(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-12
(54)【発明の名称】3D印刷用高性能熱硬化性樹脂
(51)【国際特許分類】
B29C 64/124 20170101AFI20250204BHJP
C08G 73/00 20060101ALI20250204BHJP
C08L 79/00 20060101ALI20250204BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20250204BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20250204BHJP
C08K 5/00 20060101ALI20250204BHJP
B29C 64/314 20170101ALI20250204BHJP
B33Y 70/10 20200101ALI20250204BHJP
【FI】
B29C64/124
C08G73/00
C08L79/00
C08K3/013
C08K3/04
C08K5/00
B29C64/314
B33Y70/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024563764
(86)(22)【出願日】2023-01-18
(85)【翻訳文提出日】2024-09-06
(86)【国際出願番号】 IL2023050053
(87)【国際公開番号】W WO2023139579
(87)【国際公開日】2023-07-27
(32)【優先日】2022-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524270268
【氏名又は名称】ノガ スリーディー イノベーションズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Noga 3D Innovations Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ヴィダフスキー,ユヴァル
(72)【発明者】
【氏名】アタール,ヌリット
(72)【発明者】
【氏名】グロスマン,エイタン
【テーマコード(参考)】
4F213
4J002
4J043
【Fターム(参考)】
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4J043VA042
4J043ZB03
(57)【要約】
この技術は、イミド-伸長-ビスマレイミド(IE-BMI)とシアネートエステルとの組み合わせを含む付加製造用インク製剤に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加製造用のインク製剤であって、前記製剤は、少なくとも1つのイミド-伸長-ビスマレイミド(IE-BMI)、少なくとも1つのシアネートエステル、及び所望に応じて少なくとも1つの添加剤を含む、インク製剤。
【請求項2】
少なくとも1つの伸長ビスマレイミド(E-BMI)をさらに含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
キャリアを含まない、請求項1に記載の製剤。
【請求項4】
少なくとも1つの添加剤をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項5】
前記少なくとも1つの添加剤が、反応性材料及び非反応性材料から選択される、請求項4に記載の製剤。
【請求項6】
前記反応性材料が、光反応性希釈剤、芳香族ビスマレイミド、短鎖脂肪族ビスマレイミド、ラジカル重合開始剤、及び光重合開始剤から選択される、請求項5に記載の製剤。
【請求項7】
前記非反応性材料が、界面活性剤、抑制剤、酸化防止剤、顔料、染料、分散剤、及び強化充填剤から選択される、請求項5に記載の製剤。
【請求項8】
少なくとも1つの炭素質材料及び/又は少なくとも1つの機能性材料をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項9】
少なくとも1つの炭素質材料及び/又は少なくとも1つの機能性材料が、グラファイト、短炭素繊維、カーボンナノチューブ(CNT)、溶融シリカ粒子、酸化グラフェン、及び2D材料から選択される、請求項8に記載の製剤。
【請求項10】
前記2D材料が、窒化ホウ素(BN)、MoS
2、及びWS
2から選択される、請求項9に記載の製剤。
【請求項11】
前記製剤に可溶性である無機前駆体又はゾルゲル前駆体をさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項12】
前記ゾルゲル前駆体が、ジ-、トリ-、又はテトラ-アルコキシシランである、請求項11に記載の製剤。
【請求項13】
前記ゾルゲル前駆体が、テトラエトキシシラン(TEOS)、3-イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、ビスアミノシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(APTMS)、(3-グリシドキシプロピル)トリメチルシラン、シランジオール、シラントリオール、トリシラノールフェニル(POSS)、乳酸アルミニウム、アルミニウムアルコキシド、アルミニウムイソプロポキシド、塩化アルミニウム、トリス(アセト酢酸エチル)アルミニウム、ジルコニウムアルコキシド、ジルコニウムプロポキシド、硝酸ジルコニウム、チタンアルコキシド、チタンイソプロポキシド、チタンn-ブトキシド、チタンエトキシド、及びニオブエトキシドから選択される、請求項12に記載の製剤。
【請求項14】
前記IE-BMIが、一般構造(I)のものであり、
式中、R1及びR2の各々は、独立して、1~50個の炭素原子を有する炭素系基から選択され、
Gは、1~50個の炭素原子を有する炭素系基であり、及び式中、
前記環状イミドの各々は、所望に応じて、縮合環又は置換環系である、請求項1~13のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項15】
R1及びR2の各々が、独立して、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ芳香族基、炭素環式基、飽和基、及び不飽和基から選択される、請求項14に記載の製剤。
【請求項16】
Gが、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ芳香族基、炭素環式基、飽和基、及び不飽和基から選択される、請求項14に記載の製剤。
【請求項17】
R1、R2、及びGの各々が、互いに独立して、1~50個の炭素原子を有するアルキレン基、2~50個の炭素原子を有するアルケニレン基又はアルキニレン基、4~10個の炭素原子を有するカルボシクリル基、6~10個の炭素原子を有する芳香族基、並びに6~10個の炭素原子及び1又は複数個のヘテロ原子を有するヘテロ芳香族基であり、R1及びR2及びGの各々は、所望に応じて置換されていてもよい、請求項14に記載の製剤。
【請求項18】
R1、R2、及びGの各々が、互いに独立して、1~45、1~40、1~45、1~35、1~30、1~25、1~20、1~15、1~10、1~9、1~8、1~7、1~6、1~5、1~4、10~50、10~45、10~40、10~35、10~30、10~25、10~20、5~45、5~35、5~25、若しくは5~15個の炭素原子を有する、又は1~50のメチレン基を有するアルキレン基である、請求項17に記載の製剤。
【請求項19】
R1、R2、及びGの各々が、互いに独立して、2~45、2~40、2~45、2~35、2~30、2~25、2~20、2~15、2~10、2~9、2~8、2~7、2~6、2~5、2~4、10~50、10~45、10~40、10~35、10~30、10~25、10~20、5~45、5~35、5~25、若しくは5~15個の炭素原子を有するアルケニレン基又はアルキニレン基である、請求項17に記載の製剤。
【請求項20】
R1、R2、及びGの各々が、互いに独立して、4員環、又は5員環、6員環、7員環、若しくは8員環であるカルボシクリル基、又は二環式環系である、請求項17に記載の製剤。
【請求項21】
R1、R2、及びGの各々が、互いに独立して、芳香族基又はヘテロ芳香族基であり、6~10個の炭素原子、並びにヘテロ芳香族基の場合はN、O、及びSから選択される1又は複数個のヘテロ原子を有する、請求項17に記載の製剤。
【請求項22】
前記IE-BMIの前記環状イミド基部分の各々が、縮合環状イミド、アリール置換環状イミド、及びアリール縮合環状イミドの中から選択される、請求項1~21のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項23】
前記IE-BMIが、式(II)の化合物であり、
式中、R1及びR2の各々は、請求項12に定められる通りであり、R3は、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ芳香族基、炭素環式基、飽和基、及び不飽和基から選択され、nは、0~10の整数である、請求項1~22のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項24】
nがゼロではない、請求項23に記載の製剤。
【請求項25】
nが、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10である、請求項23又は24に記載の製剤。
【請求項26】
R1、R2、及びR3の各々が、互いに独立して、飽和、不飽和、芳香族、又は脂肪族-芳香族混合基を表し、nが、0~10の整数である、請求項23に記載の製剤。
【請求項27】
R1、R2、及びR3の各々が、異なっている、請求項23に記載の製剤。
【請求項28】
R1、R2、R3の各々が、同じである、請求項23に記載の製剤。
【請求項29】
R1が、-CH
2-、-O-、-SiR
2-、C=O、及びビスフェノールから選択される、請求項23に記載の製剤。
【請求項30】
R2が、-CH
2-、-O-、-SiR
2-、C=O、及びビスフェノールから選択される、請求項23に記載の製剤。
【請求項31】
R3が、-CH
2-、-O-、-SiR
2-、C=O、及びビスフェノールから選択される、請求項23に記載の製剤。
【請求項32】
