特表-19004368IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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再表2019-4368希土類磁石表面への被膜の形成方法及び希土類磁石
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2019年1月3日
【発行日】2020年3月26日
(54)【発明の名称】希土類磁石表面への被膜の形成方法及び希土類磁石
(51)【国際特許分類】
   H01F 41/02 20060101AFI20200303BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20200303BHJP
   B05D 7/14 20060101ALI20200303BHJP
   B05D 3/06 20060101ALI20200303BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20200303BHJP
【FI】
   H01F41/02 G
   B05D7/24 301T
   B05D7/14 P
   B05D3/06 102Z
   B05D1/26 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】16
【出願番号】特願2019-527026(P2019-527026)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2018年6月28日
(31)【優先権主張番号】特願2017-127661(P2017-127661)
(32)【優先日】2017年6月29日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-218124(P2017-218124)
(32)【優先日】2017年11月13日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗原 雄太
(72)【発明者】
【氏名】赤田 和仁
【テーマコード(参考)】
4D075
5E062
【Fターム(参考)】
4D075AC06
4D075AC09
4D075AE02
4D075BB42Z
4D075BB46Z
4D075BB60Z
4D075CA23
4D075CA33
4D075CA44
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA10
4D075DB01
4D075DC13
4D075EA05
4D075EA21
4D075EB22
4D075EC01
4D075EC30
4D075EC37
5E062CD04
5E062CG01
5E062CG07
(57)【要約】
希土類磁石の表面を紫外線硬化樹脂組成物で被覆し、紫外線硬化樹脂組成物に紫外線を照射して硬化させることにより、希土類磁石表面に紫外線硬化樹脂の被膜を形成した希土類磁石であって、ヘッドから液滴を射出するインクジェット方式により、ヘッドの先端から紫外線硬化樹脂組成物の液滴を射出して希土類磁石表面に付着させる工程、及び希土類磁石表面に付着した紫外線硬化樹脂組成物に、紫外線を照射して、紫外線硬化樹脂組成物を硬化させる工程を含む方法により被膜を形成した希土類磁石を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類磁石の表面を紫外線硬化樹脂組成物で被覆し、該紫外線硬化樹脂組成物に紫外線を照射して硬化させることにより、希土類磁石表面に紫外線硬化樹脂の被膜を形成する方法であって、
(A)ヘッドから液滴を射出するインクジェット方式により、ヘッドの先端から紫外線硬化樹脂組成物の液滴を射出して希土類磁石表面に付着させる工程、及び
(B)希土類磁石表面に付着した紫外線硬化樹脂組成物に、紫外線を照射して、紫外線硬化樹脂組成物を硬化させる工程
を含むことを特徴とする希土類磁石表面への被膜の形成方法。
【請求項2】
上記(A)工程において、ヘッドの先端を希土類磁石の表面近傍で移動させながら紫外線硬化樹脂組成物の液滴を順次射出することにより、希土類磁石の表面の一部又は全部に、紫外線硬化樹脂組成物の液滴が連結して形成された紫外線硬化樹脂組成物の薄層を形成した後、上記(B)工程を実施することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
上記(A)工程において、ヘッドの先端を希土類磁石の表面近傍で移動させながら紫外線硬化樹脂組成物の液滴を順次射出することにより、希土類磁石の表面の一部に、紫外線硬化樹脂組成物の液滴が連結して形成された紫外線硬化樹脂組成物の薄層を形成した後、上記(B)工程を実施し、更に、上記(A)及び(B)工程を、希土類磁石の紫外線硬化樹脂で被覆されていない表面に対して順次繰り返して、希土類磁石の所定の表面全体に紫外線硬化樹脂の被膜を形成することを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
