(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-19
(54)【発明の名称】ヤーンボビンのための検査システムおよびヤーンボビンを検査するための方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/95 20060101AFI20250212BHJP
G01N 21/88 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
G01N21/95 Z
G01N21/88 J
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024545249
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(85)【翻訳文提出日】2024-09-09
(86)【国際出願番号】 EP2022052126
(87)【国際公開番号】W WO2023143740
(87)【国際公開日】2023-08-03
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524283534
【氏名又は名称】サンコ・テクスティル・イスレトメレリ・サナイ・ベ・ティジャレット・アノニム・シルケティ・バシュプナル・スベシ
【氏名又は名称原語表記】SANKO TEKSTIL ISLETMELERI SANAYI VE TICARET ANONIM SIRKETI BASPINAR SUBESI
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コヌックオール,ハーカン
(72)【発明者】
【氏名】アイドゥン,ギョクハン
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA07
2G051AB02
2G051CA04
2G051DA01
2G051EB05
(57)【要約】
ヤーンボビンのための検査システムが提供される。ヤーンボビン検査の自動化を向上できるシステムを提供すべきである。システムは、ヤーンボビン(12)の画像を取得するための画像取得装置(5)と、少なくとも第1のタイプの欠陥に関する第1のデータセットが記憶されるデータベース(3)であって、第1のデータセットは、この第1のタイプの欠陥を有するヤーンボビン(12)のサンプルを使用することによって生成される、データベース(3)と、画像取得装置(5)を用いて検査されたヤーンボビン(12)が第1のタイプの欠陥を有するかどうかを判定するためのアプリケーション(4)とを備える。さらに、ヤーンボビンを検査し、異なるタイプの欠陥をヤーンボビンに割り当てるための方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヤーンボビン(12)の画像を取得するための画像取得装置(5)と、
少なくとも第1のタイプの欠陥に関する第1のデータセットが記憶されるデータベース(3)であって、前記第1のデータセットは、この第1のタイプの欠陥を有するヤーンボビン(12)のサンプルを使用することによって生成される、データベース(3)と、
前記画像取得装置(5)を用いて検査された前記ヤーンボビン(12)が前記第1のタイプの欠陥を有するかどうかを判定するためのアプリケーション(4)と
を備える、ヤーンボビンのための検査システム。
【請求項2】
前記データベース(3)に、少なくとも第2のタイプの欠陥に関する第2のデータセットが記憶され、前記第2のデータセットは、この第2のタイプの欠陥を有するヤーンボビン(12)のサンプルを使用することによって生成されるように、前記検査システムが構成されることを特徴とする、請求項1に記載の検査システム。
【請求項3】
前記アプリケーション(4)は、前記画像取得装置(5)を用いて検査された前記ヤーンボビン(12)が前記第1のタイプの欠陥および/または前記第2のタイプの欠陥を有するかどうかを判定するように構成されることを特徴とする、請求項2に記載の検査システム。
【請求項4】
前記欠陥のタイプは、以下のもの、すなわち、エラステインフリー欠陥、損傷ボビン欠陥、摩耗欠陥、色欠陥、直径欠陥、を含む群から選択されることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の検査システム。
【請求項5】
前記データベース(3)に、少なくとも1つのさらなるタイプの欠陥に各々関連する1つまたは複数のさらなるデータセットが記憶され、それぞれの前記データセットは、このさらなるタイプの欠陥を有するヤーンボビン(12)のサンプルを使用することによって生成されるように、前記検査システムが構成されることを特徴とする、請求項3または4に記載の検査システム。
【請求項6】
前記アプリケーション(4)は、前記画像取得装置(5)を用いて検査された前記ヤーンボビン(12)の前記欠陥のタイプを判定するように構成されることを特徴とする、請求項2~5のいずれかに記載の検査システム。
【請求項7】
前記アプリケーション(4)は、
前記画像取得装置(5)を用いて検査された前記ヤーンボビン(12)の前記欠陥のタイプを前記ヤーンボビン(12)に割り当てる欠陥割り当てモジュール(25)と、
前記画像取得装置(5)によって取得された前記ヤーンボビン(12)の前記画像に重ね合わせることができるマーカを提供するためのデータを生成する欠陥マーカモジュール(26)と
を有することを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載の検査システム。
【請求項8】
前記マーカはピクセルの集合体によって画定され、前記ピクセルの集合体のサイズおよび形態は前記欠陥のエリアに対応することを特徴とする、請求項7に記載の検査システム。
【請求項9】
異なるタイプの欠陥について、異なる色が前記マーカのために使用されるように前記システムは構成されることを特徴とする、請求項7または8のいずれかに記載の検査システム。
【請求項10】
前記画像取得装置(5)を用いて取得されたそれぞれの前記ヤーンボビン(12)の前記画像に前記マーカが重畳された重畳画像が、ディスプレイ(2)上に可視化されることを特徴とする、請求項7~9のいずれかに記載の検査システム。
【請求項11】
前記システムは、レール(8)に取り付けられたボビンホルダ(11)をさらに備え、前記ボビンホルダ(11)は、検査ゾーンを通って前記レール(8)に沿って移動されることができ、前記検査ゾーンは、前記画像の取得が実行されるゾーンであることを特徴とする、請求項1~10のいずれかに記載の検査システム。
