特表-17195319IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電機株式会社の特許一覧
<>
  • 再表WO2017195319-燃料噴射弁 図000003
  • 再表WO2017195319-燃料噴射弁 図000004
  • 再表WO2017195319-燃料噴射弁 図000005
  • 再表WO2017195319-燃料噴射弁 図000006
  • 再表WO2017195319-燃料噴射弁 図000007
  • 再表WO2017195319-燃料噴射弁 図000008
  • 再表WO2017195319-燃料噴射弁 図000009
  • 再表WO2017195319-燃料噴射弁 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2017年11月16日
【発行日】2018年12月27日
(54)【発明の名称】燃料噴射弁
(51)【国際特許分類】
   F02M 51/06 20060101AFI20181130BHJP
【FI】
   F02M51/06 G
   F02M51/06 A
   F02M51/06 M
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
【出願番号】特願2018-516286(P2018-516286)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2016年5月12日
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100073759
【弁理士】
【氏名又は名称】大岩 増雄
(74)【代理人】
【識別番号】100088199
【弁理士】
【氏名又は名称】竹中 岑生
(74)【代理人】
【識別番号】100094916
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 啓吾
(74)【代理人】
【識別番号】100127672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 憲治
(72)【発明者】
【氏名】福冨 範久
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 恭輔
(72)【発明者】
【氏名】宗実 毅
(72)【発明者】
【氏名】平井 学
【テーマコード(参考)】
3G066
【Fターム(参考)】
3G066AB02
3G066AD05
3G066BA51
3G066CC05U
3G066CC14
3G066CC15
3G066CC18
3G066CC24
3G066CE25
3G066CE26
(57)【要約】
磁気式の燃料噴射弁(100)は、コア(6)およびアマチュア(5)の外周側に設けられた磁性材よりなるホルダ(7)、ホルダ(7)の外周側に設けられたハウジング(8)を備えている。ハウジング(8)からホルダ(7)を介しコア(6)に至る電磁通路は、ホルダ(7)からアマチュア(5)を経由してコア(6)に至る磁路A、ホルダ(7)からコア(6)に直接的に至る磁路B、上記磁路Aおよび上記磁路Bに至る共通磁路Cを有する。共通磁路Cとなるホルダ(7)またはハウジング(8)には、磁路断面積Sの磁気絞り部が設けられる。磁路A、Bで各々最小となる磁路断面積SA、の合計面積SよりもSを小さくし、磁束を調整することで、製品間の電磁力バラツキを抑制する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気式の燃料噴射弁の弁体と一体に設けられ、電磁吸引力によってコアと接離するアマチュア、上記コアおよび上記アマチュアの外周側に設けられた磁性材よりなるホルダを備え、
上記ホルダから上記コアに至る電磁通路は、上記ホルダから上記アマチュアを経由して上記コアに至る第一の磁路、上記ホルダから上記コアに直接的に至る第二の磁路、上記第一の磁路および上記第二の磁路に至る共通磁路を有し、
上記ホルダの上記共通磁路には、上記第一の磁路を通る磁束を調整する磁気絞り部が設けられ、
上記磁気絞り部の磁路断面積は、上記第一の磁路の最小磁路断面積と上記第二の磁路の最小磁路断面積の合計面積よりも小さいことを特徴とする燃料噴射弁。
【請求項2】
上記磁気絞り部は、上記共通磁路と上記第一の磁路および上記第二の磁路との分岐点に位置し、上記コアと上記アマチュアとが接する開弁状態における磁路断面積が、上記コアと上記アマチュアとが離間する閉弁状態における磁路断面積より小さくなるように形成されていることを特徴とする請求項1記載の燃料噴射弁。
