特表-18185943IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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再表2018-185943蛍光プレミックス粒子、それを含有する蛍光染色液、およびそれらを用いた蛍光染色法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2018年10月11日
【発行日】2020年2月13日
(54)【発明の名称】蛍光プレミックス粒子、それを含有する蛍光染色液、およびそれらを用いた蛍光染色法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20200121BHJP
   C12N 15/115 20100101ALN20200121BHJP
【FI】
   G01N33/543 575
   C12N15/115 ZZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】41
【出願番号】特願2019-511047(P2019-511047)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2017年4月7日
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】磯田 武寿
(72)【発明者】
【氏名】富岡 大輔
(57)【要約】
本発明は、蛍光プレミックス粒子、それを含有する蛍光染色液、およびそれらを用いた蛍光染色法に関し、該蛍光プレミックス粒子は、第1反応性物質で修飾された蛍光体集積粒子と、第2反応性物質で修飾された、抗体およびアプタマーからなる群より選ばれる少なくとも1種の目的タンパク質結合性物質とが、第1反応性物質と第2反応性物質との相互作用により連結している粒子である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1反応性物質で修飾された蛍光体集積粒子と、第2反応性物質で修飾された、抗体およびアプタマーからなる群より選ばれる少なくとも1種の目的タンパク質結合性物質とが、第1反応性物質と第2反応性物質との相互作用により連結している、蛍光プレミックス粒子。
【請求項2】
前記第1反応性物質がストレプトアビジンであり、前記第2反応性物質がビオチンである、請求項1に記載に記載の蛍光プレミックス粒子。
【請求項3】
前記目的タンパク質結合性物質が、目的タンパク質に特異的に結合する1次抗体または1次アプタマーである、請求項1または2に記載の蛍光プレミックス粒子。
【請求項4】
前記目的タンパク質結合性物質が、目的タンパク質に特異的に結合する1次抗体に特異的に結合する2次抗体または2次アプタマーである、請求項1または2に記載の蛍光プレミックス粒子。
【請求項5】
前記蛍光体集積粒子が、樹脂製の母体と蛍光体とを含む粒子である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の蛍光プレミックス粒子。
【請求項6】
前記蛍光体集積粒子の表面の単位面積あたりに連結している前記目的タンパク質結合性物質の数が、0.003〜0.012個/nm2である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の蛍光プレミックス粒子。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の蛍光プレミックス粒子を含有する蛍光染色液。
【請求項8】
発光波長のピークが互いに100nm以上離れている2種類以上の蛍光プレミックス粒子を含有する、一液型または多液型である、請求項7に記載の蛍光染色液。
【請求項9】
請求項3に記載の蛍光プレミックス粒子を含有する蛍光染色液を使用する染色法であって、
目的タンパク質に前記蛍光染色液中の蛍光プレミックス粒子を結合させる処理を含む、蛍光染色法。
【請求項10】
請求項4に記載の蛍光プレミックス粒子を含有する蛍光染色液を使用する染色法であって、
目的タンパク質に前記1次抗体を結合させる処理、および
目的タンパク質に結合させた1次抗体に前記蛍光染色液中の蛍光プレミックス粒子を結合させる処理を含む、蛍光染色法。
【請求項11】
請求項8に記載の蛍光染色液を使用する染色法であって、
2種以上の目的タンパク質のそれぞれに、前記蛍光染色液中の対応する蛍光プレミックス粒子のそれぞれを、直接的または間接的に結合させる処理を含む、蛍光染色法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光プレミックス粒子、それを含有する蛍光染色液、およびそれらを用いた蛍光染色法に関する。
【背景技術】
【0002】
病理診断は、患者から採取した組織や細胞を用いて標本スライドを作製し、所定の方法で染色することによって取得される染色画像に基づいて、細胞または組織の形態を観察するとともに、特定の生体物質の発現状態を評価することにより、その患者が特定の疾患に罹患しているか否か、あるいは特定の治療薬が奏功するか否かといった様々な事象を判断する方法である。
【0003】
病理診断では、腫瘍組織を採取して作製された検体を用いて、がん遺伝子の一種であるHER2遺伝子(HER2/neu、c-erbB-2)および/またはHER2遺伝子から産生される膜タンパク質であるHER2タンパクを定量し、評価することによって、乳がん患者の予後を診断したり、分子標的治療薬「トラスツズマブ」(商品名「ハーセプチン」(登録商標)、抗HER2モノクローナル抗体)による治療効果を予測する方法が広く行われている。HER2タンパク質は、ホモ二量体もしくは活性化したEGFR(HER1)、HER3またはHER4と結合したヘテロ二量体を形成してシグナル伝達を行うと考えられており、がん細胞増殖因子の受容体として機能していると推定される(これまでのところHER2に結合する内因性リガンドは知られていない)。
【0004】
腫瘍組織を対象としたHER2の検査法としては、HER2タンパク質を染色する免疫組織化学(IHC)法とHER2遺伝子を染色する蛍光in situ ハイブリダイゼーション(FISH)法が挙げられる。検査の手順および判定基準(スコア)については、米国臨床腫瘍学会および米国病理学会により発行されているASCO/CAP HER2検査ガイドライン(2007年制定、2013年改訂)が各国において広く用いられており、日本でも、改訂されたASCO/CAPのHER2検査ガイドラインに準拠したHER2検査ガイド(HER2検査ガイド第四版、乳癌HER2検査病理部会、2014年4月)が用いられている。
【0005】
IHC法では、酵素標識された抗体を検体に接触させ、抗原抗体反応を利用して検出の目的となるタンパク質と抗体とを直接的または間接的に結合させた後に、その酵素に対応した基質を反応させることで発色させる方法が一般的に用いられており、例えば、酵素としてペルオキシダーゼを用い、基質としてジアミノベンジジンを用いるDAB染色法が広く採用されている。
【0006】
しかしながら、DAB染色法のような酵素と基質との反応に基づく染色法は、発色濃度が温度・時間などの条件により大きく左右されるため、発色濃度から実際の目的となるタンパク質の量を正確に見積もることが難しいという課題があった。
【0007】
そこで近年、遺伝子またはタンパク質を標識するために、有機蛍光色素や半導体ナノ粒子(量子ドット)などの蛍光体を複数個集積させたナノサイズの粒子、すなわち蛍光体集積粒子(phosper integrated particle;PID、「蛍光物質集積ナノ粒子」などと呼ばれることもある。)を用いる方法が提案され、実用化が進められている。蛍光体集積粒子を用いて目的とするタンパク質または遺伝子を標識し、その蛍光体に適合する励起光を照射することで、標識されたタンパク質または遺伝子を輝度の高い輝点として観察することが可能となり、タンパク質または遺伝子が発現している位置および量を正確に評価することが可能である。また、蛍光体集積粒子は従来用いられてきた染色剤よりも褪色しにくいため、比較的長時間の観察や撮像が可能となるという利点を有する。
【0008】
蛍光体集積粒子を用いて検体に含まれるタンパク質を蛍光標識する方法としては、以下の方法が知られている。例えば、特許文献1(国際公開第2014/136885号)の実施例では、粒子表面をストレプトアビジンで修飾した蛍光体集積粒子(色素樹脂粒子)を作製しておき、組織切片上の抗原(HER2タンパク)に1次抗体(抗HER2ウサギモノクローナル抗体)を結合させ、続いてビオチンで標識した2次抗体(抗ウサギIgG抗体)を該1次抗体に結合させた後、ストレプトアビジン修飾蛍光体集積粒子を該2次抗体に結合させるという、蛍光標識法(アビジン−ビオチン併用2次抗体法)が開示されている。
【0009】
ここで、ストレプトアビジン修飾蛍光体集積粒子の作製は、以下の方法で行われている。
【0010】
(i)母体としてメラミン樹脂を用いて蛍光色素を集積(内包)した樹脂粒子を形成した後、そのメラミン樹脂にシランカップリング剤である3−アミノプロピルトリメトキシシランを反応させることで粒子表面にアミノ基を導入し、さらにそのアミノ基にリンカーとしてのスクシンイミジル−[(N−マレイミドプロピオンアミド)−ドデカエチレングリコール]エステルを反応させることで、メラミン樹脂粒子表面にマレイミド基を導入する。
【0011】
(ii)ストレプトアビジンとN−スクシンイミジルS−アセチルチオ酢酸とを反応させて、ストレプトアビジンにチオール基を導入する。
【0012】
(iii)前記(i)のメラミン樹脂粒子のマレイミド基と、前記(ii)のストレプトアビジンのチオール基とを反応させて、両者を結合させる。
【0013】
また、特許文献2(国際公開第2016/129444号)では、特定の還元剤を用いた処理によって適度な数のジスルフィド結合(−S−S−)を還元してチオール基(−SH)を生成させた抗体と、そのチオール基と反応しうる結合基(例えばマレイミド基)を表面に導入した蛍光体集積ナノ粒子とを反応させることにより、粒子表面の単位面積あたり適度な数の抗体を結合させた抗体結合蛍光体集積ナノ粒子が開示されている。前記抗体は、IHC法における直接法で用いられる1次抗体であってもよいし、間接法で用いられる2次抗体等であってもよいとされる。
【0014】
例えば、特許文献2の実施例では、以下の方法で作製した抗体修飾蛍光色素内包シリカナノ粒子を用いてHER2の免疫染色を行う実施形態が開示されている。
【0015】
(i)原材料として3−アミノプロピルトリメトキシシランおよび蛍光色素である5−カルボキシテトラメチルローダミン(登録商標「TAMRA」)を用いて蛍光色素内包シリカナノ粒子を形成し、そのシリカナノ粒子にリンカーとしてのスクシンイミジル−[(N−マレイミドプロピオンアミド)−ドデカエチレングリコール]エステル(製品名「SM(PEG)12」)を反応させることで、粒子表面にマレイミド基を導入する。
【0016】
(ii)1次抗体(抗HER2ウサギモノクローナル抗体)または2次抗体(抗ウサギIgG抗体)を、還元剤として2−メルカプトエタノール等を用いて処理し、ジスルフィド結合を還元してチオール基を生成する。
【0017】
(iii)前記(i)のシリカナノ粒子のマレイミド基と、前記(ii)の1次抗体または2次抗体のチオール基とを反応させて両者を結合させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】国際公開第2014/136885号
【特許文献2】国際公開第2016/129444号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
特許文献1、2等に記載されているような従来の蛍光体集積粒子を用いた免疫染色法でも、検体に含まれる目的タンパク質を一定の精度で蛍光標識することはできるが、蛍光体集積粒子の目的タンパク質への結合性が不十分で、染色条件によっては感度、すなわち目的タンパク質を十分な精度で検出できない場合があり、染色性には改善の余地があった。
【0020】
本発明の一実施形態では、蛍光体集積粒子を用いて検体に含まれる目的タンパク質を蛍光標識する方法において、従来よりも感度を向上させるための手段を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者が鋭意検討した結果、下記構成例によれば、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0022】
本発明の構成例は以下の通りである。
【0023】
[1] 第1反応性物質で修飾された蛍光体集積粒子と、第2反応性物質で修飾された、抗体およびアプタマーからなる群より選ばれる少なくとも1種の目的タンパク質結合性物質とが、第1反応性物質と第2反応性物質との相互作用により連結している、蛍光プレミックス粒子。
