IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アークローマ (スウィッツァランド) ゲーエムベーハーの特許一覧

特表2025-505046反応染料の異性体混合物およびテキスタイル繊維材料を染色または印刷するためのそれらの使用
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-19
(54)【発明の名称】反応染料の異性体混合物およびテキスタイル繊維材料を染色または印刷するためのそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C09B 62/085 20060101AFI20250212BHJP
   C09B 67/24 20060101ALI20250212BHJP
   C09B 67/26 20060101ALI20250212BHJP
   D06P 1/382 20060101ALI20250212BHJP
   D06P 3/66 20060101ALI20250212BHJP
   C09D 11/32 20140101ALI20250212BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
C09B62/085 C
C09B67/24 B CSP
C09B67/26 B
D06P1/382
D06P3/66 B
C09D11/32
B41J2/01 501
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024565247
(86)(22)【出願日】2023-01-19
(85)【翻訳文提出日】2024-08-02
(86)【国際出願番号】 EP2023051254
(87)【国際公開番号】W WO2023144005
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】22153149.4
(32)【優先日】2022-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】22172397.6
(32)【優先日】2022-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524277304
【氏名又は名称】アークローマ (スウィッツァランド) ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】ARCHROMA (SWITZERLAND) GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】弁理士法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クリスナッチャー,ヒューバート
(72)【発明者】
【氏名】エレット,ファニー
(72)【発明者】
【氏名】ニコレット,ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】グラシエ,ジャン‐クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】レントゲン,ゲオルグ
【テーマコード(参考)】
2C056
4H157
4J039
【Fターム(参考)】
2C056FB03
2C056FC01
4H157AA01
4H157AA02
4H157BA07
4H157DA01
4H157DA24
4H157GA07
4J039BC51
4J039BE06
4J039CA03
4J039EA14
4J039EA44
4J039GA24
(57)【要約】
本発明は、窒素含有またはヒドロキシ基含有繊維材料を染色または印刷するために好適である反応染料の異性体混合物、ならびに良好なビルドアップ挙動、高い固着率、未固着染料の良好なウォッシュオフ性および良好なオールラウンド堅牢性、さらには良好な浴安定性などの様々な染色パラメーターに対する良好な安定性を有する染色物または印刷物などの材料の生産の分野に関する。さらに、本発明は、窒素含有またはヒドロキシ基含有繊維材料を染色または印刷するための方法であって、本発明による反応染料の異性体混合物を使用する方法に関する。本発明の異性体混合物は、少なくとも式(Ia)の異性体および式(Ib)の異性体を含む。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の式(I):
【化1】
[式中、
は、水素またはC~Cアルキルであり、
は、水素、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、スルホ、カルボキシまたはハロゲンであり、
Zは、式-SO-CH=CH、-SO-(CH-Y、-NH-(CH-O-(CH-SO-CH=CH、-NH-(CH-O-(CH-SO-(CH-Y、-NH-(CH-O-(CH-SO-CH=CH、-NH-(CH-O-(CH-SO-(CH-Y、-NHCO-(CH-SO-CH=CHまたは-NHCO-(CH-SO-(CH-Yの繊維反応性ラジカルであり、Yは、アルカリ条件下で除去可能な基であり、
Xは、ハロゲンであり、
Mは、水素、有機塩、アルカリ金属または1当量のアルカリ土類金属である]の反応染料の異性体混合物。
【請求項2】
少なくとも式(Ia):
【化2】
の異性体および式(Ib):
【化3】
の異性体を含み、
、R、Z、XおよびMが、請求項1において定義されている、
請求項1に記載の異性体混合物。
【請求項3】
式(Ia)の異性体および式(Ib)の異性体を1:4~4:1の範囲の重量比で含む、先行請求項のいずれかに記載の異性体混合物。
【請求項4】
式(Ia)の異性体および式(Ib)の異性体を1:4~1:1、好ましくは3:7~2:3の範囲の重量比で含む、先行請求項のいずれかに記載の異性体混合物。
【請求項5】
式(Ia)の異性体および式(Ib)の異性体を4:1~1:1、好ましくは7:3~3:2の範囲の重量比で含む、先行請求項のいずれかに記載の異性体混合物。
【請求項6】
- 少なくとも、式(Ia1)および(Ia2):
【化4】
の反応染料を含む式(Ia)の異性体と、
- 少なくとも、式(IIa1)および(IIa2):
【化5】
の異性体の混合物を含む式(Ib)の異性体とを含み、
、R、Z、XおよびMが、請求項1において定義されている、
先行請求項のいずれかに記載の異性体混合物。
【請求項7】
反応染料(Ia1)および(Ib1)の反応染料(Ia2)および(Ib2)に対する重量比が、6:4~99:1、好ましくは7:3~95:5、より好ましくは8:2~95:5の範囲である、請求項6に記載の異性体混合物。
【請求項8】
が、水素、メチル、エチル、n-プロピルまたはn-ブチルである、先行請求項のいずれかに記載の異性体混合物。
【請求項9】
が、水素、メチル、エチル、スルホ、カルボキシまたはハロゲンである、先行請求項のいずれかに記載の異性体混合物。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の異性体混合物を調製するための方法であって、
(a) 下式
【化6】
[式中、RおよびZは、請求項1から9のいずれかにより定義される]
の化合物をジアゾ化し;
こうして得られたジアゾニウム塩を下式
【化7】
のカップリング成分と反応させ、それにより、下式
【化8】
[式中、RおよびZは、請求項1から9のいずれかにより定義される]
のアゾ化合物を得るステップと、
(b) ステップ(a)において調製された式(3)のアゾ化合物を下式
【化9】
[式中、Xは、同じハロゲンを表し、請求項1から9のいずれかにより定義される]
の化合物と縮合させて、それにより、下式
【化10】
[式中、R、ZおよびXは、請求項1から9のいずれかにより定義される]
の化合物を準備するステップと;
(c) ステップ(b)において調製された式(5)の化合物を、下式
【化11】
[式中、RおよびMは、請求項1から9のいずれかにより定義される]
の化合物の異性体混合物と縮合させて、請求項1から9のいずれかに記載の式(1)の反応染料の異性体混合物を準備するステップと
を含む方法。
【請求項11】
式(6)の化合物の異性体混合物が、一方の異性体がアニリンのメタ位にスルホ基をもち、かつ他方の異性体がアニリンのパラ位にスルホ基をもつ2種の異性体を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1から9のいずれかに記載の少なくとも1種の式(1)の反応染料の異性体混合物を含む水性インク。
【請求項13】
