(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-10-28
(54)【発明の名称】超電導磁石の励磁システム
(51)【国際特許分類】
H10N 60/80 20230101AFI20251021BHJP
G21B 1/11 20060101ALI20251021BHJP
H05H 7/04 20060101ALI20251021BHJP
H05H 13/04 20060101ALI20251021BHJP
H10N 60/81 20230101ALI20251021BHJP
H01F 6/06 20060101ALI20251021BHJP
【FI】
H10N60/80 W
G21B1/11 A
H05H7/04
H05H13/04 E
H10N60/81
H01F6/06 510
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2025517871
(86)(22)【出願日】2022-09-28
(85)【翻訳文提出日】2025-05-22
(86)【国際出願番号】 US2022044980
(87)【国際公開番号】W WO2024072382
(87)【国際公開日】2024-04-04
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513131419
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック レノバブレス エスパーニャ, エセ.エレ.
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【氏名又は名称】黒川 俊久
(72)【発明者】
【氏名】ウー,アンボー
(72)【発明者】
【氏名】ブレイ,ジェームズ・ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】スタウトナー,アーンスト・ウォルフギャング
(72)【発明者】
【氏名】ミンフェン,シュー
(72)【発明者】
【氏名】トレイ,デイヴィッド・アラン
【テーマコード(参考)】
2G085
4M114
【Fターム(参考)】
2G085BC18
4M114BB04
4M114BB07
4M114CC03
4M114DA02
(57)【要約】
【課題】超電導磁石のフィールド充電システム
【解決手段】
超電導磁石用の超電導回路は、超電導回路は、第1の温度領域、第2の温度領域、少なくとも1つの第1の構成要素、少なくとも1つの第2の構成要素、及び励磁システムを含んでいる。第1の温度領域は、第1の温度を規定し、第2の温度領域は第2の温度を規定し、前記第2の温度は前記第1の温度よりも高い。前記少なくとも1つの第1の構成要素は、前記第1の温度領域内に配置されている。前記少なくとも1つの第2の構成要素は、前記第2の温度領域内に配置されている。励磁システムは、前記第1の構成要素と前記第2の構成要素とを電気的に結合する少なくとも1つのフレキシブル接続部を含む。前記フレキシブル接続部は、異なる第1の温度及び第2の温度によって引き起こされる熱膨張及び熱収縮によって、前記第1の構成要素と前記第2の構成要素が変位すること及び動くことを可能にする。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導磁石用の超電導回路であって、前記超電導回路は、
第1の温度を規定する第1の温度領域、
第2の温度を規定する第2の温度領域であって、前記第2の温度は前記第1の温度よりも高い、第2の温度領域、
前記第1の温度領域内に配置された少なくとも1つの第1の構成要素、
前記第2の温度領域内に配置された少なくとも1つの第2の構成要素、及び
励磁システムであって、
前記第1の構成要素と前記第2の構成要素とを電気的に結合する少なくとも1つのフレキシブル接続部を含み、
前記フレキシブル接続部は、異なる第1の温度及び第2の温度によって引き起こされる熱膨張及び熱収縮によって、前記第1の構成要素と前記第2の構成要素が変位すること及び動くことを可能にする
励磁システム
を含む、超電導回路。
【請求項2】
前記第1の構成要素は複数の超電導コイルを含み、前記第2の構成要素は前記複数の超電導界磁コイルを囲む少なくとも1つの熱シールドを含み、前記励磁システムは前記複数の超電導コイルに通電するように構成されている、請求項1に記載の超電導回路。
【請求項3】
前記励磁システムは、更に、複数の高電流リード線と超電導スイッチを含む、請求項2に記載の超電導回路。
【請求項4】
前記複数の高電流リード線は、一対の高温超電導体(HTS)リード線と一対の抵抗リード線とを更に含み、前記一対の抵抗リード線は、真空容器を貫通し、少なくとも1つのフレキシブル接続部を介して前記一対のHTSリード線に結合された1つ又は複数のフィードスルー電力線であり、前記一対のHTSリード線は、複数の超電導界磁コイル及び前記超電導スイッチに結合されている、請求項3に記載の超電導回路。
【請求項5】
前記超電導スイッチは、前記複数の超電導界磁コイルの支持構造と機械的及び熱的に結合したコールドプレートに設置され、
前記一対のHTSリード線は、前記コールドプレートに固定されている、請求項4に記載の超電導回路。
【請求項6】
前記一対のHTSリード線と前記一対の抵抗リード線との間の接続部は、前記少なくとも1つのフレキシブル接続部と熱プレートとを含む、請求項4に記載の超電導回路。
【請求項7】
前記一対の抵抗リード線は、銅、真鍮、リン青銅、又はそれらの組合せを含む、請求項4に記載の超電導回路。
【請求項8】
前記第1の温度は約10ケルビン(K)よりも低い温度であり、前記第2の温度は約35Kから約55Kの間の温度である、請求項1に記載の超電導回路。
【請求項9】
前記第1の温度及び前記第2の温度よりも高い第3の温度を規定する第3の温度領域を更に含み、前記第3の温度領域内に第3の構成要素が配置され、前記第3の構成要素は、前記少なくとも1つのフレキシブル接続部の第2のフレキシブル接続部を介して前記第2の構成要素に接続される、請求項1に記載の超電導回路。
【請求項10】
前記第2の構成要素は、少なくとも1つの電気構成要素が配置された熱シールドを含み、前記第3の構成要素は、少なくとも1つの電気構成要素が配置された真空容器を含む、請求項9に記載の超電導回路。
【請求項11】
前記少なくとも1つのフレキシブル接続部は、編組ワイヤを含んでいる、請求項1に記載の超電導回路。
【請求項12】
超電導磁石の複数の超電導コイルに通電するための励磁システムであって、前記励磁システムは、
第1の温度と第2の温度とを接続する少なくとも1つの高温超電導体(HTS)リード線であって、前記第2の温度は前記第1の温度とは異なる温度である、少なくとも1つの高温超電導体(HTS)リード線、
