特表-17110594IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2017年6月29日
【発行日】2018年10月18日
(54)【発明の名称】鉛蓄電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/06 20060101AFI20180921BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20180921BHJP
   H01M 10/08 20060101ALI20180921BHJP
【FI】
   H01M10/06 L
   H01M4/62 B
   H01M10/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
【出願番号】特願2017-558049(P2017-558049)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2016年12月13日
(31)【優先権主張番号】特願2015-255206(P2015-255206)
(32)【優先日】2015年12月25日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】特許業務法人河崎・橋本特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森川 有紀
(72)【発明者】
【氏名】武澤 秀治
(72)【発明者】
【氏名】安藤 和成
【テーマコード(参考)】
5H028
5H050
【Fターム(参考)】
5H028AA06
5H028EE02
5H028EE06
5H028FF02
5H028HH01
5H050AA02
5H050BA09
5H050CA06
5H050CB15
5H050DA09
5H050EA22
5H050HA01
(57)【要約】
鉛蓄電池は、正極と、負極と、前記正極および前記負極の間に介在するセパレータと、硫酸を含む電解質と、を含み、前記負極は、ビスフェノール類とアミノベンゼンスルホン酸類とホルムアルデヒドとの縮合物、および負極活物質を含み、前記縮合物の重量平均分子量は、5,000〜13,000である。前記電解質は、アルミニウムイオンおよび/またはチタンイオンを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、負極と、前記正極および前記負極の間に介在するセパレータと、硫酸を含む電解質と、を含み、
前記負極は、ビスフェノール類とアミノベンゼンスルホン酸類とホルムアルデヒドとの縮合物、および負極活物質を含み、
前記縮合物の重量平均分子量は、5,000〜13,000であり、
前記電解質は、アルミニウムイオンおよびチタンイオンからなる群より選択される少なくとも一種を含む、鉛蓄電池。
【請求項2】
前記ビスフェノール類は、ビスフェノールAを含み、
前記アミノベンゼンスルホン酸類は、アミノベンゼンスルホン酸、およびアミノベンゼンスルホン酸塩からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1に記載の鉛蓄電池。
【請求項3】
前記縮合物中のイオウ含有量は、3〜6質量%である、請求項1または2に記載の鉛蓄電池。
【請求項4】
前記負極中の前記縮合物の含有量は、前記負極活物質100質量部に対して、0.05〜1質量部である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の鉛蓄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛蓄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
鉛蓄電池は、安価で、電池電圧が比較的高く、大電力が得られるため、自動車用のセルスターターの他、様々な用途で使用されている。鉛蓄電池は、二酸化鉛を含む正極と、鉛を含む負極と、正極および負極の間に介在するセパレータと、硫酸を含む電解質とを含む。
【0003】
