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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2017年10月5日
【発行日】2019年2月7日
(54)【発明の名称】FGFR3病の予防または治療剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20190111BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20190111BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20190111BHJP
   A61K 31/155 20060101ALI20190111BHJP
   A61K 31/473 20060101ALI20190111BHJP
   A61K 31/4409 20060101ALI20190111BHJP
   A61K 31/4725 20060101ALI20190111BHJP
   A61K 31/223 20060101ALI20190111BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20190111BHJP
【FI】
   A61K45/00
   A61P19/00
   A61P43/00 111
   A61K31/155
   A61K31/473
   A61K31/4409
   A61K31/4725
   A61K31/223
   A61K31/198
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】22
【出願番号】特願2018-509644(P2018-509644)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2017年3月31日
(31)【優先権主張番号】特願2016-74721(P2016-74721)
(32)【優先日】2016年4月1日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
【住所又は居所】京都府京都市左京区吉田本町36番地1
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】妻木 範行
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084NA14
4C084ZA961
4C084ZA962
4C084ZC201
4C084ZC202
4C084ZC411
4C084ZC412
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC17
4C086BC27
4C086BC38
4C086GA07
4C086GA08
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA96
4C086ZC20
4C086ZC41
4C206AA01
4C206AA02
4C206HA31
4C206JA21
4C206JA22
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZA96
4C206ZC20
4C206ZC41
(57)【要約】
本発明は、有効成分としてメトホルミン、Farnesyl transferase阻害剤、Geranylgeranyl transferase阻害剤およびRock阻害剤から成る群より選択される少なくとも1つの薬剤を含む、FGFR3病の治療および/または予防用医薬を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分としてメトホルミン、Farnesyl transferase阻害剤、Geranylgeranyl transferase阻害剤およびRock阻害剤から成る群より選択される少なくとも1つの薬剤を含む、FGFR3病の治療および/または予防用医薬。
【請求項2】
前記薬剤がメトホルミンである、請求項1に記載の医薬。
【請求項3】
前記Farnesyl transferase阻害剤が、Lonafarnib、Chaetomellic acid A、FPT Inhibitor I、FPT Inhibitor II、FPT Inhibitor III、FTase Inhibitor I、FTase Inhibitor II、FTI-276 trifluoroacetate salt、FTI-277 trifluoroacetate salt、L-744,832 Dihydrochloride、Manumycin A、Tipifarnibおよびα-hydroxy Farnesyl Phosphonic Acidから成る群より選択される薬剤である、請求項1に記載の医薬。
【請求項4】
前記Geranylgeranyl transferase阻害剤が、GGTI-2418, GGTI-2133, GGTI-2147, GGTI-2154, GGTI-2166, GGTI-286, GGTI-287, GGTI-297およびGGTI-298から成る群より選択される薬剤である、請求項1に記載の医薬。
【請求項5】
前記Rock阻害剤が、Y-27632、Fasudil/HA1077、SR3677、GSK269962、H-1152およびWf-536から成る群より選択される薬剤である、請求項1に記載の医薬。
【請求項6】
前記FGFR3病が、致死性骨異形成症 (TD) および/または軟骨無形成症 (ACH)である、請求項1から請求項5のいずれか一つに記載の医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線維芽細胞増殖因子受容体3(FGFR3)病の予防または治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
致死性骨異形成症 (TD)や軟骨無形成症 (ACH)などの骨形成異常に関する疾患は、一般に線維芽細胞増殖因子受容体3(FGFR3)病と呼ばれており、FGFR3中の機能獲得型突然変異により引き起こされる疾患であると考えられている。したがって、これらの疾患の治療を行う上での分子標的として、FGFR3およびその下流のシグナル伝達経路に係る種々の分子が注目されており、FGFR3からの過剰なシグナル伝達を阻害する様々な方法が試みられてきた。
【0003】
例えば、Jonquoyらは、チロシンキナーゼ阻害剤(非特許文献1)により、Rauchenbergerらは、FGFR3の中和抗体(非特許文献2)により、およびYasodaらは、c型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)(非特許文献3)により、FGFR3からの過剰なシグナル伝達を阻害する方法を報告している。これらの方法のうちいくつかは、実際に、FGFR3に関連する軟骨異形成のモデルマウスにおける骨成長を回復させている。しかしながら、変異型FGFR3を導入した形質転換細胞での確認に留まり、適切なヒト細胞モデルを用いての有効性は確認されておらず、FGFR3病に十分な治療が行い得るかについては不明な点も多いため、更なる新規治療薬の開発が切望されている。
