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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-26
(54)【発明の名称】生体物質のガス化方法および装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/02 20060101AFI20250218BHJP
   C01B 3/12 20060101ALI20250218BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20250218BHJP
   C10J 3/20 20060101ALI20250218BHJP
   C10J 3/78 20060101ALI20250218BHJP
   C10J 3/30 20060101ALI20250218BHJP
【FI】
C01B3/02 Z
C01B3/12
C01B32/50
C10J3/20
C10J3/78
C10J3/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024546033
(86)(22)【出願日】2023-01-30
(85)【翻訳文提出日】2024-07-31
(86)【国際出願番号】 GB2023050205
(87)【国際公開番号】W WO2023152464
(87)【国際公開日】2023-08-17
(31)【優先権主張番号】2201816.2
(32)【優先日】2022-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524288012
【氏名又は名称】ワイルド ハイドロジェン リミテッド
【氏名又は名称原語表記】WILD HYDROGEN LIMITED
【住所又は居所原語表記】3 Gabwell Business Centre, Quadrant Way, Hardwicke, Gloucester Gloucestershire GL2 2JH (GB)
(74)【代理人】
【識別番号】100216471
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬戸 麻希
(72)【発明者】
【氏名】ウィッカム マーク
(72)【発明者】
【氏名】グリーフ アンドレ
【テーマコード(参考)】
4G140
4G146
【Fターム(参考)】
4G140BA02
4G140BB03
4G146JA02
4G146JB07
4G146JC02
(57)【要約】
生体物質のガス化方法および装置
圧力容器(10)内で生体物質(210)から水素ガスを製造する方法および装置を紹介する
。この方法は、粒状材料(15)を500℃以上に加熱することと、大気圧で加熱された粒状
材料(15)を有する圧力容器内に生物起源材料(210)のバッチを添加すること、圧力容
器を閉鎖すること、そして閉鎖された圧力容器(10)内で加熱された粒状材料(15)と生
物起源材料(210)とを混合して生物起源材料(210)の温度を上昇させ、ガス化を開始す
ることとを含み、ガス化によって圧力容器(10)内の圧力を上昇させるガスが生成され、
生成されたガスは水素ガスからなる。
選択図 図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力容器内で生体物質から水素ガスを製造する方法であって、粒状の材料を500℃以上に
加熱する工程と、大気圧で加熱された粒状の材料とともに生体物質のバッチを圧力容器内
に添加する工程と、圧力容器を閉鎖する工程と、閉鎖された圧力容器内で加熱された粒状
の材料を生体物質と混合して生体物質の温度を上昇させ、ガス化を開始する工程とを含み
、ガス化により圧力容器内の圧力を上昇させるガスが生成され、生成されたガスは水素ガ
スからなることを特徴とするもの。
【請求項2】
請求項1記載の方法で、粒状の材料を加熱することが、生体物質の以前のバッチから発生
した水素ガスを燃焼させることからなるもの。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法で、粒状の材料を生体物質と混合することが、圧力容器を回
転させることを含むもの。
【請求項4】
前記のいずれかの請求項の方法で、生体物質が粒子で構成され、粒子が互いに異なるサイ
ズを有し、任意に互いに異なるレベルの含水率を有するもの。
【請求項5】
前記のいずれかの請求項の方法で、大気圧で圧力容器に生体物質のバッチを添加すること
が、生体物質をカートリッジに装填することと、カートリッジを圧力容器の端部にスライ
ドさせることとを含み、粒状の材料が圧力容器のカートリッジとは反対側の端部に存在す
るもの。
【請求項6】
請求項5に記載の方法で、圧力容器が、圧力容器の長さに沿った長手方向軸を有し、カー
トリッジを圧力容器の端部に摺動させることが、長手方向軸が水平に延びるように圧力容
器を方向付けることと、カートリッジを長手方向軸に沿った方向に摺動させて圧力容器の
端部に摺動させることとを含むもの。
【請求項7】
前記のいずれかの請求項の方法で、加熱された粒状の材料を生体物質と混合する前に、酸
