(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2015年5月14日
【発行日】2017年3月9日
(54)【発明の名称】太陽電池モジュール用裏面保護シートおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 31/049 20140101AFI20170217BHJP
H01L 31/056 20140101ALI20170217BHJP
【FI】
H01L31/04 562
H01L31/04 624
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】15
【出願番号】特願2015-510554(P2015-510554)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2014年11月4日
(31)【優先権主張番号】特願2013-229077(P2013-229077)
(32)【優先日】2013年11月5日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】000206473
【氏名又は名称】大倉工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】野口 克弘
(72)【発明者】
【氏名】岩城 優介
(72)【発明者】
【氏名】笠木 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】山地 理嗣
【テーマコード(参考)】
5F151
【Fターム(参考)】
5F151BA11
5F151JA03
5F151JA04
5F151JA05
5F151JA06
5F151JA23
(57)【要約】
【課題】光電変換効率を高めることができる太陽電池モジュール用裏面保護シートを提供すること。
【解決手段】前面板、太陽電池素子、封止材とともに一体化されて太陽電池モジュールを構成する太陽電池モジュール用裏面保護シートであって、封止材と接する面を有する樹脂層が、造核剤を含む樹脂組成物からなり、該樹脂層の封止材と接する面が光反射機能を有する凹凸構造を備えることを特徴とする太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光反射機能を有する凹凸構造を表面に有する樹脂層を備える裏面保護シートであって、樹脂層が造核剤を含む樹脂組成物から構成されるとともに樹脂層の前記表面が裏面保護シートの両面のうちの一方の面をなすことを特徴とする太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項2】
前記造核剤を含む樹脂組成物が、DSC測定の昇温時における吸熱ピーク温度Tmと、降温時における発熱ピーク温度Tcの差ΔTmcが40℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項3】
太陽電池モジュール用裏面保護シートを構成する樹脂の融点がいずれも150℃以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項4】
前記造核剤を含む樹脂組成物が、ポリプロピレン系樹脂とリン酸エステル金属塩系造核剤とからなることを特徴とする請求項1または2に記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項5】
造核剤を含む樹脂組成物から裏面保護シートの樹脂層を形成させ、次いで、溶融状態あるいは軟化状態にある樹脂層を、光反射機能を付与するための凹凸構造が刻印されたエンボスロールに加圧接触させることによって樹脂層表面に凹凸構造を転写することを特徴とする、太陽電池モジュール用裏面保護シートの製造方法。
【請求項6】
前面板、太陽電池素子、封止材および裏面保護シートをこの順に積層して一体化した太陽電池モジュールであって、
該裏面保護シートは、造核剤を含み且つ光反射性凹凸表面を有する樹脂層を備え、この光反射性凹凸表面が封止材と接していることを特徴とする太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の太陽電池素子を封入した太陽電池モジュール用裏面保護シートに関するものであり、さらに詳しくは、光電変換効率を高めることができる太陽電池モジュール用裏面保護シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境への意識の高まりにより、クリーンエネルギーを利用した発電手段の一つとして、太陽電池モジュールを備えた太陽電池発電システムが注目されている。太陽電池モジュールは板状の太陽電池素子が複数枚配置されており、これらの太陽電池素子を封止材と呼ばれるエチレン−酢酸ビニル共重合体などの合成樹脂で挟み込み、太陽光が当る側にガラスなどの前面板が、反対側に耐候性、防湿性を有する太陽電池モジュール用裏面保護シート(以下、裏面保護シートと略称することがある)が重ね合わされ、真空加熱ラミネーション法などにより一体成形されている。
