特表-18193917IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルプスアルパイン株式会社の特許一覧
再表2018-193917回転型操作装置とその制御方法及びプログラム
<>
  • 再表WO2018193917-回転型操作装置とその制御方法及びプログラム 図000003
  • 再表WO2018193917-回転型操作装置とその制御方法及びプログラム 図000004
  • 再表WO2018193917-回転型操作装置とその制御方法及びプログラム 図000005
  • 再表WO2018193917-回転型操作装置とその制御方法及びプログラム 図000006
  • 再表WO2018193917-回転型操作装置とその制御方法及びプログラム 図000007
  • 再表WO2018193917-回転型操作装置とその制御方法及びプログラム 図000008
  • 再表WO2018193917-回転型操作装置とその制御方法及びプログラム 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2018年10月25日
【発行日】2020年1月23日
(54)【発明の名称】回転型操作装置とその制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/01 20060101AFI20191220BHJP
   G06F 3/0362 20130101ALI20191220BHJP
   G05G 5/03 20080401ALI20191220BHJP
   G05G 25/00 20060101ALI20191220BHJP
   H01H 19/00 20060101ALN20191220BHJP
   H01H 19/02 20060101ALN20191220BHJP
   H01H 9/16 20060101ALN20191220BHJP
【FI】
   G06F3/01 560
   G06F3/0362 461
   G05G5/03 B
   G05G25/00 C
   H01H19/00 Y
   H01H19/02 A
   H01H9/16 G
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】23
【出願番号】特願2019-513569(P2019-513569)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2018年4月10日
(31)【優先権主張番号】特願2017-84369(P2017-84369)
(32)【優先日】2017年4月21日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】涌田 宏
【テーマコード(参考)】
3J070
5B087
5E555
5G052
5G219
【Fターム(参考)】
3J070AA14
3J070BA19
3J070BA51
3J070CB01
3J070CB37
3J070CC71
3J070DA01
3J070DA52
5B087AA09
5B087BC12
5B087BC13
5E555AA08
5E555BA02
5E555BB02
5E555BC01
5E555DA24
5E555FA00
5G052AA24
5G052BB02
5G052JA07
5G052JB20
5G219GS21
5G219HT02
5G219KS08
5G219QS02
(57)【要約】
回転角センサ105における操作部材102の回転角の検出値の時間変化に基づいて、回転操作に対する操作部材102の見かけ上の慣性モーメントを本来の慣性モーメントJ2と相違させる補正トルクが制御トルクT1に追加されるように、制御信号(D1,D2)が補正される。操作部材102の見かけ上の慣性モーメントを本来の慣性モーメントJ2と相違させることにより、この見かけ上の慣性モーメントを操作部材102の見た目の質感に適合させることができる。従って、操作部材102の見た目の質感と実際の操作で感じる負荷との食い違いに起因する操作感触の違和感を、効果的に低減できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転操作に応じて回転可能な操作部材と、
入力される制御信号に応じて、前記操作部材を回転駆動又は制動するための制御トルクを発生するトルク発生部と、
前記操作部材の回転角を検出する回転角センサと、
前記回転角センサにおける前記回転角の検出値に応じた前記制御信号を生成する制御信号生成部と、
前記回転角の検出値の時間変化に基づいて、前記回転操作に対する前記操作部材の見かけ上の慣性モーメントを本来の慣性モーメントと相違させるための補正トルクが前記制御トルクに追加されるように前記制御信号を補正する第1補正部と
を有する回転型操作装置。
【請求項2】
前記第1補正部は、前記回転角の検出値に基づいて前記操作部材の角加速度を算出し、前記操作部材の慣性モーメントと前記角加速度とに基づいて推定される第1慣性トルクに応じた前記補正トルクが前記制御トルクに追加されるように前記制御信号を補正する、
請求項1に記載の回転型操作装置。
【請求項3】
前記操作部材において前記回転操作の操作トルクが印加される部分と前記制御トルクが印加される部分との間に作用するねじれトルクを検出するトルクセンサと、
前記ねじれトルクの検出値及び前記回転角の検出値に基づいて推定される前記制御トルクと、前記制御信号に対応する前記制御トルクとの差である誤差トルクが小さくなるように前記制御信号を補正する第2補正部とを有する、
請求項1又は2に記載の回転型操作装置。
【請求項4】
前記第2補正部は、前記回転角の検出値に基づいて前記操作部材の角加速度を算出し、前記トルクセンサからみて前記トルク発生部側の回転する部材の慣性モーメントと前記角加速度とに基づいて第2慣性トルクを算出し、前記ねじれトルクの検出値と前記第2慣性トルクとに基づいて推定される前記制御トルクと、前記制御信号に対応する前記制御トルクとの差である前記誤差トルクが小さくなるように前記制御信号を補正する、
請求項3に記載の回転型操作装置。
【請求項5】
前記トルク発生部は、
入力される第1制御信号に応じて、前記操作部材を回転駆動する駆動トルクを発生する駆動機と、
入力される第2制御信号に応じて、前記操作部材の回転を制動する制動トルクを発生する制動機とを含み、
前記第1補正部は、前記第1制御信号及び前記第2制御信号の少なくとも一方を補正し、
前記第2補正部は、前記第1制御信号及び前記第2制御信号の少なくとも一方を補正する、
請求項3又は4に記載の回転型操作装置。
【請求項6】
前記制動機は、
前記操作部材に接触した磁気粘性流体と、
前記第2制御信号に応じた磁界を発生し、当該磁界により前記磁気粘性流体の粘性を変化させる磁界制御部とを含む、
請求項5に記載の回転型操作装置。
【請求項7】
