特表-19182039IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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  • 再表WO2019182039-希土類磁石 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2019年9月26日
【発行日】2021年5月13日
(54)【発明の名称】希土類磁石
(51)【国際特許分類】
   H01F 1/055 20060101AFI20210416BHJP
   C22C 38/00 20060101ALN20210416BHJP
   B22F 3/00 20210101ALN20210416BHJP
   B22F 9/04 20060101ALN20210416BHJP
【FI】
   H01F1/055 170
   C22C38/00 303D
   B22F3/00 F
   B22F9/04 C
   B22F9/04 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】18
【出願番号】特願2020-507886(P2020-507886)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2019年3月20日
(31)【優先権主張番号】特願2018-56831(P2018-56831)
(32)【優先日】2018年3月23日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】福地 英一郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 将志
【テーマコード(参考)】
4K017
4K018
5E040
【Fターム(参考)】
4K017AA04
4K017BA06
4K017BB01
4K017BB02
4K017BB05
4K017BB12
4K017BB13
4K017BB16
4K017CA07
4K017DA02
4K017EA03
4K018AA27
4K018BA18
4K018BB04
4K018BD01
4K018CA02
4K018DA29
4K018DA31
4K018FA08
4K018KA45
5E040AA03
5E040AA06
5E040AA19
5E040CA01
5E040NN01
(57)【要約】
【課題】NdFe17型結晶構造の化合物を主相とする希土類磁石であって、通常の焼結方法で焼成した場合でも焼結密度が高く、残留磁束密度Brおよび保磁力HcJが高い特性を持つ希土類磁石を得る。
【解決手段】
R,TおよびMを含む希土類磁石である。RはSmを必須とする1種以上の希土類元素である。TはFe単独またはFeおよびCoである。MはCu,Zn,Al,Ga,Ag,Au,Si,GeおよびSnからなる群から選択される少なくとも1種である。NdFe17型結晶構造を有する結晶粒子からなる主相、および、主相以外の相である副相からなる。副相の少なくとも一部がMを含み、副相におけるMの平均含有割合が5at%以上30at%以下である。希土類磁石の任意の切断面における副相の総面積割合が3%以上25%以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
R,TおよびMを含む希土類磁石であって、
RはSmを必須とする1種以上の希土類元素、TはFe単独またはFeおよびCo、MはCu,Zn,Al,Ga,Ag,Au,Si,GeおよびSnからなる群から選択される少なくとも1種であり、
NdFe17型結晶構造を有する結晶粒子からなる主相、および、前記主相以外の相である副相からなり、
前記副相の少なくとも一部がMを含み、
前記副相におけるMの平均含有割合が5at%以上30at%以下であり、
前記希土類磁石の任意の切断面における前記副相の総面積割合が3%以上25%以下であることを特徴とする希土類磁石。
【請求項2】
さらにCを含み、前記希土類磁石全体に対するCの含有割合が0at%超15at%以下である請求項1に記載の希土類磁石。
【請求項3】
RとしてさらにPrおよび/またはNdを含み、
R全体に対するSmの含有割合が50at%以上99at%以下であり、PrおよびNdの合計含有割合が1at%以上50at%以下である請求項1または2に記載の希土類磁石。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、希土類磁石に関する。
