(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-19
(54)【発明の名称】赤外検出器及びその作製方法
(51)【国際特許分類】
H10F 30/223 20250101AFI20250212BHJP
B82Y 30/00 20110101ALI20250212BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20250212BHJP
【FI】
H10F30/223
B82Y30/00
B82Y40/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024545247
(86)(22)【出願日】2022-01-27
(85)【翻訳文提出日】2024-07-26
(86)【国際出願番号】 CN2022074382
(87)【国際公開番号】W WO2023141895
(87)【国際公開日】2023-08-03
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524283523
【氏名又は名称】成都英飛睿技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】INFIRAY TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】9 Shuangxing Avenue, Huangjia Road, South West Airport Economic and Development Area, Shuangliu District Chengdu, Sichuan 610000, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】劉 ▲るぅ▼
(72)【発明者】
【氏名】周 勲
(72)【発明者】
【氏名】▲ざん▼ ▲うぇん▼慧
【テーマコード(参考)】
5F149
【Fターム(参考)】
5F149AA04
5F149AB07
5F149BA05
5F149CB03
5F149CB04
5F149CB14
5F149DA02
5F149DA28
5F149DA30
5F149DA35
5F149FA05
5F149GA06
5F149LA01
5F149XB18
5F149XB24
5F149XB37
(57)【要約】
赤外検出器及びその作製方法を提供し、赤外検出器は、主に、第1コンタクト層(800)と、第2コンタクト層(300)と、第1コンタクト層と第2コンタクト層との間に位置する吸収層(400)及びバリア複合層とを含む。そのうち、バリア複合層は、順次隣接するとともに、何れも広バンドギャップ半導体材料である真性層(500)、電界制御層(600)及びブロック層(700)を含み、真性層は、狭バンドギャップ半導体材料である吸収層に隣接する。そして、吸収層のドープタイプは、N型ドープであり、電界制御層及びブロック層は、何れもP型ドープであるため、バリア複合層と吸収層とによってPIN構造を形成して、赤外検出器の空乏層を広バンドギャップの真性層内に移行させることができ、検出器の発生・再結合電流を効果的に抑制した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外検出器であって、第1コンタクト層と、第2コンタクト層と、前記第1コンタクト層と第2コンタクト層との間に位置する吸収層及びバリア複合層とを含み、
前記吸収層は、N型ドープの狭バンドギャップ半導体材料層であり、
前記バリア複合層は、順次隣接する真性層、電界制御層及びブロック層を含み、前記真性層は、前記吸収層に隣接し、且つ広バンドギャップ半導体材料層であり、前記電界制御層及び前記ブロック層は、何れもP型ドープの広バンドギャップ半導体材料層である、ことを特徴とする赤外検出器。
【請求項2】
基板と、バッファ層とを更に含み、
前記基板は、N型ドープInP基板又は半絶縁型InP基板であり、
前記バッファ層は、広バンドギャップ半導体材料層であり、
前記バッファ層は、前記第2コンタクト層と前記基板との間に位置し、前記吸収層は、前記第2コンタクト層の前記バッファ層とは反対側に位置する、ことを特徴とする請求項1に記載の赤外検出器。
【請求項3】
前記第1コンタクト層は、前記ブロック層に隣接し、且つP型ドープの狭バンドギャップ半導体材料層であり、
前記第2コンタクト層は、前記吸収層に隣接し、且つN型ドープの広バンドギャップ半導体材料層であり、且つ前記第2コンタクト層のドープ濃度は、前記吸収層のドープ濃度よりも大きい、ことを特徴とする請求項2に記載の赤外検出器。
【請求項4】
前記真性層の伝導帯下端エネルギー、前記電界制御層の伝導帯下端エネルギー、前記ブロック層の伝導帯下端エネルギーは順次増加し、
前記ブロック層の禁制帯幅は、前記電界制御層の禁制帯幅よりも大きく、前記電界制御層の禁制帯幅は、前記真性層の禁制帯幅以上である、ことを特徴とする請求項3に記載の赤外検出器。
【請求項5】
前記吸収層は、InGaAs層又はInGaAs/GaAsSbタイプII超格子層である、ことを特徴とする請求項1に記載の赤外検出器。
【請求項6】
前記真性層及び前記電界制御層は、何れも広バンドギャップアンチモン化物半導体材料層であり、前記真性層内のアンチモン成分は、前記吸収層の格子に整合するものとされる、ことを特徴とする請求項5に記載の赤外検出器。
【請求項7】
前記真性層は、AlGaAsSb層であり、