R1、R2、及びR3の各々が、互いに独立して、20~50個の炭素原子、25~45個の炭素原子、又は30~40個の炭素原子を含む長鎖リンカー部分である、請求項23に記載の製剤。
【請求項33】
R1、R2、及びR3の各々が、互いに独立して、30~40個の炭素原子、又は35~40個の炭素原子、又は36個の炭素原子を含む、請求項23に記載の製剤。
【請求項34】
R1、R2、及びR3の各々が、互いに独立して、全てメチレン基であるC36H70アルキレン基である、請求項23に記載の製剤。
【請求項35】
前記伸長BMIが、平均分子量が最大10,000ダルトンである液体又は固体又は半固体の樹脂である、請求項1~34のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項36】
前記IE-BMIが、平均分子量が500~5,000ダルトンである液体又は固体又は半固体である、請求項1~35のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項37】
前記IE-BMIが、構造(III)、(IV)、及び(V)から選択され、
構造(III)~(V)の各々において、R1及びR2の各々は、独立して、請求項21に定められる通りであり、各nは、1~10である、請求項1~36のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項38】
前記E-BMIが、以下の構造のものである、請求項1~22のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項39】
R1及びR2の各々が、C36H70アルキレン基である、請求項37に記載の製剤。
【請求項40】
前記IE-BMIが、以下から選択される、請求項1~39のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項41】
付加製造用のインク製剤であって、前記製剤は、少なくとも1つのイミド-伸長-ビスマレイミド(IE-BMI)及び/又は少なくとも1つの伸長-ビスマレイミド(E-BMI)、少なくとも1つのシアネートエステル、並びに少なくとも1つの添加剤を含み、前記IE-BMIは、構造(I)のものであり、
式中、R1及びR2の各々は、独立して、1~50個の炭素原子を有する炭素系基から選択され、
Gは、1~50個の炭素原子を有する炭素系基であり、及び式中、
前記環状イミドの各々は、所望に応じて、縮合環又は置換環系である、インク製剤。
【請求項42】
前記シアネートエステルが、以下の構造のものであり、
式中、Rは、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、及び飽和又は不飽和炭化水素から選択され、所望に応じて、Si、P、S、O、及びNから選択される1又は複数個のヘテロ原子によって介在及び/又は置換され、nは、1~6の整数である、請求項1~41のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項43】
Rが、各々置換された又は非置換であるフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、又はピレニル基から選択されるアリールである、請求項42に記載の製剤。
【請求項44】
Rが、各々非置換である又は置換されたフェニル、ビフェニル、ナフチル、ビス(フェニル)メタン、ビス(フェニル)エタン、ビス(フェニル)プロパン、ビス(フェニル)ブタン、ビス(フェニル)エーテル、ビス(フェニル)チオエーテル、ビス(フェニル)スルホン、ビス(フェニル)ホスフィンオキシド、ビス(フェニル)シラン、ビス(フェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(フェニル)トリフルオロエタン、ビス(フェニル)ジシクロペンタジエン、フェノールホルムアルデヒド樹脂から選択されるアリールである、請求項42に記載の製剤。
【請求項45】
nが、1、2、3、4、5、又は6である、請求項42に記載の製剤。
【請求項46】
nが、2又は3である、請求項42に記載の製剤。
【請求項47】
前記シアネートエステルが、1,3-又は1,4-ジシアナトベンゼン;1,3,5-トリシアナトベンゼン;1,3-、1,4-、1,6-、1,8-、2,6-、又は2,7-ジシアナトナフタレン;1,3,6-トリシアナトナフタレン;2,2’又は4,4’-ジシアナトビフェニル;ビス(4-シアナトフェニル)メタン;2,2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン;2,2-ビス(3,5-ジクロロ-4-シアナトフェニル)プロパン;2,2-ビス(3-ジブロモ-4-ジシアナトフェニル)プロパン;ビス(4-シアナトフェニル)エーテル;ビス(4-シアナトフェニル)チオエーテル;ビス(4-シアナトフェニル)スルホン;トリス(4-シアナトフェニル)ホスファイト;トリス(4-シアナトフェニル)ホスフェート;ビス(3-クロロ-4-シアナトフェニル)メタン;4-シアナトビフェニル;4-クミルシアナトベンゼン;2-tert-ブチル-1,4-ジシアナトベンゼン;2,4-ジメチル-1,3-ジシアナトベンゼン;2,5-ジ-tert-ブチル-1,4-ジシアナトベンゼン;テトラメチル-1,4-ジシアナトベンゼン;4-クロロ-1,3-ジシアナトベンゼン;3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’ジシアナトジフェニル;ビス(3-クロロ-4-シアナトフェニル)メタン;1,1,1-トリス(4-シアナトフェニル)エタン;1,1-ビス(4-シアナトフェニル)エタン;2,2-ビス(3,5-ジクロロ-4-シアナトフェニル)プロパン;2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-シアナトフェニル)プロパン;ビス(p-シアノフェノキシフェノキシ)ベンゼン;及びこれらのいずれかの混合物から選択される、請求項1~46のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項48】
ビスマレイミドトリアジン(BT)樹脂をさらに含む、請求項1~47のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項49】
エポキシ樹脂をさらに含む、請求項1~48のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項50】
付加製造の方法に使用するための、請求項1~49のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項51】
前記付加製造が、液槽重合である、請求項50に記載の製剤。
【請求項52】
前記方法が、前記製剤の層ごとの堆積を含み、各層は、光照射の条件下で硬化される、請求項50に記載の製剤。
【請求項53】
デジタルライトプロセッシング(DLP)又はステレオリソグラフィ(SLA)に使用するための、請求項1~52のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項54】
物体を製造するための方法であって、前記方法は、請求項1~53のいずれか一項に記載の製剤を印刷することを含み、前記印刷は、デジタルライトプロセッシング(DLP)又はステレオリソグラフィ(SLA)の条件下で実施される、方法。
【請求項55】
前記製剤を基材上に堆積させること、及び前記堆積させた製剤を、熱硬化又は光硬化の条件下で硬化させて前記3D物体を得ること、を含む、請求項55に記載の方法。
【請求項56】
前記製剤の前記堆積が、層ごとであり、各層は、次の層が堆積される前に硬化される、請求項53に記載の方法。
【請求項57】
前記インク製剤が、液槽浴で提供される、請求項53に記載の方法。
【請求項58】
請求項1~53のいずれか一項に記載の製剤から形成される物体であって、前記物体は、航空宇宙産業、自動車産業、エレクトロニクスパッケージング、マイクロエレクトロニクス絶縁、腐食防止、フィルム、医療用デバイス、及び医療用インプラントに使用するために実施されるポリマー物体、構造体、又はパターンである、物体。
【請求項59】
請求項54~57のいずれか一項に記載の方法から形成される物体であって、前記物体は、航空宇宙産業、自動車産業、エレクトロニクスパッケージング、マイクロエレクトロニクス絶縁、腐食防止、フィルム、医療用デバイス、及び医療用インプラントに使用するために実施されるポリマー物体、構造体、又はパターンである、物体。
【請求項60】
付加製造に使用するための製剤であって、前記製剤は、少なくとも1つのシアネートエステル、所望に応じて少なくとも1つの添加剤、及び以下から選択される少なくとも1つのビスマレイミドを含む、製剤。
【請求項61】
樹脂の形態である、請求項1~53のいずれか一項及び請求項60に記載の製剤。
【請求項62】
前記樹脂が、光重合開始剤及び少なくとも1種の金属触媒をさらに含む、請求項61に記載の製剤。
【請求項63】
前記金属触媒が、亜鉛(II)アセチルアセトネート水和物である、請求項62に記載の製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加製造(AM)に使用するためのインク組成物全般に関し、より詳細には、デジタルライトプロセッシング(DLP)及びステレオリソグラフィ(SLA)技術による三次元(3D)印刷用の高性能熱硬化性樹脂ベースのインクの開発に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルライトプロセッシング/ステレオリソグラフィ(DLP/SLA)3D印刷技術では、三次元物体の構築が、段階的に又は層ごとに行われる。特に、層形成は、可視光又はUV光放射線によって媒介される光硬化性樹脂の固化によって行われる。2つの印刷手法が知られており、1つは、成長する物体の上面に新しい層を形成するものであり、もう1つは、成長する物体の下面に新しい層を形成するものである[1]。他の手法は、米国特許第7,438,846号[2]、米国特許第7,892,474号[3]、米国特許出願公開第2013/0292862号[4]、米国特許出願公開第2013/0295212号[5]などに開示されている。このような方法で使用するための材料は一般的に限られており、三次元製造がその潜在能力を充分に発揮するためには、様々な製品群のための高性能特性を有する新規な樹脂が必要とされる。
