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特表2025-523425軸箱体の取り付け面の損傷を修復する方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-07-23
(54)【発明の名称】軸箱体の取り付け面の損傷を修復する方法および装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 24/04 20060101AFI20250715BHJP
   C22C 21/10 20060101ALI20250715BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20250715BHJP
   B22F 9/08 20060101ALI20250715BHJP
   B23P 6/00 20060101ALI20250715BHJP
【FI】
C23C24/04
C22C21/10
B22F1/00 N
B22F9/08 A
B23P6/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024573342
(86)(22)【出願日】2023-09-21
(85)【翻訳文提出日】2024-12-12
(86)【国際出願番号】 CN2023120345
(87)【国際公開番号】W WO2024078291
(87)【国際公開日】2024-04-18
(31)【優先権主張番号】202211529888.9
(32)【優先日】2022-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202211248277.7
(32)【優先日】2022-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520112818
【氏名又は名称】シーアールアールシー チンダオ スーファン カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】ハン シャオホイ
(72)【発明者】
【氏名】カオ ジンシャン
(72)【発明者】
【氏名】スン シャオグァン
(72)【発明者】
【氏名】マー イン
(72)【発明者】
【氏名】リウ ズージン
【テーマコード(参考)】
4K017
4K018
4K044
【Fターム(参考)】
4K017BA01
4K017BB01
4K017BB05
4K017BB09
4K017BB10
4K017BB11
4K017BB12
4K017BB13
4K017CA07
4K017FA15
4K018BA08
4K018BB04
4K018BD09
4K044AA06
4K044AB10
4K044BA10
4K044BB10
4K044CA07
4K044CA23
4K044CA27
4K044CA29
4K044CA62
(57)【要約】
本願では、軸箱体の取り付け面の損傷を修復する方法及び装置が開示されている。当該方法は、軸箱体の取り付け面の損傷位置における腐食ピットの寸法の測定結果を取得して、損傷位置の欠陥領域を確定し、除去加工処理によって欠陥領域の腐食層を除去するステップと、欠陥領域を分類し、各欠陥領域の種類に基づいて、欠陥領域に対してそれぞれ相応のスプレー処理を行い、相応の修復領域を得るステップと、各修復領域に対して除去再製造を行い、取り付け面の寸法を復元するステップとを含む。当該方法によれば、軸箱体の取り付け面の腐食生成物を除去できるだけでなく、機械加工により腐食生成物を除去した上で、順次、付加処理、除去処理を施すことで、軸箱体の寸法を効率よく、かつ、正確に回復させることができ、従来の熱修復手段による部品の組織状態、寸法精度、及び機械的性能への影響をなくし、軸箱体の使用寿命をさらに長くする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸箱体の取り付け面の損傷位置における腐食ピットの寸法の測定結果を取得して、前記損傷位置の欠陥領域を確定し、除去加工処理によって前記欠陥領域の腐食層を除去するステップと、
前記欠陥領域を分類し、各前記欠陥領域の種類に基づいて、前記欠陥領域に対してそれぞれ相応のスプレー処理を行い、相応の修復領域を得るステップと、
各前記修復領域に対して除去再製造を行い、前記取り付け面の寸法を回復させるステップと
を含む、軸箱体の取り付け面の損傷を修復する方法。
【請求項2】
前記の軸箱体の取り付け面の損傷位置における腐食ピットの寸法の測定結果を取得して、前記損傷位置の欠陥領域を確定し、除去加工処理によって前記欠陥領域の腐食層を除去するステップは、
前記腐食ピットの位置に基づいて、前記損傷位置の各欠陥領域をそれぞれ確定するステップであって、前記欠陥領域ごとに、少なくとも1つの前記腐食ピットが含まれるステップと、
同一の前記欠陥領域内の前記腐食ピットの最大深さ及び相応の前記欠陥領域の面積を取得して、機械加工の処理範囲を確定するステップと、
各前記機械加工の処理範囲内において、前記除去加工処理によって、各前記欠陥領域の腐食層をそれぞれ除去するステップと
をさらに含む、請求項1に記載の軸箱体の取り付け面の損傷を修復する方法。
【請求項3】
前記の同一の前記欠陥領域内の前記腐食ピットの最大深さ及び相応の前記欠陥領域の面積を取得して、機械加工の処理範囲を確定するステップは、
同一の前記欠陥領域で複数の前記腐食ピットを選別し、深さ測定器により選別した各前記腐食ピットの深さをそれぞれ測定し、比較により前記腐食ピットの最大深さを取得するステップと、
前記欠陥領域の面積を計測するステップと、
前記腐食ピットの最大深さと前記欠陥領域の面積に基づいて、前記機械加工の処理範囲を確定するステップと
をさらに含み、
ここで、前記機械加工の処理範囲の面積が、前記欠陥領域の面積よりも大きく、且つ前記機械加工の処理範囲の深さが、前記腐食ピットの最大深さ以上である、請求項2に記載の軸箱体の取り付け面の損傷を修復する方法。
【請求項4】
前記の各前記機械加工の処理範囲内において、前記除去加工処理によって、各前記欠陥領域の腐食層をそれぞれ除去するステップの後に、
前記除去加工処理後の前記欠陥領域に対してフィレット遷移処理を行うステップをさらに含み、
ここで、前記フィレット遷移処理後の前記欠陥領域のフィレットとベース面との夾角が30°以下である、請求項2に記載の軸箱体の取り付け面の損傷を修復する方法。
【請求項5】
前記の欠陥領域を分類し、各前記欠陥領域の種類に基づいて、前記欠陥領域に対してそれぞれ相応のスプレー処理を行い、相応の修復領域を得るステップは、
前記欠陥領域内の各前記腐食ピットの長さ及び幅を取得するステップと、
各前記腐食ピットの長さ及び幅に基づいて、前記欠陥領域を分類して、前記欠陥領域の種類を確定するステップであって、ここで、前記欠陥領域の種類が、点状欠陥、線状欠陥及び面状欠陥を含むステップと、
前記点状欠陥に対して、前記欠陥領域の中心部に垂直するようにスプレーガンを駆動してスプレーするステップと、
前記線状欠陥に対して、前記欠陥領域の長手方向に沿って進行し、且つ進行経路が幅方向に変化しないように前記スプレーガンを駆動し、さらに、前記腐食ピットの最大深さに基づいて前記スプレーガンの往復回数を確定するステップと、
前記面状欠陥に対して、前記欠陥領域の長手方向及び幅方向に沿ってそれぞれ進行するように前記スプレーガンを駆動し、さらに、前記腐食ピットの最大深さに基づいて前記スプレーガンの往復回数を確定するステップと
をさらにを含む、請求項2に記載の軸箱体の取り付け面の損傷を修復する方法。
【請求項6】
前記点状欠陥は、前記腐食ピットの長さ及び幅がいずれも5mm未満であり、前記線状欠陥は、前記腐食ピットの長さが5mm以上、かつ幅が5mm以下であり、前記点状欠陥及び前記線状欠陥を除く残りの欠陥がいずれも前記面状欠陥である、請求項5に記載の軸箱体の取り付け面の損傷を修復する方法。
【請求項7】
前記の軸箱体の取り付け面の損傷位置における腐食ピットの寸法の測定結果を取得して、前記損傷位置の欠陥領域を確定し、除去加工処理によって前記欠陥領域の腐食層を除去するステップの前に、
前記取り付け面の損傷位置をレーザー洗浄するステップと、
洗浄後の前記損傷位置を表面洗浄して、前記損傷位置の腐食ピットを露出させるステップと
をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の軸箱体の取り付け面の損傷を修復する方法。
【請求項8】
前記の前記取り付け面の損傷位置をレーザー洗浄し、洗浄後の前記損傷位置を表面洗浄して、前記損傷位置の腐食ピットを露出させるステップは、
レーザー洗浄システムにより前記取り付け面の損傷位置をレーザー洗浄するステップであって、ここで、前記レーザー洗浄システムのレーザーパワーが50W~120Wであり、洗浄時間が2min~5minであるステップと、
高圧エアガンにより洗浄後の前記損傷位置を表面洗浄して、前記損傷位置の腐食ピットを露出させるステップと
をさらに含む、請求項7に記載の軸箱体の取り付け面の損傷を修復する方法。
【請求項9】
前記の前記欠陥領域を分類し、各前記欠陥領域の種類に基づいて、前記欠陥領域に対してそれぞれ相応のスプレー処理を行い、相応の修復領域を得るステップの前に、
除去加工処理後の前記欠陥領域内の全ての孔状部位をプラグで塞ぐステップと、
除去加工処理後の前記欠陥領域をサンドブラスト処理するステップと、
サンドブラスト処理後の前記欠陥領域を予熱スプレーするステップと
をさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の軸箱体の取り付け面の損傷を修復する方法。
【請求項10】
