(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-19
(54)【発明の名称】除染ロボットおよび除染方法
(51)【国際特許分類】
A61L 9/14 20060101AFI20250212BHJP
A61L 2/18 20060101ALI20250212BHJP
A61L 2/22 20060101ALI20250212BHJP
B64D 13/06 20060101ALI20250212BHJP
A61L 9/01 20060101ALI20250212BHJP
B08B 3/08 20060101ALI20250212BHJP
A61L 101/22 20060101ALN20250212BHJP
A61L 101/06 20060101ALN20250212BHJP
【FI】
A61L9/14
A61L2/18
A61L2/22
B64D13/06
A61L9/01 F
A61L9/01 M
B08B3/08 Z
A61L9/01 E
A61L101:22
A61L101:06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024561732
(86)(22)【出願日】2023-01-03
(85)【翻訳文提出日】2024-09-02
(86)【国際出願番号】 US2023010068
(87)【国際公開番号】W WO2023133108
(87)【国際公開日】2023-07-13
(32)【優先日】2022-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】524253386
【氏名又は名称】アバロン ステリテック リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】524252220
【氏名又は名称】ラウ, ジョンソン イウ-ナム
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ホー, ワイ ホン
(72)【発明者】
【氏名】ラウ, ジョンソン イウ-ナム
【テーマコード(参考)】
3B201
4C058
4C180
【Fターム(参考)】
3B201AA31
3B201AA46
3B201AB56
3B201BB22
3B201BB62
3B201BB83
3B201BB95
3B201BC01
3B201CD43
4C058AA23
4C058BB07
4C058CC01
4C058DD01
4C058DD05
4C058DD07
4C058DD11
4C058DD13
4C058EE03
4C058JJ07
4C058JJ22
4C058JJ24
4C058JJ28
4C180AA07
4C180CB01
4C180EA53X
4C180EA57X
4C180EA58X
4C180EA65X
4C180EB17X
4C180GG08
4C180GG09
4C180KK02
4C180LL06
4C180MM07
(57)【要約】
洗浄・除染システム。より具体的には、本発明の態様は、ロボット手段により空間を洗浄および/または除染するためのデバイス、システム、および方法に関する。一態様では、本発明は、公共輸送を含めた標的空間のところに好都合に配備され得、小さくて狭い空間を通って操縦移動してこれらの空間を効果的におよび効率的に除染することができる除染ロボットを提供する。別の態様では、本発明は、少なくとも40ミクロンのサイズであって実質的に同じサイズである液滴を生成することができる霧化システムを提供する。さらに別の態様では、本発明は、除染組成物の液滴を使用して、鉄道システムまたは航空機の空間などの閉鎖空間、あるいは閉鎖された部屋を除染するための方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉鎖空間中の標的微生物の量、細胞生存率、および/または感染力を低下させる方法であって、
(a)除染剤組成物の多数の液滴を前記閉鎖空間の中へ散布するステップと、
(b)前記液滴を前記閉鎖空間全体に分散させ、前記閉鎖空間中の前記除染組成物の有効濃度を所定時間維持するステップと、を含む方法。
【請求項2】
前記有効濃度が、前記一定の時間内で90.0%~99.9%だけ前記閉鎖空間内の前記標的微生物のバイオバーデンを低減するのに十分である前記閉鎖空間内の前記除染剤組成物の濃度である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記有効濃度が、前記一定の時間内で1logから6logだけ前記閉鎖空間内で前記標的微生物を低減するのに十分である前記閉鎖空間内の前記除染剤組成物の濃度である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記有効濃度が、ATP生物発光アッセイによって測定される相対発光量(RLU)の許容基準を満たすように前記閉鎖空間の表面清浄度を改善するのに十分である前記閉鎖空間内の前記除染剤組成物の濃度である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記閉鎖空間が、航空機の客室、高速大量輸送システムに位置する閉じた空間、または閉じた部屋である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記液滴のサイズが2ミクロンから40ミクロンの範囲内にある、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記除染剤組成物が、第4級アンモニウム化合物、過酸化水素、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸、二酸化塩素、次亜塩素酸カリウム、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、およびジクロロイソシアヌル酸カリウム、からなる群から選択される少なくとも1つの有効成分を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記有効濃度が10ppmから40ppmの範囲内にある、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記一定の時間が15秒から360分の範囲内にある、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記閉鎖空間が、Boeing航空機またはAirbus航空機の客室と同じ構成または実質的に同じ構成を有する航空機の客室である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記除染剤組成物が次亜塩素酸ベースの除染剤組成物であり、前記除染剤組成物の前記有効濃度が10~40ppmであり、前記一定の時間が15~30分である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記閉鎖空間が、約1,500立方フィートから約10,000立方フィートサイズを有する閉じた部屋である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記閉鎖空間が、モデルMetro Cammell EMU(DC)(M-トレイン)、Adtranz-CAF EMU、Rotem EMU、CNR Changchun EMU(C-トレイン)、SP1900/1950 EMU、Metro Cammell EMU(AC)、Hyundai Rotem EMU(R-ストック)、またはライトレールローリングストック内の列車コンパートメントと同じ構成または実質的に同じ構成を有する高速大量輸送システムに位置する閉じた空間である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記液滴のサイズが実質的に一様である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記多数の液滴が噴射または噴霧によって散布される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記多数の液滴が前記一定の時間中に継続的にまたは非継続的に前記閉鎖空間の中へ散布される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記標的微生物が、細菌、胞子、地衣類、真菌、原虫、ビリノ、ウイロイド、ウイルス、ファージ、および藻類からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記閉鎖空間内での空気の換気が制限される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記多数の液滴の前記散布が前記閉鎖空間内に位置するエアロゾル生成デバイスによって実現されて制御される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記散布するステップの前に前記閉鎖空間内の有機物質および障害物体を取り除くステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記散布するステップの開始後の以下のステップ、
(a)前記散布するステップ中に一定の間隔でまたは継続的に前記閉鎖空間内の前記除染剤組成物の前記有効成分の濃度を検出するステップ、
(b)前記検出される濃度を、前記除染剤組成物の前記有効成分の所定の目標濃度と比較するステップ、および
(c)前記検出される濃度が前記所定の目標濃度と等しいかまたはそれより大きい値を達成したときに前記散布するステップを少なくとも5分間停止するステップ、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
除染ロボットであって、
(a)シャーシと、
(b)少なくとも2つのホイールであって、前記ホイールのうちの一方のホイールが前記シャーシの片面に配設され、もう一方のホイールが前記シャーシのもう片面に配設される、少なくとも2つのホイールと、
(c)除染剤を周囲エリアに対して計量分配するように構成された除染モジュールと、
(d)前記ロボットをオペレーションさせるためのエネルギーを供給するように構成された動力供給モジュールと、
を備え、
前記ロボットが細長いボディを有し、狭い空間に対して除染剤を自動で計量分配するように適合される、除染ロボット。
【請求項23】
前記除染モジュールが、
(a)少なくとも1種類の除染液を保管するように構成された流体タンクと、
(b)前記ロボット内での前記除染液の移動を駆動するように構成された圧送システムと、
(c)除染剤の液滴を生成するように構成された霧化システムと、
(d)前記ロボットからその周囲に対して除染剤の前記液滴を計量分配するように構成されたディスペンサーと、
(e)除染剤の前記液滴の流量および方向を制御するように構成された流量調整モジュールと、
を備える、請求項22に記載の除染ロボット。
【請求項24】
前記霧化システムが、前記除染液を微細な液滴に変質させるように構成された1つまたは複数の霧化要素を備える、請求項23に記載の除染ロボット。
【請求項25】
前記霧化システムが、超音波手段、静電手段、またはこれらの組み合わせにより、除染剤の前記液滴を生成する、請求項23に記載の除染ロボット。
【請求項26】
前記液滴のサイズが2ミクロンから10ミクロンの範囲内にある、請求項23に記載の除染ロボット。
【請求項27】
生成される前記液滴の集団の少なくとも95%が実質的に同じサイズを有する、請求項23に記載の除染ロボット。
【請求項28】
前記ロボットが、少なくとも3メートル×2.5メートルの断面積をカバーする除染剤の液滴を生成することができる、請求項22に記載の除染ロボット。
【請求項29】
ディスペンサーが前記ロボットから脱着可能である、請求項22に記載の除染ロボット。
【請求項30】
除染剤の液滴の散布のレートが調整可能である、請求項22に記載の除染ロボット。
【請求項31】
前記ロボットが、前記除染剤を識別して追跡するように構成された識別モジュールをさらに備える、請求項22に記載の除染ロボット。
【請求項32】
前記ロボットが前記シャーシの片面にあるハンドルをさらに備える、請求項22に記載の除染ロボット。
【請求項33】
前記動力供給モジュールが少なくとも1つの交換可能なバッテリーを備える、請求項22に記載の除染ロボット。
【請求項34】
前記ロボットが前記シャーシの1つまたは複数の側にある1つまたは複数のロック手段をさらに備え、前記1つまたは複数のロック手段が、1つまたは複数のストラップ上にある1つまたは複数の相補的な構成要素と対となるように構成され、使用者が前記1つまたは複数のストラップを介して自分の身体上で前記ロボットを運ぶことができる、請求項22に記載の除染ロボット。
【請求項35】
前記ロボットの重量が約10kgから約15kgの範囲内にある、請求項22に記載の除染ロボット。
【請求項36】
前記除染ロボットが34cm以下の幅を有する、請求項22に記載の除染ロボット。
【請求項37】
前記除染ロボットが、前記ロボットをリモートコンピュータシステムまたは外部デバイスに接続するようにおよび前記リモートコンピュータシステムまたは外部デバイスから命令を受信するように構成された通信モジュールをさらに備える、請求項22に記載の除染ロボット。
【請求項38】
前記除染ロボットが自律ロボットであり、
(a)前記ホイールを駆動するように構成された1つまたは複数のモーターと、
(b)周囲環境に関する信号を受信するように構成された1つまたは複数のセンサーと、
(c)自律的に操縦移動するように前記ロボットを案内するように構成されたナビゲーションシステムと、
をさらに備える、請求項22に記載の除染ロボット。
【請求項39】
前記ナビゲーションシステムが、前記センサーからの信号を受信および処理するように、ならびに前記ロボットのナビゲーションおよび/またはオペレーションを制御する1つまたは複数のコマンドを生成するように、構成されたコンピュータシステムである、請求項38に記載の除染ロボット。
【請求項40】
前記ロボットがその中心から左に少なくとも20mmおよびその中心から右に少なくとも20mmの許容誤差距離を有する、請求項38に記載の除染ロボット。
【請求項41】
前記ロボットが、以下のこと、
(a)スポットで360度で旋回すること、
(b)窮屈な角部を上手く通ること、および
(c)15度を登ること、
のうちの1つまたは複数のことが可能である、請求項38に記載の除染ロボット。
【請求項42】
液体を液滴に変質させるための霧化システムであって、
(a)少なくとも1つの液体を保持するためのハウジングと、
(b)前記液体を液滴に変質させるように構成された1つまたは複数の霧化要素と、
(c)前記ハウジングから前記ハウジングの外部まで前記液滴が移動するのを可能にする少なくとも1つの出口と、
を備える、霧化システム。
【請求項43】
