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特表2025-506044がんを処置するためのBcl-2阻害剤及びオーロラキナーゼ阻害剤
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  • 特表-がんを処置するためのBcl-2阻害剤及びオーロラキナーゼ阻害剤 図1
  • 特表-がんを処置するためのBcl-2阻害剤及びオーロラキナーゼ阻害剤 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-03-05
(54)【発明の名称】がんを処置するためのBcl-2阻害剤及びオーロラキナーゼ阻害剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/06 20060101AFI20250226BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250226BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250226BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20250226BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20250226BHJP
   A61K 31/472 20060101ALI20250226BHJP
   A61K 31/4162 20060101ALI20250226BHJP
   A61K 31/55 20060101ALI20250226BHJP
   A61K 31/517 20060101ALI20250226BHJP
   A61K 31/661 20060101ALI20250226BHJP
   A61K 31/4545 20060101ALI20250226BHJP
【FI】
A61K45/06
A61P35/00
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61K31/5377
A61K31/496
A61K31/472
A61K31/4162
A61K31/55
A61K31/517
A61K31/661
A61K31/4545
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024547635
(86)(22)【出願日】2023-02-10
(85)【翻訳文提出日】2024-10-04
(86)【国際出願番号】 EP2023053392
(87)【国際公開番号】W WO2023152339
(87)【国際公開日】2023-08-17
(31)【優先権主張番号】2201824.6
(32)【優先日】2022-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ネイチャー、ネイチャーパブリッシンググループUK、ロンドン、2022年、第603巻、第7899号、第166~173頁(Nature, Nature Publishing Group UK, London, 2022, vol 603,no. 7899, pg. 166-173) 発行年月日:2022年2月23日(水)
(71)【出願人】
【識別番号】512010753
【氏名又は名称】ゲノム・リサーチ・リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】517415872
【氏名又は名称】スティヒティング・ヘット・ネーデルランズ・カンカー・インスティテュート-アントニ・ファン・レーウェンフック・ゼィークンホイス
【氏名又は名称原語表記】STICHTING HET NEDERLANDS KANKER INSTITUUT-ANTONI VAN LEEUWENHOEK ZIEKENHUIS
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コーカー,エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】エメリー,エイミー
(72)【発明者】
【氏名】ガーネット,マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ジャークス,パトリシア
(72)【発明者】
【氏名】ビス,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ウェッセルズ,ロデウィック
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA20
4C084MA02
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC45
4C086BC73
4C086BC84
4C086CB05
4C086CB11
4C086CB14
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA10
4C086GA12
4C086GA16
4C086HA19
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、患者における乳がん、卵巣がん、膵臓がん、又は前立腺がんから選択されるがんの処置方法における使用のための、ナビトクラックス、ベネトクラクス、A-1331852、AZD5991、又はA-1155463から選択されるBcl-2タンパク質ファミリーの阻害剤とオーロラキナーゼ阻害剤との併用療法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における乳がん、卵巣がん、膵臓がん、又は前立腺がんから選択されるがんの処置方法における使用のための、ナビトクラックス、ベネトクラクス、A-1331852、AZD5991、又はA-1155463から選択されるBcl-2タンパク質ファミリーの阻害剤とオーロラキナーゼ阻害剤との組合せ。
【請求項2】
患者における乳がん、卵巣がん、膵臓がん、又は前立腺がんから選択されるがんの処置方法における使用のための、ナビトクラックス、ベネトクラクス、A-1331852、AZD5991、又はA-1155463から選択されるBcl-2タンパク質ファミリーの阻害剤であって、オーロラキナーゼ阻害剤との組合せで患者に投与される、Bcl-2タンパク質ファミリーの阻害剤。
【請求項3】
患者における乳がん、卵巣がん、膵臓がん、又は前立腺がんから選択されるがんの処置方法における使用のためのオーロラキナーゼ阻害剤であって、ナビトクラックス、ベネトクラクス、A-1331852、AZD5991、又はA-1155463から選択されるBcl-2タンパク質ファミリーの阻害剤との組合せで患者に投与される、オーロラキナーゼ阻害剤。
【請求項4】
Bcl-2タンパク質ファミリーの阻害剤がナビトクラックスである、請求項1に記載の使用のための組合せ、請求項2に記載の使用のためのBcl-2タンパク質ファミリーの阻害剤、又は請求項3に記載の使用のためのオーロラキナーゼ阻害剤。
【請求項5】
Bcl-2タンパク質ファミリーの阻害剤がA-1331852である、請求項1に記載の使用のための組合せ、請求項2に記載の使用のためのBcl-2タンパク質ファミリーの阻害剤、又は請求項3に記載の使用のためのオーロラキナーゼ阻害剤。
【請求項6】
Bcl-2タンパク質ファミリーの阻害剤がA-1155463である、請求項1に記載の使用のための組合せ、請求項2に記載の使用のためのBcl-2タンパク質ファミリーの阻害剤、又は請求項3に記載の使用のためのオーロラキナーゼ阻害剤。
【請求項7】
Bcl-2タンパク質ファミリーの阻害剤がベネトクラクスである、請求項1に記載の使用のための組合せ、請求項2に記載の使用のためのBcl-2タンパク質ファミリーの阻害剤、又は請求項3に記載の使用のためのオーロラキナーゼ阻害剤。
【請求項8】
Bcl-2タンパク質ファミリーの阻害剤がAZD5991である、請求項1に記載の使用のための組合せ、請求項2に記載の使用のためのBcl-2タンパク質ファミリーの阻害剤、又は請求項3に記載の使用のためのオーロラキナーゼ阻害剤。
【請求項9】
がんが乳がんである、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用のための組合せ、Bcl-2タンパク質ファミリーの阻害剤、又はオーロラキナーゼ阻害剤。
【請求項10】
がんが非HER2リッチ乳がんである、請求項1から9のいずれか一項に記載の使用のための組合せ、Bcl-2タンパク質ファミリーの阻害剤、又はオーロラキナーゼ阻害剤。
【請求項11】
がんがHER2-であると決定される、請求項1から10のいずれか一項に記載の使用のための組合せ、Bcl-2タンパク質ファミリーの阻害剤、又はオーロラキナーゼ阻害剤。
【請求項12】
がんが基底細胞様乳がんである、請求項1から11のいずれか一項に記載の使用のための組合せ、Bcl-2タンパク質ファミリーの阻害剤、又はオーロラキナーゼ阻害剤。
【請求項13】
がんがトリプルネガティブ乳がんである、請求項1から11のいずれか一項に記載の使用のための組合せ、Bcl-2タンパク質ファミリーの阻害剤、又はオーロラキナーゼ阻害剤。
