(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-17
(54)【発明の名称】繊維セメント板および繊維セメント板を有する壁構造物
(51)【国際特許分類】
E04B 2/56 20060101AFI20250207BHJP
E04C 2/04 20060101ALI20250207BHJP
【FI】
E04B2/56 604D
E04B2/56 601A
E04B2/56 621Y
E04B2/56 621L
E04B2/56 632L
E04B2/56 632Y
E04B2/56 641B
E04B2/56 642C
E04B2/56 644B
E04C2/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024545778
(86)(22)【出願日】2023-02-15
(85)【翻訳文提出日】2024-07-29
(86)【国際出願番号】 EP2023053757
(87)【国際公開番号】W WO2023156455
(87)【国際公開日】2023-08-24
(32)【優先日】2022-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524285848
【氏名又は名称】スイスパール デンマーク ホールディング エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100227329
【氏名又は名称】延原 愛
(72)【発明者】
【氏名】ジェンセン,ミア ヴェルナー
(72)【発明者】
【氏名】ポールセン,カールステン ボルム
(72)【発明者】
【氏名】ヴィグ,ピーター ヘセルンド モーラー
【テーマコード(参考)】
2E002
2E162
【Fターム(参考)】
2E002EA03
2E002FB05
2E002GA04
2E002GA16
2E002MA04
2E002MA23
2E002MA42
2E162CA01
2E162EA11
(57)【要約】
繊維セメント板は、離間して配置され、互いに実質的に平行な上縁部および下縁部と、離間して配置され、上縁部および下縁部に対して実質的に垂直な第1の側縁部および第2の側縁部と、内向き面および外向き面とを有する矩形本体を含む。さらに、第1の側縁部および第2の側縁部は、互いに実質的に平行に配置され、上縁部と下縁部とを接続する。さらに、下縁部には長手方向溝が設けられ、上縁部には、隣接する同一の繊維セメント板の下縁部の溝条内に挿入されるように適合された突条が設けられる。また、第1の側縁部には溝条が設けられ、第2の側縁部には、隣接する同一の繊維セメント板の第1の側縁部の溝条内に挿入されるように適合された突条が設けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
離間して配置され、互いに実質的に平行な上縁部および下縁部と、離間して配置され、前記上縁部および前記下縁部に対して実質的に垂直な第1の側縁部および第2の側縁部と、内向き面および外向き面とを有する矩形本体であって、前記第1の側縁部および前記第2の側縁部は互いに実質的に平行に配置され、前記上縁部と前記下縁部とを接続する、矩形本体を備える、壁構造物用の繊維セメント板であって、
前記下縁部には溝条が設けられ、前記上縁部には、隣接する同一の繊維セメント板の溝条に挿入されるように適合された突条が設けられること、
前記第1の側縁部には溝条が設けられ、前記第2の側縁部には、隣接する同一の繊維セメント板の第1の側縁部の溝条内に挿入されるように適合された突条が設けられること、および
前記第1の側縁部の前記溝条内にシーラントが施されること
を特徴とする繊維セメント板。
【請求項2】
前記繊維セメント板の前記下縁部の前記溝条は、シーラントを有さないことを特徴とする、請求項1に記載の繊維セメント板。
【請求項3】
前記外向き面には、前記外向き面への水の浸入を低減する疎水性コーティングが施されることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の繊維セメント板。
【請求項4】
前記繊維セメント板は壁構造物の一部であり、前記第1の側縁部の前記溝条および前記第2の側縁部の突条は垂直方向に配置され、前記外向き面は前記内向き面よりも前記壁構造物の中心から遠くに配置されることを特徴とする、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の繊維セメント板。
【請求項5】
垂直方向または水平方向に延在する支持梁列と、
前記支持梁に取り付けられ、互いに係合される複数の繊維セメント板であって、各繊維セメント板は、第1および第2の垂直配向縁部と、第1および第2の水平配向縁部と、内向き面および外向き面とを有する、複数の繊維セメント板と
を備える壁構造物であって、
前記第1の水平配向縁部は下縁部であり、溝条が設けられ、前記第2の水平配向縁部は上縁部であり、隣接するの繊維セメント板の下縁部の溝条の内側に配置される突条が設けられること、
前記第1の垂直配向縁部には溝条が設けられ、前記第2の垂直配向縁部には、隣接する繊維セメント板の第1の垂直配向縁部の溝条の内側に配置される突条が設けられること、および
前記第1の垂直配向縁部の前記溝条内にシーラントが施されること
を特徴とする、壁構造物。
【請求項6】
各繊維セメント板の前記第1の水平方向に配置された縁部の前記溝条は、シーラントを有さないことを特徴とする、請求項5に記載の壁構造物。
【請求項7】
各繊維セメントプレートの前記外向き面には、前記外向き面への水の浸入を低減する疎水性コーティングが施されることを特徴とする、請求項5または請求項6に記載の壁構造物。
【請求項8】
前記複数の繊維セメント板は、水平方向に配向された千鳥配列で配置されることを特徴とする、請求項5~請求項7のいずれか一項に記載の壁構造物。
【請求項9】
