特表-13160949IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2013年10月31日
【発行日】2015年12月21日
(54)【発明の名称】空気調和装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/02 20060101AFI20151124BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20151124BHJP
【FI】
   F24F11/02 102F
   F25B1/00 304P
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】16
【出願番号】特願2014-512018(P2014-512018)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2012年4月26日
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098604
【弁理士】
【氏名又は名称】安島 清
(74)【代理人】
【識別番号】100087620
【弁理士】
【氏名又は名称】高梨 範夫
(74)【代理人】
【識別番号】100125494
【弁理士】
【氏名又は名称】山東 元希
(74)【代理人】
【識別番号】100141324
【弁理士】
【氏名又は名称】小河 卓
(74)【代理人】
【識別番号】100153936
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 健誠
(74)【代理人】
【識別番号】100160831
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 元
(74)【代理人】
【識別番号】100166084
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 堅太郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 航祐
(72)【発明者】
【氏名】牧野 浩招
(72)【発明者】
【氏名】坂部 昭憲
(72)【発明者】
【氏名】有山 正
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AB02
3L260BA23
3L260CA12
3L260CB14
3L260CB18
3L260DA08
3L260FB07
(57)【要約】
空気調和装置の冷凍サイクルを構成する圧縮機3および負荷側熱交換器6の仕様、および空気調和装置の運転状態に基づき、絞り装置7の開度変更時の応答時定数を推測する時定数演算手段20と、時定数演算手段20の演算結果に基づき、絞り装置7の開度の制御ゲインもしくは制御間隔の少なくとも1つの値を演算する制御定数演算手段21と、制御定数を変更する制御定数変更手段22とを備えた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷側熱交換器で構成された1つ以上の負荷側ユニットと、圧縮機、熱源側熱交換器、および絞り装置を備えた熱源側ユニットとを接続し、それらの間に冷媒を循環させることで冷凍サイクルを形成する空気調和装置であって、
前記空気調和装置の前記冷凍サイクルの運転状態量を計測する計測部と、
前記冷凍サイクルを構成する圧縮機の仕様、凝縮器熱交換器の仕様、および前記冷凍サイクルの運転状態量を基に、前記絞り装置の開度変更時の応答時定数を推測する時定数演算手段と、前記時定数演算手段の演算結果および、前記計測部の計測結果に基づき、前記絞り装置の開度の制御ゲインもしくは制御間隔の少なくとも1つの値を演算する制御定数演算手段と、前記制御定数演算手段の演算結果をもとに制御ゲインもしくは制御間隔を変更する制御定数変更手段と、前記制御定数に基づき前記絞り装置の開度を変更する絞り装置制御手段とで構成された制御部と、
を備えた空気調和装置。
【請求項2】
前記制御間隔は、前記時定数演算手段にて演算される応答時定数の3倍以下になるように設定される請求項1に記載の空気調和装置。