【請求項3】
磁気式の燃料噴射弁の弁体と一体に設けられ、電磁吸引力によってコアと接離するアマチュア、上記コアおよび上記アマチュアの外周側に設けられた磁性材よりなるホルダ、上記ホルダの外周側に設けられたハウジングを備え、
上記ハウジングから上記ホルダを介し上記コアに至る電磁通路は、上記ホルダから上記アマチュアを経由して上記コアに至る第一の磁路、上記ホルダから上記コアに直接的に至る第二の磁路、上記第一の磁路および上記第二の磁路に至る共通磁路を有し、
上記ハウジングの上記共通磁路には、上記第一の磁路を通る磁束を調整する磁気絞り部が設けられ、
上記磁気絞り部の磁路断面積は、上記第一の磁路の最小磁路断面積と上記第二の磁路の最小磁路断面積の合計面積よりも小さいことを特徴とする燃料噴射弁。
【請求項4】
上記第二の磁路は、上記コアと上記アマチュアとが接する開弁状態において、磁気飽和となる断面積に設定されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載の燃料噴射弁。
【請求項5】
上記磁気絞り部は、上記コアと上記アマチュアとが接する開弁状態において、磁気飽和となる断面積に設定されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項記載の燃料噴射弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内燃機関等に用いられる電磁式の燃料噴射弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の燃料噴射弁は、カバー、ケーシング、可動子、コアからなる磁気回路を含む構成であった。そして、コイルによって発生した磁束は、ケーシングの内周から非磁性のスリーブを通過して可動子の側面に入り、可動子の端面からエアギャップを通過してコアの端面に入るように構成されていた。
この構成において、可動子とコアは非磁性スリーブ内に配置され、可動子への電磁吸引力を発生させる構造となっていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−282576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の燃料噴射弁では、図8に示すように、可動子101(アマチュア)とコア102とがエアギャップ103を介して対向配置されている。そして、エアギャップ103を通る磁路103aには磁束が生じ、この磁束のテンション方向に電磁吸引力が発生する。しかし、製品間において、可動子101及びコア102の形状バラツキや、可動子101とコア102との配置に依存する切離面の傾き角バラツキがあった。そして、これらのバラツキにより、エアギャップ103の磁気抵抗が変化し、エアギャップ103を通る磁路103aに発生する磁束に変化が生じていた。
【0005】
また、従来の燃料噴射弁では、非磁性材よりなるスリーブ104が、エアギャップ103の外周側に配置されるとともに、ケーシング105(ハウジング)に内接するように配置されていた。そのため、エアギャップ103の外周側には、磁気通路となる磁性体が配置されていない構造となっていた。
このため、エアギャップ103を迂回し、可動子101の側面からコア102の側面に至る、洩れ磁路104aに洩れ磁束が発生していた。
そして、この洩れ磁路104aに生じる洩れ磁束は、可動子101の外周面から斜め方向に延びる成分を有するため、電磁吸引力に影響を与えていた。
【0006】
このような従来構造の燃料噴射弁は、可動子101とコア102のそれぞれの形状のバラツキ、両者間の傾き角のバラツキに依存して、エアギャップにおける磁気抵抗が変化するものであった。そのため、磁路103a及び洩れ磁路104aを通る磁束にもバラツキが発生し、製品間における電磁吸引力バラツキが大きくなるという問題があった。
【0007】
ここで、バッテリ電圧を供給されてコイルに電流を供給する燃料噴射弁は、内燃機関の低温始動時のバッテリ電圧が低い状態でも開弁動作を保証する必要がある。
従来の一般的な燃料噴射弁では、内燃機関の動作初期の低温時において、例えばコイル抵抗が12Ω、バッテリ電圧が6Vの場合には、0.5A程度の小電流が通電された状態となる。そして、動作初期においては、可動子101と一体化されたニードルは閉弁状態であり、可動子101とコア102との間のエアギャップ103が大きくなっているため、比較的小さな電磁吸引力が発生する状態となっていた。
