(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-19
(54)【発明の名称】異物検出の障害状態を示す無線電力伝送システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
H02J 50/60 20160101AFI20250212BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20250212BHJP
H02J 50/40 20160101ALI20250212BHJP
【FI】
H02J50/60
H02J50/10
H02J50/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024545097
(86)(22)【出願日】2023-01-25
(85)【翻訳文提出日】2024-09-20
(86)【国際出願番号】 US2023061227
(87)【国際公開番号】W WO2023147335
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】202211004861
(32)【優先日】2022-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523233477
【氏名又は名称】ジーイー インテレクチュアル プロパティ ライセンシング エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100133503
【氏名又は名称】関口 一哉
(72)【発明者】
【氏名】カナカサバイ, ヴィスワナサン
(72)【発明者】
【氏名】ガネーシャ, ジャヤンティ
(72)【発明者】
【氏名】タティコンダ, スバッラオ
(57)【要約】
本開示は、無線電力伝送(WPT)システムにおける異物検出(FOD)のためのシステム、方法、および装置を提供する。FODプロトコルは、アイドルフェーズ、構成フェーズ、接続フェーズ、および電力伝送フェーズなど、WPTシステムの異なる動作フェーズで調整することができる。FOD評価ユニットは、各動作フェーズの一部として異物検出評価を実行し得る。FODプロトコルは、電力送信機がオンにされる前に電力受信機が電力送信機上に配置されるシナリオを処理するために、アイドルフェーズにおける初期アイドルフェーズ異物検出評価を含み得る。FOD評価ユニットは、異物検出の精度を向上させるために、各FOD評価中に使用されるオフセット値を調整し得る。オフセット値は、初期アイドルフェーズ異物検出評価の後に電力受信機の移動に対応するように適合され得る。
【選択図】
図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線電力伝送(WPT)システムにおける異物検出(FOD)のための方法であって、
電力送信機をオンにするためのユーザ入力に応答してアイドルフェーズの前に、またはその一部としてFOD評価ユニットを初期化するステップであって、前記FOD評価ユニットを初期化するステップは、初期アイドルフェーズ異物検出評価がまだ実行されていないことを表すために、FODフラグを第1の値に設定することを含む、ステップと、
前記FODフラグが前記第1の値に設定されているときに前記電力送信機が前記アイドルフェーズから異なる動作フェーズに移行する場合にFOD障害状態を示すステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記電力送信機が前記アイドルフェーズにあるときに前記初期アイドルフェーズ異物検出評価を実行するステップと、
異物が検出されなかったことを前記初期アイドルフェーズ異物検出評価の結果が示すときに前記FODフラグを第2の値に設定するステップと、
異物が検出されたことを前記初期アイドルフェーズ異物検出評価の前記結果が示すときに前記FOD障害状態を示すステップと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記初期アイドルフェーズ異物検出評価が実行される前に電力受信機の存在に基づいて前記電力送信機が前記アイドルフェーズから前記異なる動作フェーズに移行したと判定するステップであって、前記決定は、前記電力送信機が前記アイドルフェーズから前記異なる動作フェーズに移行するときに前記FODフラグが前記第1の値に設定されることに少なくとも部分的に基づく、ステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記電力送信機に関連付けられた接合面からの前記電力受信機の取外しを促すために前記FOD障害状態を示すステップをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記初期アイドルフェーズ異物検出評価は、異なるそれぞれの動作フェーズに関連付けられた電力供給前異物検出評価および電力供給中異物検出評価と比較して固有である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記初期アイドルフェーズ異物検出評価を実行するステップは、
複数の検出値を取得するステップであって、各検出値は、それぞれの対の検出コイルのうちの検出コイル間の差異を示す、ステップと、
複数のオフセット値の対応するものを加算または減算することによって前記複数の検出値のうちの1つ以上を調整するステップであって、前記複数のオフセット値は、前記FOD評価ユニットの較正に基づく初期オフセット値である、ステップと、
前記複数の検出値の各々を検出閾値と比較するステップと、
前記複数の検出値のうちの少なくとも1つが前記検出閾値を上回るときに異物が検出されたと判定するステップと、
を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記FOD評価ユニットを初期化するステップは、
不揮発性メモリから較正値を取得するステップと、
前記較正値に基づいて前記初期オフセット値を決定するステップと、
をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
電力送信機の製造、設置、または保守の一部として前記較正値を決定するステップと、
不揮発性メモリに前記較正値を記憶するステップと、
をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
異物が検出されなかったことを前記初期アイドルフェーズ異物検出評価の結果が示すときに前記FODフラグを第2の値に設定するステップと、
前記電力送信機と前記電力受信機との間の通信ハンドシェイクに応答して前記電力送信機が前記アイドルフェーズから構成フェーズに移行したと判定するステップと、
電力供給前異物検出評価で使用するように複数のオフセット値を適合させるステップと、
をさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記FOD評価ユニットを適合させるステップは、
複数の検出値を取得するステップであって、各検出値は、それぞれの対の検出コイルのうちの検出コイル間の差異を示す、ステップと、
前記複数の検出値に基づいて前記複数のオフセット値を更新するステップと、
後続の異物検出評価で使用するために、前記電力送信機の揮発性メモリ内に前記複数のオフセット値を記憶するステップと、
を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記電力送信機の2つ以上の動作フェーズで複数の異物検出評価を実行するステップであって、前記複数のFOD評価は、構成フェーズまたは接続フェーズで実行される少なくとも電力供給前異物検出評価を含む、ステップをさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記電力供給前異物検出評価は、
前記複数の検出値の更新値を取得するステップと、
前記複数のオフセット値のうちの対応するものを加算または減算することによって前記複数の検出値のうちの1つ以上を調整するステップと、
前記複数の検出値の各々を検出閾値と比較するステップと、
前記複数の検出値のうちのいくつが前記検出閾値を上回るかの数を判定するステップと、
前記数が閾値量未満であるときに、前記電力供給前異物検出評価の結果が異物が検出されたことであると示すステップと、
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記電力供給前異物検出評価は、
前記複数の検出値のいずれか1つの大きさが限界を上回るときに、前記電力供給前異物検出評価の前記結果が異物が検出されたことであると示すステップ
をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記電力供給前異物検出評価は、
前記数がゼロであるとき、または前記数が前記閾値量以上であるときに、前記電力供給前異物検出評価の前記結果が異物が検出されないことであると示すステップ
をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記数が前記閾値量以上であるときに電力受信機が移動したと判定するステップと、
更新された複数のオフセット値が後続の異物検出評価で使用可能であるように、前記電力受信機が移動したという判定に応答して、前記複数の検出値に基づいて前記更新された複数のオフセット値を生成するように前記複数のオフセット値を適合させるステップと、
をさらに含む、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記電力送信機がオンにされている間に前記更新された複数のオフセット値が維持され、前記電力送信機がオフにされている間に前記更新された複数のオフセット値が破棄されるように、揮発性メモリに前記更新された複数のオフセット値を記憶するステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記FOD障害状態を示すステップは、
前記FOD障害状態の表示をユーザインターフェースに提示させるステップであって、前記ユーザインターフェースは前記電力送信機、前記電力送信機を収容する家電、または前記電力送信機の接合面に配置された電力受信機にある、ステップ、または
前記電力送信機に関連付けられた通信インターフェースを介して前記FOD障害状態の表示を通信するステップ、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記FOD障害状態を無効化するためにユーザインタラクションの表示を受信するステップと、
前記FODフラグを前記第2の値に設定するステップと、
前記FOD障害状態をクリアするステップと、
をさらに含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記FOD障害状態を無効化するために前記表示を受信する前記ステップに応答して後続の異物検出評価のために前記複数のオフセット値を適合させるステップをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記電力受信機が前記接合面から取り外されると前記アイドルフェーズに移行するステップと、
前記電力送信機が前記アイドルフェーズにあるときに前記初期アイドルフェーズ異物検出評価を実行するステップと、
をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
異物検出(FOD)のためのシステムであって、
電力送信機をオンにするためのユーザ入力に応答してアイドルフェーズの前に、またはその一部としてFOD評価ユニットを初期化するように構成された電力送信機であって、前記FOD評価ユニットを初期化するステップは、初期アイドルフェーズ異物検出評価がまだ実行されていないことを表すために、FODフラグを第1の値に設定するステップを含む、電力送信機と、
前記FODフラグが前記第1の値に設定されているときに前記電力送信機が前記アイドルフェーズから異なる動作フェーズに移行する場合にFOD障害状態を示すように構成されている前記FOD評価ユニットと、
を備えるシステム。
【請求項22】
前記FOD評価ユニットは、
前記電力送信機が前記アイドルフェーズにあるときに前記初期アイドルフェーズ異物検出評価を実行し、
異物が検出されなかったことを前記初期アイドルフェーズ異物検出評価の結果が示すときに前記FODフラグを第2の値に設定し、
異物が検出されたことを前記初期アイドルフェーズ異物検出評価の前記結果が示すときに前記FOD障害状態を示す、
ようにさらに構成されている、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記FOD評価ユニットは、前記初期アイドルフェーズ異物検出評価が実行される前に電力受信機の存在に基づいて前記電力送信機が前記アイドルフェーズから前記異なる動作フェーズに移行したと判定するように構成され、前記決定は、前記電力送信機が前記アイドルフェーズから前記異なる動作フェーズに移行するときに前記FODフラグが前記第1の値に設定されることに少なくとも部分的に基づく、請求項21に記載のシステム。
【請求項24】
前記FOD評価ユニットは、前記電力送信機に関連付けられた接合面からの前記電力受信機の取外しを促すために前記FOD障害状態を示すように構成されている、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記初期アイドルフェーズ異物検出評価は、異なるそれぞれの動作フェーズに関連付けられた電力供給前異物検出評価および電力供給中異物検出評価と比較して固有である、請求項21~24のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項26】
前記アイドルフェーズの間、前記FOD評価ユニットは、
複数の検出値を取得し、各検出値は、それぞれの対の検出コイルのうちの検出コイル間の差異を示し、
複数のオフセット値の対応するものを加算または減算することによって前記複数の検出値のうちの1つ以上を調整し、前記複数のオフセット値は、前記FOD評価ユニットの較正に基づく初期オフセット値であり、
前記複数の検出値の各々を検出閾値と比較し、
前記複数の検出値のうちの少なくとも1つが前記検出閾値を上回るときに異物が検出されたと判定する、
ように構成されている、請求項21~25のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項27】
較正値を記憶するように構成された不揮発性メモリであって、前記FOD評価ユニットは、前記較正値に基づいて前記初期オフセット値を決定するように構成されている、不揮発性メモリをさらに備える、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記FOD評価ユニットは、
異物が検出されなかったことを前記初期アイドルフェーズ異物検出評価の結果が示すときに前記FODフラグを第2の値に設定し、
前記電力送信機と電力受信機との間の通信ハンドシェイクに応答して前記電力送信機が前記アイドルフェーズから構成フェーズに移行したと判定し、
電力供給前異物検出評価で使用するように複数のオフセット値を適合させる、
ように構成されている、請求項21~27のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項29】
前記FOD評価ユニットは、
複数の検出値を取得し、各検出値は、それぞれの対の検出コイルのうちの検出コイル間の差異を示し、
前記複数の検出値に基づいて前記複数のオフセット値を更新し、
後続の異物検出評価で使用するために、前記電力送信機の揮発性メモリ内に前記複数のオフセット値を記憶する、
ようにさらに構成されている、請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
前記FOD評価ユニットは、前記電力送信機の2つ以上の動作フェーズで複数の異物検出評価を実行するように構成され、前記複数のFOD評価は、構成フェーズまたは接続フェーズで実行される少なくとも電力供給前異物検出評価を含む、請求項21~29のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項31】
前記電力供給前異物検出評価を実行するように構成されている前記FOD評価ユニットは、
前記複数の検出値の更新値を取得し、
前記複数のオフセット値のうちの対応するものを加算または減算することによって前記複数の検出値のうちの1つ以上を調整し、
前記複数の検出値の各々を検出閾値と比較し、
前記複数の検出値のうちのいくつが前記検出閾値を上回るかの数を判定し、
前記数が閾値量未満であるときに、前記電力供給前異物検出評価の結果が異物が検出されたことであると示す、
ように構成された前記FOD評価ユニットを含む、請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