【請求項3】
前記時定数演算手段において応答時定数を推測する際に、前記圧縮機の運転周波数の情報が利用される請求項1または2に記載の空気調和装置。
【請求項4】
前記時定数演算手段において応答時定数を推測する際に、前記熱源側熱交換器の内容積、前記負荷側熱交換器の内容積、および前記圧縮機の押しのけ量のうち少なくとも1つの情報が利用される請求項3に記載の空気調和装置。
【請求項5】
前記時定数演算手段において応答時定数を推測する際に、前記圧縮機の体積効率が利用され、前記体積効率を前記圧縮機の吐出圧力、吸入圧力および運転周波数から推測することを特徴とする請求項3または4に記載の空気調和装置。
【請求項6】
前記時定数演算手段で推定する前記応答時定数は、
整定時間が最小値となる固有値=(前記制御間隔/前記制御ゲイン比)/(前記応答時定数+無駄時間)の関係を満たし、
前記整定時間は、制御目標の対象が制御目標値を中心として所定範囲内に収まるまでの時間、
前記ゲイン比は、前記制御ゲインを一回の操作で制御目標値に到達するための前記制御目標対象の応答ゲインで割った値、
前記無駄時間は、前記絞り装置に対する開度変更指令発信時点から前記制御目標対象に変化が現れるまでの時間、
であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の空気調和装置。
【請求項7】
前記無駄時間をゼロとみなして前記応答時定数を推定する請求項6に記載の空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクルに係り、特に冷凍サイクルの状態量を制御するのに好適な、電動式膨張弁の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動式膨張弁を使用して冷媒の温度や圧力等の冷凍サイクルの状態量が所定の値となるように冷媒流量を制御する方法として、室内温度、外気温度および圧縮機回転数に応じて、あらかじめマイクロコンピュータに記憶されているPID制御の制御ゲインを演算し、PID制御により電動式膨張弁を駆動して、冷媒流量を制御する方法が提案されている。(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
また、複数接続された、室内機の運転台数や、制御目標との偏差に応じて、あらかじめマイクロコンピュータにテーブルとして記憶されているPID制御の制御ゲインや制御間隔を決定し、PID制御により電動式膨張弁を駆動して、冷媒流量を制御する方法が提案されている。(たとえば、特許文献2参照)。
【0004】
また、電動式膨張弁の開度や圧縮機運転容量や制御目標との偏差に応じて、PID制御の制御ゲインや制御間隔を決定し、PID制御により電動式膨張弁を駆動して、冷媒流量を制御する方法が提案されている。(たとえば、特許文献3参照)。
【0005】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2515716号(第3頁、第6図)
【特許文献2】特開平3−28676(第5頁、表2)
【特許文献3】特開2001−012808(第7頁、第図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の空気調和装置には以下のような問題があった。まず、特許文献1記載の制御においては、PID制御の制御ゲインは該空気調和装置のシステム固有の値であるため、冷媒の種類や、空気調和装置の熱交換器の内容積が異なる場合は、時定数や無駄時間が異なる。したがって、空気調和装置の仕様もしくは機種が変わった場合は、その都度、試験やシミュレーションによって、最適な制御ゲインや制御間隔を求め、マイクロコンピュータに記憶する必要があるため、膨大な記憶領域が必要であり、定数決定のために膨大な時間を費やす必要があるといった課題があった。
【0008】
