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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-28
(54)【発明の名称】インスタント偏光顕微鏡
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/36 20060101AFI20250220BHJP
   G01N 21/21 20060101ALI20250220BHJP
【FI】
G02B21/36
G01N21/21 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024546204
(86)(22)【出願日】2023-02-03
(85)【翻訳文提出日】2024-10-01
(86)【国際出願番号】 US2023061999
(87)【国際公開番号】W WO2023150727
(87)【国際公開日】2023-08-10
(31)【優先権主張番号】63/306,604
(32)【優先日】2022-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524289879
【氏名又は名称】ザ マリン バイオロジカル ラボラトリー
(71)【出願人】
【識別番号】500125788
【氏名又は名称】ユニバーシティ、オブ、サウサンプトン
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF SOUTHAMPTON
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】マイケル シュリバク
(72)【発明者】
【氏名】ピーター カザンスキー
【テーマコード(参考)】
2G059
2H052
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059EE01
2G059EE02
2G059EE05
2G059FF01
2G059FF03
2G059JJ19
2G059JJ20
2G059KK04
2G059MM01
2H052AA01
2H052AB01
2H052AC04
2H052AC05
2H052AC33
2H052AC34
2H052AD31
2H052AD34
2H052AF14
(57)【要約】
偏光顕微鏡は、試料を照らすように構成された光源と、試料のイメージを撮影するように構成されたイメージセンサと、を備える。さらに、偏光顕微鏡は、光源と試料の間に配置された第1の円偏光子を備える。モザイク式複屈折マスクが、試料とイメージセンサの間に配置されている。さらに、偏光顕微鏡は、該マスクとイメージセンサの間に配置された第2の偏光子を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光顕微鏡であって、
試料を照らすように構成された光源と、
前記試料のイメージを撮影するように構成されたイメージセンサと、
前記光源と前記試料の間に配置された第1の円偏光子と、
前記試料と前記イメージセンサの間に配置されたモザイク式複屈折マスクと、
前記マスクと前記イメージセンサの間に配置された第2の偏光子と、
を備える偏光顕微鏡。
【請求項2】
前記第2の偏光子及び前記モザイク式複屈折マスクは、前記イメージセンサに取付けられている、請求項1に記載の顕微鏡。
【請求項3】
前記第2の偏光子及び前記モザイク式複屈折マスクは、前記イメージセンサと共役な平面内に配置されている、請求項1に記載の顕微鏡。
【請求項4】
前記顕微鏡は、前記試料と前記モザイク式複屈折マスクの間に配置された対物レンズをさらに備えている、請求項1に記載の顕微鏡。
【請求項5】
前記第2の偏光子は、円偏光子を含んでいる、請求項1に記載の顕微鏡。
【請求項6】
前記第2の偏光子は、右巻きの円偏光子を含んでおり、かつ、前記第1の偏光子は、左巻きの円偏光子を含んでいる、請求項1に記載の顕微鏡。
【請求項7】
前記モザイク式複屈折マスクのスーパーピクセルは、0~0.25λのリタデーション範囲を有する、第1の正方形、第2の正方形、第3の正方形、及び第4の正方形を備えている、請求項1に記載の顕微鏡。
【請求項8】
前記第1の正方形は複屈折性ではなく、前記第2の正方形、前記第3の正方形、及び前記第4の正方形は、0.01λ~0.25λの範囲にある等しいリタデーションを有しており、かつ、前記第2の正方形は、0゜であるスロー軸の向きを有しており、前記第3の正方形は60゜であるスロー軸の向きを有しており、かつ前記第4の正方形は120゜であるスロー軸の向きを有している、請求項7に記載の顕微鏡。
【請求項9】
前記第1の正方形は複屈折性ではなく、前記第2の正方形、前記第3の正方形、及び前記第4の正方形は、0.01λ~0.25λの範囲にある等しいリタデーションを有しており、かつ、前記第2の正方形は、0゜であるスロー軸の向きを有しており、前記第3の正方形は45゜であるスロー軸の向きを有しており、かつ前記第4の正方形は90゜であるスロー軸の向きを有している、請求項7に記載の顕微鏡。
【請求項10】
前記第1の正方形、前記第2の正方形、前記第3の正方形、及び前記第4の正方形は、0.01λ~0.25λの範囲にある等しいリタデーションを有しており、かつ、前記第1の正方形は、0゜であるスロー軸の向きを有しており、前記第2の正方形は45゜であるスロー軸の向きを有しており、前記第3の正方形は90゜であるスロー軸の向きを有しており、かつ前記第4の正方形は135゜であるスロー軸の向きを有している、請求項7に記載の顕微鏡。
【請求項11】
前記モザイク式複屈折マスクは、スーパーピクセルのセットを2つ備えている、請求項1に記載の顕微鏡。
【請求項12】
前記モザイク式複屈折マスクは、石英基板の内部に向けられたレーザパルスによって作製されている、請求項1に記載の顕微鏡。
【請求項13】
前記モザイク式複屈折マスクは、ナノ構造化された表面によって形成されている、請求項1に記載の顕微鏡。
【請求項14】
前記モザイク式複屈折マスクは、複屈折フィルムから作製されたマイクロタイルから構成されている、請求項1に記載の顕微鏡。
【請求項15】
インスタントイメージングフルストークス偏光計であって、
偏光子及びイメージセンサを備えた偏光イメージセンサと、
前記偏光イメージセンサに近位のモザイク式複屈折マスクであって、前記モザイク式複屈折マスクは、複数の複屈折スーパーピクセルを備えており、かつ各複屈折スーパーピクセルは、複屈折性を有さない1つ以上のピクセル及び1つ以上の複屈折ピクセルから形成されている、モザイク式複屈折マスクと、
前記偏光イメージセンサに動作的に結合されたプロセッサであって、前記プロセッサは、複数の前記複屈折スーパーピクセルによって生成される複数の強度信号を処理して、前記イメージセンサによって撮影されたイメージのストークスパラメータを特定するように構成されている、プロセッサと、
を備える、インスタントイメージングフルストークス偏光計。
【請求項16】
前記偏光子は、複数の偏光スーパーピクセルを備えるモザイク式偏光マスクを備えており、かつ、各偏光スーパーピクセルは複数のマイクロ偏光子を備えている、請求項15に記載の偏光計。
【請求項17】
前記偏光子は円偏光子を含んでいる、請求項15に記載の偏光計。
【請求項18】
前記モザイク式複屈折マスクは、前記イメージセンサ及び前記偏光子のうち1つ以上に取付けられている、請求項15に記載の偏光計。
【請求項19】
前記モザイク式複屈折マスクは、スーパーピクセルのセットを2つ備えている、請求項15に記載の偏光計。
【請求項20】
各複屈折スーパーピクセルは、6つのピクセルを含んでいる、請求項15に記載の偏光計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願に対する相互参照)
本出願は、2022年2月4日に出願された米国仮特許出願第63/306604号の優先権の利益を主張する。該出願の内容全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(連邦政府後援研究に関する声明)
本発明は、アメリカ国立衛生研究所(National Institutes of Health)によって与えられた、GM101701号の政府支援を用いて行われた。政府は、本発明に特定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
偏光顕微鏡法(PLM)は、ヘンリー・タルボットによる1834年の最初の偏光顕微鏡の開発以来、2世紀にわたって広く用いられてきた。PLMシステムは、試料が複屈折性の分子又は構造を含んでいる場合には、不可視であるはずのその試料にコントラストを導入する。PLM顕微鏡は、偏光プローブビームを生成し、調査中の試料によって導入された偏光の方位及び/又は楕円率の変化を、色及び/又は強度の変化に変換し、地質学者、物理学者、化学者、生物学者及びエンジニアが複屈折性試料を研究することを可能にする。PLM顕微鏡は、元々岩石の薄片の記載岩石学的調査のために構成されたものだが、近年では、化学、セラミック技術、金属組織学、犯罪検出、軍事情報、生物学、及び医学の分野における重要性が増している。
【発明の概要】
【0004】
例示的な偏光顕微鏡は、試料を照らすように構成された光源と、試料のイメージを撮影するように構成されたイメージセンサと、を備える。さらに、偏光顕微鏡は、光源と試料の間に配置された第1の円偏光子を備える。モザイク式複屈折マスクが、試料とイメージセンサの間に配置されている。さらに、偏光顕微鏡は、該マスクとイメージセンサの間に配置された第2の偏光子を備える。
【0005】
一実施形態では、第2の偏光子及びモザイク式複屈折マスクは、イメージセンサに取付けられている。他の実施形態では、第2の偏光子及びモザイク式複屈折マスクは、イメージセンサと共役な平面内に配置されている。さらに、このシステムは、試料とモザイク式複屈折マスクの間に配置された対物レンズを備える場合もある。他の実施形態では、第2の偏光子は、円偏光子を含んでいる。一実施形態では、第2の偏光子は、右巻きの円偏光子を含んでおり、かつ、第1の偏光子は、左巻きの円偏光子を含んでいる。
【0006】
一実施形態では、モザイク式複屈折マスクのスーパーピクセルは、0~0.25λのリタデーション範囲を有する、第1の正方形(又はピクセル)、第2の正方形(又はピクセル)、第3の正方形(又はピクセル)、及び第4の正方形(又はピクセル)を備えている。このような実施形態の一実装例では、第1の正方形は複屈折性ではなく、第2の正方形、第3の正方形、及び第4の正方形は、0.01λ~0.25λの範囲にある等しいリタデーションを有している。さらに、第2の正方形は、0゜であるスロー軸の向きを有しており、第3の正方形は60゜であるスロー軸の向きを有しており、かつ第4の正方形は120゜であるスロー軸の向きを有している。代替的には、第2の正方形は、0゜であるスロー軸の向きを有しており、第3の正方形は45゜であるスロー軸の向きを有しており、かつ第4の正方形は90゜であるスロー軸の向きを有している。他の代替的な構成では、第1の正方形、第2の正方形、第3の正方形、及び第4の正方形は、0.01λ~0.25λの範囲にある等しいリタデーションを有しており、かつ、第1の正方形は、0゜であるスロー軸の向きを有しており、第2の正方形は45゜であるスロー軸の向きを有しており、第3の正方形は90゜であるスロー軸の向きを有しており、かつ第4の正方形は135゜であるスロー軸の向きを有している。
【0007】