前記電力供給前異物検出評価を実行するように構成されている前記FOD評価ユニットは、
前記複数の検出値のいずれか1つの大きさが限界を上回るときに、前記電力供給前異物検出評価の前記結果が異物が検出されたことであると示す
ように構成された前記FOD評価ユニットを含む、請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
前記電力供給前異物検出評価を実行するように構成されている前記FOD評価ユニットは、
前記数がゼロであるとき、または前記数が前記閾値量以上であるときに、前記電力供給前異物検出評価の前記結果が異物が検出されないことであると示す
ように構成された前記FOD評価ユニットを含む、請求項31に記載のシステム。
【請求項34】
前記FOD評価ユニットは、
前記数が前記閾値量以上であるときに電力受信機が移動したと判定し、
更新された複数のオフセット値が後続の異物検出評価で使用可能であるように、前記電力受信機が移動したという判定に応答して、前記複数の検出値に基づいて前記更新された複数のオフセット値を生成するように前記複数のオフセット値を適合させる、
ようにさらに構成されている、請求項31~33のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項35】
前記FOD評価ユニットは、
前記電力送信機がオンにされている間に前記更新された複数のオフセット値が維持され、前記電力送信機がオフにされている間に前記更新された複数のオフセット値が破棄されるように、揮発性メモリに前記更新された複数のオフセット値を記憶するようにさらに構成されている、請求項34に記載のシステム。
【請求項36】
前記FOD障害状態を示すように構成されている前記FOD評価ユニットは、
前記FOD障害状態の表示をユーザインターフェースに提示させることであって、前記ユーザインターフェースは前記電力送信機、前記電力送信機を収容する家電、または前記電力送信機の接合面に配置された電力受信機にある、こと、または
前記電力送信機に関連付けられた通信インターフェースを介して前記FOD障害状態の表示を通信すること、
のうちの少なくとも1つの動作を実行するように構成されている前記FOD評価ユニットを含む、請求項21~35のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項37】
前記FOD評価ユニットは、
前記FOD障害状態を無効化するためにユーザインタラクションの表示を受信し、
前記FODフラグを前記第2の値に設定し、
前記FOD障害状態をクリアする、
ようにさらに構成されている、請求項21~36のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項38】
前記FOD評価ユニットは、前記FOD障害状態を無効化するために前記表示を受信する前記ステップに応答して後続の異物検出評価のために前記複数のオフセット値を適合させるようにさらに構成されている、請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
前記電力送信機は、前記電力受信機が前記接合面から取り外されると前記アイドルフェーズに移行するように構成されており、
前記FOD評価ユニットは、前記電力送信機が前記アイドルフェーズにあるときに前記初期アイドルフェーズ異物検出評価を実行するように構成されている、請求項38に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、無線電力に関する。より具体的には、本出願は、無線電力伝送システムにおける異物検出に関する。
【背景技術】
【0002】
電力送信機(「無線電力送信装置」と呼ばれることもある)から電力受信機(「無線電力受信装置」と呼ばれることもある)への電力の送信を可能にする技術が開発されてきた。電力受信機は、他の例の中でもとりわけ、モバイルデバイス、小型電子デバイス、コンピュータ、タブレット、ガジェット、家電(コードレスブレンダー、ケトル、またはミキサなど)、およびいくつかのタイプの大型電子デバイスなどの様々なタイプのデバイスに含まれ得る。無線電力送信は、非接触電力送信または無接触電力送信と呼ばれることがある。無線電力は、電力送信機と電力受信機との間の誘導結合または共振結合を使用して伝送され得る。例えば、電力送信機は、電磁場を生成する一次コイルを含んでもよい。電磁場は二次コイルが一次コイルの近傍に配置されると、電力受信機の二次コイルに起電力を誘発し得る。この構成では、電磁場は、二次コイルに電力を無線で伝送し得る。
【0003】
無線電力伝送システムでは、金属異物(他の例の中でもとりわけ鍵、硬貨、金属缶、またはアルミニウム箔など)が電磁場の近傍にあるとき、金属異物が渦電流によって不必要に加熱される可能性がある。これは、火災の危険など、安全上の問題をもたらす可能性がある。さらに、無線電力伝送プロセスの効率が、不注意によって影響を受け、または妨害される可能性がある。無線電力伝送システムにおいて異物を検出するための従来の技術は、このような安全上の問題を防止するには不十分または効果がない場合がある。
【発明の概要】
【0004】
本開示のシステム、方法、および装置は各々、いくつかの革新的な態様を有し、そのいずれも本明細書に開示される望ましい属性を単独で担うことはない。
【0005】
本開示に記載される主題の1つの革新的な態様は、無線電力伝送(WPT)システムにおける異物検出(FOD)のための方法として実施することができる。本方法は、電力送信機をオンにするためのユーザ入力に応答してアイドルフェーズの前に、またはその一部としてFOD評価ユニットを初期化するステップを含み得る。FOD評価ユニットを初期化するステップは、初期アイドルフェーズ異物検出評価がまだ実行されていないことを表すために、FODフラグを第1の値に設定するステップを含み得る。方法は、FODフラグが第1の値に設定されているときに電力送信機がアイドルフェーズから異なる動作フェーズに移行する場合にFOD障害状態を示すステップを含み得る。
【0006】
本開示に記載される主題の別の革新的な態様は、FODのためのシステムとして実施することができる。本システムは、電力送信機をオンにするためのユーザ入力に応答してアイドルフェーズの前に、またはその一部としてFOD評価ユニットを初期化するように構成された電力送信機を含み得る。FOD評価ユニットを初期化するステップは、初期アイドルフェーズ異物検出評価がまだ実行されていないことを表すために、FODフラグを第1の値に設定するステップを含み得る。システムは、FODフラグが第1の値に設定されているときに電力送信機がアイドルフェーズから異なる動作フェーズに移行する場合にFOD障害状態を示すように構成されているFOD評価ユニットを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本開示に記載された主題の1つ以上の実装形態の詳細は、添付の図面および以下の説明に記載されている。他の特徴、態様、および利点は、説明、図面、および特許請求の範囲から明らかになるだろう。以下の図の総体寸法は、縮尺通りに描かれているとは限らないことに留意されたい。
【
図1】例示的な無線電力伝送(WPT)システムのブロック図である。
【
図2】異物検出のための検出装置を有する例示的な無線電力伝送システムのブロック図である。
【
図3】検出値が1対の検出コイルに関連付けられたコイル回路の比較に基づく、例示的な検出装置のブロック図である。
【
図4】検出値の例示的な大きさを有するチャートである。
【
図5】検出値が差動電流によって誘発された電圧に基づく、例示的な検出装置のブロック図である。
【
図6】例示的な検出装置における複数の検出コイルの図である。
【
図7】電力受信機の移動と異物の存在とを区別することができる複数のコイル対の図である。
【
図8】電力受信機の移動対異物の存在に起因するコイル対の検出電圧を比較する例示的なチャートである。
【
図9】検出値がオフセット値に基づいて調整される、例示的な異物検出評価のブロック図である。
【
図10】WPTシステムの様々な動作フェーズの状態図である。
【
図11】WPTシステムの様々な動作フェーズに関連する異物検出評価の概要図である。
【
図12】WPTシステムの様々な動作フェーズに関連する異物検出評価の詳細図である。
【
図13】異物検出評価のためのプロセスを示す図である。
【
図14】異物検出(FOD)障害処理のための例示的な動作を示す図である。
【
図15】いくつかの実装形態による、異物を検出するための例示的なプロセスのフローチャート図である。
【
図16】無線電力伝送システムで使用するための例示的な装置のブロック図である。 様々な図面における同様の参照番号および符号は、同様の要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
無線電力伝送(WPT)システムは、無線電力送信装置および無線電力受信装置を含み得る。無線電力送信装置は、電力送信機(「PTx」と呼ばれることもある)を含み得る。無線電力送信装置は、他の要素を含んでもよい。しかしながら、「無線電力送信装置」および「電力送信機」という用語は、振動電磁場の誘導結合または共振結合を介して無線電力受信装置に電力を伝達するWPTシステムの装置の全部または一部を表すために、交換可能に使用され得る。無線電力受信装置は、電力受信機(「PRx」と呼ばれることもある)を含み得る。無線電力受信装置は、他の要素を含んでもよい。しかしながら、「無線電力受信装置」および「電力受信機」という用語は、振動電磁場の誘導結合または共振結合を介して電力を受信するWPTシステムの装置の全部または一部を表すために、交換可能に使用され得る。接合面は、電力送信機と電力受信機との間に空間を画定し得る。
【0009】
時折、接合面内またはその付近など、電磁場の近傍に異物(金属異物と呼ばれることもある)がある場合がある。異物は、導電性であるかまたは検出可能な透磁率を有し、WPTシステムの一部ではないがWPTシステムの動作環境内に不注意によって存在する、任意の物体であり得る。異物の非限定的な例は、鉄の物体、金属缶、硬貨、金属スプーン、鍵、アルミニウム箔、または他の導電性または鉄の物体を含み得る。異物が電磁場の近傍にあるとき、異物は電磁場と相互作用する可能性があり、これにより、無線電力伝送に悪影響を与えるか、または異物を不必要に加熱させる可能性がある。
【0010】
WPTシステムは、異物検出システム(「検出装置」と呼ばれることもある)を含み得る。検出装置は、異物検出(FOD)評価のための値(「検出値」または「FOD値」とも呼ばれる)を取得または生成するために使用される、複数の検出コイルを含み得る。各検出値は、コイル対の2つのコイル間の電流、電圧、インピーダンス、または他の電気的特性の比較を表し得る。例えば、検出値は、差動電流、差動電圧、または1対の検出コイルに関連付けられたインピーダンスの差を示す任意の値であってもよい。FOD評価の一部として、FOD評価ユニットは、検出コイルが電気エネルギーで能動的にまたは受動的に励磁されている間に、各対の検出コイルの検出値を測定し得る。例えば、検出装置は、検出値を測定または取得して検出値をFOD評価ユニットに送信するためのセンサまたは他の回路を含んでもよい。FOD評価ユニットは、他の例の中でもとりわけ、電力送信機の一部(電力送信機のコントローラ内に実装されるような)、検出装置の一部(検出装置の制御ユニットなど)、電力送信機および検出装置を含む家電の一部(家電のプロセッサなど)、または外部プロセッサとしてもよい。FOD評価ユニットは、金属物体がコイル対の検出コイルのうちの1つの近くにあるか否かを判定するために、検出値を検出閾値と比較し得る。いくつかのタイプの異物検出評価では、FOD評価ユニットは、いくつのコイル対が金属物体の存在を示すかに基づいて、検出閾値を越える検出値が異物によるものか電力受信機の移動によるものかを判定し得る。より少ないコイル対(閾値量未満など)が金属物体の存在を検出すると、金属物体は異物であると判定され得る。逆に、より多くのコイル対(閾値量を越えるなど)が金属物体の存在を検出すると、FOD評価ユニットは、金属物体が電力受信機であると判定し得る。
【0011】
WPTシステムは、アイドルフェーズ、構成フェーズ、接続フェーズ、および電力伝送フェーズなどの異なるフェーズで動作する。技術仕様は、電力送信機および電力受信機が動作フェーズ間でどのように移行することができるかを定義し得る。例えば、電力送信機は典型的に、オンにされた後にアイドルフェーズで開始する。電力送信機をオンにすることは、コントローラ、通信ユニット、ドライバ、または一次コイルを除く電力送信機の他の構成要素に電力供給することを指す。一次コイルは、電力受信機と電力送信機との間で行うべき通信の後に、電力伝送フェーズでのみ通電される。電力受信機が接合面に配置されると、電力送信機の通信コイルのpingにより、電力受信機の存在を検出する。ハンドシェイクプロセスは、電力送信機と電力受信機との間で行われる。ハンドシェイクの成功に基づいて、電力送信機はアイドルフェーズから構成フェーズに移行する。電力送信機および電力受信機は、構成フェーズから接続フェーズおよび電力伝送フェーズへの移行に関して通信する。従来の異物検出技術は、アイドルフェーズなどの特定の動作フェーズで起こり得る固有のシナリオに関係なく、電力伝送フェーズに関連している。
【0012】
本開示は、異なる動作フェーズで動作する無線電力伝送システムにおける異物検出のためのシステム、方法、および装置を提供する。任意の特定の時間に実行される異物検出評価のタイプは、電力送信機の動作フェーズに依存し得る。したがって、FOD評価ユニットは、様々な動作フェーズに関連してFOD評価がどのように行われるかを定義するプロトコル(「FODプロトコル」と呼ばれることもある)に従うことができる。例えば、FODプロトコルは、異物を検出し、電力送信機がオンにされる前に電力受信機が電力送信機上に配置されるシナリオを軽減するための初期アイドルフェーズ異物検出評価を含んでもよい。FODプロトコルは、電力送信機が電力伝送フェーズに向かって他の動作フェーズに移行する際の後続の異物検出評価(電力供給前異物検出評価および電力供給中異物検出評価など)を含み得る。電力送信機は(FOD評価ユニットと協調して)、各動作フェーズの前または最中に異物が導入された場合にWPTシステムが無線電力を生成するのを防ぐことができる。
【0013】
各異物検出評価は、検出値と検出閾値との比較に基づいてもよく、いくつかの動作フェーズでは、異物検出評価は、いくつのコイル対が金属物体の存在を示すかの比較にさらに基づく。本開示の態様によれば、FOD評価ユニットは、WPTシステムにおける異物検出の精度を向上させるために、オフセット値を使用して検出値を調整し得る。他の例の中でもとりわけ、検出コイルの不一致、電力受信機の移動、WPTシステム内の非異物(「フレンドリな物体」またはあ「フレンドリな金属」と呼ばれることもある)の存在など、システムの変化を補償するために、検出値のうちの対応するものにオフセット値が加算(または減算)される。
【0014】
いくつかの実装形態では、FOD評価ユニットは、電力送信機が最初にオンにされるかまたは初期化されるときに異物を検出するために初期アイドルフェーズ異物検出評価を実行するように構成されてもよい。電力送信機は電力送信機が最初にオンにされた直後に、かつアイドルフェーズに関連して、FOD評価ユニットに初期アイドルフェーズ異物検出評価を実行させてもよい。初期アイドルフェーズ異物検出評価では、オフセット値(「初期オフセット値」と呼ばれる)は、事前決定され得る「較正値」に基づく。例えば、較正値は、電力送信機が設置または保守されているときなど、接合面に電力受信機および異物がないとわかっている瞬間に、予め測定されてもよい(「較正」または「較正されている」と呼ばれる)。較正値は、電力送信機が最初にオンにされたときにFOD評価ユニットのために利用可能なままであるように、電力送信機の不揮発性メモリに記憶され得る。FOD初期化の一部として、FOD評価ユニットは、不揮発性メモリから取得した較正値に基づいて複数のオフセット値を(「初期オフセット値」として)決定する。本明細書にさらに記載されるように、初期アイドルフェーズ異物検出評価は、電力受信機が接合面に既に存在する他の動作フェーズと比較して、異物を検出するための異なる基準を使用してもよい。電力送信機がオンにされたときに電力受信機が既に存在する場合、初期アイドルフェーズ異物検出評価は、FOD障害状態をクリアすることができるまで、電力送信機が無線電力を送信するのを防ぐことができる。電力送信機がオンにされたときに電力受信機が存在しない場合、初期アイドルフェーズ異物検出評価は、異物が存在するか否かを正常に判定し得る。
【0015】