近年の自動車用途では、鉛蓄電池は、アイドルストップ状態に晒されるなど、充電状態(SOC:state of charge)が90〜70%程度となる中途充電状態で使用されることも多い。このような中途充電状態で電池が使用され続けると、サルフェーションと呼ばれる負極活物質の失活により充電受入性が低下し、電池の劣化が加速する。慢性的な充電不足の状態では、徐々に硫酸鉛が結晶化し、電気化学的な活性を失うためである。結晶質の硫酸鉛は電解質に溶解しにくいため、負極の充電反応の分極が増加する。負極の充電受入性が低下することによって、限られた充電時間での充電容量(充電効率)が小さくなり、SOCが回復しにくくなる。よって、中途充電状態が続き、SOCの低下がさらに進み、電池が劣化する。
【0004】
そこで、負極の充電受入性を向上させることで、負極活物質の失活を抑制する様々な改良が試みられている。
特許文献1では、鉛蓄電池の負極の充電受入性を向上するため、負極の添加剤として、分子量が1.7万〜2.0万の合成リグニン(ビスフェノールスルホン酸ポリマー縮合物)と、カーボンブラックとを用いることが提案されている。同様の目的で、特許文献2では、鱗片状黒鉛および分子量が1.5万〜2.0万でイオウ含有量が6〜10質量%のビスフェノールAアミノベンゼンスルホン酸ナトリウム塩のホルムアルデヒド縮合物を、負極に用いることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−196191号公報
【特許文献2】特開2013−41848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1および特許文献2において負極に添加されているビスフェノールアミノベンゼンスルホン酸やそのナトリウム塩のホルムアルデヒド縮合物は、1.5万以上や1.7万以上と高分子量である。このような縮合物を用いると、負極表面に析出した硫酸鉛の表面を高分子量の縮合物が覆うこととなり、硫酸鉛の有効表面積が小さくなる。そのため、硫酸鉛から電解質中に鉛イオンが溶出することが妨げられる。さらに、鉛の表面を縮合物が覆うこととなり、負極上の充電反応サイトが少なくなり、充電受入性が低下する。充電受入性は、低温になるほど低下し易い。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、鉛蓄電池において、充電受入性の低下を抑制することである。
本発明の一側面は、正極と、負極と、前記正極および前記負極の間に介在するセパレータと、硫酸を含む電解質と、を含み、
前記負極は、ビスフェノール類とアミノベンゼンスルホン酸類とホルムアルデヒドとの縮合物、および負極活物質を含み、
前記縮合物の重量平均分子量は、5,000〜13,000であり、
前記電解質は、アルミニウムイオンおよびチタンイオンからなる群より選択される少なくとも一種を含む、鉛蓄電池に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の上記側面によれば、充電受入性の低下が抑制された鉛蓄電池を提供できる。
【0009】
本発明の新規な特徴を添付の請求の範囲に記述するが、本発明は、構成および内容の両方に関し、本発明の他の目的および特徴と併せ、図面を照合した以下の詳細な説明によりさらによく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る鉛蓄電池の一部を切り欠いた斜視図である。
図2図1の鉛蓄電池における正極の正面図である。
図3図1の鉛蓄電池における負極の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態に係る鉛蓄電池は、正極と、負極と、正極および負極の間に介在するセパレータと、硫酸を含む電解質と、を含む。負極は、ビスフェノール類とアミノベンゼンスルホン酸類とホルムアルデヒドとの縮合物、および負極活物質を含む。この縮合物の重量平均分子量は、5,000〜13,000である。電解質は、さらにアルミニウムイオンおよびチタンイオンからなる群より選択される少なくとも一種を含む。
【0012】
負極上に析出した硫酸鉛の表面近傍では、サルフェーションにより硬い結晶が形成され易く、硬い結晶の生成により硫酸鉛の再溶解が妨げられる。ビスフェノール類とアミノベンゼンスルホン酸類とホルムアルデヒドとの縮合物を負極に添加すると、析出した硫酸鉛の周囲がこの縮合物により被覆され、サルフェーションが抑制される。しかし、縮合物が1.5万以上や1.7万以上といった高分子量である場合には、縮合物により硫酸鉛の表面の多くが覆われることになるため、硫酸鉛の有効表面積が小さくなる。また、負極の表面に高分子量の縮合物が存在すると、活性な鉛の表面も覆われ、鉛の有効表面積が小さくなる。その結果、硫酸鉛からの鉛イオンの溶出が妨げられ、負極上において充電反応を担う反応サイトが少なくなるため、充電受入性が低下する。
