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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2017年12月28日
【発行日】2019年4月11日
(54)【発明の名称】眼用医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/44 20060101AFI20190315BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20190315BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20190315BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20190315BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20190315BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20190315BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20190315BHJP
【FI】
   A61K31/44
   A61P27/02
   A61P27/06
   A61K47/42
   A61K47/24
   A61K47/28
   A61K9/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】35
【出願番号】特願2018-524178(P2018-524178)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2017年6月23日
(31)【優先権主張番号】特願2016-125860(P2016-125860)
(32)【優先日】2016年6月24日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
【住所又は居所】京都府京都市左京区吉田本町36番地1
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】池田 華子
(72)【発明者】
【氏名】村上 達也
(72)【発明者】
【氏名】垣塚 彰
(72)【発明者】
【氏名】吉村 長久
(72)【発明者】
【氏名】須田 謙史
(72)【発明者】
【氏名】三輪 裕子
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA95
4C076BB24
4C076CC10
4C076DD63
4C076DD70
4C076EE41
4C076FF68
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC17
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA58
4C086NA13
4C086ZA33
(57)【要約】
本願は、高密度リポタンパク質中に含まれる式(I)の化合物、または、それらのエステル、オキシド、プロドラッグ、薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を含む眼用医薬組成物を提供する。式(I)中、Raはハロ、ヒドロキシ、アルキル、ハロ置換アルキル、アリール、ハロまたはアルキル置換アリール、アルコキシ、ヒドロキシまたはカルボキシ置換アルコキシ、アリールオキシ、ハロまたはアルキル置換アリールオキシ、CHO、C(O)−アルキル、C(O)−アリール、C(O)−アルキル−カルボキシル、C(O)−アルキレン−カルボキシエステルおよびシアノから成る群から選択され、mは0〜4から選択される整数である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高密度リポタンパク質中に含まれる式(I):
【化1】
〔式中、
Raはハロ、ヒドロキシ、アルキル、ハロ置換アルキル、アリール、ハロまたはアルキル置換アリール、アルコキシ、ヒドロキシまたはカルボキシ置換アルコキシ、アリールオキシ、ハロまたはアルキル置換アリールオキシ、CHO、C(O)−アルキル、C(O)−アリール、C(O)−アルキル−カルボキシル、C(O)−アルキレン−カルボキシエステルおよびシアノから成る群から選択され、
mは0〜4から選択される整数である〕
の化合物またはそのエステル、オキシド、薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を含む眼用医薬組成物。
【請求項2】
高密度リポタンパク質が細胞親和性ペプチドと結合している、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
細胞親和性ペプチドが、TATペプチド、ペネトラチン、ポリアルギニン(R8)、LL−37、トランスポータン、Pep−1およびMTSからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
細胞親和性ペプチドが、TATペプチド、ペネトラチンおよびポリアルギニン(R8)からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項2または請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
細胞親和性ペプチドがペネトラチンである、請求項2ないし請求項4のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項6】
高密度リポタンパク質が、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)およびジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)からなる群から選択される少なくとも1種のリン脂質を含む、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項7】
高密度リポタンパク質がジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)を含む、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項8】
高密度リポタンパク質がさらなる脂質を含む、請求項6または請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
さらなる脂質が3β−[N−(N’N’−ジメチルアミノエチル)カルバモイル]コレステロール(DC−Chol)である、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
高密度リポタンパク質がジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)および3β−[N−(N’N’−ジメチルアミノエチル)カルバモイル]コレステロール(DC−Chol)を含み、DSPCとDC−Cholの総量に対するDC−Cholの割合が約7〜15モル%である、請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項11】
高密度リポタンパク質が細胞親和性ペプチドとアポリポタンパク質との融合タンパク質を含む、請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項12】
高密度リポタンパク質が、N末端球状ドメイン欠損アポリポタンパク質A−Iを含む、請求項1ないし請求項11のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項13】
高密度リポタンパク質が、ペネトラチンとN末端球状ドメイン欠損アポリポタンパク質A−Iとの融合タンパク質、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)およびDC−コレステロールを含む、請求項1ないし請求項12のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項14】
高密度リポタンパク質の粒径が直径約10〜20nmである、請求項1ないし請求項13のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項15】
式(I)の化合物が、式
【化2】
の化合物である、請求項1ないし請求項14のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項16】
高密度リポタンパク質が、アポリポタンパク質1モル当たり、約3〜約15モルの式(I)の化合物またはそのエステル、オキシド、薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を含む、請求項1ないし請求項15のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項17】
眼疾患の処置および/または予防のための、請求項1ないし請求項16のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項18】
眼疾患が、緑内障、網膜色素変性症、加齢黄斑変性または虚血性眼疾患である、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
点眼剤である、請求項1ないし請求項18のいずれかに記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、日本国特許出願第2016−125860号について優先権を主張するものであり、ここに参照することによって、その全体が本明細書中へ組み込まれるものとする。
本願は、眼疾患の処置および/または予防に有効な成分を高密度リポタンパク質中に含むことを特徴とする、眼用医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
VCP(valosin-containing protein)ATPase阻害活性を有するある種の4−アミノ−ナフタレン−1−スルホン酸誘導体は、細胞内ATP減少の抑制、小胞体ストレスの抑制を介し、種々の細胞に対する細胞保護効果・細胞死抑制効果を有し(特許文献1)、緑内障、網膜色素変性症、加齢黄斑変性または虚血性眼疾患などの眼疾患の処置および/または予防に有効であることが知られている(特許文献2〜4、非特許文献1および2)。これらの疾患では後眼部に存在する網膜組織や視神経が損傷を受けるが、一般的に、点眼により薬剤を後眼部に到達させることは困難である。実際に、腹腔内投与等により全身投与された4−アミノ−ナフタレン−1−スルホン酸誘導体が眼疾患の処置および/または予防に有効であることは報告されているが、単独で点眼投与された場合に、十分な量で後眼部へ到達することは確認されていない。
