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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2019年10月3日
【発行日】2021年4月30日
(54)【発明の名称】カーボンナノチューブ線材
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/158 20170101AFI20210402BHJP
   D01F 9/12 20060101ALI20210402BHJP
   H01B 1/04 20060101ALI20210402BHJP
【FI】
   C01B32/158
   D01F9/12
   H01B1/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
【出願番号】特願2020-511132(P2020-511132)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2019年3月29日
(31)【優先権主張番号】特願2018-69826(P2018-69826)
(32)【優先日】2018年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(72)【発明者】
【氏名】境 沙和
【テーマコード(参考)】
4G146
4L037
5G301
【Fターム(参考)】
4G146AA11
4G146AB06
4G146AC01A
4G146AC01B
4G146AC03A
4G146AC03B
4G146AC20B
4G146AC22A
4G146AC22B
4G146AC23B
4G146AD20
4G146AD22
4G146AD26
4G146BC08
4G146BC09
4G146CB02
4G146CB09
4G146CB10
4G146CB26
4G146DA03
4L037CS04
4L037FA04
4L037UA04
5G301BA03
(57)【要約】
本発明は、複数のカーボンナノチューブ(11a)で構成されるカーボンナノチューブ集合体(11)からなるカーボンナノチューブ線材(10)に関する。複数のカーボンナノチューブ(11a)において、複数のカーボンナノチューブ(11a)の平均長さが150μm以下であり、平均長さのCV値が0.40以上であり、複数のカーボンナノチューブ(11a)の平均径が4nm未満であり、平均径のCV値が0.18以上であり、かつ、3μm以上の長さのカーボンナノチューブの割合が60%以上である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のカーボンナノチューブで構成されるカーボンナノチューブ集合体からなるカーボンナノチューブ線材であって、
前記複数のカーボンナノチューブにおいて、前記複数のカーボンナノチューブの平均長さが150μm以下であり、前記平均長さのCV値が0.40以上であり、前記複数のカーボンナノチューブの平均径が4nm未満であり、前記平均径のCV値が0.18以上であり、かつ、3μm以上の長さのカーボンナノチューブの割合が60%以上であることを特徴とする、カーボンナノチューブ線材。
【請求項2】
前記複数のカーボンナノチューブの平均長さが1μm以上である、請求項1に記載のカーボンナノチューブ線材。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブ線材の密度が0.5g/cm以上である、請求項1または2に記載のカーボンナノチューブ線材。
【請求項4】
前記複数のカーボンナノチューブにおいて、前記平均長さのCV値が1.2以下であり、前記平均径が1nm以上であり、前記平均径のCV値が0.80以下であり、かつ、前記3μm以上の長さのカーボンナノチューブの割合が95%以下である、請求項1乃至3までのいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ線材。
【請求項5】
前記複数のカーボンナノチューブにおいて、前記平均長さのCV値が0.70以上であり、前記平均径が1.2nm以上であり、前記平均径のCV値が0.50以上0.80以下であり、かつ、前記3μm以上の長さのカーボンナノチューブの割合が70%以上95%以下である、請求項1乃至4までのいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ線材。
【請求項6】
