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再表2018-181960ヒトiPS細胞を用いた骨芽細胞塊の作製法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2018年10月4日
【発行日】2020年2月13日
(54)【発明の名称】ヒトiPS細胞を用いた骨芽細胞塊の作製法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/077 20100101AFI20200121BHJP
   C12N 5/074 20100101ALI20200121BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20200121BHJP
   A61L 27/38 20060101ALI20200121BHJP
   A61L 27/36 20060101ALI20200121BHJP
【FI】
   C12N5/077
   C12N5/074
   C12N5/10
   A61L27/38 111
   A61L27/36 100
   A61L27/38 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
【全頁数】26
【出願番号】特願2019-509392(P2019-509392)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2018年3月30日
(31)【優先権主張番号】特願2017-67295(P2017-67295)
(32)【優先日】2017年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江草 宏
(72)【発明者】
【氏名】大川 博子
【テーマコード(参考)】
4B065
4C081
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AB01
4B065AC20
4B065BA01
4B065BB04
4B065BB19
4B065BC50
4B065BD25
4B065CA44
4B065CA60
4C081AB02
4C081AB03
4C081AB04
4C081BA12
4C081CD34
4C081DA01
4C081EA11
(57)【要約】
本発明はヒトiPS細胞から骨芽細胞塊を製造する方法であって、
(1)未分化ヒトiPS細胞を非接着培養して、胚様体の形成を誘導する工程、
(2)上記工程(1)で得られたヒトiPS細胞の胚様体を非接着培養して、ヒトiPS細胞の中胚葉系細胞への分化を誘導する工程、及び
(3)上記工程(2)で得られたヒトiPS細胞の中胚葉系細胞を非接着培養して、骨芽細胞への分化を誘導する工程
を含む方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトiPS細胞から骨芽細胞塊を製造する方法であって、
(1)未分化ヒトiPS細胞を非接着培養して、胚様体の形成を誘導する工程、
(2)上記工程(1)で得られたヒトiPS細胞の胚様体を非接着培養して、ヒトiPS細胞の中胚葉系細胞への分化を誘導する工程、及び
(3)上記工程(2)で得られたヒトiPS細胞の中胚葉系細胞を非接着培養して、骨芽細胞への分化を誘導する工程
を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記工程(2)において中胚葉への分化を誘導するための成分としてレチノイン酸のみを配合した培地を用いる方法を除く、方法。
【請求項3】
前記工程(1)における培養時間が0.5〜3.5日間である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記工程(2)における培養が、Wntシグナル活性化剤及びヘッジホッグシグナル阻害剤からなる群より選択される少なくとも一種の存在下で行われる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記Wntシグナル活性化剤が、CHIR99021、6−ブロモインディルビン−3’−オキシム、ケンパウロン、SB−216763、SKL2001、デオキシコール酸、WAY−316606、NSC−693868、リシニン、7−oxo−β−シトステロール、IM−12及びHLY78からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ヘッジホッグシグナル阻害剤が、シクロパミン、AY9944、GANT58、GANT61、ジェルビン、SANT−1、SANT−2、U18666A、ベラトラミン、ビスモデギブ、Cur−61414、ロボトニキニン、JK184及びHPI−4からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記工程(3)における培養が、低酸素模倣化合物及びスタチン化合物からなる群より選択される少なくとも一種の存在下で行われる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法により、ヒトiPS細胞から骨芽細胞塊を製造する工程、及び
当該骨芽細胞塊を不活化処理する工程
を含む、骨再生剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、iPS細胞を用いた骨芽細胞塊の作製法に関する。
【背景技術】
【0002】
骨腫瘍摘出、粉砕骨折、関節リウマチの固定に伴う骨欠損、顎堤吸収等により失われた骨の欠損部等に対して、これらを補うための人工骨・骨補填材料の需要は非常に高まっている。
【0003】
現在、臨床で人工骨・骨補填材料として使用されている、ハイドロキシアパタイト等の非吸収性材料、及びβ−第3リン酸カルシウム等の吸収性材料は、自家骨と比較して骨誘導性に欠ける等の問題があり、外科的処置の予後が必ずしも良くなかった。また、次世代型として開発推進が望まれている人工骨とBMP(Bone Morphogenetic Protein)等の成長因子タンパク質とを組み合わせたハイブリッド人工骨・骨補填材は、骨組織再生に重要な「細胞外基質」がないため、十分な骨再生効果を得ることができなかった。
【0004】
かかる状況の下、本発明者は、幹細胞を原料とし、不活化細胞塊を含み、前記不活化細胞塊が少なくとも石灰化物及び細胞外基質を含むことを特徴とする骨再生剤を作製することに成功している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2015/064705
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Stem Cell Reports Vol. 2, 751-760, June 3, 2014
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ヒトiPS細胞を原料として、立体的かつ中実の骨芽細胞塊を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記状況の下、ヒトiPS細胞を原料に用い、特許文献1に記載の方法に従い、ES培地での2日間の培養、さらにレチノイン酸を加えて2日間の培養を行い、骨芽細胞分化誘導培地で培養する方法により骨芽細胞塊を作製すると、マウスiPS細胞を用いた場合と異なり、細胞塊は得られるものの、当該細胞塊の形状は中空の袋状(嚢状)となってしまった。また、上記方法において、レチノイン酸の添加を省略しても、同様に当該細胞塊の形状は中空の袋状となってしまった。一方、非特許文献1には、胚様体の形成を誘導する工程を行わず、ヒトiPS細胞を中胚葉系細胞分化誘導培地で接着培養し、骨芽細胞分化誘導培地で接着培養することにより、骨芽細胞塊を製造した旨の記載がされている。しかし、非特許文献1に記載の方法で得られる細胞は、培養容器の壁面に沿って平面的に増殖しているため、人工骨・骨補填材料の原料となる立体的な細胞塊として回収することができない。そのため、本発明者らは、非接着培養とする以外、非特許文献1に記載の方法に従い、培養を行ったところ、非接着培養だと、細胞死が引き起こされてしまい、必要となる細胞塊を得ることができなかった。これらの新たに見出された結果に基づき、本発明者らはさらに、鋭意研究した結果、胚様体の形成を誘導する工程、当該工程で得られた胚様体の中胚葉系細胞への分化を誘導する工程、及び当該工程で得られた中胚葉系細胞の骨芽細胞への分化を誘導する工程という3工程を経ることにより、非接着培養であっても、ヒトiPS細胞から袋状でない骨芽細胞塊を得ることができることを見出した。本発明者らは、当該新たな知見に基づき、培養条件等をさらに精査し、本発明を完成させた。