一実施形態では、モザイク式複屈折マスクは、スーパーピクセルのセットを2つ備えている。他の実施形態では、モザイク式複屈折マスクは、石英基板の内部に向けられたレーザパルスによって作製されている。代替的には、モザイク式複屈折マスクは、ナノ構造化された表面によって形成されている場合もある。また、モザイク式複屈折マスクは、複屈折フィルムから作製されたマイクロタイルから構成されている場合もある。
【0008】
例示的なインスタントイメージングフルストークス偏光計(instant imaging full Stokes polarimeter)は、モザイク式偏光マスク及びイメージセンサを備えた偏光イメージセンサを備える。さらに、この偏光計は、偏光イメージセンサに近位のモザイク式複屈折マスクを備える。モザイク式複屈折マスクは、複数の複屈折スーパーピクセルを備えており、かつ各複屈折スーパーピクセルは、複屈折性を有さない1つ以上のピクセル及び1つ以上の複屈折ピクセルから形成されている。さらに、偏光計は、偏光イメージセンサに動作的に結合されたプロセッサを備える。プロセッサは、イメージセンサのスーパーピクセルによって生成される複数の強度信号を処理して、イメージセンサによって撮影されたイメージのストークスパラメータを特定するように構成されている。
【0009】
一実施形態では、偏光子は、複数の偏光スーパーピクセルを備えるモザイク式偏光マスクを備えており、かつ、各偏光スーパーピクセルは複数のマイクロ偏光子を備えている。他の実施形態では、偏光子は円偏光子を含んでいる。他の実施形態では、モザイク式複屈折マスクは、イメージセンサ及び偏光子のうち1つ以上に取付けられている。一実施形態では、モザイク式複屈折マスクは、スーパーピクセルのセットを2つ備えている。他の実施形態では、各複屈折スーパーピクセルは、6つのピクセルを含んでいる。
【0010】
当業者には、本発明の他の原理的な特徴及び有利な点が、以下の図面、詳細な説明、及び添付の特許請求の範囲を参照した際に、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明の例示的な実施形態は、添付の図面を参照しつつ、以下に記述される。
【0012】
図1A】例示的な一実施形態に従う、第1のモザイク式複屈折マスクのパターンを示している。
図1B】例示的な一実施形態に従う、スーパーピクセルと呼称され得る4つのモザイク正方形の基本グループの一例を示している。本図で、ハッシュマーク(hash mark)は、第1のモザイク式複屈折マスクのリターダンス及びスロー軸の向きを示している。
図2A】例示的な一実施形態に従う、第2のモザイク式複屈折マスクのパターンを示している。
図2B】例示的な一実施形態に従う、スーパーピクセルと呼称され得る4つのモザイク正方形の基本グループの一例を示している。本図で、ハッシュマークは、第2のモザイク式複屈折マスクのリターダンス及びスロー軸の向きを示している。
図3A】例示的な一実施形態に従う、第3のモザイク式複屈折マスクのパターンを示している。
図3B】例示的な一実施形態に従う、第3のモザイク式複屈折マスクのリターダンス及びスロー軸の向きを示す色を有する、4つのモザイク正方形の基本グループの一例を示している。
図4A】例示的な一実施形態に従う、第4のモザイク式複屈折マスクのパターンを示している。
図4B】例示的な一実施形態に従う、第4のモザイク式複屈折マスクのリターダンス及びスロー軸の向きを示す色を有する、4つのモザイク正方形の基本グループの一例を示している。
図5A】例示的な一実施形態に従う、2つの基本グループを用いて実装された第1のモザイク式複屈折マスクの構成の一例を示している。
図5B】例示的な一実施形態に従う、4つ(2×2)のモザイク正方形を有する基本グループの4つの変形を示している。
図5C】例示的な一実施形態に従う、16(4×4)のモザイク正方形を有する基本グループを示している。
図6】例示的な一実施形態に従う、イメージセンサ(フォトダイオードアレイ)に直接取付けられたモザイク式複屈折マスク及び円偏光子を有するインスタント偏光顕微鏡(instant polarized light microscope)の一例を示している。
図7】例示的な一実施形態に従う、モザイク式複屈折マスク及び円偏光子がイメージセンサと共役な平面(即ち、中間的な結像面)内に配置されている、インスタント偏光顕微鏡の一例を示している。
図8】例示的な一実施形態に従う、反射光路を有するインスタント偏光顕微鏡の一概略図である。
図9】例示的な一実施形態に従う、レーザパルスによって石英基板の内部に書き込まれた(ナノ加工された)モザイク式複屈折マスクを示している。
図10】例示的な一実施形態に従う、モザイク式複屈折マスク及び偏光イメージセンサを有するインスタント偏光顕微鏡を示している。
図11】例示的な一実施形態に従う、フルストークス偏光パラメータのイメージングのための、第1のモザイク式複屈折マスクのパターンを示している。
図12】例示的な一実施形態に従う、フルストークス偏光パラメータのイメージングのための、第2のモザイク式複屈折マスクのパターンを示している。
図13図13Aは、例示的な一実施形態に従う、フルストークス偏光パラメータのイメージングのための、第3のモザイク式複屈折マスクのパターンを示している。図13Bは、例示的な一実施形態に従う、モザイク式複屈折マスクの2つのスーパーピクセルを示している。図13Cは、例示的な一実施形態に従う、モザイク式複屈折マスクの2つのスーパーピクセルによって生成される、6つの信号の2つのセットを示している。
図14】例示的な一実施形態に従う、顕微鏡イメージングシステムを実装するためのコンピューティングシステムのブロック図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ここ30年にわたって、偏光顕微鏡の測定プロセスを自動化してその分析力をより完全に利用するために、幾つかのスキームが提案されてきた。これらのスキームは、従来の補償器の使用を常に含んでおり、これは、コンピュータ制御で回されるか、又はポッケルスセル、ファラデー回転子、及び液晶可変リターダー等の電気光学変調器によって置き換えられる。代替的に、幾つかの従来のシステムは、イメージングビームを分割し、同時に複数のイメージを撮影し、異なる偏光状態について各々を分析する。また、これらのスキームは、光電子増倍管又はデジタルカメラ等の電子光検出器を用いた定量的な強度測定も含んでいる。さらに最近になると、モザイク式偏光マスクを搭載した電荷結合素子(CCD)チップを用いる定量的インスタント偏光顕微鏡(PLM)が利用可能になった。これらの従来のPLMは、直線偏光設定を用いた4フレームアルゴリズムを用いている。しかしながら、このアプローチは、細胞分裂の紡錘体、コラーゲン繊維、光情報担体のナノ加工構造等の複屈折性の弱いサンプルの測定を含むシナリオにおいては、信号対雑音比が本質的に低い。さらに、従来のPLMは、顕微鏡の偏光軸に対して限られた範囲の配向を有する異方性構造を明らかにすることができるのみである。さらに、従来の補償器の使用は、例えば複屈折性等の光学異方性の測定のために膨大な時間を要する。
【0014】
本発明者は、楕円偏光設定を用いるアルゴリズムを提案し、単一又は二重の液晶偏光状態発生器を有する2つのタイプの高感度な定量的PLMを作り出した。これらのPLMは、LC-Polscopeと呼称され、全視野にわたって、すべての複屈折軸の向きについて、高感度(例:0.02nmの複屈折リタデーション)で、高解像度(例:0.2μm)で、かつはやい時間間隔(例:1秒)で、複屈折微細構造を同時に測定する。
【0015】
本明細書には、LC-Polscopeと同じ高感度を提供するインスタント偏光顕微鏡が記載されている。しかしながら、ここで提案されたインスタント偏光顕微鏡は、イメージ獲得の間に試料構造の動きによって引き起こされるアーティファクトを免れている。また、提案された顕微鏡は、既存のシステムよりもロバスト性がありかつ安価であり、これは、例示的な実施形態では、それが電子コントローラを有する液晶光学素子を利用することがないからである。また、提案された顕微鏡は、液晶素子が不在であることにより、既存のシステムよりも、より広いスペクトルレンジで、かつ大幅に厳しい環境条件において、使用することも可能である。提案された顕微鏡は、科学、教育、及び産業における大量生産及び広範な使用によく適している。また、提案された顕微鏡は、それは液晶光学素子のリタデーションのドリフトによって引き起こされる再較正を除外するものなので、ユーザフレンドリーである。
【0016】
例示的な実施形態では、提案されたインスタント偏光顕微鏡は、モザイク式複屈折マスク及び偏光子を含む複屈折アセンブリを利用している。モザイク式複屈折マスクは、一実施形態においては4つの近接した円偏光フィルタを備え得る。他の実施形態では、モザイク式複屈折マスクは、3つの近接した円偏光フィルタと、1つの円偏光フィルタとを備え得る。本発明者は、二次元リターダンスマップの計算のための特定のアルゴリズムを用いて機能するように設計されたモザイク式マスクの、様々な基本的な構成を提案している。モザイク式マスクを示す(以下で述べられる)図面においては、1つの複屈折モザイク正方形が、イメージセンサ上の1つのピクセルに対応している。
【0017】
提案されたモザイク式複屈折マスクは、従来のマスクとは複数の点で異なっている。例えば、幾つかの偏光イメージセンサが、直線偏光子モザイク式マスク及びフォトダイオードアレイによって作り出される。このようなマスクでは、ワイヤーグリッド直線偏光子を有しかつ0°、45°、90°、及び135°を向いた透過面を有する、4つのピクセルが存在する。以下でより詳細に論じられるように、提案されたモザイク式複屈折マスクは、このような従来のシステムとは、構成、リタデーション、及びスロー軸の向きにおいて異なっている。
【0018】
提案されたモザイク式複屈折マスクは、複数のやり方で作製され得る。例えば、マスクは、レーザパルスによって石英基板の内側に書き込まれ(ナノ加工され)得る。また、マスクは、ナノ構造化された表面、パターンを有する液晶アレイ、パターンを有するフォトニック結晶アレイによって形成される場合もあれば、又は複屈折フィルムから作製されたマイクロタイルから構成される場合もある。
【0019】
図1は、第1のモザイク式マスクの構成を示している。具体的には、図1Aは、例示的な一実施形態に従う、第1のモザイク式複屈折マスクのパターンを示している。図1Bは、例示的な一実施形態に従う、スーパーピクセルと呼称され得る4つのモザイク正方形の基本グループの一例を示している。本図で、ハッシュマークは、第1のモザイク式複屈折マスクのリターダンス及びスロー軸の向きを示している。図中において、デルタ記号はリタデーションを示しており、プサイ記号はスロー軸の向きを示している。図1の実施形態においては、マスクの空の/白い正方形は、複屈折性ではなく、0nmのリタデーションを有している。水平方向の直線を有する正方形は、20nm(~0.03λ)のリタデーション及び0゜のスロー軸を有しており、正方向に傾斜した直線を有する正方形は、20nmのリタデーション及び60゜のスロー軸を有しており、かつ、負方向に傾斜した直線を有する正方形は、20nmのリタデーション及び120゜のスロー軸を有している。図1のモザイク式マスクは、新しい修正された対称的な3フレームアルゴリズム及び追加的な消光設定を用いて機能するように設計されている。
【0020】
図2Aは、例示的な一実施形態に従う、第2のモザイク式複屈折マスクのパターンを示している。図2Bは、例示的な一実施形態に従う、第2のモザイク式複屈折マスクのリターダンス及びスロー軸の向きを示す色を有する、4つのモザイク正方形の基本グループの一例を示している。提案された第2のモザイク式複屈折マスクは、対称的な4フレームアルゴリズムを用いて機能するように設計されている。図示されているように、マスクのスーパーピクセルは、20nm(~0.03λ)のリタデーションを有する4つのピクセルを備えている。ハッチパターンの方向は、0゜、45゜、90゜、及び135゜であるスロー軸の向きφを示している。
