特表-19193976IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2019年10月10日
【発行日】2021年7月15日
(54)【発明の名称】車両用操向装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20210618BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20210618BHJP
   B62D 101/00 20060101ALN20210618BHJP
   B62D 113/00 20060101ALN20210618BHJP
   B62D 119/00 20060101ALN20210618BHJP
   B62D 117/00 20060101ALN20210618BHJP
【FI】
   B62D6/00
   B62D5/04
   B62D101:00
   B62D113:00
   B62D119:00
   B62D117:00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
【全頁数】33
【出願番号】特願2020-511688(P2020-511688)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2019年3月20日
(31)【優先権主張番号】特願2018-73909(P2018-73909)
(32)【優先日】2018年4月6日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078776
【弁理士】
【氏名又は名称】安形 雄三
(74)【代理人】
【識別番号】100200333
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100121887
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 好章
(72)【発明者】
【氏名】椿 貴弘
【テーマコード(参考)】
3D232
3D333
【Fターム(参考)】
3D232DA03
3D232DA04
3D232DA09
3D232DA15
3D232DA23
3D232DA63
3D232DA64
3D232DC01
3D232DC02
3D232DC03
3D232DC08
3D232DC22
3D232DD01
3D232DD06
3D232DD10
3D232DD17
3D232DE06
3D232DE10
3D232EB04
3D232EB11
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3D232EC23
3D232EC29
3D232EC37
3D333CB02
3D333CB13
3D333CB31
3D333CB46
3D333CD60
3D333CE12
3D333CE49
3D333CE53
(57)【要約】
【課題】路面の状態に影響されず、経年によるステアリング操舵系の機構特性の変化に左右されず、操舵角等に対して同等の操舵トルクを容易に実現することが可能な車両用操向装置を提供する。
【解決手段】操舵系をアシスト制御する車両用操向装置において、目標操舵トルクを生成する目標操舵トルク生成部と、目標操舵トルクを目標捩れ角に変換する変換部と、目標捩れ角に対して捩れ角を追従させるようなモータ電流指令値を演算する捩れ角制御部とを備え、目標操舵トルク生成部が、操舵角の大きさがラックエンド近傍に設定される所定の閾値を超えた場合、出力する第1トルク信号が操舵反力として機能する端当て特性補正部を具備し、第1トルク信号を目標操舵トルクとして出力し、モータ電流指令値に基づいてモータを駆動制御する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意のバネ定数を有するトーションバー及び前記トーションバーの捩れ角を検出するセンサを少なくとも備え、モータを駆動制御することにより、操舵系をアシスト制御する車両用操向装置において、
目標操舵トルクを生成する目標操舵トルク生成部と、
前記目標操舵トルクを目標捩れ角に変換する変換部と、
前記目標捩れ角に対して前記捩れ角を追従させるようなモータ電流指令値を演算する捩れ角制御部とを備え、
前記目標操舵トルク生成部が、
操舵角の大きさがラックエンド近傍に設定される所定の閾値を超えた場合、出力する第1トルク信号が操舵反力として機能する端当て特性補正部を具備し、前記第1トルク信号を前記目標操舵トルクとして出力し、
前記モータ電流指令値に基づいて前記モータを駆動制御することを特徴とする車両用操向装置。
【請求項2】
前記端当て特性補正部が、
前記操舵角の大きさが前記閾値を超えてから大きくなるに従って、前記第1トルク信号が徐々に大きくなるような特性を有する請求項1に記載の車両用操向装置。
【請求項3】
前記閾値が、車速又は舵角速度が速くなるに従って小さくなるように設定される請求項1又は2に記載の車両用操向装置。
【請求項4】
前記端当て特性補正部の特性がマップ又は数式で定義されている請求項2又は3に記載の車両用操向装置。
【請求項5】
前記目標操舵トルク生成部が、
前記端当て特性補正部からの出力に対して位相進み補償を行うことにより跳ね返りを低減する跳ね返り低減位相進み補償部を更に具備し、
前記跳ね返り低減位相進み補償部からの出力を前記第1トルク信号とする請求項1乃至4のいずれかに記載の車両用操向装置。
【請求項6】
前記跳ね返り低減位相進み補償部での前記位相進み補償が、車速又は舵角速度が速くなるに従って応答性が速くなるような特性を有する請求項5に記載の車両用操向装置。
【請求項7】
前記目標操舵トルク生成部が、
基本マップを用いて前記操舵角に応じた第2トルク信号を求める基本マップ部と、
車速感応であるダンパゲインマップを用いて角速度情報に基づいて第3トルク信号を求めるダンパ演算部とを更に具備し、
前記第2トルク信号及び前記第3トルク信号の内の少なくとも1つの信号並びに前記第1トルク信号より前記目標操舵トルクを算出する請求項1乃至6のいずれかに記載の車両用操向装置。
【請求項8】
前記基本マップが車速感応である請求項7に記載の車両用操向装置。
【請求項9】
前記目標操舵トルク生成部が、
前記第2トルク信号及び前記第3トルク信号の内の少なくとも1つの信号に前記第1トルク信号を加算することにより、前記目標操舵トルクを算出する請求項7又は8に記載の車両用操向装置。
【請求項10】
前記目標操舵トルク生成部が、
前記第2トルク信号及び前記第3トルク信号の内の少なくとも1つの信号に前記第1トルク信号を乗算することにより、前記目標操舵トルクを算出する請求項7又は8に記載の車両用操向装置。
【請求項11】
前記目標操舵トルク生成部が、
前記基本マップ部の前段又は後段に、位相補償を行なう位相補償部を更に具備し、
前記基本マップ部及び前記位相補償部を介して、前記操舵角に応じた前記第2トルク信号を求める請求項7乃至10のいずれかに記載の車両用操向装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トーションバー等の捩れ角に基づいて所望の操舵トルクを実現し、路面の状態に影響されず、経年による機構系特性の変化に左右されない高性能な車両用操向装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用操向装置の1つである電動パワーステアリング装置(EPS)は、車両の操舵系にモータの回転力でアシスト力(操舵補助力)を付与するものであり、インバータから供給される電力で制御されるモータの駆動力を、減速機構を含む伝達機構により、ステアリングシャフト或いはラック軸にアシスト力として付与する。かかる従来の電動パワーステアリング装置は、アシスト力を正確に発生させるため、モータ電流のフィードバック制御を行っている。フィードバック制御は、操舵補助指令値(電流指令値)とモータ電流検出値との差が小さくなるようにモータ印加電圧を調整するものであり、モータ印加電圧の調整は、一般的にPWM(パルス幅変調)制御のデューティの調整で行っている。
【0003】
電動パワーステアリング装置の一般的な構成を図1に示して説明すると、ハンドル1のコラム軸(ステアリングシャフト、ハンドル軸)2は減速機構3、ユニバーサルジョイント4a及び4b、ピニオンラック機構5、タイロッド6a,6bを経て、更にハブユニット7a,7bを介して操向車輪8L,8Rに連結されている。また、トーションバーを有するコラム軸2には、ハンドル1の操舵トルクTsを検出するトルクセンサ10及び操舵角θhを検出する舵角センサ14が設けられており、ハンドル1の操舵力を補助するモータ20が減速機構3を介してコラム軸2に連結されている。電動パワーステアリング装置を制御するコントロールユニット(ECU)30には、バッテリ13から電力が供給されると共に、イグニションキー11を経てイグニションキー信号が入力される。コントロールユニット30は、トルクセンサ10で検出された操舵トルクTsと車速センサ12で検出された車速Vsとに基づいてアシスト(操舵補助)指令の電流指令値の演算を行い、電流指令値に補償等を施した電圧制御指令値Vrefによって、EPS用モータ20に供給する電流を制御する。
