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再表2019-111914表面処理銅箔、並びにこれを用いた銅張積層板及びプリント配線板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2019年6月13日
【発行日】2019年12月12日
(54)【発明の名称】表面処理銅箔、並びにこれを用いた銅張積層板及びプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   C25D 7/06 20060101AFI20191115BHJP
   C25D 1/04 20060101ALI20191115BHJP
   C25D 5/16 20060101ALI20191115BHJP
   H05K 1/09 20060101ALI20191115BHJP
【FI】
   C25D7/06 A
   C25D1/04 311
   C25D5/16
   H05K1/09 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】29
【出願番号】特願2019-523892(P2019-523892)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2018年12月4日
(31)【優先権主張番号】特願2017-233684(P2017-233684)
(32)【優先日】2017年12月5日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PHOTOSHOP
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153866
【弁理士】
【氏名又は名称】滝沢 喜夫
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 貴広
【テーマコード(参考)】
4E351
4K024
【Fターム(参考)】
4E351AA04
4E351BB30
4E351DD04
4E351DD54
4E351GG07
4E351GG20
4K024AA09
4K024AB02
4K024AB03
4K024AB09
4K024BA09
4K024BB11
4K024BC02
4K024CA02
4K024CA06
4K024DB03
4K024DB10
4K024EA01
4K024GA01
(57)【要約】
本発明の表面銅箔は、銅箔基体の少なくとも一方の面に、粗化粒子が形成されてなる粗化処理層を含む表面処理皮膜を有する表面処理銅箔であって、前記表面処理銅箔の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察するとき、前記表面処理皮膜の表面は、前記粗化粒子の粒子高さ(h)の平均値が0.05〜0.30μmであり、前記粗化粒子の粒子幅(w)に対する前記粒子高さ(h)の比(h/w)の平均値が0.7〜5.0であり、下記式(1)で算出される前記粗化粒子の線被覆率(c)が15〜60%である。
c=d×W×100 (%) ・・・(1)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅箔基体の少なくとも一方の面に、粗化粒子が形成されてなる粗化処理層を含む表面処理皮膜を有する表面処理銅箔であって、
前記表面処理銅箔の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察するとき、前記表面処理皮膜の表面は、
前記粗化粒子の粒子高さ(h)の平均値が0.05〜0.30μmであり、
前記粗化粒子の粒子幅(w)に対する前記粒子高さ(h)の比(h/w)の平均値が0.7〜5.0であり、
下記式(1)で算出される前記粗化粒子の線被覆率(c)が15〜60%である、表面処理銅箔。
c=d×W×100 (%) ・・・(1)
〔上記(1)式中、cは、前記線被覆率(c)であり、dは、観察視野の幅方向2.5μmの領域あたりに存在する前記粗化粒子の個数から算出される、前記粗化粒子の線密度(d)[個/μm]であり、Wは該領域における前記粗化粒子の粒子幅(w)の平均値である。〕
【請求項2】
前記表面処理皮膜の表面における20度鏡面光沢度G(20°)、60度鏡面光沢度Gs(60°)及び85度鏡面光沢度G(85°)の各値により下記式(2)で算出される値が0〜10である、請求項1に記載の表面処理銅箔。
(Gs(85°)−Gs(60°))/Gs(20°) ・・・(2)
【請求項3】
前記表面処理皮膜の表面において、20度鏡面光沢度G(20°)が0.5〜120%であり、60度鏡面光沢度Gs(60°)が5〜200%であり、85度鏡面光沢度G(85°)が75〜120%である、請求項1又は2に記載の表面処理銅箔。
【請求項4】
前記粗化粒子の粒子幅(w)の平均値が0.02〜0.15μmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の表面処理銅箔。
【請求項5】
前記表面処理皮膜の表面において、十点平均粗さRzjis値が0.5〜2.0μmである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の表面処理銅箔。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の表面処理銅箔を用いて形成してなる、銅張積層板。
【請求項7】
請求項6に記載の銅張積層板を用いて形成してなる、プリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理銅箔、特に高周波帯域で使用されるプリント配線板に好適な表面処理銅箔に関する。さらに本発明は、上記表面処理銅箔を用いた銅張積層板及びプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、50GHzを超えるような高周波対応機器が開発されてきている。しかし、周波数が50GHz帯を超えるような高周波信号を導体回路に伝送した場合、電流が流れる表皮深さは0.3μm程度か、それ以下となり、電流は導体のごく表層しか流れない。そのため、導体の表面凹凸が大きい場合には、導体の伝送経路(すなわち表皮部分の伝送経路)が長くなり、伝送損失が増加する。したがって、上記高周波対応機器に用いる銅張積層板では、伝送損失の増加を抑制するため、銅箔の表面凹凸を小さくすることが望まれている。
【0003】
また、通常、プリント配線板に使用される銅箔では、伝送特性に加えて、樹脂基材との高い密着性も求められる。一般に、樹脂基材と銅箔表面との間で密着力を高める手法としては、電気めっきやエッチング等により、その表面に粗化処理層(粗化粒子を形成させた層)を形成し、樹脂基材との物理的な密着効果(アンカー効果)を得ることで、密着力を高める手法が挙げられる。しかし、銅箔表面と、樹脂基材との密着性を効果的に高めるべく、銅箔表面に形成する粗化粒子の粒子サイズを大きくすると、上述の通り伝送損失が増加してしまう。
【0004】
ところで、高周波対応のプリント配線板は、最近、さらに高い信頼性が要求される分野へも展開されてきている。例えば、車載用プリント配線基板等の移動体通信機器用プリント配線基板では、高温環境等の過酷な環境下にも耐え得る高度な信頼性が要求される。このような高度な信頼性の要求に応えるためには、銅箔と樹脂基材との密着性をさらに高める必要があり、例えば、150℃で1000時間の過酷試験にも耐え得る密着性が必要である。そのため、上記のような従来の手法では、近年求められている過酷な高温環境下での密着性(耐熱密着性)を満足できなくなっている。
【0005】
また、プリント配線板に使用される銅箔では、樹脂基材との密着力を高めるために、上記粗化処理層の形成に加え、銅箔表面をシランカップリング剤で処理することで、樹脂基材に対して化学的な密着性を付与する手法が用いられる。しかし、シランカップリング剤と樹脂基材との間で、化学的密着性を高めるためには、樹脂基材が、ある程度極性の大きな置換基を有していることが必要である。しかし、誘電損失を抑えるべく、樹脂基材として、極性の大きな置換基の量を減少させた低誘電性基材を用いる場合には、シランカップリング剤で銅箔表面を処理しても化学的密着性を得難く、銅箔と樹脂基材との十分な密着性が担保し難くなる。