【0013】
本発明では、重量平均分子量が5,000〜13,000の比較的低分子量の縮合物を用い、電解質にアルミニウムイオンおよびチタンイオンからなる群より選択される少なくとも一種のカチオンを含むことで、負極上に析出した硫酸鉛の表面が縮合物により適度に覆われ、硫酸鉛の有効表面積を従来に比べて大きくできるとともに、サルフェーションを抑制することができる。そのため、硫酸鉛から鉛イオンが溶出され易い状態を維持することができる。また、負極上の鉛の有効表面積を従来に比べて大きくできるため、充電反応サイトを維持することができる。よって、充電受入性を向上できる。
【0014】
電解質にアルミニウムイオンおよびチタンイオンからなる群より選択される少なくとも一種のカチオンを含むことで、硫酸鉛のサルフェーションが抑制される。その理由は定かではないが、負極上に析出した硫酸鉛の表面にカチオンが吸着して、硫酸鉛の粒子径が過度に大きくなることが抑制され、硫酸鉛の表面における結晶化が抑制されると考えられる。なお、上記のカチオンは、鉛イオンの溶出を阻害しないと考えられる。分子量が比較的小さい縮合物を用いることで、硫酸鉛の有効表面積が増加し、上記のカチオンと硫酸鉛との接触機会が増加する。そのため、より多くのカチオンが硫酸鉛に吸着し、上記のカチオンの硫酸鉛へのサルフェーション抑制作用が強くなる。
【0015】
縮合物は鉛イオンと相互作用することで、充電時の鉛イオンの移動を阻害する。この縮合物と鉛イオンとの相互作用は、露出している硫酸鉛近傍の縮合物の末端近くの芳香環と鉛イオンとの間で起こると推測される。ここで、上記カチオンは、縮合物との作用が強いため、縮合物と鉛イオンとの作用により鉛イオンの移動が阻害されることを、抑制することができる。縮合物の分子量が小さくなると、縮合物が硫酸鉛表面をより均一に覆うため、カチオンと作用する芳香環の露出割合が増加する。その結果、縮合物とカチオンとの作用が強くなり、縮合物と鉛イオンとの作用が弱まって、鉛イオンの移動がし易くなるため、充電受入性を向上できる。
なお、充電受入性は、室温に比べて、低温で低下する傾向があるが、本発明では、室温だけでなく、低温においても高い充電受入性を確保することができる。
【0016】
本明細書中、室温とは、例えば、20℃〜35℃の温度を言うものとする。また、低温とは、5℃以下または0℃以下の温度(例えば、−20℃〜+5℃、または−20℃〜0℃)を言うものとする。
【0017】
以下に、適宜図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る鉛蓄電池についてより詳細に説明する。
(負極)
鉛蓄電池の負極は、一般に、負極格子(エキスパンド格子または鋳造格子など)と、負極格子に保持された、負極合剤とを含む。負極活物質および上記の縮合物は、通常、この負極合剤に含まれる。負極は、一般に板状であるため、負極板とも呼ばれる。
【0018】
負極格子の材料としては、鉛または鉛合金が例示される。鉛合金は、例えば、Ba、Ag、Ca、Al、Bi、Sb、および/またはSnを含むものであってもよい。中でも、Caおよび/またはSnを含む鉛合金が好ましく、機械的強度などの観点から、少なくともCaを含む鉛合金を用いることも好ましい。鉛合金において、Caの含有量は、0.03〜0.10質量%であってもよく、Snの含有量は、0.2〜0.6質量%であってもよい。負極格子は、必要に応じて、組成の異なる複数の鉛合金層を有するものであってもよい。
【0019】
負極活物質は、酸化還元反応により容量を発現する。負極活物質としては、鉛(海綿状鉛など)が使用される。充電状態の負極活物質は、海綿状鉛であるが、未化成の負極は、通常、鉛粉末を用いて作製される。負極を作製する際には、鉛粉末は、酸化鉛を含んでもよい。
【0020】
縮合物を構成するビスフェノール類としては、2つのフェノール単位が連結された構造を有する限り特に制限されない。ビスフェノール類としては、例えば、ビフェノールの他、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなどの2つのフェノール単位が連結基を介して連結した骨格を有する化合物などが挙げられる。連結基としては、例えば、メチレン、エチレン、ジメチルメチレン基などのアルキレン基(またはアルキリデン基);スルホニル基などが挙げられる。フェノール単位や連結基に、さらに置換基を有してもよい。縮合物は、ビスフェノール類に由来する単位を含んでいる。縮合物には、一種のビスフェノール類が使用されていてもよく、二種以上のビスフェノール類が使用されていてもよい。