前記カーボンナノチューブ線材が単線である、請求項1乃至5までのいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ線材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、径、長さにバラツキのある複数のカーボンナノチューブで構成されたカーボンナノチューブ集合体からなるカーボンナノチューブ線材に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブ(以下、「CNT」ということがある。)は、様々な特性を有する素材であり、多くの分野への応用が期待されている。
【0003】
例えば、CNTは、軽量であると共に、導電性、熱伝導性、強度等の諸特性に優れるため、線材の材料として用いることが考えられる。
【0004】
一方、CNTを線材として使用する場合、カーボンナノチューブ線材(以下、「CNT線材」ということがある。)は、複数のCNTのパッキングにより得られるカーボンナノチューブ集合体(以下、「CNT集合体」ということがある。)から形成される。この場合、強度を高めるために各CNT間の隙間ができるだけ小さく、かつ導電性を高めるために各CNTが一方向に整列して配向していることが理想的である。
【0005】
例えば、小さい径のCNTを使用することで、各CNTを高密度にパッキングすることができ、高導電性が得られると考えられる。このような高導電性を示すCNT線材の実現には、各CNTが全て一方向に整列して配向していることが必要である。しかしながら、各CNTを全て一方向に整列させ、配向させることは技術的に非常に困難である。また、実際には、各CNTはランダムに配向し、各CNT間に隙間が多く存在すると推察される。
【0006】
特許文献1には、圧縮応力が加えられている環境下でCNTを線材化することにより、CNT同士の接触部の面積、接触圧力を大きくし、線材の導電性を高める技術が開示されている。しかしながら、外部から圧縮応力を加えても、CNT線材の長手方向における配向性を高めることはできない。そのため、導電性にバラツキが生じる傾向にあり、特に、ランダムな配向性を示し得る径の小さいCNTを使用する場合、この傾向が顕著になるとの問題がある。
【0007】
径以外のCNTの要素として、例えば、図5(a)に示されるような長いCNTを用いることで、導電パスが高まり、導電性を向上させることができると考えられる。しかしながら、長いCNTのみでは、図5(b)に示されるように、各CNT間の隙間が大きく、パッキングが疎になり、強度が劣ることが予想される。
【0008】
一方、例えば、図6(a)に示されるような短いCNTを用いることで、小さい径のCNTの使用と同様、各CNTを高密度にパッキングすることができると考えらえる。しかしながら、図6(b)に示されるように、長さ方向(長手方向)の導電パスが短いため、CNT線材の長手方向における導電性が劣ってしまうことが予想される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2013−212980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記事情に鑑み、本発明の目的は、強度および導電性に優れると共に、カーボンナノチューブが高密度にパッキングされたカーボンナノチューブ線材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記問題に対して鋭意検討を行った結果、径および長さに所定のバラツキがある複数のカーボンナノチューブで構成されるカーボンナノチューブ集合体を用いることにより、複数のカーボンナノチューブ間の隙間を少なくすることができると共に、より高密度に複数のカーボンナノチューブをパッキングできるとの知見を得た。これにより、長さ方向にも導電性が高く、かつ、強度も高いカーボンナノチューブ線材が得られることを見出した。
【0012】
すなわち、本発明の要旨構成は、以下の通りである。
[1]複数のカーボンナノチューブで構成されるカーボンナノチューブ集合体からなるカーボンナノチューブ線材であって、
前記複数のカーボンナノチューブにおいて、前記複数のカーボンナノチューブの平均長さが150μm以下であり、前記平均長さのCV値が0.40以上であり、前記複数のカーボンナノチューブの平均径が4nm未満であり、前記平均径のCV値が0.18以上であり、かつ、3μm以上の長さのカーボンナノチューブの割合が60%以上である、カーボンナノチューブ線材。
[2]前記複数のカーボンナノチューブの平均長さが1μm以上である、上記[1]に記載のカーボンナノチューブ線材。
[3]前記カーボンナノチューブ線材の密度が0.5g/cm以上である、上記[1]または[2]に記載のカーボンナノチューブ線材。