前記ハウジングが、1つまたは複数の種類の除染剤を保持するための1つまたは複数のチャンバを備える、請求項42に記載の霧化システム。
【請求項44】
前記霧化システムが、超音波手段、静電手段、またはこれらの組み合わせにより液体を液滴に変質させる、請求項42に記載の霧化システム。
【請求項45】
前記霧化要素が超音波トランスデューサーである、請求項42に記載の霧化システム。
【請求項46】
前記霧化要素が、霧化面と、前記霧化面の振動を引き起こすように構成されたジェネレータと、を備え、前記液体が前記霧化面に接触するときに分割されて液滴となる、請求項42に記載の霧化システム。
【請求項47】
前記霧化要素が、前記液体がそこを通って流れることができるプローブと、前記プローブの振動を引き起こすように前記プローブの先端部のところに構成されたジェネレータと、を備え、前記液体が前記プローブの先端部に接触するときに分割されて液滴となる、請求項42に記載の霧化システム。
【請求項48】
前記霧化要素の表面が複数の陰イオンまたは荷電粒子で被覆される、請求項42に記載の霧化システム。
【請求項49】
前記液滴のサイズが2ミクロンから10ミクロンの範囲内にある、請求項42に記載の霧化システム。
【請求項50】
生成される前記液滴の集団の少なくとも95%が実質的に同じサイズを有する、請求項42に記載の霧化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、参照によりその開示の全体が本明細書に組み込まれている、2022年1月4日に出願した仮出願第63/296,433号、および、2022年2月6日に出願した仮出願第63/307,123号の優先権を主張するものである。
【0002】
発明の分野
本発明は、概して、除染システムおよび除染方法に関する。より詳細には、例えば、航空機の客室および鉄道システムなどの大量輸送機関内の公共空間を洗浄、除染、および滅菌するのに好都合に配備され得る除染移動式ロボットである。詳細には、本発明の態様は、公共空間を洗浄、除染、および滅菌する際に移動式ロボットを制御するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
何百万の人々が公共輸送を毎日使用している。したがって、公共輸送の公共空間を清浄な状態で維持することが非常に重要である。公共輸送のサービス提供会社は、通常、時間をあけて1回の大規模な洗浄を実施し、一日に数回、小規模の洗浄を実施する。ゴミ、塵、および小片ゴミなどの可視異物を表面または物体から取り除くことを一般には意味する洗浄は、通常、手動で実行され、使用される洗浄設備(例えば、電気掃除機、モップ、および手動掃除機)は、主として、可視異物(例えば、塵および夾雑物)のみを取り除くことを専門とする。
【0004】
COVID-19パンデミックが発生した後では、衛生面の懸念から公共輸送機関への公衆の信頼が大幅に低下した。行政も、公共輸送が地域社会でのCOVID-19または他のウイルスの拡散を増大させる可能性があることを憂慮している。
【0005】
飛行機旅行中の感染リスクの問題は特に大きい問題である。乗客は通常は航空機の客室内の閉鎖空間に詰め込まれることを理由として、および、フライト時間が一般的な列車またはバスの乗車の継続時間よりも大幅に長く、最大15時間またはそれよりも長い時間になる可能性もあることを理由として、フライトでのウイルス伝播の速度またはリスクは他の形態の公共輸送(例えば、列車およびバス)を介してのウイルス伝播の速度またはリスクより高いと推測される。
【0006】
これを考慮して、公共輸送のサービス提供会社は、公共輸送内での病気の拡散のリスクを低減することを目的として公共エリアを除染することを始めている。
【0007】
本発明の時点では、公共輸送内の除染オペレーションは大部分が手動で実行されている。手動の除染は、除染の程度の非一貫性、除染剤の過度の使用、洗浄作業人の病原体に対する暴露が増大することおよびそれにより洗浄作業人および地域社会の感染のリスクが増大すること、洗浄作業人の使い捨ての防護具の使用による廃棄物の量の増大、時間、コスト、および従業員の怪我の増大、人間が到達することが困難であるエリアでの除染の効果がないこと、などの、いくつかの不利な点を有する。
【0008】
手動の洗浄および/または除染の代替手段または補完手段として、ロボットによる洗浄および/または除染システムが開発されてきた。ロボットによる手法は、限定しないが、一貫性および信頼性の向上、感染リスクの低下、廃棄物の量の低減、ならびに、時間、コスト、労働力需要、さらには従業員の怪我の低減を含めた、従来の手動の手法に勝る多くの利益を提供する。その結果として、ロボットシステムを使用して洗浄および/または除染を実施する会社の環境・社会・ガバナンス(ESG)評価が、従来の手動技術を使用する会社と比較して上がることになる。
【0009】
洗浄および/または除染のロボットは屋内または屋外の多様な場所に配備され得る。しかし、これらの場所のうちの一部の場所は狭くて小さく、これらの場所のうちの一部の場所は多くの障害物を有する可能性がある。さらに、異なる場所は異なる床材(例えば、カーペット、プラスチック、木材、金属、石材など)を有する可能性があり、一部の場所は非平坦の表面または傾斜する表面を有する可能性がある。例えば、列車内部は多様な床材および非平坦な表面を含む可能性がある。さらに別の例として、航空機の客室は非常に窮屈で狭い。洗浄および/または除染のロボットを使用することによりある場所を洗浄および/または除染するのを完全に自動化するために、ロボットは多様な環境を通って操縦移動(navigate)するのに十分な融通性を有する必要がある。
【0010】
しかし、既存の洗浄および/または除染のロボットは通常は重いかまたは嵩張り、制限された空間を有するような現場あるいはリフト機または有意な人手の補助のない現場には配備され得ない。
【0011】
さらに、噴射または湿式噴霧(wet fogging)により除染剤を適用する既存の除染ロボットは、除染プロセスを完了するのに、および、入れるようにするためにエリアが再び開けられることが可能となる前に一定の安全レベルにまで除染剤液滴を定着させるかまたは排出するのを可能にするのに、4~6時間要する可能性がある。大量輸送に関しては、大量輸送が搭乗・乗車の間に限られた時間しか有さないようなタイトなスケジュールを有する場合は、洗浄および除染のためのその利用可能時間が非常に短くなり得る。これは、空港への到着後にすぐに出発する必要があって次のフライトのための準備を整える必要がある航空機に特に当てはまる。
【0012】
上記の背景を考慮すると、航空機の客室および鉄道システムなどの大量輸送における公共空間を含めた多様な場所を洗浄、除染、および滅菌するのに好都合に配備され得る移動式ロボットを有すること、ならびに、要求を満たすために除染のための従来のターンアラウンド時間を短縮することが望ましい。さらに、感染に対抗するために閉鎖空間を効果的におよび効率的に除染する除染方法を有することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
要旨
本明細書では、ロボット手段による空間の洗浄および/または除染のためのデバイス、システム、および方法が説明される。
【0014】
本発明の態様は、洗浄および除染に関しての一貫性および信頼性を向上させるための洗浄・除染移動式ロボットシステムを提供することである。
【0015】
本発明のさらに別の態様は、公共輸送における公衆の信頼を回復させるのを補助するように、洗浄および除染の時間およびコストを低減することである。公共輸送に関連するエリアを高頻度で洗浄および除染することが、公共輸送における公衆の信頼を再確立するのに重要な要素である。
【0016】
本発明以前では、狭い列車および航空機の客室を通って操縦移動するのに十分な細さおよび小ささでありながら、高い最大積載量を運んで効果的および効率的に除染を実施する自動化除染ロボットは存在しない。本発明は、公共輸送に好都合に配備され得、列車および航空機の客室などの小さくて狭い空間を通って操縦移動することができ、効果的および効率的に洗浄および除染を実施する、ロボットを提供する。
【0017】
本発明の態様は、効果的および効率的な除染のための、小さい接地面積を有し、正確に制御され、高い信頼性を有するロボットを提供することである。本発明のロボットは軽量で小さく、小さく狭い空間を通って操縦移動することが可能である。いくつかの実施形態では、本発明のロボットの幅は約32センチメートル(cm)から約34cmの範囲である。いくつかの実施形態では、本発明のロボットの重量は、除染剤およびバッテリーなしで、10キログラム(kg)から15kgの範囲である。
【0018】
本発明の態様は、高いカバレージおよび調整可能なスプレーレートで周囲に対して除染剤を適用するロボットを提供することである。本発明のさらに別の態様は、結果として空間が十分に除染されるが入るために迅速かつ安全に再び開けられ得ることになるように、空間の除染の効果および効率を向上させることである。
【0019】
本発明の態様は、噴射または低温噴霧および熱噴霧(thermal fogging)を含む噴霧のために微細な液滴(すなわち、小さい粒径の液体)を生成することができる霧化システムを提供することである。いくつかの実施形態では、本発明の霧化システムは、限定しないが超音波プロセスおよび静電プロセスを含む、多様な機械的手段から霧化を実現する。一実施形態では、本発明の霧化システムは、約2ミクロンから約40ミクロン、好適には約2ミクロンから約10ミクロンの範囲の粒径の微細な液滴を生成する。さらに別の実施形態では、本発明の霧化システムによって生成される液滴のサイズが実質的に一様であり、液滴集団(droplet population)の少なくとも95%が実質的に同じ粒径を有する。
【0020】
したがって、本発明の実施形態は、一態様では、公共輸送に好都合に配備され得、洗浄および除染を迅速に徹底的に実施し、公共輸送を除染して除染プロセスの完了のすぐ後で公共輸送を再び開けてその状態で留めるのに安全なものとするのを可能にする、洗浄・除染ロボットとなり得る。さらに別の態様では、本発明は、空間の洗浄および除染のためのロボットシステムならびにそのオペレーションの方法を提供する。
【0021】
本発明の別の態様は、鉄道システムまたは航空機の空間などの閉鎖空間または閉鎖された部屋を除染するための方法を提供する。除染組成物の多数の液滴を閉鎖空間に提供することによりならびに空間内の空気および/または表面を有効濃度の除染組成物に対して有効な時間にわたって接触させるのを可能にすることにより、空間内の空気中のおよび/または表面上の微生物のレベルが満足できる程度で低減され得る。
【0022】
要約すると、本発明の種々の実施形態によるロボット、システム、および方法は、概して、空間の除染を改善し、具体的には、好都合であり、効果的であり、効率的である、安全な手法で公共輸送の除染を可能にする。結果として、公衆、乗客、および労働者のすべてが利益を得ることになる。
【0023】
本発明の追加の態様は、一部、以下の記述に記載され、一部、本記述から明らかとなるかまたは本発明を実施することによって理解され得る。
【0024】
当業者であれば、図中の要素は単純さおよび明瞭さのために示され、すべての関連物および選択肢が示されていないことを認識することができるであろう。例えば、商業的に実行可能である実施形態で有用であるかまたは必要である一般的であるが良好に理解される要素は、しばしば、本開示のこれらの種々の実施形態の図をあまり邪魔しないようにするために、描かれない可能性がある。さらに、特定の処置および/またはステップが特定の発生順序で説明されたりまたは描かれたりする可能性があるが、順番に関するこれらの特殊性が実際には必要ないことを当業者であれば理解することができることが認識され得よう。さらに、特定の意味が別に本明細書に記載される場合を除いて、本明細書で使用される用語および表現がそれらの対応する個別の調査分野および研究分野に関連して定義され得ることが理解され得よう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、一実施形態による特定のモジュールを備える除染移動式ロボットの概略図である。
【0026】
【
図2】
図2は、別の実施形態による除染移動式ロボットの概略図である。
【0027】
【
図3】
図3は、一実施形態によるロック手段を有する除染移動式ロボットの概略図である。
【0028】
【
図4】
図4は、一実施形態による種々のモジュールを備える除染移動式ロボットの概略図である。
【0029】
【
図5】
図5は、一実施形態による除染移動式ロボットの霧化システムの概略図である。
【0030】
【
図6】
図6は、除染プロセス中に11個の断面(断面1から11)が処理されて監視される、メトロの概略図である。
【0031】
【
図7A】
図7Aから7Cは、一実施形態による、本発明によって除染される航空機の客室の概略図である。
【
図7B】
図7Aから7Cは、一実施形態による、本発明によって除染される航空機の客室の概略図である。
【
図7C】
図7Aから7Cは、一実施形態による、本発明によって除染される航空機の客室の概略図である。
【
図8】
図8は、一実施形態による、固定式除染ロボットによって除染される、約200平方フィートおよび高さ8フィートの閉じた部屋の間取り図である。
【0032】
【
図9】
図9は、一実施形態による、固定式除染ロボットによって除染される、約320平方フィートおよび高さ9フィートの閉じた部屋の間取り図である。
【0033】
【
図10】
図10は、一実施形態による自動化除染ロボットによって除染される、約320平方フィートおよび高さ498cmの閉じた部屋の間取り図である。
【0034】
【
図11】
図11は、一実施形態による静電アトマイザーを有するコンパートメントの断面図である。
【0035】
【
図12】
図12は、本発明の一実施形態による、除染を評価する表面清浄度試験のために選定された列車上の11個の位置を示す図である。
【0036】
【
図13】
図13は、本発明の一実施形態による、除染を評価する表面清浄度試験のための航空機の客室上の位置を示す図である。
【0037】
【
図14】
図14は、一実施形態による自動化除染ロボットによって除染される、約330平方フィートおよび高さ300cmの閉じた部屋の間取り図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
詳細な説明
