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再表2018-225424波長変換体及びその製造方法、並びに波長変換体を用いた発光装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2018年12月13日
【発行日】2020年4月2日
(54)【発明の名称】波長変換体及びその製造方法、並びに波長変換体を用いた発光装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20200306BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20200306BHJP
   C09K 11/79 20060101ALI20200306BHJP
   C09K 11/80 20060101ALI20200306BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20200306BHJP
【FI】
   G02B5/20
   C09K11/08 J
   C09K11/08 A
   C09K11/79
   C09K11/80
   C09K11/08 B
   H01L33/50
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】31
【出願番号】特願2019-523398(P2019-523398)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2018年5月1日
(31)【優先権主張番号】特願2017-111512(P2017-111512)
(32)【優先日】2017年6月6日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-238640(P2017-238640)
(32)【優先日】2017年12月13日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100141449
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 隆芳
(74)【代理人】
【識別番号】100142446
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 覚
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】大塩 祥三
(72)【発明者】
【氏名】阿部 岳志
【テーマコード(参考)】
2H148
4H001
5F142
【Fターム(参考)】
2H148AA01
2H148AA07
4H001CA05
4H001CF02
4H001XA08
4H001XA12
4H001XA13
4H001XA14
4H001XA20
4H001XA71
4H001YA58
5F142DA15
5F142DA22
5F142DA32
5F142DA45
5F142DA61
5F142DA73
5F142FA28
5F142GA01
5F142GA21
5F142HA01
(57)【要約】
波長変換体100は、Ce3+で付活された無機蛍光体からなる第一の蛍光体1と、Ce3+で付活された無機蛍光体からなり、第一の蛍光体とは異なる第二の蛍光体2とを含む。第一の蛍光体及び第二の蛍光体の少なくとも一方は粒子状である。第一の蛍光体を構成する化合物と第二の蛍光体を構成する化合物との接触部における化学反応、及び、第一の蛍光体を構成する化合物と第二の蛍光体を構成する化合物との凝着の少なくとも一方により、第一の蛍光体と第二の蛍光体が結合している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ce3+で付活された無機蛍光体からなる第一の蛍光体と、
Ce3+で付活された無機蛍光体からなり、前記第一の蛍光体とは異なる第二の蛍光体と、
を含み、
前記第一の蛍光体及び前記第二の蛍光体の少なくとも一方は粒子状であり、
前記第一の蛍光体を構成する化合物と前記第二の蛍光体を構成する化合物との接触部における化学反応、及び、前記第一の蛍光体を構成する化合物と前記第二の蛍光体を構成する化合物との凝着の少なくとも一方により、前記第一の蛍光体と前記第二の蛍光体が結合している、波長変換体。
【請求項2】
前記第一の蛍光体は、前記第二の蛍光体と異なる色の蛍光を放つ、請求項1に記載の波長変換体。
【請求項3】
前記第一の蛍光体と前記第二の蛍光体とは互いに融点が異なる、請求項1又は2に記載の波長変換体。
【請求項4】
前記第一の蛍光体及び前記第二の蛍光体の一方はケイ酸塩系の蛍光体であり、前記第一の蛍光体及び前記第二の蛍光体の他方はアルミン酸塩系の蛍光体である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の波長変換体。
【請求項5】
前記第一の蛍光体及び前記第二の蛍光体は互いに固溶する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の波長変換体。
【請求項6】
前記波長変換体は、前記第一の蛍光体を構成する元素と、前記第二の蛍光体を構成する元素のみを含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の波長変換体。
【請求項7】
前記波長変換体は、実質的に、前記第一の蛍光体と、前記第二の蛍光体と、前記第一の蛍光体と前記第二の蛍光体との結合部からなる、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の波長変換体。
【請求項8】
前記波長変換体は、前記第一の蛍光体及び前記第二の蛍光体が焼結してなり、内部に複数の空隙を有する焼結体である、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の波長変換体。
【請求項9】
前記波長変換体は無機酸化物のみからなる、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の波長変換体。
【請求項10】
前記波長変換体はガーネット化合物のみからなる、請求項9に記載の波長変換体。
【請求項11】
前記粒子状の蛍光体の平均粒子径は、1μm以上100μm未満である、請求項1乃至10のいずれか一項に波長変換体。
【請求項12】
前記波長変換体に含まれる発光中心はCe3+のみである、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の波長変換体。
【請求項13】
前記第一の蛍光体及び前記第二の蛍光体のいずれか一方は、580nm以上630nm未満の波長範囲内に蛍光ピークを有する光を放つ蛍光体である、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の波長変換体。
【請求項14】
前記第一の蛍光体及び前記第二の蛍光体の他方は、480nm以上550nm未満の波長範囲内に蛍光ピークを有する光を放つ蛍光体である、請求項13に記載の波長変換体。
【請求項15】
前記第一の蛍光体及び第二の蛍光体は、400nm以上470nm未満の波長範囲内にピークを有する光によって励起する、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の波長変換体。
【請求項16】
前記第一の蛍光体が放つ第一の蛍光と、前記第二の蛍光体が放つ第二の蛍光との混色光は、青色光との加法混色によって白色光となる、請求項1乃至15のいずれか一項に記載の波長変換体。
【請求項17】
前記第一の蛍光体及び前記第二の蛍光体の一方が放つ蛍光は、前記第一の蛍光体及び前記第二の蛍光体の他方を励起する、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の波長変換体。
【請求項18】
前記波長変換体は透光性を有する、請求項1乃至17のいずれか一項に記載の波長変換体。
【請求項19】
前記波長変換体は透光性を有しない、請求項1乃至17のいずれか一項に記載の波長変換体。
【請求項20】
前記第一の蛍光体が放つ第一の蛍光及び前記第二の蛍光体が放つ第二の蛍光の少なくとも一方を、励起光の照射面とは異なる面から放つ、請求項1乃至19のいずれか一項に記載の波長変換体。
【請求項21】
板状であり、一方の面が平滑面である、請求項1乃至20のいずれか一項に記載の波長変換体。
【請求項22】
前記一方の面の反対側は、複数の凹凸を有する凹凸面であり、
前記凹凸面の表面粗さRaは、2μm以上50μm以下である、請求項21に記載の波長変換体。
【請求項23】
請求項1乃至22のいずれか一項に記載の波長変換体の製造方法であって、
Ce3+で付活された無機蛍光体からなる第一の蛍光体の粒子群と、Ce3+で付活された無機蛍光体からなり、前記第一の蛍光体とは異なる第二の蛍光体の粒子群とを混合してなる成形体を作製する成形工程と、
前記成形体に含まれる前記第一の蛍光体と前記第二の蛍光体とを結合する結合工程と、
を有する、波長変換体の製造方法。
【請求項24】
前記結合工程は、前記第一の蛍光体と前記第二の蛍光体との接触部に、前記第一の蛍光体と前記第二の蛍光体との固溶体を形成する工程である、請求項23に記載の波長変換体の製造方法。
【請求項25】
前記結合工程は、前記第一の蛍光体及び前記第二の蛍光体の一方を融解する工程である、請求項23に記載の波長変換体の製造方法。
【請求項26】
