特表-18185942IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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再表2018-185942タンパク質修飾蛍光体集積粒子の精製物を製造する方法、蛍光染色液の製造方法、タンパク質修飾蛍光体集積粒子の精製物、蛍光染色液およびタンパク質修飾蛍光体集積粒子精製用フィルター
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  • 再表WO2018185942-タンパク質修飾蛍光体集積粒子の精製物を製造する方法、蛍光染色液の製造方法、タンパク質修飾蛍光体集積粒子の精製物、蛍光染色液およびタンパク質修飾蛍光体集積粒子精製用フィルター 図000007
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2018年10月11日
【発行日】2020年2月13日
(54)【発明の名称】タンパク質修飾蛍光体集積粒子の精製物を製造する方法、蛍光染色液の製造方法、タンパク質修飾蛍光体集積粒子の精製物、蛍光染色液およびタンパク質修飾蛍光体集積粒子精製用フィルター
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/04 20060101AFI20200121BHJP
   G01N 33/536 20060101ALI20200121BHJP
【FI】
   G01N30/04 Z
   G01N33/536 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】34
【出願番号】特願2019-511046(P2019-511046)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2017年4月7日
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】磯田 武寿
(57)【要約】
本発明は、タンパク質修飾蛍光体集積粒子の精製物を製造する方法、蛍光染色液の製造方法、タンパク質修飾蛍光体集積粒子の精製物、蛍光染色液およびタンパク質修飾蛍光体集積粒子精製用フィルターに関し、該タンパク質修飾蛍光体集積粒子の精製物を製造する方法は、表面が生体物質結合性タンパク質で修飾された蛍光体集積粒子(タンパク質修飾蛍光体集積粒子)と、その作製工程に由来する夾雑物とを含有する溶液を、前記生体物質結合性タンパク質への可逆的な結合性能を有する物質(タンパク質結合性物質)を担持したフィルターに接触させることにより、前記タンパク質修飾蛍光体集積粒子を前記夾雑物から分離する精製工程を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質修飾蛍光体集積粒子と、その作製工程に由来する夾雑物とを含有する溶液を、タンパク質結合性物質を担持したフィルターに接触させることにより、前記タンパク質修飾蛍光体集積粒子を前記夾雑物から分離する、精製工程を含み、
前記タンパク質修飾蛍光体集積粒子が、表面が生体物質結合性タンパク質で修飾された蛍光体集積粒子であり、
前記タンパク質結合性物質が、前記生体物質結合性タンパク質への可逆的な結合性能を有する物質である、
タンパク質修飾蛍光体集積粒子の精製物を製造する方法。
【請求項2】
前記生体物質結合性タンパク質が抗体であり、前記タンパク質結合性物質がプロテインA、プロテインGまたはプロテインLである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記タンパク質修飾蛍光体集積粒子が蛍光プレミックス粒子であり、
前記蛍光プレミックス粒子が、第1反応性物質で修飾された蛍光体集積粒子と、第2反応性物質で修飾された生体物質結合性タンパク質とが、第1反応性物質と第2反応性物質の相互作用により連結している粒子である、
請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記第1反応性物質がストレプトアビジンであり、前記第2反応性物質がビオチンである、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記タンパク質修飾蛍光体集積粒子が、蛍光体集積粒子1粒子当たり、生体物質結合性タンパク質を1000〜5000個有する粒子である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記蛍光体集積粒子の平均粒子径が30〜300nmである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の製造方法で得られた、タンパク質修飾蛍光体集積粒子の精製物を含有する蛍光染色液の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の製造方法により得られたタンパク質修飾蛍光体集積粒子の精製物。
【請求項9】
請求項8に記載のタンパク質修飾蛍光体集積粒子の精製物を含有する、蛍光染色液。
【請求項10】
タンパク質修飾蛍光体集積粒子が通過可能なサイズの細孔を有するフィルターと、該フィルターに担持されたタンパク質結合性物質とを備え、
前記タンパク質修飾蛍光体集積粒子が、表面が生体物質結合性タンパク質で修飾された蛍光体集積粒子であり、
前記タンパク質結合性物質が、前記生体物質結合性タンパク質への可逆的な結合性能を有する物質である、
タンパク質修飾蛍光体集積粒子精製用フィルター。
【請求項11】
前記フィルターが、デキストランまたはその誘導体と、アクリルアミドまたはその誘導体との架橋共重合体である、請求項10に記載のフィルター。
【請求項12】
前記タンパク質結合性物質がプロテインA、プロテインGまたはプロテインLである、請求項10または11に記載のフィルター。
【請求項13】
前記蛍光体集積粒子の平均粒子径が30〜300nmである、請求項10〜12のいずれか一項に記載のフィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質修飾蛍光体集積粒子の精製物を製造する方法、蛍光染色液の製造方法、タンパク質修飾蛍光体集積粒子の精製物、蛍光染色液およびタンパク質修飾蛍光体集積粒子精製用フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
病理診断は、患者から採取した組織や細胞を用いて標本スライドを作製し、所定の方法で染色することによって取得される染色画像に基づいて、細胞または組織の形態を観察するとともに、特定の生体物質の発現状態を評価することにより、その患者が特定の疾患に罹患しているか否か、あるいは特定の治療薬が奏功するか否かといった様々な事象を判断する方法である。
【0003】
病理診断では、腫瘍組織を採取して作製された検体を用いて、がん遺伝子の一種であるHER2遺伝子(HER2/neu、c-erbB-2)および/またはHER2遺伝子から産生される膜タンパク質であるHER2タンパクを定量し、評価することによって、乳がん患者の予後を診断したり、分子標的治療薬「トラスツズマブ」(商品名「ハーセプチン」(登録商標)、抗HER2モノクローナル抗体)による治療効果を予測する方法が広く行われている。HER2タンパク質は、ホモ二量体もしくは活性化したEGFR(HER1)、HER3またはHER4と結合したヘテロ二量体を形成してシグナル伝達を行うと考えられており、がん細胞増殖因子の受容体として機能していると推定される(これまでのところHER2に結合する内因性リガンドは知られていない)。
【0004】
腫瘍組織を対象としたHER2の検査法としては、HER2タンパク質を染色する免疫組織化学(IHC)法とHER2遺伝子を染色する蛍光in situ ハイブリダイゼーション(FISH)法が挙げられる。検査の手順および判定基準(スコア)については、米国臨床腫瘍学会および米国病理学会により発行されているASCO/CAP HER2検査ガイドライン(2007年制定、2013年改訂)が各国において広く用いられており、日本でも、改訂されたASCO/CAPのHER2検査ガイドラインに準拠したHER2検査ガイド(HER2検査ガイド第四版、乳癌HER2検査病理部会、2014年4月)が用いられている。
【0005】
IHC法では、酵素標識された抗体を検体に接触させ、抗原抗体反応を利用して検出の目的となるタンパク質と抗体とを直接的または間接的に結合させた後に、その酵素に対応した基質を反応させることで発色させる方法が一般的に用いられており、例えば、酵素としてペルオキシダーゼを用い、基質としてジアミノベンジジンを用いるDAB染色法が広く採用されている。
【0006】
しかしながら、DAB染色法のような酵素と基質との反応に基づく染色法は、発色濃度が温度・時間などの条件により大きく左右されるため、発色濃度から実際の目的となるタンパク質の量を正確に見積もることが難しいという課題があった。
【0007】
そこで近年、タンパク質を標識するために、有機蛍光色素や半導体ナノ粒子(量子ドット)などの蛍光体を複数個集積させたナノサイズの粒子、すなわち蛍光体集積粒子(phosper integrated particle;PID、「蛍光物質集積ナノ粒子」などと呼ばれることもある。)を用いる方法が提案され、実用化が進められている。蛍光体集積粒子を用いて目的とするタンパク質を標識し、その蛍光体に適合する励起光を照射することで、標識されたタンパク質を輝度の高い輝点として観察することが可能となり、タンパク質が発現している位置および量を正確に評価することが可能である。また、蛍光体集積粒子は従来用いられてきた染色剤よりも褪色しにくいため、比較的長時間の観察や撮像が可能となるという利点を有する。
【0008】
蛍光体集積粒子を用いて検体に含まれるタンパク質を蛍光標識する方法としては、以下の方法が知られている。例えば、特許文献1(国際公開第2014/136885号)の実施例では、粒子表面をストレプトアビジンで修飾した蛍光体集積粒子(色素樹脂粒子)を作製しておき、組織切片上の抗原(HER2タンパク)に1次抗体(抗HER2ウサギモノクローナル抗体)を結合させ、続いてビオチンで標識した2次抗体(抗ウサギIgG抗体)を該1次抗体に結合させた後、ストレプトアビジン修飾蛍光体集積粒子を該2次抗体に結合させるという、蛍光標識法(アビジン−ビオチン併用2次抗体法)が開示されている。
【0009】
ここで、ストレプトアビジン修飾蛍光体集積粒子の作製は、以下の方法で行われている。
【0010】
(i)母体としてメラミン樹脂を用いて蛍光色素を集積(内包)した樹脂粒子を形成した後、そのメラミン樹脂にシランカップリング剤である3−アミノプロピルトリメトキシシランを反応させることで粒子表面にアミノ基を導入し、さらにそのアミノ基にリンカーとしてのスクシンイミジル−[(N−マレイミドプロピオンアミド)−ドデカエチレングリコール]エステルを反応させることで、メラミン樹脂粒子表面にマレイミド基を導入する。
【0011】
(ii)ストレプトアビジンとN−スクシンイミジルS−アセチルチオ酢酸とを反応させて、ストレプトアビジンにチオール基を導入する。
【0012】
(iii)前記(i)のメラミン樹脂粒子のマレイミド基と、前記(ii)のストレプトアビジンのチオール基とを反応させて、両者を結合させる。
【0013】
また、特許文献2(国際公開第2016/129444号)では、特定の還元剤を用いた処理によって適度な数のジスルフィド結合(−S−S−)を還元してチオール基(−SH)を生成させた抗体と、そのチオール基と反応しうる結合基(例えばマレイミド基)を表面に導入した蛍光体集積ナノ粒子とを反応させることにより、粒子表面の単位面積あたり適度な数の抗体を結合させた抗体結合蛍光体集積ナノ粒子が開示されている。このような抗体結合蛍光体集積ナノ粒子は、1つの抗体に対して複数の蛍光体集積ナノ粒子が結合することなどを抑制することにより、該粒子の保存中の凝集や沈殿を抑制することができる。前記抗体は、IHC法における直接法で用いられる1次抗体であってもよいし、間接法で用いられる2次抗体等であってもよいとされる。