【背景技術】
【0002】
希土類磁石はその高磁気特性から年々生産量を伸ばしており、各種モータ用、各種アクチュエータ用、MRI装置用など様々な用途に使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載のSmFe17金属間化合物を主相とする磁石材料は、室温で36.8kOeという非常に高い保磁力を得ている。したがって、有望な磁石材料であると考えられる。
【0004】
しかしながら、SmFe17金属間化合物を主相とする磁石材料は、粒界相の制御技術が確立されていない。そして、SmFe17金属間化合物を主相とする磁石材料の高い保磁力を活かした磁石はいまだに実現されていない。
【0005】
非特許文献1では、放電プラズマ焼結法(SPS法)を用いた焼結磁石が報告されている。SPS法では通常の焼結法と比較して低温で焼結される。また、焼結時に加圧が必要である。しかし、非特許文献1に記載の焼結磁石は焼結体として密度が低い。また、副相として軟磁性相が存在している。さらに、一般的にはSPS法を用いる場合には通常の焼結法を用いる場合と比較して磁気特性が低下してしまう。以上より、非特許文献1に記載の焼結磁石は、焼結前の段階で期待されるほどの磁気特性が得られていない。さらに、SPS法そのものが比較的量産に適さない焼結方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−133496号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Materials Science and Engineering 1(2009)012032
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、NdFe17型結晶構造の化合物を主相とする希土類磁石であって、通常の焼結方法で焼成した場合でも焼結密度が高く、残留磁束密度Brおよび保磁力HcJが高い特性を持つ希土類磁石を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、R,TおよびMを含む希土類磁石であって、
RはSmを必須とする1種以上の希土類元素、TはFe単独またはFeおよびCo、MはCu,Zn,Al,Ga,Ag,Au,Si,GeおよびSnからなる群から選択される少なくとも1種であり、
NdFe17型結晶構造を有する結晶粒子からなる主相、および、前記主相以外の相である副相からなり、
前記副相の少なくとも一部がMを含み、
前記副相におけるMの平均含有割合が5at%以上30at%以下であり、
前記希土類磁石の任意の切断面における前記副相の総面積割合が3%以上25%以下であることを特徴とする。
【0010】
本発明の希土類磁石は上記の特徴を有するため、通常の焼結方法でも高い焼結密度が得られる。また、残留磁束密度Brおよび保磁力HcJも高くなる。すなわち、磁気特性が改善される。
【0011】
本発明の希土類磁石は、さらにCを含んでもよく、希土類磁石全体に対するCの含有割合が0at%超15at%以下であってもよい。
【0012】
本発明の希土類磁石は、RとしてさらにPrおよび/またはNdを含んでもよく、
R全体に対するSmの含有割合が50at%以上99at%以下であってもよく、PrおよびNdの合計含有割合が1at%以上50at%以下であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例3の反射電子像である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0015】
本実施形態に係る希土類磁石1は、NdFe17型結晶構造(空間群P6/mcm)を有する結晶粒子を主相11とする。そして、主相11以外の相を副相13とする。以下の記載では、NdFe17型結晶構造を有する結晶粒子からなる相をR17結晶相と記載する。
【0016】
副相13の構造は任意である。例えば、R17結晶相以外のR−T結晶相を含んでもよい。R−T結晶相としては、例えば、RT結晶相、RT結晶相、R結晶相、RT結晶相、RT結晶相、R17結晶相、RT12結晶相などが挙げられる。副相13には非晶質相が含まれても良い。ただし、R17結晶相やRT結晶相など、軟磁性もしくは保磁力の低いR−T結晶相は少ないことが好ましい。また、本実施形態に係る希土類磁石1がどのような結晶を含むかについては、X線回折法(XRD)や元素分析機能が付いた走査型電子顕微鏡(SEM)などを用いて確認することができる。
