特表-18135108IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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再表2018-135108粒子状組成物、液体組成物、粒子状組成物の製造方法、表面改質剤、水分散性の向上方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2018年7月26日
【発行日】2019年8月8日
(54)【発明の名称】粒子状組成物、液体組成物、粒子状組成物の製造方法、表面改質剤、水分散性の向上方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 13/00 20060101AFI20190712BHJP
   C09D 7/62 20180101ALI20190712BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20190712BHJP
   A61K 8/04 20060101ALI20190712BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20190712BHJP
【FI】
   B01J13/00 B
   C09D7/62
   C09D201/00
   A61K8/04
   A61K8/19
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】28
【出願番号】特願2018-562896(P2018-562896)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2017年11月10日
(31)【優先権主張番号】特願2017-6136(P2017-6136)
(32)【優先日】2017年1月17日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】592218300
【氏名又は名称】学校法人神奈川大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】田嶋 和夫
(72)【発明者】
【氏名】今井 洋子
(72)【発明者】
【氏名】宮坂 佳那
【テーマコード(参考)】
4C083
4G065
4J038
【Fターム(参考)】
4C083AB211
4C083AB212
4C083AB231
4C083AB232
4C083AB241
4C083AB242
4C083AB321
4C083AB322
4C083AC011
4C083AC012
4C083AC021
4C083AC022
4C083AC421
4C083AC422
4C083BB13
4C083BB25
4G065AA06
4G065AB10X
4G065AB33X
4G065BA01
4G065BA15
4G065BA20
4G065BB01
4G065BB03
4G065CA11
4G065DA02
4G065DA06
4J038CC032
4J038CF022
4J038CG142
4J038DL002
4J038EA011
4J038HA026
4J038HA066
4J038HA166
4J038HA376
4J038JA25
4J038JA55
4J038JB01
4J038KA06
4J038NA25
4J038NA26
(57)【要約】
固体粒子の種類にかかわらず、水への高い分散性を有する粒子状組成物、及び、その製造方法を提供すること。また、液体組成物、表面改質剤、及び、水分散性の向上方法を提供すること。さらに、本発明は、油性物質への分散性を有する粒子状組成物及びその製造方法を提供すること。
粒子状組成物は、固体粒子と、該固体粒子の表面に存在する、両親媒性物質と、を含み、両親媒性物質が水中においては閉鎖小胞体の形成能を有する。粒子状組成物の製造方法は、固体粒子と、水中においては閉鎖小胞体の形成能を有する両親媒性物質を溶解した溶媒との混合物を調製する工程と、混合物中の溶媒を除去する工程と、を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体粒子と、該固体粒子の表面に存在する両親媒性物質と、を含み、
前記両親媒性物質が水中においては閉鎖小胞体の形成能を有する、粒子状組成物。
【請求項2】
水に分散させた際、6層以上の単分子膜層を形成して前記固体粒子表面を被覆可能な前記両親媒性物質を含有する請求項1に記載の粒子状組成物。
【請求項3】
水又は油性物質に分散させたときの平均粒子径が、被覆処理前の固体粒子をエタノールに分散させたときの平均粒子径に対して1.0倍以上1.5倍以下である、請求項1又は2に記載の粒子状組成物。
【請求項4】
前記固体粒子が、金属酸化物の粒子である、請求項1から3のいずれかに記載の粒子状組成物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の粒子状組成物と、該粒子状組成物を含む水又は油性物質と、を有する、液体組成物。
【請求項6】
前記水中において、前記固体粒子表面が前記両親媒性物質によって形成された6層以上の単分子膜層によって被覆された状態で分散している請求項5に記載の液体組成物。
【請求項7】
化粧料又は塗料用である、請求項5又は6に記載の液体組成物。
【請求項8】
請求項1から4のいずれかに記載の粒子状組成物の製造方法であって、
固体粒子と、水中においては閉鎖小胞体の形成能を有する両親媒性物質を溶解した溶媒との混合物を調製する工程と、
前記混合物中の溶媒を除去する工程と、を有する、方法。
【請求項9】
前記混合物中の溶媒の除去を、溶媒を揮発させることにより行う、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
水中においては閉鎖小胞体の形成能を有する両親媒性物質からなる、固体粒子の表面改質剤。
【請求項11】
