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再表2018-97156有機エレクトロルミネッセンス素子及び有機材料用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2018年5月31日
【発行日】2019年10月17日
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネッセンス素子及び有機材料用組成物
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20190920BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20190920BHJP
【FI】
   H05B33/14 B
   C09K11/06 660
   C09K11/06 690
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】131
【出願番号】特願2018-552605(P2018-552605)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2017年11月22日
(31)【優先権主張番号】特願2016-228471(P2016-228471)
(32)【優先日】2016年11月25日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-76424(P2017-76424)
(32)【優先日】2017年4月7日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-158486(P2017-158486)
(32)【優先日】2017年8月21日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 優太
(72)【発明者】
【氏名】井上 暁
(72)【発明者】
【氏名】並川 威人
(72)【発明者】
【氏名】宮田 康生
(72)【発明者】
【氏名】田畑 顕一
(72)【発明者】
【氏名】井 宏元
【テーマコード(参考)】
3K107
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB02
3K107CC04
3K107CC21
3K107DD53
3K107DD64
3K107DD66
3K107DD67
3K107DD69
3K107FF00
3K107FF13
3K107FF19
(57)【要約】
本発明の課題は、高発光効率かつ高寿命で発光できる有機エレクトロルミネッセンス素子及び有機材料用組成物を提供することである。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、陽極、陰極及び当該陰極と当該陽極との間に備えられた一つ又は複数の有機機能層を含む有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記有機機能層が、リン光発光性金属錯体及び蛍光発光性化合物を含有し、当該リン光発光性金属錯体が、特定の一般式で表される構造を有する化合物であり、かつ、当該リン光発光性金属錯体が、特定の式を満たすコア・シェル型ドーパントであることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極、陰極及び当該陰極と当該陽極との間に備えられた一つ又は複数の有機機能層を含む有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記有機機能層が、リン光発光性金属錯体及び蛍光発光性化合物を含有し、
当該リン光発光性金属錯体が、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物であり、かつ、
当該リン光発光性金属錯体が、下記式(a)を満たすことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化1】
〔前記一般式(1)において、Mは、Ir又はPtを表す。A1、A2、B1及びB2は、それぞれ独立に炭素原子又は窒素原子を表す。環Z1は、A1及びA2と共に形成される6員の芳香族炭化水素環又は5員若しくは6員の芳香族複素環、又はこれらの環のうちの少なくとも一つを含む芳香族縮合環を表す。環Z2は、B1及びB2と共に形成される5員若しくは6員の芳香族複素環、又はこれらの環のうちの少なくとも一つを含む芳香族縮合環を表す。A1とMとの結合及びB1とMとの結合は、一方が配位結合であり、他方は共有結合を表す。環Z1及び環Z2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいが、下記一般式(2)で表される置換基を少なくとも一つ有する。環Z1及び環Z2の置換基が、結合することによって、縮環構造を形成していてもよく、環Z1と環Z2とで表される配位子同士が連結していてもよい。Lは、Mに配位したモノアニオン性の二座配位子を表し、置換基を有していてもよい。mは、0〜2の整数を表す。nは、1〜3の整数を表す。MがIrの場合のm+nは3であり、MがPtの場合のm+nは2である。m又はnが2以上のとき、環Z1と環Z2とで表される配位子又はLは各々同じでも異なっていてもよく、環Z1と環Z2とで表される配位子とLとは連結していてもよい。
一般式(2)
*−L′−(CR2n′−A
〔前記一般式(2)において、記号*は、前記一般式(1)における環Z1又は環Z2との連結箇所を表す。L′は、単結合又は連結基を表す。Rは、水素原子又は置換基を表す。n′は、3以上の整数を表す。複数のRは、同じでも異なっていてもよい。Aは、水素原子又は置換基を表す。〕
式(a):{Vall/Vcore}>2
〔前記式(a)において、Vallは、環Z1及び環Z2に結合する置換基を含めた前記一般式(1)で表される化学構造を有する化合物の分子体積を表す。ただし、MがIrの場合にはn=3及びm=0と仮定し、MがPtの場合にはn=2及びm=0と仮定する。Vcoreは、Vallの分子体積を表す前記化学構造から環Z1及び環Z2に結合する置換基を除き水素原子と置換した化学構造を有する化合物の分子体積を表す。ただし、環Z1と環Z2とで表される配位子が複数種存在する場合、前記の仮定で表される全ての場合において、Vall及びVcoreは、前記式(a)を満たす。〕
【請求項2】
前記一般式(2)におけるL′が、非共役連結基を表すことを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
前記一般式(1)における環Z1と環Z2とで表される配位子が、三つ以上の置換基を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
陽極、陰極及び当該陰極と当該陽極との間に備えられた一つ又は複数の有機機能層を含む有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記有機機能層が、リン光発光性金属錯体及び蛍光発光性化合物を含有し、
当該リン光発光性金属錯体が、下記一般式(3)〜(5)のいずれかで表される化学構造を有する化合物であり、かつ、
当該リン光発光性金属錯体が、下記式(b)を満たすことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化2】
〔前記一般式(3)〜(5)において、Mは、Ir又はPtを表す。A1〜A3及びB1〜B4は、それぞれ独立に炭素原子又は窒素原子を表す。A1とMとの結合及びB1とMとの結合は、一方が配位結合であり、他方は共有結合を表す。Lは、Mに配位したモノアニオン性の二座配位子を表し、置換基を有していてもよい。mは、0〜2の整数を表す。nは、1〜3の整数を表す。MがIrの場合のm+nは、3であり、MがPtの場合のm+nは、2である。m又はnが2以上のとき、環Z3と環Z4とで表される配位子、環Z5と環Z6とで表される配位子、環Z7と環Z8とで表される配位子又はLは、各々同じでも異なっていてもよく、これらの配位子とLとは互いに連結していてもよい。
前記一般式(3)において、環Z3は、A1及びA2と共に形成される5員の芳香族複素環又はこの環を含む芳香族縮合環を表す。環Z4は、B1〜B3と共に形成される5員の芳香族複素環又はこの環を含む芳香族縮合環を表す。R1は炭素数2以上の置換基を表す。環Z3及び環Z4はR1以外に置換基を有していてもよく、環Z3及び環Z4の置換基が結合することによって、縮環構造を形成していてもよく、環Z3と環Z4とで表される配位子同士が連結していてもよい。
前記一般式(4)において、環Z5は、A1〜A3と共に形成される6員の芳香族炭化水素環又は6員の芳香族複素環、又はこれらの環のうちの少なくとも一つを含む芳香族縮合環を表し、環Z6は、B1〜B3と共に形成される5員の芳香族複素環又はこの環を含む芳香族縮合環を表す。R2及びR3は、各々水素原子又は置換基を表し、少なくとも一方は炭素数2以上の置換基を表す。環Z5及び環Z6は、R2及びR3以外に置換基を有していてもよく、環Z5及び環Z6の置換基が結合することによって、縮環構造を形成していてもよく、環Z5と環Z6とで表される配位子同士が連結していてもよい。
前記一般式(5)において、環Z7は、A1及びA2と共に形成される6員の芳香族炭化水素環又は6員の芳香族複素環、又はこれらの環のうちの少なくとも一つを含む芳香族縮合環を表す。環Z8は、B1〜B4と共に形成される6員の芳香族炭化水素環又は6員の芳香族複素環、又はこれらの環のうちの少なくとも一つを含む芳香族縮合環を表す。R4及びR5は、それぞれ水素原子又は置換基を表し、少なくとも一方は炭素数2以上の置換基を表す。環Z7及び環Z8は、R4及びR5以外に置換基を有していてもよく、環Z7及び環Z8の置換基が結合することによって、縮環構造を形成していてもよく、環Z7と環Z8とで表される配位子同士が連結していてもよい。〕
式(b):{Vall/Vcore}>2
〔前記式(b)において、Vallは、環Z3〜環Z8に結合する置換基を含めた一般式(3)〜(5)で表される化学構造を有する化合物の分子体積を表す。ただし、MがIrの場合にはn=3、m=0と仮定し、MがPtの場合にはn=2、m=0と仮定する。Vcoreは、Vallの分子体積を表す前記化学構造から環Z3〜環Z8に結合する置換基を除き水素原子と置換した化学構造を有する化合物の分子体積を表す。ただし、環Z3と環Z4とで表される配位子、環Z5と環Z6とで表される配位子及び環Z7と環Z8とで表される配位子が複数種存在する場合、前記の仮定で表される全ての場合において、Vall及びVcoreは、前記式(b)を満たす。〕
【請求項5】
前記一般式(3)における環Z3と環Z4とで表される配位子、前記一般式(4)における環Z5と環Z6とで表される配位子又は前記一般式(5)における環Z7と環Z8とで表される配位子が、三つ以上の置換基を有することを特徴とする請求項4に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
前記リン光発光性金属錯体の発光スペクトルと前記蛍光発光性化合物の吸収スペクトルの間に重なりを有していることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
前記リン光発光性金属錯体及び前記蛍光発光性化合物が、下記式(c)又は式(d)の少なくとも一方を満たすことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
式(c)
P(HOMO)>FL(HOMO)
〔前記式(c)において、P(HOMO)は、リン光発光性金属錯体のHOMOエネルギー準位、FL(HOMO)は、蛍光発光性化合物のHOMOエネルギー準位を表す。〕
式(d)
P(LUMO)<FL(LUMO)
〔前記式(d)において、P(LUMO)は、リン光発光性金属錯体のLUMOエネルギー準位、FL(LUMO)は、蛍光発光性化合物のLUMOエネルギー準位を表す。〕
【請求項8】
JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された水蒸気透過度が0.001〜1g/(m・day)の範囲内で、かつJIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が0.001〜1mL/(m・day)の範囲内のガスバリアー層を有することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項9】
リン光発光性金属錯体及び蛍光発光性化合物を含有する有機材料用組成物であって、
当該リン光発光性金属錯体が、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物であり、かつ、
当該リン光発光性金属錯体が、下記式(a)を満たすことを特徴とする有機材料用組成物。
【化3】
〔前記一般式(1)において、Mは、Ir又はPtを表す。A1、A2、B1及びB2は、それぞれ独立に炭素原子又は窒素原子を表す。環Z1は、A1及びA2と共に形成される6員の芳香族炭化水素環又は5員若しくは6員の芳香族複素環、又はこれらの環のうちの少なくとも一つを含む芳香族縮合環を表す。環Z2は、B1及びB2と共に形成される5員若しくは6員の芳香族複素環、又はこれらの環のうちの少なくとも一つを含む芳香族縮合環を表す。A1とMとの結合及びB1とMとの結合は、一方が配位結合であり、他方は共有結合を表す。環Z1及び環Z2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいが、下記一般式(2)で表される置換基を少なくとも一つ有する。環Z1及び環Z2の置換基が、結合することによって、縮環構造を形成していてもよく、環Z1と環Z2とで表される配位子同士が連結していてもよい。Lは、Mに配位したモノアニオン性の二座配位子を表し、置換基を有していてもよい。mは、0〜2の整数を表す。nは、1〜3の整数を表す。MがIrの場合のm+nは3であり、MがPtの場合のm+nは2である。m又はnが2以上のとき、環Z1と環Z2とで表される配位子又はLは各々同じでも異なっていてもよく、環Z1と環Z2とで表される配位子とLとは連結していてもよい。
一般式(2)
*−L′−(CR2n′−A
〔前記一般式(2)において、記号*は、前記一般式(1)における環Z1又は環Z2との連結箇所を表す。L′は、単結合又は連結基を表す。Rは、水素原子又は置換基を表す。n′は、3以上の整数を表す。複数のRは、同じでも異なっていてもよい。Aは、水素原子又は置換基を表す。〕
式(a):{Vall/Vcore}>2
〔前記式(a)において、Vallは、環Z1及び環Z2に結合する置換基を含めた前記一般式(1)で表される化学構造を有する化合物の分子体積を表す。ただし、MがIrの場合にはn=3及びm=0と仮定し、MがPtの場合にはn=2及びm=0と仮定する。Vcoreは、Vallの分子体積を表す前記化学構造から環Z1及び環Z2に結合する置換基を除き水素原子と置換した化学構造を有する化合物の分子体積を表す。ただし、環Z1と環Z2とで表される配位子が複数種存在する場合、前記の仮定で表される全ての場合において、Vall及びVcoreは、前記式(a)を満たす。〕
【請求項10】
リン光発光性金属錯体及び蛍光発光性化合物を含有する有機材料用組成物であって、
当該リン光発光性金属錯体が、下記一般式(3)〜(5)のいずれかで表される化学構造を有する化合物であり、かつ、
当該リン光発光性金属錯体が、下記式(b)を満たすことを特徴とする有機材料用組成物。
【化4】
〔前記一般式(3)〜(5)において、Mは、Ir又はPtを表す。A1〜A3及びB1〜B4は、それぞれ独立に炭素原子又は窒素原子を表す。A1とMとの結合及びB1とMとの結合は、一方が配位結合であり、他方は共有結合を表す。Lは、Mに配位したモノアニオン性の二座配位子を表し、置換基を有していてもよい。mは、0〜2の整数を表す。nは、1〜3の整数を表す。MがIrの場合のm+nは、3であり、MがPtの場合のm+nは、2である。m又はnが2以上のとき、環Z3と環Z4とで表される配位子、環Z5と環Z6とで表される配位子、環Z7と環Z8とで表される配位子又はLは、各々同じでも異なっていてもよく、これらの配位子とLとは互いに連結していてもよい。
前記一般式(3)において、環Z3は、A1及びA2と共に形成される5員の芳香族複素環又はこの環を含む芳香族縮合環を表す。環Z4は、B1〜B3と共に形成される5員の芳香族複素環又はこの環を含む芳香族縮合環を表す。R1は炭素数2以上の置換基を表す。環Z3及び環Z4はR1以外に置換基を有していてもよく、環Z3及び環Z4の置換基が結合することによって、縮環構造を形成していてもよく、環Z3と環Z4とで表される配位子同士が連結していてもよい。
前記一般式(4)において、環Z5は、A1〜A3と共に形成される6員の芳香族炭化水素環又は6員の芳香族複素環、又はこれらの環のうちの少なくとも一つを含む芳香族縮合環を表し、環Z6は、B1〜B3と共に形成される5員の芳香族複素環又はこの環を含む芳香族縮合環を表す。R2及びR3は、各々水素原子又は置換基を表し、少なくとも一方は炭素数2以上の置換基を表す。環Z5及び環Z6は、R2及びR3以外に置換基を有していてもよく、環Z5及び環Z6の置換基が結合することによって、縮環構造を形成していてもよく、環Z5と環Z6とで表される配位子同士が連結していてもよい。
前記一般式(5)において、環Z7は、A1及びA2と共に形成される6員の芳香族炭化水素環又は6員の芳香族複素環、又はこれらの環のうちの少なくとも一つを含む芳香族縮合環を表す。環Z8は、B1〜B4と共に形成される6員の芳香族炭化水素環又は6員の芳香族複素環、又はこれらの環のうちの少なくとも一つを含む芳香族縮合環を表す。R4及びR5は、それぞれ水素原子又は置換基を表し、少なくとも一方は炭素数2以上の置換基を表す。環Z7及び環Z8は、R4及びR5以外に置換基を有していてもよく、環Z7及び環Z8の置換基が結合することによって、縮環構造を形成していてもよく、環Z7と環Z8とで表される配位子同士が連結していてもよい。〕
式(b):{Vall/Vcore}>2
〔前記式(b)において、Vallは、環Z3〜環Z8に結合する置換基を含めた一般式(3)〜(5)で表される化学構造を有する化合物の分子体積を表す。ただし、MがIrの場合にはn=3、m=0と仮定し、MがPtの場合にはn=2、m=0と仮定する。Vcoreは、Vallの分子体積を表す前記化学構造から環Z3〜環Z8に結合する置換基を除き水素原子と置換した化学構造を有する化合物の分子体積を表す。ただし、環Z3と環Z4とで表される配位子、環Z5と環Z6とで表される配位子及び環Z7と環Z8とで表される配位子が複数種存在する場合、前記の仮定で表される全ての場合において、Vall及びVcoreは、前記式(b)を満たす。〕
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機エレクトロルミネッセンス素子及び有機材料用組成物に関し、より詳しくは、高効率、高寿命で発光する有機エレクトロルミネッセンス素子及び有機材料用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」ともいう。)は、発光性化合物を含有する発光層を陰極と陽極で挟んだ構成を有し、発光層に電子及び正孔を注入して、再結合させることにより励起子(エキシトン)を生成させ、このエキシトンが失活する際の光の放出(蛍光・リン光)を利用して発光する素子である。数V〜数十V程度の電圧で発光が可能であり、更に自己発光型であるために視野角が広く、視認性が高い。また、薄膜型の完全固体素子であるために省スペース、携帯性等の観点から注目されている。今後の有機EL素子としては、更に低消費電力で、効率よく高輝度に発光する有機EL素子の開発が望まれている。
蛍光発光性化合物は、最低三重項励起状態(以下「T1」と略記する。)からの発光を
行うことができないため、電界駆動させ蛍光発光性化合物で電子と正孔を再結合した際、生成する75%の3重項励起子は、無放射失活(熱失活)で浪費されるため、発光効率に問題を抱えている。一方で、IrやPtといった重原子を有する金属錯体は、重原子効果によって一重項励起状態から三重項励起状態への本来禁制であるスピン反転が可能であり、原理的には最大100%の内部量子効率を実現し得る。そのため、高輝度化の観点から、発光材料としては蛍光発光性化合物より発光効率の優れるリン光発光性化合物が着目されている。しかしながら、特に青色リン光発光性化合物に関しては、寿命及び色純度の点で満足できるレベルのものは見いだされていない。
【0003】
そこで、リン光発光性化合物(特にリン光発光性金属錯体)と蛍光発光性化合物とを共存させて発光させ、高発光効率と高寿命を両立させる試みがなされている。
【0004】
例えば、白色発光素子では、青色蛍光発光性化合物と緑色リン光発光性金属錯体、赤色リン光発光性化合物とを共存させて光らせる素子が多い。しかし、リン光発光性金属錯体のT1から青色蛍光発光性化合物のT1準位へエネルギー移動をし、青色蛍光発光性化合物のT1から熱失活が生じるため、高効率・高寿命の発光が難しいという問題があった(図1参照。)。
【0005】
また、色純度が良く高寿命の蛍光発光性化合物を高効率発光させる試みがなされている。例えば、リン光発光性金属錯体と蛍光発光性化合物とを共存させ、リン光発光性化合物のT1から、蛍光発光性化合物の最低一重項励起状態(以下「S1」と略記する)へエネルギー移動させ蛍光発光性化合物のS1から蛍光発光させる(すなわち、リン光発光性金属錯体を蛍光増感剤として用いる)ことで、高効率で蛍光発光させる手段が提案されている(例えば、特許文献1及び非特許文献1参照。)。
【0006】
しかしながら、リン光発光性金属錯体と蛍光発光性化合物とを共存させ、リン光発光性金属錯体を蛍光増感剤として用いて蛍光発光させる有機EL素子は、青色光源も含めた全光源がリン光発光性である素子に比較すると高効率化はいまだ充分とはいえない。その原因として、リン光発光性金属錯体のT1から蛍光発光性化合物のT1へデクスター型のエネルギー移動をし、蛍光発光性化合物のT1から熱失活してしまうことが原因として挙げられる(図2参照。)。
【0007】
すなわち、リン光発光性金属錯体と蛍光発光性化合物のそれぞれから発光させる場合及びリン光発光性金属錯体を、蛍光発光性化合物からの蛍光発光の増感剤として使用する場合のいずれにおいても、高効率発光を低下させている原因は、リン光発光性金属錯体のT1から蛍光発光性化合物のT1へのデクスター型のエネルギー移動と、それに伴う蛍光発光性化合物のT1からの熱失活であった。
【0008】
これらの問題点について、さらに詳細に説明する。リン光発光性金属錯体は、リン光の励起子寿命(τ)が数μs〜数100μs程度であり、原理上、蛍光発光性化合物の蛍光寿命と比較して2〜3オーダー長くなっている。
【0009】
そのため、リン光発光性金属錯体と蛍光発光性化合物とを共存させた場合には、リン光発光性金属錯体のT1から蛍光発光性化合物の最低三重項励起状態にデクスター型のエネルギー移動を引き起こしやすい。
【0010】
例えば、図1に示すように、緑色リン光発光性金属錯体と青色蛍光発光性化合物とを併用した場合には、緑色リン光発光性金属錯体のT1から青色蛍光発光性化合物のT1にデクスター型のエネルギー移動をし、蛍光発光性化合物のT1から熱失活してしまう。その結果、緑色リン光発光性金属錯体の緑色リン光発光効率の低下を引き起こすという問題があった。なお、この場合には、緑色リン光発光性金属錯体のT1よりエネルギー準位の高い青色蛍光発光性化合物の最低一重項励起状態(以下「S1」ともいう。)にはフェルスター型のエネルギー移動は生じない。すなわち蛍光増感が無い。
【0011】
次に、図2に示すように、リン光発光性金属錯体を蛍光増感剤として用いた場合には、リン光発光性金属錯体のT1から蛍光発光性化合物のS1にフェルスター型のエネルギー移動する(蛍光増感する)のと並行して、蛍光発光性化合物の最低三重項励起状態にもデクスター型のエネルギー移動を引き起こしやすい。結果、蛍光発光性化合物のT1励起子は発光せず熱失活を引き起こすため、発光効率の低下を引き起こしていた。
【0012】
また、通常リン光発光性金属錯体の励起子寿命は蛍光発光性化合物の蛍光寿命に対し十分長いため、リン光発光性金属錯体上で生成した励起子は、電界駆動経時に生成され蓄積した消光物質にエネルギー移動しやすくなる。その結果、消光物質からの熱失活を生じさせてしまうため、素子駆動経時での輝度低下を生じる。このようにして、有機EL素子の発光強度が低下するため、リン光発光性金属錯体を蛍光増感剤として用いた場合には、結果的に有機EL素子を低寿命化させてしまうという問題を有する(図3参照。)。
【0013】
ここで、リン光発光性金属錯体から消光物質へのエネルギー移動による消光現象は、下記に示すStern−Volmerの式(数式(SV))によって説明することができる。
【0014】
【数1】
【0015】
(前記数式(SV)中、PL(with Quencher)は消光物質存在下における発光強度、PL0(without Quencher)は消光物質不存在下における発光強度、Kqは発光材料から消光物質へのエネルギー移動速度、[Q](=Kd×t)は消光物質濃度、Kdは凝集・分解等による消光物質の生成速度、tは光又は電流による積算励起時間、τ0は消光物質が存在しない場合の発光材料のリン光寿命である。)
数式(SV)から明らかなように、リン光金属錯体はその長い励起子寿命から、消光物質へのエネルギー移動が生じやすい。さらに、特に青色リン光発光性金属錯体では、三重項励起状態の準位が高いためにドーパントの発光スペクトルと消光物質の吸収スペクトルとに重なりが生じ易く、エネルギー移動速度(Kq)が大きくなっている。そのため、青色リン光発光性金属錯体は原理的に消光が起き易く、増感剤として用いると高寿命化に対して問題がある。
また、リン光金属錯体のリン光寿命の長さは、当該リン光金属錯体上の励起子が滞留する長さを意味し、特に高電流密度下での素子駆動において、つまりは励起状態となる分子が多く存在するようになると、低電流密度では問題にならなかった、発光性を低下させる要因として知られるTTA(Triplet−Triplet Annihilation)が発生しやすくなり、ひいては素子の輝度半減寿命(以下、「半減寿命」ともいう。)の大幅な低下が引き起こされる。これはロールオフJ0や加速係数で評価され、高励起子密度下で駆動した際にも低励起子密度下で駆動した状態と同様な発光寿命を示す場合、加速係数は1となり、駆動条件に関わらず輻射失活できていることを意味し、J0値が大きければ電流駆動条件によらず発光性を維持できことを意味する。
なお、J0とは、有機EL素子において、電流密度を増大させて最大となるEQEの半分の値となるEQEになる電流密度をいう。
