(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-14
(54)【発明の名称】微生物学的用途のための単一ビーズ静電容量検出器
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6816 20180101AFI20250206BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20250206BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20250206BHJP
G01N 1/00 20060101ALI20250206BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20250206BHJP
【FI】
C12Q1/6816 Z
C12M1/34 B
C12M1/00 A
G01N1/00 101F
G01N33/53 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024544981
(86)(22)【出願日】2023-01-27
(85)【翻訳文提出日】2024-09-27
(86)【国際出願番号】 IB2023000046
(87)【国際公開番号】W WO2023144630
(87)【国際公開日】2023-08-03
(32)【優先日】2022-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520086564
【氏名又は名称】アルトラテック・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ダルトン, タラ
(72)【発明者】
【氏名】カミンズ, ティモシー
(72)【発明者】
【氏名】アハーン, マーガレット
(72)【発明者】
【氏名】マグワイア, デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】オドリスコル, ジョン
(72)【発明者】
【氏名】キング, コリン
(72)【発明者】
【氏名】フリー, ポール
(72)【発明者】
【氏名】オファーレル, ブライアン
【テーマコード(参考)】
2G052
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
2G052AB20
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4B063QX02
(57)【要約】
本発明は、試料中の標的分析物の検出および/または定量のための改良された静電容量ビーズセンサを提供し、検出限界は単一ビーズまでであり、複数のビーズ試験、またはビーズの連続フローに再使用可能であり、容易に製造可能かつ自動化可能である。それは、例えばウイルス核酸およびそのウイルスに対する宿主抗体の同時検出を可能にする、各種核酸標的全体にわたるだけでなく全標的クラスにわたってマルチプレックス標的検出をさらに可能にする様々な構造的利点および電子シグナル増幅技術の使用によって、PCRなどの酵素増幅を必要とせずに単一分子検出までの感度を可能にする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸検出のための方法であって、前記方法は、静電容量センサを使用し、酵素増幅なしで、試料中に存在する標的核酸を100コピー/mLまたはそれ未満で検出することを含む、方法。
【請求項2】
前記標的核酸の検出において少なくとも10
9のシグナル増幅を達成するように操作可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも30回のPCRサイクルと同等の前記標的核酸の検出においてシグナル増幅を達成するように操作可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
静電容量センサによる前記核酸検出が、少なくとも約8pFのフルスケールレンジを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
静電容量-デジタルコンバータを使用して前記静電容量センサからのシグナルを変換することをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記静電容量-デジタルコンバータが、シグマ-デルタ24ビット静電容量-デジタルコンバータである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
静電容量センサによる核酸検出が、少なくとも約0.5aFの分解能および少なくとも約4aFの精度を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
静電容量センサによる前記核酸検出が、基準入力に内部オフセットキャパシタを含めることにより、少なくとも約15pFのフルスケールレンジを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記標的核酸をレポーター(R)ビーズに結合させることと、
シグナル処理回路と通信する基板上の2つの静電容量電極を含むセンサ領域を介して前記Rビーズを通過させることであって、
前記2つの電極は、間隔を空けて配置されギャップを形成しており、
一度に単一のビーズのみが前記ギャップ間を移動する、前記Rビーズを介して通過させることと、
前記Rビーズを、前記シグナル処理回路を使用して、それが前記ギャップを介して通過するときに検出することと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記Rビーズを複数のセンサ領域を介して通過させることと、
前記Rビーズを、前記複数のセンサ領域から前記シグナル処理回路によって受信されたシグナルに、最大尤度推定(MLE)機械学習アルゴリズム、部分応答最大尤度(PRML)アルゴリズム、またはビタビアルゴリズムのうちの1つまたはそれを超えるものを適用することによって、それが前記複数のセンサ領域を通過するときに検出することと、
をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記標的核酸を検出することが、
前記標的核酸をレポーター(R)ビーズに結合させることと、
静電容量センサを使用して前記Rビーズを検出することと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記静電容量センサを使用して前記Rビーズを検出することが、流体中で前記センサを通過して流れる前記Rビーズを検出することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記流体がオイルを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記オイルがシリコーンオイルである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記流体がフッ素化炭素を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記流体が、ドデカフルオロ-2-メチルペンタン-3-オンおよびメトキシ-ノナフルオロブタンから選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記Rビーズをフッ素化することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記流体中を流れる前記Rビーズの周囲に水層を形成して、前記静電容量センサにおける検出シグナルを増幅することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
ビーズ結合ペプチド核酸(PNA)を使用して前記標的核酸を前記Rビーズに結合させることをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記ビーズ結合PNAがリガンドリンカーPNAである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
1つまたはそれを超える静電容量センサを使用して、試料中に存在する少なくとも前記標的核酸を含む複数の異なる標的を検出することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記複数の異なる標的が、複数の異なる標的核酸を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記複数の異なる標的核酸が、異なる病原体または病原体の異なるバリアントに由来する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記病原体がSARS-CoV-2である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記複数の異なる標的がタンパク質を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記タンパク質が抗体である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記タンパク質が抗原である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記標的核酸がデングウイルスに由来し、前記抗体がデング特異的抗体である、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記複数の異なる標的を検出することが、
前記複数の標的の各々を異なるビーズに結合させることと、
前記静電容量センサを使用して前記異なるビーズの各々を検出することと、
を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項30】
前記静電容量センサからの異なる静電容量検出シグナルに基づいて前記異なるビーズを区別することをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記複数の異なる標的を検出することが、前記複数の異なる標的の各々を基板上の異なるプローブに結合させることを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項32】
前記基板が、1つまたはそれを超える静電容量センサと操作可能に関連付けられる、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
