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  • 再表WO2018221096-電解コンデンサおよびその製造方法 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2018年12月6日
【発行日】2020年4月2日
(54)【発明の名称】電解コンデンサおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/028 20060101AFI20200306BHJP
   H01G 9/00 20060101ALI20200306BHJP
   H01G 9/15 20060101ALI20200306BHJP
【FI】
   H01G9/028 G
   H01G9/028 F
   H01G9/00 290H
   H01G9/15
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】15
【出願番号】特願2019-522037(P2019-522037)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2018年4月26日
(31)【優先権主張番号】特願2017-108090(P2017-108090)
(32)【優先日】2017年5月31日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100115554
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 幸一
(72)【発明者】
【氏名】福井 斉
(57)【要約】
電解コンデンサは、陽極体と、前記陽極体上に形成された誘電体層と、前記誘導体層上に形成された固体電解質層とを備える。前記固体電解質層は、導電性高分子を含み、前記導電性高分子は、自己ドープ型のポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)類を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極体と、前記陽極体上に形成された誘電体層と、前記誘導体層上に形成された固体電解質層とを備え、
前記固体電解質層は、導電性高分子を含み、
前記導電性高分子は、自己ドープ型のポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)類を含む、電解コンデンサ。
【請求項2】
前記自己ドープ型のポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)類は、スルホン酸基またはその塩を有する、請求項1に記載の電解コンデンサ。
【請求項3】
前記固体電解質層は、前記誘電体層上に形成された第1導電性高分子を含む第1導電性高分子層と、前記第1導電性高分子層上に形成された第2導電性高分子を含む第2導電性高分子層と、を備え、
前記第1導電性高分子は、前記自己ドープ型のポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)類である、請求項1または2に記載の電解コンデンサ。
【請求項4】
前記第2導電性高分子は、非自己ドープ型の導電性高分子である、請求項3に記載の電解コンデンサ。
【請求項5】
前記第2導電性高分子は、ポリピロールである、請求項3または4に記載の電解コンデンサ。
【請求項6】
前記第1導電性高分子層の厚さは、前記第2導電性高分子層の厚さよりも薄い、請求項3〜5のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
【請求項7】
誘電体層が形成された陽極体を準備する工程と、
前記誘電体層上に、自己ドープ型のポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)類を含む固体電解質層を形成する工程と、を含み、
前記固体電解質層を形成する工程は、前記誘電体層上に前記自己ドープ型のポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)類を含む第1液状組成物を付着させて、前記自己ドープ型のポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)類を第1導電性高分子として含む第1導電性高分子層を形成する工程を含む、電解コンデンサの製造方法。
【請求項8】
