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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2018年8月2日
【発行日】2019年2月7日
(54)【発明の名称】脱硫装置および脱硫方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/04 20060101AFI20190111BHJP
   B01J 20/18 20060101ALI20190111BHJP
   B01J 20/20 20060101ALI20190111BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20190111BHJP
   C07C 7/152 20060101ALI20190111BHJP
【FI】
   B01D53/04ZNM
   B01J20/18 D
   B01J20/20 B
   B01J20/26 A
   C07C7/152
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
【出願番号】特願2018-520207(P2018-520207)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2017年12月18日
(11)【特許番号】特許第6406745号(P6406745)
(45)【特許公報発行日】2018年10月17日
(31)【優先権主張番号】特願2017-12193(P2017-12193)
(32)【優先日】2017年1月26日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニック株式会社
【住所又は居所】大阪府門真市大字門真1006番地
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
【住所又は居所】京都府京都市左京区吉田本町36番地1
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 将司
(72)【発明者】
【氏名】張 晋
(72)【発明者】
【氏名】脇田 英延
(72)【発明者】
【氏名】辻 庸一郎
(72)【発明者】
【氏名】北川 進
(72)【発明者】
【氏名】樋口 雅一
【テーマコード(参考)】
4D012
4G066
4H006
【Fターム(参考)】
4D012BA01
4D012BA02
4D012BA03
4D012CA07
4D012CB13
4D012CE03
4D012CF08
4D012CF10
4D012CG01
4D012CG06
4G066AA02B
4G066AA05B
4G066AA62B
4G066AB24B
4G066AC11B
4G066BA22
4G066BA36
4G066CA25
4G066DA04
4G066FA37
4H006AA02
4H006AD33
(57)【要約】
脱硫装置は、炭化水素燃料に含まれる硫黄化合物を除去する第一脱硫剤が充填された第一脱硫部と、炭化水素燃料の流れ方向において、第一脱硫部よりも後段に設けられ、炭化水素燃料に含まれる硫黄化合物を除去する第二脱硫剤が充填された第二脱硫部と、を備え、第二脱硫剤は、銅イオンと有機配位子とを組合せた高分子構造を有する多孔性配位高分子で構成され、第一脱硫剤とは硫黄化合物の吸着能が異なっており、第二脱硫剤の温度は100℃以下に保たれている。これにより、脱硫装置は、コストを抑制しつつ、簡易な構成により、炭化水素燃料に含まれる硫黄化合物を効率よく除去できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素燃料に含まれる硫黄化合物を除去する第一脱硫剤が充填された第一脱硫部と、
前記炭化水素燃料の流れ方向において、前記第一脱硫部よりも後段に設けられ、前記炭化水素燃料に含まれる前記硫黄化合物を除去する第二脱硫剤が充填された第二脱硫部と、を備え、
前記第二脱硫剤は、銅イオンと有機配位子とを組合せた高分子構造を有する多孔性配位高分子で構成され、前記第一脱硫剤とは前記硫黄化合物の吸着能が異なっており、
前記第二脱硫剤の温度は100℃以下に保たれている、脱硫装置。
【請求項2】
前記多孔性配位高分子は、配位不飽和なオープンメタルサイトを有する、請求項1に記載の脱硫装置。
【請求項3】
前記有機配位子は、一つ以上のカルボキシレート基および一つ以上のベンゼン環を有する請求項1または2に記載の脱硫装置。
【請求項4】
前記有機配位子は、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸及びその誘導体である、請求項1から3のいずれか1項に記載の脱硫装置。
【請求項5】
前記第一脱硫剤は、活性炭または遷移金属酸化物である、請求項1から4のいずれか1項に記載の脱硫装置。
【請求項6】
前記第一脱硫剤と前記第二脱硫剤との充填重量の比は、4対1から7対1の範囲内である、請求項5に記載の脱硫装置。
【請求項7】
前記炭化水素燃料の流れ方向において、前記第二脱硫部の後段に設けられ、前記炭化水素燃料に含まれる前記硫黄化合物を除去する第三脱硫剤が充填された第三脱硫部をさらに備え、