【0009】
従って、本発明は以下の項に示す方法を提供する:
項1.ヒトiPS細胞から骨芽細胞塊を製造する方法であって、
(1)未分化ヒトiPS細胞を非接着培養して、胚様体の形成を誘導する工程、
(2)上記工程(1)で得られたヒトiPS細胞の胚様体を非接着培養して、ヒトiPS細胞の中胚葉系細胞への分化を誘導する工程、及び
(3)上記工程(2)で得られたヒトiPS細胞の中胚葉系細胞を非接着培養して、骨芽細胞への分化を誘導する工程
を含む方法。
【0010】
項2.項1に記載の方法であって、前記工程(2)において中胚葉への分化を誘導するための成分としてレチノイン酸のみを配合した培地を用いる方法を除く、方法。
【0011】
項3.前記工程(1)における培養時間が0.5〜3.5日間である、項1又は2に記載の方法。
【0012】
項4.前記工程(2)における培養が、Wntシグナル活性化剤及びヘッジホッグシグナル阻害剤からなる群より選択される少なくとも一種の存在下で行われる、項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【0013】
項5.前記Wntシグナル活性化剤が、CHIR99021、6−ブロモインディルビン−3’−オキシム(6−bromoindirubin−3’−oxime)(BIO)、ケンパウロン(Kenpaullone)、SB−216763、SKL2001、デオキシコール酸(deoxycholic acid)、WAY−316606、NSC−693868、リシニン(ricinin)、7−oxo−β−シトステロール(7−oxo−β−sitosterol)、IM−12、HLY78等からなる群より選択される少なくとも一種である、項4に記載の方法。
【0014】
項6.前記ヘッジホッグシグナル阻害剤が、シクロパミン、AY9944、GANT58、GANT61、ジェルビン、SANT−1、SANT−2、U18666A、ベラトラミン、ビスモデギブ(Vismodegib)、Cur−61414、ロボトニキニン(Robotnikinin)、JK184、HPI−4等からなる群より選択される少なくとも一種である、項4又は5に記載の方法。
【0015】
項7.前記工程(3)における培養が、低酸素模倣化合物及びスタチン化合物からなる群より選択される少なくとも一種の存在下で行われる、項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【0016】
項8.項1〜7のいずれか1項に記載の方法により、ヒトiPS細胞から骨芽細胞塊を製造する工程、及び
当該骨芽細胞塊を不活化処理する工程
を含む、骨再生剤の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、非接着培養を用いることによりヒトiPS細胞から立体的な骨芽細胞塊を得ることができる。また、本発明によれば、袋状でない中実の骨芽細胞塊を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本願実施例における中胚葉細胞塊の形成を評価するための免疫蛍光染色の結果を示す。
図2】本願実施例における各試験の培養手順の概要と得られた細胞塊の写真を示す。
図3】本願実施例における段階的分化誘導法の各試験により得られた骨芽細胞塊のH&E染色、von Kossa染色、又はOsteocalcinの免疫蛍光染色の結果を示す。A 非接着+振盪培養。B 非接着培養。C 低酸素模倣化合物(Desferrioxamine)を添加。D スタチン化合物(Simvastatin)を添加
図4】本願実施例で用いたシーソー型バイオリアクターの概要を示す。
図5】本願実施例で用いた培養フラスコの概略図を示す。
図6】胚様体誘導期間がその後の中胚葉誘導に及ぼす影響((Brachyuryタンパク質発現))。本願実施例における中胚葉細胞塊の形成を評価するための免疫蛍光染色の結果を示す。
図7】胚様体誘導期間がその後の中胚葉誘導に及ぼす影響(Brachyury遺伝子発現)。本願実施例において種々の日数で胚様体誘導し、中胚葉誘導した場合のBrachyury遺伝子の発現量のグラフを示す。
図8】1日間の胚様体誘導による中胚葉誘導前後の中胚葉マーカー遺伝子発現に及ぼす影響。本願実施例における中胚葉誘導前後のBrachyury遺伝子の発現量のグラフを示す。
図9】CHIR99021およびCyclopamineが中胚葉誘導に及ぼす影響。本願実施例におけるBrachyury遺伝子の発現量に対するCHIR99021及びcyclopamine非存在下の影響に関するグラフを示す。
図10】ヒトiPS細胞由来骨芽細胞塊とヒト凍結乾燥骨の成分比較。本願実施例における骨芽細胞分化誘導した細胞塊とヒト凍結乾燥骨とのFTIR解析結果を示す。実線:乾燥不活化iPS細胞由来細胞塊。点線:ヒト凍結乾燥骨(FDBA)。
図11】ヒトiPS細胞由来凍結乾燥骨芽細胞塊を用いた骨形成促進。本願実施例における三次元骨芽細胞塊の骨再生能の評価結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
骨芽細胞塊の製造方法
本発明は、ヒトiPS細胞から骨芽細胞塊を製造する方法であって、
(1)未分化ヒトiPS細胞を非接着培養して、胚様体の形成を誘導する工程、
(2)上記工程(1)で得られたヒトiPS細胞の胚様体を非接着培養して、ヒトiPS細胞の中胚葉系細胞への分化を誘導する工程、及び
(3)上記工程(2)で得られたヒトiPS細胞の中胚葉系細胞を非接着培養して、骨芽細胞への分化を誘導する工程
を含む方法を提供する。
【0020】
(1)胚様体形成の誘導
本発明の方法は、未分化ヒトiPS細胞を非接着培養して、胚様体の形成を誘導する工程を含む。
【0021】
原料として用いるヒトiPS細胞としては、体細胞に核初期化物質を導入することにより作製されたものを用いることができる。
【0022】
iPS細胞作製のための出発材料として用いることのできる体細胞は、ヒト由来の生殖細胞以外のいかなる細胞であってもよく、例えば、口腔粘膜細胞(例、歯肉線維芽細胞、頬粘膜線維芽細胞、歯肉上皮細胞、頬粘膜上皮細胞等)、角質化する上皮細胞(例、角質化表皮細胞等)、粘膜上皮細胞(例、舌表層の上皮細胞等)、外分泌腺上皮細胞(例、乳腺細胞等)、ホルモン分泌細胞(例、副腎髄質細胞等)、代謝・貯蔵用の細胞(例、肝細胞等)、境界面を構成する内腔上皮細胞(例、I型肺胞細胞等)、内鎖管の内腔上皮細胞(例、血管内皮細胞等)、運搬能をもつ繊毛のある細胞(例、気道上皮細胞等)、細胞外マトリックス分泌用細胞(例、線維芽細胞等)、収縮性細胞(例、平滑筋細胞等)、血液と免疫系の細胞(例、Tリンパ球等)、感覚に関する細胞(例、桿細胞等)、自律神経系ニューロン(例、コリン作動性ニューロン等)、感覚器と末梢ニューロンの支持細胞(例、随伴細胞等)、中枢神経系の神経細胞とグリア細胞(例、星状グリア細胞等)、色素細胞(例、網膜色素上皮細胞等)、及びそれらの前駆細胞(組織前駆細胞等)等が挙げられる。細胞の分化の程度に特に制限はなく、未分化な前駆細胞(体性幹細胞も含む)であっても、最終分化した成熟細胞であっても、同様に本発明における体細胞の起源として使用することができる。ここで未分化な前駆細胞としては、例えば神経幹細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞、歯髄幹細胞等の組織幹細胞(体性幹細胞)が挙げられる。
【0023】