また、特許文献2記載、特許文献3記載の制御においては、稼動室内機台数や制御目標との偏差に応じてゲインや制御間隔を決定しているが、制御定数がテーブル保持であるため、室内外の環境条件や、冷媒循環量などの運転状態が変わった場合でも一定値(固定値)となっており、冷凍サイクルの高圧、低圧などの運転状態が変わった場合の影響が考慮されていない。したがって、環境条件や運転状態に応じて常に最適な状態で制御することが困難である。そのため、冷凍サイクルの系が安定せず、ハンチングを引き起こし空調能力が安定しない。また、場合によっては、オーバーシュート量が大きく高圧の過昇もしくは低圧の低下に至り、空調機器の動作保護のため停止させなければならない事態に陥るといった課題があった。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、空気調和装置の運転状態、システム構成に応じて、電動式膨張弁の制御ゲインもしくは制御間隔を適性化し、制御対象の値が制御目標となるように常に最短の整定時間でオーバーシュートを抑制でき、最適制御可能な空気調和装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するために、この発明は以下の手段を講じたものである。
【0011】
本発明に係る空気調和装置は、負荷側熱交換器で構成された1つ以上の負荷側ユニットと、圧縮機、熱源側熱交換器、および絞り装置を備えた熱源側ユニットとを接続し、それらの間に冷媒を循環させることで冷凍サイクルを形成する空気調和装置であって、前記空気調和装置の前記冷凍サイクルの運転状態量を計測する計測部と、前記冷凍サイクルを構成する圧縮機の仕様、凝縮器熱交換器の仕様、および前記冷凍サイクルの運転状態量を基に、前記絞り装置の開度変更時の応答時定数を推測する時定数演算手段と、前記時定数演算手段の演算結果および、前記計測部の計測結果に基づき、前記絞り装置の開度の制御ゲインもしくは制御間隔の少なくとも1つの値を演算する制御定数演算手段と、前記制御定数演算手段の演算結果をもとに制御ゲインもしくは制御間隔を変更する制御定数変更手段と、前記制御定数に基づき前記絞り装置の開度を変更する絞り装置制御手段とで構成された制御部と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0012】
空気調和装置を構成する圧縮機の仕様、負荷側熱交換器の仕様、および冷凍サイクルの運転状態量に応じて、最適な時間間隔もしくは制御ゲインで、絞り装置を制御するため、オーバーシュートすることなく迅速に安定な冷凍サイクル状態を得ることができ、一層の省エネ性および快適性、製品品質の向上を計ることができる。
また、冷凍サイクルが短時間で安定化するので、絞り装置を構成している電動式膨張弁を駆動する駆動部の変更量が減少するため、電動式膨張弁の摺動部の摩耗が抑えられ、信頼性の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態1に係る空気調和装置のシステム図。
図2】本発明の実施の形態1に係る空気調和装置のp−h線図。
図3】無駄時間+1次遅れ系での制御対象が制御目標値に制御されるときの変化を表す概念図。
図4】最大行過ぎ比を固定した場合の、制御間隔、時定数、無駄時間、応答ゲイン、制御ゲインの関係を示す図。
図5】制御間隔、時定数、無駄時間、制御ゲイン比に対する行過ぎ比および整定時間の関係を示す図。
図6】凝縮器内容積、圧縮機周波数、体積効率と吸入過熱度の応答時定数の関係を示す図。
図7】本発明の実施の形態1に係る空気調和装置において、制御間隔を固定した場合の絞り装置の制御フローチャート。
図8】本発明の実施の形態1に係る空気調和装置において、制御ゲイン比を固定した場合の絞り装置の制御フローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1.
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図1は本発明に係る実施の形態1の空気調和装置100の冷媒回路図である。空気調和装置100は、室外機1と室内機2を備えている。室外機1には圧縮機3、暖房と冷房の運転切換を行う流路切換弁としての四方弁4、絞り装置7、室外熱交換器(熱源側熱交換器)9が搭載されている。また、室内機2には室内熱交換器(負荷側熱交換器)6が搭載されている。
【0016】
圧縮機3はインバータにより回転数が制御され容量制御されるタイプである。
【0017】