素をパージするために圧力容器にガスを送り込むことを含むもの。
【請求項8】
前記のいずれかの請求項の方法で、加熱された粒状の材料と生体物質との混合後または混
合中に、水ガスシフト反応を誘導するために圧力容器に水または蒸気を送り込むことを含
むもの。
【請求項9】
前記のいずれかの請求項の方法で、ガス化後に圧力容器から加圧下で水素ガスを排出する
ことをさらに含み、好ましくは、水素が、粒状材料が存在する圧力容器の端部とは反対側
の圧力容器の端部から排出されるもの。
【請求項10】
前記のいずれかの請求項の方法で、粒状の材料が酸化カルシウムを含み、ガス化によって
生成されたガスが二酸化炭素を含み、二酸化炭素が酸化カルシウムと反応して炭酸カルシ
ウムを生成するもの。
【請求項11】
請求項9に付加される請求項10に記載の方法で、水素が圧力容器から排出された後、炭酸
カルシウムを加熱して炭酸カルシウムから二酸化炭素を放出させ、二酸化炭素を捕捉する
ことを含むもの。
【請求項12】
生体物質から水素ガスを製造するための装置であって、少なくとも500℃に加熱された粒
状の材料を貯蔵するように構成された圧力容器と、圧力容器が大気圧にある間に、加熱さ
れた粒状の材料とは反対側の圧力容器の端部に生体物質のバッチを加えるために開閉可能
なヘッドと、粒状の材料と生体物質とを一緒に混合するために圧力容器を回転させるよう
に構成された原動機とを備える装置。
【請求項13】
請求項12に記載の装置で、圧力容器が円筒形状であり、ピボットを備え、原動機がピボッ
トを中心に圧力容器を回転させるように構成され、ピボットが円筒形状の長手方向軸に垂
直な軸を中心に圧力容器の枢動を可能にすることを特徴とするもの。
【請求項14】
請求項13に記載の装置で、前記圧力容器が前記ピボットに隣接するかまたは前記ピボット
内に設けられた入口を備えるもの。
【請求項15】
請求項12、13または14記載の装置であって、ヘッドが圧力容器から開放されたときに圧力
容器内にスライドするように構成されたカートリッジを含むもの。このカートリッジは、
生体物質のバッチを保持するように構成されている。
【請求項16】
請求項12から15のいずれか一項に記載の装置で、圧力容器が外皮、内皮、および内皮と外
皮との間の断熱材からなるもの。
【請求項17】
請求項15に付加される請求項16に記載の装置で、カートリッジが、カートリッジと内皮と
の間に環状及び円筒状の空間を残しながら内皮内を摺動するように構成され、ヘッドが、
ガス化中に圧力容器内に流体又はガスを注入するために、環状及び円筒状の空間への注入
口を備えるもの。
【請求項18】
請求項17に記載の装置で、カートリッジの端部が、環状および円筒状の空間への加熱され
た粒状の材料および生体物質の進入を阻止するように構成された環状フィルターを備える
もの。
【請求項19】
請求項12から18のいずれか一項に記載の装置で、圧力容器が容器内に撹拌装置を備えてお
り、その撹拌装置が粒状の材料と生体物質との混合物を撹拌するように構成されているも
の。
【請求項20】
請求項12から19のいずれか一項に記載の装置であって、該装置が粒状の材料を含み、該粒
状の材料が酸化カルシウムを含むことを特徴とする装置。
【請求項21】
請求項12から19のいずれか1項に記載の装置で、圧力容器が、ガスを生成するための生体
物質のガス化、生成されたガスの水ガスシフト、および炭素捕獲のすべてを圧力容器内で
行うように構成されているもの。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体物質のガス化に関するものである。 より具体的には、高温高圧下でガス
化して水素を製造するものである。
【背景技術】
【0002】
生物由来の物質をガス化して水素を製造することは、有機物から再生可能なエネルギー源
を得るための有力な方法として以前から熱心に研究されてきた。このプロセスは、生成さ
れるガスから炭素を分離する炭素捕捉技術を用いれば、カーボンネガティブにすることも
可能である。生体物質は、例えば、木材チップやペレット、家庭廃棄物、家畜糞尿などで
構成され、バイオマス原料と呼ばれることもある。
ガス化はさまざまな温度と圧力のもとで行われるが、有望な研究のひとつでは生体物質の
含水率が超臨界状態になるように非常に高い圧力と高温を利用するものがある。超臨界状
態は通常温度374.4℃以上、圧力22.064MPa以上で発生し、反応速度と、水ガスシフトが速
くなり、水素収量が増加する。生体物質を水素ガス、二酸化炭素、水蒸気に実質的に完全
にガス化することができる。ガス化は水(水蒸気)の存在下で行われ、水蒸気はこの条件
下で触媒として働き、水ガスシフト反応によって一酸化炭素と水を二酸化炭素と水素ガス
に変換する。
しかし、このプロセスを大規模で実用的なシステムとして商業化するのは容易ではない。
ガス化反応は吸熱反応であるため、熱の形のエネルギーを生体物質に供給しなければなら
ず、熱損失によってプロセスの効率を低下してしまう。
吸熱反応のためのエネルギーと同様に、生体物質中の水分を蒸発させ過熱するためのエネ
ルギーも供給しなければならず、また生体物質自体を加熱するためのエネルギーも供給し
