特表-18131687IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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  • 再表WO2018131687-積層体 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2018年7月19日
【発行日】2019年11月7日
(54)【発明の名称】積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/12 20060101AFI20191011BHJP
   B32B 25/10 20060101ALI20191011BHJP
   B05D 1/18 20060101ALI20191011BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20191011BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20191011BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20191011BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20191011BHJP
   A41D 19/00 20060101ALI20191011BHJP
【FI】
   B32B27/12
   B32B25/10
   B05D1/18
   B05D7/24 301E
   B05D1/36 Z
   B05D3/00 D
   B05D7/00 B
   B05D7/24 302N
   B05D7/24 303E
   B05D7/24 302Q
   B05D7/24 302P
   B05D7/24 302G
   B05D3/00 F
   A41D19/00 P
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】26
【出願番号】特願2018-561431(P2018-561431)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2018年1月12日
(31)【優先権主張番号】特願2017-4131(P2017-4131)
(32)【優先日】2017年1月13日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】谷山 友哉
(72)【発明者】
【氏名】早坂 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 慎二
【テーマコード(参考)】
3B033
4D075
4F100
【Fターム(参考)】
3B033AB19
3B033AC03
3B033BA01
4D075AB01
4D075AB43
4D075AB51
4D075AB52
4D075AB54
4D075AE01
4D075BB16X
4D075BB24Z
4D075BB26Z
4D075BB60X
4D075BB91Y
4D075BB92Y
4D075BB93Y
4D075CA03
4D075CA13
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA04
4D075DB20
4D075DB32
4D075DC38
4D075EA06
4D075EA10
4D075EB12
4D075EB13
4D075EB14
4D075EB19
4D075EB22
4D075EB51
4D075EB56
4D075EC01
4D075EC02
4D075EC07
4D075EC08
4D075EC33
4D075EC54
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK21B
4F100AK27A
4F100AK27B
4F100AK28A
4F100AK28B
4F100AN02A
4F100AN02B
4F100BA02
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100DG01A
4F100GB71
4F100JA06
4F100JB09B
4F100JK06
4F100JM01B
4F100YY00A
4F100YY00B
(57)【要約】
複数の繊維から構成される繊維基材と、重合体ラテックスから形成される重合体層とが積層されてなる積層体であって、前記重合体層は、一部が、前記繊維の間に浸透した状態で前記繊維基材を被覆しており、前記重合体層のうち、前記繊維の間に浸透した部分である浸透重合体層の、前記繊維基材の表面からの厚みをt[μm]とし、前記繊維基材の基材層平均厚みをd[μm]とした場合に、前記基材層平均厚みdに対する前記浸透重合体層の厚みtの比(t/d)が、0.1〜0.95であり、前記重合体層のうち、前記繊維基材の表面を被覆する部分である表面重合体層の、前記繊維基材の表面からの厚みをt[μm]とした場合に、前記表面重合体層の厚みt[μm]が、80μm以上である積層体を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の繊維から構成される繊維基材と、重合体ラテックスから形成される重合体層とが積層されてなる積層体であって、
前記重合体層は、一部が、前記繊維の間に浸透した状態で前記繊維基材を被覆しており、
前記重合体層のうち、前記繊維の間に浸透した部分である浸透重合体層の、前記繊維基材の表面からの厚みをt[μm]とし、前記繊維基材の基材層平均厚みをd[μm]とした場合に、前記基材層平均厚みdに対する前記浸透重合体層の厚みtの比(t/d)が、0.1〜0.95であり、
前記重合体層のうち、前記繊維基材の表面を被覆する部分である表面重合体層の、前記繊維基材の表面からの厚みをt[μm]とした場合に、前記表面重合体層の厚みt[μm]が、80μm以上である積層体。
【請求項2】
前記重合体ラテックスが、増粘剤としてノニオン性水溶性高分子を含有する請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記重合体ラテックス中における、前記ノニオン性水溶性高分子の含有割合が、0.1〜5.0重量%である請求項2に記載の積層体。
【請求項4】
前記ノニオン性水溶性高分子が、ポリビニルアルコールおよび/またはポリビニルピロリドンである請求項2または3に記載の積層体。
【請求項5】
前記重合体ラテックスを構成する重合体がニトリルゴムである請求項1〜4のいずれかに記載の積層体。
【請求項6】
前記ニトリルゴムが、エチレン性不飽和ニトリル単量体単位、共役ジエン単量体単位、およびエチレン性不飽和酸単量体単位を含有する請求項5に記載の積層体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の積層体を備える保護手袋。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の積層体の製造方法であって、
前記重合体ラテックスを、前記繊維基材に付着させるラテックス付着工程と、
前記繊維基材に付着させた前記重合体ラテックスに、凝固剤溶液を接触させて前記重合体ラテックス中の重合体を凝固させることで、前記重合体層を形成する凝固工程と、を備え、
前記重合体ラテックスを前記繊維基材に付着させる際に、前記重合体ラテックスの粘度を、B型粘度計を用いて測定される回転速度10rpmの条件における粘度で、600〜25,000mPa・sの範囲に制御した状態にて、前記重合体ラテックスを前記繊維基材に付着させる積層体の製造方法。
【請求項9】
前記重合体ラテックスを前記繊維基材に付着させる際に、前記重合体ラテックスを、温度が25℃、固形分濃度が45重量%、および、B型粘度計を用いて測定される回転速度10rpmの条件における粘度が600〜25,000mPa・sに制御された状態にて、前記重合体ラテックスを前記繊維基材に付着させる請求項8に記載の積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の繊維から構成される繊維基材と、重合体ラテックスから形成される重合体層とが積層されてなる積層体に関するものである。また、本発明は、上記積層体を備える保護手袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、工場での製造作業、軽作業、工事作業、農作業等の様々な用途で、繊維製手袋をゴムや樹脂等により被覆することで、耐溶剤性、グリップ性、耐摩耗性等を向上させた保護手袋が作業用手袋として用いられている。
【0003】
