特表-17209059IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人京都大学の特許一覧
再表2017-209059ガンマ線画像取得装置およびガンマ線画像取得方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2017年12月7日
【発行日】2019年4月11日
(54)【発明の名称】ガンマ線画像取得装置およびガンマ線画像取得方法
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/172 20060101AFI20190315BHJP
   G01T 1/203 20060101ALI20190315BHJP
   G01T 1/161 20060101ALI20190315BHJP
【FI】
   G01T1/172
   G01T1/203
   G01T1/161 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】32
【出願番号】特願2018-520899(P2018-520899)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2017年5月29日
(31)【優先権主張番号】特願2016-107780(P2016-107780)
(32)【優先日】2016年5月30日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
【住所又は居所】京都府京都市左京区吉田本町36番地1
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【弁理士】
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【弁理士】
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】谷森 達
(72)【発明者】
【氏名】高田 淳史
(72)【発明者】
【氏名】水本 哲矢
(72)【発明者】
【氏名】友野 大
【テーマコード(参考)】
2G188
4C188
【Fターム(参考)】
2G188AA01
2G188AA02
2G188AA25
2G188BB04
2G188BB07
2G188BB15
2G188CC03
2G188CC10
2G188CC23
2G188DD05
2G188DD06
2G188EE08
2G188EE16
2G188EE36
2G188FF02
2G188FF08
4C188EE02
4C188EE29
4C188FF04
4C188FF15
4C188GG03
4C188GG11
4C188JJ05
4C188JJ06
4C188KK07
4C188KK15
4C188KK32
4C188LL09
(57)【要約】
ガンマ線画像取得装置(1)は、入射ガンマ線のコンプトン散乱による対象散乱ガンマ線の方向とエネルギーとを取得し、反跳電子の方向とエネルギーとを取得する。これらの情報から、入射ガンマ線の入射方向およびエネルギーを取得する。ガンマ線画像取得装置(1)は、複数の入射ガンマ線の入射方向およびエネルギーに基づくイメージングスペクトロスコピーにより、入射方向に対応する各画素がエネルギー分布の情報を含む二次元画像を取得する。当該二次元画像において、面積と撮像範囲の立体角とが比例する。これにより、距離に依存することなくガンマ線強度の分布が取得され、従来よりも有用な情報を示す画像を得ることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンプトン散乱を利用するガンマ線画像取得装置であって、
チャンバと、
外部から前記チャンバ内に入射する入射ガンマ線のコンプトン散乱による対象散乱ガンマ線を検出し、前記対象散乱ガンマ線の検出位置およびエネルギーを取得する散乱ガンマ線検出部と、
前記チャンバ内における前記入射ガンマ線の散乱位置を取得する散乱位置取得部と、
前記散乱位置および前記検出位置に基づいて前記対象散乱ガンマ線の方向を取得する散乱方向取得部と、
前記散乱位置からの反跳電子の方向とエネルギーとを取得する反跳電子情報取得部と、
前記対象散乱ガンマ線の方向およびエネルギー、並びに、前記反跳電子の方向およびエネルギーから、対応する入射ガンマ線の入射方向およびエネルギーを取得する入射ガンマ線算出部と、
複数の入射ガンマ線の入射方向およびエネルギーに基づくイメージングスペクトロスコピーにより、入射ガンマ線の入射方向に対応する各画素がエネルギー分布の情報を含む二次元画像を取得する画像取得部と、
を備え、
前記二次元画像において、面積と撮像範囲の立体角とが比例し、
前記入射ガンマ線算出部にて得られる前記入射方向の精度を示す点広がり関数の半値全幅が、15度以下の見込み角に対応する。
【請求項2】
請求項1に記載のガンマ線画像取得装置であって、
前記画像取得部が、前記複数の入射ガンマ線のうち、放射線源から前記チャンバに直接的に入射する直接入射ガンマ線、および、前記直接入射ガンマ線のエネルギー範囲よりも低いエネルギー範囲の散乱入射ガンマ線のうち、少なくとも一方のガンマ線を特定し、前記少なくとも一方のガンマ線の入射方向の分布を二次元画像として取得する。
【請求項3】
コンプトン散乱を利用するガンマ線画像取得装置であって、
チャンバと、
外部から前記チャンバ内に入射する入射ガンマ線のコンプトン散乱による対象散乱ガンマ線を検出し、前記対象散乱ガンマ線の検出位置およびエネルギーを取得する散乱ガンマ線検出部と、
前記チャンバ内における前記入射ガンマ線の散乱位置を取得する散乱位置取得部と、
前記散乱位置および前記検出位置に基づいて前記対象散乱ガンマ線の方向を取得する散乱方向取得部と、
前記散乱位置からの反跳電子の方向とエネルギーとを取得する反跳電子情報取得部と、
前記対象散乱ガンマ線の方向およびエネルギー、並びに、前記反跳電子の方向およびエネルギーから、対応する入射ガンマ線の入射方向およびエネルギーを取得する入射ガンマ線算出部と、
複数の入射ガンマ線のうち、第1のエネルギー範囲の第1入射ガンマ線、および、前記第1のエネルギー範囲とは異なる第2のエネルギー範囲の第2入射ガンマ線を特定し、前記第1入射ガンマ線の情報から三次元のガンマ線場を示す第1ガンマ線画像を取得し、前記第2入射ガンマ線の情報から三次元のガンマ線場を示す第2ガンマ線画像を取得する画像取得部と、
を備え、
前記入射ガンマ線算出部にて得られる前記入射方向の精度を示す点広がり関数の半値全幅が、15度以下の見込み角に対応する。
【請求項4】
請求項3に記載のガンマ線画像取得装置であって、
前記第1入射ガンマ線が、放射線源から前記チャンバに直接的に入射する直接入射ガンマ線であり、前記第2入射ガンマ線が、前記直接入射ガンマ線のエネルギー範囲よりも低いエネルギー範囲の散乱入射ガンマ線である。
【請求項5】
請求項4に記載のガンマ線画像取得装置であって、
入射ガンマ線が、放射性物質を含む対象物から放射される。
【請求項6】
請求項5に記載のガンマ線画像取得装置であって、
前記対象物が、ポジトロンまたはガンマ線を放射する薬剤が投与された人体である。
【請求項7】
請求項4ないし6のいずれかに記載のガンマ線画像取得装置であって、
予め準備された前記対象物内の電子密度分布を記憶する記憶部と、
前記第1ガンマ線画像を、前記第2ガンマ線画像および前記電子密度分布を用いて補正する補正部と、
をさらに備える。
【請求項8】
請求項4ないし6のいずれかに記載のガンマ線画像取得装置であって、
前記第1ガンマ線画像を平滑化し、平滑化された前記第1ガンマ線画像および前記第2ガンマ線画像から前記対象物内の電子密度分布を取得する電子密度分布取得部、
をさらに備える。
【請求項9】
請求項3ないし8のいずれかに記載のガンマ線画像取得装置であって、
前記チャンバと同様のチャンバが増設される取付部、
をさらに備える。
【請求項10】
コンプトン散乱を利用するガンマ線画像取得装置であって、
ポジトロンを放射する物質を含む対象物において、ポジトロンと電子との対消滅により発生した対ガンマ線の一部が入射ガンマ線として入射するチャンバと、
前記チャンバ内における前記入射ガンマ線のコンプトン散乱による対象散乱ガンマ線を検出し、前記対象散乱ガンマ線の検出位置およびエネルギーを取得する散乱ガンマ線検出部と、
前記チャンバ内における前記入射ガンマ線の散乱位置および散乱時刻を取得する散乱情報取得部と、
前記散乱位置および前記対象散乱ガンマ線の前記検出位置に基づいて前記対象散乱ガンマ線の方向を取得する散乱方向取得部と、
前記散乱位置からの反跳電子の方向とエネルギーとを取得する反跳電子情報取得部と、
前記対象散乱ガンマ線の方向およびエネルギー、並びに、前記反跳電子の方向およびエネルギーから、対応する入射ガンマ線の入射方向およびエネルギーを取得する入射ガンマ線算出部と、
前記対象物を挟んで前記チャンバとは反対側に配置され、前記対象物から入射するガンマ線の検出位置および検出時刻を取得する対向検出部と、
前記チャンバに入射する入射ガンマ線の入射方向、エネルギー、散乱位置および散乱時刻に基づいて、前記対向検出部にて検出されたガンマ線のうち、前記入射ガンマ線と対となって発生したガンマ線の検出位置および検出時刻を有するものを特定する対ガンマ線特定部と、
前記対ガンマ線特定部にて特定された対ガンマ線の一方の前記チャンバ内における散乱位置および散乱時刻、並びに、前記対ガンマ線の他方の前記対向検出部における検出位置および検出時刻に基づいて、前記対象物内の前記対ガンマ線の発生位置を取得する対ガンマ線発生位置取得部と、
複数の対ガンマ線の発生位置を三次元画像として取得する画像取得部と、
を備え、
前記入射ガンマ線算出部にて得られる前記入射方向の精度を示す点広がり関数の半値全幅が、15度以下の見込み角に対応する。