なければならない。
固体間の熱伝達が速いため、流動床反応器内で生体物質をガス化するのが最も一般的な技
術である。しかしながらこの技術では生体物質を小さくし、床内で均一に分布させる必要
がある。加圧システムでは、ガス化炉への圧送を可能にするため、生体物質を液体添加剤
で非常に小さく粉砕することが多い。さらに、ガス化に必要な高温の床を維持するために
、生体物質を乾燥させる必要があることも多い。このようなバイオ原料の処理はすべて高
価であり、コストに大きく影響する。
最新のガス化炉は、高温(約700℃)、1気圧またはわずかに加圧された状態で合成ガス
を生成する。合成ガスはその後冷却され、水ガスシフト反応のためにスクラビングされ、
さらに大気温度まで冷却された後、コンプレッサーで圧力を通常2.6MPaまで上昇させ、水
素を二酸化炭素やその他の成分から分離する。この圧縮ステップはコストが高くで、さら
に多くの電力を消費する。
米国特許2019/0062656A1は、プロセスの効率を高めるために熱交換器を使用した超臨界条
件下での生体物質のガス化を記載している。しかしながら、生体物質をプロセスに供給す
ることも問題である。典型的には生体物質をスラリーに形成して、必要とされる高圧下で
ポンプで送り込むことができるようにする必要がある。この場合、通常、生体物質の粒径
を調整するために生体物質を前処理する必要があり、水ガスシフト反応が起こるのに必要
な量よりも多量の水を注入する必要があり、非効率的である。
したがって、本発明の目的はこうした公知の技術を改良することである。
【発明の概要】
【0003】
本発明の第一の実施形態によれば、圧力容器内で生体物質から水素ガスを製造する方法が
提供される。この方法は、粒状材料を500℃以上に加熱することと、大気圧で加熱された
粒状材料とともに圧力容器内に生物起源材料のバッチを添加することと、圧力容器を閉鎖
することと、閉鎖された圧力容器内で加熱された粒状材料と生物起源材料とを混合して生
物起源材料の温度を上昇させ、ガス化を開始することとを含み、ガス化により圧力容器内
の圧力を上昇させるガスが生成され、生成されたガスは水素ガスなどで構成される。
この方法では、生体物質を連続的に処理するのではなく、生体物質を一括処理するので、
生体物質を圧力下で圧送できるスラリーに前処理する必要はない。その代わりに、圧力容
器内に圧力がかかる前に、プロセスの開始時に生体物質を圧力容器に加えることができる
。生物起源材料は、含水率が変化する未加工のバイオマス原料であってもよく、典型的に
は平均含水率が50%以上である。
従来、多量の生体物質を一度に加熱することは、生体物質内の粒径のばらつきや含水率の
ばらつき、さらには熱伝導性の悪さのために問題があった。しかし、本発明によれば、加
熱した粒状材料と混合することにより、生物起源材料を必要な高温まで迅速に加熱するこ
とが可能である。粒状の材料を生体物質と混合することは、好ましくは、圧力容器を回転
させることからなり、それにより、生体物質の粒径および含水率に関係なく、加熱された
粒状の材料を生体物質全体に分散させる。
粒状の材料は、典型的には多数の粒子(顆粒)から構成され、生体物質への効率的な混合
および熱伝達のために、最大5mm、より好ましくは0.5mm~2mmの粒径である。
粒状材料は、例えば砂、カンラン石、酸化カルシウムの少なくとも1つなどの不活性また
は不燃性材料で構成することができる。時間の経過とともに、以前のガス化サイクルから
の灰分または残留固形分が粒状材料に加わることがある。定期的に、例えば一定回数のガ
ス化サイクルの後に、粒状の材料を交換および/または洗浄することにより、粒状の材料
をリフレッシュすることができる。
生体物質を添加する前に、粒状の材料を圧力容器内で高温に加熱してもよい。例えば、前
のバッチの生体物質のガス化から残った水素ガスを圧力容器内で燃焼させることができる
。特に粒状の材料が前のバッチの生体物質のガス化から既に高温である場合は都合が良い
。あるいは、特に粒状の材料を周囲温度から加熱する必要がある場合、加熱のために粒状
の材料を圧力容器から取り出してもよい。
粒状の材料は、少なくとも1000kg/m3のかさ密度を有することが好ましく、少なくとも200
0kg/m3のかさ密度を有するものがより好ましい。生物起源材料は、より低いかさ密度を有
するものが多い。例えば100kg/m3から600kg/m3の領域である。
圧力容器に保持される粒状の材料の重量は、圧力容器が満杯のときに容器内の生体物質の
重量の少なくとも10倍であることが好ましい。これにより粒状の材料には、生体物質の温
度を上昇させてガス化反応を駆動するのに十分な熱量を貯蔵することができる。含水率と
生体物質の種類に応じて、粒状の材料と生体物質の適切な比率を使用すれば、必要な乾燥
と吸熱ガス化ステップを駆動するのに十分なエネルギーが粒状の材料に存在することにな
る。しかし、より多くの熱が必要な場合、この方法は、圧力容器に酸素を注入して水素の
一部を燃焼させること、加熱ガスを加えること、および/または電気加熱を使用すること
も含まれる。
この実施形態において、粒状材料は少なくとも800℃まで加熱でき、例えば850℃まで加熱