【0004】
本発明者らは、FGFR3病患者由来の体細胞を用いて作製したiPS細胞を利用して治療薬の候補を探索し、高脂血症治療薬であるスタチン類がFGFR3病の治療薬の候補となり得ることを報告している(特許文献1および非特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2015/083582
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Jonquoy, A., et al., Hum Mol Genet 21: 841-851 (2012)
【非特許文献2】Rauchenberger, R., et al., J Biol Chem 278: 38194-38205 (2003)
【非特許文献3】Yasoda, A., et al., Endocrinology 150: 3138-3144 (2009)
【非特許文献4】Yamashita A, et al., Nature. 513: 507-511 (2014)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、線維芽細胞増殖因子受容体3(FGFR3)病の治療剤および/または予防剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記の課題を解決すべくFGFR3病の治療剤および/または予防剤を見出すべくFGFR3病患者の体細胞由来のiPS細胞を用いてスクリーニングを行った結果、メトホルミン、Farnesyl transferase阻害剤、Geranylgeranyl transferase阻害剤およびRock阻害剤が当該FGFR3病患者由来のiPS細胞から軟骨細胞への分化誘導を促進することを見出した。本発明はそのような知見に基づいて完成されたものである。
【0009】
すなわち、本発明は次に記載の事項を提供するものである。
[1] 有効成分としてFarnesyl transferase阻害剤、Geranylgeranyl transferase阻害剤およびRock阻害剤から成る群より選択される少なくとも1つの薬剤を含む、FGFR3病の治療および/または予防用医薬。
[2] 前記薬剤がメトホルミンである、[1]に記載の医薬。
[3] 前記Farnesyl transferase阻害剤が、Lonafarnib、Chaetomellic acid A、FPT Inhibitor I、FPT Inhibitor II、FPT Inhibitor III、FTase Inhibitor I、FTase Inhibitor II、FTI-276 trifluoroacetate salt、FTI-277 trifluoroacetate salt、L-744,832 Dihydrochloride、Manumycin A、Tipifarnibおよびα-hydroxy Farnesyl Phosphonic Acidから成る群より選択される薬剤である、[1]に記載の医薬。
[4] 前記Geranylgeranyl transferase阻害剤が、GGTI-2418, GGTI-2133, GGTI-2147, GGTI-2154, GGTI-2166, GGTI-286, GGTI-287, GGTI-297およびGGTI-298から成る群より選択される薬剤である、[1]に記載の医薬。
[5] 前記Rock阻害剤が、Y-27632、Fasudil/HA1077、SR3677、GSK269962、H-1152およびWf-536から成る群より選択される薬剤である、[1]に記載の医薬。
[6] 前記FGFR3病が、致死性骨異形成症 (TD) および/または軟骨無形成症 (ACH)である、[1]から[5]のいずれか一つに記載の医薬。
[7] FGFR3病を治療および/または予防するための方法であって、メトホルミン、Farnesyl transferase阻害剤、Geranylgeranyl transferase阻害剤およびRock阻害剤から成る群より選択される少なくとも1つの薬剤を投与することを含む、方法。
[8] 前記薬剤がメトホルミンである、[7]に記載の方法。
[9] 前記Farnesyl transferase阻害剤が、Lonafarnib、Chaetomellic acid A、FPT Inhibitor I、FPT Inhibitor II、FPT Inhibitor III、FTase Inhibitor I、FTase Inhibitor II、FTI-276 trifluoroacetate salt、FTI-277 trifluoroacetate salt、L-744,832 Dihydrochloride、Manumycin A、Tipifarnibおよびα-hydroxy Farnesyl Phosphonic Acidから成る群より選択される薬剤である、[7]に記載の方法。
[10] 前記Geranylgeranyl transferase阻害剤が、GGTI-2418, GGTI-2133, GGTI-2147, GGTI-2154, GGTI-2166, GGTI-286, GGTI-287, GGTI-297およびGGTI-298から成る群より選択される薬剤である、[7]に記載の方法。
[11] 前記Rock阻害剤が、Y-27632、Fasudil/HA1077、SR3677、GSK269962、H-1152およびWf-536から成る群より選択される薬剤である、[7]に記載の方法。
[12] 前記FGFR3病が、致死性骨異形成症 (TD) および/または軟骨無形成症 (ACH)である、[7]から[11]のいずれか一つに記載の方法。
[13] FGFR3病の治療および/または予防用医薬の製造におけるメトホルミン、Farnesyl transferase阻害剤、Geranylgeranyl transferase阻害剤およびRock阻害剤から成る群より選択される少なくとも1つの薬剤の使用。
[14] 前記薬剤がメトホルミンである、[13]に記載の使用。
[15] 前記Farnesyl transferase阻害剤が、Lonafarnib、Chaetomellic acid A、FPT Inhibitor I、FPT Inhibitor II、FPT Inhibitor III、FTase Inhibitor I、FTase Inhibitor II、FTI-276 trifluoroacetate salt、FTI-277 trifluoroacetate salt、L-744,832 Dihydrochloride、Manumycin A、Tipifarnibおよびα-hydroxy Farnesyl Phosphonic Acidから成る群より選択される薬剤である、[13]に記載の使用。
