特表-18116859IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社アドールの特許一覧
<>
  • 再表WO2018116859-活性炭及びその製造方法 図000004
  • 再表WO2018116859-活性炭及びその製造方法 図000005
  • 再表WO2018116859-活性炭及びその製造方法 図000006
  • 再表WO2018116859-活性炭及びその製造方法 図000007
  • 再表WO2018116859-活性炭及びその製造方法 図000008
  • 再表WO2018116859-活性炭及びその製造方法 図000009
  • 再表WO2018116859-活性炭及びその製造方法 図000010
  • 再表WO2018116859-活性炭及びその製造方法 図000011
  • 再表WO2018116859-活性炭及びその製造方法 図000012
  • 再表WO2018116859-活性炭及びその製造方法 図000013
  • 再表WO2018116859-活性炭及びその製造方法 図000014
  • 再表WO2018116859-活性炭及びその製造方法 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2018年6月28日
【発行日】2018年12月20日
(54)【発明の名称】活性炭及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/336 20170101AFI20181122BHJP
   B01J 20/20 20060101ALI20181122BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20181122BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20181122BHJP
   C02F 1/28 20060101ALI20181122BHJP
【FI】
   C01B32/336
   B01J20/20 A
   B01J20/28 Z
   B01J20/30
   C02F1/28 D
   C02F1/28 R
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】21
【出願番号】特願2018-525488(P2018-525488)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2017年12月7日
(11)【特許番号】特許第6379325号(P6379325)
(45)【特許公報発行日】2018年8月22日
(31)【優先権主張番号】特願2016-245202(P2016-245202)
(32)【優先日】2016年12月19日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】391034167
【氏名又は名称】株式会社アドール
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591147694
【氏名又は名称】大阪ガスケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】中野 智康
(72)【発明者】
【氏名】清水 弘和
(72)【発明者】
【氏名】河内 昭典
(72)【発明者】
【氏名】堺 啓二
【テーマコード(参考)】
4D624
4G066
4G146
【Fターム(参考)】
4D624AA02
4D624AB11
4D624BA02
4D624BB01
4D624BB02
4D624BC01
4D624CA01
4D624CA11
4G066AA02B
4G066AA05B
4G066AA42A
4G066AB23A
4G066BA16
4G066BA23
4G066BA25
4G066BA26
4G066BA36
4G066CA33
4G066FA02
4G066FA18
4G066FA21
4G066FA27
4G066FA34
4G146AA06
4G146AA16
4G146AB06
4G146AC02B
4G146AC04A
4G146AC04B
4G146AC05A
4G146AC05B
4G146AC06A
4G146AC06B
4G146AC08A
4G146AC08B
4G146AC09A
4G146AC09B
4G146AC27A
4G146AC27B
4G146AC28A
4G146AC28B
4G146AD11
4G146AD33
4G146BA11
4G146BA22
4G146BA40
4G146BB04
4G146BB05
4G146BB06
4G146BB16
4G146BC03
4G146BC25
4G146BC33B
4G146BC37B
4G146BD02
4G146BD03
4G146BD18
(57)【要約】
高い空塔速度(SV)での通水処理においても、高い総トリハロメタンろ過能力を有する活性炭を提供する。
QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Aが0.3cc/g以上0.5cc/g以下であり、
かつ、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以上2.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.03cc/g以上0.12cc/g以下である、活性炭。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Aが0.3cc/g以上0.5cc/g以下であり、
かつ、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以上2.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.03cc/g以上0.12cc/g以下である、活性炭。
【請求項2】
QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、2.5nm以上の範囲の細孔径の細孔容積Cが0.03cc/g以下である、請求項1に記載の活性炭。
【請求項3】
前記細孔容積Aに対する、前記細孔容積Bの比率(細孔容積B/細孔容積A)が0.1〜0.3である、請求項1又は2に記載の活性炭。
【請求項4】
比表面積が900m2/g以上1500m2/g以下であり、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、全細孔容積が0.33cc/g以上0.70cc/g以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の活性炭。