【0003】
近年、後眼部への薬物送達効率の向上を目的として、薬物キャリアを用いた点眼用ドラッグデリバリーの開発が試みられている。現在眼科領域に応用されている薬物キャリアとしては、後眼部到達用リポソームが知られている(特許文献5および6)。後眼部到達用リポソームのサイズが小さいほど、後眼部への到達性が高まることが期待されており(非特許文献3)、点眼用ドラッグキャリアのサイズは20nm以下が望ましいことを示唆する報告もある(非特許文献4)。しかしながら、一般に100nm未満のサイズのリポソームを作製できるという報告は少ない。
【0004】
悪性腫瘍細胞への抗癌剤細胞内デリバリーを目的とする、細胞親和性ペプチドを融合した高密度リポタンパク質(cHDL)が知られている(非特許文献5)。点眼剤としての薬物デリバリーを目的とする、粒径100nm以下のリポタンパク質は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2012/014994号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2012/043891号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2014/129495号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2015/129809号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2009/107753号パンフレット
【特許文献6】特開2011−246464号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】池田華子 他著、Sci Rep 4, 5970, 2014
【非特許文献2】中野紀子 他著、Heliyon 2, e00096, 2016
【非特許文献3】廣中耕平 他著、J Controlled Release 2009; 136: 247-53
【非特許文献4】Kompella, U. B. 他著、Molecular Vision 2006; 12: 1185-1198
【非特許文献5】村上達也 他著、Nanomedicine (London, U. K.) 2010; 5: 867-79
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願は、4−アミノ−ナフタレン−1−スルホン酸誘導体を含む眼用医薬組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願は、高密度リポタンパク質中に含まれる式(I):
【化1】
〔式中、
Raはハロ、ヒドロキシ、アルキル、ハロ置換アルキル、アリール、ハロまたはアルキル置換アリール、アルコキシ、ヒドロキシまたはカルボキシ置換アルコキシ、アリールオキシ、ハロまたはアルキル置換アリールオキシ、CHO、C(O)−アルキル、C(O)−アリール、C(O)−アルキル−カルボキシル、C(O)−アルキレン−カルボキシエステルおよびシアノから成る群から選択され、
mは0〜4から選択される整数である〕
の化合物、または、それらのエステル、オキシド、プロドラッグ、薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を含む眼用医薬組成物(以下、本願の医薬組成物と称する)を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本願により、4−アミノ−ナフタレン−1−スルホン酸誘導体を含む眼用医薬組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、細胞毒性試験の結果を示す。本図面は、cHDLおよびrHDLを、ネガティブコントロールとしてのHBSS/HEPES溶液、およびポジティブコントロールとしての塩化ベンザルコニウムと比較した結果を示す。
図2図2は、後眼部組織への到達確認試験の結果を示す蛍光顕微鏡写真である。本図面は、点眼30分後のcHDLおよびHBSS/HEPES溶液を比較した結果を示す。
図3図3は、後眼部組織への到達確認試験における蛍光強度を示す。本図面は、cHDL、rHDL、ネガティブコントロールとしてのHBSS/HPES溶液、およびポジティブコントロールとしての小サイズのリポソームであるDSPC ssLipと比較した結果を示す。
図4図4は、後眼部薬物デリバリーシステムのモデル試験(脈絡膜血管新生モデル)における、パゾパニブ(Pazopanib)点眼後の脈絡膜新生血管面積を示す。本図面は、cHDL中に内包されたパゾパニブと、内包されていないパゾパニブとを比較した結果を示す。
図5図5は、後眼部薬物デリバリーシステムのモデル試験(脈絡膜血管新生モデル)における、パゾパニブ内包cHDLの点眼後の脈絡膜新生血管面積を示す。本図面は、パゾパニブを内包するcHDLと、内包していないcHDLとを比較した結果を示す。
図6図6は、リン脂質としてDMPC、DPPC、またはDSPCを使用したcHDLに内包させたクマリン−6の、後眼部組織への到達確認試験の結果を示す蛍光顕微鏡写真である。本図面は、点眼30分後の各cHDLの結果を示す。
図7図7は、図6に示す後眼部組織への到達確認試験における蛍光強度を示す。本図面は、DMPC、DPPC、またはDSPCを使用したcHDLを比較した結果を示す。
図8図8は、細胞膜透過性ペプチド(本明細書中、CPPとも記載する)としてTATペプチド、ペネトラチン(PEN)ペプチド、またはポリアルギニン(R8)を結合したcHDL、およびCPPを結合していないHDLに内包させたクマリン−6の、後眼部組織への到達確認試験の結果を示す蛍光顕微鏡写真である。本図面は、点眼30分後の各cHDLの結果を示す。
図9図9は、図8に示す後眼部組織への到達確認試験における蛍光強度を示す。本図面は、TATペプチド、ペネトラチン(PEN)ペプチド、またはポリアルギニン(R8)を結合したcHDLと、CPPを結合していないcHDLとを比較した結果を示す。
図10図10は、種々の濃度のクマリン−6を使用して製造したcHDLの、後眼部組織への到達確認試験の結果を示す蛍光顕微鏡写真である。本図面は、点眼30分後の、クマリン−6の濃度が0.03mM、0.05mM、0.1mMまたは0.2mMのcHDL溶液を比較した結果を示す。
図11図11は、図10に示す後眼部組織への到達確認試験における蛍光強度を示す。本図面は、クマリン−6の濃度が0.03mM、0.05mM、0.1mMまたは0.2mMの場合について各cHDLを比較した結果を示す。
図12図12は、後眼部薬物デリバリーシステムのモデル試験(血管新生モデル)において、それぞれパゾパニブを内包するcHDL、カプチゾール、およびssLipの点眼後の脈絡膜新生血管面積を示す。本図面は、cHDLとカプチゾール、またはcHDLとssLipとを対比した結果を示す。
図13図13は、化合物1溶液、DSPC−化合物1またはDC(10)−化合物1(図面中、それぞれPBS、DSPC_HDL、DC_HDLと示す)を点眼したラットにおける化合物1の網膜・硝子体中への到達濃度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書では、数値が「約」の用語を伴う場合、その値の±10%の範囲を含むことを意図する。数値の範囲は、両端点の間の全ての数値および両端点の数値を含む。範囲に関する「約」は、その範囲の両端点に適用される。従って、例えば、「約20〜30」は、「20±10%〜30±10%」を含むものとする。
【0012】
特に具体的な定めのない限り、本明細書で使用される用語は、有機化学、医学、薬学、分子生物学、微生物学等の分野における当業者に一般に理解されるとおりの意味を有する。以下にいくつかの本明細書で使用される用語についての定義を記載するが、これらの定義は、本明細書において、一般的な理解に優先する。
【0013】
「アルキル」は、1〜10個の炭素原子、好ましくは1〜6個の炭素原子を有する、1価飽和脂肪族ヒドロカルビル基を意味する。アルキルは、例えば直鎖および分枝鎖ヒドロカルビル基、例えばメチル(CH−)、エチル(CHCH−)、n−プロピル(CHCHCH−)、イソプロピル((CHCH−)、n−ブチル(CHCHCHCH−)、イソブチル((CHCHCH−)、sec−ブチル((CH)(CHCH)CH−)、t−ブチル((CHC−)、n−ペンチル(CHCHCHCHCH−)およびネオペンチル((CHCCH−)を意味するが、これらに限定されない。
【0014】
基の接頭語「置換」は、当該基の1個以上の水素原子が、同一または異なる指定する置換基によって置換されていることを意味する。
【0015】
「アルキレン」は、1〜10個の炭素原子、好ましくは1〜6個の炭素原子を有する、2価飽和脂肪族ヒドロカルビル基を意味する。アルキレン基は、分枝鎖および直鎖ヒドロカルビル基を含む。
【0016】
「アルコキシ」は、−O−アルキル(ここで、アルキルは本明細書に定義されている)の基を意味する。アルコキシは、例えばメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、t−ブトキシ、sec−ブトキシおよびn−ペントキシを含む。
【0017】
「アリール」は1個の環(例えばフェニル)または複数の縮合環(例えばナフチルまたはアントリル)を有する6〜14個の炭素原子の1価芳香族性炭素環式基を意味する。アリール基は典型的には、フェニルおよびナフチルを含む。
「アリールオキシ」は、−O−アリール(ここで、アリールは本明細書に定義されている)の基を意味し、例えばフェノキシおよびナフトキシを含む。
【0018】
「シアノ」は、−CNの基を意味する。
「カルボキシル」または「カルボキシ」は−COOHまたはその塩を意味する。
「カルボキシエステル」は、−C(O)O−アルキル(ここで、アルキルは本明細書に定義されている)の基を意味する。
「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを含むハロゲンを意味する。
「ヒドロキシ」は−OHの基を意味する。
【0019】
特に定めのない限り、本明細書において明示的に定義されていない置換基の命名法は、官能基の末端部分を命名し、次いで結合点に向かって隣接する官能基を命名して行う。例えば、置換基「アリールアルキルオキシカルボニル」は、(アリール)−(アルキル)−O−C(O)−を意味する。
【0020】
上記定義は許容されない置換パターン(例えば5個のフルオロ基で置換されたメチル)を含むことを意図しないと理解される。かかる許容されない置換パターンは、当業者に周知である。
【0021】
「式(I)の化合物」は、本明細書において使用するとき、本明細書に記載の式(I)に含まれる化合物、および式(I)の具体的な化合物を意味する。該用語はさらに、化合物の立体異性体および互変異性体を含む。本明細書において、式(I)の化合物、並びに、それらのエステル、オキシド、プロドラッグ、薬学的に許容される塩および溶媒和物を総称して、「本願の有効成分」と記載することがある。ある実施態様では、式(I)の化合物またはそのエステル、オキシド、薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を用いる。ある実施態様では、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を用いる。