別の第3の温度に配置された電源であって、前記励磁システムに電力を供給して前記複数の超電導コイルに通電するための電源、及び
前記第1の温度の前記少なくとも1つのHTSリード線と前記第2の温度の前記電源との間に電気的に結合された少なくとも1つのフレキシブル接続部と、
前記少なくとも1つのフレキシブル接続部は、異なる第1及び第2の温度によって引き起こされる熱膨張及び熱収縮によって、前記励磁システムの構成要素が変位すること及び動くことを可能にする、励磁システム。
【請求項13】
前記電源は、前記超電導磁石の真空容器及び熱シールドを貫通する1つ又は複数のフィードスルー電力線を含む、請求項12に記載の励磁システム。
【請求項14】
前記1つ又は複数のフィードスルー電力線に結合され、少なくとも部分的に前記熱シールド内に配置される1つ又は複数のロッド部材を更に含む、請求項13に記載の励磁システム。
【請求項15】
前記少なくとも1つのフレキシブル接続部は、少なくとも1つの第1のフレキシブル接続部及び少なくとも1つの第2のフレキシブル接続部を含み、前記少なくとも1つの第1のフレキシブル接続部は、前記1つ又は複数のロッド部材と、少なくとも1つの熱プレートの第1の部分とに結合され、前記少なくとも1つの第2のフレキシブル接続部は、前記少なくとも1つの熱プレートの第2の部分と、少なくとも1つのHTSリード線とに結合される、請求項14に記載の励磁システム。
【請求項16】
超電導スイッチを更に含み、前記少なくとも1つのHTSリード及び前記超電導スイッチは前記複数の超電導コイルに結合されている、請求項12に記載の励磁システム。
【請求項17】
超電導磁石の複数の超電導コイルに通電する方法であって、前記方法は、
励磁システムを、複数の超電導コイルと、前記超電導磁石の少なくとも1つの他の構成要素とに結合することであって、前記複数の超電導コイル及び前記少なくとも1つの他の構成要素は異なる温度に維持され、前記励磁システムは、電源、少なくとも1つの高温超電導体(HTS)リード線、及び前記電源と前記少なくとも1つのHTSリード線との間に電気的に結合された少なくとも1つのフレキシブル接続部を有する、結合すること、及び
前記電源によって前記励磁システムに電力を供給し、前記複数の超電導コイルに通電すること
を含み、
前記少なくとも一つのフレキシブル接続部は、異なる温度によって引き起こされる熱膨張及び熱収縮によって、前記励磁システムの構成要素が変位すること及び動くことを可能にする、方法。
【請求項18】
前記電源は、前記超電導磁石の真空容器及び熱シールドを貫通する一つ又は複数のフィードスルー電力線を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
1つ又は複数のロッド部材を前記1つ又は複数のフィードスルー電力線に結合することを更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも1つのフレキシブル接続部は、少なくとも1つの第1のフレキシブル接続部及び少なくとも1つの第2のフレキシブル接続部を含み、前記方法は、
前記少なくとも1つの第1のフレキシブル接続部を、少なくとも1つの熱プレートの第1の部分において前記1つ又は複数のロッド部材に結合すること、及び
前記少なくとも1つの第2のフレキシブル接続部を、前記少なくとも1つの熱プレートの第2の部分及び前記少なくとも1つのHTSリード線に結合すること
を更に含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、超電導磁石に関し、より詳細には、超電導発電機内で使用されるような超電導磁石の励磁システムに関する。
【背景技術】
【0002】
超電導機械は、一般に、超電導回路のコイルから構成される超電導磁石を含んでいる。超電導回路の超電導状態では、超電導回路は電気抵抗がなく、そのため通常のワイヤよりもはるかに大きな電流を流すことができ、強力な磁場を発生させる。したがって、超電導磁石は非超電導電磁石よりも大きな磁場を発生させることができ、巻線でエネルギーが熱として散逸しないため、動作に掛かる費用を抑えることができる。したがって、超電導磁石は、磁気共鳴イメージング(MRI)機器、及び科学的装置(核磁気共鳴(NMR)分光計、発電機、質量分析計、核融合炉、粒子加速器など)で一般的に使用されている。
【0003】
運転中、超電導磁石の巻線は、その臨界温度(すなわち、巻線材料が通常の抵抗状態から超電導状態に変化する温度)よりも低く冷却されなければならない。典型的には、巻線は、巻線の臨界温度よりもかなり低い温度まで冷却される。温度がより低ければ、超電導巻線は非超電導状態に戻ることなく、高電流と高磁界に耐えることができるからである。そのため、一般的には、液体冷却又は機械的冷却を使用して、巻線を、超電導状態を維持するのに十分な温度に維持している。液体冷却では、冷却剤として液体冷媒(例えば、動作温度に応じてヘリウム、水素、アルゴンなど)が使用され、この液体冷媒の沸点は、ほとんどの巻線材料の臨界温度よりもはるかに低い。例えば、ヘリウムは4.2ケルビンで沸騰し、ニオブチタン(NbTi)超電導ワイヤの臨界温度である9ケルビンよりもかなり低い。したがって、超電導磁石と液体冷媒は、クライオスタットと呼ばれる熱的に絶縁された容器に収容される。あるいは、機械的冷却には、2段階の機械的冷凍を使用した超電導磁石の冷却が含まれる。
【0004】
更に、超電導磁石の運転中、磁石に通電すると、巻線を超電導材料片で短絡させることができる。短絡回路はスイッチ(永久スイッチと呼ばれることもある)によって行われ、このスイッチは、一般的には、超電導材料片を表しており、この超電導材料片は、超電導磁石内部に配置されており、巻線端部の間に接続され、小さなヒータに取り付けられている。したがって、巻線は閉じた超電導ループとなり、電源を切っても、連続した期間において永久電流が流れ、磁場が維持される。この永久モードの利点は、磁場の安定性が、最適な電源で実現できる磁場の安定性よりも優れていること、及び巻線に電力を供給するエネルギーが不要であることである。例えば、超電導スイッチは、通常、その超電導スイッチの電気誘導を最小限に抑えるためにバイファイラで巻線されており、超電導スイッチは、超電導状態では抵抗ゼロであり、インダクタンスは無視できるものである。
【0005】
したがって、超電導磁石が最初にオンにされると、スイッチは、スイッチの転移温度より高い温度に加熱され、スイッチは抵抗性となる。永久モードで動作させるには、所望の磁場が得られるまで供給電流を調整し、その後ヒータをオフにする。永久スイッチは超電導温度まで冷却され、それにより巻線が短絡する。その後、電源をオフにすることができる。
【0006】