次に、実施され得る特定の例示の実施形態を説明として示す、本明細書の一部を形成する添付図面を参照しながら実施形態がより完全に説明され得る。これらの説明および例示の実施形態は、本開示が1つまたは複数の実施形態の原理の例示であって、示される実施形態のうちの任意の1つの実施形態を限定することを意図されない可能性があることの理解のもとで、提示され得る。実施形態は多くの異なる形態で具現化され得、本明細書に記載される実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、本開示を徹底的で完全なものとし得るようにおよび本開示が実施形態の範囲を当業者に完全に伝え得るように、提供されるものである。とりわけ、本発明は、方法、システム、コンピュータ可読媒体、装置、またはデバイスとして具現化され得る。したがって、本発明は、全体としてハードウェアである実施形態、全体としてソフトウェアである実施形態、またはソフトウェアの態様およびハードウェアの態様を組み合わせる実施形態の形態をとることができる。したがって、以下の詳細な説明は限定的な意味で解釈され得ない。
【0039】
本明細書では、ロボット手段による空間の洗浄および/または除染のためのデバイス、システム、および方法が説明される。
【0040】
本発明の態様は、洗浄および除染に関しての一貫性および信頼性を向上させるための、ならびに、洗浄および除染の時間およびコストを低減するための、洗浄・除染移動式ロボットシステムを提供することである。
【0041】
本発明のさらに別の態様は、公共輸送に好都合に配備され得、列車および航空機の客室などの小さくて狭い空間を通って操縦移動することができ、効果的および効率的に洗浄および除染を実施する、移動式ロボットを提供することである。
【0042】
さらに別の態様では、本発明は、噴射または噴霧のために微細な液滴(すなわち、小さい粒径の液体)を生成することができる霧化システムを提供する。
【0043】
別の態様では、本発明は、空間の洗浄および除染のためのロボットシステムならびにそのオペレーションの方法を提供する。
【0044】
一態様では、本発明は、除染組成物の液滴を使用して閉鎖空間を除染するための方法を提供する。別の態様では、本発明は、除染組成物の液滴を使用して閉鎖空間内の標的微生物のレベルを低減させるための方法を提供する。
【0045】
除染ロボット
【0046】
本発明は、効果的および効率的な除染のための、小さい接地面積を有し、正確に制御され、高い信頼性を有するロボットを提供する。本発明のロボットは軽量で小さく、小さく狭い空間を通って操縦移動することが可能である。
【0047】
図1を参照すると、自動化洗浄・除染ロボット10の第1の実施形態は、第4級アンモニウム化合物(QAC:Quaternary Ammonium Compound)および/または任意の適切な他の除染剤(「Disinfectant」)を保持するように構成された少なくとも1つの流体保管装置12と、少なくとも1つのホイール14と、ロボット10が移動するときにロボット10の経路内の任意の障害物を検出するように構成された、ロボット10の前部または側部に設置された少なくとも1つの障害物センサー16と、エリアおよび/またはボリューム内の計量分配される除染剤の濃度を得るように構成された少なくとも1つの除染剤センサー18と、可視異物を表面から取り除くように構成された洗浄モジュール20と、空中浮遊菌(airborne germ)および/または表面上の菌を死滅させるために除染剤を適用するように構成された除染モジュール22と、センサー16、18から信号を受信するように、除染センサー18から受信された信号に基づいて除染モジュール22を制御するように、および障害物センサー16からの信号に基づいて障害物を回避しながら所定のエリアを通って操縦移動するように、構成されたコンピュータシステム24と、を備える。
【0048】
例えば、除染されることになる物質、温度、湿度、および圧力などの、殺生物効力に影響を与える要因は多く存在する。本発明のコンピュータシステム24は、除染剤の過剰使用を回避するために周囲要因に基づいて殺生物効力および使用される除染剤の量を最適化するのに、機械学習を使用することができる。除染剤の最適化は汚染および公衆に対しての付随のリスクを低減することができる。
【0049】
いくつかの実施形態では、付着性化学物質(adherence chemical)(例えば、ポリマー)が、除染剤が表面の上により長く留まるのを可能にするために除染剤に添加され得る。
【0050】
いくつかの実施形態では、ロボット10は、任意の再充電可能なバッテリーを含むことができる。さらにいくつかの実施形態では、ロボット10はリチウムバッテリーを含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、ロボット10は、ホイール14を駆動するように構成された少なくとも1つのモーターを含むことができる。
【0052】
いくつかの実施形態では、障害物センサー16は中距離スキャナーであり得、少なくとも5mの360度の視界をロボット10に与えることができる。いくつかの実施形態では、スキャナーは、光源方式(light sourced)(例えば、レーザー)または可聴音ベース(例えば、ソナー)であり得る。いくつかの実施形態では、障害物センサー16はカメラおよび/またはソナートランスデューサーであり得る。
【0053】
図2を参照すると、本発明のロボットは、航空機の客室の通路などの狭い空間にロボットが配備されてそこを通って操縦移動するのを可能にする細長いボディを有する。いくつかの実施形態では、本発明のロボットの幅は34cm以下であり、好適には約32cmから約34cmの範囲である。
【0054】
いくつかの実施形態では、本発明のロボットの重量は、除染剤およびバッテリーなしで20kg未満であり、好適には除染剤およびバッテリーなしで10kg未満である。一実施形態では、除染剤およびバッテリーなしのロボットの重量が約10kgから約15kgの範囲内にある。
【0055】
いくつかの実施形態では、本発明のロボットは少なくとも2つのホイールを備え、ここでは、2つのホイールのうちの一方のホイールがシャーシの片面に配設され、残りのホイールがシャーシの反対側に配設される。いくつかの他の実施形態では、本発明のロボットは少なくとも4つのホイールを備え、ここでは、ホイールのうちの2つのホイールがシャーシの片面に配設され、残りの2つのホイールがシャーシの反対側に配設される。いくつかの実施形態では、本発明のロボットは、ロボットの1つまたは複数のホイールを駆動するように構成された1つまたは複数のモーター(または、等価の電子構成要素)をさらに備える。
【0056】
いくつかの実施形態では、本発明のロボットは、狭い経路を動き回ることができ、スポットで360度旋回することができ(すなわち、スキッドステアリング)、および/または、窮屈な角部(90度)を上手く通ることができる。いくつかの他の実施形態では、ロボットは15度の傾斜を登ることができる。
【0057】
本発明のさらに別の態様では、本発明は2つの独立した2ホイール駆動システムを接続して組み合わせて4ホイール駆動システムを形成し、ここでは、2つの独立した2ホイール駆動システムのホイールが等しいまたは異なる直径および構成となり得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、本発明のロボットのシャーシは、少なくとも1つの金属材料、少なくとも1つのプラスチック材料、またはこれらの組み合わせで作られる。金属材料の例は、限定しないが、アルミニウム、銅、真鍮、ステンレス鋼、チタン、および鋼鉄を含めた、金属および合金を含む。プラスチック材料の例は、限定しないが、UL94 Flame Classification(Safety of Flammability of Plastic Materials for Parts in Devices and Appliances testingのための規格)のレーティングV0の範囲内にあるプラスチック材料、および工業規格に適合する他のプラスチック材料を含む。
【0059】
本発明のロボットのナビゲーションまたは移動は手動で(例えば、ハンドルを介して)またはナビゲーションシステム下で(例えば、モーターおよびコンピュータシステムを介して)作動され得る。
【0060】
いくつかの実施形態では、本発明のロボットはハンドルをさらに備え、使用者は、ハンドルを介して、手動で、ロボットを押したり引いたり、または牽引したりすることができる。一実施形態では、ハンドルは折り畳みテレスコピック方式のハンドル(foldable telescope handle)である。一実施形態では、使用者がロボットを空間内の所望の位置まで移動させた後、使用者は空間から離れることができ、ロボットが自動で除染プロセスを実行することになる。
【0061】
いくつかの実施形態では、本発明のロボットは自律除染移動式ロボットであり、ここでは、ロボットは自動化ナビゲーションシステム下で操縦移動し、自動で除染を実施する。
【0062】
図3を参照すると、本発明のロボット20は、ハンドル(22)と、使用者が自分の肩でロボットを運ぶのを可能にする、ストラップ上にある1つまたは複数の相補的な構成要素と対となるように構成された1つまたは複数のロック手段(26a、26b、26c、および26d)と、をさらに備えることができる。一実施形態では、ハンドル22は、ロボット20を手動モードでオペレーションさせるのを可能にすることができる。ロボット20は、ロボット20の多様なステータスまたは情報を表示するための、ロボット20の外部表面の上にあるディスプレイ(図示せず)をさらに提供することができる。例えば、ステータスまたは情報は、バッテリーレベル、除染レベル、または除染計画などを含むことができる。別の実施形態では、ロボット20は、ロボット20の能力をさらに向上させるための種々のモジュールを収容するための側方パネルまたは側方ドア28となり得る1つまたは複数のモジュールを含むことができる。
【0063】
ロック手段およびその相補的な構成要素は、フック・ループまたはサイドリリースバックルの形態となり得る。一実施形態では、使用者は本発明のロボットのロック手段とストラップ上にある対応する相補的な構成要素とを接続することができ、ストラップを介して自分の身体上でロボットを運ぶことができる。さらに別の実施形態では、掲示板またはディスプレイボードなどの他の物品が、本明細書で説明されるロック手段および相補的な構成要素の同様の組み合わせを使用して本発明のロボットに取り付けられ得る。
【0064】
いくつかの実施形態では、ロボット20は、様々な位置から様々な位置までロボット20が移動するかまたは移動させられるのを可能にするための1組のホイール24aおよび24bをさらに含むことができる。一実施形態では、ホイール24aはホイール24bより小さいサイズとなり得る。一実施形態では、ホイール24aは、ロボット20のナビゲーションまたは操縦を容易にするために360度で動き回ることができる。別の実施形態では、ロボット20は、ロボット20の操縦を支援するためのシャーシ22をさらに含むことができる。例えば、シャーシ22は、ロボット20が通電されるかまたはオペレーション中にあるときにセミ電動アシストの駆動装置を提供するための電動デバイスまたは動力付きデバイスを含むことができる。
【0065】
いくつかの実施形態では、動力供給モジュールは外部電源から電気を得るための電源プラグと、いかなる外部電源にも接続することなくロボットをオペレーションさせるのを可能にするエネルギーを保存するように構成された少なくとも1つのバッテリーと、を備える。一実施形態では、バッテリーはリチウムバッテリーおよびアルカリバッテリーなどである。
【0066】
いくつかの実施形態では、バッテリーはロボットボディから脱着可能であり、交換可能および/または再充電可能である。本明細書で説明される一式の交換可能なバッテリーを用いて、使用者はバッテリーを迅速におよび容易に交換することができ、それにより、ほぼ中断なしで、および、再充電のための待機を必要とすることなく、本発明のロボットを常にオペレーションさせることが可能となる。
【0067】
いくつかの実施形態では、バッテリーは本発明のロボットの上に装着されるときに再充電され得、再充電は手動で(例えば、電源コードを通して外部電力を提供することにより)または自動で(例えば、外部充電用ドックから外部電力を得るようにロボットに指示を出すことにより)行われ得る。いくつかの他の実施形態では、本発明のロボットまたはバッテリーは、有線手段または無線手段を通して外部充電用ドックを介して再充電されることが可能である。さらに別の実施形態では、バッテリーは、本発明のロボットから脱着されるときに再充電され得る。
【0068】
いくつかの実施形態では、バッテリーは、完全に充電された後、少なくとも2時間稼働することができる。本発明のいくつかの実施形態によると、除染液滴の散布が完了するまで30分から60分を要する可能性がある除染プロセスであり、本発明のロボットは、バッテリーを再充電または充電することなく少なくとも2ラウンドの除染を実施するように配備され得る。
【0069】
除染モジュール
【0070】
図4を参照すると、ロボット20内に収容され得る除染モジュール(30)が、少なくとも、除染液を保管するように構成された流体タンク(31)と、ロボット20内での除染液の移動を駆動するように構成された圧送システム(32)と、除染剤の液滴を生成するように構成された霧化システム(33)と、ロボット20からその周囲に対して除染剤の液滴を計量分配または適用するように構成されたディスペンサー(34)と、除染剤液滴の流量および方向を制御するように構成された流量調整モジュールまたはアクチュエータモジュール(35)と、を含むことができる。さらに別の実施形態では、除染モジュールは、同じ種類または異なる種類の流体または除染剤を保持するための2つまたはそれよりも多い流体タンクを備えることができる。別の実施形態では、除染モジュール30の構成またはハウジングは、ロボット20の中に嵌め込まれるために、細長くてよく、つまりその形状が細長となり得る。一例では、ロボット20は、列車または航空機などの閉鎖空間内の座席の間の通路に沿って操縦移動させられるように設計され得る。したがって、ディスペンサー34aおよび34bは、除染モジュール30より高い位置に配置され得るかまたは除染モジュール30の上に配置され得る。この実施形態では、例えば、ディスペンサー34aおよび34bの出口が霧化システム33の上に配置され得る。別の実施形態では、ディスペンサー34aおよび34bは、除染剤の露出を増大するために反対方向となり得る。
【0071】
一実施形態では、流体タンクは少なくとも5リットルの液体を保管することができる。いくつかの実施形態では、流体タンクは約3リットルから約5リットルの液体を保管することができる。本発明のいくつかの実施形態によると、約5リットルの除染剤が60分の除染プロセスで利用されることとなり、したがって、5リットルの流体タンクは、本発明のロボットが最大60分継続して除染剤を供給するのを可能にすることになる。
【0072】
一実施形態では、圧送システムは、ロボット内の液体の流れを駆動するように構成された、電気的に駆動される少なくとも1つのポンプを備える。
【0073】
霧化システム
【0074】
一態様では、本発明は、噴射用途または噴霧用途のための除染剤の微細な液滴を生成することができる霧化システムを提供する。種々の実施形態で、除染剤の液滴は必要に応じた多様な温度で適用され得、低温噴霧または熱噴霧を介することができる。
