特表-16163387IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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再表2016-163387電気測定用デバイス、及び電気測定装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2016年10月13日
【発行日】2018年2月1日
(54)【発明の名称】電気測定用デバイス、及び電気測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/00 20060101AFI20180105BHJP
   G01N 15/12 20060101ALI20180105BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20180105BHJP
   C12M 1/34 20060101ALN20180105BHJP
【FI】
   G01N27/00 Z
   G01N15/12 E
   G01N37/00 101
   C12M1/34 D
   C12M1/34 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】30
【出願番号】特願2017-511011(P2017-511011)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2016年4月6日
(31)【優先権主張番号】特願2015-78222(P2015-78222)
(32)【優先日】2015年4月7日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-243615(P2015-243615)
(32)【優先日】2015年12月14日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)事業「ナノ・マイクロポアを用いたInSECTシステムの開発」に係る委託業務、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
【住所又は居所】愛知県名古屋市千種区不老町1番
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】馬場 嘉信
【住所又は居所】愛知県名古屋市千種区不老町1番 国立大学法人名古屋大学内
(72)【発明者】
【氏名】加地 範匡
【住所又は居所】愛知県名古屋市千種区不老町1番 国立大学法人名古屋大学内
(72)【発明者】
【氏名】安井 隆雄
【住所又は居所】愛知県名古屋市千種区不老町1番 国立大学法人名古屋大学内
(72)【発明者】
【氏名】川合 知二
【住所又は居所】大阪府吹田市山田丘1番1号 国立大学法人大阪大学内
(72)【発明者】
【氏名】柳田 剛
【住所又は居所】大阪府吹田市山田丘1番1号 国立大学法人大阪大学内
【テーマコード(参考)】
2G060
4B029
【Fターム(参考)】
2G060AA06
2G060AA15
2G060AA19
2G060AD06
2G060AD08
2G060AE20
2G060AF02
2G060AF20
2G060AG11
2G060AG15
2G060HC13
2G060JA07
2G060KA09
4B029AA07
4B029BB01
4B029CC01
4B029FA02
4B029FA12
4B029GA08
(57)【要約】
定常電流の変化のみではなく過渡電流の発生も読み取ることで、高感度検出ができるように設計した電気測定用デバイス、及び該電気測定用デバイスを含む電気測定装置を提供する。
サンプル分離流路及びサンプル移動流路が少なくとも形成された基板、並びにサンプル測定部を含み、前記サンプル分離流路の一端が前記サンプル移動流路の一端に接続するように形成され、前記サンプル測定部は、前記サンプル移動流路に接続する第1測定部、及び前記第1測定部とは反対側から前記サンプル移動流路に接続する第2測定部を含む、電気測定用デバイス。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル分離流路及びサンプル移動流路が少なくとも形成された基板、並びにサンプル測定部を含み、
前記サンプル分離流路の一端が前記サンプル移動流路の一端に接続するように形成され、
前記サンプル測定部は、前記サンプル移動流路に接続する第1測定部、及び前記第1測定部とは反対側から前記サンプル移動流路に接続する第2測定部を含む、
電気測定用デバイス。
【請求項2】
前記第1測定部及び前記第2測定部が、前記サンプル移動流路を挟んで非対称の位置に形成されている請求項1に記載の電気測定用デバイス。
【請求項3】
前記サンプル測定部が、第1測定部及び第2測定部を含み、前記第1測定部及び第2測定部が電極として形成され、且つ前記サンプル移動流路を横切るように形成されている請求項1に記載の電気測定用デバイス。
【請求項4】
前記サンプル分離流路に、ピラーが形成されている請求項1〜3の何れか一項に記載の電気測定用デバイス。
【請求項5】
前記サンプル分離流路の他端に接続したサンプル投入流路、前記サンプル移動流路の他端に接続したサンプル回収流路を含む、請求項1〜4の何れか一項に記載の電気測定用デバイス。
【請求項6】
前記サンプル分離流路に、サンプル中の分離・除去された成分を排出する分離サンプル排出流路が接続している請求項1〜5の何れか一項に記載の電気測定用デバイス。
【請求項7】
サンプルを捕集するためのサンプル捕集手段を含む請求項1〜6の何れか一項に記載の電気測定用デバイス。
【請求項8】
前記サンプル捕集手段が、傾斜状のサンプル捕集部、及び
前記傾斜状のサンプル捕集部の頂部に形成され、捕集したサンプルを前記サンプル投入流路に投入するためのサンプル投入孔、
を有する請求項7に記載の電気測定用デバイス。
【請求項9】
前記傾斜状のサンプル捕集部に、錐体が形成されている請求項8に記載の電気測定用デバイス。
【請求項10】
前記サンプル捕集部にナノワイヤが形成されている請求項8又は9に記載の電気測定用デバイス。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか一項に記載の電気測定用デバイス、
サンプルがサンプル移動流路を移動できるようにするための駆動回路、
第1測定部及び第2測定部に電圧を印加し、前記サンプルが前記サンプル移動回路を移動する際の電流の変化を測定する測定回路、
を含む電気測定装置。
【請求項12】
前記測定回路は更に可変抵抗及び抵抗素子を含み、前記サンプル移動流路中の前記第1測定部及び前記第2測定部に挟まれている部分の電位差と、抵抗素子の電位差を釣り合った状態にできる、請求項11に記載の電気測定装置。
【請求項13】
前記測定回路が、過渡電流及び定常電流の変化を測定する請求項11又は12に記載の電気測定装置。
【請求項14】
蛍光顕微鏡を更に含む請求項11〜13の何れか一項に記載の電気測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気測定用デバイス、及び電気測定装置に関し、特に、細胞、菌、ウィルス、DNA等のサンプルがマイクロ流路を流れる際に、定常電流の変化のみではなく過渡電流の発生も読み取ることで、高感度検出ができるように設計した電気測定用デバイス、及び該電気測定用デバイスを含む電気測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
溶液中に含まれる細胞、菌、花粉、PM2.5等のサンプルの大きさ、個数等を正確に測定することは、健康な生活を送る上で大切な情報であり、近年、ますます測定精度の向上が望まれている。また、生物化学の分野では、DNA断片をそのまま分析する分析デバイスの開発が望まれている。
【0003】
図1は、サンプルの大きさや個数等の測定方法の従来技術を示しており、シリコン等の基板上に形成した細孔(マイクロポア)にサンプルを通過させ、細孔に印加した電圧によって細孔の内部を流れる定常電流が変化する様子から細胞の大きさ、硬さを解析している(非特許文献1参照)。図1に示す従来の測定方法は、細孔の体積が小さい程感度が向上すことが知られている。細孔の体積を減らすためには直径を小さくするとともに基板を薄くする必要があり、そのため、測定の際には図1に示すように基板は縦置きにして使用されている。
【0004】
