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特表2025-504972細胞ベースの肉製品を製造するための方法及び組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-19
(54)【発明の名称】細胞ベースの肉製品を製造するための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/14 20060101AFI20250212BHJP
   C12N 1/16 20060101ALI20250212BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20250212BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20250212BHJP
   A23L 13/00 20160101ALI20250212BHJP
   C12N 15/31 20060101ALN20250212BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20250212BHJP
【FI】
C12N1/14 A
C12N1/16 G
C12N1/14 E
C12N1/19
C12N5/071
A23L13/00 Z
C12N15/31
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024545187
(86)(22)【出願日】2023-01-24
(85)【翻訳文提出日】2024-09-25
(86)【国際出願番号】 US2023011442
(87)【国際公開番号】W WO2023146852
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】63/304,374
(32)【優先日】2022-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524283110
【氏名又は名称】ノベル ファームス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100156982
【弁理士】
【氏名又は名称】秋澤 慈
(72)【発明者】
【氏名】ルー ミッシェル セイコ
(72)【発明者】
【氏名】マーシャル マリア ニエヴェス マルティネス
【テーマコード(参考)】
4B042
4B065
【Fターム(参考)】
4B042AC10
4B042AD36
4B042AK16
4B042AP30
4B065AA57X
4B065AA63X
4B065AA80X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AA91X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065BB06
4B065BB12
4B065BB15
4B065BB19
4B065BB25
4B065BB29
4B065BB31
4B065BB37
4B065BC03
4B065BC07
4B065BC11
4B065BC26
4B065BC32
4B065BC41
4B065BD06
4B065BD14
4B065BD44
4B065CA24
4B065CA41
(57)【要約】
【課題】細胞ベースの肉製品を製造するための方法及び組成物を提供する。
【解決手段】本明細書には、構造の均一性が向上した細胞ベースの肉製品を製造するための方法及び組成物が開示される。特に、本開示のこの技術は、糸状菌-酵母バイオカプセル、及び細胞ベースの肉製品の製造方法におけるそれらの使用に関する。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞ベースの肉製品の製造に使用するためのバイオカプセルであって、前記バイオカプセルは、
(i)糸状菌、及び
(ii)複数の酵母細胞を含む生体材料足場を含む、バイオカプセル。
【請求項2】
前記糸状菌が菌糸体を含む、請求項1に記載のバイオカプセル。
【請求項3】
前記複数の酵母細胞が、1つ以上の異種タンパク質を発現するように遺伝子操作されている、請求項1又は2に記載のバイオカプセル。
【請求項4】
前記1つ以上の異種タンパク質が、1つ以上の細胞外マトリックス(ECM)タンパク質、成長因子タンパク質、細胞接着タンパク質、細胞表面タンパク質、細胞シグナル伝達タンパク質、タンパク質モチーフ(合成又は天然に存在する)、フレーバータンパク質、又はそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項3に記載のバイオカプセル。
【請求項5】
前記糸状菌が、子嚢菌門、担子菌門、及び接合菌門(ケカビ門及びトリモチカビ門)からなる群から選択される門に属する1つ以上の菌株を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のバイオカプセル。
【請求項6】
前記糸状菌株が、子嚢菌門に由来し、アスペルギルス、ペニシリウム、及びアカパンカビからなる群から選択される属に属する、1つ以上の菌株を含む、請求項5に記載のバイオカプセル。
【請求項7】
前記糸状菌が、アスペルギルス属に由来し、アスペルギルス・オリゼの1つ以上の菌株を含む、請求項6に記載のバイオカプセル。
【請求項8】
前記糸状菌が、アカパンカビ属に由来し、ニューロスポラ・クラッサの1つ以上の菌株を含む、請求項6に記載のバイオカプセル。
【請求項9】
前記糸状菌株が、ケカビ門に由来するリゾプス・オリゼ又はリゾプス・オリゴスポラスの菌株である、請求項5に記載のバイオカプセル。
【請求項10】
前記複数の酵母細胞が、サッカロミセス・セレビシエ、サッカロミセス・バヤヌース、サッカロミセス・カペンシス、シゾサッカロミセス・ポンベ、及びピキア・パストリスからなる群から選択される1つ以上の菌株を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のバイオカプセル。
【請求項11】
前記複数の酵母細胞が、サッカロミセス・セレビシエの1つ以上の菌株を含む、請求項10に記載のバイオカプセル。
【請求項12】
前記1つ以上の異種タンパク質が、脊索動物ECMタンパク質、成長因子タンパク質、細胞接着タンパク質、細胞シグナル伝達タンパク質、タンパク質モチーフ(合成又は天然に存在する)、フレーバータンパク質、細胞表面タンパク質、又はそれらの任意の組み合わせである、請求項3に記載のバイオカプセル。
【請求項13】
前記異種脊索動物タンパク質が、哺乳動物ECMタンパク質、成長因子タンパク質、接着分子タンパク質、細胞シグナル伝達タンパク質、タンパク質モチーフ(合成又は天然に存在する)、フレーバータンパク質、細胞表面タンパク質、又はそれらの任意の組み合わせである、請求項12に記載のバイオカプセル。
【請求項14】
前記1つ以上の異種タンパク質は、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、及びRGDモチーフペプチドからなる群より選択される1つ以上のECMタンパク質を含む、請求項3に記載のバイオカプセル。
【請求項15】
前記1つ以上の異種タンパク質が、可溶的に発現されるか、特定の細胞内局在を標的とするか、又は分泌される、請求項3に記載のバイオカプセル。
【請求項16】
前記複数の酵母細胞が固定又は脱細胞化されている、請求項1~15のいずれか一項に記載のバイオカプセル。
【請求項17】
細胞ベースの肉製品であって、
(i)
(a)糸状菌、及び
(b)複数の酵母細胞を含む、食用生体材料足場と、
(ii)複数の1つ以上の細胞型と、を含む、細胞ベースの肉製品。
【請求項18】
前記複数の1つ以上の細胞型が、筋芽細胞又はその前駆細胞、脂肪細胞又はその前駆細胞、線維芽細胞又はその前駆細胞、内皮細胞又はその前駆細胞、平滑筋細胞又はその前駆細胞、筋衛星細胞、人工多能性幹細胞、胚性幹細胞、間葉系幹細胞、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つ以上の細胞型を含む、請求項17に記載の細胞ベースの肉製品。
【請求項19】
前記複数の酵母細胞が、1つ以上の異種タンパク質を発現するように遺伝子操作されている、請求項17又は18に記載の細胞ベースの肉製品。
【請求項20】
前記複数の1つ以上の細胞型が、脊索動物細胞である、請求項17~19のいずれか一項に記載の細胞ベースの肉製品。
【請求項21】
前記脊索動物細胞が、哺乳動物細胞である、請求項20に記載の細胞ベースの肉製品。
【請求項22】
前記脊索動物細胞が、ブタ細胞、ウシ細胞、又は家禽細胞である、請求項20に記載の細胞ベースの肉製品。
【請求項23】
前記糸状菌が菌糸体を含む、請求項17~22のいずれか一項に記載の細胞ベースの肉製品。
【請求項24】
前記1つ以上の異種タンパク質が、1つ以上の細胞外マトリックス(ECM)タンパク質、成長因子タンパク質、細胞接着タンパク質、細胞表面タンパク質、細胞シグナル伝達タンパク質、タンパク質モチーフ(合成又は天然に存在する)、フレーバータンパク質、又はそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項19に記載の細胞ベースの肉製品。
【請求項25】
前記糸状菌が、子嚢菌門、担子菌門、及び接合菌門(ケカビ門及びトリモチカビ門)からなる群から選択される門に属する1つ以上の菌株を含む、請求項17~24のいずれか一項に記載の細胞ベースの肉製品。
【請求項26】
前記糸状菌株が、子嚢菌門に由来し、アスペルギルス、ペニシリウム、及びアカパンカビからなる群から選択される属に属する、1つ以上の菌株を含む、請求項25に記載の細胞ベースの肉製品。
【請求項27】
前記糸状菌が、アスペルギルス属に由来し、アスペルギルス・オリゼの1つ以上の菌株を含む、請求項26に記載の細胞ベースの肉製品。
【請求項28】
前記糸状菌が、アカパンカビ属に由来し、ニューロスポラ・クラッサの1つ以上の菌株を含む、請求項26に記載の細胞ベースの肉製品。
【請求項29】
前記糸状菌株が、ケカビ門に由来するリゾプス・オリゼ又はリゾプス・オリゴスポラスの菌株である、請求項25に記載の細胞ベースの肉製品。
【請求項30】
前記複数の酵母細胞が、サッカロミセス・セレビシエ、サッカロミセス・バヤヌース、サッカロミセス・カペンシス、シゾサッカロミセス・ポンベ、及びピキア・パストリスからなる群から選択される1つ以上の菌株を含む、請求項17~29のいずれか一項に記載の細胞ベースの肉製品。
【請求項31】
前記複数の酵母細胞が、サッカロミセス・セレビシエの1つ以上の菌株を含む、請求項30に記載の細胞ベースの肉製品。
【請求項32】
前記1つ以上の異種タンパク質が、脊索動物ECMタンパク質、成長因子タンパク質、細胞接着タンパク質、細胞シグナル伝達タンパク質、タンパク質モチーフ(合成又は天然に存在する)、フレーバータンパク質、又は細胞表面タンパク質である、請求項19に記載の細胞ベースの肉製品。
【請求項33】
前記異種脊索動物タンパク質が、哺乳動物ECMタンパク質、成長因子タンパク質、接着分子タンパク質、細胞シグナル伝達タンパク質、タンパク質モチーフ(合成又は天然に存在する)、フレーバータンパク質、又は細胞表面タンパク質である、請求項32に記載の細胞ベースの肉製品。
【請求項34】
前記1つ以上の異種タンパク質が、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、及びRGDモチーフペプチドからなる群より選択される1つ以上のECMタンパク質を含む、請求項19に記載の細胞ベースの肉製品。
【請求項35】
前記1つ以上の異種タンパク質は、可溶的に発現されるか、特定の細胞内局在を標的とするか、又は分泌される、請求項19に記載の細胞ベースの肉製品。
【請求項36】
前記複数の酵母細胞が固定又は脱細胞化されている、請求項17~35のいずれか一項に記載の細胞ベースの肉製品。
【請求項37】
糸状菌-酵母バイオカプセルを製造するための方法であって、
菌糸体を含む糸状菌培養物に複数の酵母細胞を添加して糸状菌-酵母調製物を形成すること、及び
前記糸状菌と酵母の自発的共固定化を誘導する条件下で前記調製物を培養して糸状菌-酵母バイオカプセルを形成することを含む、方法。
【請求項38】
前記糸状菌と酵母の共固定化を誘導する前記条件が、第1の培養培地及び第2の培養培地の使用を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記複数の酵母細胞が、1つ以上の異種タンパク質を発現するように遺伝子操作されている、請求項37又は38に記載の方法。
【請求項40】
前記第1の培養培地が、前記糸状菌によって使用可能であるが前記酵母によって使用できない炭素源を含み、前記炭素源が、グルコン酸、デンプン、セルロース、イヌリン、及び他の同様のコロイド分子からなる群から選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記第2の培養培地が、前記糸状菌によっても利用可能な前記酵母にとって好ましい炭素源を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
前記糸状菌を酵素と接触させて、前記糸状菌の密度、多孔性、又は組織の1つ以上を改変することをさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項43】
前記酵素が、ザイモラーゼ、リチカーゼ、及びグルカラーゼからなる群から選択される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記酵母細胞を固定又は脱細胞化することをさらに含む、請求項37~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記糸状菌-酵母バイオカプセルが、細胞ベースの肉製造のための食用生体材料足場として使用される、請求項37~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記糸状菌-酵母バイオカプセルを成形することをさらに含む、請求項37~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記糸状菌-酵母バイオカプセルの形状が、三次元の肉製品の形状に似ている、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