【請求項11】
請求項10に記載のガンマ線画像取得装置であって、
前記対向検出部が、鉛を含むプラスチックシンチレータまたは鉛を含むガラスシンチレータを含む。
【請求項12】
請求項10または11に記載のガンマ線画像取得装置であって、
前記チャンバと同様の他のチャンバと、
前記チャンバの場合と同様に、前記他のチャンバに入射する入射ガンマ線の散乱に関する情報および前記対向検出部に入射するガンマ線の情報から、対ガンマ線の発生位置を取得する構成と、
をさらに備え、
前記チャンバから前記対象物に向かう方向と、前記他のチャンバから前記対象物に向かう方向とのなす角が、0度以上140度以下である。
【請求項13】
ガンマ線画像取得方法であって、
a)外部からチャンバ内に入射ガンマ線を入射させる工程と、
b)前記チャンバ内における前記入射ガンマ線のコンプトン散乱による対象散乱ガンマ線の方向とエネルギーとを取得する工程と、
c)前記対象散乱ガンマ線に対応する反跳電子の方向とエネルギーとを取得する工程と、
d)前記対象散乱ガンマ線の方向およびエネルギー、並びに、前記反跳電子の方向およびエネルギーから、前記入射ガンマ線の入射方向およびエネルギーを取得する工程と、
e)前記d)工程にて取得される複数の入射ガンマ線の入射方向およびエネルギーに基づくイメージングスペクトロスコピーにより、入射ガンマ線の入射方向に対応する各画素がエネルギー分布の情報を含む二次元画像を取得する工程と、
を備え、
前記二次元画像において、面積と撮像範囲の立体角とが比例し、
前記d)工程にて得られる前記入射方向の精度を示す点広がり関数の半値全幅が、15度以下の見込み角に対応する。
【請求項14】
ガンマ線画像取得方法であって、
a)外部からチャンバ内に入射ガンマ線を入射させる工程と、
b)前記チャンバ内における前記入射ガンマ線のコンプトン散乱による対象散乱ガンマ線の方向とエネルギーとを取得する工程と、
c)前記対象散乱ガンマ線に対応する反跳電子の方向とエネルギーとを取得する工程と、
d)前記対象散乱ガンマ線の方向およびエネルギー、並びに、前記反跳電子の方向およびエネルギーから、前記入射ガンマ線の入射方向およびエネルギーを取得する工程と、
e)前記d)工程にて取得される複数の入射ガンマ線のうち、第1のエネルギー範囲の第1入射ガンマ線、および、前記第1のエネルギー範囲とは異なる第2のエネルギー範囲の第2入射ガンマ線を特定し、前記第1入射ガンマ線の情報から三次元のガンマ線場を示す第1ガンマ線画像を取得し、前記第2入射ガンマ線の情報から三次元のガンマ線場を示す第2ガンマ線画像を取得する工程と、
を備え、
前記d)工程にて得られる前記入射方向の精度を示す点広がり関数の半値全幅が、15度以下の見込み角に対応する。
【請求項15】
ガンマ線画像取得方法であって、
a)ポジトロンを放射する物質を含む対象物において、ポジトロンと電子との対消滅により発生した対ガンマ線の一部を入射ガンマ線としてチャンバに入射させる工程と、
b)前記チャンバ内における前記入射ガンマ線のコンプトン散乱による散乱位置および散乱時刻を取得する工程と、
c)前記入射ガンマ線の前記コンプトン散乱による対象散乱ガンマ線の方向とエネルギーとを取得する工程と、
d)前記対象散乱ガンマ線に対応する反跳電子の方向とエネルギーとを取得する工程と、
e)前記対象散乱ガンマ線の方向およびエネルギー、並びに、前記反跳電子の方向およびエネルギーから、対応する入射ガンマ線の入射方向およびエネルギーを取得する工程と、
f)前記対象物を挟んで前記チャンバとは反対側に配置された対向検出部により、前記対象物から入射するガンマ線の検出位置および検出時刻を取得する工程と、
g)前記チャンバに入射する入射ガンマ線の入射方向、エネルギー、散乱位置および散乱時刻に基づいて、前記対向検出部で検出されるガンマ線のうち、前記入射ガンマ線と対となって発生したガンマ線の検出位置および検出時刻を有するものを特定する工程と、
h)前記g)工程にて特定された対ガンマ線の一方の前記チャンバ内における散乱位置および散乱時刻、並びに、前記対ガンマ線の他方の前記対向検出部における検出位置および検出時刻に基づいて、前記対象物内の前記対ガンマ線の発生位置を取得する工程と、
i)前記g)およびh)工程を繰り返すことにより、複数の対ガンマ線の発生位置を三次元画像として取得する工程と、
を備え、
前記入射ガンマ線算出部にて得られる前記入射方向の精度を示す点広がり関数の半値全幅が、15度以下の見込み角に対応する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガンマ線画像を取得する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ガンマ線の放射分布を二次元または三次元の画像として捉える技術が、宇宙線観測や医療等の分野において研究されている。数百keVないし数MeVのガンマ線を検出する一手法として、コンプトン効果によるガンマ線の散乱を利用するものがある。コンプトン散乱では、ガンマ線が物質に入射すると、物質から反跳電子が放出され、入射ガンマ線は散乱ガンマ線となる。コンプトン散乱を利用してガンマ線の検出精度を向上するために、散乱ガンマ線および反跳電子のそれぞれの方向およびエネルギーを検出して入射ガンマ線の方向を取得する技術が開発されている。このようなガンマ線画像取得装置は、電子飛跡検出型コンプトンカメラ(Electron-Tracking Compton Camera、以下、「ETCC」という。)と呼ばれる。
【0003】
T. Tanimori et al.、"An Electron-Tracking Compton Telescope for a Survey of the Deep Universe by MeV gamma-rays"、Astrophysical Journal, The American Astronomical Society、2015年8月26日、第810巻、第1号、28(以下、「文献1」という。)では、ETCCによる宇宙線観測において、様々な改良を重ねてバックグラウンド放射線を効率よく取り除く技術が報告されている。また、文献1では、性能を向上したETCCにおいて、通常の光学望遠鏡と同様に点広がり関数(Point Spread Function、以下、「PSF」という。)を定義し、分解能が定量的に議論されている。
【0004】
友野 大、外17名、″電子飛跡検出型コンプトンカメラを用いた環境ガンマ線イメージング(V)″、[online]、2015年9月28日、日本物理学会、[2016年4月14日検索]、インターネット〈URL:http://www-cr.scphys.kyoto-u.ac.jp/research/MeV-gamma/Presentation/2015/JPS2015A_tomono20150915v5.pdf)では、ETCCを利用して環境ガンマ線を画像化する技術が提案されている。特開2015−148448号公報、特開2015−190965号公報および特開2015−224986号公報では、ETCCにおける反跳電子の飛跡を検出する精度を向上する技術が開示されている。
【0005】
一方、医療の分野では、陽電子放射断層撮影(Positron Emission Tomography、以下、「PET」という。)や単一光子放射断層撮影(Single Photon Emission Computed Tomography、以下、「SPECT」という。)において、ガンマ線を利用した病巣の画像化が行われている。
【0006】
ところで、従来より、ガンマ線の分布を画像化するために、バックグラウンド放射線の除去や装置にて発生するノイズの除去に対する研究がなされてきた。そのため、得られる情報からより有用な情報を得るための画像化は検討されていない。また、PETでは、その検出原理上、ノイズの低減に限界がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、コンプトン散乱を利用するガンマ線画像取得装置に向けられている。ガンマ線画像取得装置は、チャンバと、外部から前記チャンバ内に入射する入射ガンマ線のコンプトン散乱による対象散乱ガンマ線を検出し、前記対象散乱ガンマ線の検出位置およびエネルギーを取得する散乱ガンマ線検出部と、前記チャンバ内における前記入射ガンマ線の散乱位置を取得する散乱位置取得部と、前記散乱位置および前記検出位置に基づいて前記対象散乱ガンマ線の方向を取得する散乱方向取得部と、前記散乱位置からの反跳電子の方向とエネルギーとを取得する反跳電子情報取得部と、前記対象散乱ガンマ線の方向およびエネルギー、並びに、前記反跳電子の方向およびエネルギーから、対応する入射ガンマ線の入射方向およびエネルギーを取得する入射ガンマ線算出部と、複数の入射ガンマ線の入射方向およびエネルギーに基づくイメージングスペクトロスコピーにより、入射ガンマ線の入射方向に対応する各画素がエネルギー分布の情報を含む二次元画像を取得する画像取得部とを備える。
【0008】
前記二次元画像において、面積と撮像範囲の立体角とが比例し、前記入射ガンマ線算出部にて得られる前記入射方向の精度を示す点広がり関数の半値全幅が、15度以下の見込み角に対応する。
【0009】
二次元画像において、面積と撮像範囲の立体角とが比例することから、ガンマ線画像取得装置にて得られる情報から、従来よりも有用な情報を示す画像を得ることができる。
【0010】
好ましい一の形態では、前記画像取得部は、前記複数の入射ガンマ線のうち、放射線源から前記チャンバに直接的に入射する直接入射ガンマ線、および、前記直接入射ガンマ線のエネルギー範囲よりも低いエネルギー範囲の散乱入射ガンマ線のうち、少なくとも一方のガンマ線を特定し、前記少なくとも一方のガンマ線の入射方向の分布を二次元画像として取得する。
【0011】
