特表-19168093IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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再表2019-168093アンモニアの製造方法、モリブデン錯体及びベンゾイミダゾール化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2019年9月6日
【発行日】2021年4月30日
(54)【発明の名称】アンモニアの製造方法、モリブデン錯体及びベンゾイミダゾール化合物
(51)【国際特許分類】
   C01C 1/04 20060101AFI20210402BHJP
   B01J 31/26 20060101ALI20210402BHJP
   C07F 9/6506 20060101ALI20210402BHJP
   C07F 11/00 20060101ALN20210402BHJP
【FI】
   C01C1/04 E
   B01J31/26 M
   C07F9/6506
   C07F11/00 BCSP
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】22
【出願番号】特願2020-503610(P2020-503610)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2019年2月28日
(31)【優先権主張番号】特願2018-36967(P2018-36967)
(32)【優先日】2018年3月1日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2018-158595(P2018-158595)
(32)【優先日】2018年8月27日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、「戦略的創造研究推進事業」「再生可能エネルギーからのエネルギーキャリアの製造とその利用のための革新的基盤技術の創出」「分子触媒を利用した革新的アンモニア合成及び関連反応の開発」委託研究開発、産業技術強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(71)【出願人】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西林 仁昭
(72)【発明者】
【氏名】中島 一成
(72)【発明者】
【氏名】芦田 裕也
(72)【発明者】
【氏名】的場 一隆
(72)【発明者】
【氏名】近藤 章一
(72)【発明者】
【氏名】菊池 隆正
【テーマコード(参考)】
4G169
4H050
【Fターム(参考)】
4G169AA06
4G169BA21A
4G169BA21B
4G169BA27A
4G169BA27B
4G169BB08A
4G169BB08B
4G169BC44B
4G169BC59A
4G169BC59B
4G169BD14B
4G169BE16A
4G169BE16B
4G169BE26A
4G169BE26B
4G169CB82
4G169DA02
4G169FA01
4G169FB77
4H050AA01
4H050AB40
4H050AB82
4H050WB11
4H050WB16
4H050WB17
4H050WB21
(57)【要約】
本発明のアンモニアの製造方法は、触媒、還元剤及びプロトン源の存在下、窒素分子からアンモニアを製造する方法である。触媒としては、例えば[MoI3(PNP)](PNPは2,6−ビス(ジ−tert−ブチルホスフィノメチル)ピリジン)であるモリブデン錯体を用いる。還元剤としては、ヨウ化サマリウム(II)、プロトン源としては、アルコール又は水を用いる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒、還元剤及びプロトン源の存在下、窒素分子からアンモニアを製造する方法であって、
前記触媒は、(A)PNP配位子として2,6−ビス(ジアルキルホスフィノメチル)ピリジン(但し、2つのアルキル基は同じでも異なっていてもよく、ピリジン環の少なくとも1つの水素原子はアルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子に置換されていてもよい)を有するモリブデン錯体、(B)PCP配位子としてN,N−ビス(ジアルキルホスフィノメチル)ジヒドロベンゾイミダゾリデン(但し、2つのアルキル基は同じでも異なっていてもよく、ベンゼン環の少なくとも1つの水素原子はアルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子に置換されていてもよい)を有するモリブデン錯体、(C)PPP配位子としてビス(ジアルキルホスフィノエチル)アリールホスフィン(但し、2つのアルキル基は同じでも異なっていてもよい)を有するモリブデン錯体、又は、(D)trans−Mo(N22(R123P)4(但し、R1,R2,R3は同じでも異なっていてもよいアルキル基又はアリール基であり、2つのR3は互いに繋がってアルキレン鎖を形成していてもよい)で表されるモリブデン錯体であり、
