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再表2019-188867細胞内動態を改善した新規カチオン性脂質
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2019年10月3日
【発行日】2021年3月25日
(54)【発明の名称】細胞内動態を改善した新規カチオン性脂質
(51)【国際特許分類】
   C07D 211/22 20060101AFI20210226BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20210226BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20210226BHJP
【FI】
   C07D211/22CSP
   A61K48/00
   A61K47/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】54
【出願番号】特願2020-510009(P2020-510009)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2019年3月25日
(31)【優先権主張番号】特願2018-60764(P2018-60764)
(32)【優先日】2018年3月27日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人千葉大学
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】中井 悠太
(72)【発明者】
【氏名】丹下 耕太
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】玉川 晋也
(72)【発明者】
【氏名】秋田 英万
(72)【発明者】
【氏名】田中 浩揮
(72)【発明者】
【氏名】高田 奈依
(72)【発明者】
【氏名】小西 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 達成
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076DD60
4C084AA13
(57)【要約】
細胞内動態を改善したカチオン性脂質、これを含む脂質膜構造体、及びこれらの用途を提供すること。
式(1)

(式(1)中、
1a及びR1bはそれぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキレン基を表し、
及びXはそれぞれ独立して、炭素数が1〜6であり、かつ3級アミノ基の数が1の非環状のアルキル3級アミノ基、又は炭素数が2〜5であり、かつ3級アミノ基の数が1〜2の環状のアルキレン3級アミノ基を表し、
2a及びR2bはそれぞれ独立して、炭素数8以下のアルキレン基又はオキシジアルキレン基を表し、
及びYはそれぞれ独立して、エステル結合、アミド結合、カーバメート結合、エーテル結合又はウレア結合を表し、
及びZはそれぞれ独立して、炭素数が3〜16であり、少なくとも1つの芳香環を有し、かつヘテロ原子を有していてもよい芳香族化合物から誘導される2価の基を表し
3a及びR3bはそれぞれ独立して、水酸基を有する脂溶性ビタミンとコハク酸無水物又はグルタル酸無水物との反応物由来の残基、又は水酸基を有するステロール誘導体とコハク酸無水物又はグルタル酸無水物との反応物由来の残基、又は炭素数12〜22の脂肪族炭化水素基を表す。)で示されるカチオン性脂質。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
【化1】
(式(1)中、
1a及びR1bはそれぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキレン基を表し、
及びXはそれぞれ独立して、炭素数が1〜6であり、かつ3級アミノ基の数が1の非環状のアルキル3級アミノ基、又は炭素数が2〜5であり、かつ3級アミノ基の数が1〜2の環状のアルキレン3級アミノ基を表し、
2a及びR2bはそれぞれ独立して、炭素数8以下のアルキレン基又はオキシジアルキレン基を表し、
及びYはそれぞれ独立して、エステル結合、アミド結合、カーバメート結合、エーテル結合又はウレア結合を表し、
及びZはそれぞれ独立して、炭素数が3〜16であり、少なくとも1つの芳香環を有し、かつヘテロ原子を有していてもよい芳香族化合物から誘導される2価の基を表し
3a及びR3bはそれぞれ独立して、水酸基を有する脂溶性ビタミンとコハク酸無水物又はグルタル酸無水物との反応物由来の残基、又は水酸基を有するステロール誘導体とコハク酸無水物又はグルタル酸無水物との反応物由来の残基、又は炭素数12〜22の脂肪族炭化水素基を表す。)で示されるカチオン性脂質。
【請求項2】
及びZがそれぞれ独立してZ
【化2】
(式中、
sは0〜3の整数を表し、
tは0〜3の整数を表し、
uは0〜4の整数を表し、
u個のRはそれぞれ独立して置換基を表す。)
である請求項1記載のカチオン性脂質。
【請求項3】
sが0である請求項2記載のカチオン性脂質。
【請求項4】
及びXがそれぞれ独立して、炭素数が2〜5であり、かつ3級アミノ基の数が1〜2の環状のアルキレン3級アミノ基である請求項1〜3のいずれか1項に記載のカチオン性脂質。
【請求項5】
3a及びR3bがそれぞれ独立して、水酸基を有する脂溶性ビタミンとコハク酸無水物又はグルタル酸無水物との反応物由来の残基、又は炭素数12〜22の脂肪族炭化水素基である請求項1〜4のいずれか1項に記載のカチオン性脂質。
【請求項6】
3a及びR3bがそれぞれ独立して、水酸基を有する脂溶性ビタミンとコハク酸無水物又はグルタル酸無水物との反応物由来の残基である請求項5記載のカチオン性脂質。
【請求項7】
3a及びR3bがそれぞれ独立して、炭素数12〜22の脂肪族炭化水素基である請求項5記載のカチオン性脂質。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のカチオン性脂質を膜の構成脂質として含む脂質膜構造体。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のカチオン性脂質、又は請求項8記載の脂質膜構造体を含む核酸導入剤。
【請求項10】
生体外において、核酸を内封した請求項9記載の核酸導入剤と細胞とを接触させることを含む、当該核酸を当該細胞内へ導入する方法。
【請求項11】
核酸を内封した請求項9記載の核酸導入剤を、標的細胞へ送達されるように、生体へ投与することを含む、当該核酸を当該細胞内へ導入する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は細胞内動態を改善したカチオン性脂質、これを含む脂質膜構造体、及びこれらの用途に関する。
【背景技術】
【0002】
核酸治療を実用化するために、効果的で安全な核酸送達キャリアが求められている。ウイルスベクターは、発現効率のよい核酸送達キャリアであるが、安全性の観点から実用上問題がある。そのため、より安全に使用できる非ウイルス核酸送達キャリアの開発が進められており、そのなかでもカチオン性脂質を用いたキャリアは、現在最も一般的に使用されている非ウイルス核酸送達キャリアである。
【0003】
カチオン性脂質は大別してアミン部位と脂質部位から構成されており、カチオン性を示すアミン部位とポリアニオンである核酸が静電的に相互作用し、正に帯電したリポソーム又は脂質膜構造体を形成することで、細胞への取り込みを促進し、核酸を細胞内へ送達するものである。
【0004】
一般に広く用いられている公知のカチオン性脂質としてはDOTAPやDODAPが挙げられる。これらの公知のカチオン性脂質はリン脂質と組み合わせることによって、正に帯電したリポソーム又は脂質膜構造体を形成し、核酸と静電的に相互作用することで、標的細胞に核酸を送達し得る(非特許文献1)。
【0005】
一方で、カチオン性脂質を用いた脂質膜構造体が、核酸送達キャリアとして生体内で実用的な効果を発揮するためには、体内動態が良いこと、具体的には血中での安定性が高いこと、腫瘍等の標的への集積性が高いことなどの要件を満たす必要がある。この課題に対し、脂質膜構造体の表面のpKaを中性付近に調整し、PEG脂質を導入した脂質膜構造体が、静脈内注射後に長い血中寿命を示すこと、腫瘍部位に集積することが知られている。
【0006】
このように体内動態を改善したカチオン性脂質が開発されているが、一般的に外来物質を細胞内に導入するという核酸送達キャリアの性質上、少ない取り込み量で大きな効果を発揮することが望まれている。即ち、脂質膜構造体を発現ベクターの細胞内への送達キャリアとして用いた場合、細胞内に取り込まれた単位脂質膜構造体当たりの発現量を高め、細胞内での発現効率を高めることが求められている。細胞内での発現効率を高めるためには、体内動態の他に、細胞への取り込み、エンドソームからの脱出、核膜透過などの細胞内動態を改善する必要がある。さらに細胞内における転写を促進する上では、核酸をキャリアから解離させ、転写因子との結合性を高める必要があることがわかっている(非特許文献2)。
【0007】
以上のように、核酸送達キャリアとしては、体内動態だけでなく、細胞内動態を改善する必要があり、特に、細胞への取り込み、エンドソーム脱出、核酸のキャリアからの解離、を促進させることが重要となる。これらの細胞内動態の改善例については以下の報告がある。
【0008】
特許文献1には、細胞への取り込み量を増加させた例が述べられている。この文献では、細胞への取り込み量を増加させる目的でアミノ基を多く含有したカチオン性脂質が記載されている。このカチオン性脂質を含む脂質膜構造体は、細胞への取り込み量を増加させることはできるが、一方で、核酸と相互作用するアミノ基を多く有するため、細胞内においては、脂質膜構造体からの核酸の解離が抑制されることになり、核酸送達効率の改善は期待できない。
【0009】
次に、エンドソーム脱出効率を改善した例がある(非特許文献3および非特許文献4)。これらの文献では、カチオン性脂質のアミノ基周辺構造を改変し、脂質膜構造体の表面のpKaをエンドソーム脱出に好ましい値に調整している。その結果、脂質膜構造体のエンドソームからの脱出が促進され、細胞質内へ効率良く核酸を送達できることが述べられている。しかし、適切なpKaを有する脂質膜構造体のすべてが、高い核酸送達効率を示すわけではなく、また、これら文献のカチオン性脂質については、脂質膜構造体のpKaを調整できる以外の効果についての記載はない。
【0010】
また、エンドソーム脱出効率を改善する方法として、脂質膜構造体の膜融合能を向上させることも1つの手法である(非特許文献5)。この文献では、エンドソーム脱出能の指標の1つとして、膜融合能(ヘモライシス活性)を評価している。脂質膜構造体を構成するカチオン性脂質の構造を改変することで、膜融合能が変化し、エンドソーム内環境での膜融合能が、核酸送達効率に影響することが述べられている。しかし、具体的にどのような構造が膜融合能を改善させるかについての記載はない。
【0011】
さらに、細胞内での核酸の脂質膜構造体からの解離を促進させた例がある(特許文献2及び3)。これら文献では、1つまたは2つのアミン部位と1つの脂質部位からなる化合物同士を、生分解性を示すジスルフィド結合で繋いだ構造を有するカチオン性脂質について述べられている。これらの文献では、当該カチオン性脂質が血中安定性や腫瘍標的性などの体内動態を改善することができ、また、アミン部位周辺の構造を変更することで、脂質膜構造体としてのpKaを細胞内でのエンドソーム脱出に有利な値に調整でき、さらに、細胞内でジスルフィド結合が切断されることを利用し、核酸を脂質膜構造体から解離させる効果を有することが示されている。実際、公知のカチオン性脂質であるDOTAPやDODAPと比較して、高い核酸送達効率を示すことから、当該カチオン性脂質は核酸の細胞質内への送達効率の向上などの細胞内動態を改善できることが明らかとなっている。
【0012】
以上のように、細胞への取り込み、エンドソーム脱出、核酸のキャリアからの解離を促進させるなど、核酸送達キャリアの細胞内動態の改善に関する報告は複数ある。しかしながら、こうした当該分野での技術進捗にも関らず、これらカチオン性脂質を用いた脂質膜構造体によって達成される細胞への核酸送達効率は、いまだ十分に満足されるものではなく、さらなる改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2011−121966号公報
【特許文献2】US2014/0335157A1
【特許文献3】国際公開第2016/121942号
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Biomaterials 29(24―25):3477―96,2008
【非特許文献2】Molecular Therapy 13(4):786―794,2006
【非特許文献3】Molecular Therapy 24(4):788−795,2016
【非特許文献4】Angewante Chemie International Edition 51:8529−8533,2012
【非特許文献5】Proceedings of the National Academy of Science 110(32):12881−12886,2013
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の課題は、従来技術では達成し得なかった細胞内動態のさらなる改善を達成し、核酸送達キャリアとして用いることができるカチオン性脂質、当該カチオン性脂質を用いた脂質膜構造体、および当該カチオン性脂質を用いた核酸導入剤を提供することである。
また、本発明の課題は、カチオン性脂質を含む核酸導入剤を用いて核酸導入を達成する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは上記課題に鑑み鋭意検討した結果、エンドソーム脱出効率に影響する脂質膜構造体のpKaを調整でき、かつ高い膜融合能を有したカチオン性脂質を見出した。具体的には、脂質部位近傍に芳香環を導入し、これをアミン部位と結合させた化合物をジスルフィド結合で繋いだ構造を有するカチオン性脂質であり、ジスルフィド結合を有することから、細胞内でジスルフィド結合が切断され、核酸を脂質膜構造体から解離させる効果も併せ持つ。
この新規カチオン性脂質を含んだ脂質膜構造体は、エンドソーム内環境において高い膜融合能を有し、エンドソーム脱出効率が高いことから、核酸を効率良く細胞質内へ送達できることを見出した。
【0017】
即ち、本発明は、以下の内容を包含する。
[1]式(1)
【0018】
【化1】
【0019】
(式(1)中、
1a及びR1bはそれぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキレン基を表し、
及びXはそれぞれ独立して、炭素数が1〜6であり、かつ3級アミノ基の数が1の非環状のアルキル3級アミノ基、又は炭素数が2〜5であり、かつ3級アミノ基の数が1〜2の環状のアルキレン3級アミノ基を表し、
2a及びR2bはそれぞれ独立して、炭素数8以下のアルキレン基又はオキシジアルキレン基を表し、
及びYはそれぞれ独立して、エステル結合、アミド結合、カーバメート結合、エーテル結合又はウレア結合を表し、