ヒドロキシル基含有または窒素含有繊維材料、特にセルロース系繊維材料などのテキスタイル材料の染色または印刷における、請求項1から9のいずれかに記載の少なくとも1種の式(I)の反応染料の異性体混合物または請求項12に記載の水性インクの使用。
【請求項14】
請求項1から9のいずれかに記載の少なくとも1種の式(I)の反応染料の異性体混合物または請求項12に記載の水性インクで染色または印刷されたテキスタイル。
【請求項15】
ヒドロキシ基含有または窒素含有繊維材料を染色または印刷するための方法であって、請求項1から9のいずれかに記載の少なくとも1種の式(I)の反応染料の異性体混合物または請求項12に記載の水性インクを使用することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒素含有またはヒドロキシ基含有繊維材料を染色または印刷するために好適である反応染料の異性体混合物、ならびに良好なビルドアップ挙動、高い固着率、未固着染料の良好なウォッシュオフ性および良好なオールラウンド堅牢性、さらには良好な浴安定性などの様々な染色パラメーターに対する良好な安定性を有する染色物または印刷物などの材料の生産の分野に関する。
【0002】
さらに、本発明は、窒素含有またはヒドロキシ基含有繊維材料を染色または印刷するための方法であって、本発明による反応染料の異性体混合物を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ここ数年、多くの国が、天然資源を節約し、気候に有害である物質の排出を削減することにより、環境の質を改善するように専心している。これらの目標の達成に向けて産業を支援するために、政府は資金を提供している。消費者は、最高の環境標準に従って生産されている、環境にやさしいテキスタイル製品を求めている。ブランドおよび小売業者は、これらの要求を実際の要件へと移しており、テキスタイル製造業者は、最新装置に投資し、環境にやさしい化学物質を選択することにより、それらの生産卓越性を常に改善している。
【0004】
結果として、最高の環境上および経済上の要件を満たす一方で、所望の色合いの染色も浴安定性の改善などの様々な染色パラメーターに対する安定性の改善と共に提供する、繊維材料を再現可能に染色および印刷するために好適である新規の反応染料混合物について、非常に大きな需要が存在する。
【0005】
好適な反応染料は、洗濯堅牢性および耐水性ならびに耐汗性などの良好な堅牢性も提供すべきである。
【0006】
さらに、それらは、十分な染色性を有すると同時に、未固着染料の良好なウォッシュオフ容易性を有するべきである。それらはまた、良好な着色収率および高い反応性を示すべきであり、目的は、特に、良好なビルドアップ性および高い固着率を有する染色を提供することである。
【0007】
ヒドロキシル基含有または窒素含有繊維材料を染色および印刷するために使用することができる反応染料は公知であり、例えば、欧州特許出願公開0567036号公報において記載されている。しかしながら、これらの染料は、高い固着率を様々な染色パラメーターに対する良好な安定性、特に、良好な浴安定性と組み合わせて提供することはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許出願公開0567036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明は、特に、繊維材料を所望の色合いで再現可能に染色および印刷するために好適であり、上で示された要件を最大可能な程度まで満たす新たな反応染料の混合物を提供するという問題に基づく。前記染料混合物はまた、良好なビルドアップ性、高い固着率、未固定染料の良好なウォッシュオフ性、および良好なオールラウンド堅牢性、例えば、光および湿度に対する堅牢性、さらには、浴安定性の改善などの様々な染色パラメーターに対する安定性の改善を有する染色をもたらすべきである。
【0010】
1つまたは複数の特徴がその後に続く「から本質的になる」という用語は、本発明の方法または材料には、明確に列挙されている構成要素、またはステップの他に、本発明の特性および特徴に著しく影響を及ぼさない構成要素またはステップが含まれ得ることを意味する。
【0011】
「XからYの間に含まれる」という表現は、別段に明確に述べられていない限り、境界を含む。この表現は、標的範囲がXおよびYの値と、XからYまでのすべての値を含むことを意味する。
【0012】
本明細書の記載および特許請求の範囲を通じて、「を含む」および「を含有する」という言葉、ならびにこれらの言葉の変化形、例えば「を含むこと(comprising)」および「を含む(comprises)」は、「これに限定されないが、~を含む(including but not limited to)」を意味し、他の部分、添加剤、成分、整数またはステップを排除するものではない。さらに、単数形は、文脈が別段に要求していない限り、複数形を包含し:特に、不定冠詞が使用されている場合、本明細書は、文脈が別段に要求していない限り、複数形、さらには単数形も企図されると理解されるべきである。
【0013】
上限および下限が特性について、例えば、成分の濃度について引用されている場合、上限のいずれかと下限のいずれかとの組合せにより定義される広範な値も含意され得る。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、少なくとも1種の式(I):
【0015】
【化1】
[式中、
は、水素またはC~Cアルキルであり、
は、水素、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、スルホ、カルボキシまたはハロゲンであり、
Zは、式-SO-CH=CH、-SO-(CH-Y、-NH-(CH-O-(CH-SO-CH=CH、-NH-(CH-O-(CH-SO-(CH-Y、-NH-(CH-O-(CH-SO-CH=CH、-NH-(CH-O-(CH-SO-(CH-Y、-NHCO-(CH-SO-CH=CHまたは-NHCO-(CH-SO-(CH-Yの繊維反応性ラジカルであり、Yは、アルカリ条件下で除去可能な基であり、
Xは、ハロゲンであり、
Mは、水素、有機塩、アルカリ金属または1当量のアルカリ土類金属である]の反応染料の異性体混合物に関する。
【0016】
好ましい一実施形態では、本発明による異性体混合物は、少なくとも式(Ia):
【0017】
【化2】
の異性体および式(Ib):
【0018】
【化3】
の異性体を含み、R、R、Z、XおよびMは、上で定義されている。
【0019】
一実施形態では、本発明による異性体混合物は、式(Ia)の異性体および式(Ib)の異性体を1:4~4:1の範囲の重量比で含む。
【0020】
一実施形態では、本発明による異性体混合物は、式(Ia)の異性体および式(Ib)の異性体を1:4~1:1の範囲の重量比で含む。
【0021】
一実施形態では、本発明による異性体混合物は、式(Ia)の異性体および式(Ib)の異性体を3:7~2:3の範囲の重量比で含む。
【0022】
一実施形態では、本発明による異性体混合物は、式(Ia)の異性体および式(Ib)の異性体を4:1~1:1の範囲の重量比で含む。
【0023】
一実施形態では、本発明による異性体混合物は、式(Ia)の異性体および式(Ib)の異性体を7:3~3:2の範囲の重量比で含む。
【0024】
好ましい一実施形態では、本発明による異性体混合物は、
- 少なくとも、式(Ia1)および(Ia2):
【0025】
【化4】
の反応染料を含む式(Ia)の異性体と
- 少なくとも、式(IIa1)および(IIa2):
【0026】
【化5】
の異性体の混合物を含む式(Ib)の異性体とを含み、
、R、Z、XおよびMは上で定義されている。
【0027】
好ましい一実施形態では、本発明による異性体混合物は、式(Ia1)および(Ia2)の反応染料を含む式(Ia)の異性体と、式(Ib1)および(Ib2)の反応染料を含む式(Ib)の異性体とを含み、前記反応染料(Ia1)および(Ib1)の前記反応染料(Ia2)および(Ib2)に対する重量比は、6:4~99:1、好ましくは7:3~95:5、より好ましくは8:2~95:5の範囲である。
【0028】
好ましい一実施形態では、Rは、水素、メチル、エチル、n-プロピルまたはn-ブチルである。
【0029】
好ましい一実施形態では、Rは、水素、メチル、エチル、スルホ、カルボキシまたはハロゲンである。
【0030】
本発明はまた、本発明による異性体混合物を調製するための方法であって、
(a) 下式
【0031】
【化6】
[式中、RおよびZは、上で定義される]
の化合物をジアゾ化し;
こうして得られたジアゾニウム塩を下式
【0032】
【化7】
のカップリング成分と反応させ、それにより、下式
【0033】
【化8】