【0024】
[2] 前記第1反応性物質がストレプトアビジンであり、前記第2反応性物質がビオチンである、[1]に記載に記載の蛍光プレミックス粒子。
【0025】
[3] 前記目的タンパク質結合性物質が、目的タンパク質に特異的に結合する1次抗体または1次アプタマーである、[1]または[2]に記載の蛍光プレミックス粒子。
【0026】
[4] 前記目的タンパク質結合性物質が、目的タンパク質に特異的に結合する1次抗体に特異的に結合する2次抗体または2次アプタマーである、[1]または[2]に記載の蛍光プレミックス粒子。
【0027】
[5] 前記蛍光体集積粒子が、樹脂製の母体と蛍光体とを含む粒子である、[1]〜[4]のいずれかに記載の蛍光プレミックス粒子。
【0028】
[6] 前記蛍光体集積粒子の表面の単位面積あたりに連結している前記目的タンパク質結合性物質の数が、0.003〜0.012個/nm2である、[1]〜[5]のいずれかに記載の蛍光プレミックス粒子。
【0029】
[7] [1]〜[6]のいずれかに記載の蛍光プレミックス粒子を含有する蛍光染色液。
【0030】
[8] 発光波長のピークが互いに100nm以上離れている2種類以上の蛍光プレミックス粒子を含有する、一液型または多液型である、[7]に記載の蛍光染色液。
【0031】
[9] [3]に記載の蛍光プレミックス粒子を含有する蛍光染色液を使用する染色法であって、
目的タンパク質に前記蛍光染色液中の蛍光プレミックス粒子を結合させる処理を含む、蛍光染色法。
【0032】
[10] [4]に記載の蛍光プレミックス粒子を含有する蛍光染色液を使用する染色法であって、
目的タンパク質に前記1次抗体を結合させる処理、および
目的タンパク質に結合させた1次抗体に前記蛍光染色液中の蛍光プレミックス粒子を結合させる処理を含む、蛍光染色法。
【0033】
[11] [8]に記載の蛍光染色液を使用する染色法であって、
2種以上の目的タンパク質のそれぞれに、前記蛍光染色液中の対応する蛍光プレミックス粒子のそれぞれを、直接的または間接的に結合させる処理を含む、蛍光染色法。
【発明の効果】
【0034】
本発明の一実施形態によれば、従来よりも目的タンパク質を蛍光標識する際の感度を著しく向上させ、目的タンパク質の定量の精度を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、本発明の一実施形態の蛍光プレミックス粒子を表す概略模式図である。[1A]は、リンカー(15)を介して第1反応性物質(20)、例えばストレプトアビジン(21)で修飾された蛍光体集積粒子(10)を示し、[1B]は、第2反応性物質(30)、例えばビオチン(31)で修飾された目的タンパク質結合性物質(抗体またはアプタマー)(40)を示し、[1C]は、前記[1A]の第1反応性物質(20)と前記[1B]の第2反応性物質(30)とが相互作用により連結することで形成された、蛍光プレミックス粒子(1)を示す。
図2図2は、1次抗体が連結された蛍光プレミックス粒子を用いる、本発明の蛍光染色法の一実施形態(1次反応型染色法)の手順を表す概略模式図である。[2A]は、染色工程開始前の、組織切片(100)上の目的タンパク質(150)が未反応の状態を示し、[2B]は、目的タンパク質(150)に、1次抗体(41)が連結された蛍光プレミックス粒子(1)を結合させる処理を示す。
図3図3は、2次抗体が連結された蛍光プレミックス粒子を用いる、本発明の蛍光染色法の一実施形態(2次反応型染色法)の手順を表す概略模式図である。[3A]は、染色工程開始前の、組織切片(100)上の目的タンパク質(150)が未反応の状態を示し、[3B]は、目的タンパク質(150)に1次抗体(41)を結合させる処理を示し、[3C]は、1次抗体(41)に、2次抗体(42)が連結された蛍光プレミックス粒子(1)を結合させる処理を示す。
図4図4は、従来のビオチン−アビジン併用2次抗体法に準じた蛍光染色法の一実施形態の手順を表す概略模式図である。[4A]は、染色工程開始前の、組織切片(100)上の目的タンパク質(150)が未反応の状態を示し、[4B]は、目的タンパク質(150)に1次抗体(41)を結合させる処理を示し、[4C]は、1次抗体(41)にビオチン(31)で修飾された2次抗体(42)を結合させる処理を示し、[4D]は、ビオチン(31)に、ストレプトアビジン(21)で修飾された蛍光体集積粒子(10)を結合させる処理を示す。
図5図5は、比較例1において撮影された蛍光染色像である。
図6図6は、実施例1において撮影された蛍光染色像である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
−蛍光プレミックス粒子−
本発明の一実施形態に係る蛍光プレミックス粒子は、第1反応性物質で修飾された蛍光体集積粒子と、第2反応性物質で修飾された、抗体およびアプタマーからなる群より選ばれる少なくとも1種の目的タンパク質結合性物質とが、第1反応性物質と第2反応性物質との相互作用により結合している複合体である。
【0037】
本発明者は、例えば、前述した特許文献1に開示されている実施形態(アビジン−ビオチン併用2次抗体法)等の従来の蛍光染色法において、ストレプトアビジン修飾蛍光体集積粒子とビオチン標識1次または2次目的タンパク質結合性物質とを予め反応させて(プレミックスして)複合体を調製しておき、検体(例:組織切片)に含まれる目的タンパク質に該複合体を結合させる、または、目的タンパク質に1次抗体を結合させた後、該複合体をその1次抗体に結合させる、という方法に改変することにより、蛍光標識の感度が著しく向上することを見出した。
【0038】
この理由としては次のようなことが考えられる。
プレミックスすることにより、第1反応性物質と第2反応性物質との結合効率が優れる。
また、第1反応性物質としてストレプトアビジンを用い、第2反応性物質として、ビオチンを用いる場合、蛍光体集積粒子表面のストレプトアビジン1個につきそれぞれ最大4個のビオチン標識目的タンパク質結合性物質を結合させることができるため(ストレプトアビジン1分子に対して最大ビオチン4分子が結合するため)、蛍光体集積粒子には極めて多くの目的タンパク質結合性物質を担持させることができ、目的タンパク質や1次抗体への結合効率が著しく高くなる。
【0039】
なお、「蛍光プレミックス粒子」は、通常、蛍光染色液に含有され、換言すれば蛍光染色液を製造するために使用される。蛍光プレミックス粒子自体は目的タンパク質に結合して蛍光標識する「蛍光染色液」としての機能を果たすため、目的タンパク質に結合する前の蛍光プレミックス粒子に連結されている目的タンパク質結合性物質は未反応の状態である。
【0040】
一方、従来の免疫染色法、例えば、目的タンパク質に1次抗体を反応させ、その1次抗体にビオチン修飾2次抗体を反応させ、さらにストレプトアビジン修飾蛍光体集積ナノ粒子を反応させるような実施形態(ビオチン−アビジン併用2次抗体法)では、2次抗体が1次抗体と反応しているため、前記蛍光プレミックス粒子には該当しない。
【0041】
蛍光プレミックス粒子は、1個の蛍光体集積粒子の表面に、適度な数の目的タンパク質結合性物質が連結していることが好ましい。具体的には、蛍光体集積粒子の表面の単位面積あたりに連結している目的タンパク質結合性物質の数は、0.003個/nm2以上が好ましく、0.003個/nm2以上0.012個/nm2以下がより好ましい。後述するような蛍光プレミックス粒子の作製方法(例:第1〜第3工程を含む実施形態)における各種の条件を調節することにより、適切な範囲ないし前記好ましい範囲の目的タンパク質結合性物質が表面に連結された蛍光体集積粒子を作製することができる。
【0042】
蛍光体集積粒子の表面の単位面積あたりに連結している目的タンパク質結合性物質の数は、例えば国際公開第2015/159776号に記載されている手法を応用して、次のようにして求めることができる:
(i)蛍光体集積粒子の表面に導入した第1反応性物質についての、単位面積あたりの数を測定する;
(ii)その第1反応性物質1つに対して、最大いくつの第2反応性物質(で修飾された目的タンパク質結合性物質)が結合するか、係数を決定する(例えば、第1反応性物質がアビジン等である場合は4であり、第1反応性物質が抗ハプテン抗体である場合は1である);
(iii)前記(i)の単位面積あたりの数に、前記(ii)の係数を乗じた値を、蛍光体集積粒子の表面の単位面積あたりに連結し得る目的タンパク質結合性物質の数の最大値とみなす;
(iv)反応のために添加した第2反応性物質で修飾された目的タンパク質結合性物質の量が、(iii)の最大値よりも多いときは、その最大値を目的タンパク質結合性物質の単位表面積あたりの数とみなし、(iii)の最大値よりも少ないときは、第2反応性物質で修飾された目的タンパク質結合性物質の添加総数を蛍光体集積粒子の総表面積で除した値を、目的タンパク質結合性物質の単位表面積あたりの数とみなす。
【0043】
≪第1反応性物質および第2反応性物質≫
前記第1反応性物質および第2反応性物質は、相互作用により互いに特異的に結合する物質同士の組み合わせであって、いずれも、目的タンパク質結合性物質とそれが結合する目的タンパク質(または、2次もしくは3次以上の高次目的タンパク質結合性物質)との特異的な結合と交差して反応することのない物質から選択される。第1反応性物質および第2反応性物質としては、いずれも限定されないが、例えば、公知の染色法において目的タンパク質(抗原等)と標識物質(蛍光体等)とを間接的に結合させる際に利用されているものの中から選択することができる。
【0044】
例えば、アビジン−ビオチン複合体を利用した免疫染色法(ABC法)に準じて、第1反応性物質として、アビジン、ストレプトアビジンまたはニュートラアビジンなどのアビジン類、好ましくはストレプトアビジンを選択し、第2反応性物質としてビオチンを選択することができる。このような実施形態は、1つのアビジン類に対して4つのビオチンが結合することから、目的生体物質をより高感度で検出することができる。特に、1つの蛍光体集積粒子に対してより多くの目的タンパク質結合性物質を連結できるために特に好ましい。
【0045】
また、前記アビジン類とビオチンとの組み合わせの代わりに、ハプテン(免疫原性を有さないが抗原性を示し、抗体と反応しうる比較的分子量の低い物質)と抗ハプテン抗体とを、第1反応性物質および第2反応性物質として用いることもできる。
【0046】
ハプテンおよび抗ハプテン抗体の組み合わせとしては、例えば、ジコキシゲニンと抗ジコキシゲニン抗体、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)と抗FITC抗体、DNP(2,4−ジニトロフェニル)と抗DNP抗体、が挙げられる。
【0047】
≪目的タンパク質結合性物質≫
前記目的タンパク質結合性物質は、抗体およびアプタマーからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、目的タンパク質と直接的にまたは間接的に結合できる物質である。
該目的タンパク質結合性物質は2種以上であってもよいが、通常、1種である。
【0048】
<抗体>
前記抗体は、免疫染色法において目的タンパク質と直接的にまたは間接的に結合できる抗体であれば特に限定されない。該抗体は、目的タンパク質(抗原)に特異的に結合する1次抗体であってもよいし、その1次抗体に特異的に結合する2次抗体、またはそれ以上の高次抗体であってもよいが、1次抗体または2次抗体であることが好ましい。
【0049】
1次抗体は、抗原にユニークなエピトープを認識して結合する抗体であり、目的タンパク質の定量の安定性の観点から、ポリクローナル抗体よりもモノクローナル抗体が好ましい2種類以上のモノクローナル抗体を混合して使用する場合、抗体ごとに異なるエピトープについて特異的に結合するモノクローナル抗体の組合せが好ましい。
【0050】
1次抗体を産生する免疫動物としては特に限定されず、一般的な動物から選択することができ、例えばマウス、ラット、モルモット、ウサギ、ヤギ、ヒツジなどが挙げられる。
【0051】
2次抗体またはそれ以上の高次抗体は、1次抗体または低次抗体にユニークなエピトープ、好ましくはそれらの抗体の目的タンパク質(抗原)等との結合に関与していない領域(Fc等)に存在するエピトープを認識して結合する抗体である。2次抗体等は、目的タンパク質の定量の安定性の観点から、モノクローナル抗体が好ましいが、経済的な観点からポリクローナル抗体を用いてもよい。
【0052】
2次抗体等を産生する免疫動物は、1次抗体を産生する免疫動物として例示した動物種等の中から、1次抗体等を産生する動物種またはFc等の領域を形成している動物種に応じて、適切な動物を選択すればよい。例えば、1次抗体として天然型のマウス抗体(マウスが産生したIgG)を用いる場合は、2次抗体として、マウス以外の免疫動物(ウサギ等)が産生する、マウスIgGに特異的に結合する抗体を用いることが適切である。
【0053】
