(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-12
(54)【発明の名称】凍結手術装置及びその材料、ならびにその使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 9/10 20060101AFI20250204BHJP
A61B 18/02 20060101ALI20250204BHJP
A61L 31/14 20060101ALI20250204BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20250204BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20250204BHJP
【FI】
A61K9/10
A61B18/02
A61L31/14
A61K47/26
A61K47/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024547004
(86)(22)【出願日】2023-02-06
(85)【翻訳文提出日】2024-08-22
(86)【国際出願番号】 US2023062017
(87)【国際公開番号】W WO2023150739
(87)【国際公開日】2023-08-10
(32)【優先日】2022-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524293773
【氏名又は名称】モスコヴィッツ、マーティン・ジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モスコヴィッツ、マーティン・ジェイ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C081
4C160
【Fターム(参考)】
4C076AA22
4C076BB16
4C076CC50
4C076DD23
4C076DD67
4C081AC06
4C081BA13
4C081CE11
4C081DA13
4C160JJ07
4C160JJ09
4C160MM22
4C160MM32
(57)【要約】
本開示では、哺乳類対象に対して凍結手術(cryo-surgery)を実施するための材料、装置、システム、及び方法が提供される。より具体的には、低温スラリー、及びこの低温スラリーを、体脂肪減少処置を必要とする治療対象に皮下注射するための装置、システム、ならびに方法が提示される。このスラリー及び装置、システム、ならびに方法は、治療対象に全身麻酔を用いる必要がなく、また施術者の間で大幅な新たな外科的トレーニングを必要とせずに、皮下における非常に効果的な氷相脂肪分解(ice-phase-lipolysis)を可能にする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶解した単純炭水化物及び溶解した塩を含む冷却された水溶液と氷との混合物を含む、哺乳動物の手術に使用するための低温スラリー。
【請求項2】
前記単純炭水化物が3~7個の炭素原子を有する単糖類を含む、請求項1に記載の低温スラリー。
【請求項3】
前記単純炭水化物が6個の炭素原子を有する単糖類を含む、請求項2に記載の低温スラリー。
【請求項4】
前記単純炭水化物がデキストロースであるように構成される、請求項3に記載の低温スラリー。
【請求項5】
前記塩が生体適合性塩であるように構成される、請求項1に記載の低温スラリー。
【請求項6】
前記塩が塩化物塩であるように構成される、請求項1に記載の低温スラリー。
【請求項7】
前記塩が塩化ナトリウムであるように構成される、請求項1に記載の低温スラリー。
【請求項8】
前記単純炭水化物はデキストロースであり、前記塩は塩化ナトリウムであるように構成される、請求項1に記載の低温スラリー。
【請求項9】
前記デキストロース及び前記塩化ナトリウムが、前記スラリーが実質的に自由に流動可能な溶液混合物の状態で過冷却されるのに十分な濃度で水溶液中に含まれる、請求項8に記載の低温スラリー。
【請求項10】
外科用ポンプに対して操作可能に接続された容器を含み、前記容器がさらに混合手段を含む、外科用注射装置。
【請求項11】
前記混合手段がミキシングポンプ循環システムまたは内部オーガーを含む、請求項10に記載の外科用注射装置。
【請求項12】
前記容器には請求項10に記載の前記低温スラリーが収容されており、前記オーガーの動作により前記低温スラリーが混合される、請求項10に記載の外科用注射装置。
【請求項13】
前記外科用ポンプが蠕動ローラーポンプであるように構成される、請求項12に記載の外科用注射装置。
【請求項14】
前記外科用ポンプに対して動作可能に接続された注入針をさらに含む、請求項10に記載の外科用注射装置。
【請求項15】
前記注入針の外径が2.7mmであるように構成される、請求項14に記載の外科用注射装置。
【請求項16】
前記容器を覆い塞ぐ蓋をさらに含む、請求項10に記載の外科用注射装置。
【請求項17】
外科用注射システムであって、
低温スラリーを受け取って収容するように構成された容器と、
前記容器に対して動作可能に接続された蠕動外科用ポンプと、
前記蠕動外科用ポンプに対して操作可能に接続された注入針とを備え、
前記低温スラリーは冷却された水溶液及び氷を含み、
前記水溶液は溶解した単糖類及び溶解した塩を含む、外科用注射システム。
【請求項18】
前記単糖類はデキストロースであり、前記塩は塩化ナトリウムであるように構成される、請求項17に記載の外科用注射システム。
【請求項19】
過冷却温度において効果的に動作することが可能な請求項17に記載の外科用注射システム。
【請求項20】
前記低温スラリーは、生きた哺乳動物の脂肪細胞と接触したときに氷相脂肪分解を引き起こすのに十分な低温であるように構成される、請求項17に記載の外科用注射システム。
【請求項21】
前記容器は、バケットの内容物を動作温度に維持する冷却要素によって実質的に取り囲まれている、請求項17に記載の外科用注射システム。
【請求項22】
未凍結水溶液のバッチまたは前記低温スラリーのバッチを受け取り、好ましい低温に維持し、かつ保持するように構成された冷却保持チャンバをさらに含む、請求項17に記載の外科用注射システム。
【請求項23】
前記容器が混合漏斗を含む、請求項17に記載の外科用注射システム。
【請求項24】
哺乳動物の対象に対して氷相脂肪分解を引き起こす方法であって、
氷相脂肪分解される脂肪細胞に対してスラリーが近接するように、冷却された水溶液及び氷の混合物を含む低温スラリーを皮下注射するステップを含み、
前記水溶液は、溶解した単純炭水化物及び溶解した塩を含む、方法。
【請求項25】
前記単純炭水化物がデキストロースであり、前記塩が塩化ナトリウムであるように構成される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記注射が請求項18のシステムを使用して実行される、請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2022年2月7日出願の米国仮出願第63/307,359に基づく優先権を主張するものであり、その出願の開示内容の全体は、ここで参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、外科用装置、材料、及びその方法の分野に関する。より具体的には、本開示は、注入による氷相脂肪分解(ice-phase-lipolysis)を実行するための装置、材料、及び方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
体脂肪削減処置は非常に人気があり、医師や医療用品製造業者にとって大きな収入源となっている。2019年には、265,000件を超える脂肪吸引手術が行われたことを米国形成外科医協会が報告した(米国形成外科医協会、美容施術の動向https://www.plasticsurgery.org/documents/News/Statistics/2020/cosmetic-procedure-trends-2020.pdf)。
【0004】