サンドブラスト処理後の前記欠陥領域の表面粗さRaが5.0μm~7.6μmである、請求項9に記載の軸箱体の取り付け面の損傷を修復する方法。
【請求項11】
前記予熱スプレーのプロセスパラメータが、
予熱スプレーにアルミニウム合金粉末を用い、前記粉末の粒度が10μm~60μmであり、前記粉末の乾燥温度が70±5℃であり、前記予熱スプレーの時間が40min~60minであり、
前記予熱スプレーに用いられるスプレーガスが99.99%窒素ガスであり、
前記スプレーガスのガス圧力が3.5MPa~5.5MPaであり、
前記予熱スプレーのスプレー距離が5mm~20mmであり、
前記予熱スプレーのスプレーガンとスプレー面との角度が60°以上である
ことを含む、請求項9に記載の軸箱体の取り付け面の損傷を修復する方法。
【請求項12】
軸箱体の取り付け面の損傷位置における腐食ピットの寸法の測定結果を取得するための寸法測定システムと、
前記腐食ピットの寸法の測定結果に基づいて、前記損傷位置の欠陥領域を確定し、除去加工処理によって前記欠陥領域の腐食層を除去するための除去加工処理システムと、
前記欠陥領域を分類し、各前記欠陥領域の種類に基づいて、前記欠陥領域に対してそれぞれ相応のスプレー処理を行い、相応の修復領域を得るためのスプレーシステムと、
各前記修復領域に対して除去再製造を行い、前記取り付け面の寸法を回復させるための除去再製造システムと
を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の軸箱体の取り付け面の損傷を修復する方法を実行可能な、軸箱体の取り付け面の損傷を修復する装置。
【請求項13】
重量百分率で、3.2~7.8%のZn、2.0~2.7%のMg、1.5~2.9%のCu、0.02~0.06%のTi、0.3~1.5%のC、0.05~0.20%のZr、1.0%~2.8%のNd、0.01~0.08%のSrを含み、残部がAlである、請求項11に記載の軸箱体の取り付け面の損傷を修復する方法に用いられる、アルミニウム合金粉末。
【請求項14】
前記アルミニウム合金粉末が、重量百分率で、1.2~2.5%のNd、及び/又は、0.02~0.06%のSrを含み、
任意に、前記アルミニウム合金粉末が、重量百分率で、2.2~2.3%のMg、5.3~6.5%のZn、1.2~2.5%のNd、0.9~1.0%のC、0.12~0.15%のZr、2.0~2.2%のCu、0.03~0.04%のTi、0.02~0.06%のSrを含み、残部がAlである、請求項13に記載のアルミニウム合金粉末。
【請求項15】
1)元素配合比で材料を配合することと、
2)原料を加熱溶融し、アトマイズによる製粉を行うことと、
3)製造された粉末を乾燥処理し、篩い分け、アルミニウム合金粉末を得ることと
を含む、請求項13又は14に記載のアルミニウム合金粉末の製造方法。
【請求項16】
前記アトマイズによる製粉に、アルゴンガスアトマイズ法が採用される、請求項15に記載のアルミニウム合金粉末の製造方法。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の方法により製造されたアルミニウム合金粉末。
【請求項18】
請求項13~14、17のいずれか1項に記載のアルミニウム合金粉末のアルミニウム合金材料の修復における使用。
【請求項19】
1)修復しようとする領域をサンドブラスト処理することと、
2)請求項13~14、17のいずれか1項に記載のアルミニウム合金粉末を用いて、高圧コールドスプレーを行うことと、
3)スプレーによる修復が完了したワークを溶体化処理することと
を含む、アルミニウム合金の高圧コールドスプレーコーティングの接合強度を向上させる方法。
【請求項20】
サンドブラスト処理後のワークの表面粗さRaが5.0~7.6μmに達し、任意に、Raが5.8~7.6μmである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記高圧コールドスプレーの温度が350~500℃であり、ガス圧力が4.5~5.5MPaであり、及び/又は、前記溶体化処理の温度が400~500℃であり、溶体化時間が30min~60minである、請求項19又は20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【相互参照】
【0001】
本願は、2022年11月30日に提出された、出願番号が202211529888.9であり、発明の名称が「アルミニウム合金部品の高圧コールドスプレーコーティングの接合強度を向上させる方法」である中国特許出願、及び2022年10月12日に提出された、出願番号が202211248277.7であり、発明の名称が「軸箱体の取り付け面の損傷を修復する方法および装置」である中国特許出願の優先権を主張し、それらのすべての内容を引用により、本願に援用する。
【技術分野】
【0002】
本願は、鉄道交通の技術分野に関し、特に、軸箱体の取り付け面の損傷を修復する方法及び装置、並びにアルミニウム合金部品の高圧コールドスプレーコーティングの接合強度を向上させる方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
アルミニウム合金材料は、比強度が高く、比弾性率が高く、耐食性が良いなどの特徴から、交通運輸、車両製造、航空宇宙などの分野で広く応用されており、高速鉄道、自動車、航空機の軽量化の重要な材料である。軸箱体は、高速列車や都市鉄道、地下鉄等の鉄道車両の重要な構成部品であり、通常、高強度アルミニウム合金製である。軸箱体と他の部品との接続接触面にガルバニック腐食が発生することを防止するために、通常、当該面にリン酸亜鉛ワニスをスプレーして保護するが、車両の運行中に、フレッティング摩耗及び環境因子の影響により、リン酸亜鉛ワニスは破壊されやすく、基体が露出するようになるため、軸箱体の取り付け面にガルバニック腐食が発生し、その表面に各種の腐食ピットが形成され、その結果、アルミニウム合金の軸箱体の取り付け面の材料が流失し、取り付け面の粗さが許容値を超え使用要求を満たさなくなり、部品の廃棄率が高まる。
【0004】
このような問題に対して、現在、主に使用されているのは、機械加工によって軸箱体の取り付け面上のガルバニック腐食による腐食層を除去することで、粗さの不適合問題を解決するという対策である。しかし、軸箱体の取り付け面の寸法は、1~2回の機械加工で下限値に達してしまい、再度錆が発生したら機械加工の手段で修復することができず、廃棄又は封止処理するしかない。このような操作には、メンテナンスのコストが高く、資源の浪費が深刻であるという問題がある。しかしながら、一般的なレーザー、プラズマ、アークなどの高エネルギービームによる材料の修復と再製造技術には、7000系高強度アルミニウム合金を修復する際にワークが割れやすく、熱影響領域が大きく、修復層の硬度が低いなどの一連の従来から克服が難しい問題が存在する。高強度アルミニウム合金の加工特性の制限により、アーク溶接又は高エネルギーレーザー溶着技術を使用して修復する場合、アルミニウム合金の基材組織の損傷を回避できず、修復する領域の機械的性能が低下し、入熱により精密部品が変形し、精度が低下する。
【0005】
現在、コールドスプレー技術を用いて軸箱体の腐食面の再製造修復を行っているが、一般的な高圧コールドスプレーコーティングの接合強度は低く、コーティングの接合強度は通常、44~60MPaにしか達することができないため、動車組列車の高規格(修復後のコーティングの接合強度は100MPa以上に達する必要がある)の部品の使用要求を満たすことができない。
【0006】
以上に説明したように、新規な修復技術及びそれを支える修復プロセスの開発が急務となっている。
【発明の内容】
【0007】
本願は、軸箱体の取り付け面の損傷を修復する方法及び装置を提供し、軸箱体の取り付け面からの腐食面の除去を実現した上で、腐食生成物を効率的に除去しつつ、軸箱体の寸法を回復させることができ、従来の熱修復手段による部品の組織状態、寸法精度及び機械的性能への影響をなくし、軸箱体の使用寿命をさらに向上させる。
【0008】
本願は、軸箱体の取り付け面の損傷を修復する方法を提供し、
軸箱体の取り付け面の損傷位置における腐食ピットの寸法の測定結果を取得して、前記損傷位置の欠陥領域を確定し、除去加工処理によって前記欠陥領域の腐食層を除去するステップと、
前記欠陥領域を分類し、各前記欠陥領域の種類に基づいて、前記欠陥領域に対してそれぞれ相応のスプレー処理を行い、相応の修復領域を得るステップと、
各前記修復領域に対して除去再製造を行い、前記取り付け面の寸法を回復させるステップと
を含む。
【0009】
本願が提供する軸箱体の取り付け面の損傷を修復する方法によれば、前記の軸箱体の取り付け面の損傷位置における腐食ピットの寸法の測定結果を取得して、前記損傷位置の欠陥領域を確定し、除去加工処理によって前記欠陥領域の腐食層を除去するステップは、
前記腐食ピットの位置に基づいて、前記損傷位置の各欠陥領域をそれぞれ確定するステップであって、前記欠陥領域ごとに、少なくとも1つの前記腐食ピットが含まれるステップと、
同一の前記欠陥領域内の前記腐食ピットの最大深さ及び相応の前記欠陥領域の面積を取得して、機械加工の処理範囲を確定するステップと、
各前記機械加工の処理範囲内において、前記除去加工処理によって、各前記欠陥領域の腐食層をそれぞれ除去するステップと
をさらに含む。
【0010】
本願が提供する軸箱体の取り付け面の損傷を修復する方法によれば、前記の同一の前記欠陥領域内の前記腐食ピットの最大深さ及び相応の前記欠陥領域の面積を取得して、機械加工の処理範囲を確定するステップは、
同一の前記欠陥領域で複数の前記腐食ピットを選別し、深さ測定器により選別した各前記腐食ピットの深さをそれぞれ測定し、比較により前記腐食ピットの最大深さを取得するステップと、