一方、内燃機関の定常状態では、発電機から約12Vの電圧が供給されるため、約1Aの大電流が通電された状態となる。そして、ニードルが開弁状態であり、エアギャップ103が小さくなっているため、比較的大きな電磁力吸引力が発生する状態となっていた。
【0008】
低温時の動作保証のため、電磁吸引力を確保しようとして可動子101の対向面積を大きくすると、定常状態での電磁吸引力が過剰となってしまい、開弁から閉弁に移行する際の応答遅れを生じ、微小噴射量の精度が低下するという問題があった。
【0009】
このように、製品間における燃料噴射弁の電磁吸引力のバラツキが大きい場合、燃料の噴射量が変化し、内燃機関における空燃比の精度が低下するという問題があった。また、閉弁時の応答遅れが大きいと、製品間における微小噴射量のバラツキが大きくなり、内燃機関における軽負荷時の空燃比の精度が低下するという問題があった。
【0010】
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、燃料噴射弁の電磁吸引力のバラツキを抑制することにより、噴射量の精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係わる燃料噴射弁は、磁気式の燃料噴射弁の弁体と一体に設けられ、電磁吸引力によってコアと接離するアマチュア、上記コアおよび上記アマチュアの外周側に設けられた磁性材よりなるホルダを備え、上記ホルダから上記コアに至る電磁通路は、上記ホルダから上記アマチュアを経由して上記コアに至る第一の磁路、上記ホルダから上記コアに直接的に至る第二の磁路、上記第一の磁路および上記第二の磁路に至る共通磁路を有し、上記ホルダの上記共通磁路には、上記第一の磁路を通る磁束を調整する磁気絞り部が設けられ、上記磁気絞り部の磁路断面積は、上記第一の磁路の最小磁路断面積と上記第二の磁路の最小磁路断面積の合計面積よりも小さいことを特徴とするものである。
【0012】
また、この発明に係わる燃料噴射弁は、磁気式の燃料噴射弁の弁体と一体に設けられ、電磁吸引力によってコアと接離するアマチュア、上記コアおよび上記アマチュアの外周側に設けられた磁性材よりなるホルダ、上記ホルダの外周側に設けられたハウジングを備え、上記ハウジングから上記ホルダを介し上記コアに至る電磁通路は、上記ホルダから上記アマチュアを経由して上記コアに至る第一の磁路、上記ホルダから上記コアに直接的に至る第二の磁路、上記第一の磁路および上記第二の磁路に至る共通磁路を有し、上記ハウジングの上記共通磁路には、上記第一の磁路を通る磁束を調整する磁気絞り部が設けられ、上記磁気絞り部の磁路断面積は、上記第一の磁路の最小磁路断面積と上記第二の磁路の最小磁路断面積の合計面積よりも小さいことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明の燃料噴射弁によれば、コアとアマチュアの外周側に、磁気回路構成部となる磁性材よりなるホルダを配置している。さらに、ホルダまたはハウジングの、第一の磁路および第二の磁路に至る共通磁路に、磁気絞り部を形成している。そして、この磁気絞り部の断面積を管理し、第一の磁路を通る磁束を調整することにより、製品間における電磁吸引力のバラツキを抑制することを可能としている。
この発明の上記以外の目的、特徴、観点および効果は、図面を参照する以下のこの発明の詳細な説明から、さらに明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態1に係る燃料噴射弁の側断面図である。
図2】実施の形態1の燃料噴射弁の、開弁時における磁気回路構成部の要部断面図であり、図2(a)は磁路を、図2(b)は磁路要部における磁路断面積を示す図である。
図3】実施の形態1の説明に必要な図であり、図3(a)は比較例となる燃料噴射弁の磁気回路を、図3(b)は実施の形態1の燃料噴射弁の磁気回路を示す回路図である。
図4】実施の形態1の燃料噴射弁の、磁束の起磁力依存性を示す図である。
図5】本発明の実施の形態2に係る燃料噴射弁の側断面図である。
図6】実施の形態2の燃料噴射弁の磁気回路構成部の要部断面図であり、図6(a)は開弁時の状態を、図6(b)は閉弁時の状態を示す図である。
図7】本発明の実施の形態3に係る燃料噴射弁の側断面図である。
図8】従来の燃料噴射弁の磁気回路構成部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施の形態1.