【0003】
高性能熱硬化性ポリマーは、優れた熱安定性及び機械的特性を有し、そのために構造製品の製造において価値のある材料である。高性能熱硬化性ポリマーの例としては、ポリイミド、シアネートエステル、エポキシ、ビスマレイミド、フェノール樹脂、及びポリベンゾオキサジンが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】[1]米国特許第5,236,637号
【特許文献2】[2]米国特許第7,438,846号
【特許文献3】[3]米国特許第7,892,474号
【特許文献4】[4]米国特許出願公開第2013/0292862号
【特許文献5】[5]米国特許出願公開第2013/0295212号
【発明の概要】
【0005】
本発明は、ビスマレイミド-トリアジン(BT)インクをベースとする高性能熱硬化性材料の光重合による3D印刷用製剤に関する。最も一般的に述べると、本発明のインク製剤は、化学前駆体として作用する少なくとも1つのイミド-伸長-ビスマレイミド(imide-extended-bismaleimides:IE-BMI)ベースの材料、及び反応性希釈剤としての少なくとも1つのシアネートエステルを含む。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様では、付加製造用のインク製剤が提供され、この製剤は、少なくとも1つのイミド-伸長-ビスマレイミド(IE-BMI)、少なくとも1つのシアネートエステル、及び所望に応じて少なくとも1つの添加剤を含む。
【0007】
本発明はさらに、付加製造用の製剤におけるIE-BMIの使用を提供し、この製剤は、所望に応じて、シアネートエステル、液体キャリア、及び少なくとも1つの添加剤をさらに含む。
【0008】
さらに、IE-BMI及び/又はE-BMIを含み、所望に応じてさらにシアネートエステル、液体キャリア、及び少なくとも1つの添加剤を含むインク製剤を使用することを含む3D印刷の方法が提供され、3D印刷は、本明細書でさらに定められるように、付加製造を含む。
【0009】
本発明の態様のいくつかの実施形態では、本発明に従う製剤又は本発明の方法に従って使用される製剤は、少なくとも1つのIE-BMI及び/又は少なくとも1つのE-BMI、少なくとも1つのシアネートエステル、並びに所望に応じて少なくとも1つの添加剤を含む。
【0010】
いくつかのさらなる実施形態では、製剤はさらにキャリアを含む。いくつかの実施形態では、キャリアは使用されず、存在するシアネートエステルが、IE-BMIを溶解するために使用される。
【0011】
存在してもよい添加剤は、反応性材料及び非反応性材料の中から選択され得る。反応性材料の限定されない例としては、アクリレート、メタクリレート、チオール、ビニルエーテル、及びエポキシ含有硬化性材料などの光反応性希釈剤;芳香族ビスマレイミド;短鎖脂肪族ビスマレイミド;ラジカル重合開始剤;並びに/又はベンゾフェノン、芳香族α-ヒドロキシケトン、ベンジルケタール、芳香族α-アミノケトン、フェニルグリオキサル酸エステル、モノアシルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシド、トリスアシルホスフィンオキシド、及び/若しくは芳香族ケトンから誘導されるオキシムエステルなどの光重合開始剤が挙げられる。非反応性材料(すなわち、非硬化性材料)の限定されない例としては、表面活性剤、すなわち、界面活性剤;抑制剤;酸化防止剤;顔料;染料;分散剤;並びに/又はシリカ、アルミナ、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、窒化ホウ素、若しくはチョップドファイバーから構成されるマイクロ粒子及びナノ粒子を含む強化充填剤が挙げられる。
【0012】
本発明の製剤は、グラファイト、短炭素繊維、カーボンナノチューブ(CNT)、溶融シリカ粒子、酸化グラフェン、並びに窒化ホウ素(BN)、MoS2、及びWS2などの2D材料などの炭素質材料及び他の機能性材料をさらに含み得る。
【0013】
本発明の製剤は、製剤に可溶性である無機前駆体又はゾルゲル前駆体をさらに含み得る。この材料は、無機粒子状物質ではない。いくつかの実施形態では、無機前駆体又はゾルゲル前駆体は、充填剤として機能する金属酸化物粒子を形成するために、又は樹脂に直接結合して架橋剤として作用するために添加される。in situゾルゲルプロセスは、以下の2つの方法で行うことができる。
a.一工程ゾルゲル - 液体の前駆体及び添加剤を、エポキシド成分とワンポットで混合する場合。
b.二工程で、液体前駆体から均一なゾル溶液を調製し、続いてエポキシド成分に添加する。
【0014】
いずれの場合も、中間体の反応性M-OH部分が形成され得る(式中、Mは金属原子である)。ゾルゲル前駆体としては、ジ-、トリ-、及びテトラ-アルコキシシラン(例:テトラエトキシシラン(TEOS)、(3-イソシアナトプロピル)トリメトキシシラン);ビスアミノシラン;アクリロキシメチルトリメトキシシラン;メチルトリエトキシシラン;ジメチルジメトキシシラン;フェニルトリメトキシシラン;アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(APTMS);(3-グリシドキシプロピル)トリメチルシラン;シランジオール、シラントリオール、及びトリシラノールフェニル(POSS)などのシラノール;乳酸アルミニウム;アルミニウムイソプロポキシドなどのアルミニウムアルコキシド;塩化アルミニウム;トリス(アセト酢酸エチル)アルミニウム;ジルコニウムプロポキシドなどのジルコニウムアルコキシド;硝酸ジルコニウム;チタンイソプロポキシド、チタンn-ブトキシド、及びチタンエトキシドなどのチタンアルコキシド;ニオブエトキシドが挙げられ得る。ゾルゲル前駆体は、40重量%未満の量で存在し得る。
【0015】
いくつかの実施形態では、本発明の製剤は、少なくとも1つの添加剤、典型的には反応性添加剤、を含んでよく、ポリアミン、例えばマレイミド官能性とのマイケル付加反応を受けることができるオリゴマーポリアミン;光反応性希釈剤;芳香族ビスマレイミド;ラジカル重合開始剤;光重合開始剤;界面活性剤;安定剤;キャリア又は溶媒;及びナノ粒子又はチョップドファイバーなどの強化材料、などである。
【0016】
いくつかの実施形態では、本発明の製剤は、亜鉛(II)アセチルアセトネート水和物などの少なくとも1つの金属触媒をさらに含み得る。
【0017】
いくつかの実施形態では、製剤は、メラミン、メラミン誘導体、シアネートエステル、フェノール、及び芳香族アミンをさらに含み得る。いくつかの実施形態では、メラミン誘導体は、メチル化又はブチル化メラミンなどの、炭素数1~10のアルキル部分(C1~C10アルキル)を有するアルキル化メラミンである。
【0018】
伸長ビスマレイミドは、熱硬化性材料の調製に使用されるビスマレイミド(BMI)の一種である。これらは、反応性の末端基又はペンダント基を有する低分子量のプレポリマー中のイミド部分から構成され、UV、熱、又は触媒の手段によってホモ重合及び/又は共重合を受けることができ、その結果、架橋された固体生成物が形成される。これらの材料は、加工が比較的容易であること、及びその分子量を制御することによって特定のレオロジー特性を調整可能であることを特徴とする。加えて、架橋された熱硬化性BMIは、高温時、湿潤環境中、並びに溶媒及び潤滑液の存在下において、非常に優れた物理的特性を保持する。
【0019】
イミド-伸長-ビスマレイミド(IE-BMI)は、ビスマレイミド構造を有する材料であり、2つのマレイミドが、末端マレイミド官能基を有する伸長構造部分である可変部分Rによって分離されている。一般的な伸長ビスマレイミドは、次のような構造で表され、
式中、Rは、2つのマレイミド基を分離するいかなる炭素鎖又は炭素系官能基であってもよい。R官能基は、末端イミド(例:環状イミド)官能基を有するいかなる部分であってもよく、
式中、可変部分Gは、任意の炭素系部分であり、式中、破線の各々は、上に示した伸長ビスマレイミドの窒素原子に連結していることを示している。したがって、イミド伸長ビスマレイミドは、一般構造(I)のものであってよく、
式中、R1、R2、及びGの各々は、互いに独立して、本明細書において定められる通りであり、式中、可変部分Gに結合したイミド部分のいずれも、本明細書においてさらに開示されるように、置換環状イミド、縮合環状イミド、アリール置換又はアリール縮合環状イミドなどの中から選択されてよい。
【0020】
本発明に従って使用されるIE-BMIは、様々な基材に対して良好な接着性を呈する非晶質で低分子量のビスマレイミドオリゴマーである。これらの材料は、
図1A、又は具体的には
図1Bに示されるように、UV又はフリーラジカル条件下でホモ硬化して(homo-cured)、強靭で疎水性の架橋ポリイミドを形成することができる。
【0021】
これらのイミド伸長BMIが非晶質の性質であることから、様々な反応性希釈剤中で室温安定な溶液を形成することが可能である。IE-BMIは、航空宇宙、マイクロエレクトロニクス、自動車などの産業で使用されている。これらの材料は、卓越した熱安定性、非常に優れた低pH加水分解耐性、低誘電率、耐放射線性、溶媒に対する不活性、誘電損失、及び吸湿性、高い延性、高い疎水性、並びに比較的低い弾性率及び強度を有する。IE-BMIは、光重合開始剤又は熱重合開始剤の添加の有無にかかわらず、光及び熱硬化性であり、そのために、光誘導3D印刷プロセスに適している。しかし、IE-BMIは、比較的高い粘度を有し、そのために、3D印刷プロセスにおけるインク成分としてはあまり適していない。
【0022】
本発明に従って使用されるIE-BMIは、一般構造(I)のものであり、
式中、R1及びR2の各々は、独立して、1~50個の炭素原子を有し、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ芳香族基、炭素環式基、飽和基、及び不飽和基から選択され得る炭素系基から選択され、
Gは、1~50個の炭素原子を有し、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ芳香族基、炭素環式基、飽和基、及び不飽和基から選択され得る炭素系基であり;並びに式中、
環状イミドの各々は、所望に応じて、縮合環又は置換環系である。
【0023】