体脂肪に対する処置には、食生活の変更及び改善、運動習慣の改善、栄養の補給、薬物、ならびにラップバンド、胃内バルーン、脂肪吸引及び脂肪除去などのミクロ/マクロ手術が含まれる。これらの処置はそれぞれ、治療対象に課される高額なコスト、痛み、不快感、望ましくない副作用、健康上のリスク、不便であること、時間を要すること、期待したほどの効果が得られないことなど、一定の欠点を伴う。
【0005】
その結果、手頃なコストで実行できる安全かつ効果的な体脂肪減少処置に対する大きなアンメットニーズが存在している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、外科用材料、外科用装置、システム、及びそれらの使用方法を提供する。より具体的には、本開示は、それを必要とする哺乳動物対象に対する注射による氷相脂肪分解を実施するための装置、材料、及び方法を提供する。
【0007】
一態様では、本開示は、冷却された水溶液及び氷の混合物を含む哺乳動物の手術に用いるための低温スラリーを提供し、当該水溶液は溶解した単純炭水化物及び溶解した塩を含む。低温スラリーに関するいずれの実施形態においても、単純炭水化物は、3~7個の炭素原子を有する任意の単糖類を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、単純炭水化物は、6個の炭素原子を有する任意の単糖類を含んでいてもよい。さらに別の実施形態では、単純炭水化物はデキストロースからなる。
【0008】
低温スラリーに関するいずれの実施形態においても、塩は生体適合性塩を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、塩は塩化物塩であってもよい。いくつかの実施形態では、塩は塩化ナトリウムからなる。
【0009】
低温スラリーに関するいくつかの実施形態では、単純炭水化物はデキストロースであり、塩は塩化ナトリウムであり、それらの両方ともが水溶液中に存在しており、低温スラリーが実質的に自由に流動可能な溶液のままで過冷却されるのに十分な濃度である。
【0010】
低温スラリーに関するいずれの実施形態においても、スラリーは滅菌されていてもよい。
【0011】
他の態様では、本明細書は、外科用ポンプに対して動作可能に接続された容器を含む外科用注射装置を提供し、該容器は、混合手段に動作可能に対して接続されるか、または混合手段をさらに含む。混合手段は、1以上のミキシングポンプまたは内部オーガーを含んでいてもよい。外科用注射装置のいずれの実施形態においても、容器には低温スラリーが収容されており、この低温スラリーは冷却された水溶液及び氷の混合物を含み、該水溶液は溶解した単純炭水化物及び溶解した塩を含む。外科用注射装置のいくつかの実施形態では、外科用ポンプは蠕動ローラーポンプを含んでいてもよい。
【0012】
外科用注射装置に関するいずれの実施形態においても、装置は、外科用ポンプに対して動作可能に接続されたカニューレ/注入針をさらに備えていてもよい。いくつかの実施形態では、針の外径は2.7mmである。
【0013】
外科用注射装置に関するいずれの実施形態においても、ホッパー(hopper)は容器を覆い塞ぐ蓋をさらに備えていてもよい。
【0014】
他の態様では、本開示は、外科用注射システムであって、低温スラリーを受け取って収容するように構成された容器と、該容器に対して動作可能に接続された外科用ポンプと、該外科用ポンプに対して動作可能に接続されたカニューレ/注入針とを備え、該低温スラリーは冷却された水溶液及び氷を含み、該水溶液は溶解した単糖類及び溶解した塩を含むシステムを提供する。システムに関するいずれの実施形態においても、容器は混合漏斗を含んでいてもよい。いずれの実施形態においても、混合漏斗は上部及び下方先端部を備えていてもよい。このような実施形態では、混合漏斗は上部において、チューブ用に1以上の接続部(hook-ups)を備えていてもよい。混合漏斗は、1以上のミキシングポンプに流体的に結合され、低温スラリーの液体対氷の比率及び/または成分を循環させ、かつ、維持することを可能とする。
【0015】
外科用注射システムに関するいくつかの実施形態では、単糖類はデキストロースであり、塩は塩化ナトリウムである。いくつかの実施形態では、システムは過冷却温度において効果的に動作することが可能である。いくつかの実施形態では、低温スラリーは、注入によって生きた哺乳動物の脂肪細胞と接触したときに氷相脂肪分解を引き起こすような、十分に低い温度である。
【0016】
外科用注射システムに関するいずれの実施形態においても、容器は冷却保存されてもよい。いくつかの実施形態では、容器は約0℃で冷却されてもよい。外科用注射システムに関するいずれの実施形態も、保持チャンバをさらに備えていてもよい。いずれの実施形態においても、保持チャンバは冷却されてもよい。いくつかの実施形態では、保持チャンバは約0℃で冷却されてもよい。保持チャンバは、溶液のバッチ及び/または低温スラリーのバッチを受け取って保持するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、保持チャンバは、テフロン(登録商標)材料を含む側壁を有する1以上の容器を含んでいてもよい。
【0017】
他の態様では、本開示は、哺乳動物の対象に対して注射により氷相脂肪分解を生じさせる方法を提供し、本方法は、スラリーが氷相脂肪分解される脂肪細胞に対して近接するように、冷却された水溶液及び氷の混合物を含む低温スラリーを皮下注射するステップを含み、該水溶液は、溶解した単純炭水化物及び溶解した塩を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、溶解した単純炭水化物はデキストロースからなり、溶解した塩は塩化ナトリウムからなる。
【0019】
本方法に関するいずれの実施形態においても、本開示で提供される装置及びシステムを用いることにより、本方法を実行することが可能である。本方法に関するいずれの実施形態においても、本方法は、滅菌された装置及び材料、ならびに無菌技術を利用して実行されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本明細書では、添付の図を参照して、いくつかの実施形態を例としてのみ説明する。ここで、図面を詳細に参照しながら示す具体的な内容は例示であり、実施形態の例示的な説明を目的とするものであることを強調する。この点に関して、図面と併せて説明することにより、実施形態がどのように実施されるかが当業者にとって明らかになる。
【0021】
特定の用語または符号が互換性を有することや同義語である可能性があることは、文脈から容易に理解できるであろう。例えば、「ジャー(jar)」の符号が付された要素を示す図は、本明細書において「ホッパー」と記載されることもある本開示の装置の技術的特徴を指すこともある。
【0022】
【
図1】
図1は、本発明の外科用装置及びシステムの実施形態の概略図である。概略図に示す装置の実施形態は、1以上のバッチのスラリーを低温動作温度、例えば0℃で維持するための「保持チャンバ」と、消耗スラリーの新しいバッチを収容して混合するためのオーガーなどの混合手段を収容することが可能なミキシングチャンバと、ミキシングチャンバを取り囲む冷却チャンバと、チューブを通じてスラリーを注入針開口部/カニューレまで前進させるためのローラーポンプと、外科の治療対象の皮下挿入用に構成されたカニューレ/針とを含む。「ミキシングチャンバ」とともに「保持チャンバ」を含めることにより、スラリーのバッチを冷却された状態に保ちながら、同時に他のスラリーのバッチを混合することが可能となる。
図1の実施形態を採用した場合には、スラリーの各バッチの作成に約50分要する可能性がある。
【
図2】
図2は、本発明の外科用装置及びシステムの実施形態のモックアップの写真である。図(写真)は、オーガーモータに対して動作的に接続されたオーガーなどの混合手段を有する容器であり、該容器はチューブに対して供給を行う。チューブはローラーポンプに対して動作可能に接続されており、チューブを通してスラリーを注入針/カニューレに向けて供給することによって、外科手術の対象に対して皮下注射を行う。
【
図3A】
図3A~3Cは、本発明の外科用装置及びシステムに関する実施形態を用いた方法の進行過程を示す写真である。
図3Aは、オーガーを容器に挿入する様子を示す写真である。オーガーは、例えば電気モータによって駆動して回転し、それにより、ジャー内の氷スラリーを混合してスラリーを準液体状態に維持することで、スラリーが氷と液体とに分離することを防止する。