また、細孔を通過するサンプルの状態をより詳しく測定するため、マイクロ流路を形成した基板を横置きにすることで細孔部分を蛍光顕微鏡で観察できるようにし、定常電流の測定に加え細孔の周りの事象を直接観察する方法も知られている(非特許文献2参照)。図2は、非特許文献2のFig.1を示している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Waseem A.et al.,Lab on a Chip, Vol.12, pp.2345−2352 (2012)
【非特許文献2】Naoya.Y et al.,“Tracking single−particle dynamics via combined optical and electrical sensing”, SCIENTIFIC REPORTS, Vol.3, pp.1−7(2013)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図1に示す方法では、得られる情報が定常電流の変化の信号のみであり、細孔を通過したサンプルの判別は電流値の強弱などから推察するに留まる。そのため、複数のサンプルが細孔に流れ込む場合や、測定するサンプルが生体分子等の形状が球体以外又は変化し易い場合などは、詳細な解析が難しいという問題がある(問題1)。
【0007】
また、非特許文献1に記載されている方法は、サンプルを駆動させるための駆動回路と、細孔をサンプルが通過する際の電流変化を測定する測定回路が同じになっている。一般的に、印加電圧を大きくすることで測定感度を上げることができるが、駆動回路と測定回路が同じ場合、印加電圧を大きくすると測定回路の電流計に負荷がかかり過ぎ、高感度検出ができないという問題がある(問題2)。
【0008】
更に、サンプルが細孔を通過する時間は、サンプルの表面電荷、変形能等に影響されるため、特に生体分子解析においては非常に重要な情報である。しかしながら、従来法の感度では、細孔内の定常電流の緩やかな変化を読みとることしか出来ず、印加電圧によって加速されたサンプルが短い細孔を通過する時間を読み取るには誤差が大きかった。加えて、核酸等の細長い形状の生体分子を測定する場合、生体分子を伸長状態で細孔に導入する必要があるが、そのためには、生体分子を伸長状態にするためのガイド流路が必要となる。しかしながら、ガイド流路を設けることは細孔部分の体積を増加することになり、感度の低下が避けられないという問題がある(問題3)。
【0009】
一方、図2に示すように、基板を横置きにして蛍光顕微鏡で観察することで、上記(問題1)を解決することができる。しかしながら、非特許文献2に記載されている方法は、ポンプの圧力により液体中に分散したサンプルが基板上に形成された細孔を通過するように設計されている。ポンプの圧力で液体中に分散したサンプルを流す場合、測定感度を上げる為に細孔のサイズを小さくすればするほど、液体が細孔を流れにくくなる。勿論、ポンプの圧力を大きくすることで液体を流すこともできるが、圧力を大きくし過ぎると、細孔部分が破損する恐れがある。また、非特許文献2に記載されているポンプの圧力でサンプルを流す方法では、核酸やタンパク質を流すことはできないという問題がある。更に、非特許文献2に記載されている方法も、非特許文献1に記載されている方法と同様に、感度を上げる為には細孔の体積を小さくする必要があり、上記(問題3)を解決することができないという問題がある。
【0010】
本発明は、上記従来の問題を解決するためになされた発明であり、鋭意研究を行ったところ、
(1)サンプルを流すことができるサンプル移動流路を形成し、該サンプル移動流路に接続する第1測定部及び前記第1測定部とは反対側から前記サンプル移動流路に接続する第2測定部を形成することで、サンプルの駆動回路と測定回路を別回路として設計できること、
(2)サンプルの駆動回路と測定回路を別回路とすることで、駆動回路の電圧を高く設定することで検出感度を高めることができ、従来はノイズに埋もれていた過渡電流を測定できること、
(3)測定回路に可変抵抗を組み込んだ場合は、より高感度検出が可能となり過渡電流をより精度良く測定できること、
(4)過渡電流を読み取ることで、サンプル移動流路へのサンプルの入出タイミングを正確に測定することができ、その結果、サンプルの通過速度を計算することでサンプルの表面電荷及び変形能を測定できること、
(5)サンプル移動流路の前にサンプル分離流路を形成することで、投入したサンプルから非分析対象成分を除去できること、
(6)サンプルを捕集するためのサンプル捕集手段を形成した場合は、大気中や水中に浮遊する有害・危険物質を捕集してサンプル投入流路に投入できるので身の回りの有害・危険物質を自動分析できること、
を新たに見出した。
【0011】
すなわち、本発明の目的は、定常電流の変化のみではなく過渡電流の発生も読み取ることで高感度検出ができ、更に、非分析対象成分を分離・除去し、サンプルを自動的に捕集して分析できるように設計した電気測定用デバイス、及び該電気測定用デバイスを含む電気測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、以下に示す、電気測定用デバイス、及び該電気測定用デバイスを含む電気測定装置に関する。
【0013】
(1)サンプル分離流路及びサンプル移動流路が少なくとも形成された基板、並びにサンプル測定部を含み、
前記サンプル分離流路の一端が前記サンプル移動流路の一端に接続するように形成され、
前記サンプル測定部は、前記サンプル移動流路に接続する第1測定部、及び前記第1測定部とは反対側から前記サンプル移動流路に接続する第2測定部を含む、
電気測定用デバイス。
(2)前記第1測定部及び前記第2測定部が、前記サンプル移動流路を挟んで非対称の位置に形成されている上記(1)に記載の電気測定用デバイス。
(3)前記サンプル測定部が、第1測定部及び第2測定部を含み、前記第1測定部及び第2測定部が電極として形成され、且つ前記サンプル移動流路を横切るように形成されている上記(1)に記載の電気測定用デバイス。
(4)前記サンプル分離流路に、ピラーが形成されている上記(1)〜(3)の何れか一に記載の電気測定用デバイス。
(5)前記サンプル分離流路の他端に接続したサンプル投入流路、前記サンプル移動流路の他端に接続したサンプル回収流路を含む、上記(1)〜(4)の何れか一に記載の電気測定用デバイス。
(6)前記サンプル分離流路に、サンプル中の分離・除去された成分を排出する分離サンプル排出流路が接続している上記(1)〜(5)の何れか一に記載の電気測定用デバイス。
(7)サンプルを捕集するためのサンプル捕集手段を含む上記(1)〜(6)の何れか一に記載の電気測定用デバイス。
(8)前記サンプル捕集手段が、傾斜状のサンプル捕集部、及び
前記傾斜状のサンプル捕集部の頂部に形成され、捕集したサンプルを前記サンプル投入流路に投入するためのサンプル投入孔、
を有する上記(7)に記載の電気測定用デバイス。
(9)前記傾斜状のサンプル捕集部に、錐体が形成されている上記(8)に記載の電気測定用デバイス。
(10)前記サンプル捕集部にナノワイヤが形成されている上記(8)又は(9)に記載の電気測定用デバイス。
(11)上記(1)〜(10)の何れか一に記載の電気測定用デバイス、
サンプルがサンプル移動流路を移動できるようにするための駆動回路、
第1測定部及び第2測定部に電圧を印加し、前記サンプルが前記サンプル移動回路を移動する際の電流の変化を測定する測定回路、
を含む電気測定装置。
(12)前記測定回路は更に可変抵抗及び抵抗素子を含み、前記サンプル移動流路中の前記第1測定部及び前記第2測定部に挟まれている部分の電位差と、抵抗素子の電位差を釣り合った状態にできる、上記(11)に記載の電気測定装置。
(13)前記測定回路が、過渡電流及び定常電流の変化を測定する上記(11)又は(12)に記載の電気測定装置。
(14)蛍光顕微鏡を更に含む上記(11)〜(13)の何れか一に記載の電気測定装置。
【発明の効果】
【0014】
(1)本発明の電気測定用デバイスは、サンプルを流すことができるサンプル移動流路を形成し、該サンプル移動流路に接続する第1測定部及び前記第1測定部とは反対側から前記サンプル移動流路に接続する第2測定部を形成している。そのため、本発明の電気測定用デバイスを用いた電気測定装置は、サンプルの駆動回路と測定回路を別回路として設計できるので、駆動回路の電圧を高く設定し、検出感度を高めることができるので過渡電流も正確に読み取ることができる。更に、測定回路に可変抵抗を組み込んだ場合は、駆動回路と測定回路が釣り合った状態からの差分を読み取ることができるので、検出感度をより高めることができる。
(2)本発明の電気測定装置は、過渡電流を読み取ることでサンプル移動流路へのサンプルの入出タイミングを正確に測定でき、通過速度からサンプルの表面電荷及び変形能を測定することが可能となる。
(3)本発明の電気測定用デバイスは横置きで使用できることから、蛍光顕微鏡観察と組み合わせて使用することで、より正確な分析をすることができる。