【0075】
図5を参照すると、霧化システム(40)が、少なくとも、少なくとも1つの除染液を保持するためのハウジング(42)と、液体を微細な液滴に変質させるように構成された1つまたは複数の霧化要素(44)と、ハウジングからディスペンサーまで液滴が移動するのを可能にする少なくとも1つの出口と、を含むことができる。一実施形態では、霧化システム40は除染モジュール30内に配置され得る。別の実施形態では、霧化システム40は除染モジュール30の外部に配置され得るが、ロボット30内のロボットのコンパートメント内になおも収容され得る(側方パネル28を介してアクセス可能である)。一実施形態では、ハウジングは、1つまたは複数の種類の除染剤を保持するための1つまたは複数のチャンバを備える。
【0076】
いくつかの実施形態では、霧化要素44は超音波トランスデューサーとなり得る。
【0077】
一実施形態では、霧化要素は、霧化面と、高振動数の音波を機械的エネルギーに変換することにより振動を引き起こすように構成されたジェネレータと、を備え、機械的エネルギーが液体の中へ伝達され、その結果、液体が霧化面に接触するときに分割されて微細な液滴となる。
【0078】
さらに別の実施形態では、霧化要素は、液体がそこを通って流れることができるプローブと、先端部に到達した液体を微細な液滴に変質させるために高振動数の音波を使用して振動を引き起こすようにプローブの先端部のところに構成されたジェネレータと、を備える。
【0079】
一実施形態では、高振動数の音波は超音波である。
【0080】
いくつかの実施形態では、超音波トランスデューサーである本発明の霧化要素は特別なエコー構造および孔サイズを有して構成され、実質的にサイズが一様である液滴を生成することができる。
【0081】
いくつかの他の実施形態では、霧化要素は、放電電極と、放電電極に印加されるためのパルス電圧を発生させるように構成された電圧発生ユニットと、を備える静電アトマイザー1102であり、ここでは、液体が、放電電極に接触するとき、霧化されて微細な液滴となる。一実施形態では、霧化要素は、複数の陰イオンまたは荷電粒子で被覆された表面を備え、それにより、液体を微細な液滴にすることを誘発する。
【0082】
一実施形態では、本発明によって生成される液滴は、表面に対してのその付着性を向上させるための正電荷または負電荷を担持する。いくつかの実施形態では、本発明は、少なくとも1つの電極と、除染剤液滴を帯電させるように構成された1つのイオン化装置または同様の構成要素をさらに備え、ここでは、このような電極、イオン化装置または構成要素が、霧化要素の中にまたは外部に位置することができる。一実施形態では、除染剤液滴は、本発明の霧化要素により除染剤溶液が変質されて液滴になるときに、帯電させられる。さらに別の実施形態では、除染剤液滴は、本発明の霧化要素を使用して生成された後で帯電させられる。例えば、イオン化装置は、ディスペンサーに沿って移動する液滴を帯電させるようにディスペンサー内に配置され得る。
【0083】
一般的な超音波アトマイザーを含む既存の霧化技術は十分に一様であるミストまたはフォグを作ることができず、生成される液滴のサイズは5ミクロンから15ミクロンまで広く分布する。本霧化システムは、十分に一様であるサイズの非常に微細な液滴を生成することができる。一実施形態では、本明細書で説明される霧化システム40は、約2ミクロンから約10ミクロンの範囲のサイズの液滴を生成することができる。さらに別の実施形態では、本発明の霧化システムは、約20ミクロンから約40ミクロンのサイズの液滴を生成することができる。
【0084】
一実施形態では、霧化システム40は、液滴集団の少なくとも95%が実質的に同じ粒径を有するような液滴を生成することができる。
【0085】
図11を参照すると、構成システム1100が霧化システム40と共に採用され得る。システム1100は、出口1104(例えば、ディスペンサー34aおよび34b)から外に出ることができる最適なサイズの液滴のためのチャンネルまたは経路のシステムを含むことができる。一実施形態では、空気推進源(例えば、ファン)が、第1のチャンネル1108を通る強制空気の供給源を提供することができる。チャンネル1108内の矢印は、チャンネル1108を通る空気の流れ方を示すことができる。側方チャンネル1110が、チャンネル1108から別のチャンバ1112まで空気を誘導することができる。一実施形態では、アトマイザー1102からの液滴は最初にチャンバ1112に入ることができる。チャンバ1112内の矢印によって示される空気流の方向で、液滴がチャンバ1112からチョークポイントまたはスロットル1116の方に向かって流れるように空気と一体に移動することができる。一例では、空気流の方向は、ブロッカーまたはブロッキングプレート1114を通過させるように液滴を誘導するように、本質的に水平または概して水平となり得る。一態様では、ブロッキングプレート1114は、チャンバ1112からより大きいサイズの液滴が逃げるのを防止、阻止、または制限することができる。
【0086】
一態様では、ブロッキングプレート1114は、第1のプレート1122と、側方プレート1118および1120と、を含むことができる。側方プレート1118および1120は第1のプレート1122に対して角度を付けられ得る。例えば、
図11に示されるように、側方プレート1118および1120は、アトマイザー1102の方を向くようにおよび出口1104から離れるように角度を付けられ得る。別の実施形態では、側方プレート1118および1120は、アトマイザー1102から離れるようにおよび出口1104の方を向くように角度を付けられ得る。一実施形態では、システム1100は1つまたは複数のプレート1124をさらに含むことができる。一例では、1つまたは複数のプレート1124は、ブロッキングプレート1114から逃げた液滴をさらに制限するように種々のエリアに配置され得る。例えば、
図11に示されるように、1つまたは複数のプレート1124はブロッキングプレート1114に接近するように配設され得る。示される例では、1つまたは複数のプレート1124はブロッキングプレート1114の上方に配設され得、概して水平となり得る。
【0087】
一態様では、より小さいサイズのまたは非常に小さいサイズの液滴が出口1104の方に向かって移動するとき、チョークポイントまたはスロットル1116が、出口1116の方に向かう液滴のサイズをさらに制限または低減することができる。液滴がチャンネル1108に到達するまでに、空気の力が出口1104から外に出るように液滴を運ぶことができる。
【0088】
本明細書で説明される霧化システム1100によって作られる液滴が非常に小さいサイズであることにより、本発明は、噴射または湿式噴霧の手法に勝るいくつかの利益を有する乾燥噴霧(dry fogging)により除染剤を計量分配することができる。一つには、乾燥噴霧は高い空気カバレージを達成するものであり、空気除染および表面除染の両方に適する。二つ目として、使用されることになる除染剤の量が有意に低減され得、本発明のいくつかの実施形態によると、最大80%の除染剤となり得、それにより、潜在的な汚染および公衆に対しての潜在的な付随のリスクを低減する。
【0089】
さらに、乾燥噴霧は物体を湿った液滴に接触させることがなく、したがって、座席カバーが通常は綿または水分を吸収する傾向を有する他の材料で作られるような航空機の客室および列車の客室の除染の場合には、処理される物体または表面を乾燥させるための長時間のステップまたは余分なステップが必要なくなり、それにより、除染のすぐ後で公共輸送を使用することが可能となる。
【0090】
さらに、本発明の霧化システムはオペレーションするのに必要とする電力が少なく、したがって、デバイス全体の所要電力を低減する。
【0091】
ディスペンサー
【0092】
一実施形態では、本発明のロボットは、ロボットからその周囲に対して除染剤液滴を計量分配するように構成されたディスペンサーを備える。一実施形態では、ディスペンサーは、一方の端部においてシャーシの外部に接続されてもう一方の端部において霧化システムに接続された少なくとも1つの出口を備える。一実施形態では、ディスペンサーは
図4に描かれるような2つの出口を備え、ここでは、2つの出口は、水平レベルから測定してゼロ度から90度の範囲内の異なる角度に液滴を噴射するように構成される。外部に接続された出口の端部は、達成されることになる噴射のカバレージおよびレートに応じて、多様な形状および寸法を有することができる。
【0093】
一実施形態では、ディスペンサーはロボットから脱着可能であり、それにより、使用者が種々の構成のディスペンサーの間での切り換えを行うことが可能となる。
【0094】
ディスペンサーは、限定しないが、UL94 Flame ClassificationのレーティングV0の範囲内にあるプラスチック材料を含めた、プラスチック材料で作られ得る。
【0095】
流量調整モジュール
【0096】
図4に描かれるように、本発明のロボットは、除染剤液滴の流量および/または流れの方向を制御するように構成された流量調整モジュールをさらに備える。いくつかの実施形態では、本発明の流量調整モジュールは、固定速度または調整可能な速度を有する少なくとも1つのファンを備える。したがって、ロボット内の液滴の流量およびさらには除染剤液滴の噴射レートは使用者の命令に従って調整され得る。
【0097】
必要に応じてならびに空間のサイズおよび設計などの他の要因に応じて、一回の除染プロセスでの除染剤の噴射レートが一定または可変となり得る。いくつかの実施形態では、除染剤の噴射レートは、2,000mL/minから8,000mL/min、好適には4,000mL/minから5,000mL/minの範囲内にある。
【0098】
必要に応じてならびに空間のサイズおよび設計などの他の要因に応じて、液滴はファンのオペレーションを用いてまたはファンのオペレーションなしで周囲に対して計量分配され得る。いくつかの実施形態では、ファンは散布の経過中にオペレーション状態にある。いくつかの他の実施形態では、ファンは散布の経過中にオフにされ、次いで、空間内での液滴の流れおよび散布を誘導するために散布の直後にまたは散布のすぐ後でオンにされる。
【0099】
本明細書で説明されるディスペンサーおよび/または流量調整モジュールの特別な設計を用いることにより、液滴の流れおよび散布が、空間の効果的な除染を確実なものとするように正確に制御され得る。
【0100】
本発明のロボットは、効果的な除染のために、屋内空間の天井および壁に到達する液滴を計量分配することができる。
【0101】
具体的には、本発明のロボットは、公共輸送内の空間内での除染のために、十分に広範囲である高いカバレージを達成することができる。いくつかの実施形態では、本発明のロボットは、少なくとも3メートル×2.5メートル(3m×2.5m)の断面積をカバーすることができる。いくつかの実施形態では、本発明のロボットによって作られる液滴はロボットの上側端部の上方最大2.5mに到達することができ、ロボットの中心から左の最大1.5mに到達することができ、ロボットの中心から右の最大1.5mに到達することができる。これらの液滴は、結果、拡散により空間内の別の場所に到達することができる。
【0102】
本明細書で説明されるロボットは、多様な種類の水性除染剤に適合し、広範囲の物体を除染するのに適する。本発明のロボットと共に使用され得る除染剤は、限定しないが、次亜塩素酸、二酸化塩素、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、ジクロロイソシアヌル酸カリウム、過酸化水素、ホルムアルデヒドベースの除染剤、および第4級アンモニウム塩化物を含む。
【0103】
本発明のロボットは、他のモードまたは技術の除染を採用する1つまたは複数の追加の除染モジュールをさらに備えることができる。このような追加のモードまたは技術の除染の例は、オゾンフリー紫外線C(UVC:ultraviolet-C)の除染および空気清浄機を含むことができる。
【0104】
本発明のロボットは、洗浄されることになる表面からゴミおよび夾雑物などの可視異物を取り除くように構成された洗浄モジュールをさらに備えることができる。いくつかの実施形態では、洗浄は、除染プロセスの前に洗浄モジュールを用いてまたは手動で、本発明のロボットを使用して実行され得る。
【0105】
いくつかの実施形態では、本発明のロボットは50dBまたはそれ未満の低い騒音レベルでオペレーションすることができる。
【0106】
センサーおよび自律ナビゲーションシステム
【0107】
本発明のロボットは、ロボットのナビゲーションを案内するように、ならびに、自律システム下で航空機の通路などの狭い空間内でロボットがオペレーションおよび操縦移動するのを可能にするように、構成されたナビゲーションモジュールをさらに備えることができる。
【0108】
自律ロボットまたは自動化ロボットには、通常、周囲環境に関する信号を受信するためのセンサーと、受信される信号に基づいてロボットの移動またはオペレーションを調整するための何らかの制御装置システムと、が設置され、その結果、ロボットが障害物を回避しながら所定のルートに沿って操縦移動することができる。通常、許容誤差距離(tolerance distance)は、ロボットがさらに操縦移動するのを制限するように、または、所定の許容誤差距離内の障害物の存在をセンサーが検出するときにそのルートを調整するようにロボットに指示を出すように、設定される。より大きい許容誤差距離を設定することによりナビゲーション中に障害物に当たる可能性を下げ易くなるが、過度に大きい許容誤差距離は、障害物に当たる可能性が非常に低い場合であってもロボットが停止するかまたはその所定のルートを調整する必要があるので、ロボットの性能を有意に阻害し得る。狭い空間内でのナビゲーションに関しておよび/または航空機の客室内などでの制限される光に関して、高い操縦性および精度が大きな課題である。本明細書で説明される特別な設計により、本発明のロボットは、ほとんど逸脱することなくその隣接する障害物に対して高い耐性で所定のルートに沿って進むという意味において、高い精度で狭い空間内を操縦移動することができる。
【0109】
一実施形態では、本発明のロボットは、リアルタイムの監視および/または位置決めを目的として周囲環境から信号を受信する少なくとも1つのセンサーをさらに備える。本発明のロボットと共に使用されることになるセンサーは、光源方式(例えば、レーザーシステム、LiDarシステム、およびカメラ)、可聴音ベース(例えば、ソナーシステム)、電波ベース(例えば、レーダー)、ならびに、自動ローカライゼーション・ナビゲーションシステムのために適用可能である任意の他のセンサーであり得る。センサーから収集または受信される信号および画像は分析のために任意の適用可能な信号処理装置に伝送され得、および/または活動記録の一部として記録され得る。
