特表-18008705IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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  • 再表WO2018008705-体内埋め込み型動作アシスト装置 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2018年1月11日
【発行日】2019年4月25日
(54)【発明の名称】体内埋め込み型動作アシスト装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/08 20060101AFI20190329BHJP
   A61B 17/72 20060101ALI20190329BHJP
   A61B 17/86 20060101ALI20190329BHJP
   A61F 2/38 20060101ALI20190329BHJP
【FI】
   A61F2/08
   A61B17/72
   A61B17/86
   A61F2/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】21
【出願番号】特願2018-526426(P2018-526426)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2017年7月5日
(31)【優先権主張番号】特願2016-133689(P2016-133689)
(32)【優先日】2016年7月5日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 直人
(72)【発明者】
【氏名】橋本 稔
(72)【発明者】
【氏名】小関 道彦
(72)【発明者】
【氏名】塚原 淳
【テーマコード(参考)】
4C097
4C160
【Fターム(参考)】
4C097AA07
4C097AA20
4C097AA21
4C097BB01
4C097CC01
4C097CC05
4C097DD01
4C097DD04
4C097DD06
4C097DD10
4C097DD12
4C160LL27
4C160LL28
4C160LL29
4C160LL42
4C160LL43
(57)【要約】
体内埋め込み型動作アシスト装置(1)は、股関節(12)を中心として屈伸動作などの動きが生じる骨盤側の骨(15)と大腿骨(14)との間に、股関節(12)を挟み、その前側および後側に、第1の紐(28)、第2の紐(29)を架け渡してある。骨盤側の骨(15)にはアシスト力発生用の回転アクチュエータ(24)が固定されている。回転アクチュエータ(24)により第1、第2の紐(28、29)を引張ることにより、股関節(12)を中心とする屈伸動作等をアシストする引張力が股関節部分に伝えられる。人体の各関節部の自然な動きを拘束することなく、必要とされるアシスト力を関節部に伝達可能な体内埋め込み型動作アシスト装置を実現できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者の関節の動きをアシストするために体内に埋め込まれて使用される体内埋め込み型動作アシスト装置であって、
前記関節を中心とする相対運動を行う一対の骨を第1および第2の骨とした場合に、前記第1の骨または当該第1の骨に繋がる腱を第1の部位と呼び、前記第2の骨または当該第2の骨に繋がる腱を第2の部位と呼ぶものとすると、
前記相対運動における第1の方向の動きをアシストするための引張力を、前記第1、第2の部位の間に伝えるために用いる可撓性の線状部材と、
前記線状部材に前記引張力を与えるアクチュエータと
を有している体内埋め込み型動作アシスト装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記線状部材の少なくとも一部を覆っている筒状部材を有しており、
前記筒状部材は、可撓性および伸縮性のうち、少なくとも、可撓性を備えている体内埋め込み型動作アシスト装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記アクチュエータと前記線状部材との間の前記引張力の伝達経路に配置したダンパーを有している体内埋め込み型動作アシスト装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記相対運動における前記第1の方向とは逆の第2の方向の動きをアシストするための引張力を、前記第1、第2の部位の間に伝えるために、前記第1の部位と前記第2の部位の間に架け渡して使用するための弾性部材を有している体内埋め込み型動作アシスト装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記アクチュエータは、回転運動、直線運動あるいは伸縮運動によって、前記引張力を前記線状部材に与える回転駆動機構、直動機構あるいは伸縮機構である体内埋め込み型動作アシスト装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記アクチュエータの取り付け位置は、前記第1の骨あるいは前記第2の骨の表面または内部である体内埋め込み型動作アシスト装置。
【請求項7】
請求項1において、
前記アクチュエータは、前記線状部材の一部を形成している伸縮可能な高分子アクチュエータである体内埋め込み型動作アシスト装置。
【請求項8】
請求項1において、
前記線状部材を、前記第1、第2の部位に対して、前記引張力を伝達可能に取り付けるために、
前記線状部材を前記第1の部位あるいは前記第2の部位に固定するために用いるクギ、ネジあるいはボルト、
前記線状部材を前記第1の部位あるいは前記第2の部位に締結するために用いる帯状部材、
前記線状部材を前記第1の部位あるいは前記第2の部位に接合するために用いる接着材、および、
前記線状部材を前記第1の部位あるいは前記第2の部位に縫合するために用いる縫合部材
