(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-10-24
(54)【発明の名称】混合セメント、その製造方法及び混合セメントの性能を高めるための混和材料の使用
(51)【国際特許分類】
C04B 7/24 20060101AFI20251017BHJP
C04B 7/13 20060101ALI20251017BHJP
C04B 7/19 20060101ALI20251017BHJP
C04B 7/26 20060101ALI20251017BHJP
C04B 28/02 20060101ALI20251017BHJP
C04B 24/02 20060101ALI20251017BHJP
C04B 24/12 20060101ALI20251017BHJP
【FI】
C04B7/24
C04B7/13
C04B7/19
C04B7/26
C04B28/02
C04B24/02
C04B24/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2025515342
(86)(22)【出願日】2023-10-25
(85)【翻訳文提出日】2025-03-12
(86)【国際出願番号】 EP2023079767
(87)【国際公開番号】W WO2024094517
(87)【国際公開日】2024-05-10
(32)【優先日】2022-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506416400
【氏名又は名称】シーカ テクノロジー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】アナ アレナス
(72)【発明者】
【氏名】ホセ マヌエル フェルナンデス
(72)【発明者】
【氏名】クリスティナ バルベルデ
(72)【発明者】
【氏名】ラミロ ガルシア
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112PB15
4G112PB20
4G112PC12
(57)【要約】
本発明は、混合セメントを製造する方法であって、ポルトランドクリンカー及びセメント質廃棄物を、アルカノールアミン、グリコール、グリセロール、炭水化物、塩化物又はそれらの混合物から選択される粉砕助剤の存在下で共粉砕するステップを含む方法に関する。本発明は、このような方法で得ることができる混合セメントにも関する。最後に、本発明は、ポルトランドクリンカーと、セメント質廃棄物から回収された補助セメント質材料とを含む混合セメントの硬化後の性能を高めるための、アルカノールアミン、グリコール及び/又はグリセロールから選択される混和材料10の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合セメントを製造する方法であって、
(1)ポルトランドクリンカーを提供するステップと、
(2)セメント質廃棄物を提供するステップと、
(3)アルカノールアミン、グリコール、グリセロール、炭水化物、塩化物又はそれらの混合物から選択される粉砕助剤を提供するステップと、
(4)前記ポルトランドクリンカー及びセメント質廃棄物を前記粉砕助剤の存在下で共粉砕するステップと
を含む方法。
【請求項2】
ポルトランドクリンカーのセメント質廃棄物に対する重量比は、1:1~10:1、好ましくは2:1~6:1、特に2.5:1~5:1であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
さらに、石膏、ポゾラン及び/又は潜在水硬性材料が粉砕中に存在し、前記ポゾラン及び/又は前記潜在水硬性材料は、前記セメント質廃棄物と異なることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記粉砕助剤は、前記組み合わされたポルトランドクリンカー、セメント質廃棄物並びに存在する場合には石膏、ポゾラン及び潜在水硬性材料の全乾燥重量に対して40~2500ppm、好ましくは100~1500ppm、特に800~1200ppmの量で存在することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
粉砕助剤は、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジエタノールイソプロパノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチルジグリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキシレングリコール、グリセロール、炭水化物、塩化ナトリウム、塩化カルシウム又はそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
粒子のサイズ分離のステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の方法で得ることができる混合セメント。
【請求項8】
前記混合セメントが、特に記載がない限り、前記混合セメントの全乾燥重量に対して
a)60~90重量%、好ましくは70~80重量%のポルトランドクリンカーと、
b)5~35重量%、好ましくは15~25重量%のセメント質廃棄物と、