1つまたはそれを超えるレポーター(R)ビーズを前記異なる基板結合標的の各々に結合させることをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記Rビーズが結合している前記異なる基板結合標的に基づいて前記基板結合標的から前記Rビーズを選択的に放出することと、
前記静電容量センサを通過する前記放出されたRビーズを流体中で流すことと、
前記センサを通過して流れる前記放出されたRビーズを検出することと、
をさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記異なるビーズの各々が異なるサイズを有する、請求項29に記載の方法。
【請求項36】
前記異なるビーズの各々を、そのサイズに基づいて異なる静電容量センサにマイクロ流体的に誘導することをさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記誘導するステップが、慣性法、誘電泳動法または磁気泳動法のうちの1つまたはそれを超えるものを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記標的核酸を検出することが、
前記標的核酸を基板上のプローブに結合させることと、
複数のレポーター(R)ビーズを前記基板結合標的核酸に結合させることと、
をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項39】
前記複数のRビーズが、前記基板結合標的核酸中の異なる配列に結合する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記基板が、前記静電容量センサと操作可能に関連付けられる、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記基板結合標的核酸から前記複数のRビーズを放出することと、
前記静電容量センサを通過する前記放出されたRビーズを流体中で流すことと、
前記センサを通過して流れる前記放出されたRビーズを検出することと、
をさらに含む、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記2つの電極が、前記Rビーズが通過するトレンチを形成する、請求項9に記載の方法。
【請求項43】
前記標的核酸を検出することが、
輸送(T)ビーズを前記試料中の前記標的核酸に結合させてTビーズ複合体を形成することと、
前記Tビーズ複合体をレポーター(R)ビーズに結合させてRビーズ複合体を形成することと、
前記Rビーズ複合体から前記Rビーズおよび前記Tビーズを溶出することと、
静電容量センサを使用して前記Rビーズを検出することと、
前記Tビーズを前記試料に戻して別の標的核酸に結合させることと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項44】
核酸検出のためのシステムであって、前記システムは、
シグナル処理回路と、
前記シグナル処理回路と通信する基板上に2つの静電容量電極を含むセンサ領域と、
を含む静電容量センサを含み、前記2つの電極は間隔を空けて配置されギャップを形成しており、
単一のビーズのみが任意の時点で前記ギャップ間を移動し、前記電極は前記ビーズおよび/または前記ビーズに結合した任意の分子を検出する、システム。
【請求項45】
前記システムが、ビーズを検出するために使用された後に再使用可能である、請求項44に記載のシステム。
【請求項46】
前記静電容量センサが、約2mm×2mmである、請求項44に記載のシステム。
【請求項47】
ビーズまたは粒子が、水、緩衝液、またはオイルもしくはフッ素化炭素、または有機溶媒に含まれ、前記センサ領域を通って流れる、請求項44に記載のシステム。
【請求項48】
検出される前記ビーズまたは粒子が、上流アッセイからの微生物学的分析物の代用物である、請求項47に記載のシステム。
【請求項49】
ビーズまたは粒子が磁性または非磁性であり得る、請求項47に記載のシステム。
【請求項50】
前記ギャップが、ビーズ直径の2倍である、請求項44に記載のシステム。
【請求項51】
前記基板が3D印刷されている、請求項44に記載のシステム。
【請求項52】
前記電極が、スパッタリングまたはインク堆積およびパターニングによって形成される、請求項51に記載のシステム。
【請求項53】
前記電極間の前記間隔が約0.8μm~20μmである、請求項52に記載のシステム。
【請求項54】
前記基板がCMOS半導体チップである、請求項44に記載のシステム。
【請求項55】
前記電極が金属層内でエッチングされ、前記電極間の前記間隔は40nm~5μmである、請求項54に記載のシステム。
【請求項56】
ビーズ凝集および/またはオイルシリンジングを防止するための超音波振盪、誘電泳動ビーズステアリング、またはビーズゼータ電位の調整のうちの1つまたはそれを超えるものをさらに含む、請求項44に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2022年1月28日に出願された米国仮特許出願第63/304,312号の利益および優先権を主張し、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般に、磁気ビーズによる核酸および抗体/抗原分子捕捉、ならびにこれらの分子の検出/定量の方法、単一ビーズのレベルひいては単一分子検出に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
生物学的試料からの核酸(NA)の捕捉および検出は、早期疾患の検出およびモニタリングの重要な側面になっている。従来の臨床検査室評価では、分子および血清学(抗体/抗原)試験の両方が、確実な診断を提供する際に一緒に使用される。理想的には、そのような試験は、1つの試料から一緒に行われる。一例として、PCRまたはLAMP試験は、ウイルスRNAの存在に関する定性的またはおそらく半定量的な情報を提供することができ、一方、別個の抗体検出は、人の過去の感染状態を確立することができる。捕捉されたNAの定量が、例えば、感染性病原体のウイルス量を決定する際、または複数の捕捉されたNAの遺伝子発現分析のために重要である。
【0004】
最近のCOVID-19のパンデミックに見られるように、マルチプレックス試験、バリアントの同定、およびジェノタイピングも非常に重要になっており、この場合、「懸念されるバリアント」(例えば、デルタ、オミクロン)が大きな健康問題および多くの死者を引き起こした。超高感度での直接単一分子検出は、がんを引き起こす可能性がある稀少変異の分析、病原性DNAまたはRNAによるバイオ医薬品の微量汚染の検出、ウイルス量が極めて低い患者におけるウイルス感染の非常に早いまたは遅い検出(参照により本明細書に組み込まれる「single-molecule-PCR」米国特許第5811235号を参照されたい)、ならびにクローニングおよびDNAおよびRNA配列決定におけるテンプレート生成を可能にし得る。超高感度法の欠点は、アンプリコンによる交差汚染、犯罪現場に容疑者が偶発的に接触すること、および患者が感染から回復してもはや感染性でなくなった後も病原性RNAまたはDNAの存在に関して長期間検査陽性であり続けることであり得る。これらは酵素増幅法の特定の特徴である。
【0005】
これらの非常に重要な健康診断は、現在、高度に専門化された検査室でのみ利用可能であり、高度に訓練されたスタッフならびにかなりの設備およびインフラストラクチャを必要とし、すべてが多大な費用の一因となる。
【0006】
核酸捕捉のための磁気ビーズの使用は公知である。このための最適な磁気ビーズ直径は、400nm~2800nmの範囲である。核酸捕捉のために、典型的には40nmに至るまでのさらに小さい直径を有する非磁性粒子(例えば、ガラス、シリカ、ポリスチレン、チタニア、銀、または金)もまた、用いられる。診断におけるナノ粒子の注目すべき使用は、それらが抗原の比色検出のために抗体とコンジュゲートされる、またはその逆に、同じ技術を使用した抗体試験のために抗原とコンジュゲートされるラテラルフロー試験である。
【0007】
捕捉されたDNAを溶出し、仮に標的DNAが存在し、適合するオリゴマープローブおよびプライマーとハイブリダイズする場合、それは典型的には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)または光検出のためのループ媒介等温増幅(LAMP)アッセイで指数関数的に増幅される。捕捉された標的がRNAである場合、逆転写ステップ(RNAからcDNA)が最初に用いられる。
【0008】
存在する場合、標的NAの検出には従来の酵素増幅が用いられる。しかしながら、これらのPCR法およびLAMP法では、指数関数的増幅の確率論的性質のために、試料中の標的NAの正確な定量が困難であり、低濃度の試料を測定および定量することは依然として困難である。PCRおよびLAMPを使用した単一分子検出もまた、特定の試料による酵素阻害、典型的にはそれぞれ>18(一般的には20+)および>50ヌクレオチドであるプライマープローブの長さのために困難である。これにより、一塩基変異(例えば、デルタまたはオミクロンバリアントにおいて)の多くが互いに15~20ヌクレオチド以内に起こり得る、SARS-CoV-2ウイルスのスパイク遺伝子の受容体結合ドメイン(RBD)における変異などの非常に重要な変異への結合を防ぐことができる。液滴/デジタルPCRおよび配列決定は、単一分子の検出および識別に対処することができるが、それらの方法は、典型的には、大型で極めて高価な検査装置および訓練された専門家のオペレーターを必要とする。
【0009】
相補型金属酸化膜半導体(CMOS)チップ、例えば、Florescuら(2010)「On-chip magnetic separation of superparamagnetic beads for integrated molecular analysis」J Appl.Phys.107(5):054702に記載されているようなホールセンサ、およびMurmannら(2013)「A 256 pixel magnetoresistive biosensor microarray in 0.18μm CMOS」,IEEE J Solid-State Circuits 48(5):1290-1301に記載されているようなGMR-SVセンサ(これらの各々の内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)上で標的分子を運ぶ磁性ビーズの検出が提案されている。
【0010】
しかしながら、これらのCMOSチップの各々は、高価でありかつ標準的な大容量CMOSファウンドリープロセスでは一般に利用できない余分な磁性層および金属特殊層を必要とする。
