特表-18056305IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2018年3月29日
【発行日】2019年7月4日
(54)【発明の名称】L−システインの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 13/06 20060101AFI20190614BHJP
   C12P 13/12 20060101ALI20190614BHJP
   C12N 15/54 20060101ALN20190614BHJP
   C12N 15/53 20060101ALN20190614BHJP
【FI】
   C12P13/06 D
   C12P13/12 B
   C12N15/54
   C12N15/53
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】20
【出願番号】特願2018-540261(P2018-540261)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2017年9月20日
(31)【優先権主張番号】特願2016-184743(P2016-184743)
(32)【優先日】2016年9月21日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度国立研究開発法人科学技術振興機構 研究成果展開事業 研究成果最適展開支援プログラム「耐熱性酵素を用いたL−システイン製造技術の開発」に係る委託業務、産業技術力強化法 第19条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(71)【出願人】
【識別番号】312015749
【氏名又は名称】興人ライフサイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160978
【弁理士】
【氏名又は名称】榎本 政彦
(72)【発明者】
【氏名】本田 孝祐
(72)【発明者】
【氏名】井村 誠
(72)【発明者】
【氏名】岩切 亮
【テーマコード(参考)】
4B064
【Fターム(参考)】
4B064AE08
4B064AE14
4B064AE63
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B064DA10
(57)【要約】
【課題】本発明は、従来の発酵法に代わる新たなL−システインを製造する方法を提供することを課題とする。より具体的には、耐熱性酵素の組み合わせにより、L−システインの製造方法を提供する。特に、3-ホスホグリセリン酸(3PG)からホスホヒドロキシピルビン酸(HPV)を経由してO−ホスホセリンを合成する経路を効率的に製造する方法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、3PGに、好熱菌由来のホスホセリンアミノトランスフェラーゼ(PSAT)及び3ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ(PGDH)を作用させて、O−ホスホセリンを生成させる、O−ホスホセリンの製造方法及び、当概工程を含むL−システインの製造方法により課題を解決した。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3-ホスホグリセリン酸(3PG)に、好熱菌由来のホスホセリンアミノトランスフェラーゼ(PSAT)及び3ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ(PGDH)を作用させて、O−ホスホセリンを生成させる、O−ホスホセリンの製造方法。
【請求項2】
L−システインを製造する方法であって、請求項1の製造工程を含む、L−システインの製造方法。
【請求項3】
請求項2の製造方法において、さらにグルタミン酸デヒドロゲナーゼ又はNADHオキシダーゼを添加して製造することを特徴とする、L−システインの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノ酸の一種である、L−システインの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
L−システインは、近年市場を急拡大させているアミノ酸であり、世界人口の増加により、その市場は今後も拡大を続けることが予想される。L−システインの主な用途は、食品添加物、医薬品、化粧品やグルタチオン、N−アセチル−システイン、コエンザイムAの合成前駆体としての利用である。
【0003】
L−システインの製造方法としては毛髪や羽毛などの酸加水分解物からの分離抽出が中心であるが、近年では微生物による発酵法による製造も開始されている。しかし、微生物による発酵法は、次のような課題がある。L-システインは細胞内濃度の上昇に伴い、(1)微生物への増殖阻害と(2)生合成酵素へのフィードバック阻害を引き起こすことが知られている。(1)については、L-システイン細胞外排出ポンプタンパク質の同定と当該遺伝子の発現強化、(2)については、L-システイン生合成酵素の立体構造解析とフィードバック阻害メカニズムの解明、及びそれに基づく非感受性変異酵素の創出という育種戦略によって解決がはかられている。このように、微生物の代謝機能を活用し、遺伝子改変、育種などにより、生産性を向上させることが試みられているが、前述のような課題により、充分な生産性を得られないことがあった。(特許文献1〜5)