また、絞り装置7は開度が可変に制御される電動式膨張弁である。室外熱交換器9はファンなどで送風される外気と熱交換する。ガス管5、液管8は室外機1と室内機2を接続する接続配管である。
【0018】
空気調和装置100の冷凍サイクルに使用できる冷媒には、非共沸混合冷媒や擬似共沸混合冷媒、単一冷媒等がある。非共沸混合冷媒には、HFC(ハイドロフルオロカーボン)冷媒であるR407C(R32/R125/R134a)等がある。この非共沸混合冷媒は、沸点が異なる冷媒の混合物であるので、液相冷媒と気相冷媒との組成比率が異なるという特性を有している。擬似共沸混合冷媒には、HFC冷媒であるR410A(R32/R125)やR404A(R125/R143a/R134a)等がある。この擬似共沸混合冷媒は、非共沸混合冷媒と同様の特性の他、R22の約1.6倍の動作圧力という特性を有している。
【0019】
また、単一冷媒には、HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)冷媒であるR22やHFC冷媒であるR134a、HFO冷媒(ハイドロフルオロオレフィン)であるR1234yf、R1234ze等がある。この単一冷媒は、混合物ではないので、取扱いが容易であるという特性を有している。その他、自然冷媒である二酸化炭素やプロパン、イソブタン、アンモニア等を使用することもできる。なお、R22はクロロジフルオロメタン、R32はジフルオロメタンを、R125はペンタフルオロエタンを、R134aは1,1,1,2−テトラフルオロエタンを、R143aは1,1,1−トリフルオロエタンをそれぞれ示している。したがって、空気調和装置100の用途や目的に応じた冷媒を使用するとよい。
【0020】
室外機1には計測制御装置18及び複数の温度センサが設置されている。温度センサ43が圧縮機3の吐出側、温度センサ44が圧縮機3の吸入側、温度センサ45が室外熱交換器9と絞り装置7の間、のそれぞれ設置場所の冷媒温度を計測する。さらに、室外機1には圧力センサ51、52が設置されており、圧力センサ51は圧縮機3の吸入冷媒の圧力を、圧力センサ52は圧縮機3の吐出冷媒の圧力をそれぞれ計測する。
【0021】
室内機2には温度センサ41、42が設置されている。温度センサ42は室内熱交換器6と絞り装置7の間に設けられており、そこを流れる冷媒温度を計測する。温度センサ41は室内熱交換器6に吸気される空気温度を計測する。なお、負荷となる熱媒体が水など他の媒体である場合には温度センサ41はその媒体の流入温度を計測する。
【0022】
室外機1の計測制御装置18は、各センサや空気調和装置の利用者から指示される運転情報を計測する計測部16と、計測された情報を基に、圧縮機3の運転方法、四方弁4の流路切換、室外熱交換器9のファン送風量、絞り装置7の開度などを制御する制御部17から構成されている。なお、図1では、操作対象が絞り装置の場合のみを示しており、他の操作対象については図示していない。また、計測部16は、室内熱交換器6と室外熱交換器9の内容積、および圧縮機の(流体)押しのけ量に係る情報を、あらかじめ保持しているものとする。
【0023】
次に、この空気調和装置100の冷房運転動作について、図1を基に説明する。冷房運転時には、四方弁4の流路は図1の実線方向に設定される。そして圧縮機3から吐出された高温高圧のガス冷媒は四方弁4を経て凝縮器となる室外熱交換器9で放熱しながら凝縮液化し高圧の液冷媒となる。室外熱交換器9を出た高圧の冷媒は、絞り装置7で減圧された後、液管8を経由して、室内機2に流入し、蒸発器である室内熱交換器6に流入し、そこで吸熱し、蒸発ガス化される。室内機側の空気や水などの負荷側媒体の熱を吸熱することで冷房を行う。その後、ガス管5を経て室外機1に流入する。そして、四方弁4を経て、圧縮機3に吸入される。
【0024】
空気調和装置100では、室内側の熱負荷等に応じて空気調和装置1に要求される冷房能力が変化するため、このような冷房運転時に要求される冷房能力の変化に対応できるようにする必要がある。そこで、空気調和装置100では、室内側(負荷側)の温度センサ41によって検出される温度が、空気調和装置利用者から指示される室内温度に近づくように、圧縮機3の運転容量を変更する制御を行っている。ここで、圧縮機3の運転容量の制御は、圧縮機3の運転周波数fを変更することによって行われる。