前記制御信号生成部は、前記操作部材の回転角と前記第1制御信号の信号値との予め設定された対応関係、及び、前記操作部材の回転角と前記第2制御信号の信号値との予め設定された対応関係に基づいて、前記回転角の検出値に対応した信号値を持つ前記第1制御信号及び前記第2制御信号を生成する、
請求項5又は6に記載の回転型操作装置。
【請求項8】
前記操作部材を回転可能に支持する筐体を有し、
前記操作部材は、前記筐体によって回転可能に支持されたシャフトと、前記シャフトに固定された回転操作用のノブとを含み、
前記駆動機は、前記シャフトを回転駆動する前記駆動トルクを発生し、
前記制動機は、前記シャフトの回転を制動する前記制動トルクを発生し、
前記トルクセンサは、前記シャフトにおいて前記駆動トルク及び前記制動トルクが印加される部分と前記ノブが固定される部分との間に作用する前記ねじれトルクを検出する、
請求項5乃至7の何れか一項に記載の回転型操作装置。
【請求項9】
回転型操作装置の制御方法であって、
前記回転型操作装置は、
回転操作により印加される操作トルクに応じて回転可能な操作部材と、
入力される制御信号に応じて、前記操作部材を回転駆動又は制動するための制御トルクを発生するトルク発生部と、
前記操作部材の回転角を検出する回転角センサと
を有し、
前記回転角センサにおける前記回転角の検出値に応じた前記制御信号を生成することと、
前記回転角の検出値の時間変化に基づいて、前記回転操作に対する前記操作部材の見かけ上の慣性モーメントを本来の慣性モーメントと相違させるための補正トルクが前記制御トルクに追加されるように前記制御信号を補正することとを有する、
回転型操作装置の制御方法。
【請求項10】
前記回転型操作装置は、前記操作部材において前記操作トルクが印加される部分と前記制御トルクが印加される部分との間に作用するねじれトルクを検出するトルクセンサを有しており、
前記ねじれトルクの検出値及び前記回転角の検出値に基づいて推定される前記制御トルクと、前記制御信号に対応する前記制御トルクとの差である誤差トルクが小さくなるように前記制御信号を補正することを有する、
請求項9に記載の回転型操作装置の制御方法。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の回転型操作装置の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転操作に伴う操作感触を制御することが可能な回転型操作装置とその制御方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
操作部材を回転させることにより、車両のトランスミッションの切り換えやオーディオ装置の音量の調節などの入力を受け付ける回転型操作装置が知られている。例えば、下記の特許文献1に記載される力覚付与入力装置は、操作者により回転操作される操作部材と、操作部材にトルクを与える電動アクチュエータと、操作部材の回転角を検知する回転角度検知手段と、操作部材の角速度を検知する回転速度検知手段と、操作部材の回転角及び角速度に応じて電動アクチュエータを制御する制御手段とを備える。この力覚付与入力装置は、回転操作に伴う操作部材の回転角及び回転速度に応じて、電動アクチュエータから操作部材に与えるトルクを制御することにより、クリック機構に似た操作感触を発生させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−114201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、回転型操作装置の操作感触は、回転操作に伴う負荷の感覚や指に伝わる衝撃の感覚など、実際の操作によって得られる感覚に基づくものであるが、その実際の感覚と操作者が予想する感覚との違いが大きくなると、操作者に違和感を与える場合がある。
【0005】
例えば車載の機器では、軽量化を図りつつ見た目の高級感を演出するために、樹脂などの軽量な材料の表面に金属的な質感を与える処理を施す場合がある。操作部材の見た目の質感が金属に近い場合、操作者は金属に相応しい重たい負荷を無意識のうちに予想する。そのため、実際の操作で感じる負荷が予想した負荷に比べて軽いと、その感覚の違いが操作者に違和感を与えてしまう。
【0006】
操作部材の質量が異なると、操作部材の慣性トルクが異なるため、この慣性トルクの違いが回転操作の負荷の感覚に影響を与える。操作部材の慣性トルクは、操作部材の慣性モーメントと角加速度に応じて変化する。仮に、電動アクチュエータなどを用いて操作部材に一定のトルクを与えても、角加速度に応じて変化しない一定のトルクは慣性トルクとは異なるため、上述した操作者の違和感を解消することはできない。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、操作部材の見た目の質感と実際の操作で感じる負荷との食い違いに起因する操作感触の違和感を低減できる回転型操作装置とその制御方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点に係る回転型操作装置は、回転操作に応じて回転可能な操作部材と、入力される制御信号に応じて、前記操作部材を回転駆動又は制動するための制御トルクを発生するトルク発生部と、前記操作部材の回転角を検出する回転角センサと、前記回転角センサにおける前記回転角の検出値に応じた前記制御信号を生成する制御信号生成部と、前記回転角の検出値の時間変化に基づいて、前記回転操作に対する前記操作部材の見かけ上の慣性モーメントを本来の慣性モーメントと相違させるための補正トルクが前記制御トルクに追加されるように前記制御信号を補正する第1補正部とを有する。
【0009】
この構成によれば、前記回転操作に対する前記操作部材の見かけ上の慣性モーメントを本来の慣性モーメントと相違させるための前記補正トルクが前記制御トルクに追加されることにより、前記操作部材の見かけ上の慣性モーメントを前記操作部材の見た目の質感に適合させることが可能になる。そのため、前記操作部材の見た目の質感と実際の操作で感じる負荷との食い違いに起因する操作感触の違和感が低減される。
【0010】
好適に、前記第1補正部は、前記回転角の検出値に基づいて前記操作部材の角加速度を算出し、前記操作部材の慣性モーメントと前記角加速度とに基づいて推定される第1慣性トルクに応じた補正トルクが前記制御トルクに追加されるように前記制御信号を補正してよい。
【0011】
この構成によれば、前記操作部材の慣性モーメントと前記角加速度とに基づいて推定される第1慣性トルクに応じた前記補正トルクが前記制御トルクに追加されることにより、前記回転操作に対する前記操作部材の見かけ上の慣性モーメントが本来の仮想モーメントに対して変化する。
【0012】
好適に、上記回転型操作装置は、前記操作部材において前記回転操作の操作トルクが印加される部分と前記制御トルクが印加される部分との間に作用するねじれトルクを検出するトルクセンサと、前記ねじれトルクの検出値及び前記回転角の検出値に基づいて推定される前記制御トルクと、前記制御信号に対応する前記制御トルクとの差である誤差トルクが小さくなるように前記制御信号を補正する第2補正部とを有してよい。