請求項1乃至22のいずれか一項に記載の波長変換体を備える、発光装置。
【請求項27】
固体発光素子をさらに備え、
前記波長変換体に含まれる前記第一の蛍光体及び前記第二の蛍光体は、前記固体発光素子が放つ励起光を、当該励起光よりも長波長の光に変換する、請求項26に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長変換体及びその製造方法、並びに波長変換体を用いた発光装置に関する。詳細には本発明は、固体発光素子、特にレーザーダイオードを備える発光装置に利用することが可能な波長変換体及び波長変換体の製造方法、並びに当該波長変換体を用いた発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固体発光素子と、蛍光体を含む波長変換体とを組み合わせてなる発光装置が知られている。このような発光装置としては、例えば、白色発光ダイオード光源、レーザー照明装置及びレーザープロジェクターが知られている。
【0003】
近年、このような発光装置の高出力化が進んでおり、その結果、蛍光体への負荷は年々高まる傾向にある。そして、蛍光体の耐久性を高めるために、近年では、蛍光体を含む波長変換体の全無機化が進みつつある。このような波長変換体として、例えば、蛍光体単結晶や透光性蛍光セラミックス、蛍光体の焼結体が提案されている。
【0004】
透光性蛍光セラミックスや蛍光体の焼結体を利用した従来技術として、特許文献1の波長変換体が知られている。特許文献1では、ベースとなる多結晶セラミックス体にCe3+などの発光中心を拡散させることによって、多結晶セラミックスの一部または全部を多結晶蛍光セラミックスとした波長変換体が開示されている。
【0005】
特許文献2では、レーザー光を出射するレーザー光源と、酸窒化物蛍光体を焼結させた蛍光体焼結体を含み、レーザー光源から出射されたレーザー光を受けて蛍光を発する発光部とを備える照明装置が開示されている。そして、当該蛍光体焼結体は、互いに異なる色の蛍光を発する複数種類の焼結体を含み、レーザー光の光軸に沿って積層されていることも開示されている。
【0006】
また、特許文献3では、発光装置の出力光の色むらを抑制するために、蛍光体Aと蛍光体Bとを混在させ、1つの粒子を形成してなる波長変換体が開示されている。そして、蛍光体Aは、600nm以上660nm未満の波長領域に発光ピークを有する蛍光を放ち、かつ、Eu2+で付活された窒素を含有する無機化合物である。また、蛍光体Bは、400nm以上600nm未満の波長領域に発光ピークを有する蛍光を放ち、かつ、Eu2+で付活された無機化合物である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4621421号公報
【特許文献2】特開2012−123940号公報
【特許文献3】特開2007−231105号公報
【発明の概要】
【0008】
特許文献1及び特許文献2のように、蛍光体単結晶や透光性蛍光セラミックスを用いた場合、実質的に蛍光体のみからなる波長変換体を得ることができる。しかしながら、蛍光体単結晶や透光性蛍光セラミックスを用いる場合には、複数種類の波長変換体を組み合わせることにより色調制御する必要性が生じる。また、このような波長変換体は直線透過率が大きく、LED光やレーザー光が強い指向性を保ったまま透過する。そのため、蛍光体が発する蛍光と他の光とを加法混色した場合、色調ムラが生じ、色調制御が困難であった。
【0009】
また、特許文献3のように、波長変換体が、Eu2+で付活された蛍光体を含むように設計する場合は、窒化物系の赤色蛍光体を選択できるので、赤色光成分の強度が大きな波長変換体を得ることができる。しかし、Eu2+で付活された蛍光体は残光が若干長いことから、レーザー光などの高密度光で励起した場合、高出力の蛍光を得ることが困難であった。
【0010】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものである。そして、本発明の目的は、色調制御を容易にしつつも、高出力の蛍光を得ることが可能な波長変換体及び波長変換体の製造方法、並びに当該波長変換体を用いた発光装置を提供することにある。
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の第一の態様に係る波長変換体は、Ce3+で付活された無機蛍光体からなる第一の蛍光体と、Ce3+で付活された無機蛍光体からなり、第一の蛍光体とは異なる第二の蛍光体とを含む。第一の蛍光体及び第二の蛍光体の少なくとも一方は粒子状である。第一の蛍光体を構成する化合物と第二の蛍光体を構成する化合物との接触部における化学反応、及び、第一の蛍光体を構成する化合物と第二の蛍光体を構成する化合物との凝着の少なくとも一方により、第一の蛍光体と第二の蛍光体が結合している。
【0012】
本発明の第二の態様に係る波長変換体の製造方法は、Ce3+で付活された無機蛍光体からなる第一の蛍光体の粒子群と、Ce3+で付活された無機蛍光体からなり、第一の蛍光体とは異なる第二の蛍光体の粒子群とを混合してなる成形体を作製する成形工程と、成形体に含まれる第一の蛍光体と第二の蛍光体とを結合する結合工程と、を有する。
【0013】
本発明の第三の態様に係る発光装置は、波長変換体を備える。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の実施形態に係る波長変換体の一例を示す概略断面図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る波長変換体の他の例を示す概略断面図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る波長変換体の他の例を示す概略断面図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る波長変換体の他の例を示す概略断面図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係る波長変換体において、基材を備える例を示す概略断面図である。
図6図6は、本発明の実施形態に係る波長変換体において、基材を備える他の例を示す概略断面図である。
図7図7は、本発明の実施形態に係る波長変換体の製造工程を説明するための概略図である。
図8図8は、本発明の実施形態に係る発光装置を説明するための概略図である。
図9図9(a)は、LuCaMg(SiO:Ce3+蛍光体を示す電子顕微鏡写真である。図9(b)は、LuAl(AlO:Ce3+蛍光体を示す電子顕微鏡写真である。
図10図10(a)は、実施例1の波長変換体の表面を示す電子顕微鏡写真であり、図10(b)は、図10(a)で示した表面の拡大写真である。図10(c)は、実施例1の波長変換体の断面を示す電子顕微鏡写真であり、図10(d)は、図10(c)で示した断面の拡大写真である。
図11図11(a)乃至図11(d)は、実施例1の波長変換体の表面を示す電子顕微鏡写真である。
図12図12は、本発明の実施形態に係る波長変換体の蛍光スペクトルを測定した結果を示すグラフである。
図13図13は、本発明の実施形態に係る波長変換体の蛍光スペクトルを測定した結果を示すグラフである。
図14図14は、実施例1の波長変換体の蛍光スペクトルと、LuCaMg(SiO:Ce3+及びLuAl(AlO:Ce3+の混合蛍光体が放つ蛍光スペクトルのシミュレーション結果とを示すグラフである。
図15図15は、実施例2の波長変換体における一方の面を研磨した状態を示す電子顕微鏡写真である。図15(a)は、波長変換体における符号yで示す面を粗研磨した後の状態を示す断面写真である。図15(b)は、波長変換体における粗研磨した部位を拡大して示す断面写真である。図15(c)は、波長変換体における粗研磨した面を示す写真である。図15(d)は、波長変換体における、粗研磨した後に機械研磨を施した面を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施形態は、いずれも本実施形態の好ましい一例を示すものである。したがって、以下の実施形態で示される、数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、並びに、ステップ(工程)及びステップの順序などは一例であって、本実施形態を限定する主旨ではない。
【0016】
従来の波長変換体として、蛍光体粉末を無機材料で封止した構造を有するものが知られている。蛍光体粉末を無機封止してなる波長変換体は、光散乱作用を持つ高効率の蛍光体粉末を複数種利用することができるので、色調制御が容易であり、波長変換効率を高めることができる。しかし、蛍光体粒子間の隙間を無機材料で埋める手段が限られるので、蛍光体の高密度充填が困難であり、熱伝導性が劣っている。
【0017】
また、波長変換体として、蛍光体単結晶や蛍光セラミックスを用いた場合には、実質的に蛍光体のみからなる波長変換体を得ることができる。しかし、この場合には、複数種の波長変換体を組み合わせることによって色調制御する必要性が生じる。また、このような波長変換体は直線透過率が大きく、LED光やレーザー光が強い指向性を保ったまま透過するため、色調ムラが生じて、色調制御が困難である。
【0018】