本発明の実施の形態1の燃料噴射弁100の構成について、図1から図4を用いて説明する。
図1は、本発明の実施の形態1の燃料噴射弁100の全体構造を示す側断面図である。図1に示すように、燃料噴射弁100の外形は樹脂モールド部1によって形成され、燃料の経路は、紙面上から下の方向に形成されている。燃料噴射弁100の下方部となる噴射口近傍には、円錐形状のシート面2aを有するバルブシート2が配置されている。そして、シート面2aからの弁体3の離脱状態により、燃料の噴射量が制御される。
【0016】
弁体3は、ニードル4を介して、電磁制御により可動するアマチュア5(可動子)に固定されている。アマチュア5には、燃料経路上流側にアマチュア端面5aが形成されている。アマチュア5よりも燃料経路上流側には、燃料流路(パイプ)の基部となるコア6が配置されている。このコア6の下流側端面には、アマチュア端面5aと対向するコア端面6aが形成されている。
【0017】
アマチュア5とコア6との接離面間の間隙はエアギャップとなる。そして、アマチュア5とコア6との接離面の外周側には、磁性材よりなるホルダ7が配置されている。このホルダ7は、磁気回路の構成部品となっている。そして、ホルダ7内にコア6が圧入され、両者は接合されている。
このホルダ7の内部の燃料経路下流側にはバルブシート2が保持されている。
【0018】
さらに、ホルダ7の外周側に、磁気回路の構成部品となるハウジング8が配置されている。このハウジング8とコア6との間にはコイル9が配置され、ハウジング8とコア6とは、カバー10を介して接合されている。
また、コア6の内径にはロッド11が固定され、ロッド11とニードル4との間には、ニードル4に軸方向荷重を作用させるスプリング12が配置されている。
【0019】
そして、この燃料噴射弁100は、ラバーリング13を介して上流側の燃料パイプと燃料シール状態で接続される。燃料は、コア6の燃料供給端に配置されたフィルタ14を通って燃料噴射弁100の内部に供給される。供給された燃料は各パーツの燃料流路を通って弁体3とシート面2aとの接触部に至り、開弁状態になるとオリフィスプレート15のオリフィス15aを通って噴射される。
【0020】
次に、燃料噴射弁100の動作初期の開弁動作について説明する。
燃料噴射弁100は、2本のターミナル16(図1には1本のターミナルのみ記載。)間の電圧がオンになると、ターミナル16に接続されたコイル9に電流が流れる。そして、通電により発生した磁界により、主に、コア6、カバー10、ハウジング8、ホルダ7、アマチュア5、コア6の磁性材からなる磁気回路に磁束が還流する。
【0021】
アマチュア5とコア6の間には、これらアマチュア端面5aとコア端面6aに対し、ほぼ垂直となる方向に磁束が通る。そして、磁束の方向に沿ったテンションが作用し、可動パーツであるアマチュア5に、コア6への電磁吸引力が発生する。この電磁吸引力がスプリング12の荷重を上回ると、ニードル4が変位を始める。ニードル4の変位は、アマチュア端面5aが、コア端面6aに接触した位置で完了し、開弁状態となり、弁体3とシート面2aとの間に約40から60μmの隙間が形成される。燃料は、この隙間を通り、オリフィス15aから外部に噴射される。
【0022】
次に、燃料噴射弁100の閉弁動作について説明する。
2本のターミナル16間の電圧がオフになると、コイル9の電流が遮断される。電流が遮断されると磁束の減少とともにアマチュア5に作用する電磁吸引力も減少し、所定の時間が経過して電磁吸引力がスプリング12の荷重を下回るとニードル4が変位を始める。電圧オフ後の時間に対するニードル4の変位プロフィールは、変位のない所定の時間が経過した後に、放物線状に変位して、弁体3がシート面2aに接触すると変位は完了する。変位の完了に伴い燃料噴射は終了する。