前記還元剤として、ランタノイド系金属のハロゲン化物(II)を用い、
前記プロトン源として、アルコール又は水を用いる、
アンモニアの製造方法。
【請求項2】
前記(A)のモリブデン錯体は、下記式(A1),(A2)又は(A3)
【化1】
(式中、R1及びR2は同じであっても異なっていてもよいアルキル基であり、Xはヨウ素原子、臭素原子又は塩素原子であり、ピリジン環上の少なくとも1つの水素原子はアルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子で置換されていてもよい)で表されるモリブデン錯体である、
請求項1に記載のアンモニアの製造方法。
【請求項3】
前記(B)のモリブデン錯体は、下記式(B1)
【化2】
(式中、R1及びR2は同じであっても異なっていてもよいアルキル基であり、Xはヨウ素原子、臭素原子又は塩素原子であり、ベンゼン環上の少なくとも1つの水素原子はアルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子で置換されていてもよい)で表されるモリブデン錯体である、
請求項1に記載のアンモニアの製造方法。
【請求項4】
前記式(B1)のジヒドロベンゾイミダゾリデン環の5位及び6位の少なくとも一方はトリフルオロメチル基で置換されている、
請求項3に記載のアンモニアの製造方法。
【請求項5】
前記(C)のモリブデン錯体は、式(C1)
【化3】
(式中、R1及びR2は同じであっても異なっていてもよいアルキル基であり、R3はアリール基であり、Xはヨウ素原子、臭素原子又は塩素原子である)で表されるモリブデン錯体である、
請求項1に記載のアンモニアの製造方法。
【請求項6】
前記(D)のモリブデン錯体は、式(D1)又は(D2)
【化4】
(式中、R1,R2及びR3は同じであっても異なっていてもよいアルキル基又はアリール基であり、nは2又は3である)で表されるモリブデン錯体である、
請求項1に記載のアンモニアの製造方法。
【請求項7】
前記窒素分子として、常圧の窒素ガスを用いる、
請求項1〜6のいずれか1項に記載のアンモニアの製造方法。
【請求項8】
前記アルコールは、グリコールであるか、ROH(Rは水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6の鎖状、環状又は分岐状のアルキル基、又は、アルキル基を有していてもよいフェニル基)である、
請求項1〜7のいずれか1項に記載のアンモニアの製造方法。
【請求項9】
前記ランタノイド系金属のハロゲン化物(II)はハロゲン化サマリウム(II)である、
請求項1〜8のいずれか1項に記載のアンモニアの製造方法。
【請求項10】
式(B2)
【化5】
(式中、R1及びR2は同じであっても異なっていてもよいアルキル基であり、Xはヨウ素原子、臭素原子又は塩素原子であり、R3及びR4の少なくとも一方はトリフルオロメチル基で置換されている)で表される、モリブデン錯体。
【請求項11】
式(E)
【化6】
(式中、Aはアニオンであり、R1及びR2は同じであっても異なっていてもよいアルキル基であり、R3及びR4の少なくとも一方はトリフルオロメチル基で置換されている)で表される、ベンゾイミダゾール化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニアの製造方法、モリブデン錯体及びベンゾイミダゾール化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
窒素分子をアンモニアに変換する工業的な手法であるハーバー・ボッシュ法は、高温高圧の反応条件を必要とするエネルギー多消費型のプロセスである。これに対し、近年、温和な条件下で窒素分子からアンモニアを製造する方法が開発されている。例えば、非特許文献1には、下記式に示すように、触媒としてのPNP配位子を有するモリブデンヨード錯体と、プロトン源としての2,4,6−コリジニウムトリフルオロメタンスルホナートとのトルエン溶液中に、還元剤としてのデカメチルコバルトセンのトルエン溶液を、常圧の窒素ガス存在下、室温で添加し、その後攪拌することにより、触媒としてモリブデン錯体を基準として415当量のアンモニアが生成したと報告されている。
【化1】
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Bull. Chem. Soc. Jpn. 2017, vol. 90, pp1111-1118