【請求項14】
がんがルミナルB乳がんである、請求項1から11のいずれか一項に記載の使用のための組合せ、Bcl-2タンパク質ファミリーの阻害剤、又はオーロラキナーゼ阻害剤。
【請求項15】
がんがルミナルA乳がんである、請求項1から11のいずれか一項に記載の使用のための組合せ、Bcl-2タンパク質ファミリーの阻害剤、又はオーロラキナーゼ阻害剤。
【請求項16】
オーロラキナーゼ阻害剤がオーロラAキナーゼ阻害剤である、請求項1から15のいずれか一項に記載の使用のための組合せ、Bcl-2タンパク質ファミリーの阻害剤、又はオーロラキナーゼ阻害剤。
【請求項17】
オーロラキナーゼ阻害剤がアリセルチブ、トザセルチブ、ZM447439、AZD2811、AZD1152、LY3295668、MK-5108、GSK1070916及びMLN8054から選択される、請求項1から15のいずれか一項に記載の使用のための組合せ、Bcl-2タンパク質ファミリーの阻害剤、又はオーロラキナーゼ阻害剤。
【請求項18】
オーロラキナーゼ阻害剤がアリセルチブ、トザセルチブ、ZM447439、AZD2811及びAZD1152から選択される、請求項17に記載の使用のための組合せ、Bcl-2タンパク質ファミリーの阻害剤、又はオーロラキナーゼ阻害剤。
【請求項19】
オーロラキナーゼ阻害剤がアリセルチブ、トザセルチブ及びZM447439から選択される、請求項17に記載の使用のための組合せ、Bcl-2タンパク質ファミリーの阻害剤、又はオーロラキナーゼ阻害剤。
【請求項20】
オーロラキナーゼ阻害剤がアリセルチブである、請求項17に記載の使用のための組合せ、Bcl-2タンパク質ファミリーの阻害剤、又はオーロラキナーゼ阻害剤。
【請求項21】
Bcl-2タンパク質ファミリーの阻害剤及びオーロラキナーゼ阻害剤が別々に投与される、請求項1から20のいずれか一項に記載の使用のための組合せ、Bcl-2タンパク質ファミリーの阻害剤、又はオーロラキナーゼ阻害剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がんの処置(治療)のための併用療法に関する。
【背景技術】
【0002】
治療における進歩にも拘わらず、がんは世界中で社会、家族及び個人に多大な影響を有し続けている。がんは世界で最大の死因の一つである。米国国立がん研究所により提供される統計によれば、2018年には世界で1810万の新規症例及び950万のがん関連死があった。2040年までに年間の新規がん症例数は2950万まで、がん関連死の数は1640万まで上昇すると予測される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
分子的に定義された腫瘍を患う患者における単剤標的化療法の使用により、がん治療は改善されている。それにも拘わらず、多くの患者は依然として効果的な治療法を欠いており、既存の又は獲得された耐性のために、我々の最も先進的な医薬ですら臨床的利益が制限される。数を増している標的型抗がん剤を使用した併用療法は、既存の薬剤への耐性を克服し、反応(応答)を増強し、用量を制限する単剤の毒性を低減し、患者にとって処置の範囲を拡大する可能性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、患者におけるがんの処置のための有効成分の療法的組合せの使用、特にオーロラキナーゼ阻害剤とのBcl-2タンパク質ファミリーの阻害剤の組合せを対象とする。本明細書において記載される通り、本発明者らは、がん細胞株におけるオーロラキナーゼ阻害剤とのBcl-2タンパク質ファミリーの阻害剤、例えばナビトクラックス(navitoclax)の組合せについて相乗作用を観察した。
【0005】
第1の態様では、本発明は、患者における乳がん、卵巣がん、膵臓がん、又は前立腺がんから選択されるがんの処置方法における使用のための、ナビトクラックス、ベネトクラクス(venetoclax)、A-1331852、AZD5991、又はA-1155463から選択されるBcl-2タンパク質ファミリーの阻害剤とオーロラキナーゼ阻害剤との組合せを提供することができる。
【0006】
一部の場合では、本発明は、患者における乳がん、卵巣がん、膵臓がん、又は前立腺がんから選択されるがんの処置方法における使用のための、ナビトクラックス、ベネトクラクス、A-1331852、AZD5991、又はA-1155463から選択されるBcl-2タンパク質ファミリーの阻害剤を提供することができ、Bcl-2タンパク質ファミリーの阻害剤はオーロラキナーゼ阻害剤との組合せで患者に投与される。
【0007】
一部の場合には、本発明は、患者における乳がん、卵巣がん、膵臓がん、又は前立腺がんから選択されるがんの処置方法における使用のためのオーロラキナーゼ阻害剤を提供することができ、オーロラキナーゼ阻害剤は、ナビトクラックス、ベネトクラクス、A-1331852、AZD5991、又はA-1155463から選択されるBcl-2タンパク質ファミリーの阻害剤との組合せで患者に投与される。
【0008】
一部の実施形態では、ナビトクラックスが使用される。一部の実施形態では、ベネトクラクスが使用される。一部の実施形態では、A-1331852が使用される。一部の実施形態では、AZD5991が使用される。一部の実施形態では、A-1155463が使用される。
【0009】
一部の実施形態では、がんは非HER2リッチ乳がんである。本発明者らは、非HER2乳がん細胞株中に有意な相乗作用を観察した。一部の実施形態では、がんはHER2-であると決定される。
【0010】
一部の実施形態では、がんは基底細胞様(basal-like)乳がんである。一部の実施形態では、がんはトリプルネガティブ乳がんである。
【0011】
一部の実施形態では、がんはルミナルA乳がんである。
【0012】
一部の実施形態では、がんはルミナルB乳がんである。
【0013】
一部の実施形態では、オーロラキナーゼ阻害剤はオーロラAキナーゼ阻害剤である。一部の実施形態では、オーロラキナーゼ阻害剤はアリセルチブ(alisertib)、トザセルチブ(tozasertib)、ZM447439、AZD2811(バラセルチブ(barasertib)-hQPAとしても公知)、AZD1152(バラセルチブ、バラセルチブ-hQPAのプロドラッグ)、LY3295668、MK-5108、GSK1070916及びMLN8054から選択される。一部の実施形態では、オーロラキナーゼ阻害剤はアリセルチブ、トザセルチブ、ZM447439、AZD2811及びAZD1152から選択される。一部の実施形態では、オーロラキナーゼ阻害剤はアリセルチブ、トザセルチブ及びZM447439から選択される。一部の実施形態では、オーロラキナーゼ阻害剤はアリセルチブである。
【0014】
ナビトクラックス、ベネトクラクス、A-1331852、AZD5991、又はA-1155463から選択されるBcl-2タンパク質ファミリーの阻害剤及びオーロラキナーゼ阻害剤は、一緒に(共に)又は別々に投与することができ、同時に又は異なる時間に投与できることが理解される。例えば、化合物は処置サイクル又は処置レジメンの一部として、異なる日に投与することができる。好適には、但し必ずではないが、本明細書において記載されるBcl-2タンパク質ファミリーの阻害剤及びオーロラキナーゼ阻害剤は別々に製剤化される。好ましい方法では、両方の化合物が経口投与のために製剤化される。
【0015】
特許請求される併用療法は、治癒及び対症(緩和)の両方に使用することが可能である。併用療法は、他の処置レジメンと比較した場合、より良好な患者のアウトカム及び/又はエクスペリエンスにつながる可能性があり、追加的又は代替的に患者が利用可能な処置の選択肢を拡大する可能性がある。
【0016】
好適には、患者はヒト患者であり得る。
【0017】
本発明はまた、がんの処置を必要とする患者におけるがんの処置方法であって、患者に有効量のナビトクラックス、ベネトクラクス、A-1331852、AZD5991、又はA-1155463から選択されるBcl-2タンパク質ファミリーの阻害剤と有効量のオーロラキナーゼ阻害剤との組合せを投与するステップを含み、がんが乳がん、卵巣がん、膵臓がん、又は前立腺がんから選択される方法にも関する。
【0018】
本発明はまた、がんの処置を必要とする患者におけるがんの処置方法であって、患者に有効量のオーロラキナーゼ阻害剤との組合せで有効量のナビトクラックス、ベネトクラクス、A-1331852、AZD5991、又はA-1155463から選択されるBcl-2タンパク質ファミリー阻害剤を投与するステップを含み、がんが乳がん、卵巣がん、膵臓がん、又は前立腺がんから選択される方法にも関する。
【0019】
本発明はまた、がんの処置を必要とする患者におけるがんの処置方法であって、患者に有効量のナビトクラックス、ベネトクラクス、A-1331852、AZD5991、又はA-1155463から選択されるBcl-2タンパク質ファミリーの阻害剤との組合せで有効量のオーロラキナーゼ阻害剤を投与するステップを含み、がんが乳がん、卵巣がん、膵臓がん、又は前立腺がんから選択される方法にも関する。
【0020】