いくつかの実施形態では、R1、R2、及びGの各々は、互いに独立して、1~50個の炭素原子を有するアルキレン基、2~50個の炭素原子を有するアルケニレン基又はアルキニレン基、4~10個の炭素原子を有するカルボシクリル基、6~10個の炭素原子及び所望に応じて1又は複数個のヘテロ原子を有する芳香族基又はヘテロ芳香族基であり、R1及びR2及びGの各々は、所望に応じて置換されていてもよい。
【0024】
いくつかの実施形態では、R1、R2、及びGの各々は、互いに独立して、1~50個の炭素原子を有するアルキレン基である。いくつかの実施形態では、1~45、1~40、1~45、1~35、1~30、1~25、1~20、1~15、1~10、1~9、1~8、1~7、1~6、1~5、1~4、10~50、10~45、10~40、10~35、10~30、10~25、10~20、5~45、5~35、5~25、5~15、又は1から50の間のいずれかの数のメチレン基を有するアルキレン。
【0025】
いくつかの実施形態では、R1、R2、及びGの各々は、互いに独立して、2~50個の炭素原子を有するアルケニレン基(1又は複数の二重結合を有する)又はアルキニレン基(1又は複数の三重結合を有する)である。いくつかの実施形態では、2~45、2~40、2~45、2~35、2~30、2~25、2~20、2~15、2~10、2~9、2~8、2~7、2~6、2~5、2~4、10~50、10~45、10~40、10~35、10~30、10~25、10~20、5~45、5~35、5~25、5~15、又は2から50の間のいずれかの数のメチレン基を有するアルケニレン又はアルキニレン。
【0026】
いくつかの実施形態では、R1、R2、及びGの各々は、互いに独立して、4~10個の炭素原子を有するカルボシクリル基である。いくつかの実施形態では、炭素環式基は、4員環、又は5員環、6員環、7員環、若しくは8員環、又は縮合していても縮合していなくてもよい二環式環系であり、所望に応じて以下に詳述するように置換されていてもよい。
【0027】
いくつかの実施形態では、R1、R2、及びGの各々は、互いに独立して、6~10個の炭素原子を有する芳香族基又はヘテロ芳香族基であり、ヘテロ芳香族基の場合、N、O、及びSから選択される1又は複数個のヘテロ原子を含み得る。
【0028】
本明細書で用いられる場合、「脂肪族」という用語は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、及び炭素環式基を意味する。同様に、「ヘテロ脂肪族」という用語は、ヘテロアルキル基、ヘテロアルケニル基、ヘテロアルキニル基、及びヘテロ環式基を意味する。
【0029】
「アルキル」又は「アルキレン」は、1~100個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐鎖状の飽和炭化水素基のラジカルを意味する。いくつかの実施形態では、アルキル/アルキレン基は、1~20個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アルキル/アルキレン基は、1~50個の炭素原子を有する。アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル(例:n-プロピル、イソプロピル)、ブチル(例:n-ブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、イソブチル)、ペンチル(例:n-ペンチル、3-ペンタニル、アミル、ネオペンチル、3-メチル-2-ブタニル、tert-アミル)、ヘキシル(例:n-ヘキシル)などが挙げられる。アルキル基/アルキレン基のいずれも、本明細書で開示されるように置換されていてよい。
【0030】
「ヘテロアルキル/ヘテロアルキレン」は、炭素鎖上で置換されていてよい、置換基の一部であってよい、又は炭素鎖に沿って提供される介在原子であってよい、酸素、窒素、又は硫黄から選択される少なくとも1個のヘテロ原子(例:1、2、3、又は4個のヘテロ原子)をさらに含む、アルキル基又はアルキレン基である。
【0031】
「アルケニル/アルケニレン」とは、2~100個の炭素原子及び1又は複数の炭素-炭素二重結合(例:1、2、3、又は4つの二重結合)を有する直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基のラジカルを意味し、(E)-配置又は(Z)-配置であってよい。
【0032】
「アルキニル/アルキニレン」とは、2~100個の炭素原子及び1又は複数の炭素-炭素三重結合(例:1、2、3、又は4つの三重結合)を有する直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基のラジカルを意味する。
【0033】
「カルボシクリル」又は「炭素環式」とは、3~100個の環炭素原子を有し、環構造中にヘテロ原子を有しない非芳香族環状炭化水素基のラジカルを意味する。例示的なカルボシクリル基としては、シクロプロピル、シクロプロペニル、シクロブチル、シクロブテニル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロオクテニル、ビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、ビシクロ[2.2.2]オクタニル、シクロデセニル、オクタヒドロ-1H-インデニルなどが挙げられる。炭素環式系は、単環構造、又は多環構造、例えば縮合した多環構造であってもよい。同様に、炭素環式系は、単環式、又は縮合環系、架橋環系、若しくはスピロ環系を含む多環式であってもよい。
【0034】
「ヘテロシクリル」又は「ヘテロ環式」は、窒素、酸素、及び硫黄から独立して選択される1又は複数個のヘテロ原子を含む、炭素原子数3~100の非芳香族環系である。ヘテロ環式系の例としては、アジルジニル(azirdinyl)、オキシラニル、チイラニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、ジヒドロチオフェニル、ピロリジニル、ジヒドロピロリル、オキサジアゾリニル、チアジアゾリニルなどが挙げられる。
【0035】
ヘテロ環式系とは異なり、「アリール」系とは、6~14個の環炭素原子を有し、ヘテロ原子を有しない単環式又は多環式(例:二環式又は三環式)の芳香族環系のラジカルを意味する。
【0036】
「ヘテロアリール」とは、環炭素原子並びに窒素、酸素、及び硫黄から選択される1~4個の環ヘテロ原子を有する単環式又は多環式(例:二環式、三環式)の芳香族環系を形成する、炭素原子数5~100のラジカルを意味する。
【0037】
本明細書で用いられる場合、「不飽和」基は、二重結合又は三重結合を含み、「飽和」基は、二重結合又は三重結合を含まず、例えば、その部分は、単結合のみを含む。
【0038】
可変部分Rを定める基の各々、すなわち、1~数百個以上の炭素原子を有し、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ芳香族基、炭素環式基、飽和基、不飽和基などから選択され得る炭素系基の各々は、独立して、ハロゲン、-CN、-NO2、-N3、-SO2H、-SO3H、-OH、-OX、-ON(X)2、-N(X)2、-N(OX)X’、-SH、-SX、-SSX、-C(=O)X、-CO2H、-CHO、-CO2X、-OC(=O)X、-OCO2X、-C(=O)N(X)2、-SO2X、-SO2OX、-OSO2X、-S(=O)X、-OS(=O)X、-Si(X)3、-OSi(X)3 -C(=O)SX、-C(=S)SX、-SC(=S)SX、-SC(=O)SX、C1~C20アルキル、C1~C20ペルハロアルキル、C1~C20アルケニル、C1~C20アルキニル、ヘテロC1~C20アルキル、ヘテロC1~C20アルケニル、ヘテロC1~C20アルキニル、C3~C10カルボシクリル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリールから選択される1又は複数の基で置換されていてよく、式中、X又はX’の各例は、定められる通りの、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、又はアリールから独立して選択される独立した基である。
【0039】
いくつかの実施形態では、環状イミド基の各々は、縮合環状イミド、アリール置換環状イミド、及びアリール縮合環状イミドの中から選択され得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、IE-BMIは、式(II)の化合物であり、
式中、R1及びR2の各々は、本明細書において定められる通りであり、R3は、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ芳香族基、炭素環式基、飽和基、及び不飽和基から選択され、各々定められる通りであり、nは、0(E-BMIを形成する)~10(IE-BMIを形成する)の整数である。
【0041】
いくつかの実施形態では、nはゼロとは異なる。いくつかの実施形態では、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10である。
【0042】
式(II)の化合物において、R1、R2、及びR3の各々は、互いに独立して、飽和、不飽和、芳香族、又は脂肪族と芳香族との混合基を表し、nは、0~10の整数である。
【0043】
いくつかの実施形態では、R1、R2、及びR3の各々は、異なっている。
【0044】
いくつかの実施形態では、R1、R2、R3の各々は、同じである。
【0045】
いくつかの実施形態では、R1、R2、及びR3の各々は、互いに独立して、飽和、不飽和、芳香族、又は脂肪族と芳香族との混合基から選択される。
【0046】
いくつかの実施形態では、R1、R2、及びR3の各々は、アルキル又はアルキレン、アルケニル又はアルケニレン、アルキニル又はアルキニレン、アリール又はアリーレン、ヘテロアリール又はヘテロアリーレン、及びアラルキル又はアラルキレンから選択される。
【0047】
いくつかの実施形態では、R1は、-CH2-、-O-、-SiR2-、C=O、ビスフェノールなどから選択される。
【0048】
いくつかの実施形態では、R2は、-CH2-、-O-、-SiR2-、C=O、ビスフェノールなどから選択される。
【0049】
いくつかの実施形態では、R3は、-CH2-、-O-、-SiR2-、C=O、ビスフェノールなどから選択される。
【0050】
いくつかの実施形態では、R1、R2、及びR3の各々は、互いに独立して、20~50個の炭素原子、25~45個の炭素原子、30~40個の炭素原子を含む長鎖リンカー部分である。