[4]前記複数のカーボンナノチューブにおいて、前記平均長さのCV値が1.2以下であり、前記平均径が1nm以上であり、前記平均径のCV値が0.80以下であり、かつ、前記3μm以上の長さのカーボンナノチューブの割合が95%以下である、上記[1]乃至[3]までのいずれかに記載のカーボンナノチューブ線材。
[5]前記複数のカーボンナノチューブにおいて、前記平均長さのCV値が0.70以上であり、前記平均径が1.2nm以上であり、前記平均径のCV値が0.50以上0.80以下であり、かつ、前記3μm以上の長さのカーボンナノチューブの割合が70%以上95%以下である、上記[1]乃至[4]までのいずれかに記載のカーボンナノチューブ線材。
[6]前記カーボンナノチューブ線材が単線である、上記[1]乃至[5]までのいずれかに記載のカーボンナノチューブ線材。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数のカーボンナノチューブにおいて、複数のカーボンナノチューブの平均長さが150μm以下であり、平均長さのCV値が0.40以上であり、複数のカーボンナノチューブの平均径が4nm未満であり、平均径のCV値が0.18以上であり、かつ、3μm以上の長さのカーボンナノチューブの割合が60%以上であることにより、強度および導電性に優れると共に、カーボンナノチューブが高密度にパッキングされたカーボンナノチューブ線材を提供することができる。
【0014】
本発明によれば、複数のカーボンナノチューブにおいて、平均長さのCV値が1.2以下であり、複数のカーボンナノチューブの平均径が1nm以上であり、平均径のCV値が0.80以下であり、かつ、3μm以上の長さのカーボンナノチューブの割合が95%以下であることにより、より導電性に優れ、カーボンナノチューブがより高密度にパッキングされたカーボンナノチューブ線材を提供することができる。
【0015】
本発明によれば、複数のカーボンナノチューブにおいて、平均長さのCV値が0.70以上であり、複数のカーボンナノチューブの平均径が1.2nm以上であり、平均径のCV値が0.50以上0.80以下であり、かつ、3μm以上の長さのカーボンナノチューブの割合が70%以上95%以下であることにより、カーボンナノチューブが非常に高密度でパッキングされたカーボンナノチューブ線材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の実施形態例に係るカーボンナノチューブ線材の構成の一例を示す概略図である。
図2図2は、本発明の実施形態例に係るカーボンナノチューブ線材において、異なる長さのカーボンナノチューブが分散された状態の一例を示す概略図である。
図3図3は、本発明の実施形態例に係るカーボンナノチューブ線材において、異なる径のカーボンナノチューブが分散された状態の一例を示す概略図である。
図4図4は、カーボンナノチューブ集合体を構成する複数のカーボンナノチューブのWAXSによるq値−強度の関係を示すグラフである。
図5図5(a)は、長いカーボンナノチューブの一例を示し、図5(b)は、長いカーボンナノチューブのみが配向された状態の一例を示す概略図である。
図6図6(a)は、短いカーボンナノチューブの一例を示し、図6(b)は、短いカーボンナノチューブのみが配向された状態の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施形態例に係るカーボンナノチューブ線材について、図面を用いながら詳細に説明する。
【0018】
<カーボンナノチューブ線材>
図1に示されるように、本発明に係るカーボンナノチューブ線材10は、複数のCNT11a,11a,・・・で構成されるCNT集合体11からなる。CNT集合体11は、1層以上の層構造を有する複数のCNT11a,11a,・・・で構成されており、CNT線材10は、CNT集合体11の単数から、または複数が束ねられて形成されている。ここで、CNT線材とはCNTの割合が90質量%以上のCNT線材を意味する。なお、CNT線材におけるCNT割合の算定においては、メッキとドーパントは除かれる。CNT集合体11の長手方向が、CNT線材10の長手方向を形成しているため、CNT集合体11は、線状となっている。CNT線材10における複数のCNT集合体11,11,・・・は、その長軸方向がほぼ揃って配向している。CNT線材10は、1本のCNT線材10からなる単線(素線)であっても、複数本のCNT線材10を撚り合わせた撚り線の状態であってもよいが、配向性の観点から、単線であることが好ましい。また、CNT線材10を撚り線の形態とすることで、CNT線材10の円相当直径、断面積を適宜調節することができる。単線であるCNT線材10の円相当直径は、特に限定されないが、例えば、0.01mm以上4.0mm以下である。また、撚り線としたCNT線材10の円相当直径は、特に限定されないが、例えば、0.1mm以上15mm以下である。
