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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2016年12月15日
【発行日】2018年4月19日
(54)【発明の名称】非ペプチド性GAPDH凝集阻害剤
(51)【国際特許分類】
   C07C 323/60 20060101AFI20180323BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20180323BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20180323BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20180323BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20180323BHJP
   C12N 9/04 20060101ALN20180323BHJP
【FI】
   C07C323/60CSP
   A61K31/198ZNA
   A61P25/28
   A61P25/16
   A61P25/14
   C12N9/04 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
【全頁数】21
【出願番号】特願2017-523665(P2017-523665)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2016年6月8日
(31)【優先権主張番号】特願2015-116140(P2015-116140)
(32)【優先日】2015年6月8日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】505127721
【氏名又は名称】公立大学法人大阪府立大学
【住所又は居所】大阪府堺市中区学園町1番1号
(74)【代理人】
【識別番号】100104307
【弁理士】
【氏名又は名称】志村 尚司
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 秀満
【住所又は居所】大阪府堺市中区学園町1番1号 公立大学法人大阪府立大学内
【テーマコード(参考)】
4B050
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
4B050CC10
4B050DD11
4B050HH04
4B050KK12
4B050LL01
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA03
4C206GA19
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZA02
4C206ZA15
4C206ZA16
4H006AA01
4H006AB21
4H006TA04
4H006TB55
4H006TC34
(57)【要約】
【課題】GAPDH凝集阻害剤として使用し得る新たな非ペプチド化合物を提供する。
【解決手段】化学式1(但し、式中のR,R,Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、又は炭素原子数が1以上10以下の脂肪族炭化水素基である。)で示される化合物、それらのポリサルファー化誘導体又はそれらの薬理学的に許容される塩を有効成分とするGAPDH凝集阻害剤を提供する。この化合物は、GAPDH凝集阻害作用を有し、脳神経変性疾患に関連する各種タンパク質の脳内凝集を抑制して、これらタンパク質の凝集に伴うアルツハイマー病やパーキンソン病、脳梗塞など各種脳神経疾患の改善又はこれら疾患の重篤化の防止に寄与する。
【式1】

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式1(但し、式中のR,R,Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、又は炭素原子数が1以上10以下の脂肪族炭化水素基である。)で示される化合物、又は化学式1で示される化合物のポリサルファー化誘導体、並びにそれらの薬理学的に許容される塩。
【化1】
【請求項2】
化学式1(但し、式中のR,R,Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、又は炭素原子数が1以上10以下の脂肪族炭化水素基である。)で示される化合物、化学式1で示される化合物のポリサルファー化誘導体、それらの薬理学的に許容される塩からなる群から選ばれる1以上の化合物を有効成分とするGAPDH凝集阻害剤。
【化1】
【請求項3】
請求項1に記載の化合物を含有する医薬組成物。