のうちの少なくとも一つを有している体内埋め込み型動作アシスト装置。
【請求項9】
請求項1において、
前記第1、第2の骨のうち、少なくとも一方の骨の髄腔に挿入固定するために用いる髄内釘を有しており、
前記髄内釘は、前記線状部材および前記アクチュエータのうちの少なくとも一方の取付部分である体内埋め込み型動作アシスト装置。
【請求項10】
請求項1において、
前記線状部材は、前記第1、第2の部位の間に架け渡される架け渡し部分として用いられる部分を備え、
前記アクチュエータは、前記架け渡し部分の長さを増減できるように、前記線状部材に係合している体内埋め込み型動作アシスト装置。
【請求項11】
請求項10において、
前記線状部材を第1の線状部材とし、前記引張力を第1の引張力と呼ぶものとすると、
前記相対運動における前記第1の方向とは逆の第2の方向の動きをアシストする第2の引張力が前記第1、第2の部位に伝達されるように、当該第1、第2の部位の間に架け渡して使用するための可撓性の第2の線状部材を有しており、
前記アクチュエータは、前記第1、第2の線状部材における前記第1、第2の部位の間の架け渡し部分の長さが逆位相で増減するように、前記第1、第2の線状部材に係合している体内埋め込み型動作アシスト装置。
【請求項12】
請求項10において、
前記線状部材の前記架け渡し部分を第1の架け渡し部分と呼び、前記引張力を第1の引張力と呼ぶものとすると、
前記線状部材は、前記第1の架け渡し部分と、前記第1の方向とは逆の第2の方向の動きをアシストする第2の引張力を伝達するための第2の架け渡し部分とが形成されるように、前記第1、第2の部位の間に架け渡して用いられる線状部材であり、
前記アクチュエータは、前記第1、第2の架け渡し部分の長さが逆位相で増減するように、前記線状部材に係合している体内埋め込み型動作アシスト装置。
【請求項13】
請求項1において、
前記線状部材の少なくとも一部を覆っている筒状部材と、
前記アクチュエータと前記線状部材との間の前記引張力の伝達経路に配置したダンパーと
前記第1、第2の骨のそれぞれの髄腔に挿入固定するために用いる髄内釘と
を有しており、
前記筒状部材は、可撓性および伸縮性のうち、少なくとも、可撓性を備えており、
前記関節は膝関節であり、
前記アクチュエータは、前記第1の骨である大腿骨に挿入固定される前記髄内釘に取り付けて用いるための回転アクチュエータであり、
前記線状部材の一方の端は、前記第2の骨である脛骨に挿入固定される前記髄内釘に連結するための端である体内埋め込み型動作アシスト装置。
【請求項14】
請求項1において、
前記アクチュエータは、前記第1、第2の部位のうちの一方に取り付けて用いるためのアクチュエータであり、
前記線状部材の一方の端は、前記第1、第2の部位の他方に連結するための端であり、
前記アクチュエータは、前記線状部材の他方の端を引張ることができるように、当該線状部材に係合している体内埋め込み型動作アシスト装置。
【請求項15】
請求項13において、
前記第1、第2の骨のうち、少なくとも一方の骨の髄腔に挿入固定するために用いる髄内釘を有しており、
前記髄内釘に、前記アクチュエータが組み込まれている体内埋め込み型動作アシスト装置。
【請求項16】
請求項13において、
前記相対運動における前記第1の方向とは逆の第2の方向の動きをアシストするための第2の引張力を、前記第1、第2の部位の間に伝えるために用いる可撓性の第2の線状部材と、
前記第2の線状部材に前記第2の引張力を与える第2のアクチュエータと
を有しており、
前記第2のアクチュエータは、前記第1、第2の部位のうちの一方に取り付けて用いるアクチュエータであり、
前記第2の線状部材の一方の端は、前記第1、第2の部位のうちの他方に連結するための端であり、
前記第2のアクチュエータは、前記第2の線状部材の他方の端を引張ることができるように、当該第2の線状部材に係合している体内埋め込み型動作アシスト装置。
【請求項17】
請求項1において、
前記線状部材の少なくとも一部を覆っている筒状部材と、
前記アクチュエータと前記線状部材との間の前記引張力の伝達経路に配置したダンパーと
を有しており、
前記筒状部材は、可撓性および伸縮性のうち、少なくとも、可撓性を備えており、
前記関節は膝関節であり、
前記アクチュエータは、前記第1の骨である大腿骨の表面あるいは内部に取り付けて用いるための直動アクチュエータであり、
前記線状部材の一方の端は、前記第2の骨である脛骨に連結するための端であり、
前記直動アクチュエータの直動部は、前記線状部材の他方の端に、前記ダンパーを介して連結されている体内埋め込み型動作アシスト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、股関節、膝関節等の関節を中心とした動きをアシストするために、装着者の体内に埋め込まれて使用される体内埋め込み型動作アシスト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の体内埋め込み型動作アシスト装置は特許文献1、2に開示されている。特許文献1に開示の動力付き人工関節では、人工関節内にアクチュエータが組み込まれ、人工関節を動かすためのアシスト力を人工関節に加えている。人工関節は、関節部分が健常であるが筋力の低下などにより歩行等の動作が困難な人には適していない。
【0003】
特許文献2に開示の埋込型動作補助装置では、電動モータによって駆動される2本のリムのそれぞれを、関節に繋がっている各骨に固定し、電動モータからの補助力を各骨に加えるようにしている。関節部分が健常であるが歩行等の動作が困難な人に用いることができる。
【0004】
特許文献1、2に開示の動作アシスト装置では、電動モータの回転力を、各骨に対して剛体部材を介して伝達している。動作アシスト装置に設けた機械的な関節軸を中心として、アシスト力伝達用の剛体部材が、人体の前後方向に旋回する。動作アシスト装置が発生するアシスト力は、定まった位置を中心として人体の関節部に作用する。
【0005】