このような保護手袋としては、たとえば、手袋型に装着した繊維製手袋の外表面に、ゴムや樹脂を付着させて被膜を形成することにより得られる保護手袋等が知られているが、繊維製手袋にゴムや樹脂を付着させる際に、ゴムや樹脂が繊維製手袋の外表面から内部まで浸透してしまう場合があり、これにより、ゴムや樹脂が手袋型に付着して、保護手袋を手袋型から外すのが困難になってしまい、保護手袋の生産性が低下しまうとともに、得られる保護手袋を装着した際の快適性が低下してしまうという問題があった。
【0004】
このような問題を解決するために、たとえば、特許文献1には、繊維製手袋に、酸もしくは多価金属塩等を溶解してなる凝固剤溶液を含浸させた後、手袋体の該表面に、ゴムまたは合成樹脂のエマルジョンを接触させて薄膜を形成し、さらに、該薄膜上に合成樹脂のペーストの塗膜を形成してなる保護手袋が開示されている。しかしながら、特許文献1の技術により得られる保護手袋は、ゴムまたは合成樹脂のエマルジョンを用いて形成される薄膜について、厚みや、繊維製手袋への浸透量が制御されておらず、得られる保護手袋の柔軟性が低下してしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−118102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、生産性に優れ、しかも、柔軟性および装着時の快適性にも優れた積層体を提供することを目的とする。また、本発明は、このような積層体を備える保護手袋を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、複数の繊維から構成される繊維基材と、重合体ラテックスから形成される重合体層とが積層されてなる積層体であって、重合体層のうち前記繊維の間に浸透した部分の厚みの、前記繊維基材の基材層平均厚みに対する比を、所定範囲に制御するとともに、重合体層のうち繊維基材の表面を被覆する部分の厚みも、所定範囲に制御することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明によれば、複数の繊維から構成される繊維基材と、重合体ラテックスから形成される重合体層とが積層されてなる積層体であって、前記重合体層は、一部が、前記繊維の間に浸透した状態で前記繊維基材を被覆しており、前記重合体層のうち、前記繊維の間に浸透した部分である浸透重合体層の、前記繊維基材の表面からの厚みをt[μm]とし、前記繊維基材の基材層平均厚みをd[μm]とした場合に、前記基材層平均厚みdに対する前記浸透重合体層の厚みtの比(t/d)が、0.1〜0.95であり、前記重合体層のうち、前記繊維基材の表面を被覆する部分である表面重合体層の、前記繊維基材の表面からの厚みをt[μm]とした場合に、前記表面重合体層の厚みt[μm]が、80μm以上である積層体が提供される。
【0009】
本発明の積層体において、前記重合体ラテックスが、増粘剤としてノニオン性水溶性高分子を含有することが好ましい。
本発明の積層体において、前記重合体ラテックス中における、前記ノニオン性水溶性高分子の含有割合が、0.1〜5.0重量%であることが好ましい。
本発明の積層体において、前記ノニオン性水溶性高分子が、ポリビニルアルコールおよび/またはポリビニルピロリドンであることが好ましい。
本発明の積層体において、前記重合体ラテックスを構成する重合体がニトリルゴムであることが好ましい。
本発明の積層体において、前記ニトリルゴムが、エチレン性不飽和ニトリル単量体単位、共役ジエン単量体単位、およびエチレン性不飽和酸単量体単位を含有するものであることが好ましい。
【0010】
また、本発明によれば、上記の積層体を備える保護手袋が提供される。
【0011】
さらに、本発明によれば、上記の積層体の製造方法であって、前記重合体ラテックスを、前記繊維基材に付着させるラテックス付着工程と、前記繊維基材に付着させた前記重合体ラテックスに、凝固剤溶液を接触させて前記重合体ラテックス中の重合体を凝固させることで、前記重合体層を形成する凝固工程と、を備え、前記重合体ラテックスを前記繊維基材に付着させる際に、前記重合体ラテックスの粘度を、B型粘度計を用いて測定される回転速度10rpmの条件における粘度で、600〜25,000mPa・sの範囲に制御した状態にて、前記重合体ラテックスを前記繊維基材に付着させる積層体の製造方法が提供される。
本発明の積層体の製造方法において、前記重合体ラテックスを前記繊維基材に付着させる際に、前記重合体ラテックスを、温度が25℃、固形分濃度が45重量%、および、B型粘度計を用いて測定される回転速度10rpmの条件における粘度が600〜25,000mPa・sに制御された状態にて、前記重合体ラテックスを前記繊維基材に付着させることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、生産性に優れ、しかも、柔軟性および装着時の快適性にも優れた積層体を提供することができる。また、本発明によれば、このような積層体を備える保護手袋を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明で用いる繊維基材の模式図、および本発明の積層体の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の積層体は、複数の繊維から構成される繊維基材と、重合体ラテックスから形成される重合体層とが積層されてなる積層体であって、前記重合体層は、一部が、前記繊維の間に浸透した状態で前記繊維基材を被覆しており、前記重合体層のうち、前記繊維の間に浸透した部分である浸透重合体層の、前記繊維基材の表面からの厚みをt[μm]とし、前記繊維基材の基材層平均厚みをd[μm]とした場合に、前記基材層平均厚みdに対する前記浸透重合体層の厚みtの比(t/d)が、0.1〜0.95であり、前記重合体層のうち、前記繊維基材の表面を被覆する部分である表面重合体層の、前記繊維基材の表面からの厚みをt[μm]とした場合に、前記表面重合体層の厚みt[μm]が、80μm以上であることを特徴とする。
【0015】
本発明で用いる繊維基材としては、特に限定されず、繊維製のものであればよい。繊維基材を構成する繊維としては、綿、毛、麻、羊毛等の天然繊維、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル、ナイロン等の合成繊維などを素材として用いることができ、これらの中でも、綿を用いることが好ましい。
【0016】
本発明で用いる繊維基材を構成する繊維は、単繊維(上記の天然繊維や合成繊維などから取り出される一本一本)であってもよいし、複数の単繊維からなる撚糸であってもよいが、撚糸であることが好ましい。
【0017】
繊維基材は、上述した繊維の編物または織物であってもよいし、不織布であってもよい。また、繊維基材は、縫製されたものであってもよい。
【0018】
本発明の積層体においては、上述したように、繊維基材の基材層平均厚みdに対する、重合体層の浸透重合体層の厚みtの比(t/d)が上記範囲にあればよいが、繊維基材の基材層平均厚みdは、好ましくは50〜3,000μm、より好ましくは100〜2,000μm、さらに好ましくは400〜900μmである。基材層平均厚みdを上記範囲とすることにより、得られる積層体の強度をより向上させることができる。
【0019】
なお、繊維基材は、複数の繊維により構成されるため、特に、繊維基材が織布である場合には、通常、繊維が折り重なって厚み方向における繊維の重なり度合いが密になっている部分(重なり合っている繊維の数が多い部分)と、厚み方向における繊維の重なり度合いが疎になっている部分(重なり合っている繊維の数が少ない部分)とが存在し、これらの部分を含む層(基材層)によって、構成されることとなる。そのため、繊維基材は、そのミクロ構造においては、繊維の重なり度合いが密になっている部分と、繊維の重なり度合いが疎になっている部分とで、その厚みが異なる場合があるが、本発明においては、繊維基材の基材層平均厚みdは、繊維基材について、繊維の重なり度合いが密になっている部分の厚みを、その厚みとした平均値として、求めることとする。すなわち、繊維の重なり度合いが密になっている部分の厚みを平均したものを基材層平均厚みdとする。
【0020】
また、繊維基材を構成する繊維の線密度は、特に限定されないが、好ましくは50〜500デニールである。
【0021】
繊維基材のゲージ数は、特に限定されないが、重合体層の一部を繊維基材により適度に浸透させることができる(繊維基材上に重合体層を形成する際に、形成される重合体層のうち、浸透重合体層の厚みtをより適度な範囲に制御することができる)という観点より、好ましくは7〜18ゲージである。ここで、ゲージ数は、1インチの間にある編機の針の数をいう。
【0022】
本発明の積層体は、たとえば、このような繊維基材に、後述する重合体ラテックスを付着させた後、繊維基材に付着した重合体ラテックスに凝固剤溶液を接触させて重合体ラテックス中の重合体を凝固させることで、重合体層を形成することにより得ることができる。この際においては、重合体層は、繊維基材に一部が浸透した状態で、繊維基材を被覆するようにして形成される。