[式中、RおよびZは上で定義される]
のアゾ化合物を得るステップと、
(b) ステップ(a)において調製された式(3)のアゾ化合物を下式
【0034】
【化9】
[式中、Xは、上で定義されたのと同じハロゲンを表す]
の化合物と縮合させて、それにより、下式
【0035】
【化10】
[式中、R、ZおよびXは、上で定義されている]
の化合物を準備するステップと;
(c) ステップ(b)において調製された式(5)の化合物を、下式
【0036】
【化11】
[式中、RおよびMは、上で定義されている]
の化合物の異性体混合物と縮合させて、本発明による式(1)の反応染料の異性体混合物を準備するステップと
を含む方法に関する。
【0037】
好ましい一実施形態では、式(6)の化合物の異性体混合物は、一方の異性体がアニリンのメタ位にスルホ基をもち、かつ他方の異性体がアニリンのパラ位にスルホ基をもつ2種の異性体を含む。
【0038】
本発明はまた、本発明による少なくとも1種の式(1)の反応染料の異性体混合物を含む水性インクに関する。
【0039】
本発明はまた、ヒドロキシル基含有または窒素含有繊維材料、特に、セルロース系繊維材料などのテキスタイル材料の染色または印刷における、本発明による少なくとも1種の式(I)の反応染料の異性体混合物または本発明によるインクの使用に関する。
【0040】
本発明はまた、ヒドロキシル基含有または窒素含有繊維材料、特に、セルロース系繊維材料などのテキスタイル材料を染色または印刷するための方法であって、本発明による少なくとも1種の式(I)の反応染料の異性体混合物または本発明による水性インクを使用することを含む方法に関する。
【0041】
本発明はまた、本発明による少なくとも1種の式(I)の反応染料の異性体混合物または本発明による水性インクで染色または印刷されたテキスタイルに関する。
【発明を実施するための形態】
【0042】
式(I)の反応染料の異性体混合物
本発明は、少なくとも1種の式(I):
【0043】
【化12】
[式中、
は、水素またはC~Cアルキルであり、
は、水素、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、スルホ、カルボキシまたはハロゲンであり、
Zは、式-SO-CH=CH、-SO-(CH-Y、-NH-(CH-O-(CH-SO-CH=CH、-NH-(CH-O-(CH-SO-(CH-Y、-NH-(CH-O-(CH-SO-CH=CH、-NH-(CH-O-(CH-SO-(CH-Y、-NHCO-(CH-SO-CH=CHまたは-NHCO-(CH-SO-(CH-Yの繊維反応性ラジカルであり、Yは、アルカリ条件下で除去可能な基であり、
Xは、ハロゲンであり、
Mは、水素、有機塩、アルカリ金属または1当量のアルカリ土類金属である]の反応染料の異性体混合物に関する。
【0044】
本発明による少なくとも1種の式(I)の反応染料の異性体混合物は、非常に良好なビルドアップ性、高い固着率、未固着染料の良好なウォッシュオフ性、および良好なオールラウンド堅牢性、さらには様々な染色パラメーターに対する安定性の改善、特に浴安定性の改善を提供する。
【0045】
本明細書において使用される場合の「異性体」および「異性体混合物」には、同じ化学式を有するが、原子の異なる配置を有する染料が含まれる。本発明によれば、式(I)の反応染料の異性体混合物は、同じ化学式を有し、したがって同じ炭素数を有するが、-SOM部分がフェニル環上の異なる位置で結合している反応染料を含む。
【0046】
本明細書において使用される場合の「異性体混合物」という用語は、反応染料の1種よりも多い異性体を含む組成物を意味する。
【0047】
「少なくとも1種の反応染料の異性体混合物」は任意選択で、1種よりも多い式(I)の反応染料の異性体を含有する。したがって、異性体混合物は、式(I)の反応染料の1種よりも多い(すなわち、2種またはそれ以上)の異性体を含有し、異なる式(I)の反応染料の1種よりも多い(すなわち、2種またはそれ以上)の異性体も含有し得る。異なる式(I)の反応染料は、式(I)に含まれる異なる化学式を有し、したがって、異なる炭素数を有する。例えば、少なくとも1種の式(I)の反応染料の異性体混合物は、式(I)のβ-ビニルスルホニル反応染料およびその異性体ならびに式(I)のβ-スルファトエチルスルホニル反応染料およびその異性体(それらの異性体は、フェニル環上の異なる位置に結合しているスルホン置換基を有する)を含む。
【0048】
本明細書において開示のとおりのこれらの異性体混合物は、単一の式(I)の反応染料とは区別される。
【0049】
「Ci~Cjアルキル」とは、i~j個の炭素原子を含む飽和、直鎖または分枝炭化水素含有鎖を意味する。
【0050】
「C~Cアルキル」とは、1~4個の炭素原子を含む飽和、直鎖または分枝炭化水素含有鎖を意味する。好ましくは、炭化水素含有鎖は、直鎖状である。好ましくは、C~Cアルキル基は、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、s-ブチル、i-ブチルまたはt-ブチルにより形成される群から選択される。より好ましくは、C~Cアルキル基は、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチルにより形成される群から選択される。有利には、C~Cアルキル基は、メチルまたはエチルである。
【0051】
「C~Cアルコキシ」とは、1~4個の炭素原子を含み、1個の酸素原子により置換されている飽和、直鎖または分枝炭化水素含有鎖を意味する。
【0052】
好ましくは、炭化水素含有鎖は、直鎖状である。好ましくは、C~Cアルコキシ基は、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、s-ブトキシ、i-ブトキシまたはt-ブトキシにより形成される群から選択される。より好ましくは、C~Cアルコキシ基は、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、n-ブトキシにより形成される群から選択される。有利には、C~Cアルコキシ基は、メトキシまたはエトキシである。
【0053】
本明細書において使用される場合、「ハロゲン」という用語は、フッ素原子、塩素原子または臭素原子、好ましくは、フッ素原子または塩素原子を指す。
【0054】
本明細書において使用される場合、「スルホ」という用語は、-SOM基を指す。スルホ基-SO3Mは、遊離酸の形態で(Mは水素である)または、好ましくは、塩形態で存在する。好適な塩は、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩である。検討されるさらなる塩は、有機アミン塩、アンモニウム塩、またはそれらの混合物である。挙げることができる例は、ナトリウム、リチウム、カリウムもしくはアンモニウム塩、モノ-、ジ-もしくはトリ-エタノールアミン塩または混合Na/LiもしくはNa/Li/NH4塩である。
【0055】
本明細書において使用される場合、「Y」という用語は、-Cl、-Br、-F、-OSOM、-SSOM、-OCO-CH、-OPO、-OCO-C、-OSO-C1~Cアルキルまたは-OSO-N(C~Cアルキル)からなる群から選択されるアルカリ条件下で除去可能な基を指す。好ましくは、Yは、-Cl、-OSOM、-SSOM、-OCO-CH、-OCO-Cまたは-OPO、より好ましくは、-Clまたは-OSOMからなる群から選択され、Mは、上で与えられた意味を有する。
【0056】
好ましい一実施形態では、Rは、水素、メチル、エチル、n-プロピルまたはn-ブチルである。より好ましくは、Rは、水素、メチルまたはエチルである。有利には、Rは、エチルである。
【0057】
好ましい一実施形態では、Rは、水素、メチル、エチル、スルホ、カルボキシまたはハロゲンである。より好ましくは、Rは、水素、スルホまたはハロゲンである。有利には、Rは、スルホである。
【0058】
より好ましい一実施形態では、
が、エチルであり、
が、スルホであり、
Zが、式-SO-CH=CHまたは-SO-(CH-Yの繊維反応性ラジカルであり、Yが、アルカリ条件下で除去可能な基であり、
Xが、フッ素原子であり、
Mが、水素、有機塩、アルカリ金属または1当量のアルカリ土類金属である、
少なくとも1種の式(I)の反応染料の異性体混合物。
【0059】
好ましい一実施形態では、本発明による異性体混合物は、少なくとも式(Ia):
【0060】
【化13】
の異性体および式(Ib):
【0061】
【化14】
の異性体を含み、R、R、Z、XおよびMはそれぞれ、上で与えられた意味および好ましい意味を有する。
【0062】
一実施形態では、本発明による異性体混合物は、式(Ia)の異性体および式(Ib)の異性体を1:4~4:1の範囲の重量比で含む。