人体の各関節部の動きは複雑であり、例えば膝関節においては膝の屈伸運動に伴って膝関節の関節軸が前後および上下方向に捩れて移動する。股関節、肩関節などのボールジョイント系の関節においては、その関節中心は実質的に移動することはないが、前後の屈伸運動に加えて内転・外転運動、内旋・外旋運動および、それらの複合運動が生じる。
【0006】
従来の一般的な動作アシスト装置では、剛体部材からアシスト力伝達系が構成され、屈伸運動をアシストするアシスト力の中心位置が固定されている。このような動作アシスト装置では、複雑な人体関節部を中心とする動きに追従できず、本来の自然な動きを再現できない。動作アシスト装置を装着した場合には、それによってアシストされる関節部分の動きが、動作アシスト装置の動きに拘束される。この結果、人体関節部分に不要な力が作用し、関節が動かない、または、装着者が拘束感、違和感を覚えることがある。
【0007】
一方、特許文献3、4には外装型の動作アシスト装置が提案されている。特許文献3、4に記載の動作アシスト装置では、膝関節の屈伸運動に伴う関節軸の前後方向および上下方向への移動を考慮している。人体の屈伸運動に合わせて、屈伸運動のアシスト力の回転軸を前後および上下方向に移動させる機構が備わっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−26197号公報
【特許文献2】特開2009−95382号公報
【特許文献3】特開2007−275482号公報
【特許文献4】特開2013−70783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が対象としている体内埋め込み型動作アシスト装置は、特許文献2に記載されているような人工関節を用いずに歩行動作などの動作をアシストする。このような体内埋め込み型動作アシスト装置においては、従来、屈伸運動に伴う人体の関節軸の移動が考慮されていない。また、屈伸運動に加えて内外転運動、内外旋運動、および、それらの複合運動が生じる股関節などに用いるのに適した体内埋め込み型動作アシスト装置は提案されていない。
【0010】
膝関節に用いる体内埋め込み型動作アシスト装置に対して、上記の特許文献3、4に記載の外装型の動作アシスト装置を適用することが考えられる。すなわち、装置側のアシスト力の回転軸を、前後・上下方向に移動させる機構を採用することが考えられる。しかしながら、外装型の動作アシスト装置におけるアシスト力の回転軸を移動させるための機構は、複雑なリンク機構、あるいは複数のアクチュエータを用いて回転軸を前後方向に移動させるようにしている。このような機構は、構造が複雑で小型化が容易でなく、体内への埋め込みには適していない。
【0011】
また、従来の機構は、一義的に定めた軌跡に沿ってアシスト力の回転軸を往復移動させるものである。しかしながら、歩行動作などにおける屈伸運動に伴う人体の関節部の関節軸の動きは複雑である。一義的に定めた軌跡に沿って動作アシスト装置の側のアシスト力の回転中心を移動させても、関節が動かないことがある。また、装着者にとって拘束感、違和感のないアシスト動作を実現できないことがある。
【0012】
さらに、外装型の動作アシスト装置においては、例えば、人体に対する装置の装着状態に遊びができる。この遊びによって、比較的簡単に、人体の関節の動きと装置側の動きのずれを吸収できる。体内埋め込み型動作アシスト装置では、体内の限られたスペースに装置構成部品が配置される。各構成部品は、関節に繋がる一対の骨のそれぞれに対して、遊びの無い状態で固定される。装置側の動作と人体側の動作の間にずれが生じると、それが装着者の関節に、大きな拘束力として作用する。
【0013】
本発明の目的は、人体の各関節の自然な動きを拘束することなく、必要とされるアシスト力を関節部に伝えることのできる体内埋め込み型動作アシスト装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明による体内埋め込み型動作アシスト装置は、装着者の関節の動きをアシストするために体内に埋め込まれて使用される。本発明による体内埋め込み型動作アシスト装置は、関節を中心とする相対運動を行う一対の骨を第1および第2の骨と呼び、第1の骨または当該第1の骨に繋がる腱を第1の部位と呼び、第2の骨または当該第2の骨に繋がる腱を第2の部位と呼ぶものとすると、相対運動における第1の方向の動きをアシストするための引張力を、第1、第2の部位の間に伝えるために用いる可撓性の線状部材と、線状部材に引張力を与えるアクチュエータとを有していることを特徴としている。
【0015】
本発明において「線状部材」とは、広く、長尺状の部材を意味し、紐、ワイヤー、ロープ、テープ、帯などと呼ばれる各種の形態の細長い部材を含む。また、円形断面、扁平な楕円状断面、中空断面など、断面形状も各種のものが含まれる。さらに、1本の線状素材からなる線状部材、および、複数本の線状素材(繊維状素材)を束ねた拠り糸などの形態の線状部材を含む。線状部材は、必要とされるアシスト力を伝達するために十分な引張強度を備え、人体の関節の動きに追従して撓むことのできる十分な撓み性あるいは柔軟性を備えた部材であればよい。線状部材の素材としては、例えば、炭素繊維、チタン、高分子ポリマーなどを用いることができる。
【0016】
本発明において、例えば、線状部材を、第1、第2の部位の間に架け渡し、アクチュエータを、線状部材における架け渡し部分の長さを増減できるように、当該線状部材に係合させる。
【0017】
または、第1、第2の部位のうちの一方の側にアクチュエータを取り付け、他方の側に線状部材の一端を取り付け、線状部材の他端の側を引張ることができるように、当該線状部材の他端にアクチュエータを係合させる。
【0018】
伸展・屈曲運動が主たる関節、例えば、膝関節において、線状部材の架け渡し部分の長さが短くなる方向にアクチュエータを駆動する。あるいは、線状部材を直接にアクチュエータにより引張る。これにより、膝関節を中心として双方の骨が相対的に伸展する伸展運動のアシスト力を、線状部材を介して引張力として加えることができる。線状部材の架け渡し部分の長さを元の長さに戻すと、あるいは、線状部材を緩めると、アシスト力(引張力)が解除され、双方の骨が接近する屈曲運動が可能になる。