することができる。粒状材料が生物起源材料と混合されると、粒状材料は、乾燥およびガ
ス化ステップを実施するのに必要な温度、例えば少なくとも600℃、好ましくは約700℃ま
で生物起源材料を加熱することができる。粒状の材料は、理想的には850℃で、ガス化お
よび水ガスシフトに必要な反応を生じさせるのに十分なエネルギーを含み、圧力容器の内
容物を理想的には700℃および超臨界圧力に残し、水素、二酸化炭素および他のガス状成
分を高圧で除去することを可能にする。これにより、コンプレッサーで圧力を上げること
なく、水素を後続の処理段階に移送することができる。
生体物質の一括処理は、例えば生体物質をカートリッジに装填して、カートリッジを圧力
容器の端にスライドさせることにより、気圧で移動させる方法がある。圧力容器は大きく
重いので、カートリッジは、生体物質を場所から場所へ迅速に移動させる便利な手段とな
る。例えば、カートリッジは、生体物質をトラックなどから積み込める位置まで移動させ
、その後、圧力容器にスライドさせてガス化を開始することができる。
カートリッジを装填する際、加熱された粒状の材料が圧力容器のカートリッジとは反対側
の端部にあることがのぞましい。生体物質が加熱された粒状の材料から圧力容器の反対側
の端にあるため、生体物質は加熱された粒状の材料からガス化を開始するのに十分な熱を
受けないからである。
入ってくる生体物質のバッチの燃焼/酸化は望ましくない。そこで本方法は、加熱された
粒状の材料と生体物質との混合に先立ち、好ましくは圧力容器が閉じられる前と後の両方
において、カートリッジが圧力容器に装填される際に酸素をパージするために、二酸化炭
素または蒸気などの不活性ガスを圧力容器に送り込むこともできる。
粒状の材料と生体物質が混合されると、ガス化反応が始まり、圧力容器内の圧力が徐々に
高まる。ガス化によって生成されるガスは合成ガスである。合成ガスは、水素をH2として
含みうる。
ガス化が継続するが圧力容器内の圧力は超臨界水ガス化に必要な圧力に達することが望ま
しいことから、過度の圧力が発生しないように調整されることがある。超臨界水はより速
い反応速度を実現して水素収率を増加させ、タールやチャーを減少させる水ガスシフトを
促進する。
生体物質の一括処理は、生成される一酸化炭素を効率的に水素に変換するのに十分な高い
含水率を有していない可能性があるため、加熱された粒状の材料と生体物質との混合後ま
たは混合中に、水または蒸気を圧力容器に圧送して完全な水ガスシフト反応を誘導するこ
とをさらに含みうる。
ガス化反応が完了して実質的にすべての生体物質が変換されると、圧力容器内の加圧され
た水素ガスは圧力容器から次の段階(例えばさらなる精製処理や貯蔵)のために排出され
る。水素は、生成されるガスの中で最も軽いため、通常、圧力容器の上部に集まる。その
ため水素が圧力容器から出るようにする前に圧力容器を回転させ、水素が排出される出口
を上部にすることができる。最も重い成分である粒状の材料は底部に存在し、二酸化炭素
や蒸気などの気体は通常、粒状の材料と水素の間に存在する。圧力容器内の圧力と温度に
よっては、様々なガスが圧力容器内で超臨界流体相になることがある。
粒状の材料は酸化カルシウムであってもよいし、酸化カルシウムを主成分とするものであ
ってもよい。ガス化によって発生した二酸化炭素が酸化カルシウムと反応して炭酸カルシ
ウムを生成し、炭素を捕捉することもできる。ガス化反応が終了し、水素を除去した後、
炭酸カルシウムを含む粒状物を加熱(焼成)して炭酸カルシウムから二酸化炭素を放出さ
せ、二酸化炭素を回収して貯蔵することができる。この加熱は圧力容器から炭酸カルシウ
ムを取り出した後に行ってもよいし、より望ましいのは炭酸カルシウムの加熱は、水素が
圧力容器から取り出された後、炭酸カルシウムがまだ圧力容器内にあるうちに行うことで
ある。この加熱により炭酸カルシウムは酸化カルシウムに戻り、次の生体物質のガス化に
備える。二酸化炭素は圧力容器から抽出され、次の生体物質のガス化が始まる前に貯蔵さ
れる。
ガス化後の粒状の材料の加熱が次の生体物質のバッチのガス化の準備のために必要である
ため、酸化カルシウムを使用して二酸化炭素を捕捉して回収のために二酸化炭素を放出す
ることは、最小限であるが余分なエネルギーを消費する可能性がある。例えば、炭酸カル
シウムを含む粒状の材料は、ガス化が完了した後、700℃から900℃まで加熱され、回収の
ために炭酸カルシウムから二酸化炭素を放出し、炭酸カルシウムを900℃で酸化カルシウ
ムに戻し、次のガス化サイクルにおける生体物質の次のバッチのガス化に備えることがで
きる。
したがって圧力容器では、ガスを生成するための生体物質のガス化、生成ガスの水ガスシ
フト、炭素捕獲のすべてを圧力容器内で可能にすることができる。これは、ガス化、水ガ
スシフト、炭素捕獲のために別々の容器を必要とすることが多い既知のプロセスよりもは
るかに単純で効率的である。
本発明の別の(第二の)実施形態によれば、生体物質から水素ガスを製造するための装置
がある。この装置は少なくとも500℃に加熱される粒状の材料を貯蔵するように構成され
た圧力容器と、圧力容器が大気圧にある間に、加熱された粒状の材料とは反対側の圧力容
器の端部に生体物質のバッチを添加するために開閉可能なヘッドと、粒状の材料と生体物