【0003】
このような中で、太陽電池モジュールの開発においては、太陽電池モジュールへ入射した太陽光エネルギーを効率良く電気エネルギーに変換する、いわゆる光電変換効率をいかに高めるかが大きな課題となっており、太陽電池素子はもちろん、裏面保護シートにも様々な工夫が提案されている。
【0004】
日本特許公開第2010−123720号公報には、前面板と太陽電池素子と封止材と裏面保護シートとを有する太陽電池モジュールにおいて、裏面保護シートの封止材と接する面側に光反射機能を有する凹凸構造が形成されている裏面保護シートが提案されている。ここにおいて凹凸構造を裏面保護シートに直接形成する方法として、金型を用いたプレス法、キャスティング法、押出し成形法、射出成形法などが例示されている。
【0005】
しかしながら、金型を用いたプレス法、キャスティング法、押出し成形法、射出成形法により裏面保護シート表面に凹凸構造の転写を行っても、合成樹脂が冷却固化する間に転写した凹凸構造が緩和し、表面形状を精度よく転写できず、得られた裏面保護シート表面の、特に凹凸構造の頂上付近の形状がなだらかとなり、太陽光を有効に利用できないという問題があった。
【0006】
また、仮に所望の凹凸構造を備えた裏面保護シートが得られたとしても、該裏面保護シートと封止材であるエチレン−酢酸ビニル共重合体などとを真空加熱ラミネーションにより貼合しようとすると、裏面保護シート表面に形成されていた凹凸構造が平坦化し所期の目的を達成できないという問題もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記課題に鑑みなされたもので、封止材と接する面に光反射機能を有する凹凸構造が精度よく転写されており、光電変換効率を高めることができる裏面保護シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討を行った。この結果、裏面保護シートの封止材と接する面を有する樹脂層が、造核剤を含む樹脂組成物からなり、該樹脂層の封止材と接する面が光反射機能を有する凹凸構造を備えるようにした裏面保護シートが、前記課題を解決したものであることを見出し本発明に至った。
【0009】
本発明によれば、
[1]光反射機能を有する凹凸構造を表面に有する樹脂層を備える裏面保護シートであって、樹脂層が造核剤を含む樹脂組成物から構成されるとともに樹脂層の前記表面が裏面保護シートの両面のうちの一方の面をなすことを特徴とする太陽電池モジュール用裏面保護シートが提供される。
【0010】
本発明は、更に、
[2]前記造核剤を含む樹脂組成物が、DSC測定の昇温時における吸熱ピーク温度Tmと、降温時における発熱ピーク温度Tcの差ΔTmcが40℃以下であることを特徴とする[1]に記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート、
[3]太陽電池モジュール用裏面保護シートを構成する樹脂の融点がいずれも150℃以上であることを特徴とする[1]または[2]に記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート、
[4]前記造核剤を含む樹脂組成物が、ポリプロピレン系樹脂とリン酸エステル金属塩系造核剤とからなることを特徴とする[1]または[2]に記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート、
[5]造核剤を含む樹脂組成物から裏面保護シートの樹脂層を形成させ、次いで、溶融状態あるいは軟化状態にある樹脂層を、光反射機能を付与するための凹凸構造が刻印されたエンボスロールに加圧接触させることによって樹脂層表面に凹凸構造を転写することを特徴とする、太陽電池モジュール用裏面保護シートの製造方法、
[6]前面板、太陽電池素子、封止材および裏面保護シートをこの順に積層して一体化した太陽電池モジュールであって、該裏面保護シートは、造核剤を含み且つ光反射性凹凸表面を有する樹脂層を備え、この光反射性凹凸表面が封止材と接していることを特徴とする太陽電池モジュール、
を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の裏面保護シートは、シート表面に光反射機能を有する凹凸構造が精度よく転写されているため、該裏面保護シートを用いた太陽電池モジュールは、光電変換効率がより高められたものとなる。また本発明の製造方法によれば、上記した裏面保護シートを簡便な方法で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の裏面保護シートを用いた太陽電池モジュール1の模式部分断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の裏面保護シートが備える光反射機能を有する凹凸構造の模式斜視図である。
