(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-21
(54)【発明の名称】超音波外科手術用器具を駆動するための方法およびデバイス、ならびに超音波外科手術用システム
(51)【国際特許分類】
A61B 17/32 20060101AFI20250214BHJP
【FI】
A61B17/32 510
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024569665
(86)(22)【出願日】2023-02-09
(85)【翻訳文提出日】2024-10-02
(86)【国際出願番号】 CN2023075246
(87)【国際公開番号】W WO2023151629
(87)【国際公開日】2023-08-17
(31)【優先権主張番号】202210130249.9
(32)【優先日】2022-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524303773
【氏名又は名称】リーチ・サージカル・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フェンタン・リ
(72)【発明者】
【氏名】チャン・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】シャオユン・ファン
(72)【発明者】
【氏名】サンドン・リ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160JJ13
4C160JJ46
4C160MM33
4C160NN03
4C160NN11
(57)【要約】
方法は、開始信号に応答して、超音波外科手術用器具のトランスデューサを駆動するために第1の期間に第1の振幅範囲を有する駆動信号を供給するステップと、第1の期間の後に、第1の所定の間隔で減少する振幅を有する第1の遷移信号を供給するステップと、第1の所定の間隔の後に、第2の期間に第2の振幅範囲を有する駆動信号を供給するステップであって、第2の振幅範囲の上限は、第1の振幅範囲の下限よりも低い、ステップと、第2の期間の後に、第2の所定の間隔で増加する振幅を有する第2の遷移信号を供給するステップと、第2の所定の間隔の後に、第3の期間に第3の振幅範囲を有する駆動信号を供給するステップであって、第3の振幅範囲の下限は、第2の振幅範囲の上限よりも高い、ステップと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波外科手術用器具を駆動するための方法であって、
開始信号に応答して、前記超音波外科手術用器具のトランスデューサを駆動するために第1の期間に第1の振幅範囲を有する駆動信号を供給するステップと、
前記第1の期間の後に、前記トランスデューサを駆動するために第1の所定の間隔で減少する振幅を有する第1の遷移信号を供給するステップと、
前記第1の所定の間隔の後に、前記トランスデューサを駆動するために第2の期間に第2の振幅範囲を有する駆動信号を供給するステップであって、前記第2の振幅範囲の上限は、前記第1の振幅範囲の下限よりも低い、ステップと、
前記第2の期間の後に、前記トランスデューサを駆動するために第2の所定の間隔で増加する振幅を有する第2の遷移信号を供給するステップと、
前記第2の所定の間隔の後に、前記トランスデューサを駆動するために第3の期間に第3の振幅範囲を有する駆動信号を供給するステップであって、前記第3の振幅範囲の下限は、第2の振幅範囲の上限よりも高い、ステップと、を含み、
前記第1の所定の間隔および前記第2の所定の間隔のうちの少なくとも一方は、ゼロを上回る、方法。
【請求項2】
前記第1の所定の間隔がゼロを上回る場合、前記第1の所定の間隔で前記超音波外科手術用器具に供給される前記第1の遷移信号の振幅は、第1の非線形曲線に従って減少する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の非線形曲線は、A=(A
11-A
12)×sinΦ+A
11、Φ∈(180°,270°)として定義され、Aは前記第1の遷移信号の振幅であり、A
11は前記第1の期間の終了における信号の振幅であり、A
12は前記第2の期間の開始における信号の振幅である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の所定の間隔がゼロを上回る場合、前記第2の所定の間隔で前記超音波外科手術用器具に供給される前記第2の遷移信号の振幅は、第2の非線形曲線に従って増大する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の非線形曲線は、C=(A
14-A
13)×sinΦ+A
13、Φ∈(0°,90°)として定義され、Cは前記第2の遷移信号の振幅であり、A
13は前記第2の期間の終了における信号の振幅であり、A
14は前記第3の期間の開始における信号の振幅である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の所定の間隔がゼロを上回る場合、前記第1の所定の間隔で前記超音波外科手術用器具に供給される前記第1の遷移信号の振幅は、線形に減少する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の所定の間隔がゼロを上回る場合、前記第2の所定の間隔で前記超音波外科手術用器具に出力される前記第2の遷移信号の振幅は、線形に増大する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の期間に前記超音波外科手術用器具に供給される信号の前記第2の振幅範囲の上限と下限との間の差は、設定値よりも低い、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の期間に前記超音波外科手術用器具に供給される信号は、周期信号である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の期間に前記超音波外科手術用器具に供給される前記周期信号は、正弦波信号である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の期間に前記超音波外科手術用器具に供給される前記正弦波信号は、関数B=A
5-設定値×sin(π×τ/T)によって表され、Bは前記第2の期間における信号の振幅であり、τは時間変数、τ∈(0,T)であり、Tは前記第2の期間の時間長であり、A
5は前記第2の期間における信号の振幅の上限である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記超音波外科手術用器具によってフィードバックされた電流変動または電圧変動を取得するステップであって、前記電流変動または電圧変動は、エンドエフェクタアセンブリのインピーダンス変動に従って決定される、ステップと、
前記電流変動または電圧変動に従って各期間における信号の振幅を調整するステップであって、各期間は、前記第1の期間、前記第2の期間、前記第3の期間、前記第1の所定の間隔および/または前記第2の所定の間隔を含む、ステップと、をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記電流変動または電圧変動に従って前記第1の期間、前記第2の期間、および前記第3の期間の時間長を決定するステップをさらに含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の所定の間隔がゼロを上回る場合に前記電流変動または電圧変動に従って前記第1の所定の間隔の時間長を決定するステップ、および/または
前記第2の所定の間隔がゼロを上回る場合に前記電流変動または電圧変動に従って前記第2の所定の間隔の時間長を決定するステップ、をさらに含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の期間、前記第2の期間、および前記第3の期間にわたる信号のうちの少なくとも1つは、前記超音波外科手術用器具の共振周波数である周波数を有する、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
超音波外科手術用器具を駆動するための発生器であって、
前記発生器はプロセッサチップを備え、前記プロセッサチップにはプログラム情報がプリロードされ、前記発生器が開始信号に応答したときに、前記プロセッサチップは前記プログラム情報を実行して、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法を実行することによって、前記発生器は駆動信号を前記超音波外科手術用器具に出力する、発生器。