【0021】
図3Aは、例示的な一実施形態に従う、第3のモザイク式複屈折マスクのパターンを示している。図3Bは、例示的な一実施形態に従う、第3のモザイク式複屈折マスクのリターダンス及びスロー軸の向きを示す色を有する、4つのモザイク正方形の基本グループの一例を示している。例示的な一実施形態においては、図3Aのモザイク式複屈折マスクは、定量的インスタント偏光顕微鏡において使用されるために、偏光イメージセンサ(例:Sonyの偏光イメージセンサ)に追加される場合がある。この設計は、円偏光子の使用を含まない。図3Bにおいて示されているように、マスクのスーパーピクセルは、0.25λのリタデーションを有する4つのピクセルを含んでいる。スーパーピクセルのスロー軸の向きφは、第1のピクセル位置300においてφ=5゜であり、第2のピクセル位置305においてφ=50゜であり、第3のピクセル位置310においてφ=95゜であり、かつ、第4のピクセル位置315においてφ=140゜である。
【0022】
図4Aは、例示的な一実施形態に従う、第4のモザイク式複屈折マスクのパターンを示している。図4Bは、例示的な一実施形態に従う、第4のモザイク式複屈折マスクのリターダンス及びスロー軸の向きを示す色を有する、4つのモザイク正方形の基本グループの一例を示している。図4の実施形態において、マスクの白い正方形は、複屈折性ではない。マスクのスーパーピクセルは4つのピクセルを含んでおり、そのうち3つは20nm(~0.03λ)のリタデーションを有する影の付いたピクセルであり、かつ、(第1のピクセル位置400にある)白いピクセルは、リタデーションを有していない。スーパーピクセルのスロー軸の向きは、第2のピクセル位置405では0゜であり、第3のピクセル位置410では45゜であり、かつ、第4のピクセル位置415では90゜である。提案された第3のモザイク式複屈折マスクは、消光設定を備えた非対称な4フレームアルゴリズムを用いて機能するように設計されている。このアルゴリズムは感度がより低くなっており、その感度は試料の向きに依存することは、注意されたい。代替的な実施形態では、4フレームアルゴリズムを用いて機能する追加的なモザイク式複屈折マスクの構成が用いられ得る。2フレーム、3フレーム、及び5フレームのアルゴリズムのための追加的なマスクの構成を作り出すことも可能であるが、そのような構成は最適なものであるとは考えられず、追加的な利益をもたらすことが発見されているわけでもない。
【0023】
ベイヤーカラーフィルタアレイ(例:赤フィルタ、青フィルタ、そして2つの緑フィルタ)と同様に、提案された複屈折マスクは多くの多様なやり方で実装され得る。例えば、図5Aは、例示的な一実施形態に従う、2つの基本グループを用いて実装された第1のモザイク式複屈折マスクの構成の事例を示している。小さい方のグループは2×2のピクセル領域をカバーしており、大きい方のグループは4×4のピクセル領域をカバーしている。従って、このマスクは2つのモードで機能することができる、即ち、(1)より多くの光が利用可能であるときの、高解像度のモード、及び(2)照光が弱いときの、低感度のモード、の2つのモードではたらくことができる。図5Bは、例示的な一実施形態に従う、4つ(2×2)のモザイク正方形を有する基本グループの4つの変形を示している。図5Cは、例示的な一実施形態に従う、16(4×4)のモザイク正方形を有する基本グループを示している。図5の実施形態では、白い正方形500は複屈折性ではなく、第1の影付き(例:赤色の)正方形505、第2の影付き(例:緑色の)正方形510、及び第3の影付き(例:青色の)正方形515は、20nm(~0.03λ)のリターダンスを有しており、かつ、それぞれ0゜、60゜、及び120゜のスロー軸の向きを有している。図示されているように、隣り合うモザイク正方形は、組み合わせられて、より大きな1つのユニットを形成することができる。
【0024】
モザイク式複屈折マスクを有するインスタント偏光顕微鏡の原理的なスキームが、以下に記載される。例示的な一実施形態では、提案されたモザイク式複屈折マスクは、偏光顕微鏡内で、直交する円偏光子又は円偏光子に近い偏光子同士の間に配置される。モザイク正方形は、イメージセンサ上に直接配置されるか、又はセンサと共役な平面内に配置されるかのいずれかである。図6は、例示的な一実施形態に従う、イメージセンサ(フォトダイオードアレイ)に直接取付けられたモザイク式複屈折マスク及び円偏光子を有するインスタント偏光顕微鏡の一例を示している。図6はまた、顕微鏡内の光透過路も示している。図6においては、Scは光源(例:レーザ、発光ダイオード)であり、Fはバンドパスフィルタであり、LCPは左巻きの円偏光子であり、RCPは右巻きの円偏光子であり、Cはコンデンサであり、Spは分析中の試料を指しており、かつ、Oは対物レンズである。代替的な実施形態では、図6の顕微鏡は、より少ない構成要素、追加的な構成要素、及び/又は異なる構成要素を備えている場合もある。
【0025】
図7は、例示的な一実施形態に従う、モザイク式複屈折マスク及び円偏光子がイメージセンサと共役な平面(即ち、中間的な結像面)内に配置されている、インスタント偏光顕微鏡の一例を示している。この実施形態では、対物レンズは試料の像をモザイク式マスク上に作り出し、投影レンズはモザイク式マスク及び試料をイメージセンサ上にイメージングする。図7の実施形態は、図6に示された各種構成要素に加えて、図中のLによって示されている投影レンズ(又はリレーレンズ)を含んでいる。
【0026】
図8は、例示的な一実施形態に従う、反射光路を有するインスタント偏光顕微鏡の一概略図である。図8の実施形態では、円偏光ビームが、非偏光ビームスプリッタによって、試料に向かうように反射されている。この例では、モザイク式複屈折マスクは、イメージセンサ上に直接配置されている。図6及び7に示されている各種構成要素に加えて、図8の実施形態は、非偏光ビームスプリッタも含んでおり、これは図中ではNPBSによって示されている。
【0027】
図9は、例示的な一実施形態に従う、レーザパルスによって石英基板の内部に書き込まれた(ナノ加工された)モザイク式複屈折マスクを示している。図9のイメージは、多色偏光顕微鏡によって撮影されたものである。図9においては、色相がスロー軸の向きに対応しており、かつ、明度がリタデーションに比例している。マスクはLumenera camera Infinity 8-2Mを用いて機能するように設計されている。マスクのスーパーピクセルは4つのピクセルを含んでおり、第1のピクセル900、第2のピクセル905、及び第3のピクセル910は、20nmのリタデーションを有しており、かつ、第4のピクセル915はリタデーションを有していない。追加的には、第1のピクセル900はφ=0゜のスロー軸の向きを有しており、第2のピクセル905はφ=60゜のスロー軸の向きを有しており、かつ、第3のピクセル910はφ=120゜のスロー軸の向きを有している。モザイク式マスクのピクセルサイズは、9μm×9μmであり、これはInfinity 8-2Mにおけるピクセルサイズと等しい。代替的な実施形態では、モザイク式マスクは、異なるタイプのカメラ(即ちイメージセンサ)に適合する異なるピクセルサイズを備えていてもよい。
【0028】
図10は、例示的な一実施形態に従う、モザイク式複屈折マスク及び偏光イメージセンサを有するインスタント偏光顕微鏡を示している。例示的な一実施形態では、偏光イメージセンサは、オンチップレンズ(on-chip lens)、偏光子、及びフォトダイオードを備えるSonyの偏光イメージセンサであり得る。代替的な実装例においては、図10の実施形態は、図7の実施形態と類似のリレーレンズ(又は投影レンズ)も含み得る。
【0029】
例示的な実施形態では、偏光のすべての可能な状態が、ストークスパラメータと呼ばれる4つの実数の組によって表現され得る。ストークスパラメータは、各々、強度の次元を有している。デカルト座標の観点では、S、S、S、及びSによって示される4つのストークスパラメータは、以下のように定められる。
【0030】
【数1】
【0031】
特に、Iは光波の全体強度を示しており、I、I、I+45゜、I-45゜、I、及びIは、強度であって、波の経路に配置された理想的な可変偏光子によって透過され、かつx、y、+45°、-45°の向きの直線偏光ならびに(l)左巻き及び(r)右巻きの円偏光を透過させるようにそれぞれ調節されている、強度を示している。これらの偏光は、縮退した偏光(degenerate polarization)と呼称される。提案されたモザイク式複屈折マスクは、すべてのストークスパラメータの瞬時のマッピングのために使用され得る。このようなデバイスは、インスタントイメージングフルストークス偏光計と呼称される。以下で、インスタントイメージングフルストークス偏光計のための3つの例の概要を述べる。
【0032】
図11は、例示的な一実施形態に従う、偏光イメージングチップを用いたフルストークス偏光パラメータのイメージングのための、第1のモザイク式複屈折マスクを示している。図11の上列は、イメージセンサを覆う、提案されたモザイク式複屈折マスクとモザイク式偏光マスクの組み合わせを示している。偏光マスクとイメージセンサの組み合わせは、偏光イメージセンサと呼称され、これは現在では市場で購入できる(例えば、Sony IMX250MZR)。下列は、複屈折マスク及び偏光マスク中のスーパーピクセル及びそれらの相互配置を表示している。複屈折スーパーピクセルは、複屈折性を有さない3つのピクセルと、1/4波長のリタデーション(Δ=λ/4)及び水平方向のスロー軸(φ=0°)を有する複屈折ピクセルと、から形成される。偏光スーパーピクセルは、水平方向(x)、鉛直方向(y)、及び±45°方向に方向づけられた主軸(principal axis)を有する4つのマイクロ偏光子から形成される。イメージセンサのスーパーピクセルは、すべてのストークスパラメータの計算を以下のように可能にする、信号I、I、I、及びIを生成する。
【0033】
【数2】
【0034】
現在利用可能な偏光イメージセンサは、ワイヤーグリッドマイクロ偏光子を用いており、緑色光から近赤外光にわたる、より長い波長範囲で比較的よく機能する。青色光、紫色光、近紫外光を含むより短い波長範囲で機能するために、図12に示されているような偏光計の構成を用いることができる。図12の上列は、提案されたモザイク式複屈折マスク、円偏光子、及びイメージセンサの組み合わせを示している。下列は、複屈折マスク中のスーパーピクセル、円偏光子の一領域、及び対応するイメージセンサのスーパーピクセルを表示している。複屈折スーパーピクセルは、複屈折性を有さない1つのピクセルと、1/4波長のリタデーション(Δ=λ/4)ならびに水平方向及び斜め方向を向いたスロー軸(φ=-45°、0°、+45°)を有する3つの複屈折ピクセルと、から形成される。イメージセンサのスーパーピクセルは、すべてのストークスパラメータの計算を上記の数式(2)を用いて可能にする、信号I、I、I、及びIを生成する。
【0035】