【0004】
また、微生物由来の酵素を用いて、各種有用物質の製造がおこなわれている(特許文献6、7)。このような手法でL−システインを製造すると、その中間において、O−ホスホセリンが合成される場合がある。このO−ホスホセリンは3−ホスホグリセリン酸 (以下、原則「3PG」) からホスホヒドロキシピルビン酸 (以下、原則「HPV」) を経由して合成される。非特許文献1にて超好熱菌アーキアであるSulfolobus tokodaii由来の3ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ(以下、原則「PGDH」)は報告されているが、pH11といった極めて極端な条件かつジスルフィド結合を促進するよう設計した大腸菌にて過剰発現させたPGDHでしか酵素活性は確認することができず、本来菌体が生存しうる中性付近であるpH8.0では活性がほぼ見られていない。本願発明者らが、既にアノテーションされているThermococcus kodakarensis KOD1由来のPGDHをクローニングし、酵素活性を測定したが、同様に単独では活性を見出すことができなかった。
【0005】
このような背景のなか、今後の需要の一層の増大に応えるために、L-システインの安価かつ効率的な製造法の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−22215号公報
【特許文献2】WO2013/000864
【特許文献3】特開2009−232844号公報
【特許文献4】再表2012−137689号公報
【特許文献5】WO2012/152664
【特許文献6】特開2005−160371号公報
【特許文献7】特開2003−219892号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】1: Shimizu Y, Sakuraba H, Doi K, Ohshima T (2008) Molecular and functional characterization of D-3-phosphoglycerate dehydrogenase in the serine biosynthetic pathway of the hyperthermophilic archaeon Sulfolobus tokodaii. Arch Biochem Biophys. 470(2):120-8.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来の発酵法に代わる新たなL−システインを製造する方法を提供することを課題とする。より具体的には、耐熱性酵素の組み合わせにより、L−システインの製造方法を提供する。特に、3PGからHPVを経由してO−ホスホセリンを合成する経路を効率的に製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、耐熱性酵素を組み合わせ、任意の人工代謝経路をin vitroで構築する技術によるL-システインの製造方法を見出した。本発明の概要は、
(1)好熱菌/超好熱菌に由来する耐熱性酵素遺伝子を大腸菌のような汎用的かつ中温性の微生物宿主内で発現させる。
(2)得られた組換え菌体又は菌体からの抽出液を60〜90℃程度の熱処理に供し、宿主由来の酵素を失活させるとともに、宿主の細胞構造を部分的に破壊することで基質/生産物の透過性を高めた触媒モジュールとする。
(3)これらのモジュールを組み合わせ、in vitro人工代謝経路を構築する。
また、O−ホスホセリンの合成については、異種菌株由来のPGDHとホスホセリンアミノトランスフェラーゼ(以下、原則「PSAT」)を組み合わせることによって活性を見出すことができた。O−ホスホセリンの合成は、PGDHとPSATは単独では機能しないが、組み合わせることによって活性を示すことを明らかにした。
このように本発明は、従来の発酵法に代わる新たなL−システインを製造する方法を提供することを課題とする。より具体的には、耐熱性酵素の組み合わせにより、L−システインの製造方法を提供する。特に、3PGからHPVを経由してL−システインの前駆体であるO−ホスホセリンを製造する方法を見出した。
【0010】
より具体的には、以下のような発明を提供する。
(1)3−ホスホグリセリン酸(3PG)に、好熱菌由来の3ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ(PGDH)及びホスホセリンアミノトランスフェラーゼ(PSAT)を作用させて、O−ホスホセリンを生成させる、O−ホスホセリンの製造方法、
(2)L−システインを製造する方法であって、(1)の製造工程を含む、L−システインの製造方法、
(3)(2)の製造方法において、さらにグルタミン酸デヒドロゲナーゼ(GDH)又はNADHオキシダーゼ(以下「NOX」)を添加して製造することを特徴とする、L−システインの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、微生物から粗精製した耐熱性酵素を用いることで、in vitroでL−システインを製造することが可能である。そのため、発酵法で、課題となっていたL-システインによる生育阻害は問題とならない。また、本発明では酵素を組み合わせることによって経路を自由にデザインすることが可能であるため、L-システインによるフィードバック阻害を被る酵素反応を経由しないように設計できる(図1)。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】L−システイン製造の代謝経路例