【0110】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明される1つまたは複数のセンサーが、5メートルから40メートルの360度の視界を本発明のロボットに与えることができ、ロボットから最大40メートルに位置する障害物を検出することができる。
【0111】
いくつかの実施形態では、本発明のロボットは、左に20ミリメートル(mm)および右に20mmの許容誤差距離を有するように構成され、これは、左側および右側の両方において20mmの範囲内に障害物が検出されない限りにおいてロボットが継続して操縦移動およびオペレーションすることになることを意味する。
【0112】
本明細書で説明されるホイールと併せて、本発明のロボットは狭い空間内で自律的に着実に操縦移動および旋回することができ、その隣接する障害物に当たる可能性は低い。したがって、本発明のロボットは、ほとんど逸脱することなくその所定のルートに沿って進むことが可能となる。
【0113】
安全管理
【0114】
本発明は除染が安全に実行されるのを確実なものとするための1つまたは複数の安全対策をさらに備えることができ、それにより、人々の負う潜在的な健康リスクを低減する。
【0115】
いくつかの実施形態では、本発明のロボットは、除染剤および/または操作者を識別して追跡するように構成された識別モジュールをさらに備える。識別モジュールは、識別タグから特定の信号を検出するかまたは読み取るように、および、電子通信を介してこのような信号を1つまたは複数の処理装置に伝送するように、構成された1つまたは複数のスキャナーを備えることができる。ロボットは使用者に識別タグを提供するように要求することができ、システムに保存される除染剤および/または操作者の認可リストに対してタグが適合する場合にのみ、完全にオペレーションすることになる。
【0116】
このような識別タグの例は、限定しないが、RFID、QRコード(登録商標)、NFCチップ、およびバーコードを含む。例えば、個人RFIDタグが、噴射または噴霧(事例による)による除染のために使用されることを認可された除染剤溶液の各ボトルに割り当てられ、適合するRFIDタグが存在する場合にのみロボットドアが開けられることになる。適合するRFIDタグが存在しない場合、使用者がロボットを起動したりまたは除染剤溶液を充填して除染を実施するためにロボットを開けたりすることができなくなる。各RFIDタグは、ロボットの流体タンクサイズおよび除染剤溶液を運ぶボトルのサイズに応じて1回または複数回の起動を可能にすることができる(例えば、除染溶液のボトルが1回では終了され得ない場合に複数回の起動が可能とされ得る)。いくつかの他の実施形態では、流体タンク内の液体の体積は除染剤溶液の消費を確定するためにリアルタイムベースで追跡され、このような情報が対応するRFIDタグの記録を更新するのに使用され得る。これにより、認可された除染剤溶液のみが使用されるようになることおよび/またはロボットが権限保持者によってオペレーションさせられることになることが確実なものとなる。
【0117】
さらに別の実施形態では、本発明のロボットは緊急安全制御をさらに備えることができ、ここでは、ロボットが所定の距離内で移動する物体をセンサーが検出するとすぐにまたはその1秒の範囲内で移動または噴射を停止することになる。一実施形態では、この場合、ロボットは、使用者に対して状況に関する通知を行うための警告信号を供給することになる。これにより、除染プロセスの前に空間から取り除かれない場合の人間または生体物の暴露のリスクが低減されることになる。
【0118】
オペレーションシステム
【0119】
いくつかの実施形態では、本発明のロボットは、通信モジュールを通して通信ネットワークにさらに接続され得る。通信ネットワークはリモートコンピュータシステムにさらに接続され得、ここでは、使用者は、コンピュータ、スマートデバイス、または同様の外部デバイスを通して遠隔の場所からロボットに命令を出すことができる。いくつかの実施形態では、ロボットは、限定しないが、そのセンサーによって受信されるデータを含めたその洗浄・除染パラメータを通信ネットワークと共有することができる。さらにいくつかの他の実施形態では、ロボットは、そのオペレーション中の任意の時間に通信ネットワークを介して命令を受信することができる。
【0120】
いくつかの実施形態では、通信は、限定しないが、WI-FI、BLUETOOTH(登録商標)、NFC、および4Gまたは5G遠隔通信システムを含めた、無線通信である。
【0121】
本発明の態様は、リアルタイムデータを考慮してリアルタイムベースでロボットのオペレーションを制御するために、本発明のロボットのセンサーから信号を受信、処理、および/または分析するように構成されたコンピュータシステムを提供することである。一実施形態では、コンピュータシステムは、ロボットの性能を調整および最適化することを目的として、ロボットの多様なモジュールのオペレーションを制御および調節するためにセンサーからの信号に基づいて、洗浄および/または除染されることになる材料および/または物体の種類(例えば、床、壁、ドア、座席など)を識別するのに機械学習を使用することができる。コンピュータシステムは、同様の物体を洗浄および除染することに関する以前のデータに基づいて最適化される除染戦略を決定するのに、このような情報をさらに使用することができる。
【0122】
さらに別の実施形態では、コンピュータシステムは、追跡可能性のためにすべての活動記録を記録するための監視システムをさらに提供することができる。記録されることになる情報または活動は、各オペレーションの開始時間および終了時間、ロボットの位置およびルート、担当操作者、種々の事象、事故の記録、噴射体積、およびバッテリー状態を含むことができる。別の実施形態では、コンピュータシステムは使用者が洗浄・除染計画を作るのを可能にし、その結果、ロボットが、ルート、噴射時間、噴射レート、液滴のサイズ、および噴射モードなどの、使用者の所定のオペレーションパラメータに従ってオペレーションすることになる。
【0123】
ロボットおよびコンピュータシステムは、多様なモードのオペレーションまたは機能を実装するようにさらに構成され得る。例えば、ロボットは電源を入れられた後でスタンバイモードとなるか、あるいは、外部コンピュータまたはスマートデバイスを使用してネットワーク通信を介して使用者がロボットと通信して命令を与えるのを可能にするセットアップモードとなる。いくつかの他の実施形態では、所定のルートに従ってロボットが操縦移動することになる自動化モードと、その洗浄モジュールを使用してロボットが洗浄を実施することになる洗浄モードとが提供される。さらに別の実施形態では、ロボットは事故モードに切り換えることができ、ここでは、電力または溶液の不足、接続損失、および障害物の存在などの問題に直面するときにロボットがオペレーションを停止して使用者に対して通知を行うことになる。
【0124】
コンピュータシステムは、マイクロプロセッサと、マイクロプロセッサに接続されたコンピュータ可読記憶媒体またはメモリと、を含むことができる。
【0125】
使用者がロボットをオン/オフにしたりまたはロボットを制御したりするためのスイッチおよびボタンがロボットにさらに提供され得る。緊急の場合、ロボットのオペレーションのいずれかを終わらせるための緊急停止ボタンがさらに提供され得る。
【0126】
ディスプレイおよび警告装置
【0127】
本発明のロボットは、使用者が情報を受け取るのを可能にするように構成されたディスプレイモジュールをさらに備えることができる。表示されることになる情報は、各オペレーションの開始時間および終了時間、分および秒の総経過時間、ロボットのGPS位置、担当操作者、除染剤溶液に関する情報(例えば、使用される除染剤溶液の種類、流体タンクに充填された体積、および充填の日時)、ファンおよび噴射に関する情報(例えば、ファンがオンであるか否か、その速度、および噴射レート)、ならびに、バッテリー状態を含むことができる。
【0128】
いくつかの実施形態では、ディスプレイモジュールは使用者が使用者自身の選択で情報にアクセスしてロボットのオペレーションに関する命令を与えるのを可能にするユーザーインターフェースを備える。
【0129】
一実施形態では、ディスプレイモジュールは、一方で、流体タンク内の除染溶液のレベル、バッテリーレベル、および液滴の噴射レートなどの、ロボットのオペレーションに関する情報を示すように、および他方で、使用者からの入力を受信するように、構成されたLCDタッチスクリーンである。別の実施形態では、ディスプレイモジュールは特定のオペレーションパラメータに関するアイコンを示すことができ、ここでは、使用者がそれに応じてロボットのオペレーションを選んで制御することができる。
【0130】
一実施形態では、本発明のロボットは、ロボットのオペレーションに影響を与え得る任意の警戒状況を使用者に警告するように構成された1つまたは複数の警告装置をさらに備えることができる。例えば、可聴警告装置が、低バッテリーレベル、低溶液レベル、過熱、障害物の検出の事象において、使用者に対して通知を行うのに採用され得る。光インジケータまたはメッセージの告知などの、警告装置のいくつかの他の形態も採用され得る。
【0131】
空気サンプリングモジュールおよび現場監視のための検出モジュール
一実施形態では、ロボットは、周囲から空気を集めるように構成された空気サンプリングモジュールまたは空気サンプリングユニットと、1つまたは複数の標的物質の存在または不在を検出するようにあるいは閉鎖空間内でのそのレベルを測定するように構成された検出モジュールと、をさらに備えることができる。このような標的物質は、限定しないが、微生物、揮発性有機化合物(VOC:volatile organic compound)、および汚染物質を含み、このような標的物質の関連情報が、除染プロセスの進捗および中の空気品質などの閉鎖空間のステータスを示すことができることが期待される。
【0132】
一実施形態では、検出モジュールは空気サンプリングモジュールに接続され得る。別の実施形態では、検出モジュールは空気サンプリングモジュールに一体化され得る。
【0133】
空気サンプリングモジュールは、固定速度および/または固定体積であるいは可変速度および/または可変体積で本発明のロボットの外部から内部まで空気を機械的に移動させるのに、送風機またはポンプなどの周囲空気を捕捉するための適切な手段を採用することができる。一実施形態では、空気サンプリングモジュールは、入口と、空気サンプルを集めることを目的として入口を通して周囲からロボットのボディの中へ空気を移動させるためのモーターなどの機構と、を備えることができる。空気サンプリングモジュールは、本発明のロボットのオペレーション中におよび/またはオペレーション後に、継続的にまたは所定の間隔で空気サンプルを集めることができる。別の実施形態では、検出モジュールは、標的微生物の存在または不在を検出するための任意の適切な手段を採用することができる。例えば、検出モジュールは試験サブシステムをさらに含むことができる。例えば、サブシステムは、標的微生物の存在または不在の兆候、ならびに/あるいは、標的微生物の量または同様の指示を提供することができる、核酸ベースのまたは抗原ベースの分子試験デバイスを含むことができる。一実施形態では、検出モジュールは、試験サブシステムから兆候を考慮して信号(視覚信号、電子信号、または他の形態の信号であり得る)を生成することができるシグナリングサブシステムを含むことができる。一実施形態では、シグナリングサブシステムは、試験サブシステムの画像または兆候を捕捉する視覚的捕捉デバイスを含むことができる。別の実施形態では、シグナリングサブシステムは試験サブシステムと一体化され得、その結果、試験サブシステムは人間に兆候を提供しない可能性がある。例えば、試験サブシステムは、検出モジュールに信号を送信する前に信号をシグナリングサブシステムに伝送することができる。一実施形態では、検出モジュールは、2つまたはそれよりも多くの種類の微生物を同時に検出する多重検出を行うことができる。
【0134】
別の実施形態では、シグナリングサブシステムは、温度、湿度、位置などの生データを捕捉することできるかまたはVOCおよび汚染物質を捕捉することができるセンサーなどの、他のサブシステムにさらに接続され得る。
【0135】
一実施形態では、検出モジュールまたはロボットは、検出される信号の分析を実施するための、記憶ユニットに連結された処理装置またはマイクロプロセッサをさらに含むことができる。例えば、処理装置は検出される信号に基づいて標的微生物を定量化または半定量化することが可能となり得、それにより、絶対測定ユニットまたは相対測定ユニット内の空気中の標的微生物のレベルの通知を使用者に対して行う。さらに別の実施形態では、本発明のデバイスは、任意の警戒状況の通知を使用者に対して行うために、シグナリングサブシステムを通して警告信号を与えることができる。
【0136】
本発明の検出モジュールは、本発明のロボットのオペレーション中におよび/またはオペレーション後に、継続的にまたは所定の間隔で検出を実行することができ、得られたデータをロボットのオペレーションシステムに送信することができる。一実施形態では、本発明のロボットのオペレーションシステムは検出モジュールからデータまたは信号を受信するように構成され、受信されるデータまたは信号を考慮して、噴射レートおよび噴射時間などの本発明のロボットの1つまたは複数のオペレーションパラメータを調整することができる。
【0137】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明されるモジュールの一部またはすべてがロボットボディから分離可能および脱着可能であり、それにより、必要に応じてロボットを設計して組み立てるという融通性を与える。
【0138】
除染ロボットを使用する航空機の客室の除染
【0139】
種々の実施形態で、本発明は、航空機の除染のために適合された除染ロボットを提供する。ここで説明されるロボットは、航空機の狭い通路にロボットを容易に配備するのを可能にする軽量で細長いボディを有する。実施形態のうちのいくつかの実施形態によるセンサーおよびナビゲーションシステムを用いて、ロボットは高い精度で狭い通路に沿って操縦移動することができ、ほとんど逸脱することなく所定のルートに沿って進みながら除染プロセスを完了することができる。さらに、本発明のロボットは乾燥噴霧により表面および空気を除染することができ、それによりフライトをその通常段階に戻して次のフライトのための準備が整った状態にして安全状態にするのに必要となる時間を短縮する。本発明のロボットはオペレーションするのにWI-FI接続に依存せず、予め設定されたプログラムに従って客室内で除染を実施することが可能である。
【0140】