【0017】
ここで、本実施形態に係る希土類磁石1がMを含むことで、副相13にRおよびMを含む化合物が生じる。以下、RおよびMを含む化合物からなる相をR−M相とする。なお、R−M相にはさらにTを含んでもよい。R−M相におけるRの含有割合には特に限定はないが、例えば24at%以上である。R−M相を構成するRおよびMを含む化合物は融点が低く、焼結により粒界相となりやすい。言いかえれば、Mが粒界相に拡散してRおよびMを含む化合物が生じる。なお、本実施形態での粒界相とは、複数のR17結晶相の結晶粒子間に存在する副相のことである。
【0018】
R−M相が生じることで、R17結晶相やRT結晶相など、R17結晶相以外のR−T結晶相が析出しにくくなる。そして、均一な粒界相を形成しやすくなる。
【0019】
この結果、従来よりも高温で焼結することが可能となり、加圧なしでも十分な焼結密度を有する希土類磁石1を得ることができる。さらに、十分な焼結密度を有することで得られる希土類磁石1の残留磁束密度Brおよび保磁力HcJを向上させることができる。
【0020】
希土類磁石1において主相11と副相13とを区別する方法には特に制限はないが、例えばSEMを用いて反射電子像を得て、各相におけるコントラストの違いから目視により区別することが出来る。反射電子像の具体例を図1に示す。なお、図1は後述する実施例3の試料の切断面をイオンミリングにより鏡面加工した後にSEMを用いて得られた反射電子像である。
【0021】
また、エネルギー分散型X線分光器(EDS)のついたSEM(いわゆるSEM−EDS)を用いることが好ましい。EDSを用いて元素マッピングを行い、後述するRとTの比率が概ね5:17である相が主相11であり、空孔を除くそれ以外の相が副相13であると判断できる。反射電子像と元素マッピング画像とを組み合わせることで、より正確に主相11と副相13とを区別することができる。さらに、透過電子顕微鏡(TEM)を用いたエネルギー分散型X線分光法(TEM−EDS)や電子回折法を併用することで、微小領域の結晶組織や非晶質相の区別が可能である。
【0022】
本実施形態に係る希土類磁石1は、副相13の少なくとも一部がMを含み、副相13におけるMの平均含有割合が5at%以上30at%以下であり、任意の切断面における副相13の総面積割合が3%以上25%以下である。
【0023】
Mの平均含有割合は50μm×50μm以上の大きさの測定範囲においてSEM−EDSを用いて測定範囲内の全ての副相13におけるMの含有割合を測定して平均することにより算出する。なお、測定範囲については単独で50μm×50μm以上の大きさの測定範囲となるようにしてもよく、複数の測定範囲の合計が50μm×50μm以上の大きさとなるようにしてもよい。
【0024】
副相13におけるMの平均含有割合を5at%以上30at%以下とすることで希土類磁石1が緻密化しやすくなり密度が高くなりやすくなる。そして、R17結晶相やRT相など、R17結晶相以外のR−T結晶相の生成が抑制される。その結果、残留磁束密度Brおよび保磁力HcJが向上しやすくなる。
【0025】
副相13におけるMの平均含有割合が小さすぎる場合には希土類磁石1が緻密化しにくくなり焼結密度が低下しやすくなる。また、R17結晶相やRT結晶相など、R17結晶相以外のR−T結晶相の生成が十分に抑制されなくなる。その結果、粒界相の組成が不均一になりやすくなる。さらに、残留磁束密度Brおよび保磁力HcJが低下しやすくなる。副相13におけるMの平均含有割合が大きすぎる場合には希土類磁石1が緻密化しにくくなり焼結密度が低下しやすくなる。また、粒界相におけるMの分布が不均一になるため、残留磁束密度Brおよび保磁力HcJが低下しやすくなる。
【0026】
副相13の総面積割合は50μm×50μm以上の大きさの測定範囲においてSEM−EDSを用いて測定範囲内の全ての副相13の合計面積を算出し、測定範囲の面積で割ることにより算出する。なお、測定範囲については単独で50μm×50μm以上の大きさの測定範囲となるようにしてもよく、複数の測定範囲の合計が50μm×50μm以上の大きさとなるようにしてもよい。
【0027】
副相13の総面積割合を3%以上25%以下とすることで希土類磁石1が緻密化しやすくなり密度が高くなりやすくなる。そして、R17結晶相やRT結晶相など、R17結晶相以外のR−T結晶相の生成が抑制される。その結果、残留磁束密度Brおよび保磁力HcJが向上しやすくなる。