【請求項12】
前記ボビンホルダ(11)は、ボビン中心軸に垂直である軸に沿って、前記ヤーンボビン(12)を回転させるように適合されることを特徴とする、請求項11に記載の検査システム。
【請求項13】
前記ボビンホルダ(11)は、周方向および/または並進方向の少なくとも1つにおける前記ボビンホルダ(11)内での前記ヤーンボビン(12)の相対移動を防止するために、前記ヤーンボビン(12)が配置され得る固定エリアを有するリング(17)により構成されることを特徴とする、請求項11または12のいずれかに記載の検査システム。
【請求項14】
前記固定エリアは、前記リング(17)のリング中心軸の方向に延在する2つの平行に延在するロッド(18)によって画定され、前記ロッドは、その外周面において前記ヤーンボビン(12)を保持する隙間(20)をそれらの間に有することを特徴とする、請求項13に記載の検査システム。
【請求項15】
前記リング(17)は、可動要素を介して前記レール(8)に取り付けられた回転ヒンジ(19)を有することを特徴とする、請求項11~14のいずれかに記載の検査システム。
【請求項16】
複数のボビンホルダ(17)が前記レール(8)に沿って次々に配置されることを特徴とする、請求項11~15のいずれかに記載の検査システム。
【請求項17】
前記ボビンホルダ(17)は、前記レール(8)に沿って一緒に移動するように適合されることを特徴とする、請求項11~16のいずれかに記載の検査システム。
【請求項18】
前記システムは、前記レール(8)が入口から出口まで延在して通る2つの開口部(9、10)を有する暗室(6)をさらに備えることを特徴とする、請求項1~17のいずれかに記載の検査システム。
【請求項19】
前記画像取得装置(5)は、前記暗室(6)内に設けられることを特徴とする、請求項18に記載の検査システム。
【請求項20】
前記画像取得装置(5)は、欠陥検出のために前記ヤーンボビン(12)のエリアを照明する照明セクション(15)と、前記エリアの前記画像を取得するためのカメラ装置(14)とを備えることを特徴とする、請求項1~19のいずれかに記載の検査システム。
【請求項21】
前記システムは、画像処理・調整モジュール(16)をさらに備えることを特徴とする、請求項1~20のいずれかに記載の検査システム。
【請求項22】
前記システムは、前記欠陥の判定のために、検出されるべき前記欠陥タイプに応じて、異なる画像取得装置(5)が使用されるように構成されることを特徴とする、請求項1~21のいずれかに記載の検査システム。
【請求項23】
前記照明セクション(15)は、検出されるべき前記欠陥タイプに応じて特定の波長および/または色温度で動作することを特徴とする、請求項20に記載の検査システム。
【請求項24】
前記画像処理・調整モジュール(16)は、検出されるべき前記欠陥タイプに応じて、異なるフィルタを用いて前記画像データを処理および調整するように適合されることを特徴とする、請求項21に記載の検査システム。
【請求項25】
以下の画像取得装置タイプ、すなわち、エラステインフリー欠陥のための画像取得装置、損傷ボビン欠陥のための画像取得装置、摩耗欠陥のための画像取得装置、色欠陥のための画像取得装置、および直径欠陥のための画像取得装置、のうちの少なくとも1つが前記暗室(6)内に設けられることを特徴とする、請求項18~24のいずれかに記載の検査システム。
【請求項26】
エラステインフリー欠陥のための画像取得装置は、リング形を有する照明セクション(15)と、前記リングの中央領域に設けられたカメラ装置(14)とを有することを特徴とする、請求項25に記載の検査システム。
【請求項27】
エラステインフリー欠陥のための2つの前記画像取得装置は、前記レール(8)を挟んで設けられることを特徴とする、請求項25または26に記載の検査システム。
【請求項28】
エラステインフリー欠陥のための前記画像取得装置の上流または下流に、さらなる画像取得装置が設けられることを特徴とする、請求項25~27のいずれかに記載の検査システム。
【請求項29】
前記システムは、前記システムに供給されるヤーンボビン(12)が、検出される前記欠陥タイプに応じて自動的に分類されるように構成されることを特徴とする、請求項1~28のいずれかに記載の検査システム。
【請求項30】
前記システムは、前記検出された欠陥が前記システムから割り当てられた前記欠陥のタイプに対応することが人間によって確認された後に、欠陥検出中に取得された前記データが定期的に前記データベースに記憶されるように構成されることを特徴とする、請求項1~29のいずれかに記載の検査システム。
【請求項31】
前記システムは、異なるタイプの欠陥への前記欠陥割り当てが人工知能によって行われ、および/または前記システムがディープラーニングを用いて動作するように構成されることを特徴とする、請求項1~29のいずれかに記載の検査システム。
【請求項32】
ヤーンボビンを検査し、異なるタイプの欠陥をそれに割り当てるための方法であって、前記方法は、欠陥割り当てのためにアプリケーションおよびデータベースを使用する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、欠陥を探索するためにヤーンボビンを検査することができるヤーンボビンのための検査システムに関する。さらに、このようなヤーンボビンを検査するためのそれぞれの方法が提供される。
【背景技術】
【0002】
今日まで、ヤーン生産の工業プロセスにおいて、ヤーンボビンは、ヤーンボビンに特定の欠陥または不良が存在するかどうかを探すために人間の目で検査されている。そのような欠陥または不良が存在する場合、それぞれのボビンはマークされるか、または、顧客に送られることになるボビンから除去される。しかしながら、物理的測定によって、特に画像検査システムによって検査を行うことができるいくつかの技術が科学論文に開示されている。このような従来技術は、例えば、科学論文Automatic Bobbin Inspection System,J.Baumgartinger,R.Konig,Lenzinger Berichte,82(2003)70-75、および科学論文An Innovative Solution for Abrage Fault Detection on Yarn Bobbin and Fabric Surface,H.I.Celik,E.Gultekin,L.C.Dulger,H.I.Sunbul,H.Kani in ICENS,5th International Conference on Engineering and Natural Science,June 12-16,2019 in Pragueに記載されている。