(4)本発明の電気測定用デバイスは、サンプル移動流路の前にサンプル分離流路を形成している。そのため、投入したサンプル中の非分析対象成分を分離・除去できるので、高感度分析をすることができる。
(5)サンプルを捕集するためのサンプル捕集手段を形成した場合は、大気中や水中に浮遊する有害・危険物質を捕集してサンプル投入流路に自動的に投入できるので、身の回りの有害・危険物質を自動分析できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、サンプルの大きさや個数等の測定方法の従来技術を示している。
図2図2は、非特許文献2のFig.1を示している。
図3図3は、本発明の電気測定用デバイス1の概略を説明する図である。
図4図4は、本発明の電気測定用デバイス1の他の実施形態を示している。
図5図5は、第1測定部6及び第2測定部7を電極で形成した電気測定用デバイス1の概略を説明する図である。
図6図6は、第1測定部6及び第2測定部7を電極で形成した電気測定用デバイス1の他の実施形態を説明するための図で、図6(1)は上面図、図6(2)はC−C’断面図を表す。
図7図7(1)及び(2)は、第1測定部6及び第2測定部7を電極で形成した電気測定用デバイス1の他の実施形態を説明するための断面図である。
図8図8は、ピラー12間を流れる流体の作用により、サイズの異なる微粒子を分離する原理を説明する図である。
図9図9は、サンプル分離流路11に分離サンプル排出流路15を設けた電気測定用デバイス1の概略を示す図である。
図10図10は、図4のA−A’断面図で、電気測定用デバイス1の製造工程の一例を示している。
図11図11は、本発明の電気測定用デバイス1の他の製造工程を示す図である。
図12図12は、シール材22に電極(第1測定部6及び/又は第2測定部7)を形成する手順を示す図である。
図13図13は、図4に示す電気測定用デバイス1にサンプル捕集手段50の一例を設けた際のB−B’断面図である。
図14図14(1)はサンプル捕集部51に錐体53を形成した例を示しており、図14(2)は錐体53の頂部に向かうほどナノワイヤの密度を高くする例を示している。
図15図15は、本発明の電気測定用デバイス1を用いた電気測定装置10の概略を示す図である。
図16】本発明の電気測定装置10を用いてサンプルを測定する際の、電気測定用デバイス1上のサンプルの位置と測定できる電流値の関係を説明する図である。
図17図17は、本発明の電気測定用デバイス1の他の実施形態を示している。
図18図18は、図面代用写真で、図18(1)は、実施例1で作製した電気測定用デバイス1の写真、図18(2)は、第1測定部6及び第2測定部7付近の拡大写真である。
図19図19は、図面代用写真で、図19(1)は、実施例2で作製した電気測定用デバイス1の第1測定部6及び第2測定部7付近の拡大写真、図19(2)は、実施例3で作製した電気測定用デバイス1の第1測定部6及び第2測定部7付近の拡大写真である。
図20図20(1)は、実施例5における測定時間と測定された定常電流値の関係を示すグラフ、図20(2)は、実施例6における測定時間と測定された定常電流値の関係を示すグラフ、図20(3)は、実施例7における測定時間と測定された定常電流値の関係を示すグラフである。
図21図21は、実施例3の電気測定用デバイス1を用いた場合、ピークを2つ測定した理由を説明する図である。
図22図22は、サンプル移動流路3を流れるサンプルの位置の連続写真、及びサンプルが流れる際の定常電流値の変化(シグナル強度)と蛍光強度の変化を示す写真及びグラフである。
図23図23は、実施例9で測定した定常電流値の変化(シグナル強度)を示すグラフである。
図24図24は、実施例9で測定した結果に基づき作製したサンプルの体積と定常電流値の変化(シグナル強度)を示すグラフである。
図25図25は、駆動回路の電圧とサンプルがサンプル移動流路を通過する時間の関係を示す図である。
図26図26は、図面代用写真で、図26(1)は実施例12で作製した電気測定用デバイス1のサンプル分離流路11部分の写真、図26(2)はピラー部分を拡大した写真である。
図27図27は、図面代用写真で、実施例27で作製した電気測定用デバイス1をシール材22側から倒立顕微鏡で撮影した写真である。
図28図28は、実施例14における測定時間と測定された定常電流値の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の電気測定用デバイス、及び電気測定装置について詳しく説明する。先ず、本発明において、「定常電流」とは駆動回路と測定回路の電気抵抗値に基づいて流れるイオン電流であって、サンプル移動流路にサンプルが導入されていない時に流れている、変化せずに一定の値となる電流を意味する。また、「定常電流の変化」とは、サンプル移動流路にサンプルが導入され、サンプル移動流路中の第1測定部及び第2測定部に挟まれている部分にサンプルが到達した際に、大きく回路抵抗値が変化することによって得られるイオン電流値の変化のことを意味する。また、「過渡電流」とは、測定回路に瞬間的に流れるイオン電流を意味する。
【0017】
図3は、本発明の電気測定用デバイス1の概略を説明する図である。図3に示す電気測定用デバイス1は、基板2、基板2上に形成されたサンプル移動流路3、サンプル移動流路3の一端に接続するサンプル分離流路11、サンプル移動流路3の他端に接続するサンプル回収流路5、サンプル分離流路11に接続するサンプル投入流路4、並びにサンプル移動流路3に接続する第1測定部6及び第1測定部6とは反対側からサンプル移動流路3に接続する第2測定部7を含んでいる(以下、基板上に形成した流路を纏める場合は、単に「流路」と記載することがある。)。そして、第1測定部6及び第2測定部7でサンプル測定部を形成する。
【0018】
サンプル移動流路3の幅及び深さは、サンプルのサイズより大きければ特に制限は無いが、測定感度を上げる為には、サンプルのサイズより大き過ぎないように適宜調整することが好ましい。例えば、空気中のPM2.5の直径は約2.5μmであるので、サンプル移動流路3の幅及び深さは、3μm程度の大きさであればよい。また、スギ花粉の直径は約20〜40μm、ヒノキ花粉の直径は28μm〜45μm程度と言われているので、幅及び深さは約50μm程度であればよい。勿論、上記の数値は目安であって、サンプルがさらに大きな場合は、幅及び深さを100μ、150μm、200μm等、サンプルのサイズに応じて大きくしてもよい。幅及び深さの下限値は、現在の微細加工技術では約4nmが限界であるが、技術の進歩により、更に小さくしてもよい。本発明の電気測定用デバイス1は、従来の細孔と異なりサンプル移動流路3を長く設計することができ、サンプル移動流路3内でサンプルの伸長状態を作り出して核酸やタンパク質等の生体分子を測定することもできる。
【0019】
サンプル投入流路4及びサンプル回収流路5は、サンプル駆動回路の電極を投入できる大きさであって、サンプルを含む液体(以下、サンプルを含む液体を「サンプル液」と記載することがある。)を投入及び回収できれば大きさ及び形状に特に制限は無いが、深さはサンプル移動流路3と同じにすることが望ましい。なお、サンプル分離流路11にサンプルが効率よく流入できるようにするため、サンプル投入流路4は、サンプル分離流路15に向かって幅が狭くなるテーパー状にしてもよい。また、サンプル回収流路5は、サンプル移動回路3から幅が広くなるテーパー状にしてもよい。
【0020】
第1測定部6及び第2測定部7は、測定回路を構成し、定常電流の変化及び過渡電流を測定(以下、定常電流の変化及び過渡電流を測定することを「電流の変化を測定」と記載することがある。)するために用いられる。第1測定部6及び第2測定部7は、サンプル移動流路3に繋がる流路を形成し、当該流路内に電極を投入することで形成することができる。また、サンプル移動流路3に接する電極で構成してもよい。
【0021】
第1測定部6及び第2測定部7を流路で形成する場合、流路の大きさ及び形状は、サンプル測定回路の電極を投入できる大きさであれば特に制限は無いが、測定感度を高くするためには、抵抗を少なくすることが好ましい。サンプル液で満たされた流路の抵抗値は、サンプル液の抵抗率と流路の長さの積を、流路の断面積で割った値となる。したがって、流路の幅を大きくするほど面積が大きくなり、抵抗を少なくすることができる。そのため、第1測定部6及び前記第2測定部7の幅は、サンプル移動流路3と接続している部分の長さLより、サンプル移動流路3から離れるにしたがって長くなることが好ましい。第1測定部6及び第2測定部7の形状は同じであっても異なっていてもよいが、第1測定部6及び第2測定部7の形状が異なると、測定して得られるシグナルも非対称となる。そのため、測定したシグナルから物の形状等、より精度の高い測定をする場合は、第1測定部6及び第2測定部7を同じ形状にすることが好ましい。