本発明において「核初期化物質」とは、体細胞からiPS細胞を誘導することができる物質(群)であれば、タンパク性因子又はそれをコードする核酸(ベクターに組み込まれた形態を含む)、あるいは低分子化合物等のいかなる物質から構成されてもよい。核初期化物質がタンパク性因子又はそれをコードする核酸の場合、好ましくは以下の組み合わせが例示される(以下においては、タンパク性因子の名称のみを記載する)。
[1] Oct3/4, Klf4, c-Myc
[2] Oct3/4, Klf4, c-Myc, Sox2(ここで、Sox2はSox1, Sox3, Sox15, Sox17又はSox18で置換可能である。また、Klf4はKlf1, Klf2又はKlf5で置換可能である。さらに、c-MycはT58A(活性型変異体), N-Myc, L-Mycで置換可能である。)
[3] Oct3/4, Klf4, c-Myc, Sox2, Fbx15, Nanog, Eras, ECAT15-2, TclI, β-catenin (活性型変異体S33Y)
[4] Oct3/4, Klf4, c-Myc, Sox2, TERT, SV40 Large T antigen(以下、SV40LT)
[5] Oct3/4, Klf4, c-Myc, Sox2, TERT, HPV16 E6
[6] Oct3/4, Klf4, c-Myc, Sox2, TERT, HPV16 E7
[7] Oct3/4, Klf4, c-Myc, Sox2, TERT, HPV6 E6, HPV16 E7
[8] Oct3/4, Klf4, c-Myc, Sox2, TERT, Bmil(以上、WO2007/069666を参照(但し、上記[2)の組み合わせにおいて、Sox2からSox18への置換、Klf4からKlf1もしくはKlf5への置換については、Nature Biotechnology, 26, 101-106 (2008)を参照)。「Oct3/4, Klf4, c-Myc, Sox2」の組み合わせについては、Cell,126, 663-676 (2006)、Cell, 131, 861-872 (2007) 等も参照。「Oct3/4, Klf2(又はKlf5), c-Myc, Sox2」の組み合わせについては、Nat. Cell Biol., 11, 197-203 (2009)も参照。「Oct3/4, Klf4, c-Myc, Sox2, hTERT, SV40LT」の組み合わせについては、Nature, 451, 141-146 (2008)も参照。)
[9] Oct3/4, Klf4, Sox2(Nature Biotechnology, 26, 101-106 (2008)を参照)
[10] Oct3/4, Sox2, Nanog, Lin28(Science, 318, 1917-1920 (2007)を参照)
[11] Oct3/4, Sox2, Nanog, Lin28, hTERT, SV40LT(Stem Cells, 26, 1998-2005 (2008)を参照)
[12] Oct3/4, Klf4, c-Myc, Sox2, Nanog, Lin28(Cell Research (2008) 600-603を参照)
[13] Oct3/4, Klf4, c-Myc, Sox2, SV40LT(Stem Cells, 26, 1998-2005 (2008)も参照)
[14] Oct3/4, Klf4(Nature 454:646-650 (2008)、Cell Stem Cell, 2:525-528(2008))を参照)
[15] Oct3/4, c-Myc(Nature 454:646-650 (2008)を参照)
[16] Oct3/4, Sox2 (Nature, 451, 141-146 (2008), WO2008/118820を参照)
[17] Oct3/4, Sox2, Nanog (WO2008/118820を参照)
[18] Oct3/4, Sox2, Lin28 (WO2008/118820を参照)
[19] Oct3/4, Sox2, c-Myc, Esrrb (ここで、EssrrbはEsrrgで置換可能である。Nat. Cell Biol., 11, 197-203 (2009) を参照)
[20] Oct3/4, Sox2, Esrrb (Nat. Cell Biol., 11, 197-203 (2009) を参照)
[21] Oct3/4, Klf4, L-Myc
[22] Oct3/4, Nanog
[23] Oct3/4
[24] Oct3/4, Klf4, c-Myc, Sox2, Nanog, Lin28, SV40LT(Science, 324: 797-801 (2009)を参照)
[25] Oct3/4, Klf4, Sox2, GLISファミリーのメンバー(例えば、GLIS1、GLIS2、GLIS3等が挙げられ、好適には、GLIS1(GLIS family zinc finger 1)が挙げられる。 WO2010/098419, WO2011/102531を参照)
[26] Oct3/4, Klf4, Sox2, IRXファミリーのメンバー(例えば、IRX1、IRX2、IRX3、IRX4、IRX5、IRX6等が挙げられ、好適には、IRX6(iroquois homeobox protein 6)が挙げられる。 WO2010/098419を参照)
[27] Oct3/4, Klf4, Sox2, PTXファミリーのメンバー(例えば、PITX1、PITX2、PITX3等が挙げられ、好適には、PITX2(paired-like homeodomain transcription factor 2)が挙げられ、PITX2には3つのアイソフォーム(isoforms a, b及びc)が知られており、いずれのアイソフォームも用いられ得るが、isoform bが特に好ましい。WO2010/098419を参照)
[28] Oct3/4, Klf4, Sox2, DMRTB1(DMRT-like family B with proline-rich C-terminal 1, WO2010/098419を参照)
上記[1]-[28]において、Oct3/4に代えて他のOctファミリーのメンバー、例えばOct1A、Oct6等を用いることもできる。また、Sox2(又はSox1、Sox3、Sox15、Sox17、Sox18)に代えて他のSoxファミリーのメンバー、例えばSox7等を用いることもできる。さらに、Lin28に代えて他のLinファミリーのメンバー、例えばLin28b等を用いることもできる。
【0024】
また、上記[1]-[28]には該当しないが、それらのいずれかにおける構成要素をすべて含み、且つ任意の他の物質をさらに含む組み合わせも、本発明における「核初期化物質」の範疇に含まれ得る。また、核初期化の対象となる体細胞が上記[1]-[28]のいずれかにおける構成要素の一部を、核初期化のために十分なレベルで内在的に発現している条件下にあっては、当該構成要素を除いた残りの構成要素のみの組み合わせもまた、本発明における「核初期化物質」の範疇に含まれ得る。
【0025】
これらの組み合わせの中で、Oct3/4, Sox2, Klf4, c-Myc, Nanog, Lin28及びSV40LTから選択される少なくとも1つ、好ましくは2つ以上、より好ましくは3つ以上が、好ましい核初期化物質の例として挙げられる。
【0026】
上記の各核初期化物質のヒトcDNA配列情報は、WO2007/069666又はWO2010/098419に記載のNCBI accession numbersを参照することにより取得することができ(Nanogは当該公報中では「ECAT4」との名称で記載されている。なお、Lin28、Lin28b、Esrrb、Esrrg及びL-MycのヒトcDNA配列情報は、それぞれ下記表1記載のNCBI accession numbersを参照することにより取得できる。)、当業者は容易にこれらのcDNAを単離することができる。
【0027】
【表1】
【0028】
また、GLISファミリーのメンバー、IRXファミリーのメンバー、PTXファミリーのメンバー、DMRTB1のヒトcDNA配列情報は、それぞれ下記表2に記載のNCBI accession numbersを参照することにより取得できる。