【請求項5】
総トリハロメタンろ過能力が45L/g以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の活性炭。
【請求項6】
前記活性炭が繊維状活性炭である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の活性炭。
【請求項7】
イットリウムを0.1〜1.0質量%含む活性炭前駆体を、CO2濃度が50容積%以上の雰囲気下、温度900〜1000℃で賦活する工程を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の活性炭の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の活性炭を含む、浄水フィルター。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれかに記載の活性炭を用いる、水のろ過方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性炭及びその製造方法に関し、特に高空塔速度下におけるトリハロメタンのろ過能力に優れた、活性炭及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲料用に供される水道水などには、殺菌を目的として塩素が添加されている。しかしながら、水道水中に含まれる塩素は、水道水中に含まれる有機物と反応して、有機ハロゲン系化合物を生成する。例えば、天然有機物であるフミン質が水道水中において塩素と反応すると、発がん性物質であるトリハロメタンを生成することが知られている。そして、水道水中に含まれるこれらの有機ハロゲン系化合物のろ過能力に優れた活性炭が提案されている。
【0003】
有機ハロゲン系化合物のろ過能力に優れた活性炭として、例えば、細孔径が100Å(10nm)以下の細孔容積に対する、細孔径20Å〜100Å(2nm〜10nm)の細孔容積比率が5〜50%であり、細孔径10Å(1nm)以下の細孔容積比率が45%以上である多孔質炭素を含有する吸着剤が知られている(例えば、特許文献1参照。)。該吸着剤において、細孔径が100Å以下の細孔容積に対して、細孔径20Å〜100Åの細孔容積比率を5〜50%とするのは、比較的大きな細孔の割合を高めて、動的吸着力を高めるためである。一方、該吸着剤においては、静的吸着力である平衡吸着量を高める必要もあることから、静的平衡吸着量に有効な細孔径10Å以下の細孔容積比率を45%以上とすることが開示されている。そして、該吸着剤は、このような構成とすることによって、静的吸着力と動的吸着力とを両立することができるとされている。
【0004】
また、77.4Kにおける窒素吸着等温線よりBJH法で求めた細孔径分布において細孔直径30Å以上50Å未満の範囲のメソ細孔容積が0.02〜0.40cc/gであり、かつ、全細孔容積に対する上記範囲のメソ細孔容積の割合が5〜45%である活性炭が知られている(例えば、特許文献2参照)。該活性炭によれば、かかる範囲内に上記メソ細孔(直径2〜50nmの細孔)容積及び上記割合を制御することによって、各種の被吸着物質(特にトリハロメタン類)の吸着に適した材料とすることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−247527号公報
【特許文献2】特開2004−182511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、このような活性炭を含む浄水フィルターには、高い総トリハロメタンろ過能力が求められている。例えば、浄水フィルターには、JIS S3201の「揮発性有機化合物のろ過能力試験」における総トリハロメタンの総ろ過水量(総トリハロメタンの除去率が80%に低下するまでの水量)が多いことが要求されてきている。該総ろ過水量が多いほど、浄水フィルターの使用可能期間(取替え期間)が長くなる。
【0007】
加えて、浄水フィルターが水栓一体型浄水器用である場合などには、浄水フィルターは小型化する必要がある。浄水フィルターが小型になると、空塔速度(SV)が大きくなり、高い総トリハロメタンろ過能力を維持することが難しくなる。
【0008】
本発明者等が検討した結果、特許文献1及び2に開示された活性炭は、SVが1000h-1の条件で評価されているところ、高い空塔速度(例えばSVが3000h-1程度)の条件下では、総トリハロメタンのろ過能力が十分発揮できないという問題があることが判明した。
【0009】
本発明は、上記問題を解決し、高い空塔速度(SV)での通水処理においても、高い総トリハロメタンろ過能力を有する活性炭及びその製造方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
トリハロメタン分子は1.5nm以下の細孔に吸着しやすいと考えられる。しかしながら、本発明者等は、高SV下において総トリハロメタン分子のろ過を検討する場合には、トリハロメタン分子が細孔内に拡散する速度も重要な要素であると考えた。そこで、本発明者らはこれらの観点から検討を重ね、活性炭の細孔径及びその細孔容積を制御し、1.5nm以下の細孔容積を特定の範囲とし、且つ1.5nm以上2.5nm以下の細孔径の細孔容積を特定範囲のものとすることで、高SV下においても高い総トリハロメタンろ過能力を有することを見出した。
【0011】
例えば、特許文献1に開示された発明は、メソ孔のうちでも広範な細孔径範囲である2〜10nmの細孔容積を制御することにより動的吸着力を高めることを図っている。しかし、該発明では、例えば3000h-1のような高いSV下でのろ過能力を向上すること、及び、1.5nm以上2.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積を制御することは検討されていない。実際、同文献に実施例として具体的に開示された活性炭は、1.5nm以上2.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積が小さく、高い空塔速度の条件下での総トリハロメタンのろ過能力が十分発揮できない。
【0012】