他の形態に係るガンマ線画像取得装置は、チャンバと、外部から前記チャンバ内に入射する入射ガンマ線のコンプトン散乱による対象散乱ガンマ線を検出し、前記対象散乱ガンマ線の検出位置およびエネルギーを取得する散乱ガンマ線検出部と、前記チャンバ内における前記入射ガンマ線の散乱位置を取得する散乱位置取得部と、前記散乱位置および前記検出位置に基づいて前記対象散乱ガンマ線の方向を取得する散乱方向取得部と、前記散乱位置からの反跳電子の方向とエネルギーとを取得する反跳電子情報取得部と、前記対象散乱ガンマ線の方向およびエネルギー、並びに、前記反跳電子の方向およびエネルギーから、対応する入射ガンマ線の入射方向およびエネルギーを取得する入射ガンマ線算出部と、複数の入射ガンマ線のうち、第1のエネルギー範囲の第1入射ガンマ線、および、前記第1のエネルギー範囲とは異なる第2のエネルギー範囲の第2入射ガンマ線を特定し、前記第1入射ガンマ線の情報から三次元のガンマ線場を示す第1ガンマ線画像を取得し、前記第2入射ガンマ線の情報から三次元のガンマ線場を示す第2ガンマ線画像を取得する画像取得部とを備える。
【0012】
前記入射ガンマ線算出部にて得られる前記入射方向の精度を示す点広がり関数の半値全幅が、15度以下の見込み角に対応する。
【0013】
第1のエネルギー範囲の第1入射ガンマ線、および、第1のエネルギー範囲とは異なる第2のエネルギー範囲の第2入射ガンマ線を特定することにより、ガンマ線画像取得装置にて得られる情報から、有用な情報を示す第1ガンマ線画像および第2ガンマ線画像を取得することができる。
【0014】
好ましい形態では、前記第1入射ガンマ線は、放射線源から前記チャンバに直接的に入射する直接入射ガンマ線であり、前記第2入射ガンマ線は、前記直接入射ガンマ線のエネルギー範囲よりも低いエネルギー範囲の散乱入射ガンマ線である。
【0015】
好ましい例では、入射ガンマ線は、放射性物質を含む対象物から放射される。さらに好ましい例では、前記対象物は、ポジトロンまたはガンマ線を放射する薬剤が投与された人体である。
【0016】
好ましい他の形態では、ガンマ線画像取得装置は、予め準備された前記対象物内の電子密度分布を記憶する記憶部と、前記第1ガンマ線画像を、前記第2ガンマ線画像および前記電子密度分布を用いて補正する補正部とをさらに備える。
【0017】
好ましいさらに他の形態では、ガンマ線画像取得装置は、前記第1ガンマ線画像を平滑化し、平滑化された前記第1ガンマ線画像および前記第2ガンマ線画像から前記対象物内の電子密度分布を取得する電子密度分布取得部をさらに備える。
【0018】
好ましくは、ガンマ線画像取得装置は、前記チャンバと同様のチャンバが増設される取付部をさらに備える。
【0019】
さらに他の形態に係るガンマ線画像取得装置は、ポジトロンを放射する物質を含む対象物において、ポジトロンと電子との対消滅により発生した対ガンマ線の一部が入射ガンマ線として入射するチャンバと、前記チャンバ内における前記入射ガンマ線のコンプトン散乱による対象散乱ガンマ線を検出し、前記対象散乱ガンマ線の検出位置およびエネルギーを取得する散乱ガンマ線検出部と、前記チャンバ内における前記入射ガンマ線の散乱位置および散乱時刻を取得する散乱情報取得部と、前記散乱位置および前記対象散乱ガンマ線の前記検出位置に基づいて前記対象散乱ガンマ線の方向を取得する散乱方向取得部と、前記散乱位置からの反跳電子の方向とエネルギーとを取得する反跳電子情報取得部と、前記対象散乱ガンマ線の方向およびエネルギー、並びに、前記反跳電子の方向およびエネルギーから、対応する入射ガンマ線の入射方向およびエネルギーを取得する入射ガンマ線算出部と、前記対象物を挟んで前記チャンバとは反対側に配置され、前記対象物から入射するガンマ線の検出位置および検出時刻を取得する対向検出部と、前記チャンバに入射する入射ガンマ線の入射方向、エネルギー、散乱位置および散乱時刻に基づいて、前記対向検出部にて検出されたガンマ線のうち、前記入射ガンマ線と対となって発生したガンマ線の検出位置および検出時刻を有するものを特定する対ガンマ線特定部と、前記対ガンマ線特定部にて特定された対ガンマ線の一方の前記チャンバ内における散乱位置および散乱時刻、並びに、前記対ガンマ線の他方の前記対向検出部における検出位置および検出時刻に基づいて、前記対象物内の前記対ガンマ線の発生位置を取得する対ガンマ線発生位置取得部と、複数の対ガンマ線の発生位置を三次元画像として取得する画像取得部とを備える。
【0020】
前記入射ガンマ線算出部にて得られる前記入射方向の精度を示す点広がり関数の半値全幅は、15度以下の見込み角に対応する。
【0021】
対向検出部が設けられることにより、対ガンマ線の発生位置を安価に高い精度にて取得することができる。
【0022】
好ましくは、前記対向検出部は、鉛を含むプラスチックシンチレータまたは鉛を含むガラスシンチレータを含む。
【0023】
好ましい形態では、ガンマ線画像取得装置は、前記チャンバと同様の他のチャンバと、前記チャンバの場合と同様に、前記他のチャンバに入射する入射ガンマ線の散乱に関する情報および前記対向検出部に入射するガンマ線の情報から、対ガンマ線の発生位置を取得する構成とをさらに備える。前記チャンバから前記対象物に向かう方向と、前記他のチャンバから前記対象物に向かう方向とのなす角が、0度以上140度以下である。
【0024】
本発明は、ガンマ線画像を取得するガンマ線画像取得方法にも向けられている。
【0025】
上述の目的および他の目的、特徴、態様および利点は、添付した図面を参照して以下に行うこの発明の詳細な説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】検出部を示す図である。
図2】ガンマ線画像取得装置の構成を示すブロック図である。
図3】ガンマ線画像取得装置の動作の流れを示す図である。
図4】チャンバ内におけるコンプトン散乱の様子を示す図である。
図5】ARMおよびSPDを説明するための図である。
図6A】等立体角射影方式によるガンマ線画像を例示する図である。
図6B】従来のガンマ線画像を例示する図である。
図6C】環境放射線モニタから得られた線量から作成したガンマ線画像を例示する図である。
図7A】地面から飛来するガンマ線のスペクトルを示す図である。
図7B】空から飛来するガンマ線のスペクトルを示す図である。
図7C】除染が不十分な領域におけるスペクトルを示す図である。
図7D】十分に除染が行われた領域におけるスペクトルを示す図である。
図8】除染が不十分な領域を示す図である。
図9】患者に対する検出部の配置を示す図である。
図10】ガンマ線画像取得装置の一部の構成要素を示す図である。
図11】ガンマ線画像取得装置の動作の一部を示す図である。
図12A】直接ガンマ線画像が補正される様子を説明するための図である。
図12B】直接ガンマ線画像が補正される様子を説明するための図である。
図13】ガンマ線画像取得装置の一部の構成要素を示す図である。
図14】ガンマ線画像取得装置の動作の一部を示す図である。
図15】患者に対する検出部の配置を示す図である。
図16】対向検出部の構造を示す図である。
図17】ガンマ線画像取得装置の構成を示すブロック図である。
図18】ガンマ線画像取得装置の動作の流れを示す図である。
図19】患者に対する検出部の配置を示す図である。
図20】対向検出部の他の例を示す図である。
図21】対向検出部のさらに他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、本発明の一の好ましい実施の形態に係るガンマ線画像取得装置の検出部10を示す図である。ガンマ線画像取得装置は、コンプトン散乱を利用するETCC(電子飛跡検出型コンプトンカメラ)である。検出部10の基本構造は、上述の非特許文献1に開示されたものと同様である。検出部10は、中央にTPC(Time Projection Chamber)と呼ばれるチャンバ11を有する。チャンバ11は直方体状であり、その内部にはガスが充填されている。チャンバ11内のガスとしては、例えば、アルゴンを主成分とするガスが使用される。ガスには適宜他のガスが添加されてよい。ガスとしてアルゴン以外のガスが用いられてもよい。チャンバ11内の圧は、例えば、1〜数気圧である。
【0028】
ガンマ線は、様々な方向からチャンバ11内に入射する。以下、外部からチャンバ11に入射するガンマ線を「入射ガンマ線」と呼ぶ。入射ガンマ線の一部と、チャンバ11内のガスの原子が有する電子との相互作用により、コンプトン散乱が生じる。コンプトン散乱により、入射ガンマ線の進行方向は変化し、入射ガンマ線は散乱ガンマ線となる。1つのコンプトン散乱に対応するガンマ線は、1つの光子である。以下、入射ガンマ線のコンプトン散乱による散乱ガンマ線を「対象散乱ガンマ線」と呼ぶ。入射ガンマ線からエネルギーを受け取った電子は、反跳電子として原子から放出される。このように、チャンバ11内の領域は、ガンマ線を検出するための散乱領域となっている。
【0029】
チャンバ11の底面には、二次元ガス増幅位置検出部12が設置されている。二次元ガス増幅位置検出部12の例の1つとしては、μPIC(Micro Pixel Chamber)を挙げることができる。本実施の形態に係る二次元ガス増幅位置検出部12は、マイクロパターンガス検出器(MPGD)の一種であり、荷電粒子の入射位置を取得する。チャンバ11の上方にはドリフトプレーン13が配置される。チャンバ11内には二次元ガス増幅位置検出部12からドリフトプレーン13に向かう電場が形成される。反跳電子はチャンバ11内のガスから電子を電離し、電子雲を形成する。電子雲は電場により二次元ガス増幅位置検出部12へと導かれ、検出される。
【0030】
