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特表2025-505320ポリエステル混紡生地のリサイクル方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-21
(54)【発明の名称】ポリエステル混紡生地のリサイクル方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/10 20060101AFI20250214BHJP
   C08J 11/18 20060101ALI20250214BHJP
   C08J 11/22 20060101ALI20250214BHJP
   C08J 11/24 20060101ALI20250214BHJP
   C08J 11/28 20060101ALI20250214BHJP
   B29B 17/02 20060101ALI20250214BHJP
   C08G 63/183 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
C08J11/10 ZAB
C08J11/18
C08J11/22
C08J11/24
C08J11/28
B29B17/02
C08G63/183
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024569664
(86)(22)【出願日】2022-07-08
(85)【翻訳文提出日】2024-08-14
(86)【国際出願番号】 CN2022104576
(87)【国際公開番号】W WO2023155367
(87)【国際公開日】2023-08-24
(31)【優先権主張番号】202210150394.3
(32)【優先日】2022-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524304714
【氏名又は名称】チンタオアミノマテリアルテクノロジー カンパニーリミテッド
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO AMINO MATERIAL TECHNOLOGY CO. LTD
【住所又は居所原語表記】Chengyun Center, The Intersection of Yangzhou Branch Road and Wenzhou Road, Jiaozhou Qingdao, Shandong 266399 China
(74)【代理人】
【識別番号】100165663
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 光宏
(72)【発明者】
【氏名】劉紅港
(72)【発明者】
【氏名】郭青
(72)【発明者】
【氏名】郭彩紅
(72)【発明者】
【氏名】毛徳彬
(72)【発明者】
【氏名】胡文健
(72)【発明者】
【氏名】万暁波
(72)【発明者】
【氏名】穆有炳
【テーマコード(参考)】
4F401
4J029
【Fターム(参考)】
4F401AA02
4F401AA22
4F401AA24
4F401AA26
4F401AB06
4F401BA06
4F401BB09
4F401BB10
4F401BB11
4F401CA02
4F401CA32
4F401CA33
4F401CA67
4F401CA69
4F401CA75
4F401DC01
4F401EA04
4F401EA05
4F401EA28
4F401EA34
4F401EA57
4F401EA59
4F401EA64
4F401EA66
4F401EA67
4F401FA01Y
4F401FA07Z
4J029AA03
4J029AB07
4J029AC01
4J029AE02
4J029BA03
4J029CB06A
4J029CF19
4J029EA05
4J029HA01
4J029HB01
4J029KA02
4J029KD02
4J029KG01
4J029KG02
4J029KG03
(57)【要約】
本発明は、織物のリサイクルに関し、さらにポリエステル混紡生地のリサイクル方法に関する。ポリエステルを含む被処理原料を処理した後、触媒で40℃~120℃で0.5~8時間反応してポリエステルの分解を行い、完全な解重合を達成し、その後、分離してリサイクルし、分離後のポリエステル成分及びその他の混紡成分は再利用を実現する。本発明の方法は、低温条件下でポリエステルの100%解重合を実現し、解重合されたポリエステル成分は他の成分から容易に分離できるため、混紡生地中のポリエステルと他の温度に敏感な繊維成分を完全に分離できる。リサイクルして得られたポリエステル解重合モノマーは、新たなポリエステルの合成にも使用でき、ポリエステル混紡廃棄物中の異なる繊維成分のクローズドループリサイクルが実現し、これは、生態環境を保護し、再生繊維のコストを削減する上で非常に重要である。
【選択図】図3









【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル混紡生地のリサイクル方法であって、ポリエステルを含む被処理原料を処理した後、触媒で40℃~120℃で0.5~8時間反応してポリエステルの分解を実行し、完全な解重合を達成し、その後、分離してリサイクルし、分離した後のポリエステル成分及びその他の混紡成分は再利用できることを特徴とするポリエステル混紡生地のリサイクル方法。
【請求項2】
前記触媒は有機塩基の主触媒と助触媒であり、ここで、触媒添加量は、混紡生地の質量の0.1~20wt%であり、有機塩基の主触媒と助触媒の質量比は1:0.01~100であることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル混紡生地のリサイクル方法。
【請求項3】
前記有機塩基の主触媒は、窒素元素含有のアミジンまたはグアニジン化合物、誘導体のうちの1種又は複数種であり、助触媒はニトリル化合物であることを特徴とする請求項2に記載のポリエステル混紡生地のリサイクル方法。
【請求項4】
前記有機塩基の主触媒は、(a)1,8-ジアザビシクロウンデカ-7-エン (DBU)、ポリマーまたは化合物担持型DBU、及びDBUとイミダゾールおよびその誘導体によって形成された有機塩、(b)1,5,7-トリアザビシクロ[ 4.4.0]デカ-5-エン(TBD)、ポリマーまたは化合物担持型TBD、及びTBDとイミダゾールおよびその誘導体によって形成された有機塩、(c)1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン( DBN)、ポリマーまたは化合物担持型DBN、及びDBNとイミダゾールおよびその誘導体によって形成された有機塩であることを特徴とする請求項3に記載のポリエステル混紡生地のリサイクル方法。
【請求項5】
前記助触媒は、アセトニトリル、プロパンニトリル、ベンゾニトリル、アジポニトリルの1種又は複数種であることを特徴とする請求項3に記載のポリエステル混紡生地のリサイクル方法。