本発明は、患者におけるがんの処置ための医薬品製造における、ナビトクラックス、ベネトクラクス、A-1331852、AZD5991、又はA-1155463から選択されるBcl-2タンパク質ファミリーの阻害剤とオーロラキナーゼ阻害剤との組合せの使用にも関し、がんは乳がん、卵巣がん、膵臓がん、又は前立腺がんから選択される。
【0021】
本発明はまた、患者におけるがんの処置のための医薬品製造における、オーロラキナーゼ阻害剤との組合せでのナビトクラックス、ベネトクラクス、A-1331852、AZD5991、又はA-1155463から選択されるBcl-2タンパク質ファミリーの阻害剤の使用にも関し、がんは乳がん、卵巣がん、膵臓がん、又は前立腺がんから選択される。
【0022】
本発明はまた、患者におけるがんの処置のための医薬品製造における、ナビトクラックス、ベネトクラクス、A-1331852、AZD5991、又はA-1155463から選択されるBcl-2タンパク質ファミリーの阻害剤との組合せでのオーロラキナーゼ阻害剤の使用にも関し、がんは乳がん、卵巣がん、膵臓がん、又は前立腺がんから選択される。
【0023】
本発明は、記載される態様及び好ましい特徴の組合せを含むが、そのような組合せが明らかに容認できない又は明示的に回避される場合は除く。
【0024】
次に、本発明の原理を例示する実施形態及び実験を、付随する図面への参照と共に考察する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施例1に記載される通り、PAM50サブタイプにより階層化された51の乳がん細胞株における本発明の併用療法の活性を示す図である。ナビトクラックスとAURK阻害剤との組合せは、Her2細胞を除く乳がん細胞株においてしばしば相乗的である。PAM50サブタイプからの細胞株で3種のAURK阻害剤と対になったナビトクラックス(アンカー)の二元相乗作用。
図2】乳がん細胞株のナビトクラックス+オーロラキナーゼ阻害剤組合せへの感受性を示すグラフである。乳がん細胞株はPAM50サブタイプの範囲をカバーするように選択された:基底、ルミナルA(LumA)、ルミナルB(LumB)又はHer2。各点のプロット(A~G)に示すように、細胞はナビトクラックスプラスオーロラキナーゼ阻害剤で処置した。相乗作用測定基準、ブリス(BLISS)ウィンドウ及びIウィンドウは、記載される通りに生成した。各点は単一のレプリケートであり、細胞株につき5~8のレプリケートがある。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明の態様及び実施形態を付随する図への参照により考察する。更なる態様及び実施形態は、当業者には明らかである。この文章に言及される全ての文書は、本明細書において参照として組み込まれる。
【0027】
Bcl-2タンパク質ファミリーの阻害剤
Bcl-2タンパク質ファミリーは、Bcl-2相同(BH)ドメインを共有する、進化的に保存された多数のタンパク質からなる。Bcl-2ファミリーは、ミトコンドリアでのプログラム細胞死の一形態であるアポトーシスの調節により最も注目される。Bcl-2タンパク質ファミリーは、アポトーシスを促進する又は阻害するメンバーからなり、内因性アポトーシス経路における主要なステップであるミトコンドリア外膜透過化(MOMP)を制御することによりアポトーシスを管理する。
【0028】
Bcl-2タンパク質ファミリーは、Bcl-2(B細胞リンパ腫2)、Bcl-xL(B細胞特大リンパ腫)、Bcl-w(Bcl-2様タンパク質2又はBCL2L2)、Mcl-1(骨髄性白血病細胞分化誘導タンパク質)及びA1(Bcl-2関連タンパク質A1又はBCL2A1)を含む、幾つかのファミリーメンバーを含む。
【0029】
本明細書において記載される併用療法は、Bcl-2タンパク質ファミリーの阻害剤を含む。Bcl-2タンパク質ファミリーの阻害剤は、Bcl-2タンパク質ファミリーの1つ以上、例えばBcl-2、Bcl-xL、Bcl-w、Mcl-1及びA1、並びにそれらの組合せの阻害剤であり得る。例えば、Bcl-2タンパク質ファミリーの阻害剤はBcl-2及びBcl-xLの阻害剤であり得る。
【0030】
一部の実施形態では、本明細書において記載される処置方法における使用のための組合せは、Bcl-2の阻害剤を含む。すなわち、本明細書において記載される処置方法における使用のための組合せは、Bcl-2阻害剤を含む。
【0031】
一部の実施形態では、本明細書において記載される処置方法における使用のための組合せは、Bcl-xLの阻害剤を含む。すなわち、本明細書において記載される処置方法における使用のための組合せは、Bcl-xL阻害剤を含む。
【0032】
一部の実施形態では、本明細書において記載される処置方法における使用のための組合せは、Bcl-wの阻害剤を含む。すなわち、本明細書において記載される処置方法における使用のための組合せは、Bcl-w阻害剤を含む。
【0033】
一部の実施形態では、本明細書において記載される処置方法における使用のための組合せは、Mcl-1の阻害剤を含む。すなわち、本明細書において記載される処置方法における使用のための組合せは、Mcl-1阻害剤を含む。
【0034】
一部の実施形態では、本明細書において記載される処置方法における使用のための組合せは、A1の阻害剤を含む。すなわち、本明細書において記載される処置方法における使用のための組合せは、A1阻害剤を含む。
【0035】
様々なBcl-2、Bcl-xL、Bcl-w、Mcl-1及びA1阻害剤が当該分野で公知であり、ナビトクラックス、ベネトクラクス、A-1331852、AZD5991及びA-1155463が含まれる。一部の実施形態では、本明細書において記載される処置方法における使用のための組合せは、ナビトクラックスを含む。一部の実施形態では、本明細書において記載される処置方法における使用のための組合せは、ベネトクラクスを含む。一部の実施形態では、本明細書において記載される処置方法における使用のための組合せは、A-1331852を含む。一部の実施形態では、本明細書において記載される処置方法における使用のための組合せは、AZD5991を含む。一部の実施形態では、本明細書において記載される処置方法における使用のための組合せは、A-1155463を含む。
【0036】
好ましくは、本明細書において記載される処置方法における使用のための組合せは、Bcl-xL阻害剤、例えばナビトクラックス、A-1331852及びA-1155463を含む。一部の実施形態では、本明細書において記載される処置方法における使用のための組合せは、ナビトクラックスを含む。一部の実施形態では、本明細書において記載される処置方法における使用のための組合せは、A-1331852を含む。一部の実施形態では、本明細書において記載される処置方法における使用のための組合せは、A-1155463を含む。
【0037】
ナビトクラックス
ナビトクラックスはABT-263又はABT263とも呼ばれ、Bcl-2阻害剤である(無細胞アッセイでのKi≦1nM)。ナビトクラックスはまた、無細胞アッセイでKiが≦0.5nM及び≦1nMであるBcl-xL及びBcl-wの強力な阻害剤でもあるが、Mcl-1及びA1への結合はこれより弱い。その構造は、
【0038】
【化1】
である。
【0039】
IUPAC命名法では、ナビトクラックスは4-(4-{[2-(4-クロロフェニル)-5,5-ジメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル]メチル}ピペラジン-1-イル)-N-(4-{[(2R)-4-(モルホリン-4-イル)-1-(フェニルスルファニル)ブタン-2-イル]アミノ}-3-(トリフルオロメタンスルホニル)ベンゼン-1-スルホニル)ベンズアミドと呼ぶことができる。
【0040】
ナビトクラックスはEP1888550に開示されており、この文書は本明細書に参照により、代表的な一般合成方法と共にその全体が組み込まれる。化合物は市販されている。ナビトクラックスは骨髄線維腫の処置を研究する第III相臨床試験中である。
【0041】
ベネトクラクス
ベネトクラクスはABT-199及びGDC-0199としても公知である。ベネトクラクスはBcl-2の選択的阻害剤であり、無細胞アッセイでKiが<0.01nMであり、Bcl-xL及びBcl-wに対して>4800倍選択的であり、Mcl-1には活性がない。ベネトクラクスは特定の血液がんの処置に承認されている。その構造は、
【0042】
【化2】
である。
【0043】
IUPAC命名法では、ベネトクラクスは4-[4-[[2-(4-クロロフェニル)-4,4-ジメチルシクロヘキセン-1-イル]メチル]ピペラジン-1-イル]-N-[3-ニトロ-4-(オキサン-4-イルメチルアミノ)フェニル]スルホニル-2-(1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-イルオキシ)ベンズアミドと呼ぶことができる。その合成は当該分野で公知であり、化合物は市販されている。
【0044】
A-1331852
A-1331852は強力で選択的なBcl-xL阻害剤であり、Ki値はBcl-xLについては0.01nM未満、Bcl-2、Bcl-w及びMcl-1についてはそれぞれ6nM、4nM、142nMである。A-1331852はがん、免疫疾患及び自己免疫疾患の処置において有用であり得る。その構造は、
【0045】
【化3】
である。
【0046】