【請求項4】
脳神経変性疾患又はその症状を予防、治療又は改善するための請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記脳神経変性疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、脳梗塞の何れかである請求項4に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非ペプチドであるGAPDH(グリセルアルデヒド‐3‐リン酸脱水素酵素)の凝集阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
認知障害を主徴とするアルツハイマー病は早急に対策を要する疾患である。アルツハイマー病などのアミロイドーシスとGAPDHの凝集には関連があり、GAPDHの凝集を阻害すればアミロイドβの凝集や沈着が防止されることが指摘されている。このような状況下において、本願発明者らは、特定のアミノ酸配列を有する10〜20個のアミノ酸残基からなるペプチドがGAPDHの凝集を阻害することを見いだし、特許出願を行っている(特許文献1)。
【0003】
しかしながら、ペプチドは消化管で分解されるだけでなく体内における代謝も早く、静脈投与によっても脳内への移行が少ないとされる。また、ペプチドの合成や精製も困難であるという問題点があるので、ペプチドに類似した非ペプチド化合物(ペプチドミミック)が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−241402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、特許文献1に開示されたペプチドについて更に研究を進めたところ、さらに短いアミノ酸残基からなるペプチドがGAPDHの凝集を抑制することを突き止めた。そしてこのペプチドから種々の化合物をモデリングしたところ、GAPDHの凝集を選択的に阻害する化合物が見いだされた。つまり、本発明の課題は、GAPDH凝集阻害剤として使用し得る新たな非ペプチド化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る化合物は次の化学式1(化1)で示される化合物又はそれらのポリサルファー化誘導体であって、GAPDH凝集阻害剤として使用される。但し、式中の、R,R,Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、又は炭素原子数が1以上10以下の脂肪族炭化水素基である。また、本発明に係る化合物はそれらの薬理学的に許容される塩やでもあり得る。
【化1】
【発明の効果】
【0007】
本発明は非ペプチド化合物である新しいGAPDH凝集阻害剤を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は化合物TN-101の合成経路を示す図である。
図2図2はアミロイドβ40誘発性PC12細胞死におけるGAI-17ぺプチドの保護効果を示す図である。図中「**」はコントロールとの間で有意差(有意水準1%)があったことを、「##」「††」は対象群間で有意差(有意水準1%)があったことを示す。
図3図3は脳卒中モデルにおけるGAPDH凝集と脳梗塞の関係を示す図である。(a)は脳内GAPDH凝集体の形成を示すウエスタンブロッティングの画像を、(b)は脳内GAPDH凝集体の形成と脳梗塞体積の関係を示す図である。
図4図4はGAI-17ペプチドの脳保護効果を示す図である。(a)は脳梗塞体積の変化を示す図、(b)は神経症状の改善を示す図である。
図5図5はGAPDHと化合物TN-101が結合した状態のファーマコフォアモデルを示す図である。
図6図6は化合物TN-101の1次スクリーニングの結果を示す図である。
図7図7は化合物TN-101の2次スクリーニングの結果を示す図である。
図8図8は化合物TN-101のGAPDH凝集阻害活性(IC50)の測定結果を示すグラフである。図中「**」はGAI-17ペプチドとの間で有意差(有意水準1%)があったことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る化合物は次の化学式1(化1)で示される化合物又はそれらの化合物のポリサルファー化誘導体である。なお、化学式中、R,R,Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、又は炭素原子数が1以上10以下の脂肪族炭化水素基である。ハロゲン原子は、フッ素原子であり、塩素原子であり、臭素原子であり、ヨウ素原子であり得る。脂肪族炭化水素基は、飽和又は不飽和の炭化水素基でもあり、直鎖状又は分岐状の炭化水素基でもあり得る。脂肪族炭化水素基は、例えば、メチル基であり、エチル基であり、n−プロピル基であり、イソプロピル基であり、n−ブチル基であり、イソブチル基であり、sec-ブチル基であり、tert-ブチル基であり得る。