壁構造物を形成する方法であって、
垂直方向または水平方向に延在する支持梁列を設けるステップと、
各々の繊維セメント板が、突条が設けられた上縁部と、溝条が設けられた下縁部と、溝条が設けられた第1の垂直配向縁部と、突条が設けられた第2の垂直配向縁部と、前記第1の垂直配向縁部の前記溝条内に配置されたシーラントとを含む、複数の繊維セメント板を設けるステップと、
前記複数の繊維セメント板のうちの第1の繊維セメント板を前記支持梁のうちの少なくとも1つに取り付けるステップと、
前記複数の繊維セメント板のうちの第2の繊維セメント板の下縁部を前記第1の繊維セメント板の下縁部と位置合わせし、前記第2の繊維セメント板を水平方向に摺動させて、前記第1の繊維セメント板の前記第2の垂直配向縁部の突条または前記第2の繊維セメント板の前記第2の垂直配向縁部の突条を前記第2のセメント板の前記第1の垂直配向縁部の溝条または前記第1の繊維セメント板の前記第1の垂直配向縁部の溝条にそれぞれ挿入して、前記第2の繊維セメント板または前記第1の繊維セメント板の前記第2の垂直配置縁部の前記溝条内に配置された前記シーラントを押し潰すことによって、前記第2の繊維セメント板を前記第1の繊維セメント板と係合させるステップと
を含む方法。
【請求項10】
前記複数の繊維セメント板のうちの第3の繊維セメント板を垂直方向下方に摺動させ、前記第1の繊維セメント板の前記上縁部の突条を前記第3の繊維セメント板の前記下縁部の溝条に嵌め込むことによって、前記第3の繊維セメント板を前記第1の繊維セメント板と係合させるステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、壁構造物に使用される繊維セメント板に関する。さらに、本開示は、隣接縁部に沿って配置された協働する突条および溝条を有する繊維セメント板を組み立てることによって形成された壁構造物に関する。このようなセメント板は、「さねはぎ」接続部を有するセメント板と呼ばれることが多い。
【背景技術】
【0002】
繊維セメント板を用いて壁構造を作る場合、垂直木製梁と、垂直木製梁を接続する水平木製横梁とを有する背面構造物を作成することが一般的である。繊維セメント板は、その後、基礎となる木製構造物に取り付けられる。繊維セメント板は、各々の繊維セメント板の垂直方向および水平方向の両方の全ての縁部が、セメント板の縁部に沿ってねじを介して垂直方向および水平方向の木製梁によって支持されるように配置される。このようにして、2枚の隣接する繊維セメント板間の隣接する縁部は、セメント板の背後に配置された木製梁によって支持される。木製梁は、壁に強度を与えるためにセメント板の縁部を支持するために必要がある。さらに、時間の経過に伴って、2つの隣接する縁部は、材料の寸法変化により、わずかに引き離され、2つの隣接する縁部間に隙間が形成される可能性がある。耐火被覆を確実にするために、セメント板の背後の木製梁は、確実にこの隙間が覆われるようにする。隙間が開いている場合、火炎は隙間を介して壁構造物を通過する可能性がある。場合によっては、先行技術では、隣接するセメント板の水平方向縁部間に配置された背面木製梁の代わりに、2枚の隣接するセメント板の縁部を封止し支持するために亜鉛めっき鋼H梁を使用することが可能である。隣接するセメント板の縁部を支持/封止するための他の形態の構成もまた、当技術分野で知られている。
【0003】
しかしながら、既知の先行技術のタイプの壁構造物は、垂直木製梁と水平木製または鋼製梁の両方を必要とするため、製造しにくい。さらに、セメント板を基礎となる支持構造物に取り付けるためにねじを使用するため、取り付けに時間がかかり、多くのねじが必要である。また、繊維セメント板の縁部が適切に支持されるように、垂直梁および水平梁を正確に配置する必要がある。
【0004】
さらに、先行技術では、繊維セメント板は大型である、すなわち、繊維セメント板は重く、一般に、一人の作業者が安全に運ぶには大きすぎる。多くの場合、セメント板は非常に重いので、2人の作業者であっても、自力で持ち運ぶべきではなく、機械的な吊り上げ装置を使用する必要がある。しかし、作業場所の状態によっては、作業者らが1枚のセメント板を自力で持ち運ぶ場合もある。これは、作業者に身体的ストレスを与え、病気休暇の原因となる長期の疲弊を引き起こす。
【0005】
さらに、壁構造物を防風性および防水性にすることが望まれる場合が多い。これは、現在では、全てのセメント板を背面梁に取り付けた後に、外側に面する側または天候にさらされる側の全ての隣接するセメント板間の接合部に防水テープを追加的に貼り付けることによって行われる。
【0006】
場合によっては、そのような壁構造物は、最終外壁構造物として建物上で組み立てられることにも留意されたい。その他の場合では、そのような壁構造物は、最初に外壁構造物として組み立てられるが、後で、より恒久的な壁構造物によって覆われる。例えば、繊維セメント壁構造物が最初に組み立てられ、その後、繊維セメント壁構造物を覆うようにレンガ外面が設置される。しかしながら、建設プロセスに応じて、繊維セメント壁構造物の設置から、より恒久的な壁構造物による繊維セメント壁構造物の被覆までの間に、何ヶ月も経過する可能性がある。最終外壁構造物を設置する前の期間において、繊維セメント壁構造物は、防風性および防水性でなければならない。
【0007】
互いに係合する異なる形態の協働する突条および溝条を有する異なる形態の繊維セメント板が当技術分野で周知であることにも留意されたい。このようなセメント板は、強度、防火性および/または防湿性/耐候性の要件が低い床および/または内壁に使用されることが多い。このようなセメント板の例は、米国特許第2020157812号に開示されている。この先行技術のタイプのセメント板における突部および溝の形状は、セメント板の4つの側面全てに沿って協働する突部および溝がある用途には適していない。このタイプの先行技術のセメント板は、2枚のセメント板を機械的に係止するようにさらに適切に設計されており、セメント板を別のセメント板と係合させるために垂直軸を中心としてセメント板を枢動させる必要がある。この形態が適しているのは、一度に1つの縁部のみが係止される場合だけである。