【0003】
後者の論文では、照明セクションおよびカメラを使用する一般的なプロトタイプマシンの視野検査システムが記載されている。照明セクションは、ヤーンボビンの表面に特定の温度の光を照射することで、いわゆる摩滅不良(摩耗に起因する不良)をより視認しやすくする。これらの不良は、例えば、ヤーンボビンの表面にあり、摩耗によって生じる。輝度を変更し、取得された画像の画像処理を調整することによって、それぞれの摩滅不良(摩耗欠陥)をより見やすくすることができることが示されている。
【0004】
科学論文Automatic Bobbin Inspection System(J.Baumgartinger&R.Konig,2003)は、幾何学的形状、マクロ構造不良およびミクロ構造不良における、ヤーンボビンの一般的に知られている異なる不良を記載している。特に、破断したフィラメントの検出をどのように実行することができるかについて記載されている。ヤーンボビンが回転されて分析される間にヤーンボビンの表面で反射されたレーザビームをCCDカメラが記録し、反射されたビームが所定の条件を満たす場合、それぞれの表面に破断したフィラメントが位置すると決定される。これらの面は、ボビンの長手方向におけるボビンの端面である。このシステムでは、破断したフィラメントを検出するために、それぞれの境界条件などを設定するために多大な労力を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記先行技術文献を考慮して、本発明者らは、新しい手法を適用し、ヤーンボビンに特定の欠陥が存在するか否かの判定に、人工知能および/またはディープラーニングで動作するシステムを使用することが可能であることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
これを考慮して、請求項1に規定された特徴を有する検査システムが提供される。第1のステップで、特定のタイプの欠陥(または不良)を有するヤーンボビンのサンプルが、画像取得装置を介してそれぞれのヤーンボビンの画像を取得するために使用される。取得された画像から、データベースに保存されるデータが得られる。
【0007】
したがって、それぞれのタイプの欠陥を有する複数のヤーンボビンが、データベース内の第1のデータセットを設定するために使用される。その後、後の工業プロセスでさらなるヤーンボビンが評価されるとき、特定のタイプの欠陥が存在するかどうかを自動的に決定または導出することができる。次いで、このタイプの欠陥が存在するか否かを決定することができる。
【0008】
すなわち、画像取得装置によって取得されたそれぞれのデータが第1のデータセット内のデータに対応するか、または実質的に対応するかが、アプリケーションによって決定される。この場合、第1の欠陥が存在すると決定される。データベースに有効な第1のデータセットを有するために、「第1のタイプの欠陥」と呼ばれるこの特定のタイプの欠陥を有するヤーンボビンのサンプルを使用して前記データセットを生成することが有益であり、この第1のタイプの欠陥は、異なる領域にそれぞれ提供されるか、または異なる態様を有する。第1のタイプの欠陥のさまざまな態様は、それぞれの異なるサンプルにおいて広範であるため、それぞれの第1のデータセットは、第1の欠陥が、生産中に検査を受けるヤーンボビンに含まれているかどうかを識別するためにより良好に使用することができる。
【0009】
検査システムは、ヤーンボビンの画像を取得するための画像取得装置を有してもよい。この画像データは、アプリケーションにおいてデータベースに記憶された第1のデータセットと比較され、画像取得装置を用いて検査されたヤーンボビンが第1のタイプの欠陥を有するか否かがアプリケーションによって決定される。
【0010】
さらなる発展形態によれば、データベースには、第2のタイプの欠陥に対応する第2のデータセットが記憶される。この第2のデータセットは、この第2のタイプの欠陥を有するヤーンボビンのサンプルを使用することによって設定することもできる。第1のデータセット生成について上述した態様は、第2のデータセット生成にも適用し得る。
【0011】
それぞれの第1および第2のデータセットを設定するために使用されるサンプルヤーンボビンは、それぞれの第1および/または第2の欠陥のみを有することが有益である。
【0012】
第1および第2のデータセットは、データベースの異なるセクションに提供される必要はなく、すべてデータベースの1つのセクション内に一緒に保存することができる。第1および第2のデータセットに関連するそれぞれのデータは、それを第1または第2のタイプの欠陥に割り当てるそれぞれの識別子を有してもよい。両方のタイプの欠陥を有するサンプルも、データセットを設定するために使用され得る。このデータは、第1および第2のタイプの欠陥に対応する識別子を有してもよい。
【0013】
したがって、システムでは、検査されるヤーンボビンの欠陥が第2のタイプの欠陥であるかどうかを決定することもできる。
【0014】
これらの第1および/または第2のタイプの欠陥を有するそれぞれのヤーンボビンは、顧客に出荷されるボビンのバッチから除去することができる。欠陥を有するそれぞれのボビンを分類して、この第1のタイプの欠陥を有するヤーンボビン、この第2のタイプの欠陥を有するヤーンボビン、および両方のタイプの欠陥を有するヤーンボビンのバッチを形成することができる。
【0015】
それぞれのバッチは、異なるパレットなどに配置することができる。それぞれのタイプの欠陥は、エラステインフリー欠陥、損傷ボビン欠陥、摩耗欠陥、色欠陥、または直径欠陥であり得る。
【0016】
エラステインフリー欠陥は、以下のように理解されるべきである。いくつかのヤーン、例えばデニムの生産に使用されるヤーンは、特定の弾性を有し得る。この弾性を確保するために、それぞれの特性を調整するために、ヤーン内に少なくとも1つの弾性フィラメントが提供されてもよい。非弾性を有するさらなるフィラメントが提供されてもよく、これらのフィラメントはリング紡糸中に一緒にねじられてコアを形成してもよい。このコアは、例えば天然繊維であるステープル繊維を含むカバー層によって封入されてもよい。しかしながら、紡糸(特にリング紡糸)プロセス中に、コアに含まれる弾性フィラメントが破損し、したがって、コア内に弾性フィラメントが設けられていない領域が存在することがある。この領域はエラステインフリーエリアと呼ばれる。したがって、エラステインフリー欠陥は、エラステイン含有ヤーンにエラステインが設けられていない領域が存在するエリアがヤーンに沿って存在する欠陥である。このエラステインは、商標「エラステイン」に対応する材料に限定されず、ライクラなどの任意の弾性フィラメントによって提供することができる。本発明者らは、特定の画像取得装置および人工知能を使用して、このようなエラステインフリー欠陥を検出することが可能であることを初めて見出した。