固体粒子の表面を、水中においては閉鎖小胞体の形成能を有する両親媒性物質で覆うことによる、水又は油性物質に対する分散性の向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子状組成物、液体組成物、粒子状組成物の製造方法、表面改質剤、水分散性の向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体粒子は、化粧料や塗料等の多くの用途で使用されており、この固体粒子を、水等の媒体に均一に安定分散させる技術が従来より求められている。特に、化粧料としてのUVやファンデーション用色素粒子等では多様な分散条件での繊細な安定性が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、シリコーン樹脂及び/又は有機粉体からなる固体粒子の表面を、水溶性ポリオキシアルキレングリコール誘導体、水溶性カチオンポリマー、低分子有機ケイ素誘導体により親水化処理することで、水への分散性が向上することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5155658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように、水への分散性を高めるためには、固体粒子の種類(シリコーン樹脂等)に応じた親水化処理が必要であるという問題がある。そのため、固体粒子の種類にかかわらず、水への分散性を高めることができる技術が求められている。
【0006】
本発明は以上の実情に鑑みてなされたものであり、固体粒子の種類にかかわらず、高い水への分散性を有する粒子状組成物、及びその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、液体組成物、表面改質剤、及び、水分散性の向上方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、油性物質への分散性を有する粒子状組成物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、水中においては閉鎖小胞体の形成能を有する両親媒性物質により固体粒子の表面をコーティングすることで、固体粒子の水又は油性物質に対する分散性が高くなることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0008】
(1) 固体粒子と、該固体粒子の表面に存在する両親媒性物質と、を含み、
前記両親媒性物質が水中においては閉鎖小胞体の形成能を有する、粒子状組成物。
【0009】
(2) 水に分散させた際、6層以上の単分子膜層を形成して前記固体粒子表面を被覆可能な前記両親媒性物質を含有する(1)に記載の粒子状組成物。
【0010】
(3) 水又は油性物質中に分散させたときの平均粒子径が、エタノールに分散させたときの平均粒子径に対して1.0倍以上1.5倍以下である、(1)又は(2)に記載の粒子状組成物。
【0011】
(4) 前記固体粒子が、金属酸化物の粒子である、(1)から(3)のいずれかに記載の粒子状組成物。
【0012】
(5) (1)から(4)のいずれかに記載の粒子状組成物と、該粒子状組成物を含む水又は油性物質と、を有する、液体組成物。
【0013】
(6) 前記水中において、前記固体粒子表面が前記両親媒性物質によって形成された6層以上の単分子膜層によって被覆された状態で分散している(5)に記載の液体組成物。
【0014】
(7) 化粧料又は塗料用である、(5)又は(6)に記載の液体組成物。
【0015】
(8) (1)から(4)のいずれかに記載の粒子状組成物の製造方法であって、
固体粒子と、水中においては閉鎖小胞体の形成能を有する両親媒性物質を溶解した溶媒との混合物を調製する工程と、
前記混合物中の溶媒を除去する工程と、を有する、方法。
【0016】
(9) 前記混合物中の溶媒の除去を、溶媒を揮発させることにより行う、(8)に記載の方法。
【0017】
(10) 水中においては閉鎖小胞体の形成能を有する両親媒性物質からなる、固体粒子の表面改質剤。
【0018】
(11) 固体粒子の表面を、水中においては閉鎖小胞体の形成能を有する両親媒性物質で覆うことによる、水又は油性物質に対する分散性の向上方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、固体粒子の種類にかかわらず、水への高い分散性を有する粒子状組成物、及びその製造方法を提供することを目的とすることができる。また、本発明によれば、液体組成物、表面改質剤、及び、水分散性の向上方法を提供することができる。さらに、本発明は、油性物質への分散性を有する粒子状組成物及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】(a)実施例31、比較例11の粒子状組成物についてのUV−visスペクトルを示す。(b)実施例32、比較例12の粒子状組成物についてのUV−visスペクトルを示す。
図2】(a)実施例33の粒子状組成物についてのTEM観察による画像を示す。(b)実施例34の粒子状組成物についてのTEM観察による画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0022】
<粒子状組成物>
本発明は、固体粒子と、該固体粒子の表面に存在する両親媒性物質と、を含み、両親媒性物質が水中においては閉鎖小胞体の形成能を有する、粒子状組成物である。本発明は、これにより、固体粒子の種類にかかわらず、水又は油性物質への高い分散性を有する。その理由は、以下のとおりと推測される。
【0023】
本発明の両親媒性物質は、水中においては閉鎖小胞体の形成能を有するものであり、この閉鎖小胞体は、いわゆる三相乳化能を有する粒子として知られているが、この閉鎖小胞体の粒子は互いに反発し、粒子間で斥力が発生する。このような両親媒性物質を固体粒子の表面に配置することで、固体粒子間において斥力が発生し、水中又は油性物質中での分散性が向上すると推測される。特に、両親媒性物質により固体粒子の表面において多層膜を形成することで、固体粒子間において発生する引力を上回る斥力が生じやすくなり、水中又は油性物質中で固体粒子間の凝集が防止され、分散性が特に向上するものと推測される。なお、本発明の粒子状組成物は、被覆剤として機能する前記の両親媒性物質が余剰に存在しても水中に分散した際には、その余剰分は自己組織能により閉鎖小胞体化して分散するため、固体粒子の分散の妨げとはならない。また、油性物質に分散した際には、両親媒性物質自体が油に溶解しないため、固体粒子の分散の妨げとはならない。