【0023】
次に、図2に、開弁時の磁気回路構成部の要部断面図を示し、磁路とその断面積について説明する。図2(a)は、燃料噴射弁100における、アマチュア端面5aとコア端面6aとの間のエアギャップ付近の磁束の流れ(電磁通路)を示し、図2(b)は、磁気回路の主要な各部の磁路断面積を示している。
【0024】
図2(a)に示すように、ハウジング8内の磁束はコア6に至るが、その電磁通路は、ハウジング8とホルダ7の圧入部(接合部)からホルダ7の軸方向を通り、アマチュア5の下端に至る共通磁路C、共通磁路Cから分岐し、アマチュア5を介してコア6に至る磁路A(第一の磁路に相当する。)と、ホルダ7から直接的にコア6に至る磁路B(第二の磁路に相当する。)よりなる。図2(a)には、磁路Aを短破線で、磁路Bを長破線で、共通磁路Cを白抜き線で示している。
【0025】
図2(b)は、図2(a)からアマチュア5、コア6、ホルダ7を抜き書きした断面図である。この図2(b)において、ホルダ7の磁路断面積が異なる複数の構成部が形成されており、これらの構成部は、流路下流側から上流側に、第一の円筒部7a、第二の円筒部7b、第三の円筒部7c、第四の円筒部7dの順に配置形成されている。
【0026】
ホルダ7の第一の円筒部7aは、ハウジング8に圧入される肉厚の部分であり、共通磁路Cとなる部分である。
続いて、軸方向に沿って形成される第二の円筒部7bは、第一の円筒部7aからホルダ7とアマチュア5との接合下端に至る共通磁路Cとなる部分である。この第二の円筒部7bは、本願発明の特徴となる磁気絞り部に相当している。この磁気絞り部となる第二の円筒部7bの断面積は、この燃料噴射弁100の磁気回路中で最小となるように形成される。つまり、第二の円筒部7bの断面積は、磁気絞り部の磁路断面積Sに相当している。
【0027】
そして、この第二の円筒部7bは、例えば、ホルダ7を切削加工することによって形成することができ、任意の寸法精度を達成することで、磁気絞り部の磁束調整の精度を確保することが可能となる。
【0028】
続いて、第三の円筒部7cは、アマチュア5とコア6と接離面間の間隙部となるエアギャップの外周側に形成され、磁路Bとなる部分である。この第三の円筒部7cの断面積は、ホルダ7内において最小であり、磁路B内で最小となる磁路断面積Sに相当している。
続いて、第四の円筒部7dは、コア6に圧入される部分である。
【0029】
ここで、アマチュア5とコア6との接合面の磁路断面積はSとして表される。そして、本発明の燃料噴射弁100の磁気回路は、SA+SB=S1、S1>S2を満たす寸法に形成されている。
【0030】
次に、各磁路を通過する磁束について説明する。
図2(a)に示すように、共通磁路Cにおいて、ホルダ7の外周はハウジング8の内周に圧入され接触しているので、ハウジング8から第一の円筒部7aには、ほぼ磁気ロスなく磁束が貫通する。
そして、第一の円筒部7aを通過する磁束が、第二の円筒部7bの磁路断面積に応じた値以上である場合に、第二の円筒部7bの磁気絞り部が磁気飽和し、第二の円筒部7bを軸方向上側に通過する磁束は、所定値となるように調整(制限)される。
【0031】
ホルダ7の磁気絞り部において調整された磁束は、磁路Aと磁路Bに分岐して軸方向上側に進む。このとき、磁路Bを構成する第三の円筒部7cが磁気回路中最小断面積に形成されているため、飽和状態となり、磁路Bに流れなかった残りの磁束が磁路Aに進む。磁路Aと磁路Bは、コア6に至り合流する。