初期アイドルフェーズ異物検出評価の後、FOD評価ユニットは、他の動作フェーズなどで後続の異物検出評価を実行し得る。他の動作フェーズでは、FOD評価ユニットは、検出されたシステム変化を考慮するために、複数のオフセット値を適合させ得る。適合(「再較正」と呼ばれることもある)は、電力受信機が検出されて異物が存在しないときにシステム変化(電力受信機の移動など)を考慮するために、FOD評価ユニットが(後続の異物検出評価で使用するために)複数のオフセット値を更新することを可能にする。更新されたオフセット値(「適合オフセット値」と呼ばれることもある)は、電力送信機がオンである間に使用することができ、電力送信機がオフにされると削除できるように、揮発性メモリ内に記憶されてもよい。電力送信機がオフにされてからオンにされるたびに、複数のオフセット値が較正値にリセットされる。適合は、構成フェーズ、接続フェーズ、または電力伝送フェーズなどにおいて、FOD評価ユニットが接合面に存在する電力受信機を検出した後に行われる。FOD評価ユニットは、電力受信機の存在または移動を補償するために、または異物が検出されないときに、他の動作フェーズで適合を実行してもよい。
【0016】
異物検出評価ごとに、FOD評価ユニットは、異物が検出されたときに障害状態(「FOD障害」と呼ばれることもある)を示し得る。電力送信機または電力受信機は、障害状態に基づいて、異なるフェーズで動作を制御し得る。本開示は、WPTシステムの現在のフェーズに応じて、FOD評価ユニットがFOD障害を判定するときに使用することができるFOD障害処理のいくつかの例を含む。例えば、FOD障害は、電力送信機、電力受信機、または両方のユーザインターフェースによって示されてもよい。いくつかの実装形態では、FOD評価ユニットは、電力受信機、電力送信機、または電力送信機もしくは電力受信機のいずれかもしくはこれらの両方を含む家電のプロセッサにメッセージを通信してもよい。いくつかの実装形態では、FOD障害を無効化またはクリアするために(PRxまたはPTxのユーザインターフェースなどを介した)ユーザインタラクションを使用することができる。代替的または追加的に、FOD障害状態は、WPTシステムの動作環境から異物およびPRxを除去するために、ユーザ介入によってクリアされてもよい。
【0017】
本開示に記載される主題の特定の実装形態は、以下の潜在的な利点のうちの1つ以上を実現するために実施することができる。異物検出は、WPTシステムの異なる動作フェーズで正確に実行することができる。例えば、FOD評価ユニットは、異物が検出されたときにFOD障害を適切に示し得る。そしてFOD評価ユニットは、異物が存在しないときに、電力受信機の移動を考慮するように検出値を適切に調整し得る。本開示の技術を使用して、WPTシステムは、FOD手順および動作フェーズを調整することができる。さらに、いくつかの実装形態では、FOD手順は、WPTが異物をチェックする機会を得る前に電力送信機上に電力受信機を配置するなどのいくつかの一般的なユーザエラーに対処することができる。したがって、本開示の実装形態は、無線電力伝送システムの追加の安全性および信頼性を提供することができる。
【0018】
以下の説明は、本開示の革新的な態様を説明する目的のための特定の実装形態を対象とする。しかしながら、当業者は、本明細書の教示が多くの異なる方法で適用され得ることを容易に認識するだろう。記載される実装形態は、無線電力伝送のための任意の手段、装置、システム、または方法において実施することができる。
【0019】
図1は、例示的な無線電力伝送システム100のブロック図を示す。無線電力伝送システムは、電力送信機102および電力受信機118を含み得る。電力送信機102は、電力受信機118内の1つ以上の対応する二次コイル120に(無線電力信号として)無線エネルギーを送信する1つ以上の一次コイル110を含み得る。一次コイルは、電力送信機内の無線エネルギー源(電磁場を生成する誘導または磁気共鳴エネルギーなど)を指す。一次コイル110は、電力信号発生器106に関連付けられてもよい。一次コイル110は、(無線エネルギーまたは無線電力信号とも呼ばれ得る)無線電力を送信するワイヤコイルであってもよい。電力信号発生器および一次コイルは共に、無線電力伝送中に一次磁場を生成し得る。電力信号発生器106は、一次コイル110に電力を供給して一次コイル110に無線電力信号を生成させる構成要素(図示せず)を含み得る。例えば、電力信号発生器106は、1つ以上のスイッチ、ドライバ、直列コンデンサ、整流器、または他の構成要素を含み得る。電力送信機102はまた、電力信号発生器106の構成要素を制御する送信コントローラ108(PTXコントローラと呼ばれることもある)も含み得る。例えば、送信コントローラ108は、動作点(電圧または電流など)を決定し、動作点に従って電力信号発生器106を制御してもよい。
【0020】
いくつかの実装形態では、電力信号発生器106、送信コントローラ108、および他の構成要素(図示せず)は、まとめて電力送信機回路と呼ばれてもよい。電力送信機回路の一部または全部は、無線電力を制御して1つ以上の電力受信機に送信するための本開示の特徴を実装する集積回路(IC)として具現化され得る。送信コントローラ108は、マイクロコントローラ、専用プロセッサ、集積回路、特定用途向け集積回路(ASIC)、または任意の他の適切な電子デバイスとして実装され得る。
【0021】
電源112は、電力送信機102の電力送信機回路に電力を供給し得る。電源112は、交流電流(AC)電力を直流電流(DC)電力に変換し得る。例えば、電源112は、外部電源(主電源など)からAC電力を受信して、AC電力を電力信号発生器106によって使用されるDC電力に変換する変換器を含んでもよい。
【0022】
いくつかの実装形態では、第1の通信ユニット142は、無線電力信号を介して通信を送信または受信するために、電力信号発生器106または一次コイル110の構成要素に結合され得る。第1の通信ユニット142は、無線電力信号を介して無線信号の送信および受信を引き起こす1つ以上のスイッチおよび他の構成要素を制御するための論理を含み得る。例えば、第1の通信ユニット142は、情報を無線電力信号に付加された変調信号に変換する変調器または復調器を含んでもよい。一例では、第1の通信ユニット142は、送信コントローラ108からのデータを、電力送信機102から電力受信機118への通信のために無線電力信号と結合される周波数シフトキー(FSK)変調信号に変換してもよい。別の例では、第1の通信ユニット142は、電力信号発生器106または一次コイル110からの負荷変調振幅シフトキー(ASK)信号を感知し、第1の通信ユニット142が送信コントローラ108に提供するデータを取得するためにASK信号を復調してもよい。
【0023】
いくつかの実装形態では、電力送信機102は、無線通信インターフェース114を含み得る。無線通信インターフェース114は、第1の通信コイル116(コイルまたはループアンテナであってもよい)に接続され得る。無線通信インターフェース114は、第1の通信コイル116を介して無線通信信号の送信および受信を引き起こす1つ以上のスイッチおよび他の構成要素を制御するための論理を含み得る。いくつかの実装形態では、無線通信インターフェース114は、短距離無線周波数通信(Bluetooth(商標)など)または近距離無線通信(NFC)をサポートし得る。NFCは、13.56MHzの搬送波周波数でデータ転送を行う技術である。無線通信ユニット114はまた、任意の適切な通信プロトコルをサポートし得る。
【0024】
送信コントローラ108は、様々な技術を使用して、電力受信機118の存在または近接を検出し得る。いくつかの実装形態では、電力受信機118の存在または近接は、電力信号発生器106および一次コイル110によって生成される周期的な低電力信号に応答する負荷変化に基づいて検出され得る。いくつかの実装形態では、電力受信機118の存在または近接は、電力送信機102の無線通信インターフェース114の周期的なpingプロセス中に起こり得る。
【0025】
送信コントローラ108は、電力送信機102が電力受信機118に供給する無線電力の特性を制御し得る。電力受信機118を検出した後、送信コントローラ108は、電力受信機118から情報を受信し得る。例えば、送信コントローラ108は、電力受信機118とのハンドシェイクプロセス中に情報を受信してもよい。情報は、電力受信機118に関する情報(他の例の中でもとりわけ、電力定格、負荷状態、製造業者、モデル、または標準的な送信機で動作しているときの受信機のパラメータなど)を含み得る。送信コントローラ108は、電力受信機118に供給する無線電力の少なくとも1つの動作制御パラメータ(周波数、デューティサイクル、電圧など)を決定するために、この情報を使用し得る。無線電力を構成するために、送信コントローラ108は、電力信号発生器106の周波数、デューティサイクル、電圧、または任意の他の適切な特性を修正し得る。
【0026】
電力受信機118は、二次コイル120、整流器126、および受信機コントローラ128を含み得る。二次コイル120は、電磁場を介して無線エネルギーを受信し得る。二次コイル120が一次コイル110と整列すると、二次コイル120は、一次コイル110から受信した無線電力信号に基づいて誘導電圧を生成し得る。コンデンサ(図示せず)およびスイッチ(図示せず)は、二次コイル120と整流器126との間で直列であってもよい。整流器126は、誘導電圧を整流し、負荷130に誘導電圧を提供し得る。いくつかの実装形態では、負荷130は、電力受信機118の外部にあり、整流器126からの電線を介して結合されてもよい。いくつかの実装形態では、整流器126は存在しなくてもよく、二次コイル120の誘導電圧は、二次コイル120および負荷130に直列の要素に供給されてもよい。
【0027】
受信機コントローラ128は、整流器126および第2の通信ユニット152に接続され得る。第2の通信ユニット152は、無線電力信号を介して通信を送信または受信するために、二次コイル120または整流器126の構成要素に結合され得る。第2の通信ユニット152は、無線電力信号を介して通信信号の送信および受信を引き起こす1つ以上のスイッチおよび他の構成要素を制御するための論理を含み得る。例えば、第2の通信ユニット152は、情報をASKまたはFSK変調信号に変換する変調器または復調器を含んでもよい。一例では、第2の通信ユニット152は、受信機コントローラ128からのデータを、電力受信機118から電力送信機102への通信のために無線電力信号を負荷変調するために使用されるASK変調信号に変換してもよい。別の例では、第2の通信ユニット152は、二次コイル120または整流器126で無線電力信号内のFSK信号を感知し、第2の通信ユニット152が受信機コントローラ128に提供するデータを取得するためにFSK信号を復調してもよい。
【0028】
いくつかの実装形態では、電力受信機118は、無線通信インターフェース132を含み得る。無線通信インターフェース132は、第2の通信コイル134(コイルまたはループアンテナであってもよい)を介して無線通信するための変調回路および復調回路を含み得る。したがって、受信機コントローラ128は、NFC通信またはBluetoothを使用して、無線通信インターフェース132および無線通信インターフェース114を介して送信コントローラ108と無線通信し得る。
【0029】
いくつかの従来の無線電力システムでは、一次コイルは、無線企画によって事前決定された定格まで無線エネルギーを二次コイルに伝送することができる。例えば、低電力無線電力信号は、5ワット(5W)、9W、12W、または15Wを搬送することができる。低電力無線電力システムは、多くの電子デバイスに適している最大15ワットのエネルギーを送達し得る。より多くの電力を必要とする家電またはデバイスへの無線電力送信をサポートするために、より高い電力の無線システムが開発されつつある。例えば、高電力コードレスキッチン送信機は、2.2Wもの電力を送達し得る。
【0030】
接合面180(「接合空間」と呼ばれることもある)は、電力送信機と電力受信機との間に空間を画定し得る。例えば、接合面は、電力受信機が配置され得る電力送信機の表面を含んでもよい。一次コイル110と二次コイル120との間の距離は、接合面の表面の厚さを含み得る。無線電力伝送中、一次コイル110は、接合面を通り、二次コイルが配置される動作環境に入る磁場(一次磁場と呼ばれる)を誘発し得る。したがって、「動作環境」は、システム内の一次磁場によって画定され、一次コイル110の一次磁場は、検出可能に存在し、二次コイルまたは異物190(FO190として示される)と検出可能に相互作用することができる。
【0031】
異物190がWPTシステムの動作環境に存在するとき、異物190は、磁場との相互作用による温度の上昇を経験する可能性がある。したがって、異物が検出されると、電力送信機は、一次磁場の生成を中断するか、または安全なレベルを超えて異物を加熱させるのに十分な量のエネルギーを電力送信機が異物に伝達するのを他の方法で防ぐことができる。WPTシステムは、検出装置(異物検出マットまたは「FODマット」と呼ばれることもある)を含み得る。いくつかの実装形態では、検出装置は、電力送信機102または接合面180と一体化または結合されてもよい。
【0032】
図2は、異物検出のための検出装置を有する例示的な無線電力伝送システム200のブロック図を示す。無線電力伝送システム200は、
図1を参照して記載されたように、電力送信機102(一次コイル110を有する)、接合面180、および電力受信機118(二次コイル120を有する)を含む。簡潔にするために、電力送信機102および電力受信機118の他の構成要素は、
図2には示されていない。検出装置(
図2に示されるFODマット150またはその変形例など)は、本開示のいくつかの態様に従って異物の存在を検出することができる複数の検出コイル170を含み得る。いくつかの実装形態では、検出装置はFODマット150を含んでもよく、検出コイルはFODマット150の中または上に構築されてもよい。
図2には示されていないが、いくつかの実装形態では、FODマットは、接合面の全域にわたって延在してもよい。あるいは、FODマット(およびその中の検出コイルの数または構成)は、一次コイル110、二次コイル120、または両方のサイズを画定する技術仕様に基づいてサイズ決めされてもよい。
図2の例は表面の中または上にFODマット150として配備された検出装置を示すが、いくつかの実装形態では、検出装置は、一次コイル110と二次コイル120との間の空間内の任意の表面または構造の上または中に配備されてもよい。
【0033】
WPTシステムは、FOD評価ユニット155を含み得る。いくつかの実装形態では、FOD評価ユニット155は、(
図2に示されるように)電力送信機102の一部であってもよい。いくつかの他の実装形態では、FOD評価ユニット155は、WPTシステム内の他の場所に(他の例の中でもとりわけ、検出装置、FOD制御ユニット(図示せず)内に、または電力送信機102を収容する家電(図示せず)の一部として)配置されてもよい。FOD評価ユニット155は、本明細書にさらに記載される、検出値に基づいて検出コイル170の近傍の異物190を検出するように構成され得る。いくつかの実装形態では、FOD評価ユニット155は、FOD評価結果に基づいて電力送信機102の無線電力伝送動作を無効化または有効化し得る。FOD評価結果は、FOD評価ユニット155が検出コイル170の近傍の異物190を検出したか否かを示し得る。いくつかの実装形態では、FOD評価ユニット155は、FOD評価結果に基づいて電力受信機118の無線電力伝送動作を電力受信機118に有効化または無効化させるために、FOD評価結果を電力受信機118と通信してもよい。いくつかの実装形態では、FOD評価結果が、異物が検出されたことであるとき、FOD評価結果は、FOD障害信号と呼ばれ得る。1つのFODマット150のみが
図2に示されているが、いくつかの実装形態では、WPTシステム内に2つ以上のFODマットが配備されてもよい。例えば、FOD評価ユニット155は、コンロの上または他の無線電力家電の異なる一次コイルまたは異なる電力送信機に関連して配置されたFODマット(図示せず)を使用して異物検出を実行してもよい。代替的または追加的に、電力送信機に関連して1つのFODマットが配置されてもよく、電力受信機に関連して別のFODマットが配置されてもよい。FODマットの各々は、(
図2のFOD評価ユニット155を参照して記載された機能を実行する)同じまたは異なる異物評価ユニットに接続されてもよい。
【0034】