【0024】
なお、三相乳化法は、水中において閉鎖小胞体の形成能を有する両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体が、油−水の界面に介在して、ファンデルワールス力により油相に付着することで乳化を可能とするものである。三相乳化機構は、水性部分及び疎水性部分をそれぞれ水相及び油相に向け、油水界面張力を下げることで乳化状態を維持する乳化機構とは全く異なる(例えば特許3855203号公報参照)。本発明においては水中における閉鎖小胞体が固体粒子を乳化するわけではないが、本発明は、水中において閉鎖小胞体を形成する(つまり、三相乳化形成能を有する)両親媒性物質を被覆剤とすることで、結果的に固体粒子の表面を水又は油性物質への分散性を高めることを見出したものである。なお、三相乳化可能な粒子か否かは、乳化に用いる親水性ナノ粒子分散液について、光散乱測定を行い、平均粒子径が、例えば、8〜400nmになっていることで判断できる。さらに調製したエマルションについて、原子間顕微鏡(AFM)観察を行い、乳化剤粒子が、油滴表面に付着していることを確認することで、判断することができる。
【0025】
(両親媒性物質)
本発明に用いられる両親媒性物質は、水中において閉鎖小胞体の形成能を有する両親媒性物質(以下、本明細書において「両親媒性物質」と略称する場合がある。)であり、例えば、水中で二分子膜を形成可能な(つまり、水中でベシクルを形成可能な)ものである。このような水中で二分子膜形成能を有する両親媒性物質としては、下記の一般式1で表されるポリオキシエチレン硬化ひまし油の誘導体もしくは一般式2で表されるようなジアルキルアンモニウム誘導体、トリアルキルアンモニウム誘導体、テトラアルキルアンモニウム誘導体、ジアルケニルアンモニウム誘導体、トリアルケニルアンモニウム誘導体、又はテトラアルケニルアンモニウム誘導体のハロゲン塩の誘導体を採用するとよい。
【0026】
一般式1
【化1】
【0027】
水中で二分子膜形成能を有する両親媒性物質としては、ポリオキシエチレン硬化ひまし油の誘導体(日光ケミカルズ株式会社社製の「HCO−10」、「HCO−20」、「HCO−30」、「HCO−40」、「HCO−50」、「HCO−100」等)が好ましい。
【0028】
一般式2
【化2】
【0029】
式中、R及びRは、各々独立して炭素数8〜22のアルキル基又はアルケニル基であり、R及びRは、各々独立して水素又は炭素数1〜4のアルキル基であり、XはF、Cl、Br、I又はCHCOOである。
【0030】
あるいは、水中で二分子膜形成能を有する両親媒性物質として、リン脂質やリン脂質誘導体等を採用してもよい。リン脂質としては、下記の一般式3で示される構成のうち、炭素鎖長12のDLPC(1,2−Dilauroyl−sn−glycero−3−phospho−rac−1−choline)、炭素鎖長14のDMPC(1,2−Dimyristoyl−sn−glycero−3−phospho−rac−1−choline)、炭素鎖長16のDPPC(1,2−Dipalmitoyl−sn−glycero−3−phospho−rac−1−choline)が採用可能である。
【0031】
一般式3
【化3】
【0032】
また、下記の一般式4で示される構成のうち、炭素鎖長12のDLPG(1,2−Dilauroyl−sn−glycero−3−phospho−rac−1−glycerol)のNa塩又はNH塩、炭素鎖長14のDMPG(1,2−Dimyristoyl−sn−glycero−3−phospho−rac−1−glycerol)のNa塩又はNH塩、炭素鎖長16のDPPG(1,2−Dipalmitoyl−sn−glycero−3−phospho−rac−1−glycerol)のNa塩又はNH塩を採用してもよい。
【0033】
一般式4
【化4】
【0034】
また、リン脂質、リン脂質誘導体としては、レシチン(天然レシチン、水添レシチン等)を用いることができる。
【0035】
水中で二分子膜形成能を有する両親媒性物質としては、脂肪酸エステルを採用してもよい。脂肪酸エステルとしては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル(モノステアリン酸テトラグリセリル、トリステアリン酸デカグリセリル等)、ショ糖脂肪酸エステル(ショ糖ステアリン酸エステル等)、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等を用いることができる。これらのうち、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルが特に好ましい。
【0036】
本発明に用いる両親媒性物質の量は後述するように、固体粒子を水に分散させる場合、固体粒子表面が両親媒性物質で形成される単分子膜によって6層(二分子膜で3層)以上被覆されるのが望ましい。つまり、本発明の両親媒性物質は、6層以上の単分子膜層を形成して固体粒子表面を被覆可能なものであることが好ましい。これは本発明者らが見出した技術上の知見である。したがって、理想的には単分子膜6層を形成させる分だけの両親媒性物質があれば、固体粒子の水への分散性は確保されると考えられる。ただ、前記のように余剰に両親媒性物質が存在したとしても、余剰分は自己組織能により閉鎖小胞体化して水中に分散するため、固体粒子分散そのものの障害になるものではない。一方で、油性物質に分散した場合には、両親媒性物質は層を形成しないが、固体粒子を覆う。このように両親媒性物質により覆われた固体粒子は、油性物質との濡れの作用により油性物質中に分散する。なお、両親媒性物質を余剰に添加しても両親媒性物質は油性物質に溶解しないため固体粒子の分散の妨げとはならない。
【0037】