前記固体電解質層を形成する工程は、さらに、前記第1導電性高分子層上に前記第2導電性高分子またはその前駆体を含む第2液状組成物を付着させて、前記第2導電性高分子を含む前記第2導電性高分子層を形成する工程を含む、請求項7に記載の電解コンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
小型かつ大容量で等価直列抵抗(ESR)の小さいコンデンサとして、陽極体と、陽極体上に形成された誘電体層と、誘導体層上に形成されるとともに導電性高分子を含む固体電解質層と、を備えた電解コンデンサが有望視されている。
【0002】
特許文献1では、イソチアナフテン骨格を有する自己ドープ型導電性高分子を含む導電性高分子層を備える固体電解コンデンサが提案されている。特許文献2では、ポリアニリンスルホン酸やポリ(イソチアナフテンジイル−スルホネート)などの自己ドープ型導電性高分子を含む導電性高分子層とアミン類含有層とを備える固体電解コンデンサが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−110074号公報
【特許文献1】国際公開第2013/081099号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、導電性高分子の種類によっては、高温環境下でESRが増大する虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一局面は、陽極体と、前記陽極体上に形成された誘電体層と、前記誘導体層上に形成された固体電解質層とを備え、
前記固体電解質層は、導電性高分子を含み、
前記導電性高分子は、自己ドープ型のポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)類を含む、電解コンデンサに関する。
【0006】
また、本発明の別の一局面は、誘電体層が形成された陽極体を準備する工程と、
前記誘電体層上に、自己ドープ型のポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)類を含む固体電解質層を形成する工程と、を含み、
前記固体電解質層を形成する工程は、前記誘電体層上に前記自己ドープ型のポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)類を含む第1液状組成物を付着させて、前記自己ドープ型のポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)類を第1導電性高分子として含む第1導電性高分子層を形成する工程を含む、電解コンデンサの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高温環境下でも低ESRが維持される電解コンデンサおよびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る電解コンデンサの断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[電解コンデンサ]
本発明の実施形態に係る電解コンデンサは、陽極体と、陽極体上に形成された誘電体層と、誘導体層上に形成された固体電解質層とを備える。
(固体電解質層)
本実施形態において、固体電解質層は、導電性高分子を含み、導電性高分子は、自己ドープ型のポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)類(第1導電性高分子)を含む。
【0010】
自己ドープ型の導電性高分子(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)類など)とは、導電性高分子の骨格(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)骨格など)に共有結合により直接的または間接的に結合したアニオン性基を有する導電性高分子を言う。この導電性高分子自体が有するアニオン性基が、導電性高分子のドーパントとして機能することから、自己ドープ型と称される。アニオン性基には、例えば、酸性基(酸型)もしくはその共役アニオン基(塩型)が含まれる。
【0011】
従来、自己ドープ型の導電性高分子としては、アニオン性基を有するポリアニリンやアニオン性基を有するポリイソチアナフテンなどが利用されている。しかし、自己ドープ型のポリアニリンや自己ドープ型のポリイソチアナフテンを含む固体電解質層を備える電解コンデンサが高温環境下に晒されると、ESRが増大する。これは、高温環境下において、固体電解質層の電気伝導度が低下したり、固体電解質層に亀裂等が入るなどして膜形状の安定性が低下したり、自己ドープ型の導電性高分子を含む層とこれと隣接する層との界面における密着性が低下したりすることによるものと考えられる。