このシステムを更に支援するために、超電導磁石及びスイッチの様々な構成要素を超電導機械内の別々の領域に配置して、低温又は高温に維持されるように設計された構成要素間の望ましくない熱伝達を低減することができる。しかし、熱膨張及び収縮による超電導磁石の様々な構成要素間の変位及び動きと、磁場が永久モードに移行することに起因する動的負荷の変化も考慮しなければならない。
【0007】
したがって、本開示は、前述の問題に対処する超電導回路用の改良された励磁システムに関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2017/287608号明細書
【発明の概要】
【0009】
本開示の態様及び利点は、以下の記載で部分的に説明される、以下の記載から明らかである、又は本開示の実施を通じて知ることができる。
【0010】
一態様において、本開示は超電導磁石用の超電導回路に関する。前記超電導回路は、第1の温度領域、第2の温度領域、少なくとも1つの第1の構成要素、少なくとも1つの第2の構成要素、及び励磁システムを含んでいる。第1の温度領域は、第1の温度を規定し、第2の温度領域は第2の温度を規定し、前記第2の温度は前記第1の温度よりも高い。前記少なくとも1つの第1の構成要素は、前記第1の温度領域内に配置されている。前記少なくとも1つの第2の構成要素は、前記第2の温度領域内に配置されている。励磁システムは、前記第1の構成要素と前記第2の構成要素とを電気的に結合する少なくとも1つのフレキシブル接続部を含む。前記フレキシブル接続部は、異なる第1の温度及び第2の温度によって引き起こされる熱膨張及び熱収縮によって、前記第1の構成要素と前記第2の構成要素が変位すること及び動くことを可能にする。
【0011】
一実施形態では、前記第1の構成要素は複数の超電導コイルを含み、前記第2の構成要素は前記複数の超電導界磁コイルを囲む少なくとも1つの熱シールドを含む。更に、前記励磁システムは前記複数の超電導コイルに通電するように構成されている。
【0012】
他の実施形態では、前記励磁システムは、更に、複数の高電流リード線と超電導スイッチを含む。
【0013】
追加の実施形態では、前記複数の高電流リード線は、一対の高温超電導体(HTS)リード線と一対の抵抗リード線とを更に含み、前記一対の抵抗リード線は、真空容器を貫通し、少なくとも1つのフレキシブル接続部を介して前記一対のHTSリード線に結合された1つ又は複数のフィードスルー電力線であり、前記一対のHTSリード線は、複数の超電導界磁コイル及び前記超電導スイッチに結合されている。
【0014】
他の実施形態では、前記超電導スイッチは、前記複数の超電導界磁コイルの支持構造と機械的及び熱的に結合したコールドプレートに設置されている。更に、前記一対のHTSリード線は、前記コールドプレートに固定されている。
【0015】
更に他の実施形態では、前記一対のHTSリード線と前記一対の抵抗リード線との間の接続部は、前記少なくとも1つのフレキシブル接続部と熱プレートとを含む。
【0016】
別の追加の実施形態では、前記一対の抵抗リード線は、銅、真鍮、リン青銅、又はそれらの組合せを含む。
【0017】
他の追加の実施形態では、前記第1の温度は約10ケルビン(K)よりも低い温度であり、前記第2の温度は約35Kから約55Kの間の温度である。
【0018】
更に別の実施形態では、超電導回路は、前記第1の温度及び前記第2の温度よりも高い第3の温度を規定する第3の温度領域を更に含む。更に、前記第3の温度領域内に第3の構成要素が配置され、前記第3の構成要素は、前記少なくとも1つのフレキシブル接続部の第2のフレキシブル接続部を介して前記第2の構成要素に接続される。
【0019】
更に別の実施形態では、前記第2の構成要素は、少なくとも1つの電気構成要素が配置された熱シールドを含み、前記第3の構成要素は、少なくとも1つの電気構成要素が配置された真空容器を含む。
【0020】
他の実施形態では、前記少なくとも1つのフレキシブル接続部は、編組ワイヤを含んでいる。
【0021】
別の態様では、本開示は、超電導磁石の複数の超電導コイルに通電するための励磁システムに関する。前記励磁システムは、少なくとも1つの高温超電導体(HTS)リード線と、電源と、少なくとも1つのフレキシブル接続部とを含んでいる。前記HTSリード線は、第1の温度と第2の温度とを接続し、前記第2の温度は前記第1の温度とは異なる温度である。前記電源は別の第3の温度に配置されており、前記励磁システムに電力を供給して前記複数の超電導コイルに通電を行うためのものである。少なくとも1つのフレキシブル接続部は、前記第1の温度の前記少なくとも1つのHTSリード線と前記第2の温度の前記電源との間に電気的に結合されている。更に、前記少なくとも1つのフレキシブル接続部は、異なる第1及び第2の温度によって引き起こされる熱膨張及び熱収縮によって、前記励磁システムの構成要素が変位すること及び動くことを可能にする。
【0022】
一実施形態では、前記電源は、前記超電導磁石の真空容器及び熱シールドを貫通する1つ又は複数のフィードスルー電力線を含む。
【0023】
別の実施形態では、1つ又は複数のロッド部材が、前記1つ又は複数のフィードスルー電力線に結合され、少なくとも部分的に前記熱シールド内に配置される。
【0024】
他の実施形態では、前記少なくとも1つのフレキシブル接続部は、少なくとも1つの第1のフレキシブル接続部及び少なくとも1つの第2のフレキシブル接続部を含み、前記少なくとも1つの第1のフレキシブル接続部は、前記1つ又は複数のロッド部材と、少なくとも1つの熱プレートの第1の部分とに結合され、前記少なくとも1つの第2のフレキシブル接続部は、前記少なくとも1つの熱プレートの第2の部分と、少なくとも1つのHTSリード線とに結合される。
【0025】
更に別の実施形態では、励磁システムは超電導スイッチを更に含み、前記少なくとも1つのHTSリード及び前記超電導スイッチは前記複数の超電導コイルに結合されている。
【0026】
更に別の態様では、本開示は、超電導磁石の複数の超電導コイルに通電する方法に関する。前記方法は、励磁システムを、複数の超電導コイルと、前記超電導磁石の少なくとも1つの他の構成要素とに結合することを含み、前記複数の超電導コイル及び前記少なくとも1つの他の構成要素は異なる温度に維持され、前記励磁システムは、電源、少なくとも1つの高温超電導体(HTS)リード線、及び前記電源と前記少なくとも1つのHTSリード線との間に電気的に結合された少なくとも1つのフレキシブル接続部を有する。前記方法は、更に、前記電源によって前記励磁システムに電力を供給し、前記複数の超電導コイルに通電することを含む。前記少なくとも一つのフレキシブル接続部は、異なる温度によって引き起こされる熱膨張及び熱収縮によって、前記励磁システムの構成要素が変位すること及び動くことを可能にする。
【0027】
別の実施形態では、前記方法は、更に、1つ又は複数のロッド部材を前記1つ又は複数のフィードスルー電力線に結合することを更に含む。
【0028】