前記欠陥領域の面積を計測するステップと、
前記腐食ピットの最大深さと前記欠陥領域の面積に基づいて、前記機械加工の処理範囲を確定するステップと
をさらに含み、
ここで、前記機械加工の処理範囲の面積は、前記欠陥領域の面積よりも大きく、且つ前記機械加工の処理範囲の深さは、前記腐食ピットの最大深さ以上である。
【0011】
本願が提供する軸箱体の取り付け面の損傷を修復する方法によれば、前記の各前記機械加工の処理範囲内において、前記除去加工処理によって、各前記欠陥領域の腐食層をそれぞれ除去するステップの後に、
前記除去加工処理後の前記欠陥領域に対してフィレット遷移処理を行うステップをさらに含み、
ここで、前記フィレット遷移処理後の前記欠陥領域のフィレットとベース面との夾角は30°以下である。
【0012】
本願が提供する軸箱体の取り付け面の損傷を修復する方法によれば、前記の欠陥領域を分類し、各前記欠陥領域の種類に基づいて、前記欠陥領域に対してそれぞれ相応のスプレー処理を行い、相応の修復領域を得るステップは、
前記欠陥領域内の各前記腐食ピットの長さ及び幅を取得するステップと、
各前記腐食ピットの長さ及び幅に基づいて、前記欠陥領域を分類して、前記欠陥領域の種類を確定するステップであって、ここで、前記欠陥領域の種類が、点状欠陥、線状欠陥及び面状欠陥を含むステップと、
前記点状欠陥に対して、前記欠陥領域の中心部に垂直するようにスプレーガンを駆動してスプレーするステップと、
前記線状欠陥に対して、前記欠陥領域の長手方向に沿って進行し、且つ進行経路が幅方向に変化しないように前記スプレーガンを駆動し、さらに、前記腐食ピットの最大深さに基づいて前記スプレーガンの往復回数を確定するステップと、
前記面状欠陥に対して、前記欠陥領域の長手方向及び幅方向に沿ってそれぞれ進行するように前記スプレーガンを駆動し、さらに、前記腐食ピットの最大深さに基づいて前記スプレーガンの往復回数を確定するステップと
をさらに含む。
【0013】
本願が提供する軸箱体の取り付け面の損傷を修復する方法によれば、前記点状欠陥は、前記腐食ピットの長さ及び幅がいずれも5mm未満であり、前記線状欠陥は、前記腐食ピットの長さが5mm以上、かつ幅が5mm以下であり、前記点状欠陥及び前記線状欠陥を除く残りの欠陥はいずれも前記面状欠陥である。
【0014】
本願が提供する軸箱体の取り付け面の損傷を修復する方法によれば、前記の軸箱体の取り付け面の損傷位置における腐食ピットの寸法の測定結果を取得して、前記損傷位置の欠陥領域を確定し、除去加工処理によって前記欠陥領域の腐食層を除去するステップの前に、
前記取り付け面の損傷位置をレーザー洗浄するステップと、
洗浄後の前記損傷位置を表面洗浄して、前記損傷位置の腐食ピットを露出させるステップと
をさらに含む。
【0015】
本願が提供する軸箱体の取り付け面の損傷を修復する方法によれば、前記の前記取り付け面の損傷位置をレーザー洗浄し、洗浄後の前記損傷位置を表面洗浄して、前記損傷位置の腐食ピットを露出させるステップは、
レーザー洗浄システムにより前記取り付け面の損傷位置をレーザー洗浄するステップであって、ここで、前記レーザー洗浄システムのレーザーパワーが50W~120Wであり、洗浄時間が2min~5minであるステップと、
高圧エアガンにより洗浄後の前記損傷位置を表面洗浄して、前記損傷位置の腐食ピットを露出させるステップと
をさらに含む。
【0016】
本願が提供する軸箱体の取り付け面の損傷を修復する方法によれば、前記の前記欠陥領域を分類し、各前記欠陥領域の種類に基づいて、前記欠陥領域に対してそれぞれ相応のスプレー処理を行い、相応の修復領域を得るステップの前に、
除去加工処理後の前記欠陥領域内の全ての孔状部位をプラグで塞ぐステップと、
除去加工処理後の前記欠陥領域をサンドブラスト処理するステップと、
サンドブラスト処理後の前記欠陥領域を予熱スプレーするステップと
をさらに含む。
【0017】
本願が提供する軸箱体の取り付け面の損傷を修復する方法によれば、サンドブラスト処理後の前記欠陥領域の表面粗さRaは5.0μm~7.6μmである。
【0018】
本願が提供する軸箱体の取り付け面の損傷を修復する方法によれば、前記予熱スプレーのプロセスパラメータは、
予熱スプレーにアルミニウム合金粉末を用い、前記粉末の粒度が10μm~60μmであり、前記粉末の乾燥温度が70±5℃であり、前記予熱スプレーの時間が40min~60minであり、
前記予熱スプレーに用いられるスプレーガスが99.99%窒素ガスであり、
前記スプレーガスのガス圧力が3.5MPa~5.5MPaであり、
前記予熱スプレーのスプレー距離が5mm~20mmであり、
前記予熱スプレーのスプレーガンとスプレー面との角度が60°以上である
ことを含む。
【0019】
本願は、さらに、前記のような軸箱体の取り付け面の損傷を修復する方法を実行可能な、軸箱体の取り付け面の損傷を修復する装置を提供する。
【0020】
前記軸箱体の取り付け面の損傷を修復する装置は、
軸箱体の取り付け面の損傷位置における腐食ピットの寸法の測定結果を取得するための寸法測定システムと、
前記腐食ピットの寸法の測定結果に基づいて、前記損傷位置の欠陥領域を確定し、除去加工処理によって前記欠陥領域の腐食層を除去するための除去加工処理システムと、
前記欠陥領域を分類し、各前記欠陥領域の種類に基づいて、前記欠陥領域に対してそれぞれ相応のスプレー処理を行い、相応の修復領域を取得するためのスプレーシステムと、
各前記修復領域に対して除去再製造を行い、前記取り付け面の寸法を回復させるための除去再製造システムと
を含む。
【0021】
本願は、さらに、上記の軸箱体の取り付け面の損傷を修復する方法に用いられるアルミニウム合金粉末を提供し、当該アルミニウム合金粉末は、重量百分率で、3.2~7.8%のZn、2.0~2.7%のMg、1.5~2.9%のCu、0.02~0.06%のTi、0.3~1.5%のC、0.05~0.20%のZr、1.0%~2.8%のNd、0.01~0.08%のSrを含み、残部がAlである。
【0022】
本願の実施例によれば、前記アルミニウム合金粉末は、重量百分率で、1.2~2.5%のNd、及び/又は、0.02~0.06%のSrを含む。検討により、Nd元素とSr元素が、当該含有量の範囲内にあると、コーティングの接合強度を向上させ、気孔率を減少させることができることが見出された。
【0023】
いくつかの具体例において、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%、2.1%、2.2%、2.3%、2.4%又は2.5%のNdを含む。
【0024】
いくつかの具体例において、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%又は0.06%のSrを含む。
【0025】
本願の実施例によれば、前記アルミニウム合金粉末は、重量百分率で、2.2~2.3%のMg、5.3~6.5%のZn、1.2~2.5%のNd、0.9~1.0%のC、0.12~0.15%のZr、2.0~2.2%のCu、0.03~0.04%のTi、0.02~0.06%のSrを含み、残部がAlである。
【0026】
本願の実施例によれば、前記アルミニウム合金粉末は、重量百分率で、5.3%のZn、2.3%のMg、2.2%のCu、0.04%のTi、0.9%のC、0.12%のZr、1.9%のNd、0.04%のSrを含み、残部がAlである。
【0027】
本願の実施例によれば、前記アルミニウム合金粉末の粒径は10μm~60μmである。通常、篩網を用いて粉末を篩い分けることができる。検討により、この粒度範囲の粉末が、より均一であり、流動性が良いことが見出された。
【0028】
本願の実施例によれば、前記アルミニウム合金粉末は、アトマイズ法、例えば具体的にはアルゴンガスアトマイズ法により製造されたものである。
【0029】
本願は、さらに、上記アルミニウム合金粉末の製造方法であって、
1)元素配合比で材料を配合することと、
2)原料を加熱溶融し、アトマイズによる製粉を行うことと、
3)製造された粉末を乾燥処理し、篩い分け、アルミニウム合金粉末を得ることと
を含む方法を提供する。
【0030】
本願は、更に、上記アルミニウム合金粉末のアルミニウム合金材料、特に、高速鉄道、自動車、航空機などの分野で使用されるアルミニウム合金材料の修復における使用を含む。いくつかの具体例において、高速列車や都市鉄道、地下鉄等の鉄道車両の軸箱体の修復に使用される。前記軸箱体は、高強度アルミニウム合金製、例えば、7050FD高強度アルミニウム合金製である。
【0031】
高強度アルミニウム合金の高圧コールドスプレーの接合強度が低い工程のために、アルミニウム合金の高圧コールドスプレーの接合強度を高める方法を提供する。この方法は、高圧コールドスプレー技術を重要なアルミニウム合金耐荷重部品に適用することができ、高強度アルミニウム合金の表面状態の回復だけでなく、重要部品の強度及び機能の修復を実現することもでき、高圧コールドスプレー技術をより多くの産業分野に適用することにおいて重要な推進作用を果たす。
【0032】
本願は、更に、アルミニウム合金の高圧コールドスプレーコーティングの接合強度を向上させる方法であって、
1)修復しようとする領域をサンドブラスト処理することと、
2)上記アルミニウム合金粉末を用いて高圧コールドスプレーを行うことと、
3)スプレーによる修復が完了したワークを溶体化処理することと
を含む方法を提供する。
【0033】
通常、本願におけるアルミニウム合金粉末は、使用前に乾燥処理され、例えば、真空オーブンに入れられて乾燥される。いくつかの実施例において、真空オーブンの乾燥温度は60~70℃であり、時間は40~60minである。乾燥後に、コールドスプレー送粉システムに投入してスプレーを行うことができる。
【0034】