【0028】
副相13の総面積割合が小さすぎる場合には希土類磁石1が緻密化しにくくなり焼結密度が低下しやすくなる。また、R17結晶相やRT相など、R17結晶相以外のR−T相の生成が十分に抑制されなくなる。その結果、粒界相の組成が不均一になりやすくなる。さらに、残留磁束密度Brおよび保磁力HcJが低下しやすくなる。副相13の総面積割合が大きすぎる場合には、希土類磁石1における主相11の総面積割合が小さくなりすぎる。その結果、残留磁束密度Brが低下しやすくなる。
【0029】
本実施形態に係る希土類磁石1は、R,TおよびMを含む希土類磁石である。RはSmを必須とする1種以上の希土類元素、TはFe単独、またはFeおよびCo、MはCu,Zn,Al,Ga,Ag,Au,Si,GeおよびSnからなる群から選択される少なくとも1種である。MはCu,Zn,Al,Ga,AgおよびAuからなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。
【0030】
希土類磁石1におけるRの含有割合は任意であるが、15at%以上35at%以下であってもよく、24.2at%以上30.6at%以下であることが好ましい。Rの含有割合が小さすぎても大きすぎてもR17結晶相が十分に形成されにくくなる。
【0031】
希土類磁石1におけるTの含有割合は任意である。また、T全体に対するCoの含有割合は任意であるが、0at%以上20at%以下としてもよい。Coの含有割合が小さいほど高保磁力となる傾向にある。また、Coの含有割合が大きいほど高磁束密度となる傾向にある。
【0032】
希土類磁石1におけるMの含有割合は任意であるが、0.2at%以上10at%以下であってもよく、0.3at%以上4.2at%であることが好ましい。希土類磁石1におけるMの含有割合が小さすぎると副相13にRおよびMを含む化合物(R−M相)が十分に形成されにくくなる。そして、後述する副相13におけるMの平均含有割合が小さくなりすぎる。Mの含有割合が大きすぎると副相13におけるMの平均含有割合が大きくなりすぎる。または、副相13の総面積割合が大きくなりすぎる。
【0033】
また、本実施形態に係る希土類磁石1はさらにCを含んでもよい。そして、希土類磁石1全体に対するCの含有割合が0at%超15at%以下であることが好ましく、1.0at%以上7.5at%以下であることがさらに好ましい。
【0034】
本実施形態に係る希土類磁石1はCを含むことで保磁力HcJが向上する傾向にある。保磁力HcJが向上する理由は不明であるが、希土類磁石1がCを含むことで、副相13の粒界相にRおよびCを含む化合物が形成されやすくなると本発明者らは考えている。以下、RおよびCを含む化合物からなる相をR−Cリッチ相とする。なお、R−Cリッチ相にはMおよび/またはTが含まれていてもよい。そして、R−Cリッチ相が非磁性相であり磁気分離効果が高いため、希土類磁石1の保磁力HcJが向上すると本発明者らは考えている。
【0035】
本実施形態に係る希土類磁石1について、Rに占めるSmの割合は多い方が好ましく、希土類磁石全体におけるR全体に対するSmの含有割合は50at%以上であることが好ましい。
【0036】
また、RとしてPrあるいはNdの1つ以上を含有する場合には、PrあるいはNdの有効磁気モーメントがSmよりも大きいため、残留磁束密度が向上する傾向がある。さらに、PrあるいはNdを含有する場合には、副相13の中でもR17結晶相やRT結晶相などの低保磁力成分の生成を抑制する効果が得られる。ただし、Rに占めるPrおよびNdの合計含有割合が大きすぎると保磁力HcJが低下しやすくなる。
【0037】
したがって、R全体に対するSmの含有割合が50at%以上99at%以下であることが好ましく、PrおよびNdの合計含有割合が1at%以上50at%以下であることが好ましい。また、RとしてSm、PrおよびNd以外の希土類元素を磁気特性に大きな影響を与えない範囲で含有してもよい。Sm,PrおよびNd以外の希土類元素の含有量は、例えばR全体に対して5at%以下である。
【0038】
本実施形態に係る希土類磁石1においては、上記した元素以外の他の元素を含有してもよい。例えば、Bi,Ti,V,Cr,Mn,Zr,Nd,Mo,Mg等の元素を適宜含有させることができる。また、原料に由来する不純物を含んでもよい。上記した元素以外の他の元素の含有量は任意であるが、希土類磁石1全体に対して例えば3%以下である。