図3Bは、容器に滅菌された氷スラリーを充填した状態を示す写真である。
図3Cは、容器が蓋で覆い塞がれている様子を示す写真である。
【
図3B】
図3A~3Cは、本発明の外科用装置及びシステムに関する実施形態を用いた方法の進行過程を示す写真である。
図3Aは、オーガーを容器に挿入する様子を示す写真である。オーガーは、例えば電気モータによって駆動して回転し、それにより、ジャー内の氷スラリーを混合してスラリーを準液体状態に維持することにより、スラリーが氷と液体とに分離するのを防止する。
図3Bは、容器に滅菌された氷スラリーを充填した状態を示す写真である。
図3Cは、容器が蓋で覆い塞がれている様子を示す写真である。
【
図3C】
図3A~3Cは、本発明の外科用装置及びシステムに関する実施形態を用いた方法の進行過程を示す写真である。
図3Aは、オーガーを容器に挿入する様子を示す写真である。オーガーは、例えば電気モータによって駆動して回転し、それにより、ジャー内の氷スラリーを混合してスラリーを準液体状態に維持することにより、スラリーが氷と液体とに分離するのを防止する。
図3Bは、容器に滅菌された氷スラリーを充填した状態を示す写真である。
図3Cは、容器が蓋で覆い塞がれている様子を示す写真である。
【
図4A】
図4A~4Bは、本発明の方法を採用した対象から切除された下腹部の皮下脂肪組織を示す写真である。
図4Aは切除された未処理の陰性対照脂肪組織を示す。
図4Bは、約0℃において300cc~500ccの滅菌された氷スラリーによって処理された、切除された脂肪組織を示す。
【
図4B】
図4A~4Bは、本発明の方法を採用した対象から切除された下腹部の皮下脂肪組織を示す写真である。
図4Aは切除された未処理の陰性対照脂肪組織を示す。
図4Bは切除された脂肪組織であって、約0℃において300cc~500ccの滅菌された氷スラリーによって処理されたものを示す。
【
図5A】
図5A~5Bは、本開示による注射装置の例示的な透視図である。
図5Aは、タッチスクリーンを備えていない注射装置の実施形態の図を示している。
図5Bは、インタラクティブタッチスクリーンを備えた注射装置の代替実施形態の図を示している。
【
図5B】
図5A~5Bは、本開示による注射装置の例示的な透視図である。
図5Aは、タッチスクリーンを備えていない注射装置の実施形態の図を示している。
図5Bは、インタラクティブタッチスクリーンを備えた注射装置の代替実施形態の図を示している。
【
図6】
図6は、本開示による注射装置の例示的な断面図である。
図6に示すような例示的な実施形態は、以下の実施例においてさらに詳細に説明される。
【
図7】
図7は、本開示の装置及びシステムの例示的な実施形態(
図6に示す装置など)の混合漏斗に、資格を有する医療従事者が、溶解した単純炭水化物及び溶解した塩を含むスラリーを注ぐ様子を示す例示的な図である。スラリーは、第三者の製造業者によって事前に混合された水溶液から調製され、液相において無菌状態で供給及び保管されてもよい。資格を有する医療従事者は、本開示の装置及びシステム、または溶液を冷却して氷と混合する付属装置の容器(receptacle)に対して溶液を注ぎ、例えば、約60パーセントの溶液と40パーセントの固体の氷とのスラリーを作成することが可能である。本開示の装置及びシステムは、例えば冷却システム及びオーガー機構によって、スラリーを適切な温度及び組成に維持することが可能である。
【
図8】
図8は、本開示の装置及びシステムの実施形態において用いられる混合漏斗の実施形態の例示的な図を示す。図の混合漏斗には3つのチューブ出口が設けられており、チューブに対して接続させることが可能である。チューブは、例えばミキシングポンプと流体連通していてもよい。チューブは、出口ポンプと互いに流体連通し、さらに、対象の体内にスラリーを導入するために用いられるカニューレまたは注入針とも互いに流体連通していてもよい。
【
図9】
図9は、本開示の装置及びシステムの実施形態の保持チャンバの例示的な実施形態を示す図である。保持チャンバは、水溶液及び/またはスラリーを保持することが可能であり、または水溶液及び/またはスラリーを収容する1以上の容器を保持することが可能である。保持チャンバは、その内容物を冷却するものであってもよく、例えば、保存のために水溶液を低温に維持してもよく、氷の含有量やコンシステンシーを維持するためにスラリーを凍結温度に維持してもよい。
【
図10】
図10は、液体水溶液から氷スラリーを調製するために使用できる装置の例示的な図である。
【
図11】
図11は、氷スラリーを保持し、本開示の装置及びシステムに対して氷スラリーを供給するための再利用可能なキャニスターの例示的な実施形態を示す。
【
図12】
図12は、切開を行った後に対象の体内へ氷スラリーを外科的に注射するために用いることが可能な例示的なカニューレ/注入針の俯瞰写真である。
【
図13】
図13は、本開示の方法、システム、及び装置で用いることが可能な例示的な使い捨て滅菌チューブの透視写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
ここで説明する発明は、外科用材料、外科用装置、外科用材料、及びそれらの使用方法を含む。より具体的には、本開示は、それを必要とする哺乳動物対象において注射による氷相脂肪分解を実施するための装置、材料、システム、及び方法を提供する。
【0024】
従来の脂肪吸引などの体脂肪減少手術は非常に人気があり、近年では外科医が年間約265,000件の脂肪吸引手術を行っている。ほとんどの脂肪吸引手術は全身麻酔で行われるが、これは局所麻酔の方法、例えば膨潤麻酔と比較して、多大な費用、設備やスタッフの複雑さ、医学的リスクを伴う。全身麻酔は、手術中において最も危険な側面である。2009年の研究によると、全身麻酔を受けた外科手術の対象者10,000人のうち約1人が全身麻酔関連の合併症で死亡していることが判明した。Leandro Gobbo Brazらの「麻酔における死亡率:体系的レビュー」CLINICS 2009;64(10)999-1006(2009)を参照されたい。換言すれば、従来の脂肪吸引術には、あらゆる侵襲的手術に伴う全てのリスク及びコストが伴う。
【0025】
一方、従来の脂肪吸引術に代わる、脂質特有の物理的特性をターゲットにした非外科的アプローチが登場し、脂肪を選択的に破壊できるようになった。この技術分野の装置における手法としては、超音波、無線、レーザーを用いたものが含まれる。(例えば、Zocchi M.の「超音波脂肪彫刻の臨床的側面」、SEMIN PLAST SURG 1993 7(2):153-72を参照されたい)。2010年頃から、脂肪の多い組織は脂肪の少ない組織よりも寒冷障害の影響を受けやすいという観察から出現したクライオリポライシス法が、侵襲性の低い、すなわち「非侵襲的」な代替整形手術として最も人気のある方法になった(例えば、Zelickson B. 他、(2009)「非侵襲的な脂肪細胞破壊のためのクライオリポライシス法:豚モデルによる初期の結果」DERMA SURG、35(10)、1462-70を参照されたい)。皮下脂肪は細胞死を引き起こす温度まで低下するが、真皮組織や皮下筋肉及び結合組織は損傷を受けない。その後、治療対象の体は死亡した脂肪細胞を排出するだけである。
【0026】
本開示全体で使用する「氷相脂肪分解」とは(文脈において別の意味が明確に指定または示唆されていない限り)、氷スラリー注射を用いて温度を低下させ、生きた動物の脂肪細胞を意図的に標的として殺すあらゆる方法を指す。本開示全体で使用される「クライオリポライシス」とは(文脈において別の意味が明確に指定または示唆されていない限り)、生きた動物の脂肪細胞を意図的に標的として殺すために、冷却を経皮的に適用することによる低温の達成を指す場合がある。
【0027】
従来のクライオリポライシス法は、事前に設定された時間、大抵30分~60分のサイクルで選択した領域にアプリケーターを接触させることにより、非外科的に局所脂肪の減少を引き起こすものである。従来のクライオリポライシス法では、通常、皮下温度を約1時間かけて8℃程度にまで低下させる。Gordon H. Sasaki 医学博士、FACS他「非侵襲的選択的クライオリポライシス法及び再灌流回復による局所的自然脂肪減少及び輪郭形成」、AESTHETIC SURG J、34(3)420-31(2014)を参照されたい。しかしながら、従来のクライオリポライシス法は、これまでのところ、脂肪吸引法よりも効果は劣る。この方法は時間がかかり、治療対象の身体から除去できる脂肪の場所や量についても限定されている。