【請求項17】
前記発生器は、信号調整回路をさらに備え、前記プロセッサチップは前記プログラム情報を実行した後にプリセット波形信号を出力し、前記信号調整回路は前記プリセット波形信号を処理して前記駆動信号にする、請求項16に記載の発生器。
【請求項18】
前記発生器は、インピーダンス検出回路をさらに備え、前記インピーダンス検出回路は、前記超音波外科手術用器具によってフィードバックされた電流変動または電圧変動を検出し、前記電流変動または電圧変動をデジタル信号に変換し、前記デジタル信号を前記プロセッサチップにフィードバックするために使用され、前記電流変動または電圧変動は、エンドエフェクタアセンブリのインピーダンス変動に従って決定され、
前記プロセッサチップは、前記インピーダンス検出回路によってフィードバックされた前記デジタル信号に従って前記駆動信号の振幅を調整する、請求項16または17に記載の発生器。
【請求項19】
前記プロセッサチップは、前記インピーダンス検出回路によってフィードバックされた前記デジタル信号に従って前記駆動信号の第1の期間、第2の期間、および第3の期間の時間長を調整する、請求項18に記載の発生器。
【請求項20】
前記プロセッサチップは、前記第1の所定の間隔がゼロを上回るときに前記電流変動または電圧変動に従って前記第1の所定の間隔の時間長を決定し、および/または前記第2の所定の間隔がゼロを上回るときに前記電流変動または電圧変動に従って前記第2の所定の間隔の時間長を決定する、請求項19に記載の発生器。
【請求項21】
超音波外科手術用システムであって、超音波外科手術用器具および請求項16から20のいずれか一項に記載の発生器を備え、
前記超音波外科手術用器具は、トランスデューサおよび手術用アセンブリを備え、
前記トランスデューサは、前記発生器によって供給される駆動信号を受信し、前記駆動信号を超音波振動に変換し、
前記手術用アセンブリは、導波路と、前記導波路の遠位端に配置構成され、組織を手術するために使用されるエンドエフェクタアセンブリとを備え、前記超音波振動は、前記導波路から前記エンドエフェクタアセンブリに伝達され、前記エンドエフェクタアセンブリによって生成された超音波エネルギーは、手術される組織に作用する、超音波外科手術用システム。
【請求項22】
開始信号スイッチをさらに備え、前記開始信号スイッチの出力端は、前記発生器の入力端と接続され、前記開始信号スイッチは、前記開始信号スイッチがトリガーされたときに前記発生器に開始信号を送信する、請求項21に記載の超音波外科手術用システム。
【請求項23】
前記エンドエフェクタアセンブリのインピーダンス変動を前記トランスデューサにフィードバックし、
前記トランスデューサは、前記インピーダンス変動に対応する電流変動または電圧変動を発生し、前記電流変動または電圧変動を前記発生器に送信する、請求項21に記載の超音波外科手術用システム。
【請求項24】
前記手術用アセンブリは、内管および外管をさらに備え、
前記内管は前記導波路に袖付けされ、前記外管は前記内管に袖付けされ、
前記外管の遠位端はジョーアセンブリに接続され、前記内管の遠位端は前記ジョーアセンブリに作用し、前記内管は前記外管に対して摺動し、前記ジョーアセンブリをブレードに対して枢動するように駆動し、
当接部が、前記内管および外側シースの遠位側に設けられ、前記当接部は、前記内管と前記外管との間に支持部を形成することによって、前記内管および前記外管の相対的摺動運動に影響を及ぼさないことを前提として前記内管と前記外管との間の半径隙間が変化することを防ぐ、請求項21から23のいずれか一項に記載の超音波外科手術用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2022年2月11日に出願した中国特許出願第202210130249.9号の優先権を主張するものである。上記の特許出願の開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、外科手術用器具の分野に関するものであり、より具体的には、超音波外科手術用器具(ultrasonic surgical instrument)を駆動するための方法およびデバイス、ならびに超音波外科手術用システム(ultrasonic surgical system)に関するものである。
【背景技術】
【0003】
超音波軟組織切断および/または凝固システムとも呼ばれる超音波外科手術用器具は、主に、超音波エネルギーを使用して軟組織切断および凝固を促進することで出血を止め、また熱損傷が少なく、骨組織および卵管を除くヒト軟組織の切断に適している。超音波外科手術用器具および超音波発生器は、超音波外科手術用システムの主要部材であり、超音波外科手術用器具は、トランスデューサおよびエフェクタを含む。エフェクタは、ブレードおよびジョーアセンブリを備え、エフェクタは、伝送媒体を通してトランスデューサに接続されている。作動時に、発生器は、特定の周波数および振幅に従って駆動信号をトランスデューサに出力し、トランスデューサは、駆動信号を機械振動に変換する。機械振動は伝達媒質(transmission media)によって伝達され、増幅され、次いでエフェクタのブレードに伝達され、それによりブレードは超音波周波数で振動する。手術者は、ブレードおよびジョーアセンブリを協働的に操作して好適な圧力を形成することによって組織部分を手術するか、またはブレードを組織部分に直接当てて手術することができる。
【0004】
止血および熱傷における利点により、超音波外科手術用器具は、血管をシールするために使用されることが多い。血管をシールするプロセスは、血管の筋組織層を分離する、血管をシールし凝固させる、血管を切断するという3つの段階を含む。異なる段階では、発生器から出力される駆動信号の振幅および周波数も異なるので、ブレードの振動振幅および周波数も変化させる。手術者によって加えられる手持ちの力と組み合わせることで、ブレードとジョーアセンブリとの間の作用力が変化し、これは異なる段階で血管に力を印加する要件を満たす。血管をシールする3つの段階に従って、既存の解決方法の発生器によって出力される駆動信号はステップ信号である。信号の振幅は、第1の段階から第2の段階に入るときに、高い点から低い点へ瞬時にジャンプし、信号の振幅は、第2の段階から第3の段階に入るときに、低い点から高い点へ瞬時にジャンプする。これにより、ブレードの超音波振動エネルギーが急激に変化し、手術者によって印加される力の安定性および血管をシールするプロセスにおける操作精度に影響を及ぼすだけでなく、組織部分に作用する引き裂き力にも影響を及ぼし、ブレードを破損させ得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本出願において、超音波外科手術用器具を駆動するための方法およびデバイス、ならびに超音波外科手術用システムが提供される。この方法は、
開始信号に応答して、超音波外科手術用器具のトランスデューサを駆動するために第1の期間に第1の振幅範囲を有する駆動信号を超音波外科手術用器具に供給するステップと、
第1の期間の後に、トランスデューサを駆動するために第1の所定の間隔で減少する振幅を有する第1の遷移信号を供給するステップと、
第1の所定の間隔の後に、トランスデューサを駆動するために第2の期間に第2の振幅範囲を有する駆動信号を供給するステップであって、第2の振幅範囲の上限は、第1の振幅範囲の下限よりも低い、ステップと、
第2の期間の後に、トランスデューサを駆動するために第2の所定の間隔で増加する振幅を有する第2の遷移信号を供給するステップと、
第2の所定の間隔の後に、トランスデューサを駆動するために第3の期間に第3の振幅範囲を有する駆動信号を供給するステップであって、第3の振幅範囲の下限は、第2の振幅範囲の上限よりも高い、ステップと、を含み、
第1の所定の間隔および第2の所定の間隔のうちの少なくとも一方は、ゼロを上回る(すなわち、ゼロよりも大きい)。
【0006】
それに加えて、本出願において、超音波外科手術用器具を駆動するための発生器が提供される。発生器はプロセッサチップを備え、プロセッサチップにはプログラム情報がプリロードされ、発生器が開始信号に応答したときに、プロセッサチップはプログラム情報を実行して、上記の解決方法による超音波外科手術用器具を駆動するための方法を実行し、それにより発生器は駆動信号を超音波外科手術用器具に出力する。
【0007】
さらに、本出願において、上記の解決方法による超音波外科手術用器具および発生器を備える、超音波外科手術用システムが提供され、
超音波外科手術用器具は、トランスデューサおよび手術用アセンブリを備え、
トランスデューサは、発生器によって出力された駆動信号を受信し、駆動信号を超音波振動信号に変換し、