【0004】
コントロールユニット30には、車両の各種情報を授受するCAN(Controller Area Network)40が接続されており、車速VsはCAN40から受信することも可能である。また、コントロールユニット30には、CAN40以外の通信、アナログ/ディジタル信号、電波等を授受する非CAN41も接続可能である。
【0005】
コントロールユニット30は主としてCPU(MCU、MPU等も含む)で構成されるが、そのCPU内部においてプログラムで実行される一般的な機能を示すと図2のようになる。
【0006】
図2を参照してコントロールユニット30の機能及び動作を説明すると、トルクセンサ10で検出された操舵トルクTs及び車速センサ12で検出された(若しくはCAN40からの)車速Vsは、電流指令値演算部31に入力される。電流指令値演算部31は、入力された操舵トルクTs及び車速Vsに基づいてアシストマップ等を用いて、モータ20に供給する電流の制御目標値である電流指令値Iref1を演算する。電流指令値Iref1は加算部32Aを経て電流制限部33に入力され、最大電流を制限された電流指令値Irefmが減算部32Bに入力され、フィードバックされているモータ電流値Imとの偏差I(=Irefm−Im)が演算され、その偏差Iが操舵動作の特性改善のためのPI(比例積分)制御部35に入力される。PI制御部35で特性改善された電圧制御指令値VrefがPWM制御部36に入力され、更に駆動部としてのインバータ37を介してモータ20がPWM駆動される。モータ20の電流値Imはモータ電流検出器38で検出され、減算部32Bにフィードバックされる。
【0007】
加算部32Aには補償信号生成部34からの補償信号CMが加算されており、補償信号CMの加算によって操舵システム系の特性補償を行い、収れん性や慣性特性等を改善するようになっている。補償信号生成部34は、セルフアライニングトルク(SAT)343と慣性342を加算部344で加算し、その加算結果に更に収れん性341を加算部345で加算し、加算部345の加算結果を補償信号CMとしている。
【0008】
このように、従来の電動パワーステアリング装置でのアシスト制御では、運転者の手入力にて加えられた操舵トルクをトーションバーの捩れトルクとしてトルクセンサで検出し、主にそのトルクに応じたアシスト電流としてモータ電流を制御している。しかしながら、この方法で制御を行なう場合、路面の状態(例えば傾斜)の違いにより、操舵角によって異なる操舵トルクとなってしまうことがある。モータ出力特性の経年使用によるバラツキによっても、操舵トルクに影響を与えることがある。
【0009】
かかる問題を解決するために、例えば、特許第5208894号公報(特許文献1)に示されるような電動パワーステアリング装置が提案されている。特許文献1の電動パワーステアリング装置では、運転者の触覚特性に基づく適切な操舵トルクを与えるために、操舵角又は操舵トルクと手応え量との関係に基づいて決定される操舵角と操舵トルクとの関係(操舵反力特性マップ)に基づいて、操舵トルクの目標値を設定している。
【0010】
また、電動パワーステアリング装置でのアシスト制御において、操舵系の最大舵角(ラックエンド)の近傍で大きなアシストトルクがモータにより付加されると、操舵系が最大舵角に至った時点、即ち端当て時に大きな衝撃が生じ、打音(異音)が発生して、運転者が不快に感じる可能性がある。
【0011】
この端当て時での異音発生を抑制するために、例えば、特公平6−4417号公報(特許文献2)では、操舵系の操舵角が最大操舵角より所定値手前になったことを判定する操舵角判定手段を備えると共に、操舵角が最大操舵角より所定値手前になったときにモータへ供給する電力を減少させて、アシストトルクを減少させる補正手段を備えた電動式パワーステアリング装置が開示されている。特許第4115156号公報(特許文献3)では、調節機構が端位置に近づいているかどうかを決定し、調節機構が端位置に近づいていることがわかった場合、ステアリング補助を減少するように駆動手段を制御し、調節機構が端位置に近付く速度を決定するため、位置センサによって決定された調節速度が評価される電動パワーステアリング装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第5208894号公報
【特許文献2】特公平6−4417号公報
【特許文献3】特許第4115156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1の電動パワーステアリング装置では、操舵反力特性マップを予め求めておかなければならず、また、操舵トルクの目標値と検出される操舵トルクとの偏差に基づいて制御を行っているので、操舵トルクに対する影響が残ってしまうおそれがある。
【0014】
特許文献2に開示された電動式パワーステアリング装置では、モータのアシストトルクを減少させる特性が全く示されておらず、具体的な構成となっていない。また、補正手段がモータへ供給する電力を直接調整し、フィードバック制御に組み込まれていないので、スムーズな制御を行えないおそれがある。
【0015】
特許文献3に開示された電動パワーステアリング装置では、終端に近づく速度に応じてステアリング補助(アシスト量)を調整しているが、特許文献2と同様に、フィードバック制御に組み込まれていないので、スムーズな制御を行えないおそれがある。
【0016】
本発明は上述のような事情よりなされたものであり、本発明の目的は、路面の状態に影響されず、経年によるステアリング操舵系の機構特性の変化に左右されず、操舵角等に対して同等の操舵トルクを容易に実現することが可能であり、更に、運転者に操舵違和感を与えずに、端当て時の異音の発生を抑制し、衝撃力を抑制可能な車両用操向装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、任意のバネ定数を有するトーションバー及び前記トーションバーの捩れ角を検出するセンサを少なくとも備え、モータを駆動制御することにより、操舵系をアシスト制御する車両用操向装置に関し、本発明の上記目的は、目標操舵トルクを生成する目標操舵トルク生成部と、前記目標操舵トルクを目標捩れ角に変換する変換部と、前記目標捩れ角に対して前記捩れ角を追従させるようなモータ電流指令値を演算する捩れ角制御部とを備え、前記目標操舵トルク生成部が、操舵角の大きさがラックエンド近傍に設定される所定の閾値を超えた場合、出力する第1トルク信号が操舵反力として機能する端当て特性補正部を具備し、前記第1トルク信号を前記目標操舵トルクとして出力し、前記モータ電流指令値に基づいて前記モータを駆動制御することにより達成される。
【0018】
また、本発明の上記目的は、前記端当て特性補正部が、前記操舵角の大きさが前記閾値を超えてから大きくなるに従って、前記第1トルク信号が徐々に大きくなるような特性を有することにより、或いは、前記閾値が、車速又は舵角速度が速くなるに従って小さくなるように設定されることにより、或いは、前記端当て特性補正部の特性がマップ又は数式で定義されていることにより、或いは、前記目標操舵トルク生成部が、前記端当て特性補正部からの出力に対して位相進み補償を行うことにより跳ね返りを低減する跳ね返り低減位相進み補償部を更に具備し、前記跳ね返り低減位相進み補償部からの出力を前記第1トルク信号とすることにより、或いは、前記跳ね返り低減位相進み補償部での前記位相進み補償が、車速又は舵角速度が速くなるに従って応答性が速くなるような特性を有することにより、或いは、前記目標操舵トルク生成部が、基本マップを用いて前記操舵角に応じた第2トルク信号を求める基本マップ部と、車速感応であるダンパゲインマップを用いて角速度情報に基づいて第3トルク信号を求めるダンパ演算部とを更に具備し、前記第2トルク信号及び前記第3トルク信号の内の少なくとも1つの信号並びに前記第1トルク信号より前記目標操舵トルクを算出することにより、或いは、前記基本マップが車速感応であることにより、或いは、前記目標操舵トルク生成部が、前記第2トルク信号及び前記第3トルク信号の内の少なくとも1つの信号に前記第1トルク信号を加算することにより、前記目標操舵トルクを算出することにより、或いは、前記目標操舵トルク生成部が、前記第2トルク信号及び前記第3トルク信号の内の少なくとも1つの信号に前記第1トルク信号を乗算することにより、前記目標操舵トルクを算出することにより、或いは、前記目標操舵トルク生成部が、前記基本マップ部の前段又は後段に、位相補償を行なう位相補償部を更に具備し、前記基本マップ部及び前記位相補償部を介して、前記操舵角に応じた前記第2トルク信号を求めることにより、より効果的に達成される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の車両用操向装置によれば、目標操舵トルク生成部で生成される目標操舵トルクを基に求められる目標捩れ角に対して制御を行うことにより、目標捩れ角に捩れ角が追従するように動作し、所望の操舵トルクを実現し、運転者の操舵の感覚に基づく適切な操舵トルクを与えることができる。