【0013】
この構成によれば、前記ねじれトルクの検出値及び前記回転角の検出値に基づいて推定される前記制御トルクと、前記制御信号に対応する前記制御トルクとの差である前記誤差トルクが小さくなる。これにより、前記操作部材の見かけ上の慣性モーメントが精度良く設定される。
【0014】
好適に、前記第2補正部は、前記回転角の検出値に基づいて前記操作部材の角加速度を算出し、前記トルクセンサからみて前記トルク発生部側の回転する部材の慣性モーメントと前記角加速度とに基づいて第2慣性トルクを算出し、前記ねじれトルクの検出値と前記第2慣性トルクとに基づいて推定される前記制御トルクと、前記制御信号に対応する前記制御トルクとの差である前記誤差トルクが小さくなるように前記制御信号を補正してよい。
【0015】
この構成によれば、前記トルクセンサからみて前記トルク発生部側の回転する部材の慣性モーメントと、前記角加速度とに基づいて、前記第2慣性トルクが算出される。前記誤差トルクは、前記ねじれトルクの検出値と前記第2慣性トルクとに基づいて推定される前記制御トルクと、前記制御信号に対応する前記制御トルクとの差である。前記誤差トルクが小さくなることにより、前記操作部材の見かけ上の慣性モーメントが精度良く設定される。
【0016】
好適に、前記トルク発生部は、入力される第1制御信号に応じて、前記操作部材を回転駆動する駆動トルクを発生する駆動機と、入力される第2制御信号に応じて、前記操作部材の回転を制動する制動トルクを発生する制動機とを含んでよい。前記第1補正部は、前記第1制御信号及び前記第2制御信号の少なくとも一方を補正してよい。前記第2補正部は、前記第1制御信号及び前記第2制御信号の少なくとも一方を補正してよい。
【0017】
この構成によれば、前記第1制御信号に応じた前記駆動トルクが前記駆動機において発生し、前記第2制御信号に応じた前記制動トルクが前記制動機において発生する。そのため、前記駆動トルクと前記制動トルクとの組み合わせにより、様々な操作感触を生み出す前記制御トルクを生成することが可能になる。また、前記第1補正部及び前記第2補正部において、前記第1制御信号及び前記第2制御信号の少なくとも一方がそれぞれ補正されることにより、前記補正トルクが前記制御トルクに追加されるとともに、前記誤差トルクの低減が図られる。
【0018】
好適に、前記制動機は、前記操作部材に接触した磁気粘性流体と、前記第2制御信号に応じた磁界を発生し、当該磁界により前記磁気粘性流体の粘性を変化させる磁界制御部とを含んでよい。
【0019】
この構成によれば、前記磁気粘性流体の粘性を変化させることにより、前記操作部材に印加される前記制動トルクが変化する。従って、前記操作部材に機械的な摩擦力を加える方法に比べて前記制動トルクの精密な制御が可能になる。
【0020】
好適に、前記制御信号生成部は、前記操作部材の回転角と前記第1制御信号の信号値との予め設定された対応関係、及び、前記操作部材の回転角と前記第2制御信号の信号値との予め設定された対応関係に基づいて、前記回転角の検出値に対応した信号値を持つ前記第1制御信号及び前記第2制御信号を生成してよい。
【0021】
この構成によれば、前記第1制御信号及び前記第2制御信号の各々について予め設定された前記対応関係に基づいて、前記回転角の検出値に対応した信号値を持つ前記第1制御信号及び前記第2制御信号がそれぞれ生成される。
【0022】
好適に、上記回転型操作装置は、前記操作部材を回転可能に支持する筐体を有してよい。前記操作部材は、前記筐体によって回転可能に支持されたシャフトと、前記シャフトに固定された回転操作用のノブとを含んでよい。前記駆動機は、前記シャフトを回転駆動する前記駆動トルクを発生してよい。前記制動機は、前記シャフトの回転を制動する前記制動トルクを発生してよい。前記トルクセンサは、前記シャフトにおいて前記駆動トルク及び前記制動トルクが印加される部分と前記ノブが固定される部分との間に作用する前記ねじれトルクを検出してよい。
【0023】
この構成によれば、前記ノブの見た目の質感と、前記ノブに対する実際の回転操作で感じる負荷との食い違いに起因する操作感触の違和感を低減することが可能になる。
【0024】
本発明の第2の観点は、回転操作により印加される操作トルクに応じて回転可能な操作部材と、入力される制御信号に応じて、前記操作部材を回転駆動又は制動するための制御トルクを発生するトルク発生部と、前記操作部材の回転角を検出する回転角センサとを有する回転型操作装置の制御方法に関する。この制御方法は、前記回転角センサにおける前記回転角の検出値に応じた前記制御信号を生成することと、前記回転角の検出値の時間変化に基づいて、前記回転操作に対する前記操作部材の見かけ上の慣性モーメントを本来の慣性モーメントと相違させるための補正トルクが前記制御トルクに追加されるように前記制御信号を補正することとを有する。
【0025】
前記回転型操作装置は、前記操作部材において前記操作トルクが印加される部分と前記制御トルクが印加される部分との間に作用するねじれトルクを検出するトルクセンサを有してよい。前記回転型操作装置の制御方法は、前記ねじれトルクの検出値及び前記回転角の検出値に基づいて推定される前記制御トルクと、前記制御信号に対応する前記制御トルクとの差である誤差トルクが小さくなるように前記制御信号を補正することを有してよい。
【0026】
本発明の第3の観点は、上記第2の観点に係る回転型操作装置の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムに関する。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、操作部材の見た目の質感と実際の操作で感じる負荷との食い違いに起因する操作感触の違和感を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施形態に係る回転型操作装置の外観の一例を示す斜視図である。
図2図1に示す2−2線を通る断面における回転型操作装置の部分切断面図である。
図3図1に示す回転型操作装置の構成の一例を示すブロック図である。
図4】制御トルクの制御信号の生成と補正に関わる構成の一例を示すブロック図である。
図5】回転角に応じて変化する第1制御信号及び第2制御信号と、これに対応する駆動トルク及び制御トルクの例を示す図である。
図6図1に示す回転型操作装置の各部に作用するトルクを説明するための図である。
図7】制御信号の生成及び補正に関わる処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態に係る回転型操作装置について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る回転型操作装置100の外観の一例を示す斜視図である。図2は、図1に示す2−2線を通る断面における回転型操作装置100の部分切断面図である。図3は、図1に示す回転型操作装置100の構成の一例を示すブロック図である。