【0019】
同様に、ボールジョイント系の関節、例えば、股関節の場合においても、股関節を中心とした屈伸運動のアシスト力を引張力の形態で加えることができる。また、内転運動あるいは外転運動のアシスト力、内旋運動あるいは外旋運動のアシスト力を、アクチュエータから、線状部材を介して引張力の形態で加えることできる。
【0020】
アシスト力の伝達経路が可撓性の線状部材によって形成されており、装置側においてアシスト力の回転軸あるいは回転中心は規定されていない。常に、人体の関節の関節軸あるいは関節中心を中心として、アシスト力が関節に作用する。人体の関節を中心とした双方の骨の自然な動きに追従しながら、アシスト力を伝達可能である。例えば、屈曲運動が主たる膝関節などの関節の場合には、双方の骨の屈伸運動に伴う関節の関節軸の移動を拘束することなく、常に人体の関節の関節軸を中心として、アシスト力が加えられる。また、ボールジョイント系の関節、例えば股関節において、股関節に繋がっている骨などの間に屈伸方向にアシスト力が加わるように配置した線状部材は、その関節中心を中心とした人体側の部位の各方向の動きに追従して、撓み、あるいは、捩れる。例えば、股関節を中心とした内外転運動を拘束することがない。
【0021】
本発明によれば、可撓性の線状部材を用いることにより、本来備わっている筋肉などによる関節を中心とした運動機能を擬似的に再現することができる。よって、従来における剛体リンクなどから構成される装置とは異なり、人体における各関節において、関節の可動性を維持でき、また、拘束力あるいは違和感の無い状態あるいは少ない状態で、装着者の関節にアシスト力を加えることができる。
【0022】
本発明において、線状部材の少なくとも一部を筒状部材によって覆うことが望ましい。筒状部材は、可撓性および伸縮性のうち、少なくとも、可撓性を備えていることが望ましい。
【0023】
筒状部材の可撓性は、線状部材の動きに追従可能な可撓性あるいは柔軟性を意味する。また、筒状部材の伸縮性は、線状部材の架け渡し部分の長さの増減に追従可能な伸縮性を意味する。通常は、最大架け渡し長さに対応する長さの筒状部材を配置し、最小架け渡し長さに対応する長さに縮むことが可能な伸縮性があればよい。
【0024】
関節部を中心とする人体の動きに伴って人体に埋め込まれる線状部材は所定の範囲内を移動する。線状部材が直接に周囲の人体組織に接触して損傷を与えるおそれがある。線状部材を、周囲の人体組織に接触しても損傷などの悪影響を与えることのない素材から筒状部材(チューブ、シース)によって覆っておくことにより、線状部材の移動範囲内にある人体組織に損傷を与えることを防止できる。また、このようにすれば、人体組織との適応性に制約されることなく、線状部材として各種の素材のものを用いることも可能になる。
【0025】
本発明において、アクチュエータと線状部材の間の引張力の伝達経路には、ダンパーを配置することが望ましい。「ダンパー」として、例えば、コイルバネ、捩りバネ、板バネ、ゴムなどの可撓性の弾性体、その他の各種の弾性部材を用いることができる。弾性部材は、必要とされる引張力が伝達される場合には実質的に弾性変形せず、それを超える引張力が作用する場合には弾性変形して、伝達される引張力が所定の大きさを超えないようにする。
【0026】
アクチュエータが停止している状態において、関節部の側から線状部材を介して外力が作用するおそれがある。例えば、膝関節の場合には、装着者が段差につまずく等により、膝関節が意図せずに屈曲あるいは伸展させられる場合がある。このような場合には、大きな衝撃力が線状部材、アクチュエータ等の部分に作用し、これらの部分が破損するおそれがある。引張力の伝達経路上にダンパー、例えば、コイルばねを配置しておくことで、衝撃力を緩和でき、各部が破損するなどの弊害を回避できる。
【0027】
本発明において、関節部を中心とする相対運動における第1の方向とは逆の第2の方向の動きをアシストするための引張力を、第1、第2の部位の間に伝えるために、第1の部位と第2の部位の間に架け渡して使用するための弾性部材を有している場合がある。
【0028】
例えば、関節を中心とする屈曲方向あるいは伸長方向のアシスト力を与える線状部材と、屈曲状態を伸展状態に戻すための復帰力あるいは伸展張状態を屈曲状態に戻すための復帰力を与える弾性部材との組合せを用いることができる。同様に、関節を中心とする内転方向あるいは外転方向のアシスト力を与える線状部材と、内転状態あるいは外転状態を元の状態に戻すための復帰力を与える弾性部材との組合せを用いることができる。また、関節を中心とする内旋方向あるいは外旋方向のアシスト力を与える線状部材と、内旋状態あるいは外旋状態を元の状態に戻すための復帰力を与える弾性部材との組合せを用いることができる。
【0029】
ここで、「弾性部材」として、引張コイルバネ、圧縮コイルバネ、捩りバネ、板バネ、ゴムなどの可撓性の弾性体、その他の各種の弾性的に伸び縮みなどの弾性変形可能な部材を用いることができる。
【0030】
本発明において、アクチュエータとしては各種のアクチュエータを用いることができる。例えば、回転運動によって線状部材の巻き取り・巻き出しを行うものを用いることができる。また、直線運動によって線状部材の引き込み・繰り出しを行うもの、伸縮部材の伸縮運動によって線状部材の引張動作などを行うものを用いることができる。
【0031】
また、アクチュエータは、前記第1あるいは第2の骨の表面、または、前記第1あるいは第2の骨の内部に配置することができる。
【0032】
一方、アクチュエータとしては、人工筋肉などとして用いられる高分子アクチュエータを用いることができる。この場合には、例えば、高分子アクチュエータによって、線状部材の一部を形成することができる。このような高分子アクチュエータとしては、例えば、本願出願人による特開2015−122935号公報において提案されているPVCからなる誘電体層を備えたアクチュエータ素子を用いることができる。