前記第三脱硫剤は、ニッケルまたは銀イオン交換ゼオライトを含み、前記第一脱硫剤および前記第二脱硫剤とは前記硫黄化合物の吸着能が異なっており、
前記第三脱硫剤の温度は100℃以下に保たれている、請求項1から6のいずれか1項に記載の脱硫装置。
【請求項8】
前記第二脱硫部において充填される前記第二脱硫剤の充填量は、前記第三脱硫部において充填される前記第三脱硫剤の充填量よりも多い、請求項7に記載の脱硫装置。
【請求項9】
前記炭化水素燃料は、前記硫黄化合物としてジメチルスフィルドおよびメルカプタン類を含む、請求項1から8のいずれか1項に記載の脱硫装置。
【請求項10】
炭化水素燃料に含まれる硫黄化合物を除去する第一脱硫剤が充填された第一脱硫部と、
前記炭化水素燃料の流れ方向において、前記第一脱硫部よりも後段に設けられ、前記炭化水素燃料に含まれる硫黄化合物を除去する第二脱硫剤が充填された第二脱硫部と、を備え、該第二脱硫剤が、銅イオンと有機配位子とを組合せた高分子構造を有する多孔性配位高分子で構成された脱硫装置を用いた脱硫方法であって、
前記第二脱硫剤の温度を100℃以下に保つステップと、
前記第一脱硫部および前記第二脱硫部の順に前記炭化水素燃料を流通させるステップと、
前記第一脱硫部と前記第二脱硫部とにおいてそれぞれ異なる種類の硫黄化合物を吸着除去するステップと、を含む脱硫方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素燃料に含まれる硫黄化合物の脱硫装置および脱硫方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガスまたはLPG等の炭化水素燃料から水素を生成する水素生成方法の1つとして、水蒸気改質法を用いた水素生成装置が知られている。ところで、天然ガス中には燃料由来の硫黄化合物に加えて、一般に付臭剤としてターシャリーブチルメルカプタン(TBM;tertiary-butylmercaptan)、ジメチルスルフィド(DMS;dimethyl sulfide)、およびテトラヒドロチオフェン(THT;tetrahydro thiophene)などの硫黄化合物が数ppm添加される。水素生成装置が備える水蒸気改質触媒は、これら硫黄化合物により被毒されやすい。このため、水素生成装置の前段には脱脱硫装置が設けられる。
【0003】
脱脱硫装置による脱硫の方法としては、例えば、都市ガスに水素を添加し、共沈法により調整された銅‐亜鉛系脱硫剤を用いて脱硫する方法が提案されている(例えば、特許文献1)。また、脱硫容器内において、その上流側と下流側とで硫黄化合物吸着能の異なる吸着剤を充填してなる脱硫装置も提案されている(例えば、特許文献2)。また、吸着脱硫において吸着困難なDMSを効果的に除去できる材料として、銀イオン交換Y型ゼオライト(AgNa−Y)を用いることが提案されている(例えば、非特許文献1)。また、TBMに関して強い吸着性を示す、銅(Cu)を担持した活性炭なども知られている(例えば、非特許文献2)。その他、多孔性配位高分子を用いた脱硫剤も提案されている(例えば、特許文献3、4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3242514号公報
【特許文献2】特開2003−20489号公報
【特許文献3】特表2011−520592号公報
【特許文献4】特開2013−144284号公報
【非特許文献1】Shigeo Satokawa, Yuji Kobayashi, Hiroshi Fujiki, “Adsorptive removal of dimethylsulfide and t-butylmercaptan from pipeline natural gas fuel on Ag zeolites under ambient conditions” Applied Catalysis B: Environmental Volume 56, Issues1-2, 10 March 2005, Page 51-56.
【非特許文献2】Hoang Phuoc Ho, Palraj Kasinathan, Jaesung Kim, Doohwan Lee, Hee Chul Woo, “Deep desulfurization of fuel gas by adsorption on Cu-impregnated activated carbons in practical conditions” Korean Journal of Chemical Engineering, June 2016, Volume 33, Issue 6, pp1908-1916
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、一例として、コストを抑制しつつ、簡易な構成により、炭化水素燃料に含まれる硫黄化合物を効率よく除去できる脱硫装置および脱硫方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の脱硫装置の一態様(aspect)は、炭化水素燃料に含まれる硫黄化合物を除去する第一脱硫剤が充填された第一脱硫部と、前記炭化水素燃料の流れ方向において、前記第一脱硫部よりも後段に設けられ、前記炭化水素燃料に含まれる硫黄化合物を除去する第二脱硫剤が充填された第二脱硫部と、を備え、前記第二脱硫剤は、銅イオンと有機配位子とを組合せた高分子構造を有する多孔性配位高分子で構成され、前記第一脱硫剤とは前記硫黄化合物の吸着能が異なっており、前記第一脱硫剤および前記第二脱硫剤の温度は100℃以下に保たれている。