【請求項6】
前記ポリエステルを含む被処理原料は、ポリエステル混紡生地又はポリエステルと他の生地の混合生地であり、ここで、被処理原料中のポリエステルの含有量は5%~100%であり、前記ポリエステル混紡生地とは、スパンデックス、綿、ビスコース繊維、再生セルロース繊維、ナイロン、ウール、カシミヤ、純絹のうちの1種以上とポリエステルとを混紡した生地であることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル混紡生地のリサイクル方法。
【請求項7】
前記ポリエステルを含む被処理原料は、原料を、アルコールまたはアルコールを含む混合系中で40~130℃で0.3~2時間洗浄するものであり、ここで、アルコールを含む混合系は、アルコールとアルカリ性化合物の混合物であり、前記アルカリ性化合物は、ソーダ灰(NaCO)、酢酸ナトリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、炭酸カリウム、酢酸カリウム、カリウムメトキシド、酸化カルシウム、水酸化カルシウムのうちの1種または複数種であることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル混紡生地のリサイクル方法。
【請求項8】
前記ポリエステルを分解した後、固液分離し、固体を収集し、ソックスレー抽出によりポリエステル成分とその他の繊維成分を分離し、液体を、常圧蒸留によりアルコールと助触媒をリサイクルし、次に真空蒸留または抽出によりポリエステルのジオールおよび二塩基酸モノマー、ならびに有機塩基触媒をリサイクルすることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル混紡生地のリサイクル方法。





【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織物のリサイクルに関し、さらにポリエステル混紡生地のリサイクル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルは世界で最も人気のある繊維材料の1つであり、2010年以来、ポリエステル繊維は世界で最も消費されている繊維となっている。2020年、世界の年間ポリエステル生産量は5,700万トンに達した。紡織繊維としてのポリエステルは、単独で使用されるだけでなく、他の繊維と混紡されることもよくある。混紡後のポリエステル生地は、ポリエステル生地の優れた機械的特性を備えているだけでなく、他の繊維生地の優れた特性も明らかに保持している。そのため、アパレル業界ではポリエステルのさまざまな混紡生地がますます人気が高まっている。例えば、ポリエステルと綿の混紡生地は、カジュアル衣料品で最も一般的な生地の1つである。綿の着心地の良さだけでなく、ポリエステル生地の安っぽさも兼ね備えた生地である。スポーツウェアでは、ポリエステルとスパンデックスの混紡生地が最も重要な生地である。このような混紡生地は、ポリエステル繊維の外観や風合いを維持するだけでなく、弾性や着用感にも優れている。しかし、混紡生地で作られた衣類は使用後に大量に廃棄されている。これは、既存の技術ではポリエステルとその他の繊維成分を完全に分離する技術が不足しているためである。そのため、毎年何百万トンものポリエステル混紡生地が簡単に焼却され埋め立てられている。このような処理方法は、多くの資源を無駄にするだけでなく、私たちの生活環境に深刻な悪影響を及ぼしている。ポリエステル混紡繊維廃棄物を持続可能な工程を使用して高付加価値紡織繊維にリサイクルできれば、廃棄物処理による環境への悪影響を軽減するだけでなく、限られた資源を最大限に活用することもできる。
【0003】
現在開示されているポリエステル混紡生地のリサイクル技術の中で、ポリエステルの化学的解重合は最も主な方法である。ただし、ポリエステル繊維の解重合プロセス中の解重合温度は通常200℃以上になり(特許文献1、特許文献2)、この温度では、温度に敏感な成分がポリエステルより先に分解するため、混紡生地の他の成分をリサイクルすることが困難となる。特許文献3は、ポリエステルの低温解重合方法を開示し、この方法では、120℃以上の温度でポリエステルを解重合できるが、スパンデックスなどの温度に敏感な成分は、120℃の反応条件下で粘着性を持ち始め、分離されたスパンデックス成分は弾性を失い、リサイクルが困難になった。特許文献4は、100℃~180℃の温度条件下でポリエステルを解重合する方法を開示したが、この開示された方法では、ポリエステルは低温反応条件(100℃~140℃)では100%解重合することができない。これにより、ポリエステルが混紡生地から完全に分離できなくなり、他の生地成分のリサイクルが困難になった。さらに、この方法は低温条件下ではポリエステルモノマーの収率が低いため、リサイクル工程の経済的コストも高くなる。したがって、ポリエステル混紡生地のリサイクルを実現するには、いかに低温条件下で他の成分を損傷することなくポリエステル成分を100%解重合させるかが鍵となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】CN106113319A
【特許文献2】CN102250379B
【特許文献3】US8,541,477B2
【特許文献4】WO2021126661A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ポリエステル混紡生地のリサイクル方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の技術的解決手段を採用する。
【0007】
ポリエステル混紡生地のリサイクル方法であって、ポリエステルを含む被処理原料を処理した後、触媒で40~120℃で0.5~8時間反応してポリエステルの分解を実行し、完全な解重合を達成し、その後、分離してリサイクルし、分離した後のポリエステル成分及びその他の混紡成分は再利用できる。
【0008】
前記触媒は有機塩基の主触媒と助触媒であり、ここで、触媒添加量は、混紡生地の質量の0.1~20wt%であり、有機塩基の主触媒と助触媒の質量比は1:0.01~100である。
【0009】
前記有機塩基の主触媒は、窒素元素含有のアミジンまたはグアニジン化合物、誘導体のうちの1種又は複数種であり、助触媒はニトリル化合物である。
【0010】
前記有機塩基の主触媒は、(a)1,8-ジアザビシクロウンデカ-7-エン (DBU)、ポリマーまたは化合物担持型DBU、及びDBUとイミダゾールおよびその誘導体によって形成された有機塩、(b)1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(TBD)、ポリマーまたは化合物担持型TBD、及びTBDとイミダゾールおよびその誘導体によって形成された有機塩、(c)1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(DBN)、ポリマーまたは化合物担持型DBN、及びDBNとイミダゾールおよびその誘導体によって形成された有機塩である。