本発明において、ポリサルファー化誘導体とは、化学式2(化2:但し式中nは1以上の整数)に示されるように、化学式1で示される化合物のイオウ原子にさらに1個又は2個以上のイオウ原子(ポリサルファー)が付加された化合物、及び化学式3(化3:但し式中nは1以上の整数)に示されるように2分子の化学式1で示される化合物が、1個又は2個以上のイオウ原子(ポリサルファー)を介在させて結合した誘導体を意味する。また、本発明に係る化合物は、薬理学的に許容される塩でもあり得る。当該塩は、例えば塩酸塩であり、硫酸塩であり、マレイン酸塩であり、オレイン酸塩、フマル酸塩であり得る。
【0010】
【化1】
【0011】
【化2】
【0012】
【化3】
【0013】
化学式1で示される化合物は、一般的な合成方法により容易に合成され得る。その合成方法は例えば、図1に示される。もっとも、図1に示された反応条件や試薬、溶媒は例示であり、適宜当業者により好ましい条件や試薬や溶媒が選択され得る。そして、そのポリサルファー化誘導体は、公知の方法、例えば、Idaらの論文(Ida T, Sawa et al., Reactive cysteine persulfides and S-polythiolation regulate oxidative stress and redox signaling, Proc. Natl. Acad. Sci. U S A., 2014, 111巻21号, 7606-7611頁)に記載された方法によって製造し得る。
【0014】
本発明に係る化合物はGAPDH凝集阻害作用を発揮し、種々の脳神経変性疾患又はその症状の予防、治療又は改善に使用され得る。脳神経変性疾患は、例えば、アルツハイマー病であり、ハンチントン病であり、パーキンソン病であり、脳梗塞であり得る。当該化合物は、GAPDHの活性中心にあるCys-152周辺に形成される結合ポケットに、化合物のSH基が入り、GAPDHのCys-152とS-S結合を生じて、GAPDHのオリゴマー化(凝集)を阻止する。したがって、医薬品としての使用に際しては、置換基であるR,R,Rの選択に際してはファーマコアフォアモデルが参考にされ、炭素原子数が10よりも大きい場合もあり得る。GAPDHの凝集は、脳神経変性疾患に関与する種々のタンパク質、例えばアルツハイマー病におけるアミロイドβである、の凝集や沈着を防止し得る。また、脳血流障害時には、脳梗塞に先だってGAPDH凝集体が形成されることから、脳梗塞の発生や進行を阻止し得る。
【0015】
当該化合物は医薬品として使用される場合、典型的には医薬組成物として使用される。医薬組成物は、脳室内への直接投与の他、経皮投与、静脈内投与、筋肉内投与、経直腸投与など種々の方法により投与され得る。医薬組成物は、各投与経路に応じた剤型に調製され得る。その剤型は特に限定されず、例えば散剤であり、顆粒剤であり、錠剤であり、カプセル剤であり、内服用液剤であり、注射剤であり、スプレー剤であり、軟膏であり、硬膏剤であり得る。
【0016】
本発明に係る医薬組成物は、本発明に係る化合物と製剤化に必要な担体及びその他の補助剤を含み得る。製剤化に必要な担体は、例えば、デンプンや乳糖、白糖などの賦形剤であり、液剤のための精製水であり、注射剤のための注射用精製水であり、外用剤に使用されるワセリンやラノリンなどの軟膏用基剤であり得る。その他の補助剤は、例えば、トラガントガムやゼラチンのような結合剤、ステアリン酸マグネシウムやタルクのような滑沢剤、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースのような崩壊剤、メチルセルロースやヒドロキシプロピルセルロースなどのコーティング剤、pH調整剤、安定剤、乳化剤などであり得る。
【0017】
化合物の投与量は、投与される化合物の種類、疾患の種類や患者の状態、投与経路、患者の年齢や体重等によって適宜決定され得る。医薬組成物中の配合量は、必要とされる投与量となるように、剤型に応じて適宜調製され得る。その配合量は、概ね組成物中0.0001%〜50%程度であるが、この範囲に限られるものではない。
【0018】
以下、下記の実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されることのないのはいうまでもない。
【実施例1】
【0019】
〔ペプチドのダウンサイジング〕
ペプチドミミックの作製に際し、リード化合物となるペプチドの探索を行った。表1に示すようにアミノ酸配列を有するGAI-1(配列番号1)から、そのN末端及びC末端にあるアミノ酸を数個欠損させた各種のペプチドを合成した。合成した各ペプチドについて、下記の1次スクリーニング、2次スクリーニング、3次スクリーニングを行い、SCTのアミノ酸配列からなるペプチド(GAI-17)を選択した。また、選択したGAI-17のペプチドについて、GAPDH凝集阻害活性におけるIC50値を求めた。これらの結果を表1に示す。