また、例えば、特許文献2に開示された発明は、比較的大きい細孔径3〜5nmの範囲の細孔容積を制御することが開示されている。また、制御する方法として、Mg、Mn、Fe、Y、Pt及びGdの少なくとも1種の金属成分を0.01〜5重量%含有するピッチを活性炭前駆体として用い、当該前駆体を不融化処理又は炭素化処理し、賦活処理する方法において、上記金属成分の種類を変えることによって、得られる活性炭のメソ細孔モード直径を制御すること、トリハロメタン類の吸着用活性炭を製造する場合には、Fe添加活性炭が水中の有機化合物除去の吸着剤として最も優れた効果を発揮することが開示されている。さらに、具体的に実施可能な態様としては、活性炭前駆体にFeを含有させ、水蒸気賦活をおこなう方法が開示されている。しかし、該発明においても、例えば3000h-1のような高いSV下でのろ過能力を向上すること、及び、1.5nm以上2.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積を制御することは検討されていない。そして、本発明者等の検討によれば、特許文献2に実施例として具体的に開示された、活性炭前駆体にFeを含有させ水蒸気賦活をおこなう方法では、比較的大きい細孔径3〜5nmの範囲の細孔容積は大きくすることができるものの、細孔径1.5nm以下の範囲の細孔容積及び1.5nm以上2.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積を十分に大きいものとすることができず、高い空塔速度の条件下での総トリハロメタンのろ過能力が十分発揮できないことが判明した。
【0013】
本発明は、これらの知見に基づいて、さらに検討を重ねることにより完成された発明である。
【0014】
すなわち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Aが0.3cc/g以上0.5cc/g以下であり、
かつ、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以上2.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.03cc/g以上0.12cc/g以下である、活性炭。
項2. QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、2.5nm以上の範囲の細孔径の細孔容積Cが0.03cc/g以下である、項1に記載の活性炭。
項3. 前記細孔容積Aに対する、前記細孔容積Bの比率(細孔容積B/細孔容積A)が0.1〜0.3である、項1又は2に記載の活性炭。
項4. 比表面積が900m2/g以上1500m2/g以下であり、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、全細孔容積が0.33cc/g以上0.70cc/g以下である、項1〜3のいずれか1項に記載の活性炭。
項5. 総トリハロメタンろ過能力が45L/g以上である、項1〜4のいずれか1項に記載の活性炭。
項6. 前記活性炭が繊維状活性炭である、項1〜5のいずれか1項に記載の活性炭。
項7. イットリウムを0.1〜1.0質量%含む活性炭前駆体を、CO2濃度が50容積%以上の雰囲気下、温度900〜1000℃で賦活する工程を含む、項1〜6のいずれか1項に記載の活性炭の製造方法。
項8. 項1〜6のいずれかに記載の活性炭を含む、浄水フィルター。
項9. 項1〜6のいずれかに記載の活性炭を用いる、水のろ過方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の活性炭によれば、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Aが0.3cc/g以上0.5cc/g以下であり、かつ、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以上2.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.03cc/g以上0.12cc/g以下であることから、大きな空塔速度(SV)での通水処理においても、高い総トリハロメタンろ過能力を有する活性炭を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例1の活性炭のQSDFT法によって算出される細孔径分布を示すグラフである。
図2】実施例2の活性炭のQSDFT法によって算出される細孔径分布を示すグラフである。
図3】実施例3の活性炭のQSDFT法によって算出される細孔径分布を示すグラフである。
図4】実施例4の活性炭のQSDFT法によって算出される細孔径分布を示すグラフである。
図5】実施例5の活性炭のQSDFT法によって算出される細孔径分布を示すグラフである。
図6】比較例1の活性炭のQSDFT法によって算出される細孔径分布を示すグラフである。
図7】比較例2の活性炭のQSDFT法によって算出される細孔径分布を示すグラフである。
図8】比較例3の活性炭のQSDFT法によって算出される細孔径分布を示すグラフである。
図9】比較例4の活性炭のQSDFT法によって算出される細孔径分布を示すグラフである。
図10】比較例5の活性炭のQSDFT法によって算出される細孔径分布を示すグラフである。
図11】比較例6の活性炭のQSDFT法によって算出される細孔径分布を示すグラフである。
図12】比較例7の活性炭のQSDFT法によって算出される細孔径分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の活性炭について詳細に説明する。
【0018】
本発明の活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Aが0.3〜0.5cc/gであり、かつ、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以上2.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.03cc/g以上0.12cc/g以下である。
【0019】
高SV下でも高い総トリハロメタンろ過能力を有するものとするには、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積を特定範囲とし、且つ1.5nm以上2.5nm以下の細孔径の細孔容積を特定範囲とすることが重要である。本発明者等が検討したところ、1.5nm以下の細孔はトリハロメタン分子を吸着しやすく、1.5nm以上2.5nm以下の細孔はトリハロメタン分子の吸着の他にもトリハロメタン分子の細孔内への拡散にも寄与すると考えられる。そして、本発明者等が検討を重ねたところ、1.5nm以下の細孔の細孔容積及び1.5nm以上2.5nm以下の細孔の細孔容積は、単に大きくすれば良いというのではなく、特定範囲以下とすることも重要であることが明らかとなった。従って、本発明の活性炭によれば、1.5nm以下の細孔の細孔容積及び1.5nm以上2.5nm以下の細孔の細孔容積を特定の範囲に調整することにより、高SV下においても高い総トリハロメタンろ過能力を発揮できるのである。
【0020】