前記電界制御層は、AlGaAsSb層又はInP層であり、
前記ブロック層は、AlAsSb層、InAlAs層、InP層、InAsP層のうち、少なくとも1つであり、
前記第1コンタクト層は、InGaAs層又はGaAsSb層であり、
前記第2コンタクト層は、InP層又はInAlAs層である、ことを特徴とする請求項6に記載の赤外検出器。
【請求項8】
前記第1コンタクト層は、In
xGa
1-xAs層又はGaAs
ySb
1-y層であり、前記第1コンタクト層のドープされたアクセプタ濃度は、2E+18cm
-3以上であり、前記第1コンタクト層の厚さは、0.05~0.2μmであり、
前記吸収層は、シリコン又はイオウをドープしたIn
xGa
1-xAs層であり、前記In
xGa
1-xAs層の厚さは、2.0~3.0μmであるか、又は、前記吸収層は、In
0.53Ga
0.47As/GaAs
ySb
1-yタイプII超格子層であり、そのうち、前記In
0.53Ga
0.47As/GaAs
ySb
1-yタイプII超格子層のIn
0.53Ga
0.47As井戸層の厚さは、4~7nmであり、GaAs
ySb
1-yバリア層の厚さは、4~7nmであり、前記In
0.53Ga
0.47As/GaAs
ySb
1-yタイプII超格子層の周期数は、150~300であり、
前記真性層及び前記電界制御層は、何れもAl
zGa
1-zAs
ySb
1-y層であり、前記真性層の厚さは、0.3~1.0μmであり、且つ前記真性層のバックグラウンドキャリア濃度は、1~10E+15cm
-3であり、前記電界制御層の厚さは、0.2~0.8μmであり、前記電界制御層のドープされたアクセプタ濃度は、0.5~5E+17cm
-3であり、
前記ブロック層は、AlAs
ySb
1-y層であり、前記ブロック層のドープされたアクセプタ濃度は、0.5~2E+18cm
-3であり、前記ブロック層の厚さは、0.5~2.0μmであり、
前記第2コンタクト層は、シリコン又はイオウをドープしたInP層又はInAlAs層であり、前記第2コンタクト層のドープされたドナー濃度は、2~8E+18cm
-3であり、前記第2コンタクト層の厚さは、0.2~1.0μmであり、
そのうち、前記x、y、zの範囲は、それぞれ0.47≦x≦0.82、0.47≦y≦0.51、0.2≦z≦0.5である、ことを特徴とする請求項7に記載の赤外検出器。
【請求項9】
パッシベーション層と、第1電極と、第2電極とを更に含み、
前記パッシベーション層は、少なくとも一部が前記第1コンタクト層の前記ブロック層とは反対側に位置し、且つ第1タイプの開口及び第2タイプの開口を有し、
前記第1タイプの開口により、前記第1コンタクト層が露出され、前記第2タイプの開口により、前記第1コンタクト層、前記バリア複合層、前記吸収層を順次通過して前記第2コンタクト層で止まる電極トレンチが露出され、
前記第1電極は、前記第1タイプの開口を通過して前記第1コンタクト層とオーミック接触を形成し、
前記第2電極は、前記電極トレンチを通過して前記第2コンタクト層とオーミック接触を形成する、ことを特徴とする請求項1~8の何れか一項に記載の赤外検出器。
【請求項10】
前記第1コンタクト層及び前記バリア複合層は、メサトレンチにより、前記吸収層に設けられた複数のメサに仕切られ、前記メサトレンチは、前記第1コンタクト層の表面から、前記吸収層の表面まで延在し、
前記パッシベーション層は、前記第1コンタクト層の前記ブロック層とは反対側から、前記メサトレンチの側壁及び底部まで延在する、ことを特徴とする請求項9に記載の赤外検出器。
【請求項11】
請求項1に記載の赤外検出器の作製方法であって、
基板上に第2コンタクト層をエピタキシャル成長させることと、
前記第2コンタクト層上にN型ドープの狭バンドギャップ半導体材料をエピタキシャル成長させて、吸収層を形成することと、
前記吸収層上に真性層、電界制御層及びブロック層を順次エピタキシャル成長させて、バリア複合層を形成し、前記真性層が広バンドギャップ半導体材料層であり、前記電界制御層及び前記ブロック層が何れもP型ドープの広バンドギャップ半導体材料層であることと、
前記ブロック層上に第1コンタクト層をエピタキシャル成長させることとを含む、ことを特徴とする作製方法。
【請求項12】
上述の前記基板上に第2コンタクト層をエピタキシャル成長させることの前に、前記作製方法は、
前記基板上にバッファ層をエピタキシャル成長させることを更に含み、
前記基板上に第2コンタクト層をエピタキシャル成長させることは、
前記基板上のバッファ層上に第2コンタクト層をエピタキシャル成長させることを含み、
上述の前記ブロック層上に第1コンタクト層をエピタキシャル成長させることの後に、前記作製方法は、
前記第1コンタクト層及び前記バリア複合層をエッチングして、メサトレンチにより仕切られたメサを形成することと、
前記メサに表面パッシベーションプロセスを実行して、前記メサを被覆するパッシベーション層を形成することと、
前記パッシベーション層をエッチングして前記第2タイプの開口を形成し、前記第2タイプの開口を経由してエッチングして前記電極トレンチを形成することと、
前記パッシベーション層をエッチングして、前記第1タイプの開口を形成することと、
前記第1コンタクト層とオーミック接触を形成する第1電極、及び、前記第2コンタクト層とオーミック接触を形成する第2電極をそれぞれ形成することとを更に含む、ことを特徴とする請求項11に記載の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、半導体技術の分野に関し、特に、赤外検出器及びその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