【0063】
一実施形態では、本発明による異性体混合物は、式(Ia)の異性体および式(Ib)の異性体を1:4~1:1の範囲の重量比で含む。
【0064】
一実施形態では、本発明による異性体混合物は、式(Ia)の異性体および式(Ib)の異性体を3:7~2:3の範囲の重量比で含む。
【0065】
一実施形態では、本発明による異性体混合物は、式(Ia)の異性体および式(Ib)の異性体を4:1~1:1の範囲の重量比で含む。
【0066】
一実施形態では、本発明による異性体混合物は、式(Ia)の異性体および式(Ib)の異性体を7:3~3:2の範囲の重量比で含む。
【0067】
有利には、前記比での式(Ia)および(Ib)の異性体の混合物は、本発明による異性体混合物に、単独で利用される異性体の安定性と比較して、様々な染色パラメーターに対する安定性の改善、特に、浴安定性の改善を提供する。顕著には、本発明による前記比での式(Ia)および(Ib)の異性体の混合物は、単独で利用される異性体の浴安定性と比較した場合に、前記混合物の浴安定性に関して相乗効果を有する。
【0068】
別の好ましい実施形態では、本発明による異性体混合物は少なくとも、式(Ia1)および(Ia2):
【0069】
【化15】
の反応染料を含む式(Ia)の異性体と、
- 少なくとも、式(IIa1)および(IIa2):
【0070】
【化16】
の異性体の混合物を含む式(Ib)の異性体とを含み、
、R、Z、XおよびMはそれぞれ、上で与えられた意味および好ましい意味を有する。
【0071】
好ましい一実施形態では、本発明による異性体混合物は、式(Ia1)および(Ia2)の反応染料を含む式(Ia)の異性体と、式(Ib1)および(Ib2)の反応染料を含む式(Ib)の異性体とを含み、反応染料(Ia1)および(Ib1)の反応染料(Ia2)および(Ib2)に対する重量比は、6:4~99:1、好ましくは7:3~95:5、より好ましくは8:2~95:5の範囲である。
【0072】
好ましい一実施形態では、本発明による異性体混合物は、少なくとも:
- 式(IIa):
【0073】
【化17】
の異性体および、
- 式(IIb):
【0074】
【化18】
の異性体を含み、R、R、Z、XおよびMはそれぞれ、上で与えられた意味および好ましい意味を有する。
【0075】
前記好ましい実施形態では、本発明による異性体混合物は有利には、少なくとも:
- 式(IIIa):
【0076】
【化19】
の異性体
- 式(IIIb):
【0077】
【化20】
の異性体
- 式(IIIc):
【0078】
【化21】
の異性体、および
- 式(IIId):
【0079】
【化22】
の異性体を含み、R、R、XおよびMはそれぞれ、上で与えられた意味および好ましい意味を有する。
【0080】
本発明による式(1)の反応染料の異性体混合物は、遊離酸の形態で、または、好ましくは、その塩の形態で存在する。検討される塩は、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属およびアンモニウム塩または有機アミンの塩である。ナトリウム、リチウム、カリウムおよびアンモニウム塩ならびにモノ-、ジ-およびトリ-エタノールアミンの塩を例として挙げることができる。
【0081】
好ましい一実施形態では、本発明による異性体混合物は、さらなる添加剤、例えば、塩化ナトリウムまたはデキストリンを含み得る。
【0082】
所望の場合には、本発明による異性体混合物は、例えば、取り扱いを改善するか、または貯蔵安定性を増大させるさらなる補助剤、例えば、緩衝剤、分散剤またはアンチダスト剤(anti-dusts)を含んでよい。そのような補助剤は、当業者に公知である。
【0083】
一実施形態では、本発明による異性体混合物は、テキスタイルに、特に、窒素含有またはヒドロキシ基含有繊維材料を染色または印刷するために好適である。
【0084】
本明細書において使用される場合、「テキスタイル」、「テキスタイル材料」および「繊維材料」という用語は、幅広く解釈されるべきであり、非常に広範な表出形態で、例えば、繊維、ヤーン、生地、ガーメント、ニット、織布および不織布の形態であってよい。本発明によるコポリマーは、広範囲の様々なテキスタイル材料を処理するために好適である。本発明によるテキスタイルは、ヒドロキシ基含有または窒素含有繊維材料、特にセルロース系繊維材料である。本発明によるテキスタイルは、木綿、絹、羊毛、リネン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアクリル、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリラクチドおよび麻などの天然または合成テキスタイルであってよいか、または木綿とポリエステル繊維またはポリアミド繊維とのブレンドなどの天然テキスタイル材料と合成テキスタイル材料(すなわち、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアクリル、ポリエステル、ポリオレフィンまたはポリラクチド)とのブレンドでもあってよい。
【0085】
本発明による異性体混合物を調製するための方法
本発明はまた、少なくとも1種の式(I)の反応染料の異性体混合物を調製するための方法であって、
(a) 下式
【0086】
【化23】
[式中、RおよびZは、上で定義されているとおりの意味を有する]
の化合物をジアゾ化し;
こうして得られたジアゾニウム塩を下式
【0087】
【化24】
のカップリング成分と反応させ、それにより、下式
【0088】
【化25】
[式中、RおよびZは上で定義されているとおりである]
のアゾ化合物を得るステップと、
(b) ステップ(a)において調製された式(3)のアゾ化合物を下式
【0089】
【化26】
[式中、Xは、上で定義されたのと同じハロゲンを表す]
の化合物と縮合させて、それにより、下式
【0090】
【化27】
[式中、R、ZおよびXは、上で定義されているとおりである]
の化合物を準備するステップと;
(c) ステップ(b)において調製された式(5)の化合物を、下式
【0091】
【化28】
[式中、RおよびMは、上で定義されたとおりである]
の化合物の異性体混合物と縮合させて、本発明による式(1)の反応染料の異性体混合物を準備するステップと
を含む方法に関する。
【0092】
ステップ(c)で得られる式(1)の反応染料の異性体混合物を任意選択で、変換反応に掛けることもできる。そのような変換反応は例えば、ビニル化可能な反応性基-SO-Yを、希水酸化ナトリウム溶液で処理することにより、そのビニル形態に変換すること、例えば、β-クロロエチルスルホニルラジカルまたはβ-スルファトエチルスルホニルラジカルをビニルスルホニルラジカルに変換することなどである。そのような反応は、それ自体は公知である。それらの変換反応は一般に、中性からアルカリ性の媒体中で、例えば、20~70℃の温度で、例えば、6~14のpHで行われる。
【0093】
好適な式(1)の化合物は、例えば、2-ヒドロキシ-4-β-スルファトエチル-1-アミノベンゼン、2-メトキシ-4-β-スルファトエチル-1-アミノベンゼン、および2-スルホ-4-β-スルファトエチル-1-アミノベンゼンであり、市販されている。
【0094】
ステップ(a)において、式(1)のアミンを一般に、低温、例えば、0℃~40℃で、鉱酸水溶液中で、亜硝酸の作用によりジアゾ化し、式(2)のカップリング成分との反応を弱酸性、中性または弱アルカリ性pHで実施する。
【0095】
式(3)の化合物は、それ自体は公知のプロセスに従って、例えば、US-A-4341699、GB-A-1576237、US-A-4754023、EP-A-94055およびUS-A-5298607に記載されているような慣用のジアゾ化およびカップリング反応などにより調製することができる。
【0096】
好適な式(4)の化合物は、例えば、フッ化シアヌルまたは塩化シアヌルであり、市販されている。
【0097】
ステップ(b)では、式(3)のアゾ化合物を、水溶液中で、低温、例えば、0℃~40℃で、弱酸性、中性または弱アルカリ性pHで式(4)の化合物と縮合させる。
【0098】
ステップ(c)では、式(5)の中間体を、低温、例えば、0℃~40℃で、鉱酸水溶液中で、弱酸性、中性または弱アルカリ性pHで式(6)の化合物の異性体混合物と縮合させる。
【0099】
好ましい一実施形態では、式(6)の化合物の異性体混合物は、一方の異性体がアニリンのメタ位にスルホ基をもち、かつ他方の異性体がアニリンのパラ位にスルホ基をもつ2種の異性体を含む。
【0100】