また、加速係数とは、下記(E)式中のnである。
1/t2=(L1/L2−n・・・(E)
[L1:電流密度2.5mA/cm印加時の初期輝度
2:電流密度16.25mA/cm印加時の初期輝度
1:輝度L1(低輝度・低電流2.5mA/cm)での素子の輝度半減寿命
2:輝度L2(高輝度・高電流16.25mA/cm)での素子の輝度半減寿命]
【0016】
また、最近ではリン光発光性金属錯体以外の蛍光発光増感剤、例えば熱活性化遅延蛍光(以下、TADFと略記する。)化合物をアシスト剤として用い、高効率で蛍光発光させるという提案がなされている(例えば特許文献2参照。)。
【0017】
しかし、TADF化合物はリン光発光性金属錯体よりもさらに長い励起子寿命を有することから、増感剤として用いた場合には、消光物質などを経由して熱失活を生じさせやすく、高寿命化に問題を有する。
【0018】
以上の背景から、TADF化合物よりも、消光物質などによる熱失活を生じさせにくい高い励起子耐性を有するリン光発光性金属錯体を用いて、高発光効率かつ高寿命で発光させる技術の提案が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特許4571359号公報
【特許文献2】特開2015−144224号公報
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】Journal of Physics D:Applied Physics.Vol.41(2008) 125108
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、高発光効率かつ高寿命で発光できる有機エレクトロルミネッセンス素子及び有機材料用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、特定のリン光発光性金属錯体と、蛍光発光性化合物とを有機機能層に含有する有機エレクトロルミネッセンス素子により、高発光効率かつ高寿命で発光できる有機エレクトロルミネッセンス素子を提供できることを見いだし本発明に至った。
【0023】
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0024】
1.陽極、陰極及び当該陰極と当該陽極との間に備えられた一つ又は複数の有機機能層を含む有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記有機機能層が、リン光発光性金属錯体及び蛍光発光性化合物を含有し、当該リン光発光性金属錯体が、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物であり、かつ、当該リン光発光性金属錯体が、下記式(a)を満たすことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0025】
【化1】
【0026】
〔前記一般式(1)において、Mは、Ir又はPtを表す。A1、A2、B1及びB2は、それぞれ独立に炭素原子又は窒素原子を表す。環Z1は、A1及びA2と共に形成される6員の芳香族炭化水素環又は5員若しくは6員の芳香族複素環、又はこれらの環のうちの少なくとも一つを含む芳香族縮合環を表す。環Z2は、B1及びB2と共に形成される5員若しくは6員の芳香族複素環、又はこれらの環のうちの少なくとも一つを含む芳香族縮合環を表す。A1とMとの結合及びB1とMとの結合は、一方が配位結合であり、他方は共有結合を表す。環Z1及び環Z2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいが、下記一般式(2)で表される置換基を少なくとも一つ有する。環Z1及び環Z2の置換基が、結合することによって、縮環構造を形成していてもよく、環Z1と環Z2とで表される配位子同士が連結していてもよい。Lは、Mに配位したモノアニオン性の二座配位子を表し、置換基を有していてもよい。mは、0〜2の整数を表す。nは、1〜3の整数を表す。MがIrの場合のm+nは3であり、MがPtの場合のm+nは2である。m又はnが2以上のとき、環Z1と環Z2とで表される配位子又はLは各々同じでも異なっていてもよく、環Z1と環Z2とで表される配位子とLとは連結していてもよい。
【0027】
一般式(2)
*−L′−(CR2n′−A
〔前記一般式(2)において、記号*は、前記一般式(1)における環Z1又は環Z2との連結箇所を表す。L′は、単結合又は連結基を表す。Rは、水素原子又は置換基を表す。n′は、3以上の整数を表す。複数のRは、同じでも異なっていてもよい。Aは、水素原子又は置換基を表す。〕
【0028】
式(a):{Vall/Vcore}>2
〔前記式(a)において、Vallは、環Z1及び環Z2に結合する置換基を含めた前記一般式(1)で表される化学構造を有する化合物の分子体積を表す。ただし、MがIrの場合にはn=3及びm=0と仮定し、MがPtの場合にはn=2及びm=0と仮定する。Vcoreは、Vallの分子体積を表す前記化学構造から環Z1及び環Z2に結合する置換基を除き
水素原子と置換した化学構造を有する化合物の分子体積を表す。ただし、環Z1と環Z2とで表される配位子が複数種存在する場合、前記の仮定で表される全ての場合において、Vall及びVcoreは、前記式(a)を満たす。〕
【0029】
2.前記一般式(2)におけるL′が、非共役連結基を表すことを特徴とする第1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0030】
3.前記一般式(1)における環Z1と環Z2とで表される配位子が、三つ以上の置換基を有することを特徴とする第1項又は第2項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0031】
4.陽極、陰極及び当該陰極と当該陽極との間に備えられた一つ又は複数の有機機能層を含む有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記有機機能層が、リン光発光性金属錯体及び蛍光発光性化合物を含有し、当該リン光発光性金属錯体が、下記一般式(3)〜(5)のいずれかで表される化学構造を有する化合物であり、かつ、当該リン光発光性金属錯体が、下記式(b)を満たすことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0032】
【化2】
【0033】
〔前記一般式(3)〜(5)において、Mは、Ir又はPtを表す。A1〜A3及びB1〜B4は、それぞれ独立に炭素原子又は窒素原子を表す。A1とMとの結合及びB1とMとの結合は、一方が配位結合であり、他方は共有結合を表す。Lは、Mに配位したモノアニオン性の二座配位子を表し、置換基を有していてもよい。mは、0〜2の整数を表す。nは、1〜3の整数を表す。MがIrの場合のm+nは、3であり、MがPtの場合のm+nは、2である。m又はnが2以上のとき、環Z3と環Z4とで表される配位子、環Z5と環Z6とで表される配位子、環Z7と環Z8とで表される配位子又はLは、各々同じでも異なっていてもよく、これらの配位子とLとは互いに連結していてもよい。
【0034】
前記一般式(3)において、環Z3は、A1及びA2と共に形成される5員の芳香族複素環又はこの環を含む芳香族縮合環を表す。環Z4は、B1〜B3と共に形成される5員の芳香族複素環又はこの環を含む芳香族縮合環を表す。R1は炭素数2以上の置換基を表す。環Z3及び環Z4はR1以外に置換基を有していてもよく、環Z3及び環Z4の置換基が結合することによって、縮環構造を形成していてもよく、環Z3と環Z4とで表される配位子同士が連結していてもよい。
【0035】
前記一般式(4)において、環Z5は、A1〜A3と共に形成される6員の芳香族炭化水素環又は6員の芳香族複素環、又はこれらの環のうちの少なくとも一つを含む芳香族縮合環を表し、環Z6は、B1〜B3と共に形成される5員の芳香族複素環又はこの環を含む芳香族縮合環を表す。R2及びR3は、各々水素原子又は置換基を表し、少なくとも一方は炭素数2以上の置換基を表す。環Z5及び環Z6は、R2及びR3以外に置換基を有していてもよく、環Z5及び環Z6の置換基が結合することによって、縮環構造を形成していてもよく、環Z5と環Z6とで表される配位子同士が連結していてもよい。
【0036】
前記一般式(5)において、環Z7は、A1及びA2と共に形成される6員の芳香族炭化水素環又は6員の芳香族複素環、又はこれらの環のうちの少なくとも一つを含む芳香族縮合環を表す。環Z8は、B1〜B4と共に形成される6員の芳香族炭化水素環又は6員の芳香族複素環、又はこれらの環のうちの少なくとも一つを含む芳香族縮合環を表す。R4及びR5は、それぞれ水素原子又は置換基を表し、少なくとも一方は炭素数2以上の置換基を表す。環Z7及び環Z8は、R4及びR5以外に置換基を有していてもよく、環Z7及び環Z8の置換基が結合することによって、縮環構造を形成していてもよく、環Z7と環Z8とで表される配位子同士が連結していてもよい。〕
式(b):{Vall/Vcore}>2
〔前記式(b)において、Vallは、環Z3〜環Z8に結合する置換基を含めた一般式(3)〜(5)で表される化学構造を有する化合物の分子体積を表す。ただし、MがIrの場合にはn=3、m=0と仮定し、MがPtの場合にはn=2、m=0と仮定する。Vcoreは、Vallの分子体積を表す前記化学構造から環Z3〜環Z8に結合する置換基を除き水素原子と置換した化学構造を有する化合物の分子体積を表す。ただし、環Z3と環Z4とで表される配位子、環Z5と環Z6とで表される配位子及び環Z7と環Z8とで表される配位子が複数種存在する場合、前記の仮定で表される全ての場合において、Vall及びVcoreは、前記式(b)を満たす。〕
【0037】
5.前記一般式(3)における環Z3と環Z4とで表される配位子、前記一般式(4)における環Z5と環Z6とで表される配位子又は前記一般式(5)における環Z7と環Z8とで表される配位子が、三つ以上の置換基を有することを特徴とする第4項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0038】
6.前記リン光発光性金属錯体の発光スペクトルと前記蛍光発光性化合物の吸収スペクトルの間に重なりを有していることを特徴とする第1項から第5項のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0039】
7.前記リン光発光性金属錯体及び前記蛍光発光性化合物が、下記式(c)又は式(d)の少なくとも一方を満たすことを特徴とする第1項から第6項のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
式(c)
P(HOMO)>FL(HOMO)
〔前記式(c)において、P(HOMO)は、リン光発光性金属錯体のHOMOエネルギー準位、FL(HOMO)は、蛍光発光性化合物のHOMOエネルギー準位を表す。〕
式(d)
P(LUMO)<FL(LUMO)
〔前記式(d)において、P(LUMO)は、リン光発光性金属錯体のLUMOエネルギー準位、FL(LUMO)は、蛍光発光性化合物のLUMOエネルギー準位を表す。〕
【0040】
8.JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された水蒸気透過度が0.001〜1g/(m・day)の範囲内で、かつJIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が0.001〜1mL/(m・day)の範囲内のガスバリアー層を有することを特徴とする第1項から第7項のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0041】
9.リン光発光性金属錯体及び蛍光発光性化合物を含有する有機材料用組成物であって、
当該リン光発光性金属錯体が、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物であり、かつ、
当該リン光発光性金属錯体が、下記式(a)を満たすことを特徴とする有機材料用組成物。
【0042】
【化3】
〔前記一般式(1)において、Mは、Ir又はPtを表す。A1、A2、B1及びB2は、それぞれ独立に炭素原子又は窒素原子を表す。環Z1は、A1及びA2と共に形成される6員の芳香族炭化水素環又は5員若しくは6員の芳香族複素環、又はこれらの環のうちの少なくとも一つを含む芳香族縮合環を表す。環Z2は、B1及びB2と共に形成される5員若しくは6員の芳香族複素環、又はこれらの環のうちの少なくとも一つを含む芳香族縮合環を表す。A1とMとの結合及びB1とMとの結合は、一方が配位結合であり、他方は共有結合を表す。環Z1及び環Z2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいが、下記一般式(2)で表される置換基を少なくとも一つ有する。環Z1及び環Z2の置換基が、結合することによって、縮環構造を形成していてもよく、環Z1と環Z2とで表される配位子同士が連結していてもよい。Lは、Mに配位したモノアニオン性の二座配位子を表し、置換基を有していてもよい。mは、0〜2の整数を表す。nは、1〜3の整数を表す。MがIrの場合のm+nは3であり、MがPtの場合のm+nは2である。m又はnが2以上のとき、環Z1と環Z2とで表される配位子又はLは各々同じでも異なっていてもよく、環Z1と環Z2とで表される配位子とLとは連結していてもよい。
一般式(2)
*−L′−(CR2n′−A
〔前記一般式(2)において、記号*は、前記一般式(1)における環Z1又は環Z2との連結箇所を表す。L′は、単結合又は連結基を表す。Rは、水素原子又は置換基を表す。n′は、3以上の整数を表す。複数のRは、同じでも異なっていてもよい。Aは、水素原子又は置換基を表す。〕
式(a):{Vall/Vcore}>2
〔前記式(a)において、Vallは、環Z1及び環Z2に結合する置換基を含めた前記一般式(1)で表される化学構造を有する化合物の分子体積を表す。ただし、MがIrの場合にはn=3及びm=0と仮定し、MがPtの場合にはn=2及びm=0と仮定する。Vcoreは、Vallの分子体積を表す前記化学構造から環Z1及び環Z2に結合する置換基を除き水素原子と置換した化学構造を有する化合物の分子体積を表す。ただし、環Z1と環Z2とで表される配位子が複数種存在する場合、前記の仮定で表される全ての場合において、Vall及びVcoreは、前記式(a)を満たす。〕
【0043】
10.リン光発光性金属錯体及び蛍光発光性化合物を含有する有機材料用組成物であって、
当該リン光発光性金属錯体が、下記一般式(3)〜(5)のいずれかで表される化学構造を有する化合物であり、かつ、
当該リン光発光性金属錯体が、下記式(b)を満たすことを特徴とする有機材料用組成物。
【0044】
【化4】
〔前記一般式(3)〜(5)において、Mは、Ir又はPtを表す。A1〜A3及びB1〜B4は、それぞれ独立に炭素原子又は窒素原子を表す。A1とMとの結合及びB1とMとの結合は、一方が配位結合であり、他方は共有結合を表す。Lは、Mに配位したモノアニオン性の二座配位子を表し、置換基を有していてもよい。mは、0〜2の整数を表す。nは、1〜3の整数を表す。MがIrの場合のm+nは、3であり、MがPtの場合のm+nは、2である。m又はnが2以上のとき、環Z3と環Z4とで表される配位子、環Z5と環Z6とで表される配位子、環Z7と環Z8とで表される配位子又はLは、各々同じでも異なっていてもよく、これらの配位子とLとは互いに連結していてもよい。
前記一般式(3)において、環Z3は、A1及びA2と共に形成される5員の芳香族複素環又はこの環を含む芳香族縮合環を表す。環Z4は、B1〜B3と共に形成される5員の芳香族複素環又はこの環を含む芳香族縮合環を表す。R1は炭素数2以上の置換基を表す。環Z3及び環Z4はR1以外に置換基を有していてもよく、環Z3及び環Z4の置換基が結合することによって、縮環構造を形成していてもよく、環Z3と環Z4とで表される配位子同士が連結していてもよい。
前記一般式(4)において、環Z5は、A1〜A3と共に形成される6員の芳香族炭化水素環又は6員の芳香族複素環、又はこれらの環のうちの少なくとも一つを含む芳香族縮合環を表し、環Z6は、B1〜B3と共に形成される5員の芳香族複素環又はこの環を含む芳香族縮合環を表す。R2及びR3は、各々水素原子又は置換基を表し、少なくとも一方は炭素数2以上の置換基を表す。環Z5及び環Z6は、R2及びR3以外に置換基を有していてもよく、環Z5及び環Z6の置換基が結合することによって、縮環構造を形成していてもよく、環Z5と環Z6とで表される配位子同士が連結していてもよい。
前記一般式(5)において、環Z7は、A1及びA2と共に形成される6員の芳香族炭化水素環又は6員の芳香族複素環、又はこれらの環のうちの少なくとも一つを含む芳香族縮合環を表す。環Z8は、B1〜B4と共に形成される6員の芳香族炭化水素環又は6員の芳香族複素環、又はこれらの環のうちの少なくとも一つを含む芳香族縮合環を表す。R4及びR5は、それぞれ水素原子又は置換基を表し、少なくとも一方は炭素数2以上の置換基を表す。環Z7及び環Z8は、R4及びR5以外に置換基を有していてもよく、環Z7及び環Z8の置換基が結合することによって、縮環構造を形成していてもよく、環Z7と環Z8とで表される配位子同士が連結していてもよい。〕
式(b):{Vall/Vcore}>2
〔前記式(b)において、Vallは、環Z3〜環Z8に結合する置換基を含めた一般式(3)〜(5)で表される化学構造を有する化合物の分子体積を表す。ただし、MがIrの場合にはn=3、m=0と仮定し、MがPtの場合にはn=2、m=0と仮定する。Vcoreは、Vallの分子体積を表す前記化学構造から環Z3〜環Z8に結合する置換基を除き水素原子と置換した化学構造を有する化合物の分子体積を表す。ただし、環Z3と環Z4とで表される配位子、環Z5と環Z6とで表される配位子及び環Z7と環Z8とで表される配位子が複数種存在する場合、前記の仮定で表される全ての場合において、Vall及びVcoreは、前記式(b)を満たす。〕
【発明の効果】
【0045】
本発明の上記手段により、リン光発光性金属錯体と蛍光発光性化合物とが含有される発光層において高発光効率かつ高寿命で発光(リン光発光及び蛍光発光)できる有機エレクトロルミネッセンス素子及び有機材料用組成物を提供することができる。また、より好ましい効果としては、リン光発光性金属錯体により蛍光発光性化合物からの蛍光発光を増加(蛍光増感)できるエレクトロルミネッセンス素子を提供することができる。
【0046】
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
【0047】
まず、リン光発光性金属錯体からリン光発光させる場合について推察する。
<リン光発光性金属錯体からのリン光発光効率低下>
図1に示すように、緑色リン光発光性金属錯体と青色蛍光発光性化合物とを併用した場合には、緑色リン光発光性金属錯体のT1から青色蛍光発光性化合物のT1にデクスター型のエネルギー移動をし、蛍光発光性化合物のT1から熱失活してしまう。結果、緑色リン光発光性金属錯体からの緑色リン光発光の効率低下を引き起こす
<リン光発光性金属錯体からのリン光発光効率低下の抑制>
リン光発光効率低下を抑制し、高効率で蛍光発光させるためには、効率低下を引き起こすリン光発光性金属錯体のT1から蛍光発光性化合物のT1へのデクスター型エネルギー移動を経由した熱失活を抑制することで達成することができる。そこで本発明者らは、リン光発光性金属錯体として、コア部とシェル部とを備えるドーパント(以下、「コア・シェル型ドーパント」ともいう)を用いることとした。
【0048】
図4に示すように、コア・シェル型ドーパント10は、コア部11の周囲にシェル部12を備えている。よって、コア・シェル型ドーパント10は、通常のドーパント20と比較して、発光中心であるコア部11と蛍光発光性化合物13との物理的な距離を設けることができる。
【0049】
なお、デクスター型エネルギー移動は、距離依存性が大きく化合物間距離が大きいとエネルギー移動しにくくなる。一方フェルスター型エネルギー移動は距離依存性が小さく化合物間距離が大きくてもエネルギー移動は減少しにくい。
【0050】
その結果、図5に示すように、エネルギー移動の距離依存性が大きいデクスター型エネルギー移動を抑制し、高効率でリン光発光をさせることが可能となる。
【0051】
つぎに、リン光発光性金属錯体を蛍光発光の増感剤として用い蛍光発光性化合物から蛍光発光させる場合について推察する。
【0052】
<リン光発光性金属錯体による蛍光増感の発現>
リン光発光性金属錯体による蛍光増感は、図2に示すようにリン光発光性金属錯体のT1から蛍光発光性化合物のS1へのフェルスター型エネルギー移動を経由し、蛍光発光性化合物が蛍光発光することで引き起こる。このフェルスター型のエネルギー移動は、発光性金属錯体の発光スペクトルと蛍光発光性化合物の吸収スペクトルの間に重なりを有しているときに生じやすい。したがって、本発明の効果を出すためには、発光性金属錯体、蛍光発光性化合物が前記条件を満たすことが好ましい。
【0053】
<高効率蛍光発光の発現機構>
リン光発光性金属錯体を増感剤として用い、従来よりも高効率で蛍光発光させるためには、効率低下を引き起こすリン光発光性金属錯体のT1から蛍光発光性化合物のT1へのデクスター型エネルギー移動を経由した熱失活を抑制することで達成することができる。
【0054】
そこで本発明者らは、リン光発光性金属錯体として、コア・シェル型ドーパントを用いることとした。
【0055】
なお、デクスター型エネルギー移動は、距離依存性が大きく化合物間距離が大きいとエネルギー移動しにくくなる。一方フェルスター型エネルギー移動は距離依存性が小さく化合物間距離が大きくてもエネルギー移動は減少しにくい。
【0056】
その結果、図6に示すように、エネルギー移動の距離依存性が大きいデクスター型エネルギー移動を優先的に抑制し、高効率で蛍光発光させることが可能となる。
【0057】
<高発光効率・高寿命蛍光発光の同時発現機構>
リン光発光性金属錯体を増感剤として用い、従来よりも高効率、高寿命で蛍光発光させるためには、寿命低下を引き起こす増感剤から消光物質へのエネルギー移動を抑制することも重要である。この課題もコア・シェル型ドーパントを増感剤として用いることで解決することができる。すなわち、図7に示すようにコア・シェル型ドーパントを用いると、蛍光発光性化合物と同時に駆動経時で生成する消光物質との物理的距離も離すことができる。
【0058】
その結果、消光物質へのデクスター移動による失活(数式(SV)中のKq)を抑制できる。したがって、駆動経時で消光物質が生成しても、熱失活が生じにくい有機EL素子を得ることができる。
加えて、リン光発光性化合物単体では成し遂げることのできなかった超高速な励起子排出により、高電流密度下で駆動させた場合にもロールオフが起きづらく、ひいては、高電流密度下での駆動においても、低電流密度下での駆動状況と近しい、つまりは加速係数の増大を抑えた(すなわち、加速係数nが1に近い)素子を提供できる。
【0059】
このようにして従来よりも高寿命、高効率の発光素子を作製することができるものと推察している。
【0060】
なお、消光物質のS1へのフェルスター型エネルギー移動での消光は、蛍光発光性化合物のS1へのフェルスター型エネルギー移動と競争関係にある。
【0061】
したがって、蛍光発光性化合物のS1へのフェルスター型エネルギー移動を優先して起こすことで、消光物質による失活をさらに抑制することが可能であると推察している。
【0062】
例えば、リン光発光性金属錯体の発光スペクトルと蛍光発光性化合物の吸収スペクトルの間の重なりを、より大きくすることにより、蛍光発光性化合物のS1へのフェルスター
型エネルギー移動を優先して生じさせ、さらに高発光効率かつ高寿命で蛍光発光させることができるものと推察している。
【0063】
また、消光物質による失活の抑制は、消光物質である水や酸素に対する耐性を向上させることになる。この結果、本願発明に係るガスバリアー層においては、従来採用されているような高いガスバリアー性を必要としない。従来は、例えば、フレキシブルな有機EL素子の信頼性を確保するには、フレキシブルな基板に対し、ガスバリアー性の高いガスバリアー層を有することが必要であり、コストを高くする一因となっていた。本発明に係る発光材料は水や酸素に対する耐性があるため、ガスバリアー性の高いガスバリアー層を必要とせず、この結果、ガスバリアー性の低いガスバリアー層を採用した場合であっても実用に耐えることができ、ひいては、コストを抑えることができる。
本発明に係るガスバリアー層の性能としては、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された水蒸気透過度(WVTR)が0.001〜1g/(m・day)で、かつJIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度(OTR)が0.001〜1mL/(m・day・atm)のガスバリアー性を有することが好ましく、従来のような高いガスバリアー性、例えばWVTRが1.0×10−5g/(m・day)以下のガスバリアー性を有していなくとも実用に耐えられる。本発明に係るガスバリアー層の性能は、さらに好ましくはWVTRが0.01〜1g/(m・day)の範囲内、OTRが0.01〜1mL/(m・day・atm)の範囲内である。本発明のガスバリアー層は、有機EL素子において、基材上に形成され若しくは封止部材として、又はその両方の態様で備えられていればよく、有機EL素子の形態により任意に設定できる。
【0064】
以下に、本発明の有機EL素子と従来の有機EL素子との違いについて、図8A及び図8Bを用いて更に説明する。
(1)低電流密度下駆動時
発光層内にできる励起子量は少ない。
そのため、リン光発光性化合物とホスト化合物を用いた従来技術であっても生成した励起子はTTAなど相互作用し無輻射失活することは少ない。
【0065】
(2)TTAなどによる発光性低減抑制
発光層内にできる励起子量は多い。
そのため、従来技術では励起子排出能がμ秒と低いため、TTAなどの相互作用により無輻射失活が発現する(図8A参照。)。
一方、本発明では、生成した励起子は速やかに基底状態へと輻射失活可能であるためTTAが起こりづらく発光性を維持することができる(図8B参照。)。そのため、低電流密度下駆動と近しい状態で発光可能であり、加速係数は1に近くなる。
【0066】
(3)再結合位置による発光性低減抑制