【0023】
本発明で用いる重合体ラテックスとしては、特に限定されないが、得られる積層体を柔軟性により優れるものとすることができるという点より、重合体としてゴム状重合体を含有するものを用いることが好ましく、ゴム状重合体としては、天然ゴム;ブタジエンやイソプレンなどの共役ジエンを重合または共重合してなる共役ジエン系ゴム;等が挙げられ、これらの中でも、共役ジエン系ゴムが好ましい。共役ジエン系ゴムとしては、ニトリルを共重合してなるいわゆるニトリルゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム等が挙げられ、これらの中でも、ニトリルゴムが特に好ましい。
【0024】
ニトリルゴムとしては、特に限定されないが、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体および必要に応じて用いられる共重合可能なその他の単量体を共重合したものを用いることができる。
【0025】
α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、特に限定されないが、ニトリル基を有し、炭素数が、好ましくは3〜18であるエチレン性不飽和化合物を用いることができる。このようなα,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ハロゲン置換アクリロニトリルなどが挙げられ、これらの中でも、アクリロニトリルが特に好ましい。なお、これらのα,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
ニトリルゴムにおけるα,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有割合は、全単量体単位に対して、好ましくは10〜45重量%、より好ましくは20〜40重量%である。α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有割合を上記範囲にすることにより、得られる積層体の耐溶剤性を向上させることができ、かつ、風合いを向上させることができる。
【0027】
また、ニトリルゴムとしては、得られる重合体層にゴム弾性を付与するという観点より、共役ジエン単量体単位を含有するものが好ましい。
【0028】
共役ジエン単量体単位を形成する共役ジエン単量体としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、クロロプレンなどの炭素数4〜6の共役ジエン単量体が好ましく、1,3−ブタジエン及びイソプレンがより好ましく、1,3−ブタジエンが特に好ましい。なお、これらの共役ジエン単量体は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
共役ジエン単量体単位の含有割合は、ニトリルゴムを構成する全単量体単位に対して、好ましくは40〜80重量%、より好ましくは52〜78重量%である。共役ジエン単量体単位の含有割合を上記範囲にすることにより、得られる積層体について、耐溶剤性を向上させることができ、かつ、保護手袋として用いた場合における風合いを向上させることができる。
【0030】
また、ニトリルゴムは、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位を形成する単量体、および共役ジエン単量体単位を形成する単量体と共重合可能なその他のエチレン性不飽和酸単量体を含んでいてもよい。
【0031】
このような共重合可能なその他のエチレン性不飽和酸単量体としては、特に限定されないが、たとえば、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体、スルホン酸基含有エチレン性不飽和単量体、リン酸基含有エチレン性不飽和単量体などが挙げられる。
【0032】
カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体としては、特に限定されないが、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸;フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等のエチレン性不飽和多価カルボン酸およびその無水物;マレイン酸メチル、イタコン酸メチル等のエチレン性不飽和多価カルボン酸の部分エステル化物;などが挙げられる。
【0033】
スルホン酸基含有エチレン性不飽和単量体としては、特に限定されないが、ビニルスルホン酸、メチルビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、(メタ)アクリル酸−2−スルホン酸エチル、2−アクリルアミド−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸などが挙げられる。
【0034】
リン酸基含有エチレン性不飽和単量体としては、特に限定されないが、(メタ)アクリル酸−3−クロロ−2−リン酸プロピル、(メタ)アクリル酸−2−リン酸エチル、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンリン酸などが挙げられる。
【0035】
これらの共重合可能なその他のエチレン性不飽和酸単量体は、アルカリ金属塩またはアンモニウム塩として用いることもでき、また、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記の共重合可能なその他のエチレン性不飽和酸単量体のなかでも、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体が好ましく、エチレン性不飽和モノカルボン酸がより好ましく、メタクリル酸が特に好ましい。
【0036】
本発明で用いる重合体ラテックスを構成する重合体中における、共重合可能なその他のエチレン性不飽和酸単量体の含有量は、重合体中の全単量体単位に対して、好ましくは2〜8重量%である。共重合可能なその他のエチレン性不飽和酸単量体単位の含有量を上記範囲にすることにより、繊維基材上に形成する重合体層の成形性を優れたものとすることができ、かつ、得られる積層体を保護手袋として用いた場合における風合いを向上させることができる。
【0037】
重合体ラテックスを構成する重合体は、上述したエチレン性不飽和ニトリル単量体単位、共役ジエン単量体単位、および共重合可能なその他のエチレン性不飽和酸単量体単位に加えて、さらに他の単量体単位を含有していてもよい。
【0038】
他の単量体単位を形成する他の単量体としては、共役ジエン単量体、エチレン性不飽和ニトリル単量体単位、およびエチレン性不飽和酸単量体と共重合可能な単量体であればよく、特に限定されないが、たとえば、以下の単量体が挙げられる。
【0039】
すなわち、他の単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、モノクロルスチレン、ジクロルスチレン、トリクロルスチレン、モノメチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン等の芳香族ビニル単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド等のエチレン性不飽和カルボン酸アミド単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等のエチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル単量体;エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン単量体;メチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル等のビニルエーテル単量体;酢酸アリル、酢酸メタリル、塩化アリル、塩化メタリル等の(メタ)アリル化合物;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン;などを挙げることができ、これらの中でも、得られる積層体の強度をより高めることができるという観点より、芳香族ビニル単量体が好ましい。これらの他の単量体は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
重合体ラテックスを構成する重合体中の他の単量体単位の含有量は、繊維基材から重合体層が剥離してしまうことを防止する観点、作業用手袋として用いた場合の作業時の疲労を抑制する観点、および作業用手袋として着用した場合における溶剤ガスの透過を抑制する観点から、重合体中の全単量体単位に対して、好ましくは26重量%以下、より好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは7重量%以下、特に好ましくは5重量%以下である。