筋芽細胞又はその前駆細胞、脂肪細胞又はその前駆細胞、線維芽細胞又はその前駆細胞、内皮細胞又はその前駆細胞、平滑筋細胞又はその前駆細胞、筋衛星細胞、人工多能性幹細胞、胚性幹細胞、間葉系幹細胞、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、複数の1つ以上の細胞型を、前記糸状菌-酵母バイオカプセルに播種し、播種されたバイオカプセルを形成すること、並びに
前記播種されたバイオカプセルを、前記複数の1つ以上の細胞型の分化を誘導するのに有効な条件下で培養して、食用の細胞ベースの肉製品を製造することをさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項49】
前記複数の1つ以上の細胞型が、脊索動物細胞である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記脊索動物細胞が、哺乳動物細胞である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記脊索動物細胞が、ブタ細胞、ウシ細胞、又は家禽細胞である、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
前記1つ以上の異種タンパク質が、1つ以上の細胞外マトリックス(ECM)タンパク質、成長因子タンパク質、細胞接着タンパク質、細胞表面タンパク質、細胞シグナル伝達タンパク質、タンパク質モチーフ(合成又は天然に存在する)、フレーバータンパク質、又はそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項53】
前記糸状菌が、子嚢菌門、担子菌門、及び接合菌門(ケカビ門及びトリモチカビ門)からなる群から選択される門に属する1つ以上の菌株を含む、請求項37~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記糸状菌株が、子嚢菌門に由来し、アスペルギルス、ペニシリウム、及びアカパンカビからなる群から選択される属に属する、1つ以上の菌株を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記糸状菌が、アスペルギルス属に由来し、アスペルギルス・オリゼの1つ以上の菌株を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記糸状菌が、アカパンカビ属に由来し、ニューロスポラ・クラッサの1つ以上の菌株を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
前記糸状菌株が、ケカビ門に由来するリゾプス・オリゼ又はリゾプス・オリゴスポラスの菌株である、請求項53に記載の方法。
【請求項58】
前記複数の酵母細胞が、サッカロミセス・セレビシエ、サッカロミセス・バヤヌース、サッカロミセス・カペンシス、シゾサッカロミセス・ポンベ、及びピキア・パストリスからなる群から選択される1つ以上の菌株を含む、請求項37~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記複数の酵母細胞が、サッカロミセス・セレビシエの1つ以上の菌株を含む、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記1つ以上の異種タンパク質が、脊索動物ECMタンパク質、成長因子タンパク質、細胞接着タンパク質、細胞シグナル伝達タンパク質、ペプチドモチーフ(合成又は天然に存在する)、フレーバータンパク質、又は細胞表面タンパク質である、請求項39に記載の方法。
【請求項61】
前記異種脊索動物タンパク質が、哺乳動物ECMタンパク質、成長因子タンパク質、接着分子タンパク質、細胞シグナル伝達タンパク質、ペプチドモチーフ(合成又は天然に存在する)、フレーバータンパク質、又は細胞表面タンパク質である、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記1つ以上の異種タンパク質が、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、及びRGDモチーフペプチドからなる群より選択される1つ以上のECMタンパク質を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項63】
前記1つ以上の異種タンパク質が、可溶的に発現されるか、特定の細胞内局在を標的とするか、又は分泌される、請求項39に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2022年1月28日に出願された米国仮特許出願第63/304,374号に対する優先権を主張し、その内容は、参照によりその全体が、本明細書に組み込まれる。
【0002】
本技術は、構造の均一性が向上した細胞ベースの肉製品を製造するための方法及び組成物に関する。特に、この技術は、糸状菌-酵母バイオカプセルの生成、及び細胞ベースの肉製品の製造方法におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
以下の説明は、読み手の理解を助けるために提供されている。提供される情報又は引用される参考文献はいずれも、本明細書に開示される組成物及び方法の先行技術であると認めるものではない。
【0004】
畜産は環境、公衆衛生、動物福祉に重大な悪影響を及ぼす。地球表面のおおよそ30%、全耕作地の70%が動物の飼育に専用されており、家畜が地上バイオマス総量の20%を占めると推定されている。驚異的な土地消費に加えて、畜産は地球上の総淡水供給量の推定8%を消費する。最後に、畜産業は世界の温室効果ガス(GHG)排出量の18%を占めており、世界の生物多様性に対する最大の脅威となっている。
【0005】
畜産慣行と劣悪な動物福祉条件は食中毒の原因である。豚インフルエンザや鳥インフルエンザなど、多くの病原性ウイルスが家畜に由来する。さらに、家禽製品や生の豚肉を扱う際の悪い衛生慣行は、大腸菌、サルモネラ菌、カンピロバクター、寄生虫の蔓延を促進する。さらに、米国で使用されているすべての抗生物質の70%は家畜に使用されており、この抗生物質の過剰使用が抗生物質耐性菌の出現の主な原因となっている。米国だけでも、これらの抗生物質耐性菌は、おおよそ550億ドルの経済的負担を生み出し、年間おおよそ200万人の感染、25万人の入院、少なくとも23,000人の死亡により医療システムを圧倒している。最後に、畜産業界には公衆衛生上の脅威にさらされているだけでなく、悪質な畜産慣行と動物福祉のあからさまな無視が蔓延している。
【0006】
畜産業の悪影響と闘う態勢を整えている新興産業は、細胞ベースの肉(クリーンミート、人工肉、培養肉、実験室で育てられた肉、人工培養肉としても知られている)業界である。細胞ベースの食肉産業は、エネルギー使用量を7~45%、温室効果ガスを78~96%、土地使用量を99%、水使用量を82~96%削減すると推定されている。さらに、細胞ベースの肉の無菌生産環境により、抗生物質の使用が不要になり、その結果、抗生物質耐性菌の出現が防止される。
【0007】
現在の細胞ベースの食肉技術は、動物細胞を液体培地懸濁液中で増殖させ、マイクロキャリア上に凝集させる技術である衛星細胞培養に大きく依存している。これらの細胞ベースの肉製品はミンチ肉に似ており、天然の動物の肉の形状や質感がなく、その全体構造は細胞外マトリックス(ECM)などの生体材料足場に由来する。ECMは、天然肉の生化学的及び生体力学的特性を与えるオリゴ糖と糖タンパク質で構成されている。構造を与えることに加えて、ECMには細胞の付着、増殖を促進し、最終的な組織の全体的な挙動と組成を決定するさまざまなマトリックスタンパク質が含まれている。したがって、ECMなどの生体材料足場は、細胞ベースの肉の生成にとって重要である。
【0008】
ECM及び同様の生体材料足場を生成する現在の方法は、非効率であり、コストがかかる。Matrigel(商標)などの市販のECMは、マウス肉腫から採取される。Matrigel(商標)の製造は、マウス癌細胞株とバイオセーフティ実験室を必要とする、高価で非効率なプロセスである。非ECM足場を、アルギン酸塩、シルク、キトサンなどの天然生体材料のほか、ポリエチレングリコール、ポリグリコール酸、ポリアクリルアミドなどの合成生体材料から作成できる。ただし、動物細胞の成長に適した生体材料足場を生成するには、これらの天然生体材料基質を精製マトリックスタンパク質でさらに機能化する必要がある。マトリックスタンパク質の精製には時間とコストがかかる。さらに、精製マトリックスタンパク質を使用して生体材料基質を機能化するには、イオンビーム蒸着やプラズマ処理などのコストと時間のかかる技術が必要である。したがって、任意の所定の動物細胞型を任意の所望の組織に成長及び増殖させるための、多糖類ベースの構造要素及び/又はタンパク質を含む、安価で堅牢でカスタマイズ可能な食用生体材料足場を製造するための新しいアプローチを開発する必要がある。
【発明の概要】
【0009】
一態様では、本技術の開示は、細胞ベースの肉製品の製造に使用するためのバイオカプセルを提供し、ここで、バイオカプセルは、(i)糸状菌、及び(ii)複数の酵母細胞を含む生体材料足場を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、糸状菌は菌糸体を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、複数の酵母細胞は、1つ以上の異種タンパク質を発現するように遺伝子操作される。いくつかの実施形態では、1つ以上の異種タンパク質は、1つ以上の細胞外マトリックス(ECM)タンパク質、成長因子タンパク質、細胞接着タンパク質、細胞表面タンパク質、細胞シグナル伝達タンパク質、タンパク質モチーフ(合成又は天然に存在する)、フレーバータンパク質、又はそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0012】
いくつかの実施形態では、糸状菌は、子嚢菌門、担子菌門、及び接合菌門(ケカビ門及びトリモチカビ門)からなる群から選択される門に属する、1つ以上の菌株を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、糸状菌株は、子嚢菌門に由来し、アスペルギルス、ペニシリウム、及びアカパンカビからなる群から選択される属に属する、1つ以上の菌株を含む。いくつかの実施形態では、糸状菌は、アスペルギルス属に由来し、アスペルギルス・オリゼの1つ以上の菌株を含む。いくつかの実施形態では、糸状菌は、アカパンカビ属に由来し、ニューロスポラ・クラッサの1つ以上の菌株を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、糸状菌株は、ケカビ門に由来するリゾプス・オリゼ又はリゾプス・オリゴスポラスの菌株である。
【0015】
いくつかの実施形態では、複数の酵母細胞は、サッカロミセス・セレビシエ、サッカロミセス・バヤヌース、サッカロミセス・カペンシス、シゾサッカロミセス・ポンベ、及びピキア・パストリスからなる群から選択される1つ以上の菌株を含む。いくつかの実施形態では、複数の酵母細胞は、サッカロミセス・セレビシエの1つ以上の菌株を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、1つ以上の異種タンパク質は、脊索動物ECMタンパク質、成長因子タンパク質、細胞接着タンパク質、細胞シグナル伝達タンパク質、タンパク質モチーフ(合成又は天然に存在する)、フレーバータンパク質、細胞表面タンパク質、又はそれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態では、異種脊索動物タンパク質は、哺乳動物ECMタンパク質、成長因子タンパク質、接着分子タンパク質、細胞シグナル伝達タンパク質、タンパク質モチーフ(合成又は天然に存在する)、フレーバータンパク質、細胞表面タンパク質、又はそれらの任意の組み合わせである。
【0017】
いくつかの実施形態では、1つ以上の異種タンパク質は、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、及びRGDモチーフペプチドからなる群より選択される1つ以上のECMタンパク質を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、1つ以上の異種タンパク質は、可溶的に発現されるか、特定の細胞内局在を標的とするか、又は分泌される。
【0019】
いくつかの実施形態では、複数の酵母細胞は固定化又は脱細胞化される。
【0020】
一態様では、本技術の開示は、(i)(a)糸状菌、及び(b)複数の酵母細胞を含む食用生体材料足場と、(ii)複数の1つ以上の細胞型を含む生体材料足場と、を含む、細胞ベースの肉製品を提供する。
【0021】
いくつかの実施形態では、複数の1つ以上の細胞型は、筋芽細胞又はその前駆細胞、脂肪細胞又はその前駆細胞、線維芽細胞又はその前駆細胞、内皮細胞又はその前駆細胞、平滑筋細胞又はその前駆細胞、筋衛星細胞、人工多能性幹細胞、胚性幹細胞、間葉系幹細胞、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つ以上の細胞型を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、複数の酵母細胞は、1つ以上の異種タンパク質を発現するように遺伝子操作される。
【0023】
いくつかの実施形態では、複数の1つ以上の細胞型は脊索動物細胞である。いくつかの実施形態では、脊索動物細胞は、哺乳動物細胞である。
【0024】
いくつかの実施形態では、脊索動物細胞は、ブタ細胞、ウシ細胞、又は家禽細胞である。