本発明において、特定の細孔径範囲の細孔容積は、QSDFT法によって算出されるものである。QSDFT法(急冷固体密度汎関数法)とは、幾何学的・化学的に不規則なミクロポーラス・メソポーラスな炭素の細孔径解析を対象とした、約0.5nm〜約40nmまでの細孔径分布の計算ができる解析手法である。QSDFT法では、細孔表面の粗さと不均一性による影響が明瞭に考慮されているため、細孔径分布解析の正確さが大幅に向上した手法である。本発明においては、Quantachrome社製「AUTOSORB−1−MP」を用いて窒素吸着等温線の測定、及びQSDFT法による細孔径分布解析をおこなう。77Kの温度において測定した窒素の脱着等温線に対し、Calculation modelとしてN2 at 77K on carbon[slit pore,QSDFT equilibrium model]を適用して細孔径分布を計算することで、特定の細孔径範囲の細孔容積を算出されることができる。
【0021】
本発明の活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Aが0.3cc/g以上0.5cc/g以下であり、大きな空塔速度(SV)での通水処理においても、より高い総トリハロメタンろ過能力を有しやすくする観点から、当該細孔容積Aは0.4cc/g以上0.5cc/g以下が好ましい。
【0022】
特に、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Aが0.4cc/g以上0.5cc/g以下であり、かつ、0.65nm以上0.8nm以下の範囲の細孔径の細孔容積が0.05cc/g以上、好ましくは0.06cc/g以上0.12cc/g以下であると、本発明の活性炭は、大きな空塔速度(SV)での通水処理においても、より一層高い総トリハロメタンろ過能力を有しやすくなる。
【0023】
さらに、大きな空塔速度(SV)での通水処理においても、より高い総トリハロメタンろ過能力を有しやすくする観点から、本発明の活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積が0.2cc/g以上0.4cc/g以下であることが好ましい。また、同様の観点から、本発明の活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以上1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積が0.03cc/g以上0.15cc/g以下であることが好ましい。
【0024】
本発明の活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以上2.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.03cc/g以上0.12cc/g以下であり、大きな空塔速度(SV)での通水処理においても、より高い総トリハロメタンろ過能力を有しやすくする観点から、当該細孔容積Bは0.06cc/g以上0.12cc/g以下が好ましい。
【0025】
本発明の活性炭は、大きな空塔速度(SV)での通水処理においても、より高い総トリハロメタンろ過能力を有しやすくする観点から、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、2.5nm以上の範囲の細孔径の細孔容積Cが0.03cc/g以下であることが好ましい。
【0026】
本発明の活性炭は、大きな空塔速度(SV)での通水処理においても、より高い総トリハロメタンろ過能力を有しやすくする観点から、前記細孔容積Aに対する、前記細孔容積Bの比率(細孔容積B/細孔容積A)が0.1〜0.3であることが好ましく、0.15〜0.3であることがより好ましく、0.15〜0.20であることが特に好ましい。上記比率とすることで、大きな空塔速度(SV)での通水処理において、トリハロメタンの吸着と拡散のバランスがより一層優れたものとなり、より高い総トリハロメタンろ過能力を有しやすくなると考えられる。
【0027】
本発明の活性炭は、活性炭の比表面積(窒素を被吸着物質として用いたBET法(1点法)により測定される値)としては、好ましくは700〜2500m2/g程度、より好ましくは1000〜2000m2/g程度が挙げられる。また、QSDFT法によって算出される活性炭の全細孔容積としては0.35〜1.50cc/g程度、より好ましくは0.35〜1.00cc/g程度であることが好ましい。
【0028】
また、大きな空塔速度(SV)での通水処理においても、トリハロメタンの吸着と拡散のバランスがより一層優れたものとして、より高い総トリハロメタンろ過能力を有しやすくする観点から、本発明の活性炭において、当該全細孔容積(100%)中の前記細孔容積Aの割合としては、好ましくは70〜90%程度、より好ましくは75〜85%程度、特に好ましくは82〜84%程度が挙げられる。同様の観点から、当該全細孔容積(100%)中の前記細孔容積Bの割合としては、好ましくは10〜30%程度、より好ましくは12〜19%程度、特に好ましくは13〜15%程度が挙げられる。
【0029】
後述の通り、本発明の製造方法において、活性炭前駆体の主原料(すなわち、本発明の活性炭の由来となる原料)としては、特に制限されず、例えば、不融化或いは炭素化した有機質材料、フェノール樹脂等の不融性樹脂等が挙げられ、該有機質材料としては、例えば、ポリアクリロニトリル、ピッチ、ポリビニルアルコール、セルロース等が挙げられる。これらの中でも、本発明の活性炭は、ピッチに由来することが好ましく、石炭ピッチに由来することがより好ましい。
【0030】
本発明の活性炭は、上記特定の細孔径分布とするために、活性炭前駆体としてイットリウム化合物を含むものを用いる。そして、本発明の活性炭は、活性炭前駆体に含まれるイットリウム化合物に由来するイットリウム単体及び/又はイットリウム化合物を含むものであってもよい。本発明の活性炭の総質量における、該活性炭に含有されるイットリウム単体及びイットリウム化合物の質量の割合(合計)としては、例えば、0.2〜1.0質量%が挙げられ、0.21〜0.5質量%が好ましく挙げられる。上記割合は、ICP発光分光分析装置(Varian社製型式715−ES)により測定されるイットリウム元素換算の割合(すなわち、イットリウムの含有量)である。
【0031】
本発明の活性炭の形態は特に限定されないが、例えば、粒状活性炭、粉末状活性炭、繊維状活性炭等が挙げられる。フィルター加工して用いる場合の加工性や浄水器で使用する場合の吸着速度の観点から繊維状活性炭とすることがより好ましい。繊維状活性炭の平均繊維径としては、好ましくは30μm以下、より好ましくは5〜20μm程度が挙げられる。なお、本発明の繊維状活性炭の平均繊維径は、画像処理繊維径測定装置(JIS K 1477に準拠)により測定した値である。また、粒状活性炭及び粉末状活性炭の粒径としては、レーザー回折/散乱式法で測定した積算体積百分率D50が0.01〜5mmが挙げられる。