FOD評価ユニット155が電力送信機102または電力受信機118とFOD評価結果を通信する技術は異なっていてもよい。いくつかの実装形態では、FOD評価ユニット155は、電力送信機102の送信コントローラ(図示せず)に実装されてもよく、送信コントローラによって処理される情報としてFOD評価結果を提供し得る。いくつかの他の実装形態では、FOD評価ユニット155は、電力送信機102の送信コントローラへの有線通信リンク(図示せず)を有してもよい。いくつかの実装形態では、FOD評価ユニット155は、無線通信リンク(図示せず)によって電力送信機102または電力受信機118または両方と通信してもよい。FOD評価ユニット155が電力送信機102の送信コントローラに統合されていない実装形態では、送信コントローラは、FOD評価ユニット155によって実行されるFOD評価のタイミングを管理し得る。例えば、送信コントローラは、WPTシステムの様々な動作フェーズ中に、FOD評価ユニット155にFOD評価を実行させてもよい。いくつかの実装形態では、電力送信機102がFOD評価をトリガすると、電力送信機102は、FOD評価ユニット155に電力送信機の現在の動作フェーズのインジケータを提供してもよく、またはFOD評価ユニット155がどのタイプのFOD評価を実行するかを示してもよい。いくつかの実装形態では、FOD評価ユニット155は、通信プロトコルを必要とせずに、メモリ記憶ユニット、ピンライン、または他の制御信を使用して、FOD評価結果を電力送信機102または電力受信機118に通信し得る。いくつかの実装形態では、FOD評価ユニット155は、電力送信機102または電力受信機118のコントローラ内にソフトウェアとして配置または実装されてもよい。
【0035】
FODマット150は、可撓性マット、適合マット、剛性マットまたはプラグアンドプレイマット、独立型マット、またはこれらの組み合わせであってもよい。FODマット150の基材は、電気絶縁材料で作られてもよい。いくつかの実装形態では、FODマット150は、(電力受信機118が大型家電であるときなどに)その上での電力受信機の移動に耐えるための機械的耐摩耗性材料をさらに含み得る。いくつかの実装形態では、FODマット150は、屋外用途向けにさらに設計され、温度、湿度に耐えるように設計されてもよく、水の浸入に耐性があってもよい。検出コイル170は、FODマット150の基材上に配置されてもよく、またはユーザの安全および美観のためにFODマット150の基材に埋め込まれてもよい。いくつかの他の実施形態では、検出コイル170は、FODマット150の基材上に印刷、成形、織り込み、または付加製造されてもよい。
【0036】
検出コイル170は、対になって動作し得る。FOD評価ユニット155は、複数のコイル対に関連付けられた検出値(他の例の中でもとりわけ差動電圧、差動電流、または差動インピーダンスなど)を取得し得る。典型的に、電力受信機118は、同時に複数のコイル対に広がるほど十分に大きい。逆に、異物190は電力受信機118よりも小さくてもよい。異物190は、1つのコイルにしか広がらないか、または隣り合うコイル対に属する2つのコイルに広がってもよい。1対の検出コイルにおける検出値の差を比較することによって、FOD評価ユニット155は、コイル対の近傍の異物の存在を検出することができる。例えば、第1の検出コイル171および第2の検出コイル172がコイル対を形成してもよい。第1の検出コイル171の近くの異物190により、第1の検出コイル171と第2の検出コイル172との検出値が異なり得る。検出装置(FODマット150など)は、いくつかのこのようなコイル対を有してもよく、FOD評価ユニット155は、各コイル対のコイルについてそれぞれの検出値を比較し得る。
【0037】
能動的励磁を使用する実装形態では、FOD評価ユニット155は、高周波数(一例として、200kHz以上など、一次磁場で典型的に使用される周波数よりも高い)を使用して、ドライバ(図示せず)に第1の検出コイル171および第2の検出コイル172を励磁させてもよい。コイル対は、コイル対の検出コイルを同時に励磁するドライバに並列回路で結合され得る。存在するとき、異物は、(異物の存在しない)第2の検出コイル172と比較して異なるインピーダンスまたは電流を第1の検出コイル171に経験させる可能性がある。第1の検出コイル171および第2の検出コイル172を通じて引き込まれた電流を比較することによって、FOD評価ユニット155は、第1の検出コイル171または第2の検出コイル172の近くに異物が存在すると判定し得る。コイル対によって引き込まれた電流の差は、差動電流と呼ばれ得る。
【0038】
受動的励磁を使用する実装形態では、FOD評価ユニット155は、一次コイル110によって生成された磁場に基づいて、検出コイル内で誘発された電圧を観察し得る。コイル対の検出コイルは、直列に接続され、既知のインピーダンスによって終端されてもよい。一次コイル110が電力送信機102によって励磁されると、一次コイル110によって生成された磁場は、コイル対の検出コイル内に電圧を誘発し得る。異物が存在しないとき、検出コイルの電圧は均一であり、効果的に相殺され得る。逆に、異物が存在すると、検出コイルの電圧は不均一であり、測定可能な差動電圧を生じる。差動電圧は、本開示の様々な実装形態においてオフセット値を使用して調整することができる検出値の一例である。
【0039】
したがって、本開示の技術は、能動的励磁または受動的励磁を使用する検出装置と共に使用することができる。簡潔にするために、本開示の例の多くは能動的励磁に基づくが、受動的励磁を使用する検出装置にも同じまたは同様の概念が適用される。
【0040】
図3は、検出値が1対の検出コイルに関連付けられたコイル回路の比較に基づく、例示的な検出装置のブロック
図300を示す。
図3は、第1の検出コイル171および第2の検出コイル172を備えるコイル対を示す。コイル対は、ドライバ305に並列に接続される。したがって、コイル対の検出コイルのうちの1つが励磁されると、他方の検出コイルも励磁される。ドライバ305は、コイル対(この例では第1の検出コイル171および第2の検出コイル172)に動作可能に結合され得る。ドライバ305は、コイル回路311および312を通る交流電流信号を使用して、コイル対の検出コイル171および172を同時に励磁するように構成され得る。例えば、第1のコイル回路311は、ドライバ305から第1の検出コイル171を通る電流の経路を含んでもよく、第2のコイル回路312は、ドライバ305から第2の検出コイル172を通る電流の経路を含んでもよい。
【0041】
感知装置(図示せず)またはFOD評価ユニット(図示せず)は、コイル対に関連付けられた検出値350を取得し得る。例えば、検出値350は、他の例の中でもとりわけ、差動電流、差動電圧、または差動インピーダンスであってもよい。検出値350は、第1の検出コイル171および第2の検出コイル172を比較するときに電流がどのように異なって伝わるかの比較を表す。例えば、検出値350は、第1のコイル回路311を通る第1の電流(
図2において「A」として参照される)と第2のコイル回路312を通る第2の電流(
図2において「B」として参照される)との差を表す差動電流であってもよい。
【0042】
検出値350は、本開示の技術に従ってオフセット値を使用して調整され得る。いくつかの実装形態では、第1の検出コイル171および第2の検出コイル172のインピーダンス値は、異物190が存在しないときに同じまたは同様であり得る。しかしながら、異物190が存在するとき、異物190は、第1の検出コイル171が第1のインピーダンス値を有し、第2の検出コイル172が第2のインピーダンス値を有するように、検出コイル171および172のうちの1つにインピーダンスの変化を引き起こす可能性がある。インピーダンスの差は、コイル回路311および312を通じて引き込まれた電流の量を異ならせる場合がある。差動電流は、コイル回路311および312を通じて引き込まれた電流の比較を指すことができる。異物190が存在せず、検出コイル171および172のインピーダンスが同じまたは同様であるとき、コイル回路311および312通じて引き込まれた電流の量は、同じまたは同様であり得る。したがって、検出値350は、ほとんどまたは全く差がないことを示す低い値であり得る。逆に、異物190が第1の検出コイル171のうちの1つの近くに存在するとき、第1の検出コイル171のインピーダンスは変化して、コイル回路311および312を通じて引き込まれた電流の差がより大きいことを検出値350に示させる。
【0043】
FOD評価ユニット(図示せず)は、検出コイルの複数のコイル対から検出値(検出値350など)を取得することができる。FOD評価ユニットは、いくつのコイル対が検出値の変化を有するかに基づいて、電力受信機の移動と異物の導入と区別し得る。例えば、複数のコイル対の閾値量についての検出値が差動電流または差動電圧の変化を示すとき、FOD評価ユニットは、このような変化が電力受信機の移動に起因すると判定し得る。1つまたは2つのコイル対(または閾値量未満)の検出値が差動電流または差動電圧の変化を示すとき、FOD評価ユニットは、このような変化が異物の導入に起因すると判定し得る。このような場合、FOD評価ユニットは、FOD障害状態を示すFOD評価結果を送信し得る。いくつかの実装形態では、FOD評価ユニットは、電力受信機の移動が行われたという判定に応答して、複数のコイル対の検出値を修正またはオフセットし得る。したがって、検出値のその後の比較のために、FOD評価ユニットは、WPTシステムの磁場内の電力受信機の以前の移動を考慮するように検出値を調整することができる。したがって、異物を検出するための正確な技術を依然として提供しながら、電力受信機の通常のインピーダンスの影響を考慮することによって後続のFOD評価の精度を向上させることができる。
【0044】
図4は、検出値の例示的な大きさを有するチャート400を示す。例えば、
図4は、(
図3の差動電流350の例として)差動電流350Aおよび350Bの例示的な大きさ、ならびに異物が存在するか否かを判定するために差動電流をどのように使用することができるかを図式的に示す。異物が存在しないとき(グラフ411に示される)、差動電流350Aの大きさは検出閾値420よりも低くなり得る。異物が存在するとき(グラフ412に示される)、差動電流350Bの大きさは検出閾値420よりも高くなり得る。検出閾値420は、FOD評価ユニットの所望の感度に基づく構成可能なパラメータであってもよい。
【0045】
図4に示される例では、差動電流が検出閾値を上回ったときに異物が検出される。いくつかの実装形態では、異物は、差動電流の変化量に基づいて検出される。例えば、差動電流は、ベースライン状態の間はより高く、異物が検出されたときに閾値量未満に低下し得る。差動電流は、異物が存在するときにより大きくなってもよく、より小さくなってもよい(以前の測定値またはベースライン測定値と比較して)。したがって、いくつかの実装形態では、差動電流の変化量は、異物の存在を示すことができる。差動電流の量の変化は、その変化が異物の導入に基づくか否かを判定するために、検出閾値と比較され得る。
【0046】
図5は、検出値が差動電流によって誘発された電圧に基づく、例示的な検出装置500のブロック図を示す。例示的な検出装置は、本明細書に記載されるように、対になって配置された検出コイルを含み得る。例えば、例示的な検出装置は、
図3を参照して記載されたように、1対の検出コイル171および172(コイル対と呼ばれる)を含み得る。検出装置は、FOD期間中にコイル対を同時に励磁するように構成されたドライバ(図示せず)を含み得る。異物190の存在(またはその欠如)は、コイル回路311および312に差動電流を引き起こす可能性がある。
図5は、差動電流を測定するために使用することができる差動電流感知装置の一例を提供する。差動電流感知装置は、磁気コア510および差動電流感知回路501を含むことができ、これらは、検出値545を取得するために測定することができる電圧を提供するように組み合わせて動作する。
【0047】
コイル回路311および312上の電流が磁気コア510を通過すると、電流の差が磁気コア内に鎖交磁束を生成する。コイル回路311および312は、コイル回路311および312内の等しい電流がより小さい鎖交磁束を生成し、その一方でコイル回路311および312の電流の差がより大きい鎖交磁束を生成するように、反対方向に磁気コアを通過する。磁気コア510内の鎖交磁束は、磁気コア510の回りに巻かれたセンサコイル520に対応する電気信号を誘発し得る。この誘発された電気信号は、磁気コア510が磁気的に飽和しないという条件下で、コイル回路311および312内の電流の差に依存(関連または比例)し、検出コイル171および172のコイル対の間の差動電流の測定値を表す、誘導電圧522を有する。
【0048】
差動電流感知回路501はまた、DC電圧545(検出値545と呼ばれる)を生成するために誘導電圧信号を受信および整流する整流器530も含み得る。任意選択のフィルタ540は、検出電圧を制御ユニット155に送信する前に検出電圧をフィルタリングし得る。一例では、フィルタ540は、測定値から高周波成分を除去するように構成される。
【0049】
FOD評価ユニット155は、検出値545を使用して異物検出評価の結果を示す異物検出評価結果580(FOD結果)を生成するように構成され得る。いくつかの実装形態では、FOD評価ユニット155は、検出値の絶対値を検出閾値565と比較するように構成された比較器560を含み得る。検出値と検出閾値565との比較に基づいて、FOD評価ユニット155は、FOD評価結果580または他の制御信号をWPTシステムの構成要素(電力送信機または電力受信機)に提供し得る。例えば、検出値の絶対値が検出閾値565より大きいとき、FOD評価ユニット155は、異物が存在することを示すFOD評価結果580を提供し得る。あるいは、異物の存在における検出値は、異物が存在しないときの検出値よりも低くてもよい。したがって、いくつかの実装形態では、以前のまたはベースライン測定から現在の測定までの検出電圧の絶対値の変化をデルタ閾値と比較してもよく、変化量がデルタ閾値よりも大きいときに異物が検出され得る。FOD評価ユニット155は、検出値545の絶対値(大きさともよばれる)を生成するための構成要素(絶対値ユニットまたはABS555と呼ばれる)を含み得る。
【0050】
いくつかの実装形態では、FOD評価ユニット155は、検出電圧の対応するものに対してオフセット値(略して「オフセット」と呼ばれることもある)を加算または減算するように構成された調整ユニット550も含み得る。例えば、オフセット値は、検出コイル171および172のコイル対のインピーダンスの通常の差に基づいてもよく、または以前の異物検出評価の結果に基づいてもよい。いくつかの実装形態では、初期オフセット値は、検出コイル171および172の製造中または製造後に決定され得る。代替的または追加的に、初期オフセット値は、異物が存在しないときの検出装置のベースライン測定中にFOD評価ユニット155またはテスト機器(図示せず)によって決定されてもよい。例えば、初期オフセット値は、検出装置がどこに設置されているかに応じて、FODマット、電力送信機、または電力受信機の他の構成要素によって引き起こされるインピーダンスのわずかな差を考慮し得る。FOD評価ユニット155の較正中に、較正値が測定され、初期オフセット値として記憶され得る。初期アイドルフェーズ異物検出評価中に、(検出値ごとの)初期オフセット値が実際の検出値から減算され、ABS555に渡される。比較器560は、FOD結果580を生成するために、ABS555によって生成された絶対値を検出閾値565と比較し得る。
【0051】
アイドルフェーズでは、初期アイドルフェーズ異物検出評価は、較正値に基づく、初期オフセット値と呼ばれる複数のオフセット値を利用する。他の動作フェーズでは、電力受信機が接合面に存在する。FOD評価ユニット155は、異物が存在しないときの接合面上の電力受信機の移動の検出を考慮するために、複数のオフセット値を適合させ得る。例えば、検出値は、後続の異物検出評価(構成フェーズ、接続フェーズ、または電力伝送フェーズなど)で使用するためにそのコイル対に関連付けられた更新されたオフセット値として使用されてもよい。更新されたオフセット値は、電力受信機の移動に起因するインピーダンスの変化を反映し得る。後続の異物検出評価では、更新されたオフセット値は、検出値545を調整するために調整ユニット550によって使用される。
【0052】
図6は、例示的な検出装置における複数の検出コイルの
図600を示す。4つのコイル対が示されている。第1のコイル対は、第1および第2の検出コイル171および172を備える。第2のコイル対は、第3および第4の検出コイル173および174を備える。第3のコイル対は、第5および第6の検出コイル175および176を備える。第4のコイル対は、第7および第8の検出コイル177および178を備える。
図6の例は教育目的のために提供され、検出装置は、任意の様々なコイル対を有し得ることは明らかである。簡潔にするために、検出コイル171、172、173、174、175、176、177、178は、それぞれL1、L2、L3、L4、L5、L6、L7、およびL8と呼ばれる。
【0053】
異物検出評価中、各コイル対について検出値を取得することができるように、1つ以上のコイル対が能動的または受動的に励磁され得る。いくつかの実装形態では、コイル対は、他のコイル対の干渉なしにその関連する検出値が測定され得るように、連続パターンで励磁され得る。いくつかの実装形態では、隣接しない検出コイルを有する2つ以上のコイル対が同時に励磁および測定され得る。
【0054】
図6はまた、異物190がコイルL3の近傍に位置する例を示す。コイルL3およびL4のコイル対が励磁されると、これらの検出コイルは異なる電流を引き込み、検出値は、異物がこれらのコイルのうちの1つの近くに位置することを示し得る。