【0021】
縮合物を構成するアミノベンゼンスルホン酸類としては、アミノベンゼンスルホン酸およびその塩が挙げられる。アミノベンゼンスルホン酸において、アミノ基とスルホン酸基との位置は、o−位、m−位またはp−位のいずれであってもよいが、p−位であることが好ましい。アミノベンゼンスルホン酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、アンモニウム塩などが例示できる。縮合物は、アミノベンゼンスルホン酸類に由来する単位を含んでいる。縮合物には、一種のアミノベンゼンスルホン酸類が使用されていてもよく、二種以上のアミノベンゼンスルホン酸類が使用されていてもよい。
【0022】
縮合物において、ビスフェノール類に由来する単位と、アミノベンゼンスルホン酸類に由来する単位とのモル比は、例えば、1.0:0.3〜1.0:0.7であり、1.0:0.3〜1.0:0.6であってもよい。
【0023】
縮合物は、アミノベンゼンスルホン酸類に由来してスルホン酸基またはその誘導体基(塩も含む。以下、スルホン酸基から誘導される誘導体基を含めて単にスルホン酸基と言う)を含んでいる。スルホン酸基は、充電時に硫酸鉛から溶出する鉛イオンを捕捉して、鉛イオンの移動を阻害し易い。このような観点からは、縮合物中のスルホン酸基の含有量は少ない方が好ましい。スルホン酸基の含有量は、縮合物中のイオウ含有量により確認することができる。縮合物中のイオウ含有量は、8質量%以下であることが好ましく、3〜6質量%または3〜5.5質量%であってもよい。縮合物の重量平均分子量が5,000〜13,000で、イオウ含有量が上記の範囲である場合、特に縮合物の分散性が向上し、硫酸鉛表面を均一に縮合物が覆うため、充電受入性の向上効果が大きい。
【0024】
鉛蓄電池においては、縮合物中のイオウ含有量は、ICP発光分析およびイオンクロマトグラフィーを利用して求められる。より具体的に説明すると、まず、鉛蓄電池から負極を取り出し、負極合剤を掻き落として水洗し、水洗した液を回収する。この液を真空乾燥することにより負極活物質を得、負極活物質の質量を測定する。ICP発光分析により、負極活物質中のS、Pb、およびBaの濃度を求め、PbSO4およびBaSO4の濃度を算出する。負極活物質を所定量の水に溶解させて、イオンクロマトグラフィーにより、SO4の濃度を算出する。このSO4の濃度は、H2SO4、PbSO4およびBaSO4の合計濃度に相当する。SO4の濃度と、上記で算出したPbSO4およびBaSO4の濃度と、上記で測定した負極活物質の質量とから、負極活物質中に含まれるH2SO4、PbSO4およびBaSO4の合計質量を求め、この合計質量を負極活物質の質量から減ずることにより縮合物の質量を求める。ICP発光分析により求めたS元素の濃度からイオンクロマトグラフィーにより求めたSO4の濃度を減じることで、縮合物中のS元素の濃度を求め、この濃度と縮合物の質量とから、縮合物中のイオウ含有量が求められる。
【0025】
負極中の縮合物の含有量は、負極活物質(鉛)100質量部に対して、例えば、0.01〜2質量部であり、0.05〜1.5質量部または0.05〜1質量部であることが好ましい。縮合物の含有量がこのような範囲である場合、充電受入性の向上効果が得られ易い。
【0026】
負極(特に、負極合剤)は、さらに、防縮剤(硫酸バリウムなど)、導電剤(カーボンブラックなどの導電性の炭素質材料など)、および/または結着剤(ポリマーバインダーなど)を含んでもよい。また、負極は、必要に応じて、他の公知の添加剤を含んでもよい。
【0027】
負極は、負極格子に、負極合剤ペーストを充填または塗布し、乾燥することにより未化成の負極を作製し、さらに化成処理することにより形成できる。負極合剤ペーストは、負極合剤の構成成分(負極活物質および上記の縮合物など)に加え、分散媒としての硫酸および/または水などを含む。
【0028】
乾燥工程は、室温よりも高い温度および湿度で乾燥する熟成乾燥工程であってもよい。乾燥工程は、公知の条件下で行うことができる。
化成処理は、鉛蓄電池の電槽内で、硫酸を含む電解質中に、いずれも化成前の正極および負極を浸漬させた状態で充電することにより行うことができる。化成処理は、必要に応じて、電池または極板群の組み立て前に行うこともできる。
【0029】
(正極)