【0025】
いくつかの実施形態では、糸状菌は菌糸体を含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、1つ以上の異種タンパク質は、1つ以上の細胞外マトリックス(ECM)タンパク質、成長因子タンパク質、細胞接着タンパク質、細胞表面タンパク質、細胞シグナル伝達タンパク質、タンパク質モチーフ(合成又は天然に存在する)、フレーバータンパク質、又はそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0027】
いくつかの実施形態では、糸状菌は、子嚢菌門、担子菌門、及び接合菌門(ケカビ門及びトリモチカビ門)からなる群から選択される門に属する、1つ以上の菌株を含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、糸状菌株は、子嚢菌門に由来し、アスペルギルス、ペニシリウム、及びアカパンカビからなる群から選択される属に属する、1つ以上の菌株を含む。いくつかの実施形態では、糸状菌は、アスペルギルス属に由来し、アスペルギルス・オリゼの1つ以上の菌株を含む。いくつかの実施形態では、糸状菌は、アカパンカビ属に由来し、ニューロスポラ・クラッサの1つ以上の菌株を含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、糸状菌株は、ケカビ門に由来するリゾプス・オリゼ又はリゾプス・オリゴスポラスの菌株である。
【0030】
いくつかの実施形態では、複数の酵母細胞は、サッカロミセス・セレビシエ、サッカロミセス・バヤヌース、サッカロミセス・カペンシス、シゾサッカロミセス・ポンベ、及びピキア・パストリスからなる群から選択される1つ以上の菌株を含む。いくつかの実施形態では、複数の酵母細胞は、サッカロミセス・セレビシエの1つ以上の菌株を含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、1つ以上の異種タンパク質は、脊索動物ECMタンパク質、成長因子タンパク質、細胞接着タンパク質、細胞シグナル伝達タンパク質、タンパク質モチーフ(合成又は天然に存在する)、フレーバータンパク質、又は細胞表面タンパク質である。いくつかの実施形態では、異種脊索動物タンパク質は、哺乳動物ECMタンパク質、成長因子タンパク質、接着分子タンパク質、細胞シグナル伝達タンパク質、タンパク質モチーフ(合成又は天然に存在する)、フレーバータンパク質、又は細胞表面タンパク質である。
【0032】
いくつかの実施形態では、1つ以上の異種タンパク質は、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、及びRGDモチーフペプチドからなる群より選択される1つ以上のECMタンパク質を含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、1つ以上の異種タンパク質は、可溶的に発現されるか、特定の細胞内局在を標的とするか、又は分泌される。
【0034】
いくつかの実施形態では、複数の酵母細胞は固定又は脱細胞化される。
【0035】
一態様では、本技術の開示は、糸状菌-酵母バイオカプセルを製造するための方法であって、方法は、菌糸体を含む糸状菌培養物に複数の酵母細胞を添加して糸状菌-酵母調製物を形成すること、及び糸状菌と酵母の自発的共固定化を誘導する条件下で調製物を培養して糸状菌-酵母バイオカプセルを形成することを含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、糸状菌と酵母の共固定化を誘導する条件は、第1の培養培地及び第2の培養培地の使用を含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、複数の酵母細胞は、1つ以上の異種タンパク質を発現するように遺伝子操作される。
【0038】
いくつかの実施形態では、第1の培地は、糸状菌によって使用可能であるが酵母によって使用できない炭素源を含み、炭素源は、グルコン酸、デンプン、セルロース、イヌリン、及び他の同様のコロイド分子からなる群から選択される。
【0039】
いくつかの実施形態では、第2の培養培地は、糸状菌によっても利用可能な酵母にとって好ましい炭素源を含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、この方法は、糸状菌を酵素と接触させて、糸状菌の密度、多孔性、又は組織の1つ以上を改変することをさらに含む。いくつかの実施形態では、酵素は、ザイモラーゼ、リチカーゼ、及びグルカラーゼからなる群から選択される。
【0041】
いくつかの実施形態では、この方法は、酵母細胞を固定又は脱細胞化することをさらに含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、糸状菌-酵母バイオカプセルは、細胞ベースの肉製造のための食用生体材料足場として使用される。
【0043】
いくつかの実施形態では、この方法は、糸状菌-酵母バイオカプセルを成形することをさらに含む。いくつかの実施形態では、糸状菌-酵母バイオカプセルの形状は、三次元肉製品の形状に似ている。
【0044】
いくつかの実施形態では、この方法は、筋芽細胞又はその前駆細胞、脂肪細胞又はその前駆細胞、線維芽細胞又はその前駆細胞、内皮細胞又はその前駆細胞、平滑筋細胞又はその前駆細胞、筋衛星細胞、人工多能性幹細胞、胚性幹細胞、間葉系幹細胞、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、複数の1つ以上の細胞型を、糸状菌-酵母バイオカプセルに播種し、播種されたバイオカプセルを形成すること、並びに、播種されたバイオカプセルを、複数の1つ以上の細胞型の分化を誘導するのに有効な条件下で培養して、食用の細胞ベースの肉製品を製造することをさらに含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、複数の1つ以上の細胞型は脊索動物細胞である。
【0046】
いくつかの実施形態では、脊索動物細胞は、哺乳動物細胞である。
【0047】
いくつかの実施形態では、脊索動物細胞は、ブタ細胞、ウシ細胞、又は家禽細胞である。
【0048】
いくつかの実施形態では、1つ以上の異種タンパク質は、1つ以上の細胞外マトリックス(ECM)タンパク質、成長因子タンパク質、細胞接着タンパク質、細胞表面タンパク質、細胞シグナル伝達タンパク質、タンパク質モチーフ(合成又は天然に存在する)、フレーバータンパク質、又はそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0049】
いくつかの実施形態では、糸状菌は、子嚢菌門、担子菌門、及び接合菌門(ケカビ門及びトリモチカビ門)からなる群から選択される門に属する、1つ以上の菌株を含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、糸状菌株は、子嚢菌門に由来し、アスペルギルス、ペニシリウム、及びアカパンカビからなる群から選択される属に属する、1つ以上の菌株を含む。いくつかの実施形態では、糸状菌は、アスペルギルス属に由来し、アスペルギルス・オリゼの1つ以上の菌株を含む。いくつかの実施形態では、糸状菌は、アカパンカビ属に由来し、ニューロスポラ・クラッサの1つ以上の菌株を含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、糸状菌株は、ケカビ門に由来するリゾプス・オリゼ又はリゾプス・オリゴスポラスの菌株である。
【0052】
いくつかの実施形態では、複数の酵母細胞は、サッカロミセス・セレビシエ、サッカロミセス・バヤヌース、サッカロミセス・カペンシス、シゾサッカロミセス・ポンベ、及びピキア・パストリスからなる群から選択される1つ以上の菌株を含む。いくつかの実施形態では、複数の酵母細胞は、サッカロミセス・セレビシエの1つ以上の菌株を含む。
【0053】
いくつかの実施形態では、1つ以上の異種タンパク質は、脊索動物ECMタンパク質、成長因子タンパク質、細胞接着タンパク質、細胞シグナル伝達タンパク質、ペプチドモチーフ(合成又は天然に存在する)、フレーバータンパク質、又は細胞表面タンパク質である。いくつかの実施形態では、異種脊索動物タンパク質は、哺乳動物ECMタンパク質、成長因子タンパク質、接着分子タンパク質、細胞シグナル伝達タンパク質、ペプチドモチーフ(合成又は天然に存在する)、フレーバータンパク質、又は細胞表面タンパク質である。
【0054】
いくつかの実施形態では、1つ以上の異種タンパク質は、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、及びRGDモチーフペプチドからなる群より選択される1つ以上のECMタンパク質を含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、1つ以上の異種タンパク質は、可溶的に発現されるか、特定の細胞内局在を標的とするか、又は分泌される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1A】酵母(サッカロミセス・セレビシエ)及び麹菌(アスペルギルス・オリゼ)菌糸体の共固定化を示す画像である。菌糸体を含む麹菌糸構造への酵母細胞壁の吸着を促進する条件下で麹菌とともに成長された、細胞質GFPを発現する酵母レポーター株を示す画像である。徹底的な洗浄後でも、酵母の亜集団は依然として麹菌糸体の菌糸に結合した状態で残る。
図1B】酵母(サッカロミセス・セレビシエ)及び麹菌(アスペルギルス・オリゼ)菌糸体の共固定化を示す画像である。共固定化された酵母及び麹菌構造は、平らなシートに成長させることができる。
図1C】酵母(サッカロミセス・セレビシエ)及び麹菌(アスペルギルス・オリゼ)菌糸体の共固定化を示す画像である。共固定化された酵母及び麹菌構造は、球体に成長させることができる。
図2】アスペルギルス・オリゼ及びサッカロミセス・セレビシエの共生成長からなる足場に筋芽細胞が接着していることを示す画像である。ウズラ筋芽細胞(QM7細胞株)を、実施例7(足場生成-平らなシートの場合)に記載の方法で成長された共生成長サッカロミセス・セレビシエ、及びアスペルギルス・オリゼから構成される平らなシート状足場上に播種した。細胞を含んだ足場を固定化し、動物細胞を染色するアクチン(543-ファロイジンで可視化)を染色した。
図3A】構造化培養肉製品に組み立てられた細胞を含んだ足場を示す画像である。採取され、赤色で染色され、微生物トランスグルタミナーゼで架橋されて「生の」培養肉製品を製造した、細胞を含んだ足場を示す画像である。
図3B】構造化培養肉製品に組み立てられた細胞を含んだ足場を示す画像である。アボカド油で調理した培養肉製品の画像である。
図4】ウシCOL1A145kDaフラグメントをコードするサッカロミセス・セレビシエ細胞質発現プラスミドのプラスミドマップである。ウシ(Bos taurus)COL1A1フラグメントの45kDaフラグメントに6×HISエピトープが付加され(「6×HIS-Bt_COL1A145kDa」)、酵母CYC1遺伝子からの3’UTRで終端した(「3’UTR_CYC1」)。発現は酵母GPDプロモーター(「P_GPD」)によって駆動される。このプラスミドは、大腸菌選択用のカナマイシン耐性マーカー(「Kan_R」)、大腸菌増殖用のpUCプラスミドからの複製起点(「Ori_pUC」)、酵母選択用のLEU2栄養要求性マーカー(「LEU2」)、及び酵母増殖用の2umエレメント(「2um」)を含む。
図5A】ウシコラーゲンCOL1A1を発現するように操作されたアスペルギルス・オリゼ及びサッカロミセス・セレビシエの共生成長から構成される足場に接着した筋芽細胞を示す画像である。ウズラ筋芽細胞(QM7細胞株)を、実施例8(足場生成-平らなシートの場合)に記載の方法で成長されたウシCOL1A1の45kDaフラグメントを発現する、共生成長サッカロミセス・セレビシエ、及びアスペルギルス・オリゼから構成される平らなシート状足場上に播種した。細胞を含んだ足場を固定し、アクチン(543-ファロイジンで可視化)を染色した。
図5B】ウシコラーゲンCOL1A1を発現するように操作されたアスペルギルス・オリゼ及びサッカロミセス・セレビシエの共生成長から構成される足場に接着した筋芽細胞を示す画像である。ウズラ筋芽細胞(QM7細胞株)を、実施例8(足場生成-平らなシートの場合)に記載の方法で成長されたウシCOL1A1の45kDaフラグメントを発現する、共生成長サッカロミセス・セレビシエ、及びアスペルギルス・オリゼから構成される平らなシート状足場上に播種した。細胞を含んだ足場を固定化し、核(DAPIで可視化)を染色した。
図5C】ウシコラーゲンCOL1A1を発現するように操作されたアスペルギルス・オリゼ及びサッカロミセス・セレビシエの共生成長から構成される足場に接着した筋芽細胞を示す画像である。ウズラ筋芽細胞(QM7細胞株)を、実施例8(足場生成-平らなシートの場合)に記載の方法で成長されたウシCOL1A1の45kDaフラグメントを発現する、共生成長サッカロミセス・セレビシエ、及びアスペルギルス・オリゼから構成される平らなシート状足場上に播種した。細胞を含んだ足場を固定化し、アクチン及び核を染色し、共同可視化した。
図6A】構造化培養肉製品に組み立てられた、細胞を含んだ遺伝子操作された足場を示す画像である。細胞質コラーゲンを発現するように遺伝子操作されたサッカロミセス・セレビシエを有し、採取され、トランスグルタミナーゼで架橋されて「生の」ウズラ細胞(QM7)培養肉製品を製造した、細胞を含んだ足場の上面図である。
図6B図6Aの培養肉製品の側面図である。
図6C】アボカド油で調理した培養肉製品の画像である。