IUPAC命名法では、A-1331852は3-[1-(1-アダマンチルメチル)-5-メチル-ピラゾール-4-イル]-6-[8-(1,3-ベンゾチアゾール-2-イルカルバモイル)-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]ピリジン-2-カルボン酸と呼ぶことができる。その合成は当該分野で公知であり、化合物は市販されている。
【0047】
AZD5991
AZD5991(又はAZD-5991)は大環状のMcl-1阻害剤であり、Mcl-1に対してサブナノモルの親和性を有する(Ki=0.13nM)。AZD5991の結合親和性はヒトMcl-1と比較して、マウスのMcl-1に対しては約25分の1の低さであるが、ラットのMcl-1に対しては4分の1の低さに過ぎない。その構造は、
【0048】
【化4】
である。
【0049】
IUPAC命名法では、AZD5991は17-クロロ-5,13,14,22-テトラメチル-28-オキサ-2,9-ジチア-5,6,12,13,22-ペンタザヘプタシクロ[27.7.1.14,7.011,15.016,21.020,24.030,35]オクタトリアコンタ-1(36),4(38),6,11,14,16,18,20,23,29(37),30(35),31,33-トリデカエン-23-カルボン酸と呼ぶことができる。その合成は当該分野で公知であり、化合物は市販されている。
【0050】
AZD5991は2つの回転異性体形態すなわちアトロプ異性体(R)及び(S)(単結合周りの回転により異なる立体構造異性体)で存在する。
【0051】
【化5】
である。
【0052】
本明細書においてAZD5991に言及する場合、本発明者らは具体的に特定しない限り両方の回転異性体(又はラセミ体)を指す。
【0053】
A-1155463
A-1155463は非常に強力で選択的なBcl-xL阻害剤である。A-1155463はBcl-xLに対しピコモルの結合親和性を示すが、Bcl-2、並びに関連タンパク質のBcl-w(Ki=19nM)及びMcl-1(Ki>440nM)には1000分の1未満の弱い結合性である。その構造は、
【0054】
【化6】
である。
【0055】
IUPAC命名法では、A-1155463は2-[8-(1,3-ベンゾチアゾール-2-イルカルバモイル)-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]-5-[3-[4-[3-(ジメチルアミノ)プロパ-1-イニル]-2-フルオロ-フェノキシ]プロピル]チアゾール-4-カルボン酸と呼ぶことができる。その合成は当該分野で公知であり、化合物は市販されている。
【0056】
オーロラキナーゼ阻害剤
オーロラキナーゼ阻害剤は本明細書において及び当該分野において、AURK阻害剤すなわちAURKiとも呼ばれる。
【0057】
オーロラキナーゼ(AURK)は、細胞分裂プロセスにおいて重要であると理解されるホスホトランスフェラーゼ酵素である。オーロラキナーゼ経路の調節はがんの処置のための、特に腫瘍形成の防止及び処置における関心事である。
【0058】
3クラスのAURKがヒトにおいて特定されている:オーロラA、オーロラB及びオーロラC。オーロラAはオーロラ2としても公知であり、オーロラBはオーロラ1としても公知である。
【0059】
一部の実施形態では、本発明のAURK阻害剤はオーロラAキナーゼを阻害する。
【0060】
様々なAURK阻害剤が当該分野において公知であり、アリセルチブ、トザセルチブ、ZM447439、AZD2811(活性バラセルチブ-hQPA)、AZD1152(バラセルチブ、バラセルチブ-hQPAのプロドラッグ)、LY3295668、MK-5108、GSK1070916及びMLN8054が含まれる。一部の実施形態では、オーロラキナーゼ阻害剤はアリセルチブ、トザセルチブ、ZM447439、AZD2811及びAZD1152から選択される。一部の実施形態では、オーロラキナーゼ阻害剤はアリセルチブ、トザセルチブ及びZM447439から選択される。一部の実施形態では、AURKiはアリセルチブである。一部の実施形態では、AURKiはトザセルチブである。一部の実施形態では、AURKiはZM447439である。
【0061】
アリセルチブ
アリセルチブはMLN8237としても公知であり、経口で利用可能な選択的オーロラAキナーゼ阻害剤である。その構造は、
【0062】
【化7】
である。
【0063】
IUPAC命名法では、アリセルチブは4-{[9-クロロ-7-(2-フルオロ-6-メトキシフェニル)-5H-ピリミド[5,4-d][2]ベンザゼピン-2-イル]アミノ}-2-メトキシ安息香酸と呼ぶことができる。その合成は当該分野で公知であり、化合物は市販されている。
【0064】
トザセルチブ
トザセルチブはVX-680及びMK-0457としても公知で、汎(pan-)オーロラキナーゼ阻害剤である。トザセルチブはオーロラAキナーゼに対してB/Cより大幅に強力である。その構造は、
【0065】
【化8】
である。
【0066】
IUPAC命名法では、トザセルチブはN-[4-({4-(4-メチルピペラジン-1-イル)-6-[(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ]ピリミジン-2-イル}スルファニル)フェニル]シクロプロパンカルボキサミドと呼ぶことができる。その合成は当該分野で公知であり、化合物は市販されている。
【0067】
ZM447439
ZM447439は、オーロラAキナーゼ及びオーロラBキナーゼの選択的でありATP競合的な阻害剤である。その構造は、
【0068】
【化9】
である。
【0069】
IUPAC命名法では、ZM447439はN-[4-({6-メトキシ-7-[3-(モルホリン-4-イル)プロポキシ]キナゾリン-4-イル}アミノ)フェニル]ベンズアミドと呼ぶことができる。その合成は当該分野で公知であり、化合物は市販されている。
【0070】
AZD2811
AZD2811は選択的オーロラBキナーゼ阻害剤であり、無細胞アッセイにおけるIC50は0.37nMである。バラセルチブ-hQPA(-ヒドロキシキナゾリン-ピラゾール-アニリン)又はAZD1152-hQPAとしても公知のAZD2811は、下に記載されるAZD1152の活性代謝物である。AZD2811はがん細胞において増殖停止及びアポトーシスを誘導する。その構造は、
【0071】
【化10】
である。
【0072】
IUPAC命名法では、AZD2811は2-[3-[[7-[3-[エチル(2-ヒドロキシエチル)アミノ]プロポキシ]キナゾリン-4-イル]アミノ]-1H-ピラゾール-5-イル]-N-(3-フルオロフェニル)アセトアミドと呼ぶことができる。その合成は当該分野で公知であり、化合物は市販されている。AZD2811はAccurin(商標)製剤(BIND Therapeutics, Inc.)として提供され得る。
【0073】
AZD1152
AZD1152はバラセルチブとしても公知である。AZD1152はバラセルチブ-hQPA(AZD2811)のプロドラッグであり、無細胞アッセイにおけるIC50が0.37nMである、高度に選択的なオーロラBキナーゼ阻害剤である。その構造は、
【0074】
【化11】
である。
【0075】
IUPAC命名法では、AZD1152は2-[エチル-[3-[4-[[5-[2-(3-フルオロアニリノ)-2-オキソエチル]-1H-ピラゾール-3-イル]アミノ]キナゾリン-7-イル]オキソプロピル]アミノ]エチルリン酸二水素と呼ぶことができる。その合成は当該分野で公知であり、化合物は市販されている。
【0076】
LY3295668
LY3295668はAK-01としても公知である。LY3295668は強力で経口活性の特異的オーロラAキナーゼ阻害剤であり、AURKA及びAURKBに対するKiはそれぞれ0.8nM及び1038nMである。その構造は、
【0077】
【化12】
である。
【0078】
IUPAC命名法では、LY3295668は(2R,4R)-1-[(3-クロロ-2-フルオロ-フェニル)メチル]-4-[[3-フルオロ-6-[(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ]-2-ピリジル]メチル]-2-メチル-ピペリジン-4-カルボン酸と呼ぶことができる。その合成は当該分野で公知であり、化合物は市販されている。
【0079】
LY3295668はまた、他の異性体形態(2R,4S)、(2S,4R)及び(2S,4S)としても存在し得る。すなわち、LY3295668は、(2R,4S)-1-[(3-クロロ-2-フルオロ-フェニル)メチル]-4-[[3-フルオロ-6-[(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ]-2-ピリジル]メチル]-2-メチル-ピペリジン-4-カルボン酸、(2S,4R)-1-[(3-クロロ-2-フルオロ-フェニル)メチル]-4-[[3-フルオロ-6-[(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ]-2-ピリジル]メチル]-2-メチル-ピペリジン-4-カルボン酸、及び(2S,4S)-1-[(3-クロロ-2-フルオロ-フェニル)メチル]-4-[[3-フルオロ-6-[(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ]-2-ピリジル]メチル]-2-メチル-ピペリジン-4-カルボン酸としても存在し得る。