【0029】
【表2】
【0030】
また、上記の各アミノ酸配列と90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の同一性を有し、且つKlf4の代替因子として野生型タンパク質と同等の核初期化能力を有する天然もしくは人工の変異タンパク質及びそれをコードする核酸も、本発明のKlf4を代替する核初期化物質として利用することができる。
【0031】
核初期化物質としてタンパク性因子自体を用いる場合には、得られたcDNAを適当な発現ベクターに挿入して宿主細胞に導入し、該細胞を培養して得られる培養物から組換えタンパク性因子を回収することにより調製することができる。一方、核初期化物質としてタンパク性因子をコードする核酸を用いる場合、得られたcDNAを、ウイルスベクター、プラスミドベクター、エピゾーマルベクター等に挿入して発現ベクターを構築し、核初期化工程に供される。
【0032】
核初期化物質の体細胞への導入は、特許文献1(WO2015/64705)等、本発明の属する技術分野において用いられている方法を適宜使用することができる。
【0033】
また、iPS細胞は、分化抵抗性の指標としてC4ORF51、HHLA1、ABHD12B、ZNF541等の因子を用い、これらの因子が有意に発現しない株を選抜したものであってもよい(WO2013/014929参照)。
【0034】
また、iPS細胞としては、例えば、細胞の生存、増殖、未分化性維持等に必要な液性因子を供給し、かつ細胞接着の足場となるフィーダー細胞と共に培養しておき、胚様体形成誘導の前に適宜、フィーダー細胞を適宜除去したものを用いることができる。
【0035】
本工程は、これらの未分化iPS細胞を、胚様体の形成を誘導するために用いられる液体培地中で非接着培養することにより行うことができる。
【0036】
本発明において、非接着培養とは、培養容器の底面等(例えば、底面及び壁面)への細胞の接着が抑制された状態での培養を意味する。本発明において、非接着培養には、振盪培養、培養容器の底面等への細胞の接着が抑制された非接着性培養容器(例えば、非接着性培養皿、非接着性ウェル、非接着性フラスコ、三次元培養プレート、細胞塊作製容器等)を用いた静置培養等が含まれる。非接着性培養容器としては、リン脂質ゲル、ハイドロゲル、微細加工等で低接着表面処理を行った容器等を用いることができる。また、本発明において、振盪培養には、上記非接着性培養容器を用いてもよいし、非接着性でない培養容器を用いてもよい。振盪培養をする場合、その方法は特に限定されないが、例えば、図4に示されるようなシーソー型バイオリアクターを用いて行うことができる。また、振盪培養の傾斜角は、特に限定されないが、水平方向に対して、1°〜40°が好ましく、5°〜35°がより好ましく、10°〜30°がさらに好ましい。振盪培養の振幅は、特に限定されないが、例えば、0.1〜20cm程度であってもよい。振盪の周期は、特に限定されないが、例えば、0.01〜1.00Hz程度であってもよい。図4では、傾斜角は10°であり、振幅は5.5cmである。培養フラスコをのせるテーブル(シーソー型バイオリアクターの部材)の横幅は特に限定されず、例えば、20〜50cm、30〜40cm等の範囲のものを使用することができる。テーブル培養フラスコとしては、特に限定されないが、培養面積(growth area)が、例えば、5〜200cm、10〜60cm、15〜35cm等の範囲のものを用いることができる。振盪培養を行う場合、培養開始時の細胞濃度は、特に限定されないが、growth area25 cm培養フラスコを用いた場合には、1×10〜1×10cells/フラスコ程度が好ましく、1×10〜7×10cells/フラスコ程度がより好ましい。
【0037】
培地としては、霊長類ES/iPS細胞培養用の培地を適宜使用することができる。本発明においてES細胞培養用の培地を単にES培地と示すこともある。霊長類ES/iPS細胞培養用の培地としては、例えば、REPROCELL社製、RCHEMD001;Biological Industries社製、NutriStem;ThemoFisher Scientific社製、Essential 6 MediumあるいはStemFlex培地等が挙げられる。かかる培地には、FGF(Fibroblast growth factors)等の成長因子を配合してもよい。これらの成長因子は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、培地には、必要に応じて、幹細胞等の細胞培養の際に用い得る添加剤を配合してもよい。かかる添加剤の具体例としては、例えば、牛胎児血清(fetal bovine serum)、アミノ酸(例えば、L−グルタミン等)、抗生物質(例えば、ペニシリン、ストレプトマイシン、アムホテリシンB等)が挙げられる。
【0038】
本工程における培養時間としては、例えば、約0.5〜3.5日間が好ましく、0.625〜2.5日間がより好ましく、0.875〜1.25日間がより好ましい。また、本工程における培養時間としては、例えば、約12〜84時間が好ましく、約15〜60時間がより好ましく、約21〜30時間がより好ましい。本工程の培養時間を上記範囲とすることにより、最終的な骨芽細胞塊を袋状でない中実な形状で得ることができるため好ましい。本工程における培養温度は特に限定されず、例えば、30〜42℃が好ましく、35〜39℃がより好ましい。本工程における培養は、3〜10%COの雰囲気下で行うことが好ましい。
【0039】
本工程により、非特許文献1のように未分化のヒトiPS細胞を直接、中胚葉系細胞誘導培地で培養するのではなく、未分化のヒトiPS細胞を一旦、胚様体に成長させておくことにより、次の中胚葉系細胞に誘導する段階での細胞死を大幅に抑制することができる。
【0040】
従って、本発明の方法においては、工程(1)の胚様体形成工程は、中胚葉系細胞誘導を実質的に生じさせずに、胚様体の形成まででとどめることを意図する。従って、典型的には、工程(1)で用いる培地として、中胚葉系細胞への誘導剤を含まない培地が用いられる。
【0041】
(2)中胚葉系細胞への分化誘導
本発明の方法は、上記工程(1)で得られたヒトiPS細胞の胚様体を非接着培養して、ヒトiPS細胞の中胚葉系細胞への分化を誘導する工程を含む。
【0042】
当該工程に用いる培地としては、中胚葉系細胞の分化誘導に適した培地を適宜使用することができる。かかる培地としては、例えば、DMEM培地;ナカライテスク社製、DMEM/F12培地;Thermo Fisher Scientific社製、Neurobasal medium培地;Thermo Fisher Scientific社製、RPMI 1640培地;Thermo Fisher Scientific社製、Stemline(R)II造血幹細胞増殖培地;Sigma−Aldrich社製等が挙げられる。これらの培地は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせてもよい。
【0043】
本工程に用いる培地には、中胚葉への分化誘導を促進する観点から、Wntシグナル活性化剤を配合することが好ましい。Wntシグナル活性化剤としては、特に限定されないが、例えば、CHIR99021、6−ブロモインディルビン−3’−オキシム[6−bromoindirubin−3’−oxime(BIO)]、ケンパウロン(Kenpaullone)、SB−216763、SKL2001、デオキシコール酸(deoxycholic acid)、WAY−316606、NSC−693868、リシニン(ricinine)、7−oxo−β−sitosterol (7−oxo−β−sitosterol)、IM−12、HLY78等が挙げられ、CHIR99021等が好ましい。これらのWntシグナル活性化剤は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせてもよい。
【0044】
Wntシグナル活性化剤を配合する場合、その配合量は特に限定されないが、本工程で用いる培地中での最終濃度として、例えば、1〜100μMが好ましく、10〜50μMがより好ましい。