及びZはそれぞれ独立して、炭素数が3〜16であり、少なくとも1つの芳香環を有し、かつヘテロ原子を有していてもよい芳香族化合物から誘導される2価の基を表し、
3a及びR3bはそれぞれ独立して、水酸基を有する脂溶性ビタミンとコハク酸無水物又はグルタル酸無水物との反応物由来の残基、又は水酸基を有するステロール誘導体とコハク酸無水物又はグルタル酸無水物との反応物由来の残基、又は炭素数12〜22の脂肪族炭化水素基を表す。)で示されるカチオン性脂質(本明細書中、「カチオン性脂質(1)」と略記する場合がある)。
【0020】
[2]Z及びZがそれぞれ独立してZ
【0021】
【化2】
【0022】
(式中、
sは0〜3の整数を表し、
tは0〜3の整数を表し、
uは0〜4の整数を表し
u個のRはそれぞれ独立して置換基を表す。)
である[1]記載のカチオン性脂質。
【0023】
[3]sが0である[2]記載のカチオン性脂質。
【0024】
[4]X及びXがそれぞれ独立して、炭素数が2〜5であり、かつ3級アミノ基の数が1〜2の環状のアルキレン3級アミノ基である[1]〜[3]のいずれか1に記載のカチオン性脂質。
【0025】
[5]R3a及びR3bがそれぞれ独立して、水酸基を有する脂溶性ビタミンとコハク酸無水物又はグルタル酸無水物との反応物由来の残基、又は炭素数12〜22の脂肪族炭化水素基である[1]〜[4]のいずれか1に記載のカチオン性脂質。
【0026】
[6]R3a及びR3bがそれぞれ独立して、水酸基を有する脂溶性ビタミンとコハク酸無水物又はグルタル酸無水物との反応物由来の残基である[5]記載のカチオン性脂質。
【0027】
[7]R3a及びR3bがそれぞれ独立して、炭素数12〜22の脂肪族炭化水素基である[5]記載のカチオン性脂質。
【0028】
[8][1]〜[7]のいずれか1に記載のカチオン性脂質を膜の構成脂質として含む脂質膜構造体。
【0029】
[9][1]〜[7]のいずれか1に記載のカチオン性脂質、又は[8]記載の脂質膜構造体を含む核酸導入剤。
【0030】
[10]生体外において、核酸を内封した[9]記載の核酸導入剤と細胞とを接触させることを含む、当該核酸を当該細胞内へ導入する方法。
【0031】
[11]核酸を内封した[9]記載の核酸導入剤を、標的細胞へ送達されるように、生体へ投与することを含む、当該核酸を当該細胞内へ導入する方法。
【発明の効果】
【0032】
本発明は、3級アミノ基と芳香環を有するエステル、脂質部位、そして生分解性基であるジスルフィド結合を有するカチオン性脂質、またそれを含む脂質膜構造体に関するものである。本発明のカチオン性脂質は、脂質膜構造体を形成することができ、また当該カチオン性脂質を含む核酸導入剤とすることができる。本発明のカチオン性脂質はエンドソーム脱出効率に影響する脂質膜構造体のpKaを調整でき、それに加え、エンドソーム内環境において膜融合能が高いため、エンドソーム脱出が促進される。さらに、本発明のカチオン性脂質に含まれるジスルフィド結合が、細胞内の還元的環境において切断され、内包物(核酸)の放出が促進される。そのため、本発明のカチオン性脂質を用いた核酸導入剤は、細胞質内への高い核酸送達効率を達成することができる。
【0033】
本発明のカチオン性脂質、又はそれを含む脂質膜構造体を用いて、核酸導入を行うと、血清成分による核酸の分解が抑制されるので、血清存在下での核酸導入や、生体内での核酸導入に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明のカチオン性脂質(O−Ph−P4C2)から調製されるLNPのpH7.4および5.5でのヘモライシス活性(膜融合能)を示した図である。
図2】本発明のカチオン性脂質(O−Ph−P4C2およびO−Bn−P4C2)と比較例1から調製される各種LNPのpH5.5における各種脂質濃度でのヘモライシス活性を示した図である。
図3】本発明のカチオン性脂質(O−Ph−P4C1、O−Ph−P4C2)および比較例1から調製される各種LNPのインビトロでの遺伝子発現活性を示した図である。
図4】本発明のカチオン性脂質(O−Ph−P4C2およびO−Bn−P4C2)と比較例1から調製される各種LNPのインビトロでの遺伝子発現活性を示した図である。
図5】本発明のカチオン性脂質(O−Ph−P4C2およびO−Bn−P4C2)と比較例1から調製される各種LNP、および市販の遺伝子導入試薬TransIT(登録商標)のインビボでの遺伝子発現活性を示した図である。
図6】本発明のカチオン性脂質(O―Ph―P4C2、O−Bn−P4C2)および比較例1から調製される各種LNPのインビボでのFVII遺伝子のノックダウン活性を示した図である。
図7】本発明のカチオン性脂質(O−Ph−P4C2、E−Ph−P4C2、HD−Ph−P4C2、O−Ph−amide−P4C2)、および比較例1から調製される各種LNPのpH7.4およびpH5.5でのヘモライシス活性(膜融合能)を示した図である。
図8】本発明のカチオン性脂質(O−Ph−P4C2、L−Ph−P4C2、HD−Ph−P4C2、O−Ph−amide−P4C2)と比較例1から調製される各種LNPのインビトロでの遺伝子発現活性を示した図である。
図9】本発明のカチオン性脂質(O−Ph−P4C2)から調製されるLNPおよび遺伝子導入試薬(Lipofectamine MessengerMAX)のインビトロでの遺伝子発現の総量を示した図である。
図10】本発明のカチオン性脂質(O−Ph−P4C2)から調製されるLNPおよび遺伝子導入試薬のインビトロでの細胞への遺伝子発現の均一性を示した図である。
図11】本発明のカチオン性脂質(E−Ph−P4C2)および比較例2から調製される各種LNPのインビボ(皮下)での遺伝子発現活性を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0036】
本発明は、式(1)で示されるカチオン性脂質を提供するものである。
【0037】
1a及びR1bはそれぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキレン基を表し、直鎖状であっても良く、分岐を有していても良いが、好ましくは直鎖状である。該アルキレン基の炭素数は、好ましくは1〜4であり、より好ましくは1〜2である。炭素数1〜6のアルキレン基としては、具体的にはメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、イソプロピレン基、テトラメチレン基、イソブチレン基、ペンタメチレン基、ネオペンチレン基等を挙げることができる。R1a及びR1bは、好ましくはそれぞれ独立して、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、イソプロピレン基又はテトラメチレン基であり、最も好ましくはそれぞれエチレン基である。
【0038】
1aはR1bと同一であっても異なっていてもよいが、好ましくは、R1aはR1bと同一の基である。
【0039】
及びXはそれぞれ独立して、炭素数が1〜6であり、かつ3級アミノ基の数が1の非環状のアルキル3級アミノ基、又は炭素数が2〜5であり、かつ3級アミノ基の数が1〜2の環状のアルキレン3級アミノ基を表し、好ましくはそれぞれ独立して、炭素数が2〜5であり、かつ3級アミノ基の数が1〜2の環状のアルキレン3級アミノ基である。
【0040】
炭素数が1〜6であり、かつ3級アミノ基の数が1の非環状のアルキル3級アミノ基中の炭素数1〜6のアルキル基は、直鎖状であっても分岐状であっても環状であっても良い。該アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜3である。炭素数1〜6のアルキル基としては、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、2−メチルブチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができ、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基又はイソプロピル基であり、最も好ましくはメチル基である。
【0041】
炭素数が1〜6であり、かつ3級アミノ基の数が1の非環状のアルキル3級アミノ基の好ましい具体的な構造は、Xで示される。
【0042】
【化3】
【0043】
のRは炭素数1〜6のアルキル基を表し、直鎖状であっても分岐状であっても環状であっても良い。該アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜3である。炭素数1〜6のアルキル基としては、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、2−メチルブチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができ、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基又はイソプロピル基であり、最も好ましくはメチル基である。
【0044】
炭素数が2〜5であり、かつ3級アミノ基の数が1〜2の環状のアルキレン3級アミノ基中の炭素数は、好ましくは4〜5である。炭素数が2〜5であり、かつ3級アミノ基の数が1〜2の環状のアルキレン3級アミノ基としては、具体的にはアジリジレン基、アゼチジレン基、ピロリジレン基、ピペリジレン基、イミダゾリジレン基、ピペラジレン基であり、好ましくはピロリジレン基、ピペリジレン基、ピペラジレン基であり、最も好ましくはピペリジレン基である。
【0045】
炭素数が2〜5であり、かつ3級アミノ基の数が1の環状のアルキレン3級アミノ基の好ましい具体的な構造はXで示される。
【0046】
【化4】
【0047】
のpは1又は2である。pが1のときXはピロリジレン基であり、pが2のときXはピペリジレン基である。
【0048】
炭素数が2〜5であり、かつ3級アミノ基の数が2の環状のアルキレン3級アミノ基の好ましい具体的な構造はXで示される。
【0049】
【化5】
【0050】
のwは1又は2である。wが1のときXはイミダゾリジレン基であり、wが2のときXはピペラジレン基である。
【0051】
はXと同一であっても異なっていてもよいが、好ましくは、XはXと同一の基である。
【0052】
2a及びR2bはそれぞれ独立して、炭素数8以下のアルキレン基又はオキシジアルキレン基を表し、好ましくはそれぞれ独立して、炭素数8以下のアルキレン基である。
【0053】
炭素数8以下のアルキレン基は、直鎖状であっても、分岐を有していても良いが、好ましくは直鎖状である。当該アルキレン基に含まれる炭素数は、好ましくは6以下であり、最も好ましくは4以下である。炭素数8以下のアルキレン基としては、具体的にはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、テトラメチレン基、イソブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基等を挙げることができ、好ましくはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基であり、最も好ましくはエチレン基である。
【0054】
炭素数8以下のオキシジアルキレン基とは、エーテル結合を介したアルキレン基(アルキレン−O−アルキレン)を示し、2つ存在するアルキレン基の炭素数の合計が8以下のものである。ここで、2つ存在するアルキレンは同一でも異なっていてもよいが、好ましくは同一である。炭素数8以下のオキシジアルキレン基としては、具体的にはオキシジメチレン基、オキシジエチレン基、オキシジプロピレン基、オキシジブチレン基等を挙げることができる。好ましくは、オキシジメチレン基、オキシジエチレン基、オキシジプロピレン基であり、最も好ましくはオキシジエチレン基である。
【0055】
2aはR2bと同一であっても異なっていても良いが、好ましくは、R2aはR2bと同一の基である。
【0056】
及びYはそれぞれ独立して、エステル結合、アミド結合、カーバメート結合、エーテル結合又はウレア結合であり、好ましくはそれぞれ独立して、エステル結合、アミド結合又はカーバメート結合であり、より好ましくはそれぞれ独立して、エステル結合又はアミド結合であり、最も好ましくはそれぞれエステル結合である。Y及びYの結合の向きは制限されないが、YおよびYがエステル結合の場合、好ましくは、−Z−CO−O−R2a−および−Z−CO−O−R2b−の構造を呈する。
【0057】
はYと同一であっても異なっていてもよいが、好ましくは、YはYと同一の基である。
【0058】
及びZはそれぞれ独立して、炭素数が3〜16であり、少なくとも1つの芳香環を有し、かつヘテロ原子を有していてもよい芳香族化合物から誘導される2価の基を表す。当該芳香族化合物に含まれる炭素数は好ましくは6〜12であり、最も好ましくは6〜7である。また、当該芳香族化合物に含まれる芳香環は、好ましくは1つである。
【0059】
炭素数3〜16の芳香族化合物に含まれる芳香環の種類として、芳香族炭化水素環については、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、芳香族ヘテロ環についてはイミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、トリアジン環、ピロール環、フランチオフェン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、ピリジン環、プリン環、プテリジン環、ベンズイミダゾール環、インドール環、ベンゾフラン環、キナゾリン環、フタラジン環、キノリン環、イソキノリン環、クマリン環、クロモン環、ベンゾジアゼピン環、フェノキサジン環、フェノチアジン環、アクリジン環等を挙げることができ、好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環であり、最も好ましくは、ベンゼン環である。
芳香環は置換基を有してもよく、その置換基としては、炭素数2〜4のアシル基、炭素数2〜4のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜4のカルバモイル基、炭素数2〜4のアシルオキシ基、炭素数2〜4のアシルアミノ基、炭素数2〜4のアルコキシカルボニルアミノ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1〜4のアルキルスルファニル基、炭素数1〜4のアルキルスルホニル基、炭素数6〜10のアリールスルホニル基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、シアノ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のウレイド基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素6〜10のアリール基、炭素数6〜10のアリールオキシ基等を挙げることができ、好ましい例としてはアセチル基、メトキシカルボニル基、メチルカルバモイル基、アセトキシ基、アセトアミド基、メトキシカルボニルアミノ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メチルスルファニル基、フェニルスルホニル基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、シアノ基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t-ブチル基、ウレイド基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、t-ブトキシ基、フェニル基およびフェノキシ基等が挙げられる。