更に別の実施形態では、前記少なくとも1つのフレキシブル接続部は、少なくとも1つの第1のフレキシブル接続部及び少なくとも1つの第2のフレキシブル接続部を含む。前記方法は、前記少なくとも1つの第1のフレキシブル接続部を、少なくとも1つの熱プレートの第1の部分において前記1つ又は複数のロッド部材に結合すること、及び前記少なくとも1つの第2のフレキシブル接続部を、前記少なくとも1つの熱プレートの第2の部分及び前記少なくとも1つのHTSリード線に結合することを更に含む。
【0029】
本開示のこれらの特徴、態様、及び利点並びに他の特徴、態様、利点は、以下の記載及び特許請求の範囲を参照して、更に良く理解することができるようになる。図面は、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成し、図面は、本開示の実施形態を示しており、本明細書と協力して本開示の原理の説明の補助をする。
【図面の簡単な説明】
【0030】
当業者を対象とする本開示(ベストモードを含む)の完全かつ実施可能な開示は、本明細書に記載されており、明細書では以下の図が参照される。
【
図1】
図1は、本開示による超電導磁石の一実施形態の斜視図を示す。
【
図2】
図1の超電導磁石の一実施形態の透視斜視図を示し、特に超電導磁石の内部構成要素を示す。
【
図3】本開示による超電導磁石の超電導スイッチの一実施形態の斜視図を示す。
【
図5】
図4の超電導スイッチの詳細な斜視図を示し、特に、導電性ロッドに熱結合された超電導スイッチの超電導巻線及び熱伝導部材を示す。
【
図6】本開示による超電導スイッチの別の実施形態の詳細な斜視図を示し、特に、管に電気的に結合された超電導スイッチの超電導巻線及び熱伝導部材を示す。
【
図7】本開示による超電導磁石の簡略化された概略図を示す。
【
図8】本開示による超電導磁石のための励磁システムの一実施形態の回路図を示す。
【
図9】本開示による超電導磁石のための励磁システムの様々な構成要素の一実施形態の概略図を示す。
【
図10】本開示による超電導磁石用の励磁システムの様々な構成要素の部分斜視図を示す。
【
図11】本開示による超電導磁石の複数の超電導コイルに通電するための方法の一実施形態のフロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、本開示の実施形態について詳細に説明する。実施形態の1つ又は複数の実施例は、図面に示されている。各実施例は、本開示を限定するのではなく、本開示を説明するために提供されている。実際、当業者にとって、本開示の範囲から逸脱することなく、本開示に対して様々な修正及び変更ができることは明らかである。例えば、ある実施形態の一部として図示された又は記載された特徴を、別の実施形態と共に使用して、更に別の実施形態を得ることができる。したがって、本開示は、特許請求の範囲及びその均等物の範囲内に入るような修正及び変形を含むことが意図されている。
【0032】
一般に、本開示は、超電導磁石用のフレキシブルな励磁システムを有する超電導回路に関する(超電導発電機など)。一実施形態では、例えば、超電導回路は、第1の温度を画定する第1の温度領域と、第1の温度よりも高い第2の温度を画定する第2の温度領域とを含むことができる。超電導回路は、第1の温度領域内に配置された第1の構成要素と、第2の温度領域内に配置された第2の構成要素とを含むこともできる。超電導回路の励磁システムは、第1の構成要素と第2の構成要素を電気的に結合するフレキシブル接続部を含む。したがって、フレキシブル接続部は、異なる第1の温度及び第2の温度によって引き起こされる熱膨張及び熱収縮によって、第1の構成要素と第2の構成要素が変位すること及び動くことを可能にする。このように、超電導回路は超電導磁石の領域間の温度差が考慮され、その結果として超電導磁石が損傷する恐れが低減する。
【0033】
図を参照すると、
図1-
図3は、本開示による超電導磁石10の一実施形態の斜視図を示す。このような超電導磁石は、さまざまな用途(磁気共鳴イメージング(MRI)装置、NMR分光計、発電機(例えば、風力タービン発電機など)、質量分析計、核融合炉、粒子加速器、浮上、誘導、推進、及び同様のものを含むがこれらに限定されない)に有用である。特に、
図1は、本開示による超電導磁石10の一実施形態の全体的な斜視図を示し、
図2は、本開示による超電導磁石10の一実施形態の透明斜視図を示し、
図3は、本開示による超電導磁石10の一実施形態の内部斜視図を示す。
【0034】
特に、
図2に示されているように、超電導磁石10は断熱容器12を含んでおり、この容器12は、一般にクライオスタットと呼ばれる。本明細書において、クライオスタットは、一般に、極低温の冷却システムを含む容器を表す。更に、
図3に示されているように、超電導磁石10の断熱容器12は超電導回路16を含み、超電導回路16は、断熱容器12の内部に1つ又は複数の超電導コイル23を有しており、超電導コイル23は内部構造29によって支持されている。したがって、このような実施形態では、断熱容器12は、ワイヤを絶対零度近くまで(例えば、10ケルビン(K)まで、好ましくは4Kまで)冷却できるように超電導回路16を絶縁する。例えば、
図3に示されているように、断熱容器12は、タンク15から内部構造29に、及び/又は断熱容器12の内壁全体に液体極低温物質(例えば、動作温度に応じてヘリウム、水素、アルゴン、又はその他)を運ぶ複数の導管21を含むことができる。更に、一実施形態では、断熱容器12の内部部分は、真空容器13と、外部環境と断熱容器12内の低温部品との間の熱放射及び対流を遮断する熱シールド36(
図7)とを含み、それによって放射熱伝達を最小化することもできる。
【0035】
より詳細には、図示されているように、超電導回路16はコイル状に配置され、磁界を発生させるように構成することができる。特に
図1に示されているように、超電導磁石10は、超電導回路16に通電するための励磁システム20に接続された電源18を更に含む。
【0036】
したがって、超電導状態では、超電導回路16は電気抵抗を持たず、そのため通常のワイヤよりもはるかに大きな電流を流すことができ、強力な磁場を発生させる。更に、動作中、超電導回路16は、その臨界温度(すなわち、ワイヤ材料が通常の抵抗状態から変化して超電導になる温度)よりも低く冷却されなければならない。典型的には、超電導回路16は、臨界温度を大幅に下回る温度まで冷却される。なぜなら、温度が低いほど超電導巻線が良好に働き、超電導巻線は非超電導状態に戻ることなく高い電流及び磁場に耐えることができるからである。
【0037】
したがって、
図1-
図3の実施形態で示されているように、超電導磁石10は、超電導回路16を冷却するための液体冷却を行う冷却システム14を更に含むことができる。より具体的には、図示されているように、冷却システム14は、冷却媒体17又は冷却剤(