【0011】
上記ポリマー又は化合物担持型触媒(ポリマー又は化合物担持型DBUを例とする)は、ポリスチレン担持型DBU(PS-DBU)、活性炭担持型DBUである。
【0012】
形成された有機塩(DBUとイミダゾール及びその誘導体によって形成された有機塩を例とする)は、DBU及びイミダゾール(Imidazole)によって形成された有機塩([HDBU][Im])、DBU及び2-エチルイミダゾル(2-Ethylimidazole)によって形成された有機塩([HDBU][2-EtIm])、DBU及びベンゾイミダゾール(Benzimidazole)によって形成された有機塩([HDBU][BIm])、DBU及び2-メチルイミダゾール(2-methylimidazole)によって形成された有機塩([HDBU][2-MeIm])、DBU及び2-エチル-4-メチルイミダゾール(2-Ethyl-4-Methylimidazole)によって形成された有機塩([HDBU][2-Et-4-MeIm])、DBU及び2-フェニルイミダゾール(2-Phenylimidazole)によって形成された有機塩([HDBU][2-PhIm])である。
【0013】
前記助触媒は、アセトニトリル、プロパンニトリル、ベンゾニトリル、アジポニトリルの1種又は複数種である。
【0014】
好ましくは、前記方法は、ポリエステルを含む被処理原料を処理した後、メタノール溶液に添加し、その後、触媒を添加して60~110℃で、1~5時間反応してポリエステル分解を行い、完全な解重合を達成し、その後、分離したポリエステル成分を分離・リサイクルして再利用することである。
【0015】
より好ましくは、前記方法は、ポリエステルを含む被処理原料を処理した後、メタノール溶液に添加し、その後、触媒を添加して80~110℃で、1~2時間反応してポリエステル分解を行い、完全な解重合を達成し、その後、分離したポリエステル成分を分離・リサイクルして再利用することである。
【0016】
前記ポリエステルを含む被処理原料は、ポリエステル混紡生地又はポリエステルと他の生地の混合生地であり、ここで、混合生地中のポリエステルの含有量は5%~100%であり、前記ポリエステル混紡生地とは、スパンデックス、綿、ビスコース繊維、再生セルロース繊維、ナイロン、ウール、カシミヤ、純絹のうちの1種以上とポリエステルとを混紡した生地である。
【0017】
上記混紡生地において、ポリエステルの含有量は少なくとも5%、又は少なくとも25%、又は少なくとも50%、又は少なくとも75%、又は少なくとも95%である。
【0018】
前記ポリエステルを含む被処理原料は、原料を、アルコールまたはアルコールを含む混合系中で40~130℃で0.3~2時間洗浄するものであり、ここで、アルコールを含む混合系は、アルコールとアルカリ性化合物の混合物であり、前記アルカリ性化合物は、ソーダ灰(NaCO)、酢酸ナトリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、炭酸カリウム、酢酸カリウム、カリウムメトキシド、酸化カルシウム、水酸化カルシウムのうちの1種または複数種である。
【0019】
さらに、原料を、アルコールまたはアルコールを含む混合系中で50~110℃又は80~100℃又は90~100℃で0.3~2時間洗浄し、原料に含まれる汚れ、油汚れ及び他の不純物を除去するものである。
【0020】
前記ポリエステルを分解した後、固液分離し、固体を収集し、ソックスレー抽出によりポリエステル成分とその他の繊維成分を分離し、液体を、常圧蒸留によりアルコールと助触媒をリサイクルし、次に真空蒸留または抽出によりポリエステルのジオールおよび二塩基酸モノマー、ならびに有機塩基触媒をリサイクルし、上記ポリエステルを解重合した後にリサイクルしたモノマー例えばテレフタル酸ジメチル(DMT)及びエチレングリコールを真空蒸留により精製した後、原料として新しいポリエステルを合成することができる。
【0021】
本発明の作用原理は以下のとおりである。
有機塩基の主触媒によるメタノールのポリエステルに対する分解を触媒するプロセスでは、有機塩基の主触媒はまずメタノールを活性化し、メタノールに求核性の高いメタノールアニオンを生成させ、下図に示すように、
【化1】
形成されたメタノールアニオンは、求核反応によりエステル結合を攻撃しやすくなり、エステル結合の切断が達成される。しかしながら、有機塩基の主触媒によってメタノールを活性化する反応は可逆的である。ニトリル(R-C≡N:)を反応系に添加すると、-C≡N:の強い極性と窒素原子上の孤立電子により、反応により生成する有機塩基の主触媒カチオンが系内で安定になり、反応平衡をより多くのメタノールアニオンの生成に向けてシフトし、それによって有機塩基の主触媒の触媒活性を向上させる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の利点は以下のとおりである。
【0023】
本発明の方法は、低温条件下でポリエステルの100%解重合を実現する。解重合されたポリエステル成分は他の成分から容易に分離できるため、混紡生地中のポリエステルと他の温度に敏感な繊維成分を完全に分離できる。また、本発明における反応分離プロセスは穏やかかつ効率的であり、他の繊維は100%純度の成分が得られ、繊維はほとんど損傷せず、直接絹糸に再紡績することも、再生繊維の原料として使用することもできる。リサイクルして得られたポリエステルの解重合モノマーは、新たなポリエステルの合成にも使用でき、ポリエステル混紡廃棄物中の異なる繊維成分のクローズドループリサイクルが実現し、これは、生態環境を保護し、再生繊維のコストを削減する上で非常に重要である。
【0024】
本発明の分離プロセスでは、有機アルカリ触媒を使用してポリエステルのエステル結合の切断を触媒し、低温条件下での有機塩基の触媒活性と効率を向上させるために、システムプロセス中に補助触媒が添加され、有機塩基と助触媒を併用すると、低温条件でのポリエステルの100%解重合が達成され、また、助触媒を添加した後、ポリエステルモノマーのリサイクル率が大幅に向上した。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施例によって提供される解重合後にリサイクルされたポリエステルモノマーであるテレフタル酸ジメチル(DMT)の赤外スペクトル(FTIR)である。
図2】本発明の実施例によって提供される解重合後にリサイクルされたポリエステルモノマーであるフラン-2,5-ジカルボン酸ジメチルエステルの赤外スペクトル(FTIR)である。
図3】本発明の実施例によって提供される分離されてリサイクルされたポリエステルと綿の混紡生地である。ここで、Aは、分離反応前の混紡生地であり、Bは、分離反応後の純綿生地である。