【0007】
また、本発明の脱硫方法の一態様は、炭化水素燃料に含まれる硫黄化合物を除去する第一脱硫剤が充填された第一脱硫部と、前記炭化水素燃料の流れ方向において、前記第一脱硫部よりも後段に設けられ、前記炭化水素燃料に含まれる硫黄化合物を除去する第二脱硫剤が充填された第二脱硫部と、を備え、該第二脱硫剤が、銅イオンと有機配位子とを組合せた高分子構造を有する多孔性配位高分子で構成された脱硫装置を用いた脱硫方法であって、前記第一脱硫剤および前記第二脱硫剤の温度を100℃以下に保つステップと、前記第一脱硫部および前記第二脱硫部の順に前記炭化水素燃料を流通させるステップと、前記第一脱硫部と前記第二脱硫部とにおいてそれぞれ異なる種類の硫黄化合物を吸着除去するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、以上に説明したように構成され、コストを抑制しつつ、簡易な構成により、炭化水素燃料に含まれる硫黄化合物を効率よく除去できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態に係る脱硫装置の構成の一例を示す図である。
図2図1に示す脱硫装置が備える第二脱硫部の脱硫剤を構成する多孔性配位高分子におけるオープンメタルサイトの一例を示す図である。
図3図1に示す脱硫装置を用いた炭化水素燃料の脱硫方法の一例を示すフローチャートである。
図4】本発明の実施の形態の変形例に係る脱硫装置の構成の一例を示す図である。
図5】脱硫試験前のHKUST−1のX線回折パターンの一例を示す図である。
図6】脱硫試験後のHKUST−1のX線回折パターンの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本発明の一形態を得るに至った経緯)
近年、エネルギーを有効に利用することが可能である分散型の発電装置として、発電効率および総合効率が高い燃料電池コージェネレーションシステム(以下、単に「燃料電池システム」と称する)が注目されている。燃料電池システムでは、発電の際に水素が必要となる。このため、燃料電池システムでは、燃料電池と共に、天然ガスまたはLPG等の炭化水素燃料から水素を生成する水素生成装置が併設される。水素生成装置は、例えば、水素生成方法の1つである水蒸気改質法を用いて、炭化水素燃料から水素を生成する。
【0011】
ところで、炭化水素燃料中には燃料由来の硫黄化合物以外に、付臭剤としてTBM等のメルカプタン類、およびDMS等のスフィルド類が数ppm添加されている。上記した水蒸気改質法において利用する水蒸気改質触媒は、これらの硫黄化合物により被毒されやすいため、水蒸気改質触媒の前段に脱硫装置を設け、炭化水素燃料を脱硫する必要がある。
【0012】
脱硫法としては、「常温」、「水添」、「超高次」の3種類の脱硫法が知られている。例えば、「常温」の脱硫法としては、常温で吸着脱硫を行い、定期的に脱脱硫装置を交換する吸着脱硫法が挙げられる。「水添」の脱硫法としては、脱硫装置を200〜350℃に保持した状態で水素生成装置から排出される改質ガスの一部を該脱硫装置に戻し、改質ガスに含まれる水素によりCoMo系触媒等で水素化して硫化水素を生成する。そして、生成した硫化水素を酸化亜鉛等で除去する水添脱硫法が挙げられる。さらにまた、「超高次」の脱硫法としては、特許文献1に開示された脱硫装置のように、CuZnO系脱硫剤を用いて、200〜350℃で水素により硫黄化合物を水素化すると同時に硫黄化合物を吸収除去する脱硫法が挙げられる。
【0013】
吸着脱硫法では、Ag、Cu、Mnなどの遷移金属を含むゼオライトにより硫黄化合物を常温で吸着除去するが、遷移金属の種類によってはガス中に含まれる水分により、吸着能力が阻害されることがある。そこで、非特許文献1では、ガス露点に影響を受けにくく、吸着困難なDMSを除去できる材料として、Agゼオライトが効果的である点が示されている。
【0014】
しかしながら、Agゼオライトは高価でありコストがかかる。そこで、特許文献2では、Agゼオライトの充填量を減らすように、硫黄化合物の吸着能が異なる脱硫剤を二段配置した脱硫装置が提案されている。この特許文献2に係る脱硫装置では、前段に設けられた脱硫剤によりメルカプタン類を、後段に設けられた脱硫剤によりDMSを除去する。この特許文献2に係る脱硫装置では、前段に設けられる脱硫剤として、活性炭、二酸化マンガン、ゼオライトなどの硫黄化合物吸着剤を用い、後段に設けられる脱硫剤として、ゼオライトにAgなどの遷移金属を担持させた硫黄化合物吸着剤が用いられている。なお、安価にメルカプタン類を除去するために、前段に設けられる脱硫剤として非特許文献2で開示された、銅を担持した活性炭などを用いることもできる。
【0015】
また、硫黄化合物を除去する脱硫剤として、多孔質の配位ネットワーク構造をもつ金属有機構造体(MOF;Metal-organic framework)が効果的である点が見出されている。例えば、特許文献3では、Crイオンとベンゼン−1、4−ジカルボン酸からなる多孔性配位高分子(PCP;Porous coordination polymer)の一種、MIL−101を用いた脱硫剤が報告されている。一方、特許文献4には、Ag系触媒を担持した多孔性配位高分子が記載されている。この多孔性配位高分子は、Agゼオライトと比較して、高い硫化水素除去能を示すことが報告されている。