【0051】
いくつかの実施形態では、R1、R2、及びR3の各々は、互いに独立して、30~40個の炭素原子、又は35~40個の炭素原子、又は36個の炭素原子を含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、R1、R2、及びR3の各々は、互いに独立して、全てメチレン基であるC36H70アルキレン基である。
【0053】
いくつかの実施形態では、R1、R2、及びR3の各々は、互いに独立して、1又は複数の二重結合を含む。いくつかの実施形態では、R1、R2、及びR3の各々は、互いに独立して、1又は複数のカルボシクリル基を含む。
【0054】
反応性伸長BMIは、平均分子量が最大で10,000ダルトン、例えば500~3,000ダルトンである液体又は固体又は半固体の樹脂であり得る。
【0055】
反応性IE-BMIは、同様に、平均分子量が500~5,000ダルトンである液体又は固体又は半固体であり得る。
【0056】
いくつかの実施形態では、本発明に従うIE-BMIは、構造(III)、(IV)、及び(V)から選択され、
構造(III)~(V)の前述の材料の各々において、R1及びR2の各々は、独立して、本明細書において定められる通りである。各nは、1~10である。
【0057】
いくつかの実施形態では、本発明の製剤で使用される化合物は、以下のものなどのE-BMIである。
【0058】
いくつかの実施形態では、構造(III)、(IV)、及び(V)の各々において、R1及びR2の各々は、C36H70アルキレン基である。
【0059】
本発明に従うE-BMI及びIE-BMIの限定されない例としては、以下が挙げられ、
これはIE-BMIの一例であり、
これはIE-BMIの一例であり、
これはIE-BMIの一例であり、及び
これはE-BMIの一例である。
【0060】
本発明の第1の態様では、付加製造用のインク製剤が提供され、この製剤は、少なくとも1つのイミド-伸長-ビスマレイミド(IE-BMI)及び/又は少なくとも1つの伸長-ビスマレイミド(E-BMI)、少なくとも1つのシアネートエステル、並びに所望に応じて少なくとも1つの添加剤を含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、IE-BMIは、本明細書で定められるように、構造(I)のものである。
【0062】
マレイミド末端基の二重結合は、隣接する電子吸引性カルボニル基のために、非常に電子不足の状態である。したがって、低分子量のビスマレイミド前駆体は、その炭素-炭素二重結合でホモ重合及び/又は共重合を起こして、架橋ネットワークを提供することができる。したがって、マレイミド官能基とマイケル付加反応を起こすオリゴマーポリアミンなどの反応性添加剤を使用して、そのような架橋ネットワークが実現され得る。伸長-BMI成分は、化学線照射下で素早く硬化を起こし(1層あたり0.1~20秒)、熱硬化性ポリマー材料の三次元ネットワークを形成する。
【0063】
シアネートエステルは、極めて高いガラス転移温度(最高で400℃)、高い引張強度、高い弾性率、並びに低い誘電率、誘電損失、及び吸湿性を有する高温熱硬化性樹脂の重要なクラスである。これらの材料は、高温で熱硬化される。硬化機構は、
図2に示されるように、シアネートエステルの3つのシアノ基が三量体化してトリアジン環を生成することを含む。
【0064】
シアネートエステルの一般構造を
図3Aに示す。示される構造において、nは、1~6の整数であり、Rは、各々本明細書で定められる通りのアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、及び炭化水素(飽和又は不飽和)から選択され、それらは所望に応じて、Si、P、S、O、及びNから選択される1又は複数個のヘテロ原子によって介在及び/又は置換されてよい。
【0065】
いくつかの実施形態では、シアネートエステルにおいて、Rは、各々置換された又は非置換であるフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、又はピレニル基から選択されるアリールである。
【0066】
いくつかの実施形態では、シアネートエステルにおいて、Rは、各々非置換である又は例えば1~6つの置換基によって置換されたフェニル、ビフェニル、ナフチル、ビス(フェニル)メタン、ビス(フェニル)エタン、ビス(フェニル)プロパン、ビス(フェニル)ブタン、ビス(フェニル)エーテル、ビス(フェニル)チオエーテル、ビス(フェニル)スルホン、ビス(フェニル)ホスフィンオキシド、ビス(フェニル)シラン、ビス(フェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(フェニル)トリフルオロエタン、ビス(フェニル)ジシクロペンタジエン、フェノールホルムアルデヒド樹脂から選択されるアリールである。
【0067】
いくつかの実施形態では、シアネートエステルにおいて、nは、1、2、3、4、5、又は6である。いくつかの実施形態では、nは、2、3、4、又は5である。いくつかの実施形態では、nは、2又は3である。
【0068】
例示的なシアネートエステル化合物としては、限定されるものではないが、1,3-又は1,4-ジシアナトベンゼン;1,3,5-トリシアナトベンゼン;1,3-、1,4-、1,6-、1,8-、2,6-、又は2,7-ジシアナトナフタレン;1,3,6-トリシアナトナフタレン;2,2’又は4,4’-ジシアナトビフェニル;ビス(4-シアナトフェニル)メタン;2,2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン;2,2-ビス(3,5-ジクロロ-4-シアナトフェニル)プロパン;2,2-ビス(3-ジブロモ-4-ジシアナトフェニル)プロパン;ビス(4-シアナトフェニル)エーテル;ビス(4-シアナトフェニル)チオエーテル;ビス(4-シアナトフェニル)スルホン;トリス(4-シアナトフェニル)ホスファイト;トリス(4-シアナトフェニル)ホスフェート;ビス(3-クロロ-4-シアナトフェニル)メタン;4-シアナトビフェニル;4-クミルシアナトベンゼン;2-tert-ブチル-1,4-ジシアナトベンゼン;2,4-ジメチル-1,3-ジシアナトベンゼン;2,5-ジ-tert-ブチル-1,4-ジシアナトベンゼン;テトラメチル-1,4-ジシアナトベンゼン;4-クロロ-1,3-ジシアナトベンゼン;3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’ジシアナトジフェニル;ビス(3-クロロ-4-シアナトフェニル)メタン;1,1,1-トリス(4-シアナトフェニル)エタン;1,1-ビス(4-シアナトフェニル)エタン;2,2-ビス(3,5-ジクロロ-4-シアナトフェニル)プロパン;2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-シアナトフェニル)プロパン;ビス(p-シアノフェノキシフェノキシ)ベンゼン;及びこれらのいずれかの混合物が挙げられる。
【0069】
図2に示されるように、シアネートエステルを硬化させると、3つのCN基が三量体化してトリアジン環を形成する結果となる。モノマーが2つのシアネート基を含む場合、得られる構造は、3Dポリマーネットワークである。熱硬化性ポリマーマトリックスの特性は、ビスフェノール化合物の置換基の選択によって微調整することができる。ビスフェノールA及びノボラックをベースとするシアネートエステルが主要製品であり、ビスフェノールF及びビスフェノールEも使用される。ビスフェノールの芳香族環は、材料の強靭性を向上させるために、アリル系基で置換されてもよい。
【0070】
シアネートエステルの熱硬化の特定の例を、ビス(4-シアナトフェニル)メタンについて
図3Bに示す。
【0071】
エポキシのカチオン光重合は、UV硬化の業界で最も急速に成長している分野の一つである。それは、無溶媒で、エネルギー効率がよく、周囲温度で行われることから、従来のUV硬化の利点を提供する。フリーラジカル光重合に比べて、エポキシの開環重合は、酸素阻害の影響を受けないため、収縮率が非常に低く、非常に優れた接着性及び耐薬品性をもたらす結果となり、活性中心寿命が非常に長いことに起因して、光重合開始後の暗硬化及び熱後硬化が可能となる。カチオン系はまた、室温で熱的に安定で、チオキサントン誘導体によって効率的に光活性化又は光増感が可能であるトリアリールスルホニウム塩及びジアリールヨードニウム塩の光重合開始剤が最近では入手可能であることの恩恵も受ける。
【0072】
さらに、カチオン系の幅広い多様性は、材料特性を調整するための高分岐鎖ポリマー及びポリオールとの組み合わせにおいて、又は機械的特性、熱安定性、耐スクラッチ性を改善し、硬化収縮を低減するための、充填剤若しくは二重硬化ゾルゲル光重合プロセスをベースとした有機-無機ハイブリッドナノコンポジットにおいて、多くの関心を集めている。
【0073】
ビスマレイミドトリアジン(BT)樹脂は、ビスマレイミドとシアネートエステルとの混合物を含む耐熱性熱硬化性樹脂である。BT樹脂は、プリント回路基板(PCB)の製造に最も一般的に使用される樹脂の一つである。それは、PCBのハンドセットで使用されるチップを接続するために用いられる基板の製造に使用される。シアネートエステルの3つのシアノ基は、ホモ硬化し、三量体化してトリアジン環構造となる。IE-BMIとシアネートエステルのホモ硬化に加えて、前述のように、マレイミド基の二重結合がシアノ基と共重合して、ヘテロ環式6員環構造を(
図4A及び
図4B)、したがって、三重硬化系を生成することができる。
【0074】
ビスマレイミドトリアジン樹脂は、可撓性を高めるために、エポキシ樹脂と共反応される。BT-エポキシは、プリント回路基板(PCB)にも使用される熱硬化性樹脂の群に属する。これは、PCBの一般的な原材料であるエポキシ樹脂とBT樹脂との混合物である。トリアジン樹脂とエポキシ樹脂とのブレンドは、ポリシアヌレートネットワーク中へのエポキシの挿入と、5員環オキサゾリジノン環の形成(
図5)との組み合わせによって硬化し、したがって、四重硬化系を生成する。硬化状態の特性は、芳香族ジアミン硬化エポキシよりも高いT
g値、より低い吸湿性、及びより低い誘電損失特性を特徴とする。
【0075】