【0012】
それに対し、本実施形態によれば、自己ドープ型のポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)類(第1導電性高分子)を用いることで、ポリアニリン類やポリイソチアナフテン類を用いる場合に比べて高温環境下におけるESRの増大を抑制できる。これは、第1導電性高分子の骨格が、ポリアニリン類等に比べて熱に対する耐性が高く、高温環境下において第1導電性高分子が劣化しにくいためと考えられる。第1導電性高分子を用いることで、高温環境下でも、固体電解質層の劣化が抑制され、固体電解質層における亀裂や破断の発生を抑制できる。その結果、固体電解質層における抵抗の増加が抑制され、高い電気伝導度を維持できるため、高温環境下におけるESRの増大が抑制されると考えられる。なお、第1導電性高分子には、ポリイソチアナフテン類に比べて、多くのエーテル結合が含まれるため、一般には耐熱性が低いと予想される。この予想に反して、本実施形態で高温環境下におけるESRの増大が抑制されるのは、第1導電性高分子が多くのエーテル結合を含むことで、第1導電性高分子を含む層とこの層と隣接する層との界面における高い密着性が維持され易いことによるものと考えられる。
【0013】
第1導電性高分子には、例えば、アニオン性基を有するポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)類が含まれる。アニオン性基としては、スルホン酸基、カルボキシ基、リン酸基、ホスホン酸基、またはこれらの塩(無機塩基との塩、有機塩基との塩など)などが挙げられる。ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)類は、1種のアニオン性基を有していてもよく、2種以上のアニオン性基を有していてもよい。アニオン性基としては、スルホン酸基またはその塩が好ましく、スルホン酸基またはその塩とスルホン酸基またはその塩以外のアニオン性基との組み合わせでもよい。
【0014】
ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)類には、3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)の単独重合体、EDOTと他の共重合性モノマーとの共重合体、およびこれらの誘導体(置換基を有する置換体など)などが含まれる。アニオン性基を有するこれらの重合体やその誘導体が、第1導電性高分子である。
第1導電性高分子の重量平均分子量は、特に限定されないが、例えば1,000以上1,000,000以下である。
【0015】
固体電解質層は、誘電体層上に形成された第1導電性高分子を含む第1導電性高分子層と、第1導電性高分子層上に形成された第2導電性高分子を含む第2導電性高分子層と、を備えてもよい。第2導電性高分子層は、単層であってもよく、複数の層で構成されていてもよい。誘電体層上に、第1導電性高分子層が形成されていない領域が存在する場合には、この領域において、誘電体層上に第2導電性高分子層が形成されていてもよい。
【0016】
第1導電性高分子層は、第1導電性高分子以外の導電性高分子(例えば、後述の非自己ドープ型導電性高分子など)を含んでいてもよいが、第1導電性高分子の含有量が多いことが好ましい。第1導電性高分子層に含まれる導電性高分子全体に占める第1導電性高分子の比率は、例えば、90質量%以上であり、100質量%であってもよい。
【0017】
第1導電性高分子は、アニオン性基を有しているが、第1導電性高分子層には、必要に応じて、ドーパントが含まれていてもよい。ドーパントとしては、例えば、アニオンおよび/またはポリアニオンが使用される。第1導電性高分子層において、アニオンおよび/またはポリアニオンは、導電性高分子とともに、導電性高分子複合体を形成していてもよい。なお、本明細書中、導電性高分子複合体とは、アニオンおよび/またはポリアニオンがドープされた導電性高分子、もしくは、アニオンが結合した導電性高分子、ポリアニオンが、ポリアニオンのアニオン性基を介して結合した導電性高分子をいう。
【0018】
アニオンとしては、例えば、硫酸イオン、硝酸イオン、燐酸イオン、硼酸イオン、有機スルホン酸イオンなどが挙げられるが、特に制限されない。アニオンは、塩の形態で第1導電性高分子層に含まれていてもよい。
【0019】