【0006】
このように、銅張積層板において、伝送損失の抑制と、銅箔と樹脂基材との密着性、特に常態密着性と耐熱密着性の向上(耐久性の向上)とは、互いにトレードオフの関係にある。そのため、従来から、銅張積層板に用いられる銅箔では、伝送損失の抑制と、樹脂基材との常態密着性及び耐熱密着性との両立の観点で様々な手法が検討されている。
【0007】
例えば、特許文献1では、微細な凹凸により表面積比を増やす手法が提案されており、特許文献2では、粗化粒子を特殊な形状とする手法が提案されており、特許文献3では、ニッケルやコバルト等との合金めっきで微細な粗化粒子を形成する手法が提案されており、特許文献4では、微細な粗化粒子を形成し、その上をモリブデンとコバルトを含有する酸化防止処理層で覆う手法が提案されている。
【0008】
しかしながら、上記のような手法ではいずれも、より高周波帯域での伝送損失の抑制や、樹脂基材との常態密着性及び耐熱密着性の更なる向上の観点では、未だ十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第6182584号公報
【特許文献2】特許第5972486号公報
【特許文献3】特開2015−61939号公報
【特許文献4】特許第6083619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたもので、特にプリント配線板の導体回路に用いる場合に、高周波帯域での優れた伝送特性(以下、単に「高周波特性」ということがある。)と、樹脂基材との優れた常態密着性及び耐熱密着性とを良好に両立できる表面処理銅箔を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討した結果、銅箔基体の少なくとも一方の面に、粗化粒子が形成されてなる粗化処理層を含む表面処理皮膜を有する表面処理銅箔において、前記表面処理銅箔の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察するとき、前記表面処理皮膜の表面は、前記粗化粒子の粒子高さ(h)の平均値が0.05〜0.30μmであり、前記粗化粒子の粒子幅(w)に対する前記粒子高さ(h)の比(h/w)の平均値が0.7〜5.0であり、前記粗化粒子の線被覆率(c)が15〜60%であることによって、特にプリント配線板の導体回路に用いる場合に、優れた高周波特性と、優れた常態密着性及び耐熱密着性とを両立し得る表面処理銅箔が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
[1] 銅箔基体の少なくとも一方の面に、粗化粒子が形成されてなる粗化処理層を含む表面処理皮膜を有する表面処理銅箔であって、
前記表面処理銅箔の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察するとき、前記表面処理皮膜の表面は、
前記粗化粒子の粒子高さ(h)の平均値が0.05〜0.30μmであり、
前記粗化粒子の粒子幅(w)に対する前記粒子高さ(h)の比(h/w)の平均値が0.7〜5.0であり、
下記式(1)で算出される前記粗化粒子の線被覆率(c)が15〜60%である、表面処理銅箔。
c=d×W×100 (%) ・・・(1)
〔上記(1)式中、cは、前記線被覆率(c)であり、dは、観察視野の幅方向2.5μmの領域あたりに存在する前記粗化粒子の個数から算出される、前記粗化粒子の線密度(d)[個/μm]であり、Wは該領域における前記粗化粒子の粒子幅(w)の平均値である。〕
[2] 前記表面処理皮膜の表面における20度鏡面光沢度G(20°)、60度鏡面光沢度Gs(60°)及び85度鏡面光沢度G(85°)の各値により下記式(2)で算出される値が0〜10である、上記[1]に記載の表面処理銅箔。
(Gs(85°)−Gs(60°))/Gs(20°) ・・・(2)
[3] 前記表面処理皮膜の表面において、20度鏡面光沢度G(20°)が0.5〜120%であり、60度鏡面光沢度Gs(60°)が5〜200%であり、85度鏡面光沢度G(85°)が75〜120%である、上記[1]又は[2]に記載の表面処理銅箔。
[4] 前記粗化粒子の粒子幅(w)の平均値が0.02〜0.15μmである、上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の表面処理銅箔。
[5] 前記表面処理皮膜の表面において、十点平均粗さRzjis値が0.5〜2.0μmである、上記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の表面処理銅箔。
[6] 上記[1]〜[5]のいずれか1項に記載の表面処理銅箔を用いて形成してなる、銅張積層板。
[7] 上記[6]に記載の銅張積層板を用いて形成してなる、プリント配線板。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、銅箔基体の少なくとも一方の面に、粗化粒子が形成されてなる粗化処理層を含む表面処理皮膜を有する表面処理銅箔において、前記表面処理銅箔の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察するとき、前記表面処理皮膜の表面は、前記粗化粒子の粒子高さ(h)の平均値が0.05〜0.30μmであり、前記粗化粒子の粒子幅(w)に対する前記粒子高さ(h)の比(h/w)の平均値が0.7〜5.0であり、前記粗化粒子の線被覆率(c)が15〜60%であることによって、特にプリント配線板の導体回路に用いる場合に、優れた高周波特性と、優れた常態密着性及び耐熱密着性とを両立し得る表面処理銅箔を提供することができる。また、本発明の表面処理銅箔によれば、例えば50GHzを超える高周波信号を伝送した場合であっても、伝送損失を高度に抑制でき、且つ、高温下においても樹脂基材(樹脂層)との高い密着性を維持でき、過酷条件における耐久性にも優れたプリント配線板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の表面処理銅箔の表面処理皮膜の表面の様子を、真上から及び加工断面から観察したSEM画像の各一例である。
図2図2は、表面処理銅箔の加工断面のSEM画像を画像解析する際の手順の一例である。
図3図3は、粗化粒子の計測方法の一例を説明するための図である。
図4図4は、特殊な形状を有する粗化粒子等の計測方法を説明するための図である。
図5図5は、特殊な形状を有する粗化粒子、特に突起部を有する粗化粒子の計測方法の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の表面処理銅箔の好ましい実施形態について、詳細に説明する。
本発明に従う表面処理銅箔は、銅箔基体の少なくとも一方の面に、粗化粒子が形成されてなる粗化処理層を含む表面処理皮膜を有し、前記表面処理銅箔の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察するとき、前記表面処理皮膜の表面は、前記粗化粒子の粒子高さ(h)の平均値が0.05〜0.30μmであり、前記粗化粒子の粒子幅(w)に対する前記粒子高さ(h)の比(h/w)の平均値が0.7〜5.0であり、下記式(1)で算出される前記粗化粒子の線被覆率(c)が15〜60%であることを特徴とする。
c=d×W×100 (%) ・・・(1)
〔上記(1)式中、cは、前記線被覆率(c)であり、dは、観察視野の幅方向2.5μmの領域あたりに存在する前記粗化粒子の個数から算出される、前記粗化粒子の線密度(d)[個/μm]であり、Wは該領域における前記粗化粒子の粒子幅(w)の平均値である。〕
【0016】
本発明の表面処理銅箔は、銅箔基体と、該銅箔基体の少なくとも一方の面に、粗化粒子を形成してなる粗化処理層を含む表面処理皮膜とを有する。このような表面処理皮膜の表面は、表面処理銅箔の最表面(表裏面)のうち少なくとも一方の面であり、また、銅箔基体の少なくとも一方の面に形成された粗化粒子の形成状態及び粒子形状等が反映された微細な凹凸表面形状をもつ粗化面である。このような表面処理皮膜の表面(以下、「粗化面」という。)は、例えば、銅箔基体上に形成された粗化処理層の表面であってもよいし、この粗化処理層上に直接形成されたシランカップリング剤層の表面、又は、この粗化処理層上に、Niを含有する下地層、Znを含有する耐熱処理層及びCrを含有する防錆処理層等の中間層を介して形成されたシランカップリング剤層の表面であってもよい。また、本発明の表面処理銅箔が、例えば、プリント配線板の導体回路に用いられる場合には、上記粗化面が、樹脂基材を貼着積層するための表面(貼着面)となる。