本願の実施例によれば、スプレーしようとするワークの表面に対してブラストによる粗面化処理を行うことにより、表面粗さを向上させ、修復領域の深さ及び面積に応じてスプレープロセスのパラメータを設定する。いくつかの具体例において、サンドブラスト処理後のワークの表面粗さRaは5.0~7.6μm、例えばRaは5.8~7.6μmに達している。
【0035】
本願の実施例によれば、前記高圧コールドスプレーの温度は、350~500℃、例えば400~500℃であり、ガス圧力は、4.5~5.5MPa、例えば5~5.5MPaである。
【0036】
本願の実施例によれば、前記高圧コールドスプレーの速度(スプレーガン)は、250~350mm/s、例えば300mm/sである。
【0037】
本願の実施例によれば、前記高圧コールドスプレーの角度(スプレーガン)は70~90°である。
【0038】
本願の実施例によれば、前記溶体化処理の温度は、400~500℃、例えば455~460℃であり、溶体化時間は30min~60min、例えば35~40minである。
【0039】
本願の実施例により、前記高圧コールドスプレーの温度は350~500℃であり、ガス圧力は4.5~5.5MPaであり、前記高圧コールドスプレーの速度は250~350mm/sであり、高圧コールドスプレーの角度は70~90°であり、前記溶体化処理の温度は400~500℃であり、溶体化時間は30min~60minである。検討により、この好ましい条件で粉末粒子が基体に衝突すると、自身が激しく塑性変形するとともに、基材表面に相応の凹みが発生し、基体の表面粗さの影響と相まって、粉末粒子の基体への優れた結合品質を発生させることができることが見出された。コーティングの内部の空孔も相応に減少または消失する。
【0040】
本願は、高圧コールドスプレー後、コールドスプレーされた軸箱体を熱処理してコールドスプレーコーティングの極めて高い接合強度及び極めて低い気孔率を達成し、一般的な高圧コールドスプレーコーティングの接合強度が低く、気孔率が高いという問題を解決し、修復された部品の使用性能を保証する。
【0041】
本願が提供する軸箱体の取り付け面の損傷を修復する方法は、付加(除去)再製造の技術手段に、金属材料を低温固体の状態で堆積させる機能を有するコールドスプレー付加製造の技術手段を革新的に導入し、寸法測定及び欠陥分類により正確なプロセス経路の設計を実現することにより、アルミニウム合金の軸箱体の取り付け面の損傷部位を修復し、異なる損傷形態に対して異なる修復プロセスを制定して、従来のアルミニウム合金の軸箱体のメンテナンスのコストが高く、修復が困難であり、資源の浪費が深刻であるという問題を解決する。
【0042】
本願に記載の方法は、軸箱体の取り付け面の損傷位置における腐食ピットの寸法を測定することにより、除去加工処理を実現できる欠陥領域を確定し、腐食層を除去する操作の精度を向上させる。当該方法は、欠陥領域を細かく分類し、各欠陥領域の種類に基づいて、欠陥領域に対してそれぞれ相応のスプレー処理を行って、精密なスプレーを実現する。これに基づいて、本方法は、各修復領域に対して除去再製造を実行し、取り付け面の寸法を回復させる。従来技術と比較して、本方法は、単に軸箱体の取り付け面を機械加工して腐食面を除去するのではなく、除去加工に加えて、高圧コールドスプレー手段によって腐食された欠陥領域に対して付加製造の修復手段を行っており、軸箱体の取り付け面の腐食生成物を除去できるだけでなく、機械加工により腐食生成物を除去した上で、順次、付加処理、除去処理を施すことで、軸箱体の寸法を効率よく、かつ、正確に回復させることができ、従来の熱修復手段による部品の組織状態、寸法精度、及び機械的性質への影響をなくし、軸箱体の使用寿命をさらに長くする。
【0043】
更に、本願に記載の方法は、高圧コールドスプレー技術を重要なアルミニウム合金耐荷重部品に適用することができ、高強度アルミニウム合金の表面状態の回復だけでなく、重要部品の強度及び機能の修復を実現することもでき、高圧コールドスプレー技術をより多くの産業分野に適用することにおいて重要な推進作用を果たす。
【0044】
本願は、更に、取り付け面の損傷を修復する装置を提供し、寸法測定システム、除去加工処理システム、スプレーシステム及び除去再製造システムを設けることにより、当該軸箱体の取り付け面の損傷を修復する装置は、上記の軸箱体の取り付け面の損傷を修復する方法を実行可能とし、上記の軸箱体の取り付け面の損傷を修復する方法の全ての利点を備えることができ、ここでは具体的な説明を省略する。
【0045】
本願が提供するアルミニウム合金粉末は、主に、Al、Zn、Mg、Cu、Ti、C、Zr、Nd、Srなどの元素を含む。本願は、希土類元素を添加し、粉末に対して結晶粒微細化強化を行い、さらに合金元素中にTiとCを添加することにより、粉末粒子の内部にTiC硬質粒子をその場で析出させ、粉末粒子の強度と硬度を向上させ、コールドスプレー過程において基材よりも硬度の高い粒子を基材の表面に高速で衝突させる過程で、当該粒子を基材表面に効果的に埋め込むことができ、これにより、従来のアルミニウム合金粉末は、より高い界面接合強度を形成する。
【0046】
従来のコールドスプレーによる修復技術と比較して、本願は、高圧コールドスプレーの付加製造技術に基づくものであり、粉末の処方を最適化し、Nd、Srなどの希土類元素を導入することにより、結晶粒微細化強化の作用を果たし、合金元素中のTiとCの添加により、粉末粒子の内部にTiC硬質粒子をその場で析出させ、粉末粒子の強度と硬度を向上させ、基体の強度とより優れたマッチング度を達成する。スプレー過程において、低いスプレー温度を設けることにより、金属粒子が加熱された後に過度に軟化することを回避し、高いガス圧力により、粒子により大きな運動エネルギーを付与する。堆積過程において、自身に十分な偏平変形が生じるだけでなく、コーティング内部の粒子間の圧縮応力も増加したため、粒子が基体に衝突する際に、界面でより広面積のアンカー効果とピンニング効果が生じることに更に有利であり、同時に粉末及び基材の表面酸化膜が破裂したため、粒子の衝撃による運動エネルギーの作用下で冶金的接合部位が形成され、接合性能が大幅に向上する。スプレーによる修復後の軸箱体に対して溶体化処理を行うことで、内部空隙を収縮させ、界面での元素拡散を強化し、接合面を固化させ、接合強度をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
以下、本願又は従来技術における技術案をより明確に説明するために、実施例又は従来技術の説明に必要な図面を簡単に説明する。勿論、以下に説明する図面は、本願の一部の実施例に過ぎず、当業者であれば、創造的な労力をせずに、これらの図面に基づいてその他の図面を取得することができる。
【0048】
図1】本願が提供する軸箱体の取り付け面の損傷を修復する方法のフローチャートである。
図2】本願の実施例1で製造されたアルミニウム合金粉末の形態図である。
図3】本願の実施例2で製造された、コールドスプレーによる修復コーティングである。
図4】本願の比較例1で製造された、コールドスプレーによる修復コーティングである。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本願の目的、技術案及び利点をより明らかにするために、本願における図面を参照しながら、本願における技術案を明確かつ完全に説明する。勿論、説明する実施例は、全ての実施例ではなく、本願の一部の実施例に過ぎない。本願における実施例に基づいて、当業者が創造的な労働をしないうちに取得する全ての他の実施例は、いずれも本願の保護範囲に属する。
【0050】
以下、実施例及び比較例を参照して本願をさらに説明する。ここで採用される実施例は、本願に少なくとも1つの実施形態が存在することを意味するが、本願は、この実施例と異なる他の方式を採用して実現されてもよいため、本願は、以下で開示される具体的な実施例に限定されるものではない。
【0051】
以下、図1を参照しながら、本願の軸箱体の取り付け面の損傷を修復する方法(本願において「方法」と略称する)、及び軸箱体の取り付け面の損傷を修復する装置(本願において「装置」と略称する)を説明する。
【0052】
図1に示すように、本願に記載の軸箱体の取り付け面の損傷を修復する方法は、
軸箱体の取り付け面の損傷位置における腐食ピットの寸法の測定結果を取得して、損傷位置の欠陥領域を確定し、除去加工処理によって欠陥領域の腐食層を除去するステップS1と、
欠陥領域を分類し、各欠陥領域の種類に基づいて、欠陥領域に対してそれぞれ相応のスプレー処理を行い、相応の修復領域を得るステップS2と、
各修復領域に対して除去再製造を行い、取り付け面の寸法を回復させるステップS3と
を含む。
【0053】
本願に記載の方法において、ステップS1は、軸箱体の取り付け面の損傷位置における腐食ピットの寸法を測定することにより、除去加工処理を実現できる欠陥領域を確定し、腐食層を除去する操作の精度を向上させる。ステップS2は、欠陥領域を細かく分類し、各欠陥領域の種類に基づいて、欠陥領域に対してそれぞれ相応のスプレー処理を行うことにより、精密なスプレーを実現する。これに基づいて、本方法は、更にステップS3によって、各修復領域に対して除去再製造を行い、取り付け面の寸法を回復させる。従来技術と比較して、本方法は、単に軸箱体の取り付け面を機械加工して腐食面を除去するのではなく、除去加工に加えて、高圧コールドスプレー手段によって腐食された欠陥領域に対して付加製造の修復手段を行っており、軸箱体の取り付け面の腐食生成物を除去できるだけでなく、機械加工により腐食生成物を除去した上で、順次、付加処理、除去処理を施すことで、軸箱体の寸法を効率よく、かつ、正確に回復させることができ、従来の熱修復手段による部品の組織状態、寸法精度、及び機械的性能への影響をなくし、軸箱体の使用寿命をさらに長くする。