式(6)の化合物の好適な異性体混合物は例えば、N-エチル-3-スルホアニリンおよびN-エチル-4-スルホアニリンの混合物であり、前記異性体は市販されている。
【0101】
前記異性体混合物は、N-エチルアニリンのスルホン化により合成することもできるし、または2種の異性体を物理的に混合することにより得ることもできる。
【0102】
好ましい一実施形態では、式(6)の化合物の異性体混合物は、1:4~4:1、好ましくは、1:4~1:1、より好ましくは、3:7~2:3の、アニリンのメタ位にスルホ基を含む異性体(N-エチル-3-スルホアニリン)とアニリンのパラ位にスルホ基を含む異性体(N-エチル-4-スルホアニリン)との重量比を有する。
【0103】
好ましい一実施形態では、式(6)の化合物の異性体混合物は、1:4~4:1、好ましくは、4:1~1:1、より好ましくは、7:3~3:2の、アニリンのメタ位にスルホ基を含む異性体(N-エチル-3-スルホアニリン)とアニリンのパラ位にスルホ基を含む異性体(N-エチル-4-スルホアニリン)との重量比を有する。
【0104】
有利には、前記比での式(6)の化合物の混合物は、同じ比で本発明による式(1)の反応染料の異性体混合物を得ることにつながり、これは、単独で利用される異性体の安定性と比較した場合に、様々な染色パラメーターに対する安定性の改善、特に浴安定性の改善を得ることを可能にする。顕著には、本発明による前記比での式(1)の反応染料の異性体の混合物は、単独で利用される異性体の浴安定性と比較した場合に、前記混合物の浴安定性に関して相乗効果を有する。
【0105】
上述の個別のプロセスステップを異なる順序で実施することもできるので、適切な場合には一部の場合に、同時に、異なるプロセスバリアントが可能である。反応を一般に、段階的に連続して実施し、その際、個々の反応成分間の、それ自体は公知の単純な反応の順序は特定の条件により決定される。
【0106】
組成物および使用
本発明はまた、本発明による少なくとも1種の式(1)の反応染料の異性体混合物を含む水性インクに、かつ様々な基材、特にテキスタイル繊維材料を印刷するためのインクジェット印刷方法におけるそのようなインクの使用に関し、その際、上に示された定義および優先が前記染料、前記インクおよび前記基材に当てはまる。
【0107】
本発明の少なくとも1種の反応染料の異性体混合物は、特にセルロース系繊維材料への印刷適用において非常に良好なビルドアップ挙動、高い最終ビルドアップおよび高い固着率、さらには、様々な印刷パラメーターに対する安定性の改善を示す。
【0108】
本発明による式(1)の反応染料の異性体混合物は、記録系において使用するための着色剤としても好適である。そのような記録系は、例えば、紙もしくはテキスタイル印刷のための市販のインクジェットプリンター、または万年筆もしくはボールペンなどの筆記用具、特に、インクジェットプリンターである。その目的では、本発明による染料を始めに、記録系において使用するために好適な形態にする。好適な形態は例えば、本発明による異性体混合物を着色剤として含む水性インクである。前記インクは、慣用の手法で、個々の成分を所望の量の水中で一緒に混合することにより調製することができる。
【0109】
基材として、上述のヒドロキシル基含有または窒素含有繊維材料、特にセルロース系繊維材料が検討される。繊維材料は好ましくは、テキスタイル繊維材料である。
【0110】
同じく検討される基材は、紙およびプラスチックフィルムである。
【0111】
紙の例としては、市販のインクジェット紙、写真用紙、光沢紙、プラスチックコーティング紙、例えば、Epson Ink-jet Paper、Epson Photo Paper、Epson Glossy Paper、Epson Glossy Film、HP Special Ink-jet Paper、Encad Photo Gloss PaperおよびIlford Photo Paperを挙げることができる。プラスチックフィルムは、例えば、透明または不透明/半透明である。好適なプラスチックフィルムは例えば、3M Transparency Filmである。
【0112】
使用の性質、例えばテキスタイル印刷または紙印刷に応じて、例えば、インクの粘度または他の物理的特性、特に、該当する基材についての親和性に対して影響を有する特性を相応して適合させることが必要であり得る。
【0113】
水性インク中で使用される本発明による異性体混合物は好ましくは、低い塩含有率を有するべきであり、つまり、それらは、染料の重量に対して0.5重量%未満の塩の総含有率を有するべきである。それらの調製の結果として、および/または希釈剤のその後の添加の結果として、相対的に高い塩含有率を有する染料は、例えば、限外濾過、逆浸透または透析などの膜分離手順により脱塩することができる。
【0114】
前記インクは好ましくは、前記インクの総重量に対して1~35重量%、特に1~30重量%、好ましくは、1~20重量%の本発明による異性体混合物の総含有率を有する。この場合の好ましい下限は、1.5重量%、好ましくは2重量%、特に3重量%の限界である。
【0115】
前記インクは、水混和性有機溶媒、例えば、C1~C4アルコール、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノールまたはイソブタノール;アミド、例えば、ジメチルホルムアミドまたはジメチルアセトアミド;ケトンまたはケトンアルコール、例えば、アセトンまたはジアセトンアルコール;エーテル、例えば、テトラヒドロフランまたはジオキサン;窒素含有複素環式化合物、例えば、N-メチル-2-ピロリドンまたは1,3-ジメチル-2-イミダゾリドン、ポリ-アルキレングリコール、例えば、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコール;C2 C6アルキレングリコールおよびチオグリコール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、チオ-ジグリコール、ヘキシレングリコールおよびジエチレングリコール;他のポリオール、例えば、グリセロールまたは1,2,6-ヘキサン-トリオール;および多価アルコールのC1~C4アルキルエーテル、例えば、2-メトキシ-エタノール、2-(2-メトキシ-エトキシ)エタノール、2-(2-エトキシエトキシ)エタノール、2-[2-(2-メトキシ-エトキシ)エトキシ]エタノールまたは2-[2-(2-エトキシエトキシ)エトキシ]エタノール;好ましくは、N-メチル-2-ピロリドン、ジエチレングリコール、グリセロールまたは特に、1,2-プロピレングリコールを通常は、前記インクの総重量に対して2~30重量%、特に5~30重量%、好ましくは、10~25重量%の量で含み得る。
【0116】
加えて、前記インクは、可溶化剤、例えば、β-カプロラクタムを含んでもよい。
【0117】
前記インクは、とりわけ粘度を調節する目的で、天然または合成由来の増粘剤を含んでよい。
【0118】
挙げることができる増粘剤の例には、市販のアルギン酸増粘剤、デンプンエーテルまたはローカストビーン粉末エーテル、特に、そのままの、または変性セルロース、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースもしくはヒドロキシプロピルメチルセルロースとの、特に好ましくは、カルボキシメチルセルロース20~25重量%との混合物でのアルギン酸ナトリウムが含まれる。同じく挙げることができる合成増粘剤は、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸またはポリ(メタ)アクリルアミドに基づくもの、また、例えば、2000~20000の分子量を有するポリアルキレングリコール、例えば、ポリエチレングリコールもしくはポリプロピレングリコールまたは酸化エチレンおよび酸化プロピレンの混合ポリアルキレングリコールなどである。
【0119】
前記インクは、そのような増粘剤を、例えば、前記インクの総重量に対して0.01~2重量%、特に0.01~1重量%、好ましくは、0.01~0.5重量%の量で含有する。
【0120】
前記インクは、緩衝物質、例えば、ホウ砂、ホウ酸塩、リン酸塩、ポリ-リン酸塩またはクエン酸塩を含んでもよい。挙げることができる例には、ホウ砂、ホウ酸ナトリウム、テトラホウ酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ペンタポリリン酸ナトリウムおよびクエン酸ナトリウムが含まれる。それらは、例えば、4~9、特に5~8.5のpH値を確立するために、特に、前記インクの総重量に対して0.1~3重量%、好ましくは0.1~1重量%の量で使用される。
【0121】
さらなる添加剤として、前記インクは、界面活性剤または保湿剤を含み得る。