c)任意選択的に、1~10重量%、好ましくは5重量%の石膏と、
d)前記組み合わされたポルトランドクリンカー、セメント質廃棄物及び存在する場合には石膏の全乾燥重量に対して40~2500ppm、好ましくは100~1500ppm、特に800~1200ppmの、アルカノールアミン、グリコール、グリセロール、炭水化物、塩化物又はそれらの混合物から選択される粉砕助剤と
を含むことを特徴とする、請求項7に記載の混合セメント。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の混合セメントを含む建築材料、特にコンクリート又はモルタル。
【請求項10】
硬化中の混合セメント又は混合セメントを含む建築材料の収縮を減少させるための、アルカノールアミン、グリコール及び/又はグリセロールから選択される混和材料の使用であって、前記混合セメントは、ポルトランドセメントと、セメント質廃棄物から回収された補助セメント質材料とを含む、使用。
【請求項11】
硬化後の混合セメント又は混合セメントを含む建築材料の圧縮強度を増加させるための、アルカノールアミン、グリコール及び/又はグリセロールから選択される混和材料の使用であって、前記混合セメントは、ポルトランドセメントと、セメント質廃棄物から回収された補助セメント質材料とを含む、使用。
【請求項12】
前記混和材料は、ポルトランドクリンカー及び/又は前記補助セメント質材料にその粉砕前又は粉砕中に加えられることを特徴とする、請求項10又は11に記載の使用。
【請求項13】
セメント質廃棄物の粉砕の効率を改善するための、アルカノールアミン、グリコール、グリセロール、炭水化物、塩化物又はそれらの混合物から選択される粉砕助剤の使用であって、前記粉砕は、前記セメント質廃棄物の炭酸化なしに行われる、使用。
【請求項14】
前記混和材料又は粉砕助剤は、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジエタノールイソプロパノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチルジグリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキシレングリコール、グリセロール、炭水化物、塩化ナトリウム、塩化カルシウム又はそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項10~13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
前記粉砕助剤は、前記セメント質廃棄物の乾燥重量に対して100~1500ppm、好ましくは250~1200ppm、特に400ppm又は1000ppmの量で使用されることを特徴とする、請求項13又は14に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合セメントの分野に関する。より詳細には、本発明は、混合セメントを製造する方法及びそのような方法に有用な粉砕助剤に関する。本発明は、セメント質廃棄物、特に建造物の解体からの廃棄コンクリート及びモルタルの再利用の分野にも関する。
【背景技術】
【0002】
長年にわたり、建設業では、セメント、特に普通ポルトランドセメント(OPC)が使用されており、使用が続けられている。しかし、特に、OPCの使用は、高い環境フットプリントを有する。主な理由の1つは、セメントの製造に関連する高CO2放出である。したがって、建築材料からの結合材としてのOPCの少なくとも一部を置き換えようとする多くの努力が行われている。
【0003】
可能性の1つは、OPCを少なくとも部分的に置き換えるためのいわゆる補助セメント質材料(SCM)の使用である。OPC及びSCMを含むセメントは、混合セメント又は複合セメントとも呼ばれる。長年にわたって知られているSCMとしては、製鋼スラグ、焼成粘土、火山灰などの天然ポゾラン、シリカフューム又はフライアッシュが挙げられる。
【0004】
例えば、国際公開第2018/228839号パンフレットは、任意選択的にアルカノールアミン粉砕助剤の存在下でポルトランドクリンカー及び潜在水硬性材料をともに粉砕し、粉砕した材料を無機フィラーと組み合わせることによって得ることができる複合セメントを開示している。
【0005】
例えば、解体廃棄物の形態の硬化コンクリートを処理して、骨材と、SCMとして適切な鉱物粉末とを回収できることも知られている。適切なプロセスの1つは、例えば、国際公開第2021/170501号パンフレット(Sika Technology AG)に開示されている。
【0006】
解体廃棄物からのSCMの回収及びポルトランドセメントと置き換えるためのその使用は、建築材料の分野における循環経済に対する重要なステップとなる。
【0007】
SCMとして有用な鉱物粉末の回収のための廃棄建築材料の処理における重要なステップの1つは、粉砕ステップである。特に望ましいものは、粉砕効率を改善でき、同時に改善された性質を有するSCMを得ることができる方法及び化学物質である。特に望ましくは、このような方法及び化学物質は、ポルトランドクリンカーと、セメント質廃棄物、特に廃棄建築材料との共粉砕に使用され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以下の目的の1つ以上を解決する。