本発明の粒子状組成物に用いられる固体粒子は、例えば、金属、金属酸化物、金属硫化物、これらの錯塩類等の無機粒子、有機粒子が挙げられる。金属酸化物としては、酸化チタン、酸化セリウム、酸化鉄(四酸化鉄、二酸化鉄、三酸化鉄等)、酸化亜鉛、酸化ケイ素等が挙げられる。有機粒子としては、炭素微粒子、ポリスチレン、ポリアクリル酸エステル、ポリ酢酸ビニル等が挙げられる。これらのうち、固体粒子としては金属酸化物が好ましい。
【0038】
固体粒子は、あらかじめ両親媒性物質とは異なるものにより表面処理(例えば、親水性処理又は疎水性処理)されたものであってもよく、表面処理されていないものであってもよい。固体粒子は、このように表面の状態にかかわらず、両親媒性物質で表面処理することで高い水又は油性物質への分散性を得られる点においても有用である。
【0039】
本発明の粒子状組成物は、上述のとおり水又は油性物質に対する分散性が高く、固体粒子同士の凝集が抑制されるため、被覆処理前の固体粒子(すなわち、両親媒性物質を表面に備えない固体粒子)を水又は油性物質に分散させたときに比べて、平均粒子径が小さくなる。特に、本発明の粒子状組成物は、水又は油性物質に分散させたときの平均粒子径が被覆前の固体粒子をエタノールに分散させたときの平均粒子径に対して同等であることが好ましい。具体的には、本発明の粒子状組成物は、水又は油性物質に分散させたときの平均粒子径が被覆処理前の固体粒子をエタノールに分散させたときの平均粒子径に対して1.5倍以下であることが好ましく、1.4倍以下であることがより好ましく、1.3倍以下であることがさらに好ましく、1.2倍以下であることが特に好ましい。また、本発明の粒子状組成物は、水又は油性物質に分散させたときの平均粒子径が被覆処理前の固体粒子をエタノールに分散させたときの平均粒子径に対して1.0倍以上(1.01倍以上、1.05倍以上、1.1倍以上等)であってよい。本発明の粒子状組成物の水又は油性物質に分散させたときの平均粒子径は、水中又は油性物質中において、動的・電気泳動光散乱光度計(ELSZ,大塚電子株式会社製)により測定する。なお、被覆前の固体粒子のエタノールに分散させたときの平均粒子径も、その状態で動的・電気泳動光散乱光度計(ELSZ,大塚電子株式会社製)により測定する。なお、動的・電気泳動光散乱光度計(ELSZ,大塚電子株式会社製)による平均粒子径の測定値は、計測装置内で粒子全てを球状とみなして演算、出力されてくる値である。
【0040】
本発明においては、固体粒子を被覆する両親媒性物質で形成される単分子膜の層数として6層(二分子膜で3層)が確保されれば、固体粒子の水又は油性物質へのより高い分散性が得られると思われる。固体粒子を被覆する両親媒性物質の層の数は、後述する式(14)のとおりに算出される被覆率(φ)で表すことができる。ここで、式(14)を算出する方法について、以下に説明する。なお、本明細書の説明において「被覆剤」とあるのは、本発明に用いられる「水中又は油性物質中においては閉鎖小胞体の形成能を有する両親媒性物質」と同義である。
【0041】
処理対象の固体粒子の質量を(m[g])とする。
まず、固体粒子の全表面積(S[nm])は、以下の式(1)で表される。
【0042】
【数1】
【0043】
上記式(1)における固体粒子1個あたりの表面積(s[nm])は、以下の式(2)で示すことができる。
【0044】
【数2】
【0045】
上記式(1)における固体粒子の個数(N[個])は、以下の式(3)で表すことができる。
【0046】
【数3】
【0047】
上記式(3)における固体粒子の全体積(V[nm])と固体粒子1個あたり(平均)の体積(v[nm])は、それぞれ以下の式(4)、(5)で表すことができる。
【0048】
【数4】
【0049】
【数5】
【0050】
式(4)、(5)を上記式(3)に代入することで、式(3)を以下の式(6)に変換できる。
【0051】
【数6】
【0052】
上記式(1)で示される固体粒子の全表面積(S[nm])は、式(1)に式(2)及び式(6)を代入することで、以下の式(7)に変換できる。
【0053】
【数7】
【0054】
固体粒子を被覆する被覆剤1分子を球と仮定し、被覆剤の質量(m[g])の時の被覆剤分子断面の全面積(P[nm])は、以下の式(8)で表すことができる。
【0055】
【数8】
【0056】
被覆に用いた被覆剤1分子あたりの体積(v[nm])は、以下の式(9)で表すことができる。
【0057】
【数9】
【0058】
上記式(9)を用いて、被覆に用いた被覆剤1分子あたりの半径(r[nm])を以下の式(10)で表すことができる。
【0059】
【数10】
【0060】
上記式(10)を用いて、上記式(8)における、固体粒子を被覆する被覆剤1分子あたりの断面積(p[nm])を以下の式(11)で表すことができる。
【0061】
【数11】
【0062】
上記式(8)における被覆剤の個数(N[個])は、以下の式(12)で表すことができる。
【0063】
【数12】
【0064】
上記式(8)に式(11)と式(12)を代入することで、式(8)を以下の式(13)に変換できる。
【0065】
【数13】
【0066】
固体粒子に対する被覆剤の被覆率(φ)は、被覆剤分子の全断面積(P[nm])を固体粒子の全表面積(S[nm])で除することで表すことができる。ここで、被覆率(φ)は上述のように、被覆剤が固体粒子表面に形成する単分子膜の層数を表している。したがって、式(7)で表される(S)と、式(13)で表される(P)を用いることで、固体粒子に対する被覆剤の被覆率(φ)を、以下の式(14)で表すことができる。
【0067】
【数14】
【0068】
π、θ、Nは常数であるため、被覆剤の種類を決定すれば、被覆剤の分子量、比重が決まる。また、固体粒子の種類が決まれば、固体粒子の比重が決まる。したがって、被覆率を調整するには、被覆剤の種類、固体粒子の種類を決めた上で、被覆剤の分子量、比重、固体粒子の比重、固体粒子のエタノール中での平均粒子径を代入し、その値に応じて、被覆剤の質量、固体粒子の質量を調整することで行うことができる。なお、エタノール中で分散させたときの固体粒子の平均粒子径(D)は、その状態で動的・電気泳動光散乱光度計(ELSZ,大塚電子株式会社製)により測定される。