ビスマレイミドトリアジン(BT)樹脂は、最終用途の特性を最適化するためにも、エポキシ樹脂と混合され得る。ポリエポキシドとしても知られるエポキシ樹脂は、エポキシド基を含む反応性プレポリマー及びポリマーの一種である。エポキシ樹脂は、触媒ホモ重合によってそれ自体と、又は多官能性アミン、酸、酸無水物、フェノール、アルコール、及びチオールを含む広範な共反応体と反応(架橋)し得る。ポリエポキシドの、それ自体との又は多官能性硬化剤との反応によって、好ましい機械的特性、並びに高い耐熱性及び耐薬品性を多くの場合有する熱硬化性ポリマーが形成される。脂環式エポキシドは、分子内に1又は複数の脂肪族環を含み、その上にオキシラン環が含まれている。脂環式エポキシドは、その脂肪族構造、高いオキシラン含有量、及び塩素を含まないことを特徴とし、その結果、低い粘度、並びに(硬化後は)良好な耐候性、低い誘電率、及び高いTgとなる。脂環式エポキシドは、通常、求電子反応又はカチオン性反応により、熱又はUVで開始されてホモ重合される。
【0076】
したがって、印刷されたパターン又は物体に対する特定の機械的及び化学的属性を調整するために、並びにそのような物体を実現する目的で3D印刷技術を改変するために、本発明の製剤は、少なくとも1つのIE-BMI及びシアネートエステルに加えて、ポリエポキシド又はエポキシドに富む樹脂、ビスマレイミドトリアジン(BT)樹脂、伸長BMIなどから選択される少なくとも1つの追加の反応性モノマー又はオリゴマーを含み得る。
【0077】
本発明の製剤は、付加製造の方法で使用するように構成又は構築される。本技術分野で知られているように、「付加製造」とは、一般的には、3Dモデルデータから物体を作製するために、通常は層ごとに、材料を接合するものであるいかなるプロセスをも意味する。本発明の製剤の硬化が熱硬化又は光硬化のいずれで実現可能であり得るかに応じて、使用される方法は異なり得る。いくつかの実施形態では、付加製造は、液槽重合であり、この場合、製剤は、ある特定の波長の光照射条件下で、層ごとに硬化される。2つの主たる液槽重合技術は、デジタルライトプロセッシング(DLP)及びステレオリソグラフィ(SLA)である。
【0078】
デジタルライトプロセッシング、DLP、とは、3Dモデリングソフトウェアで作成されたデザインを用い、光と液体樹脂とを利用して固体の部品及び製品を作製する3D印刷技術である。このプロセスでは、3Dデザインがプリンターに送られると、液体ポリマーの槽が、3Dモデルの画像を液体ポリマー上に映すDLPプロジェクターからの光に曝露される。曝露された液体ポリマーは硬化し、このプロセスが、再度層ごとに繰り返される。このプロセスは、3Dモデルが完成し、槽から液体が排出され、固化したモデルが現れるまで繰り返される。
【0079】
ステレオリソグラフィ(SLA)及びDLPは、非常に類似する3D印刷技術である。どちらの技術も、液体樹脂を選択的に光源に曝露することで機能するものであるが、SLAはレーザーを使用し、DLPはプロジェクターを使用する。原理的には非常に類似しているが、この2つの技術は、大きく異なる出力を生成することができる。
【0080】
本発明はさらに、物体を製造する方法も提供し、この方法は、本発明に従う製剤を印刷することを含み、印刷は、DLP又はSLAの条件下で実施される。
【0081】
したがって、本発明の製剤は、様々な付加製造法においてインク材料として利用することができる。いくつかの実施形態では、製剤は、液槽ベースの3D印刷法における樹脂浴として使用される。
【0082】
3D物体を生産又は製造する方法は、本発明に従うインク製剤を基材上に堆積させること、及び上記堆積させた製剤を、熱硬化又は光硬化の条件下で硬化させて3D物体を得ること、を含み得る。
【0083】
いくつかの実施形態では、インク製剤の堆積は、層ごとであり、各層は、次の層が堆積される前に硬化される。
【0084】
いくつかの実施形態では、インク製剤は、液槽浴で提供される。
【0085】
形成されると、物体は、以下の1又は複数を含む後処理条件下でさらに処理され得る。
- 酢酸ヘキシル、酢酸ペンチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、メチルエチルケトン、tert-ブチルメチルエーテル、シクロヘキサン、ヘキサン、石油エーテルペンタンなどの疎水性溶媒で物体を洗浄すること;
- 物体に含まれ得る又は物体に付随し得る溶媒を蒸発させること;
- 例えば5~180分間又は10~60分間にわたって、物体を光硬化させること(UV照射);
- 例えば窒素雰囲気下、室温を超える温度で、例えば150℃~300℃の温度で1~12時間にわたって、又は180℃まで3時間、220℃まで1時間、及び275℃まで1時間の段階的な加熱によって、物体を熱処理して後硬化させること。
【0086】
3D物体の製造方法は、3Dコンピュータ支援設計(CAD)モデルからのインク製剤の層ごとの堆積を含み得る付加製造プロセスである。航空宇宙及び自動車用途で使用されるものなどの特殊用途製品のための材料及びプロセスでは、低質量要件(low mass requirement)、少量シリーズ生産(small production series)、困難な材料調達、非常に高い性能、及び非常に高い信頼性を含むいくつかの課題が提起されている。付加製造は、このような用途に充分に適しており、すなわち、非常に少ないシリーズに適応可能であり、数マイクロメートルから数メートルまでの寸法範囲に適用可能であり、広く様々な材料(ポリマー、金属、セラミック、複合材料、組織及び生細胞、宇宙飛行士用食料など)に適用可能であり、これまでは製造することができなかった複雑な形状を可能とし、接続部分(例:フランジ、コネクタ、ケーブル)の低減を可能とし、大幅な質量削減を可能とし、性能の向上、短いリードタイム、最小限の材料廃棄をもたらし、並びに宇宙船の建設及びさらには軌道上での製造にも使用できる可能性がある。
【0087】
本発明に従って若しくは本発明の製剤から形成された物体又は一般的にはポリマー材料を宇宙用途に使用することには、非常に多くの利点がある。本発明のポリマー及び物体は、超高真空(UHV)、紫外線(UV)、電離放射線(すなわち、高エネルギー電子、陽子、及び重イオン)、高温、さらには微小隕石及びデブリに曝されることを含む過酷な宇宙の状況にもかかわらず、最小限の劣化で、長期間にわたって宇宙環境中で機能することが可能となる特性を呈する。理論に束縛されるものではないが、ポリマーの優位性は、強度、弾性率、伸び、及び熱安定性などのポリマーの重視される熱的及び機械的特性から生じる。
【0088】
本発明の方法の製品、又は本発明の製剤から形成された製品は、ポリマー物体、構造体、又はパターンとして特徴付けることができ、これらは、いかなる形状及びサイズであってもよく、並びに様々な用途で実施することができる。一般に、本発明の製品は、航空宇宙産業、自動車産業、エレクトロニクスパッケージング、マイクロエレクトロニクス絶縁、腐食防止、フィルム、医療用デバイス、医療用インプラント、さらには他の多くの分野で実施され得る。
【0089】
したがって、別の態様では、本発明のインク製剤から形成されたポリマー物体、要素、又はデバイスが提供される。
【0090】
本発明はさらに、本明細書に開示される印刷方法のためのインク製剤を提供し、このインク製剤は、少なくとも1つのIE-BMI、シアネートエステルとしての(1,1’-ビス(4-シアナトフェニル)エタン)、イソボルニルアクリレート中の亜鉛(II)アセチルアセトネート水和物、及びフェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドを含む。いくつかの実施形態では、製剤は、少なくとも1つのE-BMIをさらに含む。
【0091】
いくつかの実施形態では、IE-BMI及びE-BMIは、以下から選択される。
【0092】
本発明はさらに、製剤、その使用、方法及びプロセス、並びに物体全般に関する。
【0093】
付加製造用のインク製剤であって、この製剤は、少なくとも1つのイミド-伸長-ビスマレイミド(IE-BMI)、少なくとも1つのシアネートエステル、及び所望に応じて少なくとも1つの添加剤を含む。
【0094】
本発明の製剤のいずれについても、少なくとも1つの伸長ビスマレイミド(E-BMI)をさらに含んでよい。
【0095】
本発明の製剤のいずれについても、キャリアを含んでいなくてよい。
【0096】
本発明の製剤のいずれについても、少なくとも1つの添加剤をさらに含んでよい。
【0097】
本発明の製剤のいずれについても、少なくとも1つの添加剤は、反応性材料及び非反応性材料から選択されてよい。
【0098】
本発明の製剤のいずれについても、反応性材料は、光反応性希釈剤、芳香族ビスマレイミド、短鎖脂肪族ビスマレイミド、ラジカル重合開始剤、及び光重合開始剤から選択されてよい。
【0099】
本発明の製剤のいずれについても、非反応性材料は、界面活性剤、抑制剤、酸化防止剤、顔料、染料、分散剤、及び強化充填剤から選択され得てよい。
【0100】
本発明の製剤のいずれも、少なくとも1つの炭素質材料及び/又は少なくとも1つの機能性材料をさらに含んでよい。
【0101】
本発明の製剤のいずれについても、少なくとも1つの炭素質材料及び/又は少なくとも1つの機能性材料は、グラファイト、短炭素繊維、カーボンナノチューブ(CNT)、溶融シリカ粒子、酸化グラフェン、及び2D材料から選択されてよい。
【0102】
本発明の製剤のいずれについても、2D材料は、窒化ホウ素(BN)、MoS2、及びWS2から選択されてよい。
【0103】
本発明の製剤のいずれも、製剤に可溶性である無機前駆体又はゾルゲル前駆体をさらに含んでよい。
【0104】
本発明の製剤のいずれについても、ゾルゲル前駆体は、ジ-、トリ-、又はテトラ-アルコキシシランであってよい。
【0105】
本発明の製剤のいずれについても、ゾルゲル前駆体は、テトラエトキシシラン(TEOS)、3-イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、ビスアミノシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(APTMS)、(3-グリシドキシプロピル)トリメチルシラン、シランジオール、シラントリオール、トリシラノールフェニル(POSS)、乳酸アルミニウム、アルミニウムアルコキシド、アルミニウムイソプロポキシド、塩化アルミニウム、トリス(アセト酢酸エチル)アルミニウム、ジルコニウムアルコキシド、ジルコニウムプロポキシド、硝酸ジルコニウム、チタンアルコキシド、チタンイソプロポキシド、チタンn-ブトキシド、チタンエトキシド、及びニオブエトキシドから選択されてよい。