【0025】
次に、本発明の特徴に係る絞り装置7の制御方法の一例を、図2を用いて説明する。空気調和装置100は、圧縮機3の吸入冷媒の過熱度SHが目標過熱度SHmになるように、絞り装置7の開度を制御している。ここで、圧縮機3の吸入における冷媒の過熱度SHは、圧力センサ51によって検出される吸入圧力Psと圧縮機3の吸入部の温度センサ44によって検出される冷媒の温度Tsから算出される。より具体的には、まず、圧力センサ51によって検出される吸入圧力Psを冷媒の飽和温度に換算して、蒸発温度Teを得る。そして、温度センサ44によって検出される冷媒の温度Tsから蒸発温度Teを差し引くことによって過熱度SHを得る。
【0026】
ここで、現在の圧縮機の吸入状態が図2の(d)の状態であるとき、この時の過熱度SHとして、絞り装置7を一回の操作で開き、目標過熱度SHmの状態、図2の(d2)に制御できたとする。このとき、冷凍サイクルの高圧、低圧の変化がなく、室内熱交換器6での冷房能力が等しいと仮定する。絞り装置7の開口面積を制御する電動パルスモータの駆動開度をLP[パルス]とすると、絞り装置7を流通する冷媒循環量はLPに比例する。現在の開度をLP、一回の操作で目標過熱度SHmに制御するのに必要な開度変更量をΔLPとする。また、制御対象である現在の過熱度SHと目標過熱度SHmの偏差をΔSHm=SH−SHmとすると、(d)と(d2)の比エンタルピー差ΔHs[kJ/kg]は、次式で表すことができる。
【0027】
(数1)
ΔHs=Cpg×ΔSHm (式1)
【0028】
ここで、Cpgは定圧ガス比熱[kJ/kgK]である。この値は、具体的には、圧力センサ51の圧力と圧縮機3の吸入部の温度センサ44から演算される。また、絞り装置7の操作の前後で冷房能力が一定であるという仮定と、冷媒循環量がLPに比例するという仮定から、次式が成り立つ。
【0029】
(数2)
LP×(ΔHe+ΔHs)=(LP+ΔLP)×ΔHe (式2)
【0030】
ここで、ΔHeは圧縮機3の吸入過熱度が目標過熱度SHmであるときの、蒸発器(冷房の場合、室内熱交換器6)での冷媒のエンタルピー変化を表す。エンタルピー差ΔHeは、具体的には、圧力センサ51の圧力から求まる飽和ガス温度に目標過熱度SHmを足し合わせた温度から演算されるエンタルピーHeoから、圧力センサ52と絞り装置7の入口の温度センサ45から演算されるエンタルピーHeiを差し引くことによって演算可能である。式1を式2に代入して整理すると、次式が成り立つ。
【0031】
(数3)
ΔLP=Cpg/ΔHe×LP×ΔSHm (式3)
【0032】
式3は、制御対象の偏差ΔSHmと操作量ΔLPの関係を表しているため、右辺のCpg/ΔHe×LPは、一回の操作で制御目標に到達するための制御対象の応答ゲイン(以下、K∞と表記)を表している。
【0033】
空気調和装置100の制御は、ある制御間隔CI[sec]で制御されることになるので、応答ゲインK∞で制御すると、一回の制御動作でよい操作量になるところを複数回動作させることになるため、場合によっては動かし過ぎになり、ハンチングを引き起こす。そのため実際の制御ゲイン(以下、Kと表記)は、応答ゲインK∞よりも小さい値を選定する必要がある。選定すべき最適制御ゲインKを求めるため、過熱度SHの変化を「無駄時間+1次遅れ」系とし、この系に対する制御応答特性を定量化する。
【0034】
「無駄時間+1次遅れ」系の制御対象の応答特性を図3に示す。制御系において制御ゲインをある値に設定して、操作量をステップ上に変化させ制御量の応答特性をとると図3のようになる。制御量が制御目標値を超えた最大値は、行過ぎ量あるいはオーバーシュートと一般的に言われている。また、制御量が制御目標値を中心として、所望の許容範囲である整定範囲内に収まるまでの時間は、整定時間STと言われている。制御目標値と現在の制御量の偏差をA、行過ぎ量をaとし、a/Aを行過ぎ比として定義する。また、無駄時間DTは、絞り装置7に対する開度変更指令発信時点から制御目標対象に変化が現れるまでの時間とも言える。
【0035】