【0041】
本発明で用いる重合体ラテックスとしては、特に限定されず、たとえば上記の単量体を含有してなる単量体混合物を重合して得られる重合体のラテックスであればよく、前記単量体混合物を乳化重合して得られるラテックス、前記単量体混合物を溶液重合して得られる重合体溶液を転相乳化して得られるラテックス、などを用いることができる。
乳化重合して得られるラテックスを用いる場合には、乳化重合に用いる単量体混合物の組成を調節することにより、得られる共重合体の組成を容易に調節することができるようになる。乳化重合の方法としては、従来公知の方法を採用することができる。
【0042】
上記の単量体の混合物を乳化重合するには、通常用いられる、乳化剤、重合開始剤、分子量調整剤等の重合副資材を使用することができる。これら重合副資材の添加方法は特に限定されず、初期一括添加法、分割添加法、連続添加法などいずれの方法でもよい。
【0043】
乳化剤としては、特に限定されないが、たとえば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、および両性界面活性剤などが挙げられ、これらの中でも、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコールの硫酸エステル塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤が好ましい。
乳化剤の使用量は、使用する全単量体100重量部に対して、好ましくは0.5〜10重量部、より好ましくは1〜8重量部である。
【0044】
重合開始剤としては、特に限定されないが、ラジカル開始剤が好ましい。ラジカル開始剤としては、特に限定されないが、たとえば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、過酸化水素等の無機過酸化物;t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル等のアゾ化合物;などが挙げられ、これらの中でも、無機過酸化物または有機過酸化物が好ましく、無機過酸化物がより好ましく、過硫酸塩が特に好ましい。これらの重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合開始剤の使用量は、使用する全単量体100重量部に対して、好ましくは0.01〜2重量部、より好ましくは0.05〜1.5重量部である。
【0045】
分子量調整剤としては、特に限定されないが、たとえば、α−メチルスチレンダイマー;t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン等のメルカプタン類;四塩化炭素、塩化メチレン、臭化メチレン等のハロゲン化炭化水素;テトラエチルチウラムダイサルファイド、ジペンタメチレンチウラムダイサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンダイサルファイド等の含硫黄化合物;などが挙げられ、これらの中でも、メルカプタン類が好ましく、t−ドデシルメルカプタンがより好ましい。これらの分子量調整剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
分子量調整剤の使用量は、その種類によって異なるが、使用する全単量体100重量部に対して、好ましくは0.1〜1.5重量部、より好ましくは0.2〜1.0重量部である。
【0046】
乳化重合は、通常、水中で行なわれる。水の使用量は、使用する全単量体100重量部に対して、好ましくは80〜500重量部、より好ましくは100〜200重量部である。
【0047】
乳化重合に際し、必要に応じて、上記以外の重合副資材をさらに用いてもよい。重合副資材としては、キレート剤、分散剤、pH調整剤、脱酸素剤、粒子径調整剤等が挙げられ、これらの種類、使用量とも特に限定されない。
【0048】
単量体の添加方法としては、たとえば、反応容器に使用する単量体を一括して添加する方法、重合の進行に従って連続的または断続的に添加する方法、単量体の一部を添加して特定の転化率まで反応させ、その後、残りの単量体を連続的または断続的に添加して重合する方法等が挙げられ、いずれの方法を採用してもよい。単量体を混合して連続的または断続的に添加する場合、混合物の組成は、一定としても、あるいは変化させてもよい。
また、各単量体は、使用する各種単量体を予め混合してから反応容器に添加しても、あるいは別々に反応容器に添加してもよい。
【0049】
乳化重合する際の重合温度は、特に限定されないが、通常、0〜95℃であり、好ましくは5〜70℃である。重合時間は、特に限定されないが、通常、5〜40時間程度である。
【0050】
以上のように単量体を乳化重合し、所定の重合転化率に達した時点で、重合系を冷却したり、重合停止剤を添加したりして、重合反応を停止する。重合反応を停止する際の重合転化率は、通常、80重量%以上であり、好ましくは90重量%以上である。
【0051】
重合停止剤は、通常、乳化重合において使用されているものであれば、特に限定されないが、その具体例としては、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシアミン硫酸塩、ジエチルヒドロキシアミン、ヒドロキシアミンスルホン酸及びそのアルカリ金属塩等のヒドロキシアミン化合物;ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム;ハイドロキノン誘導体;カテコール誘導体;ヒドロキシジメチルベンゼンチオカルボン酸、ヒドロキシジエチルベンゼンジチオカルボン酸、ヒドロキシジブチルベンゼンジチオカルボン酸等の芳香族ヒドロキシジチオカルボン酸及びこれらのアルカリ金属塩等の芳香族ヒドロキシジチオカルボン酸化合物;等が挙げられる。
重合停止剤の使用量は、特に限定されないが、通常、使用する全単量体100重量部に対して、0.05〜2重量部である。
【0052】
重合反応を停止した後、所望により、未反応の単量体を除去し、固形分濃度やpHを調整してもよい。
【0053】
重合体ラテックスを構成する重合体の粒子の重量平均粒子径は、通常、30〜1000nm、好ましくは50〜500nm、より好ましくは70〜200nmである。重合体の粒子の重量平均粒子径を上記範囲にすることにより、重合体ラテックスの粘度が適度なものとなって重合体ラテックスの取扱性がより向上するとともに、重合体層を成形する際の成形性が向上してより均質な重合体層を有する積層体が得られるようになる。
【0054】
重合体ラテックスの固形分濃度は、通常、20〜65重量%であり、好ましくは30〜60重量%、より好ましくは35〜55重量%である。この重合体ラテックスの固形分濃度を上記範囲にすることにより、ラテックスの輸送効率を向上させることができ、かつ、重合体ラテックスの粘度が適度なものとなって重合体ラテックスの取扱性が向上する。
【0055】
重合体ラテックスのpHは、通常、5〜13であり、好ましくは7〜10、より好ましくは7.5〜9である。重合体ラテックスのpHを上記範囲にすることにより、機械的安定性が向上して重合体ラテックスの移送時における粗大凝集物の発生を抑制することができ、かつ、重合体ラテックスの粘度が適度なものとなって重合体ラテックスの取扱性が向上する。
【0056】
さらに、本発明で用いる重合体ラテックスには、架橋剤、架橋促進剤、または酸化亜鉛等を添加することができる。すなわち、本発明で用いる重合体ラテックスは、架橋剤、架橋促進剤、または酸化亜鉛等を添加して、重合体ラテックス組成物としてもよく、重合体ラテックス組成物の形態にて、重合体層の形成に用いてもよい。
【0057】
架橋剤としては、硫黄系架橋剤を用いることが好ましい。硫黄系架橋剤としては、特に限定されないが、粉末硫黄、硫黄華、沈降性硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄などの硫黄;塩化硫黄、二塩化硫黄、モルホリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、ジベンゾチアジルジスルフィド、カプロラクタムジスルフィド(N,N’−ジチオ−ビス(ヘキサヒドロ−2H−アゼピノン−2))、含リンポリスルフィド、高分子多硫化物などの含硫黄化合物;テトラメチルチウラムジスルフィド、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールなどの硫黄供与性化合物;などが挙げられる。これらの架橋剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