[16] 前記Geranylgeranyl transferase阻害剤が、GGTI-2418, GGTI-2133, GGTI-2147, GGTI-2154, GGTI-2166, GGTI-286, GGTI-287, GGTI-297およびGGTI-298から成る群より選択される薬剤である、[13]に記載の使用。
[17] 前記Rock阻害剤が、Y-27632、Fasudil/HA1077、SR3677、GSK269962、H-1152およびWf-536から成る群より選択される薬剤である、[13]に記載の使用。
[18] 前記FGFR3病が、致死性骨異形成症 (TD) および/または軟骨無形成症 (ACH)である、[13]から[17]のいずれか一つに記載の使用。
[19] FGFR3病を治療および/または予防するために使用されるメトホルミン、Farnesyl transferase阻害剤、Geranylgeranyl transferase阻害剤およびRock阻害剤から成る群より選択される少なくとも1つの薬剤。
[20] 前記薬剤がメトホルミンである、[19]に記載の薬剤。
[21] 前記Farnesyl transferase阻害剤が、Lonafarnib、Chaetomellic acid A、FPT Inhibitor I、FPT Inhibitor II、FPT Inhibitor III、FTase Inhibitor I、FTase Inhibitor II、FTI-276 trifluoroacetate salt、FTI-277 trifluoroacetate salt、L-744,832 Dihydrochloride、Manumycin A、Tipifarnibおよびα-hydroxy Farnesyl Phosphonic Acidから成る群より選択される薬剤である、[19]に記載の薬剤。
[22] 前記Geranylgeranyl transferaseが、GGTI-2418, GGTI-2133, GGTI-2147, GGTI-2154, GGTI-2166, GGTI-286, GGTI-287, GGTI-297およびGGTI-298から成る群より選択される薬剤である、[19]に記載の薬剤。
[23] 前記Rock阻害剤が、Y-27632、Fasudil/HA1077、SR3677、GSK269962、H-1152およびWf-536から成る群より選択される薬剤である、[19]に記載の薬剤。
[24] 前記FGFR3病が、致死性骨異形成症 (TD) および/または軟骨無形成症 (ACH)である、[19]から[23]のいずれか一つに記載の薬剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、FGFR3病の治療剤および/または予防剤を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】Vehicle(基剤)、Rosuva(ロスバスタチン)、各濃度(0.1μM、1μMまたは10μM)のFTI、GGTIまたはRockiを添加してTD714由来iPS細胞から分化誘導した軟骨細胞、または低コレステロール培地を用いてTD714由来iPS細胞から分化誘導した軟骨細胞(low chole)における、(A)SOX9、(B)COL2(II型コラーゲン)および(C)Acan(アグリカン)の発現をリアルタイムPCRで測定した結果を示す。対照として、健常個体由来iPS細胞から分化誘導した軟骨細胞(WT)および未分化の健常個体由来iPS細胞(iPSC)における同mRNAの発現を測定した結果も示す。
図2】Vehicle(基剤)、Rosuva(ロスバスタチン)、各濃度(0.1μM、1μM、10μMまたは100μM)のRockiを添加した培地を用いてTD714由来iPS細胞から分化誘導したパーティクル、および低コレステロール培地を用いてTD714由来iPS細胞から分化誘導したパーティクルのSafranin O-fast green-iron hematoxylin stainingの結果を示す。
図3】Vehicle(基剤)、Rosuva(ロスバスタチン)、各濃度(0.1μM、1μM、または10μM)のRocki、FTIまたはGGTIを添加した培地を用いてTD714由来iPS細胞から分化誘導したパーティクル、および低コレステロール培地を用いてTD714由来iPS細胞から分化誘導したパーティクルのSafranin O-fast green-iron hematoxylin stainingの結果を示す。
図4】Vehicle(基剤)、Rosuva(ロスバスタチン)、各濃度(0.1μM、1μM、または10μM)のRocki、FTIまたはGGTIを添加した培地を用いてTD714由来iPS細胞から分化誘導したパーティクル、および低コレステロール培地を用いてTD714由来iPS細胞から分化誘導したパーティクルにSafranin O-fast green-iron hematoxylin stainingを施し、Safranin O陽性領域の比率を比較した結果を示す。
図5】Vehicle(基剤)、各濃度(0.0001μM、0.001μM、0.01μMまたは0.1μM)のFTI-277(FTI)、Lonafarnib(Lona)またはTipifarnib(Tipi)を添加した培地を用いてTD714由来iPS細胞から分化誘導した軟骨細胞における、(A)SOX9、(B)COL2(II型コラーゲン)および(C)Acan(アグリカン)の発現をリアルタイムPCRで測定した結果を示す。
図6】各濃度(0.0001μM(0.1nM)、0.001μM(1nM)、0.01μMまたは0.1μM)のFTI-277を添加した培地を用いてTD714由来iPS細胞から分化誘導したパーティクルのSafranin O-fast green-iron hematoxylin stainingの結果(上段)、およびSafranin O陽性領域の比率を比較した結果(下段)を示す。
図7】各濃度(0.0001μM(0.1nM)、0.001μM(1nM)、0.01μMまたは0.1μM)のLonafarnib(Lona)またはTipifarnib(Tipi)を添加した培地を用いてTD714由来iPS細胞から分化誘導したパーティクルのSafranin O-fast green-iron hematoxylin stainingの結果(上段)、およびSafranin O陽性領域の比率を比較した結果(下段)を示す。
図8】Vehicle(基剤)、Rosuva(ロスバスタチン)、各濃度(0.1μM、1μM、または10μM)のRocki、FTIまたはGGTIを添加した培地を用いてTD329N由来iPS細胞から分化誘導したパーティクル、および低コレステロール培地を用いてTD329N由来iPS細胞から分化誘導したパーティクルのSafranin O-fast green-iron hematoxylin stainingの結果を示す。
図9】Vehicle(基剤)、Rosuva(ロスバスタチン)、各濃度(0.1μM、1μM、または10μM)のRocki、FTIまたはGGTIを添加した培地を用いてTD329N由来iPS細胞から分化誘導したパーティクル、および低コレステロール培地を用いてTD329N由来iPS細胞から分化誘導したパーティクルにSafranin O-fast green-iron hematoxylin stainingを施し、Safranin O陽性領域の比率を比較した結果を示す。