ポリアニオンは、スルホン酸基、カルボキシ基、リン酸基、ホスホン酸基、またはこれらの塩などのアニオン性基を有する。ポリアニオンは、アニオン性基を一種有してもよく、二種以上有してもよい。アニオン性基としては、スルホン酸基またはその塩が好ましく、スルホン酸基またはその塩とスルホン酸基またはその塩以外のアニオン性基との組み合わせでもよい。ポリアニオンとしては、例えば、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸、またはこれらの塩などが挙げられる。これらを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらは単独重合体であってもよく、2種以上のモノマーの共重合体であってもよい。なかでも、ポリスチレンスルホン酸(PSS)が好ましい。
ポリアニオンの重量平均分子量は、例えば、1,000以上1,000,000以下である。
【0020】
第1導電性高分子層中のドーパントの含有量は、第1導電性高分子100質量部に対して、例えば、0〜40質量部であり、0〜10質量部または0.1〜10質量部であることが好ましい。
【0021】
第2導電性高分子としては、通常、第1導電性高分子とは異なるものが使用され、非自己ドープ型の導電性高分子が好ましい。非自己ドープ型の導電性高分子とは、導電性高分子の骨格に共有結合で直接的または間接的に結合したアニオン性基(具体的には、スルホン酸基、カルボキシ基、リン酸基、ホスホン酸基、およびこれらの塩)を有さない導電性高分子を言う。
【0022】
非自己ドープ型の導電性高分子としては、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンなどが好ましい。これらを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよく、2種以上のモノマーの共重合体でもよい。なお、本明細書では、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンなどは、それぞれ、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンなどを基本骨格とする高分子を意味する。したがって、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンなどには、それぞれの誘導体(アニオン性基以外の置換基を有する置換体など)も含まれ得る。例えば、ポリチオフェンには、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)などが含まれる。これらのうち、高い耐熱性と高い耐湿特性とを両立する観点からは、ポリピロール(その誘導体も含む)が好ましい。
第2導電性高分子の重量平均分子量は、特に限定されないが、例えば1,000以上1,000,000以下である。第2導電性高分子層が複数層で構成される場合、各層に含まれる第2導電性高分子は同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0023】
第2導電性高分子層は、さらにドーパントを含むことができる。ドーパントとしては、例えば、アニオンおよび/またはポリアニオンが使用される。アニオンおよびポリアニオンとしては、それぞれ、第1導電性高分子層について記載したものから選択すればよい。第2導電性高分子層において、アニオンやポリアニオンは、導電性高分子とともに、導電性高分子複合体を形成していてもよい。
【0024】
第1導電性高分子層の厚さは、第2導電性高分子層の厚さよりも薄いことが好ましい。陽極体の表面(具体的には、陽極体の孔やピットの内壁面を含む表面)に沿って形成される誘電体層の表面のできるだけ多くの領域を第1導電性高分子層で覆うことができ、高い耐熱性が得られ易くなるとともに、厚みが大きな第2導電性高分子層を形成することで、漏れ電流を低減できるためである。
なお、各層の厚みは、固体電解質層の厚み方向の断面における電子顕微鏡写真により確認することができる。
【0025】
固体電解質層は、必要に応じて、さらにアルカリ成分を含んでもよい。アルカリ成分は、第1導電性高分子層および/または第2導電性高分子層に含まれていてもよい。アルカリ成分としては、無機アルカリ化合物、有機アルカリ化合物などが使用される。無機アルカリ化合物としては、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムなどの金属水酸化物などが挙げられる。有機アルカリ化合物としては、アミン化合物などが好ましい。アミン化合物としては、脂肪族アミン、環状アミンなどが好ましい。アルカリ成分は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。固体電解質層において、アルカリ成分は、導電性高分子および/またはドーパントと塩を形成していてもよい。
【0026】