【0032】
本発明の活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Aが0.3cc/g以上0.5cc/g以下であり、かつ、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以上2.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.03cc/g以上0.12cc/g以下であることから、大きな空塔速度(SV)での通水処理においても、高い総トリハロメタンろ過能力を有する活性炭を得ることができる。本発明の活性炭が備える、大きな空塔速度(SV)での通水処理における総トリハロメタンろ過能力としては、例えば、SV3000h-1の場合45〜90L/gが挙げられ、50〜70L/gが好ましく挙げられる。
【0033】
上記総トリハロメタンろ過能力(L/g)の測定は、以下の方法によりおこなう。すなわち、活性炭を105℃の乾燥機で2時間以上乾燥後、3.0gを採取し、ミキサーで叩解した後にガラスカラムに充填する。ガラスカラムは直径25mmのものを用い、高さ41mmになるように充填する。JIS−S−3201「家庭用浄水器試験方法」に基づいて総トリハロメタン(CHCl3:CHCl2Br:CHClBr2:CHBr3=45:30:20:5)濃度が100±20ppbの試料水を調製し、水温20℃±1℃に管理し、空塔速度3000h-1で活性炭カラムに通水する。試料水及び濾過水の濃度は、非放射線源式電子捕獲型検出器(GC7000EN、株式会社ジェイ・サイエンス・ラボ製)を使用しヘッドスペース法で測定する。濾過水の総トリハロメタン除去率が80%を下回るまで連続して試料水を通水し、除去率80%の通水量(L/g)を活性炭の総トリハロメタン吸着能力とする。
【0034】
次に、本発明の活性炭の製造方法について詳細に説明する。
【0035】
本発明の活性炭の製造方法は、イットリウムを0.1〜1.0質量%含む活性炭前駆体を、CO2濃度が50容積%以上の雰囲気下、温度900〜1000℃で賦活する工程を含むことが好ましい。
【0036】
従来、浄水用途、特にトリハロメタン等の低分子の有機ハロゲン系化合物を除去する活性炭においては、活性炭前駆体を、水蒸気を多く含む雰囲気下で賦活する方法が多くおこなわれている。例えば、特許文献1には、実施可能な方法として、フラーレンを活性炭前駆体とし、水蒸気/窒素=50/50(体積比)の雰囲気下で賦活をおこなうことが開示されている。しかし、前述のように、特許文献1で開示された活性炭は1.5nm以上2.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積が小さい。そして、仮に、上記方法において、賦活時間をより長くする等によって、1.5nm以上2.5nm以下の範囲の細孔径の容積を増加することを図ったとしても、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積が減少してしまう。
【0037】
また、特許文献2には、細孔直径30Å以上50Å未満の細孔の容積を特定範囲とするため、Mg、Mn、Fe、Y、Pt及びGdの少なくとも1種の金属成分を含有する活性炭前駆体を、窒素及び飽和水蒸気が存在する雰囲気下、賦活をおこなう方法が開示されている。しかし、該方法では、本発明者等の検討によれば、細孔径1.5nm以下の範囲の細孔容積及び1.5nm以上2.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積を十分に大きいものとすることができない。そして、仮に、上記方法において、賦活時間をより長くする等によって賦活をより進めたとしても、細孔直径30Å以上50Å未満よりも大きい範囲の細孔が発達するのみで1.5nm以上2.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積を大きくすることができない。
【0038】
一方、本発明の製造方法では、イットリウムを0.1〜1.0質量%含む活性炭前駆体を、水蒸気よりもゆるやかに反応するCO2を50容量%以上含む賦活ガスを用いて賦活させることにより、細孔径1.5nm以下の範囲の細孔容積を維持しつつ、1.5nm以上2.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積を制御し特定範囲のものとすることが可能となる。
【0039】
本発明の製造方法において、活性炭前駆体の主原料としては、特に制限されない。例えば、不融化或いは炭素化した有機質材料、フェノール樹脂等の不融性樹脂等が挙げられ、該有機質材料としては、例えば、ポリアクリロニトリル、ピッチ、ポリビニルアルコール、セルロース等が挙げられる。炭素化時の理論炭素化収率の点で、ピッチが好ましく、ピッチの中でも特に石炭ピッチが好ましい。
【0040】
本発明の製造方法において、活性炭前駆体の前記イットリウムの含有量としては、0.1〜1.0質量%が好ましく、0.1〜0.5質量%がより好ましい。イットリウムは、イットリウム単体或いはイットリウム化合物を原料と混合することにより含有させることができる。イットリウム化合物としては、イットリウムを構成金属元素とする、金属酸化物、金属水酸化物、金属ハロゲン化物、金属硫酸塩等の無機金属化合物、酢酸等の有機酸と金属との塩、有機金属化合物などが挙げられる。有機金属化合物としては、金属アセチルアセトナート、芳香族金属化合物等が挙げられる。
【0041】
本発明の製造方法において、賦活の雰囲気は、CO2濃度が50容積%以上であり、好ましくは95容積%以上、より好ましくは99容積%以上である。前述のようにCO2を賦活ガスとするとゆるやかに反応が進むことから、CO2濃度が高くなるほど細孔径分布を調整しやすくなり、本発明の活性炭が得られやすくなる。
【0042】
賦活の雰囲気において、CO2以外の他の成分としては、N2、O2、H2、H2O、COが挙げられる。
【0043】
本発明の製造方法において、賦活の雰囲気温度は通常800〜1000℃程度であり、好ましくは900〜980℃程度である。また、賦活時間としては、活性炭前駆体の主原料、イットリウム化合物の含有量、賦活ガス中のCO2濃度等に応じ、所定の細孔径分布となるよう調整すればよい。例えば、活性炭前駆体の主原料として軟化点が275℃〜288℃のピッチを用い、活性炭前駆体の前記イットリウム化合物の含有量として0.1〜5.0質量部含有するものとして、CO2濃度を100容量%とした場合は、賦活の雰囲気温度は900〜1000℃、賦活時間は10〜50分として賦活をすることが挙げられる。
【実施例】
【0044】