【発明の概要】
【0008】
本発明の第1の態様は、2枚の隣接する繊維セメント板間の各接合部の背後に配置された複数の水平配向梁および/または垂直配向梁を必要とせずに、繊維セメント板の組み立てを容易にするために、セメント板の縁部に沿って突条および溝条を有する壁構造物用の繊維セメント板を提供することである。
【0009】
本発明の第2の態様は、突条および溝条を介して互いに係合された複数の繊維セメント板を有し、そのことにより繊維セメント板を支持するために水平配向梁の必要性を排除する壁構造物を提供することである。
【0010】
本発明の第3の態様は、2枚の隣接するセメント板間の接合部を通って壁構造物内に水が浸入するのを防止するために防水テープを必要としない繊維セメント板を提供することである。
【0011】
これらの態様は、請求項1に記載の繊維セメント板によって少なくとも部分的に実現される。請求項1によれば、繊維セメント板は、離間して配置され、互いに実質的に平行な上縁部および下縁部と、離間して配置され、上縁部および下縁部に対して実質的に垂直な第1の側縁部および第2の側縁部と、内向き面および外向き面とを有する矩形本体を含む。さらに、第1の側縁部および第2の側縁部は、互いに実質的に平行に配置され、上縁部と下縁部とを接続する。さらに、下縁部には溝条が設けられ、上縁部には、隣接する同一の繊維セメント板の下縁部の溝条内に挿入されるように適合された突条が設けられる。また、第1の側縁部には溝条が設けられ、第2の側縁部には、隣接する同一の繊維セメント板の側縁部の溝条内に挿入されるように適合された突条が設けられる。さらに、第1の側縁部の溝条内にシーラントが施される。
【0012】
「突条」という用語は、セメント板の縁部に沿って伸長する形で延びる突部として理解すべきであることに留意されたい。同様に、「溝条」という用語は、セメント板の縁部に沿って延びる溝として理解すべきである。
【0013】
セメント板は壁構造物の一部ではないが、内側および外側という用語は、セメント板が壁構造物の一部になったときに、最初に限定する向きであるので、内向き面および外向き面は、第1の面および第2の面として解釈され得ることにも留意されたい。
【0014】
また、上述したように、セメント板が壁構造物の一部でない場合、上縁部および下縁部は、第1の縁部および第2の縁部とみなすことができる。用語「上部」および「下部」は、セメント板が壁構造物の一部になったときに、最初に実際に限定する部分である。しかしながら、用語「上縁部」および「下縁部」は、当業者にとって請求項をより明確にする用語である。
【0015】
一実施形態では、シーラントは、第1の側縁部の溝条内にのみ施され、下縁部の溝条は、シーラントを有さない。
【0016】
一実施形態では、シーラントは、繊維セメント板を設置する前に除去される剥離片を含む。
【0017】
一実施形態では、シーラントは、ペーストの形態であり、シーラントの寿命の間、本質的に非硬化性であり、シーラントの寿命の間、接着性および弾性を保持する。
【0018】
いくつかの実施形態では、シーラントは、溝条の基部または底部に配置される。いくつかの実施形態では、第1の側縁部の溝条、第2の側縁部の突条、および溝条内のシーラントの載置は、1枚のセメント板の第2の側縁部の突条が隣接するセメント板の第1の側縁部の溝条に挿入されたときに、突条の先端がシーラントに係合するように配置される。いくつかの実施形態では、突条の先端は、シーラントが突条の先端を包み込むように、シーラントに係合する。いくつかの実施形態では、突条の先端がシーラントに係合した後、シーラントは、突条の外側に面する側と内側に面する側の両方に配置される。
【0019】
いくつかの実施形態では、シーラントは、セメント板の内向き面よりもセメント板の外向き面の近くに配置される。いくつかの実施形態では、シーラントの少なくとも一部は、溝の基部とセメント板の外向き面との間にある溝条内の位置に配置される。このようにして、垂直溝内への水の浸入は、溝の基部に達する前に止められる。いくつかの実施形態では、シーラントの少なくとも一部は、セメント板の下縁部に沿った溝条の基部とセメント板の上縁部の突条の先端とを接続する平面と、セメント板の外向き面との間にある溝条内の位置に配置される。このようにして、垂直溝への水の浸入は、セメント板が壁構造物に組み立てられたときに隣接するセメント板の上縁部の突条の先端の外側にある位置で止められ、このことにより、垂直溝への水の浸入が隣接するセメント板の上縁部の突条の先端を確実に越えないようにする。
【0020】
いくつかの実施形態では、第1のセメント板および第2のセメント板の平面に平行な方向に沿った動きによって、第1のセメント板の第2の側縁部の突条が第1のセメント板に隣接する第2のセメント板の第1の側縁部の溝条に挿入され得るように、第1の側縁部の溝条および第2の側縁部の突条が配置される。
【0021】
いくつかの実施形態では、上縁部の突条と第2の側縁部の突条とは同一である。いくつかの実施形態では、下縁部の溝条と第1の側縁部の溝条とは同一である。
【0022】
一実施形態では、外向き面には、外向き面への水の浸入を低減する疎水性コーティングが施される。このようにして、外面が湿気にさらされたときにセメント板が時間の経過に伴って変形するのが防止され得る。繊維セメント板の一方の面が他方の面よりも湿った状態になると、セメント板は、より湿った面に向かって撓むこともあり得る。このことについては、通常のセメント板の場合、セメント板は通常、多数のねじを使用して、基礎となるフレーム構造に固定されるので、問題がない。現行のシステムとは異なり、特定の形態の溝および突部については、撓みを低減すべきである。突部および溝の形状および形態に応じて、セメント板の広範囲の撓みは、突部および/または溝を破損させ、その結果、隣接するセメント板間の接合部の強度を低下させ、および/またはセメント板によって付与される壁構造物の防水性を低下させる可能性がある。