【0014】
例えば、特許文献2の実施例では、以下の方法で作製した抗体修飾蛍光色素内包シリカナノ粒子を用いてHER2の免疫染色を行う実施形態が開示されている。
【0015】
(i)原材料として3−アミノプロピルトリメトキシシランおよび蛍光色素である5−カルボキシテトラメチルローダミン(登録商標「TAMRA」)を用いて蛍光色素内包シリカナノ粒子を形成し、そのシリカナノ粒子にリンカーとしてのスクシンイミジル−[(N−マレイミドプロピオンアミド)−ドデカエチレングリコール]エステル(製品名「SM(PEG)12」)を反応させることで、粒子表面にマレイミド基を導入する。
【0016】
(ii)1次抗体(抗HER2ウサギモノクローナル抗体)または2次抗体(抗ウサギIgG抗体)を、還元剤として2−メルカプトエタノール等を用いて処理し、ジスルフィド結合を還元してチオール基を生成する。
【0017】
(iii)前記(i)のシリカナノ粒子のマレイミド基と、前記(ii)の1次抗体または2次抗体のチオール基とを反応させて両者を結合させる。
【0018】
特許文献3(国際公開第2015/163209号)には、抗体結合蛍光体集積粒子を製造した後、組織染色に使用するまで保存するために用いられる、緩衝液、タンパク質、界面活性剤などを含有する保存液が記載されており、保存中の抗体結合蛍光体集積ナノ粒子の保存時の分散安定性を向上させることで、沈降および/または凝集を抑制し、組織染色において当該粒子の粗大塊を抑制できるという作用効果を奏する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】国際公開第2014/136885号
【特許文献2】国際公開第2016/129444号
【特許文献3】国際公開第2015/163209号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
このような抗体またはストレプトアビジン等の生体物質結合性タンパク質で表面が修飾された蛍光体集積粒子(本明細書において「タンパク質修飾蛍光体集積粒子」と称する。)は一般的に、製造してから使用するまでの間の保存中に沈降または凝集が生じやすいという問題があった。そのような沈降物または凝集物を含んだ溶液から調製した蛍光染色液を用いて、組織切片等の検体を免疫染色すると、取得した蛍光画像において、凝集したタンパク質修飾蛍光体集積粒子が原因と考えられる輝点の粗大塊が発生し、輝点の数を正しく計測する妨げとなることがあった。このような事態を避けるため、従来は、長期保存後のタンパク質修飾蛍光体集積粒子を用いて蛍光染色液を調製する場合は、予め、遠心分離、上澄み液の除去、染色用溶媒による希釈および超音波処理によるタンパク質修飾蛍光体集積粒子の再分散を適当な回数繰り返すことにより溶媒置換を行った後、フィルター処理を行うなど、複雑な操作を要する前処理が必要であった。
【0021】
また、特許文献3に記載されているような特定の保存液を用いることによって、タンパク質修飾蛍光体集積粒子の保存時の分散安定性を一定程度改善することはできる。しかしながら、タンパク質修飾蛍光体集積粒子の保存時の分散安定性の向上にはまだ改善の余地があり、さらに今後開発されるであろう様々なタンパク質修飾蛍光体集積粒子に対しても保存時の分散安定性を向上できる、新たな手段の開発が求められている。
【0022】
本発明の一実施形態は、タンパク質修飾蛍光体集積粒子の保存時の分散安定性を向上させるための手段を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の一実施形態は、タンパク質修飾蛍光体集積粒子と、その作製工程に由来する夾雑物とを含有する溶液を、前記生体物質結合性タンパク質への可逆的な結合性能を有する物質(本明細書において「タンパク質結合性物質」と称する。)を担持させたフィルターに接触させることにより、前記タンパク質修飾蛍光体集積粒子を前記夾雑物から分離する精製工程を含む、タンパク質修飾蛍光体集積粒子の精製物を製造する方法に関する。
【0024】
前記生体物質結合性タンパク質は、好ましくは抗体であり、前記タンパク質結合性物質は、好ましくはプロテインA、プロテインGまたはプロテインLである。
【0025】
前記タンパク質修飾蛍光体集積粒子は、好ましくは、第1反応性物質で修飾された蛍光体集積粒子と、第2反応性物質で修飾された生体物質結合性タンパク質とが、第1反応性物質と第2反応性物質の相互作用により連結している、蛍光プレミックス粒子である。前記第1反応性物質は、好ましくはストレプトアビジンであり、前記第2反応性物質は、好ましくはビオチンである。
【0026】
前記タンパク質修飾蛍光体集積粒子は、蛍光体集積粒子1粒子当たり、生体物質結合性タンパク質を1000〜5000個有する粒子であることが好ましい。
【0027】
前記蛍光体集積粒子の平均粒子径は、好ましくは30〜300nmである。
【0028】
本発明の一実施形態は、前記製造方法によって得られた、タンパク質修飾蛍光体集積粒子の精製物を含有する蛍光染色液の製造方法に関する。
【0029】
本発明の一実施形態は、前記製造方法によって得られたタンパク質修飾蛍光体集積粒子の精製物に関する。また、本発明の他の実施形態は、該精製物を含有する、蛍光染色液に関する。
【0030】
さらに、本発明の一実施形態は、タンパク質修飾蛍光体集積粒子が通過可能なサイズの細孔を有するフィルターと、当該フィルターに担持されたタンパク質結合性物質とを備える、タンパク質修飾蛍光体集積粒子精製用フィルターに関する。
【発明の効果】
【0031】
本発明の一実施形態によれば、タンパク質修飾蛍光体集積粒子を保存する際の凝集や沈降を抑制でき、高い分散安定性を有するタンパク質修飾蛍光体集積粒子の精製物が得られる。このタンパク質修飾蛍光体集積粒子の精製物を用いることにより、手早く蛍光染色液を調製することができ、また、生体物質を定量する際の妨げとなる、粒子の凝集塊に基づく輝点の粗大塊が抑制された蛍光画像を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、実施例の<分散安定性の評価>における、抗HER2抗体直結TAMRA集積シリカ粒子の分散液(非精製物)を蛍光顕微鏡で撮影した画像の一例である。円内に、極端に輝度の高い輝点(凝集塊)が認められる。
図2図2は、実施例の<染色性能の評価>における、比較例2で得られた分散液から調製した蛍光染色液を用いて作製された染色スライドを蛍光顕微鏡で撮影した画像である。円内にクラスター状の輝点(凝集塊)が認められる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
−タンパク質修飾蛍光体集積粒子の精製物を製造する方法−
本発明の一実施形態に係るタンパク質修飾蛍光体集積粒子の精製物を製造する方法は、タンパク質修飾蛍光体集積粒子と、その作製工程に由来する夾雑物とを含有する溶液を、タンパク質結合性物質を担持したフィルターと接触させることにより、前記タンパク質修飾蛍光体集積粒子を前記夾雑物から分離する、精製工程を含む。
【0034】
本発明者は、タンパク質修飾蛍光体集積粒子の保存時の分散安定性を低下させている要因の一つとして、その作製工程に由来する様々な夾雑物が混在していること、そして生体物質結合性タンパク質と可逆的な結合性能を有する物質を担持したフィルターにタンパク質修飾蛍光体集積粒子の溶液を接触させることで、夾雑物を極めて高い水準で除去できること、ここで得られる精製物によれば、その保存中の分散安定性の低下を抑制することができることを見出した。
【0035】
タンパク質修飾蛍光体集積粒子を作製する際には、従来は、例えば、前記特許文献2(段落0067、0134等参照)に記載されているように、蛍光体集積粒子の表面に生体物質結合性タンパク質を連結させる工程を行った後、遠心分離およびpH緩衝液への分散を複数回繰り返す工程(洗浄工程)を行っており、この工程により該粒子が含まれている溶液中の夾雑物は十分に除去されると考えられていた。しかしながら、このような方法では除去しきれなかった夾雑物が、粒子の保存中に生じる凝集や沈降の一因であること、そしてそのような夾雑物を除去することで、粒子の保存中に生じる凝集や沈降を抑制することができるということを本発明者は見出した。このことにより、粒子の保存中に生じる凝集や沈降を抑制できるということは、当業者にとっても意外なことであった。
【0036】
従来の洗浄工程では十分に除去できなかった夾雑物としては、例えば、原料や試薬に含まれる不純物との副次的相互作用などによって粒子形成反応で消費されなかった粒子原料、洗浄により除外できなかった界面活性剤、変性して非反応性となり粒子に結合しなかったタンパク質などが挙げられる。それらの夾雑物がタンパク質修飾蛍光体集積粒子の分散安定性、さらには蛍光(免疫)染色の染色性に悪影響を与えているものと推認される。
【0037】
また、本発明者は、本発明の一実施形態に係る製造方法は、特に、新規な実施形態、具体的には、前記特許文献1に開示されている実施形態(アビジン−ビオチン併用2次抗体法)において、ストレプトアビジン修飾蛍光体集積粒子とビオチン標識2次抗体とを予め反応させて(プレミックスして)得られるタンパク質修飾蛍光体集積粒子を含む溶液を保存する際の、粒子の分散安定性を向上させるために極めて有効であることも見出した。
【0038】
前記製造方法では、フィルターに担持されているタンパク質結合性物質と、タンパク質修飾蛍光体集積粒子を構成する生体物質結合性タンパク質とが結合することで、タンパク質修飾蛍光体集積粒子はフィルターに捕捉され、タンパク質結合性物質と反応しない夾雑物はフィルターに捕捉されずに流出することで、両者を分離することができる。
【0039】
本発明の「製造方法」においては、通常、「精製工程」の後、さらに、フィルターに捕捉されたタンパク質修飾蛍光体集積粒子とフィルターとを分離する脱離工程を含む。この脱離工程は、例えば、フィルターに、溶離液を流すことなどにより行うことができる。
【0040】
脱離工程によってフィルターから脱離したタンパク質修飾蛍光体集積粒子を回収することによって、タンパク質修飾蛍光体集積粒子の精製物を得ることができる。
【0041】
前記溶離液としては、特に制限されないが、タンパク質修飾蛍光体集積粒子をフィルターから十分に脱離させることができる液体であることが好ましく、さらに、タンパク質修飾蛍光体集積粒子およびその構成成分の構造や機能を失わせない液体であることが好ましい。タンパク質修飾蛍光体集積粒子の構成成分やフィルターに含まれるタンパク質結合性物質の種類等によって適切な液体を用いることができるが、例えばグリシン−HCl等が好適に用いられる。
【0042】
また、「精製工程」または「脱離工程」の後に必要に応じて、フィルターおよび回収したタンパク質修飾蛍光体集積粒子を洗浄する工程や、従来と同様の遠心分離処理、カラムを用いた精製処理、洗浄処理等のうち必要な処理を行ってもよい。
【0043】
なお、フィルターに担持されているタンパク質結合性物質は、タンパク質修飾蛍光体集積粒子のみならず、該フィルターと接触する溶液に未反応の生体物質結合性タンパク質が含まれている場合、該タンパク質も捕捉してしまうが、前記脱離工程を適切に行うことで、フィルターの分子ふるい機能等によって、タンパク質修飾蛍光体集積粒子と未反応の生体物質結合性タンパク質とを適切に分離することができる。
【0044】
具体的には、タンパク質修飾蛍光体集積粒子は、通常、生体物質結合性タンパク質に比べてサイズが大きい上、1粒子あたり複数の生体物質結合性タンパク質が連結された粒子であるため、未反応の生体物質結合性タンパク質と比較してフィルターに対して強く捕捉される傾向にあり、フィルターを通過しにくい。従って、溶離液を流したときに、未反応の生体物質結合性タンパク質は、フィルターからの流出時間が早いのに対し、タンパク質修飾蛍光体集積粒子はフィルターからの流出時間が遅くなる。このため、タンパク質修飾蛍光体集積粒子を多く含有する画分(溶出後期)を分取することにより、未反応の生体物質結合性タンパク質含量の少ない「精製物」を得ることができる。
【0045】