【
図3】
図3は、実施例1〜3および比較例1で製造された裏面保護シート部材の、レーザマイクロスコープによる凹凸構造の観察画像である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の裏面保護シートについて詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の裏面保護シートを用いた太陽電池モジュール1の模式部分断面図である。太陽電池モジュール1は、裏面保護シート11と、封止材12と、太陽電池素子13と、前面板14を有する。太陽光L1は前面板より入射し、大部分の太陽光L2は太陽電池素子表面へ入射する。一方、太陽電池素子間を通過した太陽光L3は、光反射機能を有する裏面保護シート11により反射され太陽光L4となり、さらに前面板で反射され太陽光L5となって太陽電池素子へ入射し、太陽光エネルギーが電気エネルギーへ変換される。裏面保護シート11は、造核剤を含み光反射性凹凸表面を有する樹脂層を備え、この光反射性凹凸表面が裏面保護シート11の一方の面を構成している。光反射性凹凸表面が封止材12と接する状態で、裏面保護シート11を封止材12、太陽電池素子13 および前面板14とともに一体化することにより太陽電池モジュール1が構成される。樹脂層が、造核剤を含む樹脂組成物からなるため、樹脂層の光反射性表面の凹凸構造が精度よく形成されている。これにより裏面保護シート11を用いた太陽電池モジュール1は光電変換効率が一層高められたものとなる。
【0015】
本発明の裏面保護シートは樹脂層のみからなる単層構成であっても良く、樹脂層に他の機能を有する層を積層した多層構成のものであってもよい。さらに、裏面保護シートは、ガスバリア性を付与するために、金属あるいは無機酸化物を蒸着したガスバリア性フィルムなどを備えることができる。
【0016】
前記造核剤を含む樹脂組成物を構成する樹脂としては、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PA(ポリアミド)、PP(ポリプロピレン)などの合成樹脂材料が挙げられる。
【0017】
また、本発明の裏面保護シートは、単層構成、多層構成のいずれの場合であっても、各層を構成する樹脂の融点がいずれも150℃以上であることが好ましい。樹脂の融点が150℃以上であることにより、太陽電池モジュールの組み立て時の真空加熱ラミネーション工程における樹脂の溶融、流出を防止できる。
【0018】
造核剤としては、例えば、p−t−ブチル安息香酸アルミニウム、安息香酸ナトリウムなどの安息香酸類の金属塩、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)リン酸エステルナトリウム、メチレンビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)リン酸エステルナトリウム、ビス〔メチレンビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)リン酸エステル〕ヒドロキシアルミニウムなどの芳香族リン酸エステル金属塩および芳香族リン酸エステル金属塩とアルカリ金属化合物の混合物、ジベンジリデンソルビトール、ビス(メチルベンジリデン)ソルビトール、ビス(ジメチルベンジリデンソルビトール)などのジベンジリデンソルビトール類、アミノ酸金属塩、ロジン酸金属塩などの有機系造核剤のほか、タルク、クレイ、炭酸カルシウムなどの無機系造核剤が挙げられる。これら造核剤の配合量は、樹脂層を構成する樹脂100重量部に対し0.05〜1.0重量部、とりわけ0.1〜0.5重量部であることが好ましい。造核剤の50%粒子径(メディアン径(レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて測定))は好ましくは2〜20μmであり、より好ましくは3〜10μmの範囲である。
【0019】
樹脂層を構成する樹脂組成物は、エンボスロールなどのスタンパに刻印された光反射機能を付与するための凹凸構造が樹脂層表面に精度よく成形できるという観点から、ポリプロピレン系樹脂とリン酸エステル金属塩系造核剤からなることが特に好ましい。
【0020】
造核剤を含む樹脂組成物が、DSC測定(示差走査熱量測定)の昇温時における吸熱ピーク温度Tmと、降温時における発熱ピーク温度Tcの差ΔTmcが40℃以下であることが、凹凸構造を付与するエンボスロールなどのスタンパの表面形状をより精度よく忠実に転写することができ、また、樹脂組成物が冷却固化する間に転写した凹凸構造が緩和することが少ないため所望の凹凸構造が得られやすいという理由で好ましい。
【0021】