【0011】
ChangおよびLu(2013),「CMOS capacitive biosensors for highly sensitive biosensing applications」,Annual Int Conf IEEE Eng Med Biol Soc.2013:4102-5(その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)は、CMOSチップ上での磁気ビーズの静電容量検出を提案している。
【0012】
ガラス、シリカ、チタニア、銀、金ナノ粒子などの非磁性粒子の検出は、典型的には、高価な光検出器、レーザ、X線もしくはSEM、または質量分析装置を必要とする。いくつかのラテラルフロー試験では、ヒトの眼による視覚的な検出が可能であり、この試験では、多数の典型的には40nmのナノ粒子が検出(または対照ライン)で捕捉されることで視覚的な検出が可能になる。しかしながら、これらの方法の感度は数千の粒子に限定される。
【0013】
米国特許第10,746,683号(Cumminsら)(その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)は、上に列挙した磁性および非磁性の両方の粒子を検出するための櫛型電極(IDE)静電容量センサを記載している。これは、200ビーズの検出下限を有する使い捨てセンサであり、水またはバッファー担体が蒸発し、ビーズがセンサ表面に永久的に付着したままになる。
米国特許第10,160,966号(O’Farrellら)(その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)は、試料に提供され得るビーズ、および標的核酸分子にハイブリダイズし捕捉するこれらのビーズに結合したペプチド核酸(PNA)プローブを開示している。これは使い捨ての構成である。
米国特許第11,459,601号(O’Farrellら)(その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)は、核酸検出のための様々なアッセイステップを開示している。第1のPNAプローブおよび捕捉された核酸が付着した常磁性輸送(T)ビーズを試料から磁気的に除去し、様々な洗浄およびテザーステップにより移動させる。次いで、第2のPNAプローブが付着したレポーター(R)ビーズが、存在する場合、捕捉された標的核酸にテザリングして、標的特異的サンドイッチアッセイを作製する。次いで、これを洗浄チャンバおよびCMOSセンサチップ上に移動させ、そこでRビーズを溶出および検出する。これも使い捨ての構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第5811235号
【特許文献2】米国特許第10,746,683号
【特許文献3】米国特許第10,160,966号
【特許文献4】米国特許第11,459,601号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Florescuら(2010)「On-chip magnetic separation of superparamagnetic beads for integrated molecular analysis」J Appl.Phys.107(5):054702
【非特許文献2】Murmannら(2013)「A 256 pixel magnetoresistive biosensor microarray in 0.18μm CMOS」,IEEE J Solid-State Circuits 48(5):1290-1301
【非特許文献3】ChangおよびLu(2013),「CMOS capacitive biosensors for highly sensitive biosensing applications」,Annual Int Conf IEEE Eng Med Biol Soc.2013:4102-5
【発明の概要】
【0016】
本開示のシステムおよび方法は、一般に、試料中の標的分析物の検出および/または定量に関する。本明細書で論じられる様々な構造および技術により、単独でまたは組み合わせて、PCRなどの酵素増幅を必要とせずに、単一分子検出に至るまでの感度を得ることができる。本発明のシステムおよび方法は、例えばウイルス核酸およびそのウイルスに対する宿主抗体の同時検出を可能にする、各種核酸標的全体にわたるだけでなく全標的クラスにわたってマルチプレックス標的検出をさらに可能にする様々な構造的利点および電子シグナル増幅技術を使用することができる。
【0017】
本発明の態様は、静電容量センサを使用し、酵素増幅なしで、試料中に存在する標的核酸を100コピー/mLまたはそれ未満で検出することを含む、核酸検出方法を含み得る。様々な実施形態において、全体を通して論じられる技術は、単独でまたは組み合わせて使用して、アッセイの所望の感度、精度、および複雑性に応じて、150コピー/mLまたはそれ未満、250コピー/mLまたはそれ未満、500コピー/mLまたはそれ未満、1000コピー/mLまたはそれ未満、5000コピー/mLまたはそれ未満、10,000コピー/mLまたはそれ未満、50,000コピー/mLまたはそれ未満、100,000コピー/mLまたはそれ未満、1,000,000コピー/mLまたはそれ未満などの検出を達成し得る。特定の実施形態において、方法は、標的核酸の検出において少なくとも109個のシグナル増幅を達成するように操作可能であり得る。様々な実施形態において、方法は、この場合もアッセイパラメータに応じて、少なくとも108、少なくとも107、少なくとも106、少なくとも105、少なくとも104、少なくとも103、または少なくとも102のシグナル増幅を達成し得る。同様に、方法は、少なくとも30回のPCRサイクル、少なくとも25回のPCRサイクル、少なくとも20回のPCRサイクル、少なくとも15回のPCRサイクル、少なくとも10回のPCRサイクル、または少なくとも5回のPCRサイクルと同等の標的核酸の検出においてシグナル増幅を達成するように操作可能であり得る。
【0018】
静電容量センサによる核酸検出は、少なくとも約8pF、少なくとも約7pF、少なくとも約6pF、少なくとも約5pF、少なくとも約4pF、少なくとも約3pF、少なくとも約2pF、または少なくとも約1pFのフルスケールレンジを含み得る。方法は、静電容量-デジタルコンバータを使用して静電容量センサからのシグナルを変換することを含み得る。静電容量-デジタルコンバータは、シグマ-デルタ方式の24ビット静電容量-デジタルコンバータであり得る。静電容量センサによる核酸検出は、少なくとも約0.5aFの分解能および少なくとも約4aFの精度を含み得る。様々な実施形態において、静電容量センサによる核酸検出は、参照入力に内部オフセットキャパシタを含めることにより、少なくとも約15pFのフルスケールレンジを含み得る。
【0019】
本発明の方法は、標的核酸をレポーター(R)ビーズに結合させることと、シグナル処理回路と通信する基板上の2つの静電容量式電極を含むセンサ領域を介してRビーズを通過させることと、シグナル処理回路を使用して、ギャップを介してR-ビーズが通過するときのRビーズを検出することと、をさらに含み得る。2つの電極は、単一のビーズのみが一度にギャップ間を移動するように間隔を空けて配置されギャップを形成してもよい。2つの電極は、Rビーズが通過するトレンチを形成してもよい。方法は、Rビーズを複数のセンサ領域を介して通過させることと、Rビーズを、複数のセンサ領域からシグナル処理回路によって受信されたシグナルに最大尤度推定(MLE)機械学習アルゴリズム、部分応答最大尤度(PRML)アルゴリズム、またはビタビアルゴリズムのうちの1つまたはそれを超えるものを適用することによって、それが複数のセンサ領域介して通過するときに検出することと、をさらに含み得る。
【0020】
いくつかの実施形態において、標的核酸を検出することは、標的核酸をレポーター(R)ビーズに結合することと、静電容量センサを使用してRビーズを検出することと、を含み得る。静電容量センサを使用してRビーズを検出することは、流体中でセンサを通過して流れるRビーズを検出することを含み得る。流体はオイルであり得る。オイルはシリコーンオイルであり得る。流体はフッ素化炭素を含み得る。流体は、ドデカフルオロ-2-メチルペンタン-3-オンおよびメトキシ-ノナフルオロブタンから選択され得る。方法は、Rビーズをフッ素化することを含み得る。方法は、流体中を流れるRビーズの周りに水層を形成して、静電容量センサで検出シグナルを増幅することを含み得る。
【0021】
特定の実施形態において、方法は、ビーズ結合ペプチド核酸(PNA)を使用して標的核酸をRビーズに結合させることを含み得る。ビーズ結合PNAは、標的RNAと相互作用しないリガンドまたはリンカーPNAを含み得る。方法は、1つまたはそれを超える静電容量センサを使用して、試料中に存在する少なくとも標的核酸を含む複数の異なる標的を検出することを含み得る。複数の異なる標的は、複数の異なる標的核酸を含み得る。複数の異なる標的核酸は、異なる病原体または病原体の異なるバリアントに由来し得る。病原体はSARS-CoV-2であり得る。複数の異なる標的は、タンパク質を含み得る。タンパク質は抗体であり得る。タンパク質は抗原であり得る。いくつかの実施形態において、標的核酸はデングウイルスに由来し得、抗体はデング特異的抗体であり得る。特定の実施形態において、標的は、Onpattro、Patisiran、givosiran、lumasiran、およびinclisiran(siRNA)を含むがこれらに限定されない薬物、またはREGEN-COV(casilivimabおよびimdevimab)などの抗体カクテルであり得る。
【0022】
標的は、トジナメランなどのmRNAワクチンであり得る。治療薬およびウイルス量の共モニタリングが有利であり、本方法およびシステムのマルチプレックス性により、そのような共モニタリングが可能になり得る。いくつかのRNA由来薬物の安定性が使用前および使用後の両方で懸念されており、例えば注射前および使用後の血液または唾液試料からの両方のこれらの濃度またはレベルのモニタリング技術が有益である。製薬会社におけるこれらの技術のQCに同じ技術を使用することができる。標的は、合成であり得、Nl-メチルプソイドウリジンなどの非標準塩基を含み得る標的核酸誘導体を含み得る。標的はまた、リン脂質または糖脂質であり得る。標的は、細胞、ウイルス粒子または脂質ナノ粒子の表面にあってもよく、ここで、細胞、ウイルス粒子または脂質ナノ粒子はテザリングを可能にする。
【0023】