【0039】
なお、本実施形態に係る希土類磁石1全体の組成比の分析にはICP質量分析法が用いられる。また、必要に応じて酸素気流中燃焼−赤外線吸収法を併用してもよい。
【0040】
以下、本実施形態に係る希土類磁石1の製造方法の好適な例について説明する。
【0041】
希土類磁石1は、鋳造法、ストリップキャスト法、超急冷凝固法、蒸着法、HDDR法、焼結法、熱間加工法などを適宜組み合わせて製造することができるが、超急冷凝固法と焼結法を用いた製造方法の一例について説明する。
【0042】
超急冷凝固法には、具体的には、単ロール法、双ロール法、遠心急冷法、ガスアトマイズ法等の種類が存在するが、単ロール法を用いることが好ましい。単ロール法では、合金溶湯をノズルから吐出して冷却ロール周面に衝突させることにより、合金溶湯を急速に冷却し、薄帯状または薄片状の急冷合金を得る。単ロール法は、他の超急冷凝固法に比べ、量産性が高く、急冷条件の再現性が良好である。
【0043】
原料として、まず、所望の組成比を有する合金インゴットを準備する。原料合金は、R,TおよびMなどを含む原料金属を不活性ガス、好ましくはAr雰囲気中でアーク溶解等の溶解法により溶解させることで作製することができる。C、またはその他の元素を適宜含有させたい場合も同様にして含有させることができる。
【0044】
上記方法で作製された合金インゴットから、超急冷凝固法により、急冷薄帯を作製する。超急冷凝固法としては、例えば上記の合金インゴットをスタンプミルなどにより小片化して小片を得て、得られた小片をAr雰囲気中で高周波溶解して溶湯を得て、得られた溶湯を高速で回転している冷却ロール上に吐出して急冷凝固させるメルトスピン法を用いることができる。冷却ロールで急冷された溶湯は、薄帯状に急冷凝固された急冷薄帯になる。
【0045】
なお、小片化する方法はスタンプミルに限定されない。高周波溶解時の雰囲気はAr雰囲気に限定されない。冷却ロールの回転速度は任意である。例えば10m/s以上100m/s以下としてもよい。冷却ロールの材質は任意であり、例えば冷却ロールとして銅ロールを用いてもよい。
【0046】
次に、得られた急冷薄帯を粉砕して粒径数μm程度の微粉末を得る。粉砕は粗粉砕および微粉砕の2段階で行ってもよく、微粉砕のみの1段階で行ってもよい。
【0047】
次に、得られた微粉末を所定の形状に成形して成形体を得る。成形時の圧力は任意である。例えば10MPa以上1000MPa以下である。
【0048】
次に、得られた成形体を焼結し、同時に結晶化を行うことで希土類磁石1を得ることができる。焼結は通常の焼結方法により行う。通常の焼結方法とは、焼結時に加圧を行わない焼結方法のことであり、一般的にはSPS法などと比べて高い焼結温度を必要とする。本実施形態に係る希土類磁石1は、焼結中に異相の一部が低融点の液相成分となることで、無加圧で、かつ従来よりも低い焼結温度で焼結することができる。焼結温度(結晶化温度)は具体的には500℃以上とすることができる。また、750℃以下であってもよい。焼結時の雰囲気は任意である。例えばAr雰囲気とすることができる。焼結時間(結晶化時間)は任意である。例えば10分以上10時間以下とすることができる。焼結後の冷却速度は任意である。例えば0.01℃/s以上30℃/s以下とすることができる。
【0049】
また、希土類磁石1の異相中のMの分布を向上させ、均一な粒界相を形成するために、焼結工程後の熱処理が有効である。この熱処理は500℃以上650℃以下の熱処理温度に10℃/s以上30℃/s以下の速度で昇温し、次いで10分間以上300分間以下、前記熱処理温度にキープされることにより行われる。通常、これらの処理はAr雰囲気で行う。
【0050】
また、1合金法を用いる場合にR、TおよびMを含む急冷薄帯を粉砕前に結晶化してもよい。この場合の結晶化処理条件は任意である。例えば結晶化温度を500℃以上700℃以下、結晶化時間を1分以上50時間以下、結晶化後の冷却速度を0.01℃/s以上30℃/s以下とすることができる。
【0051】
また、上記の結晶化処理を行うことでRおよびTからなる合金がR17結晶相の単磁区粒子となっている場合には、磁場中成形を行うことで異方性磁石とすることも可能である。
【0052】
以上、本実施形態に係る希土類磁石1の製造方法の一例について説明したが、希土類磁石1の製造方法は任意である。
【0053】