上記(A)工程において、ヘッドの先端から紫外線硬化樹脂組成物の液滴を射出して、該液滴に対して上記(B)工程を実施し、上記液滴が硬化した紫外線硬化樹脂の隣接部にヘッドの先端を移動させて、更に、上記(A)及び(B)工程を、希土類磁石の紫外線硬化樹脂で被覆されていない表面に対して、ヘッドの先端を希土類磁石の表面近傍で移動させながら順次繰り返すことにより、希土類磁石の表面の一部又は全部に、紫外線硬化樹脂の被膜を形成することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
希土類磁石の表面に付着した紫外線硬化樹脂組成物の液滴を、紫外線を照射せずに1秒間以上保持した後、上記液滴に紫外線を照射することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
希土類磁石の表面を紫外線硬化樹脂組成物で被覆し、該紫外線硬化樹脂組成物に紫外線を照射して硬化させることにより、希土類磁石表面に紫外線硬化樹脂の被膜を形成した希土類磁石であって、
(A)ヘッドから液滴を射出するインクジェット方式により、ヘッドの先端から紫外線硬化樹脂組成物の液滴を射出して希土類磁石表面に付着させる工程、及び
(B)希土類磁石表面に付着した紫外線硬化樹脂組成物に、紫外線を照射して、紫外線硬化樹脂組成物を硬化させる工程
を含む方法により上記被膜を形成したことを特徴とする希土類磁石。
【請求項7】
希土類磁石本体と、該希土類磁石本体を被覆する樹脂被膜とを有し、上記被膜表面の算術平均粗さRaが、1.05μm以上、かつ上記被膜の平均膜厚の20%以下であることを特徴とする希土類磁石。
【請求項8】
希土類磁石本体と、該希土類磁石本体を被覆する樹脂被膜とを有し、上記被膜の平均膜厚が8μm以上であり、上記被膜表面の最大高さ粗さRzが、7μm以上、かつ上記被膜の平均膜厚の87.5%以下であることを特徴とする希土類磁石。
【請求項9】
希土類磁石本体と、該希土類磁石本体を被覆する樹脂被膜とを有し、上記被膜の密度が0.93g/cm3以下であることを特徴とする希土類磁石。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Nd−Fe−B焼結磁石などの希土類磁石の表面に樹脂被膜を形成する方法、及び希土類磁石の表面に樹脂被膜を形成して被覆した希土類磁石に関する。
【背景技術】
【0002】
Nd−Fe−B焼結磁石は、合金粉末を加圧成形した後、焼結して得られるが、表面が腐食されやすく、腐食により磁気特性が低下しやすい。Nd−Fe−B焼結磁石の用途としては、自動車用の電動モータなどが挙げられ、電動モータのロータコアは、積層鋼板のスロットに磁石が挿入された構成となっているが、積層鋼板と磁石との間を絶縁していないと、磁石に生じる渦電流が、積層鋼板を介して隣接するスロットに挿入された別の磁石にまで流れてしまい、比較的大きなループの渦電流が生じてしまう場合がある。また、磁石内の渦電流の対策として、スロット内の磁石を分割して複数の磁石で構成する場合もあるが、スロット内の複数の磁石が直接接触した状態では、磁石間の導通の影響は十分に除外できない。更に、渦電流による磁石の温度上昇によって生じる、熱損失や磁気特性の低下により、電動モータにおいて所望の性能が得られ難くなるという問題がある。
【0003】
このような問題に対して、Nd−Fe−B焼結磁石の表面に被膜を形成することにより、耐食性や絶縁性を向上させることが行われている(例えば、特開2011−193621号公報(特許文献1))。また、特開2015−61328号公報(特許文献2)には、回転電機ロータの渦電流の低減のために、磁石用スロットの幅方向に並べられた2つの永久磁石に、永久磁石のロータ軸方向に離間した2か所以上で絶縁テープを巻き付け、2つの永久磁石を絶縁テープで固定して連結することが開示されている。
【0004】
Nd−Fe−B焼結磁石に施される表面処理は、その目的により、種々の手法が採られるが、めっきや樹脂塗装などが、代表例として挙げられ、樹脂塗装としては、吹き付け塗装、電着塗装などが一般に行われている。吹き付け塗装の場合、塗料として熱硬化性樹脂を用いるのが一般的であるが、吹き付け塗装は、吹き付けであるが故に、塗装対象物に付着せずにロスとなる塗料が一定量発生してしまうため、塗料歩留を高くするには限界がある。また、吹き付け塗装、電着塗装いずれの場合においても、塗装後の塗料の乾燥や焼き付けのために、ヒータによる加熱が必要である。この加熱には、一般に熱処理炉が使用されるが、塗料の固定のための時間を要することや、加熱に伴う高いエネルギー消費などにおいて問題があり、更には、熱処理炉などの装置の設置に広い面積が必要となる。このような理由から、従来の手法では、磁石の表面処理に伴うコストが高くなる傾向にあった。