硫黄系架橋剤の添加量は、重合体ラテックス中の全固形分100重量部に対して、好ましくは0.01〜5重量部、より好ましくは0.05〜3重量部、特に好ましくは0.1〜2重量部である。硫黄系架橋剤の添加量を上記範囲にすることにより、得られる積層体について、耐溶剤性を向上させることができ、かつ、保護手袋として用いた場合における風合いを向上させることができる。
【0059】
硫黄系架橋剤は、硫黄系架橋剤を溶媒に分散させた分散液として添加することが好ましい。分散液として重合体ラテックスに添加することにより、得られる重合体層におけるき裂、ピンホールの発生、および凝集物の付着等の欠陥が少ない積層体が得られる。
【0060】
硫黄系架橋剤の分散液の調製方法としては、特に限定されないが、硫黄系架橋剤に溶媒を添加し、ボールミルやビーズミルなどの湿式粉砕機で粉砕攪拌する方法が好ましい。
【0061】
硫黄系架橋剤として硫黄を使用する場合には、架橋促進剤(加硫促進剤)や、酸化亜鉛を併用することが好ましい。
【0062】
架橋促進剤(加硫促進剤)としては、特に限定されないが、たとえば、ジエチルジチオカルバミン酸、ジブチルジチオカルバミン酸、ジ−2−エチルヘキシルジチオカルバミン酸、ジシクロヘキシルジチオカルバミン酸、ジフェニルジチオカルバミン酸、ジベンジルジチオカルバミン酸などのジチオカルバミン酸類およびそれらの亜鉛塩;2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛、2−メルカプトチアゾリン、ジベンゾチアジル・ジスルフィド、2−(2,4−ジニトロフェニルチオ)ベンゾチアゾール、2−(N,N−ジエチルチオ・カルバイルチオ)ベンゾチアゾール、2−(2,6−ジメチル−4−モルホリノチオ)ベンゾチアゾール、2−(4′−モルホリノ・ジチオ)ベンゾチアゾール、4−モルホリニル−2−ベンゾチアジル・ジスルフィド、1,3−ビス(2−ベンゾチアジル・メルカプトメチル)ユリアなどが挙げられ、これらの中でも、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛が好ましい。これらの架橋促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
架橋促進剤の使用量は、重合体ラテックス中の全固形分100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部である。
【0063】
また、酸化亜鉛の使用量は、重合体ラテックス中の全固形分100重量部に対して、好ましくは5重量部以下、より好ましく0.1〜3重量部、さらに好ましくは0.5〜2重量部である。
【0064】
重合体ラテックスとして、架橋剤を添加したものを用いる場合には、重合体ラテックスとして、予め熟成(前加硫ともいう。)させたものを用いてもよい。
【0065】
重合体ラテックスの粘度は、温度25℃かつ固形分濃度45重量%の条件においてB型粘度計を使用し回転速度10rpmの条件下で測定される粘度で、好ましくは600〜25,000mPa・sであり、より好ましくは800〜20,000mPa・s、さらに好ましくは900〜15,000mPa・s、特に好ましくは1,000〜12,000mPa・sである。重合体ラテックスの粘度を上記範囲とすることにより、形成される重合体層が繊維基材の裏面まで到達してしまう裏抜けの発生をより有効に防止することができるとともに、より適切に重合体層を形成することができるようになるため、得られる積層体を保護手袋として用いた場合に、耐久性(重合体層の耐剥離性および耐切創性など)、および柔軟性をより高度にバランスさせることができる。
【0066】
なお、重合体ラテックスの粘度を上記範囲とする方法としては、特に限定されないが、たとえば、重合体ラテックスに増粘剤を添加する方法を用いることが好ましい。増粘剤としては、特に限定されないが、たとえば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等のビニル系化合物;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース塩等のセルロース誘導体;ポリカルボン系酸化合物およびそのナトリウム塩;ポリエチレングリコールエーテル等のポリオキシエチレン誘導体;等が挙げられる。これらのなかでも、ノニオン性水溶性高分子が好ましく、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンが特に好ましい。
【0067】
重合体ラテックスに増粘剤としてノニオン性水溶性高分子を添加する場合には、重合体ラテックス中におけるノニオン性水溶性高分子の含有割合は、好ましくは0.1〜5.0重量%である。ノニオン性水溶性高分子の含有割合を上記範囲とすることにより、重合体ラテックスの粘度をより適度なものとすることができる。
【0068】
重合体ラテックスに増粘剤を添加する方法としては、特に限定されないが、重合体ラテックスとして架橋剤を添加したものを用いる場合には、重合体ラテックス中に凝集物が発生してしまうことを防止し、重合体ラテックスの移送をより良好に行うことができるようになるという観点より、重合体ラテックスの熟成前に一部の増粘剤を添加した後、熟成後にさらに残部の増粘剤を添加する方法(分割添加する方法)、または重合体ラテックスの熟成後に増粘剤を添加する方法を用いることが好ましく、これらのなかでも、分割添加する方法が特に好ましい。
【0069】
また、重合体ラテックスには、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、酸化マグネシウム、(メタ)アクリル酸亜鉛、(メタ)アクリル酸マグネシウムなどの充填剤を添加してもよいが、得られる積層体を保護手袋として用いた場合における耐切創性をより向上させることができるという観点より、重合体ラテックスにはこれらの充填剤を添加しないことが好ましい。
【0070】
重合体ラテックスには、必要に応じて、老化防止剤、酸化防止剤、防腐剤、抗菌剤、湿潤剤、分散剤、顔料、染料、充填剤、補強剤、pH調整剤などの各種添加剤を所定量添加することもできる。
【0071】
架橋剤を添加した重合体ラテックスの固形分濃度は、好ましくは25〜55重量%、より好ましくは35〜55重量%である。また、架橋剤を添加した重合体ラテックスの表面張力は、好ましくは25〜40mN/mである。
【0072】
次いで、本発明で用いる凝固剤溶液について説明する。
本発明で用いる凝固剤溶液は、溶媒中に凝固剤を溶解または分散させてなるものである。
【0073】
凝固剤としては、重合体ラテックス中の重合体を凝固させることができるものであればよく、特に限定されず、金属塩などを用いることができる。金属塩を構成する金属種としては、特に限定されないが、たとえば、リチウム、ナトリウム、カリウムなどの1価の金属;マグネシウム、カルシウム、亜鉛、鉄、バリウム、ジルコニウム、銅などの2価の金属;アルミニウムなどの3価の金属;などが挙げられる。また、金属塩を構成する塩種としては、特に限定されないが、たとえば、硝酸、硫酸、酢酸などの有機酸;などが挙げられる。これらの中でも、金属種としては多価の金属が好ましく、2価の金属がより好ましく、カルシウムが特に好ましい。また、塩種としては、硝酸または塩素が好ましく、硝酸が特に好ましい。即ち、金属塩としては、多価金属塩が好ましく、2価金属の硝酸塩またはハロゲン化塩がより好ましい。
これらの金属塩の具体例としては、硝酸カルシウム、硝酸バリウム、硝酸亜鉛等の硝酸塩;塩化バリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム等のハロゲン化金属塩;酢酸バリウム、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛等の酢酸塩;硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム等の硫酸塩;等が挙げられ、これらの中でも、硝酸塩およびハロゲン化金属塩が好ましく、硝酸カルシウムおよび塩化カルシウムがより好ましく、硝酸カルシウムが特に好ましい。
これらの金属塩は、単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0074】
また、凝固剤溶液には、上述した凝固剤に加えて、さらに有機酸を含有していてもよい。有機酸としては、特に限定されないが、カルボキシル基、スルホ基、ヒドロキシ基、チオール基の少なくとも一種類の基を有する有機酸が好ましい。具体的には、酢酸、蟻酸、プロピオン酸、クエン酸、シュウ酸などが挙げられ、これらの中でも、酢酸が好ましい。
【0075】
凝固剤を溶解または分散させるための溶媒としては、特に限定されないが、水、もしくはメタノール、エタノール等のアルコール、またはこれらの混合物などを用いることができ、これらの中でも、水が特に好ましい。
【0076】
凝固剤溶液中における凝固剤の濃度は、通常、5〜50重量%、好ましくは10〜30重量%である。