【0017】
損傷ボビン欠陥は、ボビン自体の損傷に関連する欠陥である。ボビンという用語は、ヤーンボビンという用語とは反対に、本出願では、ヤーンが巻き付けられる中央のシャフトにのみ使用される。したがって、ヤーンボビンは、ボビンに巻き付けられたヤーンを含む。以下では、ボビンという用語が使用される限り、ヤーンが巻き付けられるシャフトを意味する。以下では、ヤーンボビンという用語が使用される場合、ボビンに巻き付けられたヤーンを含む完全な配置を意味する。
【0018】
それぞれのボビンは、破損したり、他の損傷を受けたりする可能性がある。これは、例えば、画像取得システムがヤーンボビンの長手方向の前端面に焦点を合わせているときに見ることができる。
【0019】
摩耗欠陥は、ハンドリング時のヤーンおよびボビンの摩耗に起因する欠陥である。
色欠陥は、ヤーンの色における欠陥である。特定の生産プロセスでは、ヤーンは着色されてもよい。それぞれの結果は、標準化されたカラーコードに対応するべきである。カラーコードが、例えばステッカーを介してボビンの内側に描かれている場合があり得る。それぞれのシステムは、それぞれのカラーコードを取得し、ヤーンの検出された色がカラーコードと一致するか否かを決定してもよい。これにより、顧客が注文したそれぞれの色がそれぞれのヤーンボビンに対して満たされることが保証され得る。
【0020】
直径欠陥は、ヤーンボビンの直径における欠陥である。ボビンのそれぞれのバッチには、通常、所定の直径、例えば顧客が注文した直径がある。したがって、パッケージされて顧客に出荷されるそれぞれのヤーンボビンを管理するために、検査システムを用いて直径欠陥が判定される。
【0021】
それぞれの欠陥のいずれかは、単独で、または任意の組合せで、同じ検査システムで判定することができる。
【0022】
これは、エラステインフリー欠陥に加えて、損傷ボビン欠陥および/または摩耗欠陥および/または色欠陥および/または直径欠陥が検出され得ることを意味する。
【0023】
それぞれの欠陥について、サンプルヤーンボビンを使用して異なるデータセットが生成され、このデータセットはデータベースに保存される。
【0024】
データベースから、保存されたデータのいずれが取得された画像のデータに対応するかが決定され、それによって異なる欠陥のそれぞれの割り当てが行われる。
【0025】
アプリケーションは、画像取得装置を用いて検査されたヤーンボビンの欠陥のタイプを判定するように構成される。
【0026】
本発明者らは、アプリケーションが欠陥割り当てモジュール、さらにそれに加えて欠陥マーカモジュールを有し得ることが有益であることにさらに注目した。欠陥割り当てモジュールにより、画像取得装置を用いて検査されたヤーンボビンの欠陥のタイプが、それぞれのヤーンボビンに割り当てられる。欠陥マーカモジュールでは、画像取得装置によって取得されたヤーンボビンの画像に重ね合わせることができるマーカを提供するためのデータが生成される。
【0027】
このような構成により、検査システムを操作する人間(オペレータ)は、それぞれの欠陥をより良好に識別することができ、それはそれぞれのボビン上のどこにあるかを特定することができる。
【0028】
マーカはピクセルの集合体によって画定され、ピクセルの集合体のサイズおよび形態は欠陥のエリアに対応することが有益である。
【0029】
異なるタイプの欠陥は、マーカのために使用される異なる色に割り当てられてもよい。例えば、エラステインフリー欠陥を示すピクセルの色は赤色であってもよく、損傷ボビン欠陥を示すピクセルの色は緑色であってもよく、摩耗欠陥を示すピクセルの色は青色であってもよく、直径欠陥を示すピクセルの色は黄色であってもよい。画像取得装置を用いて取得されたそれぞれのヤーンボビンのそれぞれの画像に、それぞれのマーカが重畳されてもよく、この重畳画像をディスプレイ上に可視化することができる。そして、システムを操作するそれぞれの人間は、それぞれの欠陥が割り当てられているディスプレイを見ることができる。オペレータにとって欠陥がどこにあるかの判定をさらに容易にするために、ディスプレイ上で、ヤーンボビンの画像(重畳されたマーカなし)がヤーンボビンの画像(重畳されたマーカあり)の隣に示され、両方の画像が同じサイズ(倍率)であることが有益である。マーカを有さない画像よりも、欠陥の位置がよりよく見える。
【0030】
システムを通るヤーンボビンのそれぞれの搬送は区切られていないが、それぞれのシステムが、レールに取り付けられたボビンホルダを備えることが有益であると考えられた。ボビンホルダは、検査ゾーン(画像取得が実行されるゾーン)を通ってレールに沿って移動することができる。
【0031】
検査されるボビンのバッチから、それぞれのヤーンボビンは、ユーザ(オペレータ)によって手で、またはロボットによって自動的にそれぞれのボビンホルダに入れられてもよい。ボビンホルダを介して、ヤーンボビンは検査ゾーンを通って移動する。その後、ヤーンボビンは、人間が手動でまたはロボットによって自動的にヤーンホルダから取り出すことができ、それぞれの欠陥を有するボビンが保管されているパレットおよび/または欠陥を有さないボビンが保管されているパレットに自動的に割り当てることができる。
【0032】
割り当ては、自動的に、または赤色もしくは緑色の光を有するそれぞれの光システムによって、行われてもよい。緑色光は、欠陥のないヤーンボビンに対応するため、オペレータは、顧客に送るべきヤーンボビンのパッケージにそのヤーンボビンを割り当てることができる。赤色光は、欠陥のあるヤーンに対応する。また、異なる欠陥タイプにヤーンボビンを割り当てるために、異なる光タイプを使用することができる。
【0033】
さらなる発展形態によれば、ヤーンボビンホルダは、ボビン中心軸に垂直であり、レール延在方向にも垂直であり得る軸に沿って、ヤーンボビンを回転させるように適合される。それぞれのヤーンボビンは、その長手方向に沿ってレールに沿って移動するという利点がある。しかしながら、検査ゾーンでは、ボビンのそれぞれの軸方向が、レールが延在する方向に対して垂直になるように、それぞれのヤーンボビンを90°回転させることが有益である。
【0034】