また、逆に、溶離力の弱い溶離液を用いれば、生体物質結合性タンパク質よりも重いタンパク質修飾蛍光体集積粒子の方が早く溶離、流出するため、タンパク質修飾蛍光体集積粒子を多く含有する画分(溶出初期)を分取することにより、未反応の生体物質結合性タンパク質含量の少ない「精製物」を得ることができる。
【0046】
≪タンパク質修飾蛍光体集積粒子の精製物≫
本発明の一実施形態に係るタンパク質修飾蛍光体集積粒子の精製物は、前記精製工程を含む方法により得られる。
【0047】
なお、該精製物中の夾雑物の残存量は極めて微量であり、また、前記製造方法を実施する前の夾雑物の存在量も微量であり、どちらも公知の手段によっては十分な精度で定量できないため、例えば、前記課題を解決するには、該精製物中の夾雑物の量がどの程度であればよいかを規定することは、不可能または非実際的であるといわざるを得ない。それゆえ、該精製物を、前記製造方法によって得られたものであると規定することは妥当なことである。
【0048】
−タンパク質修飾蛍光体集積粒子−
前記タンパク質修飾蛍光体集積粒子は、表面が生体物質結合性タンパク質で修飾された蛍光体集積粒子である。蛍光体集積粒子の生体物質結合性タンパク質による修飾方法は、蛍光染色の目的とする生体物質の蛍光標識方法に応じて適宜選択すればよい。前記タンパク質修飾蛍光体集積粒子としては、第1反応性物質で修飾された蛍光体集積粒子と、第2反応性物質で修飾された生体物質結合性タンパク質とが、第1反応性物質と第2反応性物質の相互作用により連結している粒子である、蛍光プレミックス粒子が好ましい。
【0049】
前記タンパク質修飾蛍光体集積粒子は、蛍光体集積粒子1粒子あたりに連結している生体物質結合性タンパク質の数が、好ましくは1000個以上、より好ましくは1000〜50000個である粒子が望ましい。
【0050】
タンパク質修飾蛍光体集積粒子を作製する際の各種の条件を調節することにより、このような数の生体物質結合性タンパク質を有する粒子を得ることができる。
【0051】
蛍光体集積粒子1粒子あたりに連結している生体物質結合性タンパク質の数は、例えば国際公開第2015/159776号に記載されている方法により算出でき、また、前記蛍光プレミックス粒子の場合には、該方法を応用した、下記(i)〜(iv)の方法で求めることができる。
【0052】
(i)蛍光体集積粒子の表面に導入した第1反応性物質の、該粒子1つあたりの数を測定する
(ii)その第1反応性物質1つに対して、最大いくつの第2反応性物質(で修飾された生体物質結合性タンパク質)が結合するか、係数を決定する(例えば、第1反応性物質がアビジン等である場合は4であり、第1反応性物質が抗ハプテン抗体である場合は1である)
(iii)前記(i)の1粒子あたりの数に、前記(ii)の係数を乗じた値を、蛍光体集積粒子1粒子あたりに連結し得る生体物質結合性タンパク質の数の最大値とみなす
(iv)反応のために添加した第2反応性物質で修飾された生体物質結合性タンパク質の量が、(iii)の最大値よりも多いときは、前記最大値を、蛍光体集積粒子1粒子あたりの生体物質結合性タンパク質の数とみなし、(iii)の最大値よりも少ないときは、第2反応性物質で修飾された生体物質結合性タンパク質の添加総数を蛍光体集積粒子の数で除した値を、蛍光体集積粒子1粒子あたりの生体物質結合性タンパク質の数とみなす。
【0053】
≪生体物質結合性タンパク質≫
生体物質結合性タンパク質は、生体物質への結合性能を有するタンパク質であって、蛍光染色の対象である目的生体物質に、蛍光体集積粒子を直接的または間接的に結合させるために用いられる。このような生体物質結合性タンパク質は、目的生体物質の蛍光標識方法に応じて、また、蛍光体集積粒子の修飾の実施形態に応じて適宜選択すればよいが、抗体であることが好ましい。
【0054】
例えば、蛍光染色として免疫染色法を行なう場合、蛍光体集積粒子を直接的に目的生体物質に結合させる場合、その目的生体物質と特異的に結合する抗体(1次抗体)を、生体物質結合性タンパク質とすることができる。
【0055】
一方、免疫染色法において、蛍光体集積粒子を間接的に目的生体物質に結合させる場合、(i)1次抗体と特異的に結合する抗体(2次抗体)、(ii)2次抗体と特異的に結合する抗体(3次抗体)以上の高次抗体、または、(iii)1次抗体や2次抗体等を修飾している反応性物質(第2反応性物質)に特異的に結合する反応性物質(第1反応性物質)を、生体物質結合性タンパク質とすることができる。
【0056】
なお、「蛍光体集積粒子の表面が生体物質結合性タンパク質で修飾された」とは、蛍光体集積粒子の表面に、直接生体物質結合性タンパク質が結合している場合のみならず、何らかの結合を介して、生体物質結合性タンパク質が結合している場合も含む。
【0057】
例えば、前記蛍光プレミックス粒子は、蛍光体集積粒子の表面からもっとも遠位に生体物質結合性タンパク質が結合する。
【0058】
<抗体>
前記生体物質結合性タンパク質としては、抗体(免疫グロブリン)を用いることが好ましい。該抗体は、免疫染色法において目的生体物質と直接的にまたは間接的に結合できる抗体であれば特に限定されない。該抗体としては、前記1次抗体、2次抗体および3次抗体以上の高次抗体のいずれであってもよい。
【0059】
1次抗体は、抗原にユニークなエピトープを認識して結合する抗体であり、目的生体物質の定量の安定性の観点から、ポリクローナル抗体よりもモノクローナル抗体が好ましい2種類以上のモノクローナル抗体を混合して使用する場合、抗体ごとに異なるエピトープについて特異的に結合するモノクローナル抗体の組合せが好ましい。
【0060】
1次抗体を産生する免疫動物としては特に限定されず、一般的な動物から選択することができ、例えばマウス、ラット、モルモット、ウサギ、ヤギ、ヒツジなどが挙げられる。
【0061】
2次抗体またはそれ以上の高次抗体は、1次抗体または低次抗体にユニークなエピトープ、好ましくはそれらの抗体の目的生体物質(抗原)等との結合に関与していない領域(Fc等)に存在するエピトープを認識して結合する抗体である。2次抗体等は、目的生体物質の定量の安定性の観点から、モノクローナル抗体が好ましいが、経済的な観点からポリクローナル抗体を用いてもよい。
【0062】
2次抗体等を産生する免疫動物は、1次抗体を産生する免疫動物として例示した動物種等の中から、1次抗体等を産生する動物種またはFc等の領域を形成している動物種に応じて、適切な動物を選択すればよい。例えば、1次抗体として天然型のマウス抗体(マウスが産生したIgG)を用いる場合は、2次抗体として、マウス以外の免疫動物(ウサギ等)が産生する、マウスIgGに特異的に結合する抗体を用いることが適切である。
【0063】
前記抗体は、いずれのアイソタイプを用いてもよいが、通常はIgGまたはIgMであり、特にIgGが好ましい。抗体は、目的生体物質または低次抗体を特異的に認識して結合する能力を有する限り、完全長のIgGのような天然型の抗体であってもよいし、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv、scFvなどの抗体断片、または、これらの抗体断片を用いて多機能化(多価化または多重特異性化)された人工抗体などの、非天然型の抗体であってもよい。また、特定の免疫動物に由来する天然型の抗体(例えばマウスによって産生されるマウス抗体)であってもよいし、ベクター等を用いた人工的な手段により作製されるキメラ抗体、ヒト型化抗体または完全ヒト抗体であってもよい。
【0064】
タンパク質結合性物質として、プロテインA、プロテインGまたはプロテインLを用いる場合は、それらと抗体との結合性(アフィニティー)は、抗体の部位、動物種、サブクラスなどによって異なるので、適切な抗体を用いる必要がある。
【0065】
例えば、プロテインAおよびプロテインGは主にFc領域を認識して結合することから、Fc領域を有する完全長の抗体または抗体断片を用いることが好ましい(プロテインGは、Fab領域とも弱く結合するため、Fab領域を含む抗体断片を用いることができる場合もある)。一方、プロテインLは軽鎖(κ軽鎖)を認識して結合することから、Fc領域を有さない、scFv、Fabなどの抗体断片を用いることもできる。また、プロテインAは、例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG4には強く結合するが、ヒトIgG3とはほとんど結合せず、マウスIgG2a、IgG2b、IgG3には強く結合するが、マウスIgG1との結合は、生体条件のバッファー(Tris−HClやリン酸ナトリウムバッファー)中では弱くなるため、動物種に応じて結合性の強いサブクラスの抗体を用いることが好ましい。
【0066】
<第1反応性物質および第2反応性物質>
第1反応性物質および第2反応性物質は、相互作用により互いに特異的に結合する物質同士の組み合わせであって、いずれも生体物質結合性タンパク質とそれが結合する目的生体物質(目的タンパク質、または2次抗体もしくは3次抗体以上の高次抗体)との特異的な結合と交差して反応することのない物質から選択される。
【0067】
第1反応性物質および第2反応性物質としては、いずれも限定されないが、例えば、公知の染色法において目的生体物質(抗原等)と標識物質(蛍光体等)とを間接的に結合させる際に利用されているものの中から選択することができる。
【0068】
例えば、アビジン−ビオチン複合体を利用した免疫染色法(ABC法)に準じて、第1反応性物質として、アビジン、ストレプトアビジンまたはニュートラアビジンなどのアビジン類、好ましくはストレプトアビジンを選択し、第2反応性物質としてビオチンを選択することができる。このような実施形態は、1つのアビジン類に対して4つのビオチンが結合することから、目的生体物質をより高感度で検出することができる。特に蛍光プレミックス粒子を作製する際には1つの蛍光体集積粒子に対してより多くの生体物質結合性タンパク質を連結できるために特に好ましい。
【0069】
また、前記アビジン類とビオチンとの組み合わせの代わりに、ハプテン(免疫原性を有さないが抗原性を示し、抗体と反応しうる比較的分子量の低い物質)と抗ハプテン抗体(例えば、ジコキシゲニンと抗ジコキシゲニン抗体、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)と抗FITC抗体)を、第1反応性物質および第2反応性物質として用いることもできる。これらは、例えば、後述する免疫染色法の第3、第4実施形態において、生体物質結合性タンパク質としても用いることができる。
【0070】
≪蛍光体集積粒子≫
前記蛍光体集積粒子(生体物質結合性タンパク質で修飾される前の粒子)としては、特に制限されないが、有機物または無機物でできた母体となる粒子の内部または表面に、蛍光体(例えば蛍光色素)を複数個固定して集積した構造を有するナノサイズの(直径が1μm以下の)粒子であることが好ましく、一粒子で十分な輝度の蛍光を発することができる粒子であることが好ましい。
【0071】
このような蛍光体集積粒子は、蛍光体を単独で(集積化せずに一分子で)用いる場合と比較して、目的生体物質を標識する際の蛍光の強度(輝度)が強く、細胞の自家蛍光等のノイズや他の色素との識別性が高く、また蛍光体単独よりも励起光の照射による劣化が起こりにくい(耐光性の強い)などの点から、蛍光染色において好ましく用いられる。
【0072】
蛍光体集積粒子に集積される蛍光体は特に限定されないが、例えば公知の様々な有機蛍光色素分子や半導体ナノ粒子(量子ドット等と称されることもある)を用いることができる。以下、蛍光体として有機蛍光色素を用いた場合の蛍光体集積粒子を有機蛍光色素集積粒子といい、蛍光体として半導体ナノ粒子を用いた場合の蛍光体集積粒子を無機蛍光体集積粒子という。
【0073】
蛍光体集積粒子の作製に用いられる蛍光体は、所望の用途に応じ、所望の波長(色)の蛍光を発する蛍光体を選択すればよい。蛍光標識の対象とする目的生体物質が2種類以上である場合は、それぞれに対応した異なる波長の蛍光を発する蛍光体の組み合わせを選択し、それぞれの蛍光体を集積した蛍光体集積粒子を作製すればよい。そのような2種類以上の蛍光体を用いる場合は、発光波長のピークが互いに100nm以上離れている蛍光体を選択することが好ましい。