【0030】
図1に示すように、回転型操作装置100は、操作者の回転操作に応じて回転可能な操作部材102と、操作部材102を回転可能に支持する筐体101とを有する。回転型操作装置100は、操作部材102の回転角や、回転位置、回転速度等の回転操作に関わる操作情報を生成する。回転型操作装置100は、例えばオーディオ装置における音量の調整や、車両におけるトランスミッションの切り換えなどに用いられる。
【0031】
図2の切断面は、操作部材102の回転軸AXを通る。図2に示すように、操作部材102は、筐体101によって回転可能に支持されたシャフト112と、シャフト112に固定されたノブ111とを含む。シャフト112は、筐体101の内部に収容される。ノブ111は、筐体101の外側に露出しており、操作者の回転操作を受ける。図1及び図2の例において、ノブ111とシャフト112は回転軸AXを中心軸とする円柱状の形状を持っており、回転軸AXの回りで一体的に回転する。
【0032】
図2に示すように、回転型操作装置100は、機械系の構成として、トルク発生部103と、トルクセンサ104と、回転角センサ105とを有する。トルク発生部103、トルクセンサ104及び回転角センサ105は、それぞれ筐体101の内部に収容されており、操作部材102のシャフト112に沿って設けられている。
【0033】
また図3に示すように、回転型操作装置100は、制御系の構成として、処理部108と、記憶部109と、インターフェース部110とを更に含む。
【0034】
(トルク発生部103)
トルク発生部103は、後述する処理部108(図3)から入力される制御信号(D1,D2)に応じて、操作部材102を回転駆動又は制動するための制御トルクT1を発生する。図2の例において、トルク発生部103は、駆動機106と制動機107を含む。
【0035】
駆動機106は、処理部108から入力される第1制御信号D1に応じて、操作部材102を回転駆動する駆動トルクTdを発生する。駆動機106は、例えば図2に示すように、DCモータなどの電動機120を含む。電動機120は、図2の例において、シャフト112と一体的に回転する複数の回転子121と、回転子121に対向して配置された複数の固定子122とを含む。回転子121は例えば永久磁石であり、固定子122は例えばコイルである。複数の固定子122のコイルにそれぞれ所定の波形の駆動電流を供給することにより、複数の回転子121に作用する磁界が発生し、複数の回転子121をシャフト112とともに回転駆動する駆動トルクTdが発生する。駆動トルクTdの大きさは、固定子122のコイルに供給する駆動電流の大きさに応じて変化する。
【0036】
駆動機106は、図3に示すように、駆動回路123と駆動信号生成部124を更に含む。駆動回路123は、入力される駆動信号に応じた駆動電流を発生し、電動機120の複数の固定子122にそれぞれ供給する。駆動信号生成部124は、処理部108から入力される第1制御信号D1に応じた駆動信号を生成し、駆動回路123に入力する。第1制御信号D1は、固定子122のコイルに供給する駆動電流の大きさを設定する信号である。駆動信号生成部124は、この第1制御信号D1の設定に応じた駆動電流が供給されるように駆動信号を生成する。
【0037】
例えば駆動信号生成部124は、第1制御信号D1の信号値(デジタル値)に応じた振幅を持つアナログの駆動信号を出力するD/Aコンバータを含む。あるいは、駆動信号生成部124は、第1制御信号D1の信号値(デジタル値)に応じてパルス幅変調されたPWM信号を平滑化し、駆動信号として出力する平滑回路を含んでもよい。
【0038】
なお、駆動機106は、上述した電動機120に限定されず、他の動力源に基づいてトルクを発生する種々のタイプの原動機を含んでもよい。
【0039】
制動機107は、処理部108から入力される第2制御信号D2に応じて、操作部材102の回転を制動する制動トルクTbを発生する。例えば制動機107は、操作部材102に接触した磁気粘性流体134と、磁気粘性流体134に作用する磁界を制御する磁界制御部132とを含む。
【0040】
磁界制御部132は、第2制御信号D2に応じた磁界を発生し、当該磁界により磁気粘性流体134の粘性を変化させる。例えば磁界制御部132は、シャフト112の周りに環状に巻かれたコイルである。図2に示すように、磁界制御部132は、操作部材102のシャフト112に固定された環状のコイルケース131の中に配置される。コイルケース131は、回転軸AXに略垂直な対向面133を持つ。シャフト112には、回転軸AXに略垂直な面を持つ円盤状の抵抗盤135が固定されており、この抵抗盤135の一方の面とコイルケース131の対向面133とが近接して配置される。磁気粘性流体134は、コイルケース131の対向面133と抵抗盤135との間隙に充填されており、図示しないシール部材によってこの間隙の中に閉じ込められている。
【0041】
磁界制御部132に流れる駆動電流が変化すると、磁気粘性流体134を通る磁界が変化し、磁界の変化によって磁気粘性流体134を構成する粒子の結合力が変化し、粒子の結合力の変化によって磁気粘性流体134の粘性が変化する。磁気粘性流体134の粘性が変化すると、コイルケース131と抵抗盤135との相対的な回転を妨げる力、すなわち摩擦力が変化する。この摩擦力が大きくなるほど、操作部材102の回転を制動する制動トルクTbが大きくなる。制動トルクTbの大きさは、磁界制御部132に流れる駆動電流の大きさに応じて変化する。
【0042】
制動機107は、図3に示すように、駆動回路136と駆動信号生成部137を更に含む。駆動回路136は、入力される駆動信号に応じた駆動電流を発生し、磁界制御部132に供給する。駆動信号生成部137は、処理部108から入力される第2制御信号D2に応じた駆動信号を生成し、駆動回路136に入力する。第2制御信号D2は、磁界制御部132に供給する駆動電流の大きさを設定する信号である。駆動信号生成部137は、この第2制御信号D2の設定に応じた駆動電流が供給されるように駆動信号を生成する。
【0043】
例えば駆動信号生成部137は、第2制御信号D2の信号値(デジタル値)に応じた振幅を持つアナログの駆動信号を出力するD/Aコンバータを含む。あるいは、駆動信号生成部137は、第2制御信号D2の信号値(デジタル値)に応じてパルス幅変調されたPWM信号を平滑化し、駆動信号として出力する平滑回路を含んでもよい。
【0044】
なお、制動機107は、上述したように磁気粘性流体134の粘性を利用するものに限定されず、他の種々の方法で制動トルクTbを発生してもよい。例えば、制動機107は、操作部材102へ機械的に部材を接触させる方法や、電磁力を用いる方法により制動トルクTbを発生してもよい。
【0045】
(回転角センサ105)