質とを一緒に混合するために圧力容器を回転させるように構成された原動機とを備える。
圧力容器および粒状材料は、本発明の第1の実施形態に関連して記載したのと同じ圧力容
器および粒状材料であってもよい。
この圧力容器は円筒形状でピボットを備え、原動機がピボットを中心に圧力容器を回転さ
せるように構成させることができる。ピボットは円筒形状の長手方向軸に垂直な軸を中心
に圧力容器の回動を可能にする。従って、圧力容器内の材料は圧力容器の回転時に円筒形
状の一端から円筒形状の他端へと繰り返し落下し、圧力容器の内部空間内で加熱された粒
状材料と生物起源材料とを十分に混合することができる。また、2つのピボットには、圧
力容器に流体を導入したり、圧力容器から流体を抽出したりするためのインレットを設け
ることもできる。
本装置は、圧力容器からヘッドが開放されたときに、圧力容器内にスライドするように構
成されたカートリッジを含みうる。カートリッジは、圧力容器から取り外され、ローリー
、クレーン、コンベヤーまたはホッパーから次の生体物質のバッチを装填され、その後生
体物質のガス化のために圧力容器内に再びスライドされる。
圧力容器は、外皮、内皮、および内皮と外皮の間の断熱材からなることが望ましい。断熱
材は、加熱された粒状の材料および生体物質から外部環境への熱の損失を遮断する。圧力
容器は、内皮と圧力容器の頭部との間に膨張継手を含んでいてもよく、外皮が冷たいまま
である間に内皮が加熱される際の相対的な軸方向および半径方向の膨張に対応する。
カートリッジは、カートリッジと内皮との間に環状及び円筒状の空間を残しながら内皮内
を摺動するように構成できる。頭部はガス化前及び/又はガス化中に圧力容器内に流体又
はガスを注入するための、環状及び円筒状の空間への入口を含むこともできる。圧力容器
のヘッドとは反対側のカートリッジの端部は、加熱された粒状の材料及び生体物質の環状
及び円筒状空間への進入を阻止するように構成された環状フィルターでもよい。
カートリッジは、圧力容器のヘッドから繰り返し脱着できるように構成することもできる
。例えばヘッドを圧力容器上で閉じ、カートリッジに生体物質を充填している間に圧力容
器内の粒状の材料を加熱できるようにしてもよい。
圧力容器は容器内に撹拌装置を備えることもできる。この時撹拌装置は粒状材料と生物起
源材料との混合物を撹拌するように構成される。これにより粒状材料と生物起源材料との
混合が改善され、粒状材料から生物起源材料への熱伝達が改善される。これにより反応速
度が向上し、生体物質の各バッチのサイクル時間が短縮され、最終的に水素生成量が増加
する。撹拌装置は、圧力容器の内部空間に突出するバッフルを含んでいてもよく、それに
より圧力容器を回転させる際に混合物がバッフル上を通過する際に、粒状材料と生物起源
材料との混合物を撹拌する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
ここでは本発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。この実施形態は本発明を限定
するものではなく、例示に過ぎない。
図1】本発明の実施形態における圧力容器の概略透視図である。
図2】原動機によって回転するように取り付けられたときの図1の圧力容器の概略透視図である。
図3】圧力容器内に生体物質および粒状の材料を装填するためのカートリッジを含む、図1の圧力容器の概略断面図である。
図4図3のカートリッジに生体物質を装填するために使用されるローリーの概略図である。
図5図3の圧力容器とカートリッジの概略断面図であり、生体物質を入れたカートリッジを圧力容器に装填する前の状態である。
図6図3の圧力容器とカートリッジの概略断面図であり、生体物質を含むカートリッジが圧力容器に装填された後である。
図7図1の圧力容器のヘッド端部を拡大した概略断面図である。
図8図6の圧力容器およびカートリッジの概略断面図である。
図8】粒状材料と生物起源材料とを混合するために圧力容器が逆向きに回転された後の、図6の圧力容器およびカートリッジの概略断面図である。
図9】粒状材料と生物起源材料とをさらに混合するために圧力容器が直立方向に回転された後の、図8の圧力容器およびカートリッジの概略断面図である。および
図10】圧力容器、例えば図1の圧力容器内で生体物質から水素ガスを製造する方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
図は縮尺通りではなく、同一または類似の参照符号は同一または類似の特徴を示す。
発明の詳細

以下、本発明のある実施形態について図1図9を参照して説明する。図1は、圧力容器10
の概略透視図である。圧力容器10は円筒形状を有し、長さが幅の4倍以上である。圧力容
器は円筒形状の外皮12と、一次容器12の一端に設けられた頭部20と、一次容器12の反対側
の端部に設けられた基部20aとから構成される。
ヘッド20はインレットパイプ22から構成され、これは圧力容器10の中心軸AX1(図2参照)
に沿って整列する。このインレットパイプ22は、図1のように圧力容器が直立姿勢にある
ときその最上部に位置することがある。この場合、ヘッド10はベース20aの垂直の上方に