【0045】
本工程に用いる培地には、中胚葉への分化誘導を促進する観点から、ヘッジホッグシグナル阻害剤を配合することが好ましい。ヘッジホッグシグナル阻害剤としては、特に限定されないが、例えば、シクロパミン、AY9944、GANT58、GANT61、ジェルビン、SANT−1、SANT−2、U18666A、ベラトラミン、ビスモデギブ(Vismodegib)、Cur−61414、ロボトニキニン(Robotnikinin)、JK184、HPI−4等が挙げられ、シクロパミン等が好ましい。これらのヘッジホッグシグナル阻害剤は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせてもよい。
【0046】
ヘッジホッグシグナル阻害剤を配合する場合、その配合量は特に限定されないが、本工程で用いる培地中での最終濃度として、例えば、1〜100μMが好ましく、1〜10μMがより好ましい。
【0047】
本発明においては、これらのWntシグナル活性化剤及び、ヘッジホッグシグナル阻害剤を両方用いることが好ましい。
【0048】
尚、前述の「課題を解決するための手段」に記載したように、本発明は、特許文献1に記載の方法に従い、ES培地での2日間の培養、さらにレチノイン酸を加えて2日間の培養を行い、骨芽細胞分化誘導培地で培養する方法では、細胞塊の形状は中空の袋状となってしまうという新たな知見に基づき、かかる課題を解決すべくさらに改良することにより完成されたものである。従って、胚様体形成の誘導工程の後に、中胚葉への分化を誘導し得る成分としてレチノイン酸のみを配合した培地を用いた培養工程を行う方法は、本発明の方法から除かれる。
【0049】
また、培地には、必要に応じて、細胞培養の際に用い得る添加剤を配合してもよい。かかる添加剤の具体例としては、例えば、牛胎児血清(fetal bovine serum)、アミノ酸(例えば、L−グルタミン等)、抗生物質(例えば、ペニシリン、ストレプトマイシン、アムホテリシンB等)が挙げられる。
【0050】
また、培地には、細胞培養に用いる添加剤として、市販の細胞培養用サプリメント等を添加しても良い。かかるサプリメントとしては、N−2 Supplement;Thermo Fisher Scientific社製、B−27 Supplement;Thermo Fisher Scientific社製、Insulin, Transferrin, Selenium Solution;Thermo Fisher Scientific社製、Wnt3a;R&D Systems社製、Activin A;R&D Systems社製、BMP4;Peprotech社製が挙げられる。これらのサプリメントは、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせてもよい。
【0051】
本発明の方法は、骨芽細胞の細胞塊を製造するための方法である。従って、本中胚葉系細胞分化誘導工程も、非接着培養により行われる。非接着培養の具体的な態様としては、前述したものが挙げられる。本工程においては、非接着性培養容器(例えば、非接着性培養皿、非接着性ウェル、非接着性フラスコ等)を用いた静置培養等が好ましい。
【0052】
本工程における培養時間としては、例えば、0.125〜10日間が好ましく、1〜8日間がより好ましく、3〜6日間がより好ましい。また、本工程における培養時間としては、例えば、約3〜240時間が好ましく、約24〜192時間がより好ましく、約72〜144時間がより好ましい。本工程における培養温度は特に限定されず、例えば、30〜42℃が好ましく、35〜39℃がより好ましい。本工程における培養は、3〜10%COの雰囲気下で行うことが好ましい。
【0053】
本発明においては、前述した(1)胚様体形成の誘導工程と後述する(3)骨芽細胞の分化誘導工程との間に、上記中胚葉系細胞の分化誘導工程を行うことが、ヒトiPS細胞を原料として中実な細胞塊を得るために重要である。
【0054】
(3)骨芽細胞への分化誘導
本発明の方法は、上記工程(2)で得られたヒトiPS細胞の中胚葉系細胞を非接着培養して、骨芽細胞への分化を誘導する工程を含む。
【0055】
当該工程に用いる培地としては、骨芽細胞への分化誘導に適した培地を適宜使用することができる。かかる培地としては、例えば、DMEM培地(例えば、ナカライテスク社製、sodium pyruvate非含有DMEM培地等);αMEM培地(例えば、ナカライテスク社製αMEM培地)等が挙げられる。これらの培地は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせてもよい。
【0056】
本工程において、培地には、骨芽細胞への分化誘導促進剤等を配合してもよい。骨芽細胞への分化誘導促進剤としては、例えば、アスコルビン酸、β-グリセロリン酸、デキサメタゾン、BMP-2、ヘミコハク酸ヒドロコルチゾン、レチノイン酸等が挙げられる。アスコルビン酸は、アスコルビン酸-2-リン酸又はその塩であってもよい。また、分化誘導剤として、デキサメタゾンに代えて、又はこれに加えて、ヘミコハク酸ヒドロコルチゾンを用いてもよい。これらの骨芽細胞への分化誘導促進剤は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせてもよい。
【0057】
アスコルビン酸を配合する場合、その配合量は特に限定されないが、本工程で用いる培地中での最終濃度として、例えば、50〜300μMが好ましく、150〜200μMがより好ましい。β-グリセロリン酸を配合する場合、その配合量は特に限定されないが、本工程で用いる培地中での最終濃度として、例えば、1〜100mMが好ましく、5〜15mMがより好ましい。デキサメタゾンを配合する場合、その配合量は特に限定されないが、本工程で用いる培地中での最終濃度として、例えば、0.001〜10μMが好ましく、0.01〜1.0μMがより好ましい。
【0058】
骨芽細胞の石灰化の観点から、本工程における培地には、低酸素模倣化合物をさらに配合することが好ましい。低酸素模倣化合物としては、例えば、desferrioxamine(DFX)、cobalt chloride(CoCl)等が挙げられる。これらの低酸素模倣化合物は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせてもよい。
【0059】
骨芽細胞の石灰化の観点から、本工程における培地には、スタチン化合物をさらに配合することが好ましい。スタチン化合物としては、例えば、アトルバスタチン、フルバスタチン、シンバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン及びロスバスタチン等が挙げられる。これらのスタチン化合物は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせてもよい。
【0060】
また、培地には、必要に応じて、細胞培養の際に用い得る添加剤を配合してもよい。かかる添加剤の具体例としては、例えば、牛胎児血清(fetal bovine serum)、アミノ酸(例えば、L−グルタミン等)、抗生物質(例えば、ペニシリン、ストレプトマイシン、アムホテリシンB等)が挙げられる。
【0061】
本発明の方法は、骨芽細胞の細胞塊を製造するための方法である。従って、本中胚葉系細胞分化誘導工程も、非接着培養により行われる。非接着培養の具体的な態様としては、前述したものが挙げられる。本工程においては、振盪培養等が好ましい。
【0062】
本工程における培養時間としては、例えば、約1〜90日間が好ましく、約7〜60日間がより好ましく、約21〜50日間がより好ましい。また、本工程における培養時間としては、例えば、約24〜2160時間が好ましく、約168〜1440時間がより好ましく、約504〜1200時間がより好ましい。本工程における培養温度は特に限定されず、例えば、30〜42℃が好ましく、35〜39℃がより好ましい。本工程における培養は、3〜10%COの雰囲気下で行うことが好ましい。
【0063】
骨再生剤の製造方法
