(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-19
(54)【発明の名称】アポリポタンパク質EのC末端フラグメント及びγ-セクレターゼ活性の阻害におけるその応用
(51)【国際特許分類】
C07K 14/47 20060101AFI20250212BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20250212BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20250212BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20250212BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20250212BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20250212BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20250212BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20250212BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20250212BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20250212BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20250212BHJP
A61K 35/30 20150101ALI20250212BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20250212BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250212BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20250212BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20250212BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20250212BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20250212BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250212BHJP
C12N 5/0793 20100101ALN20250212BHJP
【FI】
C07K14/47 ZNA
C12N15/12
C12N15/11 Z
C12N15/63 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/867 Z
C12N5/10
A61K38/16
A61K48/00
A61K31/7088
A61K35/76
A61K35/30
A61P25/28
A61P35/00
A61P29/00
A61P11/06
A61P11/00
A61P13/12
A61P43/00 111
C12N5/0793
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024544983
(86)(22)【出願日】2023-01-30
(85)【翻訳文提出日】2024-08-26
(86)【国際出願番号】 CN2023073849
(87)【国際公開番号】W WO2023143610
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】202210113320.2
(32)【優先日】2022-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523427364
【氏名又は名称】斯莱普泰(上海)生物医藥科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】SYNPHATEC (SHANGHAI) BIOPHARMACEUTICAL TECHNOLOGY CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳 椰 林
(72)【発明者】
【氏名】侯 祥 龍
(72)【発明者】
【氏名】耿 泱
(72)【発明者】
【氏名】張 雪 馨
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
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4C087ZC20
4H045AA10
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4H045BA10
4H045CA40
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、アポリポタンパク質E(apolipoprotein E、ApoE)のC末端フラグメント(例えばApoE CT)及び修飾されるApoE2及びγ-セクレターゼ活性の阻害におけるその応用に関する。本発明の一つの様態は、単離されたApoEコンストラクト(ApoE construct)を提供し、それが、ApoEポリペプチドを含み、前記ApoEポリペプチドは:(1)SEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来のフラグメントを含み、当該フラグメントのN末端の最初のアミノ酸残基は、SEQ ID NO:12の215-221位のアミノ酸残基のいずれか一つであり、当該フラグメントのC末端の最末のアミノ酸残基は、SEQ ID NO:12の274-299位のアミノ酸残基のいずれか一つである;あるいは(2)そのアミノ酸配列は、(1)に記載のフラグメントと少なくとも約70%の配列同一性を有し、かつ(1)に記載のフラグメントによるγセクレターゼ切断活性の阻害の少なくとも約50%を保持する。本発明は、さらに、前記ApoEコンストラクトのタンパク質部分のコード配列、核酸コンストラクト、宿主細胞、構築方法、医薬組成物及び用途を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ApoEポリペプチドを含む単離されたApoEコンストラクト。前記ApoEポリペプチドは
(1)SEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来のフラグメントを含み、当該フラグメントのN末端の最初のアミノ酸残基は、SEQ ID NO:12の215-221位のアミノ酸残基のいずれか一つであり、当該フラグメントのC末端の最末のアミノ酸残基は、SEQ ID NO:12の274-299位(好ましくは279-299位)のアミノ酸残基のいずれか一つである;あるいは
(2)そのアミノ酸配列は、(1)に記載のフラグメントと少なくとも約70%の配列同一性を有し、かつ(1)に記載のフラグメントによるγセクレターゼ切断活性の阻害の少なくとも約50%を保持する。
【請求項2】
前記ApoEポリペプチドまたは前記(1)におけるSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来するフラグメントは、以下のいずれか一つの配列を含むことを特徴とする請求項1に記載の単離されたApoEコンストラクト:
(i)SEQ ID NO:12の215-299位アミノ酸残基のアミノ酸配列;
(ii)SEQ ID NO:12の216-299位アミノ酸残基のアミノ酸配列;
(iii)SEQ ID NO:12の217-299位アミノ酸残基のアミノ酸配列;
(iv)SEQ ID NO:12の218-299位アミノ酸残基のアミノ酸配列;
(v)SEQ ID NO:12の219-299位アミノ酸残基のアミノ酸配列;
(vi)SEQ ID NO:12の220-299位アミノ酸残基のアミノ酸配列;
(vii)SEQ ID NO:12の221-299位アミノ酸残基のアミノ酸配列;
(viii)SEQ ID NO:12の216-294位アミノ酸残基のアミノ酸配列;
(ix)SEQ ID NO:12の216-289位アミノ酸残基のアミノ酸配列;
(x)SEQ ID NO:12の219-289位アミノ酸残基のアミノ酸配列;
(xi)SEQ ID NO:12の219-288位アミノ酸残基のアミノ酸配列;
(xii)SEQ ID NO:12の219-287位アミノ酸残基のアミノ酸配列;
(xiii)SEQ ID NO:12の219-286位アミノ酸残基のアミノ酸配列;
(xiv)SEQ ID NO:12の219-285位アミノ酸残基のアミノ酸配列;
(xv)SEQ ID NO:12の219-284位アミノ酸残基のアミノ酸配列;
(xvi)SEQ ID NO:12の219-279位アミノ酸残基のアミノ酸配列;
(xvii)SEQ ID NO:12の219-274位アミノ酸残基のアミノ酸配列;
(xviii)SEQ ID NO:12の220-274位アミノ酸残基のアミノ酸配列;
(xix)SEQ ID NO:12の220-279位アミノ酸残基のアミノ酸配列;または
(xx)SEQ ID NO:12の221-274位アミノ酸残基のアミノ酸配列。
【請求項3】
前記ApoEポリペプチドまたは前記(1)におけるSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来するフラグメントは、SEQ ID NO:13、18-34、78と87中のいずれか一つのアミノ酸配列を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の単離されたApoEコンストラクト。
【請求項4】
前記ApoEポリペプチドまたは前記(1)におけるSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来するフラグメントは、SEQ ID NO:31-34、78と87中のいずれか一つに示されるアミノ酸配列を含むことを特徴とする請求項1-3のいずれか一つに記載の単離されたApoEコンストラクト。
【請求項5】
前記ApoEポリペプチドは、SEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列に対する一つまたは複数のアミノ酸部位の突然変異を含むことを特徴とする請求項1-4のいずれか一つに記載の単離されたApoEコンストラクト:R226、D227、R228、L229、D230、Q235、E238、V239、R240、K242、E244、E245、Q246、A247、Q248、Q249、I250、R251、L252、Q253、A254、E255、Q275、V280、V287、T289、S290、A291、P293、V294、P295、S296、D297、N298、H299、R251+T289、R251+T289+A291、S290+P293+V294+P295+S296+D297+N298+H299、R226+D227+R228+L229+D230、E238+V239+R240+K242、またはE244+E245+Q246+A247+Q248+Q249+I250+R251+L252+Q253+A254。
【請求項6】
前記ApoEポリペプチドは、SEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列に対する一つまたは複数のアミノ酸部位の突然変異を含むことを特徴とする請求項1-5のいずれか一つに記載の単離されたApoEコンストラクト:R226A、D227A、R228A、L229A、D230A、Q235A、E238A、V239A、R240A、K242A、E244del、E245del、Q246del、A247del、Q248del、Q249del、I250del、R251S、L252del、Q253del、A254del、E255A、Q275A、V280A、V287A、T289A、S290A、A291T、P293A、V294A、P295A、S296A、D297A、N298A、H299A、R251A+T289A、R251S+T289A+A291T、S290A+P293A+V294A+P295A+S296A+D297A+N298A+H299A、R226A+D227A+R228A+L229A+D230A、E238A+V239A+R240A+K242A、またはE244del+E245del+Q246del+A247del+Q248del+Q249del+I250del+R251del+L252del+Q253del+A254del。
【請求項7】
前記ApoEポリペプチドは、SEQ ID NO:46-52、57-59、62と76中のいずれか一つのアミノ酸配列を含むことを特徴とする請求項1-6のいずれか一つに記載の単離されたApoEコンストラクト。
【請求項8】
前記ApoEコンストラクトにおけるApoEポリペプチドのN末端は、さらに、SEQ ID NO:12の1-167位または1-205位または1-214位アミノ酸残基のアミノ酸配列を含み、または、SEQ ID NO:12の1-167位または1-205位または1-214位アミノ酸と少なくとも約70%の同一性の配列を有することを特徴とする請求項1-7のいずれか一つに記載の単離されたApoEコンストラクト。
【請求項9】
前記ApoEコンストラクトは、SEQ ID NO:60または61に示されるアミノ酸配列を含むことを特徴とする請求項8に記載の単離されたApoEコンストラクト。
【請求項10】
前記ApoEコンストラクトが、前記ApoEポリペプチドのN末端またはC末端に、さらに、膜透過ペプチドを含むことを特徴とする請求項1-9のいずれか一つに記載の単離されたApoEコンストラクト。
【請求項11】
前記膜透過ペプチドは、SEQ ID NO:35-45、63-65と84-86中のいずれか一つのアミノ酸配列を含むことを特徴とする請求項10に記載の単離されたApoEコンストラクト。
【請求項12】
前記膜透過ペプチドは、SEQ ID NO:63または65に示されるアミノ酸配列を含むことを特徴とする請求項10または11に記載の単離されたApoEコンストラクト。
【請求項13】
前記膜透過ペプチドは、リンカー配列を介して、前記ApoEポリペプチド、または前記のSEQ ID NO:12の1-167位または1-205位または1-214位アミノ酸残基を含むアミノ酸配列、または前記のSEQ ID NO:12の1-167位または1-205位または1-214位アミノ酸と少なくとも約70%の同一性を有する配列に接続することを特徴とする請求項10-12のいずれか一つに記載の単離されたApoEコンストラクト。
【請求項14】
前記ApoEコンストラクトが、前記ApoEポリペプチドのN末端に、さらに、シグナルペプチドを含むことを特徴とする請求項1-13のいずれか一つに記載の単離されたApoEコンストラクト。
【請求項15】
前記シグナルペプチドは、SEQ ID NO:66-68から選ばれるいずれか一つのアミノ酸配列を含むことを特徴とする請求項14に記載の単離されたApoEコンストラクト。
【請求項16】
請求項1-15のいずれか一つに記載の単離されたApoEコンストラクトのタンパク質部分をコードすることを特徴とする単離された核酸。
【請求項17】
請求項16に記載の単離された核酸を含むことを特徴とするベクター。
【請求項18】
前記ベクターは、前記単離された核酸の5’末端にニューロン特異的プロモーターを含有することを特徴とする請求項17に記載のベクター。
【請求項19】
前記ニューロン特異的プロモーターが、シナプシンプロモーター、thy-1プロモーターとカルモジュリン依存性プロテインキナーゼII-αプロモーターから選ばれることを特徴とする請求項18に記載のベクター。
【請求項20】
前記ベクターは、組換えAAVまたはlentivirus発現ベクターであることを特徴とする請求項17-19のいずれか一つに記載のベクター。
【請求項21】
請求項1-15のいずれか一つに記載の単離されたApoEコンストラクトを発現し、請求項16に記載の単離された核酸を含有し、または請求項17-20のいずれか一つに記載のベクターを含有することを特徴とする宿主細胞。
【請求項22】
前記宿主細胞は、ニューロンであることを特徴とする請求項21に記載の宿主細胞。
【請求項23】
(i)請求項1-15のいずれか一つに記載の単離されたApoEコンストラクト、請求項16に記載の単離された核酸、請求項17-20のいずれか一つに記載のベクター、または請求項21または22に記載の宿主細胞;及び(ii)薬学のに許容される担体;を含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項24】
個体のγセクレターゼの切断活性に関連する疾患を治療または予防する医薬品の調製における請求項1-15のいずれか一つに記載の単離されたApoEコンストラクト、請求項16に記載の単離された核酸、請求項17-20のいずれか一つに記載のベクター、請求項21または22に記載の宿主細胞、または請求項23に記載の医薬組成物の用途。
【請求項25】
個体のγセクレターゼの切断活性に関連する疾患を治療または予防する方法、当該方法は、前記個体へ有効投与量の請求項1-15のいずれか一つに記載の単離されたApoEコンストラクト、請求項16に記載の単離された核酸、請求項17-20のいずれか一つに記載のベクター、請求項21または22に記載の宿主細胞、または請求項23に記載の医薬組成物を投与することを含む。
【請求項26】
前記医薬品または方法で、γセクレターゼの切断活性を阻害し、そして前記γセクレターゼの切断活性に関連する疾患を治療または予防することを特徴とする請求項24に記載の用途または25に記載の方法。
【請求項27】
前記疾患は、神経システム退行性疾患、癌症、炎性疾患と腎臓疾患から選ばれることを特徴とする請求項24-26のいずれか一つに記載の用途または方法。
【請求項28】
(i)前記神経システム退行性疾患は、アルツハイマー病およびその関連疾患、アミロイド脳血管疾患、ダウン症候群、加齢に伴うその他の神経変性疾患(前頭側頭型認知症など)から選ばれる;
(ii)前記癌症は、頭頸部がん、乳がん、肝臓がん、膵臓がん、卵巣がん、肺がん、神経膠腫、線維腫、リンパ腫、骨肉腫、胃がん、膀胱がんから選ばれる;
(iii)前記炎性疾患は、喘息、肺炎、気道炎症から選ばれる;及び/又は
(iv)前記腎臓疾患は、急性腎障害、明細胞腎細胞がん、腎線維症、閉塞性腎症から選ばれる;
ことを特徴とする請求項24-27のいずれか一つに記載の用途または方法。
【請求項29】
前記個体は、ヒトであることを特徴とする請求項24-28のいずれか一つに記載の用途または方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この特許出願は、2022年1月30日に出願された中国出願番号CN202210113320.2の優先権を主張し、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
電子配列表への参照
電子配列表(217334 1PCWO.xml;サイズ:92,558 バイト;作成日:2023年1月30日)の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
技術分野
本発明は、アポリポタンパク質E(apolipoprotein E、ApoE)のC末端フラグメント及びγ-セクレターゼ活性の阻害におけるその応用に関する。
【背景技術】
【0004】
γ-セクレターゼは、100種類を超えるI型膜貫通タンパク質の切断酵素であり、さまざまな生物学的プロセスに関与する。T細胞とB細胞の分化異常、血性下痢、皮膚や毛髪の欠損、アルツハイマー病(AD)などはすべて、γ-セクレターゼの異常に関連する。γ-セクレターゼは、NCT、APH1、PEN2、およびプレセニリン1(presenilin1、PS1)またはプレセニリン2(presenilin2、PS2)の4つのタンパク質の複合体である。γ-セクレターゼの酵素活性中心は、PS1またはPS2である。現在、PS1とPS2のさまざまな変異が、ADを引き起こすことが発見され、PS1とPS2は、両方ともADの病原性遺伝子であるため、γ-セクレターゼは、特にADの治療にとって、非常に重要な薬物標的となる。
【0005】
ADは、ヒトで最も一般的な神経変性疾患である。AD患者は、主に、進行性の記憶障害、認知機能障害、性格変化、及び言語障害などの症状を示し、さらにセルフケア能力の喪失に発展し、最終的には死に至る。中国は、世界で最もAD患者の数が多い国である。2019年の時点で、中国には、AD患者が1,000万人以上おり、毎年増加傾向にある。80歳超の人がADになる確率は、40%を超える。さらに、ADの治療費も非常に高額であり、家族や社会に多大な負担を与える。
【0006】
過去数十年で、ADの病因に関する研究は、大きく進歩し、Aβカスケード仮説が提唱された。この仮説は、脳内でのAβの過剰産生と異常な蓄積が、一連の重篤でゆっくりとした病気の最初の原因であり、脳内で一連の異常な生物学的プロセスを引き起こし、ニューロンでのシナプス変性とニューロン死を引き起こすと考えている。脳では、アミロイド前駆体タンパク質(amyloid precursor protein、APP)は、主にニューロンによって発現され、Aβは、βおよびγセクレターゼによるAPPの連続的な切断によって生成され、生成されたAβは、細胞外に放出され、このプロセスはAPPのアミロイド代謝と呼ばれる。通常の生理学的条件下では、脳内で生成されるAβは、ほとんどは可溶性である。しかし、病変が発生すると、脳内に大量のAβが異常に蓄積し、神経細胞の周囲に沈着するアミロイド斑を形成し、ニューロンの損傷を引き起こし、さらに脳組織の不全を引き起こし、最終的にADを引き起こす。さらに、脳血管内でのアミロイドタンパク質の異常な凝集と沈着は、アミロイド脳血管疾患を引き起こす可能性がある。APPは、βおよびγセクレターゼによって切断され、有毒なAβを生成するだけでなく、APPの非アミロイド代謝経路であるαおよびγセクレターゼによっても順番に切断される。α-セクレターゼの切断部位は、Aβの内部に位置するため、α切断産物は、Aβを生成せず、その切断フラグメントはα-CTFと呼ばれ、神経毒性がなく、ADを引き起こしない。α酵素とβ酵素の切断は、互いに競合し、α-セクレターゼの酵素切断が増加すると、Aβの生成が減少する;同様に、γ-セクレターゼの酵素切断が減少すると、Aβの生成が減少し、アミロイド斑の形成が遅くなり、そして最終的には、ADとアミロイド脳血管疾患の発生を遅らせ、さらには予防することさえできる。γ-セクレターゼを標的とするさまざまな薬物が臨床試験で試験される。
【0007】
ApoEは、人体内で広く分泌されるタンパク質であり、脳内のニューロンでAPPと共発現することができる。ヒトApoEには、ApoE2、ApoE3、およびApoE4の3つの異性体がある;それらは、構造と機能において非常に類似し、だいたい3つの機能ドメインに分けられ、受容体結合部位を含むN末端ドメイン、脂質結合部位を含むC末端ドメイン、及び両端のドメインを接続する中央の柔軟なヒンジ領域である。ApoE2、ApoE3、とApoE4は、N末端ドメインの2つのアミノ酸残基が異なるだけであり、C末端ドメインでは完全に同一のアミノ酸配列を有する。中でも、ApoE2には、保護効果があり、ADの発症リスクを軽減できる;ApoE4は、ADの主な危険因子であり、ADのリスクを大幅に高めるだけでなく、ADの発症年齢を大幅に早め、ADの状態を悪化させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これまでのところ、ApoE2とApoE4が、どのようにADのリスクに影響するかはまだ不明である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の内容
一つの様態では、本発明が、単離されたApoEコンストラクトを提供し、それが、ApoEポリペプチドを含み、前記ApoEポリペプチドが:(1)SEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来のフラグメントを含み、当該フラグメント(または当該ApoEポリペプチド)N末端の最初のアミノ酸残基は、SEQ ID NO:12の215-221位のアミノ酸残基のいずれか一つであり、当該フラグメント(または当該ApoEポリペプチド)C末端の最末のアミノ酸残基は、SEQ ID NO:12の274-299位(例えば279-299位)のアミノ酸残基のいずれか一つである;または(2)そのアミノ酸配列が、(1)に記載のフラグメントと少なくとも約70%(例えば少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または以上)の配列同一性を有し、かつ(1)に記載のフラグメントによるγセクレターゼ切断活性の阻害の少なくとも約50%(例えば少なくとも約60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、100%、1.5倍、2倍、5倍、10倍または以上)を保持する。
【0010】
前記単離されたApoEコンストラクトのいずれか一つによる一部の実施形態において、前記ApoEポリペプチドまたは前記(1)におけるSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来するフラグメントは、以下のいずれか一つの配列を含む(またはそれからなる、または基本的にそれからなる):(i)SEQ ID NO:12の215-299位アミノ酸残基的アミノ酸配列;(ii)SEQ ID NO:12の216-299位アミノ酸残基のアミノ酸配列;(iii)SEQ ID NO:12の217-299位アミノ酸残基のアミノ酸配列;(iv)SEQ ID NO:12の218-299位アミノ酸残基のアミノ酸配列;(v)SEQ ID NO:12の219-299位アミノ酸残基のアミノ酸配列;(vi)SEQ ID NO:12の220-299位アミノ酸残基のアミノ酸配列;(vii)SEQ ID NO:12の221-299位アミノ酸残基のアミノ酸配列;(viii)SEQ ID NO:12の216-294位アミノ酸残基のアミノ酸配列;(ix)SEQ ID NO:12の216-289位アミノ酸残基のアミノ酸配列;(x)SEQ ID NO:12の219-289位アミノ酸残基のアミノ酸配列;(xi)SEQ ID NO:12の219-288位アミノ酸残基のアミノ酸配列;(xii)SEQ ID NO:12の219-287位アミノ酸残基のアミノ酸配列;(xiii)SEQ ID NO:12の219-286位アミノ酸残基のアミノ酸配列;(xiv)SEQ ID NO:12の219-285位アミノ酸残基のアミノ酸配列;(xv)SEQ ID NO:12の219-284位アミノ酸残基のアミノ酸配列;(xvi)SEQ ID NO:12の219-279位アミノ酸残基のアミノ酸配列;(xvii)SEQ ID NO:12の219-274位アミノ酸残基のアミノ酸配列;(xviii)SEQ ID NO:12の220-274位アミノ酸残基のアミノ酸配列;(xix)SEQ ID NO:12の220-279位アミノ酸残基のアミノ酸配列;または(xx)SEQ ID NO:12の221-274位アミノ酸残基のアミノ酸配列。
【0011】
前記単離されたApoEコンストラクトのいずれか一つによる一部の実施形態において、前記ApoEポリペプチドまたは前記(1)におけるSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来するフラグメントは、SEQ ID NO:13、18-34、78と87中のいずれか一つのアミノ酸配列を含む(またはそれからなる、または基本的にそれからなる)。一部の実施形態において、前記ApoEポリペプチドまたは前記(1)におけるSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来するフラグメントは、SEQ ID NO:31-34、78と87中のいずれか一つに示されるアミノ酸配列(例えばSEQ ID NO:33)を含む(またはそれからなる、または基本的にそれからなる)。
【0012】
前記単離されたApoEコンストラクトのいずれか一つによる一部の実施形態において、前記ApoEポリペプチドは、SEQ ID NO:13、18-34、78と87中のいずれか一つのアミノ酸配列と、少なくとも約70%(例えば少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または以上)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む(またはそれからなる、または基本的にそれからなる)。一部の実施形態において、前記ApoEポリペプチドは、ヒト以外の霊長類の配列、例えば、SEQ ID NO:13、18-34、78と87中のいずれか一つのアミノ酸配列と相同性が高く保存された配列を含有する。
【0013】
前記単離されたApoEコンストラクトのいずれか一つによる一部の実施形態において、前記ApoEポリペプチドは、SEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列に対する一つまたは複数のアミノ酸部位の突然変異(例えば挿入、欠失または置換)を含む:R226、D227、R228、L229、D230、Q235、E238、V239、R240、K242、E244、E245、Q246、A247、Q248、Q249、I250、R251、L252、Q253、A254、E255、Q275、V280、V287、T289、S290、A291、P293、V294、P295、S296、D297、N298、H299、R251+T289、R251+T289+A291、S290+P293+V294+P295+S296+D297+N298+H299、R226+D227+R228+L229+D230、E238+V239+R240+K242、またはE244+E245+Q246+A247+Q248+Q249+I250+R251+L252+Q253+A254。一部の実施形態において、前記ApoEポリペプチドは、SEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列に対する一つまたは複数のアミノ酸部位の突然変異を含む:R226A、D227A、R228A、L229A、D230A、Q235A、E238A、V239A、R240A、K242A、E244del、E245del、Q246del、A247del、Q248del、Q249del、I250del、R251S、L252del、Q253del、A254del、E255A、Q275A、V280A、V287A、T289A、S290A、A291T、P293A、V294A、P295A、S296A、D297A、N298A、H299A、R251A+T289A、R251S+T289A+A291T、S290A+P293A+V294A+P295A+S296A+D297A+N298A+H299A、R226A+D227A+R228A+L229A+D230A、E238A+V239A+R240A+K242A、またはE244del+E245del+Q246del+A247del+Q248del+Q249del+I250del+R251del+L252del+Q253del+A254del。
【0014】
前記単離されたApoEコンストラクトのいずれか一つによる一部の実施形態において、前記ApoEポリペプチドは、SEQ ID NO:46-52、57-59、62と76中のいずれか一つのアミノ酸配列を含む(またはそれからなる、または基本的にそれからなる)。
【0015】
前記単離されたApoEコンストラクトのいずれか一つによる一部の実施形態において、前記ApoEコンストラクトにおけるApoEポリペプチドのN末端は、さらにSEQ ID NO:12の1-167位または1-205位または1-214位アミノ酸残基のアミノ酸配列、または、SEQ ID NO:12の1-167位または1-205位または1-214位アミノ酸と少なくとも約70%(例えば少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または以上)の同一性を有する配列を含む。一部の実施形態において、前記ApoEコンストラクトは、SEQ ID NO:60または61に示されるアミノ酸配列を含む(またはそれからなる、または基本的にそれからなる)。
【0016】
前記単離されたApoEコンストラクトのいずれか一つによる一部の実施形態において、前記ApoEコンストラクトにおける前記ApoEポリペプチドのN末端またはC末端は、さらに膜透過ペプチドを含む。一部の実施形態において、前記膜透過ペプチドは、SEQ ID NO:35-45、63-65と84-86中のいずれか一つのアミノ酸配列を含み(またはそれからなり、または基本的にそれからなり)、例えば、SEQ ID NO:63または65に示されるアミノ酸配列を含む(またはそれからなる、または基本的にそれからなる)。一部の実施形態において、前記膜透過ペプチド(例えばC末端)は、前記ApoEポリペプチド(例えばN末端)に、または、前記SEQ ID NO:12の1-167位または1-205位または1-214位アミノ酸残基を含むアミノ酸配列(例えばN末端)に、または前記SEQ ID NO:12の1-167位または1-205位または1-214位アミノ酸と少なくとも約70%の同一性を有する配列(例えばN末端)に、リンカー配列を介して接続される。
【0017】
前記単離されたApoEコンストラクトのいずれか一つによる一部の実施形態において、前記ApoEコンストラクトにおける前記ApoEポリペプチドのN末端は、さらにシグナルペプチドを含む。一部の実施形態において、前記シグナルペプチドは、SEQ ID NO:66-68に示されるいずれか一つのアミノ酸配列を含む(またはそれからなる、または基本的にそれからなる)。
【0018】
もう一つの態様では、本発明は、単離されたApoEコンストラクトを提供し、当該単離されたApoEコンストラクトは、エレメント(1):膜透過ペプチド、及び、エレメント(2):ApoE2の全長配列(例えばSEQ ID NO:12)またはApoE3の全長配列(例えばSEQ ID NO:89)または少なくともSEQ ID NO:12の221-274位アミノ酸残基を含むフラグメントを含む;ただし、前記エレメント(1)とエレメント(2)の間に、ペプチド結合を介して直接に接続し、またはリンカー配列を介して接続する。一部の実施形態において、前記膜透過ペプチドは、SEQ ID NO:35-45、63-65と84-86中のいずれか一つのアミノ酸配列から選ばれ、例えばSEQ ID NO:63または65に示されるアミノ酸配列である。一部の実施形態において、エレメント(2)に記載の少なくともSEQ ID NO:12の221-274位アミノ酸残基を含むフラグメントは、本発明に記載のいずれか一つのSEQ ID NO:12の221-274位アミノ酸残基を含むApoEポリペプチドから選ばれる。一部の実施の形態において、エレメント(2)に記載の少なくともSEQ ID NO:12の221-274位アミノ酸残基を含むフラグメントのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:13、18-34と78中のいずれか一つに示される。一部の実施の形態において、エレメント(2)に記載の少なくともSEQ ID NO:12の221-274位アミノ酸残基を含むフラグメントは、ApoE2のN末端ドメイン(SEQ ID NO:12の1-167位アミノ酸残基)、ヒンジ領域(SEQ ID NO:12の168-205位アミノ酸残基)、及びC末端少なくともSEQ ID NO:12の221-274位アミノ酸残基を含むフラグメントを含む。一部の実施形態において、前記エレメント(2)は、以下のいずれか一つの配列含む:SEQ ID NO:12の1-274位、1-279位、1-280位、1-281位、1-282位、1-283位、1-284位、1-285位、1-286位、1-287位、1-288位、1-289位、1-290位、1-291位、1-292位、1-293位、1-294位、1-295位、1-296位、1-297位、1-298位、または1-299位アミノ酸残基。
【0019】
本発明は、さらに、以上のいずれか一つに記載の単離されたApoEコンストラクトのタンパク質部分をコードする単離された核酸とベクター(例えばクローニングベクターまたは発現ベクター)、及び以上のいずれか一つに記載の単離されたApoEコンストラクトのタンパク質部分を発現する宿主細胞、または当該核酸またはベクターを含む宿主細胞を提供する。一部の実施形態において、前記ベクターが、前記単離された核酸の5’末端に、ニューロン特異的プロモーターを有する。一部の実施形態において、前記ニューロン特異的プロモーターが、シナプシンプロモーター、thy-1プロモーターとカルモジュリン依存性プロテインキナーゼII-αプロモーターから選ばれる。一部の実施形態において、前記ベクターは、組換えAAVまたはlentivirus発現ベクターである。一部の実施形態において、前記宿主細胞は、ニューロン(例えばヒトニューロン、ヒト以外の霊長類ニューロン、またはげっ歯類ニューロン)である。一部の実施形態において、前記ApoEコンストラクトは、ApoE2(例えばSEQ ID NO:12)またはApoE3(例えばSEQ ID NO:89)の全長アミノ酸配列を含む(またはそれからなる、または基本的にそれからなる)。
【0020】
本発明は、さらに、(i)本明細書のいずれか一つの実施形態に記載の単離されたApoEコンストラクト、単離された核酸、ベクター、または宿主細胞、及び(ii)薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0021】
本発明は、さらに、個体(例えばヒト)のγセクレターゼの切断活性に関連する疾患を治療または予防する医薬品の調製における本明細書のいずれか一つの実施形態に記載の単離されたApoEコンストラクト、単離された核酸、ベクター、宿主細胞または医薬組成物の応用を提供する。本発明は、さらに、個体(例えばヒト)のγセクレターゼの切断活性に関連する疾患を治療または予防する方法を提供し、当該方法は、前記個体へ有効投与量の本明細書のいずれか一つの実施形態に記載の単離されたApoEコンストラクト、単離された核酸、ベクター、宿主細胞または医薬組成物を投与することを含む。一部の実施形態において、前記医薬品または方法が、γセクレターゼの切断活性を阻害し、そして前記γセクレターゼの切断活性に関連する疾患を治療または予防する。一つまたは複数の実施形態では、前記疾患は、神経変性疾患、腫瘍またはがん、炎症性疾患、及び腎臓疾患から選ばれる。一つまたは複数の実施形態では、前記疾患は、アルツハイマー病およびその関連疾患、アミロイド脳血管疾患、ダウン症候群、加齢に伴うその他の神経変性疾患(前頭側頭型認知症など)、頭頸部がん(例えば頭頸部扁平上皮がんと口腔扁平上皮がん)、乳がん、肝臓がん、膵臓がん(転移性膵臓がんを含む)、卵巣がん、肺がん(例えば非小細胞肺がん、肺腺がんと小細胞肺がん)、神経膠腫(例えば悪性神経膠腫)、線維腫、リンパ腫(例えばB細胞リンパ腫)、骨肉腫、胃がん、膀胱がん、喘息(例えばアレルギー性喘息)、肺炎、気道炎症、急性腎障害、明細胞腎細胞がん、腎線維症、閉塞性腎症から選ばれる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1:ApoEは、そのC末端フラグメント(ApoE CT)によって、APPのアミロイド代謝を弱化し、その非アミロイド代謝物(α-CTF)を増加する。パネルAとB:HEK293T細胞におけるApoE2とApoE3の過剰発現は、非アミロイド代謝経路(α切断)によって共発現されたAPPから産生されるα-CTFを大幅に増加することができるが、ApoE4が増加することができない。統計結果は、パネルBに示し、N=8、pairedあるいはone sample t-testである。パネルC:一過性トランスフェクションによる過剰発現ApoE2は、共発現されたAPPから生成される総Aβ40を減少させ、N=8、pairedあるいはone sample t-testである。パネルDとE:免疫ブロット実験が、ApoE CTの過剰発現は、共発現されたAPPから生成されるα-CTFを増加するが、ApoE2またはApoE4のN末端フラグメント(ApoE2 NT、ApoE4 NT)の過剰発現は、α-CTFの産生を変化しないことを表し、統計結果は、パネルEに示し、N=8、pairedあるいはone sample t-testである。パネルFとG:ApoE CTの過剰発現が、APPから生成されるAβ40とAβ42を低下するが、ApoE2 NT、ApoE3 NTあるいはApoE4 NTの過剰発現が、いずれもAβを変化させなく、N=5、one sample t-testである。パネルA-G:HEK 293T細胞。パネルH:マウスの大脳皮質と海馬の初代培養ニューロンにおいて、レンチウイルス(lentivirus)発現システムを使用して発現されたApoE CTは、ニューロンにおけるAβ40の内因性産生を減少させることができる。プロモーターは、hSynである。N=7、one sample t-test。パネルI:レンチウイルスを使用して多能性幹細胞株から誘導されたヒトニューロンで発現されたApoE CTも、ニューロンによって産生される内因性Aβ40を減少させることができる。プロモーターは、hSynであり、N=5、unpaired t-test。Western Blotによってタンパク質APP、α-CTFとApoEを検出し、ELISAによってAβを検出する。
【
図2】
図2:培地中のApoE2とApoE CTは、細胞におけるAPPの非アミロイド代謝産物を増加させることができない。パネルA:免疫ブロット実験によって培地に含まれるApoE2とApoE CTタンパク質を検出する。パネルBとC:ApoE2またはApoE CTタンパク質を含む細胞培養培地との共インキュベーションは、細胞におけるAPPから生成されるα-CTFを変化させなく、統計結果は、パネルCに示し、N=9、one sample t-testである。パネルD:免疫蛍光実験により、HEK 293T細胞を、ApoE2またはApoE CTタンパク質を含む細胞培地と共インキュベートした後、細胞内で大量のApoE2またはApoE CTタンパク質が検出されなく、個々の細胞の表面にはごく一部しか付着していないことが示された。リポソームを使用して、HEK 293T細胞に一過的にトランスフェクトして発現されたApoE CTは、細胞内に大量に存在する。パネルE:免疫蛍光実験により、ApoE2またはApoE CTタンパク質を含む培地と共インキュベートした後、マウスの初代培養ニューロンでは、大量のApoE2またはApoE CT タンパク質が検出されなく、ApoEのごく一部だけが、個々のニューロンの表面に付着することが示された。レンチウイルスによって発現させたApoE CTは、ニューロン中に大量に存在する。MAP2でニューロンをラベルし、DAPIで核をラベルする。
【
図3】
図3:ApoE CTが、Aβのコア配列を減少させる。パネルA、BとC:HEK 293T細胞におけるAPPによるAβ産生に対する、異なるApoE CT突然変異体の過剰発現の影響。パネルA:CT NA1/2/3/4//5:ApoE CTのN末端に、ApoEに元々存在する1、2、3、4または5個のアミノ酸残基を挿入する。CT ND3/4:ApoE CTのN末端から3または4個のアミノ酸残基を削除する。CT CD5/10:ApoE CTのC末端から5または10個のアミノ酸残基を削除する。ELISAによって、Aβ40に対する異なるApoE CT突然変異体の影響を測定した。パネルB:CT ND1/2//5:ApoE CTのN末端から1、2または5個のアミノ酸残基を削除する。ELISAによって、Aβ40に対する異なるApoE CT突然変異体の影響を測定した。パネルC:CT ND3CD10/11/12/13/14/15/20/25:ApoE CTのN末端から3個のアミノ酸残基を削除するとともに、C末端から10、11、12、13、14、15、20または25個のアミノ酸を削除する。ELISAによって、Aβ40に対する異なるApoE CT突然変異体の影響を測定した。N=5(パネルAとB)または7(パネルC)、one sample t-test。
【
図4】
図4:ApoE CTがAPPセクレターゼの発現量を変えない。パネルA:ApoE CTが、APP代謝酵素mRNAの発現に影響を与えない。パネルB:ApoE CTが、APP代謝酵素mRNAのタンパク質発現量に影響を与えない。ADAM10:APPのαセクレターゼ;BACE1:APPのβセクレターゼ;PS1とPS2:γセクレターゼのコア活性サブユニットタンパク質。qRT-PCRとWestern Blotを使用して、それぞれにmRNAとタンパク質のレベルを検出した。GFPを発現する細胞は、陰性コントロールである。N=9、one sample t-test。
【
図5】
図5:ApoE CTは、APP切断に対するγ-セクレターゼ阻害剤の効果をシミュレートし、β-CTFのγ切断を阻害する。パネルAとB:γセクレターゼ活性中心タンパク質PS1の過剰発現が、α-CTFの産生を低下することができるが、ApoE CTの発現あるいは1μM PF03084014(γセクレターゼ阻害剤)での処理は、どちらもα-CTFの産生を増加する。統計結果は、パネルBに示し、N=11、pairedあるいはone sample t-testである。パネルCとD:ApoE CTの過剰発現が、β-CTFが産生するAβ40(N=4)とAβ42(N=6)を阻害することができ、one sample t-test。パネルE:ApoE CTの過剰発現が、APP