【0019】
[CNT集合体]
CNT集合体11は、複数のCNT11aの束であり、CNT11aの長手方向が、CNT集合体11の長手方向を形成している。CNT集合体11における複数のCNT11a,11a,・・・は、その長軸方向がほぼ揃って配向している。CNT集合体11の円相当直径は、例えば、20nm以上1000nm以下であり、より典型的には、20nm以上80nm以下である。
【0020】
[CNT]
CNT集合体11を構成するCNT11aは、単層構造又は複層構造を有する筒状体が糸状に形成された物質であり、単層構造のCNTはSWNT(Single-walled nanotube)、複層構造のCNTはMWNT(Multi-walled nanotube)と呼ばれる。図1では、便宜上、2層構造を有するCNT11aのみを記載しているが、CNT集合体11には、3層構造を有するCNTまたは単層構造の層構造を有するCNTも含まれていてもよく、3層構造を有するCNTまたは単層構造の層構造を有するCNTから形成されていてもよい。但し、CNTが4層構造以上であると、CNTの径のサイズ、分布が大きくなり、所定のバラツキで配向させることが困難となる。そのため、CNTは、単層構造、2層構造または3層構造であることが好ましく、単層構造または2層構造であることがより好ましい。
【0021】
2層構造を有するCNT11aは、六角形格子の網目構造を有する2つの筒状体T1、T2が略同軸で配された3次元網目構造体であり、DWNT(Double-walled nanotube)と呼ばれる。構成単位である六角形格子は、その頂点に炭素原子が配された六員環であり、他の六員環と隣接してこれらが連続的に結合している。
【0022】
[CNTの長さ]
次に、CNT線材10におけるCNT11aの長さについて説明する。
【0023】
複数のCNT11a,11a,・・・において、複数のCNT11a,11a,・・・の平均長さ(以下、単に「平均長さ」ともいう。)は、150μm以下である。平均長さが150μmより長い場合、短いCNTが少な過ぎるため、複数のCNT11a,11a,・・・間に大きな隙間が生じる。そのため、複数のCNT11a,11a,・・・のパッキングが疎になり、高い強度を得ることができない。また、パッキングが疎になることに基づき、複数のCNT11a,11a,・・・同士の接触面積が減少し、導電性が劣ってしまう。よって、平均長さが150μm以下であることにより、強度および導電性に優れると共に、複数のCNT11a,11a,・・・が高密度にパッキングされたCNT線材10を得ることができる。一方、平均長さの下限値は、1μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましく、8μm以上であることがさらに好ましい。平均長さが1μm未満であると、長いCNTが少な過ぎるため、長さ方向(長手方向)の導電パスが短く、優れた導電性を得ることが困難となる傾向にある。また、CNTの長さが長いほど、CNT同士が互いに絡まって繋がりを形成しやすく、CNT線材の長さ方向(長手方向)に沿って安定して密にパッキングされやすい。一方、長いCNTが少な過ぎると、長いCNT同士の繋がりが少なくなる。平均長さが1μm以上であることにより、CNT線材の長さ方向に沿って安定した密なパッキングがしやすくなり、これにより高強度化を図ることも可能となる。
【0024】
複数のCNT11a,11a,・・・において、平均長さのCV値(Coefficient of Variation)は0.40以上であり、0.70以上であることが好ましい。ここで、平均長さのCV値とは、平均長さに対する標準偏差の程度を意味し、具体的には、複数のCNT11a,11a,・・・の平均長さに対する(平均長さの値の分散)1/2を表す。平均長さのCV値は、下記の式(1)で算出することができ、平均長さのCV値が小さいほど、複数のCNT11a,11a,・・・が単分散の傾向にあることを意味し、平均長さのCV値が大きいほど、複数のCNT11a,11a,・・・が多分散の傾向にあることを意味する。平均長さのCV値が0.40未満であると、単分散になり過ぎであり、長いCNTと短いCNTとのバラツキが少ないため、長いCNT間の隙間を短いCNTで十分に埋めることができなくなる。