【0009】
(i)混合セメントを製造する方法であって、前記混合セメントは、ある含有量のポルトランドセメントと、セメント質廃棄物から得られるある含有量のSCMとを有する、方法を提供する。
【0010】
(ii)ある含有量のポルトランドセメントと、セメント質廃棄物から得られるある含有量のSCMとを有する混合セメントを提供する。
【0011】
(iii)ある含有量のポルトランドセメントと、セメント質廃棄物から得られるある含有量のSCMとを有する混合セメントの性能を改善する方法を提供する。特に、このような混合セメント及びこのような混合セメントを含む建築材料の圧縮強度及び/又は収縮挙動を改善する。
【0012】
(iv)セメント質廃棄物の粉砕効率を改善する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
驚くべきことに、幾つかの目的は、請求項1に記載の方法によって解決され得ることが分かった。
【0014】
同様に驚くべきことに、アルカノールアミン、グリコール、グリセロール、炭水化物、塩化物又はそれらの混合物から選択される適切な粉砕助剤の目標とする使用により、幾つかの目的が解決され得ることが分かった。
【0015】
したがって、驚くべきことに、ポルトランドセメントと、セメント質廃棄物から得られるSCMとを含む有利な混合セメントは、アルカノールアミン、グリコール、グリセロール、炭水化物、塩化物又はそれらの混合物から選択される粉砕助剤の存在下でポルトランドクリンカー及びセメント質廃棄物を共粉砕するステップを含む方法で得ることができる。
【0016】
本発明の利点としては、セメント質廃棄物、特に建築解体廃棄物から得られるSCMのより良好な活性化、ポルトランドセメントと、セメント質廃棄物から得られるSCMとを含む混合セメントのより高い性能、セメント質廃棄物を使用することによる廃棄物の減少、混合セメントとセメント質廃棄物との粉砕効率の改善が挙げられる。
【0017】
本発明のさらなる態様は、独立請求項の主題である。好ましい実施形態は、従属請求項の主題である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
第1の態様では、本発明は、混合セメントを製造する方法であって、
(1)ポルトランドクリンカーを提供するステップと、
(2)セメント質廃棄物を提供するステップと、
(3)アルカノールアミン、グリコール、グリセロール、炭水化物、塩化物又はそれらの混合物から選択される粉砕助剤を提供するステップと、
(4)ポルトランドクリンカー及びセメント質廃棄物を前記粉砕助剤の存在下で共粉砕するステップと
を含む方法に関する。
【0019】
これに関連して、「混合セメント」及び「複合セメント」という用語は、同義で使用される。両方の用語は、少なくとも1つの水硬性材料と、少なくとも1つのさらなる材料との混合物を含むセメントに関連し、前記さらなる材料は、別の水硬性材料、ポゾラン、潜在水硬性材料、非水硬性材料又はフィラーであり得る。
【0020】
水硬性材料又は水硬性結合材は、水硬性反応で水と反応して固体水和物相を形成する材料である。水硬性材料は、特にセメント、好ましくはポルトランドセメントである。特に、ポゾラン及び潜在水硬性材料は、規格EN 206-1に準拠した潜在水硬性及び/又はポゾラン特性を有するタイプIIコンクリート添加剤である。典型的なポゾランは、火山灰、軽石、燃焼オイルシェール、粘土、焼成粘土、もみ殻灰、マイクロシリカ、シリカフューム及びフライアッシュである。典型的な潜在水硬性材料は、スラグ、特に粉砕された粒状高炉スラグ及び塩基性酸素炉スラグである。
【0021】
これに関連して、ポルトランドクリンカーは、高温においてセメントキルン中で石灰石及びアルミノシリケート材料から得られる焼結生成物である。「クリンカー」という用語は、未粉砕材料を意味し、典型的には塊又は団塊として得られる。これに関連して使用されるポルトランドクリンカーは、任意の種類のポルトランドクリンカーであり得る。ポルトランドクリンカーの典型的な相組成は、45~80重量%のC3S、1~40重量%のC2S、0~15重量%のC3A及び0~20重量%のC4AF(ここで、「C」は、CaOを表し、「S」は、SiO2を表し、「A」は、Al2O3を表し、「Fは、Fe2O3を表す)である。ポルトランドクリンカーの典型的な化学組成は、55~75重量%のCaO、15~25重量%のSiO2、2~6重量%のAl2O3、0~6重量%のFe2O3、0~2重量%のMgO及び0~2重量%のSO3である。
【0022】
これに関連して、「セメント」という用語は、粉砕された材料を意味する。したがって、例えば、ポルトランドセメントは、ポルトランドクリンカーを粉砕して得られるセメントである。ポルトランドセメントのBlaine粉末度は、2500cm2/g~12000cm2/g、好ましくは3000cm2/g~9000cm2/g、特に3500cm2/g~8000cm2/gの範囲であり得る。Blaine粉末度は、DINEN 196-6:2018に準拠して測定され得る。
【0023】