【0020】
(1次スクリーニング)
1次スクリーニングとして、潜在能力(Potency)を示すGAPDH凝集阻害活性を測定した。特許文献1に記載の方法に準じ、5μM精製ヒトGAPDHをBuffer G2に溶解した溶液にペプチドを50μMとなるように添加した後、37℃48時間でインキュベートし、溶液の濁度(405nmにおける吸光度)からGAPDHの凝集阻害率を測定した。
【0021】
(2次スクリーニング)
2次スクリーニングとして、A.細胞毒性(Cytotoxicity)を示すペプチドの存在下におけるPC12細胞の生存率、B.副作用(Side effect)を示すGAPDH酵素活性に及ぼす影響、C.特異性(Specificity)を示すアミロイド形成に及ぼす影響をそれぞれ調べた。
A.細胞毒性
80%コンフルエントに培養したPC12細胞を、50μMのペプチドの存在下で37℃72時間培養し、常法に従って細胞の生存率(Cell viability)を測定した。
B.副作用
特許文献1に記載の方法に準じ、0.01μMの精製ヒトGAPDHに対して10μMのペプチドをそれぞれ添加して、GAPDHの酵素活性を測定した。
C.特異性
特許文献1に記載の方法に準じ、25μMのアミロイドβ23-35を含む溶液を37℃で1時間インキュベートし、その溶液の蛍光強度からアミロイド凝集形成を評価した。
【0022】
(3次スクリーニング)
3次スクリーニングとして、有効性(Effectiveness)を示す細胞保護効果を調べた。特許文献1に記載の方法に準じ、Aβ1-40誘発PC12細胞死に対する細胞保護効果を調べた。
【0023】
【表1】
【0024】
次に、GAI-17について、アミロイド形成を促進するGAPDH-Seeds(GAPDHによるアミロイド様線維)の存在下におけるアミロイドβ誘発性細胞死に対する保護効果、及び脳保護効果について下記方法により調べた。
(GAPDH-Seeds存在下におけるアミロイドβ誘発性細胞死に対する保護効果)
GAPDH-Seeds(1%)及びGAI-17(50μM)の存在下で、特許文献1の記載の方法に準じてAβ1-40誘発PC12細胞死に対する細胞保護効果を調べた。その結果を図2に示す。
(脳保護効果)
脳保護効果として、脳卒中モデル(MCAO)における脳梗塞体積の変化及び神経症状の改善を調べた。脳卒中モデルマウスに対して、ペプチドを60nmol/マウスで脳室内投与し、24時間後の脳梗塞体積の減少及び神経症状の改善を測定した。脳卒中モデルマウスは、Andrabiらの方法(Andrabi et atl.,Nat Med.,2011,Jun;17(6):692-9)に従って作製された。マウスを30分間の虚血状態に保った後還流を再開した。虚血開始36時間経過後に脳梗塞体積を測定した。また、Andrabiらの方法(同上)に従って、マウスの神経症状についてのニューロロジカルスコアを求め、神経症状の改善度を求めた。
【0025】
GAPDHの凝集はβアミロイドの凝集だけでなく、その他の脳神経変性疾患に関与するタンパク質(例えば、パーキンソン病におけるα−シヌクレインやハンチントン病におけるハンチンチン)の凝集に関与すると言われている(Tsuchiya K. et al.、Eur J Neurosci.、21、317-26,Bae BI.et al.、Proc Natl Acad Sci U S A.、103、3405-9など)。脳神経変性疾患の1つである脳梗塞におけるGAPDHの凝集との関連を調べたところ、図3に示すように、虚血・再還流開始12時間ぐらいから脳内においてGAPDH凝集体の形成が観察され、GAPDH凝集体の形成に遅れて脳梗塞体積の増加が観察された。これに対し、ペプチドの投与により、24時間後における脳梗塞体積の減少や神経症状の改善が見られた(図4)。これらのことから、GAPDH凝集を阻害することで、脳卒中などの血流障害によって生じる神経症状の悪化防止や改善が期待される。特に脳卒中後6時間以内の投与が重篤化の防止に繋がるものと考えられる。
【実施例2】
【0026】
(化合物TN-101の合成)
次にGAI-17のペプチドをリード化合物としてデザイニングを行い、化学式1中、R,R,Rのそれぞれが水素原子である化合物(TN-101)を図1に示すフローに従って合成した。
【0027】