図10】Vehicle(基剤)、各濃度(0.0001μM、0.001μM、0.01μMまたは0.1μM)のFTI-277(FTI)、Lonafarnib(Lona)またはTipifarnib(Tipi)を添加した培地を用いてTD329N由来iPS細胞から分化誘導した軟骨細胞における、(A)SOX9、(B)COL2(II型コラーゲン)および(C)Acan(アグリカン)の発現をリアルタイムPCRで測定した結果を示す。
図11】Vehicle(基剤)、Rosuva(ロスバスタチン)、各濃度(0.1μM、1μM、または10μM)のRocki、FTIまたはGGTIを添加した培地を用いてACH8858由来iPS細胞から分化誘導したパーティクル、および低コレステロール培地を用いてACH8858由来iPS細胞から分化誘導したパーティクルのSafranin O-fast green-iron hematoxylin stainingの結果を示す。
図12】Vehicle(基剤)、Rosuva(ロスバスタチン)、各濃度(0.1μM、1μM、または10μM)のRocki、FTIまたはGGTIを添加した培地を用いてACH8858由来iPS細胞から分化誘導したパーティクル、および低コレステロール培地を用いてACH8858由来iPS細胞から分化誘導したパーティクルにSafranin O-fast green-iron hematoxylin stainingを施し、Safranin O陽性領域の比率を比較した結果を示す。
図13】Vehicle(基剤)、各濃度(0.0001μM、0.001μM、0.01μMまたは0.1μM)のFTI-277(FTI)、Lonafarnib(Lona)またはTipifarnib(Tipi)を添加した培地を用いてACH8858由来iPS細胞から分化誘導した軟骨細胞における、(A)SOX9、(B)COL2(II型コラーゲン)および(C)Acan(アグリカン)の発現をリアルタイムPCRで測定した結果を示す。
図14】Vehicle(基剤)、Rosuva(ロスバスタチン)、各濃度(0.1μM、1μM、または10μM)のRocki、FTIまたはGGTIを添加した培地を用いてACHhomo-8859由来iPS細胞から分化誘導したパーティクル、および低コレステロール培地を用いてACHhomo-8859由来iPS細胞から分化誘導したパーティクルのSafranin O-fast green-iron hematoxylin stainingの結果を示す。
図15】Vehicle(基剤)、Rosuva(ロスバスタチン)、各濃度(0.1μM、1μM、または10μM)のRocki、FTIまたはGGTIを添加した培地を用いてACHhomo-8859由来iPS細胞から分化誘導したパーティクル、および低コレステロール培地を用いてACHhomo-8859由来iPS細胞から分化誘導したパーティクルにSafranin O-fast green-iron hematoxylin stainingを施し、Safranin O陽性領域の比率を比較した結果を示す。
図16】Vehicle(基剤)、各濃度(0.0001μM、0.001μM、0.01μMまたは0.1μM)のFTI-277(FTI)、Lonafarnib(Lona)またはTipifarnib(Tipi)を添加した培地を用いてACHhomo-8859由来iPS細胞から分化誘導した軟骨細胞における、(A)SOX9、(B)COL2(II型コラーゲン)および(C)Acan(アグリカン)の発現をリアルタイムPCRで測定した結果を示す。
図17】Vehicle(基剤)、1μMのRosuvastatin(ロスバスタチン)、各濃度(0.2mMまたは2mM)のメトホルミン(Met)を添加した培地を用いて、TD714由来iPS細胞、ACH8858由来iPS細胞または健常個体由来iPS細胞(409B2)から軟骨へ分化誘導したパーティクルのSafranin O-fast green-iron hematoxylin stainingの結果を示す。
図18】Vehicle(基剤)、1μMのRosuvastatin(ロスバスタチン)、各濃度(0.2mM、2mMまたは5mM)のメトホルミン(Met)を添加した培地を用いて、TD714由来iPS細胞、ACH8858由来iPS細胞または健常個体由来iPS細胞(409B2)から軟骨へ分化誘導したパーティクルにおける、COL2(II型コラーゲン)、Acan(アグリカン)およびSOX9の発現をリアルタイムPCRで測定した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
FGFRの変異を有する疾患(例えば、FGFR3病)の治療剤および/または予防剤
本明細書において、「FGFR3病」は、FGFR3中に突然変異を有することにより骨形成異常を生じたあらゆる骨形成疾患を意味する。FGFR3病は、好ましくは、骨系統疾患の国際分類(Warman et al., Am J Med Genet 155A(5):943-68 (2011))に記載されたFGFR3病群に属する一連の疾患を意味し、例えば、致死性骨異形成症 (TD) 、軟骨無形成症 (ACH)、軟骨低形成症、Camptodactyly, tall stature, and hearing loss syndrome (CATSHL)、Crouzon-like craniosynostosis with acanthosis nigricans (Crouzonodermoskeletal)、頭蓋骨早期癒合症などが挙げられる。FGFR3中に生じる突然変異は、機能獲得型もしくは機能欠損型のいずれの変異であってもよいが、好ましくは、機能獲得型の突然変異であり得る。
【0013】
本発明において、FGFRの変異を有する疾患(例えば、FGFR3病)の治療および/または予防剤は、メトホルミン、Farnesyl transferase阻害剤、Geranylgeranyl transferase阻害剤およびRock阻害剤から成る群より選択される少なくとも1つの薬剤を有効成分として含む医薬である。有効成分はメトホルミンおよびFarnesyl transferase阻害剤から成る群より選択される少なくとも1つの薬剤であってもよく、メトホルミンであってもよい。
【0014】
メトホルミン(化学名:1,1-Dimethylbiguanide、CAS番号:657-24-9、C4H11N5)は、ビグアナイド系の血糖降下薬として知られている。メトホルミン塩酸塩が製剤化され上市されている。
【0015】