位置する。インレットパイプ22は、圧力容器内で発生した水素ガスの出口として、および
/または、圧力容器内に加熱用ガスを注入するために使用することができる。
以下にさらに説明するが、ヘッド20はリングヘッダ24から構成され、圧力容器から様々な
ガスを注入または抽出するために使用できる。
リングヘッダ24はリング状で、複数のパイプ24aに接続されている。この複数のパイプ24a
は、リングヘッダ24の周囲に等間隔に配置され、リングヘッダ24から圧力容器10の内部10
a(図2参照)に向かって気体を送るために半径方向内側および/または軸方向に延びる。
一次容器12はまたヘッド20に隣接するリングヘッダ19に接続されてもよく、リングヘッダ
19はまた複数のパイプ19bを介して圧力容器から様々なガスを注入または抽出するように
構成できる。リングヘッダー19、24およびインレットパイプ22との間でガスを搬送するた
めに使用する装置は、明瞭化のためにここでは図に示していない。
圧力容器10は、一次容器10aの端部からヘッド20をロックしたり、ロック解除するために
回転可能なブリーチロックリング25を含む。ヘッド20は必要なときにロックを解除して一
次容器10aから取り外すことができる。
圧力容器10はまた、2つのピボットシャフト18から構成できる。この2つのピボットシャフ
ト18は、ピボットシャフト18を中心に圧力容器を保持し回転させるために使用できる。ピ
ボットシャフト18は、一次容器10aの外側に固定でき、好ましくは圧力容器10の長さの中
間にある。図2の概略図は、圧力容器20のピボットシャフト18が軸AX2に沿って整列し、原
動機30aに接続されている状態を示している。原動機は、様々な形状及び構成を取り得る
が、図示の実施形態では、フレーム30と、ピボットシャフト18を回転させ、それによって
圧力容器20を軸AX2を中心に回転させるように構成された油圧モータ32とから構成され得
る。図示のように、回転軸AX2は、圧力容器の円筒形状の長手方向軸AX1に対して垂直であ
ってもよい。原動機は、ピボットシャフトの軸AX2を水平に保持するように構成され、こ
れにより軸AX2を中心とする圧力容器の回転は、圧力容器を垂直面内で回転させ、圧力容
器の内容物は、圧力容器の回転に伴って、圧力容器の一端から他端へと繰り返し落下する

図3の概略図は圧力容器20の断面図であり、圧力容器の内部の詳細が見える。一次容器12
は、圧力容器内部で発生する可能性のある非常に高い圧力に耐えるように構成され、これ
は肉厚の鋼管であってもよい。圧力容器はまた、一次容器12の内部にシース14を備える。
シース14は円筒形であってもよく、好ましくは一次容器12と同軸である。断熱材13の円筒
状の層が、一次容器12とシース14の間の空間を満たしている。シース14は、圧力容器の内
部空間10a内で発生する高温に耐える耐熱鋼層から構成でき、断熱材13は、一次容器12へ
の熱損失を低減するのに役立つ。つまり一次容器12は圧力容器の外皮を画定し、シース14
は圧力容器の内皮を画定する。他の実施形態では、断熱材とシースを多層耐火ライニング
として組み合わせてもよい。圧力容器の内部10aは粒状材料15で部分的に充填されている
。粒状材料は、砂、カンラン石、または有意な熱を蓄えることができる他の不活性で不燃
性の粒子状材料であってもよい。ガス化反応を促進し、水素の収率を向上させるために、
必要に応じて、NiFe2O4などの触媒材料を粒状材料に添加することができる。圧力容器は
、圧力容器内の内部空間10aに突出するバッフル50(図3のみに示す)の形態の撹拌装置を
含んでいてもよい。バッフルは、固定されていてもよいし、可動であってもよいし、全く
実装されていなくてもよい。
ヘッド20はカートリッジ40に接続でき、カートリッジ40は圧力容器のシース14の内外に摺
動可能であってもよい。カートリッジ40は、円筒形状の側壁41と、円筒40の一端に設けら
れた基部42とからなり、基部42はヘッド20によって保持される。円筒状の側壁41は、シー
ス14の内側に、シース14と同軸に収まることができる。側壁41の外径はシース14の内径よ
り小さく、カートリッジ40の側壁41と圧力容器のシース14との間に環状で円筒状の空間44
を残すことができる。
カートリッジの側壁41は、基部41とは反対側のカートリッジの端部に配置された環状フィ
ルタ45で終端させることもできる。環状フィルタ45は、環状及び円筒状空間44と内部10a
との間にフィルタを形成する。環状フィルター45は、環状及び円筒状空間44と内部10aと
の間の気体の通過を許容するが、粒状材料又は生物起源材料のような粒子の通過は許容し
ないように、小さな開口を有するように構成され得る。

図7の拡大概略図をみると、ヘッド20は、外側ドーム26と内側カップ27とから構成できる
ことがわかる。内側カップ27は外側ドーム26の内側に配置されてもよく、内側カップ27と
外側ドーム26は、熱絶縁材料23によって互いに間隔を空けて配置されてもよい。内側カッ
プ27は、カートリッジ40の基部42を保持してもよい。いくつかの実施形態では、カートリ
ッジ40は、基部42を内側カップ27から引き出すことによってヘッド20から分離される。他