鉛蓄電池の正極は、一般に、正極格子(エキスパンド格子または鋳造格子など)と、正極格子に保持された正極活物質(または正極合剤)とを含む。正極は、一般に板状であるため、正極板とも呼ばれる。
【0030】
正極格子の材料としては、負極格子について例示した鉛または鉛合金が例示できる。高い耐食性および機械的強度が得られ易い観点からは、Caおよび/またはSnを含む鉛合金を用いることが好ましい。鉛合金において、Caの含有量は0.01〜0.1質量%であってもよく、Snの含有量は0.05〜3質量%であってもよい。正極格子は、必要に応じて、組成の異なる複数の鉛合金層を有するものであってもよい。例えば、正極活物質を保持する部分には、正極活物質の劣化を抑制する観点から、Sbを含む鉛合金層を形成することが好ましい。正極格子中のSbの含有量は、例えば、0.001〜0.002質量%であってもよい。
【0031】
正極活物質は、酸化還元反応により容量を発現する。正極活物質としては、酸化鉛(PbO2)が使用される。正極活物質は、通常、粉末の形態で使用される。
正極合剤は、正極活物質に加え、導電剤(カーボンブラックなどの導電性の炭素質材料など)および/または結着剤(ポリマーバインダーなど)を含んでもよい。正極は、必要に応じて公知の添加剤を含んでもよい。
正極は、負極の場合に準じて形成できる。
【0032】
(セパレータ)
セパレータとしては、微多孔膜または繊維シート(またはマット)などが例示できる。微多孔膜または繊維シートを構成するポリマー材料としては、耐酸性を有するものが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンなどが例示できる。繊維シートは、ポリマー繊維(上記ポリマー材料で形成された繊維)、および/またはガラス繊維などの無機繊維で形成してもよい。
セパレータは、必要に応じて、フィラー、および/またはカーボンなどの添加剤を含んでもよい。
【0033】
(電解質)
電解質は、硫酸を含んでおり、さらに、アルミニウムイオンおよびチタンイオンからなる群より選択される少なくとも一種のカチオンを含む。これらのカチオンのうち、アルミニウムイオンが好ましい。
【0034】
電解質中の上記のカチオンの濃度は、例えば、アルミニウムイオンの場合、1〜50mmol/Lであり、5〜50mmol/Lであることが好ましく、10〜40mmol/Lであってもよい。チタンイオンの場合、0.1〜50mmol/Lであり、1〜40mmol/Lであることが好ましく、1〜10mmol/Lであってもよい。カチオンの濃度がこのような範囲である場合、サルフェーションを抑制する効果がさらに高まる。
【0035】
電解質は、必要に応じて、固体のチタン化合物を含んでもよい。チタン化合物としては、例えば、メタチタン酸、チタン酸水和物および/またはチタン酸塩が挙げられる。
【0036】
電解質の密度は、例えば、1.10〜1.35g/cm3であり、1.20〜1.35g/cm3であることが好ましい。なお、本明細書中、電解質の密度とは、20℃における密度である。電池内の電解質の密度については、満充電状態(SOCが99%以上)の電池における電解質の密度が上記の範囲であることが好ましい。なお、満充電状態の電池とは、既化成で満充電状態の電池である。
【0037】
鉛蓄電池は、電池ケース(電槽)内に、極板群および電解質を収容することにより作製できる。極板群は、複数の正極と複数の負極とを、これらの間にセパレータを介在させた状態で、正極と負極とが交互になるように重ね合わせることにより作製できる。セパレータは、正極と負極との間に介在するように配置すればよく、袋状のセパレータを用いたり、シート状のセパレータを2つ折り(U字状)にして、一方の電極を挟み、他方の電極と重ね合わせたりしてもよい。電槽内には、複数の極板群を収容してもよい。
【0038】
図1は、本発明の一実施形態に係る鉛蓄電池の一部切り欠き斜視図である。図2図1の正極の正面図であり、図3図1の負極の正面図である。
鉛蓄電池1は、極板群11と、図示しない電解質とを含み、これらは電槽12に収容されている。より具体的には、電槽12は、隔壁13により複数のセル室14に仕切られており、各セル室14には極板群11が1つずつ収納され、電解質も収容されている。極板群11は、複数枚の正極2および負極3を、セパレータ4を介して積層することにより構成されている。
【0039】