【0032】
さらに、燃料噴射弁100の磁気回路について詳細に説明する。
内燃機関の定常運転状態において、巻き数340ターンのコイルに1Aの電流が通電されると、磁気回路には、比較的大きな340Aの起磁力が発生し、磁気絞り部に相当するホルダ7の第二の円筒部7bで磁気飽和状態となる。
磁気回路中を還流する磁束数は、共通磁路Cの最小磁路断面積部となるホルダ7の磁気絞り部(第二の円筒部7b)の飽和磁束数に制限される。
【0033】
共通磁路Cの磁束は、一部が分岐して磁路Bを通りコア6に至る。つまり、ホルダ7の第二の円筒部7bを通過した磁束の一部は、第三の円筒部7cと第四の円筒部7dを通ってコア6に入る。
そして、共通磁路Cから分岐した残りの磁束は、磁路Aを通りコア6に至る。つまり、ホルダ7の第二の円筒部7bを通過し、磁路Bに進まなかった残りの磁束は、第二の円筒部7bの内周面からアマチュア5の外周面に入り、アマチュア5内部を軸方向に沿って通過し、アマチュア端面5aから、エアギャップを介して、コア端面6aからコア6に入る。
【0034】
ここで、例えば、磁路Bの最小となる磁路断面積Sは、ホルダ7の第三の円筒部7cの肉厚を約0.2mmとした部分である。その磁路断面積Sは、第二の円筒部7bの磁気絞り部の磁路断面積Sの1/3以下に形成されている。このホルダ7の第三の円筒部7cは、磁気絞り部と同様に磁気飽和している。よって、磁気絞り部により、磁路Aを通る磁束を調整することが可能となっている。
【0035】
一方、磁路Aの最小の磁路断面積Sはエアギャップ部における、アマチュア5およびコア6の端面の面積に相当している。磁路Aと磁路Bのエアギャップ部における合計の磁路断面積Sは、Sが磁気回路中の最小断面積であるため、S=S+S>Sの関係となっている。
【0036】
ここで、例えば、S:S≒10:9となるように寸法を制御することで、電磁吸引力のバラツキ抑制の効果が顕著となる。上記の関係に比して、Sがより小さくなる場合、電磁吸引力が不足し、Sがより大きく、S1の値に近づき過ぎた場合、寸法公差により逆転し、電磁吸引力のバラツキ抑制効果が低減する場合がある。
【0037】
次に、図3を用いて、比較例となる従来構造の燃料噴射弁と本願発明の燃料噴射弁100と磁気回路を比較する。図3において、図3(a)は比較例となる従来の燃料噴射弁の磁気回路、図3(b)は実施の形態1の燃料噴射弁100の磁気回路を示す回路図である。なお、図3(a)の回路図は、図8に示した従来の燃料噴射弁の構造を反映しており、図8における可動子101(アマチュア)からコア102に至る磁路103aは、図2(a)の磁路Aに相当し、スリーブ104に生じる洩れ磁路104aは、図2(b)の磁路Bに相当するものと考える。洩れ磁路104aは、図3(a)においては記号Bで示す。
【0038】
図3の回路図において、コイルの起磁力はE、磁路Aの磁気抵抗はRA、洩れ磁路Bの磁気抵抗はRBで表される。磁気回路の起電力Eは、電気回路の直流電圧に相当し、磁気抵抗RA、RBは電気抵抗に相当する。また、磁気回路中を流れる磁束が電流に相当する。
【0039】
図3(a)に示すように、従来の磁気回路は、磁路Aと並列に洩れ磁路Bが生じ、磁路Aを通る磁束φA及び洩れ磁路Bを通る磁束φBは、コイルの起磁力Eと磁気抵抗RA、RBによって変化し、φAもφBも電磁吸引力に影響を与えている。なお、共通磁路Cを通る磁束φは、磁束制限されないφtotalとなる。