【0005】
このような問題に対応する表面処理として、例えば、特開2012−164964号公報(特許文献3)には、防錆塗装として、紫外線硬化樹脂を使用した被膜形成方法が示されている。この方法は、未硬化の紫外線硬化樹脂を貯留した容器に、吸着装置により吸着した磁石本体を浸漬させて、紫外線硬化樹脂で被覆し、その後、紫外線を照射することで、部材表面に紫外線硬化樹脂被膜を形成するものである。この方法では、紫外線硬化樹脂の塗布に際して、磁石本体を紫外線硬化樹脂が貯留された容器に一定時間浸漬させた後、余分な樹脂を、吸着装置を回転させることにより振り落として取り除き、紫外線照射を行っている。
【0006】
しかしながら、この場合、回転の遠心力により、回転軸から離間する側で紫外線硬化樹脂が厚く形成されてしまい、被覆面全体に均質に被膜を形成することが難しい。そのため、耐食性や絶縁性が不十分な部分が形成されてしまう可能性があり、耐食性や絶縁性が不十分な部分が形成されないように被膜を形成すためには、その部分以外では、必要以上に厚い被膜が形成されることとなり、紫外線硬化樹脂材料の無駄が生じ、特に、モータのロータコアなどに内蔵される磁石にあっては、スロットに内蔵できる磁石の体積が必要以上に減少することになるため、モータの性能低下につながってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−193621号公報
【特許文献2】特開2015−61328号公報
【特許文献3】特開2012−164964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、低コストで、簡便な方法、かつコンパクトな装置を用いて、希土類磁石の表面に、希土類磁石に耐食性や絶縁性などを与える被膜を均質に形成することができる方法、及びこのような方法で好適に被膜を形成した希土類磁石を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、ヘッドから液滴を射出するインクジェット方式により、ヘッドの先端から紫外線硬化樹脂組成物の液滴を射出して希土類磁石表面に付着させ、希土類磁石表面に付着した紫外線硬化樹脂組成物に、紫外線を照射して、紫外線硬化樹脂組成物を硬化させることによって、希土類磁石表面に紫外線硬化樹脂の被膜を形成すれば、低コストで、簡便な方法、かつコンパクトな装置を用いて、希土類磁石の表面に、希土類磁石に耐食性や絶縁性などを与える被膜を、均質に効率よく形成できることを見出し、更に、このような方法により形成した被膜を有する希土類磁石の該被膜の表面状態が、従来の吹き付け塗装により形成された被膜とは全く異なる形態であることを見出し、本発明をなすに至った。
【0010】
即ち、本発明は、下記の希土類磁石表面への被膜の形成方法及び希土類磁石を提供する。
1.希土類磁石の表面を紫外線硬化樹脂組成物で被覆し、該紫外線硬化樹脂組成物に紫外線を照射して硬化させることにより、希土類磁石表面に紫外線硬化樹脂の被膜を形成する方法であって、
(A)ヘッドから液滴を射出するインクジェット方式により、ヘッドの先端から紫外線硬化樹脂組成物の液滴を射出して希土類磁石表面に付着させる工程、及び
(B)希土類磁石表面に付着した紫外線硬化樹脂組成物に、紫外線を照射して、紫外線硬化樹脂組成物を硬化させる工程
を含むことを特徴とする希土類磁石表面への被膜の形成方法。
2.上記(A)工程において、ヘッドの先端を希土類磁石の表面近傍で移動させながら紫外線硬化樹脂組成物の液滴を順次射出することにより、希土類磁石の表面の一部又は全部に、紫外線硬化樹脂組成物の液滴が連結して形成された紫外線硬化樹脂組成物の薄層を形成した後、上記(B)工程を実施することを特徴とする1記載の方法。
3.上記(A)工程において、ヘッドの先端を希土類磁石の表面近傍で移動させながら紫外線硬化樹脂組成物の液滴を順次射出することにより、希土類磁石の表面の一部に、紫外線硬化樹脂組成物の液滴が連結して形成された紫外線硬化樹脂組成物の薄層を形成した後、上記(B)工程を実施し、更に、上記(A)及び(B)工程を、希土類磁石の紫外線硬化樹脂で被覆されていない表面に対して順次繰り返して、希土類磁石の所定の表面全体に紫外線硬化樹脂の被膜を形成することを特徴とする2記載の方法。
4.上記(A)工程において、ヘッドの先端から紫外線硬化樹脂組成物の液滴を射出して、該液滴に対して上記(B)工程を実施し、上記液滴が硬化した紫外線硬化樹脂の隣接部にヘッドの先端を移動させて、更に、上記(A)及び(B)工程を、希土類磁石の紫外線硬化樹脂で被覆されていない表面に対して、ヘッドの先端を希土類磁石の表面近傍で移動させながら順次繰り返すことにより、希土類磁石の表面の一部又は全部に、紫外線硬化樹脂の被膜を形成することを特徴とする1記載の方法。