【0080】
本明細書においてLY3295668に言及する場合、本発明者らは具体的に特定しない限り全ての異性形態を指す。
【0081】
MK-5108
MK-5108はVX-689としても公知である。MK-5108は高度に選択的なオーロラAキナーゼ阻害剤であり、無細胞アッセイにおけるIC50は0.064nMである。MK-5108はオーロラB/CよりオーロラAキナーゼに対して220倍及び190倍選択性が高く、一方MK-5108はトロポミオシン受容体キナーゼA(TrkA)を100分の1より低い選択性で阻害する。MK-5108はオートファジーを誘導することが公知である。MK-5108は以下の構造を有する。
【0082】
【化13】
【0083】
IUPAC命名法では、MK-5108は(4-(3-クロロ-2-フルオロ-フェノキシ)-1-[[6-(チアゾール-2-イルアミノ)-2-ピリジル]メチル]シクロヘキサンカルボン酸と呼ぶことができる。その合成は当該分野で公知であり、化合物は市販されている。
【0084】
GSK1070916
GSK1070916は、可逆的でありATP競合的なオーロラB/Cキナーゼ阻害剤であり、IC50は3.5nM/6.5nMである。GSK1070916は近い関係にあるオーロラA-TPX2複合体に対して>100倍の選択性を示す。GSK1070916は以下の構造を有する。
【0085】
【化14】
【0086】
IUPAC命名法では、GSK10709016は3-[4-[4-[2-[3-[(ジメチルアミノ)メチル]フェニル]-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-4-イル]-1-エチル-ピラゾール-3-イル]フェニル]-1,1-ジメチル-尿素と呼ぶことができる。その合成は当該分野で公知であり、化合物は市販されている。
【0087】
MLN8054
MLN8054はオーロラAキナーゼの強力で選択的な阻害剤であり、IC50は昆虫細胞Sf9中4nMである。MLN8054はオーロラAキナーゼに対してオーロラBキナーゼより40倍超選択的である。MLN8054は以下の構造を有する。
【0088】
【化15】
【0089】
IUPAC命名法では、MLN8054は4-[[9-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5H-ピリミド[5,4-d][2]ベンザゼピン-2-イル]アミノ]安息香酸と呼ぶことができる。その合成は当該分野で公知であり、化合物は市販されている。
【0090】
特定の阻害剤組合せ
一部の場合では、本明細書において記載される処置方法における使用のためのBcl-2タンパク質ファミリーの阻害剤、例えばBcl-2、Bcl-xL、Bcl-w、Mcl-1及びA1阻害剤とオーロラキナーゼ阻害剤との組合せは、特定の阻害剤の組合せであり得る。
【0091】
一部の場合、組合せは、ナビトクラックス及びアリセルチブ、ナビトクラックス及びバラセルチブ、ナビトクラックス及びGSK1070916、ナビトクラックス及びLY3295668、ナビトクラックス及びMLN8054、ナビトクラックス及びトザセルチブ、ナビトクラックス及びZM447439、A-1331852及びアリセルチブ、A-1331852及びLY3295668、A-1331852及びMK-5108、A-1155463及びアリセルチブ、A-1155463及びLY3295668、並びにA-1155463及びMK-5108から選択することができる。
【0092】
一部の場合、組合せは、ナビトクラックス及びアリセルチブ、ナビトクラックス及びバラセルチブ、ナビトクラックス及びGSK1070916、ナビトクラックス及びLY3295668、ナビトクラックス及びMLN8054、ナビトクラックス及びトザセルチブ、ナビトクラックス及びZM447439、並びにA-1331852及びアリセルチブから選択することができる。
【0093】
一部の場合では、本明細書において記載される処置方法における使用のための組合せは、ナビトクラックスとアリセルチブとの組合せであり得る。一部の場合では、本明細書において記載される処置方法における使用のための組合せは、ナビトクラックスとバラセルチブとの組合せであり得る。一部の場合では、本明細書において記載される処置方法における使用のための組合せは、ナビトクラックスとGSK1070916との組合せであり得る。一部の場合では、本明細書において記載される処置方法における使用のための組合せは、ナビトクラックスとLY3295668との組合せであり得る。一部の場合では、本明細書において記載される処置方法における使用のための組合せは、ナビトクラックスとMLN8054との組合せであり得る。一部の場合では、本明細書において記載される処置方法における使用のための組合せは、ナビトクラックスとトザセルチブとの組合せであり得る。一部の場合では、本明細書において記載される処置方法における使用のための組合せは、ナビトクラックスとZM447439との組合せであり得る。一部の場合では、本明細書において記載される処置方法における使用のための組合せは、A-1331852とアリセルチブとの組合せであり得る。
【0094】
薬学的に許容される塩
本明細書において記載される場合、任意の化合物が薬学的に許容される塩、水和物又は溶媒和物(溶媒和化合物)として提供され得る。好適な薬学的に許容される塩は当該分野において公知であり、例えばBergeら、J Pharm Sci、1977 66(1) 1頁に記載される。
【0095】
有効成分の投与
本発明の方法において使用される化合物は、経口及び静脈内経路を含む任意の好適な経路で投与することができる。経口投与が好まれ得ることは理解される。化合物は、化合物及び1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物において提供され得る。経口投与のための製剤は、錠剤又は粉末若しくは液体を含むカプセルの形態であり得る。
【0096】
投与は好ましくは、個々(individual)に利益を示すのに十分である「治療有効量」又は「有効量」(互換的に使用される)である。投与される実際の量、並びに投与の速度及び時間経過は、処置される疾患の性格及び重症度に依存する。処置の処方、例えば用量の決定等は、一般医及び他の医師の責任内にあり、典型的には処置されるべき障害、個々の患者の状態、送達部位、投与方法及び医師に公知の他の要因が考慮される。上に述べた手法及びプロトコルの例は、Remington's Pharmaceutical Sciences、第20版、2000、pub. Lippincott、Williams & Wilkinsにおいて見出すことができる。
【0097】
本明細書において記載される有効成分の当該分野で公知の用量レジメン(dosage regimen)を、本発明においても使用することができる。
【0098】
例えば、ナビトクラックスは単剤として325mgの経口用量で連続21/21の投与スケジュールで投与された(Wilsonら、Lancet Oncol.、2010年12月、11(12):1149~1159頁)。1000mg/m2のゲムシタビンと組み合わせた場合、ナビトクラックスはClearyら(Invest New Drugs、2014年10月、32(5):937~945頁)においても325mgで投与された。ナビトクラックスはまた、21日サイクルにわたって間欠的にも投与され、患者は間欠的投与レジメン(intermittent dosing regimen)においてナビトクラックスを-3日目に受け、続いて21日サイクルの1~14日目に投与された。連続投与レジメン(continuous dosing regimen)の患者は、150mg用量で1週間のリードインを受け、続いて同一の試験において継続した毎日の投与を受けた(Gandhiら、J Clin Oncol、2011年3月1日、29(7):909~916頁)。したがって、ナビトクラックスの好適な用量レジメンは医師によって処方され得ることが望ましい。ベネトクラクス、A-1331852、AZD5991及びA-1155463の好適な用量レジメンもまた、当該分野において記載される。
【0099】
AURKi、例えばアリセルチブ、トザセルチブ、ZM447439、AZD2811、AZD1152及びLY3295668の用量レジメンも当該分野において公知である。例えばアリセルチブは、進行性固形腫瘍又はリンパ腫を患う東アジアの患者における第I相臨床試験で試験されている。患者は21日サイクルで、7日間、1日2回(BID)アリセルチブを受け、用量はBID30mgからBID40mgに漸増し、これは良好に忍容された(Venkatakrishnanら、Invest New Drugs、2015年8月、33(4):942~953頁)。これは、欧米の患者が受けていたアリセルチブBID50mgの用量より若干少なかった(Beltranら、Clin. Cancer Res.、2019年1月1日、25(1):43~51頁、Kellyら、Invest New Drugs、2014年6月、32(3):489~499頁)。
【0100】