図3)を含む1つ又は複数の冷却タンク15を含むことができる。例えば、一実施形態では、冷却媒体17は液体ヘリウムとすることができ、その沸点は4.2ケルビンであり、ワイヤ材料の臨界温度をはるかに下回る。
【0038】
超電導磁石10の1つの動作モードでは、磁石に通電した後、超電導回路16を超電導材料片で短絡することができる。このような実施形態では、例えば、短絡は、超電導スイッチ25(永久スイッチと呼ばれることもある)を通じて励磁システム20により行うことができる。言い換えれば、励磁システム20の超電導スイッチ25は、一般的には、超電導材料片を表しており、この超電導材料片は、超電導磁石10内に配置されており、超電導回路16の巻線端部の間に接続され、超電導材料片の温度をワイヤの転移温度を超える温度まで上昇させることができるヒータを有している。これは、超電導スイッチは、通常は低温の超電導状態で存在し、通常は電気インダクタンスを最小限にするためにバイファイラで巻かれているためであり、超電導状態では抵抗がゼロでインダクタンスが無視できることを示す。
【0039】
更に、
図4に示されているように、励磁システム20の超電導スイッチ25を液体ヘリウムによって冷却することができるように、熱交換器30(フィンのついた銅の熱交換器など)を備えてもよい。したがって、熱交換器30がオフにされ、励磁システム20の超電導スイッチ25がその転移温度よりも低い温度に冷却されると、超電導回路16は閉じた超電導ループとなるため、電源18をオフにすることができ、長期間にわたって永久電流が流れ、磁場が維持される。したがって、この持続モードの利点は、磁場の安定性が、最良の電源で実現可能なものよりも優れていること、及び巻線に電力を供給するためにエネルギーを必要としないことである。
【0040】
更に、超電導磁石10が最初にオンにされると、励磁システム20の超電導スイッチ25がその転移温度よりも高い温度に加熱され、励磁システム20の超電導スイッチ25が抵抗性となる。この状態を実現するために、電源18が、超電導コイル23及び励磁システム20と電気的に結合された一対の電流リードに接続される。電流リードは、更に、少なくとも1つの抵抗性電流リードと、もう1つの高温超電導体(HTS)電流リードとを含んでいる。所望の磁場が得られるまで供給電流が調整され、その後ヒータがオフになる。励磁システム20の超電導スイッチ25は超電導温度まで冷却され、それによって超電導回路16が短絡する。その後、電源18をオフにすることができる。
【0041】
ここで
図4~
図6を参照すると、励磁システム20の超電導スイッチ25は、超電導巻線22と熱伝導部材24とを含んでいる。例えば、一実施形態では、超電導巻線は、最小インダクタンスを達成するために、バイファイラ巻きの超電導巻線とすることができる。更に、一実施形態では、熱伝導部材24は、超電導巻線22に熱的に結合した第1の端部26と、冷却タンク15に熱的に結合した第2の端部28とを含む。例えば、
図4に示されているように、熱交換器30は冷却タンク15内に搭載され、熱交換器30は、冷却タンク15のタンク壁19(
図3)に、例えばろう付けにより固定された熱伝導性ロッド32(銅ロッドなど)によって励磁システム20に熱的に接続することができる。更に、
図4及び
図5に示すように、熱伝導性ロッド32に、例えば半田付けによって追加の支持構造34を取り付け、追加の支持構造34に熱伝導部材24の第2の端部28を固定することができる。代替の実施形態では、
図6に示されているように、熱伝導部材24は、複数の導管21のうちの1つの導管に取り付けることができる。そのような実施形態では、熱伝導部材24は、1つ又は複数の編組銅ストラップを使用して導管21に取り付けることができ、その編組銅ストラップは、熱伝導部材24及び導管21に固定することができる。
【0042】
図7を参照すると、超電導磁石10の簡略化された概略図が示されている。より具体的には、図示されているように、超電導磁石10は、一般に、冷却システム14、真空容器13、コールドマス38、コールドマス38と真空容器13との間の熱シールド36、及びクライオクーラ40を含んでいる。更に、図示されているように、冷却システム14は、一般に、超電導磁石10の熱シールド36に対して配置することができる。このような実施形態では、例えば、コールドマス38は、静止部品(例えば、界磁巻線アセンブリであり、界磁巻線アセンブリ内では、電機子巻線アセンブリが回転する)とすることができる。更に、一例として、真空容器13は、界磁巻線アセンブリを支持する非回転部品とすることができる。したがって、このような実施形態では、回転可能な構成要素は、超電導磁石10の運転中に回転可能ではない構成要素に対して回転するように配置することができる。このような実施形態では、熱シールド36は、コールドマス38を取り囲み、真空容器13からの放射(矢印42で示す)を遮断及び/又はブロックする。更に、図示されているように、熱は熱バス/バスバー44によってクライオクーラ40に移動し、それによってコールドマス38からの放射熱のほとんどが遮断される。更に、図示されているように、このような構成の熱バス/バスバー44は、クライオクーラ40に接続するために熱シールド36の上部に取付けられている。熱シールド36は、構造部品を通して伝導される熱も遮断する。
【0043】
ここで
図8~
図10を参照すると、本明細書で説明されている超電導磁石10の超電導コイルに通電するための励磁システム100の構成要素の様々な図が示されている。特に、
図8は、本開示による励磁システム100の回路
図102の一実施形態を示している。
図9は、本開示による励磁システム100の様々な構成要素の一実施形態の概略図を示しており、特に、励磁システム100が熱シールド36及び真空容器13を貫通し、超電導コイル23と電源18との間に結合されている様子を示している。
図10は、本開示による励磁システム100の様々な構成要素の部分斜視図を示す。
【0044】
特に
図8に示されているように、回路
図102は、
図3に示されている超電導コイル23と同様に超電導コイル23(
図9)に通電するために、一般に、励磁システム100に電力を供給する電源18を含んでいる。更に、
図8~
図10に示されているように、励磁システム100は、複数の高電流リード104、超電導スイッチアセンブリ106を含むコールドマス38、及び少なくとも1つのフレキシブル接続部108、110を更に含んでいる。より具体的には、図示されているように、超電導スイッチアセンブリ106は、一般的に、超電導スイッチ112と複数の電気的保護ダイオード114とを含むことができる。超電導スイッチアセンブリ106は、超電導コイル23を表すインダクタと電気的に並列に接続されている。
【0045】
更に、
図8及び