【0023】
一実施形態では、疎水性コーティングは、ローラ、噴霧、浸漬、または別の好適な方法によって塗布される。一実施形態では、疎水性コーティングは、シラン、シロキサン、シリコーン樹脂、ステアリン酸金属塩、疎水性ポリマー、またはこれらの組み合わせのいずれか1つを含む。塗布される疎水性コーティングの特定量は、使用される実際のセメント板の特性に依存する。この量は、湿気にさらされたときにセメント板の許容できない撓みを防止するのに十分な量にすべきである。しかしながら、場合によっては、セメント板は、水蒸気に対して一定の透過性を保持する必要があり、すなわち、セメント板は、「通気性」を維持した状態である必要がある。繊維セメント板の当業者は、所望の特性を提供し、通気性と防水性との間の適切なトレードオフを提供するために、適切な量の適切なコーティングを提供することができる。
【0024】
一実施形態では、繊維セメント板は壁構造物の一部であり、側縁部の溝条および突条は垂直方向に配置され、外向き面は内向き面よりも壁構造物の中心から遠くに配置される。いくつかの実施形態では、壁構造物は、外壁構造物として配置される。いくつかの実施形態では、繊維セメント板の外向き面は、天候にさらされる面として配置される。
【0025】
一実施形態では、繊維セメント板は、厚さ9mmを有し、長さ1500mmおよび幅600mmを有する外向き面を含む。一実施形態では、繊維セメント板は、面縁部を1cm超えて延在する突条を有するので、セメント板の全長は1510mmであり、全幅は610mmである。本明細書において後述するように、他の寸法も可能である。
【0026】
一実施形態では、繊維セメント板の1つまたは複数の寸法は、周囲温度および湿度の変化によって変化し得、シーラントは、2枚の接続された繊維セメント板間の封止を維持するために、伸張および/または圧縮するように適合される。一実施形態では、シーラントは、接着剤が2枚の隣接するセメント板の突条と溝条との間に接着接続部を形成するように、接着特性を有する。一実施形態では、シーラントの接着特性は、高い弾性および高い破断伸び率を有する。このようにして、シーラントはセメント板に取り付けられたままであるが、セメント板の寸法が変化すると容易に伸長する。このようにして、シーラントは、セメント板を結合させるのに大きく寄与するものではない。これは、隣接するセメント板を結合させるための接合強度を目的とした、より従来型の接着剤とは対照的である。一実施形態において、破断点伸び率は、100%超、200%超、または300%超である。一実施形態では、接着剤の強度は低い。一実施形態では、接着剤の強度係数は、1MPa未満、0.5MPa未満、または0.25MPa未満である。
【0027】
一実施形態では、繊維セメント板の長さは、周囲温度および湿度に起因して2mm~4mm減少する場合があり、シーラントは、隣接するセメント板間の封止接触を維持するために伸張するように適合される。
【0028】
本発明の追加の態様によれば、壁構造物が開示される。壁構造物は、垂直方向または水平方向に延在する支持梁列と、梁に取り付けられ、互いに係合された複数の繊維セメント板とを含む。さらに、各繊維セメント板は、第1および第2の垂直配向側縁部と、第1および第2の水平配向縁部と、内向き面および外向き面とを有する。
【0029】
いくつかの実施形態では、壁構造物は、外壁構造物である。いくつかの実施形態では、複数の繊維セメント板の外向き面は、天候にさらされる面として配置される。
【0030】
第1の水平配向縁部には長手方向の溝が設けられ、第2の水平配向縁部には、隣接する同一の繊維セメント板の第1の水平配向縁部の溝条の内側に配置される突条が設けられる。さらに、第1の垂直配向縁部には溝条が設けられ、第2の垂直配向縁部には、隣接する繊維セメント板の第1の垂直配向縁部の溝条の内側に配置される突条が設けられ、シーラントは第1の垂直配向縁部の溝条内に施される。いくつかの実施形態では、シーラントは、第1の垂直配向縁部の溝条の基部または底部に施される。いくつかの実施形態では、シーラントは、隣接する繊維セメント板の第1の垂直配向縁部の溝条の内側に配置された第2の垂直配向縁部の突条の先端を包み込む。
【0031】
いくつかの実施形態では、シーラントの少なくとも一部は、セメント板の内向き面よりもセメント板の外向き面の近くに配置される。いくつかの実施形態では、シーラントの少なくとも一部は、溝の基部とセメント板の外向き面との間にある溝条内の位置に配置される。このようにして、垂直溝内への水の浸入は、溝の基部に達する前に止められる。いくつかの実施形態では、シーラントの少なくとも一部は、セメント板の下縁部に沿った溝条の基部とセメント板の上縁部の突条の先端とを接続する平面と、セメント板の外向き面との間にある溝条内の位置に配置される。このようにして、垂直溝への水の浸入は、隣接するセメント板の上縁部の突条の先端の外側にある位置で止められ、このことにより、垂直溝への水の浸入が隣接するセメント板の上縁部の突条の先端を確実に越えないようにする。
【0032】
一実施形態では、第1の水平配向縁部は、繊維セメント板の下縁部であり、第2の水平縁部は、繊維セメント板の上縁部である。
【0033】
一実施形態では、各繊維セメント板の第1の水平方向に配置された縁部の溝条は、シーラントを有さない。
【0034】
一実施形態では、各繊維セメント板の外向き面には、その面への水の浸入を低減する疎水性コーティングが施される。
【0035】
一実施形態では、複数の繊維セメント板は、水平方向に配向された千鳥配列で配置される。一実施形態では、下側セメント板の垂直に配置された縁部は、上側セメント板の垂直に配置された縁部から水平方向にずらされる。