【0122】
好適な界面活性剤には、市販の陰イオン性または非イオン性界面活性剤が含まれる。本発明によるインク中の保湿剤として、例えば、好ましくは0.1~30重量%、特に2~30重量%の量での尿素または乳酸ナトリウム(有利には、50%~60%水溶液の形態で)とグリセロールおよび/またはプロピレングリコールとの混合物が検討される。
【0123】
1~40mPa・s、特に1~20mPa・s、さらに特に1~10mPa・sの粘度を有するインクが優先される。
【0124】
さらに、前記インクは加えて、慣用の添加剤、例えば、消泡剤または特に、真菌および/または細菌増殖を阻害する防腐剤を含んでよい。そのような添加剤を通常、前記インクの総重量に対して0.01~1重量%の量で使用する。
【0125】
防腐剤としては、ホルムアルデヒド発生剤(formaldehyde-yielding agent)、例えば、パラホルムアルデヒドおよびトリオキサン、特に、およそ30~40重量%ホルムアルデヒド水溶液、イミダゾール化合物、例えば、2-(4-チアゾリル)-ベンゾイミダゾール、チアゾール化合物、例えば、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オンまたは2-n-オクチル-イソチアゾリン-3-オン、ヨウ素化合物、ニトリル、フェノール、ハロアルキルチオ化合物またはピリジン誘導体、特に1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オンまたは2-n-オクチル-イソチアゾリン-3-オンが検討される。好適な防腐剤は例えば、ジプロピレングリコール中の1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オンの20重量%溶液(Proxel(登録商標)GXL)である。
【0126】
前記インクは加えて、フッ素化ポリマーまたはテロマー、例えば、ポリエトキシペルフルオロアルコール(Forafac(登録商標)またはZonyl(登録商標)製品)などのさらなる添加剤を、例えば、前記インクの総重量に対して0.01~1重量%の量で含んでよい。
【0127】
インクジェット印刷法の場合には、インクの個々の小滴を、制御された手法でノズルから基材に噴霧する。これは主に、その目的のために使用される連続インクジェット法およびドロップ・オン・デマンド法である。連続インクジェット法の場合には、小滴が連続的に生成され、印刷作業に必要とされなかった小滴はレセプタクルへと除去されて再循環される。他方で、ドロップ・オン・デマンド法の場合には、小滴は所望に応じて生成されて、印刷のために使用される;つまり、小滴は、印刷作業のために必要とされる場合にのみ生成される。小滴の生成は、例えば、ピエゾインクジェットヘッドにより、または熱エネルギー(バブルジェット)により行われ得る。ピエゾインクジェットヘッドによる印刷、および連続インクジェット法による印刷が優先される。
【0128】
本発明はまた、ヒドロキシル基含有または窒素含有繊維材料、特にセルロース系繊維材料などのテキスタイル材料の染色または印刷における、本発明による少なくとも1種の式(I)の反応染料の異性体混合物または本発明によるインクの使用、または言い換えると、本発明による少なくとも1種の式(I)の反応染料の異性体混合物または本発明によるインクを使用する、ヒドロキシル基含有または窒素含有繊維材料、特に、セルロース系繊維材料などのテキスタイル材料を染色または印刷するための方法に関する。
【0129】
本発明による異性体混合物または本発明によるインクは、慣用の染色および印刷方法に好適であり、広範囲の様々な方式で、特に、染料水溶液または印刷用ペーストの形態で繊維材料に施与し、それに固着させることができる。
【0130】
本発明によるヒドロキシ基含有または窒素含有繊維材料を染色および印刷するためのプロセスは、慣用の染色および印刷方法に従って、例えば、本発明による異性体混合物をアルカリと一緒にパダーに施与し、次いで、数時間にわたって、ほぼ室温、例えば、25~35℃で貯蔵することにより固着させる、いわゆるコールド・パッド・バッチプロセスにより実施することができる。別法では、本発明による染色および印刷のためのプロセスは、物品を、任意選択で塩を含有する本発明による異性体混合物水溶液に含侵させ、前記異性体混合物をアルカリ処理の後に、またはアルカリの存在下で、任意選択で熱の作用下で固着させる吸尽染色法により実施することができる。
【0131】
染色のために、または印刷のために使用される本発明による異性体混合物または本発明によるインクの量は、所望の染色濃度に応じて幅広い限界内で変動し得る;一般に、染色または印刷される物品に対して0.01~15重量%、特に0.1~10重量%の量が有利であることが判明している。
【0132】
本発明はまた、本発明による少なくとも1種の式(I)の反応染料の異性体混合物、または本発明による水性インクで染色または印刷されたテキスタイルに関する。
【0133】
本発明による異性体混合物を使用して生産された染色物および印刷物は、酸性およびアルカリの両方の範囲において高い着色力および高い繊維-染料結合安定性を有し、それらの非フォトクロミック特性により注目すべきであり、良好な耐光および耐塩素性、良好なウォッシュオフ挙動、良好な浴安定性、優れたオペレーショナル・エクセレンス(再現性、固着時間など)も有する。
【0134】
次の実施例は、本発明を例示するために役立つ。別段に示されていない限り、温度は、摂氏温度で示されており、質量はg/g(100%活性成分)として表されており、部は重量部であり、パーセンテージは重量パーセントに関し、比はモル当量値として表されている。重量部は、リットルに対するキログラムの比率で体積部に関する。
【実施例
【0135】
- pHを、適正化された値に維持するために、塩酸32%溶液、炭酸ナトリウム20%溶液または水酸化ナトリウム30%溶液を使用し、
- 水および氷を冷却ステップのために使用し、
- 反応を、HPLC分析方法を使用してモニターし、この後者は反応の終了を示し、
- 合成のために使用される生成物はすべて市販されている。
【0136】
実施例1aおよび1b:
(a) 水200部に微細分散させた2-アミノ-5-((2-(スルファトオキシ)エチル)スルホニル-ベンゼンスルホン酸109.0gを次の手順によりジアゾ化する:
(a1) 2-アミノ-5-((2-(スルファトオキシ)エチル)スルホニル-ベンゼンスルホン酸および水中の塩酸32%溶液を2.0~3.0:1.0の化学量論(HCl32%:2-アミノ-5-((2-(スルファトオキシ)エチル)スルホニル-ベンゼンスルホン酸)で混合し、
(a2) ステップ(a1)において得られた混合物を、亜硝酸ナトリウムの4N溶液を用いて、完全なジアゾ化を保証するために1.05~1.1:1.0のわずかなモル過剰(亜硝酸ナトリウム:ステップ(a1)において得られた混合物)で0~30℃でジアゾ化し、
(a3) ステップ(a2)において得られた反応混合物を1時間にわたって撹拌し、過剰の亜硝酸塩を、スルファミン酸10%溶液を添加することにより中和して、必要とされるジアゾニウム塩を得る。
【0137】
次いで、水中に予め分散させた3-アミノフェニル尿素46.0gを氷で冷却し、氷の添加により維持される0~30℃で、炭酸ナトリウム20%溶液を添加することにより維持されるpH4.5~6.0で、ステップ(a3)で得られたジアゾニウム塩混合物を添加することによりカップリングする。カップリングの完了後に、反応物を25~40℃に加温し、トリアゼン除去のために、pH1.0~1.5で1~3時間にわたってHCl32%溶液で処理する。次いで、得られた混合物を次いで、20~25℃に冷却し、炭酸ナトリウム20%溶液を使用してpH6.5~7.0で溶解する。
【0138】
(b) ステップ(a)で得られた混合物を0~5℃で、pH6.0~8.0で氷で冷却し、フッ化シアヌル53.0gを5~20分以内に前記混合物に添加する。前記混合物のpHを、水酸化ナトリウム30%溶液の添加により、この値で維持し、温度を、氷を添加することにより0~5℃以内に維持する。添加の完了後に、得られた混合物を5~10にわたって、上記条件内で撹拌する。次いで、塩酸32%溶液を、得られた混合物に添加して、pHを3.0~4.0に調整する一方で、温度は、氷の添加により上の値で維持する。
(c) N-エチル-3-スルホアニリンおよびN-エチル-4-スルホアニリンの混合物を、(N-エチル-3-スルホアニリン:N-エチル-4-スルホアニリン)を
(c-1) 式(101a)としての実施例(1a)では3:2のモル比で、または
(c-2) 式(101b)としての実施例(1b)では2:3のモル比で
物理的に混合することにより調製する。
【0139】