【0022】
本明細書において使用するとき、用語「立体異性体」は、1個以上の立体中心のキラリティーが異なる化合物を意味する。立体異性体はエナンチオマーおよびジアステレオマーを含む。式(I)の化合物は、非対称的に置換された炭素原子を含んでいる場合がある。かかる非対称的に置換された炭素原子は、エナンチオマー、ジアステレオマーおよび(R)−または(S)−型のような絶対立体化学として定義され得る他の立体異性形態で存在する化合物をもたらし得る。その結果、化合物のすべてのかかる可能な異性体、それらの光学的に純粋な形態における個々の立体異性体、それらの混合物、ラセミ混合物(またはラセミ体)、ジアステレオマーの混合物ならびに1個のジアステレオマーが意図される。用語「S」および「R」立体配置は、本明細書において使用するとき、IUPAC 1974 RECOMMENDATIONS FOR SECTION E, FUNDAMENTAL STEREOCHEMISTRY, Pure Appl. Chem. 45:13 30 (1976) によって定義されるとおりである。
【0023】
本明細書において使用するとき、用語「互変異性体」は、エノールケトおよびイミンエナミン互変異性体のようなプロトンの位置が異なる化合物の別の形態または環−NH−基および環=N−基の両方と結合した環原子を含むヘテロアリール基の互変異性型を意味する。
【0024】
本明細書において使用するとき、用語「エステル」は、インビボで加水分解されるエステルを意味し、人体で容易に分解されて親化合物またはその塩を放出するものを含む。好適なエステル基は例えば、薬学的に許容される脂肪族カルボン酸、特にアルカン酸、アルケン酸、シクロアルカン酸およびアルカン二酸に由来するもの(ここで、各アルキルまたはアルケニル基は有利には6個以下の炭素原子を有する)を含む。具体的なエステルの例は、ギ酸エステル、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、ブチル酸エステル、アクリル酸エステルおよびエチルコハク酸エステルを含む。
【0025】
本明細書において使用するとき、用語「オキシド」は、ヘテロアリール基の窒素環原子が酸化され、N−オキシドを形成しているものを意味する。
【0026】
用語「プロドラッグ」は、本明細書において使用するとき、合理的な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激性、アレルギー性応答等なくヒトまたは動物の組織と接触させて使用するのに適した、合理的な利益/危険比で釣り合った、そして意図した使用に有効な化合物のプロドラッグ、ならびに可能であれば当該化合物の双性イオン形態を意味する。プロドラッグは、インビボで速やかに、例えば血中で加水分解によって変換されて、上記式の親化合物をもたらす化合物である。一般的な説明は、T. Higuchi and V. Stella, Pro drugs as Novel Delivery Systems, Vol. 14 of the A.C.S. Symposium SeriesおよびEdward B. Roche, ed., Bioreversible Carriers in Drug Design, American Pharmaceutical Association and Pergamon Press, 1987に記載されている(いずれも参照により本明細書に引用する)。
【0027】
「薬学的に許容される塩」は当該技術分野で周知の多様な有機および無機対イオンに由来する薬学的に許容される塩を意味し、例えばナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウムおよびテトラアルキルアンモニウムとの塩、ならびに有機もしくは無機酸との塩、例えば塩酸、臭化水素酸、酒石酸、メシル酸、酢酸、マレイン酸およびオキサル酸との塩を含む。化合物の薬学的に許容される塩は、式(I)の化合物のオキシド、エステルまたはプロドラッグの塩を含む、薬学的に許容される塩を意味する。
【0028】
本明細書において使用するとき、用語「薬学的に許容される塩」は、式(I)の化合物の非毒性酸またはアルカリ土類金属塩を含む。これらの塩は、式(I)の化合物の最終単離および精製中にインサイチュで、あるいは塩基もしくは酸官能基と好適な有機もしくは無機酸もしくは塩基を別に、それぞれ反応させて製造することができる。代表的な塩は:酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、ブチル酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、ジグルコン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、フマル酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、オキサル酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩およびウンデカン酸塩を含むが、これらに限定されない。また、塩基性窒素含有基は、メチル、エチル、プロピルおよびブチルの塩化物、臭素化物およびヨウ化物のようなアルキルハライド;ジメチル、ジエチル、ジブチルおよびジアミル硫酸のようなジアルキル硫酸、デシル、ラウリル、ミリスチルおよびステアリルの塩化物、臭素化物およびヨウ化物のような長鎖ハライド、ベンジルおよびフェネチルの塩化物のようなアラルキルハライドならびに他のもののような反応剤で4級化されていてもよい。それによって、水または油に溶解または分散する生成物が得られる。
【0029】
薬学的に許容される酸付加塩を形成するために使用することができる酸の例は、塩酸、硫酸およびリン酸のような無機酸およびシュウ酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、コハク酸およびクエン酸のような有機酸を含む。塩基付加塩は、式(I)の化合物の最終単離および精製中にインサイチュで、あるいはカルボン酸基と好適な塩基、例えば薬学的に許容される金属カチオンのヒドロキシド、カルボネートもしくはビカルボネートまたはアンモニア、または有機第1級、第2級もしくは第3級アミンとを別に反応させて製造することができる。薬学的に許容される塩は、アルカリおよびアルカリ土類金属のカチオン、例えばナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウムの塩等、ならびに非毒性アンモニウム、第4級アンモニウムおよびアミンのカチオン、例えば限定されないが、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミン等を含むが、これらに限定されない。塩基付加塩の形成に有用な他の代表的な有機アミンは、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン等を含む。
【0030】
本明細書において使用するとき、用語「溶媒和物」は、化学量論または非化学量論量の溶媒と結合した上記定義の化合物を意味する。溶媒和物は、式(I)の化合物の薬学的に許容される塩の溶媒和物を含む。溶媒は、揮発性であり、非毒性であり、かつ/または、痕跡量でヒトへの投与に許容される。好適な溶媒和物は水和物である。
【0031】
式(I)の化合物またはその何れかのエステル、オキシド、薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物がヒトまたは動物体または細胞における代謝によって、インビボで処理されて代謝産物を生じ得ることが当業者には明らかであろう。用語「代謝産物」は、本明細書において使用するとき、親化合物の投与後、対象において生産される何れかの式の誘導体を意味する。誘導体は、多様な対象における生化学的変換、例えば酸化、還元、加水分解または結合によって親化合物から生産されてよく、例えばオキシドおよび脱メチル化誘導体を含む。式(I)の化合物の代謝産物は、当該技術分野で既知の日常的な技術を用いて同定することができる。例えば Bertolini, G. et al., J. Med. Chem. 40:2011 2016 (1997); Shan, D. et al., J. Pharm. Sci. 86(7):765 767; Bagshawe K., Drug Dev. Res. 34:220 230 (1995); Bodor, N., Advances in Drug Res. 13:224 331 (1984); Bundgaard, H., Design of Prodrugs (Elsevier Press 1985);およびLarsen, I. K., Design and Application of Prodrugs, Drug Design and Development (Krogsgaard Larsen et al., eds., Harwood Academic Publishers, 1991) を参照されたい。式(I)の化合物またはそれらの何れかのエステル、オキシド、薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の代謝産物である個々の化合物は、本願の有効成分に含まれると理解されるべきである。
【0032】
ある実施態様では、式(I)中、Raは、それぞれ独立して、ハロ、ヒドロキシ、アルキル、ハロ置換アルキルおよびアルコキシから成る群から選択される。
ある実施態様では、式(I)中、Raは、それぞれ独立して、ハロおよびアルキルから成る群から選択される。
ある実施態様では、式(I)中、Raは2個存在し、一方がハロであり、他方がアルキルである。
【0033】
ある実施態様において、医薬組成物は、式(I)に含まれる下記の化合物または、それらのエステル、オキシド、プロドラッグ、薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を含む:
4−アミノ−3−(6−フェニルピリジン−3−イルアゾ)ナフタレン−1−スルホン酸;
4−アミノ−3−(6−p−トルイルピリジン−3−イルアゾ)ナフタレン−1−スルホン酸;
4−アミノ−3−(6−m−トルイルピリジン−3−イルアゾ)ナフタレン−1−スルホン酸;
4−アミノ−3−(6−o−トルイルピリジン−3−イルアゾ)ナフタレン−1−スルホン酸;
4−アミノ−3−(6−ビフェニル−2−イルピリジン−3−イルアゾ)ナフタレン−1−スルホン酸;
3−[6−(2−アセチルフェニル)ピリジン−3−イルアゾ]−4−アミノナフタレン−1−スルホン酸;
3−[6−(3−アセチルフェニル)ピリジン−3−イルアゾ]−4−アミノナフタレン−1−スルホン酸;