【0033】
なお、線状部材(第1、第2の線状部材)を第1、第2の部位に対して、引張力を伝達可能に取り付けるために用いる部材(取付方法)としては、各種のものを用いることができる。例えば、線状部材を第1の部位あるいは第2の部位に固定するために用いるクギ、ネジあるいはボルト、線状部材を第1の部位あるいは第2の部位に締結するために用いる帯状部材、線状部材を第1の部位あるいは第2の部位に接合するために用いる接着材、線状部材を第1の部位あるいは第2の部位に縫合するために用いる縫合部材などを用いることができる。
【0034】
本発明において、装着者の関節、骨などに過大な負担を掛けることなくアシスト力の伝達機構を構成するには、骨の髄腔に髄内釘を挿入固定すればよい。この場合には、髄内釘に線状部材あるいはアクチュエータを取り付けることができる。
【0035】
次に、線状部材を用いて、関節を中心とした相対運動の第1の方向および逆の第2の方向のいずれの方向にもアシスト用の引張力を与えることができる。例えば、屈曲運動および伸展運動の双方をアシストするための引張力を、線状部材を介して関節部分に与えるために、伸び縮みが逆位相で行われるように、1組の線状部材あるいは2組の線状部材を配置すればよい。また、股関節などの関節を中心とした相対運動、例えば、内転運動および外転運動の双方に対して線状部材によってアシスト力を与えるために、伸び縮みが逆位相で行われるように1組の線状部材あるいは2組の線状部材を配置すればよい。
【0036】
このために、本発明においては、前記の線状部材を第1の線状部材とすると、関節部を中心とする相対運動における第1の方向とは逆の第2の方向の動きをアシストする引張力が第1、第2の部位に伝達されるように、当該第1、第2の部位の間に架け渡して使用するための1本あるいは複数本の可撓性の第2の線状部材を有している。アクチュエータは、第1、第2の線状部材における第1、第2の部位の間の架け渡し部分の長さが逆位相で増減するように、第1、第2の線状部材に連結される。
【0037】
この代わりに、線状部材を、第1、第2の部位の間の架け渡し部分として、相対運動における第1方向の動きをアシストする引張力を伝達するための第1の架け渡し部分と、第1の方向とは逆の第2の方向の動きをアシストする引張力を伝達するための第2の架け渡し部分とが形成されるように、第1、第2の部位の間に架け渡してもよい。この場合には、アクチュエータを、第1、第2の架け渡し部分の長さが逆位相で増減するように、線状部材に係合させる。
【0038】
さらに、本発明において、関節部を中心とする相対運動における第1の方向の動きをアシストするために、第1の線状部材と第1のアクチュエータを配置し、第2の方向の動きをアシストするために、第2の線状部材と第2のアクチュエータを配置することができる。
【0039】
なお、本発明の体内埋め込み型動作アシスト装置は、例えば、装着者の股関節を中心とする屈伸運動、内外転運動あるいは内外旋運動、膝関節を中心とする屈伸運動をアシストする装置として用いることができる。また、本発明の体内埋め込み型動作アシスト装置は、自力で動くことが可能であるが健常な動きが困難な人であって、動作困難の程度が異なる人に広く用いることができる。さらに、筋力が効かずに歩行等の動作が不能な人にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明を適用した実施の形態1の体内埋め込み型歩行アシスト装置を人体前側から見た場合の概略構成図である。
図2図1の体内埋め込み型アシスト装置を人体左外側から見た場合の概略構成図である。
図3図2の直立状態の左股関節と左膝関節が屈曲した状態を示す概略構成図である。
図4】本発明を適用した実施の形態2の体内埋め込み型の膝関節アシスト機構を示す説明図および直動アクチュエータの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
[実施の形態1]
図1図3に示す実施の形態1は、本発明を、股関節動作アシストユニットおよび膝関節動作アシストユニットを備えた体内埋め込み型歩行アシスト装置に適用したものである。
【0042】
(全体構成)
図1は実施の形態1に係る体内埋め込み型歩行アシスト装置を装着者の前側から見た場合の概略構成図である。図2は体内埋め込み型歩行アシスト装置を左外側から見た場合の直立状態の概略構成図であり、図3は直立状態から左股関節および左膝関節が屈曲した状態を示す概略構成図である。体内埋め込み型歩行アシスト装置1(以下、単に「アシスト装置1」と呼ぶ。)は、装着者の体内、本例では左脚11内に埋め込まれて、左脚11の歩行動作に伴う股関節12および膝関節13の屈伸運動をアシストする。
【0043】
アシスト装置1は、左の股関節12の部分に埋め込まれ、当該股関節12を中心とする歩行時の前後の屈伸運動をアシストする股関節動作アシストユニット2と、左の膝関節13の部分に埋め込まれ、当該膝関節13を中心とする歩行時の前後の屈伸運動をアシストする膝関節動作アシストユニット4とを備えている。
【0044】
アシスト装置1は、例えば、不図示の人体装着型のバッテリ電源および不図示の制御ユニットを備えており、バッテリ電源から股関節動作アシストユニット2、膝関節動作アシストユニット4および制御ユニットに対して駆動電力が供給される。制御ユニットは、例えば、神経振動子モデルを用いた制御方法により人体の動きに連動して股関節動作アシストユニット2および膝関節動作アシストユニット4の駆動を制御する。このような制御方法を、本願出願人は特開2015−44240号公報において提案している。
【0045】
(股関節動作アシストユニット)
股関節動作アシストユニット2は、大腿骨14の髄腔内に挿入される髄内釘21と、髄内釘21を大腿骨14に固定するためのスクリューネジ22と、骨盤側の例えば腸骨15に固定されるスクリューネジ23と、このスクリューネジ23にハウジング24aが固定されたアシスト力発生用の回転アクチュエータ24とを有している。