複数の異なる標的を検出することは、複数の標的の各々を異なるビーズに結合させることと、静電容量センサを使用して異なるビーズの各々を検出することと、を含み得る。方法は、静電容量センサからの異なる静電容量検出シグナルに基づいて異なるビーズを区別することをさらに含み得る。いくつかの実施形態において、方法は、Rビーズが結合している異なるセンサ結合標的に基づいて、Rビーズを基板結合標的から選択的に放出することと、Rビーズを放出するキャパシタンスへの影響を検出することと、を含み得る。
【0024】
複数の異なる標的を検出することは、複数の異なる標的の各々を基板上の異なるプローブに結合することを含み得る。基板は、1つまたはそれを超える静電容量センサと操作可能に関連付けられてもよい。方法は、1つまたはそれを超えるレポーター(R)ビーズを異なる基板結合標的の各々に結合させることをさらに含み得る。いくつかの実施形態において、方法は、Rビーズが結合している異なる基板結合標的に基づいて基板結合標的からRビーズを選択的に放出することと、静電容量センサを通過する、放出されたRビーズを流体中で流すことと、センサを通過して流れる放出されたRビーズを検出することと、を含み得る。異なるビーズの各々は、異なるサイズを有してもよく、方法は、そのサイズに基づいて異なるビーズの各々を異なる静電容量センサにマイクロ流体的に誘導することを含み得る。この誘導するステップは、慣性法、誘電泳動法または磁気泳動法のうちの1つまたはそれを超えるものを含み得る。
【0025】
標的核酸を検出することは、標的核酸を基板上のプローブに結合させることと、複数のレポーター(R)ビーズを基板結合標的核酸に結合させることと、をさらに含み得る。複数のRビーズは、基板結合標的核酸中の異なる配列に結合し得る。基板は、静電容量センサと操作可能に関連付けられてもよい。方法は、基板結合標的核酸から複数のRビーズを放出することと、静電容量センサを通過する、放出されたRビーズを流体中で流すことと、センサを通過して流れる放出されたRビーズを検出することと、をさらに含み得る。
【0026】
特定の実施形態において、標的核酸を検出することは、輸送(T)ビーズを試料中の標的核酸に結合させてTビーズ複合体を形成することと、Tビーズ複合体をレポーター(R)ビーズに結合させてRビーズ複合体を形成することと、Rビーズ複合体からRビーズおよびTビーズを溶出することと、静電容量センサを使用してRビーズを検出することと、Tビーズを試料に戻して別の標的核酸に結合させることと、を含み得る。
【0027】
本発明の態様はまた、上記の方法のいずれかを実行するように操作可能な本明細書に記載されるようなシステムおよびアーキテクチャを含み得る。
【0028】
本発明の態様は、核酸検出のためのシステムを含み得、システムは、シグナル処理回路と、シグナル処理回路と通信する基板上に2つの静電容量電極を含むセンサ領域とをさらに含む静電容量センサを含み、2つの電極は間隔を空けて配置されギャップを形成しており、単一のビーズのみが任意の時点でギャップ間を移動し、電極はビーズおよび/またはビーズに結合した任意の分子を検出する。システムは、ビーズを検出するために使用された後に再利用可能であり得る。静電容量センサは、約2mm×2mmであり得る。ビーズまたは粒子は、水、緩衝液、またはオイルもしくはフッ素化炭素、または有機溶媒に含まれていてもよい。検出されるビーズまたは粒子は、上流アッセイからの微生物学的分析物の代用物であり得る。ビーズまたは粒子は、磁性または非磁性であり得る。
【0029】
ギャップは、ビーズ直径の2倍であり得る。いくつかの実施形態において、基板は3D印刷されてもよい。電極は、スパッタリングまたはインク堆積およびパターニングによって形成され得る。電極間の間隔は、約0.8μm~20μmであり得る。基板は、CMOS半導体チップであり得る。電極は、金属層内でエッチングされてもよく、電極間の間隔は、約40nm~約5pmであり得る。特定の実施形態において、本発明のシステムおよび方法は、ビーズ凝集を防止し、かつ/またはシステムを通る粒子およびビーズの移動を誘導するために、超音波振盪、誘電泳動ビーズステアリング、オイルシリンジングおよび/またはビーズゼータ電位の調整の1つまたはそれを超えるものをさらに含み得る。
【0030】
本発明の目的は、検査室以外で、簡易な携帯用フォーマットで、臨床現場および家庭で使用するために、操作のための訓練をほとんどまたは全く必要としない非常に重要な健康診断を利用可能にすることである。しかしながら、同じ技術は、中央検査室のサイズ、規模、電力消費量および物流コストを削減することができる。本発明の更なる目的は、患者試料からの核酸および抗体の同時かつ迅速な検出を可能にすることである。この同時検出は、デングウイルス(DENV)RNAバリアント1、2、3、4(現在の活動性感染を示す)を検出および区別するだけでなく、DENV抗体も検出および同定することが不可欠なデングアウトブレイクなどの症例に有利であり得る。トリアージでは、デングワクチンの適用に関する何らかの臨床判断を行う前に、患者が過去のデング熱感染症の病歴を有していたかどうかを確立することにそれが役立ち得る。
【0031】
本明細書に記載されるシステムおよび方法は、上で論じた技術における特定の欠点を認識し、これに対処する。例えば、Florescuのビーズは極めて大きく、通常は2.8μmまたはそれよりも大きく、直径4.5μmの円形ホールセンサ上へのビーズの正確な操作を必要とする。単一粒子のこの精密操作は、自動化された市販のNAアッセイでは実用的ではない。Murmannの磁性粒子はより小さい(50nm)が、検出の下限は2000粒子であり、ほとんどの核酸試験および遺伝子発現分析に実用的ではない。ChangおよびLuに記載されているビーズは、10μmの直径であり、ほとんどの分子分析アッセイには大きすぎ、コイルの正確な中心へのビーズの電磁的操作を必要とする。これはまた、商業的または自動化されたアッセイに実用的ではない。さらに、ChangおよびLuに記載されているセンシング機構は、ビーズの存在下でChangおよびLuのキャパシタンスが実際に減少するため、静電容量性ではない。したがって、ビーズの連続フローを検出し、単一のビーズを検出することができる再使用可能なセンサのニーズは満たされていない。さらに、単一分子分析を可能にするためのビーズの連続フローに対する満たされていないニーズがある。単一分子分析、ジェノタイピング、およびバリアント同定を可能にするためのTビーズおよびRビーズの連続フローに対する満たされていないニーズ、ならびに流行病大発生状況における迅速な臨床介入、処置、およびリアルタイム監視を可能にするために、ポイントオブケアおよびコミュニティクリニックなどの非検査室環境において、核酸検出、バリアント同定、ウイルス量定量、および単一分子検出分析を実行するための簡易な携帯用手段および方法に対する満たされていないニーズもある。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】PETフィルム上のスパッタリングされたITO電極上のビーズ付き分析物液滴を示す。
【0033】
【
図2】静電容量-デジタルコンバータおよびPETフィルムへの接続ソケットを示す。
【0034】
【
図3】24ビットシグマデルタ静電容量-デジタルコンバータアーキテクチャおよび回路を示す。
【0035】
【
図4】3D印刷された基板上のインク印刷されたレーザーアブレーション電極キャパシタを示す。
【0036】
【
図5】
図4のインク印刷されたレーザーアブレーション電極の側面写真である。
【0037】
【
図6】CMOSシリコンチップ上のエッチングされたアルミニウム電極IDEキャパシタを示す。
【0038】
【
図7】アルミニウムおよび銅電極CMOS半導体の形成を示す。
【0039】
【
図8】テザリングされたビーズ付きの従来技術の分析物センサ、およびその等価回路を示す。
【0040】
【
図9】
図6の円形CMOSセンサ上に具体的に捕捉されたビーズの写真である。
【0041】
【
図10】キャパシタンス対RNAのグラフにおけるエンドツーエンドアッセイ性能を示す。
【0042】
【
図11】1つのセンサへの多数のビーズの特異的テザリングによるシグナル増幅を示す。
【0043】
【
図12】SARS-CoV-2ウイルスの保存領域を標的とするPNAプローブを示す。
【0044】
【
図13】SARS-CoV-2ウイルスの領域を標的とする更なるPNAプローブを示す。
【0045】
【
図14】SARS-CoV-2ウイルスの領域を標的とする更なるPNAプローブを示す。
【0046】
【
図15】デングエンベロープおよびNS1タンパク質の抗原性ペプチド配列を示す。
【0047】
【
図16】デングウイルスバリアント1、2、3、4を標的とするPNAプローブを示す。
【0048】
【
図17】デングウイルスバリアント1、2、3、4を標的とするPNAプローブを示す。
【0049】
【
図18】いくつかのセンサにスポットされたPNAプローブを有する30個のCMOSセンサを示す。
【0050】
【
図19】デングRNAおよび抗体検出のためのセンサのスポッティングパターンを示す。
【0051】
【
図20】CMOSセンサチップ上に並んだデングRNAおよび抗体アッセイを示す。
【0052】
【
図21】
図6のIDEキャパシタのいくつかをCMOSシリコンチップ上の行で示す。
【0053】
【
図22】いくつかのセンサ上に透明なシリコーンオイルを有する
図21のチップの写真である。
【0054】
【
図23】
図21の円形センサの一方の上にあるオイルのシリンダの概略図である。
【0055】
【
図24】C
シリコーンオイルおよびC
窒化物を有する
図23の等価回路を示す。
【0056】
【
図25】
図21の円形センサ上のビーズ含有PD5オイル膜の写真である。
【0057】
【
図26】円形センサ上の
図25のビーズ付きオイルのシリンダの概略図である。
【0058】
【
図27】C
シリコーンオイル、C
窒化物、C
ビーズを有する
図26の等価回路を示す。
【0059】
【
図28】ビーズの有無によるPD5オイルキャパシタンスのセンサ測定値を提供する。
【0060】
【
図29】金属電極間の0.8μmトレンチ内の0.4μmビーズを示す。
【0061】
【
図30】電極間を通過するオイル中のこのビーズの電場シミュレーションである。
【0062】
【
図31】ビーズが電極間を通過するときのビーズの計算されたキャパシタンスを示す。
【0063】
【0064】
【0065】
【
図34】接地面を下にした、
図33のビーズキャパシタンス計算を示す。
【0066】
【
図35】電極間を流れる一連のビーズのリアルタイムキャパシタンスを示す。
【0067】
【
図36】複数の電極間を流れ、次いで基板の孔を流れ落ちるビーズを示す。
【0068】
【