これに関連して、「セメント質廃棄物」という用語は、その意図する目的のために使用することができないか又はその寿命の終了に到達している任意のセメント質材料を意味する。これに関連して、セメント質材料は、少なくとも1つの水硬性結合材、特に少なくとも1つのセメントを含む材料である。この水硬性結合材は、未硬化状態であり得るか、又は部分的若しくは完全に硬化され得る。ある実施形態によると、セメント質廃棄物は、少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも20重量%の少なくとも1つの水硬性結合材、特にセメントを未硬化、部分硬化又は完全硬化状態で含む。特に、セメント質廃棄物は、廃棄建築材料である。廃棄建築材料は、例えば、過剰な材料、規格外の材料、返却された材料又は解体廃棄物である。特に、セメント質廃棄物は、解体廃棄物である。実施形態によると、セメント質廃棄物は、骨材と少なくとも1つの水硬性結合材とを含むが、他の点について、その組成は、限定されない。特に好ましいセメント質廃棄物は、コンクリート、特に過剰のコンクリート、規格外のコンクリート又は解体で得られたコンクリートである。
【0024】
セメント質廃棄物は、異なる材料の混合物であり得る。例えば、セメント質廃棄物は、コンクリート又はモルタル、コンクリートと、石膏をベースとする材料との混合物、コンクリートとプラスターとの混合物、れんがとモルタルとの混合物、れんがと、モルタルと、プラスターとの混合物などであり得る。金属繊維、特に鋼繊維、ポリマー繊維及び/又はガラスがセメント質廃棄物中に含まれ得る。特に、セメント質廃棄物は、未硬化、部分硬化又は完全硬化セメント、骨材及びフィラーを含む。しかしながら、セメント質廃棄物は、金属又は木材の大きい断片を含まないことが好ましい。
【0025】
セメント質廃棄物は、本発明の方法を行う前に前処理され得る。前処理は、特にセメント質廃棄物の破砕及び/又は材料による選別である。破砕が行われる場合、破砕された材料のサイズは、最も大きい骨材の粒度よりも大きいことが好ましい。別の前処理は、セメント質材料を金属、木材、プラスチック、紙及び/又はプラスターから分離するためのセメント質廃棄物の選別であり得る。選別は、例えば、磁石を用いて又は密度分離によって行われ得る。
【0026】
セメント質廃棄物がある程度のセラミック材料を含むことが有利であり得る。例えば、セメント質廃棄物は、最大で25重量%のセラミック材料、好ましくは1~5重量%のセラミック材料を含み得る。
【0027】
粉砕されたセメント質廃棄物は、典型的には、骨材及び補助セメント質材料を含む。補助セメント質材料は、特に元のセメント質材料の製造に使用され、硬化又は未硬化、好ましくは硬化され得る水硬性、ポゾラン性及び/又は潜在水硬性材料である。
【0028】
本発明の粉砕助剤は、アルカノールアミン、グリコール、グリセロール、炭水化物、塩化物又はそれらの混合物から選択される。本発明の粉砕助剤は、液体中、特に水中の溶液又は分散物として配合され得る。したがって、本発明の粉砕助剤は、アルカノールアミン、グリコール、グリセロール、炭水化物、塩化物又はそれらの混合物の、液体中、特に水中の溶液又は分散物の形態を取り得る。以下では、粉砕助剤の全ての使用量の範囲は、任意の液体、特に水を含まずに存在するアルカノールアミン、グリコール、グリセロール、炭水化物、塩化物又はそれらの混合物を意味する。
【0029】
アルカノールアミンは、好ましくは、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン(TEA)、ジエタノールイソプロパノールアミン(DEIPA)、エタノールジイソプロパノールアミン(EDIPA)、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン(TIPA)、N-メチルジイソプロパノールアミン(MDIPA)、N-メチルジエタノールアミン(MDEA)、テトラヒドロキシエチルエチレンジアミン(THEED)及びテトラヒドロキシイソプロピルエチレンジアミン(THIPD)並びに2つ以上のこれらのアルカノールアミンの混合物からなる群から選択される。特に好ましい実施形態によると、アルカノールアミンは、TEA、TIPA、DEIPA、MDEA又はそれらの混合物から選択される。
【0030】
実施形態によると、グリコールは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチルジグリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキシレングリコールからなる群から選択される。好ましくは、グリコールは、ジエチレングリコールである。
【0031】
本発明の炭水化物は、単糖又は二糖の群に属する。適切な炭水化物の例としては、グリセルアルデヒド、トレオース、エリトロース、キシロース、リキソース、リボース、アラビノース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、フルクトース、ソルボース、ラクトース、マルトース、スクロース、ラクツロース、トレハロース、セロビオース、キトビオース、イソマルトース、パラチノース、マンノビオース、ラフィノース及びキシロビオースが挙げられるが、これらに限定されない。炭水化物は、例えば、蒸留残渣、糖蜜の形態でも使用され得る。
【0032】
塩化物は、これに関連して、好ましくはアルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩化物である。特に、塩化物は、塩化ナトリウム又は塩化カルシウムである。