図7】ウシCOL1A145kDaフラグメントをコードするサッカロミセス・セレビシエ分泌発現プラスミドのプラスミドマップである。ウシ(Bos taurus)COL1A1フラグメントの45kDaフラグメント(「Bt_COL1A145kDa」)を、6×ヒスチジンエピトープ(「MFa-6×HIS」)に融合した交配因子αリーダー配列の3’末端に融合し、続いてトロンビン切断部位(「トロンビン切断」)を付加した。融合タンパク質の発現は、酵母TEF1プロモーター(「P_TEF1」)から駆動され、3×停止コドン(「3× stop」)で終端した。このプラスミドは、大腸菌選択用のカナマイシン耐性マーカー(「Kan_R」)、大腸菌増殖用の複製起点(「ColE1 ori」)、酵母選択用のURA3栄養要求性マーカー(「LEU2」)、及び酵母増殖用の2umエレメント(「2um」)を含む。
図8】小胞体標的ウシP4HA1の発現のためのサッカロミセス・セレビシエ組み込みベクターのプラスミドマップである。3’HDELペプチド配列が付加されたウシ(Bos taurus)P4HA1遺伝子(「Bt_P4HA1-HDEL」)が、小胞体を標的とするために、Kar2リーダー配列(「Kar2」)の3’末端に融合された。融合タンパク質は酵母TEF1プロモーター(「P_TEF1」)から駆動され、酵母CYC1遺伝子からの3’UTR(「3’UTR_CYC1」)で終端した。このプラスミドは、大腸菌選択用のカナマイシン耐性マーカー(「Kan_R」)、大腸菌増殖用の複製起点(「ColE1 ori」)、酵母選択用のLEU2栄養要求性マーカー(「LEU2」)、酵母選択用のHIS3栄養要求性マーカー(「HIS3」)、及び酵母増殖用の2umエレメント(「2um」)を含む。
図9】小胞体標的ウシP4HBの発現のためのサッカロミセス・セレビシエ組み込みベクターのプラスミドマップである。3’HDELペプチド配列が付加されたウシ(Bos taurus)P4HB遺伝子(「Bt_P4HB-HDEL」)が、小胞体を標的とするために、Kar2リーダー配列(「Kar2」)の3’末端に融合された。融合タンパク質は酵母TEF1プロモーター(「P_TEF1」)から駆動され、酵母CYC1遺伝子の3’UTR(「3’UTR_CYC1」)で終端する。このプラスミドは、大腸菌選択用のカナマイシン耐性マーカー(「Kan_R」)、大腸菌増殖用の複製起点(「ColE1 ori」)、酵母選択用のURA3栄養要求性マーカー(「URA3」)、酵母選択用のHIS3栄養要求性マーカー(「HIS3」)、及び酵母増殖用の2umエレメント(「2um」)を含む。
【発明を実施するための形態】
【0057】
本技術の実質的な理解を提供するために、本技術のある特定の態様、モード、実施形態、変形及び特徴が、以下に様々な詳細さのレベルで記載されることを理解されたい。本明細書で使用されるようなある特定の用語の定義が、以下に提供される。別段に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、概して、本技術が属する当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0058】
I.定義
本明細書で使用されるすべての専門用語は、生化学及び分子生物学で一般的に使用される。したがって、それらは、本技術が属する分野の当業者には理解されるものである。これらの専門用語は、たとえば次の書類において見つけることができる:Molecular Cloning:A Laboratory Manual 3rd ed.,vol.1-3,ed.Sambrook及びRussel(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,2001)、Current Protocols In Molecular Biology,ed.Ausubel et al.,(Greene Publishing Associates and Wiley-Interscience,New York,1988)(定期更新を含む)、Short Protocols In Molecular Biology: A Compendium Of Methods From Current Protocols In Molecular Biology 5th ed., vol.1-2,ed.Ausubel et al.,(John Wiley & Sons,Inc.,2002)、Genome Analysis:A Laboratory Manual,vol.1-2,ed.Green et al.,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1997)。
【0059】
本明細書では以下の用語が使用されており、その定義が指針として提供されている。
【0060】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、単数形のみを指定するように明示的に記載されない限り、単数形及び複数形の両方を指定する。
【0061】
「約(about)」という用語及び範囲の使用は一般に、約という用語によって制限されるか否かにかかわらず、理解される数が本明細書に記載される正確な数に限定されず、本技術の範囲から逸脱しないが、実質的に引用された範囲内の範囲を指すことが意図されることを意味する。本明細書で使用される場合、「約」は、当業者によって理解され、使用される文脈である程度変動するであろう。使用される文脈を考慮して当業者には明らかではない用語の使用が存在する場合、「約」は、特定の用語のプラス又はマイナス10%までを意味する。
【0062】
本明細書で使用される場合、「及び/又は」という語句は、そのように結合された要素、例えば、場合によっては連結的に存在し、他の場合には分離的に存在する要素の「いずれか又は両方」を意味すると理解されるべきである。したがって、非限定的な例として、「A及び/又はB」への言及は、「含む(comprising)」などのオープンエンドの文言と組み合わせて使用される場合、一実施形態では、Aのみ(任意でB以外の要素を含む)、別の実施形態では、Bのみ(任意でA以外の要素を任意に含む)、さらに別の実施形態では、AとBの両方(任意選択で他の要素を含む)などを指すことができる。
【0063】
本明細書で使用される場合、「おおよそ(approximately)」という用語が数値範囲と共に使用されるとき、それは、その数値の上及び下の境界を拡張することによって範囲を修正する。一般に、「おおよそ」という用語は、本明細書では、数値を記載された値を上及び下に20%、10%、5%、又は1%の変動で修正するために使用される。ある特定の実施形態では、「おおよそ」という用語は、数値を、記述された値を上及び下に10%の変動で修正するために使用される。ある特定の実施形態では、「おおよそ」という用語は、数値を、記述された値を上及び下に5%の変動で修正するために使用される。ある特定の実施形態では、「おおよそ」という用語は、数値を、記述された値を上及び下に1%の変動で修正するために使用される。
【0064】
本明細書で使用される場合、「少なくとも1つ」という用語は、1つ以上の要素のリストに関して、要素のリスト内の要素のうちの任意の1つ以上から選択される少なくとも1つの要素を意味すると理解されるべきであるが、必ずしも要素のリスト内に具体的に列挙された各要素及びすべての要素のうちの少なくとも1つを含むわけではなく、要素のリスト内の要素の任意の組み合わせを除外しない。この定義はまた、「少なくとも1つ」という語句が指す要素のリスト内で具体的に識別される要素以外の要素が、具体的に識別される要素に関連するかどうかにかかわらず、任意選択的に存在し得ることも可能にする。したがって、非限定的な例として、「A及びBの少なくとも1つ」(又は同等に「A又はBの少なくとも1つ」、又は同等に「A及び/又はBの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、Bが存在せずに(及び任意選択でB以外の要素を含む)、少なくとも1つの、任意選択で2つ以上のA、別の実施形態では、Aが存在せずに(及び任意でA以外の要素を含む)、少なくとも1つの、任意で2つ以上のB、さらに別の実施形態では、少なくとも1つの、任意選択で2つ以上のA、及び少なくとも1つの、任意選択で2つ以上のB(及び任意選択で他の要素を含む)、などを指すことができる。
【0065】
本明細書で使用する場合、「バイオカプセル」又は「糸状菌-酵母バイオカプセル」という用語は、酵母及び糸状菌の共固定化の形態を指す。酵母と糸状菌の組み合わせた固有の接着特性により、液体培地中である特定の条件下で培養すると、疎水性相互作用を通じてバイオカプセルが自発的に形成される。いくつかの実施形態では、酵母は遺伝子操作されていない。いくつかの実施形態では、酵母は、1つ以上の細胞外マトリックス(ECM)タンパク質、成長因子タンパク質、細胞接着タンパク質、細胞表面タンパク質、細胞シグナル伝達タンパク質、モチーフペプチド(合成又は天然に存在する)、フレーバータンパク質、又はそれらの任意の組み合わせから選択される1つ以上の異種タンパク質を発現するように遺伝子操作され、異種タンパク質は可溶的に発現されるか、特定の細胞内局在を標的とするか、又は分泌される。いくつかの実施形態では、酵母は固定又は脱細胞化される。いくつかの実施形態では、バイオカプセルは生体材料足場として使用される。いくつかの実施形態では、バイオカプセルは、食用生体材料足場として使用される。いくつかの実施形態では、バイオカプセルは、本明細書に記載の方法に従って細胞ベースの肉製造のための食用生体材料足場として使用される。
【0066】
本明細書で使用する場合、「実施形態」という用語は、特定の特徴、構造、又は特性が本技術の少なくとも1つ以上の発現、実施例、又は実装態様に含まれることを意味する。さらに、特定の特徴、構造、又は特性は、当業者には明らかであるように、任意の適切な方法で組み合わせることができる。異なる実施形態の特徴の組み合わせは、本技術の範囲内にあることを意図しており、あらゆる可能な置換を例によって明示的に説明する必要はない。したがって、特許請求された実施形態のいずれも、任意の組み合わせで使用することができる。
【0067】
本明細書で使用する場合、「遺伝子工学」又は「遺伝子操作された」という用語は、宿主生物に核酸又は特異的突然変異を導入するための任意の方法を包含する。例えば、酵母細胞は、異種タンパク質を発現するポリヌクレオチド配列で形質転換されるときに遺伝子操作される。ポリヌクレオチド配列が導入され、その結果、細胞内での新規及び/又は異種遺伝子の発現、又はアップレギュレーション若しくはダウンレギュレーション、欠失、コピー数の変化により、細胞内に自然に見出される遺伝子産物のレベル増加若しくは減少を引き起こす場合に、細胞は遺伝子操作される。
【0068】
「異種核酸」とは、細胞(又は細胞の祖先)に導入された核酸、DNA、又はRNAを指し、それは、それが導入された細胞内に自然に見出される配列のコピーではない。このような異種核酸は、それが導入された細胞内に天然に見出される配列のコピーであるセグメント、又はそのフラグメントを含み得る。
【0069】
本明細書で使用する場合、「前駆細胞」という用語は、複数の系統で分化した細胞を生じさせることができる細胞を指す。前駆細胞には、胚性幹細胞、間葉系幹細胞、成体幹細胞、分化した胚性幹細胞、分化した成体幹細胞、又は人工多能性幹細胞などの幹細胞が含まれ得る。
【0070】
II.概要
本技術は、ステーキ様の培養肉製品などの細胞ベースの肉製品の製造のための培養動物細胞の付着、増殖、及び形態形成のための構造及び適切な成長環境を提供する、食用バイオカプセルの製造のための組成物及び方法に関する。バイオカプセルは、食用ベース基質及び酵母細胞(例えば、パン酵母(サッカロミセス・セレビシエ)など)を含む。いくつかの実施形態では、バイオカプセルの酵母は改変又は遺伝子操作されていない。いくつかの実施形態では、バイオカプセルの酵母は、1つ以上の異種タンパク質(例えば、1つ以上の細胞外マトリックス(ECM)タンパク質、成長因子タンパク質、細胞接着タンパク質、細胞表面タンパク質、細胞シグナル伝達タンパク質、モチーフペプチド(合成又は天然に存在する)、フレーバータンパク質、又はそれらの任意の組み合わせ)を発現するために遺伝子操作される。ベース基質は食用糸状菌の菌糸体を含み、任意の所望の形状及びサイズに成長させることができ、最終的な培養肉製品の主要な構造要素として機能する。ベース基質は酵母によって機能化されており、任意選択で遺伝子操作することができる。ベース基質は、例えば、主に食用多糖類で構成される、遺伝子操作されたパン酵母によって発現される組換えタンパク質で機能化できる。遺伝子操作されたパン酵母は、脱細胞化又は固定することができ、酵母を不活性にする一方で、可溶性発現され得る、特定の細胞内局在を標的とし得る、又は分泌され得る異種タンパク質が構造的に無傷のままであるようにする。
【0071】
III.動物組織の成長のための足場
動物の組織は、三次元構造に成長した様々な細胞型の組織化された配置である。個々の細胞が組織化された組織に成長するためには、細胞は、三次元での膨脹性成長を促進するある種の支持足場に接着する可能性がある。足場生体材料は、組織の構造を三次元で模倣する生体適合性表面を有し、細胞/組織の浸透をサポートするために相互接続された多孔性を示す可能性がある。天然源から作られた足場は、生物学的認識を促進し、細胞の接着と機能をサポートする生来の能力により有利である。
【0072】
天然由来の足場生体材料は、一般に2つのグループに分類される:(1)コラーゲン、シルクフィブロイン、ゼラチン、フィブロネクチン、ケラチン、フィブリン、卵殻膜などの細胞外マトリックス(ECM)タンパク質ベースの生体材料、並びに(2)ヒアルロナン、セルロース、グルコース、アルギン酸塩、コンドロイチン、キチン及びその誘導体であるキトサンなどの多糖類ベースの生体材料。足場タンパク質の両方のグループが組織の成長にとって重要であるが、開発のほとんどは多糖類ベースの生体材料の分野でのみ行われている。ジェランガム、アルギン酸塩、ペクチン、修飾セルロースなどの食品に安全な植物由来のポリマーで作られた調整可能な足場の開発は進んでいるが、ECMタンパク質は現在まだほとんどが動物源から採取されており、これは非効率的であり、バッチ間のばらつきが生じる。さらに、ECMタンパク質と多糖類ベースの生体材料の両方を組み合わせる足場を製造するための当該技術分野の現在の方法は、高度に精製されたECMタンパク質を必要とする機能化技術を使用しており、これは非常にコストが高く非効率的である。