高電流密度下などでの駆動により、キャリアバランスが崩れHTL及びETLのいずれかの界面近くで発光してしまう場合、従来技術では(2)同様TTAなどの相互作用による無輻射失活過程を引き起こす(図8A参照。)。一方、本発明では、再結合位置は従来技術同様界面に寄ってしまった際にも、フェルスターエネルギー移動により蛍光発光性化合物へとエネルギー移動が可能であるため、従来技術よりも発光領域を広く使うことができ、励起子密度の緩和が可能となる(図8B参照。)。加えて、蛍光発光性化合物へとエネルギー移動することで励起子滞留時間を大幅に短寿命化できるため、更に無輻射失活を引き起こしにくくなる。
【0067】
(4)素子駆動中の発光位置変動による発光性低減抑制
初期状態では理想の発光位置で再結合していた場合でも、素子駆動中に通電や駆動の熱により膜質が変動し、キャリアバランスが変わることで、上記(3)で述べたような発光性が低減することがある(図8A参照。)。本発明では、上記(3)で述べたように、駆動中に再結合位置が変動した際にも発光領域を広く使うことができるだけでなく、励起子の排出を速やかに行うことが可能であるために、駆動中の再結合位置の変動に起因して発光性が低減することの抑制にも大きく効果を発現する(図8B参照。)。
【図面の簡単な説明】
【0068】
図1】従来の緑色発光性金属錯体と、青色蛍光発光性化合物とを併用した場合におけるエネルギー準位を示す図(蛍光増感が無い場合)
図2】従来のリン光発光性金属錯体を用いて蛍光増感する場合におけるリン光発光性金属錯体と蛍光発光性化合物とのエネルギー準位を示す図
図3】従来のリン光発光性金属錯体を用いて蛍光増感する場合におけるリン光発光性金属錯体と蛍光発光性化合物、消光物質とのエネルギー準位を示す図
図4】コア・シェル型ドーパントと蛍光発光性化合物との関係及び通常のドーパント(リン光発光性金属錯体)と蛍光発光性化合物との関係を説明する概念図
図5】緑色発光性コア・シェル型ドーパントと青色蛍光発光性化合物とを併用した場合におけるエネルギー準位を示す図(蛍光増感が無い場合)
図6】コア・シェル型ドーパントを用いて蛍光増感する場合における、コア・シェル型ドーパントと蛍光発光性化合物とのエネルギー準位を示す図
図7】コア・シェル型ドーパントを用いて蛍光増感する場合における、コア・シェル型ドーパントと蛍光発光性化合物、消光物質とのエネルギー準位を示す図
図8A】従来の有機EL素子の発光層内における発光を説明する概略図
図8B】本発明に係る有機EL素子の発光層内における発光を説明する概略図
図9】本発明の有機EL素子を用いた表示装置の一例を示した概略斜視図
図10図9に示す表示部Aの構成の一例を示した概略斜視図
図11】本発明の有機EL素子を用いた照明装置の一例を示した概略斜視図
図12】本発明の有機EL素子を用いた照明装置の一例を示した概略断面図
図13】本発明の可撓性有機EL素子を用いた照明装置の一例を示した概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0069】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、陽極、陰極及び当該陰極と当該陽極との間に備えられた一つ又は複数の有機機能層を含む有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記有機機能層が、リン光発光性金属錯体及び蛍光発光性化合物を含有し、当該リン光発光性金属錯体が、前記一般式(1)で表される構造を有する化合物であり、かつ、当該リン光発光性金属錯体が、前記式(a)を満たすことを特徴とする。この特徴は、下記各実施態様に共通する又は対応する技術的特徴である。
【0070】
実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記一般式(2)におけるL′が、非共役連結基を表すことが、高発光効率かつ高寿命で発光できる有機エレクトロルミネッセンス素子が得られる観点から、好ましい。また高発光効率かつ高寿命で蛍光増感して蛍光発光できるという観点でも好ましい。
【0071】
さらに、前記一般式(1)における環Z1と環Z2とで表される配位子が、三つ以上の置換基を有することが好ましい。これにより、高発光効率かつ高寿命で蛍光発光できる有機エレクトロルミネッセンス素子が得られる。また高発光効率かつ高寿命で蛍光増感して蛍光発光できるという観点でも好ましい。
【0072】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、陽極、陰極及び当該陰極と当該陽極との間に備えられた一つ又は複数の有機機能層を含む有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記有機機能層が、リン光発光性金属錯体及び蛍光発光性化合物を含有し、当該リン光発光性金属錯体が、前記一般式(3)〜(5)のいずれかで表される化学構造を有する化合物であり、かつ、当該リン光発光性金属錯体が、前記式(b)を満たしている。
【0073】
実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記一般式(3)における環Z3
環Z4とで表される配位子、前記一般式(4)における環Z5と環Z6とで表される配位子
又は前記一般式(5)における環Z7と環Z8とで表される配位子が、三つ以上の置換基を有することが、高発光効率かつ高寿命で発光できる有機エレクトロルミネッセンス素子が得られることから、好ましい。また高発光効率かつ高寿命で蛍光増感して蛍光発光できるという観点でも好ましい。
【0074】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、前記リン光発光性金属錯体の発光スペクトルと前記蛍光発光性化合物の吸収スペクトルの間に重なりを有していることが、高発光効率かつ高寿命で蛍光発光できる有機エレクトロルミネッセンス素子が得られるという観点から、好ましい。
【0075】
また、有機エレクトロルミネッセンス素子は、前記リン光発光性金属錯体及び前記蛍光発光性化合物が、前記式(c)又は式(d)の少なくとも一方を満たすことが、高発光効率かつ高寿命で発光できる有機エレクトロルミネッセンス素子が得られるという観点から、好ましい。また高発光効率かつ高寿命で蛍光増感して蛍光発光できるという観点でも好ましい。
【0076】
本発明の実施態様としては、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された水蒸気透過度が0.001〜1g/(m・day)の範囲内で、かつJIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が0.001〜1mL/(m・day)までの範囲内のガスバリアー層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であることができる。
このように、本発明によれば、このようなガスバリアー性のあまり高くないガスバリアー層を有する場合でも実用に耐えることができるため、コストを抑えることができる。
本発明の有機材料用組成物は、リン光発光性金属錯体及び蛍光発光性化合物を含有する有機材料用組成物であって、当該リン光発光性金属錯体が、前記一般式(1)で表される構造を有する化合物であり、かつ、当該リン光発光性金属錯体が、前記式(a)を満たしている。
また、本発明の有機材料用組成物は、リン光発光性金属錯体及び蛍光発光性化合物を含有する有機材料用組成物であって、当該リン光発光性金属錯体が、前記一般式(3)〜(5)のいずれかで表される化学構造を有する化合物であり、かつ、当該リン光発光性金属錯体が、前記式(b)を満たしている。
上記有機材料用組成物は、有機機能層に含有させることができる。
【0077】
以下、本発明とその構成要素及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
≪本発明の第1の実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の概要≫
本発明の第1の実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子は、陽極、陰極及び当該陰極と当該陽極との間に備えられた一つ又は複数の有機機能層を含む有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記有機機能層が、リン光発光性金属錯体及び蛍光発光性化合物を含有し、当該リン光発光性金属錯体が、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物であり、かつ、当該リン光発光性金属錯体が、下記式(a)を満たすことを特徴とする。
【0078】
【化5】
【0079】
〔前記一般式(1)において、Mは、Ir又はPtを表す。A1、A2、B1及びB2は、それぞれ独立に炭素原子又は窒素原子を表す。環Z1は、A1及びA2と共に形成される6員の芳香族炭化水素環又は5員若しくは6員の芳香族複素環、又はこれらの環のうちの少なくとも一つを含む芳香族縮合環を表す。環Z2は、B1及びB2と共に形成される5員若しくは6員の芳香族複素環、又はこれらの環のうちの少なくとも一つを含む芳香族縮合環を表す。A1とMとの結合及びB1とMとの結合は、一方が配位結合であり、他方は共有結合を表す。環Z1及び環Z2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいが、下記一般式(2)で表される置換基を少なくとも一つ有する。環Z1及び環Z2の置換基が、結合することによって、縮環構造を形成していてもよく、環Z1と環Z2とで表される配位子同士が連結していてもよい。Lは、Mに配位したモノアニオン性の二座配位子を表し、置換基を有していてもよい。mは、0〜2の整数を表す。nは、1〜3の整数を表す。MがIrの場合のm+nは3であり、MがPtの場合のm+nは2である。m又はnが2以上のとき、環Z1と環Z2とで表される配位子又はLは各々同じでも異なっていてもよく、環Z1と環Z2とで表される配位子とLとは連結していてもよい。
【0080】
一般式(2)
*−L′−(CR2n′−A
〔前記一般式(2)において、記号*は、前記一般式(1)における環Z1又は環Z2との連結箇所を表す。L′は、単結合又は連結基を表す。Rは、水素原子又は置換基を表す。n′は、3以上の整数を表す。複数のRは、同じでも異なっていてもよい。Aは、水素原子又は置換基を表す。〕
【0081】
式(a):{Vall/Vcore}>2
〔前記式(a)において、Vallは、環Z1及び環Z2に結合する置換基を含めた前記一般式(1)で表される化学構造を有する化合物の分子体積を表す。ただし、MがIrの場合にはn=3及びm=0と仮定し、MがPtの場合にはn=2及びm=0と仮定する。Vcoreは、Vallの分子体積を表す前記化学構造から環Z1及び環Z2に結合する置換基を除き水素原子と置換した化学構造を有する化合物の分子体積を表す。ただし、環Z1と環Z2とで表される配位子が複数種存在する場合、前記の仮定で表される全ての場合において、Vall及びVcoreは、前記式(a)を満たす。〕
【0082】
<第1の実施形態に係るリン光発光性金属錯体>
本発明の第1の実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子は、リン光発光性金属錯体を含有することを特徴とする。また、当該リン光発光性金属錯体が、前記一般式(1)で表される化学構造を有する化合物であることを特徴とする。
(第1の実施形態に係るリン光発光性金属錯体の化学構造)
第1の実施形態に係るリン光発光性金属錯体は、前記一般式(1)で表される化学構造を有する。
【0083】
第1の実施形態に係るリン光発光性金属錯体は、前記一般式(2)で表される炭素数3以上の直鎖アルキレン構造を環Z1又は環Z2に有することによって、発光中心であるコア部と消光物質との間に物理的距離を設け、消光物質へのエネルギーの移動を抑制することができる。
【0084】
消光物質へのエネルギーの移動をより抑制する観点から、前記一般式(2)のn′は4以上の整数が好ましく、6以上の整数がより好ましい。
【0085】
第1の実施形態に係るリン光発光性金属錯体は、前記一般式(2)のL′が非共役連結基であることが好ましい。L′を非共役連結基とすることで、HOMO(最高被占分子軌道)部及びLUMO(最低空分子軌道)部が中心金属、環Z及び環Zに局在化しやすくなる。
【0086】
すなわち、シェル部を形成する置換基部分へのHOMO部及びLUMO部の非局在化を抑制することができる。その結果、発光中心であるコア部と消光物質との間に物理的距離を十分に設けることができる。したがって、高発光効率かつ高寿命で発光できる効果をより大きくできる。また高発光効率かつ高寿命で蛍光増感して蛍光発光できるという効果もより大きくできる。
【0087】
ここで、非共役連結基とは、連結基が単結合(一重結合ともいう。)と二重結合の繰り返しによって表記できない場合又は連結基を構成する芳香環同士の共役が立体的に切断されている場合を意味する。例えば、アルキレン基、シクロアルキレン基、エーテル基、チオエーテル基等である。また、芳香環に置換した置換基による立体障害等により、二つの芳香環の平面構造が直交した化学構造を有する場合も、芳香環同士の共役が立体的に切断されているとする。
第1の実施形態に係るリン光発光性金属錯体は、一般式(1)における環Z1と環Z2とで表される配位子が、三つ以上の置換基を有することが、高発光効率かつ高寿命で発光できる観点から好ましい。nが2以上の場合、各配位子が三つ以上の置換基を有することが、好ましい。
【0088】
このような構成とすることにより、発光中心であるコア部に対して3次元的にシェル部を形成することができ、全方位において消光物質との物理的距離を設けることができる。
【0089】
前記一般式(1)における置換基(一般式(2)で表される置換基以外)、一般式(2)のRの置換基、Aの置換基としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、芳香族炭化水素基(芳香族炭化水素環基、芳香族炭素環基、アリール基等ともいい、例えば、フェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基等)、芳香族複素環基(例えば、ピリジル基、ピラジル基、ピリミジニル基、トリアジル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、トリアゾリル基(例えば、1,2,4−トリアゾール−1−イル基、1,2,3−トリアゾール−1−イル基等)、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、フラザニル基、チエニル基、キノリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、アザカルバゾリル基(前記カルバゾリル基のカルバゾール環を構成する炭素原子の任意の一つ以上が窒素原子で置き換わったものを示す)、キノキサリニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、キナゾリニル基、フタラジニル基等)、複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基、ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基又はヘテロアリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、フッ化炭化水素基(例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジエチルシリル基等)、ホスホノ基等が挙げられる。
【0090】
これらの置換基は、上記の置換基によって更に置換されていてもよく、更に、これらの置換基は複数が互いに結合して環構造を形成してもよい。
【0091】
一般式(2)のL′の連結基としては、特に制限はないが、例えば、置換若しくは無置換の炭素数1〜12のアルキレン基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリーレン基、環形成原子数5〜30のヘテロアリーレン基又はこれらの組み合わせからなる二価の連結基等が挙げられる。
【0092】
そして、炭素数1〜12のアルキレン基は、直鎖状であっても分岐構造を有していてもよく、また、シクロアルキレン基のように環状構造であってもよい。また、環形成炭素数6〜30のアリーレン基は、非縮合であっても縮合環であってもよい。
【0093】
環形成炭素数6〜30のアリーレン基としては、例えば、o−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基、ナフタレンジイル基、フェナントレンジイル基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、クォーターフェニレン基、トリフェニレンジイル基、フルオレンジイル基等が挙げられる。
【0094】
環形成原子数5〜30のヘテロアリーレン基としては、例えば、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピペリジン環、トリアジン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、インドール環、イソインドール環、ベンゾイミダゾール環、フラン環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、ジベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、シロール環、ベンゾシロール環、ジベンゾシロール環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、フェナントロリン環、アクリジン環、フェナジン環、フェノキサジン環、フェノチアジン環、フェノキサチイン環、ピリダジン環、アクリジン環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、ベンゾオキサゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾジフラン環、チエノチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、ベンゾジチオフェン環、サイクラジン環、キンドリン環、テペニジン環、キニンドリン環、トリフェノジチアジン環、トリフェノジオキサジン環、フェナントラジン環、アントラジン環、ペリミジン環、ナフトフラン環、ナフトチオフェン環、ベンゾジチオフェン環、ナフトジフラン環、ナフトジチオフェン環、アントラフラン環、アントラジフラン環、アントラチオフェン環、アントラジチオフェン環、チアントレン環、フェノキサチイン環、ナフトチオフェン環、カルバゾール環、カルボリン環、ジアザカルバゾール環(カルバゾール環を構成する炭素原子の任意の二つ以上が窒素原子で置き換わったものを表す)、アザジベンゾフラン環(ジベンゾフラン環を構成する炭素原子の任意の一つ以上が窒素原子で置き換わったものを表す)、アザジベンゾチオフェン環(ジベンゾチオフェン環を構成する炭素原子の任意の一つ以上が窒素原子で置き換わったものを表す)、インドロカルバゾール環、インデノインドール環、等から水素原子を二つ除くことにより導かれる二価の基が挙げられる。
【0095】
より好ましいヘテロアリーレン基としては、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピペリジン環、トリアジン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、カルバゾール環、カルボリン環、ジアザカルバゾール環等から水素原子を二つ除くことにより導かれる二価の基が挙げられる。
【0096】
これらの連結基は、前記した置換基によって置換されていてもよい。
【0097】
≪本発明の第2の実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の概要≫
本発明の第2の実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子は、陽極、陰極及び当該陰極と当該陽極との間に備えられた一つ又は複数の有機機能層を含む有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記有機機能層が、リン光発光性金属錯体及び蛍光発光性化合物を含有し、当該リン光発光性金属錯体が、下記一般式(3)〜(5)のいずれかで表される化学構造を有する化合物であり、かつ、当該リン光発光性金属錯体が、下記式(b)を満たすことを特徴とする。
【0098】
【化6】
【0099】
〔前記一般式(3)〜(5)において、Mは、Ir又はPtを表す。A1〜A3及びB1〜B4は、それぞれ独立に炭素原子又は窒素原子を表す。A1とMとの結合及びB1とMとの結合は、一方が配位結合であり、他方は共有結合を表す。Lは、Mに配位したモノアニオン性の二座配位子を表し、置換基を有していてもよい。mは、0〜2の整数を表す。nは、1〜3の整数を表す。MがIrの場合のm+nは、3であり、MがPtの場合のm+nは、2である。m又はnが2以上のとき、環Z3と環Z4とで表される配位子、環Z5と環Z6とで表される配位子、環Z7と環Z8とで表される配位子又はLは、各々同じでも異なっていてもよく、これらの配位子とLとは互いに連結していてもよい。
【0100】
前記一般式(3)において、環Z3は、A1及びA2と共に形成される5員の芳香族複素環又はこの環を含む芳香族縮合環を表す。環Z4は、B1〜B3と共に形成される5員の芳香族複素環又はこの環を含む芳香族縮合環を表す。R1は炭素数2以上の置換基を表す。環Z3及び環Z4はR1以外に置換基を有していてもよく、環Z3及び環Z4の置換基が結合することによって、縮環構造を形成していてもよく、環Z3と環Z4とで表される配位子同士が連結していてもよい。
【0101】
前記一般式(4)において、環Z5は、A1〜A3と共に形成される6員の芳香族炭化水素環又は6員の芳香族複素環、又はこれらの環のうちの少なくとも一つを含む芳香族縮合環を表し、環Z6は、B1〜B3と共に形成される5員の芳香族複素環又はこの環を含む芳香族縮合環を表す。R2及びR3は、各々水素原子又は置換基を表し、少なくとも一方は炭素数2以上の置換基を表す。環Z5及び環Z6は、R2及びR3以外に置換基を有していてもよく、環Z5及び環Z6の置換基が結合することによって、縮環構造を形成していてもよく、環Z5と環Z6とで表される配位子同士が連結していてもよい。
【0102】
前記一般式(5)において、環Z7は、A1及びA2と共に形成される6員の芳香族炭化水素環又は6員の芳香族複素環、又はこれらの環のうちの少なくとも一つを含む芳香族縮合環を表す。環Z8は、B1〜B4と共に形成される6員の芳香族炭化水素環又は6員の芳香族複素環、又はこれらの環のうちの少なくとも一つを含む芳香族縮合環を表す。R4及びR5は、それぞれ水素原子又は置換基を表し、少なくとも一方は炭素数2以上の置換基を表す。環Z7及び環Z8は、R4及びR5以外に置換基を有していてもよく、環Z7及び環Z8の置換基が結合することによって、縮環構造を形成していてもよく、環Z7と環Z8とで表される配位子同士が連結していてもよい。〕
【0103】
式(b):{Vall/Vcore}>2
〔前記式(b)において、Vallは、環Z3〜環Z8に結合する置換基を含めた一般式(3)〜(5)で表される化学構造を有する化合物の分子体積を表す。ただし、MがIrの場合にはn=3、m=0と仮定し、MがPtの場合にはn=2、m=0と仮定する。Vcoreは、Vallの分子体積を表す前記化学構造から環Z3〜環Z8に結合する置換基を除き水素原子と置換した化学構造を有する化合物の分子体積を表す。ただし、環Z3と環Z4とで表される配位子、環Z5と環Z6とで表される配位子及び環Z7と環Z8とで表される配位子が複数種存在する場合、前記の仮定で表される全ての場合において、Vall及びVcoreは、前記式(b)を満たす。〕
【0104】
<第2の実施形態に係るリン光発光性金属錯体>
本発明の第2の実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子は、リン光発光性金属錯体を含有することを特徴とする。また、当該リン光発光性金属錯体が、前記一般式(3)〜一般式(5)の化学構造を有する化合物であることを特徴とする。
(第2の実施形態に係るリン光発光性金属錯体の化学構造)
第2の実施形態に係るリン光発光性金属錯体は、前記一般式(3)〜(5)で表される化学構造を有する化合物である。
【0105】
第2の実施形態に係るリン光発光性金属錯体は、前記一般式(3)〜(5)のR1〜R5に炭素数2以上の置換基を有することによって、発光中心であるコア部と消光物質との間に物理的距離を設け、消光物質へのエネルギーの移動を抑制することができる。したがって、高発光効率かつ高寿命で発光することができる。また高発光効率かつ高寿命で蛍光増感して蛍光発光することもできる。
【0106】
消光物質へのエネルギーの移動をより抑制するため、前記の置換基は炭素数3以上の置換基であることが好ましく、炭素数4以上の置換基であることがより好ましい。
【0107】
第2の実施形態に係るリン光発光性金属錯体は、一般式(3)における環Z3と環Z4とで表される配位子、一般式(4)における環Z5と環Z6とで表される配位子又は一般式(5)における環Z7と環Z8とで表される配位子が、三つ以上の置換基を有することが好ましい。nが2以上の場合は、各配位子が三つ以上の置換基を有することが好ましい。
【0108】
このような化学構造とすることにより、発光中心であるコア部に対して3次元的にシェル部を形成することができ、全方位において消光物質との物理的距離を設けることができる。
【0109】
なお、一般式(3)〜(5)における置換基は、一般式(1)の置換基として例示したものと同様のものが挙げられる。
<本発明に係るリン光発光性金属錯体(コア・シェル型ドーパント)の分子体積>
本発明に係るリン光発光性金属錯体(第1の実施形態及び第2の実施形態に係るリン光発光性金属錯体)は、前記の特定の化学構造を有し、かつ、下記式(a)又は式(b)を満たすことを特徴とする。
【0110】
第1の実施形態である一般式(1)で表される化学構造を有するリン光発光性金属錯体の場合には、
式(a):{Vall/Vcore}>2
〔前記式(a)において、Vallは、環Z1及び環Z2に結合する置換基を含めた前記一般式(1)で表される化学構造を有する化合物の分子体積を表す。ただし、MがIrの場合にはn=3及びm=0と仮定し、MがPtの場合にはn=2及びm=0と仮定する。Vcoreは、Vallの分子体積を表す前記化学構造から環Z1及び環Z2に結合する置換基を除き水素原子と置換した化学構造を有する化合物の分子体積を表す。ただし、環Z1と環Z2とで表される配位子が複数種存在する場合、前記の仮定で表される全ての場合において、Vall及びVcoreは、前記式(a)を満たす。〕を満たし、