【0033】
特に好ましい粉砕助剤は、ジエチレングリコールとグリセロールとの混合物である。別の特に好ましい粉砕助剤は、トリイソプロパノールアミン(TIPA)とジエタノールイソプロパノールアミン(DEIPA)との混合物である。別の特に好ましい粉砕助剤は、アルカノールアミン、特にトリイソプロパノールアミン(TIPA)又はジエタノールイソプロパノールアミン(DEIPA)、炭水化物及び塩化物、特に塩化ナトリウム又は塩化カルシウムの混合物である。
【0034】
本発明の方法における共粉砕は、アトリションミル上で実施され得る。特に適切なアトリションミルは、半自生ミル及び圧縮グラインダーである。圧縮グラインダーは、これに関連して、粉砕される材料の層に対して圧縮力を作用させることができるグラインダーの一種である。好ましくは、圧縮力は、回転する円筒又はローターステーターによって作用させる。圧縮グラインダーは、例えば、クラッシャー又はローラーミルであり得る。好ましい実施形態によると、圧縮グラインダーは、垂直ローラーミル又は水平ローラーミルである。半自生ミルの例は、ボールミル又は撹拌ミルである。実施形態によると、本発明の方法では、粉砕は、ボールミル又は撹拌ミル中で行われる。
【0035】
粉砕は、バッチ式又は連続的に行われ得る。したがって、本発明の方法は、バッチプロセス又は連続プロセスであり得る。
【0036】
「共粉砕」という用語は、ポルトランドクリンカー及びセメント質廃棄物が粉砕助剤の存在下で粉砕されることを意味する。「粉砕」及び「摩砕」という用語は、これに関連して同義で使用され得る。
【0037】
本発明の共粉砕は、好ましくは、乾式プロセスである。これは、粉砕中に存在する水の量が固体材料の全重量に対して10重量%未満、好ましくは5重量%未満、特に2重量%未満であることを意味する。
【0038】
粉砕助剤は、ミル内のポルトランドクリンカー及びセメント質廃棄物の上に噴霧されることが好ましい。同様に、ミルに供給するコンベヤベルト上のポルトランドクリンカー及び/又はセメント質廃棄物に粉砕助剤を加えることもできる。これは、本発明の方法が連続プロセスである場合に特に好ましい。
【0039】
本発明の方法では、ポルトランドクリンカー及びセメント質廃棄物と異なるさらなる材料が共粉砕のステップ中に存在し得る。このようなさらなる材料は、好ましくは、石膏、ポゾラン及び/又は潜在水硬性材料から選択される。ポゾラン及び潜在水硬性材料は、前述の定義の通りである。実施形態によると、本発明の方法では、さらなる石膏、ポゾラン及び/又は潜在水硬性材料が粉砕中に存在し、これらのポゾラン及び/又は潜在水硬性材料は、セメント質廃棄物と異なる。
【0040】
ポルトランドクリンカーとセメント質廃棄物とは、共粉砕ステップにおいて、ある規定された重量比で存在することが好ましい。
【0041】
実施形態によると、本発明の方法では、ポルトランドクリンカーのセメント質廃棄物に対する重量比は、1:1~10:1、好ましくは2:1~6:1、特に2.5:1~5:1である。
【0042】
重量比がこれらの範囲外となる場合、得られる混合セメントの性質は、水と混合したとき及び/又は硬化後、特に加工性、収縮及び/又は圧縮強度が最適ではなくなる。例えば、セメント質廃棄物の比率が高すぎる場合、硬化後に得られる混合セメントの圧縮強度が低下し得る。
【0043】
実施形態によると、本発明の方法では、粉砕助剤は、組み合わされたポルトランドクリンカー、セメント質廃棄物並びに存在する場合には石膏、ポゾラン及び潜在水硬性材料の全乾燥重量に対して40~2500ppm、好ましくは100~1500ppm、特に800~1200ppmの量で存在する。この文脈全体を通して、「ppm」という用語は、「百万部当たりの部数」を意味する。
【0044】
本発明の方法は、粒子のサイズ分離のステップをさらに含み得る。
【0045】
実施形態によると、分離は、セメント質廃棄物から得られる清浄な骨材を、製造される混合セメントから分離するために、あらかじめ規定されたカットオフ粒度で行われる。骨材は、あらかじめ規定されたカットオフ粒度以上の粒度を有する。実施形態によると、分離は、濾過、ふるい分け、沈降、密度分離、例えばサイクロン中の風力選別及び/又は遠心分離によって行われる。
【0046】
このようなサイズ分離により、骨材と補助セメント質材料(SCM)との回収が行われ、次にこのSCMが混合セメントの一部となる。
【0047】
しかしながら、セメント質廃棄物を粉砕することで得られるSCMは、骨材も含み得る。
【0048】
本発明の混合セメントは、さらなる材料を含み得る。特に、このようなさらなる材料は、さらなるSCM及び/又はフィラーであり得る。適切なさらなる材料は、特に石膏、ポゾラン、潜在水硬性材料及び/又は石灰石微粉末である。さらなる材料、特に石膏、ポゾラン及び/又は潜在水硬性材料は、本発明の方法の共粉砕ステップ前又はその間に既に加えられ得る。これは、さらなる材料の硬度及び粉砕性がポルトランドクリンカー及びセメント質廃棄物と同様である場合に特に有用であり得る。しかしながら、さらなる材料、特に石灰石は、共粉砕ステップ後の乾燥粉末を混合する別のステップでも加えられ得る。これは、さらなる材料の硬度及び粉砕性がポルトランドクリンカー及びセメント質廃棄物と異なる場合に特に有用であり得る。
【0049】
