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再表2018-97153発光性膜、有機エレクトロルミネッセンス素子、有機材料組成物及び有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2018年5月31日
【発行日】2019年10月17日
(54)【発明の名称】発光性膜、有機エレクトロルミネッセンス素子、有機材料組成物及び有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20190920BHJP
   H05B 33/04 20060101ALI20190920BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20190920BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20190920BHJP
【FI】
   H05B33/14 B
   H05B33/04
   H05B33/10
   C09K11/06 660
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】116
【出願番号】特願2018-552603(P2018-552603)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2017年11月22日
(31)【優先権主張番号】特願2016-228472(P2016-228472)
(32)【優先日】2016年11月25日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-76419(P2017-76419)
(32)【優先日】2017年4月7日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-158484(P2017-158484)
(32)【優先日】2017年8月21日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田畑 顕一
(72)【発明者】
【氏名】中村 優太
(72)【発明者】
【氏名】並川 威人
(72)【発明者】
【氏名】井上 暁
(72)【発明者】
【氏名】宮田 康生
(72)【発明者】
【氏名】井 宏元
【テーマコード(参考)】
3K107
【Fターム(参考)】
3K107CC23
3K107DD53
3K107DD64
3K107DD67
3K107DD68
3K107DD69
3K107EE46
3K107FF00
3K107FF13
3K107FF19
3K107FF20
3K107GG02
3K107GG06
3K107GG28
(57)【要約】
本発明の課題は、発光効率、色度及び発光寿命に優れた発光性膜を提供することである。
本発明の発光性膜は、ホスト化合物、青色リン光発光性化合物及び青色蛍光発光性化合物を含む発光性膜であって、前記青色リン光発光性化合物の発光スペクトルと前記青色蛍光発光性化合物の吸収スペクトルとが、重なりを有しており、かつ、前記青色リン光発光性化合物と前記青色蛍光発光性化合物の最短波長側の発光極大波長が、特定の関係を満たし、前記青色蛍光発光性化合物に由来する発光が検出されることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスト化合物、青色リン光発光性化合物及び青色蛍光発光性化合物を含む発光性膜であって、
前記青色リン光発光性化合物の発光スペクトルと前記青色蛍光発光性化合物の吸収スペクトルとが、重なりを有しており、かつ、
前記青色リン光発光性化合物(式中において「BPM」と略記する。)と前記青色蛍光発光性化合物(式中において「BFM」と略記する。)の最短波長側の発光極大波長が、下記数式(1)を満たし、
前記青色蛍光発光性化合物に由来する発光が検出されることを特徴とする発光性膜。
数式(1):λBFM≧λBPM
[前記数式(1)中、λBFMは前記青色蛍光発光性化合物の最短波長側の発光極大波長を表す。λBPMは前記青色リン光発光性化合物の最短波長側の発光極大波長を表す。]
【請求項2】
前記青色リン光発光性化合物と前記青色蛍光発光性化合物の発光色のCIE色度座標のy値が下記数式(2)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の発光性膜。
数式(2):yBPM≧yBFM
[前記数式(2)中、yBPMは、前記青色リン光発光性化合物の発光色のCIE色度座標のy値を表す。yBFMは、前記青色蛍光発光性化合物の発光色のCIE色度座標のy値を表す。]
【請求項3】
前記青色リン光発光性化合物から前記青色蛍光発光性化合物へのエネルギー移動の割合が、下記数式(3)を満たすことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の発光性膜。
数式(3):PF/PD≧0.34
[前記数式(3)中、PFは、前記青色リン光発光性化合物の三重項励起状態から前記青色蛍光発光性化合物の一重項励起状態へのフェルスター型エネルギー移動確率を表す。PDは、前記青色リン光発光性化合物の三重項励起状態から前記青色蛍光発光性化合物の三重項励起状態へのデクスター型エネルギー移動確率を表す。]
【請求項4】
前記青色リン光発光性化合物が、下記一般式(1)で表されることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の発光性膜。
【化1】
〔前記一般式(1)において、Mは、Ir又はPtを表す。A1、A2、B1及びB2は、それぞれ独立に炭素原子又は窒素原子を表す。環Z1は、A1及びA2とともに形成される6員の芳香族炭化水素環又は5員若しくは6員の芳香族複素環、又はこれらの環のうちの少なくとも1つを含む芳香族縮合環を表す。環Z2は、B1及びB2とともに形成される5員若しくは6員の芳香族複素環、又はこれらの環のうちの少なくとも1つを含む芳香族縮合環を表す。前記環Z1及び環Z2が有する炭素原子は、カルベン炭素原子であってもよい。A1とMとの結合及びB1とMとの結合は、一方が配位結合であり、他方は共有結合を表す。環Z1及び環Z2は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい。環Z1及び環Z2の置換基が結合することによって、縮環構造を形成していてもよく、環Z1と環Z2とで表される配位子同士が連結していてもよい。Lは、Mに配位したモノアニオン性の二座配位子を表し、置換基を有していてもよい。mは、0〜2の整数を表す。nは、1〜3の整数を表す。MがIrの場合のm+nは3であり、MがPtの場合のm+nは2である。m又はnが2以上のとき、環Z1と環Z2とで表される配位子又はLはそれぞれ同じでも異なっていてもよく、環Z1と環Z2とで表される配位子とLとは連結していてもよい。〕
【請求項5】
陽極と陰極との間に、発光層を備える有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記発光層が、請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の発光性膜を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の発光性膜が、当該発光性膜に隣接する層の材料を含有していることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された水蒸気透過度が0.001〜1g/(m・day)の範囲内で、かつJIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が0.001〜1mL/(m・day・atm)の範囲内のガスバリアー層を有することを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
陽極と陰極との間に、発光層と当該発光層に隣接する層とを備える有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記発光層が、ホスト化合物及び青色リン光発光性化合物を含有し、
前記発光層に隣接する層が、青色蛍光発光性化合物を含有し、
前記青色リン光発光性化合物の発光スペクトルと前記青色蛍光発光性化合物の吸収スペクトルとが、重なりを有しており、かつ、
前記青色リン光発光性化合物(式中において「BPM」と略記する。)と前記青色蛍光発光性化合物(式中において「BFM」と略記する。)の最短波長側の発光極大波長が、下記数式(1)を満たし、
前記青色蛍光発光性化合物に由来する発光が検出されることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
数式(1):λBFM≧λBPM
[前記数式(1)中、λBFMは前記青色蛍光発光性化合物の最短波長側の発光極大波長を表す。λBPMは前記青色リン光発光性化合物の最短波長側の発光極大波長を表す。]
【請求項9】
前記リン光発光性化合物及び前記青色蛍光発光性化合物が、下記数式(5)又は数式(6)の少なくとも一方を満たすことを特徴とする請求項5から請求項8までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
数式(5):HOMOBPM>HOMOBFM
数式(6):LUMOBPM<LUMOBFM
〔前記数式において、HOMOBPMは、青色リン光発光性化合物の最高被占軌道(HOMO)におけるエネルギー準位を表す。HOMOBFMは、青色蛍光発光性化合物のHOMOエネルギー準位を表す。
また、LUMOBPMは、前記青色リン光発光性化合物の最低空軌道(LUMO)におけるエネルギー準位を表す。LUMOBFMは、前記青色蛍光発光性化合物のLUMOエネルギー準位を表す。〕
【請求項10】
JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された水蒸気透過度が0.001〜1g/(m・day)の範囲内で、かつJIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が0.001〜1mL/(m・day・atm)の範囲内のガスバリアー層を有することを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項11】
ホスト化合物、青色リン光発光性化合物及び青色蛍光発光性化合物を含有する有機材料組成物であって、
前記青色リン光発光性化合物の発光スペクトルと前記青色蛍光発光性化合物の吸収スペクトルとが、重なりを有しており、かつ、
前記青色リン光発光性化合物(式中において「BPM」と略記する。)と前記青色蛍光発光性化合物(式中において「BFM」と略記する。)の最短波長側の発光極大波長とが、下記数式(1)を満たし、
前記青色蛍光発光性化合物に由来する発光が検出されることを特徴とする有機材料組成物。
数式(1):λBFM≧λBPM
[前記数式(1)中、λBFMは前記青色蛍光発光性化合物の最短波長側の発光極大波長を表す。λBPMは前記青色リン光発光性化合物の最短波長側の発光極大波長を表す。]
【請求項12】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の発光性膜を有する有機エレクトロルミネッセンス素子を製造する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項13】
前記発光性膜が、ドライプロセスで製造されることを特徴とする請求項12に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項14】
前記発光性膜が、ウェットプロセスで製造されることを特徴とする請求項12に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項15】
JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された水蒸気透過度が0.001〜1g/(m・day)の範囲内で、かつJIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が0.001〜1mL/(m・day・atm)の範囲内のガスバリアー層を有することを特徴とする請求項12から請求項14のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光性膜、有機エレクトロルミネッセンス素子、有機材料組成物及び有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、発光効率、色度及び素子寿命に優れた発光性膜等に関する。
【背景技術】
【0002】
発光型の電子ディスプレイデバイスとして、有機エレクトロルミネッセンス(以下、「EL」ともいう。)素子がある。
【0003】
有機EL素子は、発光する化合物(以下、「発光材料」ともいう。)を含有する発光層を陰極と陽極で挟んだ構成を有し、発光層に電子及び正孔を注入して、再結合させることにより励起子(エキシトン)を生成させ、このエキシトンが失活する際の光の放出(蛍光・リン光)を利用して発光する素子であり、数V〜数十V程度の低電圧で発光が可能であり、さらに自己発光型であるために視野角に富み、視認性が高く、薄膜型の完全固体素子であるために省スペース、携帯性等の観点から注目されている。
【0004】
今後の有機ELの素子開発として、さらに発光効率、輝度及び色度の良好な発光が可能な有機EL素子が望まれている。
【0005】
高輝度の観点から、発光材料としては、青色蛍光発光性化合物よりIr、Ru、Ptといった重原子を含む青色リン光発光性金属錯体が用いられることが多い。その理由は、これらの金属錯体が、重原子効果によって一重項励起状態から三重項励起状態への本来禁制であるスピン反転が可能であり、理論的には最大100%の内部量子収率を実現し得るためである。
【0006】
しかしながら、青色リン光発光性化合物として、高い発光効率を有するものが見いだされているが、素子寿命及び色度の観点で満足できるレベルの物は見いだされていないのが実状である。その理由は、青色リン光発光性化合物のエネルギー準位(以下、単に「準位」ともいう)が、赤色や緑色のものと比較して高く、電界駆動中に生成された準位の低い消光物質にエネルギー移動がしやすいためである。
【0007】
青色リン光発光性化合物は発光減衰寿命τが数μs〜数十μs程度であり、蛍光発光材料の蛍光寿命と比較して2〜4オーダー長くなっている。また、青色リン光発光性化合物は、三重項励起状態の準位が高いために、青色リン光発光性化合物からの発光スペクトルと消光物質の吸収スペクトルとに重なりが生じやすく、エネルギー移動速度が大きくなっている。
【0008】
加えて、発光減衰寿命の長さは化合物上の励起子が滞留する長さを意味し、高電流密度下での素子駆動において、つまりは励起状態となる分子が多く存在するようになると、低電流密度では問題にならなかった、発光性を低下させる要因として知られるTTA (Triplet−Triplet Annihilation)やTPA(Triplet−Polaron Annihilation)が発生しやすくなり、ひいては素子寿命の大幅な低下が引き起こされる。これはロールオフや素子寿命の加速係数(以下、単に「加速係数」ともいう。)で評価され、高励起子密度下で駆動した際にも低励起子密度下で駆動した状態と同様な発光寿命を示す場合、加速係数は1となり、駆動条件に関わらず輻射失活できていることを意味する。
なお、加速係数とは、下記(E)式中のnである。
【0009】
1/t2=(L1/L2−n・・・(E)
[L1:電流密度2.5mA/cm印加時の初期輝度
2:電流密度16.25mA/cm印加時の初期輝度
1:輝度L1(低輝度・低電流2.5mA/cm)での素子寿命(輝度半減寿命)
2:輝度L2(高輝度・高電流16.25mA/cm)での素子寿命(輝度半減寿命)]
【0010】
ここで、消光物質が生成した際の発光材料からの消光現象は、下記に示すSTERN−VOLMERの式(数式(A))によって説明することができる。
【0011】
【数1】
【0012】
前記数式(A)中、PL(with Quencher)は消光物質存在下における発光強度、PL0(without Quencher)は消光物質非存在下における発光強度、Kqは発光材料から消光物質へのエネルギー移動速度、[Q](=Kd×t)は消光物質濃度、Kdは凝集・分解等による消光物質の生成速度、tは光又は電流による積算励起時間、τ0は消光物質が存在しない場合のリン光発光性化合物のリン光発光半減寿命である。
【0013】
つまり、前記数式(A)より、蛍光発光性化合物のような発光減衰寿命τが短い発光材料であれば素子の発光寿命(以下、「素子寿命」ともいう。)の長寿命化が期待されるが、前述したように、従来の蛍光発光性化合物を用いた有機EL素子では内部量子収率が25%を超えることはない。
【0014】
そこで、蛍光発光性化合物の高効率化として考案されたのが、三重項−三重項消滅(以下、単に「TTA」ともいう)機構を用いた蛍光発光効率の高効率化である。一般的な蛍光発光性化合物の三重項励起状態は熱失活することになるが、励起子密度を高くすることで三重項励起子同士が衝突し、一重項励起状態が生成することが知られている。TTA機構は下数式(B)で表され、五つの三重項励起子から一つの一重項励起子が生成する。しかし、TTA機構を用いても外部取り出し量子効率(EQE)の理論限界値は8%とリン光発光性化合物には及ばない。
【0015】
数式(B)
4(T1+T1)→S1+3T1+4S0
1→S0+hν
【0016】
上記数式(B)中のS0は基底状態、S1は一重項励起準位、T1は三重項励起準位を示し、は励起状態を表す。
【0017】
加えて、例えば、特許文献2には、TADF(熱活性化遅延蛍光)発光性化合物を蛍光発光性化合物のアシストドーパントとして用いることで、高効率な有機EL素子の作製する技術が記載されているが、蛍光発光性化合物が添加されている発光成膜の発光減衰寿命(τ)は依然μ秒オーダーと長く、高輝度下及び高電流密度下ではロールオフや、上記加速係数が大きくなり、発光性が低下し、ひいては素子寿命の低下が問題となった。
【0018】
上記数式(B)を有機EL素子中で発現させるためには、前述したように励起子の高密度化が必要となってくる。そのため、発光層内の発光位置を正孔輸送層(HTL:hole transport layer)又は電子輸送層(ETL: electron transportlayer)側に偏らせなければならない。しかしながら、実際には、励起子耐性の弱いETL側に偏らせることはできず、HTLと発光層(EML:emitterlayer)の界面で発光させなければならない。そのため、HTLとEMLとの界面で、これら層を構成する材料が混合(以下、「界面が混合」ともいう。)した際には、HTLへのエネルギー移動が発現し、励起子密度の低下により発光効率の低下につながる。
【0019】
界面の混合は塗布法による製膜により顕著に発現する。塗布法で多層成膜した際には、HTLとEMLの界面が数nm混合されることが知られており、HTLへのエネルギー移動確率が増加することで、大幅な発光効率の低下を引き起こすことも確認されている。そのため励起子の高密度化によるTTA機構を用いた素子は、限定された層構成でのみ実施可能となる。
【0020】
TTAに変わる蛍光増感では、例えば、特許文献1では、図1に示すように、青色蛍光発光性化合物と、青色蛍光発光性化合物の一重項励起状態の準位よりも三重項励起状態の準位が高い青色リン光発光性化合物を組み合わせることで、青色蛍光発光性化合物の一重項励起状態を青色リン光発光性化合物からのフェルスター型エネルギー移動により増感することで、青色蛍光発光性化合物からの発光の高効率化が提案されているが、本機構を用いた青色蛍光発光性化合物の増感には紫外発光可能な青色リン光発光性化合物を用いなければならない。
【0021】
さらに、特許文献3では、図2に示すように、青色蛍光発光性化合物と青色リン光発光性化合物の組み合わせによる色度向上化が提案されている。しかしながら、青色蛍光発光性化合物の三重項励起状態への失活経路の抑制は施されておらず、発光効率が十分とはいえず改善の余地があった。
【0022】
本発明においては、青色蛍光発光性化合物のS1増感として、フェルスター型エネルギー移動効率がデクスター型エネルギー移動効率に比べ優位に働く青色蛍光発光性化合物とリン光発光性化合物を併用することにより、発光効率の向上のみならず、層構成によらず高い素子寿命と高い色度を実現するものである。
【0023】
上述のように、
・青色リン光発光性化合物は発光減衰寿命τが数μs〜数十μs程長いこと
・三重項励起状態の準位が高いために、青色リン光発光性化合物からの発光スペクトルと消光物質の吸収スペクトルとに重なりが生じやすく、エネルギー移動速度が大きくなっていること
の2点が相まって、前記数式(A)からも分かるように、青色リン光発光性化合物の使用による素子寿命を長寿命化させることの困難な要因となっている。
特許文献1〜3に開示された技術についても、素子寿命は十分とはいえず、大いに改善の余地が残っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】特許第4571359号
【特許文献2】特許第5905916号
【特許文献3】特許第4904821号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、発光効率、色度及び素子寿命に優れた発光性膜、有機エレクトロルミネッセンス素子、有機材料組成物及び有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、青色リン光発光性化合物の発光スペクトルと前記青色蛍光発光性化合物の吸収スペクトルとが、重なりを有しており、かつ、これらの発光性化合物における最短波長側の発光極大波長を特定の関係に規定することにより、発光性膜の発光効率、色度及び素子寿命を向上できることを見いだし本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0027】
1.ホスト化合物、青色リン光発光性化合物及び青色蛍光発光性化合物を含む発光性膜であって、
前記青色リン光発光性化合物の発光スペクトルと前記青色蛍光発光性化合物の吸収スペクトルとが、重なりを有しており、かつ、
前記青色リン光発光性化合物(式中において「BPM」と略記する。)と前記青色蛍光発光性化合物(式中において「BFM」と略記する。)の最短波長側の発光極大波長が、下記数式(1)を満たし、
前記青色蛍光発光性化合物に由来する発光が検出されることを特徴とする発光性膜。
数式(1):λBFM≧λBPM
[前記数式(1)中、λBFMは前記青色蛍光発光性化合物の最短波長側の発光極大波長を表す。λBPMは前記青色リン光発光性化合物の最短波長側の発光極大波長を表す。]
【0028】
2.前記青色リン光発光性化合物と前記青色蛍光発光性化合物の発光色のCIE色度座標のy値が下記数式(2)を満たすことを特徴とする第1項に記載の発光性膜。
数式(2):yBPM≧yBFM
[前記数式(2)中、yBPMは、前記青色リン光発光性化合物の発光色のCIE色度座標のy値を表す。yBFMは、前記青色蛍光発光性化合物の発光色のCIE色度座標のy値を表す。]
【0029】
3.前記青色リン光発光性化合物から前記青色蛍光発光性化合物へのエネルギー移動の割合が、下記数式(3)を満たすことを特徴とする第1項又は第2項に記載の発光性膜。
数式(3):PF/PD≧0.34
[前記数式(3)中、PFは、前記青色リン光発光性化合物の三重項励起状態から前記青色蛍光発光性化合物の一重項励起状態へのフェルスター型エネルギー移動確率を表す。PDは、前記青色リン光発光性化合物の三重項励起状態から前記青色蛍光発光性化合物の三重項励起状態へのデクスター型エネルギー移動確率を表す。]
【0030】
4.前記青色リン光発光性化合物が、下記一般式(1)で表されることを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の発光性膜。
【0031】
【化1】
【0032】