前記抗体は、いずれのアイソタイプを用いてもよいが、通常はIgGまたはIgMであり、特にIgGが好ましい。抗体は、目的タンパク質または低次抗体を特異的に認識して結合する能力を有する限り、完全長のIgGのような天然型の抗体であってもよいし、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv、scFvなどの抗体断片、または、これらの抗体断片を用いて多機能化(多価化または多重特異性化)された人工抗体などの、非天然型の抗体であってもよい。また、特定の免疫動物に由来する天然型の抗体(例えばマウスによって産生されるマウス抗体)であってもよいし、ベクター等を用いた人工的な手段により作製されるキメラ抗体、ヒト型化抗体または完全ヒト抗体であってもよい。
【0054】
<アプタマー>
前記アプタマーとしては、抗体を用いる免疫染色法(直接法または間接法)に準じる方法によって目的タンパク質を特異的に標識できるアプタマーであれば特に限定されない。該アプタマーは、目的タンパク質に特異的に結合する1次アプタマーであってもよいし、目的タンパク質に結合した1次抗体または1次アプタマーに特異的に結合する2次アプタマー、またはそれ以上の高次アプタマーであってもよいが、1次アプタマーまたは2次アプタマーであることが好ましい。
【0055】
アプタマーは、核酸(DNAまたはRNA)アプタマーと、ペプチドアプタマーに大別することができ、目的タンパク質または目的タンパク質に結合した抗体や低次アプタマーを特異的に認識して結合する能力を有する限り、核酸アプタマーとペプチドアプタマーのどちらを用いてもよい。
【0056】
核酸アプタマーおよびペプチドアプタマーは、公知の手法により作製することができる。
【0057】
<蛍光体集積粒子>
前記蛍光体集積粒子(第1反応性物質で修飾される前の粒子)としては、特に制限されないが、有機物または無機物でできた母体となる粒子の内部または表面に、蛍光体(例えば蛍光色素)を複数個固定して集積した構造を有するナノサイズの(直径が1μm以下の)粒子であることが好ましく、一粒子で十分な輝度の蛍光を発することができる粒子であることが好ましい。
【0058】
このような蛍光体集積粒子は、蛍光体を単独で(集積化せずに一分子で)用いる場合と比較して、目的タンパク質を標識する際の蛍光の強度(輝度)が強く、細胞の自家蛍光等のノイズや他の色素との識別性が高く、また蛍光体単独よりも励起光の照射による劣化が起こりにくい(耐光性の強い)などの点から、蛍光染色において好ましく用いられる。
【0059】
蛍光体集積粒子に集積される蛍光体は特に限定されないが、例えば公知の様々な有機蛍光色素分子や半導体ナノ粒子(量子ドット等と称されることもある)を用いることができる。以下、蛍光体として有機蛍光色素を用いた場合の蛍光体集積粒子を有機蛍光色素集積粒子といい、蛍光体として半導体ナノ粒子を用いた場合の蛍光体集積粒子を無機蛍光体集積粒子という。
【0060】
蛍光体集積粒子の作製に用いられる蛍光体は、所望の用途に応じ、所望の波長(色)の蛍光を発する蛍光体を選択すればよい。蛍光標識の対象とする目的タンパク質が2種類以上である場合は、それぞれに対応した異なる波長の蛍光を発する蛍光体の組み合わせを選択し、それぞれの蛍光体を集積した蛍光体集積粒子を作製すればよい。そのような2種類以上の蛍光体を用いる場合は、発光波長のピークが互いに100nm以上離れている蛍光体を選択することが好ましい。
【0061】
(1)有機蛍光色素集積粒子
有機蛍光色素集積粒子は、粒子の母体となる物質の内部または表面に有機蛍光色素を複数個集積した、ナノサイズの蛍光粒子であることが好ましい。
【0062】
有機蛍光色素としては、例えば、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、Alexa Fluor(登録商標、インビトロジェン社製)系色素、BODIPY(登録商標、インビトロジェン社製)系色素、カスケード(登録商標、インビトロジェン社)系色素、クマリン系色素、NBD(登録商標)系色素、ピレン系色素、シアニン系色素、ペリレン系色素、オキサジン系色素、ピロメテン系色素など、低分子有機化合物(ポリマー等の高分子有機化合物ではないもの)からなる蛍光色素が挙げられる。中でも、スルホローダミン101およびその塩酸塩であるTexasRed(登録商標)などのローダミン系色素や、ペリレンジイミドなどのペリレン系色素、ピロメテン556等のピロメテン系色素は、比較的耐光性が高いため好ましい。
【0063】
有機蛍光色素集積粒子を構成する母体としては、樹脂やシリカなど、物理的または化学的な結合力で有機蛍光色素を集積化できる物質等が挙げられるが、樹脂が好ましい。具体的には、ポリスチレン、ポリアミド、ポリ乳酸、ポリアクリロニトリル、ポリグリシジルメタクリレート、ポリメラミン、ポリウレア、ポリベンゾグアナミン、ポリフラン、ポリキシレン、フェノール樹脂、ASA樹脂(アクリロニトリル−スチレン−アクリル酸メチル共重合体)等の樹脂;多糖;シリカ等;安定的に有機蛍光色素を集積できる物質等が挙げられる。ポリスチレン、ポリメラミン、シリカなどの疎水性の化合物、特にメラミン樹脂やスチレン樹脂は、蛍光色素集積粒子を作製しやすく、また発光強度の高い粒子が得られるため好ましい。
【0064】
たとえば、蛍光体としてペリレンジイミド、スルホローダミン101またはその塩酸塩(テキサスレッド)、ピロメテン等の蛍光色素を用い、母体としてメラミン樹脂、スチレン樹脂等の樹脂を用いて作製される有機蛍光色素集積粒子は、標識性能等に優れることから、前記蛍光体集積粒子として好ましい。
【0065】
(2)無機蛍光体集積粒子
無機蛍光体集積粒子は、粒子の母体となる物質の内部または表面に半導体ナノ粒子を複数個集積した、ナノサイズの蛍光粒子であることが好ましい。
【0066】
前記半導体ナノ粒子は特に限定されず、II−VI族化合物、III−V族化合物またはIV族元素を含有する量子ドット、国際公開第2012/133047号に例示されたCdSe等の粒子ドット等が挙げられる。
【0067】
また、半導体ナノ粒子をコアとし、その周囲にシェルを設けた量子ドットを用いることもできる。以下、シェルを有する半導体ナノ粒子の表記法として、コアがCdSe、シェルがZnSの場合、CdSe/ZnSと表記する。
【0068】
シェルを有する半導体ナノ粒子としては、具体的には、国際公開第2012/133047号に例示されたCdSe/ZnS等が挙げられる。
【0069】
半導体ナノ粒子は必要に応じて、有機ポリマー等により表面処理が施されていてもよい。例えば、粒子表面がカルボキシ基で修飾されているCdSe/ZnS(インビトロジェン社製)、粒子表面がアミノ基で修飾されているCdSe/ZnS(インビトロジェン社製)等を用いることができる。
【0070】
無機蛍光体集積粒子を構成する母体としては、樹脂やシリカなど、物理的または化学的な結合力で半導体ナノ粒子を集積化できる物質等が挙げられるが、樹脂が好ましい。該樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂等の熱硬化性樹脂;スチレン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体)、ASA樹脂(アクリロニトリル−スチレン−アクリル酸メチル共重合体)など、1種類または2種類以上のモノマーを用いて作製される各種の単独重合体および共重合体が挙げられる。
【0071】
前記有機蛍光色素集積粒子および無機蛍光体集積体は公知であり、その製造に用いられる蛍光体および母体や製造方法などの詳細、実施形態の具体例については、例えば国際公開第2013/035703号、国際公開第2013/147081号、国際公開第2014/136776号などを参照すればよい。
【0072】
[蛍光体集積粒子の平均粒子径]
蛍光体集積粒子の平均粒子径は、好ましくは30〜300nm、より好ましくは40〜160nmである。一般的に、粒子径が小さくなるほど比表面積が大きくなり、検体との結合力が高まるが、平均粒子径が30nmを下回ると、蛍光体集積粒子に起因して蛍光観察で観察されるべき輝点が全く観察されないか、または観察されにくい場合がある。逆に、蛍光体集積粒子の平均粒子径が300nmを上回ると、蛍光観察において観察される輝点が多くなりすぎる等、輝点同士が分離されずに正確に輝点をカウントすることが困難となる場合がある。
【0073】
蛍光体集積粒子の粒径のばらつきを示す変動係数は特に限定されないが、20%程度以下であることが好ましい。
【0074】
蛍光体集積粒子の粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて画像を撮影し、蛍光標識用樹脂粒子の断面積を計測し、その計測値を相当する円の面積としたときの直径(面積円相当径)として測定することができる。十分な数(たとえば1000個)の集団に含まれる蛍光体集積粒子それぞれついて前記のようにして粒子径を測定した後、平均粒子径はその算術平均として算出され、変動係数は式:100×粒径の標準偏差/平均粒径により算出される。
【0075】
蛍光体集積粒子の平均粒子径は、その製造の際の条件を調節することにより、所望の範囲に収まるようにすることができる。
【0076】
有機蛍光色素集積粒子の製造方法の一例として、乳化重合法、具体的には、該粒子の母体となる樹脂(熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂)を合成するためのモノマーを(共)重合させながら、蛍光体を添加し、当該(共)重合体の内部または表面に当該蛍光体を取り込ませる方法が挙げられる。乳化重合法における反応系では、界面活性剤により外側が水相で内側が油相のミセルが形成され、該ミセルの内側の油相に前記樹脂を構成するモノマーが包含された状態となり、このミセル内側で重合反応が行われることとなる。このような乳化重合法により有機蛍光色素集積粒子を合成する際に、例えば樹脂原料に対して10〜60重量%の量の乳化作用を有する界面活性剤を加えることで、平均粒子径が30〜300nmの粒子を作製できる。また、使用する界面活性剤の量が一定である場合、蛍光色素集積粒子の製造に使用する樹脂原料と蛍光体それぞれの反応系全体に対する割合を変更することによっても、蛍光色素集積粒子の平均粒子径の調節が可能である。
【0077】
一方、無機蛍光体集積粒子の平均粒子径は、例えば無機蛍光体集積粒子を製造した後、サイズ選択沈殿法により分級して、所定の粒子径を有する無機蛍光体集積粒子の画分を回収することで、所定の範囲に収めることができる。
【0078】
サイズ選択沈殿法とは、予め親油性基を有する吸着物を無機蛍光体集積粒子表面に吸着させた後、親油性溶媒中に無機蛍光体集積粒子を分散させ、溶媒中に両親媒性の添加剤を少量ずつ添加して沈殿させるという方法である。無機蛍光体集積粒子の分散性は、粒子表面の吸着基と溶媒の相互作用に強く依存しているため、添加剤を徐々に加えることで大サイズの無機蛍光体集積粒子から順に凝集沈殿物を形成し、この沈殿を遠心分離で回収し、溶媒中で再分散することで粒子径分布の狭い無機蛍光体集積粒子を得ることができる。
【0079】
なお、前記親油性基を有する吸着物としては、へプタン、オクタン、ドデカンなどのアルキル基をもつ化合物が挙げられ、炭素数8〜12の化合物が好ましい。
【0080】
また、親油性溶媒としては、ピリジン、へキサンなどが挙げられ、両親媒性の添加剤としてはクロロホルム、メタノールなどが好ましく用いられる。
【0081】
量子ドットなどの無機蛍光体集積粒子表面に吸着できる親油性基としては、トリオクチルホスフィン(TOP)等のホスフィノ基、トリオクチルホスフィンオキサイド(TOPOT)等のホスフィンオキシド基、リン酸基、アミノ基などが挙げられる。
【0082】
<蛍光プレミックス粒子の作製方法>
前記蛍光プレミックス粒子は、第1反応性物質で修飾された蛍光体集積粒子と、第2反応性物質で修飾された目的タンパク質結合性物質とが、第1反応性物質と第2反応性物質との相互作用により連結している構造を有していればよく、その作製方法は特に限定されるものではない。
【0083】
通常、第1反応性物質で修飾された蛍光体集積粒子、第2反応性物質で修飾された目的タンパク質結合性物質のそれぞれを作製した後、適切な分散媒、例えばPBS中で混合することによって作製することができ、好ましくは、下記第1〜第3工程により作製することができる。
【0084】
・第1工程:第1反応性物質で修飾された蛍光体集積粒子の調製工程
前記第1工程は、第1反応性物質で修飾された蛍光体集積粒子(以下「第1反応性物質修飾蛍光体集積粒子」ともいう。)を調製するための工程である。この工程は、従来のアビジン−ビオチン複合体を利用した免疫染色法(ABC法)において用いられる、ストレプトアビジン等(本発明における第1反応性物質)で修飾された蛍光体集積粒子を調製するための工程と同様の実施形態とすることができる。
【0085】