【0055】
図7は、電力受信機の移動と異物の存在とを区別することができる複数のコイル対の図を示す。
図7のレイアウトは、
図6を参照して記載された複数のコイル対の例示的な構成を利用する。一次コイル(図示せず)は、コイルL1~L8によって覆われる検出ゾーンの中央でその下に位置し得る。第1の例701は、検出コイルのアレイ上を第1の位置710から第2の位置720まで移動する二次コイル(簡潔にするために、一重丸で示される)を示す。二次コイルは金属成分およびフェライト成分を含むので、二次コイルは、検出コイルのインピーダンスの変化を引き起こす可能性がある。したがって、コイル対の検出値が測定されると、二次コイル自体が、いくつかのコイル対に関連付けられた検出値の差異を生じさせる可能性がある。しかしながら、二次コイルは検出コイルのサイズと比べて比較的大きいので、複数のコイル対が検出値の変化を測定する。比較すると、第2の例702は、WPTシステムの動作環境に導入された異物190を示している。異物は、検出コイルのサイズと比べて比較的小さい。このため、おそらく1つまたは2つのコイル対で異物の導入による検出値の変化を測定し得る。いくつかの実装形態では、検出コイルL1~L8(およびそれらのサブコイル)のサイズは、技術仕様に適合する二次コイルの標準サイズ(または複数のサイズ)に基づいて選択され得る。同様に、検出コイルL1~L8のサイズは、動作環境に導入されそうな異物の潜在的なサイズに基づいて選択され得る。例えば、キッチンWPTシステムで使用するための検出装置は、他の例の中でもとりわけ、スプーン、フォーク、硬貨、鍵、ブリキ缶、または金属プレートを検出するのに適切なサイズの検出コイルを含み得る。EV WPTシステムで使用するための検出装置は、他の例の中でもとりわけ、レンチ、アルミニウム缶、ガスタンク、ワッシャ、ナット、またはネジを検出するのに適切なサイズの検出コイルを含み得る。デスクトップWPTシステムで使用するための検出装置は、異物(他の例の中でもとりわけ、ペン、鍵、コンピュータ部品、指輪、またはサムドライブなど)を検出するのに適切なサイズの検出コイルを含み得る。
【0056】
図8は、電力受信機の移動対異物の存在に起因するコイル対の検出値を比較する例示的なチャート800を示す。第1の例810では、FOD評価ユニット(本明細書の図のいずれかを参照して記載されたFOD評価ユニット155など)は、(較正値に基づく初期オフセット値によって調整された)検出電圧のベースライン表現を確立し得る。例えば、アイドルフェーズでは、FOD評価ユニットは、較正値に基づいて各コイル対の検出値に初期オフセット値を加算し得る。検出値811、812、813、および814は、複数のコイル対の差動電流(または差動電圧)の測定値を表し得る。FOD評価ユニットは、(初期オフセット値によって調整された)検出値に基づいて異物が存在しないと判定し得る。例えば、FOD評価ユニットは、各検出値を検出閾値と比較し、各コイル対について異物が存在しないと判定してもよい。代替的または追加的に検出FOD評価ユニットは、各検出値の変化量をデルタ閾値と比較し、変化量がデルタ閾値未満であるときに異物が存在しないと判定してもよい。電力受信機が存在し、異物が検出されない他の動作フェーズでは、FOD評価ユニットは、電力受信機の移動によって引き起こされるインピーダンスの変化に基づいて、複数のオフセット値を適合させてもよい。他の動作フェーズでは、更新されたオフセット値は、後続の異物検出評価中にコイル対の検出値を調整するために使用され得る。
【0057】
第2の例820(後続の異物検出評価など)では、電力受信機は、以前の評価に関連付けられた以前の位置から移動していてもよい。この移動は、コイル対の検出値の変化を引き起こす可能性がある。例えば、検出値821、822、823、および824は、後続の異物検出評価中の複数のコイル対の差動電流(または差動電圧)の測定値を表し得る。第2の例では、第2、第3、および第4のコイル対に対応する検出値822、823、および824が変化している。検出値822、823、および824の変化は、この説明のために、それぞれ826、827、および828で囲まれている。教育目的のために(826、827、および828で囲まれた)検出値の減少として示されているが、いくつかの実装形態では、変化は検出値の増加であってもよい。変化が増加であるか減少であるかにかかわらず、FOD評価ユニットは、いくつのコイル対がデルタ閾値よりも大きい検出値の変化を有したかを判定し得る。閾値を超えるコイル対がそれぞれの検出値の変化を有したので、FOD評価ユニットは、この変化が電力受信機の移動に起因すると判定し得る。閾値量は、構成可能なパラメータであってもよく、または事前決定されてもよい。いくつかの実装形態では、3つ以上のコイル対の変化は、無線電力伝送中の電力受信機の移動に起因すると見なされ得る。検出値の変化が電力受信機の移動に起因するとFOD評価ユニットが判定すると、FOD評価ユニットは、電力受信機の新しい位置を考慮するようにオフセット値を適合させ得る。いくつかの実装形態では、オフセット値は、異物検出評価の結果が電力受信機の移動に基づくと判定されるときはいつでも、適合され得る。
【0058】
第3の例830では、無線電力伝送中に動作環境に異物が導入され得る。検出値831、832、833、および834は、複数のコイル対の差動電流(または差動電圧)の測定値を表し得る。第3の例では、第2のコイル対の検出値832が変化している。検出値832の変化は、この説明のために836で囲まれている。検出値の変化を有するコイル対の数が閾値量よりも少ないので、FOD評価ユニットは、変化が第2のコイル対の検出コイルの近傍に導入された異物に起因すると判定し得る。FOD評価ユニットは、異物が存在し得ることを示すために、FOD障害信号または制御信号をWPTシステムに送信し得る。
【0059】
図9は、検出値がオフセット値に基づいて調整される、例示的な異物検出評価のブロック
図900を示す。ブロック
図900は、FOD評価ユニット(FOD評価ユニット155を含む、本明細書に記載されるFOD評価ユニットのいずれかなど)の特徴を説明し得る。異物検出評価の前の何らかの時点で(電力送信機の設置または保守の最中など)、較正値910を決定するために較正プロセス905が実行され得る。較正値910は、接合面に異物も電力受信機も存在しない瞬間のコイル対の間のインピーダンス差のベースライン測定値を表す。較正値910は、電力送信機およびFOD評価ユニットがオフにされたときでも残るように、FOD評価ユニットに関連付けられた不揮発性メモリに記憶され得る。電力送信機がオンになると、FOD評価ユニットは、較正値910が不揮発性メモリから取得されて対応する調整ユニット921、922、923、および924の初期オフセット値として使用されるFOD初期化920を受ける。
【0060】
図9を参照して記載された例示的なシナリオでは、FOD評価ユニットは、第1、第2、第3、および第4のコイル対にそれぞれ関連付けられた検出値911、912、913、および914を受信するように構成され得る。例えば、検出値は、能動的または受動的に励磁されるコイル対の検出コイルを流れるエネルギーの差を記述する差動電圧、差動電流、または差動インピーダンスであってもよい。検出値の各々は、コイル対に関連付けられた感知回路を使用して取得され得る。検出値911、912、913、および914は、それぞれ調整ユニット921、922、923、および924を使用して調整され得る。各調整ユニット921、922、923、および924は、対応するオフセット値を加算または減算することによって、対応する検出値911、912、913、および914を調整し得る。初期アイドルフェーズ異物検出評価では、オフセット値(まとめてオフセット値970と呼ばれる)は、FOD初期化920中に取得された初期オフセット値に基づいてもよい。検出値911、912、913、および914がそれぞれ調整ユニット921、922、923、および924によって調整された後、ABS951、952、953、および954はそれぞれ、調整された検出値の絶対値(大きさ)を生成し得る。比較器960は、異物が特定のコイル対の検出コイルの近くに位置しているか否かを判定するために、各調整済み検出値を検出閾値965と比較し得る。いくつかの実装形態では、初期アイドルフェーズ異物検出などで、検出値のいずれか1つが検出閾値を上回る場合、比較器は、FOD障害信号を示すFOD結果980を送信し得る。他の動作フェーズの異物検出評価では、比較器は、検出閾値965を上回る調整済み検出値の数を判定し得る。例えば、比較器は、(それぞれのコイル対に対応する)調整済み検出値のうちのいくつが検出閾値965を上回るかを示す変化数を判定し得る。変化数が閾値量967を上回る場合、比較器は、変化が電力受信機の移動に起因すると判定し得る。この状況では、FOD評価ユニットは、後続の異物検出評価と共に使用するようにオフセット値970を適合するために適合990を実行し得る。あるいは、変化数が閾値量967を下回る場合、FOD評価ユニットは、FOD結果980が異物の存在を示すと判定し得る。初期アイドルフェーズ異物検出評価では、閾値量967は、変化数が電力受信機の移動として解釈されないように、無効化されるかまたは別途高い値に設定されてもよい。アイドルフェーズでは、調整済み検出値のうちの少なくとも1つが検出閾値965を上回るとき、FOD結果980はFOD障害状態を示し得る。他の動作フェーズでは、閾値量967は、調整済み検出値のうちの複数のものが検出閾値965を上回るとき、FOD評価ユニットが、異物が存在しないことをFOD結果980が示すと判定し、後続の異物検出評価で使用するためにオフセット値970を更新するために適合990を実行し得るように、構成可能な値(3または4など)であってもよい。
【0061】
FOD結果980は、異物が検出されないことを示す第1の状態と、異物が検出されたことを示す第2の状態とを含み得る。いくつかの実装形態では、異物が検出されたことをFOD結果980が示すとき、FOD結果980はまた、FOD障害状態信号、FOD障害表示、または電力送信機もしくは電力受信機にFOD障害を示す用語と呼ばれてもよい。いくつかの実装形態では、FOD障害表示の結果として、電力送信機は電力受信機への電力を停止または低減する。いくつかの実装形態では、FOD障害表示は、電力送信機または電力受信機のいずれかに関連付けられたユーザインターフェースを介して提示され得る。
【0062】
図10は、WPTシステムの様々な動作フェーズの状態
図1000を示す。状態
図1000は、WPTシステムが動作し得る動作フェーズを示す。電力受信機が電力送信機の接合面内に配置されると、二者は、電力伝送を構成および制御する目的で通信を開始する。WPTシステムに関連付けられた動作フェーズは、アイドルフェーズ1010(pingフェーズと呼ばれることもある)、構成フェーズ1020、接続フェーズ1030、および電力伝送フェーズ1040の4つがあり得る。技術仕様は、電力送信機および電力受信機が動作フェーズ間でどのように移行することができるかを定義し得る。例えば、WPTシステムは、典型的にはアイドルフェーズ1010で始まり、アイドルフェーズ1010から構成フェーズ1020に移行することができる。構成フェーズ1020から、WPTシステムは、接続フェーズ1030に移行することができる。接続フェーズ1030から、WPTシステム電力伝送フェーズ1040に移行することができる。さらに、WPTシステムは、電力受信機が接合面から取り外されたときなど、他のフェーズ(構成フェーズ1020、接続フェーズ1030、または電力伝送フェーズ1040)のいずれかからアイドルフェーズ1010に戻ることができる。動作フェーズの各々は、参照のために本明細書で簡単に記載される。
【0063】
アイドルフェーズ1010(pingフェーズ)では、電力送信機は、電力受信機との通信を確立しようと試みる。電力受信機は、接合面に配置されるだけであってもよく、またはこの動作フェーズ中に存在しなくてもよい。電力送信機は、電力受信機との通信またはその存在の検出を試みてもよい。例えば、電力送信機は、互換性のある電力受信機が存在すると判定するために、アナログping、帯域外通信(NFCなど)、デジタルping、またはこれらの任意の組泡汗を使用し得る。(NFC通信を確認することなどによって)電力受信機が存在するとWPTシステムが判定すると、WPTシステムは構成フェーズ1020に移行し得る。
【0064】
構成フェーズ1020では、電力受信機は、基本識別情報および構成データを電力送信機に送信し得る。例えば、電力送信機は、NFC通信を介して電力受信機から静的構成情報を受信してもよい。電力送信機および電力受信機は、これらが両方とも無線電力伝送のための技術仕様またはプロトコルの互換性のあるバージョンを使用することを検証するために、この情報を使用し得る。電力送信機および電力受信機は、基本設定を通信するか、またはそれぞれの機能に関して通信し得る。構成フェーズ1020から、WPTシステムは接続フェーズ1030に移行し得る。
【0065】
接続フェーズ1030では、電力送信機および電力受信機は、電力伝送フェーズを管理するパラメータをネゴシエートするためにさらなる通信を交換し得る。パラメータをネゴシエートした後、電力送信機は無線電力を伝送するように準備されてもよく、電力受信機は無線電力を受信するように準備されてもよい。しかしながら、電力送信機は、電力伝送フェーズ1040に移行する前に電力受信機からの要求またはコマンドを待ってもよい。これは、例えば、コードレス家電(他の例の中でもとりわけブレンダ、トースタ、ミキサ、または電子レンジなど)がユーザインタラクションを待つ間に使用するように構成されているときに有用であり得る。ユーザは、電力受信機のユーザインターフェースによって電力伝送フェーズ1040を開始してもよく、そして電力受信機は、電力伝送フェーズ1040に移行するために電力送信機と通信する。
【0066】
電力伝送フェーズ1040では、電力送信機は、無線電力を電力受信機に伝送し得る。典型的に、電力送信機は、電力伝送フェーズ1040中に異物検出評価を周期的に実行する。いくつかでは、電力送信機は、接続フェーズ1030から電力伝送フェーズ1040に移行する前に、異物が存在しないことを保証するために異物検出評価を実行し得る。電力送信機はまた、電力伝送フェーズ1040中に周期的な異物検出評価を実行し得る。
【0067】
アイドルフェーズ1010、構成フェーズ1020、および接続フェーズ1030は、まとめて電力供給前フェーズ1002と呼ばれてもよく、その一方で電力伝送フェーズ1040は電力供給中フェーズ1004と呼ばれてもよい。WPTシステムの従来の実装形態は、典型的に、電力供給中フェーズ1004における異物検出評価を記載している。しかしながら、このような実装形態は、フェーズ1002において異物の存在によって発生し得る問題を検出して適切に処理するには不十分であり得る。さらに、電力供給前フェーズ1002(アイドルフェーズ1010など)のうちの1つの間に異物検出評価が実行されるときであっても、従来のWPTシステムは、電力送信機が動作フェーズ間で移行する際に異物検出評価が様々な動作フェーズの間でどのように調整されるかを考慮していない。
【0068】
図11は、WPTシステムの様々な動作フェーズに関連する異物検出評価の概要
図1100を示す。概要
図1100は、
図10を参照して記載されたように、アイドルフェーズ1010、構成フェーズ1020、接続フェーズ1030、および電力伝送フェーズ1040を含む。本開示よれば、異物検出評価(アイドルフェーズFOD評価1110、電力供給前FOD評価1120および1130、ならびに電力供給中FOD評価1140として示される)は、動作フェーズ1010、1020、1030、および1040のうちの複数(または全て)に関連して実行することができる。いくつかの実装形態では、異物検出評価は、次の動作フェーズに移行する前の前提条件であってもよい。異物検出評価のいずれかの間に異物が検出されると、FOD評価ユニットはFOD障害を示し得る。本出願は、様々なFOD障害処理1180オプションを記載しており、そのうちのいくつかは、異物か検出されたときにWPTシステムがどの動作フェーズを実行していたかに依存し得る。
【0069】
いくつかの実装形態では、FOD評価ユニットは、(ブロック1106に示される)電力送信機がオンにされた後、およびアイドルフェーズ1010の前(またはその一部として)に異物検出初期化1108を実行し得る。いくつかの実装形態では、電力送信機は、アイドルフェーズFOD評価を促すためにFOD評価ユニットを初期化し得る。FOD初期化1108の間、FOD評価は、(不揮発性メモリなどから)較正値を取得し、初期アイドルフェーズ異物検出評価1110のためのFOD評価ユニット設定における初期オフセット値としてこれらをロードし得る。いくつかの実装形態では、異物検出初期化1108は、初期アイドルフェーズ異物検出評価が実行されたか否かに関する状態を維持するために、状態インジケータ(FODフラグと呼ばれる)を設定することを含み得る。例えば、FOD評価ユニットは、FODフラグを第1の値(「1」または「真」など)に「設定」してもよく、(電力送信機をオンにした後の)初期アイドルフェーズ異物検出評価がまだ実行されていないことを表してもよい。逆に、FOD評価ユニットは、(電力送信機をオンにした後の)初期アイドルフェーズ異物検出評価が実行されたことを表すために、FODフラグを第2の値(「0」または「偽」など)に再設定することによって、FODフラグを「クリア」してもよい。FODフラグの例示的な第1および第2の値は、ここでは非限定的な例として提供される。(FOD障害状態に加えて)FODフラグは、WPTシステムが様々な動作フェーズ間でどのように移行するかを制御し得る。