第2の実施形態である一般式(3)〜(5)で表される化学構造を有するリン光発光性金属錯体の場合には、
式(b):{Vall/Vcore}>2
〔前記式(b)において、Vallは、環Z3〜環Z8に結合する置換基を含めた一般式(3)〜(5)で表される化学構造を有する化合物の分子体積を表す。ただし、MがIrの場合にはn=3、m=0と仮定し、MがPtの場合にはn=2、m=0と仮定する。Vcoreは、Vallの分子体積を表す前記化学構造から環Z3〜環Z8に結合する置換基を除き水素原子と置換した化学構造を有する化合物の分子体積を表す。ただし、環Z3と環Z4とで表される配位子、環Z5と環Z6とで表される配位子及び環Z7と環Z8とで表される配位子が複数種存在する場合、前記の仮定で表される全ての場合において、Vall及びVcoreは、
前記式(b)を満たす。〕を満たす。
【0111】
前記式(a)又は式(b)において、Vallは、各一般式(1)、(3)〜(5)において、MがIrの場合にはn=3、m=0と仮定し、MがPtの場合にはn=2、m=0と仮定するとともに、環Z1〜環Z8に結合する置換基を含めた構造の分子体積を表す。
【0112】
一方、Vcoreは、Vallの分子体積を表す前記化学構造から環Z1〜環Z8に結合する置換基を除き水素原子と置換した化学構造の分子体積を表す。また、環Z1〜環Z8が芳香族縮合環である場合、Vcoreは前記芳香族縮合環に結合する置換基を水素原子と置換した構造の分子体積を表す。
【0113】
ただし、Vallは、環Z1と環Z2とで表される配位子、環Z3と環Z4とで表される配位子、環Z5と環Z6とで表される配位子及び、環Z7と環Z8とで表される配位子が複数種存在する場合、前記の仮定で表される全ての場合において、Vall、Vcoreは、前記式(a)又は式(b)を満たす必要がある。具体的には、以下のとおりである。
【0114】
下記例(1)のように、一般式(4)の環Z5と環Z6、一般式(5)の環Z7と環Z8で表される配位子がそれぞれ存在する発光性金属錯体の場合、n=3、m=0と仮定した化学構造としては、下記例(2)、下記例(3)の二つの化学構造が考えられる。下記例(2)の化学構造の分子体積をVall、下記例(3)の化学構造の分子体積をVall2とすると、下記例(2)の化学構造のVcoreは下記例(4)で表される化学構造の化合物の分子体積であり、下記例(3)の化学構造のVcoreは下記例(5)で表される化学構造の化合物の分子体積(Vcore2と定義する)である。そして、Vall/Vcore、Vall2/Vcore2はいずれも前記式(b)を満たす必要がある。
【0115】
【化7】
【0116】
なお、Vall、Vcoreは、詳細には、ファンデルワールス分子体積であり、分子描画ソフト、例えば、Winmostor(株式会社クロスアビリティ製)によって算出することができる。
本発明に係るリン光発光性金属錯体は、Vcoreに対するVallの体積比率(Vall/Vcore)が2より大きい。体積比率(Vall/Vcore)が、2.5以上であることが、高発光効率かつ高寿命で発光できる観点から好ましい。また高発光効率かつ高寿命で蛍光増感して蛍光発光できるという観点でも好ましい。
【0117】
リン光発光性金属錯体を前記体積比率が大きくなるように分子設計することにより、コア・シェル型ドーパントから消光物質へのエネルギーの移動を好適に抑制することができる。
【0118】
前記体積比率の上限は、特に限定されないものの、製造容易性の観点から、5以下が好ましく、3以下がより好ましい。
【0119】
例えば、下記例(6)のように、緑色リン光発光する錯体として周知であるIr(ppy)3は、シェル部を有していないため、Vall/Vcoreが2以下となる。詳細には、Vall=Vcore=0.45004nmであり、Vall/Vcore=1となる。
【0120】
一方、下記例(7)のように、Ir(ppy)3に対して前記一般式(2)を満たす置換基を導入してシェル部を備えた金属錯体は、Vall/Vcoreが2を超える。詳細には、
all=0.96005nm、Vcore=0.45004nmであり、Vall/Vcore=2.13となる。
【0121】
【化8】
【0122】
本発明に係るリン光発光性金属錯体は、上記のように前記式(a)又は式(b)を満たし、コア部とシェル部とから構成される「コア・シェル型ドーパント」である。
【0123】
以下、本発明に係る発光性金属錯体の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0124】
【化9】
【0125】
【化10】
【0126】
【化11】
【0127】
【化12】
【0128】
【化13】
【0129】
【化14】
【0130】
【化15】
【0131】
本発明に係るリン光発光性金属錯体の分子量に特に制限はない。
【0132】
本発明に係るリン光発光性金属錯体は、有機機能層中に1〜50質量%の範囲内で含有されることが、好ましい。
<蛍光発光性化合物>
本発明に用いられる蛍光発光性化合物は、一重項励起状態からの発光が可能な化合物であり、一重項励起状態からの発光が観測される限り特に限定されない。
【0133】
本発明に用いられる蛍光発光性化合物としては、例えば、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、クリセン誘導体、フルオランテン誘導体、ペリレン誘導体、フルオレン誘導体、アリールアセチレン誘導体、スチリルアリーレン誘導体、スチリルアミン誘導体、アリールアミン誘導体、ホウ素錯体、クマリン誘導体、ピラン誘導体、シアニン誘導体、クロコニウム誘導体、スクアリウム誘導体、オキソベンツアントラセン誘導体、フルオレセイン誘導体、ローダミン誘導体、ピリリウム誘導体、ポリチオフェン誘導体、又は希土類錯体系化合物等が挙げられる。
【0134】
また、近年では遅延蛍光を利用した発光性ドーパントも開発されており、これらを用いてもよい。
【0135】
遅延蛍光を利用した発光性ドーパントの具体例としては、例えば、国際公開第2011/156793号、特開2011−213643号公報、特開2010−93181号公報等に記載の化合物が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
【0136】
本発明に係る蛍光発光性化合物の分子量に特に制限はない。
【0137】
本発明に係る蛍光発光性化合物の一例を以下に挙げるが、これに限るものではない。
【0138】
【化16】
【0139】
【化17】
【0140】
【化18】
【0141】
【化19】
【0142】
【化20】
【0143】
【化21】
【0144】
【化22】
【0145】
【化23】
【0146】
【化24】
【0147】
【化25】
【0148】
【化26】
【0149】
【化27】
【0150】
【化28】
【0151】
【化29】
【0152】
【化30】
【0153】
【化31】
【0154】
【化32】
【0155】
【化33】
【0156】
【化34】
【0157】
また、前記リン光発光性金属錯体及び前記蛍光発光性化合物が、下記式(c)又は式(d)の少なくとも一方を満たすことが高発光効率かつ高寿命で発光できる有機エレクトロルミネッセンス素子を提供できる観点から好ましい。
式(c)
P(HOMO)>FL(HOMO)
〔前記式(c)において、P(HOMO)は、リン光発光性金属錯体のHOMOエネルギー準位、FL(HOMO)は、蛍光発光性化合物のHOMOエネルギー準位を表す。〕
【0158】
式(d)
P(LUMO)<FL(LUMO)
〔前記式(d)において、P(LUMO)は、リン光発光性金属錯体のLUMOエネルギー準位、FL(LUMO)は、蛍光発光性化合物のLUMOエネルギー準位を表す。〕
上記式2、又は式3の少なくとも一方を満たすことで、発光性金属錯体上でキャリヤ再結合しやすくなり、より高効率で発光できるためである。
【0159】
<HOMO、LUMO>
LUMOとは化合物の最低空分子軌道である。そして、LUMOエネルギー準位とは、真空準位にある電子が化合物のLUMOに落ちて安定化するエネルギーであり、真空準位を0としたときのエネルギーで定義される。
【0160】
HOMOとは化合物の最高被占分子軌道である。そして、HOMOエネルギー準位とは、HOMOにある電子を、真空準位に移動させるのに要するエネルギーに−1を掛けて得られた値で定義される。
【0161】
本発明において、HOMOエネルギー準位及びLUMOエネルギー準位の値は、米国Gaussian社製の分子軌道計算用ソフトウェアであるGaussian98(Gaussian98、Revision A.11.4,M.J.Frisch,et al,Gaussian,Inc.,Pittsburgh PA,2002.)を用いて計算した時の値であり、キーワードとして蛍光発光材料はB3LYP/6−31G*、発光性金属錯体はB3LYP/LanL2DZを用いて構造最適化を行うことにより算出した値(eV単位換算値)と定義する。この計算値が有効な背景には、この手法で求めた計算値と実験値の相関が高いためである。
【0162】
<リン光発光性金属錯体及び蛍光発光性化合物を含有する有機機能層>
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、前記リン光発光性金属錯体及び前記蛍光発光性化合物を含有する有機機能層を含むことを特徴とする。
【0163】
本発明に係るリン光発光性金属錯体及び蛍光発光性化合物を含有する有機機能層は発光を機能させる層であり、電極又は隣接層から注入されてくる電子及び正孔が再結合し、励起子を経由して発光する場を提供する層である。発光する部分は当該有機機能層の層内であっても、有機機能層と隣接層との界面であってもよい。
【0164】
リン光発光性金属錯体及び蛍光発光性化合物を含有する有機機能層においては、励起されたリン光発光性化合物からのリン光発光と、蛍光発光性化合物からの蛍光発光が行われる(蛍光増感が無い場合。)。また、蛍光増感がある場合には、リン光発光性金属錯体から、蛍光発光性化合物にエネルギー移動して蛍光発光性化合物から蛍光を発光させ、リン光発光性金属錯体は、蛍光発光を機能させるための増感剤として機能するものと推察される。
【0165】
前記リン光発光性金属錯体及び蛍光発光性化合物を含有する有機機能層において、含有させるリン光発光性金属錯体と、蛍光発光性化合物との質量比率に特に制限はないが、発光効率の観点から、蛍光発光化合物1質量部に対し、リン光発光性金属錯体を1〜50質量部の範囲内で含有させることが好ましい。
【0166】
本発明に係るリン光発光性金属錯体及び蛍光発光性化合物を含有する有機機能層は、一つの層であっても複数の層であっても良い。複数の有機機能層を有する場合には、前記リン光発光性金属錯体と前記蛍光発光性化合物とがそれぞれ異なる層に含有されていても良い。
【0167】
前記リン光発光性金属錯体と前記蛍光発光性化合物とがそれぞれ異なる層に含有されている場合は、リン光発光と蛍光発光がそれぞれの層から発光させることができる。蛍光増感する場合は、リン光発光性金属錯体を含有する層から、蛍光発光性化合物を含有する層にエネルギー移動して、蛍光発光性化合物からの蛍光発光を増加させると推察している。
【0168】
有機機能層の層厚の総和は、特に制限はないが、形成する膜の均質性や、発光時に不必要な高電圧を印加するのを防止し、且つ、駆動電流に対する発光色の安定性向上の観点から、2〜5000nmの範囲に調整することが好ましく、より好ましくは2〜500nmの範囲に調整され、更に好ましくは5〜200nmの範囲に調整される。
【0169】
また、本発明において個々の有機機能層の層厚としては、2〜1000nmの範囲内に調整することが好ましく、より好ましくは2〜200nmの範囲内に調整され、更に好ましくは3〜150nmの範囲内に調整される。
【0170】
本発明に係る有機機能層は、前記したリン光発光性金属錯体(コア・シェル型ドーパント)と蛍光発光性化合物とを含有する。
【0171】
ただし、本発明に係る有機機能層は、本発明の効果を妨げない範囲内において、別途、以下に記載するホスト化合物やその他のドーパントを含有していてもよい。
【0172】
また、本発明に用いられるリン光発光性金属錯体と蛍光発光性化合物は複数種を併用して用いてもよい。これにより、任意の発光色を得ることもできる。
【0173】
本発明の有機EL素子が発光する色は、「新編色彩科学ハンドブック」(日本色彩学会編、東京大学出版会、1985)の108頁の図4.16において、分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタ(株)製)で測定した結果をCIE色度座標に当てはめたときの色で決定される。
【0174】
本発明においては、1層又は複数層の有機機能層が、発光色の異なる複数の発光性ドーパントを含有し、白色発光を示すことも好ましい。
【0175】
白色を示す発光性ドーパントの組み合わせについては特に限定はないが、例えば青と橙や、青と緑と赤の組み合わせ等が挙げられる。
【0176】
本発明の有機EL素子における白色とは、特に限定はなく、橙色寄りの白色であっても青色寄りの白色であってもよいが、2度視野角正面輝度を前述の方法により測定した際に、1000cd/mでのCIE1931表色系における色度がx=0.39±0.09、y=0.38±0.08の領域内にあることが好ましい。
<ホスト化合物>
本発明に用いられるホスト化合物(以下単にホストともいう)は、有機機能層(以下「発光層」ともいう。)において主に電荷の注入及び輸送を担う化合物であり、有機EL素子においてホスト化合物自体の発光は実質的に観測されない。
【0177】
ホスト化合物は、好ましくは室温(25℃)においてリン光発光のリン光量子収率が、0.1未満の化合物であり、更に好ましくはリン光量子収率が0.01未満の化合物である。
【0178】
また、ホスト化合物の励起状態エネルギーは、同一層内に含有されるリン光発光性金属錯体の励起状態エネルギーよりも高いことが好ましい。
【0179】
ホスト化合物は、単独で用いてもよく、又は複数種併用して用いてもよい。ホスト化合物を複数種用いることで、電荷の移動を調整することが可能であり、有機EL素子を高効率化することができる。
【0180】
本発明で用いることができるホスト化合物としては、特に制限はなく、従来の有機EL素子で用いられる化合物を用いることができる。低分子化合物でも繰り返し単位を有する高分子化合物でもよく、また、ビニル基やエポキシ基のような反応性基を有する化合物でもよい。
【0181】
公知のホスト化合物としては、正孔輸送能又は電子輸送能を有し、かつ、発光の長波長化を防ぎ、更に、有機EL素子を高温駆動時や素子駆動中の発熱に対して安定して動作させる観点から、高いガラス転移温度(Tg)を有することが好ましい。好ましくはTgが90℃以上であり、より好ましくは120℃以上である。
【0182】
ここで、ガラス転移点(Tg)とは、DSC(Differential Scanning Calorimetry:示差走査熱量法)を用いて、JIS−K−7121に準拠した方法により求められる値である。
【0183】
本発明に係るホスト化合物は、好ましくは下記一般式(HA)又は(HB)で表される構造を有する化合物である。
【0184】
【化35】
【0185】
【化36】
【0186】
一般式(HA)及び(HB)中、Xaは、O又はSを表す。Xb、Xc、Xd及びXeは、それぞれ独立に、水素原子、置換基又は下記一般式(HC)で表される構造を有する基を表すが、Xb、Xc、Xd及びXeのうち少なくとも一つは下記一般式(HC)で表される構造を有する基を表し、下記一般式(HC)で表される構造を有する基のうち少なくとも一つはArがカルバゾリル基を表すことが好ましい。
【0187】
一般式(HC)
Ar−(L′)−*
【0188】
一般式(HC)中、L′は、芳香族炭化水素環又は芳香族複素環から導出される2価の連結基を表す。nは0〜3の整数を表し、nが2以上の場合、複数のL′は同じでもあっても異なっていてもよい。*は、一般式(HA)又は(HB)との結合部位を表す。Arは、下記一般式(HD)で表される構造を有する基を表す。
【0189】
【化37】
【0190】
一般式(HD)中、Xfは、N(R′)、O又はSを表す。E〜EはC(R″)又はNを表し、R′及びR″は水素原子、置換基又は一般式(HC)におけるL′との結合部位を表す。*は、一般式(HC)におけるL′との結合部位を表す。
【0191】
上記一般式(HA)で表される構造を有する化合物においては、好ましくは、Xb、Xc、Xd及びXeのうち少なくとも二つが一般式(HC)で表され、より好ましくはXcが一般式(HC)で表され、かつ、当該一般式(HC)におけるArが置換基を有していてもよいカルバゾリル基を表す。
【0192】
一般式(HA)及び(HB)におけるXb、Xc、Xd及びXeで表される置換基、並びに一般式(HD)におけるR′及びR″で表される置換基としては、上記一般式(DP)における環Z及び環Zが有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0193】
一般式(HC)におけるL′で表される芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、p−クロロベンゼン環、メシチレン環、トルエン環、キシレン環、ナフタレン環、アントラセン環、アズレン環、アセナフテン環、フルオレン環、フェナントレン環、インデン環、ピレン環、ビフェニル環等が挙げられる。
一般式(HC)におけるL′で表される芳香族複素環としては、例えば、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、キナゾリン環、カルバゾール環、カルボリン環、ジアザカルバゾール環(カルボリン環を構成する任意の炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったものを示す。)、フタラジン環等が挙げられる。
【0194】
以下に、本発明に係るホスト化合物の具体例として、上記一般式(HA)又は(HB)で表される構造を有する化合物の他、本発明に適用可能な化合物を挙げるが、本発明はこれらに特に限定されない。
【0195】
【化38】
【0196】
【化39】
【0197】
【化40】
【0198】
【化41】
【0199】
【化42】
【0200】
【化43】
【0201】
【化44】
【0202】
【化45】
【0203】
【化46】
【0204】
【化47】
【0205】
【化48】
【0206】
【化49】
【0207】
【化50】
【0208】
また、上記化合物のほか、本発明に係るホスト化合物の具体例としては、以下の文献に記載の化合物等を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されない。
【0209】
特開2001−257076号公報、同2002−308855号公報、同2001−313179号公報、同2002−319491号公報、同2001−357977号公報、同2002−334786号公報、同2002−8860号公報、同2002−334787号公報、同2002−15871号公報、同2002−334788号公報、同2002−43056号公報、同2002−334789号公報、同2002−75645号公報、同2002−338579号公報、同2002−105445号公報、同2002−343568号公報、同2002−141173号公報、同2002−352957号公報、同2002−203683号公報、同2002−363227号公報、同2002−231453号公報、同2003−3165号公報、同2002−234888号公報、同2003−27048号公報、同2002−255934号公報、同2002−260861号公報、同2002−280183号公報、同2002−299060号公報、同2002−302516号公報、同2002−305083号公報、同2002−305084号公報、同2002−308837号公報、米国特許出願公開第2003/0175553号明細書、米国特許出願公開第2006/0280965号明細書、米国特許出願公開第2005/0112407号明細書、米国特許出願公開第2009/0017330号明細書、米国特許出願公開第2009/0030202号明細書、米国特許出願公開第2005/0238919号明細書、国際公開第2001/039234号、国際公開第2009/021126号、国際公開第2008/056746号、国際公開第2004/093207号、国際公開第2005/089025号、国際公開第2007/063796号、国際公開第2007/063754号、国際公開第2004/107822号、国際公開第2005/030900号、国際公開第2006/114966号、国際公開第2009/086028号、国際公開第2009/003898号、国際公開第2012/023947号、特開2008−074939号公報、特開2007−254297号公報、欧州特許第2034538号明細書等である。さらには、特開2015−38941号公報の段落[0255]〜[0293]に記載の化合物H−1〜H−230も好適に使用できる。
【0210】
本発明に用いられるホスト化合物は、有機機能層中での質量比が20質量%以上の範囲内で含有されることが、リン光発光錯体・蛍光発光性化合物の凝集抑制の面から好ましい。
【0211】
≪有機エレクトロルミネッセンス素子の構成層≫
本発明の有機EL素子における代表的な素子構成としては、以下の構成を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0212】
(1)陽極/発光層/陰極
(2)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(3)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
(4)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(5)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(6)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(7)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/(電子阻止層/)発光層/(正孔阻止層/)電子輸送層/電子注入層/陰極
前記の中で(7)の構成が好ましく用いられるが、これに限定されるものではない。
【0213】
本発明に係る発光層は、単層又は複数層で構成されており、発光層が複数の場合は各発光層の間に非発光性の中間層を設けてもよい。
【0214】
必要に応じて、発光層と陰極との間に正孔阻止層(正孔障壁層ともいう)や電子注入層(陰極バッファー層ともいう)を設けてもよく、また、発光層と陽極との間に電子阻止層(電子障壁層ともいう)や正孔注入層(陽極バッファー層ともいう)を設けてもよい。
【0215】
本発明に係る電子輸送層とは、電子を輸送する機能を有する層であり、広い意味で電子注入層、正孔阻止層も電子輸送層に含まれる。また、複数層で構成されていてもよい。
【0216】
本発明に係る正孔輸送層とは、正孔を輸送する機能を有する層であり、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も正孔輸送層に含まれる。また、複数層で構成されていてもよい。
【0217】
(タンデム構造)
また、本発明に係る有機EL素子は、少なくとも1層の発光層を含む発光ユニットを複数積層した、いわゆるタンデム構造の素子であってもよい。
【0218】
タンデム構造の代表的な素子構成としては、例えば以下の構成を挙げることができる。
【0219】
陽極/第1発光ユニット/第2発光ユニット/第3発光ユニット/陰極
陽極/第1発光ユニット/中間層/第2発光ユニット/中間層/第3発光ユニット/陰極
ここで、前記第1発光ユニット、第2発光ユニット及び第3発光ユニットは全て同じであっても、異なっていてもよい。また二つの発光ユニットが同じであり、残る一つが異なっていてもよい。
【0220】
また、第3発光ユニットはなくてもよく、一方で第3発光ユニットと電極の間に更に発光ユニットや中間層を設けてもよい。
【0221】
複数の発光ユニットは直接積層されていても、中間層を介して積層されていてもよく、中間層は、一般的に中間電極、中間導電層、電荷発生層、電子引抜層、接続層、中間絶縁層とも呼ばれ、陽極側の隣接層に電子を、陰極側の隣接層に正孔を供給する機能を持った層であれば、公知の材料構成を用いることができる。
【0222】
中間層に用いられる材料としては、例えば、ITO(インジウム・スズ酸化物)、IZO(インジウム・亜鉛酸化物)、ZnO2、TiN、ZrN、HfN、TiOx、VOx、CuI、InN、GaN、CuAlO2、CuGaO2、SrCu22、LaB6、RuO2、Al等の導電性無機化合物層や、Au/Bi23等の2層膜や、SnO2/Ag/SnO2、ZnO/Ag/ZnO、Bi23/Au/Bi23、TiO2/TiN/TiO2、TiO2/ZrN/TiO2等の多層膜、またC60等のフラーレン類、オリゴチオフェン等の導電性有機物層、金属フタロシアニン類、無金属フタロシアニン類、金属ポルフィリン類、無金属ポルフィリン類等の導電性有機化合物層等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
【0223】
発光ユニット内の好ましい構成としては、例えば前記の代表的な素子構成で挙げた(1)〜(7)の構成から、陽極と陰極を除いたもの等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
【0224】
タンデム型有機EL素子の具体例としては、例えば、米国特許第6337492号明細書、米国特許第7420203号明細書、米国特許第7473923号明細書、米国特許第6872472号明細書、米国特許第6107734号明細書、米国特許第6337492号明細書、国際公開第2005/009087号、特開2006−228712号公報、特開2006−24791号公報、特開2006−49393号公報、特開2006−49394号公報、特開2006−49396号公報、特開2011−96679号公報、特開2005−340187号公報、特許第4711424号、特許第3496681号、特許第3884564号、特許第4213169号、特開2010−192719号公報、特開2009−076929号公報、特開2008−078414号公報、特開2007−059848号公報、特開2003−272860号公報、特開2003−045676号公報、国際公開第2005/094130号等に記載の素子構成や構成材料等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