【0022】
なお、図3では、第1測定部6及び第2測定部7を略台形状にすることで、第1測定部6及び第2測定部7の幅をLより長くしているが、第1測定部6及び第2測定部7の幅がサンプル移動流路3から離れるにしたがって長くなれば形状に特に限定は無い。例えば、図4は、本発明の電気測定用デバイス1の他の実施形態を示しており、図4に示すように、半円形状とすることで、サンプル移動流路3から離れるにしたがって長くするようにしてもよい。
【0023】
第1測定部6及び第2測定部7の深さは、サンプル移動流路3の深さと同じにすればよい。また、長さLは、短い程感度が良くなることから、微細加工技術で作製可能な程度まで短くすればよい。一方、長さLが長すぎると、サンプルがサンプル移動流路3から第1測定部6又は第2測定部7に流れ込む恐れがあるので、長さLはサンプル移動流路3の幅より短い方が好ましく、測定対象サンプルのサイズより短くすることがより好ましい。
【0024】
図5は、第1測定部6及び第2測定部7を電極で形成した電気測定用デバイス1の概略を説明する図である。第1測定部6及び第2測定部7を電極で形成する場合は、流路を形成する必要は無く、サンプル移動流路3が形成された後、導電性の材料をサンプル移動流路3に接する位置まで塗布すればよい。電気測定用デバイス1の使用時にガラス等で蓋(シール部材)をすることから、サンプル移動流路3の中はサンプル液で満たされる。そのため、基板2上に電極を形成してもサンプル液に導通できる。なお、本発明においては、配置に関係なく、流路を形成している部材を基板と記載し、流路を形成していない部材をシール材と記載する。
【0025】
電極の材料としては、アルミニウム、銅、白金、金、銀、チタン等の公知の導電性金属を用いればよい。また、電極は基板2上をマスクして前記材料を蒸着することで作製すればよい。第1測定部6及び第2測定部7を流路で形成して電極を挿入する形態と比較して、第1測定部6及び第2測定部7を電極で形成すると抵抗を少なくできる。そのため、サンプル移動流路3に印加する電圧を低くすることができる。サンプル移動流路3と電極との接続部分の長さは上記と同様にすればよい。また、相対する電極の形状は同じにすることが望ましい。上記のとおり電極の場合は抵抗を少なくできることから、図3及び図4に示すように第1測定部6及び第2測定部7の幅がサンプル移動流路3から離れるにしたがって長くしてもよいが、長方形等、同じ幅であってもよい。
【0026】
図3図5に示す実施形態では、サンプル測定部が、第1測定部6、第1測定部6とは反対側からサンプル移動流路3に接続する第2測定部7を含んでいたが、第1測定部6及び第2測定部7を電極で形成し、サンプル移動流路3を横切るように形成してもよい。図6は、第1測定部6及び第2測定部7を電極で形成し且つサンプル移動流路3を横切るように形成した電気測定用デバイス1の実施形態を説明するための図で、図6(1)は上面図、図6(2)はC−C’断面図を表す。図6に示す実施形態では、シール材22上に電極(第1測定部6及び第2測定部7)を形成し、基板2にサンプル移動流路3、サンプル投入流路4、サンプル回収流路5、サンプル分離流路11等を形成している。また、基板2には、サンプル投入流路4にサンプルを投入するためのサンプル投入孔23、サンプル回収流路5からサンプルを回収するためのサンプル回収孔24が基板2を貫通するように形成されている。図6に示す実施形態では、電極(第1測定部6及び第2測定部7)は、基板2とシール材22を組み合わせた際に、サンプル移動流路3のサンプルが流れる方向に離間し、且つサンプル移動流路3を横切るように形成されている。本実施形態の電気測定用デバイス1は、図6(2)に示すように、第1測定部6及び第2測定部7の間をサンプルが流れる際の、過渡電流を測定することができる。
【0027】
図7は、第1測定部6及び第2測定部7を電極で形成し且つサンプル移動流路3を横切るように形成した電気測定用デバイス1の他の実施形態を説明するための断面図である。図7(1)に示す実施形態は、第1測定部6又は第2測定部7の何れか一方をシール材22に、他方を基板2に形成することで、サンプル移動流路3を挟むように電極を形成する以外は、図6に示す実施形態と同様である。なお、第1測定部6及び第2測定部7は、基板2とシール材22を組み合わせた際に、サンプル移動流路3を挟んで対称となる位置に形成してもよいが、サンプル移動流路3を挟んで非対称となる位置に形成することが望ましい。
【0028】
図7(2)は、第1測定部6及び第2測定部7を電極で形成し且つサンプル移動流路3を横切るように形成した電気測定用デバイス1の他の実施形態を説明するための断面図である。図7(2)に示す実施形態は、図3〜5に示す実施形態と同様に、基板2側にサンプル移動流路3、サンプル投入流路4、サンプル回収流路5、サンプル分離流路11等を形成し、シール材22に第1測定部6及び第2測定部7をサンプル移動流路3のサンプルが流れる方向に離間し且つサンプル移動流路3を横切るように形成し、並びにサンプル投入孔23及びサンプル回収孔24を形成している。
【0029】
図6及び図7に示す実施形態の電極は、サンプル移動流路3を横切るように形成する以外は、図5に示す実施形態と同様の材料で形成すればよい。
【0030】
サンプル分離流路11は、サンプル投入流路4とサンプル移動流路3の間に形成され、サンプル液中の非分析対象物を除去するために形成されている。例えば、大気中のPM10等の大きなサイズの微粒子を除去してPM2.5を分析、サンプル中の細菌等を除去し溶出物のみを分析、生体サンプル中のタンパク質等の特定の成分を除去して核酸を分析等、投入したサンプルから非分析対象物を除去できれば特に制限は無い。例えば、サンプル中の大きなサイズの微粒子を除去する場合、サンプル分離流路11にサイズ分離フィルターを形成、ナノワイヤを密集状態で形成することでフィルターを形成、液体の流れを利用してサイズ分離を行うピラーの形成等が挙げられる。また、サンプル中のタンパク質等の特定成分を除去する場合は、例えば抗体を担持したフィルター、ナノワイヤ、ピラー等をサンプル分離流路11に形成すればよい。
【0031】
サンプル分離フィルターは、市販されているものを用いればよい。
【0032】
ナノワイヤは、サンプル分離流路11に、ナノワイヤ形成用粒子又は触媒を塗布し、公知の方法でナノワイヤを成長させればよい。ナノワイヤ形成用粒子としては、例えば、ZnOが挙げられる。ZnO微粒子を用いたナノワイヤは、水熱合成方法を用いて作製することができる。具体的には、先ず、ZnO粒子をサンプル分離流路11上に塗布する。次いで、硝酸亜鉛六水和物(Zn(NO32・6H2O)、ヘキサメチレンテトラミン(C6124)を脱イオン水に溶解した前駆体溶液に、加熱した基板を浸漬させることで、ZnOナノワイヤを成長させることができる。
【0033】
ナノワイヤ作製用の触媒としては、例えば、金、プラチナ、アルミニウム、銅、鉄、コバルト、銀、錫、インジウム、亜鉛、ガリウム、クロム、チタン等が挙げられる。触媒を用いたナノワイヤは、次の手順で作製することができる。
(a)触媒をサンプル分離流路11上に堆積する。
(b)SiO2、Li2O、MgO、Al23、CaO、TiO2、Mn23、Fe23、CoO、NiO、CuO、ZnO、Ga23、SrO、In23、SnO2、Sm23、EuO等の材料を用い、パルスレーザーデポジション、VLS(Vapor−Liquid−Solid)法等の物理蒸着法でコアナノワイヤを形成する。
(c)破砕・抽出した核酸が静電的相互作用により吸着し難い材料であるSiO2、TiO2等を用い、スパッタリング、EB(Electron Beam)蒸着、PVD(Physical Vapor Deposition)、ALD(Atomic Layer Deposition)等の一般的な蒸着法により、コアナノワイヤの周囲に被覆層を形成する。なお、触媒を用いて作製するナノワイヤは、分岐鎖を有しないナノワイヤであってもよいし、分岐鎖を有するナノワイヤであってもよい。
【0034】
ピラーは、後述するエッチングを用いた製造方法により、サンプル投入流路4等の他の流路と同時に作製することができる。エッチングによりピラーを形成する場合、ピラーの直径や配置等を制御できる。図8は、ピラー12間を流れる流体の作用により、サイズの異なる微粒子を分離する原理を説明する図である。流路の方向Xに対して、所定角度Y方向にピラー12を設けると、大きな粒子13はY方向(サンプル分離流路11の壁面方向)に流れる。一方、小さな粒子14はピラー12の間を沿って流れることから、サイズの異なる微粒子を分離することができる。ピラー12の直径、ピラー12同士の間隔及び流路の方向Xに対する角度は、分離する微粒子の大きさにより適宜設定すればよい。また、ピラー12の断面形状も、円形、楕円形、三角形等、好適調整すればよい。好適なピラー12のデザインは、例えば、J.McGrath et al.,“Deterministic lateral displacement for particle separation:a review”,Lab on a Chip, Vol.14, pp.4139−4157 (2014)、等を参考に設計すればよい。