【0020】
更に、捩れ角制御での目標値の基となる目標操舵トルクを、ラックエンドに近接するに従い、操舵反力が働くように、操舵角の大きさに対する閾値の設定によって調整することにより、端当て手前で適切な制動がかかり、運転者への操舵違和感を与えずに、端当てを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】電動パワーステアリング装置の概要を示す構成図である。
図2】電動パワーステアリング装置のコントロールユニット(ECU)内の構成例を示すブロック図である。
図3】EPS操舵系と各種センサの設置例を示す構造図である。
図4】本発明の構成例(第1実施形態)を示すブロック図である。
図5】目標操舵トルク生成部の構成例(第1実施形態)を示すブロック図である。
図6】基本マップの特性例を示す線図である。
図7】ダンパゲインマップの特性例を示す線図である。
図8】端当て特性マップの特性例(第1実施形態)を示す線図である。
図9】捩れ角制御部の構成例を示すブロック図である。
図10】出力制限部での上下限値の設定例を示す線図である。
図11】本発明の動作例を示すフローチャートである。
図12】目標操舵トルク生成部の動作例(第1実施形態)を示すフローチャートである。
図13】捩れ角制御部の動作例を示すフローチャートである。
図14】端当て付近まで操舵した場合の操舵角に対する目標操舵トルクの変化例を示す線図である。
図15】目標操舵トルク生成部の構成例(第2実施形態)を示すブロック図である。
図16】端当て特性マップの特性例(第2実施形態)を示す線図である。
図17】目標操舵トルク生成部の構成例(第3実施形態)を示すブロック図である。
図18】端当て特性マップの特性例(第3実施形態)を示す線図である。
図19】目標操舵トルク生成部の構成例(第4実施形態)を示すブロック図である。
図20】跳ね返り低減位相進み補償部による跳ね返り低減の効果に関するシミュレーション結果を示す図である。
図21】目標操舵トルク生成部の構成例(第5実施形態)を示すブロック図である。
図22】本発明の構成例(第6実施形態)を示すブロック図である。
図23】位相補償部の挿入例を示すブロック図である。
図24】SBWシステムの概要を示す構成図である。
図25】本発明の構成例(第7実施形態)を示すブロック図である。
図26】目標転舵角生成部の構成例を示すブロック図である。
図27】転舵角制御部の構成例を示すブロック図である。
図28】本発明の動作例(第7実施形態)を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、路面の状態に影響されず、操舵角等に対して同等の操舵トルクを実現するための車両用操向装置であり、トーションバー等の捩れ角を、操舵角等に応じた値に追従するように制御することにより所望の操舵トルクを実現している。
【0023】
以下に、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0024】
先ず、本発明に係る車両用操向装置の1つである電動パワーステアリング装置に関連する情報を検出する各種センサの設置例について説明する。図3は、EPS操舵系と各種センサの設置例を示す図であり、コラム軸2にはトーションバー2Aが備えられている。操向車輪8L,8Rには路面反力Fr及び路面情報μが作用する。トーションバー2Aを挟んでコラム軸2のハンドル側には上側角度センサが設けられ、トーションバー2Aを挟んでコラム軸2の操向車輪側には下側角度センサが設けられており、上側角度センサはハンドル角θを検出し、下側角度センサはコラム角θを検出する。操舵角θhはコラム軸2の上部に設けられた舵角センサで検出される。ハンドル角θ及びコラム角θの偏差から、下記数1及び数2によってトーションバーの捩れ角Δθ及びトーションバートルクTtを求めることができる。なお、Ktはトーションバー2Aのバネ定数である。
【0025】
【数1】
【0026】
【数2】
トーションバートルクTtは、例えば特開2008−216172号公報で示されるトルクセンサを用いて検出することも可能である。なお、本実施形態では、トーションバートルクTtを操舵トルクTsとしても扱うこととする。
【0027】
次に、本発明の構成例について説明する。
【0028】
図4は本発明の構成例(第1実施形態)を示すブロック図であり、運転者のハンドル操舵はEPS操舵系/車両系100内のモータでアシスト制御される。目標操舵トルクTrefを出力する目標操舵トルク生成部200には、操舵角θh及び車速Vsが入力される。目標操舵トルクTrefは変換部400で目標捩れ角Δθrefに変換され、目標捩れ角Δθrefは、トーションバー2Aの捩れ角Δθ及びモータ角速度ωmと共に捩れ角制御部300に入力される。捩れ角制御部300は、捩れ角Δθが目標捩れ角Δθrefとなるようなモータ電流指令値Imcを演算し、モータ電流指令値ImcによりEPSのモータが駆動される。
【0029】
図5は目標操舵トルク生成部200の構成例を示しており、目標操舵トルク生成部200は、基本マップ部210、微分部220、ダンパゲイン部230、端当て特性補正部240、乗算部250並びに加算部251及び252を備える。操舵角θhは基本マップ部210、微分部220及び端当て特性補正部240に入力され、車速Vsは基本マップ部210及びダンパゲイン部230に入力される。
【0030】
基本マップ部210は、基本マップを有し、基本マップを用いて、車速Vsをパラメータとするトルク信号(第2トルク信号)Tref_aを出力する。基本マップはチューニングにより調整されており、例えば、図6(A)に示されるように、トルク信号Tref_aは、操舵角θhの大きさ(絶対値)|θh|が増加するにつれて増加し、車速Vsが0[km/h]から増加するにつれても増加するようになっている。なお、図6(A)において、符号部211は操舵角θhの符号(+1、−1)を乗算部212に出力しており、操舵角θhの大きさからマップによりトルク信号Tref_aの大きさを求め、これに操舵角θhの符号を乗算し、トルク信号Tref_aを求める構成となっている。または、図6(B)に示されるように、正負の操舵角θhに応じてマップを構成しても良く、この場合、操舵角θhが正の場合と負の場合とで変化の態様を変えても良い。また、図6に示される基本マップは車速感応であるが、車速感応でなくても良い。
【0031】
微分部220は、操舵角θhを微分して角速度情報である舵角速度ωhを算出し、舵角速度ωhは乗算部250に入力される。
【0032】
ダンパゲイン部230は、舵角速度ωhに乗算されるダンパゲインDを出力する。乗算部250にてダンパゲインDを乗算された舵角速度ωhは、トルク信号(第3トルク信号)Tref_bとして加算部252に入力される。ダンパゲインDは、ダンパゲイン部230が有する車速感応型のダンパゲインマップを用いて、車速Vsに応じて求められる。ダンパゲインマップは、例えば、図7に示されるように、車速Vsが高くなるに従って徐々に大きくなる特性を有する。ダンパゲインマップは操舵角θhに応じて可変としても良い。なお、ダンパゲイン部230及び乗算部250でダンパ演算部を構成している。
【0033】