本発明は、前述した方法によりヒトiPS細胞から骨芽細胞塊を製造する工程、及び当該骨芽細胞塊を不活化処理する工程
を含む、骨再生剤の製造方法も提供する。
【0064】
骨芽細胞塊を製造する工程に用いる原料のヒトiPS細胞について、及び骨芽細胞塊を製造する工程において必要な処理等については前述した通りである。
【0065】
本発明の方法は、上記工程により得られた骨芽細胞塊を不活化処理する工程を含む。
【0066】
不活性化の方法は、特に限定されないが、例えば、凍結乾燥、加熱処理、高圧処理、酸又はアルカリ溶液処理、高圧蒸気滅菌、放射線滅菌、ガス滅菌、電磁波処理等が挙げられる。凍結乾燥について、条件は特に限定されず、公知の方法を使用できる。また、例えば、凍結乾燥の前に、予備凍結を行ってもよい。予備凍結の温度は、特に限定されないが、例えば、約−12〜−20℃が好ましい。凍結乾燥温度は、特に限定されないが、約−100〜−5℃が好ましい。また、凍結乾燥圧力は、特に限定されず、例えば、600Pa以下が好ましく、50Pa以下がより好ましい。具体的な凍結乾燥条件としては、例えば、温度を−10℃に固定して凍結乾燥開始と同時に気圧を徐々に5〜20Paまで下げていく方法が挙げられる。
【0067】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【実施例】
【0068】
(1−1)ヒトiPS細胞の培養
実験には、ヒト皮膚線維芽細胞由来iPS細胞株(409B2:RIKEN BRC CELL BANK社)を用いた。フィーダー細胞には、SNLP76.7−4細胞(英国Sanger InstituteのDr.Allan Bradleyより供与)を用いた。
【0069】
SNLP76.7−4フィーダー細胞を、10cm細胞培養プレート(0.1%ゼラチンコート処理)に播種し、7%ウシ胎仔血清(FBS:ジャパンバイオシーラム,Lot # JBS−011501)、2mM L−Glutamine(Thermo Fisher Scientific,Cat.#25030−081)、50U penicillin、50μg/ml streptomycin(Thermo Fisher Scientific,Cat.#15140−122)含有DMEM培地(sodium pyruvate非含有:ナカライテスク,Cat.#08459−35)〕を用いて培養した。培地交換は2日おきに行った。iPS細胞の培養前にSNLP76.7−4フィーダー細胞を12μg/mlのMitomycin C(ナカライテスク,Cat.#20898−21)で2.5時間処理し、10cm細胞培養プレート(0.1%ゼラチンコート処理)に1.5×10個/dishの濃度で播種した。
【0070】
このSNLP76.7−4フィーダー細胞上にiPS細胞を播種し、4ng/ml human basic FGF(REPROCELL,RCHEOT002,003)含有のPrimates ES Medium(ES培地:REPROCELL,RCHEMD001)を用いて培養した。培地交換は1日おきに行った。
【0071】
(1−2)胚様体の形成
iPS細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、1mlのCTK溶液(0.25%trypsin,0.1mg/ml collagenase IV,10mMCaCl2,20%KSR)を添加して37℃で1分間処理した後に、CTK溶液を吸引除去し、PBSを1ml添加した。PBSを除去し、培養プレートから剥離したフィーダー細胞のみを可及的に吸引除去した。その後、培養プレートに残存している接着iPS細胞を、4ng/ml FGF添加ES培地(RCHEMD001)5mlを用いて回収した。この細胞懸濁液を、低接着性培養皿(Thermo Fisher Scientific,Cat.#150239)に移し、1日間静置培養することにより胚様体の形成を誘導した。対照として、胚様体の形成を0日または4日間行った。
【0072】
(1−3)中胚葉細胞への分化誘導
静置培養を1日間行った後に、iPS細胞胚様体を回収した。回収したiPS細胞胚様体を5mlの中胚葉分化誘導培地〔2%B−27 Supplement(Thermo Fisher Scientific,Cat.#17504−044)、1%N−2 Supplement(Thermo Fisher Scientific,Cat.#17502−048)、30μM CHIR99021(和光純薬,Cat.#038−23103)、5μM cyclopamine(Enzo Life science,Cat.#BML−GR334)含有DMEM/F12(Thermo Fisher Scientific,Cat.#11330−032)とNeurobasal medium(Thermo Fisher Scientific,Cat.#21103−049)の1:1混合培地〕を用いて、あらたな低接着性培養皿上に播種し、5日間の静置培養を行った。対照として、中胚葉分化誘導を行わずに、(1−2)で示した胚様体形成後に、(1−4)に示す骨芽細胞分化誘導を行った。中胚葉分化誘導の評価には、中胚葉のマーカーであるBrachyuryを用いた免疫蛍光染色を行った。また、CHIR99021あるいはcyclopamineを含有しない中胚葉分化誘導培地で胚様体を培養し、両化合物の効果を検討した。
【0073】
(1−4)骨芽細胞への分化誘導
中胚葉分化誘導後、培地を骨芽細胞分化誘導培地〔15%FBS(Thermo Fisher Scientific,Cat.#490082)、0.1μM デキサメタゾン(Sigma Aldrich,Cat.#D2915)、10mM β−グリセロリン酸(Sigma Aldrich,Cat.# G9422)および172.7μM アスコルビン酸−2−リン酸(Sigma Aldrich,Cat.#A8960)、100units/mlペニシリン,100μg/mlストレプトマイシン、250ng/mlアンホテリシンB(Thermo Fisher Scientific,Cat.#15240)含有DMEM培地(sodium pyruvate非含有:ナカライテスク,京都,Cat.#08459−35)〕に交換し、細胞濃度が約1×10〜7×10cells/mlの懸濁液とした。当該細胞懸濁液を、図5に概略を示す形状の低接着性フラスコ(Greiner bio−one,Cat.#690195、growth area:25cm)を用いて、シーソー型バイオリアクター(10°傾斜,周期0.33Hz,テーブルの横幅32cm、振幅5.5cm)(BC−700:BIO CRAFT)上で振盪しながら、最大60日間非接着培養した。対照として、振盪させずに非接着培養を行った。培地交換は、7日おきに行った。得られた試料にヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色、von Kossa染色、もしくはOsteocalcinの免疫蛍光染色を施し、組織化学観察を行った。
【0074】
また、低酸素模倣化合物(10μM desferrioxamine)あるいはスタチン化合物(1μM simvastatin)を骨芽細胞分化誘導培地に添加して非接着振盪培養した場合の効果を検討した。
【0075】
(1−5)結果
中胚葉細胞塊の形成
上記(1−2)、(1−3)に記載の方法によって得られた中胚葉細胞塊において、中胚葉のマーカー(Brachyury)の著明な発現を認めた(図1A)。また、cyclopamine非存在下でも同様にBrachyuryの著明な発現を認め、中胚葉細胞塊に誘導することができた(図1B)。一方、CHIR99021非存在下では(図1Cおよび1D)、CHIR99021存在下ほど著明ではなかったものの、Brachyuryの発現は認められた。
【0076】
段階的分化誘導法による三次元骨芽細胞塊の形成
前記(1−1)に記載の方法で1日間の胚様体形成を経た後、中胚葉分化誘導を行わずに直接骨芽細胞分化誘導した結果、細胞は袋状の石灰化を示さない細胞構造体となった(図2A)。
【0077】
そこで、iPS細胞を骨芽細胞誘導する前に中胚葉誘導する方法の有効性を検討した。iPS細胞から直接(ES培地での胚様体形成を行わずに)中胚葉への分化誘導を試みた結果、中胚葉誘導1日後に全てのiPS細胞が細胞死を起こした(図2B)。