[前記一般式(1)において、Mは、Ir又はPtを表す。A1、A2、B1及びB2は、それぞれ独立に炭素原子又は窒素原子を表す。環Z1は、A1及びA2とともに形成される6員の芳香族炭化水素環又は5員若しくは6員の芳香族複素環、又はこれらの環のうちの少なくとも1つを含む芳香族縮合環を表す。環Z2は、B1及びB2とともに形成される5員若しくは6員の芳香族複素環、又はこれらの環のうちの少なくとも1つを含む芳香族縮合環を表す。前記環Z1及び環Z2が有する炭素原子は、カルベン炭素原子であってもよい。A1とMとの結合及びB1とMとの結合は、一方が配位結合であり、他方は共有結合を表す。環Z1及び環Z2は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい。環Z1及び環Z2の置換基が結合することによって、縮環構造を形成していてもよく、環Z1と環Z2とで表される配位子同士が連結していてもよい。Lは、Mに配位したモノアニオン性の二座配位子を表し、置換基を有していてもよい。mは、0〜2の整数を表す。nは、1〜3の整数を表す。MがIrの場合のm+nは3であり、MがPtの場合のm+nは2である。m又はnが2以上のとき、環Z1と環Z2とで表される配位子又はLはそれぞれ同じでも異なっていてもよく、環Z1と環Z2とで表される配位子とLとは連結していてもよい。]
【0033】
5.陽極と陰極との間に、発光層を備える有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記発光層が、第1項から第4項までのいずれか一項に記載の発光性膜を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0034】
6.第1項から第4項までのいずれか一項に記載の発光性膜が、当該発光性膜に隣接する層の材料を含有していることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0035】
7.JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された水蒸気透過度が0.001〜1g/(m・day)の範囲内で、かつJIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が0.001〜1mL/(m・day・atm)の範囲内のガスバリアー層を有することを特徴とする第5項又は第6項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0036】
8.陽極と陰極との間に、発光層と当該発光層に隣接する層とを備える有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記発光層が、ホスト化合物及び青色リン光発光性化合物を含有し、
前記発光層に隣接する層が、青色蛍光発光性化合物を含有し、
前記青色リン光発光性化合物の発光スペクトルと前記青色蛍光発光性化合物の吸収スペクトルとが、重なりを有しており、かつ、
前記青色リン光発光性化合物(式中において「BPM」と略記する。)と前記青色蛍光発光性化合物(式中において「BFM」と略記する。)の最短波長側の発光極大波長が、下記数式(1)を満たし、
前記青色蛍光発光性化合物に由来する発光が検出されることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
数式(1):λBFM≧λBPM
[前記数式(1)中、λBFMは前記青色蛍光発光性化合物の最短波長側の発光極大波長を表す。λBPMは前記青色リン光発光性化合物の最短波長側の発光極大波長を表す。]
【0037】
9.前記リン光発光性化合物及び前記青色蛍光発光性化合物が、下記数式(5)又は数式(6)の少なくとも一方を満たすことを特徴とする第5項から第8項までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
数式(5):HOMOBPM>HOMOBFM
数式(6):LUMOBPM<LUMOBFM
【0038】
[前記数式において、HOMOBPMは、青色リン光発光性化合物の最高被占軌道(HOMO)におけるエネルギー準位を表す。HOMOBFMは、青色蛍光発光性化合物のHOMOエネルギー準位を表す。
また、LUMOBPMは、前記青色リン光発光性化合物の最低空軌道(LUMO)におけるエネルギー準位を表す。LUMOBFMは、前記青色蛍光発光性化合物のLUMOエネルギー準位を表す。]
【0039】
10.JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された水蒸気透過度が0.001〜1g/(m・day)の範囲内で、かつJIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が0.001〜1mL/(m・day・atm)の範囲内のガスバリアー層を有することを特徴とする第8項又は第9項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0040】
11.ホスト化合物、青色リン光発光性化合物及び青色蛍光発光性化合物を含有する有機材料組成物であって、
前記青色リン光発光性化合物の発光スペクトルと前記青色蛍光発光性化合物の吸収スペクトルとが、重なりを有しており、かつ、
前記青色リン光発光性化合物(式中において「BPM」と略記する。)と前記青色蛍光発光性化合物(式中において「BFM」と略記する。)の最短波長側の発光極大波長とが、下記数式(1)を満たし、
前記青色蛍光発光性化合物に由来する発光が検出されることを特徴とする有機材料組成物。
数式(1):λBFM≧λBPM
[前記数式(1)中、λBFMは前記青色蛍光発光性化合物の最短波長側の発光極大波長を表す。λBPMは前記青色リン光発光性化合物の最短波長側の発光極大波長を表す。]
【0041】
12.第1項から第4項までのいずれか一項に記載の発光性膜を有する有機エレクトロルミネッセンス素子を製造する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【0042】
13.前記発光性膜が、ドライプロセスで製造されることを特徴とする第12項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【0043】
14.前記発光性膜が、ウェットプロセスで製造されることを特徴とする第12項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【0044】
15.JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された水蒸気透過度が0.001〜1g/(m・day)の範囲内で、かつJIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が0.001〜1mL/(m・day・atm)の範囲内のガスバリアー層を有することを特徴とする第12項から第14項のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【発明の効果】
【0045】
本発明の上記手段により、発光効率、色度及び素子寿命に優れた発光性膜等を提供することができる。
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように考えている。
【0046】
≪青色リン光発光性化合物による素子寿命の長寿命化の発現機構≫
前記のStern−Volmerの式によると、発光性膜における青色リン光発光性化合物の発光強度の減衰を抑えて素子寿命を長寿命化する手段としては、
(1)青色リン光発光性化合物の発光減衰寿命τを短くする
(2)光や電界駆動経時において生成する消光物質量([Q])を減らす
(3)生成した消光物質へのエネルギー移動速度(Kq)を抑制する
の三つが挙げられる。
【0047】
本発明者らは、前記手段の中で(1)の青色リン光発光性化合物の発光減衰寿命τの短期化に着目した。そして、本発明では、τを短くするとともに色度改善のために、青色リン光発光性化合物と、青色リン光発光性化合物からフェルスター型エネルギー移動が十分に可能な青色蛍光発光性化合物を用いることとした。
【0048】
<蛍光発光性化合物の利点と欠点>
図1は、特許文献1に開示された技術において、発光に寄与しないホスト化合物とリン光発光性化合物が存在する発光性膜に、リン光発光性化合物からエネルギー移動が可能な蛍光発光性化合物を添加した場合のエネルギー移動を示す模式図である。特許文献1に開示された技術においては、リン光発光性化合物から蛍光発光性化合物へと、フェルスター型エネルギー移動又はデクスター型エネルギー移動し、ひいては、蛍光発光又は無輻射失活する、というリン光発光性化合物の励起子失活経路が増大する。よって、前記蛍光発光性化合物を添加した発光性膜は、添加していない発光性膜と比較した際に、リン光発光性化合物自身の発光減衰寿命τを短期化できることが知られている。
【0049】
さらに、リン光発光性化合物よりも色度が優れる蛍光発光性化合物を用いた場合には、発光性膜の発光色の色度の改善と発光減衰寿命τを短くできる(例えば、特許文献2参照。)。
【0050】
しかしながら、本発明者らは、高色度の光を発光する蛍光発光性化合物の添加によるリン光発光性化合物の発光減衰(発光減衰寿命τ)を短くすることには次の様な欠点があることを見いだした。
【0051】
図2は、特許文献2に開示された技術におけるエネルギー移動を示す模式図である。
一般に、青色蛍光発光性化合物の三重項励起状態は赤色程度と低いエネルギー準位であるため、青色リン光発光性化合物の三重項励起状態のエネルギー準位よりも低エネルギー準位となり、無輻射失活が優位に起こると考えられる。
すなわち、図2に示すように、蛍光発光性化合物を添加した発光性膜は、リン光発光性化合物の発光減衰寿命τを短期化できる。その一方で、リン光発光性化合物のT1よりも低い蛍光発光性化合物のT1へのエネルギー移動(デクスター型エネルギー移動)が増加することで、蛍光発光性化合物を添加しない発光性膜で十分に得られていた発光特性が低下し、この結果、発光性膜から得られる発光量が減ってしまう。このようにリン光発光性化合物のT1準位から、添加した蛍光発光性化合物のT1準位へ励起子失活すると、生成した励起子を熱失活などの無輻射失活機構で失活させてしまい、発光輝度低下を引き起こし、結果として同輝度換算での発光性膜を使用する素子の素子寿命を短くする。
【0052】
なお、公知の蛍光発光性化合物の添加によって所望の素子寿命が得られないのは、前記の様な蛍光発光性化合物の添加が有する欠点に基づくものであると考える。
【0053】
<蛍光発光性化合物添加の欠点の究明と解決手段>
一般に、図1に示すように、青色リン光発光性化合物と青色蛍光発光性化合物を用いた場合には、青色リン光発光性化合物の三重項励起子は青色蛍光発光性の三重項励起状態へのデクスター型エネルギー移動によって無輻射失活で励起子が発光に寄与することなく失活する。
【0054】
そこで、本発明者らは、青色蛍光発光性化合物を添加した発光性膜を使用する素子の素子寿命を長くするため、まず、青色リン光発光性化合物の三重項励起状態から青色蛍光発光性化合物の一重項励起状態へのフェルスター型エネルギー移動を向上させることに着目した。この結果、青色リン光発光性化合物の発光スペクトルと青色蛍光発光性化合物の吸収スペクトルの重なり(重なり積分値)を大きくすることによって、青色リン光発光性化合物のT1から蛍光発光性化合物のS1へのフェルスター型エネルギー移動が十分大きくできることを見いだした。また、上記数式(1)を満たすことで、重なり積分値を十分大きくでき、この結果、励起子を効果的に発光に用いることができ、ひいては、素子寿命を長寿命化できることを見いだし本発明に至った。
なお、青色リン光発光性化合物の発光スペクトルと青色蛍光発光性化合物の吸収スペクトルの重なり及び数式(1)と本願発明の効果発現との関係の具体的検討・結果は実施例で詳述する。
【0055】
なお、この励起子を効果的に発光に用いるフェルスター型エネルギー移動の向上は、消光物質へのデクスター移動による失活(数式(A)中のKq)を抑制できる。したがって、駆動経時で消光物質が生成しても、熱失活が生じにくい有機EL素子を得ることができる。
加えて、青色リン光発光性化合物単体では成し遂げることのできなかった超高速な励起子排出により、高電流密度下で駆動させた場合にもロールオフが起きづらく、この結果、低電流密度下での駆動状況と近しい、つまりは加速係数の増大を抑えた(すなわち、加速係数nが1に近い)素子を提供できる。
消光物質による失活の抑制は、消光物質である水や酸素に対する耐性を向上させることになる。この結果、本願発明に係るガスバリアー層においては、従来採用されているような高いガスバリアー性(例えば、水蒸気透過度、酸素透過度。)を必要としない。従来は、例えば、フレキシブルな有機EL素子の信頼性を確保するには、フレキシブルな基板が、ガスバリアー性の高いガスバリアー層を有することが必要であり、コストを高くする一因となっていた。本発明に係る発光材料は水や酸素に対する耐性があるため、ガスバリアー性の高いガスバリアー層を必要とせず、この結果、ガスバリアー性の低いガスバリアー層を採用した場合であっても実用に耐えることができ、ひいては、コストを抑えることができる。
本発明に係るガスバリアー層の性能としては、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された水蒸気透過度(WVTR)が0.001〜1g/(m・day)で、かつJIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度(OTR)が0.001〜1mL/(m・day・atm)のガスバリアー性を有することが好ましく、従来のような高いガスバリアー性、例えばWVTRが1.0×10−5g/(m・day)以下のガスバリアー性を有していなくとも実用に耐えられる。本発明に係るガスバリアー層の性能は、さらに好ましくはWVTRが0.01〜1g/(m・day)の範囲内、OTRが0.01〜1mL/(m・day・atm)の範囲内である。本発明のガスバリアー層は、有機EL素子において、基材上に形成され若しくは封止部材として、又はその両方の態様で備えられていればよく、有機EL素子の形態により任意に設定できる。
【0056】
以下に、本発明の有機EL素子と従来の有機EL素子との違いについて、図3A及び図3Bを用いて更に説明する。
(1)低電流密度下駆動時
発光層内にできる励起子量は少ない。
そのため、リン光発光性化合物とホスト化合物を用いた従来技術であっても生成した励起子はTTAなど相互作用し無輻射失活することはすくない。
【0057】
(2)TTAなどによる発光性低減抑制
発光層内にできる励起子量は多い。
そのため、従来技術では励起子排出能がμ秒と低いため、TTAなどの相互作用により無輻射失活が発現する(図3A参照。)。
一方、本発明では、生成した励起子は速やかに基底状態へと輻射失活可能であるためTTAが起こりづらく発光性を維持することができる(図3B参照。)。そのため、低電流密度下駆動と近しい状態で発光可能であり、加速係数は1に近くなる。
【0058】
(3)再結合位置による発光性低減抑制
高電流密度下などでの駆動により、キャリアバランスが崩れHTL及びETLのいずれかの界面近くで発光してしまう場合、従来技術では(2)同様TTAなどの相互作用による無輻射失活過程を引き起こす(図3A参照。)。一方、本発明では、再結合位置は従来技術同様界面に寄ってしまった際にも、フェルスターエネルギー移動により蛍光発光性化合物へとエネルギー移動が可能であるため、従来技術よりも発光領域を広く使うことができ、励起子密度の緩和が可能となる(図3B参照。)。加えて、蛍光発光性化合物へとエネルギー移動することで励起子滞留時間を大幅に短寿命化できるため、さらに無輻射失活を引き起こしにくくなる。
【0059】
(4)素子駆動中の発光位置変動による発光性低減抑制
初期状態では理想の発光位置で再結合していた場合でも、素子駆動中に通電や駆動の熱により膜質が変動し、キャリアバランスが変わることで、上記(3)で述べたような発光性が低減することがある(図3A参照。)。本発明では、上記(3)で述べたように、駆動中に再結合位置が変動した際にも発光領域を広く使うことができるだけでなく、励起子の排出を速やかに行うことが可能であるために、駆動中の再結合位置の変動に起因して発光性が低減することの抑制にも大きく効果を発現する(図3B参照。)。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】特許文献1に開示された技術におけるエネルギー移動を示す模式図
図2】特許文献2に開示された技術におけるエネルギー移動を示す模式図
図3A】従来の有機EL素子の発光層内における発光を説明する概略図
図3B】本発明に係る有機EL素子の発光層内における発光を説明する概略図
図4】本発明に係る表示装置の構成の一例を示した概略斜視図
図5図4に示す表示部Aの模式図
図6】本発明に係る照明装置の概略図
図7】本発明に係る照明装置の断面図
図8A】実施例1の発光性膜について測定された発光強度及び吸光度を示すグラフ
図8B】実施例1の発光性膜について測定された発光強度及び吸光度を示すグラフ
図8C】実施例1の発光性膜について測定された発光強度及び吸光度を示すグラフ
図8D】実施例1の発光性膜について測定された発光強度及び吸光度を示すグラフ
図8E】実施例1の発光性膜について測定された発光強度及び吸光度を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0061】
本発明の発光性膜は、ホスト化合物、青色リン光発光性化合物及び青色蛍光発光性化合物を含む発光性膜であって、
前記青色リン光発光性化合物の発光スペクトルと前記青色蛍光発光性化合物の吸収スペクトルとが、重なりを有しており、かつ、
前記青色リン光発光性化合物(式中において「BPM」と略記する。)と前記青色蛍光発光性化合物(式中において「BFM」と略記する。)の最短波長側の発光極大波長が、上記数式(1)を満たし、
前記青色蛍光発光性化合物に由来する発光が検出されることを特徴とする。この特徴は各請求項に係る発明に共通又は対応する技術的特徴である。これにより、本発明は、発光効率、色度及び素子寿命に優れるという効果を得られる。
【0062】
本発明の実施態様としては、前記青色リン光発光性化合物と前記青色蛍光発光性化合物の発光色の色度が上記数式(2)を満たすことが好ましい。これにより、青色リン光発光性化合物では成しえなかった純度の高い青をより高効率で発現させることができる。
【0063】
本発明の実施態様としては、前記青色リン光発光性化合物から前記青色蛍光発光性化合物へのエネルギー移動の割合が、上記数式(3)を満たすことが好ましい。これにより、発光成膜の素子寿命の低下をより抑制しつつ青色蛍光発光性化合物をより増感することができる。
【0064】
本発明の実施態様としては、前記青色リン光発光性化合物が、上記一般式(1)で表されることが好ましい。これにより、より励起子の安定性な青色リン光発光性化合物を作製できるだけでなく、青色リン光発光性化合物の発光スペクトルと青色蛍光発光性化合物の吸収スペクトルとの重なり積分値を大きくでき、この結果、励起子をより効果的に発光に用いることができ、ひいては、素子寿命を長寿命化できる発光性膜が得られる。
【0065】
本発明の実施態様としては、陽極と陰極との間に、発光層を備える有機エレクトロルミネッセンス素子であって、本発明の発光性膜を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であってもよい。これにより、青色リン光発光性化合物で成しえなかった色度のよい、より高い発光効率の有機エレクトロルミネッセンス素子を提供できる。
【0066】
本発明の実施態様としては、本発明の発光性膜が、当該発光性膜に隣接する層の材料を含有している有機エレクトロルミネッセンス素子であってもよい。従来の蛍光を用いた素子では、TTAを発現するために発光位置を隣接層側に偏らせ励起子密度を向上させていたため、隣接層が混合することで励起子密度の低下、ひいては隣接層が消光材として働き大幅な素子寿命の低下を引き起こしていた。本発明の発光性膜は励起子密度を偏らせること及び高密度化せる必要は全くなく、ひいては青色リン光発光性化合物から青色蛍光発光性化合物へのフェルスター型エネルギー移動によって移動した励起子は即座に発光として輻射失活するために外部の影響を受けにくい。つまり、外部環境に影響されにくい有機エレクトロルミネッセンス素子を安定して提供できる。
【0067】
本発明の実施態様としては、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された水蒸気透過度が0.001〜1g/(m・day)の範囲内で、かつJIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が0.001〜1mL/(m・day・atm)までの範囲内のガスバリアー層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であることができる。
このように、本発明によれば、このようなガスバリアー性のあまり高くないガスバリアー層を有する場合でも実用に耐えることができるため、コストを抑えることができる。
【0068】
本発明の実施態様としては、陽極と陰極との間に、発光層と当該発光層に隣接する層とを備える有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記発光層が、ホスト化合物及び青色リン光発光性化合物を含有し、前記発光層に隣接する層が、青色蛍光発光性化合物を含有し、前記青色リン光発光性化合物の発光スペクトルと前記青色蛍光発光性化合物の吸収スペクトルとが、重なりを有しており、かつ、前記青色リン光発光性化合物と前記青色蛍光発光性化合物の最短波長側の発光極大波長が、上記数式(1)を満たし、前記青色蛍光発光性化合物に由来する発光が検出される有機エレクトロルミネッセンス素子であってもよい。これにより、青色蛍光発光性化合物と青色リン光発光性化合物との距離を離すことができ、この結果、デクスター型エネルギー移動を抑制することができ、ひいては、素子寿命の低下を抑制できる。
【0069】
本発明の実施態様としては前記リン光発光性化合物及び前記青色蛍光発光性化合物が、上記数式(5)及び数式(6)のいずれかを満たす有機エレクトロルミネッセンス素子であってもよい。これにより、青色蛍光発光性化合物上で直接電荷が再結合せず、EQEの低下が抑制された有機エレクトロルミネッセンス素子を提供できる。
【0070】
本発明の実施態様としては、ホスト化合物、青色リン光発光性化合物及び青色蛍光発光性化合物を含有する有機材料組成物であって、
前記青色リン光発光性化合物の発光スペクトルと前記青色蛍光発光性化合物の吸収スペクトルとが、重なりを有しており、かつ、
前記青色リン光発光性化合物(式中において「BPM」と略記する。)と前記青色蛍光発光性化合物(式中において「BFM」と略記する。)の最短波長側の発光極大波長とが、上記数式(1)を満たし、前記青色蛍光発光性化合物に由来する発光が検出されることを特徴とする有機材料組成物であってもよい。これにより、例えば、ウェットプロセスなど様々な作製プロセスに対応できる。
【0071】
本発明の実施態様としては、本発明の発光性膜を有する有機エレクトロルミネッセンス素子を製造する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、前記発光性膜が、ウェットプロセス又はドライプロセスを用いて製膜されることが好ましい。特にウェットプロセスを用いて製膜されることにより、素子の形状や大きさに課せられる制約を低減できるだけでなく、より安価な作製プロセスで有機エレクトロルミネッセンス素子を作製することができる。
また、上記有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法では、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された水蒸気透過度が0.001〜1g/(m・day)の範囲内で、かつJIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が0.001〜1mL/(m・day・atm)の範囲内のガスバリアー層を有することができる。