第1反応性物質は、公知の手法に従って作製することができる。合成した蛍光体集積粒子が有する反応性部位と第1反応性物質とを共有結合等により直結させてもよいし、間接的に、具体的には、両末端に反応性官能基を有するリンカーを用いて、リンカーのそれぞれの反応性官能基を、蛍光体集積粒子が有する反応性部位および第1反応性物質が有する反応性部位と反応させて共有結合を形成させることにより、蛍光体集積粒子と第1反応性物質とをリンカーを介して連結させてもよい。
【0086】
第1反応性物質が有する反応性部位としては、一般的なタンパク質が有するアミノ基、カルボキシ基、チオール基等が挙げられる。反応性部位は、第1反応性物質が元来有する部位であってもよいし、リンカー以外の処理剤(化合物)を用いることで、第1反応性物質に導入された(例:シランカップリング剤等の化合物と反応させることによって粒子表面に導入された)部位であってもよい。例えば、第1反応性物質がストレプトアビジン等のタンパク質である場合、該タンパク質にチオール基を導入するには、N−スクシンイミジルS−アセチルチオアセテート(SATA)を反応させた後にヒドロキシルアミンによる脱保護処理を行うことで、第1反応性物質が元来有していたアミノ基にチオール基を導入したり、また、ジチオトレイトール(DTT)等の還元剤を用いた処理により、第1反応性物質が元来有していたジスルフィド結合(−S−S−)を切断してチオール基を生成する方法が挙げられる。第1反応性物質が有する反応性部位としてそのようなチオール基を利用する場合、蛍光体集積粒子と第1反応性物質とを結合させるために用いるリンカーが有すべき反応性官能基はチオール基と反応しうるもの、例えばマレイミド基が好ましい。前記リンカーは、そのような第1反応性物質の反応性部位と反応しうる反応性官能基を一端または両端に有すればよく、両末端の反応性官能基は同じものであっても異なっていてもよい。前記リンカーは、分子中にポリオキシアルキレン部のような鎖状構造、代表的にはPEG(ポリエチレングリコール)鎖を有する化合物であってもよい。前記リンカーの機能は、以下に述べるようなシランカップリング剤自体が果たしてもよい。
【0087】
蛍光体集積粒子として母体がシリカである粒子を用いる場合、その蛍光体集積粒子(シリカ粒子)が有する反応性部位として、シリカ粒子表面のシラノール基を用いてもよいし、シランカップリング剤を利用してシリカ粒子の表面に導入した、シラノール基以外の反応性部位を用いてもよい。
【0088】
ここで用いられるシランカップリング剤は、一端にアルコキシ基、アセトキシ基、ハロ基等の加水分解性基を有し、他端にアミノ基、メルカプト基、エポキシ基等の官能基を有する化合物等が挙げられる。シランカップリング剤の加水分解性基は、加水分解反応によりシラノール基になった後、シリカ粒子表面のシラノール基(または他のシランカップリング剤のシラノール基)と縮合反応を起こすため、シリカ粒子表面に前記のアミノ基等の官能基を導入することができる。
【0089】
導入されたアミノ基等の官能基は、それ自身を第1反応性物質が有する反応性部位と反応させるために用いてもよいし、必要に応じて、さらにリンカーの一端にある反応性官能基と反応させることで、リンカーの他端にある反応性官能基を第1反応性物質が有する反応性部位と反応させるために用いてもよい。例えば、シランカップリング剤により導入されたメルカプト基またはアミノ基を蛍光体集積粒子が有する反応性部位とする場合、それらに対する反応性官能基として、一端にマレイミド基またはN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)基を有するリンカーを用いることが好ましい。
【0090】
蛍光体集積粒子として母体が樹脂である粒子を用いる場合、その蛍光体集積粒子(樹脂粒子)が有する反応性部位は、樹脂を合成するために用いた原料(モノマー等)が有していて合成後も残存している官能基であってもよいし、樹脂の合成反応によって形成される所定の構造であってもよいし、前述のリンカー以外の処理剤(化合物)を用いることで、蛍光体集積粒子が元来有する反応性部位に導入された部位であってもよい。
【0091】
例えば、母体がメラミン樹脂である蛍光体集積粒子を用いる場合、一端にメラミン樹脂に吸着させるための加水分解性基(例えばトリアルコキシ基)を有し、他端にアミノ基を有するシランカップリング剤を反応させることによって、または両端にアミノ基を有するリンカーを反応させることによって、メラミン樹脂粒子の表面に、第1反応性物質が有する反応性部位に対応した反応性官能基としてのアミノ基を導入することができる。なお、前記の両端にアミノ基を有するリンカーにおいて、リンカーが有する一方のアミノ基が反応するのは、メラミン樹脂が有する反応性部位、例えばメラミン樹脂の合成に用いられる、メラミンとホルムアルデヒドとを予め反応させた際に生じるメチロールメラミンが有するメチロール基(−CH2OH)や、それがさらにアルコールと反応することで生成するエーテル化物(−CH2OR)に対する反応性官能基である。
【0092】
また、母体がスチレン樹脂である蛍光体集積粒子を用いる場合、そのスチレン樹脂を合成する際に、スチレンと共重合しうる、側鎖にアミノ基、エポキシ基等の官能基を有するモノマーを用いることによって、リンカーの一端にある反応性官能基と反応させるための反応性部位として、アミノ基、エポキシ基等の官能基を表面に有するスチレン樹脂粒子が得られる。
【0093】
前述したような反応のためのリンカーおよびシランカップリング剤は、両端に様々な反応性官能基を有するものが市販されていて容易に入手することができ、また両端に所望の反応性官能基を有するものは公知の手法に従って合成することも可能である。例えば、PEG鎖の一端にNHS基(アミノ基と反応しうる反応性官能基)、他端にマレイミド基(チオール基と反応しうる反応性官能基)を有するリンカーとして、「SM(PEG)n」(n=2,4,6,8,12,24)(Thermofisher Scientific社製)等の製品を用いることができる。
【0094】
リンカーと、第1反応性物質および/または蛍光体集積粒子とは、公知のプロトコールに従って反応させることができる。リンカーと、第1反応性物質および/または蛍光体集積粒子との反応条件、例えば第1反応性物質および/または蛍光体集積粒子が有する反応性部位の数(密度)、反応に用いるリンカーと第1反応性物質および/または蛍光体集積粒子との分子数の比率(各溶液の濃度および容量)、反応試薬の種類および使用量、反応温度、反応時間等などによって、第1反応性物質による蛍光体集積粒子の修飾状態は変動しうるので、これらを適切に調節すればよい。
【0095】
第1工程では、リンカーと第1反応性物質との反応、およびリンカーと蛍光体集積粒子との反応を、順次(または可能であれば同時に)行えばよい。例えば、まず蛍光体集積粒子とリンカーを結合させ、次に、一端が蛍光体集積粒子に結合しているそのリンカーと第1反応性物質とを結合させればよい。
【0096】
第1工程の後、好ましくは未反応物や不純物を除去するために、遠心分離処理、カラムを用いた精製処理、洗浄処理を必要により行ってから、第1反応性物質修飾蛍光体集積粒子(分散液)を回収し、第3工程で用いる。
【0097】
・第2工程:第2反応性物質で修飾された目的タンパク質結合性物質の調製工程
前記第2工程は、第2反応性物質で修飾された目的タンパク質結合性物質(以下「第2反応性物質修飾目的タンパク質結合性物質」ともいう。)を調製するための工程である。典型的には、両末端に反応性官能基を有するリンカーを用いて、リンカーのそれぞれの反応性官能基を、目的タンパク質結合性物質が有する反応性部位および第2反応性物質が有する反応性部位と反応させて共有結合を形成することにより、目的タンパク質結合性物質と第2反応性物質とをリンカーを介して連結する。例えば、第2反応性物質としてビオチンを用いる場合、この工程は、従来のアビジン−ビオチン複合体を利用した免疫染色法(ABC法)において用いられる、ビオチンで修飾された抗体を調製するための工程と同様の実施形態とすることができる。
【0098】
第2工程のリンカーとしては、前述した第1工程のリンカーと同様のリンカーを用いることができる。また、リンカーと第2反応性物質(好ましくはビオチン)との反応様式、およびリンカーと目的タンパク質結合性物質との反応様式は、リンカーとタンパク質との反応であるという共通性により、いずれも前述した第1工程におけるリンカーと第1反応性物質(好ましくはストレプトアビジン)との反応様式と同様でもよく、必要に応じて改変してもよい。
【0099】
また、一端にビオチンが予め結合され、他端に目的タンパク質結合性物質が有する反応性部位に対する反応性官能基(例えば、チオール基に対するマレイミド基)を有するリンカーは、必要な反応試薬等も含めて、いわゆるビオチンラベリングキットのような製品として市販されており、慣用されている。そのようなキットを用いる場合、第2工程は、目的タンパク質結合性物質にビオチン化されたリンカーを結合させるための反応を行うだけでよい。
【0100】
第2工程では、リンカーと第2反応性物質との反応(前述したキットのような製品を用いる場合は不要である)、およびリンカーと目的タンパク質結合性物質との反応を、順次(または可能であれば同時に)行えばよい。
【0101】
第2工程の反応後、従来と同様の遠心分離処理、カラムを用いた精製処理、洗浄処理等を必要により行ってから、第2反応性物質修飾目的タンパク質結合性物質を回収し、第3工程で用いる。
【0102】
・第3工程:第1反応性物質修飾蛍光体集積粒子と第2反応性物質修飾目的タンパク質結合性物質との反応工程
前記第3工程は、第1工程において調製された第1反応性物質修飾蛍光体集積粒子と、第2工程において調製された第2反応性物質修飾目的タンパク質結合性物質とを反応させて、最終的に蛍光プレミックス粒子を作製するための工程である。
【0103】
このような第3工程は、適切な溶媒中で(例えばPBS等の緩衝液中で)、第1反応性物質修飾蛍光体集積粒子と第2反応性物質修飾目的タンパク質結合性物質とを混合し、所定の時間反応させることで行うことができる。
【0104】
第3工程の後、好ましくは未反応物や不純物を除去するために、遠心分離処理、カラムを用いた精製処理、洗浄処理等を必要により行ってから、蛍光プレミックス粒子を回収し、適切な溶媒中に分散させて、蛍光染色液とすることができる。
【0105】
前記精製処理については、サイズ分離カラム処理、ゲル濾過カラム処理、吸着分離カラム処理などを用いることができ、粒子よりも小さな分子やタンパク質などを除去するのに適している。DOJIN IgG purification kit -A/Gは吸着分離型のカラムであり、適宜用いることができる。
【0106】
−蛍光染色液−
本発明の一実施形態に係る蛍光染色液は、前記蛍光プレミックス粒子を含有する。蛍光染色液は一般的に、蛍光プレミックス粒子を調製し、回収した後、その蛍光プレミックス粒子を適切な分散媒、例えば1%BSAを含有するPBS(リン酸緩衝生理食塩水)に分散させた分散液として調製することができる。
【0107】
蛍光染色液を、2種類以上の目的タンパク質を蛍光標識の対象とする実施形態において使用する場合は、各目的タンパク質に対応する2種類以上の蛍光プレミックス粒子を含有していてもよい。その場合、2種類以上の蛍光プレミックス粒子は、各目的タンパク質を標識する蛍光プレミックス粒子の蛍光(輝点)の識別性に悪影響を及ぼさないよう、蛍光波長のピークは互いに十分に離れていることが好ましく、例えば100nm以上離れていることが好ましい。また、このような複数の目的タンパク質を対象として用いる蛍光染色液は、2種類以上の蛍光プレミックス粒子が同じパック(分散液)に含まれている一液型であってもよいし、各蛍光プレミックス粒子が別々のパックに含まれている多液型であってもよい。染色方法の実施形態に応じて、蛍光染色液は、蛍光プレミックス粒子の1液型または多液型のパックに加えて、それ以外の試薬(例えば細胞形態観察用の染色液)のパックを含んでもよい。
【0108】
−蛍光染色法−
前記蛍光染色液は、様々な蛍光染色法に利用することができるが、典型的には、検体である組織切片から作製した組織スライドにおいて、検体に含まれる目的タンパク質を免疫染色により蛍光標識した、染色スライドを作製するために利用される。
【0109】
蛍光体集積粒子を用いた蛍光染色法および作製された染色スライドを用いた病理診断等の分析法の基本的な実施形態は公知である。蛍光染色法は、一般的には、標本前処理工程(脱パラフィン処理、抗原賦活化処理、細胞固定処理、洗浄処理等)、染色工程(免疫染色処理、形態観察用染色処理、蛍光プレミックス粒子処理、洗浄処理、ブロッキング処理等)、標本後処理工程(封入処理、透徹処理、脱水処理等)などの工程によって実施することができる。また、完成した染色スライドを用いた分析法は、観察・撮影工程、撮影された画像を用いた画像処理・分析工程などによって実施することができる。このような蛍光染色法および分析法は、例えば、国際公開第2013/035688号、特開2015−117980号公報、国際公開第2014/136885号、国際公開第2016/129444号、国際公開第2015/163209号等の特許文献を参照したり、一般的ないし公知の技術的事項に基づくことで、適切に実施することができる。