【0074】
(1)有機蛍光色素集積粒子
有機蛍光色素集積粒子は、粒子の母体となる物質の内部または表面に有機蛍光色素を複数個集積した、ナノサイズの蛍光粒子であることが好ましい。
【0075】
有機蛍光色素としては、例えば、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、Alexa Fluor(登録商標、インビトロジェン社製)系色素、BODIPY(登録商標、インビトロジェン社製)系色素、カスケード(登録商標、インビトロジェン社)系色素、クマリン系色素、NBD(登録商標)系色素、ピレン系色素、シアニン系色素、ペリレン系色素、オキサジン系色素、ピロメテン系色素など、低分子有機化合物(ポリマー等の高分子有機化合物ではないもの)からなる蛍光色素が挙げられる。中でも、スルホローダミン101およびその塩酸塩であるTexasRed(登録商標)などのローダミン系色素や、ペリレンジイミドなどのペリレン系色素、ピロメテン556等のピロメテン系色素は、比較的耐光性が高いため好ましい。
【0076】
有機蛍光色素集積粒子を構成する母体としては、樹脂やシリカなど、物理的または化学的な結合力で有機蛍光色素を集積化できる物質等が挙げられる。具体的には、ポリスチレン、ポリアミド、ポリ乳酸、ポリアクリロニトリル、ポリグリシジルメタクリレート、ポリメラミン、ポリウレア、ポリベンゾグアナミン、ポリフラン、ポリキシレン、フェノール樹脂、ASA樹脂(アクリロニトリル−スチレン−アクリル酸メチル共重合体)等の樹脂;多糖;シリカ等;安定的に有機蛍光色素を集積できる物質等が挙げられる。ポリスチレン、ポリメラミン、シリカなどの疎水性の化合物、特にメラミン樹脂やスチレン樹脂は、蛍光色素集積粒子を作製しやすく、また発光強度の高い粒子が得られるため好ましい。
【0077】
たとえば、蛍光体としてペリレンジイミド、スルホローダミン101またはその塩酸塩(テキサスレッド)、ピロメテン等の蛍光色素を用い、母体としてメラミン樹脂、スチレン樹脂等の樹脂を用いて作製される有機蛍光色素集積粒子は、標識性能等に優れることから、前記蛍光体集積粒子として好ましい。
【0078】
(2)無機蛍光体集積粒子
無機蛍光体集積粒子は、粒子の母体となる物質の内部または表面に半導体ナノ粒子を複数個集積した、ナノサイズの蛍光粒子であることが好ましい。
【0079】
前記半導体ナノ粒子は特に限定されず、II−VI族化合物、III−V族化合物またはIV族元素を含有する量子ドット、国際公開第2012/133047号に例示されたCdSe等の粒子ドット等が挙げられる。
【0080】
また、半導体ナノ粒子をコアとし、その周囲にシェルを設けた量子ドットを用いることもできる。以下、シェルを有する半導体ナノ粒子の表記法として、コアがCdSe、シェルがZnSの場合、CdSe/ZnSと表記する。
【0081】
シェルを有する半導体ナノ粒子としては、具体的には、国際公開第2012/133047号に例示されたCdSe/ZnS等が挙げられる。
【0082】
半導体ナノ粒子は必要に応じて、有機ポリマー等により表面処理が施されていてもよい。例えば、粒子表面がカルボキシ基で修飾されているCdSe/ZnS(インビトロジェン社製)、粒子表面がアミノ基で修飾されているCdSe/ZnS(インビトロジェン社製)等を用いることができる。
【0083】
無機蛍光体集積粒子を構成する母体としては、樹脂やシリカなど、物理的または化学的な結合力で半導体ナノ粒子を集積化できる物質等が挙げられる。該樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂等の熱硬化性樹脂;スチレン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体)、ASA樹脂(アクリロニトリル−スチレン−アクリル酸メチル共重合体)など、1種類または2種類以上のモノマーを用いて作製される各種の単独重合体および共重合体が挙げられる。
【0084】
前記有機蛍光色素集積粒子および無機蛍光体集積体は公知であり、その製造に用いられる蛍光体および母体や製造方法などの詳細、実施形態の具体例については、例えば国際公開第2013/035703号、国際公開第2013/147081号、国際公開第2014/136776号などを参照すればよい。
【0085】
[蛍光体集積粒子の平均粒子径]
蛍光体集積粒子の平均粒子径は、好ましくは30〜300nm、より好ましくは40〜160nmである。一般的に、粒子径が小さくなるほど比表面積が大きくなり、検体との結合力が高まるが、平均粒子径が30nmを下回ると、蛍光体集積粒子に起因して蛍光観察で観察されるべき輝点が全く観察されないか、または観察されにくい場合がある。逆に、蛍光体集積粒子の平均粒子径が300nmを上回ると、蛍光観察において観察される輝点が多くなりすぎる等、輝点同士が分離されずに正確に輝点をカウントすることが困難となる場合がある。
【0086】
蛍光体集積粒子の粒径のばらつきを示す変動係数は特に限定されないが、20%程度以下であることが好ましい。
【0087】
蛍光体集積粒子の粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて画像を撮影し、蛍光標識用樹脂粒子の断面積を計測し、その計測値を相当する円の面積としたときの直径(面積円相当径)として測定することができる。十分な数(たとえば1000個)の集団に含まれる蛍光体集積粒子それぞれついて前記のようにして粒子径を測定した後、平均粒子径はその算術平均として算出され、変動係数は式:100×粒径の標準偏差/平均粒径により算出される。
【0088】
蛍光体集積粒子の平均粒子径は、その製造の際の条件を調節することにより、所望の範囲に収まるようにすることができる。
【0089】
有機蛍光色素集積粒子の製造方法の一例として、乳化重合法、具体的には、該粒子の母体となる樹脂(熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂)を合成するためのモノマーを(共)重合させながら、蛍光体を添加し、当該(共)重合体の内部または表面に当該蛍光体を取り込ませる方法が挙げられる。乳化重合法における反応系では、界面活性剤により外側が水相で内側が油相のミセルが形成され、該ミセルの内側の油相に前記樹脂を構成するモノマーが包含された状態となり、このミセル内側で重合反応が行われることとなる。このような乳化重合法により有機蛍光色素集積粒子を合成する際に、例えば樹脂原料に対して10〜60重量%の量の乳化作用を有する界面活性剤を加えることで、平均粒子径が30〜300nmの粒子を作製できる。また、使用する界面活性剤の量が一定である場合、蛍光色素集積粒子の製造に使用する樹脂原料と蛍光体それぞれの反応系全体に対する割合を変更することによっても、蛍光色素集積粒子の平均粒子径の調節が可能である。
【0090】
一方、無機蛍光体集積粒子の平均粒子径は、例えば無機蛍光体集積粒子を製造した後、サイズ選択沈殿法により分級して、所定の粒子径を有する無機蛍光体集積粒子の画分を回収することで、所定の範囲に収めることができる。
【0091】
サイズ選択沈殿法とは、予め親油性基を有する吸着物を無機蛍光体集積粒子表面に吸着させた後、親油性溶媒中に無機蛍光体集積粒子を分散させ、溶媒中に両親媒性の添加剤を少量ずつ添加して沈殿させるという方法である。無機蛍光体集積粒子の分散性は、粒子表面の吸着基と溶媒の相互作用に強く依存しているため、添加剤を徐々に加えることで大サイズの無機蛍光体集積粒子から順に凝集沈殿物を形成し、この沈殿を遠心分離で回収し、溶媒中で再分散することで粒子径分布の狭い無機蛍光体集積粒子を得ることができる。
【0092】
なお、前記親油性基を有する吸着物としては、へプタン、オクタン、ドデカンなどのアルキル基をもつ化合物が挙げられ、炭素数8〜12の化合物が好ましい。
【0093】
また、親油性溶媒としては、ピリジン、へキサンなどが挙げられ、両親媒性の添加剤としてはクロロホルム、メタノールなどが好ましく用いられる。
【0094】
量子ドットなどの無機蛍光体集積粒子表面に吸着できる親油性基としては、トリオクチルホスフィン(TOP)等のホスフィノ基、トリオクチルホスフィンオキサイド(TOPOT)等のホスフィンオキシド基、リン酸基、アミノ基などが挙げられる。
【0095】
≪タンパク質修飾蛍光体集積粒子の作製方法≫
後述する免疫染色法の第1および第2実施形態では、それぞれ生体物質結合性タンパク質として1次抗体および2次抗体が連結された蛍光体集積粒子を、免疫染色法の第3および第4実施形態では、ともに生体物質結合性タンパク質として第1反応性物質(例えばストレプトアビジン、抗ハプテン抗体)が連結された蛍光体集積粒子を、タンパク質修飾蛍光体集積粒子として用いる。
【0096】
生体物質結合性タンパク質が抗体であるタンパク質修飾蛍光体集積粒子(例えば後述する免疫染色法の第1、第2実施形態において用いられるタンパク質修飾蛍光体集積粒子)の製造においては蛍光体集積粒子と抗体とを反応させるが、この反応では通常、過剰量の抗体を添加するため、反応後の溶液には生成したタンパク質修飾蛍光体集積粒子のほかに、未反応の(粒子と結合していない)抗体が多く含まれることがある。
【0097】
これらのタンパク質修飾蛍光体集積粒子は、公知の手法に従って作製することができる。合成した蛍光体集積粒子が有する反応性部位と生体物質結合性タンパク質(1次抗体、2次抗体または第1反応性物質)とを共有結合等により直結させてもよいし、間接的に、具体的には、両末端に反応性官能基を有するリンカーを用いて、リンカーのそれぞれの反応性官能基を、蛍光体集積粒子が有する反応性部位および生体物質結合性タンパク質が有する反応性部位と反応させて共有結合を形成させることにより、蛍光体集積粒子と生体物質結合性タンパク質とをリンカーを介して連結させてもよい。
【0098】
生体物質結合性タンパク質が有する反応性部位としては、一般的なタンパク質が有するアミノ基、カルボキシ基、チオール基等が挙げられる。反応性部位は、生体物質結合性タンパク質が元来有する部位であってもよいし、リンカー以外の処理剤(化合物)を用いることで、生体物質結合性タンパク質に導入された(例:シランカップリング剤等の化合物と反応させることによって粒子表面に導入された)部位であってもよい。例えば、生体物質結合性タンパク質にチオール基を導入するには、N−スクシンイミジルS−アセチルチオアセテート(SATA)を反応させた後にヒドロキシルアミンによる脱保護処理を行なうことで、生体物質結合性タンパク質が元来有していたアミノ基にチオール基を導入したり、またジチオトレイトール(DTT)等の還元剤を用いた処理により、生体物質結合性タンパク質が元来有していたジスルフィド結合(−S−S−)を切断してチオール基を生成する方法が挙げられる。生体物質結合性タンパク質が有する反応性部位としてそのようなチオール基を利用する場合、蛍光体集積粒子と生体物質結合性タンパク質とを結合させるために用いるリンカーが有すべき反応性官能基はチオール基と反応しうるもの、例えばマレイミド基が好ましい。前記リンカーは、そのような生体物質結合性タンパク質の反応性部位と反応しうる反応性官能基を一端または両端に有すればよく、両末端の反応性官能基は同じものであっても異なっていてもよい。前記リンカーは、分子中にポリオキシアルキレン部のような鎖状構造、代表的にはPEG(ポリエチレングリコール)鎖を有する化合物であってもよい。前記リンカーの機能は、以下に述べるようなシランカップリング剤自体が果たしてもよい。
【0099】
蛍光体集積粒子として母体がシリカである粒子を用いる場合、その蛍光体集積粒子(シリカ粒子)が有する反応性部位として、シリカ粒子表面のシラノール基を用いてもよいし、シランカップリング剤を利用してシリカ粒子の表面に導入した、シラノール基以外の反応性部位を用いてもよい。
【0100】