【0073】
本明細書に記載されるように、本技術は、多糖類ベースの構造要素及び/又はタンパク質(ECMタンパク質など)を有し、任意の所定の動物細胞型の任意の所望の組織への成長及び増殖を改善する可能性がある、堅牢でカスタマイズ可能な足場を製造するための菌類ベースのアプローチの使用に関する。
【0074】
IV.菌類
カビ及び酵母は自然界に広く分布している菌類である。菌類とは、酵母やカビなどの微生物、並びによりよく知られているキノコを含む真核生物のグループの任意のメンバーである。カビ又はは糸状菌は、菌糸体を形成する細胞の長いフィラメント(菌糸)として提示される。菌糸は、菌類の長く分岐した糸状構造である。糸状菌は菌糸の架橋ネットワークで構成され、極性化した先端の伸長と分枝形成(成長先端の数の増加)を介して膨張し、これは動物や植物の細胞分裂に相当する。ほとんどの菌類では、菌糸が栄養成長の主な様式であり、総称して「菌糸体」と呼ばれる。
【0075】
本技術の菌糸体は、当業者に知られている任意の方法によって成長できることが理解されるべきである。
【0076】
いくつかの実施形態では、菌糸足場は、細胞ベースの食肉技術用の灌流バイオリアクターシステムを使用することによって生成され得る。灌流バイオリアクターシステムには、例えば、牛筋細胞の増殖、透析、酸素化のための懸濁リアクターユニット、リアクターユニット間の培地循環及び培地供給のためのポンプ、及び凝集細胞塊の機械的作動の有無にかかわらず凝集細胞塊を製造するための足場バイオリアクターユニットが含まれ得る。
【0077】
いくつかの実施形態では、糸状菌は、子嚢菌門、担子菌門、及び接合菌門(ケカビ門及びトリモチカビ門)からなる群から選択される門に属する1つ以上の菌株を含む。いくつかの実施形態では、糸状菌株は、子嚢菌門に由来し、アスペルギルス、ペニシリウム、及びアカパンカビからなる群から選択される属に属する、1つ以上の菌株を含む。いくつかの実施形態では、糸状菌は、アスペルギルス属に由来し、アスペルギルス・オリゼの1つ以上の菌株を含む。いくつかの実施形態では、糸状菌は、アカパンカビ属に由来し、ニューロスポラ・クラッサの1つ以上の菌株を含む。いくつかの実施形態では、糸状菌は、ケカビ門に由来するリゾプス・オリゼ又はリゾプス・オリゴスポラスの菌株である。
【0078】
ペニシリウムやアスペルギルスなどのカビは好気性であり、その化学活性により、抗生物質、チーズなどの製造において非常に重要である。ペニシリウムは、自然環境、食品の腐敗、食品や医薬品の製造において重要な子嚢菌の属である。アスペルギルスは、糸状菌又は普通のカビのグループからなる属であり、そのほとんどが無性状態で発生し、多くの異なる環境に広がり、発芽し得る分生子(無性胞子又は分生子柄)を生成することによって繁殖し、成長する。
【0079】
酵母は、菌界のメンバーとして分類される真核性の単細胞微生物である。サッカロミセス・セレビシエ(一般にビール酵母として知られている)は、ワイン製造、製パン、醸造に役立つ嫌気性酵母の一種である。一部のサッカロミセス・セレビシエは、アルコール発酵が終了し、発酵性糖が枯渇すると、ワインの表面にベール又は花を形成することがあるが、これは自発的固定化の形態である。
【0080】
ビール酵母は室温で液体として容易に培養でき、成長が速く(倍加時間が約2時間)、そのゲノムを十分に確立された分子生物学ツールセットを使用して、容易に操作できる。真核生物であるビール酵母には、哺乳動物タンパク質を効率的に生産できる細胞機構が備わっている。ビール酵母は食用であり、製パンと醸造における役割、アルコール製造における役割で最もよく知られており、その数多くの健康上の利点により栄養補助食品としても消費されている。
【0081】
アスペルギルス・オリゼ(一般に麹菌として知られる)は、伝統的に酒、醤油及び味噌の製造に使用され、肉に似た自然なうま味を有しているため、人間が消費しても安全である。単独の材料として、又は出芽酵母と組み合わせて、麹菌の菌糸体からの繊維状材料は、分岐、糸状の菌糸で構成される菌類の栄養構造を形成することができる。麹菌は、任意のサイズの固体構造を形成するように成長させることができる。
【0082】
また、麹菌の密度及び材料特性を製造時に調整することができ、必要に応じて、この糸状菌は、遺伝子工学に適している。したがって、本技術のいくつかの実施形態では、麹菌は足場の主要なキチン構造要素を構成し、動物組織の構造的骨格を提供する。人工ビール酵母を麹足場に添加すると、機能的な組織へのさまざまな動物細胞の接着と増殖を改善するために使用できるカスタマイズ可能な特性が追加される。
【0083】
V.キチン
キチンは出芽酵母や糸状菌の細胞壁の主成分である。キチンは、天然に豊富に存在する多糖類であり、天然に豊富に存在する別のポリマーである脱アセチル化キトサンの生成物である。キチン/キトサンは、エビ、カニ、ロブスターなどの甲殻類の殻の主成分であり、アスペルギルス・オリゼ(一般的に麹菌として知られる)、サッカロミセス・セレビシエ(一般的にビール酵母、パン酵母、又は出芽酵母と呼ばれる)を含むさまざまな菌類の細胞壁の主成分でもある。キチンは、動物組織培養の基質として三次元足場に容易に操作できる。扱いやすい化学的特性、動物を含まない性質、豊富さに加えて、キチン/キトサンには抗菌特性及び栄養上の利点も含まれている。本明細書に記載されるように、いくつかの実施形態では、パン/ビール酵母と麹菌の両方に由来するキチン/キトサンが、各動物組織用に特異的に操作されるカスタマイズされた足場の主要な構造成分として使用される。
【0084】
単独の材料として、又は出芽酵母と組み合わせて、麹菌の菌糸体からの繊維状材料は、分岐、糸状の菌糸で構成される菌類の栄養構造を形成することができる。麹菌は、当技術分野で知られている手順を使用して、任意のサイズの固体構造を形成するように成長させることができる。さらに、その密度と材料特性は製造中に調整でき、必要に応じて、この糸状菌は遺伝子工学に適している。したがって、本明細書に記載されるように、いくつかの実施形態では、麹が生体材料足場の主要なキチン構造要素を構成し、動物組織の構造的骨格(例えば、ステーキの形状)を提供する。人工ビール酵母を麹足場に添加すると、さまざまな脊索動物細胞及び非脊索動物細胞の機能的な組織への接着と増殖を改善するために使用できるカスタマイズ可能な特性が追加される。
【0085】
VI.酵母及び遺伝子操作された酵母
本明細書に記載されるように、本技術のバイオカプセル組成物及び方法は酵母細胞を含む。これらの酵母細胞は、動物細胞の接着とその後の細胞活性のために1つ以上の異種タンパク質を発現するように任意選択で遺伝子操作できる。いくつかの実施形態では、酵母は、サッカロミセス・セレビシエ、サッカロミセス・バヤヌース、サッカロミセス・カペンシス、シゾサッカロミセス・ポンベ、及びピキア・パストリスからなる群から選択される1つ以上の菌株を含む。いくつかの実施形態では、酵母は、サッカロミセス・セレビシエ(パン酵母、ビール酵母)の1つ以上の菌株を含む。
【0086】
いくつかの実施形態では、1つ以上の異種タンパク質は、1つ以上の細胞外マトリックス(ECM)タンパク質、成長因子タンパク質、細胞接着タンパク質、細胞表面タンパク質、細胞シグナル伝達タンパク質、モチーフペプチド(合成又は天然に存在する)、フレーバータンパク質、又はそれらの任意の組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、異種タンパク質は、1つ以上の脊索動物又は非脊索動物の海洋生物ECMタンパク質、成長因子タンパク質、細胞接着タンパク質、細胞表面タンパク質、細胞シグナル伝達タンパク質、モチーフペプチド(合成又は天然に存在する)、フレーバータンパク質、又はそれらの任意の組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、異種脊索動物タンパク質は、哺乳動物ECMタンパク質、成長因子タンパク質、接着分子タンパク質、細胞表面タンパク質、細胞シグナル伝達タンパク質、モチーフペプチド(合成又は天然に存在する)、フレーバータンパク質、又はそれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態では、異種タンパク質は、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、及びRGDモチーフペプチドからなる群から選択される1つ以上のECMタンパク質を含む。フレーバータンパク質には、例えばフレーバー付与化合物の結合及び/又は吸収を通じて組成物のフレーバーに影響を与えるタンパク質が含まれる。適切なフレーバータンパク質の範囲、及びそれらが組成物のフレーバーにどのように影響を与えるかは、当業者には理解されるであろう。Zhang,Jian,Kang,Dachend,Zhang,Wangang,及びLorenzoe,Jose,Recent advantage of interactions of protein-flavor in foods:Perspective of theoretical models,protein properties and extrinsic factors.Trends in Food Science and Technology.2021 May;111:405-425を参照のこと。いくつかの実施形態では、異種タンパク質は、可溶的に発現されるか、特定の細胞内局在を標的とするか、又は分泌される。
【0087】
いくつかの実施形態では、酵母細胞は、生細胞又は死細胞、無傷の状態、透過処理された状態、又は元の細胞質の内容物をすべて空にした状態(脱細胞化)でさえ使用することができる。いくつかの実施形態では、本技術の酵母細胞は固定される。酵母細胞は、熱衝撃、洗剤、アルコールなどの脱水剤による処理、浸透圧衝撃、凍結乾燥、物理的(機械的)溶解、電気的破壊、酵素消化、又はそれらの任意の組み合わせによる固定又は脱細胞化を含むがこれらに限定されない、当技術分野で公知の任意の適切な方法によって固定又は脱細胞化することができる。
【0088】
VII.カプセル化
カプセル化では、食品成分、酵素、細胞、又はその他の材料を小さなカプセルに組み込むことを含む。カプセル化された材料を湿気、熱、又はその他の極端な条件から保護できるため、その安定性が向上し、生存能力が維持されるため、この技術の応用は食品業界で増加している。バイオカプセルを形成するには、噴霧乾燥、噴霧冷却又は噴霧冷却、押出コーティング、流動床コーティング、リポソーム封入、コアセルベーション、包接錯体形成、遠心押出及び回転懸濁分離を含む様々な技術が使用される。香料添加剤、酸塩基、人工甘味料、着色料、保存料、膨脹剤、酸化防止剤、望ましくないフレーバー、匂い、栄養素を含む薬剤など、多種多様な食品がカプセル化されている。マイクロカプセル化、又は微小な粒子又は液滴をコーティングで囲んで小さなカプセルを与えるプロセスも、特に酵素の固定化のために実行されており、これは、多数の酵素を変性や化学修飾を受けずに合成ポリマー(セルロースアセテートタレートなど)で捕捉できるためである。
【0089】
異種タンパク質を含む固定酵母と糸状菌ベース(例えば、麹菌ベース)の足場との組み合わせは、これら両方の菌類の固有の付着特性を利用する。ビール酵母は、強力な疎水性相互作用を通じて糸状菌の菌糸と自然に結合する。
【0090】
当該プロセスで使用される真菌類(粘菌類とは区別されるすべての真菌類(子嚢菌類及び担子菌類)を含む菌類の一部門)の固有の付着特性により、酵母細胞による麹菌ベースの基質の機能化が可能になる。パン酵母は、強力な疎水性相互作用を通じて糸状菌の菌糸と自然に結合する。さらに、化学架橋剤や外部支持体を添加せずに、糸状菌(例えば、麹菌)とビール酵母の共固定化を誘導するためのプロトコルが以前に記載されている。両方の微生物を含む大きな球体(直径が約2cm)、すなわち「糸状菌-酵母バイオカプセル」を製造する技術が実証されており、この糸状菌-酵母バイオカプセルは多くの過酷な条件下で極めて安定であり、確立された足場に似ている。
【0091】
これらのバイオカプセルの密度及び多孔性は、出芽酵母細胞壁の主成分であるグルカンの固有の特性を利用することで調節できる。グルカンは、グリコシド結合によって連結された、D-グルコースに由来する多糖類である。グルカンは中性pHで重合してゲルを形成することができるため、システムに別の同調可能な層が追加される。本明細書に記載ように、細胞外マトリックス(ECM)タンパク質、成長因子タンパク質、細胞接着タンパク質、細胞表面タンパク質、細胞シグナル伝達タンパク質、モチーフペプチド(合成又は天然は存在する)、フレーバータンパク質又はそれらの任意の組み合わせなどの異種タンパク質を発現するように任意選択で遺伝子操作される、食用で構造的に堅牢な麹菌ベースのマトリックス及びビール酵母で構成される生体材料足場は、筋肉/脂肪ベースの動物組織の生成のための三次元構造及び細胞増殖の合図を提供する。
【0092】
VIII.複数の1つ以上の細胞型、播種、及び細胞の培養
多数の細胞型又は細胞集団を、本技術の糸状菌-酵母バイオカプセルとともに培養して、三次元の食用の細胞ベースの肉製品を形成することができる。いくつかの実施形態では、1つ以上の細胞型は、筋芽細胞又はその前駆細胞、脂肪細胞又はその前駆細胞、線維芽細胞又はその前駆細胞、内皮細胞又はその前駆細胞、平滑筋細胞又はその前駆細胞、筋衛星細胞、人工多能性幹細胞、間葉系幹細胞、胚性幹細胞、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0093】
いくつかの実施形態では、複数の細胞型は前駆細胞である。いくつかの実施形態では、前駆細胞は単培養で培養される。いくつかの実施形態では、前駆細胞は単培養で分化される。いくつかの実施形態では、前駆細胞は単培養で分化され、その後、本技術の三次元糸状菌-酵母バイオカプセル上に播種され、インキュベートされる。いくつかの実施形態において、前駆細胞は、本技術の三次元糸状菌-酵母バイオカプセル上に播種され、インキュベートされ、in situで分化される。前駆細胞を培養し、分化した細胞に分化させる方法は、当業者には容易に明らかであろう。
【0094】