端当て特性補正部240は、操舵角θhの大きさ|θh|が、ラックエンド近傍に設定される所定の閾値θthを超えてから、操舵反力としてのトルク信号(第1トルク信号)Tref_cを出力するような特性のマップ(以下、「端当て特性マップ」とする)を有する。端当て特性マップは、例えば、図8(A)に示されるように、操舵角θhの大きさ|θh|が閾値θthを超えてから大きくなるに従って、トルク信号Tref_cはゼロから徐々に大きくなる特性を有する。図8(A)において、端当て特性マップは、操舵角θhの大きさ|θh|が閾値θthを超えてから傾きが連続的に大きくなるような特性になっており、これにより、操舵反力に急激な変化をつけることで端当てを抑制することができる。この際、傾きの最大値は、図6(A)に示される基本マップの傾きよりも大きい値となっており、例えば、操舵角10[deg]に対して3[Nm]以上の傾きとする。更に、閾値θthにおける傾きをゼロに設定した場合、トルク信号Tref_cが働き始めた際の切り替わりの違和感をより抑え、円滑な切り替えを実現することができる。図8(A)において、θlimは操舵角の機械的な限界値又は操舵角検出の測定限界値であり、端当て特性マップはこの限界値以下の領域で定義される。このように、端当て特性補正部によれば、操舵角θhの大きさが閾値θthを超えた場合に大きな操舵反力となる目標操舵トルクを与えることができるので、操舵機構の端までに操舵が及ばないようにすることができる。なお、端当て特性マップは、図8(A)に示されるような曲線的な特性ではなく、傾きが一定の直線的な特性でも良い。また、マップではなく、数式、例えば二次関数等によって特性を定義しても良い。更に、基本マップの場合と同様に、図8(A)において、符号部241は操舵角θhの符号(+1、−1)を乗算部242に出力しており、操舵角θhの大きさからマップによりトルク信号Tref_cの大きさを求め、これに操舵角θhの符号を乗算し、トルク信号Tref_cを求める構成となっている。または、図8(B)に示されるように、正負の操舵角θhに応じてマップを構成しても良く、この場合、操舵角θhが正の場合と負の場合とで変化の態様を変えても良い。
【0034】
トルク信号Tref_c、Tref_b及びTref_aは、加算部252及び251で順次加算され、目標操舵トルクTrefとして出力される。
【0035】
なお、舵角速度ωhは、操舵角θhに対する微分演算により求めているが、高域のノイズの影響を低減するために適度にローパスフィルタ(LPF)処理を実施している。また、ハイパスフィルタ(HPF)とゲインにより、微分演算とLPFの処理を実施しても良い。更に、舵角速度ωhは、操舵角θhではなく、上側角度センサが検出するハンドル角θ又は下側角度センサが検出するコラム角θに対して微分演算とLPFの処理を行って算出しても良い。舵角速度ωhの代わりにモータ角速度ωmを角速度情報として使用しても良く、この場合、微分部220は不要となる。
【0036】
変換部400は、トーションバー2Aのバネ定数Ktの逆数の符号を反転した−1/Ktの特性を有しており、目標操舵トルクTrefを目標捩れ角Δθrefに変換する。
【0037】
捩れ角制御部300は、目標捩れ角Δθref、捩れ角Δθ及びモータ角速度ωmに基づいてモータ電流指令値Imcを演算する。図9は捩れ角制御部300の構成例を示すブロック図であり、捩れ角制御部300は、捩れ角フィードバック(FB)補償部310、捩れ角速度演算部320、速度制御部330、安定化補償部340、出力制限部350、減算部361及び加算部362を備えている。変換部400から出力される目標捩れ角Δθrefは減算部361に加算入力され、捩れ角Δθは減算部361に減算入力されると共に、捩れ角速度演算部320に入力され、モータ角速度ωmは安定化補償部340に入力される。
【0038】
捩れ角FB補償部310は、減算部361で算出される目標捩れ角Δθrefと捩れ角Δθの偏差Δθに対して補償値CFB(伝達関数)を乗算し、目標捩れ角Δθrefに捩れ角Δθが追従するような目標捩れ角速度ωrefを出力する。補償値CFBは単純なゲインKppでも、PI制御の補償値など一般的に用いられている補償値でも良い。目標捩れ角速度ωrefは速度制御部330に入力される。捩れ角FB補償部310と速度制御部330により、目標捩れ角Δθrefに捩れ角Δθを追従させ、所望の操舵トルクを実現することが可能となる。
【0039】
捩れ角速度演算部320は、捩れ角Δθに対する微分演算により捩れ角速度ωtを算出し、捩れ角速度ωtは速度制御部330に入力される。微分演算として、HPFとゲインによる擬似微分を行なっても良い。また、捩れ角速度ωtを別の手段や捩れ角Δθ以外から算出し、速度制御部330に入力するようにしても良い。
【0040】
速度制御部330は、I−P制御(比例先行型PI制御)により、目標捩れ角速度ωrefに捩れ角速度ωtが追従するようなモータ電流指令値Imca1を算出する。減算部333で目標捩れ角速度ωrefと捩れ角速度ωtとの差分(ωref−ωt)を算出し、その差分を、ゲインKviを有する積分部331にて積分し、積分結果は減算部334に加算入力される。捩れ角速度ωtは比例部332にも入力され、ゲインKvpによる比例処理を施され、減算部334に減算入力される。減算部334での減算結果がモータ電流指令値Imca1として出力される。なお、速度制御部330は、I−P制御ではなく、PI制御、P(比例)制御、PID(比例積分微分)制御、PI−D制御(微分先行型PID制御)、モデルマッチング制御、モデル規範制御等の一般的に用いられている制御方法でモータ電流指令値Imca1を算出しても良い。
【0041】
安定化補償部340は補償値Cs(伝達関数)を有しており、モータ角速度ωmに応じたモータ電流指令値Imca2を算出する。追従性及び外乱特性を向上させるために、捩れ角FB補償部310及び速度制御部330のゲインを上げると、高周波域の制御的な発振現象が発生してしまう。この対策として、モータ角速度ωmに対し、安定化するために必要な伝達関数(Cs)を安定化補償部340に設定する。これにより、EPS制御システム全体の安定化を実現することができる。安定化補償部340の伝達関数(Cs)として、例えば1次のHPFの構造を用いた擬似微分とゲインにより設定した、下記数3で表わされる1次フィルタを使用する。
【0042】
【数3】
ここで、Kstaはゲインで、fcは遮断周波数であり、fcとして例えば150[Hz]を設定する。sはラプラス演算子である。なお、伝達関数として、2次フィルタ、4次フィルタ等を使用しても良い。
【0043】
速度制御部330からのモータ電流指令値Imca1及び安定化補償部340からのモータ電流指令値Imca2は加算部362で加算され、モータ電流指令値Imcbとして出力される。
【0044】
出力制限部350は、モータ電流指令値Imcbの上下限値を制限して、モータ電流指令値Imcを出力する。図10に示されるように、モータ電流指令値に対する上限値及び下限値を予め設定し、入力するモータ電流指令値Imcbが、上限値以上の場合は上限値を、下限値以下の場合は下限値を、それ以外の場合はモータ電流指令値Imcbを、モータ電流指令値Imcとして出力する。
【0045】
このような構成において、本実施形態の動作例を図11図13のフローチャートを参照して説明する。
【0046】
動作を開始すると、目標操舵トルク生成部200は、操舵角θh及び車速Vsを入力し、目標操舵トルクTrefを生成する(ステップS10)。目標操舵トルク生成部200の動作例については、図12のフローチャートを参照して説明する。
【0047】
目標操舵トルク生成部200に入力された操舵角θhは基本マップ部210、微分部220及び端当て特性補正部240に、車速Vsは基本マップ部210及びダンパゲイン部230にそれぞれ入力される(ステップS11)。
【0048】
基本マップ部210は、図6(A)又は(B)に示される基本マップを用いて、操舵角θh及び車速Vsに応じたトルク信号Tref_aを生成して、加算部251に出力する(ステップS12)。
【0049】
微分部220は操舵角θhを微分して舵角速度ωhを出力し(ステップS13)、ダンパゲイン部230は図7に示されるダンパゲインマップを用いて車速Vsに応じたダンパゲインDを出力し(ステップS14)、乗算部250は舵角速度ωh及びダンパゲインDを乗算してトルク信号Tref_bを演算し、加算部252に出力する(ステップS15)。
【0050】
端当て特性補正部240は、図8(A)又は(B)に示される端当て特性マップを用いて、操舵角θhに応じたトルク信号Tref_cを求め、加算部252に出力する(ステップS16)。
【0051】
そして、加算部252にてトルク信号Tref_b及びTref_cが加算され、その加算結果にトルク信号Tref_aが加算部251にて加算され、目標操舵トルクTrefが演算される(ステップS17)。
【0052】
目標操舵トルク生成部200で生成された目標操舵トルクTrefは変換部400に入力され、変換部400で目標捩れ角Δθrefに変換される(ステップS20)。目標捩れ角Δθrefは捩れ角制御部300に入力される。
【0053】
捩れ角制御部300は、目標捩れ角Δθrefと共に、捩れ角Δθ及びモータ角速度ωmを入力し、モータ電流指令値Imcを演算する(ステップS30)。捩れ角制御部300の動作例については、図13のフローチャートを参照して説明する。
【0054】
捩れ角制御部300に入力された目標捩れ角Δθrefは減算部361に、捩れ角Δθは減算部361及び捩れ角速度演算部320に、モータ角速度ωmは安定化補償部340にそれぞれ入力される(ステップS31)。