使用者は多様なシナリオ下で航空機の客室を除染するのに、ならびに、その要求に応じて、除染剤の種類、除染プロセスの継続時間および他のパラメータを調整するのに、本発明のロボットを使用することができる。例えば、航空機がアイドリング状態であって同じ日に次のフライトがない場合、より長い継続時間の除染および換気が実施され得る。航空機のスケジュールがタイトであって航空機が2つのフライトの間に1時間から1.5時間しか有さない可能性がある場合、本発明のロボットにより迅速であるが効果的な除染が実施され得る。本発明のロボットのいくつかの実施形態によると、除染時間は約15分程度の短さにすることができ、換気時間は約15~30分となり得、これにより、ターンアラウンド時間を大幅に短縮することになり、航空機が次のフライトをスケジュール通りに開始することが可能となる。さらに別の実施形態では、許容され得る除染剤および許容され得る粒径の液滴を使用する食事前の除染が採用され得る。高頻度で十分な除染を用いることにより、感染のリスクまたは病気の蔓延のリスクが大幅に低減され得る。
【0141】
閉鎖空間の除染の方法
【0142】
本発明の態様は、空間内の空気および表面を含めた、種々の設定値の空間を除染するための方法を提供することである。いくつかの実施形態では、メトロ、列車、航空機、船舶、ならびに、ホテルの部屋、簡易宿泊所の部屋、および仕事場または学校の部屋などの部屋、の空間などの閉鎖エリア内の空間を除染するための方法が提供される。さらに別の態様では、閉鎖エリアまたは閉鎖空間中の標的微生物の量、細胞生存率、および/または感染力を低下させる方法が提供される。
【0143】
一態様では、本発明は閉鎖エリアまたは閉鎖空間中の標的微生物の量、細胞生存率、および/または感染力を低下させる方法を提供し、本方法は、a)除染剤組成物の多数の液滴をエリアの中へ散布するステップと、b)一定の時間、エリア内の除染剤組成物の有効濃度を維持することを目的として液滴をエリア全体に分散させるのに十分である時間を与えるステップと、を含む。
【0144】
本明細書で使用される場合の標的微生物の細胞生存率は、集団内での標的微生物の生きている健康な細胞の割合の測定値である。
【0145】
本明細書で使用される場合の、除染剤組成物および標的空間または標的表面に関しての有効濃度は、標的微生物のバイオバーデンを満足できるレベルで低減することができる、標的空間中のまたは標的表面上の除染剤組成物中の有効成分の濃度を意味する。いくつかの実施形態では、除染剤組成物の有効濃度は、90~99%だけまたは好適には95~99%だけ標的微生物のバイオバーデンを低減することができる、標的空間中のまたは標的表面上の除染剤組成物中の有効成分の濃度である。いくつかの他の実施形態では、除染剤組成物の有効濃度は、99.1~99.99%、99.96~99.99%、または好適には99.9~99.9%だけ標的微生物のバイオバーデンを低減することができる、標的空間中のまたは標的表面上の除染剤組成物中の有効成分の濃度である。さらに他の実施形態では、除染剤組成物の有効濃度は、指定時間の範囲内で、1log、2log、3log、4log、5log、または6logだけ標的微生物を減少させることができる、標的空間中のまたは標的表面上の除染剤組成物中の有効成分の濃度である。
【0146】
本明細書で使用される場合の「バイオバーデン」という用語は、除染前の空間内の表面上のまたは空気中の生存微生物の数を意味し、この表面または空間の微生物汚染または微生物負荷の程度を反映することができる。
【0147】
本明細書で使用される場合の「微生物」という用語は任意の非細胞生物または単細胞生物(群体生物を含む)を意味する。微生物はすべての原核生物を含み、病原体となり得る。微生物は、細菌、胞子、地衣類、真菌、原虫、ビリノ、ウイロイド、ウイルス、ファージ、および一部の藻類を含む。微生物は病原微生物または非病原性微生物となり得る。
【0148】
除染剤組成物の多数の液滴をエリアの中へ散布するのにおよび有効濃度に達するのにまたは有効濃度を維持するのに十分である時間は、限定しないが:散布されるときの液滴のサイズ、使用されている除染剤組成物の種類、液滴中の除染剤組成物の濃度、標的微生物の固有性、エリアのサイズおよび湿度、ならびにエリアの処理前状態、を含めた複数の要因の相関的要素となり得る。時間の計算は上記の要因のうちの1つまたは複数の要因に基づいて行われ得る。
【0149】
いくつかの実施形態では、除染剤組成物の液滴は噴射または噴霧により標的空間または標的表面に散布され、ここでは、除染剤の液滴は標的表面上の空気および表面部分に散布され、それにより、空気中のおよびこれらの表面上の微生物を死滅させるかまたは他の手法で破壊する。任意の特定の理論に限定されないが、噴霧は液滴のサイズに関して噴射とは異なり、液滴のサイズは、液滴の表面接触挙動および噴射分布に直接に影響を与える。通常、噴霧除染デバイスは10~40ミクロンのサイズの液滴を生成し、噴射デバイスは100ミクロンを超えるサイズのより大きい液滴を生成する。いくつかの実施形態では、液滴のサイズは約2ミクロンから約40ミクロンの範囲内にある。他の実施形態では、液滴のサイズは約100ミクロンまたはそれを上回る。
【0150】
噴射または噴霧は、手動で(例えば、手持ち式の噴霧器により)、または自動化手段により(例えば、固定式または移動式のいずれであってもよい、ハンズフリーの噴射/噴霧デバイスにより)、実施され得る。一実施形態では、液滴は、本明細書で説明されるロボット、システム、または発明のうちのいずれかを使用して散布される。
【0151】
噴射または噴霧は、室温で、より低い温度で、またはより高い温度で、適用され得る。一実施形態では、液滴は低温噴霧または熱噴霧により散布される。
【0152】
いくつかの実施形態では、液滴は静電的に帯電される。
【0153】
いくつかの実施形態では、除染剤組成物の液滴が標的表面に対して散布される前に、有機物質および他の障害物体を取り除くための表面の事前洗浄が実施される。
【0154】
除染剤組成物が適用可能でありかつ噴射または噴霧による用途において安全であることを条件として、本明細書の方法に関連して多様な種類の除染剤組成物が使用され得る。適用可能な除染剤組成物の例は、限定しないが、クアット(第4級アンモニウム化合物)ベースの除染剤、過酸化水素ベースの除染剤、および塩素ベースの除染剤を含む。いくつかの実施形態では、除染剤組成物は、第4級アンモニウム化合物、過酸化水素、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸、二酸化塩素、次亜塩素酸カリウム、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、およびジクロロイソシアヌル酸カリウム、からなる群から選択される少なくとも1つの有効成分を含有する。
【0155】
本発明の方法によって除染されることになる閉鎖空間は多様なサイズおよび設定値であり得る。一実施形態では、閉鎖空間は約500立方フィートから5,000立方フィートのサイズを有する。さらに別の実施形態では、閉鎖空間は約1,500立方フィートから4,000立方フィートのサイズを有する。
【0156】
一実施形態では、本発明の方法によって除染されることになる閉鎖空間はそのドアまたは窓のすべてまたは一部が閉じられるかまたは密閉される。別の実施形態では、例えば、中の空調設備、通気口、またはファンのうちの1つまたは複数がオフにされることより、閉鎖空間内の空気の換気が制限される。
【0157】
本発明の除染の方法は広範囲の空間に適用され得る。以下の詳細な説明は、本発明を使用して、鉄道システム、航空機、および閉鎖された部屋の空間を除染するための方法を示すための多様な実施形態を提供する。
【0158】
鉄道システムの除染
【0159】
一態様では、メトロ、サブウェイ、および列車などの鉄道システムの空間を除染する方法が提供される。さらに別の態様では、鉄道システムの空間内の標的微生物の量、細胞生存率、および/または感染力を低下させる方法が提供される。鉄道システムの空間は、メトロ、サブウェイ、または列車のコンパートメントであり得る。
【0160】
本方法は、a)除染剤組成物の多数の液滴を鉄道システムの空間の中へ散布するステップと、b)一定の時間、空間内の除染剤組成物の有効濃度を維持することを目的として液滴を空間全体に分散させるのに十分である時間を与えるステップと、を含む。本明細書で説明されるように、液滴は手動でまたは自動化手段で散布され得、多様な種類の除染剤が使用され得る。
【実施例】
【0161】
(実施例1)
モデルCトレインの除染
【0162】
図6は、メトロ(鉄道システムのすべての列車の一般的な内部設計を示す、Hong Kong Mass Transit RailwayシステムのモデルCトレイン)の概略図を示し、ここでは、除染プロセス中に11個の断面(断面1から11)が処理されて監視された。メトロの寸法は24600mm×3096mm×3700mmである。11個の断面は、メトロのドア、座席、座席壁、および貫通路などの種々の典型的な位置を含む。プローブが、幾何学的平面全体の除染剤の濃度を監視するために、縁部エリア(例えば、壁にある)または閉塞エリア(例えば、座席下)などの断面の戦略的位置に配置された。
【0163】
この実施形態では、リモコンを介してオペレーションさせられる移動式の自動化除染ロボットがメトロの一方の端部に配備され、次いで、メトロに沿ってもう一方の端部に向かって移動するときに各々の断面のところに気化過酸化水素を散布し、ここでは、試験中、すべてのドアが閉じられており、換気がオフにされていた。気化過酸化水素が、少なくとも20分間にわたって標的断面上で90ppm(百万分率)の過酸化水素を達成するように(これらの断面に位置するプローブによって検出される)、11個の断面の各々のところにおいてロボットによって適用された。除染プロセスの完了後、メトロのすべてのドアが空気混入のために30分間開けられ、それにより、人間の暴露に安全であるレベルにまで除染剤濃度を低下させた。処理の前後での11個の断面における細菌レベルが監視された。気化過酸化水素を20分間にわたって90ppmで維持することによりEscherichia coliを99.999%超で低減することが可能であることが分かった。
【0164】
(実施例2)
エアポートエクスプレスライントレイン(airport express line train)の除染
【0165】
鉄道システムの空間の除染の有効性をさらに評価するために、3つの異なる種類の除染剤組成物を使用して香港の大量輸送鉄道(MTR:Mass Transit Railway)のエアポートエクスプレスライン(AEL:Airport Express Line)トレインで系統的実地試験を実施した。この実施例では、リモコンを介してオペレーションさせられる移動式の自動化除染ロボットが列車の一方の端部のところに配設され、次いで、列車に沿ってもう一方の端部の方に向かって移動するときに除染剤を散布し、ここでは、試験中、すべてのドアが閉じられており、換気がオフにされた。表1は、除染剤の種類、およびこの実施例で採用される除染プロセスのオペレーションパラメータをまとめる。本明細書で使用される場合の除染剤消費は、立方メートル(m
3)で表される除染剤空間の単位体積当たりのミリメートル(mL)の単位で表されるその適用形態での除染剤組成物の量を意味する。例として、1mL/m
3の除染消費は、1m
3(1m×1m×1m)の空間内において、空間全体のための、デバイスまたは他の手段によるその適用形態での1mLの除染剤組成物の噴射を必要とする、ことを意味する。
【表1】
【0166】
ATP生物発光アッセイを利用して除染済み空間の表面清浄度を監視することにより除染の有効性を評価した。アデノシン三リン酸(ATP:Adenosine triphosphate)は生物学的負荷の測定値であり、表面全体の清浄度を示すために生物学的汚染のためのマーカーとして使用される。バイオマスの変化(増加/減少)が存在する場合、それに対応するATPの変化が存在する。この場合、ATPの相対量が、3M(商標)Clean-Trace(商標)Luminometer LX25または3M(商標)Clean-Trace(商標)Hygiene Monitoring Deviceなどの携帯用デバイスを用いて測定され得、結果が相対発光量(RLU:relative light unit)で表される。除染の文脈では、表面清浄度監視試験が、洗浄・除染プロセスが満足できる程度で実行されたかどうかを細胞生存率およびバイオバーデンを参照して評価するための迅速な現地試験として機能する。一般に、RLU読取値が低下すると、サンプル中の微生物の量が減少し、表面がより清浄になる。医療環境では、RLUの推奨される許容基準は以下の通りである:a)合格(<500RLU)、b)注意(500~1,000RLU)、c)不合格(>1,000RLU)。
【0167】
この実施例は、3M(商標)Clean-Trace(商標)Hygiene Monitoring Deviceを使用して除染およびそのそれぞれのRLU読取値が測定される直前および直後に、2回の独立したスワッピングにより、列車の標的エリア(2cm×5cmのサンプルエリア)の各々から2つの試料が集められた。
図12に示されるように、列車の多様な接触可能なエリアおよび材料をカバーする合計11個のサンプル位置が選定されて試験された。表2~4は、この実施例の表面清浄度監視試験の結果の概要を提供する。
【表2】
【表3-1】
【表3-2】
【表4-1】
【表4-2】
【0168】
これらの結果は、EVICATE ProまたはNANOCYNを使用する除染が、通過するすべての選定された位置の表面清浄度を大幅に向上させ、対してBIOEMを使用する除染の効果がより低いことを示した。
【0169】
当業者であれば認識するように、本発明の方法は種々の設計の鉄道システムを除染するのに使用され得、本明細書で示されるかまたは説明される列車の種類に限定されない。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、Metro Cammell EMU(DC)(M-トレイン)、Adtranz-CAF EMU、Rotem EMU、CNR Changchun EMU(C-トレイン)、SP1900/1950 EMU、Metro Cammell EMU(AC)、Hyundai Rotem EMU(R-ストック)、およびライトレールローリングストック(light rail rolling stock)などの、香港または中国本土の大量輸送鉄道(MTR)の列車の客室を除染するのに使用され得る。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、CRH2 Class、CRH2A Class、CRH2 Class x2 & Passenger cars、CRH3 Class、CRH3 Class、CRH380AL Class、CRH400AF Class、CRH400AF Class、CRH5 Class、CRH5 Class x2 & Passenger cars、DJJ Class ”Blue Arrow” Train、X-2000 Tilt Train、およびKCR Metropolitan Train(香港)を含めた、中国本土または香港で運用される列車などの、高速列車の列車の客室を除染するのに使用され得る。