回転角センサ105は、操作部材102の回転角を検出するセンサであり、例えばロータリーエンコーダ140を含む。ロータリーエンコーダ140は、例えば図2に示すように、操作部材102のシャフト112に固定された円盤状の検出盤141と、検出盤141の外周縁付近に近接して配置された光学検知部142を含む。検出盤141には、外周縁付近に複数の穴が形成されている。光学検知部142は、この穴の有無を光学的に検知する。光学検知部142の検知結果により、操作部材102の回転角が検出される。
【0046】
なお、回転角センサ105は、上述したロータリーエンコーダ140に限定されず、他の種々の方法により回転角を検出してもよい。例えば、回転角センサ105は、シャフト112に固定された永久磁石による磁界の変化に基づいて回転角を検出してもよいし、シャフト112の回転に応じて抵抗値や他の物理量が変化するセンサにより回転角を検出してもよい。
【0047】
(トルクセンサ104)
トルクセンサ104は、操作部材102において回転操作の操作トルクT2が印加される部分と、トルク発生部103の制御トルクT1が印加される部分との間に作用するねじれトルクTsを検出する。すなわち、トルクセンサ104は、シャフト112において駆動トルクTd及び制動トルクTbが印加される部分とノブ111が固定される部分との間に作用するねじれトルクTsを検出する。
【0048】
トルクセンサ104は、例えば強磁性体の磁歪効果を利用してねじれトルクTsを検出する。図2の例において、トルクセンサ104は、シャフト112に形成された磁歪膜115A及び115Bと、磁歪膜115Aの周囲に巻かれた検出コイル116Aと、磁歪膜115Bの周囲に巻かれた検出コイル116Bとを有する。図3では、検出コイル116A及び116Bを合わせて「検出コイル116」と表している。トルクセンサ104は、検出コイル116A及び116Bの出力信号の差を増幅するアンプ回路117を含む。
【0049】
磁歪膜115A及び115Bは、互いに逆方向の磁気異方性を有しており、シャフト112に作用するねじれトルクTsに応じて、一方の透磁率が増大すると他方の透磁率が減少する。検出コイル116A及び116Bは、図示しない励磁コイルと磁気結合しており、励磁コイルに印加される信号に応じて電磁誘導された信号をそれぞれ出力する。検出コイル116A及び116Bの出力信号の差は、磁歪膜115A及び115Bの透磁率の差に応じて変化し、ねじれトルクTsの大きさを表す。トルクセンサ104は、検出コイル116A及び116Bの出力信号の差に相当する信号をねじれトルクTsの検出結果として出力する。
【0050】
なお、トルクセンサ104は、上述した磁歪効果を利用する方法に限定されず、他の種々の方法によりねじれトルクを検出してもよい。例えば、トルクセンサ104は、シャフト112に取り付けられたトルクゲージの信号をスリップリングなどを介して出力する方法によりねじれトルクTsを検出してもよい。
【0051】
図2に示すように、トルクセンサ104を挟んだシャフト112の一方側にノブ111が固定され、シャフト112の他方側に回転角センサ105とトルク発生部103が設けられている。また図2の例において、回転角センサ105はトルク発生部103よりトルクセンサ104の近くに位置し、トルク発生部103の中では、駆動機106が制動機107よりトルクセンサ104の近くに位置する。
【0052】
(処理部108)
処理部108は、回転型操作装置100の動作に関わる制御やデータの入出力などの処理を実行する装置であり、例えば記憶部109に格納されるプログラム155に基づいて種々の処理を実行するコンピュータを含む。処理部108は、全ての処理をコンピュータによって実行しても良いし、少なくとも一部の処理を専用のハードウェア(ロジック回路)で実行してもよい。
【0053】
処理部108は、トルク発生部103において発生するトルク(制御トルクT1)の制御に関わる処理を行う構成要素として、制御信号生成部151と、第1補正部152と、第2補正部153を含む。
【0054】
(制御信号生成部151)
制御信号生成部151は、回転角センサ105における回転角の検出値に応じた制御信号(D1,D2)を生成する。すなわち、制御信号生成部151は、操作部材102の回転角と第1制御信号D1の信号値との予め設定された対応関係、及び、操作部材102の回転角と第2制御信号D2の信号値との予め設定された対応関係に基づいて、回転角の検出値に対応した信号値を持つ第1制御信号D1及び第2制御信号D2を生成する。操作部材102の回転角と第1制御信号D1の信号値との対応関係、及び、操作部材102の回転角と第2制御信号D2の信号値との対応関係は、パターンデータ156として記憶部109に格納される。制御信号生成部151は、このパターンデータ156を参照して、回転角の検出値に応じた第1制御信号D1及び第2制御信号D2を生成する。
【0055】
図4は、制御トルクT1の制御信号(D1,D2)の生成と補正に関わる構成の一例を示すブロック図である。図4の例において、制御信号生成部151は、角度データ生成部161と、第1制御信号生成部162と、第2制御信号生成部163を含む。
【0056】
角度データ生成部161は、回転角センサ105における回転角の検出値に応じた角度データAを生成する。例えば角度データ生成部161は、操作部材102を回転することが可能な範囲における回転角の検出値を、この範囲に含まれる複数の角度範囲の各々における相対的な回転角を表す角度データAに変換する。具体例として、回転可能な範囲に制限がなく、1回転(360°)の範囲が12個の角度範囲に分かれており、各角度範囲が30°の幅を持つものとする。この場合、角度データ生成部161は、回転角の検出値が0°から360°まで変化する間に、角度データAを0°から30°まで12回変化させる。
【0057】
第1制御信号生成部162は、パターンデータ156に含まれる第1制御信号D1の信号値と角度データAとの対応関係に基づいて、角度データAに対応した信号値を持つ第1制御信号D1を生成する。
第2制御信号生成部163は、パターンデータ156に含まれる第2制御信号D2の信号値と角度データAとの対応関係に基づいて、角度データAに対応した信号値を持つ第2制御信号D2を生成する。
【0058】
図5は、回転角に応じて変化する第1制御信号D1及び第2制御信号D2と、これに対応する駆動トルクTd及び制御トルクT1の例を示す図である。図5における横軸は、操作部材102の回転方向を正とする一方向への回転角の変化を示す。図5における正の第1制御信号D1は、操作部材102の回転を抑制する方向に駆動トルクTdを発生させることを示し、負の第1制御信号D1は、操作部材102の回転を促進する方向に駆動トルクTdを発生させることを示す。図5における正の駆動トルクTdは、操作部材102の回転を抑制するトルクを示し、負の駆動トルクTdは、操作部材102の回転を促進するトルクを示す。図5における第2制御信号D2は、制動トルクTbの大きさを指定する。図5における制御トルクT1は、駆動トルクTdと制動トルクTbとの和を示しており、正負の符号の意味は駆動トルクTdと同じである。なお、図5に例示する制御トルクT1は、操作部材102を一定の速度で回転させた場合のものであり、後述する第1補正部152による補正を受けていない。