【0035】
なお、ピラー12を用いて微粒子の分離を行う場合は、図9に示すように、サンプル分離流路11に分離サンプル排出流路15を設けてもよい。分離された大きなサンプル13は分離サンプル排出流路15を通して排出できるので、サンプル移動流路3内に入ることを防止できるので、ノイズを低減することができる。
【0036】
電気測定用デバイス1は、微細加工技術を用いて製造することができる。図10は、図4のA−A’断面図で、電気測定用デバイス1の製造工程の一例を示している。
(1)基板2の上に、エッチング可能な材料8を化学蒸着で塗布する。
(2)ポジ型フォトレジスト9をスピンコータで塗布する。
(3)流路を形成する個所に光が照射するように、フォトマスクを用いて露光・現像処理し、流路を形成する部分のポジ型フォトレジスト9を除去する。
(4)流路を形成する個所の材料8をエッチングし、基板2上に流路を形成する。
(5)ポジ型フォトレジスト9を除去し、サンプル分離流路11部分に、フィルター又はナノワイヤを形成する。
【0037】
基板2は、半導体製造技術の分野で一般的に用いられている材料であれば特に制限は無い。基板2の材料としては、例えば、石英ガラス、Si、Ge、Se、Te、GaAs、GaP、GaN、InSb、InP等が挙げられる。
【0038】
ポジ型フォトレジスト9としては、TSMR V50、PMER等、半導体製造分野で一般的に使用されているものであれば特に制限はない。また、ポジ型に代え、ネガティブ型フォトレジストを用いてもよく、SU−8、KMPR等、半導体製造分野で一般的に使用されているものであれば特に制限はない。フォトレジストの除去液は、ジメチルホルムアミドとアセトン等、半導体分野で一般的な除去液であれば特に制限はない。
【0039】
基板2の上に堆積し、流路及び流路以外を形成する材料8としては、絶縁性の材料であれば特に制限は無く、例えば、SiO2、Si34、BPSG、SiON等が挙げられる。なお、図10に示す製造工程は、エッチング可能な材料8を用いて流路を形成しているが、材料8として、上記のポジ型フォトレジストやネガティブ型フォトレジスト等の感光性樹脂を用いてもよい。感光性樹脂を用いる場合は、基板2上に感光性樹脂を塗布し、流路を形成できる形状のフォトマスクを用い、露光・現像により、感光性樹脂で流路を形成すればよい。
【0040】
図11は、本発明の電気測定用デバイス1の他の製造工程を示す図である。図10に示す製造工程は、エッチングにより流路を形成しているが、図11に示す製造工程では、鋳型を転写することで電気測定用デバイス1を作製できる。
(1)フォトマスクの形状を変えることで、転写後に流路を形成する凸部8を基板上に形成し、鋳型を作製する。
(2)鋳型を、転写用の材料21に転写する。
(3)鋳型を剥離し、サンプル分離流路11部分に、フィルター、ナノワイヤを形成して基板2を作製する。
【0041】
鋳型を転写する材料21としては、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、硬質ポリエチレン製等のプラスチック等の絶縁性材料が挙げられる。なお、転写して作製した電気測定用デバイス1は、取扱いの利便性を向上するため、ガラス、プラスチック等の補助基板に貼り付けてもよい。
【0042】
また、図6及び図7(1)に示す実施形態の場合は、先ず、図12に示す手順によりシール材22に電極(第1測定部6及び/又は第2測定部7)を形成する。
(1)シール材22の上に、ポジ型フォトレジスト9をスピンコータで塗布する。
(2)第1測定部6及び/又は第2測定部7を形成する個所に光が照射するように、フォトマスクを用いて露光・現像処理し、第1測定部6及び/又は第2測定部7を形成する部分のポジ型フォトレジスト9を除去する。なお、第1測定部6及び/又は第2測定部7に加え、後述するサンプル駆動回路を構成するための電極31、32も必要に応じて形成することもできる。
(3)上記(2)のポジ型フォトレジスト9を除去した部分に、電極を形成する材料を堆積する。
(4)ポジ型フォトレジスト9を除去する。
【0043】
次に、基板2を作製する。基板2は、サンプル移動流路3、サンプル投入流路4、サンプル回収流路5、サンプル分離流路11を形成できる形状のフォトマスクを用いる以外は、上記図11と同様の手順及び材料により作製すればよい。更に、必要に応じて、サンプル投入孔23及びサンプル回収孔24を切削加工等により形成すればよい。そして、基板2とシール材22を液密に接着することで電気測定用デバイス1を作製することができる。
【0044】
なお、図7(1)に示す実施形態では流路等を形成した基板2(鋳型を転写する材料21)に電極(第1測定部6及び/又は第2測定部7)を形成する必要がある。基板2としてPDMS、PMMA、PC等の鋳型を転写する材料21を用いた場合は、“Ikjoo Byun et.al., J.Micromech.Microeng.,23,085016,2013”に記載されている方法により電極を形成すればよい。
【0045】
また、図7(2)に示す実施形態では、流路が基板2側に形成されているので、シール材22に電極を形成すればよい。シール材22としてガラスを用いる場合は図12に示す手順で電極を形成し、PDMS、PMMA、PC等を用いる場合は上記の論文に記載されている方法により電極を形成すればよい。
【0046】
本発明の電気測定用デバイス1を用いて測定する際に、蛍光顕微鏡で観察する場合には、基板2、材料8、鋳型を転写する材料21、補助基板、シール材22は、光透過性材料で形成することが望ましい。
【0047】
また、電気測定用デバイス1は、各種流路やピラーの配置をデザインしたフォトマスクをシリコン等の基板2に被せ、プラズマエッチング等の手法により一体形成してもよい。
【0048】
電気測定用デバイス1は、サンプル液が流れやすくするために親水化処理をしてもよい。親水化処理方法としては、プラズマ処理、界面活性剤処理、PVP(ポリビニルピロリドン)処理、光触媒等が挙げられ、例えば、電気測定用デバイス1の流路が形成されている面を10〜30秒間プラズマ処理することで、表面に水酸基を導入することができる。
【0049】
本発明の電気測定用デバイス1は、サンプルを捕集するためのサンプル捕集手段を設けてもよい。図13は、図4に示す電気測定用デバイス1にサンプル捕集手段50設けた際のB−B’断面図である。サンプル捕集手段50は、大気中又は水中に含まれるサンプルをサンプル投入流路4に投入できれば特に制限は無い。図13には、傾斜状のサンプル捕集部51、及び捕集したサンプルをサンプル投入流路4に投入するためのサンプル投入孔52が形成されたすり鉢状のサンプル捕集手段50が示されている。
【0050】
サンプル捕集手段50は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、硬質ポリエチレン製等のプラスチック等の絶縁性材料で作製することができる。作製方法としては、切削加工又は3Dプリンタが挙げられる。作製したサンプル捕集手段50は、必要に応じて親水化処理又は疎水化処理をしてもよい。例えば、雨水や排水等の水に含まれるサンプルを分析する場合は、少なくとも傾斜状のサンプル捕集部51を疎水化処理して水が流れやすくしてもよい。逆に、大気中に含まれる水分を捕集し、捕集した水分に含まれるサンプルを分析する場合は、大気中の水分を捕集し易くするためにサンプル捕集部51を親水化処理してもよい。
【0051】
疎水化処理は、例えば、フッ素処理、プラズマ処理、プラズマ重合、表面の化学修飾、表面への疎水性化合物のグラフト重合、疎水性ポリマーのコーティング、金属酸化物の被膜(ALDを用いた)などが挙げられる。また、親水化処理は、上記のプラズマ処理、界面活性剤処理、PVP(ポリビニルピロリドン)処理、金属酸化物の被膜、光触媒等と同様に行えばよい。何れも、公知の方法で処理を行えばよい。
【0052】