【0028】
したがって、脂肪減少処置を求める治療対象は、従来の脂肪吸引(効果的である一方で、高価であり、かつ高度な専門知や全身麻酔が必要)と従来のクライオリポライシス法(より安価で、全身麻酔は不要だが、効果は低い)との間で板挟みとなる。本開示の氷相脂肪分解材料、装置、システム、及び方法は、大幅かつ新たな規制当局の承認や外科医のトレーニングを必要とせずに、このジレンマに対する独自の解決策を提供する。
【0029】
このような長年満たされていないニーズに応えるため、本開示は、滅菌された軟らかい凍結氷スラリーを皮下送達するための材料、システム、及び方法を提供する。本開示は、一般に審美的なボディコンタリング(contouring)を目的として(なお、材料、システム、及び方法は他の医療目的にも使用可能である)、脂肪細胞の破壊、吸収、及び排出を達成するために氷相脂肪分解を利用するシステム及び方法を提供する。本開示の材料、システム、及び方法は、従来の脂肪吸引におけるチューメセント(tumescent)液の配置と同様のプロセスで、治療対象の皮下空間に対してスラリーを導入することを可能にする。溶解した氷スラリーはエネルギーを吸収して近くの脂肪細胞を冷却し、細胞死を引き起こす。その後、脂質細胞の内容物は治療対象の体内に吸収され、排出される。本開示のこのようなシステムは、適切な外科的処理または緊急処置における局所冷却用の凍結生理食塩水の製造、及び移植臓器の輸送のために医療従事者によって用いられることが可能である。本開示のシステムは、全身麻酔を必要とせず、治療対象が覚醒しているときに採用されてもよい。本開示のシステム及び方法により、治療部位の脂肪を約25%~約50%減少させることが期待される。
【0030】
本発明は、局所麻酔を行った治療対象の真皮の下に対して穏やかに注射することが可能な低温スラリーを提供する。本開示はさらに、体脂肪の減少を誘発するために低温スラリーを注射するための装置、システム及び方法を提供する。2021年には、皮下氷スラリー注射は実行可能であり、局所クライオリポライシス法と同等の安全性及び忍容性プロファイルが観察されたという結論を下した、初めてのパイロットスタディが発表された(Kandula P.他、「注射によるクライオリポライシス法:ヒトに対する初の研究」PLAST RECONSTR SURG GLOB OPEN 2021、9(9):e3818)。皮下に注射された氷スラリーの相変化は、氷相脂肪分解を誘発することが可能であり、注射部位に対して選択的なものである。対照部位では有意な変化は見られなかった。したがって、本開示の発明は、全身麻酔を必要とせず、また、本開示の方法がほとんどの形成外科医の通常の訓練及び知識や技能の範囲内であるため、大掛かりな規制当局の承認または施術者のトレーニングを必要とせずに、従来のクライオリポライシス法よりも深部において、より効果的な脂肪減少を可能にする。さらに、本発明により、治療対象の身体内において到達が難しい部位の治療が可能となる。
【0031】
本開示のシステム及び方法は、審美的なボディコンタリングまたはその他の所定の医療目的のために、あらゆる局所的な皮下脂肪沈着物を治療するために採用することが可能である。対象の身体上における部位の例としては、顎下、腕、胸、腹部、脇腹、胴体、背中、太もも、及び脚を含む。本開示のシステム及び方法を使用するにあたって、特定の体格指数(BMI)や要件は示していない。本開示のシステム及び方法を採用した治療には、約10分から約20分要すると予想される。最初に治療した対象の身体部位は、所望に応じて再度治療することが可能である。例えば、対象は太ももを治療し、数か月後に同じ部位を再度治療してもよい。
【0032】
一態様では、本開示は、冷却された水溶液及び氷の混合物を含む哺乳動物の手術に使用するための低温スラリーを提供し、水溶液は溶解した単純炭水化物及び溶解した塩を含む。
【0033】
低温スラリーのいずれの実施形態においても、単純炭水化物は、3~7個の炭素原子を有する任意の単糖類を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、単純炭水化物は、6個の炭素原子を有する任意の単糖類を含んでいてもよい。さらに他の実施形態では、単純炭水化物はデキストロースからなる。
【0034】
低温スラリーに関するいずれの実施形態においても、塩は生体適合性塩を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、塩は塩化物塩であってもよい。いくつかの実施形態では、塩は塩化ナトリウムからなる。
【0035】
内部凍結溶解法は腫瘍やその他の病状の治療に採用されているが、このような方法においては局所温度が0℃よりも大幅に低くなるため、脂肪に特化した治療には適していない。前述したように、従来のクライオリポライシス法は、治療対象の皮膚の表面を低温にするという方法で、2010年頃から使用されている。一方、他のグループでは皮下法による氷相脂肪分解を実験したが、0.9%の塩化ナトリウム及び10%のグリセロールを含む-4.8℃~-3.5℃の氷スラリーを用いた。知識や信念に基づいて、2022年1月現在、アメリカ食品医薬品局は少量(すなわち、500mg未満)のグリセロールの皮下注射のみを承認している。一方、デキストロース-塩化ナトリウム溶液は安全性が実証されており、何十年にもわたって皮下注射処置に用いられてきた。例えば、急性脱水を引き起こした治療対象の水分補給には、デキストロース-塩化ナトリウム溶液の皮下注射が必要とされる。例えば、Paula A. Rochon他「高齢者の脱水症を治療するための皮下注射の根拠に関する系統的レビュー」J GERONTOL A、1997年5月、52(3):M169-76や、Tari Turner及びAnne-Marie Cassano「高齢者の治療対象の水分補給のための皮下デキストロース-根拠に基づくレビュー」B.M.C. GERIATR 2004年:4(2)を参照されたい。本開示は、デキストロース-塩化ナトリウム溶液を用いて安全かつ効果的な低温スラリーを形成できるという、新たな驚くべき改良を提供する。
【0036】
低温スラリーに関するいくつかの実施形態では、単純炭水化物はデキストロースであり、塩は塩化ナトリウムであり、両方とも水溶液であり、低温スラリーが実質的に自由に流動可能な溶液のままで超冷却(super-chilled)(すなわち、0℃以下)されるのに十分な濃度である。
【0037】
低温スラリーは、約5重量%の氷、約10重量%の氷、約15重量%の氷、約20重量%の氷、約25重量%の氷、約30重量%の氷、約35重量%の氷、約40重量%の氷、約45重量%の氷、約50重量%の氷、約55重量%の氷、約60重量%の氷、約65重量%の氷、約70重量%の氷を含んでいてもよい。低温スラリーは、約5%体積の氷、約10%体積の氷、約15%体積の氷、約20%体積の氷、約25%体積の氷、約30%体積の氷、約35%体積の氷、約40%体積の氷、約45%体積の氷、約50%体積の氷、約55%体積の氷、約60%体積の氷、約65%体積の氷、約70%体積の氷を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、スラリーは約40重量%の氷を含む。氷対液体の比率を調整することにより、任意の粘度や相変化潜熱を実現することが可能である。
【0038】
低温スラリーに関するいずれの実施形態においても、スラリーは滅菌されていてもよい。低温スラリーの液体成分は滅菌状態で製造され、滅菌容器に密封され、治療時及び/または治療場所の近くで医療従事者によって開封される。同様に、低温スラリーが接触するあらゆる装置、容器、表面、チューブ、手袋、及び/または皮膚も滅菌されていてもよい。
【0039】
ある実施形態では、スラリーは滅菌された水中において12.2%デキストロース及び0.18%塩化ナトリウムの水溶液を含む。ある実施形態では、スラリーにはスラリー溶液に添加された薬剤を含んでいなくてもよい。このような溶液は、約40%の軟らかい凍結氷スラリーに変化させることも可能である。本開示のシステムを採用して、氷及び約60%の液体水溶液を混合する。
【0040】