3−[6−(4−アセチルフェニル)ピリジン−3−イルアゾ]−4−アミノナフタレンスルホン酸;
4−アミノ−3−[6−(2,4−ジクロロフェニル)ピリジン−3−イルアゾ]ナフタレン−1−スルホン酸;
4−アミノ−3−[6−(2−トリフルオロメチルフェニル)ピリジン−3−イルアゾ]ナフタレン−1−スルホン酸;
4−アミノ−3−[6−(4−トリフルオロメチルフェニル)ピリジン−3−イルアゾ]ナフタレン−1−スルホン酸;
4−アミノ−3−[6−(2−クロロフェニル)ピリジン−3−イルアゾ]ナフタレン−1−スルホン酸;
4−アミノ−3−[6−(3−クロロフェニル)ピリジン−3−イルアゾ]ナフタレン−1−スルホン酸;
4−アミノ−3−[6−(4−クロロフェニル)ピリジン−3−イルアゾ]ナフタレン−1−スルホン酸;
4−アミノ−3−[6−(2−メトキシフェニル)ピリジン−3−イルアゾ]ナフタレン−1−スルホン酸;
4−アミノ−3−[6−(4−メトキシフェニル)ピリジン−3−イルアゾ]ナフタレン−1−スルホン酸;
4−アミノ−3−[6−(2−イソプロポキシフェニル)ピリジン−3−イルアゾ]ナフタレン−1−スルホン酸;
4−アミノ−3−[6−(4−イソプロポキシフェニル)ピリジン−3−イルアゾ]ナフタレン−1−スルホン酸;
4−アミノ−3−[6−(2−フェノキシフェニル)ピリジン−3−イルアゾ]ナフタレン−1−スルホン酸;
4−アミノ−3−[6−(3−メトキシフェニル)ピリジン−3−イルアゾ]ナフタレン−1−スルホン酸;
4−アミノ−3−[6−(2,3−ジメチルフェニル)ピリジン−3−イルアゾ]ナフタレン−1−スルホン酸;
4−アミノ−3−[6−(2,5−ジメチルフェニル)ピリジン−3−イルアゾ]ナフタレン−1−スルホン酸;
4−アミノ−3−[6−(3,5−ジメチルフェニル)ピリジン−3−イルアゾ]ナフタレン−1−スルホン酸;
4−アミノ−3−[6−(3−トリフルオロメチルフェニル)ピリジン−3−イルアゾ]ナフタレン−1−スルホン酸;
4−{4−[5−(1−アミノ−4−スルホナフタレン−2−イルアゾ)ピリジン−2−イル]フェニル}−4−オキソブチル酸メチルエステル;
4−アミノ−3−(6−ビフェニル−3−イルピリジン−3−イルアゾ)ナフタレン−1−スルホン酸;
4−アミノ−3−[6−(3−シアノフェニル)ピリジン−3−イルアゾ]ナフタレン−1−スルホン酸;
4−アミノ−3−[6−(4−シアノフェニル)ピリジン−3−イルアゾ]ナフタレン−1−スルホン酸;
4−アミノ−3−[6−(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ピリジン−3−イルアゾ]ナフタレンスルホン酸;
4−アミノ−3−[6−(4−ベンゾイルフェニル)ピリジン−3−イルアゾ]ナフタレン−1−スルホン酸;
4−アミノ−3−[6−(2−プロポキシフェニル)ピリジン−3−イルアゾ]ナフタレン−1−スルホン酸;
4−アミノ−3−[6−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)ピリジン−3−イルアゾ]ナフタレン−1−スルホン酸;
4−アミノ−3−[6−(5−フルオロ−2−プロポキシフェニル)ピリジン−3−イルアゾ]ナフタレン−1−スルホン酸;
4−アミノ−3−[6−(2−フルオロ−6−プロポキシフェニル)ピリジン−3−イルアゾ]ナフタレン−1−スルホン酸;
4−アミノ−3−[6−(4−フルオロ−2−プロポキシフェニル)ピリジン−3−イルアゾ]ナフタレン−1−スルホン酸;
4−アミノ−3−[6−(5−フルオロ−2−メチルフェニル)ピリジン−3−イルアゾ]ナフタレン−1−スルホン酸;
4−アミノ−3−[6−(2−フルオロ−5−メチルフェニル)ピリジン−3−イルアゾ]ナフタレン−1−スルホン酸;
4−アミノ−3−[6−(2−ブトキシフェニル)ピリジン−3−イルアゾ]ナフタレン−1−スルホン酸;
4−アミノ−3−[6−(2−ヘキシルオキシフェニル)ピリジン−3−イルアゾ]ナフタレン−1−スルホン酸;
4−アミノ−3−[6−(4−ブチルフェニル)ピリジン−3−イルアゾ]ナフタレン−1−スルホン酸;
4−アミノ−3−[6−(2−ヒドロキシフェニル)ピリジン−3−イルアゾ]ナフタレン−1−スルホン酸;
4−アミノ−3−{6−[2−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)フェニル]ピリジン−3−イルアゾ}ナフタレン−1−スルホン酸;
4−{2−[5−(1−アミノ−4−スルホナフタレン−2−イルアゾ)ピリジン−2−イル]フェノキシ}ブチル酸;
4−アミノ−3−{6−[2−(3−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]ピリジン−3−イルアゾ}ナフタレン−1−スルホン酸;
4−アミノ−3−[6−(2−イソブトキシフェニル)ピリジン−3−イルアゾ]ナフタレン−1−スルホン酸;
4−アミノ−3−[6−(5−クロロ−2−ヒドロキシフェニル)ピリジン−3−イルアゾ]ナフタレン−1−スルホン酸;
4−アミノ−3−[6−(4−メチルビフェニル−2−イル)ピリジン−3−イルアゾ]ナフタレン−1−スルホン酸;
4−アミノ−3−[6−(4'−クロロ−4−メチルビフェニル−2−イル)ピリジン−3−イルアゾ]ナフタレン−1−スルホン酸;
4−アミノ−3−[6−(4,3',5'−トリメチルビフェニル−2−イル)ピリジン−3−イルアゾ]ナフタレン−1−スルホン酸;
4−アミノ−3−[6−(3'−クロロ−4−メチルビフェニル−2−イル)ピリジン−3−イルアゾ]ナフタレン−1−スルホン酸;
4−アミノ−3−[6−(2,6−ジメチルフェニル)ピリジン−3−イルアゾ]ナフタレン−1−スルホン酸;
4−アミノ−3−[6−(3−ホルミル−2−イソプロポキシ−5−メチルフェニル)ピリジン−3−イルアゾ]ナフタレン−1−スルホン酸;
4−アミノ−3−[6−(3−ホルミル−2−ブトキシ−5−メチルフェニル)ピリジン−3−イルアゾ]ナフタレン−1−スルホン酸。
【0034】
ある実施態様において、有効成分は、下記式
【化2】
で表される4−アミノ−3−[6−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)ピリジン−3−イルアゾ]ナフタレン−1−スルホン酸ナトリウム塩、またはその遊離形、または、そのエステル、オキシド、プロドラッグ、薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物である。
【0035】
式(I)の化合物、特に、上記の化合物の特性および合成方法は、国際公開第2012/014994号、国際公開第2012/043891号、国際公開第2014/129495号パンフレット、国際公開第2015/129809号パンフレット(特許文献1〜4)に詳細に記載されている。これらの文献の全体を出典明示により本明細書の一部とする。
【0036】
本願に関して、「高密度リポタンパク質(HDL)」とは、アポリポタンパク質A−I(apoA−I)を含むリポタンパク質を意味し、天然由来のHDL、またはアポリポタンパク質とリン脂質とから化学合成的な手法もしくは遺伝子工学的な手法により製造される再構成(すなわち、人工)HDLのいずれであってもよい。HDLは、主な構成成分としてアポリポタンパク質およびリン脂質を含む。また、HDLは、機能性ペプチドとしての細胞親和性ペプチド(本明細書中、CPとも記載する)を結合することによって、細胞親和性ペプチド結合HDL(本明細書中、cHDLとも記載する)として得ることができる。また、HDLは、任意の構成成分として蛍光標識物質を含んでいてもよい。
【0037】
本願に関して、HDLの密度は、天然由来のHDLの場合、約1.063〜1.210g/mLの範囲(Antonio M. Gotto, Jr.らMethods Enzymol. 1986; 128: 3-41を参照)である。再構成HDLの場合、典型的には天然由来のHDLの大きさに準じるが、製造時に所望の密度に調整することができるため、例えば天然の低密度リポタンパク質(LDL)の密度である約1.019〜約1.063g/mLの範囲(Antonio M. Gotto, Jr.らの同文献を参照)をも含み得る。
【0038】
HDLの粒径は、天然由来のHDLの場合、約5〜12nmの範囲(Antonio M. Gotto, Jr.らの同文献を参照)である。再構成HDLの場合、典型的には天然由来のHDLの大きさに準じるが、製造時に所望の粒径に調整することができるため、例えば天然のLDLの粒径である直径が約18〜約25nmの範囲(Antonio M. Gotto, Jr.らの同文献を参照)をも含み得て、また直径が約1000nm未満、約200nm未満、または約100nm未満の粒径に調整することもできる。HDLは、細胞親和性ペプチドの結合の有無に関係なく、そのサイズが小さいほど、後眼部への到達性が高まることが期待され、従って典型的には粒径は直径が約100nm未満、好ましくは約10〜約50nm、より好ましくは約10〜約20nmである。本願に関して、「粒径」は、動的光散乱法により測定した体積平均径を意味し、通常の測定装置、例えば、市販の Nanotrac UPA-EX250 particle size analyzer (Nikkiso Co., Ltd.; Tokyo, Japan) により測定し得る。
【0039】
構成成分としての「アポリポタンパク質」とは、リポタンパク質を構成する脂質以外のタンパク質部分を意味する。本明細書中、「アポリポタンパク質」なる用語は、天然のリポタンパク質中に含まれることが一般に知られるアポリポタンパク質およびその改変体を含む。アポリポタンパク質は、例えば、アポリポタンパク質A〜Eの群に属するタンパク質またはその改変体であり、好ましくはアポリポタンパク質A−I(apoA−I)、アポリポタンパク質A−II(apoA−II)、アポリポタンパク質C(apoC)、アポリポタンパク質E(apoE)、またはその改変体である。本願におけるHDLは、apoA−Iまたはその改変体を含み、さらに別のアポリポタンパク質を含んでもよい。本明細書において、アポリポタンパク質の改変体とは、アポリポタンパク質と同等の機能(例えば、脂質結合機能)を有する変異体または類似体等(つまり、機能的同等物)を意味する。アポリポタンパク質の改変体としては、例えば、アポリポタンパク質の部分断片およびそれらの組み合わせを挙げられる。apoA−Iの改変体としては、N末端の球状ドメイン(例えば、N末端の1−43アミノ酸)を欠く、N末端球状ドメイン欠損apoA−I、例えば、N末端43アミノ酸欠損apoA−I、または、N末端44アミノ酸欠損apoA−Iを挙げられる。
【0040】
構成成分としての「リン脂質」とは、1つまたは複数のリン酸エステル部位を有する脂質を意味する。本願におけるリン脂質とは、天然のリポタンパク質中に含まれることが一般に知られるリン脂質を含む。本願において、リン脂質は、天然のHDL中に含まれることが知られるリン脂質が好ましいが、これに限定されない。リン脂質としては、例えば、スフィンゴシンを骨格とするスフィンゴリン脂質およびグリセリンを骨格とするグリセロリン脂質が挙げられる。