蛍光体の焼結体を用いた場合にも、実質的に蛍光体のみからなる波長変換体を得ることができる。さらに、蛍光体の焼結体からなる場合には、波長変換体に光散乱作用を持たせることもできる。しかし、複数種の蛍光体からなる単一の焼結体、とりわけ橙色または赤色の蛍光を放つ蛍光体(暖色蛍光体)を含む複数種の蛍光体からなる単一の焼結体には、これまで実質的に目が向けられていなかった。この理由は、高い技術ニーズが無かったことや、技術シーズとなる暖色蛍光体の種類が限られること、さらには、技術シーズの候補となる暖色蛍光体が不人気材料であったことなどがある。このため、当業者には、暖色蛍光体を含む複数種の蛍光体を含有し、かつ、波長変換効率が高い波長変換体を得ることは困難であると認識されていた。
【0019】
本実施形態に係る波長変換体は、超短残光性の蛍光特性、光散乱特性及び高熱伝導性を有することから、レーザーダイオードなどの固体発光素子と組み合わせることにより、発光装置の高出力化及び出力光の高品質化を図ることが可能となる。
【0020】
[波長変換体]
本実施形態に係る波長変換体100は、図1に示すように、第一の蛍光体1と第二の蛍光体2を含む波長変換体である。第一の蛍光体1は、Ce3+で付活された無機蛍光体からなる。第二の蛍光体2もCe3+で付活された無機蛍光体からなるが、第一の蛍光体1とは異なる蛍光体である。そして、第一の蛍光体1と第二の蛍光体2の少なくとも一方は粒子状を成している。図1では、第一の蛍光体1と第二の蛍光体2の両方が粒子状である場合を示している。
【0021】
波長変換体100は、複数の第一の蛍光体1の粒子と複数の第二の蛍光体2の粒子が混在しており、第一の蛍光体1と第二の蛍光体2は結合部3を介して結合している。そして、結合部3は、第一の蛍光体1を構成する化合物と第二の蛍光体2を構成する化合物との接触部における化学反応により形成されている。具体的には、結合部3は、第一の蛍光体1を構成する化合物と第二の蛍光体2を構成する化合物とが固溶することにより形成されている。
【0022】
また、結合部3は、第一の蛍光体1を構成する化合物と第二の蛍光体2を構成する化合物との凝着により形成されている。具体的には、結合部3は、第一の蛍光体1を構成する化合物と第二の蛍光体2を構成する化合物との間の分子間力、または当該化合物同士が係合することにより形成されている。このように、第一の蛍光体1と第二の蛍光体2が結合部3を介して結合することにより、波長変換体100の熱伝導性を高めることが可能となる。つまり、第一の蛍光体1と第二の蛍光体2は、これらの固溶体または凝着部からなる結合部3により結合しており、蛍光体同士が無機材料により連結している。そのため、結合部3により第一の蛍光体1と第二の蛍光体2との間の熱伝導パスが形成されることから、波長変換体全体の熱伝導性を高めることが可能となる。また、波長変換体の熱伝導性が向上し、高密度光での励起に伴い波長変換体で発生した熱を効率よく放散することから、蛍光体の温度消光を抑制することが可能となる。
【0023】
なお、第一の蛍光体1の粒子同士や第二の蛍光体2の粒子同士も、接触部での固溶及び凝着の少なくとも一方により結合していることが好ましい。
【0024】
上述のように、波長変換体100は、複数の第一の蛍光体1の粒子と複数の第二の蛍光体2の粒子が混在してなる。そのため、第一の蛍光体1と第二の蛍光体2との界面及び結合部3では、入射光の屈折や反射が生じる。つまり、波長変換体100において、第一の蛍光体1及び第二の蛍光体2は光散乱体として機能している。そのため、入射光としてレーザー光などの指向性が強いコヒーレント光を用いた場合、コヒーレント光を光散乱により緩和して、ランバーシアンに近く、ギラギラ感を抑制した光に波長変換することが可能となる。
【0025】
第一の蛍光体1及び第二の蛍光体2は、発光中心としてCe3+を含んでいる。Ce3+の蛍光寿命は10−8〜10−7sであり、Eu2+等の他の発光中心と比較しても残光性が極めて短い。このため、ハイパワーレーザー光などの高密度の光励起条件下でも、蛍光出力の飽和現象が少なく、励起光の密度にほぼ比例する高い蛍光出力を得ることができる。また、Ce3+は、母体によって発光色が変化することから、出力光の色調を変えることが容易である。
【0026】
本実施形態の波長変換体100の形状は特に限定されるものではない。波長変換体100は薄板状であることが好ましく、円盤状または角板状であることも好ましい。このような形状の波長変換体100は、製造及び取り扱いが容易となる。
【0027】
波長変換体100の大きさも特に限定されるものではない。波長変換体100は、断面における横方向の最長長さが0.1mm以上100mm未満であることが好ましく、1mm以上30mm未満であることがより好ましい。また、波長変換体100の断面における横方向の最短長さが0.1mm以上100mm未満であることも好ましく、1mm以上30mm未満であることがより好ましい。波長変換体100の厚みは、30μm以上1cm未満であることが好ましく、50μm以上3mm未満であることがより好ましい。
【0028】
波長変換体100は、レーザー光のスポット径(一般に数10μm以上5mm未満)よりも大きい投影面積を持つ大きさであることが好ましい。この場合、全てのレーザー光を波長変換体100に照射できるようになるため、効率的に波長変換することが可能となる。
【0029】
波長変換体100に含まれる第一の蛍光体1と第二の蛍光体2の組み合わせは、様々な変形例を取ることが可能である。図1の波長変換体100は、第一の蛍光体1の平均的な粒子径が、第二の蛍光体2の平均的な粒子径とほぼ等しい組み合わせの例である。第一の蛍光体1と第二の蛍光体2の平均粒子径がほぼ等しい場合には、三次元のいずれの方向にも、蛍光体粒子のサイズむらが少ない波長変換体となる。そのため、均一な配向特性を持つ出力光を放つことが可能な波長変換体を得ることができる。また、図1のような構成の場合、第一の蛍光体1と第二の蛍光体2の結合部3が相対的に少ない波長変換体になるため、第一の蛍光体1と第二の蛍光体2の双方の特性を明瞭に持つ波長変換体を得ることができる。
【0030】
図2の波長変換体100Aは、第一の蛍光体1の平均的な粒子径が、第二の蛍光体2の平均的な粒子径よりも大きい例である。第一の蛍光体1の平均的な粒子径が、第二の蛍光体2の平均的な粒子径よりも大きい場合には、粒子径の大きな蛍光体の隙間を、粒子径の小さな蛍光体で充填するようになる。そのため、蛍光体の充填密度が高くなり、波長変換効率が良好な波長変換体100Aを得ることが可能となる。なお、本実施形態の波長変換体では、第一の蛍光体1の平均的な粒子径が、第二の蛍光体2の平均的な粒子径よりも小さいことも好ましい。
【0031】
図3の波長変換体100Bは、第一の蛍光体1及び第二の蛍光体2の両方とも、粒子径の大きな粒子と粒子径の小さな粒子が混在した例である。このような構成であることにより、図2の波長変換体100Aと同様に、粒子径の大きな蛍光体の隙間を粒子径の小さな蛍光体が充填するようになる。そのため、蛍光体の充填密度が高くなり、波長変換効率が良好な波長変換体100Bを得ることができる。
【0032】
図4の波長変換体100Cは、第二の蛍光体2をベースとし、第二の蛍光体2の内部に第一の蛍光体1の粒子を分散させた例である。このような構成であることにより、第一の蛍光体1の隙間を第二の蛍光体2が充填するようになる。そのため、蛍光体の充填密度が高くなり、波長変換効率が良好な波長変換体100Cを得ることができる。なお、本実施形態の波長変換体は、第一の蛍光体1をベースとし、第一の蛍光体1の内部に第二の蛍光体2の粒子を分散させた態様であってもよい。
【0033】
本実施形態の波長変換体100において、第一の蛍光体1は、第二の蛍光体2と異なる色の蛍光を放つことが好ましい。第一の蛍光体1の発光色が第二の蛍光体2の発光色と異なる場合には、第一の蛍光体1と第二の蛍光体2の種類や含有割合を適宜変えることにより、制御された色調の出力光を放つ波長変換体を得ることが可能となる。
【0034】
本実施形態の波長変換体100において、第一の蛍光体1と第二の蛍光体2とは互いに融点が異なることが好ましい。この際、第一の蛍光体1と第二の蛍光体2の融点差は、100℃以上であることが好ましい。また、第一の蛍光体1と第二の蛍光体2のうち、融点が低い方の蛍光体の融点は1600℃未満であることが好ましい。第一の蛍光体1の融点と第二の蛍光体2の融点が異なる場合には、融点差を利用して、粒子状とそれ以外の性状が混在する波長変換体とすることが可能となる。
【0035】
本実施形態の波長変換体100において、第一の蛍光体1と第二の蛍光体2は、蛍光体の母体となる化合物が互いに異なることが好ましい。例えば、第一の蛍光体1及び第二の蛍光体2の一方はケイ酸塩系の蛍光体であり、第一の蛍光体1及び第二の蛍光体2の他方はアルミン酸塩系の蛍光体であることが好ましい。なお、ケイ酸塩系の蛍光体は、ケイ酸塩のみからなる蛍光体、または、端成分となるケイ酸塩の固溶割合が70mol%以上の固溶体からなる蛍光体をいう。アルミン酸塩系の蛍光体は、アルミン酸塩のみからなる蛍光体、または、端成分となるアルミン酸塩の固溶割合が70mol%以上の固溶体からなる蛍光体をいう。
【0036】
一般にケイ酸塩系の蛍光体はアルミン酸塩系の蛍光体よりも融点が低く、融点差が大きい。そのため、ケイ酸塩系の蛍光体とアルミン酸塩系の蛍光体とを使用することにより、粒子状の蛍光体と粒子状以外の性状の蛍光体とが混在する波長変換体を得ることができる。また、低融点性のケイ酸塩系の蛍光体とアルミン酸塩系の蛍光体とを混合した後、ケイ酸塩系の蛍光体の融点近傍の温度で加熱することにより、ケイ酸塩系の蛍光体とアルミン酸塩系の蛍光体の接触部で固溶体を形成しやすくなる。そのため、蛍光体粒子同士の結合力が大きい波長変換体を得ることが可能となる。
【0037】