チャンバ11の4つの側面の外側および二次元ガス増幅位置検出部12の下側のそれぞれには、散乱ガンマ線検出部14が配置される。散乱ガンマ線検出部14は、シンチレータが二次元に配列されたシンチレータアレイ141と、各シンチレータからの蛍光を検出する検出回路142とを含む。シンチレータとしては様々なものが利用可能であり、例えば、GSO(ケイ酸ガドリニウム)を含む材料が利用される。シンチレータアレイ141は、チャンバ11と検出回路142との間に位置する。チャンバ11からの対象散乱ガンマ線がいずれかのシンチレータに吸収されると、検出回路142がシンチレータから放射される光を検出することにより、対象散乱ガンマ線の検出位置が取得される。なお、散乱ガンマ線検出部14は、チャンバ11の底面のみに設けられてもよい。側面の4つの散乱ガンマ線検出部14は、検出効率を向上したい場合に有効である。
【0031】
図2は、ガンマ線画像取得装置1の構成を示すブロック図である。ガンマ線画像取得装置1は、検出部10と、散乱位置取得部21と、反跳電子飛跡取得部22と、散乱ガンマ線算出部23と、反跳電子算出部24と、入射ガンマ線算出部25と、画像取得部26と、表示部27とを備える。散乱位置取得部21、反跳電子飛跡取得部22、散乱ガンマ線算出部23、反跳電子算出部24、入射ガンマ線算出部25および画像取得部26は、専用の電気的回路もしくは汎用の演算回路、またはこれらの組み合わせにより実現される。
【0032】
図3は、ガンマ線画像取得装置1の動作の流れを示す図である。なお、前提として、図3に示す動作の前に、外部からチャンバ11内に入射ガンマ線を入射させて検出情報を取得する工程が存在する。図4は、チャンバ11内におけるコンプトン散乱の様子を示す図である。既述のように、コンプトン散乱により、入射ガンマ線91から対象散乱ガンマ線92と反跳電子93とが導出される。実際には、対象散乱ガンマ線92によりさらにコンプトン散乱が生じる場合もあるが、本実施の形態では、説明を簡素化するために、複雑なケースを省略する。
【0033】
対象散乱ガンマ線92は、5つの散乱ガンマ線検出部14(図1参照)のいずれかに入射すると、散乱ガンマ線検出部14にてその検出位置および検出時刻が取得される。一方、反跳電子93は、既述のように、チャンバ11内のガスの原子から電子を電離するとともにエネルギーを失いつつ進む。電離電子94の電子雲は、電場により図4中に破線の矢印にて示すようにチャンバ11の底部の二次元ガス増幅位置検出部12(図1参照)に向かって移動する。二次元ガス増幅位置検出部12は、二次元に配列された微細検出器を有する。各微細検出器は進入してくる電離電子94を検出する。これにより、電離電子94の検出位置および検出時刻が取得される。対象散乱ガンマ線92および電離電子94の検出情報は、図2において記載を省略するメモリに保存される。対象散乱ガンマ線92が検出される毎に、検出情報はメモリに蓄積される。
【0034】
散乱位置取得部21は、最初に保存された対象散乱ガンマ線92の検出情報と、対応する電子雲の検出情報とを読み出す(ステップS11)。以下、これらの情報をまとめて、単に「検出情報」と呼ぶ。散乱位置取得部21は、電子雲において初期に形成された部位を特定する。そして、対象散乱ガンマ線92が検出されてから初期の電離電子94が検出されるまでの時間に基づいて、当該電離電子94の電界によるドリフト距離を求める。すなわち、二次元ガス増幅位置検出部12から散乱位置までの高さを取得する。初期の電離電子94の情報は、二次元ガス増幅位置検出部12上の二次元の位置を含むため、最終的に、散乱位置がチャンバ11内の三次元の位置情報として取得される(ステップS12)。
【0035】
反跳電子飛跡取得部22は、二次元ガス増幅位置検出部12が時間の経過とともに検出した電離電子94の情報に基づいて、電子雲の三次元形状を求める。このとき、散乱位置の情報を参照して電子雲のチャンバ11内の位置も決定される。これにより、反跳電子93の飛跡が取得される。ここで、反跳電子飛跡取得部22の飛跡制限部221は、反跳電子93がチャンバ11の側面や底面に衝突したかを確認し、衝突した場合は、注目しているコンプトン散乱から得られた検出情報は、以後の演算対象から除外される。
【0036】
散乱ガンマ線算出部23は、散乱方向取得部231と、エネルギー取得部232とを含む。散乱方向取得部231は、散乱位置と、対象散乱ガンマ線92の検出位置とに基づいて、対象散乱ガンマ線92の方向を取得する。エネルギー取得部232は、散乱ガンマ線検出部14から出力される検出信号の大きさから、対象散乱ガンマ線92のエネルギーを取得する(ステップS13)。対象散乱ガンマ線92のエネルギーは実質的に散乱ガンマ線検出部14にて取得されると捉えられてもよい。
【0037】
反跳電子算出部24は、反跳方向取得部241と、エネルギー取得部242とを含む。反跳方向取得部241は、散乱位置近傍における電子雲の形状から、反跳電子93の反跳方向を取得する。エネルギー取得部242は、電子雲の大きさおよび長さから反跳電子93のエネルギーを取得する(ステップS14)。
【0038】
以上のように、検出部10と、散乱位置取得部21と、散乱ガンマ線算出部23とが、対象散乱ガンマ線92の方向およびエネルギーを取得する散乱ガンマ線情報取得部230として機能する。検出部10と、散乱位置取得部21と、反跳電子飛跡取得部22と、反跳電子算出部24とが、反跳電子93の方向およびエネルギーを取得する反跳電子情報取得部240として機能する。
【0039】
入射ガンマ線算出部25は、入射方向取得部251と、エネルギー取得部252と、入射方向制限部253とを含む。入射方向取得部251は、コンプトン散乱式を利用して、対象散乱ガンマ線92の散乱方向およびエネルギー、並びに、反跳電子93の反跳方向およびエネルギーに基づいて、対応する入射ガンマ線91の検出部10への入射方向、すなわち、到来方向を求める。なお、散乱方向、反跳方向および入射方向は、演算上はベクトルの情報である。
【0040】
ガンマ線画像取得装置1において、対象散乱ガンマ線92の方向と入射ガンマ線91の入射方向とのなす散乱角φの決定精度、すなわち、角度分解能は、ARM(Angular Resolution Measure)と呼ばれる。図5に示すように、対象散乱ガンマ線92の方向に垂直な面上では、ARMは円環状の領域の幅として表現される。一方、対象散乱ガンマ線92の散乱方向を示すベクトルおよび反跳電子93の反跳方向を示すベクトルとが張る平面である散乱平面の決定精度、すなわち、角度分解能は、SPD(Scatter Plane Deviation)と呼ばれる。SPDは、上記円環状の領域を角度方向に狭める。ARMおよびSPDにより、1つの検出情報に対して、図5中に平行斜線を付す領域95が、実際に入射ガンマ線91が入射したと考えられる方向の範囲となる。
【0041】
また、エネルギー取得部252は、エネルギー保存の法則から、対象散乱ガンマ線92のエネルギーおよび反跳電子93のエネルギーの和と、入射ガンマ線91のエネルギーおよび静止とみなせる電子のエネルギーの和とが等しいことに基づいて、入射ガンマ線91のエネルギーを取得する(ステップS15)。
【0042】
ところで、ガンマ線画像取得装置1では入射ガンマ線91の入射方向が高い精度にて取得される。そのため、入射方向の精度を示す指標として、通常の望遠鏡と同様に、PSF(Point Spread Function、点広がり関数)の概念を導入することができる。PSFの半値全幅はガンマ線画像取得装置1の解像度として利用することができる。
【0043】
PSFは、実際に測定を行うことにより、または、上記ARMおよびSPDを用いてシミュレーションにより求めることができる。例えば、遠方に点と見なすことができる放射線源を配置し、入射ガンマ線が検出される毎に求められた入射方向をプロットし、その分布からPSFを得ることができる。シミュレーションによりPSFを求める場合は、仮想的な放射線源からの入射ガンマ線の入射方向を求める際に、ARMとSPDとを用いて入射方向を確率的にランダムに変更する。そして、演算により求められた多数の入射方向の分布からPSFが得られる。
【0044】
ガンマ線画像取得装置1のPSFの半値全幅は、15度以下の見込み角に対応する。好ましくは、半値全幅が対応する見込み角は10度以下であり、さらに好ましくは7度以下であり、さらに好ましくは3度以下である。理論上、半値全幅が対応する見込み角は1度以上である。以下の他の実施の形態においても同様である。
【0045】
入射ガンマ線算出部25の入射方向制限部253は、ステップS15にて取得された入射方向のうち、観察すべき範囲外の領域から検出部10に入射するガンマ線を除外する。これにより、バックグラウンドノイズや他の散乱ガンマ線等のノイズとして入射するガンマ線の大部分が検出すべき入射ガンマ線91から除外される。
【0046】
1つの検出情報の処理が完了すると、次の検出情報が存在するか否か確認され(ステップS16)、存在する場合は、次の検出情報に対して上記ステップS11〜S15が繰り返される。これにより、多数の入射ガンマ線91の入射方向およびエネルギーが取得される。以下、入射ガンマ線91の入射方向およびエネルギーを「入射ガンマ線情報」と呼ぶ。
【0047】
画像取得部26は、入射ガンマ線情報から二次元画像であるガンマ線画像を生成する(ステップS21)。正確には、画像取得部26は、ガンマ線画像のデータを生成する。ガンマ線画像の解像度は、通常画像と比べて低いため、ガンマ線画像の1つの画素は、通常画像中のある程度の大きさの領域に対応する。以下、ガンマ線画像の画素を「画素領域」と表現する。例えば、画像中央での画素領域の1辺の長さは、PSFの半値全幅に対応する。各画素領域は入射ガンマ線の入射方向に対応する。
【0048】
ガンマ線画像は、等立体角射影方式により生成される。すなわち、二次元画像において、面積と撮像範囲の立体角とが比例する。表示部27には、等立体角射影方式の通常画像とガンマ線画像とが表示される(ステップS22)。これらの画像は、横に並ぶようにして表示されてもよく、重ね合わされてもよい。
【0049】