【0070】
アイドルフェーズ1010(特に電力受信機が電力送信機の接合面に配置される前)に関連して、FOD評価ユニットは、アイドルフェーズFOD評価1110を実行し得る。アイドルフェーズFOD評価1110について、FOD評価ユニットは、(不揮発性メモリに記憶された較正値に関連付けられた初期オフセット値によって調整された)検出値のうちのいずれか1つ以上が検出閾値を上回るとき、FOD障害状態を示し得る。したがって、アイドルフェーズFOD評価1110は、アイドルフェーズFOD評価1110が電力受信機の移動を考慮しようと試みず、検出値比較の低い方の閾値量がFOD障害状態をトリガするという点で、他の動作フェーズにおけるFOD評価(電力供給前FOD評価1120および1130または電力供給中FOD評価1140など)とは異なり得る。異物が検出された場合(ブロック1112)、FOD評価ユニットは、(ブロック1175に示されるように)FOD障害状態を示し、
図14を参照してさらに記載されるように、いくつかのFOD障害処理オプション1180のうちの1つに進み得る。あるいは、異物が検出されない場合(ブロック1112)、FOD評価ユニットは、WPTシステムがアイドルフェーズ1010で動作し続けるように、または電力受信機が接合面に配置されているときに構成フェーズ1020に移行し得るように、FOD障害状態をクリアし得る(そしてFOD初期化中に設定されたFODフラグもクリアし得る)。リマインダとして、FODフラグは、電力送信機がオンにされた後に初期アイドルフェーズ異物検出評価が実行されたか否かを記憶して示すために、FOD評価ユニットによって使用される。FODフラグは、(電力送信機がオンにされることに関連して)FOD初期化中に設定され、初期アイドルフェーズ異物検出評価が実行されるとクリアされる。
【0071】
FOD評価ユニットは、電力送信機がオンにされる前に電力受信機が接合面に配置されていない第1のシナリオ、および電力送信機がオンにされる前に電力受信機が接合面に配置されている第2のシナリオなど、様々なシナリオを含むことができる。両方のシナリオにおいて、FOD評価ユニットは、アイドルフェーズFOD評価のために初期オフセット値(較正値に基づく)を使用し得る。アイドルフェーズFOD評価1110では、FOD評価ユニットは、任意のコイル対の検出値のうちの少なくとも1つにおいて差異が検出閾値を上回ることを検出すると、FOD障害状態表示を示し得る。電力送信機がオンにされる前に電力受信機が接合面に配置されているときのシナリオでは、FOD評価ユニットは、FOD初期化中に設定されたFODフラグをクリアせず、(スイッチまたはユーザインターフェースを使用するなど)ユーザアクションによって、または短期間だけ電力受信機(およびもしあれば異物)をユーザが取り除いてFOD評価ユニットが初期アイドルフェーズ異物検出評価を実行した後に電力受信機を戻すことのいずれかによってクリアすることができるFOD障害状態を示す。
【0072】
アイドルフェーズFOD評価1110は、不揮発性メモリに記憶された較正値に基づいて初期オフセット値を使用し得ることを想起されたい。FOD評価ユニットは、構成フェーズ1020、接続フェーズ1030、および電力伝送フェーズ1040にそれぞれ関連して異物検出評価1120、1130、1140(および対応するブロック1122、1132、1142)を実行し得る。アイドルフェーズ以外の各動作フェーズでは、電力受信機が存在し、FOD評価ユニットは、異物と電力受信機の移動などのシステム変化とを区別することができる基準に基づいて、異物が存在するか否かを判定し得る。例えば、電力受信機の移動は、複数の調整済み検出値が(検出閾値と比較して)変化したときに検出され得る。逆に、異物は、調整済み検出値のうちの1つ(または閾値量未満)が(検出閾値と比較して)変化したときに検出され得る。異物が存在しないとFOD評価ユニットが判定すると、FOD評価ユニットは、システム変化を考慮するようにオフセット値を適合させ得る。適合の後、WPTシステムの後の動作フェーズに関連付けられたものを含む、更新されたオフセット値が後続の異物検出評価に使用され得る。いくつかの実装形態では、(異物の存在とは無関係の現在のシステム変化のための適合に基づく)更新されたオフセット値は、FOD評価ユニットに関連付けられた揮発性メモリ内に保持されてもよい。
【0073】
図12は、WPTシステムの様々な動作フェーズに関連する異物検出評価の詳細
図1200を示す。
図11のものと同じ参照番号を有する
図12の要素は、同様の特徴を説明する。ブロック1106において、電力送信機がオンにされ得る。例えば、これは、1つ以上の電力送信機が組み込まれた料理用コンロまたはオーブンを作動させることを含んでもよい。電力送信機がオンにされると、電力送信機はFOD評価ユニットを初期化し得る。電力送信機は、アイドルフェーズを界すする前、またはその最中にFOD評価ユニットを初期化し得る。ブロック1108において、FOD評価ユニットは、(初期アイドルフェーズ異物検出評価がまだ実行されていないことを示す)FODフラグおよびFOD障害状態を設定し得る。例えば、FODフラグは、初期アイドルフェーズ異物検出評価がまだ実行されていないことを示すために、第1の値(「1」など)に設定されてもよい。初期アイドルフェーズ異物検出評価が実行されると、FODフラグは、クリアされるか、またはそのように示すために第2の値(「0」など)に設定され得る。さらに、ブロック1108において、FOD評価ユニットは較正値を取得し、初期アイドルフェーズ異物検出評価のための初期オフセット値を設定するためにこれらを使用し得る。
【0074】
ブロック1210において(アイドルフェーズで)、電力送信機は、電力受信機が存在するか否かを判定するために、NFC pingを実行し得る。電力受信機が存在し、少なくとも部分的に電力供給されている場合、電力送信機のNFC pingは、電力受信機から電力送信機への通信をもたらす。そうではなく、電力受信機が存在しないかまたはその通信インターフェースが有効化されていない場合、電力送信機は、NFC pingに応答して通信を受信しない。ブロック1212において、電力送信機がNFC pingへの応答を受信しない場合、電力送信機は、ブロック1220において構成フェーズに移行し得る。あるシナリオでは、ユーザは、電力送信機をオンにする前に電力送信機上に電力受信機を配置していてもよいことに留意されたい。したがって、このシナリオでは、電力送信機は、初期アイドルフェーズ異物検出評価が実行される前に構成フェーズに移行することが可能である。以下でさらに詳細に記載されるように、
図12を参照して記載されるプロセスは、FODフラグをクリアせず、FOD障害状態をトリガすることによってこのシナリオに対応することができ、これにより、不正確な異物検出評価および潜在的に危険な結果を防止する。
【0075】
アイドルフェーズを簡単に続けると、ブロック1212において、電力送信機がping応答を受信しない場合、プロセスはブロック1110に続いてもよい。ブロック1110において、FOD評価ユニットは、(
図13を参照して記載されるような)アイドルフェーズFOD評価を実行し得る。ブロック1112において、FOD評価ユニットは、異物が検出されたか否かを判定するために、アイドルフェーズFOD評価1110の結果をチェックし得る。アイドルフェーズにおいて、FOD評価ユニットが初期アイドルフェーズ異物検出評価を実行し、電力送信機が電力受信機からping応答を受信した後まで、NFC pingに応答しなかった電力受信機もまた異物として扱われることに留意されたい。異物が検出されたとFOD評価ユニットが判定した場合、プロセスは、FODフラグが設定されるブロック1215に続く。ブロック1215から、プロセスは、電力受信機のNFC ping応答が検出されるまでアイドルフェーズでのループを続けるために、ブロック1210に戻り得る。あるいは、いくつかの実装形態(電力送信機またはその家電がユーザインターフェースを有するときなど)では、プロセスは、FOD評価ユニットがFOD障害状態を示すブロック1175に進んでもよい。
【0076】
ブロック1112において、異物が検出されない場合、プロセスはブロック1214に続く。ブロック1214において、FOD評価ユニットは、初期アイドルフェーズ異物検出評価が実行されて異物が検出されなかったことを示すために、FODフラグをクリアし得る。ブロック1214および1215から、プロセスは、電力受信機の存在を再びpingし、電力送信機が電力受信機からping応答を受信するような時間までアイドルフェーズに留まるために、ブロック1210に戻る。アイドルフェーズFOD評価のいずれかの後、FODフラグが以前に設定されており、異物がユーザによって除去された場合、プロセスは最終的に、FODフラグがクリアされるブロック1214を含む。
【0077】
いずれかの時点で、電力送信機はNFC pingへの応答を受信し得る。ブロック1212から、プロセスはブロック1220に続き得る(アイドルフェーズから構成フェーズへの変化も表す)。ブロック1220において、電力送信機は、電力受信機から構成情報を受信し得る。ブロック1222において、電力送信機(またはFOD評価ユニット)は、FODフラグをチェックし得る。FODフラグが、初期アイドルフェーズ異物検出評価が実行されていないかまたは電力受信機の配置の前に異物がクリアされていないことを示す第1の値(「1」など)に設定された場合、プロセスはブロック1175に続き得る。ブロック1175において、FOD評価ユニットはFOD障害状態を示し得る。このシナリオは、例えば、初期アイドルフェーズ異物検出評価が実行される前(電力送信機がオンにされる前など)に電力受信機が電力送信機上に配置されているとき、またはアイドルフェーズにおいて異物が検出され、FOD評価ユニットにFODフラグをクリアさせるためにまだ除去されていないときに発生する。FOD評価ユニットは、異物が存在しないことを確認できないので、FODフラグおよびFOD障害状態は、アイドルフェーズ異物検出評価を実行することができ、異物が存在しないことをFOD評価ユニットが確認できるまで、電力送信機が動作を継続することを防止する。本明細書にさらに記載されるように、FOD障害処理1180は、電力送信機がアイドルフェーズに戻り(ブロック1210)、アイドルフェーズにおいてブロック1110で別のアイドルフェーズFOD評価を実行することができるように、ユーザが電力受信機を短時間取り外すことを含み得る。例えば、FOD障害処理1180は、接合面の全ての異物および電力受信機がないことをアイドルフェーズFOD評価1110が検証できるように、ユーザが異物または電力受信機を除去することを含み得る。
【0078】
ブロック1222において、FODフラグがクリアされた場合(または別途アイドルフェーズ異物検出評価が、電力受信機の配置の前に異物が存在しないと確認したことを示す場合)、プロセスは、ブロック1221に続き得る。ブロック1221において、FOD評価ユニットは、オフセット値を再較正するための適応を実行し得る。FOD評価ユニットは、検出値の新しい測定を行い、これらを適合オフセット値として記憶し得る。したがって、適合オフセット値は、接合面における電力受信機の存在を考慮する。
【0079】
ブロック1120において、FOD評価ユニットは、今回は電力送信機の上に電力受信機を配置して、別の異物検出評価を実行し得る。ブロック1120におけるこの動作は、異物が導入されていないことを検証し、接合面の電力受信機の移動によるインピーダンスの変化を処理するために後続の異物検出評価で使用することができるオフセット値を適合させるためにも、使用され得る。ブロック1122(構成フェーズ)において、異物が検出された場合、プロセスは、FOD障害状態を示し、構成動作フェーズを中止するために、ブロック1175に続き得る。そうでなければ、ブロック1122において、異物か検出されない場合、プロセスはブロック1230に続き得る。いくつかの実装形態では、FOD評価ユニットは、電力受信機の移動などのシステム変化を考慮するようにオフセット値(図示せず)を適合させ得る。適合の後、WPTシステムの後の動作フェーズに関連付けられたものを含む、更新されたオフセット値が後続の異物検出評価に使用され得る。
【0080】
ブロック1230において、電力送信機は、電力受信機が動作の準備が整っているか否かを判定し得る。電力受信機が動作されると、これは無線電力伝送を受信する準備が整っている。典型的には、電力受信機上のユーザインターフェースは、ユーザが電力受信機を起動するためにボタンを押下するときなどに、電力受信機が動作の準備が整っているか否かを制御し得る。電力受信機が動作の準備が整って以内場合、プロセスはブロック1130に続き得る。ブロック1130において、FOD評価ユニットは異物検出評価を実行してもよく、ブロック1132において、FOD評価ユニットは、異物が検出されたと異物検出評価の結果が示すか否かを判定し得る。異物が検出された場合、プロセスはブロック1175に続く。異物が検出されない場合、プロセスはブロック1231に続く。ブロック1231において、FOD評価ユニットは、システム変化を考慮するようにオフセット値を適合させ得る。例えば、FOD評価ユニットが(調整済み検出値の数が閾値量を上回ることなどに基づいて)電力受信機の移動を検出した場合、FOD評価ユニットは、後続の異物検出評価で使用するようにオフセット値を適合させるための適合を実行し得る。ブロック1230、1130、1132、および1231は、電力送信機が接続フェーズにあり、電力受信機が動作されていないときに電力送信機の動作環境に導入される異物をFOD評価ユニットが周期的にまたは継続的に監視できるように、ループを形成し得ることに留意されたい。電力受信機が動作の準備が整っているとき、電力受信機は、接続フェーズから電力伝送フェーズへの移行を要求するためのメッセージを電力送信機に通信し得る。ブロック1230において、(上述のメッセージによって示されるように)電力受信機が動作の準備が整うと、電力送信機は、ブロック1240において電力伝送フェーズに移行し得る。
【0081】
ブロック1240において、電力送信機は、電力受信機に電力を伝達するために、電力送信機の一次コイルに通電し、電磁場を生成することによって、電力伝送を開始し得る。電力伝送フェーズの間、電力送信機は、電力受信機が動作されていることを周期的に確認し(ブロック1242に示される)、FOD評価ユニットは、異物検出評価を周期的に実行し得る(ブロック1140に示される)。(ブロック1242で判定されるように)電力受信機がもはや動作されていない任意の時点で、プロセスはブロック1280に続き得る。ブロック1280において、電力送信機は、電力受信機が依然として存在するか否かを判定し得る。そうである場合、電力送信機は、ブロック1230で接続フェーズに戻り得る。電力受信機が取り外されている場合、電力送信機は、ブロック1210でアイドルフェーズに戻り得る。電力伝送フェーズの間、FOD評価ユニットは異物検出評価を周期的に実行し得る(ブロック1140に示される)。これにより、WPTシステムは、動作環境中の異物の導入に反応することが可能になる。ブロック1142において、異物が存在するとFOD評価ユニットが判定すると、プロセスは、もしあればシステム変化を考慮するようにオフセット値を適合させるためにブロック1241に進む。ブロック1241から、プロセスは、無線電力伝送を継続するためにブロック1240に戻り得る。ブロック1142において、異物が検出されると、プロセスはブロック1244に続き得る。ブロック1244において、電力送信機は、無線電力伝送を終了または制限し得る。ブロック1244から、プロセスは、FOD障害状態を示すためにブロック1175に続き得る。
【0082】
ブロック1175において、WPTシステム(他の例の中でもとりわけ、FOD評価ユニット、電力送信機、または電力受信機など)は、FOD障害状態を示し得る。例えば、FOD障害状態は、電力送信機、電力受信機、または両方に関連付けられたユーザインターフェースを介して提示されてもよい。いくつかの実装形態では、FOD障害状態は、FOD障害状態が示されたことを通信するために、電力送信機から電力受信機へ(またはその逆)の通信を含み得る。ブロック1180において、