【0054】
損傷位置における腐食ピットが完全に露出することを保証し、後続の寸法測定の結果をより正確にし、大きな差が生じることにより後続の欠陥領域の判定及び分類に誤りが生じることを回避するために、ステップS1の前に、表面を前処理するステップをさらに含むことが好ましい。
【0055】
好ましくは、表面を前処理するステップは、具体的に、
取り付け面の損傷位置をレーザー洗浄するステップS01と、
洗浄後の損傷位置を表面洗浄して、損傷位置の腐食ピットを露出させるステップS02と
を含む。
【0056】
軸箱体の取り付け面のサビ跡及び汚染物を除去し、後続の寸法測定の結果の精度と測定効率を向上させるために、好ましくは、上記のステップS01とステップS02は、更に、
レーザー洗浄システムにより取り付け面の損傷位置をレーザー洗浄するステップであって、ここで、レーザー洗浄システムのレーザーパワーが50W~120Wであり、洗浄時間が2min~5minであるステップS011と、
高圧エアガンにより洗浄後の損傷位置を表面洗浄して、損傷位置の腐食ピットを露出させるステップS021と
を含む。
【0057】
ステップS011において、損傷位置内の全ての腐食ピットが完全に露出することを保証するために、最も好ましい洗浄時間は3minである。
【0058】
ステップS021において、レーザー洗浄後に、高圧エアガンを用いて再びレーザー洗浄後の表面をクリーニングし、損傷位置内に汚染物の残留がないことを確保する。
【0059】
いくつかの実施例では、上記のステップS1は、さらに、
腐食ピットの位置に基づいて、損傷位置の各欠陥領域をそれぞれ確定するステップであって、欠陥領域ごとに、少なくとも1つの腐食ピットが含まれるステップS11と、
同一の欠陥領域内の腐食ピットの最大深さ及び相応の欠陥領域の面積を取得して、機械加工の処理範囲を確定するステップS12と、
各機械加工の処理範囲内において、除去加工処理によって、各欠陥領域の腐食層をそれぞれ除去するステップS13と
を含む。
【0060】
ステップS11によれば、腐食ピットの分布状況に基づいて、損傷位置を複数の欠陥領域に正確に区分することができ、それにより、欠陥領域ごとに特定のプロセス経路及びパラメータを設定して、損傷位置における各欠陥領域に対する区分及び分類をより正確且つより適切にすることができる。その後、ステップS12によって、腐食ピットの最大深さ及び相応の欠陥領域の面積を計測することで、後続のステップS13における除去加工処理の深さ及び領域範囲を確定し、さらに、正確かつ明確な機械加工の処理範囲を確定して、除去処理が深すぎることおよび大きすぎることを回避し、軸箱体の取り付け面に対して保護作用を果たす。
【0061】
いくつかの具体的な実施例において、上記ステップS12は、さらに、
同一の欠陥領域で複数の腐食ピットを選別し、深さ測定器により選別した各腐食ピットの深さをそれぞれ測定し、比較により腐食ピットの最大深さを取得するステップS121と、
欠陥領域の面積を計測するステップS122と、
腐食ピットの最大深さと欠陥領域の面積に基づいて、機械加工の処理範囲を確定するステップS123と
を含む。
【0062】
好ましくは、上記機械加工の処理範囲の面積は、欠陥領域の面積よりも大きく、且つ機械加工の処理範囲の深さは、腐食ピットの最大深さ以上である。当該設定によれば、除去処理の範囲が欠陥領域全体をカバーすることを保証し、腐食層の除去操作に漏れがあることを回避でき、除去処理の範囲を可及的に小さくしつつ、腐食層除去の正確性を可及的に向上させることができる。
【0063】
好ましくは、除去加工処理後の欠陥領域に対してより良好な保護作用を奏するために、好ましくは、上記ステップS13の後に、除去加工処理後の欠陥領域に対してフィレット遷移処理を行うステップS14をさらに含む。
【0064】
ここで、フィレット遷移処理後の欠陥領域のフィレットとベース面との夾角は30°以下である。換言すれば、本方法は、腐食ピット深さ測定器を用いて腐食ピットの深さの検出を行うことで、複数の腐食ピットのうちの最大腐食深さを有する腐食ピットを得、この最大腐食深さを有する腐食ピットの深さを腐食ピットの最大深さとした上で、0.2mmを加算して腐食ピット表面の除去加工を行っており、そして、当該機械加工の処理範囲の周縁部はフィレット遷移処理を行い、鋭角又は直角が現れることを回避し、ベース面との夾角を30°以下とすべきである。
【0065】
ここで、上記の腐食ピット深さ測定器を用いた腐食ピットの深さの測定の具体的なステップは、
軸箱体の取り付け面を上にして、平坦な状態で載置台に置くステップと、
腐食ピット深さ測定器を軸箱体の取り付け面に近づけ、プローブが平坦な表面に接触するように軽く置き、マイクロメーターをゼロに調整した後、プローブを軸箱体の取り付け面の縁に近づけるように移動し、プローブの高さを軸箱体の取り付け面の測定しようとする深さ以下に調整するステップと、
プローブを持ち上げ、測定領域の真上に移動させた後、プローブを下ろし、測定を行うステップと、
腐食領域の異なる部位をランダムに測定し、測定点を5つ以上とし、最大深さを記録するステップと
である。
【0066】
腐食ピットの最大深さ及び領域面積を測定した上で、0.2mmを加算して機械加工プロセスを確定し、軸箱体の修復部位に対して除去加工を行い、腐食層を除去し、完成後に目視で加工深さが十分であるか否かを検査する。
【0067】
いくつかの実施例では、修復過程における軸箱体の取り付け面に対してより良好な保護作用を奏するために、好ましくは、ステップS1とステップS2との間に、さらに、
除去加工処理後の欠陥領域内の全ての孔状部位をプラグで塞ぐステップS15と、
除去加工処理後の欠陥領域をサンドブラスト処理するステップS16と、
サンドブラスト処理後の欠陥領域を予熱スプレーするステップS17と
を含む。
【0068】
好ましくは、ステップS15において、操作の便宜のために、修復しようとする軸箱体を専用治具に取り付ける。ブラスト前に、専用プラグによって、欠陥領域内の孔状部位、特にねじ山部位を塞ぎ、確実な保護作用を奏することが好ましい。好ましく用いられる専用プラグは非金属材質であり、粒子のスプレー経路を干渉しない。
【0069】
好ましくは、ステップS16は、除去加工処理後の欠陥領域に対してブラストによる粗面化を行うことにより、ブラスト後の表面を均一で金属光沢のない粗い状態とする。好ましくは、ブラスト後の欠陥領域の表面粗さRaは5.0μm~7.6μmである。好ましくは、25メッシュの茶色コランダム砂を用いてサンドブラスト処理を行い、ブラスト圧力は、0.3MPa~0.6MPaであり、ブラスト距離は80mm~120mmであり、ブラスト角度は、40°~70°であり、ブラスト時間は、2min~5minである。
【0070】
好ましくは、ステップS17の予熱スプレーは、修復しようとする取り付け面に対して予熱作用を果たすことができ、これにより、粉末に対して乾燥処理を行う。好ましくは、予熱スプレーのプロセスパラメータは、具体的には、予熱スプレーにアルミニウム合金粉末(例えば、7050アルミニウム合金粉末)を採用し、粉末の粒度が10μm~60μmであり、粉末の乾燥温度が70±5℃であり、予熱スプレーの時間が40min~60minであり、予熱スプレー用のスプレーガスが99.99%窒素ガスであり、スプレーガスのガス圧力が3.5MPa~5.5MPaであり、予熱スプレーのスプレー距離が5mm~20mmであり、予熱スプレーのスプレーガンとスプレー面の角度が60°以上であることを含む。
【0071】
いくつかの実施例では、ステップS2は、さらに、
欠陥領域内の各腐食ピットの長さ及び幅を取得するステップS21と、
各腐食ピットの長さ及び幅に基づいて、欠陥領域を分類し、欠陥領域の種類を確定するステップであって、ここで、欠陥領域の種類が、点状欠陥、線状欠陥及び面状欠陥を含むステップS22と
を含む。
【0072】
上記のステップS21により、各腐食ピットの寸法を正確に取得する。上記のステップS22により、欠陥領域を正確に分類し、異なる種類の欠陥領域に対して独自のプロセス経路を制定して、コールドスプレープロセスをより指向性及び独特性を有し、かつ異なる領域のプロセス要求に適合するようにし、スプレープロセスの効率及び品質を向上させる。
【0073】
具体的には、上記のステップS22は、さらに、
点状欠陥に対して、欠陥領域の中心部に垂直するようにスプレーガンを駆動してスプレーすることと、
線状欠陥に対して、欠陥領域の長手方向に沿って進行し、且つ進行経路が幅方向に変化しないようにスプレーガンを駆動し、さらに、腐食ピットの最大深さに基づいてスプレーガンの往復回数を確定することと、
面状欠陥に対して、欠陥領域の長手方向および幅方向に沿ってそれぞれ進行するようにスプレーガンを駆動し、さらに、腐食ピットの最大深さに基づいてスプレーガンの往復回数を確定することと
を含み、
ここで、点状欠陥は、腐食ピットの長さ及び幅がいずれも5mm未満であることが好ましく、線状欠陥は、腐食ピットの長さが5mm以上であり、かつ幅が5mm以下であることが好ましく、点状欠陥および線状欠陥を除く残りの欠陥がいずれも面状欠陥であり、実際の領域寸法に応じて、スプレーガンの欠陥の長手方向における走行距離及び欠陥の幅方向における移動距離を設定することが好ましい。
【0074】
なお、プロセス操作の品質及び効率をさらに向上させるために、好ましくは、2つ又は2つ以上の点状欠陥同士の距離が5mmを超えない場合、それを面状欠陥とみなし、面状欠陥のスプレープロセスに従ってスプレーによる修復を行い、2つ又は2つ以上の線状欠陥同士の距離が5mmを超えない場合、それを面状欠陥とみなし、面状欠陥のスプレープロセスに従ってスプレーによる修復を行う。
【0075】