【0225】
以下、本発明の有機EL素子を構成する各層について説明する。
≪有機機能層≫
本発明の有機EL素子を構成する有機機能層は、少なくとも発光層を備え、必要に応じて発光層以外の有機機能層、例えば正孔注入層、正孔輸送層、阻止層、電子輸送層、電子注入層等を備える。各有機機能層は、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/電子阻止層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/電子注入層/陰極の順に積層される。
【0226】
以下、各有機機能層について説明する。
≪発光層≫
本発明に用いられる発光層は、電極又は隣接層から注入されてくる電子及び正孔が再結合し、励起子を経由して発光する場を提供する層であり、発光する部分は発光層の層内であっても、発光層と隣接層との界面であってもよい。
【0227】
発光層は、有機化合物として、ホスト化合物と、発光材料(発光性ドーパント)とを含有する。
【0228】
ホスト化合物及び発光材料を含む発光層において、発光材料の発光波長、種類等を適宜調整することにより、任意の発光色を得ることができる。
【0229】
本発明に係る発光層は、発光層のいずれかの層に、前記のリン光発光性金属錯体(コア・シェル型ドーパント)と前記の蛍光発光性化合物とを含有して構成される。
【0230】
ただし、本発明に係る発光層は、本発明の効果を妨げない範囲内において、別途、以下に示す、コア・シェル型ドーパント以外のリン光発光性ドーパントを使用していてもよい。また、前述のホスト化合物を使用することができる。
【0231】
発光層の膜厚の総和は、特に制限はないが、形成する膜の均質性や、発光時に不必要な高電圧を印加するのを防止し、且つ、駆動電流に対する発光色の安定性向上の観点から、2nm〜5μmの範囲に調整することが好ましく、より好ましくは2nm〜500nmの範囲に調整され、更に好ましくは5〜200nmの範囲に調整される。
【0232】
また、本発明において個々の発光層の層厚としては、2nm〜1μmの範囲に調整することが好ましく、より好ましくは2〜200nmの範囲に調整され、更に好ましくは3〜150nmの範囲に調整される。
【0233】
本発明に用いられる発光層は、単一層であっても複数層で構成されてもよい。
【0234】
本発明においては、1層又は複数層の発光層(例えば、青色光発光層、緑色光発光層、赤色光発光層)が、白色発光を示すことも好ましい。
【0235】
白色を示す発光性ドーパントの組み合わせについては特に限定はないが、例えば青と橙や、青と緑と赤の組合わせ等が挙げられる。
【0236】
本発明に係る発光層は、発光層のいずれかの層に、前記のリン光発光性金属錯体(コア・シェル型ドーパント)と前記の蛍光発光性化合物とを含有して構成される。
【0237】
ただし、本発明に係る発光層は、本発明の効果を妨げない範囲内において、別途、以下に示す、コア・シェル型ドーパント以外のリン光発光性ドーパントを使用していてもよい。また、前述の蛍光発光性化合物やホスト化合物を使用することができる。
<使用できるリン光発光性ドーパント>
【0238】
本発明において使用できるリン光発光性ドーパントとしては、有機EL素子の発光層に使用される公知のものの中から適宜選択して用いることができる。
【0239】
本発明に使用できる公知のリン光発光性ドーパントの具体例としては、以下の文献に記載されている化合物等が挙げられる。
【0240】
Nature 395,151(1998)、Appl.Phys.Lett.78,1622(2001)、Adv.Mater.19,739(2007)、Chem.Mater. 17,3532(2005)、Adv.Mater.17,1059(2005)、国際公開第2009/100991号、国際公開第2008/101842号、国際公開第2003/040257号、米国特許公開第2006/835469号明細書、米国特許公開第2006/0202194号明細書、米国特許公開第2007/0087321号明細書、米国特許公開第2005/0244673号明細書、Inorg.Chem.40,1704(2001)、Chem.Mater.16,2480(2004)、Adv.Mater.16,2003(2004)、Angew.Chem.lnt.Ed.2006,45,7800、Appl.Phys.Lett.86,153505(2005)、Chem.Lett.34,592(2005)、Chem.Commun.2906(2005)、Inorg.Chem.42,1248(2003)、国際公開第2009/050290号、国際公開第2002/015645号、国際公開第2009/000673号、米国特許公開第2002/0034656号明細書、米国特許第7332232号明細書、米国特許公開第2009/0108737号明細書、米国特許公開第2009/0039776号、米国特許第6921915号明細書、米国特許第6687266号明細書、米国特許公開第2007/0190359号明細書、米国特許公開第2006/0008670号明細書、米国特許公開第2009/0165846号明細書、米国特許公開第2008/0015355号明細書、米国特許第7250226号明細書、米国特許第7396598号明細書、米国特許公開第2006/0263635号明細書、米国特許公開第2003/0138657号明細書、米国特許公開第2003/0152802号明細書、米国特許第7090928号明細書、Angew.Chem.lnt.Ed.47,1(2008)、Chem.Mater.18,5119(2006)、Inorg.Chem.46,4308(2007)、Organometallics 23,3745(2004)、Appl.Phys.Lett.74,1361(1999)、国際公開第2002/002714号、国際公開第2006/009024号、国際公開第2006/056418号、国際公開第2005/019373号、国際公開第2005/123873号、国際公開第2007/004380号、国際公開第2006/082742号、米国特許公開第2006/0251923号明細書、米国特許公開第2005/0260441号明細書、米国特許第7393599号明細書、米国特許第7534505号明細書、米国特許第7445855号明細書、米国特許公開第2007/0190359号明細書、米国特許公開第2008/0297033号明細書、米国特許第7338722号明細書、米国特許公開第2002/0134984号明細書、米国特許第7279704号明細書、米国特許公開第2006/098120号明細書、米国特許公開第2006/103874号明細書、国際公開第2005/076380号、国際公開第2010/032663号、国際公開第2008/140115号、国際公開第2007/052431号、国際公開第2011/134013号、国際公開第2011/157339号、国際公開第2010/086089号、国際公開第2009/113646号、国際公開第2012/020327号、国際公開第2011/051404号、国際公開第2011/004639号、国際公開第2011/073149号、米国特許公開第2012/228583号明細書、米国特許公開第2012/212126号明細書、特開2012−069737号公報、特開2012−195554号公報、特開2009−114086号公報、特開2003−81988号公報、特開2002−302671号公報、特開2002−363552号公報等である。
【0241】
≪電子輸送層≫
本発明において電子輸送層とは、電子を輸送する機能を有する材料からなり、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよい。
【0242】
本発明に用いられる電子輸送層の総層厚については特に制限はないが、通常は2nm〜5μmの範囲であり、より好ましくは2〜500nmであり、更に好ましくは5〜200nmである。
【0243】
また、有機EL素子においては発光層で生じた光を電極から取り出す際、発光層から直接取り出される光と、光を取り出す電極と対極に位置する電極によって反射されてから取り出される光とが干渉を起こすことが知られている。光が陰極で反射される場合は、電子輸送層の総層厚を5nm〜1μmの間で適宜調整することにより、この干渉効果を効率的に利用することが可能である。
【0244】
一方で、電子輸送層の層厚を厚くすると電圧が上昇しやすくなるため、特に層厚が厚い場合においては、電子輸送層の電子移動度は10−5cm/Vs以上であることが好ましい。
【0245】
電子輸送層に用いられる材料(以下、「電子輸送材料」ともいう。)としては、電子の注入性又は輸送性、正孔の障壁性のいずれかを有していればよく、従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。
【0246】
例えば、含窒素芳香族複素環誘導体(カルバゾール誘導体、アザカルバゾール誘導体(カルバゾール環を構成する炭素原子の一つ以上が窒素原子に置換されたもの)、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリダジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、フェナントロリン誘導体、アザトリフェニレン誘導体、オキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、ベンズチアゾール誘導体等)、ジベンゾフラン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、シロール誘導体、芳香族炭化水素環誘導体(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、トリフェニレン等)等が挙げられる。
【0247】
また、配位子にキノリノール骨格やジベンゾキノリノール骨格を有する金属錯体、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、Ga又はPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることができる。
【0248】
その他、メタルフリー若しくはメタルフタロシアニン、又はそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。また、発光層の材料として例示したジスチリルピラジン誘導体も、電子輸送材料として用いることができるし、正孔注入層、正孔輸送層と同様にn型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。
【0249】
また、これらの材料を高分子鎖に導入した、又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0250】
本発明に用いられる電子輸送層においては、電子輸送層にドープ材をゲスト材料としてドープして、n性の高い(電子リッチ)電子輸送層を形成してもよい。ドープ材としては、金属錯体やハロゲン化金属など金属化合物等のn型ドーパントが挙げられる。このような構成の電子輸送層の具体例としては、例えば、特開平4−297076号公報、同10−270172号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等の文献に記載されたものが挙げられる。
【0251】
本発明の有機EL素子に用いられる、公知の好ましい電子輸送材料の具体例としては、以下の文献に記載の化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0252】
米国特許第6528187号明細書、米国特許第7230107号明細書、米国特許公開第2005/0025993号明細書、米国特許公開第2004/0036077号明細書、米国特許公開第2009/0115316号明細書、米国特許公開第2009/0101870号明細書、米国特許公開第2009/0179554号明細書、国際公開第2003/060956号、国際公開第2008/132085号、Appl.Phys.Lett.75,4(1999)、Appl.Phys.Lett.79,449(2001)、Appl.Phys.Lett.81,162(2002)、Appl.Phys.Lett.81,162(2002)、Appl.Phys.Lett.79,156(2001)、米国特許第7964293号明細書、米国特許公開第2009/030202号明細書、国際公開第2004/080975号、国際公開第2004/063159号、国際公開第2005/085387号、国際公開第2006/067931号、国際公開第2007/086552号、国際公開第2008/114690号、国際公開第2009/069442号、国際公開第2009/066779号、国際公開第2009/054253号、国際公開第2011/086935号、国際公開第2010/150593号、国際公開第2010/047707号、欧州特許第2311826号明細書、特開2010−251675号公報、特開2009−209133号公報、特開2009−124114号公報、特開2008−277810号公報、特開2006−156445号公報、特開2005−340122号公報、特開2003−45662号公報、特開2003−31367号公報、特開2003−282270号公報、国際公開第2012/115034号等である。
【0253】
本発明におけるよりより好ましい電子輸送材料としては、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、トリアジン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、カルバゾール誘導体、アザカルバゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体が挙げられる。
【0254】
電子輸送材料は単独で用いてもよく、また複数種を併用して用いてもよい。
【0255】
≪正孔阻止層≫
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層の機能を有する層であり、好ましくは電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が小さい材料からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。
【0256】
また、前述する電子輸送層の構成を必要に応じて、本発明に係る正孔阻止層として用いることができる。
【0257】
本発明の有機EL素子に設ける正孔阻止層は、発光層の陰極側に隣接して設けられることが好ましい。
【0258】
本発明に用いられる正孔阻止層の層厚としては、好ましくは3〜100nmの範囲であり、更に好ましくは5〜30nmの範囲である。
【0259】
正孔阻止層に用いられる材料としては、前述の電子輸送層に用いられる材料が好ましく用いられ、また、前述のホスト化合物として用いられる材料も正孔阻止層に好ましく用いられる。
【0260】
≪電子注入層≫
本発明に用いられる電子注入層(以下、「陰極バッファー層」ともいう。)とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために陰極と発光層との間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されている。
【0261】
本発明において電子注入層は必要に応じて設け、前記のように陰極と発光層との間、又は陰極と電子輸送層との間に存在させてもよい。
【0262】
電子注入層はごく薄い膜であることが好ましく、素材にもよるがその層厚は0.1〜5nmの範囲が好ましい。また構成材料が断続的に存在する不均一な膜であってもよい。
【0263】
電子注入層は、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、電子注入層に好ましく用いられる材料の具体例としては、ストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム等に代表されるアルカリ金属化合物、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム等に代表されるアルカリ土類金属化合物、酸化アルミニウムに代表される金属酸化物、リチウム8−ヒドロキシキノレート(Liq)等に代表される金属錯体等が挙げられる。また、前述の電子輸送材料を用いることも可能である。
【0264】
また、前記の電子注入層に用いられる材料は単独で用いてもよく、複数種を併用して用いてもよい。
【0265】
≪正孔輸送層≫
本発明において正孔輸送層とは、正孔を輸送する機能を有する材料からなり、陽極より注入された正孔を発光層に伝達する機能を有していればよい。
【0266】
本発明に用いられる正孔輸送層の総層厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μmの範囲であり、より好ましくは2〜500nmであり、更に好ましくは5〜200nmである。
【0267】
正孔輸送層に用いられる材料(以下、「正孔輸送材料」ともいう。)としては、正孔の注入性又は輸送性、電子の障壁性のいずれかを有していればよく、従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。
【0268】
例えば、ポルフィリン誘導体、フタロシアニン誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、トリアリールアミン誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、イソインドール誘導体、アントラセンやナフタレン等のアセン系誘導体、フルオレン誘導体、フルオレノン誘導体及びポリビニルカルバゾール、芳香族アミンを主鎖又は側鎖に導入した高分子材料又はオリゴマー、ポリシラン、導電性ポリマー又はオリゴマー(例えばPEDOT:PSS、アニリン系共重合体、ポリアニリン、ポリチオフェン等)等が挙げられる。
【0269】
トリアリールアミン誘導体としては、αNPDに代表されるベンジジン型や、MTDATAに代表されるスターバースト型、トリアリールアミン連結コア部にフルオレンやアントラセンを有する化合物等が挙げられる。
【0270】
また、特表2003−519432号公報や特開2006−135145号公報等に記載されているようなヘキサアザトリフェニレン誘導体も同様に正孔輸送材料として用いることができる。
【0271】
更に不純物をドープしたp性の高い正孔輸送層を用いることもできる。その例としては、特開平4−297076号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報の各公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。
【0272】
また、特開平11−251067号公報、J.Huang et.al.著文献(Applied Physics Letters 80(2002),p.139)に記載されているような、いわゆるp型正孔輸送材料やp型−Si、p型−SiC等の無機化合物を用いることもできる。更にIr(ppy)3に代表されるような中心金属にIrやPtを有するオルトメタル化有機金属錯体も好ましく用いられる。
【0273】
正孔輸送材料としては、前記のものを使用することができるが、トリアリールアミン誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、アザトリフェニレン誘導体、有機金属錯体、芳香族アミンを主鎖又は側鎖に導入した高分子材料又はオリゴマー等が好ましく用いられる。
【0274】
本発明の有機EL素子に用いられる、公知の好ましい正孔輸送材料の具体例としては、前記で挙げた文献の他、以下の文献に記載の化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0275】
例えば、Appl.Phys.Lett.69,2160(1996)、J.Lumin.72−74,985(1997)、Appl.Phys.Lett.78,673(2001)、Appl.Phys.Lett.90,183503(2007)、Appl.Phys.Lett.90,183503(2007)、Appl.Phys.Lett.51,913(1987)、Synth.Met.87,171(1997)、Synth.Met.91,209(1997)、Synth.Met.111,421(2000)、SID Symposium Digest,37,923(2006)、J.Mater.Chem.3,319(1993)、Adv.Mater.6,677(1994)、Chem.Mater.15,3148(2003)、米国特許公開第2003/0162053号明細書、米国特許公開第2002/0158242号明細書、米国特許公開第2006/0240279号明細書、米国特許公開第2008/0220265号明細書、米国特許第5061569号明細書、国際公開第2007/002683号、国際公開第2009/018009号、欧州特許第650955号明細書、米国特許公開第2008/0124572号、米国特許公開第2007/0278938号明細書、米国特許公開第2008/0106190号明細書、米国特許公開第2008/0018221号明細書、国際公開第2012/115034号、特表2003−519432号公報、特開2006−135145号公報、米国特許出願番号13/585981号等である。
【0276】
正孔輸送材料は単独で用いてもよく、また複数種を併用して用いてもよい。
【0277】
≪電子阻止層≫
電子阻止層とは広い意味では正孔輸送層の機能を有する層であり、好ましくは正孔を輸送する機能を有しつつ電子を輸送する能力が小さい材料からなり、正孔を輸送しつつ電子を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。
【0278】
また、前述する正孔輸送層の構成を必要に応じて、本発明に用いられる電子阻止層として用いることができる。
【0279】
本発明の有機EL素子に設ける電子阻止層は、発光層の陽極側に隣接して設けられることが好ましい。
【0280】
本発明に用いられる電子阻止層の層厚としては、好ましくは3〜100nmの範囲であり、更に好ましくは5〜30nmの範囲である。
【0281】
電子阻止層に用いられる材料としては、前述の正孔輸送層に用いられる材料が好ましく用いられ、また、前述のホスト化合物として用いられる材料も電子阻止層に好ましく用いられる。
【0282】
≪正孔注入層≫
本発明に用いられる正孔注入層(以下、「陽極バッファー層」ともいう。)とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために陽極と発光層との間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されている。
【0283】
本発明において正孔注入層は必要に応じて設け、前記のように陽極と発光層又は陽極と正孔輸送層との間に存在させてもよい。
【0284】
正孔注入層は、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、正孔注入層に用いられる材料としては、例えば前述の正孔輸送層に用いられる材料等が挙げられる。
【0285】
中でも銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニン誘導体、特表2003−519432号公報や特開2006−135145号公報等に記載されているようなヘキサアザトリフェニレン誘導体、酸化バナジウムに代表される金属酸化物、アモルファスカーボン、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム錯体等に代表されるオルトメタル化錯体、トリアリールアミン誘導体等が好ましい。
【0286】
前述の正孔注入層に用いられる材料は単独で用いてもよく、また複数種を併用して用いてもよい。
【0287】
≪その他の添加物≫
前述した有機EL素子を構成する各層は、更にその他の添加物が含まれていてもよい。その他の添加物は、添加剤として組成物に添加されていてもよいし、構成素材の不純物として含まれていてもよい。
【0288】
その他の含有物としては、例えば臭素、ヨウ素及び塩素等のハロゲン元素やハロゲン化化合物、Pd、Ca、Na等のアルカリ金属やアルカリ土類金属、遷移金属の化合物や錯体、塩等が挙げられる。
【0289】
その他の含有物の含有量は、任意に決定することができるが、含有される層の全質量%に対して1000ppm以下であることが好ましく、より好ましくは500ppm以下であり、更に好ましくは50ppm以下である。
【0290】
ただし、電子や正孔の輸送性を向上させる目的や、励起子のエネルギー移動を有利にするための目的等によってはこの範囲内ではない。
【0291】
≪陽極≫
有機EL素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上、好ましくは4.5V以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としては、Au等の金属、CuI、インジウム・スズ酸化物(ITO)、SnO2、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In23−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。
【0292】
陽極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、又はパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、前記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。
【0293】
又は、有機導電性化合物のように塗布可能な物質を用いる場合には、印刷方式、コーティング方式等湿式製膜法を用いることもできる。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。
【0294】
陽極の厚さは材料にもよるが、通常10nm〜1μm、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
【0295】
≪陰極≫
陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。