【0040】
また、図3(b)に示すように、本発明の磁気回路は、共通磁路Cから分岐して磁路Aと磁路Bが並列となるように形成され、共通磁路Cには磁路Aおよび磁路Bに直列配置となるように磁気絞り部に相当する磁束制限器70bが接続されている。また、磁路Bのエアギャップ部に位置する部分には磁束制限器70cが接続されている。
【0041】
つまり、本発明の磁気回路では、定常運転状態の開弁時の起磁力Eが比較的大きくなる場合には、磁路Bは磁束が飽和するため磁束制限器70c(電気回路の電流制限器)となり、共通磁路Cの磁気絞り部(磁束制限器70b)も磁束が飽和するため磁束制限器となる。磁路Aのエアギャップを通る磁束φAは、φtotal−φBから決まる。この時、φB及びφtotalの飽和磁束数は、ホルダ7の材質と断面積によって決まり、起磁力Eの変化による影響を受けないため、φAも安定して決まる。
これにより、製品間における電磁吸引力のバラツキを抑制することができる。よって、本発明の燃料噴射弁100においては、電磁吸引力のバラツキ改善により噴射量精度の向上が可能となっている。
【0042】
次に、図4を用いて本発明の燃料噴射弁100の、磁束φの起磁力E依存性について説明する。図4に例示するように、従来構造の磁束φAの単調増加プロフィールに対して、本発明の燃料噴射弁100では、磁気絞り部となるホルダ7の第二の円筒部7b(磁束制限器70b)が飽和するために、所定値以上の起磁力Emax(図4中の記号Emaxで示す範囲)では、磁束φAは一定値φmaxとなり、そのφmaxは、従来の値φmaxよりも低減される。
一方、磁束φAとφAは、ホルダ7の磁気絞り部が飽和しない起磁力Eminでは、磁束φminが従来と同等の値となる。
【0043】
また、図4に示すように、ホルダ7の第三の円筒部7cが構成する磁束制限器70cは、起磁力Eが0から飽和状態に至るE1の範囲では飽和せず、起磁力EがE1に達すると飽和し、起磁力がE1以上となるE2の範囲で一定値φBとなる。
【0044】
よって、例えば低温始動時の閉弁状態における電磁吸引力をほぼ維持しつつ、定常運転時の開弁状態における電磁力を低減することができ、開弁から閉弁に移行する際の応答遅れを改善することができる。そのため、本願の燃料噴射弁100では、微小噴射量の精度を向上させることが可能となっている。
【0045】
図8に示す従来の燃料噴射弁では、既に説明したように、開放された可動子101(アマチュア)の外周面からコア102の外周面へ至る洩れ磁路104aにおいて、可動子101の外周面から斜め方向の漏れ磁束が発生し、可動子101を可動させる電磁吸引力に影響を及ぼしていた。
【0046】
しかし、本発明の燃料噴射弁100においては、アマチュア5の外周面には全長にわたって、微小隙間を隔ててホルダ7内周面が対面した構造となっている。そして、ホルダ7は磁性体であるためアマチュア5の外周面に垂直となる方向、すなわち半径方向に磁束が出入りするようになる。
そのため、本発明の燃料噴射弁100では、従来のような、軸に対して斜め方向に進む洩れ磁束の発生を抑制でき、アマチュア5を可動させる電磁吸引力に影響を及ぼすことを防止した構造となっている。このような電磁吸引力のバラツキ改善により、燃料噴射精度を向上させることが可能となっている。
【0047】
以上のように、本発明の実施の形態1の燃料噴射弁100は、電磁力のバラツキの抑制、開弁状態の電磁吸引力の低減が可能であり、ひいては内燃機関の空燃比精度の向上に寄与することが可能となっている。
【0048】
実施の形態2.