5.希土類磁石の表面に付着した紫外線硬化樹脂組成物の液滴を、紫外線を照射せずに1秒間以上保持した後、上記液滴に紫外線を照射することを特徴とする1乃至4のいずれかに記載の方法。
6.希土類磁石の表面を紫外線硬化樹脂組成物で被覆し、該紫外線硬化樹脂組成物に紫外線を照射して硬化させることにより、希土類磁石表面に紫外線硬化樹脂の被膜を形成した希土類磁石であって、
(A)ヘッドから液滴を射出するインクジェット方式により、ヘッドの先端から紫外線硬化樹脂組成物の液滴を射出して希土類磁石表面に付着させる工程、及び
(B)希土類磁石表面に付着した紫外線硬化樹脂組成物に、紫外線を照射して、紫外線硬化樹脂組成物を硬化させる工程
を含む方法により上記被膜を形成したことを特徴とする希土類磁石。
7.希土類磁石本体と、該希土類磁石本体を被覆する樹脂被膜とを有し、上記被膜表面の算術平均粗さRaが、1.05μm以上、かつ上記被膜の平均膜厚の20%以下であることを特徴とする希土類磁石。
8.希土類磁石本体と、該希土類磁石本体を被覆する樹脂被膜とを有し、上記被膜の平均膜厚が8μm以上であり、上記被膜表面の最大高さ粗さRzが、7μm以上、かつ上記被膜の平均膜厚の87.5%以下であることを特徴とする希土類磁石。
9.希土類磁石本体と、該希土類磁石本体を被覆する樹脂被膜とを有し、上記被膜の密度が0.93g/cm3以下であることを特徴とする希土類磁石。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、低コストで、簡便な方法、かつコンパクトな装置を用いて、希土類磁石の表面に、希土類磁石に耐食性や絶縁性などを与える被膜を、均質に効率よく形成した希土類磁石を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について、更に詳しく説明する。
本発明では、希土類磁石の表面を紫外線硬化樹脂組成物で被覆し、希土類磁石を被覆した紫外線硬化樹脂組成物に紫外線を照射して硬化させることにより、希土類磁石表面に紫外線硬化樹脂の被膜を形成する。
【0013】
希土類磁石としては、Nd−Fe−B焼結磁石、SmCo焼結磁石等の焼結磁石などを対象とし得る。希土類磁石の形状は、後述するように、紫外線硬化樹脂組成物の液滴をヘッドの先端から射出するインクジェット方式を適用するため、平面や、円周面、楕円周面、球面の一部又は全部、楕円球面の一部又は全部などの湾曲面で構成された形状であることが好ましく、また、インクジェット方式に用いるヘッドが侵入できない凹部を有していない形状が好ましい。具体的には、断面が長方形、平行四辺形、台形などの断面四角形の板状又は柱状の形状、断面が扇形の一部又は全部の形状の板状又は柱状の形状などが挙げられるが、インクジェット方式の適用性を考慮すると、直方体形状が特に好ましい。
【0014】
本発明の被膜の形成方法には、(A)ヘッドから液滴を射出するインクジェット方式により、ヘッドの先端から紫外線硬化樹脂組成物の液滴を射出して希土類磁石表面に付着させる工程、及び(B)希土類磁石表面に付着した紫外線硬化樹脂組成物に、紫外線を照射して、紫外線硬化樹脂組成物を硬化させる工程が含まれる。希土類磁石の表面に形成される被膜は、希土類磁石に耐食性を与える、希土類磁石に絶縁性を与える(希土類磁石の電気抵抗を高める)などの目的で形成される。このような被膜の厚さ(平均膜厚)は、通常3μm以上であるが、6μm以上、特に8μm以上、とりわけ10μm以上であることがより好ましく、また、20μm以下、特に18μm以下、とりわけ16μm以下であることが好ましい。被膜の厚さが上記範囲より薄くなると、良好な耐食性、絶縁性を与えることが難しくなる場合がある。一方、被膜の厚さが上記範囲より厚くなると、例えば、被膜を形成した希土類磁石がIPM回転機に搭載される磁石である場合、所定の容積の空隙に磁石を配置することになるが、被膜が厚くなるほど、上記所定の容積の空隙に挿入される磁石本体(被膜やプライマー層以外の部分)の体積が減少することになるため、回転機の特性が低下するおそれがある。本発明によって、例えば、モータ用途の磁石として十分な電気抵抗を有する希土類磁石を得ることができる。
【0015】
(A)工程においては、ヘッドから液滴を射出するインクジェット方式により、ヘッドの先端から紫外線硬化樹脂組成物の液滴を射出して希土類磁石表面に紫外線硬化樹脂組成物の液滴を付着させる。インクジェット方式を適用した装置は、一般に、インクジェットプリンタとして知られており、液状の塗工物を微液滴化して射出し、対象物の表面に、直接付着させる装置である。紙などにインクを印刷する装置以外にも、インクの代わりに未硬化の樹脂組成物を射出し、対象物の表面に、直接付着させる装置も市販されており、この場合も、通常、インクジェットプリンタと呼ばれている。インクジェット方式には、2種類の型があり、液状の塗工物を常に射出しているコンティニュアス型と、必要なときのみ液状の塗工物を射出するオンデマンド型がある。オンデマンド型には、更に2方式が存在し、圧電素子を利用して液状の塗工物を射出するピエゾ方式と、加熱により発生した気泡を利用して液状の塗工物を射出するサーマル方式がある。本発明では、特に限定はされないが、装置の小型化が比較的容易とされているオンデマンド型が好ましく、また、紫外線硬化樹脂組成物は、熱によって硬化する場合もあるため、ピエゾ方式が好ましい。