【0059】
操作部材102の回転方向を右回りと左回りとで反転させる場合、例えば制御信号生成部151は、それぞれの回転方向において図5と同様な第1制御信号D1及び第2制御信号D2を生成してよい。この場合、それぞれの回転方向において、図5における正の第1制御信号D1は、操作部材102の回転を抑制する方向に駆動トルクTdを発生させることを示し、負の第1制御信号D1は、操作部材102の回転を促進する方向に駆動トルクTdを発生させることを示す。
【0060】
図5に示すように、連続する2つの角度範囲R0−1及びR0−2において、回転角の変化に対する第1制御信号D1の変化のパターンが同一となっている。1回転の範囲(360°)には、角度範囲R0−1、R0−2と同様な複数の角度範囲が含まれる。これらの複数の角度範囲を区別せずに「R0」と呼ぶ。角度データ生成部161は、それぞれの角度範囲R0において、始点から終点に向かって同様に変化する角度データAを生成する。これにより、第1制御信号生成部162及び第2制御信号生成部163は、それぞれの角度範囲R0において同様に変化する第1制御信号D1及び第2制御信号D2を生成する。
【0061】
図5の例において、1つの角度範囲R0には、第1区間R1と第2区間R2が含まれる。角度データが「A1」から「A3」までの第1区間R1において、第1制御信号D1は負のピーク値DL1から正のピーク値DH1へ連続的に変化し、駆動トルクTdは負のピーク値TL1から正のピーク値TH1へ連続的に変化する。第1区間R1の角度データA2において、第1制御信号D1がゼロになり、これに対応して駆動トルクTdもゼロになる。
【0062】
角度データが「A3」から「A1」までの第2区間R2において、第1制御信号D1は正のピーク値DH1から負のピーク値DL1へ連続的に変化し、駆動トルクTdは正のピーク値TH1から負のピーク値TL1へ連続的に変化する。第2区間R2の角度データA4において、第1制御信号D1がゼロになり、これに対応して駆動トルクTdもゼロになる。
【0063】
角度データが「A1」から「A2」までの第1サブ区間S1と、角度データが「A4」から「A1」までの第4サブ区間S4では、駆動トルクTdが負であるため、駆動トルクTdが操作部材102の回転を促進する方向(以下、「促進方向」と記す場合がある。)に働く。角度データが「A2」から「A3」までの第2サブ区間S2と、角度データが「A3」から「A4」までの第3サブ区間S3では、駆動トルクTdが正であるため、駆動トルクTdが操作部材102の回転を抑制する方向(以下、「抑制方向」と記す場合がある。)に働く。
【0064】
図5の例において、第2制御信号D2は一定の値DL2に保持される。そのため、制動機107の制動トルクTbも一定の値TM3に保持される。
【0065】
制御トルクT1は、駆動トルクTdと制動トルクTbとの和であるため、図5に示す制御トルクT1のグラフは、図5に示す駆動トルクTdのグラフを制動トルクTbの値TM3だけ正方向にシフトさせたものになる。
【0066】
制御トルクT1は、第1区間R1の角度データA5においてゼロになる。角度データA5からA3にかけて操作部材102を回転させると、制御トルクT1が正方向に増大し、抑制方向の制御トルクT1が増大するため、操作者は徐々に大きくなる抵抗力を感じる。角度データが「A3」を超えるとき、制御トルクT1が増大から減少に転じるため、操作者は抵抗力の変化を感じる。更に角度データA3からA1にかけて操作部材102を回転させると、正方向の制御トルクT1が徐々に減少するため、操作者は抵抗力が軽くなる感じを受ける。この回転の途中で制御トルクT1がゼロになり、更に負方向へ増大すると、促進方向の制御トルクT1が増大するため、操作者は操作部材102によって回転方向に引き込まれる感じを受ける。角度データA1を超えて操作部材102を回転させると、促進方向への引き込み力が弱くなり、制御トルクT1がゼロとなる角度データA5において引き込み力がゼロになる。そのため、操作者は、角度データA5の位置で操作部材102の回転を安定的に停止させることができる。
【0067】
(第1補正部152)
第1補正部152は、回転角センサ105における回転角の検出値の時間変化に基づいて、回転操作に対する操作部材102の見かけ上の慣性モーメントを本来の仮想モーメントと相違させるための補正トルクが制御トルクT1に追加されるように制御信号(D1,D2)を補正する。
【0068】
図6は、図1に示す回転型操作装置100の各部に作用するトルクを説明するための図である。図6において、「T1」はトルク発生部103が発生する制御トルクを示し、「T2」は操作者の回転操作によってノブ111に印加される操作トルクを示し、「Ts」はトルクセンサ104で検出されるねじれトルクを示す。「Tf」は、後述の第2補正部153によって補正される誤差トルクを示す。
【0069】
図6において、「α2」はノブ111の角加速度を示し、「α1」はトルク発生部103の回転の加速度を示す。本実施形態において、シャフト112のねじれは殆ど生じないため、角加速度「α1」と「α2」は角加速度「α」に等しいものとする。
【0070】
図6において、「J1」は、トルクセンサ104からみてトルク発生部103側の回転する部材(回転子121、抵抗盤135、検出盤141、シャフト112の一部など)の慣性モーメントを示す。また、「J2」は、トルクセンサ104からみてノブ111側の回転する部材(ノブ111、シャフト112の一部)の本来の慣性モーメントを示す。
【0071】
誤差トルクTfをゼロとすると、図6においてトルクセンサ104よりノブ111側の部材では次の式が成立する。
【0072】
J2・α=Ts−T2 … (1)
【0073】
ここで、「k」を一定の係数とした場合、式(1)は次の式のように変形できる。
【0074】
(k+1)・J2・α=(k+1)・(Ts−T2) … (2)
【0075】
式(2)は更に、次式のように変形できる。
【0076】
(k+1)・J2・α=(Ts−T2)+k・J2・α … (3)
【0077】
ここで、制御トルクT1に補正トルク「k・J2・α」を加算することを考える。制御トルクT1に補正トルク「k・J2・α」を加算すると、トルクセンサ104で検出されるねじれトルクの検出値は「Ts」から「Ts+k・J2・α」に変化する。この変化後の検出値を「Ts’」とすると、式(3)は次のように表される。
【0078】
(k+1)・J2・α=(Ts’−T2) … (4)
【0079】
式(4)を式(1)と比較して分かるように、制御トルクT1に補正トルク「k・J2・α」を加算することで、回転操作に対する操作部材102の見かけ上の慣性トルクは、本来の慣性モーメントJ2に対して(k+1)倍となる。
【0080】
