IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヘーガー、ジャスパーの特許一覧

特表2025-505703熱エネルギーを運動エネルギーに変換するための方法および改良された装置
<>
  • 特表-熱エネルギーを運動エネルギーに変換するための方法および改良された装置 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-28
(54)【発明の名称】熱エネルギーを運動エネルギーに変換するための方法および改良された装置
(51)【国際特許分類】
   F01K 13/00 20060101AFI20250220BHJP
   F01K 9/00 20060101ALI20250220BHJP
   F01K 17/02 20060101ALI20250220BHJP
   F22B 1/16 20060101ALI20250220BHJP
【FI】
F01K13/00 D
F01K9/00 A
F01K17/02
F22B1/16 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024547422
(86)(22)【出願日】2023-02-03
(85)【翻訳文提出日】2024-09-30
(86)【国際出願番号】 EP2023052631
(87)【国際公開番号】W WO2023152032
(87)【国際公開日】2023-08-17
(31)【優先権主張番号】102022103298.1
(32)【優先日】2022-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524298022
【氏名又は名称】ヘーガー、ジャスパー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘーガー、ジャスパー
(57)【要約】
本発明は、熱エネルギー、特に環境からのエネルギーを運動エネルギーに変換する方法、および熱エネルギーを運動エネルギーに変換する装置に関し、前記装置は方法を実行するために使用される。本発明による方法では、流体を有する2つの回路が、少なくとも3つの熱交換器において一方の流体が他方に影響を及ぼすという点で、互いに動作的に接続される。2つの回路には、使用される流体の温度を予め設定する環境熱交換器がさらに設けられる。この目的のために使用される排熱は、例えば、産業分野に由来し得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱エネルギーを運動エネルギーに変換する方法であって、第1の回路(2)において、
第1のガス状流体を温度上昇を伴って圧縮するステップであって、前記第1の回路(2)を通る前記流体の圧送運動を生成する、ステップと、
前記第1の流体を第1の熱交換器(6)内で凝縮を伴って冷却するステップと、
前記第1の流体を第3の熱交換器(11)内でさらなる凝縮を伴ってさらに冷却するステップと、
前記第1の流体を減圧弁(7)内で減圧するステップと、
熱を第2の熱交換器(8)内で吸収するステップと、
熱エネルギーを第1の環境熱交換器(4)内でさらに吸収するステップと、
の反復的方法ステップ
を含み、
第2の回路(3)において、
第2の流体を前記第2の回路(3)を通して圧送するステップと、
第3の熱交換器(11)内で加熱するステップと、
第2の環境熱交換器(12)内で蒸発させるステップと、
第1の熱交換器(6)内でさらに加熱するステップと、
前記第2の流体を、関連する圧力減少および熱エネルギー放出を伴って熱機関(9)に移送するステップと、
前記熱機関(9)内でエネルギーを取り出すステップと、
前記第2の熱交換器(8)へ再循環させ、液化させるステップと、
の、並行する反復的方法ステップ
を含み、ここで、前記回路(2、3)が、一方の回路内の凝縮器が他方の回路内の蒸発器であるという相互の条件に従う、
方法。
【請求項2】
前記第3の熱交換器(11)内でさらなる凝縮が行われないことを特徴とする、請求項1に記載の熱エネルギーを運動エネルギーに変換する方法。