このように、ΔTmcが40℃以下の樹脂組成物がエンボスロールなどのスタンパの表面形状をより忠実に転写・再現することができるのは、次のようなメカニズムによるものと推察される。即ち、溶融状態の熱可塑性樹脂は、エンボスロールなどのスタンパで賦形後冷却される際、冷却に伴って体積収縮するが、ΔTmcが小さい樹脂組成物は、冷却固化後速やかに結晶化が進行するため、結晶化が遅い樹脂組成物よりも冷却による体積収縮が小さくなると考えられる。
【0022】
また裏面保護シートは、封止材と接する面の光反射性が高められていることが望ましい。この具体的な手段としては、裏面保護シートの封止材と接する面に金属蒸着を行う方法、裏面保護シートの樹脂層を白色に着色する方法が挙げられる。中でも樹脂層を白色に着色する方法は、簡便であり、コストの上昇を最低限に抑えることができより好ましい。ここにおいて用いられる白色系顔料としては酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウムなどが挙げられるが、酸化チタンが、屈折率が高く、合成樹脂への分散性に優れているという観点からより好適である。白色顔料の配合量は樹脂層を構成する樹脂100重量部に対し5〜50重量部であることが好ましい。
【0023】
樹脂層表面の凹凸構造は、周期構造を有していても良く、不定形でも良い。また、凹凸構造の凸部の高さは、50μm以下、さらには40μm以下が好ましい。この高さが50μm以下の場合はエンボスロールなどのスタンパの表面の凹凸構造を裏面保護シートの樹脂層へ転写する際の転写性が良く、凸部の先端部分が欠けることが無い。一方、凹凸構造の凸部の高さは5μm以上、さらには10μm以上が好ましい。この高さが5μm以上の場合は太陽光を有効に利用できる。なお、「凹凸構造の凸部の高さ」とは、凸部の頂点の、谷部を基準とした高さを意味する。
【0024】
また本発明においては、
図2に示すように、光反射樹脂層の凹凸構造が、15度以上45度未満の傾斜角θを有することが、裏面保護シートからの反射光を前面板へ臨界角以上で入射させることができ、裏面保護シートからの反射光を太陽電池モジュール内へ効率よく閉じ込めることができる理由で好ましい。
【0025】
また、裏面保護シートの厚さは100μm〜600μmであることが、太陽電池モジュール内へ水分の透過を防ぎ、裏面保護シートのロール状の巻き取りを可能とし、且つシワの発生がないなどの優れた取扱い性を与える観点から、好ましい。
【0026】
本発明の裏面保護シートは、例えば、フラットダイを装着した押出し機へ造核剤を含む樹脂組成物を供給し、溶融状態あるいは軟化状態の樹脂組成物をフラットダイからシート状に押出し、得られた溶融状態あるいは軟化状態のシートを、光反射機能を付与するための凹凸構造が刻印されたエンボスロールに加圧接触させながら引き取ることにより製造することができる。なお、前記多層構成の裏面保護シートを製造する場合には、複数の押出し機を装着したフラットダイより共押出しする方法が好ましく採用できる。
【実施例】
【0027】
以下に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。
【0028】
[実施例1]
フラットダイを装着した単層製膜装置を用い、ブロックポリプロピレン(融点:164℃)100重量部に対し、造核剤(ADEKA社製:芳香族リン酸エステル金属塩系)0.1重量部を配合した樹脂組成物をシート状に押出し、一辺が78μm、高さが27μm、傾斜角35度の正四角錐の凹凸構造を与える彫刻が全面に施されたエンボスロールに加圧接触させながら引き取り、表面に正四角錐の凸構造を有する厚み120μmの単層の裏面保護シートを製造した。
【0029】
[実施例2]
造核剤の配合量を0.2重量部とする以外は実施例1と同様にして厚み120μmの裏面保護シートを製造した。
【0030】
[実施例3]
造核剤の配合量を0.3重量部とする以外は実施例1と同様にして厚み120μmの裏面保護シートを製造した。
【0031】
[比較例1]
造核剤を配合しない以外は実施例1と同様にして厚み120μmの裏面保護シートを製造した。
【0032】
実施例1〜3および比較例1で得られた裏面保護シートの 昇温時における吸熱ピーク温度Tm、および降温時の発熱ピーク温度Tcを測定し、その差ΔTmcを求めた。即ち、示差走査熱量測定機 (DSC)を用い、測定サンプルを30℃から250℃まで昇温速度10℃/minで加熱した際の吸熱ピーク温度Tm、および測定サンプルを250℃から0℃まで降温速度10℃/minで冷却した際の発熱ピーク温度Tcを測定した。測定結果を表1に示す。
【0033】
又、実施例1〜3および比較例1で得られた裏面保護シートの表面の凹凸構造を、レーザマイクロスコープ(レーザーテック社製 コンフォーカル顕微鏡 C130)を用いて観察した。この観察画像を
図3に示す。観察画像から凹凸構造の凸部の高さ(エンボス高さ)を計測した。この結果を表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
表1、