例えば、上記の製造方法では1種類の急冷薄帯を用いる1合金法を用いているが、2種類の急冷薄帯を用いる2合金法を用いてもよい。また3種類以上の急冷薄帯を用いてもよい。
【0054】
具体的には、例えばRおよびTからなる急冷薄帯、および、RおよびMからなる急冷薄帯を準備する。そして、各急冷薄帯の粉砕中または粉砕後に混合させることができる。2合金法による場合には、前記RおよびTからなる急冷薄帯が主に主相11となり、前記RおよびMからなる急冷薄帯が主に副相13となる。主に副相13となる前記RおよびMからなる急冷薄帯にTを含有させ、R、TおよびMからなる急冷薄帯としてもよい。また、R、TおよびMの含有率が互いに異なる2種類以上の急冷薄帯を用いてもよい。なお、この場合には、全ての急冷薄帯がR、TおよびMを全て含有しなくてもよい。全ての急冷薄帯がR、TおよびMから選択される1つ以上を含有していればよい。そして、各急冷薄帯の混合比を制御することによっても副相13の総面積割合などを制御することができる。少量であれば、急冷薄帯の代わりに単体の金属からなる粉末を用いてもよい。
【0055】
また、2合金法を用いる場合には、RおよびTからなる急冷薄帯のみを粉砕前に結晶化処理してもよい。特に、R:Tが5:17に近い急冷薄帯を結晶化処理することでR17結晶相を安定的に生成させることができる。この場合の結晶化処理条件は任意である。例えば結晶化温度を500℃以上700℃以下、結晶化時間を1分以上50時間以下、結晶化後の冷却速度を0.01℃/s以上30℃/s以下とすることができる。なお、RおよびTからなる急冷薄帯を2種類以上用いる場合には、R:Tが5:17に近い急冷薄帯のみを結晶化処理してもよい。
【0056】
また、上記の結晶化処理を行うことでRおよびTからなる合金がR17結晶相の単磁区粒子となっている場合には、磁場中成形を行うことで異方性磁石とすることも可能である。
【実施例】
【0057】
以下、本発明の内容を実施例及び比較例を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0058】
(実験例1)
まず、Sm,Pr,Nd,Fe,Cu,Zn,Al,Ga,Ag,Au,Si,Ge,Snおよび/またはCの単体または合金からなる原料を準備した。得られる磁石が下表1の組成となるように各原料を配合し、Ar雰囲気中、アーク溶解することで合金インゴットを作製した。次にスタンプミルを用いて当該合金インゴットを小片化して小片を得た。次に当該小片を50kPaのAr雰囲気で高周波溶解して溶湯を得た。次に当該溶湯から単ロール法にて急冷薄帯を得た。具体的には、当該溶湯を周速50m/sで回転させた冷却ロール(銅ロール)に吐出して急冷薄帯を得た。次に当該急冷薄帯を粗粉砕および微粉砕して平均粒径5μm程度の微粉末を得た。粗粉砕はスタンプミルで、微粉砕はジェットミルで行った。次に当該微粉末を無磁場、100MPaで10mm×15mm×12mmの直方体形状に成形した後に、昇温速度5℃/min、焼結保持温度700℃もしくは725℃、焼結保持時間1時間で結晶化および焼結した後、室温まで急冷した。冷却後の試料は、昇温速度20℃/s、熱処理温度550℃、熱処理保持時間30分間の熱処理をおこない、希土類磁石とした。また、得られた焼結体の組成が表1に示す組成であることをICP質量分析法および必要に応じて酸素気流中燃焼−赤外線吸収法を併用して確認した。具体的には、酸素気流中燃焼−赤外線吸収法はC量の測定に用いた。
【0059】
次に、得られた各試料の主相および副相を区別し、各相の組成を分析した。具体的には、得られた各試料を切断して得られた断面をイオンミリングにより鏡面加工し、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて反射電子像を観察した。なお、SEMは、エネルギー分散型X線分光器(EDS)を備えたものを用いた。反射電子像のコントラストから各領域が主相であるか副相であるかが概ね判断できる。次に、反射電子像の画像から主相および副相を含む50μm×50μmの観察領域を決定し、EDSを用いて元素マッピングを行った。元素マッピングのデータから、RとTの比率が概ね5:17である相を主相、空孔を除くそれ以外の領域を副相と判断した。最終的には、反射電子像のコントラストおよび元素マッピングのデータを併用して主相および副相を特定した。次に、副相部分の元素マッピングデータから副相の平均組成を特定し、副相中のMの平均含有割合(at%)を特定した。また、100×(副相の合計面積)/(観察領域の面積−空孔の面積)から副相の総面積割合(%)を特定した。上記の作業を4つの50μm×50μmの観察領域について行い、その平均値を各試料における副相中のMの平均含有割合、および副相の総面積割合とした。