【0072】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0073】
なお、本発明において、青色とは、下記溶液スペクトルにおいて得られるy値が、0.45以下である場合を青色とする。
【0074】
(溶液スペクトル測定)
溶液スペクトルは、2−メチルテトラヒドロフラン(2m−THF)に溶解させた試料を分光光度計により測定することで求めることができる。
具体的には、2m−THFによって1×10−5mol/Lの濃度に調製された試料を用いて、分光光度計U−3000(日立ハイテクノロジーズ(株)製)により測定すればよい。
【0075】
≪発光性膜の概要≫
本発明の発光性膜は、ホスト化合物、青色リン光発光性化合物及び青色蛍光発光性化合物を含む発光性膜であって、
前記青色リン光発光性化合物の発光スペクトルと前記青色蛍光発光性化合物の吸収スペクトルとが、重なりを有しており、かつ、
前記青色リン光発光性化合物(式中において「BPM」と略記する。)と前記青色蛍光発光性化合物(式中において「BFM」と略記する。)の最短波長側の発光極大波長が、下記数式(1)を満たし、
前記青色蛍光発光性化合物に由来する発光が検出されることを特徴とする。
数式(1):λBFM≧λBPM
[前記数式(1)中、λBFMは前記青色蛍光発光性化合物の最短波長側の発光極大波長を表す。λBPMは前記青色リン光発光性化合物の最短波長側の発光極大波長を表す。]
【0076】
≪発光性膜≫
本発明の発光性膜は、ホスト化合物と青色リン光発光性化合物と青色蛍光発光性化合物とを含有する。
本発明の発光性膜における青色リン光発光性化合物やホスト化合物や青色蛍光発光性化合物の含有量は、適用する製品に要求される条件に基づいて、任意に決定することができるとともに、膜厚方向に対して均一な濃度で含有されていてもよく、また任意の濃度分布を有していてもよい。
ただし、本発明に係る発光性膜における青色リン光発光性化合物の含有量は、発光現象を好適に発現させるべく、発光性膜の質量を100質量%とした場合、1〜50質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましい。また、本発明に係る発光性膜におけるホスト化合物の含有量は、発光性膜の質量を100質量%とした場合、50〜99質量%が好ましく、70〜99質量%がより好ましい。また、本発明に係る発光性膜における青色蛍光発光性化合物の含有量は、青色リン光発光性化合物からの増感現象を好適に発現させると同時に電界駆動時に蛍光発光性化合物上での直接再結合を抑制させる点から、青色リン光発光性化合物と同等以下の質量%が好ましく、0.1〜5.0質量%がより好ましい。
【0077】
本発明の様態として、青色リン光発光性化合物の三重項励起状態から青色蛍光発光性化合物の一重項励起状態へのフェルスター型エネルギー移動による青色蛍光発光性化合物の一重項励起状態の増感に焦点を当てる。ここで我々は、青色リン光発光性化合物がホスト化合物からの励起子を全てそれらの三重項励起状態へ転化し、次にその三重項励起状態を青色蛍光発光性化合物へ移行させる技術を記述する。下式はホスト化合物、青色リン光発光性化合物、青色蛍光発光性化合物を含む発光性膜であって、ホスト化合物を主に光励起した際の励起子移行の記述である。
【0078】
数式(C)
X→D+

A→X+
A+hν
【0079】
数式(C)中Dはホスト化合物を示し、Xは項間交差剤(青色リン光発光性化合物)、Aはエネルギー受容体(青色蛍光発光性化合物)を表す。上付き文字1は一重項スピン多重度を示し、上付き文字3は三重項スピン多重度を示し、は励起状態を示す。
【0080】
上式機構を理解するため、根底にあるエネルギー移動の機構的理論を論ずる。
【0081】
≪デクスター型エネルギー移動とフェルスター型エネルギー移動≫
<デクスター型エネルギー移動>
デクスター型エネルギー移動は隣り合った分子の分子軌道の重複に依存する短期的な過程である。また、エネルギー供与体とエネルギー受容体の対の対称性も保持する。したがって、数式(C)のエネルギー移動はデクスター機構によっては不可能である。
【0082】
<フェルスター型エネルギー移動>
フェルスター型エネルギー移動の機構では、数式(C)のエネルギー移動は可能である、フェルスター型エネルギー移動では、送信機及びアンテナと同様に、エネルギー供与体及びエネルギー受容体の両方の分子中で許容された遷移によって生ずる。このことは典型的にはフェルスター型エネルギー移動は一重項状態の間の移動に限定させることになる。
【0083】
しかし、本発明の様態では、エネルギー供与体の移動:
が許容されるリン光発光性化合物を考える。しかし、励起三重項状態と基底一重項状態の対称性の相違により、この移動確率は低い。
【0084】
それにもかかわらず、重金属原子によって導入されるスピン軌道相互作用によるなどして、状態の多少の摂動によりリン光体がリン光発光することができる限り、それはフェルスター型エネルギー移動でのエネルギー供与体としての役割も果たすことができる。
【0085】
加えて、フェルスター型エネルギー移動を効率的に発現させる主な因子は、エネルギー供与体(リン光発光性化合物)の発光スペクトルと、エネルギー受容体(蛍光発光性化合物)の吸収スペクトルの重なりが存在することである。
このため、本発明においては、青色リン光発光性化合物の発光スペクトルと青色蛍光発光性化合物の吸収スペクトルとが、重なりを有することが必須である。
実施例において、重なり積分の重要性に関して詳細に記述する。
【0086】
以下、本発明では、フェルスター型エネルギー移動効率とは青色リン光発光性化合物の三重項励起状態から青色蛍光発光性化合物の一重項励起状態へのエネルギー移動効率を指し、デクスター型エネルギー移動効率とは、青色リン光発光性化合物の三重項励起状態から青色蛍光発光性化合物の三重項励起状態へのエネルギー移動効率を指す。また、本発明ではフェルスター型エネルギー移動効率とデクスター型エネルギー移動効率の比率(以下、単に「PF/PD」とも記載。)で発光特性との考察を実施する。
【0087】
また、各エネルギー移動効率は蛍光発光性化合物の添加前後の発光性膜の絶対量子収率(以下、単に「PLQE」とも記載。)と発光減衰寿命τ(以下、単に「τ」とも記載。)からでき、例えば、PLQE測定は、絶対量子収率測定装置C9920−02(浜松ホトニクス社製)、発光減衰寿命τは、蛍光寿命測定装置(例えば、ストリークカメラC4334や小型蛍光寿命測定装置C11367−03(いずれも浜松ホトニクス社製)など)を用いることで計測可能である。
【0088】
各エネルギー移動効率の算出法は、下記数式(D)のとおりである。
【0089】
【数2】
【0090】
上記数式(D)中のτ0は青色蛍光発光性化合物が添加されていない発光性膜(以下、「青色蛍光発光性化合物を添加する前の発光性膜」ともいう。)の発光減衰寿命τは青色蛍光発光性化合物添加をした後の発光減衰寿命を表す。PLQE0は青色蛍光発光性化合物を添加する前の発光性膜における絶対量子収率であり、PLQEは青色蛍光発光性化合物が添加された発光性膜(以下、「青色蛍光発光性化合物を添加した後の発光性膜」ともいう。)における絶対量子収率である。また、Krは青色リン光発光性化合物の輻射速度、Knrはリン光発光性化合物の無輻射速度、Kfは青色リン光発光性化合物の三重項励起状態から蛍光発光性化合物S1励起状態へのフェルスターエネルギー移動速度、Kdはリン光発光性化合物の三重項励起状態から蛍光発光性化合物T1励起状態へのデクスターエネルギー移動速度である。そして、PDは、青色リン光発光性化合物の三重項励起状態から青色蛍光発光性化合物の三重項励起状態へのデクスター型エネルギー移動効率を示す。PFは、青色リン光発光性化合物の三重項励起状態から青色蛍光発光性化合物の一重項励起状態へのフェルスター型エネルギー移動効率を示している。
【0091】
一般に、青色蛍光発光性化合物を発光材料に用いると、電荷再結合の際に一重項励起子が25%、三重項励起子が75%生成される。つまり、本発明中でのデクスター型エネルギー移動効率に対するフェルスター型エネルギー移動効率(PF/PD)は、下記数式(3)を満たすことが、青色蛍光発光性化合物の一重項励起状態を増感する点から、好ましい。
【0092】
数式(3):PF/PD≧0.34
なお、より好ましくは、上限は特に限定されないものの、素子寿命を長寿命化できる点で数式(3A)を満たすことが好ましい。
数式(3A):PF/PD≧0.5
【0093】
≪重なり積分≫
上述のように、フェルスター型エネルギー移動を効率的に発現させる主な因子として、青色リン光発光性化合物の発光スペクトルと青色蛍光発光性化合物の吸収スペクトルの重なりがある。前記各スペクトルの重なりの大きさは重なり積分値と呼ばれ、下記数式(OI)で算出されることが知られている。
【0094】
【数3】
【0095】
上数式(OI)中のfDは規格化されたドナー(エネルギー供与体、青色リン光発光性化合物)発光スペクトル、εはアクセプター(エネルギー受容体、青色蛍光発光性化合物)のモル吸光係数を示す。λは波長を示す。なお、Jは、重なり積分値を表す。
【0096】
≪発光極大波長の関係(数式(1))≫
青色リン光発光性化合物(式中において「BPM」と略記する。)と青色蛍光発光性化合物(式中において「BFM」と略記する。)の最短波長側の発光極大波長が、下記数式(1)を満たす。
【0097】
数式(1):λBFM≧λBPM
[前記数式(1)中、λBFMは前記青色蛍光発光性化合物の最短波長側の発光極大波長を表す。λBPMは前記青色リン光発光性化合物の最短波長側の発光極大波長を表す。]
【0098】
なお、本発明に係る最短波長側の発光極大波長とは、発光スペクトルにおいて、発光強度(発光ピーク強度)が極大となるときの波長のうち、最短波長側にあるものをいう。
【0099】
(発光スペクトルの測定)
発光スペクトルの測定は公知の方法で行うことができる。例えば、蛍光光度計(HITACHI F−7000形分光蛍光光度計)を用いて行うことができる。
【0100】
(吸収スペクトルの測定)
吸収スペクトルの測定は公知の方法で行うことができる。例えば、蛍光光度計(HITACHI U−3300分光光度計)を用いて行うことができる。
【0101】
≪色度の関係≫
前記青色リン光発光性化合物と前記青色蛍光発光性化合物の発光色のCIE色度座標のy値が下記数式(2)を満たすことが好ましい。
数式(2):yBPM≧yBFM
[前記数式(2)中、yBPMは、前記青色リン光発光性化合物の発光色のCIE色度座標のy値を表す。yBFMは、前記青色蛍光発光性化合物の発光色のCIE色度座標のy値を表す。]
【0102】
(色度の測定方法)
本発明の有機EL素子や本発明の発光性膜の発光する色は、「新編色彩科学ハンドブック」(日本色彩学会編、東京大学出版会、1985)の108頁の図4.16において、分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタ(株)製)で測定した結果をCIE色度座標に当てはめたときの色で決定され、上記y値は、このCIE色度座標のy値である。
なお、各化合物の発光色の色度の検出方法は、特に限定されず、例えば、HPLC(High Performance Liquid Chromatography)などで化合物を分離精製した上で、発光色を上記分光放射輝度計などで測定すればよい。
【0103】
≪青色リン光発光性化合物及び青色蛍光発光性化合物の含有量の関係(数式(4))≫
青色リン光発光性化合物の含有量(質量%)と青色蛍光発光性化合物の含有量(質量%)とが、下記数式(4)を満たす態様であってもよい。これにより、青色リン光発光性化合物を介して青色蛍光発光性化合物をより効率よく増感することができる。
数式(4):前記青色リン光発光性化合物の含有量(質量%)≧前記青色蛍光発光性化合物の含有量(質量%)
【0104】
≪青色蛍光発光性化合物≫
本発明に係る青色蛍光発光性化合物について説明する。
【0105】
本発明に係る青色蛍光発光性化合物は、一重項励起からの発光が可能な化合物であり、一重項励起からの発光が観測される限り特に限定されない。
【0106】
本発明に係る青色蛍光発光性化合物としては、例えば、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、クリセン誘導体、フルオランテン誘導体、フルオレン誘導体、アリールアセチレン誘導体、スチリルアリーレン誘導体、スチリルアミン誘導体、アリールアミン誘導体、ホウ素錯体、クマリン誘導体、ピラン誘導体、シアニン誘導体、クロコニウム誘導体、スクアリウム誘導体、オキソベンツアントラセン誘導体、フルオレセイン誘導体、ローダミン誘導体、ピリリウム誘導体、ペリレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、又は希土類錯体系化合物等が挙げられるが、青色発光を得られる限り特に限定されない。
中でも、青色リン光発光性化合物の発光スペクトルと青色蛍光発光性化合物の吸収スペクトルの重なり積分値をより大きくする点で、ストークスシフトの小さい青色蛍光発光性化合物を用いることがより好ましい。
【0107】
さらに好ましくは、ストークスシフトが0.1eV以下の化合物である。このようにすることで、リン光発光性化合物の発光スペクトルと蛍光発光性化合物の吸収スペクトルの重なり積分を大きくできることに加え、フェルスター型エネルギー移動により蛍光発光性化合物が発光する際に蛍光分子の構造緩和も小さくすることができるため、これまでの根本の問題であった膜質の変動をも抑制することができる。このため、更なる素子寿命の長寿命化が期待できる。
【0108】
また、近年では遅延蛍光を利用した発光ドーパントも開発されており、これらを用いてもよい。
【0109】
遅延蛍光を利用した青色蛍光発光性化合物の具体例としては、例えば、国際公開第2011/156793号、特開2011−213643号公報、特開2010−93181号公報等に記載の化合物が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
【0110】
また、以下に例示する化合物も好適に使用できる。
【0111】
【化2】
【0112】
【化3】
【0113】
【化4】
【0114】
【化5】
【0115】
【化6】
【0116】
【化7】
【0117】
【化8】
【0118】
【化9】
【0119】
【化10】
【0120】
【化11】
【0121】
【化12】
【0122】
【化13】
【0123】
【化14】
【0124】
【化15】
【0125】
【化16】
【0126】
【化17】
【0127】
【化18】
【0128】
【化19】
【0129】
【化20】
【0130】
≪青色リン光発光性化合物≫
本発明に係る青色リン光発光性化合物は、重原子を含有し、三重項励起からの発光が可能な化合物であり、三重項励起からの発光が観測される限り特に限定されない。好ましくは、下記一般式(1)で表される青色リン光発光性化合物である。これにより、より励起子の安定性な青色リン光発光性化合物を作製できるだけでなく、青色リン光発光性化合物の発光スペクトルと青色蛍光発光性化合物の吸収スペクトルとの重なり積分値を大きくでき、この結果、励起子をより効果的に発光に用いることができ、ひいては、素子寿命をより長寿命化できる発光性膜が得られる。
【0131】
【化21】
【0132】
前記一般式(1)において、Mは、Ir又はPtを表す。A1、A2、B1及びB2は、それぞれ独立に炭素原子又は窒素原子を表す。環Z1は、A1及びA2とともに形成される6員の芳香族炭化水素環又は5員若しくは6員の芳香族複素環、又はこれらの環のうちの少なくとも1つを含む芳香族縮合環を表す。環Z2は、B1及びB2とともに形成される5員若しくは6員の芳香族複素環、又はこれらの環のうちの少なくとも1つを含む芳香族縮合環を表す。前記環Z1及び環Z2が有する炭素原子は、カルベン炭素原子であってもよい。A1とMとの結合及びB1とMとの結合は、一方が配位結合であり、他方は共有結合を表す。環Z1及び環Z2は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい。環Z1及び環Z2の置換基が結合することによって、縮環構造を形成していてもよく、環Z1と環Z2とで表される配位子同士が連結していてもよい。Lは、Mに配位したモノアニオン性の二座配位子を表し、置換基を有していてもよい。mは、0〜2の整数を表す。nは、1〜3の整数を表す。MがIrの場合のm+nは3であり、MがPtの場合のm+nは2である。m又はnが2以上のとき、環Z1と環Z2とで表される配位子又はLはそれぞれ同じでも異なっていてもよく、環Z1と環Z2とで表される配位子とLとは連結していてもよい。
【0133】
なお、環Z2は好ましくは5員の芳香族複素環であり、B1及びB2は少なくとも一方が窒素原子であることが好ましい。一般式(1)は、好ましくは下記一般式(DP−1で表される。
【0134】
【化22】
【0135】
上記一般式(DP−1)において、M、A1、A2、B1、B2、環Z1、L、m及びnは、一般式(1)におけるM、A1、A2、B1、B2、環Z1、L、m及びnと同義である。
【0136】
3〜B5は芳香族複素環を形成する原子群であり、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素原子、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を表す。B3〜B5が有する置換基としては、前述の一般式(1)における環Z1及び環Z2が有する置換基と同義の基が挙げられる。
【0137】
一般式(DP−1)においてB1〜B5で形成される芳香族複素環は、下記一般式(DP−1a)、(DP−1b)及び(DP−1c)のいずれかで表されることが好ましい。
【0138】
【化23】
【0139】
一般式(DP−1a)、(DP−1b)及び(DP−1c)において、*1は一般式(DP−1)のA2との結合部位を表し、*2はMとの結合部位を表す。
Rb3〜Rb5は水素原子又は置換基を表し、Rb3〜Rb5で表される置換基としては、前述の一般式(1)における環Z1及び環Z2が有する置換基と同義の基が挙げられる。
一般式(DP−1a)におけるB4及びB5は、炭素原子又は窒素原子であり、より好ましくは少なくとも一つが炭素原子である。
一般式(DP−1b)におけるB3〜B5は、炭素原子又は窒素原子であり、より好ましくは少なくとも一つは炭素原子である。
一般式(DP−1c)におけるB3及びB4は、炭素原子又は窒素原子であり、より好ましくは少なくとも一つは炭素原子であり、Rb3とRb4で表される置換基がさらに互いに結合して縮環構造を形成していることがより好ましく、このとき新たに形成される縮環構造は芳香族環であることが好ましく、ベンゾイミダゾール環、イミダゾピリジン環、イミダゾピラジン環又はプリン環のいずれかであることが好ましい。Rb5はアルキル基、アリール基であることが好ましく、フェニル基であることがより好ましい。
【0140】
以下に一般式(1)の具体的な化合物例を示すが、本願で使用可能なものは、これらに限定されない。
【0141】
【化24】
【0142】
また、その他本発明において使用できる青色リン光発光性化合物としては、有機EL素子の発光層に使用される公知のものの中から適宜選択して用いることができる。
【0143】
本発明に使用できる公知の青色リン光発光性化合物の具体例としては、以下の文献に記載されている化合物等が挙げられるがこれに限るものではない。
Nature 395,151(1998)、Appl.Phys.Lett.78,1622(2001)、Adv.Mater.19,739(2007)、Chem.Mater. 17,3532(2005)、Adv.Mater.17,1059(2005)、国際公開第2009/100991号、国際公開第2008/101842号、国際公開第2003/040257号、米国特許公開第2006/835469号明細書、米国特許公開第2006/0202194号明細書、米国特許公開第2007/0087321号明細書、米国特許公開第2005/0244673号明細書、Inorg.Chem.40,1704(2001)、Chem.Mater.16,2480(2004)、Adv.Mater.16,2003(2004)、Angew.Chem.lnt.Ed.2006,45,7800、Appl.Phys.Lett.86,153505(2005)、Chem.Lett.34,592(2005)、Chem.Commun.2906(2005)、Inorg.Chem.42,1248(2003)、国際公開第2009/050290号、国際公開第2002/015645号、国際公開第2009/000673号、米国特許公開第2002/0034656号明細書、米国特許第7332232号明細書、米国特許公開第2009/0108737号明細書、米国特許公開第2009/0039776号、米国特許第6921915号明細書、米国特許第6687266号明細書、米国特許公開第2007/0190359号明細書、米国特許公開第2006/0008670号明細書、米国特許公開第2009/0165846号明細書、米国特許公開第2008/0015355号明細書、米国特許第7250226号明細書、米国特許第7396598号明細書、米国特許公開第2006/0263635号明細書、米国特許公開第2003/0138657号明細書、米国特許公開第2003/0152802号明細書、米国特許第7090928号明細書、Angew.Chem.lnt.Ed.47,1(2008)、Chem.Mater.18,5119(2006)、Inorg.Chem.46,4308(2007)、Organometallics 23,3745(2004)、Appl.Phys.Lett.74,1361(1999)、国際公開第2002/002714号、国際公開第2006/009024号、国際公開第2006/056418号、国際公開第2005/019373号、国際公開第2005/123873号、国際公開第2005/123873号、国際公開第2007/004380号、国際公開第2006/082742号、米国特許公開第2006/0251923号明細書、米国特許公開第2005/0260441号明細書、米国特許第7393599号明細書、米国特許第7534505号明細書、米国特許第7445855号明細書、米国特許公開第2007/0190359号明細書、米国特許公開第2008/0297033号明細書、米国特許第7338722号明細書、米国特許公開第2002/0134984号明細書、米国特許第7279704号明細書、米国特許公開第2006/098120号明細書、米国特許公開第2006/103874号明細書、国際公開第2005/076380号、国際公開第2010/032663号、国際公開第2008/140115号、国際公開第2007/052431号、国際公開第2011/134013号、国際公開第2011/157339号、国際公開第2010/086089号、国際公開第2009/113646号、国際公開第2012/020327号、国際公開第2011/051404号、国際公開第2011/004639号、国際公開第2011/073149号、米国特許公開第2012/228583号明細書、米国特許公開第2012/212126号明細書、特開2012−069737号公報、特開2012−195554号公報、特開2009−114086号公報、特開2003−81988号公報、特開2002−302671号公報、特開2002−363552号公報等である。
また、環Z1及び環Z2が有する炭素原子がカルベン炭素原子である場合(具体的には、カルベン錯体である場合。)、例えば、国際公開2005/019373号公報、国際公開2006/056418号公報、国際公開2005/113704号公報、国際公開2007/115970号公報、国際公開2007/115981号公報及び国際公開2008/000727号公報に記載されるカルベン錯体を好適に使用できる。
【0144】
具体的には、下記化合物を使用できるが、これらに限定されない。
【0145】
【化25】
【0146】
【化26】
【0147】
【化27】
【0148】
【化28】
【0149】