【0077】
本発明の積層体は、たとえば、上述したように、繊維基材に重合体ラテックスを付着させ、次いで、このような凝固剤溶液を、繊維基材に付着させた重合体ラテックスと接触させて、重合体ラテックス中の重合体を凝固させることで、重合体層を形成することにより得ることができる。この際には、繊維基材に付着した重合体ラテックスは、一部が繊維基材を構成する繊維の間に浸透し、この状態で、凝固剤溶液を重合体ラテックスに接触させると、図1(A)および図1(B)に示すように、繊維基材の表面上に重合体層が形成されるとともに、重合体層の一部が繊維基材を構成する繊維の隙間まで浸透したものとなる。なお、図1(A)および図1(B)は、それぞれ繊維基材および積層体の模式図であり、図1(A)は、繊維基材の断面図を示し、図1(B)は、図1(A)に示す繊維基材に重合体層が積層されてなる積層体の断面図を示す。図1(B)に示す積層体においては、重合体層は、一部が、繊維基材を構成する繊維の間に浸透した状態で繊維基材を被覆している。図1(B)においては、積層体を構成する重合体層のうち、繊維基材の表面から繊維の隙間に浸透した部分を浸透重合体層とし、また、重合体層のうち、繊維基材の表面から繊維基材を被覆する部分を表面重合体層として示している。なお、本発明においては、重合体層を、適宜、浸透重合体層および表面重合体層からなるものとして説明するが、通常、これら浸透重合体層および表面重合体層は、一体として形成されることとなる。
【0078】
なお、本発明の積層体は、特に限定されないが、たとえば、保護手袋として用いることができる。本発明の積層体を保護手袋として用いる場合には、繊維基材としては、特に限定されないが、たとえば、繊維として単繊維の撚糸を使用し、この撚糸を織ることで手袋形状としたものを用いることができる。この場合には、手袋形状とした繊維基材上に、重合体層を形成することによって、保護手袋を得ることができる。
【0079】
本発明の積層体においては、積層体を構成する重合体層のうち、繊維に浸透した部分の厚み、すなわち、図1で示す浸透重合体層の繊維基材の表面からの厚みをt(単位はμm)とし、繊維基材の基材層平均厚みをd(単位はμm)とした場合に、基材層平均厚みdに対する浸透重合体層の厚みtの比(t/d)が、0.1〜0.95であり、好ましくは0.1〜0.9、より好ましくは0.15〜0.8、さらに好ましくは0.15〜0.4、特に好ましくは0.15〜0.35である。本発明によれば、基材層平均厚みdに対する浸透重合体層の厚みtの比(t/d)を上記範囲とすることにより、得られる積層体を保護手袋として用いる場合に、重合体層が繊維基材の裏面まで到達してしまう裏抜けの発生を防止することができ、これにより裏抜けに起因して発生する保護手袋の生産性の低下(たとえば、手袋形状の繊維基材を、手袋型に装着した状態で、繊維基材に重合体ラテックスを付着させることにより重合体層を形成する場合に、裏抜けにより重合体ラテックスが手袋型に付着してしまい、得られる保護手袋を手袋型から脱着しづらくなることによる生産性の低下)を防止することができるとともに、得られる保護手袋の耐久性、柔軟性および装着時の快適性を高度にバランスさせることができる。基材層平均厚みdに対する浸透重合体層の厚みtの比(t/d)が小さすぎると、すなわち、基材層平均厚みdに対して浸透重合体層の厚みtが薄すぎると、得られる積層体を保護手袋として用いた場合に、重合体層が剥離しやすくなることで、耐久性が低下してしまう。一方、基材層平均厚みdに対する浸透重合体層の厚みtの比(t/d)が大きすぎると、すなわち、基材層平均厚みdに対して浸透重合体層の厚みtが厚すぎると、得られる積層体を保護手袋として用いた場合における、柔軟性が低下してしまう。
【0080】
また、本発明の積層体においては、基材層平均厚みdに対する浸透重合体層の厚みtの比(t/d)が上記範囲にあればよいが、浸透重合体層の厚みt自体は、好ましくは50〜600μm、より好ましくは100〜550μm、さらに好ましくは120〜500μm、特に好ましくは120〜250μmである。浸透重合体層の厚みtを上記範囲とすることにより、得られる積層体を保護手袋として用いた場合における耐久性がより向上する。
【0081】
さらに、本発明の積層体においては、重合体層のうち、繊維基材の表面を被覆する部分の厚み、すなわち、図1に示す表面重合体層の厚みtは、80μm以上、好ましくは100μm以上、より好ましくは180μm以上である。表面重合体層の厚みtを上記範囲とすることにより、得られる積層体を保護手袋として用いた場合における耐久性がより向上する。なお、表面重合体層の厚みtの上限は、特に限定されないが、好ましくは1,000μm以下、より好ましくは800μm以下、さらに好ましくは600μm以下である。
【0082】
また、重合体層における浸透重合体層と表面重合体層との厚みの比率は、特に限定されないが、浸透重合体層の厚みtに対する表面重合体層の厚みtの比(t/t)で、好ましくは0.2〜5、より好ましくは0.3〜4、さらに好ましくは0.8〜4、特に好ましくは1〜2である。浸透重合体層と表面重合体層との厚みの比率を上記範囲にすることにより、得られる積層体を保護手袋として用いた場合に、耐久性および柔軟性を高度にバランスさせることができる。
【0083】
また、重合体層の全体の厚み、すなわち、浸透重合体層の厚みtおよび表面重合体層の厚みtの合計は、特に限定されないが、好ましくは150μm以上である。
【0084】
本発明の積層体は、以上のように、基材層平均厚みdに対する浸透重合体層の厚みtの比(t/d)、および表面重合体層の厚みt[μm]が、それぞれ上述した範囲に制御されたものであり、これにより、耐久性および柔軟性が高度にバランスされたものとなり、たとえば、作業用手袋、特に家庭用、農業用、漁業用および工業用等の保護手袋として好適に用いることができる。
【0085】
次いで、本発明の積層体の製造方法について説明する。
本発明の製造方法は、上記した重合体ラテックスを繊維基材に付着させるラテックス付着工程と、繊維基材に付着させた重合体ラテックスに、凝固剤溶液を接触させて重合体ラテックス中の重合体を凝固させることで、重合体層を形成する凝固工程と、を備える。この際に、本発明の製造方法においては、重合体ラテックスを繊維基材に付着させる際に、重合体ラテックスの粘度を、B型粘度計を用いて測定される回転速度10rpmの条件における粘度で、600〜25,000mPa・sの範囲に制御した状態にて、重合体ラテックスを繊維基材に付着させるものである。この際における、重合体ラテックスの粘度は、より好ましくは800〜20,000mPa・s、さらに好ましくは900〜15,000mPa・s、特に好ましくは1,000〜12,000mPa・sである。なお、重合体ラテックスを、繊維基材に付着させる際における、重合体ラテックスの温度および固形分濃度は特に限定されず、B型粘度計を用いて測定される回転速度10rpmの条件における粘度が上記範囲となるように制御すればよいが、好ましくは温度20〜40℃、固形分濃度30〜50重量%に制御した状態、特に、温度25℃、固形分濃度45重量%に制御した状態にて、重合体ラテックスを繊維基材に付着させることが好ましい。
【0086】
本発明の製造方法によれば、重合体ラテックスの粘度を上記範囲に調整した状態にて、繊維基材に付着させることで、重合体ラテックスを繊維基材に付着させる際に、重合体ラテックスが繊維基材の繊維の間に浸透する速度を適度なものとすることができ、これにより、重合体ラテックスを、裏抜けすることなく、かつ、繊維基材の繊維の間に適度に浸透させることができる。そのため、重合体ラテックスが繊維基材に適度に浸透した状態で、繊維基材に付着した重合体ラテックスに凝固剤溶液を接触させることができ、その結果、重合体ラテックスの一部が繊維基材に適度に浸透したまま、重合体ラテックス中の重合体が凝固して重合体層が形成され、得られる積層体について、繊維基材の基材層平均厚みdに対する浸透重合体層の厚みtの比(t/d)を上記範囲に制御することができるようになる。これにより、得られる積層体を作業用手袋などの保護手袋として用いた場合に、柔軟性および耐久性に優れたものとなる。
【0087】
重合体ラテックスの粘度を上記範囲に調製する方法としては、上述したように、重合体ラテックスに増粘剤を添加する方法を用いることができる。なお、増粘剤の添加方法としては、重合体ラテックスとして架橋剤を添加したものを用いる場合には、重合体ラテックス中に凝集物が発生してしまうことを防止し、重合体ラテックスの移送をより良好に行うことができるようになるという観点より、増粘剤を重合体ラテックスの熟成前および熟成後に分割して添加する方法、または増粘剤を重合体ラテックスの熟成後に添加する方法を用いることが好ましい。
【0088】