そのため、複数のCNT11a,11a,・・・のパッキングが疎になり、優れた強度を得ることができない。また、パッキングが疎になることに基づき、複数のCNT11a,11a,・・・同士の接触面積が減少するため、導電性が劣ってしまう。よって、平均長さのCV値が0.40以上であることにより、強度および導電性に優れると共に、複数のCNT11a,11a,・・・が高密度にパッキングされたCNT線材10を得ることができる。また、平均長さのCV値が0.70以上である場合、複数のCNT11a,11a,・・・のパッキングがより密になり、パッキングの高密度化に基づき、強度および導電性も顕著に向上する。一方、平均長さのCV値の上限値は、1.2以下であることが好ましい。平均長さのCV値が1.2より大きい場合、より多分散であるものの、平均長さのバラツキが多過ぎるため、各CNTはランダムに配向しやすくなり、各CNT間に隙間が多くなる傾向にある。
【0025】
平均長さのCV値=標準偏差÷平均長さ・・・(1)
【0026】
複数のCNT11a,11a,・・・において、3μm以上の長さのカーボンナノチューブの割合が60%以上であり、70%以上であることが好ましい。当該割合は、複数のCNT11a,11a,・・・の総数に対する、3μm以上の長さのカーボンナノチューブの個数の割合を意味する。当該割合が60%未満であると、3μm以上の比較的長いCNTが少な過ぎるため、長さ方向の導電パスが短く、優れた導電性を得ることができない。また、長いCNT同士の繋がりが少なくなるため、CNT線材の長さ方向に沿って安定した密なパッキングが困難となり、これにより優れた強度を得ることができなくなる。よって、3μm以上の長さのCNTの割合が60%以上であることにより、強度および導電性に優れると共に、複数のCNT11a,11a,・・・が高密度にパッキングされたCNT線材10を得ることができる。一方、当該割合の上限値は、95%以下であることが好ましい。当該割合が95%より多い場合、短いCNTが少な過ぎるため、複数のCNT11a,11a,・・・間に大きな隙間が生じやすい。そのため、複数のCNT11a,11a,・・・のパッキングが疎になりやすく、複数のCNT11a,11a,・・・同士の接触面積が減少して、高い導電性が得られにくい傾向にある。
【0027】
このように、複数のCNT11a,11a,・・・において、平均長さ、該平均長さのCV値および3μm以上の長さのカーボンナノチューブの割合を制御することにより、例えば、図2に示すように、長いCNT同士の隙間を短いCNTで適切に埋めることができる。これにより、複数のCNT11a,11a,・・・のパッキングが密になり、その上、CNT線材の長さ方向に沿って安定して密にパッキングされやすく、優れた強度を得ることができる。また、長いCNTと短いCNTとが互いに接触し、複数のCNT11a,11a,・・・間の接触面積が長さ方向で増大するため、優れた導電性が付与される。
【0028】
[CNTの径]
次に、CNT線材10におけるCNT11aの径について説明する。
【0029】
複数のCNT11a,11a,・・・において、複数のCNT11a,11a,・・・の平均径(以下、単に「平均径」ともいう。)は4nm未満である。平均径が4nm以上であると、径が小さいCNTが少な過ぎるため、径が大きいCNT間の隙間を径が小さいCNTで十分に埋めることができなくなる。そのため、複数のCNT11a,11a,・・・のパッキングが疎になり、優れた強度を得ることができない。また、パッキングが疎になることに基づき、複数のCNT11a,11a,・・・同士の接触面積が減少するため、導電性が劣ってしまう。よって、平均径が4nm以上であることにより、強度および導電性に優れると共に、複数のCNT11a,11a,・・・が高密度にパッキングされたCNT線材10を得ることができる。一方、平均径の下限値は、1nm以上であることが好ましく、1.2nm以上であることがより好ましい。平均径が1nm未満である場合、径が小さいCNTが多すぎるため、径が小さいCNTがランダムに配向しやすくなり、これにより、径が大きいCNT間の隙間を径が小さいCNTで十分に埋めにくくなる。そのため、複数のCNT11a,11a,・・・のパッキングが疎になり、高い強度を得ることができない場合がある。
【0030】