図2】PGDHの活性測定
図3】PSATの活性測定結果
図4】反応液中のNADHおよびα−KGの濃度
図5】PGDHの活性
図6】補酵素再生系の添加の検討
図7】システイン生産試験の経時変化
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、3−ホスホグリセリン酸(3PG)に、好熱菌由来のホスホセリンアミノトランスフェラーゼ(PSAT)及び3ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ(PGDH)を作用させて、O−ホスホセリンを生成させる、O−ホスホセリンの製造方法である。さらに、前述の工程を含むL−システインの製造方法である。
【0014】
O−ホスホセリンは3PGからHPVを経由して合成される。この経路で使用する酵素は、PGDH及びPSATである。
【0015】
本発明で使用される、3ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ(PGDH)は、3PGをHPVへ変換する酸化還元酵素である。当該酵素は、好熱菌由来であれば、構造等は特に限定されない。本発明において、好熱菌とは、60℃以上、特に70〜110℃において、変性することなく、活性を保持できる酵素を発現する菌である。好熱菌としては、例えば、サーマス属(Thermus thermophilus、Thermus aquaticus等)、サーモトーガ属(Thermotoga lettingae、Thermotoga neapolitana、Thermotoga petrophila、 Thermotoga maritima等)、サーモコッカス属(Thermococcus profundus、Thermococcus kodakarensis 、Thermococcus gammatolerans等)、パイロコッカス属(Pyrococcus horikoshii、Pyrococcus abyssi、Pyrococcus glycovorans、Pyrococcus furiosus、Pyrococcus wosei等)、スルフォロバス属(Sulfolobus tokodaii、Sulfolobus acidocaldarius、Sulfolobus islandicus、Sulfolobus solfataricus)、パイロディクティム属(Pyrodictium occultum、Pyrodictium abyssi、Pyrodictium brockii等)、パイロバキュラム属(Pyrobaculum aerophilum、Pyrobaculum arsenaticum、Pyrobaculum organotrophum等)、ハイパーサーマス属(Hyperthermus butylicus等)、アクイフェックス属(Aquifex pyrophilus等)、サーモデスルフォバクテリウム属(Thermodesulfobacterium commune等)、メタノパイラス属(Methanopyrus kandleri等)、パイロロバス属(Pyrolobus fumarii等)、テルモフィルム属(Thermoproteus tenax、Thermoproteus naphthophila)、サーモシネココッカス属(Thermosynechococcus elongates )、シネココッカス属 (Synechococcus lividus) 、オーシャニサーマス属(Oceanithermus profundus)、ロドサーマス属(Rhodothermus marinus)、サーモビブリオ属(Thermovibrio ammonificans)、デスルフロバクテリウム属(Desulfurobacterium thermolithotrophum)、サーモデスルファテイター属(Thermodesulfatator indicus)などである。
【0016】
次に、ホスホセリンアミノトランスフェラーゼ(PSAT)は、セリン生合成系酵素である。当該酵素は、好熱菌由来であれば、構造等は特に限定されない。本発明において、好熱菌とは、60℃以上、特に70〜110℃において、変性することなく、活性を保持できる酵素を発現する菌である。好熱菌は、例えば、サーマス属(Thermus thermophilus、Thermus aquaticus等)、サーモトーガ属(Thermotoga lettingae、Thermotoga neapolitana、Thermotoga petrophila、 Thermotoga maritima等)、サーモコッカス属(Thermococcus profundus、Thermococcus kodakarensis 、Thermococcus gammatolerans等)、パイロコッカス属(Pyrococcus horikoshii、Pyrococcus abyssi、Pyrococcus glycovorans、Pyrococcus furiosus、Pyrococcus wosei等)、スルフォロバス属(Sulfolobus tokodaii、Sulfolobus