図14を参照して記載されたものなど、FOD障害状態をクリアするための多くの方法があり得る。例えば、ユーザは異物を除去してもよい。別の例では、ユーザは、FOD評価ユニットが電力受信機を戻す前に初期オフセット値を使用してアイドルフェーズでアイドルフェーズ異物検出評価を実行することを可能にするために、電力受信機を取り外してもよい。いくつかの実装形態では、ユーザインターフェースは、動作環境に存在し、動作環境での使用に安全であるとユーザに知られている金属を考慮するために、手動による無効化によってFOD障害状態をリセットすること、またはオフセット値の適合を強制することを可能にし得る。さらに、ユーザインターフェースは、較正手順の手動による開始によって、次に電力送信機がオンにされるときに使用するために不揮発性メモリに記憶される新しい較正値を測定することを可能にし得る。
【0083】
図13は、異物検出評価のためのプロセス1300を示す。ブロック1310において、FOD評価ユニットは、検出コイルの各コイル対の検出値を評価し得る。例えば、ブロック1312において、FOD評価ユニットは、検出値(差動電流または差動電圧など)を取得し得る。ブロック1314において、FOD評価ユニットは、そのコイル対のオフセット値を使用して検出値を調整し得る。アイドルフェーズでは、オフセット値は、較正値に基づく初期オフセット値であってもよい。他の動作フェーズでは、オフセット値は、以前の異物検出評価に基づく適合オフセット値であってもよい。ブロック1316において、FOD評価ユニットは、調整済み検出値(または調整済み検出値の絶対値)を検出閾値と比較し得る。ブロック1318において、調整済み検出値が検出閾値を上回る場合、プロセスはブロック1322に続き得る。ブロック1322において、FOD評価ユニットは、金属物体(おそらく異物または電力受信機)が検出されたと判定し得る。ブロック1322において、FOD評価ユニットは、金属物体を検出したコイル対の数にコイル対を追加し得る。コイル対の数は、異物検出評価ごとにリセットされ、異物検出評価の特定の反復中に金属物体の存在によって影響を受けたコイルの数を表す。プロセスはブロック1324に続いてもよく、そこでFOD評価ユニットは、ブロック1310を参照して記載されたのと同じ方法で次のコイル対を評価し続ける。ブロック1318において、調整済み検出値が検出閾値を上回るとき、FOD評価ユニットは、コイル対が金属物体による影響を受けていないと判定することができ、プロセスは、次のコイル対を評価するためにブロック1324に続く。ブロック1310で複数のコイル対を評価した後、プロセスはブロック1330に続き得る。
【0084】
ブロック1330において、いくつかの実装形態では、FOD評価ユニットは、任意の調整済み検出値の大きさが安全限界を上回るか否かを判定し得る。そうである場合、プロセスはブロック1350に続いてもよく、そこでFOD評価ユニットは、異物が検出されたか否かを示すFOD結果を生成し得る。代替的または追加的に、FOD評価ユニットは、FOD評価を継続すべきか否かのユーザフィードバックをユーザインターフェースに要求させてもよい。安全限界は、複数のコイル対が電力受信機の存在も登録した場合でも、故障したコイル対、センサ、または1つのコイル対の近くに存在し得る異物を検出するメカニズムを提供する。例えば、安全限界は、ブロック1318における検出閾値よりも高くてもよい。調整済み検出値の大きさのいずれも安全限界を上回らない場合、プロセスはブロック1340に続き得る。
【0085】
ブロック1340において、FOD評価ユニットは、(ブロック1322において蓄積されたような)金属検出を伴うコイル対の数が閾値量を上回るか否かを判定し得る。いくつかの実装形態では、閾値量は、電力送信機の動作フェーズに依存し得る。例えば、アイドルフェーズでは、電力受信機が存在しないとき、単一のコイル対、または全てのコイル対が金属検出を有する場合でも、FOD評価ユニットはFOD障害状態をトリガし、プロセスはブロック1350に進む。構成フェーズ、接続フェーズ、または電力伝送フェーズでは、閾値量は、金属検出を有する3つ以上のコイル対が電力受信機の移動に起因すると解釈され得るように設定され得る。
【0086】
ブロック1340に戻り、数が閾値量を下回る場合、プロセスはブロック1350に続き得る。リマインダとして、ブロック1350において、FOD評価ユニットは、異物が検出されたことを示すFOD結果を生成し得る。例として、ブロック1340において、構成フェーズ、接続フェーズ、または電力伝送フェーズでは、1つまたは2つのコイル対のみが金属物体を検出した場合(および閾値量が3つのコイル対である場合)、FOD評価ユニットは、コイル対が金属異物を検出したと推論し得る。あるいは、構成フェーズ、接続フェーズ、または電力伝送フェーズでは、(3などの閾値量を上回る)複数のコイル対が調整済み検出値の変化を検出した場合、FOD評価ユニットは、このような変化が電力受信機の移動に起因すると推論し得る。ブロック1340において、金属検出を伴うコイル対の数が閾値量を上回る場合、プロセスはブロック1360に続き得る。ブロック1360において、FOD評価ユニットは、FOD評価ユニットが電力受信機の移動を考慮するようにオフセット値を更新する適合を実行し得る。その後、更新されたオフセット値は、後続の異物検出評価のために使用されてもよい。ブロック1370において、FOD評価ユニットは、異物が検出されていないことを示すFOD結果を生成し得る。
【0087】
図14は、FOD障害処理のための例示的な動作1400を示す。例示的な動作1400はオプションとして提供され、そのうちのいくつかは、様々な実装形態において省略されてもよい。ブロック1410において、電力送信機は、電力送信機に関連付けられたユーザインターフェースなどを介してFOD障害を示し得る。ブロック1420において、電力送信機(またはFOD評価ユニットは、FOD障害状態を電力受信機に通信し得る。そして電力受信機は、電力受信機に関連付けられたユーザインターフェースなどを介してFOD障害を示し得る。
【0088】
いくつかの実装形態では、ユーザインタラクションは(電力送信機または電力受信機に関連付けられたユーザインターフェースなどを介して)、WPTシステムにFOD障害を無効化させ得る。ブロック1430において、ユーザインタラクションがFOD障害を無効化するとき、プロセスはブロック1440に続き得る。そうでなければ、プロセスは、ブロック1470などの、別のFOD障害処理オプションに続き得る。ブロック1440において、ユーザによる無効化に基づいて、FOD評価ユニットは、FOD評価ユニットが既存の検出値に基づいてオフセット値を更新する適合を実行し得る。ブロック1450において、FOD評価ユニットはFOD障害状態をクリアし得る。ブロック1460において、FOD評価ユニットはFODフラグをリセットし得る。そこから、電力送信機は、(参照符号「B」を介して)
図12のブロック1120に戻り得る。いくつかの実装形態では、ユーザによる無効化により、電力送信機は、
図12のブロック1221またはブロック1230に戻り、続いて接続フェーズに進み得る。
【0089】
いくつかの実装形態では、FOD障害状態は、接合面から電力受信機を取り外すことによってクリアされ得る。ブロック1470において、電力受信機が接合面から取り外されると、WPTシステムはアイドルフェーズに復帰し得る。ブロック1452において、FOD評価ユニットはFOD障害状態をクリアし得る。ブロック1462において、FOD評価ユニットはFODフラグをクリアまたはリセットし得る。そこから、電力送信機は、(参照符号「A」を介して)
図12のブロック1210およびアイドルフェーズに戻り得る。
【0090】
図15は、いくつかの実装形態による、異物を検出するための例示的なプロセス1500のフローチャート図を示す。プロセス1500の動作は、本明細書に記載されるFOD評価ユニットによって実施され得る。例えば、プロセス1500の動作は、
図2~
図14を参照して記載されたFOD評価ユニットによって実施されてもよい。いくつかの実装形態では、FOD評価ユニットは、電力送信機の送信コントローラに含まれるか、またはその一部であってもよい。あるいは、プロセス1500の動作は、電力送信機、電力受信機、またはWPTシステムの他の構成要素によって実行されてもよい。簡潔にするために、プロセス1500の動作は、装置によって実行されるものとして記載される。
【0091】
ブロック1510において、装置は、電力送信機をオンにするためのユーザ入力に応答してアイドルフェーズの前に、またはその一部としてFOD評価ユニットを初期化し得る。FOD評価ユニットを初期化するステップは、初期アイドルフェーズ異物検出評価がまだ実行されていないことを表すために、FODフラグを第1の値に設定するステップを含み得る。
【0092】
ブロック1520において、装置は、FODフラグが第1の値に設定されているときに電力送信機がアイドルフェーズから異なる動作フェーズに移行する場合にFOD障害状態を示し得る。
【0093】
図16は、無線電力伝送システムで使用するための例示的な装置1600のブロック図を示す。いくつかの実装形態では、装置1600は、本明細書に記載される検出装置のいずれかなどの検出装置であってもよい。いくつかの実装形態では、装置1600は、FOD評価ユニットのいずれかなどのFOD評価ユニットであってもよい。装置1600は、プロセッサ1602(場合により複数のプロセッサ、複数のコア、複数のノード、またはマルチスレッディングの実装などを含む)を含むことができる。装置1600は、メモリ1606も含むことができる。メモリ1606は、システムメモリ、または本明細書に記載されるコンピュータ可読媒体の可能な実現のいずれか1つ以上であってもよい。装置1600は、バス1611(PCI、ISA、PCI-Express、HyperTransport(登録商標)、InfiniBand(登録商標)、NuBus(登録商標)、AHB、AXIなど)も含むことができる。
【0094】
装置1600は、複数の検出コイル(コイルアレイ1664など)の励磁を管理するように構成された1つ以上のコントローラ1662を含み得る。いくつかの実装形態では、コントローラ1662は、プロセッサ1602、メモリ1606、およびバス1611内に分散させることができる。コントローラ1662は、本明細書に記載される動作の一部または全部を実行し得る。例えば、コントローラ1662は、本明細書に記載されるドライバコントローラの特徴を実装してもよい。
【0095】
メモリ1606は、
図1~
図15を参照して記載された実装形態の機能を実装するためにプロセッサ1602によって実行可能なコンピュータ命令を含むことができる。これらの機能のいずれか1つは、ハードウェアまたはプロセッサ1602に部分的に(または完全に)実装され得る。例えば、機能は、特定用途向け集積回路、プロセッサ1602に実装された論理、周辺機器またはカード上のコプロセッサなどで実装され得る。さらに、実現は、より少ない構成要素、または
図16に示されていない追加の構成要素を含んでもよい。プロセッサ1602、メモリ1606、およびコントローラ1662は、バス1611に結合され得る。バス1611に結合されているものとして示されているが、メモリ1606はプロセッサ1602に結合されてもよい。
【0096】
本明細書に記載される図、動作、および構成要素は、例示的な実装形態の理解を助けるように意図される例であり、潜在的な実装形態を制限するため、または特許請求の範囲を制限するために使用されるべきではない。いくつかの実装形態は、追加の動作、より少ない動作、並列または異なる順序の動作、ならびに異なる方法でのいくつかの動作を実行し得る。
【0097】
前述の開示は、例示および説明を提供するが、網羅的であること、または態様を開示された正確な形態に限定することを意図するものではない。修正および変形は、上記の開示に照らして行われてもよく、または態様の実践から取得されてもよい。本開示の態様は様々な例に関して記載されてきたが、例のいずれかからの態様の任意の組み合わせもまた本開示の範囲内にある。本開示の例は、教育目的のために提供される。代替的に、または本明細書に開示される他の例に加えて、例は、以下の実装形態オプション(明確にするために条項として列挙される)の任意の組み合わせを含む。
条項
【0098】
条項1.無線電力伝送(WPT)システムにおける異物検出(FOD)のための方法であって、電力送信機をオンにするためのユーザ入力に応答してアイドルフェーズの前に、またはその一部としてFOD評価ユニットを初期化するステップであって、FOD評価ユニットを初期化するステップは、初期アイドルフェーズ異物検出評価がまだ実行されていないことを表すために、FODフラグを第1の値に設定することを含む、ステップと、FODフラグが第1の値に設定されているときに電力送信機がアイドルフェーズから異なる動作フェーズに移行する場合にFOD障害状態を示すステップと、を含む方法。
【0099】
条項2.電力送信機がアイドルフェーズにあるときに初期アイドルフェーズ異物検出評価を実行するステップと、異物が検出されなかったことを初期アイドルフェーズ異物検出評価の結果が示すときにFODフラグを第2の値に設定するステップと、異物が検出されたことを初期アイドルフェーズ異物検出評価の結果が示すときにFOD障害状態を示すステップと、をさらに含む、条項1に記載の方法。
【0100】
条項3.初期アイドルフェーズ異物検出評価が実行される前に電力受信機の存在に基づいて電力送信機がアイドルフェーズから異なる動作フェーズに移行したと判定するステップであって、前記決定は、電力送信機がアイドルフェーズから異なる動作フェーズに移行するときにFODフラグが第1の値に設定されることに少なくとも部分的に基づく、ステップをさらに含む、条項1に記載の方法。
【0101】
条項4.電力送信機に関連付けられた接合面からの電力受信機の取外しを促すためにFOD障害状態を示すステップをさらに含む、条項3に記載の方法。
【0102】
条項5.初期アイドルフェーズ異物検出評価は、異なるそれぞれの動作フェーズに関連付けられた電力供給前異物検出評価および電力供給中異物検出評価と比較して固有である、条項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【0103】
条項6.初期アイドルフェーズ異物検出評価を実行するステップは、複数の検出値を取得するステップであって、各検出値は、それぞれの対の検出コイルのうちの検出コイル間の差異を示す、ステップと、複数のオフセット値の対応するものを加算または減算することによって複数の検出値のうちの1つ以上を調整するステップであって、複数のオフセット値は、FOD評価ユニットの較正に基づく初期オフセット値である、ステップと、複数の検出値の各々を検出閾値と比較するステップと、複数の検出値のうちの少なくとも1つが検出閾値を上回るときに異物が検出されたと判定するステップと、を含む、条項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【0104】
条項7.FOD評価ユニットを初期化するステップは、不揮発性メモリから較正値を取得するステップと、較正値に基づいて初期オフセット値を決定するステップと、をさらに含む、条項6に記載の方法。
【0105】
条項8.電力送信機の製造、設置、または保守の一部として較正値を決定するステップと、不揮発性メモリに較正値を記憶するステップと、をさらに含む、条項7に記載の方法。
【0106】
条項9.異物が検出されなかったことを初期アイドルフェーズ異物検出評価の結果が示すときにFODフラグを第2の値に設定するステップと、電力送信機と電力受信機との間の通信ハンドシェイクに応答して電力送信機がアイドルフェーズから構成フェーズに移行したと判定するステップと、電力供給前異物検出評価で使用するように複数のオフセット値を適合させるステップと、をさらに含む、条項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【0107】
条項10.FOD評価ユニットを適合させるステップは、複数の検出値を取得するステップであって、各検出値は、それぞれの対の検出コイルのうちの検出コイル間の差異を示す、ステップと、複数の検出値に基づいて複数のオフセット値を更新するステップと、後続の異物検出評価で使用するために、電力送信機の揮発性メモリ内に複数のオフセット値を記憶するステップと、を含む、条項9に記載の方法。
【0108】
条項11.電力送信機の2つ以上の動作フェーズで複数の異物検出評価を実行するステップであって、複数のFOD評価は、構成フェーズまたは接続フェーズで実行される少なくとも電力供給前異物検出評価を含む、ステップをさらに含む、条項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【0109】
条項12.電力供給前異物検出評価は、複数の検出値の更新値を取得するステップと、複数のオフセット値のうちの対応するものを加算または減算することによって複数の検出値のうちの1つ以上を調整するステップと、複数の検出値の各々を検出閾値と比較するステップと、複数の検出値のうちのいくつが検出閾値を上回るかの数を判定するステップと、数が閾値量未満であるときに、電力供給前異物検出評価の結果が異物が検出されたことであると示すステップと、を含む、条項11に記載の方法。