複数のCNT11a,11a,・・・において、平均径のCV値(Coefficient of Variation)は0.18以上であり、0.50以上であることが好ましい。ここで、平均径のCV値とは、平均径に対する標準偏差の程度を意味し、具体的には、複数のCNT11a,11a,・・・の平均径に対する(平均径の値の分散)1/2の割合を表す。CV値は、下記の式(2)で算出することができ、CV値が小さいほど、複数のCNT11a,11a,・・・が単分散の傾向にあることを意味し、CV値が大きいほど、複数のCNT11a,11a,・・・が多分散の傾向にあることを意味する。CV値が0.18未満であると、単分散になり過ぎであり、径のバラツキが少ないため、径が大きいCNT間の隙間を径が小さいCNTで十分に埋めることができなくなる。そのため、複数のCNT11a,11a,・・・のパッキングが疎になり、優れた強度を得ることができない。また、パッキングが疎になることに基づき、複数のCNT11a,11a,・・・同士の接触面積が減少するため、導電性が劣ってしまう。そのため、平均径のCV値が0.18以上であることにより、強度および導電性に優れると共に、複数のCNT11a,11a,・・・が高密度にパッキングされたCNT線材10を得ることができる。また、平均径のCV値が0.50以上である場合、複数のCNT11a,11a,・・・のパッキングがより密になり、さらなる高密度化を図ることができる。一方、CV値の上限値は、0.80以下であることが好ましい。CV値が0.80より大きい場合、より多分散であるものの、径のバラツキが多過ぎるため、複数のCNT11a,11a,・・・が最充填構造をとりにくくなり、これにより、径が大きいCNT同士で集まった部分の空隙が大きくなる傾向にある。そのため、密なパッキングが困難になりやすく、高い強度が得られにくい傾向にあり、さらに、複数のCNT11a,11a,・・・同士の接触面積が減少すると、高い導電性が得られにくい傾向にある。
【0031】
平均径のCV値=標準偏差÷平均径・・・(2)
【0032】
このように、複数のCNT11a,11a,・・・において、平均径および該平均径の値のCV値を制御することにより、例えば、図3に示すように、径の大きいCNT同士の隙間を径の小さいCNTで適切に埋めることができる。これにより、複数のCNT11a,11a,・・・のパッキングが密になり、優れた強度を得ることができる。また、径の大きいCNTと径の小さいCNTとが互いに適度に接触し、複数のCNT11a,11a,・・・間の接触面積が幅方向で増大するため、優れた導電性が付与される。
【0033】
上記の各パラメータの組合せのうち、複数のCNT11a,11a,・・・において、平均長さのCV値が1.2以下であり、平均径が1nm以上であり、平均径のCV値が0.80以下であり、かつ、3μm以上の長さのカーボンナノチューブの割合が95%以下である場合、より導電性に優れ、CNT11a,11a,・・・がより高密度にパッキングされたCNT線材10を得ることができる。特に、複数のCNT11a,11a,・・・において、平均長さのCV値が0.70以上であり、平均径が1.2nm以上であり、平均径のCV値が0.50以上0.80以下であり、かつ、3μm以上の長さのカーボンナノチューブの割合が70%以上95%以下である場合、CNT11a,11a,・・・が非常に高密度でパッキングされたCNT線材10を得ることができる。
【0034】
[CNTの配列構造及び密度]
次に、CNT集合体11を構成する複数のCNT11aの配列構造及び密度について説明する。
【0035】
図4は、CNT集合体11を構成する複数のCNT11a,11a,・・・のWAXS(広角X線散乱)によるq値−強度の関係を示すグラフである。
【0036】
WAXSは、数nm以下の大きさの物質の構造等を評価するのに適している。例えば、WAXSを用いて、以下の方法でX線散乱画像の情報を分析することで、外径が数nm以下であるCNT11aの密度を評価することができる。任意の1つのCNT集合体11について散乱ベクトルqと強度の関係を分析した結果、図4に示すように、q=3.0nm−1〜4.0nm−1付近に見られる(10)ピークのピークトップのq値から見積られる格子定数の値が測定される。この格子定数の測定値と、ラマン分光法またはTEMなどで観測されるCNT集合体の直径とに基づいて、CNT11a,11a,・・・が平面視で六方最密充填構造を形成していることを確認することができる。よって、CNT線材10内で複数のCNT集合体の直径分布が狭く、複数のCNT11a,11a,・・・が、規則正しく配列、すなわち、高密度を有することで、六方最密充填構造を形成して高密度で存在しているといえる。このように、複数のCNT集合体11,11・・・が良好な配向性を有していると共に、さらに、CNT集合体11を構成する複数のCNT11a,11a,・・・が規則正しく配列して高密度で配置されているので、CNT線材10の熱は、CNT集合体11の長手方向に沿って円滑に伝達して行きながら放熱されやすくなる。よって、CNT線材10は、上記CNT集合体11とCNT11aの配列構造または密度を調節することで、放熱ルートを長手方向、径の断面方向にわたり調節できるので、金属製の芯線と比較して優れた放熱特性を発揮する。