【0060】
及びZの好ましい具体的な構造としては、Zが挙げられる。
【0061】
【化6】
【0062】
式中、sは0〜3の整数を表し、tは0〜3の整数を表し、uは0〜4の整数を表し、u個のRはそれぞれ独立して置換基を表す。
【0063】
のsは、好ましくは0〜1の整数であり、より好ましくは0である。
【0064】
のtは、好ましくは0〜2の整数であり、より好ましくは1である。
【0065】
のuは、好ましくは0〜2の整数であり、より好ましくは0〜1の整数である。
【0066】
のRは、当該カチオン性脂質の合成過程における反応を阻害しない、炭素数3〜16の芳香族化合物に含まれる芳香環(ベンゼン環)の置換基である。該置換基としては、炭素数2〜4のアシル基、炭素数2〜4のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜4のカルバモイル基、炭素数2〜4のアシルオキシ基、炭素数2〜4のアシルアミノ基、炭素数2〜4のアルコキシカルボニルアミノ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1〜4のアルキルスルファニル基、炭素数1〜4のアルキルスルホニル基、炭素数6〜10のアリールスルホニル基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、シアノ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のウレイド基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素6〜10のアリール基、炭素数6〜10のアリールオキシ基等を挙げることができ、好ましい例としてはアセチル基、メトキシカルボニル基、メチルカルバモイル基、アセトキシ基、アセトアミド基、メトキシカルボニルアミノ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メチルスルファニル基、フェニルスルホニル基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、シアノ基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t-ブチル基、ウレイド基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、t-ブトキシ基、フェニル基およびフェノキシ基等が挙げられる。Rが複数個存在する場合、各Rは同一であっても異なっていてもよい。
【0067】
はZと同一であっても異なっていてもよいが、好ましくは、ZはZと同一の基である。
【0068】
3a及びR3bはそれぞれ独立して、水酸基を有する脂溶性ビタミンとコハク酸無水物又はグルタル酸無水物との反応物由来の残基、又は水酸基を有するステロール誘導体とコハク酸無水物又はグルタル酸無水物との反応物由来の残基、又は炭素数12〜22の脂肪族炭化水素基を表し、好ましくはそれぞれ独立して、水酸基を有する脂溶性ビタミンとコハク酸無水物又はグルタル酸無水物との反応物由来の残基、又は炭素数12〜22の脂肪族炭化水素基であり、最も好ましくはそれぞれ独立して、炭素数12〜22の脂肪族炭化水素基である。
【0069】
水酸基を有する脂溶性ビタミンとしては、例えばレチノール、エルゴステロール、7−デヒドロコレステロール、カルシフェロール、コルカルシフェロール、ジヒドロエルゴカルシフェロール、ジヒドロタキステロール、トコフェロール、トコトリエノール等を挙げることができる。水酸基を有する脂溶性ビタミンは、好ましくはトコフェロールである。
【0070】
水酸基を有するステロール誘導体としては、例えばコレステロール、コレスタノール、スチグマステロール、β−シトステロール、ラノステロール、及びエルゴステロール等が挙げられ、好ましくはコレステロール、又はコレスタノールである。
【0071】
炭素数12〜22の脂肪族炭化水素基は、直鎖状であっても、分岐を有していても良い。当該脂肪族炭化水素基は、飽和であっても不飽和であっても良い。不飽和脂肪族炭化水素基の場合、当該脂肪族炭化水素基に含まれる不飽和結合の数は通常1〜6個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1〜2個である。不飽和結合には炭素−炭素二重結合及び炭素−炭素三重結合が含まれるが、好ましくは炭素−炭素二重結合である。当該脂肪族炭化水素基に含まれる炭素数は、好ましくは13〜19であり、最も好ましくは13〜17である。脂肪族炭化水素基には、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が含まれるが、好ましくはアルキル基又はアルケニル基が含まれる。炭素数12〜22の脂肪族炭化水素基としては、具体的にはドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、ドデカジエニル基、トリデカジエニル基、テトラデカジエニル基、ペンタデカジエニル基、ヘキサデカジエニル基、ヘプタデカジエニル基、オクタデカジエニル基、ノナデカジエニル基、イコサジエニル基、ヘンイコサジエニル基、ドコサジエニル基、オクタデカトリエニル基、イコサトリエニル基、イコサテトラエニル基、イコサペンタエニル基、ドコサヘキサエニル基、イソステアリル基、1−ヘキシルヘプチル基、1−ヘキシルノニル基、1−オクチルノニル基、1−オクチルウンデシル基、1−デシルウンデシル基等を挙げることができる。炭素数12〜22の脂肪族炭化水素基は、好ましくはトリデシル基、ペンタデシル基、ヘプタデシル基、ノナデシル基、ヘプタデセニル基、ヘプタデカジエニル基、1−ヘキシルノニル基であり、特に好ましくはトリデシル基、ヘプタデシル基、ヘプタデセニル基、ヘプタデカジエニル基である。
【0072】
本発明の一態様において、R3a及びR3bで表される炭素数12〜22の脂肪族炭化水素基は脂肪酸由来である。この場合、脂肪酸由来のカルボニル炭素は式(1)中の−CO−O−に含まれる。脂肪族炭化水素基の具体例としては、脂肪酸としてリノール酸を用いた場合ではヘプタデカジエニル基となり、脂肪酸としてオレイン酸を用いた場合ではヘプタデセニル基となる。
【0073】
3aはR3bと同一であっても異なっていてもよいが、好ましくは、R3aはR3bと同一の基である。
【0074】
本発明の一態様において、R1aはR1bと同一であり、XはXと同一であり、R2aはR2bと同一であり、YはYと同一であり、ZはZと同一であり、R3aはR3bと同一である。
【0075】
本発明の式(1)で示されるカチオン性脂質の好適な例としては、以下のカチオン性脂質が挙げられる。
[カチオン性脂質(1−1)]
1a及びR1bがそれぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキレン基(例、メチレン基、エチレン基)であり;
及びXがそれぞれ独立して、炭素数が1〜6であり、かつ3級アミノ基の数が1の非環状のアルキル3級アミノ基(例、−N(CH)−)、又は炭素数が2〜5であり、かつ3級アミノ基の数が1〜2の環状のアルキレン3級アミノ基(例、ピペリジレン基)であり;
2a及びR2bがそれぞれ独立して、炭素数8以下のアルキレン基(例、メチレン基、エチレン基、プロピレン基)であり;
及びYがそれぞれ独立してエステル結合又はアミド結合であり;
及びZがそれぞれ独立して、炭素数が3〜16であり、少なくとも1つの芳香環を有し、かつヘテロ原子を有していてもよい芳香族化合物から誘導される2価の基(例、−C−CH−、−CH−C−CH−)であり;
3a及びR3bがそれぞれ独立して、水酸基を有する脂溶性ビタミン(例、トコフェロール)とコハク酸無水物又はグルタル酸無水物との反応物由来の残基、又は炭素数12〜22の脂肪族炭化水素基(例、ヘプタデセニル基、ヘプタデカジエニル基、1−ヘキシルノニル基)である;
カチオン性脂質(1)。
【0076】
[カチオン性脂質(1−2)]
1a及びR1bがそれぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキレン基(例、メチレン基、エチレン基)であり;
及びXがそれぞれ独立して、炭素数が1〜3であり、かつ3級アミノ基の数が1の非環状のアルキル3級アミノ基(例、−N(CH)−)、又は炭素数が2〜5であり、かつ3級アミノ基の数が1の環状のアルキレン3級アミノ基(例、ピペリジレン基)であり;
2a及びR2bがそれぞれ独立して、炭素数6以下のアルキレン基(例、メチレン基、エチレン基、プロピレン基)であり;
及びYがそれぞれ独立してエステル結合又はアミド結合であり;
及びZがそれぞれ独立して、炭素数が6〜12であり、1つの芳香環を有し、かつヘテロ原子を有していてもよい芳香族化合物から誘導される2価の基(例、−C−CH−、−CH−C−CH−)であり;
3a及びR3bがそれぞれ独立して、水酸基を有する脂溶性ビタミン(例、トコフェロール)とコハク酸無水物との反応物由来の残基、又は炭素数13〜19の脂肪族炭化水素基(例、ヘプタデセニル基、ヘプタデカジエニル基、1−ヘキシルノニル基)である;
カチオン性脂質(1)。
【0077】
[カチオン性脂質(1−3)]
1a及びR1bがそれぞれ独立して、炭素数1〜2のアルキレン基(例、メチレン基、エチレン基)であり;
及びXがそれぞれ独立して、X
【0078】
【化7】
【0079】
(式中、Rは炭素数1〜3のアルキル基(例、メチル基)である。)、又はX
【0080】
【化8】
【0081】
(式中、pは1又は2である。)
であり;
2a及びR2bがそれぞれ独立して、炭素数4以下のアルキレン基(例、メチレン基、エチレン基、プロピレン基)であり;
及びYがそれぞれ独立してエステル結合又はアミド結合であり;
及びZがそれぞれ独立して、Z
【0082】
【化9】
【0083】
(式中、sは0〜1の整数であり、tは0〜2の整数であり、uは0〜2の整数(好ましくは0)であり、u個のRは、それぞれ独立して置換基を表す。)
であり;
3a及びR3bがそれぞれ独立して、水酸基を有する脂溶性ビタミン(例、トコフェロール)とコハク酸無水物との反応物由来の残基、又は炭素数13〜17の脂肪族炭化水素基(例、ヘプタデセニル基、ヘプタデカジエニル基、1−ヘキシルノニル基)である;
カチオン性脂質(1)。
【0084】
本発明のカチオン性脂質(1)の具体例として、以下のO−Ph−P3C1、O−Ph−P4C1、O−Ph−P4C2、O−Bn−P4C2、E−Ph−P4C2、L−Ph−P4C2、HD−Ph−P4C2、O−Ph−amide−P4C2、O−Ph−C3Mを挙げることができる。
【0085】
【表1-1】
【0086】
【表1-2】
【0087】
次に本発明のカチオン性脂質(1)の製造方法について説明する。
【0088】
本発明のカチオン性脂質(1)は、−S−S−(ジスルフィド)結合を有している。そのため、製造方法としては、R3a−CO−O−Z−Y−R2a−X−R1a−を有するSH(チオール)化合物、及びR3b−CO−O−Z−Y−R2b−X−R1b−を有するSH(チオール)化合物を製造後、これらを酸化(カップリング)することで−S−S−結合を含む本発明のカチオン性脂質(1)を得る方法、−S−S−結合を含む化合物に、必要な部分を順次合成していき、最終的に本発明のカチオン性脂質(1)を得る方法等が挙げられる。好ましくは、後者の方法である。
【0089】
後者の方法の具体例を以下に挙げるが、製造方法はこれらに限定されない。
【0090】
出発化合物としては、−S−S−結合を含む両末端カルボン酸、両末端アミン、両末端イソシアネート、両末端アルコール、メタンスルホニル基などの脱離基を有する両末端アルコール、p−ニトロフェニルカーボネート基などの脱離基を有する両末端カーボネートなどが挙げられる。
【0091】
例えば、R1aおよびR1bが同一でRであり、XおよびXが同一でXであり、R2aおよびR2bが同一でRであり、YおよびYが同一でYであり、Z及びZが同一でZであり、かつR3aおよびR3bが同一でRであるカチオン性脂質(1)を製造する場合、以下に示す合成経路にて目的とする式(1’)のカチオン性脂質物を得ることができる。
【0092】
【化10】
【0093】
−S−S−結合を含む化合物(I)中の両末端官能基(FG)を、二級アミンと末端に1つの官能基(FG)を有する化合物(II)中の二級アミンに反応させて化合物(III)を合成する。Rを有する化合物(IV)と、水酸基と反応性官能基(FG)を有するZを含む化合物(V)中の水酸基とを反応させて化合物(VI)を合成し、最後に化合物(VI)の反応性官能基(FG)と化合物(III)の反応性官能基(FG)とを反応させることにより、−S−S−結合、R、X、R、Y、ZおよびRを含む式(1’)のカチオン性脂質を得ることができる。
【0094】
上述の製造方法のうち、化合物(III)は、特許文献2又は特許文献3に記載された方法により製造することが出来る。
【0095】
化合物(IV)と化合物(V)の反応には、触媒として炭酸カリウムや炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、4−ジメチルアミノピリジン(以下、「DMAP」と称する)などの塩基触媒を使用しても良く、p−トルエンスルホン酸やメタンスルホン酸などの酸触媒存在下、または無触媒で行ってもよい。
【0096】
また、ジシクロヘキシルカルボジイミド(以下、「DCC」と称する)、ジイソプロピルカルボジイミド(以下、「DIC」と称する)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(以下、「EDC」と称する)などの縮合剤を使用して、化合物(IV)と化合物(V)を直接反応させてもよく、または、化合物(IV)を、縮合剤を使用して無水物などに変換した後、化合物(V)と反応させてもよい。
【0097】
化合物(IV)の仕込み量は、化合物(V)に対して、通常1〜50mol当量であり、好ましくは1〜10mol当量である。
【0098】
化合物(IV)と化合物(V)との反応に使用される触媒は、反応させる化合物種によって、適宜選択してよい。
【0099】
触媒量は、化合物(V)に対して、通常0.05〜100mol当量であり、好ましくは、0.1〜20mol当量であり、より好ましくは0.1〜5mol当量である。
【0100】
化合物(IV)と化合物(V)の反応に使用する溶媒としては、反応を阻害しない溶媒であればよく、特に制限なく使用することができる。例えば水、酢酸エチル、ジクロロメタン、クロロホルム、アセトニトリル、トルエンなどが挙げられる。これらの中ではクロロホルム、トルエンが好ましい。
【0101】
反応温度は、通常0〜150℃であり、好ましくは0〜80℃であり、より好ましくは10〜50℃である。反応時間は、通常1〜48時間であり、好ましくは1〜24時間である。
【0102】
上記反応によって得られた反応物(VI)は、抽出精製、再結晶、吸着精製、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーなどの一般的な精製法によって、適宜精製することができる。
【0103】