短波赤外検出は、他の波長検出に比べて、可視光の反射型結像と同様に細部を分解可能な能力を持ちながら、不可視光の検出能力を持ち、はっきりでかけがえのない結像優位性を持っており、多くの分野で広く応用可能である。
【0003】
一般的な短波赤外検出器としては、主に、InGaAs(インジウムガリウム砒素)と、HgCdTe(水銀カドミウムテルル)との2種類の材料をベースとして作製された検出器がある。そのうち、InGaAs検出器は、1.7μm以下の波長でパフォーマンスが優れており、且つ材料の成熟度が継続的に向上するにつれて、拡張カットオフ波長(1.7μm≦λc≦2.5μm)の帯域範囲では、InGaAs検出器の性能は、既にHgCdTe検出器の性能に匹敵するようになっている。また、Sb(アンチモン)化物をベースとした短波赤外タイプII超格子(type-II superlattice、T2SL)技術も近年急速に発展しており、特にInPベースのInGaAs/GaAsSb(インジウムガリウム砒素/ガリウム砒素アンチモン)系T2SLは、2.5μm以下の帯域に応答できるだけでなく、その暗電流レベルが既に同じ動作温度でのHgCdTeよりも優れている。性能、コスト、製造可能性等の面から総合的に考慮すると、InGaAs検出器及びInPベースのT2SL検出器は、これから最も応用価値のある短波赤外検出器になる。
【0004】
既存技術では、InGaAs検出器は、PIN構造(P型半導体層とN型半導体層との間に真性半導体層が挟まれた構造)を用いることが多いが、カットオフ波長の拡張という応用需要に伴い、吸収層内のInの成分を増加させる必要がある。しかしながら、In成分の多いInGaAs材料の欠陥は徐々に増加し、バルク暗電流の支配的なメカニズムが拡散から発生・再結合メカニズムに変わり、このとき、狭バンドギャップの吸収層が空乏化すると、検出器の暗電流が著しく増大してしまう。InPベースのInGaAs/GaAsSbタイプII超格子検出器にとっては、吸収層内の発生・再結合を抑制することも、暗電流レベルを低減する重要な手法である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
既存の技術的問題を解決するために、本発明の実施例は、暗電流を低減可能な赤外検出器及びその作製方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施例の第1様態には、赤外検出器であって、第1コンタクト層と、第2コンタクト層と、前記第1コンタクト層と第2コンタクト層との間に位置する吸収層及びバリア複合層とを含み、
前記吸収層は、N型ドープの狭バンドギャップ半導体材料層であり、
前記バリア複合層は、順次隣接する真性層、電界制御層及びブロック層を含み、前記真性層は、前記吸収層に隣接し、且つ広バンドギャップ半導体材料層であり、前記電界制御層及び前記ブロック層は、何れもP型ドープの広バンドギャップ半導体材料層である、赤外検出器が提供されている。
【0007】
本発明の実施例の第2様態には、上記に記載の赤外検出器の作製方法であって、
基板上に第2コンタクト層をエピタキシャル成長させることと、
前記第2コンタクト層上にN型ドープの狭バンドギャップ半導体材料をエピタキシャル成長させて、吸収層を形成することと、
前記吸収層上に真性層、電界制御層及びブロック層を順次エピタキシャル成長させて、バリア複合層を形成し、前記真性層が広バンドギャップ半導体材料層であり、前記電界制御層及び前記ブロック層が何れもP型ドープの広バンドギャップ半導体材料層であることと、
前記ブロック層上に第1コンタクト層をエピタキシャル成長させることとを含む、作製方法が提供されている。
【発明の効果】
【0008】
上記実施例で提供された本願による赤外検出器及びその作製方法において、赤外検出器は、主に、第1コンタクト層と、第2コンタクト層と、前記第1コンタクト層と第2コンタクト層との間に位置する吸収層及びバリア複合層とを含む。そのうち、バリア複合層は、順次隣接するとともに、何れも広バンドギャップ半導体材料である真性層、電界制御層及びブロック層を含み、真性層は、狭バンドギャップ半導体材料である吸収層に隣接する。そして、吸収層のドープタイプは、N型ドープであり、電界制御層及びブロック層は、何れもP型ドープであるため、バリア複合層と吸収層とによってPIN構造を形成して、赤外検出器の空乏層を広バンドギャップの真性層内に移行させることができ、検出器の発生・再結合電流を効果的に抑制する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本願のいくつかの実施例による赤外検出器の模式図である。
【
図2】
図2は、本願のいくつかの実施例による赤外検出器の模式図である。
【
図3】
図3は、本願のいくつかの実施例による赤外検出器の模式図である。
【
図4】
図4は、本願のいくつかの実施例による赤外検出器のエネルギーバンドシーケンスの模式図である。
【
図5】
図5は、本願のいくつかの実施例による赤外検出器の模式図である。
【
図6】
図6は、本願のいくつかの実施例による赤外検出器の作製フローの模式図である。
【
図7】
図7は、本願のいくつかの実施例による赤外検出器の作製フローの模式図である。
【