【0060】
また、全ての実施例および比較例がNdFe17型結晶構造を有することについてXRDを用いて確認した。そして、全ての実施例および比較例の試料についてICP質量分析法および必要に応じて酸素気流中燃焼−赤外線吸収法を併用して表1に示す組成となっていることを確認した。
【0061】
試料の磁気特性は、パルス励磁型B−Hカーブトレーサを用いて測定した。本実施例では残留磁束密度Brが3.5kGである場合を良好とした。また、保磁力HcJが30kOe以上である場合を良好とした。
【0062】
試料の相対密度(%)は、100×(各試料の寸法および質量を実際に測定して得られた寸法密度)/(SmFe17結晶相の理論密度)により得た。なお、本実験例ではSmFe17結晶相の理論密度は文献値である7.922g/cmとした。試料の相対密度が80%以上である場合を焼結密度が良好であるとした。
【0063】
【表1】
【0064】
表1より、副相の総面積割合が3〜25%であり、副相中のMの平均含有割合が5〜30at%である各実施例は相対密度が高く、磁気特性も優れていた。これに対し、Mを含まず、副相の総面積割合が低かった比較例1は相対密度が低く、磁気特性も低下した。
【0065】
(実験例2)
実験例2では、1種類の急冷薄帯を作製した実験例1とは異なり、下表2に示す組成からなる2種類の急冷薄帯を作製した。具体的には、RおよびTを含有する急冷薄帯1、および、RおよびMを含有する急冷薄帯2を作成した。急冷薄帯を作製するまでの製造方法は実験例1と同様である。
【0066】
次に、急冷薄帯1に対して結晶化処理を行った。具体的には、Ar雰囲気中、昇温速度20℃/minで650℃まで加熱し、650℃で30時間保持した後に室温まで急冷した。
【0067】
次に、各急冷薄帯に対してスタンプミルを用いて粗粉砕を行い、各急冷薄帯の粗粉末を得た。そして、ジェットミルを用いて、各粗粉末を下表2に示す合金混合比率(重量比)で混合しつつ微粉砕を行い、微粉末を得た。
【0068】
以後、実験例1と同様にして各試料の磁石を得て実験例1と同様にして評価した。結果を表2に示す。また、得られた焼結体の組成が表2に示す組成であることをICP質量分析法にて確認した。
【0069】
【表2】
【0070】
表2より、副相の総面積割合が3〜25%であり、副相中のMの平均含有割合が5〜30at%である各実施例は相対密度が高く、磁気特性も優れていた。これに対し、副相中のMの平均含有割合が小さすぎる比較例2は相対密度が低下し、残留磁束密度Brが低下した。副相中のMの平均含有割合が大きすぎる比較例3は残留磁束密度Brおよび保磁力HcJが低下した。副相の総面積割合が大きすぎる比較例4は残留磁束密度Brが低下した。
【0071】
(実験例3)
実験例3の実施例23、24では、下表3に示す組成からなる3種類の急冷薄帯を作製した。具体的には、RおよびTを含有する急冷薄帯1と、RおよびTを含有するが急冷薄帯1とは組成が異なる急冷薄帯2と、MおよびRまたはTを含有する急冷薄帯3とを作成した。急冷薄帯を作製するまでの製造方法は実験例1と同様である。なお、実験例3の実施例25では、急冷薄帯1および急冷薄帯2は実施例23、24と同様であるが、急冷薄帯3を用いず、代わりにZn単体の微粉末を用いた。
【0072】
次に、急冷薄帯1に対して結晶化処理を行った。具体的には、Ar雰囲気中、昇温速度20℃/minで650℃まで加熱し、650℃で30時間保持した後に室温まで急冷した。
【0073】
次に、各急冷薄帯に対してスタンプミルを用いて粗粉砕を行い、各急冷薄帯の粗粉末を得た。そして、ジェットミルを用いて、各粗粉末(実施例25では各粗粉末およびZn単体の微粉末)を下表3に示す合金混合比率(重量比)で混合しつつ微粉砕を行い、微粉末を得た。
【0074】
以後、実験例1と同様にして各試料の磁石を得て実験例1と同様にして評価した。結果を表3に示す。また、得られた焼結体の組成が表3に示す組成であることをICP質量分析法にて確認した。
【0075】
【表3】
【0076】
表3より、副相の総面積割合が3〜25%であり、副相中のMの平均含有割合が5〜30at%である各実施例は相対密度が高く、磁気特性も優れていた。
【符号の説明】
【0077】
1・・・希土類磁石
11・・・主相
13・・・副相



図1
【国際調査報告】