化合物(III)と化合物(VI)とを反応させる場合には、化合物(IV)と化合物(V)の反応のように、触媒として炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、4−ジメチルアミノピリジンなどの塩基触媒を使用しても良く、p−トルエンスルホン酸やメタンスルホン酸などの酸触媒存在下、または無触媒で行ってもよい。
【0104】
また、DCC、DIC、EDCなどの縮合剤を使用して、化合物(III)と化合物(VI)とを直接反応させてもよく、または、化合物(VI)を、縮合剤を使用して無水物などに変換した後、化合物(III)と反応させてもよい。
【0105】
化合物(VI)の仕込み量は、化合物(III)に対して、通常1〜50mol当量であり、好ましくは1〜10mol当量である。
【0106】
化合物(III)と化合物(VI)との反応に使用される触媒は、反応させる化合物種によって、適宜選択してよい。
【0107】
触媒量は、化合物(III)に対して、通常0.05〜100mol当量であり、好ましくは、0.1〜20mol当量であり、より好ましくは0.1〜5mol当量である。
【0108】
化合物(III)と化合物(VI)の反応に使用する溶媒としては、反応を阻害しない溶媒であればよく、特に制限なく使用することができる。例えば水、酢酸エチル、ジクロロメタン、クロロホルム、アセトニトリル、トルエンなどが挙げられる。これらの中ではクロロホルム、トルエンが好ましい。
【0109】
反応温度は、通常0〜150℃であり、好ましくは0〜80℃であり、より好ましくは10〜50℃である。反応時間は、通常1〜48時間であり、好ましくは1〜24時間である。
【0110】
上記反応によって得られた本発明のカチオン性脂質(1)は、抽出精製、再結晶、吸着精製、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーなどの一般的な精製法によって、適宜精製することができる。
【0111】
具体的な実施例は後述する(実施例1〜9)。当業者であれば、適宜原料を選択し、本明細書の実施例の方法に準じて反応を行うことにより、所望のカチオン性脂質(1)を製造することができる。
【0112】
次に本発明の脂質膜構造体について説明する。
【0113】
本発明の脂質膜構造体とは、本発明のカチオン性脂質、即ち、上記一般式(1)で表わされるカチオン性脂質を膜の構成物質として含有するものである。ここで、本発明における「脂質膜構造体」とは、両親媒性脂質の親水基が界面の水相側に向かって配列した膜構造を有する粒子を意味する。「両親媒性脂質」とは、親水性を示す親水性基、および疎水性を示す疎水性基の両方を有する脂質のことを意味する。両親媒性脂質としては、例えば、カチオン性脂質やリン脂質等を挙げることができる。
【0114】
本発明の脂質膜構造体の形態は特に限定されないが、例えば、水系溶媒に本発明のカチオン性脂質が分散した形態として、リポソーム(例えば一枚膜リポソーム、多重層リポソームなど)、O/W型エマルション、W/O型エマルション、球状ミセル、ひも状ミセル、脂質ナノ粒子(Lipid Nano Particle、以下「LNP」と称する)または不特定の層状構造物などを挙げることができる。本発明の脂質膜構造体は、好ましくはリポソームである。本発明の別の実施態様において、本発明の脂質膜構造体は、好ましくはLNPである。
【0115】
本発明の脂質膜構造体は、本発明のカチオン性脂質に加え、それ以外のその他の構成成分をさらに含有してもよい。当該その他の構成成分としては、例えば、脂質(リン脂質(ホルファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホルファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン等)、糖脂質、ペプチド脂質、コレステロール、本発明のカチオン性脂質以外のカチオン性脂質、PEG脂質等)、界面活性剤(例えば、3−[(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]プロパンスルホネート、コール酸ナトリウム塩、オクチルグリコシド、N−D−グルコ−N−メチルアルカンアミド類等)、ポリエチレングリコール、タンパク質などが挙げられる。本発明の脂質膜構造体における当該その他の構成成分の含有量は、通常5〜95mol%であり、好ましくは10〜90mol%であり、より好ましくは、30〜80mol%である。
【0116】
本発明の脂質膜構造体に含まれる本発明のカチオン性脂質の含有量は特に限定されないが、通常は、脂質膜構造体を後述の核酸導入剤として用いた場合に、核酸を導入するために十分な量の本発明のカチオン性脂質が含まれる。例えば、総脂質の5〜100mol%、好ましくは10〜90mol%、より好ましくは20〜70mol%である。
【0117】
本発明の脂質膜構造体は、本発明のカチオン性脂質及びその他の構成成分(脂質等)を適当な溶媒または分散媒、例えば、水性溶媒やアルコール性溶媒中に分散させ、必要に応じて組織化を誘導する操作を行うことにより調製することができる。
【0118】
「組織化を誘導する操作」としては、例えば、マイクロ流路又はボルテックスを用いたエタノール希釈法、単純水和法、超音波処理、加熱、ボルテックス、エーテル注入法、フレンチ・プレス法、コール酸法、Ca2+融合法、凍結−融解法、逆相蒸発法等の自体公知の方法が挙げられるが、これらに限定されない。
【0119】
本発明のカチオン性脂質を含む脂質膜構造体に核酸を内封させ、これを細胞へ接触させることにより、生体内及び/又は生体外において該核酸を該細胞内へ導入することができる。従って、本発明は、上記本発明のカチオン性脂質又は脂質膜構造体を含む、核酸導入剤を提供するものである。
【0120】
本発明の核酸導入剤は、任意の核酸を細胞内へ導入することができる。核酸の種類としては、DNA、RNA、RNAのキメラ核酸、DNA/RNAのハイブリッド等を挙げることができるがこれらに限定されない。また、核酸は1〜3本鎖のいずれも用いることができるが、好ましくは1本鎖又は2本鎖である。核酸は、プリン又はピリミジン塩基のN−グリコシドであるその他のタイプのヌクレオチド、あるいは非ヌクレオチド骨格を有するその他のオリゴマー(例えば、市販のペプチド核酸(PNA)等)、又は特殊な結合を有するその他のオリゴマー(但し、該オリゴマーはDNAやRNA中に見出されるような塩基のペアリングや塩基の付着を許容する配置を持つヌクレオチドを含有する)などであってもよい。さらに該核酸は、例えば、公知の修飾の付加された核酸、当該分野で知られた標識のある核酸、キャップの付いた核酸、メチル化された核酸、1個以上の天然ヌクレオチドを類縁物で置換した核酸、分子内ヌクレオチド修飾された核酸、非荷電結合(例えば、メチルスルホネート、ホスホトリエステル、ホスホルアミデート、カーバメート等)を持つ核酸、電荷を有する結合又は硫黄含有結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート等)を持つ核酸、例えば蛋白質(例えば、ヌクレアーゼ、ヌクレアーゼ・インヒビター、トキシン、抗体、シグナルペプチド、ポリ−L−リジン等)や糖(例えば、モノサッカライド等)等の側鎖基を有している核酸、インターカレント化合物(例えば、アクリジン、プソラレン等)を持つ核酸、キレート化合物(例えば、金属、放射活性を持つ金属、ホウ素、酸化性の金属等)を含有する核酸、アルキル化剤を含有する核酸、修飾された結合を持つ核酸(例えば、αアノマー型の核酸等)等であってもよい。
【0121】
本発明において使用できるDNAの種類は特に制限されず、使用の目的に応じて適宜選択することができる。例えば、プラスミドDNA、cDNA、アンチセンスDNA、染色体DNA、PAC、BAC、CpGオリゴ等が挙げられ、好ましくはプラスミドDNA、cDNA、アンチセンスDNAであり、より好ましくはプラスミドDNAである。プラスミドDNA等の環状DNAは適宜制限酵素等により消化され、線形DNAとして用いることもできる。
【0122】
本発明において使用できるRNAの種類は特に制限されず、使用の目的に応じて適宜選択することができる。例えば、siRNA、miRNA、shRNA、アンチセンスRNA、メッセンジャーRNA(mRNA)、一本鎖RNAゲノム、二本鎖RNAゲノム、RNAレプリコン、トランスファーRNA、リボゾーマルRNA等が挙げられ、好ましくは、siRNA、miRNA、shRNA、mRNA、アンチセンスRNA、RNAレプリコンである。
【0123】
本発明において用いられる核酸は、当業者が通常用いる方法により精製されていることが好ましい。
【0124】
核酸を内封した本発明の核酸導入剤は、例えば疾患の予防および/又は治療を目的として、生体内(in vivo)投与することができる。従って、本発明において用いられる核酸は、ある所定の疾患に対して予防および/又は治療活性を有するもの(予防・治療用核酸)が好ましい。そのような核酸としては、例えば、いわゆる遺伝子治療に用いられる核酸などが挙げられる。
【0125】
本発明の核酸導入剤を用いて、核酸を細胞内へ導入するためには、本発明の脂質膜構造体を形成する際に、目的とする核酸を共存させることにより、該核酸を内封した本発明の脂質膜構造体を形成させる。例えば、エタノール希釈法によりリポソームを形成する場合、核酸の水溶液と、本発明の脂質膜構造体の構成成分(脂質等)のエタノール溶液とをボルテックスやマイクロ流路等で激しく混合した後で、混合物を適切な緩衝液で希釈する。単純水和法によりリポソームを形成する場合、本発明の脂質膜構造体の構成成分(脂質等)を適切な有機溶媒に溶解し、該溶液をガラス容器に入れ、減圧乾燥することにより溶媒を留去し、脂質薄膜を得る。ここへ、核酸の水溶液を加え、水和させた後に、ソニケーターで超音波処理する。本発明はこのような核酸を内封した上記脂質膜構造体をも提供するものである。
【0126】
核酸を内封した脂質膜構造体の一形態として、核酸とカチオン性脂質との間の静電的複合体を形成することによって核酸封入したLNPが挙げられる。このLNPは、核酸等を特定の細胞内に選択的に送達するためのドラッグデリバリーシステムとして用いることができ、例えば、樹状細胞への抗原遺伝子導入によるDNAワクチンや腫瘍の遺伝子治療薬や、RNA干渉を利用した標的遺伝子の発現を抑制する核酸医薬品などに有用である。
【0127】
核酸を内封した本発明の脂質膜構造体の粒子径は、特に制限は無いが、好ましくは10nm〜500nmであり、より好ましくは30nm〜300nmである。粒子径の測定は、例えばZetasizer Nano(Malvern社)などの粒度分布測定装置を用いて行うことができる。脂質膜構造体の粒子径は、脂質膜構造体の調製方法により、適宜調整することができる。
【0128】
核酸を内封した本発明の脂質膜構造体の表面電位(ゼータ電位)は、特に制限は無いが、好ましくは−15〜+15mV、さらに好ましくは−10〜+10mVである。従前の遺伝子導入においては、表面電位がプラスに荷電された粒子が主に用いられてきた。これは、負電荷を有する細胞表面のヘパリン硫酸との静電的相互作用を促進し、細胞への取り込みを促進するための方法としては有用であるが、正の表面電荷は、細胞内において送達核酸との相互作用によるキャリアからの核酸の放出の抑制や、mRNAと送達核酸との相互作用によるタンパク質の合成が抑制される可能性がある。表面電荷を上記の範囲内に調整することにより、この問題を解決し得る。表面電荷の測定は、例えばZetasizer Nanoなどのゼータ電位測定装置を用いて行うことができる。脂質膜構造体の表面電荷は、本発明のカチオン性脂質を含む脂質膜構造体の構成成分の組成により、調整することができる。
【0129】
本発明の脂質膜構造体の脂質膜表面pKa(以下、Liposomal pKaと称する)は、特に制限はないが、好ましくはpKaが5.5〜7.2であり、さらに好ましくはpKaが6.0〜6.8である。Liposomal pKaは、エンドサイトーシスで取り込まれた脂質膜構造体がエンドソーム内の弱酸性環境下において、脂質膜構造体のプロトン化の受け易さを示す指標とされている。非特許文献3や4に記載されているようにエンドソームから脱出し、核酸を砂防室内へ送達するには、Liposomal pKaをエンドソーム脱出に好ましい値とすることが重要であり、上記の範囲内に調整することにより、効率良く細胞質内へ核酸の送達を行うことができる。Liposomal pKaは、本発明のカチオン性脂質を含む脂質膜構造体の構成成分の組成により、調整することができる。
【0130】
本発明の脂質膜構造体のヘモライシス活性(膜融合能)は、特に制限はないが、好ましくは生理的pH(pH7.4)ではヘモライシス活性を有しておらず(5%未満)、エンドソーム内の弱酸性環境下(pH5.5)において活性を有している。非特許文献5に記載されているようにヘモライシスは、エンドサイトーシスで取り込まれた脂質膜構造体がエンドソームから脱出するための手段の1つである。ヘモライシス活性が高い方が効率よく核酸を細胞質内へ送達できるが、生理的pHにおいてヘモライシス活性を有する場合、血中滞留中に意図しない細胞へ核酸を送達することになり、標的指向性の低下や毒性にも繋がる。そのため、上記のようにエンドソーム内環境においてのみヘモライシス活性を有することが好ましい。ヘモライシス活性は、本発明のカチオン性脂質を含む脂質膜構造体の構成成分の組成により、調整することができる。
【0131】
核酸を内封した本発明の脂質膜構造体と細胞とを接触させることで、内封された核酸を細胞内へ導入することができる。当該「細胞」の種類は、特に限定されず、原核生物及び真核生物の細胞を用いることができるが、好ましくは真核生物である。真核生物の種類も、特に限定されず、例えば、ヒトを含む哺乳類(例えば、ヒト、サル、マウス、ラット、ハムスター、ウシ等)、鳥類(例えば、ニワトリ、ダチョウ等)、両生類(例えば、カエル等)、魚類(例えば、ゼブラフィッシュ、メダカ等)等の脊椎動物、昆虫(蚕、蛾、ショウジョウバエ等)等の無脊椎動物、植物、微生物(例えば、酵母等)等が挙げられる。より好ましくは、本発明で対象とされる細胞は、動物もしくは植物細胞、さらに好ましくは哺乳動物細胞である。当該細胞は、癌細胞を含む培養細胞株であっても、個体や組織より単離された細胞、あるいは組織もしくは組織片の細胞であってもよい。また、細胞は接着細胞であっても、非接着細胞であってもよい。
【0132】
生体外(in vitro)において核酸を内封した本発明の脂質膜構造体と細胞とを接触させる工程を以下において具体的に説明する。
【0133】
細胞は当該脂質膜構造体との接触の数日前に適当な培地に懸濁し、適切な条件で培養する。脂質膜構造体との接触時において、細胞は増殖期にあってもよいし、そうでなくてもよい。
【0134】
当該接触時の培養液は、血清含有培地であっても血清不含培地であってもよいが、培地中の血清濃度は30重量%以下が好ましく、20重量%以下であることがより好ましい。培地中に過剰な血清等の蛋白質が含まれていると、当該脂質膜構造体と細胞との接触が阻害される可能性がある。
【0135】
当該接触時の細胞密度は、特には限定されず、細胞の種類等を考慮して適宜設定することが可能であるが、通常1×10〜1×10細胞/mLの範囲である。
【0136】
このように調製された細胞に、例えば、上述の核酸が内封された本発明の脂質膜構造体の懸濁液を添加する。該懸濁液の添加量は、特に限定されず、細胞数等を考慮して適宜設定することが可能である。細胞へ接触させる際の脂質膜構造体の濃度は、目的とする核酸の細胞内への導入が達成可能な限り特には限定されないが、脂質濃度として、通常1〜100nmol/mL、好ましくは10〜50nmol/mLであり、核酸の濃度として、通常0.01〜100μg/mL、好ましくは0.1〜10μg/mLである。