【0170】
当業者であれば認識するように、空間に対して除染剤液滴を散布するのに、手動デバイス、固定式デバイス、または移動式デバイスのいずれが採用される場合でも、十分なカバレージを確実なものとすることを目的としておよび反応するのに十分な時間を与えることを目的として、メトロの全体にわたって(特には、閉塞エリアまたは露出度の低いエリア)有効濃度を達成するためには十分な量の除染剤を噴射することが重要である。処理時間は、対象の標的微生物の種類および量、使用される除染剤の種類、ならびに、メトロの客室の処理前の状態に従って変動し得る。いくつかの実施形態では、約9,000~11,000立方フィートのメトロの客室を除染するためには、客室中のまたは標的表面上の過酸化水素蒸気の有効濃度が120~400ppmの範囲内にあり、処理時間は20~360分の範囲内にある。いくつかの他の実施形態では、約9,000~11,000立方フィートのメトロの客室を除染するためには、客室中のまたは標的表面上のクアットベースの除染剤液滴の有効濃度が10~40ppmの範囲内にあり、処理時間は20~360分の範囲内にある。いくつかの他の実施形態では、約9,000~11,000立方フィートのメトロの客室を除染するためには、客室中のまたは標的表面上の次亜塩素酸ベースの除染剤液滴の有効濃度が10~40ppmの範囲内にあり、処理時間は20~360分の範囲内にある。
【0171】
いくつかの他の実施形態では、本明細書で説明される方法は、鉄道システムの閉鎖空間中の標的微生物の量、細胞生存率、および/または感染力を低下させ、一定の時間内で標的微生物のバイオバーデンを90.0~99.9%だけ低減する。さらに他の実施形態では、本明細書で説明される方法は、一定の時間内で鉄道システムの閉鎖空間のRLU読取値を少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%だけ低減する。
【0172】
航空機の客室の除染
【0173】
一態様では、航空機の客室の空間を除染する方法が提供される。さらに別の態様では、航空機の客室の空間中の標的微生物の量、細胞生存率、および/または感染力を低下させる方法が提供される。
【0174】
本方法は、a)除染剤組成物の多数の液滴を航空機の客室の空間の中へ散布するステップと、b)一定の時間、空間内の除染剤組成物の有効濃度を維持することを目的として液滴を空間全体に分散させるのに十分な時間を与えるステップと、を含む。本明細書で説明したように、液滴は手動でまたは自動化手段により散布され得、多様な種類の除染剤が使用され得る。
【0175】
図7は、2つの通路を有する航空機の客室の概略図を示す。一実施形態では、1つの移動式の自動化除染ロボットが各通路の開始ポイントのところに配置され、航空機のもう一方の端部まで通路に沿って移動しながら除染剤液滴を散布し、ここでは、航空機のすべてのドアおよび窓が閉じられており、空調設備を含めたすべての換気デバイスがオフにされている。2つのロボットは、15秒などの一定の時間にわたって各々の滞在ポイント(客室クラス間またはトイレエリア間の仕切りである)のところで停止するように構成される。除染全体は約10分から15分であった。除染プロセスの完了後、航空機のすべてのドアが空気混入のために開けられ、それにより、人間の暴露に安全であるレベルにまで除染剤濃度を低下させる。処理の前後の客室内の選定された位置のところの標的微生物のレベルが監視される。本発明の方法は標的微生物の量を大幅に低減することができ、バイオバーデンを低く維持することにおいて満足できるレベルとなり得ることが期待される。
【0176】
当業者であれば認識するように、除染剤液滴を散布するのに、手動デバイス、固定式デバイス、または移動式デバイスのいずれが採用される場合でも、十分なカバレージを確実なものとすることを目的としておよび反応するのに十分な時間を与えることを目的として、航空機の客室の全体にわたって(特には、閉塞エリアまたは露出度の低いエリア)有効濃度を達成するためには十分な量の除染剤を噴射することが重要である。処理時間は、対象の標的微生物の種類および量、使用される除染剤の種類、ならびに、航空機の客室の処理前の状態に従って変動し得る。
【0177】
本発明の方法は、旅客機または貨物航空機のいずれであっても、限定しないが、BOEING航空機(例えば、モデル707、720、727、737、747、757、767、777、および797)、ならびにAIRBUS航空機(例えば、モデルA220、A300、A310、A318、A319、A320、A321、A330、A340、A350、およびA380)を含めた、多様な種類の航空機で使用され得る。
【0178】
いくつかの実施形態では、BOEINGモデル737の航空機の客室を除染するためには、客室中のクアットベースの除染剤液滴の有効濃度が10~40ppmの範囲内にあり、処理時間が20~360分の範囲内にある。いくつかの他の実施形態では、AIRBUSモデルA320の航空機の客室を除染するためには、客室中のクアットベースのフォグまたはミストの除染剤液滴の有効濃度が10~40ppmの範囲内にあり、処理時間が20~360分の範囲内にある。
【0179】
種々の実施形態で、本発明と共に使用され得る除染剤は、洗浄製品と民間輸送機の内部部品/材料との化学的適合性を試験するための「BOEING SPECIFICATION STANDARD BSS7434」、および、維持材料とAirbusとの適合性を評価する「AIRBUS INDUSTRIES BRITISH AEROSPACE AIRBUS AIMS09-00-002」などの、航空宇宙産業で活動する会社によって採用される航空宇宙産業規格または他の適用可能な規格に適合する除染剤である。
【0180】
一実施形態では、本発明と共に使用されることになる除染剤は、広範囲のウイルス(例えば、単純ヘルペス、ノロウイルス(腹痛)、インフルエンザA(H1N1)、SARS-CoV-2(COVID-19を引き起こすウイルス)を含めたコロナウイルス、A型肝炎およびB型肝炎)、細菌(例えば、メシチリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA:Methicillin-resistant Staphylococcus aureus)、Escherichia coli、Pseudomonas aeruginosa)、カビおよび真菌(例えば、Candida Albicans、Trichophyton mentagrophytes)、ならびに他の微生物を、30秒の接触時間で6logの減少(すなわち、99.9999%の減少)で排除することが可能である次亜塩素酸ベースの除染剤であるMICROSAFEによるNANOCYNである。NANOCYN/MICROSAFEは、中東/アフリカ、ヨーロッパ、オーストラリア、および他の地域で、規制当局により、噴射または噴霧(燻蒸消毒またはミスティングとしても公知である)による特定の表面および空中空間の除染のために認可されており、米国でももうじき認可されることになる。
【0181】
一実施形態では、本発明は、a)次亜塩素酸ベースの除染剤溶液の多数の液滴を航空機の客室の空間の中へ散布するステップと、b)一定の時間、空間内の除染剤組成物の有効濃度を維持することを目的として液滴を空間全体に分散させるのに十分な時間を与えるステップと、を含む、航空機の客室を除染する方法を提供する。いくつかの実施形態では、次亜塩素酸液滴の有効濃度が10~200ppmの範囲内にあり、処理時間は15~240分の範囲内にある。
【0182】
(実施例3)
AIRBUS A350の客室の除染
【0183】
一実施形態では、本発明は、除染ロボットを使用して航空便の客室(モデルAIRBUS A350)を除染する方法を提供する。除染の有効性を評価するために表面清浄度試験を実施した。
図7Aから
図7Cを参照すると、除染ロボットが各通路の開始ポイントのところに配置され、航空機のもう一方の端部まで通路に沿って移動しながらNANOCYNの液滴を散布し、ここでは、航空機のすべてのドアおよび窓が閉じられており、空調設備を含めたすべての換気デバイスがオフにされていた。2つのロボットは、15~30秒にわたって各々の滞在ポイント(客室クラス間またはトイレエリア間の仕切りである)のところで停止するように構成された。除染時間は全体で約15~30分であった。航空便の客室内のNANOCYNの濃度が約10~40ppmである。処理の前後の客室内の
図13に示されるような選定された位置のところのサンプルが集められ、表面清浄度試験を使用して試験された。
【0184】
表5が結果をまとめており、これらの結果は、RLU読取値の有意な低下によって分かるように、NANOCYNを使用する本発明が、試験された位置の大部分において満足できる除染結果を達成することができたことを示した。
【表5-1】
【表5-2】
【0185】
一実施形態では、航空機の客室内の標的微生物の量、細胞生存率、および/または感染力を低下させる方法が提供され、本方法は、除染剤組成物の多数の液滴を航空機の客室の中へ散布するステップと、一定の時間、航空機の客室内の除染剤組成物の有効濃度を維持することを目的として液滴を航空機の客室の全体に分散させるのに十分な時間を与えるステップと、を含む。
【0186】
一実施形態では、有効濃度は、航空機の客室内の標的微生物のバイオバーデンを一定の時間内で90.0%~99.9%だけ低減するのに十分である航空機の客室内の除染剤組成物の濃度である。
【0187】
一実施形態では、航空機の客室内の標的微生物の量、細胞生存率、および/または感染力を低下させる本発明の方法は、以下のパラメータに従って、BOEING航空機の客室に対して除染剤組成物の液滴を散布することを含む。
【表A-1】
【表A-2】
【0188】
一実施形態では、航空機の客室内の標的微生物の量、細胞生存率、および/または感染力を低下させる本発明の方法は、以下のパラメータに従って、以下の有効成分を含有する除染剤組成物の液滴をAIRBUS航空機の客室に対して散布することを含む。
【0189】
【0190】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明される方法は、航空機の客室の閉鎖空間内の標的微生物の量、細胞生存率、および/または感染力を低下させ、標的微生物のバイオバーデンを一定の時間内で90.0~99.9%だけ低減する。さらに他の実施形態では、本明細書で説明される方法は、航空機の客室の閉鎖空間のRLU読取値を一定の時間内で少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%だけ低減する。
【0191】
閉鎖された部屋の除染
【0192】
一態様では、ホテルの部屋、簡易宿泊所の部屋、および仕事場または学校の部屋などの、閉鎖された部屋を除染する方法が提供される。さらに別の態様では、閉鎖エリア内の標的微生物の量、細胞生存率、および/または感染力を低下させる方法が提供される。病院、高齢者施設、および育児施設などの部屋などの他の部屋も本発明の方法によって処理され得る。本方法は、a)除染剤組成物の多数の液滴を部屋の中へ散布するステップと、b)一定の時間、部屋内の除染剤組成物の有効濃度を維持することを目的として液滴を部屋全体に分散させるのに十分である時間を与えるステップと、を含む。本明細書で説明されるように、液滴は手動でまたは自動化手段で散布され得、多様な種類の除染剤が使用され得る。
【0193】
(実施例4)
カーペットを敷いた閉じた会議室の除染
【0194】
図8は、天井から床までいかなる仕切りも存在しない、約200平方フィートおよび高さ8フィートのカーペットを敷いた閉じた会議室の間取り図を示す。部屋全体の10個の位置(位置A~J)に細菌が配置された。固定式除染デバイスがテーブルの一方の端部のところに配備され(位置J)、室温および標準大気圧で5分間、テーブルの一方の端部に向かってクアットベースの除染剤の液滴を散布するように構成され、ここでは、部屋のすべてのドアおよび窓が閉じられており、空調設備を含めたすべての換気デバイスがオフにされていた。液滴の適用後、部屋は少なくとも30分そのままで放置され、すべてのプロセスの後で位置A~Jから細菌サンプルを集めた。プロセス前後の位置A~Jの細菌レベルを測定して比較した(表6)。処理後に平均約90%~99.99%のキャリア細菌(carrier bacteria)が排除されたことが分かった。
【表6-1】
【表6-2】
【0195】
(実施例5)
カーペットを敷いていない閉じた部屋の除染
【0196】
図9は、天井から床までいかなる仕切りも存在しない、約320平方フィートおよび高さ9フィートのカーペットを敷いていない閉じた部屋の間取り図を示す。部屋全体の位置A~Jに細菌が配置された。固定式除染デバイスが部屋の角部のうちの1つの角部(*を付される)のところに配備され、18分間、部屋の角部に向かって除染剤の液滴を散布するように構成され、続けて30分の待機期間を設けた。プロセス全体が室温および標準大気圧で行われ、ここでは、部屋のすべてのドアおよび窓が閉じられており、空調設備を含めたすべての換気デバイスがオフにされていた。多様な細菌の株を使用する一連の試験が実施され、処理前後のそれらのレベルが監視された。表7は、使用される除染剤の種類および処理後の細菌レベルの平均減少量をまとめる。
【表7】
【0197】
(実施例6)
クアットベースの除染剤を使用する閉じた部屋の除染
【0198】
図10は、約320平方フィートおよび高さ498cm(約16.34フィート)の閉じた部屋の間取り図を示し、ここでは、細菌は、壁(W1~W4)、角部(C1~C4)、および同じ高さまたは異なる高さにあるテーブル(T1~T3)の位置を含めた、部屋内の選定された位置に配置された。移動式の自動化除染デバイスが配備され、矢印のルートによって示されるように所定のルートに従って進みながら部屋内を2回移動するように、および、約4分の総噴射時間でクアットベースの除染剤(有効成分濃度:0.05%~1%(wt/wt))の液滴を散布するように、構成された。この状態で部屋を2時間放置した。プロセス全体が室温および標準大気圧で行われ、ここでは、部屋のすべてのドアおよび窓が閉じられており、空調設備を含めたすべての換気デバイスがオフにされていた。
【0199】
表8は処理後の細菌レベルの平均減少量をまとめており、本処理が選定されたすべての位置および高さの2回試験した細菌株を>99%だけ減少させることができたことを示す。
【表8】
【0200】
(実施例7)
NANOCYNを使用する閉じた部屋の除染
【0201】
この実施例では、本明細書で説明される除染ロボットの一実施形態によって散布されるNANOCYNの除染有効性を評価するために、微生物学的方法を使用して認定研究機関により約330平方フィートの閉じた部屋でシミュレーション試験が行われた。
【0202】