ここで用いられるシランカップリング剤は、一端にアルコキシ基、アセトキシ基、ハロゲン原子等の加水分解性基を有し、他端にアミノ基、メルカプト基、エポキシ基等の官能基を有する化合物等が挙げられる。シランカップリング剤の加水分解性基は、加水分解反応によりシラノール基になった後、シリカ粒子表面のシラノール基(または他のシランカップリング剤のシラノール基)と縮合反応を起こすため、シリカ粒子表面に前記のアミノ基等の官能基を導入することができる。
【0101】
導入されたアミノ基等の官能基は、それ自身を生体物質結合性タンパク質が有する反応性部位と反応させるために用いてもよいし、必要に応じて、さらにリンカーの一端にある反応性官能基と反応させることで、リンカーの他端にある反応性官能基を生体物質結合性タンパク質が有する反応性部位と反応させるために用いてもよい。例えば、シランカップリング剤により導入されたメルカプト基またはアミノ基を蛍光体集積粒子が有する反応性部位とする場合、それらに対する反応性官能基として、一端にマレイミド基またはN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)基を有するリンカーを用いることが好ましい。
【0102】
蛍光体集積粒子として母体が樹脂である粒子を用いる場合、その蛍光体集積粒子(樹脂粒子)が有する反応性部位は、樹脂を合成するために用いた原料(モノマー等)が有していて合成後も残存している官能基であってもよいし、樹脂の合成反応によって形成される所定の構造であってもよいし、前述のリンカー以外の処理剤(化合物)を用いることで、蛍光体集積粒子が元来有する反応性部位に導入された部位であってもよい。
【0103】
例えば、母体がメラミン樹脂である蛍光体集積粒子を用いる場合、一端にメラミン樹脂に吸着させるための加水分解性基(例えばトリアルコキシ基)を有し、他端にアミノ基を有するシランカップリング剤を反応させることによって、または両端にアミノ基を有するリンカーを反応させることによって、メラミン樹脂粒子の表面に、生体物質結合性タンパク質が有する反応性部位に対応した反応性官能基としてのアミノ基を導入することができる。なお、前記の両端にアミノ基を有するリンカーにおいて、リンカーが有する一方のアミノ基が反応するのは、メラミン樹脂が有する反応性部位、例えばメラミン樹脂の合成に用いられる、メラミンとホルムアルデヒドとを予め反応させた際に生じるメチロールメラミンが有するメチロール基(−CH2OH)や、それがさらにアルコールと反応することで生成するエーテル化物(−CH2OR)に対する反応性官能基である。
【0104】
また、母体がスチレン樹脂である蛍光体集積粒子を用いる場合、そのスチレン樹脂を合成する際に、スチレンと共重合しうる、側鎖にアミノ基、エポキシ基等の官能基を有するモノマーを用いることによって、リンカーの一端にある反応性官能基と反応させるための反応性部位として、アミノ基、エポキシ基等の官能基を表面に有するスチレン樹脂粒子が得られる。
【0105】
前述したような反応のためのリンカーおよびシランカップリング剤は、両端に様々な反応性官能基を有するものが市販されていて容易に入手することができ、また両端に所望の反応性官能基を有するものは公知の手法に従って合成することも可能である。例えば、PEG鎖の一端にNHS基(アミノ基と反応しうる反応性官能基)、他端にマレイミド基(チオール基と反応しうる反応性官能基)を有するリンカーとして、「SM(PEG)n」(n=2,4,6,8,12,24)(Thermofisher Scientific社製)等の製品を用いることができる。
【0106】
リンカーと、生体物質結合性タンパク質および/または蛍光体集積粒子とは、公知のプロトコールに従って反応させることができる。リンカーと、生体物質結合性タンパク質および/または蛍光体集積粒子との反応条件、例えば生体物質結合性タンパク質および/または蛍光体集積粒子が有する反応性部位の数(密度)、反応に用いるリンカーと生体物質結合性タンパク質および/または蛍光体集積粒子との分子数の比率(各溶液の濃度および容量)、反応試薬の種類および使用量、反応温度、反応時間等などによって、生体物質結合性タンパク質による蛍光体集積粒子の修飾状態は変動しうるので、これらを適切に調節すればよい。
【0107】
前記タンパク質修飾蛍光体集積粒子の作製工程では、リンカーと生体物質結合性タンパク質との反応、およびリンカーと蛍光体集積粒子との反応を、順次(または可能であれば同時に)行えばよい。例えば、まず蛍光体集積粒子とリンカーを結合させ、次に、一端が蛍光体集積粒子に結合しているそのリンカーと生体物質結合性タンパク質とを結合させればよい。
【0108】
<蛍光プレミックス粒子の作製方法>
後述する、免疫染色法の第5および第6実施形態では、それぞれ生体物質結合性タンパク質として1次抗体または2次抗体が連結された蛍光プレミックス粒子を、タンパク質修飾蛍光体集積粒子として用いる。そのような蛍光プレミックス粒子は、第1反応性物質で修飾された蛍光体集積粒子と、第2反応性物質で修飾された抗体とを、第1反応性物質と第2反応性物質の相互作用により連結させることにより作製することができる。典型的には、蛍光プレミックス粒子は、下記第1〜第3工程により作製することができる。
【0109】
・第1工程:第1反応性物質で修飾された蛍光体集積粒子の作製工程
前記第1工程は、第1反応性物質で修飾された蛍光体集積粒子を調製するための工程である。この工程は、≪タンパク質修飾蛍光体集積粒子の作製方法≫において説明した、生体物質結合性タンパク質で修飾された蛍光体集積粒子を作製するための工程と同様の実施形態とすることができる。
【0110】
第1工程の反応後、従来と同様の遠心分離処理、カラムを用いた精製処理、洗浄処理等を必要により行ってから、第1反応性物質(好ましくはストレプトアビジン)で修飾された蛍光体集積粒子を回収し、第2工程で用いる。さらに好ましい実施形態として、第1工程の反応後に、直ちに未反応物や不純物を除去するために、タンパク質結合性物質を担持したフィルターに接触させる精製処理を行ってもよい。
【0111】
・第2工程:第2反応性物質で修飾された抗体の調製工程
前記第2工程は、第2反応性物質で修飾された抗体を調製するための工程である。典型的には、両末端に反応性官能基を有するリンカーを用いて、リンカーのそれぞれの反応性官能基を、抗体が有する反応性部位および第2反応性物質が有する反応性部位と反応させて共有結合を形成することにより、抗体と第2反応性物質とをリンカーを介して連結する。例えば、第2反応性物質としてビオチンを用いる場合、この工程は、従来のアビジン−ビオチン複合体を利用した免疫染色法(ABC法)において用いられる、ビオチンで修飾された抗体を調製するための工程と同様の実施形態とすることができる。
【0112】
第2工程のリンカーとしては、第1工程と同様に、≪タンパク質修飾蛍光体集積粒子の作製方法≫において説明したリンカーと同様のリンカーを用いることができる。また、リンカーと第2反応性物質(好ましくはビオチン)との反応様式、およびリンカーと抗体との反応様式は、リンカーとタンパク質との反応であるという共通性により、いずれも前述したリンカーと生体物質結合性タンパク質との反応様式と同様でもよく、必要に応じて改変してもよい。
【0113】
また、一端にビオチンが予め結合され、他端に抗体が有する反応性部位に対する反応性官能基(例えば、チオール基に対するマレイミド基)を有するリンカーは、必要な反応試薬等も含めて、いわゆるビオチンラベリングキットのような製品として市販されており、慣用されている。そのようなキットを用いる場合、第2工程は、抗体にビオチン化されたリンカーを結合させるための反応を行うだけでよい。
【0114】
第2工程では、リンカーと第2反応性物質との反応(前述したキットのような製品を用いる場合は不要である)、およびリンカーと抗体との反応を、順次(または可能であれば同時に)行えばよい。
【0115】
第2工程の反応後、従来と同様の遠心分離処理、カラムを用いた精製処理、洗浄処理等を必要により行ってから、第2反応性物質で修飾された抗体を回収し、第3工程で用いる。さらに好ましい実施形態として、第2工程の反応後に、直ちに未反応物や不純物を除去するために、タンパク質結合性物質を担持したフィルターに接触させる精製処理を行ってもよい。
【0116】
・第3工程:第1反応性物質修飾蛍光体集積粒子と第2反応性物質修飾抗体との反応工程
前記第3工程は、第1工程において調製された第1反応性物質修飾蛍光体集積粒子と、第2工程において調製された第2反応性物質修飾抗体とを反応させて、最終的に蛍光プレミックス粒子を作製するための工程である。
【0117】
このような第3工程は、適切な溶媒中で(例えばPBS等の緩衝液中で)、第1反応性物質修飾蛍光体集積粒子と第2反応性物質修飾抗体とを混合し、所定の時間反応させることで行うことができる。
【0118】
≪タンパク質修飾蛍光体集積粒子と、その作製工程に由来する夾雑物とを含有する溶液≫
タンパク質修飾蛍光体集積粒子と、その作製工程に由来する夾雑物とを含有する溶液は、典型的には、タンパク質修飾蛍光体集積粒子を作製するために、蛍光体集積粒子の表面を生体物質結合性タンパク質で修飾する反応が行われた後の溶液(反応後溶液)である。タンパク質修飾蛍光体集積粒子は前述のように、蛍光体集積粒子の合成やその表面修飾など、長いプロセスを経て作製され、反応後溶液には、反応により生成したタンパク質修飾蛍光体集積粒子とともに、未反応の原料、原料や試薬に含まれる不純物などの夾雑物が含まれる。
【0119】
≪タンパク質修飾蛍光体集積粒子精製用フィルター≫
本発明の一実施形態に係るタンパク質修飾蛍光体集積粒子精製用フィルターは、タンパク質修飾蛍光体集積粒子が通過可能なサイズの細孔を有するフィルターと、該フィルターに担持されたタンパク質結合性物質とを備える。
該フィルターは、前記製造方法に好適に用いられる。
【0120】
タンパク質結合性物質を担持させる前のフィルターは特に限定されず、架橋された共重合体からなる多孔性ポリマーなど、様々な材質のフィルターを用いることができる。例えば、デキストランまたはその誘導体(アリルデキストラン等)とアクリルアミドまたはその誘導体(N,N−メチレンビスアクリルアミド等)との架橋共重合体からなる多孔性ポリマーのフィルターが好ましい。
【0121】
このようなフィルターの市販品としては、(例:商品名「Sephacryl S-1000 SF」、GEヘルスケア・ジャパン株式会社製)等が挙げられる。
【0122】
前記フィルターの細孔のサイズとしては特に制限されないが、平均粒子径が30〜300nmである蛍光体集積粒子からなるタンパク質修飾蛍光体粒子が通過可能なサイズであることが好ましい。
【0123】
架橋共重合体のモノマー(種類および配合比)や反応条件などに応じて、フィルターの細孔のサイズを調節することが可能である。
【0124】
なお、抗体の精製に広く用いられるフィルター、例えばプロテインA担持樹脂「TOYOPEARL AF-rProtein A HC-650F」は、平均細孔径が約5nmであり、タンパク質修飾蛍光体集積粒子が通過可能なフィルターではない。
【0125】
タンパク質結合性物質を担持させる前のフィルターにタンパク質結合性物質を担持させる手法は特に限定されないが、一般的には、フィルターの架橋共重合体とタンパク質結合性物質のそれぞれが有する官能基とを反応させて共有結合させればよい。
【0126】
例えば、架橋共重合体としてデキストラン系共重合体を選択する場合、その共重合体が有する水酸基にブロモ酢酸を反応させる処理等により、カルボキシメチル基を導入することができる。一方、タンパク質結合性物質としてプロテインA、プロテインGまたはプロテインLを選択する場合、これらタンパク質が有するアミノ基を利用することができる。前記カルボキシメチル基を水溶性カルボジイミド(WSC)等で活性エステル化し、前記アミノ基と反応させることにより、これら反応性基の間で共有結合が形成され、フィルターにタンパク質結合性物質を担持させることができる。
【0127】
タンパク質結合性物質担持フィルターは、例えば、従来の精製処理に用いられていたゲル濾過用のものと同様のカラムに充填して、タンパク質修飾蛍光体集積粒子の精製のために用いることができる。
【0128】
<タンパク質結合性物質>