【0046】
また、股関節動作アシストユニット2は、図2図3に示すように、回転アクチュエータ24のハウジング24aによって回転自在の状態で支持されている前側巻取り軸25および後側巻取り軸26と、大腿骨14の上側の骨端に固定されたスクリューネジ27と、可撓性の線状部材である第1の紐28および第2の紐29とを有している。これらの第1、第2の紐28、29は、例えば細幅のテープ状あるいは帯状の紐である。
【0047】
第1の紐28は、人体前側に位置する前側巻取り軸25から巻き出されてスクリューネジ27における同一側に位置するネジ前端27aに架け渡されている。同様に、第2の紐29は、人体後側に位置する後側巻取り軸26から巻き出されてスクリューネジ27における同一側に位置するネジ後端27bに架け渡されている。したがって、第1の紐28および第2の紐29は、股関節12を挟み人体前後の位置において、骨盤側の腸骨15と大腿骨14との間に架け渡されている。
【0048】
本例では、骨盤側に固定されているスクリューネジ23に固定したハウジング24aによって支持されている前側巻取り軸25が、第1の紐28を骨盤側の骨に架け渡すための部位として機能し、大腿骨14の側のスクリューネジ27のネジ前端27aが第1の紐28を大腿骨14に架け渡す(固定する)ための部位として機能する。同様に、後側巻取り軸26が、第2の紐29を骨盤側の骨に架け渡すための部位として機能し、大腿骨14の側のスクリューネジ27のネジ後端27bが第2の紐29を大腿骨14に架け渡す(固定する)ための部位として機能する。
【0049】
ここで、前側の第1の紐28における前側巻き取り軸25からスクリューネジ27のネジ前端27aまでの間の架け渡し部分28aは、可撓性のチューブ31によって覆い隠されている。チューブ31は例えば蛇腹構造をしており、その長さ方向に伸縮可能である。同様に、後側の第2の紐29における後側巻き取り軸26からスクリューネジ27のネジ後端27bまでの間の架け渡し部分29aは、可撓性のチューブ32によって覆い隠されている。チューブ32も例えば蛇腹構造をしており、その長さ方向に伸縮可能である。
【0050】
例えば、回転アクチュエータ24の回転軸24bには、ピニオン33が同軸に固定されている。ピニオン33には、人体前後方向から前側伝達歯車34および後側伝達歯車35がかみ合っている。前側伝達歯車34は前側巻取り軸25に同軸に固定され、後側伝達歯車35は後側巻取り軸26に同軸に固定されている。
【0051】
第1の紐28は例えば時計回りに前側巻取り軸25に巻かれており、第2の紐29は逆の反時計回りに後側巻取り軸26に巻かれている。例えば、図2の状態において、回転アクチュエータ24を駆動してその回転軸24bが一方向に回転すると、図3に示すように、第1の紐28が前側巻き取り軸25に巻き取られ、前側巻取り軸25から大腿骨14のスクリューネジ27のネジ前端27aまでの間に架け渡されている第1の紐28の架け渡し部分28aの長さが短くなる。換言すると、前側巻き取り軸25からネジ前端27aまでの距離が短くなる。
【0052】
この結果、回転アクチュエータ24の回転力が、股関節12の関節中心を中心として、大腿骨14が骨盤に対して前方に屈曲する方向のアシスト力として、第1の紐28を介して大腿骨14に作用する。チューブ31は伸縮性があり、架け渡し部分28aの長さの減少に応じて縮むので、第1の紐28の巻き取り動作に干渉しない。
【0053】
また、後側の第2の紐29は、図3に示すように、後側巻き取り軸26の同一方向の回転によって巻き出されて、その架け渡し部分29aの長さが長くなり、大腿骨14の屈曲運動に干渉しない。チューブ32は、架け渡し部分29aが長くなると、それに応じて伸張するので、第2の紐29が露出して周囲の人体組織に接触することがない。
【0054】
回転アクチュエータ24を逆方向に回転すると、前側の第1の紐28の架け渡し部分28aの長さが長くなり、後側の第2の紐29の架け渡し部分29aの長さが短くなる。これにより、回転アクチュエータ24の回転力が、股関節12を中心として、大腿骨14が骨盤に対して後方に伸展する方向のアシスト力が第2の紐29を介して大腿骨14に作用する。この場合にも各チューブ31、32が架け渡し部分28a、29aの長さの変化に追従して伸縮して、例えば、図3の状態から図2の状態に戻る。
【0055】
ここで、股関節12を中心として、大腿骨14の側の部位に、内転運動あるいは外転運動、内旋運動あるいは外旋運動、または、それらの複合運動が生じた場合には、撓み性のある第1、第2の紐28、29は、そのような動きに追従して撓み、あるいは捩れる。よって、股関節動作アシストユニット2が内外転運動の障害になることを防止できる。また、このような内外転運動に追従して、第1、第2の紐28、29を巻き出し、巻き戻しを行うように回転アクチュエータ24を駆動制御すれば、装着者は拘束感あるいは違和感なく内外転運動を行うことができる。
【0056】
さらに、内外転運動、内外旋運動の一方あるいは双方をアシストする引張力を加えることができるように、紐などの可撓性の線状部材を架け渡しておき、この架け渡し長さを、回転アクチュエータなどのアクチュエータによって増減することもできる。このようにすれば、内外転運動、内外旋運動のアシストを行うことができる。
【0057】
なお、回転アクチュエータ24は、例えば、電動モータおよび、この出力回転を減速して回転軸24bに伝達する減速機を備えている。また、回転アクチュエータ24の埋め込み位置は、その埋め込みスペースを容易に確保できるように、例えば、股関節12の左横方位置から上方に外れた位置とされる。
【0058】
(膝関節動作アシストユニット)
次に、膝関節動作アシストユニット4は、大腿骨14の髄腔内に挿入される上述した髄内釘21と、髄内釘21の下端部分21bを大腿骨14に固定するためのスクリューネジ42と、脛骨17に挿入される髄内釘41と、髄内釘41の上端側部分41aを脛骨17に固定するためのスクリューネジ43と、大腿骨14の側のスクリューネジ42にハウジング44aが固定されたアシスト力発生用の回転アクチュエータ44とを有している。