ΔAICDのβ切断によって生成されるAβ40に影響を与えない。Western Blotでタンパク質を検出し、ELISAでAβを検出する。
【
図6】
図6:ApoE CTが、APPの切断の必要とするγセクレターゼの存在に影響を与える。パネルAとD:γセクレターゼ活性中心タンパク質PS1とPS2がノックアウトされたHEK 293T細胞では(PS1/2 dKO)、α-CTFが大量に増加し、この場合、ApoE CTの過剰発現が、α-CTFをさらに増加させなく、統計結果は、パネルD(GFP1を付いた二つの柱)に示される。パネルB、CとD:PS1あるいはPS2の発現を補充したPS1/2 dKO細胞では、ApoE CTの過剰発現が、もう一度α-CTFを増加し、統計結果は、パネルDに示され、N=8、paired t-test。パネルE:PS2の発現を補充したPS1/2 dKO細胞では、ApoE CTの過剰発現は、APPから産生するAβ40を低減し、N=4、one sample t-test。Western Blotでタンパク質を検出し、ELISAでAβ40を検出する。
【
図7】
図7:体外で精製されたApoE2が、濃度依存の方式でAPPのγ切断を直接に阻害する。パネルA:免疫ブロットでは、単離精製されたβ-CTF、ApoE2、ApoE2 NT、PS1、NCT、PEN2とGFPを示す。パネルB:精製システムでは、γセクレターゼがβ-CTFを切断して、Aβ40を産生する反応は、10μM PF03084014(γセクレターゼ阻害剤)に阻害され、N=3、paired t-tests。パネルC:精製されたApoE2が、投与量依存の方式で、γセクレターゼによるβ-CTFの切断を阻害し、Aβ40の産生を低減する。ApoE2の半数阻害濃度は、約1.2μMであり、N=3。パネルD:精製されたApoE2は、β-CTFのγ切断によって生成されるAβ40を阻害できるが、ApoE2 NTは、γセクレターゼによるβ-CTFの切断を阻害できなく、N=3、paired t-tests。Western Blotでタンパク質を検出し、ELISAでAβ40を検出する。
【
図8】
図8:ApoE CTが、APLP1のγ切断を阻害しない。1μM PF03084014(γセクレターゼ阻害剤)が、HEK 293T細胞において外因的に発現されたAPLP1のγ切断を阻害し、APLP1のα切断により産生されたα-like CTFを増多する;しかし、ApoE CTが、APLP1により産生されたα-like CTFを増多しない。
【
図9】
図9:ニューロンにおけるApoE CTの過剰発現が、5xFADマウスモデルの脳のアミロイド斑を低減する。パネルA:5xFADマウスモデルsubiculum領域アミロイド斑(THSのマーク)とApoE CTあるいはGFPの共染色の代表的な画像。5xFADマウスでは、アデノ随伴ウイルス(AAV)発現システムを使用し、ニューロンにApoE CTを発現し(1ヶ月齢で注射、7ヶ月齢で解析)、GFPをコントロールとし、プロモーターはhSyn(ヒトシナプシン、human synapsin)である。ポリペプチドをコードする核酸配列の前には、シグナルペプチドをコードする配列が存在する。統計結果は、パネルB、C、DとEに示される。パネルB:ApoE CTを発現するマウスのsubiculum領域には、アミロイド斑(plaque)あたりの平均面積はより小さく(パネルB)、平均蛍光強度はより弱く(パネルC)、総面積に占める割合はより少なく(パネルD)、斑の密度もより低い(パネルE)。THSで、アミロイド斑をマークする。N=33、unpaired t-test。
【
図10】
図10:ニューロンに発現されたApoE2は、マウスニューロンに内因的に産生されたAβ40を阻害する。パネルA:マウスの初代培養ニューロンに、レンチウイルス発現システム(lenti-virus)によって発現されたApoE2は、マウスニューロン(mouse neurons)に産生された内因的なAβ40を低下し、GFPをコントロールとする。N=7、paired t-test。パネルB:野生型マウス(WT mouse)の脳に、AAVによって発現されたApoE2が、マウス脳中の内因的なAβ40を低下し、GFPをコントロールとする。N=5、unpaired t-test。hsynプロモーターを使用し、ニューロン特異的な発現を確保する。ELISAでAβを検出する。
【
図11】
図11:両端にタグタンパク質を挿入したApoE2またはApoE CTが、依然としてAPP切断を制御する活性を有する。パネルAとB:HEK 293T細胞に、タグタンパク質V5を含有するApoE2-V5(C末端にタグタンパク質を挿入する)の過剰発現とV5-ApoE2(N末端にタグタンパク質を挿入する)は、どちらも著しくAPPから産生されたα-CTFを増加する。統計結果は、パネルBに示される。N=6、one sample t-test。パネルCとD:HEK 293T細胞に、タグタンパク質V5をApoE CTのC末端あるいはN末端に挿入したApoE CT-V5とV5-ApoE CTの過剰発現は、どちらもAPPから産生されたα-CTFを著しく増加し、統計結果は、パネルDに示される。N=6、one sample t-test。Western BlotでAPP及びその切断フラグメントを検出する。
【
図12】
図12:ApoE CTの突然変異は、依然としAPPの切断を制御することができる。パネルAとB:HEK 293T細胞におけるApoE CT、ApoE CTの単一または二重部位の突然変異としてのCT A20、CT A40、CT A60、CT A65、CT A72、CT A80とCT A36/74の過剰発現は、どちらもα-CTFを著しく増加する。統計結果は、パネルBに示される。N=6、one sample t-test。パネルCとD:HEK 293T細胞における多重部位突然変異としてのCT R10、CT LF5とCT LM5の過剰発現は、ApoE CTと同様に、α-CTFを著しく増加する;しかしながら、CT E5、CT E10、CT E20とCT F5は、α-CTFの活性を増加する機能を失う。統計結果は、パネルDに示される。N=4、one sample t-test。Western Blotでタンパク質を検出する。
【
図13】
図13:ApoE2内にアミノ酸配列を挿入あるいは削除しても、ApoE2は、依然としてAPPの代謝を制御することができる。パネルA:HEK 293T細胞にAPPと共発現するApoE2-M3Fは、α-CTFを増加する。パネルB:HEK 293T細胞にAPPと共発現するApoE2 MD10は、α-CTFを増加する。
【
図14】
図14:非ヒト由来のApoE CTも、APPの切断を制御する。パネルAとB:HEK 293T細胞に、ヒト由来のApoE CT配列と非常に類似するヒト以外の霊長類由来のApoE CTの過剰発現は、α-CTFを著しく増加し、かつ、その活性は、ヒト由来のApoE CTの活性と同じである。統計結果は、パネルBに示される。N=6、one sample t-test。Western Blotでタンパク質を検出する。ヒト由来とサル由来のApoE CT配列のアライメントは、パネルCに示される。
【
図15】
図15:膜透過ペプチドに接続するApoEは、依然として、APP切断を制御する活性を有する。パネルAとB:HEK 293T細胞に、APPが、R9-ApoE2、FGF4-ApoE2あるいはRDP-ApoE2と共発現し、GFPを陰性コントロールグループとする。R9-ApoE2とRDP-ApoE2の共発現は、α-CTFを著しく増加する。統計結果は、パネルBに示される。N=5、one sample t-test。Western Blotでタンパク質を検出する。
【
図16】
図16:細胞に発現するApoE CTは、APP切断を制御する活性を持つために、シグナルペプチドに接続する必要がある。パネルAとB:HEK 293T細胞に、N末端にアポリポタンパク質A1シグナルペプチドと接続するApoE CT突然変異体(ASP CT)とアポリポタンパク質Jシグナルペプチドを含有するApoE CT突然変異体(JSP CT)の過剰発現は、依然として、α-CTFを著しく増加する。細胞にシグナルペプチドに接続しないNSP CTの発現は、APPの切断を制御してα-CTFを増加することができない。統計結果は、パネルBに示される。N=6、one sample t-test。Western Blotでタンパク質を検出する。
【
図17】
図17:ApoE2は、そのC末端領域によって、α-CTFを増加し、Aβの産生を低減する。パネルA:ヒト(上)またはサル(下)皮質にApoEとNeuN(ニューロンマーカー)の共免疫蛍光染色の代表的な画像。矢印は、ApoE陽性ニューロンを表す。パネルB:ヒトの脳皮質にApoEとAPPの共免疫蛍光染色の代表的な画像。パネルCとD:APPが、GFP、ApoE2、ApoE3またはApoE4と一過性共発現するN2A細胞中の全長APP(FL-APP)、α-CTFとApoEシグナルのWestern blot、及び対応する統計解析。N=8、one sample t-test。パネルE:APP、BACE1が、GFP、ApoE2、ApoE3またはApoE4と一過性共発現するHEK 293T細胞中のAβ40の正規化統計解析。N=8、one sample t-test。パネルFとG:APPが、GFP、ApoE CT、ApoE2 NTまたはApoE4 NTと一過性共発現するN2A細胞中の全長APP(FL-APP)、α-CTFとApoEシグナルのWestern blot、及び対応する統計解析。N=8、one sample t-test。パネルH:APP、BACE1が、GFP、ApoE CTと一過性共発現するN2A細胞中のAβ40の正規化統計解析。N=4、one sample t-test。パネルIとJ:APPが、GFP、ApoE2またはApoE CTと一過性共発現するN2A細胞中の全長APP(FL-APP)、α-CTFとApoEシグナルのWestern blot、及び対応する統計解析。N=6、one sample t-test。パネルK:レンチウイルスシステムを使用してGFPあるいはApoE CTを一過性発現するマウス皮質(cortical neurons)あるいは(hippocampal neurons)ニューロン中のAβ40正規化統計解析。プロモーターは、hSynである。N=7、one sample t-test。パネルL:レンチウイルスシステムを使用してGFPあるいはApoE CTを一過性発現するヒト由来多能干細胞に誘導されるニューロン(human neurons)中のAβ40正規化統計解析。プロモーターは、hSynである。N=5、unpaired t-test。
【
図18】
図18:ApoE CTが、APP及びγセクレターゼと相互作用する。パネルA:APP-FLAGが、GFP、ApoE2あるいはApoE CTと一過性共発現するN2A細胞にApoEとAPPの免疫蛍光染色の代表的な画像。パネルB:GFP、ApoE2-V5あるいはApoE CT-V5を一過性発現する初代培養ニューロンにApoEと内因的に発現されたAPPの免疫蛍光染色の代表的な画像。パネルC:ApoE CT-V5を一過性発現するヒト由来多能干細胞に誘導されるニューロンにApoE CTと内因的に発現されたAPPの免疫蛍光染色の代表的な画像。MAP2染色で、ニューロンを表し、DAPI染色で細胞核を表す。パネルD:免疫ブロットで、HEK 293T細胞で共発現されたAPP-APEX2ラベルされたApoE2を検出する。パネルE:免疫ブロットで、HEK 293T細胞で共発現されたAPP-APEX2ラベルされたApoE CTを検出する。パネルF:免疫ブロットで、HEK 293T細胞で共発現されたApoE2-APEX2ラベルされたAPPを検出する。パネルG:免疫ブロットで、マウスニューロン細胞で発現されたApoE-APEX2ラベルされたニューロン中に内因的に発現されたAPPと陰性コントロールCOX2。パネルH:免疫ブロットで、HEK 293T細胞で、それぞれにADAM10、BACE1、PS1あるいはPS2と一過性共発現したApoE2-APEX2ラベルされたADAM10、BACE1、PS1とPS2を検出する。パネルI:免疫共沈降で、HEK 293T細胞で、それぞれに、ApoE2、ApoE2 NTあるいはApoE CTと一過性共発現したβ-CTF-FLAG相互作用のApoEを検出する。パネルJ:免疫共沈降で、HEK 293T細胞で、それぞれに、ApoE2、ApoE2 NTあるいはApoE CTと一過性共発現したγセクレターゼ(HA-APH、V5-NCT、FLAG-PEN2)相互作用のApoEを検出する。パネルK:免疫共沈降で、ヒトの脳組織中の内因的なγセクレターゼ(NCT、PS1、PS2 とPEN2)と内因的なApoEの相互作用を検出する。
【
図19】
図19:ApoE CTが、APPのγ切断を阻害することで、α-CTFを増加し、Aβを低減する。パネルAとB:免疫ブロットで、HEK 293T細胞で、下記のものの発現あるいは医薬品による処理の条件下で、APPからα-CTFを産生する状況を検出・統計解析した:APPとGFPの一過性発現(バンド1);APPとPS1の共発現の場合、1マイクロモルのγセクレターゼ阻害剤PF03084014での処理が有る/無い(バンド2、バンド3);APP、PS1とApoE CTの共発現(バンド4)。N=11。パネルCとD、免疫ブロットで、1マイクロモルのγセクレターゼ阻害剤であるPF03084014で処理した場合、HEK293T細胞におけるAPP共発現によるα-CTF生成に対するGFPまたはApoE CTの影響を検出・統計解析し、コントロールグループでは、阻害剤での処理を行わなかった。N=7。パネルE:ELISAで、それぞれにβ-CTFとGFPまたはApoE CTを一過性共発現したHEK 293T細胞に産生されたAβ40を検出した。N=4。パネルF:ELISAで、それぞれにβ-CTFとGFPまたはApoE CTを一過性共発現したHEK 293T細胞に産生されたAβ40を検出した。N=6。パネルGとパネルH:ELISAでAPP
ΔAICDとGFPあるいはApoE CTが、それぞれに共発現されたHEK 293Tに産生されたAβ40を検出した結果を示す。パネルG、細胞培地。パネルH、細胞溶解液。パネルB、D、E、F、GとH、one sample t-test。
【
図20】
図20:ApoE CTがAPP代謝を制御するにはγセクレターゼが必要である。パネルA:免疫ブロットで、野生型(WT)、PS1あるいはPS2シングルノックアウト(PS1 KO、PS2 KO)、PS1とPS2ダブルノックアウト(PS1/2 dKO)のHEK 293T細胞系におけるPS1とPS2のタンパク質発現を検出した。パネルB:野生型HEK 293T細胞系におけるAPPの発現(バンド1);PS1シングルノックアウトHEK 293T細胞系におけるAPPの発現(バンド2);1マイクロモルのγセクレターゼ阻害剤PF03084014で処理されたPS1シングルノックアウトHEK 293T細胞系におけるAPPの発現(バンド3);PS1シングルノックアウトHEK 293T細胞系におけるAPPとPS1の共発現(バンド4)。免疫ブロットで、異なる条件での細胞のα-CTFの含量を検出した。パネルCとD:それぞれに野生型(WT)とPS1シングルノックアウト(PS1 KO)のHEK 293T細胞系中に、免疫ブロットで、共発現APPの切断により産生されたα-CTFに対するApoE CTの影響を検出と統計解析し、GFPをコントロールとした。N=9。パネルEとF:それぞれに野生型とPS2シングルノックアウト(PS2 KO)のHEK 293T細胞系中に、免疫ブロットで、共発現APPの切断により産生されたα-CTFに対するApoE CTの影響を検出と統計解析し、GFPをコントロールとした。N=9。パネルGとJ:それぞれに野生型(WT)とPS1とPS2ダブルノックアウト(PS1/2 dKO)のHEK 293T細胞系中に、免疫ブロットで、APP共発現によるα-CTF産生に対するApoE CTの影響を検出と統計解析し、GFPをコントロールとした。N=8。パネルHとJ:免疫ブロットでPS1とPS2ダブルノックアウト(PS1/2 dKO)HEK 293T細胞中でそれぞれにAPP、PS1とGFPあるいはApoE CTを共発現させたことによって産生されたα-CTFを検出と統計解析した。N=8。パネルIとJ:免疫ブロットでPS1とPS2ダブルノックアウト(PS1/2 dKO)HEK 293T細胞中でそれぞれにAPP、PS2とGFPあるいはApoE CTを共発現させたことによって産生されたα-CTFを検出と統計解析した。N=8。パネルKとL:免疫ブロットでPS1とPS2ダブルノックアウト(PS1/2 dKO)HEK 293T細胞中でそれぞれにAPPとGFPあるいはApoE2を共発現させたことによって産生されたα-CTFを検出と統計解析した。N=9。パネルM:ELISAでPS1とPS2ダブルノックアウト(PS1/2 dKO)HEK 293T細胞中でそれぞれにβ-CTF、PS2とGFPあるいはApoE CTを共発現させたことによって産生されたAβ40を検出した。N=4。パネルD、F、J、LとM、one sample t-test。
【
図21】
図21:マウスのニューロンで内因性ApoEのノックダウンが、APPの代謝産物であるCTF
14kDのレベルの低下とAβの上昇を引き起こした。パネルA:免疫ブロットで、レンチウイルス発現システムによってshScramble(陰性コントロール)、shApoE_1(ApoEのshRNA_1)またはshApoE_2(ApoEのshRNA_2)を一過性発現した初代培養マウスのニューロン中の内因的に発現されたApoEを検出した。パネルB:1マイクロモルのγセクレターゼ阻害剤PF03084014で処理した場合、マウスのニューロン中のAPPの代謝物であるCTF
14kDの相対含有量。パネルCとD:免疫ブロットでレンチウイルス発現システムによってshScramble、shApoE_1または shApoE_2を一過性発現した初代培養マウスのニューロン中に内因的に発現されたAPPの代謝物であるCTF
14kDの相対含有量を検出と統計解析した。N=5、one sample t-test。パネルE:1マイクロモルのγセクレターゼ阻害剤PF03084014で処理した場合、免疫ブロットでレンチウイルス発現システムによってshScramble、shApoE_1またはshApoE_2を一過性発現した初代培養マウスのニューロン中に内因的に発現されたAPPの代謝物であるCTF
14kDの相対含有量を検出した。パネルF:ELISAでレンチウイルス発現システムによってshScramble、shApoE_1またはshApoE_2を一過性発現した初代培養マウスのニューロン中に内因的に発現されたAPPに産生されたAβ40を解析した。N=5、one sample t-test。
【
図22】
図22:ApoE2は、APPのγ切断を直接阻害する。パネルA:免疫ブロットでは、発現され、精製されたβ-CTF、ApoE2、ApoE2 NT、PS1、NCT、PEN2とGFPを解析した。パネルB:ELISAで三つの異なる条件で産生されたAβレベルを検出と統計解析した:精製されたβ-CTF、精製されたβ-CTFとγセクレターゼ共インキュベーション、及び、1マイクロモルのγセクレターゼ阻害剤PF03084014で処理した場合に精製されたβ-CTFとγセクレターゼ共インキュベーション。N=3、student’s t test。パネルC:ELISAで精製されたβ-CTFと一連の濃度勾配のApoE2との共インキュベーションで産生されたAβを検出と統計解析した。IC
50は、約1.2±0.48マイクロモルである。パネルD:ELISAで、精製されたβ-CTFが、それぞれに2.5マイクロモルの精製されたGFP、ApoE2とApoE2 NTとの共インキュベーションで産生されたAβを検出と統計解析した。N=3、student’s t test。
【
図23】
図23:ニューロンで発現されたApoE CTは、アミロイド斑に移動し、かつ5×FADマウスの脳におけるアミロイド斑形成を遅延した。パネルA:実験モデル図。パネルB:5×FADマウスで10週間発現されたマウスの脳ニューロンにおけるアデノ随伴ウイルスGFPまたはApoE CTとアミロイド斑(plaque)の免疫蛍光染色の代表的な画像を示す。パネルC:アミロイド斑の平均大きさを統計解析した。パネルD:アミロイド斑の総面積がsubiculum領域に占めす割合を統計解析した。パネルE:アミロイド斑の密度を統計解析した。N=21。
【
図24】
図24:5×FADマウスのニューロンで発現されたApoEは、CTを介してアミロイド斑の周囲に凝集した。パネルA:5×FADマウスの皮質ニューロンで3ヶ月間発現されたレンチウイルスApoE2-IRES-GFP、ApoE2 NT-IRES-GFPとApoE CT-IRES-GFPおよびアミロイド斑(GFP)の免疫蛍光染色の代表的な画像を示す。パネルB:5×FADマウス皮質ニューロンで一か月発現されたレンチウイルスApoE CTとヒト由来APP(hAPP)の免疫蛍光染色代表的な画像を示す。パネルC:野生型マウス皮質ニューロンで三か月発現されたレンチウイルスApoE CTとhAPPの免疫蛍光染色代表的な画像を示す。Plaque、アミロイド斑。
【
図25】
図25:ヒトのニューロンに内因的なApoEが存在する;AD患者の脳中のアミロイド斑はApoEと共局在する。パネルA:非AD患者(62歳、最上部)あるいはAD患者(86歳、最下部)皮質にApoEとNeuN(ニューロンマーカー)の共免疫蛍光染色の代表的な画像を示す。矢印は、ApoE陽性ニューロンを表す。パネルB:ヒト大脳皮質における全ニューロンに対するApoE陽性ニューロンの割合。パネルC:全ApoE陽性細胞に対するApoE陽性ニューロンの割合。若年(YOUNG):16~23歳、n=3;老年(OLD):60歳以上、n=3;AD:60歳以上、n=6。パネルD:ヒト大脳皮質におけるApoEとGFAP(アストロサイトマーカー)の共免疫蛍光染色の代表的画像。パネルE:非AD患者(62歳、最上部)あるいはAD患者(86歳、最下部)皮質にApoEとアミロイド斑(6E10)の共免疫蛍光染色の代表的な画像を示す。
【
図26】
図26:HEK 293T細胞において、ApoE2は、ApoE CTを介してα-CTFを増加させ、Aβを減少させる。パネルA:免疫ブロットで、HEK 293T細胞において、それぞれにAPPとGFPあるいはADAM10を共発現し、産生されたα-CTFを検出した。パネルB:免疫ブロットで、1マイクロモルのADAM10の阻害剤GI254023Xで処理したHEK 293T細胞に産生されたα-CTFを検出し、コントロールには、GI254023Xで処理しなかった。パネルCとD:免疫ブロットで、HEK 293T細胞において、それぞれにAPPとGFP、ApoE2、ApoE3又はApoE4を共発現し、産生されたα-CTFを検出と統計解析した。N=12。パネルEとF:免疫ブロットで、HEK 293T細胞において、それぞれにAPPとGFP、ApoE2 NT、ApoE3 NT又はApoE4 NTを共発現し、産生されたα-CTFを検出と統計解析した。N=12。パネルGとH:免疫ブロットで、HEK 293T細胞において、それぞれにAPPとGFP又はApoE CTを共発現し、産生されたα-CTFを検出と統計解析した。N=18。パネルI:ELISAで、HEK 293T細胞においてそれぞれにAPP、BACE1とGFP、ApoE CT、ApoE2 NT、ApoE3 NTまたはApoE4 NTの共発現で産生されて培地に分泌されたAβ40を検出と統計解析した。N=4。パネルJ:ELISAで、HEK 293T細胞においてそれぞれにAPP、BACE1とGFPまたはApoE CTの共発現で産生された細胞溶解液中のAβ40を検出した。N=5。パネルK:ELISAで、HEK 293T細胞においてそれぞれにAPP、BACE1とGFPまたはApoE CTの共発現で産生されたAβ42和Aβ42/Aβ40を検出した。N=6。パネルLとM:免疫ブロットで、HEK 293T細胞において、それぞれにAPP、BACE1と、GFPまたはApoE CTとの共発現に産生されたβ-CTFを検出と統計解析した。N=13。パネルNとO:免疫ブロットで、HEK 293T細胞において、それぞれにAPPとGFP、ApoE 2又はApoE CTを共発現し、産生されたα-CTFを検出と統計解析した。N=6。パネルPとQ:免疫ブロットで、HEK 293T細胞において、それぞれにマウスAPP(mAPP)とGFP又はApoE CTを共発現し、産生されたα-CTFを検出と統計解析した。N=6。パネルRとS:ELISAで、HEK 293T細胞においてそれぞれにAPPSWとGFPあるいはApoE CTの共発現で産生されたAβ40を検出と統計した;パネルR、培地中のAβ40;パネルS、細胞溶解液中のAβ40。N=6。パネルTとU:免疫ブロットで、HEK 293T細胞において、それぞれにAPPとGFP又はApoEA1を共発現し、産生されたα-CTFを検出と統計解析した。N=6。パネルI:ELISAで、HEK 293T細胞において、それぞれに、APP、BACE1とGFPまたはApoA1の共発現で産生させたAβ40を検出と統計解析した。N=3。面板D、F、H、I、J、K、M、O、Q、R、S、UとV,one sample t-test。
【
図27】
図27:培地中のApoE2とApoE CTが、APPの代謝を変えない。パネルA:免疫ブロットで、細胞培地中のApoE2とApoE CTを検出した。パネルBとC:免疫ブロットで、HEK 293T細胞において共発現させたAPPからのα-CTFの産生に対する培地中のGFP、ApoE2あるいはApoE CTの影響を検出と統計解析した。N=9。パネルD:免疫ブロットで、異なる条件で、培地中のApoE2を検出した。元々のApoE2含有培地(バンド1)、トランスフェクトしていない細胞と48時間インキュベートした後のApoE2含有培地(バンド2)は、37℃のインキュベーターに単独に48時間保存されたApoE2含有培地(バンド3)。パネルE:免疫蛍光で、HEK 293T細胞に取り込ませる培地中のApoE2とApoE CT、及びHEK 293T細胞に発現されたApoE CTを検出した。DAPI、細胞核マーカー。パネルF:免疫蛍光で、ニューロンに取り込ませる培地中のApoE2とApoE CT、及びニューロンに発現されたApoE CTを検出した。MAP2、成熟ニューロンのマーカー;DAPI、細胞核マーカー。パネルG:免疫ブロットで、精製されたApoE2と細胞溶解物または細胞培地から由来のApoE2を解析した。
【
図28】
図28:APPのγ切断部位附近のADに関連する突然変異が、ApoE CTの活性に影響を与える。パネルAとB:免疫ブロットで、HEK 293T細胞において、それぞれにAPPが異なるAD突然変異とGFP又はApoE CTを共発現し、産生されたα-CTFを検出と統計解析した。N=7、one sample and student’s t-test。
【
図29】
図29:αまたはβセクレターゼが阻害される場合、ApoE CTは、依然としてAPPの代謝を制御することができる。パネルA:免疫ブロットで、1マイクロモルのADAM10阻害剤であるGI254023Xで処理した場合、HEK293T細胞におけるAPP共発現によるα-CTF生成に対するApoE CTの影響を検出・統計解析し、コントロールグループでは、阻害剤での処理を行わなかった。N=9。パネルCとD:ELISAで、免疫ブロットで、1マイクロモルのADAM10阻害剤であるGI254023Xで処理した場合、HEK293T細胞におけるAPPとBACE1の共発現によるAβ生成に対するApoE CTの影響を検出・統計解析し、コントロールグループでは、阻害剤での処理を行わなかった。パネルC、細胞培地中のAβ40;パネルD、細胞溶解液中のAβ40。N=6。パネルEとF:免疫ブロットで、5マイクロモルのBACE1阻害剤であるAZD3839で処理した場合、HEK293T細胞におけるAPP共発現によるα-CTF生成に対するApoE CTの影響を検出・統計解析し、コントロールグループでは、阻害剤での処理を行わなかった。N=10。パネルGとH:免疫ブロットで、HEK 293T細胞において、それぞれにAPP
M596VとGFP又はApoE CTを共発現し、産生されたα-CTFを検出と統計解析した。N=7。パネルI:qRT-PCRで、HEK 293T細胞における内因性ADAM10、BACE1、PS1およびPS2 mRNA発現量に対するApoE2またはApoE CTの発現の影響を検出と統計解析した。パネルJ:免疫ブロットで、HEK 293T細胞における内因性ADAM10、BACE1、PS1およびPS2タンパク質発現量に対するApoE2またはApoE CTの影響を検出した。パネルK:免疫ブロットで、HEK 293T細胞で共発現したAPPの細胞表面発現に対するApoE CTの影響を検出した。GFP(-)およびApoE CT(+)を発現するHEK 293T細胞の細胞表面タンパク質をスルホ-N-ヒドロキシスクシンイミド-ビオチンで標識し、ストレプトアビジン結合アガロースビーズで分離した。
【
図30】
図30:ApoE CTが、NOCTHとAPLP1のγ切断を阻害することができない。パネルA:HEK 293T細胞において、N100-V5しか発現しない(バンド1);共発現されたN100-V5とγセクレターゼ(バンド2);1マイクロモルのγセクレターゼ阻害剤PF03084014で処理して共発現されたN100-V5とγセクレターゼ(バンド3);共発現されたN100-V5、γセクレターゼとApoE CT(バンド4)。免疫ブロットで、以上の条件で発現された場合のN100-V5の切断を検出した。パネルB:免疫ブロットで、HEK 293T細胞においてAPP、γセクレターゼとApoE CTを共発現する場合のα-CTFの含有量を検出した。パネルC:HEK 293T細胞において、APLP-V5しか発現しない(バンド1);1マイクロモルのγセクレターゼ阻害剤PF03084014で処理して発現されたAPLP-V5(バンド2);APLP1-V5とApoE CTの共発現(バンド3)。免疫ブロットで、以上の条件で発現された場合のAPLP1-V5の代謝を検出した。
【
図31】
図31:体外で精製されたβ-CTF、ApoE2、ApoE2 NTとγセクレターゼ。コーカサスブルーの染色で、精製されたβ-CTF-Myc-6×His(パネルA)、ApoE2-3×FLAG(パネルB)、ApoE2NT-3×FLAG(パネルC)、γセクレターゼ(パネルD)(NCT-V5- 6×His;PLAG-PEN2;APH;全長PS1、FL-PS1;PS1のN末端フラグメント、PS1 NTF;PS1のC末端フラグメント、PS1 CTF)と3×FLAG-GFP(パネルE)を示した。
【
図33】
図33:ヒトApoEタンパク質の構造。N末端構造ドメイン(残基1-167)とC末端構造ドメイン(残基206-299)は、柔軟なヒンジ領域(残基168-205)によって接続される。三つのサブタイプは、ApoE2(Cys112;Cys158)、ApoE3(Cys112;Arg158)とApoE4(Arg112;Arg158)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
具体的な実施形態
本発明の範囲内で、本発明の上記の技術的特徴および以下に具体的に記載される技術的特徴(実施例など)を互いに組み合わせて、好ましい技術を形成することができることを理解すべきである。
【0024】
ヒト由来アポリポタンパク質E(ApoE)は、主に、ApoE2、ApoE3とApoE4の三つのサブタイプを含む。ApoEは、三つの領域を含む:一つのN末端ドメイン(ApoE NT)、一つのヒンジ領域と一つの保存的なC末端ドメイン(ApoE CT)。三つのApoEサブタイプの間の唯一の配列の違いは、それらのN末端ドメイン(
図33)にある。例示的なApoE2(ヒト由来ApoE2)のアミノ酸配列は、以下に示される:
【0025】
【0026】
例示的なApoE3(ヒト由来ApoE3)のアミノ酸配列は、以下に示される:
【0027】
【0028】
本発明は、単離されたApoEコンストラクトを提供し、それが、ApoEポリペプチドを含む。当該ApoEポリペプチドは、ApoEタンパク質のC末端ドメインの一部の配列(例えばSEQ ID NO:12の221-274位アミノ酸)、または当該配列に基づいて改造された配列を含む。本発明は、発明者による前記のApoEコンストラクト(例えば、本発明のApoEポリペプチドまたはApoE2)の予期せぬ発見に基づく:(i)それは、ニューロン中(生体内または生体外)でアミロイド前駆体タンパク質(amyloid precursor protein,APP)の切断を細胞自律的に制御できる;(ii)それが、γ-セクレターゼの酵素活性、例えば、γ-セクレターゼに仲介されるAPPγ-切断を阻害(例えば少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または100%を阻害)することができ、γ-セクレターゼ阻害剤(例えばPF03084014)によるAPP γ-切断阻害効果と類似する;(iii)それが、APPのアミロイド代謝を低下(例えば少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または100%を低下)することができ、例えば、アミロイドタンパク質 β(Aβ)(例えばAβ40及び/またはAβ42)の産生を低減(例えば少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または100%を低減)し、またはC末端フラグメント β(β-CTF)に対するγ-切断を低下(例えば少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または100%を低下)することができる;(iv)それが、APPの非アミロイド代謝を向上(例えば少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、100%、2倍、5倍、10倍、20倍または以上を向上)することができ、例えばC末端フラグメント α(α-CTF)の産生を増加(例えば少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、100%、2倍、5倍、10倍、20倍または以上を増加)することができる;(v)それが、α-セクレターゼ、β-セクレターゼ、及び/またはγ-セクレターゼ(またはそのサブユニット)(例えばADAM10、BACE1、PS1及び/またはPS2)のmRNA及び/またはタンパク質発現に影響を与えない(または約 30%、20%、10%、5%または以下しか影響を与えない);(vi)そのが、β-セクレターゼに仲介されるAPP β-切断、及び/またはα-セクレターゼに仲介されるAPP α-切断に影響を与えない(または約30%、20%、10%、5%または以下しか影響を与えない);(vii)それが、非APPタンパク質(例えばAPLP1(APP like protein 1)またはNotch)またはそのフラグメントに対するγ-切断を阻害しなく(または約30%、20%、10%、5%または以下しか阻害しなく)、非APPタンパク質のγ-切断によって産生されるα-CTFを増加しなく(または約30%、20%、10%、5%または以下しか増加しなく)、これは、ApoEコンストラクトが基質特異性でγ-切断を阻害するのに対し、γ-セクレターゼ阻害剤はこの基質特異性を持たないことを示す;(viii)前記ApoEコンストラクトは、ADモデルマウス脳中のアミロイド斑を低減(例えば少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または100%を低減)することができ、例えばアミロイド斑の平均斑の大きさ、総面積、及び/または密度を低減(例えば少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または100%を低減)し、ニューロン内のAβ(例えばAβ40及び/またはAβ42)の産生を低減(例えば少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または100%を低減)し、マウスのAD病理学的プロセスを低下(例えば少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または100%を低下)し、ADマウス生存率及び/または寿命を向上(例えば少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、100%、2倍、5倍、10倍、20倍または以上を向上)することができる;(ix)前記ApoEコンストラクトのN末端及び/またはC末端に挿入されたタグタンパク質(例えば精製タグまたは検出タグ)、及びいくつかの前記ApoEコンストラクト(例えばApoE2またはApoE3)の内部におけるアミノ酸残基(例えばApoE2-M3FまたはApoE2 MD10)の挿入または削除は、当該ApoEコンストラクトによるγ-セクレターゼ酵素活性の阻害、例えばγ-セクレターゼに仲介されるAPP γ-切断に対する阻害に影響を与えない(または約30%、20%、10%、5%または以下しか影響を与えない);(x)前記ApoEコンストラクトのN末端またはC末端に膜透過ペプチド(cell-penetrating peptide、CPP)の挿入が、前記ApoEコンストラクトによるγ-セクレターゼ酵素活性を阻害する効果(例えば前記一つまたは複数の効果)を向上(例えば少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、100%、2倍、5倍、10倍、20倍または以上を向上)することができる;(xi)細胞では、γセクレターゼによるAPPの切断を制御するために、前記ApoEコンストラクトのN末端にシグナルペプチドがある必要があるが、シグナルペプチドの由来について、厳密な要件はない;(xii)本発明に記載されるいくつかのApoEコンストラクト(例えばApoE CT(SEQ ID NO:33))は、γ-セクレターゼに仲介されるAPPγ-切断の阻害において、ApoE2(例えばSEQ ID NO:12)及び/またはApoE3(例えばSEQ ID NO:89)の全長タンパク質よりも高い(例えば少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、100%、2倍、5倍、10倍、20倍または以上高い)活性さえ有する;(xiii)前記ApoEコンストラクトは、APPバリアントを発現する複数の細胞(たとえば、病原性スウェーデンAPP突然変異体(APPSW)、保護的アイスランドAPP突然変異(A673T)、APPM596V、またはβまたはα切断部位付近のAPP突然変異(KM670/671NL、E693K、E693Δ))におけるAPP γ-切断を阻害する効果もあり、たとえば、Aβの産生を低減(例えば少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または100%を低減)する;(xiv)前記ApoEコンストラクトは、細胞内で内因的なAPPと重複する核周囲の細胞内分布パターンを示し、細胞内で内因性的なAPP、α-セクレターゼとγ-セクレターゼまたはその成分と相互作用することができる;(xv)ADモデルマウスでは、ニューロンで局所的に発現された(例えば皮質、歯状回(DG)、海馬CA3で発現された)前記ApoEコンストラクトが、離れた部位から海馬台に移動し、アミロイド斑の周囲に蓄積し、それによって、これらのアミロイド産生ホットスポットにおけるγ-セクレターゼの酵素活性を局所的に阻害する;(xvi)本発明に記載のApoEコンストラクトと高い相同性(例えば少なくとも約90%、95%、96%、97%、98%、99%または以上)の非ヒト由来ApoEコンストラクト(例えばサルApoE C末端配列)は、前記の一つまたは複数の特性と類似する特性を有する。
【0029】
本願は、ポリポタンパク質Eが、そのC末端フラグメントを介して細胞自律的にγ-セクレターゼの切断を阻害し(すなわち、γ-セクレターゼと同じ細胞内で機能する)、APPのアミロイド代謝を阻害し、Aβの産生を減少する;また、APPの非アミロイド代謝産物であるα-CTFを増加する;ADモデルマウスの脳内のアミロイド斑の大きさと密度の増加を緩和することを初めて発見した。したがって、ApoEのC末端フラグメントは、γセクレターゼを標的とする医薬品として使用され、ADとアミロイド脳血管病の発生と進展の緩和(例えば少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または100%のAD進展プロセスを緩和)、治療、あるいは予防に用いられる。なお、ApoEのC末端フラグメントが、γセクレターゼの阻害剤として、複数の生物学的プロセスで役割を果たす可能性があり、ApoEのC末端フラグメントの応用は、神経変性疾患分野に限られなく、がん、炎症性疾患、及び腎臓疾患などの複数の疾患、例えばγセクレターゼの切断活性に関連する任意の疾患(γセクレターゼの切断活性を阻害することで治療または予防できる疾患)に用いられてもよい。一般的なγセクレターゼ阻害剤が、治療中に重篤な副作用を引き起こし、これは、いずれもNotchシグナル伝達の欠陥、例えば免疫抑制、胃腸出血と下痢、癌性皮膚病変に関連する。本発明に提供されるApoEコンストラクトは、Notchのγ-切断に影響を与えなく、したがって、本発明に提供されるApoEコンストラクトと関連する方法は、効果的で安全な新しい治療方法を提供する可能性がある。
【0030】
本願は、さらに、アポリポタンパク質EのC末端フラグメントにおけるSEQ ID NO:12の221-274位アミノ酸配列(MGSRTRDRLDEVKEQVAEVRAKLEEQAQQIRLQAEAFQARLKSWFEPLVEDMQR;SEQ ID NO:78;“ApoE CT ND5CD25”)は、当該C末端フラグメントが生物学的機能(例えばγ-セクレターゼに仲介されるAPPγ-切断を阻害すること)を発揮するために必要なアミノ酸配列であることを見出した。一部の実施形態において、アポリポタンパク質EのC末端フラグメントの最も短い機能的フラグメントは、SEQ ID NO:12の220-274位アミノ酸配列(EMGSRTRDRLDEVKEQVAEVRAKLEEQAQQIRLQAEAFQARLKSWFEPLVEDMQR;SEQ ID NO:87)である。一部の実施形態において、ApoEのC末端フラグメントの最も短い機能的フラグメントは、SEQ ID NO:12の220-279位アミノ酸配列EMGSRTRDRLDEVKEQVAEVRAKLEEQAQQIRLQAEAFQARLKSWFEPLVEDMQRQWAGL(SEQ ID NO:34)である。
【0031】
1.定義
特に指定しない限り、本発明の実施には、当業者の従来の方法の範囲内で、化学、生化学、有機化学、分子生物学、微生物学、組換えDNA技術、遺伝学、免疫学、細胞生物学、幹細胞プロトコール、細胞培養およびトランスジェニック生物学における一般的な方法が採用され、多くは、説明のために以下に説明される。このような技術は文献に詳しく説明されている。本明細書で引用されるすべての刊行物、特許、および特許出願は、その全体が参照により組み込まれる。
【0032】
他に説明されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味を有する。本発明の目的のために、以下の用語は、当該技術分野で一般に理解されている意味と一致するように定義される。
【0033】
本明細書で使用される場合、「治療する(treating)」および「治療(treatment)」という用語は、その用語が適用される疾患または状態、あるいはそのような疾患または状態の一つまたは複数の症状の発症を遅延し、その進展を遅延または逆転し、その重症度を軽減し、それを軽減または予防することを意味する。
【0034】
「有効量」または「薬学的有効量」という用語は、所望の結果を生み出すために必要な1つまたは複数の薬剤の量および/または投与量および/または投与計画を指し、例えば、APPγ切断を低下するのに十分の量、または、神経変性疾患(例えばAD)に関連する一つまたは複数の症状を治療する量、または、哺乳類の脳におけるアミロイド堆積物を特徴とする疾患の重症度の軽減または前記疾患の進展の遅延に十分の量(例えば、治療有効量)、哺乳類の脳におけるアミロイド堆積物を特徴とする疾患のリスクの低下または前記疾患の発症の遅延及び/または最終の重症度のの軽減に十分の量(例えば、予防有効量)を指す。
【0035】
「軽減」という用語は、当該病状または疾患の一つまたは複数の症状を低減または除去し、及び/または、当該病状または疾患の一つまたは複数の症状の速率を低減し、または、当該病状または疾患の一つまたは複数の症状の発症や重症度を遅延し、及び/または、前記病状または疾患を予防することを指す。いくつかの実施形態では、病状または疾患の一つまたは複数の症状を低減または除去するとは、病状または疾患の特徴とする一つまたは複数のマーカー(例えば、総-Tau(tTau)、リン酸化-Tau(pTau)、APPneo、可溶性Aβ40、Aβ42、pTau/Aβ42比とtTau/Aβ42比及び/またはCSFのAβ42/Aβ40比、Aβ42/Aβ38比、sAPPα、sAPPα/sAPPβ比、sAPPα/Aβ40比、sAPPα/Aβ42比などの組分から選ばれる一つまたは複数のレベルの増加)の低減または除去、及び/または非アミロイド代謝産物(例えばα-CTF)の増加、及び/または一つまたは複数の診断基準(例えば、臨床認知症評価(CDR))の低減、安定化または逆転を含むが、これらに限定されない。
【0036】