図8a-8e】
図8a~8eは、本願のいくつかの実施例による赤外検出器の作製フロー中に形成される各中間構造の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面及び具体的な実施例を参照して、本願の技術態様を更に詳しく述べる。
【0011】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般的に理解される意味と同じである。本願の説明において本願の明細書で使用される用語は、具体的な実施例を記述することのみを目的としており、本願の実現形態を制限することを意図するものではない。本明細書で使用される「及び/又は」という用語は、1つ又は複数の関連列挙項目的任意及び全部の組み合わせを含む。
【0012】
本願の記述において、理解すべきなのは、「中心」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「鉛直」、「水平」、「頂」、「底」、「内」、「外」等の用語により指し示された方位や位置関係は、図面に基づいて示された方位や位置関係であり、本願の記述の便宜及び記述の簡略化のためのものに過ぎず、言及された装置や素子が特定の方位を有し、特定の方位で構成及び操作されなければならないことを指示又は暗示するものではないため、本開示を制限するものとして理解されてはならない。本願の記述において、特に断りのない限り、「複数」の意味は、2つ又はそれ以上である。
【0013】
本願の発明者は、研究の過程では、従来のPIN構造を用いた拡張波長の短波赤外検出器に上記のような問題があることを見い出し、更に、nBnユニポーラバリア構造を用いてInGaAs検出器及びInPベースのT2SL検出器の暗電流の問題を解決するような方式では、エネルギーバンドのタイプ及びバリア層の真性バックグラウンド濃度のレベルの制約により、理想的なユニポーラバリアを形成することが難しく、暗電流の低減効果が顕著ではないことを見い出した。そこで、本願の発明者は、短波赤外検出に応用可能であり、特に拡張カットオフ波長のInGaAs検出器又はInPベースのInGaAs/GaAsSbタイプII超格子検出器に適した新しい赤外検出構造を提供するようにした。無論、本発明による赤外検出器は、適切な材料を選択した上で、他の波長タイプの検出器にも応用可能である。
【0014】
図1~
図3及び
図5は、それぞれ、本願の異なる実施例による赤外検出器の模式図を示しており、
図4は、本願による赤外検出器の構造のエネルギーバンドシーケンスの模式図であり、
図6及び
図7は、本願の異なる実施例による赤外検出器の作製フローの模式図であり、
図8a~8eは、本願の実施例による赤外検出器の作製フロー中に形成される各中間構造の模式図である。以下、上記の各図面を参照して、本願による赤外検出器及びその作製方法を詳しく述べる。
【0015】
図1を参照して、いくつかの実施例において、赤外検出器は、第1コンタクト層800と、第2コンタクト層300と、第1コンタクト層800と第2コンタクト層300との間に位置する吸収層400及びバリア複合層とを含む。そのうち、当該バリア複合層は、順次隣接する真性層500、電界制御層600及びブロック層700を含む。
【0016】
真性層500は、吸収層400に隣接し、即ち吸収層400の第1側に位置し、真性層500は、広バンドギャップ半導体材料とされ、即ち、その禁制帯幅は、少なくとも入射エネルギーの禁制帯幅よりも大きいとされる。
【0017】
電界制御層600は、真性層500の吸収層400とは反対側に位置し、真性層500は、対向する第1側及び第2側を含み、その第2側が吸収層400の第1側に接触し、その第1側が電界制御層600に隣接する。電界制御層600は、吸収層400とは逆のドープタイプを有し、主に、吸収層400内の少数キャリアが吸収層400と真性層500との境界面に蓄積されるのを阻止するために使用され、即ち電界制御層600は、吸収層400と真性層500との境界面に存在するバリアであって、吸収層400内の少数キャリアの輸送を遮断又は妨害する少数キャリアバリアを除去又は低減して、吸収層400内の少数キャリアが吸収層400と真性層500との境界面付近に蓄積されることを回避するためのものである。
【0018】
ブロック層700は、電界制御層600とは同一のドープタイプを有し、且つそのドープ濃度が電界制御層600のドープ濃度よりも大きく、即ちブロック層700は、電界制御層600に比べて高濃度ドープであり、電界制御層600は、低濃度ドープである。吸収層400のドープタイプは、N型ドープであり、電界制御層600及びブロック層700のドープタイプは、P型ドープである。ブロック層700は、検出器の表面暗電流を低減するためのものであり、広禁制帯材料の選択が必要となる。
【0019】
説明すべきなのは、赤外検出器の入射光内の光子は、吸収層400に進入した後、吸収層400によって吸収されることで、光生成キャリアが発生される。したがって、吸収層400の禁制帯幅は、入射光子のエネルギー以下とされる。吸収層400は、真性層500に比べて狭バンドギャップ半導体層であり、真性層500は、吸収層400に比べて広バンドギャップ半導体層である。即ち、吸収層400は、狭バンドギャップ半導体材料層であり、真性層500、電界制御層600、ブロック層700は、何れも広バンドギャップ半導体材料層である。また、本願において、多数キャリアとは、電子及び正孔の一方を指し、少数キャリアとは、電子及び正孔の他方を指す。例えば、N型ドープの吸収層にとっては、その多数キャリアが電子、少数キャリアが正孔となり、P型ドープの吸収層にとっては、その多数キャリアが正孔、少数キャリアが電子となる。