acidocaldarius、Sulfolobus islandicus、Sulfolobus solfataricus)、パイロディクティム属(Pyrodictium occultum、Pyrodictium abyssi、Pyrodictium brockii等)、パイロバキュラム属(Pyrobaculum aerophilum、Pyrobaculum arsenaticum、Pyrobaculum organotrophum等)、ハイパーサーマス属(Hyperthermus butylicus等)、アクイフェックス属(Aquifex pyrophilus等)、サーモデスルフォバクテリウム属(Thermodesulfobacterium commune等)、メタノパイラス属(Methanopyrus kandleri等)、パイロロバス属(Pyrolobus fumarii等)、テルモフィルム属(Thermoproteus tenax、Thermoproteus naphthophila)、サーモシネココッカス属(Thermosynechococcus elongates )、シネココッカス属 (Synechococcus lividus) 、オーシャニサーマス属(Oceanithermus profundus)、ロドサーマス属(Rhodothermus marinus)、サーモビブリオ属(Thermovibrio ammonificans)、デスルフロバクテリウム属(Desulfurobacterium thermolithotrophum)、サーモデスルファテイター属(Thermodesulfatator indicus)などである。
【0017】
本発明で使用される、PGDH及びPSATは、前述のS. tokodaii等の好熱菌等の由来であれば、当概酵素を取得する方法は特に限定されない。遺伝子工学の手法を用いて得る場合は、目的の酵素をコードする遺伝子を適当なベクターに挿入し、組換えベクターを構築する。当該組換えベクターを酵素生産可能な宿主細胞に形質転換し、酵素を発現製造することができる。本発明では、複数の酵素を用いるため、簡便に形質転換可能な、DH5α、MG1655株等の大腸菌、Pseudomonas属などのグラム陰性菌、Corynebacterium属やBacillus属、Rhodococcus属などのグラム陽性菌が適している。具体的には、PGDHとPSATは各微生物のゲノムDNAよりPCR増幅した当該遺伝子を、例えば、pET21aに連結し、T7プロモーター制御下で発現させる。各微生物のゲノムDNAは、国立研究開発法人理化学研究所バイオリソースセンター、国立環境研究所、独立行政法人製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジーセンター(NBRC)、公益財団法人かずさDNA研究所などから入手可能である。また、使用するDNAは、配列情報から合成したDNAでも使用可能であり、アミノ酸配列が同じであれば、配列情報と完全一致していなくても良い。合成DNAとはアミノ酸配列を大腸菌のコドン使用頻度に合わせて設計したDNA配列である。これらのDNAから、当概遺伝子を前述のように調製した発現ベクターをNovagen社製 BL21 (DE3) pLysS等の大腸菌に形質転換する。または、相同組み換えやトランスポゾンによるDNA断片を挿入してもよい。形質転換方法は、一般的な方法で良い。
【0018】
本発明では、3PGからO−ホスホセリンを製造する際に使用する酵素は、PSAT及びPGDHである。前段までに記載の好熱菌由来の酵素を適宜選択して使用することができる。この2つの酵素は、同種の菌由来でもよく、異種の菌由来でも使用できる。O−ホスホセリン製造工程では、PGDH単独では、pH11などの条件でしか反応しなかった場合であっても、この2つの酵素を用いることで、pH6〜8程度の中性付近にてO−ホスホセリンを得ることができる。
【0019】
本願発明で必要な酵素は、DH5α、MG1655株等の大腸菌、Pseudomonas属などのグラム陰性菌、Corynebacterium属やBacillus属、Rhodococcus属などのグラム陽性菌などから選択した菌類に、複数同時に発現させて、得ることができる。本段落で使用する菌類は、後述のように、宿主由来のタンパク質を容易に除去するため、好熱性菌である必要はない。必要な酵素をすべて同時に発現させても良いが、通常は、発現効率等から、実施例記載のように、複数の大腸菌等に分けて、酵素を得ることもできる。また、それぞれの酵素を個々の大腸菌等に発現させて得ても良い。 本願は、好熱菌由来の酵素を大腸菌等で発現させて得るため、大腸菌等の宿主由来のタンパク質を容易に除去することができる。例えば、大腸菌で発現後、高温、60℃〜80℃で熱処理をすることで、大腸菌由来のタンパク質は変性するが、目的の酵素は、好熱菌由来の酵素であるため、熱変性しない。このように、熱処理で変性したタンパク質を除去することで、必要な粗酵素液を容易に得ることができる。熱処理は、培養後の菌体を直接熱処理しても良い。又は、菌体抽出液を熱処理しても良い。抽出方法は、特に制限なく選択できる。菌体を超音波破砕等により破砕後、抽出した液を熱処理してもよい。 具体的には、例えば、組換え大腸菌の湿菌体を200mg wet cells/mlとなるように50mM HEPES−NaOH (pH8.0)に懸濁し、懸濁液を超音波破砕処理に供することにより菌体を破砕、無細胞抽出液を得る。無細胞抽出液に対し、70℃、30分間の熱処理を施し、宿主由来タンパク質の変性操作を行う。遠心分離により細胞残さと変性タンパク質を取り取り除くことで、上清を粗酵素液として、L−システインの製造に用いることができる。