【0055】
減算部361では、目標捩れ角Δθrefから捩れ角Δθを減算することにより、偏差Δθが算出される(ステップS32)。偏差Δθは捩れ角FB補償部310に入力され、捩れ角FB補償部310は、偏差Δθに補償値CFBを乗算することにより偏差Δθを補償し(ステップS33)、目標捩れ角速度ωrefを速度制御部330に出力する。
【0056】
捩れ角Δθを入力した捩れ角速度演算部320は、捩れ角Δθに対する微分演算により捩れ角速度ωtを算出し(ステップS34)、速度制御部330に出力する。
【0057】
速度制御部330では、目標捩れ角速度ωrefと捩れ角速度ωtの差分が減算部333で算出され、その差分が積分部331で積分(Kvi/s)されて減算部334に加算入力される(ステップS35)。更に、捩れ角速度ωtは比例部332で比例処理(Kvp)され、比例結果が減算部334に減算入力され(ステップS35)、減算部334の減算結果であるモータ電流指令値Imca1が出力され、加算部362に入力される。
【0058】
安定化補償部340は、入力したモータ角速度ωmに対して、数3で表される伝達関数Csを用いて安定化補償を行い(ステップS36)、安定化補償部340からのモータ電流指令値Imca2は加算部362に入力される。
【0059】
加算部362ではモータ電流指令値Imca1及びImca2の加算が行われ(ステップS37)、加算結果であるモータ電流指令値Imcbは出力制限部350に入力される。出力制限部350は、予め設定された上限値及び下限値によりモータ電流指令値Imcbの上下限値を制限し(ステップS38)、モータ電流指令値Imcとして出力する(ステップS39)。
【0060】
捩れ角制御部300から出力されたモータ電流指令値Imcに基づいてモータを駆動し、電流制御が実施される(ステップS40)。
【0061】
なお、図11図13におけるデータ入力及び演算等の順番は適宜変更可能である。
【0062】
本実施形態での端当て特性補正部の効果について、図14を参照して説明する。
【0063】
図14は、左右の端当て付近まで操舵した場合の操舵角θhに対する目標操舵トルクTrefの変化の様子を示す線図の概念図である。端当て特性補正部の効果に焦点を当てるべく、ダンパゲインDはゼロとし、車速Vsは一定で、基本マップの特性はトルク信号Tref_aが操舵角θhの大きさ|θh|に比例する特性であるとしている。よって、実質的には、図14は直線状の基本マップと端当て特性マップによる線図となっている。
【0064】
捩れ角制御部300の制御により目標操舵トルクTref相当の捩れ角を実現することができるので、端当て特性補正部240の機能により端当てまでの目標操舵トルクを図14のように変化させることによって、端当てを抑制することが可能であることがわかる。
【0065】
第1実施形態での端当て特性補正部240では、車速Vsに関係なく、固定の端当て特性マップを使用しているが、閾値θthを車速Vsによって変更することにより、より柔軟な端当て抑制を実現することができる。例えば、車速Vsが高速になるにつれて、閾値θthを小さくすることにより、高速時での切り過ぎによる車両のスリップ等を抑制することできる。
【0066】
図15は上述の機能を実現した場合の目標操舵トルク生成部の構成例(第2実施形態)を示しており、目標操舵トルク生成部500内の端当て特性補正部540には操舵角θhの他に車速Vsが入力されており、端当て特性マップとして図16(A)に示されるような特性のマップを使用する。即ち、車速Vsが低速の場合は、閾値がθthLである特性を用いて操舵角θhの大きさ|θh|に応じたトルク信号Tref_cを求め、車速Vsが高速の場合は、閾値がθthHである特性を用いて操舵角θhの大きさ|θh|に応じたトルク信号Tref_cを求める。これにより、高速時は、操舵の早い段階で操舵反力としてのトルク信号Tref_cが働き始めることになるので、切り過ぎによる車両のスリップ等を抑制することができる。なお、図16(A)では、低速時と高速時とでは閾値が異なるのみで変化の態様(曲線度合いや傾き)は同じであるが、車速Vsによって変化の態様を変えても良い。また、端当て特性補正部240の場合と同様に、図16(B)に示されるように、正負の操舵角θhに応じてマップを構成しても良く、この場合、操舵角θhが正の場合と負の場合とで変化の態様を変えても良い。更に、車速Vsではなく、舵角速度を使用し、舵角速度が高速になるにつれて、閾値θthを小さくするようにしても良い。また、車速Vs及び舵角速度を使用し、閾値や変化の態様を変えても良い。使用する舵角速度として、微分部220で算出される舵角速度ωhを使用しても良い。
【0067】
第2実施形態での端当て特性補正部540から出力されるトルク信号Tref_cをゲインと見做して、そのゲインを基本マップ部210から出力されるトルク信号Tref_aに乗算するような構成で、目標操舵トルク生成部を構成することもできる。その構成例(第3実施形態)を図17に示す。
【0068】
図17に示される目標操舵トルク生成部600では、基本マップ部210から出力されるトルク信号Tref_a及び端当て特性補正部640から出力されるトルク信号(ゲイン)Tref_cは乗算部253で乗算され、その乗算結果に乗算部250からのトルク信号Tref_bを加算部254で加算し、加算結果が目標操舵トルクTrefとなる。端当て特性補正部640における端当て特性マップの特性は、図18に示されるように、図16(A)に示される目標操舵トルク生成部500における端当て特性マップの特性と比較すると、値が1のオフセットを重畳したような特性となる。即ち、車速Vsが低速の場合は操舵角θhの大きさ|θh|が閾値θthLになるまで、車速Vsが高速の場合は操舵角θhの大きさ|θh|が閾値θthHになるまで、トルク信号Tref_cは1で、操舵角θhの大きさ|θh|がそれぞれの閾値を超えてからは、トルク信号Tref_cは徐々に大きくなる。トルク信号Tref_cは、操舵角θhの大きさ|θh|が閾値を超えてから、操舵反力として機能することになる。このような特性にすることにより、図17に示される構成で図14に示されるような特性を実現することができる。なお、第1実施形態における目標操舵トルク生成部200も、図17に示されるような構成で実現可能である。また、トルク信号Tref_cをトルク信号Tref_aに乗算しているが、乗算部250からのトルク信号Tref_bに乗算し、その乗算結果にトルク信号Tref_aを加算するような構成でも良い。
【0069】
端当て特性補正部240により端当てを抑制することが可能となるが、端当て付近まで操舵した際に、端当て抑制がかかることにより、跳ね返される事象が生じる可能性がある。この場合、運転者が不安感をもつおそれがある。この跳ね返される事象を改善するために、端当て特性補正部240からの出力に対して位相進み補償を行う機能を付加し、跳ね返りの低減を図る。
【0070】
この跳ね返り低減のための位相進み補償を行う機能は目標操舵トルク生成部にて搭載する。第1実施形態に本機能を搭載した場合の目標操舵トルク生成部の構成例(第4実施形態)を図19に示す。図5に示される第1実施形態での目標操舵トルク生成部200と比べると、第4実施形態での目標操舵トルク生成部700には、端当て特性補正部240の後段に跳ね返り低減位相進み補償部245が設けられている。端当て特性補正部240から出力されたトルク信号Tref_cは跳ね返り低減位相進み補償部245に入力され、跳ね返り低減位相進み補償部245はトルク信号Tref_ccを出力し、トルク信号Tref_ccは加算部252に入力される。
【0071】
跳ね返り低減位相進み補償部245は、下記数4で表される1次の位相補償フィルタを有し、分子の遮断周波数を分母の遮断周波数よりも小さい値に設定することにより位相進みの設定とする。
【0072】
【数4】
ここで、Tn=1/(2π・fn)、Td=1/(2π・fd)で、fn及びfdは遮断周波数であり、fn<fdとなっている。跳ね返り低減位相進み補償部245は、入力したトルク信号Tref_cに対して、上記数4で表される位相補償フィルタによる位相進み補償を行い、トルク信号Tref_ccを算出する。操舵角θhの大きさ|θh|が閾値θth以下の場合、図8に示されるようにトルク信号Tref_cはゼロであるから、跳ね返り低減位相進み補償部245から出力されるトルク信号Tref_ccもゼロとなり、位相進み補償は機能しないことになる。このように、端当て特性補正部240及び跳ね返り低減位相進み補償部245を組み合わせることにより、端当て抑制と同時に跳ね返り低減を実現することができる。なお、位相補償フィルタは1次ではなく、2次以上でも良く、位相進み補償を実現するのであれば、PD(比例微分)制御等で位相進み補償を行っても良い。