このような構成によれば、通常、それぞれの画像取得装置は、長手方向に延在するレールを挟んで異なる側に取り付けられるので、ボビンの長手方向のそれぞれの端面をより良好に検査することができる。ヤーンボビンの異なるエリアで画像取得を行うために、画像取得中にヤーンボビンの回転を実行することもできる。
【0035】
それぞれのボビンホルダは、ヤーンボビンが配置され得る固定エリアを有するリングとして構築されてもよい。ヤーンボビンは、ヤーンボビンの相対移動が防止されるように配置されるべきである。これは、周方向の移動であってもよいし、ヤーンボビンの並進方向の移動であってもよい。周方向および並進方向の両方の相対移動が防止されることが有益である。
【0036】
固定エリアは、ボビンホルダを画定するリングのリング中心軸の方向に延在する2つの平行に延在するロッドによって画定されてもよい。2つの平行に延在するロッドは、その外周面においてボビンを保持する隙間をそれらの間に有することができる。このような構成により、直径の異なるヤーンボビンを同一のホルダに配置することが容易となる。
【0037】
ボビンホルダのそれぞれのリングは、可動要素を介してレールに取り付けられた回転ヒンジを有してもよい。特定の検査システムでは、複数のそのようなボビンホルダがレールに沿って次々に配置されることが有益であり、ボビンホルダがレールに沿って一緒に移動するように適合されることが有利であり得る。それは、それぞれのボビンホルダの各々が、チェーンまたはケーブルまたは他の結合部によって隣接するボビンホルダに接続されてもよく、チェーンまたはケーブルまたは他の結合部がそれぞれのレールに沿って引き出されると、ボビンホルダがシステムを通って互いに所定の距離だけ移動することを意味する。
【0038】
システムは、レールが入口および出口から延在して通る2つの開口部を有する暗室を備えることがさらに有益である。画像取得装置は、暗室内に設けられてもよい。そのような暗室が使用される場合、周囲の光が画像取得を妨げ、アーチファクトを生成することが防止される。
【0039】
しかしながら、このような暗室を使用する必要はなく、特に、画像取得装置が可視スペクトルで動作するのではなく、赤外線またはX線スペクトルで動作する場合には必要ではない。
【0040】
それぞれの画像取得装置は、欠陥検出のためにヤーンボビンのエリアを照明する照明セクションと、エリアの画像を取得するためのカメラ装置とを備えることが有益である。照明セクションを介して、それぞれのエリアを照明することができ、カメラを介して、照明されたエリアを撮影することができる。
【0041】
さらに、システムは、画像処理・調整モジュールを備えてもよい。
画像処理・調整モジュールを介して、それぞれの取得された画像はフィルタリングを受けることができる。それぞれのフィルタリングは、それぞれのタイプの欠陥を検出することがより容易であるより良好なデータ品質を提供することができる可能性がある。
【0042】
各異なるタイプの欠陥について、異なる画像取得装置が使用されることが有益であることが示されている。これは、異なるタイプの欠陥に対して、異なる画像取得条件が好ましい可能性があるためである。一方では、異なるタイプの欠陥に対して、画像処理・調整モジュールを用いて異なるフィルタリングを適用することができる。他方では、および/または追加的に、使用されるそれぞれのカメラ装置は、異なる波長に対して感度があり、および/またはそれぞれの照明セクションは、異なる波長を有する、および/または異なる波長領域および/または色温度を有する放射を照射する。
【0043】
特に、照明セクションは、検出される欠陥タイプに応じて特定の波長または色温度で動作する。
【0044】
検出される欠陥タイプに応じて、画像処理・調整モジュールにおいて異なるフィルタが使用されてもよい。
【0045】
使用されるそれぞれの画像取得装置は、以下のうちの1つまたは複数であってもよい。エラステインフリー欠陥のための画像取得装置、損傷ボビン欠陥のための画像取得装置、摩耗欠陥のための画像取得装置、色欠陥のための画像取得装置、および直径欠陥のための画像取得装置。
【0046】
それぞれの欠陥タイプは、前述のセクションで既に説明されている。画像取得装置のそれぞれの違いは、それらが異なる波長および/または異なる色温度で動作すること、および/またはそれぞれのカメラ装置が異なる感度を有し得ることであってもよい。
【0047】
特に、エラステインフリー欠陥のための画像取得装置では、照明セクションがリング形を有し、カメラ装置がリングの中央領域に設けられることが有益であると考えられた。このリング形照明セクションは、それぞれのビームをヤーンボビンの長手方向のそれぞれの端面に照射するように取り付けられる。したがって、照明セクションのリングのそれぞれの中心軸は、レールの延在方向に対して垂直に設けられてもよい。
【0048】
特に、エラステインフリー欠陥検出のための2つの画像取得装置がレールを挟んで設けられることが有益であると考えられた。両方の画像取得装置が互いに対して中心に位置合わせされ、前記位置合わせされた中心がレールの延在方向に対して直交することが利点である。
【0049】
さらに、エラステインフリー欠陥のための画像取得装置の上流および下流に、少なくとも1つのさらなる画像取得装置が設けられることが有益であると考えられた。そのような画像取得装置は、摩耗欠陥、色欠陥、直径欠陥などのための画像取得装置であってもよい。
【0050】
システムは、システムに供給されるヤーンボビンが、検出される欠陥タイプに応じて自動的に分類されるようにさらに構成されてもよい。
【0051】
システムは、実際に検出された欠陥がシステムからヤーンボビンに割り当てられた欠陥のタイプに対応することが人間(オペレータ)によって確認された後に、欠陥検出中に取得されたデータが定期的にデータベースに記憶されるようにさらに構成されてもよい。
【0052】
このため、重畳画像上に表示ユニットとマーカを有することが有益である。したがって、検査システムを操作するそれぞれの人間は、欠陥のタイプへのより良好な割り当てを有するために、より多くのデータ(より広いデータセット)をデータベースに瞬時に供給し、データベースに入力することができる。
【0053】
一般に、システムは、異なるタイプの欠陥への欠陥割り当てが人工知能によって行われ、(または)特にシステムがディープラーニングを用いて動作するように構成される。
【0054】
前述の検査システムに加えて、ヤーンボビンを検査し、異なるタイプの欠陥をそれに割り当てるための方法が提供される。方法は、欠陥割り当てのためにアプリケーションおよびデータベースを使用する。システムに関して説明したそれぞれの前述の態様は、それぞれの検査方法にも提供され得る。