ガンマ線画像は、各画素領域に対応する複数の入射ガンマ線のエネルギー分布、すなわち、スペクトルの情報も含む。このように、複数の入射ガンマ線の入射方向およびエネルギーに基づくイメージングスペクトロスコピー(イメージング分光法)により、二次元画像であるガンマ線画像が取得される。放射線源から直接的に入射するガンマ線は、スペクトルにおいてピークとして現れる。
【0050】
ここで、画像取得部26では、各画素領域に対応する入射ガンマ線のうち、特定のエネルギー範囲のものを抽出し、その数を画素領域の濃淡として表現するガンマ線画像を生成することも可能となっている。これにより、特定の放射性物質から直接的に入射する核ガンマ線のエネルギー範囲を画像取得部26に設定することにより、放射性物質の分布を得ることができる。
【0051】
一方、放射性物質からのガンマ線が周囲の物質にて散乱してから検出部10に入射する散乱ガンマ線のエネルギー範囲を画像取得部26に設定することにより、放射性物質に起因した何らかの現象が生じていることを示すガンマ線画像を取得することができる。例えば、放射性物質にて汚染された地下水が流出している場合、大気散乱ガンマ線とは異なる多量の散乱ガンマ線が検出される領域が、ガンマ線画像に現れる。
【0052】
換言すれば、画像取得部26は、複数の入射ガンマ線のうち、放射線源から検出部10のチャンバ11内に直接的に入射するガンマ線のエネルギー範囲の直接入射ガンマ線、および、直接入射ガンマ線のエネルギー範囲よりも低いエネルギー範囲の散乱入射ガンマ線のうち、少なくとも一方のガンマ線を特定し、少なくとも一方のガンマ線の入射方向の分布を二次元画像として取得する。
【0053】
このように、入射ガンマ線のエネルギー範囲を制限したガンマ線画像を取得することにより、さらに好ましくは、エネルギー範囲の異なる複数のガンマ線画像を取得することにより、周囲におけるガンマ線の状態をより的確に把握することが可能となる。
【0054】
図6Aは、等立体角射影方式によるガンマ線画像を例示する図である。図6Aは、放射性物質の除染が行われた領域から得られた画像である。図6Bは、同じ入射ガンマ線情報から得られる従来のガンマ線画像である。各ガンマ線画像は、正方形の画素領域が二次元に配列された画像である。円911は、見込み角50°に対応する。従来のガンマ線画像では、ガンマ線の到来方向の精度が悪く、かつ、単純に仮想面上に到来位置をプロットしているため、等立体角射影方式に比べて各画素領域での漏れ込みが多い。そのため、図6Aでは、破線にて囲む領域901にてガンマ線の検出量が多いが、図6Bでは、破線にて囲む広い領域902にてガンマ線の検出量が多くなっている。
【0055】
図6Aでは、各画素領域に対応する撮像範囲の立体角は同一である。図6Cは、環境放射線モニタ(株式会社堀場製作所製、PA−1100)を用いて地面から10cmの高さでの線量を多数の地点で測定し、等立体角当たりのガンマ線強度に変換したものである。図6Cでは、実際の環境を示す自然画像を等立体角射影に変換して重ねている。図6Cでは、破線にて囲む領域903においてガンマ線の検出量が多い。図6Aのガンマ線画像は、図6Bの従来のガンマ線画像よりも実際の測定結果と一致している。
【0056】
図7Aは、図8に示す円911のうち、地平線912よりも下の地面から飛来するガンマ線のエネルギースペクトルを示す図である。図7Bは、円911のうち、地平線912よりも上の空から飛来するガンマ線のエネルギースペクトルを示す図である。これらの図から、ガンマ線画像取得装置1では、PSFの広がりが小さいため、空からのガンマ線のスペクトルと地面からのガンマ線のスペクトルとが明瞭に異なる。
【0057】
図7Cは、図8に示す円913におけるエネルギースペクトルを示す図であり、図7Dは、地面のうち円913以外の領域におけるエネルギースペクトルを示す図である。図7Cでは、放射性セシウムの存在を示す662keVにピークが存在するが、図7Dでは662keVにピークは存在しない。このことから、円913にて示す領域の除染が不十分であることが判る。従来、放射性物質の存在領域を取得するためには、時間を掛けて移動しつつ測定することが必要であったが、ガンマ線画像取得装置1では、PSFの広がりが小さいため、広範囲における放射性物質の存在領域を、通常の撮影のように容易に取得することができる。なお、図7Aないし図7Dでは領域毎にスペクトルを求めているが、既述のように、各画素領域でスペクトルが取得可能である。
【0058】
等立体角射影方式を利用することにより、ガンマ線強度(天文学で定義された強度を指し、単位面積、単位時間、単位立体角当たりのガンマ線数)の分布が測定される。この強度(ガンマ線束)は立体角当たりで保存される。そのため距離に関係なく情報は保存され一定となる。これがイメージング核分光を可能にする要因である。PSFに依存する分解能の範囲でガンマ線の情報は無限遠より維持されるため、光学で言うところの光度の測定と同様の測定が可能となる。光度は無限遠の光の発光源の物理情報を含む量である。
【0059】
したがって、ガンマ線の場合、距離に関係なく放射線源からの定量的な放射密度が測定可能となる。その結果、ガンマ線の放射地点と検出部10との間の距離が不明であっても放射地点での単位面積当たりの放射強度の測定が可能となり、遠方でのガンマ線放射強度を測定することが出来る。ガンマ線画像取得装置1は、広視野であり、人間の目で見る範囲以上の広範囲なガンマ線分布を捉えることができる。そのため、等立体角射影方式は、特に適している。
【0060】
例えば、ガンマ線画像取得装置1を上空に運び、地表からのガンマ線を検出することにより、広域の地表面上の放射線物質量の分布を定量的に可視化できる。原子力関連施設では、広範囲のガンマ線放射強度(放射線物質量と同等と捉えることができる。)を定量的に画像化することにより事故を未然に防ぐことが可能になり、事故発生時の対応も改善される。例えば、事故発生時に、原子炉から放出された放射線量の核種毎の三次元分布および拡散方向が測定可能となり、SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)等の拡散予測システムとの連動で迅速な避難計画立案が可能となる。
【0061】
放射線を扱う多くの仕事の安全性が飛躍的に改善され、効率も大きく改善される。例えば、地表面や壁等に存在する放射線物質量が測定できることにより、どこをまず除染すれば放射線量がどのように変わるか予測可能となる。これにより、放射性物質で汚染された場所の除染を効率よく行うことができる。汚染水タンク、貯蔵施設等の漏洩監視において、初期の段階での発見および場所の正確な特定が可能となる。また、廃炉作業では、炉心周囲の物質からの放射線強度測定により、シミュレーションによる計画的な廃炉の手順決定が可能になり、大幅な効率化および安全性の向上が期待できる。
【0062】
以上のように、等立体角射影方式を利用することにより、ガンマ線画像取得装置1にて得られる情報から、従来よりも有用な情報を示す画像を得ることができる。
【0063】
次に、ガンマ線画像取得装置1を医療に利用する例について説明する。図9は、検査対象である仰臥位の患者8を側方から見た場合の検出部10の配置を示す図である。図9の例では、2つの検出部10は、患者8の頭部を挟むように上下に配置される。ガンマ線画像取得装置1では、2つの検出部10を患者8の体幹軸に平行に移動する移動部51が設けられる。移動部51は、患者8の上方にて体幹軸に平行に延びるガイド511と、患者8の下方にて体幹軸に平行に延びるガイド511とを含む。各ガイド511には取付部512が設けられ、取付部512はガイド511に沿って移動する。検出部10は取付部512に取り付けられ、各検出部10はガイド511に沿って移動する。
【0064】
各ガイド511には、検出部10が取り付けられていない他の取付部512も設けられる。チャンバ11を含む検出部10と同様の構造を有する他の検出部10を増設する際に、この取付部512に検出部10が取り付けられる。2つの検出部10が増設されると、ガンマ線画像取得装置1では2組の検出部10が利用可能となる。
【0065】
患者8である人体には、PETの場合と同様に、ポジトロンを放出する放射性物質を含む薬剤が投与される。放射性物質は患部に集まり、ポジトロンが消滅する際に発生するガンマ線が入射ガンマ線として検出部10に入射する。もちろん、SPECTのように、ガンマ線を放出する放射性物質を含む薬剤が利用されてもよい。
【0066】
図10は、図2のガンマ線画像取得装置1に追加される構成要素を示す図である。画像取得部26には、ガンマ線場取得部31が設けられる。画像取得部26と表示部27との間に補正部32が追加され、補正部32には記憶部33が接続される。図11は、図3のステップS16よりも後の処理を示す図である。
【0067】
画像取得部26には、上下2つの検出部10にて検出された入射ガンマ線の方向およびエネルギー、並びに、散乱位置が入力される。画像取得部26は、入射ガンマ線のエネルギーを参照して、直接入射ガンマ線と散乱入射ガンマ線とを特定する。直接入射ガンマ線は、放射線源から検出部10に直接的に入射する核ガンマ線である。例えば、エネルギーが511keV近傍のガンマ線である。直接入射ガンマ線のエネルギー範囲は、取得されるガンマ線のエネルギーの精度に合わせて適宜設定される。散乱入射ガンマ線は、直接入射ガンマ線のエネルギー範囲よりも低いエネルギー範囲のガンマ線である。例えば、エネルギー範囲が100keV以上、かつ、直接入射ガンマ線に対して設定したエネルギー範囲以下のガンマ線である。
【0068】
画像取得部26のガンマ線場取得部31は、直接入射ガンマ線の入射ガンマ線情報から、直接入射ガンマ線に関する三次元のガンマ線場を取得する(ステップS31)。直接入射ガンマ線は、直接ガンマ線のうち検出部10に入射するものであることから、ステップS31にて得られるガンマ線場を、以下「直接ガンマ線場」と呼ぶ。