いくつかの実施例では、上記のステップS3は、フライスを用いて修復領域を加工し、表面を損傷しないことを加工基準として、原稿図面に基づいて修復領域の表面寸法及び粗さを回復させ、部品の精度を保証することをさらに含む。
【0076】
本願に開示される軸箱体の取り付け面の損傷を修復する装置は、前記のような軸箱体の取り付け面の損傷を修復する方法を実行可能である。この軸箱体の取り付け面の損傷を修復する装置は、寸法測定システム、除去加工処理システム、スプレーシステム及び除去再製造システムを含む。寸法測定システムは、軸箱体の取り付け面の損傷位置における腐食ピットの寸法の測定結果を取得するためのものである。除去加工処理システムは、腐食ピットの寸法の測定結果に基づいて、損傷位置の欠陥領域を確定し、除去加工処理によって欠陥領域の腐食層を除去するためのものである。スプレーシステムは、欠陥領域を分類し、各欠陥領域の種類に基づいて、欠陥領域に対してそれぞれ相応のスプレー処理を行い、相応の修復領域を得るためのものである。除去再製造システムは、各修復領域に対して除去再製造を実行して、取り付け面の寸法を回復させるためのものである。
【0077】
当該装置は、寸法測定システム、除去加工処理システム、スプレーシステム及び除去再製造システムを設けることにより、上記の軸箱体の取り付け面の損傷を修復する方法を実行でき、上記の軸箱体の取り付け面の損傷を修復する方法の全ての利点を備えることができ、ここでは具体的な説明を省略する。
【実施例
【0078】
以下では、表面粗さを、表面粗さ測定機を用いて測定した。
【0079】
実施例1
本実施例は、アルミニウム合金粉末を提供し、その製造方法は以下の通りである。
1)重量百分率で、2.3%の純Mg粉、5.3%の純Zn粉、1.9%のNd粉、0.9%の黒鉛粉、0.12%のZr粉、2.2%のCu粉、0.04%のTi粉、0.04%のSr粉を採取し、残部をAl粉とし、真空融解炉に入れ、十分に融解させた後、800℃でアルゴンガスアトマイズ法による製粉を行い、冷却した後、収集する。
2)篩網を用いて粉末を篩い分け、粒径が10~60μmのアルミニウム合金粉末を得る。
【0080】
本実施例は、更に、アルミニウム合金の高圧コールドスプレーコーティングの接合強度を向上させる方法を提供し、当該方法では、
1)本実施例で製造されたアルミニウム合金粉末を真空オーブンに入れて乾燥し、時間は40minであり、乾燥温度は70℃である。
2)軸箱体の修復しようとする表面の腐食層を除去し、乾燥状態を保ち、その後、サンドブラスト処理を行い、サンドブラスト処理後に、表面粗さを測定したところ、Raが7.6μmである。
ステップ1)で乾燥されたアルミニウム合金粉末を用いて高圧コールドスプレーを行い、高圧コールドスプレーの空気の圧力を5.0MPa、スプレーガンの温度を400℃、スプレーガンの速度を300mm/s、スプレーガンの角度を90°に設定する。
3)修復後の軸箱体を溶体化熱処理し、処理温度は455℃であり、保温時間は35minであり、60℃で冷却する。
【0081】
本実施例で製造されたアルミニウム合金粉末の電子顕微鏡の微細形態図を図2に示す。
【0082】
本実施例の方法により製造されたアルミニウム合金粉末は、希土類元素の添加により、結晶粒微細化強化の作用を果たし、粒度を微細化し、結晶粒の成長を抑制し、粉末粒子の機械的強度を向上させるとともに、TiC硬質相の析出により粉末粒子の強度をさらに向上させる。
【0083】
本実施例は、合理的なコールドスプレーのプロセスパラメータを組み合わせることにより修復コーティングを製造し、修復された軸箱体に対して溶体化熱処理による強化を行い、最後に規格GB/T 6396-2008に従って接合強度を測定し、その結果、コーティングの接合強度が126MPaに達し、気孔率が0.2%未満である。
【0084】
実施例2
本実施例は、アルミニウム合金粉末を提供し、その製造方法は以下の通りである。
1)重量百分率で、2.2%の純Mg粉、6.5%の純Zn粉、1.5%のNd粉、1.0%の黒鉛粉、0.15%のZr粉、2.0%のCu粉、0.03%のTi粉、0.05%のSr粉を採取し、残部をAl粉とし、真空融解炉に入れ、十分に融解させた後、800℃でアルゴンガスアトマイズ法による製粉を行い、冷却した後、収集する。
2)篩網を用いて粉末を篩い分け、粒径が15~55μmのアルミニウム合金粉末を得る。
【0085】
本実施例は、更に、アルミニウム合金の高圧コールドスプレーコーティングの接合強度を向上させる方法を提供し、当該方法では、
1)本実施例で製造されたアルミニウム合金粉末を真空オーブンに入れて乾燥し、時間は1hであり、乾燥温度は60℃である。
2)軸箱体の修復しようとする表面の腐食層を除去し、乾燥状態を保ち、その後、サンドブラスト処理を行い、サンドブラスト処理後の表面粗さRaは5.8μmである。
ステップ1)で乾燥されたアルミニウム合金粉末を用いて高圧コールドスプレーを行い、高圧コールドスプレーの空気の圧力を5.5MPa、スプレーガンの温度を500℃、スプレーガンの速度を300mm/s、スプレーガンの角度を70°に設定する。
3)修復後の軸箱体を溶体化熱処理し、処理温度は460℃であり、保温時間は40minであり、65℃で冷却する。
【0086】
本実施例の方法により製造されたアルミニウム合金粉末は、希土類元素の添加により、結晶粒微細化強化の作用を果たし、粒度を微細化し、結晶粒の成長を抑制し、TiC強化相が生成して粉末粒子の機械的強度をさらに向上させる。
【0087】
本実施例で製造された、コールドスプレーによる修復コーティングの内部構造の電子顕微鏡の微細形態図を図3に示す。
【0088】
本実施例は、合理的なコールドスプレーのプロセスパラメータを組み合わせることにより修復コーティングを製造し、規格GB/T 6396-2008に従って接合強度を測定した結果、コーティングの接合強度が130MPaに達し、気孔率が0.2%未満である。
【0089】
実施例3
本実施例は、アルミニウム合金粉末を提供し、その製造方法は以下の通りである。
1)重量百分率で、2.2%の純Mg粉、6.5%の純Zn粉、2.5%のNd粉、1.0%の黒鉛粉、0.15%のZr粉、2.0%のCu粉、0.03%のTi粉、0.06%のSr粉を採取し、残部をAl粉とし、真空融解炉に入れ、十分に融解させた後、800℃でアルゴンガスアトマイズ法による製粉を行い、冷却した後、収集する。
2)篩網を用いて粉末を篩い分け、粒径が15~55μmのアルミニウム合金粉末を得る。
【0090】
本実施例は、更に、アルミニウム合金の高圧コールドスプレーコーティングの接合強度を向上させる方法を提供し、当該方法では、
1)本実施例で製造されたアルミニウム合金粉末を真空オーブンに入れて乾燥し、時間は1hであり、乾燥温度は60℃である。
2)軸箱体の修復しようとする表面の腐食層を除去し、乾燥状態を保ち、その後、サンドブラスト処理を行い、サンドブラスト処理後の表面粗さRaは5.8μmである。
ステップ1)で乾燥されたアルミニウム合金粉末を用いて高圧コールドスプレーを行い、高圧コールドスプレーの空気の圧力を5.5MPa、スプレーガンの温度を500℃、スプレーガンの速度を300mm/s、スプレーガンの角度を90°に設定した。
3)修復後の軸箱体を溶体化熱処理し、処理温度は460℃であり、保温時間は40minであり、65℃で冷却する。
【0091】
本実施例の方法により製造されたアルミニウム合金粉末は、希土類元素の添加により、結晶粒微細化強化の作用を果たし、粒度を微細化し、結晶粒の成長を抑制し、TiC強化相が生成して粉末粒子の機械的強度をさらに向上させる。
【0092】
本実施例は、合理的なコールドスプレーのプロセスパラメータを組み合わせることにより修復コーティングを製造し、規格GB/T 6396-2008に従って接合強度を測定した結果、コーティングの接合強度が135MPaに達し、気孔率が0.2%未満である。
【0093】
実施例4
本実施例は、アルミニウム合金粉末を提供し、その製造方法は以下の通りである。
1)重量百分率で、2.2%の純Mg粉、6.5%の純Zn粉、1.2%のNd粉、1.0%の黒鉛粉、0.15%のZr粉、2.0%のCu粉、0.03%のTi粉、0.02%のSr粉を採取し、残部をAl粉とし、真空融解炉に入れ、十分に融解させた後、800℃でアルゴンガスアトマイズ法による製粉を行い、冷却した後、収集する。
2)篩網を用いて粉末を篩い分け、粒径が15~55μmのアルミニウム合金粉末を得る。
【0094】
本実施例は、更に、アルミニウム合金の高圧コールドスプレーコーティングの接合強度を向上させる方法を提供し、当該方法では、
1)本実施例で製造されたアルミニウム合金粉末を真空オーブンに入れて乾燥し、時間は1hであり、乾燥温度は60℃である。
2)軸箱体の修復しようとする表面の腐食層を除去し、乾燥状態を保ち、その後、サンドブラスト処理を行い、サンドブラスト処理後の表面粗さRaは5.8μmである。
ステップ1)で乾燥されたアルミニウム合金粉末を用いて高圧コールドスプレーを行い、高圧コールドスプレーの空気の圧力を5.5MPa、スプレーガンの温度を500℃、スプレーガンの速度を300mm/s、スプレーガンの角度を90°に設定する。
3)修復後の軸箱体を溶体化熱処理し、処理温度は460℃であり、保温時間は40minであり、65℃で冷却する。
【0095】
本実施例の方法により製造されたアルミニウム合金粉末は、希土類元素の添加により、結晶粒微細化強化の作用を果たし、粒度を微細化し、結晶粒の成長を抑制し、TiC強化相が生成して粉末粒子の機械的強度をさらに向上させる。
【0096】
本実施例は、合理的なコールドスプレーのプロセスパラメータを組み合わせることにより修復コーティングを製造し、規格GB/T 6396-2008に従って接合強度を測定した結果、コーティング層の接合強度が125MPaに達し、気孔率が0.2%未満である。