【0073】
跳ね返り低減位相進み補償部245による跳ね返り低減の効果について、シミュレーション結果を基に説明する。
【0074】
シミュレーションでは、端当て特性補正部240での閾値θthの設定を180degとし、ハンドルに手入力トルク6Nmを加えて切り増していき、約0.35sec後に操舵角θhが180degとなり、端当て抑制機能が働き出すものとする。また、跳ね返り低減位相進み補償部245での1次の位相補償フィルタの設定は、分子の遮断周波数を5Hz、分母の遮断周波数を30Hzとし、跳ね返り低減位相進み補償部245による位相進み補償がある場合とない場合のシミュレーションを行う。
【0075】
シミュレーション結果を図20に示す。図20(A)が位相進み補償がない場合の結果で、図20(B)が位相進み補償がある場合の結果であり、横軸が時間[sec]、縦軸が操舵角θh[deg]を示す。図20(A)からわかるように、位相進み補償がない場合は、操舵角θhが0.4sec後辺りで跳ね返って大きく戻されており、その後も振動的に応答している。跳ね返りの幅は25deg程度である。これに対して、位相進み補償がある場合は、図20(B)からわかるように、位相進み補償がない場合に比べて跳ね返りの角度が低減し、振動も適度に減少している。跳ね返りの幅は8deg程度と大幅に低減しており、跳ね返りが改善している。これにより、運転者を不安にさせることなく、かつ運転者は安全に運転することができる。
【0076】
第4実施形態での跳ね返り低減位相進み補償部245に対して、第2実施形態での端当て特性補正部540のように、車速Vsに応じて特性を変更しても良く、更に、車速Vsではなく、舵角速度に応じて特性を変更しても良い。また、車速Vs及び舵角速度に応じて特性を変更しても良い。例えば、車速又は舵角速度が速いときには応答性が速くなるように、Tnを大きくするか、Tdを小さくする。これにより、より適切な跳ね返り低減を実現することができる。また、第2及び第3実施形態に対しても跳ね返り低減位相進み補償部を設け、跳ね返り低減を実現することができる。この場合も、端当て特性補正部640の後段に跳ね返り低減位相進み補償部を設け、端当て特性補正部240からのトルク信号Tref_cを跳ね返り低減位相進み補償部に入力することになる。そして、第3実施形態に対して跳ね返り低減位相進み補償部を設けた場合、跳ね返り低減位相進み補償部245から出力されるトルク信号Tref_ccは乗算部253に入力することになる。
【0077】
第1実施形態での目標操舵トルク生成部200は基本マップ部210、ダンパ演算部(ダンパゲイン部230及び乗算部250)及び端当て特性補正部240を備えているが、端当て抑制のみに特化し、端当て特性補正部240のみを備える構成としても良く、更に、第4実施形態のように、跳ね返りを低減すべく、跳ね返り低減位相進み補償部245を付加し、端当て特性補正部240及び跳ね返り低減位相進み補償部245のみを備える構成としても良い。この場合の目標操舵トルク生成部の構成例(第5実施形態)を図21に示す。図21(A)が端当て特性補正部240のみを備える構成例で、図21(B)が端当て特性補正部240及び跳ね返り低減位相進み補償部245のみを備える構成例である。図21(A)の構成の場合、目標操舵トルク生成部800Aは、端当て特性補正部240から出力されるトルク信号Tref_cを目標操舵トルクTrefとして出力することになる。図21(B)の構成の場合、目標操舵トルク生成部800Bは、跳ね返り低減位相進み補償部245から出力されるトルク信号Tref_ccを目標操舵トルクTrefとして出力することになる。なお、図21(A)及び(B)の構成に基本マップ部210又はダンパ演算部を付加して、目標操舵トルク生成部を構成しても良い。
【0078】
第1〜第5実施形態での捩れ角制御部から出力されるモータ電流指令値Imcに、従来のEPSにおいて操舵トルクに基づいて演算される電流指令値(以下、「アシスト電流指令値」とする)を、例えば、図2に示される電流指令値演算部31から出力される電流指令値Iref1又は電流指令値Iref1に補償信号CMを加算した電流指令値Iref2等を加算しても良い。
【0079】
第1実施形態に対して、上記の内容を適用した構成例(第6実施形態)を図22に示す。アシスト制御部150は、電流指令値演算部31、又は、電流指令値演算部31、補償信号生成部34及び加算部32Aから構成される。アシスト制御部150から出力されるアシスト電流指令値Iac(図2における電流指令値Iref1又はIref2に相当)と、捩れ角制御部300から出力されるモータ電流指令値Imcは、加算部160で加算される。加算結果である電流指令値Icは電流制限部170に入力され、最大電流を制限された電流指令値Icmに基づいてモータを駆動し、電流制御が実施される。
【0080】
第1〜第6実施形態のうち、基本マップ部210を備える目標操舵トルク生成部200、500、600及び700において、基本マップ部210の前段又は後段に位相補償を行なう位相補償部260を挿入しても良い。つまり、図5図15図17及び図19中の破線で囲まれた領域Rの構成を、図23(A)又は(B)に示されるような構成にしても良い。位相補償部260において、位相補償として位相進み補償を設定し、例えば、分子の遮断周波数を1.0Hz、分母の遮断周波数を1.3Hzとした1次フィルタで位相進み補償を行う場合、スッキリしたフィールを実現することができる。目標操舵トルク生成部に関しては、操舵角に基づいた構成であるならば、上述の構成に限られない。
【0081】
また、EPS制御システムが安定している場合は、安定化補償部を省略しても良い。出力制限部も省略可能である。
【0082】
図1及び図3では本発明をコラム型EPSに適用しているが、本発明はコラム型等の上流型に限られず、ラック&ピニオン等の下流型EPSにも適用可能である。更に、目標捩れ角に基づくフィードバック制御を行うということでは、トーションバー(バネ定数任意)及び捩れ角検出用のセンサを少なくとも備えるステアバイワイヤ(SBW)反力装置等にも適用可能である。本発明を、トーションバーを備えたSBW反力装置に適用した場合の実施形態(第7実施形態)について説明する。
【0083】
まずは、SBW反力装置を含むSBWシステム全体について説明する。図24はSBWシステムの構成例を、図1に示される電動パワーステアリング装置の一般的な構成に対応させて示した図である。なお、同一構成には同一符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0084】
SBWシステムは、ユニバーサルジョイント4aにてコラム軸2と機械的に結合されるインターミディエイトシャフトがなく、ハンドル1の操作を電気信号によって操向車輪8L,8R等からなる転舵機構に伝えるシステムである。図24に示されるように、SBWシステムは反力装置60及び駆動装置70を備え、コントロールユニット(ECU)50が両装置の制御を行う。反力装置60は、舵角センサ14にて操舵角θhの検出を行うと同時に、操向車輪8L,8Rから伝わる車両の運動状態を反力トルクとして運転者に伝達する。反力トルクは、反力用モータ61により生成される。なお、SBWシステムの中には反力装置内にトーションバーを有さないタイプもあるが、本発明を適用するSBWシステムはトーションバーを有するタイプであり、トルクセンサ10にて操舵トルクTsを検出する。また、角度センサ74が、反力用モータ61のモータ角θmを検出する。駆動装置70は、運転者によるハンドル1の操舵に合わせて、駆動用モータ71を駆動し、その駆動力を、ギア72を介してピニオンラック機構5に付与し、タイロッド6a,6bを経て、操向車輪8L,8Rを転舵する。ピニオンラック機構5の近傍には角度センサ73が配置されており、操向車輪8L,8Rの転舵角θtを検出する。ECU50は、反力装置60及び駆動装置70を協調制御するために、両装置から出力される操舵角θhや転舵角θt等の情報に加え、車速センサ12からの車速Vs等を基に、反力用モータ61を駆動制御する電圧制御指令値Vref1及び駆動用モータ71を駆動制御する電圧制御指令値Vref2を生成する。
【0085】
このようなSBWシステムに本発明を適用した第7実施形態の構成について説明する。
【0086】
図25は第7実施形態の構成を示すブロック図である。第7実施形態は、捩れ角Δθに対する制御(以下、「捩れ角制御」とする)と、転舵角θtに対する制御(以下、「転舵角制御」とする)を行い、反力装置を捩れ角制御で制御し、駆動装置を転舵角制御で制御する。なお、駆動装置は他の制御方法で制御しても良い。
【0087】