したがって、実施形態によると、本発明の方法では、粉砕された混合物は、1つ以上の無機フィラー、好ましくは石灰石と組み合わされる。
【0050】
本発明の方法では、ポルトランドクリンカー及びセメント質廃棄物の共粉砕ステップで炭酸化が起こらないことが好ましい。これは、共粉砕ステップ中、ポルトランドクリンカー及びセメント質廃棄物がCO2と反応しないことを意味する。
【0051】
別の態様では、本発明は、前述の方法で得ることができる混合セメントに関する。
【0052】
以上で好ましいと記載される任意の特徴は、この態様にも適用される。
【0053】
好ましくは、混合セメントは、乾燥粉末の形態で存在する。混合セメントのBlaine粉末度は、2500cm2/g~12000cm2/g、好ましくは3000cm2/g~9000cm2/g、特に3500cm2/g~8000cm2/gの範囲であり得る。Blaine粉末度は、DIN EN 196-6:2018に準拠して測定され得る。
【0054】
実施形態によると、本発明の混合セメントは、(特に記載がない限り、混合セメントの全乾燥重量に対して)
a)60~90重量%、好ましくは70~80重量%のポルトランドクリンカーと、
b)5~35重量%、好ましくは15~25重量%のセメント質廃棄物と、
c)任意選択的に、1~10重量%、好ましくは5重量%の石膏と、
d)組み合わされたポルトランドクリンカー、セメント質廃棄物及び存在する場合には石膏の全乾燥重量に対して40~2500ppm、好ましくは100~1500ppm、特に800~1200ppmの、アルカノールアミン、グリコール、グリセロール、炭水化物、塩化物又はそれらの混合物から選択される粉砕助剤と
を含むか又はそれらからなる。
【0055】
別の態様では、本発明は、前述の混合セメントを含む建築材料、特にコンクリート又はモルタルに関する。
【0056】
以上で好ましいと記載される任意の特徴は、この態様にも適用される。
【0057】
本発明の混合セメントを含む限り、建築材料は、その組成において特に限定されない。
【0058】
例えば、本発明の建築材料は、例えば、岩石、砕石、砂利、砂、特に珪砂、川砂及び/又は砕砂、ガラス、発泡ガラス、中空ガラスビーズ、ガラスセラミック、麻繊維若しくはコルクなどの生物由来の材料並びにゴムなどの合成有機材料などの骨材をさらに含み得る。
【0059】
本発明の建築材料は、モルタル及びコンクリート産業で一般的な任意のさらなる添加剤も含み得る。特に、このようなさらなる添加剤は、可塑剤、流動化剤、収縮低減材、空気連行剤、脱気剤、安定剤、粘度調整剤、増粘剤、減水剤、遅延剤、耐水剤、繊維、発泡剤、消泡剤、再分散性ポリマー粉末、制塵剤、クロメート低減剤、顔料、殺生物剤、防錆剤及び鋼不動態化剤から選択される。さらなる添加剤は、前述の粉砕助剤と化学的に異なる。
【0060】
好ましい実施形態によると、本発明の建築材料は、コンクリート又はモルタルである。
【0061】
本発明の建築材料は、乾燥形態又は湿式形態であり得る。ここで、乾燥形態は、建築材料が易流動性粉末の形態であり、10重量%以下、好ましくは5重量%以下、特に1重量%以下の含水量を有することを意味する。ここで、湿式形態は、建築材料が水と混合されることを意味する。実施形態によると、水の混合セメントに対する混合重量比は、0.1~1.0、好ましくは0.2~0.6である。
【0062】
別の態様では、本発明は、硬化中の混合セメント又は混合セメントを含む建築材料の収縮を減少させるための、アルカノールアミン、グリコール、グリセロール、炭水化物、塩化物又はそれらの混合物から選択される混和材料の使用であって、前記混合セメントは、ポルトランドセメントと、セメント質廃棄物から回収された補助セメント質材料とを含む、使用に関する。
【0063】
非常に好ましくは、混合セメントは、混和材料の存在下で共粉砕されたポルトランドクリンカーと、セメント質廃棄物から回収された補助セメント質材料とを含む。「混和材料の存在下での共粉砕」という用語は、ポルトランドクリンカーと、セメント質廃棄物から回収された補助セメント質材料とが前記混和材料の存在下でともに粉砕されることを意味する。
【0064】
以上で好ましいと記載される任意の特徴は、この態様にも適用される。
【0065】
特に、混合セメントは、前述の方法で得られるセメントである。しかしながら、この態様における混合セメントは、ポルトランドセメントと、粉砕したセメント質廃棄物とを混合することによって得ることもできる。ポルトランドセメントを得る方法は、当業者に周知である。これに関連して、粉砕されたセメント質廃棄物は、好ましくは、前述の方法でポルトランドクリンカーが存在しない場合に得られる。
【0066】
好ましい実施形態によると、アルカノールアミン、グリコール、グリセロール、炭水化物、塩化物又はそれらの混合物から選択される混和材料は、ポルトランドクリンカー及び/又はセメント質廃棄物にその粉砕前又は粉砕中に加えられる。
【0067】
しかしながら、アルカノールアミン、グリコール、グリセロール、炭水化物、塩化物又はそれらの混合物から選択される混和材料を、粉砕後、ポルトランドセメント、セメント質廃棄物から回収されたSCM又はそれらの混合物に加えることも可能である。
【0068】
したがって、好ましい実施形態によると、ポルトランドクリンカー及び/又はセメント質廃棄物は、混和材料の存在下で粉砕又は共粉砕される。
【0069】