【0020】
本発明では、L−システインを製造する工程のうち、O−ホスホセリンを得る工程で、3PGから、上記のPGDHとPSATによりO−ホスホセリンを得る工程を含む。PGDHとPSATは、単独では、機能しないため、両酵素を同時に用いる。両酵素は、前述の好熱菌由来のものを用いるが、同種の好熱菌由来でも、異種の好熱菌由来でもよく、適宜組み合わせて使用することができる。
【0021】
本発明のL−システインを製造する工程の内、前段の3PGからO−ホスホセリンを得る工程以外の工程で必要な酵素も、PGDH及びPSATと同様に好熱菌由来の酵素を用いる。好熱菌由来であれば、適宜選択し、用いることができる。用いる酵素は、原料により異なるが、グルコースを原料とした場合に必要となる酵素群の例を、表1に示す。その他原料は、グリセロール、デンプン等の糖類であり、解糖系により代謝可能な原料であれば良い。本願は、PGDHとPSATによりO−ホスホセリンを得る工程を有していれば、前記の原料は、制限なく使用できる。グルコース以外の原料を用いた時の酵素は、当業者であれば、適宜選択できる。必要な酵素は、本明細書で例示した、好熱菌由来の酵素を用いる。
【0022】
【表1】
【0023】
表1の酵素の取得方法は、段落[0017]から[0018]に記載の方法と同様に行う。すべての酵素は、同種の好熱菌でもよく、異種の好熱菌でも良い。酵素遺伝子は、国立研究開発法人理化学研究所バイオリソースセンター、国立環境研究所、独立行政法人製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジーセンター(NBRC)、公益財団法人かずさDNA研究所等から入手可能なものを用いることができる。入手したDNAから目的遺伝子をPCR等で増幅し使用することができる。また、入手した遺伝子情報から合成したDNAでも良い。本発明では、前述のように大腸菌等に導入し発現させるため、各酵素遺伝子を大腸菌など、選択した菌類での発現に最適化して使用しても良い。
【0024】
このようにして得られた遺伝子は、大腸菌発現ベクターに一般的な方法で組込むことができる。使用するすべての遺伝子を一つの発現ベクターに組み込むこともできるが、使用する遺伝子の微生物由来、プロモーター選択等の最適性によって、必要な発現ベクターに分けて導入しても良い。例えば、Thermus thermophilus HB8由来のフルクトース-1,6-ビスリン酸アルドラーゼ(TtFBA)、Thermoproteus tenax由来のグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ (TteGAPN)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ (TteGDH) とThermococcus kodakarensis KOD1由来の3-ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ (TkPGDH)、ホスホセリンアミノトランスフェラーゼ (TkPSAT) は、各微生物のゲノムDNAよりPCR増幅した当該遺伝子を、Aeropyrum pernix由来のO−ホスホセリンスルフヒドラーゼ (AmCysS) とThermococcus profundus由来のNADHオキシダーゼ (TpNOX) は合成DNAをpET21aに連結し、T7プロモーターにより、T. thermophilus HB8由来の乳酸デヒドロゲナーゼは、pET11aに、T. thermophilus HB8由来のグルコキナーゼ (TtGK)、グルコースリン酸イソメラーゼ (TtGPI)、ホスホフルクトキナーゼ (TtPFK)、トリオースリン酸イソメラーゼ (TtTIM) とT. thermophilus HB27由来のポリリン酸キナーゼ (TtPPK)、ピルビン酸キナーゼ (TtPK) は合成DNAをpRCI (※)にそれぞれ導入するなど、使用する遺伝子によって、当業者が最適なベクターを複数選択しても良い。
※ Ninh PH, Honda K, Sakai T, et al. (2015) Assembly and multiple gene expression of thermophilic enzymes in Escherichia coli for in vitro metabolic engineering. Biotechnol Bioeng 112, 189-196
【0025】
このようにして得られた発現ベクターを段落0019に記載の大腸菌などに導入する。導入する方法に特に制限はなく、一般的な方法を用いることができる。大腸菌などの培養は、一般的な方法で良い。使用するプロモーターにより、発現誘導が必要な場合は、発現の誘導を行う。
【0026】
大腸菌の培養後、段落0019記載の方法と同様に粗酵素液を得る。使用した菌類が異なる場合には、それぞれ別々に調製しても、まとめて調製しても良い。好熱菌由来の酵素を用いているため、熱処理により、大腸菌などの宿主由来のタンパク質は、熱変性により容易に除去することができる。また、本発明では、変性したタンパク質の除去のみの精製操作で得られた粗酵素液を使用することができる。また、さらに精製して使用しても良い。