【0017】
ここで、本発明の表面処理銅箔の粗化面の様子を図1(a)及び(b)に示す。図1(a)は、本発明の表面処理銅箔の粗化面を、真上から走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したSEM画像の一例であり、図1(b)は、表面処理銅箔の表面側から、イオンミリング装置を用いて断面加工を施し、その加工断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したSEM画像の一例である。図1(a)及び(b)に示すように、本発明の表面処理銅箔の粗化面には、非常に微細な粗化粒子が比較的疎らに形成されている。
【0018】
このような特殊な粗化面における粗化粒子の形状評価は、従来一般的な粗化面の観察手法、例えばレーザー顕微鏡や白色干渉顕微鏡等の観察では、解像度の限界(現在は粒子径が0.1μm程度)を下回るため正確な評価が難しく、また鏡面光沢度測定等の光学的手法のみでも粗化粒子の高低差の明確な判断がつかないため、十分な評価ができない。そのため、従来の手法では、粗化面の厳密な評価には、コストや、技術的な面で限界があった。そこで、本発明では、粗化面の評価方法の一手法として、図1(b)のように、表面処理銅箔の断面から、粗化面における粗化粒子の形成状態を分析し、これにより粗化面の特徴を規定し、評価することとした。具体的には、以下の手法により行う。
【0019】
まず、表面処理銅箔の表面側から、イオンミリング装置を用いて断面加工を施し、その加工断面をSEMの加速電圧3kVにて、倍率5万倍の二次電子像を観察する。SEM観察の際には、表面処理銅箔を平滑な支持台の上に、表面処理銅箔の反りやたるみが出ないように注意して水平に固定して、断面SEM写真内で表面処理銅箔が水平な状態となるよう調整するものとする。
【0020】
さらに、粗化面における粗化粒子の寸法の計測は、上記SEM観察で得られたSEM写真を画像解析することにより行う。図2に画像解析の手順の一例を示す。まず、図2(a)の様な倍率5万倍の断面SEM写真を得る。次にこの断面SEM写真を画像処理して、図2(b)の様な断面形状の輪郭線を抽出する。そして、最終的に、図2(c)に示すような、同一加工断面における断面形状の輪郭線のみを抽出する。なお、このような画像処理は、一般的な画像編集ソフトウェアである「Photoshop」、「imageJ」、「Real World Paint」等の公知の処理ソフトにより行うことができる。具体的には後述の実施例にて説明する。
【0021】
次に、上記抽出した断面形状の輪郭線、図2(c)に基づき、粗化粒子を特定し、各種寸法の計測を行う。なお、このような計測は、一般的な画像計測ソフトウェアである「WinROOF」、「Photo Ruler」等の公知の処理ソフトにより行うことができる。具体的には後述の実施例にて説明する。以下、最も単純な粗化粒子の計測方法の一例を図3に示す。
始めに、図3(a)の様に、輪郭線上にある計測しようとする凸部(粗化粒子)について、粒子の成長方向に、凸部の頂点Vを通る線Lを引く。次に、図3(b)の様に、この線Lに垂直に交わる上下2辺をもつ長方形(正方形も含む)Sqを描く。この長方形Sqは、上辺が頂点Vと交わり、下辺のいずれか一方の角が、凸部の根元のうち頂点から遠い方と交わる(この角を「R1」とする)。さらに長方形Sqの下辺のもう一方の角(この角を「R2」とする)は、上辺方向から線Lと平行に伸びる一辺と直交し、該一辺上に凸部の根元のもう一方が位置する(この点を「R2’」とする)。そして、図3(c)に示すように、このような長方形Sqの辺のうち、線Lと平行な一辺の寸法を粗化粒子の粒子高さ(h)とし、線Lと垂直な一辺の寸法を粗化粒子の粒子幅(w)とする。なお、以下の特殊な例を除き、長方形Sqを描いて計測した全て凸部を、それぞれ一粗化粒子とみなす。
【0022】
次に、粗化粒子として計測しない例と、特殊な形状を有する粗化粒子の計測方法について、必要に応じて図4及び図5を参照しながら説明する。
まず、特に図示しないが、前記基準で計測される凸部のうち、粒子高さ(h)が0.02μm未満のものは、本発明の注目する密着性と高周波特性に影響を及ぼさず、また正確な測定も困難であるため、計測対象とはせず、この場合は本発明の「粗化粒子」には含めないものとする。
【0023】
また、図4(a)に示されるように、上記基準で計測される凸部のうち、粒子幅(w)に対する粒子高さ(h)の比(h/w)が0.40未満となるものも、本発明の注目する密着性と高周波特性に影響を及ぼさないため、観察対象とはせず、本発明の「粗化粒子」には含めないものとする。
【0024】
また、図4(b)は、頂点が2つ以上ある凸部の計測例である。この場合は、図4(b)に示されるとおり、上述の定義に基づき各頂点ごとに一粒子とみなして計測すればよい。
【0025】
また、図4(c)は、根元付近が2段以上になっている凸部の計測例である。この場合は、根元の判定については、本発明の注目する密着性と高周波特性が凸部のどの部分まで影響しているか、という観点で判断する。すなわち、凸部の根元のうち頂点から遠い方と交わる角R1については、根元の最も下の段の位置とする。またこの場合は、粒子の成長方向は、粒子全体として判断する。
【0026】
また、図4(d)は、図4(a)のような、寸法比(h/w)が0.40未満の比較的根元が曖昧な凸部の上に、さらに別の凸部がある有る場合の計測例である。この場合は、曖昧な根元は計測対象とはせず、区別できる根元をもつ凸部に着目し、上記定義に基づき計測すればよい。そもそも曖昧な根元をもつなだらかな凸部は、本発明の注目する密着性と高周波特性に影響を及ぼさないためである。
【0027】
また、図5(a)に示すように、計測しようとする凸部が、主部Aと、そこから分岐した突起部Bとを有する場合は、以下のように計測する。まず、図5(b)に示すように、主部Aである凸部については、上記基準で粒子高さ(h)及び粒子幅(w)を計測し、上記基準に従って粗化粒子と認定する。次に、図5(c)に示すように、この主部Aから分岐した突起部Bである凸部の根元の位置R1から、主部Aの線Lに対して垂直な直線を引き、この交点をR1BLAとする。ここで、線L上において、主部Aの根元側から点R1BLAまでの距離を高さhABとするとき、高さhABが主部Aの粒子高さhの1/4以上である場合は、この突起部Bは計測対象とはせず、本発明の「粗化粒子」には含めないものとする。また、この高さhABが、主部Aの粒子高さhの1/4未満である場合は、突起部Bは上記基準に従って粒子高さ(h)及び粒子幅(w)を測定し、主部Aとは別の粗化粒子として扱う。
なお、特に図示はしないが、主部から分岐した突起部が複数ある場合は、それぞれの突起部毎に上記基準に沿って個別に判断する。
【0028】
また、上記以外の形状を有する粗化粒子については、本発明の着目する密着性と高周波特性の効果を考慮して、上述の基準に準じて適宜、粒子高さ(h)及び粒子幅(w)を計測する。
【0029】
また、粗化粒子の認定及び計測は、輪郭線の判断となるため、異なる測定者により多少の誤差が生じ得る。しかし、このような誤差も、多数の粗化粒子の測定結果を平均化することにより十分に最小化できる。具体的には、任意の観察断面において、少なくとも5枚以上、好ましくは10枚以上の断面写真を解析し、各測定値の平均値を各表面処理銅箔の測定値として評価する。
【0030】
すなわち、まず、断面写真毎に、上記基準に基づき、粗化粒子の粒子高さ(h)及び粒子幅(w)、並びに観察視野の幅方向2.5μmのあたりに存在する粗化粒子(観察対象粒子)の個数を計測する。これらの値に基づき、粒子高さ(h)、粒子幅(w)及び粒子幅(w)に対する粒子高さ(h)の比(h/w)の各平均値と、後述する粗化粒子の線密度(d)及び線被覆率(c)とをそれぞれ算出する。その後、断面写真毎に算出された各値をまとめて、観察断面の総数で平均化して、各表面処理銅箔の測定値とする。なお、より具体的な測定方法や算出方法については後述の実施例にて説明する。