上述のように、波長変換体100において、第一の蛍光体1と第二の蛍光体2は結合部3を介して結合しており、結合部3は、第一の蛍光体1を構成する化合物と第二の蛍光体2を構成する化合物との接触部における化学反応により形成されていることが好ましい。そのため、第一の蛍光体1及び第二の蛍光体2は互いに固溶することが好ましい。これにより、第一の蛍光体1と第二の蛍光体2が、両者の固溶体を介して徐々に組成を変えながら結合する構造になる。そのため、蛍光体粒子間の結合力が強く、蛍光体粒子同士が離れ難くなることから、機械的な強度に優れる波長変換体を得ることが可能となる。
【0038】
このように、波長変換体100において、第一の蛍光体1と第二の蛍光体2は、互いに固溶する性質を持つ蛍光体であることが好ましい。これにより、第一の蛍光体1と第二の蛍光体2が固溶してなる結合部3の形成が容易となる。
【0039】
本実施形態の波長変換体100は、第一の蛍光体1を構成する元素と、第二の蛍光体2を構成する元素のみを含むことが好ましい。つまり、波長変換体100は、第一の蛍光体1と第二の蛍光体2を構成する元素以外の元素を含まないことが好ましい。これにより、第一の蛍光体1及び第二の蛍光体2の蛍光出力や信頼性の低下を招く不要な元素を含まない波長変換体となる。そのため、高い変換効率と高信頼性を期待できる波長変換体を得ることが可能となる。
【0040】
波長変換体100は、実質的に、第一の蛍光体1と、第二の蛍光体2と、第一の蛍光体1と第二の蛍光体2との結合部3からなることが好ましい。つまり、波長変換体100は、第一の蛍光体1と第二の蛍光体2と結合部3とを有しており、その他に波長変換体100の作用効果に影響を与えない構成を有していても構わない。ただ、波長変換体100の作用効果に影響を与える他の構成は有しないことが好ましい。これにより、波長変換体100は蛍光出力や信頼性の低下を招く不要な物質を含まないため、高い変換効率と高信頼性を期待できる波長変換体を得ることができる。
【0041】
波長変換体100は、第一の蛍光体1及び第二の蛍光体2が焼結してなり、内部に複数の空隙を有する焼結体であることが好ましい。または、波長変換体100は、第一の蛍光体1及び第二の蛍光体2が焼結してなり、内部に複数の空隙を有しないセラミックス体であることが好ましい。波長変換体100がこのような焼結体またはセラミックス体であることにより、波長変換体の製造や取り扱いが容易になるので、工業生産に適した波長変換体となる。
【0042】
波長変換体100は、無機酸化物のみからなることが好ましい。つまり、第一の蛍光体、第二の蛍光体及び結合部3の全てが無機酸化物からなることが好ましい。この場合、常圧の大気中での取り扱いが容易となるだけでなく、上述の焼結体やセラミックス体の製造が容易となる。そのため、工業生産に適した波長変換体となる。
【0043】
波長変換体100は、ガーネット化合物のみからなることが好ましい。つまり、波長変換体100は、ガーネット(柘榴石)の結晶構造を持つ化合物のみからなることが好ましい。また、第一の蛍光体1、第二の蛍光体2及び結合部3は、ガーネットの結晶構造を持つ化合物であることが好ましい。ガーネット化合物は、化学的に安定であり、かつ、常圧の大気中での取り扱いが容易である。そして、波長変換体100がガーネット化合物のみからなる場合には、化学的性質が類似した化合物のみで構成されるため、工業生産により適した波長変換体となる。
【0044】
ガーネット化合物は、天然では、複数の端成分の固溶体として存在することが知られ、ガーネット化合物同士が固溶体を形成しやすい性質を持つ。そのため、第一の蛍光体1及び第二の蛍光体2がガーネットの結晶構造を持つ化合物の場合には、第一の蛍光体1と第二の蛍光体2は固溶体を形成しやすいため、結合部3を介して結合させることが容易となる。
【0045】
さらに、ガーネット化合物の蛍光体粒子は、多面体形状を持つ単分散粒子、または多面体に近い形状を持つ単分散粒子とすることが容易である。このため、蛍光体の充填率が大きく、かつ、透光性に優れる波長変換体を得ることが可能となる。
【0046】
波長変換体100において、粒子状の蛍光体の平均粒子径は、1μm以上100μm未満であることが好ましい。つまり、波長変換体100において、第一の蛍光体1及び第二の蛍光体2の少なくとも一方は粒子状であるため、当該蛍光体の平均粒子径は上記範囲内であることが好ましい。また、波長変換体100において、粒子状の蛍光体の平均粒子径は、3μm以上50μm未満であることがより好ましく、5μm以上40μm未満であることが特に好ましい。このような粒子径を有する蛍光体は、近紫外領域から可視領域の光の吸収と散乱が容易であり、発光装置用としての高い実用実績を持つ。そのため、このような粒子径を有する蛍光体を用いた場合には、発光装置用として実用性の高い波長変換体を得ることができる。なお、波長変換体100における蛍光体の粒子径は、波長変換体の断面を顕微鏡で観察した際の、蛍光体粒子の最長軸長さをいう。
【0047】
波長変換体100に含まれる発光中心はCe3+のみであることが好ましい。3価のセリウムイオン(Ce3+)を含む蛍光体は、ハイパワー密度の光励起条件下でも、蛍光出力の飽和現象が少なく、励起光の密度にほぼ比例する高い蛍光出力を得ることができる。また、波長変換体の製造時などに、異種蛍光体の粒子間で発光中心が拡散した場合であっても、波長変換特性の変動が少ない波長変換体を得ることが可能となる。
【0048】
なお、Ce3+は、母体によって発光色が変わる、超短残光性の発光中心である。そのため、波長変換体100に含まれる発光中心がCe3+のみの場合には、出力光の色調を変えることが容易であり、さらに高密度の光照射下であっても、高出力を保持することが可能となる。なお、「高密度の光照射」とは、波長変換体に照射する励起光の強度が1W/mm以上、特に3W/mm以上となる光照射をいい、1W/mm以上100W/mm未満の光照射である。なお、波長変換体の用途として、励起光の強度が10W/mm未満や50W/mm未満の光照射で足りる場合がある。ただ、波長変換体の用途として、10W/mm以上、さらには50W/mm以上の光照射が求められる場合もあり、本実施形態の波長変換体によれば、これらの用途に容易に対応することが可能となる。
【0049】
波長変換体100において、第一の蛍光体1及び第二の蛍光体2のいずれか一方は、580nm以上630nm未満の波長範囲内に蛍光ピークを有する光を放つ蛍光体であることが好ましい。また、第一の蛍光体1及び第二の蛍光体2のいずれか一方は、590nm以上620nm未満の波長範囲内に蛍光ピークを有する光を放つ蛍光体であることがより好ましい。第一の蛍光体1及び第二の蛍光体2のいずれか一方は、600nm以上615nm未満の波長範囲内に蛍光ピークを有する光を放つ蛍光体であることが特に好ましい。この場合には、視感度が比較的高い赤色光成分の割合が多い蛍光を放つことが可能となるため、照明用途に適する波長変換体を得ることができる。
【0050】
上述のように、波長変換体100において、第一の蛍光体1及び第二の蛍光体2のいずれか一方は、580nm以上630nm未満の波長範囲内に蛍光ピークを有する光を放つ蛍光体であることが好ましい。そして、第一の蛍光体1及び第二の蛍光体2の他方は、480nm以上550nm未満の波長範囲内に蛍光ピークを有する光を放つ蛍光体であることが好ましい。また、第一の蛍光体1及び第二の蛍光体2の他方は、490nm以上530nm未満の波長範囲内に蛍光ピークを有する光を放つ蛍光体であることがより好ましい。さらに、第一の蛍光体1及び第二の蛍光体2の他方は、500nm以上515nm未満の波長範囲内に蛍光ピークを有する光を放つ蛍光体であることが特に好ましい。このような波長変換体100は、青緑色光成分や緑色光成分が多い蛍光を放つ蛍光体も含むことになるため、照明用途に特に適する波長変換体を得ることができる。
【0051】
波長変換体100において、第一の蛍光体1及び第二の蛍光体2は、380nm以上500nm未満の波長範囲内にピークを有する光によって励起することが好ましい。また、第一の蛍光体1及び第二の蛍光体2は、400nm以上470nm未満の波長範囲内にピークを有する光によって励起することがより好ましい。さらに、第一の蛍光体1及び第二の蛍光体2は、400nm以上415nm未満、または440nm以上470nm未満のいずれかの波長範囲内にピークを有する光によって励起することがさらに好ましい。特に、第一の蛍光体1及び第二の蛍光体2は、450nm以上460nm未満の波長範囲内にピークを有する光によって励起することが好ましい。この場合には、紫から青色の短波長可視光、特に、色純度と視感度の面でバランスが取れた青色光で第一の蛍光体1及び第二の蛍光体2を励起できる。そのため、波長変換体100と、発光ダイオードやレーザーダイオードなどの固体発光素子と組み合わせることにより、短波長可視光と蛍光体が放つ蛍光とを利用した発光装置を得ることが可能となる。
【0052】
波長変換体100において、第一の蛍光体1が放つ第一の蛍光と、第二の蛍光体2が放つ第二の蛍光との混色光は、青色光との加法混色によって白色光となることが好ましい。青色光との加法混色によって白色光を形成できる波長変換体は、照明光としての需要が多いことから、発光装置に好適に用いることが可能となる。
【0053】
波長変換体100において、第一の蛍光体1及び第二の蛍光体2の一方が放つ蛍光は、第一の蛍光体1及び第二の蛍光体2の他方を励起することが好ましい。つまり、第一の蛍光体1及び第二の蛍光体2の一方が放つ蛍光を第一の蛍光体1及び第二の蛍光体2の他方が吸収して、当該他方の蛍光体を励起することが好ましい。この場合、一方の蛍光体によって他方の蛍光体を励起することが可能となるため、利用できる蛍光体の選択肢を広げることが可能となる。また、蛍光体同士の光干渉効果を利用して、蛍光体の単純な組み合わせでは実現できない分光分布を持つ波長変換体を得ることが可能となる。