空気調和装置としては、省エネ性や負荷追従性の観点から、速い目標値応答を求められるが、整定時間を短くすると行過ぎ比が大きくなる。また、条件によっては、行過ぎ比が許容されない場合がある。例えば、R32冷媒のような高圧冷媒は、冷媒の特性上比熱比が大きく、圧縮機の吐出温度が上昇しやすい。吐出温度を制御対象とする場合は、行過ぎ比が大きい場合は、吐出温度の上昇により圧縮機3のモータに使用されている磁石の減磁による圧縮機の効率低下、冷凍機油の焼き付きによる損傷があるため、行過ぎ比を小さくする必要がある。
【0036】
図4は、行過ぎ比が所望の整定範囲の最大値となる状態を示した図である。つまり、整定時間最小となる最適な状態の、制御間隔CI、時定数τ、無駄時間DTに対する、応答ゲインK∞に対する制御ゲインKの比率として定義する制御ゲイン比β(=K/K∞)の関係を示したものである。横軸、縦軸ともに無次元化されているため、「無駄時間+1次遅れ」の系であれば常にこの関係が成立する。例えば、制御間隔CIおよび無駄時間DTが一定の場合、時定数τが大きいほど、系の応答は遅いため、制御ゲイン比βを小さくする必要あることを示している。また、時定数τおよび無駄時間DTが一定の場合、制御間隔CIが短いほど、制御ゲイン比βを小さくする必要があることを示している。
【0037】
このように、例えば、制御間隔CIが固定の場合、対象の系の時定数τ、無駄時間DTに応じて制御ゲイン比βを演算し、制御ゲインKを決定することで、常に所望の行過ぎ比以下で整定時間が最小となる最適な運転が実現できる。
【0038】
図5は、制御間隔CI、時定数τ、無駄時間DT、制御ゲイン比βをパラメータとして、行過ぎ比a/A、整定時間STの関係を示したものである。図5の上段のグラフ501、グラフ502の横軸は、ξ=(制御間隔CI/制御ゲイン比β)/(時定数τ+無駄時間DT)と定義した無次元化パラメータ又は指標である。
図5のグラフ501は、縦軸が行過ぎ比であり、例えば、制御ゲイン比β、時定数τ、無駄時間DTを固定した場合、制御間隔CIが大きいほど、行過ぎ比が小さくなることを示している。
【0039】
図5のグラフ502は、縦軸が整定時間に相当するものであり、例えば、制御間隔CI、時定数τ、無駄時間DTを固定した場合、制御ゲイン比βが整定時間最小となるパラメータξmでのβ(図中B)よりも大きい時(図中A)、行過ぎ比が増大し、ハンチングが増大するため、整定時間が長くなることを示している。また、逆に制御ゲイン比βが整定時間最小となるパラメータξmでのβ(図中B)よりも小さい時(図中C)、行過ぎ比は小さいが、変化量が小さく整定時間が長くなることを示している。
【0040】
整定時間最小となるパラメータξmは、制御対象の系の許容整定範囲の設定によって決まる固有値(具体的には2〜3)である。一方、制御対象の系の、時定数τ、無駄時間DTは運転状態によって決まる。したがって、整定時間最小となるパラメータξm=(制御間隔CI/制御ゲイン比β)/(時定数τ+無駄時間DT)の関係を満たすように、制御間隔CIまたは制御ゲイン比βの少なくとも1つの値を変更することで、常に所望の行過ぎ比以下で整定時間が最小となる最適な運転が実現できる。
【0041】
ここで、制御対象の時定数τについて図6を用いて説明する。過熱度SHの時定数τは、一次遅れ系と仮定すると、質量保存則から、存在冷媒量が大きい凝縮器の内容積Vcond[m]を圧縮機3の押しのけ量Vst[m]と圧縮機周波数f[Hz]と圧縮機の体積効率ηv[−]とを掛け合わせたもので割った値と線形な相関式を導くことができる。したがって、室内熱交換器6の内容積、室外熱交換器9の内容積および圧縮機3の押しのけ量をあらかじめ情報として保持しておくことで、制御部17によって指定される圧縮機周波数fより、過熱度SHの時定数τを推測することが可能となる。圧縮機の体積効率ηvは固定値(例えば0.9)としてもよいし、圧縮機の運転周波数fおよび圧力センサ52によって計測される高圧と圧力センサ51によって計測される低圧との圧縮比の関数として演算してもよい。
【0042】
また、整定時間最小となるパラメータξmの固有値は2〜3程度であり、無駄時間DTは、ほぼゼロと仮定した場合、制御ゲイン比βは1以下の値であることから、制御対象の系の、時定数τに対して、制御間隔CIは、3倍以下に設定すればよい。つまり、制御ゲイン比βが大きい場合は、制御間隔CIも大きくなり、電動式膨張弁を駆動する駆動部の駆動回数が減少するため、電動式膨張弁の摺動部の摩耗が抑えられ、信頼性の向上が図れる。