重合体ラテックスを熟成させる際の温度条件は、特に限定されないが、好ましくは20〜50℃である。また、熟成させる際の時間は、繊維基材と重合体層との剥離を防止する観点、得られる積層体を保護手袋として用いた場合における耐久性を向上させる観点、および該保護手袋を作業用手袋として用いた場合における溶剤ガスの透過を抑制する観点から、好ましくは4時間以上120時間以下、より好ましくは24時間以上72時間以下である。熟成時間を上記範囲にすることにより、得られる積層体において、重合体層が繊維基材に適度に浸透することで、繊維基材と重合体層との剥離がより有効に防止され、得られる積層体の耐久性がより向上するとともに、積層体を保護手袋として用いた場合における溶剤ガスの透過をより有効に抑制することができる。
【0089】
繊維基材に重合体ラテックスを付着させる方法としては、特に限定されないが、たとえば、繊維基材を、重合体ラテックスに浸漬させる方法などが挙げられる。
【0090】
なお、繊維基材に重合体ラテックスを付着させる際には、予め繊維基材を所望の形状の成形用型に被せた状態で、繊維基材を重合体ラテックスに浸漬させることが好ましい。
【0091】
繊維基材を被せる成形用型としては、特に限定されないが、材質は磁器製、ガラス製、金属製、プラスチック製など種々のものを用いることができる。成形用型の形状は、最終製品の形状に合わせて、所望の形状とすればよい。たとえば、積層体を保護手袋として使用する場合には、繊維基材を被せる成形用型として、手首から指先までの形状を有する成形用型など、各種の手袋用の成形用型を用いることが好ましい。
【0092】
本発明の製造方法においては、繊維基材に重合体ラテックスを付着させた後、重合体ラテックスを乾燥させることが好ましい。この際における乾燥温度は、特に限定されないが、好ましくは180℃以下、より好ましくは10〜170℃である。また、乾燥時間は、特に限定されないが、好ましくは1秒間〜60分間、より好ましくは3秒間〜30分間である。
【0093】
次いで、このようにして繊維基材に付着させた重合体ラテックスに、凝固剤溶液を接触させることで、重合体ラテックス中の重合体を凝固させて、重合体層を形成する。
【0094】
繊維基材に付着させた重合体ラテックスに、凝固剤溶液を接触させる方法としては、特に限定されないが、たとえば、重合体ラテックスが付着した繊維基材を凝固剤溶液に浸漬させる方法が挙げられる。
【0095】
また、重合体ラテックスが付着した繊維基材を凝固剤溶液に浸漬させる際には、重合体ラテックスが付着した繊維基材を、所望の形状の成形用型に被せた状態で、凝固剤溶液に浸漬させることが好ましい。この際においては、予め繊維基材を所望の形状の成形用型に被せた状態で、上述したように繊維基材に重合体ラテックスを付着させて、その後、重合体ラテックスが付着した繊維基材を、成形用型に被せたまま、凝固剤溶液に浸漬させることが好ましい。
【0096】
繊維基材を凝固剤溶液に浸漬させる場合における浸漬時間は、特に限定されないが、好ましくは30〜1秒間、より、好ましくは10〜1秒間である。
【0097】
また、本発明の製造方法においては、繊維基材に付着させた重合体ラテックスに、凝固剤溶液を接触させて付着させた後、乾燥を行うことで、凝固剤溶液に含まれている溶媒を除去することが好ましい。この際の乾燥温度は、特に限定されず、用いる溶媒に応じて選択すればよいが、好ましくは10〜80℃、より好ましくは15〜70℃である。また、乾燥時間は、特に限定されないが、好ましくは600〜1秒間、より好ましくは300〜5秒間である。
【0098】
さらに、重合体ラテックスとして、架橋剤を添加したものを用いる場合には、重合体ラテックスが付着した繊維基材を凝固剤溶液に接触させた後、繊維基材に付着した重合体ラテックスを加熱することにより、重合体ラテックスを構成する重合体を架橋させることが好ましい。
【0099】
架橋のための加熱温度は、好ましくは60〜160℃、より好ましくは80〜150℃である。加熱温度を上記範囲にすることにより、架橋反応に要する時間を短くして積層体の生産性を向上させることができるとともに、過剰な加熱による重合体の酸化劣化を抑制して、得られる積層体の物性を向上させることができる。架橋のための加熱時間は、加熱温度に応じて適宜選択すればよいが、通常、5〜120分である。
【0100】
本発明の製造方法においては、以上のようにして、繊維基材上に重合体層が形成されてなる積層体が得られる。
【0101】
なお、本発明の製造方法においては、繊維基材上に重合体層を形成した後、重合体層を20〜80℃の温水に0.5〜60分程度浸漬することにより、重合体層から水溶性不純物(乳化剤、水溶性高分子、凝固剤など)を除去しておくことが好ましい。
【0102】
また、繊維基材を成形用型に被せた状態で重合体層を形成した場合には、重合体層が形成された繊維基材を、成形用型から脱着することによって、積層体を得ることができる。脱着方法としては、手で成形用型から剥したり、水圧や圧縮空気の圧力により剥したりする方法を採用することができる。
【0103】
積層体を成形用型から脱着した後には、さらに60〜120℃の温度で、10〜120分の加熱処理(後架橋工程)を行ってもよい。また、積層体の内側および/または外側の表面に、塩素化処理やコーティング処理などによる表面処理層を形成してもよい。
【0104】
本発明の製造方法によれば、以上のようにして、繊維基材に重合体ラテックスを付着させた後、繊維基材に付着した重合体ラテックスに凝固剤溶液を接触させることにより、重合体ラテックスが、裏抜けすることなく、繊維基材の繊維の間に適度に浸透したまま、重合体ラテックス中の重合体が凝固して、これにより繊維基材上に重合体層が形成された積層体が得られる。そのため、本発明の製造方法によれば、積層体を製造する際の重合体層の裏抜けをより有効に防止することができ、裏抜けに起因する不具合の発生が抑制され、積層体の生産性をより向上させることができる。さらに、重合体層の裏抜けが防止されることにより、得られる保護手袋を実際に装着した際の快適性がより向上する。
【0105】
また、従来、積層体を製造する方法としては、まず繊維基材を凝固剤溶液に浸漬させ、その後、繊維基材に重合体ラテックスを付着させることにより、積層体を得る方法が知られている。しかしながら、上記の方法では、繊維基材を凝固剤溶液に浸漬させることで、繊維基材が凝固剤溶液と過度に接触してしまうため、繊維基材が劣化してしまう場合があり、このような繊維基材の劣化を抑制するために、使用することができる繊維基材の種類や、凝固剤の種類が制限されてしまっていた。これに対して、本発明の製造方法では、まず繊維基材に重合体ラテックスを付着させ、その後、繊維基材に付着した重合体ラテックスに凝固剤溶液を接触させるものであるため、繊維基材が凝固剤溶液と過度に接触することがなく、これにより、より多くの種類の繊維基材および凝固剤を適用することが可能となる。
【0106】
しかも、本発明の製造方法により得られる積層体は、図1に示すように、重合体層の一部が繊維基材に適度に浸透した状態となっており、これにより、耐久性および柔軟性が高度にバランスされたものとなり、たとえば、作業用手袋、特に家庭用、農業用、漁業用および工業用等の保護手袋として好適に用いることができる。
【実施例】
【0107】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限られるものではない。以下において、特記しない限り、「部」は重量基準である。物性および特性の試験または評価方法は以下のとおりである。
【0108】
浸透重合体層の厚みt、および表面重合体層の厚みt
実施例および比較例で製造した積層体について、中指の先から12cmの掌部分の重合体層が積層された断面を、光学顕微鏡(キーエンス社製、VHX−200)を用いて観察することで、浸透重合体層の厚みt、および表面重合体層の厚みtを測定した。具体的な測定方法について図1を参照して説明すると、浸透重合体層の厚みtは、繊維基材の表面から、浸透した重合体の最深部までの距離を、10カ所測定し、測定結果の数平均値を算出することにより求めた。また、表面重合体層の厚みtは、繊維基材の表面から、重合体層の表面までの距離を、10カ所測定し、測定結果の数平均値を算出することにより求めた。
【0109】
脱型性
実施例および比較例で製造した積層体について、積層体の製造中に、金属製手袋型から剥がす際に、容易に脱着することができたか否かを、以下の基準で評価した。
3:10秒以内に脱着できた。
2:5分以内に脱着できた。
1:脱着できなかった。
【0110】
裏抜け
実施例および比較例で製造した積層体について、繊維基材に浸透した重合体層が繊維基材の裏面まで到達しているか否かを目視にて確認し、以下の基準で評価した。
3:裏面に到達している重合体層の面積が裏面全体の5%以下。
2:裏面に到達している重合体層の面積が裏面全体の5%超、20%未満。
1:裏面に到達している重合体層の面積が裏面全体の20%以上。
【0111】
耐久性(耐剥離性)
実施例および比較例で製造した積層体について、重合体層と繊維基材との剥離を意図的に試み、以下の基準で評価した。