上記の概略的な2つの偏光計は、上で3つのストークスパラメータを計算するために和演算を行っている。従って、これらの実装例は、ノイズの増加及び感度の低下をもたらし得る。図13の偏光計の概略は、差分演算のみを行う。図13Aは、例示的な実施形態に従う、偏光イメージングチップを用いたフルストークスパラメータのイメージングのための、モザイク式複屈折マスクを示している。図13Bは、例示的な実施形態に従う、モザイク式複屈折マスクの2つのスーパーピクセルを示している。図13Cは、例示的な実施形態に従う、モザイク式複屈折マスクの2つのスーパーピクセルによって生成される6つの信号のセットを2つ示している。図13の実施形態では、提案されたモザイク式マスクは、偏光イメージセンサ(例:上記のSonyの偏光イメージングチップ)と組み合わせられて用いられ、このことが、該デバイスがイメージの4つのストークス偏光パラメータすべてを受け取ることを可能にする。マスクは、各々6つのピクセルを有するスーパーピクセルのセットを2つ含んでおり、その中では、4つの右側のピクセルは複屈折性を有してはおらず、かつ2つの左側の複屈折ピクセルは1/4波長のリタデーション(Δ=λ/4)を有している。ハッチパターンの向きは、スロー軸の向きを示しており、これは、第1のスーパーピクセル中では-45°及び0°であり、かつ第2のスーパーピクセル中では90°及び45°である。
【0036】
第1のイメージセンサのスーパーピクセルは、すべてのストークスパラメータを以下のように計算することを可能にする信号I11、I12、I13、I14、I15、及びI16を生成する。
【0037】
【数3】
【0038】
第2のイメージセンサのスーパーピクセルは、すべてのストークスパラメータを以下のように計算することを可能にする信号I21、I22、I23、I24、I25、及びI26を生成する。
【0039】
【数4】
【0040】
このように、本明細書では、フォトダイオードアレイに追加され得る、取付型の一様な円偏光子を有する、ナノ加工モザイク式複屈折マスクのための方法及びシステムを記載している。提案されたセンサは、イメージ中の偏光のわずかな変化について瞬時的で高い感度を有する。一実装例では、上記のモザイク式複屈折マスクは、インスタント偏光顕微鏡に組み込まれ、偏光歪みが低減されたより高い感度の偏光イメージセンサを形成することができる。他の実装例では、モザイク式複屈折マスクは、インスタントフルストークス偏光パラメータのイメージングを行う、インスタントフルストークスカメラを作り出すように用いられ得る。
【0041】
例示的な一実施形態では、インスタント偏光顕微鏡又はフルストークスカメラの操作は、プロセッサ、メモリ、ユーザインタフェース,トランシーバ(即ち、レシーバ及び/又はトランスミッタ)等を含むコンピューティングシステムによって実施され得る。顕微鏡/カメラを操作するための命令がメモリに格納され得るのであり、該命令がプロセッサによって実行された際には、コンピューティングシステムがデバイスの動作を制御することができる。コンピューティングシステムのすべて又は一部は、一実施形態においては顕微鏡に組み込まれ得る。コンピューティングシステムのすべて又は一部は、顕微鏡から離れた場所にあるシステムの形態であり、かつシステムを制御しかつ/又は操作を実施するように用いられる、という場合がある。一例としては、図14は、例示的な実施形態に従う顕微鏡イメージングシステムを実装するためのコンピューティングシステム1400のブロック図である。コンピューティングシステム1400は、実装例に応じて、他のコンピューティングデバイス(例:サーバ、プロセッサ)と、直接か又はネットワーク1435を通じて、通信することができる。
【0042】
コンピューティングシステム1400は、プロセッサ1405、オペレーティングシステム1410、メモリ1415、入力/出力(I/O)システム1420、ネットワークインタフェース1425、及びイメージングアプリケーション1430を含んでいる。代替的な実施形態では、コンピューティングシステム1400は、より少ない構成要素、追加的な構成要素、及び/又は異なる構成要素を備え得る。コンピューティングシステム1400の構成要素は、1つ以上のバス又は任意の他の相互接続システムを介して、互いに通信する。コンピューティングシステムが顕微鏡から離れた場所にある実施形態では、コンピューティングシステム1400は、本明細書に記載の操作を実施するために十分な処理能力を有する任意のタイプのコンピューティングデバイス(例:タブレット、ラップトップ、デスクトップ、スマートフォン)であってよい。
【0043】
プロセッサ1405は、本明細書に記載の任意のシステムの構成要素のいずれかと電気的に通信しており、かつそれを制御するように用いられる、という場合がある。例えば、プロセッサは、イメージングアプリケーション1430を実行し、受け取ったユーザ選択を処理し、データ及びコマンドを顕微鏡及び/又はイメージングセンサに送信し、顕微鏡及び/又はイメージングセンサから生データを受け取り、そのデータを本明細書に記載のアルゴリズムを用いて処理するなどするように、用いられ得る。プロセッサ1405は、当業界における任意のタイプのコンピュータプロセッサであってよく、かつ、複数のプロセッサ及び/又は複数の処理コアを含み得る。プロセッサ1405は、コントローラ、マイクロコントローラ、オーディオプロセッサ、グラフィックス処理ユニット、ハードウェアアクセラレータ、デジタル信号プロセッサ等を備え得る。さらに、プロセッサ1405は、例えば、CISC(complex instruction set computer)プロセッサとして、RISC(reduced instruction set computer)プロセッサとして、x86命令セットコンピュータ(x86 instruction set computer)プロセッサとして実装され得る。プロセッサ1405は、任意のタイプのオペレーティングシステムであり得るオペレーティングシステム1410を走らせるように用いられる。
【0044】
オペレーティングシステム1410は、メモリ1415内に格納されており、このメモリ1415は、プログラム、顕微鏡データ、読み取り値及び設定値、ネットワークおよび通信データ、周辺要素データ、イメージングアプリケーション1430、及び他の動作命令を格納するようにも用いられる。メモリ1415は、例えばフラッシュメモリ、RAM(random access memory)、DRAM(dynamic RAM)、SRAM(static RAM)、USB(universal serial bus)ドライブ、光学ディスクドライブ、テープドライブ、内部ストレージデバイス、不揮発性ストレージデバイス、ハードディスクドライブ(HDD)、揮発性ストレージデバイス等である各種タイプのコンピュータメモリを含む、1つ以上のメモリシステムであり得る。幾つかの実施形態では、メモリ1415の少なくとも一部は、システムにクラウドストレージを提供するために、クラウド内に存在する場合がある。同様にして、一実施形態では、本明細書に記載の任意のコンピューティング要素(例:プロセッサ1405)は、システムがクラウドコンピューティングを通じて走らされかつ制御されることができるように、クラウド内に実装され得る。
【0045】
I/Oシステム1420は、ユーザ及び周辺デバイスがコンピューティングシステム1400と相互作用できるようにするフレームワークである。I/Oシステム1420は、ユーザがコンピューティングシステム1400と相互作用し、それを制御することができるようにする、ディスプレイ、1つ以上のスピーカー、1つ以上のマイクロフォン、キーボード、マウス、1つ以上のボタン又は他のコントロール部等を備え得る。また、I/Oシステム1420は、電源、USBデバイス、データ獲得カード、PCIe(peripheral component interconnect express)デバイス、SATA(serial advanced technology attachment)デバイス、HDMI(登録商標)(high-definition multimedia interface)デバイス、独自接続デバイス等の周辺コンピューティングデバイスとインタフェース接続する、回路及びバス構造も備えている。
【0046】
ネットワークインタフェース1425は、コンピューティングデバイス1400が、離れた場所にあるデータ処理センタ、個々の顕微鏡ユニット、サーバ、ウェブサイト等の他のデバイスから/他のデバイスにデータを送受信することができるようにする、トランシーバ回路(例:トランスミッタ及びレシーバ)を備えている。ネットワークインタフェース1425は、1つ以上の通信ネットワークであり得るネットワーク1435を通じた通信を可能にする。ネットワーク1435は、ケーブルネットワーク、ファイバネットワーク、セルラーネットワーク、Wi-Fiネットワーク、固定電話(landline telephone)ネットワーク、マイクロ波ネットワーク、衛星ネットワーク等を含み得る。また、ネットワークインタフェース1425はBluetooth(登録商標)等のデバイス間(device-to-device)通信を可能にする回路も備えている。
【0047】
イメージングアプリケーション1430は、プロセッサ1405によって実行される際に、光源の制御、イメージングセンサの制御、撮影されたイメージからのデータの抽出、ストークスパラメータの計算等の本明細書に記載の様々な動作のうちいずれかを実行する、コンピュータ可読命令の形態のソフトウェア及びアルゴリズムを含み得る。イメージングアプリケーション1430は、上で論じられたプロセッサ1405及び/又はメモリ1415を利用することができる。代替的な実施例では、イメージングアプリケーション1430は、コンピューティングデバイス1400から離れた場所にある場合もあれば又はそれからは独立している場合もあるが、それと通信をしている。
【0048】
本明細書において、「例示的な」という語は、例としてはたらくことを意味するように用いられる。「例示的」であるとして本明細書に記載されている任意の態様又は設計は、必ずしも、他の態様又は設計に対して好ましいか又は有利であるものとして構成されるわけではない。さらに、本開示の目的のために、他の形で特定されていない限りは、「1つの」(a、an)という語は、「1つ以上」(one or more)を意味する。
【0049】
本発明の例示的な実施形態の上記の記載は、例示及び説明の目的のために提供されている。それは、本発明を、開示された厳密な形態について排他的であるようにするか又はそれに限定することは意図されていないのであり、上記の教えに照らして修正及び変形が可能であるか、又は本発明の実践からそれらを得ることができる。実施形態は、本発明の原理を説明するために選ばれ記載されており、かつ、当業者が、本発明を、各種実施形態で、かつ考えられる特定の用途に適した各種修正を用いて、利用することを可能にするための本発明の実際の適用例として、選ばれ記載されている。本発明の範囲は、本明細書に添付の請求項及びそれらの等価物によって定められることが、意図されている。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2024-10-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願に対する相互参照)
本出願は、2022年2月4日に出願された米国仮特許出願第63/306604号の優先権の利益を主張する。該出願の内容全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
偏光顕微鏡法(PLM)は、ヘンリー・タルボットによる1834年の最初の偏光顕微鏡の開発以来、2世紀にわたって広く用いられてきた。PLMシステムは、試料が複屈折性の分子又は構造を含んでいる場合には、不可視であるはずのその試料にコントラストを導入する。PLM顕微鏡は、偏光プローブビームを生成し、調査中の試料によって導入された偏光の方位及び/又は楕円率の変化を、色及び/又は強度の変化に変換し、地質学者、物理学者、化学者、生物学者及びエンジニアが複屈折性試料を研究することを可能にする。PLM顕微鏡は、元々岩石の薄片の記載岩石学的調査のために構成されたものだが、近年では、化学、セラミック技術、金属組織学、犯罪検出、軍事情報、生物学、及び医学の分野における重要性が増している。