【0110】
≪染色工程≫
(1)免疫染色処理
免疫染色処理は、免疫染色法に基づき、目的タンパク質を蛍光標識するために検体(例:組織切片)を染色する処理であり、使用する蛍光染色液に含まれる蛍光プレミックス粒子の実施形態に応じて、免疫染色処理の実施形態も変化する。
【0111】
免疫染色法には様々な手法があり、目的タンパク質を蛍光標識して病理診断等に用いることのできるよう検体(組織切片)を染色することができれば特に限定されないが、代表的には次の方法が挙げられる。
【0112】
免疫染色処理の第1実施形態(1次反応型染色法)は、目的タンパク質を直接的に蛍光標識し染色する免疫染色法(1次抗体法)に準じた、蛍光体集積粒子と1次抗体または1次アプタマーが連結した蛍光プレミックス粒子を含有する蛍光染色液を用いる実施形態であり、検体における目的タンパク質にその蛍光染色液中の蛍光プレミックス粒子を結合させる処理を含む。
【0113】
免疫染色処理の第2実施形態(2次反応型染色法)は、目的タンパク質を間接的に蛍光標識し染色する免疫染色法(2次抗体法)に準じた、蛍光体集積粒子と2次抗体または2次アプタマーが連結した蛍光プレミックス粒子を含有する蛍光染色液を用いる実施形態であり、検体における目的タンパク質に1次抗体または1次アプタマーを結合させる処理、およびその1次抗体または1次アプタマーに蛍光染色液中の蛍光プレミックス粒子を結合させる処理を含む。
【0114】
また、前記2つの実施形態を応用した、免疫染色処理の第3実施形態(1次反応型多重染色法)および第4実施形態(2次反応型多重染色法)として、検体中の2種以上の目的タンパク質のそれぞれに、蛍光染色液中の対応する蛍光プレミックス粒子のそれぞれを、直接的または間接的に結合させる処理を含む実施形態も挙げられる。この場合、各蛍光プレミックス粒子の発光波長のピークは、互いに100nm以上離れていることが好ましい。また、蛍光染色液は、各蛍光プレミックス粒子を1種類ずつ含有するような、複数の蛍光染色液のセットからなる多液型であってもよいし、すべての蛍光プレミックス粒子を含有する1つの蛍光染色液からなる一液型あってもよい。
【0115】
免疫染色処理は、前述したような実施形態またはその他の改変された実施形態に対応する、公知の(理想的には標準化された)手順および処理条件に従って行えばよい。
【0116】
一般的には、標本前処理工程を終えた検体(組織切片)を載置した検体スライドを、免疫染色処理の実施形態に応じた1種類または2種類以上の試薬(蛍光染色液等)に、適切な温度および時間条件の下(例えば4℃で一晩)、浸漬すればよい。
【0117】
第2または第4実施形態においては、まず1次抗体を含有する溶液に検体スライドを浸漬し、続いて、得られた検体スライドを、2次抗体または2次アプタマーが連結された蛍光プレミックス粒子を含有する蛍光染色液に浸漬すればよい。
【0118】
第3または第4実施形態において、多液型の蛍光染色液を用いる場合は、各蛍光染色液に順次、検体スライドを浸漬すればよい。
【0119】
なお、免疫染色処理に必要な試薬は、公知の方法に従って作製するか、市販品として入手することができる。
【0120】
免疫染色処理に含まれる各染色の間や免疫染色処理全体の後には、必要に応じて、PBS等の洗浄液を用いて、染色された検体を洗浄してもよい。例えば、検体スライドを、室温で、3〜30分間、PBSに浸漬することにより検体スライドを洗浄することができ、必要に応じて、浸漬途中でPBSを交換してもよい。
【0121】
(2)細胞形態観察用染色処理
細胞形態観察用染色処理は、通常、免疫染色処理の後に行われる処理であって、細胞ないし組織の形状や細胞の各部の位置情報を得るために検体(組織切片)を形態観察用染色液で染色する処理である。
【0122】
形態観察用染色液としては、典型的には、ヘマトキシリン染色液、エオシン染色液、パパニコロウ(Pap)染色液等の色素を用いた染色液が挙げられる。このような色素を用いた染色処理は、一般的な手順に従って行えばよい。例えば、ヘマトキシリン・エオシン(HE)染色を行なう場合、例えば、マイヤーヘマトキシリン液で5分間染色し、45℃の流水で3分間洗浄した後、1%エオシン液で5分間染色すればよい。
【0123】
形態観察用染色液として、蛍光体集積粒子を用いた蛍光染色液を用いることもできる。例えば、国際公開第2015/146896号に記載されているように、検体の細胞膜に恒常的に発現している生体物質であって目的タンパク質以外の生体物質(以下「参照生体物質」ともいう。)を、蛍光体集積粒子を用いて蛍光染色することにより、細胞膜上の参照生体物質を標識した蛍光体集積粒子を輝点として観察することができる。このような輝点が集積している領域は、参照生体物質が発現している細胞膜またはその近傍(細胞膜領域)であることから、細胞ないし組織の形状や細胞の位置情報を得ることができる。このような参照生体物質により蛍光標識する処理およびそのために用いられる溶液も、染色処理および蛍光染色液の一実施形態とみなす。参照生体物質を免疫染色するために、前記蛍光プレミックス粒子を利用してもよい。
【0124】
参照生体物質は、細胞膜上に均一かつ恒常的に発現しており、さらに形態観察の目的を達するために十分な量を発現している生体物質から選択することが適切である。たとえば、ATPase、カドヘリン、サイトケラチン、EpCAM(Epithelial Cell Adhesion/Activating Molecule:上皮細胞接着分子、CD326、KSAまたはTROP1とも呼ばれる。)などの膜タンパク質は、好ましい参照生体物質になり得る。
【0125】
参照生体物質を蛍光染色によって蛍光標識化するための染色剤は、参照生体物質に特異的に結合する物質に結合した蛍光体集積粒子を含むことが好ましい。
【0126】
参照生体物質に特異的に結合する物質には、参照生体物質としてのタンパク質を抗原として特異的に認識して結合する抗体を用いることができる。たとえば、カドヘリンを参照生体物質とする場合は抗カドヘリン抗体を用いることができる。
【0127】
(3)蛍光プレミックス粒子固定処理
蛍光プレミックス粒子固定処理は、免疫染色処理の後、形態観察用染色処理等の他の処理の前に、所定の固定化試薬を用いて行われる処理であって、蛍光プレミックス粒子で標識された目的タンパク質を検体(組織切片)上に固定化する処理である。なお、細胞形態観察用染色処理として、参照生体物質を対象とする蛍光染色処理を行う場合は、その処理の後、他の処理の前に、同様の固定処理を行ってもよい。
【0128】
固定化試薬としては、例えば、目的タンパク質に結合した蛍光プレミックス粒子を、目的タンパク質またはその周辺のタンパク質と架橋させることができる試薬が挙げられる。
【0129】
このように蛍光プレミックス粒子固定処理を行うことで、形態観察用染色処理、ブロッキング処理、洗浄処理等、各種の溶液に検体(組織切片)を浸漬しても、蛍光プレミックス粒子が目的タンパク質から解離したり、目的タンパク質の近傍から遊離することを防止し、染色スライドを観察・撮影する際に蛍光プレミックス粒子の蛍光輝点数が減少する問題を解決できると推測される。
【0130】
(固定化試薬)
前記蛍光プレミックス粒子用の固定化試薬としては、例えば、蛍光プレミックス粒子表面に存在する反応部位(以下「第1反応部位」と呼ぶ。)および検体(組織切片)の周辺のタンパク質が有する反応部位(以下「第2反応部位」と呼ぶ。)のそれぞれと反応しうる反応部位(それぞれ、以下「第3反応部位」および「第4反応部位」と呼ぶ。)を有する化合物(架橋剤)が挙げられる。
【0131】
第1反応部位および第2反応部位としては、例えば、アミノ基(リジン側鎖のε−アミノ基、N末端のα−アミノ基)、チオール基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、芳香環等の官能基が挙げられる。第1反応部位と第2反応部位は、同一であっても、異なってもよい。
【0132】
一方、第3反応部位および第4反応部位としては、例えば、NHS(N−ヒドロキシスクシンイミド)基、マレイミド基、アルデヒド基、エポキシ基およびヨード基等の官能基が挙げられる。第3反応部位と第4反応部位は、同一であっても、異なってもよく、1つの官能基が第3反応部位と第4反応部位の両方の機能を兼ね備えていてもよい(例えば、固定化試薬としてホルムアルデヒドを使用する場合のアルデヒド基)。第3反応部位と第4反応部位はPEG等のリンカーで連結されていてもよい。固定化試薬1分子中に第3反応部位および/または第4反応部位が複数存在してもよい。
【0133】
蛍光プレミックス粒子固定処理は、適切な濃度の固定化試薬液を適切な時間、検体(組織切片)に接触させることで行うことができる。固定試薬液中の固定化試薬の濃度は適宜調節することができるが、例えば1〜500μMが好ましい。特にPEG等のリンカーを介して両端に官能基が結合している固定化試薬を用いる場合、濃度が高すぎると架橋反応が十分に進まない場合がある。すなわち、固定化試薬の分子一端の官能基だけが検体(組織切片)の周辺のタンパク質または蛍光プレミックス粒子に結合し、リンカーを介した反対側のもう一方の官能基が架橋の相手と反応せず余った状態となる(その架橋の相手には別の固定化試薬の分子がすでに結合している)おそれがある。また、過剰の固定化試薬によって蛍光プレミックス粒子および検体(組織切片)が覆われてしまうと、蛍光プレミックス粒子から発せられる蛍光の強度が低下して識別しにくくなったり、形態観察用染色処理で使用される染色液とその対象との反応が妨げられ、それらの処理による染色が不十分となるおそれがある。
【0134】
固定化試薬液と検体との接触時間(固定化処理時間)も適宜調節することができるが、例えば、室温で、数分間〜数時間程度である。
【0135】
(4)ブロッキング処理
ブロッキング処理は、例えば、免疫染色処理の抗原抗体反応の前後に行われ、蛍光プレミックス粒子の目的タンパク質への非特異的吸着や、蛍光プレミックス粒子の表面にあるアビジン類(プレミックス処理における未反応部位)の生体内に存在する内因性ビオチンへの吸着を抑制するための処理が挙げられる。
【0136】
なお、内因性ビオチンは、ヒトでは肝臓、腎臓、筋肉、乳腺、消化管に多く存在しており、組織切片の凍結保存や、標本作製工程における細胞固定処理(用いる固定化試薬の種類等の条件)によっては失活しないことがある。したがって、乳腺等、前記組織に由来する切片を染色の対象とする場合は、ビオチン−アビジン反応用のブロッキング処理を行うことが好ましい。
【0137】
例えば、免疫染色法として2次抗体法に準じた方法を用いる場合は、目的タンパク質に対して1次抗体または1次アプタマーを結合させる処理(1次抗体処理)を行う前や、その1次抗体または1次アプタマーに対して2次抗体または2次アプタマーが連結された蛍光プレミックス粒子を結合させる処理(蛍光プレミックス粒子処理)を行う前、さらに、形態観察用染色処理として参照生体物質を利用する蛍光染色を行う場合には、参照生体物質に対して1次抗体を結合させる処理を行う前や、その1次抗体に対して蛍光標識された2次抗体を結合させる処理を行う前に、1次抗体(1次アプタマー)または2次抗体(2次アプタマー)等が標的とする所定の抗原等以外のタンパク質に非特異的に吸着することを抑制するための、抗原抗体反応用のブロッキング処理を行ってもよい。
【0138】
ブロッキング処理は、公知のブロッキング剤を用いて行えばよい。例えば、抗原抗体反応用のブロッキング処理には、BSA含有PBS緩衝液などを用いることができ、アビジン−ビオチン反応用のブロッキング処理には、アビジン溶液(内因性ビオチンに結合させて、蛍光プレミックス粒子が有するアビジン等の4箇所の反応部位のうち未反応の部位が結合することをブロッキングするための処理液)およびビオチン溶液(蛍光プレミックス粒子が有するアビジン等の4箇所の反応部位のうち未反応の部位に結合させて封止し、内因性ビオチンに結合することをブロッキングするための処理液)などを含むブロッキング試薬(例えばニチレイバイオサイエンス社製「内因性アビジン・ビオチンブロッキングキット」)を用いることができる。目的タンパク質が複数種あるときの多重染色のように、同一の検体(組織切片)に対して複数回の染色処理が実施される場合は、必要に応じて、ブロッキング処理およびそれに先立つ蛍光プレミックス固定処理を複数回行ってもよい。
【0139】
≪目的タンパク質≫