【0036】
一実施形態では、シーラントは、繊維セメント板を梁に取り付ける前に除去される剥離片を含む。
【0037】
一実施形態では、シーラントは、ペーストの形態であり、シーラントの寿命の間、非硬化性であり、シーラントの寿命の間、接着および弾性を保持する。
【0038】
一実施形態では、繊維セメント板の1つまたは複数の寸法は、周囲温度および湿度の変化によって変化し、シーラントは、2枚の接続された繊維セメント板間の封止を維持するために、伸張および/または圧縮するように適合される。
【0039】
一実施形態では、繊維セメント板の長さは、周囲温度および湿度に起因して少なくとも2mm、少なくとも3mmまたは少なくとも4mm減少する場合があり、シーラントは、隣接するセメント板間の封止接触を維持するために伸張するように適合される。
【0040】
さらに別の態様によれば、壁構造物を形成する方法が提供される。該方法は、垂直方向または水平方向に延在する支持梁列を設けるステップと、複数の繊維セメント板を設けるステップとを含む。各繊維セメント板は、突条が設けられた上縁部と、溝条が設けられた下縁部と、溝条が設けられた第1の垂直配向縁部と、突条が設けられた第2の垂直配向縁部と、第1の垂直配向縁部の溝条の内側に配置されたシーラントとを含む。該方法はさらに、複数の繊維セメント板のうちの第1の繊維セメント板を支持梁のうちの少なくとも1つに取り付けるステップと、複数の繊維セメント板のうちの第2の繊維セメント板の下縁部を第1の繊維セメント板の下縁部と位置合わせし、第2の繊維セメント板を水平方向に摺動させて、第1の繊維セメント板の第2の垂直配向縁部の突条または第2の繊維セメント板の第2の垂直配向縁部の突条を第2のセメント板の第1の垂直配向縁部の溝条または第1の繊維セメント板の第1の垂直配向縁部の溝条に挿入して、シーラントが押し潰されるようにすることによって、第2の繊維セメント板を第1の繊維セメント板と係合させるステップとを含む。
【0041】
一実施形態では、該方法は、複数の繊維セメント板のうちの第3の繊維セメント板を垂直方向下方に摺動させ、第1の繊維セメント板の上縁部の突条を第3の繊維セメント板の下縁部の溝条に嵌め込むことによって、第3の繊維セメント板を第1の繊維セメント板と係合させるステップをさらに含む。
【0042】
一実施形態では、該方法は、複数の繊維セメント板のうちの第4の繊維セメント板を垂直方向下方に摺動させ、第1の繊維セメント板および/または第2の繊維セメント板の上縁部の突条を第4の繊維セメント板の下縁部の溝条に嵌め込み、次いで、第4の繊維セメント板を第3の繊維セメント板に向かって水平方向に摺動させて、第4の繊維セメント板の第2の垂直配向縁部の突条または第3の繊維セメント板の第2の垂直配向縁部の突条を第3の繊維セメント板の第1の垂直配向縁部の溝条または第4の繊維セメント板の第1の垂直配向縁部の溝条に挿入して、シーラントが押し潰されるようにすることによって、第4の繊維セメント板を第1の繊維セメント板および/または第2の繊維セメント板と係合させるステップをさらに含む。
【0043】
一実施形態では、複数の繊維セメント板は、水平方向に配向された千鳥配列で複数の梁に取り付けられる。一実施形態では、複数の繊維セメント板は、上側セメント板の垂直配向縁部が、下側の隣接するセメント板の垂直配向縁部から水平方向にずらされるように配置される。
【0044】
以下では、添付の図面に示す実施形態を参照しながら本発明をより詳細に説明する。図示されている実施形態は、例示目的でのみ使用され、本発明の範囲を限定するために使用されるべきではないことを強調しておく。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】垂直方向に延在する梁列と、梁に取り付けられた複数の繊維セメント板とを有する壁構造物の正面図である。
【
図2】断面線IIーIIに沿った壁構造物の断面図である。
【
図3】断面線III-IIIに沿った壁構造物の断面図である。
【
図4】
図3に示す断面の一部の拡大図であり、隣接する繊維セメント板の側方溝の内側に配置された繊維セメント板の側方突条を示す図である。
【
図5】
図2に示す壁構造物の断面の一部の拡大図であり、隣接する繊維セメント板の長手方向溝の内側に配置された繊維セメント板の長手方向突条を示す図である。
【
図6】組み立て前の互いに離間された
図4の側方溝および長手方向突条と、側方溝の内側に配置されたシーラントとを示す図である。
【
図7】組み立て前の互いに離間された
図5の長手方向溝および長手方向突条を示す図である。
【
図8】一方の繊維セメント板の溝条および他方の繊維セメント板の突条の第1の実施形態の拡大図であり、2枚の繊維セメント板を組み立てる前に溝条の内側にシーラントが配置された状態を示す図である。
【
図9】
図8の実施形態の拡大図であり、2枚の繊維セメント板が組み立てられた状態を示す図である。
【
図10】一方の繊維セメント板の溝条および他方の繊維セメント板の突条の第2の実施形態の拡大図であり、溝条の内側にシーラントが配置された状態を示す図である。
【
図11】
図10の実施形態の拡大図であり、2枚の繊維セメント板が組み立てられた状態を示す図である。
【
図12】壁構造物を形成するために繊維セメント板を支持梁と組み立てる様々な段階を示す図である。
【
図13】壁構造物を形成するために繊維セメント板を支持梁と組み立てる様々な段階を示す図である。
【
図14】壁構造物を形成するために繊維セメント板を支持梁と組み立てる様々な段階を示す図である。
【