「個体」または「受験者」は、哺乳類、鳥類、カエル、魚類、ショウジョウバエ、線虫などを含むが、これらに限定されない。哺乳動物は、霊長類(例えばヒト、または非ヒト霊長類例えばサル)、げっ歯類(例えばマウス、ラット、ハムスター、アレチネズミ、リス、モルモット、ウサギ)、家畜(例えばブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、ロバ)、ペット(例えば猫、犬、ウサギ、ハムスターなど)を含むが、これらに限定されない。一部の実施の形態において、前記個体は、ヒトである。
【0037】
本明細書で使用される用語「製剤」または「医薬品制剤」または「剤形」または「医薬品製剤」は、少なくとも一種の受験者へ送達する治療剤または医薬品を含有する組成物を指す。
【0038】
二つのポリペプチドまたは核酸配列の間の「配列同一性」は、総残基数に対するパーセンテージとして前記配列の間で同一である残基の数を意味し、総残基数の計算は、変異の種類に基づいて行われる。突然変異のタイプは、配列のどちらかの端または両方の端の插入(伸び)、配列のどちらかの端または両方の端の欠失(短縮)、一つまたは複数のアミノ酸/ヌクレオチドの置換/取り替え、配列の内部の插入、配列の内部の欠失を含むが、これらに限定されない。ポリペプチドを例として挙げると(ヌクレオチドも同じ)、突然変異のタイプは、一つまたは複数のアミノ酸/ヌクレオチドの置換/取り替え、配列の内部の插入と配列の内部の欠失から選ばれる一つまたは複数であると、残基の総数は、比較した分子の大きい方として計算される。突然変異のタイプは、さらに、配列のどちらかの端または両方の端での插入(伸び)または配列のどちらかの端または両方の端での欠失(短縮)を含むと、どちらかの端または両方の端に插入または欠失されるアミノ酸の数(例えば、両方の端の插入または欠失の数は、20個より少ない)は、残基の総数に含まれない。同一性パーセントを計算する場合、比較しようとする配列を、配列の間で最大の一致が得られるようにアラインメントし、アラインメント内のギャップ(存在する場合)を特定のアルゴリズムで解決する。
【0039】
ここで使用される用語「フラグメント」は、ポリペプチドを指し、固有または特徴的な、特定のポリペプチドの任意の単離された部分として定義される。ここで使用される用語は、全長ポリペプチドの活性の少なくとも一部を保持する、所与のポリペプチドの任意の単離された部分も指す。好ましくは、保持される活性部分は、全長ポリペプチドの活性の少なくとも10%である。より好ましくは、保持される活性部分は、全長ポリペプチドの活性の少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%である。より好ましくは、保持される活性部分は、全長ポリペプチドの活性の少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%である。最も好ましくは、保持される活性部分は、全長ポリペプチドの活性の100%である。ここで使用される当該用語は、また、全長ポリペプチドの少なくとも1つの指定された配列エレメントを含む所定のポリペプチドの任意の部分を指す。好ましくは、配列エレメントは、全長ポリペプチドの少なくとも4~5個、より好ましくは少なくとも約10、15、20、25、30、35、40、45、50個以上のアミノ酸にわたる。
【0040】
ここで使用される「ポリペプチド」という用語は、ペプチド結合によって結合された連続したアミノ酸の鎖を指す。この用語は、任意の長さのアミノ酸鎖を指すが、当業者は、この用語が長鎖を指すだけでなく、ペプチド結合によって接続された2つのアミノ酸を含む最も短い鎖を指すのにも使用できることを知っている。
ここで使用される「タンパク質」という用語は、別個の単位として機能する1つまたは複数のポリペプチドを指す。「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、単一のポリペプチドが別個の機能単位であり、その独立した機能単位を形成するために他のポリペプチドとの持続的な物理的結合を必要としない場合、本明細書では互換的に使用される。別個の機能単位が、互いに物理的に結合した複数のポリペプチドからなる場合、本明細書で使用する「タンパク質」という用語は、物理的に結合し、別個の単位として一緒に機能する複数のポリペプチドを指す。
【0041】
「組換え発現ポリペプチド」、「組換えポリペプチド」、および「修飾ポリペプチド」(またはタンパク質)は、ポリペプチドを発現するように遺伝子操作された宿主細胞から発現される当該ポリペプチドを指す。組換え発現ポリペプチドは、宿主細胞(例えば、哺乳動物細胞)で通常に発現されるポリペプチドと同じまたは類似していてもよい。組換え発現されたポリペプチドはまた、宿主細胞にとって外来のもの、例えば、哺乳動物宿主細胞において通常発現されるポリペプチドに対して異種のポリペプチドであってもよい。あるいは、組換え発現ポリペプチドは、キメラポリペプチドであり、例えば、ポリペプチドの一部は、哺乳動物宿主細胞で通常に発現されるポリペプチドと同じまたは類似のアミノ酸配列を含み、他の部分は宿主細胞にとって外因性である。
【0042】
「アミノ酸」という用語は、20の一般的な天然アミノ酸を意味する。天然に存在するアミノ酸としては、アラニン(Ala;A)、アルギニン(Arg;R)、アスパラギン(Asn;N)、アスパラギン酸(Asp;D)、システイン(Cys;C)、グルタミン酸(Glu;E)、グルタミン(Gln;Q)、グリシン(Gly;G)、ヒスチジン(His;H)、イソロイシン(Ile;I)、ロイシン(Leu;L)、リジン(Lys;K)、メチオニン(Met;M)、フェニルアラニン(Phe;F)、プロリン(Pro;P)、セリン(Ser;S)、スレオニン(Thr;T)、トリプトファン(Trp;W)、チロシン(Tyr;Y)およびバリン(Val;V)を含む。
【0043】
非重要なアミノ酸は、タンパク質の通常の機能に影響を与えることなく保存的に置換できる。保存的な置換とは、アミノ酸を化学的または機能的に類似したアミノ酸で置き換えることを意味する。類似のアミノ酸の保存的な置換表を提供することは当技術分野でよく知られている。例えば、いくつかの実施の形態では、以下に提供されるアミノ酸群は、互いの保存的な置換であるとみなされる。
【0044】
一部の実施形態において、互いの保存的な置換とみなされるアミノ酸群:
【表3】
【0045】
一部の実施形態において、互いの保存的な置換とみなされる別のアミノ酸群:
【0046】
【0047】
一部の実施形態において、互いの保存的な置換とみなされる別のアミノ酸群:
【0048】
【0049】
本明細書で使用される場合、「約」または「およそ」という用語は、基準量、レベル、値、量、頻度、パーセンテージ、スケール、サイズ、量、重量、または長さと比較して、最大15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%または1%まで変化する量、レベル、値、量、頻度、パーセンテージ、スケール、サイズ、量、重量、または長さを指す。一つの実施の形態では、「約」または「およそ」という用語は、基準量、レベル、値、量、頻度、パーセンテージ、スケール、サイズ、量、重量、または長さの前後±15%、±10%、±9%、±8%、±7%、±6%、±5%、±4%、±3%、±2%または±1%の量、レベル、値、量、頻度、パーセンテージ、スケール、サイズ、量、重量、または長さの範囲を指す。
【0050】
本明細書で使用される場合、「基本的に(substantially/essentially)」という用語は、程度、基準量、レベル、値、量、頻度、パーセンテージ、スケール、サイズ、量、重量、または長さと比較して、約70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%または以上の程度、量、レベル、値、量、頻度、パーセンテージ、スケール、サイズ、量、重量、または長さを指す。
【0051】
数値範囲は、範囲の終点と範囲の各特定の値を含み、たとえば、「16~100個のアミノ酸」は、16と100を含み、16~100の各特定の値を含む。
【0052】
本明細書全体を通じて、特に限定されない限り、「含む」、「含有」、「有する」、および「持つ」という用語は、記載されたステップまたは要素またはステップまたは要素のグループを含むことを非明示的に意味するが、他のステップまたは要素またはステップまたは要素のグループを除外しないと理解されるべきである。特定の実施形態では、「含む」、「含有」、「有する」、および「持つ」という用語は同義的に使用される。
【0053】
「からなる」とは、「からなる」という語句に続くものをすべて含むことを意味し、これらに限定される。したがって、「からなる」という語句は、列挙された要素が必須であり、他の要素が存在してはいけないことを示す。
【0054】
「基本的に……からなる」とは、「基本的に……からなる」という語句の後に列挙される要素のいずれかを含むことを意味し、また、挙げられた要素の開示で指定されている活動やアクションを妨げたり、それに寄与したりしない他の要素に限定される。したがって、「基本的に……からなる」という表現は、挙げられた要素が必須であるが、他の要素はオプションではなく、それらが挙げられた要素の活動またはアクションに影響を与えるかどうかに依存し、存在するか存在しない可能性があることを示す。
【0055】
冠詞「一つ/一個(a/an)」および「当該/この(the)」は、本明細書では、冠詞の1つまたは複数(すなわち、少なくとも1つ)の単語の文法的対象を指すために使用される。例えば、「要素」は、1つの要素または複数の要素を意味する。
【0056】
代替案(例えば、「または」)の使用は、代替案のいずれか、両方、または任意の組み合わせを意味すると理解されるべきである。
【0057】
「および/または」という用語は、選択肢のいずれかまたは両方を意味すると理解されるべきである。
【0058】
本明細書全体を通して、「一つの実施形態」、「ある実施形態」、「いくつかの実施形態」、「関連する実施形態」、「特定の実施形態」、「別の実施形態」、または「さらなる実施形態」への言及またはそれらの組み合わせちは、実施形態に関連して説明された特定の特徴、構造、または特徴が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体のさまざまな場所に出現する前述の語句は、必ずしもすべて同じ実施形態を指しているわけではない。さらに、特定の特徴、構造、または特性は、1つまたは複数の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせることができる。
【0059】
2.ApoEコンストラクトとApoEポリペプチド
一つの様態では、本願が、単離されたApoEコンストラクトを提供し、それが、ApoEポリペプチドを含み、前記ApoEポリペプチドが:(1)SEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来のフラグメントを含み、当該フラグメント(または当該ApoEポリペプチド)N末端の最初のアミノ酸残基は、SEQ ID NO:12の215-221位のアミノ酸残基のいずれか一つであり、当該フラグメント(または当該ApoEポリペプチド)C末端の最末のアミノ酸残基は、SEQ ID NO:12の274-299位(例えば279-299位)のアミノ酸残基のいずれか一つである;または(2)そのアミノ酸配列が、(1)ぶjに記載のフラグメントと少なくとも約70%(例えば少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または以上)の配列同一性を有し、かつ(1)に記載のフラグメントによるγセクレターゼ切断活性の阻害の少なくとも約50%(例えば少なくとも約60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、100%、1.5倍、2倍、5倍、10倍または以上)を保持する。本明細書に記載の「フラグメント」とは、対応するタンパク質からの連続したアミノ酸配列を指すことを理解されるべきである。
【0060】
一部の実施形態において、前記ApoEポリペプチドは、SEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来のフラグメントを含み、当該ApoEポリペプチドN末端の最初のアミノ酸残基は、SEQ ID NO:12の215-221位のアミノ酸残基のいずれか一つであり、当該ApoEポリペプチドC末端の最末のアミノ酸残基は、SEQ ID NO:12の274-299位(例えば279-299位)のアミノ酸残基のいずれか一つである。一部の実施形態において、前記ApoEコンストラクトは、ApoEポリペプチドを含み、前記ApoEポリペプチドは、SEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来するフラグメントからなり、当該ApoEポリペプチドN末端の最初のアミノ酸残基は、SEQ ID NO:12の215-221位のアミノ酸残基のいずれか一つであり、当該ApoEポリペプチドC末端の最末のアミノ酸残基は、SEQ ID NO:12の274-299位(例えば279-299位)のアミノ酸残基のいずれか一つである。
【0061】
一部の実施形態において、前記ApoEポリペプチドは、SEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来のフラグメントと、少なくとも約70%の同一性を有し、かつ当該フラグメントによるγセクレターゼ切断活性の阻害の少なくとも約50%を保留し、ただし、当該フラグメントのN末端の最初のアミノ酸残基は、SEQ ID NO:12の215-221位のアミノ酸残基のいずれか一つであり、当該フラグメントのC末端の最末のアミノ酸残基は、SEQ ID NO:12の274-299位(例えば279-299位)のアミノ酸残基のいずれか一つである。
【0062】
一部の実施形態において、前記単離されたApoEコンストラクトは、前記ApoEポリペプチド(例えば単離されたApoEポリペプチド)からなる、または基本的に前記ApoEポリペプチドからなる。したがって、一部の実施形態において、本願は、さらに、ApoEポリペプチド(例えば単離されたApoEポリペプチド)を提供する。
【0063】
一部の実施形態において、前記ApoEポリペプチド(例えば単離されたApoEポリペプチド)は、(1)前記のSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来するフラグメントからなる、または基本的に前記(1)のSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来するフラグメントからなる。
【0064】
一部の実施形態において、前記ApoEコンストラクトは、天然に存在するものではない。例えば、一部の実施形態において、前記ApoEコンストラクトまたは前記ApoEポリペプチドは、ApoE2ではなく、ApoE3ではなく、及び/またはApoE4全長タンパク質ではない。
【0065】
一部の実施形態において、前記ApoEコンストラクトまたは前記ApoEポリペプチドは、たとえば、神経特性の発現にApoE コンストラクトを使用する場合、全長ApoE2またはApoE3タンパク質(例えばヒト全長ApoE2またはApoE3タンパク質)である。
【0066】
一部の実施形態において、前記ApoEポリペプチド(例えば単離されたApoEポリペプチド)または前記(1)におけるSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来するフラグメントのアミノ酸配列の開始点(またはN末端の最初のアミノ酸残基)は、ApoE SEQ ID NO:12配列の215-221位(例えば215位、216位、217位、218位、219位、220位または221位)のいずれか一つ部位のアミノ酸残基、例えば215位、216位、219位、220位または221位のいずれか一つのアミノ酸残基である。一部の実施形態において、前記ApoEポリペプチドまたは前記(1)におけるSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来するフラグメントのアミノ酸配列の終わり(またはC末端の最末のアミノ酸残基)は、ApoE SEQ ID NO:12配列274~299位(例えば274位、275位、276位、277位、278位、279位、280位、281位、282位、283位、284位、285位、286位、287位、288位、289位、290位、291位、292位、293位、294位、295位、296位、297位、298位または299位)のいずれか一つのの部位のアミノ酸残基、例えば279-299位(本数を含む)のいずれか位置のアミノ酸残基、例えば274位、279位または299位のいずれか一つのアミノ酸残基である。
【0067】
一部の実施形態において、前記ApoEポリペプチド(例えば単離されたApoEポリペプチド)または前記(1)におけるSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来するフラグメントは、以下のいずれか一つの配列を含む(またはそれからなる、または基本のにそれからなる):SEQ ID NO:12に示される配列の215-299位、216-299位、217-299位、218-299位、219-299位、220-299位、221-299位、215-274位、216-274位、217-274位、218-274位、219-274位、220-274位、221-274位、215-279位、216-279位、217-279位、218-279位、219-279位、220-279位、221-279位、215-294位、216-294位、217-294位、218-294位、219-294位、220-294位、221-294位、215-289位、216-289位、217-289位、218-289位、219-289位、220-289位、221-289位、215-288位、216-288位、217-288位、218-288位、219-288位、220-288位、221-288位、215-287位、216-287位、217-287位、218-287位、219-287位、220-287位、221-287位、215-286位、216-286位、217-286位、218-286位、219-286位、220-286位、221-286位、215-285位、216-285位、217-285位、218-285位、219-285位、220-285位、221-285位、215-284位、216-284位、217-284位、218-284位、219-284位、220-284位、または221-284位のアミノ酸残基。
【0068】
一部の実施形態において、前記ApoEポリペプチド(例えば単離されたApoEポリペプチド)または前記(1)におけるSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来するフラグメントは、以下のいずれか一つの配列を含む(またはそれからなる、または基本のにそれからなる):(i)SEQ ID NO:12の215-299位アミノ酸残基的アミノ酸配列;(ii)SEQ ID NO:12の216-299位アミノ酸残基のアミノ酸配列;(iii)SEQ ID NO:12の217-299位アミノ酸残基のアミノ酸配列;(iv)SEQ ID NO:12の218-299位アミノ酸残基のアミノ酸配列;(v)SEQ ID NO:12の219-299位アミノ酸残基のアミノ酸配列;(vi)SEQ ID NO:12の220-299位アミノ酸残基のアミノ酸配列;(vii)SEQ ID NO:12の221-299位アミノ酸残基のアミノ酸配列;(viii)SEQ ID NO:12の216-294位アミノ酸残基のアミノ酸配列;(ix)SEQ ID NO:12の216-289位アミノ酸残基のアミノ酸配列;(x)SEQ ID NO:12の219-289位アミノ酸残基のアミノ酸配列;(xi)SEQ ID NO:12の219-288位アミノ酸残基のアミノ酸配列;(xii)SEQ ID NO:12の219-287位アミノ酸残基のアミノ酸配列;(xiii)SEQ ID NO:12の219-286位アミノ酸残基のアミノ酸配列;(xiv)SEQ ID NO:12の219-285位アミノ酸残基のアミノ酸配列;(xv)SEQ ID NO:12の219-284位アミノ酸残基のアミノ酸配列;(xvi)SEQ ID NO:12の219-279位アミノ酸残基のアミノ酸配列;(xvii)SEQ ID NO:12の219-274位アミノ酸残基のアミノ酸配列;(xviii)SEQ ID NO:12の220-274位アミノ酸残基のアミノ酸配列;(xix)SEQ ID NO:12の220-279位アミノ酸残基のアミノ酸配列;または(xx)SEQ ID NO:12の221-274位アミノ酸残基のアミノ酸配列。
【0069】
一部の実施形態において、前記ApoEコンストラクトまたはApoEポリペプチドは、SEQ ID NO:12の211-214位の一つまたは複数のアミノ酸配列を含まない。一部の実施形態において、前記ApoEコンストラクトまたはApoEポリペプチドは、以下の一つまたは複数のアミノ酸フラグメントを含まない(またはいずれか一つも含まない):SEQ ID NO:12の212-214位、213-214位、211-214位、211-215位、211-216位、211-217位、211-218位、211-219位、211-220位、211-221位、211-222位、212-214位、212-215位、212-216位、212-217位、212-218位、212-219位、212-220位、212-221位、212-222位、213-214位、213-215位、213-216位、213-217位、213-218位、213-219位、213-220位、213-221位、213-222位、214-215位、214-216位、214-217位、214-218位、214-219位、214-220位、214-221位、または214-222位。
【0070】
一部の実施形態において、前記ApoEコンストラクトまたはApoEポリペプチドは、SEQ ID NO:12の211-214位のアミノ酸配列を含むが、当該SEQ ID NO:12の211-214位のアミノ酸配列のC末端は、前記ApoEポリペプチドのN末端に直接に接続しなく、例えば、それらの間に少なくとも一つの非ApoE由来の配列(例えばFLAG配列)を插入する。一部の実施形態において、前記SEQ ID NO:12の211-214位のアミノ酸配列のC末端と前記ApoEポリペプチドのN末端との間に、SEQ ID NO:77に示される3XFLAG配列を插入する。
【0071】
一部の実施形態において、前記ApoEコンストラクトまたは前記ApoEポリペプチドは、前記(1)におけるSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来するフラグメントのN末端及び/またはC末端に、さらに、一つまたは複数の非ApoE由来のアミノ酸残基を含んでも良い。一部の実施形態において、前記ApoEコンストラクトまたは前記ApoEポリペプチドは、前記(1)におけるSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来するフラグメントのN末端及び/またはC末端に、さらに一つまたは複数のアミノ酸残基を含んでも良く、かつ、当該アミノ酸残基を前記(1)フラグメントN末端またはC末端に挿入する場合、SEQ ID NO:12の対応する部位のアミノ酸残基と異なる。例えば、前記(1)におけるSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来するフラグメントのN末端の最初のアミノ酸残基は、SEQ ID NO:12の215位アミノ酸残基であり、前記ApoEコンストラクトまたは前記ApoEポリペプチドは、SEQ ID NO:12の215位アミノ酸残基のN末端に、さらに、一つまたは複数のアミノ酸残基を含んでも良いが、当該一つまたは複数のアミノ酸残基は、SEQ ID NO:12の214、213、212、211などの部位のアミノ酸残基と異なる。
【0072】
一部の実施形態において、前記ApoEコンストラクトは、前記ApoEポリペプチド(例えば(1)のSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来するフラグメント、またはApoE突然変異体)のN末端及び/またはC末端に、さらに、一つまたは複数の非ApoE由来のアミノ酸残基を含んでも良い。一部の実施形態において、前記ApoEコンストラクトは、前記ApoEポリペプチドのN末端及び/またはC末端に、さらに、一つまたは複数のアミノ酸残基を含んでも良く、且つ当該アミノ酸残基を、前記ApoEポリペプチドのN末端またはC末端に挿入する場合、SEQ ID NO:12の対応する部位のアミノ酸残基と異なる。例えば、前記ApoEポリペプチドのN末端の最初のアミノ酸残基は、SEQ ID NO:12の215位アミノ酸残基であり、前記ApoEコンストラクトは、SEQ ID NO:12の215位アミノ酸残基のN末端に、さらに、一つまたは複数のアミノ酸残基を含んでも良いが、当該一つまたは複数のアミノ酸残基は、SEQ ID NO:12の214、213、212、211などの部位のアミノ酸残基と異なる。
【0073】
一部の実施形態において、前記ApoEポリペプチド(例えば単離されたApoEポリペプチド)または前記(1)におけるSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来するフラグメントは、少なくとも、SEQ ID NO:12の221-274位アミノ酸配列(SEQ ID NO: 78)を含む。例えば、前記ApoEポリペプチドまたは前記(1)におけるSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来するフラグメントは、SEQ ID NO:78に示されるアミノ酸配列のN末端に、さらに、1、2、3、4、5、または6個のアミノ酸残基を含んでも良く、及び/またはC末端に、さらに、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25個のアミノ酸残基を含んでも良い。一部の実施形態において、前記ApoEポリペプチド(例えば単離されたApoEポリペプチド)または前記(1)におけるSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来するフラグメントは、SEQ ID NO:78に示されるアミノ酸配列からなり、または基本的に、SEQ ID NO:78に示されるアミノ酸配列からなる。一部の実施形態において、前記ApoEポリペプチド(例えば単離されたApoEポリペプチド)または前記(1)におけるSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来するフラグメントは、少なくとも、SEQ ID NO:12の220-279位アミノ酸配列(SEQ ID NO: 34)を含む。例えば、前記ApoEポリペプチドまたは前記(1)におけるSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来するフラグメントは、SEQ ID NO:34に示されるアミノ酸配列のN末端に、さらに、1、2、3、4、または5個のアミノ酸残基を含んでも良く、及び/またはC末端に、さらに、1、2、3、4、5、5、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20個のアミノ酸残基を含んでも良い。一部の実施形態において、前記ApoEポリペプチド(例えば単離されたApoEポリペプチド)または前記(1)におけるSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来するフラグメントは、SEQ ID NO:34に示されるアミノ酸配列からなり、または基本的に、SEQ ID NO:34に示されるアミノ酸配列からなる。一部の実施形態において、前記ApoEポリペプチド(例えば単離されたApoEポリペプチド)または前記(1)におけるSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来するフラグメントは、少なくとも、SEQ ID NO:12の219-274位アミノ酸配列(SEQ ID NO: 32)を含む。例えば、前記ApoEポリペプチドまたは前記(1)におけるSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来するフラグメントは、SEQ ID NO:32に示されるアミノ酸配列のN末端に、さらに、1、2、3、または4個のアミノ酸残基を含んでも良く、及び/またはC末端に、さらに、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25個のアミノ酸残基を含んでも良い。一部の実施形態において、前記ApoEポリペプチド(例えば単離されたApoEポリペプチド)または前記(1)におけるSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来するフラグメントは、SEQ ID NO:32に示されるアミノ酸配列からなり、または基本的に、SEQ ID NO:32に示されるアミノ酸配列からなる。一部の実施形態において、前記ApoEポリペプチド(例えば単離されたApoEポリペプチド)または前記(1)におけるSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来するフラグメントは、少なくとも、SEQ ID NO:12の219-279位アミノ酸配列(SEQ ID NO: 31)を含む。例えば、前記ApoEポリペプチドまたは前記(1)におけるSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来するフラグメントは、SEQ ID NO:31に示されるアミノ酸配列のN末端に、さらに、1、2、3、または4個のアミノ酸残基を含んでも良く、及び/またはC末端に、さらに、1、2、3、4、5、5、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20個のアミノ酸残基を含んでも良い。一部の実施形態において、前記ApoEポリペプチド(例えば単離されたApoEポリペプチド)または前記(1)におけるSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来するフラグメントは、SEQ ID NO:31に示されるアミノ酸配列からなり、または基本的に、SEQ ID NO:31に示されるアミノ酸配列からなる。
【0074】
一部の実施形態において、前記ApoEコンストラクト(例えば単離されたApoEコンストラクト)、前記ApoEポリペプチド(例えば単離されたApoEポリペプチド)、または前記(1)におけるSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来するフラグメントは、SEQ ID NO:13、18-34、78と87(例えばSEQ ID NO:31-34、78と87、またはSEQ ID NO:33または78)中のいずれか一つのアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、前記ApoEコンストラクト(例えば単離されたApoEコンストラクト)、前記ApoEポリペプチド(例えば単離されたApoEポリペプチド)、または前記(1)におけるSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来するフラグメントは、SEQ ID NO:13、18-34、78と87(例えばSEQ ID NO:31-34、78と87、またはSEQ ID NO:33または78)中のいずれか一つのアミノ酸配列からなり、または基本的に、SEQ ID NO:13、18-34、78と87(例えばSEQ ID NO:31-34、78と87、またはSEQ ID NO:33または78)中のいずれか一つのアミノ酸配列からなる。
【0075】
本願に記載のApoEコンストラクトと前記ApoEポリペプチドは、その突然変異体(本明細書には、「ApoE突然変異体」とも呼ばれる)を含む。例えば、前記(1)におけるSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来するフラグメント(例えばSEQ ID NO:13、18-34、78と87のいずれか一つの配列)と比較すると、当該突然変異体は、一つまたは複数のアミノ酸突然変異(例えば挿入、欠失または置換)を有し、「酵素活性を阻害する保存的修飾」を含むが、これらに限定されない。例えば、当該突然変異体は、前記(1)におけるSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来するフラグメント(例えばSEQ ID NO:13、18-34、78と87のいずれか一つの配列)と、少なくとも約70%(例えば少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または以上)の配列同一性を有する。一部の実施形態において、前記突然変異体は、少なくとも約50%(例えば少なくとも約60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、100%、1.5倍、2倍、5倍、10倍または以上)の前記(1)におけるSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来するフラグメント(例えばSEQ ID NO:13、18-34、78と87のいずれか一つの配列)によるγセクレターゼ切断活性の阻害を保持する。一部の実施形態において、前記突然変異体は、少なくとも約50%(例えば少なくとも約60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、100%、1.5倍、2倍、5倍、10倍または以上)のApoE2(SEQ ID NO:12)またはApoE3(SEQ ID NO:89)またはSEQ ID NO:33に示されるApoEフラグメントによるγセクレターゼ切断活性の阻害を保持する。
【0076】
本明細書では、「酵素活性を阻害する保存的修飾」とは、タンパク質コンストラクトまたはポリペプチドによるγ-セクレターゼ切断(例えばAPPに対するγ-切断)の阻害に有意な影響(例えば約50%、40%、30%、20%、10%、5%、1%または以下を超えない低下)を与えないか、または変化させないアミノ酸修飾を指す。こんな酵素活性を阻害する保存的修飾は、アミノ酸替換、挿入及び/または欠失を含む。修飾は、部位特異的突然変異誘発またはPCR媒介突然変異誘発などの当技術分野で知られている標準的な技術によって、本発明のタンパク質コンストラクトまたはポリペプチドに導入され得る。一部の実施形態において、前記(1)におけるSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来するフラグメント(例えばSEQ ID NO:13、18-34、78と87のいずれか一つの配列)と比較すると、前記ApoE突然変異体は、1個または複数個(例えば40個以内、30個以内、20個以内、10個以内、8個以内、5個以内、3個以内、2個または1個)のアミノ酸插入、置換及び/または欠失(N末端及び/またはC末端での插入及び/または削除)を有する同時に、少なくとも約50%(例えば少なくとも約60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、100%、1.5倍、2倍、5倍、10倍または以上)の前記(1)におけるSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来するフラグメントによるγセクレターゼの切断(例えばAPPに対するγ-切断)を阻害する生物学活性を保持する。一部の実施形態において、前記ApoEポリペプチド(例えば単離されたApoEポリペプチド)は、少なくとも約50%(例えば少なくとも約60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、100%、1.5倍、2倍、5倍、10倍または以上)のApoE2(SEQ ID NO:12)またはApoE3(SEQ ID NO:89)またはSEQ ID NO:33に示されるApoEフラグメントによるγセクレターゼ切断活性の阻害を保持する。一部の実施形態において、前記ApoEポリペプチド(例えば単離されたApoEポリペプチド)は、前記(1)におけるSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来するフラグメント(例えばSEQ ID NO:13、18-34、78と87のいずれか一つの配列、例えばSEQ ID NO:33)と比較して、より高い(例えば少なくとも約1.2倍、1.5倍、2倍、5倍、10倍または以上)γセクレターゼの切断(例えばAPPに対するγ-切断)を阻害する生物学活性を有する。
【0077】
一部の実施形態において、前記ApoEポリペプチドは、実施例1の任意のApoEポリペプチドまたはApoEコンストラクト中の一つまたは複数のアミノ酸部位の突然変異(例えば挿入、欠失または置換)を含む。本発明は、実施例1と実施例2の中の任意のApoEポリペプチドまたはApoEコンストラクト(例えば単離されたもの)を提供する。
【0078】
一部の実施形態において、、前記ApoEポリペプチドは、SEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列に対する一つまたは複数のアミノ酸部位の突然変異(例えば挿入、欠失または置換)を含む:R226、D227、R228、L229、D230、Q235、E238、V239、R240、K242、E244、E245、Q246、A247、Q248、Q249、I250、R251、L252、Q253、A254、E255、Q275、V280、V287、T289、S290、A291、P293、V294、P295、S296、D297、N298、H299、R251+T289、R251+T289+A291、S290+P293+V294+P295+S296+D297+N298+H299、R226+D227+R228+L229+D230、E238+V239+R240+K242、またはE244+E245+Q246+A247+Q248+Q249+I250+R251+L252+Q253+A254。一部の実施形態において、前記ApoEポリペプチドは、SEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列の一つまたは複数のアミノ酸部位に対する突然変異を含む:Q235、E255、Q275、V280、V287、P295、R251+T289、S290+P293+V294+P295+S296+D297+N298+H299、R226+D227+R228+L229+D230、E238+V239+R240+K242、E244+E245+Q246+A247+Q248+Q249+I250+R251+L252+Q253+A254、またはR251+T289+A291。一部の実施形態において、前記突然変異は、前記の一つまたは複数の部位のA、SまたはTへの置換、例えばAへの置換を含む。一部の実施形態において、前記突然変異は、前記の一つまたは複数の部位のアミノ酸残基の削除を含む。
【0079】
一部の実施形態において、前記酵素活性を阻害する保存的修飾は、保存的な置換である。保存的な置換とは、アミノ酸残基が類似の側鎖を持つアミノ酸残基に置き換えられる置換である。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野において定義される。これらのファミリーには、次の側鎖を持つアミノ酸が含まれる:塩基性側鎖(リジン、アルギニン、ヒスチジンなど)、酸性側鎖(アスパラギン酸、グルタミン酸など)、非荷電極性側鎖(グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファンなど)、非極性側鎖(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニンなど)、β分岐側鎖(スレオニン、バリン、イソロイシンなど)、芳香族側鎖(チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジンなど)。
【0080】
一部の実施形態において、前記ApoEポリペプチドは、SEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列に対する一つまたは複数のアミノ酸部位の突然変異を含む:R226A、D227A、R228A、L229A、D230A、Q235A、E238A、V239A、R240A、K242A、E244del、E245del、Q246del、A247del、Q248del、Q249del、I250del、R251S、L252del、Q253del、A254del、E255A、Q275A、V280A、V287A、T289A、S290A、A291T、P293A、V294A、P295A、S296A、D297A、N298A、H299A、R251A+T289A、R251S+T289A+A291T、S290A+P293A+V294A+P295A+S296A+D297A+N298A+H299A、R226A+D227A+R228A+L229A+D230A、E238A+V239A+R240A+K242A、またはE244del+E245del+Q246del+A247del+Q248del+Q249del+I250del+R251del+L252del+Q253del+A254del。一部の実施形態において、前記ApoEポリペプチドは、SEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列に対する一つまたは複数のアミノ酸部位の突然変異を含む:Q235A、E255A、Q275A、V280A、V287A、P295A、R251A+T289A、S290A+P293A+V294A+P295A+S296A+D297A+N298A+H299A、R226A+D227A+R228A+L229A+D230A、E238A+V239A+R240A+K242A、E244del+E245del+Q246del+A247del+Q248del+Q249del+I250del+R251del+L252del+Q253del+A254del、またはR251S+T289A+A291T。
【0081】
一部の実施形態において、前記ApoEポリペプチドまたは前記ApoE突然変異体は、前記(1)におけるSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来するフラグメント(例えばSEQ ID NO:13、18-34、78と87のいずれか一つの配列、例えばSEQ ID NO:33)と少なくとも約70%の配列同一性、例えば少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または以上(しかし100%ではない)の同一性を有する。一部の実施形態において、前記ApoE突然変異体は、前記(1)におけるSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来するフラグメント(例えばSEQ ID NO:13、18-34、78と87のいずれか一つの配列、例えばSEQ ID NO:33)と比較して、同じレベルでγセクレターゼの切断を阻害し、または、少なくとも約50%(例えば少なくとも約60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、100%、1.5倍、2倍、5倍、10倍または以上)の前記(1)におけるSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来するフラグメントによるγセクレターゼ切断活性の阻害を保持する。一部の実施形態において、前記ApoE突然変異体は、前記(1)におけるSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来するフラグメントと同様に、ヒトから由来する。一部の実施形態において、前記ApoEポリペプチドは、非ヒト由来の配列を含むか、非ヒト由来の配列から由来する。当分野でよく知られる方法で、突然変異体と前記(1)におけるSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来するフラグメントとの間の配列同一性を測定し、例えば、BLASTPで測定しても良い。
【0082】
一部の実施形態において、前記ApoEポリペプチドは、非ヒト由来の配列を含むか、非ヒト由来の配列から由来し、且つそのアミノ酸配列は、前記(1)におけるSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来するフラグメント(例えばSEQ ID NO:13、18-34、78と87のいずれか一つの配列、例えばSEQ ID NO:33)と少なくとも約70%の配列同一性を有し、かつ少なくとも約50%の前記(1)におけるSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来するフラグメントによるγセクレターゼ切断活性の阻害を保持する。一部の実施形態において、前記ApoEポリペプチドは、以下のいずれか一つの種のApoE配列を含むか、それらから由来する:哺乳動物、鳥類、カエル、魚類、ショウジョウバエ、線虫など。一部の実施形態において、哺乳動物は、霊長類(例えばヒト、または非ヒト霊長類例えばサル)、げっ歯類(例えばマウス、ラット、ハムスター、スナネズミ、リス、アレチネズミ、リス、モルモット、ウサギ)、家畜(例えばブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、ロバ)、ペット(例えば猫、犬、ウサギ、ハムスターなど)を含むが、これらに限定されない。一部の実施形態において、前記ApoEポリペプチドは、非天然存在の修飾を含み、例えば、サルApoE配列にさらにアミノ酸修飾を含む。