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の非特許文献1では、高価なデカメチルコバルトセンやコリジンの共役酸を化学量論量使用する必要があった。そのため、工業的な観点からより安価なアンモニアの製造方法の開発が期待されていた。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、比較的安価に窒素分子からアンモニアを製造することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために、本発明者らは、窒素分子からアンモニアを製造する方法につき、触媒としてある種のモリブデン錯体を用い、還元剤としてヨウ化サマリウム(II)を用いて検討したところ、アルコールや水をプロトン源として使用できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明のアンモニアの製造方法は、
触媒、還元剤及びプロトン源の存在下、窒素分子からアンモニアを製造する方法であって、
前記触媒は、(A)PNP配位子として2,6−ビス(ジアルキルホスフィノメチル)ピリジン(但し、2つのアルキル基は同じでも異なっていてもよく、ピリジン環の少なくとも1つの水素原子はアルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子に置換されていてもよい)を有するモリブデン錯体、(B)PCP配位子としてN,N−ビス(ジアルキルホスフィノメチル)ジヒドロベンゾイミダゾリデン(但し、2つのアルキル基は同じでも異なっていてもよく、ベンゼン環の少なくとも1つの水素原子はアルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子に置換されていてもよい)を有するモリブデン錯体、(C)PPP配位子としてビス(ジアルキルホスフィノエチル)アリールホスフィン(但し、2つのアルキル基は同じでも異なっていてもよい)を有するモリブデン錯体、又は、(D)trans−Mo(N22(R123P)4(但し、R1,R2,R3は同じでも異なっていてもよいアルキル基又はアリール基であり、2つのR3は互いに繋がってアルキレン鎖を形成していてもよい)で表されるモリブデン錯体であり、
前記還元剤として、ランタノイド系金属のハロゲン化物(II)を用い、
前記プロトン源として、アルコール又は水を用いる
ものである。
【0008】
このアンモニアの製造方法によれば、プロトン源としてアルコールや水を用いることができるし、常温(0〜40℃)でも反応が進行するため、従来に比べて安価に窒素分子からアンモニアを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のアンモニアの製造方法の好適な実施形態を以下に示す。
【0010】
本実施形態のアンモニアの製造方法は、触媒、還元剤及びプロトン源の存在下、窒素分子からアンモニアを製造する方法である。この方法では、触媒として、(A)PNP配位子として2,6−ビス(ジアルキルホスフィノメチル)ピリジン(但し、2つのアルキル基は同じでも異なっていてもよく、ピリジン環の少なくとも1つの水素原子はアルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子に置換されていてもよい)を有するモリブデン錯体、(B)PCP配位子としてN,N−ビス(ジアルキルホスフィノメチル)ジヒドロベンゾイミダゾリデン(但し、2つのアルキル基は同じでも異なっていてもよく、ベンゼン環の少なくとも1つの水素原子はアルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子に置換されていてもよい)を有するモリブデン錯体、(C)PPP配位子としてビス(ジアルキルホスフィノエチル)アリールホスフィン(但し、2つのアルキル基は同じでも異なっていてもよい)を有するモリブデン錯体、又は、(D)trans−Mo(N22(R123P)4(但し、R1,R2,R3は同じでも異なっていてもよいアルキル基又はアリール基であり、2つのR3は互いに繋がってアルキレン鎖を形成していてもよい)で表されるモリブデン錯体を用いる。また、還元剤として、ランタノイド系金属のハロゲン化物(II)を用い、プロトン源として、アルコール又は水を用いる。
【0011】
(A)のモリブデン錯体において、アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基及びそれらの構造異性体などの直鎖状又は分岐状のアルキル基であってもよいし、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの環状のアルキル基であってもよい。アルキル基は、炭素数1〜12であることが好ましく、炭素数1〜6であることがより好ましい。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキシルオキシ基及びそれらの構造異性体などの直鎖状又は分岐状のアルコキシ基であってもよいし、シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペントキシ基、シクロヘキシルオキシ基などの環状のアルコキシ基であってもよい。アルコキシ基は、炭素数1〜12であることが好ましく、炭素数1〜6であることがより好ましい。ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