【0069】
なお、ステップS31および後述のステップS32にて利用される入射ガンマ線情報には、入射ガンマ線の方向およびエネルギーに加えて、散乱位置が含まれる。すなわち、ガンマ線画像取得装置1では、散乱位置を含む方向が測定される。これにより、ガンマ線場取得部31は、チャンバ11に対する入射ガンマ線の軌跡の位置を取得する。そして、多数の入射ガンマ線の軌跡を参照して、解析的手法または統計的手法を用いてガンマ線場を取得する。直接ガンマ線場は、三次元画像として得られるため、以下、直接ガンマ線場を「直接ガンマ線画像」と呼ぶ。
【0070】
ガンマ線場取得部31は、さらに、散乱入射ガンマ線の入射ガンマ線情報から、散乱入射ガンマ線に関する三次元の散乱ガンマ線場を取得する(ステップS32)。以下、散乱ガンマ線場を示す三次元画像を「散乱ガンマ線画像」と呼ぶ。なお、原理的には、エネルギー毎の三次元のガンマ線画像を生成することができ、体内の位置毎に放射ガンマ線のエネルギー分布を得ることが可能である。換言すれば、三次元画像に拡張した広義のイメージングスペクトロスコピーが可能である。
【0071】
これにより、複数種類の放射性物質からのエネルギーが異なる直接ガンマ線の同時計測も可能である。この場合、すべての放射性物質に対して広視野観測による動画取得も可能となる。例えば、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT:Boron Neutron Capture Therapy)において、中性子ビーム下で、PET製剤にてマーキングされた腫瘍からの511keVのガンマ線と478keVのホウ素ガンマ線とを分離して画像を生成することができる。これにより、ホウ素製剤の体内分布の腫瘍集中度をPET製剤の分布と比較しながら治療を行うことができる。
【0072】
より一般的に表現すれば、画像取得部26は、複数の入射ガンマ線のうち、第1のエネルギー範囲の第1入射ガンマ線、および、第1のエネルギー範囲とは異なる第2のエネルギー範囲の第2入射ガンマ線を特定する。そして、第1入射ガンマ線の情報から三次元のガンマ線場を示す第1ガンマ線画像を取得し、第2入射ガンマ線の情報から三次元のガンマ線場を示す第2ガンマ線画像を取得する。第1のエネルギー範囲と第2のエネルギー範囲とは、好ましくは重ならないが、用途によっては部分的に重なってもよく、一方が他方を包含してもよい。これにより、ガンマ線画像取得装置1にて得られる情報から、従来よりも有用な情報を示す画像を得ることができる。
【0073】
また、光学撮像と同じ原理であるため画像処理法も単純になり、高精度な処理が可能となる。ガンマ線画像取得装置1は視野が広いため、2台の検出部10であっても広範囲かつ高精度のガンマ線画像を取得することができる。
【0074】
ガンマ線画像取得装置1では、予め取得された体内の電子密度分布の情報が記憶部33に保存されて準備される。電子密度分布は、例えば、X線CT画像からX線の吸収量を求めてコンプトン散乱に変換する手法や外部に設置した放射線源を用いて人体の透過計数を測定することにより取得される。
【0075】
体内でのガンマ線の散乱量はガンマ線の強度と電子密度とに比例する。また、体内の各位置には周囲から直接ガンマ線が進入するため、位置xでの直接ガンマ線の強度、すなわち、全方向からの直接ガンマ線の量は、位置xを含むある程度の大きさ領域における平均となる。したがって、ある位置xでの散乱ガンマ線の強度(または強度に相当する値)をfcomp、電子密度をneとし、位置x近傍での直接ガンマ線の平均強度(または平均強度に相当する値)をfavとすると、fcomp=fav・neとなる。
【0076】
一方、ステップS31にて取得された直接ガンマ線画像における位置xでの直接ガンマ線の強度(または強度に相当する値)をfRIとした場合、fRIをfavで除算することにより、周囲からの直接ガンマ線の影響を低減することができる。すなわち、放射性物質の集中度、例えば、PETにおけるSUV(standardized uptake value)に相当する値として、fRI/favを利用することにより、放射性物質の集中度の変化を鮮明に取得することができる。上記処理により、補正部32は、直接ガンマ線画像を、散乱ガンマ線画像および電子密度分布を用いて補正する(ステップS33)。補正方法は様々に修正されてよい。除算に代えて減算が行われてもよい。補正により、定量性のある体内での放射性物質の分布情報を得ることができる。表示部27では、三次元の、または、任意の断面における補正後の直接ガンマ線画像が表示される(ステップS34)。なお、PETやSPECTにて得られる画像は上述のfRIに相当する画像である。
【0077】
図12Aおよび図12Bは、直接ガンマ線画像が補正される様子を説明するための図である。図12Aは、直接ガンマ線画像における強度変化を概念的に示す図である。符号81にて示す領域には血液量の多い臓器の存在により強度が高くなっている領域である。符号82を付すピークは、腫瘍が存在する位置を示す。図12Bは、補正後の直接ガンマ線画像を示す図である。電子密度の変化の影響が低減され、相対的に腫瘍の位置が明瞭に現れる。これにより、臓器内の腫瘍のように、従来、周囲の明るさにより不鮮明となっていた領域を明瞭に確認することが可能となる。放射性物質の異常集中を明瞭とする上記補正は、脳、心臓、肝臓、腎臓等において特に有効である。
【0078】
ところで、PETでは、対象物を囲む多数のピクセル素子でポジトロン電子対消滅から生じる2つのガンマ線が同時に計測される原理により、ヒットした2つのピクセルを結んだ方向をガンマ線の方向と仮定している。PETでは実際のガンマ線の方向は測定されない。そのため、各ピクセルにはほぼ立体角2πの前方全方向からのガンマ線が到来し、ランダムノイズや散乱ガンマ線のノイズによる偶発事象が多数発生する。その結果、正しい事象に対してノイズが大きくなる。PETにコリメータを設ける場合であっても、散乱成分にはコリメータ内で散乱される成分が多く、上記課題を根本的に解決することはできない。
【0079】
これに対し、ガンマ線画像取得装置1では、PSFの半値全幅に対応する頂角の円錐からのガンマ線と他のガンマ線とを区別することができる。すなわち、対象物に向かって伸びる数度の円錐内のガンマ線による事象のみを識別でき、その範囲内の放射線源からの直接ガンマ線、および、体内での散乱ガンマ線を他のガンマ線から良好に分離することができる。加えて、直接ガンマ線と散乱ガンマ線とは、エネルギー情報を参照してでほぼ完全に弁別できる。その結果、直接ガンマ線のみを画像化することができ、非常に低雑音の高品位画像を得ることができる。PETやSPECTでは規定のエネルギー範囲以外の散乱ガンマ線の方向を正しく求めることはできないが、ガンマ線画像取得装置1では散乱ガンマ線の方向も正しく測定され、散乱ガンマ線の由来が判定できる。ガンマ線画像取得装置1では、PETの場合のような検出部のスキャンは必要なく、装置も相対的に小型化が可能である。
【0080】
ガンマ線画像取得装置1では、PETの場合のような、散乱発生源の分布、雑音除去法に由来するアーチファクトがイメージングに影響を与えることはない。また、PETでは真の事象を増やすために薬剤の投与量を増加させたとしても、真の事象は薬剤量に比例するが偶発事象は投与量の2乗で増加する。そのため、薬剤の増量による効果はあまり期待できない。ガンマ線画像取得装置1では、PETと比較して患者に投与する薬剤の量を大幅に削減することが実現される。
【0081】
ガンマ線画像取得装置1では、入射ガンマ線のエネルギー範囲の制限、検出部10内で検出される対象散乱ガンマ線および反跳電子の制限、および、ガンマ線の入射方向の制限により、ランダムなノイズや不要な散乱ガンマ線のノイズを大幅に削減することが実現される。これにより、従来のコンプトンカメラやPETと比較して大幅にノイズが低減された画像が取得される。
【0082】
上述の原理を利用することにより、ガンマ線画像取得装置1では、対象物の電子密度分布を取得することも可能である。この場合、図13に示すように、画像取得部26と表示部27との間に電子密度分布取得部34が設けられる。
【0083】
図14に示すように、図11と同様に三次元の直接ガンマ線画像および散乱ガンマ線画像を取得した後に(ステップS31,S32)、電子密度分布取得部34は、直接ガンマ線の散乱長(例えば、5〜10cm)程度に広がった領域で平均化するように、直接ガンマ線画像を平滑化する。この平滑化画像をfavとみなし、fcomp/favを求めることにより、電子密度neが得られる。電子密度分布取得部34は、この処理を各位置で行うことにより、平滑化された直接ガンマ線画像および散乱ガンマ線画像から対象物である人体内の電子密度分布を取得する(ステップS35)。散乱ガンマ線の強度は、PSFにて定められる上述の円錐内の電子密度に比例するため、体内の電子密度分布が画像化可能となる。表示部27では、三次元の、または、任意の断面における電子密度分布を示す画像が表示される(ステップS36)。
【0084】
ガンマ線画像取得装置1にて電子密度分布が取得されることにより、体内での散乱により失われるガンマ線の量の補正が可能となる。ガンマ線の散乱量は体内の物質分布に依存するため個人毎の計測が必要となるが、ガンマ線画像取得装置1ではガンマ線画像の取得と同時に電子密度分布が取得できる。
【0085】
なお、X線CTで電子密度分布を求める場合、体内での光電吸収計数を測定して電子密度へ変換する必要があるが、光電吸収は原子量の5乗に比例するため、重い原子を含む骨などに強く影響され、さらなる補正が必要となる。ガンマ線画像取得装置1では、電子密度分布を簡素な処理で取得することができる。
【0086】