【0083】
一部の実施形態において、前記ApoEポリペプチドまたは前記ApoE突然変異体は、ヒト以外の霊長類配列、例えば、前記(1)におけるSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来するフラグメント(例えばSEQ ID NO:13、18-34、78と87のいずれか一つの配列、例えばSEQ ID NO:33)と相同性が高く保存された配列を含有する。一部の実施形態において、前記ApoEポリペプチドは、SEQ ID NO:62に示されるサル由来のApoE C末端アミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、前記ApoEポリペプチドは、SEQ ID NO:62に示されるアミノ酸配列からなり、または、基本的にSEQ ID NO:62に示されるアミノ酸配列からなる。
【0084】
一部の実施形態において、前記ApoEポリペプチドは、SEQ ID NO:33に示されるアミノ酸配列に基づく一つまたは複数の突然変異(例えば挿入、欠失または置換)、例えば、前記の一つまたは複数の部位の突然変異を含み、または、SEQ ID NO:33に示されるアミノ酸配列と少なくとも約70%(例えば少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または以上)の配列同一性を有する。一部の実施形態において、前記ApoEポリペプチドSEQ ID NO:33に示されるアミノ酸配列に基づく一つまたは複数の突然変異(例えば挿入、欠失または置換)、例えば、前記のいずれか一つまたは複数の部位の突然変異を含み、または、SEQ ID NO:33に示されるアミノ酸配列と少なくとも約70%(例えば少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または以上)の配列同一性を有し、且つ少なくとも約50%(例えば少なくとも約60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、100%、1.5倍、2倍、5倍、10倍または以上)のSEQ ID NO:33に示されるアミノ酸配列によるγセクレターゼ切断活性の阻害を保持する。
【0085】
一部の実施形態において、前記ApoEコンストラクトまたは前記ApoEポリペプチドは、SEQ ID NO:46-52、57-59、62と76中のいずれか一つのアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、前記ApoEコンストラクトまたは前記ApoEポリペプチドは、SEQ ID NO:46-52、57-59、62と76中のいずれか一つのアミノ酸配列からなり、または基本的にSEQ ID NO:46-52、57-59、62と76中のいずれか一つのアミノ酸配列からなる。
【0086】
一部の実施形態において、前記ApoEコンストラクト(例えば単離されたApoEコンストラクト)、前記ApoEポリペプチド(例えば単離されたApoEポリペプチド、またはApoE突然変異体)、または前記(1)におけるSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来するフラグメント(例えばSEQ ID NO:13、18-34、78と87のいずれか一つの配列)によるγセクレターゼに仲介される切断(例えばAPPに対するγ-切断)の阻害作用は、以下の一つまたは複数の特性を含む:(i)γ-セクレターゼに仲介されるAPP γ-切断を阻害(例えば少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または100%を阻害)すること;(ii)APPのアミロイド代謝を低下(例えば少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または100%を低下)すること;(iii)Aβ(例えばAβ40及び/またはAβ42)の産生を 低減(例えば少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または100%を低減)すること;(iv)β-CTFに対するγ-切断を低下(例えば少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または100%を低下)すること;(v)APPの非アミロイド代謝を向上(例えば少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、100%、2倍、5倍、10倍、20倍または以上を向上)すること;(vi)α-CTFの産生を増加(例えば少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、100%、2倍、5倍、10倍、20倍または以上を増加)すること;(vii)非APPタンパク質(例えばAPLP1またはNotch)またはそのフラグメントに対するγ-切断を阻害しない(または約30%、20%、10%、5%または以下しか阻害しない)こと;(viii)非APPタンパク質(例えばAPLP1、Notch、ErbB4、E-cadherin、N-cadherin、ephrin-B2またはCD44)のγ-切断で産生されるα-CTFを増加しない(または約30%、20%、10%、5%または以下しか増加しない)こと;(ix)ADを罹患する個体の脳中のアミロイド斑を低減(例えば少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または100%を低減)し、例えばアミロイド斑の平均斑大きさ、総面積、及び/または密度を低減(例えば少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または100%を低減)すること;(x)ADを罹患する個体のニューロン内Aβ(例えばAβ40及び/またはAβ42)の産生を低減(例えば少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または100%を低減)すること;(xi)ADを罹患する個体の病理学的プロセスを低下(例えば少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または100%を低下)すること;(xii)ADを罹患する個体の生存率及び/または寿命を向上(例えば少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、100%、2倍、5倍、10倍、20倍または以上を向上)すること;及び/または(xiii)α-セクレターゼ、β-セクレターゼ、及び/またはγ-セクレターゼ(またはそのサブユニット)(例えばADAM10、BACE1、PS1及び/またはPS2)のmRNA及び/またはタンパク質発現に影響を与えない(または約30%、20%、10%、5%または以下しか影響を与えない)。
【0087】
一部の実施形態において、前記ApoEコンストラクト(例えば単離されたApoEコンストラクト)、前記ApoEポリペプチド(例えば単離されたApoEポリペプチド、またはApoE突然変異体)、または前記(1)におけるSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来するフラグメントによるγ-セクレターゼ切断(例えばAPPに対するγ-切断)を阻害する能力は、SEQ ID NO:12または33または89に示されるタンパク質によるγ-セクレターゼ切断を阻害する能力より高い(例えば少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、100%、2倍、5倍、10倍、20倍または以上高い)。一部の実施形態において、前記ApoEコンストラクト、前記ApoEポリペプチド(例えば単離されたApoEポリペプチド、またはApoE突然変異体)、または前記(1)におけるSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来するフラグメントによるγ-セクレターゼ切断(例えばAPPに対するγ-切断)を阻害する能力は、SEQ ID NO:12または33または89に示されるタンパク質によるγ-セクレターゼ切断を阻害する能力と同じまたは類似する(例えばそれらの差は、約10%を超えない)。一部の実施形態において、前記ApoEコンストラクト、前記ApoEポリペプチド(例えば単離されたApoEポリペプチド、またはApoE突然変異体)、または前記(1)におけるSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来するフラグメントによるγ-セクレターゼ切断(例えばAPPに対するγ-切断)を阻害する能力は、SEQ ID NO:12または33または89に示されるタンパク質によるγ-セクレターゼ切断を阻害する能力より、最大約50%低い(例えば40%、30%、20%、10%、5%、1%または以下低い)。
【0088】
一部の実施形態において、前記ApoEコンストラクト(例えば単離されたApoEコンストラクト)、前記ApoEポリペプチド(例えば単離されたApoEポリペプチド、またはApoE突然変異体)、または前記(1)におけるSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来するフラグメント(例えばSEQ ID NO:13、18-34、78と87のいずれか一つの配列)によるγセクレターゼに仲介される切断(例えばAPPに対するγ-切断)の阻害活性は、γ-セクレターゼ阻害剤(例えばPF03084014)と同じまたは類似する(例えばそれらの差は、約10%、5%または1%を超えない)。一部の実施形態において、前記ApoEコンストラクト(例えば単離されたApoEコンストラクト)、前記ApoEポリペプチド(例えば単離されたApoEポリペプチド、またはApoE突然変異体)、または前記(1)におけるSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来するフラグメントによるγセクレターゼに仲介される切断(例えばAPPに対するγ-切断)を阻害する活性は、γ-セクレターゼ阻害剤(例えばPF03084014)より高い(例えば少なくとも約10%、20%、50%、100%、1.5倍、2倍、5倍または以上高い)。一部の実施形態において、前記ApoEコンストラクト(例えば単離されたApoEコンストラクト)、前記ApoEポリペプチド(例えば単離されたApoEポリペプチド、またはApoE突然変異体)、または前記(1)におけるSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来するフラグメントによるγセクレターゼに仲介される切断(例えばAPPに対するγ-切断)を阻害する活性は、γ-セクレターゼ阻害剤(例えばPF03084014)より低い(例えば少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または以上低い)。
【0089】
一部の実施形態において、前記ApoEコンストラクト(例えば単離されたApoEコンストラクト)、前記ApoEポリペプチド(例えば単離されたApoEポリペプチド、またはApoE突然変異体)、または前記(1)におけるSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来するフラグメント(例えばSEQ ID NO:13、18-34、78と87のいずれか一つの配列)によるAPPに対するγ-切断の阻害は、非APPタンパク質(例えばAPLP1、Notch)に対するγ-切断の阻害より高い(例えば少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、100%、2倍、5倍、10倍、20倍または以上高い)。一部の実施形態において、前記ApoEコンストラクト(例えば単離されたApoEコンストラクト)、前記ApoEポリペプチド(例えば単離されたApoEポリペプチド、またはApoE突然変異体)、または前記(1)におけるSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来するフラグメントは、APPに対するγ-切断しか阻害しなく、非APPタンパク質(例えばAPLP1、Notch)に対するγ-切断を阻害しないか、ほとんど阻害しない。
【0090】
一部の実施形態において、α-アミラーゼ阻害剤(例えばGI254023X)及び/またはβ-アミラーゼ阻害剤(例えばAZD3839)は、前記ApoEコンストラクト(例えば単離されたApoEコンストラクト)、前記ApoEポリペプチド(例えば単離されたApoEポリペプチド、またはApoE突然変異体)、または前記(1)におけるSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列から由来するフラグメントによるγセクレターゼ切断(例えばAPPに対するγ-切断)活性の阻害に影響を与えなく、または約50%以下(例えば約40%、30%、20%、10%、5%、1%または以下)に影響を与える。例えば、α-アミラーゼ阻害剤またはβ-アミラーゼ阻害剤の存在下で、前記ApoEコンストラクトまたはApoEポリペプチドは、依然として、APPから産生されるα-CTFレベルを向上し、Aβの産生を低減することができる。
【0091】
γセクレターゼ切断(例えばAPPに対するγ-切断)活性に対する影響は、当分野の任意の適当な方式、例えば、γセクレターゼの酵素活性自身を研究し、またはγセクレターゼの切断産物(例えばAβ、如Aβ40またはAβ42)の特性または量を研究し、またはγセクレターゼ基質(例えばAPP、α-CTF、β-CTF、APLP1、Notch、ErbB4、E-cadherin、N-cadherin、ephrin-B2あるいは CD44)の特性または量(例えばγ切断により減少するかどうか)を研究することによって研究を行ってもよい。これらの研究方法は、qRT-PCR、BCA、フローサイトメトリー、プロテオミクス、メタボロミクス、ELISA、Western blot、免疫共沈降、タンパク質蛍光標識、免疫染色などを含むが、これらに限定されなく、インビボでもインビトロでも可能(細胞実験または非細胞実験)である。任意のγセクレターゼ活性検出キット、例えばMyBioSourceの#MBS704513キット、またはR&D Systemsの#FP003キットは、ここに用いられる。なお、実施例1と2に記載される研究方式も参照する。
【0092】
一部の実施形態において、前記ApoEコンストラクトは、いずれか一つの前記ApoEポリペプチド(例えばSEQ ID NO:13、18-34、46-52、57-59、62、76、78と87のいずれか一つの配列)のN末端に、さらに、ApoE2タンパク質のN末端ドメイン配列または一部の配列(例えばSEQ ID NO:12の1-167位アミノ酸配列または一部の配列;SEQ ID NO:79)、及び/またはヒンジ領域配列または一部の配列(例えばSEQ ID NO:12の168-205位アミノ酸配列または一部の配列;SEQ ID NO:80)、またはApoE2タンパク質のN末端ドメイン配列(または一部の配列)及び/またはヒンジ領域配列(または一部の配列)と少なくとも約70%(例えば少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または以上)の同一性を有する配列(例えば非ヒトの霊長類(例えばサル)のApoE同種配列)を含む。一部の実施形態において、前記ApoEコンストラクトは、いずれか一つの前記ApoEポリペプチド(例えばSEQ ID NO:13、18-34、46-52、57-59、62、76、78と87のいずれか一つの配列)のN末端に、さらに、ApoE3タンパク質のN末端ドメイン配列または一部の配列(例えば1-167位アミノ酸配列または一部の配列;SEQ ID NO:90)、及び/またはヒンジ領域配列または一部の配列(例えば168-205位アミノ酸配列または一部の配列;SEQ ID NO:80)、またはApoE3タンパク質のN末端ドメイン配列(または一部の配列)及び/またはヒンジ領域配列(または一部の配列)と少なくとも約70%(例えば少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または以上)の同一性を有する配列(例えば非ヒトの霊長類(例えばサル)のApoE同種配列)を含む。一部の実施形態において、前記ApoEコンストラクトは、前記ApoEポリペプチドのN末端に、さらに、ApoE C末端ドメイン(SEQ ID NO:12の206-299位)から由来する一部の配列(例えばそのN末端一部の配列)、例えばSEQ ID NO:12の206-214位アミノ酸の配列または一部の配列、またはApoE C末端ドメインの当該一部の配列と少なくとも約70%(例えば少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または以上)の同一性を有する配列を含む。一部の実施形態において、前記ApoE2またはApoE3タンパク質(または非ヒト同種タンパク質)のN末端ドメイン配列または一部の配列のC末端、または(N末端ドメイン+ヒンジ領域)配列または一部の配列のC末端、または(N末端ドメイン+ヒンジ領域+C末端ドメインの一部のN末端配列)配列のC末端は、ペプチド結合またはリンカー配列(例えばタンパク質リンカー配列)によって、前記ApoEポリペプチドのN末端に接続する。一部の実施形態において、ヒトApoE2またはApoE3タンパク質のN末端ドメイン(または一部の配列)及び/またはヒンジ領域(または一部の配列)及び/またはC末端ドメイン(またはそのN末端の一部の配列)に対して同種のApoEタンパク質配列は、以下の任意の種から由来する配列である:哺乳動物(例えば非ヒトの霊長類例えばサル、げっ歯類、家畜、ペット)、鳥類、カエル、魚類、ショウジョウバエ、線虫など。
【0093】
一部の実施形態において、前記ApoEコンストラクトは、いずれか一つの前記ApoEポリペプチド(例えばSEQ ID NO:13、18-34、46-52、57-59、62、76、78と87のいずれか一つの配列)のN末端に、さらに、SEQ ID NO:12の1-167位(SEQ ID NO:79)または1-205位(SEQ ID NO:81)または1-214位アミノ酸残基のアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:12の1-167位または1-205位または1-214位アミノ酸と少なくとも約70%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、前記ApoEコンストラクトは、SEQ ID NO:60または61に示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、前記ApoEコンストラクトは、SEQ ID NO:60または61に示されるアミノ酸配列からなり、または基本的にSEQ ID NO:60または61に示されるアミノ酸配列からなる。
【0094】
一部の実施形態において、前記ApoEコンストラクトは、いずれか一つの前記ApoEポリペプチド(例えばSEQ ID NO:13、18-34、46-52、57-59、62、76、78と87のいずれか一つの配列)のN末端に、さらに、ApoE3(SEQ ID NO:89)の1-167位(SEQ ID NO:90)または1-205位または1-214位アミノ酸残基のアミノ酸配列、またはApoE3の1-167位または1-205位または1-214位アミノ酸と少なくとも約70%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0095】
一部の実施形態において、前記ApoEコンストラクトは、ApoE2(例えばヒトApoE2、SEQ ID NO:12)の全長配列を含む(またはそれからなる、または基本的にそれからなる)。一部の実施形態において、前記ApoEコンストラクトは、ApoE3(例えばヒトApoE3、SEQ ID NO:89)の全長配列を含む(またはそれからなる、または基本的にそれからなる)。
【0096】
一部の実施形態において、前記ApoEコンストラクトは、いずれか一つの前記ApoEポリペプチド(例えばSEQ ID NO:13、18-34、46-52、57-59、62、76、78と87のいずれか一つの配列、またはApoE2またはApoE3全長配列)のN末端またはC末端に、さらに一つの膜透過ペプチドを含む。一部の実施形態において、前記膜透過ペプチドは、SEQ ID NO:35-45、63-65と84-86中のいずれか一つのアミノ酸配列、例えばSEQ ID NO:63または65に示されるアミノ酸配列を含む(またはそれからなる、または基本的にそれからなる)。一部の実施形態において、前記膜透過ペプチド(例えばC末端)は、ペプチド結合またはリンカー配列(例えばタンパク質リンカー配列)によって、前記ApoEポリペプチド(例えばN末端)、または前記SEQ ID NO:12または89の1-167位(またはそのフラグメント)または1-205位(またはそのフラグメント)または1-214位(またはそのフラグメント)アミノ酸残基を含むアミノ酸配列(例えばN末端)、または前記SEQ ID NO:12または89の1-167位(またはそのフラグメント)または1-205位(またはそのフラグメント)または1-214位(またはそのフラグメント)アミノ酸と少なくとも約70%の同一性を有する配列(例えばN末端)に接続する。一部の実施形態において、前記膜透過ペプチドのN末端は、さらに、ペプチド結合またはリンカー配列によって、シグナルペプチドのC末端に接続する。一部の実施形態において、前記膜透過ペプチドは、前記ApoEコンストラクトの最もN末端に位置する。一部の実施形態において、前記膜透過ペプチドは、前記ApoEコンストラクトの最もC末端に位置する。
【0097】
一部の実施形態において、本発明は、ApoEコンストラクト(または融合タンパク質)を提供し、当該融合タンパク質は、以下のエレメント(1)とエレメント(2)を含む:(1)膜透過ペプチド、と(2)ApoE2の全長配列(例えばSEQ ID NO:12)、またはApoE3の全長配列(例えばSEQ ID NO:89)、またはApoE2の少なくともSEQ ID NO:12の221-274位アミノ酸残基を含むフラグメント。前記エレメント(1)とエレメント(2)の間は、ペプチド結合によって直接に接続しても良く、リンカー配列を介して接続しても良い。
【0098】
膜透過ペプチドまたは細胞膜透過ペプチド、巨大分子を細胞内に運ぶことができる一種の短いペプチドを指す。当分野によく知られる膜透過ペプチドで、本発明の融合タンパク質を構築しても良い。例示的なの膜透過ペプチドは、Siegmund Reissmann、Cell penetration: scope and limitations by the application of cell-penetrating peptides、J. Pept. Sci. 2014;20:760-784を参照する。本明細書では、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。本発明に適する膜透過ペプチドは、RQIKIWFQNRRMKWKK(SEQ ID NO:35);YGRKKRRQRRR(SEQ ID NO:36);KQAIPVAK(SEQ ID NO:37);RRRRNRTRRNRRRVR(SEQ ID NO:38);オリゴアルギニン(即ち、長さ9-12個のアルギニン残基のフラグメント;R9(SEQ ID NO:63)、R10(SEQ ID NO:84)、R11(SEQ ID NO:85)、R12(SEQ ID NO:86));KLTRAQRRAAARKNKRNTRGC(SEQ ID NO:39);ALWKTLLKKVLKAPKKKRKVC(SEQ ID NO:40);RKKRRQRRR(SEQ ID NO:41);DAATATRGRSAASRPTERPRAPARSASRPRRPVE(SEQ ID NO:42);GWTLNSAGYLLGKINLKALAALAKKIL(SEQ ID NO:43);AGYLLGKINLKALAALAKKIL(SEQ ID NO:44);YTAIAWVKAFIRKLRK(SEQ ID NO:45);及びKSVRTWNEIIPSKGCLRVGGRCHPHVNGGGRRRRRRRRR(SEQ ID NO:65)を含むが、これらに限定されない。
【0099】
一部の実施形態において、融合タンパク質におけるエレメント(2)に記載のApoE2の少なくともSEQ ID NO:12の221-274位アミノ酸残基を含むフラグメントは、本明細書のいずれか一つの実施形態に記載の単離されたApoEポリペプチド、及びApoE2またはApoE3のN末端とヒンジ領域(またはそのフラグメント)及びC末端の少なくとも221-274位アミノ酸残基を含有するフラグメントであっても良い。一部の実施形態において、前記のApoE2ポリペプチドは、以下のいずれか一つの配列を含んでも良い:SEQ ID NO:12の1-274位、1-279位、及び1-280位、1-281位、1-282位、1-283位、1-284位、1-285位、1-286位、1-287位、1-288位、1-289位、1-290位、1-291位、1-292位、1-293位、1-294位、1-295位、1-296位、1-297位、1-298位、または1-299位アミノ酸残基。
【0100】
一部の実施形態において、前記融合タンパク質におけるエレメント(2)は、SEQ ID NO:12、13、18-34、60、78、87と89中のいずれか一つのアミノ酸配列から選ばれる。
【0101】
一部の実施形態において、前記リンカーは、非タンパク質リンカーである。一部の実施形態において、前記リンカーは、タンパク質リンカーである。一部の実施形態において、前記リンカーは、3~25個の残基を含むペプチド、例えば3~15、5~15、10~20、20-25、または3-10個の残基を含むペプチドである。ペプチドリンカーの適当な実例は、当分野で公知されるものである。通常、リンカーは、一つまたは複数の前後に反復するモチーフを含有し、当該モチーフは、通常にGly及び/またはSerを含有する。例えば、当該モチーフは、SGGS(SEQ ID NO:69)、GSSGS(SEQ ID NO:70)、GGGS(SEQ ID NO:71)、GGGGS(SEQ ID NO:72)、SSSSG(SEQ ID NO:73)、GSGSA(SEQ ID NO:74)GGSGG(SEQ ID NO:75)またはGGGSGGGS(SEQ ID NO:88)であっても良い。一部の実施形態において、前記モチーフは、リンカー配列中で隣接し、繰り返し部分の間にアミノ酸残基は挿入されていない。リンカー配列は、1、2、3、4又は5個の繰り返しモチーフの組成を含んでも良い。ある実施の形態において、リンカー配列は、ポリグリシンリンカー配列である。リンカー配列におけるグリシンの数は、特に制限されなく、通常に、2~20個、例えば2~15、2~10、2~8個である。グリシンとセリン以外に、リンカーには、他の既知なアミノ酸残基、例えばアラニン、ロイシン、スレオニン、グルタミン酸、フェニルアラニン、アルギニン、グルタミンなどを含んでも良い。一部の実施形態において、前記リンカー配列は、SEQ ID NO:88に示される。
【0102】
本発明のApoEコンストラクトまたは融合タンパク質には、遺伝子クローニング操作、融合タンパク質の構築、組換えタンパク質の発現の促進、宿主細胞から自動的に分泌される組換えタンパク質の取得、または組換えタンパク質の検出および/または精製の容易化などを目的として、融合タンパク質へアミノ酸残基または配列を導入することも可能である。一部の実施形態において、本発明のApoEコンストラクトまたは融合タンパク質には、さらに、シグナルペプチド、リーダーペプチド、末端伸長、タグタンパク質などを含む。
【0103】
一部の実施形態において、前記ApoEコンストラクトは、特に細胞で発現するしようとする場合、前記ApoEポリペプチドのN末端に、さらに、シグナルペプチドを含む。一部の実施形態において、前記シグナルペプチドのC末端は、ペプチド結合またはリンカー配列(例えばタンパク質リンカー配列)によって、前記ApoEポリペプチド(例えばSEQ ID NO:13、18-34、46-52、57-59、62、76、78と87のいずれか一つの配列、またはApoE2またはApoE3全長配列)のN末端、または前記のSEQ ID NO:12または89の1-167位(またはそのフラグメント)または1-205位(またはそのフラグメント)または1-214位(またはそのフラグメント)アミノ酸残基を含むアミノ酸配列のN末端、または前記SEQ ID NO:12または89の1-167位(またはそのフラグメント)または1-205位(またはそのフラグメント)または1-214位(またはそのフラグメント)アミノ酸と少なくとも約70%の同一性を有する配列のN末端、または膜透過ペプチドのN末端に接続する。一部の実施形態において、前記シグナルペプチドは、前記ApoEコンストラクトの最もN末端に位置する。一部の実施形態において、前記シグナルペプチドは、さらにSEQ ID NO:60または61に示されるアミノ酸配列のN末端に挿入される。一部の実施形態において、前記シグナルペプチドは、さらに、ApoE2(例えばSEQ ID NO:12)またはApoE3(例えばSEQ ID NO:89)の全長配列のN末端に挿入される。一部の実施形態において、前記シグナルペプチドのC末端は、さらに、ペプチド結合またはリンカー配列(例えばタンパク質リンカー配列)によって、膜透過ペプチドのN末端に接続する。任意のよく知られたシグナルペプチドは、ここで用いられる。一部の実施形態において、前記シグナルペプチドは、前記ApoEコンストラクトまたは前記ApoEポリペプチドに対して同種であり、例えばApoE2(SEQ ID NO:12)またはApoE3(SEQ ID NO:89)タンパク質自己から由来するシグナルペプチドである。一部の実施形態において、前記シグナルペプチドは、前記ApoEコンストラクトまたは前記ApoEポリペプチドに対して異種であり、例えば、ApoA1またはApoJから由来するシグナルペプチドである。一部の実施形態において、前記シグナルペプチドは、SEQ ID NO:66-68に示されるいずれか一つのアミノ酸配列を含む(またはそれからなる、または基本的にそれからなる)。
【0104】
一部の実施形態において、前記ApoEコンストラクトは、N末端からC末端まで、以下の配列を含む(またはそれらからなる、または基本的にそれらからなる):
シグナルペプチド-任意のリンカー1-膜透過ペプチド(例えばSEQ ID NO:63または65に示されるアミノ酸配列)-任意のリンカー2 - ApoE2タンパク質(例えばSEQ ID NO:12)またはApoE3タンパク質(例えばSEQ ID NO:89);
シグナルペプチド-任意のリンカー-ApoE2タンパク質(例えばSEQ ID NO:12)またはApoE3タンパク質(例えばSEQ ID NO:89);
ApoE2タンパク質(例えばSEQ ID NO:12)またはApoE3タンパク質(例えばSEQ ID NO:89);
膜透過ペプチド(例えばSEQ ID NO:63または65に示されるアミノ酸配列)-任意のリンカー-ApoE2タンパク質(例えばSEQ ID NO:12)またはApoE3タンパク質(例えばSEQ ID NO:89);
シグナルペプチド-任意のリンカー1 - 膜透過ペプチド(例えばSEQ ID NO:63または65に示されるアミノ酸配列)-任意のリンカー2 - いずれか一つの前記ApoEポリペプチド(例えばSEQ ID NO:13、18-34、46-52、57-59、62、76、78と87のいずれか一つの配列、例えばSEQ ID NO:33);
膜透過ペプチド(例えばSEQ ID NO:63または65に示されるアミノ酸配列)-任意のリンカー-いずれか一つの前記ApoEポリペプチド(例えばSEQ ID NO:13、18-34、46-52、57-59、62、76、78と87のいずれか一つの配列、例えばSEQ ID NO:33);
シグナルペプチド-任意のリンカー-いずれか一つの前記ApoEポリペプチド(例えばSEQ ID NO:13、18-34、46-52、57-59、62、76、78と87のいずれか一つの配列、例えばSEQ ID NO:33);
いずれか一つの前記ApoEポリペプチド(例えばSEQ ID NO:13、18-34、46-52、57-59、62、76、78と87のいずれか一つの配列、例えばSEQ ID NO:33);
シグナルペプチド-任意のリンカー1-膜透過ペプチド(例えばSEQ ID NO:63または65に示されるアミノ酸配列)-任意のリンカー2-ApoE2またはApoE3 N末端ドメイン及び/またはヒンジ領域及び/または(C末端ドメインのN末端)配列またはフラグメント(例えばSEQ ID NO:79-81と90中のいずれか一つに示されるアミノ酸配列またはそのフラグメント)-任意のリンカー3-いずれか一つの前記ApoEポリペプチド(例えばSEQ ID NO:13、18-34、46-52、57-59、62、76、78と87のいずれか一つの配列、例えばSEQ ID NO:33);
膜透過ペプチド(例えばSEQ ID NO:63または65に示されるアミノ酸配列)-任意のリンカー1-ApoE2またはApoE3 N末端ドメイン及び/またはヒンジ領域及び/または(C末端ドメインのN末端)配列またはフラグメント(例えばSEQ ID NO:79-81と90中のいずれか一つに示されるアミノ酸配列またはそのフラグメント)-任意のリンカー2-いずれか一つの前記ApoEポリペプチド(例えばSEQ ID NO:13、18-34、46-52、57-59、62、76、78と87のいずれか一つの配列、例えばSEQ ID NO:33);
シグナルペプチド-任意のリンカー1-ApoE2またはApoE3 N末端ドメイン及び/またはヒンジ領域及び/または(C末端ドメインのN末端)配列またはフラグメント(例えばSEQ ID NO:79-81と90中のいずれか一つに示されるアミノ酸配列またはそのフラグメント)-任意のリンカー2-いずれか一つの前記ApoEポリペプチド(例えばSEQ ID NO:13、18-34、46-52、57-59、62、76、78と87のいずれか一つの配列、例えばSEQ ID NO:33);
ApoE2またはApoE3 N末端ドメイン及び/またはヒンジ領域及び/または(C末端ドメインのN末端)配列またはフラグメント(例えばSEQ ID NO:79-81と90中のいずれか一つに示されるアミノ酸配列またはそのフラグメント)-任意のリンカー-いずれか一つの前記ApoEポリペプチド(例えばSEQ ID NO:13、18-34、46-52、57-59、62、76、78と87のいずれか一つの配列、例えばSEQ ID NO:33);
シグナルペプチド-任意のリンカー1-膜透過ペプチド(例えばSEQ ID NO:63または65に示されるアミノ酸配列)-任意のリンカー2-(SEQ ID NO:60または61に示されるアミノ酸配列);
膜透過ペプチド(例えばSEQ ID NO:63または65に示されるアミノ酸配列)-任意のリンカー-(SEQ ID NO:60または61に示されるアミノ酸配列);
SEQ ID NO:60または61に示されるアミノ酸配列;または
シグナルペプチド-任意のリンカー-(SEQ ID NO:60または61に示されるアミノ酸配列)。
【0105】
一部の実施形態において、前記ApoEコンストラクトは、前記ApoEポリペプチドのN末端及び/またはC末端に、さらに、タグタンパク質を含む。一部の実施形態において、前記タグタンパク質は、前記ApoEコンストラクトの最もN末端に位置する。一部の実施形態において、前記タグタンパク質は、前記ApoEコンストラクトの最もC末端に位置する。一部の実施形態において、前記タグタンパク質(例えばSEQ ID NO:77に示される3XFLAG配列)は、前記ApoEコンストラクトの内部に位置するが、前記ApoEポリペプチドのN末端に位置し、例えば、前記ApoEポリペプチドのN末端に直接に連結する。前記タグタンパク質は、発現精製タグ(例えばHis-tag、FLAG-tag、GST-tag、c-Myc-tag、V5-tag、HA-tag)であっても良く、または、検出タグ(例えばGFP、RFP、V5、HA)であっても良い。一部の実施形態において、精製タグは、検出に使用されてもよく、例えば免疫ブロットまたは抗体による検出に用いられる。一部の実施形態において、前記タグタンパク質は、前記ApoEコンストラクト(例えばApoE2またはApoE3、またはSEQ ID NO:33配列を含むApoEポリペプチド)の最もN末端に位置する。一部の実施形態において、前記タグタンパク質は、前記ApoEコンストラクトの最もC末端に位置する。一部の実施形態において、前記タグタンパク質は、V5タグGKPIPNPLLGLDST(SEQ ID NO:82)またはIPNPLLGLD(SEQ ID NO:83)である。一部の実施形態において、前記タグタンパク質は、FLAGタグ(例えばSEQ ID NO:77)である。
【0106】
アミロイド前駆体タンパク質(Amyloid-beta precursor protein、APP)と加水分解
APPは、細胞膜に埋め込まれたタンパク質であり、主にニューロンのシナプスに集中すす。それが、α、β、γセクレターゼの切断部位を含有する。APPは、多くの異なる種で発現され、高い相同性を持つ。本明細書に記載のAPPは、いずれかの種から由来されてもよく、例えば哺乳動物、鳥類、カエル、魚類、ショウジョウバエ、線虫などから由来されてもよい。哺乳動物は、霊長類(例えばヒト、または非ヒト霊長類例えばサル)、げっ歯類(例えばマウス、ラット、ハムスター、アレチネズミ、リス、モルモット、ウサギ)、家畜(例えばブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、ロバ)、ペット(例えば猫、犬、ウサギ、ハムスターなど)を含むが、これらに限定されない。一部の実施の形態において、前記APPは、ヒトAPPである。
【0107】
APPのアミロイド代謝が、短いβアミロイドポリペプチド(Aβ)を産生する。Aβポリペプチドは、AβのN末端位置近くのβ-セクレターゼ活性による、およびAβのC末端位置近くのガンマセクレターゼ活性によるAPPの切断によって調製される。APPはα-セクレターゼ活性によっても切断され、可溶性 APPα の分泌された非アミロイド フラグメントが生成される。β部位APP切断酵素(「BACE-1」)は、βセクレターゼ活性によるAβの産生に関与する主要なアスパルチル プロテアーゼであると考えられる。BACE-1阻害はAβの産生を阻害する。BACE1は、APPを切断し、細胞外ドメイン(sAPPβ)を細胞外空間に放出する内腔活性部位を持つI型膜貫通タンパク質である。残りのC末端フラグメント(CTF)は、γ-セクレターゼによってさらに切断され、その結果、AβおよびAPP細胞内C末端ドメイン(AICD)が放出される。プレセニリンはγ-セクレターゼの主要な酵素成分であり、γ-セクレターゼによるAPPの不正確な切断により、C末端で長さが数アミノ酸ずつ異なる連続したAβポリペプチドが産生される。ほとんどのAβは、通常に、アミノ酸40(Aβ40)で終わるが、42アミノ酸バリアント(Aβ42)は、凝集しやすいことが示され、老人斑形成の核となるとの仮説が立てられる。γ-セクレターゼの調節も、38アミノ酸バリアント(Aβ38)の増加につながる可能性がある。競合するα-セクレターゼ経路は、α-セクレターゼとγ-セクレターゼによる連続的な切断の結果である。ADAM-10は、APP切断のためのα-セクレターゼであり、当該切断は、神経保護機能を示す細胞外ドメイン(sAPPα)を放出する(Lammichら,(1999)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,96:3922-3927)。続いて83アミノ酸CTF(C83)が切断され、p3(非アミロイド性)とAICDが放出される(Furukawaら,(1996)J.Neurochem.,67:1882-1896)。
【0108】
Aβは、βアミロイド線維および斑の主要成分であり、前記βアミロイド線維及び斑は、増加する病状に関与していると考えられる。このような病状の例は、アルツハイマー病、ダウン症候群、パーキンソン病、記憶喪失(アルツハイマー病およびパーキンソン病に伴う記憶喪失を含む)、注意欠陥障害(アルツハイマー病、パーキンソン病、ダウン症候群に関連するものを含む)、認知症(初老期認知症、老人性認知症、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病、ダウン症候群に関連する認知症を含む)、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性、神経変性、嗅覚障害(アルツハイマー病、パーキンソン病、ダウン症候群に関連するものを含む)、ベータアミロイド脳血管疾患(脳アミロイド脳血管疾患を含む)、遺伝性脳出血、軽度認知障害(「MCI」)、緑内障、アミロイドーシス、II型糖尿病、血液透析(β2ミクログロブリンとその合併症)、スクレイピー、牛海綿状脳炎、クロイツフェルト・ヤコブ病、外傷性脳損傷などの神経変性疾患を含むが、これらに限定されない。
【0109】
一部の実施の形態において、前記APPは、野生型APPである。一部の実施の形態において、前記APPは、天然に存在するAPPサブタイプである。一部の実施形態において、前記APPは、任意の既知または未知のAPP突然変異体を含むがこれらに限定されない突然変異体である。APP突然変異は、121ファミリーで確認される。最も一般的なミスセンス変異は、Val717残基をIle(ロンドン変異)、Phe、またはGly残基に置き換え、Glu693をGln残基(Dutch変異)またはGly残基(Arctic変異)に置き換え、または、Lys670とMet671をAsnとLeu残基に置き換える(二重変異はスウェーデン変異APPSWと呼ばれ、APP770アイソフォームで番号が付けられる)。一部の実施形態において、前記APPは、ヒトAPPであり、以下の一つまたは複数の突然変異を含む:K670N、M671L、スウェーデン(K670N+M671L)、フロリダ(I716V)、ロンドン(V717I)、APPM596V(β切断は実行できない)、γ切断部位に近いfAD変異(例えば、T714I、V717F、L723P)、βまたはα切断部位に近いfAD突然変異(例えば、KM670/671NL、E693K、E693Δ)、または保護的アイスランド突然変異(A673T)。一部の実施形態において、前記APPは、γ-切断に影響を与える突然変異、例えばγ部位に近い突然変異を含まない。
【0110】
一部の実施形態において、前記ApoEコンストラクトまたはApoEポリペプチドは、いずれか一つのAPPのγ-切割を阻害(例えば少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%を阻害)することができる。一部の実施形態において、前記ApoEコンストラクトまたはApoEポリペプチドによるいずれか一つの前記APP突然変異体のγ-切割を阻害する能力は、それによる野生型APPのγ-切割を阻害する能力の少なくとも約30%(例えば少なくとも約40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、100%、1.5倍、2倍、5倍、10倍または以上)である。一部の実施形態において、前記ApoEコンストラクトまたはApoEポリペプチドは、γ-切断に影響を与える突然変異を含むAPP(例えばT714I、V717F、L723P)のγ-切割を阻害する能力が、野生型APPのγ-切割を阻害する能力より低い(例えば少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、99%または100%低い)。
【0111】
γセクレターゼ
γセクレターゼ複合体は、四つの単独のタンパク質からなる:PSEN1(プレセニリン1、presenilin-1,PS1)、nicastrin、APH-1(前咽頭欠陥1、anterior pharynx-defective 1)とPEN-2(プレセニリンエンハンサー2、presenilin enhancer 2)。最近の証拠は、複合体の5番目のタンパク質であるCD147が、非必須の制御因子であり、CD147が存在しないと、γ-セクレターゼ活性が増加することを示唆する。
本明細書に記載のγセクレターゼは、いずれかの種から由来されてもよく、例えば哺乳動物、鳥類、カエル、魚類、ショウジョウバエ、線虫などから由来されてもよい。一部の実施形態において、前記γセクレターゼは、ヒト、または非ヒトの霊長類、例えばサルから由来する。
【0112】
一部の実施形態において、本明細書に記載のγセクレターゼは、野生型γセクレターゼ、または自然に存在するサブタイプである。一部の実施形態において、前記γセクレターゼは、一つまたは複数の突然変異、例えばその切断活性を増強または低下する突然変異を含む。一部の実施形態において、前記γセクレターゼは、PS1に一つまたは二つの突然変異を有する:M146L、L286V。一部の実施形態において、前記γセクレターゼのPS1及び/またはPS2活性は、低下または欠失する。
【0113】