他の態様では、本明細書は、外科用ポンプに動作可能に接続された容器を備え、該容器が混合手段に動作可能に接続された外科用注射装置を提供する。いずれの実施形態においても、容器には、水性液体及び氷の混合物を含む低温スラリーが収容され、水性溶液は単糖類及び塩を含んでいてもよく、単糖類はデキストロースであり、塩は塩化ナトリウムであってもよい。一実施形態では、容器は、滅菌水中の12.2%デキストロース及び0.18%塩化ナトリウムの水溶液を含む低温スラリーを受け取り、収容してもよい。ある実施形態では、スラリーはスラリー溶液に添加された薬剤を含んでいてなくてもよい。スラリーは、約40%の氷及び約60%の液体水溶液を含む軟らかい凍結氷スラリーであってもよい。
【0041】
外科用注射装置のいずれの実施形態においても、容器はバケツ、ボウル、密閉容器(pouch)、ねじ蓋付き容器、または混合漏斗を含んでいてもよい。容器は上部が開いていてもよく、密閉可能な蓋を備えていてもよく、あるいは永久的または半永久的に密閉され、充填バルブを備えていてもよい。容器は任意の適切な材料から作製されてもよい。容器は実質的に剛体であってもよく、または実質的に非剛体であってもよい。容器は、再利用可能、一部再利用可能、使い捨て、または部分的に使い捨てのいずれであってもよい。混合手段は、1以上のミキシングポンプを含んでもよく、またはオーガーを含んでもよい。ミキシングポンプは、チューブによって容器に流体的に結合され、ポンプはスラリーを循環及び/または撹拌状態に維持して、スラリーが固まるのを防ぎ、それにより所望の液体対氷の比率及びコンシステンシーを維持してもよい。オーガーを有する実施形態では、オーガーは、低温スラリーを撹拌し、継続的に混合するのに十分な速度で回転し、それにより、スラリーが適切にポンプで押し出されることが可能になる。外科用注射装置のいくつかの実施形態では、外科用ポンプは蠕動ローラーポンプを含んでいてもよい。
【0042】
例示的な実施形態では、外科用注射装置は、ミキシングチャンバ(混合ファネル、ミキシングポンプヘッド)、出力ライン、治療対象ライン、混合漏斗用引き出し型収納(mix funnel storage drawer)、フットペダル、及び保持チャンバ(
図5A)を含むメインユニット、加えて、オプションにより、例えばタッチスクリーンなどの電子ユーザーインターフェース(
図5B)などのコンポーネントを含んでいてもよい。具体的には、ミキシングチャンバには漏斗、ミキシングポンプヘッド、出力ライン(
図6)が収容される。漏斗ユニットは、専用品として設計された滅菌済みの使い捨て混合バッグであり、3本のチューブに接続できるようになっている。2本のチューブラインは2つの蠕動ポンプ(ミキシングポンプヘッド)を通過し、1本のチューブラインは出力ポンプヘッドを通過し、スラリー溶液は、スラリーを漏斗ユニットに送り込む(
図8)。オプションのタッチスクリーン(
図5B)は、ミキシングポンプ及び出力ポンプの速度を制御するためのユーザ制御インターフェースであり、フットペダルで出力ポンプのオン/オフを切り替える。保持チャンバには、再利用可能な滅菌キャニスターに6~12リットルのスラリーが保持される(
図9、11)。スラッシュを形成するために用いられる水溶液(例示的にはデキストロース及び塩化ナトリウムを含む)は、第三者によって製造され、エンドユーザーに対して提供されてもよい。滅菌水溶液を装置に付加すると、装置は、相変化脂肪分解治療に用いられる軟らかい注射可能な凍結氷スラリーを生成する(
図7)。
【0043】
前述したように、例示的な実施形態には、(例えば、デキストロース及び塩化ナトリウムを含む)滅菌水溶液で充填される再利用可能なキャニスター(
図11)を含む。キャニスターは、オフサイトの製造施設で充填及び密封される場合もあれば、治療現場と同じ施設の現場において充填及び密封されてもよい。再利用可能なキャニスター及びその内容物は、室温または冷蔵などの凍結温度以上で保管してもよい。キャニスターは、治療時及び/または治療場所、またはその近辺で開封/開封されてもよい。滅菌水溶液は、治療現場において冷凍装置を用いて低温氷スラリーに変換されてもよい。冷凍装置は、装置の容器に流体結合された外科用注射装置の構成要素であり、これにより、冷凍装置は水溶液を軟らかく凍った氷スラリーへと凍結させ、そのスラリーを外科用注射装置容器に供給する。あるいは、冷凍装置は注射装置の外部に設置され、冷凍装置は滅菌水溶液を凍結し、出力された滅菌済みの軟らかい凍結氷スラリーは、滅菌手術室において認められている手順を採用して、装置の漏斗ユニット(滅菌使い捨てミキシングバッグ)に手動で移送される(
図7)。漏斗ユニットは、本開示のデバイス及びシステムと互換性のある独自の設計に従って製造されてもよい。例示的な実施形態では、漏斗ユニットは、より小さい第3のチューブ(
図8参照)を介して出力ポンプヘッド(例えば、蠕動ポンプ)に接続される。漏斗ユニットと治療対象投与用カニューレとの間には、使い捨ての滅菌治療対象用チューブが接続されている(
図6)。滅菌カニューレはスラリーを治療対象の体内に注射するのに用いられる。外科用注射装置は、滅菌スラリーが注射されるまでその温度を維持する(
図7)。(スラリーが治療対象の体内に注入されると、スラリーは溶けるため、この時点でスラリーの温度を制御する必要がなくなる。)この装置は、カニューレ/注入針(
図12)及び使い捨てチューブ(
図13)から構成されてもよい。
【0044】
外科用注射装置のいずれの実施形態においても、装置は外科用ポンプに動作可能に接続された注入針をさらに含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、針は外径2.7mmの針である。
【0045】
外科用注射装置に関するいずれの実施形態においても、容器は、容器を覆い塞ぐ蓋をさらに備えていてもよい。
【0046】
他の態様では、本開示は、外科用注射システムを提供し、このシステムは、低温スラリーを受け取って収容するように構成された容器と、容器に動作可能に接続された外科用ポンプと、外科用ポンプに動作可能に接続された注入針とを備え、低温スラリーは、冷却された水溶液及び氷を含み、水溶液は、溶解した単糖類及び溶解した塩を含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、容器は混合漏斗を含む(例えば、
図6を参照)。混合漏斗は、混合手段をさらに備えていてもよいし、混合手段に動作可能に接続されていてもよい。混合手段は、好ましい液体対氷の比率やコンシステンシーを維持するために低温スラリーを撹拌してもよい。いくつかの実施形態では、混合漏斗は上部先端部及び下部先端部を備える。このような実施形態では、混合漏斗の上部は、チューブへの1以上の結合によって混合手段に流体的に結合されてもよい。混合手段は、1以上のミキシングポンプを含んでもよい。いくつかの実施形態では、混合漏斗は、内部オーガーをさらに備えていてもよい。
【0048】
外科用注射システムのいくつかの実施形態では、単糖類はデキストロースであり、塩は塩化ナトリウムである。いくつかの実施形態では、システムは過冷却温度において効果的に動作することが可能である。いくつかの実施形態では、低温スラリーは、生きた哺乳動物の脂肪細胞と接触すると氷相脂肪分解を引き起こすことができるほど十分に低い温度である。いくつかの実施形態では、哺乳動物の対象の生きた脂肪細胞は、10℃以下まで低下してもよい。いくつかの実施形態では、スラリーは、滅菌水中に12.2%のデキストロース及び0.18%の塩化ナトリウムを含む水溶液を含んでもよい。いくつかの実施形態では、スラリーには薬剤が添加されなくてもよい。いくつかの実施形態では、スラリーは、薬剤を添加していない滅菌水中の12.2%デキストロース及び0.18%塩化ナトリウムを含む水溶液で構成されてもよい。スラリーは、約40%の氷及び約60%の液体水溶液を含む軟らかい凍結氷スラリーであってもよい。
【0049】
いくつかの実施形態では、容器は、容器の内容物をスラリーの動作温度に維持するように構成された冷却要素によって実質的に囲まれていてもよい。いずれの実施形態においても、スラリーの動作温度は、約-10℃~0℃よりもわずかに高い。いずれの実施形態においても、スラリーの動作温度は約0℃、約-5℃、約-8℃、または約-10℃であってもよい。
【0050】