トザセルチブ(MK-0457又はVX-680としても公知)も、進行性固形腫瘍を患う成人患者における第I相用量漸増試験において試験された。患者は21日毎に漸増する24時間継続静脈内(CIV)注入のトザセルチブを投与され、最大耐用量(MTD)は64mg/m2/hrに達した。患者はまた、経口でも100mgのトザセルチブを投与された(Traynorら、Cancer Chemother Pharmacol. 2011年2月、67(2): 305~314頁)。第II相試験では、患者は14日毎に40mg/m2/h、32mg/m2/h又は24mg/m2/hでトザセルチブを5日間継続注入で投与された(Seymourら、Blood Cancer Journal、2014、4、e238)。ZM447439、AZD2811、AZD1152及びLY3295668の好適な用量レジメンもまた、当該分野において記載される。
【0101】
したがって、本明細書に記載される有効成分は、約1mg~約1000mg、例えば約5mg~約500mg、例えば約10mg~約400mgの投薬量(用量)(dosage)で投与することができる。
【0102】
一部の実施形態では、ナビトクラックスは約1mg~約1000mg、例えば約5mg~約500mg、例えば約10mg~約400mg、例えば約150mg~約325mg、例えば約150mg又は約325mgの投薬量(用量)で投与することができる。一部の実施形態では、ベネトクラクスは約1mg~約1000mg、例えば約5mg~約500mg、例えば約10mg~約400mg、例えば約150mg~約325mg、例えば約150mg又は約325mgの投薬量(用量)で投与することができる。一部の実施形態では、A-1331852は約1mg~約1000mg、例えば約5mg~約500mg、例えば約10mg~約400mg、例えば約150mg~約325mg、例えば約150mg又は約325mgの投薬量(用量)で投与することができる。一部の実施形態では、AZD5991は約1mg~約1000mg、例えば約5mg~約500mg、例えば約10mg~約400mg、例えば約150mg~約325mg、例えば約150mg又は約325mgの投薬量(用量)で投与することができる。一部の実施形態では、A-1155463は約1mg~約1000mg、例えば約5mg~約500mg、例えば約10mg~約400mg、例えば約150mg~約325mg、例えば約150mg又は約325mgの投薬量(用量)で投与することができる。
【0103】
一部の実施形態では、AURKi、例えばアリセルチブ、トザセルチブ、ZM447439、AZD2811、AZD1152及びLY3295668は、約1mg~約1000mg、例えば約5mg~約500mg、例えば約10mg~約300mg、例えば約20mg~約100mg、例えば約30mg~約50mg、例えば約30mg又は約40mg又は約50mgの投薬量(用量)で投与することができる。
【0104】
本明細書において記載される有効成分は、同時に又は逐次的に、又は処方された投与サイクル内の異なる時点で投与することができる。本明細書において記載される有効成分は、毎日、例えば1日1回(QD)、1日2回(BID)、1日3回(TID)、若しくは1日4回(QID)投与することができ、又はこれより低い頻度若しくは間欠的なスケジュールで投与することができる。
【0105】
好適には、患者はヒト患者であり得る。
【0106】
がん種
本発明は、患者におけるがん、特に基底細胞様、TNBC(トリプルネガティブ乳がん)、及び/又はHRD(相同組換え修復欠損)のがんの処置のための方法に関する。
【0107】
HRD欠損の診断は当該分野で認識されており、以下を含む基準に基づき得る。
1. BRCA1又はBRACA2遺伝子の体細胞又は生殖系列の機能欠失変異の遺伝子試験は、HRDを決定するため臨床的に使用されている。例えばGonzalez-Martinら、N Engl J Med 2019、381(25):2391~2402頁(PMID 51362799)を参照されたい。利用可能な試験プラットフォームには、進行性卵巣がんのためのLynparza(商標)(オラパリブ)(https://myriad.com/investors/news-release/news-release-detail/?newsItemId=21171)のコンパニオン診断としてFDAに承認されたMyriad Genetics, Inc.のmyChoice(登録商標)CDx(https://myriad.com/products-services/precision-medicine/mychoice-cdx/)、及びFDAに承認された(https://www.fda.gov/drugs/resources-information-approved-drugs/fda-grants-marketing-approval-foundationone-cdx-in-vitro-diagnostic)Foundation Medicine, Inc.のFoundationOneLiquid(登録商標)CDx(https://www.foundationmedicine.com/test/foundationone-liquid-cdx)が含まれる。FoundationOne(登録商標)CDxプラットフォームについての情報は、例えばhttps://assets.ctfassets.net/w98cd481qyp0 /41rJj28gFwtxCwHQxopaEb/fba378cd309082f09570f32fc16b5d01/FoundationOne_CDx_Label_Technical_Info.pdfに見出すことができる。
2. 全ゲノムシーケンシングデータからの変異シグネチャー解析が提案される。これらのアッセイは、HRDの結果としての「遺伝子の傷跡」を探す。ある種のものは遺伝子におけるコピー数プロファイルの変化を、他のものはヌクレオチド置換のパターンを求める。重み付けモデルであるHRDetectが開発され、これが、変異シグネチャーに基づいて、BRCA1又はBRCA2の生殖系列又は体細胞の変異、及び変異が検出されない機能的なBRCA1又はBRCA2の欠損を予測する(Daviesら、Nat Med. 2017年4月、23(4): 517~525頁)。
3. 他のDNA修復経路遺伝子における変化もHRDを付与し得る(例えばATM、ATR、PALB2、RAD51C、RAD51D、BRIP1、BARD1、RPA、PTEN、CHEK1、CHEK2、MRE11、RADa50、MLH1、MSH2、MSH6、PMS2等[このリストは包括的なものではない])。
4. 機能分析、例えば細胞内のRAD51病巣形成、又はプラチナ系薬剤への感受性(Ngoi及びTan、ESMO Open、2021年6月、6(3):100144頁)。
【0108】
一部の実施形態では、がんは1つ以上の上記の基準又は試験(テスト)によりHRD欠損と決定されている。
【0109】
TNBCを定義する特徴は、BRCA1/2変異の頻度増大である。その診断は当該分野で認められている。
【0110】
一部の場合では、処置は乳がん、卵巣がん、膵臓がん及び前立腺がんから選択されるがんのものである。乳がん、卵巣がん、膵臓がん及び前立腺がんは、HRDである腫瘍が一定割合で存在するがん種であり、したがって本発明者らは、HER2陰性/TNBCにおいて有効である処置は卵巣がん、膵臓がん及び前立腺がんでも有効であり得ると推論する。例として、PARP阻害剤は、BRCA1/2変異腫瘍を伴う、乳がん、卵巣がん、前立腺がん及び膵臓がんの患者を処置するために臨床的に使用される。
【0111】
患者は乳がんを有する場合がある。乳がんは異質起源の疾患であり、典型的には5つのサブタイプに分類される:ルミナルA(LumA)、ルミナルB(LumB)、HER2リッチ(HER2又はHER2-E)、基底細胞様(基底)及び正常乳がん様(normal breast-like)(正常)である。これらのサブタイプは、免疫組織化学による4つの認識されたバイオマーカーの発現レベルに基づいて区別され得る:エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)及びKi-67。例えば、米国国立がん研究所は乳がん処置(成人)についての情報(PDQ(登録商標))-医療専門家向け版を提供しており、https://www.cancer.gov/types/breast/hp/breast-treatment-pdq#_18でアクセスできる。医師及び当業者には他の助言及びリソースが利用可能であるが、乳がんの種類決定は当該分野において通常のことであり、十分に理解されていることが認められる。
【0112】
好適には、乳がんは非HER2リッチ(非HER2-E)乳がんである。すなわち、乳がんはルミナルA(LumA)、ルミナルB(LumB)、又は基底細胞様(基底)に分類することができる。診断的には、HER2ステータスは典型的にIHC/FISHサブタイプ分類により定義される。IHCは免疫組織化学テストを指し、FISHは蛍光in situハイブリダイゼーションテストを指す。HER2についてのIHCは0、+1、+2又は+3に分類され、+3の結果はHER2リッチがんを示し、0又は1+の結果は非HER2リッチがんを示す。+2の結果は決定的でない(equivocal)と考えられ、この場合、通常FISHも使用される。