【請求項3】
前記第2の流体が、前記第2の環境熱交換器(12)内で既に蒸発されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の熱エネルギーを運動エネルギーに変換する方法。
【請求項4】
前記各回路(2、3)内の少なくとも1つの点において、温度および/または流量および/または圧力の測定が行われ、収集されたデータが評価され、前記各回路が閉ループコントローラによって最適化されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の熱エネルギーを運動エネルギーに変換する方法。
【請求項5】
前記第2の回路(3)内のポンプ(10)で生成された廃熱が、前記第2の環境熱交換器(12)と前記第1の熱交換器(6)との間で、または前記第1の熱交換器(6)と前記熱機関(9)との間で前記第2の回路(3)に、前記第2の回路(3)に供給されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の熱エネルギーを運動エネルギーに変換する方法。
【請求項6】
請求項1から5に記載の方法用の、熱エネルギーを運動エネルギーに変換するための改良された装置(1)であって、流体のための2つの回路(2、3)を備え、第1の回路(2)が、順に、第1の環境熱交換器(4)と、圧縮機(5)と、第1の熱交換器(6)と、減圧弁(7)と、第2の熱交換器(8)とを備え、前記第1の回路(2)において、前記第1の熱交換器(6)が凝縮器として機能し、前記第2の熱交換器(8)が蒸発器として機能し、第2の回路(3)が、順に、前記第1の熱交換器(6)と、熱機関(9)と、前記第2の熱交換器(8)と、ポンプ(10)とを備え、前記第2の回路(3)において、前記第1の熱交換器(6)が蒸発器として機能し、前記第2の熱交換器(8)が凝縮器として機能し、前記2つの回路(2、3)が、流体的に非接続であるが、前記第1の熱交換器(6)および前記第2の熱交換器(8)で機能的関係を有し、前記第1の回路(2)において、前記第1の熱交換器(6)の下流に第3の熱交換器(11)が配置され、前記第2の回路(3)において、前記ポンプ(10)の下流に前記第3の熱交換器(11)および第2の環境熱交換器(12)が配置され、前記回路(2、3)が、前記第3の熱交換器(11)で前記第1の回路(2)と前記第2の回路(3)との間に機能的関係を有することを特徴とする、改良された装置(1)。
【請求項7】
前記装置が、温度および/または流量および/または圧力の測定センサと、測定データを処理するための制御ユニットと、前記処理を制御するための閉ループコントローラとを有することを特徴とする、請求項6に記載の、前記方法用の熱エネルギーを運動エネルギーに変換するための改良された装置(1)。
【請求項8】
前記環境熱交換器(4、12)が外部回路に組み込まれることを特徴とする、請求項6または7に記載の、前記方法用の熱エネルギーを運動エネルギーに変換するための改良された装置(1)。
【請求項9】
前記第2の回路(3)内の前記ポンプ(10)が圧縮機として構成されることを特徴とする、請求項6から8に記載の、前記方法用の熱エネルギーを運動エネルギーに変換するための改良された装置(1)。
【請求項10】
前記第1の熱交換器(6)および/または前記第3の熱交換器(11)および/または前記第2の環境熱交換器(12)が熱交換装置内で接続されることを特徴とする、請求項6から9に記載の、前記方法用の熱エネルギーを運動エネルギーに変換するための改良された装置(1)。
【請求項11】