【0296】
陰極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、厚さは通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。
【0297】
なお、発光した光を透過させるため、有機EL素子の陽極又は陰極のいずれか一方が透明又は半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
【0298】
また、陰極に前記金属を1〜20nmの厚さで作製した後に、陽極の説明で挙げる導電性透明材料をその上に作製することで、透明又は半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する素子を作製することができる。
【0299】
≪支持基板≫
本発明の有機EL素子に用いることのできる支持基板(以下、基体、基板、基材、支持体等とも言う)としては、ガラス、プラスチック等の種類には特に限定はなく、また透明であっても不透明であってもよい。支持基板側から光を取り出す場合には、支持基板は透明であることが好ましい。好ましく用いられる透明な支持基板としては、ガラス、石英、透明樹脂フィルムを挙げることができる。特に好ましい支持基板は、有機EL素子にフレキシブル性を与えることが可能な樹脂フィルムである。
【0300】
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートフタレート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類又はそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリル、又はポリアリレート類、アートン(登録商標、JSR株式会社製)若しくはアペル(登録商標、三井化学株式会社製)といったシクロオレフィン系樹脂等を挙げられる。
【0301】
樹脂フィルムの表面には、ガスバリアー層として、無機物、有機物の被膜又はその両者のハイブリッド被膜が形成されていてもよい。このようなガスバリアー層は、水分や酸素等素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する目的で設けられる。
【0302】
バリアー膜を形成する材料としては、水分や酸素等素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素等を用いることができる。更に該膜の脆弱性を改良するために、これら無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせることがより好ましい。無機層と有機層の積層順については特に制限はないが、両者を交互に複数回積層させることが好ましい。
【0303】
ガスバリアー膜の形成方法については特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等を用いることができるが、特開2004−68143号公報に記載されているような大気圧プラズマ重合法によるものが特に好ましい。
【0304】
不透明な支持基板としては、例えば、アルミニウム、ステンレス等の金属板、フィルムや不透明樹脂基板、セラミック製の基板等が挙げられる。
【0305】
本発明の有機EL素子の発光の室温における外部取り出し量子効率は、1%以上であることが好ましく、5%以上であるとより好ましい。
【0306】
ここで、外部取り出し量子効率(%)=有機EL素子外部に発光した光子数/有機EL素子に流した電子数×100である。
【0307】
また、カラーフィルター等の色相改良フィルター等を併用しても、有機EL素子からの発光色を蛍光体を用いて多色へ変換する色変換フィルターを併用してもよい。
【0308】
≪封止≫
本発明の有機EL素子の封止に用いられる封止手段としては、例えば、封止部材と、電極、支持基板とを接着剤で接着する方法を挙げることができる。封止部材としては、有機EL素子の表示領域を覆うように配置されていればよく、凹板状でも、平板状でもよい。また、透明性、電気絶縁性は特に限定されない。
【0309】
具体的には、ガラス板、ポリマー板・フィルム、金属板・フィルム等が挙げられる。ガラス板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等を挙げることができる。また、ポリマー板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルフォン等を挙げることができる。金属板としては、ステンレス、鉄、銅、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、亜鉛、クロム、チタン、モリブテン、シリコン、ゲルマニウム及びタンタルからなる群から選ばれる一種以上の金属又は合金からなるものが挙げられる。
【0310】
本発明においては、有機EL素子を薄膜化できるということからポリマーフィルム、金属フィルムを好ましく使用することができる。更には、ポリマーフィルムはJIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された水蒸気透過度(WVTR)が0.001〜1g/(m・day)で、かつJIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度(OTR)が0.001〜1mL/(m・day・atm)のガスバリアー性を有するガスバリアー性フィルム(すなわち、ガスバリアー層。)であることが好ましい。上記ポリマーフィルムは、さらに好ましくはWVTRが0.01〜1g/(m・day)の範囲内、OTRが0.01〜1mL/(m・day・atm)の範囲内である。
【0311】
封止部材を凹状に加工するのは、サンドブラスト加工、化学エッチング加工等が使われる。
【0312】
接着剤として具体的には、アクリル酸系オリゴマー、メタクリル酸系オリゴマーの反応性ビニル基を有する光硬化及び熱硬化型接着剤、2−シアノアクリル酸エステル等の湿気硬化型等の接着剤を挙げることができる。また、エポキシ系等の熱及び化学硬化型(二液混合)を挙げることができる。また、ホットメルト型のポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィンを挙げることができる。また、カチオン硬化タイプの紫外線硬化型エポキシ樹脂接着剤を挙げることができる。
【0313】
なお、有機EL素子が熱処理により劣化する場合があるので、室温から80℃までに接着硬化できるものが好ましい。また、前記接着剤中に乾燥剤を分散させておいてもよい。封止部分への接着剤の塗布は市販のディスペンサーを使ってもよいし、スクリーン印刷のように印刷してもよい。
【0314】
また、有機機能層を挟み支持基板と対向する側の電極の外側に該電極と有機機能層を被覆し、支持基板と接する形で無機物、有機物の層を形成し封止膜とすることも好適にできる。この場合、該膜を形成する材料としては、水分や酸素等素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素等を用いることができる。
【0315】
更に該膜の脆弱性を改良するために、これら無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせることが好ましい。これらの膜の形成方法については特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等を用いることができる。
【0316】
封止部材と有機EL素子の表示領域との間隙には、気相及び液相では、窒素、アルゴン等の不活性気体やフッ化炭化水素、シリコンオイルのような不活性液体を注入することが好ましい。また、真空とすることも可能である。また、内部に吸湿性化合物を封入することもできる。
【0317】
吸湿性化合物としては、例えば、金属酸化物(例えば、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等)、硫酸塩(例えば、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸コバルト等)、金属ハロゲン化物(例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、フッ化セシウム、フッ化タンタル、臭化セリウム、臭化マグネシウム、ヨウ化バリウム、ヨウ化マグネシウム等)、過塩素酸類(例えば、過塩素酸バリウム、過塩素酸マグネシウム等)等が挙げられ、硫酸塩、金属ハロゲン化物及び過塩素酸類においては無水塩が好適に用いられる。
【0318】
≪保護膜、保護板≫
有機機能層を挟み支持基板と対向する側の前記封止膜又は前記封止用フィルムの外側に、素子の機械的強度を高めるために、保護膜若しくは保護板を設けてもよい。特に、封止が前記封止膜により行われている場合には、その機械的強度は必ずしも高くないため、このような保護膜、保護板を設けることが好ましい。これに使用することができる材料としては、前記封止に用いたのと同様なガラス板、ポリマー板・フィルム、金属板・フィルム等を用いることができるが、軽量かつ薄膜化ということからポリマーフィルムを用いることが好ましい。
【0319】
≪光取り出し向上技術≫
有機エレクトロルミネッセンス素子は、空気よりも屈折率の高い(屈折率1.6〜2.1程度の範囲内)層の内部で発光し、発光層で発生した光のうち15%から20%程度の光しか取り出せないと一般的に言われている。これは、臨界角以上の角度θで界面(透明基板と空気との界面)に入射する光は、全反射を起こし素子外部に取り出すことができないことや、透明電極ないし発光層と透明基板との間で光が全反射を起こし、光が透明電極ないし発光層を導波し、結果として、光が素子側面方向に逃げるためである。
【0320】
この光の取り出しの効率を向上させる手法としては、例えば、透明基板表面に凹凸を形成し、透明基板と空気界面での全反射を防ぐ方法(例えば、米国特許第4774435号明細書)、基板に集光性を持たせることにより効率を向上させる方法(例えば、特開昭63−314795号公報)、素子の側面等に反射面を形成する方法(例えば、特開平1−220394号公報)、基板と発光体の間に中間の屈折率を持つ平坦層を導入し、反射防止膜を形成する方法(例えば、特開昭62−172691号公報)、基板と発光体の間に基板よりも低屈折率を持つ平坦層を導入する方法(例えば、特開2001−202827号公報)、基板、透明電極層や発光層のいずれかの層間(含む、基板と外界間)に回折格子を形成する方法(特開平11−283751号公報)等が挙げられる。
【0321】
本発明においては、これらの方法を本発明の有機EL素子と組み合わせて用いることができるが、基板と発光体の間に基板よりも低屈折率を持つ平坦層を導入する方法、又は基板、透明電極層や発光層のいずれかの層間(含む、基板と外界間)に回折格子を形成する方法を好適に用いることができる。
【0322】
本発明は、これらの手段を組み合わせることにより、更に高輝度又は耐久性に優れた素子を得ることができる。
【0323】
透明電極と透明基板の間に低屈折率の媒質を光の波長よりも長い厚さで形成すると、透明電極から出てきた光は、媒質の屈折率が低いほど、外部への取り出し効率が高くなる。
【0324】
低屈折率層としては、例えば、エアロゲル、多孔質シリカ、フッ化マグネシウム、フッ素系ポリマー等が挙げられる。透明基板の屈折率は一般に1.5〜1.7程度の範囲内であるので、低屈折率層は、屈折率がおよそ1.5以下であることが好ましい。また更に1.35以下であることが好ましい。
【0325】
また、低屈折率媒質の厚さは、媒質中の波長の2倍以上となるのが望ましい。これは、低屈折率媒質の厚さが、光の波長程度になってエバネッセントで染み出した電磁波が基板内に入り込む層厚になると、低屈折率層の効果が薄れるからである。
【0326】
全反射を起こす界面又は、いずれかの媒質中に回折格子を導入する方法は、光取り出し効率の向上効果が高いという特徴がある。この方法は、回折格子が1次の回折や、2次の回折といった、いわゆるブラッグ回折により、光の向きを屈折とは異なる特定の向きに変えることができる性質を利用して、発光層から発生した光のうち、層間での全反射等により外に出ることができない光を、いずれかの層間若しくは、媒質中(透明基板内や透明電極内)に回折格子を導入することで光を回折させ、光を外に取り出そうとするものである。
【0327】
導入する回折格子は、二次元的な周期屈折率を持っていることが望ましい。これは、発光層で発光する光はあらゆる方向にランダムに発生するので、ある方向にのみ周期的な屈折率分布を持っている一般的な一次元回折格子では、特定の方向に進む光しか回折されず、光の取り出し効率がさほど上がらない。
【0328】
しかしながら、屈折率分布を二次元的な分布にすることにより、あらゆる方向に進む光が回折され、光の取り出し効率が上がる。
【0329】
回折格子を導入する位置としては、いずれかの層間、若しくは媒質中(透明基板内や透明電極内)でも良いが、光が発生する場所である有機発光層の近傍が望ましい。このとき、回折格子の周期は、媒質中の光の波長の約1/2〜3倍程度の範囲内が好ましい。回折格子の配列は、正方形のラチス状、三角形のラチス状、ハニカムラチス状等、二次元的に配列が繰り返されることが好ましい。
【0330】
≪集光シート≫
本発明の有機EL素子は、支持基板(基板)の光取り出し側に、例えばマイクロレンズアレイ上の構造を設けるように加工したり、又は、いわゆる集光シートと組み合わせることにより、特定方向、例えば素子発光面に対し正面方向に集光することにより、特定方向上の輝度を高めることができる。
【0331】
マイクロレンズアレイの例としては、基板の光取り出し側に一辺が30μmでその頂角が90度となるような四角錐を二次元に配列する。一辺は10〜100μmの範囲内が好ましい。これより小さくなると回折の効果が発生して色付き、大きすぎると厚さが厚くなり好ましくない。
【0332】
集光シートとしては、例えば液晶表示装置のLEDバックライトで実用化されているものを用いることが可能である。このようなシートとして例えば、住友スリーエム社製輝度上昇フィルム(BEF)等を用いることができる。プリズムシートの形状としては、例えば基材に頂角90度、ピッチ50μmの△状のストライプが形成されたものであってもよいし、頂角が丸みを帯びた形状、ピッチをランダムに変化させた形状、その他の形状であっても良い。
【0333】
また、有機EL素子からの光放射角を制御するために光拡散板・フィルムを、集光シートと併用してもよい。例えば、(株)きもと製拡散フィルム(ライトアップ(登録商標))等を用いることができる。
【0334】
≪有機EL素子を構成する各層の形成方法≫
本発明に用いられる有機EL素子を構成する各層(正孔注入層、正孔輸送層、電子阻止層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層等)の形成方法について説明する。
【0335】
本発明に用いられる有機EL素子を構成する各有機機能層の形成方法は、特に制限はなく、従来公知の例えば真空蒸着法、湿式法(ウェットプロセスともいう)等による形成方法を用いることができる。ここで、有機機能層が、ウェットプロセスで形成された層であることが好ましい。すなわち、ウェットプロセスで有機EL素子を作製することが好ましい。有機EL素子をウェットプロセスで作製することで、均質な膜(塗膜)が得られやすく、且つピンホールが生成しにくい等の効果を奏することができる。なお、ここでの膜(塗膜)とは、ウェットプロセスによる塗布後に乾燥させた状態のものである。
【0336】
湿式法としては、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、印刷法、ダイコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法、カーテンコート法、LB法(ラングミュア−ブロジェット法)等があるが、均質な薄膜が得られやすく、且つ高生産性の点から、ダイコート法、ロールコート法、インクジェット法、スプレーコート法等のロール・to・ロール方式適性の高い方法が好ましい。
【0337】
つぎに、本発明の有機EL素子を生産するための有機材料用組成物について説明する。
【0338】
本発明に係る化合物を溶解又は分散する液媒体としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル等の脂肪酸エステル類、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族炭化水素類、シクロヘキサン、デカリン、ドデカン等の脂肪族炭化水素類、DMF、DMSO等の有機溶媒を用いることができる。
【0339】
また、分散方法としては、超音波、高剪断力分散やメディア分散等の分散方法により分散することができる。
【0340】
更に層毎に異なる製膜法を適用してもよい。製膜に蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は使用する化合物の種類等により異なるが、一般にボート加熱温度50〜450℃、真空度10−6〜10−2Pa、蒸着速度0.01〜50nm/秒、基板温度−50〜300℃、厚さ0.1nm〜5μm、好ましくは5〜200nmの範囲で適宜選ぶことが望ましい。
【0341】
本発明の有機EL素子を生産するための有機材料用組成物としては、本発明の効果の観点から、有機材料用組成物が、リン光発光性金属錯体及び蛍光発光性化合物を含有し、当該リン光発光性金属錯体が、前記一般式(1)で表される構造を有する化合物であり、かつ、当該リン光発光性金属錯体が、前記式(a)を満たすことを特徴とする有機材料用組成物であることが、好ましい。
【0342】
またリン光発光性金属錯体及び蛍光発光性化合物を含有し、当該リン光発光性金属錯体が、前記一般式(3)〜(5)のいずれかで表される化学構造を有する化合物であり、かつ、当該リン光発光性金属錯体が、前記式(b)を満たすことが、好ましい。
【0343】
有機EL素子を構成する各層の形成は、1回の真空引きで一貫して正孔注入層から陰極まで作製するのが好ましいが、途中で取り出して異なる製膜法を施しても構わない。その際は作業を乾燥不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0344】
≪用途≫
本発明の有機EL素子は、表示デバイス、ディスプレイ、各種発光光源として用いることができる。
【0345】
発光光源として、例えば、照明装置(家庭用照明、車内照明)、時計や液晶用バックライト、看板広告、信号機、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられるがこれに限定するものではないが、特に液晶表示装置のバックライト、照明用光源としての用途に有効に用いることができる。
【0346】
本発明の有機EL素子においては、必要に応じ製膜時にメタルマスクやインクジェットプリンティング法等でパターニングを施してもよい。パターニングする場合は、電極のみをパターニングしてもよいし、電極と発光層をパターニングしてもよいし、素子全層をパターニングしてもよく、素子の作製においては、従来公知の方法を用いることができる。
【0347】
≪表示装置≫
以下、本発明の有機EL素子を有する表示装置の一例を図面に基づいて説明する。
【0348】
図9は、本発明の有機EL素子から構成される表示装置の構成の一例を示した概略斜視図であって、有機EL素子の発光により画像情報の表示を行う、例えば、携帯電話等のディスプレイの模式図である。図9に示すとおり、ディスプレイ1は、複数の画素を有する表示部A、画像情報に基づいて表示部Aの画像走査を行う制御部B等からなる。
【0349】
制御部Bは表示部Aと電気的に接続されている。制御部Bは、複数の画素それぞれに対し、外部からの画像情報に基づいて走査信号と画像データ信号を送る。その結果、各画素が走査信号により走査線毎に画像データ信号に応じて順次発光し、画像情報が表示部Aに表示される。
【0350】
図10は、図9に記載の表示部Aの模式図である。
【0351】
表示部Aは基板上に、複数の走査線5及びデータ線6を含む配線部と、複数の画素3等とを有する。
【0352】
表示部Aの主要な部材の説明を以下に行う。
【0353】
図10においては、画素3の発光した光が白矢印方向(下方向)へ取り出される場合を示している。配線部の走査線5及び複数のデータ線6はそれぞれ導電材料から構成されている。走査線5とデータ線6は互いに格子状に直交して、その直交する位置で画素3に接続されている(詳細は図示していない)。
【0354】
画素3は、走査線5から走査信号が送信されると、データ線6から画像データ信号を受け取り、受け取った画像データに応じて発光する。
【0355】
発光の色が赤領域の画素、緑領域の画素、青領域の画素を適宜同一基板上に並列配置することによって、フルカラー表示が可能となる。
【0356】
≪照明装置≫
本発明の有機EL素子を具備した、本発明の照明装置の一態様について説明する。
【0357】
本発明の有機EL素子の非発光面をガラスケースで覆い、厚さ300μmのガラス基板を封止用基板として用いて、周囲にシール材として、エポキシ系光硬化型接着剤(東亞合成株式会社製アロニックスLC0629B)を適用し、これを陰極上に重ねて透明支持基板と密着させ、ガラス基板側からUV光を照射して、硬化させて、封止し、図11図12に示すような照明装置を形成することができる。
【0358】
図11は、照明装置の概略図を示し、本発明の有機EL素子101はガラスカバー102で覆われている(なお、ガラスカバーでの封止作業は、有機EL素子101を大気に接触させることなく窒素雰囲気下のグローブボックス(純度99.999%以上の高純度窒素ガスの雰囲気下)で行う。)。
【0359】
図12は、照明装置の断面図を示し、図12において、105は陰極、106は有機EL層(発光ユニット)、107は透明電極付きガラス基板を示す。なお、ガラスカバー102内には窒素ガス108が充填され、捕水剤109が設けられている。
【0360】
図13は、可撓性支持基板201を用いて、塗布液によるウェットプロセスで作製した有機EL素子を有する照明装置の断面図である。図13に示すとおり、本発明の好ましい実施形態にかかる有機EL素子200は、可撓性支持基板201を有している。可撓性支持基板201上には陽極202が形成され、陽極202上には、下記に示す種々の有機機能層が形成され、有機機能層上には陰極208が形成されている。
有機機能層には、例えば、正孔注入層203、正孔輸送層204、発光層205、電子輸送層206、電子注入層207が含まれ、そのほかに正孔ブロック層や電子ブロック層等が含まれてもよい。
可撓性支持基板201上の陽極202、有機機能層、陰極208は封止接着剤209を介して可撓性封止部材210によって封止されている。
【0361】
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0362】
例えば、本発明の実施態様としては、陽極と陰極との間に、当該発光層を備える有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記発光層が、リン光発光性化合物(リン光発光性金属錯体)及び蛍光発光性化合物を含有し、かつ、前記リン光発光性化合物の発光スペクトルと前記蛍光発光性化合物の吸収スペクトルとが、重なりを有しており、前記発光層単層の発光減衰寿命τが下記(A1)式を満たし、前記発光層単層の絶対量子収率PLQEが下記(A2)式を満たし、前記リン光発光性化合物と蛍光発光性化合物とが下記(A3)式又は下記(A4)式を満たすことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子であってもよい。なお、従来の発光材料を単独で用いた素子では、高輝度下、高電流密度下で電界駆動した際に、ロールオフの増大(J0の低下)や加速係数が増大することで発光性が低下することに加え、素子の輝度半減寿命の大幅な低下を引き起こしていた。この実施形態ではリン光発光性化合物で生成した励起子を蛍光発光性化合物へのフェルスター型エネルギー移動によって移動させることで、励起子を即座に発光として輻射失活可能でき、ひいては、ロールオフ抑制(J0の増大)や加速係数の増大を抑制できる。
【0363】
0<τ/τ0≦0.7・・・(A1)
0.6≦PLQE/PLQE0≦1・・・(A2)
HOMO(F)<HOMO(P)・・・(A3)
LUMO(P)<LUMO(F)・・・(A4)
[τ:前記発光層単層の発光減衰寿命
τ0:前記リン光発光性化合物の単膜の発光減衰寿命
PLQE:前記発光層単層の絶対量子収率
PLQE0:前記リン光発光性化合物の単膜の絶対量子収率
HOMO(P)、LUMO(P):それぞれ、前記リン光発光性化合物の最高被占分子軌道(HOMO)と最低空分子軌道(LUMO)のエネルギー準位
HOMO(F)、LUMO(F):それぞれ、前記蛍光発光性化合物の最高被占分子軌道(HOMO)と前記蛍光発光性化合物の最低空分子軌道(LUMO)のエネルギー準位]
【0364】
なお、発光層単層とは、ホスト化合物と、リン光発光性化合物と、蛍光発光性化合物とを含有する、スペクトル測定試料として作製される評価用薄膜をいう。なお、この評価用薄膜の具体的な製造方法については、実施例にて詳述する。
また、リン光発光性化合物の単膜とは、ホスト化合物と、リン光発光性化合物と、蛍光発光性化合物とを含有する上記評価用薄膜において、ホスト化合物と、リン光発光性化合物とを含有する薄膜のことをいう。このように、リン光発光性化合物の単膜とは、蛍光発光性化合物を含有せず、本発明に係るτ/τ0、φ/φ0を求めるための評価用の発光性薄膜である。
【0365】
[(A1)〜(A4)式の説明]
<(A1)式>
発光層がリン光発光性化合物及び蛍光発光性化合物を含有することで、リン光発光性化合物の発光減衰寿命を短縮できることが知られている。
そして、リン光発光性化合物の発光減衰寿命が短いことは、リン光発光性化合物の三重項励起エネルギーが速やかに消費されることを意味するが、本発明者は、リン光発光性化合物の発光減衰寿命の短縮(τ/τ0)が0.7以下であれば、有機EL素子の輝度半減寿命の加速係数を下げる効果が大きいことを見いだした。
なお、本発明において、0より大きければ、τ/τ0は小さいほどよい。
【0366】
<(A2)式>
リン光発光性化合物に蛍光発光性化合物を含有することで、リン光発光性化合物の三重項励起状態から、蛍光発光性化合物の三重項励起状態へ、デクスター型エネルギー移動が発生し得る。デクスター型エネルギー移動が発生した場合、蛍光発光性化合物の三重項励起状態からは非発光で失活するので、絶対量子収率(すなわち、発光層単層の絶対量子収率PLQE)は低下する。