【0016】
発明者らは、上記した特許文献1〜4、非特許文献1、2に開示された脱硫装置を検討したところ、それぞれ以下の問題点があることに気が付いた。すなわち、特許文献1に開示された脱硫装置の場合、都市ガスに水素を添加させるために、水素生成装置において生成された改質ガスの一部を脱硫装置まで戻すことができる構成とする必要がある。さらに、脱硫剤を200℃〜350℃の温度に維持する必要がある。このため、特許文献1に開示された脱硫装置は、構成が複雑となるといった問題が生じる。
【0017】
また、特許文献4および非特許文献1のように脱硫剤としてAg系触媒を担持したPCPまたはAgゼオライトを用いる場合、Agの使用によりコストが高くなるという問題が生じる。
【0018】
また、特許文献2または非特許文献2に開示された脱硫装置において、前段にTBM等のメルカプタン類除去を目的として活性炭を用い、後段でDMS等のスルフィド類の除去を目的としてAgゼオライトを用いた場合、Agの使用の観点からコスト面での課題が残る。さらにまた、スルフィド類を除去するために、後段に設ける脱硫剤としてAgゼオライトを用いた場合、多孔性配位高分子を用いた脱硫剤と比較するとDMSの除去性能は低いものとなるという問題にも気が付いた。また、特許文献3に係る脱硫装置において脱硫剤として用いるMIL−101などは、加圧を要する上に硫黄化合物の除去性能が十分ではないという問題がある。
【0019】
そこで、発明者らは、コストを抑制しつつ、簡易な構成により、炭化水素燃料に含まれる硫黄化合物のうち、特に、脱硫が困難であるDMSを効率よく除去できる脱硫装置について検討した。そして、本発明者らは、無機部位および有機部位からなり、均一な骨格構造に基づく高い比表面積を有し、金属イオンが原子レベルで存在する、多孔性配位高分子(PCP)/金属有機構造体(MOF)に着目した。そして、PCPの金属イオンに、脱硫に有効な銅イオンを選択することで、従来に比べて特異的なDMS除去性能を見出し、本発明に至った。具体的には、本発明では以下に示す態様を提供する。
【0020】
本発明の第1の態様に係る脱硫装置は、炭化水素燃料に含まれる硫黄化合物を除去する第一脱硫剤が充填された第一脱硫部と、前記炭化水素燃料の流れ方向において、前記第一脱硫部よりも後段に設けられ、前記炭化水素燃料に含まれる前記硫黄化合物を除去する第二脱硫剤が充填された第二脱硫部と、を備え、前記第二脱硫剤は、銅イオンと有機配位子とを組合せた高分子構造を有する多孔性配位高分子で構成され、前記第一脱硫剤とは前記硫黄化合物の吸着能が異なっており、前記第二脱硫剤の温度は100℃以下に保たれている。
【0021】
上記構成によると、第一脱硫剤および第二脱硫剤は互いに硫黄化合物の吸着能が異なるため、炭化水素燃料に複数種類の硫黄化合物が含まれていても、異なる種類の硫黄化合物を第一脱硫剤および第二脱硫剤それぞれで別々に吸着除去させることができる。特に、第二脱硫剤は、銅イオンと有機配位子とを組合せた高分子構造を有する多孔性配位高分子で構成されている。このため、第二脱硫部において硫黄化合物のうちジメチルスフィルド等のスルフィド類を、高価なAgなどを使用することなく、脱硫することができる。
【0022】
また、第二脱硫剤を100℃以下、つまり室温もしくは脱硫装置が設けられるシステム内温度に保持する構成であるため、第二脱硫剤を外部系から加熱して高温に維持するための構成が必要がなく簡易な構成とすることができる。また、第二脱硫剤を100℃以下に保つために、被吸着分子が第二脱硫剤から脱離することを防ぐことができる。
【0023】
したがって、本発明の第1の態様に係る脱硫装置は、コストを抑制しつつ、簡易な構成により、炭化水素燃料に含まれる硫黄化合物を効率よく除去できるという効果を奏する。
【0024】
本発明の第2の態様に係る脱硫装置は、上記した第1の態様において、前記多孔性配位高分子は、配位不飽和なオープンメタルサイトを有する構成であってもよい。
【0025】
上記構成によると、金属イオンの配位状態に空きサイトを有することができるため、この空きサイトで多孔性配位高分子の多孔性構造における細孔に吸着されない硫黄化合物の分子を吸着することができる。
【0026】
このため、脱硫装置は、炭化水素燃料から硫黄化合物を除去する脱硫性能を高めることができる。
【0027】
本発明の第3の態様に係る脱硫装置は、上記した第1または第2の態様において、前記有機配位子は、一つ以上のカルボキシレート基および一つ以上のベンゼン環を有する構成であってもよい。
【0028】
本発明の第4の態様に係る脱硫装置は、上記した第1から第3の態様のいずれか1つの態様において、前記有機配位子は、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸及びその誘導体であってもよい。
【0029】
本発明の第5の態様に係る脱硫装置は、上記した第1から第4の態様のいずれか1つの態様において、前記第一脱硫剤は、活性炭または遷移金属酸化物であってもよい。
【0030】
上記構成によると、第一脱硫剤は、活性炭または遷移金属酸化物であるため、硫黄化合物のうちメルカプタン類を吸着除去することができる。このため、脱硫装置は、第一脱硫部において炭化水素燃料からメルカプタン類を、第二脱硫部において炭化水素燃料からジメチルスフィルド等のスルフィド類をそれぞれ除去することができる。