【0137】
上述の懸濁液を細胞に添加した後、該細胞を培養する。培養時の温度、湿度、CO濃度等は、細胞の種類を考慮して適宜設定する。細胞が哺乳動物由来の細胞である場合は、通常、温度は約37℃、湿度は約95%、CO濃度は約5%である。また、培養時間も用いる細胞の種類等の条件を考慮して適宜設定できるが、通常0.1〜76時間の範囲であり、好ましくは0.2〜24時間の範囲であり、より好ましくは0.5〜12時間の範囲である。上記培養時間が短すぎると、核酸が十分細胞内へ導入されず、培養時間が長すぎると、細胞が弱ることがある。
【0138】
上述の培養により、核酸が細胞内へ導入されるが、好ましくは培地を新鮮な培地と交換するか、又は培地に新鮮な培地を添加して更に培養を続ける。細胞が哺乳動物由来の細胞である場合は、新鮮な培地は、血清又は栄養因子を含むことが好ましい。
【0139】
また、上述の通り、本発明の脂質膜構造体を用いることで、生体外(in vitro)のみならず、生体内(in vivo)においても核酸を細胞内へ導入することが可能である。即ち、核酸を内封した本発明の脂質膜構造体を対象へ投与することにより、該脂質膜構造体が標的細胞へ到達・接触し、生体内で該脂質膜構造体に内封された核酸が細胞内へ導入される。該脂質膜構造体を投与可能な対象としては、特に限定されず、例えば、哺乳類(例えば、ヒト、サル、マウス、ラット、ハムスター、ウシ等)、鳥類(例えば、ニワトリ、ダチョウ等)、両生類(例えば、カエル等)、魚類(例えば、ゼブラフィッシュ、メダカ等)等の脊椎動物、昆虫(例えば、蚕、蛾、ショウジョウバエ等)等の無脊椎動物、植物等を挙げることができる。本発明の脂質膜構造体の投与対象としては、好ましくはヒト又は他の哺乳動物である。
【0140】
標的細胞の種類は特に限定されず、本発明の脂質膜構造体を用いることで、種々の組織(例えば、肝臓、腎臓、膵臓、肺、脾臓、心臓、血液、筋肉、骨、脳、胃、小腸、大腸、皮膚、脂肪組組織、リンパ節、腫瘍等)中の細胞へ、核酸を導入することが可能である。
【0141】
核酸および/または核酸以外の化合物が導入された脂質膜構造体の対象(例えば、脊椎動物、無脊椎動物など)への投与方法は、標的細胞へ該脂質膜構造体が到達・接触し、該脂質膜構造体に導入された化合物を細胞内へ導入可能な方法であれば特に限定されず、導入化合物の種類、標的細胞の種類や部位等を考慮して、自体公知の投与方法(例えば、経口投与、非経口投与(例えば、静脈内投与、筋肉内投与、局所投与、経皮投与、皮下投与、腹腔内投与、スプレー等)等)を適宜選択することができる。該脂質膜構造体の投与量は、化合物の細胞内への導入を達成可能な範囲であれば、特に限定されず、投与対象の種類、投与方法、導入化合物の種類、標的細胞の種類や部位等を考慮して適宜選択することができる。
【0142】
本発明のカチオン性脂質又は脂質膜構造体を核酸導入剤として使用する場合は、常套手段に従って製剤化することができる。
【0143】
該核酸導入剤が研究用試薬として提供される場合、当該本発明の核酸導入剤は、本発明の脂質膜構造体をそのままで、あるいは例えば水もしくはそれ以外の生理学的に許容し得る液(例えば、水溶性溶媒(例えば、リンゴ酸緩衝液、等)、有機溶媒(例えば、エタノール、メタノール、DMSO、tert−ブタノールなど)もしくは水溶性溶媒と有機溶媒との混合液等)との無菌性溶液もしくは懸濁液を用いて提供され得る。本発明の核酸導入剤は適宜、自体公知の生理学的に許容し得る添加剤(例えば、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤等)を含むことが出来る。
【0144】
また、該核酸導入剤が医薬として提供される場合、当該本発明の核酸導入剤は、本発明の脂質膜構造体をそのままで用いて、あるいは医薬上許容される公知の添加剤(例えば、担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤等)とともに用い、一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和することによって、経口剤(例えば、錠剤、カプセル剤等)あるいは非経口剤(例えば注射剤、スプレー剤等)として、好ましくは非経口剤(より好ましくは、注射剤)として製造することができる。
【0145】
本発明の核酸導入剤は、成人用に加えて、小児用の製剤とすることもできる。
【0146】
本発明の核酸導入剤はキットの態様で提供することも可能である。当該キットには、本発明のカチオン性脂質又は脂質膜構造体に加えて、核酸導入の際に使用する試薬を含むことができる。一態様において、本発明の核酸導入剤(又はキット)は、ポリカチオン(例、プロタミン)を更に含む。当該態様の本発明の核酸導入剤(又はキット)を用いることにより、容易に核酸とポリカチオン(例、プロタミン)との間の静電的複合体を、本発明の脂質膜構造体に封入することができ、核酸を細胞内導入へ供することができる。
【実施例】
【0147】
以下に本発明の実施例について更に詳細に説明するが、本発明は当該実施例に何ら限定されない。
【0148】
実施例の説明において使用している略語の意味は、それぞれ以下の通りである。
siRNA:スモールインターフェリングRNA
mRNA:メッセンジャーRNA
Chol:コレステロール
DMG−PEG2k:1,2−ジミリストイル−sn−グリセロール,メトキシポリエチレングリコール(PEG MW 2000)
DSG−PEG5k:1,2−ジステアロイル−sn−グリセロール,メトキシポリエチレングリコール(PEG MW 5000)
DOPE:1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン
DOPC:1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン
PBS:リン酸緩衝生理食塩水
MES:2−モルホリノエタンスルホン酸
TNS:6−(p−トルイジノ)−2−ナフタレンスルホン酸ナトリウム
【0149】
表1に、以下の実施例及び比較例において製造したカチオン性脂質の名称と構造を示した。比較例1および2は、特許文献2の製造方法に準じて製造した。
【0150】
【表2-1】
【0151】
【表2-2】
【0152】
[実施例1]O−Ph−P3C1の合成
O−Ph−P3C1は式(2)の方法で製造したが、製造はこの方法に限定されない。
【0153】
式(2)
【0154】
【化11】
【0155】
<オレイン酸の酸無水物化>
オレイン酸(日油(株)製)70.0g(248mmol)をクロロホルム560gに室温で溶解させ、10−15℃まで冷却した。そこへ、DCC((株)大阪合成有機化学研究所製)25.1g(121mmol)をクロロホルム140gで溶解させた懸濁液を滴下により加え、10−25℃で2時間反応させた。反応溶液をろ過後、ろ液をエバポレーターにより濃縮した。得られた濃縮物をヘキサン210gに再溶解させ、不溶物をろ過により除去した。得られたろ液をエバポレーターにより濃縮し、オレイン酸無水物を64.2g得た。
【0156】
オレイン酸無水物のH−NMRスペクトル(600MHz、CDCl
δ0.86−0.90ppm(t、6H)、δ1.25−1.40ppm(m、40H)、δ1.61−1.68(m、4H)、δ1.94−2.05(m、8H)、δ2.39−2.46(t、4H)、δ5.30−5.38(m、4H)
【0157】
<4−オレオイルオキシフェニル酢酸の合成>
オレイン酸無水物43.1g(78.9mmol)および4−ヒドロキシフェニル酢酸(東京化成工業(株)製)6.00g(39.4mmol)をクロロホルム647gに溶解させた。そこへDMAP(広栄化学(株)製)1.93g(15.8mmol)を加えて、室温で9時間反応を行った。反応溶液を10%酢酸水溶液216gで2回、イオン交換水216gで2回洗浄した後、硫酸マグネシウム(関東化学(株)製)12.9gを有機層へ加え、30分間攪拌した。硫酸マグネシウムをろ過後、ろ液をエバポレーターにて濃縮した。濃縮物をヘキサン284gで再溶解し、不溶物をろ過後、アセトニトリル168gを用いた抽出を6回行った。アセトニトリル層を回収し、エバポレーターにて濃縮することで、18.1gの粗体を得た。得られた粗体14.5gをカラム精製することで、4−オレオイルオキシフェニル酢酸を3.66g得た。
【0158】
4−オレオイルオキシフェニル酢酸のH−NMRスペクトル(600MHz、CDCl
δ0.77−0.89(t、3H)、δ1.27−1.42(m、20H)、δ1.71−1.77(m、2H)、δ1.99−2.03(m、4H)、δ2.52−2.56(m、2H)、δ3.64(s、2H)、δ5.32−5.38(m、2H)、δ7.03−7.06(m、2H)、δ7.28−7.31(m、2H)
【0159】
<O−Ph−P3C1の合成>
特許文献2に記載の方法で合成したビス{2−[3−(ヒドロキシメチル)ピペリジル]エチル}ジスルフィド(di−3PM体)0.340g(0.975mmol)と、4−オレオイルオキシフェニル酢酸0.813g(1.95mmol)、およびDMAP 0.0477g(0.390mmol)を室温でクロロホルム10.2gに溶解させた。そこへEDC(東京化成工業(株)製)0.561g(2.93mmol)を加え、30−35℃で3時間反応させた。反応溶液を20%食塩水6.80gで2回洗浄した後、硫酸マグネシウム0.340gを用いて脱水した。硫酸マグネシウムをろ過後、ろ液をエバポレーターにて濃縮し、0.870gの粗体を得た。得られた粗体をカラム精製することで、O−Ph−P3C1を0.584g得た。
【0160】
O−Ph−P3C1のH−NMRスペクトル(600MHz、CDCl
δ0.86−0.90(t、6H)、δ0.92−1.05(m、2H)、δ1.20−1.42(m、40H)、δ1.50−1.60(m、2H)、δ1.62−1.80(m、10H)、δ1.90−2.04(m、12H)、δ2.52−2.56(m、4H)、δ2.61−2.65(m、4H)、δ2.78−2.82(m、8H)、δ3.61(s、4H)、δ3.89−4.02(m、4H)、δ5.34−5.37(m、4H)、δ7.02−7.05(m、4H)、δ7.26−7.30(m、4H)
【0161】
[実施例2]O−Ph−P4C1の合成
O−Ph−P4C1は実施例1と同様の合成経路で合成した。
特許文献2に記載の方法で合成したビス{2−[4−(ヒドロキシメチル)ピペリジル]エチル}ジスルフィド(di−4PM体)0.340g(0.975mmol)と、4−オレオイルオキシフェニル酢酸0.853g(2.05mmol)、およびDMAP 0.0477g(0.390mmol)を室温でクロロホルム10.2gに溶解させた。そこへEDC 0.561g(2.93mmol)を加え、30−35℃で3時間反応させた。反応溶液を20%食塩水6.80gで2回洗浄した後、硫酸マグネシウム0.340gを用いて脱水した。硫酸マグネシウムをろ過後、ろ液をエバポレーターにて濃縮し、0.900gの粗体を得た。得られた粗体をカラム精製することで、O−Ph−P4C1を0.629g得た。
【0162】
O−Ph−P4C1のH−NMRスペクトル(600MHz、CDCl
δ0.86−0.90(t、6H)、δ1.27−1.42(m、44H)、δ1.62−1.76(m、10H)、δ1.96−2.00(m、12H)、δ2.52−2.56(m、4H)、δ2.64−2.67(m、4H)、δ2.81−2.93(m、8H)、δ3.60(s、4H)、δ3.93−3.95(d、4H)、δ5.34−5.37(m、4H)、δ7.02−7.05(m、4H)、δ7.26−7.30(m、4H)
【0163】
[実施例3]O−Ph−P4C2の合成
O−Ph−P4C2は実施例1と同様の合成経路で合成した。
特許文献2に記載の方法で合成したビス{2−[4−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジル]エチル}ジスルフィド(di−4PE体)0.350g(0.929mmol)と、4−オレオイルオキシフェニル酢酸0.813g(1.95mmol)、およびDMAP 0.0454g(0.372mmol)を室温でクロロホルム10.5gに溶解させた。そこへEDC 0.534g(2.79mmol)を加え、30−35℃で4時間反応させた。反応溶液を20%食塩水7.00gで2回洗浄した後、硫酸マグネシウム0.350gを用いて脱水した。硫酸マグネシウムをろ過後、ろ液をエバポレーターにて濃縮し、1.10gの粗体を得た。得られた粗体をカラム精製することで、O−Ph−P4C2を0.722g得た。
【0164】
O−Ph−P4C2のH−NMRスペクトル(600MHz、CDCl
δ0.86−0.90(t、6H)、δ1.22−1.42(m、46H)、δ1.54−1.76(m、12H)、δ1.94−2.03(m、12H)、δ2.52−2.56(m、4H)、δ2.62−2.66(m、4H)、δ2.80−2.89(m、8H)、δ3.59(s、4H)、δ4.11−4.14(t、4H)、δ5.34−5.37(m、4H)、δ7.02−7.05(m、4H)、δ7.26−7.30(m、4H)
【0165】
[実施例4]O−Bn−P4C2
O−Bn−P4C2は実施例1と同様の合成経路で合成した。
<4−(オレオイルオキシメチル)フェニル酢酸の合成>
オレイン酸無水物13.2g(24.1mmol)および4−(ヒドロキシメチル)フェニル酢酸(東京化成工業(株)製)2.01g(12.1mmol)をクロロホルム198gに溶解させた。そこへDMAP 0.590g(4.83mmol)を加えて、室温で7時間反応を行った。反応溶液を10%酢酸水溶液66gで2回、イオン交換水66gで2回洗浄した後、硫酸マグネシウム(関東化学(株)製)4.00gを有機層へ加え、30分間攪拌した。硫酸マグネシウムをろ過後、ろ液をエバポレーターにて濃縮した。濃縮物をヘキサン87.0gで再溶解し、不溶物をろ過後、アセトニトリル51.5gを用いた抽出を6回行った。アセトニトリル層を回収し、エバポレーターにて濃縮することで、7.47gの粗体を得た。得られた粗体5.98gをカラム精製することで、4−(オレオイルオキシメチル)フェニル酢酸を1.03g得た。
【0166】
4−(オレオイルオキシメチル)フェニル酢酸のH−NMRスペクトル(600MHz、CDCl
δ0.86−0.89(t、3H)、δ1.15−1.37(m、20H)、δ1.60−1.66(m、2H)、δ1.98−2.04(m、4H)、δ2.32−2.36(m、2H)、δ3.66(s、2H)、δ5.09(s、2H)、δ5.31−5.38(m、2H)、δ7.25−7.29(m、2H)、δ7.31−7.44(m、2H)
【0167】
<O−Bn−P4C2の合成>
di−4PE体 0.250g(0.664mmol)、4−(オレオイルオキシメチル)フェニル酢酸0.600g(1.39mmol)、およびDMAP 0.0324g(0.266mmol)を室温でクロロホルム7.5gに溶解させた。そこへEDC 0.382g(1.99mmol)を加え、30−35℃で4時間反応させた。反応溶液を20%食塩水5.00gで2回洗浄した後、硫酸マグネシウム0.250gを用いて脱水した。硫酸マグネシウムをろ過後、ろ液をエバポレーターにて濃縮し、0.823gの粗体を得た。得られた粗体をカラム精製することで、O−Bn−P4C2を0.463g得た。