手術用アセンブリは、導波路と、導波路の遠位端に配置構成され、組織を手術するために使用されるエンドエフェクタアセンブリとを備え、
超音波振動信号は、導波路からエンドエフェクタアセンブリに伝達され、エンドエフェクタアセンブリによって生成された超音波エネルギーは、手術される組織に作用する。
【0008】
本明細書は、本開示を特に指摘し明確に主張する請求項で締めくくっているが、本開示は、添付図面と併せて読んだときにその特定の実施形態の詳細な説明からよく理解されると確信している。文脈上そうでないことが指示されていない限り、図面の類似の要素を識別するために類似の番号が図面内で使用される。それに加えて、図のいくつかは、他の要素をより明確に示すために、特定の要素を省くことによって簡素化されている場合がある。そのように省かれているとしても、対応する詳細な説明において明示的に述べられ得ることを除き、例示的な実施形態のいずれかに特定の要素が存在することまたは存在していないことを必ずしも示さない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本出願発明の一実施形態による超音波外科手術用器具の一体構造の概略図である。
【
図2】本出願の一実施形態による伝達アセンブリの概略構造図である。
【
図3】本出願の一実施形態による超音波外科手術用器具の超音波エネルギーの生成および伝達プロセスの概略図である。
【
図4】本出願発明の一実施形態による超音波外科手術用器具を駆動するための方法のフローチャートである。
【
図5a】本出願の実施形態による駆動信号の波形の概略図である。
【
図5b】本出願の実施形態による駆動信号の波形の概略図である。
【
図5c】本出願の実施形態による駆動信号の波形の概略図である。
【
図5d】本出願の実施形態による駆動信号の波形の概略図である。
【
図5e】本出願の実施形態による駆動信号の波形の概略図である。
【
図6】本出願の実施形態による血管をシールするプロセスにおける血管壁厚さの変化の曲線を示す図である。
【
図7】本出願の実施形態による駆動信号の波形を示す概略図である。
【
図8】本出願の一実施形態による超音波外科手術用器具を駆動するための方法において信号を調整することを示すフローチャートである。
【
図9】本出願の別の実施形態による駆動信号の波形を示す概略図である。
【
図10a】本開示の実施形態による超音波外科手術用システムの構造ブロック図である。
【
図10b】本開示の実施形態による超音波外科手術用システムの構造ブロック図である。
【
図11】本出願の一実施形態による部分的に閉じた状態のエンドエフェクタアセンブリの分解図である。
【
図12】部分的に開いた状態の
図11に示されるエンドエフェクタアセンブリの分解図である。
【
図13】本出願の一実施形態による部分的に閉じた状態のエンドエフェクタアセンブリの概略図である。
【
図14a】エンドエフェクタアセンブリが血管をクランプするときの従来技術および本出願の超音波外科手術用器具の変形の比較図である。
【
図14b】エンドエフェクタアセンブリが血管をクランプするときの従来技術および本出願の超音波外科手術用器具の変形の比較図である。
【
図15a】本出願と従来技術との間の血管をシールした実験結果の比較図である。
【
図15b】本出願と従来技術との間の血管をシールした実験結果の比較図である。
【
図15c】本出願と従来技術との間の血管をシールした実験結果の比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次の詳細な説明では、関連技術分野における当業者が本発明を製造し使用することを可能にすることを目的としてのみ本開示の実施形態の例を説明する。そのようなものとして、これらの実施形態の詳細な説明および図解は、本質的に純粋に例示的なものであり、本開示の範囲またはその保護をいかなる形でも限定することをいっさい意図されていない。また、図面は縮尺通りではなく、いくつかの場合において、本開示の理解に必要でない、詳細は省かれていることは理解されたい。
【0011】
本出願の説明において、「中心」、「上」、「下」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」、「内側」、「外側」、および同様の語によって示される配向または位置関係は、添付図面に基づく配向または位置関係であることに留意されるべきであり、これらは、本出願の説明をしやすくし、簡素化するためのものにすぎず、指示されたデバイスまたは要素が特定の配向を有し、特定の配向で製作され、操作されなければならないことを示すかまたは暗示することを意図されておらず、したがって、本出願を限定するものとして理解することはできない。さらに、「第1」、「第2」、および「第3」という語は、説明の目的にのみ使用されており、相対的な重要性を示すまたは暗示するものとして理解され得ない。
【0012】
本出願の説明において、断りのない限り、また制限されていない限り、「装着された」、「関連して」、「接続された」、および同様の言い回しは、広い意味で理解されるべきであり、たとえば、接続は、固定接続であり、また着脱可能接続または一体接続であり、直接接続であり、また中間媒体を通しての間接接続でもあり、また2つの要素の内部通信であり得ることに留意されたい。本出願における上記の語の具体的な意味は、当業者であれば特定の条件に従って理解され得る。それに加えて、以下に説明されている本出願の異なる実施形態に関わる技術的特徴は、互いに矛盾していない限り、互いに組み合わされ得る。
【0013】
本出願の様々な実施形態において、「遠位端/側」は、外科手術用器具が操作されるときに手術者から遠く離れている外科手術用器具の端/側を指し、「近位端/側」は、外科手術用器具が操作されるときに手術者に近い端/側を指す。
【0014】
本出願の次に示す実施形態は、一般的に、超音波外科手術用システムに関するものであり、このシステムは、外科手術中に組織を横に切断し、組織を凝固させ、および/または組織をクランプするために使用され得る。
図1から
図3は、本出願の超音波外科手術用システムの特定の一実施形態の概略構造図を示している。超音波外科手術用システムは、超音波外科手術用器具を備える。超音波外科手術用器具は、手術用アセンブリとトランスデューサ10とを備える。手術用アセンブリは、近位端から遠位端まで順次配置構成されたハンドルアセンブリ20、伝達アセンブリ30、およびエンドエフェクタアセンブリ40を備える。トランスデューサ10をハンドルアセンブリ20内に挿入することによって、手術用アセンブリの近位端は、トランスデューサ10の遠位端に接続され、遠位端と一緒に組み立てられる。超音波外科手術用システムは、超音波エネルギーを供給するように構成された発生器50をさらに備える。トランスデューサ10は、ケーブルを通して発生器50に動作可能に接続され、これは発生器50からの電気エネルギーを超音波振動に変換し、これはさらにエンドエフェクタアセンブリ20に伝達される。ハンドルアセンブリ20は、手術者が外科手術用器具を操作するために設計されている。たとえば、ハンドルアセンブリ20は、切断および/または凝固操作を行うように、伝達アセンブリ30を通してエンドエフェクタアセンブリ40を作動させるように適合されている。ハンドルアセンブリ20は、様々な方式で手術者によって把持され得る。特定の一実施形態において、超音波外科手術用器具の手術用アセンブリは、エンドエフェクタアセンブリ40の開閉を制御するためのトリガー状の配置構成になっている。
【0015】
ハンドルアセンブリ20は、主ハウジング21と、主ハウジング21から下方に延在するハンドグリップ22とを備える。ハンドルアセンブリ20、特にそのハンドグリップ22は、医療従事者によって保持されるように適合され、それにより、使用時に超音波振動から手術者を絶縁しながら器具の把持および操作を円滑にする。トリガー23は、伝達アセンブリ30の遠位端に配置されたクランプアームアセンブリ42の枢動を引き起こすためにハンドグリップ22に向かっておよびハンドグリップ22から離れる方向に枢動するようにハンドルアセンブリ20に支持されている。ハンドルアセンブリ20は、ハンドスイッチ24を備え、器具の動作を制御するためにハンドグリップ22の方へ押されるように使用され、たとえば、超音波発生器が出力して超音波ブレード41を振動させることを可能にする。エンドエフェクタアセンブリ40は、エンドエフェクタアセンブリ40が閉じるときに組織をクランプし(すなわち、組織に圧力を印加し)、同時に、超音波エネルギーの作用の下で、組織の切断および凝固を実行する。超音波エネルギーの形で組織に作用する力は、負荷力として定義され得る。主ハウジング21の近位端は、そこに挿入されるべき超音波トランスデューサ10を受け入れるように開いている。