【0016】
希土類磁石表面への被膜の形成にインクジェット方式を適用すれば、希土類磁石表面に、液量が制御された微液滴を、希土類磁石表面に沿って一定の間隔で順に付着させることができ、均質性が高い被膜を形成することができる。即ち、インクジェット方式では、例えば、解像度(液滴のドット密度)、液滴の液量(樹脂組成物量)、液滴を付着させた後、紫外線照射を開始する(硬化を開始させる)までの時間(タイミング)を調整することで、吹き付け塗装による形成などで生じやすい、希土類磁石の素地が露出している部分(被膜が形成されていない部分)の発生や、塗りむらなどを、低減することができる。従って、吹き付け塗装による形成の場合よりも、均質性が保ちやすい。そのため、本発明の形成方法により被膜を形成すれば、被膜で被覆された希土類磁石において、被膜の不良部分(ピンホールなどの未被覆部分や、被膜が薄い部分)で問題になる耐食性不良や絶縁性不良を低減することができる。更に、(A)工程と(B)工程とを繰り返して被膜を形成する場合でも、硬化した紫外線硬化樹脂間の接合部分での剥がれが抑制されており、被膜の物理的安定性を得ることができる。
【0017】
インクジェットプリンタで画像を印刷する場合には、高い解像度を確保するために、インク吹付、硬化の工程で、インクの液滴の拡散を極力抑制する必要があるが、本発明の被膜の形成方法では、形成後に得られる被膜の均質性を得るためには、画像印刷に用いるインクジェット方式とは異なる条件で、紫外線硬化樹脂組成物の液滴を射出することが好ましい。
【0018】
紫外線硬化樹脂組成物の液滴を付着させるポイント(ドット)の解像度は300dpi以上、特に600dpi以上が好ましい。解像度を高くし、液滴を微細化することで、形成される被膜表面の凹凸がより微小化され、また、ピンホールなどの未被覆部分の発生を抑制することができる。解像度が高ければ、上述した効果がより高くなるが、面積当たりの液滴の射出回数が多くなるため生産性が低くなる。そのため解像度の上限は、特に限定されるものではないが、通常1,200dpi以下であり、900dpi以下であることが好ましい。なお、1つのドットには、液滴を1滴のみ付着させても、2滴以上付着させてもよい。
【0019】
液滴の液量(容積)は、形成する被膜の厚さや、上述した解像度に応じて選択されるが、形成する被膜の特性と生産効率とを考慮すれば、1滴当たり3pL以上、特に6pL以上で、20pL以下、特に12pL以下、とりわけ10pL以下が好ましい。また、液滴を形成する紫外線硬化樹脂組成物の粘度は、25℃において17mPa・s以上、27mPa・s以下であることが好ましい。なお、被膜の密着性の向上を目的として、紫外線硬化樹脂組成物を付着させる前に、希土類磁石の表面に、プライマー層を形成しておいてもよい。
【0020】
本発明のインクジェット方式による被膜の形成では、上述した解像度や液滴の液量を制御することで、被膜密度を調整することができる。被膜密度は0.93g/cm3以下、特に0.92g/cm3以下であることが好ましい。解像度が高いほど、被膜密度が高くなるが、被膜密度が高すぎると、被膜の内部応力が高くなり被膜の剥がれやクラック等の不具合が生じるおそれがある。被膜密度の観点からは、紫外線硬化樹脂組成物の液滴を付着させるポイント(ドット)の解像度は、(600〜900)dpi×(600〜900)dpiの範囲が特に好適である。一方、被膜密度の下限は、通常0.89g/cm3以上であり、0.9g/cm3以上であることが好ましい。被膜密度が低すぎると、良好な耐食性、絶縁性を得るのが難しくなるおそれがある。なお、被膜密度は、所定の面積に被膜を形成したときの膜厚と、使用したインク量(インクの体積及びインクの比重)又は被膜質量とから算出することができる。
【0021】
インクジェット方式では、液滴を付着させる位置の制御精度が高いため、樹脂組成物の無駄が出ず、歩留まりが高いだけでなく、液滴を射出して付着させる際に、希土類磁石が隣り合っていても、吹き付け塗装のように、両者の間に樹脂組成物が溜まって、希土類磁石同士が固着するような問題を引き起こし難い。
【0022】
また、インクジェット方式を適用して被膜を形成する場合、吹き付け塗装により被膜を形成する場合と比較して、コンパクトな装置を用いて、より狭い作業領域での樹脂組成物の塗布が可能となる。また、熱硬化型樹脂を利用した吹き付け塗装による被膜の形成と比較して、乾燥工程や、熱処理工程が不要であり、樹脂組成物の硬化に要する時間が短い利点がある。更に、乾燥工程や、熱処理工程が不要なことに伴い、消費電力が小さくなるため、ランニングコストも低減される。従って、インクジェット方式を適用した本発明の被膜の形成方法は、生産性の高い方法である。