【0041】
スフィンゴリン脂質としては、例えばスフィンゴミエリン、スフィンゴシン−1−リン酸、セラミドを挙げられる。グリセロリン脂質としては、例えばホスファチジルグリセロール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、およびホスファチジルエタノールアミンを挙げられ、ホスファチジルコリンが好ましい。グリセロリン脂質は、長鎖アルキル基を有するグリセロリン脂質が好ましく、例えばアシル基におけるアルキル基の炭素数が約9〜約23(つまり、炭素数が約10〜約24の脂肪酸基)、好ましくは約11〜約17(つまり、炭素数が約12〜約18の脂肪酸基)、より好ましくは約13〜約17(つまり、炭素数が約14〜約18の脂肪酸基)のグリセロリン脂質が好ましい。脂肪酸基は1個以上の炭素−炭素不飽和二重結合を含んでいてもよいが、含まないことが好ましい。ホスファチジルコリンの典型的な例としては、ジラウロイルホスファチジルコリン(DLPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、エッグホスファチジルコリン(PC)、および1−パルミトイル−2−オレオイルホスファチジルコリン(POPC)を挙げられるが、これらに限定されるものではない。リン脂質は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0042】
HDLは、リン脂質に加えて、さらなる脂質を含み得る。さらなる脂質としては、例えば、コレステロール、1,2−ジオレオイル−3−トリメチルアンモニオプロパン(DOTAP)、N−(2,3−ジオレイルオキシプロパン−1−イル)−N,N,N−トリメチル塩化アンモニウム(DOTMA)、1,2−ジオレイル−3−ジメチルアンモニウムプロパン(DODAP)、N,N−ジメチル−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピルアミン(DODMA)、2,3−ジオレイルオキシ−N−[2−(スペルミンカルボキシアミド)エチル]−N,N−ジメチル−1−プロパナミニウムトリフルオロ酢酸(DOSPA)、1,2−ジミリスチルオキシプロピル−3−ジメチルヒドロキシエチル臭化アンモニウム(DMRIE)、1,2−ジオレオイルオキシプロピル−3−ジエチルヒドロキシエチル臭化アンモニウム(DORIE)、3β−[N−(N'N'−ジメチルアミノエチル)カルバモイル]コレステロール(DC−Chol)、コレステリルヘミスクシナート(CHEMS)、1,2−ジオレオイルフォスファチジルエタノールアミン(DOPE)、一般式:RNX(XH、RNX(X(XHまたはRNX(X(X(XH(式中、Xは、−CHCHCONHCHCHN<であり;RおよびRは、互いに同一であるかまたは異なって、飽和もしくは不飽和のC〜C20脂肪族基である)で表されるデンドロン脂質(例えば、デンドロン脂質D1、D2、D3、D12、D22、D32(Funakoshi))等が挙げられる。HDL中の総脂質に対するさらなる脂質の割合は、例えば、約0〜80モル%、約0.001〜80モル%、約1〜50%または約3〜25モル%であり得る。好適なリン脂質とさらなる脂質の組み合わせおよびそれらのモル比は、リン脂質とさらなる脂質の性質(例えば、不飽和度、電荷、分子量、疎水性、溶解性など)に基づいて適宜選択される。例えば、リン脂質がDSPCであり、さらなる脂質がDC−Cholである場合、HDL中の総脂質に対するDC−Cholの割合は、約3〜28モル%、約5〜25モル%または約7〜15モル%、例えば約10モル%であり得る。
【0043】
本願に関して、「細胞親和性ペプチド(CP)」とは、細胞膜に結合し、その後細胞内に移行することが可能な細胞親和性を示すペプチドを意味する。「細胞親和性」には、細胞膜透過性、細胞接着性、血管内皮細胞集積性、エンドソーム脱出性、細胞核集積性、ミトコンドリア集積性などを含むが、これらに限定されない。ある態様において、細胞親和性ペプチドは、細胞膜透過性ペプチド(本明細書中、CPPとも記載する)である。細胞親和性ペプチドは、天然のタンパク質由来のペプチドおよび人工的に製造されたペプチド(例えば、キメラペプチド)を含む。細胞親和性ペプチドは、そのアミノ酸配列による化学的特性により、塩基性細胞親和性ペプチド、両親媒性細胞親和性ペプチド、および疎水性細胞親和性ペプチドを含む。塩基性細胞親和性ペプチドが好ましく、塩基性細胞膜透過性ペプチドがより好ましい。例えば、塩基性細胞親和性ペプチド(例えば、HIV−1ウイルスのTATタンパク質(Trans-activator of transcription protein)由来のTATペプチド、ショウジョウバエ由来のペネトラチン(PEN)、ポリアルギニン(例えば、アルギニンの8量体(R8))、ポリヒスチジン((例えば、ヒスチジンの16量体(H16))、抗菌性ペプチド由来のLL−37ペプチド)、両親媒性細胞親和性ペプチド(例えば、キメラペプチドであるトランスポータンやPep−1ペプチド)、および疎水性細胞親和性ペプチド(例えば、膜タンパク質のシグナルペプチド由来のペプチドであるミトコンドリアターゲティングシグナル(MTS))からなる群から選ばれる少なくとも1種を挙げられるが、これらに限定されるものではない。ある実施態様では、細胞親和性ペプチドは、TATペプチド、ペネトラチン、ポリアルギニン(R8)、LL−37、トランスポータン、Pep−1およびMTSからなる群から選択される少なくとも1種である。さらなる実施態様では、細胞親和性ペプチドは、TATペプチド、ペネトラチンおよびポリアルギニン(R8)からなる群から選択される少なくとも1種である。さらなる実施態様では、細胞親和性ペプチドは、ペネトラチンおよびポリアルギニン(R8)からなる群から選択される少なくとも1種である。さらなる実施態様では、細胞親和性ペプチドは、ペネトラチンである。
【0044】
細胞親和性ペプチドは、HDLと結合することで、細胞親和性ペプチド結合HDL(cHDL)を形成する。結合手法は、化学合成的な手法(例えば、カップリング方法)または生物学的手法(例えば、遺伝子工学的方法)であってよい。細胞親和性ペプチドを結合するHDL上の官能基およびその位置は、適宜改変し得る。細胞親和性ペプチドは、好ましくはアポリポタンパク質上で結合しており、より好ましくはアポリポタンパク質のC末端で結合している。細胞親和性ペプチドの結合したアポリポタンパク質は、細胞親和性ペプチドとアポリポタンパク質との融合タンパク質であってよい。融合タンパク質は、遺伝子工学的方法により、細胞親和性ペプチドをコードする遺伝子とアポリポタンパク質をコードする遺伝子とを結合し発現させることで、得ることができる。細胞親和性ペプチドとアポリポタンパク質との融合タンパク質は、細胞親和性ペプチド1個とアポリポタンパク質1個が融合した融合タンパク質であり得る。
【0045】
遺伝子工学的手法としては、メチラーゼやDNAポリメラーゼI/DNAリガーゼを用いるDNA編集や、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を挙げられる。具体的には、大腸菌発現ベクターの制限酵素認識部位に、両端に制限酵素認識配列を付加した細胞親和性ペプチド遺伝子をDNAリガーゼで挿入する。DNAシークエンス解析により、細胞親和性ペプチド遺伝子が順方向で挿入されたベクターを選択する。次に、アポリポタンパク質遺伝子の両端に制限酵素認識配列を付加した遺伝子をPCR法により作製し、大腸菌発現ベクターの制限酵素認識部位にDNAリガーゼを用いて挿入する。以上の操作により、アポリポタンパク質に細胞親和性ペプチドが融合されたポリペプチドの遺伝子を作製できる。例えば、大腸菌発現ベクターpCOLD Iの制限酵素Pst I、Xba I認識部位に、5'末端にPst I、3'末端にXba I認識配列を付加した細胞親和性ペプチド遺伝子、例えばペネトラチン遺伝子をDNAリガーゼで挿入する。次に、apoA−I遺伝子、例えばN末端球状ドメイン欠損apoA−I遺伝子の5'末端側に制限酵素Kpn I認識配列を、3'末端側に制限酵素Pst I認識配列を付加した遺伝子をPCR法により作製し、上記のpCOLD IのKpn IとPst I認識部位間にDNAリガーゼを用いて挿入する。以上の操作により、apoA−IのC末端側に細胞親和性ペプチドが融合された融合タンパク質の遺伝子を作製できる。
【0046】
HDLは、1分子当たり1分子以上の本願の有効成分を含むことができる。ある態様では、HDLは、本発明の有効成分を、アポリポタンパク質1モル当たり、例えば、約3〜約15モル、または、約4〜約12モル含み得る。
ある態様では、HDLは、リン脂質を、アポリポタンパク質1モル当たり、例えば、約50〜約500モル、約70〜約300モル、または、約80モル〜約180モル含み得る。また、HDLがリン脂質およびさらなる脂質を含む態様においては、HDLは、リン脂質を、アポリポタンパク質1モル当たり、例えば、50〜約500モル、約70〜約300モル、約80モル〜約180モル、または、約100モル〜約130モル含み得る。
【0047】
ある態様では、HDLは、例えば、約−30〜約30mV、約−20〜約20mV、約−15〜約15mV、約−10〜約10mV、約−5〜約5mV、約−2〜約2mV、または約−1.5〜1.5mVの界面動電電位(ゼータ電位)を有する。さらなる態様では、HDLは正のゼータ電位、例えば、0〜約30mV、0〜約15mV、0〜約5mV、0〜約2mV、または0〜約1.5mVのゼータ電位を有する。ゼータ電位は、光散乱電気泳動法などにより、通常の測定装置、例えば、市販のZetasizer Nano Z(Malvern Instruments, Malvern, U. K.)により測定できる。
【0048】
ある態様では、本願は、後眼部薬物デリバリー用キャリアとして使用し得るHDLであって、アポリポタンパク質およびリン脂質に加えて、さらなる脂質を含むHDLを提供する。「後眼部薬物デリバリー用キャリア」とは、後眼部へ薬物を送達するための担体を意味する。後眼部薬物デリバリー用キャリアを、後眼部疾患の診断、予防または治療に有効な薬物と組み合わせることにより、後眼部薬物デリバリー用システムを構築することができる。
【0049】
本願に関して、「眼用医薬組成物」は、眼に局所投与するための医薬組成物を意味する。眼用医薬組成物は、好ましくは、非侵襲的に投与される点眼剤である。点眼剤の剤型は、本願の有効成分の水に対する溶解性と水溶液中での安定性に応じて、例えば、水性点眼剤、用時溶解点眼剤、懸濁性点眼剤、または油性点眼剤/眼軟膏剤であり得る。
【0050】