【0059】
また、膝関節動作アシストユニット4は、回転アクチュエータ44のハウジング44aによって回転自在の状態で支持されている前側巻取り軸45および後側巻取り軸46と、脛骨17の上側の骨端に固定されたスクリューネジ47と、可撓性の第1の紐48および可撓性の第2の紐49とを有している。
【0060】
第1の紐48は、人体前側に位置する前側巻取り軸45から巻き出されてスクリューネジ47における同一側に位置するネジ前端47aに架け渡されている。同様に、第2の紐49は、人体後側に位置する後側巻取り軸46から巻き出されてスクリューネジ47における同一側に位置するネジ後端47bに架け渡されている。第1の紐48および第2の紐49は、膝関節13を挟み人体前後の位置において、大腿骨14と脛骨17の間に架け渡されている。
【0061】
前側巻取り軸45が第1の紐48を大腿骨14の側に架け渡すための部材として機能し、脛骨17の側のスクリューネジ47のネジ前端47aが第1の紐48を脛骨17に架け渡すための部材として機能する。同様に、後側巻取り軸46が、第2の紐49を大腿骨14に架け渡すための部材として機能し、脛骨17の側のスクリューネジ47のネジ後端47bが第2の紐49を脛骨17に架け渡すための部材として機能する。
【0062】
前側の第1の紐48における前側巻き取り軸45からスクリューネジ47のネジ前端47aまでの間の架け渡し部分48aは、可撓性のチューブ51によって覆い隠されている。チューブ51は例えば蛇腹構造をしており、その長さ方向に伸縮可能である。同様に、後側の第2の紐49における後側巻き取り軸46からスクリューネジ47のネジ後端47bまでの間の架け渡し部分49aは、可撓性のチューブ52によって覆い隠されている。チューブ52も例えば蛇腹構造をしており、その長さ方向に伸縮可能である。
【0063】
回転アクチュエータ44の回転軸44bには、ピニオン53が同軸に固定されている。ピニオン53には、人体前後方向から前側伝達歯車54および後側伝達歯車55がかみ合っている。前側伝達歯車54は前側巻取り軸45に同軸に固定され、後側伝達歯車55は後側巻取り軸46に同軸に固定されている。
【0064】
第1の紐48は例えば時計回りに前側巻取り軸45に巻かれており、第2の紐49は逆の反時計回りに後側巻取り軸46に巻かれている。例えば、図2の状態において、回転アクチュエータ44を駆動してその回転軸44bが一方向に回転すると、図3に示すように、第2の紐49が後側巻き取り軸46から巻き出されて、後前側巻取り軸46から脛骨17のスクリューネジ47のネジ後端47bまでの間に架け渡されている第2の紐49の架け渡し部分49aの長さが長くなる。
【0065】
この結果、回転アクチュエータ44の回転力が、膝関節13を中心として、脛骨17が大腿骨14に対して後方に屈曲する方向のアシスト力として、第2の紐49を介して脛骨17に作用する。チューブ52は伸縮性があり、架け渡し部分49aの長さの増加に応じて伸び、第2の紐49の巻き取り動作に干渉しない。
【0066】
また、前側の第1の紐48は、前側巻き取り軸45の同一方向の回転によって巻き出されて、その架け渡し部分48aの長さが短くなり、脛骨17の伸展運動に干渉しない。チューブ51は、架け渡し部分48aが長くなると、それに応じて縮むので、第1の紐48が露出して周囲の人体組織に接触して損傷を与えることがない。
【0067】
図3の状態において回転アクチュエータ44を逆方向に回転すると、図2に示すように、前側の第1の紐48の架け渡し部分48aの長さが短くなり、後側の第2の紐49の架け渡し部分49aの長さが長くなる。これにより、回転アクチュエータ44の回転力が、膝関節13を中心として、脛骨17が大腿骨14に対して前方に伸びる方向のアシスト力が第1の紐48を介して脛骨17に作用する。この場合にも各チューブ51、52が架け渡し部分48a、49aの長さの変化に追従して伸縮する。
【0068】
回転アクチュエータ44は、例えば、電動モータおよび、この出力回転を減速して回転軸44bに伝達する減速機を備えている。また、回転アクチュエータ44の埋め込み位置は、その埋め込みスペースを容易に確保できるように、例えば、膝関節13の左横方位置から上方に外れた位置とされる。
【0069】
(実施の形態1の改変例)
上記の例では股関節12、膝関節13において、その前後に1本ずつ第1、第2の紐28、29、48、49を配置している。第1、第2の紐として、それぞれ、複数本の紐を用いることも可能である。また、第1、第2の紐として機能する1本あるいは複数本の紐を、引き回すことにより、前側の架け渡し部分28a、48aが長くなると、後側の架け渡し部分29a、49aが短くなるようにすることも可能である。
【0070】
また、例えば、膝関節13において、屈曲側である後側の第2の紐49の代わりに、コイルバネ、捩りバネなどの弾性部材を、大腿骨14と脛骨17の間に圧縮力が作用する状態に架け渡しておくことも可能である。例えば、紐を、その長さが短くなる方向に引張ることにより、膝関節の伸展動作を補助し、弾性部材による圧縮力によって膝関節の屈曲動作を補助することができる。また、股関節12の側においても、紐と弾性部材とを用いることが可能である。
【0071】
さらに、膝関節13においては、前側の伸展用の第1の紐48を、大腿骨14と脛骨17の間に架け渡している。この代わりに、第1の紐48を、第1の大腿骨14と膝蓋骨18との間に架け渡し、膝蓋骨18を介して脛骨17を伸展させるようにすること可能である。
【0072】
さらにまた、上記の例では回転アクチュエータを用いてアシスト力を発生している。この代わりに、人工筋肉などに利用される高分子アクチュエータを用いることも可能である。この場合には、例えば、第1、第2の紐28、29、48、49の一部を高分子アクチュエータによって形成し、紐長さ方向に伸縮させて、架け渡し部分28a、29a、48a、49aの長さを増減させるようにすることができる。