9-フルオレニルメトキシカルボニル-S-トリチル-L-システイン(Fmoc-Cys(Trt)-OH)3gと(R)-(-)-1-アミノ-2-プロパノール0.58gを、酢酸0.8gと水溶性カルボジイミド塩酸(Water Soluble Carbodiimide・HCl)1.28gを含む35mlのジメチルホルムアミド中、室温で1時間反応させ、3.5gの化合物1を得た。次に1gの化合物1を20%のピペリジンを含む35mlのジクロロメタンに溶解し、室温で30分反応させた。その後、反応物をNHシリカゲルカラムに吸着させ、溶離液(酢酸エチル・クロロホルムの等容量混合液:メタノール=9:1)で溶出させて、0.69gの化合物2を得た。0.69gの化合物2と4.29gの2-(3-ブロモプロポキシ)テトラヒドロ-2H-ピランを、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩2.34mLを脱水したアセトニトリル40ml中で反応させ、1.94gの化合物3を得た。1.94gの化合物3を、トリフルオロ酢酸/トリイソプロピルシラン/水/ドデカンチオールの混合液10ml中、室温で30分間反応させ、0.41gの粗製化合物C(粗TN-101)を得た。この粗製化合物C82mgをODSカラムに吸着させた後、溶離液(0.1%のトリフルオロ酢酸を含む1%アセトニトリル水溶液)で溶出させ、34mgの精製化合物C(TN-101)のトリフルオロ酢酸塩を得た。エレクトロスプレーイオン化質量分析及びNMRにより、この化合物は、分子量が237.1である化合物(塩フリー)であることが確認された。
【0028】
この化合物は、図5に示すように、TN-101は、GAPDHの凝集活性中心であるCys-152周辺に形成される疎水性結合ポケットに入り込み、TN-101のSH基がアクセスすることで、GAPDHのCys-152のチオール基を保護し、GAPDHのオリゴマー化が阻止されることがシミュレートされた。
【0029】
(TN-101の有効性)
化合物TN-101について、実施例1と同様の方法により1次スクリーニング及び2次スクリーニングを行った。その結果、1次スクリーニングにおいてTN-101はリード化合物(GAI-17ペプチド)よりも優れた凝集阻害活性を示し(図6)、2次スクリーニングにおいてもリード化合物と同等若しくはそれよりも少ない細胞毒性並びにGAPDH酵素活性の非阻害性を示した(図7)。また、GAPDH凝集阻害活性におけるIC50値(0.90±0.11μM)もリード化合物に比べて有意に小さく(図8)、TN-101は好適なGAPDH凝集阻害剤といえる。
【実施例3】
【0030】
(ポリサルファー化誘導体の合成)
グルタチオン(GSH)などの生体内抗酸化活性を有するチオール物質は、脳卒中などの酸化ストレス環境下ではS-S結合(ジスルフィド結合)を形成し、二量体(GS-SG)となり抗酸化活性を失うとともに、体内安定性が低下する。一方、体内で産生される硫化水素で容易にポリサルファー化され、ポリサルファー化された誘導体は、単量体及び二量体に比べて、抗酸化活性や体内安定性が増加すると言われている(前記Idaらの論文)。同論文によると、例えば、グルタチオンであれば、ポリサルファー化された誘導体(GS-(S)n-SG:n≧1)は、なかでも、GS-SS-GSが最も高い体内安定性と抗酸化活性を示すという。そこで、TN-101もチオール化合物(「TNSH」と記す。)であるため、体内安定性と活性向上を目的に、ポリサルファー化誘導体(TNS-(S)n-STN:nは1以上の整数)を合成した。
【0031】
前記Idaらの論文に記載の方法に準じて化合物1のポリサルファー化誘導体を合成した。TN-101(20mM)水溶液と20mM硫化水素ナトリウム(NaHS)を、20μMトリス塩酸塩緩衝液(pH7.4)に溶解した20mMヨード(I2)溶液存在下で混和し、室温で15分間反応させた。反応液を、逆相液体クロマトグラフィーで展開し、TNS-(S)n-STN((化学式3)を分取した。なお、この段階では、n=0の単純二量体(TNS-STN)も生成され、nが0を含む任意の整数である混合物が得られる。分取した混合物をさらに、逆相液体クロマトグラフィーで展開し、TNS-S-STN(化学式4)を得た。
【0032】
【化4】
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明に係る化合物はアルツハイマー病などのアミロイド凝集を伴う脳アミロイドーシスや脳虚血に伴う脳神経変性疾患の治療剤や予防剤に使用され得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
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【手続補正書】
【提出日】2016年11月14日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式1(但し、式中のR,R,Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、又は炭素原子数が1以上10以下の脂肪族炭化水素基である。)、化学式2(但し、式中のR,R,Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、又は炭素原子数が1以上10以下の脂肪族炭化水素基であり、nは1以上の整数である。)、化学式3(但し、式中のR,R,Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、又は炭素原子数が1以上10以下の脂肪族炭化水素基であり、nは1以上の整数である。)の何れかで示される化合物、並びにそれらの薬理学的に許容される塩。