本願の医薬組成物は、眼用として医薬的に許容され得る添加剤、例えば緩衝化剤、等張化剤、pH調整剤、界面活性剤、安定化剤、防腐剤等を含み得る。添加剤は、本願の医薬組成物の効果を妨げない限り、特に制限されず、各種用途に応じて、眼刺激等の問題がない濃度範囲内で適宜配合することができる。緩衝化剤としては、例えばリン酸塩(例えば、リン酸ナトリウム)、酢酸塩(例えば、酢酸ナトリウム)などが挙げられる。等張化剤としては、例えば塩化ナトリウムなどの無機物塩、濃グリセリンなどのグリセリンなどを挙げられる。pH調整剤としては、例えばホウ酸などの有機酸等を挙げられる。界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレートなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類)、両性界面活性剤(例えば、アルキルジアミノエチルグリシンなどのグリシン型、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどの酢酸ベタイン型)、陰イオン性界面活性剤(例えば、テトラデセンスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸塩)、および陽イオン性界面活性剤(例えば、塩化ベンザルコニウムなどのアルキル第4級アンモニウム塩)が挙げられ、非イオン性界面活性剤が好ましい。安定化剤としては、例えば有機酸塩(例えば、クエン酸ナトリウム、マンニトール)などが挙げられる。防腐剤としては、例えば塩化ベンザルコニウム、パラベンなどが挙げられる。本願の医薬組成物は、増粘剤(例えば、アルギン酸ナトリウム)、キレート剤(例えば、エデト酸ナトリウム)、香料(例えば、メントール)等の添加剤を含んでもよい。本願の医薬組成物のpHは、眼科製剤に許容される範囲内である限りにおいて、通常4〜8の範囲内が好ましい。
【0051】
本願の医薬組成物を、さらなる有効成分と組み合わせることも可能である。さらなる有効成分としては、例えば、緑内障または高眼圧症の処置用薬物(例えば、ピロカルピン、ジスチグミン、カルテオロール、チモロール、ベタキソロール、ニプラジロール、レボブノロール、ブナゾシン、ジピベフリン、ブリモニジン、イソプロピルウノプロストン、ラタノプロスト、トラボプロスト、タフルプロスト、ビマトプロスト、リパスジル、ドルゾラミド、ブリンゾラミド等)、血管退縮治療薬(例えば、ラニビズマブ、ペガプタニブおよびアフリベルセプト等)が含まれるが、これらに限定されない。
【0052】
さらなる有効成分およびその治療上有効量は、通常の臨床医の技術および判断の範囲内で決定され得る。さらなる有効成分は、本願の医薬組成物中に存在してもよく、本願の医薬組成物とは別に提供されてもよい。
【0053】
本願に関して、本願の医薬組成物とさらなる有効成分を「組み合わせる」または「併用する」ことは、全成分を含有する投与形の使用および各成分を別個に含有する投与形の組合せの使用のみならず、それらが眼疾患の処置および/または予防に使用される限り、各成分を同時もしくは連続的に、または、いずれかの成分を遅延して投与することも意味する。2種以上のさらなる有効成分を本願の医薬組成物と組み合わせて使用することも可能である。
【0054】
本願の医薬組成物の投与の前、後、または同時に、レーザー手術、外科手術、光線力学療法等を含むがこれらに限定されない、眼疾患の処置を行ってもよい。
【0055】
眼疾患、特に後眼部疾患を患っている患者に本願の医薬組成物を投与することにより、眼疾患を処置し得る。本願に関して、「処置する」または「処置」は、疾患に罹患している対象において、疾患の原因を軽減または除去すること、疾患の進行を遅延または停止させること、および/または、疾患の症状を軽減、緩和、改善または除去することを意味する。
【0056】
眼疾患、特に後眼部疾患に罹患する危険を有する患者に本願の医薬組成物を投与することにより、眼疾患を予防し得る。本願に関して、「予防する」または「予防」は、疾患に罹患していないが、罹患する恐れのある対象において、疾患の発症を防止することを意味する。予防対象には、眼組織に何らかの異常(例えば、高眼圧、網膜色素上皮下のドルーゼン蓄積、近視)を有する対象、眼疾患の遺伝的リスク(例えば、網膜色素変性や緑内障などの原因遺伝子、疾患罹患の危険性が高いことが明らかになっている遺伝子多型の疾患遺伝子型)を有する対象、眼疾患の罹患率を高める他の疾患(例えば、糖尿病、脂質異常症等の代謝性疾患、血栓症、自己免疫疾患、腎機能障害、高血圧)に罹患している対象、眼疾患を誘発する薬物(例えば、ステロイドなど)を使用している対象が含まれる。
【0057】
本願の医薬組成物により処置および/または予防し得る眼疾患には、例えば、緑内障、網膜色素変性症、加齢黄斑変性、虚血性眼疾患および近視などによる網脈絡膜萎縮が含まれる。緑内障は、正常眼圧緑内障または眼圧降下療法に不応性の緑内障を含む。網膜色素変性症は、遺伝性網膜色素変性症および孤発性網膜色素変性症を含む。加齢黄斑変性は、滲出型加齢黄斑変性および萎縮型加齢黄斑変性を含む。虚血性眼疾患には、眼の虚血に起因または関連するすべての眼疾患が含まれ、例えば、網膜中心動脈閉塞症、網膜動脈分枝閉塞症、虚血性視神経症、網膜中心静脈閉塞症、網膜静脈分枝閉塞症、糖尿病性網膜症および高眼圧症に基づく視神経疾患または視神経障害が含まれる。虚血性眼疾患は急性であり得、虚血再灌流障害を伴い得る。
【0058】
ある態様では、本願の医薬組成物を対象に投与することを含む、眼疾患の処置および/または予防方法が提供される。別の態様では、眼疾患の処置および/または予防における本願の医薬組成物の使用が提供される。
【0059】
本願の医薬組成物に含まれるHDLは、例えば、
i)アポリポタンパク質溶液と、リン脂質(および必要に応じてさらなる脂質)を含むリポソームとを混合することにより、粗HDLを製造する工程(Spontaneous interaction 法);および
ii)超遠心法により粗HDLを精製しHDLを得る工程、
を含む方法において、本願の有効成分を、アポリポタンパク質溶液に含めるか、リポソーム中に含めるか、あるいは工程ii)に先立ち工程i)で得られた粗HDLと混和することで、製造することができる。
【0060】
あるいは、本願の医薬組成物に含まれるHDLは、例えば、
i)リン脂質(および必要に応じてさらなる脂質)とコール酸とを、(例えばリン脂質の相転移温度で)混和することによりミセル化し、得られたミセル溶液をアポリポタンパク質溶液と混合し、混合物を透析して粗HDLを製造する工程(コール酸透析(cholate-dialysis)法);および
ii)超遠心法により粗HDLを精製してHDLを得る工程、
を含む方法において、本願の有効成分を、リン脂質等と共にミセル化するか、アポリポタンパク質溶液に含めるか、あるいは工程ii)に先立ち工程i)で得られた粗HDLと混和することで、製造することができる。
【0061】
HDLを製造する際、典型的には、例えば、アポリポタンパク質の1モルに対して、数倍〜数千倍モル、数十倍〜数百倍モル、例えば約5倍〜約2000倍モル、約20倍〜約500倍モル、約30倍〜約200倍モルのリン脂質を出発物質として使用する。
【0062】
HDLを製造する際、典型的には、アポリポタンパク質1gに対して、例えば、約0.01〜約15g、約0.05〜約10g、約0.07〜約7g、または、約0.1〜約3.5gの本願の有効成分を出発物質として使用する。ある態様では、約0.3〜約3.5gの本願の有効成分を出発物質として使用し得る。
【0063】
得られたHDLは、ゲル濾過クロマトグラフィー法、超遠心法、超音波照射法、凍結融解法、ホモジナイゼーション法などを用いて微粒子に調整することができるが、これらの方法に限定されない。
【0064】
ある態様では、本願は、細胞親和性ペプチド結合高密度リポタンパク質(cHDL){これは、アポリポタンパク質、リン脂質および細胞親和性ペプチド(ここで、該リン脂質は、炭素数が12〜18の脂肪酸基のグリセロリン脂質であり、細胞親和性ペプチドは、塩基性細胞膜透過性ペプチドである)を含み、粒径が直径約100nm未満(例えば、直径約10〜20nm)である}
中に含まれる本願の有効成分を含む、眼疾患の処置および/または予防のための医薬組成物を提供する。
【0065】
ある態様では、本願は、細胞親和性ペプチド結合高密度リポタンパク質(cHDL){これは、N末端球状ドメイン欠損apoA−I、DSPC、DC−Cholおよびペネトラチンを含み、粒径が直径約10〜20nmである}
中に含まれる本願の有効成分を含む、緑内障、網膜色素変性症、加齢黄斑変性および虚血性眼疾患からなる群から選ばれる少なくとも1種の疾患の処置および/または予防のための医薬組成物を提供する。
【0066】
例えば、本願は下記の実施態様を提供する。
[1]高密度リポタンパク質中に含まれる式(I):
【化3】
〔式中、
Raはハロ、ヒドロキシ、アルキル、ハロ置換アルキル、アリール、ハロまたはアルキル置換アリール、アルコキシ、ヒドロキシまたはカルボキシ置換アルコキシ、アリールオキシ、ハロまたはアルキル置換アリールオキシ、CHO、C(O)−アルキル、C(O)−アリール、C(O)−アルキル−カルボキシル、C(O)−アルキレン−カルボキシエステルおよびシアノから成る群から選択され、
mは0〜4から選択される整数である〕
の化合物またはそのエステル、オキシド、薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を含む眼用医薬組成物。
[2]高密度リポタンパク質が細胞親和性ペプチドと結合している、[1]に記載の医薬組成物。
[3]細胞親和性ペプチドが細胞膜透過性ペプチドである、[2]に記載の医薬組成物。
[4]細胞親和性ペプチドが、TATペプチド、ペネトラチン、ポリアルギニン(R8)、LL−37、トランスポータン、Pep−1およびMTSからなる群から選択される少なくとも1種である、[2]または[3]に記載の医薬組成物。
[5]細胞親和性ペプチドが、TATペプチド、ペネトラチンおよびポリアルギニン(R8)からなる群から選択される少なくとも1種である、[2]ないし[4]のいずれかに記載の医薬組成物。
[6]細胞親和性ペプチドがペネトラチンである、[2]ないし[5]のいずれかに記載の医薬組成物。
[7]高密度リポタンパク質が、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)およびジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)からなる群から選択される少なくとも1種のリン脂質を含む、[1]ないし[6]のいずれかに記載の医薬組成物。
[8]高密度リポタンパク質がジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)を含む、[1]ないし[7]のいずれかに記載の医薬組成物。
[9]高密度リポタンパク質がさらなる脂質を含む、[7]または[8]に記載の医薬組成物。
[10]さらなる脂質が3β−[N−(N'N'−ジメチルアミノエチル)カルバモイル]コレステロール(DC−Chol)である、[9]に記載の医薬組成物。
[11]高密度リポタンパク質がジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)および3β−[N−(N'N'−ジメチルアミノエチル)カルバモイル]コレステロール(DC−Chol)を含み、DSPCとDC−Cholの総量に対するDC−Cholの割合が約7〜15モル%である、[1]ないし[10]のいずれかに記載の医薬組成物。
[12]高密度リポタンパク質が細胞親和性ペプチドとアポリポタンパク質との融合タンパク質を含む、[1]ないし[11]のいずれかに記載の医薬組成物。