【0031】
以下、本発明の表面処理銅箔の粗化面における粗化粒子の特徴について、個別に説明する。
【0032】
粗化面において、粗化粒子の粒子高さ(h)の平均値は、0.05〜0.30μmであり、好ましくは0.05〜0.20μmであり、より好ましくは0.10〜0.20μmである。上記範囲とすることにより、優れた高周波特性と、優れた常態密着性及び耐熱密着性とを両立し得る。粗化粒子の粒子高さ(h)の平均値は、0.05μm未満であると耐熱密着性が低下する傾向があり、0.30μm超であると高周波特性が低下する傾向にある。
【0033】
また、粗化粒子の幅(w)の平均値は、好ましくは0.02〜0.15μmであり、より好ましくは0.02〜0.10μmであり、さらに好ましくは0.02〜0.08μmである。特に、粗化粒子の幅(w)の平均値が0.10μm以下であることにより、耐熱密着性をさらに向上し得る。
【0034】
また、粗化粒子の粒子幅(w)に対する粒子高さ(h)の比(h/w)の平均値は、0.7〜5.0であり、好ましくは1.0〜5.0であり、より好ましくは1.0〜4.0であり、更に好ましくは1.0〜3.0である。上記範囲とすることにより、優れた高周波特性と、優れた常態密着性及び耐熱密着性とを両立し得る。比(h/w)の平均値は、0.7未満であると耐熱密着性が低下する傾向にある。また、比(h/w)の平均値を1.0以上とすることに常態密着性を更に向上できる。なお、比(h/w)の平均値は5.0超としても特に意味無く、むしろ粉落ち不良を生ずる場合があり、加熱により粗化粒子の強度が低下することから密着性(特に耐熱密着性)が低下する傾向にある。
【0035】
また、粗化面における、粗化粒子の線密度(d)は、好ましくは2.0個/μm以上であり、より好ましくは3.0個/μm以上であり、更に好ましくは4.0個/μm以上である。特に粗化粒子の線密度(d)が2.0個/μm以上であることにより、十分な常態密着性を確保し得る。なお、粗化粒子の線密度(d)は、観察視野の幅方向2.5μmのあたりに存在する粗化粒子(観察対象粒子)の個数から算出される値であり、単位線領域(幅領域)あたりの粒子個数密度を意味する。
【0036】
また、粗化面において、下記式(1)で算出される粗化粒子の線被覆率(c)は、15〜60%であり、好ましくは20〜50%であり、より好ましくは25〜50%であり、更に好ましくは25〜45%である。上記範囲とすることにより、優れた高周波特性と、優れた常態密着性及び耐熱密着性とを両立し得る。粗化粒子の線被覆率(c)は、60%超となると表面積が過度に増大することにより高周波特性が悪化する。加えて、15%未満及び60%超のどちらの場合も耐熱密着性が低下する傾向にある。特に、粗化粒子の線被覆率(c)を25%以上とすることに耐熱密着性を更に向上できる。
【0037】
c=d×W×100 (%) ・・・(1)
上記(1)式中、cは、前記線被覆率(c)であり、dは、観察視野の幅方向2.5μmの領域あたりに存在する前記粗化粒子の個数から算出される、前記粗化粒子の線密度(d)[個/μm]であり、Wは該領域における前記粗化粒子の粒子幅(w)の平均値である。
【0038】
ここで、粗化粒子の線被覆率(c)が15%未満の場合に、耐熱密着性が低下する理由は、単純に、樹脂基材と粗化面との物理的な密着効果(アンカー効果)の不足によるものと考えられる。しかし、このような物理的な密着効果の観点でみると、粗化粒子の線被覆率(c)が60%超の場合には、より強い密着効果が期待でき、耐熱密着性はより向上すると予想される。ところが、実際には、粗化粒子の線被覆率(c)が60%超の場合には、耐熱密着性は低下する。このような現象が起きる詳しい機構は明らかではないが、ひとつの理由として次のような機構を考えている。
【0039】
すなわち、本発明の表面処理銅箔のように、非常に微細なレベルの粗化粒子が形成された粗化面(樹脂基材との貼合面)においては、粗化粒子が過度に密集していると、微細な粗化粒子が、何らかの応力により剥離しようとする樹脂基材に対して、切り取り線のよう様な作用を発現すると考えられる。その結果、特に高熱環境下で延性が低下した樹脂層は、粗化粒子の先端伝いに容易に凝集破壊してしまい、耐熱密着性が低下しているものと考えられる。
【0040】
上記のような粗化粒子の密集度の観点で見ると、粗化面における、粗化粒子の線密度(d)と線被覆率(c)は、同じような指標にも見える。しかしながら、上述の切り取り線の効果に対しては、粗化粒子の線密度(d)よりも、線被覆率(c)の方がより相関があるといえる。
例えば、同じ線密度(d)をもつ粗化面であっても、粗化粒子の粒子幅が小さい場合には、すなわち、線被覆率(c)が小さい場合には、粗化粒子が存在しない部分が多くなるため、上述の切り取り線の効果は薄れると考えられる。一方、粗化粒子の粒子幅が大きい場合には、すなわち、線被覆率(c)が大きい場合には、粗化粒子が存在しない部分が少なくなるため、上述の切り取り線の効果は高まると考えられる。
【0041】
すなわち、上述の切り取り線の効果は、単に、単位線領域あたりの粗化粒子の個数としての密集度ではなく、粗化粒子間の適度な隙間(粗化粒子が存在しない部分)をもつという意味での、疎らさの影響が大きいと考えられる。したがって、本発明の表面処理銅箔のように、非常に微細なレベルの粗化粒子が形成された粗化面(樹脂基材との貼合面)においては、上述の切り取り線の効果を抑制するためにも、粗化粒子は適度に疎らであることが望ましいと考えられる。
【0042】
また、本発明の表面処理銅箔は、粗化面において、JIS Z 8741−1997に準拠して測定する鏡面光沢度が、受光角毎に以下の範囲であることが好ましい。
通常、鏡面光沢度の測定は、単一の受光角で測定評価することが一般的であるが、本発明の表面処理銅箔の粗化面は、粗化粒子の形成により複雑な形状となっているため、単一の受光角ではその表面形状の特性を十分に評価することは困難である。そのため、本発明の表面処理銅箔の粗化面においては、下記の3つの受光角を使って鏡面光沢度を測定することにより、粗化面の表面形状を更に詳しく評価することが可能となる。
なお、本発明の表面処理銅箔においては、上述の粗化粒子の高さ(h)の平均値、粗化粒子の粒子幅(w)に対する粒子高さ(h)の比(h/w)の平均値、及び粗化粒子の線被覆率(c)の評価がより優先されるが、鏡面光沢度にもある程度の傾向が見られるため、上記評価に加え、下記の3つの受光角による鏡面光沢度の評価を加えることにより、本発明の銅箔の粗化面における粗化粒子の微細な形状の特徴についても、更に詳しく評価することができる。
なお、当然ではあるが、上述の通り粗化面における鏡面光沢度の測定は、平滑な表面における測定ではないため、3つの受光角における測定値は単純な比例関係にあるものではない。
【0043】
20度鏡面光沢度G(20°)は、特に高周波特性と耐熱密着性とを両立させる観点で、好ましくは0.5〜120%であり、より好ましくは0.5〜100%であり、更に好ましくは5〜100%であり、より更に好ましくは15〜100%である。
60度鏡面光沢度G(60°)は、特に高周波特性と耐熱密着性とを両立させる観点で、好ましくは5〜200%であり、より好ましくは10〜200%であり、更に好ましくは20〜200%であり、より更に好ましくは20〜150%である。
85度鏡面光沢度G(85°)は特に高周波特性と耐熱密着性とを両立させる観点で、好ましくは75〜120%であり、より好ましくは75〜115%であり、更に好ましくは80〜115%であり、より更に好ましくは85〜115%である。
【0044】
また、本発明の表面処理銅箔は、粗化面における20度鏡面光沢度G(20°)、60度鏡面光沢度Gs(60°)及び85度鏡面光沢度G(85°)の各値により下記式(2)で算出される値が好ましくは0〜10であり、より好ましくは0〜9であり、更に好ましくは0〜5である。上記範囲とすることにより、優れた高周波特性と耐熱密着性をより確実に両立することができる。下記式(2)で算出される値が0未満であると耐熱密着性が低下する傾向があり、10超であると高周波特性が低下する傾向がある。
(Gs(85°)−Gs(60°))/Gs(20°) ・・・(2)
なお、詳しい測定条件は後述の実施例にて説明する。
【0045】