電子密度分布は、例えば、従来補正が困難であったSPECT用の薬剤に対するガンマ線の散乱補正に利用することができ、定量性を改善することができる。また、ガンマ線治療ではX線治療と異なりMeV領域の光子が照射され、コンプトン散乱により体内にエネルギーが投与される。その体内での治療効果を見積もる場合においても、体内の各場所での散乱計数を求めるために上記電子密度分布が利用可能である。
【0087】
次に、ガンマ線画像取得装置1を医療に利用する他の例について説明する。図15は、検査対象である仰臥位の患者8を頭部側から見た場合の検出部10の配置を示す図である。患者8には、ポジトロンを放出する放射性物質を含む薬剤が投与される。各検出部10の構成は、上述のものと同様である。図15の例では、2つの検出部10は、患者8の頭部の上方において左右に並ぶように配置される。図9の場合と同様に、ガンマ線画像取得装置1では、2つの検出部10を患者8を体幹軸に平行に移動する移動部51や検出部10を追加するための取付部512が設けられてもよい。
【0088】
ガンマ線画像取得装置1は、対向検出部61をさらに備える。対向検出部61は板状であり、検出部10と共に患者8を挟むように配置される。換言すれば、対向検出部61は、患者8である対象物を挟んで検出部10のチャンバとは反対側に配置される。対向検出部61は、対象物から入射するガンマ線の検出位置および検出時刻、すなわち、入射位置および入射時刻を取得する。対向検出部61は、「Timing Position Detector」である。対向検出部61は数mmの精度でガンマ線の入射位置を検出し、サブナノ秒の精度でガンマ線の入射時刻を検出する。また、対向検出部61の検出効率は高い。
【0089】
検出部10にて検出されるガンマ線の入射方向の範囲は広いため、対向検出部61が1つの場合は2つの検出部10の向きの相違は0〜60度であることが好ましいが、後述するように複数の対向検出部61を設ける場合も考慮すると、一方の検出部10のチャンバ11(図1参照)から患者8である対象物に向かう方向と、他方の検出部10のチャンバ11から対象物に向かう方向とのなす角は、0度以上140度以下であることが好ましい。ポジトロンと電子との対消滅により発生した対ガンマ線の一部は、入射ガンマ線として検出部10のチャンバ11に入射する。対ガンマ線の他の一部は、対向検出部61に入射する。
【0090】
図16は、対向検出部61の構成を示す斜視図である。対向検出部61は、二次元に配列されたシンチレータアレイ610と、光検出アレイ620と、検出回路63とを備える。シンチレータアレイ610では、シンチレータ611が二次元に配列される。各シンチレータ611は棒状であり、配列面に垂直に向けられる。シンチレータ611は、好ましくは、鉛を含むプラスチックシンチレータまたは鉛を含むガラスシンチレータである。これらのシンチレータは安価であるため、ガンマ線画像取得装置1の製造コストを削減することができる。
【0091】
二次元に配列されたシンチレータ611の上面は、患者8および検出部10に対向する入射面を構成する。ここでの「上面」は、説明の都合上の表現であり、重力方向上方には限定されない。シンチレータアレイ610は、ガンマ線検出の際のピクセルアレイとして機能する。1ピクセルの大きさは、例えば、2mm四方である。シンチレータ611の長さは数cmである。
【0092】
光検出アレイ620は、シンチレータアレイ610の下面に配置される。光検出アレイ620は、二次元に配列された光検出器621を有する。各光検出器621は、1つのシンチレータ611の下端に配置される。患者8からのガンマ線がシンチレータ611に入射すると、シンチレータ611からの光が対応する光検出器621にて検出される。光検出器621としては、高速かつ高感度のものが採用される。光検出器621は、例えば、SiPM(Silicon Photomultiplier)等のアバランシェ型光検出器である。
【0093】
光検出アレイ620からの信号は検出回路63に入力される。検出回路63は、信号に基づいて対向検出部61におけるガンマ線の検出位置と検出時刻とを記録する。検出回路63としては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)が用いられる。
【0094】
対向検出部61は、ガンマ線の検出位置および検出時刻のみを取得し、ガンマ線のエネルギーは取得しない。そのため、対向検出部61は安価に製造可能である。
【0095】
図17は、ガンマ線画像取得装置1の構成を示すブロック図である。ガンマ線画像取得装置1は、図2と比べて、散乱位置取得部21が散乱情報取得部21aに変更される。散乱情報取得部21aは、入射ガンマ線の散乱位置に加えて、散乱時刻を取得する。散乱時刻は、散乱ガンマ線が散乱ガンマ線検出部14に入射した時刻と、散乱位置とから求められる。
【0096】
図17のガンマ線画像取得装置1では、入射ガンマ線算出部25と画像取得部26との間に、対ガンマ線特定部41と、対ガンマ線発生位置取得部42とが設けられる。対ガンマ線特定部41には、散乱情報取得部21aから散乱位置および散乱時刻、入射ガンマ線算出部25から入射ガンマ線の入射方向およびエネルギー、対向検出部61からガンマ線の検出位置および検出時刻が入力される。対ガンマ線発生位置取得部42には、散乱情報取得部21aから散乱位置および散乱時刻、対向検出部61からガンマ線の検出位置および検出時刻が入力される。
【0097】
図18は、ガンマ線画像取得装置1の動作の流れを示す図である。図3と同様の工程には同符号を付してる。なお、前提として、図18に示す動作の前に、外部からチャンバ11内に入射ガンマ線を入射させて検出情報(以下、「第1検出情報」という。)を取得する工程が存在する。また、対向検出部61により、患者8から入射するガンマ線の検出位置および検出時刻を第2検出情報として取得する工程も存在する。
【0098】
図18では、ステップS11にて1つの入射ガンマ線に関する第1検出情報が読み出される。以下の説明では、1つのガンマ線に対応する第1検出情報を「1つの第1検出情報」と表現する(第2検出情報についても同様)。ステップS12aでは、散乱情報取得部21aによりチャンバ11内の散乱位置に加えて散乱時刻が取得される。ステップS13〜S15により図3と同様に、入射ガンマ線の方向とエネルギーが取得される。
【0099】
図示を省略しているが、入射ガンマ線の方向が患者8に向かっていない場合や、入射ガンマ線のエネルギーがポジトロンと電子との対消滅から導かれる511keVでない場合は、患者8から直接入射するガンマ線ではないものとして以下の演算対象から外される。そして、ステップS16を経由してステップS11に戻り、次の第1検出情報の処理へと移行する。
【0100】
ステップS15の後のステップS41では、ポジトロンと電子との対消滅により発生する対ガンマ線が反対方向に伝播することを利用して、対ガンマ線特定部41は、対向検出部61による第2検出情報から、処理中の入射ガンマ線に対応するものを特定する。換言すれば、対向検出部61でのガンマ線の検出位置と検出時刻との多数の組合せである多数の第2検出情報のうち、検出部10への入射ガンマ線と対となって発生したガンマ線に関するものを特定する。これにより、一方が検出部10に入射し、他方が対向検出部61に入射した対ガンマ線が特定される。
【0101】
具体的には、まず、検出部10での入射ガンマ線の散乱位置および入射方向から、対ガンマ線の他方が対向検出部61に入射する可能性がある空間的範囲が特定され、その範囲に入射したガンマ線の第2検出情報が選択される。既述のように、入射方向の精度を示す点広がり関数の半値全幅は、15度以下の見込み角に対応し、好ましくは、半値全幅が対応する見込み角は10度以下であり、さらに好ましくは7度以下であり、さらに好ましくは3度以下である。そのため、各第2検出情報に含まれる検出位置に基づいて、注目すべき第2検出情報の数は大幅に絞られる。
【0102】
さらに、入射ガンマ線の散乱時刻から、対ガンマ線の他方が対向検出部61に入射した可能性のある時刻の範囲が求められる。対向検出部61での検出時刻に基づいて、1つのガンマ線の第2検出情報が特定される、あるいは、演算対象とすべき第2検出情報が存在しないことが判明する。すなわち、対ガンマ線の他方が散乱することなく対向検出部61に入射した場合は、当該ガンマ線の第2検出情報として1組の検出位置および検出時刻が特定される。このように、対向検出部61は入射ガンマ線のエネルギーを取得しないが、対向検出部61からの情報を利用して目的の直接入射ガンマ線が特定可能となる。第2検出情報を特定する際の空間的制限と時間的制限との考慮順序は逆であってもよい。
【0103】
以上のように、対ガンマ線特定部41は、検出部10のチャンバ11に入射する入射ガンマ線の入射方向、エネルギー、散乱位置および散乱時刻に基づいて、対向検出部61にて検出されたガンマ線のうち、入射ガンマ線と対となって発生したガンマ線の検出位置および検出時刻を有するものを特定する。上記演算処理の細部は、適宜、変更されてよい。
【0104】
図15では、複数の検出部10が設けられるが、対向検出部61の空間分解能および時間分解能が高いため、各検出部10からの1つの第1検出情報に対応する対向検出部61からの1つの第2検出情報を特定することが可能である。
【0105】
検出部10での散乱位置および対向検出部61での検出位置を結ぶ直線上に対ガンマ線の発生位置が存在する。これに基づいて、ステップS42では、対ガンマ線の一方の散乱位置および他方の対向検出部61における検出位置、並びに、対ガンマ線の一方が散乱位置に到達した時刻と他方が対向検出部61にて検出された時刻との差から、対ガンマ線が発生した三次元の位置が正確に求められる。
【0106】
全ての第1検出情報についてステップS11〜S15、S41,S42を繰り返すこにより、対ガンマ線の多数の発生位置、すなわち、患者8に投与された薬剤の存在分布が、画像取得部26により三次元画像として取得される(ステップS43)。三次元画像は、表示部27に表示される(ステップS44)。上記処理順序は、可能な範囲で適宜変更されてよい。