図37】インク電極および3D印刷された基板のレーザ形成貫通孔を示す。
【0069】
【
図38】レーザアブレーションによって形成された狭いギャップを有するインク印刷電極を示す。
【0070】
【
図39】Tビーズの再利用を伴う特定の実施形態によるアッセイを示す。
【0071】
【
図40】例えばSARS-CoV-2の単一分子分析を可能にする実施形態を示す。
【0072】
【
図41】COVID/インフルエンザ/枯草熱についての家庭用呼吸器唾液自己検査の実施形態を示す。
【0073】
【
図42】流体相転移を通って流れるフッ素化レポータービーズを示す。
【0074】
【
図43】相転移を横切ってビーズを流すためのマイクロ流体の実施形態を示す。
【0075】
【
図44】追加の増幅を提供するDビーズにテザリングされたRビーズを示す。
【0076】
【
図45】センサ間を流れるRビーズ-Dビーズテザリング複合体を示す。
【0077】
【
図46-1】(a)CMOSセンサ、(b)ビーズ基板にテザリングされたR-Dビーズ複合体を示す。
【0078】
【
図47】Dビーズを表面にテザリングする縮小サイズRナノ粒子(1~100nm)を示す。
【0079】
【
図48】リンカー型の分子形状を有するRナノ粒子を示す。
【0080】
【
図49】標的RNAと相互作用しないリガンドであるリンカーを示す。
【0081】
【
図50】Dビーズを磁性粒子の表面にテザリングするRナノ粒子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0082】
詳細な説明
本発明は、複数のビーズ試験、またはビーズの連続フローに再使用可能であり、容易に製造可能かつ自動化可能な改良された静電容量ビーズセンサを提供する。本明細書に記載されるシステムおよび方法は、単一ビーズ、したがって単一標的分子に至るまでの検出を可能にする。以下で論じられる電子的および他のシグナル増幅技術により、酵素増幅なしでその感度を達成することができ、それによって上記のような酵素法の欠点のいくつかが回避される。さらに、本明細書に記載されるシステムおよび方法は、試料中の様々な濃度の標的分子のマルチプレックス分析において特に有用な広いダイナミックレンジを維持しながら、所望の感度を達成することができる。
【0083】
以下により詳細に論じられるように、本明細書に記載されるシステムおよび方法は、とりわけ、a)生物学的試料からの核酸分子、抗体分子、および抗原分子の同時の捕捉および検出;b)(例えば、臨床的ウイルス量決定のための)これらの分子の一桁のコピーレベルまでの定量;c)複数の静電容量ビーズセンサ上の複数のPNA捕捉遺伝子の同時定量による遺伝子発現分析;d)試料およびアッセイステップを通してリサイクルされた複数のビーズ上の複数のPNAプローブによる単一分子検出分析;e)同じ試料からのRNAおよび抗体の両方の同時検出による現在の感染と過去の感染との識別のうちの1つまたはそれを超えるものを可能にし得る。
ビーズ検出およびシグナル増幅
【0084】
図1は、150μm厚さのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上の6つのスパッタリングされたインジウム-スズ酸化物(ITO)静電容量電極センサを示す。各キャパシタは約2mm×2mmである。コネクタソケット(右側)は、キャパシタンス-デジタルコンバータ、アナログおよびデジタルフィルタ、不揮発性メモリ、シグナルプロセッサ、および無線通信(Bluetooth(登録商標)、WiFi、GSM(登録商標)、GPRSなど)を含み得るシグナルプロセッサにキャパシタを接続する。示されているキャパシタンス(4.45pF、4.587pF、4.59pF)は、液体またはビーズを含まないベースライン値である。わずかな値の増加(S1-S3-S5)は、各キャパシタに到達するためのより長い配線を反映している。これらのベースライン値は、(
図28に示すように)関連するセンサ読み取り値の各々からのオフセット減算によってゼロベースラインへのすべてのセンサのヌル化を可能にするために、シグナル処理回路の不揮発性メモリにオフセットとして格納することができる。センサは、いくつかの用途におけるアッセイの自動化のために、液滴分注チップとの統合を容易にするために直線状に配置される。
【0085】
図2は、印刷回路基板(PCB)上のキャパシタンス-デジタルコンバータ、およびこれらを
図1の6つのキャパシタに接続する小型ソケットを示す。
【0086】
図3は、当該技術分野、例えば、「Oversampling Delta-Sigma Data Converters」(Candyら、Wiley-IEEE Press,1992)で知られているようなシグマ-デルタ静電容量-デジタルコンバータの回路アーキテクチャを示す。KHz~MHzのモジュレータクロック周波数で操作する標準的なスイッチトキャパシタ技術を使用して、C
センサをC
基準と比較する;差分が増幅および積分され、次いでコンパレータに適用される。コンパレータ出力は、V
基準スイッチ、事実上1ビットデジタル-アナログコンバータ(DAC)を制御するためにフィードバックされる。コンパレータビットストリーム出力はデシメーションフィルタに適用されて最大24ビット分解能のデジタル結果を生成する。典型的な変換時間は1mS~100mSである。多段積分増幅器によって提供される100万倍の電子増幅は、全体的なアッセイ増幅に寄与し得る。
【0087】
図4は、インク印刷およびレーザアブレーションパターニングを使用して形成された櫛型電極を有する3D印刷されたポリ乳酸(PLA)基板を示す。測定されたベースラインキャパシタンス(フィンガおよび配線間寄生を含む)は、4.5pF~6.1pFの領域にある。キャパシタンスのフリンジ電界センシングまたは変換部分は、電極間隔に応じて0.4pF~1.6pFの領域内にあってよく、これはアブレーションレーザのスポットサイズに応じて、典型的には0.8μm~20μmであり得る。
【0088】
図5は、
図4のS4のインク電極の側面写真である。電極構造を作製するためのインクのレーザアブレーションは、3D印刷中に数ミクロンから数百ミクロンまでプログラム可能なインク厚さの高さを有する、電極間のトレンチをもたらす。エレクトロハイドロダイナミックインクジェット印刷は、レーザアブレーションを必要とせずに細線(例えば1pm)電極特徴を作り出す別の方法である。
【0089】
図6は、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)チップの金属トップ層のサブトラクティブエッチングによって形成された櫛型電極(IDE)キャパシタを示す。この実施形態において、シグマ-デルタ静電容量-デジタルコンバータは、センサの下または隣接して、同じCMOSチップ内に形成されてもよい。これにより、寄生キャパシタンスおよびノイズ(熱および電磁気)が有意に低減され、それによって測定のダイナミックレンジがより広くなる。
【0090】
CMOSセンサを形成する金属層の断面図を
図7(Burghartzら、IEEE 2004,DOI 10.1109/TED.2004.823325からの例示的な例)に示す。この参考文献はまた、典型的なCMOSプロセス形成ステップを記載しており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。20nmもの低い電極間隔は、半導体製造の最新のドライプラズマエッチングおよび高度方向性異方性深部反応性イオンエッチング(DRIE)方法で達成することができる。
図7の破線(a)は、特定の実施形態において、不動態化せずにビーズをその間に流すためのトレンチとして使用することができるトップ金属の狭い空間を示す。これは、製造ステップ(不動態化)を排除してより狭い間隔を達成しながら、アッセイ増幅を増加させるのに有利であり得る。ビーズが流れ得るシリコーンオイルで覆われている場合、金属の酸化または腐食が起こらない。
図7の破線(b)は、
図5の3D印刷されたレンチと同様に、はるかに厚い金属構造用の銅めっきを用いた変形例である。Burghartzのこの銅めっきの例は、RFインダクタコイル形成のためのものである。特定の実施形態において、本発明のシステムは、トレンチ内のビーズの測定、およびオイル中のビーズの流れの測定のために、この標準的な大容量RF-CMOS厚金属技術を電極トレンチ構造として使用することができる。これにより、特別なCMOS層または非標準半導体処理の要求を回避することができる。
【0091】
図8は、静電容量ビーズ検出方法(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第10,746,683号を参照されたい)を示す。ビーズは、単にセンサ表面(8b)に到達するか、または例えばプローブ-0によってセンサ表面(8c)に特にテザリングされ、ビーズに結合した更なるプローブ-1によってテザリングされ得る。静電容量フリンジ場(8b点線の電場)が、ビーズ材料の誘電率に起因するC
ビーズを検出するトランスデューサを形成する。
図8(a)は等価回路を示す。力線が絶縁窒化物保護層を通過するため、C
窒化物がC
ビーズと一続きに現れる。
【0092】
図9は、
図8(c)テザリングの写真図であり、この場合、HIV gag遺伝子を標的とするように設計されたPNAプローブによって
図6の円形センサの中心に特異的に捕捉されたレポータービーズ(Rビーズ)を示す。これらは、患者試料からの上流アッセイにおけるHIV-RNAのプロキシビーズであるため、ビーズ数を定量したものであるセンサキャパシタンスもまた、患者試料中のHIVウイルス量の直接デジタル読み出しである。これは、
図10の「キャパシタンス対RNA」のエンドツーエンドのアッセイ性能グラフに示されている。上の写真は、センサ表面に特異的に捕捉されたビーズを示す。下の写真は、オフターゲットPNAプローブを使用した場合にビーズが捕捉されていないことを示す。
【0093】
図11は、(プローブ-0によって)センサ表面にテザリングされた標的RNA鎖を示し、プローブ1、2、3、4などによって、いくつかのビーズがRNAにテザリングされている。これらのプローブは、標的DNAまたはRNAの異なる保存領域を標的とするように設計され得、したがって、標的捕捉の非常に高い特異性を与える。それはまた、センサ上にテザリングされた捕捉ビーズの数が増加するために、有意なシグナル増幅をもたらす。これは、樹状増幅を模倣し、酵素増幅なしで非常に低いコピー数レベルであってもDNAまたはRNAを定量するために、全体的なアッセイ増幅を補助することができる。
核酸および抗体アッセイペプチドならびにプローブ設計
【0094】