【0012】
(A)のモリブデン錯体としては、例えば式(A1),(A2)又は(A3)
【化2】
(式中、R1及びR2は同じであっても異なっていてもよいアルキル基であり、Xはヨウ素原子、臭素原子又は塩素原子であり、ピリジン環上の少なくとも1つの水素原子はアルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子で置換されていてもよい)で表されるモリブデン錯体が挙げられる。アルキル基、アルコキシ基及びハロゲン原子としては、既に例示したものと同じものが挙げられる。R1及びR2としては、嵩高いアルキル基(例えばtert−ブチル基やイソプロピル基)が好ましい。ピリジン環上の水素原子は、置換されていないか、4位の水素原子が鎖状、環状又は分岐状の炭素数1〜12のアルキル基で置換されていることが好ましい。
【0013】
(B)のモリブデン錯体としては、例えば式(B1)
【化3】
(式中、R1及びR2は同じであっても異なっていてもよいアルキル基であり、Xはヨウ素原子、臭素原子又は塩素原子であり、ベンゼン環上の少なくとも1つの水素原子はアルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子で置換されていてもよい)で表されるモリブデン錯体が挙げられる。アルキル基、アルコキシ基及びハロゲン原子としては、既に例示したものと同じものが挙げられる。R1及びR2としては、嵩高いアルキル基(例えばtert−ブチル基やイソプロピル基)が好ましい。ベンゼン環上の水素原子は、置換されていないか、5および6位の水素原子が鎖状、環状又は分岐状の炭素数1〜12のアルキル基で置換されていることが好ましい。特に、式(B2)のモリブデン錯体が好ましい。式(B2)中、R1、R2及びXは式(B1)と同じであり、R3及びR4の少なくとも一方がフルオロ基で置換されていることが好ましく、更にR3及びR4の少なくとも一方がトリフルオロメチル基で置換されていることがより好ましい。式(E)のベンゾイミダゾール化合物は、式(B2)のモリブデン錯体を合成するための中間体として用いることができる。式(E)中、Aはアニオンであり、R1、R2及びXは式(B1)と同じであり、R3及びR4は式(B2)と同じである。Aのアニオンとしては、特に限定するものではないが、例えばPF6-,BF4-,ClO4-などが挙げられる。
【化4】
【0014】
(C)のモリブデン錯体としては、例えば式(C1)
【化5】
(式中、R1及びR2は同じであっても異なっていてもよいアルキル基であり、R3はアリール基であり、Xはヨウ素原子、臭素原子又は塩素原子である)で表されるモリブデン錯体が挙げられる。アルキル基としては、既に例示したものと同じものが挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基及びそれらの環上の水素原子の少なくとも1つの原子がアルキル基又はハロゲン原子で置換されたものなどが挙げられる。アルキル基やハロゲン原子としては、既に例示したものと同じものが挙げられる。R1及びR2としては、嵩高いアルキル基(例えばtert−ブチル基やイソプロピル基)が好ましい。R3としては、例えばフェニル基が好ましい。
【0015】
(D)のモリブデン錯体としては、式(D1)又は(D2)
【化6】
(式中、R1,R2及びR3は同じであっても異なっていてもよいアルキル基又はアリール基であり、nは2又は3である)で表されるモリブデン錯体が挙げられる。アルキル基及びアリール基としては、既に例示したものと同じものが挙げられる。式(D1)では、R1及びR2がアリール基(例えばフェニル基)でR3が炭素数1〜4のアルキル基(例えばメチル基)であるか、R1及びR2が炭素数1〜4のアルキル基(例えばメチル基)でR3がアリール基(例えばフェニル基)であることが好ましい。式(D2)では、R1及びR2がアリール基(例えばフェニル基)でnが2であることが好ましい。
【0016】
本実施形態のアンモニアの製造方法において、窒素分子として、常圧の窒素ガスを用いることが好ましい。窒素ガスは安価なため他の試薬に対して大過剰に用いてもよい。
【0017】