そこで、第1補正部152は、制御トルクT1に補正トルク「k・J2・α」を加算する補正を行う。すなわち、第1補正部152は、回転角センサ105の回転角の検出値に基づいて操作部材102の角加速度αを算出し、慣性モーメントJ2と角加速度αとに基づいて推定される第1慣性トルクTi1に応じた補正トルク「k・J2・α」が制御トルクT1に追加されるように制御信号(D1,D2)を補正する。ここで、第1慣性トルクTi1は、式(1)で表される「J2・α」である。
【0081】
第1補正部152は、例えば図4に示すように、角加速度算出部164と、慣性トルク算出部165と、補正信号生成部166と、加算部167とを含む。
【0082】
角加速度算出部164は、回転角センサ105における回転角の検出値θの2階微分を行うことにより角加速度αを算出する。
【0083】
慣性トルク算出部165は、角加速度算出部164で算出された角加速度αに慣性モーメントJ2を乗ずることにより、第1慣性トルクTi1を算出する。
【0084】
補正信号生成部166は、制御トルクT1に補正トルク「k・J2・α」が加算されるように第1制御信号D1を補正するための補正信号を生成する。
【0085】
加算部167は、補正信号生成部166において生成された補正信号を、第1制御信号生成部162で生成された第1制御信号D1に加算する。
【0086】
なお、図4の例において、第1補正部152は第1制御信号D1のみを補正しているが、本実施形態の他の例では、第1制御信号D1と第2制御信号D2の両方若しくは第2制御信号D2のみを補正して、制御トルクT1に補正トルク「k・J2・α」が加算されるようにしてもよい。
【0087】
(第2補正部153)
第2補正部153は、トルクセンサ104におけるねじれトルクTsの検出値及び回転角センサ105における回転角の検出値に基づいて推定される制御トルクT1と、制御信号(D1,D2)に対応する制御トルクT1との差である誤差トルクTfが小さくなるように制御信号(D1,D2)を補正する。
【0088】
誤差トルクTfは、例えば駆動機106における電動機120の摺動摩擦や、制動機107における磁気粘性流体134の粘性の温度変化などに起因して発生する。
【0089】
図6においてトルクセンサ104より駆動機106側の部材では、次の式が成立する。
【0090】
T1=J1・α+Ts+Tf … (5)
【0091】
誤差トルクTfをゼロとした場合の制御トルクT1Aは、次の式で表される。
【0092】
T1A=J1・α+Ts … (6)
【0093】
式(5)と式(6)により、誤差トルクTfは次の式で表される。
【0094】
Tf=T1−T1A
=T1−(J1・α+Ts) … (7)
【0095】
ここで、第1制御信号D1の信号値を「D1」、信号値D1を駆動トルクTdに換算するための係数を「Kd」、第2制御信号D2の信号値を「D2」、信号値D2を制動トルクTbに換算するための係数を「Kb」とすると、式(7)は次の式のように変形することができる。
【0096】
Tf=(Td−Tb)−(J1・α+Ts)
=(Kd・D1−Kb・D2)−(J1・α+Ts) … (8)
【0097】
そこで、第2補正部153は、式(8)の関係に基づいて誤差トルクTfを算出する。すなわち、第2補正部153は、回転角センサ105における回転角の検出値に基づいて操作部材102の角加速度αを算出し、慣性モーメントJ1と角加速度αとに基づいて第2慣性トルクTi2を算出し、ねじれトルクTsの検出値と第2慣性トルクTi2とに基づいて推定される制御トルクT1Aと、制御信号(D1,D2)に対応する制御トルクT1との差である誤差トルクTfが小さくなるように制御信号(D1,D2)を補正する。ここで、第2慣性トルクTi2は「J1・α」である。
【0098】
第2補正部153は、例えば図4に示すように、角加速度算出部168と、慣性トルク算出部169と、駆動トルク算出部170と、制動トルク算出部171と、補正信号生成部172と、加算部173,174とを含む。
【0099】
角加速度算出部168は、回転角センサ105における回転角の検出値θの2階微分を行うことにより角加速度αを算出する。
【0100】
慣性トルク算出部169は、角加速度算出部168で算出された角加速度αに慣性モーメントJ1を乗ずることにより、第2慣性トルクTi2を算出する。
【0101】
駆動トルク算出部170は、第1制御信号D1の信号値に係数Kdを乗ずることにより、駆動トルクTdの推定値を算出する。
【0102】
制動トルク算出部171は、第2制御信号D2の信号値に係数Kbを乗ずることにより、制動トルクTbの推定値を算出する。
【0103】
加算部173は、駆動トルク算出部170で算出された駆動トルクTdの推定値から、制動トルク算出部171で算出された制動トルクTbの推定値と、慣性トルク算出部169で算出された第2慣性トルクTi2と、トルクセンサ104におけるねじれトルクTsの検出値とを減算することにより、誤差トルクTfを算出する。
【0104】
補正信号生成部172は、誤差トルクTfを相殺するトルクが制御トルクT1に追加されるように第1制御信号D1を補正するための補正信号を生成する。
【0105】
加算部174は、補正信号生成部166において生成された補正信号を、第1制御信号生成部162で生成された第1制御信号D1に加算する。
【0106】
なお、図4の例において、第2補正部153は第1制御信号D1のみを補正しているが、本実施形態の他の例では、第1制御信号D1と第2制御信号D2の両方若しくは第2制御信号D2のみを補正して、誤差トルクTfを相殺するトルクが制御トルクT1に追加されるようにしてもよい。
【0107】
また、図4の例では、第1補正部152と第2補正部153のそれぞれに角加速度αの算出部(164、168)が設けられているが、本実施形態の他の例では、第1補正部152と第2補正部153における角加速度αの算出部を共通化してもよい。
【0108】
(記憶部109)
記憶部109は、処理部108において処理に使用される定数データや変数データ、処理の結果として得られたデータなどを記憶する。処理部108がコンピュータを含む場合、記憶部109は、コンピュータにおいて実行されるプログラム155を記憶してもよい。記憶部109は、例えば、DRAMやSRAMなどの揮発性メモリ、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリ、ハードディスクなどを含んで構成される。
【0109】
(インターフェース部110)
インターフェース部110は、回転型操作装置100と他の装置(回転型操作装置100から操作情報を入力して処理に使用するホストコンピュータ等)との間でデータをやり取りするための回路である。処理部108は、記憶部109に記憶される情報(操作部材102の回転操作に関わる操作情報など)をインターフェース部110から図示しない装置へ出力する。
【0110】