また、本発明の表面処理銅箔は、粗化面において、十点平均粗さRzjis値は、好ましくは0.5〜2.0μmであり、より好ましくは0.5〜1.5μmである。特に、2.0μm以下とすることにより、伝送損失の抑制がより確実となり、高周波特性が向上する。また、0.5μm以上であれば、生産性も良好である。なお、詳しい測定条件は後述の実施例にて説明する。
【0046】
また、本発明の表面処理銅箔によれば、これをプリント配線板の導体回路に用いることにより、GHz帯の高周波信号を伝送した際の伝送損失を高度に抑制でき、かつ、高温下においても表面処理銅箔と樹脂基材(樹脂層)との密着性を良好に維持でき、過酷条件における耐久性にも優れたプリント配線板を得ることができる。
【0047】
<表面処理銅箔の製造方法>
次に、本発明の表面処理銅箔の好ましい製造方法について、その一例を説明する。本発明では、銅箔基体の表面に、粗化粒子を形成する粗化処理を行うことが好ましい。
【0048】
(銅箔基体)
銅箔基体としては、粗大な凹凸が存在しない平滑で光沢のある表面をもつ、電解銅箔や圧延銅箔を用いることが好ましい。中でも、生産性やコストの観点で電解銅箔を用いることが好ましく、特に、「両面光沢箔」と一般的に呼称されている両面が平滑な電解銅箔を用いることがより好ましい。
なお、上記のような銅箔基体の表面において、本発明の微細な粗化粒子を正常に形成する観点から、銅箔基体の表面における20度鏡面光沢度Gs(20°)、60度鏡面光沢度Gs(60°)及び85度鏡面光沢度Gs(85°)は、いずれも50%以上であることが望ましい。
【0049】
電解銅箔において、平滑で光沢のある表面としては、例えば通常の電解銅箔ではS(シャイニー)面であり、また両面光沢箔では、S面及びM(マット)面の両面であるが、より平滑で光沢のある面としてはM面である。本発明では、いずれの電解銅箔を用いる場合も、より平滑で光沢のある面に後述する粗化処理を施すことが好ましい。
【0050】
ところで、電解銅箔において、上述のような平滑な表面にもわずかな凹凸は存在する。このような凹凸は電解銅箔を作製する際のカソード面の表面形状に由来する。通常、チタン等のカソード面は、バフ研磨により、平滑に保たれているが、わずかに研磨痕が残ってしまう。そのため、カソード面を析出面として形成されるS面は、カソード面の研磨痕が転写されたレプリカ形状となり、また、M面は、カソード面の研磨痕に追従した、あるいはその影響を受けた表面形状となる。このような電解銅箔のS面及びM面には、カソード面の研磨痕に由来するスジ状の凸部又は凹部が形成されている。しかし、S面及びM面のスジ状の凸部又は凹部は、本発明が形成しようとする粗化粒子の粒子サイズと比較すると、非常にマクロであり、スケールが異なる。したがって、このようなスジ状の凸部又は凹部は、粗化面のベースラインにうねりを与えるが、その上に形成される粗化粒子の形状には影響はない。したがって、上述の定義ではあえて説明していないが、本発明において粗化面のうねりのようなマクロな凹凸は、粗化粒子としての計測対象としないことはいうまでもない。
【0051】
しかし、上述のように、電解銅箔のS面及びM面におけるスジ状の凸部又は凹部は、粗化面のベースラインにうねりを与えるため、表面処理銅箔の粗化面における十点平均粗さRzjis値の値に影響を与える可能性がある。したがって、上述の粗化面における所定の十点平均粗さRzjis値を所定の範囲に制御する観点では、後述する粗化処理を施す面の十点平均粗さRzjis値は、好ましくは0.5〜2.0μmであり、より好ましくは0.5〜1.5μmである。なお、測定方法は、粗化面における測定と同じである。詳しい測定条件は後述の実施例にて説明する。
【0052】
(粗化処理)
粗化処理は、例えば下記に示すような粗化めっき処理(1)を行うことが好ましい。なお、必要に応じて固定めっき処理(2)を組み合せてもよい。
【0053】
・粗化めっき処理(1)
粗化めっき処理(1)は、銅箔基体の少なくとも一方の面上に粗化粒子を形成する処理である。具体的には硫酸銅浴でめっき処理を行う。このような硫酸銅浴(粗化めっき液基本浴)には、粗化粒子の脱落、即ち「粉落ち」の防止を目的としたモリブデン(Mo)、砒素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、セレン(Se)、テルル(Te)、タングステン(W)等の従来から知られている添加剤の添加が可能であり、特にモリブデン(Mo)を添加することが好ましい。本発明者は、鋭意研究を行った結果、下記の要因が表面処理銅箔の表面性状に影響を及ぼすことを見出し、精妙にそれらの条件を設定することで、本発明の効果である高周波特性及び密着性(常態密着性及び耐熱密着性)の要求特性を高い水準で満足させることができることを発見した。
【0054】
まず、粗化めっき処理(1)の硫酸銅浴の銅濃度は、5g/L未満とすると粗化粒子の形成自体が難しくなり、粗化粒子の線被覆率(c)が過度に小さくなるので、耐熱密着性が悪化する傾向がある。また、めっき浴の銅濃度は13g/Lを超えると銅イオンの拡散が促進されることにより、粗化粒子が密に形成されてしまい、粗化粒子の線被覆率(c)が過度に大きくなる。また、この場合、結晶成長している粗化粒子の近傍に銅イオンが効率よく供給されてしまうため、成長中の粗化粒子がより多くの銅イオンを求めて遠くまで伸びようとする力、すなわち高さ方向に成長しようとする力が削がれてしまい、粗化粒子の高さ(h)、及び粗化粒子の粒子幅(w)に対する粒子高さ(h)の比(h/w)のそれぞれが小さくなる。その結果、耐熱密着性が悪化する傾向がある。したがって、銅濃度は5〜13g/Lとすることが好ましい。
【0055】
続いて、硫酸銅浴に添加される添加剤について、例えばモリブデン(Mo)を例に挙げて説明する。モリブデン(Mo)濃度は、500mg/L未満とすると、銅箔基体のマクロなスジ状の凸部等に粗化粒子の形成が集中する場合があり、粗化形成の均一性が悪化する。また、本発明が着目する粗化粒子の粒子幅(w)に対する粒子高さ(h)の比(h/w)の平均値を、所定の値に保ったまま、粗化粒子を微細化することが難しくなり、密着性と高周波特性を両立させるのが難しくなる傾向がある。また、モリブデン(Mo)濃度は、1000mg/Lを超えると、粗化粒子発生の起点となる核の生成密度が過度に大きくなり、粗化粒子の線被覆率(c)が過度に大きくなるため、耐熱密着性が悪化する傾向がある。したがって、モリブデン(Mo)濃度は、500〜1000mg/Lとすることが好ましい。
【0056】
次に、粗化めっき処理(1)の電解条件等を説明する。
本発明において、めっき処理の方式は、例えば大量生産及び生産コストの観点で、ロール・ツー・ロール方式でのめっき処理が好ましい。
【0057】
また、めっき処理の条件は、処理方式に応じて適宜調節すればよいが、特に銅イオンの拡散を抑制する観点で、めっき液の攪拌が起こり難い条件とすることが好ましい。そのため、ロール・ツー・ロール方式では、処理方向(処理速度の方向)と、極間のめっき液の流れの向き(極間流速の方向)とを一致させることが好ましい。また、ロール・ツー・ロール方式以外の方式では、静止浴の状態で処理することが望ましく、めっき処理中の攪拌は行わないことが好ましい。
【0058】
ところで、ロール・ツー・ロール方式及びその他の方式のいずれの場合も、めっき処理中に、ガスが発生する場合があり、発生したガスの浮上に伴い攪拌が生じる可能性がある。
例えば、バッチ式のようなロール・ツー・ロール方式以外のめっき処理の場合、本発明の処理は長くとも3秒程度という非常に短時間で終了するため、このようなガス発生による攪拌は特に考慮する必要は無い。
【0059】
しかし、ロール・ツー・ロール方式の場合には、連続処理となるため、処理槽中でガスは発生し続け、連続的に発生するガスは次々浮上するため、浮上方向にめっき液の流れが生じる。また、そもそも、ロール・ツー・ロール方式の場合、銅箔基体がめっき液中に連続的に供給されるため、銅箔基体の搬送方向にめっき液の流れが生じる。この二つの流れが、一致している場合には、上述のガスの発生はほぼ考慮する必要はない。しかし、この二つの流れが、互いに逆向きである場合、処理表面に不要な攪拌力が生じ、銅イオンの拡散が促進されるおそれがある。そのため、ロール・ツー・ロール方式によりめっき処理を行う場合には、ガスの浮上方向と、銅箔基体の搬送方向(めっき処理の処理方向)とが一致するように、めっき処理を行う反応槽を選択することが好ましい。