【0055】
方法は、コンピュータ上で実行される自動方法であってもよい。
さらに、それぞれのボビン検査を行い、および/またはそれぞれのシステムを自動的に制御するコンピュータ可読アプリケーションが提供されてもよい。
【0056】
以下で、図面に関して本発明のいくつかの実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1】暗室内に設けられた検査ゾーンを備えるシステムの一部の概略図である。
【
図3a】エラステインフリー欠陥が検出され、マーカが重畳されたそれぞれの画像が生成された(図の右側)、異なる画像を示す図である。
【
図3b】エラステインフリー欠陥が検出され、マーカが重畳されたそれぞれの画像が生成された(図の右側)、異なる画像を示す図である。
【
図3c】エラステインフリー欠陥が検出され、マーカが重畳されたそれぞれの画像が生成された(図の右側)、異なる画像を示す図である。
【
図3d】エラステインフリー欠陥が検出され、マーカが重畳されたそれぞれの画像が生成された(図の右側)、異なる画像を示す図である。
【
図4a】摩耗欠陥検出によって生成された画像の図である。図の右側において、摩耗欠陥エリアは、それぞれのヤーンボビンの長手方向の端部側のエリアにマーカによって割り当てられている。
【
図4b】摩耗欠陥検出によって生成された画像の図である。図の右側において、摩耗欠陥エリアは、それぞれのヤーンボビンの長手方向の端部側のエリアにマーカによって割り当てられている。
【
図5a】損傷ボビン欠陥と、図の右側の取得された画像に重畳されたマーカとを示す。
【
図5b】損傷ボビン欠陥と、図の右側の取得された画像に重畳されたマーカとを示す。
【
図5c】損傷ボビン欠陥と、図の右側の取得された画像に重畳されたマーカとを示す。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図6の右側には、コンピュータ1およびディスプレイ2が示されている。コンピュータ1は、記憶エリアに記憶されたデータベース3と、このコンピュータ上で動作するアプリケーション4とを有してもよい。コンピュータ1には画像取得装置5が接続され、画像取得装置5とコンピュータ1との間でデータを交換することができる。インターフェースを介して、データをそれぞれのデータベース3に入力することができる。これは、
図6の「データ入力」ボックスによって概略的に示されている。画像取得装置5、および/または欠陥判定後のそれぞれのヤーンボビンを選択するためのボビン選択手段、および/または後述するレール8に沿ったヤーンボビン12の搬送は、コンピュータ1内の制御モジュールによって制御することができる。前記制御モジュールはまた、アプリケーション4に統合されてもよい。しかしながら、
図6では、制御モジュールは、コンピュータ1内の別個の独立したモジュールとして示されている。
【0059】
図6の左側には、画像取得装置5が特定のケースに取り付けられた暗室6の概略構成が示されている。レール8は、暗室6の入口開口部9から暗室6の出口開口部10まで延在する(例えば、
図1も)。
【0060】
評価されるヤーンボビン12は、前記図には示されていないホルダ11上に最初に配置される(しかしながら、
図1および
図2では参照符号11で識別される)。ホルダ11は、レール8に取り付けられる。そして、ホルダ11に取り付けられたヤーンボビン12は、レール8に沿って暗室6内の検査エリアに移動される。検査エリアにおいて、画像取得装置5は、それぞれのボビンの画像を取得する。特定の場合には、画像がそれぞれの端面から取得され、ヤーンボビンをその長手方向に区切ることが有益であり得る。端面は、
図6において参照符号13を有する。しかしながら、検査はそれぞれの端面に限定されず、それぞれの外周面で行うこともできる。また、ヤーンボビン12の内部の検査は、それぞれの画像取得装置がヤーンボビンを貫通する波長または波長領域で動作するときに行うことができる。
【0061】
しかしながら、特定の場合には、それぞれの画像取得装置は、カメラ装置14および照明セクション15を備える。照明セクション15を介して、特定の波長を有するか、または特定の波長帯域の波を含むか、または特定の色温度を有する照射が、それぞれのヤーンボビン12に照明される。
【0062】
それぞれのカメラ装置14によって、照明されたヤーンボビン12の画像が撮られる。それぞれの画像データは、コンピュータ1に転送される。コンピュータ1の一部であり得るそれぞれの画像処理・調整モジュール16では、検出されるそれぞれの欠陥に応じてそれぞれのフィルタリングルールが適用され得る。それぞれのフィルタリングされたデータは、アプリケーション4に供給される。アプリケーション4では、評価中のヤーンボビン12に複数の欠陥タイプのうちのいずれが与えられるかが決定される。それぞれのボビン検査の後、ヤーンボビン12を出口開口部10を通って暗室6から外に移動させ、ヤーンボビン12を選択することができ、欠陥のない、または重大な欠陥のないそれぞれのヤーンボビン12を、顧客に出荷されるヤーンボビンの各バッチに割り当てることができる。
【0063】
それぞれの画像取得装置5は、摩耗検出機能、破損ボビン検出機能、色検出機能、直径検出機能、およびエラステインフリーゾーン検出機能を有してもよい。それぞれの機能を用いて、それぞれの欠陥が検出され得る。
【0064】
図6に示す特定の場合では、それぞれの機能は代替として示されているか、またはそこに示されている1つの画像取得装置5に対して同時に存在してもよい。それぞれの機能は、1つの画像取得装置内に設けられてもよいが、カメラ装置14およびそれぞれの照明セクション15を各々備える別個の画像取得装置が設けられてもよい。それぞれの画像取得装置の各々において、それぞれのカメラ装置および照明セクションは、照射される波長または波長領域または感度に関して異なる特定の構成を有してもよい。これについては以下のセクションで後述する。
【0065】
しかしながら、画像取得装置5によって、アプリケーション4に供給される画像データが生成される。
【0066】
アプリケーション4において、それぞれのデータは、データベース3に記憶されたデータセットと比較される。このデータベース3は、欠陥のタイプごとのデータをデータベース3に供給することで設定される。そうするために、それぞれの検査システムを開始する最初のステップでは、それぞれのタイプの欠陥を有するヤーンボビン12がシステムで検査され、それぞれのデータが特定の欠陥タイプに割り当てられる。そうするために、データは、特定の欠陥を識別する識別子を有してもよい。異なるタイプの欠陥を有するヤーンボビンのこの供給は、異なる欠陥に対して行われてもよい。例えば、エラステインフリー欠陥を有する10~100個のヤーンボビンがシステムに供給され、画像取得装置で導出されたそれぞれのデータがデータベースに供給される。