【0106】
本発明の製剤のいずれについても、IE-BMIは、一般構造(I)のものであってよく、
式中、R1及びR2の各々は、独立して、1~50個の炭素原子を有する炭素系基から選択され、
Gは、1~50個の炭素原子を有する炭素系基であり、及び式中、
環状イミドの各々は、所望に応じて、縮合環又は置換環系である。
【0107】
本発明の製剤のいずれについても、R1及びR2の各々は、独立して、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ芳香族基、炭素環式基、飽和基、及び不飽和基から選択されてよい。
【0108】
本発明の製剤のいずれについても、Gは、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ芳香族基、炭素環式基、飽和基、及び不飽和基から選択されてよい。
【0109】
本発明の製剤のいずれについても、R1、R2、及びGの各々は、互いに独立して、1~50個の炭素原子を有するアルキレン基、2~50個の炭素原子を有するアルケニレン基又はアルキニレン基、4~10個の炭素原子を有するカルボシクリル基、6~10個の炭素原子を有する芳香族基、並びに6~10個の炭素原子及び1又は複数個のヘテロ原子を有するヘテロ芳香族基であってよく、R1及びR2及びGの各々は、所望に応じて置換されていてもよい。
【0110】
本発明の製剤のいずれについても、R1、R2、及びGの各々は、互いに独立して、1~45、1~40、1~45、1~35、1~30、1~25、1~20、1~15、1~10、1~9、1~8、1~7、1~6、1~5、1~4、10~50、10~45、10~40、10~35、10~30、10~25、10~20、5~45、5~35、5~25、若しくは5~15個の炭素原子を有する、又は1~50のメチレン基を有するアルキレン基であってよい。
【0111】
本発明の製剤のいずれについても、R1、R2、及びGの各々は、互いに独立して、2~45、2~40、2~45、2~35、2~30、2~25、2~20、2~15、2~10、2~9、2~8、2~7、2~6、2~5、2~4、10~50、10~45、10~40、10~35、10~30、10~25、10~20、5~45、5~35、5~25、若しくは5~15個の炭素原子を有するアルケニレン基又はアルキニレン基であってよい。
【0112】
本発明の製剤のいずれについても、R1、R2、及びGの各々は、互いに独立して、4員環、又は5員環、6員環、7員環、若しくは8員環であるカルボシクリル基、又は二環式環系であってよい。
【0113】
本発明の製剤のいずれについても、R1、R2、及びGの各々は、互いに独立して、芳香族基又はヘテロ芳香族基であってよく、6~10個の炭素原子、並びにヘテロ芳香族基の場合はN、O、及びSから選択される1又は複数個のヘテロ原子を有する。
【0114】
本発明の製剤のいずれについても、IE-BMIの環状イミド基部分の各々は、縮合環状イミド、アリール置換環状イミド、及びアリール縮合環状イミドの中から選択されてよい。
【0115】
本発明の製剤のいずれについても、IE-BMIは、式(II)の化合物であってよく、
式中、R1及びR2の各々は、請求項12に定められる通りであり、R3は、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ芳香族基、炭素環式基、飽和基、及び不飽和基から選択され、nは、0~10の整数である。
【0116】
本発明の製剤のいずれについても、nは、ゼロでなくてもよい。
【0117】
本発明の製剤のいずれについても、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10であってもよい。
【0118】
本発明の製剤のいずれについても、R1、R2、及びR3の各々は、互いに独立して、飽和、不飽和、芳香族、又は脂肪族-芳香族混合基を表してよく、nは、0~10の整数である。
【0119】
本発明の製剤のいずれについても、R1、R2、及びR3の各々は、異なっていてよい。
【0120】
本発明の製剤のいずれについても、R1、R2、R3の各々は、同じであってよい。
【0121】
本発明の製剤のいずれについても、R1は、-CH2-、-O-、-SiR2-、C=O、及びビスフェノールから選択されてよい。
【0122】
本発明の製剤のいずれについても、R2は、-CH2-、-O-、-SiR2-、C=O、及びビスフェノールから選択されてよい。
【0123】
本発明の製剤のいずれについても、R3は、-CH2-、-O-、-SiR2-、C=O、及びビスフェノールから選択されてよい。
【0124】
本発明の製剤のいずれについても、R1、R2、及びR3の各々は、互いに独立して、20~50個の炭素原子、25~45個の炭素原子、又は30~40個の炭素原子を含む長鎖リンカー部分であってよい。
【0125】
本発明の製剤のいずれについても、R1、R2、及びR3の各々は、互いに独立して、30~40個の炭素原子、又は35~40個の炭素原子、又は36個の炭素原子を含んでよい。
【0126】
本発明の製剤のいずれについても、R1、R2、及びR3の各々は、互いに独立して、全てメチレン基であるC36H70アルキレン基であってよい。
【0127】
本発明の製剤のいずれについても、伸長BMIは、平均分子量が最大10,000ダルトンである液体又は固体又は半固体の樹脂であってよい。
【0128】
本発明の製剤のいずれについても、IE-BMIは、平均分子量が500~5,000ダルトンである液体又は固体又は半固体であってよい。
【0129】
本発明の製剤のいずれについても、IE-BMIは、構造(III)、(IV)、及び(V)から選択されてよく、
構造(III)~(V)の各々において、R1及びR2の各々は、独立して、請求項21に定められる通りであり、各nは、1~10である。
【0130】
本発明の製剤のいずれについても、E-BMIは、以下の構造のものである。
【0131】
本発明の製剤のいずれについても、R1及びR2の各々は、C36H70アルキレン基であってよい。
【0132】
本発明の製剤のいずれについても、IE-BMIは、以下から選択されてよい。
【0133】
付加製造用のインク製剤であって、この製剤は、少なくとも1つのイミド-伸長-ビスマレイミド(IE-BMI)及び/又は少なくとも1つの伸長-ビスマレイミド(E-BMI)、少なくとも1つのシアネートエステル、並びに少なくとも1つの添加剤を含み、IE-BMIは、構造(I)のものであり、
式中、R1及びR2の各々は、独立して、1~50個の炭素原子を有する炭素系基から選択され、
Gは、1~50個の炭素原子を有する炭素系基であり、及び式中、
環状イミドの各々は、所望に応じて、縮合環又は置換環系である。
【0134】
本発明の製剤のいずれについても、シアネートエステルは、以下の構造のものであり、
式中、Rは、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、及び飽和又は不飽和炭化水素)から選択され、所望に応じて、Si、P、S、O、及びNから選択される1又は複数個のヘテロ原子によって介在及び/又は置換され、nは、1~6の整数である。
【0135】
本発明の製剤のいずれについても、Rは、各々置換された又は非置換であるフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、又はピレニル基から選択されるアリールであってよい。
【0136】
本発明の製剤のいずれについても、Rは、各々非置換である又は置換されたフェニル、ビフェニル、ナフチル、ビス(フェニル)メタン、ビス(フェニル)エタン、ビス(フェニル)プロパン、ビス(フェニル)ブタン、ビス(フェニル)エーテル、ビス(フェニル)チオエーテル、ビス(フェニル)スルホン、ビス(フェニル)ホスフィンオキシド、ビス(フェニル)シラン、ビス(フェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(フェニル)トリフルオロエタン、ビス(フェニル)ジシクロペンタジエン、フェノールホルムアルデヒド樹脂から選択されるアリールであってよい。
【0137】
本発明の製剤のいずれについても、nは、ゼロでなくてよく、又は1、2、3、4、5、若しくは6であってよく、又はnは、2若しくは3である。
【0138】
本発明の製剤のいずれについても、シアネートエステルは、1,3-又は1,4-ジシアナトベンゼン;1,3,5-トリシアナトベンゼン;1,3-、1,4-、1,6-、1,8-、2,6-、又は2,7-ジシアナトナフタレン;1,3,6-トリシアナトナフタレン;2,2’又は4,4’-ジシアナトビフェニル;ビス(4-シアナトフェニル)メタン;2,2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン;2,2-ビス(3,5-ジクロロ-4-シアナトフェニル)プロパン;2,2-ビス(3-ジブロモ-4-ジシアナトフェニル)プロパン;ビス(4-シアナトフェニル)エーテル;ビス(4-シアナトフェニル)チオエーテル;ビス(4-シアナトフェニル)スルホン;トリス(4-シアナトフェニル)ホスファイト;トリス(4-シアナトフェニル)ホスフェート;ビス(3-クロロ-4-シアナトフェニル)メタン;4-シアナトビフェニル;4-クミルシアナトベンゼン;2-tert-ブチル-1,4-ジシアナトベンゼン;2,4-ジメチル-1,3-ジシアナトベンゼン;2,5-ジ-tert-ブチル-1,4-ジシアナトベンゼン;テトラメチル-1,4-ジシアナトベンゼン;4-クロロ-1,3-ジシアナトベンゼン;3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’ジシアナトジフェニル;ビス(3-クロロ-4-シアナトフェニル)メタン;1,1,1-トリス(4-シアナトフェニル)エタン;1,1-ビス(4-シアナトフェニル)エタン;2,2-ビス(3,5-ジクロロ-4-シアナトフェニル)プロパン;2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-シアナトフェニル)プロパン;ビス(p-シアノフェノキシフェノキシ)ベンゼン;及びこれらのいずれかの混合物から選択されてよい。
【0139】
本発明の製剤のいずれも、ビスマレイミドトリアジン(BT)樹脂をさらに含んでよい。
【0140】
本発明の製剤のいずれも、エポキシ樹脂をさらに含んでよい。
【0141】
本発明の製剤のいずれも、付加製造の方法に使用するためのものであってよい。