【0054】
本実施形態の波長変換体100において、第一の蛍光体1及び第二の蛍光体2として利用できる蛍光体は、酸化物系蛍光体、硫化物系蛍光体、窒化物系蛍光体及びハロゲン化物系蛍光体からなる群より選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。また、第一の蛍光体1及び第二の蛍光体2として好ましい蛍光体は、大気中及び常圧での取り扱いが容易な酸化物系蛍光体である。第一の蛍光体1及び第二の蛍光体2としては、酸化物、ケイ酸塩、アルミン酸塩、燐酸塩、硼酸塩、ハロケイ酸塩、ハロアルミン酸塩及びハロ燐酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。このような蛍光体は、工業生産が容易であるため、特に好適に用いることができる。
【0055】
酸化物系蛍光体としては、例えば、YAl(AlO:Ce3+、CaSc(SiO:Ce3+、LuCaMg(SiO:Ce3+などのCe3+で付活されたガーネット蛍光体;MSc:Ce3+、MLu:Ce3+などのカルシウムフェライト型の蛍光体;MAlOF:Ce3+などの酸フッ化物蛍光体を挙げることができる。但し、Mは、Ca、Sr及びBaから選択される少なくとも一つの元素である。
【0056】
硫化物系蛍光体としては、例えば、MS:Ce3+、MGa:Ce3+などの、Ce3+で付活されたアルカリ土類金属硫化物や、チオガリウム酸塩の蛍光体を挙げることができる。但し、Mは、Ca、SrおよびBaから選択される少なくとも一つの元素である。
【0057】
窒化物系蛍光体としては、例えば、LaAl(Si,Al)(N,O)10:Ce3+、LaSi:Ce3+、Ca−α−sialon:Ce3+、CaAlSiN:Ce3+、LaSi11:Ce3+などの、Ce3+で付活された酸窒化アルミノ窒化ケイ酸塩、窒化ケイ酸塩、酸窒化ケイ酸塩および窒化アルミノケイ酸塩から選択される蛍光体を挙げることができる。
【0058】
第一の蛍光体1及び第二の蛍光体2として利用できる蛍光体の結晶構造は、ガーネット型、ペロブスカイト型、アパタイト型、KNiF型、オリビン型、A希土型、B希土型、C希土型、スピネル型、シーライト型、またはカルシウムフェライト型であることが好ましい。なお、当該結晶構造は、高効率蛍光体の母体として機能する化合物が多い構造であることが好ましい。そのため、第一の蛍光体1及び第二の蛍光体2として利用できる蛍光体の結晶構造は、ペロブスカイト型、アパタイト型、KNiF型、ガーネット型、オリビン型、スピネル型、またはカルシウムフェライト型であることがより好ましい。
【0059】
ガーネット型の結晶構造を持つ酸化物の具体例としては、端成分となるケイ酸塩としてのCaSc(SiO、LuCaMg(SiO;端成分となるアルミノケイ酸塩としてのYMg(SiO(AlO)、YMgAl(AlO(SiO)、LuMg(SiO(AlO)、YBaAl(AlO(SiO)、YMgAl(AlO(SiO)、YCaAl(AlO(SiO)、LuCaAl(AlO(SiO)、CaZr(AlO(SiO);端成分となるアルミン酸塩としてのLuAl(AlO、YAl(AlO、GdAl(AlO、TbAl(AlO、YGa(AlO、YSc(AlO、CaYZr(AlO、CaEuZr(AlO、CaGdZr(AlO、CaTbZr(AlO、CaLuZr(AlO、CaYHf(AlOなどが挙げられる。本実施形態では、母体となるこれらの化合物に発光中心(例えばCe3+)を添加した蛍光体を利用することができる。
【0060】
本実施形態の波長変換体において、第一の蛍光体1は、LuCaMg(SiOを母体とするCe3+付活蛍光体であることが好ましい。LuCaMg(SiO:Ce3+は、橙色光を放つガーネットケイ酸塩であり、かつ、温度消光が比較的小さい特性を持つ。そのため、当該蛍光体を用いることにより、照明用途で求められる赤色光成分を多く放ち、高出力の用途に適する波長変換体を得ることができる。
【0061】
本実施形態の波長変換体において、第二の蛍光体2は、ガーネット化合物であるCaSc(SiOまたはLuAl(AlOを母体とするCe3+付活蛍光体であることが好ましい。CaSc(SiO:Ce3+やLuAl(AlO:Ce3+は、青緑〜緑色の光を放つ蛍光体である。そのため、上述の第一の蛍光体1が放つ橙色光と、第二の蛍光体2が放つ青緑〜緑色の光との加法混色によって、白味または黄味を帯びた光成分を放つ波長変換体を得ることができる。また、CaSc(SiO:Ce3+やLuAl(AlO:Ce3+は、LuCaMg(SiO:Ce3+と固溶体を形成する性質を持つ。そのため、第一の蛍光体と第二の蛍光体の接触部において、固溶体からなる結合部3を容易に形成することができる。
【0062】
このように、好ましい蛍光体の組み合わせは、第一の蛍光体1がLuCaMg(SiOを母体とするCe3+付活蛍光体であり、第二の蛍光体2がCaSc(SiOまたはLuAl(AlOを母体とするCe3+付活蛍光体である。本実施形態の波長変換体は、少なくとも上記の蛍光体の組み合わせを持つことが好ましい。
【0063】
なお、LuCaMg(SiOを母体とするCe3+付活蛍光体は、LuCaMg(SiO:Ce3+のみからなる蛍光体、または、LuCaMg(SiO:Ce3+の固溶割合が70mol%以上の固溶体からなる蛍光体をいう。
【0064】
同様に、CaSc(SiOを母体とするCe3+付活蛍光体は、CaSc(SiO:Ce3+のみからなる蛍光体、または、CaSc(SiO:Ce3+の固溶割合が70mol%以上の固溶体からなる蛍光体をいう。また、LuAl(AlOを母体とするCe3+付活蛍光体は、LuAl(AlO:Ce3+のみからなる蛍光体、または、LuAl(AlO:Ce3+の固溶割合が70mol%以上の固溶体からなる蛍光体をいう。
【0065】
特に好ましい第二の蛍光体2は、LuAl(AlOを母体とするCe3+付活蛍光体である。LuAl(AlO:Ce3+はアルミン酸塩であり、ケイ酸塩のLuCaMg(SiO:Ce3+よりも100℃以上高い融点を持つ。第一の蛍光体1がLuCaMg(SiO:Ce3+であり、第二の蛍光体2がLuAl(AlO:Ce3+である場合、焼結温度を第一の蛍光体1の融点に近づけても、第一の蛍光体1と第二の蛍光体2の固溶は極端に促進されない。そのため、第一の蛍光体1と第二の蛍光体2の蛍光特性が明瞭な波長変換体を得ることができる。
【0066】
なお、本実施形態の波長変換体は、第一の蛍光体1および第二の蛍光体2とは異なる蛍光体をさらに含むことも可能である。これにより、蛍光の色調が調整された波長変換体を得ることができる。
【0067】
本実施形態の波長変換体100は、透光性を有することが好ましい。これにより、励起光に加えて、第一の蛍光体1が放つ第一の蛍光、及び第二の蛍光体2が放つ第二の蛍光も透過できる波長変換体を得ることが可能となる。なお、波長変換体100は、波長380nm以上780nm以下の波長範囲において、拡散透過率が60%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。これにより、光透過性に優れた波長変換体を得ることができる。
【0068】
なお、波長変換体100は、波長380nm以上780nm以下の波長範囲において、拡散透過率が60%未満であってもよく、特に40%未満であってもよい。これにより、光透過性と光反射性を合わせ持つ波長変換体を得ることができる。
【0069】
一方、波長変換体は、透光性を有しないことも好ましい。このようにすると、光が透過しない波長変換体となる。そのため、波長変換体によって反射した励起光と、第一の蛍光体1が放つ第一の蛍光と、第二の蛍光体2が放つ第二の蛍光が、励起光の照射面のみから放射される。したがって、波長変換体における励起光の照射面でこれらの光を加法混色することが可能となる。
【0070】
波長変換体100は、第一の蛍光体1が放つ第一の蛍光及び第二の蛍光体2が放つ第二の蛍光の少なくとも一方を、励起光の照射面とは異なる面から放つ構造とすることもできる。このようにすると、第一の蛍光体1が放つ第一の蛍光と、第二の蛍光体2が放つ第二の蛍光の少なくとも一方が透過する波長変換体となる。そのため、第一の蛍光と第二の蛍光の少なくとも一方を出力することが可能な波長変換体を得ることができる。
【0071】
本実施形態の波長変換体は、基材10をさらに備えることが好ましい。図5に示す波長変換体100Dは基材10を備えており、基材10により、第一の蛍光体1及び第二の蛍光体2の焼結体全体を支持する構成となっている。また、図6に示す波長変換体100Eは基材10Aを備えており、基材10Aにより、第一の蛍光体1及び第二の蛍光体2の焼結体を部分的に支持する構成となっている。このような構成により、波長変換体100が薄く、機械的な強度が不十分な場合でも、容易に取り扱うことが可能となる。
【0072】
本実施形態において、基材は、波長変換体100の特定面に面接触する構成であってもよい。例えば図5に示すように、基材10が平板状であり、波長変換体100の下面に接触して当該下面全体を支持する構成であってもよい。また、本実施形態において、基材は、波長変換体100の側面を取り囲む構成であってもよい。例えば図6に示すように、基材10Aが波長変換体100の側面全体を取り囲み、さらに波長変換体100の下面の外周部を支持する構成であってもよい。