いくつかの実施形態では、外科用注射システムは、冷却室、すなわち「保持チャンバ」をさらに備えていてもよい。保持チャンバは、コンテナに操作可能または流体的に結合されていても、結合されていなくてもよい。保持チャンバが容器に操作可能または流体的に結合されていない実施形態では、資格を有する医療従事者が溶液及び/またはスラリーを保持チャンバに移送してもよい。保持チャンバがコンテナに操作可能かつ/または流体的に結合されている実施形態では、システムは、ポンプ手段を介して溶液及び/またはスラリーを保持チャンバとの間で移送してもよい。保持チャンバは、内容物をスラリー動作温度に維持するように構成されていてもよい。保持チャンバは、容器から氷スラリーを受け取って収容し、容器を空にして、他のバッチの低温スラリーを調製するための原料を導入できるように構成されていてもよい。したがって、低温スラリーのバッチを冷却室内に維持しながら、同時に他の氷スラリーのバッチを調整してもよい。いくつかの実施形態では、保持チャンバは、スラリーキャニスターを収容するための1以上の容器を備え、その側壁はテフロン(登録商標)材料から構成されてもよい。いずれの実施形態においても、低温スラリーのバッチの調製には約50分要することがある。いずれの実施形態においても、スラリーの動作温度は、約-10℃~0℃よりもわずかに高い温度範囲であってもよい。いずれの実施形態においても、スラリーの動作温度は、約0℃、約-1℃、約-2℃、約-3℃、約-4℃、約-5℃、約-6℃、約-7℃、約-8℃、約-9℃、または約-10℃であってもよい。いずれの実施形態においても、スラリーの動作温度は、ちょうど0℃、-1℃、-2℃、-3℃、-4℃、-5℃、-6℃、-7℃、-8℃、-9℃、-10℃であっても、またはそれより低い温度であってもよい。
【0051】
他の態様では、本開示は、哺乳動物対象において氷相脂肪分解を引き起こす方法を提供し、本方法は、低温スラリーを皮下注射することにより、氷相脂肪分解される脂肪細胞に対してスラリーを近接させるステップを含み、ここで、低温スラリーは、冷却された水溶液及び氷の混合物を含み、ここで、水溶液は、溶解した単純炭水化物及び溶解した塩を含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、溶解した単純炭水化物はデキストロースからなり、溶解した塩は塩化ナトリウムからなる。いくつかの実施形態では、水溶液は、12.2重量%の溶解デキストロース及び0.18重量%の溶解塩化ナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、低温スラリーは、60%の液体水溶液及び40%の氷を含む。
【0053】
本方法に関するいずれの実施形態においても、本方法は、上述の本開示で提供される装置及びシステムを用いて実行されてもよい。本方法に関するいずれの実施形態においても、方法は、滅菌された装置及び材料、ならびに無菌技術を利用して実行されてもよい。
【0054】
本方法に関するいずれの実施形態においても、対象者が覚醒しており、全身麻酔を受けていない状態で本方法を実施してもよい。いずれの実施形態においても、対象者は成人(すなわち、18歳以上)の男性または女性であってもよい。
【0055】
例
【0056】
1.例示的な方法プロトコル
【0057】
本開示の材料、システム、及び方法の使用における例示的な非限定的な例では、資格を有する医療専門家がカニューレを用いて、滅菌された軟凍結氷スラリーを人間の治療対象の局所的な脂肪組織の領域に皮下投与する。次いで、脂肪細胞が冷たくなると細胞死が起こる。次いで、時間の経過とともにスラリー及び細胞は吸収され、治療対象の体から排出される。氷相脂肪分解法において採用されるプロトコルは、両方のプロセスが皮下に溶液を注入することから開始するという点で、従来の脂肪吸引の最初のステップと実質的に同じである。脂肪吸引の場合、チューメセント液(通常は生理食塩水、血管を収縮させるエピネフリン、痛みを抑えるリドカインを含む)が通常、除去した脂肪の量と同量(ただし、量は変更される場合がある)治療対象に注入される(Ingargiola M.他「脂肪減少とボディコンタリングのための冷クライオリポライシス法:現在の治療パラダイムの安全性及び有効性」PLAST AND RECONST SURG、2015年6月135(6)1581-90を参照されたい)。
【0058】
より具体的には、例示的な手順は以下のステップに従う。
【0059】
(1)(例えば、ベタジン、クロルヘキシジン等により)外科手術と同様に、治療対象の皮膚を調製する。
【0060】
(2)挿入部位に局所麻酔薬を注射する。滅菌スラリーが低温であるため、多くの局所感覚神経が不活性化されるが、一部の神経、特に圧力を感知する神経は、処置中も活性状態であることがある。したがって、局所麻酔が推奨される。
【0061】
(3)滅菌スラリーの注入速度を決定する。通常、1分あたり200mL~400mLである。
【0062】
(4)挿入部位を切開し、麻酔を行った切開部からカニューレを用いて滅菌スラリーを注入し、目的の領域を治療する。治療部位が腫れて硬化した部分が見られるようになるまで、滅菌スラリーを加える。通常、スラリー注入量は約2リットル~約4リットルである。
【0063】
(5)必要に応じて切開部を縫合し、治療対象の身体からのあらゆる漏れを吸収するためのパッドを配置する。
【0064】
このような処置の後、最大数日間、治療対象の挿入部位から体液が排出されることがある。治療対象は挿入部位において、最大数週間にわたって赤み、あざ、または圧痛を味わうこともある。
【0065】
2.装置の操作モード
【0066】
本開示の装置及びシステムに関するユーザ操作モードの例示的かつ非限定的な例として、装置には、「スタートアップ」、「スタンバイ」、「アクティブ」、及び「ポンプのみ」の4つの操作モードがある。ユーザがユニットの電源を入れると、スタートアップモードになり、その間に、双方向タッチスクリーンディスプレイが点灯し、冷却システムが起動する。コントローラーのタッチスクリーンボタンにより、ユーザはさまざまなモードを切り替えることが可能である。
【0067】
スタートアップ:ユニットの電源がオンになると、スタートアップモードで温度が0℃に近づく。
【0068】
スタンバイ:スタンバイモードでは、治療対象の治療に最適なレベルになるように温度を0℃に保持する。
【0069】
アクティブ:アクティブモードでは、医師がフットペダルを踏んだときに、ミックスチャンバ内のミックスポンプヘッドが起動し、出力ポンプヘッド(「治療対象用ポンプ」とも呼ぶ)が使用可能となるように準備が行われる(
図5A)。
【0070】
ポンプのみ:ポンプのみモードでは、出力ポンプヘッド(治療対象用ポンプとも呼ぶ)が使用可能となるように準備が行われる(
図5A)。
【0071】
3.臨床パイロット研究
【0072】
本開示の低温スラリー、装置、及びシステムを、5人を対象とする試験でテストした。材料及び方法はすべて専門的かつ倫理的な基準を満たしており、手順について試験治療対象の十分なインフォームドコンセントが行われた。
【0073】
対象は、腹部整形手術を希望する5人の成人女性で構成され、それぞれ下腹部の皮下空間に過剰な脂肪を有していた。腹部整形手術を現在受けている対象を選択することで、合併症が発生した場合でも、対象がすでに予定されている美容手術の一環として皮膚を除去することが可能となる。さらに、腹部整形手術では組織学的検査のために真皮組織を除去することが可能となった。脂肪組織を評価するために術前の超音波検査が行われた。
【0074】
本開示に記載の装置及び方法を使用して、デキストロース及び塩化ナトリウムを含む約0℃の滅菌氷スラリーを調製した。スラリーを容器に入れ、オーガーで混合した。次いで、ローラーポンプを用いて、スラリーを容器からカニューレ/点滴針に送達した。
【0075】
対象の鎮痛には亜酸化窒素による局所麻酔を用いた。外科医が右下腹部の皮下腔に注入針を挿入し、滅菌状態で右下腹部の皮下腔に300cc~500ccの滅菌氷スラリーを注入した。左下腹部は、ネガティブコントロールのために意図的に未処理とした。
【0076】
手術は外来で行われた。試験対象の忍容性は良好であり、処置後すぐに帰宅した。
【0077】
対照の腹部整形手術が予定されていた1週間から16週間後に組織標本を採取した。そのとき、腹部の組織を採取し、写真を撮影した(
図4A-4B)。右下腹部(試験部位)及び左下腹部(ネガティブコントロール)からの標本を、組織学検査のために送付した。試験を受けた治療対象には、いくつかの細胞の変化が見られた。具体的には、処理した脂肪組織では、未処理のネガティブコントロールよりも細胞死及び体積減少の率が高かった。