[13]高密度リポタンパク質が、N末端球状ドメイン欠損アポリポタンパク質A−Iを含む、[1]ないし[12]のいずれかに記載の医薬組成物。
[14]N末端球状ドメイン欠損アポリポタンパク質A−Iが、N末端43アミノ酸欠損アポリポタンパク質A−IまたはN末端44アミノ酸欠損アポリポタンパク質A−Iである、[13]に記載の医薬組成物。
[15]高密度リポタンパク質が、ペネトラチンとN末端球状ドメイン欠損アポリポタンパク質A−Iとの融合タンパク質、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)およびDC−コレステロールを含む、[1]ないし[14]のいずれかに記載の医薬組成物。
[16]N末端球状ドメイン欠損アポリポタンパク質A−Iが、N末端44アミノ酸欠損アポリポタンパク質A−Iである、[14]に記載の医薬組成物。
[17]高密度リポタンパク質の粒径が直径約10〜20nmである、[1]ないし[16]のいずれかに記載の医薬組成物。
[18]式(I)中、Raが、それぞれ独立して、ハロ、ヒドロキシ、アルキル、ハロ置換アルキルおよびアルコキシから成る群から選択される、[1]ないし[17]のいずれかに記載の医薬組成物。
[19]式(I)中、Raが、それぞれ独立して、ハロおよびアルキルから成る群から選択される、[1]ないし[18]のいずれかに記載の医薬組成物。
[20]式(I)中、Raが2個存在し、一方がハロであり、他方がアルキルである、[1]ないし[19]のいずれかに記載の医薬組成物。
[21]式(I)の化合物が、式
【化4】
の化合物である、[1]ないし[20]のいずれかに記載の医薬組成物。
[22]高密度リポタンパク質が、アポリポタンパク質1モル当たり、約3〜約15モルの式(I)の化合物またはそのエステル、オキシド、薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を含む、[1]ないし[21]のいずれかに記載の医薬組成物。
[23]眼疾患の処置および/または予防のための、[1]ないし[22]のいずれかに記載の医薬組成物。
[24]眼疾患が、緑内障、網膜色素変性症、加齢黄斑変性または虚血性眼疾患である、[23]に記載の医薬組成物。
[25]点眼剤である、[1]ないし[24]のいずれかに記載の医薬組成物。
[26][1]ないし[25]のいずれかに記載の医薬組成物を対象に投与することを含む、眼疾患の処置および/または予防方法。
[27]眼疾患の処置および/または予防における[1]ないし[25]のいずれかに記載の医薬組成物の使用。
【実施例】
【0067】
上記の説明は、すべて非限定的なものであり、添付の特許請求の範囲において定義される発明の範囲から逸脱せずに、変更することができる。さらに、下記の実施例は、すべて非限定的な実施例であり、発明を説明するためだけに供されるものである。
【0068】
(実験1)
高密度リポタンパク質(HDL)の作製
(方法)
N末端の球状ドメイン(1−43アミノ酸)を欠くN末端43アミノ酸欠損apoA−IのC末端に細胞親和作用を有するTATペプチドをつなげた融合タンパク質を作製した。この融合型apoA−Iに、ジミストリルホスファチジルコリン(DMPC)と蛍光標識物質であるクマリン−6からなる粒径100nm程度のリポソームを混和することにより、cHDLを作製した(Spontaneous interaction法)。反応しなかったリポソームやリン脂質ミセル、またリン脂質や蛍光物質と結合していないアポリポタンパク質を除去するために、超遠心法によりcHDLを精製した。同様な方法で、細胞親和性ペプチドを含まない再構成HDL(以下、rHDLと記載する)を作製した。比較対照として、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)のサブミクロンサイズリポソーム(submicron sized small uni-lamella vesicle, ssLip)を国際公開第2009/107753号パンフレットに記載の方法に従って調製した。
【0069】
得られたcHDL、rHDLおよびリポソームを、タンパク質、リン脂質およびクマリン−6の各含量、粒径、並びに表面電位について調べた。タンパク質濃度はローリー(Lowry)法で、リン脂質濃度はCテスト(C test Wako(登録商標))で、クマリン−6濃度は蛍光分光光度計FluoroMaxを用いる蛍光分光法で求めた。粒径および表面電荷状態は、動的光散乱法(DLS)を用いて、それぞれ体積平均径(MV)およびゼータ電位として求めた。測定装置はそれぞれ、Nanotrac UPA-EX250 particle size analyzer (Nikkiso Co., Ltd.; Tokyo, Japan)、Zetasizer Nano Z (Malvern Instruments, Malvern, U. K.)を使用した。粒子径測定時にはサンプルを100%PBS溶液にて希釈して測定、ゼータ電位測定時には、超純水で10倍に希釈した上で測定を行った。
【0070】
(結果)
Spontaneous interaction法と超遠心法により、粒径が直径10〜20nmのHDLを得ることができた。各HDLのサイズおよびそれを構成するタンパク質、リン脂質およびクマリン−6の各濃度、並びにゼータ電位は下記表1の通りである。
【表1】
【0071】
(実験2)
HDLの毒性評価
(方法)
実験1で得られた各HDLの角膜毒性を調べるために、ヒト角膜培養細胞を使って細胞毒性試験を行った。cHDL、rHDL、および比較対照の塩化ベンザルコニウムで処理した細胞の酵素活性を比色定量法により測定した。検出試薬としてCCK−8(Cell Counting Kit-8)を使用した。
【0072】
(結果)
cHDLおよびrHDLは共に、ネガティブコントロールであるHBSS/HEPES溶液と同等以上の細胞生存率を示し、ポジティブコントロールである塩化ベンザルコニウム(市販点眼剤に含まれている防腐剤)と比べて有意に細胞毒性が低かった(図1)。
【0073】
(実験3)
HDLの網膜への到達効率
(方法)
C57/B6系統のマウスに、実験1で得られたcHDL、rHDL、粒径100nmのDSPCリポソームをそれぞれ3μLずつ眼表面に点眼し、30分後に眼球を摘出し、凍結切片を作製した。コンフォーカル顕微鏡で網膜内層の蛍光強度を観察し、結果を比較した。
(結果)
共焦点顕微鏡観察により、cHDL点眼群では、クマリン−6を有しないHBSS/HEPES溶液の点眼群には見られない蛍光が網膜内層に観察された(図2)。
【0074】
これら蛍光強度の結果を、cHDL、rHDL、ネガティブコントロールとしてのHBSS/HPES溶液、およびポジティブコントロールとしてのDSPC ssLipについて数値化した(図3)。HBSS/HEPES点眼群と比較して、cHDL、rHDL、DSPCリポソーム点眼群のいずれも網膜内層の蛍光強度は向上していた。また、cHDL点眼群では、rHDLおよびDSPCリポソーム点眼群のいずれと比べても蛍光強度は高かった。このことにより、HDLはクマリン−6を網膜内層へ到達させることが示され、特に細胞親和性ペプチドを結合したcHDLは極めて高い程度でクマリン−6を網膜に到達し得ることが示唆される。
【0075】
(実験4)
後眼部薬物デリバリーシステムのモデル試験(脈絡膜血管新生モデル)
(方法)
後眼部薬物デリバリーシステムのモデル試験として脈絡膜血管新生モデルの試験を行った。
以下の点眼液を調製した;1)1mg/mLのアポリポタンパク質濃度を有するcHDL溶液1mLおよびcHDLを含まない緩衝液1mLに、それぞれ1mgのパゾパニブを混和したもの、2)アポリポタンパク質と等モル比のパゾパニブを内包するcHDL溶液およびパゾパニブを内包していないcHDL溶液(いずれもアポリポタンパク質濃度:1.5mg/mL)。ここで、パゾパニブを内包したcHDL溶液は、実験1におけるクマリン−6の代わりにパゾパニブを用いて調製した。
【0076】
6〜8週齢のC57BL6マウスの網膜にアルゴンレーザーを照射し、脈絡膜新生血管を作製した。レーザー照射直後から1週間、点眼液を一日三回、一回3μL点眼し、1週間後に眼球摘出した。免疫染色法にて脈絡膜新生血管を染色し、フラットマウント法にてコンフォーカル顕微鏡下で脈絡膜新生血管の面積を測定した。
【0077】
(結果)
上記1)および2)の比較結果を各々図4および5に示す。いずれの場合もパゾパニブを内包したcHDL溶液の点眼で脈絡膜新生血管の面積が縮小しており、血管新生阻害作用を有するパゾパニブがcHDLへの内包を通じて疾患部位まで到達していることが示唆された。このことは、パゾパニブが後眼部へ到達し、血管新生を抑制することを示唆する。
【0078】
(実験5)
種々のリン脂質を用いるcHDL
1)cHDLの作製
(方法)
異なるリン脂質(具体的には、DMPC、DPPC、DSPCの三種類)を用いて、cHDLを、以下の方法により作製した。DMPC、DPPC、DSPCの脂肪酸基の炭素数は、各々14、16、18である。
具体的には、クマリン−6、リン脂質およびコール酸からなるミセルを事前に作製し、そのミセルと実験1と同じ融合型apoA−Iをリン脂質の相転移温度で混和することによりcHDLを作製した(コール酸透析法)。ここで、各リン脂質の相転移温度は以下の通りである:DMPCは24℃、DPPCは40−41℃、およびDSPCは55℃。クマリン−6の濃度は0.05μmol/mlに統一して使用した。得られたcHDLを、実験1の方法に準じて超遠心法により精製した。実験1の方法に準じて、得られたcHDLのタンパク質、リン脂質およびクマリン−6の各含量、並びに粒径を測定した。
【0079】
(結果)
コール酸透析法と超遠心法により、粒径が直径10〜20nmのcHDLを得ることができた。各cHDLの粒径およびそれを構成するタンパク質、リン脂質およびクマリン−6の各濃度は下記表2の通りである。
【表2】
【0080】
2)cHDLの網膜への到達効率
(方法)
上記製造した各種cHDLの網膜への到達効率を調べた。具体的には、実験3と同様の方法で、コンフォーカル顕微鏡で網膜内層の蛍光強度を観察し、結果を比較した。
【0081】
(結果)
共焦点顕微鏡観察により、網膜内層の蛍光強度を比較した。結果を図6に示す。DSPC>DPPC>DMPCの順に蛍光強度が高かった。また、これら蛍光強度の結果を実験3の方法に準じて数値化した(図7)。この結果から、上記のcHDLはクマリン−6を網膜内層へ到達させることが示され、グリセロリン脂質のアシル基におけるアルキル基の炭素数が多いほど、cHDLの網膜への到達効率が高いことが示唆された。
【0082】
(実験6)
種々の細胞膜透過性ペプチドを用いるcHDL
1)cHDLの作製
(方法)