【0110】
条項13.電力供給前異物検出評価は、複数の検出値のいずれか1つの大きさが限界を上回るときに、電力供給前異物検出評価の結果が異物が検出されたことであると示すステップをさらに含む、条項12に記載の方法。
【0111】
条項14.電力供給前異物検出評価は、数がゼロであるとき、または数が閾値量以上であるときに、電力供給前異物検出評価の結果が異物が検出されないことであると示すステップをさらに含む、条項12に記載の方法。
【0112】
条項15.数が閾値量以上であるときに電力受信機が移動したと判定するステップと、更新された複数のオフセット値が後続の異物検出評価で使用可能であるように、電力受信機が移動したという判定に応答して、複数の検出値に基づいて更新された複数のオフセット値を生成するように複数のオフセット値を適合させるステップと、をさらに含む、条項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【0113】
条項16.電力送信機がオンにされている間に更新された複数のオフセット値が維持され、電力送信機がオフにされている間に更新された複数のオフセット値が破棄されるように、揮発性メモリに更新された複数のオフセット値を記憶するステップをさらに含む、条項15に記載の方法。
【0114】
条項17.FOD障害状態を示すステップは、FOD障害状態の表示をユーザインターフェースに提示させるステップであって、ユーザインターフェースは電力送信機、電力送信機を収容する家電、または電力送信機の接合面に配置された電力受信機にある、ステップ、または電力送信機に関連付けられた通信インターフェースを介してFOD障害状態の表示を通信するステップ、のうちの少なくとも1つを含む、条項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【0115】
条項18.FOD障害状態を無効化するためにユーザインタラクションの表示を受信するステップと、FODフラグを第2の値に設定するステップと、FOD障害状態をクリアするステップと、をさらに含む、条項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【0116】
条項19.FOD障害状態を無効化するために表示を受信する前記ステップに応答して後続の異物検出評価のために複数のオフセット値を適合させるステップをさらに含む、条項18に記載の方法。
【0117】
条項20.電力受信機が接合面から取り外されるとアイドルフェーズに移行するステップと、電力送信機がアイドルフェーズにあるときに初期アイドルフェーズ異物検出評価を実行するステップと、をさらに含む、条項19に記載の方法。
【0118】
条項21.異物検出(FOD)のためのシステムであって、電力送信機をオンにするためのユーザ入力に応答してアイドルフェーズの前に、またはその一部としてFOD評価ユニットを初期化するように構成された電力送信機であって、FOD評価ユニットを初期化するステップは、初期アイドルフェーズ異物検出評価がまだ実行されていないことを表すために、FODフラグを第1の値に設定するステップを含む、電力送信機と、FODフラグが第1の値に設定されているときに電力送信機がアイドルフェーズから異なる動作フェーズに移行する場合にFOD障害状態を示すように構成されているFOD評価ユニットと、を含むシステム。
【0119】
条項22.FOD評価ユニットは、電力送信機がアイドルフェーズにあるときに初期アイドルフェーズ異物検出評価を実行し、異物が検出されなかったことを初期アイドルフェーズ異物検出評価の結果が示すときにFODフラグを第2の値に設定し、異物が検出されたことを初期アイドルフェーズ異物検出評価の結果が示すときにFOD障害状態を示す、ようにさらに構成されている、条項21に記載のシステム。
【0120】
条項23.FOD評価ユニットは、初期アイドルフェーズ異物検出評価が実行される前に電力受信機の存在に基づいて電力送信機がアイドルフェーズから異なる動作フェーズに移行したと判定するように構成され、前記決定は、電力送信機がアイドルフェーズから異なる動作フェーズに移行するときにFODフラグが第1の値に設定されることに少なくとも部分的に基づく、条項21に記載のシステム。
【0121】
条項24.FOD評価ユニットは、電力送信機に関連付けられた接合面からの電力受信機の取外しを促すためにFOD障害状態を示すように構成されている、条項23に記載のシステム。
【0122】
条項25.初期アイドルフェーズ異物検出評価は、異なるそれぞれの動作フェーズに関連付けられた電力供給前異物検出評価および電力供給中異物検出評価と比較して固有である、条項21~24のいずれか一項に記載のシステム。
【0123】
条項26.アイドルフェーズの間、FOD評価ユニットは、複数の検出値を取得し、各検出値は、それぞれの対の検出コイルのうちの検出コイル間の差異を示し、複数のオフセット値の対応するものを加算または減算することによって複数の検出値のうちの1つ以上を調整し、複数のオフセット値は、FOD評価ユニットの較正に基づく初期オフセット値であり、複数の検出値の各々を検出閾値と比較し、複数の検出値のうちの少なくとも1つが検出閾値を上回るときに異物が検出されたと判定する、ように構成されている、条項21~25のいずれか一項に記載のシステム。
【0124】
条項27.較正値を記憶するように構成された不揮発性メモリであって、FOD評価ユニットは、較正値に基づいて初期オフセット値を決定するように構成されている、不揮発性メモリをさらに含む、条項26に記載のシステム。
【0125】
条項28.FOD評価ユニットは、異物が検出されなかったことを初期アイドルフェーズ異物検出評価の結果が示すときにFODフラグを第2の値に設定し、電力送信機と電力受信機との間の通信ハンドシェイクに応答して電力送信機がアイドルフェーズから構成フェーズに移行したと判定し、電力供給前異物検出評価で使用するように複数のオフセット値を適合させる、ように構成されている、条項21~27のいずれか一項に記載のシステム。
【0126】
条項29.FOD評価ユニットは、複数の検出値を取得し、各検出値は、それぞれの対の検出コイルのうちの検出コイル間の差異を示し、複数の検出値に基づいて複数のオフセット値を更新し、後続の異物検出評価で使用するために、電力送信機の揮発性メモリ内に複数のオフセット値を記憶する、ようにさらに構成されている、条項28に記載のシステム。
【0127】
条項30.FOD評価ユニットは、電力送信機の2つ以上の動作フェーズで複数の異物検出評価を実行するように構成され、複数のFOD評価は、構成フェーズまたは接続フェーズで実行される少なくとも電力供給前異物検出評価を含む、条項21~29のいずれか一項に記載のシステム。
【0128】
条項31.電力供給前異物検出評価を実行するように構成されているFOD評価ユニットは、複数の検出値の更新値を取得し、複数のオフセット値のうちの対応するものを加算または減算することによって複数の検出値のうちの1つ以上を調整し、複数の検出値の各々を検出閾値と比較し、複数の検出値のうちのいくつが検出閾値を上回るかの数を判定し、数が閾値量未満であるときに、電力供給前異物検出評価の結果が異物が検出されたことであると示す、ように構成されたFOD評価ユニットを含む、条項30に記載のシステム。
【0129】
条項32.電力供給前異物検出評価を実行するように構成されているFOD評価ユニットは、複数の検出値のいずれか1つの大きさが限界を上回るときに、電力供給前異物検出評価の結果が異物が検出されたことであると示すように構成されたFOD評価ユニットを含む、条項31に記載のシステム。
【0130】
条項33.電力供給前異物検出評価を実行するように構成されているFOD評価ユニットは、数がゼロであるとき、または数が閾値量以上であるときに、電力供給前異物検出評価の結果が異物が検出されないことであると示すように構成されたFOD評価ユニットを含む、条項31に記載のシステム。
【0131】
条項34.FOD評価ユニットは、数が閾値量以上であるときに電力受信機が移動したと判定し、更新された複数のオフセット値が後続の異物検出評価で使用可能であるように、電力受信機が移動したという判定に応答して、複数の検出値に基づいて更新された複数のオフセット値を生成するように複数のオフセット値を適合させる、ようにさらに構成されている、条項31~33のいずれか一項に記載のシステム。
【0132】
条項35.FOD評価ユニットは、電力送信機がオンにされている間に更新された複数のオフセット値が維持され、電力送信機がオフにされている間に更新された複数のオフセット値が破棄されるように、揮発性メモリに更新された複数のオフセット値を記憶するようにさらに構成されている、条項34に記載のシステム。
【0133】
条項36.FOD障害状態を示すように構成されているFOD評価ユニットは、FOD障害状態の表示をユーザインターフェースに提示させることであって、ユーザインターフェースは電力送信機、電力送信機を収容する家電、または電力送信機の接合面に配置された電力受信機にある、こと、または電力送信機に関連付けられた通信インターフェースを介してFOD障害状態の表示を通信すること、のうちの少なくとも1つの動作を実行するように構成されているFOD評価ユニットを含む、条項21~35のいずれか一項に記載のシステム。
【0134】
条項37.FOD評価ユニットは、FOD障害状態を無効化するためにユーザインタラクションの表示を受信し、FODフラグを第2の値に設定し、FOD障害状態をクリアする、ようにさらに構成されている、条項21~36のいずれか一項に記載のシステム。
【0135】
条項38.FOD評価ユニットは、FOD障害状態を無効化するために表示を受信する前記ステップに応答して後続の異物検出評価のために複数のオフセット値を適合させるようにさらに構成されている、条項37に記載のシステム。
【0136】
条項39.電力送信機は、電力受信機が接合面から取り外されるとアイドルフェーズに移行するように構成されており、FOD評価ユニットは、電力送信機がアイドルフェーズにあるときに初期アイドルフェーズ異物検出評価を実行するように構成されている、条項38に記載のシステム。
【0137】
本開示に記載される主題の別の革新的な態様は、装置として実施することができる。装置は、モデムと、少なくとも1つのモデムと通信可能に結合された少なくとも1つのプロセッサとを含み得る。プロセッサは、モデムと共に、上述の方法または本明細書に記載される特徴のいずれか1つを実行するように構成され得る。
【0138】
本開示に記載される主題の別の革新的な態様は、プロセッサによって実行されると、上述の方法または本明細書に記載される特徴のいずれか1つをプロセッサに実行させる命令を記憶しているコンピュータ可読媒体として実施することができる。
【0139】
本開示に記載される主題の別の革新的な態様は、上述の方法または本明細書に記載される特徴のいずれか1つを実施するための手段を有するシステムとして実施することができる。
【0140】
本明細書で使用される際に、項目のリスト「のうちの少なくとも1つ」または「のうちの1つ以上」を指す語句は、単一のものを含む、これらの項目の任意の組み合わせを指す。例えば、「a、b、またはcのうちの少なくとも1つ」は、aのみ、bのみ、cのみ、aとbの組み合わせ、aとcの組み合わせ、bとcの組み合わせ、ならびにa、b、およびcの組み合わせの可能性を網羅するように意図される。
【0141】
本明細書に開示される実装形態に関連して記載される様々な例示的な構成要素、論理、論理ブロック、モジュール、回路、動作、およびアルゴリズムプロセスは、本明細書に開示される構造およびその構造的均等物を含む、電子ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、またはハードウェア、ファームウェア、もしくはソフトウェアの組み合わせとして実装され得る。ハードウェア、ファームウェア、およびソフトウェアの互換性は、概して機能に関して記載されており、上述の様々な例示的な構成要素、ブロック、モジュール、回路、およびプロセスにおいて示されている。このような機能がハードウェア、ファームウェア、またはソフトウェアのいずれで実装されるかは、特定のアプリケーションおよび全体的なシステムに課される設計上の制約に依存する。
【0142】
本明細書に開示される態様に関連して記載された様々な例示的な構成要素、論理、論理ブロック、モジュール、および回路を実装するために使用されるハードウェアおよびデータ処理装置は、汎用シングルチップまたはマルチチッププロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)または他のプログラマブル論理デバイス(PLD)、ディスクリートゲートまたはトランジスタ論理、ディスクリートハードウェア構成要素、または本明細書に記載される機能を実行するように設計されたこれらの任意の組み合わせを用いて実装または実行され得る。汎用プロセッサは、マイクロプロセッサ、または任意の従来のプロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、またはステートマシンであってもよい。プロセッサはまた、ンピューティングデバイスの組み合わせ、例えばDSPとマイクロプロセッサの組み合わせ、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと組み合わせた1つ以上のマイクロプロセッサ、または任意の他のこのような構成として実装されてもよい。いくつかの実装形態では、特定のプロセス、動作、および方法は、所与の機能に特有の回路によって実行されてもよい。
【0143】
上述のように、本明細書に記載される主題のいくつかの態様は、ソフトウェアとして実装することができる。例えば、本明細書に開示される構成要素の様々な機能、または本明細書に開示される方法、動作、プロセス、またはアルゴリズムの様々なブロックまたはステップは、1つ以上のコンピュータプログラムの1つ以上のモジュールとして実装することができる。このようなコンピュータプログラムは、本明細書に開示されたデバイスの構成要素を含むデータ処理装置による実行のための、またはその動作を制御するための、1つ以上のプロセッサ可読またはコンピュータ可読記憶媒体上に符号化された非一時的なプロセッサ実行可能命令またはコンピュータ実行可能命令を含むことができる。限定ではなく例として、このような記憶媒体は、RAM、ROM、EEPROM、CD-ROM、または他の光ディスクストレージ、磁気ディスクストレージまたは他の磁気記憶デバイス、もしくは命令またはデータ構造の形態でプログラムコードを記憶するために使用され得る任意の他の媒体を含み得る。上記の組み合わせもまた記憶媒体の範囲に含まれるべきである。
【0144】
本開示に記載された実装形態の様々な修正は、当業者に容易に明らかとなり得、本明細書で定義される一般的な原理は、本開示の範囲から逸脱することなく、他の実装形態に適用され得る。したがって、特許請求の範囲は、本明細書に示される実装形態に限定されることを意図するものではなく、本明細書に開示される本開示、原理、および新規な特徴と一致する最も広い範囲を与えられるべきである。
【0145】
加えて、別々の実装形態の文脈で本明細書に記載された様々な特徴は、単一の実装形態において組み合わせて実施することもできる。逆に、単一の実装形態の文脈で記載された様々な特徴を、複数の実装形態で別々に、または任意のサブコンビネーションで実施することもできる。このように、特徴は、特定の組み合わせで作用するものとして上述され、最初はそのように特許請求される場合もあるが、特許請求された組み合わせからの1つ以上の特徴は、場合によっては組み合わせから削除することができ、特許請求された組み合わせは、サブコンビネーションまたはサブコンビネーションの変形を対象としてもよい。
【0146】
同様に、動作は特定の順序で図面に描かれているが、これは、所望の結果を達成するために、このような動作が図示される特定の順序で、または連続する順序で実行されること、もしくは全ての図示される動作が実行されることを必要とすると理解されるべきではない。さらに、図面は、フローチャートまたはフロー図の形態で1つ以上の例示的なプロセスを概略的に描くことができる。しかしながら、概略的に示されている例示的なプロセスに、描かれていない他の動作を組み込むことができる。例えば、図示される動作のいずれかの前、後、同時、または間に1つ以上の追加の動作を実行することができる。状況によっては、マルチタスク処理および並列処理が有利であり得る。また、上述の実装形態における様々なシステム構成要素の分離は、全ての実装形態においてこのような分離を必要とすると理解されるべきではなく、記載されたプログラム構成要素およびシステムは、一般に単一のソフトウェア製品に一緒に統合されるか、または複数のソフトウェア製品にパッケージ化されることが可能であることを理解すべきである。
【国際調査報告】