図9に示されているように、本明細書で記載されている高電流リード104は、いくつかの種類のリード線(1つ又は複数の抵抗リード線118及び/又は1つ又は複数のHTSリード線120など)を含むことができる。他の実施形態では、特に
図10に示されているように、抵抗リード線118は真空フィードスルー電力線であり、抵抗リード線118は、更に、電源18(
図8)に結合された1つ又は複数の電力コネクタ119、熱シールド36及び/又は真空容器13を貫通する1つ又は複数の導電性ロッド121、及び/又は、電力コネクタ119を導電性ロッド121に固定する1つ又は複数のカップリング123を含むことができる。更に、一実施形態では、
図10に示すように、超電導スイッチ112及びHTSリード線120は、複数の超電導界磁コイル23の支持構造(
図10には示されていないが、
図8及び9に示されている)と機械的及び熱的に結合されたコールドプレート125に設置することができる。
【0046】
したがって、一実施形態では、励磁システム100の構成要素は、超電導磁石10の複数の構成要素と接続するように構成され、超電導磁石の様々な構成要素を異なる温度を有する異なる領域に配置することができる。例えば、特に
図8に示されているように、超電導スイッチアセンブリ106は、第1の温度に維持された第1の領域(点線122の下に示されている)に配置することができる。第1の温度領域は、約10ケルビン(K)よりも低い温度(約8Kよりも低い温度、約5Kよりも低い温度など)を有することができる。更に、図示されているように、HTSリード線120の少なくとも一方の高温端は、別の第2の温度に維持された第2の領域(点線117と122との間に示されている)に配置することができる。HTSリード線120の低温端は、第1の温度領域に接続することができる。このような実施形態では、第2の温度領域は、第1の領域よりも高い温度を有することができる。例えば、第2の温度領域は、約20Kから約70Kの範囲の温度(約25Kから約65Kの間の温度、約30Kから約60Kの間の温度、約35Kから約55Kの間の温度など)を有することができる。更に、電源18及び/又は1つ又は複数の抵抗リード線118は、第3の温度に維持された第3の領域(点線117の上に示されている)に配置することができる。特定の実施形態では、第3の温度領域は、第1の温度領域と第2の温度領域の両方の温度よりも高い温度とすることができる。例えば、第3の温度領域は、周囲動作温度に近い温度(200Kよりも高い温度、約250Kよりも高い温度、約300Kよりも高い温度など)とすることができる。
【0047】
したがって、フレキシブル接続部108、110は、第1、第2、及び第3の温度領域における異なる温度によって引き起こされる熱膨張及び熱収縮によって、励磁システム100の構成要素が変位する及び動くことを可能にするように設けることができる。したがって、特に
図9に示されているように、フレキシブル接続部108、110の1つ又は複数のペアは、超電導コイル23と電源18及び/又はHTSリード線120との間で電気的に結合することができる。
【0048】
一実施形態では、例えば、フレキシブル接続部108、110は、フレキシブル接続部の第1のペア108と、フレキシブル接続部の第2のペア110とを含むことができる。更に、一実施形態では、本明細書で説明したフレキシブル接続部108、110は、1つ又は複数の編組ワイヤでもよいし、フォイル部材であってもよい。更に、
図9に示すように、励磁システム100は、フレキシブル接続部の第1のペア108及び第2のペア110の間に結合された1つ又は複数の熱プレート124(例えば、熱プレートのペア)を含むこともできる。例えば、フレキシブル接続部の第1のペア108は、1つ又は複数の熱プレート124の1つの位置又は端部に配置し、フレキシブル接続部の第2のペア110は、1つ又は複数の熱プレート124の別の位置又は端部に配置することができる。
【0049】
一実施形態では、第1の温度領域は、コールドマス(又は超電導コイル23)が配置される位置を示す。同じ実施形態では、第2の温度領域は、熱シールド36が配置される位置を指す。その場合、HTSリード線120は、第2の温度領域における熱シールド36に固定することができる。更に、同じ実施形態において、第3の温度領域は真空容器13が配置される位置を指す。更に、同じ実施形態において、1つ又は複数の熱プレート124を第2の温度領域に熱的に固定し、HTSリード線120の高温端を第2の温度に維持することができる。
【0050】
他の実施形態では、本明細書に記載されたHTSリード線120は、超電導材料(セラミック、ビスマス・ストロンチウム・カルシウム・銅酸化物(BSCCO)、又はイットリウム・バリウム・銅酸化物(YBCO)など)から形成することができる。更に、一実施形態では、抵抗リード線118は、銅、真鍮、リン青銅、又はこれらの材料の任意の組合せから形成することができる。
【0051】
ここで
図11を参照すると、本開示による超電導磁石の複数の超電導コイルに通電する方法200の一実施形態のフロー図が示されている。一般的に、本明細書では、
図1~
図10を参照して上述した超電導磁石10、超電導回路16、及び/又は励磁システム100を参照しながら、方法200について記載する。しかし、当業者であれば、開示された方法200は、一般的に、適切な構成を有する任意の超電導磁石で利用できることを理解することができる。更に、
図11は、例示及び説明の目的で特定の順序で実行されるステップを示しているが、本明細書で説明する方法は、特定の順序又は組合せに限定されることはない。当業者は、本明細書で提供される開示事項を使用して、本明細書で開示される方法の様々なステップが、本開示事項の範囲から逸脱することなく、様々な方法で省略、再配置、結合、及び/又は改変できることを理解する。
【0052】
(202)に示されているように、方法200は、励磁システムを、複数の超電導コイルと超電導磁石の少なくとも1つの他の構成要素とに結合することを含む。更に、一実施形態では、複数の超電導コイル及び他の構成要素は、異なる温度に維持される。更に、本明細書で説明するように、励磁システムは、電源と、少なくとも1つのHTSリード線と、電源と少なくとも1つのHTSリード線との間に電気的に結合された少なくとも1つのフレキシブル接続部とを有する。したがって、(204)に示すように、方法200は、電源によって励磁システムに電力を供給して、複数の超電導コイルに通電することを含む。したがって、この方法で複数の超電導コイルに通電することにより、フレキシブル接続部は、異なる温度によって引き起こされる熱膨張及び熱収縮によって、励磁システムの構成要素が変位すること及び動くことを可能にする。
【0053】
本発明の様々な態様及び実施形態が以下に規定される。
[実施形態1]
超電導磁石用の超電導回路であって、 前記超電導回路は、
第1の温度を規定する第1の温度領域、