前記蛍光染色の対象である、目的タンパク質は、検体に含まれる少なくとも1種の生体物質であることが好ましく、さらに主に病理診断において、タンパク質の定量ないし検出のために行われる免疫染色の対象であるタンパク質(抗原)であることが最も好ましい。典型的には、例えば、がんの病理診断に関係するタンパク質(いわゆるバイオマーカー)が好ましい。具体的には、PD−L1(Programmed cell death1 ligand 1)、CTLA4(細胞傷害性Tリンパ球抗原−4)、CD8、CD30、CD48、CD59、あるいは、EGFR(HER1)(Epidermal Growth Factor Receptor:上皮増殖因子受容体)、HER2(Human Epidermal Growth Factor Receptor:ヒト上皮増殖因子受容体)、HER3、HER4、VEGFR(Vasular Endothelial Growth Factor Receptor:血管内皮細胞増殖因子受容体)、IGFR(Insulin-like Growth Factor Receptor:インスリン様増殖因子受容体)、HGFR(Hepatocyte Growth Factor Receptor:肝細胞増殖因子受容体)といった増殖因子の受容体(レセプター)や、T細胞表面上にある重要な抑制性の免疫チェックポイント分子であって前記PD−L1の受容体であるPD−1(Programmed cell death 1)などの免疫系の受容体であるタンパク質が例示できる
【実施例】
【0140】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
下記の表に、作製例、実施例および比較例の概要を示す。
【0141】
【表1】
【0142】
【表2】
【0143】
[作製例1]テキサスレッド集積シリカ粒子の作製
赤色の有機蛍光色素である「テキサスレッド−X」(Sulforhodamine 101−X、シグマアルドリッチ社製)3.4mgと3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製、KBM903)3μLとを、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)の中で混合し、オルガノアルコキシシラン化合物を得た。
【0144】
得られたオルガノアルコキシシラン化合物0.6mLを、99%エタノール48mL、テトラエトキシシラン(TEOS)0.6mL、超純水2mL、および28質量%のアンモニア水2.0mLと5℃で3時間混合した。
【0145】
前記工程で作製した混合液を10000Gで20分間遠心分離し、上澄みを除去した。この沈殿に対して、エタノールを加えて、沈殿物を分散させ、再度遠心分離をする洗浄を行った。さらに同様の洗浄を2回繰り返し、テキサスレッド集積シリカ粒子(励起波長590nm、発光波長620nm)を得た。得られた粒子の1000個についてSEM観察を行って粒子径を測定し、平均粒子径を算出したところ、160nmであった。
【0146】
[作製例2]テキサスレッド集積メラミン樹脂粒子の作製
赤色の有機蛍光色素である「テキサスレッド」(Sulforhodamine 101、シグマアルドリッチ社製)5.25mgを純水22.5mLに溶解した後、ホットスターラーで溶液の温度を70℃に維持しながら20分間撹拌した。撹拌後の溶液に、メラミン樹脂原料「ニカラックMX−035」(日本カーバイド工業社製)0.21gを加え、さらに同一条件で5分間加熱撹拌した。
【0147】
得られた溶液に反応開始剤としてドデシルベンゼンスルホン酸(関東化学社製)の10%水溶液を680μL加え、70℃で50分間加熱撹拌した。その後、90℃に昇温して20分間加熱撹拌した後、その溶液を放置して室温まで冷却した。得られたテキサスレッド集積メラミン樹脂粒子の分散液から、余剰の樹脂原料や有機蛍光色素等の不純物を除くため、冷却した後の溶液を複数の遠心用チューブに分注して、12,000rpmで20分間遠心分離して、溶液に含まれるテキサスレッド集積メラミン樹脂粒子を沈殿させた。上澄みを除去し、沈殿した粒子をエタノールおよび水で洗浄して、テキサスレッド集積メラミン樹脂粒子を得た。
【0148】
得られた粒子の1000個についてSEM観察を行って粒子径を測定し、平均粒子径を算出したところ、40nmであった。
【0149】
[作製例3]ピロメテン556集積メラミン樹脂粒子の作製
緑色の有機蛍光色素である「ピロメテン556」(Pyrromethene556)14.4mgを水22mLに加えて溶解させた。その後、この溶液に乳化重合用乳化剤のエマルゲン(登録商標)430(ポリオキシエチレンオレイルエーテル、花王社製)の5%水溶液を2mL加えた。この溶液をホットスターラー上で撹拌しながら70℃まで昇温させた後、メラミン樹脂原料「ニカラックMX−035」(日本カーバイド工業社製)を0.65g加えた。
【0150】
さらに、この溶液に反応開始剤としてドデシルベンゼンスルホン酸(関東化学社製)の10%水溶液を1000μL加え、70℃で50分間加熱撹拌した。その後、90℃に昇温して20分間加熱撹拌した。
【0151】
得られた分散液から、余剰の樹脂原料や蛍光色素などの不純物を除くため、純水による洗浄を行った。具体的には、遠心分離機(久保田商事社製マイクロ冷却遠心機3740)にて20000Gで15分間遠心分離し、上澄み除去後、超純水を加えて超音波照射することで再分散させた。遠心分離、上澄み除去および超純水への再分散による洗浄を5回繰り返した。
【0152】
以上の処理により、ピロメテン556集積メラミン樹脂粒子(励起波長490nm、発光波長520nm)を作製した。得られた粒子の1000個についてSEM観察を行って粒子径を測定し、平均粒子径を算出したところ、155nmであった。
【0153】
[作製例4]ストレプトアビジン修飾テキサスレッド集積シリカ粒子の作製
作製例1で得られたテキサスレッド集積シリカ粒子を、2mMのEDTA(エチレンジアミン四酢酸)を含有するPBSを用いて3nMの濃度に調整し、得られた液体に、リンカーとしてSM(PEG)12(スクシンイミジル−[(N−マレイミドプロピオンアミド)−ドデカンエチレングリコール]エステル、サーモサイエンティフィック社製)を最終濃度が10mMとなるように添加、混合し、5℃で1時間反応させた。
【0154】
得られた反応液を、10000Gで20分間遠心分離し、上澄みを除去した。そこに、2mMのEDTAを含有するPBSを加え、沈降物を分散させ、同一条件で再度遠心分離を行った。同様の手順による洗浄を3回行うことで、マレイミド基導入テキサスレッド集積シリカ粒子を得た。
【0155】
一方、1mg/mLに調整したストレプトアビジン(和光純薬工業社製)の水溶液40μLを210μLのボレートバッファーに加えた後、そこに、64mg/mLに調整した2−イミノチオラン塩酸塩(シグマアルドリッチ社製)70μLを加え、室温で1時間反応させた。これにより、ストレプトアビジンのアミノ基に対してメルカプト基を導入した(−NH−C(=NH2+Cl-)−CH2−CH2−CH2−SH)。得られた溶液を、ゲルろ過カラム(Zaba Spin Desalting Columns:フナコシ社製)に通して脱塩して、マレイミド基導入テキサスレッド集積シリカ粒子と結合可能な、メルカプト基導入ストレプトアビジンを得た。
【0156】
2mMのEDTAを含有するPBSを用い、得られたメルカプト基導入ストレプトアビジンの全量(0.04mg)と、マレイミド基導入テキサスレッド集積シリカ粒子とを、当該シリカ粒子の濃度が0.67nMとなるように混合した液体740μLを調製し、室温で1時間反応させた。その後、10mMメルカプトエタノールを添加し、反応を停止させた。
【0157】
得られた液体を遠心フィルターで濃縮した後、精製用ゲルろ過カラムを用いて未反応物を除去して、ストレプトアビジン修飾テキサスレッド集積シリカ粒子を得た。50mMのTris溶液を用いて、該粒子の濃度を0.02nMに調整した、精製したストレプトアビジン修飾テキサスレッド集積シリカ粒子分散液を調製した。
【0158】
国際公開第2015/159776号に記載の方法に従って測定したところ、得られたストレプトアビジン修飾テキサスレッド集積シリカ粒子は、0.0311個/nm2の密度で、テキサスレッド集積シリカ粒子の表面にストレプトアビジンが連結していると推定される。
【0159】
[作製例5]ストレプトアビジン修飾テキサスレッド集積メラミン樹脂粒子の作製
作製例2で得られたテキサスレッド集積メラミン樹脂粒子0.1mgをエタノール1.5mL中に分散させ、アミノプロピルトリメトキシシラン「LS−3150」(信越化学工業社製)2μLを加えて8時間撹拌しながら室温で反応させて、粒子表面にアミノ基を導入した。
【0160】
アミノ基導入テキサスレッド集積メラミン樹脂粒子を、2mMのEDTAを含有するPBSを用いて3nMの濃度に調整し、得られた液体にリンカーとしてSM(PEG)12を最終濃度が10mMとなるよう添加、混合して、撹拌しながら室温で1時間反応させた。
【0161】
得られた反応液を、10,000Gで20分間遠心分離し、上澄みを除去した後、EDTAを2mM含有するPBSを加えて沈降物を分散させ、同一条件で再度遠心分離を行った。同様の手順による洗浄を3回行うことで、マレイミド基導入テキサスレッド集積メラミン樹脂粒子を得た。
【0162】
一方、1mg/mLに調整したストレプトアビジン(和光純薬工業社製)の水溶液40μLに、64mg/mLに調整したN−スクシンイミジル−S−アセチルチオアセテート(SATA、pirce社製)の水溶液70μLを加え、室温で1時間反応させた。これにより、ストレプトアビジンのアミノ基に対して保護されたメルカプト基を導入した(−NH−CO−CH2−S−CO−CH3)。続いて、ヒドロキシルアミン処理により、保護されたメルカプト基から脱保護された(フリーの)メルカプト基を生成させて、ストレプトアビジンにメルカプト基を導入する処理を完了させた。得られた溶液をゲルろ過カラム(Zaba Spin Desalting Columns:フナコシ)に通して脱塩して、メルカプト基が導入されたストレプトアビジンを得た。
【0163】
2mMのEDTAを含有するPBS中で、前記のようにして作製したメルカプト基導入ストレプトアビジンの全量(0.04mg)と、マレイミド基導入テキサスレッド集積メラミン樹脂粒子とを混合し、1時間反応させた後、反応液に10mMメルカプトエタノールを添加して反応を停止させた。
【0164】
得られた液体を遠心フィルターで濃縮した後、精製用ゲルろ過カラムを用いて未反応物を除去して、ストレプトアビジン修飾テキサスレッド集積メラミン樹脂粒子の精製物を回収した。50mMのTris溶液を用いて、濃度を0.02nMに調整した、精製したストレプトアビジン修飾テキサスレッド集積メラミン樹脂粒子の分散液を調製した。
【0165】
[作製例6]抗DNP抗体修飾ピロメテン556集積メラミン樹脂粒子の作製
作製例2で得られたテキサスレッド集積メラミン樹脂粒子の代わりに、作製例3で得られたピロメテン556集積メラミン樹脂粒子を用い、ストレプトアビジンの代わりに抗DNP(ジニトロフェニル)抗体を用いたこと以外、作製例5と同様の手順に従って、抗DNP抗体修飾ピロメテン556集積メラミン樹脂粒子の分散液を調製した。
【0166】
[作製例7]抗FITC抗体修飾テキサスレッド集積シリカ粒子の作製
ストレプトアビジンの代わりに抗FITC抗体を用いたこと以外、作製例4と同様の手順に従って、抗FITC抗体修飾テキサスレッド集積シリカ粒子の分散液を調製した。
【0167】
[作製例8]ビオチン修飾抗HER2抗体(ビオチン修飾1次抗体)の作製
目的タンパク質HER2に対する1次抗体、すなわち抗HER2抗体として、ウサギモノクローナル抗体であるAnti−Erb 2 antibody[EP1045Y](abcam社製)を用いた。この抗HER2抗体を50mMのTris溶液に溶解して1次抗体溶液を調製した。
【0168】
一方、リンカー試薬「マレイミド−PEG2−ビオチン」(サーモサイエンティフィック社製、製品番号21901)を、DMSOを用いて0.4mMとなるように調整した。このリンカー試薬溶液8.5μLを前記1次抗体溶液に添加、混合し、37℃で30分間反応させることにより、抗HER2抗体にPEG鎖を介してビオチンを結合させた。得られた反応溶液を脱塩カラムに通して、ビオチン修飾抗HER2抗体を精製した。
【0169】
精製したビオチン修飾1次抗体(ビオチン修飾抗HER2抗体)溶液について、波長300nmにおける吸光度を分光高度計(日立製「F−7000」)を用いて測定することにより、溶液中のタンパク質(ビオチン修飾1次抗体)の濃度を算出した。50mMのTris溶液を用いて、ビオチン修飾1次抗体の濃度を6μg/mLに調整することで、ビオチン修飾1次抗体溶液を得た。
【0170】
[作製例9]ビオチン修飾抗ウサギIgG抗体(2次抗体)の作製