≪本発明に係るホスト化合物≫
本発明の発光性膜は、青色蛍光発光性化合物、青色リン光発光性化合物以外にホスト化合物も含む。以下に、本発明に係るホスト化合物について述べる。
本発明に係るホスト化合物は、発光層において主に電荷の注入及び輸送を担う化合物であり、有機EL素子においてそれ自体の発光は実質的に観測されない。
【0150】
ホスト化合物は、好ましくは室温(25℃)においてリン光発光のリン光量子収率が、0.1未満の化合物であり、更に好ましくはリン光量子収率が0.01未満の化合物である。また、ホスト化合物の励起状態エネルギーは、同一層内に含有されるリン光発光性化合物の励起状態エネルギーよりも高いことが好ましい。
【0151】
ホスト化合物としては、公知のホスト化合物を単独で用いてもよく、又は複数併用してもよい。ホスト化合物を複数種用いることで、電荷の移動を調整することが可能であり、有機EL素子を高効率化することができる。
本発明に係るホスト化合物としては、特に制限はなく、従来有機EL素子で用いられる化合物を用いることができる。低分子化合物でも繰り返し単位を有する高分子化合物でもよく、また、ビニル基やエポキシ基のような反応性基を有する化合物でもよい。
公知のホスト化合物としては、正孔輸送能又は電子輸送能を有しつつ、且つ、発光の長波長化を防ぎ、さらに、有機EL素子を高温駆動時や素子駆動中の発熱に対して安定して動作させる観点から、高いガラス転移温度(Tg)を有することが好ましい。好ましくはTgが90℃以上であり、より好ましくは120℃以上である。
ここで、ガラス転移点(Tg)とは、DSC(Differential Scanning Calorimetry:示差走査熱量法)を用いて、JIS−K−7121に準拠した方法により求められる値である。
【0152】
本発明に係るホスト化合物は、好ましくは下記一般式(HA)又は(HB)で表される構造を有する化合物である。
【0153】
【化29】
【0154】
【化30】
【0155】
一般式(HA)及び(HB)中、Xaは、O又はSを表す。Xb、Xc、Xd及びXeは、それぞれ独立に、水素原子、置換基又は下記一般式(HC)で表される構造を有する基を表すが、Xb、Xc、Xd及びXeのうち少なくとも一つは下記一般式(HC)で表される構造を有する基を表し、下記一般式(HC)で表される構造を有する基のうち少なくとも一つはArがカルバゾリル基を表す。
【0156】
一般式(HC)
Ar−(L′)−*
【0157】
一般式(HC)中、L′は、芳香族炭化水素環又は芳香族複素環から導出される2価の連結基を表す。nは0〜3の整数を表し、nが2以上の場合、複数のL′は同じでもあっても異なっていてもよい。*は、一般式(HA)又は(HB)との結合部位を表す。Arは、下記一般式(HD)で表される構造を有する基を表す。
【0158】
【化31】
【0159】
一般式(HD)中、Xfは、N(R′)、O又はSを表す。E〜EはC(R″)又はNを表し、R′及びR″は水素原子、置換基又は一般式(HC)におけるL′との結合部位を表す。*は、一般式(HC)におけるL′との結合部位を表す。
【0160】
上記一般式(HA)で表される構造を有する化合物においては、好ましくは、Xb、Xc、Xd及びXeのうち少なくとも二つが一般式(HC)で表され、より好ましくはXcが一般式(HC)で表され、かつ、当該一般式(HC)におけるArが置換基を有していてもよいカルバゾリル基を表す。
【0161】
一般式(HA)及び(HB)におけるXb、Xc、Xd及びXeで表される置換基、並びに一般式(HD)におけるR′及びR″で表される置換基としては、上記一般式(DP)における環Z1及び環Z2が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0162】
一般式(HC)におけるL′で表される芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、p−クロロベンゼン環、メシチレン環、トルエン環、キシレン環、ナフタレン環、アントラセン環、アズレン環、アセナフテン環、フルオレン環、フェナントレン環、インデン環、ピレン環、ビフェニル環等が挙げられる。
一般式(HC)におけるL′で表される芳香族複素環としては、例えば、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、キナゾリン環、カルバゾール環、カルボリン環、ジアザカルバゾール環(カルボリン環を構成する任意の炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったものを示す。)、フタラジン環等が挙げられる。
【0163】
以下に、本発明に係るホスト化合物の具体例として、上記一般式(HA)又は(HB)で表される構造を有する化合物の他、本発明に適用可能な化合物を挙げるが、本発明はこれらに特に限定されない。
【0164】
【化32】
【0165】
【化33】
【0166】
【化34】
【0167】
【化35】
【0168】
【化36】
【0169】
【化37】
【0170】
【化38】
【0171】
【化39】
【0172】
【化40】
【0173】
【化41】
【0174】
【化42】
【0175】
【化43】
【0176】
【化44】
【0177】
また、上記化合物のほか、本発明に係るホスト化合物の具体例としては、以下の文献に記載の化合物等を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されない。
【0178】
特開2001−257076号公報、同2002−308855号公報、同2001−313179号公報、同2002−319491号公報、同2001−357977号公報、同2002−334786号公報、同2002−8860号公報、同2002−334787号公報、同2002−15871号公報、同2002−334788号公報、同2002−43056号公報、同2002−334789号公報、同2002−75645号公報、同2002−338579号公報、同2002−105445号公報、同2002−343568号公報、同2002−141173号公報、同2002−352957号公報、同2002−203683号公報、同2002−363227号公報、同2002−231453号公報、同2003−3165号公報、同2002−234888号公報、同2003−27048号公報、同2002−255934号公報、同2002−260861号公報、同2002−280183号公報、同2002−299060号公報、同2002−302516号公報、同2002−305083号公報、同2002−305084号公報、同2002−308837号公報、米国特許出願公開第2003/0175553号明細書、米国特許出願公開第2006/0280965号明細書、米国特許出願公開第2005/0112407号明細書、米国特許出願公開第2009/0017330号明細書、米国特許出願公開第2009/0030202号明細書、米国特許出願公開第2005/0238919号明細書、国際公開第2001/039234号、国際公開第2009/021126号、国際公開第2008/056746号、国際公開第2004/093207号、国際公開第2005/089025号、国際公開第2007/063796号、国際公開第2007/063754号、国際公開第2004/107822号、国際公開第2005/030900号、国際公開第2006/114966号、国際公開第2009/086028号、国際公開第2009/003898号、国際公開第2012/023947号、特開2008−074939号公報、特開2007−254297号公報、欧州特許第2034538号明細書等である。さらには、特開2015−38941号公報の段落[0255]〜[0293]に記載の化合物H−1〜H−230も好適に使用できる。
【0179】
なお、本発明に用いられるホスト化合物は、発光層に隣接する隣接層に用いてもよい。
【0180】
以上、本発明の発光性膜に含有される「青色蛍光発光性化合物」、「青色リン光発光性化合物」と「ホスト化合物」と分けて説明したが、いずれの「青色リン光発光性化合物」と「ホスト化合物」の組み合わせであってもよい。
また、前記した複数の「青色リン光発光性化合物」を併用してもよいとともに、前記した複数の「ホスト化合物」を併用してもよい。そして、本発明に係る発光性膜は、様々な製品に適用可能であり、例えば、後記の有機エレクトロルミネッセンス素子、有機発光性膜太陽電池等に適用することができる。なお、本発明に係る発光性膜は、前記した「青色リン光発光性化合物」と「ホスト化合物」以外にも、各製品に適用する際に通常使用されている公知物質をさらに含有していてもよい。
【0181】
≪有機エレクトロルミネッセンス素子≫
本発明の発光性膜は、陽極と陰極との間に、発光層を備える有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層に好適に採用できる。
【0182】
≪エネルギー準位の関係(数式(5)、(6))≫
前記青色リン光発光性化合物と前記青色蛍光発光性化合物の最高被占軌道(HOMO)と最低空軌道(LUMO)とにおけるエネルギー準位の差が、
数式(5):HOMOBPM>HOMOBFM
数式(6):LUMOBPM<LUMOBFM
のいずれかを満たすことが望ましい。
[前記数式において、HOMOBPMは、青色リン光発光性化合物の最高被占軌道(HOMO)におけるエネルギー準位を表す。HOMOBFMは、青色蛍光発光性化合物のHOMOエネルギー準位を表す。
また、LUMOBPMは、前記青色リン光発光性化合物の最低空軌道(LUMO)におけるエネルギー準位を表す。LUMOBFMは、前記青色蛍光発光性化合物のLUMOエネルギー準位を表す。]
【0183】
(HOMOエネルギー準位及びLUMOエネルギー準位の計算方法)
本発明における青色蛍光発光性化合物又は青色リン光発光性化合物の分子軌道計算による構造最適化及び電子密度分布の算出は、計算手法として、ホスト材料、蛍光発光性化合物は汎関数としてB3LYP、基底関数として6−31G(d)を用い、リン光発光性材料には汎関数としてB3LYPを、基底関数としてLanL2DZを用いた分子軌道計算用ソフトウェアを用いて算出することができ、ソフトウェアに特に限定はなく、いずれを用いても同様に求めることができる。
具体的には、例えば、分子軌道計算用ソフトウェアとして、米国Gaussian社製のGaussian09(Revision C.01,M.J.Frisch,et al,Gaussian,Inc.,2010.)を用いることができる。
【0184】
[有機エレクトロルミネッセンス素子の構成層]
本発明の有機EL素子における代表的な素子構成としては、以下の構成を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
(1)陽極/発光層/陰極
(2)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(3)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
(4)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(5)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(6)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(7)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/(電子阻止層/)発光層/(正孔阻止層/)電子輸送層/電子注入層/陰極
前記の中で(7)の構成が好ましく用いられるが、これに限定されるものではない。
【0185】
本発明に係る発光層は、単層又は複数層で構成されており、発光層が複数の場合は各発光層の間に非発光性の中間層を設けてもよい。
【0186】
必要に応じて、発光層と陰極との間に正孔阻止層(正孔障壁層ともいう)や電子注入層(陰極バッファー層ともいう)を設けてもよく、また、発光層と陽極との間に電子阻止層(電子障壁層ともいう)や正孔注入層(陽極バッファー層ともいう)を設けてもよい。
【0187】
本発明に係る電子輸送層とは、電子を輸送する機能を有する層であり、広い意味で電子注入層、正孔阻止層も電子輸送層に含まれる。また、複数層で構成されていてもよい。
【0188】
本発明に係る正孔輸送層とは、正孔を輸送する機能を有する層であり、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も正孔輸送層に含まれる。また、複数層で構成されていてもよい。
【0189】
前記の代表的な素子構成において、陽極と陰極を除いた層を「有機層」ともいう。
【0190】
(タンデム構造)
また、本発明に係る有機EL素子は、少なくとも1層の発光層を含む発光ユニットを複数積層した、いわゆるタンデム構造の素子であってもよい。
【0191】
タンデム構造の代表的な素子構成としては、例えば以下の構成を挙げることができる。
【0192】
陽極/第1発光ユニット/第2発光ユニット/第3発光ユニット/陰極
陽極/第1発光ユニット/中間層/第2発光ユニット/中間層/第3発光ユニット/陰極
ここで、前記第1発光ユニット、第2発光ユニット及び第3発光ユニットは全て同じであっても、異なっていてもよい。また二つの発光ユニットが同じであり、残る一つが異なっていてもよい。
【0193】
また、第3発光ユニットはなくてもよく、一方で第3発光ユニットと電極の間に更に発光ユニットや中間層を設けてもよい。
【0194】
複数の発光ユニットは直接積層されていても、中間層を介して積層されていてもよく、中間層は、一般的に中間電極、中間導電層、電荷発生層、電子引抜層、接続層、中間絶縁層とも呼ばれ、陽極側の隣接層に電子を、陰極側の隣接層に正孔を供給する機能を持った層であれば、公知の材料構成を用いることができる。
【0195】
中間層に用いられる材料としては、例えば、ITO(インジウム・スズ酸化物)、IZO(インジウム・亜鉛酸化物)、ZnO2、TiN、ZrN、HfN、TiOx、VOx、CuI、InN、GaN、CuAlO2、CuGaO2、SrCu22、LaB6、RuO2、Al等の導電性無機化合物層や、Au/Bi23等の2層膜や、SnO2/Ag/SnO2、ZnO/Ag/ZnO、Bi23/Au/Bi23、TiO2/TiN/TiO2、TiO2/ZrN/TiO2等の多層膜、またC60等のフラーレン類、オリゴチオフェン等の導電性有機物層、金属フタロシアニン類、無金属フタロシアニン類、金属ポルフィリン類、無金属ポルフィリン類等の導電性有機化合物層等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
【0196】
発光ユニット内の好ましい構成としては、例えば前記の代表的な素子構成で挙げた(1)〜(7)の構成から、陽極と陰極を除いたもの等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
【0197】
タンデム型有機EL素子の具体例としては、例えば、米国特許第6337492号明細書、米国特許第7420203号明細書、米国特許第7473923号明細書、米国特許第6872472号明細書、米国特許第6107734号明細書、米国特許第6337492号明細書、国際公開第2005/009087号、特開2006−228712号公報、特開2006−24791号公報、特開2006−49393号公報、特開2006−49394号公報、特開2006−49396号公報、特開2011−96679号公報、特開2005−340187号公報、特許第4711424号、特許第3496681号、特許第3884564号、特許第4213169号、特開2010−192719号公報、特開2009−076929号公報、特開2008−078414号公報、特開2007−059848号公報、特開2003−272860号公報、特開2003−045676号公報、国際公開第2005/094130号等に記載の素子構成や構成材料等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
【0198】
以下、本発明の有機EL素子を構成する各層について説明する。
【0199】
≪発光層≫
本発明に係る発光層は、電極又は隣接する層(以下、「隣接層」ともいう。)から注入されてくる電子及び正孔が再結合し、励起子を経由して発光する場を提供する層であり、発光する部分は発光層の層内であっても、発光層と隣接層との界面であってもよい。そして、本発明に係る発光層は、前記した本発明の「発光性膜」を有する構成であってもよい。具体的には、本発明に係る発光層は、本発明の「発光性膜」あってもよいが、特に限定されず、例えば、その他の発光層やその他の化合物などからなる膜などを含んでいてもよい。
なお、本発明に係る発光層は、本発明で規定する発光性膜に関する要件を満たしていれば、その構成に特に制限はない。
【0200】
発光層の膜厚の総和は、特に制限はないが、形成する膜の均質性や、発光時に不必要な高電圧を印加するのを防止し、且つ、駆動電流に対する発光色の安定性向上の観点から、2nm〜5μmの範囲に調整することが好ましく、より好ましくは2〜500nmの範囲に調整され、更に好ましくは5〜200nmの範囲に調整される。
【0201】
また、本発明において個々の発光層の厚さとしては、2nm〜1μmの範囲に調整することが好ましく、より好ましくは2〜200nmの範囲に調整され、更に好ましくは3〜150nmの範囲に調整される。
【0202】
[その他の発光ドーパント、ホスト化合物]
本発明に係る発光層は、上述のように、本発明の発光性膜を含有するため、上述の「青色リン光発光性化合物」と「青色蛍光発光性化合物」「ホスト化合物」を含有して構成される。
さらに、本発明に係る有機EL素子において、本発明の発光性膜は、当該発光性膜に隣接する層の材料を含有していてもよい。隣接する層の材料としては、発光性膜(発光層)に隣接する層の材料であれば、特に限定されず、例えば正孔輸送層に含有させる化合物などが挙げられる。これにより、上述のように、本発明の発光性膜は外部環境に影響されにくい有機エレクトロルミネッセンス素子を安定して提供できる。
また、本発明に係る発光層は、本発明の効果を妨げない範囲内において、別途、以下に示す「(1)発光ドーパント(以下、「その他の発光ドーパント」ともいう。):(1.1)リン光発光性化合物(以下、「その他のリン光発光性化合物」ともいう。)、(1.2)蛍光発光性化合物(以下、「その他の蛍光発光性化合物」ともいう。)」や「(2)ホスト化合物(以下、「その他のホスト化合物」ともいう。)」を含有していてもよい。
【0203】
(1)その他の発光ドーパント
本発明に係るその他の発光ドーパントについて説明する。
【0204】
その他の発光ドーパントとしては、その他のリン光発光性化合物(その他のリン光ドーパント、その他のリン光性化合物ともいう)、その他の蛍光発光性化合物(その他の蛍光ドーパント、その他の蛍光性化合物)を併用することが好ましい。
【0205】
また、本発明係る青色リン光発光性化合物及びその他のリン光発光性化合物は、複数種を併用して用いてもよく、構造の異なるドーパント同士の組み合わせを用いてもよい。これにより、任意の発光色を得ることができる。
【0206】
本発明の有機EL素子や本発明の発光性膜の発光する色は、「新編色彩科学ハンドブック」(日本色彩学会編、東京大学出版会、1985)の108頁の図4.16において、分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタ(株)製)で測定した結果をCIE色度座標に当てはめたときの色で決定される。なお、これにより、青色蛍光発光性化合物に由来する発光を検出することができる。検出方法は、特に限定されず、例えば、HPLC(High Performance Liquid Chromatography)などで化合物を分離精製し、青色リン光化合物と青色蛍光化合物の発光吸収を測定する方法などが挙げられる。
【0207】
本発明においては、1層又は複数層の発光層が、発光色の異なる複数の発光ドーパントを含有し、白色発光を示すことも好ましい。
【0208】
白色を示す発光ドーパントの組み合わせについては特に限定はないが、例えば青と橙や、青と緑と赤の組み合わせ等が挙げられる。
【0209】
本発明に係る有機EL素子における白色とは、特に限定はなく、橙色寄りの白色であっても青色寄りの白色であってもよいが、2度視野角正面輝度を前述の方法により測定した際に、1000cd/mでのCIE1931表色系における色度がx=0.39±0.09、y=0.38±0.08の領域内にあることが好ましい。
【0210】
(1.1)その他のリン光発光性化合物
その他のリン光発光性化合物(以下、「その他のリン光ドーパント」ともいう)について説明する。
【0211】
本発明に係るその他のリン光ドーパントは、三重項励起からの発光が観測される化合物であり、具体的には、室温(25℃)にてリン光発光する化合物であり、リン光量子収率が、25℃において0.01以上の化合物であると定義されるが、好ましいリン光量子収率は0.1以上である。
【0212】
本発明におけるリン光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定できる。溶液中でのリン光量子収率は種々の溶媒を用いて測定できるが、本発明に係るその他のリン光ドーパントは、任意の溶媒のいずれかにおいて前記リン光量子収率(0.01以上)が達成されればよい。
【0213】
その他のリン光ドーパントの発光は原理としては2種挙げられ、一つはキャリアが輸送されるホスト化合物上でキャリアの再結合が起こってホスト化合物の励起状態が生成し、このエネルギーをその他のリン光ドーパントに移動させることでその他のリン光ドーパントからの発光を得るというエネルギー移動型である。もう一つはその他のリン光ドーパントがキャリアトラップとなり、その他のリン光ドーパント上でキャリアの再結合が起こりその他のリン光ドーパントからの発光が得られるというキャリアトラップ型である。いずれの場合においても、その他のリン光ドーパントの励起状態のエネルギーはその他のホスト化合物の励起状態のエネルギーよりも低いことが条件である。
【0214】
本発明において使用できるその他のリン光ドーパントとしては、有機EL素子の発光層に使用される公知のものの中から適宜選択して用いることができる。
【0215】
本発明に使用できるその他のリン光ドーパントの具体例としては、上述の本発明に係る青色リン光発光性化合物で例示した文献に記載されている公知の化合物等が挙げられる。
【0216】
中でも、好ましいその他のリン光ドーパントとしてはIrを中心金属に有する有機金属錯体が挙げられる。更に好ましくは、金属−炭素結合、金属−窒素結合、金属−酸素結合、金属−硫黄結合の少なくとも一つの配位様式を含む錯体が好ましい。
【0217】
(1.2)その他の蛍光発光性ドーパント
その他の蛍光発光性ドーパント(以下、「その他の蛍光ドーパント」ともいう)について説明する。
【0218】
その他の蛍光ドーパントは、一重項励起からの発光が可能な化合物であり、一重項励起からの発光が観測される限り特に限定されない。
【0219】
その他の蛍光ドーパントとしては、例えば、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、クリセン誘導体、フルオランテン誘導体、ペリレン誘導体、フルオレン誘導体、アリールアセチレン誘導体、スチリルアリーレン誘導体、スチリルアミン誘導体、アリールアミン誘導体、ホウ素錯体、クマリン誘導体、ピラン誘導体、シアニン誘導体、クロコニウム誘導体、スクアリウム誘導体、オキソベンツアントラセン誘導体、フルオレセイン誘導体、ローダミン誘導体、ピリリウム誘導体、ペリレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、又は希土類錯体系化合物等が挙げられる。
【0220】
また、近年では遅延蛍光を利用した発光ドーパントも開発されており、これらを用いてもよい。
【0221】
遅延蛍光を利用した発光ドーパントの具体例としては、例えば、国際公開第2011/156793号、特開2011−213643号公報、特開2010−93181号公報等に記載の化合物が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