正極2の正極格子21には耳22が設けられており、耳22を介して、正極2は正極接続部材10に接続されている。正極接続部材10は、正極格子21の耳22に接続された正極棚6、および正極棚6に設けられた正極接続体8または正極柱を含む。同様に、負極3の負極格子31には耳32が設けられており、耳32を介して、負極3は負極接続部材9に接続されている。負極接続部材9は、負極格子31の耳32に接続された負極棚5と、負極棚5に設けられた負極柱7または負極接続体とを含む。図示例では、電槽12の一方の端部には、正極棚6に正極接続体8が接続されており、負極棚5には負極柱7が接続するように配されている。電槽12の他方の端部では、正極棚6には正極柱が接続するように配され、負極棚5には負極接続体が接続される。
【0040】
各セル内において、正極棚、負極棚、および極板群の全体は、電解質に浸漬されている。
電槽12の開口部には、正極端子16および負極端子17が設けられた蓋15が装着されている。正極接続体8は、隔壁13に設けられた透孔を介して隣接するセル室14内の極板群11の負極棚5に連設された負極接続体と接続されている。これにより、極板群11は隣接するセル室14内の極板群11と直列に接続されている。電槽12の一方の端部において、負極柱7は負極端子17に接続されており、他方の端部において、正極柱は正極端子16に接続されている。蓋15に設けられた注液口には、電池内部で発生したガスを電池外に排出するための排気口を有する排気栓18が装着されている。
【0041】
正極2は、耳22を有する正極格子21と、正極格子21に保持された正極活物質層(または正極合剤層)24とを含む。正極格子21は、正極活物質層24を保持するエキスパンド網目25、エキスパンド網目25の上端部に設けられた枠骨23、および枠骨23に連接された耳22からなるエキスパンド格子である。
【0042】
同様に、負極3は、耳32を有する負極格子31と、負極格子31に保持された負極活物質層(または負極合剤層)34とを含む。負極格子31は、負極活物質層34を保持するエキスパンド網目35、エキスパンド網目35の上端部に設けられた枠骨33、および枠骨33に連接された耳32からなるエキスパンド格子である。
【0043】
正極接続部材10は、正極格子の材料として例示した鉛または鉛合金で形成できる。負極接続部材9は、負極格子の材料として例示した鉛または鉛合金で形成できる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0045】
実施例1
(1)正極の作製
図2に示すような正極を以下の手順で作製した。
原料酸化鉛粉と水と希硫酸(密度1.40g/cm3)とを質量比100:15:5で混合することにより、正極ペーストを得た。
【0046】
鋳造法により得られたPb−0.06質量%Ca−1.6質量%Sn合金からなる母材シートと、Sbを含む鉛合金箔とを重ねて圧延した。これにより、母材シート上に鉛合金箔が圧着され、厚さ1.1mmの母材層の片面に厚さ20μmのSbを含む鉛合金層を有する複合シートを得た。なお、母材シートに鉛合金箔を圧着させる部位は、後述するエキスパンド加工におけるエキスパンド網目を形成する部分のみとし、母材シートにおける正極格子21の耳22や枠骨23を形成する中央部分には鉛合金箔を圧着させなかった。
【0047】
複合シートに所定のスリットを形成した後、このスリットを展開してエキスパンド網目25を形成し、エキスパンド格子体を得た(エキスパンド加工)。なお、複合シートの中央部分は、後述する正極格子21の耳22や枠骨23を形成する部分に用いられるため、エキスパンド加工しなかった。
【0048】
エキスパンド網目25に正極ペーストを充填し、正極格子21の耳22を有する極板形状に切断加工した。これを熟成乾燥し、未化成の正極(縦:115mm、横:137.5mm)を得た。
【0049】
(2)負極の作製
図3に示すような負極を以下の手順で作製した。
原料鉛粉、ビスフェノールAとp−アミノベンゼンスルホン酸ナトリウム塩とホルムアルデヒドとの縮合物、水、希硫酸(密度1.40g/cm3)、防縮剤(硫酸バリウム)、および導電材(カーボンブラック)を混合することにより、負極合剤ペーストを得た。縮合物、水、希硫酸、防縮剤および導電材の量は、それぞれ、負極活物質(Pb)100質量部に対して、0.1質量部、12質量部、7.0質量部、1.0質量部、および0.1質量部とした。縮合物の重量平均分子量Mwは5,000であり、イオウ含有量は5.1質量%であった。
【0050】