【発明の概要】
【0003】
例示的な偏光顕微鏡は、試料を照らすように構成された光源と、試料のイメージを撮影するように構成されたイメージセンサと、を備える。さらに、偏光顕微鏡は、光源と試料の間に配置された第1の円偏光子を備える。モザイク式複屈折マスクが、試料とイメージセンサの間に配置されている。さらに、偏光顕微鏡は、該マスクとイメージセンサの間に配置された第2の偏光子を備える。
【0004】
一実施形態では、第2の偏光子及びモザイク式複屈折マスクは、イメージセンサに取付けられている。他の実施形態では、第2の偏光子及びモザイク式複屈折マスクは、イメージセンサと共役な平面内に配置されている。さらに、このシステムは、試料とモザイク式複屈折マスクの間に配置された対物レンズを備える場合もある。他の実施形態では、第2の偏光子は、円偏光子を含んでいる。一実施形態では、第2の偏光子は、右巻きの円偏光子を含んでおり、かつ、第1の偏光子は、左巻きの円偏光子を含んでいる。
【0005】
一実施形態では、モザイク式複屈折マスクのスーパーピクセルは、0~0.25λのリタデーション範囲を有する、第1の正方形(又はピクセル)、第2の正方形(又はピクセル)、第3の正方形(又はピクセル)、及び第4の正方形(又はピクセル)を備えている。このような実施形態の一実装例では、第1の正方形は複屈折性ではなく、第2の正方形、第3の正方形、及び第4の正方形は、0.01λ~0.25λの範囲にある等しいリタデーションを有している。さらに、第2の正方形は、0゜であるスロー軸の向きを有しており、第3の正方形は60゜であるスロー軸の向きを有しており、かつ第4の正方形は120゜であるスロー軸の向きを有している。代替的には、第2の正方形は、0゜であるスロー軸の向きを有しており、第3の正方形は45゜であるスロー軸の向きを有しており、かつ第4の正方形は90゜であるスロー軸の向きを有している。他の代替的な構成では、第1の正方形、第2の正方形、第3の正方形、及び第4の正方形は、0.01λ~0.25λの範囲にある等しいリタデーションを有しており、かつ、第1の正方形は、0゜であるスロー軸の向きを有しており、第2の正方形は45゜であるスロー軸の向きを有しており、第3の正方形は90゜であるスロー軸の向きを有しており、かつ第4の正方形は135゜であるスロー軸の向きを有している。
【0006】
一実施形態では、モザイク式複屈折マスクは、スーパーピクセルのセットを2つ備えている。他の実施形態では、モザイク式複屈折マスクは、石英基板の内部に向けられたレーザパルスによって作製されている。代替的には、モザイク式複屈折マスクは、ナノ構造化された表面によって形成されている場合もある。また、モザイク式複屈折マスクは、複屈折フィルムから作製されたマイクロタイルから構成されている場合もある。
【0007】
例示的なインスタントイメージングフルストークス偏光計(instant imaging full Stokes polarimeter)は、モザイク式偏光マスク及びイメージセンサを備えた偏光イメージセンサを備える。さらに、この偏光計は、偏光イメージセンサに近位のモザイク式複屈折マスクを備える。モザイク式複屈折マスクは、複数の複屈折スーパーピクセルを備えており、かつ各複屈折スーパーピクセルは、複屈折性を有さない1つ以上のピクセル及び1つ以上の複屈折ピクセルから形成されている。さらに、偏光計は、偏光イメージセンサに動作的に結合されたプロセッサを備える。プロセッサは、イメージセンサのスーパーピクセルによって生成される複数の強度信号を処理して、イメージセンサによって撮影されたイメージのストークスパラメータを特定するように構成されている。
【0008】
一実施形態では、偏光子は、複数の偏光スーパーピクセルを備えるモザイク式偏光マスクを備えており、かつ、各偏光スーパーピクセルは複数のマイクロ偏光子を備えている。他の実施形態では、偏光子は円偏光子を含んでいる。他の実施形態では、モザイク式複屈折マスクは、イメージセンサ及び偏光子のうち1つ以上に取付けられている。一実施形態では、モザイク式複屈折マスクは、スーパーピクセルのセットを2つ備えている。他の実施形態では、各複屈折スーパーピクセルは、6つのピクセルを含んでいる。
【0009】
当業者には、本発明の他の原理的な特徴及び有利な点が、以下の図面、詳細な説明、及び添付の特許請求の範囲を参照した際に、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明の例示的な実施形態は、添付の図面を参照しつつ、以下に記述される。
【0011】
図1A】例示的な一実施形態に従う、第1のモザイク式複屈折マスクのパターンを示している。
図1B】例示的な一実施形態に従う、スーパーピクセルと呼称され得る4つのモザイク正方形の基本グループの一例を示している。本図で、ハッシュマーク(hash mark)は、第1のモザイク式複屈折マスクのリターダンス及びスロー軸の向きを示している。
図2A】例示的な一実施形態に従う、第2のモザイク式複屈折マスクのパターンを示している。
図2B】例示的な一実施形態に従う、スーパーピクセルと呼称され得る4つのモザイク正方形の基本グループの一例を示している。本図で、ハッシュマークは、第2のモザイク式複屈折マスクのリターダンス及びスロー軸の向きを示している。
図3A】例示的な一実施形態に従う、第3のモザイク式複屈折マスクのパターンを示している。
図3B】例示的な一実施形態に従う、第3のモザイク式複屈折マスクのリターダンス及びスロー軸の向きを示す色を有する、4つのモザイク正方形の基本グループの一例を示している。
図4A】例示的な一実施形態に従う、第4のモザイク式複屈折マスクのパターンを示している。
図4B】例示的な一実施形態に従う、第4のモザイク式複屈折マスクのリターダンス及びスロー軸の向きを示す色を有する、4つのモザイク正方形の基本グループの一例を示している。
図5A】例示的な一実施形態に従う、2つの基本グループを用いて実装された第1のモザイク式複屈折マスクの構成の一例を示している。
図5B】例示的な一実施形態に従う、4つ(2×2)のモザイク正方形を有する基本グループの4つの変形を示している。
図5C】例示的な一実施形態に従う、16(4×4)のモザイク正方形を有する基本グループを示している。
図6】例示的な一実施形態に従う、イメージセンサ(フォトダイオードアレイ)に直接取付けられたモザイク式複屈折マスク及び円偏光子を有するインスタント偏光顕微鏡(instant polarized light microscope)の一例を示している。
図7】例示的な一実施形態に従う、モザイク式複屈折マスク及び円偏光子がイメージセンサと共役な平面(即ち、中間的な結像面)内に配置されている、インスタント偏光顕微鏡の一例を示している。
図8】例示的な一実施形態に従う、反射光路を有するインスタント偏光顕微鏡の一概略図である。
図9】例示的な一実施形態に従う、レーザパルスによって石英基板の内部に書き込まれた(ナノ加工された)モザイク式複屈折マスクを示している。
図10】例示的な一実施形態に従う、モザイク式複屈折マスク及び偏光イメージセンサを有するインスタント偏光顕微鏡を示している。
図11】例示的な一実施形態に従う、フルストークス偏光パラメータのイメージングのための、第1のモザイク式複屈折マスクのパターンを示している。
図12】例示的な一実施形態に従う、フルストークス偏光パラメータのイメージングのための、第2のモザイク式複屈折マスクのパターンを示している。
図13図13Aは、例示的な一実施形態に従う、フルストークス偏光パラメータのイメージングのための、第3のモザイク式複屈折マスクのパターンを示している。図13Bは、例示的な一実施形態に従う、モザイク式複屈折マスクの2つのスーパーピクセルを示している。図13Cは、例示的な一実施形態に従う、モザイク式複屈折マスクの2つのスーパーピクセルによって生成される、6つの信号の2つのセットを示している。
図14】例示的な一実施形態に従う、顕微鏡イメージングシステムを実装するためのコンピューティングシステムのブロック図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここ30年にわたって、偏光顕微鏡の測定プロセスを自動化してその分析力をより完全に利用するために、幾つかのスキームが提案されてきた。これらのスキームは、従来の補償器の使用を常に含んでおり、これは、コンピュータ制御で回されるか、又はポッケルスセル、ファラデー回転子、及び液晶可変リターダー等の電気光学変調器によって置き換えられる。代替的に、幾つかの従来のシステムは、イメージングビームを分割し、同時に複数のイメージを撮影し、異なる偏光状態について各々を分析する。また、これらのスキームは、光電子増倍管又はデジタルカメラ等の電子光検出器を用いた定量的な強度測定も含んでいる。さらに最近になると、モザイク式偏光マスクを搭載した電荷結合素子(CCD)チップを用いる定量的インスタント偏光顕微鏡(PLM)が利用可能になった。これらの従来のPLMは、直線偏光設定を用いた4フレームアルゴリズムを用いている。しかしながら、このアプローチは、細胞分裂の紡錘体、コラーゲン繊維、光情報担体のナノ加工構造等の複屈折性の弱いサンプルの測定を含むシナリオにおいては、信号対雑音比が本質的に低い。さらに、従来のPLMは、顕微鏡の偏光軸に対して限られた範囲の配向を有する異方性構造を明らかにすることができるのみである。さらに、従来の補償器の使用は、例えば複屈折性等の光学異方性の測定のために膨大な時間を要する。
【0013】
本発明者は、楕円偏光設定を用いるアルゴリズムを提案し、単一又は二重の液晶偏光状態発生器を有する2つのタイプの高感度な定量的PLMを作り出した。これらのPLMは、LC-Polscopeと呼称され、全視野にわたって、すべての複屈折軸の向きについて、高感度(例:0.02nmの複屈折リタデーション)で、高解像度(例:0.2μm)で、かつはやい時間間隔(例:1秒)で、複屈折微細構造を同時に測定する。
【0014】
本明細書には、LC-Polscopeと同じ高感度を提供するインスタント偏光顕微鏡が記載されている。しかしながら、ここで提案されたインスタント偏光顕微鏡は、イメージ獲得の間に試料構造の動きによって引き起こされるアーティファクトを免れている。また、提案された顕微鏡は、既存のシステムよりもロバスト性がありかつ安価であり、これは、例示的な実施形態では、それが電子コントローラを有する液晶光学素子を利用することがないからである。また、提案された顕微鏡は、液晶素子が不在であることにより、既存のシステムよりも、より広いスペクトルレンジで、かつ大幅に厳しい環境条件において、使用することも可能である。提案された顕微鏡は、科学、教育、及び産業における大量生産及び広範な使用によく適している。また、提案された顕微鏡は、それは液晶光学素子のリタデーションのドリフトによって引き起こされる再較正を除外するものなので、ユーザフレンドリーである。
【0015】
例示的な実施形態では、提案されたインスタント偏光顕微鏡は、モザイク式複屈折マスク及び偏光子を含む複屈折アセンブリを利用している。モザイク式複屈折マスクは、一実施形態においては4つの近接した円偏光フィルタを備え得る。他の実施形態では、モザイク式複屈折マスクは、3つの近接した円偏光フィルタと、1つの円偏光フィルタとを備え得る。本発明者は、二次元リターダンスマップの計算のための特定のアルゴリズムを用いて機能するように設計されたモザイク式マスクの、様々な基本的な構成を提案している。モザイク式マスクを示す(以下で述べられる)図面においては、1つの複屈折モザイク正方形が、イメージセンサ上の1つのピクセルに対応している。