図15】壁構造物を形成するために繊維セメント板を支持梁と組み立てる様々な段階を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1を参照すると、本開示の一実施形態に係る壁構造物100が示されている。壁構造物100は、複数の垂直方向に延在する支持梁102と、梁102に取り付けられ、互いに係合された複数の繊維セメント板104とを含む。図示されているように、梁102は、水平方向に配列され、互いに離間して配置される。この実施形態では、梁102の下端106は、表面(例えば、地面)に支持され、地面に当接している。この実施形態において、任意の2本の隣接する梁102間の距離は等しい。しかしながら、隣接する梁102間の距離は異なっていてもよいことが理解されよう。さらに、梁102は、木製梁として示され、企図されているが、梁102は、鋼、鉄など(ただし、これらに限定されない)の任意の他の適切な材料で作られてもよいことが想定され得る。
【0047】
繊維セメント板104は、複数の水平方向に延在する列110に配置される。列110は、梁102の長さに沿って垂直方向に配列される。図示されているように、繊維セメント板104は、異なる列110間に水平方向に配向された千鳥配列で配置される。これらの繊維セメント板104の構造は同様であるので、1枚の繊維セメント板104の構造および構築について説明する。
【0048】
図1~
図3を参照すると、繊維セメント板104(以下、単にセメント板104と称する)は、前面(または外向き面)114、前面114の反対側に配置され、梁102に面して配置された背面(または内向き面)116、および4つの縁部(すなわち、第1の長手方向縁部(または下縁部)120、第1の長手方向縁部120から離間して配置され、第1の長手方向縁部120に実質的に平行に配置された第2の長手方向縁部(または上縁部)122、第1の長手方向縁部120と第2の長手方向縁部122とを接続する第1の側縁部124、および第1の側縁部124から離間して配置され、第1の側縁部124に実質的に平行に配置され、第1の長手方向縁部と第2の長手方向縁部とを接続する第2の側縁部126)を有する矩形本体112を含む。図示されているように、第1の側縁部124および第2の側縁部126は、第1の長手方向縁部120および第2の長手方向縁部122に対して実質的に垂直方向に延在する。セメント板104と梁102との組み立てにおいて、第1の長手方向縁部120および第2の長手方向縁部122は、水平方向に、かつ地面に対して実質的に平行に延在するが、第1の側縁部124、第2の側縁部126は、垂直方向に延在する。図示されているように、セメント板104の第1の長手方向縁部120は、セメント板104の下縁部を画定し、セメント板104の第2の長手方向縁部122は、セメント板104の上縁部を画定する。
【0049】
図2~
図7を参照すると、上縁部122は、本体112から外方に延在し、第1の側縁部124から第2の側縁部126まで延在する突条130(
図5および
図7に最も詳細に示す)を含み、下縁部120は、本体112の内側へ延在する溝条132(
図5および
図7に最も詳細に示す)を含む。溝条132はさらに、第1の側縁部124から第2の側縁部126まで延在する。この実施形態では、突条130は、狭い頂部134と広い下部136とを有する舌状部である。同様に、溝条は、隣接するセメント板104の突条130の狭い頂部134を収容するための狭い基部138と、隣接するセメント板104の突条130の広い下部136を収容するための広い上部139とを含む。
図2~
図7に示されているさねはぎ実施形態の特定の寸法および設計は、概略的に示されているにすぎず、
図8~
図11に示されているさねはぎ実施形態の設計および寸法は、より現実的である。
【0050】
同様に、第1の側縁部124は、本体112の内側へ第2の側縁部126に向かって延在する溝条140(
図4、
図6、
図8、
図9、
図10、および
図11に最も詳細に示されている)を含み、第2の側縁部126は、第1の側縁部124から離れる方向に本体112の外方に延在する突条142(
図4、
図6、
図8、
図9、
図10、および
図11に最も詳細に示されている)を含む。側縁部の溝条140および突条142は共に、梁102に組み付けられた、または取り付けられたときに垂直方向に沿って延在する。また、側縁部の溝条140および突条142は、第1の長手方向縁部120から第2の長手方向縁部122まで延在する。長手方向縁部の溝条132と同様に、側縁部の溝条140は、狭い内側部分144と、広い外側部分146とを含む。同様に、側縁部の突条142は、同じ列に配置された隣接するセメント板104の側縁部の溝条140の狭い内側部分144の内側に挿入されるように適合された狭い外側部分148と、隣接するセメント板104の側縁部の溝条140の広い内側部分146の内側に配置されるように適合された広い内側部分150とを含む。「内側」および「外側」は、セメント板の中心を基準とし、内側はセメント板の中心により近く、外側セメント板の中心からより離れていることに留意されたい。
【0051】
さらに、繊維セメント板104は、側縁部の溝条140の基部に配置されたシーラント160(
図6、
図8、
図9、
図10および
図11に最も詳細に示されている)を含む。シーラント160は、隣接して配置されたセメント板104の側縁部の溝条140と突条142との間に画定された垂直接合部を通って外部から壁構造物100の内部に水または風が通過するのを防止するように適合される。一実施形態では、シーラント160は、経時的に、その弾性および接着性をある程度保持する。したがって、シーラント160は、建築現場へ輸送される前に工場でセメント板104の側縁部の溝条140に塗布される。一実施形態では、シーラント160は、その寿命を通して非硬化性であるペーストの形態である。したがって、シーラント160は、弾性および接着性の特性を保持する。いくつかの実施形態では、シーラント160は、押し潰されたときに活性化される種類のものである。したがって、輸送および保管中に存在するいかなる塵埃もシーラント160に付着せず、シーラント160は、組み立て中に押し潰し作用を受けたときに、初めて接着性を有するようになる。
【0052】