【0069】
本発明の粒子状組成物において、固体粒子に対する被覆剤の被覆率(φ)は、6以上であることが好ましく、8以上であることが好ましく、10以上(であることが好ましい。なお、被覆率(φ)の上限は特に限定されないが、例えば、50以下であってもよい。実施例で後述するように、固体粒子の分散状態が確保されるには被覆剤の層数はTEM観察により、単分子膜で6(二分子膜で3)が必要である。
【0070】
また、被覆率(φ)を6以上とするために必要な閉鎖小胞体の質量(m[g])は、式(14)を用いて、以下の式(15)のとおりに表すことができる。
【0071】
【数15】
【0072】
さらに、π、θ、Nの常数を式(15)に代入することで、式(15)を式(16)に変換することができる。
【0073】
【数16】
【0074】
したがって、本発明の粒子状組成物が高い水又は油性物質への分散性を得るためには、固体粒子を被覆する被覆剤の質量(m[g])は、式(16)を満たすことが好ましい。
【0075】
(油性物質)
油性物質としては、両親媒性物質の溶解度が高い(具体的には、1μmol/L以上)ものでなければ特に限定されず、無極性溶媒及び極性溶媒のいずれを用いることもできる。具体的に、無極性溶媒としては、炭化水素油、例えば直鎖パラフィン、分岐鎖パラフィン、脂環式炭化水素等が挙げられる。また、極性溶媒としては、エステル油、シリコーン油、脂肪酸トリグリセリド等が挙げられる。
【0076】
油性物質としては、常温において液体状のもの以外に、常温において固体状のものであってもよい。常温において固体状のものであっても、加熱等をすることにより、分散状態において流動性を有していればよい。
【0077】
本発明の目的に応じて、固体粒子、被覆剤以外の他の成分を配合してもよく、配合しなくてもよい。
【0078】
<粒子状組成物の製造方法>
本発明は、上述の粒子状組成物の製造方法も包含する。本発明の粒子状組成物は、例えば、以下の方法により製造することができる。つまり、固体粒子と、水中においては閉鎖小胞体の形成能を有する両親媒性物質を溶解した溶媒との混合物を調製する工程と、混合物中の溶媒を除去する工程と、を有する、方法により粒子状組成物を製造することができる。
【0079】
(調製工程)
本発明における調製工程は、固体粒子と、水中においては閉鎖小胞体の形成能を有する両親媒性物質を溶解した溶媒との混合物を調製する工程である。
【0080】
固体粒子、両親媒性物質は、上述のものを用いることができる。
【0081】
溶媒は、使用する両親媒性物質を溶解させることができるものであれば、どのようなものを用いてもよく、両親媒性物質の種類に応じて選択することができる。使用されうる溶媒としては、揮発性、又は除去可能な有機溶媒、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、クロロホルム、テトラヒドロフラン酢酸エチル、酢酸ブチル、短鎖炭化水素等が挙げられる。なお、「両親媒性物質の溶媒」とは、20℃において溶媒1mLに対して、両親媒性物質を0.01g以上溶解可能な溶媒のことを意味する。
【0082】
混合物の調製は、どのように行ってもよく、例えば、固体粒子と両親媒性物質を溶媒中に添加してから、撹拌することで行ってよい。
【0083】
(除去工程)
本発明における除去工程は、調製工程により調製された混合物中の溶媒を除去する工程である。
【0084】
混合物中の溶媒の除去する方法は、特に限定されないが、溶媒を揮発させることにより行うことが好ましい。溶媒を揮発させる方法は、特に限定されず、例えば、乾燥機を用いて乾燥させることで混合物中の溶媒を除去してもよい。
【0085】
本発明の製造方法は、上述した調製工程、除去工程以外の工程を有してもよく、有さなくてもよい。例えば、除去工程後に得られた粒子状組成物を、水又は油性物質に分散させて、分散性を確認する工程をさらに有してもよい。分散性の確認は、粒子状組成物の平均粒子径と、両親媒性物質を配合していない固体粒子の平均粒子径とを測定し、粒子状組成物の平均粒子径の方が小さいことを確認することで、行うことができる。
【0086】
<液体組成物>
本発明は、上述の本発明の粒子状組成物と、該粒子状組成物を含む水又は油性物質と、を有する、液体組成物を包含する。
【0087】
本発明の液体組成物は、上述の粒子状組成物を水中又は油性物質中に分散させることで、製造することができる。
【0088】
本発明の粒子状組成物の量は、特に限定されず、目的や分散性に応じて適宜選定してもよいが、例えば、水又は油性物質100mlに対して0.1mg〜70gであってよい。
【0089】
本発明の液体組成物の用途は、特に限定されないが、化粧料、塗料用、潤滑剤、固形農薬、研磨剤、印刷インキ、製紙、化学繊維、ゴム、絵具、クレヨン、陶磁器、電子材料、触媒、接着剤、釉薬、医薬品、建築土木材料等に用いる事が好ましい。
【0090】
なお、上述の本発明の粒子状組成物は、水又は油性物質中への分散性が高いため、水又は油性物質に分散させて用いられること(つまり、上述の液体組成物の用途)に適している。ただし、本発明の粒子状組成物は、固体中に分散させてもよく、例えば、プラスチック中に分散させてもよい。
【0091】
本発明の液体組成物は、水又は油性物質中、粒子状組成物以外の成分を有してもよく、有さなくてもよい。水又は油性物質中、粒子状組成物以外の成分は、例えば、用途に応じて選択することができる。
【0092】
本発明の液体組成物は、容器詰めの液体組成物であってもよく、容器に詰められていない液体組成物そのものであってもよい。
【0093】
<表面改質剤>
本発明は、水中においては閉鎖小胞体の形成能を有する両親媒性物質からなる、固体粒子の表面改質剤を包含する。
【0094】
本発明において、「表面改質」とは、例えば、固体粒子の表面に配合することで、固体粒子の水又は油性物質に対する分散性を向上させる用途を指す。
【0095】
本発明の固体粒子、両親媒性物質は、上述の粒子状組成物におけるものと同様のものを用いることができる。
【0096】
<水又は油性物質に対する分散性の向上方法>