【0107】
上記説明では主に1つの検出部10に注目しているが、他方の検出部10でも同様の処理が行われる。すなわち、ガンマ線画像取得装置1では、他方の検出部10のチャンバ11に関しても同様に、当該チャンバ11に入射する入射ガンマ線の散乱に関する情報および対向検出部61に入射するガンマ線の情報から、対ガンマ線の発生位置を取得する構成が設けられる。ただし、演算に関する構成は、両検出部10にて共用されてもよし、個別に設けられてもよい。
【0108】
既に実用化がなされているTOF(Time of Flight)−PETでは、同一構造の多数の検出装置を患者の周囲に配置し、ガンマ線の検出時刻から対発生したガンマ線を推定し、対発生位置を求めている。これにより、TOF−PETでは従来のPETに比べて画像のコントラストが向上する。しかし、散乱ガンマ線や偶発事象等のノイズは、TOF−PETも従来のPETも同様である。対発生したガンマ線を特定するための検出時間差は、人体の大きさを考慮すると4ns程度必要であり、この時間幅で偶発事象が生じる。また、対ガンマ線の少なくとも一方が人体で散乱される確率は50%程度であり、信号と同様以上のノイズが発生する。
【0109】
これに対し、ガンマ線画像取得装置1では、TOF技術を利用しつつ、特定のエネルギーを有するガンマ線の情報のみを取得することができる。その結果、散乱していない対ガンマ線の情報のみを扱うことができる。さらに、一方の検出部10への入射ガンマ線の方向から他方の検出部10における偶発性を除去でき、正しい対ガンマ線のみが得られる。また、安価ではあるが位置分解能が数mm、時間分解能がサブナノ秒の対向検出部61を用いて位置検出および時刻検出を実現しているため、ガンマ線画像取得装置1の価格の上昇を抑えることができる。ガンマ線画像取得装置1では、構造の異なる検出部10と対向検出部61とが役割分担しつつ対ガンマ線の検出を行っている。
【0110】
平面内の空間分解能および時間分解能が高い対向検出部61を利用することにより、対ガンマ線の三次元の発生位置のうち、二次元分に関しては、例えば、人体程度の大きな体内において1mm程度の極めて高い精度を得ることができる。対向検出部61を用いない場合に比べて検出部10に入射するガンマ線の方向の角度分解能は約10倍向上される。ガンマ線の伝播方向である残りの一次元に関しては、TOF技術により、例えば、体内において1〜2cm程度の精度を得ることができる。
【0111】
検出部10および対向検出部61の組合せにより、対ガンマ線の同時計数における空間的および時間的な制限を効果的に設けることができ、偶発および散乱ノイズを大幅に低減し、純粋な信号を得ることができる。その結果、低線量で高精細な三次元のガンマ線画像を取得することができる。このガンマ線画像は、ガンマ線の測定に基づいて得られる体内のRI分布の三次元画像である。ノイズが少ないため、必要な薬剤の投与量をPETの10分の1以下に削減しても同等の画像を得ることができ、アーチファクトも現れない。検出部10の数を増やすことにより、薬剤量をさらに削減することができる。
【0112】
ガンマ線画像取得装置1では、ノイズが少なく、各検出部10が独立して動作するため、検出部10を増やして検査面積を増やしてもPETのように偶発事象は増えない。そのため、全身を一度に観察することも可能である。また、PETでは多数の検出器を人体の周囲に配置するため、対ガンマ線の検出点間の距離を80cm程度にする必要があるが、ガンマ線画像取得装置1では、検出部10および対向検出部61を人体に近接させることができるため、これらの間の距離を40cm程度にすることもできる。これにより、少ない数の検出部10にて人体の広い範囲を測定することができる。
【0113】
図19は、検出部10と対向検出部61の配置の他の例を示す図である。図19では2つの検出部10の向きは90度異なる。2つの検出部10と2つの対向検出部61とはそれぞれ対向する。各検出部10と対向する対向検出部61との間に患者8は位置する。
【0114】
既述のように、ガンマ線画像取得装置1では、ガンマ線の伝播方向に関して対発生位置の測定精度は相対的に低い。そのため、2つの検出部10を90度向きを変えて患者8の同一部位に向かって配置することにより、対発生位置の画像の精度を全体的に向上することができる。なお、2つの検出部10の向きはおよそ90度異なればよく、好ましくは、向きの相違は60〜120度の範囲に設定される。
【0115】
図20は対向検出部61の他の例を示す図である。図20の対向検出部61では、長い棒状のシンチレータ611が平面上に横たわるように1列に配列される。シンチレータ611は、好ましくは、鉛を含むプラスチックシンチレータまたは鉛を含むガラスシンチレータである。図20では、各シンチレータ611の伸びる方向をY方向、シンチレータ611の配列方向をX方向として示している。Y方向はX方向に対して垂直である。ガンマ線の入射面は、シンチレータ611の側面である。各シンチレータ611の両端面に光検出器621が設けられる。検出回路63では、両端の光検出器621が光を検出する時刻および時刻の差から、シンチレータ611へのガンマ線のY方向の入射位置および入射時刻を求める。検出回路63ではデジタル処理のみが行われ、信号の大きさは利用されない。
【0116】
入射位置のX方向は、ガンマ線が入射したシンチレータ611の位置であるため、1〜2mmの分解能を得ることができる。Y方向の位置精度は、1cm程度となる。しかし、読み出し数は図16の場合に比べて1桁以上少なくなり、価格は図16の場合の数分の1に抑えることができる。
【0117】
図21は、対向検出部61のさらに他の例を示す図である。図21の対向検出部61は、Multi-Gap Resistive Plate Chambersの技術を利用したものである。対向検出部61では、高抵抗のプレートであるガラス板641と、スペーサ642とが交互に配置され、多層のチャンバが形成される。最も上のガラス板641の上面上、および、最も下のガラス板641の下面上には、それぞれ電極643が設けられ、これらの電極643間に高い電位差が与えられる。1対の電極の外側には、絶縁層644を介して読み出し電極645が設けられる。読み出し電極645はストライプ状であり、各電極線の伸びる方向が上下の読み出し電極645で90度異なる。
【0118】
多層チャンバ内には希ガスが封入され、電極643により強電界が与えられた状態で、ガラス板641に入射したガンマ線がガラス中にて電子に変換されて電子がガス中に飛び出すと、スパークが生じる。このときの信号は数kVと大きいため、上下の読み出し電極645から誘起信号が取り出される。時間分解能は数十psであり、二次元の位置分解能も1mm以下が可能である。図21の構成により、非常に安価で大面積の対向検出部61が実現される。
【0119】
対向検出部61としては、応答速度が速いものであれば様々なものが採用可能である。ガンマ線のエネルギーを取得しない安価な対向検出部61が設けられることにより、対ガンマ線の発生位置を安価に高い精度にて取得することができる。対向検出部61の数は3以上でもよい。検出部10の数が1つで、複数の対向検出部61が設けられてもよい。対向検出部61は平板状には限定されない。例えば、対向検出部61は曲面状であってもよい。検出部10の数も測定部位の広さに合わせて様々な変更されてよい。
【0120】
対向検出部61のシンチレータは、鉛を含むプラスチックシンチレータまたは鉛を含むガラスシンチレータ以外のものでもよい。
【0121】
ガンマ線画像取得装置1は、様々に変形が可能である。
【0122】
例えば、ガンマ線場の取得は、1つの検出部10でも可能である。また、同一領域の測定に3以上の検出部10が利用されてもよい。同一領域の測定に用いられる検出部10の数は、2が好ましい。また、1つの検出部10の位置を複数の位置に順次変更しつつ同一領域の測定が行われてもよい。
【0123】
入射ガンマ線を放射する対象物は、放射性物質を含むのであれば人体以外の様々なものであってもよい。例えば、金属やコンクリート等の通常のX線非破壊検査が不可能な高密度な物体であってもよい。この場合、対象物の内部診断が可能となる。配管等の劣化検査も可能である。また、対象物は動物や植物であってもよい。対象物がポジトロンを放射する物質を含む場合も同様に、対象物は人体には限定されない。
【0124】
散乱ガンマ線情報取得部230および反跳電子情報取得部240の構成は、様々に変更可能である。また、これらに上記のものと異なる検出原理が採用されてもよい。演算処理の順序も可能な範囲で適宜変更されてよい。
【0125】
上記実施形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【0126】
発明を詳細に描写して説明したが、既述の説明は例示的であって限定的なものではない。したがって、本発明の範囲を逸脱しない限り、多数の変形や態様が可能であるといえる。
【符号の説明】
【0127】
1 ガンマ線画像取得装置
8 患者
11 チャンバ
14 散乱ガンマ線検出部
21 散乱位置取得部
21a 散乱情報取得部
25 入射ガンマ線算出部
26 画像取得部
32 補正部
33 記憶部
34 電子密度分布取得部
41 対ガンマ線特定部
42 対ガンマ線発生位置取得部
61 対向検出部
91 入射ガンマ線
92 対象散乱ガンマ線
93 反跳電子
231 散乱方向取得部
240 反跳電子情報取得部
512 取付部
611 シンチレータ
S11〜S16,S12a,S21,S31〜S33,S35,S41〜S43 ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
【国際調査報告】