【0023】
本発明では、被膜を形成する樹脂として紫外線硬化樹脂を用いる。紫外線硬化樹脂は、紫外線のエネルギーにより光化学反応を起こし、液体から固体へと秒単位で硬化する樹脂である。紫外線硬化樹脂組成物(未硬化の紫外線硬化樹脂)には、主成分である光重合性化合物(モノマー又は樹脂前駆体)、光重合開始剤、着色料、助剤などが含まれる。光重合性化合物は、例えば、二重結合が開裂し重合するラジカル型のアクリルモノマーを挙げることができる。これ以外にも、カチオン型のエポキシモノマー、オキセタンモノマー、ビニルエーテルモノマーなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ラジカル型では、光重合開始剤が光により分解してラジカルが発生し、これがモノマーと反応して新たなラジカルを生成することにより重合が進行する。この場合の光重合開始剤種としては、芳香族ケトンが挙げられる。カチオン型では、光重合開始剤が光により分解して酸が発生し、これがモノマーと反応して新たなカチオン活性種を生成することにより重合が進行する。この場合の光重合開始剤種としては、トリアリルスルホニウムカチオンとヘキサフルオロホスフェートなどが挙げられる。着色料としては、例えばカーボンブラックなどが挙げられ、カーボンブラックは、被膜形成後の希土類磁石の視認性の向上に寄与する。
【0024】
(B)工程においては、希土類磁石表面に付着した紫外線硬化樹脂組成物に、紫外線を照射して、紫外線硬化樹脂組成物を硬化させる。紫外線は、用いる紫外線硬化樹脂組成物の種類に応じて適宜選択されるが、通常、200〜380nm程度の波長の紫外線を用いることができる。紫外線は、例えば、水銀ランプ、UV−LED、キセノンランプなどから照射することができる。
【0025】
本発明の被膜の形成方法では、(A)工程と(B)工程とを、例えば、以下の態様(1)又は態様(2)のように実施することができる。
【0026】
(1)(A)工程において、ヘッドの先端を希土類磁石の表面近傍で移動させながら紫外線硬化樹脂組成物の液滴を順次射出することにより、希土類磁石の表面の一部又は全部に、紫外線硬化樹脂組成物の液滴が連結して形成された紫外線硬化樹脂組成物の薄層を形成した後、(B)工程を実施する。ここで、薄層の厚さは、4μm以上、特に7μm以上で、22μm以下、特に18μm以下であることが好ましい。この場合、(A)工程において、希土類磁石の表面の一部に紫外線硬化樹脂組成物の薄層を形成した後、(B)工程を実施し、更に、(A)及び(B)工程を、希土類磁石の紫外線硬化樹脂で被覆されていない表面に対して順次繰り返して、希土類磁石の所定の表面全体に紫外線硬化樹脂の被膜を形成することもできる。
【0027】
(2)(A)工程において、ヘッドの先端から紫外線硬化樹脂組成物の液滴を射出して、液滴に対して(B)工程を実施し、液滴が硬化した紫外線硬化樹脂の隣接部にヘッドの先端を移動させて、更に、(A)及び(B)工程を、希土類磁石の紫外線硬化樹脂で被覆されていない表面に対して、ヘッドの先端を希土類磁石の表面近傍で移動させながら順次繰り返すことにより、希土類磁石の表面の一部又は全部に、紫外線硬化樹脂の被膜を形成する。
【0028】
希土類磁石の表面に液滴を付着させた後、紫外線照射を開始する(硬化を開始させる)までの時間(タイミング)は、液滴の付着と実質的にほぼ同時(例えば、液滴の射出直後から付着直後まで)であってもよいが、液滴の付着後、一定の時間保持した後に、紫外線を照射することが好ましい。このようにすることにより、希土類磁石の表面上での液滴の流動により液滴同士が連結するのを待って、硬化を開始させることができ、形成される被膜の膜厚の面内のばらつきや、不良部分(ピンホールなどの未被覆部分や、被膜が薄い部分)の発生を抑制することができる。この効果を高く得るためには、液滴の液量や、紫外線硬化樹脂組成物の粘度にもよるが、希土類磁石の表面に付着した紫外線硬化樹脂組成物の液滴を、紫外線を照射せずに1秒間以上、好ましくは3秒以上保持した後、液滴に紫外線を照射することが有効である。
【0029】
希土類磁石の表面に液滴を付着させた後、付着と実質的にほぼ同時に紫外線を照射する場合、紫外線硬化樹脂組成物の液滴を射出するヘッドの先端又はその近傍に、ヘッドの一部として又はヘッドとは別部として、紫外線照射部を設けることが有効である。例えば、紫外線硬化樹脂組成物の液滴を射出するヘッドの先端又はその近傍に、ヘッドの一部として又はヘッドとは別部として、紫外線照射部を備える紫外線硬化インクジェットプリンタなどを用いれば、ヘッドから液滴を射出したその場で紫外線硬化樹脂組成物を硬化させることができるので、吹き付け塗装による被膜の形成において実施されるような乾燥工程や、熱処理工程を別の装置で実施する必要がなく、有利である。また、この場合、紫外線を照射するタイミングを制御すれば、液滴の付着後、一定の時間保持した後に、紫外線を照射することも可能であり、ヘッドを移動させずに又は液滴が付着した紫外線硬化樹脂組成物の隣接部にヘッドの先端を移動させてから、紫外線を照射することができる。