本発明は、固体粒子の表面を、水中においては閉鎖小胞体の形成能を有する両親媒性物質で覆うことによる、水又は油性物質に対する分散性の向上方法を包含する。これにより、固体粒子の水又は油性物質に対する分散性が向上する。
【0097】
固体粒子の表面を、水中において閉鎖小胞体の形成能を有する両親媒性物質で覆う方法は、例えば、両親媒性物質の溶媒中に、両親媒性物質と固体粒子を加えた上で、溶媒を乾燥等により除去することで、行うことができる。
【0098】
本発明の固体粒子、両親媒性物質は、上述の粒子状組成物におけるものと同様のものを用いることができる。
【実施例】
【0099】
<実施例1〜5>
実施例1〜5の粒子状組成物を、後述する表1、2の配合で調製した。具体的には、まず、ポリオキシエチレン硬化ひまし油の誘導体(HCO−40)の有機溶媒溶液を調製した。このポリオキシエチレン硬化ひまし油の誘導体(HCO−40)の閉鎖小胞体の形成能を有する両親媒性物質溶液と固体粒子(粒度分布幅の広い未処理の酸化セリウム(以下、「酸化セリウムA」という。)、酸化セリウムAの表面をシリカ処理したもの、酸化セリウムAの表面をステアリン酸処理したもの、酸化セリウムAの表面をシリカ処理したもの、粒度分布幅の狭い未処理の酸化セリウム(以下、「酸化セリウムB」という。)、酸化セリウムBの表面をステアリン酸処理したもの((株)アプローズ社製のAQUACERIAPowderS)、とを有機溶媒のエタノールに添加し、撹拌し、スターラーにより2〜3時間撹拌した。その後、ホットスターラーで撹拌しながら加熱し、溶媒を揮発させた。その後、乾燥機で80℃、2〜3時間乾燥させ、溶媒を完全に除去し、実施例1〜5の粒子状組成物を調製した。
【0100】
<参考例1、比較例1〜5>
後述する表1、2の量の各固体粒子を準備し、これを参考例1、比較例1〜5の粒子とした。
【0101】
<水に対する分散性評価1>
実施例1〜5の粒子状組成物、比較例1〜5の粒子を水に分散させ、平均粒子径を動的・電気泳動光散乱光度計(ELSZ,大塚電子株式会社製)により測定した。測定は、それぞれの粒子状組成物、粒子の乾燥させた状態で全体が10.0gとなるように水を添加し、20wt%の固体粒子分散液を作製し、さらに、水で希釈した後に行った。また、参考例1の粒子をエタノールに分散させ、平均粒子径を動的・電気泳動光散乱光度計(ELSZ,大塚電子株式会社製)により測定した。それぞれの実施例の粒子状組成物、参考例、比較例の粒子の分散性について、ポリオキシエチレン硬化ひまし油の誘導体(HCO−40)の閉鎖小胞体の形成能を有する両親媒性物質により処理をしていない対応する比較例と比較して(例えば、実施例1と比較例1とを比較して)、比較例より水分散時の粒子径が小さく、粉浮きがみられなかった場合、水分散性「〇」(良好)として評価した。水分散性が悪いものは「×」(不良)として評価した。その結果を以下の表1、2に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
【表2】
【0104】
表1、2に示すように、固体粒子の表面処理や粒度分布幅に関わらず、水中において閉鎖小胞体の形成能を有する両親媒性物質で表面を処理した固体粒子は粒子径が小さくなり、いずれの実施例も比較例より水への分散性が向上したことが確認された。また、例えば、実施例1と参考例1の比較からわかるように、両親媒性物質で固体粒子の表面の処理することで、エタノールで分散させたとき(すなわち、水より粒子が分散されやすい状態)とほぼ同一の平均粒子径となることがわかった。
【0105】
<実施例6〜7、比較例6〜7>
実施例6〜7の粒子状組成物を、後述する表3の配合で調製した。具体的には、酸化セリウムA(未処理)、酸化セリウムB(未処理)を、粒度分布幅の広い未処理の酸化亜鉛(以下、「酸化亜鉛A」という。))、粒度分布幅の狭い未処理の酸化亜鉛(以下、「酸化亜鉛B」という。)に変更した点以外は、実施例1と同一の手法で、実施例6〜7の粒子状組成物を調製した。また、後述する表3の量の各固体粒子を準備し、これを比較例6〜7の粒子とした。
【0106】
<水に対する分散性評価2>
実施例6〜7の粒子状組成物、比較例6〜7の粒子を水に分散させ、平均粒子径を動的・電気泳動光散乱光度計(ELSZ,大塚電子株式会社製)により測定した。測定は、上述の「水に対する分散性評価1」と同一の方法で行った。また、それぞれの実施例の粒子状組成物、比較例の粒子の水分散性について、上述の「水に対する分散性評価1」と同一の基準で評価した。その結果を以下の表3に示す。
【0107】
【表3】
【0108】
表3に示すように、酸化亜鉛を用いた場合においても、固体粒子を水中において閉鎖小胞体の形成能を有する両親媒性物質で表面処理することで、酸化セリウム同様に水への高い分散性を得られることがわかった。
【0109】
<実施例8〜11、比較例8>
実施例8〜11の粒子状組成物を、後述する表4の配合で調製した。具体的には、酸化セリウムA(未処理)を、酸化ケイ素(日本アエロジル社製のアエロジルOX50)に変更し、配合量を表4に示すとおりに変更した点以外は、実施例1と同一の手法で、実施例8の粒子状組成物を調製した。また、酸化セリウムA(未処理)を、酸化ケイ素(日本アエロジル社製のアエロジルOX50)に変更し、配合量を表4に示すとおりに変更し、調製に使用した有機溶媒をエタノールからアセトン、クロロホルム、又はイソプロピルアルコール(IPA)に変更した点以外は、実施例1と同一の手法で、実施例9〜11の粒子状組成物を調製した。また、後述する表4の量の各固体粒子を準備し、これを比較例8の粒子とした。
【0110】
<水に対する分散性評価3>
実施例8〜11の粒子状組成物、比較例8の粒子を水に分散させ、平均粒子径を動的・電気泳動光散乱光度計(ELSZ,大塚電子株式会社製)により測定した。測定は、上述の「水に対する分散性評価1」と同一の方法で行った。また、それぞれの実施例の粒子状組成物、比較例の粒子の水分散性について、上述の「水に対する分散性評価1」と同一の基準で評価した。その結果を以下の表4に示す。
【0111】
【表4】
【0112】
表4に示すように、粒子状組成物の調製に使用する溶媒の種類を変更しても、固体粒子を水中においては閉鎖小胞体の形成能を有する両親媒性物質で表面処理することで、高い水への分散性を得られることがわかった。