【0031】
本発明の第6の態様に係る脱硫装置は、上記した第5の態様において、前記第一脱硫剤と前記第二脱硫剤との充填重量の比は、4対1から7対1の範囲内であってもよい。
【0032】
上記構成によると、第一脱硫剤と第二脱硫剤との充填重量の比を4対1から7対1の範囲とするため、炭化水素燃料に含まれる硫黄化合物を除去するのに、第一脱硫剤および第二脱硫剤それぞれの充填重量を必要十分な割合とすることができる。
【0033】
本発明の第7の態様に係る脱硫装置は、上記した第1から第6の態様のいずれか1つの態様において、前記炭化水素燃料の流れ方向において、前記第二脱硫部の後段に設けられ、前記炭化水素燃料に含まれる前記硫黄化合物を除去する第三脱硫剤が充填された第三脱硫部をさらに備え、前記第三脱硫剤は、ニッケルまたは銀イオン交換ゼオライトを含み、前記第一脱硫剤および前記第二脱硫剤とは前記硫黄化合物の吸着能が異なっており、前記第三脱硫剤の温度は100℃以下に保たれている構成であってもよい。
【0034】
上記構成によると、脱硫装置は、第三脱硫部をさらに備えた構成であるため、第一脱硫部および第二脱硫部によって除去できなかった硫黄化合物を第三脱硫部で除去することができる。このため、脱硫装置は、さらに脱硫性能を向上させることができる。
【0035】
本発明の第8の態様に係る脱硫装置は、上記した第7の態様において、前記第二脱硫部において充填される前記第二脱硫剤の充填量は、前記第三脱硫部において充填される前記第三脱硫剤の充填量よりも多い構成であってもよい。
【0036】
本発明の第9の態様に係る脱硫装置は、上記した第1から第8の態様のいずれか1つの態様において、前記炭化水素燃料は、前記硫黄化合物としてジメチルスフィルドおよびメルカプタン類を含んでもよい。
【0037】
本発明の第10の態様に係る脱硫方法は、炭化水素燃料に含まれる硫黄化合物を除去する第一脱硫剤が充填された第一脱硫部と、前記炭化水素燃料の流れ方向において、前記第一脱硫部よりも後段に設けられ、前記炭化水素燃料に含まれる硫黄化合物を除去する第二脱硫剤が充填された第二脱硫部と、を備え、該第二脱硫剤が、銅イオンと有機配位子とを組合せた高分子構造を有する多孔性配位高分子で構成された脱硫装置を用いた脱硫方法であって、前記第二脱硫剤の温度を100℃以下に保つステップと、前記第一脱硫部および前記第二脱硫部の順に前記炭化水素燃料を流通させるステップと、前記第一脱硫部と前記第二脱硫部とにおいてそれぞれ異なる種類の硫黄化合物を吸着除去するステップと、を含む。
【0038】
上記方法によると、第一脱硫部と第二脱硫部とにおいてそれぞれ異なる種類の硫黄化合物を吸着除去する。このため、炭化水素燃料に複数種類の硫黄化合物が含まれていても、第一脱硫剤および第二脱硫剤それぞれで別々に異なる種類の硫黄化合物を吸着除去させることができる。特に、第二脱硫剤は、銅イオンと有機配位子とを組合せた高分子構造を有する多孔性配位高分子で構成されている。このため、第二脱硫部において硫黄化合物のうちジメチルスフィルド等のスルフィド類を、高価なAgなどを使用することなく、脱硫することができる。
【0039】
また、上記方法では、第二脱硫剤を100℃以下、つまり室温もしくは脱硫装置が設けられるシステム内温度に保持している。このため、第二脱硫剤を外部系から加熱して高温に維持するための構成が必要がなく簡易な構成とすることができる。また、第二脱硫剤を100℃以下に保つため、被吸着分子が第二脱硫剤から脱離することを防ぐことができる。
【0040】
したがって、本発明の第10の態様に係る脱硫方法は、コストを抑制しつつ、簡易な構成の脱硫装置により、炭化水素燃料に含まれる硫黄化合物を効率よく除去できるという効果を奏する。
【0041】
以下、実施の形態の具体例について、図面を参照して説明する。
【0042】
[実施の形態]
(脱硫装置の構成)
まず、図1を参照して実施の形態に係る脱硫装置100の構成について説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る脱硫装置100の構成の一例を示す図である。脱硫装置100は、例えば、水素生成装置等に供給される炭化水素燃料に含まれる硫黄化合物を除去する装置である。炭化水素燃料としては、例えば、都市ガス、天然ガス、エタン、プロパン、LPG〈液化石油ガス〉等が例示できる。また、炭化水素燃料に含まれる硫黄化合物としては、例えば、TBM等のメルカプタン類、およびDMS等のスルフィド類などが挙げられる。
【0043】
脱硫装置100は、図1に示すように、第一脱硫部2と、該第一脱硫部2とは硫黄化合物の吸着能が異なる第二脱硫部4とを備える。脱硫装置100では、炭化水素燃料の流れ方向において、第二脱硫部4は第一脱硫部2よりも後段に設けられている。そして、入口側流路100aから脱硫装置100の内部空間に炭化水素燃料が供給され、第一脱硫部2、第二脱硫部4の順に流通し、出口側流路100bを通じて脱硫処理された炭化水素燃料が脱硫装置100の内部空間から外部へと排出される。
【0044】