【0016】
提案されたモザイク式複屈折マスクは、従来のマスクとは複数の点で異なっている。例えば、幾つかの偏光イメージセンサが、直線偏光子モザイク式マスク及びフォトダイオードアレイによって作り出される。このようなマスクでは、ワイヤーグリッド直線偏光子を有しかつ0°、45°、90°、及び135°を向いた透過面を有する、4つのピクセルが存在する。以下でより詳細に論じられるように、提案されたモザイク式複屈折マスクは、このような従来のシステムとは、構成、リタデーション、及びスロー軸の向きにおいて異なっている。
【0017】
提案されたモザイク式複屈折マスクは、複数のやり方で作製され得る。例えば、マスクは、レーザパルスによって石英基板の内側に書き込まれ(ナノ加工され)得る。また、マスクは、ナノ構造化された表面、パターンを有する液晶アレイ、パターンを有するフォトニック結晶アレイによって形成される場合もあれば、又は複屈折フィルムから作製されたマイクロタイルから構成される場合もある。
【0018】
図1は、第1のモザイク式マスクの構成を示している。具体的には、図1Aは、例示的な一実施形態に従う、第1のモザイク式複屈折マスクのパターンを示している。図1Bは、例示的な一実施形態に従う、スーパーピクセルと呼称され得る4つのモザイク正方形の基本グループの一例を示している。本図で、ハッシュマークは、第1のモザイク式複屈折マスクのリターダンス及びスロー軸の向きを示している。図中において、デルタ記号はリタデーションを示しており、プサイ記号はスロー軸の向きを示している。図1の実施形態においては、マスクの空の/白い正方形は、複屈折性ではなく、0nmのリタデーションを有している。水平方向の直線を有する正方形は、20nm(~0.03λ)のリタデーション及び0゜のスロー軸を有しており、正方向に傾斜した直線を有する正方形は、20nmのリタデーション及び60゜のスロー軸を有しており、かつ、負方向に傾斜した直線を有する正方形は、20nmのリタデーション及び120゜のスロー軸を有している。図1のモザイク式マスクは、新しい修正された対称的な3フレームアルゴリズム及び追加的な消光設定を用いて機能するように設計されている。
【0019】
図2Aは、例示的な一実施形態に従う、第2のモザイク式複屈折マスクのパターンを示している。図2Bは、例示的な一実施形態に従う、第2のモザイク式複屈折マスクのリターダンス及びスロー軸の向きを示す色を有する、4つのモザイク正方形の基本グループの一例を示している。提案された第2のモザイク式複屈折マスクは、対称的な4フレームアルゴリズムを用いて機能するように設計されている。図示されているように、マスクのスーパーピクセルは、20nm(~0.03λ)のリタデーションを有する4つのピクセルを備えている。ハッチパターンの方向は、0゜、45゜、90゜、及び135゜であるスロー軸の向きφを示している。
【0020】
図3Aは、例示的な一実施形態に従う、第3のモザイク式複屈折マスクのパターンを示している。図3Bは、例示的な一実施形態に従う、第3のモザイク式複屈折マスクのリターダンス及びスロー軸の向きを示す色を有する、4つのモザイク正方形の基本グループの一例を示している。例示的な一実施形態においては、図3Aのモザイク式複屈折マスクは、定量的インスタント偏光顕微鏡において使用されるために、偏光イメージセンサ(例:Sonyの偏光イメージセンサ)に追加される場合がある。この設計は、円偏光子の使用を含まない。図3Bにおいて示されているように、マスクのスーパーピクセルは、0.25λのリタデーションを有する4つのピクセルを含んでいる。スーパーピクセルのスロー軸の向きφは、第1のピクセル位置300においてφ=5゜であり、第2のピクセル位置305においてφ=50゜であり、第3のピクセル位置310においてφ=95゜であり、かつ、第4のピクセル位置315においてφ=140゜である。
【0021】
図4Aは、例示的な一実施形態に従う、第4のモザイク式複屈折マスクのパターンを示している。図4Bは、例示的な一実施形態に従う、第4のモザイク式複屈折マスクのリターダンス及びスロー軸の向きを示す色を有する、4つのモザイク正方形の基本グループの一例を示している。図4の実施形態において、マスクの白い正方形は、複屈折性ではない。マスクのスーパーピクセルは4つのピクセルを含んでおり、そのうち3つは20nm(~0.03λ)のリタデーションを有する影の付いたピクセルであり、かつ、(第1のピクセル位置400にある)白いピクセルは、リタデーションを有していない。スーパーピクセルのスロー軸の向きは、第2のピクセル位置405では0゜であり、第3のピクセル位置410では45゜であり、かつ、第4のピクセル位置415では90゜である。提案された第3のモザイク式複屈折マスクは、消光設定を備えた非対称な4フレームアルゴリズムを用いて機能するように設計されている。このアルゴリズムは感度がより低くなっており、その感度は試料の向きに依存することは、注意されたい。代替的な実施形態では、4フレームアルゴリズムを用いて機能する追加的なモザイク式複屈折マスクの構成が用いられ得る。2フレーム、3フレーム、及び5フレームのアルゴリズムのための追加的なマスクの構成を作り出すことも可能であるが、そのような構成は最適なものであるとは考えられず、追加的な利益をもたらすことが発見されているわけでもない。
【0022】
ベイヤーカラーフィルタアレイ(例:赤フィルタ、青フィルタ、そして2つの緑フィルタ)と同様に、提案された複屈折マスクは多くの多様なやり方で実装され得る。例えば、図5Aは、例示的な一実施形態に従う、2つの基本グループを用いて実装された第1のモザイク式複屈折マスクの構成の事例を示している。小さい方のグループは2×2のピクセル領域をカバーしており、大きい方のグループは4×4のピクセル領域をカバーしている。従って、このマスクは2つのモードで機能することができる、即ち、(1)より多くの光が利用可能であるときの、高解像度のモード、及び(2)照光が弱いときの、低感度のモード、の2つのモードではたらくことができる。図5Bは、例示的な一実施形態に従う、4つ(2×2)のモザイク正方形を有する基本グループの4つの変形を示している。図5Cは、例示的な一実施形態に従う、16(4×4)のモザイク正方形を有する基本グループを示している。図5の実施形態では、白い正方形500は複屈折性ではなく、第1の影付き(例:赤色の)正方形505、第2の影付き(例:緑色の)正方形510、及び第3の影付き(例:青色の)正方形515は、20nm(~0.03λ)のリターダンスを有しており、かつ、それぞれ0゜、60゜、及び120゜のスロー軸の向きを有している。図示されているように、隣り合うモザイク正方形は、組み合わせられて、より大きな1つのユニットを形成することができる。
【0023】
モザイク式複屈折マスクを有するインスタント偏光顕微鏡の原理的なスキームが、以下に記載される。例示的な一実施形態では、提案されたモザイク式複屈折マスクは、偏光顕微鏡内で、直交する円偏光子又は円偏光子に近い偏光子同士の間に配置される。モザイク正方形は、イメージセンサ上に直接配置されるか、又はセンサと共役な平面内に配置されるかのいずれかである。図6は、例示的な一実施形態に従う、イメージセンサ(フォトダイオードアレイ)に直接取付けられたモザイク式複屈折マスク及び円偏光子を有するインスタント偏光顕微鏡の一例を示している。図6はまた、顕微鏡内の光透過路も示している。図6においては、Scは光源(例:レーザ、発光ダイオード)であり、Fはバンドパスフィルタであり、LCPは左巻きの円偏光子であり、RCPは右巻きの円偏光子であり、Cはコンデンサであり、Spは分析中の試料を指しており、かつ、Oは対物レンズである。代替的な実施形態では、図6の顕微鏡は、より少ない構成要素、追加的な構成要素、及び/又は異なる構成要素を備えている場合もある。
【0024】
図7は、例示的な一実施形態に従う、モザイク式複屈折マスク及び円偏光子がイメージセンサと共役な平面(即ち、中間的な結像面)内に配置されている、インスタント偏光顕微鏡の一例を示している。この実施形態では、対物レンズは試料の像をモザイク式マスク上に作り出し、投影レンズはモザイク式マスク及び試料をイメージセンサ上にイメージングする。図7の実施形態は、図6に示された各種構成要素に加えて、図中のLによって示されている投影レンズ(又はリレーレンズ)を含んでいる。
【0025】
図8は、例示的な一実施形態に従う、反射光路を有するインスタント偏光顕微鏡の一概略図である。図8の実施形態では、円偏光ビームが、非偏光ビームスプリッタによって、試料に向かうように反射されている。この例では、モザイク式複屈折マスクは、イメージセンサ上に直接配置されている。図6及び7に示されている各種構成要素に加えて、図8の実施形態は、非偏光ビームスプリッタも含んでおり、これは図中ではNPBSによって示されている。
【0026】
図9は、例示的な一実施形態に従う、レーザパルスによって石英基板の内部に書き込まれた(ナノ加工された)モザイク式複屈折マスクを示している。図9のイメージは、多色偏光顕微鏡によって撮影されたものである。図9においては、色相がスロー軸の向きに対応しており、かつ、明度がリタデーションに比例している。マスクはLumenera camera Infinity 8-2Mを用いて機能するように設計されている。マスクのスーパーピクセルは4つのピクセルを含んでおり、第1のピクセル900、第2のピクセル905、及び第3のピクセル910は、20nmのリタデーションを有しており、かつ、第4のピクセル915はリタデーションを有していない。追加的には、第1のピクセル900はφ=0゜のスロー軸の向きを有しており、第2のピクセル905はφ=60゜のスロー軸の向きを有しており、かつ、第3のピクセル910はφ=120゜のスロー軸の向きを有している。モザイク式マスクのピクセルサイズは、9μm×9μmであり、これはInfinity 8-2Mにおけるピクセルサイズと等しい。代替的な実施形態では、モザイク式マスクは、異なるタイプのカメラ(即ちイメージセンサ)に適合する異なるピクセルサイズを備えていてもよい。
【0027】
図10は、例示的な一実施形態に従う、モザイク式複屈折マスク及び偏光イメージセンサを有するインスタント偏光顕微鏡を示している。例示的な一実施形態では、偏光イメージセンサは、オンチップレンズ(on-chip lens)、偏光子、及びフォトダイオードを備えるSonyの偏光イメージセンサであり得る。代替的な実装例においては、図10の実施形態は、図7の実施形態と類似のリレーレンズ(又は投影レンズ)も含み得る。
【0028】
例示的な実施形態では、偏光のすべての可能な状態が、ストークスパラメータと呼ばれる4つの実数の組によって表現され得る。ストークスパラメータは、各々、強度の次元を有している。デカルト座標の観点では、S、S、S、及びSによって示される4つのストークスパラメータは、以下のように定められる。
【0029】
【数1】
【0030】
特に、Iは光波の全体強度を示しており、I、I、I+45゜、I-45゜、I、及びIは、強度であって、波の経路に配置された理想的な可変偏光子によって透過され、かつx、y、+45°、-45°の向きの直線偏光ならびに(l)左巻き及び(r)右巻きの円偏光を透過させるようにそれぞれ調節されている、強度を示している。これらの偏光は、縮退した偏光(degenerate polarization)と呼称される。提案されたモザイク式複屈折マスクは、すべてのストークスパラメータの瞬時のマッピングのために使用され得る。このようなデバイスは、インスタントイメージングフルストークス偏光計と呼称される。以下で、インスタントイメージングフルストークス偏光計のための3つの例の概要を述べる。