固体電解質層は、本発明の効果を損なわない範囲内で、更に他の成分を含んでもよい。
【0027】
(陽極体)
陽極体は、弁作用金属、弁作用金属を含む合金などを含む。弁作用金属としては、例えば、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタンが好ましく使用される。弁作用金属は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。陽極体は、例えば、エッチングなどにより弁作用金属を含む基材(箔状または板状の基材など)の表面を粗面化することで得られる。また、陽極体は、弁作用金属を含む粒子の成形体またはその焼結体でもよい。なお、焼結体は、多孔質構造を有する。すなわち、陽極体が焼結体である場合、陽極体の全体が多孔質となり得る。
【0028】
(誘電体層)
誘電体層は、陽極体表面の弁作用金属を、化成処理などにより陽極酸化することで形成される。誘電体層は弁作用金属の酸化物を含む。例えば、弁作用金属としてタンタルを用いた場合の誘電体層はTa25を含み、弁作用金属としてアルミニウムを用いた場合の誘電体層はAl23を含む。尚、誘電体層はこれに限らず、誘電体として機能するものであればよい。陽極体の表面が多孔質である場合、誘電体層は、陽極体の表面(陽極体の孔やピットの内壁面を含む表面)に沿って形成される。
【0029】
図1は、本発明の一実施形態に係る電解コンデンサの構造を概略的に示す断面図である。図1に示すように、電解コンデンサ1は、コンデンサ素子2と、コンデンサ素子2を封止する樹脂封止材3と、樹脂封止材3の外部にそれぞれ少なくともその一部が露出する陽極端子4および陰極端子5と、を備えている。陽極端子4および陰極端子5は、例えば銅または銅合金などの金属で構成することができる。樹脂封止材3は、ほぼ直方体の外形を有しており、電解コンデンサ1もほぼ直方体の外形を有している。樹脂封止材3の素材としては、例えばエポキシ樹脂を用いることができる。
【0030】
コンデンサ素子2は、陽極体6と、陽極体6を覆う誘電体層7と、誘電体層7を覆う陰極部8とを備える。陰極部8は、誘電体層7を覆う固体電解質層9と、固体電解質層9を覆う陰極引出層10とを備える。陰極引出層10は、カーボン層11および銀ペースト層12を有する。
【0031】
陽極体6は、陰極部8と対向する領域と、対向しない領域とを含む。陽極体6の陰極部8と対向しない領域のうち、陰極部8に隣接する部分には、陽極体6の表面を帯状に覆うように絶縁性の分離層13が形成され、陰極部8と陽極体6との接触が規制されている。陽極体6の陰極部8と対向しない領域のうち、他の一部は、陽極端子4と、溶接により電気的に接続されている。陰極端子5は、導電性接着剤により形成される接着層14を介して、陰極部8と電気的に接続している。
【0032】
陽極体6としては、弁作用金属を含む基材(箔状または板状の基材など)の表面が粗面化されたものが用いられる。例えば、アルミニウム箔の表面をエッチング処理により粗面化したものが用いられる。誘電体層7は、例えば、Al23のようなアルミニウム酸化物を含む。
【0033】
陽極端子4および陰極端子5の主面4Sおよび5Sは、樹脂封止材3の同じ面から露出している。この露出面は、電解コンデンサ1を搭載すべき基板(図示せず)との半田接続などに用いられる。
【0034】
カーボン層11は、導電性を有していればよく、例えば、黒鉛などの導電性炭素材料を用いて構成することができる。銀ペースト層12には、例えば、銀粉末とバインダ樹脂(エポキシ樹脂など)を含む組成物を用いることができる。なお、陰極引出層10の構成は、これに限られず、集電機能を有する構成であればよい。
【0035】
固体電解質層9は、誘電体層7を覆うように形成されている。固体電解質層9は、必ずしも誘電体層7の全体(表面全体)を覆う必要はなく、誘電体層7の少なくとも一部を覆うように形成されていればよい。
【0036】
誘電体層7は、陽極体6の表面(孔の内壁面を含む表面)に沿って形成される。誘電体層7の表面は、陽極体6の表面の形状に応じた凹凸形状が形成されている。固体電解質層9は、このような誘電体層7の凹凸を埋めるように形成されていることが好ましい。
【0037】
本発明の電解コンデンサは、上記構造の電解コンデンサに限定されず、様々な構造の電解コンデンサに適用することができる。具体的に、巻回型の電解コンデンサ、金属粉末の焼結体を陽極体として用いる電解コンデンサなどにも、本発明を適用できる。
【0038】
[電解コンデンサの製造方法]