本実施形態のアンモニアの製造方法において、プロトン源としてアルコールを用いる場合、アルコールとして、グリコールを用いてもよいし、ROH(Rは水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6の鎖状、環状又は分岐状のアルキル基、又は、アルキル基を有していてもよいフェニル基)を用いてもよい。グリコールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールなどが挙げられるが、このうちエチレングリコールが好ましい。ROHとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコールなどの鎖状又は分岐状のアルキルアルコール;シクロプロパノールやシクロペンタノール、シクロヘキサノールなどの環状のアルキルアルコール;トリフルオロエチルアルコール、テトラフルオロエチルアルコールなどのフッ素原子を含むアルコール;フェノールやクレゾール、キシレノールなどのフェノール誘導体などが挙げられる。
【0018】
本実施形態のアンモニアの製造方法において、窒素分子からアンモニアの製造を溶媒中で行ってもよい。溶媒としては、特に限定するものではないが、環状エーテル系溶媒、鎖状エーテル系溶媒、ニトリル系溶媒、炭化水素系溶媒などが挙げられる。環状エーテル系溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン(以下、THFまたはthfと略す。)やジオキサンなどが挙げられる。鎖状エーテル系溶媒としては、例えばジエチルエーテルなどが挙げられる。ニトリル系溶媒としては、例えばアセトニトリルやプロピオニトリルなどが挙げられる。炭化水素系溶媒としては、例えばトルエンなどの芳香族炭化水素やヘキサンなどの飽和炭化水素などが挙げられる。
【0019】
本実施形態のアンモニアの製造方法において、反応温度は、常温(0〜40℃)にすることが好ましい。反応雰囲気は、加圧雰囲気にする必要はなく、常圧雰囲気でよい。反応時間は、特に限定するものではないが、通常は数分〜数10時間の範囲で設定すればよい。
【0020】
本実施形態のアンモニアの製造方法において、触媒の使用量は、還元剤に対して0.00001〜0.1当量の範囲で適宜使用すればよく、0.0005〜0.1当量使用するのが好ましく、0.005〜0.01当量使用するのがより好ましい。プロトン源の使用量は、還元剤に対して0.5〜5当量使用するのが好ましいが、1〜2当量使用するのがより好ましい。
【0021】
本実施形態のアンモニアの製造方法において、ランタノイド系金属のハロゲン化物(II)に用いられるランタノイド系金属としては、La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Luが挙げられるが、このうちSmが好ましく、ハロゲンとしては塩素、臭素、ヨウ素が挙げられるが、このうちヨウ素が好ましい。ランタノイド系金属のハロゲン化物(II)としては、ハロゲン化サマリウム(II)が好ましく、ヨウ化サマリウム(II)がより好ましい。
【0022】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【実施例】
【0023】
以下に、本発明の実施例について説明する。なお、以下の実施例は本発明を何ら限定するものではない。
【0024】
[実験例1−21]
触媒としてモリブデン錯体(1a)(化学式を表1の欄外に示す)を用いて、還元剤及びプロトン源の存在下、窒素分子からアンモニアを製造した(表1)。以下の実験例では、触媒中のモリブデン金属あたり2当量を超えるアンモニアが発生した場合に、アンモニアが触媒的に発生したと判断した。モリブデン錯体(1a)は、公知文献(Bull. Chem. Soc. Jpn. 2017, vol. 90, pp1111-1118)を参考にして合成した。
【表1】
【0025】
実験例1では、常圧の窒素雰囲気下、室温にて、触媒としてのモリブデン錯体(1a)(1.7mg,0.002mmol)と還元剤としてのSmI2(thf)2(固体結晶、0.36mmol、モリブデンに対して180当量)のテトラヒドロフラン溶液(6mL)に、水素イオン源としてのエチレングリコール(20μL,0.36mmol,180当量,還元剤に対して1当量(1倍モル))を加え、その後18時間攪拌した。その後、水酸化カリウム水溶液(30質量%,5mL)を加え、減圧条件で蒸留し、蒸留液を硫酸水溶液(0.5M,10mL)で回収した。硫酸水溶液中のアンモニア量はインドフェノール法(Analytical Chemstry, 1967, vol. 39, pp971-974)により決定した。その結果、触媒(モリブデン錯体)当たり43.8当量のアンモニアが生成した。
【0026】
実験例2−6では、実験例1においてエチレングリコールの使用量を還元剤に対して0.5〜5当量の間に設定した。その結果、エチレングリコールの使用量は還元剤に対して1〜5当量ではほとんど収率に変化がないことがわかった。なお、実験例1では、反応時間が1分、15分のときのアンモニア発生量を調べたところ、還元剤基準でそれぞれ35%、62%であり、15分でほぼ反応が完結していた。この結果から算出したTOFは最高で約1300/hであった。
【0027】