混和材料は、アルカノールアミン、グリコール、グリセロール、炭水化物、塩化物又はそれらの混合物に加えて別の材料を含み得る。例えば、混和材料は、アルカノールアミン、グリコール、グリセロール、炭水化物、塩化物又はそれらの混合物の液体中、特に水中の溶液又は分散物の形態を取り得る。
【0070】
特に、建築材料は、前述の通りである。
【0071】
本発明の混合セメント又は建築材料の硬化は、水が加えられたときに開始する。
【0072】
これに関連して、収縮は、寸法安定性に関連し、規格EN 12617-4に準拠して測定され得る。
【0073】
収縮の減少が望ましく、なぜなら、これにより、亀裂が減少し、したがって本発明の混合セメント又は建築材料の硬化によって得られる任意の物体の耐用寿命が長くなるためである。
【0074】
別の態様では、本発明は、硬化後の混合セメント又は混合セメントを含む建築材料の圧縮強度を増加させるための、アルカノールアミン、グリコール、グリセロール、炭水化物、塩化物又はそれらの混合物から選択される混和材料の使用であって、前記混合セメントは、ポルトランドセメントと、セメント質廃棄物から回収された補助セメント質材料とを含む、使用に関する。
【0075】
以上で好ましいとして記載される任意の特徴は、この態様にも適用される。
【0076】
特に、混合セメントは、前述の方法で得られるセメントである。しかしながら、この態様における混合セメントは、ポルトランドセメントと、粉砕されたセメント質廃棄物とを混合することによって得ることもできる。ポルトランドセメントを得る方法は、当業者に周知である。これに関連して、粉砕されたセメント質廃棄物は、好ましくは、前述の方法でポルトランドクリンカーが存在しない場合に得られる。
【0077】
好ましい実施形態によると、アルカノールアミン、グリコール、グリセロール、炭水化物、塩化物又はそれらの混合物から選択される混和材料は、ポルトランドクリンカー及び/又はセメント質廃棄物にその粉砕前又は粉砕中に加えられる。
【0078】
しかしながら、アルカノールアミン、グリコール、グリセロール、炭水化物、塩化物又はそれらの混合物から選択される混和材料を、粉砕後、ポルトランドセメント、セメント質廃棄物から回収されたSCM又はそれらの混合物に加えることも可能である。
【0079】
したがって、好ましい実施形態によると、ポルトランドクリンカー及び/又はセメント質廃棄物は、混和材料の存在下で粉砕又は共粉砕される。
【0080】
混和材料は、アルカノールアミン、グリコール、グリセロール、炭水化物、塩化物又はそれらの混合物に加えて別の材料を含み得る。例えば、混和材料は、アルカノールアミン、グリコール、グリセロール、炭水化物、塩化物又はそれらの混合物の液体中、特に水中の溶液又は分散物の形態を取り得る。
【0081】
特に、建築材料は、前述の通りである。
【0082】
本発明の混合セメント又は建築材料の硬化は、水が加えられたときに開始する。
【0083】
圧縮強度は、規格EN 12190に準拠して4×4×16cmの角柱に対して測定され得る。
【0084】
圧縮強度が増加することが望ましく、なぜなら、これにより、本発明の混合セメント又は建築材料の硬化によって得られる任意の物体の耐力が高くなるためである。物体のより高い耐力が実現されると、この物体の工学的設計は、建築材料中の水硬性結合材の使用が少なくなり、且つ/又は物体の厚さが減少するように調節され得る。
【0085】
別の態様では、本発明は、セメント質廃棄物の粉砕の効率を改善するための、アルカノールアミン、グリコール、グリセロール、炭水化物、塩化物又はそれらの混合物から選択される粉砕助剤の使用であって、粉砕は、セメント質廃棄物の炭酸化なしに行われる、使用に関する。
【0086】
以上で好ましいとして記載される任意の特徴は、この態様にも適用される。
【0087】
この態様における好ましい粉砕助剤は、TEA、TIPA、DEIPA、MDEA、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチルジグリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキシレングリコール、グリセロール、炭水化物、塩化ナトリウム、塩化カルシウム又はそれらの混合物から選択される。混和材料は、アルカノールアミン、グリコール、グリセロール、炭水化物、塩化物又はそれらの混合物の液体中、特に水中の溶液又は分散物の形態を取り得る。
【0088】
実施形態によると、この態様では、粉砕助剤は、セメント質廃棄物の乾燥重量に対して100~1500ppm、好ましくは250~1200ppm、特に400ppm又は1000ppmの量で使用される。
【0089】
より高い粉砕効率により、同じ粉砕時間内で粉砕される材料の粉末度を高めることができる。より高い粉砕効率により、粉砕された材料で同じ粉末度を実現するための粉砕時間を短縮することもできる。より高い粉砕効率により、粉砕された材料で同じ粉末度を実現するためのミルのエネルギー消費をより少なくすることもできる。後者は、例えば、より安定な粉砕層又はミルの振動がより少ないために生じ得る。
【0090】
この態様では、セメント質廃棄物の粉砕中に炭酸化が起こらない。これは、共粉砕ステップ中、ポルトランドクリンカー及びセメント質廃棄物がCO2と反応しないことを意味する。
【0091】