【0073】
なお、上記の例では、髄内釘を用いて装着者の骨を補強している。装着者の骨が強い場合には髄内釘を用いることなく、アクチュエータ、第1、第2の紐などを、各骨に固定することができる。
【0074】
[実施の形態2]
図4(a)は本発明を適応した実施の形態2に係る膝関節アシスト機構を示す説明図であり、図4(b)は直動アクチュエータを示す説明図である。膝関節アシスト機構100は、装着者の左脚に埋め込まれて左の膝関節13を中心とする人体前後方向の伸展運動をアシストする伸展アシストユニット110と、屈曲運動をアシストする屈曲アシストユニット130と、バッテリ電源および制御機構が組み込まれた人体装着型の制御ユニット150とを備えている。
【0075】
制御ユニット150は、例えば、神経振動子モデルを用いた制御方法により人体の動きに連動して伸展アシストユニット110および屈曲アシストユニット130の駆動を制御する(特開2015−44240号公報参照)。例えば、制御ユニット150は、歩行動作において、伸展アシストユニット110および屈曲アシストユニット130を交互に駆動制御して、膝関節運動をアシストする。
【0076】
伸展アシストユニット110は、伸展運動をアシストするための引張力を膝関節13に繋がる大腿骨14および脛骨17のうちの一方の骨、本例では脛骨17に伝えるために用いる可撓性のワイヤー111と、ワイヤー111に引張力を与えるために、大腿骨14に取り付けた直動アクチュエータ120とを備えている。
【0077】
ワイヤー111の下端111aは、脛骨17の上端部の前側の部位に固定される。ワイヤー111は膝蓋骨18を介して上方に延びており、ワイヤー111の上端111bは、直動アクチュエータ120の側に連結される。直動アクチュエータ120によるワイヤー111の牽引量は、膝関節13を90°〜0°まで伸展させるために、60mm程度必要である。これを超えるストロークの直動アクチュエータを用いればよい。
【0078】
ワイヤー111の下端111aを脛骨17に固定するための固定部112は、クギ、ネジ、ボルト、締結用バンドなどによる固定部、接着あるいは縫合による固定部とすることができる。ワイヤー111における人体組織に接触する部分は、可撓性および伸縮性のある円筒113によって覆われている。これにより、移動するワイヤー111によって人体組織が傷つけられることを防止できる。
【0079】
直動アクチュエータ120は、例えば、大腿骨14の外側の側面に沿う状態に配置され、大腿骨14に固定されている。例えば、直動アクチュエータ120を、実施の形態1における髄内釘21として製作し、大腿骨14に埋設することもできる。
【0080】
図4(b)を参照して説明すると、直動アクチュエータ120は、ボールねじ式アクチュエータであり、細長い円筒状ケース121と、この内部に同軸に延びるボールねじ軸122と、ボールねじ軸122に螺合しているボールねじ123と、ボールねじ122を回転駆動するサーボモータ124とを備えている。モータと減速機を組み合わせて必要とされるトルクを確保する場合もある。ボールねじ軸122は回転自在の状態で円筒状ケース121によって支持されており、ボールねじ123は、ボールねじ軸122に沿ってスライド可能かつ回転不可の状態で、円筒状ケース121によって支持されている。サーボモータ124を駆動してボールねじ軸122を回転すると、ボールねじ123はボールねじ軸122に沿って、矢印126で示す前後方向にスライドする。
【0081】
ボールねじ123には、ダンパーとして機能するコイルばね125を介して、ワイヤー111の上端111bが連結されている。ボールねじ123が後方にスライドすると、ワイヤー111が引張られて引き込まれる(直動アクチュエータ120の先端位置120aから、脛骨17の側に繋がっているワイヤー111の下端111aまでの間のワイヤー架け渡し長さが短くなる。)。ワイヤー111を介して、膝関節13を中心として脛骨17を大腿骨14に対して人体前方に伸長させる方向の引張力が、アシスト力として作用する。ボールねじ123を前方にスライドすると、ワイヤー111が緩み、脛骨17の引張が解除される。装着者は、膝関節13を中心として脛骨17を大腿骨14に対して後方に自由に屈曲させることが可能になる。
【0082】
再び図4(a)に戻って説明すると、屈曲アシストユニット130は、伸展アシストユニット110と同一構造であるが、取付け位置が相違する。屈曲アシストユニット130は、屈曲運動をアシストするための引張力を膝関節13に繋がる一方の骨、本例では脛骨17の側に伝えるために用いる可撓性のワイヤー131と、ワイヤー131に引張力を与える直動アクチュエータ140とを備えている。
【0083】
ワイヤー131の下端131aは、脛骨17あるいは腓骨19の上端部の後ろ側の部位に固定される。例えば、ワイヤー131の下端131aは、脛骨17における大腿二頭筋付着部あるいは後十字靭帯付着部に固定される。ワイヤー131の上端131bは、直動アクチュエータ140の側に連結されている。直動アクチュエータ140は、例えば、大腿骨14の内側の側面に沿って配置され、大腿骨14に固定されている。
【0084】
直動アクチュエータ140を駆動して、そのボールねじを後方にスライドさせると、ワイヤー131が引張られる。ワイヤー131を介して、膝関節13を中心として脛骨17を大腿骨14に対して後方に屈曲させる方向の引張力が、アシスト力として作用する。ボールねじを前方にスライドさせると、ワイヤー131が緩み、引張力が解除される。
【0085】
[その他の実施の形態]
本発明は、歩行以外の動作、例えば、腕の上げ下げを補助するために肩関節部に装着される体内埋め込み型動作アシスト装置、肘の屈伸などの動作を補助するために肘関節部に装着される体内埋め込み型動作アシスト装置として用いることができる。また、これら以外の人体の関節部に装着して動作アシストを行う装置として用いることができる。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】