【0016】
エンドエフェクタアセンブリ40は、ブレード41と、エンドエフェクタアセンブリ40を閉じる、または開くように、超音波ブレード41に向かうか、または超音波ブレード41から離れる方向に枢動するように動作可能に作動され得るジョー(jaw、顎部)アセンブリ42(クランプアームとも呼ばれる)とを備える。ジョーアセンブリ42は、開位置と閉位置との間を移動するように作動させられ得る。開位置では、ジョーアセンブリ42の少なくとも一部は、ブレード41から離間するように作動される。閉位置では、ジョーアセンブリ42は、ジョーアセンブリ42とブレード41との間にクランプされた組織に対して付勢する。
【0017】
伝達アセンブリ30は、器具のハンドルアセンブリ20から遠位方向に離れて延在する細長シャフトとして構成され得る。伝達アセンブリ30は、トランスデューサ10によって供給される超音波エネルギーをブレード41に伝達するための導波路31と、導波路31に袖付けされた内管32と、内管32に袖付けされた外管33とを備える。外管33はハンドルアセンブリ20に関して軸方向に装着され、ジョーアセンブリ42は外管33に枢動可能に接続されている。内管32の近位部分は、ハンドルアセンブリ20の作動機構と結合され、遠位部分は、ジョーアセンブリ42と結合される。内管32は、外管33に関して軸方向に往復運動するように作動機構を介して作動され、さらに、外管33の周りで枢動するようにジョーアセンブリ42を作動させる。ジョーアセンブリ42は、クランプパッド43を備える。ジョーアセンブリ42は、クランプパッド43とともに、外側チューブ33および内側チューブ32の遠位端に連結される。クランプパッド43は、ブレード41と一致するようにジョーアセンブリ42上で支持されており、ジョーアセンブリ42が枢動することで、クランプパッド43をブレード41と実質的に平行に、ブレード41と接触するように位置決めし、これによって組織処置領域を画成する。この構造により、組織は、クランプパッド43とブレード41との間にクランプされる。
【0018】
導波路31、外管33、および内管32の近位端は、主ハウジング21内に配置されたバヨネットコネクタアセンブリを通して互いに接続され、それにより、導波路31、外管33、および内管32は、全体として、ノブ35を用いてハンドルアセンブリ20に関して超音波トランスデューサ10とともに回転し得る。導波路31は、ノブ35を通してハンドルアセンブリ20の主ハウジング21内に貫入する。使用時に、外管33および導波路31は、ノブ35の回転を通して回転され得、これによりエンドエフェクタアセンブリ40およびそれに接続されたジョーアセンブリ42は必要な方向に合わせて調整され得る。使用時に、ハンドルアセンブリ20に関するノブ35の回転は、外管33、導波路31、およびこれらに動作可能に接続された超音波トランスデューサ10がハンドルアセンブリ20に関して回転することを引き起こす。
【0019】
内管32の往復運動が、ジョーアセンブリ42を開閉させる。力制限メカニズム36は、内管32に動作可能に接続され、管カラーキャップ361を備える。遠位ワッシャ362、遠位ウェーブスプリング363、近位ワッシャ364および近位ウェーブスプリング365は、管カラーキャップ361によってカラー366に固定される。カラー366は、軸方向に延在するラグを備え、ラグは、管状内管32の近位部分の適切な開口部と係合される。内管32は外周溝でO型リング367を受け入れ、O型リングは外管33の内面との係合に使用される。
【0020】
超音波外科手術用システムの構造の上記の説明に基づき、
図3に示されているような超音波エネルギー伝達プロセスの概略図が取得され得る。発生器50は、特定の電流および周波数を有する信号である、駆動信号を出力する。トランスデューサ10は、駆動信号を超音波振動信号に変換し、超音波振動信号(超音波エネルギー)は手術用ハンドスイッチ24によって導波路31に伝達され得る。導波路31は、トランスデューサ10からの超音波エネルギーを導波路31の遠位端に配置されているブレード41に伝達するのに適しており、導波路31は、可撓性、半可撓性、または剛性を有するものとしてよい。当業者に知られているように、導波路31の長さ方向に沿って伝搬する振動波の振幅および/または周波数は、導波路31の直径または他の対応する特性を変更することによって調整され得る。たとえば、直径、特に導波路の振動ノードの直径または導波路の振動ノードの近くの直径を縮小することで、導波路31からブレード41に伝達される機械振動の振幅を大きくすることができる。他の特徴も、導波路に沿って伝達される縦振動の利得(正または負)を制御し、導波路31の振動をシステムにとって理想的な共振周波数に合わせて調整するために、導波路31上に設けられ得る。このようにして、導波路31は、異なる断面サイズを有するか、または実質的に均一な断面を備えるか、または異なる断面を有する2つまたはそれ以上の断面が設けるように導波路31に沿った複数の位置においてテーパを付けられるか、またはさらに導波路の全長に沿ってテーパを付けられ得る。
【0021】
様々な実施形態において、導波路31は、様々な材料、特に、チタン、チタン合金(たとえば、Ti6Al4V)、アルミニウム、アルミニウム合金、またはステンレス鋼などの様々な医学的および外科的に許容可能な金属から作られ得る。図面に示されている実施形態などの、いくつかの実施形態において、ブレード41および導波路31は、たとえば、所望の特徴を提供するようにフライス加工された単一の金属棒から加工されるような、単一のユニットとして形成される。代替的に、導波路31および超音波ブレード41は、異なる組成の同じものの2つまたはそれ以上の分離可能コンポーネントを含んでいてもよく、コンポーネントは、たとえば、接着剤、溶接、ねじ付きスタッド、および/または当業者に知られている他の好適な方法によって互いに結合される。たとえば、超音波ブレード41は、ねじ接続、溶接接合、または他の結合メカニズムによって導波路に接続され得る。
【0022】
たとえば、描かれている実施形態における発生器50およびトランスデューサ10は、約55kHzの周波数を有する定在振動波を発生するように構成される。しかしながら、約20から約120kHzの間など、他の様々な超音波周波数が採用され得る。
【0023】
本出願の様々な実施形態において、超音波外科手術用器具を駆動するための方法が提供される。
図4に示されているように、この方法は次のステップを含む。
【0024】
S10において、このステップは、血管の筋層を分離するためのものであり、これは
開始信号に応答して、超音波外科手術用器具のトランスデューサを駆動するために第1の期間に第1の振幅範囲を有する駆動信号を供給するステップを含む。このステップでは、トランスデューサは、第1の振幅範囲を有する駆動信号によって作動され、これはブレード41が比較的高い超音波振動エネルギーで振動することを引き起こし、血管の壁を急速に乾燥させる。
【0025】
S20において、このステップは、血管のシーリングおよび/または凝固のためのものであり、これは
S201:第1の期間の後に、トランスデューサを駆動するために第1の所定の間隔で減少する振幅を有する第1の遷移信号を供給するステップと、
S202:第1の所定の間隔の後に、トランスデューサを駆動するために第2の期間に第2の振幅範囲を有する駆動信号を供給するステップであって、第2の振幅範囲の上限は、第1の振幅範囲の下限よりも低い、ステップと、
S203:第2の期間の後に、トランスデューサを作動させるために第2の所定の間隔で増加する振幅を有する第2の遷移信号を供給するステップとを含む。
【0026】
第1の所定の間隔および/または第2の所定の値は、ゼロを上回る(すなわち、ゼロよりも大きい)。たとえば、第1の所定の間隔がゼロであると決定された場合、第1の期間の終了は、第2の期間の開始とされ、代替的に、第2の所定の間隔がゼロであると決定された場合、第2の期間の終了は、第3の期間の開始とされる。このステップでは、超音波外科手術用器具のトランスデューサを駆動するための駆動信号の振幅は、ステップS10における駆動信号の振幅よりも低く、これはブレード41が低い超音波振動エネルギーで振動することを引き起こし、血管のシーリングまたは凝固を行う。
【0027】
S30において、このステップは、血管の切断のためのものであり、これは
第2の所定の間隔の後に、トランスデューサを作動させるために第3の期間に第3の振幅範囲を有する駆動信号を供給するステップであって、第3の振幅範囲の下限は、第2の振幅範囲の上限よりも高い、ステップを含む。このステップでは、トランスデューサを駆動するための駆動信号の振幅は、ステップS20における駆動信号の振幅よりも高く、これはブレード41が高い超音波振動エネルギーで振動することを引き起こし、血管を切断する。