一部の実施形態において、前記ApoEコンストラクトまたはApoEポリペプチドは、いずれか一つのγセクレターゼの酵素活性を阻害(例えば少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%を阻害)することができる。一部の実施形態において、前記ApoEコンストラクトまたはApoEポリペプチドによるいずれか一つの前記γセクレターゼ突然変異体酵素活性を阻害する能力は、それによる野生型γセクレターゼ酵素活性を阻害する能力の少なくとも約30%(例えば少なくとも約40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、100%、1.5倍、2倍、5倍、10倍または以上)である。
【0114】
3.ApoEコンストラクトの製造方法
本発明は、さらに、以上のいずれか一つに記載の単離されたApoEコンストラクト(例えばSEQ ID NO:12、60、61と89のいずれか一つのアミノ酸配列)、融合タンパク質、またはApoEポリペプチド(例えばSEQ ID NO:13、18-34、46-52、57-59、62、76、78と87中のいずれか一つのアミノ酸配列、例えばSEQ ID NO:33)のタンパク質部分をコードする単離された核酸とベクター(例えばクローニングベクターまたは発現ベクター)、及び以上のいずれか一つに記載の単離されたApoEコンストラクトを発現する宿主細胞、または当該核酸またはベクターを含む宿主細胞を提供する。一部の実施形態において、前記ベクターは、組換えAAVまたはlentivirus発現ベクターである。一部の実施形態において、前記ベクターが、前記単離された核酸の5’末端に、ニューロン特異的プロモーターを有する。一部の実施形態において、前記ニューロン特異的プロモーターが、シナプシンプロモーター(例えばhSYN)、thy-1プロモーターとカルモジュリン依存性プロテインキナーゼII-αプロモーターから選ばれる。一部の実施形態において、前記宿主細胞は、神経細胞、例えばニューロン(例えばヒトニューロン、ヒト以外の霊長類ニューロン、またはげっ歯類ニューロン)である。実施例1と2のベクター、細胞と製造方法を参照する。
【0115】
一部の実施形態において、本発明は、神経細胞におけるいずれか一つの前記ApoEコンストラクト、融合タンパク質、またはApoEポリペプチドの特異的発現を媒介する核酸またはベクターを提供する。一部の実施形態において、本発明は、ベクターまたは単離された核酸を提供し、それが、以下の5’~3’配列を含む:ニューロン特異的プロモーター(例えばhSYN)-シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列-膜透過ペプチド(例えばSEQ ID NO:63または65)をコードするヌクレオチド配列-いずれか一つの前記ApoEコンストラクト(例えばSEQ ID NO:12または89)/融合タンパク質/ApoEポリペプチド(例えばSEQ ID NO:33)をコードするヌクレオチド配列。一部の実施形態において、本発明は、ベクターまたは単離された核酸を提供し、それが、以下の5’~3’配列を含む:ニューロン特異的プロモーター(例えばhSYN)-膜透過ペプチド(例えばSEQ ID NO:63または65)をコードするヌクレオチド配列-いずれか一つの前記ApoEコンストラクト(例えばSEQ ID NO:12または89)/融合タンパク質/ApoEポリペプチド(例えばSEQ ID NO:33)をコードするヌクレオチド配列。一部の実施形態において、本発明は、ベクターまたは単離された核酸を提供し、それが、以下の5’~3’配列を含む:ニューロン特異的プロモーター(例えばhSYN)-シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列-いずれか一つの前記ApoEコンストラクト(例えばSEQ ID NO:12または89)/融合タンパク質/ApoEポリペプチド(例えばSEQ ID NO:33)をコードするヌクレオチド配列。一部の実施形態において、前記ApoEコンストラクトは、ApoE2またはApoE3の全長配列を含む(またはそれからなる、または基本的にそれからなる)。一部の実施形態において、前記ApoEコンストラクトは、SEQ ID NO:60または61のアミノ酸配列を含む(またはそれからなる、または基本的にそれからなる)。一部の実施形態において、前記ApoEポリペプチドは、SEQ ID NO:13、18-34、46-52、57-59、62、76、78と87中のいずれか一つのアミノ酸配列、例えばSEQ ID NO:33を含む(またはそれからなる、または基本のにそれからなる)。
【0116】
本願は、以上のいずれか一つに記載の単離されたApoEコンストラクト、融合タンパク質、またはApoEポリペプチドをコードする核酸分子及びその相補配列も含む。本発明は、本発明の核酸分子の全ての形式(RNAとDNAを含む)を含む。本明細書に記載の相補配列は、長さが当該核酸分子と基本的に一致(例えば長さは、少なくとも約85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%相同)する相補配列を指し、例えば少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%相補である。
【0117】
前記核酸分子またはその相補配列を含有する核酸コンストラクトも本発明の範囲に含まれる。核酸コンストラクトは、プロモーター、前記核酸分子及び転写終結配列を含有する発現カセットであっても良い。発現カセットは、発現に必要なエンハンサーを任意に含んでもよい。プロモーター、エンハンサー、転写終結配列、選択可能なマーカーおよびシグナル配列は、当技術分野で周知であり、当業者は、前記ポリペプチドの発現のために選択された宿主細胞に従って適切に選択することができる。発現カセット中のこれらのエレメントは、意図された機能を実行できるように、相互に動作可能に連結される。例えば、プロモーター配列を目的のヌクレオチド配列に作動可能に接続するとは、プロモーター配列は、標的細胞における目的のヌクレオチド配列の転写および/または目的のヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドの合成を指示することができるように、プロモーター配列と目的のヌクレオチド配列を接続することを指す。選択可能なマーカーは、ベクターが挿入された宿主細胞を、ベクターが挿入されていない宿主細胞から選択するのに役立ち、例えば、選択可能なマーカーは、抗生物質耐性を与える遺伝子であっても良い。発現されたポリペプチドを宿主細胞の外部へ輸送できるように、シグナル配列を選択する。
【0118】
遺伝制御エレメントは、ポリペプチドまたはタンパク質の遺伝子発現の制御に用いられてもよい。このような遺伝子制御エレメントは、関連する宿主細胞内で活性となるように選択される。制御エレメントは、構成的に活性を有し、または特定の条件下で誘導可能である。誘導可能な制御エレメント、毒性のあるまたは細胞の成長及び/または生存力に他の悪影響を与えるタンパク質を発現する場合に特に役立つ。当該場合、誘導可能な制御エレメントによってポリペプチドまたはタンパク質の発現を制御し、細胞生存率、細胞密度、および/または発現されたポリペプチドまたはタンパク質の総収量を改善することができる。本発明を実施するために使用できる多数の制御エレメントが、当技術分野で知られており、入手可能である。
【0119】
本発明において有用な代表的な構成的哺乳類プロモーターとしては、ヒポキサンチン ホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPTR)プロモーター、アデノシン デアミナーゼ プロモーター、ピルビン酸キナーゼ プロモーター、β+アクチン プロモーター及び当業者に知られている他の構成的プロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、真核細胞においてコード配列の構成的発現を駆動することができるウイルスプロモーターは、サルウイルスプロモーター、単純ヘルペスウイルスプロモーター、パピローマウイルスプロモーター、アデノウイルスプロモーター、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、モロニーマウス白血病ウイルス、その他のレトロウイルスロングターミナルリピート(LTR)、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼプロモーター、及び当業者に知られている他のウイルスプロモーターを含む。
【0120】
誘導性プロモーターは、誘導剤が存在する場合、有効的に接続されるコード配列の発現を駆動することができ、または、本発明に従って使用することができる。たとえば、哺乳動物細胞では、メタロチオネイン プロモーターは、特定の金属イオンの存在下で、下流のコード配列の転写を誘導できる。他の誘導性プロモーターは、当業者に認識および/または知られている。
【0121】
一部の実施形態において、本発明に適する遺伝子発現制御エレメントは、プロモーターおよびエンハンサーを含むニューロン特異的制御エレメントである。本明細書で使用する場合、「ニューロン特異的」制御エレメントという用語は、ニューロンにおける目的の核酸分子の特異的発現のためのプロモーターおよびエンハンサーなどの制御エレメントを指す。一部の実施形態において、ニューロン特異的プロモーターは、特定のサブタイプのニューロン(例えば、ドーパミン作動性ニューロン、興奮性ニューロン、外側前頭前皮質ニューロンなど)における導入遺伝子の発現のためのプロモーターである。
【0122】
ニューロン特異的プロモーターと他の制御エレメント(エンハンサーなど)は、当技術分野で知られる。適切なニューロン特異的プロモーターは、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)プロモーター、芳香族アミノ酸脱炭酸酵素プロモーター、ニューロフィラメントプロモーター、シナプシンプロモーター、thy-1プロモーター、セロトニン受容体プロモーター、チロシン水酸化酵素プロモーター、GnRHプロモーター、L7プロモーター、DNMTプロモーター、エンケファリンプロモーター、ミエリン塩基性タンパク質プロモーター、カルモジュリン依存性プロテインキナーゼII-αプロモーター、CMVエンハンサー/血小板由来増殖因子-βプロモーターを含むが、これらに限定されない。一部の実施形態において、前記ニューロン特異的プロモーターが、シナプシンプロモーター(例えばhSYN)、thy-1プロモーターとカルモジュリン依存性プロテインキナーゼII-αプロモーターから選ばれる。
【0123】
一般に、遺伝子発現配列は、TATAボックス、キャップ配列、CAAT配列などのそれぞれに転写と翻訳の開始に関与する5’非転写配列および5’非翻訳配列を含む。エンハンサーエレメントを任意に使用し、発現されるポリペプチドまたはタンパク質の発現レベルを増強することができる。哺乳動物細胞で機能するエンハンサーエレメントの実例は、SV40初期遺伝子エンハンサー(Dijkemaら,EMB0J.(1985)4:761に記載)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)(Gormanら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1982b)79:6777に記載)とヒトサイトメガロウイルス(Boshartら,Cell(1985)41:521に記載)長末端反復配列からのエンハンサー/プロモーターを含む。
【0124】
制御エレメントをコード配列に接続するためのシステムは、当技術分野でよく知られている(一般的な分子生物学および組換えDNA技術、例えばSambrook、FritschおよびManiatis、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、コールドスプリングハーバー、ニューヨーク州、1989年、参照により本明細書に組み込まれる)。様々な増殖条件および誘導条件下で、様々な哺乳動物細胞内で発現させるための好ましいコード配列を挿入するのに適する市販のベクターも、当技術分野で公知である。
【0125】
一部の実施形態において、核酸コンストラクトは、発現ベクターおよびクローニングベクターを含むベクターである。発現ベクターは、本発明に記載のポリペプチド(例えばApoE2もしくはApoE3の全長配列、あるいは本明細書に記載のいずれかのApoEコンストラクト、ApoEポリペプチドもしくは融合タンパク質)をコードする核酸分子などの外来遺伝子を宿主細胞内で発現するのに適するベクターであり、原核生物発現ベクターおよび真核生物発現ベクターを含む。真核生物の発現システムは、酵母菌の発現システム、哺乳類細胞の発現システム、昆虫細胞の発現システムなどを含む。クローニングベクターは、宿主細胞内で標的遺伝子(例えば本発明のポリペプチドをコードする核酸分子)を増幅するために使用される。クローニングベクターは、プラスミドベクター、ファージベクター、ウイルスベクター、および相互にまたは他のゲノムDNAと結合したベクターを含む。分子クローニングには、最も一般的に使用される宿主細胞は大腸菌である。
【0126】
一部の実施形態において、ベクターは、ウイルスベクターであり、レンチウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、アデノウイルスベクター、およびアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを含むが、これらに限定されない。このようなベクターは、当技術分野の標準的な方法を使用して調製することができる。一部の実施形態において、前記ベクターは、lentivirusまたはlentiviralベクターである。
【0127】
一部の実施形態において、前記ベクターは、組換えAAVベクターである。AAVベクターは、当技術分野の標準的な方法を使用して調製することができる。あらゆる血清型のアデノ随伴ウイルスベクターを使用しても良く、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV14、AAV15とAAV16を含むが、これらに限定されない。
【0128】
一部の実施形態において、本発明は、ベクター(例えばAAVまたはレンチウイルスベクター)を提供し、それが、発現カセットを含み、当該発現カセットは、目的の核酸分子に作動可能に連結されたニューロン特異的プロモーター(例えばhSyn)を含み、当該目的の核酸分子は、本発明のいずれか一つの前記ApoE C末端フラグメントをコードする核酸分子、ApoE2またはApoE3全長タンパク質をコードする核酸分子、本発明のいずれか一つの前記ApoE2コンストラクトまたは融合タンパク質をコードする核酸分子、または本発明のいずれか一つの前記ApoE2ポリペプチドをコードする核酸分子から選ばれる。好ましくは、当該ベクターは、組換えAAVベクターである。好ましくは、本明細書に適するニューロン特異的プロモーターは、シナプシンプロモーター、thy-1プロモーターとカルモジュリン依存性プロテインキナーゼII-αプロモーターを含む。一部の実施形態において、前記目的の核酸分子は、SEQ ID NOs:12、13、18-34、46-52、57-59、60-62、76、78、87と89中のいずれか一つに示されるアミノ酸配列をコードする。一部の実施形態において、前記目的の核酸分子は、さらに、N末端のシグナルペプチド(例えばSEQ ID NO:66-68中のいずれか一つのアミノ酸配列)をコードする。一部の実施形態において、前記目的の核酸分子は、さらにN末端及び/またはC末端の膜透過ペプチド(例えばSEQ ID NO:35-45、63-65と84-86中のいずれか一つのアミノ酸配列)をコードする。一部の実施形態において、前記目的の核酸分子は、さらに、N末端及び/またはC末端のタグタンパク質(例えばV5、EGFP)をコードする。
【0129】
本発明は、さらに、本明細書に開示される核酸分子、核酸コンストラクトまたはベクターを含む発現システムを提供する。発現システムは、例えば、本発明のポリペプチドを発現するように改変された大腸菌などのグラム陽性またはグラム陰性の原核宿主細胞システムであってもよい。一部の実施形態において、発現システムは、ピキア・パストリスまたはサッカロミセス・セレビシエなどの酵母などの真核宿主細胞システムである。一部の実施形態において、前記宿主細胞は、例えばHEK 293T、N2A、CHO細胞などの哺乳動物宿主細胞である。一部の実施形態において、前記宿主細胞は、神経細胞であり、グリア細胞とニューロンを含むが、これらに限定されない。高等真核細胞、特に多細胞生物に由来する細胞は、グリコシル化ポリペプチドの発現に使用することができる。適切な高等真核細胞は、脊椎動物細胞だけでなく、無脊椎動物細胞および昆虫細胞を含むが、これらに限定されない。
【0130】
目的のポリペプチドまたはタンパク質の発現に必要な十分な量の核酸を宿主細胞(例えば、哺乳動物宿主細胞)に導入するのに適する方法は、当技術分野でよく知られている。例えば、Gethingら、Nature、293:620-625(1981);マンテイら、Nature、281:40-46(1979);Levinsonら、EP 117,060、およびEP 117,058を参照し、それらはすべて参照により本明細書に組み込まれる。ベクターは、当技術分野で知られている任意の適切な方法を使用して宿主細胞に導入されてもよく、前記方法は、DEAEデキストラン媒介送達、リン酸カルシウム沈殿法、カチオン性脂質媒介送達、リポソーム媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、微粒子衝撃、受容体媒介遺伝子送達、ポリリジン、ヒストン、キトサンおよびペプチド媒介送達を含むが、これらに限定されない。哺乳動物細胞にとって、好ましい形質転換方法は、Grahamとvan der ErbがVirology、52:456-457(1978)で開示したリン酸カルシウム沈殿法、または、Hawley-Nelson、Focus 15:73(1193)のlipofectamineTM(Gibco BRL)法を含む。哺乳動物細胞宿主システムの形質転換の一般的な態様は、Axelによって1983年8月16日に出願された米国特許第4,399,216号に記載されている。哺乳動物細胞を形質転換するための様々な技術は、Keownら、Methods in Enzymology(1989)、Keownら、Methods in Enzymology,185:527-537(1990)、及びMansourら、Nature、336:348-352(1988)に見出すことができる。哺乳動物細胞において、ポリペプチドまたはタンパク質を発現させるための適切なベクターの非限定的な代表例としては、P(3)NAl;p(3)(Okayamaら、(1985)Mol.Cell Biol.5:1136-1142)、pMClneoPoly-A(Thomasら、(1987)Cell 51:503-512)、バキュロウイルスベクター(例えばPAC373またはpAC610)が挙げられる。
【0131】
一部の実施形態において、本発明に記載のポリペプチドまたはタンパク質は、宿主細胞に安定にトランスフェクトされる。しかし、当業者であれば、本発明が宿主細胞を一過性にまたは安定にトランスフェクトするために使用できることを認識すべきである。
【0132】
標的タンパク質またはポリペプチドを標的細胞に導入するには、リポソームを使用して標的タンパク質をコードするDNA(プラスミドなど)またはRNAを送達する方法や、標的タンパク質をコードするレンチウイルスまたはアデノ随伴ウイルスを使用して細胞に感染する方法など、多くの方法がある。
【0133】
細胞培養およびポリペプチド発現を受けやすい任意の哺乳動物細胞または細胞タイプを本発明で使用することができる。本発明において有用な哺乳類細胞の非限定的な実例としては、BALB/cマウス骨髄腫細胞株(NSO/1、ECACC No:85110503)、ヒト網膜芽細胞腫細胞(PER.C6(CruCelI、オランダ、ライデン))、SV40形質転換サル腎臓CV1系統(COS-7、ATCC CRL 1651)、ヒト胎児腎臓細胞株(懸濁培地中での増殖のためにサブクローン化された293または293細胞、Grahamら、J.Gen Virol.、36:59(1977))、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10)、チャイニーズハムスター卵巣細胞+/-DHFR(CH0,Urlaub and Chasin,Proc.Natl.Acad.Sc1.USA,77:42 16(1980))、マウスセルトリ細胞(TM4、Mather、Biol. Reprod.、23:243-251(1980))、サル腎臓細胞(CVI ATCC CCL70)、アフリカミドリザル腎臓細胞(VER0-76、ATCC CRL-1587)、ヒト子宮頸がん細胞(HeLa、ATCC CCL 2)、イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34)、バッファローラット肝細胞(BRL3A、ATCC CRL 1442)、ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75)、ヒト肝細胞(Hep G2、HB 8065)、マウス乳腺腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51)、TRI細胞(Matherら、Annals N.Y.Acad.Sc1.、383:44-68(1982))、MRC 5細胞、FS4 細胞およびヒト肝がん細胞株(Hep G2)、マウス神経細胞N2Aを含む。
【0134】
単離された宿主細胞は、ベクターに挿入された単離された核酸の発現を可能にする条件下で培養される。ポリヌクレオチドの発現に適する条件としては、適切な培地、培地中の宿主細胞の適切な密度、必要な栄養素の存在、補助因子の存在、適切な温度と湿度、および微生物汚染物質が存在しないことを含むが、これらに限定されない。当業者は、発現目的に適切な条件を選択し、本発明のステップおよび組成物を適切に変更し、細胞の成長および/または任意の所与の発現されたポリペプチドまたはタンパク質の産生を最適化することができる。
【0135】
宿主細胞(例えば、哺乳動物細胞)を調製する様々な方法が当技術分野で知られている。例えば、発現に十分な核酸(一般に、目的のポリペプチドまたはタンパク質をコードする遺伝子および任意の作動可能に連結された遺伝子制御エレメントを含むベクター)は、任意の数の周知の技術によって、宿主細胞株に導入されてもよい。一般に、どの宿主細胞が実際にベクターを獲得し、目的のポリペプチドまたはタンパク質を発現したかを決定するために、細胞をスクリーニングする。宿主細胞によって発現される特定の目的のポリペプチドまたはタンパク質を検出するための日常的な方法は、免疫組織化学、免疫沈降、フローサイトメトリー、免疫蛍光顕微鏡、SDS-PAGE、ウェスタンブロット、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)技術、生物活性アッセイおよびアフィニティークロマトグラフィーを含むが、これらに限定されない。当業者は、発現されたポリペプチドまたはタンパク質を検出する他の適切な技術を知っている。複数の宿主細胞が、目的のポリペプチドまたはタンパク質を発現する場合、前記技術の一部またはすべてを使用し、どの細胞が最も高いレベルのポリペプチドまたはタンパク質を発現するかを確定することができる。
【0136】
1つ又は複数の発現されたポリペプチドおよび/またはポリペプチド複合体は、任意の適切な方法を使用して収集されてもよい。1つ又は複数のポリペプチドおよび/またはポリペプチド複合体は、細胞内、細胞質周囲腔内で発現することができるか、または細胞外の培地中に分泌することができる。ポリペプチドおよび/またはポリペプチド複合体を、細胞内で発現する場合、ポリペプチドおよび/またはポリペプチド複合体を含む宿主細胞は溶解し、かつ、ポリペプチドおよび/またはポリペプチド複合体を、遠心分離または限外濾過によって溶解物から単離し、望ましくない残骸を除去しても良い。ポリペプチドおよび/またはポリペプチド複合体を、大腸菌のペリプラズム空間に分泌する場合、細胞ペーストを、酢酸ナトリウム(pH 3.5)、EDTAとフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)などの薬剤の存在下で、約30分間解凍し、細胞破片を遠心分離によって除去することができる(Carterら、BioTechnology 10:163-167(1992))。ポリペプチドおよび/またはポリペプチド複合体を、培地中に分泌する場合、細胞培養物の上清を収集し、かつAminconまたはMillipore Pelliconの限外濾過装置などの市販のタンパク質濃縮フィルターを使用して濃縮することができる。タンパク質の分解および/または汚染微生物の増殖を阻害するために、プロテアーゼ阻害剤および/または抗生物質が収集および濃縮のステップに含まれてもよい。
【0137】
ポリペプチドまたはタンパク質を、標準的な方法で単離および精製でき、クロマトグラフィー、ゲル濾過、遠心分離または溶解度差、エタノール沈殿、またはその他のタンパク質精製に利用可能な技術を含むがこれらに限定されない(Scopes、Protein Purification Principles and Practice、第2版、Springer-Verlag、ニューヨーク、1987を参照;Higgins,S.J.およびHamesのB.D.(編)、Protein Expression:A Practical Approach、オックスフォード大学出版局、1999年;およびDeutscher, M.P.、Simon,M.1.、Abelson,J.N.(編)、Guide to Protein Purification:Methods in Enzymology(Methods in Enzymology Series、Vol 182)、Academic Press、1997、すべて参照により本明細書に組み込まれる)。具体的に、免疫アフィニティークロマトグラフィーの場合、タンパク質に対して生成され、固体支持体上に固定化された抗体を含むアフィニティーカラムにタンパク質を結合させることで、タンパク質を分離できる。あるいは、標準的な組換え技術を使用し、インフルエンザコート配列、ポリヒスチジン、グルタチオン-S-トランスフェラーゼなどのアフィニティータグをタンパク質に結合させることができ、適切なアフィニティーカラムによる簡単な精製が可能になる。フェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)、ロイペプチン、ペプシン阻害剤、アプロチニンなどのプロテアーゼ阻害剤を、任意の段階またはすべての段階で添加して、精製中のペプチドまたはタンパク質の分解を軽減または解消できる。発現されたポリペプチドまたはタンパク質を単離および精製するために、細胞を溶解する必要がある場合、プロテアーゼ阻害剤は、特に必要となる。当業者は、特定の精製技術が、精製されるポリペプチドまたはタンパク質の特性、、ポリペプチドまたはタンパク質を発現する細胞の特性、および細胞成長のための培地の組成に応じて変化することを認識すべきである。
【0138】
4. 医薬組成物とキット
本発明は、さらに、医薬組成物を提供し、それが、(i)本明細書のいずれか一つの前記の単離されたApoEコンストラクト(例えばSEQ ID NO:12、60、61と89中のいずれか一つのアミノ酸配列)、融合タンパク質、単離されたApoEポリペプチド(例えばSEQ ID NO:13、18-34、46-52、57-59、62、76、78と87中のいずれか一つのアミノ酸配列、例えばSEQ ID NO:33)、単離された核酸、ベクター(例えばApoEコンストラクト(例えば全長ApoE2またはApoE3)またはApoEポリペプチドを神経特異的に発現するベクター)、または宿主細胞、及び(ii)薬学的に許容される担体;を含有する。
【0139】
以下の効果を達成するのに有効な活性成分の量を得るために、医薬組成物における活性成分(即ち、本発明のApoEコンストラクト、ApoEポリペプチド(例えばApoE C末端ポリペプチド)、融合タンパク質または発現ベクター)の実際の投与量のレベルを、変化してもよい:患者に毒性を与えることなく、特定の患者、組成物、投与方法に対して望ましい治療反応を達成する。選択される投与量のレベルは、本発明で使用されるポリペプチドまたは発現ベクターの活性、投与経路、投与時間、治療続き期間、使用される特定の組成物と組み合わせて使用される他の医薬品、化合物および/または物質、治療を受ける患者の年齢、性別、体重、状態、一般的な健康状態および以前の病歴、および医療分野でよく知られている同様の因子を含む、様々な薬物動態学的要因に依存する。
【0140】
本明細書で使用される場合、薬学的に許容される担体は、希釈剤、アジュバント、賦形剤またはビヒクルを含み、水、動物油、植物油、デンプン、グルコース、乳糖、スクロース、ゼラチン、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセリル、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセリン、プロピレン、プロピレングリコール、水、エタノールなどを含むが、これらに限定されない。必要があれば、当該組成物は、少量の湿潤剤または乳化剤またはpH緩衝剤を含有することもできる。典型的には、生理学的に許容される担体は、pH緩衝水溶液である。許容される担体、賦形剤または安定剤は、使用される投与量および濃度で、暴露された細胞に対して毒性がなく、以下を含む:リン酸塩、クエン酸塩、その他の有機酸などのバッファー;アスコルビン酸とメチオニンを含む抗酸化剤;保存料(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブタノールまたはベンジルアルコール;p-ヒドロキシ安息香酸メチルまたはp-ヒドロキシ安息香酸プロピルなどのp-ヒドロキシ安息香酸ヒドロカルビル;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清タンパク質、ゼラチンまたは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、リジンなどのアミノ酸;単糖、二糖、およびグルコース、マンノース、デキストリンなどの他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;トレハロースや塩化ナトリウムなどの張性調整剤;ショ糖、マンニトール、トレハロースまたはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えばZn-タンパク質複合体);および/またはTWEEN(登録商標)、PLURONICS(登録商標)またはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤。
【0141】
一部の実施形態において、医薬組成物は、例えば、約5.0~約8.0、約6.5~約7.5、または約6.5~約7.0のpH範囲のいずれかを含む、約4.5~約9.0の範囲のpHを有するように製剤される。一部の実施形態において、グリセロールなどの適切な張性調整剤を添加することによって、医薬組成物を血液と等張にすることもできる。
【0142】
インビボで投与しようとする医薬組成物は、通常、無菌の実質的に等張性の医薬組成物として製剤され、米国食品医薬品局のすべての適正製造基準(GMP)規制に完全に準拠している。滅菌は、滅菌フィルター膜でろ過することで簡単に行える。一部の実施形態において、組成物は、病原体を含まない。注射の場合、医薬組成物は、例えばハンクス液(Hank’s solution)またはリンガー液(Ringer’s solution)などの生理学的に適合するバッファー中の溶液の形態であってもよい。さらに、医薬組成物は固体の形態であり、使用直前に再溶解または懸濁することができる。凍結乾燥された組成物も含まれる。
【0143】
本明細書では、医薬組成物は、溶液、懸濁液、乳濁液、錠剤、丸剤、カプセル、粉末、徐放性製剤などの形態であってもよい。本発明のポリペプチドは、具体的な投与形態および投与経路に応じて適切な剤形に調製することができる。
【0144】
医薬組成物は、例えば全身投与または局所投与を含む、本明細書に記載の様々な投与様式に適合させることができる。一部の実施形態において、医薬組成物は、静脈内投与または皮下注射のために製剤される。一部の実施形態において、医薬組成物は、腫瘍部位への局所投与(例えば、腫瘍内注射)、または脳(例えば、皮質または海馬)への局所投与(例えば、注射)などの局所投与用に製剤される。
【0145】
一部の実施形態において、医薬組成物は、従来の手順に従って、静脈内、腹腔内、または脳内注射に適する医薬組成物に製剤される。典型的には、注射可能な組成物は、滅菌等張性水性バッファー中の溶液である。必要に応じて、組成物には、注射部位の痛みを軽減するために、可溶化剤および局所麻酔薬(リグノカイン(lignocaine)など)も含んでも良い。通常、成分は、別々に供給されるか、単位剤形で一緒に混合されて、例えば、活性剤の量を示すアンプルや小袋などの気密容器に入った乾燥凍結乾燥粉末または無水濃縮物として供給される。注入によって投与される場合、組成物は、滅菌した医薬品グレードの水または生理食塩水を含む注入ボトルにs分配され得る。組成物が、注射によって投与される場合、成分が投与前に混合できるように、注射用の滅菌水または生理食塩水を含むアンプルが提供され得る。
【0146】
一部の実施形態において、医薬組成物はヒトへの投与に適する。一部の実施形態において、医薬組成物は、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、ウサギ)または非ヒト霊長類(例えば、サル)への投与に適する。一部の実施形態において、前記医薬組成物は、単回使用密封バイアルなどの単回使用バイアルに含まれる。一部の実施形態において、前記医薬組成物は、多回使用バイアルに収容される。一部の実施形態において、前記医薬組成物は容器内に分散の状態で収容される。一部の実施形態において、前記医薬組成物は、低温保存されたものである。
【0147】
本発明は、さらに、本明細書のいずれか一つの前記の単離されたApoEコンストラクト、融合タンパク質、単離されたApoEポリペプチド、単離された核酸、ベクター、宿主細胞、またはその組成物(例えば医薬組成物)を含む単位剤形を提供する。「単位剤形」という用語は、個体への投与のための単位剤形として適した物理的に別個の単位を意味し、各単位には、適切な医薬担体、希釈剤、または賦形剤とともに、所望の治療効果を生み出すように計算された所定量の活性物質を含む。これらの単位剤形は、単回または複数回の単位投与量で、適切な包装に保管することができ、さらに滅菌および密封することができる。
【0148】
本願はまた、適切な包装に入った本明細書に記載の組成物(医薬組成物など)を含む製品も提供する。本明細書に記載の組成物(医薬組成物など)に適する包装は当技術分野で知られ、例えば、バイアル(密封バイアルなど)、容器、アンプル、ボトル、ジャー、柔軟な包装(密封されたマイラーまたはビニール袋など)などを含む。これらの製品は、さらに滅菌および/または密封することができる。
【0149】
本発明は、さらに、本明細書のいずれか一つの前記の単離されたApoEコンストラクト、融合タンパク質、単離されたApoEポリペプチド、単離された核酸、ベクター、宿主細胞、または医薬組成物を含むキットを提供する。一部の実施形態において、前記キットは、本明細書に記載される使用など、タンパク質、発現ベクター、または組成物の使用方法に関する1つまたは複数の説明書をさらに含む。本明細書に記載のキットは、また、商業的およびユーザーの観点から、望ましい可能性がある他の材料を含んでもよく、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、および本明細書に記載される方法のいずれかを実施するのに有用な他の材料を含む。
【0150】
5.疾患の治療方法
本発明は、さらに、個体(例えばヒト)のγセクレターゼの切断活性(例えばAPPに対するγ切断活性)に関連する疾患を治療または予防する医薬品の調製における、いずれか一つの実施形態に記載の単離されたApoEコンストラクト(例えばSEQ ID NO:12、60、61と89中のいずれか一つのアミノ酸配列)、融合タンパク質、単離されたApoEポリペプチド(例えばSEQ ID NO:13、18-34、46-52、57-59、62、76、78と87中のいずれか一つのアミノ酸配列、例えばSEQ ID NO:33)、単離された核酸、ベクター(例えばApoEコンストラクト(例えば全長ApoE2またはApoE3)またはApoEポリペプチドを神経特異的に発現するベクター)、宿主細胞または医薬組成物の用途を提供する。一部の実施形態において、前記医薬品が、γセクレターゼの切断活性(例えばAPPに対するγ切断活性)を阻害し、そして前記γセクレターゼの切断活性に関連する疾患を治療または予防する。一部の実施形態において、本発明は、個体(例えばヒト)のγセクレターゼの切断活性(例えばAPPに対するγ切断活性)に関連する疾患を治療または予防する方法を提供し、当該方法は、前記個体へ有効投与量の本発明に記載のいずれか一つの単離されたApoEコンストラクト(例えばSEQ ID NO:12、60、61と89中のいずれか一つのアミノ酸配列)、融合タンパク質、単離されたApoEポリペプチド(例えばSEQ ID NO:13、18-34、46-52、57-59、62、76、78と87中のいずれか一つのアミノ酸配列、例えばSEQ ID NO:33)、単離された核酸、ベクター(例えばApoEコンストラクト(例えば全長ApoE2またはApoE3)またはApoEポリペプチドを神経特異的に発現するベクター)、宿主細胞または医薬組成物を投与することを含む。一部の実施形態において、前記方法が、γセクレターゼの切断活性(例えばAPPに対するγ切断活性)を阻害し、そして前記γセクレターゼの切断活性に関連する疾患を治療または予防する。一部の実施形態において、前記γセクレターゼの切断活性に関連する疾患は、神経システム退行性疾患、腫瘍またはがん、炎症性疾患と腎臓疾患から選ばれる。一部の実施形態において、前記疾患は、アルツハイマー病およびその関連疾患、アミロイド脳血管疾患、ダウン症候群、加齢に伴うその他の神経変性疾患(前頭側頭型認知症など)、頭頸部がん(例えば頭頸部扁平上皮がんと口腔扁平上皮がん)、乳がん、肝臓がん、膵臓がん(転移性膵臓がんを含む)、卵巣がん、肺がん(例えば非小細胞肺がん、肺腺がんと小細胞肺がん)、神経膠腫(例えば悪性神経膠腫)、線維腫、リンパ腫(例えばB細胞リンパ腫)、骨肉腫、胃がん、膀胱がん、喘息(例えばアレルギー性喘息)、肺炎、気道炎症、急性腎障害、明細胞腎細胞がん、腎線維症、閉塞性腎症から選ばれる。一部の実施形態において、前記疾患は、AD及びその関連疾患、例えば散発性アルツハイマー病(sporadic Alzheimer’s disease、sAD)である。
【0151】
本発明に提供される前記医薬品、治療または予防する方法は、いずれかの個体に適し、哺乳動物、鳥類、カエル、魚類、ショウジョウバエ、線虫などを含むがこれらに限定されない。哺乳動物は、霊長類(例えばヒト、または非ヒト霊長類例えばサル)、げっ歯類(例えばマウス、ラット、ハムスター、アレチネズミ、リス、モルモット、ウサギ)、家畜(例えばブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、ロバ)、ペット(例えば猫、犬、ウサギ、ハムスターなど)を含むが、これらに限定されない。一部の実施の形態において、前記個体は、マウスまたはサルである。一部の実施の形態において、前記個体は、ヒトである。
【0152】
本明細書で使用される場合、適切な投与様式および投与経路は、当技術分野で周知であり、適切な投与経路には、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、皮下、脊髄、または注射または灌流などの他の非経口投与経路が含まれる。「非経口投与」とは、経腸投与および局所投与以外の投与方法を意味し、通常は注射によるものであり、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、嚢胞内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、鼻腔、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下腔、脊髄内、硬膜外および胸骨内の注射および灌流を含むが、これらに限定されない。「全身投与(systemic administration)」および「全身投与(systemicallyadministered)」という用語は、本明細書に記載の薬剤または組成物を個体(例えば、哺乳動物)に投与し、そして前記薬剤または組成物が循環系を介して、薬物作用の標的部位を含む体内の部位に送達される方法を指す。全身投与は、経口、鼻腔内、直腸、および非経口(例えば、筋肉内、静脈内、動脈内、経皮、および皮下などの消化管以外の)投与を含むが、これらに限定されない。
【0153】
一部の実施形態において、本発明のいずれか一つの前記単離されたApoEコンストラクト(例えばSEQ ID NO:12、60、61と89中のいずれか一つのアミノ酸配列)、融合タンパク質、単離されたApoEポリペプチド(例えばSEQ ID NO:13、18-34、46-52、57-59、62、76、78と87中のいずれか一つのアミノ酸配列、例えばSEQ ID NO:33)、単離された核酸、ベクター、または医薬組成物を、脳室内注射および髄腔内注射を含む任意の適切な経路を介して中枢神経系に導入する。脳室内注射は、例えば、リザーバ(例えば、オンマヤリザーバ)に接続された脳室内カテーテルによって補助することができる。
【0154】
一部の実施形態において、RNA配列およびDNA配列を含む本発明のポリペプチドのコード配列など、本発明のポリペプチドをコードする核酸分子は、当技術分野で周知の技術を使用して送達することができる。一部の実施形態において、本発明のポリペプチドのコード配列は、発現ベクターの形態で(例えば、AAVまたはレンチウイルスベクターなどのウイルスベクターを使用して)必要とする対象(例えば、ヒト)に送達される。一部の実施形態において、リポソームは、本発明のポリペプチドをコードすることができる本明細書に記載のDNAまたはRNA分子を送達するために使用される。したがって、これらの実施形態において、本発明の医薬組成物は、リポソーム、本明細書に記載の本発明のポリペプチドをコードするDNA分子またはRNA分子、およびその発現ベクターを含む。本発明での使用に適するリポソームは、当技術分野で周知であり、ヒトへの投与に適したリポソームであっても良い。
【0155】