【0168】
O−Bn−P4C2のH−NMRスペクトル(600MHz、CDCl
δ0.86−0.89(t、6H)、δ1.20−1.30(m、46H)、δ1.50−1.65(m、12H)、δ1.92−2.03(m、12H)、δ2.32−2.36(t、4H)、δ2.62−2.65(m、4H)、δ2.80−2.90(m、8H)、δ3.61(s、4H)、δ4.11−4.14(t、4H)、δ5.09(s、4H)、δ5.31−5.38(m、4H)、δ7.26−7.28(m、4H)、δ7.30−7.32(m、4H)
【0169】
[実施例5]E−Ph−P4C2
E−Ph−P4C2は実施例1と同様の合成経路で合成した。
<コハク酸D−α−トコフェロールの酸無水物化>
コハク酸D−α−トコフェロール(SIGMA−ALDRICH製)70.0g(132mmol)をクロロホルム560gに室温で溶解させ、10−15℃まで冷却した。そこへ、DCC((株)大阪合成有機化学研究所製)13.7g(66mmol)をクロロホルム140gで溶解させた懸濁液を滴下により加え、10−25℃で2時間反応させた。反応溶液をろ過後、ろ液をエバポレーターにより濃縮した。得られた濃縮物をヘキサン210gに再溶解させ、不溶物をろ過により除去した。得られたろ液をエバポレーターにより濃縮し、無水コハク酸D−α−トコフェロールを64.2g得た。
【0170】
無水コハク酸D−α−トコフェロールのH−NMRスペクトル(600MHz、CDCl
δ0.84−0.87ppm(m、24H)、δ1.02−1.85ppm(m、52H)、δ1.96(s、6H)、δ2.01(s、6H)、δ2.08(s、6H)、δ2.56−2.59(t、4H)、δ2.90−2.95(m、8H)
【0171】
<4−(D−α−トコフェロールヘミスクシニル)フェニル酢酸の合成>
無水コハク酸D−α−トコフェロール43.1g(41.3mmol)および4−ヒドロキシフェニル酢酸(東京化成工業(株)製)3.13g(20.6mmol)をクロロホルム647gに溶解させた。そこへDMAP(広栄化学(株)製)1.01g(8.26mmol)を加えて、室温で9時間反応を行った。反応溶液を10%酢酸水溶液216gで2回、イオン交換水216gで2回洗浄した後、硫酸マグネシウム(関東化学(株)製)12.9gを有機層へ加え、30分間攪拌した。硫酸マグネシウムをろ過後、ろ液をエバポレーターにて濃縮した。濃縮物をヘキサン284gで再溶解し、不溶物をろ過後、アセトニトリル168gを用いた抽出を6回行った。アセトニトリル層を回収し、エバポレーターにて濃縮することで、17.0gの粗体を得た。得られた粗体13.6gをカラム精製することで、4−(D−α−トコフェロールヘミスクシニル)フェニル酢酸を3.44g得た。
【0172】
4−(D−α−トコフェロールヘミスクシニル)フェニル酢酸のH−NMRスペクトル(600MHz、CDCl
δ0.83−0.87ppm(m、12H)、δ1.02−1.85ppm(m、26H)、δ1.96ppm(s、3H)、δ2.01ppm(s、3H)、δ2.08ppm(s、3H)、δ2.56−2.59ppm(t、2H)、δ2.71−2.76ppm(m、2H)、δ2.92−2.96ppm(m、2H)、δ3.66ppm(s、2H)、δ7.05−7.08ppm(m、2H)、δ7.27−7.31ppm(m、2H)
【0173】
<E−Ph−P4C2の合成>
di−4PE体 0.350g(0.929mmol)と、4−(D−α−トコフェロールヘミスクシニル)フェニル酢酸1.04g(1.95mmol)、およびDMAP 0.0454g(0.372mmol)を室温でクロロホルム10.5gに溶解させた。そこへEDC 0.534g(2.79mmol)を加え、30−35℃で4時間反応させた。反応溶液を20%食塩水7.00gで2回洗浄した後、硫酸マグネシウム0.350gを用いて脱水した。硫酸マグネシウムをろ過後、ろ液をエバポレーターにて濃縮し、1.31gの粗体を得た。得られた粗体をカラム精製することで、E−Ph−P4C2を0.860g得た。
【0174】
E−Ph−P4C2のH−NMRスペクトル(600MHz、CDCl
δ0.83−0.87ppm(m、24H)、δ1.02−1.85ppm(m、66H)、δ1.94−1.98ppm(m、10H)、δ2.00ppm(s、6H)、δ2.08ppm(s、6H)、δ2.53−2.66ppm(m、8H)、δ2.71−2.85ppm(m、8H)、δ2.85−2.95ppm(m、8H)、δ3.65ppm(s、4H)、δ4.11−4.14ppm(t、4H)、δ7.05−7.08ppm(m、2H)、δ7.27−7.31ppm(m、2H)
【0175】
[実施例6]L−Ph−P4C2
L−Ph−P4C2は実施例1と同様の合成経路で合成した。
<リノール酸の酸無水物化>
リノール酸(日油(株)製)69.6g(248mmol)をクロロホルム560gに室温で溶解させ、10−15℃まで冷却した。そこへ、DCC25.1g(121mmol)をクロロホルム140gで溶解させた懸濁液を滴下により加え、10−25℃で2時間反応させた。反応溶液をろ過後、ろ液をエバポレーターにより濃縮した。得られた濃縮物をヘキサン210gに再溶解させ、不溶物をろ過により除去した。得られたろ液をエバポレーターにより濃縮し、リノール酸無水物を63.8g得た。
【0176】
リノール酸無水物のH−NMRスペクトル(600MHz、CDCl
δ0.86−0.90ppm(t、6H)、δ1.25−1.40ppm(m、32H)、δ1.61−1.68(m、4H)、δ1.94−2.05(m、8H)、δ2.39−2.46(t、4H)、δ5.30−5.38(m、8H)
【0177】
<4−リノレオイルオキシフェニル酢酸の合成>
リノール酸無水物42.8g(78.9mmol)および4−ヒドロキシフェニル酢酸6.00g(39.4mmol)をクロロホルム647gに溶解させた。そこへDMAP1.93g(15.8mmol)を加えて、15−20℃で9時間反応を行った。反応溶液を10%酢酸水溶液216gで2回、イオン交換水216gで2回洗浄した後、硫酸マグネシウム12.9gを有機層へ加え、30分間攪拌した。硫酸マグネシウムをろ過後、ろ液をエバポレーターにて濃縮した。濃縮物をヘキサン284gで再溶解し、不溶物をろ過後、アセトニトリル168gを用いた抽出を6回行った。アセトニトリル層を回収し、エバポレーターにて濃縮することで、18.1gの粗体を得た。得られた粗体14.5gをカラム精製することで、4−リノレオイルオキシフェニル酢酸を3.66g得た。
【0178】
4−リノレオイルオキシフェニル酢酸のH−NMRスペクトル(600MHz、CDCl
δ0.77−0.89(t、3H)、δ1.27−1.42(m、4H)、δ1.71−1.77(m、2H)、δ1.99−2.03(m、4H)、δ2.52−2.56(m、2H)、δ3.64(s、2H)、δ5.34−5.39(m、4H)、δ7.03−7.06(m、2H)、δ7.28−7.31(m、2H)
【0179】
<L−Ph−P4C2の合成>
di−4PE体 0.350g(0.929mmol)と、4−リノレオイルオキシフェニル酢酸0.808g(1.95mmol)、およびDMAP 0.0454g(0.372mmol)を室温でクロロホルム10.5gに溶解させた。そこへEDC 0.534g(2.79mmol)を加え、30−35℃で4時間反応させた。反応溶液を20%食塩水7.00gで2回洗浄した後、硫酸マグネシウム0.350gを用いて脱水した。硫酸マグネシウムをろ過後、ろ液をエバポレーターにて濃縮し、1.02gの粗体を得た。得られた粗体をカラム精製することで、L−Ph−P4C2を0.668g得た。
【0180】
L−Ph−P4C2のH−NMRスペクトル(600MHz、CDCl
δ0.87−0.90(t、6H)、δ1.24−1.41(m、38H)、δ1.55−1.76(m、12H)、δ1.93−2.07(m、12H)、δ2.53−2.56(m、4H)、δ2.63−2.65(m、4H)、δ2.77−2.89(m、8H)、δ3.59(s、4H)、δ4.11−4.13(t、4H)、δ5.34−5.39(m、8H)、δ7.02−7.05(m、4H)、δ7.26−7.30(m、4H)
【0181】
[実施例7]HD−Ph−P4C2
HD−Ph−P4C2は実施例1と同様の合成経路で合成した。
<2−ヘキシルデカン酸の酸無水物化>
2−ヘキシルデカン酸(東京化成工業(株)製)6.36g(24.8mmol)をクロロホルム56gに室温で溶解させ、10−15℃まで冷却した。そこへ、DCC2.51g(12.1mmol)をクロロホルム14gで溶解させた懸濁液を滴下により加え、10−25℃で2時間反応させた。反応溶液をろ過後、ろ液をエバポレーターにより濃縮した。得られた濃縮物をヘキサン21gに再溶解させ、不溶物をろ過により除去した。得られたろ液をエバポレーターにより濃縮し、2−ヘキシルデカン酸無水物を5.83g得た。
【0182】
2−ヘキシルデカン酸無水物のH−NMRスペクトル(600MHz、CDCl
δ0.86−0.90ppm(m、12H)、δ1.25−1.40ppm(m、40H)、δ1.61−1.68(m、8H)、δ2.39−2.46(m、2H)
【0183】
<2−ヘキシルデカノイルオキシフェニル酢酸の合成>
2−ヘキシルデカン酸無水物3.90g(7.89mmol)および4−ヒドロキシフェニル酢酸0.600g(3.94mmol)をクロロホルム65gに溶解させた。そこへDMAP0.193g(1.58mmol)を加えて、室温で9時間反応を行った。反応溶液を10%酢酸水溶液22gで2回、イオン交換水22gで2回洗浄した後、硫酸マグネシウム1.5gを有機層へ加え、30分間攪拌した。硫酸マグネシウムをろ過後、ろ液をエバポレーターにて濃縮した。濃縮物をヘキサン28gで再溶解し、不溶物をろ過後、アセトニトリル17gを用いた抽出を6回行った。アセトニトリル層を回収し、エバポレーターにて濃縮することで、1.64gの粗体を得た。得られた粗体1.32gをカラム精製することで、2−ヘキシルデカノイルオキシフェニル酢酸を0.333g得た。
【0184】
2−ヘキシルデカノイルオキシフェニル酢酸のH−NMRスペクトル(600MHz、CDCl
δ0.77−0.89(t、6H)、δ1.27−1.42(m、20H)、δ1.71−1.77(m、4H)、δ2.52−2.56(m、2H)、δ3.64(s、2H)、δ7.03−7.06(m、2H)、δ7.28−7.31(m、2H)
【0185】
<HD−Ph−P4C2の合成>
di−4PE体 0.117g(0.310mmol)と、2−ヘキシルデカノイルオキシフェニル酢酸0.254g(0.650mmol)、およびDMAP 0.0151g(0.124mmol)を室温でクロロホルム3.5gに溶解させた。そこへEDC 0.178g(0.930mmol)を加え、30−35℃で4時間反応させた。反応溶液を20%食塩水3gで2回洗浄した後、硫酸マグネシウム0.3gを用いて脱水した。硫酸マグネシウムをろ過後、ろ液をエバポレーターにて濃縮し、0.320gの粗体を得た。得られた粗体をカラム精製することで、HD−Ph−P4C2を0.210g得た。
【0186】
HD−Ph−P4C2のH−NMRスペクトル(600MHz、CDCl
δ0.87−0.90(t、12H)、δ1.23−1.41(m、40H)、δ1.54−1.76(m、20H)、δ1.93−1.97(m、4H)、δ2.54−2.57(m、2H)、δ2.63−2.65(m、4H)、δ2.81−2.89(m、8H)、δ3.59(s、4H)、δ4.11−4.13(t、4H)、δ7.00−7.02(m、4H)、δ7.26−7.29(m、4H)
【0187】
[実施例8]O−Ph−amide−P4C2
<di−4PE体水酸基のアミノ化>
di−4PE体 0.815g(2.16mmol)と、フタルイミド(関東化学(株)製)0.892g(6.06mmol)、およびトリフェニルホスフィン(関東化学(株)製) 1.59g(6.06mmol)を室温でジクロロメタン5gに溶解させた。そこへアゾジカルボン酸ジイソプロピル(ACROS ORGANICS製)1.05g(5.20mmol)を加え、室温で4時間反応させた。反応溶液にメタノール10gを加え、エバポレーターにて濃縮した後、濃縮物をメタノール4gで再溶解し、エチレンジアミン・一水和物(関東化学(株)製)5.08g(65.0mmol)を加え、35−45℃で3時間反応させた。反応溶液をエバポレーターにて濃縮した後、濃縮物を5%リン酸二水素ナトリウム水溶液10gで再溶解し、酢酸エチル10gで3回洗浄を行った。その後、水酸化ナトリウム水溶液を用いて水層をpH12に調整し、ジクロロメタン10gで抽出を2回行い、硫酸ナトリウム(関東化学(株)製)1gを用いて脱水した。硫酸ナトリウムをろ過後、ろ液をエバポレーターにて濃縮することで、di−4PE−amine体を0.572g得た。
【0188】
di−4PE−amine体のH−NMRスペクトル(400MHz、CDCl
δ1.20−1.55ppm(m、10H)、δ1.51−1.54ppm(m、4H)、δ1.95−2.05ppm(m、4H)、δ2.58−2.66ppm(m、4H)、δ2.72ppm(t、4H)、δ2.78−2.83ppm(m、4H)、δ2.89−2.92ppm(m、4H)
【0189】
<O−Ph−amide−P4C2の合成>
di−4PE−amine体 0.348g(0.929mmol)と、4−オレオイルオキシフェニル酢酸0.813g(1.95mmol)、およびDMAP 0.0454g(0.372mmol)を室温でクロロホルム10.5gに溶解させた。そこへEDC 0.534g(2.79mmol)を加え、30−35℃で4時間反応させた。反応溶液を20%食塩水7.00gで2回洗浄した後、硫酸マグネシウム0.350gを用いて脱水した。硫酸マグネシウムをろ過後、ろ液をエバポレーターにて濃縮し、1.10gの粗体を得た。得られた粗体をカラム精製することで、O−Ph−amide−P4C2を0.629g得た。
【0190】
O−Ph−amide−P4C2のH−NMRスペクトル(600MHz、CDCl
δ0.86−0.90(t、6H)、δ1.22−1.42(m、46H)、δ1.61−1.77(m、12H)、δ1.92−2.03(m、12H)、δ2.52−2.56(m、4H)、δ2.62−2.66(m、4H)、δ2.80−2.89(m、8H)、δ3.22−3.25(m、4H)、δ3.54(s、4H)、δ5.32−5.37(m、6H)、δ7.05−7.05(m、4H)、δ7.25−7.26(m、4H)
【0191】
[実施例9]O−Ph−C3M
<O−Ph−C3Mの合成>
特許文献2に記載の方法で合成したビス[{N−メチル−N−(3-ヒドロキシプロピル)アミノ}エチル]ジスルフィド(di−MAP体) 0.275g(0.929mmol)と、4−オレオイルオキシフェニル酢酸0.813g(1.95mmol)、およびDMAP 0.0454g(0.372mmol)を室温でクロロホルム10.5gに溶解させた。そこへEDC 0.534g(2.79mmol)を加え、30−35℃で4時間反応させた。反応溶液を20%食塩水7.00gで2回洗浄した後、硫酸マグネシウム0.350gを用いて脱水した。硫酸マグネシウムをろ過後、ろ液をエバポレーターにて濃縮し、0.871gの粗体を得た。得られた粗体をカラム精製することで、O−Ph−C3Mを0.498g得た。
【0192】