の実施形態では、カートリッジ40とヘッド20とは、永久的に固定されていてもよい。入口
22は、外側ドーム26、断熱材23、および内側カップ27を貫通し、圧力容器内の内部空間10
aに開口するパイプ22によって構成される。
外側ドーム26は、ドームの周縁部において半径方向外側に延びるフランジ21からなり、一
方で一次容器12はヘッド20が位置する一次容器の端部においてフランジ11から構成される
。このフランジ11は、一次容器の端部において半径方向の外側に延び、ヘッド20のフラン
ジ21と略接するように構成されている。ブリーチロックリング25は、一次容器12とヘッド
20を一緒にロックするために、ブリーチロックリング25のある角度回転でフランジ11とフ
ランジ21に重なる。ブリーチロックリング25は、ヘッド20と一次容器12を互いから遠ざけ
るように作用する圧力容器内に形成される高圧下で、ロック解除のために回転しないよう
に傾斜面を構成する。Oリング28は、ヘッド20と一次容器12との間の接合部をシールし、
ガスの漏れを防止する。他の実施形態では、ブリーチロック装置は、ボルト締めフランジ
や油圧クランプ式フランジなどの他のタイプのシール装置で代用できる。

ガス化反応中は断熱材13により、シース14は一次容器12よりもはるかに高い温度に達する
。したがって、シース14は一次容器12に対して軸方向に熱膨張する。この膨張は、ヘッド
20に隣接するシース14の端部に設けられたベローズ部14aによって収容される。ベローズ
部14aは、シース14が一次容器12に対して相対的に加熱および冷却されると、それぞれ軸
方向に収縮および膨張する。

リングヘッダ24からの複数のパイプ24aは、外側ドーム26、断熱材23及び内側カップ27を
通過し、リングヘッダ24から環状及び円筒状の空間44への通路を提供する。リングヘッダ
19からの複数のパイプ19aも、リングヘッダ19から環状及び円筒状空間44への通路を提供
する。環状・円筒状の空間44は環状フィルター45(図3参照)で終端している。したがっ
て、気体はリングヘッダー19または24、環状・円筒状の空間44、および環状フィルター45
を介して、圧力容器の内部10aに注入することができる。図3に示すように、圧力容器の基
部20aは、気体が圧力容器から注入または抽出され得るインレットパイプ20bから構成され
得る。インレットパイプ22、インレットパイプ20b、リングヘッダ19およびリングヘッダ2
4の4つ全てを、圧力容器の内部10aからガスを導入または抽出するために使用してもよい
。ガスは、パージガス、加熱ガス、または合成ガスを含むことができる。ガスは、蒸気、
二酸化炭素、窒素、酸素、合成ガス、水素などである。

次に、図4から図8、および図9のフロー図を参照して、水素を生成するための装置の使用
方法について説明する。図9に示す第1のステップ101では、圧力容器内の粒状材料15を少
なくとも500℃、例えば850℃の高温まで加熱することができる。加熱は、例えば、入口22
および20bを介して圧力容器を通して加熱ガスを循環させることによって、または、特に
粒状材料が前のガス化サイクルから既に高温である場合には、圧力容器内のガスの燃焼に
よって達成され得る。例えば、前のガス化サイクルの後、粒状の材料の温度は650℃であ
り、次のガス化サイクルのために850℃まで加熱する必要がある。
最初のガス化サイクルのために、粒状の材料の温度を周囲温度から上げるのに必要な熱量
は相当なものであり(粒状の材料として砂を使用する場合、約700kJ/kg)、加熱は密閉圧
力容器内に加熱ガスを循環させることによって行うのが最適である。周囲温度からのスタ
ートアップの間、静的な砂層を加熱することは特に非効率的であるため、例えば圧力容器
内または圧力容器外の流動床で粒状の材料を流動化または転動させることにより、粒子間
相互作用を最大にして温度を上げることが望ましい。
第2のステップ102では、生体物質をカートリッジ40に添加することができる。第2のステ
ップ102は、ステップ101の前、後、または同時に行われてもよい。図4の概略図は、カー
トリッジ40とヘッド20が圧力容器10から取り出された状態を示している。カートリッジ40
は倒立位置に移動しており、その状態で、生体物質210のバッチがローリー200から、ヘッ
ド20とは反対側にあるカートリッジの開放端に投入される。生体物質210は、例えば、木
材チップ/ペレット、または家庭廃棄物や動物の糞のような他の生体物質である。

第3のステップ103では、生体物質210を入れたカートリッジ40を圧力容器10に挿入する。
最初に、圧力容器は、すべての粒状の材料15が圧力容器の底部20aに向かって落下するよ
うに、直立位置に配向され得る。次に、図5に示すように、圧力容器10およびカートリッ
ジ40を水平にし、両者を大気に開放して大気圧にする。次に、図6に示すように、カート
リッジ40を圧力容器10内にスライドさせ、ブリーチロックリング25を回転させてヘッド20
を一次容器12にロックし、カートリッジ40を圧力容器10内にロックすることができる。圧
力容器10およびカートリッジ40は水平に配向されているので、粒状材料15はまだ生物起源