第一脱硫部2には、炭化水素燃料中に含まれるメルカプタン類を吸着除去する第一脱硫剤6が充填されている。第一脱硫剤6としては、例えば、活性炭または遷移金属酸化物が例示できる。例えば、活性炭としては、銅を担持した活性炭が挙げられる。銅を担持した活性炭によるメルカプタン類の吸着容量は約3wt%である。上述したように常温で銅を担持した活性炭を用いた脱硫剤は公知であり詳細は省略する。また、例えば、遷移金属酸化物としては、二酸化マンガンが挙げられる。
【0045】
第二脱硫部4には、炭化水素燃料中に含まれるDMSを吸着除去する脱硫剤であって、銅イオンと有機配位子とを組合せた高分子構造を有する多孔性配位高分子で構成された第二脱硫剤8が充填されている。第二脱硫剤8は、銅イオンを金属イオンにもち、有機配位子は、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、2−ヒドロキシ−1,4−ベンゼンジカルボン酸、ビフェニル−3,4’,5−トリカルボン酸、ビフェニル−3,3’,5,5’−テトラカルボン酸、テルフェニル−3,3’’,5,5’’−テトラカルボン酸、1,3,5−トリス(4−カルボキシフェニル)ベンゼンなどの一つ以上のカルボキシレート基および一つ以上のベンゼン環を有するPCPであってもよい。また、有機配位子は、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸及びその誘導体であってもよい。
【0046】
上述したように、特許文献3では、常温でCrイオンとベンゼン−1,4−ジカルボン酸からなるPCPの一種、MIL−101等を用いた脱硫剤が開示されているが、脱硫剤にMIL−101を用いた場合、加圧を要する上に硫黄化合物の除去性能(吸着性能)は低いものとなる。ここで、PCPの硫黄化合物に対する除去性能は、PCPに含まれる金属イオンの選択によって左右されることを本発明者らは見出した。そして、脱硫に有効な金属イオンとして銅イオンを選択することで、常圧下でDMSに対する除去性能を向上させることができることを発見した。そこで、本発明の実施の形態に係る脱硫装置100では、第二脱硫剤8を構成するPCPの金属イオンとして、銀イオンに比べ安価な銅イオンを選択している。
【0047】
また、第二脱硫剤8を構成する多孔性配位高分子は、図2に示すように、オープンメタルサイトを有していてもよい。図2は、図1に示す脱硫装置100が備える第二脱硫部4の第二脱硫剤8を構成する多孔性配位高分子におけるオープンメタルサイトの一例を示す図である。オープンメタルサイトの一つの態様としては、図2に示すように、金属イオンが配位不飽和であり、その配位状態に少なくとも1つの空きサイトを有する場合、つまり配位不飽和サイトの場合が挙げられる。この構成の場合、空きサイトは、第二脱硫剤8の多孔性構造における細孔に吸着されない硫黄化合物の分子を吸着することができる部位として働くことができる。また、オープンメタルサイトの他の態様としては、金属イオンは配位飽和であるが、配位子間にねじれ、ゆがみが生じた構成の場合も挙げられる。この構成の場合、配位子間のねじれ、ゆがみが生じている部位が空きサイトとなり、この部位が第二脱硫剤8の多孔性構造における細孔に吸着されない分子を吸着する。
【0048】
また、脱硫装置100では、第一脱硫剤6および第二脱硫剤8の温度は、100℃以下となるように保たれている。これは、第二脱硫剤8の温度が100℃を越えた場合、被吸着分子の脱離が支配的に起こり、300℃以上では有機配位子の酸化分解に伴う構造破壊が起こり、脱硫性能を保持できなくなってしまうからである。第二脱硫剤8を加熱する構成は不要であり、外部系から加熱も冷却もされていない状態で好適に用いることができる。例えば、燃料電池システム等のシステム内に組み込まれるときは、システム内温度(−10℃以上100℃以下)で用いることが好ましい。
【0049】
なお、脱硫装置100における第一脱硫剤6および第二脱硫剤8それぞれの充填重量の比は、第一脱硫剤6におけるメルカプタン類の吸着量と第二脱硫剤8におけるDMSの吸着量との関係に基づき、燃料として利用可能な様々な炭化水素燃料の組成を考慮したところ、4対1から7対1の範囲内とすることができることが分かった。第一脱硫剤6および第二脱硫剤8それぞれの充填重量の比を4対1から7対1の範囲内とすることで、第一脱硫剤6および第二脱硫剤8それぞれの充填重量の割合を、炭化水素燃料に含まれる硫黄化合物を除去するのに必要十分な割合とすることができる。
【0050】
(脱硫方法)
次に、脱硫装置100を用いた炭化水素燃料の脱硫方法について、図3を参照して説明する。図3は、図1に示す脱硫装置100を用いた炭化水素燃料の脱硫方法の一例を示すフローチャートである。
【0051】
すなわち、上記した構成を有する脱硫装置100において、まず、第一脱硫部2に充填される第一脱硫剤6および第二脱硫部4に充填される第二脱硫剤8を100℃以下に保つ(ステップS11)。そして、入口側流路100aから脱硫装置100の内部空間に炭化水素燃料を供給し、第一脱硫部2、第二脱硫部4の順に流通させる(ステップS12)。炭化水素燃料を流通させた時、第一脱硫部2と第二脱硫部4とにおいてそれぞれ異なる種類の硫黄化合物を吸着除去する。つまり、第一脱硫部2においてメルカプタン類を吸着除去し、第二脱硫部4においてDMSを吸着除去する(ステップS13)。第一脱硫部2および第二脱硫部4において硫黄化合物が脱硫された炭化水素燃料は、出口側流路100bを通じて脱硫装置100の内部空間から外部へと排出される。以上のようにして、脱硫装置100において炭化水素燃料から硫黄化合物を除去し、例えば、水素生成装置等に供給することができる。