本発明に提供されるApoEコンストラクト(例えば全長ApoE2またはApoE3)、融合タンパク質、またはApoEポリペプチドは、γ-セクレターゼの阻害剤(例えば、APPのγ-切断を特異的に阻害する)であり、したがって、本発明のポリペプチドまたはその医薬組成物は、γ-セクレターゼの阻害によって利益を受ける疾患、γ-セクレターゼの阻害を標的とすることが治療または予防に効果がある疾患(本明細書では、γ-セクレターゼに仲介される疾患またはγ-セクレターゼの酵素切断活性に関連する疾患とも呼ばれる)を治療または予防することに使用されてもよい。複数の疾患は、γセクレターゼに仲介されることが知られ、アルツハイマー病および関連疾患とアミロイド脳血管疾患などの神経変性疾患(Erik D. RobersonとLennart Mucke, 100 years and Counting:Prospects for Defeating Alzheimer’s Disease, 314:781-784(2006); Bart De Strooperら、Presenilins and γ-Secretase:Structure, Function, and Role in Alzheimer’s Disease, 2:a006304(2012); Weiming Xia、γ-Secretase and its modulators:Twenty years and beyond、Neuroscience Letters 701:162-169(2019));頭頸部扁平上皮がんおよび口腔扁平上皮がん(Liang Maoら、γ-Secretase inhibitor reduces immunosuppressive cells and enhances tumour immunity in head and neck squamous cell carcinoma、Int. J. Cancer:142, 999-1009(2018))、乳がんおよび肝細胞がん(Hui Jiaら、γ-Secretase inhibitors for breast cancer and hepatocellular carcinoma:From mechanism to treatment、Life Sciences 268(2021)119007)、膵臓がん(転移性膵臓がんを含む)(Ana De Jesus-Acostaら、A Phase II Study of the Gamma Secretase Inhibitor RO4929097 in Patients with Previously Treated Metastatic Pancreatic Adenocarcinoma、Invest New Drugs. 2014 August; 32(4):739-745)、卵巣がん(Zhaoyi Feng、Inhibition of gamma-secretase in Notch1 signaling pathway as a novel treatment for ovarian cancer、Oncotarget, 2017, Vol. 8,(No. 5), pp:8215-8225)、肺がん(非小細胞肺がん、肺腺がん、小細胞肺がんなど)(Antonio Maraver、Therapeutic effect of γ-secretase inhibition in KrasG12V-driven non-small cell lung carcinoma through derepression of DUSP1 phosphatase and inhibition of ERK、Cancer Cell. 2012 August 14; 22(2);Katherine M. Morganら、Gamma secretase inhibition by BMS-906024 enhances efficacy of paclitaxel in lung adenocarcinoma、Mol Cancer Ther. 2017 December; 16(12):2759-2769)、悪性神経膠腫などの神経膠腫(Edward Panら、Phase I Study of RO4929097 with Bevacizumab in Patients with Recurrent Malignant Glioma、Neurooncol. 2016 December ; 130(3):571-579)、線維腫(Shivaani Kummarら、Clinical Activity of the g-Secretase Inhibitor PF-03084014 in Adults With Desmoid Tumors(Aggressive Fibromatosis)、JOURNAL OF CLINICAL ONCOLOGY、VOLUME 35、NUMBER 14、MAY 10, 2017)、B細胞リンパ腫などのリンパ腫(Shuji Tohda、Establishment of a novel B-cell lymphoma cell line with suppressed growth by gamma-secretase inhibitors、Leukemia Research 30(2006)1385-1390)、胃がん(Hyun-Woo Leeら、Targeting Notch signaling by c-secretase inhibitor I enhances the cytotoxic effect of 5-FU in gastric cancer、Clin Exp Metastasis(2015)32:593-603)、膀胱がん(YIBING WANGら、γ-secretase inhibitor inhibits bladder cancer cell drug resistance and invasion by reducing epithelial-mesenchymal transition、MOLECULAR MEDICINE REPORTS 12:2821-2827, 2015)、骨肉腫(M Tanakaら、Inhibition of Notch pathway prevents osteosarcoma growth by cell cycle regulation、British Journal of Cancer(2009)100, 1957 - 1965)を含む腫瘍またはがん;アレルギー性喘息などの喘息(Weixi Zhangら、γ-Secretase Inhibitor Alleviates Acute Airway Inflammation of Allergic Asthma in Mice by Downregulating Th17 Cell Differentiation、Mediators of Inflammation、Volume 2015, Article ID 258168, 7 pages)、アレルギー性気道炎症などの気道炎症(Weixi Zhangら、γ-Secretase Inhibitor Alleviates Acute Airway Inflammation of Allergic Asthma in Mice by Downregulating Th17 Cell Differentiation、Mediators of Inflammation、Volume 2015, Article ID 258168)、肺炎(Jin Hyun Kangら、g-Secretase Inhibitor Reduces Allergic Pulmonary Inflammation by Modulating Th1 and Th2 Responses、AMERICAN JOURNAL OF RESPIRATORY AND CRITICAL CARE MEDICINE VOL 179、2009)などを含む炎症性疾患;急性腎損傷などの腎臓疾患(Jean-Christophe Wyssら、Targeted γ-secretase inhibition of Notch signaling activation in acute renal injury、Am J Physiol Renal Physiol 314:F736-F746, 2018)を含むが、これらに限定されない。
【0156】
一部の実施形態において、前記γセクレターゼの切断活性(例えばAPPに対するγ切断活性)に関連する疾患は、アルツハイマー病(AD)、レビー小体型認知症(DLB)、軽度認知障害(MCI)、前頭側頭型認知症(FTD)、脳アミロイド血管症(CAA)、CAA関連脳出血などの神経変性疾患、血管性認知障害、パーキンソン病(PD)、多発性硬化症(MS)、外傷性脳損傷(TBI)、または脆弱X症候群関連振戦/運動失調症候群である。CAAは、脳血管壁へのタンパク質(主にアミロイドベータ)の沈着を特徴とする症状である。CAAはAD患者によく見られるが、ADの証拠がなくても発生する可能性がある。
【0157】
一部の実施形態において、前記γセクレターゼの切断活性(例えばAPPに対するγ切断活性)に関連する疾患は、「アミロイドタンパク質β関連疾患」であり、当該用語は、異常に高レベルのアミロイドタンパク質βペプチドの産生、蓄積、および/または凝集を特徴とするあらゆる状態を指し、例えば、アミロイド斑の形式で、特に脳内で発生する。アミロイドタンパク質β関連疾患は、AD、ダウン症候群、脆弱X症候群、CAA、CAA関連脳出血、散発性封入体筋炎を含む。
【0158】
ADは先進国で最も一般的な神経変性疾患である。組織病理学的に、ADは、Aβペプチドを含むアミロイドタンパク質斑の蓄積とtauタンパク質から由来するNFTを特徴とする。臨床的に、ADは、記憶、機能、言語能力、判断力、および実行機能の喪失を特徴とする進行性の認知障害と関連する。ADは、その後期段階で重度の行動症状を引き起こすことがよくある。
【0159】
若年性アルツハイマー病(65歳未満で診断された)の約半数は、家族性アルツハイマー病(FAD)であり、常染色体優性遺伝する。FADは、APP突然変異、PSENI突然変異、PSEN2突然変異の3つの遺伝子の少なくとも1つの突然変異によって引き起こされる。アミロイド前駆体タンパク質(APP)突然変異は、121ファミリーで確認される。最も一般的なミスセンス変異は、Val717残基をIle(ロンドン変異)、Phe、またはGly残基に置き換え、Glu693をGln残基(Dutch変異)またはGly残基(Arctic変異)に置き換え、または、Lys670とMet671をAsnとLeu残基に置き換える(二重変異はスウェーデン変異と呼ばれ、APP770アイソフォームで番号が付けられる)。219個のプレセニリン1(PSEN1)が、480ファミリーで同定され、γ-セクレターゼ切断の減弱、一部の突然変異における酸化ストレスの増加、およびDNA損傷誘発死に対する神経細胞の感受性の増加が見られる。34ファミリーで13個のプレセニリン2(PSEN2)が同定され、これらでは、γ-セクレターゼ切断の減弱、一部の突然変異における酸化ストレスの増加が見られる。
【0160】
一部の実施形態において、本発明に提供されるいずれか一つの単離されたApoEコンストラクト(例えばSEQ ID NO:12、60、61と89中のいずれか一つのアミノ酸配列)、融合タンパク質、単離されたApoEポリペプチド(例えばSEQ ID NO:13、18-34、46-52、57-59、62、76、78と87中のいずれか一つのアミノ酸配列、例えばSEQ ID NO:33)、単離された核酸、ベクター(例えばApoEコンストラクト(例えば全長ApoE2またはApoE3)またはApoEポリペプチドを神経特異的に発現するベクター)、宿主細胞または医薬組成物は、γセクレターゼ酵素活性を阻害することで、いずれかのAPP γ-切断に関連する疾患(例えばAD)、例えばいずれかのAPP突然変異を有する疾患(例えばAD)の治療に使用される。一部の実施形態において、前記APPは、ヒトAPPであり、以下の一つまたは複数の突然変異を含む:K670N、M671L、スウェーデン(K670N+M671L)、フロリダ(I716V)、ロンドン(V717I)、APPM596V(β切断は実行できない)、γ切断部位に近いfAD変異(例えば、T714I、V717F、L723P)、βまたはα切断部位に近いfAD突然変異(例えば、KM670/671NL、E693K、E693Δ)、または保護的アイスランド突然変異(A673T)。
【0161】
アルツハイマー病の表現型を評価し、治療薬を特徴づけ、治療を評価するためのいくつかの行動学的検査および組織病理学的検査が、当技術分野で知られる。組織学的分析は、通常、死後に行われる。Aβレベルの組織学的分析は、チオフラビンSの使用して実行する。コンゴレッドまたは抗Aβ染色(例えば4G8、10D5、または6E10抗体)により、切片化された脳組織上の Aβ 沈着を視覚化する(たとえば、Holcombら、1998,Nat.Med.4:97-100;Borcheltら、1997,Neuron19:939-945;Dicksonら、1988,Am.J.Path.132:86-101を参照する)。遺伝子組み換えマウスにおけるAβ沈着を視覚化するインビボ方法も記載される。BSB((トランス,トランス)-1-ブロモ-2,5-ビス-(3-ヒドロキシカルボニル-4-ヒドロキシ)スチリルベンゼン)とPETトレーサーである11Cで標識したピッツバーグ化合物B(PIB)は、Aβ斑に結合する(例えば、Skovronskyら、2000,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:7609-7614;Klunkら,2004,Ann.Neurol.55:306-319を参照する)。19F含有アミロイド親和性コンゴレッド型化合物FSB((E,E)-1-フルオロ-2,5-ビス-(3-ヒドロキシカルボニル-4-ヒドロキシ)スチリルベンゼン)が、MRIによるAβプラークの視覚化を可能になる(例えば、Higuchiら,2005,ature Neurosci. 8:527-533を参照する)。放射性マークされたプトレッシンも修飾されたアミロイドβペプチドは、アルツハイマー病のマウスモデルにおける生体内でのアミロイド沈着をマークする(例えば、Wengenackら, 2000, Nat. Biotechnol. 18:868-872を参照する)。
【0162】
アルツハイマー病の当該技術分野で知られる標準的な診断方法を使用して、アルツハイマー病に罹患している受験者を同定することができる。通常、アルツハイマー病の診断は、患者の症状(例えば、記憶機能の進行性の低下、通常の活動の進行性の放棄とフラストレーション、無関心、落ち着きのなさまたは過敏症、攻撃性、不安、睡眠障害、動揺、異常な運動行動、脱抑制、社会的引きこもり、食欲の低下、幻覚、認知症)、病歴、神経心理学的検査、神経学的および/または身体検査に基づいて行われる。脳脊髄液では、tau、アミロイドβペプチドとAD7C-NTPを含むアルツハイマー病に関連する複数のタンパク質を検出することもできる。遺伝子検査も、若年性家族性アルツハイマー病(eFAD)、常染色体優性遺伝性疾患も使用されてもよい。臨床遺伝子検査は、AD症状のある個体、または早期発症型疾患のリスクのある家族に利用できる。米国では、臨床検査改善修正条項に基づいて、PS2変異とAPPを臨床検査機関または連邦政府が承認した臨床検査機関で、検査することができる。PS1突然変異の市販検査も利用できる(Elan Pharmaceuticals)。
【0163】
本発明の治療効果は、上記のいずれかの方法または指標によって評価することができる。一部の実施形態において、本発明のApoEコンストラクト、ApoEポリペプチド、ベクター、組成物、または治療/予防方法は、以下の一つまたは複数の効果を達成することができる:(i)ニューロン中(生体内または生体外)で細胞自律的にAPPの切断を制御する;(ii)γ-セクレターゼの酵素活性を阻害(例えば少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または100%阻害)し、例えばγ-セクレターゼ阻害剤(例えばPF03084014)によるAPP γ-切断阻害効果と類似するように、γ-セクレターゼに仲介されるAPPγ-切断を阻害する;(iii)APPのアミロイド代謝を低下(例えば少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または100%低下)し、例えばアミロイドタンパク質 β(Aβ)(例えばAβ40及び/またはAβ42)の産生を低減(例えば少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または100%低減)し、またはC末端フラグメント β(β-CTF)に対するγ-切断を低下(例えば少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または100%低下)する;(iv)APPの非アミロイド代謝を向上(例えば少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、100%、2倍、5倍、10倍、20倍または以上を向上)し、例えばC末端フラグメント α(α-CTF)の産生を増加(例えば少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、100%、2倍、5倍、10倍、20倍または以上を増加)する;(v)α-セクレターゼ、β-セクレターゼ、及び/またはγ-セクレターゼ(またはそのサブユニット)(例えばADAM10、BACE1、PS1及び/またはPS2)のmRNA及び/またはタンパク質発現に影響を与えない(または約30%、20%、10%、5%または以下しか影響を与えない);(vi)β-セクレターゼに仲介されるAPP β-切断、及び/またはα-セクレターゼに仲介されるAPP α-切断に影響を与えない(または約30%、20%、10%、5%または以下しか影響を与えない);(vii)非APPタンパク質(例えばAPLP1(APP like protein 1)またはNotch)またはそのフラグメントに対するγ-切断を阻害しなく(または約30%、20%、10%、5%または以下しか阻害しなく)、非APPタンパク質のγ-切断によって産生されるα-CTFを増加しない(または約30%、20%、10%、5%または以下しか増加しない);(viii)脳中のアミロイド斑を低減(例えば少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または100%を低減)または予防し、例えばアミロイド斑の平均斑大きさ、総面積、及び/または密度を低減(例えば少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または100%を低減)し、ニューロン内のAβ(例えばAβ40及び/またはAβ42)の産生を低減(例えば少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または100%を低減)または予防し、AD病理学的プロセスを遅延(例えば少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、100%、2倍、5倍、10倍または以上を遅延)し、個体生存率及び/または寿命を向上(例えば少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、100%、2倍、5倍、10倍、20倍または以上を向上)する;(ix)ニューロンで局所的に発現された(例えば皮質、歯状回(DG)、海馬CA3で発現された)本発明に記載の前記ApoEコンストラクトが、離れた部位から海馬台に移動し、アミロイド斑の周囲に蓄積し、それによって、これらのアミロイド産生ホットスポットにおけるγ-セクレターゼの酵素活性を局所的に阻害する;または(x)一つまたは複数のAD症状(例えば、記憶機能の進行性の低下、通常の活動の進行性の放棄とフラストレーション、無関心、落ち着きのなさまたは過敏症、攻撃性、不安、睡眠障害、動揺、異常な運動行動、脱抑制、社会的引きこもり、食欲の低下、幻覚、認知症)を軽減(例えば少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または100%を低下)、除去、または予防(発生時間の遅延を含む)する。
【0164】
一部の実施形態において、前記γセクレターゼの切断活性に関連するがんは、以下の一つまたは複数を含む:頭頸部がん(例えば頭頸部扁平上皮がんと口腔扁平上皮がん)、乳がん、肝臓がん、膵臓がん(転移性膵臓がんを含む)、卵巣がん、肺がん(例えば非小細胞肺がん、肺腺がんと小細胞肺がん)、神経膠腫(例えば悪性神経膠腫)、線維腫、リンパ腫(例えばB細胞リンパ腫)、骨肉腫、胃がん、膀胱がん。
【0165】
一部の実施形態において、本明細書に記載のγセクレターゼの切断活性に関連するがんを治療する医薬品または方法は、以下の生物活性の一つまたは複数を有する:(1)癌細胞を殺すこと、例えば、少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはそれ以上のいずれかの腫瘍細胞死率;(2)がん細胞の増殖を阻害すること、例えば、増殖を少なくとも約10%(例えば少なくとも約20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%または100%中のいずれか一つを含む)阻害すること;(3)腫瘍サイズの縮小、例えば、腫瘍サイズの少なくとも約10%、20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%または100%の縮小;(4)がん患者の一つまたは複数の症状を軽減すること;(5)腫瘍転移(例えばリンパ節への転移)を阻害すること、例えば、腫瘍転移を少なくとも約10%(例えば、少なくとも約20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%、または100%のいずれかを含む)阻害すること;(6)生存期間を例えば少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、18、または24ヶ月以上延長すること;(7)がんを予防し、あるいはがんの進行までの時間を延長し、例えば、癌が進行するまでの時間を、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12か月または以上延長すること;及び(8)がんの再発を予防、抑制、または軽減すること。
【0166】
一部の実施形態において、γ-セクレターゼの酵素切断活性に関連する疾患は、炎症性疾患であり、喘息(アレルギー性喘息など)、肺炎、および気道炎症を含むが、これらに限定されない。一部の実施形態において、本明細書に記載の医薬品または治療/予防方法は、炎症を引き起こすサイトカインの分泌及び/または活性を低下(例えば少なくとも約10%、20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%または100%中のいずれかを低下)し、及び/または一つまたは複数の疾患症状を軽減(例えば少なくとも約10%、20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%または100%中のいずれかを軽減)、除去または予防(発生時間の遅延を含む)する。
【0167】
一部の実施形態において、前記γセクレターゼの切断活性に関連する疾患は、腎臓疾患であり、腎臓または腎系に影響を与える任意の疾患、障害または症状を指す。腎臓関連の疾患または症状の例としては、急性腎疾患(または腎不全)、明細胞腎細胞癌、腎線維症、または閉塞性腎症を含むが、これらに限定されない。腎臓疾患を評価および診断するための従来のマーカーは、GFR、クレアチニンおよびアルブミンを含み、任意のマーカーまたは関連する方法を本発明の治療効果を評価するために使用することができる。一部の実施形態において、本明細書に記載の医薬品または治療/予防方法は、(i)一つまたは複数の腎臓疾患指標を低下(例えば少なくとも約10%、20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%または100%中のいずれかを低下)、除去または予防(発生時間の遅延を含む)する;及び/または(ii)腎臓機能を保護または改善することができる。
【0168】
本発明は、対象(例えばヒト)のγセクレターゼに仲介される疾患を治療または予防する方法を提供し、当該方法は、当該対象へ、治療有効量または予防有効量の本発明のいずれか一つの前記ApoEコンストラクト、融合タンパク質、ApoEポリペプチド、核酸分子、ベクターまたはその医薬組成物を投与することを含む。有効量は、対象の年齢、性別、体重、状態、一般的な健康状態、および以前の病歴などの要因に基づいて当業者によって決定される。前記疾患は、好ましくは、前記の神経システム退行性疾患、腫瘍または癌症、炎性疾患及び腎臓疾患を含む。
【0169】
本発明の一部の実施形態は、γセクレターゼの切断を阻害することによって、APPのアミロイド代謝を阻害し、Aβの産生を低減する方法を提供し、当該方法は、γセクレターゼを発現する細胞(例えばニューロン)で、ApoE2(例えばN末端に膜透過ペプチドを持つApoE2)または本明細書のいずれか一つの実施形態に記載のApoEコンストラクト(例えばApoE2のC末端フラグメント、または全長ApoE2またはApoE3)、融合タンパク質またはApoEポリペプチド(例えばSEQ ID NO:13、18-34、46-52、57-59、62、76、78と87中のいずれか一つのアミノ酸配列、例えばSEQ ID NO:33)を産生することを含む。一部の実施形態において、前記細胞は、ニューロンである。一部の実施形態において、前記方法は、ADとアミロイド脳血管病の発生と進展を遅延(例えば少なくとも約10%、20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%または100%中のいずれかを遅延)、予防または治療することに用いられる。本明細書に記載の産生は、ポリペプチドの発現および細胞外から細胞内へのポリペプチドの送達を含む。一部の実施形態において、リポソームによって、前記ApoEコンストラクト(例えばApoE2及び/またはApoE3及び/またはそのC末端フラグメント)またはApoEポリペプチドをコードするDNAあるいはRNAを前記細胞に送達し、細胞内で前記ApoEコンストラクトまたはApoEポリペプチドを発現し、産生する;あるいは、レンチウイルスとアデノ随伴ウイルスを使用して細胞に感染する方式で、前記細胞内で前記ApoEコンストラクトまたはApoEポリペプチドを産生する;または細胞透過ペプチドまたは細胞エンドサイトーシス増強によってApoEコンストラクトまたはApoEポリペプチドを細胞へ侵入させる。
【0170】
一部の実施形態において、本明細書のいずれか一つに記載の実施形態に記載のApoEコンストラクトまたは融合タンパク質、用途と方法に言及されるポリペプチドは、特にSEQ ID NO: 12、13、18-33と89中いずれか一つに示されるポリペプチドを含む。
【実施例】
【0171】
以下、具体的な実施例を参照して、本発明をさらに説明する。これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の単なる例示であることが理解されるべく。理解すべきのは、本発明の開示に基づき、当業者は、本発明を様々な変更または修正を行っても良い、これらの同等の形態も本出願に添付された請求の範囲に規定される範囲内に含まれる。
【0172】
実施例では、データは、GraphPad Prismソフトウェアを使用して分析され、すべてのデータは平均±SEMとして表示される。次のデータ分析では、unpaired、paired又はone sample t-testを使用する。有意な差は、アスタリスク(*)で示され、1つのアスタリスク(*)は、0.05未満のP値を表し、2つのアスタリスク(**)は、0.01未満のP値を表し、3つのアスタリスク(***)は、0.001未満のP値を表し、4つのアスタリスク(****)は、0.0001未満のP値を表す。
【0173】
実施例1
1.主な薬剤と材料
HEK 293T細胞株を、10%ウシ胎児血清(FBS)(Life会社)および1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含有するDMEM培養液(HyClone会社)中で培養し、5%CO2を含む37℃の滅菌細胞培養インキュベーター(ThermoFisher会社)内で培養した。
【0174】
初代培養ニューロンは、16日目のマウスの胎児の皮質または海馬から由来した。マウス皮質または海馬をステレオスコープで採取した;20 U/ml パパイン(Worthington会社)で37℃で10分間消化した;消化後に、単一細胞の形で存在するニューロンを、ウェルあたり(24ウェルプレート)100,000 個のニューロンでプレーティングした;ニューロンは、2%B27(ThermoFisher会社)および1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含む神経培養液(Neurobasal培地;ThermoFisher会社)で培養された;週に1回、新鮮な培地を交換した。
【0175】
0~7ヶ月齢のC57野生型マウスおよびADモデルマウス(5×FADマウス[Tg6799]、病原性変異を含むAPPおよびPS1を発現するマウス;発現されたAPPには3つの変異K670N/M671L、I716V、およびV717Iが含まれるが、PS1には2つの変異M146L、L286Vが含まれる)。マウスには、十分な餌と水を与え、室温で12時間/12時間の明暗サイクルで飼育し、飼育環境はSPF(特定病原体を含まない)レベルの基準に達した。
【0176】
酵素結合免疫吸着測定キット(ELISA)はInvitrogen会社から購入した;ヒト由来Aβ40(KHB3481)、ヒト由来Aβ42(KHB3441)、マウス由来Aβ40(KMB3481)。
【0177】
トランスフェクション試薬は、ThermoFisher会社のlipofectamine2000およびSignaGen会社のPolyjetである。
【0178】
qRT-PCR用のQuantitect SYBR-Green qRT-PCRキットは、Qiagen会社から購入した。
【0179】
【0180】
2.実験方法
2.1 タンパク質サンプルの調製とイムノブロッティング(Western Blot)
a) 哺乳動物細胞内で目的のタンパク質を発現するプラスミドを構築し、タンパク質発現プロモーターはCAGである。
【0181】
b) HEK 293T細胞株で目的のタンパク質を発現した。トランスフェクションの1日前に、細胞の継代を行い、細胞の接着度が70%~80%に達した時点でトランスフェクションを行った。トランスフェクション試薬はlipofectamine2000(ThermoFisher会社)である。
【0182】
c) トランスフェクションの4~6時間後、新鮮な細胞培養液と交換した。
【0183】
d) トランスフェクションの36~48時間後、細胞を溶解(10%1M tris-HCl(pH=6.8)、4%SDS、20% グリセロール、0.01%ブロモフェノール ブルー)し、タンパク質サンプルを収集し、イムノブロッティング実験に使用するか、-80℃の冷蔵庫で凍結した。
【0184】
e) ポリアクリルアミドゲル電気泳動。タンパク質をロードする前に、98℃で10分間煮沸し、その後、12,000rpmで10分間遠心分離した。電気泳動:上部濃縮ゲル80V;下部分離ゲル120V。
【0185】
f) メンブレンへの転写。使用前に濾紙を電気転写液に浸し、PVDFメンブレンをメタノール中で10秒間親水化し、泳動後のゲルを泳動槽から取り出し、濾紙→PVDFメンブレン→ゲル→濾紙を、下から上までの順に置き、メンブレン転写装置に入れ、定流量で0.1A、70分間メンブレン転写した。
【0186】
g) ブロッキングと抗体のインキュベーション:転写されたPVDFメンブレンを、5%BSA/TBSTブロッキング溶液に置き、シェーカー上で室温で1時間ブロックした。一次抗体を、4℃、シェーカー上で一晩(12~16時間)インキュベートした;1×TBST、10分ごとに3回洗浄した;二次抗体を、室温℃、シェーカー上で1~2時間インキュベートした;1×TBST、10分ごとに3回洗浄した。
【0187】
h) 現像とイメージング:ECL化学発光超高感度発色試薬で現像した。
【0188】
2.2 脳スライスの製造と免疫組織化学
a) 灌流と脳の採取。マウスを心臓から灌流し、最初に20mlのPBSで血液を洗い流し、次に20mlの4%PFAで灌流した。
【0189】
b) 固定と脱水。まず、4%PFAで4℃で24時間固定し、次に30%スクロースを使用し、4℃で脱水した。
【0190】
c) マウスの脳のスライシング。24時間脱水した後、マウスの脳を厚さ40μmの脳スライスに切断し、凍結バッファーに保存するか、その後の免疫組織化学に使用した。
【0191】
d) THS染色。ddH2O、各回5分間、3回洗浄した;1% THS水溶液で10分間浸した;80%エタノール、毎回3分間、2回洗浄した;95%エタノール、1回、3分間洗浄した。その後の免疫組織化学を実行した。THS染色を行わない場合は、直接次の免疫組織化学に進んだ。
【0192】
e) 免疫組織化学。1×PBS、各回10分間、3回洗浄した;0.1% Triton-X100で細胞膜を破壊した;5%ロバまたはヤギ血清でブロッキングした;次に、一次抗体をシェーカー上で4℃で一晩(12~16時間)インキュベートした;1×PBS、各回10分間、3回洗浄した;二次抗体をシェーカー上で室温で1~2時間インキュベートした;1×PBS、各回10分間で3回洗浄した。
【0193】
f) パッチングとシーリング。
【0194】
g) シーリングの24時間後に現像した。
【0195】
h) ImageJを使用して画像を処理し、信号密度を分析した。
【0196】
2.3 酵素結合免疫吸着測定(ELISA)
実験は、Invitrogen会社のELISA分析キットの標準手順に従って実施した。
【0197】
a) HEK 293T細胞株で目的のタンパク質を発現した。トランスフェクションの1日前に、細胞の継代を行い、細胞の接着度が70%~80%に達した時点でトランスフェクションを行った。トランスフェクション試薬はlipofectamine2000(ThermoFisher会社)である。
【0198】
b) トランスフェクションの4~6時間後、新鮮な培養液と交換した。
【0199】
c) トランスフェクションの36~48時間後、細胞培養液を収集し、ELISAプロセスに入るか、-80℃の冷蔵庫で凍結した。
【0200】
d) 50μlの標準サンプルと実験サンプルを96ウェルプレートの各ウェルに加えった。
【0201】
e) 50μlのヒトAβ40またはAβ42またはマウスAβ40検出抗体を96ウェルプレートの各ウェルに添加した。
【0202】
f) 軽く振り、室温で3時間放置した。
【0203】
g) ウェルから液体を除去し、1×洗浄バッファーで4回洗浄した。
【0204】
h) 1×抗ウサギIgG HRPを含むバッファー100μlを加えた。
【0205】
i) 軽く振り、室温で30分間放置した。
【0206】
j) ウェルから液体を除去し、1×洗浄バッファーで4回洗浄した。
【0207】
k) 100μlの安定化色素原を各ウェルに加え、室温の暗所に30分間置いた。
【0208】
l) 100μlの停止液を各ウェルに加えた。
【0209】
m) マイクロプレートリーダーで450nmの吸光度を測定した。
【0210】
2.4 qRT-PCR
TRIzol(商標)Reagent(ThermoFisher会社)の取扱説明書に従って、処理した細胞からRNAを抽出した。
【0211】
a) HEK 293T細胞株で目的のタンパク質を発現した。トランスフェクションの1日前に、細胞の継代を行い、細胞の接着度が70%~80%に達した時点でトランスフェクションを行った。トランスフェクション試薬はlipofectamine2000(ThermoFisher会社)である。
【0212】
b) トランスフェクションの6時間後、新鮮な培養液と交換した。
【0213】
c) トランスフェクションの48時間後、RNAを抽出した。
【0214】
d) 500μlのTrizol(ThermoFisher会社)を24ウェル プレートの各ウェルに加え、振盪し、室温で20分間インキュベートした。
【0215】
e) 細胞懸濁液を遠心管に集めた。
【0216】
f) クロロホルム250μlを加え、転倒混和し、室温で3分間放置した。
【0217】
g) 4℃、12000gで15分間遠心分離した。遠心分離後の溶液は、フェノールを含むクロロホルム(ピンク色)が底部、DNAとタンパク質が中央、RNAを含む水相(透明)が上部にあり、溶液は明確に層状になっているように見えた。上清を新しい遠沈管に移した。
【0218】
h) 等体積(上清)のイソプロピルアルコールを加え、転倒混和し、室温で20分間放置した。
【0219】
i) 4℃、12000gで15分間遠心分離した。上清を除去し、底に少量の白い沈殿物(RNA)が見えた。
【0220】
j) 75%エタノール400μlを加えた。4℃、12000gで5分間遠心分離した。
【0221】
k) できるだけ多くのエタノールを除去し、ドラフト内で完全に乾燥させたが、過度の乾燥は避けた。適量のDEPC水を加えた。
【0222】
l) DNAを除去した後は、次の実験のために-80℃で保存した。
【0223】
mRNAの相対含有量を、Qiagen会社のQuantitect SYBR-Green qRT-PCRキットで定量的に分析した。qRT-PCRプライマーを表2に示します。
【0224】
【0225】
2.5 PS1 KO、PS2 KO および PS1/2 dKO細胞株の構築
本発明は、HEK 293T細胞を選択し、CRISPR/CAS9技術を使用し、Zhang Fengら, 2013によって公開された標準手順(Ranら, 2013)に従って、PS1 KO、PS2 KOおよびPS1/2 dKO細胞株を構築した。表3に示すように、PS1とPS2を特異的にノックアウトしたsgRNAは、https://zlab.bio/guide-design-resources Web サイトを使用して設計された。
【0226】
a) HEK 293T細胞には、PS2 sgRNAとコントロールの空のプラスミドを発現した。トランスフェクションの1日前に、細胞の継代を行い、細胞の接着度が70%~80%に達した時点でトランスフェクションを行った。トランスフェクション試薬はlipofectamine2000(ThermoFisher会社)である。
【0227】
b) トランスフェクションの6時間後、新鮮な培養液と交換した。
【0228】
c) トランスフェクションの18時間後、3μg/mlのピューロマイシン(Select会社)を含有する新鮮な培養液に交換した。
【0229】
d) 空のプラスミドをトランスフェクトしたすべてのHEK 293T細胞株が3μg/mlピューロマイシンの作用下で死滅した後、PS2 sgRNAをトランスフェクトしたHEK 293T細胞を収集した。
【0230】
e) PS2 sgRNAでトランスフェクトされたHEK 293T細胞を、1:400の比率で、10cm細胞培養皿に継代し、細胞がモノクローンの形態で増殖することを確認した。
【0231】
f) モノクローナルで増殖した細胞が細胞塊に成長した後、単一細胞塊を収集し、12ウェル プレートに継代した。
【0232】
g) 細胞塊が12ウェルプレート全体を覆った後、細胞を回収した。細胞の半分を使用してDNAとタンパク質を抽出し、PS2のDNA配列とタンパク質発現を検出した。細胞の別の部分は継代に使用された。
【0233】
h) PS2のDNA配列が編集され、PS2タンパク質を発現しなくなった細胞は、PS2ノックアウト細胞株--PS2 KO細胞株である。
【0234】
i) 本発明は、PS2 KO細胞株に基づいてPS1/PS2 dKO細胞株を構築した。さらに、PS2 KO細胞株でPS1 sgRNAまたはコントロールの空のプラスミドを発現させた;ステップa~gを行い、PS1のDNA 配列とタンパク質発現を検出した。
【0235】
j) PS1のDNA配列が編集され、PS1タンパク質を発現しなくなったPS2 KO細胞株は、PS1およびPS2ダブルノックアウト細胞株--PS1/2 KO細胞株である。
【0236】
【0237】
2.6 ウイルスの調製と注射。
2.6.1 レンチウイルスの調製
a) ニューロンで特異的に発現できるレンチウイルス発現プラスミド、レンチウイルスGFPおよびレンチウイルスApoE CTを構築した。
【0238】
b) レンチウイルス発現ベクターをカプシッドタンパク質ベクター(PSPAX2とPMD2G)とともに、HEK 293T細胞株に共トランスフェクトした。トランスフェクションの1日前に、細胞の継代を行い、細胞の接着度が70%~80%に達した時点でトランスフェクションを行った。トランスフェクション試薬はPolyjet(SignaGen会社)である。
【0239】
c) トランスフェクションの36~48時間後、細胞培養液を収集し、0.22μmフィルターで濾過した。
【0240】
d) 濾過した細胞培養液を超遠心分離した。20,000rpm、4℃で2時間5分間遠心分離した。
【0241】
e) 遠心分離後、上清を除去し、三つの10cm細胞培養培地あたり、50μlのPBSに沈殿を再懸濁した。
【0242】
f) 再懸濁したウイルスを個別包装し、その後の実験のために-80℃の冷蔵庫に保存した。
【0243】
2.6.2アデノ随伴ウイルスの調製
ニューロンで発現されたアデノ随伴ウイルスAAV-CT(AAV2/9-hSyn-ApoE CT)およびAAV-GFP(AAV2/9-hSyn-EGFP-WPRE-pA)は、Teltu Biotechnology 会社から購入した。
【0244】
2.6.3ウイルス注射
定位注射器を使用し、上記で調製したアデノ随伴ウイルス1μlを、1ヶ月齢のマウスの大脳皮質(x、y、z、+/-1.6、0、-1)および海馬(x、y、z、+/-1.5、-2、-1.5)に注射した。
【0245】
2.7 タンパク質の精製
2.7.1 γ-セクレターゼの精製
ヒトγ-セクレターゼの発現ベクターは、Luら,2014を参照する。
【0246】
a) HEK 293T細胞株でヒトγセクレターゼを発現した(同じ発現プラスミドでヒトγ-セクレターゼ、NCT、PS1、PLAG-PEN2、APHの4つのタンパク質を同時に発現した)。トランスフェクションの1日前に、細胞の継代を行い、細胞の接着度が70%~80%に達した時点でトランスフェクションを行った。トランスフェクション試薬はlipofectamine2000(ThermoFisher会社)である。
【0247】
b) トランスフェクションの4~6時間後、新鮮な細胞培養液と交換した。
【0248】
c) トランスフェクションの48時間後、1×氷冷したPBSで1回洗浄し、セルスクレーパーで細胞を削り取り、800gで5分間遠心分離して細胞を回収した。
【0249】
d) 再懸濁した細胞を溶解バッファー[25mM HEPES、pH7.4;150mM NaCl、5mM MgCl2、1mM ジチオスレイトール、0.05%(v/v)Tween-20、1×cocktail]で溶解した。
【0250】
e) 溶解細胞を20サイクル(3秒間オン、3秒間オフ)、出力45% で超音波処理した。
【0251】
f) 4℃、3000gで10分間遠心分離し、上清を新しい遠沈管に回収した。
【0252】
g) 15000g、4℃で1時間遠心分離し、上清を捨てた。
【0253】
h) 沈殿を1mlの溶解バッファーに再懸濁し、再懸濁後に1%CHAPSOを加え、4℃で2時間インキュベートした。15,000gで30分間遠心分離し、上清を新しい遠沈管に回収した。
【0254】
i) 100μl FLAGビーズ(SIGMA 会社)を上清に加え、4℃で2時間インキュベートした。
【0255】
j) 以下のバッファーで3回洗浄した。25mM HEPES,pH 7.4;150mM NaCl,0.1% digitonin。
【0256】
k) ヒトγ-セクレターゼは以下のバッファーで溶出した。25mM HEPES,pH 7.4;150mM NaCl,0.1% digitoninと500 μg/ml 3xFLAG peptide(SIGMA会社)。
【0257】
l) 精製されたヒトγ-セクレターゼを、ウェスタンブロット検出し、-80℃で保存した。
【0258】
2.7.2 ApoEの精製
a) HEK 293T細胞株でApoE2とApoE2 NTを発現した。ApoE2タンパク質とApoE2NTタンパク質には、融合発現されたFLAGが含まれる。トランスフェクションの1日前に、細胞の継代を行い、細胞の接着度が70%~80%に達した時点でトランスフェクションを行った。トランスフェクション試薬はlipofectamine2000(ThermoFisher会社)である。
【0259】
b) トランスフェクションの4~6時間後、新鮮な細胞培養液と交換した。
【0260】
c) トランスフェクションの48時間後、1×氷冷したPBSで1回洗浄し、セルスクレーパーで細胞を削り取り、800gで5分間遠心分離して細胞を回収した。
【0261】
d) 再懸濁した細胞を溶解バッファー[25mM HEPES、pH7.4;150mM NaCl、1×cocktail]で溶解した。
【0262】
e) 溶解細胞を20サイクル(3秒間オン、3 秒間オフ)、出力45% で超音波処理した。
【0263】
f) タンパク質を含む上清を得るために、12000g、15分間、4℃で遠心分離し、上清を新しい遠沈管に集めた。
【0264】
g) タンパク質を含む上清を抗FLAG M2アフィニティー樹脂(SIGMA会社)とともに4℃で90分間インキュベートした。インキュベーション後、ApoE2とApoE2 NTは抗FLAG M2 アフィニティー樹脂に移された。
【0265】
h) ApoE2およびApoE2 NTを含む抗FLAG M2アフィニティー樹脂を以下のバッファーで3回洗浄した。25mM HEPES,pH7.4;150mM NaCl,5mM MgCl2,1mM DTT,0.05%(v/v)Tween-20。
【0266】
i) ApoE2とApoE2 NTを、以下のバッファーで溶出した。25 mM HEPES,pH 7.4;150 mM NaClと500 μg/ml 3xFLAG peptide(SIGMA会社)。
【0267】
j) 精製されたApoE2とApoE2 NTを、ウェスタンブロット検出し、-80℃で保存した。
【0268】
2.7.3 β-CTFの精製
a) E.coli大腸菌でβ-CTFを発現し、発現プラスミドは、pET22 β-CTF-Myc-6xHisである。
【0269】
b) 0.5mM IPTGで誘導し、37℃で4時間発現させた後、E. coli大腸菌を以下の溶解バッファーで溶解した。30mM Tris-HCl,pH 7.5;150mM NaCl,1mM EDTA。
【0270】
c) 室温、25000gで10分間遠心分離した。上清を除去した。
【0271】
d) 沈殿を以下のバッファーに再懸濁し、室温でゆっくりと混合した。30mM Tris-HCl,pH 8.0;300mM NaCl,1mM EDTA,6M urea,1% TritonX-100,1mM CaCl2,1×cocktail。
【0272】
e) 40000g、30分間遠心分離し、沈殿を捨て、上清を0.45 mMフィルター膜で濾過した。
【0273】
f) 濾過した上清をNi-NTAビーズとともに室温で2時間インキュベートし、次に、インキュベートしたNi-NTA ビーズと上清を同時に空のクロマトグラフィーカラムにロードし、重力の作用で流出させた。通過した液体を収集し、もう一度ビーズと混ぜ合わせた。
【0274】
g) 次のように、Ni-NTA ビーズ カラム体積の10倍で、Ni-NTAビーズを洗浄した:30mM Tris-HCl,pH8.0;300mM NaCl,1mM EDTA,6M urea,1%TritonX-100,1 mM CaCl2,1× cocktail。
【0275】
h) 次のように、Ni-NTA ビーズ カラム体積の20倍で、Ni-NTA ビーズを洗浄した:30mM Tris-HCl,pH8.0;300mM NaCl,0.1%Trion X-100。
【0276】
i) 次のように、Ni-NTA ビーズ カラム体積の20倍で、Ni-NTA ビーズを洗浄した:50mMTris-HCl,pH8.0;300mM NaCl,0.1% CHAPSO。
【0277】
j) β-CTFは次のバッファーで溶出した:50mMTris-HCl、pH8.0、300mM NaCl、0.1%CHAPSO、300mM イミダゾール。
【0278】
k) 精製されたβ-CTFを、ウェスタンブロット検出し、-80℃で保存した。
【0279】
2.7.4 GFPの精製
GFPの精製方法は2.7.2のApoEの精製方法と同様である。
【0280】