【0020】
真性層500の両側にそれぞれ位置する吸収層400と電界制御層600とのドープタイプが異なり、ブロック層700のドープタイプと電界制御層のドープタイプとが同じであることで、ブロック層、電界制御層600、真性層500及び吸収層400によって1つのPIN構造が構成されており、PIN構造の原理から分かるように、当該構造の空乏層は、中間の真性層500内に位置することになる。真性層500は、その禁制帯幅が入射光子のエネルギーよりも大きく、吸収層400に比べて広バンドギャップ材料であるため、赤外検出器の発生・再結合電流を効果的に低減することができ、即ち検出器の暗電流を低減する。その理由としては、発生・再結合メカニズムが主に空乏層(空間電荷層)内で起こり、空乏層内の発生・再結合電流が真性キャリアの濃度に正比例し、真性キャリアの濃度が禁制帯幅に反比例するため、本願では、バリア複合層と吸収層400とによって形成されたPIN構造を通じて、空乏層を完全に広バンドギャップの真性層500内に移行させることができ、その結果、発生・再結合電流を低減できる。そして、真性層500に隣接する電界制御層は、低濃度ドープに設定されることで、そのドープ過程が真性層に悪影響をほとんど及ぼさなくなるとともに、真性層500と吸収層400との境界面に形成された少数キャリアバリアを除去するためにも使用され、真性層500と吸収層400との境界面における少数キャリアの蓄積が阻止され、吸収層400内の少数キャリアの輸送の改善に有利となる。したがって、電界制御層600は、真性層500におけるブロック層700に近い側の空乏層バリア幅を改善し、トンネル破壊の確率を低減することができる。一方、ブロック層700は、電界制御層600よりも真性層400から遠いため、電界制御層600に対して高濃度ドープであり、第1コンタクト層800の表面でのリークを効果的に抑制できる。
【0021】
本願による赤外検出器において、吸収層400のドープタイプは、N型ドープであり、電界制御層600及びブロック層700のドープタイプは、何れもP型ドープである。すると、本願による赤外検出器は、P-Bp-B2-N型赤外検出器となり、そのうち、P-Bp-B2-N内のPとは、P型ドープの第1コンタクト層800を指し、P-Bp-B2-N内のBpとは、P型ドープのブロック層700を指し、B2とは、電界制御層600と真性層500とによって構成された二重バリア層を指し、P-Bp-B2-N内のBp-B2とは、本願によるバリア複合層を指し、P-Bp-B2-N内のNとは、Nドープタイプの吸収層400を指す。したがって、本実施例において、吸収層400内の多数キャリアが電子、少数キャリアが正孔となる。Bp-B2バリア複合層は、吸収層400に隣接する真性層と、吸収層400とはドープタイプが逆となる電界制御層600及びブロック層700とを含むことで、P-Bp-B2-N構造は、PIN構造の機能を有することになり、即ち空乏層は、完全に真性層500内に位置することになる。そして、Bp-B2バリア複合層が吸収層400内の電子バリア層であるため、P-Bp-B2-N型赤外検出器は、PBNユニポーラバリア構造(P型コンタクト層とN型吸収層との間に電子バリアB層が設けられた構造)の機能も有する。
【0022】
上記から分かるように、本願による赤外検出器は、主に、第1コンタクト層と、第2コンタクト層と、前記第1コンタクト層と第2コンタクト層との間に位置する吸収層及びバリア複合層とを含む。そのうち、バリア複合層は、順次隣接するとともに、何れも広バンドギャップ半導体材料である真性層、電界制御層及びブロック層を含み、真性層は、狭バンドギャップ半導体材料である吸収層に隣接する。そして、吸収層のドープタイプは、N型ドープであり、電界制御層及びブロック層は、何れもP型ドープであるため、バリア複合層と吸収層とによってPIN構造を形成して、赤外検出器の空乏層を広バンドギャップの真性層内に移行させることができ、検出器内の発生・再結合電流を抑制して、赤外検出器の暗電流を効果的に減少した。また、電界制御層600は、吸収層400内の少数キャリアが真性層500内に蓄積されるのを効果的に回避できるとともに、真性層500内の電荷分布をコントロールできるため、赤外検出器の検出性能を更に向上させる。
【0023】
いくつかの実施例において、
図2に示すように、本願による赤外検出器は、基板100と、バッファ層200とを更に含む。そのうち、バッファ層200は、基板100と第2コンタクト層300との間に位置し、具体的に、バッファ層200は、基板100の一方側に位置し、例えば、基板100は、対向する第1側及び第2側を含み、バッファ層200の第2側は、基板100の第1側に接触し、バッファ層200の基板100の第1側とは反対側は、第2側となる。第2コンタクト層300は、バッファ層200の基板100とは反対側に位置し、即ちバッファ層200の第2側は、第2コンタクト層300に接触する。
【0024】