前記回路(2、3)が、前記環境熱交換器(4、12)を迂回するためのバイパス導管を有することを特徴とする、請求項6から10に記載の、前記方法用の熱エネルギーを運動エネルギーに変換するための改良された装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱エネルギー、特に環境からのエネルギーを運動エネルギーに変換する方法、および本方法が実行され得る、熱エネルギーを運動エネルギーに変換する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人々にエネルギーを供給することは非常に重要な主題である。特に、「クリーンな」エネルギーの生成は、環境を保護し、気候変動を遅らせ、さらには止めるための政治的目標である。環境に優しい公知のエネルギー生成設備には、水力発電所、大規模太陽光発電所でも工業的に利用されている太陽集熱器、および風力を陸上のエネルギーに変換する、大型海洋施設でも増えつつある風力タービンが挙げられる。長期的には、これらの技術は気候変動を止めるには不十分であろう。それに加え、エレクトロモビリティの結果として、電力消費が連続的に増加している。
【0003】
したがって、独国特許出願公開第10 2019 006 184号明細書は、ヒートポンプを火力発電所と組み合わせて利用することによって熱エネルギーを運動エネルギーに変換するための装置を提示する。この装置は、2つの熱力学的循環プロセスに基づく。2つの循環プロセスは、熱伝達の目的のために2つの熱交換器によって機械内で互いに接続される。この装置は、ヒートポンプの、熱交換器においてガスで熱エネルギーを吸収し、圧縮によってガス圧の上昇および体積の減少を同時に伴って高温を達成する能力を利用する。ポンプを動作させるためのエネルギー量は、圧送されるエネルギー量よりもはるかに小さい。次に、熱機関内でガス圧を運動エネルギーに変換できるように、加熱された流体を利用して第2の流体を蒸発させる。従来の任意の発電所のように、流体は凝縮される必要があるため、未利用の残留蒸気は凝縮器に導かれ、凝縮器は膨張弁によって減圧されたヒートポンプ回路からの非常に冷たい流体によって冷却される。熱機関回路からの流体は凝縮器内で凝縮し、繰り返し蒸発させるために圧送され熱交換器に戻される。次に、ヒートポンプからの流体は熱交換器内で再び加熱され、同じく熱交換器内に戻るために、凝縮器および環境からの熱エネルギーを伴って圧縮機に引き戻されることができ、熱は熱交換器内で熱機関回路からの流体に伝達される。結果として、熱エネルギーを運動エネルギーに常に変換することができる。ヒートポンプは、冷却および加熱するために同様に使用することができるので、エネルギー変換機械は、273ケルビン未満の沸点を有する流体を利用可能にするために両方のポテンシャル(potential)を用いる。使用される凝縮器は250ケルビン未満の温度に達することができるため、100ケルビン以上の温度差が可能である。例えばイソブタンなどの流体は、こうして高圧を形成することができ、熱機関で運動エネルギーに変換するために利用された後、ガスが最低圧力および非常に低温で凝縮器に流れる。例えばアンモニアが使用される場合、凝縮器は250ケルビン未満の温度に達し、例えばイソブタンなどのガスを凝縮させることができる。結果として、温度勾配、したがって熱機関内の圧力差は、熱交換器に吸収されたエネルギーの大部分を運動エネルギーに変換するのに十分である。凝縮タービンは、特定の種類の熱機関として、蒸発エンタルピーを利用することによって効率をさらに高めることができる。この開発のために行われた実験において、開発者は、工業的な次元での効果的な使用には依然として効率が不十分であることを認識した。
【0004】
本発明の目的は、熱エネルギーを運動エネルギーに変換するための拡張された方法および改良された装置を提供することである。
【0005】
この目的は、方法請求項1および装置請求項3の特徴によって達成され、それぞれの従属請求項がさらなる構成を説明する。
【0006】
定義
本発明の文脈における環境熱交換器は、エネルギーが熱の形態、例えば産業プロセスからの廃熱、装置用の発電所から、水もしくは水蒸気から、または最終的に直接環境からの熱エネルギーなどの形態で環境から取り出される装置であり、ただし、この熱エネルギー源は装置内で必要とされる水準を提供するのに十分であることを条件とする。
【0007】
流体が加熱されている場合、同時に流体の一部が蒸発することもあり得るが、これを詳細に説明する必要はない。