【0027】
このようにして得られた粗酵素液をL-システインの製造に用いる。緩衝液に必要な補酵素及び基質を添加し、製造する。添加する補酵素及び基質は、使用する原料(糖類の種類)により異なるが、グルコースを原料とする場合には、前記の方法で得られた粗酵素液に酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)、アデノシン三リン酸(ATP)、グルコース−1−リン酸(G1P)、グルタミン酸、硫化ナトリウム、硫酸アンモニウム、ポリリン酸を加え、ここにグルコースを加えてL−システインを製造する。グリセロールを原料とする場合にもグルコースに代わり、グリセロールを加えて製造する。本発明では、製造の反応は、50℃〜80℃で行われる。これにより、原料の溶解性の向上、反応速度の増大、汚染リスクの低減などの利点がある。デンプンを原料とする場合、デンプン分解に必要な酵素を添加する。
【0028】
L-システインの合成には補酵素である酸化還元補酵素であるNADを用いている。しかし、α−ケトグルタル酸 (以下「α−KG」)と還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)の蓄積により、平衡に達してしまうためL−システインの製造が、効率良く進まないことがある。そこで、α−KGをグルタミン酸に変換するGDH又はNADHを酸化するNADHオキシダーゼ(NOX)を他の酵素と一緒に用いることで、α−KGやNADHの蓄積を改善し、L−システインの生産速度を向上させることができる。GDHとNOXは、それぞれ1つを添加してもいいが、両方添加するとさらに生産速度が向上するため好ましい。
【0029】
前述までの酵素反応終了後、L-システインは、酵素反応液から回収することにより得ることができる。この反応液から、アミノ酸の単離精製に用いられる一般的な方法により、L−システインを単離精製することができる。具体的には、例えばゲルクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、硫酸アンモニウム沈殿等を単独で又は適宜組み合わせて行うことができる。
【実施例】
【0030】
以下に本発明をより詳細に説明するが、本発明は、以下の方法に限定されない。
【0031】
(3PGからO−ホスホセリン工程の検討)
・酵素液の調製
組換え大腸菌の湿菌体を200 mg wet cells/mlとなるように50 mM HEPES-NaOH (pH8.0)に懸濁した。懸濁液を超音波破砕処理に供することにより菌体を破砕、無細胞抽出液を得た。無細胞抽出液に対し、70℃、30分間の熱処理を施し、宿主由来タンパク質の変性操作を行った。遠心分離により細胞残さと変性タンパク質を取り除いた上清を粗酵素液として活性測定に用いた。
【0032】
・使用酵素遺伝子、菌株、培養
S. tokodaii (St) 由来のPGDHおよびPSATは合成DNAをpET21aに連結し、T7プロモーター制御下で発現させた。一方で、Thermoproteus tenax (Tt) とThermotoga maritima (Tm) 、T. kodakarensis (Tk) 、Thermosynechococcus elongates (Te) 由来のPGDHとPSATは各微生物のゲノムDNAよりPCR増幅した当該遺伝子をpET21aに連結し、T7プロモーター制御下で発現させた。これらの遺伝子発現ベクターは全てNovagen社製Rosetta 2 (DE3) pLysSに導入した。Rosetta2 (DE3) pLysSでは100 mg/Lのアンピシリンと34 mg/LのクロラムフェニコールをLuria-Bertani培地に添加し、37℃で好気的に培養した。対数増殖後期に培養液に0.2 mM IPTGの添加し、目的酵素遺伝子の誘導を行った。
【0033】
・PGDHとPSATの活性確認
3PGを除いた表2の組成で反応液を作製した。70℃で1分間保温した後に、3PGを加えることで反応を開始させた。反応はPGDHで生成されるNADHの濃度を340nmにおける吸光をモニターすることによって測定した。結果を図2にて記載する。なお、NADHの濃度は340 nmの分子吸光係数6.3×103 mol-1 L-1 cm-1にて算出した。これよりPSATを加えることによってPGDHの反応が進むことが明らかになった。
【0034】
【表2】
【0035】
・PSATの活性確認
PGDHは単独の酵素では活性を示さなかった。PSATにおいても同様に活性を示すか検討した。しかし、PSATはNADHを用いる反応ではないので、単独での評価はできない。よってNAD(H)依存型glutamate dehydrogenase (TteGDH)とカップリングさせることで反応が進むか検討した。まずは、表3の条件1にてTteGDHに活性があることを確認した。続いて、条件2のようにTkPSATとTteGDHをカップリングさせることによって、TkPSATが機能するか検証した。結果を図3に記載するが、ここではNADHの消費量を340 nmの分子吸光係数6.3×103 mol-1 L-1 cm-1であることに基づき算出した。これより、TkPGDHと同様にTkPSATも単独で機能しないことが明らかになった。
【0036】
【表3】
【0037】
・PGDHとPSATの確認