【0067】
また、破損ボビン欠陥を有する10~100個のヤーンボビンが、データベース内のボビン欠陥データを生成するために使用される。同じことは、摩耗欠陥を有するサンプルボビン、異なる特定の直径を有するボビン、および特定の色を有するボビンで行うことができる。
【0068】
データベースのこの訓練およびデータベースへのさらなるデータの追加は、検査されたヤーンボビンの指定された期間または数の後に定期的に、または評価されるそれぞれのヤーンボビンの検査中に同時に行われてもよい。そうするためには、それぞれの識別された欠陥(システムによって識別される)を照合し、それが識別されるべきそれぞれの欠陥に対応するかどうかを確認する必要がある。
【0069】
これは人間が行うことができる。
これは、それぞれのヤーンボビンが出口開口部10から出て、それぞれの人間(オペレータ)が欠陥を見て、欠陥がシステムによって識別された識別欠陥に対応するかどうかを決定した後に行うことができる。この場合、それぞれのデータは、このタイプの欠陥に対応するデータとしてデータベースに供給される。
【0070】
この割り当てはまた、人間がディスプレイ装置を見る場合にディスプレイ装置の助けを借りて行われてもよい。オペレータが、それぞれの検出された欠陥がそれぞれのヤーンボビンに実際に存在するそれぞれの欠陥に対応するかどうかを割り当てるのを助けるために、取得された画像に重ね合わされるカラーマーキングまたは少なくともマーキングが提供されてもよい。
【0071】
取得される画像は、どのような画像であってもよく、ヤーンボビンの表面だけでなく、ヤーンボビンの内部も検査することができるX線画像であってもよい。しかしながら、それぞれのマーカは、欠陥が検出されたエリアに対応する複数の画素によって生成されてもよい。
【0072】
したがって、画像が画面上で互いに隣接して配置されるときに、画素のない画像と画素を有する画像とを比較することによって、オペレータは、検出された欠陥が、検出されると想定される欠陥タイプに対応するかどうかを確認することができ、この場合、それぞれのデータはデータベースに割り当てられることができ、前記欠陥タイプを特徴づける識別子となる。
【0073】
これにより、それぞれのデータベース3およびアプリケーション4を訓練することができる。
【0074】
アプリケーション4は、人工的な知識を用いたアプリケーションであり、取得した画像と、特定の欠陥がある画像との類似度をデータベースから検索する。良好なデータベースを有するためには、特定の欠陥、例えばエラステインフリーなどの欠陥に対して、欠陥位置、欠陥広がりまたは欠陥サイズの態様が非常に異なるサンプルヤーンボビンを有することが有益である。したがって、特定のタイプの欠陥の態様間の差は、強い変動を有する。したがって、評価されるボビンの取得された画像のより確実な割り当てをより容易に得ることができる。特定の欠陥の態様の多様性(例えば、エラステインフリー欠陥の多様性)が広いほど、生成されるデータおよびアプリケーションで使用される適合性の信頼性が高くなる。
【0075】
図1は、
図6に示すシステムの左側の構成の一例を示す。
図1は、検査エリアを取り囲む暗室6を示す。それぞれのレール8は、入口開口部9から出口開口部10まで延在する。それぞれの開口部は、その長手方向軸に垂直なそれぞれのヤーンボビン断面積よりも150%大きい22からのそれぞれの開口部面積を有してもよい。この縮小されたサイズの開口部は、過剰な光が検査エリアに入るのを防止する。
【0076】
レール8は、
図2にも見ることができる。そこには、ボビンホルダ11に対応するリング17が掛けられている。回転ヒンジ19が設けられた側とは反対のリング17の下側には、それらの間に隙間20を設けた2つの平行に延在するロッド18が設けられている。隙間20内で、それぞれのヤーンボビン12のそれぞれの外周面を固定することができる。これにより、ボビンの並進移動を防止することができる。しかしながら、ヤーンボビン自体は、その中心軸に対して依然として回転されてもよい。
【0077】
それぞれのリング17は、回転ヒンジ19を介してレール8の下側に設けられた可動要素に取り付けられ、この可動要素は図では見えず、それぞれのリングは、
図1および
図2のシーケンスに示すように回転することができる。
【0078】
すなわち、それぞれのヤーンボビン12が暗室6に進入するとき、ボビン方向(軸方向)はレールの長手方向に一致する。検査エリアでは、ボビンを、特定の場合には約90°(例えば制御モジュールによって自動的に)回転させて、それぞれのヤーンボビン12の前端面および後端面を検査することができる。しかし、検査エリアでの画像取得中にヤーンボビンの回転を実行してもよい。
【0079】
図1および
図2に示す特定の構成では、参照符号23a、23bを有する要素は、ヤーンボビンのエラステイン欠陥を識別するための画像取得装置の照明セクションに対応する。参照符号24a、24bを有する要素は、エラステイン欠陥を判定するための前記それぞれの画像取得装置のカメラ装置に対応する。それぞれのカメラ装置24a、24bは、照明セクション23a、23bの中心軸に沿った中央エリアに設けられている。照明セクションは、ヤーンボビンのそれぞれの領域を特定の波長または波長帯域または光温度で照明するリングによって画定される。
【0080】
それぞれの照明波長および/またはそれぞれの感度およびカメラ装置は、エラステインフリー欠陥を検出する良好な能力を考慮して選択される。この特定の場合には、エラステインフリー欠陥のために、2つの画像処理および画像取得装置が、それぞれのヤーンボビン12の両側に設けられ、レール8を挟む。
【0081】
エラステインフリー欠陥検出のためのこの画像取得装置の下流の本実施例の特定の場合では、摩滅検出のための画像取得装置および色欠陥検出のための画像取得装置が設けられる。色欠陥検出のための画像取得装置は、参照符号5bを有する。摩滅欠陥検出のための画像取得装置は、参照符号5cを有する。各装置は、それぞれの照明セクションとカメラセクションとを備える。特に、摩滅検出のためのそれぞれの照明は板状であり、板状の孔を通してそれぞれのヤーンボビンの端面を見るカメラが設けられ、それによって平面波照射が提供される。
【0082】
色欠陥検出のための照明セクションは、照射ビームが異なる角度でサンプルを照射するようにベル状の形状を有する。色欠陥検出のための画像取得装置の場合も、同心円状に、それぞれのカメラ装置14が保持される。