【0222】
(2)その他のホスト化合物
その他のホスト化合物は、発光層において主に電荷の注入及び輸送を担う化合物であり、有機EL素子においてそれ自体の発光は実質的に観測されない。
【0223】
好ましくは室温(25℃)においてリン光発光のリン光量子収率が、0.1未満の化合物であり、更に好ましくはリン光量子収率が0.01未満の化合物である。
【0224】
また、その他のホスト化合物の励起状態エネルギーは、同一層内に含有される発光ドーパントの励起状態エネルギーよりも高いことが好ましい。
【0225】
その他のホスト化合物は、単独で用いてもよく、又は複数種併用して用いてもよい。その他のホスト化合物を複数種用いることで、電荷の移動を調整することが可能であり、有機EL素子を高効率化することができる。
【0226】
その他のホスト化合物としては、特に制限はなく、従来有機EL素子で用いられる化合物を用いることができる。低分子化合物でも繰り返し単位を有する高分子化合物でもよく、また、ビニル基やエポキシ基のような反応性基を有する化合物でもよい。
【0227】
公知のホスト化合物としては、正孔輸送能又は電子輸送能を有しつつ、且つ、発光の長波長化を防ぎ、更に、有機EL素子を高温駆動時や素子駆動中の発熱に対して安定して動作させる観点から、高いガラス転移温度(Tg)を有することが好ましい。好ましくはTgが90℃以上であり、より好ましくは120℃以上である。
【0228】
ここで、ガラス転移点(Tg)とは、DSC(Differential Scanning Calorimetry:示差走査熱量法)を用いて、JIS−K−7121に準拠した方法により求められる値である。
【0229】
本発明に係る有機EL素子に用いられる、その他のホスト化合物の具体例としては、上述の本発明に係るホスト化合物で例示した文献に記載の公知の化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0230】
また本発明に係るその他ホスト化合物は発光層に隣接する隣接層に用いてもよい。
【0231】
≪電子輸送層≫
本発明において電子輸送層とは、電子を輸送する機能を有する材料からなり、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよい。
【0232】
本発明に係る電子輸送層の総厚については特に制限はないが、通常は2nm〜5μmの範囲であり、より好ましくは2〜500nmであり、更に好ましくは5〜200nmである。
【0233】
また、有機EL素子においては発光層で生じた光を電極から取り出す際、発光層から直接取り出される光と、光を取り出す電極と対極に位置する電極によって反射されてから取り出される光とが干渉を起こすことが知られている。光が陰極で反射される場合は、電子輸送層の総厚を5nm〜1μmの間で適宜調整することにより、この干渉効果を効率的に利用することが可能である。
【0234】
一方で、電子輸送層の厚さを厚くすると電圧が上昇しやすくなるため、特に層厚が厚い場合においては、電子輸送層の電子移動度は10−5cm/Vs以上であることが好ましい。
【0235】
電子輸送層に用いられる材料(以下、電子輸送材料という)としては、電子の注入性又は輸送性、正孔の障壁性のいずれかを有していればよく、従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。
【0236】
例えば、含窒素芳香族複素環誘導体(カルバゾール誘導体、アザカルバゾール誘導体(カルバゾール環を構成する炭素原子の一つ以上が窒素原子に置換されたもの)、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリダジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、フェナントロリン誘導体、アザトリフェニレン誘導体、オキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、ベンズチアゾール誘導体等)、ジベンゾフラン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、シロール誘導体、芳香族炭化水素環誘導体(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、トリフェニレン等)等が挙げられる。
【0237】
また、配位子にキノリノール骨格やジベンゾキノリノール骨格を有する金属錯体、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、Ga又はPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることができる。
【0238】
その他、メタルフリー若しくはメタルフタロシアニン、又はそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。また、発光層の材料として例示したジスチリルピラジン誘導体も、電子輸送材料として用いることができるし、正孔注入層、正孔輸送層と同様にn型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。
【0239】
また、これらの材料を高分子鎖に導入した、又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0240】
本発明に係る電子輸送層においては、電子輸送層にドープ材をゲスト材料としてドープして、n性の高い(電子リッチ)電子輸送層を形成してもよい。ドープ材としては、金属錯体やハロゲン化金属など金属化合物等のn型ドーパントが挙げられる。このような構成の電子輸送層の具体例としては、例えば、特開平4−297076号公報、同10−270172号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等の文献に記載されたものが挙げられる。
【0241】
本発明の有機EL素子に用いられる、公知の好ましい電子輸送材料の具体例としては、以下の文献に記載の化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0242】
米国特許第6528187号明細書、米国特許第7230107号明細書、米国特許公開第2005/0025993号明細書、米国特許公開第2004/0036077号明細書、米国特許公開第2009/0115316号明細書、米国特許公開第2009/0101870号明細書、米国特許公開第2009/0179554号明細書、国際公開第2003/060956号、国際公開第2008/132085号、Appl.Phys.Lett.75,4(1999)、Appl.Phys.Lett.79,449(2001)、Appl.Phys.Lett.81,162(2002)、Appl.Phys.Lett.81,162(2002)、Appl.Phys.Lett.79,156(2001)、米国特許第7964293号明細書、米国特許公開第2009/030202号明細書、国際公開第2004/080975号、国際公開第2004/063159号、国際公開第2005/085387号、国際公開第2006/067931号、国際公開第2007/086552号、国際公開第2008/114690号、国際公開第2009/069442号、国際公開第2009/066779号、国際公開第2009/054253号、国際公開第2011/086935号、国際公開第2010/150593号、国際公開第2010/047707号、欧州特許第2311826号明細書、特開2010−251675号公報、特開2009−209133号公報、特開2009−124114号公報、特開2008−277810号公報、特開2006−156445号公報、特開2005−340122号公報、特開2003−45662号公報、特開2003−31367号公報、特開2003−282270号公報、国際公開第2012/115034号等である。
【0243】
本発明におけるよりより好ましい電子輸送材料としては、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、トリアジン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、カルバゾール誘導体、アザカルバゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体が挙げられる。
【0244】
電子輸送材料は単独で用いてもよく、また複数種を併用して用いてもよい。
【0245】
≪正孔阻止層≫
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層の機能を有する層であり、好ましくは電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が小さい材料からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。
【0246】
また、前述する電子輸送層の構成を必要に応じて、本発明に係る正孔阻止層として用いることができる。
【0247】
本発明の有機EL素子に設ける正孔阻止層は、発光層の陰極側に隣接して設けられることが好ましい。
【0248】
本発明に係る正孔阻止層の厚さとしては、好ましくは3〜100nmの範囲であり、更に好ましくは5〜30nmの範囲である。
【0249】
正孔阻止層に用いられる材料としては、前述の電子輸送層に用いられる材料が好ましく用いられ、また、前述の本発明に係るホスト化合物及びその他のホスト化合物として用いられる材料も正孔阻止層に好ましく用いられる。
【0250】
≪電子注入層≫
本発明に係る電子注入層(「陰極バッファー層」ともいう)とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために陰極と発光層との間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されている。
【0251】
本発明において電子注入層は必要に応じて設け、前記のように陰極と発光層との間、又は陰極と電子輸送層との間に存在させてもよい。
【0252】
電子注入層はごく薄い膜であることが好ましく、素材にもよるがその厚さは0.1〜5nmの範囲が好ましい。また構成材料が断続的に存在する不均一な膜であってもよい。
【0253】
電子注入層は、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、電子注入層に好ましく用いられる材料の具体例としては、ストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム等に代表されるアルカリ金属化合物、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム等に代表されるアルカリ土類金属化合物、酸化アルミニウムに代表される金属酸化物、リチウム8−ヒドロキシキノレート(Liq)等に代表される金属錯体等が挙げられる。また、前述の電子輸送材料を用いることも可能である。
【0254】
また、前記の電子注入層に用いられる材料は単独で用いてもよく、複数種を併用して用いてもよい。
【0255】
≪正孔輸送層≫
本発明において正孔輸送層とは、正孔を輸送する機能を有する材料からなり、陽極より注入された正孔を発光層に伝達する機能を有していればよい。
【0256】
本発明に係る正孔輸送層の総厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μmの範囲であり、より好ましくは2〜500nmであり、更に好ましくは5nm〜200nmである。
【0257】
正孔輸送層に用いられる材料(以下、正孔輸送材料という)としては、正孔の注入性又は輸送性、電子の障壁性のいずれかを有していればよく、従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。
【0258】
例えば、ポルフィリン誘導体、フタロシアニン誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、トリアリールアミン誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、イソインドール誘導体、アントラセンやナフタレン等のアセン系誘導体、フルオレン誘導体、フルオレノン誘導体、及びポリビニルカルバゾール、芳香族アミンを主鎖又は側鎖に導入した高分子材料又はオリゴマー、ポリシラン、導電性ポリマー又はオリゴマー(例えばPEDOT:PSS、アニリン系共重合体、ポリアニリン、ポリチオフェン等)等が挙げられる。
【0259】
トリアリールアミン誘導体としては、α−NPDに代表されるベンジジン型や、MTDATAに代表されるスターバースト型、トリアリールアミン連結コア部にフルオレンやアントラセンを有する化合物等が挙げられる。
【0260】
また、特表2003−519432号公報や特開2006−135145号公報等に記載されているようなヘキサアザトリフェニレン誘導体も同様に正孔輸送材料として用いることができる。
【0261】
更に不純物をドープしたp性の高い正孔輸送層を用いることもできる。その例としては、特開平4−297076号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報の各公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。
【0262】
また、特開平11−251067号公報、J.Huang et.al.著文献(Applied Physics Letters 80(2002),p.139)に記載されているような、いわゆるp型正孔輸送材料やp型−Si、p型−SiC等の無機化合物を用いることもできる。更にIr(ppy)3に代表されるような中心金属にIrやPtを有するオルトメタル化有機金属錯体も好ましく用いられる。
【0263】
正孔輸送材料としては、前記のものを使用することができるが、トリアリールアミン誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、アザトリフェニレン誘導体、有機金属錯体、芳香族アミンを主鎖又は側鎖に導入した高分子材料又はオリゴマー等が好ましく用いられる。
【0264】
本発明の有機EL素子に用いられる、公知の好ましい正孔輸送材料の具体例としては、前記で挙げた文献の他、以下の文献に記載の化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0265】
例えば、Appl.Phys.Lett.69,2160(1996)、J.Lumin.72−74,985(1997)、Appl.Phys.Lett.78,673(2001)、Appl.Phys.Lett.90,183503(2007)、Appl.Phys.Lett.90,183503(2007)、Appl.Phys.Lett.51,913(1987)、Synth.Met.87,171(1997)、Synth.Met.91,209(1997)、Synth.Met.111,421(2000)、SID Symposium Digest,37,923(2006)、J.Mater.Chem.3,319(1993)、Adv.Mater.6,677(1994)、Chem.Mater.15,3148(2003)、米国特許公開第2003/0162053号明細書、米国特許公開第2002/0158242号明細書、米国特許公開第2006/0240279号明細書、米国特許公開第2008/0220265号明細書、米国特許第5061569号明細書、国際公開第2007/002683号、国際公開第2009/018009号、欧州特許第650955号明細書、米国特許公開第2008/0124572号、米国特許公開第2007/0278938号明細書、米国特許公開第2008/0106190号明細書、米国特許公開第2008/0018221号明細書、国際公開第2012/115034号、特表2003−519432号公報、特開2006−135145号公報、米国特許出願番号13/585981号等である。
【0266】
正孔輸送材料は単独で用いてもよく、また複数種を併用して用いてもよい。
【0267】
≪電子阻止層≫
電子阻止層とは広い意味では正孔輸送層の機能を有する層であり、好ましくは正孔を輸送する機能を有しつつ電子を輸送する能力が小さい材料からなり、正孔を輸送しつつ電子を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。
【0268】
また、前述する正孔輸送層の構成を必要に応じて、本発明に係る電子阻止層として用いることができる。
【0269】
本発明の有機EL素子に設ける電子阻止層は、発光層の陽極側に隣接して設けられることが好ましい。
【0270】
本発明に係る電子阻止層の厚さとしては、好ましくは3〜100nmの範囲であり、更に好ましくは5〜30nmの範囲である。
【0271】
電子阻止層に用いられる材料としては、前述の正孔輸送層に用いられる材料が好ましく用いられ、また、前述の本発明に係るホスト化合物及びその他のホスト化合物として用いられる材料も電子阻止層に好ましく用いられる。
【0272】
≪正孔注入層≫
本発明に係る正孔注入層(「陽極バッファー層」ともいう)とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために陽極と発光層との間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されている。
【0273】
本発明において正孔注入層は必要に応じて設け、前記のように陽極と発光層又は陽極と正孔輸送層との間に存在させてもよい。
【0274】
正孔注入層は、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、正孔注入層に用いられる材料としては、例えば前述の正孔輸送層に用いられる材料等が挙げられる。
【0275】
中でも銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニン誘導体、特表2003−519432号公報や特開2006−135145号公報等に記載されているようなヘキサアザトリフェニレン誘導体、酸化バナジウムに代表される金属酸化物、アモルファスカーボン、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム錯体等に代表されるオルトメタル化錯体、トリアリールアミン誘導体等が好ましい。
【0276】
前述の正孔注入層に用いられる材料は単独で用いてもよく、また複数種を併用して用いてもよい。
【0277】
≪含有物≫
前述した本発明における有機層は、更に他の含有物が含まれていてもよい。
【0278】
含有物としては、例えば臭素、ヨウ素及び塩素等のハロゲン元素やハロゲン化化合物、Pd、Ca、Na等のアルカリ金属やアルカリ土類金属、遷移金属の化合物や錯体、塩等が挙げられる。
【0279】
含有物の含有量は、任意に決定することができるが、含有される層の全質量%に対して1000ppm以下であることが好ましく、より好ましくは500ppm以下であり、更に好ましくは50ppm以下である。
【0280】
ただし、電子や正孔の輸送性を向上させる目的や、励起子のエネルギー移動を有利にするための目的等によってはこの範囲内ではない。
【0281】
≪有機層の形成方法≫
本発明の発光性膜を有する有機エレクトロルミネッセンス素子を製造する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法は、公知の方法を好適に採用することができるが、特に、前記発光性膜が、ウェットプロセス又はドライプロセスを用いて製膜される態様であることが好ましい。
以下に、有機層(正孔注入層、正孔輸送層、電子阻止層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層等)の形成方法について説明する。
【0282】
本発明に係る有機層の形成方法は、特に制限はなく、従来公知の例えば、ドライプロセスなどの真空蒸着法、ウェットプロセス等による形成方法を用いることができ、また、各層に使用される化合物等の材料に合わせて、ウェットプロセスやドライプロセスを使い分けて積層し、有機層を形成する方法であってもよい。ここで、有機層が、ウェットプロセスで形成された層であることが好ましい。すなわち、ウェットプロセスで有機EL素子を作製することが好ましい。有機EL素子をウェットプロセスで作製することで、均質な膜(塗膜)が得られやすく、且つピンホールが生成しにくい等の効果を奏することができる。なお、ここでの膜(塗膜)とは、ウェットプロセスによる塗布後に乾燥させた状態のものである。
【0283】
ウェットプロセスとしては、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、印刷法、ダイコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法、カーテンコート法、LB法(ラングミュア−ブロジェット法)等があるが、均質な薄膜が得られやすく、且つ高生産性の点から、ダイコート法、ロールコート法、インクジェット法、スプレーコート法等のロール・to・ロール方式適性の高い方法が好ましい。
【0284】
なお、ドライプロセスとしては、蒸着法(抵抗加熱、EB法など)、スパッタリング法、CVD法などが挙げられる。
【0285】
本発明に係る有機EL材料を溶解又は分散する液媒体としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル等の脂肪酸エステル類、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族炭化水素類、シクロヘキサン、デカリン、ドデカン等の脂肪族炭化水素類、DMF、DMSO等の有機溶媒を用いることができる。
【0286】
また、分散方法としては、超音波、高剪断力分散やメディア分散等の分散方法により分散することができる。
【0287】
更に層毎に異なる製膜法を適用してもよい。製膜に蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は使用する化合物の種類等により異なるが、一般にボート加熱温度50〜450℃、真空度10−6〜10−2Pa、蒸着速度0.01〜50nm/秒、基板温度−50〜300℃、厚さ0.1nm〜5μm、好ましくは5〜200nmの範囲で適宜選ぶことが望ましい。
【0288】
本発明に係る有機層の形成は、一回の真空引きで一貫して正孔注入層から陰極まで作製するのが好ましいが、途中で取り出して異なる製膜法を施しても構わない。その際は作業を乾燥不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0289】
≪陽極≫
有機EL素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上、好ましくは4.5V以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としては、Au等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In23−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。
【0290】
陽極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、又はパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、前記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。
【0291】
又は、有機導電性化合物のように塗布可能な物質を用いる場合には、印刷方式、コーティング方式等湿式製膜法を用いることもできる。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また陽極としてのシート抵抗は数百Ω/sq.以下が好ましい。