前記抗HER2抗体(ウサギモノクローナル抗体)に対する2次抗体として、抗ウサギIgG抗体「LO−RG1」(GeneTex社製、cord GTX40383)を用いた。この抗ウサギIgG抗体50μgを50mMのTris溶液に溶解し、この溶液に還元剤であるDTT(ジチオトレイトール)を最終濃度が3mMとなるように添加、混合し、37℃で30分間反応させることにより、ジスルフィド結合を還元してメルカプト基を生成させた抗ウサギIgG抗体、すなわち還元型抗ウサギIgG抗体を作製した。その後、反応溶液を脱塩カラム「Zeba Desalt Spin Columns」(サーモサイエンティフィック社製、Cat.#89882)に通して、還元型抗ウサギIgG抗体を精製した。
【0171】
精製した還元型抗ウサギIgG抗体全量のうち200μLを50mMのTris溶液に溶解して2次抗体溶液を調製した。
【0172】
一方、リンカー試薬「マレイミド−PEG2−ビオチン」(サーモサイエンティフィック社製、製品番号21901)を、DMSOを用いて0.4mMとなるように調整することでリンカー試薬溶液を得た。このリンカー試薬溶液8.5μLを前記2次抗体溶液に添加、混合し、37℃で30分間反応させることにより、抗ウサギIgG抗体にPEG鎖を介してビオチンを結合させた。得られた溶液を脱塩カラムに通して、ビオチン修飾抗ウサギIgG抗体を精製した。
【0173】
精製したビオチン修飾2次抗体(ビオチン修飾抗ウサギIgG抗体)溶液について、波長300nmにおける吸光度を分光光度計(日立製「F−7000」)を用いて測定することにより、溶液中のタンパク質(ビオチン修飾2次抗体)の濃度を算出した。50mMのTris溶液を用いて、ビオチン修飾2次抗体の濃度を6μg/mLに調整することで、ビオチン修飾2次抗体溶液を得た。
【0174】
[作製例10]ビオチン修飾HER2抗原認識RNAアプタマーの作製
5’末端がビオチン修飾された、HER2抗原認識RNAアプタマー(RNA 5-AGCCGCGAGGGGAGGGAUAGGGUAGGGCGCGGCU-3、NUCLEIC ACID THERAPEUTICS, Volume 21, Number 3, 2011, 173)を、北海道システムサイエンス社に合成依頼して入手した。
【0175】
入手したビオチン修飾HER2抗原認識RNAアプタマーを、その濃度が6μg/mLになるように、50mMのTris溶液を用いて調整することで、ビオチン修飾HER2抗原認識RNAアプタマー溶液を得た。
【0176】
[作製例11]ビオチン修飾ウサギIgG認識RNAアプタマーの作製
5’末端がビオチン修飾された、ウサギIgG認識RNAアプタマー(RNA 5-GGGAGAAUUCCGACCAGAAG-UUCGAUACGCCGUGGGGUGACGUUGGCUAC-CCUUUCCUCUCUCCUCCUUCUUC-3、Analytical Biochemistry, 375, 2008, 217-222)を、北海道システムサイエンス社に合成依頼して入手した。
【0177】
入手したビオチン修飾ウサギIgG認識RNAアプタマーを、その濃度が6μg/mLになるように、50mMのTris溶液を用いて調整することで、ビオチン修飾ウサギIgG認識RNAアプタマー溶液を得た。
【0178】
[作製例12]DNP修飾抗マウスIgG抗体の作製
NHS―DNP試薬(BP−22397、BroadPharm社製)を用いて、ゴート由来抗マウスIgG抗体「ab182017」(abcam社製)のアミノ基にNHS―DNP基を反応させて、DNP修飾抗マウスIgG抗体を作製した。
【0179】
作製したDNP修飾抗マウスIgG抗体を、その濃度が6μg/mLになるように、50mMのTris溶液を用いて調整することで、DNP修飾抗マウスIgG抗体溶液を得た。
【0180】
[作製例13]FITC修飾抗ウサギIgG抗体の作製
NHS―FITC試薬(BP−22401、BroadPharm社製)を用いて、ラット由来抗ウサギIgG抗体「LO−RG1」(GeneTex社製、cord GTX40383)のアミノ基にNHS―FITC基を反応させて、FITC修飾抗ウサギIgG抗体を作製した。
【0181】
作製したFITC修飾抗ウサギIgG抗体を、その濃度が6μg/mLになるように、50mMのTris溶液を用いて調整することで、FITC修飾抗ウサギIgG抗体溶液を得た。
【0182】
[比較例1]従来のアビジン−ビオチン併用2次抗体法に準じた染色スライドの作製
1次抗体として作製例8で用いた抗HER2抗体(作成例8において、ビオチンを修飾する前の抗HER2抗体)を用い、2次抗体として作製例9で得られたビオチン修飾抗ウサギIgG抗体を用い、蛍光染色液として作製例4で得られたストレプトアビジン修飾テキサスレッド集積シリカ粒子を用いた。下記(1)、(2A)および(3)に示すような手順で、標本前処理工程(脱パラフィン処理、賦活化処理)、染色工程(1次抗体処理、2次抗体処理、蛍光標識処理、蛍光体集積粒子固定処理および形態観察用染色処理)、標本後処理工程(封入処理)を行うことにより、免疫染色法に基づく染色スライドを作製した(図4参照)。その後、作製された染色スライドを用いて、下記(4)に示す手順で観察および撮像を行った。
【0183】
(1)標本前処理工程
(1−1)脱パラフィン処理
予めパスビジョンHER−2 DNAプローブキット(アボット)を用いてFISHスコアを算出したコスモバイオ社製の組織アレイスライド(CB−A712)(HER2陽性染色対照標本)を用いた。該組織アレイスライドに対し、以下の(i)〜(iii)の手順で脱パラフィン処理を行った。
【0184】
(i)キシレンを入れた容器に組織アレイスライドを30分間、常温で浸漬させた。途中3回キシレンを交換した。
【0185】
(ii)(i)で得られた組織アレイスライドを、エタノールを入れた容器に常温で30分間浸漬させた。途中3回エタノールを交換した。
【0186】
(iii)(ii)で得られた組織アレイスライドを、水を入れた容器に30分間浸漬させた。途中3回水を交換した。
【0187】
(1−2)賦活化処理
脱パラフィン処理した組織アレイスライドを、以下の(i)〜(iv)の手順で賦活化処理した。
【0188】
(i)組織アレイスライドの溶媒を水に置換する洗浄を行った。
【0189】
(ii)(i)で得られた組織アレイスライドを、10mMクエン酸緩衝液(pH6.0)中に入れ、121℃で15分間オートクレーブ処理を行った。
【0190】
(iii)オートクレーブ処理後の組織アレイスライドを、PBSを入れた容器に30分間浸漬し、洗浄した。
【0191】
(iv)(iii)で得られた組織アレイスライドと、1%BSA含有PBSとを接触させて、1時間ブロッキング処理を行った。
【0192】
(2)染色工程
(2−1A)免疫染色処理
賦活化処理(1−2)を行った組織アレイスライドに対して、以下の(i)〜(iii)の手順で免疫染色処理を行った。
【0193】
(i)1次抗体処理:1%BSA含有PBSを用いて、ウサギモノクローナル抗体であるAnti−Erb 2 antibody[EP1045Y](abcam社製)の0.05nM溶液を、組織アレイスライド上の組織切片に滴下して、4℃で一晩反応させた。
【0194】
(ii)2次抗体処理:1次反応を行った組織アレイスライドをPBSで洗浄した後、作製例9で得られた6μg/mLのビオチン修飾抗ウサギIgG抗体溶液を組織切片に滴下し、室温で30分間反応させた。
【0195】
(iii)蛍光標識処理:2次反応を行った組織アレイスライドをPBSで洗浄した後、作製例4で得られた0.02nMのストレプトアビジン修飾テキサスレッド集積シリカ粒子溶液を組織切片に滴下し、4℃で一晩反応させた。
【0196】
(2−2)蛍光体集積粒子固定処理
蛍光標識処理(2−1A)を行った組織アレイスライドを4%中性パラホルムアルデヒド水溶液中に10分間浸漬することにより、蛍光体集積粒子固定処理を行った。
【0197】
(2−3)形態観察用染色処理
蛍光体集積粒子固定処理(2−2)を行った組織アレイスライドに対して、以下の(i)〜(ii)の手順で形態観察用染色処理(HE染色、ヘマトキシリン−エオシン染色)を行った。
【0198】
(i)処理(2−2)を行った組織アレイスライドを、マイヤーヘマトキシリン液で5分間染色してヘマトキシリン染色を行った。その後、該スライドを45℃の流水で3分間洗浄した。
【0199】
(ii)洗浄後の組織アレイスライドに、1%エオシン液で5分間染色してエオシン染色を行い、染色スライドを作製した。
【0200】
(3)標本後処理工程
形態観察用染色処理(2−3)を行った染色スライドに対して、以下の(i)〜(ii)の手順で封入処理を行った。
【0201】
(i)前記染色スライドに、常温でエンテランニュー(メルク社製)を滴下した後、カバーガラスを被せ、常温で10分間、風乾することで、封入処理を行った。
【0202】
(ii)(i)の後、観察および染色画像の撮影まで、封入処理が行われた染色スライドを遮光して保存した。
【0203】
(4)観察
封入処理を終えた染色スライドに対して、蛍光顕微鏡(オリンパス社製「BX−53」)を用いて所定の励起光(蛍光色素として用いたテキサスレッドの励起波長に対応した波長を有する励起光)を照射し、発光した蛍光を観察するとともに、顕微鏡用デジタルカメラ(オリンパス社製「DP73」)により蛍光染色画像の撮影を行った。前記励起光は、励起光用光学フィルターを用いて、575〜600nmに設定した。また、観察する蛍光の波長(nm)の範囲についても、蛍光用光学フィルターを通すことで612〜692nmに設定した。
【0204】
顕微鏡観察、画像撮影時の励起波長の条件は、580nmの励起では視野中心部付近の照射エネルギーが900W/cm2となるようにした。画像撮影時の露光時間は、画像の輝度が飽和しないように任意に設定(例えば4000μ秒に設定)した。400倍で撮像した画像をもとに画像処理ソフトImageJ(オープンソース)により輝度の極大点を検出し、輝点として計数した。
【0205】
次に、蛍光顕微鏡の明視野における観察および画像撮影により、ヘマトキシリン染色による染色像を撮影した。蛍光染色の画像とヘマトキシリン染色の画像とを、画像処理により重ねあわせることで、1細胞当たりの輝点数を計数した。1000細胞について輝点数を計数し、得られた平均値を各組織切片における輝点数とした。
【0206】
撮影された蛍光染色像を図5に示す。得られた蛍光染色像の平均輝度(1画素あたりの輝度)は141であった。
【0207】
[実施例1]抗HER2抗体連結テキサスレッド集積シリカ粒子を含有する蛍光染色液(No.1)の調製およびそれを用いた蛍光染色像の撮影
作製例4で得られた0.02nMのストレプトアビジン修飾テキサスレッド集積シリカ粒子分散液(反応液1)25μLと、作製例8により得られた濃度6μg/mLのビオチン修飾抗HER2抗体(1次抗体)溶液(反応液2)25μLとを混合し、室温で1時間反応させることにより、抗HER2抗体(1次抗体)連結テキサスレッド集積シリカ粒子(蛍光プレミックス粒子)を含有する蛍光染色液(No.1)を調製した。
【0208】
得られた蛍光プレミックス粒子は、0.012個/nm2の密度で、テキサスレッド集積シリカ粒子の表面に抗HER2抗体が連結しているものと推定される。
【0209】
比較例1において、前記(2−1A)を下記(2−1B)に示す方法に変更した以外は、比較例1と同様にして、染色スライドを作成し(図2参照)、蛍光染色像を撮影した。撮影された蛍光染色像を図6に示す。得られた蛍光染色像の平均輝度は612であった。
【0210】
(2−1B)免疫染色処理
賦活化処理(1−2)を行った組織アレイスライドに対して、以下の手順で免疫染色処理を行った。
【0211】
すなわち、抗HER2抗体(1次抗体)連結テキサスレッド集積シリカ粒子である蛍光プレミックス粒子を含有する蛍光染色液(No.1)を、50mMのTris溶液を用いて、濃度を0.02nMに調整した。この溶液を組織アレイスライド上の組織切片に滴下して、4℃で一晩反応させた。
【0212】
[実施例2]抗HER2抗体連結テキサスレッド集積シリカ粒子を含有する蛍光染色液(No.2)の調製およびそれを用いた蛍光染色像の撮影
作製例4で得られた濃度0.02nMのストレプトアビジン修飾テキサスレッド集積シリカ粒子分散液10μLと、作製例8で得られた濃度6μg/mLのビオチン修飾抗HER2抗体(1次抗体)溶液90μLとを混合し、室温で1時間反応させることで、抗HER2抗体(1次抗体)連結テキサスレッド集積シリカ粒子(蛍光プレミックス粒子)を含有する蛍光染色液(No.2)を調製した。
【0213】
得られた蛍光プレミックス粒子は、0.030個/nm2の密度で、テキサスレッド集積シリカ粒子の表面に抗HER2抗体が連結しているものと推定される。
【0214】
得られた蛍光染色液(No.2)を用いた以外は実施例1と同様にして、染色スライドを作製し、蛍光染色像を撮影した。得られた蛍光染色像の平均輝度は688であった。
【0215】
[実施例3]抗HER2抗体連結テキサスレッド集積シリカ粒子を含有する蛍光染色液(No.3)の調製およびそれを用いた蛍光染色像の撮影