前記タンパク質結合性物質は、タンパク質修飾蛍光体集積粒子が有する生体物質結合性タンパク質(蛍光体集積粒子に連結されている生体物質結合性タンパク質)に対する結合性能を有してタンパク質修飾蛍光体集積粒子を捕捉することができる一方、その結合を弱めることで、タンパク質修飾蛍光体集積粒子(および生体物質結合性タンパク質)を脱離させることができる(つまり可逆的な結合性能を有する)。このようなタンパク質結合性物質は、生体物質結合性タンパク質に応じて、適切な物質を選択すればよい。
【0129】
例えば、生体物質結合性タンパク質として抗体を有するタンパク質修飾蛍光体集積粒子を精製する場合、抗体に対して強い可逆性の結合性能を有することが知られている、プロテインA、プロテインGまたはプロテインLをタンパク質結合性物質として用いることが好ましい。
【0130】
タンパク質結合性物質として、プロテインA、プロテインGまたはプロテインLを用いる場合、それらの抗体に対する結合性(アフィニティー)は、抗体の部位、動物種、サブクラスなどによって異なるので、タンパク質修飾蛍光体集積粒子に連結させた抗体に対応した適切なものを選択する必要がある。例えば、プロテインAは、例えばヒトIgG1、IgG2、IgG4には強く結合するがヒトIgG3とはほとんど結合せず、マウスIgG2a、IgG2b、IgG3には強く結合するがマウスIgG1との結合は生体条件に近いバッファー(Tris−HClやリン酸ナトリウムバッファー)中では弱くしか結合しない性質がある。また、例えば、プロテインAおよびプロテインGは主にFc領域を認識して結合することから、Fc領域を有する完全長の抗体または抗体断片が連結されたタンパク質修飾蛍光体集積粒子を精製するためのタンパク質結合性物質として好ましい(プロテインGは、Fab領域とも弱く結合するため、Fab領域を含む抗体断片が連結されたタンパク質修飾蛍光体集積粒子の精製のために用いることができる場合もある)。一方、プロテインLは軽鎖(κ軽鎖)を認識して結合することから、Fc領域を有さない、scFv、Fabなどの抗体断片が連結されたタンパク質修飾蛍光体集積粒子を精製するためのタンパク質結合性物質として好ましい。
【0131】
−蛍光染色液−
本発明の一実施形態に係る蛍光染色液は、前記タンパク質修飾蛍光体集積粒子の精製物を含み、通常、該精製物の分散液である。
【0132】
該蛍光染色液は、前記タンパク質修飾蛍光体集積粒子の精製物が液体である場合は、該液体自体であってもよく、前記タンパク質修飾蛍光体集積粒子の精製物を適切な分散媒に分散させた液体であってもよい。該分散媒としては、例えば、1%BSAを含有するPBS(リン酸緩衝生理食塩水)が挙げられる。
【0133】
蛍光染色液を、2種類以上の目的生体物質を蛍光標識の対象とする実施形態において使用する場合は、各目的生体物質に対応する2種類以上のタンパク質修飾蛍光体集積粒子を含有していてもよい。その場合、2種類以上のタンパク質修飾蛍光体集積粒子は、各目的生体物質を標識するタンパク質修飾蛍光体集積粒子の蛍光(輝点)の識別性に悪影響を及ぼさないよう、蛍光波長のピークは互いに十分に離れていることが好ましく、例えば100nm以上離れていることが好ましい。また、このような複数の目的生体物質を対象として用いる蛍光染色液は、2種類以上のタンパク質修飾蛍光体集積粒子が同じパック(分散液)に含まれている一液型であってもよいし、各タンパク質修飾蛍光体集積粒子が別々のパックに含まれている多液型であってもよい。染色方法の実施形態に応じて、蛍光染色液は、タンパク質修飾蛍光体集積粒子の1液型または多液型のパックに加えて、それ以外の試薬(例えば細胞形態観察用の染色液)のパックを含んでもよい。
【0134】
≪目的生体物質≫
前記蛍光染色の対象である、目的生体物質は、検体に含まれる少なくとも1種の生体物質であることが好ましく、タンパク質であることが特に好ましく、さらに主に病理診断において、タンパク質の定量ないし検出のために行われる免疫染色の対象であるタンパク質(抗原)であることが最も好ましい。典型的には、例えば、がんの病理診断に関係するタンパク質(いわゆるバイオマーカー)が好ましい。具体的には、PD−L1(Programmed cell death1 ligand 1)、CTLA4(細胞傷害性Tリンパ球抗原−4)、CD8、CD30、CD48、CD59、あるいは、EGFR(HER1)(Epidermal Growth Factor Receptor:上皮増殖因子受容体)、HER2(Human Epidermal Growth Factor Receptor:ヒト上皮増殖因子受容体)、HER3、HER4、VEGFR(Vasular Endothelial Growth Factor Receptor:血管内皮細胞増殖因子受容体)、IGFR(Insulin-like Growth Factor Receptor:インスリン様増殖因子受容体)、HGFR(Hepatocyte Growth Factor Receptor:肝細胞増殖因子受容体)といった増殖因子の受容体(レセプター)や、T細胞表面上にある重要な抑制性の免疫チェックポイント分子であって前記PD−L1の受容体であるPD−1(Programmed cell death 1)などの免疫系の受容体であるタンパク質が例示できる。
【0135】
−蛍光染色法−
前記蛍光染色液は、様々な蛍光染色法に利用することができるが、典型的には、検体である組織切片から作製した組織スライドにおいて、検体に含まれる目的タンパク質を免疫染色により蛍光標識した、染色スライドを作製するために利用される。
【0136】
蛍光体集積粒子を用いた蛍光染色法および作製された染色スライドを用いた病理診断等の分析法の基本的な実施形態は公知である。蛍光染色法は、一般的には、標本前処理工程(脱パラフィン処理、抗原賦活化処理、細胞固定処理、洗浄処理等)、染色工程(免疫染色処理、形態観察用染色処理、蛍光体集積粒子工程処理、洗浄処理、ブロッキング処理等)、標本後処理工程(封入処理、透徹処理、脱水処理等)などの工程によって実施することができる。また、完成した染色スライドを用いた分析法は、観察・撮影工程、撮影された画像を用いた画像処理・分析工程などによって実施することができる。このような蛍光染色法および分析法は、例えば、国際公開第2013/035688号、特開2015−117980号公報、国際公開第2014/136885号、国際公開第2016/129444号、国際公開第2015/163209号等の特許文献を参照したり、一般的ないし公知の技術的事項に基づくことで、適切に実施することができる。
【0137】
前記蛍光染色液を用いて行われる蛍光染色法は、目的生体物質を蛍光標識して所定の目的を達成できれば特に限定されないが、代表的には以下の第1〜第6実施形態が挙げられる。
【0138】
蛍光染色法の第1実施形態は、蛍光体集積粒子と1次抗体とを連結した蛍光標識1次抗体を用意し、その蛍光標識1次抗体で目的生体物質(目的タンパク質)を直接的に蛍光標識し染色する方法(1次抗体法)である。この実施形態においては、1次抗体が生体物質結合性タンパク質、蛍光標識1次抗体がタンパク質修飾蛍光体集積粒子に相当する。
【0139】
蛍光染色法の第2実施形態は、1次抗体、および、蛍光体集積粒子と2次抗体とを連結した蛍光標識2次抗体を用意し、目的生体物質(目的タンパク質)に1次抗体を反応させた後、その1次抗体に蛍光標識2次抗体を反応させることで、目的タンパク質を間接的に蛍光標識し、染色する方法(2次抗体法)である。この実施形態においては、2次抗体が生体物質結合性タンパク質、蛍光標識2次抗体がタンパク質修飾蛍光体集積粒子に相当する。
【0140】
蛍光染色法の第3実施形態は、1次抗体と第2反応性物質(例えばビオチン、ハプテン)とを連結した第2反応性物質修飾1次抗体、および、蛍光体集積粒子と第1反応性物質(例えばアビジン類、抗ハプテン抗体)とを連結した第1反応性物質修飾蛍光体集積粒子を用意し、目的生体物質(目的タンパク質)に第2反応性物質修飾1次抗体を反応させた後、第2反応性物質に対する第1反応性物質の特異的な結合を利用して、第1反応性物質修飾蛍光体集積粒子を反応させることで、目的タンパク質を間接的に蛍光標識し、染色する方法(アビジン−ビオチン併用1次抗体法およびハプテン−抗ハプテン抗体併用1次抗体法)である。この実施形態においては、第1反応性物質が生体物質結合性タンパク質、第1反応性物質修飾蛍光体集積粒子がタンパク質修飾蛍光体集積粒子に相当する。
【0141】
蛍光染色法の第4実施形態は、1次抗体、2次抗体と第2反応性物質とを連結した第2反応性物質修飾2次抗体、および、蛍光体集積粒子と第1反応性物質とを連結した第1反応性物質修飾蛍光体集積粒子を用意し、目的生体物質(目的タンパク質)に1次抗体を反応させ、次いで第2反応性物質修飾2次抗体を反応させた後、さらに、第2反応性物質に対する第1反応性物質の特異的な結合を利用して、第1反応性物質修飾蛍光体集積粒子を反応させることで、目的タンパク質を間接的に蛍光標識し、染色する方法(アビジン−ビオチン併用2次抗体法およびハプテン−抗ハプテン抗体併用2次抗体法)である。この実施形態においても、第1反応性物質が生体物質結合性タンパク質、第1反応性物質修飾蛍光体集積粒子がタンパク質修飾蛍光体集積粒子に相当する。
【0142】
蛍光染色法の第5実施形態は、前述した第3実施形態を改変したものであり、1次抗体を有する「蛍光プレミックス粒子」を用いる方法(1次抗体型蛍光プレミックス粒子法)である。まず、1次抗体と第2反応性物質とを連結した第2反応性物質修飾1次抗体、および、蛍光体集積粒子と第1反応性物質とを連結した第1反応性物質修飾蛍光体集積粒子を用意し、これらを予め反応させ、第1反応性物質と第2反応性物質との反応を介して、1次抗体が連結された蛍光体集積粒子を調製する(プレミックスする)。そして、目的生体物質(目的タンパク質)に、プレミックスにより1次抗体が連結された蛍光体集積粒子である蛍光プレミックス粒子を反応させることで、蛍光標識し染色する。この実施形態においては、1次抗体が生体物質結合性タンパク質、前記蛍光プレミックス粒子がタンパク質修飾蛍光体集積粒子に相当する。
【0143】
蛍光染色法の第6実施形態は、前述した第4実施形態を改変したものであり、2次抗体を有する「蛍光プレミックス粒子」を用いる方法(2次抗体型蛍光プレミックス粒子法)である。まず、2次抗体と第2反応性物質とを連結した第2反応性物質修飾2次抗体、および、蛍光体集積粒子と第1反応性物質とを連結した第1反応性物質修飾蛍光体集積粒子を用意し、これらを予め反応させ、第1反応性物質と第2反応性物質との反応を介して、2次抗体が連結された蛍光体集積粒子を調製する(プレミックスする)。そして、目的生体物質(目的タンパク質)に1次抗体を反応させた後、その1次抗体に、プレミックスにより2次抗体が連結された蛍光体集積粒子である蛍光プレミックス粒子を反応させることで、蛍光標識し染色する。この実施形態においては、2次抗体が生体物質結合性タンパク質、前記蛍光プレミックス粒子がタンパク質修飾蛍光体集積粒子に相当する。
【0144】
さらに、各実施形態について、検体に含まれる2種以上の目的生体物質のそれぞれを、異なる種類のタンパク質修飾蛍光体集積粒子で蛍光標識するよう改変してもよい。この場合、目的生体物質を1種ずつ蛍光標識していってもよいし、全ての目的生体物質を同時に蛍光標識してもよい。
【実施例】
【0145】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0146】
作製例、実施例および比較例の概要を下記表に示す。
【0147】
【表1】
【0148】
【表2】
【0149】
[比較例1]抗HER2抗体直結TAMRA集積シリカ粒子の製造
下記製造工程1−1〜1−4により、抗HER2抗体直結TAMRA集積シリカ粒子を製造した。
【0150】
[製造工程1−1]TAMRA集積シリカ粒子の作製
下記工程(1−1a)〜(1−1d)により、蛍光体として有機蛍光色素であるTAMRA(登録商標)(5−カルボキシテトラメチルローダミン)を集積化(内包)したTAMRA集積シリカ粒子を作製した。
【0151】
工程(1−1a):TAMRAのN−ヒドロキシスクシンイミドエステル誘導体(TAMRA−NHSエステル)2mgと、テ卜ラエトキシシラン400μL(1.796mmol)とを混合した。