【0030】
一方、希土類磁石の表面に液滴を付着させた後、一定の時間保持した後に、紫外線を照射する場合、特に、上述した態様(1)の場合は、インクジェットプリンタとは別に、紫外線ランプなどの紫外線照射装置を別に設けて、紫外線硬化樹脂組成物の液滴や、紫外線硬化樹脂組成物の液滴が連結して形成された紫外線硬化樹脂組成物の薄層に、必要に応じて所定の時間保持した後、一括して紫外線を照射することにより(B)工程を実施してもよい。この場合、希土類磁石をインクジェットプリンタから取り外さずに紫外線を照射してもよく、また、効率はやや下がるが、希土類磁石をインクジェットプリンタから一旦取り外してから紫外線を照射してもよい。
【0031】
希土類磁石の表面は、通常、液滴の射出方向に直交する方向に配置され、例えば、希土類磁石が直方体形状の場合、必ずしも希土類磁石の6面全面に被膜を形成する必要はないが、6面全面に被膜を形成するためには、希土類磁石を5回回転させる必要がある。本発明の被膜の形成方法においては、(A)工程においてヘッドの先端から紫外線硬化樹脂組成物の液滴を射出する際、また、(B)工程において紫外線を照射する際のいずれにおいても、希土類磁石の表面を、液滴の射出方向に直交する方向から傾斜させて配置することもできる。希土類磁石が直方体形状の場合、希土類磁石の表面を例えば45°傾けることで、同時に2面を処理することができる。希土類磁石の表面を、液滴の射出方向に直交する方向から傾斜させて配置する場合は、態様(2)を適用することが好適である。
【0032】
このような方法により、希土類磁石表面に被膜を形成すると、形成された被膜の表面状態は、従来の吹き付け塗装により形成された被膜とは全く異なる形態となる。吹き付け塗装は、希土類磁石表面上に、液状の樹脂組成物が広がるように吹き付ける操作であり、また、吹き付け塗装では、液状の樹脂組成物の吹き付けから樹脂組成物の硬化までに相応の時間を要し、その間、液状の樹脂組成物が希土類磁石表面上を流れて平坦化するため、巨視的な評価(例えば1mm×1mm程度以上の範囲での評価)では、平坦性のよい形状となる。一方、吹き付けという操作の特性上、塗装状態の安定性(一定性)に劣るため、微視的な評価(例えば10μm×10μm程度の範囲毎の評価)では、被膜には、部分的に荒れた箇所が形成され、膜の均一性に劣るものとなる。
【0033】
これに対して、本発明の被膜の形成方法は、希土類磁石表面上に、液滴を1滴ずつ均等に、等間隔で付着させることができるため、塗装状態の安定性(一定性)が高く、微視的な評価では、部分的に荒れた箇所がほとんどなく、膜の均一性が高くなる。一方、本発明の被膜の形成方法では、樹脂組成物は、液滴に分割して付着させ、また、液状の樹脂組成物の液滴の付着から樹脂組成物の硬化までの時間を短くすることができ、希土類磁石表面上での液滴同士の連結(液滴の一体化及び平坦化)が進んでいない状態で、樹脂組成物が硬化する場合があるため、巨視的な評価では、被膜の表面は、液滴の形状を反映して、比較的凹凸のある形状となりやすい。特に、解像度が低いほど、希土類磁石表面上での液滴同士の連結(液滴の一体化及び平坦化)が進みにくく、より凹凸のある形状となると考えることができる。表面を被膜で被覆した希土類磁石は、しばしば、他の部材に接着して用いられるが、このような凹凸のある形状は、被膜で被覆された希土類磁石を他の部材に接着する場合において、アンカー効果を得やすいことから、接着力の向上又は接着剤の減量の観点で有利である。
【0034】
本発明においては、希土類磁石本体と、希土類磁石本体を被覆する樹脂被膜とを有する希土類磁石として、被膜表面の算術平均粗さRaが1.05μm以上、特に1.1μm以上、とりわけ1.2μm以上である希土類磁石を得ることができる。この算術平均粗さRaは、被膜の平均膜厚の50%、特に30%以下、とりわけ20%以下であることが好ましい。
【0035】
また、本発明においては、希土類磁石本体と、希土類磁石本体を被覆する樹脂被膜とを有する希土類磁石として、被膜表面の最大高さ粗さRzが7μm以上、特に8μm以上である希土類磁石を得ることができる。例えば、被膜の平均膜厚が8μm以上であれば、最大高さ粗さRzを、7μm以上、かつ被膜の平均膜厚の87.5%以下とすることができ、また、被膜の平均膜厚が10μm以上であれば、最大高さ粗さRzを、8μm以上、かつ被膜の平均膜厚の85%以下とすることができる。なお、被膜としての機能を考慮すると、被膜の平均膜厚と最大高さ粗さRzとの差は1μm以上、特に1.5μm以上であることが好ましい。
【0036】