【0043】
次に、以上の制御応答性を考慮した絞り装置7の過熱度SHの制御を、図7および図8のフローチャートを用いて説明する。
図7は、制御間隔CIを固定した場合の制御フローチャートである。まず、計測制御装置18にて制御間隔CIおよび過熱度目標値SHmをあらかじめ設定しておく(S1)。なお、過熱度目標値SHmは、冷凍サイクルの省エネ性から小さい値ほど省エネ効果が大きい。次に、計測部16にて、圧縮機3の過熱度SH、絞り装置7の現在の開度LPnowを計測する(S2)。次に、凝縮器内容積Vcond、圧縮機3の圧縮機周波数f、圧縮機3の押しのけ量Vstおよび圧縮機3の体積効率ηvの情報から、時定数演算手段20にて時定数τを推測する(S3)。なお、凝縮器内容積は、空調機の馬力比例なので、圧縮機の最大運転容量などからある程度推測でき、一方、圧縮機の押しのけ量も空調機の馬力からある程度推測可能である。
次に、制御定数演算手段21にて、制御ゲイン比βを制御間隔CI、整定時間最小固有パラメータξm(固有値)、時定数τおよび無駄時間DTを用いて演算する(S4)。ここで、無駄時間DTは、ほぼ0であるため、固定値としてあらかじめ設定しておいてもよい。次に、前回の絞り装置7の操作後から制御間隔CI以上経過しているかを判定する(S5)。経過していれば、制御定数演算手段21にて、応答ゲインK∞(=Cpg/Δhe×LPnow)を、冷凍サイクルの運転状態からえた各値を基に演算する(S6)。次に、制御定数演算手段21にて、制御ゲインK(=β×K∞)を演算する(S7)。次に、過熱度SHの目標過熱度SHmとの偏差ΔSHm(=SH−SHm)を演算する(S8)。次に、制御定数変更手段22にて、制御ゲインKを変更し、変更した制御ゲインKと偏差ΔSHmとを掛け合わせて、絞り装置7の開度変更量ΔLP=K×ΔSHmを演算する(S9)。次に、現在の絞り装置7の開度LPnowに開度変更量ΔLPを足し合わせ、絞り開度LP=LPnow+ΔLPを演算し、絞り装置制御手段23にて絞り装置7の開度を、演算した絞り開度LPに設定する(S10)。
【0044】
図8は、制御ゲイン比βを固定した場合の制御フローチャートである。制御方法は、図7に示した方法と基本的に同様であるが、この制御方法では、ステップS4において、最適な制御間隔CIをその都度演算することで、制御間隔が可変になっている点で図7と相違している。
【0045】
以上のように制御することで、空気調和装置のシステム構成や運転状態に応じて、常に所定の許容範囲の行過ぎ比以下で、整定時間が最小となる最適な運転を実現できる。
【0046】
なお、実施の形態1では、冷房運転について説明したが、暖房運転の場合でも上記の制御方法により同様に絞り装置7の制御を実施することができる。暖房の場合は、負荷側熱交換器内容積情報が凝縮器内容積Vcondに置き換わるが、図7図8に対応するフローチャートは同じになる。
また、制御量である冷凍サイクルの状態量を過熱度SHとしたが、圧縮機3の吐出側冷媒温度(温度センサ43の検出温度)または室外熱交換器9出口の過冷却度SCについても、計測制御装置18にあらかじめ設定されている値を変更することにより同様に実施でき、本発明の域を脱するものではない。
【0047】
また、実施の形態1では、負荷側の室内機が1台の場合で説明したが、室内機が複数台あるようなマルチタイプの空気調和装置においても同様の効果を奏する。
【0048】
さらに、実施の形態1では、圧縮機3が容量可変式の圧縮機である場合で説明したが、一定速の圧縮機の空気調和装置においても同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0049】
1 室外機、2 室内機、3 圧縮機、4 四方弁、5 ガス管、6 室内熱交換器(負荷側熱交換器)、7 絞り装置、8 液管、9 室外熱交換器(熱源側熱交換器)、16 計測部、17 制御部、18 計測制御装置、20 時定数演算手段、21 制御定数演算手段、22 制御定数変更手段、23 絞り装置制御手段、41 温度センサ、42 温度センサ、43 温度センサ、44 温度センサ、45 温度センサ、51 圧力センサ、52 圧力センサ、100 空気調和装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8