第2の温度を規定する第2の温度領域であって、前記第2の温度は前記第1の温度よりも高い、第2の温度領域、
前記第1の温度領域内に配置された少なくとも1つの第1の構成要素、
前記第2の温度領域内に配置された少なくとも1つの第2の構成要素、及び
励磁システムであって、
前記第1の構成要素と前記第2の構成要素とを電気的に結合する少なくとも1つのフレキシブル接続部を含み、
前記フレキシブル接続部は、異なる第1の温度及び第2の温度によって引き起こされる熱膨張及び熱収縮によって、前記第1の構成要素と前記第2の構成要素が変位すること及び動くことを可能にする
励磁システム
を含む、超電導回路。
[実施形態2]
前記第1の構成要素は複数の超電導コイルを含み、前記第2の構成要素は前記複数の超電導界磁コイルを囲む少なくとも1つの熱シールドを含み、前記励磁システムは前記複数の超電導コイルに通電するように構成されている、実施形態1に記載の超電導回路。
[実施形態3]
前記励磁システムは、更に、複数の高電流リード線と超電導スイッチを含む、実施形態2に記載の超電導回路。
[実施形態4]
前記複数の高電流リード線は、一対の高温超電導体(HTS)リード線と一対の抵抗リード線とを更に含み、前記一対の抵抗リード線は、真空容器を貫通し、少なくとも1つのフレキシブル接続部を介して前記一対のHTSリード線に結合された1つ又は複数のフィードスルー電力線であり、前記一対のHTSリード線は、複数の超電導界磁コイル及び前記超電導スイッチに結合されている、実施形態3に記載の超電導回路。
[実施形態5]
前記超電導スイッチは、前記複数の超電導界磁コイルの支持構造と機械的及び熱的に結合したコールドプレートに設置され、
前記一対のHTSリード線は、前記コールドプレートに固定されている、実施形態4に記載の超電導回路。
[実施形態6]
前記一対のHTSリード線と前記一対の抵抗リード線との接続部は、前記少なくとも1つのフレキシブル接続部と熱プレートとを含む、実施形態4又は5に記載の超電導回路。
[実施形態7]
前記一対の抵抗リード線は、銅、真鍮、リン青銅、又はそれらの組合せを含む、実施形態4~6に記載の超電導回路。
[実施形態8]
前記第1の温度は約10ケルビン(K)よりも低い温度であり、前記第2の温度は約35Kから約55Kの間の温度である、実施形態1~7のうちのいずれかの実施形態に記載の超電導回路。
[実施形態9]
前記第1の温度及び前記第2の温度よりも高い第3の温度を規定する第3の温度領域を更に含み、前記第3の温度領域内に第3の構成要素が配置され、前記第3の構成要素は、前記少なくとも1つのフレキシブル接続部の第2のフレキシブル接続部を介して前記第2の構成要素に接続される、実施形態1~8のうちのいずれかの実施形態に記載の超電導回路。
[実施形態10]
前記第2の構成要素は、少なくとも1つの電気構成要素が配置された熱シールドを含み、前記第3の構成要素は、少なくとも1つの電気構成要素が配置された真空容器を含む、実施形態9に記載の超電導回路。
[実施形態11]
前記少なくとも1つのフレキシブル接続部は、編組ワイヤを含んでいる、実施形態1~10のうちのいずれかの実施形態に記載の超電導回路。
[実施形態12]
超電導磁石の複数の超電導コイルに通電するための励磁システムであって、前記励磁システムは、
第1の温度と第2の温度とを接続する少なくとも1つの高温超電導体(HTS)リード線であって、前記第2の温度は前記第1の温度とは異なる温度である、少なくとも1つの高温超電導体(HTS)リード線、
別の第3の温度に配置された電源であって、前記励磁システムに電力を供給して前記複数の超電導コイルに通電するための電源、及び
前記第1の温度の前記少なくとも1つのHTSリード線と前記第2の温度の前記電源との間に電気的に結合された少なくとも1つのフレキシブル接続部と、
前記少なくとも1つのフレキシブル接続部は、異なる第1及び第2の温度によって引き起こされる熱膨張及び熱収縮によって、前記励磁システムの構成要素が変位すること及び動くことを可能にする、励磁システム。
[実施形態13]
前記電源は、前記超電導磁石の真空容器及び熱シールドを貫通する1つ又は複数のフィードスルー電力線を含む、実施形態12に記載の励磁システム。
[実施形態14]
前記1つ又は複数のフィードスルー電力線に結合され、少なくとも部分的に前記熱シールド内に配置される1つ又は複数のロッド部材を更に含む、実施形態13に記載の励磁システム。
[実施形態15]
前記少なくとも1つのフレキシブル接続部は、少なくとも1つの第1のフレキシブル接続部及び少なくとも1つの第2のフレキシブル接続部を含み、前記少なくとも1つの第1のフレキシブル接続部は、前記1つ又は複数のロッド部材と、少なくとも1つの熱プレートの第1の部分とに結合され、前記少なくとも1つの第2のフレキシブル接続部は、前記少なくとも1つの熱プレートの第2の部分と、少なくとも1つのHTSリード線とに結合される、実施形態14に記載の励磁システム。
[実施形態16]
超電導スイッチを更に含み、前記少なくとも1つのHTSリード及び前記超電導スイッチは前記複数の超電導コイルに結合されている、実施形態12~15に記載の励磁システム。
[実施形態17]
超電導磁石の複数の超電導コイルに通電する方法であって、前記方法は、
励磁システムを、複数の超電導コイルと、前記超電導磁石の少なくとも1つの他の構成要素とに結合することであって、前記複数の超電導コイル及び前記少なくとも1つの他の構成要素は異なる温度に維持され、前記励磁システムは、電源、少なくとも1つの高温超電導体(HTS)リード線、及び前記電源と前記少なくとも1つのHTSリード線との間に電気的に結合された少なくとも1つのフレキシブル接続部を有する、結合すること、及び
前記電源によって前記励磁システムに電力を供給し、前記複数の超電導コイルに通電すること
を含み、
前記少なくとも一つのフレキシブル接続部は、異なる温度によって引き起こされる熱膨張及び熱収縮によって、前記励磁システムの構成要素が変位すること及び動くことを可能にする、方法。
[実施形態18]
前記電源は、前記超電導磁石の真空容器及び熱シールドを貫通する一つ又は複数のフィードスルー電力線を含む、実施形態17に記載の方法。
[実施形態19]
1つ又は複数のロッド部材を前記1つ又は複数のフィードスルー電力線に結合することを更に含む、実施形態18に記載の方法。
[実施形態20]
前記少なくとも1つのフレキシブル接続部は、少なくとも1つの第1のフレキシブル接続部及び少なくとも1つの第2のフレキシブル接続部を含み、前記方法は、
前記少なくとも1つの第1のフレキシブル接続部を、少なくとも1つの熱プレートの第1の部分において前記1つ又は複数のロッド部材に結合すること、及び
前記少なくとも1つの第2のフレキシブル接続部を、前記少なくとも1つの熱プレートの第2の部分及び前記少なくとも1つのHTSリード線に結合すること