【0113】
したがって、本発明は患者におけるIHC及び/又はFISHサブタイプ分類により決定される、非HER2リッチ乳がんの処置に関連し得る。
【0114】
代替的に、本発明は、患者における遺伝子発現に基づく分子サブタイプ分類、例えば患者におけるPAM50サブタイプ分類により決定される、非HER2リッチ乳がんの処置に関連し得る。患者における遺伝子発現に基づく分子サブタイプ分類、例えばPAM50サブタイプ分類は、遺伝子発現分析、例えばOncotype DX(登録商標)のような診断テストを使用して決定することができる。
【0115】
一部の実施形態では、乳がんは基底細胞様である。
【0116】
一部の実施形態では、乳がんはトリプルネガティブ乳がん(TNBC)である。TNBCは、基底細胞様遺伝子発現又は非基底細胞様遺伝子発現を有する場合がある。その診断は当該分野において認識されており、例えばhttps://www.cancer.gov/types/breast/hp/breast-treatment-pdq#_18でアクセスできる米国国立がん研究所により提供される情報(乳がん処置(成人)(PDQ(登録商標))-医療専門家版)に記載されている。
【0117】
一部の実施形態では、乳がんはルミナルAである。
【0118】
一部の実施形態では、乳がんはルミナルBである。
【0119】
PAM50サブタイプ分類
本明細書において記載される患者は、PAM50サブタイプ分類を使用して分類することができる。PAM50は50遺伝子のテストであり、乳がんの内因性サブタイプ(基底、Her2、LumA、LumB及び正常)を特定し、再発リスク(ROR)スコアを生成するためにデザインされており、認可された通常の病院の病理研究室で実施するために開発された。PAM50はGnantら、Ann. Oncol.、2014 25(2) 339~45頁及びNielsonら、Clin Cancer Res、2010 16(21) 5255~32頁に記載されている。
【0120】
先行する記載、又は続く特許請求の範囲、又は付随する図面において開示される特徴は、それらの特定の形態で、或いは開示される機能を実施するための手段又は開示される結果を得るための方法若しくはプロセスに関して表現され、必要に応じて別々に又はそのような特徴の任意の組合せで、本発明をその多様な形態で実現するために利用することができる。
【0121】
本発明は上に記載される例としての実施形態との関連で記載されるが、この開示を与えられた場合、多数の等価の修正及び変形が当業者には明らかとなろう。したがって、上に記載される本発明の例としての実施形態は例示的なものであり、限定的ではないと考えられる。本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、記載される実施形態への様々な変更を行うことができる。
【0122】
あらゆる疑いを回避するために述べると、本明細書において提供される任意の理論的説明は、読者の理解を改善する目的で提供されるものである。本発明者らは、これらの理論的説明のいずれにも縛られることを望まない。
【0123】
本明細書において使用される項目見出しは、いずれも組織化目的のみのためであり、記載される対象を限定すると解釈されるものではない。
【0124】
添付される特許請求の範囲を含むこの明細書を通して、文脈が別様に要求しない限り、単語「含む(comprise)」及び「含む(include)」、並びにバリエーション、例えば「含む(comprises)」、「含むこと(comprising)」及び「含むこと(including)」は、述べられた整数(integer)若しくはステップ又は整数若しくはステップの群を含むことを含意するが、任意の他の整数若しくはステップ又は整数若しくはステップの群を除外することは含意しないことが理解される。
【0125】
本明細書及び添付される特許請求の範囲において使用される場合、単数形の「a」、「an」及び「the」は、文脈が明確に別様に指示しない限り、複数形の指示対象を含む。本明細書において、範囲は、「およその(約)」1つの特定の値から、及び/又は「およその(約)」別の特定の値までのように表現され得る。そのような範囲が表現される場合、別の実施形態は、1つの特定の値から、及び/又は他の特定の値までを含む。同様に、値が概数として表現される場合、先行詞「about」の使用により、特定の値が別の実施形態を形成することが理解される。数値に関連する用語「約」は任意選択であり、例えば+/-10%を意味する。
【実施例
【0126】
[実施例]
[実施例1]
ナビトクラックスを、3種のAURK阻害剤(アリセルチブ、ZM447439、トザセルチブ)との組合せで51の乳がん細胞株においてスクリーニングした。生存率はCellTiter-Gloを使用して薬剤処置の72h後に読み取り、単剤への薬剤反応及び組合せへの反応をフィットさせた。
【0127】
相乗作用は、それらの単剤活性に基づいて予想される薬剤組合せへの反応に対して、組合せの有効性(ΔEmax)又は強度(ΔIC50)の有意なシフトに基づいて決定した[ブリスにより算出(Bliss、Annals of Applied Biology、1939、26(3)、585~615頁)、ΔEmax≧20%の生存率又はΔIC50≧3(=8分の1への濃度シフト)の場合を相乗作用とした]。活性は、単剤活性と比較した組合せの生存率低下の有意なシフトに基づいて決定した(例えば、単剤活性に基づいて予想される組合せの影響より組合せが20%以上の生存率低下(20% more viability reduction)を示した場合の有効性について)。
【0128】
RNASeqのデータを使用して、乳がん細胞株をPAM50サブタイプについて注釈付けした。図1を参照のこと。
【0129】
3種のオーロラキナーゼ(AURK)阻害剤、アリセルチブ、トザセルチブ又はZM447439のいずれかと組み合わせたナビトクラックスは、細胞株において特に高い相乗作用率を有した(それぞれ細胞株の61%、60%及び53%)。
【0130】
アリセルチブ及びZM447439とのナビトクラックスは、同一のフォーマット及びアッセイを使用して実施した独立生存スクリーニングに含め、相乗作用は再現可能であった(スクリーニング間の細胞株の相乗作用決定がそれぞれ94%及び88%重複)。
【0131】
PAM50サブタイプの全てからの細胞株において、3つのナビトクラックス及びAURKi組合せのうち少なくとも2つについて相乗作用が頻繁に観察された(基底細胞様中63%(12/19細胞株)、LumA中73%(8/11)及びLumB中75%(3/4))が、例外としてHer2細胞株では相乗作用の頻度が大幅に低かった(17%すなわち1/6の細胞株)。表1及び図1を参照のこと。
【0132】
【表1】
【0133】
[実施例2]
がん細胞株における他のナビトクラックス+オーロラキナーゼ阻害剤組合せ
方法:
細胞株/薬剤の組合せ毎に49ウェル分のデータを生成する7×7のマトリクスアプローチを使用して、10種の乳がん細胞株(JIMT-1、HCC38、BT-20、CAL-51、CAMA-1、HCC1428、BT-483、MDA-MB-415、EFM-192A、HCC1419)においてスクリーニングを行った。不連続な1,000分割(7点)の用量範囲にわたり、それぞれの組合せについて1種のオーロラキナーゼ阻害剤を1種のナビトクラックスと組み合わせた。薬剤処置の72h後、CellTiter-Glo試薬を使用して生存率を測定した。単剤及び組合せの生存率測定値を細胞株毎にフィットさせ、単剤での値及び相乗作用スコアの範囲を含む複数のパラメーターを導出した。
【0134】
49の濃度の組合せ測定値全てについて、観察された組合せへの細胞の反応を単剤療法活性に基づくブリス独立性予測反応と比較することでブリス過剰を算出した。「ブリスウィンドウ(Bliss window)」は、7×7の用量マトリクス中、あり得る25の3×3部分マトリクス、すなわち「ウィンドウ」で測定した最大の平均ブリス過剰値として報告した。
【0135】
加えて、I(最高単一薬剤)過剰を49の濃度の組合せ測定値の全てについて、観察された組合せへの細胞の反応を薬剤A又は薬剤Bへのいずれか高い方の最高単一薬剤反応と比較することにより算出した。「Iウィンドウ」は、7×7の用量マトリクス中、あり得る25の3×3部分マトリクス、すなわち「ウィンドウ」で測定した最大の平均I過剰値として報告した。
【0136】
結果:
このスクリーニングには、以下のオーロラキナーゼ阻害剤のそれぞれとの組合せでナビトクラックスを含めた:アリセルチブ、MLN8054、バラセルチブ、トザセルチブ、GSK1070916、ZM447439、LY3295668。使用した細胞株は、Her2として注釈付けした2つを含むPAM50サブタイプの範囲をカバーした(図2A~G)。結果は、図2A~Gのプロットの左下にこのPAM50サブタイプが存在することにより判断される通り、全ての組合せについてHer2細胞株では相乗作用が低いことを示す。対照的に、基底、ルミナルA及びルミナルBの細胞株の大半は、より高いブリスウィンドウ及びIウィンドウのスコアから理解される通り、全ての組合せに対する反応においてより大きな相乗作用を示す。
【0137】
[実施例3]
がん細胞株における他のBH3ファミリー及びオーロラキナーゼ阻害剤組合せ