本発明におけるFarnesyl transferase阻害剤はFarnesyl transferaseの機能を抑制できるものである限り特に限定されず、例えば、Lonafarnib(CAS番号:193275-84-2、C27H31Br2ClN4O2、例、Shen M et al., Drug Discov Today 20, 267-276 (2015)参照)、Chaetomellic acid A(CAS番号:148796-51-4、C19H32O4 2Na、例、J.B. Gibbs, et al.; J. Biol. Chem. 268, 7617 (1993)、 F. Tamanoi; Trends Biochem. Sci. 18, 349 (1993) 参照)、FPT Inhibitor I(C19H29NO6P 3Na、例、Manne, V., et al. 1995. Drug Development Res. 34, 121、Patel, D.V., et al. 1995. J. Med. Chem. 38, 2906参照)、FPT Inhibitor II(C17H28NO5P 2Na、例、Manne, V., et al. 1995. Drug Development Res. 34, 121参照)、FPT Inhibitor III(C23H39NO7P Na、例、Wang, D., et al. 1998. J. Biol. Chem. 273, 33027、Manne, V., et al. 1995. Drug Development Res. 34, 121参照)、FTase Inhibitor I(CAS番号:149759-96-6、C22H38N4O3S2、例、Cox, A D., et al., 1994 The Journal of biological chemistry. 269(30): 19203-6、Garcia, A M., et al., 1993 The Journal of biological chemistry. 268(25): 18415-8参照)、FTase Inhibitor II(CAS番号:156707-43-6、C15H21N3O4S2、例、Song, Jia L., et al., 2003 Microbiology (Reading, England). 149(Pt 1): 249-59参照)、FTI-276 trifluoroacetate salt(CAS番号:170006-72-1 (free base) 、C21H27N3O3S2 C2HF3O2、例、Cohen-Jonathan, E., et al., 1999 Radiation research. 152(4): 404-11参照)、FTI-277 trifluoroacetate salt(CAS番号:170006-73-2 (free base)、C22H29N3O3S2 xC2HF3O2、例、Cohen-Jonathan, E., et al., 1999 Radiation research. 152(4): 404-11参照)、L-744,832 Dihydrochloride(CAS番号:1177806-11-9、C26H45N3O6S2 2HCl、例、R.E. Barrington et al. Mol. Cell. Biol. 1998 18 85 2、L. Sepp-Lorenzo and N. Rosen J. Biol. Chem. 1998 273 20243 3、M.M. Moasser et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1998 95 1369参照)、Manumycin A(CAS番号:52665-74-4、C31H38N2O7、例、Hara, M., et al. 1993. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90: 2281-2285参照)、Tipifarnib(CAS番号:192185-72-1、C27H22Cl2N4O、例、Shen M et al., Drug Discov Today 20, 267-276 (2015)参照)およびα-hydroxy Farnesyl Phosphonic Acid(CAS番号:148796-53-6、C15H27O4P、例、Pompliano, D.L., Rands, E., Schaber, M.D., et al., Biochemistry 31 3800-3807 (1992) 参照)を含むが、これらに限定されない。
【0016】
本発明におけるGeranylgeranyl transferase阻害剤はGeranylgeranyl transferaseの機能を抑制できるものである限り特に限定されず、例えば、GGTI-2418(CAS番号:171744-11-9、C23H31N3O3S、例、Shen M et al., Drug Discov Today 20, 267-276 (2015)参照)、GGTI-2133(CAS番号:191102-79-1、C27H28N4O3 C2HF3O2、例、Shen M et al., Drug Discov Today 20, 267-276 (2015)参照)、GGTI-2147(CAS番号:191102-87-1、C28H30N4O3、例、Bernot, D., et al. 2003. J. Cardiovasc. Pharmacol. 41, 316 参照)、GGTI-2154(CAS番号:251577-10-3、例、Shen M et al., Drug Discov Today 20, 267-276 (2015)参照)、GGTI-2166(日化辞番号:J1.244.741H、C25H30N4O3)、GGTI-286(CAS番号:171744-11-9、C23H31N3O3S、例、Lerner, E C., et al., 1995 The Journal of biological chemistry. 270(45): 26770-3 参照)、GGTI-287(C22H29N3O3S、例、Shen M et al., Drug Discov Today 20, 267-276 (2015)参照)、GGTI-297(CAS番号:181045-83-0、C26H31N3O3S C2HF3O2、例、Sun, J., et al. 1998. Oncogene 16, 1467参照)およびGGTI-298(CAS番号:180977-44-0、C27H33N3O3S CF3CO2H、例、McGuire, T F., et al., 1996 The Journal of biological chemistry. 271(44): 27402-7 参照)を含むが、これらに限定されない。
【0017】