【0078】
4.臨床試験案
【0079】
以下の臨床研究案は、被限定的な予測的な例である。
【0080】
顎下領域、腕、胸部、腹部、脇腹、胴体、背中、太もも、及び脚の過剰な脂肪に対する侵襲性を最小化する治療における本開示のシステム及び方法の安全性ならびに有効性をさらに評価するために、以下の研究プロトコルが提案される。
【0081】
本臨床試験は、適用可能な範囲において、21C.F.R.パート50、54、56、及び812に規定される治験機器に関する適正臨床試験基準(GCP)及びその他の要件に準拠して実施される。少なくとも2つの異なる臨床施設において少なくとも30人の対象が登録される。脂肪減少のためのデバイスの皮下空間へのスラリーの注入は体の部位がどこであるかに依存しない(すなわち、体のすべての部位が皮下に投与される)ため、研究のエンドポイントは必ずしも体の部位に依存するものではない。
【0082】
安全性に関する主なエンドポイントは、装置による予期しない有害作用の発生率である。本開示の方法及びシステムの予期される装置の有害作用には、発赤、打撲、または圧痛が含まれることがある。評価に関する主なエンドポイントは脂肪層の減少である。副次的エンドポイントは、治療後12週目に実施されるアンケートによって評価される。このアンケートでは、施術の快適さ、結果に対する満足度、友人に施術を勧めるかどうかが評価される。
【0083】
装置インターフェースの使いやすさや関連する表示を評価するために、臨床研究者(すなわち、医師)によるユーザビリティアンケートへの回答も行われる。
【0084】
当業者であれば、開示された態様及び実施形態には、添付の請求項によってのみ定義される本発明の範囲から逸脱することなく、さまざまな変更を加えることができることを理解するであろう。
【手続補正書】
【提出日】2024-10-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明の外科用装置及びシステムの実施形態の概略図である。概略図に示す装置の実施形態は、1以上のバッチのスラリーを低温動作温度、例えば0℃で維持するための「保持チャンバ」と、消耗スラリーの新しいバッチを収容して混合するためのオーガーなどの混合手段を収容することが可能なミキシングチャンバと、ミキシングチャンバを取り囲む冷却チャンバと、チューブを通じてスラリーを注入針開口部/カニューレまで前進させるためのローラーポンプと、外科の治療対象の皮下挿入用に構成されたカニューレ/針とを含む。「ミキシングチャンバ」とともに「保持チャンバ」を含めることにより、スラリーのバッチを冷たい状態に保ちながら、同時に他のスラリーのバッチを混合することが可能となる。
図1の実施形態を採用した場合には、スラリーの各バッチの作成に約50分要する可能性がある。
【
図2】
図2は、本発明の外科用装置及びシステムの実施形態のモックアップの写真である。図(写真)は、オーガーモータに対して動作的に接続されたオーガーなどの混合手段を有する容器であり、該容器はチューブに対して供給を行う。チューブはローラーポンプに対して動作可能に接続されており、チューブを通してスラリーを注入針/カニューレに向けて供給することによって、外科手術の対象に対して皮下注射を行う。
【
図3A】
図3A~3Cは、本発明の外科用装置及びシステムに関する実施形態を用いた方法の進行過程を示す写真である。
図3Aは、オーガーを容器に挿入する様子を示す写真である。オーガーは、例えば電気モータによって駆動して回転し、それにより、ジャー内の氷スラリーを混合してスラリーを準液体状態に維持することで、スラリーが氷と液体とに分離することを防止する。
図3Bは、容器に滅菌された氷スラリーを充填した状態を示す写真である。
図3Cは、容器が蓋で覆い塞がれている様子を示す写真である。
【
図3B】
図3A~3Cは、本発明の外科用装置及びシステムに関する実施形態を用いた方法の進行過程を示す写真である。
図3Aは、オーガーを容器に挿入する様子を示す写真である。オーガーは、例えば電気モータによって駆動して回転し、それにより、ジャー内の氷スラリーを混合してスラリーを準液体状態に維持することにより、スラリーが氷と液体に分離するのを防止する。
図3Bは、容器に滅菌された氷スラリーを充填した状態を示す写真である。
図3Cは、容器が蓋で覆い塞がれている様子を示す写真である。
【
図3C】
図3A~3Cは、本発明の外科用装置及びシステムに関する実施形態を用いた方法の進行過程を示す写真である。
図3Aは、オーガーを容器に挿入する様子を示す写真である。オーガーは、例えば電気モータによって駆動して回転し、それにより、ジャー内の氷スラリーを混合してスラリーを準液体状態に維持することにより、スラリーが氷と液体とに分離するのを防止する。
図3Bは、容器に滅菌された氷スラリーを充填した状態を示す写真である。
図3Cは、容器が蓋で覆い塞がれている様子を示す写真である。
【
図4A】
図4A~4Bは、本発明の方法を採用した対象から切除された下腹部の皮下脂肪組織を示す写真である。
図4Aは切除された未処理の陰性対照脂肪組織を示す。
図4Bは、約0℃において300cc~500ccの滅菌された氷スラリーによって処理された、切除された脂肪組織を示す。
【
図4B】
図4A~4Bは、本発明の方法を採用した対象から切除された下腹部の皮下脂肪組織を示す写真である。
図4Aは切除された未処理の陰性対照脂肪組織を示す。
図4Bは切除された脂肪組織であって、約0℃において300cc~500ccの滅菌された氷スラリーによって処理されたものを示す。
【
図5A】
図5A~5Bは、本開示による注射装置の例示的な透視図である。
図5Aは、タッチスクリーンを備えていない注射装置の実施形態の図を示している。
図5Bは、インタラクティブタッチスクリーンを備えた注射装置の代替実施形態の図を示している。
【
図5B】
図5A~5Bは、本開示による注射装置の例示的な透視図である。
図5Aは、タッチスクリーンを備えていない注射装置の実施形態の図を示している。
図5Bは、インタラクティブタッチスクリーンを備えた注射装置の代替実施形態の図を示している。
【
図6】
図6は、本開示による注射装置の例示的な断面図である。
図6に示すような例示的な実施形態は、以下の実施例においてさらに詳細に説明される。
【
図7】
図7は、本開示の装置及びシステムの例示的な実施形態(
図6に示す装置など)の混合漏斗に、資格を有する医療従事者が、溶解した単純炭水化物及び溶解した塩を含むスラリーを注ぐ様子を示す例示的な図である。スラリーは、第三者の製造業者によって事前に混合された水溶液から調製され、液相において無菌状態で供給及び保管されてもよい。資格を有する医療従事者は、本開示の装置及びシステム、または溶液を冷却して氷と混合する付属装置の容器(receptacle)に対して溶液を注ぎ、例えば、約60パーセントの液体の溶液と40パーセントの固体の氷とのスラリーを作成することが可能である。本開示の装置及びシステムは、例えば冷却システム及びオーガー機構によって、スラリーを適切な温度及び組成に維持することが可能である。
【
図8】
図8は、本開示の装置及びシステムの実施形態において用いられる混合漏斗の実施形態の例示的な図を示す。図の混合漏斗には3つのチューブ出口が設けられており、チューブに対して接続させることが可能である。チューブは、例えばミキシングポンプと流体連通していてもよい。チューブは、出口ポンプと互いに流体連通し、さらに、対象の体内にスラリーを導入するために用いられるカニューレまたは注入針とも互いに流体連通していてもよい。
【
図9】
図9は、本開示の装置及びシステムの実施形態の保持チャンバの例示的な実施形態を示す図である。保持チャンバは、水溶液及び/またはスラリーを保持することが可能であり、または水溶液及び/またはスラリーを収容する1以上の容器を保持することが可能である。保持チャンバは、その内容物を冷却するものであってもよく、例えば、保存のために水溶液を低温に維持してもよく、氷の含有量や濃度(consistency)を維持するためにスラリーを凍結温度に維持してもよい。
【
図10】
図10は、切開を行った後に対象の体内へ氷スラリーを外科的に注射するために用いることが可能な例示的なカニューレ/注入針の俯瞰写真である。
【
図11】