図14は、約330平方フィートおよび高さ300cm(約9.8フィート)の閉じた部屋の例示の間取り図を示しており、ここでは、部屋の選定された位置にS.aureauおよび/またはE.coliが配置された。移動式の自動化除染デバイスが配備され、所定のルートに従って進みながら部屋内を移動するように、および、約2~10分の総噴射時間でNANOCYNの液滴を散布するように、構成された。この状態で部屋を約1~6時間放置した。プロセス全体が室温および標準大気圧で行われ、ここでは、部屋のすべてのドアおよび窓が閉じられており、空調設備を含めたすべての換気デバイスがオフにされていた。処理期間中、部屋内のNANOCYNの濃度が約10~40ppmで維持されたことが推定される。
【0203】
このシミュレーション試験では、すべての選定された位置の細菌レベルが90%超減少したことが分かった。
【0204】
(実施例8)
EVICATE ProおよびNANOCYNを使用する閉じた部屋の除染
【0205】
この実施例では、3つの異なる除染プロトコル下で、移動式の自動化除染ロボットによって散布されるEVICATE ProおよびNANOCYNの除染有効性を評価するために、微生物学的方法を使用して認定研究機関により約200平方フィートおよび高さ300cm(約9.8フィート)の閉じた部屋でシミュレーション試験が行われた:
1.低リスクエリアのルーチン除染のために採用され得るプロトコルI(予防除染)。
2.高リスクエリアのルーチン除染または中程度に汚染されたエリアの除染のために採用され得るプロトコルII(中レベルの除染)。
3.高リスクエリアのルーチン除染または重度に汚染されたエリアの除染のために採用され得るプロトコルIII(高レベルの除染)。
【0206】
試験された病原体はS.aureusおよびE.coliであった。重要なオペレーションパラメータおよび結果が表9および表10にまとめられている。
【表9】
【表10】
【0207】
(実施例9)
老人ホームの除染
【0208】
この実施例では、本発明を使用して老人ホーム内の高リスクエリアの最深除染(full-depth disinfection)および共同エリアの予防除染が行われた。手短に言うと、選定された各エリアが、EVICATE Proを散布する移動式の除染ロボットおよび連続してEVICATE Proを散布する手動除染ロボットを使用して一定時間除染された。高リスクエリア(トイレ、配膳室、台所、保管室、および多機能ルームなど)では、除染剤消費が約4~8mL/m3であった。共同エリア(ダイニングルーム、居住コンパートメント、および廊下など)では、除染剤消費が約6~10mL/m3であった。処理後、この状態で部屋を2時間放置して、居住者および職員による再入場の前に換気した。上で説明される表面清浄度試験により除染有効性を評価した。
【0209】
表11は、共同エリアの予防除染の結果をまとめる。
【表11】
【0210】
これらの結果は、除染プロセス時のすべての選定された位置のRLUの一貫性のある有意な低下を示しており、それにより全体の衛生状態の改善を示している。さらに、表面清浄度が一般的な医療環境の指針での許容基準を合格した。
【0211】
(実施例10)
ホテル内の部屋の除染
【0212】
この実施例では、ホテル内の選定されたエリアを除染するための本発明の使用の有効性を評価するための実地試験がホテル内で行われた。舞踏場、ゲストフロア、既に使用されている客室、およびハウスキーピングオフィスの中から、合計36個のエリアが選定され、NANOCYNを散布する移動式除染ロボットを使用して除染された。除染剤消費は約1~2mL/m3であった。処理後、処理されたエリアの各々をこの状態で約30分放置した。カーペットの除染では、除染の効果を向上させることを目的として、カーペットの織物繊維に隠れたゴミおよび微生物を物理的に取り除くために除染前に電気掃除機による掃除が行われた。
【0213】
上で説明される表面清浄度試験により除染有効性を評価した。
【0214】
表12~15は、これらの選定されたエリアの除染の結果をまとめる。
【表12】
【表13-1】
【表13-2】
【表14】
【表15】
【0215】
これらの結果は、除染前の36個のスポットのRLUの平均値が高いとみなされる1000RLU超であったことを示した。除染プロセス時のすべての選定された位置においてRLU読取値の一貫性のある有意な低下が観測され(平均>80%)、150RLUの平均値を有する。具体的には、RLUの平均低下量が、舞踏場およびその受付エリアにおいて89%であり、ゲストフロアにおいて90%であり、客室およびその浴室において90%であり、ハウスキーピングオフィスにおいて73%である。全体としては、これらの結果は、表面清浄度の満足できる改善が本発明によって達成されたこと、および、得られた表面清浄度が、3Mによって公表されているHygiene Management GuideのバンドGによるハイエンドのホスピタリティセクターの産業的水準(<300RLU)を合格したことを示す。
【0216】
さらに、注目すべきこととして、選択されたエリアのうちのいくつかが既に使用されており、これは、部屋の内部の物体が除染前に取り除かれなかったことを意味する。表面清浄度のこれらの結果は、使用されている位置またはエリアであっても本発明により表面衛生状態が大きく改善されたことを実証した。
【0217】
自動化手段により除染が実施される場合、上で示される固定式または移動式除染デバイスが使用され得る。本明細書で説明される除染ロボットなどの移動式除染デバイスは、より大きいサイズの部屋を除染する場合には固定式デバイスと比較して一般的により適する。移動式除染デバイスは、テーブルおよび椅子などの障害物を回避しながら、部屋の各角部に到達するように部屋を動き回ることができ、より一貫的に部屋全体に除染剤液滴を散布することができる。
【0218】
当業者であれば認識するように、除染剤液滴を散布するのに、手動デバイス、固定式デバイス、または移動式デバイスのいずれが採用される場合でも、十分なカバレージを確実なものとすることを目的としておよび反応するのに十分な時間を与えることを目的として、航空機の客室の全体にわたって(特には、閉塞エリアまたは露出度の低いエリア)有効濃度を達成するためには十分な量の除染剤を噴射することが重要である。処理時間は、対象の標的微生物の種類および量、使用される除染剤の種類、ならびに、航空機の客室の処理前の状態に従って変動し得る。
【0219】
いくつかの実施形態では、約200~400平方フィートの閉鎖された部屋を除染するためには、部屋内のクアットベースの除染剤液滴の有効濃度が10~40ppmの範囲内にあり、処理時間が20~360分の範囲内にある。いくつかの他の実施形態では、約200~400平方フィートの閉鎖された部屋を除染するためには、部屋内の除染剤液滴の有効濃度が10~40ppmの範囲内にあり、処理時間が20~360分の範囲内にある。いくつかの実施形態では、約1,500~4,000立方フィートの閉鎖された部屋を除染するためには、部屋内のクアットベースの除染剤液滴の有効濃度が10~40ppmの範囲内にあり、処理時間が20~360分の範囲内にある。いくつかの実施形態では、約1,500~4,000立方フィートの閉鎖された部屋を除染するためには、部屋内の除染剤液滴の有効濃度が10~40ppmの範囲内にあり、処理時間が20~360分の範囲内にある。
【0220】
一実施形態では、閉鎖された部屋内の標的微生物の量、細胞生存率、および/または感染力を低下させる方法が提供され、本方法は、除染剤組成物の多数の液滴を閉鎖された部屋の中へ散布するステップと、一定の時間、閉鎖空間内の除染剤組成物の有効濃度を維持することを目的として液滴を航空機の客室全体に分散させるのに十分である時間を与えるステップと、を含む。
【0221】
一実施形態では、有効濃度は、一定の時間内で90.0%~99.9%だけ閉鎖された部屋内の標的微生物のバイオバーデンを低減するのに十分である、閉鎖された部屋内の除染剤組成物の濃度である。
【0222】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明される方法は、閉鎖された部屋内の標的微生物の量、細胞生存率、および/または感染力を低下させ、一定の時間内で90.0~99.9%だけ標的微生物のバイオバーデンを低減する。さらに他の実施形態では、本明細書で説明される方法は、一定の時間内で少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%だけ閉鎖された部屋のRLU読取値を低下させる。
【0223】
一実施形態では、約1,500~4,000立方フィートの閉鎖された部屋内の標的微生物の量、細胞生存率、および/または感染力を低下させる本発明の方法は、以下のパラメータに従って、以下の有効成分を含有する除染剤組成物の液滴を部屋に対して散布することを含む。
【表C】
【0224】
一実施形態では、約4,000~10,000立方フィートの閉鎖された部屋内の標的微生物の量、細胞生存率、および/または感染力を低下させる本発明の方法は、以下のパラメータに従って、以下の有効成分を含有する除染剤組成物の液滴を部屋に対して散布することを含む。
【表D】
【0225】
他の実施形態
【0226】
本明細書で説明される方法のいくつかの実施形態では、除染剤組成物の液滴を閉鎖空間の中へ散布するステップの開始後、除染剤組成物の有効成分の濃度または標的微生物の量などの種々のデータが、散布ステップ中、一定の間隔でまたは継続的に収集される。一実施形態では、閉鎖空間中の除染剤組成物の有効成分の濃度が、散布ステップ中、一定の間隔でまたは継続的に検出される。使用者または除染剤液滴を散布するデバイスが、これらの検出される濃度を有効成分の所定の目標濃度と比較することができ、それにより閉鎖空間内で目標濃度が達成されたか否かを確定することができる。さらに別の実施形態では、使用者または除染剤液滴を散布するデバイスが、検出される濃度が所定の目標濃度と等しいかまたはそれより大きい値を達成したときに散布ステップを、5分、10分、または15分などの一定の時間、停止することができる。
【0227】
例示の実施形態は、示されるデバイスおよびネットワーク以外の追加のデバイスおよびネットワークを含むことができる。さらに、1つのデバイスによって実施されるものとして説明される機能性は2つまたはそれより多くのデバイスによって割り振られて実施され得る。さらに、複数のデバイスが組み合わされて単一のデバイスになることもでき、単一のデバイスが組み合わされたデバイスの機能性を実施することができる。
【0228】
本明細書で説明される種々の関与物(participant)および要素は、本明細書で説明される機能を容易にするために1つまたは複数のコンピュータ装置を作動させることができる。任意のサーバー、ユーザーデバイス、またはデータベースを含めた、上で説明した図内の要素のいずれも、本明細書で説明される機能を容易にするために任意の適切な数のサブシステムを使用することができる。
【0229】
本出願で説明されるソフトウェアコンポーネントまたは機能のいずれも、例えば従来の技術またはオブジェクト指向の技術を利用して、例えば、Java(登録商標)、C++、またはPythonなどの任意の適切なコンピュータ言語を使用して少なくとも1つの処理装置によって実行され得るソフトウェアコードまたはコンピュータ可読命令として実装され得る。
【0230】
ソフトウェアコードは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、ハードドライブまたはフロッピー(登録商標)ディスクなどの磁気媒体、あるいはCD-ROMなどの光学媒体などの、非一時的なコンピュータ可読媒体に一連の命令またはコマンドとして保存され得る。任意のこのようなコンピュータ可読媒体は単一の計算装置上にまたは単一の計算装置内に常駐することができ、システムまたはネットワーク内の多様な計算装置上にまたは計算装置内に存在することもできる。
【0231】
上で説明される本発明が、モジュール手法でまたは統合的手法でコンピュータソフトウェアを使用する制御論理の形態で実装され得ることが理解され得る。本明細書で提供される開示および教示に基づいて、当業者であれば、ハードウェア、ソフトウェア、またはハードウェアおよびソフトウェアの組み合わせを使用して本発明を実装するための他の手法および/または方法を知っている可能性があり、認識することができる。
【0232】
上記の説明は例示的であり、限定的ではない。本開示を読むことにより当業者には実施形態の多くの変形形態が明らかとなり得る。したがって、実施形態の範囲は上記の説明を参照して決定されるべきではなく、係属中の特許請求の範囲をその全範囲または均等物と併せて参照することによって決定されるべきである。
【0233】
任意の実施形態からの1つまたは複数の特徴が、実施形態の範囲から逸脱することなく任意の他の実施形態の1つまたは複数の特徴と組み合わされ得る。「a」、「an」、または「the」の記載は、具体的な異なる指示がない限り、「1つまたは複数」を意味することを意図される。「および/または」の記載は、具体的な異なる指示がない限り、用語の最も包括的な意味を表すことを意図される。
【0234】
本発明のシステムの要素のうちの1つまたは複数の要素が特定の機能を達成するための手段として特許請求され得る。これらのミーンズプラスファンクション要素が特許請求されるシステムの特定の要素を説明するのに使用される場合、本明細書、図面、および特許請求の範囲に直接に目を通した当業者であれば、対応する構造が、特許請求の範囲または上述のステップに記載されるように記載される機能性を達成することを目的として、特別なプログラミングの後でコンピュータ内で見つかる機能性を使用して、および/あるいは、1つまたは複数のアルゴリズムを実装することにより、具体的に記載される機能を実施するようにプログラムされたコンピュータ、処理装置、またはマイクロプロセッサ(場合による)を含む、ことを理解することができる。当業者であれば理解するであろうように、このアルゴリズムは、本開示では、数式として、フローチャートとして、記述(narrative)として、ならびに/あるいは、記載されるプロセスおよびその均等物を当業者が実装するのに十分である構造を提供する任意の他の手法で、表され得る。
【0235】
本開示は多くの異なる形態で具現化され得、本図面および本考察は、本開示が1つまたは複数の発明の原理の例示であって、いかなる1つの実施形態も示される実施形態に限定することを意図されないことの理解の下で、提供される。
【0236】
上で説明したシステムおよび方法の別の利点および修正形態を当業者であれば容易に思い付くことができるであろう。
【0237】
したがって、本開示は、その広範囲の態様において、具体的な細部、典型的なシステムおよび方法、ならびに、上で示されて説明される例示の例に限定されない。本開示の範囲または精神から逸脱することなく上記の明細書に対して多様な修正形態および変形形態が作られ得、本開示は、これらのすべての修正形態および変形形態が以下の特許請求およびその均等物の範囲内にあることを条件として、これらのすべての修正形態および変形形態を包含することを意図される。
【国際調査報告】