【0028】
図5aから
図5eは、上記の方法において超音波外科手術用器具を駆動するために使用される信号の様々な信号波形を示す概略図である。一般に、駆動信号はすべて、第1の期間における第1の信号S
1と、第2の期間における第2の信号S
2と、第3の期間における第3の信号S
3とを含む。異なる信号の駆動の下で、エンドエフェクタアセンブリ40の動作は、血管シーリングの異なる段階に対応する。
【0029】
より具体的には、血管の筋層を分離する段階に対して、トランスデューサは、第1の期間において第1の信号S1によって駆動され、エンドエフェクタアセンブリ40は、血管の筋層の分離を実行するように作動される。この段階で、血管の壁は速やかに乾燥する。第1の期間における駆動信号は、相対的に高い振幅を与えられ、エンドエフェクタアセンブリ40に相対的に高いエネルギーを供給し、筋層の分離を円滑にする。図に示されているように、t10は第1の期間の開始時刻を指し、t11は第1の期間の終了時刻を指す。
【0030】
血管をシールするかまたは凝固させる段階は、第1の期間の終了時刻t11から始まり第3の期間の開始時刻t30までである。この段階において、トランスデューサは、第2の信号S2、第2の信号S2と第1の信号S1との間の遷移信号、および第2の信号S2と第3の信号S3との間の遷移信号によって駆動され、これはエンドエフェクタアセンブリ40が振動することを引き起こし、血管をシールするかまたは凝固させる。この段階において、第2の信号S2は、第2の振幅範囲を与えられ、その上限は、第1の振幅範囲の下限よりも低い。第2の期間の開始時刻はt20であり、第2の期間の終了時間はt21である。第2の期間の駆動信号は、低い振幅を与えられ、エンドエフェクタアセンブリ40に相対的に低いエネルギーを供給し、血管のシーリングまたは凝固を円滑にし、エンドエフェクタアセンブリ40の過剰なエネルギーによって引き起こされる血管壁の炭酸化を防止する。
【0031】
血管を切断する段階では、トランスデューサは、第3の信号S3によって第3の期間において駆動され、エンドエフェクタアセンブリ40は、血管切断を実行するように作動される。この段階において、駆動信号は、第3の期間において第3の振幅範囲を与えられ、その下限値は、第2の振幅範囲の上限値よりも高い。図に示されているように、t30は第3の期間の開始時刻を指し、t31は第3の期間の終了時刻を指す。第1の段階に対する駆動信号は、相対的に高い振幅を与えられ、エンドエフェクタアセンブリ40に相対的に高いエネルギーを供給し、血管の迅速な切断を円滑にする。
【0032】
図に示されているように、減少する振幅を有する駆動信号が第2の期間の開始時刻t
20から第1の期間の終了時刻t
11までの第1の所定の間隔△t
1において供給され、および/または増大する振幅を有する駆動信号が、第3の期間の開始時刻t
30から第2の期間の終了時刻t
21まで第2の所定の間隔△t
2において供給される。すなわち、駆動信号の振幅はより滑らかに変化し、駆動信号の階段状変化を回避する。
図5Aは、第1の信号S
1が第2の信号S
2に変化するときの遷移時間を設定する状況を示している。図に示されているように、第1の期間の終了時刻t
11において、信号の振幅はA
11であり、第2の期間の開始時刻t
20において、信号の振幅はA
12である。信号の振幅がA
11からA
12に変化するプロセスにおいて、第1の所定の間隔△t
1は、遷移時間として定義される。
図5bは、第2の信号S
2から第3の信号S
3への変化位相の遷移時間を設定する状況を示している。図に示されているように、第2の期間の終了時刻t
21において、信号の振幅はA
13であり、第3の期間の開始時刻t
30において、信号の振幅はA
14である。信号の振幅がA
13からA
14に変化するプロセスにおいて、第2の所定の間隔△t
2は、遷移時間として定義される。
図5cから
図5eは、遷移時間が、第2の期間の開始時刻t
20の前および第2の期間の終了時刻t
21の後に設定される状況を示している。なお、上述した図に示されている波形では、第1の期間の第1の信号S
1、第2の期間の第2の信号S
2、および第3の期間の第3の信号S
3の信号振幅は、すべて一定に保たれており、第3の信号S
3の信号振幅は、第1の期間の第1の信号S
1の信号振幅と異なり得るか(
図5aおよび
図5bに示されているように)、同じであり得る(
図5cから
図5eに示されているように)。しかしながら、この方法の実際の適用において、各段階で、信号の振幅がある程度変動する、すなわち、振幅A
11またはA
12、A
13またはA
14で安定しておらず、これについては、次の実施形態においてさらに説明される。第1の期間の第1の信号S
1、第2の期間の第2の信号S
2、第3の期間の第3の信号S
3の信号振幅がすべて一定に保たれ、第3の期間の信号S
3の信号振幅が第1の期間の第1の信号S
1の信号振幅と同じであるときに、A
13=A
12、A
14=A
11である。この場合、
図5cから
図5eに示されている信号波形が取得され得る。この実施形態では、上記の図は、第1の所定の間隔△t
1および/または第2の所定の間隔△t
2の存在を例示するために主に使用されている。代替的解決方法は、信号の振幅変化のゆっくりとした遷移を実現するために2つの位相の間の変化に対する所定の間隔である。
【0033】
この実施形態の上記の解決方法により、第1の所定の間隔△t1は、遷移のために第1の信号S1と第2の信号S2との間に設定されるか、または第2の所定の間隔△t2は、遷移のために第2の信号S2と第3の信号S3との間に設定されるか、または遷移時間は、同時に両方の位相の変化に対して設定され、2つの位相における階段状変化信号は、特定の時間期間内に遷移するように部分的にもしくは完全に調整される。したがって、これは、ブレード41に伝達される超音波エネルギーが高出力と低出力との間で変化する際に特定のバッファを有し、超音波器具に関する手術者の手術精度を効果的に改善し、組織引き裂き力の急激な変化に対する影響を低減し、ブレードの破損を回避することができる。
【0034】
上記の解決方法において、第1の所定の間隔△t
1および第2の所定の間隔△t
2が設けられるときに、信号の振幅は、直線的に(
図5dに示されているように)または非線形に(
図5aから
図5cおよび
図5eに示されているように)変化する。
【0035】
大きな直径の血管を横に切断し、さらには首尾よく血管をシールするかまたは凝固させるための手術時間を短縮するために、血管壁の厚さに対応する負荷力が与えられなければならない。たとえば、第2の信号S
2と第1の信号S
1との間の遷移信号の振幅、さらには第2の信号S
2と第3の信号S
3との間の遷移信号の振幅は、非線形に変化し、これにより血管壁の厚さの変化にうまく合わせて、血管の凝固および切断を行える。すなわち、第1の所定の間隔△t
1がゼロよりも大きいかまたはゼロを上回る場合、第1の所定の間隔△t
1にわたって超音波外科手術用器具に供給される第1の遷移信号の振幅は、第1の非線形曲線に従って減少し、第2の所定の間隔△t
2がゼロよりも大きいかまたはゼロを上回る場合、第2の所定の間隔△t
2にわたって超音波外科手術用器具に供給される第2の遷移信号の振幅は、第2の非線形曲線に従って増大し、これによりシールプロセスにおいて血管の壁厚の変化は
図6に示されている曲線に従う。
【0036】
特に、この実施形態で提供される第1の遷移信号および第2の遷移信号の波形は
図7に示されている。ここで、第1の非線形曲線の式は、A=(A
11-A
12)×sinΦ+A
11、Φ∈(180°,270°)であり、Aは第1の遷移信号の振幅であり、A
11は第1の期間の終了時刻における信号の振幅であり、A
12は第2の期間の開始時刻における信号の振幅であり、第1の所定の間隔△t
1の開始時刻Φは180°であり、第1の所定の間隔△t
1の終了時刻Φは270°である。第2の曲線は、C=(A
14-A
13)×sinΦ+A
13、Φ∈(0°, 90°)であり、Cは第2の遷移信号の振幅であり、A
13は第2の期間の終了時刻における信号の振幅であり、A
14は第3の期間の開始時刻における信号の振幅であり、第2の所定の間隔△t
2の開始時刻Φは0°であり、第2の所定の間隔△t
2の終了時刻Φは90°である。
図7において、第2の期間の第2の信号S
2は一定の振幅を有する信号であり、したがってA
13=A
12である。
図9に示されているように第2の期間の第2の信号S
2が変動する振幅を有する信号である場合、A
13とA
12は異なり得る。この解決方法では、第1の信号S
1から第2の信号S
2への駆動信号の振幅変化は、正弦曲線に従い、同様に、第2の信号S