【手続補正書】
【提出日】2014年10月6日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
本発明に係る空気調和装置は、負荷側熱交換器で構成された1つ以上の負荷側ユニットと、圧縮機、熱源側熱交換器、および絞り装置を備えた熱源側ユニットとを接続し、それらの間に冷媒を循環させることで冷凍サイクルを形成する空気調和装置であって、前記冷凍サイクルの運転状態量を基に、前記絞り装置の開度の制御定数である制御ゲインもしくは制御間隔の少なくとも1つの値を演算する制御定数演算手段と、前記制御定数演算手段の演算結果をもとに前記制御ゲインもしくは前記制御間隔を変更する制御定数変更手段と、前記制御定数に基づき前記絞り装置の開度を変更する絞り装置制御手段と、を備えたものである。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
空気調和装置のシステム構成や運転状態に応じて、常に所定の許容範囲の行過ぎ比以下で、整定時間が最小となる最適な運転を実現できる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷側熱交換器で構成された1つ以上の負荷側ユニットと、圧縮機、熱源側熱交換器、および絞り装置を備えた熱源側ユニットとを接続し、それらの間に冷媒を循環させることで冷凍サイクルを形成する空気調和装置であって、
前記冷凍サイクルの運転状態量を基に、前記絞り装置の開度の制御定数である制御ゲインもしくは制御間隔の少なくとも1つの値を演算する制御定数演算手段と、前記制御定数演算手段の演算結果をもとに前記制御ゲインもしくは前記制御間隔を変更する制御定数変更手段と、前記制御定数に基づき前記絞り装置の開度を変更する絞り装置制御手段と、
を備えた空気調和装置。
【請求項2】
前記運転状態量は、前記冷凍サイクルを構成する前記圧縮機の仕様、および凝縮器として作用する熱交換器の仕様を含む請求項1に記載の空気調和装置。
【請求項3】
前記空気調和装置の前記冷凍サイクルの運転状態量を計測する計測部を備える請求項1または2に記載の空気調和装置。
【請求項4】
前記絞り装置の開度変更時の応答時定数を推測する時定数演算手段を備える請求項1〜3のいずれか1項に記載の空気調和装置。
【請求項5】
前記制御間隔は、前記時定数演算手段にて演算される応答時定数の3倍以下になるように設定される請求項に記載の空気調和装置。
【請求項6】
前記時定数演算手段において応答時定数を推測する際に、前記圧縮機の運転周波数の情報が利用される請求項4または5に記載の空気調和装置。
【請求項7】
前記時定数演算手段において応答時定数を推測する際に、前記熱源側熱交換器の内容積、前記負荷側熱交換器の内容積、および前記圧縮機の押しのけ量のうち少なくとも1つの情報が利用される請求項に記載の空気調和装置。
【請求項8】
前記時定数演算手段において応答時定数を推測する際に、前記圧縮機の体積効率が利用され、前記体積効率を前記圧縮機の吐出圧力、吸入圧力および運転周波数から推測することを特徴とする請求項6または7に記載の空気調和装置。
【請求項9】
前記時定数演算手段で推定する前記応答時定数は、
整定時間が最小値となる固有値=(前記制御間隔/前記制御ゲイン比)/(前記応答時定数+無駄時間)の関係を満たし、
前記整定時間は、制御目標の対象が制御目標値を中心として所定範囲内に収まるまでの時間、
前記ゲイン比は、前記制御ゲインを一回の操作で制御目標値に到達するための前記制御目標対象の応答ゲインで割った値、
前記無駄時間は、前記絞り装置に対する開度変更指令発信時点から前記制御目標対象に変化が現れるまでの時間、
であることを特徴とする請求項4〜8のいずれか一項に記載の空気調和装置。
【請求項10】
前記無駄時間をゼロとみなして前記応答時定数を推定する請求項に記載の空気調和装置。
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図7
【補正方法】変更
【補正の内容】
図7
【国際調査報告】