【0292】
陽極の厚さは材料にもよるが、通常10nm〜1μm、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
【0293】
≪陰極≫
陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。
【0294】
陰極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/sq.以下が好ましく、厚さは通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。
【0295】
なお、発光した光を透過させるため、有機EL素子の陽極又は陰極のいずれか一方が透明又は半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
【0296】
また、陰極に前記金属を1〜20nmの厚さで作製した後に、陽極の説明で挙げる導電性透明材料をその上に作製することで、透明又は半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する素子を作製することができる。
【0297】
≪支持基板≫
本発明の有機EL素子に用いることのできる支持基板(以下、基体、基板、基材、支持体等ともいう)としては、ガラス、プラスチック等の種類には特に限定はなく、また透明であっても不透明であってもよい。支持基板側から光を取り出す場合には、支持基板は透明であることが好ましい。好ましく用いられる透明な支持基板としては、ガラス、石英、透明樹脂フィルムを挙げることができる。特に好ましい支持基板は、有機EL素子にフレキシブル性を与えることが可能な樹脂フィルムである。
【0298】
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートフタレート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類又はそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリル、又はポリアリレート類、アートン(商品名JSR社製)若しくはアペル(商品名三井化学社製)といったシクロオレフィン系樹脂等を挙げられる。
【0299】
樹脂フィルムの表面には、ガスバリアー層として、無機物、有機物の被膜又はその両者のハイブリッド被膜が形成されていてもよい。このようなガスバリアー層は、水分や酸素等素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する目的で設けられる。
【0300】
ガスバリアー層を形成する材料としては、水分や酸素等素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素等を用いることができる。更に該膜の脆弱性を改良するために、これら無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせることがより好ましい。無機層と有機層の積層順については特に制限はないが、両者を交互に複数回積層させることが好ましい。
【0301】
ガスバリアー層の形成方法については特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等を用いることができるが、特開2004−68143号公報に記載されているような大気圧プラズマ重合法によるものが特に好ましい。
【0302】
不透明な支持基板としては、例えば、アルミニウム、ステンレス等の金属板、フィルムや不透明樹脂基板、セラミック製の基板等が挙げられる。
【0303】
本発明の有機EL素子の発光の室温における外部取り出し量子効率は、1%以上であることが好ましく、5%以上であるとより好ましい。
【0304】
ここで、外部取り出し量子効率(%)=有機EL素子外部に発光した光子数/有機EL素子に流した電子数×100である。
【0305】
また、カラーフィルター等の色相改良フィルター等を併用しても、有機EL素子からの発光色を蛍光体を用いて多色へ変換する色変換フィルターを併用してもよい。
【0306】
≪封止≫
本発明の有機EL素子の封止に用いられる封止手段としては、例えば、封止部材と、電極、支持基板とを接着剤で接着する方法を挙げることができる。封止部材としては、有機EL素子の表示領域を覆うように配置されていればよく、凹板状でも、平板状でもよい。また、透明性、電気絶縁性は特に限定されない。
【0307】
具体的には、ガラス板、ポリマー板・フィルム、金属板・フィルム等が挙げられる。ガラス板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等を挙げることができる。また、ポリマー板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルフォン等を挙げることができる。金属板としては、ステンレス、鉄、銅、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、亜鉛、クロム、チタン、モリブテン、シリコン、ゲルマニウム及びタンタルからなる群から選ばれる1種以上の金属又は合金からなるものが挙げられる。
【0308】
本発明においては、有機EL素子を薄膜化できるということからポリマーフィルム、金属フィルムを好ましく使用することができる。更には、ポリマーフィルムはJIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された水蒸気透過度(WVTR)が0.001〜1g/(m・day)で、かつJIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度(OTR)が0.001〜1mL/(m・day・atm)のガスバリアー性を有するガスバリアー性フィルム(すなわち、ガスバリアー層。)であることが好ましい。上記ポリマーフィルムは、さらに好ましくはWVTRが0.01〜1g/(m・day)の範囲内、OTRが0.01〜1mL/(m・day・atm)の範囲内である。
【0309】
封止部材を凹状に加工するのは、サンドブラスト加工、化学エッチング加工等が使われる。
【0310】
接着剤として具体的には、アクリル酸系オリゴマー、メタクリル酸系オリゴマーの反応性ビニル基を有する光硬化及び熱硬化型接着剤、2−シアノアクリル酸エステル等の湿気硬化型等の接着剤を挙げることができる。また、エポキシ系等の熱及び化学硬化型(二液混合)を挙げることができる。また、ホットメルト型のポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィンを挙げることができる。また、カチオン硬化タイプの紫外線硬化型エポキシ樹脂接着剤を挙げることができる。
【0311】
なお、有機EL素子が熱処理により劣化する場合があるので、室温から80℃までに接着硬化できるものが好ましい。また、前記接着剤中に乾燥剤を分散させておいてもよい。封止部分への接着剤の塗布は市販のディスペンサーを使ってもよいし、スクリーン印刷のように印刷してもよい。
【0312】
また、有機層を挟み支持基板と対向する側の電極の外側に該電極と有機層を被覆し、支持基板と接する形で無機物、有機物の層を形成し封止膜とすることも好適にできる。この場合、該膜を形成する材料としては、水分や酸素等素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素等を用いることができる。
【0313】
更に該膜の脆弱性を改良するために、これら無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせることが好ましい。これらの膜の形成方法については特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等を用いることができる。
【0314】
封止部材と有機EL素子の表示領域との間隙には、気相及び液相では、窒素、アルゴン等の不活性気体やフッ化炭化水素、シリコンオイルのような不活性液体を注入することが好ましい。また、真空とすることも可能である。また、内部に吸湿性化合物を封入することもできる。
【0315】
吸湿性化合物としては、例えば、金属酸化物(例えば、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等)、硫酸塩(例えば、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸コバルト等)、金属ハロゲン化物(例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、フッ化セシウム、フッ化タンタル、臭化セリウム、臭化マグネシウム、ヨウ化バリウム、ヨウ化マグネシウム等)、過塩素酸類(例えば、過塩素酸バリウム、過塩素酸マグネシウム等)等が挙げられ、硫酸塩、金属ハロゲン化物及び過塩素酸類においては無水塩が好適に用いられる。
【0316】
≪保護膜、保護板≫
有機層を挟み支持基板と対向する側の前記封止膜又は前記封止用フィルムの外側に、素子の機械的強度を高めるために、保護膜若しくは保護板を設けてもよい。特に、封止が前記封止膜により行われている場合には、その機械的強度は必ずしも高くないため、このような保護膜、保護板を設けることが好ましい。これに使用することができる材料としては、前記封止に用いたのと同様なガラス板、ポリマー板・フィルム、金属板・フィルム等を用いることができるが、軽量かつ薄膜化ということからポリマーフィルムを用いることが好ましい。
【0317】
≪光取り出し向上技術≫
有機エレクトロルミネッセンス素子は、空気よりも屈折率の高い(屈折率1.6〜2.1程度の範囲内)層の内部で発光し、発光層で発生した光のうち15%から20%程度の光しか取り出せないと一般的に言われている。これは、臨界角以上の角度θで界面(透明基板と空気との界面)に入射する光は、全反射を起こし素子外部に取り出すことができないことや、透明電極ないし発光層と透明基板との間で光が全反射を起こし、光が透明電極ないし発光層を導波し、結果として、光が素子側面方向に逃げるためである。
【0318】
この光の取り出しの効率を向上させる手法としては、例えば、透明基板表面に凹凸を形成し、透明基板と空気界面での全反射を防ぐ方法(例えば、米国特許第4774435号明細書)、基板に集光性を持たせることにより効率を向上させる方法(例えば、特開昭63−314795号公報)、素子の側面等に反射面を形成する方法(例えば、特開平1−220394号公報)、基板と発光体の間に中間の屈折率を持つ平坦層を導入し、反射防止膜を形成する方法(例えば、特開昭62−172691号公報)、基板と発光体の間に基板よりも低屈折率を持つ平坦層を導入する方法(例えば、特開2001−202827号公報)、基板、透明電極層や発光層のいずれかの層間(含む、基板と外界間)に回折格子を形成する方法(特開平11−283751号公報)等が挙げられる。
【0319】
本発明においては、これらの方法を本発明の有機EL素子と組み合わせて用いることができるが、基板と発光体の間に基板よりも低屈折率を持つ平坦層を導入する方法、又は基板、透明電極層や発光層のいずれかの層間(含む、基板と外界間)に回折格子を形成する方法を好適に用いることができる。
【0320】
本発明は、これらの手段を組み合わせることにより、更に高輝度又は耐久性に優れた素子を得ることができる。
【0321】
透明電極と透明基板の間に低屈折率の媒質を光の波長よりも長い厚さで形成すると、透明電極から出てきた光は、媒質の屈折率が低いほど、外部への取り出し効率が高くなる。
【0322】
低屈折率層としては、例えば、エアロゲル、多孔質シリカ、フッ化マグネシウム、フッ素系ポリマー等が挙げられる。透明基板の屈折率は一般に1.5〜1.7程度の範囲内であるので、低屈折率層は、屈折率がおよそ1.5以下であることが好ましい。また更に1.35以下であることが好ましい。
【0323】
また、低屈折率媒質の厚さは、媒質中の波長の2倍以上となるのが望ましい。これは、低屈折率媒質の厚さが、光の波長程度になってエバネッセントで染み出した電磁波が基板内に入り込む厚さになると、低屈折率層の効果が薄れるからである。
【0324】
全反射を起こす界面又は、いずれかの媒質中に回折格子を導入する方法は、光取り出し効率の向上効果が高いという特徴がある。この方法は、回折格子が1次の回折や、2次の回折といった、いわゆるブラッグ回折により、光の向きを屈折とは異なる特定の向きに変えることができる性質を利用して、発光層から発生した光のうち、層間での全反射等により外に出ることができない光を、いずれかの層間若しくは、媒質中(透明基板内や透明電極内)に回折格子を導入することで光を回折させ、光を外に取り出そうとするものである。
【0325】
導入する回折格子は、二次元的な周期屈折率を持っていることが望ましい。これは、発光層で発光する光はあらゆる方向にランダムに発生するので、ある方向にのみ周期的な屈折率分布を持っている一般的な一次元回折格子では、特定の方向に進む光しか回折されず、光の取り出し効率がさほど上がらない。
【0326】
しかしながら、屈折率分布を二次元的な分布にすることにより、あらゆる方向に進む光が回折され、光の取り出し効率が上がる。
【0327】
回折格子を導入する位置としては、いずれかの層間、若しくは媒質中(透明基板内や透明電極内)でも良いが、光が発生する場所である有機発光層の近傍が望ましい。このとき、回折格子の周期は、媒質中の光の波長の約1/2〜3倍程度の範囲内が好ましい。回折格子の配列は、正方形のラチス状、三角形のラチス状、ハニカムラチス状等、二次元的に配列が繰り返されることが好ましい。
【0328】
≪集光シート≫
本発明の有機EL素子は、支持基板(基板)の光取り出し側に、例えばマイクロレンズアレイ上の構造を設けるように加工したり、又は、いわゆる集光シートと組み合わせることにより、特定方向、例えば素子発光面に対し正面方向に集光することにより、特定方向上の輝度を高めることができる。
【0329】
マイクロレンズアレイの例としては、基板の光取り出し側に一辺が30μmでその頂角が90度となるような四角錐を二次元に配列する。一辺は10〜100μmの範囲内が好ましい。これより小さくなると回折の効果が発生して色付き、大きすぎると厚さが厚くなり好ましくない。
【0330】
集光シートとしては、例えば液晶表示装置のLEDバックライトで実用化されているものを用いることが可能である。このようなシートとして例えば、住友スリーエム社製輝度上昇フィルム(BEF)等を用いることができる。プリズムシートの形状としては、例えば基材に頂角90度、ピッチ50μmの△状のストライプが形成されたものであってもよいし、頂角が丸みを帯びた形状、ピッチをランダムに変化させた形状、その他の形状であっても良い。
【0331】
また、有機EL素子からの光放射角を制御するために光拡散板・フィルムを、集光シートと併用してもよい。例えば、(株)きもと製拡散フィルム(ライトアップ)等を用いることができる。
【0332】
≪用途≫
本発明の有機EL素子は、表示デバイス、ディスプレイ、各種発光光源として用いることができる。
【0333】
発光光源として、例えば、照明装置(家庭用照明、車内照明)、時計や液晶用バックライト、看板広告、信号機、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられるがこれに限定するものではないが、特に液晶表示装置のバックライト、照明用光源としての用途に有効に用いることができる。
【0334】
本発明の有機EL素子においては、必要に応じ製膜時にメタルマスクやインクジェットプリンティング法等でパターニングを施してもよい。パターニングする場合は、電極のみをパターニングしてもよいし、電極と発光層をパターニングしてもよいし、素子全層をパターニングしてもよく、素子の作製においては、従来公知の方法を用いることができる。
【0335】
≪表示装置≫
以下、本発明の有機EL素子を有する表示装置の一例を図面に基づいて説明する。
【0336】
図4は、本発明の有機EL素子から構成される表示装置の構成の一例を示した概略斜視図であって、有機EL素子の発光により画像情報の表示を行う、例えば、携帯電話等のディスプレイの模式図である。図4に示すとおり、ディスプレイ1は、複数の画素を有する表示部A、画像情報に基づいて表示部Aの画像走査を行う制御部B等からなる。
【0337】
制御部Bは表示部Aと電気的に接続されている。制御部Bは、複数の画素それぞれに対し、外部からの画像情報に基づいて走査信号と画像データ信号を送る。その結果、各画素が走査信号により走査線毎に画像データ信号に応じて順次発光し、画像情報が表示部Aに表示される。
【0338】
図5は、図4に記載の表示部Aの模式図である。
【0339】
表示部Aは基板上に、複数の走査線5及びデータ線6を含む配線部と、複数の画素3等とを有する。
【0340】
表示部Aの主要な部材の説明を以下に行う。
【0341】
図5においては、画素3の発光した光が白矢印方向(下方向)へ取り出される場合を示している。配線部の走査線5及び複数のデータ線6はそれぞれ導電材料から構成されている。走査線5とデータ線6は互いに格子状に直交して、その直交する位置で画素3に接続されている(詳細は図示していない)。
【0342】
画素3は、走査線5から走査信号が送信されると、データ線6から画像データ信号を受け取り、受け取った画像データに応じて発光する。
【0343】
発光の色が赤領域の画素、緑領域の画素、青領域の画素を適宜同一基板上に並列配置することによって、フルカラー表示が可能となる。
【0344】
≪照明装置≫
本発明の有機EL素子を具備した、本発明の照明装置の一態様について説明する。
【0345】
本発明の有機EL素子の非発光面をガラスケースで覆い、厚さ300μmのガラス基板を封止用基板として用いて、周囲にシール材として、エポキシ系光硬化型接着剤(東亞合成社製ラックストラックLC0629B)を適用し、これを陰極上に重ねて透明支持基板と密着させ、ガラス基板側からUV光を照射して、硬化させて、封止し、図6図7に示すような照明装置を形成することができる。
【0346】
図6は、照明装置の概略図を示し、本発明の有機EL素子101はガラスカバー102で覆われている(なお、ガラスカバーでの封止作業は、有機EL素子101を大気に接触させることなく窒素雰囲気下のグローブボックス(純度99.999%以上の高純度窒素ガスの雰囲気下)で行う。)。
【0347】
図7は、照明装置の断面図を示し、図7において、105は陰極、106は有機EL層(発光ユニット)、107は透明電極付きガラス基板を示す。なお、ガラスカバー102内には窒素ガス108が充填され、捕水剤109が設けられている。
【0348】
≪有機材料組成物≫
本発明の発光性膜に含有されるホスト化合物、青色リン光発光性化合物及び青色蛍光発光性化合物は、有機材料組成物にも好適に採用できる。
具体的には、ホスト化合物、青色リン光発光性化合物及び青色蛍光発光性化合物を含有する有機材料組成物であって、前記青色リン光発光性化合物の発光スペクトルと前記青色蛍光発光性化合物の吸収スペクトルとが、重なりを有しており、かつ、前記青色リン光発光性化合物(式中において「BPM」と略記する。)と前記青色蛍光発光性化合物(式中において「BFM」と略記する。)の最短波長側の発光極大波長とが、下記数式(1)を満たし、前記青色蛍光発光性化合物に由来する発光が検出されることを特徴とする有機材料組成物とすることができる。
【0349】
数式(1):λBFM≧λBPM
[前記数式(1)中、λBFMは前記青色蛍光発光性化合物の最短波長側の発光極大波長を表す。λBPMは前記青色リン光発光性化合物の最短波長側の発光極大波長を表す。]
【0350】
本発明に係る有機材料組成物は、例えば、上述の有機EL材料を溶解又は分散する液媒体に溶解又は分散させることができる。これにより、ウェットプロセスで発光層を形成する際に、本発明に係る有機材料組成物を好適に採用でき、ひいては、本発明の発光性膜を好適に製造できる。
【0351】
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0352】
例えば、また、発光層が、本発明に係るホスト化合物及び青色リン光発光性化合物を含有し、前記発光層に隣接する層が、本発明に係る青色蛍光発光性化合物を含有し、
前記青色リン光発光性化合物の発光スペクトルと前記青色蛍光発光性化合物の吸収スペクトルとが、重なりを有しており、かつ、
前記青色リン光発光性化合物(式中において「BPM」と略記する。)と前記青色蛍光発光性化合物(式中において「BFM」と略記する。)の最短波長側の発光極大波長が、前記数式(1)を満たし、
前記青色蛍光発光性化合物に由来する発光が検出されることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子であってもよい。これにより、青色蛍光発光性化合物と青色リン光発光性化合物との距離を離すことができ、この結果、デクスター型エネルギー移動を抑制することができ、ひいては、素子寿命の低下を抑制できる。
この場合、発光層に隣接する層とは、発光層に隣接している層であれば、特に限定されず、例えば、正孔輸送層や電子輸送層が挙げられるがこれに限定されない。
具体的には、例えば、正孔輸送層に蛍光発光性化合物を添加する際には、発光層に近い正孔輸送層の一部を正孔輸送層と蛍光発光性化合物の混合層にするなどすればよい。
なお、このような態様の有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層及び当該発光層に隣接する層が含有するホスト化合物、青色リン光発光性化合物及び青色蛍光発光性化合物は、本発明の発光性膜に使用されるホスト化合物、青色リン光発光性化合物及び青色蛍光発光性化合物である。
【0353】
また、本発明の実施態様としては、陽極と陰極との間に、当該発光層を備える有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記発光層が、青色リン光発光性化合物及び青色蛍光発光性化合物を含有し、かつ、前記青色リン光発光性化合物の発光スペクトルと前記青色蛍光発光性化合物の吸収スペクトルとが、重なりを有しており、前記発光層単層(すなわち、青色蛍光発光性化合物が添加された発光性膜)の発光減衰寿命τが下記(A1)式を満たし、前記発光層単層の絶対量子収率PLQEが下記(A2)式を満たし、前記リン光発光性化合物と蛍光発光性化合物とが下記(A3)式又は下記(A4)式を満たすことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子であってもよい。なお、従来の発光材料を単独で用いた素子では、高輝度下、高電流密度下で電界駆動した際に、ロールオフの増大(J0の低下)や加速係数が増大することで発光性が低下することに加え、素子寿命の大幅な低下を引き起こしていた。本実施形態では青色リン光発光性化合物で生成した励起子を青色蛍光発光性化合物へのフェルスター型エネルギー移動によって移動させることで、励起子を即座に発光として輻射失活可能であり、ひいては、ロールオフ抑制(J0の増大)や加速係数の増大を抑制できる。なお、J0とは、有機EL素子において、電流密度を増大させて最大となるEQEの半分の値となるEQEになる電流密度をいう。
【0354】
0<τ/τ0≦0.7・・・(A1)
0.6≦PLQE/PLQE0≦1・・・(A2)
HOMO(F)≦HOMO(P)・・・(A3)
LUMO(P)≦LUMO(F)・・・(A4)
[τ:前記発光層単層の発光減衰寿命
τ0:前記リン光発光性化合物の単膜(すなわち、青色蛍光発光性化合物が添加されていない発光性膜)の発光減衰寿命
PLQE:前記発光層単層の絶対量子収率
PLQE0:前記リン光発光性化合物の単膜の絶対量子収率
HOMO(P)、LUMO(P):それぞれ、前記リン光発光性化合物の最高被占分子軌道(HOMO)と最低空分子軌道(LUMO)のエネルギー準位
HOMO(F)、LUMO(F):それぞれ、前記蛍光発光性化合物の最高被占分子軌道(HOMO)と前記蛍光発光性化合物の最低空分子軌道(LUMO)のエネルギー準位]
【0355】
[(A1)〜(A4)式の説明]
<(A1)式>