を更に含む、実施形態19に記載の方法。
【0054】
本明細書の記載は、実施例を使用して、本開示(ベストモードを含む)を開示し、また、本開示を当業者が実施できるようにする(任意の装置又はシステムを製造及び使用すること並びに組み込まれた任意の方法を実行することなど)ものである。本開示の特許性のある範囲は、特許請求の範囲で規定されており、当業者が思い浮かぶ他の例を含むことができる。そのような他の例は、特許請求の範囲の字義通りの文言と異ならない構造要素を有する場合、又は特許請求の範囲の字義通りの文言と実質的な差異がない等価な構造要素を含む場合、特許請求の範囲内にあることが意図されるものである。
【符号の説明】
【0055】
10 超電導磁石
12 断熱容器
13 真空容器
14 冷却システム
15 冷却タンク
16 超電導回路
17 冷却媒体
18 電源
19 タンク壁
20 励磁システム
21 導管
22 超電導巻線
23 超電導コイル
23 超電導界磁コイル
24 熱伝導部材
25 超電導スイッチ
26 第1の端部
28 第2の端部
29 内部構造
30 熱交換器
32 熱伝導性ロッド
34 支持構造
36 熱シールド
38 コールドマス
40 クライオクーラ
44 バスバー
100 励磁システム
104 電流リード
106 超電導スイッチアセンブリ
108 フレキシブル接続部
112 超電導スイッチ
114 電気的保護ダイオード
118 抵抗リード線
119 電力コネクタ
120 HTSリード線
121 導電性ロッド
122 点線
123 カップリング
124 熱プレート
125 コールドプレート
200 方法
【手続補正書】
【提出日】2025-09-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導磁石用の超電導回路であって、前記超電導回路は、
第1の温度を規定する第1の温度領域、
第2の温度を規定する第2の温度領域であって、前記第2の温度は前記第1の温度よりも高い、第2の温度領域、
前記第1の温度領域内に配置された少なくとも1つの第1の構成要素、
前記第2の温度領域内に配置された少なくとも1つの第2の構成要素、及び
励磁システムであって、
前記第1の構成要素と前記第2の構成要素とを電気的に結合する少なくとも1つのフレキシブル接続部を含み、
前記フレキシブル接続部は、異なる第1の温度及び第2の温度によって引き起こされる熱膨張及び熱収縮によって、前記第1の構成要素と前記第2の構成要素が変位すること及び動くことを可能にする
励磁システム
を含む、超電導回路。
【請求項2】
前記第1の構成要素は複数の超電導コイルを含み、前記第2の構成要素は前記複数の超電導界磁コイルを囲む少なくとも1つの熱シールドを含み、前記励磁システムは前記複数の超電導コイルに通電するように構成されている、請求項1に記載の超電導回路。
【請求項3】
前記励磁システムは、更に、複数の高電流リード線と超電導スイッチを含む、請求項2に記載の超電導回路。
【請求項4】
前記複数の高電流リード線は、一対の高温超電導体(HTS)リード線と一対の抵抗リード線とを更に含み、前記一対の抵抗リード線は、真空容器を貫通し、少なくとも1つのフレキシブル接続部を介して前記一対のHTSリード線に結合された1つ又は複数のフィードスルー電力線であり、前記一対のHTSリード線は、複数の超電導界磁コイル及び前記超電導スイッチに結合されている、請求項3に記載の超電導回路。
【請求項5】
前記超電導スイッチは、前記複数の超電導界磁コイルの支持構造と機械的及び熱的に結合したコールドプレートに設置され、
前記一対のHTSリード線は、前記コールドプレートに固定されている、請求項4に記載の超電導回路。
【請求項6】
前記一対のHTSリード線と前記一対の抵抗リード線との間の接続部は、前記少なくとも1つのフレキシブル接続部と熱プレートとを含む、請求項4又は5に記載の超電導回路。
【請求項7】
前記一対の抵抗リード線は、銅、真鍮、リン青銅、又はそれらの組合せを含む、請求項4~6のうちのいずれか一項に記載の超電導回路。
【請求項8】
前記第1の温度は約10ケルビン(K)よりも低い温度であり、前記第2の温度は約35Kから約55Kの間の温度である、請求項1~7のうちのいずれか一項に記載の超電導回路。
【請求項9】
前記第1の温度及び前記第2の温度よりも高い第3の温度を規定する第3の温度領域を更に含み、前記第3の温度領域内に第3の構成要素が配置され、前記第3の構成要素は、前記少なくとも1つのフレキシブル接続部の第2のフレキシブル接続部を介して前記第2の構成要素に接続される、請求項1~8のうちのいずれか一項に記載の超電導回路。
【請求項10】
前記第2の構成要素は、少なくとも1つの電気構成要素が配置された熱シールドを含み、前記第3の構成要素は、少なくとも1つの電気構成要素が配置された真空容器を含む、請求項9に記載の超電導回路。
【請求項11】
前記少なくとも1つのフレキシブル接続部は、編組ワイヤを含んでいる、請求項1~10のうちのいずれか一項に記載の超電導回路。
【請求項12】
超電導磁石の複数の超電導コイルに通電する方法であって、前記方法は、
励磁システムを、複数の超電導コイルと、前記超電導磁石の少なくとも1つの他の構成要素とに結合することであって、前記複数の超電導コイル及び前記少なくとも1つの他の構成要素は異なる温度に維持され、前記励磁システムは、電源、少なくとも1つの高温超電導体(HTS)リード線、及び前記電源と前記少なくとも1つのHTSリード線との間に電気的に結合された少なくとも1つのフレキシブル接続部を有する、結合すること、及び
前記電源によって前記励磁システムに電力を供給し、前記複数の超電導コイルに通電すること
を含み、
前記少なくとも一つのフレキシブル接続部は、異なる温度によって引き起こされる熱膨張及び熱収縮によって、前記励磁システムの構成要素が変位すること及び動くことを可能にする、方法。
【請求項13】
前記電源は、前記超電導磁石の真空容器及び熱シールドを貫通する一つ又は複数のフィードスルー電力線を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
1つ又は複数のロッド部材を前記1つ又は複数のフィードスルー電力線に結合することを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つのフレキシブル接続部は、少なくとも1つの第1のフレキシブル接続部及び少なくとも1つの第2のフレキシブル接続部を含み、前記方法は、
前記少なくとも1つの第1のフレキシブル接続部を、少なくとも1つの熱プレートの第1の部分において前記1つ又は複数のロッド部材に結合すること、及び
前記少なくとも1つの第2のフレキシブル接続部を、前記少なくとも1つの熱プレートの第2の部分及び前記少なくとも1つのHTSリード線に結合すること
を更に含む、請求項14に記載の方法。
【国際調査報告】