図9のHIV Gag遺伝子PNAプローブの配列は、ZhaoらによってNature Communications(nComms 5079)に発表されており、その内容全体が本明細書に組み込まれる。完全合成PNAプローブは、固相ペプチド合成(SPPS)を使用してFMOC化学によって化学的に合成することができる。
【0095】
図12は、武漢参照配列ならびにアルファ、ベータ、ガンマ、デルタおよびオミクロンBA.1およびBA.2バリアントにわたって保存された、SARS-CoV-2ウイルスゲノムの固有の領域を標的とする14塩基PNAプローブを示す。このプローブは、例えば
図11のプローブ-0のように、センサ表面にテザリングされてもよい。
【0096】
図13および
図14は、オミクロンBA.1およびBA.2バリアントをアルファ、ベータ、ガンマ、およびデルタバリアントと識別するために、SARS-CoV-2受容体結合ドメイン(RBD)の領域を標的化するように設計された更なるPNAプローブ(プローブ6、プローブ7)を示す。プローブ8は、そのS遺伝子ドロップアウト欠失を標的とすることによってBA.2バリアントをさらに限定し、同定する。当該技術分野で公知のように、更なるプローブを同様に適用して他のバリアントを同定し、ここで、(例えば、
図41に示すような論理テーブルを適用することによって)少数の慎重に設計されたプローブ配列を用いてバリアント同定およびウイルスジェノタイピングを達成することができる。例えば、2004「A universal microarray for detection of SARS coronavirus」(doi:10.1016/j.jviromet.2004.06.016)において、Longらは、(2003/2004年の)「SARS-CoVの検出だけでなく、SARSの流行の異なる段階に関連する6つの変異した塩基の遺伝子型の同定」を与える20個のプローブ配列を発表した。
【0097】
図15は、デングウイルス(DENV)(Nagarら、DOI10.1155/2020/1820325)のエンベロープ(E)および非構造(NS-1)タンパク質の合成ペプチド配列を示す。これらはまた、FMOC SPPSによって化学的に合成され得る。それらは、患者の抗血清中のデング特異的IgMおよびIgG抗体を試験および診断するために使用されるDENVエンベロープおよび非構造タンパク質の線状エピトープに基づく。示されている9つの配列は、(Nagarらによる)高特異性抗体検出を提供するための「最も抗原性/反応性」の中からのものである。
【0098】
図16および
図17は、示されている保存領域を標的とするちょうど2つのPNAプローブ(14bpおよび15bp)を用いて、4つのデング参照ゲノムNC_001477、NC_001474、NC_001475、NC_002640(DENV1、2、3、4)の100%検出を達成する例を示す。これは、典型的には>25ntであり、したがって示されている変異のいくつかに及ぶであろうより長いPCRプローブおよびプライマーでは不可能であり、100%未満の特異性、およびより低い捕捉効率をもたらす。PNAの高い捕捉効率はまた、全体的なアッセイシグナル増幅、したがって感度に寄与し得る。
【0099】
マルチプレックス試験
図18は、様々なセンサ上にスポットされたPNAテザリングプローブと共にグループ化された、
図6に個別に示すような30個の円形CMOSセンサを示す写真である。これらのプローブは、
図9のビーズサークルに見られ、
図11に示されるように、レポーターRビーズを特異的に捕捉することができる。30個のセンサは、LAMPまたはPCRアッセイで可能であるよりもはるかに高次のマルチプレックス化およびジェノタイピングを可能にする。これは、
図19の例示的な実施形態に示されており、12個のセンサには、6つのRビーズDENV PNAプローブ(PNA1~6)の二重複製物がスポットされている。これらは、100%デング検出のための
図16/17の2つのPNAプローブと、DENV1/2/3/4変異同定のための各々1つのPNAプローブとを含む。高特異性DENV抗体検出のために、9つのセンサに
図15のEおよびNS1ペプチド配列がスポットされる:
EPl、EP2、EP4、EP7、EP10、EP12、NSl-l、NSl-3、NSl-4。各センサのビーズ定量能力を使用して、EおよびNS1量を確立することができる。CMOSチップエレクトロニクスおよびプロセッサの機械学習能力と組み合わせると、これは、アッセイ感度および選択性の向上、ならびに「重度のデング」ならびに重度および潜在的に致死性のデング出血熱(DHF)およびデングショック症候群(DSS)の潜在的な発症の予測を助けることができる。2つのPNA陽性対照センサ(両方とも、血液試料の場合は18s rRNA相補的プローブ、または唾液試料の場合はRNAse P相補的プローブをスポットした)が含まれる。例えば単一塩基ミスマッチ確認試験対照用の2つの「PNAーneg」陰性対照センサが含まれる。IgMおよびIgG陽性対照、ならびにaG陰性抗原対照についてスポットしたセンサも含まれる。温度およびCMOSプロセス変動補正およびオフセット除去のための2つのブランクセンサが使用される。
【0100】
このアッセイのこの高マルチプレックスおよび核酸/抗体固有の同時検出能力は、同じFMOC化学によって各々合成された、
図20に示すように、30個の同一場所に配置されたセンサ、および並列完全合成ペプチド配列およびペプチド-核酸(PNA)プローブによって実行される。
【0101】
特定の実施形態において、上記マルチプレックス化検出は、フロースルー検出を使用して実行されてもよい。例えば、上記の各スポットは、センサでなくてもよい。代わりに、基板へのRビーズのテザリングは、試料中のRNAと相互作用しない慎重に設計されたPNAリンカーまたはリガンド配列によって媒介され得る。これらは、RNAを標的とするPNAプローブまたは抗原性ペプチド配列にコンジュゲートされる。リンカーPNAの慎重な設計により、システムが加熱され、リンカーPNAの融解温度に達すると、基板からのRビーズの連続的かつ選択的な溶出が可能になる。このようにして、RNA標的によって媒介されるスポットに付着したRビーズを選択的かつ連続的に放出し、続いて下流のセンサで測定することができる。さらに、関連するリンカーPNAのTmに達すると、抗体によって媒介されるスポットに付着したRビーズを選択的に放出し、下流のセンサで測定することができる。センサは、それらを通過するRビーズを検出するインラインセンサであり得る。特定の実施形態において、センサは、特定のRビーズに結合するPNA機能性センサであり得る。代替的に、基板は、磁気ビーズの表面であり得る。
シリコーンオイル中を流れるビーズの検出:
【0102】
図21は、CMOSシリコンチップ上の
図6のセンシングキャパシタの別の実施形態を示す。この実施形態において、シグマ-デルタキャパシタンス-デジタルコンバータは、センシングキャパシタの左側のCMOSチップ内に形成される。チップ全体に統合された複数のダイオード温度センサは、チップ全体の温度変動によるセンサ読み取り値の差を測定および補償できることを保証する。センサは、いくつかのアッセイ自動化用途のための液滴ディスペンサ、または例えば上流核酸および抗体アッセイが異なるチャネルにあり得るマルチチャネルアッセイ方法との統合を容易にするために、行および列がオフセット形成にある。
【0103】
図22は、チップの右半分の様々な直径のいくつかのセンサ上に透明なPD5シリコーンオイルの膜を有する
図21のチップの写真である。オイルの膜は、IDE電極静電容量センサのフリンジ場変換部分に位置し、したがって、空気(K=1)よりも高い約2.5~3のオイル誘電率Kに起因してセンサキャパシタンスを増加させる。
【0104】
図23は、円形センサのうちの一方の上でセンシングされているオイル膜の円筒部分の概略図である。
図24は、絶縁窒化物不動態化層のキャパシタンスであるC
窒化物と一続きに現れるオイルキャパシタンスC
シリコーンオイルを示す、
図23の等価回路を示す。
【0105】
図25は、一方の円形センサ上の二酸化チタン(TiO
2)ビーズを含むPD5オイル膜の写真である。オイル膜中のこれらの二酸化チタン分析物ビーズは、それらの誘電率が約30~約100と、それがオイル誘電率(2.5~3)よりもはるかに高いために、更なるキャパシタンスを追加する。実際、TiO
2のKは、より低い周波数(100Hz、Wypychら、DOI 10.1155/2014/124814による)で10倍高くなり得る(最大K=1000)。したがって、最大1秒のより遅い変換時間を犠牲にしてシグマ-デルタコンバータモジュレータ周波数を遅くすることによって、更なる10倍のアッセイ増幅が可能である。
【0106】
図26は、円形センサ上のビーズ付きオイルの円筒部分を示す、
図25の概略図である。
【0107】
図27は、
図25および
図26のこの分析物センサの等価回路であり、C
窒化物と組をなして、関連するC
シリコーンオイルおよびC
ビーズキャパシタンスを示す。
【0108】
図28は、ビーズの有無によるオイルキャパシタンスのセンサ測定値を示す。時間ゼロにおいて、すべてのセンサは、空気誘電体でゼロにベースライン化される。2分後、PD5オイル膜(ビーズなし)を(陰性対照として)センサS0およびS30に適用し、1分後に1μmのTiO2ビーズを含有するPD5オイルをS6およびS25に適用する。グラフの上部に見ることができるように、ビーズはキャパシタンスの7.6fFの増加を引き起こす。(
図25の写真のように)顕微鏡でのビーズの目視計数は、約6000個のビーズの推定値を与え、すなわち、ビーズあたり約1.26aFを示す。これは、シグマ-デルタコンバータのモジュレータによって電極間に印加される1.6Vのスイッチトキャパシタ電圧に対して、約12個の電子に相当する。
【0109】
S0およびS30陰性対照センサ(直径0.96mm)を参照すると、シリコーンオイルの2分での添加が、キャパシタンスを132fF増加させる。直径0.54mmおよび0.3mmのセンサS5およびS7の場合、キャパシタンスはそれぞれ45fFおよび12.5fF増加する。これらの測定値を以下の表1にまとめており、これは、センサ直径に関係なく、シリコーン-オイル膜が空気誘電体と比較して約183fF/平方mm増加していることを示す。
表1
【表1】
【0110】
オイル中のビーズのこれらの測定は、本発明のシステムおよび方法の様々な実施形態を示す。それらは、液体蒸発の必要性を排除するために使用することができ、複数回の測定のためのセンサの再使用を可能にするのに有利である。それは、液体流量制御およびシリンジするによるビーズの移動を可能にし得、非磁性ビーズおよび粒子を検出するために、または磁性粒子のために有用である。
図28に示すグラフはまた、オイル膜厚さが変化するときのキャパシタンスの変化と、動的リアルタイムのビーズフロー検出能力を示すセンサからビーズが流出するときのキャパシタンスの変化とを示す。