【0052】
(変形例)
また、実施の形態に係る脱硫装置100は、第一脱硫部2と第二脱硫部4とを備えた構成であった。しかしながら、図4に示すように、実施の形態の変形例に係る脱硫装置101は、上記した脱硫装置100の構成において、炭化水素燃料の流れ方向に対して第二脱硫部4の後段に設けられ、炭化水素燃料に含まれる硫黄化合物を除去する第三脱硫部5をさらに備えた構成となっている。図4は、本発明の実施の形態の変形例に係る脱硫装置101の構成の一例を示す図である。変形例に係る脱硫装置101では、入口側流路100aから脱硫装置101の内部空間に炭化水素燃料が供給され、第一脱硫部2、第二脱硫部4、第三脱硫部5の順に流通し、出口側流路100bを通じて脱硫処理された炭化水素燃料が脱硫装置101から外部へと排出される。
【0053】
第三脱硫部5に充填される第三脱硫剤9は、ニッケルまたはAgイオン交換ゼオライトを含む脱硫剤であって、第一脱硫剤6および第二脱硫剤8は互いに硫黄化合物の吸着能が異なっている。第三脱硫剤9は、第一脱硫剤6および第二脱硫剤8と同様に温度が100℃以下となるように保たれている。
【0054】
このように、脱硫装置101は、第三脱硫部5をさらに備えた構成であるため、第一脱硫部2および第二脱硫部4によって除去できなかった硫黄化合物を第三脱硫部5で除去することができる。このため、変形例に係る脱硫装置101は、さらに脱硫性能を向上させることができる。
【0055】
なお、変形例に係る脱硫装置101では、第二脱硫剤8の充填量は、第三脱硫剤9の充填重量よりも多くなっている。このため、脱硫装置101は、第三脱硫剤9としてAgイオン交換ゼオライトを用いたとしても、Agイオン交換ゼオライトのみを脱硫剤として用いる構成と比較して、同様な脱硫性能を得るために必要となるAgの量を抑制することができる。また、2段配置した脱硫部から形成される脱硫装置において後段(2段目)の脱硫部の脱硫剤をAgイオン交換ゼオライトとする構成と比較しても、脱硫装置101は、同様な脱硫性能を得るために必要となるAgの量を抑制することができる。このように、脱硫装置101は、Agの使用量を低減できるためコストを抑制することができる。
【0056】
次に、本願の特徴的な構成である第二脱硫剤8に用いるPCPとして、HKUST−1(Cu(BTC);BTC=1,3,5−ベンゼントリカルボン酸)を例に挙げ、その製造方法および脱硫試験について、以下実施例として説明する。
【0057】
[実施例]
(第二脱硫剤の製造方法)
まず、第二脱硫剤8として、マイクロウェーブ加熱により、銅イオンとベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸とからなるHKUST−1を作製した。
【0058】
具体的には、ナカライテスク株式会社製硝酸銅三水和物を704mg、東京化成工業株式会社製1,3,5−ベンゼントリカルボン酸を336mg、和光純薬工業株式会社製エタノールを9.6mL、および蒸留水9.6mLを混合することによって、原料溶液を調製した。この原料溶液をマイクロウェーブ合成装置によって、140℃で1時間、加熱した。得られた試料を固液分離後、エタノールで3回洗浄してから、減圧乾燥した。その後、真空下で120℃、4時間の加熱処理をした後、残存溶媒等の除去を行った。このようにして得られた試料に対してX線回折法による測定を行ったところ、図5に示すX線の回折パターンを観測することができた。図5は、脱硫試験前のHKUST−1のX線回折パターンの一例を示す図である。なお、図5では、縦軸が回折強度となり、横軸が回折角度(2θ)となる。図5に示す回折パターンから、HKUST−1の生成を確認することができる。
【0059】
(第二脱硫剤の脱硫試験)
次に、上記して製造された第二脱硫剤(HKUST−1)の脱硫性能を調べるために脱硫試験を行った。まず、内径7mmの反応管を有する固定床流通式反応装置に、第二脱硫剤8として、1.1gのHKUST−1を充填した。充填するHKUST−1は、平均粒径20μmのものを使用した。次に、ジメチルスルフィド(DMS)を100volppmの濃度で含む都市ガス(13A)を100cm/minの線速度で反応管に流通させた。試験中、第二脱硫剤8の温度は30℃となるように保持した。酸化分解・紫外蛍光法方式の微量硫黄分析装置を使用し、反応管から排出された都市ガス中の硫黄濃度を調べた。また、化学発光硫黄検出器(Sulfur Chemiluminescence Detector)を搭載したガスクロマトグラフ(GC−SCD)を使用し、反応管から排出された都市ガスを分析することによって硫黄化合物を同定した。そして、試験開始時点から、排出された都市ガス中に含まれる硫黄の濃度が100volppbに達した時点までの経過時間を破過時間として計測した。硫黄化合物の吸着容量については、充填した第二脱硫剤8の重量に対して、破過時間までの総流通硫黄量から算出した。
【0060】
その結果、第二脱硫剤8にHKUST−1を用いた場合、表1のサンプル1に示すように、吸着容量は12wt%であった。また、第二脱硫剤8の脱硫試験後のX線回折パターンを調べたところ図6に示すように、図5に示す脱硫試験前の第二脱硫剤8のX線回折パターンとほぼ同様なパターンを示した。図6は、脱硫試験後のHKUST−1のX線回折パターンの一例を示す図である。