各々が単独では酵素活性を示さないことは上記より明らかになった。しかし、上記の手法ではNADHでの挙動のみを追跡しているため、PSATが実際に機能しているとは限らない。よって、PGDHとPSATをカップリングさせることで、PSATの生産物の一つであるα-KGが生産するか検討した。表4の反応組成で作成したものでNADHの活性を測定した。
吸光度計の条件は、波長340nm、60℃、2分間でBlank測定し、基質添加後5, 10, 15分後の吸光度の値およびα-KGを※2の文献を一部改変してHPLCにて測定した。具体的には、50μlをサンプリングし40μlの2M HClを加え遠心分離した上清に等量の1mg/ml o-Phenylenediamine in 3M HClを加え80℃で60分間インキュベーションし氷冷し遠心分離したものをHPLC分析に供しα-KGを測定した。測定条件はEluent:Acetic acid / water / methanol (1:54:45, v/v) 、Flow Rate:0.4 ml/min、Column: COSMOSIL Packed Column 5C18-AR-II 4.6IDx250mm、Column Temp.: 35℃、Detection: Exc: 336 nm, Emi:420nm)、Sample cooler: 4℃で行った。図4にNADH生成量およびα-KG生成量を示した。この結果よりNADHとα-KGは同様の結果を示した。従って、PGDHとPSATは連動して反応していることが明らかになった。
※2:Muhling J, Fuchs M, Campos ME, Gonter J, Engel JM, Sablotzki A, Menges T, Weiss S, Dehne MG, Krull M, Hempelmann G. (2003) Quantitative determination of free intracellular α-keto acids in neutrophils. J Chromatogr B 789:383-392
【0038】
【表4】
【0039】
・様々な好熱菌アーキアおよび細菌のPGDHとPSATの酵素活性評価
上記より、T. kodakarensis由来のPGDHおよびPSATは両者が共存するときに機能する。そこで、異なる好熱菌アーキアや細菌でも表5の組成で同様にPGDHおよびPSATでも組み合わせて機能するか表6の組み合わせにて検討した。これらの酵素でも同様に単独では機能しないが、PGDHとPSATを組み合わせることによって活性を確認することができた (図5) 。また、6、7にて異種菌株由来のPGDHとPSATを組み合わせることによっても活性を示すことが明らかになった。
【0040】
【表5】
【0041】
【表6】
St:Sulfolobus tokodaii
Tt:Thermus thermophilus
Tm:Thermotoga maritima
Tk:Thermococcus kodakarensis
Te:Thermosynechococcus elongates
【0042】
(L-システイン製造の検討)
[材料と手法]
・使用酵素遺伝子、菌株、培養
表7に本研究で用いた酵素遺伝子のリストを示す。Thermus thermophilus HB8由来のフルクトース-1,6-ビスリン酸アルドラーゼ(TtFBA)、Thermoproteus tenax由来のグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ (TteGAPN)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ (TteGDH) とThermococcus kodakarensis KOD1由来の3-ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ (TkPGDH)、ホスホセリンアミノトランスフェラーゼ (TkPSAT) は、各微生物のゲノムDNAよりPCR増幅した当該遺伝子を、Aeropyrum pernix由来のO-ホスホセリンスルフヒドラーゼ (AmCysS) とThermococcus profundus由来のNADHオキシダーゼ (TpNOX) は合成DNAをpET21aに連結し、T7プロモーター制御下で発現させた。これらの遺伝子発現ベクターは全てNovagen社製Rosetta 2 (DE3) pLysSに導入した。T. thermophilus HB8由来のグルコキナーゼ (TtGK)、グルコースリン酸イソメラーゼ (TtGPI)、ホスホフルクトキナーゼ (TtPFK)、トリオースリン酸イソメラーゼ (TtTIM) とT. thermophilus HB27由来のポリリン酸キナーゼ (TtPPK)は合成DNAをpRCI のlamnbda PRプロモーター制御下に連結し、E. coli DH5α株に導入した。E. coli DH5αでは100 mg/Lのアンピシリンを、Rosetta 2 (DE3) pLysSでは100 mgのアンピシリンと34 mg/LのクロラムフェニコールをLuria-Bertani培地に添加し、37℃で好気的に培養した。対数増殖後期に培養液に0.2 mM IPTGの添加もしくは熱誘導 (42℃) にて目的酵素遺伝子の誘導を行った。
【0043】
【表7】
【0044】
・酵素液の調製