次に、本発明の実施の形態2について、図5および図6を用いて説明する。図5は、実施の形態2の燃料噴射弁100の側断面図であり、図6は、磁気回路構成部の要部断面図であり、図6(a)は開弁時のアマチュア5がコア6に接している状態を、図6(b)は、閉弁時のアマチュア5とコア6の間にエアギャップ50が形成されている状態を示している。
【0049】
上述の実施の形態1では、ホルダ7の磁気絞り部となる第二の円筒部7bが、軸方向に沿って同寸となるように形成され、第二の円筒部7bにおいて磁路断面積Sは同じ値であった。しかし、この実施の形態2では、ホルダ71の磁気絞り部に相当する、ホルダ71とのアマチュア5とが対向する部分は、外側面部がテーパー形状となるように形成されており、アマチュア5の軸方向への移動により、磁路断面積Sが変化するものを示している。
【0050】
図5に示すように、ホルダ71は、アマチュア5との対向面部であり共通磁路Cを構成する磁気絞り部の形状に特徴を持っており、この磁気絞り部の外側面は傾斜しており、磁気経路下流側に向かうほど磁路断面積が大きくなるテーパー形状を形成している。この磁気絞り部は、共通磁路Cから磁路Aおよび磁路Bに分岐する分岐点に位置している。そして、コア6とアマチュア5とが接する開弁状態における磁路断面積S(open)が、コア6とアマチュア5とが離間する閉弁状態における磁路断面積S(close)より小さくなるように形成されている。つまり、磁気絞り部は、図6(a)、図6(b)のS(open)、S(close)で指し示す線の位置に形成され、アマチュア5のホルダ71と対向する下流側端面付近を起点とし、テーパー面に対して垂直な、中空の円錐形状となる。
【0051】
燃料噴射弁100の開弁状態においては、アマチュア5はコア6と接触する位置まで上流側に引き上げられているため、磁気絞り部は、図6(a)のホルダ71の記号S(open)で表される部分に相当している。そして、閉弁状態においては、弁体3がシート面2aと接触する位置までニードル4が下流側にスプリング12により押されているため、磁気絞り部は、6(b)のホルダ71の記号S(close)で表される部分に相当する。ホルダ71の外周面は燃料経路上流側に向かって径が縮小するテーパー形状であることから、S(open)<S(close)の関係となる。
【0052】
実施の形態1において示した燃料噴射弁100では、アマチュア5の位置に依存して磁気絞り部により制限される磁束数に変化は無かったが、この実施の形態2の燃料噴射弁100では、磁気絞り部の定常運転時の開弁状態における磁束数は、動作初期時の閉弁状態における磁束数よりも少なくなるように規制される。つまり、起磁力Emaxとなる場合の磁束数φtotalが、起磁力Eminとなる場合のφtotalに対して比較的小さく抑えられる。これにより燃料噴射弁100の定常運転時の開弁状態の電磁吸引力が低減される。
【0053】
以上のように、本発明の実施の形態2の燃料噴射弁100は、実施の形態1の燃料噴射弁100と比較して開弁状態における電磁吸引力をより低減することが可能であるため、微小噴射量の精度を向上させることができ、内燃機関の空燃比精度をより向上させることが可能となる。
なお、ホルダ71の磁気絞り部のテーパー面を、切削加工によって形成することで、寸法精度を許容範囲内となるように調整できることは言うまでもない。
【0054】
実施の形態3.
次に、本発明の実施の形態3について、図7を用いて説明する。図7は、実施の形態3の燃料噴射弁100の側断面図である。上述の実施の形態1または実施の形態2では、磁気回路を構成するホルダ7または71に磁気絞り部を形成していたが、この実施の形態3では、ハウジング8に磁気絞り部8aを形成している。ハウジング8は、ホルダ7とともに共通磁路Cを構成している。
【0055】
ここで、磁気絞り部8aでは、磁気回路を還流する磁束数が規制される。しかし、この磁気絞り部8aに、他の磁性体が接近していると磁気リークによる磁束のパスが発生する場合がある。そして、他の磁性体と磁気絞り部8aとの距離のバラツキにより、磁気絞り部8aを貫通する磁束数が変化するという懸念があった。
【0056】
そこで、この実施の形態3では、磁気絞り部8aを、他の磁性体からの空間距離が大きくなる、ハウジング8の大径部の軸方向中央部に形成している。磁気絞り部8aを、このような配置としたことにより、上記のような磁気リークを極力低減することができ、磁気絞り部8aを通る磁束数の変化を抑制し、電磁吸引力のバラツキを抑制することが可能となる。
ここで、ハウジング8の磁気絞り部8aは、例えば、切削加工によって形成することが可能であることは言うまでもない。
【0057】
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】