この態様では、セメント質廃棄物を別の水硬性材料、ポゾラン及び/又は潜在水硬性材料と共粉砕することができる。
【0092】
好ましくは、セメント質廃棄物の粉砕中又は粉砕後、粒子のサイズ分離が行われる。実施形態によると、分離は、セメント質廃棄物から得られる清浄な骨材を、製造される混合セメントから分離するために、あらかじめ規定されたカットオフ粒度で行われる。骨材は、あらかじめ規定されたカットオフ粒度以上の粒度を有する。この手順により、骨材は、補助セメント質材料から分離される。実施形態によると、分離は、濾過、ふるい分け、沈降、密度分離、例えばサイクロン中の風力選別及び/又は遠心分離によって行われる。
【0093】
以下の実施例は、本発明のさらなる実施形態を当業者に提供する。
【実施例】
【0094】
実施例1
使用されるセメント質廃棄物は、解体で得られたあらかじめ破砕されたコンクリート(0~32mmの主要骨材の砂及び砂利を有する)であった。セメント質廃棄物をあらかじめ破砕するためにジョークラッシャーを使用した。あらかじめ破砕された材料を次にふるい分けし、2~4mmの画分を実施例1(以下でRCD-1と記載される)に使用した。RCD-1は、摩砕前に105℃で乾燥させた。
【0095】
鋼球を有する実験室用ボールミルを使用した。粉砕のために、300gのRCD-1を260gの鋼球(直径45~49mm)とともにボールミル中に投入した。容器及び球は、105℃にあらかじめ加熱された。以下の表1に示される種類及び量の粉砕助剤を上記のミルに加えた。次に、摩砕を15分間行った。
【0096】
摩砕したRCD-1について、規格EN 196-6:2010に準拠したふるい分けによって粒度を試験した。以下の表1に結果を示す。
【0097】
【0098】
表1から分かるように、粉砕助剤の添加により、粒度D90が減少し、32μm及び45μmのふるい上に維持される量が少なくなった。したがって、同じ粉砕時間でより微細な粒子が得られた。
【0099】
実施例2
使用したセメント質廃棄物は、実施例1におけるものと同じであった。
【0100】
CEM I 52.5 R(規格EN 197-1に準拠)のためのポルトランドクリンカーを使用した。
【0101】
鋼球を有する実験室用ボールミルを使用した。粉砕のために、以下の表3に示されるそれぞれの比率のポルトランドクリンカー、石膏及びRCD-1を有する10kgの混合物を鋼球(直径45~49mm)とともにボールミル中に投入した。容器及び球は、100℃にあらかじめ加熱された。以下の表3に示されるようにポルトランドクリンカー、石膏及びRCD-1の全重量に対するppmの単位でのそれぞれの量の粉砕助剤(全ての場合にTIPA及びDEIPAの重量比2:1の混合物)を上記のミルに加えた。次に、摩砕を2時間行った。
【0102】
結果として得られた混合セメントを次に水と混合して、0.5の水対セメント比を得た。結果として得られた混合物の収縮を、以下の表3に示される時間の後、規格EN 12617-4に準拠して試験した。以下の表3に示される時間の後、規格EN 12190に準拠して4×4×16cmの角柱に対する圧縮強度を測定した。
【0103】
【0104】
上記の結果から分かるように、RCD-1の添加により、ポルトランドクリンカーのみが存在する場合のセメントよりも収縮が増加している(実施例2-1、2-2、2-4を参照されたい)。本発明の粉砕助剤の添加により、収縮が顕著に減少する(実施例2-3対2-2及び2-5対2-4を参照されたい)。
【0105】
ポルトランドクリンカーをRCD-1粉末で置き換えることにより、圧縮強度の低下も起こる(実施例2-1、2-2、2-4を参照されたい)。本発明の粉砕助剤の添加により、圧縮強度が顕著に増加する(実施例2-3対2-2及び2-5~2-7対2-4を参照されたい)。
【0106】
実施例3
使用したセメント質廃棄物は、実施例1におけるものと同じであった。
【0107】
CEM I 52.5 R(規格EN 197-1に準拠)のためのポルトランドクリンカーを使用した。
【0108】
鋼球を有する実験室用ボールミルを使用した。粉砕のために、以下の表3に示されるそれぞれの比率のポルトランドクリンカー、石膏及びRCD-1を有する10kgの混合物を鋼球(直径45~49mm)とともにボールミル中に投入した。容器及び球は、100℃にあらかじめ加熱された。以下の表4に示されるようにポルトランドクリンカー、石膏及びRCD-1の全重量に対するppmの単位でのそれぞれの量の粉砕助剤(全ての場合にTIPA及びDEIPAの重量比2:1の混合物)を上記のミルに加えた。次に、摩砕を2時間行った。
【0109】
結果として得られた混合セメントを次に水と混合して、0.5の水対セメント比を得た。結果として得られた混合物の収縮を、以下の表4に示される時間の後、規格EN 12617-4に準拠して試験した。以下の表4に示される時間の後、規格EN 12190に準拠して4×4×16cmの角柱に対する圧縮強度を測定した。
【0110】
【0111】
表4の結果から分かるように、ポルトランドクリンカーのセメント質廃棄物に対する重量比が3.75:1であり、粉砕助剤が使用される場合、14日後に特に少ない収縮を実現することができる(実施例3-1~3-3を参照されたい)。粉砕助剤の使用量を増加させると、顕著な圧縮強度の増加を示さないが、より大きい収縮が生じ得ることがさらに分かる(実施例3-4~3-6を参照されたい)。
【国際調査報告】