サンプルとして空気中の水分を捕集する場合、サンプル捕集部51の表面積を増やすことで空気中の水分を捕集し易くなる。図14(1)は、サンプル捕集部51に錐体53を形成した例を示している。錐体53は、円錐、3角錐や4角錐等の多角錐等、サンプル捕集部51の面から先尖形状に形成されていれば特に制限は無い。錐体53に吸着した水分は重力によりサンプル捕集部51に流れる。なお、錐体53をサンプル捕集部51面上にランダムに形成すると、捕集した水分がサンプル捕集部51をスムーズに流れ難くなる。そのため、錐体53は規則的に形成することが望ましく、例えば、六方細密充填配置等が挙げられる。図14(1)に示すサンプル捕集手段50は、3Dプリンタで作製することができる。また、錐体53に代え、上記した手法によりサンプル捕集部51にナノワイヤを形成することで、サンプル捕集部51の表面積を増加してもよい。
【0053】
更に、図14(1)に示す錐体53を形成した後に、ナノワイヤを錐体53とサンプル捕集部51に形成してもよい。なお、錐体53にもナノワイヤを形成する場合、図14(2)に示すように、錐体53の頂部に向かうほどナノワイヤの密度を高くすることが望ましい。頂部のナノワイヤの密度を高くすると、表面エネルギー差+ラプラス圧差により、錐体53で捕集した水分をサンプル捕集部51(矢印方向)に流すことができる。図14(2)に示す実施形態はナノワイヤ形成用微粒子であるZnOを塗布してナノワイヤを成長させればよい。均一にZnO成長することにより、錐体53の頂部に向かうほどナノワイヤの密度を高くすることができる。
【0054】
図15は、本発明の電気測定用デバイス1を用いた電気測定装置10の概略を示す図である。なお、図14に示す例は、第1測定部6及び第2測定部7として流路を形成し、流路内に電極を挿入する実施形態を説明する図である。電気測定装置10は、電気測定用デバイス1に加え、駆動回路30、及び測定回路40を含んでいる。
【0055】
駆動回路30は、サンプル投入流路4に挿入する第1電極31及びサンプル回収流路5に挿入する第2電極32、電圧印加手段33を含んでいる。第1電極31及び第2電極32は、電気を通す材料であれば特に制限は無く、例えば、アルミニウム、銅、白金、金、銀、チタン等の公知の導電性金属を用いればよい。なお、図15に示す例では、第1電極31をサンプル投入流路4に、第2電極32をサンプル回収流路5に挿入しているが、第1電極31及び第2電極32は、サンプル投入流路4及びサンプル回収流路5に形成し、電線で繋いでもよい。電圧印加手段33は、駆動回路30に直流電流を流してサンプルを移動できるものであれば特に制限は無いが、電池ボックス等、ノイズを出しにくいものが好ましい。
【0056】
なお、図15に示す実施形態では、電気測定用デバイス1のサンプル投入流路4及びサンプル回収流路5に電極31及び32を投入してサンプルを移動させているが、サンプルが移動できれば他の実施形態であってもよい。例えば、サンプル回収流路5の一部に孔をあけ、シリコンチューブの一端をサンプル回収流路5に接続し他端をシリンジポンプ等の吸引器に接続することで、駆動回路30に加え、吸引力によりサンプルを移動させてもよい。細胞等の大きなサンプルを用いる場合に有用である。また、サンプル投入流路4及びサンプル回収流路5を設けなくてもよい。その場合、サンプル分離流路11及びサンプル移動流路3に孔を形成し、駆動回路30の第1電極31をサンプル分離流路11に挿入し、第2電極32をサンプル移動回路3に挿入すればよい。更に、必要に応じて、サンプル移動流路3の一端の孔には上記と同様の吸引器を設け、サンプル分離流路11の孔にはシリコンチューブの一端を接続し、当該シリコンチューブの他端をサンプル液容器に接続することで、駆動回路30に加え、吸引力によりサンプルを移動してもよい。
【0057】
第1測定部6及び第2測定部7を流路で形成する場合、測定回路40は、第1測定部6に挿入する第3電極41及び第2測定部7に挿入する第4電極42、電流計43を少なくとも含んでおり、第3電極41及び第4電極42からの電流を電流計43で測定すればよい。
【0058】
また、駆動回路30と測定回路40の電圧を釣り合わせた状態にし、釣り合った状態からの電流の差分を検出することでより高感度検出を行う場合は、測定回路40に電圧印加手段44、可変抵抗45、抵抗値の決まった抵抗素子46、更に、必要に応じて増幅手段を含ませることで、電流の差分のみを測定できるようにしてもよい。より具体的には、一定電圧下で可変抵抗45の抵抗値を操作することで、抵抗素子46と可変抵抗45の各電位差を変化させることができる。サンプル移動流路3中の第1測定部6及び第2測定部7に挟まれている部分の電位差と、抵抗素子46の電位差が釣り合うことで、キルヒホッフの法則に基づき、サンプル移動流路3中の第1測定部6及び第2測定部7に挟まれている部分と、抵抗素子46と第1測定部6及び第2測定部7を含む回路には電流が流れない状態が作られる。この状態でサンプルが流入すると、サンプル流入による電流の変化は、電流が流れない状態からの差分として測定することができる。
【0059】
第3電極41及び第4電極42は、第1電極31及び第2電極32と同様の材料で作製すればよく、また、第1測定部(流路)6及び第2測定部(流路)7に形成して電線で繋いでもよい。電圧印加手段44は、電圧印加手段33と同様に、測定回路40に直流電流を流せれば特に制限は無く、電池ボックス等を用いればよい。電流計43も一般的に使用されている電流計を用いればよい。増幅手段も、一般的に使用されているアンプを用いればよい。なお、第1測定部6及び第2測定部7を電極で形成する場合は、第3電極41及び第4電極42は不要で、電流計43に接続する電線を電極に接続すればよい。
【0060】
本発明では、可変抵抗45及び抵抗素子46を用いることで、サンプル移動流路3中の第1測定部6及び第2測定部7に挟まれている部分の電位差と、抵抗素子46の電位差を釣り合った状態にし、サンプルがサンプル移動流路3に入った際の過渡電流の発生及び定常電流の変化を、釣り合った状態からのズレとして測定することができるので、検出感度を高めることができる。本発明に使用できる可変抵抗45及び抵抗素子46は、市販されているものを用いればよい。
【0061】
図16は、本発明の電気測定装置10を用いてサンプルを測定する際の、電気測定用デバイス1上のサンプルの位置と測定できる電流値の関係を説明する図である。先ず、測定の前に、PBS、リン酸バッファー、TBEバッファー等の緩衝液を毛管現象で流路に導入し、次いで、サンプル液をサンプル投入流路4に投入する。次に、駆動回路30に電圧を印加すると、サンプルが、サンプル分離流路11、サンプル移動流路3を通りサンプル回収流路5に向けて移動する。サンプル分離流路11とサンプル移動流路3の境界付近(図16中のaの位置)にサンプルが移動すると、測定回路40は先ず過渡電流を測定する。次に、サンプルが、aの位置からサンプル移動流路3と第1測定部6の接続部分(図16中のbの位置)の付近に移動するまで、定常電流の変化を読み取る。そして、サンプルが、bの位置からサンプル移動流路3と第2測定部7の接続部分(図16中のcの位置)から出るまでの間は、より大きな定常電流の変化を測定する。そして、サンプルが、cの位置からサンプル移動流路3とサンプル回収流路5の境界付近(図16中のdの位置)に移動するまで、定常電流の変化を読み取り、そして、サンプルがサンプル回収回路5に出る際に、測定回路40は過渡電流を測定する。
【0062】
図16に示すように、本発明の電気測定用デバイス1を用いてサンプルを測定すると、サンプルがサンプル移動流路3に入る時と出る時の過渡電流を測定することで、サンプルがサンプル移動流路3を移動(図16中のa〜d)する時間を正確に測定することができる。したがって、サンプルの表面電荷や変形能などを測定することができる。
【0063】
また、サンプルの粒径、形状は、サンプルが、第1測定部6とサンプル移動流路3の接続部分から第2測定部7とサンプル移動流路3の接続部分までの間(図16中のb〜c)の定常電流の変化の大きさで測定することができる。したがって、サンプル移動流路3の長さに比較して、サンプルの定常電流の変化を測定する長さが短いことから、測定感度を維持することができる。更に、第1測定部6と第2測定部7の間以外のサンプル移動流路3はガイド流路として利用することができることから、測定感度を維持したまま、DNA等の細長い分子を伸長状態で測定することが可能となる。
【0064】
上記のとおり、本発明の電気測定装置10は、サンプルがサンプル移動流路3を通過する間の定常電流の変化を測定し、特に、サンプルが第1測定部6及び第2測定部7の間を移動している時の定常電流のより大きな変化を測定している。したがって、第1測定部6及び第2測定部7は、サンプル移動流路3の両端部に近い非対称となる位置に形成してもよいが、その場合、後述する実施例で示すとおりピーク時の波形は線状となることから第1測定部6及び第2測定部7を形成する位置のズレを小さくすることが好ましい。なお、本発明において、位置の「ズレ」とは、第1測定部6とサンプル移動流路3の接続部分の中間点と第2測定部7とサンプル移動流路3の接続部分の中間点(図16中の⇔)を意味する。一方、後述する実施例で示すとおり、サンプル移動流路3を挟んだ対称となる位置に第1測定部6及び第2測定部7を形成しても定常電流を測定することはできるが、定常電流の波形が割れることから、上記のとおり、非対称となる位置に形成することが好ましく、位置のズレを、第1測定部6とサンプル移動流路3の接続部分の長さの半分+第2測定部7とサンプル移動流路3の接続部分の長さの半分+サンプルの大きさ、とすることがより好ましい