しかしながら、有機EL素子の性能において、発光層単層の絶対量子収率PLQEは高い方が望ましい。
実用的なリン光発光性化合物は100%に近い高い絶対量子収率(すなわち、リン光発光性化合物の単膜の絶対量子収率PLQE0)を有しており、蛍光発光性化合物を添加しても、デクスター型エネルギー移動による絶対量子収率の低下を抑制し、高い絶対量子収率を維持することが望まれる。
以上の観点から、PLQE/PLQE0が0.6〜1.0の範囲内であれば、実用的な発光素子性能をより好適に維持することができる。なお、リン光単独のPLQE0を維持する(低下しない)という意味で、PLQE/PLQE0の最大値は1である。
【0367】
<(A3)又は(A4)式>
(A3)又は(A4)式を満たすことにより、蛍光発光性化合物上で直接電荷が再結合せず、外部取り出し量子効率(EQE)の低下をより好適に抑制できる。
【0368】
発光減衰寿命は、蛍光寿命測定装置(例えば、ストリークカメラC4334や小型蛍光寿命測定装置C11367−03(いずれも浜松ホトニクス社製)など)を用いることで計測可能である。
また、発光減衰寿命τ0は、光減衰寿命τを計測した薄膜において、蛍光発光性化合物を含有させないほかは同様にして製造した薄膜について、同様に計測すればよい。
【0369】
PLQEの測定は、絶対量子収率測定装置(例えば、絶対量子収率測定装置C9920−02(浜松ホトニクス社製))を用いることで可能である。
また、絶対量子収率PLQE0は、PLQEを計測した薄膜において、蛍光発光性化合物を含有させないほかは同様にして製造した薄膜について、同様に計測すればよい。
【実施例】
【0370】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
【0371】
次に、本発明の要件を満たす実施例とそうでない比較例とを例示して、本発明に係る薄膜及び有機エレクトロルミネッセンス素子について説明する。
【0372】
[参考例1]
実施例と比較例とを用いて本発明を説明する前に、まず、参考例1では、青色発光を想定したリン光発光性金属錯体を使用し、リン光発光性金属錯体から消光物質へのエネルギー移動速度(Kq)について確認した。
【0373】
≪評価用薄膜の作製≫
50mm×50mm、厚さ0.7mmの石英基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った後、この透明基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。真空蒸着装置の蒸着用るつぼの各々に、表Iに示す「ホスト」及び「リン光発光性金属錯体」、並びに「消光物質」としてQ−1を、各々素子作製に最適の量となるように充填した。蒸着用るつぼは、モリブデン性の抵抗加熱用材料で作製されたものを用いた。
【0374】
真空蒸着装置内を真空度1×10−4Paまで減圧した後、ホスト、リン光発光性金属錯体、消光物質がそれぞれ84体積%、15体積%、1体積%になるように共蒸着させ、膜厚30nmの評価用薄膜を作製した。
【0375】
<比較用薄膜の作製>
比較用薄膜は、消光物質の蒸着を行わない点(消光物質を0体積%、消光物質を減らした分はホスト化合物に変更)以外は、前記の「評価用薄膜の作製」と同様の方法で作製を行った。
【0376】
なお、比較用薄膜は、各評価用薄膜一つに対して一つずつ(具体的には、評価用薄膜1−1に対して消光物質を蒸着させていない比較用薄膜1−1Ref、評価用薄膜1−2に対して消光物質を蒸着させていない比較用薄膜1−2Ref等)作製した。
≪コア・シェル型ドーパントの発光寿命の測定≫
評価用薄膜、比較用薄膜の発光性金属錯体の発光寿命(リン光寿命)について、過渡PL特性を測定することによって求めた。過渡PL特性の測定には、小型蛍光寿命測定装置C11367−03(浜松ホトニクス社製)を用いた。減衰成分は、340nmのLEDを励起光源としたTCC900モードにて測定した。
【0377】
なお、評価用薄膜1−1に対して無酸素状態で測定を行ったところ、発光寿命は0.8μsであったのに対し、比較用薄膜1−1−Refの発光寿命は1.6μsであった。これは、消光物質のQ−1が添加された評価用薄膜1−1において、発光性金属錯体からQ−1へのエネルギー移動による消光が一部起こっているため、比較用薄膜1−1−Refよりも短い発光寿命になったものと推察される。
<リン光発光性金属錯体から消光物質へのエネルギー移動速度(Kq)の算出>
リン光発光性金属錯体から消光物質へのエネルギー移動速度(Kq)は、前記数式(SV)を変形した下記数式(SV2)に基づいて、前記の方法にて求めた評価用薄膜の発光性金属錯体の発光寿命(τ(with Quencher)、以下、「発光減衰寿命」ともいう。)の値と比較用薄膜の発光性金属錯体の発光寿命(τ0(without Quencher))の値を代入することによって算出した。
【0378】
なお、評価用薄膜については、消光物質の含有量が1体積%であることから、[Q]には1を代入して算出した。
【0379】
【数2】
【0380】
前記数式(SV2)中、PL(with Quencher)は消光物質存在下における発光強度、PL(without Quencher)は消光物質非存在下における発光強度、Kqは発光性金属錯体から消光物質へのエネルギー移動速度、[Q](=Kd×t)は消光物質濃度、Kdは凝集・分解等による消光物質の生成速度、tは光又は電流による積算励起時間、τは消光物質が存在する場合の発光性金属錯体のリン光寿命、τ0は消光物質が存在しない場合の発光性金属錯体のリン光寿命ある。
【0381】
前記の方法によって各評価用薄膜のKqを算出し、評価用薄膜1−1のKqを1とする相対比(Kq相対比)を求めた。
≪Vall/Vcore値の算出≫
all/Vcore値の算出において、Vall、Vcoreは前記した定義のとおりである。そして、Vall/Vcore値は、Vall、Vcoreのファンデルワールス分子体積をWinmostor(株式会社クロスアビリティ製)によって算出した後、VallをVcoreで割ることに
より算出した。
なお、本実施例([参考例1]〜[参考例5]、[実施例1]〜[実施例8])において使用した各種化合物については、前記した化合物に加え、以下の化合物を使用した。
【0382】
【化51】
【0383】
【化52】
【0384】
【化53】
【0385】
【化54】
【0386】
【化55】
【0387】
【化56】
【0388】
【化57】
【0389】
以下、各評価の結果を表Iに示す。
【0390】
なお、表中のホストの番号、ドーパントの番号は、前記した化合物例の番号に対応している。
【0391】
【表1】
【0392】
<結果の検討:参考例1>
表Iに示すとおり、評価用薄膜1−10〜1−17については、ドーパントのVall/Vcoreが2を超えているとともに、本発明で規定する一般式(1)、一般式(3)、一般式(4)又は一般式(5)で表される化学構造を有するコア・シェル型リン光発光性金属錯体を用いたことから、発光性金属錯体から消光物質へのエネルギー移動が抑制され、小さいKq値(Kq相対比)となることが確認できた。
【0393】
[参考例2]
次に、参考例2では、ホストとしてH−2を使用した。参考例1と同様に青色発光を想定した化合物を使用し、一般式(1)で表される化学構造を有するリン光発光性金属錯体から消光物質へのエネルギー移動速度について確認した。
【0394】
<評価用薄膜、比較用薄膜の作製>
評価用薄膜、比較用薄膜は、表IIに示す「ホスト」及び「リン光発光性金属錯体」を使用した点以外は、参考例1と同様の方法で作製を行った。
【0395】
≪各値の測定、算出≫
リン光発光性金属錯体の発光寿命の測定、リン光発光性金属錯体から消光物質へのエネルギー移動速度(Kq相対比)の算出、Vall/Vcore値の算出については、参考例1と同様の方法で行った。
【0396】
なお、Kq相対比については、評価用薄膜2−1のKqを1とする相対比(Kq相対比)を求めた。評価結果を表IIに示す。
【0397】
【表2】
【0398】
<結果の検討:参考例2>
表IIに示すとおり、評価用薄膜2−2〜2−23については、リン光発光性金属錯体のVall/Vcoreが2を超えているとともに、本発明に係るコア・シェル型金属錯体を用いたことから、発光性金属錯体から消光物質へのエネルギー移動が抑制されることにより、小さいKq値(Kq相対比)となることが確認できた。特に、一般式(2)におけるL′が非共役連結基であった評価用薄膜、又は、環Z1と環Z2とで表される配位子が三つ以上の置換基を有していた評価用薄膜については、かなり小さいKq値(Kq相対比)となることが確認できた。
【0399】
[参考例3]
次に、参考例3では、青色発光を想定した化合物を使用し、本発明に係るリン光発光性金属錯体(コア・シェル型ドーパント)から消光物質へのエネルギー移動速度について確認した。
【0400】
≪評価用薄膜、比較用薄膜の作製≫
評価用薄膜、比較用薄膜は、表IIIに示す「ホスト」及び「リン光発光性金属錯体」を使用し、「消光物質」としてQ−2を使用し、消光物質を0.1体積%(消光物質を減らした分はホスト化合物に変更)とした点以外は、参考例1と同様の方法で作製を行った。
【0401】
<各値の測定、算出>
リン光金属錯体の発光寿命の測定、リン光発光性金属錯体から消光物質へのエネルギー移動速度(Kq相対比)の算出、Vall/Vcore値の算出については、参考例1と同様の方法で行った。
【0402】
なお、Kq相対比については、評価用薄膜3−1のKqを1とする相対比(Kq相対比)を求めた。評価結果を表IIIに示す。
【0403】
【表3】
【0404】
<結果の検討:参考例3>
表IIIに示すとおり、評価用薄膜3−2〜3−16については、リン光発光性金属錯体のVall/Vcoreが2を超えているとともに、本発明に係るリン光発光性金属錯体(コア・シェル型ドーパント)を用いたことから、リン光発光性金属錯体から消光物質へのエネルギー移動が抑制されることにより、小さいKq値(Kq相対比)となることが確認できた。特に、環Z3〜環Z8で表される配位子が三つ以上の置換基を有していた評価用薄膜については、かなり小さいKq値(Kq相対比)となることが確認できた。
【0405】
[参考例4]
次に、参考例4では、緑色発光を想定した化合物を使用し、リン光発光性金属錯体から消光物質へのエネルギー移動速度について確認した。
【0406】
≪評価用薄膜、比較用薄膜の作製≫
評価用薄膜、比較用薄膜は、表IVに示す「ホスト」及び「リン光発光性金属錯体」を使用した点以外は、参考例1と同様の方法で作製を行った。
【0407】
<各値の測定、算出>
金属錯体の発光寿命の測定、リン光発光性金属錯体から消光物質へのエネルギー移動速度(Kq相対比)の算出、Vall/Vcore値の算出については、参考例1と同様の方法で行った。
【0408】
なお、Kq相対比については、評価用薄膜4−1のKqを1とする相対比(Kq相対比)を求めた。評価結果を表IVに示す。
【0409】
【表4】
【0410】
<結果の検討:参考例4>
表IVに示すとおり、評価用薄膜4−6〜4−11については、リン光発光性金属錯体のVall/Vcoreが2を超えているとともに、本発明で規定する一般式で表される化学構造を有するコア・シェル型リン光発光性金属錯体を用いたことから、リン光発光性金属錯体から消光物質へのエネルギー移動が抑制されることにより、緑色発光の薄膜としても、小さいKq値(Kq相対比)となることが確認できた。特に、一般式(2)におけるL′が非共役連結基であった評価用薄膜、又は、環Z1と環Z2とで表される配位子が三つ以上の置換基を有していた評価用薄膜については、かなり小さいKq値(Kq相対比)となることが確認できた。
【0411】
[参考例5]
次に、参考例5では、赤色発光を想定した化合物を使用し、リン光発光性金属錯体から消光物質へのエネルギー移動速度について確認した。
【0412】
<評価用薄膜、比較用薄膜の作製>
評価用薄膜、比較用薄膜は、表Vに示す「ホスト」及び「リン光発光性金属錯体」を使用した点以外は、参考例1と同様の方法で作製を行った。
【0413】
<各値の測定、算出>
リン光発光性金属錯体の発光寿命の測定、リン光発光性金属錯体から消光物質へのエネルギー移動速度(Kq)の算出、Vall/Vcore値の算出については、参考例1と同様の方法で行った。
【0414】
なお、Kq相対比については、評価用薄膜5−1のKqを1とする相対比(Kq相対比)を求めた。評価結果を表Vに示す。
【0415】
【表5】
【0416】
<結果の検討:参考例5>
表Vに示すとおり、評価用薄膜5−7〜5−11については、リン光発光性金属錯体のVall/Vcoreが2を超えているとともに、本発明で規定する一般式で表される化学構造を有するコア・シェル型リン光発光性金属錯体を用いたことから、リン光発光性金属錯体から消光物質へのエネルギー移動が抑制されることにより、赤色発光の薄膜としても、小さいKq値(Kq相対比)となることが確認できた。
【0417】
[実施例1]
実施例1では、緑色リン光発光性金属錯体と青色蛍光発光性化合物とを含有する白色光照明装置(有機EL素子)の特性について評価した。なお実施例1は、蛍光増感が無い場合の実施例である。
【0418】
(照明装置1‐1の作製)
陽極として厚さ0.7mmのガラス基板上に、ITO(インジウム・スズ酸化物)を110nmの厚さで成膜した支持基板にパターニングを行った後、このITO透明電極を付けた透明支持基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。この基板上に、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS、Bayer製、Baytron P Al 4083)を純水で70%に希釈した溶液を3000rpm、30秒でスピンコート法により製膜した後、130℃にて1時間乾燥し、膜厚30nmの正孔注入輸送層を設けた。正孔注入輸送層を設けた後、この透明支持基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。真空蒸着装置内の蒸着用るつぼの各々に、各層の構成材料を各々素子作製に最適の量、充填した。蒸着用るつぼはモリブデン製又はタングステン製の抵抗加熱用材料で作製されたものを用いた。
【0419】
次いで、真空度1×10−4Paまで減圧した後、緑色リン光発光性金属錯体GD−1、化合物RD−3、化合物F−1及び化合物H−2を、リン光発光性金属錯体が1体積%、化合物RD−3が0.5体積%、化合物F−1が15.5体積%、化合物H−2が83体積%になるよう厚さ80nmで共蒸着し発光層(以下EMLと略記する。)を形成した。その後、化合物ET−1を膜厚30nmに蒸着して電子輸送層を形成し、さらにフッ化カリウム(以下KFと略記載する。)を厚さ2nmで形成した。さらに、アルミニウムを150nm蒸着して陰極を形成した。
【0420】
次いで、上記素子の非発光面をガラスケースで覆い、照明装置1−1を作製した。
【0421】
なお、ガラスカバーでの封止作業は、照明装置1−1を大気に接触させることなく窒素雰囲気下のグローブボックス(純度99.999%以上の高純度窒素ガスの雰囲気下)で行った。
【0422】
次に、照明装置1−1のリン光発光性金属錯体を、表VIに示すリン光発光性金属錯体に変更した以外は、照明装置1−1と同様の照明装置1−2〜1−5を作製した。
【0423】
作製した照明装置1−1〜1−5について、下記のように半減寿命を測定し、連続駆動安定性を評価した。また、下記のように外部取り出し量子効率を測定し、発光性の評価を行った。
【0424】
<半減寿命>
下記測定法に従って、半減寿命の評価を行った。
【0425】
各照明装置を初期輝度4000cd/mを与える電流で定電流駆動して、初期輝度の1/2になる時間を求め、これを半減寿命の尺度とした。なお、半減寿命は照明装置1−1を1とする相対比で表した。
【0426】
なお、値が大きいほうが比較に対して耐久性に優れていることを示す。
【0427】
<外部取り出し量子効率(EQE)>
各照明装置を室温(約23℃)、2.5mA/cmの定電流条件下による通電を行い、発光開始直後の発光輝度(L0)[cd/m]を測定することにより、外部取り出し量子効率(EQE)を算出した。
【0428】
ここで、発光輝度の測定はCS−2000(コニカミノルタ(株)製)を用いて行い、外部取り出し量子効率は、照明装置1−1を1とする相対比で表した。なお、値が大きいほうが発光効率に優れていることを示す。評価結果を表VIに示す。
【0429】
【表6】
【0430】
表VIに示すとおり、リン光発光性金属錯体のVall/Vcoreが2を超えているとともに、本発明で規定する一般式で表される化学構造を有するコア・シェル型金属錯体を用いた照明装置1−3〜1−5については、高効率高寿命で白色発光することが明らかとなった。これは、緑色リン光発光性金属錯体から蛍光発光材料のT1へのデクスター移動による熱失活が抑制され、緑色リン光発光が効率的に行われたためと推察している。
【0431】
[実施例2]
次に、実施例2では、青色蛍光発光する照明装置(有機EL素子)の特性について確認した。なお、実施例2〜実施例8は、蛍光増感がある場合の実施例である。
【0432】
<評価用照明装置の作製>
50mm×50mm、厚さ0.7mmのガラス基板上に、陽極としてITO(インジウムチンオキシド)を150nmの厚さで成膜し、パターニングを行った後、このITO透明電極を付けた透明基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った後、この透明基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。
【0433】
真空蒸着装置内の蒸着用の抵抗加熱ボートの各々に、各層の構成材料を、各々素子作製に最適の量を充填した。前記抵抗加熱ボートはモリブデン製又はタングステン製を用いた。
【0434】
真空度1×10−4Paまで減圧した後、HI−1の入った抵抗加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒でITO透明電極上に蒸着し、層厚15nmの正孔注入層を形成した。
【0435】
次いで、HT−1を蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、層厚30nmの正孔輸送層を形成した。
【0436】
次いで、H−1、表VIIに示すリン光発光性金属錯体、F−1の入った抵抗加熱ボートに通電して加熱し、ホスト、リン光発光性金属錯体、蛍光発光性化合物がそれぞれ84体積%、15体積%、1体積%になるように共蒸着し、層厚40nmの発光層を形成した。
【0437】
次いで、HB−1を蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、層厚5nmの第一電子輸送層を形成した。さらにその上に、ET−1を蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、層厚45nmの第二電子輸送層を形成した。その後、フッ化リチウムを層厚0.5nmになるよう蒸着した後に、アルミニウム100nmを蒸着して陰極を形成し、評価用の有機EL素子を作製した。
【0438】
有機EL素子の作製後、有機EL素子の非発光面を、純度99.999%以上の高純度窒素ガスの雰囲気下にてガラスケースで覆い、厚さ300μmのガラス基板を封止用基板として用いて、周囲にシール材としてエポキシ系光硬化型接着剤(東亞合成株式会社製アロニックスLC0629B)を適用し、これを前記陰極上に重ねて透明支持基板と密着させ、ガラス基板側からUV光を照射して、硬化させて、封止して、図11及び図12に示すような構成からなる評価用照明装置2−1〜2−5を作製した。
【0439】
作製した照明装置2−1〜2−5について、実施例1と同様にして半減寿命を測定し、連続駆動安定性を評価した。また、外部取り出し量子効率を測定し、発光性の評価を行った。半減寿命及び外部取り出し量子効率は、照明装置2−1を1とする相対比で表した。
【0440】
評価結果を表VIIに示す。
【0441】
【表7】
【0442】
表VIIに示すとおり、青色蛍光発光する照明装置2−2〜2−5については、リン光発光性金属錯体のVall/Vcoreが2を超えているとともに、本発明で規定する一般式で表される化学構造を有するコア・シェル型リン光発光性金属錯体を蛍光増感剤として用いたことから、高発光効率かつ高寿命で青色蛍光発光することが明らかとなった。
【0443】
[実施例3]
次に、実施例3では、複数の有機機能層を含む青色蛍光発光する照明装置(有機EL素子)の特性について確認した。
【0444】
<評価用照明装置の作製>
50mm×50mm、厚さ0.7mmのガラス基板上に、陽極としてITO(インジウム・スズ酸化物)を150nmの厚さで成膜し、パターニングを行った後、このITO透明電極を付けた透明基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った後、この透明基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。
真空蒸着装置内の蒸着用の抵抗加熱ボートの各々に、各層の構成材料を、各々素子作製に最適の量を充填した。前記抵抗加熱ボートはモリブデン製又はタングステン製を用いた。
【0445】
真空度1×10−4Paまで減圧した後、HI−2の入った抵抗加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒でITO透明電極上に蒸着し、層厚10nmの正孔注入層を形成した。
【0446】
次いで、HT−2を蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、層厚30nmの正孔輸送層を形成した。
【0447】
次いで、H−2、F−2の入った抵抗加熱ボートに通電して加熱し、ホスト、蛍光発光性化合物がそれぞれ99体積%、1体積%になるように共蒸着し、層厚10nmの第一有機機能層を形成した。次いで、H−2、表VIIIに示すリン光発光性金属錯体がそれぞれ85体積%、15体積%になるように共蒸着し、層厚20nmの第二有機機能層を形成した。
【0448】
次いで、HB−2を蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、層厚5nmの第一電子輸送層を形成した。さらにその上に、ET−2を蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、層厚45nmの第二電子輸送層を形成した。その後、フッ化リチウムを層厚0.5nmになるよう蒸着した後に、アルミニウム100nmを蒸着して陰極を形成し、評価用の有機EL素子を作製した。
【0449】
有機EL素子の作製後、有機EL素子の非発光面を、純度99.999%以上の高純度窒素ガスの雰囲気下にてガラスケースで覆い、厚さ300μmのガラス基板を封止用基板として用いて、周囲にシール材としてエポキシ系光硬化型接着剤(東亞合成株式会社製アロニックスLC0629B)を適用し、これを前記陰極上に重ねて透明支持基板と密着させ、ガラス基板側からUV光を照射して、硬化させて、封止して、図11及び図12に示すような構成からなる評価用照明装置を作製した。
【0450】
<連続駆動安定性(半減寿命)及び発光性(外部取り出し量子効率)の評価>
連続駆動安定性(半減寿命)及び発光性(外部取り出し量子効率)の評価は実施例1と同様の手段で行った。
【0451】
各評価用照明装置について、評価用照明装置3−1の半減寿命、外部取り出し量子効率(EQE)を1とする相対比を求めた。評価結果を表VIIIに示す。
【0452】
【表8】
【0453】
表VIIIに示すとおり、青色蛍光発光する照明装置3−2〜3−5については、金属錯体のVall/Vcoreが2を超えているとともに、本発明で規定する一般式で表される化学構造を有するコア・シェル型リン光発光性金属錯体を蛍光増感剤として用いたことから、蛍光発光性化合物及びリン光発光性金属錯体が別層に含有される場合の照明装置においても高発光効率かつ高寿命で蛍光発光することが明らかとなった。
【0454】
[実施例4]
次に、実施例4では、青色蛍光発光する照明装置(有機EL素子)の特性について確認した。
【0455】
<評価用照明装置の作製>
50mm×50mm、厚さ0.7mmのガラス基板上に、陽極としてITO(インジウム・スズ酸化物)を150nmの厚さで成膜し、パターニングを行った後、このITO透明電極を付けた透明基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った後、この透明基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。
【0456】
真空蒸着装置内の蒸着用の抵抗加熱ボートの各々に、各層の構成材料を、各々素子作製に最適の量を充填した。前記抵抗加熱ボートはモリブデン製又はタングステン製を用いた。
【0457】
真空度1×10−4Paまで減圧した後、HI−1の入った抵抗加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒でITO透明電極上に蒸着し、層厚15nmの正孔注入層を形成した。
【0458】
次いで、HT−2を蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、層厚30nmの正孔輸送層を形成した。
【0459】
次いで、H−3、表IXに示すリン光発光性金属錯体、F−1の入った抵抗加熱ボートに通電して加熱し、ホスト、リン光発光性金属錯体、蛍光発光性化合物がそれぞれ80体積%、19体積%、1体積%になるように共蒸着し、層厚40nmの発光層を形成した。
【0460】
次いで、HB−1を蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、層厚5nmの第一電子輸送層を形成した。さらにその上に、ET−1を蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、層厚45nmの第二電子輸送層を形成した。その後、フッ化リチウムを層厚0.5nmになるよう蒸着した後に、アルミニウム100nmを蒸着して陰極を形成し、評価用の有機EL素子を作製した。
【0461】
有機EL素子の作製後、有機EL素子の非発光面を、純度99.999%以上の高純度窒素ガスの雰囲気下にてガラスケースで覆い、厚さ300μmのガラス基板を封止用基板として用いて、周囲にシール材としてエポキシ系光硬化型接着剤(東亞合成株式会社製アロニックスLC0629B)を適用し、これを前記陰極上に重ねて透明支持基板と密着させ、ガラス基板側からUV光を照射して、硬化させて、封止して、図11及び図12に示すような構成からなる評価用照明装置を作製した。