【0113】
<実施例12〜18>
実施例12〜18の粒子状組成物を、後述する表5の配合で調製した。具体的には、ポリオキシエチレン硬化ひまし油の誘導体(HCO−40)の閉鎖小胞体の形成能を有する両親媒性物質の配合量を表5に示すとおりに変更した点以外は、実施例5と同一の手法で、実施例12〜18の粒子状組成物を調製した。
【0114】
<水に対する分散性評価4>
実施例12〜18の粒子状組成物、比較例5の粒子を水に分散させ、平均粒子径を動的・電気泳動光散乱光度計(ELSZ,大塚電子株式会社製)により測定した。測定は、上述の「水に対する分散性評価1」と同一の方法で行った。また、それぞれの実施例の粒子状組成物、比較例の粒子の水分散性について、上述の「水に対する分散性評価1」と同一の基準で評価した。その結果を以下の表5に示す。水分散性判定の項目に関しては、「△」はやや良好を表す。
【0115】
【表5】
【0116】
表5に示すとおり、酸化セリウムに対する両親媒性物質の割合が一定(すなわち被覆率φが6)以上になると、水中で粒子状組成物の平均粒子径が小さくなること、すなわち、水への分散性が高くなることがわかった。
【0117】
<実施例19〜24、比較例9〜10、参考例2〜3>
実施例19〜24の粒子状組成物を、後述する表6、7の配合で調製した。具体的には、酸化セリウムA(未処理)を、酸化鉄(メチコン処理)(SI−2タロックスLLXLO)又は酸化チタン(Al,ステアリン酸処理)(テイカ(株)社製のMT−100Z)に置き換え、ポリオキシエチレン硬化ひまし油の誘導体(HCO−40)の閉鎖小胞体の形成能を有する両親媒性物質の配合量を表6、7に示すとおりに変更した点以外は、実施例1と同一の手法で、実施例19〜24の粒子状組成物を調製した。また、後述する表6、7の量の各固体粒子を準備し、これを参考例2、3、比較例9〜10の粒子とした。
【0118】
<水に対する分散性評価5>
実施例19〜24の粒子状組成物、比較例9〜10、参考例2〜3の粒子を水に分散させ、平均粒子径を動的・電気泳動光散乱光度計(ELSZ,大塚電子株式会社製)により測定した。測定は、上述の「水に対する分散性評価1」と同一の方法で行った。また、それぞれの実施例の粒子状組成物、参考性、比較例の粒子の水分散性について、上述の「水に対する分散性評価1」と同一の基準で評価した。その結果を以下の表6、7に示す。
【0119】
【表6】
【0120】
【表7】
【0121】
表6、7に示すとおり、固体粒子を酸化鉄(メチコン処理)、酸化チタン(Al,ステアリン酸処理)に変更しても、固体粒子を水中において閉鎖小胞体の形成能を有する両親媒性物質で表面処理することで、高い水への分散性を得られることがわかった。また、酸化セリウム同様に、酸化鉄(メチコン処理)、酸化チタン(Al,ステアリン酸処理)の固体粒子を用いた場合においても、固体粒子に対する両親媒性物質の量が一定以上になると、水中での平均粒子径が小さくなること、すなわち、水への分散性が高くなることがわかった。
【0122】
<実施例25〜30>
実施例25〜30の粒子状組成物を、後述する表8、9の配合で調製した。具体的には、ポリオキシエチレン硬化ひまし油の誘導体(HCO−40)の閉鎖小胞体の形成能を有する両親媒性物質をモノステアリン酸テトラグリセリル(TETRAGLYN 1−S)の閉鎖小胞体の形成能を有する両親媒性物質、トリステアリン酸デカグリセリル(DECAGLYN 3−S)の閉鎖小胞体の形成能を有する両親媒性物質、レシチン(SLP ホワイト)の閉鎖小胞体の形成能を有する両親媒性物質、又はショ糖ステアリン酸エステル(S−1670)の閉鎖小胞体の形成能を有する両親媒性物質に変更し、さらに実施例25〜29については調製に使用した有機溶媒をエタノールからイソプロピルアルコール(IPA)又はテトラヒドロフラン(THF)に変更し、各成分の配合量を表8、9に示すとおりに変更した点以外は、実施例1と同一の手法で、実施例25〜30の粒子状組成物を調製した。
【0123】
<水に対する分散性評価6>
実施例25〜30の粒子状組成物、比較例5の粒子を水に分散させ、平均粒子径を動的・電気泳動光散乱光度計(ELSZ,大塚電子株式会社製)により測定した。測定は、上述の「水に対する分散性評価1」と同一の方法で行った。また、それぞれの実施例の粒子状組成物、比較例の粒子の水分散性について、上述の「水に対する分散性評価1」と同一の基準で評価した。その結果を以下の表8、9に示す。
【0124】
【表8】
【0125】
【表9】
【0126】
表8、9に示すとおり、両親媒性物質の種類を変えても、固体粒子を水中において閉鎖小胞体の形成能を有する両親媒性物質で表面処理することで、高い水への分散性を得られることがわかった。
【0127】
<実施例31、実施例32>
実施例1と同様の手順で、未処理の酸化セリウムB2gの表面をポリオキシエチレン硬化ひまし油の誘導体(HCO−40)の閉鎖小胞体の形成能を有する両親媒性物質0.1gで処理した実施例31の粒子状組成物を調製した。また、実施例19と同様の手順で、酸化鉄(メチコン処理)2gの表面をポリオキシエチレン硬化ひまし油の誘導体(HCO−40)の閉鎖小胞体の形成能を有する両親媒性物質0.1gで処理した実施例32の粒子状組成物を調製した。また、未処理の酸化セリウムB2gを比較例11として準備し、酸化鉄(メチコン処理)2gを比較例12として準備した。
【0128】
<UV−visスペクトルの測定>
実施例31、32の粒子状組成物、比較例11、12の粒子について、乾燥状態の粒子状組成物をペレット状にしてから、紫外・可視分光光度計(UV−vis)(V−570,Jasco株式会社製)によりUV−visスペクトルを測定した。その結果を図1に示す。図1中、(a)が実施例31、比較例11の粒子状組成物についてのUV−visスペクトルを示し、(b)が実施例32、比較例12の粒子状組成物についてのUV−visスペクトルを示す。
【0129】
図1に示すように、実施例31と比較例11、及び実施例32と比較例12はそれぞれほぼ同じスペクトルであることが確認された。これにより、固体粒子の表面を本発明に用いられる被覆剤により処理しても、固体粒子そのものの物性はほぼ保たれていることがわかった。