本発明の実施形態に係る電解コンデンサの製造方法は、誘電体層が形成された陽極体を準備する工程(第1工程)と、誘電体層上に第1導電性高分子を含む固体電解質層を形成する工程(第2工程)とを含む。第2工程は、誘電体層上に第1導電性高分子を含む第1液状組成物を付着させて、第1導電性高分子を含む第1導電性高分子層を形成する工程を含む。第2工程は、さらに、第1導電性高分子層上に第2導電性高分子またはその前駆体を含む第2液状組成物を付着させて、第2導電性高分子を含む第2導電性高分子層を形成する工程を含んでもよい。また、電解コンデンサの製造方法は、第1工程に先立って、陽極体を準備する工程を含んでもよい。また、製造方法は、更に陰極引出層を形成する工程を含んでもよい。
以下に、各工程についてより詳細に説明する。
【0039】
(陽極体を準備する工程)
この工程では、陽極体の種類に応じて、公知の方法により陽極体を形成する。
陽極体は、例えば、弁作用金属を含む箔状または板状の基材の表面を粗面化することにより準備することができる。粗面化は、基材表面に凹凸を形成できればよく、例えば、基材表面をエッチング(例えば、電解エッチング)することにより行ってもよい。
【0040】
また、弁作用金属の粉末を用意し、この粉末の中に、棒状体の陽極リードの長手方向の一端側を埋め込んだ状態で、所望の形状(例えば、ブロック状)に成形された成形体を得る。この成形体を焼結することで、陽極リードの一端が埋め込まれた多孔質構造の陽極体を形成してもよい。
【0041】
(第1工程)
第1工程では、陽極体上に誘電体層を形成する。誘電体層は、陽極体を陽極酸化することにより形成される。陽極酸化は、公知の方法、例えば、化成処理などにより行うことができる。化成処理は、例えば、陽極体を化成液中に浸漬することにより、陽極体の表面に化成液を含浸させ、陽極体をアノードとして、化成液中に浸漬したカソードとの間に電圧を印加することにより行うことができる。化成液としては、例えば、リン酸水溶液などを用いることが好ましい。
【0042】
(第2工程)
第2工程では、固体電解質層を、誘電体層の少なくとも一部を覆うように形成する。固体電解質層は、第1導電性高分子を含む第1導電性高分子層を少なくとも含むため、第2工程では、少なくとも第1導電性高分子層を形成する。第1導電性高分子層は、第1導電性高分子を含む第1液状組成物を用いて形成される。第2工程では、さらに、第1導電性高分子層を形成した後、第1導電性高分子層上に第2液状組成物を付着させて第2導電性高分子層を形成してもよい。本実施形態に係る製造方法は、第1導電性高分子層を形成する工程に先立って、第1液状組成物を調製する工程を含んでもよい。また、製造方法は、第2導電性高分子層を形成する工程に先立って、第2液状組成物を調製する工程を含んでもよい。
【0043】
(第1液状組成物を調製する工程)
本工程では、第1導電性高分子と、分散媒もしくは溶媒とを含む第1液状組成物を調製する。第1導電性高分子としては、上記で例示したものを用いることができる。第1液状組成物は、必要に応じて、ポリアニオン、アルカリ成分、および/または更に他の成分を含んでもよい。
【0044】
第1液状組成物は、例えば、第1導電性高分子の分散液(溶液)である。第1液状組成物は、第1導電性高分子とポリアニオンとの導電性高分子複合体を含んでもよい。第1液状組成物中の導電性高分子(または導電性高分子複合体)の粒子の平均粒径は、例えば、5nm以上800nm以下である。導電性高分子(または導電性高分子複合体)の平均粒径は、例えば、動的光散乱法による粒径分布から求めることができる。
【0045】
第1液状組成物に用いられる分散媒(溶媒)としては、例えば、水、有機溶媒、またはこれらの混合物が挙げられる。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなどの1価アルコール、エチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール、または、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、アセトン、ベンゾニトリルなどの非プロトン性極性溶媒が挙げられる。
【0046】
第1液状組成物は、例えば、分散媒(溶媒)中、第1導電性高分子の前駆体を酸化重合させることにより得ることができる。この前駆体としては、第1導電性高分子を構成するモノマー、および/またはモノマーがいくつか連なったオリゴマーなどが例示できる。導電性高分子複合体を含む第1液状組成物は、分散媒(溶媒)中、ドーパントの存在下、第1導電性高分子の前駆体を酸化重合させることにより得ることができる。
【0047】
(第1導電性高分子層を形成する工程)