また、インターフェース部110は、処理部108のコンピュータにおいて実行されるプログラム155をネットワーク上のサーバなどから取得して、記憶部109にロードしてもよい。他の例において、インターフェース部110は、非一時的な有形の媒体(光ディスク、USBメモリ等)からプログラム155を読み出して記憶部109に保存する読み取り装置を含んでいてもよい。
【0111】
ここで、上述した構成を有する回転型操作装置100において実行される制御信号(D1,D2)の生成と補正に関わる処理について、図7に示すフローチャートを参照して説明する。図7のフローチャートの処理は、例えば、回転角センサ105及びトルクセンサ104の各検出結果を所定の周期で取得する度に実行される。
【0112】
ST100:
処理部108は、回転角センサ105における操作部材102の回転角の検出値と、トルクセンサ104におけるねじれトルクTsの検出値をそれぞれ取得する。
【0113】
ST105:
制御信号生成部151は、ステップST100において取得された回転角の検出値に応じた第1制御信号D1及び第2制御信号D2をそれぞれ生成する。
【0114】
ST110:
第1補正部152は、ステップST100において取得された回転角の検出値の時間変化に基づいて、操作部材102の見かけ上の慣性モーメントを本来の慣性モーメントJ2と相違させる補正トルクが制御トルクT1に追加されるように制御信号(D1,D2)を補正する。例えば、第1補正部152は、回転角センサ105の回転角の検出値に基づいて操作部材102の角加速度αを算出し、慣性モーメントJ2と角加速度αとに基づいて推定される第1慣性トルクTi1に応じた補正トルク「k・J2・α」を算出する。第1補正部152は、算出した補正トルク「k・J2・α」が制御トルクT1に追加されるように制御信号(D1,D2)を補正する。
【0115】
ST115:
また第2補正部153は、ステップST100において取得された回転角の検出値とねじれトルクTsの検出値に基づいて、誤差トルクTfが小さくなるように制御信号(D1,D2)を補正する。例えば、第1補正部152は、回転角センサ105における回転角の検出値に基づいて操作部材102の角加速度αを算出し、慣性モーメントJ1と角加速度αとに基づいて第2慣性トルクTi2を算出し、ねじれトルクTsの検出値と第2慣性トルクTi2とに基づいて推定される制御トルクT1Aと、制御信号(D1,D2)に対応する制御トルクT1との差を誤差トルクTfとして算出する。第2補正部153は、算出した誤差トルクTfを相殺するトルクが制御トルクT1に追加されるように制御信号(D1,D2)を補正する。
【0116】
ST120:
処理部108は、ステップST110及びST115において補正した制御信号(D1,D2)をトルク発生部103に出力し、制御信号(D1,D2)に応じた制御トルクT1を発生させる。
【0117】
以上説明したように、本実施形態によれば、回転角センサ105における操作部材102の回転角の検出値の時間変化に基づいて、回転操作に対する操作部材102の見かけ上の慣性モーメントを本来の慣性モーメントJ2と相違させる補正トルクが制御トルクT1に追加されるように制御信号(D1,D2)が補正される。操作部材102の見かけ上の慣性モーメントを本来の慣性モーメントJ2と相違させることにより、この見かけ上の慣性モーメントを操作部材102の見た目の質感に適合させることができる。従って、操作部材102の見た目の質感と実際の操作で感じる負荷との食い違いに起因する操作感触の違和感を、効果的に低減できる。例えば、操作部材102の見た目の質感が金属に近く、実際の慣性モーメントが金属に比べて小さい場合でも、操作部材102の見かけ上の慣性モーメントを大きくすることができるため、金属のように大きな慣性トルクを模擬することができる。
【0118】
本実施形態によれば、ねじれトルクTsの検出値及び回転角の検出値に基づいて推定される制御トルクT1Aと、制御信号(D1,D2)に対応する制御トルクT1との差である誤差トルクTfが小さくなるように、制御信号(D1,D2)が補正される。この補正によって誤差トルクTfが小さくなることにより、操作部材102の見かけ上の慣性モーメントを精度良く設定できる。そのため、操作部材102の見かけ上の慣性モーメントを操作部材102の見た目の質感に一致させ易くなり、操作感触の違和感を更に効果的に低減できる。
【0119】
本実施形態によれば、第1制御信号D1に応じた駆動トルクTdが駆動機106において発生し、第2制御信号D2に応じた制動トルクTbが制動機107において発生する。そのため、駆動トルクTdと制動トルクTbとの組み合わせにより、様々な操作感触を生み出す制御トルクT1を生成できる。
【0120】
本実施形態によれば、磁気粘性流体134の粘性を磁界制御部132の磁界で変化させることにより、操作部材102に印加される制動トルクTbが変化する。従って、操作部材102に機械的な摩擦力を加える方法に比べて、制動トルクTbの精密な制御が可能になる。
【0121】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々のバリエーションを含んでいる。
例えば、上述した実施形態において挙げられている操作部材102の形状や構造、トルク発生部103における制御トルクT1の発生手段、回転角センサ105における回転角の検出手段、トルクセンサ104におけるねじれトルクTsの検出手段などは一例であり、それぞれ実施態様に合わせた他の形状、構造、機構、手段等に置き換え可能である。
【符号の説明】
【0122】
100…回転型操作装置、101…筐体、102…操作部材、103…トルク発生部、104…トルクセンサ、105…回転角センサ、106…駆動機、107…制動機、108…処理部、109…記憶部、110…インターフェース部、111…ノブ、112…シャフト、115A,115B…磁歪膜、116…検出コイル、117…アンプ回路、120…電動機、121…回転子、122…固定子、123…駆動回路、124…駆動信号生成部、131…コイルケース、132…磁界制御部、133…対向面、134…磁気粘性流体、135…抵抗盤、136…駆動回路、137…駆動信号生成部、140…ロータリーエンコーダ、141…検出盤、142…光学検知部、151…制御信号生成部、152…第1補正部、153…第2補正部、155…プログラム、156…パターンデータ、161…角度データ生成部、162…第1制御信号生成部、163…第2制御信号生成部、164…角加速度算出部、165…慣性トルク算出部、166…補正信号生成部、167…加算部、168…角加速度算出部、169…慣性トルク算出部、170…駆動トルク算出部、171…制動トルク算出部、172…補正信号生成部、173…加算部、174…加算部、D1…第1制御信号、D2…第2制御信号、α…角加速度、T1…制御トルク、Td…駆動トルク、Tb…制動トルク、Tf…誤差トルク、Ti1…第1慣性トルク、Ti2…第2慣性トルク、T2…操作トルク、Ts…ねじれトルク、J1,J2…慣性モーメント、AX…回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】