いくつかの実施形態では、複数の細胞型は生きた動物から得られ、初代細胞株として培養される。いくつかの実施形態では、細胞は生検によって取得され、生体外で培養された。いくつかの実施形態では、細胞は市販の細胞株から得られる。いくつかの実施形態では、細胞は不死化又は再プログラムされた初代細胞株である。
【0095】
いくつかの実施形態では、複数の細胞型は脊索動物に由来する。いくつかの実施形態では、複数の細胞型は、哺乳動物、鳥類、魚類、爬虫類、両生類から選択される非ヒト脊索動物に由来する。いくつかの実施形態では、複数の細胞型は非ヒト哺乳動物に由来する。いくつかの実施形態では、複数の細胞型は家畜に由来し、家畜には、例えば、ウシ、ヘラジカ、トナカイ、バイソン、ウマ、シカ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、家禽、ラマ、アルパカ、生きた魚が含まれるが、これらに限定されない家畜、準家畜、捕獲野生動物が含まれる。いくつかの実施形態では、複数の細胞型は非脊索動物の海洋生物に由来する。いくつかの実施形態では、複数の細胞型は、甲殻類(例えば、ロブスター、カニ、エビ、ハマグリ、カキ、ムール貝)、ウニ、イカ、タコから選択されるが、これらに限定されない非脊索動物の海洋生物に由来する。いくつかの実施形態では、複数の1つ以上の細胞は、本技術のバイオカプセルの酵母細胞によって発現され得る異種タンパク質と同じ脊索動物又は非脊索動物に由来する。いくつかの実施形態では、本技術のバイオカプセルの酵母細胞によって発現され得る複数の1つ以上の細胞及び異種タンパク質は、哺乳動物に由来する。いくつかの実施形態では、本技術のバイオカプセルの酵母細胞によって発現され得る複数の1つ以上の細胞及び異種タンパク質は、本明細書に記載される脊索動物又は非脊索動物の同種又は異種の組み合わせのいずれかである。いくつかの実施形態では、本技術のバイオカプセルの酵母細胞によって発現され得る複数の1つ以上の細胞及び異種タンパク質は、ブタ、ウシ、又は家禽の細胞型の同種又は異種の組み合わせのいずれかである。
【0096】
当業者であれば、本技術の組成物及び方法で使用される複数の細胞型のそれぞれが、細胞の成長及び維持に好ましい培地を有し、好ましい範囲の細胞密度も備えていることを容易に認識するであろう。
【0097】
いくつかの実施形態では、本技術のバイオカプセルには、細胞の成長及び維持に適している約1mL~約10mL培地中の約1cm2~60cm2の総表面積の範囲の足場上の約1×103細胞~約1×106細胞の範囲の複数の細胞型が播種される。いくつかの実施形態では、バイオカプセルには、約3mL培地中の足場の約9cm2の総表面積上に約1×105細胞が播種される。
【0098】
いくつかの実施形態では、「被覆率%」は、複数の1つ以上の細胞型と接触するバイオカプセル足場の面積又は体積を指す。別の実施形態では、被覆率%は、複数の1つ以上の細胞型によって占有されるバイオカプセル足場の面積又は体積を指す。本明細書で使用される場合、バイオカプセル足場と接触する細胞は、その上、内部、又はそれらの組み合わせにある。
【0099】
いくつかの実施形態では、複数の細胞型の被覆率%は、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも99%である。いくつかの実施形態では、複数の細胞の被覆率%は、5~20%、15~30%、25~40%、35~50%、45~60%、55~70%、65~80%、75~90%、85~100%、又はそれらの間の任意の範囲である。
【0100】
当業者であれば、細胞の播種及び/又は培養が細胞培養培地の存在下で行われることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、細胞培養培地は、成長因子、サイトカイン、生物活性剤、栄養素、アミノ酸、抗生物質化合物、抗炎症化合物、又はそれらの任意の組み合わせを含む。細胞の生存能力及び成長に適した適切な培地及び化合物は、当業者に知られている。
【0101】
本技術の方法及び組成物で使用できる成長因子又はそのフラグメントには、血小板由来成長因子(PDGF)及びインスリン様成長因子(IGF-1)が含まれるが、これらに限定されない。PDGF及びIGF-1は、細胞分裂促進性、走化性を刺激し、細胞反応を増殖(分化)させることが知られている。成長因子は、以下の1つ以上であり得るが、これらに限定されない:PDGF、例えばPDGF AA、PDGF BB;IGF、例えば、IGF-I、IGF-II;線維芽細胞増殖因子(FGF)、例えば、酸性FGF、塩基性FGF、β内皮細胞成長因子、FGF4、FGF5、FGF6、FGF7、FGF8、及びFGF9;トランスフォーミング成長因子(TGF)、例えばTGF-P1、TGFβ、TGF-p2、TGF-p3、TGF-p5;骨形成タンパク質(BMP)、例えばBMP1、BMP2、BMP3、BMP4;血管内皮成長因子(VEGF)、例えばVEGF、胎盤増殖因子;上皮成長因子(EGF)、例えばEGF、アンフィレグリン、ベータセルリン、ヘパリン結合EGF;インターロイキン、例えば、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14;コロニー刺激因子(CSF)、例えばCSF-G、CSF-GM、CSF-M;神経成長因子(NGF);幹細胞因子;肝細胞増殖因子、毛様体神経栄養因子、及びニューレグリン(NRG1)、又はそれらのフラグメント。
【0102】
いくつかの実施形態では、複数の細胞型を食用バイオカプセル足場とともにインキュベートする。足場は、増殖細胞の集団がとる三次元の形状若しくは形態に影響を与えるか、又はその境界を定めるような特定の形状若しくは形態であってもよい。いくつかの実施形態では、バイオカプセル足場は肉製品の三次元形状を模倣する。
【0103】
IX.糸状菌ー酵母バイオカプセルを生成するための方法
本明細書に記載されるように、本開示の技術は、糸状菌-酵母バイオカプセルを生成するための方法に関する。いくつかの実施形態では、糸状菌-酵母バイオカプセルは、培養肉製品の製造のための培養動物細胞の付着、増殖、及び形態形成のための三次元構造及び適切な成長環境を提供する食用生体材料足場として機能する。
【0104】
本技術のバイオカプセルを生成する方法は、化学結合化合物及び外部支持体の非存在下で、糸状菌と複数の酵母細胞との間の自発的共固定化を誘導し、対応する共生に有利な適切な条件を人工的に作り出すことを含む。酵母と糸状菌の組み合わせた固有の接着特性により、液体培地中である特定の条件下で培養すると、疎水性相互作用を通じてバイオカプセルが自発的に形成される。いくつかの実施形態では、酵母は、1つ以上の細胞外マトリックス(ECM)タンパク質、成長因子タンパク質、細胞接着タンパク質、細胞表面タンパク質、細胞シグナル伝達タンパク質、モチーフペプチド(合成又は天然に存在する)、フレーバータンパク質、又はそれらの任意の組み合わせから選択される1つ以上の異種タンパク質を発現するように遺伝子操作され、異種タンパク質は可溶的に発現されるか、特定の細胞内局在を標的とするか、又は分泌される。いくつかの実施形態では、酵母は固定されている。いくつかの実施形態では、酵母は脱細胞化されている。
【0105】
いくつかの実施形態では、糸状菌は、子嚢菌門、担子菌門、及び接合菌門(ケカビ門及びトリモチカビ門)からなる群から選択される門に属する1つ以上の菌株を含む。いくつかの実施形態では、糸状菌株は、子嚢菌門に由来し、アスペルギルス、ペニシリウム、及びアカパンカビからなる群から選択される属に属する、1つ以上の菌株を含む。いくつかの実施形態では、糸状菌は、アスペルギルス属に由来し、アスペルギルス・オリゼ(麹菌)の1つ以上の菌株を含む。いくつかの実施形態では、糸状菌は、アカパンカビ属に由来し、ニューロスポラ・クラッサの1つ以上の菌株を含む。いくつかの実施形態では、糸状菌は、リゾプス属に由来し、リゾプス・オリゼ又はリゾプス・オリゴスポラスの1つ以上の菌株を含む。いくつかの実施形態では、酵母は、サッカロミセス・セレビシエ、サッカロミセス・バヤヌース、サッカロミセス・カペンシス、シゾサッカロミセス・ポンベ、及びピキア・パストリスからなる群から選択される1つ以上の菌株を含む。いくつかの実施形態では、酵母の種は、サッカロミセス・セレビシエ、サッカロミセス・バヤヌース、又はサッカロミセス・カペンシスであり、酵母は、サッカロミセス・セレビシエの1つ以上の菌株を含む。糸状菌及び酵母の具体例は、本明細書に明示的に列挙したものに限定されず、他の例も考えられることを理解されたい。
【0106】
この方法は、糸状菌と酵母細胞との間の共固定化を誘導する条件を作り出すことを含む。糸状菌と酵母細胞との間の共固定化を誘導するための条件は、第1の培養培地と第2の培養培地の使用を含む。第1の培養培地は、糸状菌には利用可能であるが酵母には利用できない炭素源を含み、炭素源はグルコン酸、デンプン、セルロース、イヌリン、又は他の同様のコロイド分子から選択される。第2の培養培地は、糸状菌によっても利用可能な酵母にとって好ましい炭素源を含む。撹拌を、軌道撹拌機、撹拌通気システムを備えたサーモスタット内、スパージング、又は撹拌に適した任意のその他の手段を使用して実行できる。
【0107】
本技術のバイオカプセルを生成する方法の外部要因又は条件には以下が含まれ得る:おおよそ20℃~おおよそ37℃のインキュベーション温度、おおよそ0rpm~おおよそ270rpmの撹拌速度、及び24時間以上の培養時間。これらの外部要因は説明の目的のみで提供されることを理解されたい。
【0108】
本技術の方法によって生成されたバイオカプセルは、いくつかの実施形態において、細胞ベースの肉製品の製造に使用され得る。したがって、いくつかの実施形態では、この方法は、筋芽細胞又はその前駆細胞、脂肪細胞又はその前駆細胞、線維芽細胞又はその前駆細胞、内皮細胞又はその前駆細胞、平滑筋細胞又はその前駆細胞、筋衛星細胞、人工多能性幹細胞、間葉系幹細胞、胚性幹細胞、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、複数の1つ以上の細胞型を、糸状菌-酵母バイオカプセルに播種し、播種されたバイオカプセルを形成することをさらに含み得る。この方法は、播種されたバイオカプセルを、複数の1つ以上の細胞型の分化を誘導して食用の細胞ベースの肉製品を製造するのに有効な条件下で培養することをさらに含んでもよい。
【0109】
いくつかの実施形態では、この方法はまた、少なくとも1つの異種タンパク質、タンパク質フラグメント、及び/又はタンパク質モチーフを発現するように酵母細胞を操作し、糸状菌に1つ以上の特性を付与することを含んでもよい。いくつかの実施形態では、異種タンパク質は、可溶的に発現されるか、特定の細胞内局在を標的とするか、又は分泌される。いくつかの実施形態では、異種タンパク質は、細胞外マトリックス(ECM)タンパク質、成長因子タンパク質、細胞接着タンパク質、細胞表面タンパク質、細胞シグナル伝達タンパク質、モチーフペプチド(合成又は天然に存在する)、フレーバータンパク質、又はそれらの任意の組み合わせから選択される1つ以上の異種タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、ECMタンパク質は、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、及びRGDモチーフペプチドのうちの1つ以上から選択される。いくつかの実施形態では、異種タンパク質は非ヒト脊索動物由来である。いくつかの実施形態では、異種タンパク質は非ヒト哺乳動物由来である。いくつかの実施形態では、異種タンパク質はブタ由来である。いくつかの実施形態では、異種タンパク質はウシ由来である。いくつかの実施形態では、異種タンパク質は家禽由来である。いくつかの実施形態では、異種タンパク質は非脊索動物の海洋生物由来である。実施例の非網羅的なリストには、ゼリー構造を与えるためのコラーゲンの添加、細胞接着を与えるためのフィブロネクチンの添加が含まれる。
【0110】
したがって、本明細書に記載の食用バイオカプセル足場の所望の1つ以上の特性は、バイオカプセル足場に組み込まれ、足場に固有のものであるが、技術分野の他のものは、ホルモン、ミネラル、アガロース/ゼラチンなどの外因性材料や生体材料の誘導、堆積、又は注入によって化学的性質を介して足場を改変し、足場に望ましい特性を与える。さらに、本技術の足場は調整可能であり、例えば、特に筋肉細胞と脂肪細胞の共培養を可能にし、細胞の増殖と分化を改善できる成長因子を発現して、潜在的に製造コストを削減するように設計することができる。
【0111】
いくつかの実施形態では、この方法は、足場を任意の所望の形状に成形することを含む。いくつかの実施形態では、足場の形状は、三次元の肉製品の形状を模倣する。
【0112】
いくつかの実施形態では、この方法は、酵素(例えば、ザイモリアーゼ、リチカーゼ、及び/又はグルカラーゼ、他のもの)を糸状菌に導入して、糸状菌の密度、多孔性、及び/又は組織などの糸状菌のパラメータを改変することを含む。
【0113】
いくつかの実施形態では、この方法は、糸状菌-酵母バイオカプセルを製造することを含む。いくつかの実施形態では、糸状菌-酵母バイオカプセルは、ある形状(例えば、肉製品の形状を模倣する形状である)の中空カプセルであり、その壁は、遊離酵母細胞及び菌糸に結合する他の細胞によって部分的に占有される内部空間を制限し、クラスターを形成し、培養培地を透明のままにする。いくつかの実施形態では、足場は、最終的な肉製品、例えば、肉のスライスの形状を有し、したがって、その形状は、微小孔又は条痕を有する層状形状となる。バイオカプセルの形状は限定されず、任意の形状が考慮されることが理解されるべきである。バイオカプセルのサイズは、撹拌速度、撹拌時間、インキュベーション温度などのいくつかの外部要因に依存し得る。バイオカプセルの直径は数ミリメートルから数センチメートルまで変化し得る。バイオカプセルの三次元構造は球状に限定されず、培養される容器の形状を採用することができる。