3.0~4.0のpHを有する、ステップ(b)において得られる混合物を0~5℃の温度で冷却し、(c)において(c-1)または(c-2)として得られた混合物(N-エチル-3-スルホアニリン:N-エチル-4-スルホアニリン)57.0gを5~10分の時間をかけて、前記混合物に添加する。添加の間、pHを、水酸化ナトリウム30%溶液を用いて6.0~7.0に調整し、維持し、温度を10℃未満に維持する。添加の完了後に、反応物を20~30分間にわたって、上と同じ条件下で撹拌し、次いで、20~30℃に加熱するが、その間、pHを6.0~7.0に維持し、2~4時間にわたって、これらの条件下で撹拌する。
【0140】
反応の完了後に、反応物を30~50℃まで加熱し、逆浸透プロセスに掛け、乾燥して、反応染料の粗製の異性体混合物をもたらすが、その主な成分は遊離酸の形態で、それぞれ式(101a)または(101b)
【0141】
【化29】
に対応する。
【0142】
実施例2aおよび2bおよび比較例3~5:
次の染料は、実施例1において記載されたものと類似の手法で調製することができる。
実施例2aおよび2b:
【0143】
【化30】
【0144】
比較例3:
【0145】
【化31】
【0146】
比較例4:
【0147】
【化32】
【0148】
比較例5:
【0149】
【化33】
【0150】
比較例6:
【0151】
【化34】
【0152】
比較例7:
(a) 水200部に微細分散させた2-アミノ-5-((2-(スルファトオキシ)エチル)スルホニル-ベンゼンスルホン酸109.0gを次の手順によりジアゾ化する:
(a1) 2-アミノ-5-((2-(スルファトオキシ)エチル)スルホニル-ベンゼンスルホン酸および水中の塩酸32%溶液を2.0~3.0:1.0の化学量論(HCl32%:2-アミノ-5-((2-(スルファトオキシ)エチル)スルホニル-ベンゼンスルホン酸)で混合し、
(a2) ステップ(a1)において得られた混合物を、亜硝酸ナトリウムの4N溶液を用いて、完全なジアゾ化を保証するために1.05~1.1:1.0のわずかなモル過剰(亜硝酸ナトリウム:ステップ(a1)において得られた混合物)で0~30℃でジアゾ化し、
(a3) ステップ(a2)において得られた反応混合物を1時間にわたって撹拌し、過剰の亜硝酸塩を、スルファミン酸10%溶液を添加することにより中和して、必要とされるジアゾニウム塩を得る。
【0153】
次いで、水中に予め分散させた3-アミノフェニル尿素46.0gを氷で冷却し、氷の添加により維持される0~30℃で、炭酸ナトリウム20%溶液を添加することにより維持されるpH4.5~6.0で、ステップ(a3)で得られたジアゾニウム塩混合物を添加することによりカップリングする。カップリングの完了後に、反応物を25~40℃に加温し、トリアゼン除去のために、pH1.0~1.5で1~3時間にわたってHCl32%溶液で処理する。次いで、得られた混合物を次いで、20~25℃に冷却し、炭酸ナトリウム20%溶液を使用してpH6.5~7.0で溶解する。
【0154】
(b) 塩化シアヌル55.5gを、緩衝剤(リン酸水素二ナトリウム)1gおよび氷と共に水中に懸濁させる。前記懸濁液の温度を0~5℃に調整し、混合物を10分間にわたって、分散装置を用いての激しい撹拌下で撹拌する。
【0155】
ステップ(a)で得られた混合物を氷を用いて0~5℃で、pH6.0~8.0で冷却し、塩化シアヌル55.5gを前記混合物に急速に(1分未満で)添加する。前記混合物のpHを、炭酸ナトリウム20%溶液を添加することにより1時間にわたって15~25℃で、5.0~6.0に調節および維持する。反応の完了後に、懸濁液は15~25℃の温度で、5.0~6.0のpHである。
【0156】
(c) 2-スルホアニリン58.0gを20~25℃の温度で水に溶解し、この溶液のpHを水酸化ナトリウム30%溶液の添加により6.0~7.0に調節し、維持する。
【0157】
2-スルホアニリン溶液を5分間かけて、ステップ(b)において得られた混合物に添加し、混合物を60~70℃に加熱する。pHを、炭酸ナトリウム20%溶液の添加により5.0~5.5に維持しながら、混合物を反応の完了まで60~70℃で撹拌する。
【0158】
反応の完了後に、反応物を20~25℃の温度に冷却し、未反応の2-スルホアニリンを数滴の無水酢酸でクエンチする。次いで、前記反応物のpHを塩酸32%溶液で5.5~6.0に調整し、反応物を30~50℃まで加熱し、逆浸透プロセスに掛け、乾燥して、粗製の反応染料をもたらすが、その主な成分は遊離酸の形態で、下式:
【0159】
【化35】
に対応する。
【0160】
比較例8および9:
次の染料を、比較例6において記載されたものと類似の手法で調製することができる。
【0161】
比較例8
【0162】
【化36】
比較例9
【0163】
【化37】
【0164】
適用例10a-10b-11a-11bおよび比較適用例12~18:
適用例10a-10b-11a-11bおよび比較適用例12~18を、次の染色指示により調製する:
パッド・バッチ染色:75%(70%)の液体ピックアップ率の絞り作用(squeezing effect)を有するパダー上で、漂白された(マーセル化)コットンクレトン生地に、リットルあたりXgの本発明による異性体混合物または比較染料、1gの保湿剤(ALBAFLOW(登録商標)PAD)、2gの染料浴柔軟剤(ALBATEX(登録商標)DBS)、20mlの水酸化ナトリウム36°Be’および70mlのケイ酸ナトリウム(水ガラス)38°Be’を含有する水性染色液を含侵させる。液浸時間は2秒である。パディングの後に、生地を巻き取り、次いで、24時間にわたって25℃の温度で貯蔵する。貯蔵の後に、染色されたコットン材料を常温水ですすぎ(10分)、水中で煮沸し(5分)、続いて、常温水ですすぐ(10分)。染色された生地が、反応染料の異性体混合物の濃度(Xg/l)に応じて得られる。表1および2に、適用例10~11および比較適用例12~18についての反応染料の異性体混合物の濃度(Xg/l)、同じE25での最大ビルドアップ性および同じ基準深さでの固着率をまとめる。
【0165】
適用例10aは、実施例1aによる異性体混合物(式(101a))を用いて得る。適用例10bは、実施例1bによる異性体混合物(式(101b))を用いて得る。
【0166】
適用例11aは、実施例2aによる異性体混合物(式(102a))を用いて得る。適用例11bは、実施例2bによる異性体混合物(式(102b))を用いて得る。
【0167】
比較適用例12~18はそれぞれ、比較例3~9による染料を用いて得る。
【0168】
色深度を規定する内部試験方法により得られ、ISO 105-A-1984(E)、4頁による標準深度と相関する量であるRD(=「基準深さ」)の単位で、適用例10~11および比較適用例12~18による染色の着色力を示す。適用例10~11および比較適用例12~18により染色された生地の基準深度を分光光度により(photospectrometrically)測定する。
【0169】
ビルドアップダイアグラムを調製し、最大ビルドアップを通常の手法で決定する。
【0170】
【表1】
【0171】
適用例10a-10b-11a-11bおよび比較適用例12~18での固着率を、通常の手法で、1に等しいRDを有する規定のサイズの染色生地の試験片を切り取り、未固着の染料を煮沸中のリン酸緩衝水溶液(pH7)で溶解/抽出することにより決定する。
【0172】
【表2】
【0173】
適用例19a-19b-20a-20bおよび比較適用例21~27:
適用例19a-19b-20a-20bおよび比較適用例21~27を、浴安定性を測定することを可能にする次のパッド・バッチ染色指示により調製する:
【0174】
生地T0の染色:75%(70%)の液体ピックアップ率の絞り作用を有するパダー上で、漂白された(マーセル化)コットンクレトン生地に、リットルあたりXgの本発明による異性体混合物または比較染料、1gの保湿剤(ALBAFLOW(登録商標)PAD)、2gの染料浴柔軟剤(ALBATEX(登録商標)DBS)、Xmlの水酸化ナトリウム36°Be’および20mlのソーダ灰を含有する水性染色液を含侵させる。液浸時間は2秒である。パディングの後に、生地を巻き取り、次いで、24時間にわたって25℃の温度で貯蔵する。
【0175】
水性染色液を25℃の温度自動調節浴内に10分間にわたって戻し入れて、2パッド・バッチ染色の間にそれらが冷却しないようにし、また、染色温度条件での本発明による異性体染料混合物の浴安定性を測定することを可能にする。
【0176】
生地T10の染色:10分後に、前記水性染色液を上記のパダーに戻し入れ、漂白された(マーセル化)コットンクレトン生地に前記液体を含侵させる。パディングの後に、生地を巻き取り、次いで、24時間にわたって25℃の温度で貯蔵する。