第2コンタクト層300は、そのドープタイプが吸収層400のドープタイプと同じであり、且つそのドープ濃度が吸収層400のドープ濃度よりも大きい。したがって、第2コンタクト層300は、吸収層400に比べて高濃度ドープ型半導体層であり、吸収層400は、低濃度ドープ型半導体層である。また、いくつかの実施例において、基板100の第2側は、入射光子の入射側であり、即ち対応する赤外検出器は、裏面照射型赤外検出器である。すると、入射光子が吸収層400に入射される前に他の各半導体層によって吸収されてしまうことを回避するために、バッファ層200及び第2コンタクト層300の禁制帯幅は、何れも入射光子のエネルギーよりも大きくされる必要があり、即ちバッファ層200及び第2コンタクト層300は、何れも広バンドギャップ半導体材料層とされ、また、基板100も、広バンドギャップ半導体材料とされ、その禁制帯幅も入射光子のエネルギーよりも大きくされる。
【0025】
図4は、本願によるP-Bp-B2-N型赤外検出器における第1コンタクト層800、バリア複合層、吸収層及び第2コンタクト層のエネルギーバンドシーケンスの模式図である。
図4において、縦座標は、価電子帯上端EV及び伝導帯下端ECのポテンシャルエネルギーであり、横座標は、P-Bp-B2-N型赤外検出器の各機能層の厚さである。
【0026】
図4に示すように、いくつかの実施例において、真性層500の伝導帯下端エネルギー、電界制御層600の伝導帯下端エネルギー、ブロック層700の伝導帯下端エネルギーは順次増加し、即ち真性層500の伝導帯下端エネルギーと吸収層400の伝導帯下端エネルギーとの差、電界制御層600の伝導帯下端エネルギーと吸収層400の伝導帯下端エネルギーとの差、ブロック層700の伝導帯下端エネルギーと吸収層400の伝導帯下端エネルギーとの差は順次増加し、バリア複合層の各機能層の機能をそれぞれ最適化できる。したがって、いくつかの実施例において、ブロック層700の禁制帯幅は、電界制御層600の禁制帯幅及び真性層500の禁制帯幅のそれぞれよりも大きくなる。真性層500、ブロック層600は、吸収層400に比べて、何れも広バンドギャップ材料であり、即ち真性層500、ブロック層600の禁制帯幅は、何れも入射光子のエネルギーよりも大きくされる必要がある。
【0027】
また、本願の実施例において、
図4に示すように、吸収層400内の少数キャリアは、真性層500、電界制御層600、ブロック層700の価電子帯上端を順次経由して第1コンタクト層800内に輸送される。その理由としては、電界制御層600が真性層500内の電界をコントロールできることで、真性層500内の最も低い価電子帯上端エネルギーが吸収層400の価電子帯下端エネルギーに比べて増加するため、吸収層400と真性層500との境界面領域における少数キャリアの蓄積を除去でき、その結果、吸収層400内の少数キャリアは、スムーズに各層の価電子帯上端を通過して第1コンタクト層800内に輸送される。
【0028】
さらに、いくつかの実施例において、第1コンタクト層800は、狭バンドギャップ半導体材料層であり、例えば、第1コンタクト層800の禁制帯幅は、真性層500の禁制帯幅よりも小さく、即ち第1コンタクト層800は、真性層500に比べて狭バンドギャップ半導体材料層である。
【0029】
いくつかの実施例において、本願による赤外検出器の性能を更に最適化するために、ブロック層700の厚さを真性層500の厚さ以上に設計し、真性層500の厚さを電界制御層600の厚さ以上に設計してもよい。ただし、説明すべきなのは、他の実施例において、ブロック層700と、電界制御層600と、真性層500との厚さ関係は限定されなく、実際の応用需要に応じて調整することが可能である。
【0030】
図4を参照して、電界制御層及び真性層における一点鎖線である破線は、バリア複合層にブロック層及び真性層のみが含まれて電界制御層が含まれない構造に対応する真性層のエネルギーバンドであり、電界制御層がある場合の真性層のエネルギーバンド(実線)に比べて大きく凹んでいることが明らかであり、これによって、吸収層内の少数キャリアの全てがこの凹みに蓄積されることになり、少数キャリアキャリアの輸送に不利であり、また、もし電界制御層を追加しないと、逆バイアスの場合は、真性層におけるブロック層に近い側にも、トンネル破壊現象が発生し易くなる。
図4には、同図における一点鎖線ではない別の破線により、本願によるP-Bp-B2-N型赤外検出器に逆バイアス電圧が印加された場合の真性層のエネルギーバンド構造も模式的に示されている。
【0031】
図3に示すように、いくつかの実施例において、本願による赤外検出器は、基板から第1コンタクト層に向かって、InP基板100、広バンドギャップバッファ層200、N
+型第2コンタクト層300、N
-型吸収層400、広バンドギャップの真性層500、P
-型電界制御層600、P
+型ブロック層700及びP
+型第1コンタクト層800を順次含む。そのうち、本願において、N
-は、N
+に比べて低濃度ドープであり、N
+は、N
-に比べて高濃度ドープであり、P
-は、P
+に比べて低濃度ドープであり、P
+は、P
-に比べて高濃度ドープである。
【0032】
本願によるP-Bp-B2-N型赤外検出器は、InGaAs短波赤外検出器又はInGaAs/GaAsSbタイプII超格子短波赤外検出器に適し、特に拡張波長のInGaAs短波赤外検出器又はInGaAs/GaAsSbタイプII超格子短波赤外検出器に適しており、即ち吸収層内のInの成分が比較的高い。
【0033】
いくつかの実施例において、真性層500及び電界制御層600は、何れも広バンドギャップアンチモン(Sb)化物半導体材料層であり、前記真性層内のアンチモン成分は、前記吸収層の格子に整合するものとされる。
【0034】