【0114】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のバイオカプセルは、ステーキ様の培養肉製品を製造するための培養動物細胞の付着、増殖、及び形態形成のための構造及び適切な成長環境を提供する食用生体材料足場である。いくつかの実施形態では、足場は、酵母細胞で機能化された食用ベース基質(糸状菌)を含む。いくつかの実施形態では、ベース基質は、遺伝子操作された酵母細胞(例えば、パン酵母)によって発現される異種タンパク質で機能化される。いくつかの実施形態では、ベース基質は食用糸状菌の菌糸体を含み、任意の所望の形状及びサイズに成長させることができ、最終的な培養肉製品の主要な構造要素として機能する。いくつかの実施形態では、ベース基質は、主に食用多糖から構成される遺伝子操作酵母(例えば、パン酵母)によって発現される異種タンパク質で機能化される。いくつかの実施形態では、パン酵母は脱細胞化又は固定化される。
【実施例
【0115】
以下の実施例は、限定ではなく、例示としてのみ提供される。当業者は、本質的に同じ又は同様の結果をもたらすように変更又は修正され得る、様々な重要でないパラメータを容易に認識するであろう。実施例は、添付の特許請求の範囲によって定義されるように、本技術の範囲を限定するものと決して解釈されるべきではない。
【0116】
実施例1:バイオカプセルの作成
酵母をYP+3%グリセロール中で成長させる。アスペルギルスをプレート上で成長させ、BFMで胞子を採取する。BFM(0.67%YNB+0.5%グルコン酸)にさまざまな比率の酵母と胞子を接種する。バイオカプセルが所望のサイズに達するまで、30℃で振盪して成長が起こる。次に、バイオカプセルをYP+18%グルコース中で成長させる。その後、バイオカプセルが採取され、水で洗浄される。
【0117】
実施例2:エタノール固定プロトコル
足場(バイオカプセル)を2×50mL水で10分間洗浄し、その後50mLの40%エタノールとともに60~180分間インキュベートする。次に、足場を滅菌チューブに移し、これを滅菌水で洗浄し、滅菌PBS中で保存する。
【0118】
実施例3:足場上のC2C12の播種、成長、分化
この実施例では、不死化マウス筋芽細胞株であるC2C12を利用する。インビボ条件の複雑な相互作用から単離された筋芽細胞のインビトロ研究用に開発されたC2C12細胞は、高血清条件下で急速に増殖し、低血清条件下での筋管線維への分化が可能であるため、生物医学研究に役立つ。
【0119】
C2C12細胞を成長培地(DMEM+10%FBS)中で80~90%コンフルエンスまで成長させる。細胞はトリプシン処理され、成長培地で洗浄される。次に、40~50%コンフルエンスでの播種が、実施例1で生成されたバイオカプセル足場などの足場上に直接行われる。DMEM+FBSでは成長が7日間生じ、培地は2日ごとに補充される。任意選択で、一部のサンプルを殺処分し、ファロイジン/核染色によって検査して細胞増殖を決定する。7日目に、分化培地(DMEM+2%ウマ血清)に切り替える。その後、成長が5~7日間生じ、そこで培地が4日ごとに補充される。任意選択で、一部のサンプルを殺処分し、ファロイジン/核染色によって検査して分化/筋管形成を決定する。
【0120】
実施例4:固体基質を使用したバイオカプセルの成長
アスペルギルスをプレート上で成長させ、BFMで胞子を採取する。酵母をYP+3%グリセロール中で成長させる。さまざまな比率のアスペルギルス胞子及び酵母を水に懸濁し、BFM寒天上に広げる。プレートを28℃で72時間インキュベートする。BFMを吸引除去し、YPD18(18%グルコース)に置き換える。インキュベーションは、28℃で24時間生じる。寒天表面のバイオカプセルを採取し、加工する。
【0121】
実施例5:細胞ベースの肉製品の製造のための糸状菌-酵母菌バイオカプセルの使用
この実施例は、本技術の糸状菌-酵母バイオカプセルが細胞ベースの肉製品を製造する方法において有用であることを実証する。
【0122】
簡単に説明すると、遺伝子操作されたサッカロミセス・セレビシエ(パン酵母)細胞を、菌糸体を含むアスペルギルス・オリゼ(麹菌)の培養物に添加し、糸状菌ー酵母調製物を形成する。酵母細胞は、1つ以上の異種タンパク質を発現するように遺伝子操作される。異種タンパク質は、可溶的に発現されるか、特定の細胞内局在を標的とするか、又は分泌され得る。異種タンパク質は、任意の1つ以上の脊索動物ECMタンパク質(例えば、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、RGDモチーフペプチド)、成長因子タンパク質、細胞接着タンパク質、細胞シグナル伝達タンパク質、ペプチドモチーフ(合成又は天然に存在する)、又は細胞表面タンパク質を含み得る。次いで、調製物を、アスペルギルス・オリゼ及びサッカロミセス・セレビシエの自発的共固定化を誘導するのに十分な条件(本明細書に記載のとおり)下で培養し、それによって糸状菌-酵母バイオカプセルを形成する。次に、糸状菌-酵母バイオカプセルは固定、脱細胞化、又はその他の手段によって処理され、内因性タンパク質構造を無傷に保ちながらさらなる成長を抑制する。
【0123】
次に、不活性の糸状菌-酵母バイオカプセルには、筋芽細胞又はその前駆細胞、脂肪細胞又はその前駆細胞、線維芽細胞又はその前駆細胞、内皮細胞又はその前駆細胞、平滑筋細胞又はその前駆細胞、筋衛星細胞、人工多能性幹細胞、間葉系幹細胞、胚性幹細胞、又はそれらの任意の組み合わせから選択される複数の1つ以上の細胞型が播種され、播種されたバイオカプセルを形成する。次いで、播種されたバイオカプセルは、複数の1つ以上の細胞型の成長及び/又は分化を誘導するのに有効な条件下で培養されて、食用の細胞ベースの肉製品を製造する。
【0124】
したがって、これらの結果は、本技術の糸状菌-酵母バイオカプセルが細胞ベースの肉製品を製造する方法において有効であることを実証する。
【0125】
実施例6:パン酵母及び麹菌糸体の共固定化
導入。この実験は、細胞ベースの肉製品の製造に使用するためのバイオカプセル/足場の生成を実証する。特に、この実施例は、サッカロミセス・セレビシエ(パン酵母としても知られる)及び糸状菌、アスペルギルス・オリゼ(麹菌としても知られる)の共固定化を実証する。
【0126】
方法。簡単に言うと、糸状菌及び酵母の自発的共固定化は、糸状菌のみで利用できる炭素源中で菌類と酵母の両方が成長するときに生じる。その結果、酵母は、強い疎水性相互作用を通じて糸状菌の菌糸と強く結合する。得られるバイオカプセルは、さまざまな形状及びサイズに成長させることができ、最も一般的には1~2センチメートルの大きさになり得る球体に成長させることができる。共固定化の程度を決定するために、共固定化された麹菌/酵母の共生成長を、さまざまなイオン強度及び極性の異なる溶媒中で過剰に撹拌しながら徹底的に洗浄した。アスペルギルス・オリゼのみが利用する炭素源を含む液体培地(アミノ酸を含む0.67%酵母窒素塩基、0.5%グルコン酸)に、等モル比のアスペルギルス・オリゼ胞子及びサッカロミセス・セレビシエで接種し、30℃で激しく振盪しながら一晩成長させて糸状菌を発芽させた。翌日、等量の2×リッチグルコース含有培地(2%酵母エキス、4%ペプトン、32%グルコース)を既存の共培養物に添加し、激しく振盪しながら30℃で1~2日間インキュベートした。次に、両方の菌類で構成されるバイオカプセルを採取し、ボルテックスしながら総過剰の水で洗浄した。次いで、バイオカプセルを、40%エタノール、100mM NaCl、又は300mM NaClとともに、撹拌しながら90~120分間インキュベートした。次に、バイオカプセルを水で徹底的に洗浄し、アスペルギルス菌糸上のサッカロミセス・セレビシエの存在を顕微鏡で検査した。
【0127】
結果。この実験の結果により、アスペルギルス・オリゼ(麹菌)及びSサッカロミセス・セレビシエ(パン酵母)が共固定化された。図1Aに示すように、徹底的な洗浄後に一部の酵母は糸状菌から解離したが、蛍光顕微鏡で検査した場合、多くは麹菌糸体に吸着/付着したままであった。図1B及び図1Cに示すように、足場は平らなシート(図1B)から球体(図1C)まで、さまざまな形状及び密度に成長することができる。
【0128】
したがって、これらの結果は、本技術の方法が細胞ベースの肉製品の製造に使用できるバイオカプセルを生成するのに有用であることを実証しており、バイオカプセルは糸状菌と複数の酵母細胞を含む。
【0129】
実施例7:遺伝子操作されない酵母を用いた構造化培養肉製品の生成
足場の生成-平らなシートの場合。5mLの液体YPD16(1%酵母エキス、2%ペプトン、16%グルコース)にパン酵母菌株を接種し、30℃で振盪しながら16時間成長させた。アスペルギルス・オリゼ胞子をBFMプレート(0.67%酵母窒素塩基、0.5%グルコン酸、2%寒天)で2~3日間成長させた。アスペルギルス・オリゼ胞子を、滅菌水を使用してプレートから採取した。滅菌水中の酵母とアスペルギルス・オリゼ胞子の等モル混合物を、セロファンの薄膜を寒天の上に重ねた状態で、YPD寒天プレート((1%酵母エキス、2%ペプトン、2%グルコース、2%寒天)上にプレーティングした。重ねたセロファンの上にぼやけた層が見えるまで、プレートを30℃で1~2日間インキュベートした。次に、菌糸体ー酵母共生成長構造体をセロファン層から剥がし、50mLのYPD16を含む滅菌フラスコに移し、振盪せずに30℃で16~24時間インキュベートした。次にフラスコをシェーカーに移し、穏やかに振盪しながら30℃でさらに16~24時間成長させた。次いで、菌糸体ー酵母共生成長を過剰の滅菌水で洗浄することによって採取し、40%エタノールとともに90分間インキュベートした。次いで、足場をPBS中に保存した。平らな足場を、滅菌メスを使用して所望の形状に切断した。
【0130】
足場の生成-球状の場合。5mLの液体YPD16(1%酵母エキス、2%ペプトン、16%グルコース)にパン酵母を接種し、30℃で振盪しながら16時間成長させた。アスペルギルス・オリゼ胞子をBFMプレート(0.67%酵母窒素塩基、0.5%グルコン酸、2%寒天)上で2~3日間成長させた。アスペルギルス・オリゼ胞子を、滅菌水を使用してプレートから採取した。5mLのYPD16に、滅菌水中の酵母とアスペルギルス・オリゼ胞子の等モル混合物を接種し、30℃で16~24時間激しく振盪しながら成長させた。次いで、過剰の滅菌水で洗浄することによって球状の菌糸体ー酵母共生成長構造体を採取し、40%エタノールで90分間インキュベートした。次いで、球状足場をPBS中に保存した。
【0131】
細胞の播種及び成長。平らな足場を直径35mmの円に切断し、6ウェル組織培養プレートのウェルに移した。足場を3mLの成長培地(GM:DMEM高グルコース、ピルビン酸不含+10%FBS+1%ペニシリン/ストレプトマイシン)で洗浄した。次いで、GM中4×105細胞/mLのウズラ筋芽細胞(QM7)細胞の懸濁液3mLを組織培養ウェル内の足場に滴下添加した。足場上の細胞は、37℃、5%CO2の加湿インキュベーター内でインキュベートした。3mLの新しいGMを2~3週間隔日で交換した。細胞を含んだ足場を2日目に殺処分し、蛍光顕微鏡により細胞接着をアッセイした。
【0132】
蛍光共焦点顕微鏡。細胞を含んだ足場を新しい35mmペトリ皿に移した。細胞を1mLの4%パラホルムアルデヒドにて20分間室温で固定化した。次いで、細胞を含んだ足場をPBS+0.2%トリトンX-100中、室温で15分間インキュベートした。次いで、細胞を含んだ足場を、PBS中の543-ファロイジン及びDAPIの一次抗体溶液中で、室温で30~60分間インキュベートした。細胞を含んだ足場を室温で15分間インキュベートしながらPBS中で2回洗浄した。次いで、染色された細胞を含んだ足場を顕微鏡スライドに移し、カバーガラスで挟み、次いで、蛍光共焦点顕微鏡によって画像化して、足場への動物細胞の接着を確認した(図2)。
【0133】
培養肉製品の組み立て。細胞を含んだ足場を、採取時に滅菌PBSで徹底的に洗浄した。一部の足場を1%カルミン溶液で簡単に染色して赤色着色剤を付与し、その後PBSで洗浄して遊離染料を洗い流した。赤色及び白色の細胞を含んだ足場に、カゼイン+微生物トランスグルタミナーゼ粉末混合物(MooGloo RM)をまぶした。次に、粉をまぶした足場を互いの上に重ねて三次元形状にした。次いで、塊を37℃で16時間インキュベートして、トランスグルタミナーゼが断片を互いに「接着」できるようにした(図3A)。培養肉製品を、アボカド油を入れた鍋で調理した(図3B)。
【0134】
結果。この実験の結果により、図3A及び3Bに示すような構造化培養肉製品が生成された。
【0135】
したがって、これらの結果は、本技術の方法が、糸状菌及び複数の酵母細胞と、筋芽細胞などの複数の1つ以上の細胞型とを含む食用生体材料足場を含む、細胞ベースの肉製品を生成するのに有用であることを実証する。
【0136】
実施例8:細胞質外因性ウシコラーゲンを発現する遺伝子操作された酵母を用いた構造化培養肉製品の生成
細胞質発現プラスミド設計。ウシCOL1A1遺伝子の45kDaフラグメントを、LEU2栄養要求性選択マーカー、アンピシリン耐性マーカー、及び2um起点を含むサッカロミセス・セレビシエ細胞質発現プラスミドにクローン化した。COL1A1の発現はGPDプロモーターから駆動された。得られたプラスミドを図4に示す。
【0137】
酵母菌株の生成。サッカロミセス・セレビシエ株s288c(MATα SUC2 gal2 mal2 mel flo1 flo8-1 hap1 ho bio1 bio6)(Mortimer RK,Johnston JR.Genealogy of principal strains of the yeast genetic stock center.Genetics.1986 May;113(1):35-43.doi:10.1093/genetics/113.1.35.PMID:3519363;PMCID:PMC1202798.)を、液体YPD培地(1%酵母エキス、2%ペプトン、2%グルコース)でOD600が0.4~0.8になるまで成長させた。酢酸リチウム形質転換法を用いて、酵母を細胞質発現プラスミド(図4)で形質転換し(Gietz RD, Schiestl RH.High-efficiency yeast transformation using the LiAc/SS carrier DNA/PEG method.Nat Protoc.2007、2(1):31-4.doi:10.1038/nprot.2007.13.PMID:17401334.)、合成完全ロイシンドロップアウト(SC-LEU)寒天プレート(アミノ酸を含まない0.67%酵母窒素塩基、2%グルコース、ロイシンを含まない合成ドロップアウト培地サプリメント、2%寒天)にプレーティングした。栄養要求性形質転換体を採取し、新しいSC-LEUプレートに再画線した。栄養要求性株は、すべての下流用途のために選択培地内/上で維持された。