図4】本発明の実施例によって提供される分離されてリサイクルされたポリエステルとスパンデックスの混紡プリント生地である。ここで、Aは、分離反応前の混紡生地であり、Bは、分離反応後の純粋なスパンデックス生地であり、Cは、光学顕微鏡下でスパンデックス糸が損傷していないことを示しているものである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に実施例と組み合わせて本発明の具体的な実施形態をさらに説明し、ここで説明される具体的な実施形態は、本発明を説明及び解釈するためだけのものであり、本発明によって限定されることを意図するものではないことに留意されたい。
【0027】
本発明の方法は、より低い温度条件下でポリエステル繊維成分の100%解重合を実現し、ポリエステルモノマーのリサイクル率は95%と高く、より効率的なポリエステルのリサイクル・再生が可能となる。反応温度がより低いと工程過程がより環境に優しくなり、反応に必要なエネルギーが削減されるため、リサイクル工程の費用が安くなる。
【0028】
本発明は、温度に敏感な繊維とポリエステルの混紡の廃棄物例えば、スパンデックスとポリエステルの混紡生地、綿とポリエステルの混紡生地、ビスコース繊維とポリエステルの混紡生地、再生セルロース繊維とポリエステルの混紡生地、ナイロンとポリエステルの混紡生地、ウールとポリエステルの混紡生地、カシミヤとポリエステルの混紡生地、純絹とポリエステルの混紡生地、及びこれらの繊維の生地とポリエステル生地の混合生地のリサイクルと再利用を目的とする。ここでの再生セルロース繊維は、モーダル繊維およびリヨセル繊維であり得る。
【0029】
上記のポリエステルの解重合とは、ポリエステルをモノマーや二量体、三量体、四量体、五量体、六量体、七量体などの低分子オリゴマーに分解し、混紡生地から脱落して分離し、ポリエステル成分の分離とリサイクルを実現することを指す。該技術におけるポリエステルとは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン2,5-フランジカルボキシレート(PEF)、ポリトリメチレン2,5-フランジカルボキシレート(PTF)、ポリブチレン 2,5-フランジカルボキシレート(PBF)、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリブチレングリコールサクシネート(PBS)、低融点ポリエステルコポリマーなどの、エステル結合を含むポリマーを指す。
【0030】
解重合効率(E)は反応後に残存する固体の量から計算できる。該計算式は
解重合効率(E)=(織物生地中のポリエステル繊維含有量-解重合されていないポリエステル量)/織物生地中のポリエステル繊維含有量である。
【0031】
以下の実施例における有機塩触媒の調製:
DBUとイミダゾールおよびその誘導体によって形成される有機塩触媒の調製:
DBUとイミダゾールおよびその誘導体によって形成される有機塩触媒は、等モルのDBUとイミダゾールおよびその誘導体を室温の条件で中和反応によって調製される。例えば実施例で使用したDBU及び2-エチルイミダゾール(2-Ethylimidazole)によって形成される有機塩([HDBU][2-EtIm])は、0.025モルのDBUと0.025モルの2-エチルイミダゾールを室温の条件で5時間中和反応した後に調製した。
【0032】
同時に、上記方法によれば、DBUとベンゾイミダゾール(Benzimidazole)により有機塩([HDBU][BIm])を形成し、DBUと2-メチルイミダゾール(2-methylimidazole)により触媒([HDBU][2-MeIm])を形成し、DBUと2-エチル-4-メチルイミダゾール(2-ethyl-4-methylimidazole)により触媒([HDBU][2-Et-4-MeIm])を形成し、およびDBUと2-フェニルイミダゾール(2-phenylimidazole)により触媒([HDBU][2-PhIm])を形成することもできる。
【0033】
実施例1
ポリエステル繊維10gを50℃でメタノールで30分間洗浄した。洗浄プロセス中に、ソーダ灰0.2gを追加して洗浄し、洗浄後、繊維を75℃で1時間乾燥させた。乾燥後の繊維、メタノール20g、アセトニトリル20gおよびDBU2gを反応釜に添加し、次いで反応釜を65℃に加熱した。8時間反応した後、反応釜を室温まで冷却した。反応系内の固体部分と液体部分を濾過により分離した。固体部分をメタノールでソックスレー抽出し、ポリエステル解重合モノマーであるテレフタル酸ジメチル(DMT)8.94gを得て(図1を参照)、ソックスレー抽出器内に固体は残らなかった。つまりポリエステル繊維は完全に解重合された。分離された液体部分を蒸留によりメタノール及びアセトニトリルをリサイクルし、次に真空蒸留によりエチレングリコール及びDBUをリサイクルした(表2を参照)。
【0034】
実施例2
ポリエステル繊維10gを50℃でメタノールで30分間洗浄した。洗浄プロセス中に、ソーダ灰0.2gを追加して洗浄し、洗浄後、繊維を75℃で1時間乾燥させた。乾燥後の繊維、メタノール28g、異なる助触媒12gおよびDBU0.54gを反応釜に添加し、次いで反応釜を85℃に加熱した。2.5時間反応した後、反応釜を室温まで冷却した。反応系内の固体部分と液体部分を濾過により分離した。固体部分をメタノールでソックスレー抽出し、ポリエステル解重合モノマーであるDMTを得て、ソックスレー抽出器内の残りの固体は、解重合されていないポリエステル繊維である(表1を参照)。
【0035】
アセトニトリルを助触媒として使用して解重合した後、反応系内の固体部分と液体部分を濾過により分離し、固体部分をメタノールでソックスレー抽出し、ポリエステル解重合モノマーであるDMT9.35gを得て、ソックスレー抽出器内に固体は残らなかった。つまりポリエステル繊維は完全に解重合された。分離された液体部分を蒸留によりメタノール及びアセトニトリルをリサイクルし、次に真空蒸留によりエチレングリコール及びDBUをリサイクルした(表2を参照)。
【0036】
表1 低温反応条件下でのDBUによるポリエステルの触媒分解におけるさまざまな助触媒の活性の比較
【表1】
【0037】
実施例3
ポリエステル繊維10gを50℃でメタノールで30分間洗浄した。洗浄プロセス中に、ソーダ灰0.2gを追加して洗浄し、洗浄後、繊維を75℃で1時間乾燥させた。乾燥後の繊維、メタノール28g、ベンゾニトリル12gおよびDBU0.54gを反応釜に添加し、次いで反応釜を85℃に加熱した。2.5時間反応した後、反応釜を室温まで冷却した。反応系内の固体部分と液体部分を濾過により分離した。固体部分をメタノールでソックスレー抽出し、分離してポリエステル解重合モノマーであるDMT8.67gを得て、ポリエステル繊維は完全に解重合され、ソックスレー抽出器内に固体は残らなかった。つまりポリエステル繊維は完全に解重合された。分離された液体部分を蒸留によりメタノールをリサイクルし、次に真空蒸留によりベンゾニトリル、エチレングリコール及びDBUをリサイクルした(表2を参照)。