【0037】
高密度を得ることで放熱特性をより向上させる点から、複数のCNT11a,11a,・・・の密度を示すX線散乱による強度の(10)ピークにおけるピークトップのq値が2.0nm−1以上5.0nm−1以下であることが好ましく、かつ半値幅Δq(FWHM)が0.1nm−1以上2.0nm−1以下であることがより好ましい。
【0038】
[CNT線材の製造方法]
CNT11aは、浮遊触媒法(特許第5819888号公報)、基板法(特許第5590603号公報)等の方法により作製することができる。例えば、短いCNTは浮遊触媒法で作製し、長いCNTは基板法で作製することができる。そして、径および長さに所定のバラツキがある複数のCNT11a,11a,・・・を含む分散液を使用し、得られた分散液(CNT集合体11)を凝固することにより、CNT線材10を作製するための凝集液が得られる。
【0039】
CNT線材10の素線は、CNT集合体11を含む凝集液を用いて、乾式紡糸(特許第5819888号公報、特許第5990202号公報、特許第5350635号公報)、湿式紡糸(特許第5135620号公報、特許第5131571号公報、特許第5288359号公報)、液晶紡糸(特表2014−530964号公報)等の方法で作製することができる。
【0040】
また、CNT集合体11及びCNT11aの配向性、並びにCNT11aの配列構造及び密度は、乾式紡糸、湿式紡糸、液晶紡糸等の紡糸方法と該紡糸方法の紡糸条件とを適宜選択することで調節することができる。
【0041】
<特性>
[導電性]
本発明に係るCNT線材は、導電性として、体積抵抗率が8.0×10−5Ω・cm未満であることが好ましく、4.0×10−5Ω・cm未満であることがより好ましく、1.0×10−5Ω・cm未満であることがさらに好ましい。体積抵抗率が8.0×10−5Ω・cm未満であれば、CNT線材が優れた導電性を有していると評価できる。
【0042】
[密度]
本発明に係るCNT線材は、密度が0.5g/cm以上であることが好ましく、1.4g/cm以上であることがより好ましく、1.6g/cm以上であることがさらに好ましい。密度が0.5g/cm以上であれば、CNTが高密度でパッキングされていると評価できる。
【0043】
[強度]
本発明に係るCNT線材は、引張強度が400MPa以上であることが好ましく、450MPa以上であることがより好ましく、500MPa以上であることがさらに好ましい。引張強度が400MPa以上であれば、CNT線材が優れた強度を有していると評価できる。
【0044】
本発明に係るCNT線材は、自動車、電気機器、制御機器等の様々な分野における電力線、信号線としての電線を構成する導体として使用することができ、特に、車両用のワイヤハーネス、モーター等の一般電線の導体としての使用に好適である。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0046】
<CNT線材の作製>
実施例1〜11、比較例1〜5について、以下のようにしてCNT線材を作製した。
【0047】
[実施例1〜11、比較例1〜5について]
浮遊触媒法で作製した所定の長さを有する短いCNTと、基板法で作製した所定の長さを有する長いCNTをそれぞれ作成した。得られた各CNTを遠心分離し、さらにフィルタを介して分画することにより、径および長さが異なる複数のCNTサンプルの分散液を作製した。分画した複数のCNTサンプルの平均径をそれぞれ測定し、所定の平均径を有するCNTサンプルの分散液同士を混合することで、平均径のCV値を調整した。また、分画した複数のCNTサンプルの平均長さをそれぞれ測定し、所定の平均長さを有するCNTサンプルの分散液同士を混合することで、平均長さのCV値および3μm以上の長さのCNTの割合を調整した。このように、長さおよび径の大きさが調整された分散液から得られた凝集液を湿式紡糸により紡糸することにより、円相当直径0.1mmのCNT線材の素線(単線)を得た。
【0048】
<測定項目>
実施例1〜11および比較例1〜5で使用したCNTの長さ、径には以下のように測定した。
【0049】
[平均長さ]
CNTの平均長さは、SEM(走査型電子顕微鏡)またはAFM(原子間力顕微鏡)を用いて、SEM画像またはAFM画像から算出した。具体的には、CNT分散液を滴下したSi基板をAFM画像で観察した。走査モードはダイナミックモード、走査範囲は30μm×30μmで行った。30μmを超える長さのCNTの存在が確認された場合は、SEMでの観察を行った。基板はAFM観察で用いたものをそのまま用いた。加速電圧は1kV、倍率を1000倍にして観察し、CNTの2点間の距離(長尺長さ)を測定した。これを別のCNTでも同様に行い、CNT200本の長尺長さの平均値を平均長さとして算出した。