3. 実験結果
3.1 3つのApoE異性体とさまざまなApoEタンパク質フラグメントがAPP代謝に及ぼす影響
本発明は、HEK 293T細胞においてヒトAPPをそれぞれApoE2、ApoE3、およびApoE4と共発現させ、GFPをコントロールグループとして使用し、ウェスタンブロットを使用してα-CTFの産生を測定した。免疫ブロット実験の結果(
図1、パネルA~B)は、APPと共発現したApoE2とApoE3が、APPの非アミロイド代謝産物α-CTFを大幅に増加できるが、APPと共発現したApoE4は、α-CTFを有意に変化させることができない(GFPコントロールグループのα-CTFと比較して)ことを示した。本発明は、さらに、APPアミロイド代謝経路に対するApoEの影響を検討した。Aβは、アミロイド代謝の産物であり、生成されるAβの量が少ないほど、APPのアミロイド代謝は弱くなる。本発明では、ヒト野生型APPとβ-セクレターゼを、HEK 293T細胞においてそれぞれApoE2、ApoE3またはApoE4と共発現させ、GFPをコントロールグループとして使用して、Aβ産生に対するApoEの効果を検出した。ELISAの結果(
図1、パネルC)は、ApoE2の発現により、Aβ40の産生が有意に減少するが、ApoE3とApoE4には、この効果がないことを示した。ApoE2の発現も、ApoE4と比較してAβ40を有意に減少させた。これらの結果は、APPと同じ細胞で発現されたApoE2が、APPのアミロイド代謝を弱め、Aβ40を減少させたが、APPの非アミロイド代謝物であるα-CTFを増加させることを示した。ApoE4は、この機能を持たない。
【0281】
本発明は、さらに、ApoEのどのフラグメントが、APPアミロイド代謝を減弱させる機能を発揮するかを検出した。ApoE2、ApoE3、とApoE4は、N末端ドメインの2つのアミノ酸残基が異なるだけであり、C末端ドメインでは完全に同一のアミノ酸配列を有する。したがって、本発明は、ヒトApoEのN末端フラグメントとC末端フラグメントの発現プラスミドを構築し、その後の実験のためにそれぞれプラスミドをApoE2 NT、ApoE3 NT、ApoE4 NTまたはApoE CTタンパク質と命名した。細胞内で発現させた場合、構築されたすべてのタンパク質のN末端はさらに、ヒトApoE自体のシグナルペプチド(配列番号66)に接続された。APPを、HEK 293T細胞において、ApoE2 NT、ApoE4 NTおよびApoE CTと共発現させ、GFPをコントロールグループとして使用した。免疫ブロット実験の結果(
図1、パネルD~E)は、ApoE CT を共発現させた場合のみ、α-CTFが元のレベルの 5 倍を超えて有意に増加したことを示した。ApoE2 NTまたはApoE4 NTのいずれかを共発現させても、α-CTF は変化しなかった。同時に、ELISA実験結果は、ApoE CTが、Aβ40をGFPコントロールの約25%まで有意に減少させ、3つのApoE NTは、いずれもAβ40を減少させないことを示した(
図1、パネルF);同様に、ApoE CTは、Aβ42をGFP コントロールの約26% まで大幅に減少させた(
図1、パネルG)。
【0282】
ADは神経疾患であり、脳では、Aβは、主にニューロンで発現されるAPP の切断によって産生される。本発明は、ニューロン内にApoE CTを発現するレンチウイルスを構築した。ELISAの結果(
図1、パネルH)は、ニューロンにおけるApoE CTの過剰発現により、初代培養マウスの海馬または皮質ニューロンで内因的に生成されるAβ40が、それぞれコントロールグループの約71%および約73%に減少する可能性があることを示した。同様に(
図1、パネルI)、ヒト多能性幹細胞によって誘導されるニューロンにおける ApoE CTの過剰発現も、ヒトニューロンで内因的に生成されるAβ40をコントロールグループの約54%まで減少させた。
【0283】
これらの結果は、さまざまな細胞において、ApoE2が細胞自律的な方式で、C末端フラグメントを介してAPPの非アミロイド代謝物 α-CTF を増加させることができ、同時に、アミロイド代謝経路を弱め、Aβ を減少させることできる。
【0284】
本発明の各実験で使用したApoE CTアミノ酸配列は以下のとおりである。
【0285】
ARMEEMGSRTRDRLDEVKEQVAEVRAKLEEQAQQIRLQAEAFQARLKSWFEPLVEDMQRQWAGLVEKVQAAVGTSAAPVPSDNH(SEQ ID NO:33)。
【0286】
3.2 培養液中に分泌されるApoE2とApoE CTは、APP切断に影響を与えない
ApoE2またはApoE CTを発現するHEK 293T細胞を培養し、培養液を得た結果、培養液には、分泌されたApoE2またはApoE CTが含まれていることが示された(
図2、パネルA)。APPを発現するHEK 293T細胞を、ApoE2またはApoE CTを含むこの培養液とともに共インキュベートした。APPを発現するHEK293T細胞を、ネガティブコントロールとしてGFPを含む培養液とともに共インキュベートした。結果は、共インキュベートした培養液中のApoE2とApoE CTは、GFPコントロールと比較して、α-CTFレベルを有意に変化させないことを示した(
図2、パネルB~C)。免疫蛍光の結果(
図2、パネルD~E)は、長期間の共インキュベーション後でも、培養液中のApoE2とApoE CTは、主に細胞表面に接着し、細胞内にほとんど侵入しないことを示した。HEK 293T細胞(図 、パネルD)またはマウス初代培養ニューロン(
図2、パネルE)で発現された ApoE2とApoE CTは、細胞内に大量に存在する。
【0287】
この結果は、細胞培養液中のApoE2とApoE CTが、α-CTFおよびAβの産生を変化させることができないことを示した。ApoE2とApoE CTは、細胞自律的でなければなく、つまり、APPの切断を調節するには、APPと同じ細胞内に存在する必要があり、それによって、α-CTFが増加し、Aβの産生が減少する。その中には、ApoE2とApoE CTを標的細胞に侵入させる方法が数多くあり、具体的に、以下を含む:リポソームは、そのようなタンパク質をコードするDNAまたはRNAを送達し、特別な指示がない限り、本発明では、リポソームを使用して、対応するタンパク質をコードするプラスミドを細胞にトランスフェクトし、ApoEおよびApoE CTを発現させる;細胞をレンチウイルスまたはアデノ随伴ウイルスに感染させることによって、ApoE2およびApoE CTは、APP発現細胞において発現させることができ、本発明は、レンチウイルスまたはアデノ随伴ウイルス発現システムを使用して、ニューロンにおいてApoE2またはApoE CTを発現させる;細胞透過性ペプチド、細胞エンドサイトーシスの増強および他の方法により、ApoE2とApoE CTタンパク質をAPPを発現する標的細胞に進入させることができる;本発明は、細胞透過性ペプチドの役割を後で詳細に検討する。
【0288】
3.3 ApoE CTが、APPアミロイド代謝のコア配列を減弱する
ApoE CT上に、どのアミノ酸がAPP代謝を変化させるコア配列であるかを調べるために、本発明は、ApoEの元の1、2、3、4または5個のアミノ酸残基をApoE CTのN末端に付加して、CT NA1、CT NA2、CT NA3、CT NA4およびCT NA5を発現するプラスミドを構築した;ApoE CTのN末端の1、2、3、4、または5個のアミノ酸を削除し、CT ND1、CT ND2、CT ND3、CT ND4、およびCT ND5を発現するプラスミドを構築した;ApoEの元の5および10個のアミノ酸をApoE CTのC末端から削除し、CT CD5およびCT CD10を発現するプラスミドを構築した。前記CT NA1、CT NA2、CT NA3、CT NA4、CT NA5、CT ND1、CT ND2、CT ND3、CT ND4、CT ND5、CT CD5およびCT CD10のアミノ酸配列は、それぞれにSEQ ID NO:13-24に示される。細胞内で発現させた場合、構築されたすべてのタンパク質のN末端はさらに、ApoE自体のシグナルペプチド(SEQ ID NO:66)に接続された。
【0289】
【0290】
SEQ ID NO:18(CT ND1):
RMEEMGSRTRDRLDEVKEQVAEVRAKLEEQAQQIRLQAEAFQARLKSWFEPLVEDMQRQWAGLVEKVQAAVGTSAAPVPSDNH;
SEQ ID NO:19(CT ND2):
MEEMGSRTRDRLDEVKEQVAEVRAKLEEQAQQIRLQAEAFQARLKSWFEPLVEDMQRQWAGLVEKVQAAVGTSAAPVPSDNH;
SEQ ID NO:20(CT ND3):
EEMGSRTRDRLDEVKEQVAEVRAKLEEQAQQIRLQAEAFQARLKSWFEPLVEDMQRQWAGLVEKVQAAVGTSAAPVPSDNH;
SEQ ID NO:21(CT ND4):
EMGSRTRDRLDEVKEQVAEVRAKLEEQAQQIRLQAEAFQARLKSWFEPLVEDMQRQWAGLVEKVQAAVGTSAAPVPSDNH;
SEQ ID NO:22(CT ND5):
MGSRTRDRLDEVKEQVAEVRAKLEEQAQQIRLQAEAFQARLKSWFEPLVEDMQRQWAGLVEKVQAAVGTSAAPVPSDNH;
SEQ ID NO:23(CT CD5):
ARMEEMGSRTRDRLDEVKEQVAEVRAKLEEQAQQIRLQAEAFQARLKSWFEPLVEDMQRQWAGLVEKVQAAVGTSAAPV;
SEQ ID NO:24(CT CD10):
ARMEEMGSRTRDRLDEVKEQVAEVRAKLEEQAQQIRLQAEAFQARLKSWFEPLVEDMQRQWAGLVEKVQAAVGT。
【0291】
HEK 293T細胞において、ヒトAPPとβ-セクレターゼを、前記プラスミドのそれぞれと共発現させ、GFPをコントロールグループとし、ELISAを使用して、Aβ40産生に対する前記タンパク質の効果を測定した。ELISAの結果(
図3、パネルA~B)としては、元のアミノ酸残基の1つを、ApoE CTのN末端に付加した後でも、CT NA1が、Aβ40の産生を依然として減少させるが、2つ以上のアミノ酸残基を付加すると、CT NA2、CT NA3、CT NA4、およびCT NA5は、Aβを減少させる能力を完全に失うことを示す。ApoE CTのN末端の1~5個のアミノ酸残基を削除した後でも、ApoE ND1、ApoE ND2、ApoE ND3、ApoE ND4、およびApoE ND5は、Aβ40を依然として低減できる。ApoE CTのC末端から5または10個のアミノ酸残基を削除しても、CT CD5、CT CD10は、依然としてAβの産生を減少した。これらの結果は、ApoE CTのN末端が非常に重要であり、わずか1つまたは2つのアミノ酸の変化でさえ、Aβ40産生の阻害におけるApoE CTの活性に影響を与える可能性があることを示す。ただし、C末端残基の活性に対する影響は比較的弱い。
【0292】
前記結果によれば、本発明は、ApoE CTのN末端における3つのアミノ酸残基(CT ND3)の削除に基づいて、ApoE CTのC末端における10、11、12、13、14、15、20または25のアミノ酸残基を削除し、CT ND3CD10、CT ND3CD11、CT ND3CD12、CT ND3CD13、CT ND3CD14、CT ND3CD15、CT ND3CD20およびCT ND3CD25を発現するプラスミドを構築し、それらのアミノ酸配列をSEQ ID NO:25~32に示す。細胞内で発現させた場合、構築されたすべてのタンパク質のN末端はさらに、ApoE自体のシグナルペプチド(SEQ ID NO:66)に接続された。
【0293】
SEQ ID NO:25(CT ND3CD10):
EEMGSRTRDRLDEVKEQVAEVRAKLEEQAQQIRLQAEAFQARLKSWFEPLVEDMQRQWAGLVEKVQAAVGT;
SEQ ID NO:26(CT ND3CD11):
EEMGSRTRDRLDEVKEQVAEVRAKLEEQAQQIRLQAEAFQARLKSWFEPLVEDMQRQWAGLVEKVQAAVG;
SEQ ID NO:27(CT ND3CD12):
EEMGSRTRDRLDEVKEQVAEVRAKLEEQAQQIRLQAEAFQARLKSWFEPLVEDMQRQWAGLVEKVQAAV;
SEQ ID NO:28(CT ND3CD13):
EEMGSRTRDRLDEVKEQVAEVRAKLEEQAQQIRLQAEAFQARLKSWFEPLVEDMQRQWAGLVEKVQAA;
SEQ ID NO:29(CT ND3CD14):
EEMGSRTRDRLDEVKEQVAEVRAKLEEQAQQIRLQAEAFQARLKSWFEPLVEDMQRQWAGLVEKVQA;
SEQ ID NO:30(CT ND3CD15):
EEMGSRTRDRLDEVKEQVAEVRAKLEEQAQQIRLQAEAFQARLKSWFEPLVEDMQRQWAGLVEKVQ;
SEQ ID NO:31(CT ND3CD20):
EEMGSRTRDRLDEVKEQVAEVRAKLEEQAQQIRLQAEAFQARLKSWFEPLVEDMQRQWAGL;
SEQ ID NO:32(CT ND3CD25):
EEMGSRTRDRLDEVKEQVAEVRAKLEEQAQQIRLQAEAFQARLKSWFEPLVEDMQR。
【0294】
HEK 293T細胞において、ヒトAPP、β-セクレターゼを、前記プラスミドのそれぞれと共発現させ、GFPをコントロールグループとし、ELISAを使用して、細胞におけるAβ40産生に対する前記タンパク質の効果を測定した。ELISAの結果(
図3、パネルC)としては、ApoE CTのN末端から3個のアミノ酸残基を削除し、かつC末端から10、11、12、13、14、15、20または25個のアミノ酸を削除した後でも、CT ND3CD10、CT ND3CD11、CT ND3CD12、CT ND3CD13、CT ND3CD14、CT ND3CD15、CT ND3CD20またはCT ND3CD25が、Aβ40を依然として有意に減少させることができることを示す。これらの結果は、Aβ産生を阻害するApoE CTのコア配列の末端位置が、ApoEタンパク質の残基274から最後のアミノ酸残基までであることを示す。
【0295】
3.4 ApoE CTは、γ切断を介してAPP切断に影響を与える
ApoE CTがAPP切断に影響を与える機構を研究するために、本発明は、ApoE CTがAPPの重要な分泌酵素の発現レベルを変化させるかどうかを検出した。本発明は、qRT-PCRとWestern Blot技術を使用し、ADAM10(主要なα-セクレターゼ)、BACE1(β-セクレターゼ)、PS1とPS2(γ-セクレターゼ活性サブユニット)のmRNAとタンパク質の発現レベルをそれぞれ検出した。qRT-PCR(
図4、パネルA)とWestern Blot(
図4、パネルB)の結果は、GFPコントロールと比較して、細胞内でのApoE CTの過剰発現は、ADAM10、BACE1、PS1とPS2のmRNAおよびタンパク質の発現に変化を与えず、ApoE CTがAPP代謝酵素の発現量の変化によるAPP切断に影響を及ぼさないことを示す。
【0296】
α-CTFはγ-セクレターゼの基質であり、Aβはγ-セクレターゼの切断産物である。したがって、γ-セクレターゼの活性が変化すると、α-CTFとAβの産生が大きく変化し、ApoE CTはα-CTFとAβの産生を変化させる。したがって、ApoE CTはγ-セクレターゼの活性を変化させる可能性がある。この推測を検証するために、本発明は、HEK 293T細胞においてAPPおよびγ-セクレターゼの活性中心であるPS1を共発現させた。免疫ブロットの結果(
図5、パネルA~B)としては、PS1(γ-セクレターゼ活性を増強できる)の過剰発現によりα-CTFが減少することを示した。ApoE CTの発現、または1μMのγ-セクレターゼ阻害剤PF03084014による処理は、どちらもα-CTFを有意に増加した(
図5、パネルA~B)。この結果は、細胞内で発現されたApoE CTのAPP切断に対する効果が、γ-セクレターゼの阻害の効果と同様であることを示唆した。β-CTFは、β-セクレターゼによって消化されたAPPの産物であり、γ-セクレターゼの基質でもあり、Aβを生成するには、γ-セクレターゼ切断を1段階行うだけで完成できる。ELISAの結果(
図5、パネルC~D)は、ApoE CTの発現が、β-CTFによって生成されるAβ40が元のレベルの約80%に減少させるだけでなく、Aβ42も元のレベルの約8%に減少させることを示し、これは、Aβを減少させるApoE CTの能力が、γ切断を制御することによって達成される可能性があることを示した。本発明は、さらに、HEK293T細胞において、APP細胞内C末端ドメイン(APP intracellular C-terminal domain)が除去されたAPP(APP
ΔAICD)を、BACE1(β-セクレターゼ)とApoE CTと共発現させた。APP
ΔAICDは、γ切断を受ける必要がなく、β切断を 1 段階行うだけで、Aβを生成することができる。ELISAの結果(
図5、パネルE)としては、ApoE CTの発現が、APP
ΔAICDから生成されるAβをもはや減少させないことを示し、ApoE CTが、β切断に影響を及ぼさないことを示した。
【0297】
これらの結果は、細胞内で発現されたApoE CTは、Aβを減少させるために、γ切断を必要とし、過剰発現されたApoE CTは、γ-セクレターゼ阻害剤の効果をシミュレートすることを示し、ApoE CTは、APPのγ切断を阻害し、それによって、α-CTFを増加させ、Aβを減少させる可能性がある。
【0298】
3.5 ApoE CTによるAPP切断の制御には、γ-セクレターゼの関与が必要である
γ-セクレターゼの活性中心は、PS1またはPS2であり、PS1とPS2をノックアウトすると(PS1/2 dKO)、α-CTFは、γ-セクレターゼによって代謝されなくなり、大量に蓄積する。免疫ブロットの結果(
図6、パネルAとD)としては、野生型HEK 293T細胞株において、発現されたApoE CTが、α-CTFを有意に増加させることを示し、GFPを発現したPS1/2 dKO細胞では、野生型HEK 293T細胞株と比較して、α-CTF含有量が大幅に増加した。PS1/2 dKO細胞におけるApoE CTの発現は、α-CTFをさらに増加させなく、これは、γ-セクレターゼが存在しない場合、ApoE CTがもはやα-CTFを増加させることができないことを示した。PS1あるいはPS2の発現を補充したPS1/2 dKO細胞で発現させたApoE CTは、α-CTFを有意に増加させ(
図6、パネルB~D)、これは、ApoE CTによるα-CTFの増加が、PS1またはPS2に依存することを示す。同様に、PS2の発現を補充したPS1/2 dKO細胞株において、ApoE CTの過剰発現は、Aβ40を減少させた(
図6、パネルE)。これらの結果は、ApoE CTが、γ-セクレターゼの存在下でのみ、APPの代謝を制御できることを示した。
【0299】
3.6 ApoEは、精製系におけるγ-セクレターゼによるβ-CTF の切断を直接阻害する
ApoEがγ-セクレターゼを直接阻害するかどうかをさらに検証するために、本発明は、β-CTF、ApoE2、ApoE2 NTおよびγ-セクレターゼを精製し、免疫ブロットにより、これらの精製タンパク質を検証した(
図7、パネルA)。このうちPS1、NCT、PEN2はγ-セクレターゼの構成タンパク質である。ELISAの結果(
図7、パネルB)としては、γ-セクレターゼとβ-CTFの共インキュベーションが、Aβを産生させることができ、当該場合、10μMのγ-セクレターゼ阻害剤(PF03084014)の添加が、Aβの産生を阻害することができることを示した。この反応系に、精製されたApoE2を添加し、濃度依存の方式で、Aβ40の産生を阻害し、その半数阻害濃度(IC50)は、約1.2μMである(
図7、パネルC)。さらに、同じ濃度条件(2.5μM)では、ApoE2は、Aβの産生を有意に阻害できるが、ApoE2 NTは、Aβ40の産生を阻害できない(
図7、パネルD)。これらの結果は、ApoE2は、γ-セクレターゼによるβ-CTFの切断を直接阻害することができ、ApoE CTは、ApoEの当該活性に必要であることから、ApoE CTは、γ-セクレターゼによるAPPの切断を阻害するApoE2の重要なフラグメントであることを示唆した。
【0300】
3.7 ApoE CTが、APLP1のγ切断を阻害しない
APLP1(APP like Protein 1)は、APPと類似した構造を持つタンパク質であり、αとγセクレターゼの基質の1つである。免疫ブロットの結果(
図8)としては、γ-セクレターゼ阻害剤であるPF03084014が、HEK 293T細胞におけるAPLP1のγ切断を阻害し、α-like CTFを大幅に増加させることができるが、共発現されたApoE CTは、APLP1のα-like CTFを増加させず、ApoE CTが、APLP1のγ切断を阻害しないことを示した。この結果は、ApoE CTがある程度の基質選択性でγ-セクレターゼの切断活性を阻害することを示した。
【0301】
3.8 ニューロンで発現されたApoE CTは、ADモデルマウスの脳のアミロイド斑を減少させる
ニューロン内でApoE CTを発現できるアデノ随伴ウイルスを、4週齢のADモデルマウス(5×FAD)の皮質および海馬に注射した。ニューロン内でApoE CTを(またはGFPをネガティブコントロールとして)発現させてから6か月後に、アミロイド斑に対するその効果を検出し、ApoE CT、GFP、とアミロイド斑を染色した。その結果としては、ニューロン内でApoE CT(N末端はヒトApoE自体のシグナルペプチド(SEQ ID NO:66)と接続する)を発現する5×FADマウスの脳内のアミロイド斑面積は、より小さく、蛍光強度はより弱く、アミロイド斑の総面積が脳に占める割合はより小さくなり、アミロイド斑の密度もより減少した(
図9、パネルA~E)。これらの結果は、ニューロンで発現されたApoE CTが、5×FADマウスの脳におけるアミロイド斑の沈着を阻害し、マウスにおけるADの病理学的進行を軽減することを示した。
【0302】
3.9 ニューロンに発現されたApoE2は、マウスに内因的に産生されたAβ40を阻害できる
上記の実験は、ApoE CTが、γ-セクレターゼ活性の阻害におけるApoE2の重要な機能ドメインであり、かつApoE CTが、マウスのニューロンにおけるAβ40の産生を阻害できることを示した。次に、ApoE2がニューロンにおける内因性Aβ40の産生も阻害するかどうかを検討した(
図10)。GFPまたはApoE2は、それぞれ、レンチウイルス発現システム(lentivirus)およびニューロン特異的プロモーターを使用し、マウスの初代培養ニューロンで発現された。ApoE2のN末端は、さらに、ヒトApoE自体のシグナルペプチド(SEQ ID NO:66)に接続された。ELISAの結果(
図10、パネルA)としては、ニューロンにおいて過剰発現されたApoE2が、GFPコントロールと比較して、内因的に産生されるAβ40を減少させることができることを実証した。さらに、AAV発現システムの使用が、ApoE2を、野生型マウス(WTマウス)の脳のニューロンで発現させた。ELISAの結果(
図10、パネルB)は、マウスの脳のニューロンで発現されたApoE2も、GFPコントロールと比較して内因性Aβ40の産生を減少させることを示した。これらの結果は、ApoE2が、ApoE CTと同様に、ニューロンにおける内因性Aβ40の産生を阻害できることを示した。
【0303】
3.10 両端にタグタンパク質を挿入したApoEが、依然としてAPP切断を制御する活性を有する
ApoEに付加されたタグタンパク質が、ApoEの活性を破壊するかどうかを検討するために、本発明には、ApoE2とApoE CTのC末端およびN末端に、それぞれタグタンパク質V5(SEQ ID NO:82)を付加し、それぞれ、ApoE2-V5(V5はC末端にある)、V5-ApoE2(V5はN末端にある)、ApoE CT-V5、およびV5-ApoE CTと名付けられた。構築されたすべてタンパク質のN末端は、さらに、ヒトApoE自体のシグナルペプチド(SEQ ID NO:66)に接続された。そして、これらの発現プラスミドとAPPをHEK 293T細胞で共発現させた。免疫ブロットの結果としては、ApoE2-V5およびV5-ApoE2(
図11、パネルA~B)とApoE CT-V5およびV5-ApoE CT(
図11、パネルC~D)は、どちらもα-CTFを有意に増加させることを示し(
図11)、その活性は、ApoE2またはApoE CTに似ている。これは、両端にタグタンパク質を挿入したApoE2とApoE CTが、依然としてAPP切断を制御する活性を有することを示した。
【0304】
3.11 ApoE CTの突然変異は、依然としAPPの切断を制御することができる
ApoE CTにおける突然変異が、APP切断の制御におけるApoE CTの活性を変化させるかどうかを検討するために、本発明は、一連のApoE CT突然変異体を構築し分析した。単一部位突然変異:CT A20、CT A40、CT A60、CT A65、CT A72、CT A80;二重部位突然変異:CT A36/74;複数の部位突然変異:CT E5、CT E10、CT E20、CT F5、CT R10、CT LF5、CT LM5;を含む。突然変異部位の位置は、ApoE CT(SEQ ID NO:33)に対する位置である。それらのアミノ酸配列をSEQ ID NO:46~59に示す。構築されたすべてタンパク質のN末端は、さらに、ヒトApoE自体のシグナルペプチド(SEQ ID NO:66)に接続された。
【0305】
【0306】
【0307】
【0308】
HEK 293T細胞において、ヒトAPPを、前記プラスミドのそれぞれと共発現させ、GFPをネガティブコントロールとし、ApoE CTをポジティブコントロールとして用いた。免疫ブロットの結果としては、構築されたApoE CT(
図12、パネルA~B)の単一部位突然変異および二重部位突然変異のうち、CT A20、CT A40、CT A60、CT A65、CT A72、CT A80およびCT A36/74のすべては、α-CTFを大幅に増加し、そしてApoE CTと比較して、これらの突然変異によるα-CTF増加の程度は減少しない(CT A72、CT A80、およびCT A36/74は、α-CTFをさらに大幅に増加させた)ことを示した。複数の部位突然変異CT E5、CT E10、CT E20およびCT F5 は、α-CTF を増加させることができなくなるが、CT R10、CT LF5、およびCT LM5は依然としてα-CTFを有意に増加させ、かつこれらの突然変異は、α-CTFをApoE CTと同様のレベルまで増加させた(
図12、パネルC~D)。これらのデータは、ApoE CT突然変異体(例えばCT A20、CT A40、CT A60、CT A65、CT A72、CT A80、CT A36/74、CT R10、CT LF5とCT LM5)も、APP 切断の制御において元の ApoE CT と同様の活性を有することを示した。
【0309】
3.12 ApoE2 内のアミノ酸残基の挿入または削除が、依然としてAPPの代謝を制御できる
本実験が、ApoE2内のアミノ酸残基の挿入または削除が、ApoEの活性に影響を与えるかどうかを検討した。本発明は、まず、ApoE2(SEQ ID NO:12)の215位と216位のアミノ酸残基の間に、タグタンパク質3XFLAGを挿入し、ApoE2-M3F(SEQ ID NO:60;太字は3XFLAG配列;下線はSEQ ID NO:33の配列を示す)と命名し、当該修飾は、ApoE CT配列(SEQ ID NO:33)には影響を及ぼさない。本発明はまた、ApoE2 MD10(SEQ ID NO:61)を構築し、ApoE2 MD10は、ApoE2のアミノ酸残基244位~254位を削除させることにより得られ、これらの欠失アミノ酸は、ApoE2がAPP代謝を制御するC末端領域、すなわちSEQ ID NO:33の配列に位置する。細胞内で発現させた場合、構築されたすべてのタンパク質のN末端はさらに、ヒトApoE自体のシグナルペプチド(SEQ ID NO:66)に接続された。
【0310】
【0311】
【0312】
HEK 293T細胞において、ヒトAPPを、ApoE2-M3FとApoE2 MD10と共発現させ、GFPをネガティブコントロールグループとして使用した。免疫ブロットの結果(
図13)としては、ApoE2の中間位置にアミノ酸残基を挿入するApoE2-M3F(ApoE CT配列に影響を与えない)であっても、C末端機能領域の中央にあるアミノ酸残基を削除するApoE2 MD10であっても、α-CTFを有意に増加した。この結果は、ApoE2内にあるアミノ酸配列を挿入あるいは削除しても、ApoE2は、依然としてAPPの代謝を制御することができることを示した。
【0313】
3.13:非ヒト由来のApoE CTも、APPの切断を制御する
非ヒトApoEが同じ活性を持つかどうかをさらに研究するために、本実験では非ヒト霊長類由来のApoE CT(monkey CT)を分析した。当該配列は、アミノ酸配列がヒトApoE CTと非常に類似し、アミノ酸置換がR36S+T74A+A76Tの3つだけである(
図14、パネルC)。サル ApoE CT アミノ酸配列を以下に示す。
【0314】
【0315】
HEK 293T 細胞において、ヒトAPPと非ヒト霊長類ApoE CT(細胞内で発現させる場合、N末端はさらにヒトApoE自体のシグナルペプチド(SEQ ID NO:66)に接続する)を共発現させ、GFPをネガティブコントロールグループとして、ヒトApoE CT(N末端はさらにヒトApoE自体のシグナルペプチド(SEQ ID NO:66)に接続する)をポジティブコントロールとして使用した。免疫ノブロットの結果(
図14、パネルAおよびB)としては、非ヒト霊長類ApoE CT(monkey CT)もヒトApoE CTもα-CTFを増加させることを示した。この結果は、非ヒト霊長類のApoE CTにもAPP切断を制御する活性があることを示した。
【0316】
3.14:膜透過ペプチドを挿入するApoEは、APP切断を制御する活性を有する
膜透過性ペプチドが、ApoEの活性を変化させるかどうかを検討するために、本発明は膜透過性ペプチドをApoEに添加した。選択された膜透過ペプチド配列は次のとおりであった:
【0317】
【0318】
ヒトApoE2のN末端にR9、FGF4、RDPを添加して構築したApoE2突然変異体を、それぞれR9-ApoE2、FGF4-ApoE2、RDP-ApoE2と名付けた。すべてのタンパク質構築体のN末端は、さらに、ヒトApoE自体のシグナルペプチド(SEQ ID NO:66)に接続された。HEK 293T細胞において、R9-ApoE2、FGF4-ApoE2、およびRDP-ApoE2をそれぞれヒトAPPと共発現させ、GFPをネガティブコントロールグループとして使用した。免疫ブロットの結果(
図15)としては、FGF4-ApoE2はα-CTFを増加させなかったが、R9-ApoE2およびRDP-ApoE2の両方がα-CTFを有意に増加させたことを示した。この結果は、膜透過ペプチドと結合した ApoE2が、依然としてAPPの切断を制御できることを示した。
【0319】
3.15 シグナルペプチドは、APP切断を制御するApoECTの活性に必要である
細胞内で発現したApoEの機能を研究するための前記実験では、使用した対応するペプチドを発現するすべてのアミノ酸配列は、ヒトApoE自体のシグナルペプチド(ApoE SP;SEQ ID NO:66)を含み、このシグナルペプチドは、ApoEまたはApoE CTおよび前記に記載のApoEまたはApoE CTの各突然変異体のN末端に位置する。シグナルペプチドがApoE CTの活性に影響を及ぼすかどうかを研究するために、本発明では、ApoE CTのシグナルペプチドを、それぞれApoA1およびApoJのシグナルペプチドに置き換えた(ApoA1 SPおよびApoJ SP;SEQ ID NO:67およびSEQ ID NO:68)。シグナルペプチドに接続しないApoE CT活性も分析した。
【0320】
【0321】
ApoE A1シグナルペプチドで置換されたApoE CT突然変異体はASP CT、ApoE Jシグナルペプチドで置換されたApoE CT突然変異体はJSP CT、シグナルペプチドを含まないApoE CT突然変異体はNSP CTと命名した。HEK 293T細胞において、ヒトAPPを、前記のApoE CTの突然変異体のそれぞれと共発現させ、GFPをネガティブコントロールとし、ApoE CTをポジティブコントロールとして用いた。免疫ブロットの結果(
図16)としては、ASP CTとJSP CTは、依然としてα-CTFを増加させたが、ApoE自身のシグナルペプチドを用いたApoE CTほどではなかった;シグナルペプチドを削除した後、NSP CTはもはやα-CTFを増加させなかった。この結果は、細胞内に発現したApoEのCTが、γセクレターゼによるAPPの切断を制御するためにはシグナルペプチドと結合している必要があるが、このシグナルペプチドは異なるシグナルペプチドであってもよく、ApoE本来のシグナルペプチドに限定されないことを示唆した。
【0322】
4. 実験結果
本発明は、ApoE2がニューロンにおいて細胞自律的な方式で、APPの切断を制御できることを初めて明らかにしたもので、この過程はApoE2のC末端フラグメントに依存する。ApoEのC末端フラグメントは、APPの非アミロイド代謝産物であるα-CTFを増加させるだけでなく、APPのアミロイド代謝を減衰させ、Aβを減少させる。また、ApoE2とそのC末端フラグメントがAPPの代謝を制御するのは、細胞外に分泌されたApoEタンパク質を介して、細胞内のAPPの切断に間接的に影響を与えるためではなく、ApoE2またはそのC末端フラグメントが、APPと同じ細胞内に共存するAPPのγ-切断を直接阻害することによって達成されるのであり、これは細胞自律的な作用方式であることを判明した。ApoE2はまた、精製タンパク質を用いた実験で、β-CTFのγセクレターゼ切断を直接阻害し、C末端を欠失するApoE NTは、β-CTFのγセクレターゼ切断を阻害しなかったことがわかった。さらに、ApoEのC末端フラグメントは、APLP1のγ切断を阻害しなかったことから、ApoEのC末端フラグメントによるγ切断の阻害は、ある程度基質選択的であることが示唆された。本発明はまた、ニューロンに特異的に発現するApoEのC末端フラグメントが、ADモデルマウスの脳におけるアミロイド斑の大きさと密度を有意に減少させることを見出した。マウスのニューロンで特異的に発現したApoEは、内因性のAβ40産生を抑制する。また、NまたはC末端にタグタンパク質の挿入が、ApoE2およびApoE C末端フラグメントのAPPγ切断阻害活性には影響しなかった。本発明はまた、ApoE C末端フラグメントおよびApoE2の内部配列の一連の突然変異体を構築し、元のApoE CTまたはApoE2と同様のAPPγ切断阻害活性を有することを判明した。また、ApoEのN末端にある膜透過性ペプチドを挿入しても、APPγ切断を阻害する活性には影響しないが、N末端にシグナルペプチドがない場合には、ApoEのAPPγ切断阻害活性が欠損することを本発明は見出した。本発明の知見は、ヒト由来のApoE C末端フラグメントに限定されるものではなく、非ヒト霊長類のApoE C末端フラグメントもAPPγ切断に対して同様の阻害活性を有する。
【0323】
これらの結果は、ApoE2とそのC末端フラグメント(あるいはApoE2またはC末端フラグメントに基づく突然変異体)が、ADを予防または治療する医薬品として使用される可能性があることを示唆する。そして、そのような可能性のある医薬品は、ニューロンにおいて細胞自律的な方式で作用する必要がある。DNAまたはRNAのリポソーム送達、レンチウイルスおよびアデノ随伴ウイルス感染などは、標的細胞におけるApoE2および/またはそのC末端フラグメントを発現させることができる;細胞透過性ペプチド、細胞貪食能の増強などの方式でも、標的細胞内にApoE2および/またはそのC末端フラグメントタンパク質が豊富に存在するようになる;そして、ApoE2および/またはそのC末端フラグメントは、細胞自律的な方式でγセクレターゼの切断活性を阻害し、Aβを減少させ、APPのアミロイド代謝を抑制する。
【0324】
前記実験は、ApoE2および/またはそのC末端フラグメントが、細胞自律的な方式でγセクレターゼの切断活性を阻害することを説明するための、AD疾患を一例として挙げるものに過ぎない。さらに、アミロイド脳血管障害などの疾患は、γセクレターゼの機能異常と関連する。また、ダウン症もADに進展しやすい。したがって、ApoE2および/またはそのC末端フラグメントは、これらのAPPまたはγセクレターゼ関連疾患の治療や予防に応用できる可能性もある。
【0325】
実施例2:ApoEによるγセクレターゼの正確な阻害がアルツハイマー病の予防につながる
1. 概要
γセクレターゼ活性の異常な低下は、家族性アルツハイマー病(familial AD、fAD)の原因となるほとんどのプロジェロイド変異と関連している。しかし、より一般的な散発性AD(sAD)におけるγセクレターゼの役割は、未解決のままである。ヒトのアポリポタンパク質E(ApoE)は、sADの最も重要な遺伝的危険因子であり、本発明は、ApoEがγセクレターゼと相互作用し、その保存されたC末端領域(CT)を介して、基質特異的に細胞自律的な方式でγセクレターゼ活性を阻害することを報告している。このApoE CTに仲介される阻害活性は、異なるApoEサブタイプによって、異なって損なわれ、その結果、ApoE2>ApoE3>ApoE4の順で、ADリスクと反比例する効力を示す。興味深いことに、ADマウスモデルでは、ニューロンに発現したApoE CTが、他の領域からアミロイド斑に移動し、アミロイド斑の形成を遅らせることができる。つまり、本実験のデータは、ApoEが基質特異的なγセクレターゼ阻害活性を持つことを明らかにし、ApoEによるγセクレターゼの正確な阻害がsADのリスクを防ぐことを強く示唆した。
【0326】
2. 紹介
アルツハイマー病(AD)は最も一般的な神経変性疾患であり、世界中で5000万人近くが罹患している(Prince、2015)。β-アミロイド(Aβ)仮説では、ADは、アミロイド前駆体タンパク質(APP)がβ-セクレターゼ酵素とγ-セクレターゼ酵素によって順次切断されることによって産生されるペプチドであるAβの過剰凝集が原因であるとされる(De StrooperとKarran,2016;De Strooperら,1998;HaassとSelkoe,1993;Hardy とSelkoe,2002;Wolfeら,1999)。γセクレターゼの触媒活性中心であるプレセニリン1(PS1)とプレセニリン2(PS2)の突然変異は、まれな家族性AD(fAD)を引き起こす。これらの証拠から、γセクレターゼはADの創薬ターゲットと考えられる。残念ながら、従来のγセクレターゼ阻害剤による治療は、重篤な副作用を引き起こす可能性がある(Panzaら、2019;Xia、2019)。最近の研究では、fADに関連するプロジェリン突然変異は、通常、γセクレターゼ活性の全体的な低下と関連する(ShenとKelleher 2007;Sunら.2017;Walkerら.2005;Xiaら.2015)ことが分かって、これは、Aβ仮説に基づいて予測されるγセクレターゼの役割とは矛盾している。Aβに基づく薬剤開発の努力が満足のいくものではなかったことを考えると(KarranとDe Strooper,2016)、より一般化した散発性AD(sAD)においてγセクレターゼが果たす役割を明らかにすることが急務である。
【0327】
sADの原因遺伝子はないが、発症リスクは多くの遺伝的要因に影響される。その中でも、アポリポ蛋白質E4(ApoE4)は最も影響力のあるものの一つである(Corderら、1993;Rhinnら、2013)。ApoE遺伝子は、そのN末端領域(NT)にのみ1つのアミノ酸の違いがある3つのアイソフォーム、すなわちApoE2、3、4をコードする(Kanekiyoら,2014)。ApoE4は、ADのリスクを高めるだけでなく、発症年齢を早め、ADの重症度を悪化させる(Belloyら、2019;Liら、2020)。逆に、ApoE2はADリスクを減少させた。げっ歯類の脳では、正常な生理的条件下では、ApoEは通常グリア細胞でのみ検出されるが(Kanekiyoら、2014)、Aβはニューロンで産生される。しかし、ApoEはヒトのニューロン(Aokiら、2003年;Hanら、1994年;Metzgerら、1996年;Strittmatterら、1993年;Xuら、1999年)や傷害を受けたげっ歯類のニューロンにも発現する(Xuら、2006年)。ヒトの脳におけるApoEの代謝は、グリア細胞よりもニューロンに発現するApoEの代謝に類似する(Brechtら、2004)。異なるApoEサブタイプを持つヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)から作製したニューロンを用いた最近の研究では、ApoE4ポジティブニューロンでAβ産生が増加したことから、ニューロン中のApoEが細胞自律的な方式でAPP代謝を制御することが示唆された(Wangら、2018年)。この証拠は、ニューロンにおけるApoEが非常に重要な生理的役割を担っていることを示唆するが、これについてはこれまで十分に研究されてこなかった。
【0328】
本実験は、ApoEがγセクレターゼと直接相互作用し、そのC末端領域を介してAPPのγ切断を特異的に阻害することを報告する。エキサイティングなことに、こんな抑制活性は、ApoEサブタイプによって異なって損なわれ、ApoEサブタイプに対応するADリスクと負の相関を示した。さらに、ニューロンで発現したApoE CTは、アミロイド斑の周囲に集積し、このアミロイド形成ホットスポット領域で局所的なγ阻害を達成できる可能性がある(Jorda-Siquierら、2022年)。つまり、本実験のデータは、ApoEによるγセクレターゼの正確な阻害が、sADのリスクを防ぐことを示唆し、ApoE CTが、これまでにない特異性を持つ新規のγセクレターゼ阻害剤であることを明らかにした。
【0329】
3. 実験結果
3.1. 内因性ApoEとAPPは、ヒト大脳皮質ニューロンで共発現し、かつ重複した細胞内分布パターンを示す
ApoEは、げっ歯類の脳では主にグリア細胞に発現し、Aβはニューロンに発現するAPPによって代謝される。そのため、ほとんどの研究は、グリア細胞から分泌されるApoEが、細胞外のアミロイド斑の形成にどのように影響するかに焦点を当てる(Huangら、2017年;Huynhら、2017年;Liuら,2017年)。しかし最近の研究で、ApoEは細胞自律的な方式で、Aβの産生を制御できることが示された(Wangら、2018年)。本研究では、この可能性のあるメカニズムを探る前に、ApoEが実際にニューロンに発現することを確認するため、まずヒトの脳サンプルを免疫蛍光法で染色した。この実験結果は、ヒトの脳のニューロンとグリア細胞の両方でApoEが検出されたという、以前に報告されたヒトの脳のデータ(Aokiら、2003;Belonwuら、2022;Hanら、1994;Zalocuskyら、2021)と一致する。具体的には、若年コントロールグループ(
図17、パネルA;
図25、パネルB;および
図32のヒト脳ドナーの情報)、年齢をマッチさせた非AD患者のコントロールグループ(高齢、60歳以上)、AD患者(AD、60歳以上)の脳サンプルでは、皮質ニューロンの30~50%がApoE陽性であった(
図25、パネルAおよびB);一方、ヒト大脳皮質サンプルでは、ApoE陽性細胞の40-62%がニューロンであった(
図17、パネルA;
図25、パネルAおよびC)。さらに、ヒトの皮質アストロサイトもApoEを発現した(
図25、パネルD)。サルの大脳皮質では、検出可能なApoEシグナルのほとんどはニューロンに位置する(
図17、パネルA)。ヒトAD患者の脳では、アミロイド斑に強いApoE染色シグナルが検出されたが、ADを罹患しないコントロール脳サンプルの同じ部位では、ApoEシグナルは検出されなかった(
図25、パネルE)。重要なことは、免疫染色によって、内因性のApoEとAPPが、ヒト大脳皮質神経細胞で共存し、細胞内シグナル伝達パターンが重複していることが示されたことである(
図17、パネルB)。
【0330】
3.2. ApoE2は、細胞自律的な方式でα-CTFを増加させ、Aβを減少させる
ApoEが細胞自律的な方式でAPP代謝を制御できるかどうかを研究するため、本実験では、マウスのニューロン株(N2A;
図17、パネルC)とHEK 293T細胞(
図26、パネルC)で、APPをApoEと共発現させた。α-CTFは、APPの非アミロイド代謝経路の切断産物であり、その産生は、α-セクレターゼ(Eschら、1990年;Haassら、1992年;MuckeとSelkoe,2012年)であるADAM10(
図26、パネルAおよびB)に大きく依存することが知られる。N2A細胞とHEK 293T細胞において、ApoE2またはApoE3は、共発現APPから産生されるα-CTFのレベルを有意に増加させた(
図17、パネルCおよびD、N2A細胞;
図26、パネルCおよびD、HEK 293T細胞)。さらに、ApoE2は、共発現APPから産生されるAβ40のレベルも有意に減少させた(
図17、パネルE)。興味深いことに、ApoE4とAPPの共発現は、α-CTF(
図17、パネルCとD)およびAβ40レベル(
図17、パネルE)を変化させることができなかった。これらの結果は、ApoE2が細胞自律的な方式でα-CTFを増加させることを示唆する。