【0097】
比較例1
本比較例は、アルミニウム合金粉末を提供し、その製造方法は以下の通りである。
1)重量百分率で、2.2%の純Mg粉、6.5%の純Zn粉、1.0%の黒鉛粉、0.15%のZr粉、2.0%のCu粉、0.03%のTi粉を採取し、残部をAl粉とし、真空融解炉に入れ、十分に融解させた後、800℃でアルゴンガスアトマイズ法による製粉を行い、冷却した後、収集する。
2)篩網を用いて粉末を篩い分け、粒径が15~55μmのアルミニウム合金粉末を得る。
【0098】
本比較例は、更に、アルミニウム合金の高圧コールドスプレーコーティングの接合強度を向上させる方法を提供し、当該方法では、
1)本比較例で製造されたアルミニウム合金粉末を真空オーブンに入れて乾燥し、時間は1hであり、乾燥温度は60℃である。
2)軸箱体の修復しようとする表面の腐食層を除去し、乾燥状態を保ち、その後、サンドブラスト処理を行い、サンドブラスト処理後の表面粗さRaは5.8μmである。
ステップ1)で乾燥されたアルミニウム合金粉末を用いて高圧コールドスプレーを行い、高圧コールドスプレーのガスの圧力を3.5MPa、スプレーガンの温度を500℃、スプレーガンの速度を300mm/s、スプレーガンの角度を70°に設定した。
【0099】
本比較例で製造された、コールドスプレーによる修復コーティングの電子顕微鏡の微細形態図を図4に示す。
【0100】
比較例で製造されたアルミニウム合金粉末は、希土類元素の添加がなく、粉末粒子が十分に強化されておらず、硬質相が生成していなく、基体の強度にマッチングしにくいため、基体の界面で大量のアンカー効果とピンニング効果を形成することができず、且つ用いられるスプレーガスのガス圧力が低いため、コーティング内部にも十分な圧縮応力が発生せず、さらに、スプレー後に溶体化熱処理を行っていないため、気孔率が高く、規格GB/T 6396-2008に従って接合強度を測定した結果、コーティングの接合強度が48MPaにすぎず、気孔率が0.8%である。
【0101】
比較例2
本比較例は、アルミニウム合金の高圧コールドスプレーコーティングの接合強度を向上させる方法を提供し、当該方法では、
1)実施例2で製造されたアルミニウム合金粉末を真空オーブンに入れて乾燥し、時間は1hであり、乾燥温度は70℃である。
2)軸箱体の修復しようとする表面の腐食層を除去し、乾燥状態を保ち、その後、サンドブラスト処理を行い、サンドブラスト処理後の表面粗さRaは5.8μmである。
ステップ1)で乾燥されたアルミニウム合金粉末を用いて高圧コールドスプレーを行い、高圧コールドスプレーのガスの圧力を3.5MPa、スプレーガンの温度を500℃、スプレーガンの速度を300mm/s、スプレーガンの角度を70°に設定する。
3)修復後の軸箱体を熱処理し、溶体化処理温度は460℃であり、保温時間は40minであり、65℃で冷却する。
【0102】
本比較例で用いられたスプレーガスのガス圧力が低く、粉末粒子に対する加速効果が制限され、粒子の塑性変形の程度が通常であり、コーティング内部に十分な圧縮応力が発生していないため、気孔率が高く、規格GB/T 6396-2008に従って接合強度を測定した結果、コーティング層の接合強度が47MPaにすぎず、気孔率が1.2%である。
【0103】
比較例3
本比較例は、アルミニウム合金の高圧コールドスプレーコーティングの接合強度を向上させる方法を提供し、当該方法では、
1)実施例2で製造されたアルミニウム合金粉末を真空オーブンに入れて乾燥し、時間は1hであり、乾燥温度は70℃である。
2)軸箱体の修復しようとする表面の腐食層を除去し、乾燥状態を保ち、その後、サンドブラスト処理を行い、サンドブラスト処理後の表面粗さRaは5.8μmである。
ステップ1)で乾燥されたアルミニウム合金粉末を用いて高圧コールドスプレーを行い、高圧コールドスプレーのガスの圧力を5.5MPa、スプレーガンの温度を500℃、スプレーガンの速度を300mm/s、スプレーガンの角度を70°に設定する。
【0104】
本比較例で用いられたスプレーガスのガス圧力は高いが、スプレー後に溶体化による強化を行っていないため、内部欠陥をさらに解消し、界面元素の拡散を強化し、結合面を硬化することができず、規格GB/T 6396-2008に従って接合強度を測定した結果、コーティングの接合強度が89MPaであり、気孔率が0.8%である。
【0105】
比較例4
本比較例は、アルミニウム合金粉末を提供し、その製造方法は以下の通りである。
1)重量百分率で、2.3%の純Mg粉、5.3%の純Zn粉、0.9%のNd粉、0.9%の黒鉛粉、0.12%のZr粉、2.2%のCu粉、0.04%のTi粉、0.01%のSr粉を採取し、残部をAl粉とし、真空融解炉に入れ、十分に融解させた後、800℃でアルゴンガスアトマイズ法による製粉を行い、冷却した後、収集する。
2)篩網を用いて粉末を篩い分け、粒径が15~55μmのアルミニウム合金粉末を得る。
【0106】
本比較例で製造されたアルミニウム合金粉末を用いて、実施例1と同様の方法で軸箱体を修復する。本比較例で製造されたアルミニウム合金粉末は、Nd元素とSr元素の添加量が減少したため、粉末の硬化効果が影響され、規格GB/T 6396-2008に従って接合強度を測定した結果、コーティングの接合強度が103MPaであり、気孔率が0.3%である。
【0107】
比較例5
本比較例は、アルミニウム合金粉末を提供し、その製造方法は以下の通りである。
1)重量百分率で、2.3%の純Mg粉、5.3%の純Zn粉、3.0%のNd粉、0.9%の黒鉛粉、0.12%のZr粉、2.2%のCu粉、0.04%のTi粉、0.1%のSr粉を採取し、残部をAl粉とし、真空融解炉に入れ、十分に融解させた後、800℃でアルゴンガスアトマイズ法による製粉を行い、冷却した後、収集する。
2)篩網を用いて粉末を篩い分け、粒径が15~55μmのアルミニウム合金粉末を得る。
【0108】
本比較例で製造されたアルミニウム合金粉末を用いて、実施例1と同様の方法で軸箱体を修復する。本比較例で製造されたアルミニウム合金粉末は、Nd元素とSr元素の添加量が増加したため、粉末の混入を引き起こしやすく、気孔率が上昇し、コーティングの内部構造が緩く、規格GB/T 6396-2008に従って接合強度を測定した結果、コーティングの接合強度が92MPaであり、気孔率が0.7%である。
【0109】
なお、本願の実施例の説明において、「中心」、「縦」、「横」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」、「頂」、「底」、「内」、「外」等の用語が示す方位又は位置関係は、図面に示す方位又は位置関係に基づくものであり、本願の実施例の説明を便宜にし、そして、説明を簡単にするためのものに過ぎず、言及される装置又は素子が必ず特定の方位を有し、特定の方位で構成及び操作されることを表示又は暗示するものではないため、本願の実施例を限定するものと理解されるべきではない。また、「第1」、「第2」、「第3」といった用語は、目的を説明するためのものにすぎず、相対的な重要性を表示又は暗示するものと理解されるべきではない。
【0110】
なお、本願の実施例の説明において、特に明確な規定及び限定がない限り、「連続」、「接続」といった用語は広義に捉えられるべきであり、例えば、固定接続、取り外し可能な接続、又は一体的な接続であってもよく、機械的接続または電気的接続であってもよく、直接的な接続または中間媒体を介した間接的な接続であってもよい。当業者であれば、具体的な状況に応じて、本願の実施例における上記用語の具体的な意味を理解できる。
【0111】
本願の実施例では、特に明確な規定及び限定がない限り、第1の特徴が第2の特徴の「上」又は「下」にあることは、第1の特徴と第2の特徴が直接接触することを意味してもよく、第1の特徴と第2の特徴が中間媒体を介して間接的に接触することを意味してもよい。また、第1の特徴が第2の特徴の「上」、「上方」及び「上面」にあることは、第1の特徴が第2の特徴の真上又は斜め上にあることを意味してもよく、又は第1の特徴の水平高さが第2の特徴より高いことのみを意味する。第1の特徴が第2の特徴の「下」、「下方」及び「下面」にあることは、第1の特徴が第2の特徴の真下又は斜め下にあることを意味してもよく、又は第1の特徴の水平高さが第2の特徴より低いことのみを意味する。
【0112】
本明細書の説明において、「1つの実施例」、「いくつかの実施例」、「例」、「具体例」、又は「いくつかの例」などの参照用語の記述は、当該実施例又は例を組み合わせて説明した具体的な特徴、構造、材料又は特性が本願の実施例の少なくとも1つの実施例又は例に含まれることを意味する。本明細書において、上記用語の例示的な表現は、必ずしも同じ実施例又は例に対するものである必要はない。また、説明した具体的な特徴、構造、材料又は特性は、いずれか1つ又は複数の実施例又は例に適切な方式で組み合わせることができる。また、相互に矛盾しない限り、当業者は、本明細書に記載の異なる実施例又は例、及び異なる実施例又は例の特徴、を結合もしくは組み合わせることができる。
【0113】
上記において、一般的な説明及び具体的な実施形態で本願を詳しく説明したが、本願に基づき、いくつかの補正や改善を行い得ることは、当業者にとって明らかである。
なお、上記の実施例は、本発明の技術案を説明するためのものにすぎず、本発明の技術案を限定するためのものではない。前記の実施例を参照して本願を詳しく説明したが、当業者は、前述の実施例に記載された技術案を補正し、もしくは、その中の技術的特徴の一部を等価置換することが依然としてできることを理解すべきである。これらの補正または置換は、相応の技術案の趣旨を本発明の各実施例の技術案の範囲から逸脱させるものではない。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-12-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸箱体の取り付け面の損傷位置における腐食ピットの寸法の測定結果を取得して、前記損傷位置の欠陥領域を確定し、除去加工処理によって前記欠陥領域の腐食層を除去するステップと、