2:重合体層と繊維基材とを人力では容易に剥離できなかった。もしくは剥離できても重合体層と繊維基材とを分離させることができなかった。
1:重合体層と繊維基材とを人力で容易に剥離でき、重合体層と繊維基材とを分離させることができた。
【0112】
耐久性(耐切創性)
実施例および比較例で製造した積層体について、長さ3cmの未使用カッター刃を積層体の重合体層側に水平に2.5kgfの力で3秒間押し当てた後、カッター刃が当たっていた部分の積層体を目視観察し、以下の基準で評価した。
2:重合体層の一部が切れずに残った。
1:重合体層がすべて切れた。
【0113】
柔軟性
実施例および比較例で製造した手袋を10人にそれぞれ着用してもらい下記の評価基準で評価した。
3:柔らかい
2:硬い
1:非常に硬い
【0114】
実施例1
ディップ成形用ラテックス組成物の調製
重合体ラテックスとして、ニトリルゴム(a1)のラテックス(商品名「Nipol LX550L」、日本ゼオン社製、アクリロニトリル単位、1,3−ブタジエン単位、およびエチレン性不飽和酸単量体単位を含有するニトリルゴムのラテックス)を準備し、ニトリルゴム(a1)のラテックス中のニトリルゴム100部に対して、それぞれ固形分換算で、コロイド硫黄(細井化学工業社製)1.0部、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(大内新興化学工業社製)0.5部、酸化亜鉛2.0部となるように、各配合剤の水分散液を調製し、調製した水分散液を添加し、ラテックス組成物を得た。なお、添加の際には、ラテックスを撹拌した状態で、各配合剤の水分散液を所定の量ゆっくり添加した。その後、ラテックス組成物の固形分濃度を調整し、ラテックス組成物に対して、増粘剤としてポリビニルアルコール(PVA)0.2重量%を添加し、次いで、温度30℃、48時間の条件で、熟成(前加硫ともいう。)を施した。そして、熟成後のラテックス組成物に対して、増粘剤としてポリビニルアルコール0.18重量%をさらに添加し、固形分濃度が45重量%であるディップ成形用ラテックス組成物を得た。得られたディップ成形用ラテックス組成物における、温度25℃かつ固形分濃度45重量%の条件下、B型粘度計による回転数10rpmの条件で測定される粘度は、10,000mPa・sであった。
【0115】
凝固剤溶液の調製
硝酸カルシウム20部、および水80部を混合することで、凝固剤溶液を得た。
【0116】
積層体(保護手袋)の製造
上記にて得られたディップ成形用ラテックス組成物を25℃に調整し、次いで、手袋形状の繊維基材(材質:綿、繊維基材の基材層平均厚みd:650μm、線密度:300デニール)を被せた金属製手袋型を、25℃に調整したディップ成形用ラテックス組成物に5秒間浸漬し、ディップ成形用ラテックス組成物から引き上げた後、温度30℃、30分間の条件で乾燥させた。その後、金属製手袋型を、上記の凝固剤溶液に5秒間浸漬し、凝固剤溶液から引き上げた後、温度30℃、1分間の条件で乾燥させ、繊維基材上に重合体層を形成した。その後、温度125℃、60分間の条件で熱処理を行う事で、重合体層中のニトリルゴムに架橋処理を施した。次いで、重合体層が形成された繊維基材を金属製手袋型から剥がすことで、積層体(保護手袋)を得た。得られた積層体について、上述した方法に従い、浸透重合体層の厚みt、および表面重合体層の厚みtを測定し、脱型性、裏抜け、耐久性(耐剥離性)、耐久性(耐切創性)および柔軟性の評価を行った。結果を表1に示す。なお、表1においては、得られた浸透重合体層の厚みt、表面重合体層の厚みtの値に基づいて、(浸透重合体層の厚みt/基材層平均厚みd)の比、および(表面重合体層の厚みt/浸透重合体層の厚みt)の比を計算した結果も示した(後述する実施例2〜7および比較例1〜4についても同様)。
【0117】
実施例2
ラテックス組成物の熟成前に添加する増粘剤の添加割合を0.2重量%、熟成後に添加する増粘剤の添加割合を0.1重量%に変更し、ディップ成形用ラテックス組成物の粘度(25℃、固形分濃度45重量%の粘度)を5,400mPa・sに調整した以外は、実施例1と同様にして、積層体(保護手袋)を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0118】
実施例3
ラテックス組成物の熟成前に添加する増粘剤の添加割合を0.15重量%、熟成後に添加する増粘剤の添加割合を0.05重量%に変更し、ディップ成形用ラテックス組成物の粘度(25℃、固形分濃度45重量%の粘度)を1,200mPa・sに調整した以外は、実施例2と同様にして、積層体(保護手袋)を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0119】
実施例4
増粘剤として、ポリビニルアルコール(PVA)に代えてポリビニルピロリドン(PVP)を使用し、かつ、ラテックス組成物の熟成前に添加する増粘剤の添加割合を0.2重量%、熟成後に添加する増粘剤の添加割合を0.5重量%に変更し、ディップ成形用ラテックス組成物の粘度(25℃、固形分濃度45重量%の粘度)を2,500mPa・sに調整した以外は、実施例2と同様にして、積層体(保護手袋)を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0120】
比較例1
増粘剤として、ポリビニルアルコール(PVA)に代えてカルボキシメチルセルロース(CMC)を使用し、かつ、ラテックス組成物の熟成前に添加する増粘剤の添加割合を0.2重量%、熟成後に添加する増粘剤の添加割合を0.4重量%に変更し、ディップ成形用ラテックス組成物の粘度(25℃、固形分濃度45重量%の粘度)を5,500mPa・sに調整した以外は、実施例1と同様にして、積層体(保護手袋)を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0121】
比較例2
増粘剤として、ポリビニルアルコール(PVA)に代えてポリアクリル酸ナトリウム(PAA)を使用し、かつ、ラテックス組成物の熟成前に添加する増粘剤の添加割合を0.05重量%、熟成後に添加する増粘剤の添加割合を0.1重量%に変更し、ディップ成形用ラテックス組成物の粘度(25℃、固形分濃度45重量%の粘度)を5,800mPa・sに調整した以外は、実施例1と同様にして、積層体(保護手袋)を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0122】
比較例3
実施例1で用いたものと同様の繊維基材を準備し、準備した繊維基材を被せた金属製手袋型を、上記の凝固剤溶液に5秒間浸漬し、凝固剤溶液から引き上げた後、温度30℃、1分間の条件で乾燥させた。その後、金属製手袋型を、実施例1で用いたものと同様のディップ成形用ラテックス組成物に5秒間浸漬し、ディップ成形用ラテックス組成物から引き上げた後、温度30℃、30分間の条件で乾燥させ、繊維基材上に重合体層を形成した。その後、温度125℃、60分間の条件で熱処理を行う事で、重合体層中のニトリルゴムに架橋処理を施した。次いで、重合体層が形成された繊維基材を金属製手袋型から剥がすことで、積層体(保護手袋)を得た。得られた積層体について、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0123】
比較例4
ラテックス組成物の熟成前に添加する増粘剤の添加割合を0.05重量%、熟成後に添加する増粘剤の添加割合を0.02重量%に変更し、ディップ成形用ラテックス組成物の粘度(25℃、固形分濃度45重量%の粘度)を500mPa・sに調整した以外は、実施例2と同様にして、積層体(保護手袋)を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0124】
【表1】
【0125】
表1に示すように、(浸透重合体層の厚みt/基材層平均厚みd)の比、および表面重合体層の厚みtを、本発明の所定の範囲に制御した積層体は、いずれも、脱型性の結果が良好であることから生産性に優れ、また、裏抜けの結果が良好であることから装着時の快適性にも優れ、さらに、耐久性および柔軟性にも優れるものであった(実施例1〜4)。
【0126】
一方、(浸透重合体層の厚みt/基材層平均厚みd)の比が大きすぎる場合には、得られる積層体は、脱型性の結果が不良であることから生産性に劣り、また、裏抜けの結果が不良であることから装着時の快適性にも劣り、しかも、柔軟性にも劣るものであった(比較例1,2)。
また、(浸透重合体層の厚みt/基材層平均厚みd)の比が小さすぎる場合には、得られる積層体は、耐久性に劣るものであった(比較例3)。
さらに、表面重合体層の厚みtが薄すぎる場合には、得られる積層体は、脱型性の結果が不良であることから生産性に劣り、また、裏抜けの結果が不良であることから装着時の快適性にも劣り、しかも、耐久性にも劣るものであった(比較例4)。
図1
【国際調査報告】