具体的に、いくつかの実施例において、吸収層400は、InxGa1-xAs層であり、そのうち、0.47≦x≦0.82である。吸収層400は、N型Si(シリコン)又はS(イオウ)を低濃度ドープしたN-吸収層であり、ドープされたドナー濃度は、0.5~5E+17cm-3であり、N-型のInxGa1-xAs吸収層の厚さは、2.0~3.0μmである。
【0035】
いくつかの実施例において、吸収層400は、In0.53Ga0.47As/GaAsySb1-yタイプII超格子層であり、そのうち、In0.53Ga0.47As井戸層の厚さは、4~7nmであり、GaAsySb1-yバリア層の厚さは、4~7nmであり、成分yの範囲は、0.47≦y≦0.51であり、周期数は、150~300である。
【0036】
いくつかの実施例において、真性層500及び電界制御層600は、何れも禁制帯幅が所定値よりも大きくなるSb含有化合物半導体層であり、即ち真性層は、Sbを含む広バンドギャップ半導体層である。
【0037】
具体的に、真性層500は、AlzGa1-zAsySb1-y層であり、そのうち、Al成分zの範囲は、0.2≦z≦0.5であり、真性層500の厚さは、0.3~1.0μmであり、且つそのバックグラウンドキャリア濃度は、1~10E+15cm-3である。吸収層が上記InxGa1-xAs層である場合、真性層500内のSb成分は、吸収層との間で格子が整合するように、即ち真性層と吸収層との間の格子不整合率が最大許容不整合率よりも低くなることを確保されるように所定成分に調節される。
【0038】
具体的に、いくつかの実施例において、電界制御層600は、低濃度ドープのP-型AlzGa1-zAsySb1-y層であり、その成分がN-型AlzGa1-zAsySb1-y真性層と同じであり、その厚さが0.2~0.8μmであり、ドープされたアクセプタ濃度が0.5~5E+17cm-3である。他の実施例において、電界制御層は、広バンドギャップのInP層であってもよい。
【0039】
いくつかの実施例において、ブロック層700は、AlAsSb層、InAlAs層、InP層、InAsP層のうち、少なくとも1つであり、具体的に、本実施例において、ブロック層700は、P+型AlAsySb1-y層であり、その厚さが0.5~2.0μmであり、ドープされたアクセプタ濃度が0.5~2E+18cm-3である。
【0040】
引き続き
図3を参照して、具体的に、いくつかの実施例において、第1コンタクト層は、P
+型In
xGa
1-xAs層又はGaAs
ySb
1-y層であり、成分yの範囲は、0.47≦y≦0.51であり、そのドープされたアクセプタ濃度は、2E+18cm
-3以上であり、その厚さは、0.05~0.2μmである。第2コンタクト層300は、N
+型の広バンドギャップのInP層又はInAlAs層であり、Si又はSを高濃度ドープしたものとされ、ドープされたドナー濃度は、2~8E+18cm
-3であり、その厚さは、0.2~1.0μmである。また、基板100は、単結晶のN型又は半絶縁型InP基板である。バッファ層200は、広バンドギャップ半導体材料層であり、例えば、InAsP層、InP層、InAlAs層のうち、少なくとも1つから選択されたものであってもよい。
【0041】
図5に示すように、いくつかの実施例において、本願による赤外検出器は、パッシベーション層9012と、第1電極903と、第2電極902とを更に含む。パッシベーション層9012は、その一部が第1コンタクト層800のブロック層700とは反対側に位置し、且つ第1タイプの開口(例えば、
図8eにおけるT4)及び第2タイプの開口(例えば、
図8dにおけるT3)を有する。第1タイプの開口により、第1コンタクト層800が露出され、第2タイプの開口により、第1コンタクト層800、バリア複合層、吸収層400を順次通過して第2コンタクト層300で止まる電極トレンチ(例えば、
図8eにおける右側の深トレンチ)が露出される。第1電極903は、第1タイプの開口を通過して第1コンタクト層800とオーミック接触を形成し、第2電極902は、電極トレンチを通過して第2コンタクト層300とオーミック接触を形成する。そのうち、パッシベーション層は、SiN
x、Al
2O
3、SiO
2のうち、少なくとも1つから選択されたものであり、第1電極及び第2電極は、何れもCr/Au又はTi/Pt/Au多層金属電極である。
【0042】
引き続き
図5を参照して、いくつかの実施例において、第1コンタクト層800及び前記バリア複合層は、メサトレンチ(例えば、
図8bにおけるT2)により、吸収層400に設けられた複数のメサに仕切られ、メサトレンチは、第1コンタクト層800の表面から、吸収層400の表面まで延在し、且つパッシベーション層9012は、第1コンタクト層800のブロック層700とは反対側から、メサトレンチの側壁及び底部まで延在することで、メサの露出部分が被覆され、第1電極及び第2電極のみが露出される。
【0043】
上記から分かるように、本願の各実施例による赤外検出器は、以下の有益な効果を奏することができる。
1、広バンドギャップのSb化合物をバリアとして用いるとともに、真性層と、電界制御層との二重のSb化合物をバリアとして導入することで、空乏領域を狭バンドギャップ吸収層から広バンドギャップバリア領域に移行させることができるため、吸収層が拡散メカニズムによって支配され、バルク内の発生・再結合暗電流が大幅に低減される。
2、バリア複合層内に電界制御層を設けることで、構造の配置自由度が向上されており、キャリアの収集効率を改善できるだけでなく、空乏領域としての真性層のトンネル破壊暗電流を効果的に制御することもできる。