【0065】
図17は、電気測定用チップ1の他の実施形態を示す図である。図3〜5に示す電気測定用チップ1のサンプル投入流路4及びサンプル回収流路5は単一の流路となっているが、図17に示すよう、サンプル投入流路4及びサンプル回収流路5を、複数の流路として形成してもよい。サンプル投入流路4を複数の流路とすることで、例えば、異なるサンプルを夫々の流路に入れ、駆動回路の第1電極31及び第2電極32も夫々の流路に入れ、電圧を印加する電極を切り替えることで、異なるサンプルを連続分析して、サンプル回収流路に回収することができる。
【0066】
なお、複数の流路は、サンプル投入流路4又はサンプル回収流路5の一方のみに形成してもよい。サンプル投入流路4のみを複数の流路とした場合は、異なるサンプル液を連続的に分析することができる。
【0067】
また、サンプル液中に表面電荷が異なるサンプルが含まれる場合、サンプル移動流路3を流れるサンプルの移動速度が異なる。したがって、サンプル回収流路5のみを複数の流路を形成し、夫々の流路に挿入する電極を切り替えることで、サンプル液中の異なるサンプルを分離・回収することができ、更に別の分析に用いることができる。
【0068】
以下に実施例を掲げ、本発明を具体的に説明するが、この実施例は単に本発明の説明のため、その具体的な態様の参考のために提供されているものである。これらの例示は本発明の特定の具体的な態様を説明するためのものであるが、本願で開示する発明の範囲を限定したり、あるいは制限することを表すものではない。
【実施例】
【0069】
〔第1測定部6及び第2測定部7の間隔が異なる電気測定用デバイスの作製〕
<実施例1>
先ず第1測定部6及び第2測定部7の間隔の違いによる定常電流及び過渡電流の測定値の変化を調べるため、以下の手順で電気測定用デバイスを作製した。なお、後述する実施例5〜7において第1測定部6及び第2測定部7の間隔の違いによる測定値の変化を調べるためには、サンプルを同じ状態でサンプル移動流路3に流入する必要がある。また、後述する実施例9及び10において、本発明の電気測定用デバイスを用いて粒径の異なるサンプルを検出できることを明らかにするためには、粒径の異なる混合サンプルをサンプル移動流路3に流入させる必要がある。そのため、サンプル分離流路は不要であることから、実施例1〜3の電気測定用デバイスには、サンプル分離流路を形成しなかった。
(1)厚さ600μmのシリコン基板2(フェローテックシリコン社製 直径76mm)を準備した。
(2)ネガ型フォトレジストSU−8 3005(MICRO CHEM社製)をスピンコータにより塗布した。
(3)フォトリソグラフィにより、流路を形成する個所に光が照射するように、フォトマスクを用いて露光した。露光後は、SU−8 developer(MICRO CHEM社製)を用いてレジストを現像した。現像後は、超純水を用いてリンスし、スピンドライヤーで水分を飛ばし乾燥させ、鋳型を作製した。
(4)作製した鋳型に、ポリジメチルシロキサン(PDMS:東レ社製、SILPOT184)を流し込み、硬化させた。
(5)硬化したPDMSを鋳型から取り外し、次いで、市販のカバーガラス(厚み:0.17mm)をPDMSに密着させて、電気測定用デバイス1を作製した。
【0070】
図18(1)は、実施例1で作製した電気測定用デバイス1の写真で、図18(2)は、第1測定部6及び第2測定部7付近の拡大写真である。サンプル移動流路3の長さは150μm、幅は4μm、深さは7.5μmであった。第1測定部6及び第2測定部7の深さは7.5μm、サンプル移動流路3との接続部分の長さは10.5μmで、サンプル移動流路と第1測定部の角度は約45°であった。また、サンプル移動流路3を挟んだ第1測定部6と第2測定部7の位置のズレは、40μmであった。サンプル投入流路4及びサンプル回収流路5の深さは7.5μmであった。
【0071】
<実施例2>
実施例1のフォトマスクの形状を換え、第1測定部6と第2測定部7の位置のズレを5μmとした以外は、実施例1と同様の手順で電気測定用デバイス1を作製した。図19(1)は、実施例2で作製した電気測定用デバイス1の第1測定部6及び第2測定部7付近の拡大写真である。
【0072】
<実施例3>
実施例1のフォトマスクの形状を換え、サンプル移動流路3を挟んで対称の位置に第1測定部6と第2測定部7を形成した以外は、実施例1と同様の手順で電気測定用デバイス1を作製した。図19(2)は、実施例3で作製した電気測定用デバイス1の第1測定部6及び第2測定部7付近の拡大写真である。
【0073】
〔電気測定装置10の作製〕
<実施例4>
(1)駆動回路30の作製
第1電極31及び第2電極32は、電線(オヤイデ電気社製FTVS−408)の皮を剥いで金属部分を露出させて作製した。電圧印加手段33は、電池ボックス(誠南工業社製)を用いた。
(2)測定回路40の作製
第3電極41及び第4電極42は、電線(オヤイデ電気社製FTVS−408)の皮を剥いで金属部分を露出させて作製した。増幅手段は、FEMTO社製Variable Gain Low Noise Current Amplifierを用いた。電圧印加手段44は、電池ボックス(誠南工業社製)を用いた。可変抵抗45は、BI Technologies社製精密ポテンションメーターを用いた。電流計43は、増幅手段で増幅したシグナルをUSB−DAQ(National Instruments社製)を用いてPC用の電気信号に変換し、Lab View(National Instruments社製)を用いて作成したソフトウェアで読み取った。抵抗素子46は、金属皮膜抵抗(1kΩ パナソニック製)を用いた。
(3)実施例1で作製した電気測定用デバイス1の、サンプル投入流路4に第1電極31、サンプル回収流路5に第2電極32、第1測定部6に第3電極41、第2測定部7に第4電極42を挿入することで、本発明の電気測定装置10を作製した。
【0074】
〔電気測定装置10を用いた測定〕
<実施例5>
超純水にサンプルとして蛍光マイクロビーズ(Polyscience社製Fluoresbrite)を分散することで、サンプル液を作製した。次に、5×TBEバッファーを毛管現象により流路に導入し、作製したサンプル液30μlをサンプル投入流路4に投入し、駆動回路30に53Vの電圧を印加した。また、測定回路40には、18Vの電圧を印加した。可変抵抗45を操作し、駆動回路30及び測定回路40の見かけ上の抵抗を釣り合った状態にした。サンプルがサンプル移動流路3を流れた際の定常電流の変化と過渡電流の発生を計測した。図20(1)は、実施例5における測定時間と測定された定常電流値の関係を示すグラフである。
【0075】
<実施例6>
実施例2で作製した電気測定用デバイス1を作製した以外は、実施例5と同様の手順で測定を行った。図20(2)は、実施例6における測定時間と測定された定常電流値の関係を示すグラフである。
【0076】
<実施例7>
実施例3作製した電気測定用デバイス1を作製した以外は、実施例5と同様の手順で測定を行った。図20(3)は、実施例7における測定時間と測定された定常電流値の関係を示すグラフである。
【0077】
図20(1)〜(3)に示すように、実施例1〜3の何れの電気測定用デバイス1を用いた場合でも、過渡電流の2つのピークが確認され、ピークの間隔はほぼ同じであった。実施例1〜3は同じサンプルを使用していることから、表面電荷は同じである。したがって、第1測定部6及び第2測定部7の位置関係によらず、サンプルの表面電荷に応じて、サンプルがサンプル移動流路3を移動する時間を正確に測定することができる。
【0078】
また、実施例1の電気測定用デバイス1を用いた場合、図20(1)に示すように、定常電流値の変化量は一番大きかったが、ピーク時の波形は線状となった。これは、第1測定部6及び第2測定部7のズレが大きいことから、第1測定部6及び第2測定部7の間でサンプルが移動しても、体積変化が起こらず定常状態が続いたためと考えられる。
【0079】
一方、図20(2)に示すように、実施例2の電気測定用デバイス1を用いた場合、実施例1の電気測定用デバイス1と比較して、定常電流値の変化は少なくなるものの、定常電流値の波形は明確なピークを示した。