【0073】
基材10,10Aの材質は特に限定されず、金属、半導体及び電気絶縁体、並びにこれらの複合体または積層体からなる群より選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。基材10,10Aの材質の具体例としては、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、シリコン、アルミナ、石英、ガラスを挙げることができる。
【0074】
基材10,10Aは、表面の少なくとも一部または全部を電気絶縁材または金属でコートしたものとしてもよい。これにより、波長変換体100と基材10,10Aとの接合強度を高め、波長変換体100で発生した熱の放熱効果を向上させることが可能となる。また、波長変換体100が放つ蛍光を一方向へ反射させることも可能となる。
【0075】
基材10,10Aは、透光性を有していてもよい。この場合には、基材10,10Aが、波長変換体100の光出力面の保護を兼ねることが可能となる。また、基材10,10Aは光反射特性を有していてもよい。この場合には、基材10,10Aが、波長変換体100が放つ蛍光を一方向に出力できる反射体として作用することが可能となる。
【0076】
上述のように、本実施形態の波長変換体100の形状は特に限定されるものではなく、例えば、波長変換体100は板状とすることができる。ここで、波長変換体100が板状の場合、波長変換体100は平滑面を有することが好ましい。波長変換体100が板状であり、さらに一方の面が平滑であることにより、例えば青色レーザー光などの励起光の透過量や反射量が適宜変化する。そのため、第一の蛍光体1が放つ蛍光及び第二の蛍光体2が放つ蛍光の混色光と、励起光との加法混色により得られる出力光を、容易に色調制御することが可能となる。
【0077】
また、波長変換体100の平滑面は、励起光の入射面であることが好ましい。波長変換体100の平滑面を、レーザー光などの励起光の入射面とすることにより、波長変換体100に対する励起光の入射効率を高めることが可能になる。特に、励起光が、波長変換体100の平滑面に対して略垂直な方向に入射するように構成することで、波長変換体100に対する励起光の入射効率が高い発光装置を得ることができる。なお、「平滑面に対して略垂直な方向」とは、平滑面に対して90°±30°となる方向をいい、平滑面に対して90°±10°となる方向であることがより好ましい。
【0078】
波長変換体100は、平滑面に加えて凹凸面を有することが好ましい。つまり、板状の波長変換体100において、一方の主面が平滑面であり、一方の主面に対して反対側の主面が凹凸面であることが好ましい。波長変換体100の反対側の主面が凹凸であることにより、凹凸面からの出力光の取り出し効率を高めることができる。そのため、凹凸面からの出力光の取り出し量が局所的に多い波長変換体を得ることが可能となる。
【0079】
このように、波長変換体100は、板状であり、一方の面が平滑面であることが好ましい。また、一方の面の反対側は、複数の凹凸を有する凹凸面であることが好ましい。ここで、凹凸面の表面粗さRaは、2μm以上50μm以下であることがより好ましい。凹凸面の表面粗さRaがこの範囲内であることにより、出力光の取り出し効率をより高めることが可能となる。なお、本明細書において、表面粗さRaは、日本工業規格JIS B0601:2013に規定の算術平均粗さRaをいう。
【0080】
平滑面の表面粗さRaは特に限定されず、可能な限りゼロに近い数値であることが好ましい。平滑面の表面粗さRaは、例えば1μm未満とすることができる。なお、平滑面の表面粗さRaの下限は特に限定されないが、例えば0.1μmとすることができる。
【0081】
このように、本実施形態に係る波長変換体100は、Ce3+で付活された無機蛍光体からなる第一の蛍光体1と、Ce3+で付活された無機蛍光体からなり、第一の蛍光体1とは異なる第二の蛍光体2とを含む。第一の蛍光体1及び第二の蛍光体2の少なくとも一方は粒子状である。第一の蛍光体1を構成する化合物と第二の蛍光体2を構成する化合物との接触部における化学反応、及び、第一の蛍光体1を構成する化合物と第二の蛍光体2を構成する化合物との凝着の少なくとも一方により、第一の蛍光体1と第二の蛍光体2が結合している。本実施形態に係る波長変換体100は、光散乱体として機能する粒子状の蛍光体を複数種含んでいる。さらに波長変換体100は、熱伝導性に優れる無機化合物からなり、かつ、超短残光性の発光中心を有している。そのため、レーザー光などの指向性が強いコヒーレント光を光散乱により緩和して、ランバーシアンに近く、ギラギラ感を抑制した光に波長変換できる。さらに、高密度光で励起した際に伴う光出力飽和と温度上昇を抑制することが可能となる。そのため、波長変換体100は、色調制御を容易にしつつも、高出力の蛍光を得ることが可能となる。
【0082】
[波長変換体の製造方法]
次に、本実施形態に係る波長変換体100の製造方法について、図7を用いて説明する。なお、図7の右側に位置する模式図は、各工程における蛍光体粒子群の状態を概略的に示している。
【0083】
図7に示すように、本実施形態に係る波長変換体の製造方法は、第一の蛍光体の粒子群と第二の蛍光体の粒子群とを秤量する秤量工程20と、秤量した第一の蛍光体の粒子群と第二の蛍光体の粒子群とを混合する混合工程21とを有している。さらに、当該製造方法は、第一の蛍光体と第二の蛍光体とを混合してなる成形体を作製する成形工程22と、成形体に含まれる第一の蛍光体と第二の蛍光体とを結合する結合工程23とを有している。本実施形態に係る波長変換体の製造方法では、蛍光体を調製する原料を使用せず、蛍光体原料よりも反応性に劣る蛍光体の粒子群を使用している。そのため、第一の蛍光体および第二の蛍光体が有する固有の蛍光特性を維持した波長変換体を容易に得ることが可能となる。
【0084】
秤量工程20は、第一の蛍光体1及び第二の蛍光体2を秤量する工程であり、予め製造または入手した複数種の蛍光体粒子群を秤量する。これによって、各々秤量された複数種の蛍光体粒子群を準備する。なお、秤量工程20は、自動天秤を利用するなど、セラミックス技術で利用されるオーソドックスな秤量方法で行うことができる。
【0085】
混合工程21は、秤量工程20によって秤量した複数種の蛍光体の粒子群を混合する工程である。つまり、混合工程21では、事前に秤量した複数種の蛍光体粒子群を混合する。これによって、複数種の蛍光体粒子群が混合された混合蛍光体を準備する。なお、混合工程21は、セラミックス技術で利用されるオーソドックスな乾式混合または湿式混合を採用することができる。
【0086】
成形工程22は、混合工程21によって得た混合蛍光体の粒子群を成形体とする工程である。つまり、成形工程22では、混合蛍光体の粒子群を型などに投入して成形する。これによって、混合蛍光体が成形体になる。なお、成形工程22は、セラミックス技術で利用されるオーソドックスな成形技術を採用することができ、例えば、金型とプレス機を利用して、混合蛍光体の粒子群を加圧成形する。
【0087】
結合工程23は、成形体の中で接触した第一の蛍光体の粒子と第二の蛍光体の粒子を結合する工程である。具体的には、第一の蛍光体の粒子群と第二の蛍光体の粒子群で構成された上述の成形体を加熱するなどして、粒子同士の反応を促進して結合する。これによって、第一の蛍光体の粒子と第二の蛍光体の粒子が結合し、本実施形態の波長変換体を得ることができる。
【0088】
なお、結合工程23は、セラミックス技術で利用されるオーソドックスな焼成技術を用いることができる。例えば、電気炉を利用して成形体を加熱することにより、波長変換体を得ることができる。この際の加熱温度としては、例えば、当該成形体に含まれる最も高い融点を持つ蛍光体の融点よりも低い温度で加熱する。これにより、成形体を構成する蛍光体の粒子群が結合して結合部3を形成することが可能となる。
【0089】
結合工程23は、第一の蛍光体1と第二の蛍光体2との接触部に、第一の蛍光体1と第二の蛍光体2との固溶体を形成する工程であることが好ましい。上述のように、波長変換体100において、第一の蛍光体1と第二の蛍光体2は、これらの固溶体からなる結合部3により結合していることが好ましい。そのため、結合工程23が固溶体を形成する工程である場合には、第一の蛍光体1と第二の蛍光体2が、両者の固溶体を介して徐々に組成を変えながら結合する構造になる。そのため、第一の蛍光体1と第二の蛍光体2の粒子間の結合力が強く、異種の蛍光体粒子同士が離れ難い波長変換体を得ることができる。
【0090】
また、上述のように、本実施形態に係る波長変換体の製造方法では、蛍光体自体を調製する原料ではなく、蛍光体原料よりも反応性に劣る蛍光体の粒子群を利用している。そのため、結合工程23において、第一の蛍光体1の粒子と第二の蛍光体2の粒子が完全に固溶するわけでは無く、第一の蛍光体1と第二の蛍光体2との接触部のみで固溶反応が進行する。そのため、得られる波長変換体では、第一の蛍光体および第二の蛍光体が残存することから、これらの蛍光体に固有の蛍光特性を維持することが可能となる。
【0091】
結合工程23は、第一の蛍光体1及び第二の蛍光体2の一方を融解する工程であることが好ましい。具体的には、第一の蛍光体の粒子群と第二の蛍光体の粒子群で構成された上述の成形体において、成形体に含まれる最も高い融点を持つ蛍光体の融点よりも低く、かつ、成形体に含まれる最も低い融点を持つ蛍光体の融点よりも高い温度で加熱することが好ましい。これにより、第一の蛍光体1及び第二の蛍光体2の一方が融解する。そして、融解した一方の蛍光体が、粒子状を保つ他方の蛍光体を包み込むように作用した後、冷却によって凝固する。これにより、他方の蛍光体の表面に、融解した一方の蛍光体が係合して凝着し、結合部3を形成する。そのため、第一の蛍光体1及び第二の蛍光体2が強固に結合した波長変換体100を得ることが可能となる。