【0031】
図11は、例示的な一実施形態に従う、偏光イメージングチップを用いたフルストークス偏光パラメータのイメージングのための、第1のモザイク式複屈折マスクを示している。図11の上列は、イメージセンサを覆う、提案されたモザイク式複屈折マスクとモザイク式偏光マスクの組み合わせを示している。偏光マスクとイメージセンサの組み合わせは、偏光イメージセンサと呼称され、これは現在では市場で購入できる(例えば、Sony IMX250MZR)。下列は、複屈折マスク及び偏光マスク中のスーパーピクセル及びそれらの相互配置を表示している。複屈折スーパーピクセルは、複屈折性を有さない3つのピクセルと、1/4波長のリタデーション(Δ=λ/4)及び水平方向のスロー軸(φ=0°)を有する複屈折ピクセルと、から形成される。偏光スーパーピクセルは、水平方向(x)、鉛直方向(y)、及び±45°方向に方向づけられた主軸(principal axis)を有する4つのマイクロ偏光子から形成される。イメージセンサのスーパーピクセルは、すべてのストークスパラメータの計算を以下のように可能にする、信号I、I、I、及びIを生成する。
【0032】
【数2】
【0033】
現在利用可能な偏光イメージセンサは、ワイヤーグリッドマイクロ偏光子を用いており、緑色光から近赤外光にわたる、より長い波長範囲で比較的よく機能する。青色光、紫色光、近紫外光を含むより短い波長範囲で機能するために、図12に示されているような偏光計の構成を用いることができる。図12の上列は、提案されたモザイク式複屈折マスク、円偏光子、及びイメージセンサの組み合わせを示している。下列は、複屈折マスク中のスーパーピクセル、円偏光子の一領域、及び対応するイメージセンサのスーパーピクセルを表示している。複屈折スーパーピクセルは、複屈折性を有さない1つのピクセルと、1/4波長のリタデーション(Δ=λ/4)ならびに水平方向及び斜め方向を向いたスロー軸(φ=-45°、0°、+45°)を有する3つの複屈折ピクセルと、から形成される。イメージセンサのスーパーピクセルは、すべてのストークスパラメータの計算を上記の数式(2)を用いて可能にする、信号I、I、I、及びIを生成する。
【0034】
上記の概略的な2つの偏光計は、上で3つのストークスパラメータを計算するために和演算を行っている。従って、これらの実装例は、ノイズの増加及び感度の低下をもたらし得る。図13の偏光計の概略は、差分演算のみを行う。図13Aは、例示的な実施形態に従う、偏光イメージングチップを用いたフルストークスパラメータのイメージングのための、モザイク式複屈折マスクを示している。図13Bは、例示的な実施形態に従う、モザイク式複屈折マスクの2つのスーパーピクセルを示している。図13Cは、例示的な実施形態に従う、モザイク式複屈折マスクの2つのスーパーピクセルによって生成される6つの信号のセットを2つ示している。図13の実施形態では、提案されたモザイク式マスクは、偏光イメージセンサ(例:上記のSonyの偏光イメージングチップ)と組み合わせられて用いられ、このことが、該デバイスがイメージの4つのストークス偏光パラメータすべてを受け取ることを可能にする。マスクは、各々6つのピクセルを有するスーパーピクセルのセットを2つ含んでおり、その中では、4つの右側のピクセルは複屈折性を有してはおらず、かつ2つの左側の複屈折ピクセルは1/4波長のリタデーション(Δ=λ/4)を有している。ハッチパターンの向きは、スロー軸の向きを示しており、これは、第1のスーパーピクセル中では-45°及び0°であり、かつ第2のスーパーピクセル中では90°及び45°である。
【0035】
第1のイメージセンサのスーパーピクセルは、すべてのストークスパラメータを以下のように計算することを可能にする信号I11、I12、I13、I14、I15、及びI16を生成する。
【0036】
【数3】
【0037】
第2のイメージセンサのスーパーピクセルは、すべてのストークスパラメータを以下のように計算することを可能にする信号I21、I22、I23、I24、I25、及びI26を生成する。
【0038】
【数4】
【0039】
このように、本明細書では、フォトダイオードアレイに追加され得る、取付型の一様な円偏光子を有する、ナノ加工モザイク式複屈折マスクのための方法及びシステムを記載している。提案されたセンサは、イメージ中の偏光のわずかな変化について瞬時的で高い感度を有する。一実装例では、上記のモザイク式複屈折マスクは、インスタント偏光顕微鏡に組み込まれ、偏光歪みが低減されたより高い感度の偏光イメージセンサを形成することができる。他の実装例では、モザイク式複屈折マスクは、インスタントフルストークス偏光パラメータのイメージングを行う、インスタントフルストークスカメラを作り出すように用いられ得る。
【0040】
例示的な一実施形態では、インスタント偏光顕微鏡又はフルストークスカメラの操作は、プロセッサ、メモリ、ユーザインタフェース,トランシーバ(即ち、レシーバ及び/又はトランスミッタ)等を含むコンピューティングシステムによって実施され得る。顕微鏡/カメラを操作するための命令がメモリに格納され得るのであり、該命令がプロセッサによって実行された際には、コンピューティングシステムがデバイスの動作を制御することができる。コンピューティングシステムのすべて又は一部は、一実施形態においては顕微鏡に組み込まれ得る。コンピューティングシステムのすべて又は一部は、顕微鏡から離れた場所にあるシステムの形態であり、かつシステムを制御しかつ/又は操作を実施するように用いられる、という場合がある。一例としては、図14は、例示的な実施形態に従う顕微鏡イメージングシステムを実装するためのコンピューティングシステム1400のブロック図である。コンピューティングシステム1400は、実装例に応じて、他のコンピューティングデバイス(例:サーバ、プロセッサ)と、直接か又はネットワーク1435を通じて、通信することができる。
【0041】
コンピューティングシステム1400は、プロセッサ1405、オペレーティングシステム1410、メモリ1415、入力/出力(I/O)システム1420、ネットワークインタフェース1425、及びイメージングアプリケーション1430を含んでいる。代替的な実施形態では、コンピューティングシステム1400は、より少ない構成要素、追加的な構成要素、及び/又は異なる構成要素を備え得る。コンピューティングシステム1400の構成要素は、1つ以上のバス又は任意の他の相互接続システムを介して、互いに通信する。コンピューティングシステムが顕微鏡から離れた場所にある実施形態では、コンピューティングシステム1400は、本明細書に記載の操作を実施するために十分な処理能力を有する任意のタイプのコンピューティングデバイス(例:タブレット、ラップトップ、デスクトップ、スマートフォン)であってよい。
【0042】
プロセッサ1405は、本明細書に記載の任意のシステムの構成要素のいずれかと電気的に通信しており、かつそれを制御するように用いられる、という場合がある。例えば、プロセッサは、イメージングアプリケーション1430を実行し、受け取ったユーザ選択を処理し、データ及びコマンドを顕微鏡及び/又はイメージングセンサに送信し、顕微鏡及び/又はイメージングセンサから生データを受け取り、そのデータを本明細書に記載のアルゴリズムを用いて処理するなどするように、用いられ得る。プロセッサ1405は、当業界における任意のタイプのコンピュータプロセッサであってよく、かつ、複数のプロセッサ及び/又は複数の処理コアを含み得る。プロセッサ1405は、コントローラ、マイクロコントローラ、オーディオプロセッサ、グラフィックス処理ユニット、ハードウェアアクセラレータ、デジタル信号プロセッサ等を備え得る。さらに、プロセッサ1405は、例えば、CISC(complex instruction set computer)プロセッサとして、RISC(reduced instruction set computer)プロセッサとして、x86命令セットコンピュータ(x86 instruction set computer)プロセッサとして実装され得る。プロセッサ1405は、任意のタイプのオペレーティングシステムであり得るオペレーティングシステム1410を走らせるように用いられる。
【0043】
オペレーティングシステム1410は、メモリ1415内に格納されており、このメモリ1415は、プログラム、顕微鏡データ、読み取り値及び設定値、ネットワークおよび通信データ、周辺要素データ、イメージングアプリケーション1430、及び他の動作命令を格納するようにも用いられる。メモリ1415は、例えばフラッシュメモリ、RAM(random access memory)、DRAM(dynamic RAM)、SRAM(static RAM)、USB(universal serial bus)ドライブ、光学ディスクドライブ、テープドライブ、内部ストレージデバイス、不揮発性ストレージデバイス、ハードディスクドライブ(HDD)、揮発性ストレージデバイス等である各種タイプのコンピュータメモリを含む、1つ以上のメモリシステムであり得る。幾つかの実施形態では、メモリ1415の少なくとも一部は、システムにクラウドストレージを提供するために、クラウド内に存在する場合がある。同様にして、一実施形態では、本明細書に記載の任意のコンピューティング要素(例:プロセッサ1405)は、システムがクラウドコンピューティングを通じて走らされかつ制御されることができるように、クラウド内に実装され得る。
【0044】
I/Oシステム1420は、ユーザ及び周辺デバイスがコンピューティングシステム1400と相互作用できるようにするフレームワークである。I/Oシステム1420は、ユーザがコンピューティングシステム1400と相互作用し、それを制御することができるようにする、ディスプレイ、1つ以上のスピーカー、1つ以上のマイクロフォン、キーボード、マウス、1つ以上のボタン又は他のコントロール部等を備え得る。また、I/Oシステム1420は、電源、USBデバイス、データ獲得カード、PCIe(peripheral component interconnect express)デバイス、SATA(serial advanced technology attachment)デバイス、HDMI(登録商標)(high-definition multimedia interface)デバイス、独自接続デバイス等の周辺コンピューティングデバイスとインタフェース接続する、回路及びバス構造も備えている。
【0045】
ネットワークインタフェース1425は、コンピューティングデバイス1400が、離れた場所にあるデータ処理センタ、個々の顕微鏡ユニット、サーバ、ウェブサイト等の他のデバイスから/他のデバイスにデータを送受信することができるようにする、トランシーバ回路(例:トランスミッタ及びレシーバ)を備えている。ネットワークインタフェース1425は、1つ以上の通信ネットワークであり得るネットワーク1435を通じた通信を可能にする。ネットワーク1435は、ケーブルネットワーク、ファイバネットワーク、セルラーネットワーク、Wi-Fiネットワーク、固定電話(landline telephone)ネットワーク、マイクロ波ネットワーク、衛星ネットワーク等を含み得る。また、ネットワークインタフェース1425はBluetooth(登録商標)等のデバイス間(device-to-device)通信を可能にする回路も備えている。
【0046】