【0462】
<連続駆動安定性(半減寿命)及び発光性(外部取り出し量子効率)の評価>
連続駆動安定性(半減寿命)及び発光性(外部取り出し量子効率)の評価は実施例1と同様の手段で行った。
各評価用照明装置について、評価用照明装置4−1の半減寿命、外部取り出し量子効率(EQE)を1とする相対比を求めた。また、蛍光発光性化合物、リン光発光性金属錯体の、HOMOエネルギー準位、LUMOエネルギー準位を、米国Gaussian社製の分子軌道計算用ソフトウェアであるGaussian98(Gaussian98、Revision A.11.4,M.J.Frisch,et al,Gaussian,Inc.,Pittsburgh PA,2002.)を用いて計算した。
【0463】
結果を、表IX及び表Xに示す。
【0464】
【表9】
【0465】
【表10】
【0466】
表IXに示すとおり、青色蛍光発光する照明装置4−2〜4−4については、金属錯体のVall/Vcoreが2を超えているとともに、本発明に係るリン光発光性金属錯体(コア・
シェル型ドーパント)を蛍光増感剤として用いたことから、高発光効率かつ高寿命で蛍光発光することが明らかとなった。特に、コア・シェル型リン光発光性金属錯体と蛍光発光性化合物F−1とが、式(c)又は式(d)のいずれかを満たしている照明装置4−2、4−4においてはより高効率・高寿命で蛍光発光することが分かった。これは、式(c)又は式(d)の少なくとも一方を満たすことで、蛍光発光性化合物上のキャリヤ直接再結合を抑制できたためだと推察される。
【0467】
[実施例5]
次に、実施例5では、緑色蛍光発光する照明装置(有機EL素子)の特性について確認した。
<評価用照明装置の作製>
50mm×50mm、厚さ0.7mmのガラス基板上に、陽極としてITO(インジウム・スズ酸化物)を150nmの厚さで成膜し、パターニングを行った後、このITO透明電極を付けた透明基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った後、この透明基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。
真空蒸着装置内の蒸着用の抵抗加熱ボートの各々に、各層の構成材料を、各々素子作製に最適の量を充填した。前記抵抗加熱ボートはモリブデン製又はタングステン製を用いた。
真空度1×10−4Paまで減圧した後、HI−2の入った抵抗加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒でITO透明電極上に蒸着し、層厚10nmの正孔注入層を形成した。
次いで、HT−1を蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、層厚20nmの正孔輸送層を形成した。
【0468】
次いで、H−4、表XIに示す金属錯体、F−3の入った抵抗加熱ボートに通電して加熱し、ホスト、リン光発光性金属錯体、蛍光発光性化合物がそれぞれ84体積%、15体積%、1体積%になるように共蒸着し、層厚30nmの発光層を形成した。
【0469】
次いで、HB−3を蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、層厚10nmの第一電子輸送層を形成した。さらにその上に、ET−2を蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、層厚40nmの第二電子輸送層を形成した。その後、フッ化リチウムを層厚0.5nmになるよう蒸着した後に、アルミニウム100nmを蒸着して陰極を形成し、評価用の有機EL素子を作製した。有機EL素子の作製後、有機EL素子の非発光面を、純度99.999%以上の高純度窒素ガスの雰囲気下にてガラスケースで覆い、厚さ300μmのガラス基板を封止用基板として用いて、周囲にシール材としてエポキシ系光硬化型接着剤(東亞合成株式会社製アロニックスLC0629B)を適用し、これを前記陰極上に重ねて透明支持基板と密着させ、ガラス基板側からUV光を照射して、硬化させて、封止して、図11及び図12に示すような構成からなる評価用照明装置を作製した。
<連続駆動安定性(半減寿命)及び発光性(外部取り出し量子効率)の評価>
連続駆動安定性(半減寿命)及び発光性(外部取り出し量子効率)の評価は実施例1と同様の手段で行った。
各評価用照明装置について、評価用照明装置5−1の半減寿命、外部取り出し量子効率(EQE)を1とする相対比を求めた。
【0470】
【表11】
【0471】
表XIに示すとおり、緑色蛍光発光する照明装置5−3〜5−5については、金属錯体のVall/Vcoreが2を超えているとともに、本発明に係るリン光発光性金属錯体(コア・シェル型ドーパント)を蛍光増感剤として用いたことから、高発光効率かつ高寿命で蛍光発光することが明らかとなった。
【0472】
[実施例6]
次に、実施例6では、赤色蛍光発光する照明装置(有機EL素子)の特性について確認した。
【0473】
<評価用照明装置の作製>
50mm×50mm、厚さ0.7mmのガラス基板上に、陽極としてITO(インジウム・スズ酸化物)を120nmの厚さで成膜し、パターニングを行った後、このITO透明電極を付けた透明基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。
【0474】
この透明基板上に、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS、Bayer社製、Baytron P Al 4083)を純水で70%に希釈した溶液を用い、3000rpm、30秒の条件でスピンコート法により薄膜を形成した後、200℃にて1時間乾燥し、層厚20nmの正孔注入層を設けた。
【0475】
次に、この透明基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。
【0476】
真空蒸着装置内の蒸着用の抵抗加熱ボートの各々に、各層の構成材料を、各々素子作製に最適の量を充填した。蒸着用抵抗加熱ボートはモリブデン製又はタングステン製を用いた。
【0477】
真空度1×10−4Paまで減圧した後、HT−2の入った抵抗加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で正孔注入層上に蒸着し、層厚20nmの正孔輸送層を形成した。
【0478】
次いで、H−5、表XIIに示す金属錯体、F−4の入った抵抗加熱ボートに通電して加熱し、ホスト、リン光発光性金属錯体、蛍光発光性化合物がそれぞれ80体積%、18体積%、2体積%になるように共蒸着し、層厚30nmの発光層を形成した。
次いで、HB−2を蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、層厚5nmの第一電子輸送層を形成した。
【0479】
次いで、ET−1を蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、層厚40nmの電子輸送層を形成した。
【0480】
その上に、フッ化リチウムを層厚0.5nmになるよう蒸着した後に、アルミニウム100nmを蒸着して陰極を形成し、評価用の有機EL素子を作製した。
【0481】
有機EL素子の作製後、有機EL素子の非発光面を、純度99.999%以上の高純度窒素ガスの雰囲気下にてガラスケースで覆い、厚さ300μmのガラス基板を封止用基板として用いて、周囲にシール材としてエポキシ系光硬化型接着剤(東亞合成株式会社製アロニックスLC0629B)を適用し、これを前記陰極上に重ねて透明支持基板と密着させ、ガラス基板側からUV光を照射して、硬化させて、封止して、図11及び図12に示すような構成からなる評価用照明装置を作製した。
【0482】
<連続駆動安定性(半減寿命)及び発光性(外部取り出し量子効率)の評価>
連続駆動安定性(半減寿命)及び発光性(外部取り出し量子効率)の評価は実施例1と同様の手段で行った。各評価用照明装置について、評価用照明装置6−1の半減寿命、外部取り出し量子効率(EQE)を1とする相対比を求めた。
【0483】
【表12】
【0484】
表XIIに示すとおり、赤色蛍光発光する照明装置6−3〜6−5については、金属錯体のVall/Vcoreが2を超えているとともに、本発明で規定する一般式で表される化学構造を有するコア・シェル型リン光発光性金属錯体を蛍光増感剤として用いたことから、高発光効率かつ高寿命で蛍光発光することが明らかとなった。
【0485】
[実施例7]
次に、実施例7では、塗布液を用いて、ウェットプロセスにて作製した青色蛍光発光する照明装置(および素子)の特性について確認した。
【0486】
<<評価用照明装置の作製>>
(基材の準備)
まず、ポリエチレンナフタレートフィルム(以下、PENと略記する。)(帝人デュポンフィルム株式会社製)の陽極を形成する側の全面に、特開2004−68143号公報に記載の構成の大気圧プラズマ放電処理装置を用いて、SiOxからなる無機物のガスバリアー層を層厚500nmとなるように形成した。これにより、酸素透過度0.001mL/(m・24h)以下、水蒸気透過度0.001g/(m・24h)以下のガスバリアー性を有する可撓性の基材を作製した。
【0487】
(陽極の形成)
上記基材上に厚さ120nmのITO(インジウム・スズ酸化物)をスパッタ法により製膜し、フォトリソグラフィー法によりパターニングを行い、陽極を形成した。なお、パターンは発光領域の面積が5cm×5cmになるようなパターンとした。
【0488】
(正孔注入層の形成)
陽極を形成した基材をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。そして、陽極を形成した基材上に、特許第4509787号公報の実施例16と同様に調製したポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS)の分散液をイソプロピルアルコールで希釈した2質量%溶液をダイコート法にて塗布、自然乾燥し、層厚40nmの正孔注入層を形成した。
【0489】
(正孔輸送層の形成)
次に、正孔注入層を形成した基材を、窒素ガス(グレードG1)を用いた窒素雰囲気下に移し、下記組成の正孔輸送層形成用塗布液を用いて、ダイコート法にて5m/minで塗布、自然乾燥した後に、130℃で30分間保持し、層厚30nmの正孔輸送層を形成した。
【0490】
〈正孔輸送層形成用塗布液〉
正孔輸送材料 HT−3(重量平均分子量Mw=80000)10質量部
クロロベンゼン 3000質量部
【0491】
(発光層の形成)
次に、正孔輸送層を形成した基材を、下記組成の発光層形成用塗布液を用い、ダイコート法にて5m/minの塗布速度で塗布し、自然乾燥した後に、120℃で30分間保持し、層厚50nmの発光層を形成した。
【0492】
〈発光層形成用塗布液〉
ホスト化合物 H−6 9質量部
表XIIIに示すリン光発光性金属錯体 1質量部
蛍光発光性化合物F−1 0.1質量部
酢酸イソプロピル 2000質量部
【0493】
(ブロック層の形成)
次に、発光層を形成した基材を、下記組成のブロック層形成用塗布液を用い、ダイコート法にて5m/minの塗布速度で塗布し、自然乾燥した後に、80℃で30分間保持し、層厚10nmのブロック層を形成した。
【0494】
〈ブロック層形成用塗布液〉
HB−4 2質量部
イソプロピルアルコール(IPA) 1500質量部
2,2,3,3,4,4,5,5,−オクタフルオロ−1−ペンタノール
500質量部
(電子輸送層の形成)
次に、ブロック層を形成した基材を、下記組成の電子輸送層形成用塗布液を用い、ダイコート法にて5m/minの塗布速度で塗布し、自然乾燥した後に、80℃で30分間保持し、層厚30nmの電子輸送層を形成した。
〈電子輸送層形成用塗布液〉
ET−1 6質量部
2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール 2000質量部
(電子注入層、陰極の形成)
次に、基板を大気に曝露することなく真空蒸着装置へ取り付けた。また、モリブデン製抵抗加熱ボートにフッ化ナトリウム及びフッ化カリウムを入れたものを真空蒸着装置に取り付け、真空槽を4×10−5Paまで減圧した。その後、ボートに通電して加熱し、フッ化ナトリウムを0.02nm/秒で前記電子輸送層上に蒸着し、膜厚1nmの薄膜を形成した。同様に、フッ化カリウムを0.02nm/秒でフッ化ナトリウム薄膜上に蒸着し、層厚1.5nmの電子注入層を形成した。
【0495】
引き続き、アルミニウムを蒸着して厚さ100nmの陰極を形成した。
(封止)
以上の工程により形成した積層体に対し、市販のロールラミネート装置を用いて封止基材を接着した。
【0496】
封止基材として、可撓性を有する厚さ30μmのアルミニウム箔(東洋アルミニウム(株)製)に、ドライラミネーション用の2液反応型のウレタン系接着剤を用いて層厚1.5μmの接着剤層を設け、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムをラミネートしたものを作製した。
【0497】
封止用接着剤として熱硬化性接着剤を、ディスペンサーを使用して封止基材のアルミニウム箔の接着面(つや面)に沿って厚さ20μmで均一に塗布した。これを100Pa以下の真空下で12時間乾燥させた。更に、その封止基材を露点温度−80℃以下、酸素濃度0.8ppmの窒素雰囲気下へ移動して、12時間以上乾燥させ、封止用接着剤の含水率が100ppm以下となるように調整した。
【0498】
熱硬化性接着剤としては下記の(A)〜(C)を混合したエポキシ系接着剤を用いた。
【0499】
(A)ビスフェノールAジグリシジルエーテル(DGEBA)
(B)ジシアンジアミド(DICY)
(C)エポキシアダクト系硬化促進剤
上記封止基材を上記積層体に対して密着・配置して、圧着ロールを用いて、圧着ロール温度100℃、圧力0.5MPa、装置速度0.3m/minの圧着条件で密着封止した。
【0500】
以上のようにして、図13に示す構成の有機EL素子と同様の形態の有機EL素子7−1〜有機EL素子7−5を作製し、照明装置7−1〜照明装置7−5とした。
≪連続駆動安定性(半減寿命)及び発光性(外部取り出し量子効率)の評価≫
連続駆動安定性(半減寿命)及び発光性(外部取り出し量子効率)の評価は実施例1と同様の手段で行った。
各評価用照明装置について、評価用照明装置7−1の半減寿命、外部取り出し量子効率(EQE)を1とする相対比を求めた。
【0501】
【表13】
【0502】
表XIIIに示すとおり、青色蛍光発光する照明装置7−2〜7−5については、金属錯体のVall/Vcoreが2を超えているとともに、本発明で規定する一般式で表される化学構造を有するコア・シェル型リン光発光性金属錯体を蛍光増感剤として用いたことから、塗布プロセスで作製した照明装置においても高効率高寿命で蛍光発光することが明らかとなった。
【0503】
[実施例8]
次に、実施例8では、インクジェットプロセスで作製した青色蛍光発光する照明装置(および素子)の特性について確認した。
【0504】
<<評価用照明装置の作製>>
(基材の準備)
まず、ポリエチレンナフタレートフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製)(以下、PENと略記する。)の陽極を形成する側の全面に、特開2004−68143号公報に記載の構成の大気圧プラズマ放電処理装置を用いて、SiOxからなる無機物のガスバリアー層を層厚500nmとなるように形成した。これにより、酸素透過度0.001mL/(m・24h)以下、水蒸気透過度0.001g/(m・24h)以下のガスバリアー性を有する可撓性の基材を作製した。
【0505】
(陽極の形成)
上記基材上に厚さ120nmのITO(インジウム・スズ酸化物)をスパッタ法により製膜し、フォトリソグラフィー法によりパターニングを行い、陽極を形成した。なお、パターンは発光領域の面積が5cm×5cmになるようなパターンとした。
【0506】
(正孔注入層の形成)
陽極を形成した基材をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。そして、陽極を形成した基材上に、特許第4509787号公報の実施例16と同様に調製したポリ(3、4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS)の分散液をイソプロピルアルコールで希釈した2質量%溶液をインクジェット法にて塗布、80℃で5分乾燥し、層厚40nmの正孔注入層を形成した。
【0507】
(正孔輸送層の形成)
次に、正孔注入層を形成した基材を、窒素ガス(グレードG1)を用いた窒素雰囲気下に移し、下記組成の正孔輸送層形成用塗布液を用いて、インクジェット法にて塗布、150℃で30分乾燥し、層厚30nmの正孔輸送層を形成した。
〈正孔輸送層形成用塗布液〉
正孔輸送材料 HT−3(重量平均分子量Mw=80000)10質量部
パラ(p)−キシレン 3000質量部
(発光層の形成)
次に、正孔輸送層を形成した基材を、下記組成の発光層形成用塗布液を用い、インクジェット法にて塗布し、130℃で30分間乾燥し、層厚50nmの発光層を形成した。
〈発光層形成用塗布液〉
ホスト化合物 H−4 9質量部
表XIVに示す金属錯体 1質量部
蛍光材料F−1 0.1質量部
酢酸ノルマルブチル 2000質量部
【0508】
(ブロック層の形成)
次に、発光層を形成した基材を、下記組成のブロック層形成用塗布液を用い、インクジェット法にて塗布し、80℃で30分間乾燥し、層厚10nmのブロック層を形成した。
【0509】
〈ブロック層形成用塗布液〉
HB−4 2質量部
イソプロピルアルコール(IPA) 1500質量部
2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1−ペンタノール
500質量部
【0510】
(電子輸送層の形成)
次に、ブロック層を形成した基材を、下記組成の電子輸送層形成用塗布液を用い、インクジェット法にて塗布し、80℃で30分間乾燥し、層厚30nmの電子輸送層を形成した。
【0511】
〈電子輸送層形成用塗布液〉
ET−1 6質量部
2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール 2000質量部
【0512】
(電子注入層、陰極の形成)
続いて、基板を大気に曝露することなく真空蒸着装置へ取り付けた。また、モリブデン製抵抗加熱ボートにフッ化ナトリウム及びフッ化カリウムを入れたものを真空蒸着装置に取り付け、真空槽を4×10−5Paまで減圧した。その後、ボートに通電して加熱し、フッ化ナトリウムを0.02nm/秒で前記電子輸送層上に蒸着し、膜厚1nmの薄膜を形成した。同様に、フッ化カリウムを0.02nm/秒でフッ化ナトリウム薄膜上に蒸着し、層厚1.5nmの電子注入層を形成した。
引き続き、アルミニウムを蒸着して厚さ100nmの陰極を形成した。
【0513】
(封止)
以上の工程により形成した積層体に対し、市販のロールラミネート装置を用いて封止基材を接着した。
封止基材として、可撓性を有する厚さ30μmのアルミニウム箔(東洋アルミニウム(株)製)に、ドライラミネーション用の2液反応型のウレタン系接着剤を用いて層厚1.5μmの接着剤層を設け、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムをラミネートしたものを作製した。
封止用接着剤として熱硬化性接着剤を、ディスペンサーを使用して封止基材のアルミニウム箔の接着面(つや面)に沿って厚さ20μmで均一に塗布した。これを100Pa以下の真空下で12時間乾燥させた。更に、その封止基材を露点温度−80℃以下、酸素濃度0.8ppmの窒素雰囲気下へ移動して、12時間以上乾燥させ、封止用接着剤の含水率が100ppm以下となるように調整した。
熱硬化性接着剤としては下記の(A)〜(C)を混合したエポキシ系接着剤を用いた。
(A)ビスフェノールAジグリシジルエーテル(DGEBA)
(B)ジシアンジアミド(DICY)
(C)エポキシアダクト系硬化促進剤
上記封止基材を上記積層体に対して密着・配置して、圧着ロールを用いて、圧着ロール温度100℃、圧力0.5MPa、装置速度0.3m/minの圧着条件で密着封止した。
以上のようにして、上述の図1に示す構成の有機EL素子と同様の形態の有機EL素子8−1を作製した。
【0514】
≪連続駆動安定性(半減寿命)及び発光性(外部取り出し量子効率)の評価≫
連続駆動安定性(半減寿命)及び発光性(外部取り出し量子効率)の評価は実施例1と同様の手段で行った。
各評価用照明装置について、評価用照明装置8−1の半減寿命、外部取り出し量子効率(EQE)を1とする相対比を求めた。
【0515】
【表14】
【0516】
表XIVに示すとおり、青色蛍光発光する照明装置8−2〜8−5については、リン光発光性金属錯体のVall/Vcoreが2を超えているとともに、本発明で規定する一般式で表される化学構造を有するコア・シェル型リン光発光性金属錯体を蛍光増感剤として用いたことから、インクジェットプロセスで作製した照明装置においても高効率高寿命で蛍光発光することが明らかとなった。
【0517】
[実施例9]
(基材の準備)
実施例8における基材の準備で、ガスバリアー層の膜厚を適宜調整し、水蒸気透過度0.00001〜0.8g/(m・day)、酸素透過度0.000012〜1mL/(m・day・atm)を作製した。
【0518】
(発光素子の形成)
実施例8における電子注入層を以下に変えた以外は実施例8と同様にして、表XVに示したガスバリアー層の厚さを有する基材をそれぞれ用いて、照明装置8−11〜15、8−21〜25、8−31〜35、8−41〜45、8−51、8−52を作製した。
【0519】
(電子注入層の形成)
実施例8におけるフッ化ナトリウムとフッ化カリウムをフッ化リチウムに変更し、膜厚を1.0nmとして電子注入層を形成した。
【0520】
[ダークスポット(DS)評価試験]
各照明装置8−11〜15、8−21〜25、8−31〜35、8−41〜45、8−51、8−52を、85℃、85%RHの環境下で、500時間保存した。その後、各照明装置に、1mA/cmの電流を印加して発光させた。次に、100倍の光学顕微鏡(株式会社モリテックス製 MS−804、レンズMP−ZE25−200)で、照明装置の発光部の一部分を拡大して撮影した。次に、撮影画像を2mm四方に切り抜き、それぞれの画像について、ダークスポット発生の有無を観察した。観察結果より、発光面積に対するダークスポットの発生面積比率を求め、下記の基準に従って、ダークスポット耐性を評価した。
【0521】
5:ダークスポットの発生は全く認められない
4:ダークスポットの発生面積が、0.1%以上、1.0%未満である
3:ダークスポットの発生面積が、1.0%以上、3.0%未満である
2:ダークスポットの発生面積が、3.0%以上、6.0%未満である
1:ダークスポットの発生面積が、6.0%以上である
【0522】
[連続起動安定性(半減寿命)の評価]
各照明装置8−11〜15、8−21〜25、8−31〜35、8−41〜45、8−51、8−52を、85℃、85%RHの環境下で、実施例8に記載の連続起動安定性を評価した。
【0523】
【表15】
【0524】
(発明の効果)
表XVに示すとおり、リン光発光性金属錯体のVall/Vcoreが2を超えているとともに、規定する一般式で表される化合物を使用した本発明の照明装置は、フレキシブル基材のガスバリアー性が高くなくてもダークスポットの発生がおさえられることが明らかになった。また、上記の85℃、85%RHの環境下での駆動評価においても本発明の照明装置は良好な結果を得ることができた。すなわち、厚さを薄くすることで、低コストにしたバリアー基材でも実用上問題ないことが確認された。
【0525】
[実施例10]
F−1をF−5にしたほかは、実施例2と同様にして照明装置9−2〜9−5を作製した。
なお、半減寿命及び外部取出し量子効率の評価については、実施例2と同様に、照明装置2−1を1とする相対比で表した。結果は表XVIに示すとおりである。
【0526】
【表16】
【0527】
(まとめ)
実施例2(表VII)と実施例10(表XVI)の結果を比較してわかるように、本発明のコア・シェル型ドーパントを用い、励起子排出能を上げた実施例10では実施例2よりもEQE相対比及び半減寿命相対比がより向上することを明らかとした。
【0528】
[実施例11]
照明装置9−4の製造において、発光層に蛍光発光性化合物(F−5)を添加しなかったほかは同様にして照明装置10−1を作製した。
【0529】
照明装置2−4、9−4及び10−1について、下記評価を行い表XVIIに示した。なお、以下の評価はいずれも照明装置10−1を1とする相対比で表した。
【0530】
(加速係数)
2.5mA/cm、16.25mA/cmで電流駆動して、初期輝度が半減する時間から、これを累乗近似曲線で外装した際の乗数を加速係数とした。すなわち、加速係数とは、下記(E)式における半減寿命の加速係数nである。
1/t2=(L1/L2−n・・・(E)
[L1:電流密度2.5mA/cm印加時の初期輝度
2:電流密度16.25mA/cm印加時の初期輝度
1:輝度L1(低輝度・低電流2.5mA/cm)での素子の輝度半減寿命
2:輝度L2(高輝度・高電流16.25mA/cm)での素子の輝度半減寿命]
なお、輝度の測定には、分光放射輝度計CS−2000(コニカミノルタ(株)製)を用いた。
【0531】
【表17】
【0532】
(まとめ)
照明装置2−4と9−4との比較により、F−1からF−5に変更することで、リン光発光性金属錯体の発光と蛍光発光性化合物の吸収スペクトルの重なりが大きくなり、この結果、フェスルターエネルギー移動がさらに優位に働き、ひいては、半減寿命の長寿命化や加速係数の増大抑制に効率的に寄与することを明らかにした(照明装置2−4、9−4参照。)。
【産業上の利用可能性】
【0533】
本発明の有機EL素子は、高発光効率かつ高寿命で発光することができ、表示デバイス、ディスプレイ、各種発光光源として用いることができる。
【符号の説明】
【0534】
1 ディスプレイ
3 画素
5 走査線
6 データ線
A 表示部
B 制御部
10 コア・シェル型ドーパント
11 コア部
12 シェル部
13 蛍光発光性化合物
14 ホスト
20 通常のドーパント
101 有機EL素子
102 ガラスカバー
105 陰極
106 有機EL層
107 透明電極付きガラス基板
108 窒素ガス
109 捕水剤
201 可撓性支持基板
202 陽極
203 正孔注入層
204 正孔輸送層
205 発光層
206 電子輸送層
207 電子注入層
208 陰極
209 封止接着剤
210 可撓性封止部材
200 有機EL素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】