【0152】
工程(1−1b):前記反応液とは別に、エタノール40mLと14%アンモニア水10mLとを混合して混合液を調製した。
【0153】
工程(1−1c):工程(1−1b)で調製した混合液を室温下で撹拌しているところに、工程(1−1a)で調製した混合液を添加した。添加開始から室温で12時間撹拌を行った。
【0154】
工程(1−1d):反応混合物を10000Gで60分間遠心分離を行い、上澄みを除去した。エタノールを加え、沈降物を分散させた後、再度前記遠心分離を行った。同様の手順でエタノールと純水による洗浄を一回ずつ行った。
【0155】
得られたTAMRA集積シリカ粒子を走査型顕微鏡(SEM;日立社製S−800型)により観察を行ったところ、TAMRA集積シリカ粒子の平均粒子径は100nm、平均粒子径の変動係数は15%であった。
【0156】
[製造工程1−2]TAMRA集積シリカ粒子に対するマレイミド基の導入
下記工程(1−2a)〜(1−2g)により、製造工程1−1で得られたTAMRA集積シリカ粒子に対してマレイミド基を導入した。
【0157】
工程(1−2a):製造工程1−1で得られたTAMRA集積シリカ粒子1mgを純水5mLに分散させた。次に、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製、LS−3150またはKBE−903)の水分散液100μLを前記粒子の分散液に添加した後、室温で12時間撹拌して反応させ、TAMRA集積シリカ粒子の表面にアミノ基を導入した。
【0158】
工程(1−2b):反応液を10000Gで60分間遠心分離を行い、上澄みを除去した。
【0159】
工程(1−2c):エタノールを加えて沈降物を分散させた後、前記遠心分離を再度行った。同様の手順でエタノールと純水による洗浄を1回ずつ行った。得られたアミノ基修飾TAMRA集積シリカ粒子のFT−IR測定を行ったところ、アミノ基に由来するスペク卜ルが観測でき、アミノ基で表面を修飾できたことを確認した。
【0160】
工程(1−2d):工程(1−2c)で得られたアミノ基修飾TAMRA内包シリカ粒子を、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を2mM含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いて3nMに調整した。
【0161】
工程(1−2e):工程(1−2d)の調整後の液体に対して終濃度10mMとなるようにSM(PEG)12(サーモサイエンティフィック社製、succinimidyl-[(N-maleimidopropionamid)-dodecaethyleneglycol]ester)を混合し、室温で1時間反応させた。
【0162】
工程(1−2f):反応液を10000Gで60分間遠心分離を行い、上澄みを除去した。
【0163】
工程(1−2g):EDTAを2mM含有するPBSを加えて、工程(1−2f)で得られた沈降物を分散させた後、前記遠心分離を再度行った。同様の手順による洗浄を3回行った。最後に500μLのPBSに沈降物を再度分散させて、マレイミド基で修飾されたTAMRA集積シリカ粒子の分散液500μLを得た。
【0164】
[製造工程1−3]抗HER2抗体におけるメルカプト基の生成
下記工程(1−3a)〜(1−3c)により、抗HER2抗体にメルカプト基(−SH)を生成させたメルカプト基導入抗HER2抗体を調製し、該抗体中のメルカプト基の量を定量した。
【0165】
工程(1−3a):抗HER2抗体(ベンタナ社製、抗HER2ウサギモノクローナル抗体「4B5」、分子量148000)100μgをPBS100μLに溶解させた。この抗体溶液に1Mの2−メルカプトエタノール溶液0.002mL(0.2×10-5モル)添加して、pH8.5、室温下で30分間反応させて、抗体のジスルフィド結合(−S−S−)を還元し、メルカプト基を生成させた。
【0166】
工程(1−3b):工程(1−3a)後の反応液をゲル濾過カラムに供して、過剰の2−メルカプトエタノールを除去し、メルカプト基を生成させた抗HER2抗体の溶液を得た。
【0167】
工程(1−3c):メルカプト基を生成させた抗体1μL(1μg分)を分取して、メルカプト基定量キットである、レドックスアッセイ チオール定量キット(商品コード:TH01D、メーカー:メタロジェニクス)により、メルカプト基の量(モル数)を測定した。さらに同量の抗体1μLを別に分取して、BCA法を行うことで、分取した抗HER2抗体の質量を定量した。この質量と抗HER2抗体の分子量とから、分取した抗体のモル数を算出した。さらに、「メルカプト基のモル数/抗体のモル数」の式により、1抗体あたりのメルカプト基の数を算出したところ、1.5であった。
【0168】
[製造工程1−4]抗HER2抗体直結TAMRA集積シリカ粒子の作製
下記工程(1−4a)〜(1−4c)により、マレイミド基導入TAMRA集積シリカ粒子とメルカプト基導入抗HER2抗体とを結合させることで、抗HER2抗体直結TAMRA集積シリカ粒子を製造した。
【0169】
工程(1−4a):工程(1−2g)で得られたマレイミド基修飾TAMRA集積シリカ粒子0.01μgと、工程(1−3b)で得られたメルカプト基導入抗HER2抗体10μgとをPBS1mL中で混合し、室温で1時間反応を行った。
【0170】
工程(1−4b):10mMの2−メルカプトエタノール4μLを工程(1−4a)後の反応液に添加して結合反応を停止させた。
【0171】
工程(1−4c):工程(1−4b)で得られた液体を10000Gで60分間、遠心分離処理を行い、上澄みを除去した。その後、EDTAを2mM含有するPBSを加えて沈降物を分散させた後、前記遠心分離処理を再度行った。同様の手順による洗浄を3回行った。最後に沈降物を500μLのPBSに分散させて、抗HER2抗体直結(共有結合により直結した)TAMRA集積シリカ粒子の分散液を得た。
【0172】
国際公開第2016/129444号の段落[0135]〜[0136]に記載の方法に従って測定したところ、前記抗HER2抗体直結TAMRA集積シリカ粒子は、1粒子の表面に平均3000個の抗体、粒子表面1mm2あたりに換算すれば9.555×1016個の抗体が結合していると推定される。
【0173】
[実施例1]プロテインA結合樹脂カラムを用いた、抗HER2抗体直結TAMRA集積シリカ粒子の精製物の製造
比較例1と同様製造工程1−1〜1−4を行った後、下記製造工程1−5により作製したプロテインA結合樹脂カラムを用いて、下記製造工程1−6による精製処理を行った。
【0174】
[製造工程1−5]プロテインA結合樹脂カラムの作製
ゲル濾過担体「Sephacryl S-1000 SF」(GEヘルスケア・ジャパン株式会社製、アリルデキストランとN,N−メチレンビスアクリルアミドが共有架橋結合した樹脂マトリックス)のデキストラン水酸基とブロモ酢酸とを16時間反応させることにより、担体表面をカルボキシメチル化した(Monchaux, E., and Vermette, P. (2008). Cell adhesion resistance mechanisms using arrays of dextran-derivative layers. J Biomed Mater Res A 85, 1052-1063参照)。なお、「Sephacryl S-1000 SF」は、粒径230nmの物体(リポソーム)が侵入し、通過できる程度の空隙を有する多孔質体と考えられる(http://lifesciencedb.jp/dbsearch/Literature/get_pne_cgpdf.php?year=1990&number=3511&file=2Qgovzb50x7RW4IcCUhKPw==参照)。
【0175】
続いて、水溶性カルボジイミド(WSC)として1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC:(株)同仁化学研究所製)を400nMの濃度で、および、N−ヒドロキシコハク酸イミド(NHS:サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を100mMの濃度で含有する混合液を調製し、前記カルボキシメチル化した担体と該混合液とを反応させることにより、カルボキシル基を活性エステル化した。そこに、さらにプロテインA(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、「21184」)の溶液を反応させ、脱水反応によりプロテインAが有するアミノ基を前記活性エステル化したカルボキシル基に結合(固定化)させた。このようにして得られたプロテインA結合樹脂をカラム(1mL注射筒)に充填し、プロテインA結合樹脂カラムを作製した。
【0176】
[製造工程1−6]抗HER2抗体直結TAMRA集積シリカ粒子の精製処理
製造工程1−5により作製されたプロテインA結合樹脂カラムに、5mLの緩衝液A(0.1Mグリシン+1.2M酒石酸ナトリウム、pH9.0)を3回流すことによって平衡化した。製造工程1−4により得られた抗HER2抗体直結TAMRA集積シリカ粒子の分散液1.5mLを、1.5mLの緩衝液Aで希釈して、平衡化したプロテインA結合樹脂カラムに添加し、抗HER2抗体直結TAMRA集積シリカ粒子における抗HER2抗体(IgG)をプロテインA結合樹脂カラムにおけるプロテインAに結合させた。10mLの緩衝液Aでカラムを洗浄した後、溶離液として3mLの0.1Mグリシン−HCl(pH2.8)を流し、抗HER2抗体直結TAMRA集積シリカ粒子を脱着させ、精製物を回収した。
【0177】
この際、まず樹脂カラム(プロテインA)に吸着しない夾雑物が通過し、抗HER2抗体直結TAMRA集積シリカ粒子や未反応抗体は前記溶離液を通液した後に回収される。また、溶離液を通液すると、樹脂の分子ふるい機能によって、先に小さな未反応抗体が解離して溶出し、その後に大きな抗HER2抗体直結TAMRA集積シリカ粒子が溶出する。抗HER2抗体直結TAMRA集積シリカ粒子の精製物は、溶出後期の画分を取得することによって回収した。
【0178】
[実施例1’]プロテインG結合樹脂カラムを用いた、抗HER2抗体直結TAMRA集積シリカ粒子の精製物の製造
実施例1において、プロテインA結合樹脂カラムの代わりに、下記製造工程1−7により作製したプロテインG結合樹脂カラムを用いた以外は、実施例1と同様にして、抗HER2抗体直結TAMRA集積シリカ粒子の精製物を製造した。
【0179】
[製造工程1−7]プロテインG結合樹脂カラムの作製
プロテインAの代わりにプロテインG(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、「21193」)を用いたこと以外は製造工程1−5と同様にして、プロテインG結合樹脂カラムを作製した。
【0180】
[比較例2]抗HER2抗体連結テキサスレッド集積シリカ粒子(蛍光プレミックス粒子)の製造
下記製造工程2−1〜2−4により、蛍光プレミックス粒子を製造した。
【0181】
[製造工程2−1]テキサスレッド集積シリカ粒子の作製
蛍光体として赤色の有機蛍光色素である「テキサスレッド−X」(Sulforhodamine 101−X、シグマアルドリッチ社製)3.4mgと、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製、KBM903)3μLとを、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)中で混合し、オルガノアルコキシシラン化合物を得た。
【0182】
得られたオルガノアルコキシシラン化合物0.6mLを、99%エタノール48mL、テトラエトキシシラン(TEOS)0.6mL、超純水2mL、および28質量%のアンモニア水2.0mLと5℃で3時間混合した。
【0183】