O−Ph−C3MのH−NMRスペクトル(600MHz、CDCl
δ0.86−0.90(t、6H)、δ1.22−1.42(m、44H)、δ1.77−1.82(m、8H)、δ1.99−2.03(m、8H)、δ2.26(s、6H)、δ2.28−2.30(t、4H)、δ2.52−2.56(m、4H)、δ2.67−2.69(m、4H)、δ2.79−2.81(m、4H)、δ3.54(s、4H)、δ4.10−4.13(t、4H)、δ5.32−5.37(m、4H)、δ7.05−7.05(m、4H)、δ7.25−7.26(m、4H)
【0193】
[比較例1]O−P4C2の合成
特許文献2に記載の合成経路にて合成した。
【0194】
O−P4C2のH−NMRスペクトル(600MHz、CDCl
δ0.86−0.90(t、6H)、δ1.20−1.35(m、40H)、δ1.58−1.70(m、4H)、δ1.75−1.83(m、4H)、δ1.95−2.05(m、8H)、δ2.24−2.32(m、10H)、δ2.66−2.70(m、4H)、δ2.78−2.82(m、4H)、δ4.10−4.13(t、4H)、δ5.13−5.38(m、4H)
【0195】
[比較例2]E−P4C2の合成
特許文献2に記載の合成経路にて合成した。
【0196】
E−P4C2のH−NMRスペクトル(400MHz、CDCl
δ0.83−0.88(m、24H)、δ1.00−1.81(m、66H)、δ1.95−2.10(m、22H)、δ2.55−2.60(t、4H)、δ2.62−2.66(m、4H)、δ2.73−2.77(t、4H)、δ2.80−2.84(m、4H)、δ2.86−2.95(m、8H)、δ4.12−4.17(t、4H)
【0197】
[試験例1]mRNA封入粒子の調製と物性評価
1.エタノール希釈法によるmRNA封入LNPの調製
(1)脂質のエタノール溶液の調製
脂質のエタノール溶液は、5mLチューブに5mMのカチオン性脂質、5mMリン脂質、5mMコレステロールを総脂質量131.5nmolとなるように目的の割合で混合し、DMG−PEG2k(1mMエタノール溶液)をさらに総脂質量の3%相当量添加し、全量が30μLとなるようにエタノールを加えることで調製した。
【0198】
(2)核酸の酸性バッファー溶液の調製
核酸の酸性バッファー溶液は、エッペンドルフチューブにmRNA溶液(濃度はインビトロ翻訳の効率により変化するが概ね0.6−0.8μg/μL)を3μgとなるようにはかり取り、全量が45μLとなるように酸性リンゴ酸バッファー(20mM,pH3.0,30mM NaClを含む)を加えることで調製した。
【0199】
(3)エタノール希釈法によるLNP調製
核酸の酸性バッファー溶液45μLを脂質のエタノール溶液30μLにボルテックスしながら加えた。続いて混合液へMES緩衝液(pH5.5)を925μL加えた。事前にMES緩衝液1mLを加えておいたAmicon Ultra 4(Millipore社)へLNP溶液を全量移した。LNP溶液の入っていた5mLチューブへ1mLのMES緩衝液を加え、洗い込みを行った。本洗い込みは二度行った。遠心条件(25℃,1000g,3min)で約100μLまで限外濾過し濃縮した後、PBSを用いて4mLまでメスアップし、再度、遠心条件(25℃,1000g,10min)で濃縮した。最後に、PBSを用いて目的の脂質濃度になるようメスアップした。
【0200】
2.各種mRNA封入LNPの粒子径、及び表面電位の測定
粒子径並びに表面電位は、動的光散乱法(Zetasizer Nano;Malvern社)により測定した。上記1.の方法で調製した各種LNPの粒子径、表面電位の1例を表3〜9に示す。
【0201】
【表3】
【0202】
【表4】
【0203】
【表5】
【0204】
【表6】
【0205】
【表7】
【0206】
【表8】
【0207】
【表9】
【0208】
3.結果
いずれのLNPも好ましい形態である粒子径30〜300nmであり、生理的pHでの電荷(ゼータ電位)も、好ましい形態である−15〜+15mVであった。
【0209】
[試験例2]siRNA封入粒子の調製と物性評価
1.マイクロ流路法によるsiRNA封入LNPの調製
(1)脂質のエタノール溶液の調製
脂質のエタノール溶液は、エッペンドルフチューブに5mMのカチオン性脂質、5mMコレステロールを総脂質量900nmolとなるように目的の割合で混合し、DMG−PEG2k(2mMエタノール溶液)をさらに総脂質量の1.5%相当量添加し、全量が100μLとなるようにエタノールを加えることで調製した。
【0210】
(2)核酸の酸性バッファー溶液の調製
核酸の酸性バッファー溶液は、5mLチューブに4mg/mLのsiRNA溶液を4.5μgとなるようにはかり取り、全量が900μLとなるように酸性リンゴ酸バッファー(20mM,pH3.0)を加えることで調製した。
【0211】
(3)マイクロ流路を用いたLNP調製
核酸の酸性バッファー溶液および脂質のエタノール溶液をそれぞれシリンジにはかり取った。超高速ナノ医薬作成装置NanoAssmblr(Precision NanoSystems製)を用いて、核酸溶液を18mL/min、脂質溶液を2mL/min、シリンジホルダー温度を30℃の条件にて、LNPを調製し、15mLチューブへ回収した。15mLチューブへPBSを3000μL加えた後、Amicon Ultra 4へ移し、遠心条件(30℃,1000g,6min)で約100μLまで限外濾過し濃縮した。その後、PBSを用いて4mLまでメスアップし、再度、遠心条件(30℃,1000g,6min)で濃縮した。最後に、PBSを用いて目的の脂質濃度になるようメスアップした。
【0212】
2.各種siRNA封入LNPの粒子径、及び表面電位の測定
粒子径並びに表面電位は、動的光散乱法により測定した。[試験例5]の1に記載の方法で調製した各種LNPの粒子径、表面電位の1例を表10〜12に示す。
【0213】
【表10】
【0214】
【表11】
【0215】
【表12】
【0216】
3.結果
いずれのLNPも好ましい形態である粒子径30〜300nmであり、生理的pHでの電荷(ゼータ電位)も、好ましい形態である−10〜+10mVであった。
【0217】
[試験例3]Liposomal pKaの測定
1.各種LNPの調製
Liposomal pKaの評価には核酸を封入していない空のLNPを使用した。空のLNP(カチオン性脂質:DOPC:Chol:DMP−PEG2k=60:10:30:3)は[試験例1]に記載の方法において核酸を使用せずに粒子調製を行うことで作製した。
【0218】
2.Liposomal pKaの測定
pH3.0〜10.0の範囲で種々のpHに合わせた、終濃度150mMのNaClを含む20mMのクエン酸緩衝液、リン酸ナトリウム緩衝液およびトリスHCl緩衝液を用意した。[試験例3]1.で調製したLNPを脂質濃度として0.5mMとなるようにPBSで希釈した。TNS(Sigma製)は0.6mMとなるように超純水で希釈した。黒色96wellプレートにTNS溶液を2μL、各種LNP溶液を12μL、および種々のpHに調整した緩衝液を186μL加えた。プレートを遮光し、400rpmで10分間振盪した。プレートリーダー(TECAN製)を用いて、蛍光強度(励起:321nm/発光:447nm)を測定した。各LNPにおける蛍光強度の最大値を100%、最小値を0%として、相対蛍光強度を百分率で算出した。また、相対蛍光強度が50%であるpHをLiposomal pKaとした。各種LNPのLiposomal pKaの評価結果を表13に示す。
【0219】
【表13】
【0220】
3.結果
いずれのLNPのLiposomal pKaも、エンドソーム脱出に好ましいpKa(5.5〜7.2)の範囲内であった。また、カチオン性脂質のアミノ基周辺構造を改変することで、LNPのLiposomal pKaを調整することができた。
【0221】
[試験例4]pH7.4および5.5でのヘモライシス活性(膜融合能)の評価
1.各種LNPの調整
ヘモライシス活性の評価には核酸を封入していない空のLNPを使用した。空のLNPは[試験例2]の1に記載の方法において核酸を使用せずに粒子調製を行うことで作製した。
【0222】
2.マウス赤血球の取得
6−7週齢の雄のICRマウスを安楽死させ、下大静脈から血液約1000μLを採取した。取得した血液は直ちに0.5μLのヘパリン溶液(5000U/5mL)と混合した。血液にPBS約9mLを加え全量を10mLとし、転倒混和した後、遠心分離を行った(4℃,400g,10min)。血漿成分を含む上清をパスツールピペットにより取り除いた。血球成分へPBS約9mLを加え全量を10mLとし、再度遠心分離を行った。同様の洗浄作業を4度繰り返し、マウス赤血球を得た。
【0223】
3.ヘモライシス活性の評価
マウス赤血球を2、4、6、8、10μLはかり取り、1%(w/v)のTriton−X100を含むPBSで希釈した。全量を透明96wellプレートへ移し、プレートリーダーを用いて545nmにおける吸光度を測定した。本希釈系列を用いて検量線を作成し、吸光度が1になる点をヘモライシスアッセイに使用する血球量として決定した。空のLNP溶液をエッペンドルフチューブにはかり取り、リンゴ酸−PBS緩衝液(pH5.5,pH6.5,pH7.4)で希釈し、さらにマウス赤血球を加えた。脂質の終濃度を100μM、溶液の最終体積を250μLとした。各チューブを1900rpmで30分間振盪した。各サンプルを遠心条件(4℃,400g,5min)で遠心分離し、上清200μLを透明96wellプレートに移し545nmにおける吸光度を測定した。ネガティブコントロールとして、未処理赤血球を用いた。ポジティブコントロールとして1%(w/v)のTriton−Xを用いた。各サンプルの吸光度はネガティブコントロールとポジティブコントロールで規格化した。
【0224】
4.結果
結果を図1に示す。値が高い程、膜融合能(ヘモライシス活性)が高いことを意味する。本発明のカチオン性脂質を用いたLNP(O−Ph−P4C2_LNP)は生理的pH(7.4)ではヘモライシス活性を有さなかった。一方で、エンドソーム内環境pH(5.5)では80%以上の高いヘモライシス活性を示した。
【0225】
[試験例5]各種LNPのpH5.5でのヘモライシス活性の評価
1.各種LNPの調整
空のLNPは[試験例2]の1に記載の方法において核酸を使用せずに粒子調製を行うことで作製した。
【0226】
2.マウス赤血球の取得
マウス赤血球の取得は「試験例4」に記載の方法で行った。
【0227】
3.ヘモライシス活性の評価
マウス赤血球を2、4、6、8、10μL測り取り、1%(w/v)のTriton−X100を含むPBSで希釈した。全量を透明96wellプレートへ移し、プレートリーダーを用いて545nmにおける吸光度を測定した。本希釈系列を用いて検量線を作成し、吸光度が1になる点をヘモライシスアッセイに使用する血球量として決定した。空のLNP溶液をエッペンドルフチューブにはかり取り、リンゴ酸−PBS緩衝液(pH5.5)で希釈し、さらにマウス赤血球を加えた。脂質の終濃度を1.56、6.25、25、100、400μM、溶液の最終体積を250μLとした。各チューブを1900rpmで30分間振盪した。各サンプルを遠心条件(4℃,400g,5min)で遠心分離し、上清200μLを透明96wellプレートに移し545nmにおける吸光度を測定した。ネガティブコントロールとして未処理赤血球、ポジティブコントロールとして1%(w/v)のTriton−X100を添加したものを用いた。各サンプルの吸光度はネガティブコントロールとポジティブコントロールで規格化した。
【0228】
4.結果
結果を図2に示す。値が高い程、膜融合能(ヘモライシス活性)が高いことを意味する。本発明のカチオン性脂質を用いたLNP(O−Ph−P4C2_LNPおよびO−Bn−P4C2_LNP)はいずれも、比較例1のLNPよりも、各種脂質濃度においてヘモライシス活性が高かった。O−Ph−P4C2_LNPとO−Bn−P4C2_LNPはヘモライシス活性に差はなかった。pH5.5においてヘモライシス活性が高いことは、エンドソーム内環境においてエンドソーム膜との相互作用が高いこと、つまり、エンドソームからの脱出効率が高いことを意味している。本発明のカチオン性脂質を用いたLNP(O−Ph−P4C2_LNPおよびO−Bn−P4C2_LNP)は、ヘモライシス活性が高いので、エンドソーム脱出に優位であることが分かる。
【0229】
[試験例6]インビトロにおける遺伝子発現の評価1
1.各種LNPの調製
ルシフェラーゼを発現するmRNAを封入したLNP(カチオン性脂質:DOPC:Chol=60:10:30)を[試験例1]の1に記載の方法で調製した。
【0230】
2.インビトロにおける遺伝子発現の経時評価
トランスフェクション24時間前にヒト腎がん細胞OSRC2を1.0×10cells/2mL/Dishとなるように3.5cmディッシュに播種した。24時間後、培地を0.1mMのD−ルシフェリンを含む培養培地(RPMI1640)へ交換した。調製したmRNA封入LNPをmRNAの濃度で6μg/mLとなるようにPBSで希釈した。希釈したmRNA封入LNP溶液33μL(mRNA0.2μg)を3.5cmディッシュに加え、インキュベーター型ルミノメーターKronosDio(ATTO製)にセットした。ルシフェラーゼの発光強度を1時間ごとに2分間計測した。得られた発現の時間変化から、24時間の累積発光強度を算出した。
【0231】
3.結果
結果を図3に示す。値が高い程、即ち総ルシフェラーゼ活性が高い程、遺伝子発現が高いことを意味する。本発明のカチオン性脂質を用いたLNP(O−Ph−P4C1_LNPおよびO−Ph−P4C2_LNP)は、比較例1のカチオン性脂質を用いたLNP(O−P4C2_LNP)と比較して、高い遺伝子発現を示した。
【0232】
[試験例7]インビトロにおける遺伝子発現の評価2
1.各種LNPの調製
ルシフェラーゼを発現するmRNAを封入したLNP(カチオン性脂質:DOPC:Chol=52.5:7.5:40)を[試験例1]の1に記載の方法で調製した。
【0233】
2.インビトロにおける遺伝子発現の経時評価
トランスフェクション24時間前にマウス大腸がん細胞CT26を8.0×10/2mL/Dishとなるように3.5cmディッシュに播種した。24時間後、培地を0.1mMのD−ルシフェリンを含む培養培地へ交換した。調製したmRNA封入LNPをmRNAの濃度で6μg/mLとなるようにPBSで希釈した。希釈したmRNA封入LNP溶液67μL(mRNA0.4μg)を3.5cmディッシュに加え、インキュベーター型ルミノメーターKronosDioにセットした。ルシフェラーゼの発光強度を1時間ごとに2分間計測した。得られた発現の時間変化から、24時間の累積発光強度を算出した。
【0234】
3.結果
結果を図4に示す。値が高い程、即ち総ルシフェラーゼ活性が高い程、遺伝子発現が高いことを意味する。本発明のカチオン性脂質を用いたLNP(O−Ph−P4C2_LNPおよびO−Bn−P4C2_LNP)は、比較例1のLNPと比較して、高い遺伝子発現活性を示した。特に、O−Ph−P4C2_LNPは、比較例1のLNPよりも10倍程度高い遺伝子発現活性を示しており、インビトロでの優れたmRNAの送達能を有していることがわかる。
【0235】
[試験例8]インビボにおける遺伝子発現の経時評価
1.各種LNPの調製
エリスロポエチンを発現するmRNAを封入したLNP(カチオン性脂質:DOPC:Chol=52.5:7.5:40)を[試験例1]に記載の方法で調製した。