【0060】
さらに、このようなロール・ツー・ロール方式のめっき処理では、処理速度と、処理方向に沿って流れるめっき液の極間流速(以下「処理方向極間流速」とする)との差分の絶対値は、1.0m/分を超えると、処理表面に不要な攪拌力が生じ、銅イオンの拡散が促進される。銅イオンの拡散の促進は、上述のとおり、粗化粒子の線被覆率、及び粗化粒子の粒子幅(w)に対する粒子高さ(h)の比(h/w)に影響し、耐熱密着性が悪化を招く傾向がある。そのため、処理速度と処理方向極間流速との差分の絶対値は、1.0m/分未満とすることが好ましい。
【0061】
また、電流密度(A/dm)と処理時間(秒)の積(=S)は、10{(A/dm)・秒}未満とすると、本発明の求める十分な常態密着性を得ることが難しくなる。また、上記積Sは、80{(A/dm)・秒}を超えると、粗化粒子が過度に成長し、本発明の求める良好な高周波特性を得ることが難しくなる。したがって、上記積Sは、10〜80{(A/dm)・秒}とすることが好ましい。
【0062】
また、モリブデン(Mo)濃度に対する電流密度と処理時間の積Sの比(=S/Mo濃度)は、0.02〔{(A/dm)・秒}/(mg/L)〕未満とすると、粗化粒子発生の起点となる核の生成密度が過度に大きくなり、粗化粒子の線被覆率が過度に大きくなるので、耐熱密着性が悪化する傾向がある。また、S/Mo濃度は、0.10〔{(A/dm)・秒}/(mg/L)〕を超えると、銅箔基体のマクロなスジ状の凸部等に粗化粒子の形成が集中する場合があり、粗化形成の均一性が悪化することに加えて、本発明の求める特徴を持つ形状を保ったまま粗化粒子を微細に形成することが難しくなり、密着性と高周波特性を両立させるのが難しくなる傾向がある。したがってS/Mo濃度は、0.02〜0.10〔{(A/dm)・秒}/(mg/L)〕とすることが好ましい。
【0063】
・固定めっき処理(2)
固定めっき処理(2)は、上記粗化めっき処理(1)で表面処理をした銅箔基体に平滑なかぶせめっきを行う処理である。具体的には硫酸銅浴でめっき処理を行う。通常、この処理は、粗化粒子の脱落を防止するため、すなわち粗化粒子を固定化するために行なわれる。本発明では、固定めっき処理(2)は必須ではなく、必要に応じて行うことができ、例えば、銅張積層板の製造において、ポリイミド樹脂等の硬い樹脂を用いたフレキシブル基板と組み合わせる場合などに、粗化面を硬い樹脂に対応させるために行うことが好ましい。
【0064】
固定めっき処理(2)の電解条件等を説明する。
めっき処理の方式は、例えば大量生産及び生産コストの観点で、ロール・ツー・ロール方式でのめっき処理が好ましい。固定めっき処理をロール・ツー・ロール方式で行う場合に、処理速度と、極間流速との差分の絶対値は、9m/分未満とすると、正常な固定めっきを施すことが難しくなり、粉落ちが発生し易くなる。また、24m/分を超えると、粗化粒子の根元が埋まり易くなり、粗化粒子の粒子幅(w)に対する粒子高さ(h)の比(h/w)の平均値を大きくすることが難しくなり、耐熱密着性が悪化する傾向がある。したがって、処理速度と極間流速との差分の絶対値は、9〜24m/分とすることが好ましい。なお、固定めっき処理では、処理速度の流の方向(処理方向)と極間流速の流の方向とは一致していなくてもよく、互いに逆向きになる場合は、一方の流速は他方の流速に対してマイナスの流速として計算する。
【0065】
また、粗化めっき処理(1)の電流密度と処理時間の積Sに対する固定めっき処理(2)の電流密度と処理時間の積Kの比率[(K/S)×100](%)は、50%を超えると、粗化めっき処理(1)で得られた粗化粒子形状を維持するのが難しくなり、耐熱密着性等の各種特性を良好に維持することが難しくなる。したがって、上記比率[(K/S)×100]は、50%以下とすることが好ましい。
【0066】
ここまで、めっき処理の条件と共に、粗化面における粗化粒子の形状の制御の方法等を説明してきたが、粗化面における鏡面光沢度の制御方法も概ね上述の通りである。
すなわち、本発明の表面処理銅箔において、粗化面における鏡面光沢度は、粗化粒子の高さ(h)の平均値、粗化粒子の粒子幅(w)に対する粒子高さ(h)の比(h/w)の平均値、及び粗化粒子の線被覆率(c)等で表される粗化粒子の粒子形状の特徴を総合的に反映した値であり、特に、粗化粒子の粒子幅(w)に対する粒子高さ(h)の比(h/w)の平均値と粗化粒子の線被覆率(c)との積に、概ね相関する値となる。そのため、粗化面における鏡面光沢度のみを判断指標として、粗化面の表面性状を制御することは困難であるが、上記相関関係を考慮して、粗化粒子の粒子幅(w)に対する粒子高さ(h)の比(h/w)の平均値及び粗化粒子の線被覆率(c)を適宜制御することにより、所望の鏡面光沢度とすることができる。
【0067】
以下、粗化めっき処理用めっき液の組成及び電解条件の一例を示す。なお、下記条件は好ましい一例であり、本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じて添加剤の種類や量、電解条件を適宜変更、調整することができる。
【0068】
<粗化めっき処理(1)の条件>
硫酸銅五水和物・・・銅(原子)換算で、5〜13g/L
硫酸・・・100〜250g/L
モリブデン酸アンモニウム・・・モリブデン(原子)換算で、500〜1000mg/L
処理速度・・・5〜20m/分
処理方向極間流速・・・5〜20m/分
電流密度・・・5〜50A/dm
処理時間・・・0.5〜3.0秒
浴温・・・15〜20℃
【0069】
<固定めっき処理(2)の条件>
硫酸銅五水和物・・・銅(原子)換算で、50〜70g/L
硫酸・・・80〜160g/L
処理速度・・・5〜20m/分
極間流速・・・1〜30m/分
電流密度・・・1〜5A/dm
処理時間・・・1〜10秒
浴温・・・50〜70℃
【0070】
さらに、本発明の表面処理銅箔は、銅箔基体の少なくとも一方の面に、粗化粒子の電析により形成される、所定の微細な凹凸表面形状をもつ粗化処理層を有し、さらに、該粗化処理層上に、直接又は、ニッケル(Ni)を含有する下地層、亜鉛(Zn)を含有する耐熱処理層及びクロム(Cr)を含有する防錆処理層等の中間層を介してシランカップリング剤層をさらに形成してもよい。なお、上記中間層及びシランカップリング剤層はその厚みが非常に薄いため、表面処理銅箔の粗化面における粗化粒子の粒子形状に影響を与えるものではない。表面処理銅箔の粗化面における粗化粒子の粒子形状は、該粗化面に対応する粗化処理層の表面における粗化粒子の粒子形状で実質的に決定される。
【0071】
また、シランカップリング剤層の形成方法としては、例えば、表面処理銅箔の前記粗化処理層の凹凸表面上に、直接又は中間層を介してシランカップリング剤溶液を塗布した後、風乾(自然乾燥)又は加熱乾燥して形成する方法が挙げられる。塗布されたカップリング剤溶液は、溶液中の水が蒸発すれば、シランカップリング剤層が形成されることで本発明の効果が十分に発揮される。50〜180℃で加熱乾燥すると、シランカップリング剤と銅箔の反応が促進される点で好適である。
【0072】
シランカップリング剤層は、エポキシ系シラン、アミノ系シラン、ビニル系シラン、メタクリル系シラン、アクリル系シラン、スチリル系シラン、ウレイド系シラン、メルカプト系シラン、スルフィド系シラン、イソシアネート系シランのいずれか1種以上を含有することが好ましい。
【0073】
その他の実施形態として、粗化処理層とシランカップリング剤層との間に、Niを含有する下地層、Znを含有する耐熱処理層及びCrを含有する防錆処理層の中から選択される少なくとも1層の中間層を有することが好ましい。
【0074】
Niを含有する下地層は、例えば銅箔基体や粗化処理層中の銅(Cu)が、樹脂基材側に拡散し銅害が発生して密着性が低下することがある場合には、粗化処理層とシランカップリング剤層との間に形成することが好ましい。Niを含有する下地層は、ニッケル(Ni)、ニッケル(Ni)−リン(P)、ニッケル(Ni)−亜鉛(Zn)の中から選択される少なくとも1種で形成することが好ましい。
【0075】