【0008】
流体が熱を放出している場合、同時に液化することもあり得るが、これを詳細に説明する必要はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2019 006 184号明細書
【発明の概要】
【0010】
まず、本方法および装置を理解するためのいくつかの基本を説明する。ヒートポンプの場合、重要視されているもの(starting point)は一般に効率性のみであり、性能指数ではない。原則として、ポンプの消費電力、ポンプストロークおよび圧送される水量を用いて、実行される仕事、したがってポンプの効率性を計算する。対照的に、水温、したがって圧送される熱容量は重要ではない。好適な配置の場合、すなわち周囲温度と圧送される媒体の温度との差が大きい場合、そのような膨大な量の熱、大量のエネルギー担体は、同じポンプ出力で輸送することができる。目的は、この熱を利用可能にすることである。そこで、ヒートポンプの性能指数が、効率性とは異なり、圧送される流体中に存在するエネルギーの量を明らかにする。
【0011】
従来の冷却システムでは、性能指数は、その圧縮機で消費されるエネルギーの3~4倍である。したがって、ポンプ出力が1kWの場合、最大4kWの冷却出力が期待できる。生成された冷却は、例えば冷蔵庫において、熱エネルギー源としての食品から熱を引き出し、それにより食品の貯蔵寿命を延ばすために利用される。
【0012】
ヒートポンプは熱力学の第1の法則に従うため、冷却出力に対応するエネルギー量が熱として除去される。したがって、放出される熱は必要な冷却出力の大きさに対応し、この熱は冷蔵庫内の温度を必要な冷却の水準まで低下させるために使用される。周囲の空間に放出された熱は、冷蔵庫の場合、さらに利用されることなく従来技術に従って放散される。したがって、ポンプ出力1kW当たり4kWの冷却出力の場合、冷蔵庫の外側で除去される熱量は、内部から同じく4kWと、圧縮機からの追加の廃熱1kWである。
【0013】
ORC蒸気タービンの形態の熱機関は、ガスの膨張によって、温度差を回転エネルギーに、通常70%以上の領域で高度に変換し、残りは部分的に凝縮した流体中の熱として凝縮器に放出される。熱機関には、装置を作動させるために高温側および低温側が必要である。ヒートポンプの冷却体が凝縮器の形態をとり、ヒートポンプの高温側が蒸発器の形態をとる場合、ヒートポンプの要素は、流体が好適に選択され、環境からの熱が吸収されると、熱機関の高温側または低温側に関して、回転エネルギーが高度に電気エネルギーに変換されるように構成される。熱機関によって放出される熱のエネルギーは、必要な圧送エネルギーまたは圧縮機用のエネルギーを明らかに超えるほど十分大きくなる。
【0014】
先に説明したように、出力は温度差の大きさに伴って増加するため、性能指数を向上させるためには、好適な数のさらなる熱交換器によってヒートポンプおよび熱機関の回路を拡張することが望ましい。
【0015】
この背景に対して、熱エネルギーを運動エネルギーに変換するための本発明の方法が提示される。この方法では、反復的方法ステップは、第1の回路および第2の回路で並行して進行し、回路は、一方の回路の一方の凝縮器が他方の回路の蒸発器であり、その逆も同様であるという相互の条件に従う。回路内の流体は、回路を通って移動する際に、その温度に関連して、他の回路内の流体によって常に影響を受ける。
【0016】
第1の回路では、初めはガス状である第1の流体が圧縮され、温度が上昇する。圧縮は、回路を通る流体の圧送運動を生成する。この第1の流体は、第1の熱交換器内で凝縮を伴って冷却される。第1の流体は、第3の熱交換器内で同様に凝縮を伴ってさらに冷却され、減圧弁内で減圧される。その後、第2の熱交換器を通過して熱を吸収し、環境熱交換器内でさらなる熱エネルギーを吸収した後、上述の圧縮に戻される。
【0017】