【0331】
3.3. ApoE2のC末端領域は、全長ApoE2よりもα-CTF濃度を上昇させる活性が高い
ApoEは、三つの領域を含む:一つのN末端領域(ApoE NT)、一つのヒンジ領域と一つの保存のC末端領域(ApoE CT)(
図33)(Chenら、2011)。3つのApoEサブタイプの間の配列の違いは、それらのNT内にあるのみである。ApoEサブタイプの短縮突然変異体を持つHEK 293T細胞を用いた実験では、ApoE2、3、4由来のNTは、共発現APPから産生されるα-CTFを有意に変化させないことが示された(
図26、パネルEおよびF)。逆に、保存されたApoE CTの共発現は、α-CTFレベルを6倍以上増加させた(
図26、パネルGとH)。
【0332】
驚くべきことに、実験の結果としては、ApoE CTをAPPと共発現させると、細胞培養液に分泌されるAβ
40が、約75%減少し(
図26、パネルI)、細胞溶解液中のAβ
40が、約42%減少し(
図26、パネルJ)、さらにAβ
42が、約74%有意に減少したが(
図26、パネルK)、それでもAβ
42/Aβ
40の比率は、変化しなかった(
図26、パネルK)。しかし、ApoE CTをAPPとBACE1と共発現させても、β-CTFレベルは変化しなかった(
図26、パネルLおよびM)。すべてのApoE NTは、Aβ
40を有意に減少させることができなかった(
図26、パネルI)。同様に、N2A細胞を用いた実験では、ApoE CTとAPPの共発現のみがα-CTFを有意に増加させたが、ApoE NTの共発現ではα-CTFは増加しなかった(
図17、パネルFおよびG);さらに、ApoE CTは総Aβ
40も有意に減少させた(
図17、パネルH)。
【0333】
実験により、ApoE2と比較して、ApoE CTは、α-CTFレベル(
図17、パネルIとJ、N2A細胞;
図26、パネルNとO、HEK 293T細胞)を有意に増加させ、これは、ApoE CTがAPPの代謝を制御する上で、全長ApoE2よりも活性が高いことを示している。これらの結果は、ApoEの保存領域であるApoE CTが、α-CTFレベルを増加させることを示唆し、かつApoEのNTがApoE CTのこの活性を何らかの形で妨げている可能性を表す。
【0334】
分泌のApoEが、APPの切断にも影響するかどうかを研究するため、本研究は、分泌型ApoEまたはApoE CTを含む培養液で、APPのみを発現するHEK 293T細胞を培養した(
図27)。実験では、培養液中の遊離のApoE2またはApoE CTは、細胞内でAPPが産生するα-CTFを変化させないことを示した(
図27、パネルA、B、C)。注目すべきことに、ApoE2は、37℃の条件付き培地中で48時間も安定して存在した(
図27、パネルD)。ならし培地で処理したHEK 293T細胞と初代培養のラットのニューロンでは、ApoE2 またはApoE CTが、主に細胞膜の外側に検出された(
図27、パネルEおよびF)。これに対して、細胞内またはニューロンで発現されるApoE CTは、細胞内またはニューロン内に分布した(
図27、パネルEおよびF)。細胞溶解液中のApoE2と培養液中に分泌されたApoE2の相対量を比較すると、どちらも同程度の量のApoE2を含んでいた(
図27、パネルG)。さらに、ならし培地に含まれる少量のApoEは、共インキュベーション後、細胞やニューロンによってエンドサイトーシスされる(
図27、パネルEおよびF)。従って、ApoEによるAPP代謝制御は、分泌のApoEよりも細胞内ApoEによって細胞自律的な方式で行われる可能性が高い。
【0335】
3.4. ニューロンに発現したApoE CTは、内因性Aβを減少させる
ヒトAPPに加え、ApoE CTは、マウスAPP(mAPP)を一過性に発現させたHEK 293T細胞でもα-CTFレベルを増加させた(
図26、パネルPおよびQ)。初代培養のニューロンを用いた実験の結果としては、マウスの皮質および海馬ニューロンでApoE CTを過剰発現(レンチウイルス感染)させると、内因性Aβ
40がGFPコントロールに比べて30%減少した(
図17、パネルK)。hiPSCで誘導したニューロンでは、ApoE CT(レンチウイルス感染)により、ヒトのニューロンによる産生されたAβ
40が、約46%減少した(
図17、パネルL)。つまり、これらの結果により、ApoE CTが、げっ歯類およびヒトのニューロンにおける内因性Aβを遅らせることが示唆される。さらに、ApoE CTの発現は、病原性スウェーデンAPP突然変異体(APPSW)を発現するHEK 293T細胞(Citronら、1992)におけるAβ
40産生を遅らせた:培地におけるAβ
40は、約76%減少し(
図26、パネルR)、細胞溶解液におけるAβ
40は、約43%減少し(
図26、パネルS)、これは、ApoE CTが、APPSWから産生されたAβを減少させることを示した。
【0336】
APPと共発現したもう一つのアポリポタンパク質であるアポリポタンパク質A1(ApoA1)は、α-CTFとAβのレベルを変化させることができなかった(
図26、パネルT、U、V)ことから、APPの切断を制御するApoEの活性は、どのアポリポタンパク質の非特異的な活性でもないことが示唆される。
【0337】
3.5. ApoE2は、CTを仲介してAPPとγセクレターゼと相互作用する
N2A細胞では、ApoE2またはApoE CTは、共発現したAPP-FLAGと非常によく似た核周囲の細胞内分布パターンを示した(
図18、パネルA)。培養されたラットの海馬ニューロン(
図18、パネルB)とhiPSC誘導ニューロン(
図18、パネルC)では、ApoE2-V5またはApoE CT-V5の発現は、ニューロン内で内因性に発現したAPPと同様の細胞内分布パターンを示した(V5はタグタンパク質)。これらの結果は、ApoEとApoE CTがAPPと同様の細胞内分布パターンを持つことを示唆した。
【0338】
ApoEとAPPまたはAPPセクレターゼとの潜在的相互作用を検出するため、本実験では、タンパク質近接依存性標識技術が用いられた(Hungら、2016)。HEK293T細胞で共発現させると、ApoE2とApoE CTは、APP-APEX2(APPのC末端に接続したアスコルビン酸ペルオキシダーゼ2;
図18、パネルDとE)によってビオチン化された。また、FL-APP(全長APP)とα-CTFは、同じシステムでApoE2-APEX2によってビオチン化された(
図18、パネルF)。初代培養のラットのニューロンでは、ApoE2-APEX2は内因性に発現したAPPをビオチン化した(
図18、パネルG)。さらに、ApoE2-APEX2は、共発現したADAM10(αセクレターゼ)、PS1およびPS2(γセクレターゼの切断触媒活性)をビオチン化したが、βセクレターゼBACE1はビオチン化しなかった(
図18、パネルH)。さらに、HEK 293T細胞で共発現させると、ApoE2とApoE CT(ApoE2 NTではなく)は、β-CTF-FLAGと免疫沈降できた(
図18、パネルI)。同様に、HEK 293T細胞で共発現させると、ApoE2とApoE CT(ApoE2NTではなく)は、γセクレターゼの成分(APH、NCT、PEN2)と免疫沈降した(
図18、パネルJ;抗FLAG-PEN2で用い、免疫沈降を行う)。興味深いことに、ヒトの脳サンプルでは、内因性のγセクレターゼ(NCT、PS1、PS2、PEN2)が、内因性のApoEと免疫沈降した(
図18、パネルK)。以上の結果は、ApoE2とApoE CTのみが(ApoE NTではなく)、APP、γセクレターゼ、αセクレターゼと相互作用できるが、BACE1とは相互作用しないこと、かつApoEとγセクレターゼの内因性相互作用がヒトの脳に存在することを示している。
【0339】
3.6. ApoE CTはAPPのγ切断を減少させる
潜在的なメカニズムをさらに研究するため、本研究では、ADに関連するAPP突然変異体とApoE CTとの相互作用をさらに探索した。ApoE CTは、試験したすべてのAPP突然変異体から産生されたα-CTFを増加させた(
図28)。興味深いことに、野生型APP(WT APP)に比べて、ApoE CTがα-CTFレベルを増加させる能力は、γ切断部位近傍にfAD変異を持つAPP突然変異体を発現する細胞(T714I、V717F、L723P)(Kumar-Singhら、2000;Kwokら、2000;Murrellら、1991)で有意に低下した(
図28)。WT APPと、β-またはα-切断部位近傍にfAD突然変異を生じたAPPサブタイプ(KM670/671NL、E693K、E693Δ)(Bugianiら、2010;Citronら、1992;Tomiyamaら、2008;Xiaら、2021)を研究するところ、α-CTFレベルに対するApoE CTの統計的に有意な影響は検出されなかった(
図28);AD発症の確率を低下させ、保護的であるIcelandic突然変異(A673T)(Xiaら、2021年)を共発現するAPPサブタイプも、α-CTFレベルに対するApoE CTの有意な影響は検出されなかった(
図28)。これらを総合すると、APPのγ部位近傍で変異が起こると、ApoE CT活性は、破壊され、この現象は、APPの代謝を制御するApoE CTの活性にγ切断が関係していることを示唆する。α-CTFはγ切断によって分解されることから(De Strooperら 2012;De Strooperら 1998;Haassら 1992)、これらの結果は、ApoE CTがα-CTF分解に影響を及ぼす可能性を示唆する。
【0340】
次に、本研究は、APP代謝におけるγ-セクレターゼの役割に基づく詳細な検討した。γセクレターゼによるα-CTF切断に関する以前の報告(De Strooperら、2012;De Strooperら、1998;Haassら、1992)と一致し、PS1の過剰発現は、α-CTFのレベルを50%まで有意に減少させた(
図19、パネルAおよびB);γセクレターゼ阻害剤PF03084014(1μM)で処理すると、過剰発現したPS1はもはやα-CTFを減少させず、PF03084014はα-CTFも増加させた;γセクレターゼ阻害剤で処理したとき、α-CTFのレベルは、ApoE CTを共発現させたHEK 293T細胞におけるα-CTFのレベルと同様であった(
図19、パネルA、B、CおよびD)。興味深いことに、PF03084014の存在下で、ApoE CTは、α-CTFをさらに増加させることができず(
図19、パネルCおよびD)、ApoE CT活性はγセクレターゼを阻害することでブロックできることが示唆された。さらに、ADAM10阻害剤GI254023X(1μM)を使用すると、α-CTFは約45%まで減少した(
図29、パネルAおよびB)。GI254023Xの存在下でも、ApoE CTは、α-CTFを増加させ(約4倍;
図29、パネルAおよびB)、Aβ
40を減少させた(
図29、パネルCおよびD)。さらに、β-セクレターゼを、その阻害剤AZD3839(5μM)で阻害しても、ApoE CTはα-CTFを増加させた(
図29、パネルEおよびF)。ApoE CTはまた、APP
M596Vから産生されたα-CTFを増強することができ(
図29、パネルGおよびH)、APP
M596Vは、β-切断を受けられないAPP突然変異である(Citronら、1995)。さらに、ApoE CTは、β-CTFから産生されるAβ
40(
図19、パネルE)およびAβ
42(
図19、パネルF)も有意に減少させたことから、ApoE CTはγ-切断を阻害することによってAβ産生を減少させることが示唆された。APPのγ-切断産物であるAPP
ΔAICDは、Aβ
40を産生するためにβ切断されるだけでよい。興味深いことに、ApoE CTは、APP
ΔAICDから産生されたAβ
40を減少させることができなかった(
図19、パネルGおよびH)。これらの結果の全ては、ApoE CTはAPPのγ切断を阻害するが、α切断やβ切断は直接に制御しないという仮説が支持される。
【0341】
また、ApoE2もApoE CTも、どちらも、ADAM10、BACE1、PS1、PS2のmRNAまたはタンパク質発現レベルを変化させなかったことから(
図29、パネルIおよびJ)、APPセクレターゼの発現レベルには変化がないことが示唆された。また、ApoE CTは、細胞表面上のAPP発現を変化させなかった(
図29、パネルK)。
【0342】
3.7. ApoE CTによるAPP代謝の制御には、γ-セクレターゼの関与が必要である
ApoE CTによるAPP代謝の制御が、γセクレターゼを必要とするかどうかを研究するため、本研究では、PS1および/またはPS2ノックアウト(KO)HEK 293T細胞株を構築した(Luら、2014)(
図20、パネルA)。PS1 KO細胞でのα-CTFレベルは上昇し、これは、PS1の代償的発現によって逆転することができた(
図20、パネルB)。PF03084014処理は、PS1 KO細胞でのα-CTFレベルをさらに増加させた(
図20、パネルB)。共発現させたApoE CTは、PS1 KO細胞(
図20、パネルCとD)およびPS2 KO細胞(
図20、パネルEとF)でもα-CTFを増加させることができた。したがって、PS1またはPS2をノックダウンするだけでは、ApoEのCT活性を完全に消失させるには不十分である。
【0343】
WT細胞に比べて、PS1/2ダブルノックアウト細胞(PS1/2 dKO)では、α-CTFレベルも有意に上昇した(
図20、パネルG);PS1/2 dKO細胞にApoE CT(
図20、パネルGおよびJ)またはApoE2(
図20、パネルKおよびL)を共発現させても、α-CTFレベルはそれ以上上昇しなかった。PS1またはPS2の発現を補充することが、ApoE CTの活性を回復し、ApoE CTが、再びα-CTFを有意に増加した(
図20、パネルH、I、J)。また、PS2の発現を補充したPS1/2 dKO細胞において、ApoE CTは、β-CTFから産生されるAβ
40を有意に減少させた(
図20、パネルM)。これらの結果から、ApoE CTまたはApoE2がα-CTFを増加させるにはγセクレターゼが必要であることが示唆される。
【0344】
3.8. マウスのニューロンに内因性に発現したApoEは、内因性APPのγ-切断を制御する。
ニューロンにおける内因性ApoEの生理的活性を研究するため、マウスApoEに対するshRNA(shApoE_1、shApoE_2、およびshScrambleをコントロールとして)を構築した。マウスニューロンでレンチウイルスシステムを利用して発現されたshApoE_1とshApoE_2が、初代培養のマウスニューロンにおける内因的なApoEのタンパク質の発現量を低下することに成功した(
図21、パネルA)。γセクレターゼ阻害剤であるPF03084014で処理した後に、ニューロンにおけるAPP代謝によって産生された~14kDのCTF(C末端断片、CTF
14kD)のレベルは有意に増加し、これは、当該CTF
14kDもγセクレターゼによって切断されることを示する(
図21、パネルB)。shApoE_1またはshApoE_2は、マウスのニューロンにおけるCTF
14kDバンドの基礎レベルを有意に減少させ(
図21、パネルCおよびD)、これは、内因性ApoEが、CTF
14kDを増加させることが示唆された。γセクレターゼである阻害剤PF03084014が存在する場合、ApoEのこれら2つのshRNAは、もはやCTF
14kDを減少させることができなく(
図21、パネルE)、これは、ApoEのこの活性には、活性型γセクレターゼの存在が必要であることを示唆する。また、ApoEのノックダウンが、ニューロンで産生されるAβレベルも増加した(
図21、パネルF)。これらの結果から、ニューロン内の内因性ApoEが、内因性APPのγ切断を制御することが示唆される。
【0345】
3.9. ApoE CTは基質特異的にγ切断を阻害する。
本発明は、さらに、ApoE CTがNOTCHのγ-切断も阻害するかどうかを検出した。NOTCHは、γセクレターゼの基質である(Xia, 2019;Yangら、2019)。HEK 293T細胞では、共発現したγセクレターゼは、N100(NOTCHフラグメント)を減少し、PF03084014での処理が、この減少を逆転した(
図30、パネルA)。興味深いことに、共発現したApoE CTは、このγセクレターゼ依存性のN100の減少を抑制できなかった(
図30、パネルA)。しかし、ApoE CTをγセクレターゼと共発現させる場合、ApoE CTが、依然としてγセクレターゼによるAPPのγ切断を阻害した(
図30、パネルB)。APP様タンパク質1(APP-like protein 1、APLP1)は、αセクレターゼとγセクレターゼのもう一つの基質である(Eggertら、2004)。PF03084014での処理が、APLP1のレベルを減少したが、その切断産物(α-like CTF)は増加した;しかし、α-like CTFは、ApoE CTとAPLP1の共発現によって変化しない(
図30、パネルC)。これらの結果は、ApoE CTがNOTCHとAPLP1のγ-切断を阻害しないことを示する。
【0346】
3.10. ApoE2は、APPのγ切断を直接阻害する
ApoEがβ-CTFのγ切断を直接阻害するかどうかを確定するために、本発明は、さらなる試験のために、β-CTF、ApoE2、ApoE2 NT、およびγセクレターゼ(Luら、2014)を精製した(
図22、パネルA;
図31)。精製されたγセクレターゼをβ-CTFとインキュベートすると、Aβ
40が産生された;γセクレターゼが存在しない場合、β-CTFはAβ
40を産生しない;そして、β-CTFとインキュベートしたγ-セクレターゼによるAβ
40の産生は、PF03084014によって完全にブロックされた(
図22、パネルB)。精製されたApoE2は、用量依存的な方式でAβ40産生を阻害し、IC50は1.2μMであった(
図22、パネルC)。逆に、ApoE2 NTは、Aβ40の産生を抑制できなかった(
図22、パネルD)。これらの結果は、ApoE2が、そのCTを介してβ-CTFのγ-切断を直接阻害することを示唆する。
【0347】
3.11. ニューロンに発現されたApoE CTが、アミロイド斑に移行し、かつ5×FADマウスの斑の負荷を減弱させた
ApoE CTが、ADマウスモデルにおけるアミロイド斑の発生を遅らせることができるかどうかを研究するため、本実験では、4週齢の5×FADマウスの大脳皮質と海馬の神経細胞に、AAVベクターを介してApoE CTを発現させた(
図23、パネルA)。10週後、GFPコントロールと比較して、ApoE CTを発現した5×FADマウスの海馬台(subiculum)の脳領域では、平均斑の大きさ、総アミロイド斑の面積の百分比、斑密度が有意に減少した(
図23、パネルB、C、D、E)。
【0348】
興味深いことに、これらの5×FADマウスでは、ApoE CTの発現は、大脳皮質、海馬の歯状回(DG)とCA3領域のニューロンに限定されたが、subiculumに移動してアミロイド斑の周辺に蓄積した(
図23、パネルB);これに対して、ニューロンで発現されたGFPは、そうならなかった。本発明(
図25、パネルE)および他者(Metzgerら、1996)によって報告されたデータによって、ニューロンで発現されたApoE CTはアミロイド斑に移動し、アミロイド形成のホットスポット(Jorda-Siquierら、2022)でγセクレターゼを局所的に制御することができる。5×FADマウスで、ApoE2とApoE CTをレンチウイルスベクター(lentiviral vectors)を用いて発現させると、アミロイド斑の周囲に同様の分布パターンが検出された(
図24、パネルA、矢印、アミロイド斑中のApoE;無柄矢印、神経細胞中のApoE);一方、GFPとApoE2 NTは、斑の周囲に集積しなかった(
図24、パネルA)。アミロイド斑を産生しなかった1ヵ月齢の5×FADマウス(
図24、パネルB)とWTマウス(
図24、パネルC)では、ApoE CTは、ニューロンのみに存在し、かつ発現されたヒトAPP(hAPP)の細胞内分布部分と共局在していた。これらの結果は、アミロイド斑周辺へのApoEの蓄積にはCTが必要であることを示唆する。
【0349】
4. 検討
AD治療のためにAβを標的とする取り組みが失敗し続けていることから、ADにおけるAβの役割が疑問視されている(Liuら2019;Panzaら2019;Roberson and Mucke 2006)。必然的に、この失敗は、ADそのものの基本的な理解の多くにも挑戦することになる。例えば、γセクレターゼの機能不全が、fADの原因であることに疑いの余地はないが、ヒトの遺伝学的証拠によると、Aβの調節異常とfADが強く結びついている(Selkoe,2001)。しかし、sADにおけるAβの役割を支持する証拠ははるかに弱い。sADが、たまたまfADと同じ病理学的特徴を共有する別の疾患である可能性を完全に否定することはできない(Armstrong,2013;De StrooperとKarran,2016)。実際、fADとsADは、発症年齢、詳細な病理学的異常、症状など、基礎となる遺伝的要因以外にも異なる点がある(Dorszewskaら、2016年;Roherら、2016年)。
【0350】
ApoEはsADの最も重要な遺伝的因子であり、本実験から得られたデータは、ApoEが、APPのγ切断(アミロイド形成における重要なステップ)を選択的に阻害することによって、sADのリスクを減少させるようであることを初めて示している。本発明のこれらの結果は、ApoE2保有者に比べて、ApoE4保有者のアミロイド負荷がより多く、非アミロイド生成経路からの代謝産物が少ない理由を説明するものである(Corderら、1993;Hashimotoら、2012;Olssonら、2003;Schmechelら、1993)。つまり、本実験から得られたデータは、γセクレターゼの正確な阻害がsADのリスクを防ぐことを支持し、したがって、γセクレターゼを阻害することによってsADを治療することは合理的である。注目すべきは、最近の研究で、fADのプロジェリン変異のほとんどが、γセクレターゼ活性の低下をもたらすことがわかったことである(Sunら、2017;Xiaら、2015)。このことは、γセクレターゼの機能不全が、sADとfADの発病機構において、中心的な役割を果たしているにもかかわらず、γセクレターゼ活性の変化が、これら2つの異なるAD型では逆であることを示唆している。この観点から、γセクレターゼの阻害は、プロジェリン機能喪失の突然変異を持つfADには適用されないかもしれない。このことは、なぜγセクレターゼ活性が高くても低くてもADになるのか、及びfADは、γセクレターゼ活性に対するプロジェリン突然変異の影響に基づいて異なるグループに分類されるべきかどうか、という興味深い疑問が生じる。
【0351】
同時に、まだ試験されていない広範なγ基質(GunerとLichtenthaler,2020)を考慮すると、ApoEによって切断が阻害される基質は、APPだけではない可能性があり、したがって、ApoEがAPPのγ酵素切断に及ぼす影響は、sADの危険性の唯一の原因ではない可能性があるが、それでもなおもっともらしい。したがって、γセクレターゼを阻害しても、Aβクリアランスと同じ効果は得られないかもしれない。これは、Aβクリアランス戦略だけでは、満足のいく臨床結果が得られない理由を説明する一助となる可能性があり、特に興味深い問題である。γセクレターゼのどの基質が、ApoEの影響を受けるかを分析することにより、本発明の研究は、ADの病因におけるAβ以外のγセクレターゼの基質の役割を探求する機会となる。
【0352】
マウスモデルでは、ApoEは、主にグリア細胞に発現する(Xuら、2006年)。Aβはニューロンで産生されるため、ほとんどの研究は、グリア細胞から分泌されるApoEが、細胞外のアミロイドプロセスにどのように影響するかに焦点を当ててきた(Holtzmanら、1999;Huangら、2017;Huynhら、2017;Liuら、2017;Yuら、2014)。実際、ApoEのmRNAとタンパク質の両方が、ヒトの神経細胞で検出されることは、異なる研究室からの多くの論文で独立して示される(Aokiら、2003;Hanら、1994;Metzgerら、1996;Strittmatterら、1993;Xuら、1999)。最近の単一核RNA-seqデータからも、ニューロンでApoEが検出されることが示唆され、AD患者のニューロンの最大28%が高レベルでApoEを発現し(Belonwuら、2022年;Zalocuskyら,2021年)、これは、ヒト大脳皮質の神経細胞の約30~40%がApoEを発現しているというわれわれの観察と一致している。なお、ヒトの脳におけるApoEの代謝は、グリア細胞よりもニューロンに発現するApoEの代謝に類似する(Brechtら、2004)。また、ApoE4サブタイプを持つヒトのニューロンが産生したAβは、他のApoEサブタイプを持つヒトのニューロンよりも多いことが報告され(Wangら、2018年)、このことは、ヒトのニューロンにおいて内因性に発現したApoEが内因性のAPP代謝を制御しているという考えを強く支持している。しかし、ニューロンにおけるApoEの役割は、まだほとんど理解されていない。本発明は、保護サブタイプApoE2が、そのCTを介して細胞自律的な方式でAPPのγ切断を直接阻害するが、、ApoE4にはこの活性がないことを見出した。重要なことは、本発明は、マウスのニューロンにおける内因性ApoEが、内因性に発現したAPPのγ切断を有意に阻害することも見出した;また、ヒトの脳において内因性ApoEと内因性に発現したγセクレターゼとの間に、相互作用があることも見出した。さらに、ADのマウスモデルには、ADの主要な病理学的特徴の多くを内包しているが、ApoEによるアミロイド沈着は内包していない(Oakleyら、2006年)。驚くべきことに、5×FADマウスのニューロンで発現したApoEが、アミロイド斑の周囲に移動し、集積していることを本発明は見出し、このことは、AD患者の脳のアミロイド斑にApoEが存在するという既報の報告と一致し(Hanら、1994;Strittmatterら、1993)、斑中のApoEがニューロン由来であることを示唆する。これらの見出は、ニューロンにおけるApoEが、ADにおいて非常に重要な役割を果たしていることを強調し、ApoE2とApoE4が、ADの発病機構に与える寄与の違いについて、新たなメカニズム的説明を与えるものである。
【0353】
γセクレターゼは、ADの創薬ターゲットとなる可能性がある。しかしながら、過去の医薬品開発において、γセクレターゼ活性の阻害は、おそらく異なる基質にわたるγセクレターゼ阻害剤の選択性が低いために、重篤な副作用につながることが判明した(Panzaら、2019;RobersonとMucke 2006;Xia 2019)。広範で非特異的な阻害剤は、γセクレターゼを阻害し、Aβの産生をブロックする際に、γセクレターゼの他の基質の正常なプロセシングも阻害し(Panzaら、2019年;Xia,2019年)、副作用を引き起こす。APPのγ切断を選択的に阻害するγセクレターゼ修飾剤の開発は、有望な新戦略である(Xia,2019)。本発明は、ApoE CTがAPPのγ切断を阻害するが、NOTCHとAPLP1のγ切断には影響しないことを見出し、これは、ApoE CTのγ切断阻害作用が基質特異的であることを示した。以前に報告されたように、低分子薬剤は、基質(例えばAPP又はNotch(Yangら、2021))と相互作用するPS1上のβ鎖と同じ位置を占めることによって、γセクレターゼ活性を阻害する。ApoE CTは、従来の低分子阻害剤とは構造的に異なる分子であるため、多くの変化した部位に作用し、γセクレターゼへの特定の基質のみの結合に影響を与えるが、他の基質には影響を与えなく、そして、基質選択性を実現する可能性がある。しかし、正確なメカニズムはまだ解明されていない。それにもかかわらず、ApoE CTは、従来のγセクレターゼ阻害剤よりも副作用が少ない可能性のある、新たな戦略的治療法として役立つ可能性がある。つまり、本発明は、sADの発病機構におけるニューロンApoEサブタイプの役割を理解するための潜在的なメカニズムを提供するだけではなく、さらに、本発明は、ADに関連するγセクレターゼ基質のγ切断を選択的に阻害することにより、ApoE CTをADの潜在的治療アプローチとして同定する。
【0354】
これらの結果は、通常γセクレターゼ活性の低下と関連するfADとは逆に、γセクレターゼの正確な阻害が、sADのリスクを防ぐという考えを支持するものである。本発明はまた、ApoE CTをγセクレターゼの効果的な阻害剤として同定し、ApoE CTは、稀な基質特異性を持ち、遠くから移動して斑周辺のアミロイド形成ホットスポットで局所的に作用することができる。
【0355】
5. 実験材料と方法
動物
5×FADマウスのニューロンは、5つのfAD突然変異を持つヒト由来のAPPとPS1を発現する:APPのK670N/M671L+I716V+V717I突然変異とPS1のM146L+L286V突然変異である(Oakleyら, 2006)。すべてのマウスは、12時間の明暗サイクル(午前8時から午後8時まで点灯)で飼育され、餌と水は自由に摂取できた。すべてのマウスの処置は、中国科学院および米国国立衛生研究所の実験動物の飼育と使用に関するガイドラインに従って行われた。
【0356】
ヒトとサルの脳組織
すべてのヒト脳組織は、中国湖北省のChinese Brain Bank Center(CBBC)、浙江大学医学部およびNational Health And Disease Human Brain Tissue Resource Centerから入手した。
図32には、ドナー情報をまとめた。ヒト脳組織は、実験前に-80℃で保存し、4%PFAで一晩固定し、切片化する前に30%のスクロースで一晩凍結した。以下のステップは、マウスの脳切片を用いたIHCと同じである。
【0357】
アカゲザルの成体の固定した脳スライスは、中国、上海の中国科学院神経科学研究所から入手した(Wuら、2021年)。
【0358】
初代ニューロンの培養
初代の単離されたニューロンの培養物は、以前に記載されたように調製した(Chenら、2014年)。16日目の野生型胚から、マウス(C57BL/6)またはラット(SD)の海馬全体または皮質を取り出し、37℃で10分間パパイン(Worthington)で処理し、解離した。単離した細胞を、B27ニューロン増殖培地に、150,000個/ウェル(24ウェルプレート)で接種した。ニューロンは37℃、5%CO2インキュベーターで培養され、新鮮な培地が週に一度加えられた。
【0359】
PS1 KO、PS2 KOおよびPS1/2 dKO細胞株の構築
HEK 293T細胞を、10%のウシ血清アルブミン(Life Technology社)と1%のペニシリン/ストレプトマイシン(Life Technology社)を添加したDMEM培地(Gibco社)で培養した。PS1、PS2シングルノックアウトまたはPS1/2ダブルノックアウトのHEK 293T細胞株を調製するために、CRISPR/Cas9ゲノム編集法を用いた(Ranら、2013年)。PS1エクソン4を標的とするガイドRNA(gRNA)5’-ATTATCTAATGGACGACCCC-3’(SEQ ID NO:91)およびPS2エクソン4を標的とするgRNA、すなわち5’-CAAATACGGAGCGAAGCACG-3’(SEQ ID NO:92)を、それぞれpSpCas9(BB)-2A-puro骨格にサブクローニングした(PS1gRNA、PS2gRNA)。gRNAを含むプラスミドを、Lipofectamine2000(Invitrogen Technology社)を用いてHEK 293T細胞にトランスフェクトした。PS1 gRNAまたはPS2 gRNAのトランスフェクションから18時間後、HEK 293T細胞を、3μg/mlのピューロマイシン(Selleck)で処理した。空のプラスミドでトランスフェクトしたHEK 293T細胞が完全に死滅した時点で、PS1 gRNAまたはPS2 gRNAでトランスフェクトしたHEK 293T細胞を、10cmディッシュで、1:400の希釈率で培養し、各細胞が単一クローンであることを確認した。個々の細胞が、細胞クラスターに成長した後、ゲノム編集された細胞クラスターが選択され、DNAシーケンシングとWestern blotによって検証された。PS1/2dKOを構築する用の細胞株は、PS1 gRNAをPS2ノックアウト細胞にトランスフェクトし、2回目のスクリーニングを行った。
【0360】
タンパク質ブロッティング(WB)
プラスミドを、HEK 293TまたはN2A細胞に、36-48時間トランスフェクトし、細胞溶解バッファー[10% 1Mtris-HCl(pH=6.8)、4%SDS、20%グリセロール、0.01%ブロモフェノールブルー]で溶解した。溶解液を室温で10分間シェイクした後、10分間煮沸し、12,000×gで10分間遠心分離した。タンパク質は、8%または12%のTris-グリシン SDS-PAGEにかけられ、PVDF膜(Life Technologies社)に移された。サンプルは、5%BSAバッファ-(1×TBST中)で希釈した一次抗体と4℃で一晩インキュベートした。1×TBSTで3回洗浄した後、5%BSAブッファ-(1×TBST中)で希釈した二次抗体と室温で2時間インキュベートした。最後に、1×TBSTで3回洗浄した後、ECLタンパク質ブロッティング基質(Solarbio、PE0010)でシグナルを検出した。
【0361】
脳組織のサンプルは、TissueLyserII(QIAGEN、85300)を用い、RIPAバッファー(Solarbio、R0010)中で溶解した。溶解液を10分間煮沸し、12,000×gで10分間遠心した。Western blotの操作手順は、細胞サンプルの場合と同じであった。
【0362】
タンパク質ブロッティング用のAPEXタグ付きタンパク質の調製
APEX2によって生細胞内のタンパク質相互作用を標的的に検出する方法は、以前に記載されたように適用された(Hungら、2016年)。トランスフェクションから約30時間後、APEX2プラスミドと一緒に、Lipofectamine 2000(Invitrogen Technology社)を通して、HEK 293T細胞を、250uMビオチンフェノール(BP)を含むか含まない1mlの完全培地中で、37℃で30分間インキュベートした。細胞を1mMのH2O2で1分間処理し、クエンチャー溶液(10mMのアスコルビン酸ナトリウム、5mMのTrolox、10mMのアジ化ナトリウムの1×DPBS溶液)で3回洗浄した。細胞を、RIPA溶解バッファー(1×タンパク質阻害剤混合物、1mM PMSFと10mMアスコルビン酸ナトリウム、5mM Troloxと10mMアジ化ナトリウム)で溶解した。溶解物を、氷上で超音波処理し、遠心分離(12,000×g、4℃、10分間)し、上清をストレプトアビジン磁気ビーズと、4℃で一晩インキュベートした。ビーズをマグネットラックで回収し、一連のバッファー(RIPAバッファーで2回、1M KClで1回、0.1M Na2CO3で1回、2M尿素の10mM Tris-HCl(pH8.0)で2回、RIPA溶解バッファーで2回)で洗浄した。2mMビオチンと20mM DTTを含むローディングバッファー中で、各サンプルを10分間煮沸することにより、ビーズからビオチン化されたタンパク質を溶出し、溶出液を回収した。サンプルは、さらにタンパク質ブロッティングを行った。
【0363】
免疫共沈降(co-IP)
HEK 293T細胞をトランスフェクトしようとするプラスミドと共にLipofectamine2000(Invitrogen Technology社)で48時間処理し、HEK 293T細胞を1%CHAPSO(SIGMA社)、25mM HEPES(pH7.4)(Gibco社)、150mMNaCl(1×プロテアーゼ阻害剤混合物を含む)で溶解し、14,000×gで20分間遠心し、上清を回収した。上清を抗FLAG抗体(SIGMA社)または抗IgG抗体(Santacruz社)と、4℃で3時間インキュベートし、そして、ProteinG Sepharose beads(Gen Script社)でプルダウンし、その後、0.1%ジギタリスサポニン-HEPESバッファーで、15分間ずつ3回洗浄し、細胞溶解バッファー[10%1Mtris-HCl(pH=6.8)、4%SDS、20%グリセロール、0.01%ブロモフェノールブルー]で回収した。サンプルは、さらにタンパク質ブロッティングを行った。
【0364】
免疫蛍光染色および免疫組織化学(IHC)
24ウェルプレートのカバースリップ上で培養したニューロンとHEK 293T細胞を、1×PBS(2.5mM MgCl2および0.5mM CaCl2)で洗浄し、4% PFA+4% スクロースで、室温で、1×PBSに10分間固定した。次に、1×PBS中の0.15% Triton-Xで15分間透過処理し、かつ室温で、1×PBS中の5% BSAで30分間ブロッキングし、サンプルを、5% BSA(1×PBS中)バッファーで希釈した一次抗体とともに、4℃で一晩インキュベートした。その後、サンプルを、1×PBS中の0.5M NaClで1回、1×PBSで3回洗浄した。その後、5% BSA(1×PBS中)バッファーで希釈した二次抗体とインキュベートし、室温で1時間放置した。1×PBSで3回の最終洗浄した後、サンプルを、Prolong Gold Antifade Mountant(Life Technology社)で封入した。すべての画像は盲検下で撮影、分析された。
【0365】
マウスを、イソフルランで麻酔し、4% PFAで灌流した。解剖したマウスの脳を、4% PFAで一晩固定し、30% スクロースで一晩凍結保護した。凍結ミクロトーム(Leica CM3050S)を用いて、固定・凍結保護したマウスの脳から凍結脳切片(40μM)を得た。切片を浮遊させ、1×PBSで3回洗浄し、0.5% Triton-Xを加えた1×PBSで30分間透過処理した。1×PBS中の5% BSAで室温で1時間ブロッキングした後、切片を、一次抗体を含む5% BSA(1×PBS中)ブッファ-中で、4℃で一晩インキュベートした。切片を、1×PBSで3回洗浄し、5% BSA(1×PBS)バッファーで希釈した二次抗体と室温で1時間インキュベートした。その後、サンプルを、1×PBSで3回洗浄し、Prolong Gold Antifade Mountant(LifeTechnology社)で封入した。
【0366】
THS染色
マウスを、イソフルランで麻酔し、4% PFAで灌流した。解剖したマウスの脳を、4% PFAで一晩固定し、30% スクロースで一晩凍結保護した。凍結ミクロトーム(Leica、CM3050S)を用いて、固定・凍結保護したマウスの脳から凍結脳切片(40μM)を得た。切片を浮遊させ、ddH2Oで3回洗浄し、その後、1% THS(SIGMA)水溶液で室温で5分間インキュベートした。次に、切片を、80% エタノールで2回、95% エタノールで1回、それぞれ3分間洗浄した。IHCのために、サンプルを、ddH2Oで洗浄し、1×PBSで3回洗浄した。
【0367】
定量的リアルタイムPCR(qRT-PCR)
TRIzol試薬(Invitrogen社)を用いて、HEK 293T細胞から総RNAを抽出した。逆転写は、QuantiTect SYBR-Green RT-PCR(逆転写PCR)キット(Qiagen社)を用いて行った。GAPDHは、内部コントロールとして用いた。ADAM10 mRNAのフォワードプライマー5’-AGAGCAACATCTGGGGACAAA-3’(SEQ ID NO:93)とリバースプライマー5’-TCCACAAATAGGTTGGCCAGAT-3’(SEQ ID NO:94)、BACE1 mRNAのフォワードプライマー5’-AACGAATTGGCTTTGCTGTC(SEQ ID NO:95)とリバースプライマー5’-AGGCTATGGTCATGAGGGTTG-3’(SEQ ID NO:96)、PS1 mRNAのためのフォワードプライマー5’-TGACTCTCTGCATGGTGGTG-3’(SEQ ID NO:97)とリバースプライマー5’-TCAGAATTGAGTGCAGGGCT-3’(SEQ ID NO:98)、PS2 mRNAのためのフォワードプライマー5’-TTTGAGCCTCCCTTGACTGG-3’(SEQ ID NO:99)とリバースプライマー5’-GGTATTCCAGTCCCCGCTG-3’(SEQ ID NO:100)は、qRT-PCRに用いられた。定量は、SYBRグリーン蛍光シグナル(Thermo Fisher Scientific社のアプライドバイオシステムズ)の比較閾値サイクリング測定を用いて、テストした。
【0368】
酵素結合免疫吸着試験(ELISA)
HEK293T細胞およびN2A細胞を48時間トランスフェクトし、またはレンチウイルスでニューロンを4.5日後感染した後に、培地と溶解物を回収した。プロトコルの指示に従い、AβELISAキットによって、培地と細胞溶解物におけるAβ40とAβ42を検出した。(Invitrogen Technology社;ヒトAβ40はKHB3481で、ヒトAβ42はKHB3441で、マウスAβ40はKMB3481で検出する)。
【0369】
タンパク質の精製
ヒトのγセクレターゼ複合体を、前述(Luら、2014)のように精製し、ヒトのγセクレターゼ複合体をコードするcDNAと発現ベクターも、Luら、2014年を参照する。
【0370】
ヒトApoEタンパク質の精製。ヒトのApoEプラスミド(ApoE2-3×FLAGまたはApoE2NT-3×FLAG)で細胞をトランスフェクションしてから48時間後、トランスフェクションした細胞を、冷たい1×PBSで1回洗浄し、回収して800gで遠心分離した。細胞の沈殿を、25mM HEPES、pH7.4、150mM NaCl、5mM MgCl2、1mM ジチオスレイトール(DTT)、0.05%(v/v) Tween-20と1×プロテアーゼ阻害剤の混合物を含む溶解バッファー5mlに再懸濁した。細胞溶解は、超音波処理で行い、細胞破片を、遠心分離(12,000×g、4℃、15分間)で分離した。上清を、抗FLAGM2アフィニティーゲル(SIGMA社)と一緒に、4℃で90分間インキュベートした。その後、樹脂を、25mM HEPES、pH7.4、150mM NaCl、5mM MgCl2、1mM DTTと0.05%(v/v) Tween-20を含むバッファーで3回洗浄した。25mMのHEPES、pH7.4、150mMのNaCl、500μg/mlの3×FLAGペプチド(SIGMA社)を含むバッファーで、ApoEタンパク質を溶出した。精製されたタンパク質を示すために、SDS-PAGEとタンパク質ブロッティングが用いられた。
【0371】
β-CTFの精製。ヒトβ-CTF-Myc-6×Hisプラスミドで、大腸菌細胞を形質転換し、OD260が0.6~0.8に達した時点で、0.5μM IPTG(Solarbio社)で37℃、4時間に、大腸菌細胞を誘導した。大腸菌細胞を、該当バッファー(30mM Tris-HCl、pH7.5、150mM NaCl、1mM EDTA)で溶解し、氷上で超音波処理した。溶解物を、25,000×gで10分間遠心し、尿素バッファー(30mM Tris-HCl、pH8.0、300mM NaCl、1mM EDTA、6M 尿素、1% TritonX-100、1mM CaCl2、1×プロテアーゼ阻害剤混合物)に溶解して3時間ゆっくり回転させた。再懸濁した溶解物を、40,000×g、30分間で2回遠心し、上清をNi-NTAビーズ(GEhealthcare社)と室温で2時間インキュベートした。10カラム容量(CV)の尿素バッファー1(30mM Tris-HCl、pH8.0;300mM NaCl、1mM EDTA、6M尿素、1% TritonX-100、1mM CaCl2、1×cocktail)、20CVの洗浄バッファー2(30mM Tris-HCl、pH8.0、300mM NaCl、0.1% TrionX-100)、20CVの洗浄バッファー3(50 mMTris-HCl、pH8.0、300mM NaCl、0.1% Sharpsol)を使用した。結合した物質は、0-300mMのイミダゾール勾配を持つ洗浄バッファー(50mM Tris-HCl、pH8.0、300mM NaCl、0.1%CHAPSO)で溶出された。SDS-PAGEとタンパク質ブロッティングは、精製されたタンパク質の可視化に用いられた。
【0372】
ウイルスの立体的な定位注射
イソフルランによる深麻酔後、マウス(5週齢)を立体的な定位装置(RWD Instruments社)に入れた。ゼロ点(x,y,z,0,0,0)はブレグマ(Bregma)である。レンチウイルス(lentivirus-GFP、lentivirus-ApoEとlentivirus-ApoE-IRES-GFP)とAAV(AAV2/9-hSyn-EGFP-WPRE-pAおよびAAV2/9-hSyn-ApoECT;Shanghai Taitou Biotechnology社購入)を大脳皮質(x,y,z,+/-1.6,0,-1)または海馬(x,y,z,+/-1.5,-2,-1.5)に注射し、各注射部位に1ulずつ注入した。その後、手術後のマウスは、リハビリのためにケージに戻された。
【0373】
量子化と統計解析
GraphPadPrismソフトウェア(v6)は、unpaired、paired又はone sampleのt-testを用いてデータを分析した。Aβ40とAβ42レベルは、対応するGFPコントロールに対して正規化した。α-CTFレベルは、FL-APPと、対応するGFPコントロールに対して正規化した。全てのデータは平均値±SEMで表される。統計の有意性は、p<0.05と定義した。図における1つ星、2つ星、3つ星、4つ星(*)は、それぞれp値<0.05、<0.01、<0.001、<0.0001を示す。
【0374】
6. 参考文献
【0375】
【0376】
【0377】
【0378】
【0379】
【0380】
【0381】
【0382】
【0383】
【0384】
【0385】
【配列表】
【国際調査報告】