3、広バンドギャップのバリア複合層の設計により、表面暗電流を効果的に抑制できる。
【0044】
また、本願は、本願の一実施例による赤外検出器の作製方法を更に提供しており、その作製方法のフロー模式図が
図6に示されるようになり、本実施例において、前記作製方法は、ステップS1、S2、S3及びS4を含む。
【0045】
S1:基板上に第2コンタクト層をエピタキシャル成長させる。
【0046】
S2:前記第2コンタクト層上にN型ドープの狭バンドギャップ半導体材料をエピタキシャル成長させて、吸収層を形成する。
【0047】
S3:前記吸収層上に真性層、電界制御層及びブロック層を順次エピタキシャル成長させて、バリア複合層を形成し、前記真性層が広バンドギャップ半導体材料層であり、前記電界制御層及び前記ブロック層が何れもP型ドープの広バンドギャップ半導体材料層である。
【0048】
S4:前記ブロック層上に第1コンタクト層をエピタキシャル成長させる。
【0049】
図7は、本願の別の実施例による赤外検出器の作製方法フローの模式図であり、その各ステップで形成される中間構造については、
図8a~8eを参照可能である。本実施例において、S1の前に、前記作製方法は、前記基板上にバッファ層をエピタキシャル成長させるステップS0を更に含み、この点で
図6と相違する。すると、本実施例において、S1は、具体的に、前記基板上のバッファ層上に第2コンタクト層をエピタキシャル成長させることになる。
【0050】
具体的に、MOCVD(Metal-organic Chemical Vapor Deposition、金属有機化合物化学気相堆積)又はMBE(Molecular beam epitaxy、分子線エピタキシー)技術を用いて、N型又は半絶縁型InP単結晶基板上に各機能層を順次エピタキシャル成長させ、即ち前記基板上にバッファ層、第2コンタクト層、吸収層、バリア複合層及び第2コンタクト層を順次エピタキシャル成長させろと、
図2に示すような構造が形成される。
【0051】
また、引き続き
図7を参照して、本実施例において、S0及び
図6におけるS1~S4の他に、前記作製方法は、S4の後に実行されるS5~S9を更に含み、各ステップは、具体的に以下の通りである。
S5:第1コンタクト層及びバリア複合層を順次エッチングして、メサトレンチにより仕切られたメサを形成する。
【0052】
具体的に、
図8aに示すように、まず、第1コンタクト層800の表面にエッチングマスク層9011を形成し、例えばフォトレジスト又はSiO
2、SiN
x誘電体膜を利用して、開口T1を有するエッチングマスク層9011を製作し、前記開口T1は、メサトレンチの位置する領域を露出させる。ウェットやドライエッチング方法で、メサトレンチの位置する領域における第1コンタクト層800及びバリア複合層(ブロック層700、電界制御層600、真性層500)を順次エッチングして除去するとともに、エッチングを吸収層400の表面で停止することで、
図8bに示すようなメサトレンチT2を形成し、S1で形成された第1コンタクト層800及びバリア複合層は、メサトレンチT2により、吸収層400の表面に位置する複数のメサとして仕切られる。
【0053】
S6:メサに表面パッシベーションプロセスを実行して、メサを被覆するパッシベーション層を形成する。
【0054】
図8cに示すように、メサが形成された赤外検出器の中間構造の表面にSiN
x又はAl
2O
3、SiO
2誘電体膜を堆積して、メサを被覆するパッシベーション層9012を形成し、且つパッシベーション層が、メサトレンチT2によって露出された吸収層400上にも覆われるため、赤外検出器の中間構造の表面を、酸化されること等がないように保護できる。
【0055】
S7:パッシベーション層をエッチングして第2タイプの開口を形成し、第2タイプの開口を経由してエッチングして電極トレンチを形成する。
【0056】
図8dに示すように、ウェットやドライエッチングプロセスを利用して、S3で形成されたパッシベーション層9012上に第2タイプの開口T3を形成し、第2タイプの開口により、第2電極902の製作を必要とされる領域を露出させ、その後、当該領域をエッチングし、当該領域に対応する第1コンタクト層800、バリア複合層、吸収層400を順次エッチングして除去し、エッチングを第2コンタクト層300内で停止させて、電極トレンチを形成する。
【0057】
S8:パッシベーション層をエッチングして、第1タイプの開口を形成する。
【0058】
図8eに示すように、フォトリソグラフィ及びウェットやドライエッチングを利用して、パッシベーション層9012上に第1タイプの開口T4を形成して、第1電極903の製作を必要とされる領域を露出させる。
【0059】
S9:第1コンタクト層とオーミック接触を形成する第1電極、及び、第2コンタクト層とオーミック接触を形成する第2電極をそれぞれ形成する。
【0060】
Cr/Au又はTi/Pt/Au多層金属を用いて、金による半オーミック接触となる第1電極903及び第2電極902を製作することで、
図5に示すような赤外検出器が形成される。
【0061】
上述したのは、本願の具体的な実施形態に過ぎず、本願の保護範囲は、これに限定されない。当業者であれば、本願に開示の技術的範囲内で、変形や置換を容易に想到できるが、これらの変形や置換の全ては、本願の保護範囲内とされるべきである。したがって、本願の保護範囲は、添付された特許請求の範囲に準じるべきである。
【国際調査報告】