Znを含有する耐熱処理層は、耐熱性をさらに向上させる必要がある場合に形成することが好ましい。Znを含有する耐熱処理層は、例えば亜鉛、又は亜鉛を含有する合金、即ち、亜鉛(Zn)−錫(Sn)、亜鉛(Zn)−ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)−コバルト(Co)、亜鉛(Zn)−銅(Cu)、亜鉛(Zn)−クロム(Cr)及び亜鉛(Zn)−バナジウム(V)の中から選択される少なくとも1種の亜鉛を含有する合金で形成することが好ましい。
【0076】
Crを含有する防錆処理層は、耐食性をさらに向上させる必要がある場合に形成することが好ましい。防錆処理層としては、例えばクロムめっきにより形成されるクロム層、クロメート処理により形成されるクロメート層が挙げられる。
【0077】
上記の下地層、耐熱処理層及び防錆処理層は、これらの三層の全てを形成する場合には、粗化処理層上に、この順序で形成するのが好ましく、また、用途や目的とする特性に応じて、いずれか一層又は二層のみを形成してもよい。
【0078】
〔表面処理銅箔の作製〕
以下に、本発明の表面処理銅箔の作製方法をまとめる。
本発明では、以下の形成工程(S1)〜(S5)に従い、表面処理銅箔を作製することが好ましい。
(S1)粗化処理層の形成工程
銅箔基体上に、粗化粒子の電析により、微細な凹凸表面をもつ粗化処理層を形成する。
(S2)下地層の形成工程
粗化処理層上に、必要によりNiを含有する下地層を形成する。
(S3)耐熱処理層の形成工程
粗化処理層上又は下地層上に、必要によりZnを含有する耐熱処理層を形成する。
(S4)防錆処理層の形成工程
粗化処理層上、又は必要により粗化処理層上に形成した下地層及び/又は耐熱処理層上に、必要によりCrを含有する防錆処理層を形成する。
(S5)シランカップリング剤層の形成工程
粗化処理層上に、直接シランカップリング剤層を形成するか、又は下地層、耐熱処理層及び防錆処理層の少なくとも1層を形成した中間層を介してシランカップリング剤層を形成する。
【0079】
また、本発明の表面処理銅箔は、銅張積層板の製造に好適に用いられる。このような銅張積層板は、高密着性及び高周波伝送特性に優れるプリント配線板の製造に好適に用いられ、優れた効果を発揮する。特に、本発明の表面処理銅箔は、例えば40GHz以上、特に60GHz以上の高周波帯域用プリント配線板として使用される場合に好適である。
【0080】
また、銅張積層板は、本発明の表面処理銅箔を用いて、公知の方法により形成することができる。例えば、銅張積層板は、表面処理銅箔と樹脂基材(絶縁基板)とを、表面処理銅箔の粗化面(貼着面)と樹脂基材とが向かい合うように、積層貼着することにより製造される。絶縁基板としては、例えば、フレキシブル樹脂基板又はリジット樹脂基板等が挙げられるが、本発明の表面処理銅箔は、リジット樹脂基板との組み合わせにおいて特に好適である。
【0081】
また、銅張積層板を製造する場合には、シランカップリング剤層を有する表面処理銅箔と、絶縁基板とを加熱プレスによって貼り合わせることにより製造すればよい。なお、絶縁基板上にシランカップリング剤を塗布し、シランカップリング剤が塗布された絶縁基板と、最表面に防錆処理層を有する表面処理銅箔とを加熱プレスによって貼り合わせることにより作製された銅張積層板も、本発明と同等の効果を有する。
【0082】
また、プリント配線板は、上記銅張積層板を用いて、公知の方法により形成することができる。
【0083】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の一例に過ぎない。本発明は、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【実施例】
【0084】
以下に、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、以下は本発明の一例である。
【0085】
(製造例:銅箔基体の準備)
粗化処理を施すための基材となる銅箔基体として、下記カソード及びアノードを用い、下記組成の硫酸銅電解液を使用して下記電解条件により、M面における十点平均粗さRzjisが0.9〜1.8μmであり、20度鏡面光沢度Gs(20°)が179.0〜195.2%であり、60度鏡面光沢度Gs(60°)が365.8〜412.1%であり、85度鏡面光沢度Gs(85°)が121.5〜125.7%であり、厚さ18μmである、ロール状の電解銅箔(両面光沢箔)を作製した。なお、電解銅箔のM面における十点平均粗さRzjisと鏡面光沢度は、後述する表面処理銅箔と同様の条件で測定された値である。詳しくは、後述の評価方法の欄にて説明する。
【0086】
<カソード及びアノード>
カソード:#1000〜#2000のバフ研磨により粗さを調整されたチタン製の回転ドラム
アノード:寸法安定性陽極DSA(登録商標)
<電解液組成>
Cu :80g/L
SO :70g/L
塩素濃度 :25mg/L
(添加剤)
・3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸ナトリウム :2mg/L
・ヒドロキシエチルセルロース :10mg/L
・低分子量膠(分子量3000) :50mg/L
<電解条件>
浴温 :55℃
電流密度 :45A/dm
【0087】
(実施例1)
実施例1では、以下の工程[1]〜[3]を行い、表面処理銅箔を得た。以下詳しく説明する。
【0088】
[1]粗化処理層の形成
上記製造例にて作製した、M面における十点平均粗さRzjisが0.9μmであり、20度鏡面光沢度Gs(20°)が188.7%であり、60度鏡面光沢度Gs(60°)が385.7%であり、85度鏡面光沢度Gs(85°)が121.5%である電解銅箔を銅箔基体とし、該M面に、ロール・ツー・ロール方式で粗化めっき処理を施した。この粗化めっき処理は、必要に応じて2段階の電気めっき処理により行った。粗化めっき処理(1)は、下記の粗化めっき液基本浴組成を用い、銅濃度とモリブデン(Mo)濃度を下記表1記載の通りとし、かつ、処理速度、処理方向極間流速、電流密度、処理時間を下記表1記載の通りとした。モリブデン(Mo)濃度は、モリブデン(VI)酸二ナトリウム二水和物を粗化めっき液基本浴に添加し溶解させることで調整した。また、続けて固定めっき処理(2)を行う場合は、下記固定めっき液組成を用い、処理速度、極間流速、電流密度、処理時間を下記表1記載の通りとして行った。なお、固定めっき処理を行わない場合は下記[2]の工程に進んだ。
【0089】
<粗化めっき液基本浴組成、浴温>
SO :150g/L
浴温 :18℃
【0090】
<固定めっき液組成、浴温>
Cu :60g/L
SO :120g/L
浴温 :60℃
【0091】
【表1】
【0092】
[2]金属処理層の形成
続いて、上記[1]で形成した粗化処理層の表面に、下記の条件で、Ni、Zn、Crの順に金属めっきを施して金属処理層(中間層)を形成した。
【0093】
<Niめっき条件>
Ni :40g/L
BO :5g/L
浴温 :20℃
pH :3.6
電流密度 :0.2A/dm
処理時間 :10秒
【0094】
<Znめっき条件>
Zn :2.5g/L
NaOH :40g/L
浴温 :20℃
電流密度 :0.3A/dm
処理時間 :5秒
【0095】
<Crめっき条件>
Cr :5g/L
浴温 :30℃
pH :2.2
電流密度 :5A/dm
処理時間 :5秒
【0096】
[3]シランカップリング剤層の形成
最後に、上記[2]にて形成した金属処理層(特に、最表面のCrめっき層)の上に、濃度0.2質量%の3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン水溶液を塗布し、100℃で乾燥させ、シランカップリング剤層を形成した。
【0097】
(実施例2〜9及び比較例1〜7)
実施例2〜9及び比較例1〜7は、粗化処理層の形成工程[1]において、銅箔基体として、上記表1に示す十点平均粗さRzjisと鏡面光沢度を有するM面をもつ上記製造例の電解銅箔を用い、粗化めっき処理(1)及び固定めっき処理(2)の各条件を、上記表1記載の通りとした以外は、実施例1と同様の方法にて、表面処理銅箔を得た。
【0098】
[評価]
上記実施例及び比較例に係る表面処理銅箔について、下記に示す特性評価を行った。
各特性の評価条件は下記の通りであり、特に断らない限り、各測定は常温(20℃±5℃)にて行ったものである。結果を表2に示す。