発光層がリン光発光性化合物及び蛍光発光性化合物を含有することで、リン光発光性化合物の発光減衰寿命を短縮できることが知られている。
そして、リン光発光性化合物の発光減衰寿命が短いことは、リン光発光性化合物の三重項励起エネルギーが速やかに消費されることを意味するが、本発明者は、リン光発光性化合物の発光減衰寿命の短縮(τ/τ0)が0.7以下であれば、有機EL素子の半減寿命の加速係数を下げる効果が大きいことを見出した。
なお、本発明において、0より大きければ、τ/τ0は小さいほどよい。
【0356】
<(A2)式>
リン光発光性化合物に蛍光発光性化合物を含有することで、リン光発光性化合物の三重項励起状態から、蛍光発光性化合物の三重項励起状態へ、デクスター型エネルギー移動が発生し得る。デクスター型エネルギー移動が発生した場合、蛍光発光性化合物の三重項励起状態からは非発光で失活するので、絶対量子収率(すなわち、発光層単層の絶対量子収率PLQE)は低下する。
しかしながら、有機EL素子の性能において、発光層単層の絶対量子収率PLQEは高い方が望ましい。
実用的なリン光発光性化合物は100%に近い高い絶対量子収率(すなわち、リン光発光性化合物の単膜の絶対量子収率PLQE0)を有しており、蛍光発光性化合物を添加しても、デクスター型エネルギー移動による絶対量子収率の低下を抑制し、高い絶対量子収率を維持することが望まれる。
以上の観点から、PLQE/PLQE0が0.6〜1.0の範囲内であれば、実用的な発光素子性能をより好適に維持することができる。なお、リン光単独のPLQE0を維持する(低下しない)という意味で、PLQE/PLQE0の最大値は1である。
【0357】
<(A3)又は(A4)式>
(A3)又は(A4)式を満たすことにより、蛍光発光性化合物上で直接電荷が再結合せず、外部取り出し量子効率(EQE)の低下をより好適に抑制できる。
【0358】
発光減衰寿命は、前述のように、ストリークカメラC4334(浜松ホトニクス社製)を用いることで計測可能である。
また、青色蛍光発光性化合物が添加されていない発光性膜の発光減衰寿命τ0は、光減衰寿命τを計測した発光性膜において、蛍光発光性化合物を含有させないほかは同様にして製造した発光性膜について、同様に計測すればよい。
【0359】
PLQEの測定は、前述のように、蛍光寿命測定装置(例えば、ストリークカメラC4334や小型蛍光寿命測定装置C11367−03(いずれも浜松ホトニクス社製)など)を用いることで可能である。
また、青色蛍光発光性化合物が添加されていない発光性膜の絶対量子収率PLQE0は、PLQEを計測した発光性膜において、蛍光発光性化合物を含有させないほかは同様にして製造した発光性膜について、同様に計測すればよい。
【実施例】
【0360】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
【0361】
以下に、本発明の要件を満たす実施例とそうでない比較例とを例示して、本発明の発光性膜及び有機エレクトロルミネッセンス素子について説明する。
【0362】
≪評価用発光性膜の作製≫
50mm×50mm、厚さ0.7mmの石英基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った後、この透明基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。真空蒸着装置の蒸着用るつぼの各々に、「ホスト化合物(以下、単に「ホスト化合物」ともいう。)」及び「青色リン光発光性化合物(以下、単に「リン光発光性化合物」ともいう。)」、並びに「青色蛍光発光性化合物(以下、単に「蛍光発光性化合物」ともいう。)」を、各々素子作製に最適の量となるように充填した。蒸着用るつぼはモリブデン性の抵抗加熱用材料で作製されたものを用いた。
真空蒸着装置内を真空度1×10−4Paまで減圧した後、ホスト化合物、リン光発光性化合物、蛍光発光性化合物が、それぞれ84体積%、15体積%、1体積%になるように、ホスト化合物は0.56Å/秒、リン光発光性化合物は0.1Å/秒、蛍光発光性化合物は0.06Å/秒の蒸着速度で蒸着させ、膜厚30nmの評価用発光性膜(発光性膜1−1〜1−25)を作製した。
【0363】
本実施例において使用した各種化合物は下記のとおりである。
【0364】
【化45】
【0365】
【化46】
【0366】
【化47】
【0367】
[実施例1]
実施例1では、リン光発光性化合物と蛍光発光性化合物を想定した化合物を使用し発光性膜1−1〜1−25を作製し、重なり積分値に対するPF/PDを観測した。また、本発明の発光性膜において、蛍光発光化合物由来の発光が発現し、色度(y値)の改善が可能であるか、PLQEの維持が可能かを確認した。
なお、比較例(発光性膜1−1)としては、蛍光発光性化合物の最短波長側の発光極大波長がリン光発光性化合物の最短波長側の発光極大波長よりも短波長側に存在する組み合わせのものを用いた。
なお、発光性膜1−1〜1−25の作製法は上記評価用発光性膜の作製の手順で作製した。また、リン光発光性化合物、蛍光発光性化合物は表1に記載のものを使用した。ホスト化合物は、下記のH1を使用した。
【0368】
【化48】
【0369】
≪評価≫
以下、発光性膜1−1〜1−25までを評価した。
評価の方法は下記のとおりである。なお、結果は表1に示すとおりである。
【0370】
≪リン光発光性化合物から蛍光発光性化合物へのエネルギー移動効率の算出≫
前記蛍光発光性化合物を添加する前後の発光性膜のτと、PLQEの変化より、上記数式(D)を用いて、各エネルギー移動効率PF及びPDを算出した。
【0371】
(発光減衰寿命τの測定)
上記数式(D)中の発光減衰寿命τについては、過渡PL特性を測定することによって求めた。過渡PL特性の測定には、小型蛍光寿命測定装置C11367−03(浜松ホトニクス社製)を用いた。減衰成分は、280nmのLEDを励起光源としたTCC900モードにて測定した。
【0372】
(絶対量子収率(PLQE)の測定)
絶対量子収率の測定は、絶対量子収率測定装置C9920−02(浜松ホトニクス社製)を用いた。なお、表1のPLQE(相対値)は、発光性膜1−1のPLQEを1としたときの、当該発光性膜1−1のPLQEに対する発光性膜1−1〜1−25までのPLQEの相対値である。
【0373】
(PF/PDの評価基準)
F/PDの評価は以下のとおりである。
○:PF/PDが0.5以上(最良、合格)
△:PF/PDが0.34以上、0.5未満(良、合格)
×:PF/PDが0.34未満(不良、不合格)
【0374】
<発光スペクトル、吸収スペクトルの測定>
以下のようにして、発光スペクトル、吸収スペクトルの測定を測定した。
なお、図8A〜8Eに、例として、発光性膜1−1〜1−5の発光スペクトル(図8A図8Eには、それぞれ、Dp−1*F−2、Dp−2*F−2、Dp−3*F−2、Dp−4*F−2、Dp−5*F−2と記載。)を示す。横軸は波長(nm)、縦軸は発光強度及び吸光度(いずれも任意単位)を示す。
【0375】
(発光スペクトルの測定)
発光性膜1−1〜1−25について、発光スペクトル、吸収スペクトルを計測した。
発光スペクトルの測定は、日立製のF−7000型分光蛍光光度計を用い、室温(300K)にて行った。また、吸収スペクトルの測定は、日立製のU−3300分光光度計を用い、室温(300K)にて行った。
【0376】
(吸収スペクトルの測定)
蛍光発光性化合物の吸収スペクトル(溶液スペクトル)の測定については、下記のようにして行った。
まず、発光性膜1−1〜1−25に含有される蛍光発光性化合物を、2−メチルテトラヒドロフラン(2m−THF)(安定剤なし)にそれぞれ溶解させて、濃度1.0×10−5mol/Lの溶液を得た。得られた溶液を、石英セル(10mm長四角セル)に入れて、分光光度計(HITACHI 分光光度計U−3000)を用いて、溶液の波長領域250〜500nmの範囲の吸光度を測定し、これを蛍光発光性化合物の吸収スペクトルとした(なお、液温は300Kであった。)。
【0377】
(色度(y値)の測定)
発光性膜1−1〜1−25まで及びリン光発光性化合物のみを含有する発光性膜の発光色について、「新編色彩科学ハンドブック」(日本色彩学会編、東京大学出版会、1985)の108頁の図4.16において、分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタ(株)製)で測定した結果をCIE色度座標に当てはめたときの色でy値を決定した。表1中の色度(相対値)とは、発光性膜1−1のy値を1としたときの、当該発光性膜1−1のy値に対する発光性膜1−1〜1−25までのy値の相対値である。なお、本発明においては、色度(相対値)が、小さくなるほど青みを増し色度がよいことを示す。
【0378】
(極大波長差)
各発光性膜に含有されるリン光発光性化合物と蛍光発光性化合物との極大波長差を求めた。計測方法は下記のとおりである。
まず、蛍光発光性化合物を含まず、ホスト化合物とリン光発光性化合物Dp−1〜Dp−7のいずれか一種を含む発光性膜Dp−1〜Dp−7を作製した。
次に、リン光発光性化合物を含まず、ホスト化合物と蛍光発光性化合物F−2〜F−6のいずれか一種を含む発光性膜F−2〜F−6を作製した。
なお、上記発光性膜Dp−1〜Dp−7は、蛍光発光性化合物の蒸着を行わない点(蛍光発光性化合物を0体積%とし、蛍光発光性化合物を減らした分(1体積%)はホスト化合物に変更した。)以外は、前記の「評価用発光性膜の作製」と同様の方法で作製を行った。
また、上記発光性膜F−2〜F−6は、リン光発光性化合物の蒸着を行わない点(リン光発光性化合物を0体積%とし、リン光発光性化合物を減らした分(15体積%)はホスト化合物に変更した。)以外は、前記の「評価用発光性膜の作製」と同様の方法で作製を行った。
上記発光性膜Dp−1〜Dp−7及びF−2〜F−6について、上述の発光スペクトル及び吸収スペクトルの測定を上記と同様の条件で行った。測定された各発光スペクトルにおいて、発光強度(発光ピーク強度)が極大となるときの波長のうち、最短波長側にあるものを発光極大波長とした。
上記のようにして求められた発光極大波長を、それぞれ、リン光発光性化合物Dp−1〜Dp−7及び蛍光発光性化合物F−2〜F−6の発光極大波長とした。
このリン光発光性化合物Dp−1〜Dp−7並びに蛍光発光性化合物F−2の発光極大波長から、発光性膜1−1〜1−25に含有される蛍光発光性化合物とリン光発光性化合物の発光極大波長の差を求めた。この差が正のとき、蛍光発光性化合物の発光極大波長のほうがが大きいことを示す。結果は表1に示すとおりである。
なお、発光性膜Dp−1〜Dp−5について、上記のようにして計測された発光スペクトルをリン光発光性化合物Dp−1〜Dp−5の発光スペクトルとして、図8A図8Eに記載した(図8A図8Eには、Dp−1〜Dp−5発光と記載。)。
また、発光性膜F−2について、上記のようにして計測された発光スペクトル及び吸収スペクトルを、蛍光発光性化合物F−2の発光スペクトル及び吸収スペクトルとして、図8A図8Eに記載した(図8A図8EにはF−2発光、F−2吸収と記載。)。
【0379】
(重なり積分値)
重なり積分値は、上記数式(OI)から求めた。表1中の値は比較例である発光性膜1−1の重なり積分を1としたときの相対値である。
【0380】
【表1】
【0381】
≪結果の検討≫
図8A〜8Eに、発光性膜1−1〜1−5までについて、測定された発光強度及び吸光度を示した。
上述のように、比較例である発光性膜1−1は、蛍光発光性化合物の最短波長側の極大発光波長が、リン光発光性化合物の最短波長側の極大発光波長よりも短波長側に存在する発光性化合物の組み合わせである(図8A参照。)。発光性膜1−1においては、リン光発光性化合物の発光スペクトルと蛍光発光性化合物の吸収スペクトルとの重なり積分値が小さく、フェルスター型エネルギー移動効率が小さいことから、PF/PDが0.1以下となっていた。
一方、発光性膜1−2〜1−5までは、蛍光発光性化合物の最短波長側の極大発光波長が、リン光発光性化合物の最短波長側の極大発光波長と同等又はより長波長側に存在する発光性化合物の組み合わせである(図8B〜8E参照。)。表1に示すように、発光性膜1−2〜1−5までにおいては、リン光発光性化合物の発光スペクトルと蛍光発光性化合物の吸収スペクトルの重なり積分値が大きく、PF/PDが短波側に存在する組み合わせと比較し大幅に改善されていることを確認した。
さらに、本発明である発光性膜1−2〜1−5では、比較例である発光性膜1−1に対し色度が良好になり、かつ、PQLEも向上することが示された。これにより、重なり積分値が大きくなるリン光発光性化合物と蛍光発光性化合物の組み合わせを使用するほうが、リン光発光性化合物から蛍光発光性化合物へのフェルスター型エネルギー移動が効率良く発現することを確認した。
【0382】
また、色度の改善や発光性の維持に関しては、リン光発光性化合物の種類の違いによる影響は少なく、蛍光発光性化合物の吸収波長との重なり積分値に相関して物性が改善されることを明らかにした。
更に、発光性膜1−2〜1−7と発光性膜1−8〜1−13との比較から、F−2に対し吸収波長のみ長波化したF−3を使用することで、重なり積分値が大きくなるためにフェルスター移動効率が向上し、色度改善と発光性(PLQE)の維持を可能なことを明らかにした。
【0383】
また、発光性膜1−2〜1−7と発光性膜1−14〜1−19との比較から、F−2に対し吸収波長のみ長波化したF−4を使用することで、重なり積分値が大きくなるためにフェルスター移動効率が向上し、色度改善と発光性(PLQE)の維持を可能なことを明らかにした。
また、F−4を使用した発光性膜1−14〜1−19においては、重なり積分値はF−3を使用した発光性膜1−8〜1−13よりも小さいものの、置換基が嵩高い(π平面の被覆率が高い)ことからデクスターエネルギー移動を抑制することで、発光性を高効率で維持できることを明らかにした。
【0384】
F−5はF−2〜F−4に対し、蛍光発光の発光・吸収波長が共に長波化しているため、発光性を高効率で維持することができることを明らかにした(発光性膜1−20〜1−22参照。)。ただ、色度改善に関しては蛍光発光色度も長波化しているために、F−2〜F−4を使用した発光性膜1−2〜1−19と比較しても、F−5を使用した発光性膜1−20〜1−22における色度改善の程度は蛍光発光性化合物の添加前後で大きく変化しなかった。
【0385】
F−2とは母核の異なるF−6を使用した発光性膜1−25においても、F−2〜F−5を使用した発光性膜1−2〜1−24と同様に、重なり積分値の大きさに応じた発光性の維持ができることを確認した。
【0386】
[実施例2]
次に、実施例2では、照明装置(有機エレクトロルミネッセンス素子)の素子寿命(半減寿命)について確認した。
【0387】
≪評価用照明装置の作製≫
(陽極の形成)
50mm×50mm、厚さ0.7mmのガラス基板(透明基板)上に、陽極としてITO(インジウムチンオキシド)を150nmの厚さで成膜し、パターニングを行った後、このITO透明電極を付けた透明基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。
【0388】
真空蒸着装置内の蒸着用の抵抗加熱ボートの各々に、各層の構成材料を、各々素子作製に最適の量を充填した。前記抵抗加熱ボートはモリブデン製又はタングステン製を用いた。
【0389】
(正孔注入層の形成)
真空度1×10−4Paまで減圧した後、HI−1の入った抵抗加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒でITO透明電極上に蒸着し、厚さ10nmの正孔注入層を形成した。
【0390】
【化49】
【0391】
(正孔輸送層の形成)
次いで、HT−1を蒸着速度1.0Å/秒で蒸着し、厚さ30nmの正孔輸送層を形成した。
【0392】
【化50】
【0393】
(発光層の形成)
次いで、ホスト化合物(H1)並びに表2に示す「リン光発光性化合物」及び「蛍光発光性化合物」(以下、これらを合わせて単に「ドーパント」ともいう。)の入った抵抗加熱ボートに通電して加熱し、ホスト化合物(H1)、ドーパントがそれぞれ84体積%、15体積%、1体積%になるように、それぞれ蒸着速度0.56Å/秒、0.1Å/秒、0.006Å/秒で正孔輸送層上に共蒸着し、厚さ30nmの発光層を形成した。
【0394】
(電子輸送層の形成)
次いで、発光層の上に電子輸送層として、第二電子輸送層及び第二電子輸送層を形成した。具体的には、HB−1を蒸着速度1.0Å/秒で蒸着し、厚さ30nmの第一電子輸送層を形成した。さらにその上に、ET−1を蒸着速度1.0Å/秒で蒸着し、厚さ30nmの第二電子輸送層を形成した。
【0395】
【化51】
【0396】
(陰極の形成)
その後、フッ化リチウムを厚さ0.5nmになるよう蒸着した後に、アルミニウムを厚さ100nmとなるよう蒸着して陰極を形成し、評価用の有機EL素子を作製した。
【0397】
有機EL素子の作製後、有機EL素子の非発光面を、純度99.999%以上の高純度窒素ガスの雰囲気下にてガラスケースで覆い、厚さ300μmのガラス基板を封止用基板として用いて、周囲にシール材としてエポキシ系光硬化型接着剤(東亞合成社製ラックストラックLC0629B)を適用し、これを前記陰極上に重ねて透明支持基板と密着させ、ガラス基板側からUV光を照射して、硬化させて、封止して、図6及び図7に示すような構成からなる評価用照明装置2−1〜2−21を作製した。
【0398】
≪評価≫
上記評価用照明装置に対し、以下の評価をし、結果を表2に示す。
なお、表2に記載の重なり積分値については、装置2−2の重なり積分値を1.0とする相対値とした他は、実施例1と同様の方法で評価した。
【0399】
≪発光効率の測定≫
発光効率の測定は、室温(25℃)で、2.5mA/cmの定電流密度条件下による点灯を行い、分光放射輝度計CS−2000(コニカミノルタ社製)を用いて、各評価用照明装置の発光輝度を測定し、当該電流値における発光効率(外部取り出し量子効率)を求めた。なお、表2には、発光効率として、装置2−2の発光効率を1としたときの、当該装置2−2の発光効率に対する発光性膜2−1〜2−21までの発光効率の相対値を記載した。
【0400】
≪半減寿命の評価≫
各評価用照明装置について、分光放射輝度計CS−2000を用いて輝度を測定し、測定した輝度が半減する時間(LT50)を半減寿命として求めた。駆動条件は、15mA/cmとなる電流値とした。
また、本発明用の各評価用照明装置(装置2−1〜2−21)について、蛍光発光性化合物を含有しない比較用照明装置2−1〜2−21を作製し、当該比較用照明装置の半減寿命を1.0とする相対値(半減寿命:相対値)を求めた。具体例を挙げて説明すると、表2に記載の半減寿命は、比較用照明装置2−1の半減値を1として装置2−1の半減寿命の相対値であり、比較用照明装置2−2を1として装置2−2の半減寿命の相対値である。
【0401】
(HOMOエネルギー準位及びLUMOエネルギー準位の計算方法)
蛍光発光性化合物又はリン光発光性化合物の集合体を構成する化合物の分子軌道計算による構造最適化及び電子密度分布の算出は、分子軌道計算用ソフトウェアとして、米国Gaussian社製のGaussian09(Revision C.01,M.J.Frisch,et al,Gaussian,Inc.,2010.)を用いて行った。
なお、F−2及びDp−1〜Dp−7のエネルギー準位及びLUMOエネルギー準位は、表2に示すとおりである。
【0402】
(y値の測定(色度))
各評価用装置及び上記比較用照明装置について、y値を測定した。なお、測定方法は、実施例2と同様の方法で行った。
【0403】
なお、表2において、色度(相対値)は、装置2−2のy値を1としたときの、当該装置2−2のy値に対する発光性膜2−1〜2−21までのy値の相対値である。
【0404】
【表2】
【0405】
≪結果の検討≫
まず、実施例1と同様に、発光スペクトル、吸収スペクトルの測定、重なり積分値の計算をしたところ、装置2−3〜2−21までは、青色リン光発光性化合物の発光スペクトルと青色蛍光発光性化合物の吸収スペクトルとが、重なりを有しており、かつ、数式(1)を満たし、青色蛍光発光性化合物に由来する発光が検出された。
リン光発光性化合物を含まない、蛍光発光性化合物とホスト化合物のみの発光層を用いた装置2−1に対し、リン光発光性化合物をドーパントとして用い、蛍光発性化合物を増感した素子を使用する装置2−3〜2−21は、高い発光効率であることが確認された。
また、蛍光発光性化合物の最短波長側の発光極大波長がリン光発光性化合物の最短波長側の発光極大波長よりも短波長側に存在する組み合わせのドーパントを含有する発光層を有する装置2−2では、リン光発光性化合物から蛍光発光性化合物へのデクスター型エネルギー移動による励起子失活の寄与が大きく、素子寿命(半減寿命)が蛍光発光性化合物を添加する前と比較し、低下する結果となった。
【0406】
一方、フェルスター型エネルギー移動効率を増強した、蛍光発光性化合物の最短波長側の発光極大波長が、リン光発光性化合物の最短波長側の発光極大波長よりも長波長側に存在する組み合わせのドーパントを含有する発光層を有する装置2−3〜2−21まででは、素子寿命(半減寿命)の改善とともに色度の改善を両立できたことを確認した。
その中でも特に、リン光発光性化合物と蛍光発光性化合物の、最高被占軌道(HOMO)におけるエネルギー準位がHOMOBFM<HOMOBPM又は最低空軌道(LUMO)におけるエネルギー準位がLUMOBFM>LUMOBPMの関係を満たす装置2−4の組み合わせであれば、高い発光効率かつ素子寿命の長い素子を作製できることを確認した。これは、蛍光発光性化合物上で直接再結合する確率が減るためである。
【0407】
さらに、装置2−4と2−5との比較から、リン光発光性化合物の構造が、中心金属に配位結合する配位子が、芳香族炭化水素環又は芳香族複素環である際に素子の素子寿命が大きく向上することを確認した。これは、Dp−4の様な反応性の高い配位子を有することで、励起子耐性が弱く、電界駆動した際に反応点となるためである。このため、蛍光発光性化合物の効果を引き出すためにも励起子耐性が高い、芳香族炭化水素環若しくは芳香族複素環を配位子に有するリン光発光性化合物が好ましいと考えられる。
【0408】
また、色度の改善や発光性の維持に関してはリン光発光性化合物の種類の影響は少なく、蛍光発光性化合物の吸収波長との重なり積分値に加え、HOMO−LUMO準位に相関して物性が改善されることを明らかにした。
【0409】
また、重なり積分値が大きくなる(例えば、装置2−9。)ことで、発光性の維持が可能となり、素子化した際にも発光効率の増大に加え、色度改善、ひいては素子寿命の長寿命化が可能になることを明らかにした。
【0410】
F−3を使用した装置2−9〜2−12に対し、F−4を使用した装置2−13〜2−16の重なり積分値は、若干小さいものの、置換基の嵩高さがリン光発光性化合物のT1から蛍光発光性化合物のT1へのデクスターエネルギー移動を抑制するだけでなく、蛍光発光性化合物上での直接再結合を抑制することができ、結果として発光効率はF−3に対してはすぐれたものとなる。しかし、物理的に蛍光発光性化合物とリン光発光性化合物との距離が離れるために、蛍光発光性化合物へのフェルスター移動量は、F−4を使用した場合、F−3を使用した場合と比較して少ない。このため、F−3を使用した場合のほうが、F−4を使用した場合よりも色度y値が優れた結果となる。
【0411】
置換基が全て同一ではないトリイソプロピルシリル(TIPS)が入った系においても、寿命の伸長を確認した。しかし、F−5を使用した場合、蛍光の励起子耐性が他の蛍光発光性化合物(例えば、F−3)と比較して芳しくなく、この結果、他の蛍光発光性化合物(例えば、F−2)を使用したほうが、F−5を使用するよりも寿命を向上させる効果がより良好である(装置2−7〜2−12、2−17−2−20参照。)。
【0412】
[実施例3]
≪評価用照明装置の作製≫
<正孔注入層までの形成>
実施例2の評価用照明装置の作製と同様にして正孔注入層までを形成した。
【0413】
<正孔輸送層の形成>
正孔注入層上に、以下のようにして正孔輸送層を形成した。