捩れ角制御では、第1実施形態と同様の構成及び動作により、捩れ角Δθが、操舵角θh等を用いて目標操舵トルク生成部200及び変換部400を経て算出される目標捩れ角Δθrefに追従するような制御を行う。モータ角θmは角度センサ74で検出され、モータ角速度ωmは、角速度演算部951にてモータ角θmを微分することにより算出される。転舵角θtは角度センサ73で検出される。また、第1実施形態ではEPS操舵系/車両系100内の処理として詳細な説明は行われていないが、電流制御部130は、図2に示される減算部32B、PI制御部35、PWM制御部36及びインバータ37と同様の構成及び動作により、捩れ角制御部300から出力されるモータ電流指令値Imc及びモータ電流検出器140で検出される反力用モータ61の電流値Imrに基づいて、反力用モータ61を駆動して、電流制御を行う。
【0088】
転舵角制御では、目標転舵角生成部910にて操舵角θhに基づいて目標転舵角θtrefが生成され、目標転舵角θtrefは転舵角θtと共に転舵角制御部920に入力される。転舵角制御部920にて、転舵角θtが目標転舵角θtrefとなるようなモータ電流指令値Imctが演算される。そして、モータ電流指令値Imct及びモータ電流検出器940で検出される駆動用モータ71の電流値Imdに基づいて、電流制御部930が、電流制御部130と同様の構成及び動作により、駆動用モータ71を駆動して、電流制御を行う。
【0089】
目標転舵角生成部910の構成例を図26に示す。目標転舵角生成部910は、制限部931、レート制限部932及び補正部933を備える。
【0090】
制限部931は、操舵角θhの上下限値を制限して、操舵角θh1を出力する。捩れ角制御部300内の出力制限部350と同様に、操舵角θhに対する上限値及び下限値を予め設定して制限をかける。
【0091】
レート制限部932は、操舵角の急変を回避するために、操舵角θh1の変化量に対して制限値を設定して制限をかけ、操舵角θh2を出力する。例えば、1サンプル前の操舵角θh1からの差分を変化量とし、その変化量の絶対値が所定の値(制限値)より大きい場合、変化量の絶対値が制限値となるように、操舵角θh1を加減算し、操舵角θh2として出力し、制限値以下の場合は、操舵角θh1をそのまま操舵角θh2として出力する。なお、変化量の絶対値に対して制限値を設定するのではなく、変化量に対して上限値及び下限値を設定して制限をかけるようにしても良く、変化量ではなく変化率や差分率に対して制限をかけるようにしても良い。
【0092】
補正部933は、操舵角θh2を補正して、目標転舵角θtrefを出力する。例えば、目標操舵トルク生成部200内の基本マップ部210のように、操舵角θh2の大きさ|θh2|に対する目標転舵角θtrefの特性を定義したマップを用いて、操舵角θh2より目標転舵角θtrefを求める。或いは、単純に、操舵角θh2に所定のゲインを乗算することにより、目標転舵角θtrefを求めるようにしても良い。
【0093】
転舵角制御部920の構成例を図27に示す。転舵角制御部920は、図9に示される捩れ角制御部300の構成例において安定化補償部340及び加算部362を除いた構成と同様の構成をしている。目標捩れ角Δθref及び捩れ角Δθの代わりに目標転舵角θtref及び転舵角θtを入力し、転舵角フィードバック(FB)補償部921、転舵角速度演算部922、速度制御部923、出力制限部926及び減算部927が、それぞれ捩れ角FB補償部310、捩れ角速度演算部320、速度制御部330、出力制限部350及び減算部361と同様の構成で同様の動作を行う。
【0094】
このような構成において、第7実施形態の動作例を図28のフローチャートを参照して説明する。
【0095】
動作を開始すると、角度センサ73は転舵角θtを検出し、角度センサ74はモータ角θmを検出し(ステップS110)、転舵角θtは転舵角制御部920に、モータ角θmは角速度演算部951にそれぞれ入力される。
【0096】
角速度演算部951は、モータ角θmを微分してモータ角速度ωmを算出し、捩れ角制御部300に出力する(ステップS120)。
【0097】
その後、目標操舵トルク生成部200において、図11に示されるステップS10〜S40と同様の動作を実行し、反力用モータ61を駆動し、電流制御を実施する(ステップS130〜S160)。
【0098】
一方、転舵角制御においては、目標転舵角生成部910が操舵角θhを入力し、操舵角θhは制限部931に入力される。制限部931は、予め設定された上限値及び下限値により操舵角θhの上下限値を制限し(ステップS170)、操舵角θh1としてレート制限部932に出力する。レート制限部932は、予め設定された制限値により操舵角θh1の変化量に対して制限をかけ(ステップS180)、操舵角θh2として補正部933に出力する。補正部933は、操舵角θh2を補正して目標転舵角θtrefを求め(ステップS190)、転舵角制御部920に出力する。
【0099】
転舵角θt及び目標転舵角θtrefを入力した転舵角制御部920は、減算部927にて目標転舵角θtrefから転舵角θtを減算することにより、偏差Δθtを算出する(ステップS200)。偏差Δθtは転舵角FB補償部921に入力され、転舵角FB補償部921は、偏差Δθtに補償値を乗算することにより偏差Δθtを補償し(ステップS210)、目標転舵角速度ωtrefを速度制御部923に出力する。転舵角速度演算部922は転舵角θtを入力し、転舵角θtに対する微分演算により転舵角速度ωttを算出し(ステップS220)、速度制御部923に出力する。速度制御部923は、速度制御部330と同様にI−P制御によりモータ電流指令値Imctaを算出し(ステップS230)、出力制限部926に出力する。出力制限部926は、予め設定された上限値及び下限値によりモータ電流指令値Imctaの上下限値を制限し(ステップS240)、モータ電流指令値Imctとして出力する(ステップS250)。
【0100】
モータ電流指令値Imctは電流制御部930に入力され、電流制御部930は、モータ電流指令値Imct及びモータ電流検出器940で検出された駆動用モータ71の電流値Imdに基づいて、駆動用モータ71を駆動し、電流制御を実施する(ステップS260)。
【0101】
なお、図28におけるデータ入力及び演算等の順番は適宜変更可能である。また、転舵角制御部920内の速度制御部923は、捩れ角制御部300内の速度制御部330と同様に、I−P制御ではなく、PI制御、P制御、PID制御、PI−D制御等、実現可能で、P、I及びDのいずれかの制御を用いていれば良く、更に、転舵角制御部920及び捩れ角制御部300での追従制御は、一般的に用いられている制御構造で行っても良い。転舵角制御部920については、目標角度(ここでは目標転舵角θtref)に対して実角度(ここでは転舵角θt)が追従する制御構成であれば、車両用装置に用いられている制御構成に限定されず、例えば、産業用位置決め装置や産業用ロボット等に用いられている制御構成を適用しても良い。
【0102】
第7実施形態では、図24に示されるように、1つのECU50で反力装置60及び駆動装置70の制御を行っているが、反力装置60用のECUと駆動装置70用のECUをそれぞれ設けても良い。この場合、ECU同士は通信によりデータの送受信を行うことになる。また、図24に示されるSBWシステムは反力装置60と駆動装置70の間には機械的な結合を持たないが、システムに異常が発生した場合に、コラム軸2と転舵機構をクラッチ等で機械的に結合する機械的トルク伝達機構を備えるSBWシステムにも、本発明は適用可能である。このようなSBWシステムでは、システム正常時はクラッチをオフにして機械的トルク伝達を開放状態とし、システム異常時はクラッチをオンにして機械的トルク伝達を可能状態とする。
【0103】
上述の第1〜第7実施形態での捩れ角制御部300及び第6実施形態でのアシスト制御部150は、直接的にモータ電流指令値Imc及びアシスト電流指令値Iacを演算しているが、それらを演算する前に、先ず出力したいモータトルク(目標トルク)を演算してから、モータ電流指令値及びアシスト電流指令値を演算するようにしても良い。この場合、モータトルクからモータ電流指令値及びアシスト電流指令値を求めるには、一般的に用いられている、モータ電流とモータトルクの関係を使用する。
【0104】
なお、上述で使用した図は、本発明に関して定性的な説明を行うための概念図であり、これらに限定されるものではない。また、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるが、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。また、ハンドルと、モータ又は反力モータの間に任意のバネ定数を有する機構であれば、トーションバーに限定しなくても良い。
【0105】