2から第3の信号S
3への信号の振幅変化は、正弦曲線に従うので、駆動信号の振幅変化は、血管をシールするプロセスにおける壁厚さ変化のプロセスにうまく適応することができる。この解決方法では、
図7における駆動信号は、電流信号を一例として取り上げて説明されている。電流および電圧は、オームの法則に従って変換され得るので、電圧は、インピーダンスを電流と組み合わせることによる変換を通して取得され得ることは理解されるであろう。したがって、本出願の実施形態のうちの1つで提供される駆動信号は、また、電流信号または電圧信号として構成され得る。
【0037】
図7に示されているように、超音波外科手術用システムが血管をシールすることに対して適合されている場合、3段階の信号の振幅の変化は、以下の通りである。
エンドエフェクタアセンブリ40は、血管の筋肉組織層を分離する段階を実行するように駆動され、駆動信号は、血管壁を迅速に乾燥させるために一定の振幅を与えられる。この段階の持続時間は、血管の筋肉層分離が完了する時間に従って決定され得、血管の筋肉層分離が完了したかどうかは、エンドエフェクタアセンブリ40によってフィードバックされたインピーダンスに従って決定され得る。この段階では、ブレード41によって供給される一定の出力を有する超音波エネルギーは、手術者によって加えられる力と組み合わさって、著しい熱損傷を引き起こすことなく血管の筋層を分離することができる。
【0038】
エンドエフェクタアセンブリ40は、血管をシールし、凝固させる段階を実行するように駆動され、駆動信号の振幅は、血管を凝固させるために一定の振幅を与えられ得る。この段階の持続時間は、血管の凝固が完了する時間に従って決定され得、血管の凝固が完了したかどうかは、エンドエフェクタアセンブリ40によってフィードバックされたインピーダンスに従って決定され得る。
【0039】
エンドエフェクタアセンブリ40は、血管を切断する段階を実行するように駆動され、駆動信号は、血管が横に切断されるまで一定の振幅(一定の振幅は、血管の筋層を分離する段階で使用される一定の振幅と同じであっても異なっていてもよい)を与えられる。
【0040】
上記3つの段階において、異なる段階における信号の持続時間は、血管をシールするプロセスにおいてエンドエフェクタアセンブリ40によってフィードバックされたインピーダンス変化に従って決定され得る。したがって、
図8に示されているように、超音波外科手術用器具を駆動するための方法は、以下のステップをさらに含み得る。
【0041】
S40において、超音波外科手術用器具によってフィードバックされた電流値または電圧値の変動が取得され、ここで、電流値または電圧変動は、エンドエフェクタアセンブリ40によってフィードバックされたインピーダンス変動に従って決定される。
図3を参照し、また超音波外科手術用システムにおける超音波エネルギーの生成および伝達の原理を参照すると、血管をシールするプロセスの間、血管壁の特性変化(血管の壁厚さ、血管の組織特性など)は、エンドエフェクタアセンブリ40のインピーダンス変化につながり、これは、超音波振動の伝達経路に沿ってトランスデューサ10にフィードバックされ、トランスデューサ10の電流値または電圧値を変化させ得る。このステップは、血管をシールするプロセスの実行中にリアルタイムで実行される。その際に、取得された電流値または電圧変動は、トランスデューサ10によって供給される。
【0042】
S50では、電流値または電圧変動に従って各期間における信号の振幅が調整され、各期間は、第1の期間、第2の期間、第3の期間、第1の所定の間隔および/または第2の所定の間隔を含む。このステップにおいて、調整された期間は、エンドエフェクタアセンブリ40によって実行される現在の手術段階に従って決定され、たとえば、エンドエフェクタアセンブリ40が血管の筋肉組織層を分離する段階を実行するときに、第1の期間において出力される信号の振幅は、電流値または電圧変動に従って調整され、エンドエフェクタアセンブリ40が血管をシールし凝固させる段階を実行するときに、第2の期間において出力される信号の振幅は、電流値または電圧変動に従って調整される。
【0043】
さらに、上記の方法は、電流または電圧変動に従って、第1の期間、第2の期間、および第3の期間の時間長を決定するステップを含み得る。ステップS50と同様に、このステップにおいても、調整された期間は、エンドエフェクタアセンブリ40によって現在実行されている手術段階に従って決定される、すなわち、信号の振幅は、超音波外科手術用器具によってフィードバックされた電流または電圧変動に従ってリアルタイムで調整されるか、または信号の波形は、血管をシールするプロセスにおいてリアルタイムで調整される。
【0044】
代替的に、上記の方法において、遷移信号の持続時間を調整するステップS60は、血管をシールし凝固させる段階を実行するためにエンドエフェクタアセンブリ40を調整する段階にさらに含まれ、特に、
第1の所定の間隔△t1がゼロを上回る(すなわち、ゼロよりも大きい)場合、上記の方法は、S601:電流変動または電圧変動に従って第1の所定の間隔△t1の時間長を決定すること、を含む。
【0045】
第2の所定の間隔△t2がゼロを上回る(すなわち、ゼロよりも大きい)場合、上記の方法は、S602:電流変動または電圧変動に従って第2の所定の間隔△t2の時間長を決定すること、を含む。
【0046】
それに加えて、実現のプロセスにおいて、第1の所定の間隔△t1および第2の所定の間隔△t2は、等しくても異なっていてもよい。第1の間隔が第2の間隔と等しい場合、波形は単純化され得る。第1の間隔が第2の間隔と異なる場合、2つの間隔の差は、特定の許容誤差範囲内にあり、許容誤差範囲は、経験値や実験的キャリブレーションに従って決定され得る。
【0047】
上で説明されているように、エンドエフェクタアセンブリ40のインピーダンス値は、超音波外科手術用システムにより血管をシールし凝固させる段階における血管組織特性の変化に起因しても変化する。したがって、第2の信号S
2は、揮発性を有する信号として設計される、すなわち、ブレード41の超音波エネルギーは、小さな変動幅を有し、それによりエンドエフェクタアセンブリ40は血管をシールするプロセスにおけるインピーダンス変化をよりよく反映することができ、小さな変動範囲は、ブレードのエネルギー変動によって引き起こされる血管または組織の不必要な断裂を回避することができる。代替的に、第2の信号S
2の第2の振幅範囲の上限値A
5と下限値A
6との差は、設定値よりも小さい。
図9に示されている波形図を例にとると、第2の期間にわたって供給される信号は、周期信号として構成され、特に、周期信号は、関数B=A
5-設定値×sin(π×τ/T)によって表わされ得、Bは第2の期間に出力される信号の振幅であり、τは時間変数であって、τ∈(0,T)であり、Tは第2の期間の時間長である。上記において、エンドエフェクタアセンブリ40は、血管をシールし凝固させる段階において血管を完全に凝固させるために低いエネルギーで血管に連続的に作用する必要があるので、この段階では、ブレード41の超音波エネルギーおよび持続時間は、十分にマッチする必要がある、すなわち、第2の期間における信号の振幅および持続時間は、十分にマッチする必要があり、これにより、第2の期間における信号の過度に高い振幅または長い持続時間によって引き起こされる血管の炭酸化を回避し、シーリングおよび凝固効果に影響を及ぼす。この前提において、上記の関数における設定値の選択は、血管の凝固段階においてブレード41によって必要とされる低いエネルギー値に適合しており、これはキャリブレーション実験または経験値によって取得され得る。このステップにおいて、第2の信号S
2における信号の振幅は、血管をシールするプロセスにおけるインピーダンスの乱れの法則に従って設計され、正弦波モードにおける周期的変動は、血管をシールし凝固させるプロセスにおけるインピーダンス変化をよりよく反映することができる。
【0048】
本出願の実施形態は、さらに、超音波外科手術用器具を駆動するための発生器を提供する。
図10aから
図10bは、発生器50が超音波外科手術用システムにおいて使用されるときの発生器50および他の部材の概略図である。発生器50は、プロセッサチップ501(シングルチップマイクロコンピュータ、PLC、DSP、および同様のものなど)を備え、プロセッサチップ501には、様々なプリセット波形信号を生成するためのプログラム情報がプリロードされている。発生器50が開始信号に応答したときに、プロセッサチップ501は、プログラム情報を実行して上記の方法実施形態において提供される方法ステップを実行し、それにより、発生器50は、
図5aから
図5e、または
図7および