【0083】
それぞれの測定が実行され、それぞれのホルダ11が検査ゾーンを通って移動した後、それぞれのホルダ11は元の方向に回転し戻され、次いで、それぞれのホルダ11は出口開口部10を通ってシステムの外に移動する。
【0084】
この時点で、ヤーンボビンはホルダから取り外され、ボビン選択は、例えば、コンピュータと
図6のボックス「ボビン選択手段」との間の矢印によって示されるように自動的に実行される。この自動選択は、制御モジュールによって制御することもできる。
【0085】
それぞれの
図3、
図4および
図5には、それぞれのマーカが生成されるように、アプリケーション4においてそれぞれのデータがどのように処理され得るかが示されている。そうするために、アプリケーション4は、欠陥割り当てモジュール25に加えて、欠陥マーカモジュール26を有する。
【0086】
欠陥割り当てモジュール25において、それぞれの欠陥割り当ては、人工知能を介して取得された画像データとデータベース3内のデータとのそれぞれの照合を介して行われる。それぞれの欠陥マーカモジュール26を介して、この場合にはそれぞれの欠陥が検出されたエリアに対応する特定の画素のグループであり得るマーカが生成される。
【0087】
このマーカは画像に重畳され、ディスプレイ2には、マーカのないそれぞれの画像およびマーカを有する画像の対応する領域が(
図3a、
図3b、
図3cおよび
図3dに示すように)示され得る(
図3~
図5の左画像はマーカのない画像であり、それぞれの右画像はマーカのない画像と同じ位置にマーカが重ね合わされた画像であり、マーカのない画像と同じ倍率である)。したがって、ユーザがディスプレイ2を見ると、元の図のそれぞれの領域のどの位置でそれぞれの欠陥が検出され、その欠陥がどのように見えるかを見ることができる。
【0088】
図3a~
図3dに示すそれぞれの欠陥は、エラステインフリー欠陥に対応する。エラステインフリー欠陥は、例えば
図3cに最もよく見られる特定の特性を有する。
図3cの左側では、右側画像でそれぞれのマーカが示されるエリアで、それぞれのヤーンが周方向セクションに延在しておらず、波を有することが示されている。この波形から、ヤーンが緩く垂れ下がって波形の外観を作るので、ヤーンの前記セクションのコアにエラステインが設けられていないことを推理することができる。
【0089】
特定のエラステインフリー欠陥を人工知能によって判定することができ、それぞれのマーカをそれに割り当てることができることが、本発明者らによって初めて示された。
【0090】
例えば、
図3a~
図3dと、摩耗検出のために画像取得装置によって得られた結果画像(マーカありおよびなし、
図4の左右の画像)を示す
図4aおよび
図4bとを比較することによって、エラステインフリー欠陥を取得するための画像取得装置が摩耗欠陥のための画像取得装置よりも高い解像度を有し得ることが分かる。
【0091】
しかしながら、摩耗用検出は同じ方法で行われ、
図4a、
図4bでは、左側にはマーカを画像に重畳することなくそれぞれの図が示され、右側には画像に重畳されたマーカが示されている。この場合のマーカは赤色であり、エラステインフリー欠陥を示すマーカは黄色である。
【0092】
したがって、この場合にはそれぞれの画面に各欠陥画像が別々に示されている。これらの画像を重ね合わせてもよく、欠陥を異なる色でマークしてもよい。
【0093】
図5a、
図5b、および
図5cは、ボビン自体の異なる欠陥を示す。この図の場合も、左側に描かれているそれぞれの画像にはマーカが重ね合わされ、右側の画像にはマーカがない。
図5aの場合、ボビンが破損し、破線がマーカとして示されている。
図5bでは、ボビンの一部が欠落している。
【0094】
図5cでは、ボビンは設けられていない。
左側が取得された画像を示し、右側がそれぞれのマーカと重ね合わされた画像を示し、両方の画像がディスプレイ2上に互いに隣接して示されるので、両方の画像が互いに隣接して視覚化された同じサイズの場合、それぞれのユーザは、それぞれの欠陥がシステムによって自動的に識別される想定欠陥に対応するかどうかを識別し得る。この場合、彼はデータベースに入力されるそれぞれのデータを割り当て、そのデータを使用してデータベースを改善し、したがって後続の欠陥判定を改善することができる。
【0095】
本発明は、上述の特定の構成に限定されるものではなく、最も広い意味で、取得されたデータを、それぞれのタイプの欠陥について事前に記憶されたデータベース内のデータと照合することによって、ヤーンボビンの欠陥を判定するために一般に適用することができる。
【0096】
特に、本発明は、さらなるデータを用いてプロセス中に訓練される、人工知能を使用し、ディープラーニングを使用するシステムおよび方法に関する。
【0097】
特定の構成では、それぞれの欠陥を自動的に検出することができ、異なるバッチへのヤーンボビンの分類を行うことができる。
【0098】
特定のシステムに加えて、それぞれの検査方法および/またはそれぞれの方法をコンピュータ上で実行することができるアプリケーションも提供し得る。
【0099】
特定の実施形態では、それぞれのアプリケーションおよびデータベースが1つのコンピュータに設けられることが記載されている。データベースがアプリケーションから離れて設けられ、アプリケーションがPDAまたは別のリモート端末装置上で実行可能なアプリケーションであり、アプリケーションがインターネット上で実行可能なアプリケーションである場合もあり得る。アプリケーションのそれぞれの制御は、ヤーンボビンのそれぞれの検査が行われるそれぞれの施設から離れて行われてもよい。異なる要素のそれぞれの不動作は、無線通信によって、または代替的にローカルエリアネットワークを介して行われてもよい。
【0100】
参照符号リスト
1 コンピュータ
2 ディスプレイ
3 データベース
4 アプリケーション
5 画像取得装置
5b 色欠陥検出のための画像取得装置
5c 摩滅欠陥検出のための画像取得装置
6 暗室
8 レール
9 入口開口部
10 出口開口部
11 ホルダ
12 ヤーンボビン
13 端面
14 カメラ装置
15 照明セクション
16 画像処理・調整モジュール
17 リング
18 ロッド
19 回転ヒンジ
20 隙間
23a,23b ヤーンボビンのエラステイン欠陥を識別するための画像取得装置の照明セクション
24a,24b ヤーンボビンのエラステイン欠陥を識別するための画像取得装置のカメラ装置
25 欠陥割り当てモジュール
26 欠陥マーカモジュール
【国際調査報告】