鋳造法により得られたPb−0.07質量%Ca−0.25質量%Sn合金からなる母材シートを厚さ0.7mmまで圧延し、この母材シートを上記と同様の方法によりエキスパンド加工した。エキスパンド網目に負極合剤ペーストを充填し、上記と同様の方法により未化成の負極(縦:115mm、横137.5mm)を得た。
【0051】
(3)セルの作製
下記の手順でセル(テストセル)を作製した。
上記(1)および(2)で作製した正極および負極を、それぞれ、縦60mm×横40mmのサイズにカットし、1枚の負極および2枚の正極を準備した。負極を、セパレータ(ポリエチレン製の微多孔膜、ベース厚さ0.2mm、幅44mm)を介して、2枚の正極で挟んだ状態で積層させることにより、極板群を形成した。このとき、セパレータは、2つ折りにした間に負極を挟み込むようにして配置した。
【0052】
得られた極板群を両面からアクリル製の板で挟み、固定した。次いで、負極、2枚の正極それぞれに、鉛棒を溶接し、それぞれ負極端子、正極端子とした。それをアクリル樹脂製の容器に入れ、密度1.20g/cm3の硫酸水溶液を所定量注入し、化成を行った。化成に使用したセル内の硫酸水溶液を除去し、新たに、硫酸アルミニウムを溶解させた硫酸水溶液を注入した。このとき、セル内の電解質の最終的な密度が1.28g/cm3で、最終的なアルミニウムイオン濃度が表1に示す値となるように調整した。このようにして、テストセル(1.25Ah、2V)を作製した。
【0053】
(4)評価
上記(3)で作製したテストセルを用いて充電受入性を評価した。なお、テストセルの1.0Cは、各テストセルの理論容量から算出した。
以下の条件で、化成後のテストセルのSOCを調整し、充電を行った。充電受入性は充電開始後の10秒間の電気量で比較した。
放電(SOC調整):定電流、0.2C、30分
休止:12時間
充電(充電受入性):定電流(3C)−定電圧(2.4V、最大電流3C)、60秒
温度:25℃または−10℃
【0054】
実施例2
実施例1の(2)において、縮合物として、ビスフェノールAとp−アミノベンゼンスルホン酸ナトリウム塩とホルムアルデヒドとの縮合物(重量平均分子量Mw:7,000、イオウ含有量4.8質量%)を使用したこと以外は実施例1と同様にして負極およびテストセルを作製した。そして、実施例1と同様の評価を行った。
【0055】
実施例3〜5
実施例1の(2)において、縮合物として、ビスフェノールAとp−アミノベンゼンスルホン酸ナトリウム塩とホルムアルデヒドとの縮合物(重量平均分子量Mw:9,000、イオウ含有量5.0質量%)を、負極活物質(鉛)100質量部に対して表1に示す量となるように縮合物の量を調節したこと以外は実施例1と同様にして負極およびテストセルを作製した。そして、実施例1と同様の評価を行った。
【0056】
実施例6
実施例1の(2)において、縮合物として、ビスフェノールAとp−アミノベンゼンスルホン酸ナトリウム塩とホルムアルデヒドとの縮合物(重量平均分子量Mw:11,000、イオウ含有量6.8質量%)を使用したこと以外は実施例1と同様にして負極およびテストセルを作製した。そして、実施例1と同様の評価を行った。
【0057】
実施例7
実施例1の(2)において、縮合物として、ビスフェノールAとp−アミノベンゼンスルホン酸ナトリウム塩とホルムアルデヒドとの縮合物(重量平均分子量Mw:12,000、イオウ含有量5.2質量%)を用いたこと以外は実施例1と同様にして負極およびテストセルを作製した。そして、実施例1と同様の評価を行った。
【0058】
実施例8
電池内の電解質中の最終的なアルミニウムイオン濃度が40mmol/Lとなるように調整したこと以外は、実施例7と同様にしてテストセルを作製した。そして、実施例1と同様の評価を行った。
【0059】
実施例9
化成に使用したセル内の硫酸水溶液を除去し、新たに、硫酸チタンを溶解させた硫酸水溶液を注入し、セル内の電解質の最終的な密度が1.28g/cm3で、最終的なチタンイオン濃度が表1に示す値となるように調整したこと以外は、実施例7と同様にしてテストセルを作製した。そして、実施例1と同様の評価を行った。
【0060】
実施例10
実施例1の(2)において、縮合物として、ビスフェノールAとp−アミノベンゼンスルホン酸ナトリウム塩とホルムアルデヒドとの縮合物(重量平均分子量Mw:13,000、イオウ含有量6.0質量%)を使用したこと以外は実施例1と同様にして負極およびテストセルを作製した。そして、実施例1と同様の評価を行った。
【0061】
比較例1