前記欠陥領域を分類し、各前記欠陥領域の種類に基づいて、前記欠陥領域に対してそれぞれ相応のスプレー処理を行い、相応の修復領域を得るステップと、
各前記修復領域に対して除去再製造を行い、前記取り付け面の寸法を回復させるステップと
を含む、軸箱体の取り付け面の損傷を修復する方法。
【請求項2】
前記の軸箱体の取り付け面の損傷位置における腐食ピットの寸法の測定結果を取得して、前記損傷位置の欠陥領域を確定し、除去加工処理によって前記欠陥領域の腐食層を除去するステップは、
前記腐食ピットの位置に基づいて、前記損傷位置の各欠陥領域をそれぞれ確定するステップであって、前記欠陥領域ごとに、少なくとも1つの前記腐食ピットが含まれるステップと、
同一の前記欠陥領域内の前記腐食ピットの最大深さ及び相応の前記欠陥領域の面積を取得して、機械加工の処理範囲を確定するステップと、
各前記機械加工の処理範囲内において、前記除去加工処理によって、各前記欠陥領域の腐食層をそれぞれ除去するステップと
をさらに含む、請求項1に記載の軸箱体の取り付け面の損傷を修復する方法。
【請求項3】
前記の同一の前記欠陥領域内の前記腐食ピットの最大深さ及び相応の前記欠陥領域の面積を取得して、機械加工の処理範囲を確定するステップは、
同一の前記欠陥領域で複数の前記腐食ピットを選別し、深さ測定器により選別した各前記腐食ピットの深さをそれぞれ測定し、比較により前記腐食ピットの最大深さを取得するステップと、
前記欠陥領域の面積を計測するステップと、
前記腐食ピットの最大深さと前記欠陥領域の面積に基づいて、前記機械加工の処理範囲を確定するステップと
をさらに含み、
ここで、前記機械加工の処理範囲の面積が、前記欠陥領域の面積よりも大きく、且つ前記機械加工の処理範囲の深さが、前記腐食ピットの最大深さ以上である、請求項2に記載の軸箱体の取り付け面の損傷を修復する方法。
【請求項4】
前記の各前記機械加工の処理範囲内において、前記除去加工処理によって、各前記欠陥領域の腐食層をそれぞれ除去するステップの後に、
前記除去加工処理後の前記欠陥領域に対してフィレット遷移処理を行うステップをさらに含み、
ここで、前記フィレット遷移処理後の前記欠陥領域のフィレットとベース面との夾角が30°以下である、請求項2に記載の軸箱体の取り付け面の損傷を修復する方法。
【請求項5】
前記の欠陥領域を分類し、各前記欠陥領域の種類に基づいて、前記欠陥領域に対してそれぞれ相応のスプレー処理を行い、相応の修復領域を得るステップは、
前記欠陥領域内の各前記腐食ピットの長さ及び幅を取得するステップと、
各前記腐食ピットの長さ及び幅に基づいて、前記欠陥領域を分類して、前記欠陥領域の種類を確定するステップであって、ここで、前記欠陥領域の種類が、点状欠陥、線状欠陥及び面状欠陥を含むステップと、
前記点状欠陥に対して、前記欠陥領域の中心部に垂直するようにスプレーガンを駆動してスプレーするステップと、
前記線状欠陥に対して、前記欠陥領域の長手方向に沿って進行し、且つ進行経路が幅方向に変化しないように前記スプレーガンを駆動し、さらに、前記腐食ピットの最大深さに基づいて前記スプレーガンの往復回数を確定するステップと、
前記面状欠陥に対して、前記欠陥領域の長手方向及び幅方向に沿ってそれぞれ進行するように前記スプレーガンを駆動し、さらに、前記腐食ピットの最大深さに基づいて前記スプレーガンの往復回数を確定するステップと
をさらにを含む、請求項2に記載の軸箱体の取り付け面の損傷を修復する方法。
【請求項6】
前記点状欠陥は、前記腐食ピットの長さ及び幅がいずれも5mm未満であり、前記線状欠陥は、前記腐食ピットの長さが5mm以上、かつ幅が5mm以下であり、前記点状欠陥及び前記線状欠陥を除く残りの欠陥がいずれも前記面状欠陥である、請求項5に記載の軸箱体の取り付け面の損傷を修復する方法。
【請求項7】
前記の軸箱体の取り付け面の損傷位置における腐食ピットの寸法の測定結果を取得して、前記損傷位置の欠陥領域を確定し、除去加工処理によって前記欠陥領域の腐食層を除去するステップの前に、
前記取り付け面の損傷位置をレーザー洗浄するステップと、
洗浄後の前記損傷位置を表面洗浄して、前記損傷位置の腐食ピットを露出させるステップと
をさらに含む、請求項1に記載の軸箱体の取り付け面の損傷を修復する方法。
【請求項8】
前記の前記取り付け面の損傷位置をレーザー洗浄し、洗浄後の前記損傷位置を表面洗浄して、前記損傷位置の腐食ピットを露出させるステップは、
レーザー洗浄システムにより前記取り付け面の損傷位置をレーザー洗浄するステップであって、ここで、前記レーザー洗浄システムのレーザーパワーが50W~120Wであり、洗浄時間が2min~5minであるステップと、
高圧エアガンにより洗浄後の前記損傷位置を表面洗浄して、前記損傷位置の腐食ピットを露出させるステップと
をさらに含む、請求項7に記載の軸箱体の取り付け面の損傷を修復する方法。
【請求項9】
前記の前記欠陥領域を分類し、各前記欠陥領域の種類に基づいて、前記欠陥領域に対してそれぞれ相応のスプレー処理を行い、相応の修復領域を得るステップの前に、
除去加工処理後の前記欠陥領域内の全ての孔状部位をプラグで塞ぐステップと、
除去加工処理後の前記欠陥領域をサンドブラスト処理するステップと、
サンドブラスト処理後の前記欠陥領域を予熱スプレーするステップと
をさらに含む、請求項1に記載の軸箱体の取り付け面の損傷を修復する方法。
【請求項10】
サンドブラスト処理後の前記欠陥領域の表面粗さRaが5.0μm~7.6μmである、請求項9に記載の軸箱体の取り付け面の損傷を修復する方法。
【請求項11】
前記予熱スプレーのプロセスパラメータが、
予熱スプレーにアルミニウム合金粉末を用い、前記粉末の粒度が10μm~60μmであり、前記粉末の乾燥温度が70±5℃であり、前記予熱スプレーの時間が40min~60minであり、
前記予熱スプレーに用いられるスプレーガスが99.99%窒素ガスであり、
前記スプレーガスのガス圧力が3.5MPa~5.5MPaであり、
前記予熱スプレーのスプレー距離が5mm~20mmであり、
前記予熱スプレーのスプレーガンとスプレー面との角度が60°以上である
ことを含む、請求項9に記載の軸箱体の取り付け面の損傷を修復する方法。
【請求項12】
軸箱体の取り付け面の損傷位置における腐食ピットの寸法の測定結果を取得するための寸法測定システムと、
前記腐食ピットの寸法の測定結果に基づいて、前記損傷位置の欠陥領域を確定し、除去加工処理によって前記欠陥領域の腐食層を除去するための除去加工処理システムと、
前記欠陥領域を分類し、各前記欠陥領域の種類に基づいて、前記欠陥領域に対してそれぞれ相応のスプレー処理を行い、相応の修復領域を得るためのスプレーシステムと、
各前記修復領域に対して除去再製造を行い、前記取り付け面の寸法を回復させるための除去再製造システムと
を含む、請求項1に記載の軸箱体の取り付け面の損傷を修復する方法を実行可能な、軸箱体の取り付け面の損傷を修復する装置。
【請求項13】
重量百分率で、3.2~7.8%のZn、2.0~2.7%のMg、1.5~2.9%のCu、0.02~0.06%のTi、0.3~1.5%のC、0.05~0.20%のZr、1.0%~2.8%のNd、0.01~0.08%のSrを含み、残部がAlである、請求項11に記載の軸箱体の取り付け面の損傷を修復する方法に用いられる、アルミニウム合金粉末。
【請求項14】
前記アルミニウム合金粉末が、重量百分率で、1.2~2.5%のNd、及び/又は、0.02~0.06%のSrを含み、
任意に、前記アルミニウム合金粉末が、重量百分率で、2.2~2.3%のMg、5.3~6.5%のZn、1.2~2.5%のNd、0.9~1.0%のC、0.12~0.15%のZr、2.0~2.2%のCu、0.03~0.04%のTi、0.02~0.06%のSrを含み、残部がAlである、請求項13に記載のアルミニウム合金粉末。
【請求項15】
1)元素配合比で材料を配合することと、
2)原料を加熱溶融し、アトマイズによる製粉を行うことと、
3)製造された粉末を乾燥処理し、篩い分け、アルミニウム合金粉末を得ることと
を含む、請求項13に記載のアルミニウム合金粉末の製造方法。
【請求項16】
前記アトマイズによる製粉に、アルゴンガスアトマイズ法が採用される、請求項15に記載のアルミニウム合金粉末の製造方法。
【請求項17】
請求項15に記載の方法により製造されたアルミニウム合金粉末。
【請求項18】
請求項13に記載のアルミニウム合金粉末のアルミニウム合金材料の修復における使用。
【請求項19】
1)修復しようとする領域をサンドブラスト処理することと、
2)請求項13に記載のアルミニウム合金粉末を用いて、高圧コールドスプレーを行うことと、
3)スプレーによる修復が完了したワークを溶体化処理することと
を含む、アルミニウム合金の高圧コールドスプレーコーティングの接合強度を向上させる方法。
【請求項20】
サンドブラスト処理後のワークの表面粗さRaが5.0~7.6μmに達し、任意に、Raが5.8~7.6μmである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記高圧コールドスプレーの温度が350~500℃であり、ガス圧力が4.5~5.5MPaであり、及び/又は、前記溶体化処理の温度が400~500℃であり、溶体化時間が30min~60minである、請求項19に記載の方法。
【国際調査報告】