本発明におけるRock阻害剤は、Rho-キナーゼ(ROCK)の機能を抑制できるものである限り特に限定されず、例えば、Y-27632(例、Ishizaki et al., Mol. Pharmacol. 57, 976-983 (2000);Narumiya et al., Methods Enzymol. 325,273-284 (2000)参照)、Fasudil/HA1077(例、Uenata et al., Nature 389: 990-994 (1997)参照)、SR3677(例、Feng Y et al., J Med Chem. 51: 6642-6645(2008)参照)、GSK269962(例、Stavenger RA et al., J Med Chem. 50: 2-5 (2007)またはWO2005/037197参照)、H-1152(例、Sasaki et al., Pharmacol. Ther. 93: 225-232 (2002)参照)、Wf-536(例、Nakajima et al., Cancer Chemother Pharmacol. 52(4): 319-324 (2003)参照)およびそれらの誘導体、ならびにROCKに対するアンチセンス核酸、RNA干渉誘導性核酸(例、siRNA)、ドミナントネガティブ変異体、およびそれらの発現ベクターが挙げられる。また、ROCK阻害剤としては他の公知の低分子化合物も使用できる(例えば、米国特許出願公開第2005/0209261号、同第2005/0192304号、同第2004/0014755号、同第2004/0002508号、同第2004/0002507号、同第2003/0125344号、同第2003/0087919号、及び国際公開第2003/062227号、同第2003/059913号、同第2003/062225号、同第2002/076976号、同第2004/039796号参照)。本発明では、1種または2種以上のROCK阻害剤が使用され得る。
【0018】
なお、本発明のメトホルミン、Farnesyl transferase阻害剤、Geranylgeranyl transferase阻害剤またはRock阻害剤は、その薬理学的に許容される塩(好ましくは、塩酸塩、ナトリウム塩またはカルシウム塩)を包含する。
【0019】
メトホルミン、Farnesyl transferase阻害剤、Geranylgeranyl transferase阻害剤またはRock阻害剤をFGFR3病の治療剤および/または予防剤として使用する場合、常套手段に従って製剤化することができる。例えば、経口投与のための組成物としては、固体または液体の剤形、具体的には錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤を含む)、シロップ剤、乳剤、懸濁剤等が挙げられる。一方、非経口投与のための組成物としては、例えば、注射剤、坐剤等が用いられ、注射剤は静脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤等の剤形を包含しても良い。これらの製剤は、賦形剤(例えば、乳糖、白糖、葡萄糖、マンニトール、ソルビトールのような糖誘導体;トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、α澱粉、デキストリンのような澱粉誘導体;結晶セルロースのようなセルロース誘導体;アラビアゴム;デキストラン;プルランのような有機系賦形剤;および、軽質無水珪酸、合成珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウムのような珪酸塩誘導体;燐酸水素カルシウムのような燐酸塩;炭酸カルシウムのような炭酸塩;硫酸カルシウムのような硫酸塩等の無機系賦形剤である)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムのようなステアリン酸金属塩;タルク;コロイドシリカ;ビーズワックス、ゲイ蝋のようなワックス類;硼酸;アジピン酸;硫酸ナトリウムのような硫酸塩;グリコール;フマル酸;安息香酸ナトリウム;DLロイシン;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウムのようなラウリル硫酸塩;無水珪酸、珪酸水和物のような珪酸類;および、上記澱粉誘導体である)、結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、マクロゴール、および、前記賦形剤と同様の化合物である)、崩壊剤(例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、内部架橋カルボキシメチルセルロースナトリウムのようなセルロース誘導体;カルボキシメチルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドンのような化学修飾されたデンプン・セルロース類である)、乳化剤(例えば、ベントナイト、ビーガムのようなコロイド性粘土;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムのような金属水酸化物;ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウムのような陰イオン界面活性剤;塩化ベンザルコニウムのような陽イオン界面活性剤;および、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルのような非イオン界面活性剤である)、安定剤(メチルパラベン、プロピルパラベンのようなパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコールのようなアルコール類;塩化ベンザルコニウム;フェノール、クレゾールのようなフェノール類;チメロサール;デヒドロ酢酸;および、ソルビン酸である)、矯味矯臭剤(例えば、通常使用される、甘味料、酸味料、香料等である)、希釈剤等の添加剤を用いて周知の方法で製造される。
【0020】
本発明の薬剤の患者への投与量は、治療すべき病態の種類、症状および疾患の重篤度、患者年齢、性別もしくは体重、投与法などにより異なるので一義的には言えないが、医師が前記状況を考慮して判断することにより、適宜適当な投与量を決定することができる。
【0021】
経口投与の場合には、例えば、1回あたり下限0.1mg(好ましくは、0.5mg)、上限1000mg(好ましくは、500mg)を、非経口的投与の場合には、1回あたり下限0.01mg(好ましくは、0.05mg)、上限100mg(好ましくは、50mg)を、成人に対して1日あたり1から6回投与することができる。症状に応じて増量もしくは減量してもよい。
【実施例】
【0022】
本発明を以下の実施例でさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はそれら実施例に限定されないものとする。
【0023】
実施例1
iPS細胞の作製
以下のすべての実験は、治験審査委員会、動物実験委員会および施設内生物安全委員会、ならびに京都大学の承認を得て行われた。
【0024】
TD患者由来のヒト皮膚線維芽細胞(TD714, TD10749, TD315HおよびTD329N) を、コリエル医学研究所および埼玉県立小児医療センターから入手した。これらのヒト皮膚線維芽細胞(HDF)から抽出したゲノムDNAを配列解析したところ、すべてのTD患者においてFGFR3遺伝子のヘテロ接合突然変異(Arg248Cys)が確認された。ACH患者由来のHDFとして、FGFR3遺伝子においてGly380Argのヘテロ接合突然変異を有する2人のACH患者のHDF(ACH8857およびACH8858)、およびACHよりも重篤な軟骨形成不全を示すHDF(ACHhomo-8859)をコリエル医学研究所より入手した。各患者由来のHDFから以下に記載する方法でiPS細胞を作製した。対照iPS細胞として、K. OkitaおよびS. Yamanaka(京都大学iPS細胞研究所)から入手した健常な個体由来のiPS細胞株(409B2)(Okita, K., et al. Nature methods 8, 409-412 (2011))を用いた。