【0236】
2.インビボにおける遺伝子発現の経時評価
調製したmRNA封入LNPをmRNAの濃度で5μg/mLとなるようにPBSで希釈した。希釈したmRNA封入LNPを、6週齢の雌のBalb/cマウスに体重1gあたり10μLとなるように尾静脈内投与した(mRNAの投与量として0.05mg/kg)。投与後0.5、1、2、3、6、9、24時間後にマウス尾静脈から血液15μLを採取した。採取した血液は直ちに0.3μLのヘパリン溶液(5000U/5mL)と混合した。各血液サンプルを遠心条件(25℃,2000g,20min)で遠心分離し、上清を回収した。上清中のエリスロポエチン濃度をMouse Erythropoietin Quantikine ELISA Kit(R&D Systems製)を用いて、Kitのプロトコルに記載の方法で測定した。
【0237】
3.市販の遺伝子導入試薬TransIT(登録商標)を用いたmRNA−TransIT複合体の調製
本複合体の調製は文献(Thess A et al. Molecular Therapy. 2017)を参考に行った。mRNA溶液をmRNAが5μgとなるようにエッペンドルフチューブにはかり取った。mRNA溶液をダルベッコ改変イーグル培地(High−Glucose)で希釈し491μLとした。そこへTransIT−mRNA試薬5.5μLとmRNA Boost試薬を3.5μL加え、2分インキュベーションすることでmRNA−TransIT複合体を調製した。
【0238】
4.インビボにおけるmRNA−TransIT複合体の遺伝子発現の経時評価
本遺伝子発現活性評価は文献(Thess A et al. Molecular Therapy. 2017)を参考に行った。調製したmRNA−TransIT複合体を6週齢の雌のBalb/cマウスの腹腔内へ体重1gあたり5μL投与した(mRNAの投与量として0.05mg/kg)。各種タイムポイントでのマウス尾静脈からの血液採取、並びにエリスロポエチン濃度の定量を[試験例7]の2に記載の方法で行った。
【0239】
5.結果
結果を図5に示す。値が高い程、即ちエリスロポエチン活性が高い程、遺伝子発現が高いことを意味する。本発明のカチオン性脂質を用いたLNP(O−Ph−P4C2_LNPおよびO−Bn−P4C2_LNP)はいずれも、市販の遺伝子導入試薬(TransIT(登録商標))と比較して、高い遺伝子発現活性を示した。特に、O−Ph−P4C2_LNPは、市販の遺伝子導入試薬よりも10倍程度高い遺伝子発現活性を示しており、インビボでの優れたmRNAの送達能を有していることがわかる。
【0240】
[試験例9]インビボにおける遺伝子ノックダウン活性の評価(肝臓へのsiRNAの送達)
1.各種LNPの調製
肝臓特異的タンパク質である凝固第VII因子(FVII)に対するsiRNA封入LNPを[試験例2]の1に記載の方法で調製した。
【0241】
2.インビボ肝臓における遺伝子ノックダウン活性の評価
調製したsiRNA封入LNPをsiRNAの濃度で2μg/mLとなるようにPBSで希釈した。希釈したsiRNA封入LNPを、4週齢の雄のICRマウスに体重1gあたり10μLとなるように尾静脈内投与した(siRNAの投与量として0.02mg/kg)。24時間後にマウスを安楽死させ、下大静脈から血液約500μLを取得した。取得した血液は直ちに0.5μLのヘパリン溶液(5000U/5mL)と混合し、アッセイまで氷上で保存した。血中のFVII濃度はBiophen VII assay kit(Aniara社)を用い、Kitのプロトコルに記載の方法にて測定した。各サンプル投与後24時間におけるFVIIの血中濃度は未処理マウスの血中FVII濃度により規格化した。
【0242】
3.結果
結果を図6に示す。値が低い程、即ちFVIIタンパク質の発現活性が低い程、遺伝子ノックダウン活性が高いことを意味する。本発明のカチオン性脂質を用いたLNP(O−Ph−P4C2_LNPおよびO−Bn−P4C2_LNP)はいずれも、比較例1のLNPよりも遺伝子ノックダウン活性が高く、特に、O−Ph−P4C2_LNPは、インビボでの優れたsiRNAの送達能を有していることがわかる。
【0243】
[試験例10]mRNA封入粒子の調製と物性評価
1.マイクロ流路法によるmRNA封入LNPの調製
(1)脂質のエタノール溶液の調製
脂質のエタノール溶液は、5mLチューブに5mMのカチオン性脂質、5mMリン脂質、5mMコレステロールを総脂質量2550nmolとなるように目的の割合で混合し、DMG−PEG2k(1mMエタノール溶液)をさらに総脂質量の1.5%相当量添加し、全量が510μLとなるようにエタノールを加えることで調製した。
【0244】
(2)核酸の酸性バッファー溶液の調製
核酸の酸性バッファー溶液は、5mLチューブにmRNA溶液(濃度はインビトロ翻訳の効率により変化するが概ね0.6−0.8μg/μL)を10.8μgとなるようにはかり取り、全量が1300μLとなるように酸性リンゴ酸バッファー(20mM,pH3.0,30mM NaClを含む)を加えることで調製した。
【0245】
(3)マイクロ流路を用いたLNP調製
核酸の酸性バッファー溶液および脂質のエタノール溶液をそれぞれシリンジにはかり取った。超高速ナノ医薬作成装置NanoAssmblrを用いて、核酸溶液を3mL/min、脂質溶液を1mL/minにてLNP調製を行い、1.2mLを15mLチューブへ回収した。15mLチューブへpH6.5の20mMのMES(NaOHで調製)を3000μL加えた後、Amicon Ultra 4へ移し、遠心(25℃,1000g,3min)を繰り返し、約300μLまで限外濾過し濃縮した。その後、PBSを用いて4mLまでメスアップし、再度、遠心(25℃,1000g,3min)を繰り返し、濃縮した。最後に、PBSを用いて目的の脂質濃度になるようメスアップした。
【0246】
2.各種mRNA封入LNPの粒子径、及び表面電位の測定
粒子径並びに表面電位は、動的光散乱法により測定した。上記1.の方法で調製した各種LNPの粒子径、表面電位の1例を表14〜21に示す。
【0247】
【表14】
【0248】
【表15】
【0249】
【表16】
【0250】
【表17】
【0251】
【表18】
【0252】
【表19】
【0253】
【表20】
【0254】
【表21】
【0255】
3.結果
いずれのLNPも好ましい形態である粒子径30〜300nmであり、生理的pHでの電荷(ゼータ電位)も、好ましい形態である−15〜+15mVであった。
【0256】
[試験例11]Liposomal pKaの測定
1.各種LNPの調製
Liposomal pKaの評価には核酸を封入していない空のLNPを使用した。空のLNP(カチオン性脂質:DOPC:Chol:DMG−PEG2k=52.5:7.5:40:1.5)は[試験例10]に記載の方法において核酸を使用せずに粒子調製を行うことで作製した。
【0257】
2.Liposomal pKaの測定
Liposomal pKaは[試験例3]に記載の方法で算出した。各種LNPのLiposomal pKaの値を表22に示す。
【0258】
【表22】
【0259】
3.結果
いずれのLNPのLiposomal pKaも、エンドソーム脱出に好ましいpKa(5.5〜7.2)の範囲内であった。O−Ph−amide−P4C2を加えることでpKaが向上した。
【0260】
[試験例12]pH7.4および5.5でのヘモライシス活性(膜融合能)の評価
1.各種LNPの調整
ヘモライシス活性の評価には核酸を封入していない空のLNPを使用した。空のLNPは[試験例11]の1に記載の方法で作製した。
【0261】
2.マウス赤血球の取得
[試験例4]の2に記載の方法でマウス赤血球を得た。
【0262】
3.ヘモライシス活性の評価
[試験例4]の3に記載の方法でヘモライシス活性を評価した。
【0263】
4.結果
結果を図7に示す。本発明のカチオン性脂質または比較例1のカチオン性脂質を用いたLNPはいずれも生理的pH(7.4)ではヘモライシス活性を有さなかった。一方で、エンドソーム内環境pH(5.5)では本発明のカチオン性脂質を用いたLNPはいずれも比較例1のカチオン性脂質を用いたLNPよりも優れたヘモライシス活性を有することがかわる。
【0264】
[試験例13]インビトロにおける遺伝子発現の評価3
1.各種LNPの調製
ルシフェラーゼを発現するmRNAを封入したLNP(カチオン性脂質:DOPC:Chol=52.5:7.5:40)を[試験例10]の1に記載の方法で調製した。
【0265】
2.インビトロにおける遺伝子発現の経時評価
トランスフェクション24時間前にヒト子宮頚がん細胞であるHeLa細胞を5.0×10cells/2mL/Dishとなるように3.5cmディッシュに播種した。24時間後、培地を0.1mMのD−ルシフェリンを含む培養培地(D−MEM)へ交換した。調製したmRNA封入LNPをmRNAの濃度で約8μg/mLとなるようにPBSで希釈した。希釈したmRNA封入LNP溶液約50μL(mRNA 0.4μg)を3.5cmディッシュに加え、インキュベーター型ルミノメーターKronosDioにセットした。ルシフェラーゼの発光強度を1時間ごとに2分間計測した。得られた発現の時間変化から、24時間の累積発光強度を算出した。
【0266】
3.結果
結果を図8に示す。値が高い程、即ち総ルシフェラーゼ活性が高い程、遺伝子発現が高いことを意味する。本発明のカチオン性脂質を用いたLNP(O−Ph−P4C2_LNP、L−Ph−P4C2_LNP、HD−Ph−P4C2_LNP、O−Ph−P4C2+O−Ph−amide−P4C2_LNP、およびL−Ph−P4C2_LNP)は、比較例1のカチオン性脂質を用いたLNP(O−P4C2_LNP)と比較して、高い遺伝子発現を示した。さらに、O−Ph−P4C2_LNPおよびO−Ph−P4C2+O−Ph−amide−P4C2_LNPは、市販のmRNA導入試薬よりも高い遺伝子発現活性を示した。
【0267】
[試験例14]インビトロにおける遺伝子発現の評価4
1.LNPの調製
ルシフェラーゼを発現するmRNAを封入したLNP(O−Ph−P4C2:DOPC:Chol:DMG−PEG2k=52.5:7.5:40:0.75)を[試験例10]の1の記載に類する方法で調製した。
【0268】
2.遺伝子導入試薬(Lipofectamine MssengerMAX)を用いたLipofectamine−mRNAの複合体の調製
本複合体の調製は、メーカー記載のプロトコルに従って行った。エッペンドルフチューブにOpti−MEM培地125μLおよびLipofectamine MessengerMAX試薬を7.5μL加え、10分間インキュベーションした。別のエッペンドルフチューブにmRNA2.5μg/Opti−MEM培地125μLの溶液を調製した。そこへインュベートしたLipofectamine溶液を125μL加えて、5分間インキュベートすることでLipofectamine−mRNAの複合体を調製した。
【0269】
3.インビトロにおける遺伝子発現の経時評価
トランスフェクション24時間前にヒト白血病T細胞であるJurkat細胞を2.0×10cells/1.8mL/Dishとなるように3.5cmディッシュに播種した。24時間後、終濃度が0.1mMとなるようにD−ルシフェリン入りの培地(RPMI1640)を各ディッシュに200μL加えた。そこへ、各種濃度に調製したmRNA封入LNP溶液を80μL(mRNAとして0.4、0.8、1.6、3.2μg)、またはLipofectamine−mRNA複合体を40、80、160、320μL(mRNAとして0.4、0.8、1.6、3.2μg)加え、インキュベーター型ルミノメーターKronosDioにセットした。ルシフェラーゼの発光強度を3時間ごとに2分間計測した。得られた発現の時間変化から、48時間の累積発光強度を算出した。
【0270】
4.結果
結果を図9に示す。本発明のカチオン性脂質を用いたLNP(O−Ph−P4C2_LNP)は、いずれのmRNA量においても遺伝子導入試薬と比較して優れた遺伝子発現活性を示した。
【0271】
[試験例15]インビトロにおける遺伝子発現の評価5
1.LNPの調製
EGFPを発現するmRNAを封入したLNP(O−Ph−P4C2:DOPC:Chol:DMG−PEG2k=52.5:7.5:40:0.75)を[試験例10]の1の記載に類する方法で調製した。
【0272】
2.遺伝子導入試薬を用いたLipofectamine−mRNAの複合体の調製
Lipofectamine−mRNAの複合体は[試験例14]の2に記載の方法にて調製した。
【0273】
3.インビトロにおける遺伝子発現の経時評価
トランスフェクション24時間前にヒト白血病T細胞であるJurkat細胞を2.0×10cells/2mL/Dishとなるように3.5cmディッシュに播種した。24時間後、各種濃度に調製したmRNA封入LNP溶液を80μL(mRNAとして 0.4、0.8、1.6、3.2μg)、またはLipofectamine−mRNA複合体を40、80、160、320μL(mRNAとして 0.4、0.8、1.6、3.2μg)3.5cmディッシュに加え、インキュベーターで24時間培養した。培養液をFACSバッファー(0.5%ウシ血清アルブミン(BSA)、0.1%NaN含有PBS)に交換し、フローサイトメーター(NovoCyte;ACEA Biosciences製)にて測定を行い、遺伝子導入された細胞の分析を行った。
【0274】
4.結果
結果を図10に示す。値が高いほど多くの細胞に遺伝子導入されていることを表す。遺伝子導入試薬では、いずれのmRNA量でも一部の細胞でのみ遺伝子発現しており、発現の均一性が低かった。対して、本発明のカチオン性脂質を用いたLNPでは、mRNA量に関係なく殆ど全ての細胞に遺伝子導入されており、発現の均一性が非常に高いことが分かる。
【0275】
[試験例16]インビボにおける遺伝子発現の評価(皮下投与)
1.各種LNPの調製
ルシフェラーゼを発現するmRNAを封入したLNP(カチオン性脂質:DOPE:Chol=60:30:10)を、[試験例10]に記載のマイクロ流路を用いた方法にて調製した。
【0276】
2.インビボにおける遺伝子ノックダウン活性の評価
調製したmRNA封入LNPを、6週齢の雌のC57/BL6Jマウスに体重1gあたり10μLとなるように頸背部に皮下投与した(mRNAの投与量として0.05mg/kg)。投与5時間半後、体重1gあたり10μLとなるようにマウスにルシフェリンを腹腔内投与した(ルシフェリンの投与量として1.5g/kg)。30分後、IVISイメージングシステムを用いてイメージングを行った。取得した画像からマウスの頸背部における輝度の平均値をPhotoms/secとして算出し、これを頸背部における遺伝子発現活性の指標とした。
【0277】
3.結果
結果を図11に示す。値が高い程、即ち総ルシフェラーゼ活性が高い程、遺伝子発現が高いことを意味する。本発明のカチオン性脂質を用いたLNP(E−Ph−P4C2_LNP)は、マウスの皮下において比較例2よりも高い遺伝子発現活性を示した。
【産業上の利用可能性】
【0278】
本発明によると、高効率で核酸を細胞内へ導入することが可能であるので、核酸医薬や遺伝子治療、生化学実験に有用である。
【0279】
本出願は、日本で出願された特願2018−060764を基礎としており、その内容は本明細書にすべて包含されるものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】