第1導電性高分子層は、誘電体層上に第1液状組成物を付着させることにより形成される。第1導電性高分子層は、例えば、誘電体層が形成された陽極体を第1液状組成物に浸漬するか、または誘電体層が形成された陽極体に第1液状組成物を塗布や滴下した後、乾燥する工程aを含む。工程aを複数回繰り返し行ってもよい。
【0048】
(第2液状組成物を調製する工程)
第2液状組成物は、第2導電性高分子またはその前駆体と、分散媒(溶媒)と、必要により、ドーパントとを含む。第2導電性高分子およびドーパントとしては、上記で例示したものを使用することができる。第2導電性高分子の前駆体としては、第2導電性高分子を構成するモノマー、および/またはモノマーがいくつか連なったオリゴマーなどが例示できる。分散媒(溶媒)としては、第1液状組成物について例示したものを用いることができる。第2液状組成物は、さらに、アルカリ成分および/または他の成分を含んでもよい。
【0049】
第2液状組成物としては、例えば、第2導電性高分子の分散液(溶液)もしくは第2導電性高分子とドーパントとの導電性高分子複合体の分散液(溶液)を用いてもよい。第2液状組成物は、第1液状組成物の場合に準じて調製してもよい。
【0050】
第2導電性高分子層は、化学重合や電解重合により形成してもよい。化学重合の場合、例えば、第2導電性高分子の前駆体と、分散媒(または溶媒)と、酸化剤と、必要によりドーパントとを含む第2液状組成物を用いて第2導電性高分子層が形成される。電解重合の場合、例えば、第2導電性高分子の前駆体と、分散媒(または溶媒)と、必要によりドーパントとを含む第2液状組成物を用いて第2導電性高分子層が形成される。
【0051】
(第2導電性高分子層を形成する工程)
第2導電性高分子層は、第1導電性高分子層上に第2液状組成物を付着させることにより形成される。
第2導電性高分子を含む分散体(または溶液)を第2液状組成物として用いる場合、第2導電性高分子層を形成する工程は、例えば、第1導電性高分子層を第2液状組成物に浸漬するか、または第1導電性高分子層に第2液状組成物を塗布や滴下した後、乾燥する工程bを含む。工程bを複数回繰り返し行ってもよい。
【0052】
化学重合により、第2導電性高分子層を形成する場合、第2導電性高分子層の形成工程は、第1導電性高分子層を第2液状組成物に浸漬するか、または第1導電性高分子層に第2液状組成物を塗布や滴下することにより第1導電性高分子層に第2液状組成物を付着させた後、加熱する工程cを含む。加熱により、第2導電性高分子の前駆体の重合が進行し、第2導電性高分子層が形成される。工程cを複数回繰り返し行ってもよい。
【0053】
電解重合により、第2導電性高分子層を形成する場合、第2導電性高分子層の形成工程は、第1導電性高分子層を第2液状組成物に浸漬し、第1導電性高分子層を電極として、供給電極から給電する工程を含む。この工程により、第2導電性高分子の前駆体の重合が進行し、第2導電性高分子層が形成される。
化学重合や電解重合の後には、必要に応じて洗浄処理を行ってもよい。
【0054】
十分な厚みの第2導電性高分子層を形成するためには、第2導電性高分子層で用いる導電性高分子(または導電性高分子複合体)の粒子の平均粒径を、第1導電性高分子層で用いる導電性高分子(または導電性高分子複合体)の粒子の平均粒径よりも大きくすればよい。また、同様の目的で、第2液状組成物では、第1液状組成物と比べて、導電性高分子(または導電性高分子複合体)の固形分濃度が大きいものを用いてもよい。さらには、同様の目的で、工程bや工程cの回数を増やしてもよく、電解重合では、給電する時間を長くしたり、電流を大きくしてもよい。
【0055】
(陰極引出層を形成する工程)
この工程では、第2工程で得られた陽極体の(好ましくは形成された固体電解質層の)表面に、カーボン層と銀ペースト層とを順次積層することにより陰極引出層が形成される。
【0056】
[実施例]
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0057】
《実施例1》
下記の要領で、図1に示す電解コンデンサ1を作製し、その特性を評価した。
(1)陽極体を準備する工程
基材としてアルミニウム箔(厚み100μm)を準備し、アルミニウム箔の表面にエッチング処理を施し、陽極体6を得た。
【0058】
(2)誘電体層を形成する工程
陽極体6を濃度0.3質量%のリン酸溶液(液温70℃)に浸して70Vの直流電圧を20分間印加することにより、陽極体6の表面に酸化アルミニウム(Al2)を含む
誘電体層7を形成した。その後、陽極体6の所定の箇所に絶縁性のレジストテープ(分離層13)を貼り付けた。
【0059】
(3)第1液状組成物の調製工程