図11は、本開示の方法、システム、及び装置で用いることが可能な例示的な使い捨て滅菌チューブの透視写真である。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0043
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0043】
前述したように、例示的な実施形態には、(例えば、デキストロース及び塩化ナトリウムを含む)滅菌水溶液で充填される再利用可能なキャニスター
を含む。キャニスターは、オフサイトの製造施設で充填及び密封される場合もあれば、治療現場と同じ施設の現場において充填及び密封されてもよい。再利用可能なキャニスター及びその内容物は、室温または冷蔵などの凍結温度以上で保管してもよい。キャニスターは、治療時及び/または治療場所、またはその近辺で開封/開封されてもよい。滅菌水溶液は、治療現場において冷凍装置を用いて低温氷スラリーに変換されてもよい。冷凍装置は、装置の容器に流体結合された外科用注射装置の構成要素であり、これにより、冷凍装置は水溶液を軟らかく凍った氷スラリーへと凍結させ、そのスラリーを外科用注射装置容器に供給する。あるいは、冷凍装置は注射装置の外部に設置され、冷凍装置は滅菌水溶液を凍結し、出力された滅菌済みの軟らかい凍結氷スラリーは、滅菌手術室において認められている手順を採用して、装置の漏斗ユニット(滅菌使い捨てミキシングバッグ)に手動で移送される(
図7)。漏斗ユニットは、本開示のデバイス及びシステムと互換性のある独自の設計に従って製造されてもよい。例示的な実施形態では、漏斗ユニットは、より小さい第3のチューブ(
図8参照)を介して出力ポンプヘッド(例えば、蠕動ポンプ)に接続される。漏斗ユニットと治療対象投与用カニューレとの間には、使い捨ての滅菌治療対象用チューブが接続されている(
図6)。滅菌カニューレはスラリーを治療対象の体内に注射するのに用いられる。外科用注射装置は、滅菌スラリーが注射されるまでその温度を維持する(
図7)。(スラリーが治療対象の体内に注入されると、スラリーは溶けるため、この時点でスラリーの温度を制御する必要がなくなる)。この装置は、カニューレ/注入針(
図10)及び使い捨てチューブ(
図11)から構成されてもよい。
【手続補正3】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物の対象に対して氷相脂肪分解を引き起こす方法であって、
氷相脂肪分解される脂肪細胞に対して、冷却された水溶液及び氷を含むスラリーが近接するように、前記スラリーを皮下注射するステップを含み、
前記注射は、
前記スラリーを収容するように構成され、かつ、所定の液体対氷の比率及び/またはコンシステンシーを維持するように前記スラリーを撹拌するように構成された混合手段を含む容器と、
前記容器から治療対象用チューブを介して治療対象に対して前記スラリーを投与し易くするために、前記容器に対して動作可能に連結された外科用ポンプとを含む外科用注射装置を用いて行われる、方法。
【請求項2】
前記水溶液が、実質的に自由に流動可能な溶液混合物のままであるときに、-10℃から0℃よりわずかに高い温度まで冷却されると前記スラリーになる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水溶液が単糖類及び塩を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記単糖類がデキストロースであり、前記塩が塩化ナトリウムであるように構成される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記スラリーが-10℃から0℃よりわずかに高い温度で注入される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
体脂肪減少処置を必要とする治療対象の体脂肪減少方法であって、
前記スラリーが減少対象の体脂肪に近接するように構成されている、請求項1に記載の方法を含む体脂肪減少方法。
【請求項7】
スラリーを収容するように構成され、かつ、所定の液体対氷の比率及び/またはコンシステンシーを維持するように、前記スラリーを攪拌するように構成された混合手段を備える容器と、
前記容器から治療対象用チューブを介して治療対象に対して前記スラリーを投与し易くするために前記容器に動作可能に連結された外科用ポンプとを含む、外科用注射装置。
【請求項8】
前記混合手段は、両端が前記容器に取り付けられた1以上のミキシングチューブと、
各チューブに連結され、かつ、前記容器の前記スラリーを前記ミキシングチューブを通じて循環させるように構成されることにより、攪拌を行うミキシングポンプとを含む、請求項7に記載の外科用注射装置。
【請求項9】
2以上の前記ミキシングチューブと、
各々が各チューブの1つに連結する2以上の前記ミキシングポンプとを備える、請求項8に記載の外科用注射装置。
【請求項10】
各ミキシングポンプが蠕動ポンプであるように構成される、請求項8に記載の外科用注射装置。
【請求項11】
前記容器は、下部が先細りの形状になっており、
各ミキシングチューブの一端は、下端において前記容器に取り付けられている、請求項8に記載の外科用注射装置。
【請求項12】
前記混合手段が、前記容器の内部に設けられたオーガーを含む、請求項7に記載の外科用注射装置。
【請求項13】
前記外科用ポンプが蠕動ポンプであるように構成される、請求項7に記載の外科用注射装置。
【請求項14】
治療対象用チューブを介して前記外科用ポンプに動作可能に結合された注入針をさらに含む、請求項7に記載の外科用注射装置。
【請求項15】
前記容器を閉じるための蓋をさらに含む、請求項7に記載の外科用注射装置。
【請求項16】
前記スラリーが、冷却され、かつ、水溶液及び水の混合物であるように構成され、
前記水溶液は、溶解した単糖類及び溶解した塩を含む、請求項7に記載の外科用注射装置。
【請求項17】
溶解した前記単糖類及び前記塩は、実質的に自由に流動可能な溶液混合物のままであるときに、-10℃から0℃よりわずかに高い温度まで冷却されると、前記水溶液が前記スラリーであるのに十分な濃度となるように構成される、請求項16に記載の外科用注射装置。
【請求項18】
前記単糖類がデキストロースであり、前記塩が塩化ナトリウムであるように構成される、請求項17に記載の外科用注射装置。
【請求項19】
生きた哺乳動物の脂肪細胞に接触したときに、氷相脂肪分解に適した十分な低温の状態で前記スラリーを投与するように構成されている、請求項7に記載の外科用注射装置。
【請求項20】
前記容器は、前記容器の内容物を動作温度に維持する冷却要素によって実質的に取り囲まれている、請求項7に記載の外科用注射装置。
【請求項21】
水溶液及び/または前記スラリーを収容した1以上のコンテナをその内部に含み、かつ、それらを所定の低温に維持するように構成された冷却保持チャンバをさらに含む、請求項7に記載の外科用注射装置。
【請求項22】
溶解した単糖類及び溶解した塩を含む水溶液であって、
溶解した前記単糖類及び溶解した前記塩は、実質的に自由に流動可能な溶液のままであるときに、約-10℃から0℃よりわずかに高い温度まで冷却されると、前記水溶液がスラリーであるのに十分な濃度を有する、水溶液。
【請求項23】
前記単糖類が3~7個の炭素原子を有する、請求項22に記載の水溶液。
【請求項24】
前記単糖類が6個の炭素原子を有する、請求項23に記載の水溶液。
【請求項25】
前記単糖類がデキストロースであるように構成される、請求項24に記載の水溶液。
【請求項26】
前記塩が生体適合性塩であるように構成される、請求項22に記載の水溶液。
【請求項27】
前記塩が塩化ナトリウムであるように構成される、請求項26に記載の水溶液。
【請求項28】
前記単糖類がデキストロースであり、前記塩が塩化ナトリウムであるように構成される、請求項22に記載の水溶液。
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正5】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正6】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正7】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】削除
【補正の内容】
【国際調査報告】