実験例7では、実験例1において溶媒量を1mLに減らしたが、問題なく反応は進行した。
【0028】
実験例8−12では、実験例1において溶媒をTHFからジオキサン、アセトニトリル、ジエチルエーテル、トルエン、ヘキサンに変更した。これらの溶媒を用いた場合、THFに比べて収率がやや低下したものの、触媒的にアンモニアを得ることができた。なお、実験例13では、エチレングリコールをプロトン源と溶媒とを兼ねて使用した実験を行ったところ、アンモニアが還元剤基準で8%、モリブデンに対して4.9当量生成した。このことから、エチレングリコールを溶媒とした場合もアンモニアが触媒的に生成することが確認された。
【0029】
実験例14−19では、実験例3においてプロトン源をエチレングリコールから各種アルコール(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、tert−ブチルアルコール、トリフルオロエタノール、フェノール)に変更した。その結果、エチレングリコールに比べて収率がやや低下したものの、アンモニアが触媒的に生成することが確認された。
【0030】
実験例20では、実験例1においてモリブデン錯体(1a)を用いずに反応を行ったところ、アンモニアは生成しなかった。実験例21では、還元剤としてデカメチルコバルトセンを使用したところ、アンモニアは生成しなかった。
【0031】
[実験例22−29]
実験例22−29では、実施例1の触媒の代わりに表2に示す各種のモリブデン錯体を触媒として用いてアンモニアの合成を試みた。各触媒の化学式を表2の欄外に示す。実験例29では触媒を0.01mmol使用した。結果を表2に示す。
【0032】
モリブデン錯体(1b)は公知文献(Bull. Chem. Soc. Jpn. 2017, vol. 90, pp1111-1118)を参考にして合成した。モリブデン錯体(1c)、(2)は、公知文献(Nat. Chem. 2011, vol. 3, pp120-125)を参考にして合成した。モリブデン錯体(3a)は、公知文献(Nat. Commun. 2017, vol. 8, Airticle No.14874)を参考にして合成した。モリブデン錯体(3b)は、公知文献(J. Am. Chem. Soc. 2015, vol. 137, pp5666-5669)を参考にして合成した。モリブデン錯体(5a)は、公知文献(Inorg. Chem. 1973, vol. 12, pp2544-2547)を参考にして合成した。モリブデン錯体(5b)は、公知文献(J. Am. Chem. Soc. 1972, vol. 94, pp110-114)を参考にして合成した。モリブデン錯体(4)は次のように合成した。モリブデン錯体(1a)(0.2mmol、174.4mg)のTHF溶液(16mL)に対して、1気圧の窒素雰囲気下、ピリジン(0.4mmol、38μL)、水(0.4mmol、7μL)を加えて、50℃にて14時間攪拌した。その後、反応溶液を真空下濃縮乾固し、固体をベンゼン(5mL、3回)で洗浄した。その後、残渣をTHF(5mL、2回)で抽出し、真空下濃縮乾固した。固体をジクロロメタン(4mL)に溶解し、セライト濾過後にヘキサン(20mL)を加え、4日間再結晶を行うことで、4を淡黄色結晶として46.1mg(0.059mmol、30%収率)で得た。
【表2】
【0033】
実験例22−23では、触媒としてPNP配位子を持つモリブデン錯体(1b)〜(1c)を用いた。モリブデン錯体(1b)〜(1c)のXがヨウ素原子、臭素原子及び塩素原子のいずれであっても、触媒的にアンモニアが生成することがわかった。
【0034】
実験例24−27では、触媒として、PNP配位子を持つ二核モリブデン錯体(2)、PCP配位子を持つモリブデン錯体(3a)、PPP配位子を持つモリブデン錯体(3b)及びPNP配位子を持つMo(IV)オキソ錯体(4)を用いた。モリブデン錯体(2),(3a)(3b),(4)のいずれを用いても、触媒的にアンモニアが生成することがわかった。このうち、特にモリブデン錯体(3a)が良好な結果を与えた。
【0035】
実験例28−29では、触媒として、単核モリブデン錯体(5a)〜(5b)を用いた。トランス型の単核モリブデン錯体(5a),(5b)のいずれを用いても触媒的にアンモニアが生成することがわかった。
【0036】
[実験例30]
実験例30は、プロトン源として水を用いた例である(下記式参照)。モリブデン錯体(1a)(0.002mmol)及びSmI2(thf)2(固体結晶、0.36mmol、モリブデンに対して180当量)のTHF溶液(4mL)に対して、1気圧の窒素雰囲気下、室温にてシリンジポンプを用いて水(0.36mmol,モリブデンに対して180当量)のTHF溶液(2mL)を0.5時間かけて滴下しながら攪拌した。滴下完了後に更に17.5時間室温にて攪拌した後に、アンモニア及び水素の定量を行った。その結果、アンモニアが43%(モリブデンに対して26.8当量)、水素が39%(モリブデンに対して36.0当量)生成した。このことから、プロトン源として水を用いた場合でも、触媒的にアンモニアが生成することがわかった。