第1導電性高分子とアルカリ成分とを含む水分散液(第1液状組成物)を準備した。第1液状組成物中の第1導電性高分子の濃度は2質量%、第1導電性高分子の平均粒子径は400nmであった。第1導電性高分子としては、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)骨格に直接結合したスルホン酸基を有するポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を用い、アルカリ成分としてはジエチルアミンを用いた。
【0060】
(4)第1導電性高分子層の形成工程
誘電体層7が形成された陽極体6を、第1液状組成物に浸漬した後、120℃で10〜30分間乾燥する工程を2回繰り返し行い、第1導電性高分子層を形成した。
【0061】
(5)第2液状組成物の調製工程
ピロールと、ドーパント(ナフタレンスルホン酸)とを含む水分散液(第2液状組成物)を準備した。第2液状組成物中のピロールの濃度は4質量%と、ドーパントの濃度は
質量%とした。
【0062】
(6)第2導電性高分子層を形成する工程
第1導電性高分子層が形成された陽極体を、第2液状組成物に浸漬し、第1導電性高分子層を電極として、ピロールの電解重合を進行させて、第2導電性高分子としてのポリピロールを含む第2導電性高分子層を形成した。
このようにして、第1導電性高分子層と第2導電性高分子層とで構成される固体電解質層9を形成した。
【0063】
(7)陰極引出層を形成する工程
固体電解質層9の表面に、黒鉛粒子を水に分散した分散液を塗布した後、大気中で乾燥して、第3導電性高分子層の表面にカーボン層11を形成した。
【0064】
次いで、カーボン層11の表面に、銀粒子とバインダ樹脂(エポキシ樹脂)とを含む銀ペーストを塗布した後、加熱してバインダ樹脂を硬化させ、銀ペースト層12を形成した。このようにして、カーボン層11と銀ペースト層12とで構成される陰極引出層10を形成した。このようにして、コンデンサ素子2を得た。
【0065】
(8)電解コンデンサの組み立て
コンデンサ素子2に、更に、陽極端子4、陰極端子5、接着層14を配置し、樹脂封止材3で封止することにより、電解コンデンサを製造した。
【0066】
《比較例1》
スルホン酸基を有するポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)に代えて、ポリアニリンスルホン酸を用いた。これ以外は、実施例1と同様にして第1液状組成物を調製し、電解コンデンサを製造した。
【0067】
《比較例2》
スルホン酸基を有するポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)に代えて、スルホン酸基を有するポリイソチアナフテンを用いた。これ以外は、実施例1と同様にして第1液状組成物を調製し、電解コンデンサを製造した。
【0068】
[評価]
実施例および比較例の電解コンデンサについて、以下の評価を行った。
(a)ESRの測定
20℃の環境下で、4端子測定用のLCRメータを用いて、電解コンデンサの周波数100HzにおけるESR値(mΩ)を、初期ESR値として測定した。更に、高温環境下におけるESRの安定性を評価するために、145℃の温度にて、電解コンデンサに定格電圧を125時間印加した後、上記と同様の方法でESR値(mΩ)を測定し、耐熱ESRとした。
各例について、比較例1の初期ESRおよび耐熱ESRをそれぞれ100としたときの比率でESR値を評価した。
【0069】
(b)耐熱低周波tanδの測定
145℃の温度にて、電解コンデンサに定格電圧を125時間印加した後、20℃の環境下で、4端子測定用のLCRメータを用いて、電解コンデンサの周波数120Hzにおけるtanδ(%)を測定した。
各例について、比較例1の値を100としたときの比率で耐熱低周波tanδを評価した。
評価結果を表1に示す。実施例1はA1であり、比較例1および2はB1およびB2である。
【0070】
【表1】
【0071】
表1に示されるように、実施例のA1では、初期ESRおよび高温環境下に晒した後のESRはいずれも、B1およびB2よりも低くなっている。また、耐熱低周波tanδも、A1では、B1およびB2よりも低くなった。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明に係る電解コンデンサは、高温環境下での低ESRの維持が求められる様々な用途に利用できる。
【符号の説明】
【0073】
1:電解コンデンサ、2:コンデンサ素子、3:樹脂封止材、4:陽極端子、4S:陽極端子の主面、5:陰極端子、5S:陰端子の主面、6:陽極体、7:誘電体層、8:陰極部、9:固体電解質層、10:陰極引出層、11:カーボン層、12:銀ペースト層、13:分離層、14:接着層
図1
【国際調査報告】