イメージングアプリケーション1430は、プロセッサ1405によって実行される際に、光源の制御、イメージングセンサの制御、撮影されたイメージからのデータの抽出、ストークスパラメータの計算等の本明細書に記載の様々な動作のうちいずれかを実行する、コンピュータ可読命令の形態のソフトウェア及びアルゴリズムを含み得る。イメージングアプリケーション1430は、上で論じられたプロセッサ1405及び/又はメモリ1415を利用することができる。代替的な実施例では、イメージングアプリケーション1430は、コンピューティングデバイス1400から離れた場所にある場合もあれば又はそれからは独立している場合もあるが、それと通信をしている。
【0047】
本明細書において、「例示的な」という語は、例としてはたらくことを意味するように用いられる。「例示的」であるとして本明細書に記載されている任意の態様又は設計は、必ずしも、他の態様又は設計に対して好ましいか又は有利であるものとして構成されるわけではない。さらに、本開示の目的のために、他の形で特定されていない限りは、「1つの」(a、an)という語は、「1つ以上」(one or more)を意味する。
【0048】
本発明の例示的な実施形態の上記の記載は、例示及び説明の目的のために提供されている。それは、本発明を、開示された厳密な形態について排他的であるようにするか又はそれに限定することは意図されていないのであり、上記の教えに照らして修正及び変形が可能であるか、又は本発明の実践からそれらを得ることができる。実施形態は、本発明の原理を説明するために選ばれ記載されており、かつ、当業者が、本発明を、各種実施形態で、かつ考えられる特定の用途に適した各種修正を用いて、利用することを可能にするための本発明の実際の適用例として、選ばれ記載されている。本発明の範囲は、本明細書に添付の請求項及びそれらの等価物によって定められることが、意図されている。
また、本開示は、以下の態様を含む。
〔態様1〕
偏光顕微鏡であって、
試料を照らすように構成された光源と、
前記試料のイメージを撮影するように構成されたイメージセンサと、
前記光源と前記試料の間に配置された第1の円偏光子と、
前記試料と前記イメージセンサの間に配置されたモザイク式複屈折マスクと、
前記マスクと前記イメージセンサの間に配置された第2の偏光子と、
を備える偏光顕微鏡。
〔態様2〕
前記第2の偏光子及び前記モザイク式複屈折マスクは、前記イメージセンサに取付けられている、態様1に記載の顕微鏡。
〔態様3〕
前記第2の偏光子及び前記モザイク式複屈折マスクは、前記イメージセンサと共役な平面内に配置されている、態様1に記載の顕微鏡。
〔態様4〕
前記顕微鏡は、前記試料と前記モザイク式複屈折マスクの間に配置された対物レンズをさらに備えている、態様1に記載の顕微鏡。
〔態様5〕
前記第2の偏光子は、円偏光子を含んでいる、態様1に記載の顕微鏡。
〔態様6〕
前記第2の偏光子は、右巻きの円偏光子を含んでおり、かつ、前記第1の偏光子は、左巻きの円偏光子を含んでいる、態様1に記載の顕微鏡。
〔態様7〕
前記モザイク式複屈折マスクのスーパーピクセルは、0~0.25λのリタデーション範囲を有する、第1の正方形、第2の正方形、第3の正方形、及び第4の正方形を備えている、態様1に記載の顕微鏡。
〔態様8〕
前記第1の正方形は複屈折性ではなく、前記第2の正方形、前記第3の正方形、及び前記第4の正方形は、0.01λ~0.25λの範囲にある等しいリタデーションを有しており、かつ、前記第2の正方形は、0゜であるスロー軸の向きを有しており、前記第3の正方形は60゜であるスロー軸の向きを有しており、かつ前記第4の正方形は120゜であるスロー軸の向きを有している、態様7に記載の顕微鏡。
〔態様9〕
前記第1の正方形は複屈折性ではなく、前記第2の正方形、前記第3の正方形、及び前記第4の正方形は、0.01λ~0.25λの範囲にある等しいリタデーションを有しており、かつ、前記第2の正方形は、0゜であるスロー軸の向きを有しており、前記第3の正方形は45゜であるスロー軸の向きを有しており、かつ前記第4の正方形は90゜であるスロー軸の向きを有している、態様7に記載の顕微鏡。
〔態様10〕
前記第1の正方形、前記第2の正方形、前記第3の正方形、及び前記第4の正方形は、0.01λ~0.25λの範囲にある等しいリタデーションを有しており、かつ、前記第1の正方形は、0゜であるスロー軸の向きを有しており、前記第2の正方形は45゜であるスロー軸の向きを有しており、前記第3の正方形は90゜であるスロー軸の向きを有しており、かつ前記第4の正方形は135゜であるスロー軸の向きを有している、態様7に記載の顕微鏡。
〔態様11〕
前記モザイク式複屈折マスクは、スーパーピクセルのセットを2つ備えている、態様1に記載の顕微鏡。
〔態様12〕
前記モザイク式複屈折マスクは、石英基板の内部に向けられたレーザパルスによって作製されている、態様1に記載の顕微鏡。
〔態様13〕
前記モザイク式複屈折マスクは、ナノ構造化された表面によって形成されている、態様1に記載の顕微鏡。
〔態様14〕
前記モザイク式複屈折マスクは、複屈折フィルムから作製されたマイクロタイルから構成されている、態様1に記載の顕微鏡。
〔態様15〕
インスタントイメージングフルストークス偏光計であって、
偏光子及びイメージセンサを備えた偏光イメージセンサと、
前記偏光イメージセンサに近位のモザイク式複屈折マスクであって、前記モザイク式複屈折マスクは、複数の複屈折スーパーピクセルを備えており、かつ各複屈折スーパーピクセルは、複屈折性を有さない1つ以上のピクセル及び1つ以上の複屈折ピクセルから形成されている、モザイク式複屈折マスクと、
前記偏光イメージセンサに動作的に結合されたプロセッサであって、前記プロセッサは、複数の前記複屈折スーパーピクセルによって生成される複数の強度信号を処理して、前記イメージセンサによって撮影されたイメージのストークスパラメータを特定するように構成されている、プロセッサと、
を備える、インスタントイメージングフルストークス偏光計。
〔態様16〕
前記偏光子は、複数の偏光スーパーピクセルを備えるモザイク式偏光マスクを備えており、かつ、各偏光スーパーピクセルは複数のマイクロ偏光子を備えている、態様15に記載の偏光計。
〔態様17〕
前記偏光子は円偏光子を含んでいる、態様15に記載の偏光計。
〔態様18〕
前記モザイク式複屈折マスクは、前記イメージセンサ及び前記偏光子のうち1つ以上に取付けられている、態様15に記載の偏光計。
〔態様19〕
前記モザイク式複屈折マスクは、スーパーピクセルのセットを2つ備えている、態様15に記載の偏光計。
〔態様20〕
各複屈折スーパーピクセルは、6つのピクセルを含んでいる、態様15に記載の偏光計。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光顕微鏡であって、
試料を照らすように構成された光源と、
前記試料のイメージを撮影するように構成されたイメージセンサと、
前記光源と前記試料の間に配置された第1の円偏光子と、
前記試料と前記イメージセンサの間に配置されたモザイク式複屈折マスクと、
前記モザイク式複屈折マスクと前記イメージセンサの間に配置された第2の偏光子と、
を備える偏光顕微鏡。
【請求項2】
前記第2の偏光子及び前記モザイク式複屈折マスクは、前記イメージセンサに取付けられている、請求項1に記載の偏光顕微鏡。
【請求項3】
前記第2の偏光子及び前記モザイク式複屈折マスクは、前記イメージセンサと共役な平面内に配置されている、請求項1に記載の偏光顕微鏡。
【請求項4】
前記偏光顕微鏡は、前記試料と前記モザイク式複屈折マスクの間に配置された対物レンズをさらに備えている、請求項1に記載の偏光顕微鏡。
【請求項5】
前記第2の偏光子は、円偏光子を含んでいる、請求項1に記載の偏光顕微鏡。
【請求項6】
前記第2の偏光子は、右巻きの円偏光子を含んでおり、かつ、前記第1の偏光子は、左巻きの円偏光子を含んでいる、請求項1に記載の偏光顕微鏡。
【請求項7】
前記モザイク式複屈折マスクのスーパーピクセルは、0~0.25λのリタデーション範囲を有する、第1の正方形、第2の正方形、第3の正方形、及び第4の正方形を備えている、請求項1に記載の偏光顕微鏡。
【請求項8】
前記第1の正方形は複屈折性ではなく、前記第2の正方形、前記第3の正方形、及び前記第4の正方形は、0.01λ~0.25λの範囲にある等しいリタデーションを有しており、かつ、前記第2の正方形は、0゜であるスロー軸の向きを有しており、前記第3の正方形は60゜であるスロー軸の向きを有しており、かつ前記第4の正方形は120゜であるスロー軸の向きを有している、請求項7に記載の偏光顕微鏡。
【請求項9】
前記第1の正方形は複屈折性ではなく、前記第2の正方形、前記第3の正方形、及び前記第4の正方形は、0.01λ~0.25λの範囲にある等しいリタデーションを有しており、かつ、前記第2の正方形は、0゜であるスロー軸の向きを有しており、前記第3の正方形は45゜であるスロー軸の向きを有しており、かつ前記第4の正方形は90゜であるスロー軸の向きを有している、請求項7に記載の偏光顕微鏡。
【請求項10】
前記第1の正方形、前記第2の正方形、前記第3の正方形、及び前記第4の正方形は、0.01λ~0.25λの範囲にある等しいリタデーションを有しており、かつ、前記第1の正方形は、0゜であるスロー軸の向きを有しており、前記第2の正方形は45゜であるスロー軸の向きを有しており、前記第3の正方形は90゜であるスロー軸の向きを有しており、かつ前記第4の正方形は135゜であるスロー軸の向きを有している、請求項7に記載の偏光顕微鏡。
【請求項11】
前記モザイク式複屈折マスクは、スーパーピクセルのセットを2つ備えている、請求項1に記載の偏光顕微鏡。
【請求項12】
前記モザイク式複屈折マスクは、石英基板の内部に向けられたレーザパルスによって作製されている、請求項1に記載の偏光顕微鏡。
【請求項13】
前記モザイク式複屈折マスクは、ナノ構造化された表面によって形成されている、請求項1に記載の偏光顕微鏡。
【請求項14】
前記モザイク式複屈折マスクは、複屈折フィルムから作製されたマイクロタイルから構成されている、請求項1に記載の偏光顕微鏡。
【請求項15】
インスタントイメージングフルストークス偏光計であって、
偏光子及びイメージセンサを備えた偏光イメージセンサと、
前記偏光イメージセンサに近位のモザイク式複屈折マスクであって、前記モザイク式複屈折マスクは、複数の複屈折スーパーピクセルを備えており、かつ各前記複屈折スーパーピクセルは、複屈折性を有さない1つ以上のピクセル及び1つ以上の複屈折ピクセルから形成されている、モザイク式複屈折マスクと、
前記偏光イメージセンサに動作的に結合されたプロセッサであって、前記プロセッサは、複数の前記複屈折スーパーピクセルによって生成される複数の強度信号を処理して、前記イメージセンサによって撮影されたイメージのストークスパラメータを特定するように構成されている、プロセッサと、
を備える、インスタントイメージングフルストークス偏光計。
【請求項16】
前記偏光子は、複数の偏光スーパーピクセルを備えるモザイク式偏光マスクを備えており、かつ、各前記偏光スーパーピクセルは複数のマイクロ偏光子を備えている、請求項15に記載のインスタントイメージングフルストークス偏光計。
【請求項17】
前記偏光子は円偏光子を含んでいる、請求項15に記載のインスタントイメージングフルストークス偏光計。
【請求項18】
前記モザイク式複屈折マスクは、前記イメージセンサ及び前記偏光子のうち1つ以上に取付けられている、請求項15に記載のインスタントイメージングフルストークス偏光計。
【請求項19】
前記モザイク式複屈折マスクは、スーパーピクセルのセットを2つ備えている、請求項15に記載のインスタントイメージングフルストークス偏光計。
【請求項20】
前記複屈折スーパーピクセルは、6つのピクセルを含んでいる、請求項15に記載のインスタントイメージングフルストークス偏光計。
【国際調査報告】