異なるCPP(具体的には、TATペプチド、ペネトラチン(PEN)ペプチド、ポリアルギニン(R8)の三種類)を、遺伝子工学的手法により、N末端43アミノ酸欠損apoA−I(TATペプチド)またはN末端44アミノ酸欠損apoA−I(PENおよびR8)のC末端に融合した融合タンパク質を作製した。次に、実験5と同様の方法でDSPCおよびクマリン−6を用いてcHDLを作製した。クマリン−6の濃度は0.03μmol/mlに統一して使用した。得られたcHDLを、実験1の方法に準じて超遠心法により精製した。実験1の方法に準じて、得られたcHDLのタンパク質、リン脂質およびクマリン−6の各含量、粒径、並びに表面電位を測定した。
【0083】
(結果)
コール酸透析法と超遠心法により、粒径が直径10〜20nmのcHDLを得ることができた。各cHDLの粒径サイズおよびそれを構成するタンパク質、リン脂質およびクマリン−6の各濃度、並びにゼータ電位は下記表3の通りである。
【表3】
【0084】
2)cHDLの網膜への到達効率
(方法)
上記製造した各種cHDLの網膜への到達効率を調べた。具体的には、実験3と同様の方法で、共焦点顕微鏡で網膜内層の蛍光強度を観察し、結果を比較した。
【0085】
(結果)
共焦点顕微鏡観察により、網膜内層の蛍光強度を比較した。結果を図8に示す。PEN>R8≧TAT>CPPなしの順に蛍光強度が高かった。また、これら蛍光強度の結果を実験3の方法に準じて数値化した(図9)。この結果から、上記のHDLはクマリン−6を網膜内層へ到達させることが示され、特に細胞親和性ペプチドを結合したcHDLは極めて高い程度でクマリン−6を網膜に到達し得ることが示唆される。また、PENが最も網膜への到達効率を向上させることが示唆された。
【0086】
(実験7)
網膜への薬剤到達における濃度依存性
PENペプチド、DSPCおよびクマリン−6を含むcHDLを用いて、網膜への薬剤到達における濃度依存性を検証した。
(方法)
クマリン−6の濃度が0.03μmol/ml、0.05μmol/ml、0.1μmol/ml、0.2μmol/mlでそれぞれ調整したcHDL溶液を、上記実験5または6と同様な方法を用いて製造した。次いで、実験3と同様の方法で各溶液を投与したマウスの網膜内層の蛍光強度を比較した。
【0087】
(結果)
結果を図10に示す。クマリン−6の濃度が高いほど蛍光強度が高い傾向が認められた。また、これら蛍光強度の結果を実験3の方法に準じて数値化した(図11)。この結果から、cHDL中に含有されている薬剤の濃度が高ければ、網膜へ高濃度の薬剤を到達させることができることが示唆され、よって網膜への薬剤到達における量は、適用するcHDL中に含有されている薬剤の量に依存することが分かった。
【0088】
(実験8)
cHDLと従来のキャリアとの比較実験
(方法)
薬剤としてパゾパニブを選択し、ポジティブコントロールキャリアとして治験などで一般的に使われているカプチゾール、および実験3において比較対象とした粒径100nmのDSPCリポソーム(DSPC ssLip)を選択した。実験4の2)と同様の方法にて調製したcHDLを使用した。比較対象として、Yafai et al. Eur J Pharmacol. 2011; 666: 12-8および特表第2013−525501号公報に記載の方法と同様に、7%カプチゾール溶液にパゾパニブを溶解することで比較カプチゾール溶液を作製した。また、実験1と同様の方法で作製したssLipに、DMSOに溶解したパゾパニブを混和し、次いでゲル濾過カラムを用いて内包されていないパゾパニブを除去することで精製し、比較ssLip溶液を作製した。
【0089】
本実験ではパゾパニブ濃度を統一するために、国際公開第2011−069053号パンフレットおよびEscudero-Ortiz et al. Ther Drug Monit. 2015; 37: 172-9に記載の方法に準じる超高速液体クロマトグラフィー(UPLC)により、各サンプルのパゾパニブ濃度を測定した。濃度が既知のパゾパニブ標準物質溶液を用いてクロマトグラフィーの保持時間を確認し、保持時間に位置するピークの面積を計量することで検量線を作成した。各サンプルでも同一の保持時間に位置するピーク面積を計量し、検量線からパゾパニブ濃度を定量し、各サンプルが同一濃度になるよう適宜希釈した。
【0090】
これら調製した各溶液を、マウスへの点眼の回数を1日2回に変更した点を除き、実験4に記載する方法に準じて血管新生モデルのマウスに点眼適用し、脈絡膜新生血管(CNV)の面積の縮小の効果を調べた。
【0091】
(結果)
結果を図12に示す。cHDLをキャリアとして用いた場合は、比較対象のカプチゾールおよびssLipのいずれかを用いた場合と比較して、脈絡膜新生血管の面積が有意に縮小していた(図12)。このことから、血管新生作用を有する薬剤がcHDLへの内包を通じて疾患部位まで有効に到達していることが示唆された。
【0092】
(実験9)
化合物1を内包するcHDL(DSPC−化合物1)の作製
以下の構造
【化5】
を有する化合物(化合物1:4−アミノ−3−[6−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)ピリジン−3−イルアゾ]ナフタレン−1−スルホン酸ナトリウム塩)を内包するcHDLを作製した。
【0093】
1)cHDLと化合物1の重量比の検討
(方法)
リン脂質(DSPC)10mgに対して30mg/mlコール酸ナトリウム溶液(緩衝液:PBS)706μlに分散し、コール酸ミセルを作製した。N末端44アミノ酸欠損apoA−IのC末端にペネトラチンをつなげた融合タンパク質を、1.5mg/mlとなるよう4M尿素(緩衝液:PBS)に溶解した。コール酸ミセルと融合タンパク質溶液を、DSPC:融合タンパク質=200:1のモル比で、55℃で、30分間混和した。混合物をPBS溶液で終夜透析し、実験1に準じて超遠心法により沈殿物を除去した(HDL精製)。得られたHDLと化合物1を、様々な重量比で、55℃で、30分間混和した。ゲル濾過カラムを用いてcHDLを精製し、融合タンパク質および化合物1の含有量を、各々Lowry法および比色法(472nm)を用いて測定した。
【0094】
(結果)
表4に示す通り、化合物1を内包するcHDL(DSPC−化合物1)が得られた。
【表4】
【0095】
2)DSPC−化合物1作製の再現性
化合物1の添加量を1500μgとして、再度DSPC−化合物1を作製し、融合タンパク質、化合物1、リン脂質(Cテスト)の含有量を測定した。結果を表5に示す。
【表5】
化合物1/HDL比が表5に示す結果と近似するDSPC−化合物1が得られた。DLSにより測定した粒径は14.95nmであり、HDLの粒径として合理的な範囲にあった。
【0096】
(実験10)
化合物1を内包するHDLにおける脂質の検討
(方法)
リン脂質にカチオン性脂質(DOTAP、DC−Chol)を加えてゼータ電位を変化させたサンプルの有効性を確認するために、実験9と同様の方法で、各々の脂質の含有比率を変えて作製した。使用した化合物1の量は、DOTAP−化合物1、DC−化合物1ともに、融合タンパク質1gに対してそれぞれ、2gの割合で加えて作製した。
【0097】
(結果)
得られたDOTAP−化合物1、DC−化合物1およびDSPC−化合物1のゼータ電位および精製前後の粒径を表6に示す。DOTAPおよびDCの後の括弧内の数字はDSPCとDOTAPまたはDC−コレステロールの総量に対するDOTAPまたはDC−コレステロールのモル%を示す。
【表6】
【0098】
DOTAP−化合物1は粒径が非常に大きく、ばらつきがあった。DC−化合物1は比較的粒径が大きいが、超遠心法で精製すると、粒径がHDL理論値内の粒子が得られた。
【0099】
(実験11)
化合物1を内包するcHDL(DC−化合物1)の作製
(方法)
DSPCとDC−cholの混合物(DSPC−DC−chol)(DSPC:DC−chol=9:1、8:2、または7:3(モル比))を100%エタノールに5mg/mlの濃度で溶解し、蒸発させ、凍結乾燥した。これを30mg/mlコール酸ナトリウム溶液(緩衝液:PBS)にDSPC10mgに対して706μlの割合で分散し、コール酸ミセルを作製した。N末端44アミノ酸欠損apoA−IのC末端にペネトラチンをつなげた融合タンパク質を4M尿素(緩衝液:PBS)に1.5mg/mlの濃度で溶解し、これに化合物1を溶解した(750μgの融合タンパク質に対して750μgの化合物1)。この溶液とコール酸ミセルを、DSPC−DC−chol:融合タンパク質=200:1のモル比で、55℃で、30分間混和した。混合物をPBS溶液で終夜透析し、超遠心法(286,000g、106分間)により沈殿物を除去した(HDL精製)。HDL分画を回収し、希釈濃縮(Amicon Ultra 100K)した。希釈液にはPBSを使用した。DSPC−化合物1も同時に上記と同様の方法で作製した。
【0100】
(結果)
得られたDSPC−化合物1およびDC(10)−化合物1の融合タンパク質、化合物1およびリン脂質の含有量、粒径並びにゼータ電位を、実験1および9に準じて測定した。結果を表7に示す。
【表7】
【0101】
(実験12)
高密度リポタンパク質中に含まれる化合物1の網膜および硝子体組織への到達効率を調べた。
化合物1の網膜および硝子体組織への到達効率
(方法)
6−8週齢のオスのSDラットを、(1)化合物1溶液(化合物1濃度:4mM、溶媒PBS)、(2)DSPC−化合物1(化合物1濃度4.7mM)、(3)DC(10)−化合物1(化合物1濃度3.9mM)を点眼する3群にそれぞれ3匹6眼ずつに分け、覚醒下に1回点眼した(5μl)。表7に記載のDSPC−化合物1およびDC(10)−化合物1を、化合物1が上記の濃度になるまで濃縮して使用した。覚醒した状態で30分経過した後、安楽死させ、眼球を摘出した。摘出した眼球をすぐに生理食塩水で十分に洗浄し、−80℃に冷凍した後、メス刃にて冠状断方向で眼球を半割し、シャーベット状になった硝子体とともに、鑷子を用いて網膜を剥離し回収した。その際に角膜、強膜に触れないよう、眼球壁と眼内組織に触れる鑷子は分けて使用した。回収したサンプルは6眼まとめて重量を計測し、−80℃にて冷凍し、化合物1濃度測定のためホモジナイズした。ホモジネート調製に際しては、冷凍したサンプルをマルチビーズショッカーにて破砕し、サンプル重量の5倍量の純水を加えて混和した。サンプル中の化合物1濃度は、LC_MSMSにて測定した。
【0102】
結果を図13に示す。DSPC−化合物1またはDC(10)−化合物1を点眼したラットにおいて、点眼30分後の網膜および硝子体組織中に化合物1が検出された。このことは、両方の高密度リポタンパク質中に含まれる化合物1が網膜および硝子体組織に到達し、DC(10)−化合物1の送達効率が高いことを示す。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本願の医薬組成物は、式(I)の化合物またはそれらのエステル、オキシド、プロドラッグ、薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を局所投与により後眼部に到達させることができる。従って、全身的投与による副作用のリスクを軽減し得る。また、本願の医薬組成物は点眼し得るが、点眼は、同様に眼への局所投与に用いられる硝子体内注射より、安全かつ簡便である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】