【0025】
iPS細胞の製造は、次の方法によって行った。詳細には、入手したそれぞれのヒト線維芽細胞(HDF)を、10% FBS (Invitrogen), 50 U/ml penicillinおよび50 μg/ml streptomycinを添加したDMEM (Sigma)で培養した。続いて、Neon transfection system (Invitrogen)により、エピソーマルプラスミドベクター(Mixture Y4: OCT3/4, SOX2, KLF4, L-MYC, LIN28およびp53 shRNA)を各HDFにエレクトロポレーションで導入した(Okita, K., et al. Nature methods 8, 409-412 (2011))。1週間後に、フィーダー細胞をあらかじめ播種しておいた100 mmディッシュに1×105個の当該ベクターを導入したHDFを播種した。次いで、hiPSC培地(20% KSR(Invitrogen), 2mM L-グルタミン(Invitrogen), 1×10-4M 非必須アミノ酸(Invitrogen), 1×10-4M 2-メルカプトエタノール(Invitrogen), 50units/ml ペニシリン(Invitrogen), 50μg/ml ストレプトマイシン(Invitrogen), 4ng/ml bFGF(WAKO)を添加したDMEM/F12 (Sigma))で培養した。得られた各iPS細胞は、抗SSEA4抗体(Santa Cruz, sc-5279)および抗-TRA1-60抗体(Abcam, ab16287)を用いた免疫組織化学により評価した。
【0026】
その結果、作製されたすべてのiPSC株はES細胞マーカー(SSEA4およびTRA1-60)を発現しており、三胚葉を含むテラトーマを形成することが確認された。
【0027】
mRNAの測定
RNAは、RNeasy Mini Kit (Qiagen)を用いて、各細胞から単離した。得られた全RNAのうち500 ngを鋳型として、ReverTra Ace (TOYOBO)を用いて逆転写によりcDNAを合成した。定量PCR(リアルタイムPCR)のための標準曲線を作成して解析を行った。リアルタイムPCR解析は、KAPA SYBR FAST qPCR kit Master Mix ABI prism (KAPA BIOSYSTEMS)を用いて、Step One system (ABI)により測定した。mRNAの発現量は、b-ACTINの発現量で校正した。使用したプライマーの配列を表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
実施例2
軟骨誘導
以前に報告された方法(Oldershaw, R.A., et al., Nat Biotechnol 28, 1187-1194 (2010))を修正した以下に記載の方法に従って、各iPS細胞から軟骨細胞に分化誘導した。
【0030】
各iPS細胞をマトリゲル(Invitrogen)コートディッシュ上に播種し、Essential 8培地(Life Technologies)に50units/ml ペニシリンおよび50μg/ml ストレプトマイシンを添加した培地を加え、フィーダーフリー条件下で未分化維持培養した。播種後10〜15日目に、1〜2×105細胞から成るコロニーを中胚葉分化培地(DMEM/F12に対し10ng/ml Wnt3A(R&D), 10ng/ml アクチビンA(R&D), 1% インスリン-トランスフェリン-亜セレン酸ナトリウム(Invitrogen), 1% 牛胎児血清, 50units/ml ペニシリン, 50μg/ml ストレプトマイシンを混合して調製)に交換した(分化誘導0日目)。3日後(分化誘導3日目)、各薬剤(1μMのロスバスタチン(BioVision, 1995-5)、各濃度(0.1μM、1μMまたは10μM)のFarnesyl transferase阻害剤(FTI-277)(Sigma)(以下、FTIという)、各濃度(0.1μM、1μMまたは10μM)のGeranylgeranyl transferase阻害剤(GGTI-287)(Sigma)(以下、GGTIという)、各濃度(0.1μM、1μM、10μMまたは100μM)のRock阻害剤(Y27632)(Wako)(以下、Rockiという))を添加した軟骨分化培地(50μg/mlアスコルビン酸、10ng/ml BMP2(Osteopharma)、10ng/ml TGFβ(Pepro Tech)、10ng/ml GDF5、1% インスリン-トランスフェリン-亜セレン酸ナトリウム、1% FBS、50units/ml ペニシリンおよび 50μg/ml ストレプトマイシンを含有するDMEM/F12)または低コレステロール軟骨分化培地(上記軟骨分化培地のFBSを低コレステロールFBSへ置換した培地)に交換し、11日後(分化誘導14日目)にディッシュから細胞を引き剥がした。同じ培地を用いて浮遊培養により28日間培養し、パーティクルを回収した(分化誘導42日目)。分化誘導中は、2〜7日ごとに培地を交換した。
【0031】
別途、上記と同じ方法で、3種類のFarnesyl transferase阻害剤を用いて各iPS細胞から軟骨細胞に分化誘導した。すなわち、分化誘導3日目にFTI-277(Sigma)(以下、FTIという)、Lonafarnib(Cayman)(以下、Lonaという)およびTipifarnib(LCL)(以下、Tipiという)をそれぞれ濃度0.0001μM、0.001μM、0.01μMまたは0.1μMで添加した軟骨分化培地に交換し、分化誘導14日目にディッシュから細胞を引き剥がし、同じ培地を用いて浮遊培養により28日間培養し、分化誘導42日目にパーティクルを回収した。
【0032】
得られたパーティクル内に存在する軟骨細胞における、軟骨細胞マーカーであるSOX9および軟骨マトリックスタンパク質をコードする遺伝子(II型コラーゲン(COL2A1)およびアグリカン(Acan))のmRNAの発現量をリアルタイムPCRで調べた。さらに、得られたパーティクルをサフラニンO染色し、サフラニンO陽性の軟骨組織の存在を確認すると共に、サフラニンO陽性領域の比率を求めた。
【0033】
(1)TD714由来iPS細胞の結果
図1にTD714由来iPS細胞から、Farnesyl transferase阻害剤(FTI-277)、Geranylgeranyl transferase阻害剤(GGTI-287)、またはRock阻害剤(Y27632)を添加した培地を用いて分化誘導した軟骨細胞における軟骨細胞マーカーをリアルタイムPCRで測定した結果を示した。(A)がSOX9、(B)がCOL2A1、(C)がAcanの結果である。いずれの薬剤を用いた場合でも、Vehicle(基剤)と比較して各遺伝子の発現を上昇させることが確認された。