図3から明らかなように、造核剤を含む樹脂組成物からなる実施例1〜3の裏面保護シートには、所定の凹凸構造が精度よく転写されている。これに対し、造核剤を含まない樹脂組成物からなる比較例1の裏面保護シートに転写された凹凸構造は、頂上付近の形状がなだらかとなっており、実施例1〜3に比べ凹凸構造の精度が低いものであった。
【0036】
[実施例4]
フラットダイを装着した単層製膜装置を用い、ブロックポリプロピレン(融点:164℃)100重量部に対し酸化チタン25重量部、造核剤(ADEKA社製:芳香族リン酸エステル金属塩系)0.1重量部を配合した樹脂組成物をシート状に押出し、ピッチが125μm、高さが20μmで、傾斜角22度の二等辺三角形プリズム状の凹凸構造を与える彫刻が施されたエンボスロールに加圧接触させながら引き取り、表面に二等辺三角形プリズム状の凹凸構造を有する厚み120μmの樹脂シートを製造した。次いで、ドライラミネート法により、該樹脂シートに厚み190μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(融点:260℃)、厚み50μmのポリブチレンテレフタレートフィルム(融点230℃)を順に積層して厚み360μmの3層の裏面保護シートを得た。
【0037】
[比較例2]
造核剤を配合しないこと以外は実施例4と同様にして厚み120μmの樹脂シートを製造した。次いで、実施例4と同様にしてドライラミネート法により、該樹脂シートにポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルムを順に積層して厚み360μmの3層裏面保護シートを得た。
【0038】
実施例4、比較例2で得られた裏面保護シートを用いて組み立てられた太陽電池モジュールの出力向上効果を評価した。その手順は以下のとおりである。
(1)太陽電池素子の出力(Pmax)測定・・・太陽電池素子(6インチサイズのものを半分にカットしたもの)を上下に2枚配置し、太陽電池素子の間隔が3.0mmとなるように配線を行う。次いで、ソーラーシミュレータ(NPC社製NCT−180AA−M)により25℃の雰囲気下で疑似太陽光を照射し、太陽電池素子の出力(Pmax)を測定する。
(2)太陽電池モジュールの組み立て・・・前面板(ガラス)、封止材(エチレン−酢酸ビニル共重合体)、(1)で配線した太陽電池素子、封止材(エチレン−酢酸ビニル共重合体)、裏面保護シートをこの順に積層し、真空加熱ラミネーション法により一体化し、太陽電池モジュールを作成する。
(3)太陽電池モジュールの出力(Pmax)測定・・・(2)で組み立てた太陽電池モジュールに、ソーラーシミュレータ(NPC社製NCT−180AA−M)により25℃の雰囲気下で疑似太陽光を照射し、太陽電池モジュールの出力(Pmax)を測定する。
(4)出力向上効果の評価・・・(1)で測定した太陽電池素子の出力(Pmax)を基準として、(3)で測定した太陽電池モジュールの出力(Pmax)の出力向上効果(%)を評価する。
【0039】
実施例4、比較例2で得られた裏面保護シートを用いて作成された太陽電池モジュールの出力向上効果を上記した手順で評価した。この結果を表2に示す。
【0040】
【表2】
【0041】
表2から明らかなように、封止材と接する面を有する樹脂層が、造核剤を含む樹脂組成物からなり、該樹脂層の封止材と接する面が光反射機能を有する凹凸構造を備える実施例4の裏面保護シートを用いて作成された太陽電池モジュールは、比較例2の裏面保護シートを用いて作成された太陽電池モジュールに比較して良好な出力向上効果を示した。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上説明したように、本発明の裏面保護シートは、造核剤を含み且つ光反射性凹凸表面を有する樹脂層を備えることから、この裏面保護シートを、前面板、太陽電池素子、封止材とともに一体化して得られる太陽電池モジュールは、入射した太陽光エネルギーを効率良く電気エネルギーに変換することができる。また本発明の製造方法によれば、上記した裏面保護シートを簡便に製造することができる。このように本発明の裏面保護シート、それを用いた太陽電池モジュールおよびその製造方法は、近年注目されている太陽電池発電システムにおいて有用であり産業に利するところ大である。
【符号の説明】
【0043】
1 :太陽電池モジュール
11:裏面保護シート
12:封止材
13:太陽電池素子
14:前面板
L1:太陽電池モジュールに入射する太陽光
L2:太陽電池素子へ入射する太陽光
L3:太陽電池素子間を直進する太陽光
L4:裏面保護シートで反射された太陽光
L5:前面板で反射された太陽光
θ :傾斜角
【手続補正書】
【提出日】2015年3月5日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光反射機能を有する凹凸構造を表面に有する樹脂層を備える裏面保護シートであって、