図9に示されているような駆動信号を超音波外科手術用器具に出力する。プロセッサチップ501は、プリセットプログラム情報を通じて駆動信号の要件を満たす波形信号を直接的に出力することができる、すなわち、信号の各段階の振幅および持続時間は、超音波外科手術用器具の駆動要件を満たす。代替的に、
図10bに示されているように、プロセッサチップ501は、信号調整回路502と接続され、プロセッサチップ501は、プログラム情報を実行した後にプリセット波形信号を(初期信号として)出力し、信号調整回路502は、プリセット波形信号を処理して駆動信号にする。この解決方法では、プリセット波形信号の振幅は小さくてもよく、信号調整回路502は、振幅がより小さい初期信号を増幅して駆動要件を満たす駆動信号にすることができる、信号増幅機能を有し得る。信号調整回路502の機能は、プロセッサチップ501によって出力される初期信号および駆動要件に合うように適合され、増幅機能の他に、信号調整回路は、変換機能およびフィルタリング機能を有し得る。
【0049】
さらに、発生器50は、インピーダンス検出回路503をさらに備える。インピーダンス検出回路503は、超音波外科手術用器具のトランスデューサ10と接続されている。インピーダンス検出回路503は、トランスデューサ10によってフィードバックされた電流変動または電圧変動を検出し、電流変動または電圧変動をデジタル信号に変換し、デジタル信号をプロセッサチップ501にフィードバックするために使用され、電流変動または電圧変動は、エンドエフェクタアセンブリ40のインピーダンス変動に従って決定される。プロセッサチップ501は、インピーダンス検出回路503によってフィードバックされたデジタル信号に従って駆動信号の振幅を調整する。さらに、プロセッサチップ501は、インピーダンス検出回路503によってフィードバックされたデジタル信号に従って駆動信号における第1の期間、第2の期間、および第3の期間の時間長を調整することもでき、第1の所定の間隔がゼロを上回るか、またはゼロよりも大きいときに電流変動または電圧変動に従って第1の所定の間隔の時間長を決定する。および/または、第2の所定の間隔がゼロを上回るか、もしくはゼロよりも大きいときに電流変動または電圧変動に従って第2の期間の時間長を決定する。
【0050】
超音波外科手術用器具を駆動するための上記の発生器は、超音波外科手術用器具のエンドエフェクタアセンブリ40に駆動信号を出力することができる。エンドエフェクタアセンブリ40内のブレード41は、血管をシールするプロセスにおける異なる段階に適した超音波エネルギーを発生するように駆動信号によって駆動され、エンドエフェクタアセンブリ40に手術者が加えるクランプ力が組み合わされて血管のシーリングを迅速に完了することができる。
【0051】
本出願の実施形態は、さらに、超音波外科手術用システムを提供する。このシステムは、超音波外科手術用器具と、上記の実施形態によって提供される発生器50とを備える。超音波外科手術用器具は、トランスデューサ10と手術用アセンブリとを備える。トランスデューサ10は、発生器50によって出力された駆動信号を受信し、駆動信号を超音波振動信号に変換する。手術用アセンブリは、導波路31と、導波路31の遠位端に配置構成され、組織を手術するために使用されるエンドエフェクタアセンブリ40とを備える。超音波振動信号は、導波路31からエンドエフェクタアセンブリ40に伝達され、エンドエフェクタアセンブリ40によって生成された超音波エネルギーは、手術される組織に作用する。本出願発明の実施形態では、血管が手術される組織の例として取られているが、超音波外科手術用システムは、血管以外の他の組織の切断、凝固、および/またはクランプに適用され得る。
【0052】
図10bに示されているように、超音波外科手術用システムは、開始信号スイッチ50A(手術用ハンドスイッチ24、発生器50に接続されたフットスイッチ、および同様のものなど)をさらに含み得る。発生器50が開始信号スイッチ50Aから開始信号を受信したときに(図では、プロセッサチップ501の信号受信端が発生器50の信号受信端として使用されている)、プロセッサチップ501は、そこに事前に記憶されているプリセットプログラム情報を実行し、プリセット波形信号を出力することができる。プリセット波形信号は、信号調整回路502によって処理されて駆動信号を形成し、トランスデューサ10内に入力される。超音波振動の後に、エンドエフェクタアセンブリ40のブレード41は、ジョーアセンブリ42と協働して組織をクランプし、エンドエフェクタアセンブリ40のインピーダンス変化は、トランスデューサ10にフィードバックされ、それによりトランスデューサ10の電流変動または電圧変動を引き起こす。インピーダンス検出回路503は、電流変動または電圧変動を検出し、電流変動または電圧変動を処理してデジタル信号にし、デジタル信号をプロセッサチップ501にフィードバックすることができる。プロセッサチップ501は、電流値または電圧変動に従ってインピーダンス変動を決定し、インピーダンス変動に従って初期波形を調整し、駆動信号の振幅を変化させてエンドエフェクタアセンブリ40の超音波エネルギーを変化させることができ、これにより、エンドエフェクタアセンブリ40は、任意の段階で手術された組織の特性変動に対応する超音波エネルギーを生成することができ、手術された組織の動作要件をうまく満たすことができる。
【0053】
それに加えて、本出願の上記の実施形態において提案されている駆動電流波形は、電流の実効値に従って表現されており、実効値は、交流電流の大きさを測定するための値である。具体的な計算プロセスは、交流電流が抵抗器を通過するとき、1周期で発生する熱は、同じ時間に抵抗器を通過する直流電流によって生成される熱と等しく、直流電流の大きさは、交流電流の実効値であり、したがって実効値は、電流の瞬時値に従って計算され得る。具体的な用途では、瞬時値または実効値は、表示する変数として選択され得る。本出願の上記の実施形態における駆動信号が、ブレード41の動作を制御するときに、直径がより大きい血管をシールし凝固させるプロセスにおいて、各段の信号が共振周波数で動作し、第2の期間における第2の信号S2の両端が正弦波曲線を成して信号の遷移を実現するときに、ブレード41の超音波振動エネルギーは、血管シーリングの必要条件を満たすことを前提として単位時間内に最大出力値を達成することができ、それによりシーリングプロセス全体は短時間で済むことが検証されている。
【0054】
上記の実施形態における駆動信号に基づき、ブレード41の振動持続時間は、効果的に短縮され、ブレード41の機械振動によって発生する熱は、低減され得る。放熱膜を備える既存のブレード41の構造と比較した場合(従来技術ではブレードを長時間振動させる必要があるので、より多くの熱が発生し、ブレードは放熱膜を追加で設けられる必要がある)、本出願では、ブレード41の外装が放熱膜をコーティングされることを必要としないように実現することができる。既存のブレード41上にコーティングされた放熱膜は、器具コストを増大させるだけでなく、高周波振動の条件下で人体に落下する可能性があり、人体に拒絶反応を引き起こしやすい。この解決方法では、ブレード41は、放熱膜を省いた後に上記の問題点を効果的に解決している。
【0055】
上述の超音波外科手術用システムにおいて、エンドエフェクタアセンブリ40が血管をクランプするときに、ブレード41は、従来の使用シナリオ(直径が約5mm以下の血管のシーリングおよび凝固など)において負荷力を組織に印加するためにジョーアセンブリ42とマッチさせる必要がある。特に、
図11および
図12に示されているように、ブレード41に関するジョーアセンブリ42の枢動は、ジョーアセンブリ42に、それぞれ外管33および内管32に係合される一対の枢着部をセットすることによって実現される。外管33は、ハンドルアセンブリ20に固定して接続される。ジョーアセンブリ42は、ジョーアセンブリ42上の第1の貫通孔421および外管33上の対応する第2の貫通孔331を介して外管33に枢動可能に接続される。締結ピンまたはリベットが摺動して、第1の貫通孔421および第2の貫通孔331を通り、ジョーアセンブリ42を外管33に枢動可能に接続する。内管32は、外管33の長手方向軸に沿って移動する。ジョーアセンブリ42の枢動ピン422は、内管32の遠位端の枢動孔321に係合する。したがって、外管33に関する内管32の往復運動は、ジョーアセンブリ42をブレード41に関して枢動させる。ハンドグリップ22に向かうトリガー23の移動は、内管32を近位に移動し、それによってジョーアセンブリ42をブレード41に向かって枢動させる。トリガー23および協働するハンドグリップ22によってもたらされる引っ張り作用は、器具を都合良く効果的に操作し、位置決めするのに役立ち、器具の遠位端でジョーアセンブリ42を動作させてブレード41側の方へ枢動させ、それによって組織は、ブレード41に対して効果的に付勢され、押される。ハンドグリップ22から離れる方向のトリガー23の移動は、内管32を遠位に移動し、それによってジョーアセンブリ42をブレード41から離れる方向に枢動させる。