第2の流体は、第2の回路を通って圧送され、第3の熱交換器内で加熱され、一方、第1の流体は上述のように冷却される。第2の環境熱交換器内で蒸発され、第1の熱交換器内でさらに加熱される。このさらなる加熱は、第1の流体の第1の冷却を伴う。第2の流体は、第1の熱交換器から熱機関に入り、結果として圧力低下および熱エネルギー放出を伴う。熱機関では、生じた回転エネルギーを取り出し、例えば電気エネルギーに変換することができる。熱機関による膨張の後、第2の熱交換器への再循環および液化が行われ、第3の熱交換器の方向への圧送動作により一連の手順が再び開始する。
【0018】
2つの重複して相互に影響を及ぼす回路を有するこの方法の結果、それぞれの流体、特に第2の流体の最適な全体状態が達成されるが、これは、第2の流体が最高温度で熱機関に導入され、最低温度で再び回路に放出されるためである。熱機関入口と熱機関出口との温度差が特に大きい場合、高い運動エネルギーを生成することができる。
【0019】
初めはガス状である第1の流体を圧縮することによって、第2の流体が熱機関における所望の入口温度に達するような、第1の熱交換器内で第2の流体に熱が伝達される温度水準に達する。第1の流体は、冷却された形態で前方に流れ、第3の熱交換器で再び冷却され、そこで熱が第2の流体に伝達される。これにより第1の流体は凝縮し、減圧弁によって膨張される。その結果、最初に第2の熱交換器で、その後に環境熱交換器で、再び熱を吸収する準備が整う。
【0020】
そのような方法を最適に実行できるようにするために、一般的な気候条件および熱源から生じる温度差の下で効果的に機能する流体を使用することが好ましい。プロパン、二酸化炭素およびアンモニアがここで例として挙げられ得るが、他の流体は除外されない。言及されたものの中で、プロパンは非常に容易に制御することができ、より安全に利用できるため、非常に良好な適合性を有する。さらに、TFAに変換されないため、環境に侵入しても持続しない。
【0021】
熱エネルギーを運動エネルギーに変換するための本発明の方法の特定の構成では、第3の熱交換器内でさらなる凝縮は行われない。方法を最適に進行させるために、凝縮は第1の熱交換器で既に完了すべきである。最適な場合において、第1の流体は、第1の熱交換器の出口で環境温度となる。このことにより、本方法の熱交換率が向上する。
【0022】
熱エネルギーを運動エネルギーに変換するための本発明の方法のさらなる構成では、第2の流体は、第2の環境熱交換器内で既に完全に蒸発している。この方法の改善も効率の向上につながる。
【0023】
さらに、熱エネルギーを運動エネルギーに変換する方法の特定の構成では、温度および/または流量および/または圧力の測定が各回路の少なくとも1つの点で行われる。これは第1に、方法プロセスをより良好に監視することに役立つ。第2に、定期的にサンプリングされたデータはプロセスに関する情報を提供し、必要に応じてユーザに警告することができる。例えば、これらの測定には効率を高める目的があるが、安全上の理由もある。さらに、これは弁による制御を可能にし、その制御によってエネルギー流および熱伝達を最適化することができ、安全な選択が可能となる。例えば、システムが過熱または過冷却する前、または熱機関が過負荷または過少負荷になる前に、過度に高いまたは過度に低い熱入力を変更することができる。
【0024】
最後に、熱エネルギーを運動エネルギーに変換するための本発明の方法のさらなる構成は、第2の回路内のポンプで生成された廃熱が、第2の環境交換器と第1の熱交換器との間で、または第1の熱交換器と熱機関との間で前記第2の回路の回路に戻されるという特徴を含む。したがって、プロセスで形成された廃熱でさえも、さらなる使用のために送ることができ、効率を高めるのに役立つ。同様に、回路内の他の放熱要素から熱を取り出し、その熱を好適な点で回路に戻すことも可能である。
【0025】
記載された方法で使用するための熱エネルギーを運動エネルギーに変換するための改良された装置は、流体用の2つの回路を含み、第1の回路は、順に、第1の環境熱交換器と、圧縮機と、第1の熱交換器と、減圧弁と、第2の熱交換器とを含む。第1の回路では、第1の熱交換器が凝縮器として機能し、第2の熱交換器が蒸発器として機能する。第2の回路は、順に、第1の熱交換器と、熱機関と、第2の熱交換器と、ポンプとを含み、第2の回路では、第1の熱交換器が蒸発器として機能し、第2の熱交換器が凝縮器として機能する。2つの回路は互いに流体的に非接続であるが、第1および第2の熱交換器において機能的関係を有する。