【0142】
本発明の製剤のいずれについても、付加製造は、液槽重合であってよい。
【0143】
本発明の製剤のいずれについても、その方法は、製剤の層ごとの堆積を含んでよく、各層は、光照射の条件下で硬化される。
【0144】
本発明の製剤のいずれも、デジタルライトプロセッシング(DLP)又はステレオリソグラフィ(SLA)に使用するためのものであってよい。
【0145】
物体を製造するための方法であって、この方法は、請求項1~53のいずれか一項に記載の製剤を印刷することを含み、印刷は、デジタルライトプロセッシング(DLP)又はステレオリソグラフィ(SLA)の条件下で実施される。
【0146】
本発明の方法のいずれについても、方法は、製剤を基材上に堆積させること、及び上記堆積させた製剤を、熱硬化又は光硬化の条件下で硬化させて3D物体を得ること、を含む。
【0147】
本発明の方法のいずれについても、製剤の堆積は、層ごとであってよく、各層は、次の層が堆積される前に硬化される。
【0148】
本発明の方法のいずれについても、インク製剤は、液槽浴で提供されてよい。
【0149】
本発明に従う製剤から形成される物体であって、物体は、航空宇宙産業、自動車産業、エレクトロニクスパッケージング、マイクロエレクトロニクス絶縁、腐食防止、フィルム、医療用デバイス、及び医療用インプラントに使用するために実施されるポリマー物体、構造体、又はパターンである。
【0150】
本発明に従う方法から形成される物体であって、物体は、航空宇宙産業、自動車産業、エレクトロニクスパッケージング、マイクロエレクトロニクス絶縁、腐食防止、フィルム、医療用デバイス、及び医療用インプラントに使用するために実施されるポリマー物体、構造体、又はパターンである。
【0151】
付加製造に使用するための製剤であって、製剤は、少なくとも1つのシアネートエステル、所望に応じて少なくとも1つの添加剤、及び以下から選択される少なくとも1つのビスマレイミドを含む。
【0152】
本発明の製剤のいずれについても、製剤は、樹脂の形態であってよく、それは、所望に応じて、光重合開始剤及び亜鉛(II)アセチルアセトネート水和物などの少なくとも1つの金属触媒をさらに含む。
【0153】
本明細書で開示される主題をより良く理解し、実際にそれが実施され得る方法を例示する目的で、次に、単なる限定されない例として、添付の図面を参照して実施形態を記載する。
【図面の簡単な説明】
【0154】
【
図1A】
図1Aは、マレイミドのホモ重合の一般的な機構図を示す。各R基は、本明細書に開示されるように、独立してN置換部分である。
【
図1B】
図1Bは、本明細書で定められるように、構造(IV)のIE-BMIのホモ重合の図である。
【
図2】
図2は、シアネートエステルのホモ重合の機構図であり、各R基は、本明細書で開示されるように、独立して置換部分である。
【
図3B】
図3Bは、シネートエステルホモ重合の一般的な機構図を示す。
【
図4A】
図4Aは、マレイミドとシアネートエステルとの硬化機構の図を示し、各R基は、本明細書で開示されるように、独立してN置換部分又はO置換部分である。
【
図4B】
図4Bは、構造(IV)のIE-BMIとシアネートエステルとの共重合を示す。
【
図5】
図5は、エポキシとシアネートエステルとの硬化機構を示し、各R基は、本明細書で開示されるように、独立して置換部分である。
【発明を実施するための形態】
【0155】
実施例
実施例1:BTベース製剤の三重硬化樹脂及び製品
IE-BMI(BMI-1700)の20g、非水素化ダイマージアミン骨格に基づくビスマレイミド(E-BMI、BMI-689)の20g、シアネートエステル(1,1’-ビス(4-シアナトフェニル)エタン)の60g、シアネートエステルの重合を促進する金属触媒溶液(イソボルニルアクリレート中の3000ppmの亜鉛(II)アセチルアセトネート水和物)の2g、及び光重合開始剤(フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド)の0.8gを混合することによってBT製剤を調製し、完全に溶解するまで、マグネティックスターラーを用いて60℃で混合して、均質な樹脂を得た。
【0156】
この樹脂から、ASIGA DLPプリンターを用い、光強度31mW/cm2によって385nmのLEDプロジェクターを使用して、三次元中間体を形成した。形成された材料を洗浄し、UV照射下で30分間硬化させた。さらに、180℃で180分間、250℃で60分間、及び275℃で1時間にわたって後硬化を行い、所望される製品を得た。製品の熱機械特性を評価し、以下の表1に示す。
【0157】
実施例2:BT-エポキシベース製剤の四重硬化樹脂及び製品
IE-BMI(BMI-1700)の16g、E-BMI(BMI-689)の16g、シアネートエステル(1,1’-ビス(4-シアナトフェニル)エタン)の60g、シアネートエステルの重合を促進する金属触媒溶液(イソボルニルアクリレート中の3000ppmの亜鉛(II)アセチルアセトネート水和物)の2g、ラジカル光重合開始剤(フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド)の0.8g、エポキシメタクリレートハイブリッド架橋剤の反応性希釈剤(3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート)の8g、及びカチオン性光重合開始剤(プロピレンカーボネート中のトリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート塩混合物)の0.16gを混合することによってBT-エポキシ製剤を調製し、完全に溶解するまで、マグネティックスターラーを用いて60℃で混合して、均質な樹脂を得た。
【0158】
この樹脂から、ASIGA DLPプリンターを用い、光強度31mW/cm2によって385nmのLEDプロジェクターを使用して、三次元中間体を形成した。形成された材料を洗浄し、UV照射下で30分間硬化させた。さらに、180℃で180分間、250℃で60分間、及び275℃で1時間にわたって後硬化を行い、所望される製品を得た。製品の熱機械特性を評価し、以下の表1に示す。
【0159】
実施例3:BT-エポキシベース製剤の四重硬化樹脂及び製品
IE-BMI(BMI-1700)の13.5g、E-BMI(BMI-689)の13.5g、シアネートエステル(1,1’-ビス(4-シアナトフェニル)エタン)の60g、シアネートエステルの重合を促進する金属触媒溶液(イソボルニルアクリレート中の3000ppmの亜鉛(II)アセチルアセトネート水和物)の2g、ラジカル光重合開始剤(フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド)の0.8g、エポキシメタクリレートハイブリッド架橋剤の反応性希釈剤(3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート)の13.1g、及びカチオン性光重合開始剤(プロピレンカーボネート中のトリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート塩混合物)の0.26gを混合することによってBT-エポキシ製剤を調製し、完全に溶解するまで、マグネティックスターラーを用いて60℃で混合して、均質な樹脂を得た。
【0160】
この樹脂から、ASIGA DLPプリンターを用い、光強度31mW/cm2によって385nmのLEDプロジェクターを使用して、三次元中間体を形成した。形成された材料を洗浄し、UV照射下で30分間硬化させた。さらに、180℃で180分間、250℃で60分間、及び275℃で1時間にわたって後硬化を行い、所望される製品を得た。製品の熱機械特性を評価し、以下の表1に示す。
【0161】
実施例4:BT-アクリレートベース製剤の四重硬化樹脂及び製品
IE-BMI(BMI-1700)の16g、E-BMI(BMI-689)の16g、シアネートエステル(1,1’-ビス(4-シアナトフェニル)エタン)の60g、シアネートエステルの重合を促進する金属触媒溶液(イソボルニルアクリレート中の3000ppmの亜鉛(II)アセチルアセトネート水和物)の2g、ラジカル光重合開始剤(フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド)の0.8g、及びアクリル架橋剤(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート)の8gを混合することによってBT-エポキシ製剤を調製し、完全に溶解するまで、マグネティックスターラーを用いて60℃で混合して、均質な樹脂を得た。
【0162】
この樹脂から、ASIGA DLPプリンターを用い、光強度31mW/cm2によって385nmのLEDプロジェクターを使用して、三次元中間体を形成した。形成された材料を洗浄し、UV照射下で30分間硬化させた。さらに、180℃で180分間、250℃で60分間、及び275℃で1時間にわたって後硬化を行い、所望される製品を得た。製品の熱機械特性を評価し、以下の表1に示す。
【0163】
実施例5:BT-アクリレートベース製剤の四重硬化樹脂及び製品
IE-BMI(BMI-1700)の13.5g、E-BMI(BMI-689)の13.5g、シアネートエステル(1,1’-ビス(4-シアナトフェニル)エタン)の60g、シアネートエステルの重合を促進する金属触媒溶液(イソボルニルアクリレート中の3000ppmの亜鉛(II)アセチルアセトネート水和物)の2g、ラジカル光重合開始剤(フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド)の0.8g、及びアクリル架橋剤(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート)の13.1gを混合することによってBT-エポキシ製剤を調製し、完全に溶解するまで、マグネティックスターラーを用いて60℃で混合して、均質な樹脂を得た。
【0164】
この樹脂から、ASIGA DLPプリンターを用い、光強度31mW/cm
2によって385nmのLEDプロジェクターを使用して、三次元中間体を形成した。形成された材料を洗浄し、UV照射下で30分間硬化させた。さらに、180℃で180分間、250℃で60分間、及び275℃で1時間にわたって後硬化を行い、所望される製品を得た。製品の熱機械特性を評価し、以下の表1に示す。
【国際調査報告】