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。
【0045】
各実施例及び比較例につき、以下の方法により評価した。
(1)活性炭前駆体(不融化したピッチ繊維)のイットリウム含有量(質量%)
ピッチ繊維を灰化処理し、灰分を酸に溶解しICP発光分光分析装置(Varian社製型式715−ES)により測定されるイットリウム元素換算の割合をイットリウム含有量とした。
【0046】
(2)活性炭の金属含有量(質量%)
繊維状活性炭を酸に溶解しICP発光分光分析装置(Varian社製型式715−ES)により測定されるイットリウム元素換算の割合をイットリウム含有量とした。
【0047】
(3)細孔容積(cc/g)、比表面積(m2/g)、繊維状活性炭の繊維径(μm)
細孔物性値は、Quantachrome社製「AUTOSORB−1−MP」を用いて77Kにおける窒素吸着等温線より測定した。比表面積はBET法によって相対圧0.1の測定点から計算した。全細孔容積及び表1に記載した各細孔径範囲における細孔容積は、測定した窒素脱着等温線に対し、Calculation modelとしてN2 at 77K on carbon[slit pore,QSDFT equilibrium model]を適用して細孔径分布を計算することで、解析した。具体的に、表1に記載した各細孔径範囲における細孔容積は、図1〜12に示した細孔径分布を示すグラフの読み取り値又は該読み取り値から計算される値である。より具体的に、細孔径0.65nm以下の細孔容積は、細孔径分布図の横軸Pore Widthが0.65nmにおけるCumulative Pore Volume(cc/g)の読み取り値である。同様にして、細孔径0.8nm以下の細孔容積、細孔径1.0nm以下の細孔容積、細孔径1.5nm以下の細孔容積A、細孔径2.5nm以下の細孔容積を得た。細孔径2.5nm以上の細孔容積Cは、QSDFT法により得られる全細孔容積Tから上記細孔径2.5nm以下の細孔容積を減ずることで計算した。細孔径0.65〜0.8nmの範囲の細孔容積は、上記細孔径0.8nm以下の細孔容積から上記細孔径0.65nm以下の細孔容積を減ずることで計算した。細孔径1.0nm〜1.5nmの範囲の細孔容積は、上記細孔径1.5nm以下の細孔容積Aから上記細孔径1.0nm以下の細孔容積を減ずることで計算した。細孔径1.5nm〜2.5nmの範囲の細孔容積Bは、上記細孔径2.5nm以下の細孔容積から上記細孔径1.5nm以下の細孔容積Aを減ずることで計算した。
【0048】
(4)繊維状活性炭の繊維径(μm)
画像処理繊維径測定装置(JIS K 1477に準拠)により測定した。
【0049】
(5)総トリハロメタンろ過能力(L/g)
繊維状活性炭を105℃の乾燥機で2時間以上乾燥後、3.0gを採取し、ミキサーで叩解した後にガラスカラムに充填した。ガラスカラムは直径25mmのものを用い、高さ41mmになるように充填した。JIS−S−3201「家庭用浄水器試験方法」に基づいて総トリハロメタン(CHCl3:CHCl2Br:CHClBr2:CHBr3=45:30:20:5)濃度が100±20ppbの試料水を調製し、水温20℃±1℃に管理し、空塔速度3000h-1で活性炭カラムに通水した。試料水及び濾過水の濃度は、非放射線源式電子捕獲型検出器(GC7000EN、株式会社ジェイ・サイエンス・ラボ製)を使用しヘッドスペース法で測定した。濾過水の総トリハロメタン除去率が80%を下回るまで連続して試料水を通水し、除去率80%の通水量(L/g)を活性炭の総トリハロメタン吸着能力とした。
【0050】
(実施例1)
有機質材料として、軟化点が280℃の粒状石炭ピッチ100質量部に対してトリスアセチルアセトナトイットリウム(金属種Y)1.0質量部を混合したものを、溶融押出機に供給し、溶融温度320℃で溶融混合し、吐出量16g/minで紡糸することによりピッチ繊維を得た。得られたピッチ繊維を空気中常温から354℃まで1〜30℃/分の割合で54分間昇温することにより不融化処理をおこない、不融化されたピッチ繊維である活性炭前駆体を得た。該活性炭前駆体において、イットリウム(Y)の含有量は0.16質量%であった。
【0051】
得られた活性炭前駆体を、CO2濃度が100容量%のガスを賦活炉内に連続的に導入し、雰囲気温度950℃で25分間熱処理することにより賦活をおこない、実施例1の活性炭を得た。得られた活性炭は、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Aが0.33cc/g、1.5nm以上2.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.04cc/g、イットリウムの含有量は0.30質量%、平均繊維径は14.2μmであった。
【0052】
(実施例2)
有機質材料として、軟化点が280℃の粒状石炭ピッチ100質量部に対してトリスアセチルアセトナトイットリウム1.0質量部を混合したものを、溶融押出機に供給し、溶融温度320℃で溶融混合し、吐出量16g/minで紡糸することによりピッチ繊維を得た。得られたピッチ繊維を空気中常温から354℃まで1〜30℃/分の割合で54分間昇温することにより不融化処理をおこない、不融化されたピッチ繊維である活性炭前駆体を得た。該活性炭前駆体において、イットリウムの含有量は0.16質量%であった。
【0053】
得られた活性炭前駆体を、CO2濃度が100容量%のガスを賦活炉内に連続的に導入し、雰囲気温度950℃で32分間熱処理することにより賦活をおこない、実施例2の活性炭を得た。得られた活性炭は、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Aが0.42cc/g、1.5nm以上2.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.07cc/g、イットリウムの含有量は0.35質量%、平均繊維径は14.2μmであった。
【0054】
(実施例3)
有機質材料として、軟化点が280℃の粒状石炭ピッチ100質量部に対してトリスアセチルアセトナトイットリウム1.0質量部を混合したものを、溶融押出機に供給し、溶融温度320℃で溶融混合し、吐出量16g/minで紡糸することによりピッチ繊維を得た。得られたピッチ繊維を空気中常温から354℃まで1〜30℃/分の割合で54分間昇温することにより不融化処理をおこない、不融化されたピッチ繊維である活性炭前駆体を得た。該活性炭前駆体において、イットリウムの含有量は0.16質量%であった。
【0055】