実施例1の(2)において、縮合物として、ビスフェノールAとp−アミノベンゼンスルホン酸ナトリウム塩とホルムアルデヒドとの縮合物(重量平均分子量Mw:17,000、イオウ含有量7.5質量%)を使用したこと以外は実施例1と同様にして負極およびテストセルを作製した。そして、実施例1と同様の評価を行った。
【0062】
比較例2
実施例1の(2)において、縮合物として、ビスフェノールAとp−アミノベンゼンスルホン酸ナトリウム塩とホルムアルデヒドとの縮合物(重量平均分子量Mw:4,000、イオウ含有量5.6質量%)を使用したこと以外は実施例1と同様にして負極およびテストセルを作製した。そして、実施例1と同様の評価を行った。
【0063】
比較例3
実施例1の(2)において、縮合物として、ビスフェノールAとp−アミノベンゼンスルホン酸ナトリウム塩とホルムアルデヒドとの縮合物(重量平均分子量Mw:15,000、イオウ含有量6.8質量%)を使用したこと以外は実施例1と同様にして負極およびテストセルを作製した。そして、実施例1と同様の評価を行った。
【0064】
比較例4
化成に使用したセル内の硫酸水溶液を除去し、新たに、硫酸チタンを溶解させた硫酸水溶液を注入し、セル内の電解質の最終的な密度が1.28g/cm3で、最終的なチタンイオン濃度が表1に示す値となるように調整したこと以外は、比較例1と同様にしてテストセルを作製した。そして、実施例1と同様の評価を行った。なお、セル内の電解質のアルミニウムイオン濃度は0mmol/Lである。
【0065】
比較例5
硫酸水溶液を、硫酸アルミニウムを添加せずに電解質として用いたこと以外は、実施例7と同様にしてテストセルを作製した。そして、実施例1と同様の評価を行った。なお、セル内の電解質のアルミニウムイオン濃度は0mmol/Lである。
【0066】
比較例6
硫酸水溶液を、硫酸アルミニウムを添加せずに電解質として用いたこと以外は、比較例1と同様にしてテストセルを作製した。そして、実施例1と同様の評価を行った。なお、セル内の電解質のアルミニウムイオン濃度は0mmol/Lである。
【0067】
実施例および比較例の結果を表1に示す。実施例1〜10はA1〜A10であり、比較例1〜6はB1〜B6である。Alイオン濃度は、セル内の電解質中のAlイオン濃度である。Tiイオン濃度は、セル内の電解質中のTiイオン濃度である。なお、充電受入性は、比較例1における値を100としたときの比率で表した。
【0068】
【表1】
【0069】
表1に示されるように、縮合物の重量平均分子量が5,000〜13,000の範囲で、電解質にアルミニウムイオンやチタンイオンを含む場合は、重量平均分子量が15,000または17,000である縮合物を用いた場合や、電解質にアルミニウムイオンやチタンイオンを含まない場合に比べて、充電受入性が大きく向上している。縮合物の重量平均分子量が12,000の場合、重量平均分子量が17,000である縮合物を用いた場合に比べて、アルミニウムイオンやチタンイオンの効果が大きく、相乗効果が確認できる。充電受入性は、室温(25℃)の場合だけでなく、低温(−10℃)においても向上している。
【0070】
本発明を現時点での好ましい実施態様に関して説明したが、そのような開示を限定的に解釈してはならない。種々の変形および改変は、上記開示を読むことによって本発明に属する技術分野における当業者には間違いなく明らかになるであろう。したがって、添付の請求の範囲は、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、すべての変形および改変を包含する、と解釈されるべきものである。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明に係る鉛蓄電池は、特に、中途充電状態で充放電を繰り返す使用モードにおいて、優れた充電受入性を有する。よって、アイドルストップシステムや回生ブレーキシステムを搭載した車両等に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0072】
1 鉛蓄電池、2 正極、3 負極、4 セパレータ、5 負極棚、6 正極棚、7 負極柱、8 正極接続体、9 負極接続部材、10 正極接続部材、11 極板群、12 電槽、 13 隔壁、14 セル室、15 蓋、16 正極端子、17 負極端子、18 排気栓、21 正極格子、22,32 耳、23,33 枠骨、24 正極活物質層、25,35 エキスパンド網目、31 負極格子、34 負極活物質層
図1
図2
図3
【国際調査報告】