【0138】
足場の生成-平らなシートの場合。5mLの液体SC-LEU(アミノ酸を含まない0.67酵母窒素塩基、2%グルコース、ロイシンを含まない合成ドロップアウト培地サプリメント)に上記の形質転換酵母菌株を接種し、30℃で振盪しながら16時間成長させた。アスペルギルス・オリゼ胞子をBFMプレート(0.67%酵母窒素塩基、0.5%グルコン酸、2%寒天)上で2~3日間成長させた。アスペルギルス・オリゼ胞子を、滅菌水を使用してプレートから採取した。滅菌水中の酵母とアスペルギルス・オリゼ胞子の等モル混合物を、寒天の上にセロファンの薄膜を重ねたSC-LEU寒天プレート上にプレーティングした。重ねられたセロファンの上に微細なぼやけた層が見えるまで、プレートを30℃で1~2日間インキュベートした。次に、菌糸体ー酵母共生成長構造体をセロファン層から剥がし、50mLのSC-LEUを含む滅菌フラスコに移し、振盪せずに30℃で16~24時間インキュベートした。次にフラスコをシェーカーに移し、穏やかに振盪しながら30℃でさらに16~24時間成長させた。次いで、菌糸体ー酵母共生成長を過剰の滅菌水で洗浄することによって採取し、40%エタノールとともに90分間インキュベートした。次いで、足場をPBS中に保存した。平らな足場を、滅菌メスを使用して所望の形状に切断した。
【0139】
足場の生成-球状の場合。5mLの液体SC-LEU(アミノ酸を含まない0.67酵母窒素塩基、2%グルコース、ロイシンを含まない合成ドロップアウト培地サプリメント)に上記の形質転換酵母菌株を接種し、30℃で振盪しながら16時間成長させた。アスペルギルス・オリゼ胞子をBFMプレート(0.67%酵母窒素塩基、0.5%グルコン酸、2%寒天)上で2~3日間成長させた。アスペルギルス・オリゼ胞子を、滅菌水を使用してプレートから採取した。5mLのSD-LEUに、滅菌水中の酵母とアスペルギルス・オリゼ胞子の等モル混合物を接種し、30℃で16~24時間激しく振盪しながら成長させた。次いで、過剰の滅菌水で洗浄することによって球状の菌糸体ー酵母共生成長構造体を採取し、40%エタノールとともに90分間インキュベートした。次いで、球状足場をPBS中に保存した。
【0140】
細胞の播種及び成長。平らな足場を直径35mmの円に切断し、6ウェル組織培養プレートのウェルに移した。足場を3mLの成長培地(GM:DMEM高グルコース、ピルビン酸不含+10%FBS+1%ペニシリン/ストレプトマイシン)で洗浄した。次に、GM中の4×10^5細胞/mLのQM7細胞の懸濁液3mLを組織培養ウェル内の足場に滴下添加した。足場上の細胞を、5%CO2を含む37℃の加湿インキュベーター内でインキュベートした。3mLの新しいGMを2~3週間隔日で交換した。細胞を含んだ足場を2日目に殺処分し、蛍光顕微鏡により細胞接着をアッセイした。
【0141】
蛍光共焦点顕微鏡。細胞を含んだ足場を新しい35mmペトリ皿に移した。細胞を1mLの4%パラホルムアルデヒドにて20分間室温で固定化した。次いで、細胞を含んだ足場をPBS+0.2%トリトンX-100中、室温で15分間インキュベートした。次いで、細胞を含んだ足場を、PBS中の543-ファロイジン及びDAPIの一次抗体溶液中で、室温で30~60分間インキュベートした。細胞を含んだ足場を室温で15分間インキュベートしながらPBS中で2回洗浄した。次に、染色された細胞を含んだ足場を顕微鏡スライドに移し、カバーガラスで挟み、蛍光共焦点顕微鏡で画像化して、動物細胞が足場に接着していることを確認した。図5A~5Cに示すように、得られた足場は、アクチンネットワーク(図5A)及び核を有する細胞(図5B)で覆われており、統合した図(図5C)は、無傷の細胞を含む足場を示している。
【0142】
培養肉製品の組み立て。QM7細胞を含んだ足場は、採取時に滅菌PBSで徹底的に洗浄した。細胞を含んだ足場に、カゼイン+微生物トランスグルタミナーゼ粉末混合物(MooGloo RM)をまぶした。次に、粉をまぶした足場を互いの上に重ねて三次元形状にした。次いで、塊を37℃で16時間インキュベートして、トランスグルタミナーゼを、断片を互いに「接着」させた(図6A、上面図、図6B、側面図)。培養ウズラ肉製品を、アボカド油を入れた鍋で調理した(図6C)。
【0143】
結果:図6A~6Cに示すように、この実験の結果により、図3A~3Bの肉製品と比較して構造の均一性が向上した培養肉製品の生成に成功した。
【0144】
したがって、これらの結果は、本技術の方法が、糸状菌、細胞内位置を標的とするコラーゲンなどの外因性タンパク質を発現する複数の操作された酵母細胞、及び筋芽細胞などの複数の1つ以上の細胞型を含む食用生体材料足場を含む、細胞ベースの肉製品を生成するのに有用であることを実証する。
【0145】
実施例9:分泌された外因性ウシコラーゲンを発現する遺伝子操作された酵母を用いた構造化培養肉製品の生成
分泌及び組み込み発現プラスミドの設計。ウシCOL1A1遺伝子の45kDaフラグメントを、URA3栄養要求性選択マーカー、カナマイシン耐性マーカー、サッカロミセス・セレビシエ増殖用の2umエレメント、及び大腸菌増殖用のColE1起点を含むサッカロミセス・セレビシエ分泌発現プラスミドにクローニングした。3’トロンビン切断部位を持つ接合因子α(MFa)リーダー配列を、ウシCOL1A1遺伝子の45kDaフラグメントの5’末端に融合し、3× stopを付加した。MFa-COL1A145kDa融合体の発現は、TEF1プロモーターから駆動された。得られた分泌発現プラスミドを図7に示す。ウシP4HA1遺伝子を、二重LEU2及びHIS3栄養要求性選択マーカー、カナマイシン耐性マーカー、及び大腸菌増殖用の複製のColE1起点を含むサッカロミセス・セレビシエ組み込みプラスミドにクローニングした。P4HA1遺伝子は、小胞体を標的とするために、Kar2リーダー配列の3’末端とHDEL3’末端ペプチド配列に融合された。得られたP4HA1-組み込みプラスミドを図8に示す。ウシP4HB遺伝子を、二重URA3及びHIS3栄養要求性選択マーカー、カナマイシン耐性マーカー、及び大腸菌増殖用の複製のColE1起点を含むサッカロミセス・セレビシエ組み込みプラスミドにクローニングした。P4HB遺伝子は、小胞体を標的とするために、Kar2リーダー配列の3’末端とHDEL3’末端ペプチド配列に融合された。得られたP4HB組み込みプラスミドを図9に示す。
【0146】
酵母菌株の生成。連続形質転換手順を実行して、ゲノムに組み込まれたP4HA1及びP4HBを含む三重形質転換体、及び栄養要求性選択下で維持されたMFa-COL1A1プラスミドを生成した。サッカロミセス・セレビシエ株s288c(MATα SUC2 gal2 mal2 mel flo1 flo8-1 hap1 ho bio1 bio6)(Mortimer RK,Johnston JR.Genealogy of principal strains of the yeast genetic stock center.Genetics.1986 May;113(1):35-43.doi:10.1093/genetics/113.1.35.PMID:3519363;PMCID:PMC1202798.)を、液体YPD培地(1%酵母エキス、2%ペプトン、2%グルコース)でOD600が0.4~0.8になるまで成長させた。次に、酢酸リチウム形質転換法を用いて、酵母をKar2-P4HB-HDELを含むP4HB組み込みプラスミドで形質転換し(Gietz RD,Schiestl RH.High-efficiency yeast transformation using the LiAc/SS carrier DNA/PEG method.Nat Protoc.2007、2(1):31-4.doi:10.1038/nprot.2007.13.PMID:17401334.)、合成完全ウラシルドロッ-プアウト(SC-URA)寒天プレート(アミノ酸を含まない0.67%酵母窒素塩基、2%グルコース、ロイシンを含まない合成ドロップアウト培地サプリメント、2%寒天)にプレーティングした。ウラシル栄養要求性形質転換体を採取し、新しいSC-URAプレート上に再画線し、次いで非選択リッチ培地YPD寒天(1%酵母エキス、2%ペプトン、2%グルコース、2%寒天)上に再度再画線した。次いで、単一の形質転換体を液体YPD中で一晩成長させ、酢酸リチウム法を用いてP4HA1組み込みプラスミドで形質転換し、SC-LEUプレート上にプレーティングした。形質転換体をSC-LEUプレート上に画線し、次にYPDプレート上に再画線した。次いで、P4HA1及びP4HB二重形質転換体をYPD中で成長させ、酢酸リチウム形質転換法を用いて、MFa-COL1A1分泌プラスミドで形質転換し、SC-HISプレートにプレーティングした。形質転換体を採取し、SC-HISプレート上に画線した。最終的な栄養要求性株は、すべての下流用途のための選択ドロップアウトHIS培地内で維持された。
【0147】
分泌されたCOL1A1で足場を作製する。5mLの液体SC-HIS(アミノ酸を含まない0.67酵母窒素塩基、2%グルコース、ヒスチジンを含まない合成ドロップアウト培地サプリメント)に三重形質転換酵母菌株を接種し、30℃で振盪しながら16時間成長させた。アスペルギルス・オリゼ胞子をBFMプレート(0.67%酵母窒素塩基、0.5%グルコン酸、2%寒天)で2~3日間成長させた。アスペルギルス・オリゼ胞子を、滅菌水を使用してプレートから採取した。滅菌水中の酵母とアスペルギルス・オリゼ胞子の等モル混合物を、寒天の上にセロファンの薄膜を重ねたSC-HIS寒天プレート上にプレーティングした。重ねられたセロファンの上に微細なぼやけた層が見えるまで、プレートを30℃で1~2日間インキュベートした。次に、菌糸体ー酵母共生成長構造体をセロファン層から剥がし、50mLのSC-HISを含む滅菌フラスコに移し、振盪せずに30℃で16~24時間インキュベートした。次にフラスコをシェーカーに移し、穏やかに振盪しながら30℃でさらに16~24時間成長させた。次いで、菌糸体ー酵母共生成長を過剰の滅菌水で洗浄することによって採取し、40%エタノールとともに90分間インキュベートした。次いで、足場をPBS中に保存した。平らな足場を、滅菌メスを使用して所望の形状に切断した(データは示さず)。
【0148】
したがって、これらの結果は、本技術の方法が、糸状菌及び複数の遺伝子操作された酵母細胞を含む食用生体材料足場を生成するのに有用であることを実証する。
【0149】
実施例10:分泌型コラーゲン足場を使用した培養肉製品の組み立て
細胞の播種及び成長。実施例9で生成した平らな足場を直径35mmの円に切断し、6ウェル組織培養プレートのウェルに移す。足場を3mLの成長培地(GM:DMEM高グルコース、ピルビン酸不含+10%FBS+1%ペニシリン/ストレプトマイシン)で洗浄する。GM中の4×10^5細胞/mLのQM7細胞の懸濁液3mLを組織培養ウェル内の足場に滴下添加する。足場上の細胞を、5%CO2を含む37℃の加湿インキュベーター内でインキュベートする。3mLの新しいGMを2~3週間隔日で交換する。
【0150】
培養肉製品の組み立て。QM7細胞を含んだ足場を、採取時に滅菌PBSで徹底的に洗浄する。細胞を含んだ足場に、カゼイン+微生物トランスグルタミナーゼ粉末混合物(MooGloo RM)をまぶした。粉をまぶした足場を互いに重ねて三次元形状にする。次いで、塊を37℃で16時間インキュベートして、トランスグルタミナーゼが断片を互いに「接着」できるようにする。培養ウズラ肉製品を、アボカド油を入れた鍋で調理する。
【0151】
結果:これらの実験の結果により、培養肉製品の生成に成功することが期待される。
【0152】
したがって、これらの結果は、本技術の方法が、糸状菌、コラーゲンなどの分泌された外因性タンパク質、、筋芽細胞などの複数の1つ以上の細胞型、を含む食用生体材料足場を含む、細胞ベースの肉製品を生成するのに有用であることを実証する。
【0153】
均等物
本技術は、本出願に記載される特定の実施形態に関して限定されるものではなく、これは本技術の個々の態様の単一の例示として意図される。当業者に明白であろうように、本技術の多くの改変及び変形を、その趣旨及び範囲から逸脱することなく行うことができる。本明細書に列挙されるものに加えて、本技術の範囲内の機能的に等価な方法及び装置が、前述の説明から当業者には明らかであろう。かかる改変及び変形は、添付の特許請求の範囲内に入ることが意図される。本技術は、そのような特許請求の範囲が権利を有する均等物の全範囲とともに、添付の特許請求の範囲の条件によってのみ制限されるべきである。本技術は、特定の方法、試薬、化合物組成物、又は生物学的システムに限定されず、これは、もちろん、変動し得ることが理解されるべきである。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、限定することが意図されないことも理解されるべきである。
【0154】
上記明細書で言及されたそれぞれの出版物及び特許は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。本技術の記載される方法及びシステムの様々な改変及び変形が、本技術の範囲及び趣旨から逸脱することなく、当業者には明らかであろう。本技術は特定の実施形態に関連して説明されてきたが、特許請求される本技術は、そのような特定の実施形態に過度に限定されるべきではない。実際に、本技術を実施するために記載された様式の様々な改変は、当該技術分野及びそれに関連する分野における当業者には明らかであり、以下の特許請求の範囲内であることが意図される。
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
【国際調査報告】