【化7】
【0037】
[実験例31−38]
実験例31−38では、触媒としてモリブデン錯体を用いて、還元剤(SmI2)及びプロトン源の存在下、THF中、室温で窒素分子からアンモニアを製造した(表3)。実験例31では、触媒としてPNP配位子を持つモリブデン錯体(1a)、プロトン源としてジエチレングリコールを用いて反応を行った。実験例32〜37では、触媒としてPCP配位子を持つモリブデン錯体(3a)、プロトン源としてジエチレングリコールを用いて反応を行った。実験例38では、触媒としてPCP配位子を持つモリブデン錯体(3a)、プロトン源として水を用いて反応を行った。結果を表3に示す。
【0038】
【表3】
【0039】
実験例31と実験例32の結果から、PNP配位子を持つモリブデン錯体(1a)よりもPCP配位子を持つモリブデン錯体(3a)の方が触媒活性が高いことがわかった。実験例32〜37の結果から、触媒としてモリブデン錯体(3a)、プロトン源としてジエチレングリコールを用いた場合、アンモニアが高率で得られることがわかった。実験例33と実験例38の結果から、触媒としてPNP配位子を持つモリブデン錯体(3a)を用いた場合、プロトン源としてジエチレングリコールを用いるよりも水を用いた方がアンモニアが高率で得られることがわかった。なお、本明細書で示した実験例のうちで実験例38が最も良好な結果を与えた。
【0040】
[実験例39−41]
実験例39−41では、触媒としてモリブデン錯体を用いて、還元剤(SmI2)及びプロトン源(H2O)の存在下、THF中、室温で窒素分子からアンモニアを製造した(表4)。実験例39では、触媒として前出のモリブデン錯体(3a)、実験例40では、触媒としてジヒドロベンゾイミダゾリデン環の5,6位にフッ素原子を有するモリブデン錯体(3c)、実験例41では、触媒としてジヒドロベンゾイミダゾリデン環の5位にトリフルオロメチル基を有するモリブデン錯体(3d)を用いて反応を行った。
【0041】
代表例として、実験例41について説明する。モリブデン錯体(3d)(0.025μmol)及びSmI2(thf)2(固体結晶、1.44mmol、モリブデンに対して57600当量)のTHF溶液(2mL)に対して、1気圧の窒素雰囲気下、室温にて水(1.44mmol,モリブデンに対して57600当量)のTHF溶液(1mL)を加えた後に22時間室温にて攪拌した。その後、気相をガスクロマトグラフィー(GC)により分析し、水素の定量を行ったところ、触媒(モリブデン錯体)当り4700当量の水素が生成した。水酸化カリウム水溶液(30質量%,5mL)を加え、減圧条件で蒸留し、蒸留液を硫酸水溶液(0.5M,10mL)で回収した。硫酸水溶液中のアンモニア量はインドフェノール法(Analytical Chemstry, 1967, vol. 39, pp971-974)により決定した。その結果、触媒(モリブデン錯体)当たり16000当量のアンモニアが生成した。実験例39,40では、モリブデン錯体(3d)の代わりにモリブデン錯体(3a),(3c)を用いた以外は、実験例41と同様にして反応を行った。結果を表4に示す。表4から、触媒活性は、モリブデン錯体(3a)に比べてモリブデン錯体(3c),(3d)の方が高く、モリブデン錯体(3c)に比べてモリブデン錯体(3d)の方が高いことがわかった。
【0042】
【表4】
【0043】
ここで、実験例41で用いたモリブデン錯体(3d)の合成手順を、下記のスキームを参照しつつ以下に説明する。
【化8】
【0044】
・化合物1の合成
化合物1の合成を以下に示す。ジ−tert−ブチルホスフィン(2.25g、14.9mmol)及びパラホルムアルデヒド(450mg、15.0mmol)を、窒素雰囲気下60℃で16時間攪拌した。その後、ジクロロエタンを150mL、1,2−ジアミノ−4−トリフルオロメチルベンゼン(1.06g、6.02mmol)を加えて、窒素雰囲気下60℃で24時間攪拌した。その後、セレン(1.26g、16.0mmol)を加えて、窒素雰囲気下室温で24時間攪拌した。反応物を濃縮し、得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:ヘキサン=1/1)により分離した。回収したフラクションを濃縮し、真空下乾固することで化合物1を白色個体として2.48g(3.81mmol、63%収率)で単離した。1H NNR(CDCl3):δ7.08(d、J=8.4Hz、1H)、6.81(s、1H)、6.66(d、J=8.4Hz、1H)、5.01−4.99(m、1H)、4.81−4.77(m、1H)、3.39−3.33(m、4H)、1.45(d、J=15.2Hz,18H)、1.43(d、J=15.2Hz,18H)、31P NMR(CDCl3):δ79.9(s)、79.6(s)。