本発明の主たる目的は、端当て特性を実現するための目標操舵トルクの実現手段についてであり、目標操舵トルクに対する操舵トルクの追従性の実現手段に関しては、上記の変換部、捩れ角制御部に限定しなくても良い。
【符号の説明】
【0106】
1 ハンドル
2 コラム軸(ステアリングシャフト、ハンドル軸)
2A トーションバー
3 減速機構
10 トルクセンサ
12 車速センサ
14 舵角センサ
20 モータ
30、50 コントロールユニット(ECU)
31 電流指令値演算部
33、170 電流制限部
34 補償信号生成部
38、140、940 モータ電流検出器
60 反力装置
61 反力用モータ
70 駆動装置
71 駆動用モータ
72 ギア
73、74 角度センサ
100 EPS操舵系/車両系
130、930 電流制御部
150 アシスト制御部
200、500、600、700、800A、800B 目標操舵トルク生成部
210 基本マップ部
230 ダンパゲイン部
240、540、640 端当て特性補正部
245 跳ね返り低減位相進み補償部
260 位相補償部
300 捩れ角制御部
310 捩れ角フィードバック(FB)補償部
320 捩れ角速度演算部
330、923 速度制御部
340 安定化補償部
350、926 出力制限部
400 変換部
910 目標転舵角生成部
920 転舵角制御部
921 転舵角フィードバック(FB)補償部
922 転舵角速度演算部
931 制限部
932 レート制限部
933 補正部
951 角速度演算部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28

【手続補正書】
【提出日】2019年9月10日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意のバネ定数を有するトーションバー及び前記トーションバーの捩れ角を検出するセンサを少なくとも備え、モータを駆動制御することにより、操舵系をアシスト制御する車両用操向装置において、
目標操舵トルクを生成する目標操舵トルク生成部と、
前記トーションバーのバネ定数に基づいて、前記目標操舵トルクを目標捩れ角に変換する変換部と、
前記目標捩れ角に対して前記捩れ角を追従させるようなモータ電流指令値を演算する捩れ角制御部とを備え、
前記目標操舵トルク生成部が、
操舵角の大きさがラックエンド近傍に設定される所定の閾値を超えた場合、出力する第1トルク信号が操舵反力として機能する端当て特性補正部を具備し、前記第1トルク信号を前記目標操舵トルクとして出力し、
前記モータ電流指令値に基づいて前記モータを駆動制御することを特徴とする車両用操向装置。
【請求項2】
前記端当て特性補正部が、
前記操舵角の大きさが前記閾値を超えてから大きくなるに従って、前記第1トルク信号が徐々に大きくなるような特性を有する請求項1に記載の車両用操向装置。
【請求項3】
前記閾値が、車速又は舵角速度が速くなるに従って小さくなるように設定される請求項1又は2に記載の車両用操向装置。
【請求項4】
前記端当て特性補正部の特性がマップ又は数式で定義されている請求項2又は3に記載の車両用操向装置。
【請求項5】
前記目標操舵トルク生成部が、
前記端当て特性補正部からの出力に対して位相進み補償を行うことにより跳ね返りを低減する跳ね返り低減位相進み補償部を更に具備し、
前記跳ね返り低減位相進み補償部からの出力を前記第1トルク信号とする請求項1乃至4のいずれかに記載の車両用操向装置。
【請求項6】
前記跳ね返り低減位相進み補償部での前記位相進み補償が、車速又は舵角速度が速くなるに従って応答性が速くなるような特性を有する請求項5に記載の車両用操向装置。
【請求項7】
前記目標操舵トルク生成部が、
基本マップを用いて前記操舵角に応じた第2トルク信号を求める基本マップ部と、
車速感応であるダンパゲインマップを用いて角速度情報に基づいて第3トルク信号を求めるダンパ演算部とを更に具備し、
前記第2トルク信号及び前記第3トルク信号の内の少なくとも1つの信号並びに前記第1トルク信号より前記目標操舵トルクを算出する請求項1乃至6のいずれかに記載の車両用操向装置。
【請求項8】
前記基本マップが車速感応である請求項7に記載の車両用操向装置。
【請求項9】
前記目標操舵トルク生成部が、
前記第2トルク信号及び前記第3トルク信号の内の少なくとも1つの信号に前記第1トルク信号を加算することにより、前記目標操舵トルクを算出する請求項7又は8に記載の車両用操向装置。
【請求項10】
前記目標操舵トルク生成部が、
前記第2トルク信号及び前記第3トルク信号の内の少なくとも1つの信号に前記第1トルク信号を乗算することにより、前記目標操舵トルクを算出する請求項7又は8に記載の車両用操向装置。
【請求項11】
前記目標操舵トルク生成部が、
前記基本マップ部の前段又は後段に、位相補償を行なう位相補償部を更に具備し、
前記基本マップ部及び前記位相補償部を介して、前記操舵角に応じた前記第2トルク信号を求める請求項7乃至10のいずれかに記載の車両用操向装置。

【手続補正書】
【提出日】2020年2月6日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意のバネ定数を有するトーションバー及び前記トーションバーの捩れ角を検出するセンサを少なくとも備え、モータを駆動制御することにより、操舵系をアシスト制御する車両用操向装置において、
目標操舵トルクを生成する目標操舵トルク生成部と、
前記トーションバーのバネ定数に基づいて、前記目標操舵トルクを目標捩れ角に変換する変換部と、
前記目標捩れ角に対して前記捩れ角を追従させるようなモータ電流指令値を演算する捩れ角制御部とを備え、
前記目標操舵トルク生成部が、
操舵角の大きさがラックエンド近傍に設定される所定の閾値を超えた場合、出力する第1トルク信号が操舵反力として機能する端当て特性補正部と、
車速感応であるダンパゲインマップを用いて角速度情報に基づいて第3トルク信号を求めるダンパ演算部とを具備し、
前記第1トルク信号及び前記第3トルク信号より前記目標操舵トルクを算出し、
前記モータ電流指令値に基づいて前記モータを駆動制御することを特徴とする車両用操向装置。
【請求項2】
前記端当て特性補正部が、
前記操舵角の大きさが前記閾値を超えてから大きくなるに従って、前記第1トルク信号が徐々に大きくなるような特性を有する請求項1に記載の車両用操向装置。
【請求項3】
前記閾値が、車速又は舵角速度が速くなるに従って小さくなるように設定される請求項1又は2に記載の車両用操向装置。
【請求項4】
前記端当て特性補正部の特性がマップ又は数式で定義されている請求項2又は3に記載の車両用操向装置。
【請求項5】
前記目標操舵トルク生成部が、
前記端当て特性補正部からの出力に対して位相進み補償を行うことにより跳ね返りを低減する跳ね返り低減位相進み補償部を更に具備し、
前記跳ね返り低減位相進み補償部からの出力を前記第1トルク信号とする請求項1乃至4のいずれかに記載の車両用操向装置。
【請求項6】
前記跳ね返り低減位相進み補償部での前記位相進み補償が、車速又は舵角速度が速くなるに従って応答性が速くなるような特性を有する請求項5に記載の車両用操向装置。
【請求項7】
前記目標操舵トルク生成部が、
基本マップを用いて前記操舵角に応じた第2トルク信号を求める基本マップ部を更に具備し、
前記第1トルク信号、前記第2トルク信号及び前記第3トルク信号より前記目標操舵トルクを算出する請求項1乃至6のいずれかに記載の車両用操向装置。
【請求項8】
前記基本マップが車速感応である請求項7に記載の車両用操向装置。
【請求項9】
前記目標操舵トルク生成部が、
前記第1トルク信号、前記第2トルク信号及び前記第3トルク信号を加算することにより、前記目標操舵トルクを算出する請求項7又は8に記載の車両用操向装置。
【請求項10】
前記目標操舵トルク生成部が、
前記第2トルク信号及び前記第3トルク信号のいずれか1つの信号に前記第1トルク信号を乗算し、乗算されなかった信号に前記乗算の結果を加算することにより、前記目標操舵トルクを算出する請求項7又は8に記載の車両用操向装置。
【請求項11】
前記目標操舵トルク生成部が、
前記基本マップ部の前段又は後段に、位相補償を行なう位相補償部を更に具備し、
前記基本マップ部及び前記位相補償部を介して、前記操舵角に応じた前記第2トルク信号を求める請求項7乃至10のいずれかに記載の車両用操向装置。
【請求項12】
前記目標操舵トルク生成部が、
前記第1トルク信号及び前記第3トルク信号を加算することにより、前記目標操舵トルクを算出する請求項1乃至6のいずれかに記載の車両用操向装置。
【請求項13】
前記目標操舵トルク生成部が、
前記第1トルク信号を前記第3トルク信号に乗算することにより、前記目標操舵トルクを算出する請求項1乃至6のいずれかに記載の車両用操向装置。
【国際調査報告】