前記工程で作製した混合液を10000Gで20分間遠心分離し、上澄みを除去した。この沈殿に対して、エタノールを加えて、沈殿物を分散させ、再度遠心分離をするリンスを行った。さらに同様のリンスを2回繰り返し、テキサスレッド集積シリカ粒子(励起波長590nm、発光波長620nm)を得た。得られた粒子の1000個についてSEM観察を行って粒子径を測定し、平均粒子径を算出したところ、160nmであった。
【0184】
[製造工程2−2]ストレプトアビジン修飾テキサスレッド集積シリカ粒子の作製
製造工程2−1で得られたテキサスレッド集積シリカ粒子を、2mMのEDTA(エチレンジアミン四酢酸)を含有するPBSを用いて3nMの濃度に調整し、得られた液体に、リンカーとしてSM(PEG)12を最終濃度が10mMとなるように添加、混合し、5℃で1時間反応させた。
【0185】
得られた反応液を、10000Gで20分間遠心分離し、上澄みを除去した。そこに、2mMのEDTAを含有するPBSを加え、沈降物を分散させ、同一条件で再度遠心分離を行った。同様の手順による洗浄を3回行うことで、マレイミド基導入テキサスレッド集積シリカ粒子を得た。
【0186】
一方、1mg/mLに調整したストレプトアビジン(和光純薬工業社製)40μLを210μLのボレートバッファーに加えた後、そこに、64mg/mLに調整した2−イミノチオラン塩酸塩(シグマアルドリッチ社製)70μLを加え、室温で1時間反応させた。これにより、ストレプトアビジンのアミノ基に対してメルカプト基を導入した(−NH−C(=NH2+Cl-)−CH2−CH2−CH2−SH)。得られた溶液を、ゲルろ過カラム(Zaba Spin Desalting Columns:フナコシ社製)に通して脱塩して、マレイミド基導入テキサスレッド集積シリカ粒子と結合可能な、メルカプト基導入ストレプトアビジンを得た。
【0187】
2mMのEDTAを含有するPBSを用い、得られたメルカプト基導入ストレプトアビジンの全量(0.04mg)と、マレイミド基導入テキサスレッド集積シリカ粒子とを、当該シリカ粒子の濃度が0.67nMとなるように混合した液体740μLを調製し、室温で1時間反応させた。その後、10mMメルカプトエタノールを添加し、反応を停止させた。
【0188】
得られた液体を遠心フィルターで濃縮した後、精製用ゲルろ過カラムを用いて未反応物を除去して、ストレプトアビジン修飾テキサスレッド集積シリカ粒子を得た。50mMのTris溶液を用いて、該粒子の濃度を0.02nMに調整した、精製したストレプトアビジン修飾テキサスレッド集積シリカ粒子分散液(反応液1)を調製した。
【0189】
国際公開第2015/159776号に記載の方法に従って測定したところ、得られたストレプトアビジン修飾テキサスレッド集積シリカ粒子は、0.0311個/nm2の密度で、テキサスレッド集積シリカ粒子の表面にストレプトアビジンが連結していると推定される。
【0190】
[製造工程2−3]ビオチン修飾抗HER2抗体(1次抗体)の作製
目的タンパク質HER2に対する1次抗体、すなわち抗HER2抗体として、ウサギモノクローナル抗体であるAnti−Erb 2 antibody[EP1045Y](abcam社製)を用いた。この抗HER2抗体を50mMのTris溶液に溶解して1次抗体溶液を調製した。
【0191】
一方、リンカー試薬「マレイミド−PEG2−ビオチン」(サーモサイエンティフィック社製、製品番号21901)を、DMSOを用いて0.4mMとなるように調整した。得られたリンカー試薬溶液8.5μLを前記1次抗体溶液に添加、混合し、37℃で30分間反応させることにより、抗HER2抗体にPEG鎖を介してビオチンを結合させた。得られた反応溶液を脱塩カラムに通して、ビオチン修飾抗HER2抗体を精製した。
【0192】
精製したビオチン修飾1次抗体(ビオチン修飾抗HER2抗体)溶液について、波長300nmにおける吸光度を、分光光度計(日立製、「F−7000」)を用いて測定することにより、溶液中のタンパク質(ビオチン修飾1次抗体)の濃度を算出した。50mMのTris溶液を用いて、ビオチン修飾1次抗体の濃度を6μg/mLに調整することで、ビオチン修飾1次抗体溶液(反応液2)を得た。
【0193】
[製造工程2−4]抗HER2抗体連結テキサスレッド集積シリカ粒子の作製
製造工程2−2で得られた0.02nMのストレプトアビジン修飾テキサスレッド集積シリカ粒子分散液(反応液1)25μLと、製造工程2−3で得られた濃度6μg/mLのビオチン修飾1次抗体溶液(反応液2)25μLとを混合し、室温で1時間反応させることにより、抗HER2抗体連結テキサスレッド集積シリカ粒子(蛍光プレミックス粒子)の分散液を作製した。
【0194】
[実施例2]プロテインA結合樹脂カラムを用いた、抗HER2抗体連結テキサスレッド集積シリカ粒子の精製物の製造
製造工程2−1〜2−4を行った後、前記製造工程1−5と同様にして作製したプロテインA結合樹脂カラムを用いて、下記製造工程2−5による精製処理を行った。
【0195】
[製造工程2−5]抗HER2抗体連結テキサスレッド集積シリカ粒子の精製処理
プロテインA結合樹脂カラムに、5mLの緩衝液A(0.1Mグリシン+1.2M酒石酸ナトリウム、pH9.0)を3回流すことによって平衡化した。製造工程2−4で得られた抗HER2抗体連結テキサスレッド集積シリカ粒子の分散液1.5mLを、1.5mLの緩衝液Aで希釈して、平衡化したプロテインA結合樹脂カラムに添加し、抗HER2抗体連結テキサスレッド集積シリカ粒子における抗HER2抗体(IgG)をプロテインA結合樹脂カラムにおけるプロテインAに結合させた。10mLの緩衝液Aでカラムを洗浄した後、溶離液として3mLの0.1Mグリシン−HCl(pH2.8)を流し、抗HER2抗体連結テキサスレッド集積シリカ粒子を脱着させ、製造工程1−6と同様に、溶出後期の画分を取得することによって、抗HER2抗体連結テキサスレッド集積シリカ粒子の精製物を回収した。
【0196】
[実施例2’]プロテインG結合樹脂カラムを用いた、抗HER2抗体連結テキサスレッド集積シリカ粒子の精製物の製造
実施例2において、プロテインA結合樹脂カラムの代わりに、前記製造工程1−7と同様にして作製したプロテインG結合樹脂カラムを用いた以外は、実施例2と同様にして、抗HER2抗体連結テキサスレッド集積シリカ粒子の精製物を製造した。
【0197】
<回収率の比較>
実施例1および1’ならびに実施例2および2’の精製処理によるタンパク質修飾蛍光体集積粒子の回収率を測定した。回収率は、カラムに添加する前のタンパク質修飾蛍光体集積粒子分散液に含まれるタンパク質修飾蛍光体集積粒子の量と、得られた精製物に含まれるタンパク質修飾蛍光体集積粒子の量とから算出した。結果を表3に示す。回収率は、精製前後における蛍光染色液の蛍光強度の維持率と相関する。
【0198】
プロテインA結合樹脂カラム、プロテインG結合樹脂カラムのどちらを用いた場合も、タンパク質修飾蛍光体集積粒子を十分に高い回収率で回収できることが分かる。
【0199】
【表3】
【0200】
<分散安定性の評価>
比較例1および2、ならびに、実施例1および2で得られた分散液を、タンパク質修飾蛍光体集積粒子の濃度が0.002nMとなるよう、1%BSA含有PBSで希釈することで蛍光染色液を調製し、遮光下、冷蔵保存した。
【0201】
調製直後(保存前)、または、1ヶ月もしくは3ヶ月保存後の蛍光染色液それぞれを、超音波分散処理し、40μLを量り取ってAPSコートガラススライドに載せた。その後、室温で2時間程度放置して、水分を除去して乾燥させた。
【0202】
蛍光顕微鏡「BX53」および顕微鏡用デジタルカメラ「DP73」(ともにオリンパス株式会社製)を用いて、対物レンズを40倍とし、蛍光染色液の乾燥物に励起光を照射した。均一な輝度の輝点が見られるステージ高さにフォーカスを合わせ、露光時間500msで撮影した。
【0203】
各スライドの撮影画像について、極端に輝度の高い輝点(凝集塊に基づく輝点。図1、円内のような輝点。)の数を目視で数えた。結果を表4に示す。プロテインA担持カラムを用いた精製処理を行っていない比較例1および2で得られた分散液を用いた蛍光染色液は、超音波分散処理によっても残存する凝集塊が多く存在する一方、精製処理を行った実施例1および2で得られた分散液を用いた蛍光染色液は保存後であっても凝集塊はほとんど存在しないことが分かる。
【0204】
【表4】
【0205】
<染色性能の評価>
前記分散安定性の評価と同様にして、得られた蛍光染色液を用い、下記(1)、(2)および(3)に示すような手順で、標本前処理工程(脱パラフィン処理、賦活化処理)、染色工程(免疫染色処理)および標本後処理工程(洗浄処理および封入処理)を行うことにより、免疫染色法に基づく染色スライドを作製した。その後、作製された染色スライドを用いて、下記(4)に示すような手順で観察および撮像を行った。
【0206】
(1)標本前処理工程
(1−1)脱パラフィン処理
予めパスビジョンHER−2 DNAプローブキット(アボット)を用いてFISHスコアを算出したコスモバイオ社製の組織アレイスライド(CB−A712)(HER2陽性染色対照標本)を用いた。該組織アレイスライドに対し、以下の(i)〜(iii)の手順で脱パラフィン処理を行った。
【0207】
(i)キシレンを入れた容器に組織アレイスライドを30分間、常温で浸漬させた。途中3回キシレンを交換した。
【0208】
(ii)(i)で得られた組織アレイスライドを、エタノールを入れた容器に常温で30分間浸漬させた。途中3回エタノールを交換した。
【0209】
(iii)(ii)で得られた組織アレイスライドを、水を入れた容器に30分間浸漬させた。途中3回水を交換した。
【0210】
(1−2)賦活化処理
脱パラフィン処理した組織アレイスライドを、以下の(i)〜(iv)の手順で賦活化処理した。
【0211】
(i)組織アレイスライドを水に置換する洗浄を行った。
【0212】
(ii)(i)で得られた組織アレイスライドを、10mMクエン酸緩衝液(pH6.0)中に入れ、121℃で15分間オートクレーブ処理を行った。
【0213】
(iii)オートクレーブ処理後の組織アレイスライドを、PBSを入れた容器に30分間浸漬し、洗浄した。
【0214】
(iv)(iii)で得られた組織アレイスライドと、1%BSA含有PBSとを接触させて、1時間ブロッキング処理を行った。
【0215】
(2)染色工程(免疫染色処理)
賦活化処理(1−2)を行った組織アレイスライドに、前記調製した蛍光染色液を滴下し、4℃で一晩反応させた。
【0216】
(3)標本後処理工程
免疫染色処理を行ったスライドに、常温でエンテランニュー(メルク社製)を滴下した後、カバーガラスを被せ、常温で10分間風乾することで、封入処理を行った。その後、シグナルの計測まで、封入処理を終えた染色スライドを遮光して保存した。
【0217】
(4)観察・撮像
封入処理を終えた染色スライドに対して所定の励起光(蛍光色素として用いたTAMRAまたはテキサスレッドの励起波長に対応した波長を有する励起光)を照射して、蛍光を発光させた。その状態の染色スライドを、蛍光顕微鏡(オリンパス社製、「BX−53」)、顕微鏡用デジタルカメラ(オリンパス社製、「DP73」)を用いて観察および撮像した。前記励起光は、光学フィルターに通すことで、TAMRAに対しては545〜565nm、テキサスレッドに対しては575〜600nmに設定した。また、観察する蛍光についても、光学フィルターを通すことで、TAMRAに対しては570〜590nm、テキサスレッドに対しては612〜692nmに設定した。
【0218】
顕微鏡観察、画像取得時の励起波長の条件は、TAMRAに対する550nmおよびテキサスレッドに対する580nmの励起において、視野中心部付近の照射エネルギーがそれぞれ900W/cm2となるようにした。画像取得時の露光時間は、画像の輝度が飽和しないように200ミリ秒に設定して撮像した。輝点は、400倍で撮像した画像をもとに、ImageJ FindMaxims法により計測した。
【0219】
作製した染色スライドの撮影画像における、クラスター状の輝点(凝集塊)の有無、および、1画素あたりの平均輝度を表5に示す。また、比較例2で得られた分散液から調製した蛍光染色液を用いて染色されたスライドを撮影して取得した蛍光染色像を図2に示す。
【0220】
【表5】
図1
図2
【国際調査報告】