【0177】
水性染色液を25℃の温度自動調節浴内に20分間にわたって戻し入れる。
【0178】
生地T20の染色:20分後に、前記水性染色液を上記のパダーに戻し入れ、漂白された(マーセル化)コットンクレトン生地に前記液体を含侵させる。パディングの後に、生地を巻き取り、次いで、24時間にわたって25℃の温度で貯蔵する。
【0179】
水性染色液を25℃の温度自動調節浴内に30分間にわたって戻し入れる。
【0180】
生地T30の染色:30分後に、前記水性染色液を上記のパダーに戻し入れ、漂白された(マーセル化)コットンクレトン生地に前記液体を含侵させる。パディングの後に、生地を巻き取り、次いで、24時間にわたって25℃の温度で貯蔵する。
【0181】
得られた異なる染色綿生地T0、T10、T20およびT30を24時間にわたって25℃の温度自動調節浴内に貯蔵する。次いで、染色されたコットン生地T0、T10、T20およびT30を常温水ですすぎ(10分)、水中で煮沸し(5分)、続いて、常温水ですすぎ(10分)、遠心脱水し、アイロンをかける。
【0182】
得られた染色生地T0、T10、T20およびT30を暗所で終夜貯蔵し、次いで、それらの着色力を、分光比色計Datacolor 600を使用して比色測定する。
【0183】
染色生地T0では、着色力測定は「即時濃度測定(immediate strength measurement)」と名付けられる。染色生地T0のすべてで、染料の濃度(g/l)を、0.5のRD当量に達するように調整し、このRD値を100%と規定される基準として設定する。
【0184】
染色生地T10、T20およびT30では、それらの着色力をそれぞれ測定して、即時濃度測定と比較する。
【0185】
本発明による反応染料の異性体混合物、および同じく比較染料の浴安定性の決定は、即時濃度測定と比較して5%超の着色力の低下に達するために対応する時間である。
【0186】
表3に、反応染料の異性体混合物の濃度(Xg/l)および浴安定性をまとめる。
【0187】
適用例19aを、実施例1aによる異性体混合物(式(101a))を用いて得る。適用例19bを、実施例1bによる異性体混合物(式(101b))を用いて得る。
【0188】
適用例20aを、実施例2aによる異性体混合物(式(102a))を用いて得る。適用例20bを、実施例2bによる異性体混合物(式(102b))を用いて得る。
【0189】
比較適用例21~27をそれぞれ、比較例3~9による染料を用いて得る。
【0190】
【表3】
【0191】
表1、2および3にまとめられた結果は、比較染料と比較して、本発明による異性体混合物(101aまたは101b)および(102aまたは102b)の優位性を実証している。
【0192】
特に、本発明による異性体混合物(101aまたは101b)および(102aまたは102b)でそれぞれ染色されたテキスタイルは同時に、非常に良好なビルドアップ性(すなわち、最大RD値が2.00を超える)、非常に良好な固着率(すなわち、固着率は90%以上である)を呈し、さらに、染料浴中に存在する場合の異性体混合物(101aまたは101b)~(102aまたは102b)は浴安定性の改善を示し、特に、最大で20分後には着色力の5%低下に達する比較染料と比較して、本発明による異性体混合物(101aまたは101b)および(102aまたは102b)は30分後に着色力が5%超低下する。
【0193】
さらに、表3における結果は、本発明による異性体混合物を構成する異性体(104)および(105)のそれぞれと個別に比較した場合に、異性体混合物(101aまたは101b)の浴安定性に関する相乗作用を示している。
【0194】
したがって、本発明による異性体混合物は、非常に良好なビルドアップ性および非常に高い固着率を示し、同時に、単独で利用されるそれらの異性体と比較して、または従来技術の染料と比較して、優れた浴安定性を示す。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の式(I):
【化1】
[式中、
は、水素またはC~Cアルキルであり、
は、水素、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、スルホ、カルボキシまたはハロゲンであり、
Zは、式-SO-CH=CH、-SO-(CH-Y、-NH-(CH-O-(CH-SO-CH=CH、-NH-(CH-O-(CH-SO-(CH-Y、-NH-(CH-O-(CH-SO-CH=CH、-NH-(CH-O-(CH-SO-(CH-Y、-NHCO-(CH-SO-CH=CHまたは-NHCO-(CH-SO-(CH-Yの繊維反応性ラジカルであり、Yは、アルカリ条件下で除去可能な基であり、
Xは、ハロゲンであり、
Mは、水素、有機塩、アルカリ金属または1当量のアルカリ土類金属である]の反応染料の異性体混合物。
【請求項2】
少なくとも式(Ia):
【化2】
の異性体および式(Ib):
【化3】
の異性体を含み、
、R、Z、XおよびMが、請求項1において定義されている、
請求項1に記載の異性体混合物。
【請求項3】
式(Ia)の異性体および式(Ib)の異性体を1:4~4:1の範囲の重量比で含む、請求項1又は2に記載の異性体混合物。
【請求項4】
式(Ia)の異性体および式(Ib)の異性体を1:4~1:1、好ましくは3:7~2:3の範囲の重量比で含む、請求項1又は2に記載の異性体混合物。
【請求項5】
式(Ia)の異性体および式(Ib)の異性体を4:1~1:1、好ましくは7:3~3:2の範囲の重量比で含む、請求項1又は2に記載の異性体混合物。
【請求項6】
- 少なくとも、式(Ia1)および(Ia2):
【化4】
の反応染料を含む式(Ia)の異性体と、
- 少なくとも、式(IIa1)および(IIa2):
【化5】
の異性体の混合物を含む式(Ib)の異性体とを含み、
、R、Z、XおよびMが、請求項1において定義されている、
請求項1又は2に記載の異性体混合物。
【請求項7】
反応染料(Ia1)および(Ib1)の反応染料(Ia2)および(Ib2)に対する重量比が、6:4~99:1、好ましくは7:3~95:5、より好ましくは8:2~95:5の範囲である、請求項6に記載の異性体混合物。
【請求項8】
が、水素、メチル、エチル、n-プロピルまたはn-ブチルである、請求項1又は2に記載の異性体混合物。
【請求項9】
が、水素、メチル、エチル、スルホ、カルボキシまたはハロゲンである、請求項1又は2に記載の異性体混合物。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の異性体混合物を調製するための方法であって、
(a) 下式
【化6】
[式中、RおよびZは、請求項1から9のいずれかにより定義される]
の化合物をジアゾ化し;
こうして得られたジアゾニウム塩を下式
【化7】
のカップリング成分と反応させ、それにより、下式
【化8】
[式中、RおよびZは、請求項1から9のいずれかにより定義される]
のアゾ化合物を得るステップと、
(b) ステップ(a)において調製された式(3)のアゾ化合物を下式
【化9】
[式中、Xは、同じハロゲンを表し、請求項1から9のいずれかにより定義される]
の化合物と縮合させて、それにより、下式
【化10】
[式中、R、ZおよびXは、請求項1から9のいずれかにより定義される]
の化合物を準備するステップと;
(c) ステップ(b)において調製された式(5)の化合物を、下式
【化11】
[式中、RおよびMは、請求項1から9のいずれかにより定義される]
の化合物の異性体混合物と縮合させて、請求項1から9のいずれかに記載の式(1)の反応染料の異性体混合物を準備するステップと
を含む方法。
【請求項11】
式(6)の化合物の異性体混合物が、一方の異性体がアニリンのメタ位にスルホ基をもち、かつ他方の異性体がアニリンのパラ位にスルホ基をもつ2種の異性体を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1又は2に記載の少なくとも1種の式(1)の反応染料の異性体混合物を含む水性インク。
【請求項13】
ヒドロキシル基含有または窒素含有繊維材料、特にセルロース系繊維材料などのテキスタイル材料の染色または印刷における、請求項1又は2に記載の少なくとも1種の式(I)の反応染料の異性体混合物使用。
【請求項14】
請求項1又は2に記載の少なくとも1種の式(I)の反応染料の異性体混合物で染色または印刷されたテキスタイル。
【請求項15】
ヒドロキシ基含有または窒素含有繊維材料を染色または印刷するための方法であって、請求項1又は2に記載の少なくとも1種の式(I)の反応染料の異性体混合物を使用することを含む、方法。
【国際調査報告】