得られた活性炭前駆体を、CO2濃度が100容量%のガスを賦活炉内に連続的に導入し、雰囲気温度950℃で40分間熱処理することにより賦活をおこない、実施例3の活性炭を得た。得られた活性炭は、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Aが0.47cc/g、1.5nm以上2.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.11cc/g、イットリウムの含有量は0.41質量%、平均繊維径は13.9μmであった。
【0056】
(実施例4)
有機質材料として、軟化点が280℃の粒状石炭ピッチ100質量部に対してトリスアセチルアセトナトイットリウム1.0質量部を混合したものを、溶融押出機に供給し、溶融温度320℃で溶融混合し、吐出量19g/minで紡糸することによりピッチ繊維を得た。得られたピッチ繊維を空気中常温から354℃まで1〜30℃/分の割合で54分間昇温することにより不融化処理をおこない、不融化されたピッチ繊維である活性炭前駆体を得た。該活性炭前駆体において、イットリウムの含有量は0.16質量%であった。
【0057】
得られた活性炭前駆体を、CO2濃度が100容量%のガスを賦活炉内に連続的に導入し、雰囲気温度950℃で32分間熱処理することにより賦活をおこない、実施例4の活性炭を得た。得られた活性炭は、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Aが0.41cc/g、1.5nm以上2.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.09cc/g、得られた活性炭中のイットリウムの含有量は0.37質量%、平均繊維径は15.5μmであった。
【0058】
(実施例5)
有機質材料として、軟化点が280℃の粒状石炭ピッチ100質量部に対してトリスアセチルアセトナトイットリウム1.0質量部を混合したものを、溶融押出機に供給し、溶融温度320℃で溶融混合し、吐出量16g/minで紡糸することによりピッチ繊維を得た。得られたピッチ繊維を空気中常温から354℃まで1〜30℃/分の割合で54分間昇温することにより不融化処理をおこない、不融化されたピッチ繊維である活性炭前駆体を得た。該活性炭前駆体において、イットリウムの含有量は0.16質量%であった。
【0059】
得られた活性炭前駆体を、CO2濃度が50容量%、H2O濃度が50容量%のガスを賦活炉内に連続的に導入し、雰囲気温度950℃で15分間熱処理することにより賦活をおこない、実施例5の活性炭を得た。得られた活性炭は、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Aが0.32cc/g、1.5nm以上2.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.09cc/g、イットリウムの含有量は0.33質量%、平均繊維径は14.6μmであった。
【0060】
(比較例1)
特許文献2の実施例5を模擬した試験をおこなった。具体的に、有機質材料として、軟化点が280℃の粒状ピッチ100質量部に対してトリスアセチルアセトナトイットリウム1.3質量部を混合したものを、溶融押出機に供給し、溶融温度320℃で溶融混合し、吐出量20g/minで紡糸することによりピッチ繊維を得た。得られたピッチ繊維を空気中常温から354℃まで1〜30℃/分の割合で54分間昇温することにより不融化処理をおこない、不融化されたピッチ繊維である活性炭前駆体を得た。該活性炭前駆体において、イットリウムの含有量は0.25質量%であった。
【0061】
得られた活性炭前駆体を、H2O濃度が100容量%のガスを賦活炉内に連続的に導入し、雰囲気温度900℃で20分間熱処理することにより賦活をおこない、比較例1の活性炭を得た。得られた活性炭は、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Aが0.34cc/g、1.5nm以上2.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.13cc/g、イットリウムの含有量は0.66質量%、平均繊維径は16.5μmであった。
【0062】
(比較例2)
有機質材料として、軟化点が280℃の粒状石炭ピッチを、溶融押出機に供給し、溶融温度320℃で溶融混合し、吐出量20g/minで紡糸することによりピッチ繊維を得た。得られたピッチ繊維を空気中常温から354℃まで1〜30℃/分の割合で54分間昇温することにより不融化処理をおこない、不融化されたピッチ繊維である活性炭前駆体を得た。該活性炭前駆体において、イットリウムの含有量は0質量%であった。
【0063】
得られた活性炭前駆体を、H2O濃度が100容量%のガスを賦活炉内に連続的に導入し、雰囲気温度875℃で40分間熱処理することにより賦活をおこない、比較例2の活性炭を得た。得られた活性炭は、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Aが0.47cc/g、1.5nm以上2.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.01cc/g、イットリウムの含有量は0質量%、平均繊維径は16.7μmであった。
【0064】
(比較例3)
有機質材料として、軟化点が280℃の粒状石炭ピッチを、溶融押出機に供給し、溶融温度320℃で溶融混合し、吐出量20g/minで紡糸することによりピッチ繊維を得た。得られたピッチ繊維を空気中常温から354℃まで1〜30℃/分の割合で54分間昇温することにより不融化処理をおこない、不融化されたピッチ繊維である活性炭前駆体を得た。該活性炭前駆体において、イットリウムの含有量は0質量%であった。
【0065】
得られた活性炭前駆体を、CO2濃度が100容量%のガスを賦活炉内に連続的に導入し、雰囲気温度950℃で60分間熱処理することにより賦活をおこない、比較例3の活性炭を得た。得られた活性炭は、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Aが0.32cc/g、1.5nm以上2.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.00cc/g、イットリウムの含有量は0質量%、平均繊維径は18.5μmであった。
【0066】
(比較例4)
有機質材料として、軟化点が280℃の粒状石炭ピッチ100質量部に対してトリスアセチルアセトナトイットリウム0.3質量部を混合したものを、溶融押出機に供給し、溶融温度320℃で溶融混合し、吐出量20g/minで紡糸することによりピッチ繊維を得た。得られたピッチ繊維を空気中常温から354℃まで1〜30℃/分の割合で54分間昇温することにより不融化処理をおこない、不融化されたピッチ繊維である活性炭前駆体を得た。該活性炭前駆体において、イットリウムの含有量は0.06質量%であった。
【0067】