【0130】
<実施例33、実施例34>
実施例1と同様の手順で、酸化ケイ素1gの表面をポリオキシエチレン硬化ひまし油の誘導体(HCO−10)の閉鎖小胞体の形成能を有する両親媒性物質1gで処理した実施例33の粒子状組成物を調製した。また、酸化ケイ素の量をポリエチレン硬化ひまし油の誘導体(HCO−10)の閉鎖小胞体の形成能を有する両親媒性物質の量の半分にした点以外は、実施例33と同様の配合・手順で実施例34の粒子状組成物を調製した。
【0131】
<TEM観察>
TEM(透過型電子顕微鏡(JEM−2010,日本電子株式会社製))により、実施例33と実施例34の粒子状組成物を観察した。その結果を図2に示す。図2中、(a)が実施例33の粒子状組成物についてのTEM観察による画像を示し、(b)が実施例34の粒子状組成物についてのTEM観察による画像を示す。
【0132】
図2に示すように、固体粒子の表面に、本発明に用いる被覆剤が2分子膜を形成し、表面を覆って多層を形成していることが確認された。この結果から、本発明に用いる被覆剤が固体粒子の表面で二分子膜を3層(単分子膜で6層)以上形成することは、水へのより高い分散性を獲得するには望ましいことを確認した。
【0133】
<実施例35>
実施例35の粒子状組成物を、後述する表10の配合で調製した。具体的には、まず、ポリオキシエチレン硬化ひまし油の誘導体(HCO−20)の有機溶媒溶液を調製した。このポリオキシエチレン硬化ひまし油の誘導体(HCO−20)の閉鎖小胞体の形成能を有する両親媒性物質溶液と粒度分布幅の広い未処理の炭酸カルシウムとを有機溶媒のイソプロピルアルコールに添加し、撹拌し、スターラーにより2〜3時間撹拌した。その後、ホットスターラーで撹拌しながら加熱し、溶媒を揮発させた。その後、乾燥機で80℃、2〜3時間乾燥させ、溶媒を完全に除去し、実施例35の粒子状組成物を調製した。
【0134】
<比較例13>
後述する表10の量の各固体粒子を準備し、これを比較例13の粒子とした。
【0135】
<ワセリンに対する分散性評価>
ワセリン(融点65〜70℃)20gをビーカーに移し、80℃で加熱攪拌して溶融させた。この溶融ワセリンに、実施例35の粒子状組成物又は比較例13の粒子を20g添加し、10分撹拌した。得られた試料を80℃で加熱しながら光学顕微鏡で観察した。それぞれの試料について、流動性がある場合「〇」(良好)、流動性はあるがわずかに凝集が見られた場合「△」、流動性がない場合「×」(不良)として評価した。その結果を以下の表10に示す。なお、この評価方法においては、粒子状組成物又は粒子の質量比が50質量%と高含有率であるが、このような場合には粒子状組成物又は粒子が分散能を有しないと、凝集して液体の流動性を失わせてしまう。
【0136】
<固形パラフィンに対する分散性評価>
固形パラフィン(融点68〜70℃)50gをビーカーに移し、120℃で加熱攪拌して溶融させた。この溶融パラフィンに、実施例35の粒子状組成物又は比較例13の粒子を50g添加し、60分撹拌した。得られた試料を90℃で加熱しながら光学顕微鏡で観察した。それぞれの試料について、上述の「ワセリンに対する分散性評価」と同様の基準で評価した。その結果を以下の表10に示す。
【0137】
<流動パラフィンに対する分散性評価1>
流動パラフィン(融点−20〜−25℃)50gをビーカーに移し、実施例35の粒子状組成物又は比較例13の粒子を50g添加し、60分撹拌した。得られた試料を光学顕微鏡で観察した。それぞれの試料について、上述の「ワセリンに対する分散性評価」と同様の基準で評価した。その結果を以下の表10に示す。
【0138】
【表10】
【0139】
表10に示すとおり、固体粒子を水中において閉鎖小胞体の形成能を有する両親媒性物質で表面処理することで、油性物質に対する高い分散性を得られることがわかった。
【0140】
<実施例36>
実施例36の粒子状組成物を、後述する表11の配合で調製した。具体的には、まず、ポリオキシエチレン硬化ひまし油の誘導体(HCO−40)の有機溶媒溶液を調製した。このポリオキシエチレン硬化ひまし油の誘導体(HCO−40)の閉鎖小胞体の形成能を有する両親媒性物質溶液と酸化セリウムAの表面をステアリン酸処理したものとを有機溶媒のエタノールに添加し、撹拌し、スターラーにより2〜3時間撹拌した。その後、ホットスターラーで撹拌しながら加熱し、溶媒を揮発させた。その後、乾燥機で80℃、2〜3時間乾燥させ、溶媒を完全に除去し、実施例36の粒子状組成物を調製した。
【0141】
<比較例14>
後述する表11の量の各固体粒子を準備し、これを比較例14の粒子とした。
【0142】
<流動パラフィンに対する分散性評価2>
それぞれの実施例の粒子状組成物、比較例の粒子の流動パラフィンに対する分散性について、上述の「ワセリンに対する分散性評価」と同一の基準で評価した。その結果を以下の表11に示す。
【0143】
<ミリスチン酸イソプロピルに対する分散性評価2>
ミリスチン酸イソプロピル50gをビーカーに移し、実施例36の粒子状組成物又は比較例14の粒子を50g添加し、60分撹拌した。得られた試料を光学顕微鏡で観察した。それぞれの試料について、上述の「ワセリンに対する分散性評価」と同様の基準で評価した。その結果を以下の表11に示す。
【0144】
<トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルに対する分散性評価>
トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル50gをビーカーに移し、実施例36の粒子状組成物又は比較例14の粒子を50g添加し、60分撹拌した。得られた試料を光学顕微鏡で観察した。それぞれの試料について、上述の「ワセリンに対する分散性評価」と同様の基準で評価した。その結果を以下の表11に示す。
【0145】
【表11】
【0146】
表11に示すとおり、固体粒子を水中において閉鎖小胞体の形成能を有する両親媒性物質で表面処理することで、油性物質が極性を有するか否かにかかわらず油性物質に対する高い分散性を得られることがわかった。

図1
図2
【国際調査報告】