【0078】
一方、胚様体形成を1日間行い、5日間中胚葉分化誘導した後に骨芽細胞分化誘導した場合には、骨芽細胞分化誘導60日以内に球状の細胞塊を得ることができた(図2C)。この細胞塊の組織学的観察の結果、骨芽細胞分化誘導60日後では、この細胞塊の内部には、部分的な石灰化像を認めた(図3Aの*印周辺)。また、骨芽細胞分化誘導の工程で、細胞塊を振盪させずに非接着培養を行った場合でも、細胞塊の内部に部分的な石灰化像を認めた(図3Bの*印周辺)。
【0079】
小分子化合物による骨芽細胞分化の促進
Desferrioxamineまたはsimvastatin含有骨芽細胞分化誘導培地中で分化誘導した結果、著明に石灰化した骨芽細胞塊を得ることができた(図3Cおよび3D)。特に、Desferrioxamineを用いた場合には、骨芽細胞分化誘導30日目には著明に石灰化した細胞塊への誘導を認めた。
【0080】
(1−6) 中胚葉系細胞への分化誘導をしない方法及び結果(比較例)
上記(1−1)に記載の方法に従いiPS細胞を得、上記(1−2)に相当するES培地での培養を2日間行い、得られたiPS細胞の胚様体を回収し、1μMレチノイン酸(all−trans retinoic acid:Sigma)を配合した上記ES培地を用いてさらに2日間培養し、そして上記(1−3)に記載の中胚葉細胞への分化誘導工程を行うことなく、上記(1−4)に記載の骨芽細胞への分化誘導工程を行った。その結果、得られた骨芽細胞様の細胞は、中実の細胞塊ではなく、袋状となった。
【0081】
(1−7)まとめ
以上より、ヒトiPS細胞から三次元的な骨芽細胞塊を作製するためには、胚様体と中胚葉細胞へ分化する工程を含む段階的分化誘導法が必要であることが明らかとなった。また、段階的分化誘導法における胚様体培養の期間は、1〜3日が適していることが明らかとなった。さらに、ヒトiPS細胞由来骨芽細胞塊の石灰化誘導には、低酸素模倣化合物及びスタチン化合物が有効であることが示された。
【0082】
(2−1)ヒトiPS細胞の培養
実験には、ヒト皮膚線維芽細胞由来iPS細胞株(409B2:RIKEN BRC CELL BANK社)を用いた。フィーダー細胞には、SNLP76.7-4細胞を用いた。
SNLP76.7-4フィーダー細胞を、10 cm細胞培養プレート(0.1%ゼラチンコート処理)に播種し、7% ウシ胎仔血清(FBS:ジャパンバイオシーラム,Lot # JBS-011501)、2 mM L-Glutamine(Thermo Fisher Scientific,Cat.# 25030-081)、50 U penicillin、50 μg/ml streptomycin(Thermo Fisher Scientific,Cat.#15140-122)含有DMEM培地(sodium pyruvate非含有:ナカライテスク,Cat.# 08459-35)〕を用いて培養した。培地交換は2日おきに行った。iPS細胞の培養前にSNLP76.7-4フィーダー細胞を12 μg/mlのMitomycin C(ナカライテスク,Cat.#20898-21)で2.5時間処理し、10 cm細胞培養プレート(0.1% ゼラチンコート処理)に1.5 × 106個/ dishの濃度で播種した。
【0083】
このSNLP76.7-4フィーダー細胞上にiPS細胞を播種し、4 ng/ml human basic FGF(REPROCELL,RCHEMD001)含有のPrimates ES Medium(ES培地:REPROCELL,RCHEOT002,003)を用いて培養した。培地交換は1日おきに行った。
【0084】
(2−2)胚様体の形成
iPS細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、1 mlのCTK溶液(0.25% trypsin,0.1 mg/ml collagenase IV,10 mMCaCl2,20% KSR)を添加して37℃で1分間処理した後に、CTK溶液を吸引除去し、PBSを1 ml添加した。PBSを除去し、培養プレートから剥離したフィーダー細胞のみを可及的に吸引除去した。その後、培養プレートに残存している接着iPS細胞を、5 mlのES培地を用いて回収した。この細胞懸濁液を、低接着性培養皿(Thermo Fisher Scientific,Cat.# 150239)に移し、0〜4日間非接着培養することにより胚様体の形成を誘導した。
【0085】
(2−3)中胚葉細胞への分化誘導
非接着培養を0〜4日間行った後に、iPS細胞胚様体を回収した。回収したiPS細胞胚様体を5 mlの中胚葉分化誘導培地〔2% B-27 Supplement(Thermo Fisher Scientific,Cat.# 17504-044)、1% N-2 Supplement(Thermo Fisher Scientific,Cat.# 17502-048)、30 μM CHIR99021(和光純薬, Cat.# 038-23103)、5 μM cyclopamine(Enzo Life science, Cat.# BML-GR334)含有DMEM/F12(Thermo Fisher Scientific,Cat.# 11330-032)とNeurobasal medium(Thermo Fisher Scientific,Cat.# 21103-049)の1:1混合培地〕を用いて、あらたな低接着性培養皿上に播種し、5日間の非接着培養を行った。
中胚葉分化誘導の評価には、中胚葉のマーカーであるBrachyuryのタンパク質の発現を免疫蛍光染色で、遺伝子の発現をSYBR Green リアルタイム RT−PCR法を用いて検討した。
【0086】
免疫染色には1次抗体に抗Brachyuryポリクローナル抗体(AF2085, R&D SYSTEMS社)、2次抗体にAlexa Fluor594標識抗Goat IgG抗体(Thermo Fisher Scientific社)、核染色にHoechst 33258(Thermo Fisher Scientific社)を用いた。
SYBR Green リアルタイム RT−PCR法に用いたプライマーの塩基配列は以下の通りである。内部標準にはGAPDHを利用した。
Brachury forward primer: 5’-CAGTCAGTACCCCAGCCTGT-3’
Brachury reverse primer: 5’-ACTGGCTGTCCACGATGTCT-3’
GAPDH forward primer: 5’-GAAGGTGAAGGTCGGAGTCA-3’
GAPDH reverse primer: 5’-GAAGATGGTGATGGGATTTC-3’
また、中胚葉分化誘導培地にCHIR99021あるいはcyclopamineを含有せずに1日間胚様体を培養した場合の中胚葉誘導率について、Brachyuryの免疫蛍光染色を用いて検討した。中胚葉誘導率は、免疫染色写真画像中に存在する全胚様体のうち、Brachyury陽性の胚様体が占める割合から求めた。
【0087】
(2−4)骨芽細胞への分化誘導
中胚葉分化誘導後、培地を骨芽細胞分化誘導培地〔15% FBS(Thermo Fisher Scientific, Cat # 490082)、0.1 μM デキサメタゾン(Sigma Aldrich, Cat.# D2915)、10 mM β-グリセロリン酸(Sigma Aldrich,Cat.# G9422)および50 μg/ml アスコルビン酸-2-リン酸(Sigma Aldrich,Cat.# A8920)、100 units/ml ペニシリン,100 μg/ml ストレプトマイシン、250 ng/ml アンホテリシンB(Thermo Fisher Scientific,Cat.# 15240)含有DMEM培地(sodium pyruvate非含有:ナカライテスク,京都,Cat.# 08459-35)〕に交換し、低接着性フラスコ(Greiner bio-one,Cat.# 690195、growth area: 25cm2)を用いて、シーソー型バイオリアクター(10°傾斜,周期0.33Hz,テーブルの横幅32cm、振幅5.5 cm)(BC-700:BIO CRAFT)上で振盪しながら、最大30日間非接着培養した。