オイル中の単一ビーズおよびビーズフローの電気的特性評価:
【0111】
図29は、電極間の0.8μmトレンチ内の0.4μmビーズを示す。
【0112】
図30は、1ボルトが印加されたこれらの電極、および電極間を通過するオイル中(K=2.5)のこのビーズ(K=100)のCOMSOL静電シミュレーションを示す。電場勾配線を0.1Vステップで示す。
【0113】
図31は、2.5、10、30、100、および1000のビーズ誘電率について、電極間を通過する際のビーズのCOMSOLキャパシタンス計算を示す。オイル中の0.4μmビーズ(K=100)が0.8μmの電極ギャップを通過するときにキャパシタンスは4アトファラド(aF)でピークになる。これは、(
図28のグラフから)より大きな1μmのTiO2ビーズについて、1.2aFよりも0.4μmのビーズについての方が、電極間隔がより小さくかつビーズ全体の電場がより強いために、キャパシタンスがより高い。これは、この非酵素的検出/定量アッセイの全体的なシグナル増幅にさらに寄与し得る。ビーズ全体の電場の増加が、ビーズ内の分子の双極子分極を増加させ、それによってそのキャパシタンスが増加する。399aFのベースラインキャパシタンスは、このシミュレーションで使用された
図32の境界要素モデル(BEM)に示すように、近傍に他の配線または接地面がないモデルの短い電極に部分的に起因して、このシミュレーションでは極めて低い。
【0114】
実際には、電極は、それらを静電容量-デジタルコンバータに接続する長さ数ミリメートルの配線を有し得、かつ/または物理基板、例えば3D印刷されたベース、またはCMOSシリコン基板上に形成され得る。電気的にこれらの基板は大きな接地面として現れ得る。これは
図33に示されており、CMOSシリコン基板で一般的であり得るように、0.4μmのビーズが0.8μmの電極ギャップを通過し、その下には2μmの接地面がある。オイル(K=2.5)中K=100ビーズの場合、COMSOLビーズキャパシタンスは、
図34に示すように、ここでも4aFである。しかしながら、
図34のベースラインキャパシタンスは、近くの接地面への寄生キャパシタンスの増加に起因して4.274フェムトファラド(fF)(すなわち、
図31よりも10倍超高い)である。より長い配線(例えば、10mm~15mm)は、このベースラインをさらに、例えば、
図1および4に示す実施形態において4.5pF~6.1pF増加させることができる。4aFの単一ビーズキャパシタンスは、アトファラド(aF)~ピコファラド(pF)までのこれらの巨大なベースライン変動でも検出可能であることは注目に値する。これは、シグマ-デルタ24ビット静電容量-デジタルコンバータの広いダイナミックレンジに起因する。この実施形態は、8pFのフルスケールレンジ、0.5aFの分解能、および4aFの精度を有する。追加の内部オフセットキャパシタをC
基準(
図3)に追加して、ベースライン範囲を、例えば最大17pFまたは20pFまで拡張することができる。これにより、大きな寄生があっても、シリコン基板またはCMOSチップ上に、接地面の有無にかかわらず、3D印刷によって、多くの異なる方法で静電容量センサを製造することが可能になる。
【0115】
図35は、非常に低いアトファラドレベルの測定値のコンバータ出力の時間領域グラフを示す。大量の熱および1/Fノイズが明らかである。電極間を通過するビーズは、3aF~6aFの静電容量シグナルにほぼ対応する短い「ブリップ」として現れ得る(波形において丸で囲まれた先端)。これらのブリップを識別することは簡単ではない。単純なピーク検出は、あいまいなブリップを見逃す可能性がある(
図35において「?」が付されたピークによって例示される)。特定の実施形態において、移動平均フィルタリングを使用して識別を補助することができるが、短いブリップを見逃す可能性がある。したがって、いくつかの実施形態において、
図36に示すように同じビーズを複数回読み取るのを助けるために、ビーズチャネルに複数の電極を使用することができる。次いで、最大尤度推定(MLE)機械学習アルゴリズムを読み取り値に適用してビーズカウント精度を改善することができる。部分応答最大尤度(PRML)およびビタビアルゴリズムは、ビーズ識別をさらに改善し、エラー率を低減する。CMOSセンサチップ内にそれ自体埋め込まれ得るシグナル対雑音比のこれらのデジタルフィルタリングの改善は、酵素増幅なしで全体的なアッセイ増幅にさらに寄与し得る。
【0116】
多くの増幅方法および増幅ステップが本開示に記載されている:PNA高捕捉効率、ビーズ質量、CMOS 106電子増幅、マルチビーズテザリングシグナル増幅、トレンチ内のビーズ電場増加、MLEおよびPRML/ビタビデジタルシグナル処理。これらの複合効果は、このアッセイにおいて109~1012の増幅に達することである。これは、それぞれ30~40回のPCRサイクルにほぼ等しい。したがって、本明細書に記載される全合成アッセイを使用して、<100コピー/mLの分析感度レベルを達成することができるが、臨床RNAウイルス量モニタリングに理想的な数桁の広いダイナミックレンジを有する。本発明のアッセイは、酵素増幅の要求をさらに排除することができ、したがって、PCRおよびLAMPアッセイの阻害問題および複雑性の多くも排除する。全合成であるため、このアッセイはまた、ドライアイスの輸送および冷蔵庫または冷凍庫での貯蔵の要件を排除する。電子デバイスのような潜在的に数年までの長い貯蔵寿命は、試薬がより迅速に、特別な取り扱いなしに劣化する可能性がある酵素アッセイと比較して、別の可能な利点である。
貫通孔ビーズフローアッセイ方法
【0117】
図36は、複数の電極対の間で基板上のチャネルまたはトレンチに沿って流れ、次いで基板の孔を流れ落ちて後部から出るビーズを示す。いくつかの実施形態において、これは、国際公開第2004/109770号に記載されているように、DRIEエッチングされたシリコン貫通孔であり得る。
【0118】
図37は、インク電極および3D印刷されたPLA基板における例示的なレーザ形成貫通孔を示す。これは、ビーズがチューブまたはチャネル内を流れ得るインラインビーズ測定に有利であり得る。
【0119】
図38は、0.8μmのレーザスポットサイズを有するレーザアブレーションによって形成された、AおよびBインク印刷電極間の狭い0.8μmの電極間隔を示す。次いで、ビーズはチャネル内を流れ、(3D印刷されたベースのレーザアブレーションによって作製された)電極間の孔を通って「落下」する。滑らかなビーズフローは、ビーズを運ぶオイルまたは他の液体流のプッシュ/プル制御をシリンジ処理することによって、かつ/または誘電泳動ステアリングによって強化することができ、この場合、帯電ビーズ(例えば、-30mVのゼータ電位)は、外部からまたは流路に沿って、例えば
図38に示す+/-チップによって印加される正または負の電圧に応答する。ビーズの凝集は、ビーズを互いに反発させることができるカルボン酸コーティングによってビーズのゼータ電位を例えば-30mVに調整することによって、かつ/またはセンサを通る単分散フローを補助するための装置の超音波振盪によって最小限に抑えることができる。
【0120】
フロースルー検出器システムにマルチプレックス化能力を提供するために、複数のフロースルーセンサを同じデバイスに配置することができる。試験される各バリアントに対応して、異なるサイズのRビーズのいくつかの個別の群を使用することができる。これらのRビーズは、各サイズの群が異なる貫通孔センサに送達されることを可能にするために空間的に分離されてもよい。分離の方法は、慣性分離、または誘電泳動分離または磁気泳動分離によるものであり得る。それによって、ビーズを区別することができ、マルチプレックスアッセイにおける各ビーズのそれぞれの標的の分別検出が可能になる。
ビーズのリサイクル
【0121】
特定の実施形態において、ワークフローに応じてシステムを通してビーズをリサイクルすることが有利であり得る。例示的なビーズリサイクルスキームを
図39に示す。システム3901は、試料捕捉3903、アッセイ構築3905、溶出3907およびセンサ検出3909の4つの主要領域を有する。選択されたセンシング方法に応じて、標的化RNAが枯渇するまでTビーズが連続的に供給されるので、Tビーズのリサイクルが有利であり得る(
図39)。3903において、Tビーズは、Tプローブを介して標的RNAを捕捉する。RプローブおよびRビーズは、3905でアッセイ構築の次の段階に添加され、その時点で完全なアッセイは、センサ上の溶出点3907に磁気的に輸送される。次いで、溶出したRビーズは、特異的PNA-PNA結合を介してセンサ3909に付着する。経時的に、ソース標的RNAがもはや利用できなくなるまで、特定のセンサ上にRビーズの数が蓄積する。次いで、最終的な(合計)シグナルが捕捉される。
図39に示すように、溶出ステップ3907の後にTビーズを再利用3911し、初期捕捉ステップ3903に戻すことができる。Tビーズを初期捕捉ステップ3903に戻す前に洗浄し、ビーズに偽プローブ、RビーズまたはRNAが確実に付着しないようにすることができる。
【0122】
CMOS検出器が上記のような単一ビーズ連続フローセンサである場合、センサ表面結合なしで、アッセイ構築および溶出は、溶出後にリサイクルされたTビーズを用いて同様に行われる。そのような実施形態において、RビーズおよびTビーズは、溶出後に迂回され、Rビーズは単一ビーズCMOS検出器を通過し、Tビーズは、標的RNAが枯渇するまで初期捕捉ステップで試料に戻る。次いで、シグナルは、各イベントで読み取られて、CMOS検出器を通過したビーズの数を効果的にカウントする。
単一分子分析:
【0123】
全体を通して論じたように、各種シグナル増幅技術を単独でまたは組み合わせて使用して、例えば単一分子検出に対する感度を高めることができる。単一分子検出は、例えばSARS-CoV-2のアウトブレイクにおける感染症の早期検出およびウイルス量の正確な定量を含む多くの用途を有する。
図40は、例えばSARS-CoV-2の単一分子分析のための実施形態を示す。
【0124】
2022年初期に、Laiら(DOI:10.1101/2022.01.08.22268865)は、その時点で既知のバリアント:アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、ラムダ、ミュー、イプシロン、イオタ、エータ、カッパ、および初期オミクロンバリアントに対応するSARS-CoV-2ゲノム内の48個のマーカーまたはヌクレオチド変異のリストを公開した。ゲノム内のこれらの変異領域の各々を標的とする48個のプローブの「総当たり(brute-force)」セットを想定すると、プローブ-1は、例えば