方法:
細胞株/薬剤の組合せ毎に49ウェル分のデータを生成する7×7のマトリクスアプローチを使用して、Her2陽性乳がん細胞株、JIMT-1において化合物を試験した。不連続な1,000分割(7点)の用量範囲にわたり、それぞれの組合せについてアリセルチブを単独のBH3ミメティクスと組み合わせた。薬剤処置の72h後、CellTiter-Glo試薬を使用して生存率を測定した。単剤及び組合せの生存率測定値を細胞株毎にフィットさせ、単剤での値及び相乗作用スコアの範囲を含む複数のパラメーターを導出した。
【0138】
単剤及び組合せでの生存率測定値を各組合せ毎にフィットさせ、以下を含む複数のパラメーターを導出した:1)単剤の生存率への影響、2)単剤及び組合せの使用された最大濃度(Emax)での生存率への影響、及び3)単剤及び組合せについて50%の生存率減少をもたらす推定薬剤濃度(IC50)。本発明者らは、観察された組合せへの細胞の反応を単剤療法活性に基づくブリス独立性予測反応と比較し、強度(ΔIC50、すなわち増加した感受性)又は有効性(ΔEmax、すなわち減少した細胞生存率)におけるブリス独立性(Bliss、Annals of Applied Biology、1939、26(3)、585~615頁)を超えるシフトに基づいて薬剤の組合せを分類した。
【0139】
結果:
2種の異なるBcl-2ファミリータンパク質の阻害剤を、オーロラキナーゼ阻害剤アリセルチブとの組合せで、Her2陽性乳がん細胞株であるJIMT-1細胞において試験した。Bcl-2ファミリーはアポトーシス促進(pro-apoptotic)タンパク質(BAX及びBAKを含む)及び抗アポトーシス(anti-apoptotic)タンパク質(Bcl-2、Bcl-xL及びMcl-1を含む)に分けることができる。全ての抗アポトーシスBcl-2ファミリータンパク質は、BH3ミメティクスとして公知の薬剤クラスの開発のためにがんの処置において利用される構造的特徴である、BH3ドメインを共有する。これらの薬剤は、アポトーシス促進タンパク質の活性を模倣し、他の生存促進(pro-survival)ファミリーメンバーを阻害する(Diepstratenら、Nat Rev Cancer. 2022年1月、22(1):45~64頁、Kelekar及びThompson Trends Cell Biol. 1998年8月、8(8):324~30頁、Townsendら、J Exp Clin Cancer Res. 2021年11月9日、9;40(1):355頁)。ナビトクラックスは、Bcl-2、Bcl-xL及びBcl-wの強力な阻害剤であるが、Mcl1及びA1にはこれより弱く結合し、一方でA-1331852はBcl-xLの選択的阻害剤であり、Bcl-2、Bcl-w及びMcl-1と比較してBcl-xLについては≧400倍の選択性を示す。下の表2は、2つの独立したレプリケートから、各組合せについて得られたΔIC50及びΔEmaxの最大値を示す。結果は、ナビトクラックス及びA-1331852の両方がこの細胞株でアリセルチブと相乗的であることを示す。
【0140】
【表2】
【0141】
参考文献
本発明及び本発明が関わる先端技術をより十分に記載し開示する目的で、多数の刊行物が上に引用される。これら参考文献の完全な引用は下に記載する。これら参考文献のそれぞれの全体は本明細書に組み込まれる。
Beltran et al., Clin. Cancer Res., 2019 Jan 1;25(1):43-51
Berge et al., J Pharm Sci, 1977 66(1) p 1
Bliss, Annals of Applied Biology, 1939, 26(3), 585-615
Cleary et al., Invest New Drugs, 2014 Oct;32(5):937-945
Davies et al., Nat Med. 2017 Apr; 23(4): 517-525
Diepstraten et al., Nat Rev Cancer. 2022 Jan;22(1):45-64
EP1888550
Gandhi et al., J Clin Oncol, 2011 Mar 1;29(7):909-916
Gnant et al. Ann. Oncol.;2014 25(2) pp. 339-45
Gonzalez-Martin et al. N Engl J Med 2019; 381(25):2391-2402 (PMID 51362799)
Kelekar and Thompson Trends Cell Biol. 1998 Aug;8(8):324-30
Kelly et al., Invest New Drugs, 2014 Jun;32(3):489-499
Ngoi and Tan, ESMO Open, 2021 Jun;6(3):100144
Nielson et al. Clin Cancer Res; 2010 16(21) pp. 5255-32
Seymour et al., Blood Cancer Journal, 2014, 4, e238
Townsend et al., J Exp Clin Cancer Res. 2021 Nov 9;40(1):355
Traynor et al., Cancer Chemother Pharmacol. 2011 February; 67(2): 305-314
Wilson et al., Lancet Oncol.; 2010 Dec;11(12):1149-1159
Venkatakrishnan et al., Invest New Drugs, 2015 Aug;33(4):942-953
https://assets.ctfassets.net/w98cd481qyp0 /41rJj28gFwtxCwHQxopaEb/fba378cd309082f09570f32fc16b5d01/FoundationOne_CDx_Label_Technical_Info.pdf
https://www.cancer.gov/types/breast/hp/breast-treatment-pdq#_18
https://myriad.com/products-services/precision-medicine/mychoice-cdx/
【0142】
標準的な分子生物学の技法については、Sambrook, J.、Russel, D.W. Molecular Cloning, A Laboratory Manual.第3版 2001、Cold Spring Harbor、New York、Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照されたい。
【0143】
優先条項
1. 患者における乳がん、卵巣がん、膵臓がん、又は前立腺がんから選択されるがんの処置方法における使用のための、ナビトクラックス又はベネトクラクスとオーロラキナーゼ阻害剤との組合せ。
2. 組合せがナビトクラックス及びオーロラキナーゼ阻害剤である、条項1に記載の使用のための組合せ。
3. 組合せがベネトクラクス及びオーロラキナーゼ阻害剤である、条項1に記載の使用のための組合せ。
4. がんが非HER2リッチ乳がんである、条項1から3のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
5. がんがHER2-であると決定される、条項1から4のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
6. がんが基底細胞様乳がんである、条項1から5のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
7. がんがトリプルネガティブ乳がんである、条項1から6のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
8. がんがルミナルB乳がんである、条項1から5のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
9. がんがルミナルA乳がんである、条項1から5のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
10. オーロラキナーゼ阻害剤がオーロラAキナーゼ阻害剤である、条項1から9のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
11. オーロラキナーゼ阻害剤がアリセルチブ、トザセルチブ、ZM447439、AZD2811及びAZD1152から選択される、条項1から10のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
12. オーロラキナーゼ阻害剤がアリセルチブ、トザセルチブ及びZM447439から選択される、条項1から11のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
13. ナビトクラックス又はベネトクラクス及びオーロラキナーゼ阻害剤が別々に投与される、条項1から12のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
図1
図2
【国際調査報告】