【0038】
実施例4
ポリエステル繊維2gを50℃でメタノールで30分間洗浄した。洗浄プロセス中に、ソーダ灰0.1gを追加して洗浄し、洗浄後、繊維を75℃で1時間乾燥させた。乾燥後の繊維、メタノール6.4g、アセトニトリル1.6gおよび[HDBU][2-EtIm]0.14gを反応釜に添加し、次いで反応釜を90℃に加熱した。2時間反応した後、反応釜を室温まで冷却した。反応系内の固体部分と液体部分を濾過により分離した。固体部分をメタノールでソックスレー抽出し、ポリエステル解重合モノマーであるDMT1.74gを得て、ソックスレー抽出器内に固体は残らなかった。つまりポリエステル繊維は完全に解重合された。分離された液体部分を蒸留によりメタノール、アセトニトリル、エチレングリコールをリサイクルして[HDBU][2-EtIm]を抽出及びリサイクルした(表2を参照)。
【0039】
実施例5
ポリエステル繊維10gを50℃でメタノールで30分間洗浄した。洗浄プロセス中に、ソーダ灰0.2gを追加して洗浄し、洗浄後、繊維を75℃で1時間乾燥させた。乾燥後の繊維、メタノール36g、アセトニトリル4gおよびDBU0.3gを反応釜に添加し、次いで反応釜を95℃に加熱し、2.5時間反応した後、反応釜を室温まで冷却した。反応系内の固体部分と液体部分を濾過により分離した。固体部分をメタノールでソックスレー抽出し、ポリエステル解重合モノマーであるDMT9.60gを得て、ソックスレー抽出器内に固体は残らなかった。つまりポリエステル繊維は完全に解重合された。分離された液体部分を蒸留によりメタノール及びアセトニトリルをリサイクルし、次に真空蒸留によりエチレングリコール及びDBUをリサイクルした(表2を参照)。
【0040】
実施例6
ポリエステル繊維10gを50℃でメタノールで30分間洗浄した。洗浄プロセス中に、ソーダ灰0.2gを追加して洗浄し、洗浄後、繊維を75℃で1時間乾燥させた。乾燥後の繊維、メタノール36g、アジポニトリル4gおよびDBU0.3gを反応釜に添加し、次いで反応釜を95℃に加熱し、2.5時間反応した後、反応釜を室温まで冷却した。反応系内の固体部分と液体部分を濾過により分離した。固体部分をメタノールでソックスレー抽出し、ポリエステル解重合モノマーであるDMT8.55gを得て、ソックスレー抽出器内に固体は残らなかった。つまりポリエステル繊維は完全に解重合された。分離された液体部分を蒸留によりメタノールをリサイクルし、次に真空蒸留によりエチレングリコール、アジポニトリル及びDBUをリサイクルした(表2を参照)。
【0041】
実施例7
ポリエステル繊維10gを50℃でメタノールで30分間洗浄した。洗浄プロセス中に、ソーダ灰0.2gを追加して洗浄し、洗浄後、繊維を75℃で1時間乾燥させた。乾燥後の繊維、メタノール28g、アセトニトリル12gおよびDBU0.18gを反応釜に添加し、次いで反応釜を115℃に加熱し、2時間反応した後、反応釜を室温まで冷却した。反応系内の固体部分と液体部分を濾過により分離した。固体部分をメタノールでソックスレー抽出し、ポリエステル解重合モノマーであるDMT8.61gを得て、ソックスレー抽出器内に固体は残らなかった。つまりポリエステル繊維は完全に解重合された。分離された液体部分を蒸留によりメタノール及びアセトニトリルをリサイクルし、次に真空蒸留によりエチレングリコール及びDBUをリサイクルした(表2を参照)。
【0042】
実施例8
ポリエステル繊維10gを50℃でメタノールで30分間洗浄した。洗浄プロセス中に、ソーダ灰0.2gを追加して洗浄し、洗浄後、繊維を75℃で1時間乾燥させた。乾燥後の繊維、メタノール28g、プロパンニトリル12gおよびDBU0.18gを反応釜に添加し、次いで反応釜を115℃に加熱し、2時間反応した後、反応釜を室温まで冷却した。反応系内の固体部分と液体部分を濾過により分離した。固体部分をメタノールでソックスレー抽出し、ポリエステル解重合モノマーであるDMT7.79gを得て、ソックスレー抽出器内に固体は残らなかった。つまりポリエステル繊維は完全に解重合された。分離された液体部分を蒸留によりメタノール及びプロパンニトリルをリサイクルし、次に真空蒸留によりエチレングリコール及びDBUをリサイクルした(表2を参照)。
【0043】
実施例9
ポリエステル繊維10gを50℃でメタノールで30分間洗浄した。洗浄プロセス中に、ソーダ灰0.2gを追加して洗浄し、洗浄後、繊維を75℃で1時間乾燥させた。乾燥後の繊維、メタノール28g、アセトニトリル12gおよびTBD0.18gを反応釜に添加し、次いで反応釜を115℃に加熱した。2時間反応した後、反応釜を室温まで冷却した。反応系内の固体部分と液体部分を濾過により分離した。固体部分をメタノールでソックスレー抽出し、ポリエステル解重合モノマーであるDMT8.36gを得て、ソックスレー抽出器内に固体は残らなかった。つまりポリエステル繊維は完全に解重合された。分離された液体部分を蒸留によりメタノール及びアセトニトリルをリサイクルし、次に真空蒸留によりエチレングリコール及びTBDをリサイクルした(表2を参照)。
【0044】
比較例1
ポリエステル繊維10gを50℃でメタノールで30分間洗浄した。洗浄プロセス中に、ソーダ灰0.2gを追加して洗浄し、洗浄後、繊維を75℃で1時間乾燥させた。乾燥後の繊維とメタノール40gおよびDBU2gを反応釜に添加し、次いで反応釜を65℃に加熱した。8時間反応した後、反応釜を室温まで冷却した。反応系内の固体部分と液体部分を濾過により分離した。固体部分をメタノールでソックスレー抽出し、分離してポリエステル解重合モノマーであるDMT2.81gを得た。同時に、ソックスレー抽出器にはまだ解重合されていないポリエステル繊維4.55gが残った。分離された液体部分を蒸留によりメタノール、エチレングリコール及びDBUをリサイクルした(表2を参照)。
【0045】
比較例2
ポリエステル繊維10gを50℃でメタノールで30分間洗浄した。洗浄プロセス中に、ソーダ灰0.2gを追加して洗浄し、洗浄後、繊維を75℃で1時間乾燥させた。乾燥後の繊維とメタノール40gおよびDBU0.54gを反応釜に添加し、次いで反応釜を85℃に加熱した。2.5時間反応した後、反応釜を室温まで冷却した。反応系内の固体部分と液体部分を濾過により分離した。固体部分をメタノールでソックスレー抽出し、ポリエステル解重合モノマーであるDMT3.99gを得た。同時に、ソックスレー抽出器にはまだ解重合されていないポリエステル繊維5.07gが残った。分離された液体部分を蒸留によりメタノール、エチレングリコール及びDBUをリサイクルした(表2を参照)。
【0046】
比較例3