【0061】
つまり、脱硫試験後の第二脱硫剤8は、脱硫試験前の第二脱硫剤8と比較して構造、強度ともにほぼ変化がないことが分かった。このことから、第二脱硫剤8は構造破壊されることなく、DMSを吸着させることができることが示唆された。
【0062】
また、比較のために同様の脱硫試験を、アルミニウムイオンとテレフタル酸からなるMIL−53(BASF社製)を用いて行ったところ、表1のサンプル2に示すように吸着容量は0wt%であった。このことから、PCPの金属イオンにアルミニウムイオンよりも銅イオンを用いる方がDMSの吸着に有効であることが分かった。
【0063】
さらに、脱硫剤として、Agゼオライトを使用した場合について、同様の脱硫試験を行ったところ、表1のサンプル3に示すように吸着容量は3wt%であった。このことから、脱硫剤として、銅イオンを金属イオンにもち、有機配位子は、一つ以上のカルボキシレート基およびベンゼン環を有するPCPを用いた場合の方が、Agゼオライトを用いた場合よりもDMSの吸着性能が良くなることが分かった。
【0064】
【表1】
【0065】

上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造および/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明に係る脱硫装置は、硫黄化合物を含む炭化水素燃料から、該硫黄化合物を吸着除去する必要のある燃料電池スシステム等において用いることができる。
【符号の説明】
【0067】
2 第一脱硫部
4 第二脱硫部
5 第三脱硫部
6 第一脱硫剤
8 第二脱硫剤
9 第三脱硫剤
100 脱硫装置
101 脱硫装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6

【手続補正書】
【提出日】2018年4月19日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素燃料に含まれる硫黄化合物を除去する第一脱硫剤が充填された第一脱硫部と、
前記炭化水素燃料の流れ方向において、前記第一脱硫部よりも後段に設けられ、前記炭化水素燃料に含まれる前記硫黄化合物を除去する第二脱硫剤が充填された第二脱硫部と、を備え、
前記第一脱硫剤は、活性炭であって、
前記第二脱硫剤は、銅イオンと有機配位子とを組合せた高分子構造を有する多孔性配位高分子で構成され、前記第一脱硫剤とは前記硫黄化合物の吸着能が異なっており、
前記第二脱硫剤の温度は100℃以下に保たれている、脱硫装置。
【請求項2】
前記多孔性配位高分子は、配位不飽和なオープンメタルサイトを有する、請求項1に記載の脱硫装置。
【請求項3】
前記有機配位子は、一つ以上のカルボキシレート基および一つ以上のベンゼン環を有する請求項1または2に記載の脱硫装置。
【請求項4】
前記有機配位子は、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸及びその誘導体である、請求項1から3のいずれか1項に記載の脱硫装置。
【請求項5】
前記第一脱硫剤と前記第二脱硫剤との充填重量の比は、4対1から7対1の範囲内である、請求項に記載の脱硫装置。
【請求項6】
前記炭化水素燃料の流れ方向において、前記第二脱硫部の後段に設けられ、前記炭化水素燃料に含まれる前記硫黄化合物を除去する第三脱硫剤が充填された第三脱硫部をさらに備え、
前記第三脱硫剤は、ニッケルまたは銀イオン交換ゼオライトを含み、前記第一脱硫剤および前記第二脱硫剤とは前記硫黄化合物の吸着能が異なっており、
前記第三脱硫剤の温度は100℃以下に保たれている、請求項1からのいずれか1項に記載の脱硫装置。
【請求項7】
前記第二脱硫部において充填される前記第二脱硫剤の充填量は、前記第三脱硫部において充填される前記第三脱硫剤の充填量よりも多い、請求項に記載の脱硫装置。
【請求項8】
前記炭化水素燃料は、前記硫黄化合物としてジメチルスフィルドおよびメルカプタン類を含む、請求項1からのいずれか1項に記載の脱硫装置。
【請求項9】
前記第一脱硫部は、前記メルカプタン類を吸着除去するとともに、前記第二脱硫部は、前記ジメチルスフィルドを吸着除去する請求項8に記載の脱硫装置。
【請求項10】
炭化水素燃料に含まれる硫黄化合物を除去する第一脱硫剤が充填された第一脱硫部と、
前記炭化水素燃料の流れ方向において、前記第一脱硫部よりも後段に設けられ、前記炭化水素燃料に含まれる硫黄化合物を除去する第二脱硫剤が充填された第二脱硫部と、を備え、該第二脱硫剤が、銅イオンと有機配位子とを組合せた高分子構造を有する多孔性配位高分子で構成された脱硫装置を用いた脱硫方法であって、
前記第二脱硫剤の温度を100℃以下に保つステップと、
前記第一脱硫部および前記第二脱硫部の順に前記炭化水素燃料を流通させるステップと、
前記第一脱硫部と前記第二脱硫部とにおいてそれぞれ異なる種類の硫黄化合物を吸着除去するステップと、を含む脱硫方法。
【請求項11】
前記炭化水素燃料は、前記硫黄化合物としてジメチルスフィルドおよびメルカプタン類を含む、請求項10に記載の脱硫方法。
【請求項12】
前記硫黄化合物を吸着除去するステップでは、
前記第一脱硫部においてメルカプタン類を、前記第二脱硫部においてジメチルスフィルドをそれぞれ吸着除去する、請求項11に記載の脱硫方法。
【国際調査報告】