【0045】
・化合物2の合成
化合物2の合成を以下に示す。化合物1(2.48g、3.81mmol)、オルトギ酸トリエチル(10mL)、ヘキサフルオロリン酸アンモニウム(629mg、3.86mmol)を空気下、120℃で3時間攪拌した。その後、濃縮しCH2Cl2/Et2O混合溶液(4mL/8mL×2)、Et2O(10mL×1)で洗浄した。真空下で乾燥することで、化合物2を白色固体として2.58g(3.20mmol、84%収率)で単離した。1H NNR(CDCl3):δ10.13(s、1H)、8.16(s、1H)、8.11(d、J=8.4Hz、1H)、7.89(d、J=8.4Hz、1H)、5.08−5.04(m、4H)、1.48(d、J=16.0Hz,18H)、1.47(d、J=16.4Hz,18H)、31P NMR(CDCl3):δ81.7(s)、80.7(s)、−135.1〜 −152.7(m) 。
【0046】
・化合物3の合成
化合物3の合成を以下に示す。化合物3(2.58g、3.20mmol)、トリス(ジメチルアミノ)ホスフィン(1.5mL)をジクロロメタン(40mL)中、窒素雰囲気下室温で4時間攪拌した。その後、濃縮しトルエン(7mL×3)で洗浄し、真空下乾燥することで、化合物3を白色固体として1.66g(2.56mmol、80%収率)で単離した。1H NNR(CDCl3):δ9.81(s、1H)、8.27(s、1H)、8.15(d、J=8.4Hz、1H)、7.88(d、J=8.4Hz、1H)、4.72−4.70(m、4H)、1.23(d、J=12.0Hz,18H)、1.21(d、J=12.0Hz,18H)、31P NMR(CDCl3):δ25.9(s)、25.1(s)、−139.4〜 −152.6(m) 。
【0047】
・モリブデン錯体(3d)の合成
モリブデン錯体(3d)の合成を以下に示す。化合物3(1.30g、2.00mmol)、カリウムビス(トリメチルシリル)アミド(561mg、2.81mmol)をトルエン(45mL)中、アルゴン雰囲気下室温で1時間攪拌した。その後、セライトを用いて濾過した後に、MoCl3(thf)3(756mg、1.81mmol)を加えて、80℃で26時間攪拌した。反応溶液を5mLまで濃縮して、ろ紙を用いて濾過して真空下乾固した。得られた固体をトルエン(5mL×2)で洗浄した後、CH2Cl2(20mL)に溶解してセライトを用いて濾過をした。ろ液にゆっくりとヘキサン(30mL)を加えて5日間静置することで茶色結晶が生成した。上澄み液を取り除き、ヘキサン(5mL×3)で洗浄し、真空下で乾燥することでモリブデン錯体(3d)を茶色結晶として381mg(0.54mmol、30%収率)で単離した。Anal. Calcd. for C2643232Cl3Mo・1/2CH2Cl2:C,42.59;H,5.93;N,3.75 Found:C,42.79;H,5.74;N,3.91。
【0048】
実験例40で用いたモリブデン錯体(3c)は、モリブデン錯体(3d)の合成スキームにおいて、1,2−ジアミノ−4−トリフルオロメチルベンゼンの代わりに、1,2−ジアミノ−4,5−ジフルオロベンゼンを用いることにより合成することができる。
【0049】
[実験例42]
実験例42では、アンモニアの生成をスケールアップして行った。1000mLの4つ口フラスコ中でモリブデン錯体(3a)(0.100mmol、63.8mg)及びSmI2(thf)2(固体結晶、36.0mmol、19.7g、モリブデンに対して360当量)のTHF溶液(270mL)に対して、窒素気流下、室温にて水(36.0mmol、モリブデンに対して360当量)のTHF溶液(20mL)を、メカニカルスターラー(220rpm)で攪拌しながら加えた後、8分間室温にて攪拌した。反応溶液をエバポレーターにて濃縮乾固した。得られた固体に、水酸化カリウム水溶液(30質量%,20mL)を加え、減圧条件で蒸留し、蒸留液を96%濃硫酸(5.04mmol、515mg)の水溶液(約10mL)で回収した。回収した水溶液をエバポレーターにて濃縮し、真空下終夜乾燥した。その結果、(NH42SO4の白色固体を668mg(5.06mmol、84%収率)で得た。これは、触媒(モリブデン錯体)当たり101当量のアンモニア生成に相当する。Anal. Calcd. forH824S:H,6.10;N,21.20 Found:H,6.06;N,20.98。
【0050】
なお、実験例1−19,22−42が本発明の実施例に相当し、実験例20,21が比較例に相当する。
【0051】
本出願は、2018年3月1日に出願された日本国特許出願第2018−36967号及び2018年8月27日に出願された日本国特許出願第2018−158595号を優先権主張の基礎としており、引用によりその内容の全てが本明細書に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、アンモニアの製造に利用可能である。
【国際調査報告】