図12に示すように、すべてのSARS-COV-2バリアントを一意的に標的とするように設計された捕捉プローブである。プローブ-1は、試料からSARS-CoV-2 RNAを捕捉し抽出するために連続的に流れるアッセイの常磁性輸送(T)ビーズに結合され得る。Rビーズはまた、最初にプローブ2、次にプローブ3、次にプローブ4など、プローブ48までの異なるプローブが付着した群で、テザリングチャンバに順次流入することができる。次いで、
図13および
図14に部分的に示すように、患者試料中のバリアントを検索および絞り込み分析によって同定することができる。いくつかの実施形態において、必要とされるプローブの数は、オミクロンバリアントを同定するためのL452R、T478K、N501Y、およびH655Y変異のマッピングを有する
図41に示されるように、バリアントを同定するために「真理値表」の論理的低減分析を適用することによって減少され得る。
【0125】
図41は、自己検査唾液試料からの家庭用呼吸器検査のためのアッセイ実施形態を示す。上記のCOVID-19検出およびSARS-CoV-2のバリアント同定に加えて、別個にプローブを追加して、インフルエンザA、インフルエンザB、RSVおよび他のウイルス性病原体を識別および同定し、また免疫グロブリンE(IgE)抗体を検出するためのエピトープ抗原のペプチド配列プローブを識別して、くしゃみおよび鼻づまり発作の原因となり得るアレルギー性鼻炎(「枯草熱」)を同定する。上で論じた実施形態の単一分子までのアッセイ感度、酵素増幅(家庭での使用が複雑になる可能性がある)の欠如、および標的のクラスにわたるマルチプレックス性をすべて組み合わせて、そのような試験を可能にすることができる。
【0126】
他の低誘電率液体中を流れるビーズの検出:
低誘電率液体の他の例は、ドデカフルオロ-2-メチルペンタン-3-オン(Novec 649)、およびフッ素化炭素、例えばメトキシ-ノナフルオロブタン(Novec 7100)である。これらは、望ましい環境特性および電気特性を有する高度な熱伝達流体として使用される透明で無色で低臭気の液体である。Novec 649は、電子機器の冷却に一般的に使用される。それは1.8の非常に低い誘電率(@lkHz)を有し、ビーズのキャパシタンスセンシングに有利なキャリア媒体となる。さらに、それはより高密度で水に難溶性であり、フッ素化物質として、水性液体および油性液体の両方から分別される。特定の実施形態において、センサを通過してフローに放出されたビーズは、その液体内に単分散されて、アッセイ感度および単一分子検出を補助することができる。いくつかの実施形態において、相転移は、一般的に試料の種類が水性であるため使用され得る。
【0127】
図42は、特定の実施形態による、水性溶媒とフッ素化溶媒との間の界面にフッ素化Rビーズを作製するための概略図である。ビーズは、界面全体の移行を可能にするリガンドで修飾され得る。
図42に示される界面に、例えばヘプタフルオロブチルアミン(Dynabeadsで実証済み)を用いてフッ素化Rビーズに修飾されたビーズと、フルオロPNAで修飾されたビーズ(例えば、Fluor-PNA2は、ミセルを形成し、かつ/または水性/フッ素化流体界面で整列する)とが続く。このスキームは、二相性の可溶性PNA(PNAおよびフッ素化末端)を使用して、水性溶解Rビーズをタグ化し、その後のRビーズのフッ素化溶媒への移行を可能にする方法を示す。オイルへの移行のための親油性ビーズを製造するために、同様の化学物質が利用可能である。いくつかの実施形態において、Rビーズは両親媒性を有し得、水性溶媒および有機溶媒またはフッ素化溶媒の両方に単分散し得る。さらに、一方または両方の溶媒に溶解した両親媒性界面活性剤の使用は、溶媒相間のビーズの移行を容易にし得る。このアプローチは、水相から非混和性イオン液体への金ナノ粒子の移行について、Weiら(DOI:10.1021/ja039874m、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)によって実証されている。
【0128】
特定の実施形態において、例えば、最終フッ素化溶媒へのビーズの移行は、複数の溶媒(例えば、水性からアプロティック/有機、フルオロエーテル/エステル/ケトン、フッ素化または低誘電率溶媒)間の移行によるものであり得る。そのような移行は、
図43に示すようなマイクロ流体アプローチを使用して実行することができる。流体を使用して、ビーズが溶媒相全体を移動するときに混合またはミセル形成が重複する異なる溶媒を導入することができる。このアプローチはまた、別個の溶媒の各々における相間移行分子または両親媒性界面活性剤の使用を容易にし得る。このアプローチは、ビーズおよび溶媒のハンセン溶解度パラメータによって導かれ、ビーズ相移行を容易にするために各々の十分な溶解度を得る。同様の方法を、ビーズを有機溶液から水溶液に移す微小流体的なビーズ製造に使用することができる。
【0129】
Rビーズをある溶媒から別の溶媒に移動させる別の方法は、それらの高い誘電率または高いゼータ電位を利用して、Rビーズを「試料」または水溶液のフローからNovec 649または他の流体の平行なフローに偏向させることであり得、ここで、ビーズは、Novec 649に入ってセンサを有する出口に偏向されるまで、フローライン全体にわたって側方に移動する。
【0130】
いくつかの実施形態において、磁気感受性Rビーズをデバイス内に展開することができる。文献(その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Pamme&Manz、2004,DOI 10.1021/ac049183o)に示されているように、磁気泳動分離を使用して流体中でビーズを移動させることができる。磁気泳動分離を使用して、Rビーズを水相からNovec 649または油性もしくは他の相に偏向させることができる。
【0131】
水相から油性相へのビーズの移行は、ビーズが油性相にあるときにビーズの周りに薄いシェル層または水溶液の液滴の形成を可能にする。いくつかの実施形態において、この水性コーティングビーズをキャパシタンスセンサに流すことにより、ビーズ上の水性シェル層の高い誘電率に起因して、標準ビーズのシグナルを超える増幅されたシグナルを提供することができ、それによってシステム感度をさらに高めることができる。
テザリングとビーズフローアッセイとの組み合わせ:
【0132】
図44の実施形態において、上流アッセイから溶出したRビーズは、その後、更なるビーズに結合してシグナルを増幅し得る(「Dビーズ」、樹状増幅をここでも模倣する)。これは、ビーズ間のPNA-PNA結合を使用して行うことができる。これにより、Rビーズをより小さくすることが可能になり、これらのより多くを単一分子(例えば、RNA)に付着させることが可能になる。
図45は、流路を通るRビーズ-Dビーズ複合体を示し、ここで、2つのCMOSセンサが互いの上に配置されて流路を部分的または全体的に形成し、ビーズが各センサを通過するときにキャパシタンスシグナルが両方のチップによって独立して測定される。一方のセンサによる測定値が、他方のセンサからの測定値とデジタル的に比較される。単一ビーズを測定するために同じ配置を使用することができる。
【0133】
Rビーズは、基板上のRビーズおよびDビーズ複合体の捕捉を媒介するために使用することができる。複合体は、複合体化していないビーズとの区別を媒介する特性を有し得る。これらは、基板がセンサの表面であるアッセイを完了し得る基板(例えば、RビーズPNAによって媒介される)上での複合体の捕捉を含み得る。複合体の特性は、PNA-PNA結合、誘電泳動、または電気泳動を含み得る。この特性は、複合体をセンサに引き寄せ得る。この特性は、複合体がセンサを通過し、複合体化していない粒子が出口を通って流れる流路内で複合体を逸脱させる可能性がある。この特性は、複合体化していない粒子が出口を介して洗浄および/または除去される間、複合体または複合体の要素を基板上に一時的に保持することができる。例えば、基板に結合するPNA-PNAが使用される場合、複合体化していない粒子が出口を介して除去された後、システムの温度を上昇させて、複合体の1つまたは他のメンバーを基板から溶出させることができ、その後、それはセンサを通過し、本明細書の他の箇所に記載されるように測定することができる。複数のビーズの捕捉およびその後の放出は、フロースルー実施形態において前述のテザリングシグナル増幅を達成することができる。
【0134】
特定の実施形態において、Rビーズは、単一のPNAに減少され得、このPNAの別の基板への結合は、Dビーズの捕捉を媒介するために使用され得る。基板は、
図46aに示すようにセンサチップ(すなわち、PNA-PNA捕捉のためにPNAで機能化される)であってもよく、または基板は、
図46bに示すように追加の磁気ビーズであり得る。これは、テザリングされた複合体の各メンバー内の非常に強いPNA-PNA結合の利点を用いて、磁気的にビーズのテザリングおよび操作を提供することができる。したがって、フロースルーセンサを使用する場合、テザリングによるシグナル増幅の利点を依然として得ることができる。
【0135】
図47は、Dビーズを表面にテザリングするはるかに小さなRビーズ(1~100nm)の例である。
【0136】
図48は、Rナノ粒子が他の形状を有し得るか、または1つもしくはそれを超えるプローブの付着を可能にするリンカー型分子であり得るか、または2つの領域を有する長いPNAプローブであり得ることを示す。プローブ2は、Rナノ粒子上でも機能化されているが、天然のRNA標的と相互作用しないプローブまたはリガンドであり得る。これは、天然のRNA標的に見出される配列を回避し、PNAプローブとの相互作用を回避するための慎重なプローブ設計によって達成され得る。リガンドは、
図49に示すように、ビオチン-ストレプトアビジンを含むがこれに限定されない標的RNA上の正常な塩基対形成と相互作用しないようなものであり得る。
【0137】
図50は、センシングの前の更なる操作のためにDビーズを磁性粒子の表面にテザリングする小型Rナノ粒子(1~100nm)を示す。
参照による組み込み
【0138】
特許、特許出願、特許公報、雑誌、書籍、論文、ウェブコンテンツなどの他の文書への参照および引用は、本開示全体を通して行われている。そのようなすべての文書は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0139】
均等物
本明細書に示され記載されたものに加えて、本発明の各種修正およびその多くの更なる実施形態は、本明細書に引用された科学文献および特許文献への参照を含むこの文書の全内容から当業者に明らかになる。本明細書の主題は、その各種実施形態およびその均等物において本発明の実施に適合させることができる重要な情報、例示、およびガイダンスを含む。
【国際調査報告】