算術平均粗さRa及び最大高さ粗さRzの評価は、被膜の1mm×1mm以上の範囲(1mm2以上の範囲)、特に3mm×3mm以上の範囲(9mm2以上の範囲)を対象とした被膜の表面粗さの評価において、上記の割合を満たすことが好ましい。
【実施例】
【0037】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0038】
[実施例1]
直方体形状(70mm×7.3mm×3.5mm)のNd−Fe−B焼結磁石の表面全体に、UV−LED硬化フラットヘッドインクジェットプリンタUJF−6042MkII((株)ミマキエンジニアリング製)を使用して、紫外線硬化樹脂の被膜を形成した。液滴を形成する紫外線硬化樹脂組成物は、アクリル酸エステルを主成分とし、反応希釈剤として二アクリル酸ヘキサメチレン、重合開始剤、及び着色料としてカーボンブラックを含むものを用いた。解像度は600dpi×600dpi、液滴量は6pLとした。被膜は、Nd−Fe−B焼結磁石サンプル5個に対して形成した。
【0039】
Nd−Fe−B焼結磁石の1つの面(70mm×7.3mm)全体に対して、ヘッドの先端を希土類磁石の表面近傍で移動させながら紫外線硬化樹脂組成物の液滴を順次射出し、紫外線硬化樹脂組成物の液滴が連結して形成された紫外線硬化樹脂組成物の薄層を形成した後、ヘッドの先端を射出開始位置に戻して、液滴が付着した順に紫外線を照射する掃引により紫外線硬化樹脂の被膜を形成した。紫外線硬化樹脂組成物の液滴が希土類磁石の表面に付着してから紫外線が照射されるまでの時間(保持時間)は20秒であった。
【0040】
形成した紫外線硬化樹脂の被膜全体の平均膜厚を、(株)ミツトヨ製リニアゲージ(以下の平均膜厚の測定において同じ)で測定した結果、15.5μmであった。また、形成した紫外線硬化樹脂の被膜全体について、被膜表面の算術平均粗さRa及び最大高さ粗さRzを、(株)キーエンス製3D形状測定機VR−3000(以下のRa及びRzの測定において同じ)で測定した結果、Raは1.316μm、Rzは11.5μmであった。更に、被膜を形成した面の面積、被膜の膜厚、及び使用したインク量から算出した被膜密度は、0.916g/cm3であった。
【0041】
[実施例2]
解像度を600dpi×900dpiとした以外は実施例1と同様にして紫外線硬化樹脂の被膜を形成し、実施例1と同様にして、平均膜厚、算術平均粗さRa及び最大高さ粗さRzを測定したところ、平均膜厚は15.0μm、Raは1.253μm、Rzは10.8μm、被膜密度は0.915g/cm3であった。
【0042】
[比較例1]
直方体形状(70mm×7.3mm×3.5mm)のNd−Fe−B焼結磁石の表面全体に、エアスプレーを使用した吹き付け塗装により、エポキシ樹脂の被膜を形成した。未硬化のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂を主成分とし、溶剤としてトルエン、顔料としてカオリン、着色料としてカーボンブラックを含むものを用いた。被膜は、Nd−Fe−B焼結磁石サンプル5個に対して形成した。
【0043】
Nd−Fe−B焼結磁石の1つの面(70mm×7.3mm)全体に対して、エポキシ樹脂組成物を塗布し、Nd−Fe−B焼結磁石の表面の表面全体がエポキシ樹脂組成物で覆われたことを確認した後、オーブンにて、170℃で1時間加熱して、エポキシ樹脂組成物を硬化させて、エポキシ樹脂の被膜を形成した。
【0044】
得られたエポキシ樹脂被膜について、実施例1と同様にして、平均膜厚、算術平均粗さRa及び最大高さ粗さRzを測定したところ、平均膜厚は11μm、Raは1.01μm、Rzは6.910μmであった。
【0045】
次に、実施例1、実施例2及び比較例1で得られた各々5個のサンプルについて、耐久試験を実施した。耐久試験は、ATF(Automatic Transmission Fluid)への浸漬試験、及び冷熱サイクル試験とし、前者は、150℃、1,500時間、含水率0.125質量%の条件で1回、後者は、−40℃から150℃のサイクルを300サイクル実施した。
【0046】
試験前後のサンプルについて、被膜の状態を目視で確認し、また、被膜の電気抵抗を電極で挟み込み、7MPaに加圧した状態で、接続された抵抗計により測定したところ、実施例1、実施例2及び比較例1で得られた各々5個のサンプルいずれにおいても試験前後で、剥がれなどの不良は確認されなかった。また、電気抵抗は、実施例1、実施例2及び比較例1のいずれのサンプルにおいても、試験前後で大きな変化は確認されなかったが、実施例1及び実施例2ではいずれも1MΩ以上であったのに対して、比較例1では1MΩ未満のものが存在した。これらの結果から、インクジェット方式を適用した本発明において、従来の吹き付け塗装と同様の耐油性が得られ、更に、吹き付け塗装で形成した被膜と比べて、高い電気抵抗が得られることがわかった。
【国際調査報告】