【0099】
[断面観察]
表面処理銅箔の断面観察は、以下手順ステップ(i)〜(iii)にて、画像解析により行った。
まず、(i)表面処理銅箔を5mm角で切出し、表面処理銅箔の粗化面側から、粗化面に対して垂直に切断し、切断面をイオンミリング装置(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、「IM4000」)を用いて、ステージモードC1(スイング角度:±15°、スイング速度:6往復/min)、加速電圧6kVの条件で、30分間精密研磨する。作製した測定用試料の表面に露出した表面処理銅箔の加工面を、走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、「SU8020」)を用いて、加工面の垂直方向から加速電圧3kVにて5万倍の二次電子像を観察し、粗化面付近の断面写真(SEM画像、縦1.89μm×横2.54μm)を準備する。
【0100】
次に、(ii)上記断面写真について、画像編集ソフトウェア(「Real World Paint」)を用いて、粗化粒子の輪郭を強調する画像処理を行い、断面形状の輪郭線を抽出し、最終的に同一加工断面における断面形状の輪郭線のみを抽出する。その後、(iii)画像計測ソフトウェア(Photo Ruler)を用いて、輪郭線における粗化粒子の粒子高さ(h)及び粒子幅(w)、並びに任意の観察視野(幅方向2.5μm)のあたりに存在する粗化粒子(観察対象粒子)の個数を、それぞれ計測する。
【0101】
上記計測値に基づき、観察視野の幅方向2.5μmの領域における、粗化粒子の粒子高さ(h)、粒子幅(w)及び粒子幅(w)に対する粒子高さ(h)の比(h/w)の各平均値、並びに、粗化粒子の線密度(d)及び線被覆率(c)を、それぞれ求める。
【0102】
ここまでの解析を、同じ表面処理銅箔につき任意の断面10箇所で行う。そして、合計10枚の断面写真の各測定値に基づき、粗化粒子の粒子高さ(h)の平均値、粒子幅(w)の平均値、粒子幅(w)に対する粒子高さ(h)の比(h/w)の平均値、線密度(d)及び線被覆率(c)の各平均値を算出し、この各平均値を、観察対象とした表面処理銅箔の測定値とした。各実施例及び比較例の表面処理銅箔の測定値を、表2に示す。
【0103】
[鏡面光沢度]
表面処理銅箔の粗化面について、光沢度計(日本電色工業株式会社製、VG7000)を使用し、JIS Z 8741−1997に基づき、20度鏡面光沢G(20°)、60度鏡面光沢G(60°)及び85度鏡面光沢G(85°)をそれぞれ測定した。なお、測定は、受光角毎に、表面処理銅箔の長手方向(搬送方向)に対して直交方向で3回実施し、測定値の全て(N=3)を平均して、各受光角に対応する鏡面光沢度とした。
なお、上記製造例で作製した電解銅箔のM面における鏡面光沢度についても、同様の条件で測定した。
【0104】
[十点平均粗さ]
表面処理銅箔の粗化面において、接触式表面粗さ測定機(株式会社小坂研究所製、「サーフコーダーSE1700」)用いて、JIS B 0601:2001で定義される十点平均粗さRzjis(μm)を表面処理銅箔の長手方向(搬送方向)に対して直交方向で測定した。
なお、上記製造例で作製した電解銅箔のM面における十点平均粗さRzjis(μm)についても、同様の条件で測定した。
【0105】
[高周波特性の評価]
高周波特性の評価として高周波帯域での伝送損失を測定した。詳細を以下に説明する。
表面処理銅箔の粗化面を、パナソニック株式会社製のポリフェニレンエーテル系低誘電率樹脂基材であるMEGTRON7(厚さ60μm)を2枚重ねた両面に面圧3.5MPa、200℃の条件で2時間プレスすることにより貼り合わせて、両面銅張積層板を作製した。得られた銅張積層板に回路加工を行い、伝送路幅300μm、長さ70mmのマイクロストリップラインを形成した回路基板を作製した。この回路基板の伝送路に、ネットワークアナライザ(KeysightTechnologies社製、「N5247A」)を用いて高周波信号を伝送し、伝送損失を測定した。特性インピーダンスは50Ωとした。
伝送損失の測定値は、絶対値が小さいほど伝送損失が少なく、高周波特性が良好であることを意味する。得られた測定値を指標にして、下記評価基準に基づき高周波特性を評価した。
○:60GHzにおける伝送損失の絶対値が3.5dB未満、且つ100GHzにおける伝送損失の絶対値が6dB未満
△:60GHzにおける伝送損失の絶対値が3.5dB未満、且つ100GHzにおける伝送損失の絶対値が6dB以上
×:60GHzにおける伝送損失の絶対値が3.5dB以上
【0106】
[常態密着性の評価]
常態密着性の評価として、JIS C 6481:1996に基づき、剥離試験を行った。詳細を以下に説明する。
上記[高周波特性の評価]に記載の方法と同様の方法で銅張積層板を作製し、得られた銅張積層板の銅箔部分(表面処理銅箔)を10mm巾テープでマスキングした。この銅張積層板に対して塩化銅エッチングを行った後テープを除去し、10mm巾の回路配線板を作製した。株式会社東洋精機製作所製のテンシロンテスターを用いて、この回路配線板の10mm巾の回路配線部分(銅箔部分)を90度方向に50mm/分の速度で樹脂基材から剥離した際の剥離強度を測定した。得られた測定値を指標にして、下記評価基準に基づき密着性を評価した。
<常態密着性の評価基準>
○:剥離強度が0.55kN/m以上
△:剥離強度が0.50kN/m以上0.55kN/m未満
×:剥離強度が0.50kN/m未満
【0107】
[耐熱密着性の評価]
耐熱密着性の評価として、JIS C 6481:1996に基づき、加熱処理後の剥離試験を行った。詳細を以下に説明する。
上記[高周波特性の評価]に記載の方法と同様の方法で銅張積層板を作製し、得られた銅張積層板の銅箔部分を10mm巾テープでマスキングした。この銅張積層板に対して塩化銅エッチングを行った後テープを除去し、10mm巾の回路配線板を作製した。この回路配線板を、300℃の加熱オーブンにて1時間加熱した後、常温まで自然空冷した。その後、株式会社東洋精機製作所製のテンシロンテスターを用いて、この回路配線板の10mm巾の回路配線部分(銅箔部分)を90度方向に50mm/分の速度で樹脂基材から剥離した際の剥離強度を測定した。得られた測定値を指標にして、下記評価基準に基づき耐熱密着性を評価した。
<耐熱密着性の評価基準>
○:剥離強度が0.50kN/m以上
△:剥離強度が0.40kN/m以上0.50kN/m未満
×:剥離強度が0.40kN/m未満
【0108】
[総合評価]
上記の高周波特性、常態密着性及び耐熱密着性のすべてを総合し、下記評価基準に基づき総合評価を行った。なお、本実施例では、総合評価でA及びBを合格レベルとした。
<総合評価の評価基準>
A(優):全ての評価が○である。
B(合格):全ての評価で×評価がない。
C(不合格):少なくとも1つの評価が×である。
【0109】
【表2】
【0110】
表2に示されるように、実施例1〜9の表面処理銅箔は、その断面をSEM観察したときに、粗化面は、粗化粒子の粒子高さ(h)の平均値が0.05〜0.30μm、粗化粒子の粒子幅(w)に対する前記粒子高さ(h)の比(h/w)の平均値が0.7〜5.0、記粗化粒子の線被覆率(c)が15〜60%となるように制御されているため、高周波特性に優れ、高い密着性(常態密着性及び耐熱密着性)を発揮することが確認された。
【0111】
これに対し、比較例1〜7の表面処理銅箔は、粗化面において、粗化粒子の粒子高さ(h)の平均値が0.05〜0.30μm、粗化粒子の粒子幅(w)に対する前記粒子高さ(h)の比(h/w)の平均値が0.7〜5.0、記粗化粒子の線被覆率(c)が15〜60%のうち少なくとも一つを満たさないため、実施例1〜9の表面処理銅箔に比べて、高周波特性及び密着性(特に耐熱密着性)の一方又は両方が劣っていることが確認された。
図1
図2
図3
図4
図5

【手続補正書】
【提出日】2019年9月24日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項6
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の表面処理銅箔の前記表面処理皮膜が形成された面を樹脂基材と貼着させてなる、銅張積層板。
【国際調査報告】