【0050】
[平均長さのCV値]
平均長さのCV値は、下記式(1)より算出した。具体的には、平均長さの測定で取得したAFM画像およびSEM画像をImageJで読み込み、CNT200本に関して平均長さと同様に長尺長さを測定した値に基づいて算出した。
【0051】
平均長さのCV値=標準偏差÷平均長さ・・・(1)
【0052】
[3μm以上の長さのCNTの割合]
3μm以上の長さのCNTの割合は、平均長さの測定で取得したSEM画像またはAFM画像から算出した。具体的には、分散の測定と同様、AFM画像またはSEM画像をImageJで読み込み、CNT200本の長さを測り、3μm以上の長さの割合を算出した。
【0053】
[平均径]
CNTの平均径は、TEM(透過型電子顕微鏡)を用いて、TEM画像から算出した。具体的には、CNT分散液をCuグリッドに滴下し、加速電圧200kV、倍率は20万倍で観察し、CNTの幅方向の側面(径方向の側面)において、CNTの長手方向(長さ方向)と直交する端と端を結んだ線を直径として測定した。これを別のCNTでも同様に行い、CNT200本の直径の平均値を平均径として算出した。
【0054】
[平均径のCV値]
平均径のCV値は、下記式(2)より算出した。具体的には、TEM画像をImageJで読み込み、CNT200本に関して平均径と同様に直径を測定した値に基づいて算出した。
【0055】
平均径のCV値=標準偏差÷平均径・・・(2)
【0056】
<評価項目>
上記のようにして作製したCNT線材について、以下の評価を行った。
【0057】
[導電性]
CNT線材の導電性の評価として、四端子法により体積抵抗率を測定した。具体的には、抵抗測定機にCNT線材を接続し、四端子法により抵抗測定を実施した。体積抵抗率rは、r=RA/L(R:抵抗、A:CNT線材の断面積、L:測定長さ)の計算式に基づいて算出した。体積抵抗率が1.0×10−5Ω・cm未満の場合を「◎」、1.0×10−5Ω・cm以上4.0×10−5Ω・cm未満の場合を「○」、4.0×10−5Ω・cm以上8.0×10−5Ω・cm未満の場合を「△」、8.0×10−5Ω・cm以上の場合を「×」と評価した。
【0058】
[密度]
CNT線材の密度の評価として、浮沈法により密度を測定した。具体的には、ポリタングステン酸ナトリウムと水の割合を調製し、CNT線材を水溶液に入れ、浮沈を評価することにより測定した。密度が1.6g/cm以上の場合を「◎」、1.4g/cm以上1.6g/cm未満の場合を「○」、0.5g/cm以上1.4g/cm未満の場合を「△」、0.5g/cm未満の場合を「×」と評価した。
【0059】
[強度]
CNT線材の強度の評価として、引張強度を測定した。具体的には、CNT線材の引張強度を万能試験機の引張試験により測定した。ロードセルは100Nとし、試験速度は6mm/minで測定した。マイクロスコープで観察し得たCNT線材の直径から断面積を求めた。引張強度は、s=F/A(s:引張強度、F:試験力、A:CNT線材の断面積)の計算式に基づいて算出した。引張強度が500MPa以上の場合を「◎」、450MPa以上500MPa未満の場合を「○」、400MPa以上450MPa未満の場合を「△」、400MPa未満の場合を「×」と評価した。
【0060】
作製したCNT線材の測定および評価結果について、下記表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
表1に示すように、径および長さに所定のバラツキがある複数のCNTを使用した本発明に係る実施例1〜11は、いずれも、強度および導電性に優れると共に、CNTが高密度でパッキングされたCNT線材が得られた。実施例1〜8、11は、導電性および密度がより優れており、特に、実施例1〜3、5〜8は、CNTが非常に高密度にパッキングされていた。
【0063】
一方、平均長さ、平均長さのCV値、平均径、平均径のCV値、3μm以上の長さのカーボンナノチューブの割合のいずれか、または2以上が本発明の適用範囲外である比較例1〜5では、いずれも、導電性、強度、密度の全てで劣っていた。
【符号の説明】
【0064】
10 カーボンナノチューブ線材
11 カーボンナノチューブ集合体
11a カーボンナノチューブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】