得られた活性炭前駆体を、CO2濃度が100容量%のガスを賦活炉内に連続的に導入し、雰囲気温度950℃で67分間熱処理することにより賦活をおこない、比較例4の活性炭を得た。得られた活性炭は、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Aが0.61cc/g、1.5nm以上2.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.11cc/g、イットリウムの含有量は0.17質量%、平均繊維径は16.8μmであった。
【0068】
(比較例5)
有機質材料として、軟化点が280℃の粒状石炭ピッチ100質量部に対してトリスアセチルアセトナトイットリウム0.3質量部を混合したものを、溶融押出機に供給し、溶融温度320℃で溶融混合し、吐出量20g/minで紡糸することによりピッチ繊維を得た。得られたピッチ繊維を空気中常温から354℃まで1〜30℃/分の割合で54分間昇温することにより不融化処理をおこない、不融化されたピッチ繊維である活性炭前駆体を得た。該活性炭前駆体において、イットリウムの含有量は0.06質量%であった。
【0069】
得られた活性炭前駆体を、CO2濃度が100容量%のガスを賦活炉内に連続的に導入し、雰囲気温度950℃で70分間熱処理することにより賦活をおこない、比較例5の活性炭を得た。得られた活性炭は、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Aが0.64cc/g、1.5nm以上2.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.12cc/g、イットリウムの含有量は0.18質量%、平均繊維径は16.8μmであった。
【0070】
(比較例6)
有機質材料として、軟化点が280℃の粒状石炭ピッチ100質量部に対してトリスアセチルアセトナトイットリウム0.3質量部を混合したものを、溶融押出機に供給し、溶融温度320℃で溶融混合し、吐出量20g/minで紡糸することによりピッチ繊維を得た。得られたピッチ繊維を空気中常温から354℃まで1〜30℃/分の割合で54分間昇温することにより不融化処理をおこない、不融化されたピッチ繊維である活性炭前駆体を得た。該活性炭前駆体において、イットリウムの含有量は0.06質量%であった。
【0071】
得られた活性炭前駆体を、CO2濃度が100容量%のガスを賦活炉内に連続的に導入し、雰囲気温度950℃で60分間熱処理することにより賦活をおこない、比較例6の活性炭を得た。得られた活性炭は、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Aが0.58cc/g、1.5nm以上2.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.06cc/g、イットリウムの含有量は0.15質量%、繊維径は18.2μmであった。
【0072】
(比較例7)
有機質材料として、軟化点が280℃の粒状石炭ピッチ100質量部に対してトリスアセチルアセトナトイットリウム1.0質量部を混合したものを、溶融押出機に供給し、溶融温度320℃で溶融混合し、吐出量19g/minで紡糸することによりピッチ繊維を得た。得られたピッチ繊維を空気中常温から354℃まで1〜30℃/分の割合で54分間昇温することにより不融化処理をおこない、不融化されたピッチ繊維である活性炭前駆体を得た。該活性炭前駆体において、イットリウムの含有量は0.16質量%であった。
【0073】
得られた活性炭前駆体を、CO2濃度が50容量%、H2O濃度が50容量%のガスを賦活炉内に連続的に導入し、雰囲気温度950℃で20分間熱処理することにより賦活をおこない、比較例7の活性炭を得た。得られた活性炭は、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Aが0.35cc/g、1.5nm以上2.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.15cc/g、イットリウムの含有量は0.46質量%、平均繊維径は14.6μmであった。
【0074】
得られた活性炭の物性を表1に示す。また、図1〜12に、実施例1〜5、比較例1〜7の活性炭のQSDFT法によって算出される細孔径分布図を示す。
【0075】
【表1】
【0076】
実施例1〜5の活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Aが0.3cc/g以上0.5cc/g以下であり、かつ、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以上2.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.03cc/g以上0.12cc/g以下であることから、大きな空塔速度(SV)での通水処理においても、高い総トリハロメタンろ過能力を有する活性炭を得ることができるものであった。
【0077】
特に、実施例2の活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Aが0.4cc/g以上0.5cc/g以下であり、1.5nm以上2.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.06cc/g以上0.12cc/g以下であり、前記細孔容積Aに対する、前記細孔容積Bの比率(細孔容積B/細孔容積A)が0.15〜0.20であることから、上記総トリハロメタンろ過能力が特に優れたものであった。
【0078】
一方、比較例1及び7の活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以上2.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.12cc/gを超えるものであったことから、上記総トリハロメタンろ過能力が劣るものであった。
【0079】
比較例2及び3の活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以上2.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bが0.03cc/g未満であったことから、上記総トリハロメタンろ過能力が劣るものであった。
【0080】
比較例4〜6の活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Aが0.5cc/gを超えるものであったことから、上記総トリハロメタンろ過能力が劣るものであった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】