【0056】
図13に示されているように、複数の溝または切り欠きが、シーリング支持部39を装着するために導波路31の外周部に形成されている。溝は、導波路31のノードに配置される。導波路31のノードにおける超音波の振幅はゼロであるので、シーリング支持部39は、この位置に設けられ、導波路31の超音波伝達に影響を及ぼすことなく導波路31を効果的に支持することができる。このシーリング支持部39は、特に、溝内に配置構成されたシーリングゴムリングであり、このシーリングゴムリングは、シリカゲルなどの可撓性材料から作られる。最も遠いノードに設けられたシーリング支持部39は、エンドエフェクタアセンブリ40に最も近く、シーリング支持部39は、エンドエフェクタアセンブリ40の切断時に発生する組織残渣が導波路31と内管32との間の領域を通って伝送アセンブリ30に進入するのを防止することもできる。
【0057】
エンドエフェクタアセンブリ40がより大きな直径の血管のシーリングおよび凝固に使用されるときに、血管をクランプするためにより大きな力でトリガー23を操作する必要がある。Z方向のジョーアセンブリ42の力はより大きくなり、ブレード41はZ方向に移動する傾向を有する。内管と外管との間にアセンブリギャップがあると、ブレード41がZ方向に移動することを許してしまう。
図13に示されているように、ブレード41と締結されるかまたは一体化された導波路31は、シーリング支持部39を通して内管32に隙間なく当接し、内管と外管との間にアセンブリギャップが設けられる。
図14aに示されているように、上記一対の枢着部によって形成される直線は、左側に傾斜している(または、直線が右側に傾斜しているとも考えられ得る)。このときに、エンドエフェクタアセンブリ40の遠位端Fは閉じられているが、エンドエフェクタアセンブリの近位端Wにはまだ大きなギャップがある。近位端Wには大きなギャップがあり、エンドエフェクタアセンブリが血管をクランプした場合に、圧力が低くなる。このとき、遠位端でクランプされた血管は圧力およびエネルギーの作用で横切断/止血を終えているが、近位端でクランプされた血管は横切断/止血を終えていないことが容易にわかる。すなわち、より大きい直径を有する血管に作用するエンドエフェクタアセンブリ40の力整合性が悪く、いくつかの血管が切断されない、または容易に凝固しないという問題が生じる。
【0058】
本出願によって提供される上記の実施形態において、駆動信号は、ブレード41が単位時間当たりに十分高い超音波エネルギーを出力するように制御することができるので、手術者は、ジョーアセンブリ42の作用を制御する際に手術者からのクランプ力を適宜低減することができ、エンドエフェクタアセンブリ40の負荷力の整合性の低下を軽減することができる。
【0059】
さらにエンドエフェクタアセンブリ40がより大きな直径を有する血管をシールして凝固させるときに、近位端から遠位端にかけてのブレード41の負荷状況を整合性のあるものにするために、ブレード41に印加される力を近位端から遠位端にかけて徐々に減少させることが必要である。代替的に、本実施形態は、内管32および外管33の遠位端に当接部が設けられ、この当接部は内管32と外管33との間に支持部を形成し、それにより、内管および外管の遠位端同士の間のギャップがゼロに近くなり、内管および外管の相対的摺動運動に影響を及ぼすことなく内管と外管との間の半径方向ギャップが変化するのを防ぐことができる、すなわち、Z方向に沿った内管32の変位は、ブレード41がZ方向に沿ってジョーアセンブリ42によって加えられる力を受けたときにゼロに近くなり、内管と外管との間の半径方向ギャップが変化するのを防ぐことができる。
図14bに示されているように、ジョーアセンブリ42がブレード41に近い方向に枢動してより大きな直径の血管をシールし、凝固させるときに、半径Z方向におけるブレード41の位置変位は、内管32および外管33の遠位端の支持に伴って減少し、ほとんどゼロになる。このときに、エンドエフェクタアセンブリ40の遠位端Fは閉じており、エンドエフェクタアセンブリの近位端Wのギャップは小さいので、ブレード41にかかる力は、遠位端から近位端に向かって徐々に大きくなる。より具体的には、当接部の内側は、内管32の外壁に当接するか、または内管32の外壁と一体形成され、当接部の外側は、外管33の内壁と一体的に形成され、外管33の内壁と当接する。このようにして、内管32と外管33との間のギャップは、遠位端側に当接部を設けることによってさらに縮小される。いくつかの方式において、当接部は、内管32と外管33との間に配置構成された少なくとも1つのクランプ片Pである。クランプ片Pを内管32および外管33と無関係に配置構成することによって、内管33および外管33の加工難易度を低減され得る。より具体的には、クランプ片Pの表面が、内管および外管33の壁面とマッチする弧状表面として整形され、それにより、クランプ片Pは、内管32の外壁および外管33の内壁との大きな接触面積を有し、導波路31を安定して支持する。上記の当接部の実装形態は、概略図に過ぎず、クランプ片Pは、具体的な実装形態において同じ機能を達成することができる他の構造部材で置き換えられ得ることは理解され得る。
【0060】
この実施形態における上記の解決方法によれば、エンドエフェクタアセンブリ40の機械的構造を改善し、改善された駆動信号と組み合わせることにより、より大きい直径を有する血管をシールするのに要する時間は、さらに短縮され、エンドエフェクタアセンブリ40の負荷力の整合性は、改善される。この解決方法を実現するプロセスにおいて、この実施形態で提供される超音波外科手術用器具と従来技術の超音波外科手術用器具は、直径約7mmを有する血管試料60個に対するシーリングおよび凝固実験を実行するように選択され、この解決方法の効果は、シーリング作業に要する時間とシールされた血管の破裂圧力の検証結果からなる2つの態様から説明される。特に、2つの器具が、直径約7mmの複数の血管試料のシーリングおよび凝固を実行するために使用される。シーリングおよび凝固プロセス全体が完了した後、血管がシールされた位置での破裂圧力が測定され、異なる破裂圧力実験結果に対応する異なるシーリング作業に要した異なる時間がそれぞれカウントされる。最後に、この解決方法の検証結果は
図15aに示されており、既存製品の検証結果は
図15bに示されており、比較結果は
図15cに示されている。
【0061】
この解決方法で提供される超音波外科手術用器具のシーリング作業を実行する時間は、2.8~7.2秒の範囲内であり、シーリング作業を実行する平均時間は、6.067秒であり、シーリング作業を実行する時間の標準偏差は、0.928秒である。血管のシーリング作業を完了した後、血管がシールされた位置における平均バースト圧力は1186.1mmHgであり、バースト圧力実験結果により取得された標準偏差は271.9mmHgである。
【0062】
既存製品のシーリング作業を実行する時間は5.4~19.4秒の範囲であり、シーリング作業を実行する平均時間は11.225秒であり、シーリング作業を実行する時間の標準偏差は3.485秒である。血管のシーリング作業を完了した後、血管がシールされた位置における平均バースト圧力は969.71mmHgであり、バースト圧力の標準偏差は303.78mmHgである。
【0063】
図に示されている実験結果によれば、直径約7mmの血管をシールするときに、本出願の解決方法は、明らかにより短いシーリング時間を使用することができ、よりよいシーリング結果を得ることができる。この解決方法により、血管シーリング効率は、血管シーリングの品質を確実にするという前提でさらに改善され得る。
【符号の説明】
【0064】
F 遠位端
P クランプ片
W 近位端
10 トランスデューサ
20 ハンドルアセンブリ
21 主ハウジング
22 ハンドグリップ
23 トリガー
24 手術用ハンドスイッチ
30 伝達アセンブリ
31 導波路
32 内側チューブ
33 外側チューブ
35 ノブ
36 力制限メカニズム
40 エンドエフェクタアセンブリ
41 超音波ブレード
42 クランプアームアセンブリ
43 クランプパッド
50 発生器
321 枢動孔
331 第2の貫通孔
361 管カラーキャップ
362 遠位ワッシャ
363 遠位ウェーブスプリング
364 近位ワッシャ
365 近位ウェーブスプリング
366 カラー
367 O型リング
421 第1の貫通孔
422 枢動ピン
501 プロセッサチップ
502 信号調整回路
503 インピーダンス検出回路
【国際調査報告】