【0026】
本発明によれば、第1の回路内の第1の熱交換器の下流に第3の熱交換器が配置され、第2の回路内のポンプの下流に第3の熱交換器および第2の環境熱交換器が配置される。第3の熱交換器内の回路も同様に、第1の回路と第2の回路との間の機能的関係を有する。第3の熱交換器および第2の環境熱交換器を追加的に組み込むことによって、従来技術に記載された装置と比較して、装置の熱交換率がさらに高まる。流体は、熱機関において最適な結果が達成できるように、回路内の必要な温度および全体的な状態にさらにより正確に調整することができる。
【0027】
熱エネルギーを運動エネルギーに変換するための改良された装置の特定の構成では、装置は、温度および/または流量および/または圧力の測定センサと、測定データを処理するための制御ユニットとを有する。しかしながら、特に、最適な効率を確実に達成するためには、圧力、温度、流量などの測定データを検出および評価することと、流体内の圧力を高める、環境からの熱の供給を変更するなどの必要な調整を実施することが不可欠である。熱機関の熱交換率を一定にするために、指標の常時監視も必要である。
【0028】
本発明の熱エネルギーを運動エネルギーに変換するための改良された装置の特定の構成によれば、環境熱交換器が回路に組み込まれる。環境熱交換器は、従来の熱交換器に効果的に置き換えられ、他の場所で生成された熱エネルギーが取り出され、流体に伝達される。このことは、使用可能性を拡げ、使用現場の状況に合わせて装置を調整するのに役立つ。
【0029】
熱エネルギーを運動エネルギーに変換するための改良された装置の特定の構成では、第2の回路内のポンプは圧縮機として構成される。ポンプのこの追加機能は、熱機関の高い熱交換率のために必要とされる仕様にさらに正確に適合させることができるため、流体への影響が大きくなる。
【0030】
最後に、熱エネルギーを運動エネルギーに変換するための改良された装置の特定の構成では、第1の熱交換器および第3の熱交換器および/または第2の環境熱交換器が、熱交換装置内で接続される。したがって、熱交換率を損なうことなく装置をはるかに小型化することができる。こうして、より小さな範囲での使用が可能となる。さらに当然のことながら、例えばシステムにおけるより良好なエネルギー利用の理由から、可能であれば、他の構成要素を、言及された構成要素と別々にまたはまとめて、より小型のユニットに組み合わせることも可能である。
【0031】
熱エネルギーを運動エネルギーに変換するための本発明の改良された装置の最後の構成では、2つの回路には、環境熱交換器の領域にバイパス導管が設けられる。このようにして、流体がバイパス導管を通って迂回されるとき、システムは、制御された方法で環境熱交換器におけるさらなるエネルギーの吸収から保護され、したがって冷却され得る。これらのバイパス導管はまた、損傷または事故を回避することができるように、システム過熱から保護する。
【0032】
装置の大きな利点は、第1および第2の環境熱交換器が、例えば洗濯工場、エネルギー生成、廃棄物焼却、埋立地脱ガスおよび他の産業プロセスからの任意の種類の廃熱、ならびに例えば高温源からの自然廃熱を装置に伝達できることである。これは、必ずしも直接行われる必要はなく、上流の熱回路を介して実現することもできる。これにより、多くの異なる場所、好ましくはあらゆる種類の廃熱が利用されずに失われる場所において、非常に柔軟な使用が可能になる。
【0033】
多くの異なる流体が使用可能である。地球上に普及する条件下での良好な利用可能性から、二酸化炭素、アンモニアおよび特にプロパンが好ましい。これらの物質は、入手および取り扱いが比較的容易である。装置の熱交換率に影響を与えない場合、回路に異なる流体を使用することが可能である。
【0034】