【0092】
波長変換体100に平滑面を形成する方法は特に限定されず、従来公知の研磨方法を用いることができる。例えば、波長変換体100の表面を、サンドペーパー、グラインダー、ショットブラストなどを用いて研磨することで、平滑面を形成することができる。
【0093】
このように、波長変換体の製造方法は、Ce3+で付活された無機蛍光体からなる第一の蛍光体1の粒子群と、Ce3+で付活された無機蛍光体からなり、第一の蛍光体1とは異なる第二の蛍光体2の粒子群とを混合してなる成形体を作製する成形工程を有する。当該製造方法は、さらに、当該成形体に含まれる第一の蛍光体1と第二の蛍光体2とを結合する結合工程を有する。このように、本実施形態の波長変換体の製造方法は極めてシンプルであるため、波長変換体の工業生産に好適に用いることが可能となる。
【0094】
[発光装置]
次に、本実施形態に係る発光装置を説明する。本実施形態の発光装置は、上述の波長変換体を備えている。
【0095】
本実施形態の発光装置は、発光する機能を備えた電子装置を広く包含するものであり、何らかの光を発する電子装置であれば特に限定されるものではない。また、発光装置は、照明光源及び照明装置並びに表示装置なども包含する。そのため、レーザーダイオードを備える照明装置やプロジェクターなども発光装置とみなされる。
【0096】
本実施形態の発光装置は、少なくとも上述の波長変換体を利用しており、さらに当該波長変換体が放つ蛍光を出力光として利用する装置である。詳細に説明すると、本実施形態の発光装置は、上述の波長変換体と当該波長変換体を励起する励起源とを組み合わせている。波長変換体は、これに含まれる蛍光体が、励起源が放つエネルギーを吸収し、吸収したエネルギーを色調制御された蛍光に変換するものである。
【0097】
以下、図面を参考に本実施形態の発光装置を説明する。図8は、本実施形態に係る発光装置の概略を示す。図8(a)及び図8(b)において、励起源101は、本実施形態の波長変換体100が備える蛍光体を励起するための励起光102を生成する光源である。励起源101は、粒子線(α線、β線、電子線など)や、電磁波(γ線、X線、真空紫外線、紫外線、可視光など)を放つ放射装置を用いることができる。なお、励起源101は、紫色光である短波長可視光を放つ放射装置を用いることが好ましい。
【0098】
励起源101としては、各種の放射線発生装置や電子ビーム放射装置、放電光発生装置、固体発光素子、固体発光装置などを用いることができる。励起源101の代表的なものとしては、電子銃、X線管球、希ガス放電装置、水銀放電装置、発光ダイオード、半導体レーザーを含むレーザー光発生装置、無機または有機のエレクトロルミネッセンス素子などが挙げられる。
【0099】
図8(a)及び図8(b)において、出力光103は、励起源101が放つ励起線、または励起光102によって励起された波長変換体100中の蛍光体が放つ蛍光である。そして、出力光103は、発光装置において照明光や表示光として利用されるものである。
【0100】
図8(a)では、励起線または励起光102を波長変換体100に照射する方向に、蛍光体からの出力光103が放出される構造の発光装置を示す。なお、図8(a)に示す発光装置としては、白色LED光源や透過型のレーザー照明装置のほか、蛍光ランプ、電子管なども挙げられる。一方、図8(b)では、励起線または励起光102を波長変換体100に照射する方向とは逆の方向に、波長変換体100からの出力光103が放出される構造の発光装置を示す。図8(b)に示す発光装置としては、反射型のレーザー照明装置、例えば、反射板付き蛍光体ホイールを利用する光源装置やプロジェクターなどが挙げられる。
【0101】
本実施形態の発光装置の具体例として好ましいものは、蛍光体を利用して構成した半導体発光装置、照明光源、照明装置、表示装置などであり、特にレーザー照明やレーザープロジェクターである。
【0102】
そして、本実施形態の発光装置は固体発光素子をさらに備え、波長変換体に含まれる第一の蛍光体及び第二の蛍光体は、固体発光素子が放つ励起光を、当該励起光よりも長波長の光に変換することが好ましい。また、固体発光素子は、紫色光である短波長可視光を放つことが好ましい。励起源として固体発光素子を用いることにより、衝撃に強い全固体の発光装置、例えば固体照明を実現することが可能となる。なお、このような発光装置は、屋外照明、店舗照明、調光システム、施設照明、海洋照明、プロジェクター、および内視鏡のいずれかの用途に好適に用いることができる。
【0103】
このように、本実施形態に係る発光装置は、波長変換体100を備える。また、発光装置は、超短残光性であり、かつ、光散乱体として機能する粒子状の蛍光体を含む波長変換体を備える。このため、当該発光装置は、レーザー光に固有のコヒーレント効果によるギラギラ感が抑制され、かつ、ランバーシアンに近い配向特性を持つ出力光を放つことが可能となる。また、当該発光装置は、光出力飽和が抑制されるため、高密度光で励起する条件下であっても高出力の発光を得ることができる。
【0104】
本実施形態の発光装置は、熱伝導性に優れる無機化合物からなる波長変換体を備える。このため、高密度光での励起に伴い生じる波長変換体の熱を効率よく放散し、蛍光体の温度消光が抑制される。したがって、当該発光装置では、高出力光を得ることが可能となる。
【0105】
本実施形態の発光装置において、レーザー光を放つ固体発光素子をさらに備え、波長変換体に含まれる第一の蛍光体及び第二の蛍光体は、固体発光素子が放つレーザー光を、当該レーザー光よりも長波長の光に変換することが好ましい。この場合、レーザーダイオードを励起源として使用できるため、高出力の点光源として利用できる発光装置を得ることができる。
【0106】
なお、発光装置が放つ出力光は、照明光または表示画素として利用されることが好ましい。これにより、照明装置または表示装置として利用できる発光装置を得ることができる。
【実施例】
【0107】
以下、本実施形態を実施例によりさらに詳細に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0108】
[実施例1]
実施例1では、第一の蛍光体として、LuCaMg(SiO:Ce3+蛍光体を使用し、第二の蛍光体として、LuAl(AlO:Ce3+蛍光体を使用した波長変換体を作製した。
【0109】
具体的には、まず、LuCaMg(SiO:Ce3+蛍光体とLuAl(AlO:Ce3+蛍光体を準備した。LuCaMg(SiO:Ce3+は、酸化物セラミックス原料と反応促進剤として機能する化合物との混合粉末を、1300〜1400℃の温度で加熱反応させて調製したものを使用した。また、LuAl(AlO:Ce3+蛍光体は、市販品を使用した。
【0110】
参考のため、図9(a)には、LuCaMg(SiO:Ce3+蛍光体の電子顕微鏡写真を示す。図9(b)には、LuAl(AlO:Ce3+蛍光体の電子顕微鏡写真を示す。また、表1には、これらの蛍光体の特性を纏めて示す。なお、表1に示す平均的な粒子径は、図9に示す電子顕微鏡観察像(倍率:1000倍)より、一次粒子と認識できる粒子を任意に50個抽出し、それらの粒子の最長軸長さの平均値とした。
【0111】
【表1】
【0112】
実施例1の波長変換体の原料としては、このような蛍光体粉末を準備すれば足りる。
【0113】
次に、LuCaMg(SiO:Ce3+蛍光体とLuAl(AlO:Ce3+蛍光体の混合粉末を調製した。具体的には、LuCaMg(SiO:Ce3+蛍光体とLuAl(AlO:Ce3+蛍光体とを質量比が1:1となるように秤量した後、乳鉢と乳棒を利用して約10分間手混合することにより、混合粉末を調製した。
【0114】
そして、上記した混合粉末からなる成形体を作製した。具体的には、約0.1gの混合粉末を、φ10mmでステンレス鋼からなる熱プレス機用金型(アズワン株式会社製)に投入し、約10MPaで加圧した。これにより、直径が約φ10mm、高さが約0.8mmの円盤状の成形体を得た。
【0115】
最後に雰囲気炉を利用して、上記成形体を、窒素96vol%水素4vol%の雰囲気中、1350℃の温度で1時間仮焼成した。さらに大気炉を利用して、仮焼成後の成形体を、大気中1500℃の温度で2時間本焼成した。これにより、複数種の蛍光体粒子同士が結合してなる焼結体を得た。なお、仮焼成及び本焼成の昇温速度及び降温速度は、いずれも400℃/時間とした。
【0116】
このようにして、直径約φ7.5mm、高さ約0.6mmの円盤状の焼結体を得た。なお、得られた焼結体を目視観察したところ、薄い黄橙色であり、透光性を有していた。
【0117】
また、焼結体に波長450nmの青色光を照射したところ、照射面から赤味を帯びた蛍光が認められた。また、焼結体に波長365nmの紫外線を照射したところ、照射面から黄味がかった蛍光が認められた。さらに、焼結体に波長450nmの青色光または紫外線で照射した際、照射面の裏面からも赤味を帯びた蛍光が認められた。なお、照射面の裏面に認められた蛍光は、照射面に認められた蛍光と同等の強度であった。そのため、得られた焼結体は、全体に亘って強度および色調がほぼ均一な蛍光を放出した。このことから、実施例1の波長変換体は、光の透過率と拡散性の両面で良好な焼結体であるといえる。
【0118】