【0034】
図2図3および図4に、TD714由来iPS細胞から、Farnesyl transferase阻害剤(FTI-277)、Geranylgeranyl transferase阻害剤(GGTI-287)、またはRock阻害剤(Y27632)を添加した培地を用いて分化誘導したパーティクルをサフラニンO染色した結果を示した。いずれの薬剤を用いた場合でも、サフラニンO陽性の軟骨組織が確認された。
【0035】
図5にTD714由来iPS細胞から、3種類のFarnesyl transferase阻害剤(FTI-277、LonafarnibおよびTipifarnib)をそれぞれ添加した培地を用いて分化誘導した軟骨細胞における軟骨細胞マーカーをリアルタイムPCRで測定した結果を示した。(A)がSOX9、(B)がCOL2A1、(C)がAcanの結果である。いずれのFarnesyl transferase阻害剤を用いた場合でも、Vehicle(基剤)と比較して各遺伝子の発現を上昇させることが確認された。
【0036】
図6および図7に、TD714由来iPS細胞から、3種類のFarnesyl transferase阻害剤(FTI-277、LonafarnibおよびTipifarnib)をそれぞれ添加した培地を用いて分化誘導したパーティクルをサフラニンO染色した結果を示した。いずれのFarnesyl transferase阻害剤を用いた場合でも、サフラニンO陽性の軟骨組織が確認された。
【0037】
(2)TD329N由来iPS細胞の結果
図8および図9に、TD329N由来iPS細胞から、Farnesyl transferase阻害剤(FTI-277)、Geranylgeranyl transferase阻害剤(GGTI-287)、またはRock阻害剤(Y27632)を添加した培地を用いて分化誘導したパーティクルをサフラニンO染色した結果を示した。いずれの薬剤を用いた場合でも、サフラニンO陽性の軟骨組織が確認された。
【0038】
図10にTD329N由来iPS細胞から、3種類のFarnesyl transferase阻害剤(FTI-277、LonafarnibおよびTipifarnib)をそれぞれ添加した培地を用いて分化誘導した軟骨細胞における軟骨細胞マーカーをリアルタイムPCRで測定した結果を示した。(A)がSOX9、(B)がCOL2A1、(C)がAcanの結果である。いずれのFarnesyl transferase阻害剤を用いた場合でも、Vehicle(基剤)と比較して各遺伝子の発現を上昇させることが確認された。
【0039】
(3)ACH8858由来iPS細胞の結果
図11および図12に、ACH8858由来iPS細胞から、Farnesyl transferase阻害剤(FTI-277)、Geranylgeranyl transferase阻害剤(GGTI-287)、またはRock阻害剤(Y27632)添加した培地を用いて分化誘導したパーティクルをサフラニンO染色した結果を示した。いずれの薬剤を用いた場合でも、サフラニンO陽性の軟骨組織が確認された。
【0040】
図13にACH8858由来iPS細胞から、3種類のFarnesyl transferase阻害剤(FTI-277、LonafarnibおよびTipifarnib)をそれぞれ添加した培地を用いて分化誘導した軟骨細胞における軟骨細胞マーカーをリアルタイムPCRで測定した結果を示した。(A)がSOX9、(B)がCOL2A1、(C)がAcanの結果である。いずれのFarnesyl transferase阻害剤を用いた場合でも、Vehicle(基剤)と比較して各遺伝子の発現を上昇させることが確認された。
【0041】
(4)ACHhomo-8859由来iPS細胞の結果
図14および図15に、ACHhomo-8859由来iPS細胞から、Farnesyl transferase阻害剤(FTI-277)、Geranylgeranyl transferase阻害剤(GGTI-287)、またはRock阻害剤(Y27632)添加した培地を用いて分化誘導したパーティクルをサフラニンO染色した結果を示した。いずれの薬剤を用いた場合でも、サフラニンO陽性の軟骨組織が確認された。
【0042】
図16にACHhomo-8859由来iPS細胞から、3種類のFarnesyl transferase阻害剤(FTI-277、LonafarnibおよびTipifarnib)をそれぞれ添加した培地を用いて分化誘導した軟骨細胞における軟骨細胞マーカーをリアルタイムPCRで測定した結果を示した。(A)がSOX9、(B)がCOL2A1、(C)がAcanの結果である。いずれのFarnesyl transferase阻害剤を用いた場合でも、Vehicle(基剤)と比較して各遺伝子の発現を上昇させることが確認された。
【0043】
実施例3
被験薬剤をメトホルミンに変更した以外は実施例2と同じ方法で、TD714由来iPS細胞およびACH8858由来iPS細胞から軟骨細胞に誘導した。対照iPS細胞として、健常個体由来の409B2を用いた。メトホルミン(1,1-Dimethylbiguanide hydrochloride(sigma))の濃度は、0.2mM, 2mMまたは5mMとした。
【0044】
図17にメトホルミンを添加した培地を用いて分化誘導したパーティクルをサフラニンO染色した結果を示した。TD714由来iPS細胞およびACH8858由来iPS細胞から分化誘導したパーティクルには、どちらももサフラニンO陽性の軟骨組織が確認された。
【0045】
図18にメトホルミンを添加した培地を用いて分化誘導した軟骨細胞における軟骨細胞マーカー(COL2A1、Acan、SOX9)をリアルタイムPCRで測定した結果を示した。各遺伝子の発現量は、TD714由来iPS細胞を1μMのロスバスタチンで分化誘導したときの発現量を1として、相対値で示した。メトホルミンの添加により、各遺伝子の発現を上昇させることが確認された。
【0046】
以上の結果から、メトホルミン、Farnesyl transferase阻害剤、Geranylgeranyl transferase阻害剤またはRock阻害剤を用いることで、TD患者由来のiPS細胞およびACH患者由来のiPS細胞からであっても軟骨組織を形成させることができることが確認された。従って、メトホルミン、Farnesyl transferase阻害剤、Geranylgeranyl transferase阻害剤およびRock阻害剤は、致死性骨異形成症および軟骨無形成症の治療剤となり得ることが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、スクリーニングの結果得られた軟骨細胞への分化を促進する物質を提供するものであり、当該物質は、FGFR3病の新たな治療剤および/または予防剤として利用可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【配列表】
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【国際調査報告】