【0080】
更に、実施例3の電気測定用デバイス1を用いた場合、図20(3)に示すようにピークを2つ測定した。これは、図21に示すように、
(1)第1測定部6及び第2測定部7が対称となる位置関係に配置されているため、実施例1及び実施例2の配置のデバイスより測定回路40の電流が流れやすい、
(2)第1測定部6及び第2測定部7の端にサンプルが流れて来た時に定常電流の変化を測定するが、上記のとおり、実施例3の電気測定用デバイス1は電気が流れやすいため、サンプルがサンプル移動流路3との接続部分の中間に来た時に定常電流値がベース値に近い値に戻り、
(3)そして、接続部分からサンプルが流れ出る際に、定常電流値の変化を測定した、
為と考えられる。
【0081】
以上の結果より、第1測定部6及び第2測定部7は、サンプル移動流路3を挟んで非対称の位置に形成することが好ましく、サンプルの大きさに応じてピーク値の値が線状にならない程度にズラして配置(第1測定部6の端部と第2測定部7の端部がサンプル移動流路3を挟んで重ならず、且つ離れすぎない位置)することが好ましい。
【0082】
〔電気測定装置10及び蛍光顕微鏡を用いた測定〕
<実施例8>
サンプルとして蛍光マイクロビーズ(Polyscience社製Fluoresbrite)を用い、電気測定用デバイス1の第1測定部6と第2測定部7の間が観察できるように蛍光顕微鏡(Nikon社製TE300)を配置して蛍光強度を測定した以外は、実施例5と同様の手順で測定を行った。図22は、電気測定用デバイス1の写真及び第1測定部6〜第2測定部7の間を流れる蛍光マイクロビーズの写真、並びに、蛍光マイクロビーズが流れる際の定常電流値の変化(シグナル強度)と蛍光強度の変化を示すグラフ(グラフ中の線で囲った部分が、蛍光マイクロビーズが第1測定部6〜第2測定部7の間を流れた際の測定結果)である。図22に示すように、本発明の電気測定装置10を用いることで、過渡電流及び定常電流値の変化を測定しつつ、蛍光顕微鏡で電気測定用デバイス1のサンプル移動流路3を流れるサンプルを観察することができるので、電気測定用デバイス1の測定部位で起こっている事象を正確に観察することができる。
【0083】
<実施例9>
サンプルとして、粒径が約3.1μm、2.08μm、1μmの蛍光マイクロビーズ(Polyscience社製Fluoresbrite)を用いた以外は、実施例8と同様の手順で測定を行った。図23は実施例9で測定した定常電流値の変化(シグナル強度)を示すグラフである。従来の定常電流値の変化の測定のみでは、同じ大きさの物質が重なったものであるのか、又は、大きさの異なる物質であるのか判別が困難であったが、蛍光顕微鏡と併せて観察することで、サンプルを正確に判別できた。なお、蛍光顕微鏡は異なる色を判別できることから、例えば、グラム陰性菌と陽性菌を染色して蛍光顕微鏡で観察しつつ、過渡電流及び定常電流値の変化を測定することで、大凡の種類の判別も可能となる。
【0084】
〔粒径と定常電流値の大きさの関係〕
<実施例10>
サンプルとして、粒径が約3.1μm、2.08μm、1.75μm、1.1μm、1μm、0.75μmの蛍光マイクロビーズ(Polyscience社製Fluoresbrite)を用いて実施例9と同様の手順で測定を行った。図24はサンプルの体積と定常電流値の変化(シグナル強度)を示すグラフである。図24に示すように、シグナル強度とサンプルの体積は相関関係があることが確認できた。
【0085】
〔印加電圧と、シグナル強度及び通過時間の関係〕
<実施例11>
実施例5において、駆動回路30の電圧を、53V、32V、12Vの3種類に代えて測定した以外は実施例5と同様の手順で測定を行った。図25は、駆動回路の電圧とサンプルがサンプル移動流路を通過する時間の関係を示す図である。図25に示すように、駆動電圧30の電圧を大きくすることで、測定感度を上げることができる一方で、サンプルの表面電荷により、通過時間が短くなることが明らかとなった。また、12Vの場合は、シグナル強度のバラツキは少なかったものの、通過時間のバラツキが大きかった。一方、駆動電圧を32V以上にした場合、通過時間のバラツキはほとんどなかったが、シグナル強度のバラツキが見られた。これは、低電圧下では、電荷を持つサンプルへの駆動力が小さくなり、壁面から受ける摩擦力によってサンプルの移動速度に影響を与えたためと考えられる。
本発明においては、サンプル移動流路3の長さ、及び第1測定部6及び第2測定部7の間隔を任意に設定できる。したがって、駆動回路30の電圧を高くしても、定常電流の変化を読み取るのに必要で且つ最短となる時間となるようにサンプル移動流路3の長さ、及び第1測定部6及び第2測定部7を設定できることから、短時間で高感度検出を行うことができる。
【0086】
〔サンプル分離流路を含む電気測定用デバイスの作製〕
<実施例12>
(1)厚さ380μmのシリコン基板(フェローテックシリコン社製 直径76mm)を準備した。
(2)サンプル分離流路を含む各種流路、及びサンプル分離流路内のピラー以外の部分をエッチングできる形状となるように、OFPR8600でマスクを作製した。
(3)次に、ICPエッチング装置(サムコ株式会社製)でドライエッチングすることで、電気測定用デバイス1を作製した。
【0087】
図26(1)は実施例12で作製した電気測定用デバイス1のサンプル分離流路11部分の写真、図26(2)はピラー部分を拡大した写真である。ピラーの直径は約10μm、高さは(サンプル分離流路の深さ)は約20μm、隣り合うピラーの間隔(ピラーの外周同士の間隔)は約10μmであった。また、サンプル分離流路11の壁面とピラー列の角度は約1.6℃であった。
【0088】
〔サンプル移動流路3を横切るように電極を形成した電気測定用デバイスの作製〕
<実施例13>
先ず、以下の手順で電極(第1測定部6及び第2測定部7)を形成したシール材22を作製した。
(1)石英ガラス(クリスタルベース社製)の上に、接着層となるOAP(東京応化工業製)を塗布し、ポジ型フォトレジストOFPR8600(東京応化工業製)をスピンコータにより塗布した。
(2)フォトリソグラフィにより、第1測定部6及び第2測定部7を形成する個所に光が照射するように、フォトマスクを用いて露光した。露光後は、NMD−3を用いてレジストを現像した。現像後は、超純水を用いてリンスした。
(3)ポジ型フォトレジスト9を除去した部分に、スパッタ装置(サンユー電子製)を用いて、Tiを10nm、Ptを120nm堆積することで、シール材22を作製した。
【0089】
次に、実施例12と同様の手順により、サンプル分離流路11にピラーを形成した基板2を作製し、シール材22に形成した電極(第1測定部6及び第2測定部7)がサンプル移動流路3を横切るように、基板2とシール材22を貼り合わせた。図27は、実施例27で作製した電気測定用デバイス1をシール材22側から倒立顕微鏡で撮影した写真である。第1測定部6と第2測定部7の間隔は約3μmであった。また、サンプル移動流路3の幅はPM2.5の測定用のため、3μmとした。
【0090】
〔電気測定装置10の作製及び測定〕
<実施例14>
次に、実施例13で作製した電気測定用デバイス1を用いた以外は、実施例4と同様の手順で電気測定装置10を作製した。サンプルにはPM2.5の標準物質(国立環境研究所 CRM No.28 都市大気粉塵)を0.1M KClに分散したものを用い、駆動回路30に印加する電圧を6V、測定回路40に印加する電圧を1.5Vとした以外は、実施例5と同様の手順で測定を行った。図28は、実施例14における測定時間と測定された定常電流値の関係を示すグラフである。実図28に示すように、過渡電流の2つのピーク(ピーク間のTime:0.007s)及び定常電流値の変化を測定できた。
【0091】
以上の結果より、測定回路を構成する電極は、図5に示すようにサンプル移動流路3を挟むように形成してもよいし、図6及び図7に示すようにサンプル移動流路3を横切るように形成してもよいことが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の電気測定用デバイス1を用いることで、駆動回路と測定回路を別回路として設計できるので、駆動回路の電圧を高く設定し、検出感度を高めることができる。更に、過渡電流も正確に読み取ることができることから、サンプルの表面電荷を読み取ることができ、また、サンプル移動流路内でサンプルの伸長状態を作り出して核酸やタンパク質等の生体分子の測定が可能となる。更に、測定前にサンプルを分離することもできる。
したがって、企業、研究機関等において、サンプルを正確に分析するための測定機器の開発に有用である。
図1
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【国際調査報告】