ポリエステル繊維2gを50℃でメタノールで30分間洗浄した。洗浄プロセス中に、ソーダ灰0.1gを追加して洗浄し、洗浄後、繊維を75℃で1時間乾燥させた。乾燥後の繊維とメタノール8gおよび[HDBU][2-EtIm]0.14gを反応釜に添加し、次いで反応釜を90℃に加熱した。2時間反応した後、反応釜を室温まで冷却した。反応系内の固体部分と液体部分を濾過により分離した。固体部分をメタノールでソックスレー抽出し、分離してポリエステル解重合モノマーであるDMT0.91gを得た。同時に、ソックスレー抽出器にはまだ解重合されていないポリエステル繊維0.75gが残った。分離された液体部分を蒸留によりメタノール、エチレングリコールをリサイクルし、[HDBU][2-EtIm]を抽出及びリサイクルした(表2を参照)。
【0047】
比較例4
ポリエステル繊維10gを50℃でメタノールで30分間洗浄した。洗浄プロセス中に、ソーダ灰0.2gを追加して洗浄し、洗浄後、繊維を75℃で1時間乾燥させた。乾燥後の繊維とメタノール40gおよびDBU0.3gを反応釜に添加し、次いで反応釜を95℃に加熱した。2.5時間反応した後、反応釜を室温まで冷却した。反応系内の固体部分と液体部分を濾過により分離した。固体部分をメタノールでソックスレー抽出し、分離してポリエステル解重合モノマーであるDMT5.41gを得た。同時に、ソックスレー抽出器にはまだ解重合されていないポリエステル繊維3.48gが残った。分離された液体部分を蒸留によりメタノール、エチレングリコール及びDBUをリサイクルした(表2を参照)。
【0048】
比較例5
ポリエステル繊維10gを50℃でメタノールで30分間洗浄した。洗浄プロセス中に、ソーダ灰0.2gを追加して洗浄し、洗浄後、繊維を75℃で1時間乾燥させた。乾燥後の繊維とメタノール40gおよびDBU0.18gを反応釜に添加し、次いで反応釜を115℃に加熱した。2時間反応した後、反応釜を室温まで冷却した。反応系内の固体部分と液体部分を濾過により分離した。固体部分をメタノールでソックスレー抽出し、分離してポリエステル解重合モノマーであるDMT4.94gを得た。同時に、ソックスレー抽出器にはまだ解重合されていないポリエステル繊維3.25gが残った。分離された液体部分を蒸留によりメタノール、エチレングリコール及びDBUをリサイクルした(表2を参照)。
【0049】
比較例6
ポリエステル繊維10gを50℃でメタノールで30分間洗浄した。洗浄プロセス中に、ソーダ灰0.2gを追加して洗浄し、洗浄後、繊維を75℃で1時間乾燥させた。乾燥後の繊維とメタノール40gおよびTBD0.18gを反応釜に添加し、次いで反応釜を115℃に加熱した。2時間反応した後、反応釜を室温まで冷却した。反応系内の固体部分と液体部分を濾過により分離した。固体部分をメタノールでソックスレー抽出し、分離してポリエステル解重合モノマーであるDMT4.69gを得た。同時に、ソックスレー抽出器にはまだ解重合されていないポリエステル繊維3.61gが残った。分離された液体部分を蒸留によりメタノール、エチレングリコール及びTBDをリサイクルした(表2を参照)。
【0050】
表2 助触媒条件下での実施例と助触媒なしの比較例との間の解重合効率およびDMTモノマーのリサイクル率の比較。
【表2】
【0051】
実施例10
ポリエステル繊維2gを60℃でメタノールで30分間洗浄した。洗浄プロセス中に、ソーダ灰0.1gを添加し、洗浄後、繊維を75℃で1時間乾燥させた。乾燥後の繊維、メタノール6.4g、アセトニトリル1.6gおよび[HDBU][BIm]0.21gを反応釜に添加し、次いで反応釜を95℃に加熱した。2時間反応した後、反応釜を室温まで冷却した。反応系内の固体部分と液体部分を濾過により分離した。固体部分をソックスレー抽出によりポリエステル解重合モノマーであるDMT1.82gを分離し、ソックスレー抽出器内に固体は残らなかった。分離された液体部分を蒸留によりメタノール、エチレングリコールをリサイクルし、[HDBU][BIm]を抽出及びリサイクルした(表3を参照)。
【0052】
実施例11~13
具体的な実施ステップおよび反応条件は、実施例7と同じであり、反応の主触媒が置き換えられ、実施例8~9の助触媒は順次的にそれぞれ[HDBU][2-MeIm]、[HDBU][2-Et-4-MeIm]、[HDBU][2-PhIm]であり、実験結果を表3に示した。
【0053】
表3 実施例11~13におけるポリエステルの解重合率とDMTモノマーのリサイクル率
【表3】
【0054】
実施例14
ポリエチレン2,5-フランジカルボキシレート (PEF)繊維2gを60℃でメタノールで30分間洗浄した。洗浄プロセス中に、ソーダ灰0.1gを添加し、洗浄後、繊維を75℃で1時間乾燥させた。乾燥後の繊維を、反応釜に添加した。同時に反応釜に、メタノール7.2g、アセトニトリル0.8g及びDBU 0.06gを添加した。次に反応釜を、110℃に加熱し、2時間反応し、反応が終了した後、反応釜を、室温まで冷却した。反応系内の固体部分と液体部分を濾過により分離した。固体部分をメタノールでソックスレー抽出し、ポリエステル解重合モノマーであるフラン-2,5-ジカルボン酸ジメチルエステル1.71gを得た(図2を参照)。分離された液体部分を蒸留によりメタノール及びアセトニトリルをリサイクルし、次に真空蒸留によりエチレングリコール及びDBUをリサイクルした。
【0055】
実施例15
ポリ乳酸(PLA)繊維10gを60℃でメタノールで30分間洗浄した。洗浄プロセス中に、ソーダ灰0.2gを添加し、洗浄後、繊維を75℃で1時間乾燥させた。乾燥後の繊維を、反応釜に添加した。同時に反応釜に、メタノール36g、アセトニトリル4g及びDBU0.3gを添加した。次に反応釜を、100℃に加熱し、2時間反応し、反応が終了した後、反応釜を、室温まで冷却した。PLA繊維は完全に解重合された。反応後の溶液を、蒸留によりメタノール及びアセトニトリルをリサイクルし、次に真空蒸留により乳酸メチル11.31gをリサイクルした。
【0056】
実施例16
ポリエステル繊維2g及び綿繊維2gを60℃でメタノールで30分間洗浄した。洗浄プロセス中に、ソーダ灰0.1gを添加し、洗浄後、繊維を75℃で1時間乾燥させた。乾燥後の繊維を、反応釜に添加した。同時に反応釜に、メタノール9.2g、アセトニトリル0.8g及びDBU0.45gを添加した。次に反応釜を、異なる温度(100~115℃)に加熱し、それぞれ2時間反応し、反応が終了した後、反応釜を、室温まで冷却した。反応系内の固体部分と液体部分を濾過により分離した。ポリエステル繊維は完全に解重合された。固体部分をメタノールによるソックスレー抽出により分離し、綿繊維を得た。綿繊維のリサイクル率はそれぞれ98%(反応温度100℃)及び94%(反応温度115℃)であった。リサイクルした綿繊維の物性を表4に示した。
【0057】
比較例7
ポリエステル繊維2g及び綿繊維2gを60℃でメタノールで30分間洗浄した。洗浄プロセス中に、ソーダ灰0.1gを添加し、洗浄後、繊維を75℃で1時間乾燥させた。乾燥後の繊維を、反応釜に添加した。同時に反応釜に、メタノール10g及びDBU0.45gを添加した。次に反応釜を、異なる温度(190~240℃)に加熱し、それぞれ2時間反応し、反応が終了した後、反応釜を、室温まで冷却した。反応系内の固体部分と液体部分を濾過により分離した。ポリエステル繊維は完全に解重合された。固体部分をメタノールでソックスレー抽出し、綿繊維とポリエステル解重合モノマーであるDMTを分離した。分離された液体部分を蒸留によりメタノール及びアセトニトリルをリサイクルし、次に真空蒸留によりエチレングリコール及びDBUをリサイクルした。リサイクルした綿繊維の物性を表4に示した。