なお、発光層に隣接する層である正孔輸送層に、蛍光発光性化合物を添加しない場合(表3の「正孔輸送層への添加」において「無」。)及び正孔輸送層に蛍光発光性化合物を添加する場合(表3の「正孔輸送層への添加」において「有」。)について記載する。
【0414】
(正孔輸送層に蛍光発光性化合物を添加しない場合)
正孔注入層上に、HT−1を蒸着速度0.1Å/秒で蒸着し、厚さ25nmの正孔輸送層を形成した。
【0415】
(正孔輸送層に蛍光発光性化合物を添加する場合)
正孔注入層上に、HT−1を蒸着速度0.1Å/秒で蒸着し、蛍光発光性化合物を含有しない正孔輸送層を厚さ25nmで形成した。
次に、この蛍光発光性化合物を含有しない正孔輸送層の上に、正孔輸送層材料であるHT−1と表3に記載の蛍光発光性化合物とが97体積%、3体積%となるよう、蒸着速度0.6Å/秒、0.02Å/秒で、蛍光発光性化合物を含有した正孔輸送層を厚さ5nmになるよう共蒸着にて形成した。
【0416】
<発光層の形成>
次いで、上記ホスト化合物H1及び表3に示す「リン光発光性化合物」の入った抵抗加熱ボートに通電して加熱し、ホスト化合物H1、リン光発光性化合物が、それぞれ85体積%、15体積%、0.56Å/秒、0.1Å/秒で正孔輸送層上に、発光層を厚さ30nmとなるよう共蒸着した。
【0417】
<電子輸送層及び陰極の形成>
発光層に隣接する層である電子輸送層に、蛍光発光性化合物を添加しない場合(表3の電子輸送層への添加」において「無」。)及び電子輸送層に蛍光発光性化合物を添加する場合(表3の「電子輸送層への添加」において「有」。)について記載する。
【0418】
(電子輸送層に蛍光発光性化合物を添加しない場合)
発光層上に、実施例2の評価用照明装置の作製と同様にして第一電子輸送層、第二電子輸送層及び陰極を形成し、評価用の有機EL素子を作製し、評価用照明装置を作製した。
【0419】
(電子輸送層に蛍光発光性化合物を添加する場合)
発光層上に実施例2と同様の電子輸送性化合物と蛍光発光性化合物が97体積%、3体積%となるよう、0.6Å/秒、0.02Å/秒で共蒸着し厚さ5nmの蛍光発光性化合物を含有した電子輸送層を厚さ5nmとなるよう形成した。
その上に、実施例2と同様の電子輸送性化合物HB−1を蒸着速度1.0Å/秒で蒸着し、蛍光発光性化合物を含有しない電子輸送層を25nmの厚さとなるよう形成した。
【0420】
なお、比較例である装置3−1は、発光層に隣接する層に、蛍光発光性化合物が混合されていない装置である。
【0421】
上述のようにして作製された評価用照明装置である装置3−1〜3−4について、実施例2と同様にして、発光効率及び素子寿命(半減寿命)を評価した。なお、表3には、発光効率として、装置3−1の発光効率を1としたときの、当該装置3−1の発光効率に対する発光性膜3−1〜3−4までの発光効率の相対値を記載した。
【0422】
なお、加速係数、ロールオフの増大(J0について)については、下記のようにして求めた。また、表3には、加速係数、ロールオフの増大(J0について)についても装置3−1の値を1とした相対値を記載している。
【0423】
(加速係数)
2.5mA/cm、16.25mA/cmで電流駆動して、初期輝度が半減する時間から、これを累乗近似曲線で外装した際の乗数を加速係数とした。すなわち、加速係数とは、下記(E)式における半減寿命の加速係数nである。
1/t2=(L1/L2−n・・・(E)
[L1:電流密度2.5mA/cm印加時の初期輝度
2:電流密度16.25mA/cm印加時の初期輝度
1:輝度L1(低輝度・低電流2.5mA/cm)での素子寿命(輝度半減寿命)
2:輝度L2(高輝度・高電流16.25mA/cm)での素子寿命(輝度半減寿命)]
なお、輝度の測定には、分光放射輝度計CS−2000(コニカミノルタ(株)製)を用いた。
【0424】
(ロールオフの増大(J0について))
ロールオフの増大を評価するために、J0を以下のようにして求めた。まず、各装置について電流密度を増大させていき、最大となるEQEを計測した。当該最大のEQEの半分となるEQEになる電流密度を求め、これをJ0とした。
【0425】
【表3】
【0426】
≪結果の検討≫
発光層ではなく、隣接層に蛍光発光性化合物を添加することによって、EQEの低下を抑制しながら、半減寿命を向上させることを明らかにした。3−2と3−3で半減寿命の長寿命化に効果の差が発現することに関しては、発光層中の電荷再結合位置(発光中心)によるものと考えられる。本実施例では、発光層内における発光位置が電子輸送層側であり、正孔輸送層に蛍光発光性化合物を添加した3−3でエネルギー移動効率が高くなり、素子寿命が長寿命化する効果が表れたと考えられる。このように、発光層に隣接する層に蛍光発光性化合物を添加することでEQEの低下を抑制できる。
【0427】
また、リン光発光性化合物から蛍光発光性化合物フェルスター移動が十分可能な組み合わせである場合、隣接層に蛍光発光性化合物を添加した場合でも、発光層内の励起子の速やかな緩和が可能になるためロールオフ及び加速係数を改善することを明らかにした。
【0428】
[実施例4]
≪評価用照明装置の作製≫
(正孔注入層までの形成)
実施例2の評価用照明装置の作製と同様にして正孔注入層までを形成した。
【0429】
(正孔輸送層の形成)
次いで、HT−1を蒸着速度1.0Å/秒で蒸着し、厚さ25nmの正孔輸送層を形成した。
【0430】
(隣接する層の材料を含有する発光性膜(混合層)の形成)
次いで、ホスト化合物H1、表4に示す「リン光発光性化合物」及び「蛍光発光性化合物」の入った抵抗加熱ボートに通電して加熱し、HT−1(隣接する層である正孔輸送層の材料)、ホスト化合物H1、リン光発光性化合物及び蛍光発光性化合物が、それぞれ42体積%、42体積%、15体積%、1体積%になるように、それぞれ蒸着速度0.25Å/秒、0.25Å/秒、0.1Å/秒、0.003Å/秒で正孔輸送層上に、正孔輸送層と発光層の混合層(隣接する層の材料を含有する発光性膜)を5nm共蒸着した。
【0431】
(発光層の形成)
次いで、ホスト化合物H1、表4に示す「リン光発光性化合物」及び「蛍光発光性化合物」の入った抵抗加熱ボートに通電して加熱し、ホスト化合物H1、リン光発光性化合物及び蛍光発光性化合物がそれぞれ84体積%、15体積%、1体積%になるように、それぞれ蒸着速度0.5Å/秒、0.1Å/秒、0.003Å/秒で前記隣接層との混合層上に厚さ30nmの発光層を形成した。
なお、装置4−0については、ホスト化合物H1及び表4に示す「蛍光発光性化合物」の入った抵抗加熱ボートに通電して加熱し、ホスト化合物H1及び蛍光発光性化合物がそれぞれ97体積%、3体積%になるように、それぞれ蒸着速度0.64Å/秒、0.02Å/秒で前記隣接層との混合層上に厚さ30nmの発光層を形成した。
【0432】
(電子輸送層及び陰極の形成)
次いで、発光層上に、実施例2の評価用照明装置の作製と同様にして第一電子輸送層、第二電子輸送層及び陰極を形成し、評価用の有機EL素子を作製し、評価用照明装置を作製した。
また、比較例として、蛍光発光性化合物の最短波長側の発光極大波長がリン光発光性化合物の最短波長側の発光極大波長よりも短波長側に存在する組み合わせのものを用いた。
【0433】
装置4−0〜4−5について、実施例2と同様にして、発光効率及び半減寿命を評価した。なお、表4に記載の重なり積分値については、装置4−1の重なり積分値を1とする相対値とした他は、実施例1と同様の方法で評価した。
また、発光効率については、装置4−1の発光効率を1.0とする相対値とした他は、実施例2と同様の方法で評価した。
半減寿命については、実施例2と同様の方法で評価した。
【0434】
【表4】
【0435】
≪結果の検討≫
まず、実施例1と同様に、発光スペクトル、吸収スペクトルの測定、重なり積分値の計算をしたところ、装置4−2〜4−5までは、青色リン光発光性化合物の発光スペクトルと前記青色蛍光発光性化合物の吸収スペクトルとが、重なりを有しており、かつ、数式(1)を満たし、青色蛍光発光性化合物に由来する発光が検出された。
比較例4−1において、フェルスターエネルギー移動効率の悪いリン光発光性化合物と蛍光発光性化合物を含有する発光性膜に当該発光性膜に隣接する層の材料を含有させた際に、隣接する層(実施例4では、正孔輸送層)の材料HT−1の低T1への失活、若しくは正孔輸送層上での直接再結合によって、混合層を有さない装置と比較して、大幅に素子寿命が低下することを確認した。
一方、本発明である装置4−2〜4−5では、重なり積分値が十分大きく、リン光発光性化合物から蛍光発光性化合物のS1へのフェルスター型エネルギー移動が効率的に発現し、速やかに発光するため、発光性膜に隣接する層の材料を含有させた際に、発光効率の低下を抑制できたと考えられる。このように、素子寿命の維持や長寿命化に対し、重なり積分値が重要であることが分かる。
【0436】
[実施例5]
≪有機EL素子5−1の作製≫
以下のように、基材上に、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極を積層して封止し、ボトムエミッション型の有機EL素子を作製した。
【0437】
(基材の準備)
まず、ポリエチレンナフタレートフィルム(帝人デュポン社製、以下、PENと略記する。)の陽極を形成する側の全面に、特開2004−68143号公報に記載の構成の大気圧プラズマ放電処理装置を用いて、SiOxからなる無機物のガスバリアー層を厚さ500nmとなるように形成した。これにより、酸素透過度0.001mL/(m・24h)以下、水蒸気透過度0.001g/(m・24h)以下のガスバリアー性を有する可撓性の基材を作製した。
【0438】
(陽極の形成)
上記基材上に厚さ120nmのITO(インジウム・スズ酸化物)をスパッタ法により製膜し、フォトリソグラフィー法によりパターニングを行い、陽極を形成した。なお、パターンは発光領域の面積が5cm×5cmになるようなパターンとした。
【0439】
(正孔注入層の形成)
陽極を形成した基材をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。そして、陽極を形成した基材上に、特許第4509787号公報の実施例16と同様に調製したポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS)の分散液をイソプロピルアルコールで希釈した2質量%溶液をスピンコート法にて塗布、80℃で5分乾燥し、厚さ40nmの正孔注入層を形成した。
【0440】
(正孔輸送層の形成)
次に、正孔注入層を形成した基材を、窒素ガス(グレードG1)を用いた窒素雰囲気下に移し、下記組成の正孔輸送層形成用塗布液を用いて、スピンコート法にて塗布、130℃で30分乾燥し、厚さ30nmの正孔輸送層を形成した。
【0441】
〈正孔輸送層形成用塗布液〉
正孔輸送材料(化合物(HT−1))(重量平均分子量Mw=80000)
10質量部
クロロベンゼン 3000質量部
【0442】
(発光層の形成)
次に、正孔輸送層を形成した基材を、下記組成の発光層形成用塗布液を用い、スピンコート法にて塗布し、120℃で30分間乾燥し、厚さ50nmの発光層を形成した。
【0443】
〈発光層形成用塗布液〉
ホスト化合物H1 9質量部
青色蛍光発光性化合物F−2 1質量部
酢酸イソプロピル 2000質量部
【0444】
(ブロック層の形成)
次に、発光層を形成した基材を、下記組成のブロック層形成用塗布液を用い、スピンコート法にて塗布し、80℃で30分間乾燥し、厚さ10nmのブロック層(正孔阻止層)を形成した。
【0445】
〈ブロック層形成用塗布液〉
HS−1 2質量部
イソプロピルアルコール(IPA) 1500質量部
1H,1H,5H−オクタフルオロペンタノール(OFAO)
500質量部
【0446】
【化52】
【0447】
(電子輸送層の形成)
次に、ブロック層を形成した基材を、下記組成の電子輸送層形成用塗布液を用い、スピンコート法にて塗布し、80℃で30分間乾燥し、厚さ30nmの電子輸送層を形成した。
【0448】
〈電子輸送層形成用塗布液〉
ET−1 6質量部
2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール(TFPO)
2000質量部
【0449】
(電子注入層、陰極の形成)
続いて、基板を大気に曝露することなく真空蒸着装置へ取り付けた。また、モリブデン製抵抗加熱ボートにフッ化ナトリウム及びフッ化カリウムを入れたものを真空蒸着装置に取り付け、真空槽を4×10−5Paまで減圧した。その後、ボートに通電して加熱し、フッ化ナトリウムを0.02nm/秒で前記電子輸送層上に蒸着し、膜厚1nmの薄膜を形成した。同様に、フッ化カリウムを0.02nm/秒でフッ化ナトリウム薄膜上に蒸着し、厚さ1.5nmの電子注入層を形成した。
引き続き、アルミニウムを蒸着して厚さ100nmの陰極を形成した。
【0450】
(封止)
以上の工程により形成した積層体に対し、市販のロールラミネート装置を用いて封止基材を接着した。
封止基材として、可撓性を有する厚さ30μmのアルミニウム箔(東洋アルミニウム(株)製)に、ドライラミネーション用の2液反応型のウレタン系接着剤を用いて厚さ1.5μmの接着剤層を設け、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムをラミネートしたものを作製した。
【0451】
封止用接着剤として熱硬化性接着剤を、ディスペンサーを使用して封止基材のアルミニウム箔の接着面(つや面)に沿って厚さ20μmで均一に塗布した。これを100Pa以下の真空下で12時間乾燥させた。更に、その封止基材を露点温度−80℃以下、酸素濃度0.8ppmの窒素雰囲気下へ移動して、12時間以上乾燥させ、封止用接着剤の含水率が100ppm以下となるように調整した。
【0452】
熱硬化性接着剤としては下記の(A)〜(C)を混合したエポキシ系接着剤を用いた。
(A)ビスフェノールAジグリシジルエーテル(DGEBA)
(B)ジシアンジアミド(DICY)
(C)エポキシアダクト系硬化促進剤
【0453】
上記封止基材を上記積層体に対して密着・配置して、圧着ロールを用いて、圧着ロール温度100℃、圧力0.5MPa、装置速度0.3m/minの圧着条件で密着封止した。
以上のようにして、有機EL素子5−1を作製した。
【0454】
≪有機EL素子5−2〜5−5の作製≫
上記有機EL素子5−1の作製において、発光層形成用塗布液に含有される材料を表5に記載のとおりに変更した以外は同様にして、有機EL素子5−2〜5−5を作製した。なお、発光層形成用塗布液に複数種の溶媒が含有される場合には、総含有量が2000質量部となるように調整した。なお、発光層形成用塗布液に含有させるリン光発光性化合物の量は19体積%となるようにした。
【0455】
≪有機EL素子5−1〜5−5の評価≫
上記のように作製した有機EL素子5−1〜5−5について、発光効率、素子寿命(半減)の評価を行った。なお、表5に記載の重なり積分値については、装置5−1の重なり積分値を1.0とする相対値とした他は、実施例1と同様の方法で評価した。
また、発光効率については、装置5−1の発光効率を1.0とする相対値とした他は、実施例2と同様の方法で評価した。
半減寿命については、実施例2と同様の方法で評価した。
評価結果を表5に示す。
【0456】
【表5】
【0457】
≪検討の結果≫
まず、実施例1と同様に、発光スペクトル、吸収スペクトルの測定、重なり積分値の計算をしたところ、装置5−2〜5−5までは、青色リン光発光性化合物の発光スペクトルと青色蛍光発光性化合物の吸収スペクトルとが、重なりを有しており、かつ、数式(1)を満たし、青色蛍光発光性化合物に由来する発光が検出された。
表5に示すように、本発明に係る有機EL素子5−2〜5−5は、比較例の有機EL素子5−1に比べて、発光効率と素子の素子寿命が向上することが分かる。これにより、スピンコート法においても本発明のような重なり積分を十分に有しているリン光発光性化合物と蛍光発光性化合物の組み合わせにおいて素子寿命が長寿命化することが分かる。
【0458】
また、本実施形態に係る有機EL素子の製造方法は、主に塗布法を用いて各構成層を形成しているため、可撓性基板に対しても適用できるため、高い発光効率及び素子寿命の長い有機EL素子を低コストで製造可能である。
【0459】
[実施例6]
<基材の準備>
実施例5における基材の準備で、ガスバリアー層の厚さを適宜調整し、水蒸気透過度(WVTR)0.00001〜0.8g/(m・day)、酸素透過度(OTR)0.000012〜1mL/(m・day・atm)として、基材を作製した。
【0460】
<発光素子の作製>
実施例5における電子注入層を以下に変えた以外は実施例5と同様にして、照明装置5−11〜15、5−21〜25、5−31〜35、5−41〜45、5−51〜52を作製した。
【0461】
(電子注入層の形成)
実施例5におけるフッ化ナトリウムとフッ化カリウムをフッ化リチウムに変更し、厚さ1.0nmの電子注入層を形成した。
【0462】
<ダークスポット(DS)評価試験>
各照明装置5−11〜15、5−21〜25、5−31〜35、5−41〜45、5−51〜55を、85℃、85%RHの環境下で、500時間保存した。その後、各照明装置に、1mA/cmの電流を印加して発光させた。次に、100倍の光学顕微鏡(株式会社モリテックス製 MS−804、レンズMP−ZE25−200)で、照明装置の発光部の一部分を拡大して撮影した。次に、撮影画像を2mm四方に切り抜き、それぞれの画像について、ダークスポット発生の有無を観察した。観察結果より、発光面積に対するダークスポットの発生面積比率を求め、下記の基準に従って、ダークスポット耐性を評価した。結果は表6のDS評価に示した。
【0463】
5:ダークスポットの発生は全く認められない
4:ダークスポットの発生面積が、0.1%以上、1.0%未満である
3:ダークスポットの発生面積が、1.0%以上、3.0%未満である
2:ダークスポットの発生面積が、3.0%以上、6.0%未満である
1:ダークスポットの発生面積が、6.0%以上である
【0464】
<連続起動安定性(半減寿命)の評価>
各照明装置5−11〜15、5−21〜25、5−31〜35、5−41〜45、5−51〜55を、85℃、85%RHの環境下で、実施例5と同様にして発光効率と半減寿命を評価した。
【0465】
【表6】
【0466】
(発明の効果)
表6に示すとおり、重なり積分値を十分に有している本発明の照明装置5−12〜15、5−22〜25、5−32〜35、5−42〜45及び5−52は、フレキシブル基材のガスバリアー性が高くなくてもダークスポットの発生がおさえられることが明らかになった。また、上記の85℃、85%RHの環境下での発光効率と半減寿命の評価においても本発明の照明装置は良好な結果を得ることができた。すなわち、厚さを薄くすることで、低コストにしたバリアー基材でも実用上問題ないことが確認された。
【0467】
[実施例7]
≪有機EL素子6−1の作製≫
以下のように、基材上に、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極を積層して封止し、ボトムエミッション型の有機EL素子6−1を作製した。
【0468】
(基材の準備)
まず、実施例5と同様にして、基材上に、陽極を形成した。
次に、実施例5において、スピンコート法からインクジェット法に換えたほかは同様にして、正孔注入層を形成した。
【0469】
(正孔輸送層の形成)
次に、正孔注入層を形成した基材を、窒素ガス(グレードG1)を用いた窒素雰囲気下に移し、下記組成の正孔輸送層形成用塗布液を用いて、インクジェット法にて塗布、150℃で30分乾燥し、厚さ30nmの正孔輸送層を形成した。
【0470】
〈正孔輸送層形成用塗布液〉
正孔輸送材料(化合物(HT−1))(重量平均分子量Mw=80000)
10質量部
キシレン 3000質量部
【0471】
(発光層の形成)
次に、正孔輸送層を形成した基材を、下記組成の発光層形成用塗布液を用い、インクジェット法にて塗布し、130℃で30分間乾燥し、厚さ50nmの発光層を形成した。
【0472】
〈発光層形成用塗布液〉
ホスト化合物H1 9質量部
青色蛍光発光性化合物F−2 1質量部
酢酸ノルマルブチル 2000質量部
【0473】
(ブロック層の形成)
次に、発光層を形成した基材上に、実施例5のブロック層の形成、電子輸送層の形成においてスピンコート法の代わりにインクジェット法にしたほかは実施例5と同様にして、ブロック層の形成、電子輸送層の形成をした。
次に、電子注入層、陰極の形成、封止については、実施例5と同様にした。
以上のようにして、有機EL素子6−1を作製した。
【0474】
≪有機EL素子6−2〜6−5の作製≫
上記有機EL素子6−1の作製において、発光層形成用塗布液に含有される材料を表7に記載のとおりに変更した以外は同様にして、有機EL素子6−2〜6−5を作製した。なお、発光層形成用塗布液に複数種の溶媒が含有される場合には、総含有量が2000質量部となるように調整した。
【0475】
≪有機EL素子6−1〜6−5の評価≫
上記のように作製した有機EL素子6−1〜6−5について、実施例5と同様の評価を行った。その評価結果を表7に示す。
なお、表7に記載の重なり積分値については、装置6−1の重なり積分値を1.0とする相対値とした。
また、発光効率については、装置6−1の発光効率を1.0とする相対値とした。
【0476】
【表7】
【0477】
≪検討の結果≫
まず、実施例1と同様に、発光スペクトル、吸収スペクトルの測定、重なり積分値の計算をしたところ、装置6−2〜6−5までは、青色リン光発光性化合物の発光スペクトルと前記青色蛍光発光性化合物の吸収スペクトルとが、重なりを有しており、かつ、数式(1)を満たし、青色蛍光発光性化合物に由来する発光が検出された。
表7に示すように、本発明に係る有機EL素子6−2〜6−5は、比較例の有機EL素子6−1に比べて、素子寿命が向上することが分かる。また、リン光発光化合物のみよりも素子寿命が向上することが確認された。
【0478】
なお、実施例5及び実施例7に係る有機EL素子の製造方法においては、主にスピンコート法やインクジェット法などの塗布法を用いて各構成層を形成しているため、可撓性基板に対しても適用できるだけでなく、自由形状の発光デバイスを作製できることから汎用性の拡大と製造コストを低減できるといえる。
したがって、本発明の有機EL素子の製造方法によれば、可撓性基板にも適用可能であって、高発光効率及び長い素子寿命の有機EL素子を低コストで製造可能であるといえる。
【0479】
[実施例8]
実施例2の評価用照明装置の作製と同様にして評価用照明装置を形成した。なお、発光層に含有させるリン光発光性化合物の種類並びに蛍光発光性化合物の種類及び添加量は、表8のようにした。比較例7−1は、発光層に、蛍光発光性化合物を添加しなかった照明装置である。
なお、リン光発光性化合物の添加量は84体積%とし、蛍光発光性化合物とホスト化合物の合計の添加量は16体積%とした。
【0480】
[評価]
発光減衰寿命、加速係数、ロールオフの増大(J0について)については、上記と同様にして求めた。なお、各評価は、装置7−1の値を1.00とした相対値を求め、評価した。
【0481】
【表8】
【0482】
(まとめ)
表8から、蛍光発光性化合物の添加量を増大させるに従い、発光減衰寿命τが短くなり、ひいては加速係数が1に近づくことがわかる。
これは添加された蛍光発光性化合物が、発光層内で生成した励起子を即座に緩和可能になったことを意味し、高電流密度下での有機EL素子の駆動においても、低電流密度下での駆動に近しい状態で有機EL素子が駆動できていることを意味する。
また、ロールオフの指標であるJ0に関しても蛍光発光性化合物を添加したことにより、その値が大きくなり、ロールオフが抑制できていることを明らかにした。
【産業上の利用可能性】
【0483】
本発明の発光性膜は、発光効率、色度及び発光寿命に優れており、有機EL素子に適用し、表示デバイス、ディスプレイ、各種発光光源として用いることができる。
【符号の説明】
【0484】
1 ディスプレイ
3 画素
5 走査線
6 データ線
101 有機EL素子
102 ガラスカバー
105 陰極
106 有機EL層(発光ユニット)
107 透明電極付きガラス基板
108 窒素ガス
109 捕水剤
A 表示部
B 制御部
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
【国際調査報告】