いくつかの実施形態では、シーラント160の約10%は、確実にシーラント160が未硬化状態、粘着性/接着性の状態、および非常に弾性が高い状態を維持することができるように、ポリイソブチレンとエチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)との組み合わせであり得る。シーラント160の大きな弾性により、シーラント160が、雨、熱、および他の天候の影響によって引き起こされる設置繊維セメント板104の移動(最大2.4mm/m)を補償することが可能になる。
【0053】
別の実施形態(図示せず)では、シーラント160が溝条140に塗布された後にシーラント160の外面上に薄い外側「表皮」または膜が形成される。しかしながら、シーラント160は、膜内部では柔らかい状態のままである。シーラント160の外側膜は、輸送および保管中に塵埃をはじく。突条142が溝条140内に挿入されると、外側膜が破れて、軟質シーラント材料を放出する。このようにして、シーラント160は、弾性および接着性を保持する。
【0054】
別の実施形態では、シーラント160の表面に剥離片(図示せず)が設けられ得る。剥離片は、繊維セメント板104を梁102に設置するまたは取り付ける前に、建築現場で除去される。剥離片は、シーラント160を柔らかく、弾性があって、塵埃などがない状態に保つことができる。
【0055】
図1~
図7および
図12~
図15に示す実施形態では、突条142および溝条140は、完全に嵌合する。しかしながら、
図8および
図9に示す別の実施形態では、突条142の高さは、溝条140の深さ未満である。このようにして、突条がシーラントに押し込まれたときにシーラント140が溝条内に広がるためのより多くの余地がある。
【0056】
図10および
図11に示す別の実施形態では、突条142の内側部分150は、溝条140の外側部分146とぴったりと嵌合するように配置され得るが、突条142の外側部分148は、溝条140の内側部分144よりも狭くてもよい。その結果、突条142の狭い外側部分148をシーラント160内に押し込むことができ、溝条140の内側部分144には、突条142を適切に封止するための余地がある。図から、シーラントが突条の先端を包み込み、効果的なシールを形成することが分かる。この場合、シーラントの一部は、突条の内向き面上に配置され、シーラントの一部は、突条の外向き面上に配置される。同時に、溝条の外側部分と突条の内側部分とが互いにぴったりと嵌合して、セメント板の縁部を良好に固定する。
【0057】
下縁部の溝条132はシーラントを有さないことが示されているが、シーラント160と同様の、またはさらには同一のシーラントが、下縁部の溝条132の底部に配置され得ることが理解されよう。
【0058】
この実施形態では、シラン、シロキサン、およびアクリルバインダの組み合わせを含む疎水性コーティングが、工場でローラを介してセメント板の外向き面に塗布される。コーティングは、セメント板の外向き面、すなわち、天候にさらされる面が過剰な湿気を吸収するのを防止する。このことは、壁構造物が外壁構造物である場合のように、セメント板が湿気にさらされたときにセメント板の望ましくない撓みを低減する。
【0059】
疎水性コーティングは、必要な場合もあるが、それほど必要ではない場合もあることに留意されたい。例えば、より乾燥した環境で使用されるセメント板の場合、疎水性コーティングは回避され得る。同様に、セメント板の溝条および突条の形状および配置に応じて、セメント板の撓みは、セメント板を備える壁構造物の完全性に多かれ少なかれ関連し得る。例えば、特定の溝/突起設計において、疎水性コーティングを有さないセメント板は、湿気にさらされたときに非常に撓み、溝/突起は、時間の経過に伴って損傷を受け、壁装材の構造強度および耐候性に影響を及ぼす。しかしながら、他の設計では、セメント板の撓みは、溝/突起に及ぼす損傷作用を小さくすることができる。これらの場合、疎水性コーティングは回避され得る。
【0060】
次に、本発明に係る壁構造物100を形成する方法の一実施形態について説明する。該方法は、垂直方向に延在する梁102の配列を設けるステップを含む。梁102は、梁102が水平方向に配列され、互いに離間して配置されるように設けられる。また、各梁102は、垂直方向に延在する。また、梁102は、梁の下端106が支持面に当接するように位置決めされる。該方法はさらに、複数の繊維セメント板104、例えば、第1の繊維セメント板104a(
図10~
図13に示す)、第2の繊維セメント板104b(
図11~
図13に示す)、第3の繊維セメント板104c(
図12および
図13に示す)、および第4の繊維セメント板104d(
図13に示す)を設けるステップを含む。該方法は、締結具(例えば、ねじ)を介して第1のセメント板104aを梁102のうちの少なくとも1つに取り付けるステップを含む。一実施形態では、
図10に示すように、第1のセメント板104aは、第1のセメント板104aが梁102の配列の左下角に配置され、左端の梁102の幅を完全に覆うように取り付けられる。また、第1のセメント板104aは、第1の長手方向縁部120が水平方向に配向されて第1のセメント板104aの下縁部を画定し、第2の長手方向縁部122が第1のセメント板104aの上縁部を画定し、同様に水平方向に配向されるように、少なくとも1つの梁102に配置される、または取り付けられる。したがって、溝条132は、梁102の下端106に近接して配置され、支持面に面して配置され、突条130は、垂直方向上向きに延在する。
【0061】
同様に、第1の側縁部124は、垂直方向に配向され、梁102に実質的に平行に配置され、第1のセメント板104aの左側縁部を画定し、第2の側縁部126は、同様に垂直方向に配向された第1のセメント板104aの右側縁部を画定する。この実施形態では、長手方向縁部120、122の長さは、側縁部124、126の長さよりも長いことに留意されたい。