【0058】
表4 実施例および比較例における、異なる反応温度でリサイクルした綿繊維の物性
【表4】
【0059】
実施例17
ポリエステルと綿の混紡生地(綿含有量は50%)200gを100℃でメタノールで45分間洗浄した。洗浄プロセス中に、NaCO 4gを添加し、洗浄した生地を75℃で1時間乾燥させた。乾燥後の混紡生地を、反応釜に添加した。同時に反応釜にメタノール752g、アセトニトリル48g及びDBU5gを添加した。次に反応釜を、110℃に加熱し、2時間反応し、反応が終了した後、反応釜を、室温まで冷却した。反応系内の固体部分と液体部分を濾過により分離した。固体部分をメタノールによりソックスレー抽出し、分離して綿成分98.6gとポリエステル解重合モノマーであるDMT184.2gを得た。分離された液体部分を蒸留によりメタノール及びアセトニトリルをリサイクルし、次に真空蒸留によりエチレングリコール及びDBUをリサイクルした。綿成分については GB/T2912.3-2009及びGB/T7717.12-94を参照し、ガスクロマトグラフィーによって検出され、綿繊維にアセトニトリルが残らなかった。リサイクルした綿成分(図3を参照)を開繊機で開繊して綿繊維を得た。これらのリサイクルされた綿繊維を新しい綿繊維と混紡して再生糸を作成した。一部の再生綿糸の物理的特性を表5に示した。
【0060】
表5 ポリエステル成分を反応分離した後のリサイクル綿から再生した糸の力学的性質
【表5】
【0061】
実施例18
ポリエステルとスパンデックスの混紡プリント生地(スパンデックス含有量は15%)8gを85℃でメタノールで30分間洗浄した。洗浄プロセス中に、酢酸ナトリウム0.08gおよび酸化カルシウム0.08gを添加し、洗浄された生地を45℃で1時間真空乾燥させた。乾燥後の混紡生地(図14Aを参照)を反応釜に添加した。同時に反応釜にメタノール28.8g、アセトニトリル3.2g及びDBU0.4gを添加した。次に反応釜を、90℃に加熱し、2時間反応し、反応が終了した後、反応釜を、室温まで冷却した。反応系内の固体部分と液体部分を濾過により分離した。固体部分をソックスレー抽出によって分離して、スパンデックス(図4BおよびCを参照)1.16gおよびポリエステル解重合モノマーであるDMT6.40gを得た。分離された液体部分を蒸留によりメタノール及びアセトニトリルをリサイクルし、次に真空蒸留によりエチレングリコール及びDBUをリサイクルした。
【0062】
図4から、プリント混紡生地からリサイクルされたスパンデックスは純白であり、スパンデックス糸は損傷しておらず、再生スパンデックス糸を製造するための原料として直接使用できることがわかる。
【0063】
比較例8
ポリエステルとスパンデックスの混紡プリント生地(スパンデックス含有量は15%)8gを85℃でメタノールで30分間洗浄した。洗浄プロセス中に、酢酸ナトリウム0.08gおよび酸化カルシウム0.08gを添加し、洗浄された生地を45℃で1時間真空乾燥させた。乾燥後の混紡生地(図14Aを参照)を反応釜に添加した。同時に反応釜にメタノール32g及びDBU0.4gを添加した。次に反応釜を、125℃に加熱し、2時間反応し、反応が終了した後、反応釜を、室温まで冷却した。反応系内の固体部分と液体部分を濾過により分離した。固体部分をソックスレー抽出によりポリエステル解重合モノマーであるDMT 6.67gのみを得て、スパンデックス成分がなかった。スパンデックスはこの反応温度では完全に分解したため、リサイクルすることはできなかった。
【0064】
実施例19
ポリエステルとスパンデックスの混紡染色生地(黒色、スパンデックス含有量は15%)8gを85℃でメタノールで30分間洗浄した。洗浄プロセス中に、酢酸ナトリウム0.08gおよび酸化カルシウム0.08gを添加し、洗浄された生地を45℃で1時間真空乾燥させた。乾燥後の混紡生地を、反応釜に添加した。同時に反応釜にメタノール28.8g、アセトニトリル3.2g及びDBU0.4gを添加した。次に反応釜を、90℃に加熱し、2時間反応し、反応が終了した後、反応釜を、室温まで冷却した。反応系内の固体部分と液体部分を濾過により分離した。固体部分をソックスレー抽出によって分離して、スパンデックス1.16gおよびポリエステル解重合モノマーであるDMT6.36gを得た。分離された液体部分を蒸留によりメタノール及びアセトニトリルをリサイクルし、次に真空蒸留によりエチレングリコール及びDBUをリサイクルした。黒色のプリント混紡生地からリサイクルされたスパンデックスは薄茶色であった。スパンデックス糸は損傷されず、再生スパンデックス糸を製造するための原料として直接使用できる。
【0065】
実施例20
ポリエステルとウールの混紡生地(ウール含有量は65%)8gを85℃でメタノールで30分間洗浄した。洗浄プロセス中に、酢酸ナトリウム0.08gおよび酸化カルシウム0.08gを添加し、洗浄された生地を65℃で1時間真空乾燥させた。乾燥後の混紡生地を、反応釜に添加した。同時に反応釜にメタノール30g、アセトニトリル2g及びDBU0.61gを添加した。次に反応釜を、95℃に加熱し、2時間反応し、反応が終了した後、反応釜を、室温まで冷却した。反応系内の固体部分と液体部分を濾過により分離した。固体部分をソックスレー抽出によって分離して、ウール5.1gおよびポリエステル解重合モノマーであるDMT2.64gを得た。分離された液体部分を蒸留によりメタノール及びアセトニトリルをリサイクルし、次に真空蒸留によりエチレングリコール及びDBUをリサイクルした。反応により分離されたウールはリサイクルされ、再生ウールの製造に使用できた。
【0066】
実施例21
ナイロン生地5gとポリエステル生地5gを95℃でメタノールで、45分間洗浄した。洗浄プロセス中に、炭酸ナトリウム0.08gおよび酸化カルシウム0.08gを添加し、洗浄された生地を95℃で1時間真空乾燥させた。乾燥後の混合生地を、反応釜に添加した。同時に反応釜にメタノール36g、アセトニトリル4g及びDBU0.3gを添加した。次に反応釜を、100℃に加熱し、2時間反応し、反応が終了した後、反応釜を、室温まで冷却した。反応系内の固体部分と液体部分を濾過により分離した。固体部分をソックスレー抽出によって分離して、ナイロン生地4.91gおよびポリエステル解重合モノマーであるDMT4.71gを得た。分離された液体部分を蒸留によりメタノール及びアセトニトリルをリサイクルし、次に真空蒸留によりエチレングリコール及びDBUをリサイクルした。反応によって分離されたナイロンは赤外スペクトルで分析され、100%純粋なナイロンであることがわかり、リサイクルして再生ナイロン糸の製造に使用できた。
【0067】
実施例22