すべての測定および監視機器ならびに制御機器のために、エネルギー供給が提供されるものとする。ポンプもまた、電気的に作動されなければならない。さらに、エネルギーは、例えば産業からの廃熱を吸収することができる環境熱交換器内でシステムへ導入される。
【0035】
以下、別の論理的な設定で詳細を要約し、それによって、本発明の機能的関係とエネルギー変換までに生じる結果とを、変更された形態で示す。
【0036】
熱エネルギーを運動エネルギーに変換する方法は、第1の回路における反復的な方法ステップを含む。これらの方法ステップは、第1の環境熱交換器内で第1の流体の蒸発によって環境または外部プロセスから熱エネルギーを吸収することと、ガス状の第1の流体を、圧縮機により温度上昇を伴って圧縮することとを含み、ここで、圧縮することは、第1の回路を通る流体の圧送運動を生成する。さらに、この回路では、第1の熱交換器内で凝縮を伴って第1の流体から熱エネルギーを放出することと、第1の流体からの熱エネルギーを、第3の熱交換器内でさらなる凝縮を伴ってさらに放出することと、が行われる。その後、第1の流体を減圧弁を介して減圧することと、再び第2の熱交換器で熱エネルギーを吸収し、第1の流体を蒸発させることと、が行われる。
【0037】
同時に、第2の回路において、反復的な方法ステップが存在する。これらの方法ステップは、第2の熱交換器内で第2の流体の凝縮を伴って熱エネルギーを放出することと、ポンプにより第2の流体を第2の回路を通して圧送することと、第3の熱交換器内で第2の流体の蒸発を伴って熱エネルギーを吸収し、第2の回路内の蒸気圧を高めることと、を含む。続いて、第2の環境熱交換器内で第2の流体のさらなる蒸発を伴って環境または外部プロセスから熱エネルギーをさらに吸収し、第2の回路内の蒸気圧をさらに高めることと、第1の熱交換器内で第2の流体のさらなる蒸発を伴って熱エネルギーをさらに吸収し、第2の回路内の蒸気圧をさらに高めることと、が行われる。その後、その時点でガス状の形態である第2の流体は熱機関に導かれ、熱機関で蒸気圧および熱エネルギーが運動エネルギーに変換され、同時に熱機関で蒸気圧および熱エネルギーの減少を伴って運動エネルギーが取り出される。
【0038】
2つの回路は、第1の回路内の一方の凝縮器が他方の回路内の蒸発器であり、その逆も同様であるという相互の条件に従う。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1図1は本発明の装置の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明を実施例によって説明する。これに関して、図1は本発明の装置の概略図を示す。
【0041】
複数の点で接触する2つの回路2、3が示される。回路2、3の接触があるところにはすべて、熱交換器6、8、11が配置されている。回路2、3を通って移動する流体は、熱交換器において互いに影響を及ぼす。圧縮機5は、第1の回路において流動運動を達成するのに十分である。第1の回路2からの流体はここで圧縮され、温度が上昇する。第1の熱交換器6において熱エネルギーが放出され、第3の熱交換器11において熱エネルギーがさらに放出され、減圧弁7において減圧される。その後流体は、まず第2の熱交換器8で、次に第1の環境熱交換器4で熱エネルギーを吸収する。したがって、流体は、圧縮後に最高温度になり、減圧後に最低温度になる。
【0042】
第2の回路3では、流体はポンプによって第3の熱交換器11の方向に圧送され、第3の熱交換器11で加熱される。流体は第2の環境熱交換器12内でさらに加熱され、第1の熱交換器6内でさらに温度が上昇し、次いで熱機関9に移送される。熱が運動エネルギーを生成し、それにより流体を冷却する。次いで流体は、第2の熱交換器8内で再び液化された後に、圧送されて第2の回路3に戻る。
【符号の説明】
【0043】
1 装置
2 第1の回路
3 第2の回路
4 第1の環境熱交換器
5 圧縮機
6 第1の熱交換器
7 減圧弁
8 第2の熱交換器
9 熱機関
10 ポンプ
11 第3の熱交換器
12 第2の環境熱交換器
図1
【国際調査報告】