作製例4で得られた濃度0.02nMのストレプトアビジン修飾テキサスレッド集積シリカ粒子分散液95μLと、作製例8で得られた濃度6μg/mLのビオチン修飾抗HER2抗体(1次抗体)溶液5μLとを混合し、室温で1時間反応させることで、抗HER2抗体(1次抗体)連結テキサスレッド集積シリカ粒子(蛍光プレミックス粒子)を含有する蛍光染色液(No.3)を調製した。
【0216】
得られた蛍光プレミックス粒子は、0.003個/nm2の密度で、テキサスレッド集積シリカ粒子の表面に抗HER2抗体が連結しているものと推定される。
【0217】
得られた蛍光染色液(No.3)を用いた以外は実施例1と同様にして、染色スライドを作製し、蛍光染色像を撮影した。得られた蛍光染色像の平均輝度は630であった。
【0218】
[実施例4]抗HER2抗体連結テキサスレッド集積シリカ粒子を含有する蛍光染色液(No.4)の調製およびそれを用いた蛍光染色像の撮影
作製例4で得られた濃度0.02nMのストレプトアビジン修飾テキサスレッド集積シリカ粒子分散液98μLと、作製例8で得られた濃度6μg/mLのビオチン修飾抗HER2抗体(1次抗体)溶液2μLとを混合し、室温で1時間反応させることで、抗HER2抗体(1次抗体)連結テキサスレッド集積シリカ粒子(蛍光プレミックス粒子)を含有する蛍光染色液(No.4)を調製した。
【0219】
得られた蛍光プレミックス粒子は、0.001個/nm2の密度で、テキサスレッド集積シリカ粒子の表面に抗HER2抗体が連結しているものと推定される。
【0220】
得られた蛍光染色液(No.4)を用いた以外は実施例1と同様にして、染色スライドを作製し、蛍光染色像を撮影した。得られた蛍光染色像の平均輝度は472であった。
【0221】
[実施例5]精製した抗HER2抗体連結テキサスレッド集積シリカ粒子を含有する蛍光染色液(No.5)の調製およびそれを用いた蛍光染色像の撮影
まず、実施例1と同様の手順で、蛍光染色液(No.1)を調製した。
【0222】
続いて、該蛍光染色液(No.1)を下記の手順により精製することで、蛍光染色液(No.5)を調製した。
【0223】
[工程A]プロテインA結合樹脂カラムの作製
ゲル濾過担体「Sephacryl S−1000 SF」(GEヘルスケア・ジャパン社製、アリルデキストランとN,N-メチレンビスアクリルアミドが共有架橋結合した樹脂マトリックス)のデキストラン水酸基とブロモ酢酸とを16時間反応させることにより、担体表面をカルボキシメチル化した(Monchaux, E., and Vermette, P. (2008). Cell adhesion resistance mechanisms using arrays of dextran-derivative layers. J Biomed Mater Res A 85, 1052-1063参照)。なお、「Sephacryl S−1000 SF」は、粒径230nmの物体(リポソーム)が侵入し、通過できる程度の空隙を有する多孔質体である(http://lifesciencedb.jp/dbsearch/Literature/get_pne_cgpdf.php?year=1990&number=3511&file=2Qgovzb50x7RW4IcCUhKPw==参照)。
【0224】
続いて、水溶性カルボジイミド(WSC)として1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC:(株)同仁化学研究所製)を400nMの濃度で、N-ヒドロキシコハク酸イミド(NHS:サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を100mMの濃度で含有する混合液を調製し、前記カルボキシメチル化担体と該混合液とを反応させることにより、カルボキシル基を活性エステル化した。そこに、さらにプロテインA(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製「21184」)の溶液を反応させ、脱水反応によりプロテインAが有するアミノ基を前記活性エステル化したカルボキシル基に結合させた。このようにして得られたプロテインA結合樹脂をカラム(1mL注射筒)に充填し、プロテインA結合樹脂カラムを作製した。
【0225】
[工程B]抗HER2抗体連結蛍光プレミックス粒子の精製処理
5mLの緩衝液A(0.1Mグリシン+1.2M酒石酸ナトリウム、pH9.0)を3回流すことによって工程Aで作製したプロテインA結合樹脂カラムを平衡化した。
【0226】
前記蛍光染色液(No.1)1.5mLを、1.5mLの緩衝液Aで希釈して、平衡化したプロテインA結合樹脂カラムに添加し、蛍光プレミックス粒子における抗HER2抗体(IgG)をプロテインA結合樹脂カラムにおけるプロテインAに結合させた。10mLの緩衝液Aでカラムを洗浄した後、3mLの0.1Mグリシン−HCl(pH2.8)を流し、蛍光プレミックス粒子を脱離させて、蛍光染色液(No.5)を得た。
【0227】
得られた蛍光染色液(No.5)を用いた以外は実施例1と同様にして、染色スライドを作製し、蛍光染色像を撮影した。得られた蛍光染色像において、凝集した蛍光プレミックス粒子に由来する輝点はほぼ見当たらず、平均輝度は540と高い値を維持した。
【0228】
[実施例6]1次アプタマー連結テキサスレッド集積シリカ粒子を含有する蛍光染色液(No.6)の調製およびそれを用いた蛍光染色像の撮影
作製例4により得られた濃度0.02nMのストレプトアビジン修飾テキサスレッド集積シリカ粒子分散液25μLと、作製例10により得られた濃度6μg/mLのビオチン修飾HER2抗原認識RNAアプタマー(1次アプタマー)溶液25μLとを混合し、室温で1時間反応させることにより、HER2抗原認識RNAアプタマー(1次アプタマー)連結テキサスレッド集積シリカ粒子(蛍光プレミックス粒子)を含有する蛍光染色液(No.6)を調製した。
【0229】
得られた蛍光染色液(No.6)を用いた以外は実施例1と同様にして、染色スライドを作製し、蛍光染色像を撮影した。得られた蛍光染色像の平均輝度は1701であった。
【0230】
[実施例7]2次アプタマー連結テキサスレッド集積メラミン樹脂粒子を含有する蛍光染色液(No.7)の調製およびそれを用いた蛍光染色像の撮影
作製例5で得られた濃度0.02nMのストレプトアビジン修飾テキサスレッド集積メラミン樹脂粒子分散液25μLと、作製例11で得られた濃度6μg/mLのビオチン修飾ウサギIgG認識RNAアプタマー(2次アプタマー)溶液25μLとを混合し、室温で1時間反応させることにより、ウサギIgG認識RNAアプタマー(2次アプタマー)連結テキサスレッド集積メラミン樹脂粒子(蛍光プレミックス粒子)を含有する蛍光染色液(No.7)を調製した。
【0231】
比較例1において、前記(2−1A)を下記(2−1C)に示す方法に変更した以外は、比較例1と同様にして、染色スライドを作成し、蛍光染色像を撮影した。得られた蛍光染色像の平均輝度は1920であった。
【0232】
(2−1C)免疫染色処理
賦活化処理(1−2)を行った組織アレイスライドに対して、以下の(i)および(ii)の手順で免疫染色処理を行った。
【0233】
(i)1次反応:1%BSA含有PBSを用いて、ウサギモノクローナル抗体であるAnti−Erb 2 antibody[EP1045Y](abcam社製)の0.05nM溶液を、組織アレイスライド上の組織切片に滴下して、4℃で一晩反応させた。
【0234】
(ii)2次反応:1次反応を行った組織アレイスライドをPBSで洗浄した。その後、前記蛍光染色液(No.7)を、50mMのTris溶液を用いて、濃度を0.02nMに調整した液体を、前記洗浄後の組織アレイスライド上の組織切片に滴下して、4℃で一晩反応させた。
【0235】
[実施例8]2種類の蛍光プレミックス粒子を含有する蛍光染色液(No.8)の調製およびそれを用いた蛍光染色像の撮影
作製例6で得られた濃度0.02nMの抗DNP抗体修飾ピロメテン556集積メラミン樹脂粒子分散液10μLと、作製例12で得られた濃度6μg/mLのDNP修飾抗マウスIgG抗体(2次抗体)溶液90μLとを混合し、室温で1時間反応させることにより、第1の蛍光プレミックス粒子として、抗マウスIgG抗体(2次抗体)連結ピロメテン556集積メラミン樹脂粒子を含有する蛍光染色液(No.8A)を調製した。
【0236】
作製例7で得られた濃度0.02nMの抗FITC抗体修飾テキサスレッド集積シリカ粒子分散液10μLと、作製例13で得られた濃度6μg/mLのFITC修飾抗ウサギIgG抗体(2次抗体)溶液90μLとを混合し、室温で1時間反応させることにより、第2の蛍光プレミックス粒子として、抗ウサギIgG抗体(2次抗体)連結テキサスレッド集積シリカ粒子を含有する蛍光染色液(No.8B)を調製した。
【0237】
得られた蛍光染色液(No.8A)および(No.8B)を混合して、第1および第2の蛍光プレミックス粒子を等量含有する、二重染色用の一液型蛍光染色液(No.8)を調製した。
【0238】
USBiomax社製の肺組織アレイスライド「LC241b」(6名の患者に由来する腫瘍組織および正常組織の切片が2枚ずつと、褐色細胞腫(組織マーカー)の切片が1枚、合計25枚の切片が積載されているスライドグラス)を購入した。該組織アレイスライドを用いて、下記(1)、(2)および(3)に示す手順で、標本前処理工程(脱パラフィン処理、賦活化処理)、染色工程(二重免疫染色処理、蛍光体集積粒子固定処理および形態観察用染色処理)、標本後処理工程(封入処理)を行うことにより、免疫染色法に基づく染色スライドを作製した。その後、作製された染色スライドを用いて、下記(4)に示す手順で観察および撮像を行った。
【0239】
(1)標本前処理工程
(1−1)脱パラフィン処理
(i)キシレンを入れた容器に組織アレイスライドを15分間浸漬させた。途中2回キシレンを交換した。
【0240】
(ii)(i)で得られた組織アレイスライドを、エタノールを入れた容器に10分間浸漬させた。途中2回エタノールを交換した。
【0241】
(1−2)賦活化処理
(i)脱パラフィン処理した組織アレイスライドを水を入れた容器に10分間浸漬させた。
【0242】
(ii)(i)で得られた組織アレイスライドを、10mMクエン酸緩衝液(pH6.0)に浸漬させた。
【0243】
(iii)121℃で5分間オートクレーブ処理を行った。
【0244】
(iv)PBSを入れた容器に、オートクレーブ処理後の組織アレイスライドを15分間浸漬させた。途中3回PBSを交換した。
【0245】
(v)(iv)で得られた組織アレイスライドと、1%BSA含有PBSとを接触させて、1時間放置した。
【0246】
(2)染色工程
(2−1)二重免疫染色処理
(i)1%BSA含有PBSでそれぞれの濃度が0.05nMとなるよう希釈した抗PD−L1マウス抗体・抗EGFRウサギ抗体含有溶液を、賦活化処理した組織アレイスライドに載せて一晩放置した。
【0247】
(ii)前記一液型蛍光染色液(No.8)を、1%BSA含有PBSでそれぞれのプレミックス粒子の濃度が0.1nMとなるよう希釈し、その希釈液を(i)で得られた組織アレイスライドに載せて一晩放置した。
【0248】
(2−2)蛍光体集積粒子固定処理および形態観察用染色処理
(i)PBSを入れた容器に、二重免疫染色処理後の組織アレイスライドを30分間浸漬させた。
【0249】
(ii)(i)で得られた組織アレイスライドを、4%中性パラホルムアルデヒド溶液に10分間浸漬することにより、蛍光体集積粒子固定処理を行った後、HE染色を行うことで、染色スライドを作製した。
【0250】
(3)標本後処理工程
得られた染色スライドにMerck社製Aquatexを滴下後、カバーガラスを載せることで封入処理を行った。
【0251】
(4)観察
封入処理を終えた染色スライドを、緑色用および赤色用の2種類のフィルターセット(Semrock社製、下記表3参照)を備えた蛍光顕微鏡(Carl Zeiss社製)のステージに設置した。両方のフィルターセットのそれぞれにおいて、染色スライドの蛍光像の画面全体の蛍光輝点から算出された合計輝度値および一輝点毎の輝度値を計測した。国際公開第2017/014196号に記載の「第1の算出方法」および「第2の算出方法」に従って、2種類の蛍光プレミックス粒子それぞれの輝度比率を算出したところ、どちらの輝度比率も同じであり(表4参照)、また、PD−L1:EGFR=100:1900の割合で発現していることが確認された(表5)。
【0252】
【表3】
【0253】
【表4】
【0254】
【表5】
【符号の説明】
【0255】
1:蛍光プレミックス粒子(目的タンパク質結合性物質連結蛍光体集積粒子)
10:蛍光体集積粒子
15:リンカー
20:第1反応性物質
21:ストレプトアビジン
30:第2反応性物質
31:ビオチン
40:目的タンパク質結合性物質
41:1次抗体
42:2次抗体
100:組織切片
150:目的タンパク質
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]
【国際調査報告】