ポリエステル繊維100gを50℃でメタノールで30分間洗浄した。洗浄プロセス中に、ソーダ灰0.2gを添加し、洗浄後、繊維を75℃で1時間乾燥させた。乾燥後の繊維、メタノール360g、アセトニトリル40gおよびDBU3gを反応釜に添加し、次いで反応釜を95℃に加熱し、2時間反応した後、反応釜を室温まで冷却した。反応系内の固体部分と液体部分を濾過により分離した。固体部分をメタノールでソックスレー抽出し、ポリエステル解重合モノマーであるDMTを得た。得られたポリエステルモノマーは三酸化アンチモンを触媒として使用し、真空下、290℃の条件下で3時間重合させ、ポリエステルを生成し、得られたポリエステルに対して、解重合、重合を複数回繰り返し、各解重合および重縮合のパラメーターを表6に示した。
【0068】
表6 ポリエステル解重合モノマーの重合・解重合を複数回繰り返すパラメーター
【表6】
図1
図2
図3A
図3B
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-08-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル混紡生地のリサイクル方法であって、ポリエステルを含む被処理原料を処理した後、触媒で40℃~120℃で0.5~8時間反応してポリエステルの分解を実行し、完全な解重合を達成し、その後、分離してリサイクルし、分離した後のポリエステル成分及びその他の混紡成分は再利用できることを特徴とするポリエステル混紡生地のリサイクル方法。
【請求項2】
前記触媒は有機塩基の主触媒と助触媒であり、ここで、触媒添加量は、前記ポリエステル混紡生地の質量の0.1~20wt%であり、有機塩基の主触媒と助触媒の質量比は1:0.01~100であることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル混紡生地のリサイクル方法。
【請求項3】
前記有機塩基の主触媒は、窒素元素含有のアミジンまたはグアニジン化合物、誘導体のうちの1種又は複数種であり、助触媒はニトリル化合物であることを特徴とする請求項2に記載のポリエステル混紡生地のリサイクル方法。
【請求項4】
前記有機塩基の主触媒は、(a)1,8-ジアザビシクロウンデカ-7-エン (DBU)、ポリマーまたは化合物担持型DBU、及びDBUとイミダゾールおよびその誘導体によって形成された有機塩、(b)1,5,7-トリアザビシクロ[ 4.4.0]デカ-5-エン(TBD)、ポリマーまたは化合物担持型TBD、及びTBDとイミダゾールおよびその誘導体によって形成された有機塩、(c)1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン( DBN)、ポリマーまたは化合物担持型DBN、及びDBNとイミダゾールおよびその誘導体によって形成された有機塩のうちの一種であることを特徴とする請求項3に記載のポリエステル混紡生地のリサイクル方法。
【請求項5】
前記助触媒は、アセトニトリル、プロパンニトリル、ベンゾニトリル、アジポニトリルの1種又は複数種であることを特徴とする請求項3に記載のポリエステル混紡生地のリサイクル方法。
【請求項6】
前記ポリエステルを含む被処理原料は、ポリエステル混紡生地又はポリエステルと他の生地の混合生地であり、ここで、被処理原料中のポリエステルの含有量は5%~100%であり、前記ポリエステル混紡生地とは、スパンデックス、綿、ビスコース繊維、再生セルロース繊維、ナイロン、ウール、カシミヤ、純絹のうちの1種以上とポリエステルとを混紡した生地であることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル混紡生地のリサイクル方法。
【請求項7】
前記ポリエステルを含む被処理原料は、ポリエステル混紡生地を、アルコールまたはアルコールを含む混合系中で40~130℃で0.3~2時間洗浄するものであり、ここで、アルコールを含む混合系は、アルコールとアルカリ性化合物の混合物であり、前記アルカリ性化合物は、ソーダ灰(NaCO)、酢酸ナトリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、炭酸カリウム、酢酸カリウム、カリウムメトキシド、酸化カルシウム、水酸化カルシウムのうちの1種または複数種であることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル混紡生地のリサイクル方法。
【請求項8】
前記ポリエステルを分解した後、固液分離し、固体を収集し、ソックスレー抽出によりポリエステル成分とその他の繊維成分を分離し、液体を、常圧蒸留によりアルコールと助触媒をリサイクルし、次に真空蒸留または抽出によりポリエステルのジオールおよび二塩基酸モノマー、ならびに有機塩基の主触媒をリサイクルすることを特徴とする請求項に記載のポリエステル混紡生地のリサイクル方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
上記ポリエステル混紡生地において、ポリエステルの含有量は少なくとも5%、又は少なくとも25%、又は少なくとも50%、又は少なくとも75%、又は少なくとも95%である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0052
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0052】
実施例11~13
具体的な実施ステップおよび反応条件は、実施例7と同じであり、反応の主触媒が置き換えられ、実施例11~13主触媒は順次的にそれぞれ[HDBU][2-MeIm]、[HDBU][2-Et-4-MeIm]、[HDBU][2-PhIm]であり、実験結果を表3に示した。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0061
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0061】
実施例18
ポリエステルとスパンデックスの混紡プリント生地(スパンデックス含有量は15%)8gを85℃でメタノールで30分間洗浄した。洗浄プロセス中に、酢酸ナトリウム0.08gおよび酸化カルシウム0.08gを添加し、洗浄された生地を45℃で1時間真空乾燥させた。乾燥後の混紡生地(図4Aを参照)を反応釜に添加した。同時に反応釜にメタノール28.8g、アセトニトリル3.2g及びDBU0.4gを添加した。次に反応釜を、90℃に加熱し、2時間反応し、反応が終了した後、反応釜を、室温まで冷却した。反応系内の固体部分と液体部分を濾過により分離した。固体部分をソックスレー抽出によって分離して、スパンデックス(図4BおよびCを参照)1.16gおよびポリエステル解重合モノマーであるDMT6.40gを得た。分離された液体部分を蒸留によりメタノール及びアセトニトリルをリサイクルし、次に真空蒸留によりエチレングリコール及びDBUをリサイクルした。

【国際調査報告】