【化1】
【化2】
【化3】
【請求項2】
化学式1(但し、式中のR,R,Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、又は炭素原子数が1以上10以下の脂肪族炭化水素基である。)、化学式2(但し、式中のR,R,Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、又は炭素原子数が1以上10以下の脂肪族炭化水素基であり、nは1以上の整数である。)、化学式3(但し、式中のR,R,Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、又は炭素原子数が1以上10以下の脂肪族炭化水素基であり、nは1以上の整数である。)の何れかで示される化合物及びそれらの薬理学的に許容される塩からなる群から選ばれる1以上の化合物を有効成分とするGAPDH凝集阻害剤。
【化1】
【化2】
【化3】
【請求項3】
請求項1に記載の化合物を含有する医薬組成物。
【請求項4】
脳神経変性疾患又はその症状を予防、治療又は改善するための請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記脳神経変性疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、脳梗塞の何れかである請求項4に記載の医薬組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0003
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0003】
図6図6は化合物TN−101の1次スクリーニングの結果を示す図である。
図7図7は化合物TN−101の2次スクリーニングの結果を示す図である。
図8図8は化合物TN−101のGAPDH凝集阻害活性(IC50)の測定結果を示すグラフである。図中「**」はGAI−17ペプチドとの間で有意差(有意水準1%)があったことを示す。
発明を実施するための形態
[0009]
本発明に係る化合物は次の化学式1(化1)で示される化合物又はそれらの化合物のポリサルファー化誘導体である。なお、化学式中、R,R,Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、又は炭素原子数が1以上10以下の脂肪族炭化水素基である。ハロゲン原子は、フッ素原子であり、塩素原子であり、臭素原子であり、ヨウ素原子であり得る。脂肪族炭化水素基は、飽和又は不飽和の炭化水素基でもあり、直鎖状又は分岐状の炭化水素基でもあり得る。脂肪族炭化水素基は、例えば、メチル基であり、エチル基であり、n−プロピル基であり、イソプロピル基であり、n−ブチル基であり、イソブチル基であり、sec−ブチル基であり、tert−ブチル基であり得る。本発明において、ポリサルファー化誘導体とは、化学式2(化2:但し式中nは1以上の整数)又は化学式5(化5:但し式中nは1以上の整数)に示されるように、化学式1で示される化合物のイオウ原子にさらに1個又は2個以上のイオウ原子(ポリサルファー)が付加された化合物、及び化学式3(化3:但し式中nは1以上の整数)又は化学式6(化6:但し式中nは1以上の整数)に示されるように2分子の化学式1で示される化合物が、1個又は2個以上のイオウ原子(ポリサルファー)を介在させて結合した誘導体を意味する。また、本発明に係る化合物は、薬理学的に許容される塩でもあり得る。当該塩は、例えば塩酸塩であり、硫酸塩であり、マレイン酸塩であり、オレイン酸塩、フマル酸塩であり得る。なお、化学式5又は化学式6に示された化合物はそれぞれ化学式2又は化学式3において、R,R,Rのそれぞれが水素原子である化合物である。
[0010]
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0004
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0004】
[化1]
[0011]
[化2]
[化5]
[0012]
[化3]
[化6]
[0013]
化学式1で示される化合物は、一般的な合成方法により容易に合成され得る。その合成方法は例えば、図1に示される。もっとも、図1に示された反応条件や試薬、溶媒は例示であり、適宜当業者により好ましい条件や試薬や溶媒が選択され得る。そして、そのポリサルファー化誘導体は、公知の方法
【国際調査報告】