図10(a)は、実施例1の波長変換体の表面を示す電子顕微鏡写真であり、図10(b)は、図10(a)で示した表面の拡大写真である。図10(c)は、実施例1の波長変換体の断面を示す電子顕微鏡写真であり、図10(d)は、図10(c)で示した断面の拡大写真である。
【0119】
図10(a)乃至図10(d)と図9(a)及び図9(b)とを対比して分かるように、実施例1の波長変換体は、図9(a)及び図9(b)に示した蛍光体粒子の形状とサイズが明瞭に認められるものであった。そして、実施例1の波長変換体は、焼結体の平面方向および厚み方向に、サイズが異なる粒子同士が、点接触部に広がりを持って繋がる構造を持つ焼結体であった。このため、蛍光体の粒子同士が強く結合しており、機械的強度に優れる波長変換体となった。
【0120】
なお、波長変換体は、若干の空隙を持つ構造となっており、空隙によって光散乱作用を持つ構造体になっていることが分かる。
【0121】
図11(a)乃至図11(d)は、いずれも、実施例1の波長変換体における表面の電子顕微鏡写真である。そして、図11中に示す矢印は、エネルギー分散型X線分析(EDX)によって、組成分析した箇所(合計4箇所)を示している。
【0122】
詳しい説明は省略するが、EDXにより組成分析した結果、図11(a)及び図11(b)に矢印で示す、一次粒子径が比較的小さい粒子が、LuCaMg(SiOを主体にしてなる化合物であった。また、図11(c)及び図11(d)に矢印で示す、一次粒子径が比較的大きい粒子がLuAl(AlOを主体にしてなる化合物であった。
【0123】
この結果から、実施例1の波長変換体は、原料としたLuCaMg(SiO:Ce3+蛍光体とLuAl(AlO:Ce3+蛍光体の混合物の焼結体であることが分かった。そして、実施例1の波長変換体は、原料としたLuCaMg(SiO:Ce3+蛍光体とLuAl(AlO:Ce3+蛍光体が、当初の一次粒子径を実質的に変えることなく、三次元に分散していることが分かった。さらに、これらの蛍光体の粒子同士は、点接触部が広がりを持って繋がる構造を持つ焼結体になっていることも分かった。
【0124】
このように、実施例1の波長変換体は、複数種類のCe3+付活蛍光体からなる焼結体である。そして、少なくとも、LuCaMg(SiOをベースとするCe3+付活蛍光体と、LuAl(SiOをベースとするCe3+付活蛍光体とを組み合わせることによって、このような構造を実現するに至った。
【0125】
次に、実施例1の波長変換体に、青色モノクロ光を照射したときの蛍光スペクトルを測定した。図12中の(a)は、実施例1の波長変換体に、波長455nmの青色モノクロ光を照射したときの蛍光スペクトルである。また、図12中の(b)は、(Lu0.97Ce0.03CaMg(SiOと(Lu0.98Ce0.02Al(SiO)の固溶体に、波長450nmの青色モノクロ光を照射したときの蛍光スペクトルである。なお、当該固溶体は、第一の蛍光体((Lu0.97Ce0.03CaMg(SiO)と第二の蛍光体((Lu0.98Ce0.02Al(SiO)をモル比1:1で固溶させたものである。そして、当該固溶体の組成は、Lu2.5Ca0.5MgAl(SiO1.5(AlO1.5:Ce3+である。
【0126】
参考のため、図13には、波長変換体の蛍光スペクトル(図13中(a))と共に、第一の蛍光体((Lu0.97Ce0.03CaMg(SiO)に、波長450nmの青色モノクロ光を照射したときの蛍光スペクトル(図13中(c))を示した。また、図13には、第二の蛍光体((Lu0.98Ce0.02Al(SiO)に、波長450nmの青色モノクロ光を照射したときの蛍光スペクトル(図13中の(d))も示した。
【0127】
図12中の(a)及び(b)を比較して分かるように、図12中の(a)に示す実施例1の波長変換体の蛍光スペクトルは、図12中の(b)に示す固溶体の蛍光スペクトルとは異なる形状であった。具体的には、実施例1の波長変換体の蛍光スペクトルは、蛍光ピーク波長が566nm付近(555nmを超え575nm未満の波長範囲内)にあった。そして、蛍光スペクトルのピーク強度に対してx%の強度水準の蛍光スペクトル幅を蛍光スペクトルx%幅と定義したとき、実施例1の波長変換体の蛍光スペクトル10%幅は約270nm(250nmを超え290nm未満)であった。また、蛍光スペクトル50%幅は約121nm(115nmを超え124nm未満)であった。なお、図12において、蛍光スペクトル10%幅はW10で示されており、蛍光スペクトル50%幅はW50で示されている。また、蛍光スペクトル50%幅は、いわゆる半値幅である。
【0128】
これに対して、図12中の(b)に示す固溶体の蛍光スペクトルは、蛍光ピーク波長は550nm付近にあった。そして、固溶体の蛍光スペクトル10%幅は約220nmであり、蛍光スペクトル50%幅は124nmであった。
【0129】
このように、実施例1の波長変換体は、固溶体と比較して、蛍光スペクトルのピーク波長は長く、蛍光スペクトル10%幅は広く、蛍光スペクトル50%幅は狭い。つまり、実施例1の波長変換体は、裾が広く、頂点に近づくにつれて急激に狭くなるという特殊なスペクトル形状を持つ蛍光を放つものであった。このような形状のため、図12からも分かるように、実施例1の波長変換体は、固溶体と比較して、赤色光成分割合が多い光を放つという、照明用としての有利な効果を持つものになる。
【0130】
実施例1の波長変換体が放つ蛍光の蛍光スペクトル形状は、図12中の(b)、並びに図13中の(c)及び(d)と、図12中の(a)とを比較して分かるように、一般的なCe3+付活蛍光体とは異なる特異な形状である。つまり、Ce3+付活蛍光体の蛍光スペクトル形状は、発光メカニズムに起因して、蛍光ピークの長波長側に肩を持つ左右非対称の形状になるのに対して、実施例1の波長変換体では左右対称形に近い形状である。
【0131】
図14では、実施例1の波長変換体の蛍光スペクトルと、LuCaMg(SiO:Ce3+とLuAl(AlO:Ce3+の混合蛍光体が放つ蛍光スペクトルのシミュレーション結果とを纏めて示した。図14中の(a)が実施例1の波長変換体の蛍光スペクトルであり、図14中の(e)が当該シミュレーション結果である。なお、シミュレーションは、LuAl(AlO:Ce3+の蛍光スペクトルの各波長成分が、LuCaMg(SiO:Ce3+の400nm以上650nm以下の波長領域における光吸収特性の影響を100%受けることを前提としている。
【0132】
図14から分かるように、実施例1の波長変換体の蛍光スペクトルは、LuCaMg(SiO:Ce3+とLuAl(AlO:Ce3+の混合蛍光体が放つ蛍光のシミュレーション結果とほぼ一致した。
【0133】
図12乃至図14に示す結果から、実施例1の波長変換体は、原料としたLuCaMg(SiO:Ce3+蛍光体とLuAl(AlO:Ce3+蛍光体の混合物の焼結体になっていることが分かる。
【0134】
[実施例2]
実施例2では、実施例1で得られた、直径約φ7.5mm、高さ約0.6mmの円盤状の焼結体からなる波長変換体に対して、平滑面を形成した。
【0135】
具体的には、まず、実施例1の波長変換体における一方の主面に、ダイヤモンドやすり(#180)を用いて粗研磨を行った。次に、粗研磨した面に対して、0.25μmのダイヤモンド粉を用いて機械研磨を行った。このようにして、平滑面を有する実施例2の波長変換体を得た。
【0136】
図15では、実施例2の波長変換体を研磨した状態を示す電子顕微鏡写真を示している。図15の(a)は、実施例1の波長変換体に対して粗研磨した後の断面を示しており、(b)は、粗研磨した部位を拡大して示している。図15の(c)は、波長変換体における粗研磨した面を示しており、(d)は、波長変換体における機械研磨した面を示している。
【0137】
図15の(a)及び(b)から分かるように、実施例2における研磨しなかった面xは凹凸を有するのに対して、研磨した面yは平坦である。また、図15の(c)及び(d)から分かるように、実施例2の研磨面では研磨痕が観察される。すなわち、図15の(c)に示す粗研磨面では、一方向に流れるような研磨痕が認められる。それに対して、図15の(d)に示す機械研磨面では、単結晶の蛍光体粒子そのものが研磨されている様子が認められる。
【0138】
このように、実施例1の波長変換体を研磨して平滑面を形成することによって、少なくとも研磨の痕跡が認められる波長変換体を作製することができる。そして、このような平滑面は、波長変換体への励起光の入射効率を高めるように作用する。そのため、当該波長変換体を用いることにより、高出力の発光装置を得ることができる。
【0139】
以上、本実施形態を実施例によって説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【0140】
特願2017−111512号(出願日:2017年6月6日)及び特願2017−238640号(出願日:2017年12月13日)の全内容は、ここに援用される。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明によれば、色調制御を容易にしつつも、高出力の蛍光を得ることが可能な波長変換体及び波長変換体の製造方法、並びに当該波長変換体を用いた発光装置を得ることができる。
【符号の説明】
【0142】
1 第一の蛍光体
2 第二の蛍光体
3 結合部
22 成形工程
23 結合工程
100,100A,100B,100C 波長変換体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【国際調査報告】