組換え大腸菌の湿菌体を200 mg wet cells/mlとなるように50 mM HEPES-NaOH (pH8.0)に懸濁した。懸濁液を超音波破砕処理に供することにより菌体を破砕、無細胞抽出液を得た。無細胞抽出液に対し、70℃、30分間の熱処理を施し、宿主由来タンパク質の変性操作を行った。遠心分離により細胞残さと変性タンパク質を取り除いた上清を粗酵素液として活性測定に用いた。
【0045】
・酵素活性
活性測定には100 mM HEPES-NaOH (pH8.0)を使用し、反応は全て70℃で実施した。TtGKは下流のTteGAPNまでの経路とカップリングさせることによって生じるNADHの濃度を340 nmにおける吸光をモニターすることによって測定した。TtGPI、TtPFK、TtFBA、TtTIM、TteGAPNも同様の手法で測定した。TkPGDHはTkPSATとカップリングさせることで生じるNADHの濃度を340 nmにおける吸光をモニターすることによって測定した。ApCysSは反応液と等量の20%トリクロロ酢酸を加えることによってタンパク質を変性させ、反応を停止させた後に、※4のニンヒドリン試験を行うことでL-システインの濃度を測定した。TtPPKはGKとグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PDH)(株式会社耐熱性酵素研究所社製)のカップリングによって反応を実施した。TpNOXは反応によって減少するNADHの濃度を340 nmの吸光をモニターすることによって測定した。TteGDHは反応によって蓄積するNADHの濃度を340 nmの吸光をモニターによって測定した。これらの測定結果より、必要量の粗酵素液を添加することによってグルコースを基質にL-システインの生産量を測定した。なおL-システインの定量はニンヒドリン試験にて実施した。

※4: Gaitonde MK (1967) A spectrophotometric method for the direct determination of cysteine in the presence of other naturally occurring amino acids. Biochem J. 104(2):627-633
【0046】
・L-システインの生産試験
酵素活性によって測定した結果に基づき、必要量の粗酵素液を添加することによってグルコースからL-システインの生産性を測定した。反応組成は100 mM HEPES、5 mM MgCl2、0.5 mM MnCl2、10 mM NAD+、1 mM ATP、1 mM G1P、2.5 mM グルコース、5 mM グルタミン酸、5 mM 硫化ナトリウム、32 mM 酢酸アンモニウム、1 mM ポリリン酸 (平均鎖長60) からなる反応液中で実施した。ニンヒドリン試験にてL-システインを定量した。
【0047】
・L-システインの生産試験結果
実施例での使用酵素はTtGK、TtGPI、TtPFK、TtFBA、TtTIM、TteGAPN、TkPGDH、TkPSAT、ApCysSである。反応組成は表8の条件1の組成とし、70℃で実施した。グルコースを除いた反応液に前記全ての酵素を加えたものに、グルコースを加え反応を開始させた。反応開始15分後にL-システインの定量を行った。その結果、17.3 mg/LのL-システインを確認することができた。
【0048】
・補酵素再生系の添加効果
L-システインの合成経路には補酵素であるNAD+を用いている。GDHやNOXを供し、NADHを還元させることでL-システインの生産速度を向上させることを目的として検討を行った。表8の反応組成で70℃にて実施した。反応開始15分後にシステインの定量を行った。この結果、図6のように、反応液にTteGDHやTpNOXを加えた方が、生産量が高く、更に両者を加えた方が、一層生産量が高くなることが明らかになった。
【0049】
【表8】
【0050】
・経時変化
L-システインの生産試験の経時変化を取った。今回の試験の使用酵素はTtGK、TtGPI、TtPFK、TtFBA、TtTIM、TteGAPN、TkPGDH、TkPSAT、ApCysS、TtPPK、TpNOX、TteGDHである。グルコースを除いた反応液に全ての酵素を加えたものに、グルコースを加え反応を開始させた。反応開始5、10、15、20分後にサンプリングを行い、L-システインの定量を行った。反応組成を表9に示し、70℃で反応を実施した。その結果を図7にて示す。これより、TteGDHやTpNOXを加えた方が生産速度が上がることが明らかになった。一方で表9の3,4,5では反応開始15分以降で定常状態となった。また、表9の2でも生産量は伸びているが、速度は緩やかになっている。その反面、表9の1では継時的に生産されており、2に比べてもそれほど生産速度は低下していない。よって長時間反応を行うためにはTtPPKによってADPをATPに再生することが重要であることが示唆された。
【0051】
【表9】
【0052】
以上から、本発明において、耐熱性酵素の組み合わせにより、例えばグルコース若しくはグリセロール、又はデンプンなど、解糖系により代謝が可能な原料を用いたL−システインの製造することができる。特に、O−ホスホセリンは3PGからHPVを経由して合成される経路を効率的に製造し、さらに補酵素であるニコチンアミド補酵素を再合成する工程も組み込むことで、長時間にわたり、L−システインを製造することが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】