【0062】
第1のセメント板104aを取り付けた後、第2のセメント板104bは、第1のセメント板104aと係合され、締結具を使用して1つまたは複数の梁102に取り付けられる。第2のセメント板104bを第1のセメント板104aと係合させるために、
図11に示すように、第2のセメント板104bの第1の側縁部124は、第1のセメント板104aの第2の側縁部126に面して配置され、第1のセメント板104aの第2の側縁部126と位置合わせされる。その後、第1のセメント板104aの第2の側縁部の突条142が第2のセメント板104bの第1の側縁部の溝条140内に挿入されるように、第2のセメント板104bを第1のセメント板104aに向かって摺動させる。第1のセメント板104aの突条142が第2のセメント板104bの溝条140内に挿入されると、第2のセメント板104bの溝条140内に存在するシーラント160が押し出されて(
図9参照)、シーラント160が外側に移動する。このとき、シーラント160は、第2のセメント板104bの溝条140と第1のセメント板104aの突条142との間を外側に向かって流れ、その結果、第2のセメント板104bの溝条140と第1のセメント板104aの突条142との間にシーラント160が配置される。このことにより、第1のセメント板104aと第2のセメント板104bとの垂直方向の接合部がシーラント160によって封止される。このようにして、様々なセメント板104が第1の列110に水平方向に配置される。
【0063】
図では、側縁部の突条はセメント板の右側にあり、側縁部の溝条はセメント板の左側に配置されていることに留意されたい。しかしながら、本発明の範囲内で、その逆の配置がなされてもよい。同様に、建設は図の左下角から開始され、右からセメント板が追加される。しかしながら、セメント板が右下角から開始され、セメント板が左から追加される状況も可能である。
【0064】
さらに、図では、セメント板が、水平方向縁部が垂直方向縁部よりも長い矩形板であることが示されていることに留意されたい。しかしながら、本発明の範囲内で、セメント板は、垂直方向縁部が水平方向縁部よりも長くなるように配置されてもよい。同様に、正方形のセメント板も考えられる。
【0065】
続いて、第3のセメント板104cが第2の列110に配列され、第1のセメント板104aと結合される。そのためには、
図12に示すように、第3のセメント板104cの下縁部120が第1のセメント板104aの上縁部122と位置合わせされ、第3のセメント板104cが垂直方向下方に移動される。このとき、第1のセメント板104aの突条130が第3のセメント板104cの溝条132内に挿入され、そのことにより、第3のセメント板104cが第1のセメント板104aに接続される。図示されているように、第3のセメント板104cは、第3のセメント板104cの第2の側縁部126が第1のセメント板104aの第2の側縁部126からずらして配置されるように、第1のセメント板104aと係合される。このようにして、上側の列の側縁部は、下側の列の側縁部と整列しない。このことにより、壁構造物の強度が向上する。
【0066】
その後、
図13に示すように、第2のセメント板104bを第1のセメント板104aに取り付けるのと同様の方法で、第4のセメント板104dを第3のセメント板104cに取り付ける。また、第4のセメント板104dは、第3のセメント板104cと第1のセメント板104aとの係合と同様の方法で、第1のセメント板104および第2のセメント板104bと係合される。しかしながら、第4のセメント板の下縁部が第1のセメント板/第2のセメント板の頂部と係合するように、第4のセメント板を最初に第1のセメント板/第2のセメント板上に配置することができるという点で、このプロセスは、建築者にとってより容易になり得る。次に、第4のセメント板を左に摺動させて、第4のセメント板の側縁部の溝条を第3のセメント板の側縁部の突条と係合させることができる。このようにして、建築者は、セメント板を正確な位置に保持しなくても、セメント板を所定位置に容易に配置することができる。建築者は、セメント板を所定位置に大まかにセットし、次いで、それを水平方向に摺動させて第3のセメント板と係合させ、次いで、第4のセメント板を支持梁に締結することができる。
【0067】
第2のセメント板104b、第3のセメント板104c、および第4のセメント板104dも、締結具を使用して梁102に取り付けられる。このようにして、様々なセメント板104が梁102および隣接するセメント板104と係合されて壁構造物100が形成される。突条130、142をそれぞれの溝条132、140と係合させることによってセメント板104が互いに係合されるので、壁構造物100内にセメント板104を固定するための水平方向の梁の必要性がなくなる。また、セメント板104の突条130、142および溝条132、140の構成は、縁部120、122、124、126を梁102と位置合わせして、縁部120、122、124、126を梁102と接続するのではなく、任意の位置でセメント板104を梁102と締結することを容易にする。さらに、セメント板104の水平方向に配向された千鳥配列は、垂直方向に配向された接合部を通って壁構造物100の内側に水または風が浸入する可能性を低減することを容易にする。また、先行技術のタイプの壁構造物と比較すると、繊維セメント板104を梁102に取り付ける際に使用される締結具の数は約1/3になる。これは、主に、繊維セメント板104の縁部120、122が、縁部に沿って背面梁および締結具によって支持される必要がないためである。
【0068】
図面および上記の説明は、例示的な実施形態を単純かつ概略的に示したものであることに留意されたい。特定の機械的詳細については、当業者は精通しているはずであり、これらの詳細は上記説明を不必要に複雑にするだけであるので、これらの詳細の多くは示されていない。
【国際調査報告】