材料210と混合されておらず、したがって粒状材料15からの熱は直ちに生物起源材料の燃
焼/酸化をもたらさない。これは、ヘッド20が一次容器12にロックされたときに圧力容器
内に取り込まれた大気中の酸素の存在にもかかわらずである。
ステップ104において、圧力容器の内部10a内の大気は、パージガスを送り込むことによっ
て圧力容器10からパージすることも可能である。図7を参照すると、パージガスは、リン
グヘッダー19および24に送り込まれ、パイプ19aおよび24aに沿って移動し、環状および円
筒状空間44に沿って移動し、環状フィルター45(明瞭化のために図3のみに示されている
)を介して内部10aに送り込まれる。パージガスは、大気空気を入口22および20bから強制
的に追い出し、それによって大気空気およびその酸素を除去することができる。目的は水
素へのガス化であり、パージガスによる大気とその酸素の除去は燃焼を抑制するため、生
体物質の燃焼は望ましくないことが理解されよう。パージガスは、好ましくは不活性ガス
、例えば窒素または二酸化炭素である。ステップ104はステップ103と同時に行われ、圧力
容器へのカートリッジの挿入中に圧力容器が酸素からパージされるようにしてもよい。カ
ートリッジが圧力容器に挿入される前に、パージガスを圧力容器に注入して酸素をパージ
することもできる。
圧力容器10から酸素がパージされ、カートリッジ40が圧力容器内にロックされると、ステ
ップ105で圧力容器を回転させて粒状材料15を生物起源材料210と混合し、それによって生
物起源材料210を急速に加熱して生物起源材料の温度を上昇させ、生物起源材料から水分
を蒸発させて過熱し、ガス化を開始することができる。図8は、圧力容器10が原動機30a(
図3参照)によって倒立位置に回転させられたときの圧力容器10を示し、図9は、圧力容器
10が直立位置に回転させられたときの圧力容器10を示す。原動機30aは、直立位置と倒立
位置との間で圧力容器を繰り返し180度回転させ、図8及び図9に示すように、粒状物15と
生体物質210とを混合することができる。原動機30aは、圧力容器を直立位置から倒立位置
まで時計回りに180度回転させ、次に倒立位置から直立位置まで反時計回りに180度回転さ
せ、これを繰り返してもよい。この結果、一方向(時計回りまたは反時計回り)に360度
回転する場合に比べて、混合が改善される可能性があり、また、圧力容器の様々な入口お
よびリングヘッダーに接続される配管(図示せず)への負担も軽減される。
バッフル50(図3参照)を使う実施形態では、粒状材料15と生物起源材料210との混合物は
、圧力容器10の回転中に圧力容器10の一端から他端へ移動する際にバッフル50によって分
流され、バッフル50を越えて落下し、粒状材料15と生物起源材料210との混合を改善する

混合が起こると、粒状の材料が生体物質の温度を700℃付近まで上昇させ、生体物質がど
んどんガス化する。生成されたガスは、圧力容器内の圧力を超臨界水ガス化に必要な22.0
64MPa以上に安定的に上昇させる。水ガスシフト反応が起こるための追加の水を供給する
ために、リングヘッダー19または24を介して圧力容器内に蒸気を送り込むことができる。
また、必要な温度に到達し維持するために追加の熱が必要な場合には、例えば高温の二酸
化炭素や窒素などの加熱ガスを送り込むことも可能である。ガス化温度を維持するために
、水素の一部を燃焼させるために酸素を送り込むこともできる。また、粒状の材料と生体
物質の混合物を攪拌し、混合と熱伝達を改善し、ガス化を促進するために、ガスを送り込
むこともできる。
ガス化反応が完了すると、圧力容器は直立位置に保持され、粒状の材料15はすべて底部20
aに向かって落下する。その後、ステップ106で、水素ガスは入口22から排出され、実施さ
れる可能性のあるさらなる処理段階へと進む。合成ガスの他の成分も排出され、方法はス
テップ101に戻り、さらなるガス化サイクルを実行する。
粒状材料が、ステップ105におけるガス化中に生成された二酸化炭素と反応することによ
って酸化カルシウムから変換された炭酸カルシウムからなる場合、さらなるガス化サイク
ルにおいて粒状材料を加熱するステップ101は、炭酸カルシウムを酸化カルシウムおよび
二酸化炭素に戻す熱分解をもたらす。したがって、ステップ101は、例えば入口22を通し
て圧力容器から二酸化炭素を排出し、二酸化炭素を貯蔵することをさらに含んでいてもよ
い。このように、粒状材料中の酸化カルシウムを使用することにより、大きなエネルギー
コストをかけずに炭素捕捉を行うことができる。
生体物質210に金属などの汚染物質が含まれていた場合、それらは、粒状の材料15が洗浄
または交換のために除去されるまで、その後のサイクルのために粒状の材料15に加わる。
本発明の範囲に属する、説明された実施形態の他の多くの派生系については、当業者には
明らかであろう。例えば、ガス用インレットパイプは、図示の実施形態では圧力容器の端
部に配置されているが、代替の実施形態では、ピボットに隣接して、またはピボット内に
、より中央に配置することも可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】