【0088】
iPS細胞塊の成分解析をフーリエ変換型赤外分光(Fourier Transform- InfraRed:FT-IR)解析を用いて行った。iPS細胞塊をすべて回収し、10%中性緩衝ホルマリン液で固定し、蒸留水で洗浄した後、エタノール(30%,70%,90%,100%)で段階脱水を行った。再度新しいエタノール(100%)を交換した後に、乾燥機中に37℃で12時間静置した。乾燥した細胞試料に臭化カリウム(KBr)プレート法用いてFT-IR解析を行った。解析には、FT-IR測定装置:FT/IR-6300ST(日本分光)を用いて、スキャン範囲:650〜4000 cm−1、分解能:2 cm−1で積算1000回の赤外線吸収スペクトルパターンを解析した。対照として、ヒト凍結乾燥骨(FDBA;直径0.25〜1.0 mm:LifeNetHealth)を用いた。
【0089】
(2−5)iPS細胞由来骨補填材の作製
骨芽細胞分化誘導120日後の骨芽細胞塊をPBSで洗浄した後に、10 mlのPBSに4℃で一晩浸漬した。翌日,骨芽細胞塊を取り出して6 cm細胞培養皿に移し、-80℃の冷凍庫内で一晩の予備凍結を行った。その後、皿を凍結乾燥機(VD-250R;タイテック)に設置し、一晩の凍結乾燥を行うことで細胞を死滅させ(不活化)、iPS細胞由来骨補填材とした。骨補填材の入っている皿に蓋を被せてシールで密閉し、防湿庫(ガラス製デシケーター)内で保管した。
【0090】
(2−6)ラット頭蓋骨欠損モデルへの埋植
10週齢のSDラット(Slc:SD;日本エスエルシー株式会社)に全身麻酔を施した後、頭皮を剥離して骨膜弁を形成し、頭蓋骨矢状縫合の左右に直径5 mmの欠損を形成した。頭蓋骨欠損の形成には、動物手術用エンジンおよびトレフィンバー(インプラテックス,東京,Cat.#04949202)を用い、注水下にて行った。凍結乾燥を行ったiPS細胞塊を頭蓋骨欠損部に埋植し、骨膜で被覆して頭皮を縫合した。その後、ラットを特定病原体未感染の条件のもと、飲水および接触が自由な状態で飼育した。
【0091】
(2−7)結果
胚様体培養期間による中胚葉細胞塊の形成の違い
1〜4日間の胚様体形成を経た後、上記(2−3)に記載の方法によって得られた中胚葉細胞塊において、胚様体培養期間が4日になると、中胚葉のマーカーであるBrachyuryタンパク質の著明な発現低下を認めた(図6-(4))。一方、1〜3日間の胚様体形成を経た後の中胚葉細胞塊では、Brachyuryタンパク質の発現が上昇した(図6-(1)〜(3))。特に、胚様体培養期間が1日の場合にBrachyuryタンパク質の発現が著明に上昇した(図6-(1))。一方、胚様体形成誘導のための非接着培養を0日とした場合、細胞は死滅してしまった。
【0092】
また、0.5〜3日間の胚様体形成を経た後、上記(2−3)に記載の方法によって得られた中胚葉細胞塊では、Brachyury遺伝子の発現が上昇した(図7)。特に、胚様体培養期間が1〜3日の場合では0.5日の場合と比較して、Brachyury遺伝子の発現は有意に上昇し、特に1日の場合に最も高い発現を示した(図7)。
【0093】
中胚葉細胞塊の形成
上記(2−2)、(2−3)に記載の方法によって1日間胚様体形成を行った後に中胚葉細胞へ分化誘導した場合、分化誘導後の中胚葉細胞塊における中胚葉のマーカー(Brachyury)遺伝子の発現は、分化誘導前と比較して約1500倍増加した(図8)。この時、中胚葉への誘導率は83%であり、cyclopamine非存在下でも57%、CHIR99021非存在下でも40%の中胚葉誘導率を示した(図9)。CyclopamineおよびCHIR99021非存在下では中胚葉誘導率は17%に留まった。
【0094】
段階的分化誘導法による三次元骨芽細胞塊の形成
1日間の胚様体形成を経た後、中胚葉分化誘導を行ない、30日間骨芽細胞分化誘導した細胞塊のFTIR解析を行った結果、アミノ酸の豊富な基質(アミドIおよびアミドII)の中にハイドロキシアパタイトに関連するリン酸基(P)および炭酸アパタイトに関連する炭酸基(C)の存在を示唆するピークが出現し(図10:矢印)、ヒト凍結乾燥骨(FDBA)と同じ赤外線吸収スペクトルパターンを示した(図10)。
【0095】
段階的分化誘導法を用いて作製した三次元骨芽細胞塊の骨再生能の評価
骨芽細胞分化誘導120日目の細胞塊を(2−5)に記載の方法によって凍結乾燥処理し、ラット頭蓋骨に作製した直径5 mmの骨欠損部に埋植した結果,4週間後の凍結乾燥骨芽細胞塊周囲には新生骨の形成を認めた(図11-(1),(2))。また、埋植した凍結乾燥骨芽細胞塊周囲に炎症細胞の集積や腫瘍化を示す異常所見は認めなかった(図11-(2))。
【0096】
(2−8)まとめ
以上より、ヒトiPS細胞から三次元的な骨芽細胞塊を作製するためには、胚様体と中胚葉細胞へ分化する工程を含む段階的分化誘導法が必要であることが明らかとなった。また、段階的分化誘導法における胚様体培養の期間は、0.5〜3日間が適しており、1日が最も適していることが明らかとなった。また、このように作成した骨芽細胞塊を、凍結乾燥することで細胞を死滅(不活化)させた『ヒトiPS細胞由来凍結乾燥骨芽細胞塊』は、ヒト凍結乾燥骨(FDBA)と同様の成分を有し、ラット頭蓋骨欠損モデルにおいて新生骨の形成を促進することが明らかとなった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11

【手続補正書】
【提出日】2019年3月18日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトiPS細胞から骨芽細胞塊を製造する方法であって、
(1)未分化ヒトiPS細胞を0.5〜3.5日間、非接着培養して、胚様体の形成を誘導する工程、
(2)上記工程(1)で得られたヒトiPS細胞の胚様体を非接着培養して、ヒトiPS細胞の中胚葉系細胞への分化を誘導する工程、及び
(3)上記工程(2)で得られたヒトiPS細胞の中胚葉系細胞を非接着培養して、骨芽細胞への分化を誘導する工程
を含む方法であって、前記工程(2)における培養が、Wntシグナル活性化剤及びヘッジホッグシグナル阻害剤からなる群より選択される少なくとも一種の存在下で行われる、方法。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
前記工程(1)における、培養時間が0.625〜1.25日間である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
前記Wntシグナル活性化剤が、CHIR99021、6−ブロモインディルビン−3’−オキシム、ケンパウロン、SB−216763、SKL2001、デオキシコール酸、WAY−316606、NSC−693868、リシニン、7−oxo−β−シトステロール、IM−12及びHLY78からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1又は3に記載の方法。
【請求項6】
前記ヘッジホッグシグナル阻害剤が、シクロパミン、AY9944、GANT58、GANT61、ジェルビン、SANT−1、SANT−2、U18666A、ベラトラミン、ビスモデギブ、Cur−61414、ロボトニキニン、JK184及びHPI−4からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1、3及び5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記工程(3)における培養が、低酸素模倣化合物及びスタチン化合物からなる群より選択される少なくとも一種の存在下で行われる、請求項1、3、5及び6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1、3、5〜7のいずれか1項に記載の方法により、ヒトiPS細胞から骨芽細胞塊を製造する工程、及び
当該骨芽細胞塊を不活化処理する工程
を含む、骨再生剤の製造方法。
【国際調査報告】