前記樹脂層が造核剤を含む樹脂組成物から構成されるとともに樹脂層の前記表面が裏面保護シートの両面のうちの一方の面をなすことを特徴とする太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項2】
前記造核剤を含む樹脂組成物が、ブロックポリプロピレンを主成分とし、DSC測定の昇温時における吸熱ピーク温度Tmと、降温時における発熱ピーク温度Tcの差ΔTmcが40℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項3】
前記光反射機能を有する凹凸構造を表面に有する樹脂層を備える単層或いは多層フィルムに、他のフィルムが積層されたことを特徴とする請求項1または2に記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート(但し、他のフィルムが融点180℃以下のフィルムである場合を除く)。
【請求項4】
造核剤を含む樹脂組成物から裏面保護シートの樹脂層を形成させ、次いで、溶融状態あるいは軟化状態にある樹脂層を、光反射機能を付与するための凹凸構造が刻印されたエンボスロールに加圧接触させることによって樹脂層表面に凹凸構造を転写することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の太陽電池モジュール用裏面保護シートの製造方法。
【請求項5】
前面板、太陽電池素子、封止材および請求項1乃至3のいずれかに記載の裏面保護シートをこの順に積層して一体化した太陽電池モジュールであって、
前記裏面保護シートの光反射機能を有する凹凸構造を表面に有する樹脂層が封止材と接していることを特徴とする太陽電池モジュール。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
本発明は、更に、
[2]前記造核剤を含む樹脂組成物が、
ブロックポリプロピレンを主成分とし、DSC測定の昇温時における吸熱ピーク温度Tmと、降温時における発熱ピーク温度Tcの差ΔTmcが40℃以下であることを特徴とする[1]に記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート、
[3]
前記光反射機能を有する凹凸構造を表面に有する樹脂層を備える単層或いは多層フィルムに、他のフィルムが積層されたことを特徴とする[1]または[2]に記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート(但し、他のフィルムが融点180℃以下のフィルムである場合を除く)、
[
4]造核剤を含む樹脂組成物から裏面保護シートの樹脂層を形成させ、次いで、溶融状態あるいは軟化状態にある樹脂層を、光反射機能を付与するための凹凸構造が刻印されたエンボスロールに加圧接触させることによって樹脂層表面に凹凸構造を転写することを特徴とする、
[1]または[2]または[3]のいずれかに記載の太陽電池モジュール用裏面保護シートの製造方法、
[
5]前面板、太陽電池素子、封止材および
[1]または[2]または[3]のいずれかに記載の裏面保護シートをこの順に積層して一体化した太陽電池モジュールであって、
前記裏面保護シート
の光反射機能を有する凹凸構造を表面に有する樹脂層が封止材と接していることを特徴とする太陽電池モジュール、
を提供する。
【手続補正書】
【提出日】2015年7月22日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光反射機能を有する凹凸構造を表面に有する樹脂層を備える裏面保護シートであって、
前記樹脂層が、ブロックポリプロピレン100重量部に対し、造核剤を0.05〜1.0重量部含む樹脂組成物から構成されるとともに樹脂層の前記表面が裏面保護シートの両面のうちの一方の面をなすことを特徴とする太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項2】
前記樹脂層が、ブロックポリプロピレン100重量部に対し、前記造核剤を0.1〜0.3重量部含む樹脂組成物から構成されることを特徴とする請求項1記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項3】
造核剤を含む樹脂組成物から裏面保護シートの樹脂層を形成させ、次いで、溶融状態あるいは軟化状態にある樹脂層を、光反射機能を付与するための凹凸構造が刻印されたエンボスロールに加圧接触させることによって樹脂層表面に凹凸構造を転写することを特徴とする、請求項1または2に記載の太陽電池モジュール用裏面保護シートの製造方法。
【請求項4】
前面板、太陽電池素子、封止材および請求項1または2に記載の裏面保護シートをこの順に積層して一体化した太陽電池モジュールであって、前記裏面保護シートの光反射機能を有する凹凸構造を表面に有する樹脂層が封止材と接していることを特徴とする太陽電池モジュール。
【国際調査報告】